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特表2024-522770標識化ステップ中に低い含水量を有する、[18F]放射性標識された化合物を調製するための方法
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  • 特表-標識化ステップ中に低い含水量を有する、[18F]放射性標識された化合物を調製するための方法 図1
  • 特表-標識化ステップ中に低い含水量を有する、[18F]放射性標識された化合物を調製するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】標識化ステップ中に低い含水量を有する、[18F]放射性標識された化合物を調製するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 51/04 20060101AFI20240614BHJP
   A61K 101/02 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
A61K51/04 200
A61K51/04 100
A61K51/04 300
A61K101:02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577714
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022066483
(87)【国際公開番号】W WO2022263594
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】2108605.3
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】305040710
【氏名又は名称】ジーイー・ヘルスケア・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】エンゲル,トーグリム
(72)【発明者】
【氏名】マクロビー,グレイム
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,アラン
(72)【発明者】
【氏名】グリッグ,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】カーン,イムティアズ アハメド
(72)【発明者】
【氏名】ウィケネ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シェールズ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン,アレクサンダー
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084NA20
4C085HH03
4C085KA29
4C085KB38
4C085KB45
4C085KB56
4C085KB65
(57)【要約】
本発明は、含水量が制御される、[18F]放射性標識された化合物を調製する方法に関する。反応プロセス内の含水量および水の起源を制御することは、放射性標識化プロセスの生成物の収量および純度の両方に対し顕著な効果を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
18F]放射性標識された化合物を調製する方法であって、
(a)[18F]フッ化物を含む溶液から、水およびアセトニトリルを蒸発させることを含む、初期乾燥ステップ、
(b)アセトニトリルによる、[18F]フッ化物を含む前記溶液からの水の共沸蒸留を含む、さらなる乾燥ステップ(フッ化物活性化ステップ)、ならびに
(c)ステップ(b)から得られる、[18F]フッ化物を含む前記溶液由来の[18F]フッ化物により、前駆物質化合物を標識して、[18F]放射性標識された化合物を得るステップ
を含み、
乾燥ステップ(b)後の、[18F]フッ化物を含む前記溶液起源の、標識化ステップ(c)中の含水量が500ppm未満であり、
前記前駆物質化合物起源の、標識化ステップ(c)中の含水量が2000ppm以下である、
方法。
【請求項2】
少なくとも2サイクルの、アセトニトリルによる前記共沸蒸留が実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3サイクルの、アセトニトリルによる共沸蒸留が実施される、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
乾燥ステップ(b)(前記フッ化物活性化ステップ)後の、[18F]を含む前記溶液起源の、前記標識化ステップ中の含水量が400ppm未満である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
