(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ジェランガム組成物およびそれらの調製方法
(51)【国際特許分類】
C08B 37/00 20060101AFI20240614BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240614BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240614BHJP
A61K 9/19 20060101ALI20240614BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20240614BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240614BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C08B37/00 Z
A61K47/36
A61K47/12
A61K47/02
A61K9/19
C08L5/00
C08K5/098
C08K3/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577812
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022066099
(87)【国際公開番号】W WO2022263405
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517103153
【氏名又は名称】オールジャン バイオセラピューティクス エス.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】ケスティ、マッティ ヤーッコ ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ユーウェイ、ゲイリー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C090
4J002
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076DD26
4C076DD43
4C076EE30
4C076FF36
4C076FF68
4C076GG06
4C090AA05
4C090AA09
4C090BA94
4C090BB12
4C090BB16
4C090BB22
4C090BB29
4C090BB52
4C090BB97
4C090BC25
4C090BD36
4C090CA19
4C090CA39
4C090DA23
4J002AB051
4J002DH046
4J002EF066
4J002FD206
4J002GB04
(57)【要約】
本発明は一般に、バイオポリマーの分野に関する。1つの態様において、本発明は、凍結乾燥ジェランガム組成物および再構成ジェランガム組成物を調製する方法に関する。さらなる態様において、本発明は、ジェランガムを含む凍結乾燥組成物、再構成ジェランガム組成物、凍結乾燥ジェランガムを含む用量単位製剤、および医薬または他の無菌適用におけるそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、凍結乾燥ジェランガム組成物を調製する方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥し、それにより凍結乾燥ジェランガム組成物を提供する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約3mg/mlまでである。
【請求項2】
以下の工程を含む、再構成ジェランガム組成物を調製する方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程;
(v)十分な量の医薬上許容される再構成溶媒を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約3mg/mlまでであり、特に約1mg/mlから約3mg/mlである。
【請求項3】
混合工程(ii)が、最大95℃の温度、特に約70℃~95℃の間の温度または約25℃~40℃の間の温度で実施される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらに少なくともひとつのろ過工程を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
凍結乾燥に供される前に、工程(iii)で得られた溶液が、バイオバーデン低減フィルター上でろ過および/またはフィルター滅菌され、特に最初にバイオバーデン低減ろ過し、次に無菌ろ過に供され、それにより無菌溶液を提供する、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ジェランガムが、低アシルジェランガム、高アシルジェランガムまたはその混合物、特に低アシルジェランガムであり;および/または
医薬上許容される調製溶媒が、水またはカルシウムイオン封鎖剤の水溶液、特にクエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩またはリンゴ酸アルカリ金属塩溶液、より詳細にはクエン酸ナトリウム水溶液、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物水溶液であり;
特に、工程(iii)の後の組成物中のカルシウムイオン封鎖剤の濃度が、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mM、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMである、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
医薬上許容される調製溶媒が、クエン酸ナトリウム水溶液であって、工程(iii)の後の組成物中のクエン酸ナトリウム濃度が、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mM、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMであり;および/または
工程(iii)の後のジェランガムの濃度が、約1.0mg/mlから約3.0mg/ml、特に約1.5mg/mlから約2.5mg/ml、より詳細には約2.0mg/mlである、
先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、請求項1および3~7のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物の調製方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度が、約1mg/mlから約3mg/mlである。
【請求項9】
カルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比が、約15:1から約30:1、特に約20:1から約27:1、より詳細には約21.5:1から約25:1である、ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物。
【請求項10】
無菌である、請求項9に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項11】
ジェランガムが、低または高アシルジェランガムであり;および/または
カルシウムイオン封鎖剤が、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれ、特にリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれ、より詳細にはクエン酸ナトリウム、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物であり;および/または
