(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】処置装置内でマンガン種を酸化するための方法
(51)【国際特許分類】
C25B 1/28 20210101AFI20240614BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20240614BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20240614BHJP
【FI】
C25B1/28
C25B13/08 302
C25B11/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577750
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022066247
(87)【国際公開番号】W WO2022263482
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ハイデッケ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・クーネ
(72)【発明者】
【氏名】カール・クリスティアン・フェルス
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・シュトローベル
(72)【発明者】
【氏名】ブリッタ・シェラー
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011BA07
4K011DA08
4K021AB15
4K021BA02
4K021BA17
4K021DB11
4K021DB13
4K021DB31
(57)【要約】
本発明は、処置装置内でマンガン種を酸化するための方法であって、(A)処置装置内に、第1の酸化数を有するマンガン種を供給する工程、(B)処置装置内に1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極を設ける工程、(C)前記陽極と前記陰極に電流を印加し、それによって第1の酸化数を有するマンガン種の少なくとも一部を、第1の酸化数より高い第2の酸化数を有するマンガン種に陽極酸化する工程を含む方法において、前記1つ又は複数の陽極のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの陽極の全体積に基づいて6m2/L以上の表面密度を有することを特徴とする、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置装置内でマンガン種を酸化するための方法であって、
(A)前記処置装置内に、第1の酸化数を有するマンガン種を供給する工程、
(B)前記処置装置内に1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極を設ける工程、
(C)前記陽極と前記陰極に電流を印加し、それによって第1の酸化数を有するマンガン種の少なくとも一部を、前記第1の酸化数より高い第2の酸化数を有するマンガン種に陽極酸化する工程
を含む方法において、前記1つ又は複数の陽極のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの陽極の全体積に基づいて6m
2/L以上の表面密度を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の酸化数が+4以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の酸化数が+4超であり、好ましくは+7である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数の陽極及び前記少なくとも1つの陰極の互いに対する距離が、1mmから100mm、好ましくは2mmから90mm、より好ましくは3mmから80mm、更により好ましくは4mmから70mm、最も好ましくは5mmから60mmの範囲である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の陽極及び前記少なくとも1つの陰極が、透過性バリア、好ましくは透過性の膜によって互いに分離される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記表面密度が8m
2/L以上、好ましくは10m
2/L以上、より好ましくは14m
2/L以上、更により好ましくは16m
2/L以上、最も好ましくは20m
2/L以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記表面密度が、6m
2/Lから100m
2/L、好ましくは8m
2/Lから70m
2/L、より好ましくは10m
2/Lから50m
2/L、更により好ましくは12m
2/Lから40m
2/L、更により一層好ましくは14m
2/Lから30m
2/L、最も好ましくは16m
2/Lから22m
2/Lの範囲である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
6m
2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が、3Dプリント陽極、織布陽極、発泡体陽極、多重単層陽極、及び充填層陽極からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記織布陽極が、織り金属製ワイヤ及び/又は織り金属化フィラメントを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記織布陽極が、平織布陽極及び/又はパイル織布陽極を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記3Dプリント陽極が、3Dプリント格子陽極及び/又は3Dプリントラメラ陽極を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記充填層陽極が、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ビアレッキリング、ディクソンリング、ネットボール、及びHex-X区画からなる群から選択されるパッケージ区画を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
6m
2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらのうちの少なくとも1つを含む合金、これらの酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の陽極が全有効陽極表面積A
