(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】処理デバイス内でマンガン種を酸化するための方法及び処理デバイス
(51)【国際特許分類】
C25B 1/28 20210101AFI20240614BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20240614BHJP
C25B 11/03 20210101ALI20240614BHJP
【FI】
C25B1/28
C25B13/08 302
C25B11/03
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577756
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2022066248
(87)【国際公開番号】W WO2022263483
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511188635
【氏名又は名称】アトテック ドイチェランド ゲーエムベーハー ウント コ カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・クーネ
(72)【発明者】
【氏名】ギード・クループシュ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ラウディーン
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・ハイデッケ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フィッシャー
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4K011AA10
4K011AA11
4K011AA14
4K011DA08
4K021AB15
4K021BA02
4K021BA17
4K021DA11
4K021DB11
4K021DB13
4K021DB31
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を含む処理デバイス(10)内でマンガン種を酸化するための方法であって、前記ユニットが少なくとも1つのアノード(21)を含み、ハウジング(22)によって閉じ込められ、ハウジングが自由内部容積(V)を画定し、(i)ハウジングが少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、少なくとも1つのカソードがアノードユニットの外側に位置付けられるか、又は(ii)少なくとも1つのアノードユニットが少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードを含み、ハウジングが透過性障壁を含まない、方法において、(i)及び(ii)では少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードが0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、方法に関する。本発明は更に、それぞれの処理デバイス(10)に言及する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理デバイス(10)内でマンガン種を酸化するための方法であって、
(A)前記処理デバイスに、液体で、+7よりも低い酸化数を有する少なくとも1種のマンガン種を提供する工程、
(B)前記処理デバイスに、少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を設ける工程であり、前記ユニットが少なくとも1つのアノード(21)を含み且つハウジング(22)によって閉じ込められ、前記ハウジングが自由内部容積(V)を画定する、工程、
(C)電流を、前記少なくとも1つのアノード及び前記少なくとも1つのカソードに印加して、前記少なくとも1種のマンガン種の少なくとも一部分が、酸化数+7を有するマンガン種にアノード酸化されるようになされる工程
を含み
(i)前記ハウジングが少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、前記少なくとも1つのカソードがアノードユニットの外側に位置付けられるか、
又は
(ii)前記少なくとも1つのアノードユニットが、少なくとも部分的に前記少なくとも1つのカソードを含み、前記ハウジングが透過性障壁を含まない、方法において、
(i)及び(ii)では前記少なくとも1つのアノード及び前記少なくとも1つのカソードが、0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの透過性障壁が、イオン選択的透過性障壁であり、好ましくはイオン選択的透過性膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(ii)において、前記少なくとも1つのカソードが前記ハウジング内で少なくとも部分的に一体化され、好ましくは少なくとも部分的に前記少なくとも1つのアノードに向かって外側から内側に前記ハウジングを透過する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(d)が1mmから90mm、好ましくは2mmから80mm、より好ましくは3mmから70mm、更により好ましくは4mmから60mm、最も好ましくは5mmから50mmに及ぶ、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアノードが、アノード層の、好ましくは3又は3層よりも多くのアノード層の層積層体(25)を含み、より好ましくは前記層積層体が、3から300アノード層を、更により好ましくは4から200アノード層を、更になおより好ましくは6から100アノード層を、最も好ましくは8から60アノード層を、更に最も好ましくは9から30アノード層を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記層積層体では、前記アノード層が互いに0.5mmから20mm、好ましくは1mmから15mm、より好ましくは2mmから12mm、更により好ましくは3mmから10mm、最も好ましくは4mmから9mmに及ぶ距離(m)を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアノードが、シート、メッシュ、織布ウェブ、及び/又はエキスパンドメタルを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアノードが、1又はそれよりも大きい、好ましくは1.4又はそれよりも大きい、更により好ましくは1.7又はそれよりも大きい、なお更により好ましくは2又はそれよりも大きい、最も好ましくは2.1又はそれよりも大きい、更に最も好ましくは2.2又はそれよりも大きい表面係数を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアノードが、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、及び/又はこれらの混合物を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアノードが、全有効アノード表面積A
1を、及び前記少なくとも1つのカソードが全有効カソード表面積A
2を提供し、A
1がA
2よりも大きい、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
A
1:A
2が5:1から100:1、好ましくは10:1から85:1、より好ましくは15:1から70:1、更により好ましくは20:1から60:1、最も好ましくは30:1から50:1に及ぶ、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
A
1が、前記自由内部容積(V)に対して10dm
2/dm
3から100dm
2/dm
3、好ましくは15dm
2/dm
3から85dm
2/dm
3、より好ましくは20dm
2/dm
3から70dm
2/dm
3、更により好ましくは25dm
2/dm
3から60dm
2/dm
3、最も好ましくは30dm
2/dm
3から50dm
2/dm
3に及ぶ、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記処理デバイス及び/又は前記少なくとも1つのアノードユニットが、フッ素化プラスチック、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び/又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む又はこれらからなる少なくとも1つの内面を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を含み、前記ユニットが少なくとも1つのアノード(21)を含み、前記ユニットがハウジング(22)によって閉じ込められ、前記ハウジングが自由内部容積(V)を画定する、処理デバイス(10)であって、
(i)前記ハウジングが少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、前記少なくとも1つのカソードが前記アノードユニットの外側に位置付けられるか、
又は
(ii)前記ハウジングが、少なくとも部分的に前記少なくとも1つのカソードを含み、前記ハウジングが透過性障壁を含まない、処理デバイスにおいて、
