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▶ キュー−ステート バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】治療用オリゴヌクレオチド法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240614BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20240614BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240614BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240614BHJP
【FI】
C12N15/113 Z
C12Q1/06
C12N15/11 Z
C12Q1/6869 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577653
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 US2022033836
(87)【国際公開番号】W WO2022266351
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/211,814
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516056971
【氏名又は名称】キュー-ステート バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Q-State Biosciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】179 Sidney Street, Cambridge, Massachusetts 02139 United States
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リワーク, ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】ガーバー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ, ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン, ダンカン
(72)【発明者】
【氏名】アグラワル, スディール
(72)【発明者】
【氏名】デンプシー, グラハム ティー.
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA18
4B063QQ41
4B063QR16
4B063QR23
4B063QR48
4B063QR77
4B063QS34
4B063QX04
(57)【要約】
本発明は、遺伝的症状のための候補治療を発見するための、また神経毒性の証拠についてインビトロでそれらの治療をスクリーニングするためのシステムおよび方法を提供する。医学的症状が変異遺伝子などの遺伝子標的の結果である場合には、本開示は、インビボで遺伝子または遺伝子からの転写物に結合する可能性のあるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の候補配列のリストを生成し、遺伝子発現の健康な表現型を回復させることによって関連する症状を処置するインシリコ法を提供する。本発明は、インビボで神経毒性の症状について候補ASO配列をスクリーニングするためのインビトロ方法を提供する。例えば、インシリコ分析パイプラインによって出力される候補配列を合成し、生細胞に対してインビトロでアッセイすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
障害に関与する遺伝子標的と実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列のリストを生成するステップと;
予め決定された基準に従って配列を前記リストから除去し、フィルター処理されたリストを残すインシリコオペレーションを介して前記配列を分析するステップと;
前記フィルター処理されたリストの配列を用いて作製されたオリゴヌクレオチドを得るステップと;
1または複数の生細胞をインビトロで前記オリゴヌクレオチドに曝露するステップであって、前記生細胞において有害な表現型を誘導しない候補治療用オリゴヌクレオチドを同定するステッブと
を含む方法。
【請求項2】
前記遺伝子標的が遺伝子であり、オリゴヌクレオチド配列の前記リストが、前記遺伝子の配列に相補的な実質的にすべてのN量体のリストを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
15<N<25である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記インシリコオペレーションが、各オリゴヌクレオチド配列をゲノムと比較すること、および前記遺伝子標的の外側の前記ゲノム内の部分配列と実質的に相補的な配列を除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記インシリコオペレーションが、その意図した標的に対する結合親和性が十分に有利でない配列を前記リストから除去することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記インシリコオペレーションが、二量体を形成する配列、ヘアピンを形成する配列、またはオフターゲットに結合する配列を除外するために、二本鎖形成および関連するギブス自由エネルギー変化をモデル化するソフトウェアモジュールを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記インシリコオペレーションが、前記オリゴヌクレオチド配列または前記遺伝子標的のリストを非ヒトモデル生物のゲノムと比較して、前記非ヒトモデル生物において相同標的を有する遺伝子標的を同定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記非ヒトモデル生物が霊長類またはげっ歯類である、請求項8に記載の方法。
【請求項9】
前記生細胞がインビトロの幹細胞由来ニューロンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ニューロンの少なくとも1つが膜電位の光学レポーターを含み、前記方法が、少なくとも1つの前記オリゴヌクレオチドが曝露されたときに前記ニューロンの神経活動表現型を読み取るために光検出器またはセンサを使用することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ニューロンが光ゲートイオンチャネルを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記神経活動表現型が表現型のデータストアに対して分析される、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記分析が、前記データストアで訓練された機械学習システムによって実施され、前記データストア内の表現型が条件ラベルに関連付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記データストア内の前記表現型が、てんかん、自閉症、およびアルツハイマー病のうちの1または複数を含む神経学的状態によってラベル付けされる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記得るステップが、前記フィルター処理されたリストからの前記配列のそれぞれについて合成オリゴヌクレオチドを注文し、受け取ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記インシリコオペレーションが、RNAの酵素分解を媒介するギャップマーとしての前記オリゴヌクレオチド配列の性能を予測することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記遺伝子標的がナトリウムチャネルの遺伝子である、請求項16の記載の方法。
【請求項18】
前記標的が、SCN8A、SCN9A、SCN10A、UBE3A、STXBP1、およびSYNGAP1からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記障害が、慢性疼痛、癌、てんかん、運動障害、発達遅延、および関節炎からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記インシリコオペレーションが、pre-RNAのスプライシングを促進してRNAの好ましいアイソフォームを形成するオリゴヌクレオチド配列スプライス調節オリゴヌクレオチドの性能を予測することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記インシリコオペレーションが、マイクロRNAの前記機能を阻害する立体的遮断オリゴヌクレオチドとしての前記オリゴヌクレオチド配列の性能を予測することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記インシリコオペレーションが、試験オリゴヌクレオチドを用いて実施されたトランスクリプトーム分析アッセイからの結果との比較によって、標的結合を予測する予測モジュールに前記オリゴヌクレオチド配列を提示することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記予測モジュールが、機械学習システムを使用して、各オリゴヌクレオチド配列に対するオフターゲット遺伝子の発現調節を予測し、前記機械学習システムが、複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドの発現分析の結果に基づいて訓練される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記インシリコオペレーションが、オフターゲット効果を回避するための配列距離規則の適用を含み、前記規則が、完全一致、1つのミスマッチ、または少なくとも閾値数の連続一致をともなう前記配列に整列する非標的領域を前記ゲノムに含む配列を除外する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記インシリコオペレーションが、オフターゲット結合親和性を有する配列を除外するために、ヒトゲノムに、あるいは前記遺伝子標的を含む遺伝子の一次転写物配列に対する前記オリゴヌクレオチド配列のそれぞれのペアワイズアライメントを実施するソフトウェアパッケージを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記生細胞を前記オリゴヌクレオチドにインビトロで曝露するステップが、前記オリゴヌクレオチドに曝露されたときの前記細胞の神経表現型を得るために全光学電気生理学またはオプトパッチを実施することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
