(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ノナン酸エステル
(51)【国際特許分類】
C07C 69/33 20060101AFI20240614BHJP
C12P 7/6436 20220101ALI20240614BHJP
C12P 7/18 20060101ALI20240614BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240614BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240614BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240614BHJP
C12N 9/14 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C07C69/33
C12P7/6436
C12P7/18
A61Q19/00
A61Q19/10
A61K8/37
C12N9/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577825
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022064529
(87)【国際公開番号】W WO2022263149
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Evonik Operations GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1-11, 45128 Essen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ユリアン リービッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン マリアン フォン ホーフ
(72)【発明者】
【氏名】トビアス カール フーバート ミュラー
(72)【発明者】
【氏名】マキシム ヤヴォルスキー
(72)【発明者】
【氏名】スナイ カラコク
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シューフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドラ トロンビタス
【テーマコード(参考)】
4B064
4C083
4H006
【Fターム(参考)】
4B064AC05
4B064AC07
4B064AD87
4B064CB24
4C083AA122
4C083AB032
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4C083AB242
4C083AB332
4C083AB472
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4C083AC122
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4C083AC172
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4C083AC352
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4C083AC862
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4C083FF01
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB03
4H006AB12
4H006AB68
4H006AC48
4H006BN10
(57)【要約】
本発明は、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステル、その製造方法、および特に化粧品組成物または家庭用ケア組成物におけるその使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルであって、前記n-ノナン酸エステルは、少なくとも2つのエステルが、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトール中の少なくとも1つのノナノイル基の少なくとも1つのエステル化位置に関して異なる混合物の形態をとるが、ただし、平均エステル化度が3.2より大きいエリスリトールのn-ノナン酸エステルは除外されることを特徴とする、n-ノナン酸エステル。
【請求項2】
前記n-ノナン酸エステルが、モノ-n-ノナン酸エステルの少なくとも2つの位置異性体を含むことを特徴とする、請求項1記載のn-ノナン酸エステル。
【請求項3】
前記n-ノナン酸エステルが、モノ-n-ノナン酸エステルおよびジ-n-ノナン酸エステル、好ましくはトリ-n-ノナン酸エステルを含むことを特徴とする、請求項1または2記載のn-ノナン酸エステル。
【請求項4】
前記n-ノナン酸エステルが、1.0~4.0、好ましくは1.0~3.0、より好ましくは1.1~2.7、特に好ましくは1.3~2.6の平均エステル化度を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のn-ノナン酸エステル。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載のn-ノナン酸エステルを含む混合組成物であて、前記組成物が、25重量%未満、好ましくは0.01重量%~20重量%、特に好ましくは0.05重量%~10重量%の遊離n-ノナン酸を含むことを特徴とし、ここで、重量%は、キシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールのすべてのn-ノナン酸エステルとn-ノナン酸との合計に対するものである、混合組成物。
【請求項6】
前記組成物が、0.05重量%~40重量%、好ましくは0.2重量%~25重量%、特に好ましくは0.5重量%~10重量%の遊離キシリトール、ソルビトールおよび/またはエリスリトールを含むことを特徴とし、ここで、重量%は、キシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールのすべてのn-ノナン酸エステルとキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールのすべてとの合計に対するものである、請求項5記載の混合組成物。