1を提供し、前記少なくとも1つの陰極が全有効陰極表面積A
2を提供し、A
1がA
2より大きい、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
A
1:A
2が、5:1から100:1、好ましくは10:1から85:1、より好ましくは15:1から70:1、更により好ましくは20:1から60:1、最も好ましくは30:1から50:1の範囲である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処置装置内でマンガン種を酸化するための方法であって、
(A)処置装置内に、第1の酸化数を有するマンガン種を供給する工程、
(B)処置装置内に1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極を設ける工程、
(C)前記陽極と前記陰極に電流を印加し、それによって第1の酸化数を有するマンガン種の少なくとも一部を、第1の酸化数より高い第2の酸化数を有するマンガン種に陽極酸化する工程
を含む方法において、前記1つ又は複数の陽極のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの陽極の全体積に基づいて6m2/L以上の表面密度を有することを特徴とする、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基材等の非金属基材のメタライジングは、現代技術において長い歴史を持つ。典型的な用途は、自動車産業において及び衛生用品用に見られる。
【0003】
しかしながら、非金属/非導電基材の金属層への適合が求められる。典型的には、各方法は、典型的にはエッチングとして知られる、基材の表面の表面改質から開始する。通常、過度に大きな欠陥を生じずに十分な粗面処理を確実なものとするために高感度バランスが必要とされる。
【0004】
六価クロム種(クロム酸)等の環境上問題のクロム種を含む組成物を含めた、多くの方法及びエッチング組成物が知られている。これらの組成物は、通常、非常に強力且つ許容されるエッチング結果をもたらすが、環境に優しい代替物が、当該技術分野において既に提供された特定の程度まで、ますます求められている。多くの場合、マンガン系エッチング組成物が代わりに利用される。
【0005】
典型的には、マンガン系エッチング組成物は、酸性又はアルカリ性のいずれかである。しかしながら、酸性マンガン系エッチング組成物、特に過マンガン酸塩系エッチング組成物は、本質的に分解の影響をより受けやすい。その結果として、そのようなエッチング組成物は、活性マンガン種の一定且つ比較的高レベルの補充を要する。好ましくは、そのようなエッチング組成物は、比較的一定レベルの活性マンガン種を維持するために継続的にリサイクルされる。これは、典型的には、化学酸化又は電流の印加のいずれかによって達成される。各再生方法及び装置は、当該技術分野において公知である。
【0006】
CN109628948Aは、過マンガン酸イオン溶液をリサイクルするためのセラミックダイヤフラムを含む再生装置を指す。
【0007】
CN1498291Aは、エッチング処置溶液を再生するための電解再生処置装置を指す。
【0008】
WO2013/030098A1は、プラスチック部品の処置及び/又はエッチングのために使用される過マンガン酸塩を含む処置溶液を少なくとも部分的に再生するための装置を指す。
【0009】
WO01/90442A1は、過マンガン酸塩エッチング溶液の再生のための電気化学装置及び過マンガン酸塩エッチング溶液を電解再生するための装置用の陰極を指す。
【0010】
再生の効率は、典型的には、各処置装置に投入される電流、及びこの電流が各マンガン種と相互作用する仕方によって決まる。
【0011】
各再生方法及び装置の効率を更に上げることが継続して求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】CN109628948A
【特許文献2】CN1498291A
【特許文献3】WO2013/030098A1
【特許文献4】WO01/90442A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、高効率で処置装置内のマンガン種を酸化し、それによって各処置装置のコンパクト設計を可能にする方法を提供することである。より好ましくは、効率の上がった、特に過マンガン酸塩を含む酸性マンガン系エッチング組成物を処置(即ち、リサイクル)するのに特に適した方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は、処置装置内でマンガン種を酸化するための方法であって、
(A)処置装置内に、第1の酸化数を有するマンガン種を供給する工程、
(B)処置装置内に1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極を設ける工程、
(C)前記陽極と前記陰極に電流を印加し、それによって第1の酸化数を有するマンガン種の少なくとも一部を、第1の酸化数より高い第2の酸化数を有するマンガン種に陽極酸化する工程
を含む方法において、前記1つ又は複数の陽極のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの陽極の全体積に基づいて6m2/L以上の表面密度を有することを特徴とする、方法によって解決される。
【0015】
本発明の方法は、特に、前記少なくとも1つの陽極の全体積に基づいて、詳細には6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極を利用するため、非常に有効なマンガン種の酸化(好ましくは再生)を可能にする。言い換えれば、そのような陽極は、既に少なくとも1つの単一陽極内に例外的に大きな有効表面積をもたらす。ひいては、そのような1リットル当たりの大型の有効表面積は、それに対応して、第1の酸化数を有するマンガン種を接触させる面積を広くする。結果として、このマンガン種は、前記陽極で効率的に酸化され、前記第2の酸化数を有するマンガン種を生成する。
【0016】
しかしながら、典型的には、通常の方法では、典型的に低い表面密度を有する、最も典型的には6m2/L未満の従来の陽極が使用される。これは、主に二次元設計(プレート、メッシュ等)の電極に典型的に使用されるパラメータである、該従来の陽極の比較的低い表面因子においてもみることができる。例えば、使用済み金属格子陽極(メタルラス;Streckmetall社製)は、よくても2から2.5の間の表面因子をもたらし、これは既に高いとみなされている。しかしながら、新規の製造技術、例えば3Dプリンティングは、従来の陽極設計と比較して1体積当たりの表面積が有意に高い陽極の製造を可能にする。更に、これらは、様々な形状で、特に全ての三次元で設計可能である。これは全て、各処置装置のサイズを減少し、その効率を高めることを可能にする。更に、従来の陽極を積層に積み重ねて1体積当たりの表面積が大きな陽極を模倣することは、何らかの理由で該積み重ねが望ましくない場合には防止できる。代わりに、特定の形状を意図的に形成して更に高度な要件を満たすことができ、そのような陽極の利用は、より適応性を持つようになる。