(i)及び(ii)では前記少なくとも1つのアノード及び前記少なくとも1つのカソードが、0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、処理デバイス(10)。
【請求項15】
請求項2から13のいずれか一項で定義された、請求項14に記載の処理デバイス。
【請求項16】
前記液体が酸性である、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記液体が酸性であり、前記少なくとも1つのアノードが、アノード層の層積層体(25)を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアノードが、全有効アノード表面積A
1を、及び前記少なくとも1つのカソードが全有効カソード表面積A
2を提供し、A
1がA
2よりも大きく、
前記少なくとも1つのアノードが、アノード層の層積層体(25)を含み、
前記少なくとも1つのアノードが、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、及び/又はこれらの混合物を含む、
請求項14に記載の処理デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を含む処理デバイス(10)内でマンガン種を酸化するための方法であって、前記ユニットは、少なくとも1つのアノード(21)を含み、ハウジング(22)によって閉じ込められ、ハウジングは自由内部容積(V)を画定し、(i)ハウジングは少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、少なくとも1つのカソードはアノードユニットの外側に位置付けられるか、又は(ii)少なくとも1つのアノードユニットは少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードを含み、ハウジングは透過性障壁を含まない、方法において、(i)及び(ii)では少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードは、0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、方法に関する。本発明は更に、それぞれの処理デバイス(10)に言及する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック基板等の非金属基板の金属化には、現代技術における長い歴史がある。典型的な用途は、自動車産業及び衛生物品に見出される。
【0003】
しかしながら、金属層を許容する非金属/非伝導性基板の作製は労力を要する。典型的には、それぞれの方法は、典型的にはエッチングとして公知の基板の表面の表面修飾から開始する。通常、強力過ぎる欠陥なしに十分な表面の粗面化を確実にするために、繊細なバランスが必要とされる。
【0004】
多くの方法及びエッチング組成物は、6価クロム種(例えば、クロム酸)等の環境上問題のあるクロム種を含む組成物も含めて公知である。これらの組成物は通常、非常に強力で許容可能なエッチング結果を提供するが、環境に優しい代替例がなお一層求められており、ある特定の範囲までは既に当技術分野で提供されている。多くの場合、マンガン系エッチング組成物が代わりに利用される。
【0005】
典型的には、マンガン系エッチング組成物は、酸性又はアルカリ性のいずれかである。しかしながら酸性マンガン系エッチング組成物は、本来、特に過マンガン酸系エッチング組成物において分解を受け易い。その結果、そのようなエッチング組成物は、活性マンガン種の一定の且つ比較的高いレベルの補充を必要とする。好ましくは、そのようなエッチング組成物は、比較的一定のレベルの活性マンガン種を維持するよう、連続的にリサイクルされる。これは典型的には化学的酸化又は電流の印加のいずれかによって実現される。それぞれの再生方法及びデバイスは、それぞれ当技術分野で公知である。
【0006】
CN 109628948 Aは、過マンガン酸イオン溶液をリサイクルするためのセラミックダイアフラムを含む再生デバイスについて言及する。
【0007】
CN 1498291 Aは、エッチング処理溶液を再生するための電解再生処理デバイスについて言及する。
【0008】
WO 2013/030098 A1は、プラスチック部分の処理及び/又はエッチングに使用される過マンガン酸塩を含む処理溶液を、少なくとも部分再生するためのデバイスに言及する。
【0009】
WO 01/90442 A1は、過マンガン酸エッチング溶液を再生するための電気化学的な配置構成のためのカソードと、過マンガン酸エッチング溶液を電解再生するためのデバイスとに言及する。
【0010】
US 4,911,802 Aは、アルカリ金属過マンガン酸塩を生成するための電解酸化プロセスに言及する。
【0011】
US 3,062,734 Aは、電解セル及びそこで用いられる電極であって、複数の隣接する閉鎖型双極性電解セルを備える、電極に言及する。
【0012】
US 5,660,712 Aは、二酸化マンガン鉱から過マンガン酸カリウムを作製するための方法であって、二酸化マンガン含有鉱を水酸化カリウム供給溶液及び酸素で酸化する、方法に言及する。
【0013】
US 3,293,160 Aは、純粋な又は実質的に純粋なマンガン金属をアノードとして使用する、アルカリ溶液の電解によって、マンガン酸塩及び/又は過マンガン酸塩を生成するための方法に言及する。
【0014】
US 5,062,930 Aは、電解中のカソードでの望ましくない還元反応をなくし、それによって過マンガン酸塩発生効率を増大させる、二酸化マンガン接着カソード表面を含む過マンガン酸塩を電解的に発生させる方法及び装置に言及する。
【0015】
しかしながら、それぞれの再生方法の効率を更に増大させること及びよりコンパクトなデバイスを提供することが、引き続き求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】CN 109628948 A
【特許文献2】CN 1498291 A
【特許文献3】WO 2013/030098 A1
【特許文献4】WO 01/90442 A1
【特許文献5】US 4,911,802 A
【特許文献6】US 3,062,734 A
【特許文献7】US 5,660,712 A
【特許文献8】US 3,293,160 A
【特許文献9】US 5,062,930 A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって本発明の目的は、高効率の処理デバイス内でマンガン種を酸化するための方法と、コンパクトなデザインを持つそれぞれの処理デバイスとを提供することである。最も好ましくは、優れた効率で、過マンガン酸塩を特に含む酸性マンガン系エッチング組成物を処理(即ち、リサイクル)するのに、特に適した方法及びデバイスをそれぞれ提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の目的は、処理デバイス(10)内でマンガン種を酸化するための方法であって、
(A)処理デバイスに、液体で、+7よりも低い酸化数を有する少なくとも1種のマンガン種を提供する工程、
(B)処理デバイスに、少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を設ける工程であり、前記ユニットが少なくとも1つのアノード(21)を含み且つハウジング(22)によって閉じ込められ、ハウジングが自由内部容積(V)を画定する、工程、
(C)電流を、少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードに印加して、前記少なくとも1種のマンガン種の少なくとも一部分が、酸化数+7を有するマンガン種にアノード酸化されるようになされる工程
を含み、
(i)ハウジングが少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、少なくとも1つのカソードがアノードユニットの外側に位置付けられるか、
又は
(ii)少なくとも1つのアノードユニットが、少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードを含み、ハウジングが透過性障壁を含まない、方法において、
(i)及び(ii)では少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードが、0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、方法によって解決される。
【0019】
本発明において、処理デバイス(10)は、+7よりも低い酸化数を有するマンガン種の非常に効率的なアノード酸化を可能にする。更に、少なくとも1つのアノードユニット(20)は非常にコンパクトなデザインを可能にし、これが改善された効率の基礎をなす。その結果、本発明は、処理デバイスで必要とされる容積が、対応するエッチング組成物の体積と比較して相対的に低いので、酸性マンガン系エッチング組成物を効率的に処理するのに非常に適している。例えば、一般的に使用される技法では、それぞれの処理デバイスの容積は、利用されるエッチング組成物の体積とほぼ同一である。対照的に本発明の方法では、処理デバイスの処理される容積は、エッチング組成物の体積よりも著しく低い。したがって、いわゆるデッドボリューム(dead volume)は、一般的な方法及びデバイスと比較して著しく低減された。
【0020】
工程(A)で提供された液体は、工程(A)で提供された前記液体を利用する全液体の50体積%又はそれ未満の体積、好ましくは40体積%又はそれ未満、最も好ましくは30体積%又はそれ未満の体積を有する本発明の方法が、好ましい。
【0021】
