(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】シグナル増強磁気共鳴画像法に適用可能なビニル化ヒドロキシエステルの合成
(51)【国際特許分類】
C07C 67/31 20060101AFI20240614BHJP
C07C 69/68 20060101ALI20240614BHJP
C07C 269/06 20060101ALI20240614BHJP
C07C 271/18 20060101ALI20240614BHJP
C07C 201/12 20060101ALI20240614BHJP
C07C 205/42 20060101ALI20240614BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C07C67/31 CSP
C07C69/68
C07C269/06
C07C271/18
C07C201/12
C07C205/42
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577542
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022066535
(87)【国際公開番号】W WO2022263620
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505119966
【氏名又は名称】マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フェルデルング デア ヴィッセンシャフテン エー. ファオ.
【氏名又は名称原語表記】MAX-PLANCK-GESELLSCHAFT ZUR FOERDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレッグラー、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】コルチャク、セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャグタップ、アニル ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サウル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】モール、デニス
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB91
4H006AC41
4H006AC48
4H006AC84
4H006BA95
4H006BC16
4H006BD21
4H006BE90
4H006RA06
4H006RB34
4H039CA66
4H039CA99
4H039CD10
4H039CD90
4H039CL60
(57)【要約】
本発明は、シグナル増強磁気共鳴画像法に適した化合物を調製するための方法であって、酢酸ビニルを使用することによって、部分-Q-Zを含み、QがOまたはNであり、Zが保護基であるモノ-、ジ-またはトリカルボン酸をビニル化する工程と、Zを切断する工程と、Zが切断時にまだアルコールに変換されていない場合、亜硝酸塩を使用することによりQをアルコールに変換するか、またはQを臭素に変換し、続けて加水分解して、ビニルヒドロキシエステルを得る工程とを含む、方法に関する。使用される化合物は、部分的または完全に重水素化されていてもよい。さらに、本発明は、ビニルヒドロキシエステルおよび中間体のビニル部分が部分的または完全に重水素化されている、ビニルヒドロキシエステルおよびその合成の中間体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シグナル増強磁気共鳴画像法に適した化合物を調製するための方法であって、
a)式(II)の酢酸ビニル
【化1】
を使用することによって、式(VIIa)、(VIIb)または(VIIc)の化合物
【化2】
をビニル化し、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)の中間体
【化3】
を得る工程と、
b)UV光を使用することによって、または適切な薬剤、特にTFAを使用することによってZを切断する工程と、
c)工程(b)でTFAを使用する場合、TFAを除去する工程と、
d)亜硝酸塩、特にNaNO
2またはtert-ブチル-NO
2の存在下でQをアルコールに変換するか、または
亜硝酸塩、特にNaNO
2またはtert-ブチル-NO
2の存在下でQを臭素に変換し、続いて加水分解し、
式(IXa)、(IXb)または(IXc)のビニルヒドロキシエステル
【化4】
(式中、
各Rは、任意の他のRとは独立して、HおよびDから選択され、特にHであり、
R’は、HおよびDから選択され、特にHであり、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキル、特にC
1-16アルキル、より特にはC
1-6アルキル、さらにより特にはC
1-3アルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、ここで、前記NH
2部分は保護基によって保護されていてもよく、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
QはOまたはNであり、
Zは特にアミン保護基および感光性保護基から選択される保護基であり、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3、特に-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化5】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化6】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間、特に0から6の間、より特には0から3の間の整数である)
を含む、方法。
【請求項2】
X
1、X
2およびX
3がDである、請求項2に記載の方法。
【請求項3】
前記式(IXa)、(IXb)および(IXc)の化合物の少なくとも1個のC原子が
13Cである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
Zが、Boc、Fmoc、ベンジルカルバマート、アセトアミド、トリフルオロアセトアミドおよび
【化7】
(式中、
R
6またはR
7は、Hまたは-OCH
3であり、
他の部分R
7またはR
6は、H、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、
R
aは、HまたはC
1-3アルキルであり、
pは0から6の間の整数である)
から選択される保護基である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
R
6がHまたは-OCH
3であり、R
7がH、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、R
aがHまたはC
1-3アルキルであり、pが0から6の間の整数である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)の化合物のモル量に対するTFAのモル量が0から1、特に0から0.2、より特には0から0.1になるまで前記TFAが除去される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(d)におけるQの加水分解がpH5.5からpH7で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(d)におけるQの臭素化後の前記加水分解が、pH8からpH9で行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記式(IXa)、(IXb)または(IXc)のビニルヒドロキシエステルが、工程(d)の後に過分極されて、過分極ビニルヒドロキシエステルが得られる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記過分極ビニルヒドロキシエステルが加水分解される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(d)における前記亜硝酸塩の添加が、少量ずつ、特に滴下により行われる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
