IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニルバナ サイエンシーズ インク.の特許一覧

特表2024-522759ベータピロールリンカーを有するバクテリオクロリン
<>
  • 特表-ベータピロールリンカーを有するバクテリオクロリン 図1
  • 特表-ベータピロールリンカーを有するバクテリオクロリン 図2
  • 特表-ベータピロールリンカーを有するバクテリオクロリン 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ベータピロールリンカーを有するバクテリオクロリン
(51)【国際特許分類】
   C07D 487/22 20060101AFI20240614BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20240614BHJP
   A61K 31/409 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 17/10 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C07D487/22 CSP
A61K49/00
A61K41/00
A61K31/409
A61K31/555
A61P35/00
A61P33/00
A61P17/10
A61P9/10
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577599
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022034251
(87)【国際公開番号】W WO2022266544
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/212,362
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521507604
【氏名又は名称】ニルバナ サイエンシーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】NIRVANA SCIENCES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マクネビン, クリストファー ジェー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA11
4C084NA14
4C084ZA451
4C084ZA452
4C084ZA901
4C084ZA902
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB351
4C084ZB352
4C084ZB371
4C084ZB372
4C084ZC781
4C084ZC782
4C085HH11
4C085HH13
4C085KA27
4C085KB56
4C085LL18
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB04
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA45
4C086ZA90
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC78
(57)【要約】
ベータピロールリンカーを含むコンジュゲーションのための単一部位を含有するバクテリオクロリンヒドロポルフィリン化合物が提供される。また、その製造方法、並びに診断及び/又は治療のためのその使用方法も提供される。本開示の化合物は、ベータ-ピロールリンカーを欠くベンチマークバクテリオクロリンヒドロポルフィリン化合物と比較して改善された溶解度と、改善された光物理的特性、例えば、限定するものではないが、改善された吸収スペクトル、発光スペクトル、及び蛍光の輝度を特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
(式中、R、Rは異なり、それぞれが、エステル、酸、酸塩化物、ヒドラジド、アシルアジド、及びアミド基からなる群から独立して選択され、任意選択で、R及びRの一方又は両方は、
(式中、n=0~8であり、Xはコンジュゲート可能な基である)からなる群から選択され、
、R、Rは、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシアシルアミノ(alkoxylacylamino)、及びアミノアシルオキシからなる群から独立して選択され、
Mは任意選択で存在し、存在する場合には、金属を含む)
の化合物。
【請求項2】
Xが、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、フルオロフェニルエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、塩化スルホニル、無水物、カーボネート、イミドエステル、エポキシド、マレイミド、ハロアセトアミド、アジリジン、アジド、及びアルキンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、タンパク質、ペプチド、標的薬剤、抗体又はその断片、ポリマー、粒子、任意選択でナノ粒子、有機分子、及び固体支持体表面、任意選択でポリマー及び/又は無機ビーズからなる群から選択されるリガンドへの請求項1又は請求項2に記載の化合物のコンジュゲーションを容易にするコンジュゲート可能な基である、請求項1又は請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Mが存在し、Mが亜鉛、マグネシウム、金、アルミニウム、ケイ素、パラジウム、インジウム、スズ、銅及び白金からなる群から選択される金属である、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が、以下の構造:
を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が光音響イメージング剤である、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
フローサイトメトリー、光音響イメージング、顕微鏡法、MRI、及び/又は光線力学的療法のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項8】
以下の構造:
(式中、R及びRの一方はカルボン酸であり、R及びRの他方はアルキルカルボキシレートであり、R及びRは両方ともハロゲンであり、任意選択でR=Rであり、更に任意選択でR=Rは両方とも臭素であり、Rは水素であり、Mは金属である)
のR位置及びR位置に同一でない置換基を有するバクテリオクロリン誘導体を合成する方法であって、実質的に図1に記載の工程を含む、方法。
【請求項9】
前記金属が、亜鉛、マグネシウム、金、アルミニウム、ケイ素、パラジウム、インジウム、スズ、銅、及び白金からなる群から選択され、任意選択で、前記金属が亜鉛である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
又はRのカルボン酸を、
(式中、n=0~8であり、Xはコンジュゲート可能な基である)
からなる群から選択される部分に修飾することを更に含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本開示の主題は、2021年6月18日に出願された米国仮特許出願第63/212,362号の利益を主張し、その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の利益
本発明は、国立衛生研究所によって授与された助成金番号AI112302の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示の主題は、いくつかの実施形態では、コンジュゲーションのための単一部位を含有するバクテリオクロリンヒドロポルフィリン化合物及びその製造方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、ベンチマークのバクテリオクロリンと比較して改善された溶解度及び光物理的特性(例えば、吸収スペクトル、発光スペクトル、蛍光の輝度)をもたらす。
【発明の概要】
【0004】
この概要は、本開示の主題のいくつかの実施形態を列挙し、多くの場合、これらの実施形態の変形及び置換を列挙する。この概要は、多数の様々な実施形態の単なる例示である。所与の実施形態の1つ以上の代表的な特徴についての言及も同様に例示的なものである。そのような実施形態では、典型的には、特徴について言及される場合とされない場合があり、同様に、これらの特徴は、この概要に記載されているか否かにかかわらず、本開示の主題の他の実施形態に適用することができる。過度の繰り返しを避けるために、この概要では、そのような特徴のすべての可能な組み合わせを列挙又は示唆しない。
【0005】
いくつかの実施形態では、本開示の主題は、式:
(式中、R、Rは異なり、それぞれが、エステル、酸、酸塩化物、ヒドラジド、アシルアジド、及びアミド基からなる群から独立して選択され、任意選択で、R及びRの一方又は両方は、
(式中、n=0~8であり、Xはコンジュゲート可能な基である)からなる群から選択され、R、R、Rは、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシアシルアミノ(alkoxylacylamino)、及びアミノアシルオキシからなる群から独立して選択され、Mは任意選択で存在し、存在する場合には、金属を含む)
の化合物を提供する。いくつかの実施形態では、Xは、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、フルオロフェニルエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、塩化スルホニル、無水物、カーボネート、イミドエステル、エポキシド、マレイミド、ハロアセトアミド、アジリジン、アジド、及びアルキンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Xは、本開示の主題の化合物のリガンドへのコンジュゲーションを容易にするコンジュゲート可能な基である。いくつかの実施形態では、リガンドは、タンパク質、ペプチド、標的薬剤、抗体又はその断片(任意選択でパラトープを含む抗体又はその断片)、ポリマー、粒子、任意選択で微粒子又はナノ粒子、有機分子、及び固体支持体表面、任意選択でポリマー及び/又は無機ビーズからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Mが存在し、Mが亜鉛、マグネシウム、金、アルミニウム、ケイ素、パラジウム、インジウム、スズ、銅及び白金からなる群から選択される金属である。
【0006】
いくつかの実施形態では、化合物は、以下の構造を有する。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示の主題はまた、フローサイトメトリー、光音響イメージング、顕微鏡法、MRI、及び/又は光線力学的療法のために本開示の主題の化合物を使用する方法に関する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示の主題はまた、以下の構造:
(式中、R及びRの一方はカルボン酸であり、R及びRの他方はアルキルカルボキシレートであり、R及びRは両方ともハロゲンであり、任意選択でR=Rであり、更に任意選択でR及びRは両方とも臭素であり、Rは水素であり、Mは金属である)
のR位置及びR位置に同一でない置換基を有するバクテリオクロリン誘導体を合成する方法に関し、本方法は実質的に図1に記載の工程を含む。いくつかの実施形態では、金属は、亜鉛、マグネシウム、金、アルミニウム、ケイ素、パラジウム、インジウム、スズ、銅、及び白金からなる群から選択され、任意選択で、金属は亜鉛である。いくつかの実施形態では、本方法は、R又はRのカルボン酸を、
(式中、n=0~8であり、Xはコンジュゲート可能な基である)
からなる群から選択される部分に修飾することを更に含む。
【0009】
したがって、本開示の主題の目的は、コンジュゲーションのための単一部位を含有するバクテリオクロリンヒドロポルフィリン化合物、並びにそれを製造及び使用するための方法を提供することである。
【0010】
これら及び他の目的は、本開示の主題によって全体的又は部分的に達成される。更に、本開示の主題の目的は上述したが、本開示の主題の他の目的及び利点は、以下の説明、図面及び実施例を検討した後に当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の主題の実施形態を合成するための例示的なスキームを示す。
図2図2は、本開示の主題の実施形態を合成するための例示的なスキームを示す。
図3図3A図3Dは、事前に調製したバクテリオクロリン色素(化合物A)のトルエン(青色)及び水(赤色)中の吸収及び発光スペクトルを本開示の主題の化合物6と比較する一連のグラフを示す。化合物Aは以下の構造を有していた。
【化1】
化合物A
図3A及び図3Cは、それぞれ、トルエン(青色)及び水(赤色)中の化合物Aの発光スペクトルである。図3B及び図3Dは、それぞれ、トルエン(青色)及び水(赤色)中の化合物6の吸収及び発光スペクトルである。化合物Aは、化合物6では存在しなかった水中での吸収の広がりを示した。水中での著しい蛍光消光も化合物Aで観察され、これは化合物6で7倍超改善された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本開示の主題を以下でより完全に説明し、ここでは本開示の主題のすべてではないが一部の実施形態を説明する。実際、本開示の主題は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が該当する法的要件を満たすように提供される。
【0013】
I.定義
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本開示の主題を限定することを意図するものではない。
【0014】
以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載されている。
【0015】
本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、以下に別様に定義されない限り、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有することが意図される。本明細書で使用される技術への言及は、当業者には明らかであろうそれらの技術の変形又は同等の技術の置換を含む、当技術分野で一般的に理解されている技術を指すことを意図している。以下の用語は、当業者によって十分に理解されると考えられるが、以下の定義は、本開示の主題の説明を容易にするために記載されている。
【0016】
当然のことながら、本開示の主題を説明する際に、いくつかの技術及び工程が開示される。これらの各々には、個々の利点があり、各々はまた、他の開示された技術の1つ以上、又は場合によってはすべてと共に使用することができる。
【0017】
したがって、明確にするために、この説明においては、個々の工程のすべての可能な組み合わせを不必要に繰り返すことを控える。とは言え、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが完全に本発明及び特許請求の範囲の範囲内にあることを理解して読む必要がある。
【0018】
特許法の昔からの慣例に従って、「a」、「an」、及び「the」という用語は、特許請求の範囲を含む本出願で使用される場合、「1つ以上の」を指す。例えば、「蛍光微粒子及び/又はナノ粒子」という語句は、複数の同じ蛍光微粒子及び/又はナノ粒子を含む、1つ以上の蛍光微粒子及び/又はナノ粒子を指す。同様に、「少なくとも1つ」という語句は、ある実体を指すために本明細書で使用される場合、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、又はそれ以上のその実体を指し、1~100及び100より大きい整数値を含むがこれらに限定されない。
【0019】
別段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表すすべての数字は、すべての場合において「約」という用語によって修飾されていると理解されるべきである。質量、重量、時間、体積、濃度又はパーセンテージの量などの測定可能な値を指す場合に本明細書で使用される「約」という用語は、特定の量から、いくつかの実施形態では±20%、いくつかの実施形態では±10%、いくつかの実施形態では±5%、いくつかの実施形態では±1%、いくつかの実施形態では±0.5%、及びいくつかの実施形態では±0.1%の偏差を包含することを意味し、そのような偏差は本開示の方法を実行するのに適切である。したがって、反対のことが示されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは、本開示の主題によって得ようとする所望の特性に応じて変動し得る近似値である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、実体のリストの文脈で使用される場合、実体が単独で又は組み合わせて存在することを指す。したがって、例えば、「A、B、C、及び/又はD」という語句は、A、B、C、及びDを個別に含むだけでなく、A、B、C、及びDのありとあらゆる組み合わせ及びサブコンビネーションも含む。
【0021】
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」、「含有する(containing)」又は「を特徴とする(characterized by)」と同義であり、包括的又はオープンエンドであって、追加の列挙されていない要素及び/又は方法工程を排除しない。「含む(comprising)」は、指定された要素及び/又は工程が存在するが、他の要素及び/又は工程が追加される可能性があり、それらが依然として関連する主題の範囲内にあることを意味する技術用語である。
【0022】
本明細書で使用される場合、「からなる(consisting of)」という語句は、具体的に列挙されていない要素、工程、又は成分を排除する。「からなる(consists of)」という語句が請求項の本文の節に現れる場合、前文の直後ではなく、その節に記載された要素のみを限定することに留意されたい。他の要素は、全体として請求項から排除されない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、関連する開示又は請求項の範囲を、指定された材料及び/又は工程、並びに開示及び/又は請求される主題の基本的且つ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。例えば、蛍光微粒子及び/又はナノ粒子は、ポリマーマトリックス及びそれに関連する少なくとも1つのバクテリオクロリンから「本質的になる」ことができ、これは列挙されたポリマーマトリックスが蛍光微粒子及び/又はナノ粒子に存在する唯一のポリマーマトリックスであることを意味する。
【0024】
「含む(comprising)」、「からなる(consisting of)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に関して、これら3つの用語のうちの1つが本明細書で使用される場合、ここに開示され特許請求される主題は、他の2つの用語のいずれかの使用を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の主題は、蛍光微粒子及び/又はナノ粒子に関する。本開示を検討した後、したがって、当業者は、本開示の主題が、ポリマーマトリックス及びそれに関連する本開示の主題の少なくとも1つのバクテリオクロリンから本質的になる蛍光微粒子及び/又はナノ粒子、並びにポリマーマトリックス及びそれに関連する本開示の主題の少なくとも1つのバクテリオクロリンからなる蛍光微粒子及び/又はナノ粒子を包含することを理解するであろう。
【0025】
本明細書で使用される場合「ハロ」は、-F、-Cl、-Br、及び-Iを含む任意の適切なハロゲンを指す。
【0026】
本明細書で使用される場合「メルカプト」は-SH基を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合「アジド」は、-N基を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合「シアノ」は、-CN基を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合「ヒドロキシル」は、-OH基を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合「ニトロ」は、-NO基を指す。
【0031】