【請求項7】
前記組成物が、0.1重量%~60重量%、好ましくは1.0重量%~50重量%、さらにより好ましくは5.0重量%~40重量%、特に好ましくは10重量%~35重量%の少なくとも1つの溶媒を含み、好ましくは、前記溶媒は、以下の群:
a)1,2-ジオール、1,3-ジオール、1,4-ジオールおよびα,ω-ジオールであるが、ただし、前述のものは、好ましくは2~8個の炭素原子を有するものとする、
b)ポリオール、特にグリセリン、オリゴグリセリン、例えばジグリセリンおよびポリグリセリン、
c)グリセリン脂肪酸部分エステル、オリゴグリセリン脂肪酸部分エステル、例えばジグリセリン脂肪酸部分エステルおよびポリグリセリン脂肪酸部分エステル、ならびに
d)水
から選択されることを特徴とする、請求項5または6記載の混合組成物。
【請求項8】
請求項1から6までのいずれか1項記載のキシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルの酵素的な製造方法であって、
A)キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールと、少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体であって、特にn-ノナン酸エステルおよびn-ノナン酸、より好ましくはn-ノナン酸から選択されるものを提供するプロセスステップと、
B)キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールを、リパーゼの存在下で、75℃~110℃、好ましくは77℃~100℃、さらにより好ましくは80℃~95℃の温度で前記少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体と反応させて、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルを得るプロセスステップと、任意に
C)前記キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルを精製するプロセスステップと
を含む、方法。
【請求項9】
プロセスステップA)が、前記キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールと、前記少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体との少なくとも10分間、好ましくは30分間、さらにより好ましくは60分間のブレンドを含み、ここで、前記ブレンドを、好ましくは80℃~120℃、好ましくは90℃~120℃、さらにより好ましくは95℃~120℃、さらにより好ましくは100℃~120℃の温度範囲内で行うことを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールおよび前記少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体が、プロセスステップB)の開始時に反応混合物全体に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%を占めることを特徴とする、請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記リパーゼが、サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼ(アクセッション番号O59952)、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼAおよびB(アクセッション番号P41365)ならびにムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)由来のリパーゼ(アクセッション番号P19515)、フミコラ種(Humicola sp.)由来のリパーゼ(アクセッション番号O59952)、リゾムーコル・ジャバニカス(Rhizomucor javanicus)由来のリパーゼ(アクセッション番号S32492)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)由来のリパーゼ(アクセッション番号P61872)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来のリパーゼ(アクセッション番号P20261、P32946、P32947、P3294およびP32949)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のリパーゼ(アクセッション番号P61871)、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)由来のリパーゼ(アクセッション番号P25234)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)由来のリパーゼ(ABG73613、ABG73614およびABG37906)およびペニシリウム・シクロピウム(Penicillium cyclopium)由来のリパーゼ(アクセッション番号P61869)、ならびにそれらのアミノ酸レベルでのそれぞれの少なくとも60%の相同体を含む群から選択されることを特徴とする、請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
プロセスステップB)を、1bar未満、好ましくは0.5bar未満、特に好ましくは0.1bar未満の圧力で実施することを特徴とする、請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