式(IXa)、(IXb)または(IXc)のビニルヒドロキシエステル
【化8】
(式中、
R’は、HおよびDから選択され、特にHであり、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキル、特にC
1-16アルキル、より特にはC
1-6アルキル、さらにより特にはC
1-3アルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、ここで、前記NH
2部分は、特にH、DおよびNH
2から選択される保護基によって保護されていてもよく、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、ここで、少なくとも1つのX
1、X
2およびX
3はDであり、特にX
1、X
2およびX
3の各々はDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3、特に-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化9】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化10】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間、特に0から6の間、より特には0から3の間の整数である)。
【請求項13】
前記式(IXa)、(IXb)および(IXc)の化合物の少なくとも1個のC原子が
13Cである、請求項12に記載のビニルヒドロキシエステル。
【請求項14】
式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)の中間体
【化11】
(式中、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキル、特にC
1-16アルキル、より特にはC
1-6アルキル、さらにより特にはC
1-3アルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、ここで、前記NH
2部分は、特にH、DおよびNH
2から選択される保護基によって保護されていてもよく、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
QはOまたはNであり、
Zは、特にアミン保護基および感光性保護基から選択され、より特にはBoc、Fmoc、ベンジルカルバマート、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、および
【化12】
から選択される保護基であり、
R
6またはR
7は、Hまたは-OCH
3であり、
前記他の部分R
7またはR
6は、H、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、
R
aは、HまたはC
1-3アルキルであり、
pは0から6の間の整数であり、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、ここで、少なくとも1つのX
1、X
2およびX
3はDであり、特にX
1、X
2およびX
3の各々はDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3、特に-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化13】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化14】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間、特に0から6の間、より特には0から3の間の整数である)。
【請求項15】
部分
【化15】
の少なくとも1個のC原子が
13Cである、請求項14に記載の中間体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NMRシグナルを増強する過分極剤の調製に適したビニル化ヒドロキシエステルを合成する方法に関する。さらに、本発明は、ビニル化ヒドロキシエステル自体ならびにそれらの合成の中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
核磁気共鳴(NMR)およびその断層撮影モダリティ磁気共鳴画像法(MRI)の現象は、分析および臨床診断において広い適用性を有する。NMRは本質的に感度の低い現象であり、これが感度を改善するために過分極戦略が考案された理由である。したがって、過分極は、正常/熱分極シグナルと比較してNMRシグナルを数桁増強するプロセスである。過去数年において、過分極代謝産物の使用は、患者においてさえも疾患を研究するために、前臨床および臨床研究の分野に導入された。最新技術は、動的核分極(DNP)である。この手順では、典型的には13Cおよび15N同位体富化分子が使用され、最も有名な例は13C富化ピルバートである。分子は、専用の超伝導高磁場磁石内のラジカルの存在下で2K以下の極低温に冷却される。その低温で、数十分から数時間にわたるマイクロ波の照射は、ラジカルの高度に分極された電子スピンの所望の分子のヘテロ核への分極移動をもたらす。ヘテロ核は、プロトン、1H以外のスピンである。プロトンはまた、記載された手順によって分極され得るが、前臨床または臨床研究にはあまり関連しない。その後、目的の過分極分子は急速に解凍され、リアルタイムで代謝変換を直接プローブできるため、シグナル増強磁気共鳴造影剤として使用することができる。
【0003】
過分極の別の技術は、パラ水素誘起分極(PHIP)である。これはDNPよりも速い手法であり、数十分から数時間ではなく数秒で代謝産物を分極化する。代謝産物をシグナル増強するために、
A)水素のパラ-スピン異性体と急速に反応することができ、
B)高度のシグナル増強をもたらすことができ、
C)目的の分子に迅速に変換することができる、
適切な前駆体分子が必要とされる。
【0004】
PHIPアプローチを使用して、過分極した場合のアセタート、ラクタートおよびピルバートを含むいくつかの代謝産物。しかしながら、同位体富化化合物の得られた分極は、DNPによって達成可能な分極よりも1桁低いままである。そのような代謝造影剤に対してPHIPによって同様の分極度が達成される場合、これにより、PHIP技術が専用の高磁場磁石を必要としないため、造影剤の生成を費用効率が高く、桁違いに速く、医療機関に広く適用可能にする機会がもたらされる。対照的に、パラ-水素が適切な前駆体によって反応する携帯型低磁場装置のみが必要である。
【0005】
これまでのところ、NMR実験は、シグナル増強造影剤を生成するための最適な結果を理論的にもたらすために考案されている。しかしながら、ラクタートおよびピルバートを含む重要な代謝産物について最大のシグナル増強を促進する化学前駆体は存在しない。文献研究は、ビニルカルボン酸(例えば、酢酸ビニル、乳酸ビニルおよびピルビン酸ビニル)が最も有望な前駆体分子であることを示している。分子は公知であるが、重水素での同位体標識はこれまで達成されていない。PHIPによって最適なシグナル増強を達成するためには、13C原子が前駆体に含まれる必要があるだけでなく、理想的には少なくともビニル官能基が重水素化されている必要がある。これは、これまで克服されていない課題である。
【0006】