「アルキル」は、本明細書で使用される場合、単独で、又は別の基の一部として、1又は2から10、20又は50個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素(例えば、CからCアルキル、CからC10アルキル、C11からC50アルキル)を指す。アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「低級アルキル」は、アルキルのサブセットであり、いくつかの実施形態では、1から4個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素基を指す。低級アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「アルキル」又は「低級アルキル」という用語は、別途指示がない限り、置換及び非置換アルキル又は低級アルキルの両方を含むことが意図され、これらの基は、ハロ、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ハロアルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、メルカプト、アルキル-S(O)、ハロアルキル-S(O)、アルケニル-S(O)、アルキニル-S(O)、シクロアルキル-S(O)、シクロアルキルアルキル-S(O)、アリール-S(O)、アリールアルキル-S(O)、ヘテロシクロアルキル-S(O)、ヘテロシクロアルキル-S(O)、アミノ、カルボキシ、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ハロアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホンアミド、尿素、アルコキシアシルアミノ、アミノアシルオキシ、ニトロ又はシアノ(式中、m=0、1、2又は3である)から選択される基で置換され得る。
【0032】
本明細書で使用される場合「アルキレン」は、二官能性の直鎖、分岐又は環状アルキル基を指し、これは置換又は非置換であり得、ここでの「アルキル」は先に定義される通りである。
【0033】
「アルケニル」は、本明細書で使用される場合、単独で、又は別の基の一部として、1又は2から10、20又は50個の炭素原子(例えば、CからCアルケニル、CからC10アルケニル、C11からC50アルケニル)(又は炭素数1から4の低級アルケニル)を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を指し、これは、通常の鎖に1から4個の二重結合を含む。アルケニルの代表的な例としては、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2,4-ヘプタジエニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「アルケニル」又は「低級アルケニル」という用語は、別途指示がない限り、置換及び非置換アルケニル又は低級アルケニルの両方を含むことを意図し、これらの基は、上記のアルキル及び低級アルキルに関連して記載した基で置換することができる。
【0034】
本明細書で使用される場合「アルケニレン」は、二官能性の直鎖、分岐又は環状アルケニル基を指し、これは置換又は非置換であり得、ここでの「アルケニル」は先に定義される通りである。
【0035】
「アルキニル」は、本明細書で使用される場合、単独で、又は別の基の一部として、1又は20から10、20又は50個の炭素原子(例えば、CからCアルキニル、CからC10アルキニル、C11からC50アルキニル)(又は炭素数1から4の低級アルキニル)を含有する直鎖又は分岐鎖炭化水素を指し、これは、通常の鎖に1つの三重結合を含む。アルキニルの代表的な例としては、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ブチニル、4-ペンチニル、3-ペンチニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。「アルキニル」又は「低級アルキニル」という用語は、別途指示がない限り、置換及び非置換アルキニル又は低級アルキニルの両方を含むことを意図し、これらの基は、上記のアルキル及び低級アルキルに関連して記載したのと同じ基で置換することができる。
【0036】
本明細書で使用される場合「アルキニレン」は、二官能性の直鎖、分岐又は環状アルキニル基を指し、これは置換又は非置換であり得、ここでの「アルキニル」は先に定義される通りである。
【0037】
本明細書で使用される場合「アルキリデン鎖」は、置換又は非置換であってもよく、飽和又は不飽和であってもよく、N、O及びSからなる群から選択される1、2又は3個のヘテロ原子を含有していてもよい、二官能性の直鎖、分岐及び/又は環状有機基を指す。例としては、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、アリーレン、アルカリレン及びアラルキレンが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、米国特許第6,946,533号を参照されたい。アルキリデン鎖は、任意の適切な数の炭素原子(例えば、CからC、CからC10、C10からC20、C20からC50)を含むことができる。
【0038】
「アルコキシ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、オキシ基-O-を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアルキル又は低級アルキル基を指す。アルコキシの代表的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、2-プロポキシ、ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「アシル」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、-C(O)R基を指し、式中、Rは、任意の適切な置換基、例えば、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル又は本明細書に記載の他の適切な置換基である。
【0040】
「ハロアルキル」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された本明細書で定義される少なくとも1つのハロゲンを指す。ハロアルキルの代表的な例としては、クロロメチル、2-フルオロエチル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2-クロロ-3-フルオロペンチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
「ペルハロアルキル」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、アルキル基の各水素原子がハロで置き換えられているアルキル基を指す。いくつかの実施形態では、ペルハロアルキルはペルフルオロアルキル基であり、アルキル基の各水素原子はフルオロで置き換えられている。代表的なペルハロアルキル基は、トリフルオロメチル(すなわち、-CF)である。
【0042】
「アルキルチオ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、本明細書で定義されるチオ部分を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアルキル基を指す。アルキルチオの代表的な例としては、メチルチオ、エチルチオ、tert-ブチルチオ、ヘキシルチオなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
「アリール」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、1つ以上の芳香環を有する単環式炭素環系又は二環式炭素環縮合環系を指す。アリールの代表例としては、アズレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロナフチルなどが挙げられる。「アリール」という用語は、別途指示がない限り、置換及び非置換アリールの両方を含むことを意図し、これらの基は、上記のアルキル及び低級アルキルに関連して記載したのと同じ基で置換することができる。
【0044】
本明細書で使用される場合「アリーレン」は、置換又は非置換であり得る二官能性アリール基を指し、ここでの「アリール」は先に定義される通りである。
【0045】
「アリールアルキル」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、本明細書で定義されるアルキル基を介して親分子部分に付加された、本明細書で定義されるアリール基を指す。アリールアルキルの代表的な例としては、ベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、2-ナフト-2-イルエチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
「アルカリレン」及び「アラルキレン」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、本明細書で定義される少なくとも1つのアリーレン基及び少なくとも1つのアルキル、アルケニル、又はアルキニル基を含む二官能基を指す。
【0047】
本明細書で使用される場合「アミノ」は、ラジカル-NHを指す。
【0048】
「アルキルアミノ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、ラジカル-NHR(式中、Rはアルキル基である)を指す。
【0049】
「アリールアルキルアミノ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、ラジカル-NHR(式中、Rはアリールアルキル基である)を指す。
【0050】
「二置換アミノ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、ラジカル-NRaRbを指し、式中、Ra及びRbは、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ及びヘテロシクロアルキルの群から独立して選択される。
【0051】
「アシルアミノ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、ラジカル-NRを指し、式中、Rは本明細書で定義されるアシル基であり、Rは水素、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ及びヘテロシクロアルキルの群から選択される。
【0052】
「アシルオキシ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、ラジカル-ORを指し、式中、Rは本明細書で定義されるアシル基である。
【0053】
「エステル」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、-C(O)OR基を指し、式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0054】
本明細書で使用される場合「ホルミル」は、-C(O)H基を指す。
【0055】
本明細書で使用される場合「カルボン酸」は、-C(O)OH基を指す。
【0056】
本明細書で使用される場合「スルホキシル」は、式-S(O)Rの化合物を指し、式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0057】
本明細書で使用される場合「スルホニル」は、式-S(O)(O)Rの化合物を指し、式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0058】
本明細書で使用される場合「スルホネート」は、式-S(O)(O)ORの化合物を指し、式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0059】
本明細書で使用される場合「スルホン酸」は、式-S(O)(O)OHの化合物を指す。
【0060】
「アミド」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、-C(O)NRラジカルを指し、式中、R及びRは、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0061】
「スルホンアミド」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、-S(O)NRラジカルを指し、R及びRは、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0062】
「尿素」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、-N(R)C(O)NRラジカルを指し、式中、R、R及びRは、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0063】
「アルコキシアシルアミノ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、-N(R)C(O)ORラジカルを指し、式中、R、Rは、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0064】
「アミノアシルオキシ」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、-OC(O)NRラジカルを指し、式中、R及びRは、H、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールなどの任意の適切な置換基である。
【0065】
「シクロアルキル」は、本明細書で単独で又は別の基の一部として使用される場合、3、4又は5から6、7又は8個の炭素を含有する飽和又は部分不飽和環状炭化水素基を指す(この炭素は、後述するように複素環基で置換されていてもよい)。シクロアルキルの代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルが挙げられる。これらの環は、ハロ又は低級アルキルなどの本明細書に記載のさらなる置換基で置換されていてもよい。「シクロアルキル」という用語は総称であり、特に明記しない限り、以下に論じられる複素環基を含むことを意図する。
【0066】
本明細書で使用される場合「ポリオキシエチレン鎖」という用語は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)基、例えば、式-(CO)-(式中、nは、2又はそれ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、又は10又はそれ以上)の整数である)を有する基を含むか又はこれからなる部分を指す。いくつかの実施形態では、nは、4~5000、4~1000、4~100、4~50、4~28、又は4~25の整数である。本明細書で使用される場合「ポリオキシエチレン鎖」という用語は、単分散又は多分散PEG鎖及び直鎖又は分岐PEG鎖を指す場合がある。「単分散」は、1の多分散指数(PDI)を有するPEGを指し、一方、「多分散」は、1より大きいPDIを有するPEGを指し、PEGは、鎖長及び分子量についてガウス分布を含む。
【0067】
「微粒子」という用語は、約1,000μm未満であるが約1000nm超の寸法(例えば、長さ、幅、直径など)を有する少なくとも1つの領域を有する構造を指す。その寸法は、いくつかの実施形態では、約500μm未満、いくつかの実施形態では約250μm未満、いくつかの実施形態では約200μm未満、いくつかの実施形態では約150μm未満、いくつかの実施形態では約125μm未満、いくつかの実施形態では約100μm未満、いくつかの実施形態では約80μm未満、いくつかの実施形態では約70μm未満、いくつかの実施形態では約60μm未満、いくつかの実施形態では約50μm未満、いくつかの実施形態では約40μm未満、いくつかの実施形態では約30μm未満、いくつかの実施形態では約20μm未満、いくつかの実施形態では約10μm未満、いくつかの実施形態では約5μm未満であり得る。いくつかの実施形態では、その寸法は、約1μm~約250μm(例えば、約5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、又は250μm)である。
【0068】
同様に、「ナノ粒子」という用語は、約1,000nm未満の寸法(例えば、長さ、幅、直径など)を有する少なくとも1つの領域を有する構造を指す。いくつかの実施形態では、この寸法はより小さい(例えば、約500nm未満、約250nm未満、約200nm未満、約150nm未満、約125nm未満、約100nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、又は更に約20nm未満)。いくつかの実施形態では、この寸法は、約5nm~約250nm(例えば、約1、5、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、又は250nm)である。
【0069】
いくつかの実施形態では、微粒子又はナノ粒子は、ほぼ球形である。微小粒子又はナノ粒子がほぼ球形である場合、特徴的な寸法は球の直径に相当し得る。球状に加えて、微粒子又はナノ粒子は、円盤状、板状(例えば、六角形板状)、長円形、多面体状、棒状、立方体状、又は不規則形状であり得る。
【0070】
微粒子又はナノ粒子は、コア領域(すなわち、粒子の外形寸法間の空間)及び外面(すなわち、粒子の外形寸法を規定する表面)を含むことができる。いくつかの実施形態では、微粒子又はナノ粒子は、微粒子又はナノ粒子コアを取り囲む又は部分的に取り囲む1つ以上のコーティング層を有することができる。したがって、例えば、球状微粒子又はナノ粒子は、1つ以上の同心コーティング層を有することができ、各連続層は、粒子の中心により近いより小さい層の外面上に分散されている。
【0071】
「ポリマー」及び「ポリマー」という用語は、繰り返し単位(すなわち、所与の化学的部分構造の複数のコピー)を有する化学構造を指す。ポリマーは、重合性モノマーから形成することができる。重合性モノマーは、反応して、重合性モノマーの他の分子上の部分との結合(例えば、共有結合又は配位結合)を形成することができる1つ以上の部分を含む分子である。いくつかの実施形態では、各重合性モノマー分子は、2つ以上の他の分子/部分に結合することができる。場合によっては、重合性モノマーは、1つの他の分子のみに結合し、ポリマー材料の末端を形成する。
【0072】
ポリマーは、有機、無機、又はそれらの組み合わせであり得る。本明細書で使用される場合、「無機」という用語は、炭素、水素、窒素、酸素、硫黄、リン、又はハロゲン化物の1つ以外の少なくともいくつかの原子を含む化合物又は組成物を指す。したがって、例えば、無機化合物又は組成物は、1つ以上のケイ素原子及び/又は1つ以上の金属原子を含み得る。いくつかの実施形態では、ポリマーはポリスチレンであり、微粒子及び/又はナノ粒子はポリスチレンからなる。いくつかの実施形態では、微粒子及び/又はナノ粒子はポリスチレンビーズである。
【0073】
本明細書で使用される場合、「ポルフィリン」という用語は、典型的には、4個の窒素原子及び2個の置換可能な水素と共に4個のピロール環で構成され、様々な金属原子が容易に置換され得る環状構造を指す。典型的なポルフィリンはヘミンである。
【0074】
本明細書で使用される場合、「バクテリオクロリン」は、2つの部分的に飽和した隣接していない(すなわち、トランス)ピロール環を有する点でポルフィリンとは異なる。
【0075】
「と会合する」という語句は、2つの実体、例えば、ポリマーマトリックスとバクテリオクロリンとの間の任意の相互作用を指す。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス及びバクテリオクロリンは、限定するものではないが、疎水性相互作用、静電相互作用、及びファンデルワールス相互作用のうちの1つ以上などの非共有結合によって互いに会合する。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス及びバクテリオクロリンは、バクテリオクロリンがポリマーマトリックス内に存在するように、ポリマーマトリックス(例えば、ナノ粒子、微粒子、ビーズなど)がバクテリオクロリンを包含する結果として互いに会合する。そのような実施形態では、ポリマーマトリックスは、バクテリオクロリンに「よってドープされている」又は「でドープされている」とも呼ばれ、バクテリオクロリンは、ポリマーマトリックス内に「埋め込まれている」と考えることができる。いくつかの実施形態では、ポリマーマトリックス及びバクテリオクロリンは、バクテリオクロリンをポリマーマトリックスの表面に結合させる共有結合によって互いに会合する。
【0076】
本明細書で使用される場合「治療」は、疾患又は障害の症状の1つ以上が改善されるか、そうでなければ有利に変化させる任意の方法を意味する。治療はまた、本明細書の組成物の任意の薬学的使用、例えば、過剰増殖組織若しくは新生血管形成が媒介する疾患若しくは障害、又は過剰増殖組織若しくは新生血管形成が関与する疾患若しくは障害を治療するための使用を包含する。本明細書で使用される場合、特定の化合物又は薬学的組成物の投与による特定の障害の症状の改善は、組成物の投与に起因又は関連し得る永続的若しくは一時的、持続的又は一過性のいずれかの軽減を指す。
【0077】
本明細書で使用される場合「プロドラッグ」は、in vivo投与時に、1つ以上の工程又はプロセスによって代謝されるか、そうでなければ化合物の生物学的、薬学的、又は治療的に活性な形態に変換される化合物である。
【0078】
