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特表2024-522758改良されたT細胞受容体配列決定の方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】改良されたT細胞受容体配列決定の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20240614BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240614BHJP
   C12Q 1/6844 20180101ALN20240614BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20240614BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALN20240614BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6844 Z
C12N9/10
C12Q1/6876 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577594
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022034005
(87)【国際公開番号】W WO2022266450
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/212,286
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520032608
【氏名又は名称】パクト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PACT PHARMA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ユエン, ベンジャミン ティー. ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ナヤック, サパリャ
(72)【発明者】
【氏名】ポン, ソンミン
(72)【発明者】
【氏名】アン, ドゥ
(72)【発明者】
【氏名】マンデル-キャッシュマン, ステファニー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QQ20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR62
4B063QS24
(57)【要約】
本開示は、T細胞受容体(TCR)を配列決定および識別するための方法に関する。当該方法は、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)の使用を含み、ならびに、標準方法と比較して収量の向上および複雑さの低減をもたらす。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
完全長T細胞受容体(TCR)配列を含むデオキシリボ核酸(DNA)を調製する方法であって、
a)逆転写酵素がcDNA配列を生成するのに十分な条件下において、リボ核酸(RNA)分子を、TCRコード配列の3’にあるRNA分子の領域に対して相補的なcDNA合成プライマー、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)、および逆転写酵素と組み合わせることによってTCR相補的DNA(cDNA)配列を得ること;および
b)ポリメラーゼが完全長TCR配列を含むDNAを生成するのに十分な条件下において、cDNAを、TSO配列へアニールする外側プライマーおよびTCR定常配列へアニールするプライマーを含む増幅プライマーの第1のセットならびにポリメラーゼと組み合わせることによって完全長TCR配列を含むDNAを調製すること、
を含む方法。
【請求項2】
さらに、完全長TCR配列を含むDNAを配列決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
RNA分子が、T細胞を含む試料から抽出される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試料が、対象から収集される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
cDNA合成プライマーが、オリゴ-dTプライマーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
オリゴ-dTプライマーが、配列番号1または2に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
TSOが、増幅プライマー部位、バーコード、およびユニーク分子識別子(UMI)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
TSOが、配列番号3~5のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
逆転写酵素が、鋳型スイッチング逆転写酵素である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
外側プライマーが、配列番号6に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
内側プライマーが、配列番号11に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
TCR定常配列へアニールするプライマーが、配列番号7、8、12、および13に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
完全長TCR配列を含むDNAが、増幅プライマーの第2のセットを使用してさらに増幅され、プライマーの一方または両方が、バーコード配列を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
完全長TCR受容体が、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
完全長TCR受容体が、TCRガンマ鎖および/またはTCRデルタ鎖を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
b)が、約20秒から約90秒の拡張フェーズを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
増幅プライマーが、約0.1μMから約0.6μMの濃度においてフォワードプライマーを含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の方法によって作製されたcDNAライブラリー。
【請求項19】
完全長TCR配列の核酸配列を決定するために単一T細胞を解析する方法であって、
a)複数のT細胞を含む試料からの単一T細胞を選別すること;
b)
i.逆転写酵素がcDNA配列を生成するのに十分な条件下において、リボ核酸(RNA)分子を、TCRコード配列の3’にあるRNA分子の領域に対して相補的なcDNA合成プライマー、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)、および逆転写酵素と組み合わせることによってTCR相補的DNA(cDNA)配列を得ることと;
ii.ポリメラーゼが完全長TCR配列を含むDNAを生成するのに十分な条件下において、cDNAを、TSO配列へアニールする外側プライマーおよびTCR定常配列へアニールするプライマーを含む増幅プライマーの第1のセットならびにポリメラーゼと組み合わせることによって完全長TCR配列を含むDNAを調製することと
を含む、完全長TCR配列を含むDNAを調製すること;ならびに
c)完全長TCR配列を含むDNAを配列決定すること
を含む、方法。
【請求項20】
試料が、対象から収集される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
cDNA合成プライマーが、オリゴ-dTプライマーである、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
オリゴ-dTプライマーが、配列番号1または2に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
TSOが、増幅プライマー部位、識別タグ、およびユニーク分子識別子(UMI)を含む、請求項19から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
TSOが、配列番号3~5のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
逆転写酵素が、鋳型スイッチング逆転写酵素である、請求項19から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
外側プライマーが、配列番号6のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
内側プライマーが、配列番号11に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
TCR定常配列へアニールするプライマーが、配列番号7、8、12、および13のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、請求項19から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
増幅プライマーが、バーコード配列を含む、請求項19から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
完全長TCR受容体が、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖を含む、請求項19から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
完全長TCR受容体が、TCRγ鎖および/またはTCRδ鎖を含む、請求項19から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
b)が、約20秒から約90秒の拡張フェーズを含む、請求項19から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
増幅プライマーが、約0.1μMから約0.6μMの濃度でフォワードプライマーを含む、請求項19から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
単一T細胞の全トランスクリプトームを解析することをさらに含む、請求項19から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
単一T細胞の体細胞変異または遺伝的多型を解析することをさらに含む、請求項19から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
選別することが、試料を複数のペプチド/MHC複合体と接触させることを含み、
各ペプチド/MHC複合体は、関連バーコードを含む、請求項19から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
各ペプチド/MHC複合体に関連するバーコードを配列決定することをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
第1のペプチド/MHC複合体に関連する第1のバーコードと第2のペプチド/MHC複合体に関連する第2のバーコードとの比を決定することをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
さらに、第1のバーコードと第2のバーコードの比に基づいてT細胞の抗原特異性を決定することを含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年6月18日に出願された米国仮出願第63/212,286号に対する優先権を主張するものであり、なお、当該仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本願は、ASCIIフォーマットにおいて電子的に提出された配列表を含んでおり、なお、当該配列表は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。2022年6月17日に作成された前記ASCIIコピーは、087520_0254_SL.txtと命名され、サイズは13,657バイトである。
【0003】
本開示は、完全長T細胞受容体(TCR)配列を含む相補的デオキシリボ核酸(cDNA)分子を調製するため、およびそれらのTCRの核酸配列を特定するための方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
完全長TCR配列を正確に識別することは、様々な用途、例えば、これらに限定されるわけではないが、パーソナライズされた医療および養子細胞療法の開発など、にとって重要な工程であり、この場合、TCRの多様性の減少は、結果として、治療有効分子の識別の失敗を生じ得る。TCRをクローニングする従来の方法は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と、その後の、TCRα鎖のVJセグメントおよびTCRβ鎖のVDJセグメントを増幅するネステッドPCR反応の第1および第2のラウンドとの組み合わせに基づいている。これらのセグメントをインシリコにおいて解析することにより、完全長TCR配列の再構築を可能にすることができる。しかしながら、この方式で再構築されたTCR配列のかなりの割合が、不明瞭な結果を示している。この不明瞭さは、例えば、増幅工程の際にTCR配列差異をマスクするネステッドプライマーの使用に関係づけることができる。したがって、正確な完全長TCR配列を提供することができる、比較的安価でハイスループットの配列決定技術の開発が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、完全長TCR配列を含むcDNAを調製するため、およびそれらのTCRの核酸配列を特定するための方法を提供する。ある特定の非限定的な実施形態において、本開示は、完全長T細胞受容体(TCR)配列を含むデオキシリボ核酸(DNA)を調製するする方法を提供する。ある特定の実施形態において、当該方法は、逆転写酵素がcDNA配列を生成するのに十分な条件下において、リボ核酸(RNA)分子と、TCRコード配列の3’にあるRNA分子の領域に対して相補的なcDNA合成プライマー、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)、および逆転写酵素とを組み合わせることによってTCR相補的DNA(cDNA)配列を得ること;ならびに、ポリメラーゼが完全長TCR配列を含むDNAを生成するのに十分な条件下において、cDNAと、TSO配列にアニールする外側プライマーおよびTCR定常配列にアニールするプライマーを含む増幅プライマーの第1のセットならびにポリメラーゼとを組み合わせることによって完全長TCR配列を含むDNAを調製すること、を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、さらに、完全長TCR配列を含むDNAを配列決定することを含む。
