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特表2024-522746二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト
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  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図1
  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図2
  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図3
  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図4
  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図5A
  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図5B
  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図6
  • 特表-二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】二官能性触媒水素化異性化用のコバルトおよび/またはセリウムドープゼオライト
(51)【国際特許分類】
   C10G 47/16 20060101AFI20240614BHJP
   B01J 29/74 20060101ALI20240614BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240614BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240614BHJP
   C10G 47/18 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C10G47/16
B01J29/74 M
B01J29/76 M
B01J37/08
C10G47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577526
(86)(22)【出願日】2022-06-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 US2022032596
(87)【国際公開番号】W WO2022265892
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】17/349,989
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523025539
【氏名又は名称】エクソンモービル テクノロジー アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Technology and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】飯田 剛之
(72)【発明者】
【氏名】ダッカ,ジハード エム
(72)【発明者】
【氏名】カーカフ,バンドン エム
(72)【発明者】
【氏名】ピーターズ,アーロン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H129
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA21C
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB08C
4G169BB10C
4G169BB12C
4G169BC24A
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC71A
4G169BC72A
4G169BC73A
4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BE01C
4G169BE08C
4G169BE17C
4G169CC14
4G169DA06
4G169EA01Y
4G169EC27
4G169FA01
4G169FB30
4G169FB44
4G169FB77
4G169FC02
4G169FC04
4G169FC05
4G169FC07
4G169FC08
4G169ZA19A
4G169ZA19B
4G169ZA33A
4G169ZA33B
4G169ZA46A
4G169ZA46B
4G169ZB08
4G169ZC04
4G169ZF05A
4H129AA02
4H129CA04
4H129CA13
4H129DA20
4H129KA11
4H129KB03
4H129KC19X
4H129KC19Y
4H129KD13X
4H129KD18X
4H129KD21X
4H129KD23X
4H129KD26X
4H129KD26Y
4H129NA25
4H129NA37
(57)【要約】
本明細書において提供されるのは、炭化水素原料を水素および触媒と接触させて、炭化水素原料に対して分岐炭化水素の増加を有する炭化水素生成物を得ることを含み、炭化水素原料の水素化異性化方法である。本発明の触媒は、骨格金属酸化物として3価のカチオン、セリウムおよび/またはコバルトを含む骨格外種、および0.01~1.5wt.%のVIII族またはVIB族の金属、またはそれらの組み合わせを有するヘテロ原子ドープベータゼオライトを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料を水素および触媒と接触させて、前記炭化水素原料と比較して分岐炭化水素の増加を有する炭化水素生成物を得ることを含む炭化水素原料の水素化異性化方法であって、前記触媒が、骨格金属酸化物として3価のカチオン、セリウムおよび/またはコバルトを含む骨格外種を有するヘテロ原子ドープベータゼオライト、および0.01~1.5wt%のVIII族またはVIB族の金属、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項2】
前記ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、10より大きい骨格/骨格外金属酸化物に対するSiOのモル比を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、8より大きいAlに対するSiOのモル比を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、10より大きいセリウムおよび/またはコバルト金属酸化物(CeOおよびCoOとして表される)に対するSiOのモル比を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒は、金属酸化物バインダーをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記VIII族またはVIB族の金属は、Ptである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒は、0.1wt.%~1.5wt.%のPtを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭化水素原料は、1つ以上の異性化条件下で触媒と接触する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の異性化条件が、100℃~450℃の温度、0psig~1000psigの圧力、0.1hr-1~10hr-1のWHSV、および/または約0.1~約100の水素/炭化水素モル比を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、n-ヘプタン転化に選択的である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記炭化水素原料が、n-ペンタン、n-ヘキサン、および/またはn-ヘプタンを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素原料が、ナフテンおよび/または1種以上の芳香族化合物をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、前記炭化水素原料中の軽質パラフィンをC、CおよびCに選択的に変換する、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
およびCをCから分離する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
セリウムまたはコバルトを骨格外種として含むヘテロ原子ドープ-ベータゼオライトを合成する方法であって、ベータゼオライト、特にベータゼオライトを含むアルミニウムの合成に適した反応混合物を結晶化することを含み、結晶化前にセリウムおよびコバルトの少なくとも一方を、好ましくはセリウム塩および/またはコバルト塩の形態で、より好ましくはセリウムおよび/またはコバルトの硝酸塩、ハロゲン化物、酢酸塩、および硫酸塩の形態で反応混合物に添加する、方法。
【請求項16】
前記反応混合物が、水、SiO、および骨格金属酸化物を含み、前記反応混合物は、
0~4の前記反応混合物のSiOに対する構造指示剤カチオンQのモル比;
10より大きい前記反応混合物の骨格金属酸化物に対するSiOのモル比;
0より大きい前記反応混合物のSiOに対する水のモル比;
0~1の前記反応混合物のSiOに対するアルカリ金属Mのモル比;および
5より大きい前記反応混合物のAl源に対するSiOのモル比を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応混合物が、構造指示剤および/または鉱化剤をさらに含み、好ましくは、反応混合物が構造指示剤としてテトラエチルアンモニウム(TEA)イオンを含む、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
不活性、酸化的および/または蒸気条件下で、約100℃~約800℃の温度でヘテロ原子ドープベータゼオライトを焼成する工程をさらに含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
セリウムおよび/またはコバルトの骨格外種を有するベータゼオライトと、約0.01~約1.5wt%のPtとを含む組成物。
【請求項20】
ベータゼオライトが、10より大きいセリウムおよび/またはコバルト金属酸化物(CeOおよびCoOとして表される)に対するSiOモル比を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
ベータゼオライトが、8より大きいAlに対するSiOのモル比を含む、請求項19または20に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年6月17日に出願された米国出願第17/349989号の優先権および利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、軽質パラフィンの水素化異性化(hydroisomerization)に関し、より具体的には、軽質パラフィンを水素化異性化するための新規触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
軽質直鎖パラフィンの水素化異性化は、ガソリン燃料のオクタン価を高めるために、特定の石油資源を利用するための主要な反応である。この目的のためにゼオライト触媒が使用されてきた。しかし、ゼオライトをベースとする軽質パラフィン水素化異性化触媒は、クラッキングと呼ばれる副反応に悩まされることがある。金属酸化物触媒は軽質直鎖パラフィンの水素化異性化に高い活性と選択性を持つため、これらの反応に使用するために金属酸化物触媒が開発されてきた。しかし、S、N、HO、およびClなどの触媒毒が存在すると、触媒の活性が低下し得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書において提供されるのは、炭化水素原料(又は炭化水素供給原料:hydrocarbon feedstock)を水素および触媒と接触させて、炭化水素原料と比較して分岐炭化水素の増加を有する炭化水素生成物を得ることを含む炭化水素原料の水素化異性化方法である。本発明の触媒は、骨格(またはフレームワーク;framework)金属酸化物としての3価のカチオン、セリウムおよび/またはコバルトを含む骨格外(extra-framework)種を含むヘテロ原子ドープベータゼオライト、ならびに0.01~1.5wt.%のVIII族またはVIB族金属、またはそれらの組合せを含む。
