(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】圧電流体ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 53/10 20060101AFI20240614BHJP
H02N 2/04 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
F04B53/10 G
H02N2/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577716
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022066554
(87)【国際公開番号】W WO2022263628
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520211513
【氏名又は名称】サフラン ランディング システムズ ユーケー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】トム ラブ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー プランマー
(72)【発明者】
【氏名】ネイサン セル
(72)【発明者】
【氏名】ロイ エバンズ
【テーマコード(参考)】
3H071
5H681
【Fターム(参考)】
3H071AA03
3H071BB01
3H071CC33
3H071DD03
3H071DD12
3H071DD13
5H681AA01
5H681BB13
5H681DD23
(57)【要約】
主ハウジングと、前記主ハウジング内に位置する流体リザーバと、前記主ハウジング内に移動可能に取り付けられたピストンヘッドと、圧電スタックと、ピストンヘッドと圧電スタックを連結して前記圧電スタックを圧縮状態に維持するように配置されている付勢機構と、前記ピストンヘッドに隣接する前記主ハウジング内に静的に取り付けられた出口板であって、前記出口板及びピストンヘッドの隣接面が、ポンプ室を形成する出口板と、前記流体リザーバから前記ポンプ室への流体の一方向の流動を可能にするように配置されている入口ディスク弁と、前記ポンプ室からの流体の一方向の流動を可能にするように配置されている出口ディスク弁とを備える圧電流体ポンプが提供される。圧縮状態における圧電スタックの予荷重付与と入口ディスク弁の使用の組合せによって、上述の圧電ポンプが、他の圧電ポンプと比較して、圧力及び流動能力に対して実質的な改良を提供しうる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電油圧作動流体ポンプにおいて、
前記圧電油圧作動流体ポンプは、
主ハウジングと、
前記主ハウジング内に位置する流体リザーバと、
前記主ハウジング内に移動可能に取り付けられたピストンヘッドと、
前記流体リザーバを備える内部空隙部を有する圧電スタックと、
前記ピストンヘッドと圧電スタックを連結して前記圧電スタックを圧縮状態に維持するように配置された付勢機構と、
前記ピストンヘッドに隣接して主ハウジング内に静的に取り付けられた出口板であって、前記出口板及び前記ピストンヘッドの隣接面がポンプ室を形成する、出口板と、
前記流体リザーバから前記ポンプ室への流体の一方向の流動を可能にするように配置されている入口ディスク弁と、
前記ポンプ室からの流体の一方向の流動を可能にするように配置されている出口ディスク弁とを備える、圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項2】
前記圧電スタックは、前記ピストンヘッドと基部板との間に位置し、前記付勢機構は、前記ピストンヘッドと前記基部板とを互いに向かって付勢する力を作用させるように配置されているばね要素を備える、請求項1に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項3】
ピストンロッドが前記ピストンヘッドに連結され、前記ピストンロッドが前記ピストンヘッドから前記流体リザーバ及び前記基部板を通って延び、前記基部板に連結されている、請求項2に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項4】
前記ピストンロッドが1つ又は複数の保持要素によって前記基部板に連結され、前記ばね要素が前記保持要素と前記基部板との間に位置する、請求項3に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項5】
前記ばね要素が1つ又は複数のベルビルワッシャを備える、請求項4に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項6】