本明細書で使用される場合「抗体」は、一般に、抗原に特異的に結合して免疫複合体を形成する免疫グロブリン又はその断片を指す。抗体は、任意のクラスの全免疫グロブリン、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、二重又は複数の抗原又はエピトープ特異性を有するキメラ又はハイブリッド抗体であり得る。それは、ポリクローナル抗体、好ましくはヒト又は適切な動物、例えば霊長類、ヤギ、ウサギ、マウスなどに由来する親和性精製抗体であり得る。モノクローナル抗体はまた、本開示の主題における使用に適しており、それらの高い特異性のために好ましいものであり得る。それらは、免疫原性抗原調製物による哺乳動物の免疫化、免疫リンパ又は脾臓細胞と不死性骨髄腫細胞株との融合、及び特異的ハイブリドーマクローンの単離についての現在標準と考えられている手順によって容易に調製される。モノクローナル抗体を調製するあまり一般的ではない方法、例えば、超可変領域の種間融合及び遺伝子操作のマニピュレーションは、それらの有用性に影響を及ぼすのは主に抗体の抗原特異性であるため、排除されない。モノクローナルを産生するためのより新しい技術、例えば、ヒトモノクローナル、種間モノクローナル、キメラ(例えば、ヒト/マウス)モノクローナル、遺伝子操作された抗体などを使用することもできる。
【0079】
したがって、「抗体」という用語は、免疫グロブリン遺伝子又は免疫グロブリン遺伝子の断片によって実質的にコードされる1つ以上のポリペプチドを含むタンパク質を指す。免疫グロブリン遺伝子には、典型的には、カッパ(κ)、ラムダ(λ)、アルファ(α)、ガンマ(γ)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)及びミュー(μ)定常領域遺伝子、並びに多種多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖はκ又はλのいずれかに分類される。哺乳動物では、重鎖は、γ、μ、α、δ、又はεとして分類され、これらはそれぞれ、免疫グロブリンクラス、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEを定義する。他の種は、他の軽鎖及び重鎖遺伝子を有し(例えば、特定の鳥類は、IgYと呼ばれるものを産生し、これは、それらの卵の卵黄に蓄積する免疫グロブリンタイプである)、これらは本開示の主題によって同様に包含される。
【0080】
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの同一の対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25キロダルトン(kDa)の平均分子量)及び1つの「重」鎖(約50~70kDaの平均分子量)を有する。ポリペプチド鎖の2つの同一の対は、重鎖領域内に存在するジスルフィド結合によって二量体形で一緒に保持される。各鎖のN末端は、主に抗原認識を担う約100から110又はそれ以上のアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(V)及び可変重鎖(V)という用語は、それぞれこれらの軽鎖及び重鎖を指す。
【0081】
抗体は、典型的には、インタクトな免疫グロブリンとして、又は様々なペプチダーゼによる消化によって産生され得るいくつかのよく特徴付けられた断片として存在する。例えば、パパインによる抗体分子の消化によって、抗体はジスルフィド結合のN末端の位置で切断される。これにより、3つの断片:軽鎖及び重鎖のN末端を有する2つの同一の「Fab」断片、及びジスルフィド結合によって一緒に保持された重鎖のC末端を含む「Fc」断片が生成される。一方、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合のC末端の抗体を消化して、「F(ab)’」断片として知られる断片を生成し、これは、ジスルフィド結合によって結合されたFab断片の二量体である。F(ab)’断片を温和な条件下で還元してヒンジ領域のジスルフィド結合を切断し、それによってF(ab’)二量体を2つの「Fab’」モノマーに変換することができる。Fab’モノマーは、本質的にヒンジ領域の一部を有するFab断片である。これらの様々な断片に関して、Fab、F(ab’)、及びFab’断片は、少なくとも1つのインタクトな抗原結合ドメイン(「パラトープ」と呼ばれる)を含み、したがって、抗原に結合することができる。
【0082】
様々な抗体断片がインタクトな抗体の消化に関して定義されているが、当業者は、これらの断片の様々なもの(限定するものではないが、Fab’断片など)が化学的に又は組換えDNA法を利用することによってデノボで合成され得ることを理解するであろう。したがって、本明細書で使用される場合「抗体」という用語はまた、全抗体の修飾によって産生されるか、又は組換えDNA法を使用して新規に合成された抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、「抗体」という用語は、少なくとも1つの抗原結合ドメインを有する断片を含む。
【0083】
本開示の主題の抗体、断片及び誘導体には、キメラ抗体も含まれ得る。抗体に関連して本明細書で使用される場合、「キメラ」という用語及びその文法上の変化形は、1つの種の抗体定常領域に実質的に又は排他的に由来する定常領域と、別の種の可変領域の配列に実質的に又は排他的に由来する可変領域とを有する抗体誘導体を指す。特定の種類のキメラ抗体は、「ヒト化」抗体であり、この抗体は、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR)をヒト抗体のCDRで置換することによって産生される(例えば、国際公開第1992/22653号を参照されたい)。したがって、いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、対応するヒト抗体領域に実質的に又は排他的に由来するCDR以外の定常領域及び可変領域と、ヒト以外の哺乳動物に実質的に又は排他的に由来するCDRとを有する。
【0084】
本開示の主題の抗体、断片及び誘導体は、一本鎖抗体及び一本鎖抗体断片であり得る。一本鎖抗体断片は、本明細書に記載の全抗体の可変領域及び/又はCDRの少なくとも1つを有するアミノ酸配列を含有するが、それらの抗体の定常ドメインの一部又は全部を欠いている。これらの定常ドメインは抗原結合に必要ではないが、全抗体の構造の大部分を構成する。
【0085】
一本鎖抗体断片は、定常ドメインの一部又は全部を含む抗体の使用に関連する問題のいくつかを克服することができる。例えば、一本鎖抗体断片は、生物学的分子と重鎖定常領域との間の望ましくない相互作用、又は他の望ましくない生物学的活性がない傾向がある。更に、一本鎖抗体断片は全抗体よりもかなり小さく、したがって全抗体よりも大きい毛細管透過性を有することができ、一本鎖抗体断片が標的抗原結合部位により効率的に局在して結合することを可能にする。また、抗体断片は、原核細胞において比較的大規模に産生され得、したがってそれらの産生を促進する。更に、比較的小さいサイズの一本鎖抗体断片は、全抗体よりもレシピエントにおいて免疫応答を誘発しにくくする。本開示の主題の一本鎖抗体断片としては、限定するものではないが、一本鎖断片可変(scFv)抗体及びその誘導体、例えば、限定するものではないが、タンデムジscFv、タンデムトリscFv、二重特異性ダイアボディなどのダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニ抗体、ミニボディ、四価二重特異性分子、二重特異性F(ab’)断片などが挙げられる。
【0086】
本明細書で使用される場合「感染性病原体」は、侵入する微生物又は寄生生物を意味する。本明細書で使用される場合、「微生物」は、ウイルス、細菌、リケッチア、マイコプラズマ、原虫、真菌及び同様の微生物を意味し、「寄生生物」は、抗体誘導性クリアランス又は溶解性若しくは食作用性破壊を受けやすい、感染性、一般に顕微鏡性の、又は非常に小さい多細胞無脊椎動物、又はその卵若しくは幼若形態、例えば、マラリア原虫、スピロヘータなどを意味する。
【0087】
本明細書で使用される場合「腫瘍」は新生物を意味し、良性腫瘍と悪性腫瘍の両方を含む。この用語は、特に、固形(乳癌、肝臓癌又は前立腺癌など)又は非固形(白血病など)のいずれかであり得る悪性腫瘍を含む。腫瘍は、腺癌(例えば、乳房、前立腺又は肺の腺癌)などのサブタイプに更に分類することもできる。
【0088】
本明細書で使用される場合「標的」は、本明細書で提供される方法によって検出され、診断され、損なわれ又は破壊されることが意図される対象を示し、標的細胞、標的組織、及び標的組成物を含む。
【0089】
本明細書で使用される場合「標的組織」及び「標的細胞」は、この治療方法によって損なわれ又は破壊されることが意図されている組織である。光増感化合物は、これらの標的組織又は標的細胞に結合するか、又はこれらの標的組織又は標的細胞に集まり、次いで、十分な照射線が印加されると、これらの組織又は細胞は損なわれるか又は破壊される。標的細胞は標的組織中の細胞であり、標的組織としては、血管内皮組織、腫瘍の異常な血管壁、(限定するものではないが)頭頸部の腫瘍などの固形腫瘍、眼の腫瘍、消化管の腫瘍、肝臓の腫瘍、乳房の腫瘍、前立腺の腫瘍、肺の腫瘍、造血組織及びリンパ組織の非固形腫瘍及び悪性細胞、血管新生組織、血管系の他の病変、骨髄、並びに自己免疫疾患に関連する組織又は細胞が挙げられるが、これらに限定されない。標的細胞の中には、非標的細胞と比較して実質的により短時間に分裂する細胞も含まれる。
【0090】
本明細書で使用される場合「非標的組織」は、治療方法によって損なわれたり破壊されたりすることを意図していない対象のすべての組織である。これらの非標的組織としては、限定するものではないが、健常血液細胞、及びそれ以外の標的化すべきものとして識別されない他の正常組織が挙げられる。
【0091】
本明細書で使用される場合「標的組成物」は、この治療方法によって損なわれ、又は破壊されることが意図されている組成物であり、限定するものではないが、細菌、ウイルス、真菌、原虫、及び毒素などの1つ以上の病原因子、並びにそれらに感染し、又は浸潤した細胞及び組織が挙げられる。「標的組成物」という用語はまた、限定するものではないが、この治療方法によって損なわれ又は破壊されることが意図されている、有機標的として選択的且つ特異的に同定され得るプリオン、毒素、ペプチド、ポリマー、及び他の化合物などの感染性有機粒子を含む。
【0092】
本明細書で使用される場合「過剰増殖性組織」は、制御不能に成長した組織を意味し、新生物組織、腫瘍、及び抑制の効かない血管成長、例えば、加齢黄斑変性で見られ、しばしば緑内障手術後に生じる血管成長を含む。
【0093】
本明細書で使用される場合「過剰増殖性障害」は、制御されていない又は異常な細胞増殖によって引き起こされる過剰な細胞増殖を基礎病理として共有する状態障害を意味し、制御されていない血管新生を含む。そのような過剰増殖性障害の例としては、がん又は癌腫、急性及び膜増殖性糸球体腎炎、骨髄腫、乾癬、アテローム性動脈硬化症、乾癬性関節炎、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、黄斑変性、角膜血管新生、脈絡膜血管腫、翼状出血の再発、並びにエキシマレーザー手術及び緑内障濾過手術による瘢痕化が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
本明細書で使用される場合「治療有効用量」は、疾患の進行を予防するか、又は退縮を引き起こすのに十分な用量、又は疾患によって引き起こされる症状を軽減することができる用量である。
【0095】
本明細書で使用される場合「生物学的材料」は、組織(生検組織など)及び細胞の両方、並びに血液、尿、血漿、脳脊髄液、粘液、痰などの生物学的流体を指す。
【0096】
本明細書で使用される場合「照射する」及び「照射」は、対象をすべての波長の光に曝露することを含む。好ましくは、照射波長は、感光性化合物を励起する波長と一致するように選択される。好ましくは、照射波長は、感光性化合物の励起波長と一致し、対象の血液タンパク質などの非標的組織による吸収が低い。
【0097】
照射は、本明細書では、そのコヒーレンス(レーザー)又は非コヒーレンス(非レーザー)、並びに光増感化合物を使用した投与に関する強度、持続時間及びタイミングによって更に定義される。強度又はフルエンス率は、光が標的組織に到達するのに十分でなければならない。持続時間又は総フルエンス線量は、標的組織に作用する光増感化合物を十分に光活性化するのに十分でなければならない。1)投与された光増感化合物が標的組織にホーミングするのにある程度の時間を必要とし、2)多くの光増感化合物の血中レベルが時間とともに低下することから、光増感化合物の投与に関するタイミングは重要である。照射エネルギーは、対象の外部にあるか、あるいは対象に埋め込まれるか、あるいはカテーテル、光ファイバーなどによって、又はカプセル若しくは丸剤の形態で光源を摂取することによって対象に導入される、レーザー又は冷陰極光源などのエネルギー源によって供給される(例えば、米国特許第6,273,904号(2001)に開示されているように)。
【0098】
本開示の主題のいくつかの実施形態は、腫瘍を破壊するための光線力学的療法(PDT)を投与するための光エネルギーの使用に寄せられているが、当業者によって理解されるように、他の形態のエネルギーも本開示の主題の範囲内である。そのような形態のエネルギーとしては、熱、音波、超音波、化学、光、マイクロ波、イオン化(X線及びガンマ線など)、機械的、及び電気的エネルギーが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、超音波力学的に誘導又は活性化される薬剤としては、限定するものではないが、ガリウム-ポルフィリン錯体(Yumitaら、Cancer Letters 112:79-86(1997)を参照されたい)、他のポルフィリン錯体、例えば、プロトポルフィリン及びヘマトポルフィリン(Umemuraら(1996)Ultrasonics Sonochemistry 3:S187-S191を参照されたい)、他のがん薬物、例えば、超音波療法の存在下で使用されるダウノルビシン及びアドリアマイシン(Yumitaら(1987)Japan J Hyperthermic Oncology 3(2):175-182を参照されたい)が挙げられる。
【0099】
本明細書で使用される場合「カップリング剤」は、光増感剤を標的薬剤にカップリングすることができる試薬を指す。
【0100】
「標的薬剤」は、標的組織又は標的組成物などの、治療される対象の特定の組織、受容体、感染性病原体、又は身体の他の領域にホーミング又は優先的に会合又は結合する化合物を指す。標的薬剤の例としては、限定するものではないが、抗体、リガンド、リガンド-受容体結合対の1つのメンバー、核酸、ペプチド-核酸(PNA)、アプタマー、タンパク質及びペプチド、並びに組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液が挙げられる。いくつかの実施形態では、標的薬剤は、本開示の主題の化合物を目的の細胞、組織又は器官に標的化する。いくつかの実施形態では、目的の細胞、組織又は器官は腫瘍及び/又はがんであり、標的薬剤は、目的の細胞、組織又は器官の上及び/又はそれらの中に存在する腫瘍関連抗原に特異的に結合する。
【0101】
本明細書で使用される場合「特異的結合対」及び「リガンド-受容体結合対」は、2つの異なる分子を指し、分子の一方は、他方の分子の特定の空間的又は極性の有機体を特異的に引き付け又はそれに結合する表面上の又は空洞内の領域を有し、両方の分子が互いに親和性を有するようにする。特異的結合対のメンバーは、リガンド及び受容体(抗リガンド)と称される。リガンド及び受容体という用語は、リガンド又は受容体全体、又はリガンドと受容体との間で結合が起こるのに十分なその部分を包含することを意図している。リガンド-受容体結合対の例としては、ホルモンとホルモン受容体、例えば、上皮成長因子と上皮成長因子受容体、腫瘍壊死因子-αと腫瘍壊死因子受容体、及びインターフェロン及びインターフェロン受容体;アビジンとビオチン又は抗生物質;抗体と抗原の対;酵素と基質、薬物と薬物受容体;細胞表面抗原とレクチン;2本の相補的核酸鎖;核酸鎖と相補的オリゴヌクレオチド;インターロイキンとインターロイキン受容体;並びに、刺激因子とそれらの受容体、例えば、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)とGMCSF受容体及びマクロファージコロニー刺激因子(MCSF)とMCSF受容体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0102】
「リンカー」は、バイオコンジュゲート可能な基、クロスカップリング基、表面結合基、親水性基などを親分子に結合するために利用される、芳香族基又は脂肪族基(これは、置換又は非置換であってもよく、N、O又はSなどのヘテロ原子を含んでいてもよい)である。例としては、アリール、アルキル、ヘテロアリール、ヘテロアルキル(例えば、オリゴエチレングリコール)、ペプチド及び多糖リンカーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
診断又は治療目的のために本開示の主題の方法によって治療される対象には、ヒト対象と、獣医用途の他の動物対象(特に、イヌ、ネコ、ウマ、サル、チンパンジーなどの哺乳動物対象)の両方が含まれる。
【0104】
より具体的には、本明細書で使用される場合「対象」、「患者」、及び「レシピエント」という用語は互換的に使用することができ、任意の無脊椎動物又は脊椎動物種のメンバーを指す場合がある。したがって、「対象」という用語は、動物界の任意のメンバー、例えば、限定されるものではないが、脊索動物門(例えば、Classes Osteichythyes(硬骨魚類)、Amphibia(両生類)、Reptilia(爬虫類)、Aves(鳥類)、及びMammalia(哺乳類)のメンバー)、及びそこに包含されるすべての目及び科を包含することが意図される。
【0105】
本開示の主題の組成物及び方法は、温血動物に特に有用である。したがって、本開示の主題は哺乳動物及び鳥類に関する。より具体的には、ヒト及び他の霊長類などの哺乳動物、並びに、絶滅危惧のために重要な哺乳動物(シベリアントラなど)、経済的に重要な哺乳動物(ヒトが消費するために農場で飼育されている動物)及び/又はヒトにとって社会的に重要な哺乳動物(ペット又は動物園で飼育されている動物)、例えば、ヒト以外の肉食動物(ネコ及びイヌなど)、ブタ(ブタ、成豚、及びイノシシ)、反芻動物(牛、雄牛、羊、キリン、シカ、ヤギ、バイソン、ラクダなど)、げっ歯動物(マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギなど)、イノシシ動物及びウマから誘導され、且つ/又はそれらで使用するための組成物及び方法が提供される。ヒトにとって経済的にも重要であるので、絶滅危惧され、動物園で又はペットとして飼育される種類の鳥(例えばオウム、オカメインコなど)、並びに家禽、より具体的には飼い慣らされた家禽、例えば、七面鳥、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ホロホロホロチョウなどの家禽、などの鳥類に対する開示された方法及び組成物の使用も提供される。したがって、家畜(限定するものではないが、家畜豚(ブタ及び成豚)、反芻動物、ウマ、家禽など)に対する開示された方法及び組成物の使用も提供される。
【0106】
II.代表的な実施形態
いくつかの実施形態では、本開示の主題は、R1位及びR2位に特定の同一でない置換基を含むバクテリオクロリン誘導体に関する。いくつかの実施形態では、バクテリオクロリン誘導体は、以下の一般構造:
(式中、R、Rは異なり、それぞれが、エステル、酸、酸塩化物、ヒドラジド、アシルアジド、及びアミド基からなる群から独立して選択され、任意選択で、R及びRの一方又は両方は、
(式中、n=0~8であり、Xはコンジュゲート可能な基である)からなる群から選択され、R、R、Rは、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシアシルアミノ(alkoxylacylamino)、及びアミノアシルオキシからなる群から独立して選択され、そして)
を有する。
【0107】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の主題は、上記構造のR位及びR位に非同一の置換基を含むバクテリオクロリン誘導体に関する。
【0108】
いくつかの実施形態では、バクテリオクロリン誘導体は、金属化誘導体である。いくつかの実施形態では、金属化誘導体は、バクテリオクロリンの窒素によって配位された金属原子を含む。いくつかの実施形態では、金属は、亜鉛、マグネシウム、金、アルミニウム、ケイ素、パラジウム、インジウム、スズ、銅、又は白金である。
【0109】