本発明の文脈で、少なくとも1つのカソードは、アノードユニットの外側にあるか又はハウジング内に含まれることのいずれかが必須である。それぞれの場合に、少なくとも1つのカソードは(少なくとも主として)少なくとも1つのアノードの周り(取り囲むという意味で)に構築されることを示す。言い換えれば、少なくとも1つのカソードは、少なくとも主として、少なくとも1つのアノードを取り囲み又は循環し、この言葉遣いは、円形形状との集合を限定するものではない。この必須のアノード/カソード配置構成は、下記のようにも記述することができる:アノードユニットの中心点に対して、少なくとも1つのアノードから中心点への距離は、対応する少なくとも1つのカソードの対応する距離よりも短い。したがって、少なくとも1つのアノードが、対応する少なくとも1つのカソードよりもアノードユニットの中心に更に向かって位置付けられる、好ましくは少なくとも1つのアノードがアノードユニットの中心にある、本発明の方法が好ましい。
【0022】
全ての図は、本発明の原理を示す、本発明の方法で利用される処理デバイス(10)の概略図である。それらは必ずしも実際のサイズの寸法及び比を表す必要はない。流動スキーム並びに管及び弁は図示されておらず、簡便にするために省略されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】少なくとも1つのアノード(21)及び少なくとも1つのカソード(30)が垂直に向いており、ハウジング(22)内の少なくとも1つの透過性障壁(23)により分離されている、実施形態(i)による処理デバイスを示す図である。
【
図2】少なくとも1つのアノード(21)が水平に向いており、少なくとも1つのカソード(30)からハウジング(22)内の少なくとも1つの透過性障壁(23)によって分離されている、実施形態(i)による処理デバイスを示す図である。
【
図3】少なくとも1つのアノード(21)及び少なくとも1つのカソード(30)が互いに垂直に向いており、透過性障壁(23)によって分離されていない、実施形態(ii)による処理デバイスを示す図である。代わりに、ハウジング(22)が少なくとも部分的に、少なくとも1つのカソード(30)を含み、第1の組のカソードスポット(32)及び第2の組のカソードスポット(33)を含む複数のカソードスポット(31)を形成する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の方法では、2つの代替の実施形態(i)及び(ii)が提示され、実施形態(i)は少なくとも1つの透過性障壁を含み、実施形態(ii)はそれを含まない。実施形態(i)では、少なくとも1つの透過性障壁の存在に起因して、それぞれ、カソード物質が少なくとも1つのカソードの周りに形成され/存在し、アノード物質が少なくとも1つのアノードの周りに形成され/存在する。それらは少なくとも1つの透過性障壁によって互いに透過的に分離される。
【0025】
本発明の方法の追加の利点は、柔軟性の高い尺度を有することである。本発明の方法で利用される処理デバイスは、実施形態(i)及び(ii)の間で切り替えるのに高い労力を払うことなく、両方の実施形態で使用することができる。
【0026】
実施形態(i)によれば、ハウジングは少なくとも1つの透過性障壁を含み、少なくとも1つのカソードがアノードユニットの外側に位置付けられる。この実施形態は好ましくは、膜手法(少なくとも1つの透過性障壁が膜を含む場合)とも呼ばれる。少なくとも1つのカソードは、直接的にアノードユニット又はそのハウジングの部分ではなく、アノードユニットの外側に(しかし処理デバイス内に)位置付けられる(即ち、位置決めされ、配置構成される)ことが示される。しかしながら透過性障壁を用いることにより、電流は、アノード的に少なくとも1種のマンガン種が酸化して酸化数+7を有するマンガン種になるように、ハウジングにも拘らず流れることができる。好ましくは、液体はアノード物質である(即ち、アノード物質に相当する)。
【0027】
実施形態(ii)では、それぞれの透過性障壁の不在に起因して及びハウジングが少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードを含むという事実に起因してカソード物質とアノード物質との間に区別が存在しない、又は区別することができない。
【0028】
一般に、液体(即ち、好ましくは実施形態(i)で存在するアノード物質(anolyte))の最大体積は、基本的に、自由内部容積(V)に相当する。最も好ましくは、液体はエッチング組成物であり、即ち好ましくは、手段は、工程(A)で利用されるエッチング組成物として提供され、工程(C)の後にリフレッシュされた/リサイクルされたエッチング組成物として戻される。
【0029】
好ましくは(実施形態(i)又は(ii)とは無関係に)、自由内部容積(V)は、全内部ハウジング容積から、ハウジング内に位置付けられた少なくとも1つのアノード(例えば、その設置のための部分を含む)の少なくとも体積(即ち、風袋体積)を差し引いた値に相当し、したがって全内部ハウジング容積が低減される。言い換えれば、自由内部容積(V)は、より好ましくは、液体が少なくとも1つのアノードユニット内を最大限占有できる容積である。
【0030】
カソード物質が無機酸を、好ましくはリン酸を、より好ましくは20質量%から90質量%のリン酸を、更により好ましくは30質量%から80質量%の、最も好ましくは40質量%から70質量%のリン酸を含む、本発明の方法が好ましい。
【0031】
実施形態(i)では、全てのマンガン種が好ましくは少なくとも1つのカソードから分離される。これは好ましくは、透過性障壁が、負に帯電した又は中性のマンガン種を基本的に透過できないことを意味する。
【0032】
少なくとも1つの透過性障壁がイオン選択的透過性障壁であり、好ましくはイオン選択的透過性膜である本発明の方法が、好ましい。
【0033】
少なくとも1つの透過性障壁がカチオン選択的透過性障壁、好ましくはカチオン選択的透過性膜である本発明の方法が、好ましい。したがって最も好ましくは、カチオンのみが透過性である。
【0034】
少なくとも1つの透過性障壁がミネラルではない本発明の方法が、好ましい。少なくとも1つの透過性障壁が、セラミックを本質的に含まない、好ましくはセラミックを含まない本発明の方法が、好ましい。
【0035】
少なくとも1つの透過性障壁が有機物である本発明の方法が、より好ましい。少なくとも1つの透過性障壁が有機物であり、フッ素を含む(好ましくは、フッ素化された)、最も好ましくは有機物であり過フッ素化された、本発明の方法が、より好ましい。少なくとも1つの透過性障壁がNafion型膜であることが最も好ましいが、少なくとも1つの膜は、この特定のブランドに特に限定されない。したがって前述は、好ましいイオン選択的(好ましくは、カチオン選択的)透過性障壁に、好ましくはイオン選択的(好ましくは、カチオン選択的)透過膜に、同様に好ましく適用される。膜、好ましくは前記有機膜は非常に薄く、したがって比較的短い距離(d)に、したがって少なくとも1つのアノードユニットのコンパクトな設計に、良い方向に寄与する。
【0036】
本発明の文脈で、透過性障壁の全面積を、非常にコンパクトな設計に起因して比較的低く保持できることは、利点である。
【0037】
本発明の方法の工程(c)では、電流(a current)が、好ましくは電気電流(an electrical current)が印加される。この電流及びそれに関連する電場は、典型的には液体中に存在するそれぞれのイオンの移行方向に影響を及ぼす。その結果、負に帯電したマンガン種は、少なくとも1つのアノードに強制的に移行される。
【0038】
実施形態(i)で存在する透過性障壁は前記電流と組み合わせて、典型的には、負に帯電したマンガン種が更になお完全に、少なくとも1つのカソードに接触するのを防止させる。電流が存在しない場合、透過性障壁は好ましくは、アノード物質及びカソード物質を互いに混合(好ましくは、カソード物質中へのアニオンの輸送)するのを著しく抑制し/低減させる。これは好ましくは、透過性障壁、最も好ましくはカチオン選択的透過性膜が、アノード物質からカソード物質へのアニオン輸送を抑制し/回避することを意味する。その結果、負に帯電した化学種、例えばMnO4
-、PO4
3-、HPO4
2-、H2PO4
-の輸送は、電流なしで及び電流と一緒の場合であっても著しく抑制される。更に、粒子状の非帯電MnO2の輸送も、好ましくは回避されるか又は少なくとも著しく抑制される。対照的に透過性障壁は水分子の、好ましくは水及びヒドロニウムイオンの輸送/移行を自由に及び主に可能にする。
【0039】
(ii)において、少なくとも1つのカソードがハウジング内で少なくとも部分的に一体化され、好ましくは少なくとも部分的に少なくとも1つのアノードに向かって外側から内側にハウジングを透過する本発明の方法が、好ましい。
【0040】