前記ばね要素は、前記圧電スタックの外側の周囲に配置され、前記ピストンヘッド及び前記基部板に連結されている、請求項2に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項7】
前記圧電油圧作動流体ポンプは、前記流体リザーバと流体連通する流体入口をさらに備える、請求項1に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項8】
1つ又は複数の流体入口通路が、前記流体リザーバと前記ポンプ室との間の流体連通を提供するように前記ピストンヘッド内に形成され、前記入口ディスク弁が、前記ポンプ室から前記1つ又は複数の流体入口通路への流体の流動を防止するように配置されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【請求項9】
1つ又は複数の流体出口通路が、前記ポンプ室から流体出口室への流体連通を提供するように前記出口板内に形成され、前記出口ディスク弁が、前記流体出口室から前記流体出口通路への流体の流動を防止するように配置されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の圧電油圧作動流体ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、例えば、航空機システムの油圧ポンプとして使用され得る圧電流体ポンプのための改良設計に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の航空機は、小型の個人用航空機以外にも、翼フラップアクチュエータや着陸装置アクチュエータなど、多くの油圧作動システムを有している。今日まで、中央油圧ポンプは、加圧された油圧作動流体の各システムへの供給を提供するために設けられている。各システムは、それ自身の専用ポンプ、又は、複数のポンプを有することができ、又は、代替的に、全ての油圧システムは、同一のポンプによって使用される。この集中配置は、重量と、摩耗を受ける部品(例えば、油圧パイプ、コネクタ及び弁)の数などの点で多くの欠点を有する。
【0003】
航空機用集中油圧システムの欠点を緩和するために、電気油圧アクチュエータ(EHA)を使用することが可能である。このEHAでは、各アクチュエータは、それ自身の関連する、しばしば統合された、電気駆動油圧ポンプを有する。航空機の周りの動力を油圧ではなく電気的に各アクチュエータに供給することにより、軽量化と部品点数の削減をもたらしている。
【0004】
従来の電気油圧アクチュエータは、別個の電気モータによって駆動される油圧ポンプを有する。これらの別個の部品は、圧電ポンプによって置き換えることができ、それによって、重量及び摩耗しやすい部品点数のさらなる低減をもたらす。圧電ポンプの基本原理は、圧電要素のスタックが交流電流によって駆動され、したがって、スタックを往復運動で交互に膨張及び収縮させ、その結果、流体ポンプ室の容積が、交互に増加及び低下し、したがって、流体の容積が室の内外に送られることが可能になることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧電ポンプは、典型的には、低圧及び低流量能力を有し、航空機用途の電気油圧アクチュエータに使用するのに望ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、主ハウジングと、前記主ハウジング内に位置する流体リザーバと、前記主ハウジング内に移動可能に取り付けられたピストンヘッドと、圧電スタックとを連結し、前記圧電スタックを圧縮状態に維持するように配置されている付勢機構と、前記ピストンヘッドに隣接して前記主ハウジング内に静的に取り付けられた出口板であって、前記出口板及びピストンヘッドの隣接面がポンプ室を形成する、出口板と、前記流体リザーバから前記ポンプ室への流体の一方向の流動を可能にするように配置されている入口ディスク弁と、前記ポンプ室からの流体の一方向の流動を可能にするように配置されている出口ディスク弁とを備える圧電ポンプが提供される。
【0007】
圧縮状態における圧電スタックの予荷重付与と入口ディスク弁の使用の組合せによって、上述の圧電ポンプが、他の圧電ポンプと比較して、圧力及び流動能力に対して実質的な改良を提供しうる。
【0008】
圧電スタックは、ピストンヘッドと基部板との間に位置することができ、付勢機構は、ピストンヘッドと基部板とを互いに向かって付勢する力を作用させるように配置されているばね要素を備えうる。
【0009】
圧電スタックを圧縮状態に維持することは、動作中にスタックに加えられる望ましくない引張荷重を回避するという利点を有する。
【0010】
ピストンロッドは、ピストンヘッドに連結され、ピストンロッドがピストンヘッドから流体リザーバ及び基部板を通って延び、基部板に連結されうる。ピストンロッドは、1つ又は複数の保持要素によって基部板に連結することができ、ばね要素は、保持要素と基部板との間に位置する。ばね要素は、1つ又は複数のベルビルワッシャを備えうる。