【0005】
また、本明細書では、骨格外種としてセリウムまたはコバルトを含むヘテロ原子ドープベータゼオライトの合成方法も提供する。この方法は、水、SiO、および骨格金属酸化物を含む反応混合物(すなわち、ベータゼオライト、特にアルミニウム含有ベータゼオライトの合成に適した反応混合物)を、セリウム源および/またはコバルト源の存在下で結晶化させることを含む。反応混合物は、0~4の前記反応混合物のSiOに対する構造指示剤カチオンQのモル比、10より大きい前記反応混合物の骨格金属酸化物に対するSiOのモル比、0より大きい前記反応混合物のSiOに対する水のモル比、0~1の前記反応混合物のSiOに対するアルカリ金属Mのモル比;および5より大きい前記反応混合物のAl源に対するSiOのモル比を含む。セリウムおよび/またはコバルトは、例えばセリウムおよび/またはコバルト塩の形態で、結晶化が起こる前に反応混合物に添加される。ヘテロ原子ドープベータゼオライトを合成する本発明の方法は、ヘテロ原子ドープベータゼオライトを、不活性、酸化的および/または蒸気条件下で、100℃~800℃の温度で、骨格ヘテロ原子が骨格外種に変換されるように焼成する工程を含む。反応混合物は、鉱化剤および/または構造指示剤をさらに含むことができる。
【0006】
本開示の開示された方法および組成物のこれらおよび他の特徴および属性、ならびにそれらの有利な用途および/または使用は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本明細書の主題を製造および使用する際に、関連技術分野における通常の技術者を補助するために、添付の図面を参照する:
【0008】
図1図1は、CeドープAl-ベータゼオライト(上線)対Al-ベータゼオライト(下線)のX線回折のグラフである。
【0009】
図2図2は、焼成前後のCeドープAl-ベータゼオライトのDRUV-vis結果のグラフであり、CeOを基準としている(視覚的に明瞭にするため、シグナルは1/20に縮小されている)。
【0010】
図3図3は、230℃、WHSVが2,4,6/hの際の、ヘテロ原子ドープゼオライトの異性化選択率(%)対n-ヘプタン転化率(%)を示す。
【0011】
図4図4は、250℃、WHSVが2、4、6/時間または4、6/時間の際の、ヘテロ原子ドープゼオライトの異性化選択率(%)対n-ヘプタンの転化率(%)を示す。
【0012】
図5A図5Aは、250℃、1時間当たり3、6のLHSVの軽ガス(C1~C4)wt.%生成に対するRONの増加を示している。触媒Pt/Fe/WZrOを170℃で運転した場合の結果である。
【0013】
図5B図5Bは、クラッキングによる軽ガス生成に対するn-C転化率を示すグラフである。
【0014】
図6図6は、実施例3に記載された4種の触媒について、250℃で1時間当たり3,6のLHSVにおけるn-C、n-Cの相対転化率を示している。触媒Pt/Fe/WZrOを170℃で運転した場合の結果である。
【0015】
図7図7は、WHSVが0.75、1、1.5h-1の際の230℃での異性体選択性対転化率を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示および特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、明細書に別段の記載がない限り、複数形を含む。
【0017】
本明細書で“Aおよび/またはB”のような表現で使用される“および/または”という用語は、“AおよびB”、“AまたはB”、“A”および“B”を含むことを意図している。
【0018】
「C」という用語は、分子構造中にn個の総炭素原子を有する炭素原子を含む炭化水素化合物、またはそのような炭化水素化合物の2種以上の混合物を指す。このような炭化水素には、様々な程度の不飽和炭素が存在し得る。
【0019】
“パラフィン”、“アルカン”および“飽和炭化水素”という用語は、本明細書では互換的に使用され、C2n+2の式を有する炭化水素を指す。
【0020】
本明細書では、“直鎖状”および“通常の”という用語は互換的に使用され、側鎖分岐のない炭化水素を指す。
【0021】
“クラッキング”とは、炭化水素分子を2つの小さな炭化水素分子に転化(または変換;conversion)することである。
【0022】
“異性化”および“水素化異性化”という用語は、炭化水素の骨格転位、特にノルマルパラフィンの分岐パラフィンへの転化を指す。
【0023】
“重量空間速度”(WHSV)という用語は、触媒の単位重量当たり1時間当たりに流れる供給混合物の重量の尺度を指す。
【0024】
“液空間速度”(LHSV)とは、1時間当たりに触媒の単位体積当たりに流れる供給混合物の体積を示す指標である。
【0025】
“可変酸化状態金属”(variable oxidation state metal)とは、ゼロ酸化状態以外に2つ以上のアクセス可能な酸化状態を持つ金属を指す。
【0026】
“総表面積”という用語は、分散固体または多孔質固体(微多孔質材料)の総特定外部表面積および内部表面積を意味し、ISO9277に規定されているような、吸着N吸脱着等温線の量を測定することによって得られる。
【0027】
特に断りのない限り、周囲温度(「室温」ともいう)は約25℃である。
【0028】
本明細書に提供されるのは、炭化水素原料を水素および触媒と接触させて、炭化水素原料に対して分岐炭化水素の増加を有する炭化水素生成物を得ることを含み、炭化水素原料の水素化異性化方法である。触媒は、ヘテロ原子ドープゼオライトベータ、特にセリウムおよび/またはコバルトドープベータゼオライト、0.01~1.5重量%のVIII族またはVIB族金属、またはそれらの組合せを含み、金属酸化物バインダーをさらに含むことができる。本発明の方法において、ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、骨格金属酸化物としての3価のカチオンと、セリウムおよび/またはコバルトを含む骨格外種とを含む。本発明のヘテロ原子ドープベータゼオライトは、10より大きい骨格/骨格外酸化物に対するSiOのモル比をさらに含むことができる。ある態様において、本発明のヘテロ原子ドープベータゼオライトは、8より大きく、特に10より大きく、例えば10より大きく2000または1000、例えば20から200、または30または40から100または150である、Alに対するSiOのモル比を含む。ある態様において、本発明のヘテロ原子ドープベータゼオライトは、10より大きく、例えば10より大きく2000または15より大きく1000、例えば30または40または50より大きく500または300である、セリウムおよび/またはコバルト金属酸化物(CeOまたはCoOの形態)に対するSiOのモル比を含む。ある態様において、本発明のヘテロ原子ドープベータゼオライトは、VIII族またはVIB族の金属を含み、および/またはn-ヘプタンの転化に選択的である。したがって、ある態様において、本発明は、骨格金属酸化物として3価のカチオン(例えば、Al)、およびセリウムおよび/またはコバルトを含む骨格外種を有する、セリウムおよび/またはコバルトドープベータゼオライトの、水素化異性化触媒、例えば、水素化異性化触媒における使用に関する。炭化水素原料を水素および前記触媒と接触させて、炭化水素原料に対して分岐炭化水素の増加を有する炭化水素生成物を得ることを含む炭化水素原料の水素化異性化方法において使用され前記触媒は、セリウムおよび/またはコバルトがドープされたベータゼオライト、0.01~1.5wt%のVIII族および/またはVIB族金属、特にPt、および任意に金属酸化物バインダーを含む。
【0029】
本発明の水素化異性化方法において、炭化水素原料は、100℃から450℃の運転温度、0psigから1000psigの運転(または操作;operating)圧力、0.1hr-1から10hr-1のWHSV、および0から100の水素/炭化水素モル比を含む効果的な異性化条件下で触媒に曝される。ある態様では、触媒は0.1wt%から1.5wt%のPtを含む。炭化水素原料は、以下の炭化水素のいずれかを含む:n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタンおよびそれらの組み合わせ。
【0030】
本明細書に記載されるように、セリウムまたはコバルトを骨格外種として含むヘテロ原子ドープ-ベータゼオライトを合成する本発明の方法は、水、SiO、および骨格金属酸化物(特に3価の骨格金属酸化物、例えばAl)を含む反応混合物を結晶化させるステップを含む。任意に、反応混合物は、構造指示剤および/または鉱化剤を含む。反応混合物は、0~4の反応混合物のSiOに対する構造指示剤カチオンQのモル比;10より大きい反応混合物の骨格金属酸化物に対するSiOのモル比;0より大きい反応混合物のSiOに対する水のモル比;0~1の反応混合物のSiOに対するアルカリ金属Mのモル比;および5より大きく、例えば10より大きい反応混合物のAl源に対するSiOのモル比を含む。ヘテロ原子ドープベータゼオライトを合成する本発明の方法は、ヘテロ原子ドープベータゼオライトを、不活性、酸化的および/または蒸気条件下で、100℃~800℃の温度で、骨格ヘテロ原子が骨格外種に変換されるように焼成する工程を含む。ベータゼオライトは、骨格金属酸化物に対するSiOのモル比が10より大きい。ベータゼオライトはまた、SiO対Alのモル比が約8以上、特に10以上、例えば10以上2000以下、または1000以下、例えば20以上200以下、または30もしくは40以上100もしくは150以下である。ベータゼオライトは、SiO、セリウムおよび/またはコバルト金属酸化物(CeOまたはCoO)に対するモル比が10以上、例えば10以上2000以下、または15以上1000以下、例えば30または40または50以上500または300以下である。
【0031】
本発明のヘテロ原子ドープゼオライトを製造するには、結晶化前にヘテロ原子を合成ゲルに導入する。本発明の方法を利用することで、ヘテロ原子を骨格部位および骨格外種として存在させることができる。DRのUV-vis測定結果によると、ヘテロ原子含有ゼオライトの不純物として見出される骨格外種の多くは、バルクのそれと比較して明確な分散を有している。したがって、このような種は、二官能性反応の性能を高めるために、ゼオライト骨格の酸部位に近接してプロモーターとして使用することができる。これは、ヘテロ原子が合成後に骨格部位に導入される先行技術のゼオライトベータおよび他のゼオライトとは異なる。ゼオライトの骨格T部位へのヘテロ原子の組み込みの検証は、利用可能な特性評価技術のために限られている。触媒試験の結果などを通じて間接的に混入が報告されているが、混入が骨格部位経由なのか骨格外種経由なのかはこれまで不明であった。
【0032】
二官能性ヘプタン水素化異性化では、様々なヘテロ原子がプロモーターとして有益である。このような促進効果は、骨格部位またはイオン交換部位にヘテロ原子がある場合に確認されている。例えば、ZSM-48結晶の活性と選択性を向上させるために、亜鉛、チタン、ジルコニウムを骨格部位に添加することは、米国特許出願公開第2015/0273450A1に記載されている。イソヘキサデカンに対する最大収率は、材料がチタンを含む場合に得られ、確認された。記載されているような骨格導入の場合、水素化異性化の活性向上には、Mn、FeおよびGaが含まれた。イオン交換部位に異なるヘテロ原子を導入することは、活性と選択性に有益である。例としては、La、Fe、Coなどがあり、以下の文献に記載されている:Liuら,RareEarthMetalsIon-exchangedβ-zeolitesasSupportsofPlatinumCatalystsforHydroisomerizationofn-heptane,Chin.J.Chem.Eng.,19,278,2011;Ushikietal.,Co-loadingofPtandFeon*BEAZeoliteforEnhancedIsomerizationSelectivityinn-HeptaneConversion,ChemLett.47,1428-1430,2018;andIzutsuetal.,SynthesisandCharacterizationofChromium-AddedPt/BetaZeolitesanditsCatalyticPerformanceofn-HeptaneIsomerization,Catal.Lett.,143,486,2013.