【0006】
ある特定の実施形態において、RNA分子は、T細胞を含む試料から抽出される。ある特定の実施形態において、試料は、対象から採取される。ある特定の実施形態において、cDNA合成プライマーは、オリゴ-dTプライマーである。ある特定の実施形態において、オリゴ-dTプライマーは、配列番号1または2に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、TSOは、増幅プライマー部位、バーコード、およびユニーク分子識別子(UMI)を含む。ある特定の実施形態において、TSOは、配列番号3~5のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、逆転写酵素は、鋳型スイッチング逆転写酵素である。
【0007】
ある特定の実施形態において、外側プライマーは、配列番号6に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、内側プライマーは、配列番号11に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、TCR定常配列にアニールするプライマーは、配列番号7、8、12、および13に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、完全長TCR配列を含むDNAは、増幅プライマーの第2のセットを使用してさらに増幅され、この場合、プライマーの一方または両方は、バーコード配列を含む。ある特定の実施形態において、完全長TCR受容体は、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖を含む。ある特定の実施形態において、完全長TCR受容体は、TCRγ鎖および/またはTCRδ鎖を含む。
【0008】
ある特定の実施形態において、当該方法は、約20秒から約90秒の拡張フェーズを含む。ある特定の実施形態において、増幅プライマーは、約0.1μMから約0.6μMの濃度においてフォワードプライマーを含む。
【0009】
ある特定の非限定的な実施形態において、本開示は、本明細書において開示される方法によって生成されたcDNAライブラリーも提供する。
【0010】
ある特定の非限定的な実施形態において、本開示は、さらに、完全長TCR配列の核酸配列を決定するために単一T細胞を解析する方法を提供する。ある特定の実施形態において、当該方法は、複数のT細胞を含む試料からの単一T細胞を選別すること;逆転写酵素がcDNA配列を生成するのに十分な条件下において、リボ核酸(RNA)分子と、TCRコード配列の3’にあるRNA分子の領域に対して相補的なcDNA合成プライマー、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)、および逆転写酵素を組み合わせることによってTCR相補的DNA(cDNA)配列を得ることを含む、完全長TCR配列を含むDNAを調製すること;ならびにポリメラーゼが完全長TCR配列を含むDNAを生成するのに十分な条件下において、cDNAと、TSO配列へアニールする外側プライマーおよびTCR定常配列へアニールするプライマーを含む増幅プライマーの第1のセットならびにポリメラーゼとを組み合わせることによって完全長TCR配列を含むDNAを調製すること;ならびに、完全長TCR配列を含むDNAを配列決定すること、を含む。ある特定の実施形態において、試料は、対象から採取される。
【0011】
ある特定の実施形態において、cDNA合成プライマーは、オリゴ-dTプライマーである。ある特定の実施形態において、オリゴ-dTプライマーは、配列番号1または2に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、TSOは、増幅プライマー部位、識別タグ、およびユニーク分子識別子(UMI)を含む。ある特定の実施形態において、TSOは、配列番号3~5のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、逆転写酵素は、鋳型スイッチング逆転写酵素である。ある特定の実施形態において、外側プライマーは、配列番号6のいずれかに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、内側プライマーは、配列番号11に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、TCR定常配列にアニールするプライマーは、配列番号7、8、12、および13のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態において、増幅プライマーは、バーコード配列を含む。
【0012】
ある特定の実施形態において、完全長TCR受容体は、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖を含む。ある特定の実施形態において、完全長TCR受容体は、TCRγ鎖および/またはTCRδ鎖を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約20秒から約90秒の拡張フェーズを含む。ある特定の実施形態において、増幅プライマーは、約0.1μMから約0.6μMの濃度においてフォワードプライマーを含む。
【0013】
ある特定の実施形態において、当該方法は、さらに、単一T細胞の全トランスクリプトームを解析する工程を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、さらに、単一T細胞の体細胞変異または遺伝的多型を解析する工程を含む。
【0014】
ある特定の実施形態において、選別することは、試料を複数のペプチド/MHC複合体と接触させること程を含み、この場合、各ペプチド/MHC複合体は、関連バーコードを含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、さらに、各ペプチド/MHC複合体に関連するバーコードを配列決定することを含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、さらに、第1のペプチド/MHC複合体に関連する第1のバーコードと第2のペプチド/MHC複合体に関連する第2のバーコードとの比を決定することを含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、さらに、第1のバーコードと第2のバーコードの比に基づいてT細胞の抗原特異性を決定することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】完全長TCR転写物の配列を生成することに対する例示的SMART-TCR手法を示す図である。図1Aは、TCR mRNA鋳型から5’および3’増幅配列を含むcDNAを作り出すプロセスの概要を示している。
図1B】完全長TCR転写物の配列を生成することに対する例示的SMART-TCR手法を示す図である。図1Bは、図1Aにおいて作り出されたcDNAからの完全長TCR配列の増幅のためのプロセスの詳細な説明を示している。
図2】SMART-TCR手法および従来の方法によって得られた、TCR回収率、シグナル:ノイズ比、および平均NeoIDリードを示す図である。NeoID:ユニークpHLA(ペプチド-HLA)テトラマーを標識するユニークオリゴヌクレオチド配列。シグナル:ノイズ比:ユニークpHLAテトラマーのリードを異なるpHLAテトラマーのリードで除算することによって計算した、pHLAに対するTCRの特異性の推定値。臨床imPACT手法は、当技術分野において一般的に使用されるTCRに対するネストされたマルチプレックスプライマー反応のコントロールセットである。
図3】異なる実験条件においてSMART-TCR手法によって得られた、TCR回収率、シグナル:ノイズ比、および平均NeoIDリードを示す図である。臨床TCR手法:当技術分野において一般的に使用されるTCRに対するネストされたマルチプレックスプライマー反応のコントロールセットである。SMART-TCRクリーンアップRT:TCR増幅(図1Bにおいて概説される)の前にRT産物に対して為されたビーズ精製。SMART-TCR酵素スパイクイン:TCR鋳型形成を促進するための、RT反応混合物への新しいポリメラーゼ酵素の追加。SMART-TCR 1.5X NeoID:シグナル:ノイズ比およびNeoIDリードを増加させるための、増加した量のNeoIDプライマーの追加。SMART-TCR低拡張:より小さい産物形成(例えば、TCRまたはNeoID産物)を促進するための、TCR増幅のための拡張時間の減少。
図4A-4B】TCR回収率、シグナル:ノイズ比、および平均NeoIDリードに対する、拡張を下げることおよびプライマーの濃度を増加させることの効果を示す図である。図4Aは、TCR回収率を示している。図4Bは、シグナル:ノイズ比および平均NeoIDリードを示している。
図5A-5B】2つの異なる試料(LP356およびLP169)における、TCR回収率、シグナル:ノイズ比、および平均NeoIDリードに対する、拡張を下げることおよびNeoIDプライマーの濃度を増加させることの効果を示す図である。図5Aは、TCR回収率を示している。図5Bは、シグナル:ノイズ比および平均NeoIDリードを示している。NeoID:ユニークpHLA(ペプチド-HLA)テトラマーを標識するユニークオリゴヌクレオチド配列。シグナル:ノイズ比:ユニークpHLAテトラマーのリードを異なるpHLAテトラマーのリードで除算することによって計算した、pHLAに対するTCRの特異性の推定値。臨床imPACT手法:当技術分野において一般的に使用されるTCRに対するネストされたマルチプレックスプライマー反応のコントロールセットである。SMART-TCR 1.5xNeoID 3分拡張は、3分への反応の拡張時間の減少と共にNeoIDプライマーが増加される、SMART-TCRプロセスにおけるバリエーションである。SMART-TCR 2xNeoID 1.5分拡張は、1.5分への反応の拡張時間の減少と共にNeoIDプライマーが増加される、SMART-TCRプロセスにおけるバリエーションである。SMART-TCR 2xNeoID 1.5分拡張 低5’プライマーは、NeoIDプライマーが、5’プライマー(図1Bにおいて概説される)および1.5分への反応の拡張時間の減少と共に増加される、SMART-TCRプロセスにおけるバリエーションである。
図6】SMART-TCR手法が、臨床imPACT手法に対して匹敵するHLA一致comPACT分配をもたらすことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、完全長T細胞受容体(TCR)を含む相補的デオキシリボ核酸(cDNA)分子を調製するための方法および組成物を提供する。本開示は、一部において、TCR遺伝子を配列決定し、その結果として、多重増幅およびディープシーケンシングを使用してT細胞をプロファイルするための試薬および方法の発見に基づいている。最後に、本開示は、本明細書において開示される方法および組成物を使用して養子細胞療法(例えば、T細胞産物)を作製する方法も提供する。本開示の非限定的な実施形態は、本説明および実施例によって説明される。限定するためではなく開示の明瞭さのために、詳細な説明は、以下のサブセクションに分割される:
1.定義;
2.DNAを調製する方法;
3.T細胞を解析する方法;
4.組成物およびキット;
5.T細胞産物;および
6.例示的実施形態
【0017】
1.定義
特に定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、開示される本主題において使用される用語の多くについての一般的定義を当業者に提供する。Concise Medical Dictionary、LawおよびMartin編、Oxford University Press、2020;A Dictionary of Biology、Hine編、Oxford University Press、2019;A Dictionary of Chemistry、LawおよびRennie編、Oxford University Press、2020;Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology、Cammack、Atwood、Campbell、Parish、Smith、VellaおよびStirling編、Oxford University Press、2006;Paul、William.2013。Fundamental Immunology. Philadelphia、PA:Wolters Kluwer Health/Lippincott Williams & Wilkins;およびWong、Lee-Jun C. 2013。Next Generation Sequencing:Translation to Clinical Diagnostics. New York、NY:SpringerLink。本明細書において使用される場合、下記の用語は、特に明記されない限り、以下においてそれらに属する意味を有する。
【0018】
本明細書において説明される本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含む」、「からなる」、および「から実質的になる」を包含することは理解されたい。用語「含む(comprises)」および「含むこと(comprising)」は、米国特許法においてそれらに属する広い意味を有することが意図され、ならびに、「含む(includes)」、「含むこと(including)」および同様のものを意味することができる。
【0019】
本明細書において使用される場合、単語「1つの(「a」または「an」)」の使用は、特許請求の範囲および/または本明細書において用語「含む(「comprising」)」と共に使用される場合、「1つ(「one」)」を意味し得るが、「1つまたは複数(「one or more」)」、「少なくとも1つ(「at least one」)」、および「1つまたはそれ以上(「one or more than one」)」の意味とも一致する。
【0020】