乾燥ステップ(b)(前記フッ化物活性化ステップ)後の、[18F]を含む前記溶液起源の、前記標識化ステップ中の含水量が350ppm未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記前駆物質化合物起源の、前記標識化ステップ中の含水量が1500ppm以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記前駆物質化合物起源の、前記標識化ステップ中の含水量が500ppm~1000ppmである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記標識化ステップ中の合計含水量が2500ppm未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記標識化ステップ中の合計含水量が1000ppm未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
18F]フッ化物を含む前記溶液が、イオン交換樹脂、例えば、アニオン固相抽出カートリッジからの溶出剤である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)で得られる前記[18F]放射性標識された化合物が、それに続いて精製ステップにかけられる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記放射性標識された化合物が、[18F]フッ素標識された放射性医薬品、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記[18F]フッ素標識された放射性医薬品、またはその薬学的に許容される塩が、[18F]FDG(2-デオキシ-2-[18F]フルオロ-D-グルコース)、[18F]FMAU(2’-デオキシ-2’-[18F]フルオロ-5-メチル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルウラシル)、[18F]FMISO(18Fフルオロミソニダゾール)、[18F]FHBG(9-(4-[18F]フルオロ-3-[ヒドロキシメチル]ブチル)グアニン)、[18F]FES(16a-[18F]フルオロ-17b-エストラジオール)[18F]AV-45、[18F]AV-19、[18F]AV-1、[18F]フルテメタモル、[18F]フルルピリダズ、[18F]K5、[18F]HX4、[18F]W372、[18F]VM4-037、[18F]CP18、[18F]ML-10、[18F]T808、[18F]T807、2-[18F]フルオロメチル-L-フェニルアラニン、GE-135[18F]フルシクラチド、GE-212、GE-226から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記[18F]フッ素標識された放射性医薬品が、[18F]フルルピリダズ、またはその薬学的に許容される塩である、請求項12または請求項13に記載の方法。
【化1】
【請求項15】
開始時活性が100GBq超である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
開始時活性が200~350GBqである、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
放射性不純物Bの量が3.5%未満である、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
自動合成システムにおいて実施される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、放射性標識された化合物を調製する方法に関する。反応プロセス内の含水量および水の起源が、放射性標識化プロセスの生成物の収量および純度の両方に対し顕著な効果を有することが判明した。
【背景技術】
【0002】
放射性医薬品は、医用画像、診断または療法の分野における使用のための、in vivoでの哺乳類への投与に好適な、放射活性元素で標識された化合物である。放射性医薬品組成物は、放射性標識された化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒、および1つまたは複数の安定剤を含む。
【0003】
フッ素-18([18F])は、診断における使用に好適な放射性医薬品に通常使用される放射活性フッ素同位体である。フッ素-18崩壊は、ポジトロン放出(97%)および電子捕獲(3%)により発生する。放射性同位体[18F]は崩壊するため、放出されたポジトロンが、ポジトロン放出断層撮影(PET)画像化に活用される。このin vivo画像化方法は、とりわけ、心臓画像化、腫瘍画像化および脳画像化に使用される。
【0004】
自動合成システムは、放射性医薬品の生成にとって重要である。先行技術の合成モジュールは、国際公開第2007/042781号パンフレットおよび国際公開第2011/097649号パンフレットに記載される。FASTlab(登録商標)(GE Healthcare)などの合成モジュールは、臨床用途の放射性医薬品の線量の生成をもたらす。FASTlab合成モジュールは、放射性医薬品を生成するための機器を介する方法を受け入れ、作動させる。
【0005】
放射性標識された化合物を調製するプロセスにおいて、放射化学的不純物および未反応の[18F]フッ化物は、望ましくない副生成物である。これらの副生成物を最小限にすることが有利である。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、[18F]フッ化物放射性標識された化合物を調製するための改善された方法に関する。
【0007】
本発明の一態様は、[18F]放射性標識された化合物を調製する方法であって、
