(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】マクロライドの非ナノ粒子適用形態
(51)【国際特許分類】
A61K 31/706 20060101AFI20240614BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240614BHJP
A61K 31/436 20060101ALI20240614BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20240614BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240614BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240614BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240614BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240614BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240614BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K31/706
A61K9/70 401
A61K31/436
A61K31/7048
A61K31/7052
A61K47/32
A61K47/44
A61K47/34
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/14
A61K47/02
A61P37/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577793
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-09
(86)【国際出願番号】 EP2022066210
(87)【国際公開番号】W WO2022263463
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523471194
【氏名又は名称】ニュークリアス メディカル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(72)【発明者】
【氏名】ホルストコッテ、エルケ
(72)【発明者】
【氏名】バイヤー、ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076AA74
4C076BB21
4C076BB22
4C076CC07
4C076DD29U
4C076DD38
4C076DD46
4C076DD47
4C076EE06
4C076EE09
4C076EE10
4C076EE11
4C076EE12
4C076EE13
4C076EE15
4C076EE16
4C076EE23
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE49
4C076EE53
4C076FF33
4C076FF34
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086EA04
4C086EA12
4C086EA13
4C086EA15
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA56
4C086MA57
4C086NA05
4C086NA11
4C086NA13
4C086ZB08
(57)【要約】
本発明は、非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層、好ましくは粘膜付着性頬側層に関する。さらに、本発明は、非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層を含み、およびさらにバッキング層を含む粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルムに関する。本発明はまた、粘膜付着性層、バッキング層、および中間層を含む粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルムに関する。本発明はさらに、医薬としての使用のためおよび移植拒絶反応の予防および/または治療における使用のための粘膜付着性層または粘膜付着性フィルムに関する。さらに、本発明は、粘膜付着性フィルムを調製する方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層、好ましくは粘膜付着性頬側層。
【請求項2】
非ナノ粒子マクロライドがマクロライド免疫抑制剤、マクロライド抗生物質、およびマクロライド抗真菌剤から選ばれ;
ここで、好ましくは、
- マクロライド免疫抑制剤がタクロリムス、シロリムス、エベロリムス、およびピメクロリムスから選ばれ;
- マクロライド抗生物質がエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、テリスロマイシン、タイロシン、およびフィダキソマイシンから選ばれ;および/または
- マクロライド抗真菌剤がポリエン、特にナイスタチン、ナタマイシン、およびアムホテリシンBから選ばれ、
ここで、より好ましくは、該非ナノ粒子マクロライドが非ナノ粒子タクロリムスまたはシロリムス、さらにより好ましくは非ナノ粒子タクロリムスである、請求項1に記載の粘膜付着性層。
【請求項3】
該非ナノ粒子マクロライドが、微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライドの形態で、および/または分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在する、請求項1または2に記載の粘膜付着性層。
【請求項4】
該微粉化マクロライドが1~100 μm、好ましくは1.5~50 μm、より好ましくは2~25 μmの平均粒径を有する、請求項3に記載の粘膜付着性層。
【請求項5】
粘膜付着性層が
- 粘膜付着性ポリマー、好ましくはa) 両親媒性ポリマーおよび親水性ポリマー、b) ポリ(メタクリレート)、c) 架橋ポリアクリル酸ポリマー、d) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、e) ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、およびそれらの組み合わせから選ばれるポリマー;
を含み、
ここで、好ましくは、
両親媒性ポリマーが、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリオキシルひまし油およびD-α-トコフェロール-ポリエチレングリコール-スクシネート(TPGS)から選ばれ、および/または
ポリ(メタクリレート)が、中性のプロトン化可能なポリ(メタクリレート)およびカチオン性のポリ(メタクリレート)から選ばれ、好ましくはジアルキルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、およびトリアルキルアンモニオエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、特にジメチルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、およびトリメチルアンモニオエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマーから選ばれ;
およびここで粘膜付着性層が:
- セルロース誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルセルロース(EC)、およびそれらの組み合わせから選ばれる;
- 可塑剤;好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれる;より好ましくはグリセロール;
- 必要に応じて着色剤、好ましくはTiO
2;
- および非ナノ粒子マクロライド
をさらに含む、前記請求項のいずれか1項に記載の粘膜付着性層。
【請求項6】
該非ナノ粒子マクロライドが分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在し;
および該粘膜付着性ポリマーおよび/または該セルロース誘導体が有機溶媒中に可溶なポリマーである、請求項3~5のいずれか1項に記載の粘膜付着性層。
【請求項7】
粘膜付着性層が
a)粘膜付着性ポリマー、好ましくは両親媒性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC);カルボキシメチルセルロース(CMC);可塑剤、好ましくはグリセロール;および必要に応じて着色剤、好ましくはTiO
2;
好ましくは10 wt% - 30 wt%の粘膜付着性ポリマー; 25 wt% - 35 wt%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC); 10 wt% - 25 wt%のカルボキシメチルセルロース(CMC); 10 wt% - 16 wt%の該可塑剤;および必要に応じて1 wt% - 4 wt%の該着色剤;または
b)粘膜付着性ポリマー、好ましくは架橋ポリアクリル酸ポリマーおよびメチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーから選ばれる;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC); エチルセルロース(EC);可塑剤、好ましくはグリセロール;および必要に応じて着色剤、好ましくはTiO
2;
好ましくは2 wt% - 17 wt%の粘膜付着性ポリマー; 30 wt% - 70 wt%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC); 5 wt% - 40 wt%の該エチルセルロース(EC); 3 wt% - 20 wt%の該可塑剤;および必要に応じて1 wt% - 5 wt%の該着色剤
を含む、前記請求項のいずれか1項に記載の粘膜付着性層。
【請求項8】
該マクロライドが、少なくとも2 wt%、好ましくは少なくとも3 wt%、例えば3.2 wt%の濃度で;および/または1 cm
2の該粘膜付着性層に関して約0.01 mg~約10 mgの範囲の量で、好ましくは1 cm
2の該粘膜付着性層に関して約0.1 mg~約5 mgの範囲、より好ましくは1 cm
2の該粘膜付着性層に関して約1.5 mg~約3.5 mgの範囲の量で該粘膜付着性層中に存在する、前記請求項のいずれか1項に記載の粘膜付着性層。
【請求項9】
非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層、好ましくは請求項1~8のいずれか1項で定義した粘膜付着性層を含み;およびバッキング層、好ましくはマクロライドに対して不浸透性のおよび/または水に対して不浸透性のバッキング層をさらに含む、粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルム。
【請求項10】
バッキング層が、可塑剤、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコールソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ、より好ましくはグリセロールである可塑剤を含み;および/または水不溶性ポリマーおよび/またはセルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、好ましくは水不溶性セルロース誘導体、より好ましくはエチルセルロース(EC)を含む、請求項9に記載の粘膜付着性フィルム。
【請求項11】
粘膜付着性フィルムが、粘膜付着性層とバッキング層との間に配置された中間層をさらに含み;
ここで、好ましくは、該中間層が粘膜付着性層とバッキング層との間の接着を容易にし;
ここで、必要に応じて、該中間層が、可塑剤、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ、より好ましくはグリセロールである可塑剤;およびポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む、請求項9または10に記載の粘膜付着性フィルム。
【請求項12】
該粘膜付着性層が、70 g/m
2~180 g/m
2の範囲、好ましくは100 g/m
2~150 g/m
2の範囲の面積重量を有し;および/または
該バッキング層が、40 g/m
2~100 g/m
2の範囲、好ましくは40 g/m
2~60 g/m
2の範囲、例えば50 g/m
2の面積重量を有し;および/または
該中間層が、存在する場合、40 g/m
2~100 g/m
2の範囲、好ましくは40 g/m
2~70 g/m
2の範囲、例えば60 g/m
2の面積重量を有する、請求項9~11のいずれか1項に記載の粘膜付着性フィルム。
【請求項13】
粘膜付着性層、バッキング層、および中間層を含み、
ここで該中間層が、粘膜付着性層とバッキング層との間に配置され、およびここで該粘膜付着性層がマクロライド、好ましくはタクロリムスを含み;
ここで、好ましくは、該中間層が粘膜付着性層とバッキング層との間の接着を容易にし;
ここで、必要に応じて、該中間層が、可塑剤、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ、より好ましくはグリセロールである可塑剤を含み;
ここで、必要に応じて、該中間層が、ポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む、
粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルム。
【請求項14】
医薬としての使用のための、請求項1~8のいずれか1項に記載の粘膜付着性層、または請求項9~13のいずれか1項に記載の粘膜付着性フィルム。