本発明は、ヒドロキシエステルのビニルエステルを合成することを可能にする新規な化学的手順に関する。このクラスの分子の最も有名な代表例は、乳酸ビニル(α-ヒドロキシエステル)である。注目すべき他の分子は、ポリヒドロキシ酪酸、マレイン酸およびクエン酸のビニルエステル(ヒドロキシエステル)である。代謝産物の遊離酸がしばしばより望ましいが、非切断エステルも造影剤として使用することができる。上記の公知の方法および生成物とは対照的に、本発明は、過分極剤の調製に適したビニル化ヒドロキシエステルの費用対効果の高い調製を可能にする。
【0007】
上記の最新技術に基づいて、本発明の目的は、NMRシグナルを増強する過分極剤の調製に適したビニル化ヒドロキシエステルを合成する手段および方法を提供することである。この目的は、本明細書の従属請求項、例、図面および一般的な説明に記載されているさらなる有利な実施形態を用いて、本明細書の独立請求項の主題によって達成される。
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様は、シグナル増強磁気共鳴画像法に適した化合物を調製するための方法に関する。本方法は、
a)式(II)の酢酸ビニル
【化1】
を使用することによって、式(VIIa)、(VIIb)または(VIIc)、特に(VIIa)の化合物
【化2】
をビニル化し、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)、特に(VIIIa)の中間体
【化3】
を得る工程と、
b)UV光を使用することによって、または適切な薬剤、特にTFAを使用することによってZを切断する工程と、
c)工程(b)でTFAを使用する場合、TFAを除去する工程と、
d)亜硝酸塩の存在下でQをアルコールに変換するか、または
亜硝酸塩の存在下でQを臭素に変換し、続いて加水分解し、
式(IXa)、(IXb)または(IXc)、特に(IXa)のビニルヒドロキシエステル
【化4】
を得る工程と
(式中、
各Rは、任意の他のRとは独立して、HおよびDから選択され、
R’は、HおよびDから選択され、特にHであり、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
QはOまたはNであり、
Zは保護基であり、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化5】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化6】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間の整数である)
を含む。
【0009】
本発明の第2の態様は、式(IXa)、(IXb)または(IXc)、特に(IXa)のビニルヒドロキシエステル
【化7】
(式中、
各R’は、任意の他のR’とは独立して、HおよびDから選択され、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、ここで、少なくとも1つのX
1、X
2およびX
3はDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化8】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化9】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間の整数である)
に関する。
【0010】
本発明の第3の態様は、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)、特に(VIIIa)の中間体
【化10】
(式中、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
QはOまたはNであり、
Zは保護基であり、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、ここで、少なくとも1つのX
1、X
2およびX
3はDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化11】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化12】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間の整数である)
に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語および定義
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適切である場合には常に、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載されるいずれかの定義が参照により本明細書に組み入れられるいずれかの文書と矛盾する場合、記載されている定義が優先するものとする。
【0012】
本明細書で使用される場合、「備える(comprising)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」および「含む(including)」という用語、およびその他の類似の形態、ならびにそれらの文法的等価物は、これらの単語の任意の1つに続く1つまたは複数の項目が、このような1つまたは複数の項目の網羅的な列挙であることを意味しないか、列挙された1つまたは複数の項目のみに限定されることを意味しないという点で、意味において等価であり、非限定的であることが意図される。例えば、構成要素A、BおよびCを「備える(comprising)」物品は、構成要素A、BおよびCからなる(すなわち、のみを含有する)ことができ、または構成要素A、BおよびCのみならず1つまたは複数の他の成分も含有することができる。したがって、「備える(comprises)」およびその類似の形態、ならびにそれらの文法的等価物は、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」の態様の開示を含むことが意図され、理解される。
【0013】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の指示をしない限り、その範囲の上限と下限の間にある、下限の単位の10分の1までの各介在する値、およびその記載された範囲内の任意の他の記載されたまたは介在する値は、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に服して、本開示内に包含されることが理解される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、それらの含まれた限界の一方または両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0014】
本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体に向けられた変動を含む(および記載する)。例えば、「約X」という記載は、「X」という記載を含む。
【0015】
式中のヘテロ原子への言及は、他に定義されない限り、隣接する定義(例えば-N=または-NH-)に応じてすべての適切な形態を包含する。適切な形態は、当業者によって容易に理解される。例えば、QがNであり、Zがアミン保護基である定義-Q-Zの場合は、選択された保護基に応じて、Nが-N=または-NH-を包含し得ることが明らかであり、例えば、ZがBocである場合、Qは-NH-である。
【0016】
本明細書で使用される場合、添付の特許請求の範囲を含めて、単数形「a」、「or」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。
【0017】
本明細書の文脈における「アルキル」という用語は、飽和直鎖または分岐炭化水素に関する。例えば、本明細書の文脈におけるC1-C6アルキルは、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素に関する。C1-C6アルキルの非限定的な例としては、メチル、エチル、プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、2-メチルプロピル、tert-ブチル、n-ペンチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、3-メチル-2-ペンチルおよび4-メチル-2-ペンチルが挙げられる。同様に、C1-16アルキルという用語は、1から16個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素に関する。