(a)[18F]フッ化物を含む溶液から、水およびアセトニトリルを蒸発させることを含む、初期乾燥ステップ、
(b)アセトニトリルによる、[18F]フッ化物を含む前記溶液からの水の共沸蒸留を含む、さらなる乾燥ステップ(フッ化物活性化乾燥ステップ)、ならびに
(c)ステップ(b)から得られる、[18F]フッ化物を含む溶液由来の[18F]フッ化物により、前駆物質化合物を標識して、[18F]放射性標識された化合物を得るステップ
を含み、
乾燥ステップ(b)後の、[18F]を含む溶液起源の、標識化ステップ(c)中の含水量が500ppm未満であり、
前駆物質化合物起源の、標識化ステップ(c)中の含水量が2000ppm以下である、
方法に関する。
【0008】
好ましくは、少なくとも2サイクルの、アセトニトリルによる共沸蒸留が実施される。より好ましくは、3サイクルの、アセトニトリルによる共沸蒸留が実施される。
【0009】
本発明の一態様において、乾燥ステップ(b)後の、[18F]を含む溶液起源の、標識化ステップ中の含水量は400ppm未満である。好ましくは、乾燥ステップ(b)後の、[18F]を含む溶液起源の、標識化ステップ中の含水量は350ppm未満である。本発明の一態様において、前駆物質化合物起源の、標識化ステップ中の含水量は1500ppm以下である。好ましくは、前駆物質化合物起源の、標識化ステップ中の含水量は500ppm~1000ppmである。本発明の一態様において、標識化ステップ中の合計含水量は2500ppm未満、例えば、1000ppm未満である。
【0010】
本発明の別の態様において、ステップ(a)前(合成開始時)の[18F]の放射活性は、最大およそ500GBq、例えば最大およそ450GBq、最大およそ400GBq、最大およそ350GBq、最大およそ300GBq、または例えば50GBq~250GBqである。本発明のプロセスを使用することにより、本発明のプロセスにおける合成開始時の[18F]フッ化物の放射活性(開始時活性)が100GBq超である場合でも、高収量のフッ素化生成物および少量の放射化学的不純物が得られる。より大きい開始時活性を使用しつつも、高収量および少量の放射化学的不純物を達成する能力により、より多数の生成物線量を単一バッチで調製することが可能となる。
【0011】
本発明の別の態様において、放射性標識された化合物は、[18F]フッ化物標識された放射性医薬品、またはその薬学的に許容される塩である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】放射性標識された生成物を調製するための、現行のプロセスステップについてのフローチャートである。
図2】放射性標識された生成物を調製するための、本発明のプロセスについてのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語「放射性医薬品」は、その従来の意味を有し、診断または療法における使用のための、in vivoでの哺乳類への投与に好適な放射活性化合物を指す。放射性医薬品は、本明細書で言及されるように、ポジトロン放出断層撮影(PET)トレーサーであってよい。
【0014】
放射性医薬品組成物、または「薬物生成物」は、患者に投与されうる前に、純度などの必要条件に適合することを確実にするための、徹底的な品質管理(QC)プロセスにかけられなければならない。
【0015】
放射化学的純度(RCP)は、放射性TLCまたはHPLCを使用して決定され、クロマトグラムにおける、合計(放射性標識された)ピークに対する、(放射性標識された)原薬ピークの比と定義されうる。高い放射活性濃度(RAC)を有する放射性医薬品を製造する場合、保存中のRCPの低下は、放射線分解の増大により、より低いRACのものよりも大きくなる可能性が高い。高い放射活性濃度により、原薬自体が破壊(すなわち放射線分解)される。
【0016】
用語「を含む」は、本出願にわたってその従来の意味を有し、方法、システム、生成物などが、列挙される構成要素を有しなければならないが、それに加えて他の、指定されていない構成要素が存在していてもよいことを示す。
【0017】
放射性標識された化合物は、各種放射性同位体を含んでいてよい。例えば、放射性標識された化合物は、18F標識された放射性医薬品、またはその薬学的に許容される塩であってよい。放射性標識された化合物は、18F標識された放射性医薬品、またはその薬学的に許容される塩であってよい。
【0018】
放射性標識された化合物は、18F標識された放射性医薬品、またはその薬学的に許容される塩であってよい。そのような18F標識された放射性医薬品の例は、[18F]FDG(2-デオキシ-2-[18F]フルオロ-D-グルコース)、[18F]FMAU(2’-デオキシ-2’-[18F]フルオロ-5-メチル-1-ベータ-D-アラビノフラノシルウラシル)、[18F]FMISO(18Fフルオロミソニダゾール)、[18F]FHBG(9-(4-[18F]フルオロ-3-[ヒドロキシメチル]ブチル)グアニン)、[18F]FES(16a-[18F]フルオロ-17b-エストラジオール)[18F]AV-45、[18F]AV-19、[18F]AV-1、[18F]フルテメタモル、[18F]フルルピリダズ、[18F]K5、[18F]HX4、[18F]W372、[18F]VM4-037、[18F]CP18、[18F]ML-10、[18F]T808、[18F]T807、2-[18F]フルオロメチル-L-フェニルアラニン、GE-135[18F]フルシクラチド、GE-212、GE-226、またはそれらの組合せを含む。