【0017】
場合によっては、1つ又は複数の陽極が、単一陽極であり、同時に6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極である、本発明の方法が好ましい。しかしながら、その他の場合では、複数の陽極が工程(B)で設けられ、そのうちの少なくとも1つが6m2/L以上の表面密度を有し、好ましくはその全てが6m2/L以上の表面密度を有する、本発明の方法が好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述したように、本発明の方法は、第1の酸化数を有するマンガン種を第2の酸化数を有するマンガン種に陽極酸化し、第2の酸化数は第1の酸化数より大きい。
【0019】
第1の酸化数が+4以下である、本発明の方法が好ましい。
【0020】
第1の酸化数が+4、+3及び/又は+2を含む、本発明の方法がより好ましい。
【0021】
第1の酸化数を有するマンガン種がMn2+イオン及び/又はMn3+イオンを含む、本発明の方法が好ましい。
【0022】
第1の酸化数を有するマンガン種が、マンガン粒子(好ましくは、その酸化物)、好ましくはコロイド状マンガン粒子(好ましくは、その酸化物)、最も好ましくはコロイド状MnO2粒子を含む、本発明の方法が好ましい。これは、好ましくは、任意選択のその凝集体を含む。
【0023】
第2の酸化数が+4超、好ましくは+7(好ましくは+7を含む)である、本発明の方法が好ましい。しかしながら、これは、必ずしも+5又は+6の酸化数を有するマンガン種を除外しない。
【0024】
最も好ましくは、第2の酸化数を有するマンガン種は、過マンガン酸イオンを含む。
【0025】
第1の酸化数を有するマンガン種が液体、好ましくは酸性液体中に含まれる、本発明の方法が好ましい。実際、本発明の方法は、最も好ましくは、そのような酸性液体の処置において有効である。好ましくは、液体は、エッチング区画中の非金属基材、好ましくはプラスチック基材を処置、好ましくはエッチングするための処置組成物である。最も好ましくは、工程(A)の前に、液体をプラスチック基材と接触させた。言い換えれば、工程(A)の前に、第1の酸化数を有するマンガン種を非金属基材、好ましくはプラスチック基材と接触させることが好ましい。
【0026】
液体が酸、好ましくは無機酸、最も好ましくはリン酸を含む、本発明の方法がより好ましい。
【0027】
第2の酸化数を有するマンガン種をエッチング区画へ戻す、本発明の方法が好ましい。最も好ましくは、第2の酸化数を有するマンガン種は、非金属基材、好ましくはプラスチック基材を処置、好ましくはエッチングするために再利用される。そのため、最も好ましくは、本発明の方法は、マンガン種のリサイクル法である。この文脈において、「リサイクル」は、(好ましくは既に利用された)マンガン種の再酸化と後続するその再利用を指す。連続的に又は少なくとも半連続的に実施される本発明の方法が好ましい。連続的とは、好ましくは、本発明の方法の少なくとも工程(A)及び(C)が連続的に、即ち中断することなく実施されることを示す。対照的に、半連続的とは、好ましくは、工程(A)及び/又は工程(C)が、少なくとも少しの間は時々中断されることを示す。そのような中断は、本発明の方法の間に存在する種の1つの濃度を維持するか又は安定化するために必要なことがある。しかしながら、連続的な利用が好ましい。
【0028】
典型的には、例えば過マンガン酸塩によるプラスチック基材のエッチングは、過マンガン酸塩をより低い酸化数のマンガン種へ還元するが、プラスチック材料は少なくとも部分的に酸化される。
【0029】
場合によっては、本発明の方法において利用される処置装置がエッチング区画に対して外部にある、本発明の方法が好ましい。これは、処置装置がエッチング区画の外側にあることを意味する。これは、典型的には好ましい。しかしながら、その他の場合では、本発明の方法において利用される処置装置が少なくとも部分的にエッチング区画に組み込まれる、本発明の方法が好ましい。これは、好ましくは、処置装置がエッチング区画に対して内部にあることを意味する。
【0030】
非金属基材、好ましくはプラスチック基材が、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、これらの混合物、及び/又はこれらの複合体、好ましくはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、これらの混合物、及び/又はこれらの複合体を含む、本発明の方法が好ましい。そのようなプラスチック基材、特にABS及びABS-PCは、自動車部品等の装飾用途において使用されることが多い。
【0031】
本発明の効率的且つエネルギー最適化された方法を維持するために、1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極は、好ましくは、互いに比較的短い距離を有する。1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極の互いに対する距離が、1mmから100mm、好ましくは2mmから90mm、より好ましくは3mmから80mm、更により好ましくは4mmから70mm、最も好ましくは5mmから60mmの範囲である、本発明の方法が好ましい。典型的には、距離が短いほど電圧が低く、そのため、エネルギー消費を要する。したがって、場合によっては、1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極の互いに対する距離が、9mmから70mm、好ましくは10mmから60mm、より好ましくは11mmから50mm、更により好ましくは12mmから30mm、最も好ましくは13mmから20mmの範囲である、本発明の方法が好ましい。これは、最も好ましくは、6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極に適用される。
【0032】
一般に、距離が、1つ又は複数の陽極及び最も近い(好ましくは対応する)少なくとも1つの陰極との間の最短距離として定義される、本発明の方法が好ましい。言い換えれば、距離は、好ましくは、1つ又は複数の陽極及び最も近い(好ましくは対応する)少なくとも1つの陰極との間の最短外部距離である。「外部」という用語は、好ましくは、最も近い少なくとも1つの陰極の最外部に直接面する1つ又は複数の陽極の最外部を指す。