組成物の水分含量が、約5重量%以下、特に約4重量%以下である、請求項9または10に記載の凍結乾燥組成物。
【請求項12】
医薬上許容される再構成溶媒を使用するジェランガムの再構成を可能にするのに十分な容量の容器に先行する請求項のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物を含む用量単位製剤。
【請求項13】
ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む無菌凍結乾燥組成物;ならびに医薬上許容される再構成溶媒から再構成された無菌組成物であって、カルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比が、約15:1から約30:1;カルシウムイオン封鎖剤が、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれ、特にリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれ、より詳細にはクエン酸ナトリウム、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物である、無菌組成物。
【請求項14】
医薬に使用、特にヒト医薬に使用するための、請求項9~12のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物または請求項13に記載の再構成組成物。
【請求項15】
無菌適用における、ジェランガムおよびクエン酸ナトリウムなどのカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物の再構成後の請求項9~12のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体としてバイオポリマーの分野に関する。1つの態様において、本発明は、凍結乾燥ジェランガム組成物および再構成ジェランガム組成物を調製する方法を対象とする。さらなる態様において、本発明は、ジェランガムを含む凍結乾燥組成物、再構成ジェランガム組成物、凍結乾燥ジェランガムを含む用量単位製剤、および医薬または他の無菌適用におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェランガムは、スフィンゴモナス(Sphingomonas)属の細菌株の発酵によって得られる多糖類生成物である。四糖の繰り返し単位からなる直鎖状の陰イオン性多糖類である。各四糖は、1つのβ-D-グルクロン酸モノマー、1つのα-L-ラムノースモノマーおよび2つのβ-D-グルコースモノマーを含む。化学式を
図1に示す。本来の形では、グルコースモノマーの1つはO-結合アセチル部分とO-結合グリセリル部分を含み、一般に高アシルジェランガムと呼ばれている(
図1(a))。高温でアルカリにさらすとアシル基が除去され、一般に低アシルジェランガムとも呼ばれる脱アシル型ジェランガムが得られる(
図1(b))。ジェランガムは1980年代に初めて報告され、食品添加物として広く使用されている(E 418)。この10年間で、製薬分野、例えば眼科用製剤、創傷治癒、in situゲル化システム、放出制御製剤および固形製剤でのさらなる用途が提案されている。さらに、ジェランガムは組織工学、例えば軟骨修復に使用される。生細胞を含むバイオポリマー構築物の3Dプリンティングプロセスにおける安定剤および増粘剤として記載されており、例えばWO 2016/092106 A1およびEP 20 180 620.5を参照、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。ジェランガムは危険物として分類されていない(規制EC 1272/2008 GHS)。
【0003】
ジェランガム粉末は市販されている。しかし、上記の医薬品分野における多様な適用に使用されているにもかかわらず、無菌品質では市販されていない。したがって、滅菌は使用の時点で行わなければならない。しかし、ジェランガムの粘度のため、ジェランガムを含有する製品の滅菌は複雑である。バイオプリンティングなどの新たな技術で広く使用するためには、現行の適正製造基準(cGMP)規制、特に医薬品のためのcGMP規制に適合するジェランガムの処理が、一貫した再現性のある方法で要求される製品品質を確保するために極めて重要である。
【発明の概要】
【0004】
発明の簡単な概要
本願発明者らは、驚いたことに、凍結乾燥工程などの特定の調製方法の使用により、cGMP規制、特に医薬品のためのcGMP規制を満たし、それにより医薬適用および無菌適用に使用し得るジェランガム組成物を得ることが可能となることを見出した。
【0005】
したがって、本発明は、以下の工程を含む凍結乾燥ジェランガム組成物を調製する方法を対象とする:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥し、それにより凍結乾燥ジェランガム組成物を提供する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約3mg/mlまでである。
【0006】
また本発明は、以下の工程を含む再構成ジェランガム組成物を調製する方法を対象とする:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程;
(v)十分な量の医薬上許容される再構成溶媒を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約3mg/mlまでである。
【0007】
例えば、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約1mg/mlから約3mg/mlであってよい。いくつかの実施形態では、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約1.0mg/mlから約3.0mg/ml、特に約1.5mg/mlから約2.5mg/ml、より特には約2.0mg/mlである。
【0008】
ジェランガム粉末の溶解は、広い温度範囲で達成することができる。有利には、混合工程(ii)は、最大95℃の温度で実施してもよい。特定の実施形態では、混合工程(ii)は、約70℃~95℃の間または約25℃~40℃の間で実施される。
【0009】
本発明によれば、本方法がさらに少なくともひとつのろ過工程を含むことが特に想定される。このろ過工程は、好適には工程(iii)で得られた溶液を用いて実施される。したがって、いくつかの実施形態では、凍結乾燥に供される前に、工程(iii)で得られた溶液は、バイオバーデン低減フィルター上でろ過および/またはフィルター滅菌される。特に、工程(iv)において凍結乾燥に供される前に、溶液は、最初にバイオバーデン低減ろ過に供され、その後無菌ろ過に供されることにより、無菌溶液を提供することができる。
【0010】
一定の実施形態では、本発明の方法で使用されるジェランガムは低アシルジェランガムである。
【0011】
医薬上許容される調製溶媒は、特に水またはカルシウムイオン封鎖剤の水溶液、より詳細にはクエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩またはリンゴ酸アルカリ金属塩溶液、より詳細にはクエン酸ナトリウム水溶液、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物水溶液であってもよい。
【0012】
調製溶媒がカルシウムイオン封鎖剤を含有する場合、工程(iii)の後の組成物中のカルシウムイオン封鎖剤の濃度は、一定の実施形態では、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mM、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMであってもよい。
【0013】