【0011】
あるいは、ばね要素は、圧電スタックの外側の周囲に配置することができ、ピストンヘッド及び基部板に連結されている。
【0012】
圧電スタックは、流体リザーバを備える内部空隙部を有しうる。これは、リザーバ内のポンピング流体が冷却剤として作用し、圧電スタック内の過剰な熱の蓄積を防止するという利点を有する。
【0013】
圧電ポンプは、さらに、流体リザーバと流体連通する流体入口を有しうる。
【0014】
1つ又は複数の流体入口通路が、流体リザーバとポンプ室との間の流体連通を提供するようにピストンヘッド内に形成することができ、入口ディスク弁は、ポンプ室から流体入口通路への流体の流動を防止するように配置されている。
【0015】
同様に、1つ又は複数の流体出口通路は、ポンプ室から流体出口室への流体連通を提供するように出口板内に形成することができ、出口ディスク弁は、流体出口室から流体出口通路への流体の流動を防止するように配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図2は、
図1のポンプの拡大された部分を、ポンピングサイクルの異なる点の1つで示す。
【
図3】
図3は、
図1のポンプの拡大された部分を、ポンピングサイクルの異なる点の1つで示す。
【
図4】
図4は、
図1のポンプの拡大された部分を、ポンピングサイクルの異なる点の1つで示す。
【
図5】
図5は、
図1のポンプの拡大された部分を、ポンピングサイクルの異なる点の1つで示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
圧電ポンプには、従来のEHAの解決策の部品点数及び摩耗面を低減するという前述の利点がある。しかしながら、従来のEHAに対抗するためには、圧力と流動能力に実質的な改良が必要である。しかしながら、圧電ポンプの圧力及び流動能力を増大させるためには、対処すべき多くの課題が必要となる。
【0018】
非常に小さな送られる体積をかなりの流量に蓄積するために必要とされる高周波数動作は、そのような高周波数で動作することが可能な、ポンプ室へ及びポンプ室から送られる流体の流動を制御する応答弁(responsive valve)の必要性をもたらす。圧電スタックを高周波で動作させると、スタックにかなりの量の熱が発生し、それによって、圧電スタックからの熱放散を増やす必要がある。また、圧電スタックの個々の要素を構成する圧電材料は、圧縮荷重よりも引張荷重に抵抗する能力が著しく少ない。それに対して緩和されない限り、高い周波数で圧電スタックを動作させることは、スタックに高い引張荷重が加えられる結果となり、圧電スタックにかかる引張荷重を制限することを保証するために圧電スタックに予荷重を付与する方法が望ましい。
【0019】
油圧作動流体は、ある程度の圧縮性を示すが、それは小さい。これは、例えば、オイル内の巻き込まれた空気と、油圧作動流体の固有の特性から生じる。その結果、圧電要素によってもたらされる運動の大きさは小さいため、圧縮性効果がポンプの全体的な圧力能力を低下させないことを保証するために、ポンプ室の容積は最小化されなければならない。
【0020】
全てのポンプと同様に、ポンプ室の密封は、失われる流れが最小限に抑えられることを保証するために重要である。
【0021】
高周波数弁に対応するためのポンプの統合、必要な低ポンプ室容積を維持しつつ予荷重を付与しかつ密封する方法は、対処する必要がある技術的問題を全て提示する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形による圧電ポンプの断面を示す図である。ポンプ100は、主ハウジング102を有する。出口板104は、出口板がハウジングに対して移動できないような態様で、主ハウジングの内部に位置する。出口板104は主ハウジング102の内部を2つの部分に分割する。出口板104の第1の側面(
図1に示されるように、左側)上に、圧電要素のスタックが配置されている。圧電スタック106は、適切な電気信号によって駆動されると圧電スタック106が主ハウジング102内を往復できるように構成されている。好ましい実施形態では、圧電スタックは、実質的に筒状であるが、他の幾何学的形状が利用されうる。
図1に示す特定の実施形態では、スタック106は、圧電スタックの移動と共にスタックライナ110に対して摺動するように配置されている低摩擦材料の外側シースを有する。外側シース及びスタックライナ110は、組み合わされて、圧電スタック106を主ハウジング102の中心に配置し続けつつ、スタックライナ110は、また、圧電スタックがその中で配置されている室の高さ(図示されているような水平長さ)を規定するように機能する。しかしながら、他の実施形態では、外側シース及び/又はスタックライナは省略することができる。
【0023】