【0033】
少なくとも1つの陰極が、(少なくとも概して)1つ又は複数の陽極を囲んで(周囲という意味で)、特に6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極を囲んで構築される、本発明の方法が好ましい。言い換えれば、少なくとも1つの陰極は、1つ又は複数の陽極、好ましくは6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極を少なくとも概して取り囲むか又は循環するが、この表現は集団を円形に限定しない。しかしながら、この陽極/陰極の配置は、本発明の文脈において必ずしも必須ではない。
【0034】
場合によっては、1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極が、透過性バリア、好ましくは透過性の膜によって互いに分離される、本発明の方法が好ましい。そのような実施形態において、陽極液及び陰極液が好ましくは生成される。最も好ましくは、陽極液は、第1の酸化数を有するマンガン種を含む。そのため、好ましくは、陽極液は、上述した前記液体である。陰極液は、好ましくは、無機酸、より好ましくは硫酸及び/又はリン酸、最も好ましくは(唯一好ましくは)リン酸を含む。
【0035】
透過性バリアにもかかわらず、工程(C)で印加された電流は、第1の酸化数を有するマンガン種の少なくとも一部を、前記第2の酸化数を有するマンガン種に陽極酸化するように流れることができる。
【0036】
好ましくは、そのような透過性バリアが利用される場合、実質的に全てのマンガン種が少なくとも1つの陰極から分離される。これは、好ましくは、透過性バリアが基本的に、負に帯電する又は中性のマンガン種にとって透過性でないことを意味する。
【0037】
透過性バリアが、イオン選択透過性バリア、好ましくはイオン選択透過性膜である、本発明の方法が好ましい。
【0038】
透過性バリアが、陽イオン選択透過性バリア、好ましくは陽イオン選択透過性膜である、本発明の方法が好ましい。そのため、最も好ましくは、陽イオンのみが透過性である。
【0039】
場合によっては、透過性バリアが鉱物でない、本発明の方法が好ましい。対照的に、その他の場合では、透過性バリアが鉱物であり、好ましくはセラミックを含むことが好ましい。しかしながら、いくつかの他の場合では、透過性バリアに、セラミックが本質的にない、好ましくはセラミックが含まれない、本発明の方法が好ましい。
【0040】
透過性バリアが有機である、本発明の方法がより好ましい。透過性バリアが有機であり、フッ素を含み(好ましくはフッ素化されている)、最も好ましくは有機であり、過フッ素化されている、本発明の方法がより好ましい。最も好ましくは、少なくとも1つの透過性バリアはナフィオン型膜であるが、膜が特にこの特定の商標に限定されない。膜、好ましくは前記有機膜は非常に薄く、したがって比較的短い距離、そのためコンパクト設計にプラスに寄与する。対照的に、1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極が、透過性の膜、好ましくは透過性バリアによって互いに分離されない、本発明の方法もまた好ましい。
【0041】
本発明の文脈において、少なくとも1つの陽極が、6m2/L以上の表面密度を有することが必須である。表面密度が8m2/L以上、好ましくは10m2/L以上、より好ましくは14m2/L以上、更により好ましくは16m2/L以上、最も好ましくは20m2/L以上である、本発明の方法が好ましい。一般に、表面密度が高いほど、本方法は潜在的により効率であるが、但し少なくとも1つの陽極を通した十分な量の輸送が保証される。新規に発見された技術により、前記表面密度を有する陽極の製造がますます可能になる。驚くべきことに、非常に良好な大量輸送及び効率性の両方を得ることができることが確認された。これまで、比較的小さい体積上の巨大な有効表面積を有する陽極は、電場が非常に僅かな侵入深さしかないことを意味する有害な遮蔽効果の影響を受けることが想定されていたため、これは意外だった。本発明の文脈において、コンパクト設計にもかかわらず、前記少なくとも1つの陽極が、十分に高い電流効率/ターンオーバーをもたらすことは驚くべきことだった。遮蔽効果が実際に生じるが、効果は驚くほど低く、比較的巨大な全有効陽極表面積を作る大きな利益を支持して耐えることができる。前記少なくとも1つの陽極は、ファラデー箱のようなバリアを提供するが、これは意外だった。言い換えれば、前記陽極は、驚くべきことに、極度にコンパクト及び緻密な陽極構造、並びに、更には遮蔽効果にもかかわらず高い効率を可能にする。
【0042】
本発明の文脈において、表面密度は、幾何学的体積当たりの全有効表面積を画定するパラメータを示す。
【0043】
例えば、1m2の厚さ1mmを有する幾何学的プレートは、典型的には、前側及び後側並びに刃先の面積を含めて2.004m2の全有効表面積を有する。そのようなプレートの幾何学的体積は、1m×1m×10-3m=10-3m3=1リットルである。結果として、このプレートの表面密度は、2,004m2/L、即ちほぼ2m2/Lである。これはまた、この場合、このような主に二次元のプレートで約2である、「表面因子」と呼ばれる共通パラメータ(幾何学的面積当たりの全有効表面積)と調和される。
【0044】
典型的には、例えば、それぞれ所定の数及び所定の寸法で、プレートが孔を有し、メッシュが開口部を有する場合、2超の表面密度が得られる。同じことが表面因子に適用される。しかしながら、現在の市販のメッシュの表面因子は、典型的には2.5以下である。更に、表面因子は、有意な三次元を有する電極を十分に画定しない。寸法を有さない表面因子に反して、本発明の文脈における表面密度は、各陽極1リットル当たりのm2として規定される。
【0045】
6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が、最も好ましくは前記陽極の内部に、ランダム構造パターン、一様構造パターン、又は周期的再発構造パターンを含む、本発明の方法が好ましい。最も好ましくは3Dプリント陽極、織布陽極、永久固定多重単層陽極(好ましくは溶接、接着、及び/又はリベット締めによる永久固定)、分離可能多重単層陽極(好ましくはネジ抜き及び/又はアンクランプによって分離可能)、及び規定のパッケージを有する充填層陽極における、一様構造パターン及び/又は周期的再発構造パターンが最も好ましい。本発明の文脈において、ランダム、即ちカオス的で長距離秩序なしの構造パターンはあまり好ましくないが、例えば、大まかに充填された材料を有する、いわゆる充填層陽極、ノット陽極、発泡体陽極、及びランダム構造パターンを有する3Dプリント陽極には典型的である。典型的には、一様及び周期的再発構造パターンは、前記陽極の内部中への電場の均一な侵入深さを確実にし、これはランダム構造パターンを上回る利点であると推定される。好ましくは、構造パターンは、前記陽極内部の空洞及び/又は孔を含み、これらは外面から物質的にアクセス可能であり、好ましくは比較的大きな全有効表面積を生じる。その一方で、ランダム構造パターンは容易に得られ、充填層陽極に関していえば、比較的安価である。