【請求項15】
移植拒絶反応、好ましくは肝臓、腎臓または心臓同種移植拒絶反応などの固形臓器移植拒絶反応の予防および/または治療における使用のためであって、
ここで、必要に応じて、該使用が、患者の体腔中、好ましくは患者の頬側口腔中での該フィルムまたは層の取り付けを含む、
使用のための請求項1~8のいずれか1項に記載の粘膜付着性層、または請求項9~13のいずれか1項に記載の粘膜付着性フィルム。
【請求項16】
i)微粉化マクロライド、好ましくは非ナノ粒子微粉化マクロライド;およびポリマー混合物を提供すること、ここで該ポリマー混合物は
- 粘膜付着性ポリマー、好ましくはa) 両親媒性ポリマーおよび親水性ポリマー、b) ポリ(メタクリレート)、c) 架橋ポリアクリル酸ポリマー、d) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、e) ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、およびそれらの組み合わせから選ばれるポリマー;
- セルロース誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルセルロース(EC)、およびそれらの組み合わせから選ばれる;
- 必要に応じて、可塑剤;好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ;より好ましくはグリセロール;
- 必要に応じて着色剤、好ましくはTiO
2;
を含む、
ii)必要に応じて、微粉化マクロライドを液体媒体中に分散させて微粉化マクロライド分散物を得ること、および/または該微粉化マクロライドを有機溶媒中に溶解して微粉化マクロライド溶液を得ること;
iii)微粉化マクロライド、必要に応じて微粉化マクロライド分散物または微粉化マクロライド溶液、をポリマー混合物と混合して粘膜付着性層組成物を得ること;
iv)粘膜付着性層組成物を用いて粘膜付着性層を調製すること;必要に応じて粘膜付着性層組成物を表面上、好ましくはプロセスライナー上に、例えばコーティング、加熱溶融押出、および/または成型によってコーティングすることによる;
v)必要に応じて、該粘膜付着性層を乾燥し、それによって該粘膜付着性層を含む粘膜付着性フィルムを得ること
を含む、粘膜付着性フィルムを調製する方法。
【請求項17】
バッキング層を調製することをさらに含み、
a)バッキング層ポリマー混合物;必要に応じて可塑剤、好ましくはグリセロールを含む;必要に応じて水不溶性ポリマーおよび/またはセルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、好ましくは水不溶性セルロース誘導体、より好ましくはエチルセルロースを含む;を提供すること;
b)バッキング層ポリマー混合物を用いて、必要に応じて該粘膜付着性層の表面上に、例えば該ポリマー混合物を該粘膜付着性層の表面上にコーティングすることによって、バッキング層を調製すること;
c)必要に応じて、バッキング層を乾燥すること
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
中間層を調製することをさらに含み、
1)中間層ポリマー混合物;必要に応じて可塑剤、好ましくはグリセロール、およびポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む;を提供すること;
2)ポリマー混合物を用いて、必要に応じて該粘膜付着性層の表面上に、例えば該ポリマー混合物を該粘膜付着性層の表面上にコーティングすることによって、中間層を調製すること;
3)必要に応じて、中間層を乾燥すること
を含む、請求項16または17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層、好ましくは粘膜付着性頬側層に関する。さらに、本発明は、非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層を含み、およびさらにバッキング層を含む粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルムに関する。本発明はまた、粘膜付着性層、バッキング層、および中間層を含む粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルムに関する。本発明はさらに、医薬としての使用のためおよび移植拒絶反応の予防および/または治療における使用のための粘膜付着性層または粘膜付着性フィルムに関する。さらに、本発明は、粘膜付着性フィルムを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
活性剤の乏しい水溶性は、製剤処方の開発における課題である。実際、活性薬剤成分の大部分は低い水溶性を示す。治療効果を惹起するため、活性剤は十分な濃度で溶解しそして血流に到達しなければならない。従って、マクロライドなどの低い水溶性を有する活性剤は、典型的には乏しいバイオアベイラビリティを有し、すなわち投与した活性剤の少ない割合しか摂取後に血流に到達しない。薬物の低いバイオアベイラビリティは、消化管における不完全な吸収および/または消化管における不完全な代謝を反映する。タクロリムスなどのマクロライドの吸収の速度および程度は、食物の存在下でさえ低下し得る。
【0003】
狭い治療指数を有するタクロリムスなどのマクロライドは、このような乏しい溶解性のために乏しい経口バイオアベイラビリティを示し、そしてさらに薬物動態パラメーターの高い個人間および個人内変動を示す。従って、患者に投与される用量は、注意深くモニターされなければならない。マクロライドタクロリムスの患者特有の投薬(mg/kg体重/日)のせいで、利用可能なカプセル製剤はしばしば開けられ、活性成分は溶液にされ、そして次いで患者に適用される;このようなプロセスは「調剤」と呼ばれる。調剤は、医薬製品の高い品質要求を満足せず、そして間違った投薬のリスクを増大させることによって薬物の安全性を危うくしさえし得る。さらに、薬物配合は、薬物の安定性の低下または調製した溶液の微生物汚染を生じ得る。
【0004】
頬粘膜を介する薬物送達は、体循環への直接アクセスを提供しかつ肝臓の初回通過代謝を迂回する投与経路を表す。頬側薬物送達適用は、頬粘膜を通った浸透要求および体内薬物吸収のせいで、適切な水溶性を有する薬物を要求する。粘膜付着性頬側フィルムは、マクロライドタクロリムスを提供するための治療系として提案されている。タクロリムスは低い溶解性および高い浸透性を有するBCSクラスII薬物として分類され、そして126℃の高い融点を示す。タクロリムスは狭い治療指標の薬物であるという事実のせいで、用量または曝露の小さな変化が治療の失敗または毒性を生じ得るので、より厳しい生物学的同等性基準が一般的なタクロリムス製品について要求される。EP 3 662 894 A1は、タクロリムスを含むナノ粒子およびこのようなナノ粒子を含む粘膜付着性頬側フィルムに関する。このような頬側フィルムの製造は、タクロリムスナノ粒子の調製を必要とする。マクロライドを患者に効果的に送達することを可能にする粘膜付着性頬側フィルムの必要性が残る。特に、マクロライドの十分な血中濃度を達成することを可能にするマクロライドの改良された製剤の必要性が残る。さらに、タクロリムスを含む頬側フィルムを調製する効率的な方法の必要性が残る。
【0005】
従って、増大した効能および/または強化されたバイオアベイラビリティを有するマクロライドの製剤を提供する必要性が残る。特に、マクロライドの十分な用量を患者に効率的に投与することを可能にする製剤が必要とされる。さらに、マクロライドを投与するための投与形態などの改良された手段、例えばマクロライドなどの活性剤の効率的な投与を可能にする治療系の必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
以下に、本発明の構成要素が記載される。これらの構成要素は、特定の実施態様とともに挙げられるが、しかし、それらは任意の方法および任意の数で組み合わされてさらなる実施態様を作り出し得ることが理解されるべきである。様々に記載された実施例および好適な実施態様は、本発明を明確に記載された実施態様のみに限定すると解釈されるべきではない。この記載は、2つ以上の明確に記載された実施態様を組み合わせる、または1つ以上の明確に記載された実施態様を任意の数の開示されたおよび/または好適な構成要素と組み合わせる実施態様を支持しかつ包含すると理解されるべきである。さらに、この出願に記載された全ての構成要素の任意の変更および組み合わせは、文脈がそうでないと指示しない限り、本願の記載によって開示されていると見なされるべきである。
【0007】
第1の局面において、本発明は非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層、好ましくは粘膜付着性頬側層に関する。
【0008】
1つの実施態様において、非ナノ粒子マクロライドはマクロライド免疫抑制剤、マクロライド抗生物質、およびマクロライド抗真菌剤から選ばれ;
ここで、好ましくは、
- マクロライド免疫抑制剤はタクロリムス、シロリムス、エベロリムス、およびピメクロリムスから選ばれ;
- マクロライド抗生物質はエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、テリスロマイシン、タイロシン、およびフィダキソマイシンから選ばれ;および/または
- マクロライド抗真菌剤はポリエン、特にナイスタチン、ナタマイシン、およびアムホテリシンBから選ばれ、
ここで、より好ましくは、該非ナノ粒子マクロライドは非ナノ粒子タクロリムスまたはシロリムス、さらにより好ましくは非ナノ粒子タクロリムスである。
【0009】
1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドは、微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライドの形態で、および/または分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在する。
【0010】
1つの実施態様において、該微粉化マクロライドは1~100 μm、好ましくは1.5~50 μm、より好ましくは2~25 μmの平均粒径を有する。
【0011】
1つの実施態様において、粘膜付着性層は
- 粘膜付着性ポリマー、好ましくはa) 両親媒性ポリマーおよび親水性ポリマー、b) ポリ(メタクリレート)、c) 架橋ポリアクリル酸ポリマー、d) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、e) ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、およびそれらの組み合わせから選ばれるポリマー;
を含み、
ここで、好ましくは、
両親媒性ポリマーはポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、ポリオキシルひまし油およびD-α-トコフェロール-ポリエチレングリコール-スクシネート(TPGS)から選ばれ、および/または
ポリ(メタクリレート)は、中性のプロトン化可能なポリ(メタクリレート)およびカチオン性のポリ(メタクリレート)から選ばれ、好ましくはジアルキルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、およびトリアルキルアンモニオエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、特にジメチルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、およびトリメチルアンモニオエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマーから選ばれ;
およびここで粘膜付着性層は:
- セルロース誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルセルロース(EC)、およびそれらの組み合わせから選ばれる;
- 可塑剤;好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれる;より好ましくはグリセロール;
- 必要に応じて着色剤、好ましくはTiO2;
- および非ナノ粒子マクロライド
をさらに含む。
【0012】
1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドは分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在し;
および該粘膜付着性ポリマーおよび/または該セルロース誘導体は有機溶媒中に可溶なポリマーである。
【0013】
1つの実施態様において、粘膜付着性層は
a)粘膜付着性ポリマー、好ましくは両親媒性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC);カルボキシメチルセルロース(CMC);可塑剤、好ましくはグリセロール;および必要に応じて着色剤、好ましくはTiO2;
好ましくは10 wt% - 30 wt%の粘膜付着性ポリマー; 25 wt% - 35 wt%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC); 10 wt% - 25 wt%のカルボキシメチルセルロース(CMC); 10 wt% - 16 wt%の該可塑剤;および必要に応じて1 wt% - 4 wt%の該着色剤;または
b)粘膜付着性ポリマー、好ましくは架橋ポリアクリル酸ポリマーおよびメチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーから選ばれる;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC); エチルセルロース(EC);可塑剤、好ましくはグリセロール;および必要に応じて着色剤、好ましくはTiO2;
好ましくは2 wt% - 17 wt%の粘膜付着性ポリマー; 30 wt% - 70 wt%のヒドロキシプロピルセルロース(HPC); 5 wt% - 40 wt%の該エチルセルロース(EC); 3 wt% - 20 wt%の該可塑剤;および必要に応じて1 wt% - 5 wt%の該着色剤