本発明に記載の方法の特定の実施形態では、医薬上許容される調製溶媒は、クエン酸ナトリウム水溶液であり、工程(iii)の後の組成物中のクエン酸ナトリウムの濃度は、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mM、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMである。
【0014】
一定の実施形態では、本発明に記載の凍結乾燥組成物の調製方法は以下の工程を含む:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は約1mg/mlから約3mg/mlである。
【0015】
本発明は、さらにジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物を対象とし、カルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比は、約15:1から約30:1、特に約20:1から約27:1、より詳細には約21.5:1から約25:1である。好ましい実施形態では、凍結乾燥組成物は無菌である。
【0016】
凍結乾燥組成物に使用されるジェランガムは、低アシルジェランガムでも高アシルジェランガムであってもよい。カルシウムイオン封鎖剤は、多様で適切な化合物から選ばれてもよい。いくつかの実施形態では、カルシウムイオン封鎖剤は、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれ、特にリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれ、より詳細にはクエン酸ナトリウム、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物である。
【0017】
いくつかの実施形態では、組成物の水分含量は、約5重量%以下、特に約4重量%以下である。
【0018】
さらに本発明は、医薬上許容される再構成溶媒を使用するジェランガムの再構成を可能にするのに十分な容量の容器に先行する請求項のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物を含む用量単位製剤を対象とする。
【0019】
その上さらに、本発明は、ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む無菌凍結乾燥組成物;ならびに医薬上許容される再構成溶媒から再構成された無菌組成物を対象とし、ここでカルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比は、約15:1から約30:1であり、カルシウムイオン封鎖剤は、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれ、特にリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれ、より詳細には、クエン酸ナトリウムであり、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物である。
【0020】
その上さらに、本発明は、上記組成物の医薬用途を対象とする。したがって、本発明は、医薬、特にヒト医薬における使用のためのジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物を提供し、ここでカルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比は、約15:1から約30:1、特に約20:1から約27:1、より詳細には約21.5:1から約25:1である。本発明によれば、医薬、特にヒト医薬における使用のためのジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む無菌凍結乾燥組成物;ならびに医薬上許容される再構成溶媒から再構成された無菌組成物も提供し、ここでカルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比は、約15:1から約30:1である。
【0021】
最後に、本発明は、ジェランガムおよびクエン酸ナトリウムなどのカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物の再構成後の上述した通りの凍結乾燥組成物の無菌適用での用途を対象とする。
【0022】
発明の詳細な説明
第一の態様において、本発明は、凍結乾燥ジェランガム組成物を調製する方法を提供することに関する。該方法は、少なくとも下記に記載の工程を含む。
【0023】
第一の工程(工程(i))において、ジェランガム粉末は、医薬上許容される調製溶媒に添加される。本発明の文脈において、高アシルジェランガムも低アシルジェランガムも、またはその混合物を使用することができる。好ましい実施形態では、低アシルジェランガムが使用される。医薬上許容される調製溶媒は、意図する適用の必要性に応じて選択され得る。すでに述べたように、医薬上許容される調製溶媒は、特に水またはカルシウムイオン封鎖剤の水溶液でもよい。
【0024】
本発明の文脈での「カルシウムイオン封鎖剤」は、カルシウムイオンの封鎖をもたらすために使用される任意の物質であり、典型的にはキレート化による。封鎖剤の使用により、使用される溶媒中の二価イオンの配合量は制御することができる。特に二価カルシウムカチオン(Ca2+)は、ジェランガムと架橋を形成する可能性があるので、凍結乾燥組成物の調製段階ではかかるカチオンの高濃度は望ましくない。種々のクエン酸塩、リン酸塩およびリンゴ酸塩はカルシウムイオンに対して封鎖特性を有し、本発明に記載のように使用することができる。特に、医薬上許容されるカルシウムイオン封鎖剤は、水溶液、すなわち溶媒が水のクエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩またはリンゴ酸アルカリ金属塩の溶液から選ばれる。適当なアルカリ金属としては、カリウムおよびナトリウムが挙げられる。具体的な実施形態において、医薬上許容されるカルシウムイオン封鎖剤は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウムおよび医薬上許容されるそれらの混合物の水溶液から選ばれる。本発明に記載の例示的なカルシウムイオン封鎖剤は、クエン酸ナトリウム水溶液、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物の水溶液である。
【0025】
本発明の第二の工程(工程(ii))において、工程(i)で得られた混合物をジェランガム粉末が実質的に完全に溶解するまで混合する。ジェランガムの文脈では、「溶解された」または「溶解」は、「水和された」または「水和」とも称する。本明細書で使用される「実質的に完全に溶解」は、添加されたジェランガムの総量に基づいて、約0.1%未満、特に約0.01%未満のジェランガムが未溶解で残っていることを意味する。好ましい実施形態では、ジェランガム粉末は完全に溶解し、これは、例えば混合物の目視検査によって確認することができる(目に見える粒子が残っていない)。混合工程は、当業者に周知およびcGMP規制下で許容される手段、シェーカーまたはボルテックスによる撹拌、またはマグネチックスターラーによる撹拌によって行うことができる。プロセス工程に関して本明細書で使用される「で得られた」は、それぞれのプロセス工程の完了時に存在する生成物を意味する。
【0026】
調製溶媒の組成によっては完全なジェランガム粉末の溶解のために高い温度を使用することが適当かいっそう必要かもしれない。特に、混合工程(ii)は、最大95℃で実施してもよい。いくつかの実施形態では、混合工程(ii)は、約70℃と約95℃の間、例えば約80℃で実施される。このより高い範囲の温度は、調製溶媒がカルシウムイオン封鎖剤を含有しない場合に特に使用される。他の実施形態において、混合工程(ii)は約25℃と約40℃の間で実施される。この範囲の温度は、調製溶媒がカルシウムイオン封鎖剤を含有する場合に特に使用される。