【0046】
一般に、好ましい単層陽極は、メッシュ及び/又はプレート、好ましくはエキスパンドメタル(即ちエキスパンドラス)を含む。
【0047】
6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が単一セグメント陽極又は分離可能マルチセグメント陽極を含む(好ましくは単一セグメント陽極又は分離可能マルチセグメント陽極である)、本発明の方法が好ましい。本発明の文脈において、単一セグメント陽極は、一体型からなり且つ破壊のみによって分離/分解され得る陽極を示す。言い換えれば、そのような種類の陽極は、分解するように設計されていない。好ましい単一セグメント陽極は、3Dプリント陽極、織布陽極、永久固定多重単層陽極(好ましくは溶接、接着、及び/若しくはリベット締めによる永久固定)、ノット陽極、焼結、溶接、及び/若しくは圧縮された陽極材料を有する充填層陽極、並びに/又は発泡体陽極を含む。
【0048】
対照的に、分離可能マルチセグメント陽極は、非破壊的分解するように設計されている少なくとも2つ、好ましくは複数の個々の接合部からなる。好ましい分離可能マルチセグメント陽極は、分離可能多重単層陽極(好ましくはネジ抜き及び/若しくはアンクランプによって分離可能)、規定のパッケージを有する充填層陽極、並びに/又は大まかに充填された材料を有する充填層陽極を含む。
【0049】
一般に好ましいのは、表面密度が6m2/Lから100m2/L、好ましくは8m2/Lから70m2/L、より好ましくは10m2/Lから50m2/L、更により好ましくは12m2/Lから40m2/L、更により一層好ましくは14m2/Lから30m2/L、最も好ましくは16m2/Lから22m2/Lの範囲である、本発明の方法である。
【0050】
そのような特定の表面密度は、最も好ましくは、以下の陽極で得られる:
【0051】
6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が、3Dプリント陽極、織布陽極、発泡体陽極、多重単層陽極、及び充填層陽極からなる群から選択される、本発明の方法が好ましい。より好ましくは、その好ましい陽極は、上記の通りである。
【0052】
場合によっては、工程(B)において、以下:
- 1つ又は複数の陽極(好ましくは、前記少なくとも1つの、6m2/L以上の表面密度を有する陽極)、好ましくは3Dプリント陽極、織布陽極、発泡体陽極、及び充填層陽極、最も好ましくは3Dプリント陽極及び織布陽極を製造する工程
を含む、本発明の方法が好ましい。
【0053】
しかしながら、本発明の文脈内では、本発明の方法が各陽極の製造を含むかどうか又は陽極が容易に設けられるが異なる場所で製造され、本発明の方法において利用するために移設されるかどうかは関連しない。
【0054】
織布陽極が、織り金属製ワイヤ及び/又は織り金属化フィラメントを含む、本発明の方法が好ましい。典型的には、そのようなワイヤ及びフィラメントの厚さは、最大表面密度を規定する。例えば、厚さ0.2mmのフィラメント及びワイヤの場合、最大表面密度は、好ましくは、前記陽極の全体積に基づいて、18m2/Lから22m2/Lの範囲、好ましくは約20m2/Lである。厚さ0.1mmのフィラメント及びワイヤの場合、最大表面密度は、好ましくは、前記陽極の全体積に基づいて、30m2/Lから42m2/L、好ましくは35m2/Lから40m2/Lの範囲である。
【0055】
織布陽極が、平織布陽極及び/又はパイル織布陽極を含む、本発明の方法が好ましい。
【0056】
3Dプリント陽極が、3Dプリント格子陽極及び/又は3Dプリントラメラ陽極を含む、本発明の方法が好ましい。典型的には、3Dプリンティングにおけるプリンティング解像度は、最大表面密度を規定する。例えば、最小寸法が約50μmの3Dプリントスポットは、好ましくは、前記陽極の全体積に基づいて、少なくとも60m2/Lから最大100m2/Lまでの範囲、好ましくは70m2/L~90m2/Lの表面密度を有する3Dプリント陽極をもたらす。
【0057】
発泡体陽極が、固体及び/又は軟質発泡体陽極を含む、本発明の方法が好ましい。
【0058】
充填層陽極が、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ビアレッキリング、ディクソンリング、ネットボール、及びHex-X区画からなる群から選択されるパッケージ区画を含む、本発明の方法が好ましい。
【0059】
本発明の方法において、最も好ましくは、6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極は、3Dプリント陽極及び/又は織布陽極を含む。
【0060】
例えば、既に上述した3Dプリント陽極は、潜在的に非常に高い表面密度で理論的に製造することができる。非常に好ましくは、表面密度は、そのような種類の陽極の場合、前記陽極の全体積に基づいて、100m2/L以下、好ましくは30m2/Lから80m2/L、好ましくは40m2/Lから50m2/Lの範囲である。
【0061】
最も好ましくは、織布陽極は、前記陽極の全体積に基づいて、10m2/Lから40m2/L、好ましくは15m2/Lから30m2/Lの範囲の表面密度を有する。
【0062】
場合によっては、1つ又は複数の陽極が、3m2/L以下の個々の表面密度を有する多重単層陽極層(好ましくは、好ましい上述したもののような)を含まない、本発明の方法が好ましい。最も好ましくは、1つ又は複数の陽極は、個々の表面因子が3以下の多重単層陽極を含まない。場合によっては、1つ又は複数の陽極、好ましくは6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極は、多重単層陽極を全く含まない、本発明の方法が更に好ましい。多重単層陽極が基本的に可能であり且つ本発明の文脈において使用されることが望ましいが、これらは典型的には、基本的に自動化された製造方法において製造される他の好ましい陽極と比較して組み立てられる必要がある。
【0063】
6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらのうちの少なくとも1つを含む合金、これらの酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、本発明の方法が好ましい。
【0064】