【0018】
「ヒドロキシ酪酸」という用語は、2-ヒドロキシブタン酸ならびに3-ヒドロキシブタン酸に関する。
【0019】
「ヒドロキシブチラート」という用語は、アルファ-ヒドロキシブチラート(α-ヒドロキシブチラート)ならびに3-ヒドロキシブチラート(β-ヒドロキシブチラート)に関する。
【0020】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0021】
詳細な説明
本発明の第1の態様は、シグナル増強磁気共鳴画像法に適した化合物を調製するための方法に関する。本方法は、
a)式(II)の酢酸ビニル
【化13】
を使用することによって、式(VIIa)、(VIIb)または(VIIc)、特に(VIIa)の化合物
【化14】
をビニル化し、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)、特に(VIIIa)の中間体
【化15】
を得る工程と、
b)UV光を使用することによって、または適切な薬剤、特にTFAを使用することによってZを切断する工程と、
c)工程(b)でTFAを使用する場合、TFAを除去する工程と、
d)亜硝酸塩、特にNaNO
2またはtert-ブチル-NO
2の存在下でQをアルコールに変換するか、または
亜硝酸塩、特にNaNO
2またはtert-ブチル-NO
2、より特にはNaNO
2の存在下でQを臭素に変換し、続いて加水分解し、
式(IXa)、(IXb)または(IXc)、特に(IXa)のビニルヒドロキシエステル
【化16】
を得る工程と
(式中、
各Rは、任意の他のRとは独立して、HおよびDから選択され、特にHであり、
R’は、HおよびDから選択され、特にHであり、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキル、特にC
1-16アルキル、より特にはC
1-6アルキル、さらにより特にはC
1-3アルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、ここで、NH
2部分は、特にH、DおよびNH
2から選択される保護基によって保護されていてもよく、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
QはOまたはNであり、
Zは、特にアミン保護基および感光性保護基から選択され、より特にはBoc、Fmoc、ベンジルカルバマート、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、および
【化17】
から選択される保護基であり、
R
6またはR
7は、Hまたは-OCH
3であり、
他の部分R
7またはR
6は、H、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、
R
aは、HまたはC
1-3アルキルであり、
pは0から6の間の整数であり、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立して、HまたはD、特にDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3、特に-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化18】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化19】
であり、m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間、特に0から6の間、さらに特に0から3の間の整数である)
を含む。
【0022】
本発明の第4の態様に記載の方法は、シグナル増強磁気共鳴画像法における使用に適したビニルヒドロキシエステルを提供することを目的とする。ビニルヒドロキシエステルは、ラクタートなどの代謝産物の最大のシグナル増強を促進する前駆体である。PHIPによって最適なシグナル増強を達成するためには、13Cスピンが前駆体に含まれる必要があるだけでなく、理想的には少なくともビニル官能基が重水素化されている必要がある。
【0023】
適切なビニルヒドロキシエステルを製造する公知の試みは、低収率(約10%)および重水素の損失を被る。
【0024】
本発明の第4の態様の方法は、重水素を失うことなく穏やかな条件下でビニル化および脱保護を可能にする保護戦略を利用する。
【0025】
保護アミノ酸または保護ヒドロキシカルボン酸は、第1の工程でビニル化される。
【0026】
保護されたヒドロキシカルボン酸で開始した場合の保護基の除去により、ビニルヒドロキシエステルが得られる。例えば、ニトロベンゾイルなどの保護基は、UV光を照射することによって除去することができる。
【0027】
保護アミノ酸で開始した場合、アミンを脱保護し、その後、亜硝酸塩を用いてアルコールに変換することができる。TFAを使用して脱保護を行った場合、加水分解の前にTFAを除去しなければならない。
【0028】
あるいは、塩基性pHで加水分解する前に、亜硝酸塩の存在下での追加の臭素化工程を行う。ここでも、加水分解の前にTFAを除去しなければならない。非常に良好な収率が達成される(>80%)。
【0029】
シグナル増強磁気共鳴画像法用の造影剤の調製のために、ビニルヒドロキシエステルの炭素は、pH2による1H分極移動によって過分極される。得られたエステルは造影剤としてそのまま使用されてもよく、またはラクタートなどの過分極代謝産物を造影剤として使用するために加水分解によって切断されてもよい。
【0030】
特定の実施形態では、mは0または1である。
【0031】
特定の実施形態では、R8は、H、D、-CH3、-CH2D、-CHD2および-CD3から選択される。
【0032】
特定の実施形態では、R9、R11は、互いに独立してHまたはDである。
【0033】
特定の実施形態では、R10は、H、D、NH2、-CH3、-CH2D、-CHD2および-CD3、特にH、DおよびNH2から選択される。
【0034】
特定の実施形態では、各R10、R13、R15、R17、R19およびR21は、任意の他のR10、R13、R15、R17、R19またはR21とは独立して、H、DおよびNH2から選択され、NH2部分は保護基によって保護されていてもよく、特にQがNまたはNHである場合、NH2部分は保護基によって保護されている。
【0035】
特定の実施形態では、各R10、R13、R15、R17、R19およびR21は、任意の他のR10、R13、R15、R17、R19またはR21とは独立して、H、DおよびNH2から選択され、NH2部分は保護基によって保護されている。
【0036】
NH2部分に適した保護基は、当業者に公知である。R10、R13、R15、R17、R19またはR21の位置のいずれかにおけるNH2部分の保護基は、部分Qの保護基Zと直交する適切な保護基から選択される。この文脈において、「直交」は、他の保護基、例えばR10、R13、R15、R17、R19またはR21の位置のいずれかにおけるNH2部分の保護基に影響を与えることなく、1つの保護基の特定の脱保護、例えば保護基Zの除去を可能にする保護戦略に関する。例えば、ZがBocである場合、当業者は、R10、R13、R15、R17、R19またはR21の位置のいずれかでFmocを保護基として使用し得る。TFAなどの適切な試薬を使用してBoc保護基を除去した後、DMF(ジメチルホルムアミド)などの適切な溶媒中でピペリジンを使用することによってFmoc保護基を除去することができる。FmocまたはBocが感光性保護基で置き換えられる場合、代替の直交保護戦略が達成され得る。
【0037】