いくつかの実施形態では、バクテリオクロリン誘導体は、コンジュゲート可能な基を含む。本明細書で使用される場合、「コンジュゲート可能な基」という語句は、本明細書に開示される化合物のバクテリオクロリン環の置換基として存在する化学部分であって、いくつかの実施形態では、R位及びR位の1つにあり、本明細書に開示される化合物を活性部分にコンジュゲートさせ、いくつかの実施形態では、共有結合させてコンジュゲートを形成することを可能にする化学部分を指す。コンジュゲートが望まれる用途に応じて、活性部分は、いくつかの実施形態では、タンパク質、ペプチド、標的薬剤、抗体又はその断片、ポリマー、粒子、任意選択でナノ粒子、有機分子、及び固体支持体表面、任意選択でポリマー及び/又は無機ビーズであり得る。コンジュゲート可能な基は、いくつかの実施形態では、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、フルオロフェニルエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、塩化スルホニル、無水物、カーボネート、イミドエステル、エポキシド、マレイミド、ハロアセトアミド、アジリジン、アジド及びアルキンからなる群から選択することができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート可能な基は、バイオコンジュゲート可能な基である。本明細書で使用される場合「バイオコンジュゲート可能な基」という用語は、別の実体、例えば、タンパク質、ペプチド、抗体又は抗体断片などの標的薬剤、ポリマー、ナノ粒子、有機、ポリマー又は無機ビーズなどの粒子、別の固体支持体表面などの上の基と結合(例えば、共有結合)を形成して、本開示のバクテリオクロリン化合物の1つと他の実体とのコンジュゲートを形成することができる反応性化学官能基を指す。例えば、バイオコンジュゲート可能な基は、還元的アミノ化を介してアミノ置換生体分子上のアミノ基と共有結合を形成することができるアルデヒド、又はカルボジイミド活性化を介してアミノ置換生体分子に結合することができるカルボン酸であり得る。バイオコンジュゲート可能な基としては、イソシアネート、イソチオシアネート、ヨードアセトアミド、アジド、ジアゾニウム塩などのアミン(アミン誘導体を含む)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル(より一般的には、カルボン酸から誘導される活性エステル、例えば、p-ニトロフェニルエステル)、酸ヒドラジドなどのカルボン酸又は酸誘導体、及び他の基、例えば、限定するものではないが、アルデヒド、塩化スルホニル、スルホニルヒドラジド、エポキシド、ヒドロキシル基、チオール基、マレイミド、アジリジン、アクリロイル、ハロ基、ビオチン、2-イミノビオチンなどが挙げられる。
【0111】
いくつかの実施形態では、コンジュゲート可能な基(いくつかの実施形態では、バイオコンジュゲート可能な基である)は、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、フルオロフェニルエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、塩化スルホニル、無水物、カーボネート、イミドエステル、エポキシド、マレイミド、ハロアセトアミド、アジリジン、アジド及びアルキンからなる群から選択することができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲート可能な基は、
(式中、n=0~8であり、Xはコンジュゲート可能な基である)からなる群から選択され、R、R、Rは、それぞれ、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルケニル、シクロアルキルアルキニル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル、ヘテロシクロアルキニル、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルコキシ、ハロ、メルカプト、アジド、シアノ、ホルミル、カルボン酸、ヒドロキシル、ニトロ、アシル、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミノ、アシルアミノ、アシルオキシ、エステル、アミド、スルホキシル、スルホニル、スルホネート、スルホン酸、スルホンアミド、尿素、アルコキシアシルアミノ(alkoxylacylamino)、及びアミノアシルオキシからなる群から独立して選択され、Mは任意選択で存在し、存在する場合には、金属を含む。いくつかの実施形態では、Xは、カルボン酸、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、フルオロフェニルエステル、イソチオシアネート、イソシアネート、塩化スルホニル、無水物、カーボネート、イミドエステル、エポキシド、マレイミド、ハロアセトアミド、アジリジン、アジド、及びアルキンからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Xは、本開示の主題の化合物のリガンドへのコンジュゲーションを容易にするコンジュゲート可能な基である。いくつかの実施形態では、リガンドは、タンパク質、ペプチド、標的薬剤、抗体又はその断片(任意選択でパラトープを含む抗体又はその断片)、ポリマー、粒子、任意選択で微粒子又はナノ粒子、有機分子、及び固体支持体表面、任意選択でポリマー及び/又は無機ビーズからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、Mが存在し、Mが亜鉛、マグネシウム、金、アルミニウム、ケイ素、パラジウム、インジウム、スズ、銅及び白金からなる群から選択される金属である。
【0112】
いくつかの実施形態では、本開示の主題の化合物は、化合物のリガンドへのコンジュゲーションを容易にするコンジュゲート可能な基を含む。リガンドの選択、ひいてはコンジュゲート可能な基の選択は、化合物の所望の使用に依存し得る。ただし、いくつかの実施形態では、リガンドは、タンパク質、ペプチド、標的薬剤、抗体又はその断片、ポリマー、粒子、任意選択でナノ粒子、有機分子、及び固体支持体表面、任意選択でポリマー及び/又は無機ビーズからなる群から選択される。
【0113】
III.合成方法
本開示のバクテリオクロリンの調製における使用に適合させることができるバクテリオクロリンを合成する方法は、例えば、米国特許第8,664,260号及び同第8,980,565号に記載されており、これらの各々は、参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、式(II)の本開示の化合物は、適切なトランスベータ置換バクテリオクロリン、例えば、2つのベータ-バクテリオクロリン置換基がハロ(例えば、Br)置換基であるバクテリオクロリンを調製し、次いでベータ置換基を更に反応させてそれらを適切な水可溶化基で置き換えることによって調製することができる。トランスベータ置換バクテリオクロリンを合成する方法は以前に記載されている。例えば、Jiang et al.(2014)Org.Biomol.Chem.12:86-103;Chen et al.(2012)Inorg Chem 51:9443-9464を参照されたい。
【0114】
本開示の主題の化合物を合成するためのさらなる方法は、実施例に例示されている。特に、いくつかの実施形態では、本開示の主題は、以下の構造:
(式中、R及びRの一方はカルボン酸であり、R及びRの他方はアルキルカルボキシレートであり、R及びRは両方ともハロゲンであり、任意選択でR=Rであり、Rは水素であり、Mは金属であり、任意選択で金属は亜鉛、マグネシウム、金、アルミニウム、ケイ素、パラジウム、インジウム、スズ、銅及び白金からなる群から選択される)
のR位置及びR位置に同一でない置換基を有するバクテリオクロリン誘導体を合成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、Mは亜鉛である。
【0115】
限定ではなく例として、いくつかの実施形態では、本開示の主題は、化合物2の構造:
化合物2
を有する化合物を合成するための方法に関し、本方法は、図1に示され、実施例1に記載されている通りである。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、Jiang et al.(2014)Org Biomol Chem 12:86-103及びChen et al.(2012)Inorg Chem 51:9443-9464に記載されている方法を用いて合成することができる化合物1を提供すること、化合物1を2:1:1のTHF/MeOH/1 N NaOH水溶液に溶解すること、及びその溶液を約95℃に1~5分間(いくつかの実施形態では、4分間)加熱することを含む。加熱は、いくつかの実施形態では、マイクロ波で行うことができる。次いで、溶液を冷却し、その後、1NのHClでクエンチし、エタノールで希釈する。これにより有機層が形成され、これを回収し、食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させることができる。次いで、得られた混合物を濾過し、濃縮して、化合物2を得ることができる。
【0116】
その後、合成反応の生成物をカルボン酸で更に修飾して、他の基、例えば、限定するものではないがコンジュゲート可能な基、例えば、限定するものではないが、本明細書に開示されるものを有する化合物を生成することができる。カルボン酸基を修飾するための例示的な非限定的な方法は、図1及び図2並びに実施例1にも示されている。
【0117】
IV.薬学的組成物
本開示の主題の化合物は、薬学的に許容される塩として提供することができる。そのような塩としては、限定するものではないが、アミン塩、例えば、限定するものではないが、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミン及び他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、1-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-1’-イルメチル-ベンズイミダゾール、ジエチルアミン及び他のアルキルアミン、ピペラジン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン;アルカリ金属塩、例えば、限定するものではないが、リチウム、カリウム及びナトリウム;アルカリ土類金属塩、例えば、限定するものではないが、バリウム、カルシウム及びマグネシウム;遷移金属塩、例えば、限定するものではないが、亜鉛;並びに、他の金属塩、例えば、限定するものではないが、リン酸水素ナトリウム及びリン酸二ナトリウムが挙げられ、また、限定するものではないが、鉱酸の塩、例えば、限定するものではないが、塩化水素及び硫酸塩;及び有機酸の塩、例えば、限定するものではないが、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、及びフマル酸塩が挙げられる。薬学的に許容されるエステルとしては、限定するものではないが、酸性基(限定するものではないが、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、及びボロン酸)のアルキルエステル、アルケニルエステル、アルキニルエステル、アリールエステル、ヘテロアリールエステル、アラルキルエステル、ヘテロアラルキルエステル、シクロアルキルエステル、及びヘテロシクリルエステルが挙げられる。
【0118】
本開示の主題の化合物はまた、本明細書に記載の化合物のプロドラッグを含むことができる。上記のように、「プロドラッグ」は、in vivo投与時に、1つ以上の工程又はプロセスによって代謝されるか、そうでなければ化合物の生物学的、薬学的、又は治療的に活性な形態に変換される化合物である。プロドラッグを製造するために、薬学的に活性な化合物は、活性な化合物が代謝プロセスによって再生されるように修飾される。プロドラッグは、薬物の代謝安定性又は輸送特性を変化させ、副作用又は毒性をマスクし、薬物の風味を改善し、又は薬物の他の特徴若しくは特性を変化させるように設計することができる。in vivoでの薬力学的プロセス及び薬物代謝の知識により、当業者は、薬学的に活性な化合物が分かれば、その化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady(1985)Medicinal Chemistry A Biochemical Approach,Oxford University Press,New York,pages 388-392を参照されたい)。
【0119】
効用。本明細書に記載の方法及び中間体は、本明細書に記載の式(II)の化合物の合成に有用である。そのような化合物は、それ自体で、又は光線力学的療法について記載されている、例えば、Pandeyらの米国特許出願公開第2004/0044197号に記載されている他の化合物と同様に、また以下に更に詳細に記載されているように、診断及び治療目的のために更に修飾された形態(例えば、塩、金属化化合物、コンジュゲート、又はプロドラッグとして)で有用である。
【0120】
安定性。本開示の主題のバクテリオクロリン化合物のいくつかの実施形態の利点は、それらの安定性及び吸収特性である。したがって、本開示の主題は、本開示の主題の活性化合物(例えば、式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、若しくはコンジュゲート(例えば、タンパク質、ペプチド又は抗体などの標的薬剤との)からなる「ニート」組成物を提供し、当該組成物は、約600~約800ナノメートルの波長で、少なくとも10,000、最大300,000M-1cm-1又はそれ以上の溶液中のピークモル吸収係数を有するか、又はそれを特徴とする((a)示された波長におけるそのピークモル吸収係数を決定するために、活性化合物を溶液中に配置しなければならず、(b)化合物は、この範囲外にさらなるピーク、又はこの範囲内に複数のピークを示す場合がある、ことが理解される)。
【0121】
更に、本開示の主題は、溶媒中に式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくはコンジュゲート(例えば、タンパク質、ペプチド又は抗体などの標的薬剤との)を含むか又はそれから本質的になる組成物を提供する。溶媒の量は、重要ではなく、組成物の0.01又は1から99又は99.99重量%を構成することができる。本組成物は、約600~約800ナノメートルの波長で、少なくとも10,000、最大300,000M-1cm-1又はそれ以上の溶液中のピークモル吸収係数を有するか、又はそれを特徴とする。当然のことながら、モル吸収を決定する前に凝集粒子を溶液に戻すために必要に応じて撹拌を使用することができるが、本組成物の実際の使用にはある程度の凝集が望ましい場合がある。適切な溶媒は、特定の化合物及びその化合物の意図される用途によって異なるが、有機溶媒、水性溶媒、及びそれらの組み合わせの両方を含む。
【0122】
本組成物は、それらが「ニート」形態の1つ又は複数のバクテリオクロリン化合物、又は溶媒と混合された1つ又は複数のバクテリオクロリン化合物であれば、少なくとも3又は4ヶ月間、室温で周囲光の非存在下、密閉容器(例えば、フラスコのアンプル又はバイアル)で保存した場合、本開示の主題の1つ又は複数のバクテリオクロリン化合物の約10、15、又は20重量%以下の(その分解による)減少を有するか又は示す。分解は、公知の技術に従って、分光法、薄層クロマトグラフィ、NMR分光法、及び/又は質量分析法によって調べることができる。
【0123】
溶解度。本開示の主題の化合物のいくつかの実施形態の利点は、それらの水溶性である。したがって、本開示の主題は、限定するものではないが、(a)水性溶媒(例えば、蒸留水、生理食塩水、緩衝液)と、(b)水性溶媒に溶解した、約1、2、5又は10μMから200、300又は500mMの本明細書に記載の活性化合物とを含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる医薬製剤を含む組成物を提供する。
【0124】
薬学的組成物の製剤化。本明細書で提供される薬学的組成物は、薬学的に許容される担体中に、過剰増殖組織若しくは血管新生に関連する、又は過剰増殖組織若しくは血管新生が関与する疾患若しくは障害の1つ以上の症状の予防、治療、又は改善に有用な治療有効量の本明細書で提供される1つ以上の化合物を含有する。過剰増殖組織又は新生血管形成に関連する疾患又は障害としては、がん、乾癬、アテローム性動脈硬化症、心疾患、及び加齢黄斑変性が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される化合物の投与に適した医薬担体としては、特定の投与様式に適していることが当業者に知られている任意のそのような担体が挙げられる。
【0125】
本薬学的組成物は、好ましくは、上記の吸収特性及び貯蔵又は安定性特性を示す。
【0126】
更に、本化合物は、組成物中の唯一の薬学的活性成分として製剤化することができ、又は他の活性成分と組み合わせることができる。
【0127】
本組成物は、本明細書で提供される1つ以上の化合物(例えば、式(II)の化合物)を含有する。本化合物は、いくつかの実施形態では、経口投与のための、又は非経口投与のための滅菌溶液若しくは懸濁液中の、溶液、懸濁液、錠剤、分散性錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、徐放性製剤若しくはエリキシル剤、並びに経皮パッチ製剤及び乾燥粉末吸入器などの適切な医薬製剤に製剤化される。いくつかの実施形態では、上記の化合物は、当技術分野で周知の技術及び手順を使用して薬学的組成物に製剤化される(例えば、Ansel(1985)Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms,Fourth Edition.Lea&Febiger、Philadelphia、Pennsylvania、米国を参照されたい)。
【0128】
本組成物では、有効濃度の1つ以上の化合物又はその薬学的に許容される誘導体を適切な薬学的担体と混合する。本化合物は、上記のように、製剤化前に、対応する塩、エステル、エノールエーテル又はエステル、アセタール、ケタール、オルトエステル、ヘミアセタール、ヘミケタール、酸、塩基、溶媒和物、水和物又はプロドラッグの形に誘導体化することができる。本組成物中の化合物の濃度は、投与時に、過剰増殖組織若しくは血管新生に関連する、又は過剰増殖組織若しくは血管新生が関与する疾患又は障害の1つ以上の症状を治療、予防、又は改善する量の送達に有効である。
【0129】
いくつかの実施形態では、本組成物は、単回投与用に製剤化される。本組成物を製剤化するために、化合物の重量画分は、治療される状態が緩和されるか、予防されるか、又は1つ以上の症状が改善されるように、選択された担体中に有効濃度で溶解、懸濁、分散又は混合される。
【0130】
活性化合物(すなわち、式(II)の化合物又はその薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくはコンジュゲート)は、治療される患者に望ましくない副作用がない限りにおいて、治療上有用な効果を発揮するのに十分な量で薬学的に許容される担体に含まれる。治療有効濃度は、本明細書及びPandeyら(1999)の米国特許第5,952,366号に記載されているin vitro及びin vivoシステムで化合物を試験することによって経験的に決定することができ、次いでヒトの投与量をそこから外挿することができる。
【0131】
薬学的組成物中の活性化合物の濃度は、活性化合物の吸収、不活性化及び排泄速度、化合物の物理化学的特性、投与スケジュール及び投与量、並びに当業者に公知の他の因子によって異なり得る。例えば、送達される量は、本明細書に記載されるように、過剰増殖組織若しくは血管新生に関連するか、又は過剰増殖組織若しくは血管新生が関与する疾患又は障害の1つ以上の症状を改善するのに十分である。
【0132】
いくつかの実施形態では、治療有効投与量は、約0.1ng/mlから約50~100μg/mlの活性成分の血清濃度を生じるはずである。一実施形態では、治療有効投与量は、1日に体重1キログラム当たり0.001、0.01又は0.1から10、100又は1000mgの活性化合物である。医薬剤形は、単位剤形あたり約0.01mg、0.1mg又は1mgから約500mg、1000mg又は2000mg、いくつかの実施形態では約10mgから約500mgの活性成分又は必須成分の組み合わせを提供するように調製される。
【0133】
活性成分は、一度に投与することができ、又は時間間隔を置いて投与されるいくつかのより少ない用量に分割することができる。正確な投与量及び治療期間は、治療される疾患の関数であり、公知の試験プロトコルを使用して経験的に、又はin vivo若しくはin vitro試験データからの外挿によって決定することができることが理解される。濃度及び投与量の値は、緩和される状態の重症度によっても変動し得ることに留意されたい。任意の特定の対象について、特定の投与レジメンは、個々の必要性及び組成物の投与を管理又は監督する者の専門的判断に従って経時的に調整されるべきであり、本明細書に記載される濃度範囲は例示的なものにすぎず、特許請求される組成物の範囲又は実施を限定することを意図するものではないことを更に理解されたい。
【0134】
本化合物が不十分な溶解度を示す場合、化合物を可溶化する方法を用いることができる。そのような方法は当業者に公知であり、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの共溶媒の使用、ポリオキシエチレンソルビトールエステル(例えば、商品名TWEEN(登録商標)で販売されている)などの界面活性剤の使用、又は重炭酸ナトリウム溶液への溶解が挙げられるが、これらに限定されない。本化合物のプロドラッグなどの化合物の誘導体も、有効な薬学的組成物の製剤化に使用することができる。
【0135】