圧電スタック106は、中空である、すなわち、内部空隙部112を有して形成される。この内部空隙部によって、送られる流体が圧電スタック106を通って流動することが可能になる。圧電スタック106と出口板104との間には、ピストンヘッド114が位置している。ピストンロッド(又はタイロッド)116は、ピストンヘッドから圧電スタックの内部空隙部を通って延び、スタックの基部板118を通過する。基部板118は主ハウジング102に対して固定されるように配置されている。ピストンロッド116は、基部板を介して圧電スタックと共に往復運動するように配置されている。ハウジング102内で基部板118を越えて突出するピストンロッド116の端部は、それに螺着された1つ又は複数のナット120を有する。ベルビルワッシャなどの1つ又は複数の弾性要素122は、ナット120と基部板118との間のナットによって固定される。弾性要素122は、ナットによって基部板118に対して圧縮状態に保持され、その結果、ピストンロッド及びピストンヘッドを介して圧電スタック106に付勢力を加える。この付勢力は、スタックが永久的に圧縮状態に保持されるように、圧電スタックに予荷重を付与する。
【0024】
基部板118は、圧電スタック106内の内部空隙部112内への流体の流動を可能にするように形成された1つ又は複数の流体通路124を有する。使用時に、主ハウジング(図示せず)内の入口に流体供給が提供される。
【0025】
ピストンヘッド114と出口板104の対向面の間の空間は、ポンプ室126を構成する(後の図においてより容易に分かる)。ピストンヘッド114は、圧電スタックの内部空隙部112とポンプ室126との間の流体連通を提供する1つ又は複数の流体入口通路128を有する。入口ディスク弁130は、ピストンヘッドの面に固定されてポンプ室を形成し、内部空隙部112からポンプ室126への流体入口通路128を通るポンピング流体の流動を制御するように構成される。出口板104は、ポンプ100のポンプ室126と、流体出口室134との間の流体連通を提供する1つ又は複数の流体出口通路132も有し、そこから使用時に加圧流体が提供される。出口ディスク弁136は、ポンプ室を形成する面に対向する出口板104の面、すなわち、流体出口室134に隣接する出口板の面に固定される。出口ディスク弁136は、ポンプ室126から流体出口室134への流体出口通路132を通してポンピング流体の流動を制御するように配置されている。
【0026】
ここで、
図1に図示されたポンプの拡大された部分を図示する
図2~5を参照して、ポンプ100の動作を説明する。
【0027】
図2は、ポンプ室126を中心とする、
図1に示される圧電ポンプの一部分の拡大図を示す。
図2は、圧電スタック106が完全に延び、したがってピストンヘッド114が出口板104に最も近い点にあるときのポンピングサイクルにおけるある点でのポンプ100を表す。結果として、ポンプ室126の容積は、最小である。入口ディスク弁130及び出口ディスク弁136は、
図2においてより容易に見ることができる。図示の実施形態では、両方のディスク弁は、ばね鋼などの弾性材料の平面環状部を備える。入口ディスク弁130は、保持ネジ202又は他の適当な保持機構によって中央部の周りでピストンヘッド114に固定される。入口ディスク弁は、その中心から半径方向に、流体入口通路128の各々にわたって延びるのに充分な距離だけ延びる。保持スクリューの作用及びディスク弁原料の弾性特性によって、入口ディスク弁は、ピストンヘッド114に対して付勢され、流体入口通路128をポンプ室126から密封する。出口ディスク弁136は、保持ナット204を用いても、出口板104と同様の方法で固定される。出口ディスク弁は、また、流体出口通路132の各々にわたって延びるように半径方向に延び、流体出口室134から流体出口通路を密封するために出口板に対して付勢される。また、これらディスク弁は、それらに形成された追加の「減衰」孔を有することができ、弁が開いているときに流体が弁を通って流動すると共に、流体が弁の周りを効果的に流動することができる。このような減衰孔は、弁が閉鎖するときに、流体が弁を通過することを可能にするが、弁が閉鎖されているときに、ピストンヘッド114又は出口板104に対して密封するように、ディスク弁内に配置されているであろう。また、ディスク弁は、主弁本体の内側部を補剛するように、小径のばね鋼の第2のディスクなどの、追加のばねを有しうる。
図2では、入口ディスク弁及び出口ディスク弁は、両方共、閉鎖され、したがって、ポンプを通る流体の流動がないように、それらの関連する流体通路を密封するように図示されている。しかしながら、これらのディスク弁の開閉は、圧電スタックの位置との直接的な相互関係ではなく、ばね剛性、質量、及びポンプの動作の周波数などの因子に依存することが理解されるであろう。
【0028】