オリゴヌクレオチド毒性に関連する表現型を検出するために機械学習システムを運用することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記インシリコオペレーションが、各オリゴヌクレオチド配列について、前記遺伝子標的における結合部位のアクセス可能性を評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
アクセス可能性が、前記遺伝子標的のRNA転写物における二次構造または結合タンパク質の占有率を予測するソフトウェアモジュールによって評価される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記遺伝子標的が遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記オリゴヌクレオチド配列のリストが、遺伝子データベースに前記遺伝子の遺伝子配列を問い合わせ、前記遺伝子配列を解析して前記リストを生成するソフトウェアモジュールによって生成される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記インシリコオペレーションが、オリゴヌクレオチド合成サービスの注文形態として前記フィルター処理されたリストを出力するコンピュータシステムによって自動的に実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記露するステップが、前記生細胞を含むマルチウェルプレートのウェルに合成オリゴヌクレオチドを液体処理システムによって移送することを含み、前記生細胞がニューロンであり、少なくとも1つのニューロンが前記ニューロンの膜電位の光学的レポーターとして機能する微生物ロドプシンを発現する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
組成物の毒性作用を検出する方法であって、前記方法が、
遺伝子標的と相互作用して神経機能に影響を与える組成物を得るステップと;
インビトロで組成物に曝露されたニューロンの活性を測定するステップと;
前記活性の測定において、前記組成物のインビボ毒性を予測する特徴を検出するステップと
を含む、方法。
【請求項35】
前記組成物が、前記遺伝子標的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
測定された前記活性が、前記ニューロンの活動電位の活動電位波形またはスパイク列を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
インビボ毒性を予測する前記特徴が、前記ニューロンの過剰興奮性または低興奮性を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記ニューロンが、膜電位を光学的に報告する微生物ロドプシンを発現する、請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記ニューロンが、光ゲーティングイオンチャネルおよび遺伝子によってコードされたカルシウム指示薬の少なくとも一方を発現する、請求項34に記載の方法。
【請求項40】
前記検出するステップが、前記測定された活性を、前記組成物に曝露されていない1または複数のニューロンから測定された対照活性と比較することを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項41】
前記検出するステップが、既知の条件下で作製された複数のニューロンサンプルからの測定値を含む訓練データに基づいて訓練された機械学習システムによって実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記検出するステップが、コンピュータシステムに実装された機械学習によって実施される、請求項34に記載の方法。
【請求項43】
前記予測特徴が、薬物の神経毒性作用であることが知られている特徴を検出するように訓練されたシステムによって検出される、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、治療上の発見に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
てんかんは、不運な影響を伴う神経学的症状の一例である。てんかんに罹患している人は、消耗性発作に罹患しており、異常な感覚を経験することがある。てんかんの多くの症例には遺伝的原因があると考えられている。同様に、パーキンソン病、アルツハイマー病、および筋萎縮性側索硬化症も遺伝的原因を有し得る。残念なことに、医学研究者らは、すべての症例で疾患を処置する薬物を特定しているわけではない。
【0003】
実際、そのような症状に対する創薬は、どのような症状にも関係する分子機構の多様性によって妨げられる可能性がある。例えば、ユビキチンリガーゼタンパク質の遺伝子を不活性化する突然変異に関連するアンジェルマン症候群に罹患している人もいる。そのリガーゼの遺伝子を含有する15番染色体の領域には、さまざまな異常(突然変異または再配列)が存在する可能性がある。そのような突然変異を持って生まれた子供は、発達遅延、発話障害、ならびに運動およびバランスに問題を示す可能性がある。
【0004】
従来の創薬は、不適切に機能する分子標的を遮断または修正する小分子のスクリーニングが含まれることが多い。しかし、一部のカテゴリーの神経学的症状では、小分子薬による処置の明確な分子標的は存在しない。別の例では、ハッチンソン・ギルフォード症候群は、小児期に急速に老化が現れる症状である。この症状は、遺伝子の突然変異によって、その遺伝子から転写されたRNAが誤って構築されることによって引き起こされると考えられている。この場合もやはり、従来の小分子薬に自明の標的はない。したがって、様々な医学的症状は処置することが困難であり、人々の生活に不運な影響を及ぼし続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
要旨
本発明は、遺伝的症状のための候補治療を発見するための、また神経毒性の証拠についてインビトロでそれらの治療をスクリーニングするためのシステムおよび方法を提供する。医学的症状が変異遺伝子などの遺伝子標的の結果である場合には、本発明は、インビボで遺伝子または遺伝子からの転写物に結合する可能性のあるアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)の候補配列のリストを生成し、遺伝子発現の健康な表現型を回復させることによって関連する症状を処置するインシリコ法を提供する。例えば、ASOは、不利な転写物にハイブリダイズし、RNAseによる分解についてそれらをマークするDNA含有ギャップマーとして設計することができる。あるいは、ASOは、pre-RNAに結合して不利なスプライス部位をマスクし、mRNAの健康なアイソフォームへのpreRNAのスプライシングを促進するように設計することもできる。別の例では、ASOは、標的にハイブリダイズし、mRNAの翻訳を阻害し得るmiRNAなどの他の分子の結合を立体的に遮断し、それによって健康な表現型を救済するように設計することができる。本発明の方法は、ソフトウェアパッケージにおけるASOのいくつかのカテゴリーの設計に重要なルールをインシリコで具体化する。本発明のシステムは、遺伝子配列(例えば、GenBankから)を照会して、特定の基準を満たす可能性のあるすべてのASO配列を生成することができ、さらに分析モジュールを適用して、標的への結合時のギブス自由エネルギーの変化が乏しい、または非標的もしくは自己への優先的結合などの望ましくない結合挙動を示すと予測される配列を同定または除外することができる。本発明のモジュールは、例えば、競合するオリゴヌクレオチドまたはタンパク質結合を有する標的を同定するために、標的へのアクセス可能性について候補ASO配列を評価することができる。結果として得られる出力は、有望な臨床的有用性を有する一連の候補ASO配列である。標的の非限定的なセットには、SCN8A、SCN9A、SCN10A、UBE3A、STXBP1、およびSYNGAP1が含まれる。
【0006】
次に、本発明は、インビボで神経毒性の症状について候補ASO配列をスクリーニングするためのインビトロ方法を提供する。例えば、インシリコ分析パイプラインによって出力される候補配列を合成し、生細胞に対してインビトロでアッセイすることができる。これらの生細胞は、例えば顕微鏡または光学センサおよび分析システムを使用して、光学的、例えば蛍光的なニューロン活性の記録を可能にする光遺伝学的構築物を用いてインビトロで増殖させた人工多能性幹細胞(iPSC)由来ニューロンなどのニューロンであってよい。実際、この分析システムは、インシリコプラットフォームによって提案されたオリゴヌクレオチドで処置された生ニューロンのスパイク頻度および活動電位波形形状などの発火パターンを記録することができる。この分析システムは、これらの発火パターンから、例えば、疾患関連遺伝子型をもつニューロンの健康な表現型を救済する候補ASO療法に対して、有意な特徴を抽出することができる。また、重要なことに、この分析システムは、インシリコで生成されたASO配列にニューロンがインビトロで曝露された場合、神経毒性の注意すべき症状を(処置有効性の予測とは独立して)検出することができる。インビトロでニューロンは、例えば96、384、1536、または3456ウェルプレートのウェル内で生存することができ、候補ASOの大規模かつ多様なプールに迅速かつ並行して曝露させることができる。表現型レスキューを探すこととは別に、この分析システムは、ASO曝露によって誘導されるニューロン活性のパターンを捕捉し、そのパターンから神経毒性を予測する特徴を検出することができる。この分析システムには、既知の作用を有するニューロンおよび薬物など、長期にわたるハイスループットスクリーニングによって作成された大規模なデータストアが含まれる場合がある。実際、この分析システムには、既知の作用をもつデータストアに基づいて訓練された機械学習システムが含まれ得る。機械学習システム(例えば、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、その他、またはそれらの組み合わせ)は、インシリコパイプラインによって出力された新たに合成されたASOの1つへの曝露から生じるニューロン活性のパターンを読み取り、ASOを神経毒性について評価する出力を得ることができる。
【0007】
インシリコプラットフォームとインビトロプラットフォームはいずれも自動化することができる。プロセス全体は、サーバまたはクラウドコンピューティング環境に実装されたソフトウェアモジュールによって開始することができる。候補ASO配列は、オリゴヌクレオチド合成プラットフォームまたはサービスに渡すことができる。合成オリゴヌクレオチドは、マルチウェルプレートのウェル内の光遺伝学的iPSC由来ニューロンに曝露するために、例えば液体ハンドリングロボットによって取り扱うことができる。プレートイメージングは、自動蛍光プレートリーダーまたは顕微鏡によって実施することができ、機械学習システムなどの分析システムは、ウェルから読み取られたニューロン活性(例えば、スパイク頻度または活動電位の形状)から神経毒性予測特徴を読み取り、検出することができる。したがって、本発明は、遺伝的症状に対する治療用組成物の設計および毒性プレスクリーニングのための統合されたパイプラインおよびプラットフォームを提供する。