本化合物を混合又は添加したとき、得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり得る。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体又はビヒクル中の化合物の溶解度などの多くの要因によって異なる。有効濃度は、治療される疾患、障害又は状態の症状を改善するのに十分であり、経験的に決定することができる。
【0136】
本薬学的組成物は、適切な量の化合物又はその薬学的に許容される誘導体を含有する錠剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口液剤又は懸濁剤、及び経口液剤又は懸濁剤、及び油水乳剤などの単位剤形でヒト及び動物に投与するために提供される。薬学的に治療的に活性な化合物及びその誘導体は、いくつかの実施形態では、単位剤形又は複数剤形で製剤化され、投与される。本明細書で使用される単位剤形は、ヒト及び動物の対象に適した物理的に別個の単位を指し、当技術分野で公知のように個別に包装される。各単位用量は、必要な医薬担体、ビヒクル又は希釈剤と組み合わせて、所望の治療効果を生じるのに十分な治療活性化合物の所定量を含有する。単位剤形の例としては、アンプル及びシリンジ並びに個別に包装された錠剤又はカプセルが挙げられる。単位剤形は、その一部又は複数で投与することができる。複数剤形は、分離された単位投与形態で投与される単一容器に包装された複数の同一の単位剤形である。複数剤形の例としては、バイアル、錠剤若しくはカプセルの瓶又はパイント若しくはガロンの瓶が挙げられる。したがって、複数剤形は、包装において分離されない複数の単位投与量である。
【0137】
液体の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、上で定義されるような活性化合物(例えば、式(II)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、プロドラッグ若しくはコンジュゲート)及び任意の薬学的補助剤を、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどの担体に溶解、分散又は混合し、それにより溶液又は懸濁液を形成することによって調製することができる。必要に応じて、投与される薬学的組成物はまた、湿潤剤、乳化剤、可溶化剤、pH緩衝剤など、例えば、酢酸塩、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、酢酸トリエタノールアミンナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、及び他のそのような薬剤などの少量の非毒性補助物質を含有することができる。
【0138】
そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に公知であるか、又は明らかであり、例えば、Genaro,ed.(1985)Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania、米国を参照されたい。
【0139】
0.005%から100%の範囲の活性成分を含有し、残りが非毒性担体から構成される剤形又は組成物を調製することができる。これらの組成物の調製方法は、当業者に公知である。検討される組成物は、0.001%の~100%の活性成分含有することができ、一実施形態では、0.1~95%、別の実施形態では75~85%を含有することができる。
【0140】
経口投与用の組成物。経口医薬剤形は、固体、ゲル又は液体のいずれかである。固体剤形は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、及びバルク粉末である。経口錠剤の種類には、圧縮されたチュアブルなロゼンジ及び腸溶性コーティング、糖衣錠又はフィルムコーティングされ得る錠剤が含まれる。カプセルは、硬質又は軟質ゼラチンカプセルであり得るが、顆粒及び粉末は、当業者に公知の他の成分の組み合わせと共に非発泡性又は発泡性の形態で提供することができる。
【0141】
経口投与用の固体組成物。いくつかの実施形態では、製剤は、固体剤形であり、いくつかの実施形態では、カプセル又は錠剤である。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤などは、以下の成分:結合剤、潤滑剤、希釈剤、滑剤、崩壊剤、着色剤、甘味剤、香味剤、湿潤剤、催吐コーティング、及びフィルムコーティング、又は同様の性質の化合物のうちの1つ以上を含有することができる。結合剤の例としては、微結晶セルロース、トラガカントゴム、グルコース溶液、アカシア粘液、ゼラチン溶液、糖蜜、ポリイニルピロリジン、ポビドン、クロスポビドン、スクロース及びデンプンペーストが挙げられる。潤滑剤としては、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム、リコナトリウム及びステアリン酸が挙げられる。希釈剤としては、例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、カオリン、塩、マンニトール及びリン酸二カルシウムが挙げられる。滑剤としては、コロイド状二酸化ケイ素が挙げられるが、これに限定されない。崩壊剤としては、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、アルギン酸、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、ベントナイト、メチルセルロース、寒天及びカルボキシメチルセルロースが挙げられる。着色剤としては、例えば、承認され認証された水溶性FD及びC染料のいずれか、それらの混合物、及びアルミナ水和物に懸濁した水不溶性FD及びC色素が挙げられる。甘味剤としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、及びサッカリンなどの人工甘味剤、並びに任意の数の噴霧乾燥香味料が挙げられる。香味剤としては、果実などの植物から抽出された天然香味、及び、限定するものではないが、ペパーミント及びサリチル酸メチルなどの心地よい感覚を生じさせる化合物の合成ブレンドが挙げられる。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート及びポリオキシエチレンラウールエーテルが挙げられる。催吐コーティングとしては、脂肪酸、脂肪、ワックス、シェラック、アンモニア化シェラック、及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。フィルムコーティングとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ジェランガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000(PEG4000)及び酢酸フタル酸セルロースが挙げられる。
【0142】
本化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、それを胃の酸性環境から保護する組成物の中に入れて提供され得る。例えば、組成物は、胃内でその完全性を維持し、腸内で活性化合物を放出する腸溶性コーティング中に製剤化することができる。組成物は、制酸薬又は他のそのような成分と組み合わせて製剤化することもできる。単位剤形がカプセルである場合、それは、上記の種類の材料に加えて、脂肪油などの液体担体を含有することができる。更に、単位剤形は、単位剤形の物理的形態を改変する様々な他の材料、例えば、糖及び他の腸溶性コーティングを含み得る。本化合物はまた、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハー剤、散水剤、チューインガムなどの成分として投与することができる。シロップは、活性化合物に加えて、甘味剤としてのスクロース並びに特定の保存剤、染料及び着色料並びに香味料を含有することができる。
【0143】
活性物質は、所望の作用を損なわない他の活性物質、又は所望の作用を補う制酸薬、H2遮断薬、及び利尿薬などの物質と混合することもできる。活性成分は、本明細書に記載の化合物又はその薬学的に許容される誘導体である。より高い濃度の、最大で約98重量%の活性成分を含めることができる。
【0144】
いくつかの実施形態では、錠剤及びカプセル製剤は、活性成分の溶解を改善又は維持するために、当業者に公知のようにコーティングすることができる。したがって、例えば、従来の経腸的に消化可能なコーティング、例えば、フェニルサリシレート、ワックス及び酢酸フタル酸セルロースでコーティングすることができる。
【0145】
経口投与用の液体組成物。液体経口剤形としては、非発泡性顆粒から再構成された水溶液、エマルジョン、懸濁液、溶液及び/又は懸濁液、並びに発泡性顆粒から再構成された発泡性調製物が挙げられる。水溶液としては、例えば、エリキシル及びシロップが挙げられる。エマルジョンは、水中油型又は油中水型のいずれかである。
【0146】
エリキシルは、透明で甘味のある水性アルコール製剤である。エリキシル剤に使用される薬学的に許容される担体としては、溶媒が挙げられる。シロップは、糖、例えば、スクロースの濃縮水溶液であり、保存剤を含有することができる。エマルジョンは、一方の液体が他方の液体に全体にわたって小球の形態で分散している二相系である。エマルジョンに使用される薬学的に許容される担体は、非水性液体、乳化剤、及び保存剤である。懸濁剤は、薬学的に許容される懸濁剤及び保存剤を使用する。液体経口剤形に再構成される非発泡性顆粒に使用される薬学的に許容される物質としては、希釈剤、甘味料、及び湿潤剤が挙げられる。液体経口剤形に再構成される発泡性顆粒に使用される薬学的に許容される物質としては、有機酸及び二酸化炭素源が挙げられる。着色剤及び香味剤は、上記の剤形のすべてで使用される。溶媒としては、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール及びシロップが挙げられる。保存剤の例としては、グリセリン、メチル及びプロピルパラベン、安息香酸、安息香酸ナトリウム及びアルコールが挙げられる。エマルジョンに利用される非水性液体の例としては、鉱油及び綿実油が挙げられる。乳化剤としては、ゼラチン、アカシア、トラガカント、ベントナイト、及び界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが挙げられる。懸濁剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガカント、キサンタンガム、Veegum及びアカシアが挙げられる。甘味剤としては、スクロース、シロップ、グリセリン、及び人工甘味剤、例えば、サッカリンが挙げられる。湿潤剤としては、プロピレングリコールモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ジエチレングリコールモノラウレート及びポリオキシエチレンラウリルエーテルが挙げられる。有機酸としては、クエン酸及び酒石酸が挙げられる。二酸化炭素の供給源としては、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムが挙げられる。着色剤としては、任意の承認され認証された水溶性FD及びC染料、並びにそれらの混合物が挙げられる。香味剤としては、果物などの植物から抽出された天然香料、及び心地よい味覚を生じさせる化合物の合成ブレンドが挙げられる。固体剤形の場合、例えば、炭酸プロピレン、植物油又はトリグリセリド中の溶液又は懸濁液は、一実施形態ではゼラチンカプセルに封入される。そのような溶液、並びにその調製及び封入は、米国特許第4,328,245号、同第4,409,239号、及び同第4,410,545号に開示されている。液体剤形の場合、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液は、投与のために容易に測定するために、十分な量の薬学的に許容される液体担体、例えば、水で希釈することができる。
【0147】
あるいは、液体又は半固体経口製剤は、活性化合物又は塩を、植物油、グリコール、トリグリセリド、プロピレングリコールエステル(例えば、炭酸プロピレン)及び他のそのような担体に溶解又は分散させ、これらの溶液又は懸濁液を硬質又は軟質ゼラチンカプセルシェルにカプセル化することによって調製することができる。他の有用な製剤としては、米国再発行特許第28,819号及び米国特許第4,358,603号に記載されているものが挙げられる。簡潔には、そのような製剤としては、限定するものではないが、本明細書で提供される化合物であるジアルキル化モノ-又はポリアルキレングリコール、例えば、限定するものではないが、1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグライム、テトラグライム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテル(式中、350,550及び750はポリエチレングリコールのおおよその平均分子量を指す)、並びに、1つ以上の抗酸化剤、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、チオジプロピオン酸とそのエステル、及びジチオカルバメートが挙げられる。
【0148】
他の製剤としては、薬学的に許容されるアセタールを含むアルコール水溶液が挙げられるが、これらに限定されない。これらの製剤に使用されるアルコールは、限定するものではないが、プロピレングリコール及びエタノールなどの1つ以上のヒドロキシル基を有する任意の薬学的に許容される水混和性溶媒である。アセタールとしては、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
注射剤、液剤及び乳剤。いくつかの実施形態では、皮下、筋肉内又は静脈内などの注射を特徴とする非経口投与もまた本明細書で企図される。注射剤は、従来の形態で、液体の溶液若しくは懸濁液として、注射前に液体に溶解若しくは懸濁させるのに適した固体形態として、又はエマルジョンとして調製することができる。注射剤、溶液及びエマルジョンはまた、1つ以上の添加物を含有する。適切な添加物は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、又はエタノールである。更に、必要に応じて、投与される薬学的組成物はまた、少量の非毒性補助物質、例えば、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解度増強剤、及び他のそのような薬剤、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート及びシクロデキストリンを含有し得る。
【0150】
一定レベルの投与量が維持されるような徐放性系又は持続放出系の埋め込み(例えば、米国特許第3,710,795号を参照されたい)も本明細書で企図される。簡潔には、本明細書で提供される化合物は、固体内部マトリックス、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、可塑化又は非可塑化ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタレート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカーボネートコポリマー、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲルなどの親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール及び架橋部分加水分解ポリ酢酸ビニルの中に分散されており、固体内部マトリックスは、体液に不溶性の外側ポリマー膜、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルとの塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、アイオノマーであるポリエチレンテレフタレート、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール三元共重合体、及びエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体に囲まれている。本化合物は、放出速度制御段階において外側ポリマー膜を通って拡散する。そのような非経口組成物に含まれる活性化合物の割合は、その特定の性質、並びに化合物の活性及び対象の必要性に応じて大きく異なる。
【0151】
本組成物の非経口投与としては、静脈内、皮下及び筋肉内投与が挙げられる。非経口投与用の調製物としては、すぐに注射できる滅菌溶液、使用直前に溶媒とすぐに組み合わせることができる凍結乾燥粉末などの滅菌乾燥可溶性製品、例えば、すぐに皮下注射することができる滅菌懸濁液、使用直前にすぐにビヒクルと組み合わせることができる滅菌乾燥不溶性製品、及び滅菌エマルジョンが挙げられる。溶液は、水性又は非水性のいずれかであり得る。
【0152】
静脈内投与される場合の適切な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びにグルコース、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール並びにそれらの混合物などの増粘剤及び可溶化剤を含有する溶液が挙げられる。
【0153】
非経口製剤に使用される薬学的に許容される担体としては、水性ビヒクル、非水性ビヒクル、抗菌剤、等張剤、バッファー、抗酸化剤、局所麻酔剤、懸濁化剤及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート剤、並びに他の薬学的に許容される物質が挙げられる。
【0154】
水性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張性デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸加リンゲル注射液が挙げられる。非水性非経口ビヒクルとしては、植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油及び落花生油が挙げられる。静菌濃度又は静真菌濃度の抗菌剤を複数回投与用容器に包装された非経口製剤に加えることができ、抗菌剤としては、フェノール又はクレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムが挙げられる。等張剤としては、塩化ナトリウム及びデキストロースが挙げられる。緩衝剤としては、リン酸塩及びクエン酸塩が挙げられる。抗酸化剤としては、重硫酸ナトリウムが挙げられる。局所麻酔薬としては、塩酸プロカインが挙げられる。懸濁剤及び分散剤としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンが挙げられる。乳化剤としては、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)が挙げられる。金属イオンの捕捉剤又はキレート剤としては、EDTAが挙げられる。薬学的担体としては、水混和性ビヒクルのためのエチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコール、並びに、pH調整のための水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸も挙げられる。
【0155】
薬学的に活性な化合物の濃度は、注射が所望の薬理的効果をもたらす有効量が得られるように調整することができる。正確な用量は、当技術分野で知られているように、患者又は動物の年齢、体重及び状態によって異なる。
【0156】
単位用量の非経口製剤は、アンプル、バイアル、又は針付きシリンジに入れられる。非経口投与用のすべての調製物は、当技術分野で知られており、実施されているように、無菌でなければならない。
【0157】
例示的には、活性化合物を含有する滅菌水溶液の静脈内又は動脈内注入が有効な投与様式である。別の実施形態は、所望の薬理的効果をもたらすために必要に応じて注入される活性物質を含有する滅菌水性又は油性溶液又は懸濁液である。
【0158】
注射剤は、局所及び全身投与用に設計されている。一実施形態では、治療有効投与量は、治療される組織に対して、少なくとも約0.1%w/wから約90%w/w又はそれ以上の濃度、特定の実施形態では、1%w/w超の濃度の活性化合物を含むように製剤化される。
【0159】
本化合物は、微粒子化された形態若しくは他の適切な形態で懸濁することができ、あるいは、より可溶性の活性生成物を生成するように、又はプロドラッグを生成するように誘導体化することができる。得られる混合物の形態は、意図される投与様式及び選択された担体又はビヒクル中の化合物の溶解度などの多くの要因によって異なる。有効濃度は、状態の症状を改善するのに十分であり、経験的に決定することができる。
【0160】
凍結乾燥粉末。溶液、エマルジョン、及び他の混合物として投与するために再構成することができる凍結乾燥粉末もまた、本開示の主題を実施するために使用することができる。それらは、固体又はゲルとして再構成及び製剤化することもできる。
【0161】