明記されない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書に使用される場合、用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当技術分野における様々な一般公差以内、例えば、平均の2標準偏差以内として理解される。「約」は、言明される値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内として理解することができる。あるいは、この用語は、値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味することができる。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」および「核酸」は、相互互換的に使用され、ならびに、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物および/または物質を包含する。各ヌクレオチドは、塩基、具体的には、プリンまたはピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)、またはウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボースまたはリボース)、ならびにホスフェート基で構成される。多くの場合、核酸分子は、塩基の配列によって説明され、それにより、当該塩基は、核酸分子の一次構造(線形構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’へ表される。ポリヌクレオチドは、任意のDNA(これらに限定されるわけではないが、cDNA、ssDNA、およびdsDNAなど)および任意のRNA(これらに限定されるわけではないが、ssRNA、dsRNA、およびmRNAなど)を意味し、さらに、DNAおよびRNAの合成型ならびにこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。ポリヌクレオチドは、直鎖状または環状であり得る。さらに、用語ポリヌクレオチドは、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方、ならびに一本鎖形態および二本鎖形態を包含する。ポリヌクレオチドは、天然に存在するヌクレオチドまたは天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。天然に存在しないヌクレオチドの例としては、誘導化された糖もしくはリン酸骨格結合または化学的に改変された残基を有する改変されたヌクレオチド塩基が挙げられる。ポリヌクレオチドは、in vitroおよび/またはin vivoでの本発明のポリペプチドの直接発現のためのベクターとして好適なDNAおよびRNA分子を包含する。
【0022】
本明細書において相互互換的に使用される用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、少なくとも2つのアミノ酸の連結から形成される分子を意味する。1つのアミノ酸残基とその隣のアミノ酸残基の間の連結は、アミド結合であり、場合によってペプチド結合と呼ばれる。ポリペプチドは、当技術分野において既知の好適な方法、例えば、天然源からの単離、組換え発現システムでの発現、化学合成、または酵素合成など、によって得ることができる。この用語は、1つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然に存在するアミノ酸の人工化学的類似物であるアミノ酸ポリマーならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用することができる。
【0023】
用語「パーセント配列同一性」は、2つ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連において、以下において説明される配列比較アルゴリズムのうちの1つ(例えば、BLASTPおよびBLASTNまたは当業者に利用可能な他のアルゴリズム)を使用するかまたは目視確認によって測定した場合に、最大の一致に対して比較およびアラインメントされる場合に同じである、指定された割合のヌクレオチドまたはアミノ酸残基を有する2つ以上の配列またはサブ配列を意味する。用途に応じて、「パーセント配列同一性」は、比較される配列の領域、例えば、機能的領域にわたって、存在することができ、あるいは択一的に、比較される2つの配列の完全長にわたって存在することができる。配列比較のため、典型的には、1つの配列が、試験配列が比較される参照配列として機能する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列および参照配列がコンピュータにインプットされ、必要であれば、サブ配列の座標が指定され、ならびに、配列アルゴリズムプログラムパラメーターが指定される。配列比較アルゴリズムは、次いで、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列と比較して、試験配列に対するパーセント配列同一性を計算する。比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol. 48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似法に対する調査によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr., Madison, Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)のコンピュータ化実装によって、あるいは目視確認によって(概して、以下のAusubelらを参照されたい)、実施することができる。パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために好適なアルゴリズムの一例は、Altschulら、J.Mol.Biol. 215:403~410(1990)に記載されるBLASTアルゴリズムである。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、全米バイオテクノロジー情報センター(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に利用可能である。
【0024】
用語「プライマー」は、本明細書に使用される場合、概して、ポリヌクレオチド鋳型によってデュプレックスを形成する際に、核酸合成の開始点として機能することができ、ならびに拡張されたデュプレックスが形成されるように鋳型に沿って3’末端から拡張することができる、天然または合成のオリゴヌクレオチド分子を意味する。拡張プロセスの際に加えられるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定され得る。プライマーは、ポリメラーゼによって拡張される。プライマーは、概して、プライマー拡張産物の合成におけるそれらの使用に適合する長さであり、通常、長さが約8から約100ヌクレオチドの間の範囲である。「プライマー」は、鋳型に対して相補的であり、ならびに、核酸合成のプロセスにおいて鋳型に対して相補的な3’末端において結合された共有結合した塩基の追加によって拡張される、ポリメラーゼによる合成の開始のためのプライマー/鋳型複合体を与えるための鋳型との水素結合形成またはハイブリダイズによる複合体である。
【0025】
用語「増幅すること(amplifying)」または「増幅(amplification)」は、本明細書に使用される場合、概して、鋳型核酸の一方または両方の鎖に対して相補的である核酸分子を合成するプロセスを意味する。核酸分子を増幅することは、鋳型核酸を変性すること、プライマーの溶融温度未満の温度においてプライマーを鋳型核酸にアニールすること、ならびにプライマーから酵素的に延長して増幅産物を生成することを含み得る。ある特定の実施形態において、変性、アニール、および延長の工程は、増幅産物の量が増加するように、複数回実施される。増幅は、典型的には、デオキシリボヌクレオシド三リン酸、ポリメラーゼ酵素および適切なバッファー、ならびに/あるいはポリメラーゼ酵素の最適な活性のための補助因子の存在を必要とする。用語「増幅産物」は、本明細書において定義される増幅プロセスから生成される核酸を意味する。
【0026】
用語「配列決定(sequencing)」は、本明細書に使用される場合、概して、1つまたは複数のポリヌクレオチドにおけるヌクレオチド塩基の配列を決定するための方法および技術を意味する。ポリヌクレオチドは、例えば、核酸分子例えば、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)、ならびにそのバリアントまたは誘導体(例えば、一本鎖DNA)など、であり得る。配列決定は、現在利用可能な様々なシステム、例えば、これらに限定されるわけではないが、Illumina(登録商標)、Pacific Biosciences(PacBio(登録商標))、Oxford Nanopore(登録商標)、またはLife Technologies(Ion Torrent(登録商標))などによる配列決定システムよって実施することができる。あるいは、またはさらに、配列決定は、核酸増幅、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)(例えば、デジタルPCR、定量的PCR、またはリアルタイムPCR)、または等温増幅を使用して実施され得る。そのようなシステムは、対象によって提供される試料からシステムによって生成された、対象(例えば、ヒト)の遺伝情報に対応する複数の生の遺伝子データを提供し得る。ある特定の実施形態において、そのようなシステムは、シーケンシングリード(本明細書では「リード」とも呼ばれる)を提供する。リードは、配列決定された核酸分子の配列に対応する核酸塩基の鎖を含み得る。用語「シーケンシングリード存在量(sequence read abundance)」は、本明細書に使用される場合、概して、特定の配列またはヌクレオチドが配列リードのコレクションにおいて観察される回数を意味する。用語「配列決定」は、本明細書に使用される場合、概して、ポリヌクレオチドにおける連続したヌクレオチドの同一性(例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、または少なくとも200以上の連続したヌクレオチドの同一性)が得られる方法を意味する。
【0027】
用語「次世代シーケンシング(next-generation sequencing)」または「ハイスループットシーケンシング(high-throughput sequencing)」は、本明細書に使用される場合、概して、並列化シーケンシング・バイ・シンセシスまたはシーケンシング・バイ・ライゲーションプラットフォームを意味する。次世代シーケンシング法の非限定的な例としては、ナノポアシーケンシング法、電子検出法(electronic-detection-based method)、または単一分子蛍光法(single-molecule fluorescence-based method)が挙げられる。
【0028】
本明細書において使用される場合、「ポリメラーゼ」は、鋳型としてDNAまたはRNAを使用したヌクレオチド鎖へのヌクレオチド単位の追加によってポリヌクレオチド合成を触媒する酵素を意味する。この用語は、天然において生じる完全な酵素、あるいは単離された活性触媒ドメインまたは断片のいずれかを意味する。ある特定の実施形態において、ポリメラーゼは、熱安定性であり得る。「熱安定性ポリメラーゼ」は、例えば大腸菌(E. coli)由来のヌクレオチドポリメラーゼと比較して熱に対して比較的安定であり、ならびにヌクレオシド三リン酸の鋳型依存性重合を触媒する、酵素である。「熱安定性ポリメラーゼ」は、PCRにおいて使用される反復される加熱および冷却サイクルに供されたときに、重合のための酵素活性およびエキソヌクレアーゼ活性を維持する。ある特定の実施形態において、ポリメラーゼは、「DNAポリメラーゼ」であり得る。ある特定の実施形態において、DNAポリメラーゼは、「高忠実度DNAポリメラーゼ(high-fidelity DNA polymerase)」である。例えば、これらに限定されるわけではないが、ポリメラーゼは、PRIME STAR GXLポリメラーゼI、ADVANTAGE HD Polymerase、Q5(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase、PHUSION(登録商標)High-Fidelity DNA Polymerase、PLATINUM(登録商標)Taq DNA Polymerase High Fidelity、KAPA HiFi DNA Polymerase、またはKOD DNA Polymeraseであり得る。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「逆転写酵素」は、RNA鋳型からのDNAの形成を触媒する酵素を意味する。ある特定の実施形態において、逆転写酵素は、RNA鋳型からの第一鎖(first-strand)cDNA合成のために使用することができるDNAポリメラーゼである。RNA鋳型は、これらに限定されるわけではないが、メッセンジャーRNA(mRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボソームRNA(rRNA)、ウイルスRNA、全RNAなどであり得る。ある特定の実施形態において、例えば、これらに限定されるわけではないが、逆転写酵素は、鋳型スイッチング逆転写酵素、例えば、マウス白血病ウイルス逆転写酵素など、を意味する。
【0030】
用語「アダプター(adaptor)」、「アダプター(adapter)」、および「タグ」は、同じ意味で使用され得る。アダプターまたはタグは、任意の手法、例えば、ライゲーション、ハイブリダイゼーション、または他の手法など、によって、「タグ付けをされる」ポリヌクレオチド配列に結合させることができる。
【0031】
用語「バーコード」、「バーコード配列」、「NeoID」、または「分子バーコード」は、本明細書に使用される場合、概して、分子、例えば、核酸分子またはタンパク質分子についての情報を運ぶかまたは運ぶことが可能な標識、または識別子を意味する。ある特定の実施形態において、バーコードは、分子の一部、例えば、より大きな核酸配列に含まれるユニークヌクレオチド構成または配列であり得る。ある特定の実施形態において、バーコードは、分子(例えば、より大きなタンパク質)に取り付けられたタグであり得る。ある特定の実施形態において、バーコードは、ユニークであり得る。ある特定の非限定的な実施形態において、バーコードは、ポリヌクレオチドバーコード;ランダム核酸および/またはアミノ酸配列;ならびに合成核酸および/またはアミノ酸配列を含むことができる。ある特定の非限定的な実施形態において、バーコードは、試料の配列決定の前、その際、および/またはその後に、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)試料の断片に加えることができる。バーコードは、対応する分子に取り付けられた場合にバーコードの配列によってその分子の識別を表す、個々のシーケンシングリードの識別および/または定量化を可能にすることができる。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「ユニーク分子識別子」は、配列決定の際にエラー修正および増加した正確性を提供する分子バーコードのタイプを意味する。UMIの使用は、偽陽性バリアント細胞の割合を減少させ、ならびに、バリアント検出の感度を増加させる。UMIのインシリコ解析は、高水準の正確性を有する結果を提供することができ、ならびにユニークリードを報告し、潜在的エラーを取り除くことができる。UMIに関するさらなる詳細は、Islamら、Nature methods 11.2 (2014): 163に見出すことができ、なお、当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語「鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(template-switching oligonucleotide)」または「TSO」(「鋳型スイッチオリゴヌクレオチド(template switch oligonucleotide)」とも呼ばれる)は、核酸重合反応の際にポリメラーゼが初期鋳型(例えば、本明細書において説明される鋳型mRNA)から切り替えることができるオリゴヌクレオチド鋳型を意味する。TSOは、改変されるかそうでなければ天然に存在しない1つまたは複数のヌクレオチド(またはその類似物)を含み得る。例えば、これらに限定されるわけではないが、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチドは、1つまたは複数のヌクレオチド類似物(例えば、LNA、FANA、2’-0-メチルリボヌクレオチド、2’-フルオロリボヌクレオシド、または同様のもの)、結合改変(例えば、ホスホロチオエート、3’-3’および5’-5’逆転結合)、5’および/または3’末端改変(例えば、5’および/または3’アミノ、ビオチン、DIG、ホスフェート、チオール、染料、クェンチャーなど)、1つまたは複数の蛍光標識されたヌクレオチド、あるいは鋳型スイッチングオリゴヌクレオチドに所望の機能を提供する任意の他の特徴を含み得る。