を含む。
【0014】
1つの実施態様において、該マクロライドは、少なくとも2 wt%、好ましくは少なくとも3 wt%、例えば3.2 wt%の濃度で;および/または1 cm2の該粘膜付着性層に関して約0.01 mg~約10 mgの範囲の量で、好ましくは1 cm2の該粘膜付着性層に関して約0.1 mg~約5 mgの範囲、より好ましくは1 cm2の該粘膜付着性層に関して約1.5 mg~約3.5 mgの範囲の量で該粘膜付着性層中に存在する。
【0015】
さらなる局面において、本発明は、非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性層、好ましくは上記で定義した粘膜付着性層を含み;およびバッキング層、好ましくはマクロライドに対して不浸透性のおよび/または水に対して不浸透性のバッキング層をさらに含む粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルムに関する。
【0016】
1つの実施態様において、バッキング層は、可塑剤、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ、より好ましくはグリセロールである可塑剤を含み;および/または水不溶性ポリマーおよび/またはセルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、好ましくは水不溶性セルロース誘導体、より好ましくはエチルセルロースを含む。
【0017】
1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは、粘膜付着性層とバッキング層との間に配置された中間層をさらに含み;
ここで、好ましくは、該中間層は粘膜付着性層とバッキング層との間の接着を容易にし;
ここで、必要に応じて、該中間層は、可塑剤、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ、より好ましくはグリセロールである可塑剤;およびポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0018】
1つの実施態様において、該粘膜付着性層は、70 g/m2~180 g/m2の範囲、好ましくは100 g/m2~150 g/m2の範囲の面積重量を有し;および/または
該バッキング層は、40 g/m2~100 g/m2の範囲、好ましくは40 g/m2~60 g/m2の範囲、例えば50 g/m2の面積重量を有し;および/または
該中間層は、存在する場合、40 g/m2~100 g/m2の範囲、好ましくは40 g/m2~70 g/m2の範囲、例えば60 g/m2の面積重量を有する。
【0019】
1つの実施態様において、該粘膜付着性層および/またはバッキング層は、着色剤を含み;
ここで、好ましくは、該粘膜付着性層および該バッキング層はそれぞれ着色剤を含み、ここで該粘膜付着性層は第1の着色剤、例えばTiO2を含み、および該バッキング層は第2の着色剤、例えばブリリアントブルーを含み、ここで該第1の着色剤および該第2の着色剤は互いに異なる。
【0020】
1つの実施態様において、粘膜付着性層は<5 wt%、好ましくは<3 wt%、より好ましくは<2 wt%の含水量を有する。
【0021】
1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドおよび/または該粘膜付着性層は上記で定義した通りである。
【0022】
さらなる局面において、本発明は粘膜付着性層、バッキング層、および中間層を含む、粘膜付着性フィルム、好ましくは粘膜付着性頬側フィルムに関し、
ここで該中間層は、粘膜付着性層とバッキング層との間に配置され、およびここで該粘膜付着性層はマクロライド、好ましくはタクロリムスを含み;
ここで、好ましくは、該中間層は粘膜付着性層とバッキング層との間の接着を容易にし;
ここで、必要に応じて、該中間層は、可塑剤、好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ、より好ましくはグリセロールである可塑剤を含み;
ここで、必要に応じて、該中間層は、ポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む。
【0023】
1つの実施態様において、該粘膜付着性層、該バッキング層、および/または該中間層は上記で定義した通りである。
【0024】
さらなる局面において、本発明は、医薬としての使用のための、上記で定義した通りの粘膜付着性層、または上記で定義した通りの粘膜付着性フィルムに関する。
【0025】
さらなる局面において、本発明は、移植拒絶反応、好ましくは肝臓、腎臓または心臓同種移植拒絶反応などの固形臓器移植拒絶反応の予防および/または治療における使用のための、上記で定義した通りの粘膜付着性層、または上記で定義した通りの粘膜付着性フィルムに関し;
ここで、必要に応じて、該使用は、患者の体腔中、好ましくは患者の頬側口腔中での該フィルムまたは層の取り付けを含む。
【0026】
さらなる局面において、本発明は
i)微粉化マクロライド、好ましくは非ナノ粒子微粉化マクロライド;およびポリマー混合物を提供すること、ここで該ポリマー混合物は
- 粘膜付着性ポリマー、好ましくはa) 両親媒性ポリマーおよび親水性ポリマー、b) ポリ(メタクリレート)、c) 架橋ポリアクリル酸ポリマー、d) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、e) ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、およびそれらの組み合わせから選ばれるポリマー;
- セルロース誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルセルロース(EC)、およびそれらの組み合わせから選ばれる;
- 必要に応じて、可塑剤;好ましくはグリセロール、ポリエチレングリコール、例えばPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれ;より好ましくはグリセロール;
- 必要に応じて着色剤、好ましくはTiO2;
を含み、
ii)必要に応じて、微粉化マクロライドを液体媒体中に分散させて微粉化マクロライド分散物を得ること、および/または該微粉化マクロライドを有機溶媒中に溶解して微粉化マクロライド溶液を得ること;
iii)微粉化マクロライド、必要に応じて微粉化マクロライド分散物または微粉化マクロライド溶液、をポリマー混合物と混合して粘膜付着性層組成物を得ること;
iv)粘膜付着性層組成物を用いて粘膜付着性層を調製すること;必要に応じて粘膜付着性層組成物を表面上、好ましくはプロセスライナー上に、例えばコーティング、加熱溶融押出、および/または鋳造によってコーティングすることによる;
v)必要に応じて、該粘膜付着性層を乾燥し、それによって該粘膜付着性層を含む粘膜付着性フィルムを得ること
を含む、粘膜付着性フィルムを調製する方法に関する。
【0027】
1つの実施態様において、該方法は、バッキング層を調製することをさらに含み、
a)バッキング層ポリマー混合物;必要に応じて可塑剤、好ましくはグリセロール、および水不溶性ポリマー、好ましくは水不溶性セルロース誘導体、より好ましくはエチルセルロースを含む;を提供すること;
b)バッキング層ポリマー混合物を用いて、必要に応じて該粘膜付着性層の表面上に、例えば該ポリマー混合物を該粘膜付着性層の表面上にコーティングすることによって、バッキング層を調製すること;
c)必要に応じて、バッキング層を乾燥すること
を含む。
【0028】
1つの実施態様において、該方法は、中間層を調製することをさらに含み、
1)中間層ポリマー混合物;必要に応じて可塑剤、好ましくはグリセロール、およびポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、より好ましくはビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む;を提供すること;
2)ポリマー混合物を用いて、必要に応じて該粘膜付着性層の表面上に、例えば該ポリマー混合物を該粘膜付着性層の表面上にコーティングすることによって、中間層を調製すること;
3)必要に応じて、中間層を乾燥すること
を含む。
【0029】
1つの実施態様において、該方法は、該粘膜付着性層と該バッキング層とを、必要に応じて圧縮および/または積層、例えば熱積層によって、接合する工程をさらに含む。
【0030】
1つの実施態様において、該方法は、該粘膜付着性層、該中間層、および該バッキング層を、必要に応じて圧縮および/または積層、例えば熱積層によって、接合する工程をさらに含む。
【0031】
1つの実施態様において、該マクロライド、該非ナノ粒子微粉化マクロライド、該粘膜付着性ポリマー、該可塑剤、粘膜付着性層、該バッキング層、および/または該中間層は上記で定義した通りである。
【0032】
さらなる局面において、本発明は疾患または障害を予防および/または治療する方法に関し、上記で定義した通りの粘膜付着性層、または上記で定義した通りの粘膜付着性フィルムを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0033】
1つの実施態様において、該投与は、患者の体腔中、好ましくは患者の頬側口腔中での該フィルムまたは層の取り付けを含む。
【0034】
1つの実施態様において、該粘膜付着性層または粘膜付着性フィルムは、治療有効量の非ナノ粒子マクロライドを含む。
【0035】
1つの実施態様において、粘膜付着性層、粘膜付着性フィルム、および非ナノ粒子マクロライドは上記で定義した通りである。
【0036】
さらなる局面において、本発明は、移植拒絶反応、好ましくは肝臓、腎臓または心臓同種移植拒絶反応などの固形臓器移植拒絶反応を予防および/または治療する方法に関し、上記で定義した通りの粘膜付着性層、または上記で定義した通りの粘膜付着性フィルムを、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0037】
1つの実施態様において、該投与は、患者の体腔中、好ましくは患者の頬側口腔中での該フィルムまたは層の取り付けを含む。
【0038】
1つの実施態様において、該粘膜付着性層または粘膜付着性フィルムは、治療有効量の非ナノ粒子マクロライドを含む。
【0039】
1つの実施態様において、粘膜付着性層、粘膜付着性フィルム、および非ナノ粒子マクロライドは上記で定義した通りである。
【0040】
さらなる局面において、本発明は、好ましくは移植拒絶反応の予防および/または治療のための、粘膜付着性層および/または粘膜付着性フィルムの製造のための非ナノ粒子マクロライドの使用に関する。
【0041】
1つの実施態様において、粘膜付着性層、粘膜付着性フィルム、非ナノ粒子マクロライド、および/または移植拒絶反応の予防および/または治療は、上記で定義した通りである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図面の簡単な説明
本発明は、以下の図面を参照することによってここでさらに記載される。
以下の図面の記載に述べた全ての方法は、実施例に詳細に記載した通りに行った。
【
図1】
図1は、本発明の粘膜付着性層および/または粘膜付着性フィルムを製造する方法の略図を示す。
【
図2】
図2は、微粉化結晶性マクロライド(MFK10)を含むフィルムおよび同じ組成を有するがSoluplus(登録商標)を含まないフィルムの放出および一方向放出を示す。
【
図3】
図3は、MFK10 (3)、TiO
2 (2)および純粋な結晶性タクロリムス (1)のXRPDスペクトルの重ね合わせを示す。
【
図4】
図4は、粘膜付着性フィルムの投与後のインビボマクロライド血中レベルを示す。
【
図5】
図5は、粘膜付着性層、中間層(粘着層)、およびバッキング層を含む本発明の粘膜付着性フィルムを製造する方法の略図を示す。
【
図6】
図6は、30分の治療の間の、頬粘膜上に付着した微粉化結晶性マクロライド(MFK10)を含むフィルムの写真を示す(示した特定の実験は「T2_No.3_xx min」と指定され、xxはフィルムが頬粘膜に付着した治療の分の数を指定する)。付着および治療の成功もまた、分子溶解された非ナノ粒子マクロライド(FK1)を含むフィルムで観察された。
【
図7】
図7は、フィルムMFK10の治療後および取り外し後の
図6からの動物の粘膜を示す。粘膜の炎症は目に見えない。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
本発明は、マクロライドの適用のため、例えば臓器の移植、特に固形臓器の移植後の移植拒絶反応の予防および/または治療のための粘膜付着性フィルムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、一方向粘膜付着性フィルム、すなわちマクロライドを粘膜に直接放出し、そして体腔、例えば頬側口腔への放出が無視できるフィルムを提供することを目的とする。本発明は、粘膜付着性フィルムを調製する効率的な方法を提供することをさらに目的とする。本発明は、効率的に調製され得る粘膜付着性フィルムを提供することをさらに目的とする。さらに、マクロライドの嚥下を防止する粘膜付着性フィルムを調製することが本発明の目的である。マクロライドの治療血中レベルを達成することを可能にする治療系、特に粘膜付着性フィルムを提供することもまた本発明の目的である。さらに、治療効果の早期発現を可能にする治療系、特に粘膜付着性フィルムを提供することが本発明の目的である。
【0044】
タクロリムスなどのマクロライドは非常に低い水溶性を有するが、本発明の層およびフィルムは、驚くことに治療マクロライド血中濃度を達成する。予想外に、マクロライドの臨床的に関連する血中レベルは、本発明の層およびフィルムを用いて達成される。さらに、驚くことに、結晶性または分子溶解された非ナノ粒子マクロライドを含む本発明の層およびフィルムは、分解に対して非常に安定である。
【0045】