滅菌凍結乾燥粉末は、本明細書で提供される化合物又はその薬学的に許容される誘導体を適切な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は、粉末又は粉末から調製された再構成溶液の安定性又は他の薬理的成分を改善する添加物を含むことができる。使用され得る添加物としては、限定するものではないが、デキストロース、ソルビタール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース、又は他の適切な薬剤が挙げられる。溶媒はまた、クエン酸塩、リン酸ナトリウム若しくはリン酸カリウムなどのバッファー、又は当業者に公知の他のそのようなバッファー、一実施形態では、中性程度のpHのバッファーを含むことができる。溶液のその後の滅菌濾過と、これに続く当業者に公知の標準条件下での凍結乾燥によって、所望の製剤が得られる。一実施形態では、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアルに分配される。各バイアルは、単一投与量又は複数投与量の化合物を含有することができる。凍結乾燥粉末は、適切な条件下、例えば、約4℃から室温で保存することができる。
【0162】
この凍結乾燥粉末を注射用水で再構成することにより、非経口投与に使用するための製剤が得られる。再構成のために、凍結乾燥粉末を滅菌水又は別の適切な担体に添加する。正確な量は、選択される化合物によって異なる。そのような量は経験的に決定することができる。
【0163】
局所投与。局所混合物は、局所投与及び全身投与について記載されるように調製される。得られる混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり得、クリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、フォーム、エアロゾル、灌注、スプレー、坐剤、包帯、皮膚パッチ、又は局所投与に適した任意の他の製剤として製剤化される。
【0164】
本化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、吸入などによる局所適用のためのエアロゾルとして製剤化することができる(例えば、炎症性疾患、特に喘息の治療に有用なステロイドを送達するためのエアロゾルを記載している米国特許第4,044,126号を参照されたい。同第4,414,209号、及び同第4,364,923号を参照されたい)。気道へ投与するためのこれらの製剤は、単独で、又はラクトースなどの不活性担体と組み合わせて、ネブライザー用のエアロゾル若しくは溶液の形態で、又は吹送用の微細粉末の形であり得る。そのような場合、製剤の粒子は、いくつかの実施形態では、50ミクロン未満の直径、いくつかの実施形態では10ミクロン未満の直径を有する。
【0165】
本化合物は、局所又は局所適用のために、例えば、皮膚及び粘膜、例えば、眼への局所適用のために、ゲル、クリーム及びローションの形態で、並びに眼への適用のために、又は大槽内又は脊髄内適用のために製剤化することができる。経皮送達用に、また眼若しくは粘膜への投与用に、又は吸入療法のために局所投与が企図される。活性化合物の単独の又は他の薬学的に許容される添加物と組み合わせた経鼻溶液を投与することもできる。これらの溶液、特に眼科使用を意図したものは、適切な塩を含む0.01%~10%等張溶液(pH約5~7)として製剤化することができる。
【0166】
他の投与経路用の組成物。本明細書では、イオントフォレシスデバイス及び電気泳動デバイスを含む経皮パッチ、並びに直腸投与などの他の投与経路も企図される。
【0167】
光泳動デバイス及び電気泳動デバイスを含む経皮パッチは、当業者に周知である。例えば、そのようなパッチは、米国特許第6,267,983号、同第6,261,595号、同第6,256,533号、同第6,167,301号、同第6,024,975号、同第6,010715号、同第5,985,317号、同第5,983,134号、同第5,948,433号、及び同第5,860,957号に開示されている。
【0168】
例えば、直腸投与用の医薬剤形は、全身的作用のための直腸坐剤、カプセル剤及び錠剤である。直腸坐剤は、本明細書において、直腸に挿入するための、1つ以上の薬理的又は治療的に活性な成分を放出する体温で融解又は軟化する固形物を意味する。直腸坐剤に利用される薬学的に許容される物質は、基剤又はビヒクル及び融点を上昇させるための薬剤である。基剤の例としては、ココアバター(テオブロマ油)、グリセリン-ゼラチン、カルボワックス(ポリオキシエチレングリコール)及び脂肪酸のモノ-、ジ-及びトリグリセリドの適切な混合物が挙げられる。種々の基剤の組み合わせを使用することができる。坐剤の融点を上昇させる薬剤としては、鯨嚢及びワックスが挙げられる。直腸坐剤は、圧縮法又は成形のいずれかによって調製することができる。直腸坐剤の重量は、一実施形態では、約2から3グラムである。
【0169】
直腸投与用の錠剤及びカプセルは、経口投与用の製剤と同じ薬学的に許容される物質を使用し、同じ方法によって製造される。
【0170】
標的製剤。本明細書で提供される化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、治療される対象の身体の特定の組織、受容体、感染性病原体、又は他の領域を標的とするように製剤化することもできる。多くのこのような標的化方法は、当業者に周知である。そのような標的化方法はすべて、本発明の組成物に使用するために本明細書で企図される。標的化方法の非限定的な例については、例えば、米国特許第6,316,652号、同第6,274,552号、同第6,271,359号、同第6,253,872号、同第6,139,865号、同第6,131,570号、同第6,120,751号、同第6,071,495号、同第6,060,082号、同第6,048,736号、同第6,039,975号、同第6,004,534号、同第5,985,307号、同第5,972,366号、同第5,900,252号、同第5,840,674号、同第5,759,542号、及び同第5,709,874号を参照されたい。
【0171】
リポソーム。いくつかの実施形態では、腫瘍標的化リポソームなどの組織標的化リポソームを含むリポソーム懸濁液も、薬学的に許容される担体として好適であり得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製することができる。例えば、リポソーム製剤は、米国特許第4,522,811号に記載されているように調製することができる。簡潔には、卵ホスファチジルコリン及び脳ホスファチジルセリン(モル比7:3)をフラスコの中で乾燥させることによって、多層小胞(MLV)などのリポソームを形成することができる。二価カチオンを欠くリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の本明細書で提供される化合物の溶液を添加し、脂質膜が分散するまでフラスコを振盪する。得られた小胞を洗浄して非カプセル化化合物を除去し、遠心分離によってペレット化し、次いでPBSに再懸濁する。
【0172】
リガンド。いくつかの実施形態では、本開示の化合物は、特定の標的組織又は標的組成物を、その標的組織又は標的組成物に特異的なリガンドを使用して、例えば、抗体及び抗原などのリガンド又はリガンド-受容体対を使用して、標的化することができる。腫瘍抗原及び病原体に対する抗体は公知である。例えば、腫瘍又はウイルス感染、細菌感染、真菌感染及び寄生虫感染などの感染性病変によって産生されるか、又はそれらに関連するマーカーに特異的に結合する抗体及び抗体断片、並びにそのような微生物に関連する抗原及び産物は、とりわけ、Hansenらの米国特許第3,927,193号及びGoldenbergの米国特許第4,331,647号、同第4,348,376号、同第4,361,544号、同第4,468,457号、同第4,444,744号、同第4,818,709号、及び同第4,624,846号に開示されている。抗原、例えば、胃腸、肺、乳房、前立腺、卵巣、精巣、脳又はリンパの腫瘍、肉腫又は黒色腫に対する抗体を使用することができる。
【0173】
感染性病原体に対する多種多様なモノクローナル抗体が開発されており、容易な利用可能性を示すPolin(1984)Eur J Clin Microbiol 3(5):387-398による総説にまとめられている。これらには、例えば、以下:ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、レジュネラ-ニューモフィラ菌(Legionella pneumophilia)、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)、大腸菌(Esherichia coli)、淋菌(Neisseria gonorrhosae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、肺炎球菌(Pneumococcus)、インフルエンザ菌B(Hemophilis influenzae B)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)、ライム病(Lyme disease)、スピロヘータ(spirochetes)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、らい菌(Mycobacterium leprae)、ウシ流産菌(Brucella abortus)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、破傷風毒素(Tetanus toxin)、抗原虫Mab(Anti-protozoan Mabs、例えば、マラリア病原虫(Plasmodium falciparum)に対するもの)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)、ランゲルトリパノソーマ(Trypanosoma rangeli)、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)、ローデシアトリパノソーマ(Trypanosoma rhodesiensei)、ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、日本住血吸虫(Schistosoma japanicum)、ネズミ中殖条虫(Mesocestoides corti)、ニワトリ盲腸コクシジウム(Emeria tenella)、回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)、熱帯リーシュマニア(Leishmania tropica)、旋毛虫(Trichinella spiralis)、東沿岸熱タイレリア(Theileria parva)、辺縁条虫(Taenia hydatigena)、羊条虫(Taenia ovis)、無鉤条虫(Taenia saginata)、抗ウイルスMAb(Anti-viral Mabs、例えば、HIV-1、HIV-2、及びHIV-3、A、B、C、D型肝炎(Hepatitis)に対するもの)、狂犬病ウイルス(Rabies virus)、インフルエンザウイルス(Influenza virus)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex)I及びII、ヒト血清パルボ様ウイルス(Human serum parvo-like virus)、呼吸器合胞体ウイルス(Respiratory syncytial virus)、水痘帯状ヘルペスウイルス(Varicella-Zoster virus)、B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus)、麻疹ウイルス(Measles virus)、アデノウイルス(Adenovirus)、ヒトT細胞白血球ウイルス(Human T-cell leukemia viruses)、エプスタイン・バー・ウイルス(Epstein-Barr virus)、ムンプス・ウイルス(Mumps virus)、シンドビス・ウイルス(Sindbis virus)、マウス乳がんウイルス(Mouse mammary tumor virus)、猫白血病ウイルス(Feline leukemia virus)、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(Lymphocytic choriomeningitis virus)、いぼウイルス(Wart virus)、ブルータングウイルス(Blue tongue virus)、センダイウイルス(Sendai virus)、レオウイルス(Reo virus)、ポリオウイルス(Polio virus)、テングウイルス(Dengue virus)、風疹ウイルス(Rubella virus)、マウス白血病ウイルス(Murine leukemia virus)、抗マイコプラズマMAb(Antimycoplasmal MAbs、例えば、アコレプラズマ・レイドロウイ(Acholeplasma laidlawii)に対するものなど)、マイコプラズマ・アルスリチジス(Mycoplasma arthritidis)、M・ハイオリニス(M.hyorhinis)、M・オラーレ(M.orale)、M・アルギニニ(M.arginini)、M・肺炎(M.pneumonia)の病原体及びそれらの抗原に対するモノクローナル抗体(MAb)が含まれる。
【0174】
適切なMAbは、ヒトにおける感染の大部分を担う微生物(細菌、ウイルス、原虫、他の寄生生物)の大部分に対して開発されており、多くはin vitro診断目的のために従来使用されている。これらの抗体、及び従来の方法によって作製され得るより新しいMAbは、本明細書に提供される化合物を用いた標的薬剤としての使用に適している。
【0175】
マラリア寄生生物に対するMAbは、スポロゾイト、メロゾイト、シゾント及び生殖母体期に対するものであり得る。モノクローナル抗体は、スポロゾイト(サーカムスポロゾイト抗原)に対して産生され、in vitro及びげっ歯類においてスポロゾイトを中和することが分かっている。Yoshidaら(1980)Science 207:71-73を参照されたい。トキソプラズマ症に関与する原虫であるT.gondiiに対するモノクローナル抗体が開発されている。Kasperら(1982)J Immunol 129:1694-1699を参照されたい。MAbは、シストソムラ表面抗原に対して開発されており、in vivo又はin vitroでシストソムラに対して作用することが見出されている。Simpsonら(1981)Parasitology 83:163-177、Smithら(1982)Parasitology 84:83-91、Gryzchら(1982)J Immunol 129:2739-2743、Zoddaら(1982)J Immunol 129:2326-2328、及びDissousら(1982)J Immunol 129:2232-2234を参照されたい。
【0176】
抗体と免疫グロブリンクラスの混合物を使用することができ、抗体をハイブリッド化することができる。二重特異性及びハイブリッドを含む多重特異性抗体及び抗体断片は、標的組織を検出及び治療するための本開示の主題の方法において特に好ましく、少なくとも2つの異なる実質的に単一特異性の抗体又は抗体断片で構成され、当該抗体又は抗体断片の少なくとも2つは、標的病変で産生された、又は標的病変に関連する少なくとも2つの異なる抗原、又は標的組織で産生された、又は標的組織に関連するマーカー物質の少なくとも2つの異なるエピトープ又は分子に特異的に結合する。二重特異性を有する多重特異性抗体及び抗体断片は、米国特許第4,361,544号に開示されている抗腫瘍マーカーハイブリッドと同様に調製することができる。ハイブリッド抗体を調製するための他の技術は、例えば、米国特許第4,474,893号及び同第4,479,895号、並びにMilsteinら(1984)Immunol Today 5:299に開示されている。
【0177】
本開示の主題において有用な抗体断片としては、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、Fv、及びハイブリッド断片を含む同等のものが挙げられる。好ましい断片は、Fab’、F(ab’)、Fab、及びF(ab)である。免疫グロブリンの超可変抗原結合領域を保持し、Fab’断片と同様の又はそれより小さいサイズを有する任意のサブ断片も有用である。これは、抗原結合部位を組み込み、そうでなければ天然免疫グロブリン断片と実質的に同じ方法で標的化ビヒクルとしてin vivoで機能する、一本鎖又は多重鎖にかかわらず、遺伝子操作されたタンパク質及び/又は組換えタンパク質を含み得る。そのような一本鎖結合分子は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,946,778号に開示されている。Fab’抗体断片は、F(ab’)断片の還元的切断によって簡便に作製することができ、F(ab’)断片自体は、インタクトな免疫グロブリンのペプシン消化によって作製することができる。Fab抗体断片は、還元条件下でのインタクトな免疫グロブリンのパパイン消化によって、又は全免疫グロブリンの入念なパパイン消化から生じるF(ab)断片の切断によって作製することができる。
【0178】
リガンド又はリガンド-受容体結合対の1つのメンバーは、本化合物を特定の標的組織又は標的組成物に標的化するために、本明細書に提供される化合物にコンジュゲートされ得る。リガンド-受容体結合対の例は、米国特許第4,374,925号及び同第3,817,837号に記載されており、その教示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0179】
リガンドへのコンジュゲーション。リガンド-受容体結合対、より具体的には抗体の標的として役立ち得る多くの化合物が同定されており、このようなリガンドと式(II)の化合物とのコンジュゲートを構築する技術は当業者に周知である。例えば、Rakestrawら、1990は、修飾デキストランキャリアを使用して、共有結合を介してモノクローナル抗体にSn(IV)クロリンをコンジュゲートさせることを教示している。Rakestrawら(1990)Proc Nad Acad Sci USA 87:4217-4221を参照されたい。本明細書に開示される化合物は、カップリング剤を使用することによって、抗体などのリガンドにコンジュゲートさせることもできる。投与及び治療に必要な時間にわたって生理学的条件下で安定であるように成分を連結することができる任意の結合が適しているが、共有結合が好ましい。2つの成分間の連結は、例えば、式(II)の化合物が標的薬剤に直接連結される場合には直接的であり得、又は例えば、式(II)の化合物が中間体に連結され、その中間体が標的薬剤に連結される場合には間接的であり得る。
【0180】
カップリング剤は、温度、pH、塩、溶媒系、及び光増感剤、骨格(存在する場合)、及び標的薬剤の化学的安定性を実質的に保持する他の反応物の条件下で機能しなくてはならない。カップリング剤は、式(II)の化合物又は標的薬剤の変性又は不活性化が最小限であるか、又は全くないように、成分部分を安定に連結しなければならない。多くのカップリング剤は、アミン及びカルボキシレートと反応してアミドを形成するか、又はアルコール及びカルボキシレートと反応してエステルを形成する。カップリング剤は当技術分野で公知である。例えば、Bodansky(1993)Principles of Peptide Synthesis、第2版、Springer-Verlag、ニューヨーク市、ニューヨーク州、米国、及びHermanson(1996)Bioconjugate Techniques、第1版、Academic Press、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国を参照されたい。
【0181】
本明細書で提供される化合物と抗体などのリガンドとのコンジュゲートは、N末端を介した抗体へのペプチド結合を介して化合物上のカルボン酸又はエステル部分をカップリングすることによって、又は当技術分野で公知の他の方法によって、化合物を標的化部分にカップリングすることにより調製することができる。架橋結合剤などの様々なカップリング剤を共有結合性コンジュゲーションに使用することができる。架橋結合剤の例としては、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N-スクシンイミジル-5-アセチル-チオアセテート(SATA)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、オルト-フェニレン-ジマレイミド(o-PDM)、及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)が挙げられる。例えば、Karpovskyら(1984)J Exp Med 160:1686、Liuら(1985)Proc Natl Acad Sci USA 82:8648を参照されたい。他の方法としては、Brennanら(1985)Science 229:81-83及びGlennieら(1987)J Immunol 139:2367-2375に記載されているものが挙げられる。
【0182】