【0033】
本明細書の実施例に記載されているように、本発明の触媒は、従来のPt/Al-ベータ触媒の単金属触媒と比較して、軽質直鎖パラフィンに対して選択的かつ高活性である。本発明の触媒は、水素化異性化反応において、C、C、およびC混合炭化水素供給に対して選択的である。Pt/Fe/WZrO触媒およびPt/Al-MOR触媒の混合金属酸化物触媒と比較すると、本触媒は高温で運転しながら同等以上の転化率および選択性を提供する。
【0034】
実施例によってさらに教示されるように、セリウム(「Ce」)およびコバルト(「Co」)のような非従来型ヘテロ原子をベータゼオライト合成に添加して、ヘテロ原子ドープゼオライトであるAl-ベータゼオライトを得る。従って、一態様において、本発明は、骨格金属としての3価のカチオン(例えば、Al)およびCeおよび/またはCoを含む骨格外種を有するヘテロ原子ドープベータゼオライトを合成する方法に関し、前記方法は、結晶化が起こる前にヘテロ原子(すなわち、Ceおよび/またはCo)が反応混合物(または合成ゲル)に導入されることを除いて、従来の方法によってAl-ベータゼオライトを調製することを含む。したがって、この方法は、Al-ベータゼオライトの調製に適した組成を有する反応混合物(または合成ゲル)を調製するステップを含み、反応混合物(または合成ゲル)は、セリウムおよび/またはコバルトの少なくとも1つの供給源をさらに含む。好適なセリウムおよびコバルト源としては、それらの塩、特にそれらの水溶性塩、例えばセリウムおよび/またはコバルトの硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、およびハロゲン化物、例えば塩化物および臭化物が挙げられる。一態様において、反応混合物中のセリウムおよび/またはコバルトの少なくとも1つの供給源(CeOまたはCoOとして表される)に対するSiOのモル比は10より大きく、例えば10より大きく2000までまたは15より大きく1000まで、例えば30または40または50より大きく500までまたは300までである。その後、反応混合物を結晶化が起こるまで加熱する。高温の反応混合物から結晶化した生成物は、従来、分離し、水で洗浄し、乾燥することができる。本方法はまた、不活性、酸化的および/または蒸気条件下で、ヘテロ原子ドープ(Ce-および/またはCo-ドープ)ベータゼオライトを100℃から800℃の温度で焼成して、Ceおよび/またはCo原子の少なくとも一部を骨格外種に変換する工程をさらに含んでもよい。
【0035】
水素化異性化反応に適用した場合、これらのゼオライトは、従来のPt/Al-ベータゼオライトの単金属ゼオライトに匹敵する転化選択性トレードオフパターンを示した。スズ(「Sn」)のような特定の元素ではこのような向上は見られず、元素選択の重要性を示している。Pt/Fe/WZrOの混合炭化水素供給の水素化異性化反応において、Pt/Ce,Al-ベータは、より高い温度(Pt/Ce,Al-ベータ250℃、Pt/Fe/WZrO170℃)で運転するにもかかわらず、C、C、およびCに対して選択的である。変換-選択性トレードオフの進展が確認され、同様の方法で調製された従来のPt/Al-ベータと比較された。
【0036】
上述したように、ヘテロ原子はゼオライトの結晶化前に合成に導入され、焼成中に骨格部位から部分的に除去することができる。この方法論は、骨格部位にヘテロ原子を有するヘテロ原子含有ゼオライトとは対照的である。DRUV-vis測定によると、ヘテロ原子ドープゼオライトの不純物として、バルク酸化物およびヘテロ原子含有ゼオライトの不純物とは異なる分散として、骨格外種を見出すことができる。このような骨格外種は、二官能性反応の性能およびそこで使用される触媒の特性を向上させるゼオライト骨格の酸部位に近接して配置されるプロモーターとして有用である。
【0037】
ベータゼオライト
米国特許第3,308,069号および米国再発行特許第28,341号に記載されているように、ベータゼオライト(「ゼオライトベータ」とも呼ばれることがある)は、共有酸素原子によって架橋されたSiOおよびAlO四面体の開いた三次元骨格を有する結晶性アルミノケイ酸塩ゼオライトであり、アルミニウム原子とケイ素原子の合計に対する酸素原子の比率は2に等しい。アルミニウムを含む四面体の負の電気価は、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンなどのカチオンを結晶内に含むことによって釣り合う。
【0038】
ゼオライトは、分子サイズのチャンネルを持つ結晶構造を持っている。間隙はもともと水和水で占められている。少なくとも部分的な脱水後、これらのゼオライトは効率的な吸着剤となり、吸着分子は間隙内に保持される。結晶格子の開口部の格子間寸法は、吸着される分子のサイズと形状を制限する。そのため、分子寸法に基づく様々な分子の混合物の分離が可能であり、特定の分子はゼオライトに吸着され、他の分子は吸着から除外される。
【0039】
本発明の実施形態によれば、ベータゼオライトは、以下のように計算された組成を有することができる:
[XNa(1.0±0.l-X)TEA]AlO.YSiO.WH
ここで、Xはl未満、または0.75未満であり、TEAはテトラエチルアンモニウムイオンを表し、Yは5より大きく100未満であり、Wは脱水条件および存在する金属カチオンに応じて約4までである。TEA成分は、ナトリウムの分析値とAlの究極理論カチオン比1.0/1との差によって計算される。
【0040】
ベータゼオライトは、水酸化テトラエチルアンモニウムを含む反応混合物から、酸化物の混合物、または化学組成がNaO、Al、[(CN]O、SiOおよびHOのような酸化物の混合物として表すことができる材料を、水溶液中で約75℃から200℃の温度で結晶化が起こるまで加熱することによって調製される。反応混合物の組成は、mol比で表すと以下の範囲に入る:SiO/AlO約10から約200;NaO/テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)約0.0から約0.1;TEAOH/SiO約0.1から約1.0;およびHO/TEAOH約20から約75。高温の反応混合物から結晶化した生成物は、遠心分離または濾過によって分離され、水で洗浄され、乾燥される。このようにして得られた物質は、結晶性を破壊するのに十分な温度でない限り、空気または不活性雰囲気中で、約400°F(204℃)から約1700°F(927℃)またはそれ以上の範囲の温度で加熱して焼成することができる。
【0041】
ベータゼオライトを製造するには、非晶質シリカ固体またはゾルと可溶性アルミン酸塩を、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液とともに水性媒体中で反応させることを含む。アルミン酸塩は、アルミン酸ナトリウムまたはテトラエチルアンモニウムアルミン酸塩であってもよい。シリカとアルミナの供給源として、非晶質シリカ-アルミナ固形物を使用することもできる。反応混合物は、最初に連続的または定期的に攪拌して均一性を確保する。この攪拌の後、攪拌を停止してもよい。ゼオライトの形成および結晶化の間、反応塊を攪拌する必要はないが、このような後期の段階での攪拌が有害であることは見出されていない。
【0042】
結晶化手順は、約75℃から約200℃の範囲内の温度で実施することができる。結晶化の間の圧力は大気圧または少なくとも反応物の混合物と平衡状態にある水の蒸気圧に対応する圧力である。加熱は、所望の結晶性ゼオライト生成物が形成されるまで続けられる。その後、ゼオライト結晶を母液から分離し、蒸留水などで洗浄する。
【0043】
ベータゼオライトは、他の結晶性アルミノケイ酸塩とはいくつかの点で異なっている。第一に、X線結晶学によって定義された新しい構造を持っている。第二に、ベータゼオライトは新しい吸着特性の組み合わせを持っている。シクロヘキサン、n-ヘキサン、HOに対する吸着容量はほぼ等しいか、同じオーダーである。また、HO吸着容量はシクロヘキサン吸着を上回らない。さらに、SiO/AlO比は、10~100、150と高く、可変的である。
【0044】
ベータゼオライト触媒は、ベータゼオライトの元のナトリウム形態を焼成することによって、および/またはゼオライト中のナトリウムの主要部分を他の金属イオンおよび/またはアンモニアイオンで置換することによって調製することができる。焼成をイオン交換の前に行う場合、得られる水素イオンの一部または全部をイオン交換工程で金属イオンで置換することができる。
【0045】