【0034】
用語「T細胞受容体」または「TCR」は、本明細書に使用される場合、CD4+およびCD8+Tリンパ球の膜表面上に発現するポリペプチドを意味する。TCRは、抗原提示細胞の表面上の自己主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合したペプチドの認識のための免疫システムの成分として機能する抗原受容体である。TCRは、2つのジスルフィド結合膜貫通ポリペプチド鎖αおよびβあるいはγおよびδのヘテロ二量体であり得る。これら4つのTCRポリペプチド鎖のそれぞれは、複数の不連続な遺伝子セグメントを含む異なる遺伝子座によってコードされる。これらは、可変(V)領域遺伝子セグメント、接合(J)領域(joining (J) region)遺伝子セグメント、および定常(C)領域遺伝子セグメントを含む。βおよびδ鎖は、多様性(D)遺伝子(diversity (D) gene)セグメントと称される追加のエレメントを含む。可変領域は、TCRが結合特異性を有する特定の抗原およびMHC分子の決定に貢献する。用語TCRは、本明細書に使用される場合、単独の鎖または接合された両方鎖の、個別に4つのポリペプチド鎖のそれぞれ、ならびにその生物学的に活性な断片、例えば、水溶液に可溶な断片など、を含む。生物学的に活性な断片は、特定の抗原に対して特異性を伴って結合する能力を維持し得る。
【0035】
本明細書において使用される場合、「NeoTCR」は、例えば遺伝子編集方法などによってT細胞に導入される外因性T細胞受容体(TCR)を意味する。
【0036】
「T細胞産物」は、本明細書に使用される場合、外因性TCRを含む1つまたは複数のT細胞を含む組成物を意味する。ある特定の実施形態において、T細胞産物は、自己精密ゲノム編集(genome-engineered)CD8および/またはCD4T細胞を含む。標的化されたDNA媒介性非ウイルス精密ゲノム編集手法を使用することにより、内因性TCRの発現は、腫瘍排他的抗原を標的にする辺縁CD8+T細胞から単離された患者特異的外因性TCRによって排除および置換される。ある特定の実施形態において、結果として得られる操作されたCD8またはCD4T細胞は、天然発現レベルおよび天然TCR機能において、それらの天然配列の表面に外因性TCRを発現する。外因性TCR外部結合ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインの配列は、天然CD8T細胞から単離されたTCRから変更されない。NeoTCR遺伝子発現の調整は、NeoTCR遺伝子カセットがゲノムに統合される位置の上流に位置された天然内因性TCRプロモーターによって駆動される。この手法により、NeoTCRの発現の天然レベルが、非刺激の抗原活性化T細胞状態において観察される。
【0037】
用語「内因性」は、本明細書に使用される場合、通常は細胞または組織において発現される核酸分子またはポリヌクレオチドを意味する。
【0038】
用語「外因性」は、本明細書に使用される場合、細胞内に内因的に存在しない核酸分子またはポリヌクレオチドを意味する。したがって、用語「外因性」は、細胞において発現される任意の組換え核酸分子またはポリペプチド、例えば、外来性の、異種の、および過剰発現された核酸分子およびポリペプチドなど、を包含するであろう。「外因性」核酸によって、天然の野生型細胞に存在しない核酸が意味され、例えば、外因性核酸は、配列、位置(position)/配置(location)、または両方において内因性核酸と異なり得る。明瞭化のため、外因性核酸は、その天然の内因性核酸に対して同じまたは異なる配列を有し得;それは、遺伝子操作によって細胞それ自体またはその前駆細胞に導入され得、ならびに、場合により、代替のコントロール配列、例えば、非天然プロモーターまたは分泌配列など、に連結され得る。
【0039】
本明細書において使用される場合、用語「抗原ペプチド」は、MHCクラス1またはMHCクラス2の結合溝に結合されるかまたは結合することができるペプチド(例えば、9量体、10量体など)を意味する。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語「ペプチド/MHC複合体」は、MHCタンパク質および抗原ペプチドを含む機能性分子を意味する。ある特定の実施形態において、MHCタンパク質は、MHCクラスIタンパク質であり得る。ある特定の実施形態において、ペプチド/MHC複合体は、MHCタンパク質、β-2ミクログロブリン、および抗原ペプチドを含む。ある特定の実施形態において、MHCタンパク質は、MHCクラスIIタンパク質であり得る。
【0041】
2.cDNAを調製する方法
本開示は、完全長TCR配列を含むcDNAの調製を改善するための組成物および方法、ならびにそれらのTCRの完全長核酸配列を決定する際での使用を提供する。
【0042】
図1Aおよび1Bは、本開示の主題のある特定の実施形態を例示している。例えば、ある特定の実施形態において、最初に、図1Aにおいて識別されたmRNA転写物が、TCR発現細胞を含む試料、例えば、単一T細胞から抽出される。そのようなmRNA転写物の集団は、完全長TCR配列を含むであろう。ある特定の実施形態において、mRNA転写物は、工程2において例示されるようにcDNA-RNA中間体を生成するために、cDNA合成プライマーおよび逆転写酵素と組み合わされる。cDNA合成プライマーは、TCRのコード配列に対して、下流において、すなわち、mRNA転写物の3’末端に向かって、存在する任意の配列を含むことができ、その一方で、ある特定の実施形態において、cDNA合成プライマーは、オリゴ-dTオリゴヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、オリゴ-dTオリゴヌクレオチドは、配列番号1または2に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。配列番号1および2は、下記に提供される。
AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN[配列番号1]
AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACNNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN[配列番号2]
【0043】
ある特定の実施形態において、第2の逆転写酵素反応は、完全長TCR配列を含むcDNAを生成するために、cDNA-RNA中間体をTSOと組み合わせることによって行われる。ある特定の実施形態において、ならびに図1Aの工程3に示されるように、TSOは、逆転写酵素によってcDNA分子の3’末端に組み込まれたシトシンヌクレオチドの非鋳型化ストレッチにハイブリダイズすることができる。そのようなcDNAへのTSOのハイブリダイゼーションは、逆転写酵素によるさらなる拡張のための鋳型を提供し、それにより、図1Aの工程4において示されるように、さらに拡張されたcDNA分子にTSOの補体を組み入れる。
【0044】
ある特定の実施形態において、cDNA合成プライマーおよび/またはTSOは、増幅プライマー部位を含むことができる。ある特定の実施形態において、cDNA合成プライマーおよび/またはTSOは、識別タグ、例えば、バーコードなど、を含むことができる。ある特定の実施形態において、cDNA合成プライマーおよび/またはTSOは、ユニーク分子識別子(UMI)を含むことができる。ある特定の実施形態において、TSOは、配列番号3~5のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む。配列番号3~5は、下記に提供される。
AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATrGrG+G[配列番号3]
/5Biosg/AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATrGrG+G[配列番号4]
AGAGACAGAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGTACATNNNNNNNNrGrG+G[配列番号5]
【0045】
ある特定の実施形態において、逆転写酵素は、鋳型スイッチング活性を有する。ある特定の実施形態において、逆転写酵素は、鋳型(例えば、RNA)の5’末端に達した後に、いくらかの非鋳型化ヌクレオチドを加えることができる。ある特定の実施形態において、逆転写酵素は、野生型モロニーマウス白血病ウイルスまたはそのバリアントである。例えば、これらに限定されるわけではないが、逆転写酵素は、SUPERSCRIPTII(登録商標)、POWERSCRIPT(登録商標)、またはSMARTSCRIPT(登録商標)であり得る。
【0046】
図1Bに示されるように、逆転写の後に、cDNAをプライマーの第1のセットおよびDNAポリメラーゼと組み合わせることにより、配列決定のための完全長TCRを得ることができる。
【0047】
ある特定の実施形態において、図1Bにおいて概説されるcDNAの増幅は、PCRの複数のラウンドを含むことができる。ある特定の実施形態において、増幅プライマーの異なるセットを用いることができる。ある特定の実施形態において、増幅プライマーの異なるセットは、cDNA分子における異なる部分またはそれから得られる増幅産物にハイブリダイズすることができ、ならびに/あるいは、異なる配列、例えば、UMIまたは他のタイプのバーコードおよび/または増幅配列を含むことができる。
【0048】
例えば、これらに限定されるわけではないが、本開示のある特定の実施形態は、完全長TCR配列を含む第1のPCR産物を生成する第1のPCR反応(PCR1)を含むであろう。プライマーの第1のセットは、TSOの外側増幅プライマー部位、例えば、外側プライマー、にアニールするフォワードプライマー、ならびにTCR定常配列にアニールするリバースプライマーを含むことができる。ある特定の実施形態において、外側プライマーは、TSOの外側増幅結合部位にアニールする。ある特定の実施形態において、外側プライマーは、TSOにアニールする。ある特定の実施形態において、外側プライマーは、TCR可変領域の上流にある領域にアニールする。例えば、これらに限定されるわけではないが、外側プライマーは、図1Bにおいて「L」として設計されたTCRリーダー配列にアニールする。ある特定の実施形態において、外側プライマーは、配列番号6のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。
【0049】
ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRAC配列またはTRBC配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRα配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRβ配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRαおよびTCRβ配列の保存配列にアニールする。例えば、これらに限定されるわけではないが、リバースプライマーは、TRBC1およびTRBC2遺伝子の両方にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRAC配列の川下に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRBC配列の川下に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRα配列のV-J-C接合領域の下流に位置される領域にアニールする。例えば、これらに限定されるわけではないが、リバースプライマーは、TCRα配列のV-J-C接合領域の約200bp下流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRβ配列のV-D-J-C接合領域の下流に位置される領域にアニールする。例えば、これらに限定されるわけではないが、リバースプライマーは、TCRβ配列のV-D-J-C接合領域の約200bp下流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、配列番号7または8のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。配列番号6~8は、下記に提供される。
AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT[配列番号6]
GCCACAGCACTGTTGCTCTTGAAGTCC[配列番号7]
CCACCAGCTCAGCTCCACGTG[配列番号8]
【0050】
ある特定の実施形態において、第1のPCR反応(PCR1)は、さらに、NeoID配列を含む第1のPCR産物を生成する。プライマーの第1のセットは、NeoID配列に隣接する領域にアニールするフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むことができる。ある特定の実施形態において、プライマーは、配列番号9および10に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。配列番号9および10は、下記に提供される。
CTCGCCACGTCGGCTATCCTG[配列番号9]
GAGGTCGCTGTAGCTTGCTCACG[配列番号10]
【0051】