【0019】
放射性標識された化合物は、式(I):
【0020】
【化1】
(式中、Aは、N(R)、S、O、C(=O)、C(=O)O、NHCHCHO、結合、またはC(=O)N(R)から選択され、
存在する場合、Bは、水素、アルコキシアルキル、アルキルオキシ、アリール、画像化部分で任意選択で置換されたC~Cアルキル、ヘテロアリール、および画像化部分から選択され、
存在する場合、Cは、水素、アルコキシアルキル、アルキルオキシ、アリール、画像化部分で任意選択で置換されたC~Cアルキル、ヘテロアリール、および画像化部分から選択され、
Dは、水素、アルコキシアルキル、アルキルオキシ、アリール、画像化部分で任意選択で置換されたC~Cアルキル、ヘテロアリール、および画像化部分から選択されるか、または
CおよびDは、それらが結合している原子とともに、三員または四員炭素環を形成し、
Gはハロまたはハロアルキルであり、
nは0、1、2、または3であり、
、R、R、R、R、RおよびRは、水素、画像化部分で任意選択で置換されたC~Cアルキル、および画像化部分から独立に選択され、
は、画像化部分で任意選択で置換されたC~Cアルキルであり、
Eは、結合、炭素、および酸素から選択され、ただしEが結合である場合、BおよびCは非存在であり、Dはアリールおよびヘテロアリールから選択され、ただしEが酸素である場合、BおよびCは非存在であり、Dは、水素、アルコキシアルキル、アリール、画像化部分で任意選択で置換されたC~Cアルキル、およびヘテロアリールから選択され、
ただし、少なくとも1つの画像化部分が式(I)に存在する)
の化合物であってよい。
【0021】
式(I)の置換基AはOであってよい。Rはtert-ブチルであってよい。Gはクロロであってよい。画像化部分は、本明細書で言及される任意の放射性同位体、例えば[18F]であってよい。
【0022】
放射性標識された化合物は[18F]フルルピリダズであってよく、これは以下の構造を有する。
【0023】
【化2】
【0024】
生成プロセスについての記載
本発明の方法は、臨床用途の放射性医薬品の線量の生成をもたらすFASTlab(登録商標)システム(GE Healthcare)などの自動合成システムで実施されてよい。
【0025】
以下の記載において、FASTlab(登録商標)システムについて言及がなされるが、これは本発明において限定的でなく、別の好適なシステムが使用されてもよい。
【0026】
用語[18F]は、非イオンおよびアニオン形態の両方を網羅して使用される。[18F]フッ素はアニオン形態であり、ゆえに用語[18F]フッ化物が一般的に使用される。[18F]PETトレーサー製造の尺度は、合成開始時(「SOS」)に使用される放射活性(「活性」)で測定され、この活性は、本明細書で「開始時活性」または「開始時放射活性」とも呼ばれる。活性100GBqは、14.2ngの[18F]に等しい。概して、放射活性が大きいほど、放射線分解の度合が大きい。
【0027】
図1は、放射性医薬品の生成プロセスの一部についてのフローチャートを示す。
【0028】
ステップAにおいて、[18F]フッ化物が、[18O](p,n)[18F]核反応により、銀標的を有するGE Medical Systems PETtraceサイクロトロンを使用して生成される。合計標的体積3~5mLが使用される。ステップBにおいて、[18F]は、一時保存場所から、またはサイクロトロンから直接、FASTlabシステム、または別の好適なシステムに移送されてよい。FASTlabに移送される放射活性の量を測定および制御することを可能にするため、一時保存場所の使用が好ましい。FASTlabに移送されると、[18F]は、アニオン固相抽出(SPE)カートリッジ、例えばQMAカートリッジ(炭酸塩で予め調整)(Waters Corporation)に捕捉される。FASTlabに移送された活性も、QMAカートリッジの次に配置された、較正済みの放射線検出器によりインライン式に測定される。ステップCにおいて、[18F]は、例えば、水およびアセトニトリル中炭酸水素テトラブチルアンモニウム溶液(例えば400μL)により、QMAカートリッジから溶出される。窒素を使用してQMAカートリッジから溶液を流出させ、FASTlab反応器(反応槽、RV)に移送した。ステップDにおいて、水およびアセトニトリルの初期蒸発が、窒素の一定の流れのもと、真空下で、上昇温度、例えば120℃で行われる。ステップFにおいて、アセトニトリル中で溶解された、放射性標識される化合物(本明細書で「前駆物質」、または「最終中間物質」とも呼ばれる)が、反応槽に添加される。前駆物質は、例えば、18F-放射性標識により置き換えられる、トシル基(トシレート(tosylate))を保有していてよい。このフッ素化ステップにより、粗生成物が生じる。それに続いて、精製ステップを実施して純粋な放射性標識された化合物(純粋な原薬)を、無菌濾過後に薬物生成物を得る。
【0029】
前駆物質バイアル中の水のレベルの増大が、放射性標識化プロセスに対して有する影響を調査するため、いくつかの実験を実施した。
【0030】
ステップFにおける放射性標識化反応中の含水量が、粗生成物中で形成される放射性不純物(例えば、放射化学的不純物B、以下で描写される)の量における重要な変量であることが判明した。
【0031】