実施形態(ii)によれば、ハウジングは、少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードを含み(好ましくは、一体化する)、このハウジングは、透過性障壁を含まない(即ち、存在しない)。この実施形態は、好ましくは、膜を含まない手法とも呼ばれる。好ましくは、ハウジング全体が透過性障壁を含まない。この実施形態では、少なくとも1つのカソードが、好ましくは少なくとも部分的にハウジング内で一体化する。これは少なくとも1つのカソード(好ましくは、少なくとも部分的に)が、好ましくはそれ自体がハウジングの部分であり、したがって(好ましくは少なくとも部分的に)好ましくは少なくとも1つのアノードユニットをハウジングの部分として閉じ込めることも意味する。更に少なくとも1つのカソード(好ましくは、少なくとも部分的に)は、ハウジング内に含まれ(好ましくは、一体化される)、好ましくは少なくとも部分的に、カソード領域をハウジング内部に曝露する。既に述べたように、この実施形態では好ましくは、全く異なるカソード物質及びアノード物質が形成されず、むしろ液体のみが形成される。この実施形態では、好ましくは全てのマンガン種が、基本的に少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードに接触する。したがって、工程(C)において各マンガン種が少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードに直接接触する、実施形態(ii)による本発明の方法が好ましい。しかしながら、これは電流効率の視点からそれほど好ましくない。独自の実験により、透過性障壁を利用する方法(即ち、実施形態(i))と比較して、酸化数+7を有するマンガン種の望ましくない破壊をもたらす基本レベルの望ましくないカソード副反応に起因して、より低い電流効率が得られたことが示された。しかしながら独自の実験により、液体がマンガン種の他に銀イオン等の更なる金属イオンを含む場合、実施形態(ii)が大きな利点を提供することも示した。この実施形態では、銀(又はおそらくはマンガンに加えてその他の金属イオン)が永続的に溶解したままになるか、又は少なくともある特定の時間間隔で再溶解するように、望ましくないカソード銀堆積を防止または少なくとも逆転させることができる。
【0041】
(d)が1mmから90mm、好ましくは2mmから80mm、より好ましくは3mmから70mm、更により好ましくは4mmから60mm、最も好ましくは5mmから50mmに及ぶ本発明の方法が、好ましい。
【0042】
(d)に関する前述の内容は一般に、本発明の方法で好ましい。
【0043】
距離(d)が、少なくとも1つのアノードと最も近い(好ましくは、対応する)少なくとも1つのカソードとの間の最短距離と定義される本発明の方法が、一般に好ましい。言い換えれば距離(d)は、好ましくは、少なくとも1つのアノードと最も近い(好ましくは対応する)少なくとも1つのカソードとの間の最短外側距離である。「外側」という用語は、好ましくは、最も近い少なくとも1つのカソードの最も外側に向かって直接面している少なくとも1つのアノードの最も外側を指す。距離(d)は、少なくとも1つのアノードと最も近い(好ましくは、対応する)少なくとも1つのカソードとの間の最短平均外側距離であることが最も好ましい。これは好ましくは、少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードが互いに向かって並行配列を有する場合にも言える。理解を助けるため、
図1から
図3を参照する。
【0044】
特に実施形態(i)では、(d)が9mmから70mm、好ましくは10mmから60mm、より好ましくは11mmから50mm、更により好ましくは12mmから30mm、最も好ましくは13mmから20mmに及ぶ、本発明の方法が好ましい。この実施形態では、距離(d)の最小値は、少なくとも1つのカソードがアノードユニットの外側(即ち、ハウジングの外側)に位置付けられてそのハウジングが少なくとも1つのカソードと少なくとも1つのアノードとの間にあるようになされているので、典型的には実施形態(ii)と比較して大きい。したがって距離(d)が、(i)における最小距離が実施形態(ii)の最小距離(d)と比較して高いことを前提として、最小距離を有する本発明の方法が好ましい。更に実施形態(i)では、少なくとも1つの透過性障壁が、前記アノード及びカソードと直接接触するようにならずに、少なくとも1つのアノードと少なくとも1つのカソードとの間にある。しかしながら、透過性障壁の厚さは、好ましくは無視することができ、したがって距離(d)に実質的に寄与しない。
【0045】
特に実施形態(ii)では、(d)が1mmから70mm、好ましくは2mmから60mm、より好ましくは3mmから50mm、更により好ましくは4mmから30mm、最も好ましくは5mmから20mmに及ぶ本発明の方法が好ましい。この実施形態では、ハウジングが少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードを含むので、典型的には比較的低い距離(d)が維持される。したがって距離(d)の最小値は比較的低い。これには好ましくは距離(d)のより高い最小値を有する、実施形態(i)と比較して少ない電圧しか必要としないという利点がある。
【0046】
少なくとも1つのアノードがアノード層の、好ましくは3又は3層よりも多くのアノード層の層積層体(25)を含み、より好ましくは層積層体が3から300アノード層を、更により好ましくは4から200アノード層を、更になおより好ましくは6から100アノード層を、最も好ましくは8から60アノード層を、更に最も好ましくは9から30アノード層を含む本発明の方法が、好ましい。
【0047】
本発明の文脈において、例えば多数のアノード層の層積層体として設計された、非常にコンパクトな設計を有するアノードが、十分に高い電流効率/ターンオーバーを提供すること、最も好ましくは個々のアノードセグメント間の空間が非常に小さい場合;例えば層積層体の個々のアノード層の数が比較的高く、したがってそれらの間の空間が比較的小さい場合に提供するとわかることは、非常に意外であった。一般に、そのような環境下、非常に高く有害な遮蔽効果が生じ、例えば特に更に多くの個々のアノードセグメントが少なくとも1つのカソードに向かって連続して配置される場合に生じると考えられる。しかしながら、そのような遮蔽効果は確かに生じるが、その影響は意外にも低く、比較的広い全有効アノード表面積を創出する大きな利益に支えられ、意外にも耐えることができる。意外にも電場は、十分な効率及びターンオーバーを引き起こす浸透深さを有するが、そのようなアノードはFaradayケージ様障壁を提供すると想定される。言い換えれば、そのようなアノードは意外にも、極めてコンパクトで稠密なアノードアーキテクチャを可能にし、したがって比較的小さい処理デバイスが可能になる。したがってこれは自由内部容積(V)を最小限に抑えるのを可能にする。
【0048】
そのような好ましい層積層体では、層積層体が好ましくは、少なくとも1つの内部アノード層及び少なくとも1つの外部アノード層を含む。少なくとも1つの内部アノード層は、別の内部アノード層に面するか、又は少なくとも1つの外部層の少なくとも片面に面する。しかしながら層積層体が厳密に2つのアノード層を含む場合、それらは同時に少なくとも1つの外側アノード層である。これは同様に、少なくとも1つのアノードが単一アノード層を含む場合又は単一アノード層である場合に適用される。
【0049】
ある場合には、少なくとも1つのアノードが、広大な全有効アノード表面積、好ましくは好ましい層積層体を用いて得られる広大な全有効アノード表面積に等しいものも提供する単一アノード層を含むか又はそのような単一アノード層である本発明の方法が、好ましい。
【0050】
既に言及したように、距離(d)が、少なくとも1つのアノードと最も近い(好ましくは、対応する)少なくとも1つのカソードとの間の最短距離と定義される本発明の方法が、好ましい。距離(d)が、層積層体の最外アノード層と最も近い(好ましくは、対応する)少なくとも1つのカソードとの間の最短距離と定義される本発明の方法が、より好ましい。
【0051】
一般に、距離(d)は、一定の距離であることが好ましい。これは好ましくは(d)が、互いに並行に配列されている少なくとも1つのアノードと少なくとも1つのカソードとの間の距離を示すことを意味する。
【0052】
本発明の方法において、少なくとも1つのアノードは好ましくは、水平に又は垂直に向けられる(
図1及び
図2を比較)。少なくとも1つのアノードが垂直に向けられた本発明の方法が、より好ましい(
図1を比較)。これは層積層体(25)のアノード層に最も好ましく適用される。しかしながら一部のその他の場合、少なくとも1つのアノードが水平に向けられた本発明の方法が好ましい(
図2を比較)。これは層積層体(25)のアノード層にも最も好ましく適用される。独自の実験により、垂直の向きが多くの場合、改善された電流効率を提供し、したがって好ましいことを示した。そのような場合、液体は、少なくとも1つのアノードユニットを通して改善された灌流を有し、形成された気体はアノード表面で吸着されることなく容易に逃げることができることが想定される。更にこの手法は、より低いコストにも関連する。
【0053】
実施形態(i)において、少なくとも1つのアノードが2から100アノード層、好ましくは3から80アノード層、より好ましくは4から60アノード層、更により好ましくは5から40アノード層、最も好ましくは6から30アノード層の層積層体(25)を含む本発明の方法が、好ましい。
【0054】
実施形態(ii)において、少なくとも1つのアノードが、2から300アノード層、好ましくは5から260アノード層、より好ましくは7から220アノード層、更により好ましくは9から170アノード層、最も好ましくは12から130アノード層の層積層体(25)を含む本発明の方法が、好ましい。しかしながら多くの場合、アノード層の数は、好ましくは実施形態(i)に関して上記にて定義された通りである。
【0055】
層積層体では、アノード層が互いに0.5mmから20mm、好ましくは1mmから15mm、より好ましくは2mmから12mm、更により好ましくは3mmから10mm、最も好ましくは4mmから9mmに及ぶ距離(m)を有する本発明の方法が、好ましい。
【0056】
好ましくは、距離(m)は、スペーサー(26)を用いて固定される。より好ましくは、(m)は(本質的に)一定であり、最も好ましくは(本質的に)層積層体の全てのアノード層の間で一定である。
【0057】
ある場合には、非常に好ましい距離(m)は、1mmから6mm、好ましくは1.5mmから4mmに及ぶ。
【0058】