【0027】
高温度、例えば約70℃と約95℃の間での混合工程は、30分から60分間実施してもよい。
【0028】
発明者らは、驚いたことに、リン酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウム、特にクエン酸ナトリウムなどのカルシウムイオン封鎖剤を、適切な、特に比較的多量(ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤の総重量に対して、例えば約1重量%(本明細書ではwt%とも称する)から約6wt%、特に3.5wt%から4.5wt%のカルシウムイオン封鎖剤(クエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム、特にクエン酸ナトリウムなど)を含有する水溶液を用いて)添加することにより、ジェランガム粉末を完全に溶解するために外部加熱がより少ないか全く必要でないことを見出した。さらに、使用する容器への温度負荷や冷却時のゲル化の問題を低減し、使用する容器の破損(ガラスバイアル瓶の破損など)を軽減することができる。一方、ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤の総重量に対して、約1wt%から約6wt%、特に3.5wt%から4.5wt%のカルシウムイオン封鎖剤(クエン酸ナトリウムまたはリン酸ナトリウム、特にクエン酸ナトリウムなど)を含有する水溶液の適切な量は、下流の適用に必要とされるジェランガムの粘度を妨げない。さらに驚いたことに、カルシウムイオン封鎖剤のバイオポリマーに対するpH低下作用が知られているにもかかわらず、下流適用における細胞生存率に支障がないことが見出された。
【0029】
25℃~40℃の範囲内の例示的な温度は、30℃、32℃、34℃、36℃、38℃である。外部加熱は、電気加熱ブランケットやジャケットなどの当該技術分野で周知の手段によって提供されてもよい。このことは、ステンレス鋼製の装置を減らすことができ、製造が容易になる。したがって、一定の好ましい実施形態では、カルシウムイオン封鎖剤が使用され、ジェランガムの完全溶解に適用される温度は25℃および40℃の間である。例示的な実施形態では、クエン酸ナトリウム水溶液、特にクエン酸三ナトリウム二水和物の水溶液が36℃または38℃などの35℃および40℃の間で使用される。一定の好ましい実施形態では、ジェランガムおよびクエン酸ナトリウム、特にクエン酸三ナトリウム二水和物の総重量に対して、3.5重量%から4.5重量%のクエン酸ナトリウム水溶液、特にクエン酸三ナトリウム二水和物の水溶液が、36℃または38℃などの35℃および40℃の間で使用される。
【0030】
加熱が使用される場合、加熱された溶液は、特に冷却され、例えば25℃~40℃の範囲内の温度または室温まで冷却されてから、さらに進められる。例えば、高温の溶液は、連続撹拌下、室温で一晩冷却してもよい。
【0031】
ジェランガムを調製溶媒中に溶解後、さらなる調製溶媒を工程(iii)に添加してもよい。これは、例えばジェランガム濃度を所定の値に調整するために、特に工程(ii)の後の濃度が約3mg/mlを超える場合に必要とされ得る。本発明によれば、工程(iii)の後のジェランガム濃度は、約3mg/mlまでである。典型的には、さらなる調製溶媒は工程(i)で使用したものと同じ調製溶媒である。工程(ii)で得られた溶液のすべてのパラメーターが所定の要件にすでに適合している場合(例えばジェランガム濃度が約3mg/mlまでである)、さらなる調製溶媒を添加しないで方法は工程(iv)に続く。言い換えると、工程(iii)は、必要に応じてジェランガムおよび/またはカルシウムイオン封鎖剤の濃度を調整するために入れられる。
【0032】
さらなる調製溶媒の任意の添加により、カルシウムイオン封鎖剤の濃度も調製溶媒中に存在する場合、変更される。特に、工程(iii)の後の組成物中のカルシウムイオン封鎖剤の濃度は、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mMであり、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMである。いくつかの実施形態によれば、医薬上許容される調製溶媒はクエン酸ナトリウム水溶液であり、工程(iii)の後の組成物中のクエン酸ナトリウム濃度は、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mMであり、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMである。
【0033】
さらなる必須工程(工程(iv))において、工程(iii)で得られた溶液を凍結乾燥に供し、それにより凍結乾燥ジェランガム組成物を提供する。凍結乾燥(Lyophilization)または凍結乾燥させる(freeze-drying)は、所定の組成物が凍結され真空下に置かれた後に該組成物から水を除去する周知のプロセスである。凍結乾燥は、3つのフェーズに細分することができる:第1のフェーズでは、工程(iii)で得られた溶液を凍結に供し、続いて昇華(一次乾燥)および脱着(二次乾燥)させる。本発明によれば、特に約95重量%以上まで、より詳細には約96重量%以上の水を除去し、すなわち工程(iv)の後の凍結乾燥組成物の水分含量は、特に約5重量%以下、より詳細には約4重量%以下である。
【0034】
本発明に記載の凍結温度は、例えば大気圧で約-10℃から約-50℃の範囲である。一次乾燥は、例えば約0℃から約-15℃の温度範囲で減圧、例えば200μbarまたは100μbarなどの1mbar以下で行ってもよい。二次乾燥は、例えば約0℃から約+50℃の温度範囲で減圧、200μbarまたは100μbarなどの1mbar以下で行ってもよい。
【0035】
さらなる態様において、本発明は、再構成ジェランガム組成物を調製する方法に関し、該方法は、凍結乾燥ジェランガム組成物を調製する方法に関する上記工程(すなわち、工程(i)、工程(ii)、工程(iii)および工程(iv))ならびにさらに十分な量の医薬上許容される再構成溶媒を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程(工程(v))を含む。
【0036】
医薬上許容される再構成溶媒は、多種多様な液体組成物から選ばれ得る。しかし、凍結乾燥により水のみ除去され、工程(i)の調製溶媒中に以前に溶解した化合物は再構成溶媒中に再溶解することを考慮しなければならない。さらに、再構成ジェランガム組成物の使用目的は、再構成溶媒の選択に影響を及ぼす。いくつかの実施形態では、再構成溶媒は、水、特に注射用水(WFI)である。他の実施形態では、再構成溶媒は。グルコース溶液である。例えば、グルコース溶液は、グルコース濃度、例えば約300mMグルコース水溶液であってもよく、緩衝化、例えばクエン酸緩衝化されていてもよい。付加製造などの特定の下流用途におけるジェランガムの使用を妨害する多量のカチオンを含有する溶液は、再構成する溶媒として使用することから除外される。
【0037】
使用される再構成溶媒の量は、ジェランガム組成物のさらなる使用目的によって決定される。ジェランガムが、付加製造、特に3Dプリンティングなどの下流用途において使用される場合、再構成組成物中のジェランガム濃度は比較的高いことが好ましい。いくつかの実施形態によれば、再構成溶媒中のジェランガム濃度は約20mg/mlおよび約50mg/mlの間である。具体的で例示的な再構成溶媒中のジェランガム濃度は、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、35mg/mlである。
【0038】