ベータゼオライトは、様々な形態の吸着剤としても有用である。例えば、粉末結晶材料のカラムは、ベータゼオライトと粘土のような適切な結合剤との混合物をペレットにプレスすることによって得られるペレット状の形態と同様に、優れた結果をもたらすことができる。
【0046】
高活性の転化触媒は、触媒特性を付与するのに十分な量の水素イオンまたは水素イオンへの転化が可能なイオンを含む流体媒体で本発明のベータ型ゼオライトを処理することにより得ることができる。このようにして得られた触媒は、触媒活性の大きさにおいて広いスペクトルを有し、極めて低濃度で使用することができ、特定の炭化水素転化プロセスを、従来採用されていた温度よりもはるかに低い温度で、実用的かつ制御可能な速度で実施することを可能にする。
【0047】
意図される高活性触媒は、本発明のベータゼオライトを、水素イオンまたはそれに転化可能なイオンを含む流体媒体と接触させ、可溶性アニオンを含まない処理物を洗浄し、その後乾燥し、約400°F(204℃)から1700°F(927℃)またはそれ以上の範囲の温度で約1時間から48時間の間加熱して生成物を熱活性化することによって得られる。得られた生成物は活性化アルミノケイ酸塩であり、強酸性であり、約10重量%未満の金属を含み、ベータゼオライト前駆体材料の水素形態に実質的に対応する。その後、粒径が約40ミクロン未満の状態で単独または分散させたか、あるいは他の方法で密接に混和した状態で使用すると、得られた生成物は炭化水素転化用触媒として活性を示すことが判明している。
【0048】
水素イオン、アンモニウムイオン、または複合アンモニウムイオンおよび金属イオン、またはそれらの混合物を含む流体媒体でベータゼオライトを処理して得られる組成物は、異性化/水素化異性化反応、不均化反応、オレフィンの水和反応、オレフィンのアミノ化反応、酸化反応、脱水素反応、アルコールの脱水反応、脱硫反応、水素化反応、改質反応、水素化分解反応、重合反応などを含む、多種多様な炭化水素転化プロセスにおける触媒として使用することができる。これらの触媒は、常温70°F(21℃)から1000°F(538℃)までの温度範囲で安定であり、可燃性堆積物を燃焼除去することによって触媒を定期的に再生するプロセスを含む。触媒活性が高いため、この触媒は、例えばアルキル化などの様々な炭化水素転化プロセスを、少量の触媒で比較的低温で行うのに有用であり、その結果、望ましくない副反応や運転コストを最小限に抑えることができる。
【0049】
本発明のヘテロ原子ドープベータ型ゼオライトを含む触媒は、そのまま、またはアルミノシリケートの担体またはマトリックスとして機能する低活性材料または触媒活性材料を含む更なる改質接触塊の調製における中間体として使用することができる。触媒は、2~500メッシュの粒径を有する細かく分割された粒子の球状またはペレット状に成形された粉末状、粒状または成形状態で使用することができる。触媒を押出成形などで成形する場合、アルミノシリケートを乾燥前に押出成形してもよいし、乾燥または部分的に乾燥した後に押出成形してもよい。触媒製品は、好ましくは不活性雰囲気中で予備脱炭酸されるか、または転化プロセスでの使用中に初期脱炭酸を受ける。一般に、組成物は150°F(66℃)から600°F(315℃)の間で乾燥され、その後、空気または蒸気、あるいは窒素、水素、ヘリウム、排ガスなどの不活性雰囲気中で、400°F(204℃)から1700°F(927℃)の範囲の温度で、1時間から48時間以上の時間にわたって焼成される。この加熱工程は、触媒の熱活性化として知られている。
【0050】
本発明の触媒は、既存の特定の条件下での運転に最適なサイズの小片を含む、任意の所望の物理的形態で調製することができる。従って、触媒は細かく分割された粉末の形態であってもよいし、例えば、周知の技術に従ってペレット化、鋳造、押出成形することにより得られる1/16”~l/8”サイズのペレットの形態であってもよい。
【0051】
本発明の触媒は、アルミナに対するシリカの比率が低い触媒を含む水素化異性化プロセスにおいて有用である。例えば、ゼオライト中のシリカ対アルミナの比は、約200:1未満、例えば約110:1未満、または約100:1未満、または約90:1未満、または約75:1未満であり得る。様々な態様において、シリカ対アルミナの比は、50:1~200:1、例えば20:1~160:1、または30:1~100:1であり得る。
【0052】
ある態様において、本発明の触媒は金属水素化成分を含む。金属水素化成分は、典型的にはVIB族および/またはVIII族金属である。一態様において、金属水素化成分は、Pt、Pd、またはそれらの混合物であり得る。別の態様において、金属水素化成分は、非貴金属の第VIII族金属と第VIB族金属との組み合わせであり得る。
【0053】
金属水素化成分の触媒への添加は、都合の良い方法で行う。金属水素化成分を添加する1つの技法は、初期湿潤によるものである。例えば、ゼオライトとバインダーを組み合わせた後、組み合わせたゼオライトとバインダーを押し出して触媒粒子にすることができる。この触媒粒子を、適切な金属前駆体を含む溶液に曝す。あるいは、金属はイオン交換によって触媒に添加することができ、この場合、金属前駆体は押出成形前にゼオライト(またはゼオライトとバインダー)の混合物に添加される。
【0054】
触媒中の金属の量は、触媒を基準として少なくとも0.1wt.%、または少なくとも約0.15wt.%、または少なくとも約0.2wt.%、または少なくとも約0.25wt.%、または少なくとも約0.3wt.%、または少なくとも約0.5wt.%とすることができる。触媒中の金属の量は、触媒を基準として約20wt.%以下、または約10wt.%以下、または約5wt.%以下、または約2.5wt.%以下、または約1wt.%以下であり得る。金属がPt、Pd、他の第VIII族貴金属、またはそれらの組み合わせである場合、金属の量は約0.1~約5wt.%、約0.1~約2wt.%、または約0.25~約1.8wt.%、または約0.4~約1.5wt.%であり得る。金属が非貴金属である第VIII族金属と第VIB族金属との組み合わせである態様では、金属の組み合わせ量は0.5wt.%~20wt.%、または1wt.%~15wt.%、または2.5wt.%~10wt.%であり得る。
【0055】
本発明の触媒はまた、バインダーを含むことができる。いくつかの実施形態において、脱脂触媒は、低表面積バインダーを用いて調合することができ、ここで、低表面積バインダーは、100m/g以下、または80m/g以下、または70m/g以下の表面積を有するバインダーを表す。バインダーを使用して調合された触媒中のゼオライトの量は、バインダーとゼオライトの合計重量に対して、約30wt.%のゼオライトから90wt.%のゼオライトとすることができる。ゼオライトの量は、ゼオライトとバインダーの合計重量に対して少なくとも約50wt%、例えば少なくとも約60wt%または約65wt%~約80wt%である。
【0056】
本発明の様々な実施形態に従って、ゼオライトは、任意の便利な方法でバインダーと組み合わせることができる。例えば、結合触媒は、ゼオライトおよびバインダーの両方の粉末から出発し、粉末に水を加えて混合物を形成し、次いで混合物を押出成形して所望のサイズの結合触媒を製造することによって製造することができる。ゼオライトとバインダーの混合物の押出流動特性を修正するために押出助剤を使用することもできる。触媒中の骨格アルミナの量は、0.1~3.33wt.%、または0.1~2.7wt.%、または0.2~2wt.%、または0.3~1wt.%の範囲である。
【0057】
水素化異性化プロセス
直鎖および単分岐パラフィン(アルカン)の水素化異性化は、ガソリン燃料製品のオクタン価を向上させることができる。ゼオライトや混合金属酸化物触媒などの二官能性触媒を用いたパラフィン異性化は、脱水素、カルベニウムイオンを形成するプロトン化、およびシクロプロピルカチオンが関与するような機構を介したカルベニウムイオンの骨格転位によってパラフィン異性化を促進する。
【0058】
従来のパラフィン水素化異性化プロセスにおいて、炭化水素供給物は、水素および適切な二官能性触媒の存在下で加熱される。例えば、米国特許出願公開2013/0324782には、二官能性触媒が使用される従来のパラフィン異性化プロセスの1つが記載されている。さらに、米国特許第6,080,904号および第6,124,232号は、酸性金属酸化物触媒である二官能性触媒の詳細、およびCおよびC直鎖(通常の)パラフィンがそのような触媒を使用して異性化を受けるパラフィン異性化プロセスを提供する。塩化アルミナ、硫酸化ジルコニア、特定のゼオライトを含む他の触媒は、クラッキングに対して高い選択性でCおよびC直鎖パラフィンを異性化することができる。