本明細書中で使用される用語「粘膜付着性層」は、粘膜に付着し、および/または粘膜、例えば口腔および/または頬粘膜に付着するよう構成された層に関する。1つの実施態様において、粘膜付着性層は、粘膜付着性ポリマーおよび/またはセルロース誘導体を含み、そして非ナノ粒子マクロライドをさらに含む。1つの実施態様において、粘膜付着性層は非ナノ粒子マクロライド、好ましくは微粉化結晶性非ナノ粒子マクロライドおよび/または分子溶解された非ナノ粒子マクロライドを含む。1つの実施態様において、粘膜付着性層は、必要に応じて界面活性剤、例えばポリソルベートを含む。1つの実施態様において、粘膜付着性層は水性液体中に膨潤可能であるが、水性液体中に不溶であり、および/または水性液体中への無視できる溶解性を有する。不溶性または低い溶解性は、粘膜上への付着時間を増加させ、そしてそれゆえ活性成分が長時間にわたって、例えば少なくとも60分間放出されることを可能にする。本明細書中で使用される用語「粘膜付着性頬側層」または「MBF」は、頬適用のために構成された粘膜付着性層に関する。
【0046】
本明細書中で使用される用語「マクロライド」は、大きい大環状ラクトン環、例えば14-、15-、または16-員ラクトン環からなり、これに1つ以上のデオキシ糖、通常クラジノースおよびデソサミンが結合され得る天然物のクラス; 例えばタクロリムス、シロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、テリスロマイシン、タイロシン、およびフィダキソマイシン、ナイスタチン、ナタマイシン、およびアムホテリシンBに関する。1つの実施態様において、マクロライドはマクロライド免疫抑制剤、マクロライド抗生物質、およびマクロライド抗真菌剤から選ばれる。1つの実施態様において、マクロライド免疫抑制剤はタクロリムス、シロリムス、エベロリムス、およびピメクロリムスから選ばれる。1つの実施態様において、マクロライド抗生物質はエリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ロキシスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン、テリスロマイシン、タイロシン、およびフィダキソマイシンから選ばれる。1つの実施態様において、マクロライド抗真菌剤はポリエン、特にナイスタチン、ナタマイシン、およびアムホテリシンBから選ばれる。好適な実施態様において、マクロライドはタクロリムス、シロリムス、エベロリムス、およびピメクロリムス、好ましくはタクロリムスおよびシロリムスから選ばれ、より好ましくはタクロリムスである。1つの実施態様において、用語「活性剤」、「活性成分」、および「API」はマクロライドに関する。
【0047】
本明細書中で使用される用語「非ナノ粒子マクロライド」は、ナノ粒子の形態ではないマクロライドに関する。1つの実施態様において、非ナノ粒子マクロライドは、ナノ粒子として処方されない、特に1 nm~1000ナノメートルの範囲のサイズを有するナノ粒子として処方されないマクロライドに関する。1つの実施態様において、非ナノ粒子マクロライドは、分子溶解されたマクロライドおよび/または微粉化結晶性マクロライドとして処方されるマクロライドである。1つの実施態様において、分子溶解されたマクロライドは、ナノ粒子の形態の分子溶解されたマクロライドではなく、例えばミセルまたはリポソーム中に存在する分子溶解されたマクロライドではない。1つの実施態様において、分子溶解されたマクロライドは、分子溶解されたマクロライドを含むナノ粒子に関しない。1つの実施態様において、分子溶解されたマクロライドは、固溶体の形態に処方され、例えばポリマーマトリクス中に埋め込まれおよび/または溶解される。1つの実施態様において、微粉化結晶性マクロライドはナノ粒子の形態ではなく、例えば微粉化結晶性マクロライドを含むナノ粒子の形態ではない。1つの実施態様において、微粉化結晶性マクロライドは>1000 nmの平均粒径を有する。1つの実施態様において、微粉化結晶性マクロライドは微粒子の形態であり、好ましくは1 μm 1000 μmの範囲、好ましくは>1000 nmの平均粒径を有する。1つの実施態様において、本発明の粘膜付着性層および/または粘膜付着性フィルムに含まれる非ナノ粒子マクロライドは、ナノ粒子の形態ではなく、および/またはナノ粒子に含まれない。1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドは、微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライドの形態、分子溶解された非ナノ粒子形態、および/または結晶性マクロライドの形態で該層中に存在し;好ましくは該非ナノ粒子マクロライドは、微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライドの形態、および/または分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在する。1つの実施態様において、微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライドの形態、および/または分子溶解された非ナノ粒子形態のマクロライドを含む粘膜付着性層は、結晶性形態のマクロライドをさらに含む。
【0048】
本明細書中で使用される用語「平均粒径」は、粒子、例えば微粉化マクロライドの(微)粒子の分析したバッチの平均直径に関する。例えば、平均粒径は粒子のバッチの平均直径であり得、ここで、粒子が球状ではない場合、各粒子の最長延長線が直径と見なされる。1つの実施態様において、平均粒径は1~100 μm、好ましくは1.5~50 μm、より好ましくは2~25 μmの範囲である。1つの実施態様において、例えば微粉化マクロライドの平均粒径は、当業者に公知の任意の技術、例えばレーザー回折分析または動的光散乱、好ましくはレーザー回折分析を用いて測定される。平均粒径は、適切なプロセスによって、例えば動的光散乱を用いて決定される分析した粒子の平均直径として定義される。1つの実施態様において、微粉化マクロライドの平均粒径は2 μm~25 μmである。1つの実施態様において、微粉化マクロライドは粒径分布D10 2 μm; D50 10 μm;およびD90 25 μmを有する。1つの実施態様において、全ての粒子の10%は粒径<2 μmを有し、全ての粒子の50%は粒径<10 μmを有し、および全ての粒子の90%は粒径<10 μmを有した。1つの実施態様において、全ての粒子は粒径>1 μmを有した。1つの実施態様において、微粉化マクロライドはナノ粒子の形態ではない。1つの実施態様において、平均粒径はD50である。1つの実施態様において、微粉化マクロライドの平均粒径は>1 μmであり、好ましくは、粒子のどれもナノ粒子ではないことが理解される。1つの実施態様において、微粉化マクロライドの粒径は>1 μmである。1つの実施態様において、各微粉化マクロライド粒子の粒径は>1 μmである。本明細書中で使用される用語「微粉化」は、マイクロメートルの範囲および/またはマイクロメートルの範囲に、好ましくは微粉化によって縮小された平均粒子直径に関する。1つの実施態様において、「微粉化結晶性マクロライド」は、マイクロメートルの範囲の平均粒子直径を有する結晶性マクロライドに関する。
【0049】
1つの実施態様において、本明細書中で使用される用語「粘膜付着性フィルム」は、粘膜に付着するおよび/または粘膜、例えば口腔および/または頬粘膜へ付着するよう構成されたフィルムに関する。1つの実施態様において、用語「フィルム」、「粘膜付着性フィルム」、「粘膜付着性頬側フィルム」、および「MBF」は、互いに交換可能に用いられる。1つの実施態様において、「粘膜付着性頬側フィルム」または「MBF」に言及する場合、このような略語は粘膜付着性頬側フィルムに関するだけでなく、頬適用以外の他の適用のための粘膜付着性フィルムにも関する。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは、全身的効果または局所的効果、好ましくは全身的効果を得るために体腔、好ましくは頬側口腔に適用されることが意図された適切な材料の単一または複数の層を含む固形製剤である;および/または粘膜付着性フィルムは、マクロライドを一定期間にわたって送達することによって全身的効果または局所的効果のいずれかを得るために体腔、好ましくは口腔に適用されるよう構成された柔軟性単回投与製剤であり、その後、それは次いで取り外される。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは口腔粘膜パッチである。
【0050】
1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは粘膜付着性層および必要に応じてバッキング層を含む。好適な実施態様において、粘膜付着性フィルムは粘膜付着性層およびバッキング層を含む。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは粘膜付着性層;バッキング層、好ましくは不浸透性のバッキング層;および必要に応じて中間層を含む。1つの実施態様において、粘膜付着性層はポリマーマトリクス中のマクロライドを含み、そしてマクロライドの頬粘膜との長期の接触を提供する。1つの実施態様において、フィルムは少なくとも2つの層、例えば互いに積層された2つの層;好ましくは活性成分およびバッキング層を含む粘膜付着性層を含む。1つの実施態様において、マクロライドの口腔への放出を防止するため、粘膜付着性層の裏側はバッキング層、好ましくは水不溶性および/またはマクロライド不浸透性のバッキング層でシールされている。1つの実施態様において、粘膜付着性層の裏側は口腔に面するように構成された側である。1つの実施態様において、2つの層は中間層、好ましくは粘着層を介して互いに取り付けられている。1つの実施態様において、粘膜付着性層は患者に、例えば、粘膜付着性層を粘膜付着性フィルム、口腔粘膜パッチ、または任意の他の適用システムに組み込むことよって投与されるように構成されている。
【0051】
1つの実施態様において、粘膜付着性層および/またはフィルムの付着特性は、少なくとも30分間、例えば少なくとも60分間の適用に十分であり、すなわち層および/またはフィルムは粘膜に少なくとも30分間、例えば少なくとも60分間付着する。1つの実施態様において、エチルセルロースは粘膜付着性層および/またはフィルムに含まれ、そしてその低い水溶性により、少なくとも30分間、例えば少なくとも60分間の適用時間を可能にする。1つの実施態様において、バッキング層はエチルセルロースを含む。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは、薬物放出後に粘膜、例えば頬粘膜から取り外されなければならない不溶性フィルムである。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは患者に少なくとも30分間、好ましくは30~75分間の期間適用される。
【0052】
1つの実施態様において、粘膜付着性層および/または粘膜付着性フィルムは0.5 cm2~10 cm2、好ましくは2 cm2~8 cm2の面積を有する。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムの面積重量は約20 g/m2~約300 g/m2、好ましくは約50 g/m2~約260 g/m2である。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは約20 μm~約1000 μm、好ましくは約50 μm~約500 μm、より好ましくは約50 μm~約300 μm、例えば約150 μm~約260 μmのフィルム厚さを有する。
【0053】
1つの実施態様において、粘着層とバッキング層とを区別することができるために、層の少なくとも1つは着色剤を含み、例えば白色顔料は粘膜付着性層に含まれ、そして青色色素はバッキング層に含まれる。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは、クエン酸、ペパーミント油、サッカリンナトリウム、および柑橘類香味料から選ばれる剤などの香味剤および/または甘味剤をさらに含む。1つの実施態様において、このような香味剤および/または甘味剤はマクロライドまたは他のMBF成分の不快な味を隠す。1つの実施態様において、少なくとも1つの層は、安定化剤、例えばキレート剤、着色剤、香味料、甘味料、矯味剤、乳化剤、増強剤、pH調整剤、保湿剤、保存剤および/または抗酸化剤を含む群から選ばれる少なくとも1つの補助剤をさらに含む。1つの実施態様において、少なくとも1つの層は、キレート剤、好ましくはEDTAを含む。1つの実施態様において、「層」に言及する場合、粘膜付着性層、中間層、および/またはバッキング層が意味される。
【0054】
1つの実施態様において、フィルムの用量強度はフィルムのサイズおよび/または面積によって決定され、ここで、必要に応じて、フィルム面積当たりの定量的組成は一定である。1つの実施態様において、フィルムは10 mgまでのマクロライドの用量を含む。1つの実施態様において、マクロライドの量はHPLCを用いて測定される。1つの実施態様において、HPLCを用いてマクロライドが定量される。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムは、成人患者または小児患者、例えば約18歳までの年齢の子供に投与され、および/または投与されるように構成される。
【0055】
1つの実施態様において、該粘膜付着性層および/またはバッキング層は着色剤を含む。1つの実施態様において、該粘膜付着性層および該バッキング層はそれぞれ着色剤を含み、ここで該粘膜付着性層は第1の着色剤、例えばTiO2を含み、および該バッキング層は第2の着色剤、例えばブリリアントブルーを含み、ここで該第1の着色剤および該第2の着色剤は互いに異なる。1つの実施態様において、粘膜付着性層および/または粘膜付着性フィルムは<5 wt%、好ましくは<3 wt%、より好ましくは<2 wt%の含水量を有する。
【0056】