特定の実施形態では、R10、R13、R15、R17、R19またはR21の位置のいずれかのNH2部分の保護基は、Boc、Fmoc、ベンジルカルバマート、アセトアミド、トリフルオロアセトアミドおよび感光性保護基から選択されてもよく、特にBoc、Fmocおよび感光性保護基から選択され、前記保護基は、前記保護基が部分Qの保護基Zと直交するように選択される。
【0038】
特定の実施形態では、感光性保護基は、特に
【化20】
(式中、
R
6またはR
7はHまたは-OCH
3であり、他の部分R
7またはR
6は、H、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、R
aはHまたはC
1-3アルキルであり、pは0から6の間の整数である)
から選択されるニトロベンジル系保護基である。
【0039】
特定の実施形態では、NH2部分の保護基は、Boc、Fmoc、ベンジルカルバマート、アセトアミドおよびトリフルオロアセトアミドから選択されてもよく、特にBocおよびFmocから選択され、前記保護基は、前記保護基が部分Qの保護基Zと直交するように選択される。
【0040】
特定の実施形態では、R8は、H、D、-CH3、-CH2D、-CHD2および-CD3から選択され、R9、R11は、互いに独立してHまたはDであり、R10は、H、D、NH2、-CH3、-CH2D、-CHD2および-CD3から、特に、H、DおよびNH2から、より特には、HおよびDから選択される。
【0041】
特定の実施形態では、qは0または1であり、rは0または1である。
【0042】
特定の実施形態では、qは0であり、rは1である。
【0043】
特定の実施形態では、R12、R13、R14、R15、R16は、互いに独立して、HまたはDである。
【0044】
特定の実施形態では、sは0または1であり、vは0または1であり、wは0または1である。
【0045】
特定の実施形態では、sは0である。
【0046】
特定の実施形態では、sは0であり、vは1であり、wは1である。
【0047】
特定の実施形態では、R17、R18、R19、R20、R21、R22は、互いに独立して、HまたはDである。
【0048】
特定の実施形態では、R8は、H、D、-CH3、-CH2D、-CHD2および-CD3から選択され、R9、R11は、互いに独立してHまたはDであり、R10は、H、D、NH2、-CH3、-CH2D、-CHD2および-CD3から、特に、H、DおよびNH2から選択され、R12からR22は、互いに独立して、HまたはDである。
【0049】
重水素の損失のリスクを低減するために、ヒドロキシエステル部分は完全に重水素化されていてもよい。
【0050】
特定の実施形態では、R8は、Dおよび-CD3から選択される。
【0051】
特定の実施形態では、R9、R11は、Dである。
【0052】
特定の実施形態では、R10は、D、NH2および-CD3から、特にDおよびNH2から選択される。
【0053】
特定の実施形態では、R8はD、-CD3から選択され、R9、R11はDであり、R10はD、NH2、および-CD3から、特にDおよびNH2から選択される。
【0054】
特定の実施形態では、R12、R13、R14、R15、R16は、Dである。
【0055】
特定の実施形態では、R17、R18、R19、R20、R21、R22は、Dである。
【0056】
特定の実施形態では、R8はD、-CD3から選択され、R9、R11はDであり、R10は、D、NH2、-CD3から選択され、特に、DおよびNH2から選択され、R12からR22は、Dである。
【0057】
特定の実施形態では、R6はHまたは-OCH3であり、R7は、H、-OCH3、-O-CH2-C(=O)-O-CH2-CH3、-CH2-C(=O)-CH(Ra)-NH-Boc、-O-[CH2-CH2-O]p-H、-O-CH2-CH(OH)-CH2-OH、-O-CH2-C(=O)-NH-CH2-CH2-NH-Bocから選択され、RaはHまたはC1-3アルキルであり、pは0から6の間の整数である。
【0058】
QがNである場合、保護基Zはアミン保護基から選択されてもよい。
【0059】
特定の実施形態では、QはNであり、Zは、Boc、Fmoc、ベンジルカルバマート、アセトアミド、トリフルオロアセトアミドから選択される。
【0060】
QがOである場合、保護基Zは、ニトロベンゾイルなどの感光性保護基であってもよい。
【0061】
特定の実施形態では、QはOであり、Zはニトロベンゾイルおよび以下の部分から選択される。
【化21】
【0062】
上記のような方法を行う前に、より高いシグナル増強を達成するために重水素化を行うことができる。後期の重水素化は、必要量の塩基がエステル加水分解をもたらすので、実現可能ではない。
【0063】
特定の実施形態では、Zは、
【化22】
(式中、
R
6またはR
7はHまたは-OCH
3であり、他の部分R
7またはR
6は、H、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、R
aはHまたはC
1-3アルキルであり、pは0から6の間の整数である)
から選択される感光性保護基である。
【0064】
さらに、式(VIIa)、(VIIb)または(VIIc)、特に(VIIa)の13C標識化合物を使用すると、非標識化合物と比較してシグナルをさらに増加させるのに役立つ。
【0065】
ビニル化は、Pd(0)および/またはPd(2+)触媒などの転移エステル化のための触媒の存在下で行われる。
【0066】
特定の実施形態では、工程(a)におけるビニル化は、Pd(OAc)2を用いて行われる。
【0067】
重水素化化合物については、新たに再結晶化されたPd(OAc)2を使用すると、収率が10%増加することが示された。
【0068】
特定の実施形態では、ビニル化工程(a)は、新たに再結晶化されたPd(OAc)2を使用して行われる。
【0069】
特定の実施形態では、ビニル化工程(a)は、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)の中間体(式中、E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5の各々は
【化23】
であり、X
1、X
2およびX
3は本明細書で定義される通りである)を生じる。
【0070】
ビニル部分での重水素の損失を回避するために、反応条件を慎重に制御しなければならない。
【0071】
Qが-O-である場合、上記のような感光性保護基Zを使用することができる。保護基の除去は、UV光を照射することによって達成される。
【0072】
特定の実施形態では、工程(b)のUV光は、200nmから500nmの間、特に320nmの波長を有する。
【0073】
Qが-N-である場合、上記のようなアミン保護基Zを使用してもよい。アミン保護基の除去は、当業者に公知の適切な薬剤を使用することによって行うことができる。例えば、非プロトン性溶媒中でTFAを使用することによってBoc保護基を除去することができる。
【0074】
特定の実施形態では、ZはBocである。
【0075】
特定の実施形態では、工程(b)における保護基の除去は、TFA、特に非プロトン性溶媒中のTFAを使用することによって行われる。
【0076】
官能基反転(functional group inversion)を成功させるためには、過剰な酸を除去して収率を高めることが重要である。したがって、TFAとメタノールとの共蒸発およびpH制御が必要である。
【0077】
特定の実施形態では、TFAは、工程(c)におけるメタノールとの共蒸発によって除去される。
【0078】
式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)の化合物のモル量に対するTFAのモル量が0から1、特に0から0.2、さらに特には0から0.1になるまで、工程(c)においてTFAが除去される、請求項10に記載の方法。
【0079】
工程(a)におけるビニル化が、最大のビニル化が達成されるように行われた場合、工程(d)で得られたビニルヒドロキシエステルも完全にビニル化される。
【0080】
特定の実施形態では、式(IXa)、(IXb)または(IXc)のビニルヒドロキシエステルのE
1、E
2、E
3、E
4およびE
5の各々は、本明細書で定義されるX