1つ又は複数の陽極が、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらのうちの少なくとも1つを含む合金、これらの酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、本発明の方法がより好ましい。これは、好ましくは、全ての陽極に適用されることを意味する。
【0065】
既に言及されたように、第1の酸化数を有するマンガン種は、好ましくは液体中に供給される/含まれる。液体が好ましくは強酸であるため且つ特定のマンガン種の強酸化特性に起因して、1つ又は複数の陽極の材料は注意深く選択されることが好ましい。好ましい最低限の要件は、各材料が液体に対して(電気)化学的に不活性であることである。典型的には、前述の材料は、少なくとも特定の時間の間、耐性である。1つ又は複数の陽極が、白金めっき陽極及び/又は白金陽極、好ましくは白金めっきチタン陽極、及び/又は白金めっきニオブ陽極を含む、本発明の方法が非常に好ましい。そのような陽極材料は、長時間にわたっても高度の耐性を持つ。これは、最も好ましくは、6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極に適用される。
【0066】
場合によっては、材料が鉛及び/又は鉛合金を含む、本発明の方法が好ましい。好ましい鉛合金は、合金化元素としてスズ及び/又は銀を含む。しかしながら、ほとんどの場合、発明者らの実験の場合、材料が白金を含む場合、最も好ましくは白金めっきされている場合に優れた効率が得られることを示した。更に、鉛は、ヒト及び環境に対して危険である観点から、ますます望ましくない材料である。
【0067】
上述したように、工程(B)において、少なくとも1つの陰極が設けられる。
【0068】
少なくとも1つの陰極が、チタン、白金、ニオブ、鉛、これらのうちの少なくとも1つを含む合金、これらの酸化物、ステンレス鋼、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、本発明の方法が一般に好ましい。少なくとも1つの陰極が、好ましくは、各材料が、十分に酸耐性であり、水素脆化に対して十分に安定性であり、且つ/又は(液体と接触する場合)液体に対して化学的に耐性である限り、多様な材料からなる、本発明の方法が典型的に好ましい。場合によっては、少なくとも1つの陰極の材料が、6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極の材料、好ましくは1つ又は複数の陽極の材料と同一である、本発明の方法が好ましい。しかしながら、その他の場合では、好ましくは、少なくとも1つの陰極の材料は、6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極の材料、好ましくは1つ又は複数の陽極の材料とは異なる。
【0069】
発明者らの実験の場合、いくつかの例において、陰極電流が、更に耐性が乏しい材料、好ましくはステンレス鋼を利用できるように少なくとも1つの陰極を保護することを示した。これは、最も好ましくは、陰極液、好ましくはリン酸を含む陰極液、より好ましくは唯一の鉱酸としてリン酸を含む陰極液、最も好ましくは唯一の酸としてリン酸を含む陰極液が形成されるように、本発明の方法において透過性バリア、好ましくは透過性の膜が利用される場合、適用される。
【0070】
場合によっては、少なくとも1つの陰極が、シート陰極、メッシュ陰極、織りウェブ陰極、エキスパンドメタル陰極、3Dプリント陰極、織布陰極、発布体陰極、及び/又は充填層陰極を含む、本発明の方法が好ましい。好ましいのは、シート陰極及び/又はメッシュ陰極である。
【0071】
1つ又は複数の陽極が全有効陽極表面積A1を提供し、少なくとも1つの陰極が全有効陰極表面積A2を提供し、A1がA2より大きい、本発明の方法が好ましい。好ましくは、これは、6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極に適用される。
【0072】
本発明の文脈において、「全有効表面積」は、電気化学的酸化還元反応中の関与が可能な面積を指す。これは、表面密度の定義においても使用される/含まれる。
【0073】
場合によっては、A1の50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更により好ましくは80%以上、更により一層好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上、更に最も一層好ましくは99%以上が、6m2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極から得られる、本発明の方法が好ましい。
【0074】
A1:A2が、5:1から100:1、好ましくは10:1から85:1、より好ましくは15:1から70:1、更により好ましくは20:1から60:1、最も好ましくは30:1から50:1の範囲である、本発明の方法が一般に好ましい。
【0075】
場合によっては、A1:A2が、5:1から30:1、好ましくは6:1から25:1、より好ましくは7:1から20:1の範囲である、本発明の方法が好ましい。
【0076】
しかしながら、その他の場合では、A1:A2が、少なくとも10:1、好ましくは少なくとも20:1、より好ましくは少なくとも30:1、最も好ましくは少なくとも40:1である、本発明の方法が好ましい。A1:A2が、10:1から100:1、好ましくは20:1から70:1、より好ましくは30:1から50:1、最も好ましくは35:1から45:1の範囲である、本発明の方法がより好ましい。これは、いくつかの場合において、透過性バリアが利用されない場合、最も好ましい。
【0077】
A1が、処置装置内の全自由内部体積に基づいて、10dm2/dm3から200dm2/dm3、好ましくは15dm2/dm3から175dm2/dm3、より好ましくは20dm2/dm3から150dm2/dm3、更により好ましくは25dm2/dm3から125dm2/dm3、更により一層好ましくは30dm2/dm3から100dm2/dm3、最も好ましくは35dm2/dm3から75dm2/dm3、更に最も一層好ましくは40dm2/dm3から50dm2/dm3の範囲である、本発明の方法が一般に好ましい。
【0078】
本発明の文脈において、全自由内部体積は、1つ又は複数の陽極(例えば、パイプ等の設置用、好ましくは処置装置内部の全ての他の設置用のその部品を含む)の最小体積(即ち、風袋重量)を差し引いた処置装置内の全内部体積に相当する。言い換えれば、全自由内部体積は、より好ましくは、液体が処置装置内部で最大限に占め得る体積である。
【0079】
本発明の文脈において、前述のパラメータは、陽極密度(即ち、前記全自由内部体積1dm3当たりの全有効陽極表面積)を示す。本発明の方法において、第1の酸化数を有するマンガン種を非常に効率的に(即ち、所与の状況下で、可能な限り多く且つ可能な限り迅速に)酸化するために比較的高い陽極密度を実現することが望ましい。実際、前述の陽極密度は、典型的には高いと考えられる。これは、処置装置のコンパクト且つ高密度のパッキングを特徴付けるパラメータである。