【0059】
対照的に、C7+ノルマルパラフィンは、異性化反応条件下、特に反応温度が高くなるとクラッキングを起こしやすい。過剰なクラッキングは、目的とする分岐パラフィンの収率低下とオクタン価の低下をもたらす。理論やメカニズムにとらわれることなく、クラッキングはカチオン中間体のβ-分裂によって起こると考えられている。β-分裂の際、C、Cノルマルパラフィンは、エチルカチオンという一級カルベニウムイオンが形成されるが、これは困難である。対照的に、C7+パラフィンはβ-核分裂の際に、より安定で生成しやすい二級または三級カルベニウムイオンを形成する可能性がある。そのため、異性化反応条件下では、クラッキングを促進するために有利な熱力学を考慮すると、C7+パラフィンのクラッキングを抑制することが困難な場合がある。
【0060】
米国のシェールオイル生産量は急速に増加している。シェールオイルは通常、混合燃料に使用するための追加処理を必要とする。オクタン価の高い分岐炭化水素は、プレミアムガソリン製造のための混合成分として望ましいが、CおよびC直鎖パラフィンは、この炭化水素資源の主成分であり、通常の処理ではクラックが入りやすい。触媒改質はシェールオイルナフサのC8+成分に対して実行可能であるが、触媒改質はエネルギー効率が悪く、炭化水素資源のかなりの部分が未変換となる。
【0061】
上述したように、ノルマルパラフィンの水素化異性化はオクタン価を上昇させるが、C7+ノルマルパラフィンの過度の分解は様々な点で問題がある。C7+ノルマルパラフィンの分解が熱力学的に有利であることに対抗するため、異性化はより低い温度およびより低い供給混合物転化率で実施されるが、これは処理効率の観点から望ましくない場合がある。そのため、ナフサのようなノルマルパラフィンを多く含む炭化水素資源、特にC7+非分岐パラフィンや単分岐パラフィンを多く含む炭化水素資源のオクタン価を向上させることは困難である。
【0062】
本明細書で提供されるように、水素化異性化処理には、平衡によって決定されるCの最大転化レベルを達成するために、混合供給物中の高炭素数軽質パラフィンを選択的に転化することができる触媒を使用すること、次いで、部分的に転化されたCおよびCを除去する分離装置を使用すること、および高度に分岐した生成物を得るために、転化されていない軽質パラフィンに対してさらなる水素化異性化を実施することが含まれる。本方法において、水素化異性化処理用の炭化水素原料は、C-C30ノルマルパラフィン、例えばC-Cノルマルパラフィン、またはC7+ノルマルパラフィンおよび/またはモノ分岐パラフィンを含むことができる。炭化水素原料は、C7+ノルマルパラフィン、C-C30ノルマルパラフィンなどの、ならびにモノ分岐パラフィン(例えば、Cモノ分岐パラフィン、Cモノ分岐パラフィンまたはC7+モノ分岐パラフィン)、Cノルマルパラフィン、Cノルマルパラフィン、またはそれらの任意の組合せをさらに含む。したがって、炭化水素原料は、ノルマルまたはモノ分岐Cパラフィン、ノルマルまたはモノ分岐Cパラフィン、およびノルマルまたはモノ分岐Cパラフィンを含む。任意に、少なくともいくつかのノルマルまたはモノ分岐Cパラフィンも、このような炭化水素原料中に存在する。本発明の触媒で有用な他の炭化水素原料は、C10-C10ノルマルパラフィンまたはモノ分岐パラフィンを含むことができる。前述の炭化水素原料のいずれもが、1種以上の芳香族化合物をさらに含む可能性がある。
【0063】
任意選択的に、1種以上のナフテン系化合物を炭化水素原料と併用する。共供給物として1種以上のナフテン系化合物を含有させることにより、クラッキングの発生率をさらに低下させることができる。炭化水素原料と組み合わせて、約10wt.%以上のナフテン系化合物を存在させることができる。好適なナフテン系化合物としては、メチルシクロペンタン(MCP)、メチルシクロヘキサン(MCH)などの分岐ナフテン系化合物、またはそれらの組み合わせが挙げられる。エチルシクロペンタン、プロピルシクロペンタン、1,1-ジメチルシクロペンタン、1,1-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサンなどの他の適切な分岐ナフテン化合物も、同様に二環式ナフテン化合物を含む本明細書に記載のプロセスでの使用に適している。一般に、異性化反応条件下で第三級カルベニウムイオンを形成し得る任意のナフテン化合物は、水素化異性化プロセスにおいて本発明の触媒と共に効果的に使用することができる。
【0064】
水素化異性化プロセスでは、1つまたは複数の触媒を、以下の異性化反応条件の1つまたは複数下で炭化水素原料と接触させる:温度は約150℃から約300℃、または約170℃から約270℃の範囲;水素と炭化水素原料のモル比は約1:1から約3:1の範囲;圧力は約100psigから約350psigの範囲;および液体時間空間速度は約0.5時間-1から約6時間-1。水素分圧は、例えば約50kPaから約2000kPaの範囲である。特定の例では、水素化異性化反応条件は、約6時間-1以下、または約5時間-1以下、または約4時間-1以下、および約2時間-1から約5時間-1の液体時間空間速度を含む。水素化異性化反応条件は、水素化異性化反応が気相、超臨界相または液相で行われるような条件である。水素化異性化反応条件により、C-Cノルマルパラフィンの転化率が約95%以下、または約90%以下、または約85%以下、または約80%以下、または約75%以下、または約70%以下となる。本発明の触媒を使用すると、C7+ノルマルパラフィンの転化率が約70%~約90%になる。n-ヘプタンの分解収率は約10wt.%以下であり、n-ヘプタン異性化収率:分解収率の比は約10以上、例えば約10~約25、または約10~約20である。
【0065】
Pt/Fe/WZrO触媒
共同係属中の出願である米国仮出願17/349986(2021EM062-US)に教示されているように、Pt/Fe/WZrO触媒(またはEMM-62)と呼ばれる混合金属酸化物触媒は、少なくとも部分的に結晶性であり、タングステン、ジルコニウム、および可変酸化状態金属を含む。可変酸化状態金属は、Fe、Mn、Co、Cu、Ce、Niおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む。Pt/Fe/WZrO触媒は、混合金属酸化物の全質量を基準として、それぞれ約5wt%~約25wt%のタングステン、約40wt%~約70wt%のジルコニウム、および約0.01wt%~約5wt%の可変酸化状態金属を有する。Pt/Fe/WZrO触媒は、ISO9277に従って測定された約50m/g以上の総表面積と、温度プログラム吸着/脱着法で測定された約0.05mmol/g~約0.3mmol/gのアンモニア取り込み量、または重量測定法で測定された約100μmol/g以上のコリジン取り込み量の少なくとも一方を有する。
【0066】
Pt/Fe/WZrO触媒を製造するには、ジルコニウム、タングステン、および可変酸化状態金属を、約7.5以上のpHを有するアルカリ性条件下で反応混合物中で組み合わせる。可変酸化状態金属は、Fe、Mn、Co、Cu、Ce、Niおよびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される金属を含む。アルカリ性条件下で、ジルコニウム、タングステン、および可変酸化状態金属から形成される共沈反応生成物を含むスラリーが得られる。このスラリーを温浸(digest)して、共沈反応生成物から非晶質温浸生成物を形成する。この非晶質温浸生成物を空気中、約700℃から約900℃の範囲の温度で焼成し、少なくとも部分的に結晶であり、混合金属酸化物の全質量を基準として、それぞれ約5wt.%から約25wt.%のタングステン、約40wt.%から約70wt.%のジルコニウム、および約0.01wt.%から約5wt.%の可変酸化状態金属を含む混合金属酸化物を得る。この混合金属酸化物は、ISO9277に従って測定した総表面積が約50m/g以上であり、温度プログラム吸着/脱着法で測定したアンモニア取り込み量が約0.05mmol/g~約0.3mmol/g、または重量測定法で測定したコリジン取り込み量が約100μmol/g以上の少なくとも1つを有する。
【0067】
Pt/Al-MOR触媒
公開された国際特許出願であるWO2016/126431およびWO2018/160327に記載されているように、Pt/Al-MOR触媒は、30m/gを超えるメソ細孔表面積を有し、一次結晶子から構成される凝集体を含み、一次結晶子は、TEMによって測定された平均一次結晶子サイズが80nm未満であり、アスペクト比が2未満であり、総表面積が500m/gを超える。一部の実施形態では、Pt/Al-MOR触媒(EMM-34とも呼ばれることがある)は、メソ細孔表面積の全表面積に対する比が0.05以上であり、TEAまたはMTEAから合成される。