ある特定の実施形態において、第1のPCR産物が得られた後、第2および第3のPCR反応(それぞれPCR2およびPCR3)を行うことができる。ある特定の実施形態において、第2のPCRは、TCRα、TCRβ、および/またはNeoID配列の増幅を含む。ある特定の実施形態において、第2のPCRは、第1のPCR産物をプライマーの第2のセットと組み合わせて第2のPCR産物を生成することを含む。プライマーの第2のセットは、TSOの内側増幅プライマー部位、例えば、内側プライマー、にアニールするフォワードプライマーならびにTCR定常配列にアニールするリバースプライマーを含む。ある特定の実施形態において、内側プライマーは、TSOアダプター配列にアニールする。ある特定の実施形態において、内側プライマーは、TSOにアニールする。ある特定の実施形態において、内側プライマーは、TSOの下流およびTCR可変領域の上流の領域にアニールする。例えば、これらに限定されるわけではないが、内側プライマーは、TCRリーダー配列にアニールする。ある特定の実施形態において、内側プライマーは、アダプター配列を含む。ある特定の非限定的な実施形態において、アダプター配列は、TCR鋳型に対して非相同のポリヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、アダプター配列は、さらなる増幅、例えばPCR3、のための結合部位であり得る。ある特定の実施形態において、内側プライマーは、配列番号11に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRAC配列またはTRBC配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRα配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRβ配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRαおよびTCRβ配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRAC配列の川下にある領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRBC配列の川下に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRα配列のV-J-C接合領域の下流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRβ配列のV-D-J-C接合領域の下流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、予備プライマーは、PCR1において使用されるリバースプライマーの結合領域の上流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、アダプター配列を含む。ある特定の非限定的な実施形態において、アダプター配列は、TCR鋳型に対して非相同のポリヌクレオチドである。ある特定の実施形態において、アダプター配列は、さらなる増幅、例えばPCR3、のための結合部位であり得る。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、配列番号7~8のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、配列番号12~13に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。配列番号11~13は、下記に提供される。
ACTCGCGAGGGACGTGAAGCN(4-30)AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT[配列番号11]
GACAAAACTGTGCTAGACATGAGG[配列番号12]
CAGGGAAGAAGCCTGTGGCCAGG[配列番号13]
【0052】
ある特定の実施形態において、第2のPCR反応(PCR2)は、さらに、NeoID配列を含む第2のPCR産物を生成する。プライマーの第2のセットは、NeoID鋳型上にネストされたフォワードプライマーおよびリバースプライマーを含むことができる。ある特定の実施形態において、プライマーは、アダプター配列を含む。ある特定の実施形態において、アダプター配列は、さらなる増幅、例えばPCR3、のための結合部位であり得る。ある特定の実施形態において、プライマーは、配列番号14および15に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。配列番号14および15は、下記に提供される。
CCAGGGTTTTCCCAGTCACGACN(4-30)CACGTCGGCTATCCTGATCGGATGAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT[配列番号14]
AGCGGATAACAATTTCACACAGGAN(4-30)CGCTGTAGCTTGCTCACGTCCAG[配列番号15]
【0053】
ある特定の実施形態において、第3のPCR反応(PCR3)は、TCRα、TCRβ、および/またはNeoID配列を増幅することを含む。ある特定の実施形態において、第3のPCRは、第2のPCR産物をプライマーの第3のセットと組み合わせて第3のPCR産物を生成することを含む。プライマーの第3のセットは、フォワードプライマーを含む。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、TSOアダプター配列にアニールする。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、TSOにアニールする。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、TSOの川下に位置される領域にアニールする。例えば、これらに限定されるわけではないが、フォワードプライマーは、TCRリーダー配列にアニールする。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、内側プライマーのアダプター配列にアニールする。例えば、これらに限定されるわけではないが、フォワードプライマーは、第2のTCR反応において使用される内側プライマーのアダプター配列にアニールする。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、5’にアダプター配列を含む。ある特定の実施形態において、5’におけるアダプター配列は、DNA配列決定システムに適合性である。DNA配列決定システムに適合性であるアダプター配列の非限定的な例としては、P7アダプターが挙げられる。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、バーコードを含む。バーコードの非限定的な例としては、i7バーコードが挙げられる。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、NeoID配列の第2のPCR増幅の際に加えられるアダプターにアニールする。NeoID配列の増幅のためのフォワードプライマーに関する追加情報は、実施例セクションに見出すことができる。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、配列番号18および19に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。プライマーの第3のセットは、リバースプライマーも含む。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRAC配列またはTRBC配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRα配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRβ配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRαおよびTCRβ配列の保存配列にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRAC配列の川下に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TRBC配列の川下に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRα配列のV-J-C接合領域の下流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、TCRβ配列のV-D-J-C接合領域の下流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、予備プライマーは、PCR1において使用されるリバースプライマーの結合領域の上流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、予備プライマーは、PCR2において使用されるリバースプライマーの結合領域の上流に位置される領域にアニールする。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、5’にアダプター配列を含む。ある特定の実施形態において、5’におけるアダプター配列は、DNA配列決定システムに適合性である。DNA配列決定システムに適合性であるアダプター配列の非限定的な例としては、P5アダプターが挙げられる。ある特定の実施形態において、フォワードプライマーは、バーコードを含む。バーコードの非限定的な例としては、i5バーコードが挙げられる。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、NeoID配列の第2のPCR増幅の際に加えられるアダプターにアニールする。NeoID配列の増幅のためのリバースプライマーに関する追加情報は、実施例セクションに見出すことができる。ある特定の実施形態において、リバースプライマーは、配列番号16、17、および20に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含むかまたはそれからなる。
【0054】
ある特定の実施形態において、第4および第5のPCR反応(それぞれPCR4およびPCR5)は、それぞれ、第3および第4のPCR産物を使用して実施することができる。第4のPCRは、第3のPCR産物をプライマーの第4のセットと組み合わせることによりアダプター配列を加えることよって実施することができ、それにより、配列決定アウトプット、または配列決定効率、例えば、ハイスループットシーケンシング(そのようなアダプター配列は、先行の工程のいずれかに組み入れることができるが)など、を向上させ得る。ある特定の実施形態において、第5のPCRは、第4のPCR産物をプライマーの第4のセットと組み合わせることによりアダプター配列を加えることよって実施することができ、それにより、配列決定リーディング、例えば、ハイスループットシーケンシング(再び、そのようなアダプターは、先行の工程のいずれかに加えることができるが)など、を向上させることができる。プライマーの第4のセットは、第2および第3のPCR産物の5’配列にアニールするフォワードプライマーならびに第2および第3のPCR産物のTCR定常配列にアニールするリバースプライマーを含むことができる。
【0055】
ある特定の実施形態において、本明細書において説明される増幅工程の1つまたは複数におけるDNAポリメラーゼは、約0.001単位/μlから約10単位/μlの最終濃度である。ある特定の実施形態において、DNAポリメラーゼは、約0.001単位/μlから約1単位/μlの最終濃度である。ある特定の実施形態において、DNAポリメラーゼは、約0.001単位/μlから約0.1単位/μlの最終濃度である。ある特定の実施形態において、DNAポリメラーゼは、約0.01単位/μlから約1単位/μlの最終濃度である。ある特定の実施形態において、DNAポリメラーゼは、約0.01単位/μlから約0.1単位/μlの最終濃度である。ある特定の実施形態において、DNAポリメラーゼは、約0.02単位/μlから約0.08単位/μlの最終濃度である。ある特定の実施形態において、本明細書において説明される増幅工程の1つまたは複数におけるDNAポリメラーゼは、反応に加えることができる。例えば、これらに限定されるわけではないが、酵素活性および/またはTCR回収が低いように思われる場合、追加のDNAポリメラーゼを、反応に補うことができる。
【0056】
ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.02単位/μlの最終濃度において、DNAポリメラーゼを含む第1のPCR反応(PCR1)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.04単位/μlの最終濃度において、DNAポリメラーゼを含む第2のPCR反応(PCR2)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.04単位/μlの最終濃度において、DNAポリメラーゼを含む第3のPCR反応(PCR3)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.04単位/μlの最終濃度において、DNAポリメラーゼを含む第4のPCR反応(PCR4)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.04単位/μlの最終濃度において、DNAポリメラーゼを含む第5のPCR反応(PCR5)を含む。
【0057】
ある特定の実施形態において、第1、第2、第3、第4、および第5のPCR反応は、拡張工程を含む。ある特定の実施形態において、第1のPCR(PCR1)の拡張工程は、約90秒から約6分の時間を有する。ある特定の実施形態において、第2のPCR(PCR2)の拡張工程は、約20秒から約1分の時間を有する。ある特定の実施形態において、第3のPCR(PCR3)の拡張工程は、約20秒から約1分の時間を有する。ある特定の実施形態において、第4のPCR(PCR4)の拡張工程は、約20秒から約1分の時間を有する。ある特定の実施形態において、第5のPCR(PCR5)の拡張工程は、約20秒から約1分の時間を有する。
【0058】