図3は、部分的にポンプの吸入行程を通して、圧電スタック106が部分的に引き込まれるときのポンプ100を表す。ピストンヘッド114の基部板118に向かう相対運動によって、ポンプ室の容積を増し、室内の圧力を低減する。内部空隙部112内の流体とポンプ室内の下圧力との間の圧力差は、図示されるように、入口ディスク弁130の付勢力に打ち勝つのに充分であり、流体を入口通路128を通って、変形したディスク弁を通ってポンプ室126内へ流動させることができる。吸入行程の少なくとも一期間において、
図3に例示されているように、出口ディスク弁136は閉鎖されることになる。
【0029】
図4は、圧電スタック106が完全に引き込まれた(圧縮された)状態のポンプ100を例示している。この位置では、ポンピング流体が入口通路128を通ってポンプ室126へ流動せず、その結果、入口ディスク弁130の付勢力は、弁をピストンヘッド114に対し平坦なその自然位置に戻すのに充分である。
【0030】
図5は、圧電スタックが部分的に延びたとき、すなわち、スタックが
図3と反対に駆動されているときのポンプ100を示している。これは、排出行程の途中のポンプを表している。ピストンヘッド114の出口板104に向かう相対運動によって、ポンプ室126の容積を低減し、室内の圧力を増し、それによって、矢印によって示されるように、流体をポンプ室から出口通路132を通して流動させる。ポンプ室内の流体と流体出口室134内の下圧力との間の圧力差は、図示されるように、出口ディスク弁136の付勢力に打ち勝って、流体が変形したディスク弁を通って流体出口室134へ流動することを可能にするのに充分である。この間、入口ディスク弁130は閉鎖される傾向があり、これにより、流体がポンプ室から入口通路128を通ってスタックの内部空隙部112に逆流するのを防止するであろう。
【0031】
図2~
図5に示される位置(及び
図2の位置に戻る)の間の圧電スタック106の移動は、ポンプの完全な作業サイクルを構成する。前述のように、0.5リットル/分などの所望の流体流量を達成するために、圧電スタックは、1000Hz~1400Hzなどの比較的高い周波数で駆動されなければならない。状況によっては、圧電スタックを最高2000Hzで駆動することができる。これらの動作周波数において、スタックは(圧電材料における固有のエネルギ変換損失のため)望ましくない量の熱を発生する可能性が高い。しかしながら、図示のように中空の圧電スタックを利用することによって、ポンプの動作中に圧電スタックの内部を通る流体の流動は、ある程度の冷却を提供する。
【0032】
また、前述したように、上述した周波数で引張荷重の下で圧電スタックを作動させることは、望ましくない。これは、圧電スタック106がピストンヘッド114と基部板118との間で常に圧縮状態に保持されることを可能にしつつスタックが伸縮することを可能にする、ベルビルワッシャ122の使用によって克服される。ベルビルワッシャは、コイルばねなどの任意の他の適切な弾性要素で置き換えることができるが、ベルビルワッシャは、それらの全体のサイズ及び変位のために比較的高いばね力を提供する利点を有する。ベルビルワッシャで圧電スタックに予荷重に付与することは、また、変位にわたって力が一定である、ベルビルワッシャばね曲線特性の領域内で動作することによって、ポンプの圧力能力を増すことができる。しかし、ピストンヘッド及び基部板に作用するばね張力が介在するスタック要素に圧縮力を及ぼすように、圧電スタックに予荷重を付与するための他の機構、例えば、スタックの外側周囲にばね又は蛇腹を提供し、ピストンヘッド114と基部板118との間に接続することができる。
【0033】
送られる流体から生じるあらゆる圧縮性効果を回避するために、また、圧電スタックの変位が(ミリメートル未満のオーダであり)本質的に小さいために、ポンプ室の容積は、最小に維持される。例えば、ポンプ室容積は、0.7mL程度とし、長さを1mmとしうる。このようなポンプ室容積における圧電スタックの全長は、60~70mmのオーダになるだろう。上記の寸法は、純粋にポンプのスケールを理解するための助けとして提供され、必ずしも所望の寸法又は好ましい寸法ではない。
【0034】
非常に小型ポンプ容量をかなりの流れに蓄積するために必要な高周波数動作には、応答弁が必要となる。入口ディスク弁及び出口ディスク弁の動力学的能力はこの要求を満たす。さらに、ピストンヘッド上へ低プロファイルの入口ディスク弁を組み込むことは、上述のように、ポンプ室容積を最小化し、結果としてより高い圧力能力をもたらす。
【0035】
これらの特徴の組合せ(冷却のための中空圧電スタックを通って送られた流体の流動、圧電スタックの予荷重付与、及び、入口及び出口ディスク弁の使用という組合せ)は、他の圧電ポンプと比較して、上記の圧電ポンプが、圧力及び流動能力に対して実質的な改良を提供することを可能にする。その結果、このような改良型圧電ポンプのための可能な航空機の用途には、着陸装置のアップロック、ロックステイ、ギアドアアクチュエータ、ブレーキ及びステアリングアクチュエータ、エンジン抽気弁、及び航空機環境システムが含まれるが、これらに限定されない。
【国際調査報告】