【0068】
メソモルデナイトとも呼ばれるPt/Al-MOR触媒は、構造指示剤TEA(テトラエチルアンモニウムカチオン)またはMTEA(メチルトリエチルアンモニウムカチオン)から合成され、30m/gを超えるメソ細孔表面積を有し、初晶から構成される凝集体を含むゼオライトであり、初晶はTEMで測定した平均初晶サイズが80nm未満、アスペクト比が2未満である。
【0069】
Pt/Al-MOR触媒は、BET法で測定したメソ細孔表面積が30m/g以上、40m/g以上、場合によっては45m/g以上である。Pt/Al-MOR触媒は、TEMで測定した平均一次結晶サイズが80nm未満、70nm未満、60nm未満、例えば50nm未満である一次結晶子から構成される凝集体、典型的には不規則な凝集体を含む。一次結晶粒は、TEMで測定した平均一次結晶粒径が20nm以上、任意に30nm以上80nm未満の範囲であってもよい。
【0070】
任意選択で、Pt/Al-MOR触媒の一次結晶は、X線回折によって測定されるa、bおよびc結晶ベクトルのそれぞれにおいて、80nm未満、70nm未満、場合によっては60nm未満の平均一次結晶サイズを有する。一次結晶子は、任意に、X線回折によって測定されるa、bおよびc結晶ベクトルのそれぞれにおいて、20nmを超える範囲、任意に30nmを超える範囲から80nm未満の範囲の平均一次結晶サイズを有することができる。
【0071】
Pt/Al-MOR触媒は、一般に、凝集していない一次結晶と共に、一次結晶の凝集体の混合物から構成される。Pt/Al-MOR触媒の大部分、例えば80wt%以上90wt%以下は、初晶の凝集体として存在する。凝集体は一般的に不規則な形をしている。凝集体の詳細については例えば、Walter,D.,PrimaryParticles-Agglomerates-Aggregates,inNanomaterials,DeutscheForschungsgemeinschaft(DFG),Wiley,1-24,2013を参照。
【0072】
任意選択で、Pt/Al-MOR触媒は、少なくとも50重量%、少なくとも70重量%、有利には少なくとも80重量%、および少なくとも90重量%を含み、任意選択で、80nm未満、70nm未満、および60nm未満、例えば50nm未満の一次結晶サイズを有する一次結晶子から構成される不規則な凝集体から実質的になる。Pt/Al-MOR触媒は、TEMによる評価で、80nmを超えるサイズを有する一次結晶子が10重量%未満である。Pt/Al-MOR触媒は、TEMで測定した結晶サイズが80nm未満の結晶子から構成される不規則な凝集体を有する。Pt/Al-MOR触媒は、針状結晶または板状結晶を実質的に含まない(例えば、TEMによる評価で10%未満の数の針状結晶または板状結晶を含む)。
【0073】
Pt/Al-MOR触媒の一次結晶子は、3.0未満、より好ましくは2.0未満のアスペクト比を有し、ここで、アスペクト比は、結晶子の最長寸法を結晶子の幅で割ったものとして定義され、ここで、結晶子の幅は、TEMによって測定された、その最長寸法に直交する方向におけるその最長寸法の中央における結晶子の寸法として定義される。
【0074】
一次結晶子の凝集体は、典型的には不規則な形態であり、「一次」粒子である結晶子の凝集体から形成されるため、「二次」粒子であると称されることがある。一次結晶粒は、TEMで測定して、数で一次結晶粒の少なくとも90%が20~80nmおよび/または20~60nmの範囲の平均一次結晶粒径を有するような狭い粒径分布を有することがある。
【0075】
Pt/Al-MOR触媒は、500m/g以上、550m/g以上、場合によっては600m/g以上の総表面積を有する。総表面積には、内部細孔の表面積(ゼオライト表面積)と結晶の外側の表面積(外部表面積)が含まれる。総表面積はBET法で測定される。Pt/Al-MORの全表面積に対するメソ孔表面積の比は0.05以上である。Pt/Al-MOR触媒のメソ細孔容積は0.1mL/g以上、および/または0.12mL/g以上、場合によっては0.15mL/g以上である。
【実施例
【0076】
本発明の方法および組成物の特徴は、以下の非限定的な実施例に記載されている。
【0077】
実施例1:ヘテロ原子ドープベータゼオライトの合成
ゼオライトの合成
硝酸アルミニウム(Al(NO9HO)およびヘテロ原子硝酸塩(Ce(NO6HOまたはCo(NO6HOなど)を脱イオン水に溶解し、透明溶液を形成した。この透明溶液を単分散コロイダルシリカ(HO中40wt.%懸濁液)に添加した。テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)溶液(35wt.%)を加えて混合し、均質なゲルを得た。この均質なゲルをテフロンライニングしたスチール製オートクレーブ内に入れ、水熱条件下で150℃、20rpm回転下で約5~6日間加熱した。モル比は以下の通りであった:SiO:TEAOH:Al(NO:M(NO:HOが1:0.4:0.05:y:16に等しく、典型的にはyは0.005または0.01であるか、あるいは対照触媒として使用されるAl-ベータゼオライトを得るためにyは0である。
【0078】
ゼオライトを遠心分離(通常12000rpm、5分間、3回繰り返し)で回収し、120℃のオーブンで一晩乾燥させた。焼成は550℃で6時間行い、3時間の昇温期間を設けた。最後に、Pt(NH(NOを用いたイオン交換を、10グラムの溶液/1グラムのゼオライト比で24時間行い、最終生成物中に0.6wt.%のPtを得た。ゼオライトは遠心分離機で回収し、550℃で3時間焼成した。
【0079】
特性評価
Si/Ce=100のCeドープAl-ベータゼオライト(本明細書では「Ce,Al-ベータ」とも称する)のX線回折パターン(「XRD」)を図1の上段に示し、Al-ベータゼオライト(本明細書では「Al-ベータ」とも称する)図1の下段と比較した。高結晶性のBEA型ゼオライト骨格(本明細書では、BEA、またはベータ型ゼオライト、またはベータ構造型ゼオライトとも呼ばれる)が、この結晶化条件下で、合成ゲル中のセリウム(「Ce」)の存在下で得られた。焼成前と焼成後のCe添加ゼオライトのDRUV-visの結果を図2に示す。焼成前のCe,Al-ベータを1行目に示す。焼成後のCe,Al-ベータを2行目に示す。参照CeOのKubelka-Munk関数に基づく吸収強度は、比較を簡単にするために元の値の1/20に減少させた。図2、ライン3。
【0080】
DRUV-visスペクトルは、配位子から金属への電荷移動バンドまたは“LMCT”バンドを通して、ヘテロ原子の状態を検出する。ヘテロ原子が単原子状態の場合、これは酸素から金属への電荷移動に対応する。オリゴマーやバルク酸化物を形成する場合、この電荷移動はHOMOからLUMO電子バンドへの電子移動に相当する。したがって、吸収されたフォノンのエネルギーに対応する吸収ピークは、ヘテロ原子酸化物の孤立化(またはオリゴマー化)の程度を示す。多くの場合、これはヘテロ原子の状態を定性的に調べる指標となる。示されるように、Ceの状態は焼成工程の前後で変化し、この処理によって孤立の程度が低下する。この結果は、焼成ゼオライトにおいて、余分な骨格部位にオリゴマー酸化セリウムが形成されていることを示している。バルクのCeOの参照スペクトルと比較すると、吸収端は短波長側にシフトしており、オリゴマー化の程度がバルク構造を形成していないことを示している。
【0081】
これらの特性評価結果は、得られた生成物がベータゼオライトとCeO種のナノクラスターの複合体であることを示しており、高分散を保持していることから、骨格に近接している可能性が高い。
【0082】
実施例2:ゼオライト粉末を用いたC水素化異性化反応
焼成したゼオライト粉末を40/60号ふるいにかけた。ハイスループット固定床反応器を用いて、以下の活性化手順で反応を行った:
【0083】
温度は、N(100標準立方センチメートル毎分(「sccm」))の流れの下で、250℃(60℃/時間のランプレート)まで上昇させ、250℃で1時間保持した。その後、温度を220℃に下げ(60℃/時間のランプレート)、反応器の流れをH、背圧200ポンド/平方インチゲージ(「psig」)に変更した。触媒をH、3時間かけて還元した。(100sccm)。その後、反応器温度を所定の反応温度に設定した。炭化水素供給流は、H:n-Cモル比を2:1に設定し、HおよびCの分圧は、それぞれ137.1ポンド/平方インチ絶対圧(「psia」)および70.4psiaであった。