少なくとも1つのアノード、好ましくは層積層体が、シート、メッシュ、織布ウェブ、及び/又はエキスパンドメタル(即ち、メタルラス)を含む本発明の方法が、好ましい。
【0059】
本発明の文脈において、比較的高い全有効アノード表面積を持つ少なくとも1つのアノードを提供することが一般に好ましい。前述の形の少なくとも1つのアノード(最も好ましくは、層積層体)は、好ましくはこの非常に望まれる且つ好ましい特徴を満たす。多くの場合、少なくとも1つのアノードがエキスパンドメタル(メタルラス;「Streckmetall」とも呼ばれる)を含む本発明の方法が、好ましい。最も好ましくは、層積層体(25)は、エキスパンドメタルをアノード層として含む。
【0060】
少なくとも1つのアノード、好ましくは層積層体の個々のアノード層が、1又はそれよりも大きい、好ましくは1.4又はそれよりも大きい、更により好ましくは1.7又はそれよりも大きい、更になおより好ましくは2又はそれよりも大きい、最も好ましくは2.1又はそれよりも大きい、更に最も好ましくは2.2又はそれよりも大きい表面係数を有する本発明の方法が、好ましい。
【0061】
本発明の文脈で、表面係数は、幾何学的面積当たりの全有効表面積を定義するパラメーターを示す。
【0062】
例えばプレート、即ち幾何学的に1m2の表面は、典型的には2の表面係数を有し(簡略化のため、切削端の領域は無視する)、全有効表面積2m2(正面及び背面を含む)をもたらす。その結果、表面係数には、いかなる次元/単位もない。2よりも下の又は更に上の表面係数は、典型的には、例えばプレートが穴を有し且つメッシュが開口を有する場合にそれぞれ、定められた数で且つ定められた寸法で得られる。しかしながら、今日の市販のメッシュの表面係数は、典型的には2.5を超えない。
【0063】
本発明の方法では、多くの場合、比較的高い有効アノード表面積を、好ましくは層積層体を利用することによって得ることが好ましい。一方、遮蔽効果は、最良の可能性ある効率を実現するために、可能な限り低くすることが必要である。
【0064】
本発明の文脈で、上記にて定義された表面係数は、最も好ましくは層積層体の個々のアノード層に適用される。
【0065】
少なくとも1つのアノードが、好ましくは既に上記にて示されたアノードに加えて、3D印刷されたアノード、織布アノード、フォームアノード、及び充填床アノードからなる群から選択される本発明の方法も、好ましい。典型的には、そのようなアノードは、体積当たり比較的高い有効表面積を有し、最も好ましくは少なくとも1つのアノードの総体積に対して6m2/L又はそれよりも大きい。これは幾何学的体積当たりの全有効表面積を示す表面密度としても公知である。
【0066】
表面密度が6m2/Lから100m2/L、好ましくは8m2/Lから70m2/L、より好ましくは10m2/Lから50m2/L、更により好ましくは12m2/Lから40m2/L、更になおより好ましくは14m2/Lから30m2/L、最も好ましくは16m2/Lから22m2/Lの範囲にある本発明の方法が、好ましい。
【0067】
織布アノードが織製金属線及び/又は織製金属化フィラメントを含む本発明の方法が、好ましい。
【0068】
織布アノードが平らな織布アノード及び/又はパイル布帛アノードを含む本発明が、好ましい。
【0069】
3D印刷されたアノードが、3D印刷された格子アノード及び/又は3D印刷されたラメラアノードを含む本発明の方法が、好ましい。
【0070】
フォームアノードがスポンジアノードを含む本発明の方法が、好ましい。
【0071】
充填床アノードが、ラシヒリング、レッシングリング、ポールリング、ビアレッキリング、ディクソンリング、ネットボール、及びHex-X区画からなる群から選択されるパッケージ区画を含む本発明の方法が、好ましい。
【0072】
少なくとも1つのアノードが、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、及び/又はこれらの混合物を含む;好ましくは白金、チタン、及び金の少なくとも1種を含む本発明の方法が、好ましい。
【0073】
実際、必ずしも全てのアノード材料が、本発明の方法で達成される目的に適しているわけではない。液体は好ましくは高酸性であるので、且つマンガン種の強力な酸化特性により、少なくとも1つのアノード(及びそのそれぞれの材料)を慎重に選択しなければならない。最低限の要件は、それぞれの材料が液体に対して(電気)化学的に不活性であることである。典型的には、前述のアノードは少なくともある特定の時間にわたり耐性がある。少なくとも1つのアノードが白金化されたアノード及び/又は白金アノード、好ましくは白金化されたチタンアノード、及び/又は白金化されたニオブアノードを含む本発明の方法が、非常に好ましい。
【0074】
ある場合には、少なくとも1つのアノードが鉛及び/又は鉛合金を含む本発明の方法が、好ましい。好ましい鉛合金は、スズ及び/又は銀を合金元素として含む。しかしながら独自の実験により、白金を含む少なくとも1つのアノード、好ましくは白金化されたアノード及び/又は白金アノードを含む少なくとも1つのアノードで優れた効率が得られることを示した。これは好ましくは、実施形態(i)及び(ii)にもそれぞれ同様に適用される。
【0075】
少なくとも1つのカソードがチタン、白金、ニオブ、鉛、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、ステンレス鋼、及び/又はこれらの混合物を含む、本発明の方法が、一般に好ましい。典型的には、少なくとも1つのカソードが、それぞれの材料が好ましくは耐酸性であり水素脆化に対して十分に安定しており及び/又は液体に対して化学的に耐性がある限り(利用される実施形態に応じて)、広く様々な材料のものである本発明の方法が、好ましい。
【0076】
ある場合には、好ましくは実施形態(ii)において、少なくとも1つのカソードが少なくとも1つのアノードと同一である本発明の方法が、好ましい。しかしながらその他の場合には、好ましくは少なくとも1つのカソードは、好ましくは実施形態(i)において、しかし、実施形態(ii)の場合でも、少なくとも1つのアノードとは異なる。
【0077】
実施形態(i)では、少なくとも1つのカソードが白金、チタン、鉛、ニッケル、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、ステンレス鋼、及び/又はこれらの混合物を含む本発明の方法が、好ましい。ステンレス鋼が最も好ましく;この実施形態で最も好ましいカソード物質であるリン酸において非常に望ましい耐性を示す。更に独自の実験により、カソード電流が、更に低い耐性の材料を利用することができるように少なくとも1つのカソードを保護することを示した。このカソード保護の一般的原理は、好ましくは実施形態(ii)にも適用される。
【0078】
しかしながら実施形態(ii)では、好ましくは電気化学的に非常に不活性なカソード材料が必要である。そのような場合、少なくとも1つのカソードは、チタン、白金、ニオブ、鉛、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、ステンレス鋼、及び/又はこれらの混合物を含むことが好ましい。ある場合には、少なくとも1つのカソードが白金化されたカソード及び/又は白金カソードを、好ましくは白金化されたチタンカソードを、及び/又は白金化されたニオブカソードを含む本発明の方法が、好ましい。他の場合には、少なくとも1つのカソードがステンレス鋼を含む本発明の方法が、好ましい。ステンレス鋼は、ある場合には、カソード保護に起因して好ましくは使用され、したがって本発明の方法により実施形態(ii)で使用することができる。
【0079】
少なくとも1つのカソードが1つのカソード層又は2、3、若しくは3層よりも多くのカソード層の、好ましくは2つのカソード層の層積層体を含む本発明の方法が、一般に好ましい。好ましくは2つのカソード層のカソード層積層体は、本発明の方法の実施形態(ii)でより好ましい。
【0080】
層積層体のカソード層が互いに電気的に分離されている本発明の方法が、より好ましい。これにより好ましくは、各カソード層が別個の電流源を有することが可能になる。
【0081】
少なくとも1つのカソードがシート、メッシュ、織布ウェブ、及び/又はエキスパンドメタルを含む本発明の方法が、一般に好ましい。これは最も好ましくは実施形態(i)に適用される。
【0082】
少なくとも1つのカソード及び少なくとも1つのアノードが垂直に向いている、好ましくは垂直に向いており、互いに並行である、本発明の方法が、より好ましい。
【0083】
少なくとも1つのアノードが、全有効アノード表面積A1、及び少なくとも1つのカソードが全有効カソード表面積A2を提供し、A1がA2よりも大きい本発明の方法が、好ましい。
【0084】
本発明の文脈で、「全有効表面積」は、電気化学的レドックス反応に寄与するのに利用可能な面積を指す。
【0085】
実施形態(ii)では、複数のカソードスポット(31)が少なくとも1つのアノードに向かって内側に曝露され、A2が前記スポットにより形成されるように、少なくとも1つのカソードがハウジングを外側から内側へと少なくとも部分的に(好ましくは部分的に)透過する本発明の方法が、好ましい。そのようなスポットは、これらのスポットが少なくとも1つのアノードに向かってアノードユニット内に曝露される場合のみ、全有効カソード表面積を効果的に最小限に抑える。
【0086】
好ましくは、スポットは、ハウジングの少なくとも一部にわたって均等に分布される。このようにA2は、アノードユニット内で均質に分布される。
【0087】
ある場合には、複数のカソードスポットがハウジングの内部と同一平面にある本発明の方法が、好ましい。
【0088】
少なくとも部分的に(好ましくは部分的に)少なくとも1つのアノードに向かって外側から内側にハウジングを透過する少なくとも1つのカソードが、少なくとも2つのカソード層の層積層体を含む本発明の方法が(