放射性不純物Bの構造は以下の通りである。
【0032】
【化3】
【0033】
実験結果は、放射化学的不純物(例えば、放射化学的不純物B)が、フリーラジカル放射線分解機序により形成されるという仮説を支持する。水はフリーラジカルの潜在的な供給源であり、ヒドロキシ不純物の大量の[18O]アナログが、粗生成物のLC-MS分析において観察された。本発明者らは、乾燥(ステップD)中に形成されるフリーまたはヒドロキシラジカルの量と、標識化反応中に存在する含水量との間の関係が重要であると考える。より多くのフリーラジカルが、より高いRAC、より高い温度およびより長いプロセス時間により、乾燥プロセス中に発生する。本発明者らは、ヒドロキシフリーラジカルを含むフリーラジカルの形成を抑制するためには、プロセスのこの部分の間、水が最小限にされる必要があることを決定した。
【0034】
放射性標識化ステップ(ステップF)中の含水量は、以下のもの:a)乾燥ステップから持ち越された水、ならびにb)固体材料由来の前駆物質および溶解に使用されたアセトニトリルを含有するバイアル中の水から構成される。本発明の改善された乾燥プロセスが、標識化反応に入るフリーラジカルの数を減少させることが決定された。
【0035】
図2は、本発明のさらなるプロセスステップを含むプロセスのフローチャートを示す。ステップA~DおよびFは、先に図1に関連して記載された通りである。新たなステップE(ステップDから続く)において、本明細書でフッ化物活性化(乾燥)ステップとも呼ばれる、さらなる乾燥手順が実施される。ステップEにおける、[18F]を含む溶液の乾燥手順は、アセトニトリルの添加、それに続く真空下で上昇温度での蒸発による、水/アセトニトリルの共沸蒸留を含む。本発明の増強された乾燥手順において、このステップは少なくとも2回繰り返される。好ましくは3回の、共沸による乾燥サイクル(3×0.5mLアセトニトリル)が実施される。ステップEに、図1に関連して先に記載されたフッ素化(放射性標識化)ステップであるステップFが続く。
【0036】
含水量を測定するためのカールフィッシャー装置を使用する、一連の非放射活性実験により、放射性標識化反応の含水量を調査した。表1にまとめられた各実験について、3つまたは4つの試料を分析した:(i)前駆物質を溶解させるのに使用されたアセトニトリル、(ii)共沸による乾燥に使用されたアセトニトリル、(iii)溶解した前駆物質、(iv)乾燥プロセスからの持ち越しおよび(v)標識化溶液自体の含水量を分析した。
【0037】
【表1】
実験1、2および6は参照例である。
【0038】
前駆物質の構造は以下の通りである。
【0039】
【化4】
【0040】
この前駆物質は特に、放射線分解による分解を受けやすい。
【0041】
標識化反応中の合計含水量(最後の列)は、前駆物質バイアル起源の含水量、および乾燥プロセス後の[18F]フッ化物を含む溶液中に存在する含水量で構成される。
【0042】
初期高活性実験における含水量は約2500ppmであった(表1、実験1)。この順序についての乾燥計画は、120℃で約8.5分であった(「元の順序」)。
【0043】
実験2では、広く使用される乾燥順序が適用される。実験1の乾燥順序と比較して、実験2では温度が120℃でさらに約1.5分間維持され、早期の蒸発ステップ中の反応槽への不活性ガス流速のわずかな差を有する。ゆえに合計乾燥時間は約10分であった。より長い乾燥時間は、標識化反応中、含水量に対して顕著な効果を有さず、実験2での含水量は、実験1での2469ppmと比較して2665ppmであった。以下で詳述されるさらなる乾燥順序は、実験2について記載された乾燥順序に基づく。
【0044】
実験3および4では、共沸による乾燥(3×0.5mLアセトニトリル)を実験2の乾燥順序に追加した。合計乾燥時間は120℃で約15分であり、3回の共沸による乾燥サイクルの追加が、合計乾燥時間に約5~6分を追加したことを意味していた。実験3では、標識化中の含水量が605ppmであると決定され、そのうちの375ppmは乾燥ステップから持ち越された水であり、230ppmは前駆物質バイアル起源であった。
【0045】
実験5では、代替の共沸による乾燥順序を、より小さい真空設定値および3回の共沸による乾燥サイクル(3×0.5mLアセトニトリル)で、120℃の代わりに110℃で進行させた。合計乾燥時間は12.8分であった。この順序は、前駆物質が反応槽に添加される前の温度の低下(冷却ステップ)の必要がないという利点を有する。さらに、合計乾燥時間は、実験3および4における乾燥順序よりも短い(12.8分対15分)。含水量は605ppmであり、これは、より厳しい条件を有する順序(実験3)と同じであった。実験5の増強された乾燥手順は、乾燥後の、[18F]成分を含む溶液中の含水量を、2238ppmから323ppmまで減少させた(実験1と5とを比較)。
【0046】
18F]フッ化物が捕捉された後(かつこれが反応槽中に溶出する前)に、QMAカートリッジをアセトニトリルですすぐことで、QMAカートリッジの残留水がアセトニトリルで置き換えられるため、反応槽に入る水の量が減少することも仮定された。ゆえに、実験6では、シリンジS1を介した、アセトニトリルによるQMAカートリッジのすすぎを実施し、[18F]フッ化物を、実験2の乾燥プロセスを使用して乾燥させた。実験6における標識化反応での水の量は1155ppmであり、このことは、QMAカートリッジのすすぎが、実験2で使用された単純な乾燥手順と比較して、含水量の改善(すなわち、減少)をもたらすことを示唆した。しかし、実験3および4の共沸による乾燥順序をQMAカートリッジのすすぎと組み合わせる実験7では、含水量が718ppmであると測定され、これはすすぎなしよりも大きい(実験6と7とを比較)。このことは、[18F]フッ化物を含む溶液が共沸により乾燥される場合、QMAのアセトニトリルによるすすぎが不要であることを示した。