プロセスステップAにおいて、前記キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールに加えて、以下の群:アガロース、アリトール、アルロース、アルトリトール、アミロペクチン、アミロース、アラビニトール、アラビノース、セロビオース、セルロース、キチン、シクロデキストリン、デオキシリボース、デキストラン、エリスリトール、フルクタン、フルクトース、フコース、ガラクチトール、ガラクトース、グルシトール、グルコース、グリコーゲン、ヒアルロン酸、イジトール、イヌリン、イソマルト、イソマルツロース、イソメリシトース、ラクチトール、ラクトース、ラクチュロース、マルチトール、マルトヘキソース、マルトペントース、マルトース、マルトテトロース、マルトトリオース、マルツロース、マンニトール、マンノース、メリジトース、ペクチン、ラフィノース、ラムノース、リビトール、リボース、スクロース、ソルビトール、ソルボース、スタキオース、デンプン、デンプン加水分解生成物、スレイトール、トレハルロース、ウンベリフェロース、キシリトールおよびキシロースから選択される少なくとも1つの他の糖または糖アルコールを提供し、これもさらなるプロセスステップを通過することを特徴とする、請求項8から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項8から13までのいずれか1項記載の方法によって得ることができる、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステル。
【請求項15】
請求項1から4までもしくは14のいずれか1項記載のキシリトール、ソルビトールもしくはエリスリトールの少なくとも1つのn-ノナン酸エステル、または請求項5から7までのいずれか1項記載の混合組成物の、粘度調整剤、ケア有効成分、発泡ブースターまたは可溶化剤、抗菌剤、帯電防止剤、バインダー、腐食防止剤、分散剤、乳化剤、皮膜形成剤、保水剤、不透明化剤、口腔ケア剤、保存料、スキンケア剤、親水性エモリエント剤、泡安定剤および/または非イオン性界面活性剤としての、好ましくは、粘度調整剤、乳化剤、抗菌剤および/または親水性エモリエント剤としての、特に好ましくは、粘度調整剤としての、特に、増粘剤および/または抗菌剤としての、特に、洗浄配合物またはケア配合物における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステル、その製造方法、および特に化粧品組成物におけるその使用を提供する。
【0002】
先行技術
ノナン酸/ペラルゴン酸
n-ノナン酸(ペラルゴン酸、CAS 112-05-0)は、石油化学起源のn-ノナナールの酸化によって得ることができる(“Carboxylic Acids, Aliphatic,”:Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry 2014)。またn-ノナン酸は、ω-9-脂肪酸、例えばオレイン酸およびエルカ酸またはそれらのエステルのオゾン分解によって得ることができる。しかし、オゾン分解は、例えばオゾン発生器の使用など、高いエネルギー需要と特定のプロセス要件を有するプロセスである。さらに、使用されるω-9-脂肪酸は、例えばパーム油、パーム核油およびヤシ油といった熱帯植物油から得られることが多い。より一層持続可能なn-ノナン酸の製造方法は、過酸化水素に基づくものであり(Soutelo-Maria et al. in Catalysts 2018, 8, 464)、特に、例えば米国特許第9272975号明細書、米国特許第8846962号明細書、米国特許第8222438号明細書、国際公開第2007039481号および国際公開第2011080296号のようなプロセスが熱帯植物油から得られていないω-9-脂肪酸またはそのエステルからも進行して実施される場合には、こうしたプロセスが該当する。
【0003】
キシリトールおよびn-ノナン酸のエステル
Savelliらは、International Journal of Pharmaceutics 1999, 182, 221-23において、純粋な立体異性体1-O-ノナノイル-D,L-キシリトールの位置選択的合成とその両親媒性としての特性(水溶性、臨界ミセル濃度(CMC)、表面張力、リオトロピック液晶の形成、HLB値)について述べている。先行技術に記載されているプロセスの欠点は、イソプロピリデン保護基を使用した有機溶媒存在下での3段階合成である。ここではアシル化にノナノイルクロリドが使用されるが、これも欠点である。同じ合成経路で得られた1-O-ノナノイル-D,L-キシリトールについては、GoodbyらによるLiquid Crystals 1997, 22, 367-378およびDouilletらによる仏国特許出願公開第2728257号明細書にも同様の研究、例えば転移温度の測定が記載されている。Dahlhoffらは、Zeitschrift fuer Naturforschung, B: Chemical Sciences 1996, 51, 1229-1234において、1-O-ノナノイル-D,L-キシリトールの合成のために、溶媒として発がん性のあるベンゼン中に導入されたボランジイル保護基を選択した。ここでも、純粋な1-O-ノナノイル-D,L-キシリトール立体異性体の特性が液晶の形態で調べられている。
【0004】
ソルビトールおよびn-ノナン酸のエステル
欧州特許出願公開第879872号明細書には、潤滑油組成物の成分として、完全にエステル化されたソルビトールヘキサノナノエートが開示されている。
【0005】
その他の先行技術
韓国登録特許第10-1939851号公報には、無水キシリトールのエステル、およびエマルションにおけるレオロジー添加剤/粘度調整剤としての該無水キシリトールのカルボン酸エステルの使用が記載されている。先行技術に記載されている無水キシリトールカルボキシレートの欠点の1つは、親水性の低下である。先行技術に記載の無水キシリトールカルボキシレートのさらなる欠点は、その暗い色である。このような無水キシリトールカルボキシレートのさらなる欠点は、水性界面活性剤系における増粘性能の欠如である。
【0006】
独国特許出願公開第102009001748号明細書には、1molのソルビトール(グルシトールともいう)と1.55molのカプリル酸との無溶媒反応から得られるソルビタンエステル、およびこのようにして得られるソルビタンエステルの水性界面活性剤系の増粘剤としての使用が記載されている。記載された反応条件下では、ソルビトールが実質的に完全に、しかし少なくとも部分的には脱水されてソルビタンと称されるもの(生成物混合物)が形成されるというのが、このプロセスの欠点である。さらに、変色して臭気のある生成物が得られ、これは、追加の漂白または活性炭による処理なしでは、化粧品用途の品質基準を満たさない。
【0007】
本発明が対処する課題は、先行技術の少なくとも1つの欠点を克服することができるn-ノナン酸エステルを提供することであった。
【0008】
発明の詳細な説明
驚くべきことに、以下に記載されるn-ノナン酸エステルおよび以下に記載される方法は、本発明により対処される課題を解決することが可能であることが見出された。