本明細書中で使用される用語「可塑剤」は、当業者に公知の任意の可塑剤、好ましくはインビボ適用に適切な可塑剤に関する。1つの実施態様において、可塑剤、例えば粘膜付着性層、中間層、および/またはバッキング層に含まれる可塑剤は、グリセロール、ポリ(エチレングリコール)、好ましくはPEG 200またはPEG 400などの低分子量ポリ(エチレングリコール)、プロピレングリコールソルビトール、トリアセチン、およびクエン酸トリブチルから選ばれる。1つの実施態様において、低分子量ポリ(エチレングリコール)は、≦600ダルトン、好ましくは≦450ダルトン、例えば420ダルトンの分子量を有する。
【0057】
本明細書中で使用される用語「バッキング層」は、粘膜付着性フィルムの層に関する。1つの実施態様において、バッキング層は粘膜付着性フィルム中の粘膜付着性層の裏側を覆う。裏側は、好ましくは粘膜付着性層またはフィルムの体腔、好ましくは口腔に面するように構成された側、すなわち粘膜とは反対側を向いている側である。1つの実施態様において、バッキング層は、マクロライドに対して不浸透性、および/または水に対して不浸透性である。1つの実施態様において、バッキング層は粘膜付着性層から体腔への、例えば口腔へのマクロライド放出を防止する。1つの実施態様において、バッキング層は粘膜付着性層の裏側を覆い、そして必要に応じて粘膜付着性層の側面領域をさらに覆う。1つの実施態様において、バッキング層はシール層である。1つの実施態様において、バッキング層、好ましくは不浸透性のバッキング層は、マクロライドの体腔、好ましくは口腔への望ましくない放出を防止する。1つの実施態様において、バッキング層は、マクロライドの粘膜、好ましくは頬粘膜への一方向放出を確保するように構成される。1つの実施態様において、バッキング層はマクロライドの頬側口腔への放出を防止する。1つの実施態様において、バッキング層は水および/または唾液などの水性液体に不溶である。1つの実施態様において、バッキング層は、30分~75分、好ましくは少なくとも60分の期間、水および/または唾液などの水性液体に溶解しない。1つの実施態様において、バッキング層および/またはバッキング層ポリマー混合物は、水不溶性ポリマーおよび/またはセルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース、好ましくは水不溶性セルロース誘導体、より好ましくはエチルセルロースを含み、そしてそれゆえ口腔中でのバッキング層の溶解が防止される。1つの実施態様において、バッキング層および/またはバッキング層ポリマー混合物は、水不溶性ポリマーおよび/または低い水溶性を有するポリマー、好ましくはエチルセルロースなどの水不溶性ポリマーを含む。1つの実施態様において、バッキング層ポリマー混合物は少なくとも1つの成分、好ましくはバッキング層の全ての成分を含む。1つの実施態様において、バッキング層は有機溶媒ベース、例えばエタノールベースであり、および/または粘膜付着性層は水ベースである。1つの実施態様において、バッキング層は、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルを含むポリマーを含む。1つの実施態様において、バッキング層は着色剤、例えばブリリアントブルーを含む。1つの実施態様において、バッキング層は可塑剤、例えばトリアセチンを含む。
【0058】
本明細書中で使用される用語「水不溶性ポリマー」は、水に不溶であるポリマー、例えばエチルセルロースおよびポリ(メタクリル酸メチル)に関する。本明細書中で使用される用語「低い水溶性を有するポリマー」は、無視できるおよび/または低い水溶性を有するポリマー、例えばヒドロキシエチルセルロースに関する。1つの実施態様において、「水不溶性ポリマー」および「低い水溶性を有するポリマー」は、その体腔中、好ましくは頬側口腔中での適用の間、少なくとも30分間粘膜付着性フィルムの溶解を防止するポリマーである。1つの実施態様において、水不溶性ポリマーおよび/または低い水溶性を有するポリマーは、好ましくはフィルムの溶解なしで、少なくとも15分、好ましくは約30分~約75分の範囲のフィルム適用時間が提供されるように選ばれる。1つの実施態様において、水不溶性ポリマーはエチルセルロースおよび/またはポリ(メタクリル酸メチル)である。1つの実施態様において、バッキング層に含まれるセルロース誘導体はヒドロキシエチルセルロースおよび/またはエチルセルロースである。1つの実施態様において、バッキング層は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも60分、水性液体に不溶であるように構成される。1つの実施態様において、バッキング層は、少なくとも30分、好ましくは少なくとも60分、マクロライドに対して不浸透性であるように構成される;好ましくは、少なくとも30分、好ましくは少なくとも60分、唾液などの水性液体中で、マクロライドに対して不浸透性であるように構成される。1つの実施態様において、バッキング層および/またはバッキング層ポリマー混合物は、少なくとも30分、水性液体に不溶であるポリマーを含む。1つの実施態様において、バッキング層はエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、および/またはポリ(メタクリル酸メチル)を含み、そして必要に応じて可塑剤をさらに含む。1つの実施態様において、バッキング層はエチルセルロースおよび/またはポリ(メタクリル酸メチル)を含み、そして必要に応じて可塑剤をさらに含む。
【0059】
本明細書中で使用される用語「中間層」は、粘膜付着性フィルムの層、好ましくは粘膜付着性層とバッキング層との間に配置された層に関する。1つの実施態様において、中間層は粘着層である。1つの実施態様において、中間層は粘膜付着性層とバッキング層との接着を容易にする。1つの実施態様において、中間層はマクロライドのバッキング層への移動を防止する。1つの実施態様において、フィルムは粘膜付着性層とバッキング層との間の中間層を含み、マクロライドのバッキング層への移動を防止する。1つの実施態様において、用語「接着中間層」および「中間層」は互いに交換可能に使用される。1つの実施態様において、粘膜付着性層およびバッキング層は中間層を介して結合される。1つの実施態様において、本発明の方法において、該バッキング層および該中間層を含むフィルムは、層の乾燥後粘膜付着性層と組み合わされ、マクロライドの接着中間層および/またはバッキング層への移動を防止する。1つの実施態様において、本発明のフィルム中への中間層の組み込みにより、フィルムを調製する方法の間、マクロライドのバッキング層中への溶解を防止することが可能となる。1つの実施態様において、中間層は、粘膜付着性層上にバッキング層を調製するプロセスの間に、粘膜付着性層中のマクロライドの量が減少すること、および/またはマクロライドが分解することを防止する。1つの実施態様において、中間層は、マクロライドがバッキング層に含まれるエタノールに溶解することを防止する。1つの実施態様において、微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライド、および/または分子溶解された非ナノ粒子形態の非ナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性フィルムは、中間層を含む。1つの実施態様において、中間層はポリマー、必要に応じて粘着性ポリマーを含む。1つの実施態様において、中間層は、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドン;例えばポリ(ビニルピロリドン)、ポリ[(ビニルピロリドン)-コ-(酢酸ビニル)]、例えば6部のポリビニルピロリドンと4部のポリ酢酸ビニルとのコポリマー、およびポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との混合物、例えばポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との8:2混合物から選ばれる、を含むポリマーを含む。1つの実施態様において、中間層は可塑剤、例えばグリセロールを含む。
【0060】
本明細書中で使用される用語「固溶体」は、固体状態の希釈剤またはマトリクス中に分子レベルで溶解した、好ましくはポリマーマトリクス中に分子レベルで溶解したマクロライドに関する。1つの実施態様において、用語「固溶体」は、ポリマーマトリクス中に溶解し、そして必要に応じて埋め込まれたマクロライドに関する。1つの実施態様において、分子溶解された非ナノ粒子形態のマクロライドは、マクロライドの固溶体に関する。1つの実施態様において、用語「固溶体」および「分子溶解された非ナノ粒子形態」は、互いに交換可能に使用される。1つの実施態様において、固溶体は、ポリマーマトリクス中に提供された分子溶解された非ナノ粒子マクロライドであり、好ましくは有機溶媒中に可溶な少なくとも1つのポリマーを含む。1つの実施態様において、分子溶解された非ナノ粒子マクロライドはポリマーマトリクス中に提供され、好ましくは有機溶媒中に可溶な少なくとも1つのポリマーを含む。1つの実施態様において、有機溶媒中に可溶なポリマー、例えばメチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーを用いて、例えば固溶体のための、水を含まない粘膜付着性フィルム製剤の適切な粘膜付着が達成される。1つの実施態様において、分子溶解された非ナノ粒子マクロライドは、マクロライドの固溶体の形態である。1つの実施態様において、有機溶媒中に可溶なポリマーは、a) 両親媒性ポリマーおよび親水性ポリマー、b) ポリ(メタクリレート)、c) 架橋ポリアクリル酸ポリマー、d) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、e) ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、f) セルロース誘導体、およびそれらの組み合わせから選ばれる任意の有機溶媒中に可溶なポリマーである。1つの実施態様において、有機溶媒中に可溶なポリマーは、両親媒性または親水性ポリマー、例えばSoluplus(登録商標);ポリ(メタクリレート)、例えばメタクリル酸コポリマー;セルロース誘導体、好ましくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)またはエチルセルロース(EC)、より好ましくはHPC;架橋ポリアクリル酸ポリマー、例えばCarbopol(登録商標);メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、例えばGantrezTM;および/またはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、例えばKollidon(登録商標)である。1つの実施態様において、マクロライドの固溶体は、HPC;架橋ポリアクリル酸ポリマー、例えばCarbopol(登録商標);メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、例えばGantrezTM;および/またはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、例えばKollidon(登録商標)を含む。1つの実施態様において、固溶体は、HPC;および架橋ポリアクリル酸ポリマー、例えばCarbopol(登録商標)、および/またはメチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、例えばGantrezTMを含む。1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドは、微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライドの形態、および/または分子溶解された非ナノ粒子形態、好ましくは分子溶解されたマクロライドの固溶体で該粘膜付着性層中に存在する。本明細書中で使用される用語「分子溶解された非ナノ粒子形態」は、分子レベルで溶解した、例えばポリマーマトリクス中に分子レベルで溶解したマクロライドに関する。1つの実施態様において、粘膜付着性層は、少なくとも1つの成分、好ましくはa) 両親媒性ポリマーおよび親水性ポリマー、b) ポリ(メタクリレート)、c) 架橋ポリアクリル酸ポリマー、d) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、e) ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、f) セルロース誘導体、およびそれらの組み合わせから選ばれるポリマーを含み;好ましくはa)-e)から選ばれる少なくとも1つの成分を含み、そしてセルロース誘導体をさらに含み;ここで、好ましくは、該層が分子溶解された非ナノ粒子マクロライドを含む場合、該少なくとも1つの成分は、有機溶媒、好ましくはエタノール、アセトン、および/またはイソプロパノール中に可溶なポリマーである。1つの実施態様において、粘膜付着性層は可塑剤を含む。1つの実施態様において、粘膜付着性層は非ナノ粒子微粉化結晶性マクロライド、および/または分子溶解された非ナノ粒子マクロライドを含む。
【0061】
1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドが分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在する場合、粘膜付着性ポリマーおよび/またはセルロース誘導体は、フィルム形成ポリマー、好ましくはエタノールなどの有機溶媒中に可溶なフィルム形成ポリマーである。1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドが分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在する場合、分子溶解された非ナノ粒子形態は有機溶媒に可溶化される。1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドが分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在する場合、セルロース誘導体はHPC、EC、およびそれらの組み合わせから選ばれる。1つの実施態様において、該非ナノ粒子マクロライドが分子溶解された非ナノ粒子形態で該層中に存在する場合、粘膜付着性ポリマーは、両親媒性または親水性ポリマー、例えばSoluplus(登録商標);架橋ポリアクリル酸ポリマー、例えばCarbopol(登録商標);メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、例えばGantrezTM; ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、好ましくはポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、例えばKollidon(登録商標);およびセルロース誘導体、例えばHPC、EC、およびそれらの組み合わせから選ばれる。