【0084】
図3に示すように、CeおよびCoをドープしたゼオライトは、ドープしていないゼオライトと比較して、異性化生成物に対する質の高い転化-選択性のトレードオフ曲線を示した。図3の四角い記号は、Pt/Ce,Al-ベータ(WHSV=2,4,6h-1)による転化を表している。同様に、三角形はPt/Al-ベータ、円はPt/Co,Al-ベータを表し、それぞれWHSV=2,4,6h-1、250℃におけるものである。例えば、転化率が約74%の場合、選択性が+5%増加することが確認された。白金ドープAl-ベータゼオライト(または「Pt/Al-ベータ」)の転化率-選択性のトレードオフは、以前の文献(例えばWang1997)で見られた結果をはるかに上回っている。
【0085】
興味深いことに、Snを骨格に組み込むと異性化生成物に対する選択性が失われ、クラッキングが顕著な反応経路となった。図4.以前は、ジルコニウム(Zr)を導入すると、同等の転化率を達成するために反応温度が大幅に上昇することが示されていた。例えば、米国特許出願公開第2015/0273450を参照。ここで、最大収率も低下したため、この材料は他の対応物と比較して劣っていた。このように、性能を向上させるためには、ドーパント元素を正しく選択することが重要である。図4に示すように、四角はPt/Ce,Al-ベータ、丸はPt/Co,Al-ベータ、菱形はPt/Sn,Al-ベータをそれぞれWHSV=2,4,6h-1、250℃で使用した結果を表し、三角はPt/Al-ベータをWHSV=4,6h-1、230℃で使用した結果を表す。
【0086】
図3は、ヘテロ原子ドープゼオライトの異性化選択率(%)対n-ヘプタン転化率(%)を示す:(1)Ptが0.6wt.%でSi/Alが20のPt/Al-ベータ;(2)Ptが0.6wt.%、Si/Alが20、Si/Ceが100のPt/Ce,Al-ベータ、(3)Ptが0.6wt.%、Si/Alが20、Si/Coが200のPt/Co,Al-ベータ、それぞれ230℃でWHSVが2,4,6である。図4は、ヘテロ原子ドープゼオライトの異性化選択率(%)対n-ヘプタン転化率(%)を示す:(1)Ptが0.6wt.%でSi/Alが20のPt/Al-ベータ、(2)Ptが0.6wt.%でSi/Alが20のPt/Ce,Al-ベータ、(3)Ptが0.6wt.%でSi/Alが20、Si/Coが200であるPt/Co,Al-ベータ;(4)Ptが0.6wt.%でSi/Alが20、Si/Snが100であるPt/Sn,Al-ベータ(SnCl25HOを用いて調製)、それぞれ230℃でWHSVが2,4,6である。
【0087】
この実施例は、ヘテロ原子をドープしたゼオライトが、水素化異性化反応における転化率-選択性のトレードオフを改善する高度な二官能性触媒として有益であることを確認するものである。
【0088】
実施例3:軽質パラフィンモデルとしてC、C、C混合物を用いた水素化異性化反応
焼成したゼオライト粉末を40/60号ふるいにかけた。高スループット固定床反応装置を用いて、以下の活性化手順で反応を行った:N(100sccm)流下、温度を300℃(60℃/時間(hr)ランプレート)まで上昇させ、300℃で1時間保持した。温度を220℃に下げ(60℃/時間のランプレート)、反応器の流れを背圧350psigのHに変更した。ゼオライトをH(100sccm)で24時間還元した。その後、反応器温度を反応運転に指定された温度に設定した。炭化水素供給物フローは以下の通りであった:n-C:n-C:n-C=1:1:1(重量比);H:n-パラフィンモル比=2:1(モル比)。反応器の全圧は180psiaに設定した。
【0089】
図5Aは、250℃における軽ガス(C~C)生成に対する研究オクタン価(「RON」)の増加を示しており、この反応は、重量時間比速度(「WHSV」)が毎時3、6に等しい条件で行われた。図5Aの正方形はPt/Ce,Al-ベータを、菱形はPt/Al-ベータを、六角形はPt/Al-MORを、円はPt/Fe/WZrOを、それぞれWHSV=3,6h-1で表している。図5Bは、n-ヘプタンの転化率(wt.%)対C~C(wt.%)を示す。図5Bの四角はPt/Ce,Al-ベータを、菱形はPt/Al-ベータを、六角形はPt/Al-MORを、円はPt/Fe/WZrOを、それぞれWHSV=3,6h-1で表している。
【0090】
これらの図5Aおよび図5Bに示すように、CeドープAl-ベータゼオライトは、限定された分解下でRONを増加させるために供給物を選択的に異性化するためのステップアウト(step out)性能を示した。例えば、Pt/Ce,Al-ベータは、軽質ガス分解生成物を約1wt.%しか生成しない一方で、RONを+18向上させ、これは、この種の反応に使用される混合金属酸化物触媒であるPt/Fe/WZrOと同等かわずかに優れている。なお、反応温度はPt/Fe/WZrO(EMM-62)が250℃、Al-ベータゼオライト(EMM-62)が170℃であり、本発明の方法で製造したAl-ベータゼオライトサンプルは、クラッキングに有利なより厳しい条件で運転した。混合金属酸化物をベースとする触媒は低温での運転が可能であるため、この目的に使用した場合には性能的に有利である。しかし、本実施例では、Al-ベータゼオライトは修飾混合金属酸化物触媒と同等の性能を有することが示された。
【0091】
プリジンのPt/Al-ベータゼオライトとの対比は、生成される全軽質ガスあたりのRON向上の勾配から明らかである。この結果は、Ceが選択性の促進剤として作用していることを裏付けている。Pt/Al,MORは、軽質パラフィンの異性化に使用される現在のゼオライトであり、比較のためのモデル参照として使用された。使用されたこのゼオライトは、PCT公開番号WO2018/160327の段落[0053]、[0055]、[0058]、[0059]~[0064]に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。白金Al-MOR(Pt/Al-MOR)は、Pt/Ce,Al-ベータゼオライトと比較してより高い分解選択性を有し、これはおそらくゼオライトのより強い酸性に起因する。これらの比較結果は、Pt/Ce,Al-ベータゼオライトが他のゼオライトベースの水素化異性化触媒に比べて実用上有利であることを補強するものである。
【0092】
また、供給混合物中のCの転化率レベルでは、Pt/Ce,Al-ベータゼオライトでは、同じ電流条件下で他の触媒と比較して、軽質ガスの生成が著しく抑制された。図5B.Ce添加の影響は、Pt/Al-ベータゼオライトと比較して、混合パラフィン供給物の場合に増強されるようである。図4の純粋なn-C供給物を使用した結果を参照。一般的に、水素化異性化プロセスの性能を向上させるもう1つの注目すべき利点がある。従来のゼオライトベースのパラフィン異性化装置のほとんどは、C、Cを選択的に変換することができるが、炭化水素原料中の濃度レベルにより、Cの変換には限界がある。本発明の方法は、既存の異性化能力を上流の精製工程なしで全体の会話に利用できるため、新しい反応器の設置に必要な設備投資を削減できる点で有利である。
【0093】
図6に示すように、四角はPt/Ce,Al-ベータを、菱形はPt/Al-ベータを、六角形はPt/Al-MORを、丸はPt/Fe/WZrOを、それぞれLHSV=3,6h-1で表している。Pt/Ce,Al-ベータ、Pt/Al-ベータ、Pt/Fe/WZrOのC対Cの相対転化率がそれぞれ示されている。Pt/Ce,Al-ベータゼオライトは、C、Pt/Ce,Al-ベータゼオライトを使用したCよりも優先的に変換されるため、他の触媒と区別することができる。同じ傾向は、C(結果は示さず)との比較でも示された。この結果は、活性部位の性質の違い、ひいてはゼオライトへのヘテロ原子ドーピングの影響を示している。
【0094】
の優先的転化は、軽質パラフィン供給物(C-C)が、Cの最大転化レベル(平衡によって決定される)を達成するために最初に転化され、その後、既存の軽質パラフィン水素化異性化ユニットを使用してさらに処理することができる部分的に転化されたCおよびCを除去する分離ユニットが続くプロセスを設計する際に有用である。従来のパラフィン異性化装置のほとんどは、C、Cを選択的に転化するように作られており、このため炭化水素原料中のC濃度レベルが制限される。しかし、上述したように、既存の異性化能力を全体的な変換に利用することができるため、新しい反応器の設置に必要な設備投資を削減することができる。
【0095】