図3を比較)、より好ましい。
【0089】
複数のカソードスポットが、第1の及び第2の組のカソードスポットを形成し(それぞれ32及び33、
図3を比較)、各組が好ましくはそれ自体の電流を有する本発明の方法が、最も好ましい。これは好ましくは、第1及び第2の組が電気的に互いに分離されることを意味する。これは好ましくは更に、これらの組の1つを一時的にスイッチオフにして、異なる両方の電流を流すか、又は一方の組の電流を他方の組の電流に対して逆にすることが可能である。独自の実験により、これが例えば銀イオンが液体中で利用される場合に金属の銀の堆積を回避する大いに役立つことが示された。
【0090】
A1:A2が5:1から100:1、好ましくは10:1から85:1、より好ましくは15:1から70:1、更により好ましくは20:1から60:1、最も好ましくは30:1から50:1に及ぶ本発明の方法が、好ましい。
【0091】
これは一般に、本発明の方法で好ましい。
【0092】
より好ましくは、特に実施形態(i)では、ある特定の比に関する特定の考慮は、A1がA2よりも大きい限り必ずしも必要ではない。好ましくはA1:A2は、5:1から30:1、好ましくは6:1から25:1、より好ましくは7:1から20:1に及ぶ。
【0093】
しかしながら実施形態(ii)では、A1:A2が少なくとも10:1、好ましくは少なくとも20:1、より好ましくは少なくとも30:1、最も好ましくは少なくとも40:1である本発明の方法が、好ましい。A1:A2が10:1から100:1、好ましくは20:1から70:1、より好ましくは30:1から50:1、最も好ましくは35:1から45:1に及ぶ本発明の方法が、好ましい。これは好ましくは、好ましくは高い電流効率で実施形態(ii)を行うこと、及び所望のマンガン種を破壊する望ましくないカソード副反応を十分に抑制することを必要とする。更に、電流効率とエネルギー消費との間の最適なバランスが提供される。
【0094】
A1が、自由内部容積(V)に対して10dm2/dm3から100dm2/dm3、好ましくは15dm2/dm3から85dm2/dm3、より好ましくは20dm2/dm3から70dm2/dm3、更により好ましくは25dm2/dm3から60dm2/dm3、最も好ましくは30dm2/dm3から50dm2/dm3に及ぶ本発明の方法が、好ましい。
【0095】
本発明の文脈で、前述のパラメーターは、アノード密度(即ち、少なくとも1つのアノードユニットの自由内部容積のdm3当たりの全有効アノード表面積)を示す。本発明の方法では、+7よりも低い酸化数を有するマンガン種を効率的に酸化するために、比較的高いアノード密度を実現することが望まれる。事実、前述のアノード密度は、特に好ましい及び最も好ましいものにおいて、典型的には高いとみなされる。少なくとも1つのアノードユニットにおける少なくとも1つのアノードの、コンパクトで稠密な充填を特徴とするパラメーターである。この原理は、好ましくは実施形態(i)及び実施形態(ii)に適用される。
【0096】
処理デバイス及び/又は少なくとも1つのアノードユニット(好ましくは、少なくとも1つのアノードユニット)が、フッ素化プラスチック、好ましくはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及び/又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む又はこれらからなる少なくとも1つの内面を有する本発明の方法が、好ましい。
【0097】
独自の実験により、そのような材料が、液体の過酷な条件に由来する処理デバイス及び少なくとも1つのアノードユニットそれぞれに対する危害及び損傷(例えば、溶解及び/又はエッチングを用いて)を防止するのに必要とされる、化学抵抗を有することが示された。
【0098】
上述のように、工程(A)では、+7よりも低い酸化数を有する少なくとも1つのマンガン種が、液体中で提供される。
【0099】
工程(A)で、非金属基板、好ましくはプラスチック基板をエッチングするためのエッチング区画から液体が得られる本発明の方法が、好ましい。上述のように、液体は好ましくは、非金属基板と、好ましくはプラスチック基板と最も好ましくは接触した後の、エッチング組成物である。
【0100】
工程(A)では、前記液体中で、+7よりも低い酸化数を有する少なくとも1種のマンガン種が、+IVの酸化数を有するマンガン種、好ましくはMnO2を含む本発明の方法が、好ましい。より好ましくは、+IVの酸化数を有するマンガン種は、工程(C)の前の液体中の全てのマンガン種の50mol%よりも多くを、好ましくは少なくとも75mol%を構成する。好ましくは、MnO2は微粒子であり、好ましくはコロイド粒子として存在する。これは好ましくは、その必要に応じた凝集体を含む。
【0101】
プラスチック基板がアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルケトン(PEK)、これらの混合物、及び/又はこれらの複合体;好ましくはアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン-ポリカーボネート(ABS-PC)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリエポキシド(PE)、ポリアクリレート、これらの混合物、及び/又はこれらの複合体を含む本発明の方法が、好ましい。そのようなプラスチック基板は、典型的には自動車部品等の装飾用途に使用され、特にABS及びABS-PCである。
【0102】
工程(C)で、酸化数+7を有するマンガン種が過マンガン酸イオンを含む、最も好ましくは過マンガン酸イオンである本発明の方法が、好ましい。典型的には、例えば過マンガン酸塩でのプラスチック基板のエッチングは、プラスチックの材料を少なくとも部分的に酸化させながら、過マンガン酸塩を、より低い酸化数を持つマンガン種に還元する。
【0103】
工程(A)で、+7よりも低い酸化数を有する少なくとも1種のマンガン種が、マンガン元素に対して0.1g/Lから4g/Lの全濃度を有し、且つ液体の総体積が好ましくは0.2g/Lから3g/Lに及ぶ、より好ましくは0.3g/Lから2g/Lに及ぶ、最も好ましくは0.4g/Lから1.5g/Lに及ぶ本発明の方法が、好ましい。
【0104】
本発明の方法の工程(C)では、電流を印加して、+7よりも低い酸化数を有するマンガン種の少なくとも一部をアノード酸化する。
【0105】
工程(C)で、酸化数+7を有するマンガン種にアノード酸化されたマンガン種の少なくとも一部を、元のエッチング区画内に移して、プラスチック基板をエッチングする本発明の方法が、好ましい。
【0106】
最も好ましくは、本発明の方法は、過マンガン酸イオンのリサイクル方法である。この文脈において、「リサイクル」は、(好ましくは既に利用された)マンガン種を、後でそれをエッチングに再利用することで、酸化数+7に再酸化することを指す。方法が連続的に実施される本発明の方法が、好ましい。
【0107】
ある場合には、処理デバイスがエッチング区画に対して外部にある本発明の方法が、好ましい。これは処理デバイスがエッチンブ区画の外側にあることを意味する。これは典型的には好ましい。しかしながらその他の場合には、処理デバイスが少なくとも部分的にエッチング区画と一体化している本発明の方法が、好ましい。これは好ましくは、処理デバイスがエッチング区画に対して内部にあることを意味する。
【0108】
工程(C)では、電流が、0.1A/dm2から10A/dm2、好ましくは0.2A/dm2から8A/dm2、より好ましくは0.3A/dm2から6A/dm2、更により好ましくは0.4A/dm2から4A/dm2、更になお好ましくは0.5A/dm2から2.8A/dm2、最も好ましくは0.6A/dm2から1.5A/dm2に及ぶ電流密度を有する本発明の方法が、好ましい。これは好ましくは有効アノード表面積に対するアノード電流密度である。好ましくは、アノード電流密度は、電流効率を低減させることになる望ましくないアノード酸素ガス生成を回避し/低減させるために、比較的低い。
【0109】
工程(C)では、少なくとも1つのカソードが、2A/dm2から70A/dm2、好ましくは3A/dm2から60A/dm2、より好ましくは4A/dm2から50A/dm2、更により好ましくは5A/dm2から40A/dm2、更により好ましくは6A/dm2から30A/dm2、最も好ましくは7A/dm2から20A/dm2に及ぶカソード電流密度を有する本発明の方法が、好ましい。これはカソード電流密度である。比較的低いアノード電流密度とは対照的に、比較的高いカソード電流密度を有することが望ましい。これは典型的には水素ガス生成をもたらす。これは一般に望ましくないが、本発明の文脈において、所望のマンガン種の望ましくないカソード分解反応を抑制する。これは最も好ましくは、実施形態(ii)に適用される。
【0110】
実施形態(ii)のカソード電流密度が実施形態(i)におけるよりも高い本発明が、より好ましい。
【0111】
実施形態(i)では、工程(C)において、少なくとも1つのカソードが2A/dm2から30A/dm2、好ましくは3A/dm2から25A/dm2、より好ましくは4A/dm2から20A/dm2、更により好ましくは5A/dm2から15A/dm2、最も好ましくは6A/dm2から12A/dm2に及ぶカソード電流密度を有する本発明の方法が、好ましい。
【0112】
実施形態(ii)では、工程(C)において、少なくとも1つのカソードが、10A/dm2から70A/dm2、好ましくは12A/dm2から65A/dm2、より好ましくは14A/dm2から60A/dm2、最も好ましくは16A/dm2から50A/dm2に及ぶカソード電流密度を有する本発明の方法が、好ましい。ある場合には、カソード電流密度は好ましくは18A/dm2から35A/dm2に及ぶ。