例えば、DCCは、ポリリジンに架橋することができる活性化エステルを形成する、DMSO中のバクテリオクロリンカルボン酸基へのアルコールNHSのカップリングを促進するために使用することができる有用なカップリング剤である。DCCは、ペプチド合成においてカップリング剤として一般的に使用されるカルボキシ反応性架橋剤であり、206.32の分子量を有する。別の有用な架橋結合剤は、第一級アミン及びスルフヒドリル基と共に使用するためのヘテロ二官能性架橋結合剤であるSPDPである。SPDPは、312.4の分子量、6.8オングストロームのスペーサアーム長を有し、NHS-エステル及びピリジルジチオ基に反応性であり、切断可能な架橋を生成し、それにより、さらなる反応時に、薬剤が除去され、その結果、光増感剤を骨格又は標的薬剤に直接連結することができる。他の有用なコンジュゲート化剤は、ヒドロキシルアミン-HClで脱ブロックされる2段階架橋のためのブロック化SH基を導入するためのSATA、及びアミン及びスルフヒドリルに対して反応性であるスルホ-SMCCである。他の架橋結合剤及びカップリング剤もPierce Chemical Co.から入手可能である。追加の化合物及び方法、特に、タンパク質を他のタンパク質又は他の組成物、例えばレポーター基又はタンパク質の金属イオン標識化のためのキレート剤にコンジュゲートするための中間体としてシッフ塩基を含むものは、欧州特許出願公開0243929号に開示されている。
【0183】
カルボキシル基を含有する光増感剤は、予め形成された反応性エステル(N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルなど)又はカルボジイミド媒介反応によってin situでコンジュゲートされたエステルのいずれかによって、標的ポリペプチド中のリジンε-アミノ基に結合させることができる。同じことが、スルホン酸基を含有する光増感剤にも当てはまり、これは、アミノ基と反応する塩化スルホニルに変換することができる。カルボキシル基を有するバクテリオクロリンは、in situカルボジイミド法によってポリペプチド上のアミノ基に結合することができる。バクテリオクロリンはまた、セリン残基若しくはトレオニン残基のヒドロキシル基、又はシステイン残基のスルフヒドリル基に結合することができる。
【0184】
コンジュゲートの成分を接合する方法、例えば、光増感剤を有するポリアミノ酸鎖を抗菌ポリペプチドにカップリングする方法は、ヘテロ二官能性架橋試薬を使用することができる。これらの薬剤は、一方の鎖の官能基及びもう一方の鎖の異なる官能基に結合する。これらの官能基は、典型的には、アミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、及びアルデヒドである。これらの基と、別様に策定された構造で反応して、それらと共にコンジュゲートする適切な部分の組み合わせが多く存在する。Hermanson(1996)Bioconjugate Techniques、第1版 Academic Press、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、及びMerrifieldら(1994)Ciba Found Symp 186:5-20を参照されたい。
【0185】
本化合物又はその薬学的に許容される誘導体は、包装材料と、本明細書で提供される化合物又はその薬学的に許容される誘導体であって、過剰増殖組織若しくは新生血管形成の活性を調節するために有効な、あるいは過剰増殖組織若しくは新生血管形成が媒介する疾患若しくは障害、又は過剰増殖組織若しくは新生血管形成の活性が関与する疾患若しくは障害の1つ以上の症状を治療、予防若しくは改善するために有効である、包装材料内の化合物又はその薬学的に許容される誘導体と、本化合物又は組成物又はその薬学的に許容される誘導体が、過剰増殖組織若しくは新生血管形成の活性を調節するために、又は過剰増殖組織若しくは新生血管形成が媒介する疾患若しくは障害、又は過剰増殖組織若しくは新生血管形成が関与する疾患若しくは障害の1つ以上の症状を治療、予防若しくは改善するために使用されることを示すラベルと、を含む製造品として包装することができる。
【0186】
本明細書で提供される製造品は、包装材料を含む。医薬品の包装に使用するための包装材料は、当業者に周知である。例えば、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号、及び同第5,033,252号を参照されたい。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、ボトル、並びに選択された製剤及び意図された投与様式や治療様式に適した任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される化合物及び組成物の広範囲の製剤は、過剰増殖組織又は血管新生が症状又は原因のメディエーター又は誘因として関与する任意の疾患又は障害の様々な治療と同様に企図される。
【0187】
V.限定するものではないが、光線力学的療法、診断及び治療用途などの使用方法
いくつかの実施形態では、本開示の化合物(又はその薬学的に許容される塩若しくはコンジュゲート)は、光線力学的療法(PDT)を含む疾患(例えば、過剰増殖性疾患、がんなど)を治療する方法において光増感剤として作用することができる。簡潔には、光増感化合物、そのコンジュゲート又は薬学的組成物は、一般に、標的組織、標的組成物又は対象が光による照明に供される前に対象に投与される。光増感化合物は、本明細書の他の箇所に記載されるように投与される。
【0188】
光増感化合物の用量は、臨床的に決定することができる。使用される光増感化合物に応じて、同等の最適な治療レベルを確立する必要がある。循環又は局所送達された光増感剤が標的組織によって取り込まれるために、一定の時間が経過する場合がある。未結合光増感剤は、この待機期間中に血液循環から除去され、又は任意選択で未結合化合物を非標的組織から除去するために追加の時間を設けることができる。待機期間は臨床的に決定することができ、化合物ごとに異なり得る。
【0189】
この待機期間の終わりに、レーザー光源又は非レーザー光源(限定するものではないが、蛍光若しくは白熱光などの人工光源、又は周囲太陽光などの自然光源など)を使用して、結合した薬物を活性化する。照明面積は、検出、診断、又は治療される病変領域の位置及び寸法によって決定される。照射期間の持続時間は、検出又は治療が行われているかどうかによって異なり得、経験的に決定することができる。約4分~約72時間の任意の時間の合計又は累積期間を用いることができる。いくつかの実施形態では、照明期間は、約60分~148時間である。いくつかの実施形態では、照明期間は約2時間~24時間である。
【0190】
照射に使用される光の総フルエンス又はエネルギーは、ジュールで測定した場合、いくつかの実施形態では、約10ジュール~約25,000ジュールであり、いくつかの実施形態では、約100ジュール~約20,000ジュールであり、いくつかの実施形態では、約500ジュール~約10,000ジュールである。蛍光による検出用、又は標的組織若しくは標的組成物を破壊若しくは損傷する治療的処置用にかかわらず、所望の効果をもたらすのに十分な波長及びフルエンスの光が選択される。光増感剤の特徴的な光吸収波長に少なくとも部分的に対応する波長を有する光を、標的組織を照射するために使用することが好ましい。
【0191】
使用される光の強度又はパワーはワットで測定され、各ジュールは1ワット秒に等しい。したがって、本開示の方法で照射に使用される光の強度は、実質的に500mW/cm未満であり得る。ジュール単位の総フルエンス又は光のエネルギー量は秒単位の総露光時間の持続時間で除算されるため、ターゲットが照射に曝される時間が長いほど、使用される光の強度の量を増加させることなく、総エネルギー又はフルエンスの量を増やすことができる。本開示の主題は、光増感剤を活性化するのに十分に高い照射の全フルエンスの量を使用する。
【0192】
光線力学的療法のために本明細書に開示される化合物を使用するいくつかの実施形態では、本化合物を診断又は治療するために哺乳動物、例えば、ヒトに注射する。注射の濃度は、通常、約0.1~約0.5μmol/kg体重である。治療の場合、治療される領域は、所望の波長及びエネルギー、例えば、約10から200J/cmの光に曝露される。検出の場合、蛍光は、本化合物を照明するために使用される波長とは異なる波長で化合物を蛍光を発光させるのに十分な波長の光に曝露される際に決定される。検出に使用されるエネルギーは、蛍光を生じさせるのに十分であり、通常、治療に必要なエネルギーよりも著しく低い。
【0193】
本明細書に開示される光増感化合物又はその薬学的に許容される誘導体のいずれか1つは、本明細書に開示される方法のいずれかを実施する際の説明書と共にキットで供給することができる。説明書は、印刷された紙、本方法をどのように行うかを人に指示するコンピュータディスク、本方法をどのように行うかについての指示を含むビデオカセット、又は遠隔地からデータを受信し、説明するか、そうでなければ人に(インターネットなどを介して)説明書を提供するコンピュータメモリなどの任意の有形の形態であり得る。人は、例えば、上記の説明書のいずれかを使用して、又は教室で、若しくは本明細書に開示される方法のいずれかを使用して患者を治療する過程で説明を受けることによって、キットの使用方法を説明され得る。
【0194】
本開示の主題の化合物及び組成物を使用する方法のさらなる例及び具体例としては、限定するものではないが、以下が挙げられる。
(i)日和見感染症状の治療本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、日和見感染症、特に軟部組織のPDTに有用である。感染症、特に創傷感染症の抗菌処置(PDTによる)に関する感染生物としては、(非限定的な例として)黄色ブドウ球菌、緑膿菌、大腸菌が挙げられる。院内感染では、手術創感染の8%及び血流感染の10%の原因は緑膿菌である。いくつかの実施形態では、対象は、免疫減弱状態の対象、例えば、AIDSに罹患している対象又は免疫抑制剤による治療を受けている対象である。
(ii)火傷の治療黄色ブドウ球菌及びグラム陽性菌による感染は、一般に、熱傷において特に顕著である。黄色ブドウ球菌の多剤耐性は、重大な医学的課題を呈する。これに関して、本開示の主題の化合物、組成物及び方法は、熱傷の日和見感染症の治療に有用である。
(iii)敗血症本開示の主題の化合物、組成物及び方法は、ビブリオ・バルニフィカス(Vibrio vulnificus)の日和見感染症に罹患している対象のPDT処置に有用である。グラム陰性菌であるV・バルニフィカス(V.vulnificus)は、ヒトにおいて原発性敗血症、創傷感染及び胃腸疾患を引き起こす。
(iv)潰瘍本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、潰瘍を引き起こす細菌(ピロリ菌)のPDT治療に有用である。診療所では、治療は、光ファイバーケーブル(内視鏡に似ているが、赤色又は近赤外光の送達のための装備を備えている)を胃又は罹患領域に挿入するなどの任意の適切な方法で行うことができる。
(v)歯周病本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、歯肉炎などの歯周病の治療のためのPDTに有用である。歯周病は、グラム陰性嫌気性ポルフィロモナス・ギンジバリス(Porphyromonas gingivalis)などの細菌の過剰増殖によって引き起こされる。多くのPDT処置と同様に、光活性種と組み合わせた標的化又は可溶化実体は、光活性種を所望の細胞へ適切に送達するのに不可欠である。標的化の目的の口腔病原体としては、ポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)、アクチノバチルス・アクチノミセタムコミタンス(Actinobacillus actinonzycetemcomitans)、バクテロイデス・フォーサイセンシス・カンピロバクター・レクタス(Bacteroides forsythus Campylobacter rectus)、エイケネラ・コローデンス(Eikenella corrodens)、フソバクテリウム・ヌクレアタム亜種(Fusobacterium nucleatum subsp)ポリモルフム(Polymorphum)、アクチノマイセス・ビスコサス(Actinomyces viscosus)、及び連鎖球菌(streptococci)が挙げられる。そのような用途のために、本開示の主題の化合物又は組成物を局所的に適用し(例えば、マウスウォッシュ又はリンスとして)、次いで、外部装置、口腔内器具、又はそれらの組み合わせを用いて光を投与することができる。
(vi)アテローム性動脈硬化症本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、脆弱なアテローム斑を治療するためのPDTにおいて有用である。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、浸潤する炎症性マクロファージは、冠動脈のコラーゲンの薄層を分解するメタロプロテイナーゼを分泌し、しばしば致死的である血栓症をもたらすと考えられている。このような炎症性マクロファージを標的とする活性化合物は、脆弱なプラークのPDTに有用である。
(vii)美容及び皮膚科の用途本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、脱毛、乾癬の治療、又は皮膚の変色の除去などの広範囲の美容や皮膚科の問題を治療するためにPDTにおいて有用である。ルビーレーザーは、現在、脱毛のために使用されており、多くのレーザー処理において、メラニンは光増感発色団である。このような処理は、暗い色の毛髪を有する色白の個体に適度によく作用する。本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、毛髪除去のための近IR増感剤として使用することができ、これはより特異的で鋭い吸収帯を有する発色団を標的とすることを可能にする。
(viii)ざ瘡本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、ざ瘡を治療するためのPDTにおいて有用である。尋常性ざ瘡は、脂腺に感染するアクネ菌(Propionibacterium acnes)によって引き起こされ、若年者の約80%が罹患している。ここでも、抗生物質治療に対する細菌の耐性の増大は、治療が困難なざ瘡の急増につながる。ざ瘡の現在のPDT処置は、典型的には、毛包又は脂腺において遊離塩基ポルフィリンに変換されるアミノレブリン酸の添加に頼っている。本開示の主題の化合物及び組成物は、特定の状態に応じて、対象に局所的又は非経口的に(例えば、皮下注射によって)投与することができる。
(ix)感染症本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、感染症を治療するためのPDTにおいて有用である。例えば、地中海沿岸及び中東地域で広範囲に発生する皮膚リーシュマニア症及び皮下リーシュマニア症は、現在、ヒ素含有化合物によって治療されている。PDTの使用は、近年、少なくとも一例において、ヒト患者に妥当な効果を与えている。本開示の主題の化合物及び組成物の使用も同様に有用であり、合成の容易さ及びより良好なスペクトル吸収特性などの利点をもたらす可能性がある。
(x)組織シーラント本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、それを必要とする対象の組織シーラントとしてPDTに有用である。光活性化組織シーラントは、傷口の封止、組織の接着、及び組織の傷を閉じることに関して魅力的である。縫合糸又はステープルが望ましくない多くの用途があり、そのような封止の機械的方法の使用は、しばしば感染及び瘢痕をもたらす。
(xi)腫瘍性疾患本開示の主題の化合物、組成物、及び方法は、皮膚がん、肺がん、結腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、卵巣がん、基底細胞がん、白血病、リンパ腫、扁平上皮がん、黒色腫、プラークステージの皮膚T細胞リンパ腫、及びカポジ肉腫などの腫瘍性疾患又はがんを治療するためのPDTに有用である。
【0195】
PDTに加えて、本明細書で提供される組成物は、診断イメージング技術におけるイメージング増強剤として、又は診断放射線学における標的組織若しくは標的組成物の標識化のために使用することができる。現代の医療分野では、疾患の診断のための磁気共鳴画像法(MRI)を含む様々な治療法がある。がんを初期段階で検出すれば、がん性組織を治癒して除去する能力が向上するはずである。前がん領域及び微小がんの早期診断は、現代のがん治療における重要な主題である。MRIは非侵襲的であり、対象の正確なボリュームレンダリングが得られるので、臨床現場において強力なツールとして浮上している。これらの画像は、典型的な核磁気共鳴(NMR)実験のように、無線周波数パルスで核スピンを励起しながら、対象又は標本に1つ以上の直交磁場勾配を課すことによって作成される。様々な勾配場を用いてデータを収集した後、デコンボリューションにより、標本/対象の1次元、2次元、又は3次元画像が得られる。典型的には、画像は、水のプロトン由来のNMR信号に基づいており、ここで、所与の体積要素の信号強度は、水の濃度及び緩和時間の関数である。これらのパラメータの局所的変動は、MR画像で観察される鮮明なコントラストを提供する。
【0196】
MRI造影剤は、緩和速度を増加させることによって作用し、それによって、造影剤が付着する領域の水分子と体内の他の場所の水分子との間のコントラストを増加させる。ただし、薬剤の効果は、T及びTの両方を減少させることであり、前者はより大きいコントラストをもたらす一方で、後者はより小さいコントラストをもたらす。したがって、この現象は濃度依存的であり、通常、最大効率のための常磁性種の最適濃度が存在する。この最適濃度は、使用される特定の薬剤、イメージングの軌跡、イメージングのモード、すなわちスピンエコー、飽和回復、反転回復、及び/又は他の様々な強いT依存性若しくはT依存性のイメージング技術、及び薬剤が溶解又は懸濁される培地の組成によって異なり得る。これらの要因、及びそれらの相対的重要性は、当技術分野で知られている。例えば、Pykett(1982)Scientific American 246:78、及び、Rungeら(1983)、Am J Radiol、141:1209を参照されたい。MRI造影剤が診断的に使用される場合、それらは血管灌流され、血管の造影を増強し、臓器病変及び浸潤を報告する。しかしながら、診断放射線学のための特定の組織の標識化は、MRIにとって依然として困難な課題である。既存の免疫学的技術を改変することによって細胞及び組織特異的MRI画像増強剤を開発する努力は、診断放射線学における多くの研究の焦点となっている。例えば、常磁性イオン、一般にガドリニウムキレートGd-DTPAで標識された抗体が生成され、腫瘍及び他の組織のMRIコントラストに対するそれらの効果について試験されている。米国特許第5,059,415号を参照されたい。残念なことに、抗体に結合したGdの緩和度は、結合していないGd-DTPAの緩和度よりもわずかに優れているだけであることが分かっている。Paajanenら(1990)Magn Reson Med 13:38-43を参照されたい。
【0197】
MRIは、生体内のH核を検出するために一般的に用いられる。ただし、MRIは、13C、15N、31P、及び19Fをなどの他の核種のNMRスペクトルを検出することができる。19Fは生体内に豊富に存在しない。MRIに有用な同位体、例えば13C、15N、31P又は19F、特に19Fを本明細書で提供される組成物に組み込み、対象に投与することによって、本明細書で提供される化合物は標的組織に蓄積し、その後のMR画像化は、19FなどのMRI認識可能な同位体が蓄積した化合物の存在に起因して、標的組織又は標的組成物からの増強されたシグナルを有するNMRデータを生成する。したがって、本開示の化合物は、画像増強剤として使用することができ、MRIなどの診断放射線学のための特定の標的組織又は標的組成物の標識を提供することができる。
【0198】
PDTに加えて、本明細書で提供される組成物は、対象の標的細胞、標的組織、又は標的組成物を検出するために使用することができる。本明細書で提供される化合物が標的組織又は標的組成物の検出に使用される場合、本化合物は対象に導入され、本化合物が標的組織に蓄積するか又は標的組成物と会合するのに十分な時間が見込まれる。次いで、一般に化合物の蛍光を引き起こすのに十分なエネルギーの光を使用して治療領域に照射され、使用されるエネルギーは通常、光線力学的療法治療に必要なエネルギーよりも著しく低い。蛍光は、所望の波長の光に曝露される際に測定され、蛍光の量は、当技術分野で公知の方法によって、定性的又は定量的に化合物の存在と関連付けることができる。
【0199】