ある特定の実施形態において、本明細書において開示される反応のいずれかのプライマーは、約0.01μMから約1μMの濃度を有することができる。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第1のPCR(PCR1)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてリバースプライマーを有する第1のPCR(PCR1)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第2のPCR(PCR2)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてリバースプライマーを有する第2のPCR(PCR2)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第3のPCR(PCR3)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.1μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第3のPCR(PCR3)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてリバースプライマーを有する第3のPCR(PCR3)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.3μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第3のPCR(PCR3)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第4のPCR(PCR4)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてリバースプライマーを有する第4のPCR(PCR4)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第5のPCR(PCR5)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.1μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第5のPCR(PCR5)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.01μMから約1μMの濃度においてリバースプライマーを有する第5のPCR(PCR5)を含む。ある特定の実施形態において、当該方法は、約0.3μMの濃度においてフォワードプライマーを有する第5のPCR(PCR5)を含む。
【0059】
ある特定の実施形態において、当該方法は、次世代シーケンシング法によって配列決定することができる第3、第4、および第5のPCRの産物を含む。本開示の主題内において使用することができるシーケンシングプラットフォームの非限定的な例としては、Roche GS 20、Roche GS FLX、Solexaプラットフォーム、Supported Oligonucleotide Ligation and Detection(SOLiD)プラットフォーム、HeliScopeプラットフォーム、およびOxford Nanopore Technologiesプラットフォームが挙げられる。ある特定の実施形態において、当該方法は、TCRα配列およびTCRβ配列のリードを得ることを含む。
【0060】
3.T細胞を解析する方法
本開示は、単一分子、例えばT細胞、を解析するための組成物および方法を提供する。T細胞およびTCRレパートリーの理解は、パーソナライズされたオーダーメイドの療法、例えば、養子細胞移入、を改善するために有用であり得る。ある特定の実施形態において、本開示は、試料からのT細胞を選別することを含む。ある特定の実施形態において、T細胞を含む試料は、対象から採取される。試料は、T細胞を含む体液または組織の任意の試料であり得る。体液または組織の非限定的な例としては、血液、胸腺、脾臓、リンパ節、骨髄、腫瘍生検、または炎症性病変生検が挙げられる。ある特定の実施形態において、試料は、病理学的な部位から採取することができる。例えば、これらに限定されるわけではないが、試料は、腫瘍組織から収集することができる。ある特定の実施形態において、試料は、対象から採取された細胞、ならびにin vitro細胞培養において増殖した後の細胞を含み得る。
【0061】
ある特定の実施形態において、T細胞は、試料から単離され選別される。ある特定の実施形態において、T細胞は、容器の別々の場所へと選別することができる。例えば、これらに限定されるわけではないが、T細胞は、マルチウェルプレート(例えば、384ウェルプレート)またはマイクロウェルアレイ、キャピラリーまたは管(例えば、0.2mL管)、あるいはマイクロ流体デバイスのチャンバーにおいて選別することができる。ある特定の実施形態において、T細胞は、細胞を空間的に分離するエマルション滴において選別することができる。例えば、これらに限定されるわけではないが、T細胞は、フローサイトメーターを使用して選別することができる。ある特定の実施形態において、T細胞は、選別する前に標識することができる。ある特定の実施形態において、T細胞は、T細胞タンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、抗CD3抗体)によって標識することができる。ある特定の実施形態において、T細胞は、T細胞サブタイプ(例えば、CD8 T細胞、CD4 T細胞など)を分類するために、複数の試薬で標識することができる。ある特定の実施形態において、試料内のT細胞のサブセットは、単一細胞として別々の場所(例えば、別々のエマルション滴)に選別することができる。例えば、CD3/CD8のサブセットは、本明細書において開示される方法を実施するために選別することができる。ある特定の実施形態において、T細胞は、国際PCT出願番号PCT/US2020/017887号、PCT/US2019/025415号、およびPCT/US2020/054732に記載されるように選別され、なお、これらの出願のそれぞれは、参照により本明細書に組み入れられる。
【0062】
ある特定の実施形態において、T細胞は、ペプチド/MHC複合体を使用して選別される。ある特定の実施形態において、ペプチド/MHC複合体は、抗原ペプチド、β2-ミクログロブリン、およびMHCクラスI重鎖を含む。ある特定の実施形態において、ペプチド/MHC複合体は、バーコードまたはNeoIDによって標識される。ある特定の実施形態において、ペプチド/MHC複合体は、国際特許公開番号WO2019/195310に記載されるように、comPACTポリペプチドであり、なお、当該仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0063】
ある特定の実施形態において、T細胞は、分子、例えばRNAなど、を解放するために溶解される。T細胞を溶解する方法の非限定的な例としては、浸透圧衝撃、熱溶解、機械的溶解、化学的溶解、または光溶解が挙げられる。
【0064】
ある特定の実施形態において、本開示は、試料から核酸分子、例えば、RNA分子、を単離する方法を含む。ある特定の非限定的な実施形態において、核酸分子の単離は、フェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿、電気泳動、および/またはクロマトグラフィーによって実施することができる。
【0065】
ある特定の実施形態において、本開示の単一T細胞を解析するための方法は、本明細書のセクション2において説明される方法のいずれかを含む。
【0066】
ある特定の実施形態において、本開示の単一T細胞を解析する方法は、T細胞の全トランスクリプトーム解析のための方法を含む。「全トランスクリプトーム解析」は、本明細書に使用される場合、試料、例えば、単一T細胞、のトランスクリプトームの全てまたは一部の評価を意味する。ある特定の実施形態において、全トランスクリプトーム解析は、様々なPCRまたは非PCRベースの方法を使用した転写物の増幅を含む。例えば、転写物、例えば、mRNA、micro-RNA、siRNA、tRNA、rRNA、およびそれらの任意の組み合わせは、複数のRNA、例えば、mRNA分子など、に結合する1つまたは複数のユニバーサルプライマーを使用して増幅することができる。
【0067】
ある特定の実施形態において、本開示は、抗原ペプチドに対して特異的な単一T細胞を解析する方法を提供する。本明細書において開示される方法のある特定の実施形態において、T細胞は、最初に、NeoIDを含むペプチド/MHC複合体を使用して選別される。ある特定の実施形態において、T細胞は、本明細書のセクション2において説明される方法のいずれかによって解析される。ある特定の実施形態において、本開示の単一T細胞を解析する方法は、TCRα配列、TCRβ配列、およびNeoIDを配列決定することを含む。ある特定の実施形態において、本開示の方法は、さらに、偽陽性T細胞(例えば、抗原ペプチドに対して特異的でないT細胞)の除去を含む。例えば、これらに限定されるわけではないが、偽陽性T細胞は、選別されたT細胞に結合したNeoIDの配列解析によって除去することができる。同じNeoIDの複数コピーの存在は、非特異的に結合したNeoIDと比較して、高い比率の特異的NeoIDバーコード種をもたらす。これは、結果として、より高いシグナル対ノイズNeoID比(例えば、S/N比)を生じるであろう。ある特定の実施形態において、S/N比は、閾値を超える。ある特定の実施形態において、閾値は、約10である。ある特定の実施形態において、非特異的T細胞は、比較的等しい数の異なるペプチド/MHC複合体に結合し、結果として、異なるNeoIDのより低い比を生じるであろう。ある特定の実施形態において、非特異的T細胞は、閾値未満(例えば、約10の閾値未満)のS/N比を有するであろう。
【0068】
ある特定の実施形態において、選別されたT細胞は、2つの異なるペプチド/MHC複合体を認識することができる。この場合、計算されたシグナル対ノイズNeoID比は、閾値未満(例えば、約10の閾値未満)であり得る。ある特定の実施形態において、第1のシグナル対ノイズNeoID比(S/N1)および第2のシグナル対ノイズNeoID比(S/N2)を計算することができる。
【0069】
ある特定の実施形態において、S/N1は、最も高いシグナルを2番目に高いシグナルで割ったものである。ある特定の実施形態において、S/N2は、あるペプチド/MHC複合体における最も高いシグナルを、異なるペプチド/MHC複合体における最も高いシグナルで割ったものである。ある特定の実施形態において、異なるペプチド/MHC複合体における最も高いシグナルは、試料の2番目に高いシグナルではない。
【0070】
4.組成物およびキット
本開示は、本明細書において開示される方法を実施するための組成物も提供する。ある特定の実施形態において、本開示は、酵素、プライマー、バッファー、塩、および他の成分を含む。例えば、これらに限定されるわけではないが、組成物は、1つまたは複数のコントロール(例えば、ポジティブまたはネガティブコントロール)、逆転写酵素、TSO、dNTP、バッファーおよび補助因子(例えば、塩、金属補助因子など)、1つまたは複数の酵素安定化成分(例えば、DTT)、ならびに任意の他の所望の反応混合物成分を含み得る。ある特定の実施形態において、組成物は、1つまたは複数の反応管に存在し得る。
【0071】
本開示は、本明細書において開示される方法を実施するためのキットも提供する。ある特定の実施形態において、キットは、完全長TCR配列を含むcDNAを調製するために使用することができる。ある特定の非限定的な実施形態において、本明細書において開示されるキットは、cDNA合成プライマー、例えば、オリゴ-dT、逆転写酵素、dNTP、バッファーおよび補助因子、プライマー、TSO、1つまたは複数の酵素安定化成分(例えば、DTT)、ならびに/あるいは配列決定を実施するための任意の他の試薬を含むことができる。ある特定の実施形態において、キットは、核酸源からRNAを単離するための試薬を含む。
【0072】
主題のキットの成分は、別々の容器に存在し得るか、または複数の成分が、あ容器に存在し得る。例えば、これらに限定されるわけではないが、cDNA合成プライマーおよび逆転写酵素バッファーは、別々の容器において提供され得るか、または単一の容器において提供され得る。ある特定の実施形態において、1つまたは複数のキット成分は、成分が即座に使用でき、ならびに室温において簡便に貯蔵され得るように、凍結乾燥形態において提供される。
【0073】
上記において言及した成分に加えて、主題のキットは、さらに、例えば主題の方法を実践するためにキットの成分を使用するための取扱説明書を含み得る。主題の方法を実践するための取扱説明書は、概して、好適な記録媒体に記録される。例えば、取扱説明書は、紙またはプラスチックなどの物質上に印刷され得る。例えば、これらに限定されるわけではないが、取扱説明書は、キットまたはその成分の容器の標識(すなわち、包装または副包装に関連付けられた)などにおける添付文書としてキット中に存在し得る。ある特定の実施形態において、取扱説明書は、リモートソースから利用可能であり、例えば、ウェブサイトからダウンロードされる。
【0074】
5.T細胞産物
ある特定の実施形態において、その全体が本明細書に組み入れられるPCT/US2020/17887およびPCT/US2019/025415に記載される遺伝子編集技術およびTCR単離技術を使用することにより、本明細書において開示される方法によって識別されるTCRは(上記のセクション2および3を参照されたい)、外因性TCR(例えば、NeoTCR)を発現するように正確に操作されたゲノムによって、がんを有する同じ対象に由来する自己CD8およびCD4T細胞においてクローニングすることができる。換言すると、腫瘍特異的であるかまたはがん患者において識別される、本明細書において開示される方法によって識別されたTCRは、がん患者のT細胞に挿入される。本明細書において開示される方法によって識別されたT細胞発現性TCRは、次いで、T細胞の大部分がT記憶幹細胞およびT中央記憶表現型を示すような、「若い」T細胞表現型を保存する方式において拡張される。
【0075】
これらの「若い」または「より若い」または分化のより少ないT細胞表現型は、改良された移植可能性および注入後の長期の持続性を付与すると説明される。したがって、「若い」T細胞を含むこれらのT細胞産物の投与は、改良された移植可能性、注入後の長期の持続性、および身体中の腫瘍細胞を根絶するためのエフェクターT細胞への急速な分化によって、がんを有する患者に恩恵をもたらす可能性を有する。
【0076】
ある特定の実施形態において、これらのT細胞産物(例えば、本明細書において開示される方法によって識別される外因性TCRを含む)の製造プロセスは、ガイドRNA配列に結合したCRISPR-Cas9ヌクレアーゼのデュアルリボ核タンパク質種のエレクトロポレーションを伴い、この場合、それぞれの種は、ゲノムTCRα遺伝子座およびゲノムTCRβ遺伝子座を標的にする。T細胞産物の総合的評価および精密なゲノム編集プロセスは、NeoTCR産物が注入によって患者に戻した後に良好な耐容性を示すであろうことを示している。
【0077】
本明細書において説明されるゲノム編集手法は、固形腫瘍および液性腫瘍を患う患者のためのパーソナライズされた養子細胞療法のために本明細書において開示される方法によって識別された特注のT細胞発現性TCRの非常に効率的な作製を可能にする。さらに、この編集方法は、T細胞における使用に制限されず、ナチュラルキラー細胞および造血幹細胞を含む他の一次細胞タイプにも首尾よく適用された。本明細書において開示される方法によって識別されるTCRを使用してT細胞産物を作製するために使用される方法に関する追加情報は、国際特許公開番号WO2019/089610に見出すことができる。
【0078】
6.例示的実施形態