凍結乾燥ジェランガム組成物を調製する方法の好ましい実施形態では、さらに少なくともひとつのろ過工程を含む。同様に、再構成ジェランガム組成物の調製方法の好ましい実施形態では、該方法は、さらに少なくともひとつのろ過工程を含む。ろ過はバイオバーデンを減少させ、それぞれの方法のどこかで導入された望ましくない粒子を除去するのを助け得る。無菌cGMPジェランガムを提供する可能性さえ構成し得る。ろ過は原則として、活性炭、繊維または膜などの多様なフィルター材料を用いるカートリッジまたは単回使用フィルターで行うことができる。本発明の好ましい実施形態では、膜はフィルター材料として使用される。本発明に記載の好ましい膜フィルター材料としては、ポリエーテルスルホン(PES)およびフッ化ポリビニリデン(PVDF)が挙げられる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態では、上記方法の工程(iii)で得られた組成物は、無菌ろ過に供される。無菌ろ液の製造に適するフィルターは、孔径0.22μm以下、特に0.2μm以下を有し、最小107cfu/cm2のブレブンディモナス・ディミヌタ(Brevundimonas dimunita)を保持してバクテリアチャレンジをパスすることができる。いくつかのサンプルは孔径0.1μmなどのさらに小さな孔径のろ過が有益かもしれない。いくつかの実施形態では、孔径0.22μm以下、例えば0.22μmまたは0.2μmのPVDF膜を無菌ろ過に使用する。
【0040】
代替的または追加的に、上記方法の工程(iii)で得られた組成物は、本発明のいくつかの実施形態では、バイオバーデン低減ろ過に供される。本発明に記載のバイオバーデン低減ろ過に適切なフィルターは、孔径0.4μm以下、特に0.22μm以下を有する。例えば、孔径0.4μm以下、例えば0.22μmまたは0.2μmのPES膜フィルターをバイオバーデンろ過に使用してもよい。本明細書で使用されるバイオバーデン低減ろ過は、好ましくはコロニー形成単位(CFU)の数を100mL当たり10に低減する。
【0041】
本発明の一定の好ましい実施形態では、上記方法の工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過(前ろ過とも称する)および無菌ろ過(フィルター滅菌とも称する)の両方に供する。例えば、フィルターの直径に対するろ過される容量に応じて、10CFU/100ml以下は許容され、この要件を満たさない場合、その後の無菌ろ過のために十分に低いバイオバーデンを得るために、細菌保持フィルターを通する前ろ過を使用することが必要であり得る。一定の好ましい実施形態では、工程(iii)で得られた溶液を2つのろ過工程に供する。したがって、工程(iii)で得られた溶液を最初にバイオバーデン低減ろ過に供し、次に無菌ろ過に供することにより無菌溶液を提供することがさらに好ましい。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「無菌」とは、生存可能な微生物を含まないことを意味する。例えば、組成物は、10-6に等しいかまたはそれ未満の滅菌保証レベル(SAL)を有する場合、無菌と定義され得る。所定の滅菌プロセスのSALは、そのプロセスに暴露された後の製品品目において微生物が生存する確率として表される。例えば、10-6のSALは、最終製品の1×106滅菌品目中、非滅菌品目が1つ以下である確率を示す。本発明者らは、フィルター滅菌が、γ線照射などの他の滅菌方法よりも有利であることを見出した。なぜならcGMP規制、特に医薬品のcGMP規制を妨害しうる不要な不純物を生成して製品組成を変化させるリスクがないからである。
【0043】
特に工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過または無菌ろ過に供する場合、凍結乾燥工程(iv)は好ましくは、無菌条件下で行われる。「無菌条件」は、微生物汚染を防ぐように設計された条件である。例えば、アイソレーターまたはアクセス制限バリアシステム(RABS)を使用してもよく、および/またはバイオバーデン低減からおよび/または無菌ろ過以降の溶液の処理は、クリーンルーム環境、特にクラスAのクリーンルーム環境で行われる。
【0044】
上記方法により、それぞれの工程(iii)の後、すなわちジェランガムが完全に溶解し、その濃度が調製溶媒のさらなる添加によって任意に調整された後のジェランガムの濃度は、約3mg/mlまでである。本発明者らは、約3mg/mlより高濃度のジェランガムは、ろ過、特に無菌ろ過に問題を生じ得ることを見出した。例えば、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約1mg/mlから約3mg/mlであってもよい。いくつかの実施形態では、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約1.0mg/mlから約3.0mg/ml、特に約1.5mg/mlから約2.5mg/ml、より詳細には約1.8mg/mlから2.2mg/ml、例えば約2.0mg/mlである。
【0045】
凍結乾燥の前に、本方法は、バイアルまたは凍結乾燥トレイなどの適切な容器に適切な容量を充填する工程も包含しうる。一定の実施形態では、容器は、バイアル、特にガラスバイアル、または凍結乾燥トレイ、特に使い捨て凍結乾燥トレイである。容器がバイアルの場合、特に約1mlから約100mlの容量、特に50mlの容量を有し得る。容器が凍結乾燥トレイの場合、約100mlから約2000mlの容量を有し得る。充填後、容器は典型的には、半栓または栓がされる。本方法が組成物を滅菌する工程(例えば、フィルター滅菌による)を含む場合、キャッピングは、好適には、本明細書で定義される無菌条件下で行われる。
【0046】
凍結乾燥後、本方法は、凍結乾燥組成物を含む容器をキャッピングする工程をさらに包含し得る。本方法が、組成物を滅菌する工程(例えば、フィルター滅菌による)を含む場合、キャッピングは、好適には、本明細書で定義されるような無菌条件下で行われる。
【0047】
各工程の終了時に、適切な方法によって前の工程が成功裏に終了したことを確認するために、1つ以上の試験サンプルを採取してもよいことは、本発明に包含される。例えば、pHおよび/または濃度サンプルを、情報目的のため、または次の工程に進む前の調整のために、採取してもよい。一定の実施形態では、工程(i)の後にpH調整は行われない。
【0048】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の凍結乾燥組成物の調製方法は下記の工程を含む:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;および
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の凍結乾燥組成物の調製方法は下記の工程を含む:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iiic)工程(iiib)で得られた溶液を適当な容器に充填する工程;
(iiid)容器を半栓する工程;
(iv)容器中の溶液を凍結乾燥する工程;および
(v)凍結乾燥終了後容器をキャッピングする工程。
【0050】
さらなる実施形態において、本方法は上記の工程以外の工程を含まない、すなわち、本方法は、該工程からなる:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iiic)工程(iiib)で得られた溶液を適当な容器に充填する工程;
(iiid)容器を半栓する工程;
(iv)容器中の溶液を凍結乾燥する工程;および
(v)凍結乾燥終了後容器をキャッピングする工程。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の再構成組成物を調製する方法は下記の工程を含む:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程;および
(v)十分な量の医薬的に利用可能な再構成溶液を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載の凍結乾燥組成物の調製方法は、下記の工程を含む:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iiic)工程(iiib)で得られた溶液を適当な容器に充填する工程;