【0008】
例示的な一実施形態では、ASO設計は、ある症状に関与する遺伝子の選択から始まる。この設計は、mRNAまたはpre-mRNA転写物を標的とするすべての可能なアンチセンスN量体(例えば、20ヌクレオチド長のASO)の生成を含むが、パイプラインはオリゴヌクレオチド長に関して柔軟である。これらの候補配列のそれぞれについて、インシリコプラットフォームは、その意図する標的またはそれ自体へのその結合を反映する熱力学的パラメータ、ならびにヒトおよび必要に応じて1または複数の非ヒトモデル生物における意図しない標的との配列マッチングを含む、様々な配列特徴を評価する。インシリコ設計プラットフォームから出現するASOは、インビボ神経毒性の証拠についてインビトロでスクリーニングされる。インビトロスクリーニングは、iPSC由来ニューロンにおいて、ハイスループット様式ではあるがパッチクランプ技術を光学的に再現する、微生物タンパク質の組み合わせである「オプトパッチ(Optopatch)」を使用することがある。オプトパッチタンパク質は、ニューロンの活動パターンを記録するために使用される光信号を生成し、そのパターンは神経毒性の証拠について分析される。
【0009】
特定の態様では、本発明は、障害に関与する遺伝子標的と実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列のリストを生成するステップ;予め決定された基準に従って配列を除去し、フィルター処理されたリストを残すインシリコオペレーションを介して配列を分析するステップ;フィルター処理されたリストの配列を用いて作製されたオリゴヌクレオチドを得るステップ;ならびに1または複数の生細胞をインビトロでオリゴヌクレオチドに曝露するステップであって、生細胞において有害な表現型を誘導しない候補治療用オリゴヌクレオチドを同定するステップを含む方法を提供する。遺伝子標的は遺伝子であってよく、オリゴヌクレオチド配列のリストは、、15<N<25の)遺伝子の部分配列に相補的な実質的にすべてのN量体のリストであってよい。インシリコオペレーションには、各オリゴヌクレオチド配列をゲノムと比較すること、および遺伝子標的の外側のゲノム内の部分配列に実質的に相補的な配列を除去することが含まれ得る。インシリコオペレーションには、標的に結合するためのギブス自由エネルギー変化が十分に有利でない配列をリストから除去することが含まれ得る。インシリコオペレーションには、二量体を形成する配列、ヘアピンを形成する配列、またはオフターゲットに結合する配列を除外するために、二本鎖形成および関連するギブス自由エネルギー変化をモデル化するソフトウェアモジュールが含まれ得る。いくつかの実施形態では、インシリコオペレーションは、オリゴヌクレオチド配列または遺伝子標的のリストを非ヒトモデル生物(例えば、霊長類またはげっ歯類)のゲノムと比較して、非ヒトモデル生物において相同標的を有する遺伝子標的を同定することを含む。
【0010】
インシリコからインビトロ成分への移行には、ヌクレオチド合成が含まれ得る。上記得るステップには、フィルター処理されたリストから配列のそれぞれに対して合成オリゴヌクレオチドを注文し、受け取ることが含まれ得る。生細胞をインビトロでオリゴヌクレオチドに曝露するステップには、オリゴヌクレオチドに曝露されたときに細胞の神経表現型を得るために全光学電気生理学またはオプトパッチを実施することを含み得る。
【0011】
インビトロで曝露するステップでは、上記生細胞にはインビトロの幹細胞由来ニューロンが含まれ得る。特定の実施形態では、少なくとも1つのニューロンは、膜電位の光学的レポーター(例えば、必要に応じて修飾された微生物ロドプシンなど)を発現する。上記方法には、少なくとも1つのオリゴヌクレオチドに曝露されたときにニューロンの神経活動表現型を読み取るために光検出器またはセンサを使用することが含まれ得る。ニューロンは、例えば神経発火の光アクチュエータとして、光ゲートイオンチャネルが含まれ得る(適したチャネルは、CheRiffなどの藻類チャネルロドプシンの必要に応じて修飾されたバージョンが含まれ得る)。神経活動表現型は、表現型のデータストア(例えば、テラバイトまたはペタバイトの過去のオプトパッチ記録)に対して分析され得る。この分析は、データストアに基づいて訓練された機械学習システムによって実施することができ、データストア内の表現型は、症状または毒性などのラベルに関連付けられる。いくつかの実施形態では、データストア内の表現型は、てんかん、自閉症、運動障害、発達遅延障害、関節炎、慢性疼痛、およびアルツハイマー病のうちの1つまたは複数を含む神経学的症状によってラベル付けされる。この方法には、オリゴヌクレオチド毒性に関連する表現型を検出するために機械学習システムを運用することが含まれ得る。
【0012】
ギャップマーの実施形態では、インシリコオペレーションには、RNAの酵素分解を媒介するギャップマーとしてのオリゴヌクレオチド配列の性能を予測することが含まれる。遺伝子標的は、例えば、ナトリウムチャネルの遺伝子であってよく、障害は、癌または関節炎に関連する慢性疼痛である。スプライス調節の実施形態では、インシリコオペレーションには、pre-RNAのスプライシングを促進してRNAの好ましいアイソフォームを形成するオリゴヌクレオチド配列スプライス調節オリゴヌクレオチドの性能を予測することが含まれる。立体的遮断の実施形態では、インシリコオペレーションには、マイクロRNAの機能を阻害する立体的遮断オリゴヌクレオチドとしてのオリゴヌクレオチド配列の性能を予測することが含まれる。
【0013】
インシリコオペレーションには、試験オリゴヌクレオチドを用いて実施されたトランスクリプトーム分析アッセイの結果との比較によって、標的結合を予測する予測モジュールにオリゴヌクレオチド配列を提示することが含まれ得る。予測モジュールは、機械学習システムを使用して、各オリゴヌクレオチド配列に対するオフターゲット遺伝子の発現調節を予測することができ、機械学習システムは、複数のアンチセンスオリゴヌクレオチドの発現分析の結果に基づいて訓練される。好ましくは、インシリコオペレーションは、オフターゲット効果を回避するための配列距離規則(sequence distance rules)の適用を含み、この規則は、完全一致、ミスマッチ、または少なくとも閾値数の連続一致をともなう配列に整列する非標的領域をゲノムに含む配列を除外する。インシリコオペレーションには、オフターゲット結合親和性を有する配列を除外するために、ヒトゲノムに、あるいは遺伝子標的を含む遺伝子の一次転写物配列に対するオリゴヌクレオチド配列のそれぞれのペアワイズアライメントを実施するソフトウェアパッケージが含まれる。必要に応じて、インシリコオペレーションには、各オリゴヌクレオチド配列について、遺伝子標的における結合部位のアクセス可能性を評価することを含む。アクセス可能性は、遺伝子標的のRNA転写物における二次構造または結合タンパク質の占有率を予測するソフトウェアモジュールによって評価され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、遺伝子標的は遺伝子である。オリゴヌクレオチド配列のリストは、遺伝子データベースにその遺伝子の遺伝子配列を問い合わせ、その遺伝子配列を解析してリストを生成するソフトウェアモジュールによって生成され得る。必要に応じて、インシリコオペレーションは、オリゴヌクレオチド合成サービスの注文形態としてフィルター処理されたリストを(例えば、FASTファイルとして)出力するコンピュータシステムによって自動的に実施される。上記曝露するステップは、生細胞を含むマルチウェルプレートのウェルに合成オリゴヌクレオチドを液体処理システムによって移送することをともなってもよく、生細胞はニューロンであり、少なくとも1つのニューロンは、ニューロンの膜電位の光学的レポーターとして機能する微生物ロドプシンを発現する。
【0015】
本開示の態様は、組成物の毒性作用を検出する方法を提供する。本方法には、遺伝子標的と相互作用して神経機能に影響を与える組成物を得るステッブ;インビトロで組成物に曝露されたニューロンの活性を測定するステップ;および、活性測定において、組成物のインビボ毒性を予測する特徴を検出するステッブが含まれる。上記組成物には、遺伝子標的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドが含まれ得る。好ましくは、測定された活性には、ニューロンの活動電位波形または活動電位のスパイク列が含まれる。インビボ毒性を予測する特徴には、ニューロンの過剰興奮性または低興奮性が含まれ得る。ニューロンは、膜電位(例えば、Arch D95NまたはQuasAr)を光学的に報告する微生物ロドプシンを発現することがある。さらに、または代わりに、ニューロンは、少なくとも1つの光ゲートイオンチャネル(例えば、CheRiff)および/または遺伝子によってコードされたカルシウム指示薬(例えば、gCaMPタンパク質)を発現することがある。
【0016】
上記検出するステップには、測定された活性を、組成物に曝露されていない1または複数のニューロンから測定された対照活性と比較することが含まれ得る。いくつかの実施形態では、上記検出するステップは、既知の条件下で作製された複数のニューロンサンプルからの測定値を含む訓練データに基づいて訓練された機械学習システムによって実施される。上記検出するステップは、コンピュータシステムに実装された機械学習によって実施されてもよい。予測特徴は、神経毒性を示すことが知られている特徴を検出するように訓練されたシステムによって検出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図面の簡単な説明
図1図1は、本発明の方法を示す。
【0018】
図2図2は、インシリコオペレーションを示す。
【0019】
図3図3は、ASO設計ツールの成功例を示す。
【0020】
図4図4は、意図しない標的のインビトロでの調節を示す。
【0021】
図5図5は、ASO結合の予測される熱力学的特性を示す。
【0022】
図6図6は、オプトパッチを用いた全光学電気生理学を示す。
【0023】
図7図7は、ラット海馬ニューロンにおけるCheRiffの膜輸送を示す。
【0024】
図8図8は、QuasAr蛍光を示す。
【0025】
図9図9は、96ウェル顕微鏡のCADモデルを示す。
【0026】
図10図10は、赤色レーザー光を細胞サンプルに結合するための光路を示す。
【0027】
図11図11は、電圧記録の例を示す。
【0028】
図12図12は、結果のラスタープロットを示す。
【0029】
図13図13は、細胞全体で平均化されたスパイク率を示す。
【0030】
図14図14は、光遺伝学顕微鏡によって記録されたスパイク形状を示す。
【0031】
図15図15は、スパイクタイミング特性(例えば、発火頻度)を示す。
【0032】
図16図16は、適合が各細胞について自動的に抽出されることを示す。
【0033】
図17図17は、興奮性を示す。
【0034】
図18図18は、ALS-KDの結果のラスタープロットである。
【0035】
図19図19は、ALS-KDの実施形態における発火率平均を示す。
【0036】
図20図20は、ALS-KDの実施形態からのスパイク波形である。