【0080】
処置装置が、フッ素化プラスチック、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)及び/又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む又はこれらからなる少なくとも1つの内面を有する、本発明の方法が好ましい。発明者らの実験の場合、そのような材料が、(例えば、溶解及び/又はエッチングの手段による)処置装置への被害及び損傷を防止するために必要とされる耐化学性を有することを示した。
【0081】
本発明の方法の工程(C)において、流れ、好ましくは電流が印加される。
【0082】
工程(C)において、電流が、0.1A/dm2から10A/dm2、好ましくは0.2A/dm2から8A/dm2、より好ましくは0.3A/dm2から6A/dm2、更により好ましくは0.4A/dm2から4A/dm2、更により一層好ましくは0.5A/dm2から2.8A/dm2、最も好ましくは0.6A/dm2から1.5A/dm2の範囲の電流密度を有する、本発明の方法が好ましい。これは、好ましくは有効陽極表面積に基づく陽極電流密度である。好ましくは、ひいては電流効率を低下させる不要な陽極酸素ガス産生を減少するために、陽極電流密度は比較的低い。
【0083】
工程(C)において、少なくとも1つの陰極が、2A/dm2から70A/dm2、好ましくは3A/dm2から60A/dm2、より好ましくは4A/dm2から50A/dm2、更により好ましくは5A/dm2から40A/dm2、更により一層好ましくは6A/dm2から30A/dm2、最も好ましくは7A/dm2から20A/dm2の範囲の陰極電流密度を有する、本発明の方法が好ましい。これは、陰極電流密度である。比較的低い陽極電流密度とは対照的に、比較的高い陰極電流密度を有することが望ましい。これは、典型的には、水素ガス産生をもたらす。これは一般に望ましくないが、本発明の文脈において、所望のマンガン種の不要な陰極分解反応を抑えることができる。
【0084】
場合によっては、工程(C)において、少なくとも1つの陰極が、2A/dm2から30A/dm2、好ましくは3A/dm2から25A/dm2、より好ましくは4A/dm2から20A/dm2、更により好ましくは5A/dm2から15A/dm2、最も好ましくは6A/dm2から12A/dm2の範囲の陰極電流密度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0085】
その他の場合では、工程(C)において、少なくとも1つの陰極が、10A/dm2から70A/dm2、好ましくは12A/dm2から65A/dm2、より好ましくは14A/dm2から60A/dm2、更により好ましくは16A/dm2から50A/dm2、最も好ましくは18A/dm2から35A/dm2の範囲の陰極電流密度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0086】
既に上述したように、第1の酸化数を有するマンガン種が液体中に含まれる、本発明の方法が好ましい。
【0087】
工程(A)において、液体中で合わせた全てのマンガン種(即ち、第1の酸化数を有するマンガン種を含む)が、液体の全体積に基づいて、0.02mol/Lから0.3mol/L、好ましくは0.03mol/Lから0.25mol/L、最も好ましくは0.035mol/Lから0.2mol/Lの範囲の総濃度を有する、本発明の方法が好ましい。これは、好ましくは、工程(A)における及び工程(C)後の液体に適用される。
【0088】
液体が、液体の全体積に基づいて、5mol/Lから13mol/L、好ましくは6mol/Lから12mol/L、より好ましくは7mol/Lから11.5mol/L、最も好ましくは8mol/Lから11mol/Lの範囲の総濃度の酸を含む、本発明の方法が一般に好ましい。最も好ましくは、これは無機酸に適用される。
【0089】
液体が、好ましくは、液体の全体積に基づいて、7.4mol/Lから11.8mol/L、好ましくは7.8mol/Lから11.5mol/L、より好ましくは8.2mol/Lから11.2mol/L、更により好ましくは8.5mol/Lから11mol/L、最も好ましくは8.7mol/Lから10.8mol/Lの範囲の濃度でリン酸を含む、本発明の方法がより好ましい。
【0090】
リン酸が、液体中の唯一の(鉱)酸である、本発明の方法が最も好ましい。場合によっては、液体に、硫酸が実質的にない、好ましくは硫酸が含まれない、本発明の方法が好ましい。
【0091】
液体に、メタンスルホン酸及びその塩が実施的にない、好ましくは含まれない、好ましくはC1~C4アルキルスルホン酸及びその塩が実質的にない、好ましくは含まれない、最も好ましくはC1~C4スルホン酸及びその塩が実質的にない、好ましくは含まれない、本発明の方法が好ましい。
【0092】
液体に、臭化物アニオン及びヨウ化物アニオンが実質的にない、好ましくは含まれない、好ましくは塩化物アニオン、臭化物アニオン、及びヨウ化物アニオンが実質的にない、好ましくは含まれない、最も好ましくはハロゲン化物アニオンが実質的にない、好ましくは含まれない、本発明の方法が好ましい。
【0093】
少数例のみにおいて、液体が、ヨウ素を含む化合物を含む、本発明の方法が好ましい。
【0094】
液体に、三価クロムイオン及び六価クロム化合物が実質的にない、好ましくは含まれない、好ましくはクロムを含む任意の化合物及びイオンが実質的にない、好ましくは含まれない、本発明の方法が好ましい。
【0095】
液体が、アルカリ金属イオン、最も好ましくはナトリウムイオンを、好ましくは液体の全体積に基づいて、0.002mol/Lから0.5mol/L、好ましくは0.004mol/Lから0.3mol/Lの範囲の総濃度で含む、本発明の方法が好ましい。
【0096】
工程(C)の間、液体が、20℃から65℃、好ましくは30℃から50℃の範囲の温度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0097】
工程(A)における及び好ましくは追加の工程(C)後の液体が酸性であり、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、更により好ましくは0.5以下のpHを有する、本発明の方法が好ましい。
【0098】
工程(A)において及び好ましくは追加の工程(C)後に、液体が、20℃の温度を基準として、1.2g/cm3から1.7g/cm3、好ましくは1.3g/cm3から1.6g/cm3、より好ましくは1.4g/cm3から1.6g/cm3の範囲の密度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0099】