(iiid)容器を半栓する工程;
(iv)容器中の溶液を凍結乾燥する工程;
(v)凍結乾燥終了後容器をキャッピングする工程;
(vi)十分な量の医薬的に利用可能な再構成溶液を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程。
【0053】
さらなる実施形態において、本方法は上記の工程以外の工程を含まない、すなわち、本方法は、該工程からなる:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iiic)工程(iiib)で得られた溶液を適当な容器に充填する工程;
(iiid)容器を半栓する工程;
(iv)容器中の溶液を凍結乾燥する工程;
(v)凍結乾燥終了後容器をキャッピングする工程;
(vi)十分な量の医薬的に利用可能な再構成溶液を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程。
【0054】
本発明のいくつかの実施形態では、再構成組成物中のジェランガム含有量は、再構成溶液の総容量に基づいて、約2%(w/v)から約5%(w/v)、特に約2.0%(w/v)から約3.0%(w/v)、より詳細には約2.5%(w/v)であってもよい。再構成溶液は、例えば下記のようにバイオインクの調製に使用することができる。この文脈において、再構成組成物を他のポリマーおよび/または生細胞などの他のバイオインク成分と一緒に混合することが可能である。いくつかの実施形態では、再構成溶液は、最終溶液の総容量中のアルギネートの含有量が約1%(w/v)から約3%(w/v)、特に約1.0%(w/v)から約2.0%(w/v)、より詳細には約1.5%(w/v)に達するようにアルギネートと一緒に混合してもよい。いくつかの実施形態では、再構成ジェランガム溶液と一緒に混合されうる例示的な生細胞は、軟骨細胞、特にヒト軟骨細胞由来の軟骨細胞、より詳細にはヒト耳介軟骨細胞由来の軟骨細胞である。
【0055】
更なる態様において、本発明は、ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物であって、カルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比が約15:1から約30:1である組成物に関する。特定の実施形態では、カルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比は、約20:1から約27:1、より詳細には約21.5:1から約25:1である。凍結乾燥組成物は、本明細書に記載の方法にしたがって調製されうる。調製方法に関して上記にすでに述べたように、ジェランガムは、高アシルジェランガム、低アシルジェランガムまたはその混合物であり得る。好ましい実施形態では、低アシルジェランガムが使用される。カルシウムイオン封鎖剤は上記本明細書に定義の通りである。特定の実施形態ではカルシウムイオン封鎖剤は、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれる。より詳細には、カルシウムイオン封鎖剤は、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれる。一定の好ましい実施形態では、カルシウムイオン封鎖剤は、クエン酸ナトリウム、特にクエン酸三ナトリウム二水和物である。
【0056】
本発明によれば、凍結乾燥組成物は無菌が好ましい。
【0057】
残留水分含量が、凍結乾燥組成物を特徴付けるために使用され得ることは既に述べた。本発明のいくつかの実施形態では、凍結乾燥組成物は、約5重量%以下、特に約4重量%以下の水分含量を有する。いくつかの好ましい実施形態では、水分含量は約5重量%および約2重量%の間である。残留水分含量を決定するための標準的な方法は、Karl-Fischer滴定である。
【0058】
さらにさらなる態様において、本発明は、医薬上許容される再構成溶媒を使用するジェランガムの再構成を可能にするのに十分な容量の容器に前述と同義の凍結乾燥組成物を含む用量単位製剤に関する。この文脈において、十分な容器容量とは、再構成溶液を製造するために凍結乾燥組成物をより広い容器に移す必要がないことを意味する。むしろ、いくつかの好ましい実施形態では、医薬上許容される、無菌再構成溶媒を組成物とともに容器に添加して、付加製造などの下流の用途に適した濃度への再構成を可能にすることができる。適切な大きさの容器を使用することにより、起こり得る汚染を低減し、下流での使用における取り扱いを容易にする。例えば、単一の容器を、ジェランガム組成物が例えば3Dバイオプリンターに供給されるまでの凍結乾燥、再構成、および任意のさらなる工程に使用することができる。
【0059】
容器は、様々な立体形状の様々な材料から作製し得る。いくつかの実施形態において、容器は、バイアル、特にガラスバイアル、または凍結乾燥トレイ、特にプラスチック製の使い捨て凍結乾燥トレイである。同様に、容器の容量は、意図される下流適用の必要性に応じて選ばれ得る。例示的な容量は、約1mlから約100ml、特に約50ml、または約100mlから約2000mlの範囲であってよい。
【0060】
特定の実施形態において、容器は、約1mlから約100ml、特に50mlの容量を有するガラスバイアルである。他の特定の実施形態において、容器は、約100mlから約2000mlの容量を有する使い捨て凍結乾燥トレイである。
【0061】
例示的な投与単位製剤として、約20mgから約50mgのジェランガム、または特に、約20mgから約50mgのジェランガムおよび約0.9mgから約2.5mgのクエン酸ナトリウムを含む凍結乾燥組成物を含有する容器、特にガラスバイアルが記載されうる。この例示的な投与単位製剤は、例えば、注射用滅菌水などの再構成溶媒1mlで再構成し得る。
【0062】
本明細書に記載の凍結乾燥ジェランガム組成物を含む第1の容器、例えばバイアルまたは凍結乾燥トレイと、医薬上許容される再構成溶媒、特に注射用水を含む第2の容器、例えばシリンジとを含むキットを提供することも本発明に包含される。
【0063】
さらにさらなる態様において、本発明は、本明細書中に上記のように無菌凍結乾燥組成物から再構成された無菌組成物を対象とする。かかる無菌再構成組成物の特定の実施形態において、ジェランガムは、低アシルジェランガムであり、カルシウムイオン封鎖剤は、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれ、特にリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれ、より詳細にはクエン酸ナトリウム、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物である。
【0064】
さらにさらなる態様において、本発明は、本明細書に記載の凍結乾燥組成物または再構成組成物の医薬用途に関する。この態様によれば、凍結乾燥組成物または再構成組成物は、医薬、特にヒト医薬における使用のためのものである。
【0065】
本明細書に記載の例示的な医薬用途は、再生医療である。例えば、本発明に記載の凍結乾燥組成物または再構成組成物を組織工学、特に付加製造、より詳細にはバイオプリンティングなどの交互吸着成膜方法(layer-by-layer deposition method)において使用してもよい。付加製造に基づくバイオファブリケーション技術は、再生医療に使用するための生きた患者特異的な組織および器官を製造することを可能しうるので、大きな可能性を秘めている。これらの構造は、個々の患者の臨床3Dモデルに基づいて設計され、個人化された組織移植片を作製することができる。外耳または鼻の再建は、バイオプリントされた個人化された移植片によって著しく改善され得る臨床適用のひとつである。かかる移植片やインプラントは、自己細胞を用いて作製することもできる。本発明に記載のジェランガムおよび再構成溶媒を含む再構成組成物は、いわゆるバイオインク、すなわち細胞を含むバイオポリマー製剤の成分として使用し得、その結果、架橋バイオポリマー製剤または足場または組織移植片の成分として使用し得る。ジェランガムを含むバイオインクはEP 20 180 620.5に記載され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