1、X
2およびX
3を有する
【化24】
である。
【0081】
工程(d)における純粋な塩としての亜硝酸ナトリウムならびに溶液の一度の添加は、分解をもたらした。
【0082】
特定の実施形態では、工程(d)における亜硝酸塩の添加は、少量ずつ、特に滴下により行われる。
【0083】
特定の実施形態では、工程(d)の臭素化のための臭化物、特にNaBrは、亜硝酸塩の添加の前に添加され、特に亜硝酸塩の添加は、少量ずつ、特に滴下で行われる。
【0084】
酸とは対照的に、TFAアニオンはビニルエステルの安定性に重要であることが見出された。塩化物またはスルファートを使用した合成手順は成功しなかったことが証明された。
【0085】
特定の実施形態では、工程(d)におけるQのアルコールへの変換は、亜硝酸塩、特にNaNO2またはtert-ブチル-NO2、およびアニオン、特にTFAアニオンの存在下で行われる。
【0086】
特定の実施形態では、工程(d)におけるQのアルコールへの変換は、pH5.5からpH7で行われる。
【0087】
特定の実施形態では、工程(d)におけるQの臭素への変換は、亜硝酸塩、特にNaNO2またはtert-ブチル-NO2、より特にはNaNO2およびアニオン、特にTFAアニオンの存在下で行われる。
【0088】
特定の実施形態では、工程(d)でQを臭素に変換した後の加水分解は、pH8からpH9で行われる。K2CO3を使用してpHを調整してもよい。
【0089】
例えばビニル部分での重水素の損失を回避するために、工程(d)の反応はD2O中で行われ得る。この場合、重水素化アルコール部分が導入される。
【0090】
特定の実施形態では、R’はDである。
【0091】
シグナル増強磁気共鳴画像法のための造影剤の調製のために、ビニルヒドロキシエステルの炭素は、標準的な方法によってpH2による1H分極移動によって過分極される。得られたエステルは、造影剤としてそのまま使用されてもよく、またはラクタートなどの過分極代謝産物を造影剤として使用するために加水分解によって切断されてもよい。
【0092】
特定の実施形態では、式(IXa)、(IXb)もしくは(IXc)のビニルヒドロキシエステルは、工程(d)の後に過分極されるか、または式(IXa)、(IXb)もしくは(IXc)のビニルヒドロキシエステルは、工程(d)の後に過分極および加水分解される。
【0093】
特定の実施形態では、式(IXa)、(IXb)または(IXc)のビニルヒドロキシエステルは、工程(d)の後に過分極されて、過分極ビニルヒドロキシエステルが得られる。
【0094】
特定の実施形態では、過分極ビニルヒドロキシエステルは加水分解される。
【0095】
特定の実施形態では、式(IXa)、(IXb)および(IXc)の化合物の少なくとも1個のC原子は13Cである。
【0096】
特定の実施形態では、上記の方法工程は、15℃から35℃の間、特に20℃から25℃の間の温度で行われる。
【0097】
本発明の第2の態様は、式(IXa)、(IXb)または(IXc)、特に(IXa)のビニルヒドロキシエステル
【化25】
(式中、
各R’は、独立して、HおよびDから選択され、特にHである任意の他のR’であり、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキル、特にC
1-16アルキル、より特にはC
1-6アルキル、さらにより特にはC
1-3アルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、ここで、NH
2部分は、特にH、DおよびNH
2から選択される保護基によって保護されていてもよく、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、ここで少なくとも1つのX
1、X
2およびX
3はDであり、特にX
1、X
2およびX
3の各々はDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3、特に-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化26】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化27】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間、特に0から6の間、より特には0から3の間の整数である)
に関する。
【0098】
特定の実施形態では、式(IXa)、(IXb)および(IXc)の化合物の少なくとも1個のC原子は13Cである。
【0099】
特定の実施形態では、式(IXa)の化合物は、部分的または完全に重水素化された乳酸ビニルまたはヒドロキシ酪酸ビニルであり、式(IXb)の化合物は、部分的または完全に重水素化されたリンゴ酸ビニルであり、式(IXc)の化合物は、部分的または完全に重水素化されたクエン酸ビニルである。
【0100】
特定の実施形態では、式(IXa)の化合物は、部分的または完全に重水素化された乳酸ビニルまたはヒドロキシ酪酸ビニルである。特定の実施形態では、式(IXb)の化合物は、部分的または完全に重水素化されたリンゴ酸ビニルである。特定の実施形態では、式(IXc)の化合物は、部分的または完全に重水素化されたクエン酸ビニルである。
【0101】
特に、R’、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、X1、X2、X3、E1、E2、E3、E4、E5、m、q、r、s、vおよびwの定義に関して、本発明の第1の態様の実施形態を参照する。
【0102】
本発明の第3の態様は、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)、特に(VIIIa)の中間体
【化28】
(式中、
R
8、R
9およびR
12は、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキル、特にC
1-16アルキル、より特にはC
1-6アルキル、さらにより特にはC
1-3アルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21は、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、ここで、NH
2部分は、特にH、DおよびNH
2から選択される保護基によって保護されていてもよく、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22は、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
QはOまたはNであり、
Zは、Boc、Fmoc、ベンジルカルバマート、アセトアミド、トリフルオロアセトアミド、および
【化29】
から特に選択される保護基であり、
R
6またはR
7は、Hまたは-OCH
3であり、
他の部分R
7またはR
6は、H、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、
R
aは、HまたはC
1-3アルキルであり、
pは0から6の間の整数であり、
X
1、X
2およびX
3は、互いに独立してHまたはDであり、ここで少なくとも1つのX
1、X
2およびX
3はDであり、特にX
1、X
2およびX
3の各々はDであり、
Aは、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3、特に-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5は、互いに独立して、H、Dまたは
【化30】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分は
【化31】
であり、
m、q、r、s、vおよびwは、互いに独立して、0から16の間、特に0から6の間、より特には0から3の間の整数である)
に関する。
【0103】
特定の実施形態では、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)、特に(VIIIa)の中間体