【0113】
液体が酸、好ましくは無機酸、最も好ましくはリン酸を含む本発明の方法が、より好ましい。
【0114】
液体が、好ましくは工程(C)の後に、
(a)水、
(b)酸化数+7を有する0.0025mol/Lから0.1mol/Lのマンガン種、好ましくは過マンガン酸イオン、
(c)7mol/Lから12mol/Lのリン酸、
(d)0から0.1mol/Lの銀(I)イオン、及び
(e)0又は10ppm未満のマンガン(II)イオン
を含む本発明の方法が、最も好ましい。
【0115】
本発明の方法で利用される液体は、水を含む。(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)が、液体の全質量の90質量%又はそれよりも多く、好ましくは92質量%又はそれよりも多く、より好ましくは94質量%又はそれよりも多く、更により好ましくは96質量%又はそれよりも多く、最も好ましくは98質量%又はそれよりも多くを形成する本発明の方法が、好ましい。液体中、残りは水である本発明の方法が、好ましい。
【0116】
液体中、工程(C)の後、酸化数+7を有するマンガン種、好ましくは過マンガン酸イオンが、液体の総体積に対して0.004mol/Lから0.09mol/L、好ましくは0.005mol/Lから0.075mol/L、より好ましくは0.006mol/Lから0.06mol/L、更により好ましくは0.007mol/Lから0.045mol/L、更により好ましくは0.008mol/Lから0.03mol/L、最も好ましくは0.009mol/Lから0.019mol/Lに及ぶ濃度を有する本発明の方法が、好ましい。
【0117】
工程(A)で、液体中、全てのマンガン種は一緒に、液体の総体積に対して0.02mol/Lから0.3mol/L、好ましくは0.03mol/Lから0.25mol/L、最も好ましくは0.035mol/Lから0.2mol/Lに及ぶ全濃度を有する本発明の方法が、好ましい。これは酸化数+7を有する(完全に存在する場合)残留量のマンガン種を、好ましくは過マンガン酸イオン、及び+7よりも低い酸化数を有するマンガン種を含む。これは好ましくは、工程(A)で及び工程(C)の後の液体に、適用される。
【0118】
液体中、リン酸が、液体の総体積に対して7.4mol/Lから11.8mol/L、好ましくは7.8mol/Lから11.5mol/L、より好ましくは8.2mol/Lから11.2mol/L、更により好ましくは8.5mol/Lから11mol/L、より好ましくは8.7mol/Lから10.8mol/Lに及ぶ濃度を有する本発明の方法が、好ましい。
【0119】
リン酸が液体中の唯一の(鉱)酸である本発明の方法が、最も好ましい。特にリン酸は、好ましくはその他の強鉱酸がない状態で、+IVの酸化数を有するマンガン種(MnO2等)から、+IVよりも低い酸化数への更なる還元を著しく遅くする。これが非常に好ましい。これが好ましくは、液体が比較的低い量のマンガン(II)イオンを含む理由でもある。
【0120】
ある場合には、液体中、リン酸が、液体の総体積に対して9.2mol/Lから10.5mol/L、好ましくは9.3mol/Lから10.4mol/L、より好ましくは9.4mol/Lから10.3mol/Lに及ぶ濃度を有する本発明の方法が、好ましい。
【0121】
ある場合には、液体が銀(I)イオンを含む本発明の方法が、好ましい。銀イオンは、好ましくは、電解的再酸化をより良く触媒するために必要とされる。
【0122】
液体中、銀(I)イオンが0.0001mol/Lから0.09mol/L、好ましくは0.0002mol/Lから0.07mol/L、より好ましくは0.0005mol/Lから0.05mol/L、更により好ましくは0.0007mol/Lから0.03mol/L、最も好ましくは0.001mol/Lから0.01mol/Lに及ぶ濃度を有する本発明の方法が、好ましい。
【0123】
好ましくは、工程(A)で、液体はマンガン(II)イオンを実質的に含まず、好ましくは含まない。ある場合には、その濃度は、液体の総体積に対して好ましくは比較的低く、最も好ましくは10ppmを超えない。これは好ましくは、本発明の方法で利用される液体に一般に適用される。
【0124】
液体がアルカリイオンを、最も好ましくはナトリウムイオンを、好ましくは液体の総体積に対して0.002mol/Lから0.5mol/Lに及ぶ、好ましくは0.004mol/Lから0.3mol/Lに及ぶ全濃度で含む本発明の方法が、好ましい。
【0125】
液体が、メタンスルホン酸及びその塩を実質的に含まない、好ましくは含まない、好ましくはC1~C4アルキルスルホン酸及びその塩を実質的に含まない、好ましくは含まない、最も好ましくはC1~C4スルホン酸及びその塩を実質的に含まない、好ましくは含まない本発明の方法が、好ましい。
【0126】
液体が、臭化物及びヨウ化物アニオンを実質的に含まない、好ましくは含まない、好ましくは塩化物、臭化物、及びヨウ化物アニオンを実質的に含まない、好ましくは含まない、最も好ましくはハロゲン化物アニオンを実質的に含まない、好ましくは含まない本発明の方法が、好ましい。
【0127】
液体が、3価のクロムイオン及び6価のクロム化合物を実質的に含まず、好ましくは含まず、好ましくはクロムを含むいかなる化合物及びイオンも実質的に含まず、好ましくは含まない本発明の方法が、好ましい。
【0128】
液体が硫酸を実質的に含まない、好ましくは含まない本発明の方法が、好ましい。
【0129】
工程(C)中、液体が20℃から65℃、好ましくは30℃から50℃に及ぶ温度を有する本発明の方法が、好ましい。
【0130】
工程(A)で及び工程(C)の後に液体が酸性であり、好ましくは2又はそれ未満、より好ましくは1又はそれ未満、更により好ましくは0.5又はそれ未満のpHを有する本発明の方法が、好ましい。
【0131】
工程(A)で及び工程(C)の後、液体が、20℃の温度の際に1.2g/cm3から1.7g/cm3の範囲、好ましくは1.3g/cm3から1.6g/cm3、より好ましくは1.4g/cm3から1.6g/cm3の範囲の密度を有する本発明の方法が、好ましい。この密度は好ましくは、大量のリン酸、並びに粒状及び/又はコロイド状のMnO2の結果である。
【0132】
本発明は更に、少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を含み、前記ユニットが少なくとも1つのアノード(21)を含み、ユニットがハウジング(22)によって閉じ込められ、ハウジングは自由内部容積(V)を画定する、好ましくは+7よりも低い酸化数を有するマンガン種を酸化数+7を有するマンガン種に酸化するための、それぞれの処理デバイスであって、
(i)ハウジングが少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、少なくとも1つのカソードはアノードユニットの外側に位置付けられるか、
又は
(ii)ハウジングが、少なくとも部分的に少なくとも1つのカソードを含み、ハウジングが透過性障壁を含まない、処理デバイスにおいて、
(i)及び(ii)では少なくとも1つのアノード及び少なくとも1つのカソードが、0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、処理デバイスに言及する。
【0133】
好ましくは、本発明の方法に関する前述は、同様に本発明の処理デバイスに適用され、最も好ましくは本発明の方法で利用される処理デバイスに好ましいと定義された特徴は、同様に本発明の処理デバイスに適用される。
【0134】
次に本発明を、図及び以下の例を参照することによって更に説明する。
【0135】
約9から10mol/Lのリン酸、約10mmol/Lの過マンガン酸イオン、及び約2mmol/Lの銀(I)イオンを含む液体を、約40℃でABS及びABS-PC基板をエッチングするためのエッチング組成物として使用した。エッチング時間は約5から20分の間であった。エッチング中、過マンガン酸イオンの量は素早く減少した。
【0136】
環境上及び生態学的に好ましいエッチング方法を確立するために、エッチング組成物を、リサイクルのための処理デバイス(10)に液体として能動的にポンプ送出することにより(図示せず)、連続して提供した。
【0137】
図1による実施形態(i)では、処理デバイス(10)に、水性の濃リン酸(70質量%)からなるカソード物質(catholyte)を満たし、液体(即ち、この実施形態ではアノード物質(anolyte))を、少なくとも1つのアノードユニット(20)を通して連続してポンプ送出した。少なくとも1つのアノードユニット(20)は、少なくとも1つのアノードユニット(20)の中心に少なくとも1つのアノード(21)を含む画定された区画であった。少なくとも1つのアノード(21)は、2より僅かに上の個々の表面係数を有するエキスパンドメタルである、複数の8から20アノード層(25)を含む垂直に向いた層積層体として提供された。少なくとも1つのアノードユニット(20)は、約40dm
2/dm
3の全有効アノード表面積A
1を提供した。
【0138】
少なくとも1つのアノードユニット(20)は、Nafion型膜である少なくとも1つの透過性障壁(23)を含むハウジング(22)によって閉じ込められた。典型的にはそれら2つは、
図1に示されるようにハウジング(22)の反対側で使用された。複数のアノード層の間の距離(m)は、スペーサー(26)によって固定され、約1から2mmであった。
【0139】
典型的には、1から5個のアノードユニットが処理デバイスで利用されて、アノードユニット当たりリサイクルされるエッチング組成物約200Lの性能で、過マンガン酸イオンを一定してリサイクルする。特定の場合、1つの処理デバイスで5個のアノードユニットが、約600から1000Lのエッチング組成物に関して利用された。典型的には、少なくとも1つのアノードユニットに存在する液体の体積は、テキストで上記にて定義された自由内部容積(V)に相当する。