【0047】
結論として、実験5の増強された[18F]フッ化物乾燥プロセスは、3分量のアセトニトリルでの、共沸による乾燥(フッ化物活性化乾燥ステップ)を伴った。合計乾燥時間は110℃で13分弱であり、110℃は、それに続く標識化ステップに必要な温度でもある。
【0048】
好ましくは、少なくとも2サイクルの、アセトニトリルによる共沸蒸留が実施される。より好ましくは、少なくとも3サイクルの、アセトニトリルによる共沸蒸留が実施されてよい。最も好ましくは、3サイクルの、アセトニトリルによる共沸蒸留が実施される。
【0049】
好ましくは、放射性標識化ステップ中の含水量は1000ppm未満である。より好ましくは、放射性標識化ステップ中の含水量は700ppm未満である。
【0050】
好ましくは、乾燥ステップ(フッ化物活性化乾燥ステップを含む)後の[18F]を含む溶液起源の、放射性標識化ステップ中の含水量は500ppm未満である。より好ましくは、乾燥ステップ(フッ化物活性化乾燥ステップを含む)後の[18F]を含む溶液起源の、放射性標識化ステップ中の含水量は400ppm未満である。さらにより好ましくは、乾燥ステップ(フッ化物活性化乾燥ステップを含む)後の[18F]を含む溶液起源の、放射性標識化ステップ中の含水量は350ppm未満である。
【0051】
増強された乾燥ステップは、フッ化物イオンと会合した水分子の除去または減少につながるとも考えられ、フッ化物が放射性標識化反応により容易に関与することを可能にする。すなわち、フッ化物を水分子のその溶媒かごから遊離させることにより、フッ化物は、例えばKryptofix-222(Sigma Aldrich;Merck KGaA、Germany)またはテトラブチルアンモニウム塩(ABX advanced biochemical compounds GmbH、Germany)との複合体を形成して、求電子剤との反応に利用可能となる。この乾燥ステップは、本明細書で「フッ化物活性化ステップ」、または「フッ化物活性化乾燥ステップ」と呼ばれることもある。
【0052】
乾燥後の含水量の減少(例えば、図2のステップEに関して記載されたように)により、放射性標識化ステップを最適化することが可能となる。主要な放射化学的不純物を、SPEを使用する効率的な精製が可能となるレベルまで減少させて、この不純物の量を、生成物に対して、仕様限界である2%未満まで減少させる。これは、開始時放射活性最大350GBqの場合でも当てはまる。先に言及されたように、より高い放射活性レベルは、より高レベルの放射線分解、ゆえに放射化学的不純物につながる。言い換えれば、放射活性が大きいほど、打ち消されることになる効果が大きくなる。放射活性レベル350GBqでは、不純物が、標的化合物よりもさらに高レベルで得られることが予期された。このことは、いずれの生成物精製方法が使用されるかにかかわらず、放射性化学物質収量を減少させ、生じた薬物生成物線量の数を許容不能なレベルまで低下させる。しかし、本発明のプロセスを使用することにより、高収量のフッ素化生成物および少量の放射化学的不純物が得られた。この高収量のフッ素化生成物および少量の放射化学的不純物Bは、本発明のプロセスにおける合成開始時の[18F]フッ化物の放射活性(開始時活性)が100GBq超である場合でも得られる。より大きい開始時活性を使用しつつも、高収量および少量の放射化学的不純物を達成する能力により、より多数の生成物線量(「患者線量」とも呼ばれる)を単一バッチから調製することが可能となる。開始時活性250GBqでは、20超の患者線量が単一バッチから調製されうる。本発明のプロセスにおける、合成開始時の[18F]フッ化物の放射活性(開始時活性)は、最大およそ500GBq、例えば最大およそ450GBq、最大およそ400GBq、最大およそ350GBq、最大およそ300GBq、または例えば、少なくとも100GBq、50GBq~250GBq、100GBq~350GBq、200GBq~300GBq、200GBq~350GBq、または250GBq~350GBqであってよい。
【0053】
本発明のプロセスにより得られる生成物中の放射性不純物Bの量は、3.5%未満、例えば3%未満、2.5%未満、2%未満、または1.5%未満である。
【0054】
アセトニトリルバイアルの含水量
共沸による乾燥プロセスにおいて使用される100%アセトニトリルバイアルの含水量の効果を決定するため、本発明の増強された乾燥プロセス(すなわち、フッ化物活性化乾燥ステップを含む)を、2種の異なる含水量レベルを有するアセトニトリルにより実施した。このバイアルについて、2つの有効保存期間含水量仕様、750ppmおよび2000ppmが存在する。60ppmまたは2016ppmの水を含有するアセトニトリルバイアルにより実施された共沸による乾燥から、放射性標識化ステップに持ち越された含水量の比較が、表2にまとめられる。
【0055】
【表2】
【0056】