【0062】
1つの実施態様において、マクロライドを分子溶解するため、マクロライドは約10 mg/ml~約500 mg/mlの濃度で有機溶媒に溶解される。本明細書中で使用される用語「有機溶媒」は、当業者に公知の任意の有機溶媒に関する。1つの実施態様において、有機溶媒はICHクラス3またはICHクラス2溶媒である。1つの実施態様において、有機溶媒は非毒性および/または揮発性である。1つの実施態様において、有機溶媒は、エタノール、メタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸、アセトニトリル、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸ブチル、クロロホルム、シクロヘキサン、1,1,-ジエトキシプロパン、1,1-ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、2,2-ジメトキシプロパン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、2-エトキシエタノール、酢酸エチル、ギ酸エチル、エチレングリコール(1,2-エタンジオール)、ギ酸、ヘプタン、ヘキサン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、2-メトキシエタノール、2-メチル-1-プロパノール、3-メチル-1-ブタノール、1-メチル-2-ピロリジン、酢酸メチル、メチルt-ブチルエーテル、メチルブチルケトン(buylketon)、メチルシクロヘキサン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルテトラヒドロフラン、n-メチルピロリジン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ペンタン、石油エーテル、酢酸プロピル、ピリジン、スルホラン、t-ブチルアルコール、2,2,4-トリメチルペンタン(i-オクタン)、トルオール、トリクロロ酢酸、トリクロロエチレン、トリフルオロ酢酸、キシロール、およびそれらの組み合わせから選ばれ;好ましくは酢酸、アセトン、アニソール、1-ブタノール、2-ブタノール、酢酸ブチル、tert-ブチルメチルエーテル、DMSO、エタノール、酢酸エチル、エチルエーテル、ギ酸エチル、ギ酸、ヘプタン、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、3-メチル-1-ブタノール、メチルエチルケトン、2-メチル-1-プロパノール、2-メチルテトラヒドロフラン、ペンタン、1-ペンタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、酢酸プロピル、トリメチルアミンから選ばれ;より好ましくはエタノール、アセトン、およびイソプロパノールから選ばれる。1つの実施態様において、本明細書中で使用される用語「微粉化マクロライド溶液」は、微粉化マクロライドの溶液、特に有機溶媒に溶解した微粉化マクロライドの溶液に関する。1つの実施態様において、用語「微粉化マクロライド溶液」および「マクロライド溶液」は互いに交換可能に使用される。
【0063】
本明細書中で使用される用語「粘膜付着性ポリマー」は、粘膜付着を容易にするおよび/または仲介するポリマーに関する。1つの実施態様において、粘膜付着性ポリマーは、a) 両親媒性ポリマーおよび親水性ポリマー、b) ポリ(メタクリレート)、c) 架橋ポリアクリル酸ポリマー、d) メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、e) ポリ(酢酸ビニル)および/またはポリ(ビニルピロリドン)を含むポリマー、および粘膜付着性セルロース誘導体から選ばれる。1つの実施態様において、粘膜付着性ポリマーは、ポリ(アクリル酸)、例えばCarbopol(登録商標)934またはCarbopol(登録商標)971 NF;架橋ポリ(アクリル酸)、例えばポリカルボフィル; アミロペクチン、例えばProlocTM 15; ポリ(メタクリル酸)、例えばEudragit(登録商標)L100またはEudragit(登録商標)S100; ポリ(メタクリレート)、例えばEudragit(登録商標)E100、Eudragit(登録商標)RL、またはEudragit(登録商標)RS; ポリ[(無水マレイン酸)-コ-(ビニルメチルエーテル)]またはその塩、例えばGantrezTM AN 119、GantrezTMAN 139、GantrezTM AN 149、GantrezTM AN 169、またはGantrezTMMS-955;ゼラチン;多糖、例えばアルギネート、キトサン、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ペクチン、またはプルラン; セルロース誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、またはメチルセルロース(MC); ポリ(ビニルピロリドン)、例えばKollidon(登録商標)30LPまたはKollidon(登録商標)90F; ポリ[(ビニルピロリドン)-コ-(酢酸ビニル)]、例えばKollidon(登録商標)VA64;ポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との混合物、例えばKollidon(登録商標)SR; ポリ(ビニルアルコール);およびポリ(酢酸ビニル)から選ばれる。
【0064】
本明細書中で使用される用語「両親媒性ポリマー」は、当業者に公知の、任意の両親媒性ポリマー、好ましくは粘膜付着性両親媒性ポリマーに関する。典型的には、そして両親媒性ポリマーは親水性(極性)部分および疎水性(非極性)部分を有する。1つの実施態様において、両親媒性ポリマーは、ポリビニルカプロラクタム-ポリ酢酸ビニル-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー、例えばSoluplus(登録商標)、ポリオキシルひまし油、およびD-α-トコフェロール-ポリエチレングリコール-スクシネート(TPGS)から選ばれる。
【0065】
1つの実施態様において、親水性ポリマーは極性基または荷電基を含むポリマーである。1つの実施態様において、これらの基は、非イオン性、アニオン性、またはカチオン性および/または両性イオン性である。1つの実施態様において、親水性ポリマーは水に可溶である。例えば、親水性ポリマーは、デンプンおよびデンプン誘導体、デキストラン、セルロースおよびセルロース誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルまたはプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール/ポリビニルアルコールコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシドポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリエチレングリコールコポリマー、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ゼラチン、コラーゲン、アルギネート、ペクチン、プルラン、トラガント、キトサン、アルギン酸、アラビノガラクタン、ガラクトマンナン、寒天、アガロース、カラギーナン、セラック、天然ゴムおよび/またはそれらのコポリマーから選ばれ得る。
【0066】
1つの実施態様において、ポリ(メタクリレート)は、中性のプロトン化可能なポリ(メタクリレート)およびカチオン性のポリ(メタクリレート)から選ばれ、好ましくはジアルキルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、およびトリアルキルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、特にジメチルアミノエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマー、およびトリメチルアンモニオエチルメタクリレートとメタクリル酸エステルとのコポリマーから選ばれる。例えば、ポリ(メタクリレート)は、Eudragit(登録商標)L100、Eudragit(登録商標)S100、Eudragit(登録商標)E100、Eudragit(登録商標)RL、またはEudragit(登録商標)RSであり得る。
【0067】
本明細書中で使用される用語「架橋ポリアクリル酸ポリマー」は、当業者に公知のポリアクリル酸ポリマーおよび架橋ポリアクリル酸ポリマー、好ましくは架橋ポリアクリル酸ポリマー、ホモポリマー、コポリマー、およびインターポリマーなど、例えばアリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールで架橋したアクリル酸、アリルペンタエリスリトールで架橋したアクリル酸およびアクリル酸C10-C30アルキル、およびカーボマーホモポリマーまたはポリエチレングリコールと長鎖アルキル酸エステルとのブロックコポリマーを含むコポリマーに関する。例えば、架橋ポリアクリル酸ポリマーはCarbopol(登録商標)934またはCarbopol(登録商標)971 NFであり得る。
【0068】
本明細書中で使用される用語「メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー」は、当業者に公知のメチルビニルエーテルと無水マレイン酸/マレイン酸との任意のコポリマー、例えば種々のエステル基を有するポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)のモノアルキルエステルのコポリマーに関する。1つの実施態様において、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーは、無水物の形態または加水分解形態、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との混合ナトリウムおよびカルシウム塩など、例えばGantrezTM MS-955ポリマーである。1つの実施態様において、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーは、ポリ(メチルビニルエーテル-コ-無水マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル-コ-マレイン酸)、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)のモノエチルエステル、ポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)のモノエチルエステルとポリ(メチルビニルエーテル/マレイン酸)のモノブチルエステルとの混合物、およびポリ(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸)の混合ナトリウム/カルシウム塩から選ばれる。1つの実施態様において、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、例えばGantrezTMは、メチルビニルエーテルと(加水分解)無水マレイン酸とのコポリマーの混合ナトリウムおよびカルシウム塩である。1つの実施態様において、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーは、錯化剤である。例えば、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーは、GantrezTM AN 119、GantrezTMAN 139、GantrezTM AN 149、GantrezTM AN 169、GantrezTMAN-903、GantrezTM S-96、GantrezTM S-97、GantrezTMES-225、GantrezTM ES-425、またはGantrezTM MS-955であり得る。
【0069】
本明細書中で使用される用語「ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー」および「ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルピロリドンを含むポリマー」は、当業者に公知の任意のポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ[(ビニルピロリドン)-コ-(酢酸ビニル)]、およびポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との混合物に関する。1つの実施態様において、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマーは、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ[(ビニルピロリドン)-コ-(酢酸ビニル)]、例えば6部のポリビニルピロリドンと4部のポリ酢酸ビニルとのコポリマーおよびポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との混合物、例えばポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との8:2混合物から選ばれる。1つの実施態様において、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマーは、ポリ(ビニルピロリドン)を含むかまたはこれからなる。1つの実施態様において、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマーは、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、特にポリ[(ビニルピロリドン)-コ-(酢酸ビニル)]を含むかまたはこれからなる。1つの実施態様において、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマーは、ポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との混合物を含むかまたはこれからなる。1つの実施態様において、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマーは、1つ以上、好ましくは複数の酢酸ビニルモノマーおよび/または1つ以上、好ましくは複数のビニルピロリドンモノマーを含む。例えば、ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマーは、Kollidon(登録商標)30LP、Kollidon(登録商標)90F、Kollidon(登録商標)VA64、またはKollidon(登録商標)SRであり得る。