A1.ある特定の非限定的な実施形態において、本開示は、完全長T細胞受容体(TCR)配列を含むデオキシリボ核酸(DNA)を調製する方法であって、a)逆転写酵素がcDNA配列を生成するのに十分な条件下において、リボ核酸(RNA)分子を、TCRコード配列の3’にあるRNA分子の領域に対して相補的なcDNA合成プライマー、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)、および逆転写酵素と組み合わせることによってTCR相補的DNA(cDNA)配列を得ること;ならびにb)ポリメラーゼが完全長TCR配列を含むDNAを生成するのに十分な条件下において、cDNAを、TSO配列へアニールする外側プライマーおよびTCR定常配列へアニールするプライマーを含む増幅プライマーの第1のセットならびにポリメラーゼと組み合わせることによって完全長TCR配列を含むDNAを調製すること、を含む方法が提供される。
【0079】
A2.さらに、完全長TCR配列を含むDNAを配列決定することを含む、A1に記載の先述の方法。
【0080】
A3.RNA分子がT細胞を含む試料から抽出される、A1に記載の先述の方法。
【0081】
A4.試料が対象から採取される、A3に記載の先述の方法。
【0082】
A5.cDNA合成プライマーがオリゴ-dTプライマーである、A1~A4のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0083】
A6.オリゴ-dTプライマーが配列番号1または2に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、A5に記載の先述の方法。
【0084】
A7.TSOが、増幅プライマー部位、バーコード、およびユニーク分子識別子(UMI)を含む、A1~A6に記載の先述の方法。
【0085】
A8.TSOが、配列番号3~5のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、A1~A7に記載の先述の方法。
【0086】
A9.逆転写酵素が、鋳型スイッチング逆転写酵素である、A1~A8に記載の先述の方法。
【0087】
A10.外側プライマーが、配列番号6に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、A1~A9のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0088】
A11.内側プライマーが、配列番号11に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、A1~A10のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0089】
A12.TCR定常配列にアニールするプライマーが、配列番号7、8、12、および13に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、A1~A11のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0090】
A13.完全長TCR配列を含むDNAが、増幅プライマーの第2のセットを使用してさらに増幅され、プライマーの一方または両方が、バーコード配列を含む、A1~A12のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0091】
A14.完全長TCR受容体が、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖を含む、A1~A13のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0092】
A15.完全長TCR受容体が、TCRγ鎖および/またはTCRδ鎖を含む、A1~A13のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0093】
A16.b)が、約20秒から約90秒の拡張フェーズを含む、A1~A15のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0094】
A17.増幅プライマーが、約0.1μMから約0.6μMの濃度においてフォワードプライマーを含む、A1~A16のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0095】
B1.ある特定の非限定的な実施形態において、本開示は、A1~A17のいずれか1つに記載の先述の方法によって作製されたcDNAライブラリーを提供する。
【0096】
C1.ある特定の非限定的な実施形態において、本開示は、完全長TCR配列の核酸配列を決定するために単一T細胞を解析する方法であって、a)複数のT細胞を含む試料からの単一T細胞を選別すること;b)完全長TCR配列を含むDNAを調製すること;およびc)完全長TCR配列を含むDNAを配列決定すること、を含む方法を提供する。
【0097】
C2.完全長TCR配列を含むDNAを調製することが、i)逆転写酵素がcDNA配列を生成するのに十分な条件下において、リボ核酸(RNA)分子を、TCRコード配列の3’にあるRNA分子の領域に対して相補的なcDNA合成プライマー、鋳型スイッチングオリゴヌクレオチド(TSO)、および逆転写酵素と組み合わせることによってTCR相補的DNA(cDNA)配列を得ること;ならびにii)ポリメラーゼが完全長TCR配列を含むDNAを生成するのに十分な条件下において、cDNAを、TSO配列へアニールする外側プライマーおよびTCR定常配列へアニールするプライマーを含む増幅プライマーの第1のセットならびにポリメラーゼと組み合わせることによって完全長TCR配列を含むDNAを調製すること、を含む、C1に記載の先述の方法。
【0098】
C3.試料が、対象から収集される、C1またはC2に記載の先述の方法。
【0099】
C4.cDNA合成プライマーが、オリゴ-dTプライマーである、C1~C3のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0100】
C5.オリゴ-dTプライマーが、配列番号1または2に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、C4に記載の先述の方法。
【0101】
C6.TSOが、増幅プライマー部位、識別タグ、およびユニーク分子識別子(UMI)を含む、C1~C5のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0102】
C7.TSOが、配列番号3~5のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、C1~C6のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0103】
C8.逆転写酵素が、鋳型スイッチング逆転写酵素である、C1~C7のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0104】
C9.外側プライマーが、配列番号6のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、C1~C8のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0105】
C10.内側プライマーが、配列番号11に記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、C1~C9のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0106】
C11.TCR定常配列へアニールするプライマーが、配列番号7、8、12、および13のいずれか1つに記載される配列を有するポリヌクレオチドを含む、C1~C10のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0107】
C12.増幅プライマーが、バーコード配列を含む、C1~C11のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0108】
C13.完全長TCR受容体が、TCRα鎖および/またはTCRβ鎖を含む、C1~C12のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0109】
C14.完全長TCR受容体が、TCRγ鎖および/またはTCRδ鎖を含む、C1~C12のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0110】
C15.b)が、約20秒から約90秒の拡張フェーズを含む、C1~C14のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0111】
C16.増幅プライマーが、約0.1μMから約0.6μMの濃度においてフォワードプライマーを含む、C1~C15のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0112】
C17.さらに、単一T細胞の全トランスクリプトームを解析することを含む、C1~C16のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0113】
C18.さらに、単一T細胞の体細胞変異または遺伝的多型を解析することを含む、C1~C17のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0114】
C19.選別が、試料を複数のペプチド/MHC複合体と接触させることを含み、各ペプチド/MHC複合体は、関連バーコードを含む、C1~C18のいずれか1つに記載の先述の方法。
【0115】
C20.さらに、各ペプチド/MHC複合体に関連するバーコードを配列決定することを含む、C19に記載の先述の方法。
【0116】
C21.さらに、第1のペプチド/MHC複合体に関連する第1のバーコードと第2のペプチド/MHC複合体に関連する第2のバーコードとの比を決定することを含む、C20に記載の先述の方法。
【0117】
C22.さらに、第1のバーコードと第2のバーコードの比に基づいてT細胞の抗原特異性を決定することを含む、C21に記載の先述の方法。
【実施例
【0118】
本開示の主題は、制限ではなく本開示の主題の例として提供される、以下の実施例を参照することによってより良く理解されるであろう。
【0119】
実施例1
TCRをクローニングするための従来の方法は、リバース転写PCRと、その後の、TCRα鎖のVJセグメントおよびTCRβ鎖のVDJセグメントを増幅するネステッドPCR反応の第1および第2のラウンドとの組み合わせに基づいている。これらのセグメントは、次いで、完全長TCRの再構築を可能にするために、インシリコにおいて解析される。しかしながら、これらの方法は、使用が限定される。下記の表に示されるように、TCRクローニングのおよそ12%が、不明瞭な結果を示している。この不明瞭さは、増幅工程の際のある特定の変動をマスクすることができるプライマーの特徴に関連し得た。したがって、この制限を克服することは重要である。
【0120】
材料および方法:
細胞選別。細胞を、T細胞表現型およびペプチド/MHC複合体への結合に基づいて選別した。細胞を、下記の表において説明される溶解バッファーの入った96ウェルプレートへと選別した。細胞選別のための方法に関する追加情報は、国際特許出願番号PCT/US20/17887に見出すことができ、なお、当該特許出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0121】
SMART-TCR、工程1:逆転写(RT)。
【0122】
RT反応を開始する前に、細胞および選別試薬(sorting reagent)(上記のセクション「細胞選別」において説明されるような)を含む混合物を、加熱された蓋を備えるサーモサイクラー上に位置し、下記の表に詳述されるようにインキュベートした。
【0123】
それぞれのRT反応に対して、下記の成分を単一PCR反応に加えた。
【0124】
下記の表に詳述されるように、各反応物を加熱された蓋を備えるサーモサイクラーにおいてインキュベートした。
【0125】
SMART-TCR、工程2:PCR増幅1。各反応に対して、TSO配列においてアニールする5’増幅プライマーおよびTCRの定常領域においてアニールする3’増幅プライマーを使用して、第1のPCR増幅を実施した。第1のPCR(PCR1)において、各反応を下記のように調製した。
【0126】
S0009およびa0017プライマーを、NeoIDのフランキング(一方は5’および一方は3’)配列を標的にするように設計した。a0001およびa0003プライマーを、TCR定常領域に結合するように設計した(a0001は、TCRα定常領域に結合し、a0003は、TCRβ定常領域に結合する)。sP239を、RT工程に導入されたTSO配列に結合するように設計した(sP238)。プライマー配列は、下記に提供される。
sP239:AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT[配列番号6]
a0001:GCCACAGCACTGTTGCTCTTGAAGTCC[配列番号7]
a0003:CCACCAGCTCAGCTCCACGTG[配列番号8]
S0009:CTCGCCACGTCGGCTATCCTG[配列番号9]
a0017:GAGGTCGCTGTAGCTTGCTCACG[配列番号10]
【0127】
下記の表に詳述されるように、各反応物を加熱された蓋を備えるサーモサイクラーにおいてインキュベートした。
【0128】
SMART-TCR、工程3:PCR増幅2。TCRの定常領域上においてアニールするネステッド5’増幅配列プライマーおよび3’プライマーを使用することによって、PCR1産物をさらに増幅するために、第2のPCRを実施した。第2のPCRにおいて、標的がTCRαもしくはTCRβ配列またはNeoID配列であるかどうかにかかわらず、異なる条件およびプライマーを使用した。TCRα増幅に対して、各反応を下記のように調製した。
【0129】
sP259プライマーを、PCR1工程からのTSO配列にアニールするように(sP239)、ならびに5’末端(配列番号11のNによって示される)に小さいアダプター配列を加えるように設計した。アダプター配列は、第3のPCR増幅工程の際にフォワードプライマーのための結合部位として機能するであろう。TRAC_Primer2は、わずかに5’(内向きにネストされた)からPCR1工程で使用されるa0001プライマーまでのTCRα定常領域に結合する。プライマー配列は、下記に提供される。
sP259:ACTCGCGAGGGACGTGAAGCN(4-30)AAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT[配列番号11]
TRAC_Primer2:GACAAAACTGTGCTAGACATGAGG[配列番号12]
【0130】
TCRβ増幅に対して、各反応を下記のように調製した。
【0131】
aP0042プライマーを、わずかに5’(内向きにネストされた)からPCR1工程で使用されるa0003プライマーまでのTCRβ定常領域に結合するように設計した。プライマー配列は、下記に提供される。