【0037】
図21図21は、ALS-KD標的のqPCR検証を示す。
【0038】
図22図22は、疾患モデルにおけるタンパク質ノックアウトを示す。
【0039】
図23図23は、標的遺伝子の下流の経路を標的とする薬物で処置した様々な細胞の表現型を示す。
【0040】
図24図24は、ヘテロ接合患者細胞株と健康な家族性対照の結果を示す。
【0041】
図25図25は、多次元レーダープロットを示す。
【0042】
図26図26は、化合物ライブラリーの大規模スクリーニングの結果を示す。
【0043】
図27図27は、薬物類似性の比較を示す。
【0044】
図28図28は、ASOで処置したラット海馬培養物からの結果を示す。
【0045】
図29図29は、ASOおよびビヒクルを髄腔内送達した場合の結果を示す。
【0046】
図30図30は、ASO処置ニューロンの600を超える固有の興奮性特徴のUMAP投影を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
本発明は、CNS疾患の治療用アンチセンスオリゴヌクレオチドの設計および発見のための統合プラットフォームを提供する。このプラットフォームは、本発明は、障害に関与する遺伝子標的と実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列のリストを生成するステップ;予め決定された基準に従って配列を除去し、フィルター処理されたリストを残すインシリコオペレーションを介して配列を分析するステップ;フィルター処理されたリストの配列を用いて作製されたオリゴヌクレオチドを得るステップ;1または複数の生細胞をインビトロでオリゴヌクレオチドに曝露するステップであって、生細胞において有害な表現型を誘導しない候補治療用オリゴヌクレオチドを同定するステップを含む方法を提供する。アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、遺伝子発現を調節するためのツールであり、神経系の壊滅的な障害の処置手法として登場した。ASOは、現在、脊髄性筋萎縮症の処置における臨床的成功を実証しており、ドラベ症候群、ALS、ハンチントン病およびアンジェルマン症候群などの重篤な神経障害の処置に使用される可能性がある。
【0048】
本発明のシステムおよび方法は、CNSにおける毒性の負債を負うことなくASOを効果的に設計するのに有用である。本開示の方法を使用して、意図するRNA標的と意図しないRNA標的の両方に対するASOの相対的な結合親和性がインシリコで予測される。システムおよび方法は、最も臨床的に関連する化学的性質と長さについてのそのような予測を包括的に評価する。本開示のシステムおよび方法は、中枢神経系(CNS)における作用を予測するためにニューロンにおけるASO活性を試験する。前臨床インビボ毒性研究は高価であり、一般に少数のASO候補に限定されるため、インビボ研究の前に神経毒性作用を有するASOを同定するツールの開発は、問題のある症状について人々を処置するのに有用な治療薬を同定するのに役立つ。
【0049】
本発明は、ニューロンにおいて治療上関連するRNAのレベルを調節するASOを設計するためのツールを提供する。本発明のシステムおよび方法は、ニューロンベースの疾患モデル、ハイスループット全光学電気生理学(またはオプトパッチ)、および機械学習ベースの分析を統合する。本発明の方法は、意図しないRNA標的のASO調節を支配する配列および熱力学の法則を体系的に特徴付ける。これらの方法は、オプトパッチプラットフォームを使用して、インビボでの毒性の神経学的特性をインビトロで予測することができることを実証するのに有用である。方法は、例えば、UBE3AおよびSHANK3などの標的遺伝子を調節するためのASOを設計し、包括的に評価するために使用することができる。本開示のシステムおよび方法は、設計およびスクリーニングプロセスの早期に神経毒性ASOを同定するのに有用であり、それによって新規なCNS治療薬の開発が加速される。
【0050】
本開示のシステムおよび方法は、ギャップマーと立体的遮断オリゴヌクレオチドの両方について配列距離とオフターゲットASO活性との間の関係を体系的に特徴付けるのに有用である。意図する標的に相補的な配列および意図しない標的からの配列距離(ミスマッチの数)がASO特異性を推進するが、意図しない標的との相互作用を決定する距離閾値は、最も臨床的に関連するオリゴヌクレオチドの化学的性質と長さについて明確に定義されていない。本開示のシステムおよび方法は、様々な戦略を使用して、2’-MOE含有ギャップマー(その標的のRNase H媒介性崩壊を促進)および立体的遮断オリゴヌクレオチド(スプライシング、安定性、または下流翻訳を調節)のオフターゲット活性を予測する配列類似性閾値を同定するのに有用である。例えば、本開示のシステムおよび方法は、既知の有効なASOの変異体を生成し、そのオンターゲット有効性を特徴付けて、活性に対する配列置換の作用を調べるのに有用である。いくつかの実施形態は、バルクRNA-seqを使用して、有益なASOのパネルで処置した培養ニューロンにおけるトランスクリプトーム全体の遺伝子発現およびアイソフォーム組成物を評価し、様々なレベルの配列類似性でオフターゲット活性を同定する。
【0051】
本開示のシステムおよび方法は、インビボでのCNS毒性を予測するニューロンのインビトロ機能測定を行うのに有用である。オプトパッチなどのプラットフォームは、インビボで神経毒性であることが知られているASOおよび多様な非標的化ASOの大規模なパネルで処置されたげっ歯類の初代およびヒトiPSC由来ニューロンの挙動を特徴付けるために使用することができる。
【0052】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)は、遺伝子発現を調節するための有用なツールであり、神経系の壊滅的な障害の処置手法として登場した。治療様式としてのASOは、いくつかの固有の利点を有する。配列相補性により、ASOはそのRNA標的に正確に結合し、そのRNA標的のレベルを調節することができるが、意図した標的と比較してヌクレオチドのミスマッチを有する転写物(またはその意図した標的から十分な配列距離を有する転写物)はそれが行われない。特定の化学修飾は、ASOを安定化させ、RNase H媒介性崩壊を介して標的遺伝子発現をダウンレギュレートさせるか(「ギャップマー」化学で合成されたASO)、あるいはスプライシング、安定性、または下流翻訳を調節する部位で標的転写物に結合させる(RNA様「立体的遮断」化学で合成されたASO)。ASOによる遺伝子制御の機構には、(i)遺伝子ノックダウンに対するRNase H媒介性分解および(ii)遺伝子発現の回復に対するスプライス調節が潜在的に含まれる。
【0053】
本発明は、調節不全のmRNAまたはタンパク質レベルをその根本原因で修正するように設計されたASOによって特に対処することができる遺伝性疾患に対処する。ASOには、ドラベ症候群、ALSおよびアンジェルマン症候群などのまれな疾患を含む中枢神経系(CNS)の重篤な障害を処置する可能性がある。重要なことに、本発明のシステムおよび方法を使用すると、プロジェクトの開始からASOベースの治療薬の臨床試験までのタイムラインは、より伝統的な小分子ベースの治療薬のタイムラインよりもはるかに短い。
【0054】
ASOベースの医薬品の新たな成功にもかかわらず、毒性の負債を負うASO、例えば神経毒性作用を有するASOを同定し回避するための重要な臨床的および商業的機会が依然として存在する。オンターゲット転写物およびオフターゲット転写物の両方に対するASOの相対的結合親和性は、本発明の方法を使用して配列のみに基づいてインシリコで予測することができるが、オフターゲット結合部位を排除するために使用される公的に開示されたヒューリスティックスは、多くの場合、トランスクリプトーム全体の証拠による裏付けが不十分であるか、またはロックド核酸(LNA)塩基を含有するギャップマーなどの臨床的に進歩していない化学物質を使用して合成されたASOの特性に基づいている。さらに、RNA標的へのASOの直接的なワトソン・クリック結合に関連しないインビボ毒性は、配列に基づいて予測することがより困難である。毒性のあるASOを予測またはスクリーニングするために開発されたアッセイおよびツールの多くは、LNAベースのライブラリーを使用しているか、または候補治療薬の全身投与または非CNS細胞型の培養物へのその送達によって生じる肝臓および血液の毒性を具体的に調べている。これらのプラットフォームは、CNSのニューロンにおけるASOの影響は明らかにしない。本発明は、神経系の障害のための効果的で無毒性のASO治療薬の設計を加速および改善するための、ヒトニューロンにおいてハイスループットで情報量の多いインビトロスクリーニングアッセイを提供する。
【0055】
インシリコオペレーションには、最も臨床的に関連するASO化学物質のワトソン・クリック塩基対合に媒介されるオフターゲット効果を管理する配列規則を具体化する、ソフトウェアモジュールが含まれ得る。これらの規則は、活性ASOの多数の変異体のトランスクリプトーム分析および系統的検査などの実験から得ることができる。本発明の方法には、CNSにおける潜在的な毒性を評価するためのヒト細胞モデルの機能測定値を使用するインビトロスクリーニングアッセイが含まれる。これらのアッセイは、オプトパッチプラットフォームなどの全光学電気生理学の能力を利用することができる。オプトパッチは、手動パッチクランプの情報内容をもつが、10,000倍を超える高いスループットで、ニューロンの電気生理学的調査を提供する。本発明の実施形態は、その決定力のある測定プラットフォームを機械学習ベースの分析および高度な遺伝性疾患モデルと組み合わせて、CNSベースの障害における創薬のための統合技術プラットフォームを作成する。
【0056】
実施形態は、組成物の毒性作用を検出する方法を提供する。本方法には、遺伝子標的と相互作用して神経機能に影響を与える組成物を得るステップ;インビトロで上記組成物に曝露されたニューロンの活性を測定するステップ;および、活性測定において、上記組成物のインビボ毒性を予測する特徴を検出するステップが含まれる。上記組成物には、遺伝子標的にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が含まれる。ニューロンは、ニューロンの活動電位波形または活動電位のスパイク列を読み取って記録するために使用される、膜電位の光学レポーター(例えば、Arch3 D95NまたはQuasArタンパク質などのアーキロドプシン3の必要に応じて修飾されたバージョン)を発現する。機械学習システムなどの分析システムは、オリゴヌクレオチド毒性に関連する表現型を検出する。機械学習システムは、既知の条件下で作製された複数のニューロンサンプルからの測定値を含む訓練データに基づいて訓練することができる。したがって、本発明は、神経毒性の予測的読み出しとして攪乱した神経生理機能を測定する能力を備えた技術プラットフォームを提供する。
【0057】