共沸による乾燥において60または2016ppmの水を含有するアセトニトリルを使用した場合、乾燥ステップから持ち越された含水量に有意な差はなかった。したがって、本発明者らは、プロセスのこの段階で添加される水が最終結果に影響を及ぼさないことを発見した。
【0057】
増強された乾燥プロセスによる高活性試験
表3は、本発明のフッ化物乾燥プロセスおよび標準的な乾燥プロセスを使用した、粗生成物を生じる放射性標識化ステップの結果を比較する。
【0058】
18O](p,n)[18F]核反応により、銀標的を有するGE Medical Systems PETtraceサイクロトロンを使用して、[18F]フッ化物を生成させた。合計標的体積3~5mLを使用した。放射性フッ化物を、Waters QMAカートリッジ(炭酸塩で予め調整)に捕捉させ、フッ化物を、水(100μL)およびアセトニトリル(400μL)中炭酸水素テトラブチルアンモニウム(22.8mg)溶液により溶出させた。窒素を使用して、QMAカートリッジから反応槽に溶液を流出させた。[18F]フッ化物を、窒素の一定の流れのもと、真空で、3×0.5mLアセトニトリルでの共沸による乾燥ステップを含めて、110℃でおよそ20分間乾燥させた。アセトニトリル(1.7mL)中前駆物質(10.2mg)を、乾燥させた[18F]フッ化物に添加し、反応混合物を110℃で3分間加熱した。
【0059】
放射性標識化が、本発明の乾燥プロセスにより大幅に改善された:放射性標識された粗生成物の収量は72%から81%に増大し、未反応の[18F]フッ化物の量は5%から1%に減少し、放射化学的不純物Bの量は22%から13%に減少した。
【0060】
【表3】
実験10は参照例である。
【0061】
これらの結果は、本発明の乾燥プロセスにより達成される顕著な利点を示す。
【0062】
アセトニトリル6mg/mLバイアル中の前駆物質の含水量範囲の確認
乾燥ステップから放射性標識化ステップに持ち越される含水量が、粗生成物中で形成される放射化学的不純物Bの量における重要な変量であることが判明した。本発明の乾燥手順を使用すると、放射性標識化反応中の含水量は約600ppmである(表1を参照のこと)。しかし、このことは、前駆物質バイアルの有効保存期間についての問題をもたらす。前駆物質を溶解させるのに使用されるアセトニトリルの含水量は500ppmであり、前駆物質バイアルの含水量は、バイアルへの経時的な自然な水の浸入により1カ月あたりおよそ15ppm増大すると予期される。このことは、標識化反応において望ましい少ない含水量に留まるように、前駆物質バイアルの有効保存期間を7カ月未満(すなわち(600-500)/15ppm=6.7カ月)に限定する。理想的には、前駆物質バイアルの有効保存期間は最短24カ月である。24カ月後、アセトニトリル中で溶解した前駆物質は、含水量860ppm超(すなわち15ppm*24カ月+500ppm)を有する。ゆえに、放射性標識化プロセスは、前駆物質バイアル中のより高レベルの水という課題を負っていた。水を前駆物質バイアルに添加し、カールフィッシャー装置を使用して含水量を測定した。これらの実験の結果が表4に示される。実験12~18の各々については、表1における実験5の最適化された乾燥順序を使用した(すなわち乾燥順序から持ち越された含水量は500ppm未満である)。
【0063】
【表4】
実験12~18は、本発明の最適化された乾燥プロセスを使用する。
【0064】
放射化学的収量は、開始時放射活性量(例えばサイクロトロンまたはそれ以前の反応ステップから得られる)に関連する、精製後に得られる放射活性の総量を指す。放射化学的収量は、補正された崩壊、または補正された非崩壊(NDCY)のいずれかであることに留意されたい。
【0065】
より低い収量およびより多量の放射化学的不純物Bが、より多い含水量により予期される。しかし、驚くべきことに、表4の結果は、前駆物質バイアルの含水量を250ppmから2000ppmに増大させることが、放射性標識化プロセスに対して注目すべき影響を有しなかったことを示す。これは非常に驚くべき結果であり、放射性標識化反応の間、前駆物質バイアル中に存在する水が、乾燥後の[18F]フッ化物を含む溶出剤溶液由来の水とは異なった挙動をすることを示す。
【0066】
表5は、およそ2倍大きい開始時活性でも、最適化された乾燥順序により、改善された結果を示す2つの実験の比較を示す。SPE精製された生成物は、より高い純度およびより少量の放射性不純物Bを有する。
【0067】
【表5】
【0068】
生成物仕様を満たすための、必要条件のうちの1つは、放射性不純物Bの量が3.5%未満でなければならないことである。本発明による最適化された乾燥なしに、元のプロセスを使用すると、開始時放射活性125GBqを使用した場合、放射性不純物Bの量が5.6%であることが分かる。対照的に、本発明の最適化されたプロセスを使用すると、はるかにより大きい開始時放射活性249GBqを使用した場合でも、放射性不純物Bの量は1.5%である。言い換えれば、本発明により、反応を2倍超または3倍超にスケールアップすることが可能となる。
【0069】
以下の表6で、開始時放射活性の効果がさらに例示される。
【0070】
【表6】
【0071】
本発明の最適化された乾燥プロセスを使用して実施された表6の実験は、全て300GBq超の開始時活性を有し、高い生成物純度(RCP)(97%超)および少量の放射性不純物B(2%未満)を達成している。これは、生成物についての生成物仕様の必要条件内に入る。