工程(C)後、液体中の第2の酸化数を有するマンガン種、好ましくは過マンガン酸イオンが、液体の全体積に基づいて、0.004mol/Lから0.09mol/L、好ましくは0.005mol/Lから0.075mol/L、より好ましくは0.006mol/Lから0.06mol/L、更により好ましくは0.007mol/Lから0.045mol/L、更により一層好ましくは0.008mol/Lから0.03mol/L、最も好ましくは0.009mol/Lから0.019mol/Lの範囲の濃度を有する、本発明の方法が好ましい。
【0100】
液体が水を含む、好ましくは水が優勢である、本発明の方法が好ましい。
【0101】
本発明を以下の実施例によって更に例示していく。
【0102】
およそ9~10mol/Lのリン酸、およそ10mmol/Lの過マンガン酸イオン、及びおよそ2mmol/Lの銀(I)イオンを含む液体をエッチング組成物として調製した。高度の自己分解に起因して、過マンガン酸イオンの量は迅速に減少した。液体の体積は、約0.5Lだった。
【0103】
環境的に生態的に好都合なエッチング法を築くために、エッチング組成物を、リサイクル用の処置装置内で、本発明で定義した電解再酸化に供した。処置装置内で、以下の異なるタイプの単一陽極を試験した:
(a)織布陽極としての白金めっきチタン;約10m2/Lの表面密度(約10の表面因子);幾何学的表面積0.2dm2;0.75A/dm2、1A/dm2、及び1.3A/dm2の陽極電流密度で試験した;
(b)織布陽極としての白金めっきステンレス鋼;約14m2/Lの表面密度(約14の表面因子);幾何学的表面積0.15dm2;陽極電流密度1A/dm2
【0104】
陰極として、鉛合金陰極を使用した。陽極及び陰極は、陽極液及び陰極液が形成されるようにセラミック透過性バリアによって分離された。
【0105】
処置装置は、水性の濃縮リン酸(70wt%)からなる陰極液で充填され、液体は陽極液だった。
【0106】
陽極と陰極との間の距離は、およそ20mmだった。
【0107】
陽極電流密度は上述した通りであり、陰極電流密度は、およそ10A/dm2だった。
【0108】
陽極と接触させながら、第1の酸化数を有するマンガン種を継続して過マンガン酸イオン(即ち、第2の酸化数を有するマンガン種)に再酸化した。第1の酸化数を有するマンガン種は、粒状酸化マンガンを含有していた。
【0109】
非凡の高い表面密度に起因して、常時リサイクルが非常に効率的であり、必要とされるのは、比較的小さな陽極のみだった。それにもかかわらず、過マンガン酸イオンの総濃度は維持された。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処置装置内でマンガン種を酸化するための方法であって、
(A)前記処置装置内に、第1の酸化数を有するマンガン種を供給する工程、
(B)前記処置装置内に1つ又は複数の陽極及び少なくとも1つの陰極を設ける工程、
(C)前記陽極と前記陰極に電流を印加し、それによって第1の酸化数を有するマンガン種の少なくとも一部を、前記第1の酸化数より高い第2の酸化数を有するマンガン種に陽極酸化する工程
を含む方法において、前記1つ又は複数の陽極のうちの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの陽極の全体積に基づいて6m
2/L以上の表面密度を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の酸化数が+4以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の酸化数が+4超で
ある、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ又は複数の陽極及び前記少なくとも1つの陰極の互いに対する距離が、1mmから100m
mの範囲である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ又は複数の陽極及び前記少なくとも1つの陰極が、透過性バリ
アによって互いに分離される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記表面密度が8m
2/L以
上である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記表面密度が、6m
2/Lから100m
2/
Lの範囲である、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
6m
2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が、3Dプリント陽極、織布陽極、発泡体陽極、多重単層陽極、及び充填層陽極からなる群から選択される、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記織布陽極が、織り金属製ワイヤ及び/又は織り金属化フィラメントを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記織布陽極が、平織布陽極及び/又はパイル織布陽極を含む、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記3Dプリント陽極が、3Dプリント格子陽極及び/又は3Dプリントラメラ陽極を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記充填層陽極が、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ビアレッキリング、ディクソンリング、ネットボール、及びHex-X区画からなる群から選択されるパッケージ区画を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
6m
2/L以上の表面密度を有する少なくとも1つの陽極が、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらのうちの少なくとも1つを含む合金、これらの酸化物、及びこれらの混合物からなる群から選択される材料を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記1つ又は複数の陽極が全有効陽極表面積A
1を提供し、前記少なくとも1つの陰極が全有効陰極表面積A
2を提供し、A
1がA
2より大きい、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
A
1:A
2が、5:1から100:
1の範囲である、請求項
14に記載の方法。
【国際調査報告】