図1は、本発明は、障害に関与する遺伝子標的と実質的に相補的なオリゴヌクレオチド配列のリストを生成するステップ;予め決定された基準に従って配列を除去し、フィルター処理されたリストを残すインシリコオペレーションを介して配列を分析するステップ;フィルター処理されたリストの配列を用いて作製されたオリゴヌクレオチドを得ること;および、1または複数の生細胞をインビトロでオリゴヌクレオチドに曝露するステップであって、生細胞において有害な表現型を誘導しない候補治療用オリゴヌクレオチドを同定するステップを含む方法101を図示する。この方法は、ASOを設計するためのパイプラインを具体化し提供するコンピュータおよび実験システムを使用する。
【0058】
図2は、ASO設計パイプラインに含まれ得るインシリコオペレーションを示す。手短に言えば、ASO設計は、mRNAまたはpre-mRNA転写物を標的とするすべての可能なアンチセンス20量体(例えば、20ヌクレオチド長のASO)の生成から始まるが、パイプラインはオリゴヌクレオチド長に関して柔軟である。好ましくは、オリゴヌクレオチド配列のリストは、遺伝子データベースにその遺伝子の遺伝子配列を問い合わせ、その遺伝子配列を解析してリストを生成するソフトウェアモジュールによって生成される(1)。特定の実験的制約を使用して、インシリコオペレーションの1つにおける特定の配列を除外することができる(2)。例えば、モデル生物において相同標的を欠く配列、または標的遺伝子のすべての転写物アイソフォームに結合しない配列は除外され得る(2)。インシリコオペレーションには、各オリゴヌクレオチド配列をゲノムと比較すること、および「オフターゲットヒット」、すなわち、遺伝子標的の外側のゲノム内の部分配列と実質的に相補的である配列を除去すること(3)が含まれる。オペレーションでは、テトラ-CまたはG、CpGアイランド、パリンドローム、GC含有量、長いポリプリンストレッチ、長いポリピリミジンストレッチ、またはホモポリマーランなどの配列負債に基づいて、除外またはフィルター処理すること(4)が有益であり得る。さらに、インシリコオペレーションには、ヘアピンもしくは二量体形成を起こしやすいか、またはそれらの意図した標的に対する結合親和性が不十分な配列をリストから除去すること(5)が含まれ得る。オペレーションは、標的のアクセス可能性をモデル化し、包含のために選択する、すなわち、特定の配列を除外して(6)、標的全体にわたって良好なカバレッジを確保することができる。インシリコオペレーションは、試験オリゴヌクレオチドを用いて実施されたトランスクリプトーム分析アッセイの結果との比較によって、標的結合を予測する予測モジュールにオリゴヌクレオチド配列を提示することができる。加えて、または組み合わせて、インシリコオペレーションには、二量体を形成する配列、ヘアピンを形成する配列、またはオフターゲットに結合する配列を除外する(7)ために、二本鎖形成および関連するギブス自由エネルギー変化をモデル化するソフトウェアモジュールが含まれ得る。好ましくは、これらのインシリコオペレーションは、オリゴヌクレオチド合成サービスの注文形態としてフィルター処理されたリストを出力するコンピュータシステムによって自動的に実施される。
【0059】
インシリコオペレーションは、ASOの配列を選択するのに役立つ。インシリコオペレーションは、RNAの酵素分解を媒介するギャップマーとしてのオリゴヌクレオチド配列の性能を予測することができる。
【0060】
図3は、遺伝子標的がナトリウムチャネルの遺伝子であり、障害が癌または関節炎に関連する慢性疼痛である例におけるSCN8Aのノックダウンを示す。
【0061】
必要に応じて、インシリコオペレーションには、pre-RNAのスプライシングを促進してRNAの好ましいアイソフォームを形成するオリゴヌクレオチド配列スプライス調節オリゴヌクレオチドの性能を予測することが含まれる。さらに、または代わりに、インシリコオペレーションには、マイクロRNAの機能を阻害する立体的遮断オリゴヌクレオチドとしてのオリゴヌクレオチド配列の性能を予測することが含まれ得る。
【0062】
ASO候補は、実験要件を遵守し、配列負債を回避し、有利な熱力学特性を確保するようにフィルター処理される。転写物は、アクセス可能な領域を特定するためにタイル表示されることが好ましい。インシリコオペレーションには、配列距離規則を適用してオフターゲット効果を回避することが含まれ得、この規則は、完全一致、ミスマッチ、または少なくとも閾値数の連続一致で配列に整列する非標的領域をゲノムに含む配列を除外する。
【0063】
候補配列のそれぞれについて、その意図する標的またはそれ自体へのその結合を反映する熱力学的パラメータ、ならびにヒトおよびカニクイザルのトランスクリプトームにおける意図しない標的とのその配列マッチングを含む、様々な配列特徴が評価される。ASO前臨床開発計画の一環として、非ヒト霊長類における下流のインビボ毒性研究が必要であることを考慮すると、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)における正確な相同性、および、遺伝子の生物学や動物モデルの利用可能性に応じて、必要に応じて他の種における正確な相同性、またはヒトにおける一定数の転写物アイソフォームにおける一致を必要とすることが好ましいであろう(図2、ステップ2)。すなわち、インシリコオペレーションは、オリゴヌクレオチド配列または遺伝子標的のリストを非ヒトモデル生物のゲノムと比較して、非ヒトモデル生物において相同標的を有する遺伝子標的を同定することを含む。次いで、例示的な実施形態のステップ3~5では、一連の閾値を使用して数千の候補配列がフィルター処理され、好ましい結合特性を有し、配列負債がないかまたは意図しない転写物との配列アライメントが近くない候補に優先順位が付けられる。その選別されたプールは、通常、標的全体に分散した好ましい特性をもつ数百のASOを含む。標的アクセス可能性は、ASO有効性を決定する際の主要な要因であり、ステップ6は、転写物を可能な限り広くタイリングすることによってアクセス可能な領域を経験的に特定する。最も有望なASOを同定するために、ステップ7では、最適な全体のΔG値(例えば、OligoWalkなどのパッケージを使用して計算される)を有する配列のフィルター処理されたプールから領域代表が選択されるか、またはASO:標的結合に関連するギブス自由エネルギーの変化が、ASOの二量体化またはヘアピン形成の傾向に基づいて補正される。
【0064】
パイプラインは、インビトロで成功することが知られている配列を含め、以前に標的となった2つの遺伝子に対する治療用ASO設計の経験をもつ専門家によって設計された配列に収束するギャップマー配列を生成した。第2の検証ステップとして、ASOパイプラインは、以前に立体的遮断化学で標的とされた遺伝子の上位候補と重複するスプライス調節ASOを返した。最後に、パイプラインは、重度の一遺伝子性てんかんに関連する新しい重要な標的遺伝子、SCN8Aの発現を、神経芽腫細胞株において70%超ダウンレギュレートするギャップマーの生成に成功した。
【0065】
図3は、ASO設計ツールの成功例を示す。パイプラインを使用して設計された40個のASOには、SCN8A mRNAレベルを70%低下させ、外部の専門家が推奨する配列と重複する候補が含まれる。
【0066】
パイプラインは、(2)オフターゲット効果を回避するために、正確な一致を有するASO、1つのミスマッチを有するアライメント、または20量体ASOの意図しない転写物に対して少なくとも18個の連続するヌクレオチドのアライメントを除外するなどの、少なくとも特定の配列距離規則を含むことが好ましい。この主張を裏付ける好適なトランスクリプトーム全体のデータがないにもかかわらず、この分野の一部の専門家は、このレベルを超える一致による意図しない標的の調節は非常にまれであると示唆している。しかし、本発明は、意図しないワトソン・クリック結合および標的調節を伴うASOを完全に排除するには、これらの規則は不十分であり得るという洞察を含む。
【0067】
図4は、それらの一般的な閾値よりも大きい配列距離における意図しない標的のインビトロでの調節を示す。重要なことに、データは、インビトロアッセイがCNS毒性を予測する結果をもたらし得ることを示す。SCN8Aは、高度な配列類似性を有する、密接に関連したナトリウムチャネル遺伝子のファミリーの1つである。SCN8Aを標的とするASOによるこのファミリー内の他の遺伝子の意図しない調節を評価するために、20個のASO候補で処置した神経芽腫細胞において、qPCRを使用して5つのナトリウムチャネル遺伝子のレベルを測定した。次に、これらのASOの標的配列と5つの遺伝子の一次転写物間のローカルペアワイズアライメントを、RのBiostringsパッケージを使用して実施した。少なくとも1つのASOは、そのアライメントが問題のあるオフターゲットヒットを除外するために使用される閾値外にあるにもかかわらず、その意図する標的であるSCN8Aの発現だけでなく、関連するSCN3AおよびSCN1A転写物の発現も劇的に低下させる。結果は、20個のSCN8A標的化ASOの1つで処置した神経芽腫細胞の5つのナトリウムチャネル発現から、SCN8A標的化ASOによる密接に関連した遺伝子のオフターゲット調節を示す。5つのナトリウムチャネル遺伝子に対する局所的なSCN8A標的化ASOの20量体標的部位のローカルペアワイズアライメント(R/Biostrings)が実施された。
【0068】
本発明はさらに、配列距離規則よりも保存的な結果が得られる可能性のある、ASOと潜在的な結合パートナーとの間の相互作用の熱力学のモデリングをさらに使用し、ギブス自由エネルギー値の好適な変化範囲を示唆してオフターゲット結合の可能性を減らした。インシリコオペレーションには、それらの意図した標的に対して1~4個のミスマッチを有する配列とASOの結合親和性を予測するためのソフトウェアモジュール(例えば、RNAcofold)が含まれ得る。
【0069】
図5は、ミスマッチ標的に結合するASOの予測される熱力学的特性を示す(ステップ7)。一連の出発20量体ASO(n=10)について、RNAcofoldを使用して、ΔG、すなわち完全に相補的な配列および1~4個のミスマッチを有する配列への結合に関連するギブス自由エネルギー変化(kcal/mol)を予測した。ΔΔGカテゴリー、完全に相補的な配列とミスマッチ配列に結合するASO間のΔGの差は、意図した標的と意図しない標的に対するASOの相対的な親和性を反映している。標準的な除外規則は、ミスマッチの数(パネル)およびミスマッチによって中断されないアライメントのストレッチ(最大連続マッチ長、x軸)に依存する。それぞれの「変異」標的配列について、ΔΔG、つまり変異標的に結合するASOと、その直接の20量体相補体に結合するASOのギブス自由エネルギーの差が計算された。この値は最近、6を超えるとオフターゲット調節の確率が低いが、2以下の場合はオフターゲット調節の確率が比較的高いと関連付けられている。これらの結果は、一般に、設計パイプラインにおけるオフターゲット選別に使用される配列距離ヒューリスティックス(意図しない標的とのASOの結合が1ミスマッチまたは正確な20量体マッチに対して18ntストレッチの同一性がある場合は、ΔΔG値は0に近い可能性が高い)を支持する。
【0070】
選択されると、配列は合成され、生細胞に曝露される。曝露ステップは、生細胞を含むマルチウェルプレートのウェルに合成オリゴヌクレオチドを液体処理システムによって行うことができ、生細胞はニューロンであり、少なくとも1つのニューロンは、ニューロンの膜電位の光学的レポーターとして機能する微生物ロドプシンを発現する。
【0071】