【0140】
少なくとも1つのアノードユニットの外側で、少なくとも1つのカソード(30)が設けられ、典型的には少なくとも1つのアノードユニット(20)に対して反対側の少なくとも1つのアノードユニット(20)の周りに設けられる。少なくとも1つのカソード(30)は、全有効カソード表面積A2を提供し、A1はA2よりも著しく大きかった。少なくとも1つのアノード(21)と少なくとも1つのカソード(30)との間の距離(d)は、約15mmであった。
【0141】
電流を、前記少なくとも1つのアノード(21)及び前記少なくとも1つのカソード(30)に印加した。アノード電流密度は約1A/dm2であり、カソード電流密度は約10A/dm2であった。
【0142】
少なくとも1つのアノードユニット(20)を通して流れる間、液体は、層積層体(25)のアノード層に接触し、+7よりも下の酸化数を有するマンガン種が過マンガン酸イオン(即ち、酸化数+7を有するマンガン種)に連続して再酸化された。
【0143】
図2による代替の実施形態(i)では、アノード層の層積層体が水平に設けられた。電流効率は、垂直に向いたアノード層で得られた電流効率よりも僅かに下であることが観察された。
【0144】
実施形態(i)の両方の変形例では、銀(I)イオンが時々補充されて、引き出されただけでなく望ましくない少量の沈殿物も補償した。
【0145】
図3による実施形態(ii)では、透過性障壁(23)をハウジング(22)で使用しなかった。代わりに、少なくとも1つのカソードを、反対側のハウジング(22)に少なくとも部分的に一体化させて、少なくとも1つのカソード(30)がハウジング(22)に部分的に透過して少なくとも1つのアノード(21)に向かって内部に入るようにした。そのようにすることによって、複数のカソードスポット(31)が形成され、少なくとも1つのアノードユニット(20)のハウジング(22)の2つの対向する内面の面当たり約16から60個のスポットが形成された。更に2つのカソード(30)は、第1の組(32)及び第2の組(33)のカソードスポット(前記複数のカソードスポットから)が少なくとも1つのアノードユニット(20)内に、少なくとも1つのアノード(21)に向かって存在するように、利用した。両方のカソードは、互いに電気的に分離された。カソード電流を繰り返し反転させて、銀の沈殿が溶解するようにし、したがって基本的に回避されるようにした。引き出しに起因する損失のみが、ある時間間隔で補償された。その結果、著しく少ない銀しか消費されなかった。
【0146】
アノード物質とカソード物質との間に区別は存在しなかった。カソード電流密度は約50A/dm2であり、したがって実施形態(i)におけるよりも著しく高かった。少なくとも1つのアノード(21)と少なくとも1つのカソード(30)との間の距離(d)は、約10mmであった。
【0147】
各実施形態では、再酸化された過マンガン酸イオンを含む液体を、エッチング組成物として戻した。
【0148】
更にそれぞれの場合に、非常にコンパクトなアノードユニットが提供され、強酸性環境でそれぞれのマンガン種を一定してリサイクルすることを可能にした。
【符号の説明】
【0149】
1 液体
10 処理デバイス
20 少なくとも1つのアノードユニット
21 少なくとも1つのアノード
22 ハウジング
23 少なくとも1つの透過性障壁
25 アノード層の層積層体
26 スペーサー
30 少なくとも1つのカソード
31 複数のカソードスポット
32 第1の組のカソードスポット
33 第2の組のカソードスポット
V ハウジングにより画定された自由内部容積
d 少なくとも1つのアノードと少なくとも1つのカソードとの間の距離
m 層積層体中の互いに対するアノード層の距離
【手続補正書】
【提出日】2024-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理デバイス(10)内でマンガン種を酸化するための方法であって、
(A)前記処理デバイスに、液体で、+7よりも低い酸化数を有する少なくとも1種のマンガン種を提供する工程、
(B)前記処理デバイスに、少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を設ける工程であり、前記ユニットが少なくとも1つのアノード(21)を含み且つハウジング(22)によって閉じ込められ、前記ハウジングが自由内部容積(V)を画定する、工程、
(C)電流を、前記少なくとも1つのアノード及び前記少なくとも1つのカソードに印加して、前記少なくとも1種のマンガン種の少なくとも一部分が、酸化数+7を有するマンガン種にアノード酸化されるようになされる工程
を含み
(i)前記ハウジングが少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、前記少なくとも1つのカソードがアノードユニットの外側に位置付けられるか、
又は
(ii)前記少なくとも1つのアノードユニットが、少なくとも部分的に前記少なくとも1つのカソードを含み、前記ハウジングが透過性障壁を含まない、方法において、
(i)及び(ii)では前記少なくとも1つのアノード及び前記少なくとも1つのカソードが、0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの透過性障壁が、イオン選択的透過性障壁で
ある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(ii)において、前記少なくとも1つのカソードが前記ハウジング内で少なくとも部分的に一体化さ
れる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(d)が1mmから90m
mに及ぶ、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアノードが、アノード層
の層積層体(25)を
含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記層積層体では、前記アノード層が互いに0.5mmから20m
mに及ぶ距離(m)を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアノードが、シート、メッシュ、織布ウェブ、及び/又はエキスパンドメタルを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのアノードが、1又はそれよりも大き
い表面係数を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのアノードが、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、及び/又はこれらの混合物を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアノードが、全有効アノード表面積A
1を、及び前記少なくとも1つのカソードが全有効カソード表面積A
2を提供し、A
1がA
2よりも大きい、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
A
1:A
2が5:1から100:
1に及ぶ、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
A
1が、前記自由内部容積(V)に対して10dm
2/dm
3から100dm
2/dm
3
に及ぶ、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記処理デバイス及び/又は前記少なくとも1つのアノードユニットが、フッ素化プラスチッ
クを含む又はこれらからなる少なくとも1つの内面を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのアノードユニット(20)及び少なくとも1つのカソード(30)を含み、前記ユニットが少なくとも1つのアノード(21)を含み、前記ユニットがハウジング(22)によって閉じ込められ、前記ハウジングが自由内部容積(V)を画定する、処理デバイス(10)であって、
(i)前記ハウジングが少なくとも1つの透過性障壁(23)を含み、前記少なくとも1つのカソードが前記アノードユニットの外側に位置付けられるか、
又は
(ii)前記ハウジングが、少なくとも部分的に前記少なくとも1つのカソードを含み、前記ハウジングが透過性障壁を含まない、処理デバイスにおいて、
(i)及び(ii)では前記少なくとも1つのアノード及び前記少なくとも1つのカソードが、0.5mmから100mmに及ぶ距離(d)を有することを特徴とする、処理デバイス(10)。
【請求項15】
請求項2から13のいずれか一項で定義された、請求項14に記載の処理デバイス。
【請求項16】
前記液体が酸性である、請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記液体が酸性であり、前記少なくとも1つのアノードが、アノード層の層積層体(25)を含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアノードが、全有効アノード表面積A
1を、及び前記少なくとも1つのカソードが全有効カソード表面積A
2を提供し、A
1がA
2よりも大きく、
前記少なくとも1つのアノードが、アノード層の層積層体(25)を含み、
前記少なくとも1つのアノードが、白金、チタン、ニオブ、鉛、金、これらの少なくとも1種を含む合金、これらの酸化物、及び/又はこれらの混合物を含む、
請求項14に記載の処理デバイス。
【国際調査報告】