実施例4:アルミナバインダー付きゼオライト押出物を使用したC水素化異性化反応
70/30ゼオライト/アルミナ押出材を用いた高スループット固定床反応器を用いて反応を行い、押出材もこの反応に活性であることを示した。
【0096】
反応条件は以下の通りである:Hを毎時200立方センチメートルの流量で6時間流しながら、反応器を100℃から400℃に加熱することにより、担持触媒をプレコンディショニングした。2台の100立方センチメートル(「cc」)ISCOポンプを交互に使用し、ケミカルグレードのn-ヘプタン供給物を、流れが途切れないように導入した。供給物は加熱ラインを通して反応器に送られ、ブルックスのマスフローコントローラーを使用して水素流量を設定した。圧力は350psigに維持された。供給物は次に、異なるLHSV、水素:炭化水素モル比2:1、圧力350psigで、反応温度230℃に保持された触媒床を通してポンプで送られた。反応器から出た液体生成物は、加熱されたラインを通って流れ、FID検出器付きガスクロマトグラフを用いて分析された。
【0097】
実施例2の結果と比較して、Co,Al-ベータゼオライトのCo担持量をSi/Co=200からSi/Co=100に増加させた。これらの新しいゼオライトは、Ceの対応物と同様の変換トレードオフ曲線をもたらした。図7では、四角の記号がPt/Ce,Al-ベータ(LHSV=0.75,1,1.5h-1)による変換を表し、丸がPt/Co,Al-ベータ(LHSV=0.75,1,1.5h-1)を表している。この結果は、ヘテロ原子担持量もプロモーターとして触媒性能に重要な役割を果たし、押出成形されたゼオライトがこの反応に活性を維持していることを示している。
【0098】
多くの変更、修正、および変形は、本開示の精神または範囲から逸脱することなく、前述の説明に照らして当業者には明らかであり、本明細書において数値的な下限値および数値的な上限値が記載されている場合、任意の下限値から任意の上限値までの範囲が想定される。
【0099】
加えて、または代替的に、本発明は以下に関する:
【0100】
実施形態1:炭化水素原料を水素および触媒と接触させて、炭化水素原料に対して分岐炭化水素の増加を有する炭化水素生成物を得ることを含む、炭化水素原料の水素化異性化方法であって、触媒が、骨格金属酸化物として3価のカチオン、セリウムおよび/またはコバルトを含む骨格外種を有するヘテロ原子ドープベータゼオライト、ならびに0.01~1.5wt%のVIII族またはVIB族の金属、またはそれらの組み合わせを含む、方法。
【0101】
実施形態2:ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、10より大きい骨格/骨格外金属酸化物に対するSiOのモル比を含む、実施形態1に記載の方法。
【0102】
実施形態3:ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、8より大きいAlに対するSiOのモル比を含む、実施形態1または2の方法。
【0103】
実施形態4:ヘテロ原子ドープベータゼオライトは、10より大きいセリウムおよび/またはコバルト金属酸化物(CeOおよびCoOとして表される)に対するSiOのモル比を含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0104】
実施形態5:触媒は、金属酸化物バインダーをさらに含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0105】
実施形態6:VIII族またはVIB族の金属は、Ptであり、特に、触媒は0.1wt.%~1.5wt.%のPtを含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0106】
実施形態7:炭化水素原料が、1つ以上の異性化条件下で触媒と接触する、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0107】
実施形態8:1つ以上の異性化条件が、100℃~450℃の温度、0psig~1000psigの圧力、0.1hr-1~10hr-1のWHSV、および/または約0.1~約100の水素/炭化水素モル比を含む、実施形態7に記載の方法。
【0108】
実施形態9:ヘテロ原子ドープベータゼオライトが、n-ヘプタン転化に選択的である、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0109】
実施形態10:炭化水素原料が、n-ペンタン、n-ヘキサン、および/またはn-ヘプタンを含む、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0110】
実施形態11:炭化水素原料が、ナフテンおよび/または1つ以上の芳香族化合物をさらに含む、実施形態10に記載の方法。
【0111】
実施形態12:ヘテロ原子ドープベータゼオライトが、炭化水素原料中の軽質パラフィンをC,CおよびCに選択的に変換する、上記実施形態のいずれか1つに記載の方法。
【0112】
実施形態13:CおよびCをCから分離する、実施形態12に記載の方法。
【0113】
実施形態14.セリウムまたはコバルトを骨格外種として含むヘテロ原子ドープ-ベータゼオライトを合成する方法であって、ベータゼオライト、特にアルミニウム含有ベータゼオライト(Al-ベータゼオライト)の合成に適した反応混合物を結晶化することを含み、結晶化前に、セリウムおよびコバルトの少なくとも一方を、好ましくはセリウムおよび/またはコバルト塩として、特にセリウムおよび/またはコバルトの硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、および/またはハロゲン化物として、反応混合物に添加する、方法。
【0114】
実施形態15:反応混合物が、水、SiO、および骨格金属酸化物を含み、反応混合物は、
0~4の前記反応混合物のSiOに対する構造指示剤カチオンQのモル比;
10より大きい前記反応混合物の骨格金属酸化物に対するSiOのモル比;
0より大きい前記反応混合物のSiOに対する水のモル比;
0~1の前記反応混合物のSiOに対するアルカリ金属Mのモル比;および
5より大きい前記反応混合物のAl源に対するSiOのモル比を含む、実施形態14に記載の方法:
【0115】
実施形態16:反応混合物が、10より大きいセリウムおよび/またはコバルトの少なくとも1つの供給源(CeOおよびCoOとして表される)に対するSiOモル比を含む、実施形態14または15に記載の方法。
【0116】
実施形態17:反応混合物が、構造指示剤および/または鉱化剤をさらに含み、好ましくは、反応混合物が、構造指示剤としてテトラエチルアンモニウム(TEA)イオンを含む、実施形態14~16のいずれか一項に記載の方法。
【0117】
実施形態18:不活性、酸化的および/または蒸気条件下で、約100℃~約800℃の温度で、ヘテロ原子ドープベータゼオライトを焼成するステップをさらに含む、実施形態14~17のいずれか一項に記載の方法。
【0118】
実施形態19.反応混合物の化学組成(セリウム源および/またはコバルト源の非存在下)が、NaO、Al、[(C)N]O(TEAOH)、SiO、およびHOの混合物として表される、実施形態14~18のいずれか1つに記載の方法;好ましくは、反応混合物の組成が、mol比で表され、SiO/AlOが約10~約200、NaO/TEAOHが約0.0~約0.1、TEAOH/SiO、約0.1~約1.0、HO/TEAOHは約20~約75である。
【0119】
実施形態20:反応混合物を、結晶化が起こるまで約75℃~約200℃の温度で加熱する、実施形態14~19のいずれか1つに記載の方法。
【0120】
実施形態21:セリウムおよび/またはコバルトの骨格外種を有するベータゼオライトと、約0.01~約1.5wt%の白金とを含む組成物。
【0121】
実施形態22:ベータゼオライトが、10より大きい骨格金属酸化物に対するSiOのモル比を含む、実施形態21に記載の組成物。
【0122】
実施形態23:ベータゼオライトが、8より大きいAlに対するSiOのモル比を含む、実施形態21または22に記載の組成物。
【0123】
実施形態24:ベータゼオライトが、10より大きいセリウムおよび/またはコバルト金属酸化物(CeOおよびCoOとして表される)に対するSiOのモル比を含む、実施形態21~23のいずれか一項に記載の組成物。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
【国際調査報告】