ニューロンは、オプトパッチツールを含み、機能的測定プラットフォームを提供することができる。曝露ステップは、細胞膜貫通電位の研究のために遺伝的にコードされたタンパク質を使用する全光学電気生理学プラットフォーム、オプトパッチを用いてニューロンの電気的特性を記録するインビトロアッセイを提供する。
【0072】
図6は、オプトパッチを用いて生細胞に曝露されているASOを示す。好ましい実施形態では、青色光はチャネルロドプシンタンパク質CheRiffを開き、活動電位を誘発し、赤色光は蛍光電圧センサQuasArを励起してニューロンの電気活性を記録する。
【0073】
図6は、オプトパッチを用いた全光学電気生理学を示す。オプトパッチは、青色光刺激チャネルロドプシンCheRiffと赤色発光電圧センサQuasArの2つの膜タンパク質で構成される。
【0074】
図7は、ラット海馬ニューロンにおけるCheRiffの膜輸送を示す。
【0075】
図8は、QuasAr蛍光がパッチクランプ電圧記録を忠実に追跡することを示す。青色光は、高い忠実度で活動電位を引き起こす。
【0076】
これらの結果は、ニューロンが活動電位を発火させるときにニューロンから放出される光である。QuasArにより放出される710nmの光は、ニューロンの動画(例えば、図7参照)がニューロンの長さに沿って移動する光を示すように、活動電位が移動する軸索に沿った位置から放出される。その光は、例えばカメラが取り付けられた顕微鏡を使用して、動画として読み取り記録することができる。本発明は、例えば2つのオプトパッチ成分を発現する遺伝子構築物を、げっ歯類の初代およびヒト人工多能性幹細胞由来ニューロンを含む複数の興奮性細胞型に日常的に送達するためのプロトコルを使用する。さらに、本発明は、機能的ニューロン表現型データを保存した動画(例えば、活動電位および発火パターンを示す動画)を記録するための顕微鏡を使用する。
【0077】
図9は、光遺伝学顕微鏡としても知られるオプトパッチ測定用の96ウェル顕微鏡のCADモデルを示す。
【0078】
図10は、低バックグラウンド電圧イメージング用のプリズムを介して赤色レーザー光を細胞サンプルに結合するための光路と、光遺伝学顕微鏡内に具体化されたデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を介してパターン化された刺激用の青色光路を示す。光遺伝学顕微鏡は、1ミリ秒の時間分解能および単一細胞の空間分解能で、単一の動画で200を超える個々のニューロンからの電圧を同時に記録する。光遺伝学顕微鏡は、96、384およびそれ以上のウェルプレートに適合する完全に自動化されたシステムであり、1日あたり約3000ウェルにわたって1日あたり600,000個を超えるニューロンを記録することができ、手動パッチクランプ電気生理学と比較して10,000倍以上高いスループットでハイスループットスクリーニングキャンペーンを可能にする。光遺伝学顕微鏡における細胞培養物には、好ましくは、ヒト細胞ベースのニューロンモデルおよび表現型が含まれる。培養物には、創薬応用のためのスケールでの方法論によって、患者の変異を本来の遺伝的および細胞的状況において含む可能性のあるヒト人工多能性幹(iPS)細胞由来のニューロンが含まれ得る。これらのシステムは、完全なアッセイ検証のための臨床結果を伴うインビトロ測定を提供する。このアプローチは、患者由来の培養ニューロンと対照iPS細胞由来の培養ニューロンとの間の差異を改善する候補治療を試験するための基礎として役立つ。
【0079】
本発明は、複数のヒトiPS細胞由来ニューロン型におけるロバストなオプトパッチアッセイを使用する。図11図17は、ヒトiPS細胞由来運動ニューロンにおける内因性興奮性および薬理学的応答の測定のためのワークフローを示す。ヒトiPS細胞由来運動ニューロンにおけるオプトパッチの興奮性は、自動分析によって同定されたhiPSC由来運動ニューロンのオーバーレイ(着色領域)を用いて光遺伝学顕微鏡から読み取ることができる。
【0080】
図11は、選択された細胞からの電圧記録の例、および発火を誘発するために使用した青色刺激(ステップ、パルス列、およびランプ)を示す。図13の下側にわたる時間スケールは、図11、12、および13に適用される。
【0081】
図12は、それぞれの点が識別された活動電位であり、それぞれの行が単一のFOVからのニューロンであるラスタープロットを示す。静止電位を低下させ、発火を抑制する1μMの試験化合物カリウムチャネルオープナーの添加前(上)および添加後(下)。
【0082】
図13は、細胞全体で平均化されたスパイク率を示す。光遺伝学顕微鏡は、発火頻度および活動電位波形、またはスパイク形状の形で様々な機能的表現型情報を捕捉し、生細胞に対する組成物の作用を明らかにする。
【0083】
図14は、光遺伝学顕微鏡によって記録されたスパイク形状を示す。
【0084】
図15は、スパイクタイミング特性(例えば、発火頻度)を示す。
【0085】
図16は、適合が各細胞について自動的に抽出されることを示す。
【0086】
図17は、図13の階段波形から抽出された興奮性を示し、すべての刺激強度における発火の抑制を示す。
【0087】
ニューロンは、広範囲のスパイク挙動を探るように設計された刺激プロトコル(青色刺激光)で調べられる。1つのニューロンからの蛍光を捕捉するすべての画素は、その細胞の固有の発火パターンに続いて時間とともに共変動する。時間的共分散は、各細胞の重みマスクを生成するために使用される。マスクされた画素は、動画の各フレームについて平均化され、電圧トレースが計算される。各視野(FOV)は、カリウムチャネルオープナーML213の添加の前後で2回記録された。図11のトレース例は、ニューロンの挙動の根底にある変動性を実証している。多くのニューロンからの記録は、複合作用を確実に捕捉するために平均化される必要がある。蛍光時間トレースから、データセット中の各活動電位が同定され(図12)、発火率(図13)、スパイク形状パラメータ(図14)、および相対的タイミング(図15~16)が刺激の関数として測定される。試験化合物は、ニューロンの興奮性を明らかに低下させる(図17)。約500個のパラメータが、クラウドでの並列分析によって自動的に抽出され、カスタマイズされたデータベースに保存される。生ビデオデータから数と複雑さが大幅に低減された抽出値は、細胞の種類、細胞の状態、疾患の表現型および薬理学的応答を区別するためのより詳細な分析のための基礎として役立つ。
【0088】
オプトパッチプラットフォームおよびヒト細胞ベースのアッセイを使用して、本発明は、ALS関連遺伝子のダウンレギュレーションを標的とするASOギャップマーによる処置後のヒトiPS細胞由来ニューロンの電気的性質を測定するのに有用である。
【0089】
図18~21は、ASL関連遺伝子TARDBP(TDP-43)をノックダウンするためのギャップマーとして設計されたASO、例えば「ALS-KD」実施形態で処置されたヒトiPSCニューロンのオプトパッチ測定を示す。これらの結果は、ヒト培養ニューロンにおいてASOを使用して遺伝子発現を調節する能力と、ASO処置細胞でオプトパッチ測定を実行する能力の両方を示す。データは、ALS関連遺伝子TARDBP(TDP-43タンパク質をコードする)のダウンレギュレーションを標的とするASOギャップマー、またはRNA様化学のみを有し、異なる標的(TECPR2遺伝子)に対するスプライス調節活性を有する対照ASOで20日間処置したヒトiPSCニューロンのDIV30(培養30日)の培養プレートから収集された。ASOはトランスフェクションによって送達され、未処置およびビヒクルのみの条件も対照として含めた。
【0090】
図18は、それぞれの点が識別された活動電位であり、それぞれの行がニューロンである、ALS-KD結果からのラスタープロットである。データは条件ごとに約700~800個の細胞から収集され、合計2956個の単一細胞オプトパッチ測定が行われたことに留意されたい。
【0091】
図19は、その条件について測定されたすべての細胞にわたる各条件のALS-KD実施形態における発火率の平均を示す。
【0092】
図20は、条件ごとに測定されたすべての細胞について平均化されたALS-KD実施形態からのスパイク波形である。結果は、測定されたヒトiPSCニューロンの発火およびスパイク波形特性において、ビヒクル処置またはASO処置からの有意な効果がないことを示した。
【0093】
図21は、ASO1ギャップマーで処置したヒトiPSCニューロンにおけるALS-KD標的(TARDBP遺伝子)ダウンレギュレーションのqPCR検証を示しており、対照条件と比較して、転写レベルの約70%の低下(0.3の正規化発現)を示した。
【0094】
本発明は、インビトロスクリーニングおよび薬物フィンガープリンティング分析を使用して、インビボ神経毒性の特徴を検出する。オプトパッチプラットフォームで得られた複雑な多次元測定値のデータストアを用いて、表現型決定フレームワークは、機械学習技術を組み合わせて、生物学的指標の一意に識別可能なセットを識別するだけでなく、推測統計学を組み合わせて、細胞株全体で一般化できる表現型を確立し、電気生理学の実際の測定値を使用して明確化された疾患効果の簡潔な発現に達する実験の実行を行う。スクリーニング作業では、検証された表現型は、化合物をランク付けおよび選択するため、および細胞挙動をオフターゲット方向に変化させる複合作用を特徴付けるために使用することができる複合パラメータに縮小され得る。データストアには、ヒトiPSCニューロンからの表現型30,000の化合物スクリーニングが含まれ(図22~26)、例は、一遺伝子性てんかんの疾患モデルを中心としている。
【0095】
図22~26は、オプトパッチによる疾患関連表現型の同定およびスクリーニングを示す。図22~26に示されている実施形態は、30~45日間培養された、iPSC由来の皮質興奮性ニューロン(NGN2分化)における未公表の変異を伴う一遺伝子性てんかんに関する。
【0096】
図22は、WT細胞からの結果を示し、CRISPR/Cas9を使用して遺伝子をノックアウトし、複数の同質遺伝子クローンを増殖させ、ニューロンに変換した。
【0097】
図23は、複数回およびKO細胞株を通して、スパイク形状に一貫した変化があったことを示す。臨床的に有効な化合物による処置は、挙動をWTに戻す。
【0098】
図24は、類似するがそれほど重症ではない表現型がヘテロ接合患者細胞株および健康な家族性対照において観察されたことを示す。
【0099】
図25は、ニューロン形態、活動電位形状、およびスパイク列挙動の変化を明らかにする多次元レーダープロットを示す。臨床化合物による処置は、すべての測定基準でKOをWTに近づける。レーダープロットは、オプトパッチから動画に記録された活動電位データを定量的特徴に移行させる。ソフトウェアモジュールは、活動電位をレーダープロットに収集し、放射状の特徴線を段階的に描くことができる。それらからの読み取り値は、入力特徴として、例えばベクトルとして記憶することができる。例えば、入力特徴は、AHP、細胞体半径、細胞体領域、スパイク率、第1のスパイク、幅、および立ち上がり時間の各々についてスカラー値を有し得る。そのベクトル(所与の条件下の各ニューロンごと)は、分析のために機械学習システムに渡され得る。
【0100】