【0072】
対照的に、表5の実験19により示されるように、元の乾燥プロセスを使用しても、より低いRCP(90%)および許容不能なほど大量の放射性不純物B(5.6%)が達成されただけであった。より少ない放射性不純物B(生成物仕様の必要条件を満たすため3.5%未満)を生じるように、元のプロセスははるかにより小さい開始時活性を必要とし、それによりバッチあたりより少ない患者線量の生成が生じる。
【0073】
したがって、本発明の最適化された乾燥プロセスは、より大きい開始時活性の使用を可能にし、高収量、高RCPおよび少量の放射性不純物Bを有する、バッチあたりより多数の患者線量を生成する。
【0074】
乾燥プロセス中に形成されるフリーまたはヒドロキシラジカルの量と、標識化反応中に存在する含水量との間の関係に説明がつく。より多くのフリーラジカルが、より高いRAC、より高い温度およびより長いプロセス時間により、乾燥プロセス中に発生する。本発明者らは、本発明の改善された乾燥プロセスが、標識化反応に入るフリーラジカルの数を減少させると考える。
【0075】
まとめると、これらの結果は、前駆物質バイアルの含水量仕様が、良好な有効保存期間をもたらすのに十分であるはずの最大2000ppmであってよい(2000ppm-500ppm/15=100カ月、つまり8年超)ことを確認する。より長期の有効保存期間だけでなく、この、前駆物質バイアルのより多い含水量に対する許容性は、前駆物質のバイアルのより容易な製造を可能にする。
【0076】
本発明は、FASTlabプロセス中に存在する水が、それがいつプロセスに導入されたか次第で異なった挙動をすることを示す。プロセスの開始時に添加された水は、放射性標識化ステップで導入された水(すなわち、前駆物質およびそれを溶解させるのに使用された溶媒から存在する残留水)よりもプロセスに対する大きな効果を有する。
【0077】
捕捉された[18F]フッ化物は、アセトニトリルおよび水によりイオン交換樹脂から遊離される。溶出剤は、[18F]、水およびアセトニトリルを含む。高い放射活性レベルにより、放射性標識化(フッ素化)ステップの前に水が除去されなければ、より多数のヒドロキシフリーラジカルが存在する。現行の方法は、放射性標識化ステップの前に、一部の水およびアセトニトリルを蒸発させる。しかし、本発明の増強された乾燥ステップに従って、[18F]溶出剤([18F]を含む溶液)が、放射性標識化ステップより前に乾燥された場合、より少ないフリーラジカルの存在が、より少ない放射化学的不純物が存在する、より高収量のより純粋な生成物につながることが判明した。放射性標識化ステップを実施する際に留まっている、[18F]溶出剤由来の残留水の量が少ないほど、放射性標識化反応ステップにおいて発生する放射性不純物がより少ない。[18F]溶出剤中の水のヒドロキシフリーラジカルの存在の効果が、減少するかまたは回避される。
【0078】
それに続く、放射活性/放射線分解に曝露されていない新たな水の、放射性標識化ステップへの添加は、粗生成物の収量に対し負の影響を有さず、存在する不純物を増大させない。
【0079】
本発明は、FASTlabプロセスにおける含水量の起源が、より後のステップよりもより早期のステップにおいて重要であることも示す。フッ化物乾燥後もなお存在する水が、前駆物質溶液中に存在する水よりも大きい影響を有することが判明した。このことは、水が各ステップで同様の挙動をすることが予期されたことから、予期されなかった。本発明のさらなる利点は、前駆物質バイアルの含水量の増大が、バイアルのより長期の有効保存期間を可能にすることである。このことにより、単一生成バッチにおいてより多数のバイアルを生成することも可能となる。
【0080】
放射線安定剤(radiostabiliser)は、放射線分解から放射性標識された化合物を保護し、ゆえに有効保存期間にわたって、放射性標識された化合物の純度の減少を低下させるかまたは防止する。放射線安定剤は、反応性の高いフリーラジカル、例えば水の放射線分解から生じる酸素含有フリーラジカルを捕捉することにより、分解反応、例えば酸化還元プロセスを阻害するために含まれている場合があるが、本発明の増強された乾燥ステップは非常に有効であり、生じた生成物に対し、定量化分析において何ら影響も有しないことが判明した。
【0081】
したがって、本発明により、反応を、より大きい開始時活性で実施することが可能となり、それにより低レベルの放射性不純物、例えば、放射性不純物Bを有する、バッチあたりより多数の患者線量の生成が可能となる。本発明前は、反応は、発生する放射性不純物の量を制御するため、より小さい開始時活性で実施されなければならず、それによりバッチあたりより少ない生成物線量がもたらされた。
【0082】
本明細書で記載される本発明の実施形態が、広く利用および適用可能であることが、当業者により容易に理解されるはずである。したがって、本発明は、例示的な実施形態に関連して詳細に本明細書で記載されるが、本開示が、実施形態について説明的かつ例示的であり、例示的な実施形態を可能にする開示を提供するためになされることが理解されるべきである。本開示は、本発明の実施形態を限定することも、別様に任意の他のそのような実施形態、翻案、変化、改変および同等の構成を除外すると解釈されることも意図されない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。
図1
図2
【国際調査報告】