本明細書で提供される組成物はまた、対象における感染性病原体の存在又は感染性病原体が何であるかを診断するために使用され得る。本明細書で提供される化合物は、感染性病原体と選択的に会合する抗体又は抗体断片などの感染性病原体に特異的な1つ以上のリガンドにコンジュゲートすることができ、標的化合物が感染性病原体と会合し、非標的組織から除去されるのに十分な時間を置いた後、本化合物を、例えば、本化合物の蛍光を引き起こすのに十分なエネルギーの光に曝露することによって、又はMRIなどの診断放射線学を使用した画像化によって可視化することができる。例として、本明細書で提供される化合物のいずれか1つは、適切なピロリ菌抗原に対して標的化される抗体にコンジュゲートされ、対象に導入されると、コンジュゲートされた化合物を細菌が見出される胃粘液/上皮層に放出する医薬製剤に製剤化され得る。本化合物が標的感染性病原体と選択的に会合し、あらゆる未結合化合物が非標的組織から除去されるのに十分な時間が経った後、対象を検査して、ピロリ菌が存在するかどうかを調べることができる。これは、例えば、19F置換基の存在に起因して蓄積した化合物を検出するためにMRIによって行うことができ、又は疑わしい標的領域に、本化合物の蛍光を生じさせるのに十分なエネルギーの光を、例えば、光ファイバーを用いて照射し、標的化合物の任意の蛍光を検出することによって行うことができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、本開示の化合物又はそれらのコンジュゲートは、フローサイトメトリーにおいて有用であり得る。フローサイトメトリーは公知であり、例えば、米国特許第5,167,926号、同第5,915,925号、同第6,248,590号、同第6,589,792号、及び同第6,890,487号に記載されている。いくつかの実施形態では、細胞などの検出される粒子は、検出のために蛍光体又はフルオロフォアなどの発光化合物で標識される。標識は、任意の適切な技術によって、例えば、発光化合物を、次に粒子又は細胞に特異的に結合する抗体などの別の化合物にカップリングすることによって、細胞又は粒子への発光化合物の取り込み又は内在化によって、細胞又は粒子への発光化合物の非特異的吸着などによって行うことができる。本明細書に記載の活性化合物は、そのような発光化合物としてフローサイトメトリーに有用であり、フローサイトメトリー技術(蛍光活性化細胞選別又はFACSなど)は、本開示に基づいて当業者には明らかであろう既知の技術又はその変形に従って行うことができる。
【0201】
いくつかの実施形態では、本開示の主題の化合物は、光音響イメージングに使用される。光音響イメージングは、非イオン化レーザーパルスが生体組織に送達される技術である。送達されたエネルギーの一部が吸収されて熱に変換され、一時的な熱弾性膨張及び超音波放射をもたらす。その後、生成された超音波を検出及び分析して、生体組織の画像を生成する。一般に、超音波放射の大きさは、生理学的に特異的な光吸収コントラストを明らかにする。次いで、標的領域の2D又は3D画像を形成することができる。例えば、米国特許出願公開第2005/0085725号、同第2009/0066949号、同第2009/0069653号、同第2010/0226003号、及び同第2012/0296192号、米国特許第6,738,653号、同第7,864,307号、同第7,916,283号、国際公開第2002/008740号、及びXu&Wang(2006)Photoacoustic Imaging in Biomedicine、Rev Sci Instrum 77:041101;Li&Wang(2009)Photoacoustic tomography and sensing in biomedicine、Phys Med Biol 54:R59-R97;Liら(2009)In-vivo photoacoustic microscopy of nanoshell extravasation from solid tumor vasculature、J Biomed Opt 14:010507;Wang(2009)Multiscale photoacoustic microscopy and computed tomography、Nature Photonics 3:503-509;Yangら(2009)Nanoparticles for photoacoustic imaging、Wiley Interdiscip Rev Nanomed Nanobiotechnol 1:360-368;each of which is incorporated herein by reference in its entirety(これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0202】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の主題の化合物を光音響イメージング造影剤として使用することができる。本明細書で使用される場合、「光音響イメージング造影剤」という語句は、標的(任意選択で対象内に存在する標的)と接触したときに、標的が光音響イメージングによってイメージングされることを可能にする組成物を指す。いくつかの実施形態では、光音響イメージング造影剤は、少なくとも1つの照射線吸収分子を含み、いくつかの実施形態では、バクテリオクロリン、メタロバクテリオクロリン、クロリン、メタロクロリン、それらの誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、メタロバクテリオクロリン、メタロクロリン又はその誘導体は、亜鉛、ニッケル、鉄、コバルト及び銅からなる群から選択される金属と錯体を形成している。いくつかの実施形態では、金属は銅である。照射線吸収分子自体が光音響イメージング造影剤であり得ることに留意されたい。したがって、異なる照射線吸収分子の組み合わせが存在する実施形態では、組成物全体を光音響イメージング造影剤と見なすことができ、いくつかの実施形態では、個々の照射線吸収分子それぞれを光音響イメージング造影剤と見なすことができる。
【0203】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の主題は、ボリュームの画像を生成するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、メタロバクテリオクロリン、メタロクロリン又はその誘導体を含む少なくとも1つの照射線吸収成分を含む造影剤をボリューム又はその一部に投与することであって、メタロバクテリオクロリン、メタロクロリン及び/又はその誘導体が銅及び/又はマンガンに錯体形成されている、投与すること、ボリューム又はその一部を照射線に曝露すること、照射によってボリューム又はその一部に発生した超音波を検出すること、及び、投与された造影剤を含有するボリューム又はその一部の光音響画像をそこから生成すること、を含む。いくつかの実施形態では、メタロバクテリオクロリン、メタロクロリン及び/又はそれらの誘導体は、ミセル、リポソーム、ナノ粒子又はそれらの組み合わせの成分であり、且つ/又はミセル、リポソーム、ナノ粒子又はそれらの組み合わせの中に封入される。いくつかの実施形態では、650~1070nmの波長を有する照射線が使用される。いくつかの実施形態では、650~900nm、700~950nm、及び/又は750~950nmの波長を有する照射線が使用される。いくつかの実施形態では、生理学的に忍容される造影剤は、複数の異なるメタロバクテリオクロリン、メタロクロリン、それらの誘導体、及び/又はそれらの組み合わせを含み、各メタロバクテリオクロリン、メタロクロリン、及び/又はそれらの誘導体は、650~1070nmの範囲内の異なる吸収スペクトルを有する。いくつかの実施形態では、造影剤は標的薬剤を含む。いくつかの実施形態では、標的薬剤は、腫瘍細胞若しくはがん細胞、又はそれに関連する血管内皮細胞上に存在するリガンド及び/又は標的に結合する部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンド及び/又は標的は腫瘍関連抗原を含む。いくつかの実施形態では、上記部分は、腫瘍関連抗原に結合するペプチド又はペプチド模倣物を含む。
【0204】
本開示の主題はまた、いくつかの実施形態では、ボリュームの光音響イメージングを多重化するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、複数の照射線吸収成分を含む造影剤をボリューム又はその一部に投与することであって、複数の照射線吸収成分の各メンバーがメタロバクテリオクロリン、メタロクロリン及び/又はその誘導体を含み、メタロバクテリオクロリン、メタロクロリン及び/又はその誘導体が銅及び/又はマンガンに錯体形成されている、投与すること、ボリューム又はその一部を照射線に曝露することであって、照射線が複数の照射線吸収成分によって差次的に吸収される波長に較正される、曝露すること、複数の照射線吸収成分によって差次的に吸収される照射線によってボリューム又はその一部に発生した超音波を差次的に検出すること、及び、投与された造影剤を含むボリューム又はその一部から光音響画像を生成することであって、光音響画像が差次的に検出する超音波から生成される、光音響画像を生成すること、を含む。いくつかの実施形態では、複数のメタロバクテリオクロリン、メタロクロリン及び/又はそれらの誘導体のうちの1つ以上は、ミセル、リポソーム、ナノ粒子又はそれらの組み合わせの成分であり、及び/又はミセル、リポソーム、ナノ粒子又はそれらの組み合わせの中に封入される。いくつかの実施形態では、650~1070nmの波長を有する照射線が使用される。いくつかの実施形態では、650~900nm、700~950nm、及び/又は750~950nmの波長を有する照射線が使用される。いくつかの実施形態では、複数の照射線吸収成分の各メンバーは、650~1070nmの範囲内の異なる吸収スペクトルを有する。いくつかの実施形態では、複数の照射線吸収成分の1つ以上のメンバーは、標的薬剤を含む。いくつかの実施形態では、標的薬剤は、腫瘍細胞若しくはがん細胞、又はそれに関連する血管内皮細胞上に存在するリガンド及び/又は標的に結合する部分を含む。いくつかの実施形態では、リガンド及び/又は標的は腫瘍関連抗原を含む。いくつかの実施形態では、上記部分は、腫瘍関連抗原に結合するペプチド又はペプチド模倣物を含む。いくつかの実施形態では、複数の照射線吸収成分のメンバーのうちの2つ以上は、標的薬剤を含む。いくつかの実施形態では、複数の照射線吸収成分の2つ以上のメンバーは、異なる標的薬剤を含む。いくつかの実施形態では、異なる標的薬剤は、同じ又は異なる標的及び/又は標的部位に結合し、且つ/又はそうでなければ蓄積する。
【0205】
更に、本開示の主題の方法のいくつかの実施形態では、ボリュームは、対象又はその身体部分であり、任意選択でその細胞、組織、及び/又は器官である。いくつかの実施形態では、ボリュームは、腫瘍細胞、がん細胞、又は腫瘍若しくはがん関連血管細胞を含む。いくつかの実施形態では、造影剤は、1つの生理学的に許容される造影剤又は複数の生理学的に許容される造影剤である。いくつかの実施形態では、造影剤は、ヒトでの使用に生理学的に許容される。いくつかの実施形態では、造影剤は、光音響イメージング造影剤と、薬学的に許容される担体、希釈剤、又は添加物とを含む薬学的組成物として提供される。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ヒトにおける使用に薬学的に許容される。いくつかの実施形態では、ボリュームは、標的薬剤が標的とし得る1つ以上の標的及び/又は標的部位を含む。
【0206】
したがって、本開示の方法は、in vivo、エクスビボ、及びin vitroでの使用に用いることができる。in vivoで使用する場合、本開示の方法は、対象、任意選択でヒトにおける使用に生理学的に許容される造影剤を使用することができる。いくつかの実施形態では、造影剤は、薬学的組成物の一部として製剤化され、いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又は添加物を更に含むことができる。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、ヒトにおける使用に薬学的に許容される。適切な製剤としては、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、殺菌性抗生物質、及び製剤を意図するレシピエントの体液と等張にする溶質を含有することができる水性及び非水性滅菌注射溶液、並びに懸濁化剤及び増粘剤を含むことができる水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単位用量又は複数用量容器、例えば、密封されたアンプル及びバイアルで提供することができ、使用直前に滅菌液体担体、例えば、注射用水の添加のみを必要とする凍結又はフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。いくつかの例示的成分は、いくつかの実施形態では、0.1から10mg/mlの範囲、いくつかの実施形態では、約2.0mg/mlのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)であり、且つ/又はいくつかの実施形態では、10から100mg/mlの範囲、いくつかの実施形態では、約30mg/mlのマンニトール又は別の糖であり、且つ/又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。問題の製剤の種類を考慮して当技術分野で標準的な任意の他の薬剤を使用することができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、造影剤として、且つ/又は撮像若しくは画像誘導療法のためのマルチカラーPAIパネル及び/若しくはマルチモーダルマルチカラーパネルの構成要素として使用される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,617,522号を参照されたい)。
【実施例
【0208】
以下の実施例は、例示的な実施形態を示す。本開示及び当業者の一般的なレベルに照らして、当業者は、以下の実施例が例示のみを意図しており、本開示の主題の範囲から逸脱することなく数多くの変更、修正、及び変更を採用し得ることを理解するであろう。
【0209】
実施例で使用される略語。丸底フラスコ(RBF);水酸化ナトリウム(NaOH);N;N;N’;N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU);ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド(PdCl(PPh);塩化水素(HCl);ジクロロメタン(DCM);酢酸エチル(EtOAc);ヘキサン(hex);テトラヒドロフラン(THF);ジメチルホルムアミド(DMF);トリエチルアミン(EtN);炭酸セシウム(CsCO);硫酸ナトリウム(NaSO);シリカ(SiO)。
【0210】
実施例1
本開示の主題の例示的な化合物の合成
図1及び図2は、本開示の主題の実施形態を生成するための例示的なスキームを提供する。図1及び図2に示される化合物及び中間体に関するさらなる詳細は以下の通りである。
【0211】
化合物2の合成。化合物1(Jiangら(2014)Org Biomol Chem 12:86-103及びChenら(2012)Inorg Chem 51:9443-9464に記載されている方法に従って調製した、24.5mg、33.9μmol)を2:1:1のテトラヒドロフラン(THF):メタノール(MeOH):1N水酸化ナトリウム水溶液(NaOH、合計22.7mL)に溶解し、95℃まで4分間にわたってマイクロ波加熱に供した。冷却後、反応混合物を1N塩酸(HCl、7.5mL)でクエンチし、エタノール(EtOAc)で希釈した。有機層を分離し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濾過し、濃縮して、24.5mg(100%)の化合物2を得た。
【0212】
化合物3の合成。化合物2(49.0mg、67.8μmol)、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’、N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU、30.6mg、102.0μmol)及びトリエチルアミン(EtN、56.7μL、407.0μmol)をジメチルホルムアミド(DMF、8.5mL)に加え、不活性雰囲気下、遮光した室温で撹拌した。1時間後、ベータ-アラニンt-ブチルエステルHCl(18.5mg、102.0μmol)を添加した。反応物を室温で18時間撹拌し、次いで、2時間にわたって60℃に加熱した。反応物を冷却し、EtOAcで希釈し、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物を24gの二酸化シリコーン(SiO)カラムに負荷し、ヘキサン中0~50%EtOAcで20分間にわたって溶出することにより、46.7mg(81%)の化合物3を得た。
【0213】
化合物4の合成。化合物3(46.7mg、54.9μmol)、ジ-t-ブチル(((5-エチニルイソフタロイル)ビス(アザンジイル))ビス(エタン-2,1-ジイル))ジカルバメート(130.2mg、274.4μmol)及びビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド(PdCl(PPh、11.6mg、16.5μmol)を、磁気撹拌子を備える25mLシュレンクフラスコに入れた。フラスコを排気し、アルゴンでフラッシングした(3回)。DMF/EtN(2:1、合計15mL)を添加し、反応物を80℃に加熱した。18時間後、反応物を冷却し、3-メルカプトプロピル官能化シリカゲル(144mg)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。反応物をEtOAcで希釈し、ブライン(3回)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮した。その残留物を、12gのSiOカラムで、ジクロロメタン(DCM)中0~10%MeOHを使用して37分間にわたって精製することにより、58.9mg(65%)の化合物4を得た。
【0214】
化合物5の合成。化合物4(42.8mg、26.1μmol)を撹拌棒を備えた50mLのRBFに添加した。フラスコをセプタムシールし、次いで、排気し、アルゴンで3回フラッシングした。塩化水素溶液(ジオキサン中4.0N、3.0mL)を添加し、反応物をアルゴン下で1.5時間撹拌した。次いで、反応フラスコをアルゴン流でフラッシングしてジオキサンを除去し、次いで、トリブチルアミン(10滴)を添加し、さっと撹拌して、超音波処理した。フラスコを真空下で1時間乾燥させ、アルゴンでフラッシングし、mPEG12NHS(89.6mg、130.6μmol)、DMF(6mL)及びEtN(87.4μL、627.0μmol)を添加した。反応物を室温で18時間撹拌した。反応物をDCM(10mL)で希釈し、飽和塩化アンモニウム水溶液(NHCl)及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィ(40分間にわたってHO中の25~70%アセトニトリル(CAN))に供して、8.1mg(9%)の化合物5を得た。
【0215】
化合物6の合成。化合物4(58.9mg、35.9μmol)を、撹拌棒を備えた50mL丸底フラスコ(RBF)に添加した。フラスコをセプタムシールし、次いで、排気し、アルゴンで3回フラッシングした。塩化水素溶液(ジオキサン中4.0N、3.0mL)を撹拌しながら添加し、反応物をアルゴン下で1.5時間撹拌した。次いで、反応フラスコをアルゴン流でフラッシングしてジオキサンを除去し、トリブチルアミン(10滴)を添加し、さっと撹拌して、超音波処理した。フラスコを真空下で1時間乾燥させ、アルゴンでフラッシングし、mPEG12NHS(123.3mg、179.8μmol)、DMF(9mL)及び炭酸セシウム(CsCO、128.9mg、395.5μmol)を添加した。反応物を遮光した室温で18.5時間撹拌した。反応物をDCM(20mL)で希釈し、飽和NHCl水溶液及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗混合物の一部(61.0mg、17.9μmol)、TSTU(8.1mg、26.9μmol)、及びEtN(30.0μL)をDMF(4.5mL)に溶解し、反応物をアルゴン下、室温で撹拌し、遮光した。1時間後、2-マレイミドエチルアミン塩酸塩(4.8mg、26.9μmol)を添加し、反応物を室温で18時間撹拌し、遮光した。反応物をDCMで希釈し、飽和NHCl水溶液及びブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。残留物を逆相クロマトグラフィ(20分間にわたるHO中の25~55%ACN)に供して、6.6mg(10%)の化合物6を得た。Abs max(HO):382、542、781nm;em max(HO):794nm;消衰係数(HO、382nm):74,100M-1cm-1、量子収率(HO):0.06。
【0216】
実施例2
例示的な化合物の特性評価
図3A図3Dは、事前に調製したバクテリオクロリン色素(化合物A)のトルエン(青色)及び水(赤色)中の吸収及び発光スペクトルを本開示の主題の化合物6と比較する一連のグラフを示す。化合物Aは以下の構造を有していた。
化合物A
【0217】
図3A及び図3Cは、それぞれ、トルエン(青色)及び水(赤色)中の化合物Aの発光スペクトルである。図3B及び図3Dは、それぞれ、トルエン(青色)及び水(赤色)中の化合物6の吸収及び発光スペクトルである。化合物Aは、化合物6では存在しなかった水中での吸収の広がりを示した。水中での著しい蛍光消光も化合物Aで観察され、これは化合物6で7倍超改善された。
【0218】
参考文献
本明細書に列挙された、限定するものではないが、すべての特許、特許出願及びその刊行物、並びに科学雑誌論文などのすべての参考文献は、それらが本明細書で用いられる方法論、技術及び/又は組成物を補足し、説明し、その背景を提供し、又は教示する限り、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0219】
当然のことながら、本開示の主題の様々な詳細は、本開示の主題の範囲から逸脱することなく変更することができる。更に、前述の説明は例示のみを目的としており、限定を目的とするものではない。
図1
図2
図3
【国際調査報告】