図26は、各細胞培養物について、多次元表現型が、疾患スコア、多くのパラメータの線形結合、または特徴によって定量化され得ることを示す。表現型を逆転させる分子について30,000の化合物スクリーニングが実行された。最初の6,900ウェルの結果が示されており、疾患スコア閾値0.5でヒット率は約1.5%である。結果は、一貫した表現型および安定したアッセイをもたらす(平均Z’=0.4)。灰色の破線はそれぞれ1つの96ウェルプレートに対応する。
【0101】
この研究は、複数のCRISPR/Cas9編集細胞株および患者由来細胞株にわたって一貫したオプトパッチ表現型を得る能力を示す(図23、24)。表現型は、その症状について承認された薬物によってほぼ完全に逆転させることができ、疾患関連機能パラメータを抽出するプラットフォーム方法論の重要な検証を示す(図23~25)。このオプトパッチ表現型スクリーニング(数十億個の高品質iPSCニューロンで実行)は、異なる週に測定された複数のプレートにわたる培養ヒトニューロンにおいて、大きなスクリーニングウィンドウと明確に同定されたヒットにより、優れたアッセイ一貫性を示し、ヒトiPS細胞由来ニューロンを用いた複雑なアッセイを実行および解析する能力を強調した。
【0102】
本発明には、治療候補(小分子化合物またはASOのいずれか)がスクリーニングキャンペーンに含まれる場合に観察され得る介入効果の「フィンガープリント」を利用するための深層学習技術が含まれ、同様の機能効果をもつ介入の「近傍」を捕捉する(図27)。
【0103】
図27は、薬物類似性の比較を示す。入力特徴(例えば、オプトパッチの特徴のベクトル)を使用して、機械学習システムは、新しい薬物がデータストア内の既知の薬物と類似のフィンガープリントを有することを識別することができる。いくつかの実施態様では、hiPSCニューロンを30日間培養し、ツール化合物で処置してデータストアを構築した。薬物なしの対照に対するパラメータ値は、オプトパッチ興奮性アッセイから抽出された162個のパラメータによって捕捉された薬物応答を示す。カテゴリー内の異なるパラメータは、異なる刺激レジームに対応する。ナトリウムチャネル遮断薬およびカリウムチャネル遮断薬は互いに同様に作用する。非類似度マトリックスは、多様体学習技術によって簡潔なフィンガープリントに縮小された各化合物のニューラル測定値を示し、その後、縮小された薬物空間内のフィンガープリント類似度によって近傍にマッピングされる。ここでは、2回の独立した測定を比較する非類似度マトリックスが示されており、化合物フィンガープリントの再現性および類似化合物のクラスタリングを示している。そのような結果は、本開示のアッセイによって調査される電気生理学的空間のランドマークとして使用するための、ツール化合物および承認薬物からの薬物フィンガープリントの参照ライブラリーであるデータストアを構成する。データストアは、(関連する化合物近傍を見つけるために化合物空間に疾患表現型をマッピングすることによって)インビトロスクリーニング作業で使用することができ、および/または標的デコンボリューション作業のホットスタートを提供することができる。好ましい実施形態では、分析は、データストアで訓練された機械学習システムによって実施され、データストア内の表現型は条件ラベルに関連付けられる。
【0104】
これらのツールはすべて、インビトロ神経生理学の読み出しでインビボ神経毒性を予測するのに有用である。インビトロ試験は、ヒト細胞モデル生成、オプトパッチによるハイスループット機能的電気生理学、および機械学習分析を使用して、インビボで神経毒性副作用を生じる可能性のあるASOの予測電気生理学的シグネチャを同定する。多次元読み出しは、インビボで関連する神経細胞型の状況において摂動的なASO活性の影響を特定するのに有用である。
【0105】
本開示のシステムおよび方法は、ニューロンにおいて治療上関連するRNAのレベルを調節するASOを設計するのに有用である。光遺伝学および機械学習は、ニューロンベースの疾患モデル、ハイスループット全光学電気生理学(またはオプトパッチ)、および機械学習ベースの分析を統合するプラットフォームにおいて、インビボでASO毒性を予測および回避するために使用される。この方法は、意図しないRNA標的のASO調節を支配する配列および熱力学の法則を体系的に特徴付けるインシリコオペレーションを含む。方法には、オプトパッチプラットフォームを使用してインビボで毒性のある神経学的表現型を予測するインビトロアッセイが含まれる。ここでは、ASOが遺伝子標的を調節するために設計および評価されたシステムおよび方法の成分を示す結果が含まれている。
【0106】
要約すると、本方法は、ギャップマーと立体的遮断オリゴヌクレオチドの両方について配列距離とオフターゲットASO活性との間の関係を体系的に特徴付けることを含む。意図した標的に対する配列相補性および意図しない標的に対する配列距離(またはミスマッチの数)がASOの特異性を推進するが、意図しない標的との相互作用を決定する距離閾値はここで改善される。本発明のシステムおよび方法は、ASOのオンターゲット有効性とオフターゲット結合部位を調節するその能力の両方を決定するための標的部位アクセス可能性(RNA二次構造またはRNA結合タンパク質占有率から生じる)を考慮する。ASOが近い配列の一致を調節しないという観察は、ASOが単独でその半相補配列に結合できないのではなく、転写物上のその部位にアクセスできないことに起因している可能性があり、標的の二次構造またはタンパク質結合が存在しない場合には不適切に寛容な配列ヒューリスティックスにつながる可能性がある。配列距離、熱力学、およびASO有効性の間の関係を調べるためには、標的部位へのアクセス可能性を考慮する必要がある。
【0107】
本開示のシステムおよび方法は、臨床的に関連するASO化学:標的のRNase H媒介性崩壊を誘導する「ギャップマー」を含む2’-MOE、および転写物のスプライシング、安定性、または翻訳を調節し得る「立体的遮断オリゴヌクレオチド」を具体化するASOを提供する。ΔΔG(ミスマッチ標的と完全に相補的な標的に結合するASO間の二本鎖形成エネルギーの差)と転写レベルのオフターゲット調節との間の関係は、インシリコでモデル化および予測することができ、試験オリゴヌクレオチドのパネルの設計を導くために使用される。好ましくは、ASOは、配列距離(1~4)、連続結合のストレッチ、好ましいRNase H切断部位のミスマッチ、およびΔΔG値の範囲に及ぶように設計される。ASO送達および読み出しアッセイを使用して、その数百の候補ASOの有効性を評価する。結果は、情報学パイプラインにフィードバックされ、標的部位でのアクセス可能性を考慮しながらオフターゲット効果をもつASOを除外するため保守的な規則を生成することができる。
【0108】
特定の実施形態は、バルクRNAシーケンシングを使用して、有益なASOのパネルで処置した培養ヒトニューロンにおけるトランスクリプトーム全体の遺伝子発現およびアイソフォーム組成物を評価し、様々なレベルの配列類似性でオフターゲット活性を同定する。これらの実験は、臨床的に最も関連性の高い2つのASO化学の転写レベルおよびスプライス調節の両方に対するオフターゲット効果の特徴付けをもたらす。試験には、未処置細胞、トランスフェクション試薬/ビヒクルで処置した細胞、陰性対照として両方の化学のノンターゲティングASOで処置した細胞、既知のオフターゲット効果を有する、文献からの少なくとも1つの陽性対照ASOで処置した細胞、および本発明の方法によって設計された候補ASOが含まれ得る。各標的について、既存のRNA-Seqツールを使用して、同じ意図した標的および陰性対照条件を調節することが既知の対のASOの差次的発現分析を実施することができる。陰性対照と比較して、ある遺伝子を標的とする両方のASOによってその発現が有意に調節される遺伝子は、意図した標的ノックダウンの二次的作用である可能性が高いが、2つのASOのうちの1つのみによって有意に調節される遺伝子は、意図しない標的配列へのワトソン-クリック結合の結果である可能性が高い。配列分析と熱力学的モデリングとの組み合わせは、各ASOによって調節される可能性の高いオフターゲット遺伝子を予測するために使用され得る。予測されたオフターゲットヒットと観察された遺伝子発現のオフターゲット調節との間の重複を使用して、インシリコオフターゲット選別のための繊細な除外基準を生成することができる。特定のASOの直接的な影響である可能性が高いが、本発明者らの標準的な配列分析ではまず同定されない遺伝子は、設計規則を精緻化する際に特に価値があり得る。
【0109】
本開示のさらなるシステムおよび方法は、ニューロンのインビトロ機能測定がインビボCNS毒性を予測し得ることを実証するために使用される。インビボ神経毒性を予測するインビトロアッセイは、げっ歯類および非ヒト霊長類における高価で労働集約的なインビボ研究の前に、神経毒性の責任を有するASOを薬物開発パイプラインから除去することを可能にする。ここで、生細胞をインビトロでオリゴヌクレオチドに曝露するステップは、好ましくは、オリゴヌクレオチドに曝露されたときの細胞の神経表現型を得るために全光学電気生理学またはオプトパッチを実施することを含む。オプトパッチは、霊長類または齧歯類の初代およびヒトiPS細胞由来ニューロンの挙動をハイスループットで特徴付けるために使用することができる。オプトパッチは、いくつかの重要な理由から、この目的のための貴重なインビトロスクリーニングツールを提供する。第1に、オプトパッチアッセイは、遺伝子病変(図22~25)および薬理学的介入(図11~13および27)の両方の機能的効果を明らかに反映する。ここで、関連する神経毒性メカニズムが、これらの機能的測定に反映される可能性がある。本発明の方法は、例えばFDA承認小分子化合物の効果を特徴付ける豊富な過去のオプトパッチデータ(データストア)を使用することができ、ASO駆動オプトパッチ表現型を診療所で十分に忍容される(または忍容されない)効果のより広い状況内に置くことを可能にする。
【0110】
3つのギャップマーASO候補のパイロット特性評価は、慢性神経毒性がオプトパッチ表現型によって反映されることを示唆している。ASO3ではなくASO1およびASO2は、ASO送達の7日後に培養ラット海馬ニューロン(DIV8)の機能的表現型を変化させた(図28~29)。結果は、オプトパッチ表現型がインビボ神経毒性と相関したことを示す。ASO1、ASO2、およびASO3は、異なる配列を有するが、同じ標的遺伝子の発現を減少させる。
【0111】
図28は、ASO1(n=1,413ニューロン)、ASO2(n=973)、ASO3(n=2,761)、ASOなし(n=2,880)、およびスクランブル対照ASO(n=2,836)で処置したラット海馬培養物の結果を示す。ASO1およびASO2で処置した培養物は、ASO3または対照化合物で処置した培養物と比較して、視野(FOV)当たりのスパイク細胞が少なく、活動電位の発火頻度が低く、活動電位波形が変化している。
【0112】
図29は、ASO1、ASO2、ASO3、およびビヒクルをラットに髄腔内送達した場合の結果を示す。いずれの化合物についても注射24時間後に毒性表現型は認められなかったが、ASO1およびASO2で処置した動物については注射10~12日後に膀胱および後肢の麻痺が認められた。暗さ、すなわちグレーレベルは、図28に一致する。
【0113】
IT送達24時間後のラットではいずれのASOもインビボで神経学的表現型を生じなかったが、IT送達後10~12日目に、ASO1およびASO2で処置したラットでは後肢および膀胱の麻痺が観察され、ASO3で処置したラットでは観察されなかった(図29)。