【0070】
本明細書中で使用される用語「セルロース誘導体」は、セルロースおよびその誘導体に関する。1つの実施態様において、セルロース誘導体は、好ましくは水および/または唾液と接触すると溶解するよりもむしろ膨潤するセルロース誘導体である。1つの実施態様において、セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)、エチルセルロース(EC)、およびそれらの組み合わせから選ばれる。1つの実施態様において、粘膜付着性層は、粘膜付着性セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、およびそれらの組み合わせから選ばれる、であるセルロース誘導体を含む。1つの実施態様において、有機溶媒に可溶なセルロース誘導体はHPCおよび/またはECである。1つの実施態様において、CMCは水に可溶であるが、有機溶媒に可溶ではない。
【0071】
粘膜付着性フィルムを調製する方法において、フィルムの層は、個々に調製され、そして次いで、例えば中間層を介しておよび/または接着剤を介して、接合され得、および/または互いの上面に、例えば最初に粘膜付着性層を調製し、そして次いで続いて粘膜付着性層をバッキング層でコーティングすることによって、必要に応じて粘膜付着性層を中間層およびバッキング層でコーティングすることによって、調製され得るかのいずれかである。例えば、粘膜付着性フィルムを調製する方法は、粘膜付着性層、バッキング層、および必要に応じて中間層を個々に調製すること、および続いて層を積層、例えば熱積層、または圧縮を用いて接合することを含み得る。例えば、粘膜付着性層を成型し、そして続いて層の乾燥後、第2の層、例えば中間層またはバッキング層が粘膜付着性層の上面に成型される。1つの実施態様において、第1および第2の層、例えば粘膜付着性層および中間層またはバッキング層は、互いの上に取り付けられる。1つの実施態様において、粘膜付着性層は、中間層および/またはバッキング層の適用前に完全に乾燥されるわけではない。1つの実施態様において、ロールを用いて層を互いの上に圧縮させ得る。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムを調製する方法は、粘膜付着性層およびバッキング層を調製すること、および続いて粘膜付着性層およびバッキング層を、例えば圧縮または接着によって、接合することを含む。1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムを調製する方法は、粘膜付着性層、中間層、およびバッキング層を調製すること、および続いて層を、例えば圧縮または接着によって、接合することを含む。
【0072】
1つの実施態様において、粘膜付着性層を調製する該工程およびバッキング層を調製する該工程の後に、該粘膜付着性層および該バッキング層を圧縮および/または積層、例えば熱積層によって接合する工程が続く。必要に応じて、該粘膜付着性層および/または該バッキング層は、該粘膜付着性層および該バッキング層を接合する該工程の前に、乾燥または部分的に乾燥される。1つの実施態様において、粘膜付着性層を調製する該工程、中間層を調製する該工程、およびバッキング層を調製する該工程の後に、該粘膜付着性層、該中間層、および該バッキング層を圧縮および/または積層、例えば熱積層によって接合する工程が続く。必要に応じて、該粘膜付着性層、該中間層、および/または該バッキング層は、該粘膜付着性層、該中間層、および該バッキング層を接合する該工程の前に、乾燥または部分的に乾燥される。1つの実施態様において、該接合は、圧縮および/または積層、例えば熱積層によって行われる。
【0073】
1つの実施態様において、該バッキング層は、該粘膜付着性層の表面上に、例えば該ポリマー混合物を該粘膜付着性層の表面上にコーティングすることによって、調製されるか、または別個に調製され、そして続いて該粘膜付着性層と接合され、必要に応じて中間層を介して接合される。1つの実施態様において、該粘膜付着性層および該バッキング層、必要に応じて該中間層が別個に調製される場合、該層はプロセスライナー上に調製される。1つの実施態様において、該粘膜付着性層が微粉化マクロライド、好ましくは微粉化結晶性マクロライドを含む場合、該バッキング層は、該粘膜付着性層の表面上に、例えば該ポリマー混合物を該粘膜付着性層の表面上にコーティングすることによって、調製される。1つの実施態様において、該粘膜付着性層が分子溶解されたマクロライドを含む場合、該バッキング層は該粘膜付着性層とは別個に調製され、そして粘膜付着性層およびバッキング層は、それらの調製後、続いて接合され、必要に応じて中間層を介して接合される。1つの実施態様において、粘膜付着性層、バッキング層、および必要に応じて中間層は、それぞれプロセスライナー上に調製され、そしてそれらの調製後、続いて接合される。
【0074】
1つの実施態様において、粘膜付着性フィルムを調製する方法は、粘膜付着性層、バッキング層、および必要に応じて中間層を、例えば圧縮および/または積層、例えば熱積層によって、接合する工程を含む。1つの実施態様において、該粘膜付着性層、バッキング層、および必要に応じて中間層は、層を接合する工程の前に、乾燥または部分的に乾燥される。1つの実施態様において、粘膜付着性層、バッキング層、および必要に応じて中間層は、別個に調製され、そしてそれらの調製後、続いて接合され、および/または互いの上面に調製される。
【0075】
1つの実施態様において、粘膜付着性層および/またはフィルムは、医薬における使用のためのものである。1つの実施態様において、該使用は、患者の体腔中、好ましくは頬側口腔中への該フィルムの取り付けを含み、ここで該取り付けは、該粘膜付着性フィルムが体腔中、好ましくは頬側口腔中の取り付けの部位と、該ポリマーマトリクス層のバッキング層が取り付けられていない側を介して接触するようにするものである。
【0076】
粘膜付着性フィルムは、口腔および/または頬粘膜の豊かな血液循環が活性物質の血液循環への迅速な移動を確保するという点で有利である。さらに、本発明のフィルムおよび/または層は、活性成分が粘膜を通って大いに吸収され、そしてそれゆえ錠剤形態の活性成分の従来の送達形態において起こる「初回通過代謝」が回避されるという点で有利である。さらに、このような本発明の粘膜付着性フィルムは、マクロライドが胃腸管のpHおよび消化酵素による分解から保護されるという利点を有する。粘膜付着性層および/またはフィルムは、例えば経口経路と比較して迅速な効果の発現をさらに提供する。粘膜付着性フィルムは、薬物投与の簡単な方法であり、そしてそれゆえ小児科における使用に特に適している。さらに、粘膜付着性フィルムは、経鼻胃チューブを介する薬物投与に関する障害を回避し、そして物理的形状、状態、サイズ、および表面において順応性がある。粘膜付着性フィルムは正確な投薬を可能にするという点でさらに有利である。
【0077】
本明細書中で使用される用語「本発明の」、「本発明によれば」、「本発明に従って」などは、本明細書に記載のおよび/または特許請求した発明の全ての局面および実施態様に言及することが意図される。
【0078】
本明細書中で使用される用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting of)」の両方を包含すると解釈されるべきであり、両方の意味は特に意図されており、従って、本発明による個別に開示される実施形態を含む。本明細書で使用される場合、「および/または」は、他方の有無にかかわらず、2つの指定された特徴または構成要素のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「Aおよび/またはB」は、あたかも本明細書でそれぞれが個別に記載されているかのように、(i) A、(ii) B、および(iii) AおよびBのそれぞれの具体的な開示として解釈されるものとする。本発明の文脈において、用語「約(about)」および「およそ(approximately)」は、当業者が当該特徴の技術的効果を確実にするために理解できる精度の範囲を示す。この用語は典型的には、示された数値からの±20%、±15%、±10%、および例えば±5%の偏差を示す。当業者には理解されるように、所与の技術的効果の数値に対する具体的なそのような偏差は、技術的効果の性質に依存するであろう。例えば、自然または生物学的な技術効果は、一般に、人工または工学的な技術効果よりも大きな偏差を有する可能性がある。単数名詞を指すときに不定冠詞または定冠詞、例えば「a」、「an」、または「the」が使用される場合、これには、特に明記されていない限り、その名詞の複数形が含まれる。
【0079】
以下に実施例を参照するが、これらは説明のために示されるものであり、本発明を限定するものではない。
【0080】
実施例
実施例1: 微粉化結晶性マクロライドを有する粘膜付着性フィルムの調製
ポリマー混合物を、水をアセトンと混合し、そしてこの混合物中に二酸化チタンを攪拌しながら分散させることによって調製した。グリセロールおよびSoluplus(登録商標)を加えた。次いでヒドロキシプロピルセルロース(HPC)粉末をゆっくりと加え、そしてHPCが完全に溶解した後、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(CMC)粉末を加えた。混合物の粘度はCMCの溶解とともに増加した。ポリマー混合物中の気泡を回避するため、攪拌速度を低下させた。
【0081】
微粉化マクロライドを50 mMのpH 4の酢酸ナトリウム緩衝液中に予め分散させ、そして次いでポリマー混合物に加えた。微粉化マクロライドの結晶はD10 2 μm; D50 10 μm; D90 25 μmを有した。
【0082】
300 gの混合物を調製した。混合物中の固体の濃度は15重量%であった。
【0083】
【0084】
得られた混合物を、厚さ850 μm(未乾燥形態の厚さ)で、プロセスライナーFL2000上に、5 mm/sの速度で2軸スクリューコーティングナイフを用いてコーティングし、そして次いで60℃で40分乾燥した(
図1)。いくつかのシートを製造した。フィルムの目標とした面積重量は約104 g/m
2であった。6 cm
2サイズのダイカットを調製し、そしてダイカットの面積重量を決定した:
【0085】
【0086】
実施例2: バッキング層MFK12を有する粘膜付着性層のシール
シールのためのポリマー混合物を調製した。攪拌下、エタノールをグリセロール(可塑剤として)と混合した。次いでエチルセルロース粉末をゆっくりと加え、そして混合物を均一化するまで攪拌した。
【0087】
300 gの混合物を調製した。混合物中の固体の濃度は17.5重量%であった。
【0088】
【0089】
粘膜付着性層の乾燥後、粘膜付着性層シートを、エチルセルロースのエタノール溶液で、厚さ425 μmで、5 mm/sの速度で2軸スクリューコーティングナイフを用いてコーティングし、そして次いで40℃で10分乾燥した(
図1)。フィルムの目標とした面積重量は約50 g/m
2であった。6 cm
2サイズのダイカットを調製し、そしてダイカットの面積重量を決定した:
【0090】
【0091】
6 cm2の面積の丸くなった角および2.48 cmのエッジ長さを有する正方形フィルムを、粘膜付着性層およびバッキング層を含む2層積層体から打ち抜いた。プロセスライナーを除去し、そしてフィルムをサイズ8 cm x 9.6 cmの空気および湿気から保護された個々の小袋に包装した。約70個の積層体を製造した。
【0092】
実施例3: マクロライドの固溶体を有する粘膜付着性フィルムの調製
タクロリムスの溶解性
タクロリムスを有機溶媒に溶解した。特に、異なる有機溶媒中のタクロリムスの飽和溶解度を試験した。結晶性活性成分を、不溶な沈殿物が形成するまで攪拌しながら室温で規定量の溶媒に加えた。ろ過後、上澄み中の活性成分の濃度をHPLCによって定量した。
【0093】
タクロリムスは全ての試験した有機溶媒に可溶であった。溶媒ベースの粘膜付着性フィルムに関するさらなる実験のために、エタノールを有機溶媒として選んだ。非毒性および低い沸点-およびそれゆえ低温での乾燥による完全な除去の可能性-は溶媒エタノールを特徴付ける。
【0094】
【0095】
固溶体のためのポリマーマトリクス
マクロライドを固溶体として含む粘膜付着性フィルムを開発するために、有機溶媒に可溶なポリマーを選んだ。従って、水を含まない系で研究することが可能であった。6 cm2の面積を有するサンプルフィルムを、それぞれのマトリクスから調製し、そして水溶性および付着について試験した。
【0096】
例えば、エタノールに可溶なフィルム形成特性および粘膜付着特性を有するポリマーは、架橋ポリアクリル酸ポリマー、例えばCarbopol(登録商標); メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、例えばGantrezTM; ポリ(メタクリレート)、例えばEudragit(登録商標); ポリ酢酸ビニルおよび/またはポリビニルピロリドンを含むポリマー、例えばKollidon(登録商標)SR(ポリ(酢酸ビニル)とポリ(ビニルピロリドン)との8:2混合物)である。