【化32】
は、
R
8、R
9およびR
12が、互いに独立して、H、D、および完全にまたは部分的に重水素化されたアルキル、特にC
1-16アルキル、より特にはC
1-6アルキル、さらにより特にはC
1-3アルキルから選択され、
各R
10、R
13、R
15、R
17、R
19およびR
21が、任意の他のR
10、R
13、R
15、R
17、R
19またはR
21とは独立して、H、DおよびNH
2から選択され、ここで、NH
2部分が、特にH、DおよびNH
2から選択される保護基によって保護されていてもよく、
各R
11、R
14、R
16、R
18、R
20およびR
22が、任意の他のR
11、R
14、R
16、R
18、R
20またはR
22とは独立して、HおよびDから選択され、
QがOであり、
Zが、特に
【化33】
から選択される感光性保護基であり、
R
6またはR
7が、Hまたは-OCH
3であり、
他の部分R
7またはR
6が、H、-OCH
3、-O-CH
2-C(=O)-O-CH
2-CH
3、-CH
2-C(=O)-CH(R
a)-NH-Boc、-O-[CH
2-CH
2-O]
p-H、-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH、-O-CH
2-C(=O)-NH-CH
2-CH
2-NH-Bocから選択され、
R
aが、HまたはC
1-3アルキルであり、
pが0から6の間の整数であり、
X
1、X
2およびX
3が、互いに独立してHまたはDであり、ここで、少なくとも1つのX
1、X
2およびX
3がDであり、特にX
1、X
2およびX
3の各々がDであり、
Aが、-CH
3、-CH
2D、-CHD
2または-CD
3、特に-CD
3であり、
E
1、E
2、E
3、E
4およびE
5が、互いに独立して、H、Dまたは
【化34】
であり、ここで、X
1、X
2およびX
3は上に定義される通りであり、E
1およびE
2から選択される少なくとも1つの部分ならびにE
3、E
4およびE
5から選択される少なくとも1つの部分が
【化35】
であり、
m、q、r、s、vおよびwが、互いに独立して、0から16の間、特に0から6の間、より特には0から3の間の整数である
ことを特徴とする。
【0104】
特定の実施形態では、式(VIIIa)、(VIIIb)または(VIIIc)の中間体の部分
【化36】
の少なくとも1個のC原子は
13Cである。
【0105】
特に、R’、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、X1、X2、X3、E1、E2、E3、E4、E5、Q、Z、m、q、r、s、vおよびwの定義に関して、本発明の第1の態様の実施形態を参照する。
【0106】
本発明の任意の態様の特定の実施形態では、1個以上のプロトンが重水素で置き換えられる。本明細書に記載の分子は、完全に重水素化されていてもよい。
【0107】
本発明は、以下の例によってさらに例示され、そこからさらなる実施形態および利点を引き出すことができる。これらの例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0108】
例
例1:ビニルヒドロキシエステルの合成
スキーム3に示され、以下に記載されるように亜硝酸塩を使用することによって、2つの異なる合成経路(B、C)を介して重水素化乳酸ビニル(5)を合成した。その後、乳酸ビニル5を過分極および切断して(D)、NMR造影剤(6)を得た。
【化37】
【0109】
スキーム3:A:高温でのRu/C触媒の存在下でのC-2位でのアラニンの重水素化、続いて酢酸ビニル-d6によるトランスビニル化のためのBoc保護。B:クロロホルム中でアラニンビニルエステルをTFA塩エステルに変換し、続いて亜硝酸ナトリウムを使用して乳酸ビニルに直接変換する。C:ハロゲン源として臭化ナトリウムを使用した臭素を介した乳酸ビニルへの中継アプローチ。D パラ水素化:以下に記載されるような一般手順1を使用した金属系触媒によるヒドロキシエステルの触媒変換。得られたエチルエステル上の分極は、それぞれの部分の任意の炭素上に移動することができる。その後の切断は、個々の調整された手順を使用して行うことができる。
【0110】
パネルCは、パネルBに示されるそれぞれの合成工程と比較した、化合物4から出発する化合物5の合成のための代替経路を示す。
【0111】
化合物1(スキーム3のパネルA)の合成
この工程は任意である。しかしながら、C-2の重水素化は、2のより高いシグナル増強をもたらし得る。
【0112】
13C標識アラニンの使用は、非標識化合物と比較してシグナルをさらに増加させるのに役立つ。後期の重水素化は、必要量の塩基がエステル加水分解をもたらすので、実現可能ではない。それにもかかわらず、以下の反応は、プロトン化生成物および重水素化生成物の両方に作用する。
【0113】
三つ口丸底フラスコに、L-Ala(8.9g、99.9mmol、1当量)、炭素担持ルテニウム(0.89g、10%重量)および水酸化ナトリウム(12g、299.7mmol、3当量)を仕込んだ。密閉フラスコに不活性ガスを充填し、D2Oを添加した。排気により雰囲気をN2からH2に変えた。触媒を活性化するために、H2を反応媒体によりバブリングしなければならない。反応物を1~3日間70℃に加温した。NMRにより反応制御を行う。完全に変換した後、反応物を室温に冷却し、セライトを通して濾過し、pHを6に低下させた。次いで、Dowex X-8樹脂を添加し、25mLのアンモニア水溶液で洗浄した。溶媒を減圧下で蒸発させた。L-d-2-アラニンを黄色の固体(98%重水素化)として見出す。(Michelottiら、2017)
【0114】
化合物2(スキーム3のパネルA)の合成
アミノ酸1(4.5g、49.94mmol、1当量)を0℃で水に溶解した後、NEt3(7.58g、74.92mmol、1.25当量)を添加した。Boc2O(13.08g、59.93mmol、1.2当量)をジオキサン(40mL)に溶解し、反応混合物に添加した。溶液を室温で一晩撹拌した。溶媒を真空中で除去し、得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、D2Oを3回抽出した。有機相を乾燥させ、減圧下で濃縮した。
【0115】
化合物3(スキーム3のパネルA)の合成
重水素化化合物については、新たに再結晶化されたPd(OAc)2を使用すると、収率が10%増加することが示された。
【0116】
Boc保護された2D-アラニン2(0.25g、1.31mmol、1当量)を酢酸ビニル-d6(0.716g、7.86mmol、6当量)に溶解し、溶液が透明になるまで撹拌した。撹拌溶液に酢酸パラジウム(0.003g、0.01mmol、0.01当量)および水酸化カリウム(0.007g、0.13mmol、0.1当量)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。残りの酢酸ビニルを真空中で除去した。粗反応混合物をシリカゲルカラム(PE:EtOAc、10:1、Rf:0.3)に充填した。-NHBoc-アラニン-ビニル-d3エステル3(0.21g、0.98mmol、75%)を結晶性白色粉末として得た。(Saikiranら、2017)
【0117】
化合物4(スキーム3のパネルB)の合成
官能基反転(functional group inversion)を成功させるためには、過剰な酸を除去して収率を高めることが重要である。したがって、TFAとメタノールとの共蒸発およびpH制御が必要である。
【0118】
火力乾燥したフラスコにBoc-N-Ala-ビニルエステル3(0.2g、0.92mmol、1当量)を仕込んだ。ジクロロメタン(8mL)およびトリフルオロ酢酸(0.8mL)を添加し、反応混合物を室温で3時間撹拌した。この後、メタノール5mLを粗反応混合物に添加し、溶媒を真空中で蒸発させた。メタノールの添加を、その後の蒸発と共に、丸底フラスコが安定した重量に達するまで繰り返した。分析目的のために少量の試料を採取した。生成物をさらに精製することなく次の反応に使用した(0.211g、0、92mmol、99%)。(Kaltschneeら、2019)