【0114】
図30において、固有の興奮性の特徴に基づく602に基づくUMAP投影は、インビボで毒性であることが知られている2つのASOを、インビボで忍容性であることが知られている2つのASOから分離する。この空間にプロットされた追加のデータ点は、治療上関連するmRNAを標的とするASOで処置されたニューロンの挙動を示す。これらのデータは、インビトロアッセイにおいて毒性ASOに類似する配列の優先順位を下げるために使用することができる。これらの有望なパイロットデータを考慮すると、証拠は、本発明の方法がASO主導型神経毒性を予測し、リード発見の早期に神経毒性ASO候補を効率的に排除するためのインビトロスクリーニングアッセイを提供することを示唆する。
【実施例
【0115】
実施例
実施例の実験は、インビボで神経毒性のあるASOの作用が、2つの有用な細胞モデルにおけるニューロン活性の異常なパターンによって予測することができることを検証する。
実施例1.1
【0116】
2つの最も臨床的に関連する化学を表す400の多様なASOのパネルを生成し、齧歯類初代ニューロンにおける機能的挙動および細胞傷害性に対するそれらの作用を特徴付ける。このパネルには、マウスにおいて急性発作を誘発することが知られているオリゴヌクレオチド、肝毒性が知られているオリゴヌクレオチド、およびインビボで後肢脱力または他の神経毒性表現型を引き起こす代表的なオリゴヌクレオチドを含む、インビボで毒性であることが知られている一連の10~20陽性対照ASOが含まれる。このパネルには、臨床に進んでおり、ヒトおよび前臨床毒性学に使用されるモデル種においてインビボで十分に忍容されることが知られている一連の10~20個の陰性対照ASOも含まれる。残りのASOは(目標1で確立された閾値内で)ノンターゲティングとなるが、このセットは広範囲の配列モチーフを含み、本発明者らの通常の設計プロセス中で選択された配列を一般に代表する(例えば、中程度のGC含有量を有する、CpGモチーフを回避するなど)。これらの配列は、ギャップマーと立体的遮断化学の両方を使用して合成され、化学と配列との間の相互作用および可能性のある毒性に対するその効果が評価される。このASOパネルで処置した培養ラット皮質および後根神経節ニューロンの挙動は、オプトパッチを使用して機能的に特徴付けられる。ノンターゲティングASOおよび陽性対照ASOから臨床的に忍容性が高いことが知られているASOを分ける機能的特性を同定し、これらの特性を使用して、インビボで神経毒性表現型を有する可能性が最も高い(n=10)および最も低い(n=10)ノンターゲティングASOパネルのサブセットを選択する。
実施例1.2
【0117】
実施例1.1で試験したオリゴヌクレオチドパネルで処置した異なる種類のヒトiPS細胞由来ニューロンの機能的挙動および細胞傷害性プロフィールを特徴付ける。有益なASOパネルは、機能的効果が種特異的であるかどうかを確立するために、ヒトiPS細胞由来ニューロンでも試験される。この場合、ヒトiPS細胞由来ニューロンは、げっ歯類モデルよりも臨床毒性を予測するためのより忠実なモデルとなる可能性がある。少なくとも2つの異なる種類のヒトiPS細胞由来ニューロン、転写プログラミングによって自社で作製した皮質興奮性「NGN2」ニューロンおよびCellular Dynamics International社から市販されている分化ニューロン(iCell Neurons作製)を使用する。NGN2ニューロンは、遺伝子組換えiPS細胞株でニューロン転写因子ニューロゲニン2を過剰発現させることによって作製される。iPS細胞由来ニューロンは、成熟させるために初代マウスグリア単層と共培養される。ASOは、確立されたプロトコルを使用して送達される。
実施例2
【0118】
実施例1.1で同定された20個のASOを、ラットへの髄腔内送達によりインビボで特徴付ける。各ASOを5匹のラットで試験し、動物を2週間観察して、急性と長期の両方の神経毒性作用を評価する。最初の研究では、雄ラットのみを利用する。オフターゲット相同性に基づく結合効果および一般的な神経毒性作用が性別特異的である可能性は低いので、最初に雄動物に焦点を合わせることによって、これらの初期実験において変動性を低減し、ASOに媒介される効果を検出する能力を改善することが意図される(ロバスト性および再現性)。主要な所見は、将来の研究の一環として雌動物で確認される。
実施例3
【0119】
改良されたASO設計基準と改良されたスクリーニングツールを、治療上関連する標的遺伝子で試験する。UBE3A(2つの異なる神経発達障害-アンジェルマン症候群および15番染色体重複症候群(Dup15q)に関連する遺伝子)を標的とするASOを設計および試験する。この実施例は、参照により組み込まれる、2021年2月17日に出願された米国仮特許出願第63/150,188号の開示を使用する。アンジェルマン症候群は、UBE3Aの母性コピーの機能喪失変異および欠失から生じるが、母性UBE3Aを保持する染色体領域の重複または三重重複はDup15qを引き起こす。変異の母性的性質は、ニューロン特異的な様式でのUBE3A遺伝子のゲノムインプリンティングによるものであり、これにより、長い非コードアンチセンス転写物が、ニューロンにおいてのみUBE3Aの父性コピーをサイレンシングする。臨床的には異なるが、両方の症候群は発作、運動機能障害、言語遅延/障害を伴い、しばしば自閉症スペクトラム障害の基準を満たす。UBE3Aは、細胞質および核で作用し、プロテオソームによる分解の基質を標的とするE3ユビキチンリガーゼタンパク質をコードする。UBE3Aの正確な標的は依然として研究されているが、シナプス機能障害およびニューロン固有の興奮性の変化は、UBE3Aの欠失および重複に関連しており、ニューロンおよび正常な脳生理学におけるUBE3Aの重要な機能が強調されている。ASOは、UBE3Aに関連する障害の魅力的な治療アプローチである。父性アンチセンス転写物を標的とすることにより、UBE3Aの父性コピーを「サイレンシング解除」し、アンジェルマン症候群において機能を回復させることは既に検討されている。Dup15q症候群の場合、ギャップマーASOを用いて増加したUBE3Aレベルを野生型レベルにノックダウンすることにより、これらの表現型を救済し、罹患患者に治療上の利益を提供するのに役立ち得る。
【0120】
ここでは、Dup15q症候群において過剰なUBE3A転写物のRNaseH媒介崩壊を誘導するためにギャップマー化学を利用するASOが使用される。以下に概説する実験は、ASOを設計およびスクリーニングする際に毒性を回避する能力を試験する。
実施例3.1
【0121】
オフターゲット排除のための更新された閾値を使用して、UBE3A発現を下方制御するための40ギャップマーASOを設計する。例えば、参照により組み込まれる、2021年2月17日に出願された63/150,188号を参照されたい。qPCRおよびすべてのASOのタンパク質レベルを使用して、患者由来線維芽細胞およびiPSCニューロンにおけるオンターゲット遺伝子調節を評価して、UBE3Aの転写物およびタンパク質レベルを適切に調節する候補を同定する。Coriellおよび患者iPS細胞株ならびに同質遺伝子型対照から得られたDup15q皮膚線維芽細胞株を使用する。iPS細胞株を、前ニューロン転写因子NGN2の過剰発現に媒介されるロバストな転写プログラミングアプローチを使用して、皮質興奮性ニューロンに分化させる。
【0122】
図22図25は、一般に、スクリーニング作業を容易にするように適合させた、そのような方法の結果を示す。改良された基準を使用して設計された分子の有効性(UBE3A転写物およびタンパク質ノックダウンの割合)を評価するために、少なくとも3回の独立したASO送達および読み出しアッセイ(qPCRおよびイムノブロッティング)が各細胞型で実行される。分化したヒトニューロンについては、下流測定と互換性のある確立されたASO送達条件を使用する(例えば、図11図13)。これらの細胞におけるUBE3A発現および調節の動態をさらに理解するために、ASO送達および処置期間について異なる時点を試験する。
実施例3.2
【0123】
初代げっ歯類ニューロンおよびヒトiPS細胞由来ニューロンにおいてオプトパッチを使用して40個すべての候補をスクリーニングする。40個のASO候補で処置した一次げっ歯類ニューロンの機能的特性から、実施例1.1で開発した予測神経毒性閾値を使用して、インビボで毒性作用を引き起こす可能性のある候補にフラグを立てて除外することが可能になる。
【0124】
さらに、ヒトiPS細胞由来ニューロンのスクリーニングの結果は、ASO候補の治療ウィンドウの状況でこれらの表現型を評価するのに有用である。ここで試験されるヒトiPS細胞由来ニューロンは、Dup15q患者iPSC株から分化したニューロンだけでなく、UBE3Aの正常な発現を有する対照細胞も含む。Dup15q重複が遺伝的に修正された少なくとも1セットの同質遺伝子細胞株を使用する。これらの細胞株から分化した皮質興奮性ニューロンは、成熟のために初代マウスグリアと共培養され、全光学電気生理学的測定の2週間前に、オプトパッチ成分をコードする遺伝子構築物はレンチウイルス形質導入によって送達される。最初の数回のオプトパッチ測定は、患者ニューロンと対照ニューロンとの間の表現型の違いを評価することに焦点を当てる。オプトパッチプラットフォームは、疾患症状に関連するいくつかのニューロン興奮性表現型を同定する可能性が高い。表現型を確立した後、対照およびDup15qニューロンのオプトパッチパラメータに対する40個のASOの効果を評価する。患者および対照の遺伝子型を表す複数の細胞株を使用することにより、オンターゲットの機能的救済とオフターゲットの毒性シグネチャの両方を定量化することが可能になる。用量応答研究は、治療上関連するが毒性表現型を回避するASO濃度を特定するのに有用であろう。これらのデータは、所望の表現型救済のためのASO候補を認定し、ニューロン活性に対する望ましくない摂動効果を有するASO候補を排除するオプトパッチシステムの力を実証する。
実施例3.3
【0125】
上位3つの候補ASOおよびビヒクル対照で処置したヒトiPS細胞由来ニューロンにRNA-seqを実施する。UBE3Aを標的とする候補ASO(ASOあたりn=5反復)で処置したニューロン間で差次的に発現される遺伝子をマイニングして、オフターゲットの可能性のあるワトソン・クリック結合を同定する。これは、オフターゲット転写調節を同定するのに有用であろう。ビヒクル処置ASO(n=5)と比較してASO処置ニューロンで観察された差次的発現の機能的関連性は、オプトパッチ表現型を使用して評価することができる。
実施例3.4
【0126】
上位3つの候補ASOをラットにおけるインビボでの耐容性について試験する。各ASOを5匹のラットに髄腔内送達し、ASO処置後2週間のこれらの動物の臨床検査をビヒクル処置動物(n=5)と比較してスコア化する。これは、毒性予測の試験として役立つ。初代げっ歯類ニューロンにおけるオプトパッチ表現型は、インビボで神経毒性作用を誘導するASOを排除するのに有用であろう。
【0127】
要約すると、本開示のシステムおよび方法は、ASO設計におけるオフターゲット効果および神経毒性を予測および回避するのに有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
【国際調査報告】