したがって、本発明に記載の凍結乾燥組成物(再構成後)または再構成組成物をバイオインクの成分として使用してもよいし、生細胞、例えば軟骨細胞と一緒に混合してもよい。発明者らは、驚いたことに、ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤(クエン酸ナトリウムなど)の総重量に対して、特に適切な量のカルシウムイオン封鎖剤、例えば約1重量%から約6重量%、特に3.5重量%から4.5重量%のカルシウムイオン封鎖剤を含有する水溶液を使用する場合、カルシウムイオン封鎖剤は、かかるバイオインクの印刷可能性、または低pHによる細胞の生存可能性を妨げないことを見出した。
【0067】
本発明による凍結乾燥組成物または再構成組成物の例示的な医薬用途は、例えば損傷後の再建手術、腫瘍を除去する手術において、または先天性欠損症(例えば、無耳症、小耳症)を治療するために組織移植片の成分としてでもよい。この文脈において、組成物は、例えば3Dバイオプリンティングによる組織移植片の足場の製造において使用してもよい。
【0068】
さらなる実施形態において、上述した通り、ジェランガムおよびクエン酸ナトリウムなどのカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物は、凍結乾燥組成物の再構成後、無菌適用に使用するためのものである。
【0069】
この文脈において、本発明は、またジェランガムおよびクエン酸ナトリウムなどのカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物、再構成後、無菌適用における使用に関する。
【0070】
かかる無菌適用は、例えば、非医療目的、例えば細胞培養における三次元足場を提供するためのバイオテクノロジーの分野であってもよい。
【0071】
本発明は、下記実施例および図によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図面の説明文
【
図1】ジェランガムの繰り返し単位の化学式。(a)高アシルジェランガム;(b)低アシルジェランガム。
【実施例】
【0073】
実施例1:カルシウムイオン封鎖剤なしのジェランガムの製造
ジェランガム粉末(KELCOGEL(登録商標)CG-LA)を粉末バッグに秤量する。ジェランガムを最終製品濃度(プロセス終了時)が2.5mg/mlに達するように注射用水(WFI)に溶解する。粉末をWFIに徐々に加え、ジェランガムがすべて溶解し、ダマがほとんど生じないようにする。
【0074】
ジェランガムを適切に溶解/加水するために、混合物を半時間連続撹拌下で80℃以上に加熱する。溶液を撹拌し、粉末を溶解させる。粉末が完全に溶解した後、溶液は連続撹拌下室温で一晩冷却され、その後、情報目的のためにpHと濃度のサンプルを採取する。
【0075】
その後、製剤化したジェランガムをバイオバーデン低減フィルター(シングルフィルター、0.2μm、PES)でろ過し、ガラス瓶に入れ、クラスAの製造エリア(クラスBのバックグラウンドあり)に入れる。
【0076】
バイオバーデンが減少したジェランガムを、無菌フィルター(シングルフィルター、0.2μm、PVDF)でろ過し、サージタンクに入れ、クラスAの製造エリア(クラスBのバックグラウンドあり)に入れる。ろ過後、凍結乾燥機への装填に則して50mlガラスバイアルへの充填が行われる。凍結乾燥は、大気圧での凍結と-10℃、-50℃、-15℃および-50℃の温度工程、100μbarでの一次乾燥と-15℃、0℃および-10℃の温度工程、ならびに100μbarでの二次乾燥と+10℃および+50℃の温度工程で行われる。
【0077】
凍結乾燥後、各バイアルは50mgのジェランガムを含有する。
【0078】
実施例2:カルシウムイオン封鎖剤入りのジェランガムの製造
ジェランガム粉末(KELCOGEL(登録商標)CG-LA)を粉末バッグに秤量する。ジェランガムを標的濃度(プロセス終了時)が2.0mg/ml(0.20%w/w)に達するようにジェランガム1グラムあたり0.15mMクエン酸ナトリウム三水和物の注射用水(WFI)溶液に溶解する。粉末をWFIに徐々に加え、ジェランガムがすべて溶解し、ダマがほとんど生じないようにする。ジェランガムを完全に添加した後、溶解を促進するためにバルクの温度を室温から38℃までわずかに上げる。溶液を撹拌し、粉末を溶解させる。
【0079】
粉末が完全に溶解した後、情報目的のためにpHと濃度のサンプルを採取する。
【0080】
その後、製剤化したジェランガムをバイオバーデン低減フィルター(シングルフィルター、0.2μm、PES)でろ過し、ガラス瓶に入れる。この工程は、クラスCの製造エリアで行った。
【0081】
バイオバーデンが減少したジェランガムを、無菌フィルター(シングルフィルター、0.2μm、PVDF)でろ過し、サージタンクに入れ、クラスAの製造エリアに入れる。ろ過後、凍結乾燥機への装填に則して50mlガラスバイアルへの充填が行われる。凍結乾燥は、大気圧での凍結と-10℃、-50℃、-15℃および-50℃の温度工程、100μbarでの一次乾燥と-15℃、0℃および-10℃の温度工程、ならびに100μbarでの二次乾燥と+10℃および+50℃の温度工程で行われる。
【0082】
凍結乾燥後、各バイアルは40.8mgのジェランガムと1.8mgのクエン酸ナトリウム三水和物を含有する。望ましくないゲル化またはガラスバイアル破損の問題は発生しなかった。
【0083】
本発明はさらに下記項目により特徴づけられる。
【0084】
項目1.以下の工程を含む、凍結乾燥ジェランガム組成物を調製する方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥し、それにより凍結乾燥ジェランガム組成物を提供する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度は、約3mg/mlまでである。
【0085】
項目2.以下の工程を含む、再構成ジェランガム組成物を調製する方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程;
(v)十分な量の医薬上許容される再構成溶媒を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度が、約3mg/mlまでである。
【0086】
項目3.工程(iii)の後のジェランガムの濃度が、約1mg/mlから約3mg/mlである、項目1または項目2に記載の方法。
【0087】
項目4.混合工程(ii)が、最大95℃の温度、特に約70℃~95℃の間の温度または約25℃~40℃の間の温度で実施される、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0088】
項目5.さらに少なくともひとつのろ過工程を含む、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0089】
項目6.凍結乾燥に供される前に、工程(iii)で得られた溶液がバイオバーデン低減フィルター上でろ過および/またはフィルター滅菌される、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0090】
項目7.凍結乾燥に供される前に、工程(iii)で得られた溶液が、最初にバイオバーデン低減ろ過に次に無菌ろ過に供され、それにより無菌溶液が提供される、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0091】
項目8.無菌ろ過に使用するフィルターの孔径が、0.22μm以下、例えば、0.22μmまたは0.20μmである、項目6または項目7のいずれか1項に記載の方法。