【0119】
化合物5(スキーム3のパネルB)の合成
塩化物またはスルファートを使用した合成手順は成功しなかったことが証明された。TFAアニオンの存在は、ビニルエステルの安定性に必須であることが見出された。
【0120】
アミノ塩ビニルエステル4(0.211g、0.93mmol、1当量)をD2O(9mL、70~100mMの塩濃度、5.5から7.5のpH範囲)に溶解した。亜硝酸ナトリウム溶液(0.18g、2.60mmol、1.5当量。全反応体積の10%)を撹拌溶液に30分間にわたって少量ずつ添加した。純粋な塩としての亜硝酸ナトリウムならびに溶液の一度の添加は、分解をもたらした。ガス発生が停止するまで、反応物を1~3時間撹拌した。さらなるD2Oを添加することによって、反応の体積を2倍にし、続いてジエチルエーテルを使用してアルコールを抽出した。有機画分を合わせた後、粗溶液を減圧下で濃縮した。粗アルコールをシリカカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc、4:1、Rf:0.28)によって精製した。乳酸ビニル5(0.70g、0.56mmol、61%)を黄色の油状物として得た。
【0121】
化合物6(スキーム3のパネルC)の合成
アラニンビニルエステルトリフルオロ酢酸塩4(0.97g、4.27mmol、1当量)をD2O(25mL)に溶解した。撹拌溶液を0℃に冷却し、臭化ナトリウム(1.62g、15.78mmol、3.5当量)を添加し、20分間撹拌した。臭化ナトリウムは、亜硝酸ナトリウムを添加する前に添加しなければならず、そうでなければ収率は著しく低い。この後、亜硝酸ナトリウム(0.47g、6.75mmol、1.25当量)を少量ずつ添加した。1時間後、反応物を室温に加温し、さらに5時間撹拌した。水相をEtOAc(5×10mL)で抽出した。合わせた有機層を合わせ、回転蒸発によって減圧下で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc、8:1 Rf:0.29)によって精製した。ビニル-ブロモプロピオナート6(0.55g、3.10mmol、72%)を黄色の油状物として得た。
【0122】
化合物5(スキーム3のパネルC)の合成
ビニル-ブロモプロピオナート6(0.1g、0.56mmol)を、D2O(10mL)中のK2CO3のpH8の溶液に溶解した。反応物を16時間撹拌した。この後、水相をEtOAc(10×5mL)で抽出した。合わせた有機画分を合わせ、回転蒸発によって減圧下で濃縮した。粗アルコールをシリカカラムクロマトグラフィー(PE:EtOAc、4:1、Rf:0.28)によって精製した。乳酸ビニル5(0.05g、0.46mmol、83%)を黄色の油状物として得た。
【0123】
一般手順1:不飽和結合のパラ水素化(スキーム3のパネルD)
パラ水素化は、当業者に公知の方法によって行ってもよい。
【0124】
不飽和分子のストック溶液1を、化合物を2から10Mの最終濃度で適切な溶媒(D2O、CDCl3、CO(CD3)2および比較対象)に溶解することによって作製した。金属系触媒の適合ストック溶液2を、化合物を1~4mMまたは2~5g/mLの濃度で同じ溶媒に溶解することによって作製した。400μLの総体積を、ストック溶液1(0.5~3mMの最終濃度)、ストック溶液2(0.5~3mMまたは0.1~2g/mL)および溶媒(400μLまで充填)から構成し、圧力安全NMR管(pressure safe NMR tube)に移した。バブリング装置を取り付け、管を予熱した(T=353K)分光計に入れ、溶液を必要な温度に加温した。次に、最適化されたパルスシーケンス(例えばESOTHERIC;それぞれの不飽和化合物に応じた調整されたバブリングおよび沈降時間で)を実行する。
【0125】
例2:感光性保護基を使用するビニルヒドロキシエステルの合成
スキーム4は、保護基としてニトロベンゾイルを使用する乳酸ビニルの合成を示す。ビニル部分は重水素化されていてもよい。
【化38】
【0126】
スキーム4:保護基としてニトロベンゾイルを使用する乳酸ビニルの合成
1:エチル2-((2-ニトロベンジル)オキシ)プロパノアートの合成
火力乾燥したフラスコ中、不活性雰囲気下で、乳酸エチル(0.169g、1,429mmol、1当量)、1-(ブロモメチル)-2-ニトロベンゼン(0.309g、1.429mmol、1当量)または1-(メタノール)-2-ニトロベンゼン(0.219g、1.43mmol、1当量)、およびK2CO3(0.198g、1.43mmol、1当量)を乾燥アセトニトリル(5.7mL)に溶解した。混合物を1から3日間加熱還流した。反応をTLC(PE:EtOAc 5:1、Rf 0.25)によって制御した。反応物を室温に冷却した後、XmLのH2Oを添加した。水層をEtOAc(3×10mL)で抽出し、合わせた有機層を減圧下で濃縮した。粗生成物を、勾配溶媒系(95:5 PE:EtOAcから60:40 PE:EtOAc)を使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製した。純粋なエーテルを暗褐色の油状物として回収した。
【0127】
2:2-((2-ニトロベンジル)オキシ)プロパン-2-d酸の合成
エステル1(0.15g、mmol、当量)を、5%のアセトニトリル-d3を含有する10mLのD2Oに溶解し、10分間混合した。KOH(0.022g、0.395mmol、1当量)を一度に添加し、フラスコを密封し、1日間撹拌した。この後、CH2Cl2(3×5mL)を使用して遊離酸を抽出した。合わせた有機層を濃縮すると、純粋な酸が褐色の固体として得られた。
【0128】
3:ビニル-d3 2-((2-ニトロベンジル)オキシ)プロパノアート-2-dの合成
2-ニトロベンジル保護酸2(0.25g、1.11mmol、1当量)を酢酸ビニル-d6(3mL)に溶解し、溶液が透明になるまで撹拌した。撹拌溶液に酢酸パラジウム(0.012g、0.056mmol、0.05当量)および水酸化カリウム(0.06g、0.111mmol、0.1当量)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌した。残りの酢酸ビニルを真空中で除去した。粗反応混合物をシリカゲルカラムに充填した)。ビニル-d3エステル3を結晶性の褐色の粉末として得た。
【0129】
4:ビニル-d3-ラクタート-2-dの合成
2-ニトロベンジル保護アルコール3(0.25g、0.995mmol、1当量)を、5%のアセトニトリル-d3を含有するD2O(総体積12mL)に溶解し、λ=365nmの光照射に調整した光反応器中で30~60分間照射した。典型的には、50~100mM、より正確には80mMの濃度を使用して、UV光による誘導ラジカルによる副反応を低減した。水溶液をEtOAc(3×3mL)で抽出し、合わせた有機層を減圧下で濃縮した。粗ビニル-d3-ラクタート-2-d 4をシリカカラムクロマトグラフィーによって精製した。
【0130】
参照文献
Kaltschnee et al. (2019) “Hyperpolarization of Amino Acids in Water Utilizing Parahydrogen on a Rhodium Nanocatalyst”. Chemistry. A European Journal 25 (47): 11031-11035
Michelotti et al. (2017) “Development and Scale-Up of Stereoretentive α-Deuteration of Amines”. Org. Process Res. Dev. 21 (11): 1741-1744
Saikiran et al. (2017) “Efficient near infrared fluorescence detection of elastase enzyme using peptide-bound unsymmetrical squaraine dye”. Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 27 (17): 4024-4029
【国際調査報告】