【0097】
ポリマーの種々の組み合わせを試験した:
【0098】
【0099】
試験した組み合わせは、粘膜付着を示すことに成功した。さらに、試験したポリマーの組み合わせは低い水溶性を提供した。
【0100】
粘膜付着性層FK1の調製
エタノールベースのポリマー混合物を調製した、二酸化チタンを攪拌下エタノール中に分散させた。グリセロールを加えた。粉末ポリマーをゆっくりと加え、そして完全に溶解するまで攪拌し続けた。活性成分をエタノールに溶解し、そして調製したポリマー混合物に攪拌しながら加え、層組成物を得た。
【0101】
層組成物をプロセスライナー(FO Scotchpak 9755)上にコーティングし、そして続いて乾燥した。フィルムの目標とした面積重量は約150 g/m2であった。500 gの混合物を調製した。混合物中の固体の濃度は20重量%であった。
【0102】
バッキング層の調製
シール用のポリマー混合物を上記の通り調製した。1000 gの混合物を調製した。混合物中の固体の濃度は15重量%であった。
【0103】
混合物をプロセスライナー上にコーティングし、そして続いて乾燥した。フィルムの目標とした面積重量は約50 g/m2であった。
【0104】
【0105】
バッキング層と粘膜付着性層とを接着中間層を介して接合した。
【0106】
実施例4: 中間層FK9の調製
混合物を調製し、プロセスライナー(FO Scotchpak 9755)上にコーティングし、そして続いて乾燥した。フィルムの目標とした面積重量は約60 g/m2であった。1000 gの混合物を調製した。混合物中の固体の濃度は55重量%であった。
【0107】
【0108】
あるいは、中間層はポリ酢酸ビニルとポビドン(K 30)との比8:2のブレンド、すなわちビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーKollidon(登録商標)VA64の代わりにKollidon(登録商標)SRを含んだ。
【0109】
3つの層、すなわち粘膜付着性層、中間層、およびバッキング層を加圧によって互いの上面に積層した。2x3 cmのエッジ長さを有する矩形フィルムを、完成した3層積層体から打ち抜き、フィルムを個々の小袋(Hutamaki COC)に包装して空気および湿気から保護した。約150個のラミネートを製造した。
【0110】
実施例5: 層の組成
層の組成を以下に示す:
【0111】
【0112】
実施例6: フィルムの特徴付け
調製したフィルムを含有量、放出、一方向放出、含水量および溶媒含有量について分析した。用いた分析方法を表10に与え、調査の結果を表11に与える。
【0113】
マクロライド放出を決定するため、フィルムをバッキング層が回転シリンダー上にあるよう設置し(粘膜付着性層が媒体に向かい合う)、そして指示した時点で媒体中に放出された薬物の量をHPLCによって定量した。使用した媒体は、500 mlの0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを含むpH 7を有するリン酸緩衝液であった。値を平均値として与え; n個の個々の測定の最小値および最大値を括弧内に与える。
【0114】
一方向放出を決定するため、フィルムを粘膜付着性層が回転シリンダー上にあるよう設置し(バッキング層が媒体に向かい合う)、そして媒体中に放出された薬物の量を10分後、20分後および30分後に上記の通り定量した。媒体は上記と同じであった。
【0115】
【0116】
両方のフィルムとも、すなわち微粉化結晶性マクロライドを含むフィルムおよび分子溶解されたマクロライドを含むフィルム(それぞれMFK10およびFK1)は、マクロライドをほぼ完全に放出することに成功した。MFK10のマクロライド放出(
図2)はSoluplus(登録商標)の存在(活性成分に対して3倍過剰)によって引き起こされなかった。
【0117】
少量のタクロリムス(最大5 %)しかフィルムの縁を介して放出されなかった。バッキング層はタクロリムスの放出を効率的に防止した。従って、活性成分の口腔への放出-およびそれゆえ活性成分の可能性がある嚥下-はバッキング層によって効率的に防止され得る。
【0118】
少量のエタノールが両方のフィルムで検出された。決定した値は、エタノールについてICHによって規定される許容量を下回り、そしてそれゆえインビボ適用に適する。アセトンはいずれのフィルムでも検出されなかった。
【0119】
微粉化結晶性マクロライドを含むフィルム、例えばMFK10の含水量は3%未満であり;分子溶解されたマクロライドを含むフィルム、例えばFK1は水を使用せずに製造し、そしてそれゆえ含水量は分析しなかった。
【0120】
両方のフィルムの低い含水量および低い残留溶媒含有量は、ラミネートの効率的な乾燥を証明する。
【0121】
【0122】
実施例7: 積層体の安定性
両方の積層体とも、すなわち微粉化結晶性マクロライドを含むフィルムおよび分子溶解されたマクロライドを含むフィルム(それぞれMFK10およびFK1)を温度および湿度の制御下で保管し、そして指示した時点の後に分析的に特徴付けた。結果を表12および表13に報告する。
【0123】
【0124】
ラミネートMFK10のマクロライド含有量は、室温で保管した場合、活性成分の分解によって、6週間以内にわずか4.2%しか減少しなかった。
【0125】
【0126】
分子溶解されたマクロライドを含むフィルム(ラミネートFK1)の40℃で2週間の保管後、1.5%の分解生成物が検出された。製造後、このバッチは0.4%の分解生成物を含んでいた。従って、1.1%の分解生成物が40℃で2週間の保管によって形成し、そして3.4%の分解生成物が40℃で4週間の保管後に形成した。
【0127】
【0128】
従って、分子溶解されたマクロライドを含むフィルム(ラミネートFK1)の水を含まない製剤は、フィルムの化学安定性をさらにもっと増大させる。メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、例えばGantrezTMは、その錯化特性および安定化特性のせいで、フィルムの化学安定性をさらにもっと向上させる。
【0129】
実施例8: 活性剤の形態論
フィルムMFK10をx線写真で特徴付けた。活性成分、微粉化タクロリムスのサンプル、および着色剤の二酸化チタンのサンプルはコントロールとして機能した。
【0130】
微粉化結晶性タクロリムスを含むフィルム(MFK10; 赤, 3)のXRPD画像(
図3)は、結晶性タクロリムス(青, 1)および賦形剤TiO
2(橙, 2)の特徴的な反射を示す。約28°で検出された反射は、ケイ素に割り当てられ得、これをXRPD測定の基材として用いた。
【0131】
図3に示すように、微粉化結晶性マクロライドの形態論は、微粉化結晶性マクロライドのフィルム(MFK10)への組み込みによって変化しなかった。
【0132】
実施例9: インビボ適用(第1の研究)
ブタを動物モデルとして選んだ。なぜなら、この動物モデルはヒトの機能解剖学的関係に非常に類似しているからである。全ての動物は、処置時に14 kgと16 kgとの間の体重を有する6~8月齢であった。動物を処置前に少なくとも16時間絶食(一晩)させ、そして処置の間麻酔した。フィルムを粘膜付着性層の側が動物の口の粘膜上にあるよう設置し、そしてフィルムが付着するまで軽く押した。フィルムは頬粘膜上に30分間残り、そして次いで取り外した。
【0133】
血液サンプルを静脈内カテーテルを介して集めた。タクロリムスの血中レベルの決定のため、2 mlの血液を全ての動物からK2EDTA-被覆チューブに集めた。サンプルを次の時間点で集めた:投与直前(0分)、次いでフィルムの投与後15、30、60、90、120、180、および240分、および6、8、12、18、および24時間。血液収集後、血液チューブを氷上で冷却し、そして冷凍庫(-30℃~-15℃の範囲の温度)で分析まで保管した。タクロリムスの濃度を信頼性のあるLC-MS/MS法によって決定した。
【0134】
動物に適用後、適用したフィルムのタクロリムス含有量を決定した(処置後の薬物含有量)。活性用量は、フィルムのタクロリムス含有量-(マイナス)適用後の残留含有量に相当する。生物学的活性用量は、個々の動物の重量との関連で計算した(活性用量/体重)。
【0135】
薬物動態パラメーターは、血中濃度の時間経過から計算した。計算したAUCは、活性用量で正規化し、そして動物の個々の重量との関連で決めた(AUC_all/用量)。
【0136】
【0137】
フィルムの残留マクロライドレベルは54.3%と58.4%との間であった。タクロリムスは頬側投与後に両方のブタの血液中で首尾よく検出された;最大濃度はそれぞれ1.5時間および2時間後に到達した(t_max)。フィルムは頬粘膜の局所的炎症を生じなかった。
【0138】
これらの結果は、微粉化結晶性マクロライドの頬側吸収が効果的であることを実証する。
【0139】
治療に関連する死亡、臨床兆候または体重の変化はなかった。微粉化タクロリムスを充填したMBFの適用部位での炎症はなかった。
【0140】
微粉化タクロリムスを充填したMBFの頬側適用、および5 mgのPrografカプセルの経口投与後の3匹の動物からの平均血中濃度-時間プロフィール。それは、微粉化タクロリムスがMBFとしての適用後に頬粘膜を通過し得ることを首尾よく実証した。
【0141】
実施例10: インビボ適用(第2の研究)
第1の研究を、分子溶解されたマクロライド(FK1)を含むフィルムを用いて5匹のさらなる動物で繰り返した。動物は、第1の研究で試験したのと同じ動物ではなかった。フィルムは頬粘膜上に60分間残り、そして次いで取り外した。さらなる手順は第1の研究と類似していた。
【0142】
【0143】
処置後のフィルムの薬物含有量の分析は、マクロライド約55%が生物学的に活性であり、そして45%がフィルム中に残っていることを示す。
【0144】
タクロリムスは、頬側適用後に全ての5匹のブタの血液中で検出された(
図4)。最大濃度は2~3時間後に到達した(t_max)。フィルムは頬粘膜の局所的炎症を生じなかった。
【0145】
達成された血中濃度は、市販品Prografの経口投与で得られる濃度の範囲内であった。最大血中レベルに達するのに必要な時間、すなわち2-3時間は、市販品に匹敵する。従って、微粉化結晶性マクロライドを含むフィルムおよび分子溶解されたマクロライドを含むフィルムの両方とも、マクロライドを効率的に投与することを可能にした。さらに、予想外に、フィルムは、患者へのインビボ適用に適したマクロライドの血中レベル濃度を達成することを可能にした。
【0146】
実施例11:マクロライドのバッキング層への移動を防止するためのMBFのさらなる最適化
バッキング層は、エタノールに溶解したエチルセルロースに基づき、そしてタクロリムスを含む乾燥した粘膜付着性層上に成型した。タクロリムスのエタノール中の優れた溶解性のため、活性物質の一部は製造の間にバッキング層中に抽出された。
【0147】
MBFの組成および製造プロセスを、中間層、特に接着中間層を粘膜付着性層とバッキング層との間に含むことによって最適化した。合わせたバッキング層および接着中間層を、乾燥した粘膜付着性層上への積層前に乾燥した(
図5)。この修正した製造プロセスおよびMBF組成を用いた実験は、溶解試験およびHPLCを用いて試験した通り、タクロリムスがバッキング層/接着中間層中で検出可能ではないことを示した。従って、接着中間層は粘着層からバッキング層へのマクロライドの消散を防止する。
【0148】
実施例12: インビボ適用(第3の研究)
MBFのさらなる変形体を開発した。全ての場合において、タクロリムスはフィルムマトリクス中に分子溶解されて組み込まれた。
【0149】
層の組成は以下に示す:
【0150】
【0151】
研究を、第2の研究(実施例10)と同じ個体であった5匹のブタで行った。フィルムは頬粘膜上に60分間残り、そして次いで取り外した。さらなる手順は前の研究と類似していた。セッション1において、2つのフィルムを同時に口腔の同じ側に設置した。セッション2、3および4において、1つのフィルムを午前の時間に口腔の1つの側に設置し、そして約4時間後、第2の1つのフィルムを同じ側に設置した。従って、セッション1は1日1回の処置を分析し、そしてセッション2、3および4は1日2回の処置を分析した。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
興味深いことに、1日2回の処置は、1日1回の処置よりも、同じ用量を両方の処置で適用したが、より高い血中濃度を達成した。特に、上記表に見られるように、1日1回の処置よりも1日2回の処置でより高いAUCを達成した。さらに、2回目の適用後(1回目の適用後4時間)に達成した血中濃度は、1回目の適用後よりも、同じMBFを適用したが、ずっと高かった。粘膜付着性フィルムのこのような薬物動態特性は、患者の要求に対して投薬スキームを微調整するのに非常に有利である。例えば、粘膜付着性フィルムは、より高い血中濃度を要求する患者に対して1日2回投与され得、一方、粘膜付着性フィルムは、より低い濃度を必要とする患者に対して1日1回投与され得る。さらに、2回の適用の間の時間は、患者の個々の要求に適応され得る。例えば、患者の適切なマクロライド血中濃度は、粘膜付着性フィルムの2回の続く適用間の時間窓を調節することによって微調整および制御され得る。
【0158】
さらに、興味深いことに、より高い血中濃度がより高い面積濃度を有する粘膜付着性フィルムで達成されたことが観察された。粘膜付着性フィルムの薬物動態特性は、患者の要求に対して投薬スキームを微調整するのに非常に有利である。本発明者らは、非ナノ粒子マクロライド、特に微粉化マクロライドの形態または分子溶解された非ナノ粒子形態、を含む粘膜付着性フィルムがナノ粒子マクロライドを含む粘膜付着性フィルムよりも高い血中濃度を達成することを可能にすることを観察した。
【0159】
本明細書、特許請求の範囲および/または添付の図面に開示された本発明の特徴は、別個におよびそれらの任意の組み合わせの両方で、本発明をその種々の形態で実現するための材料であり得る。
【国際調査報告】