【0092】
項目9.凍結乾燥が無菌条件下で行われる、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0093】
項目10.ジェランガムが、低アシルジェランガム、高アシルジェランガムまたはその混合物、特に低アシルジェランガムである、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0094】
項目11.医薬上許容される調製溶媒が、水またはカルシウムイオン封鎖剤の水溶液、特にクエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩またはリンゴ酸アルカリ金属塩溶液、より詳細にはクエン酸ナトリウム水溶液、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物水溶液である、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0095】
項目12.工程(iii)の後の組成物中のカルシウムイオン封鎖剤の濃度が、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mM、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMである、項目11に記載の方法。
【0096】
項目13.医薬上許容される調製溶媒が、クエン酸ナトリウム水溶液であり、工程(iii)の後の組成物中のクエン酸ナトリウム濃度が、ジェランガム粉末1グラムあたり約0.1mMからジェランガム粉末1グラムあたり約0.2mM、特にジェランガム粉末1グラムあたり約0.15mMである、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0097】
項目14.工程(iii)の後のジェランガムの濃度が、約1.0mg/mlから約3.0mg/ml、特に約1.5mg/mlから約2.5mg/ml、より詳細には約2.0mg/mlである、先行する項目のいずれか1項に記載の方法。
【0098】
項目15.以下の工程を含む、項目1、3~14のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物の調製方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib) 工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iv)得られた溶液を凍結乾燥する工程;
ここで、工程(iii)の後のジェランガムの濃度が、約1mg/mlから約3mg/mlである。
【0099】
項目16.以下の工程からなる、項目1、3~14のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物の調製方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iiic)工程(iiib)で得られた溶液を適当な容器に充填する工程;
(iiid)容器を半栓する工程;
(iv)容器中の溶液を凍結乾燥する工程;および
(v)凍結乾燥終了後容器をキャッピングする工程.
【0100】
項目17.以下の工程からなる、項目2~14のいずれか1項に記載の再構成ジェランガム組成物の調製方法:
(i)ジェランガム粉末を医薬上許容される調製溶媒に添加する工程;
(ii)実質的に完全に溶解するまで混合する工程;
(iii)任意に、さらなる調製溶媒を添加する工程;
(iiia)工程(iii)で得られた溶液をバイオバーデン低減ろ過に供する工程;
(iiib)工程(iiia)で得られた溶液を無菌ろ過に供する工程;
(iiic)工程(iiib)で得られた溶液を適当な容器に充填する工程;
(iiid)容器を半栓する工程;
(iv)容器中の溶液を凍結乾燥する工程;
(v)凍結乾燥終了後容器をキャッピングする工程;および
(vi)十分な量の医薬上許容される再構成溶媒を添加し、それにより再構成ジェランガム組成物を提供する工程。
【0101】
項目18.カルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比が、約15:1から約30:1、特に約20:1から約27:1、より詳細には約21.5:1から約25:1である、ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物。
【0102】
項目19.無菌である、項目18に記載の凍結乾燥組成物。
【0103】
項目20.ジェランガムが、低または高アシルジェランガムまたはその混合物、特に低アシルジェランガムである、項目18に記載の凍結乾燥組成物。
【0104】
項目21.カルシウムイオン封鎖剤が、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれ、特にリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれ、より詳細にはクエン酸ナトリウム、より詳細にはクエン酸三ナトリウム二水和物である、項目18から20に記載の凍結乾燥組成物。
【0105】
項目22.組成物の水分含量が、約5重量%以下、特に約4重量%以下である、項目18から21に記載の凍結乾燥組成物。
【0106】
項目23.組成物が、項目1から17のいずれか1項の方法で得られる、項目18から22のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物。
【0107】
項目24.医薬上許容される再構成溶媒を使用するジェランガムの再構成を可能にするのに十分な容量の容器に、先行する項目のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物を含む用量単位製剤。
【0108】
項目25.容器が、バイアル、特にガラスバイアル、より詳細には容量約1mlから約100ml、特に50mlのガラスバイアルである、項目24に記載の用量単位製剤。
【0109】
項目26.容器が、凍結乾燥トレイ、特に使い捨て凍結乾燥トレイ、より詳細には容量約100mlから約2000mlの使い捨て凍結乾燥トレイである、項目24または項目25に記載の用量単位製剤。
【0110】
項目27.ジェランガムおよびカルシウムイオン封鎖剤を含む無菌凍結乾燥組成物および注射用水などの医薬上許容される再構成溶媒から再構成された無菌組成物であって、カルシウムイオン封鎖剤に対するジェランガムの重量比が、約15:1から約30:1であり、カルシウムイオン封鎖剤が、クエン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ金属塩およびリンゴ酸アルカリ金属塩からなる群より選ばれ、特にリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびその混合物からなる群より選ばれる、無菌組成物。
【0111】
項目28.医薬に使用、特にヒト医薬に使用するための、項目18~23のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物または項目24~26のいずれか1項に記載の用量単位製剤または項目27に記載の再構成組成物。
【0112】
項目29.無菌適用における、ジェランガムおよびクエン酸ナトリウムなどのカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物の再構成後使用のための、項目18~23のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物。
【0113】
項目30.無菌適用における、ジェランガムおよびクエン酸ナトリウムなどのカルシウムイオン封鎖剤を含む凍結乾燥組成物の再構成後の、項目18~23のいずれか1項に記載の凍結乾燥組成物または項目24~26のいずれか1項に記載の用量単位製剤の使用。
【国際調査報告】