aP0042:CAGGGAAGAAGCCTGTGGCCAGG[配列番号13]
【0132】
TCRαおよびTCRβ増幅のために、各反応物を、下記の表に詳述されるように、加熱された蓋を備えるサーモサイクラーにおいてインキュベートした。
【0133】
NeoID増幅のために、各反応物を下記のように調製した。
【0134】
S0010を、第1のPCR工程におけるS0009の元の結合部位からNeoID鋳型上のわずかに3’(ネストされた)の領域にアニールするように設計した。aP0043を、第1のPCR工程におけるa0017の元の結合部位からNeoID鋳型上のわずかに5’(ネストされた)の領域に結合するように設計した。S0010およびaP0043の両方は、小さなアダプター配列から、第3のPCR増幅の際にプライマー結合部位として機能するであろう5’末端(S0010の場合)または3’末端(aP0043の場合)までを含んだ。プライマー配列は、下記に提供される。
S0010:CCAGGGTTTTCCCAGTCACGACN(4-30)CACGTCGGCTATCCTGATCGGATGAAGCAGTGGTATCAACGCAGAGT[配列番号14]
aP0043:AGCGGATAACAATTTCACACAGGAN(4-30)CGCTGTAGCTTGCTCACGTCCAG[配列番号15]
【0135】
NeoID増幅のために、各反応物を、下記の表に詳述されるように、加熱された蓋を備えたサーモサイクラーにおいてインキュベートした。
【0136】
SMART-TCR、工程4:PCR増幅3-シーケンシングアダプターの追加。
シーケンシングアダプターおよびインデックスプライマーを、PCR増幅2における増幅された産物に加えた。PCR増幅2において得られるPCR産物(PCR2産物)へのアダプター追加のために、反応物を、下記のように調製した。
【0137】
TCRαおよびTCRβのためのPCR3バーコードプライマーは、2種類のプライマーの混合物を含んだ。フォワードプライマーを、第2のPCR増幅の際に加えられたアダプター配列に結合するように(sP259)、ならびに、十分に特異的なバーコード(i7バーコード)およびIllumina sequencing-ready P7配列を加えるように設計した。リバースプライマーを、ネステッドインTCR定常領域(TRAC_Primer2配列またはaP0042配列からの配列5’)に結合するように、ならびに、十分に特異的なバーコード(i5バーコード)およびIllumina sequencing-ready P5配列を加えるように設計した。
【0138】
NeoIDプライマーに対して、フォワードプライマーを、第2のPCR増幅(S0010)の際に加えられる5’アダプター配列に結合するように設計し、ならびにリバースプライマーを、第2のPCR増幅(aP0043)の際に加えられる3’アダプター配列に結合するように設計した。NeoIDフォワードプライマーは、十分に特異的なバーコード(i7バーコード)ならびにIllumina sequencing-ready P7配列を含んだ。NeoIDリバースプライマーは、十分に特異的なバーコード(i5バーコード)ならびにIllumina sequencing-ready P5配列を含んだ。第三ラウンドのPCRプライマーにおいて使用されるプライマーの一般構造を、下記に提供する。
TCRα定常領域のリバースプライマー:AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC[i5バーコード]TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGN(4-30)ACGGCAGGGTCAGGGTTCTG[配列番号16]
TCRβ定常領域のリバースプライマー:AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC[i5バーコード]TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGN(4-30)AGCGACCTCGGGTGGGAAC[配列番号17]
TCRαおよびTCRβのフォワードプライマー:CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT[i7バーコード]GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGN(4-30)ACTCGCGAGGGACGTGAAGC[配列番号18]
NeoIDのフォワードプライマー:CAAGCAGAAGACGGCATACGAGAT[i7バーコード]GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGN(4-30)CCAGGGTTTTCCCAGTCACGAC[配列番号19]
NeoIDのリバースプライマー:AATGATACGGCGACCACCGAGATCTACAC[i5バーコード]TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGN(4-30)AGCGGATAACAATTTCACACAGGA[配列番号20]
【0139】
TCRαおよびTCRβ増幅(PCR3)に対して、各反応物を、下記の表に詳述されるように、加熱された蓋を備えるサーモサイクラーにおいてインキュベートした。
【0140】
NeoID増幅(PCR3)のために、下記の表に詳述されるように、各反応物を加熱された蓋を備えるサーモサイクラーにおいてインキュベートした。
【0141】
SMART-TCR、工程5:DNA精製。
PCR増幅3からのPCR産物をプールし、アガロース電気泳動によって分離した。TCRαおよびTCRβ配列は、およそ650~750bpの分子量を示し、その一方で、NeoIDは、200bpの分子量を示した。識別されたバンドを切断し、精製のために処理した。精製されたDNAを定量化し、ならびにさらなる処理のために濃縮した。
【0142】
SMART-TCR、工程6:配列決定およびデータ解析。
次いで、精製および濃縮されたDNAを、EQ-005 Illumina Mini-Seq(登録商標)システムを使用して、ライブラリー作成および配列決定のためにさらに処理した。TCRα、TCRβ、およびNeoIDのリードを、カスタムコンピュータパイプラインによってインシリコにおいて解析した。簡潔に説明すると、TCR候補を識別するために、細胞は、TCRαおよびTCRβ鎖を含まなければならない。次いで、NeoIDのシグナル対ノイズ(S/N)解析を実施し、10以上のNeoID S/N比を有するTCRαおよびTCRβ鎖を伴う細胞のみを選択した。NeoIDは、ユニークpHLA(ペプチド-HLA)テトラマーを標識するユニークオリゴヌクレオチド配列を意味する。異なるpHLAテトラマーのリードで除算したユニークpHLAテトラマーのリードの比は、S/N比を与え、それは、pHLAに対するTCRの特異性の推定する方法である。
【0143】
結果:
本明細書において開示されるSMART-TCRプロトコルの性能特性を決定するために、従来のネステッドPCR手法(本明細書の以下において「臨床imPACT手法」)とSMART-TCRプロトコルとの間の比較を実施した。図2に示されるように、SMART-TCRプロトコルは、imPACTプロトコルと比較して、より高いTCR回収率、より低いS/N比、および減少したNeoIDリードカウントを示した。
【0144】
S/N比およびNeoIDリードカウントを改善するために、SMART-TCRプロトコルのいくつかの工程を、下記の表に従って変更した。
【0145】
図3に示されるように、NeoIDプライマーの量を増加することおよび拡張時間を減少させることは、SMART-TCRプロトコルと比較して、S/N比およびNeoIDリードカウントを向上させたが、その一方で、精製および酵素量の増加は、S/N比またはNeoIDリードカウントを実質的に増加させなかった。
【0146】
次に、拡張時間の減少およびNeoIDプライマーの濃度の増加が一緒に、TCR配列のより良い回収をもたらすか否かを決定した。いかなる特定の理論に束縛されることを望むわけではないが、拡張時間の減少は、より長い拡張時間を必要とする他の競合する転写物を排除し得る。驚くべきことに、図4Aおよび4Bに示されるように、この手法は、より良いTCR回収率(図4A)ならびに、従来の拡張時間およびNeoIDプライマー濃度でのSMART-TCRプロトコルと比較して著しく向上したS/N比およびNeoIDリードカウント(図4B)をもたらした。
【0147】
この手法は、ヒト対象(LP356およびLP169)から得られた一次細胞において再現された。さらに、NeoIDプライマーの量の増加および拡張時間の減少に対して、工程2での5’プライマーの量を減少させることによってSMART-TCRプロトコルを変更した(PCR1)。図5Aおよび5Bに示されるように、この新規の手法は、TCR回収率(図5A)、S/N比およびNeoIDリードカウント(図5B)を著しく増加させた。
【0148】
最後に、SMART-TCRプロトコルが、臨床imPACT手法と比較して匹敵するHLA一致comPACT分配をもたらすことが確認された(図6)。全体的に、これらのデータは、拡張時間の減少、NeoIDプライマー濃度の増加、および/または5’プライマー濃度の減少、を伴う差異を含む、SMART-TCRプロトコルの予想外の優れた品質を実証している。本明細書において説明されるように、この方法は、配列がデータベースにあるか否かにかかわらず、高品質で偏りのないT細胞受容体の配列を提供することができる。さらに、この方法は、同じ試料からの抗原特異性の識別を可能にし、ならびに、任意のパーソナライズされた医療パイプラインに容易に適合させることができる。
【0149】
実施例2
本明細書および実施例1において開示される方法において、代替のプライマーを使用することができる。第1の選択肢(オプションA)において、TSO(sP238)およびオリゴ-dTにおけるDNA配列の一部は同じである(例えば、配列番号1~5)。あるいは(オプションB)、TSOおよびオリゴ-dTにおけるDNA配列は異なっている。
【0150】
オプションBにおいて、異なるオリゴ-dT配列の使用は、工程2におけるフォワードプライマー(sP239)および工程3におけるフォワードプライマー(sP259)の非結合効果を減少させる。オプションBにおいて、sP238、sP239、およびsP259は、同時に使用され、その場合、下記のオリゴ-dT配列のいずれかを取り替える。そのようなシナリオにおいて、下記の配列が使用される。
S-オリゴ-dT:ACGAGCATCAGCAGCATACGATTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN[配列番号21]
W-オリゴ-dT:ATTCTAGAGGCCGAGGCGGCCGACATGNNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN[配列番号22]
N-オリゴ-dT:ACTATCTAGAGCGGCCGCNNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN[配列番号23]
B-オリゴ-dT:ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTNNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN[配列番号24]
K-オリゴ-dT:TAGAGGCCGAGGCGGCCGACATGNNNNNNNNTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTVN[配列番号25]
【0151】
TSOの主要配列、工程2のフォワードプライマー、および工程3のフォワードプライマーがある程度重なる限り、代替のTSOおよびフォワードプライマー配列は、上記のオリゴ-dT配列のいずれかと相互互換的に使用される。TSOおよびフォワードプライマーは、オリゴ-dT配列に対して上記において印刷された文字に一致する文字によってグループ分けされる。各反応におけるTSOおよびフォワードプライマーは、同じ文字からであり、DNA配列においてある程度の重なりを共有する。
S-TSO:/5BiosG/AGAGACAGATTGCGCAATGNNNNNNNNrGrGrG[配列番号26]
S3-PCR1-フォワードプライマー:AGAGACAGATTGCGCAATG[配列番号27]
S3-PCR2-フォワードプライマー:ACTCGCGAGGGACGTGAAGC AGAGACAGATTGCGCAATG[配列番号28]
W-TSO:/5BiosG/ATTCTAGAGGCCGAGGCGGCCGACATGrGrGrG[配列番号29]
W-PCR1-フォワードプライマー:ATTCTAGAGGCCGAGGCGGCCGACATG[配列番号30]
W-PCR2-フォワードプライマー:ACTCGCGAGGGACGTGAAGCN(4-30)ATTCTAGAGGCCGAGGCGGCCGACATG[配列番号31]
N-TSO:/5BiosG/ACTATCTAGAGCGGCCGCrGrGrG[配列番号32]
N-PCR1-フォワードプライマー:ACTATCTAGAGCGGCCGC[配列番号33]
N-PCR2-フォワードプライマー:ACTCGCGAGGGACGTGAAGCN(4-30)ACTATCTAGAGCGGCCGC[配列番号34]
B-TSO:/5BiosG/ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCTrGrGrG[配列番号35]
B-PCR1-フォワードプライマー:ACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT[配列番号36]
B-PCR2-フォワードプライマー:ACTCGCGAGGGACGTGAAGCACACTCTTTCCCTACACGACGCTCTTCCGATCT[配列番号37]
K-TSO:/5BiosG/TAGAGGCCGAGGCGGCCGACATGrGrGrG[配列番号38]
K-PCR1-フォワードプライマー:TAGAGGCCGAGGCGGCCGACATG [配列番号39]
K-PCR2-フォワードプライマー:ACTCGCGAGGGACGTGAAGCTAGAGGCCGAGGCGGCCGACATG[配列番号40]
【0152】
本発明は、何らかの長さにおいて、およびいくつかの説明された実施形態に関する何らかの特殊性において、説明されたが、任意のそのような特殊性または実施形態または任意の特定の実施形態に限定されることを意図するものではなく、従来技術の観点からクレームの最も広い可能な解釈を提供し、結果として、本発明の意図される範囲を実質的に包含するために添付されたクレームに対する参照として解釈されるべきである。
【0153】
本明細書において言及された全ての刊行物、特許出願、特許、およびその他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。本明細書と相反する場合には、定義を含めて本明細書が優先する。さらに、セクション見出し、材料、方法、および実施例は、例証に過ぎず、限定を意図するものではない。
図1A
図1B
図2
図3
図4A-4B】
図5A-5B】
図6
【配列表】
2024522758000001.app
【国際調査報告】