【0009】
本発明の利点の1つは、本発明によるn-ノナン酸エステルが、先行技術と比較して、水性界面活性剤系の優れた増粘剤であることである。さらなる利点は、本発明によるn-ノナン酸エステルが、先行技術と比較して、優れた色および非常に良好な匂いも有することである。本発明の方法の利点の1つは、反応生成物として、使用される糖もしくは糖アルコールの分解生成物または分解生成物のエステルが非常に低レベルでしか得られないことである。本発明の利点の1つは、本発明による方法が、溶媒の非存在下で実施可能であることである。本発明の利点の1つは、本発明による方法が、1つの反応ステップで実施可能であることである。本発明の利点の1つは、本発明による方法が、保護基の化学反応なしに実施可能であることである。本発明のさらなる利点は、n-ノナン酸エステルが均質な反応混合物で得られるため、例えば抽出、結晶化、ろ過または蒸留のような追加のプロセスステップが不要であることである。本発明の利点の1つは、本方法が高温で実施可能であることである。このことは、共反応物の混和性の向上につながり、一方で、使用される酵素のリサイクル性は驚くほど高い。本発明のさらなる利点は、得られたn-ノナン酸エステルを配合物、特に化粧品配合物および家庭用ケア配合物に非常に容易に組み込めることである。
【0010】
したがって、本発明は、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルにおいて、該n-ノナン酸エステルは、少なくとも2つのエステルが、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトール中の少なくとも1つのノナノイル基の少なくとも1つのエステル化位置に関して異なる混合物の形態をとるが、ただし、平均エステル化度が3.2より大きいエリスリトールのn-ノナン酸エステルは除外されることを特徴とする、n-ノナン酸エステルを提供する。
【0011】
したがって、本発明は、構造的に異なるエステルの混合組成物を規定するものである。
【0012】
例えば、本発明により好ましいn-ノナン酸エステルは、モノ-n-ノナン酸エステルの少なくとも2つの位置異性体を含むことを特徴とする。「n-ノナン酸エステルは、少なくとも2つのエステルが、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトール中の少なくとも1つのノナノイル基の少なくとも1つのエステル化位置に関して異なる混合物の形態をとる」という表現は、それぞれ同じ糖アルコールの少なくとも2つのエステルが互いに異なることを意味すると理解される。
【0013】
キシリトールのn-ノナン酸エステルの場合、これらの様々なエステルを、例えば以下のものから選択することができる:1-O-ノナノイルキシリトール、2-O-ノナノイルキシリトール、3-O-ノナノイルキシリトール、4-O-ノナノイルキシリトール、5-O-ノナノイルキシリトール、1,2-O-ジノナノイルキシリトール、1,3-O-ジノナノイルキシリトール、1,4-O-ジノナノイルキシリトール、1,5-O-ジノナノイルキシリトール、2,3-O-ジノナノイルキシリトール、2,4-O-ジノナノイルキシリトール、2,5-O-ジノナノイルキシリトール、3,4-O-ジノナノイルキシリトール、3,5-O-ジノナノイルキシリトール、4,5-O-ジノナノイルキシリトール、1,2,3-O-トリノナノイルキシリトール、1,2,4-O-トリノナノイルキシリトール、1,2,5-O-トリノナノイルキシリトール、1,3,4-O-トリノナノイルキシリトール、1,3,5-O-トリノナノイルキシリトール、1,4,5-O-トリノナノイルキシリトール、2,3,4-O-トリノナノイルキシリトール、2,3,5-O-トリノナノイルキシリトール、2,4,5-O-トリノナノイルキシリトール、3,4,5-O-トリノナノイルキシリトール、1,2,3,4-O-テトラノナノイルキシリトール、1,2,3,5-O-テトラノナノイルキシリトール、1,2,4,5-O-テトラノナノイルキシリトール、1,3,4,5-O-テトラノナノイルキシリトール、2,3,4,5-O-テトラノナノイルキシリトールおよび1,2,3,4,5-O-ペンタノナノイルキシリトール、特に好ましくは1-O-ノナノイルキシリトール、2-O-ノナノイルキシリトール、3-O-ノナノイルキシリトール、4-O-ノナノイルキシリトール、5-O-ノナノイルキシリトール、1,2-O-ジノナノイルキシリトール、1,5-O-ジノナノイルキシリトール、4,5-O-ジノナノイルキシリトール、1,2,5-O-トリノナノイルキシリトールおよび1,4,5-O-トリノナノイルキシリトール。
【0014】
ソルビトールのn-ノナン酸エステルの場合、これらの様々なエステルを、例えば以下のものから選択することができる:1-O-ノナノイルソルビトール、2-O-ノナノイルソルビトール、3-O-ノナノイルソルビトール、4-O-ノナノイルソルビトール、5-O-ノナノイルソルビトール、6-O-ノナノイルソルビトール、1,2-O-ジノナノイルソルビトール、1,3-O-ジノナノイルソルビトール、1,4-O-ジノナノイルソルビトール、1,5-O-ジノナノイルソルビトール、1,6-O-ジノナノイルソルビトール、2,3-O-ジノナノイルソルビトール、2,4-O-ジノナノイルソルビトール、2,5-O-ジノナノイルソルビトール、2,6-O-ジノナノイルソルビトール、3,4-O-ジノナノイルソルビトール、3,5-O-ジノナノイルソルビトール、3,6-O-ジノナノイルソルビトール、4,5-O-ジノナノイルソルビトール、4,6-O-ジノナノイルソルビトール、5,6-O-ジノナノイルソルビトール、1,2,3-O-トリノナノイルソルビトール、1,2,4-O-トリノナノイルソルビトール、1,2,5-O-トリノナノイルソルビトール、1,2,6-O-トリノナノイルソルビトール、1,3,4-O-トリノナノイルソルビトール、1,3,5-O-トリノナノイルソルビトール、1,3,6-O-トリノナノイルソルビトール、1,4,5-O-トリノナノイルソルビトール、1,4,6-O-トリノナノイルソルビトール、1,5,6-O-トリノナノイルソルビトール、2,3,4-O-トリノナノイルソルビトール、2,3,5-O-トリノナノイルソルビトール、2,3,6-O-トリノナノイルソルビトール、2,4,5-O-トリノナノイルソルビトール、2,4,6-O-トリノナノイルソルビトール、2,5,6-O-トリノナノイルソルビトール、3,4,5-O-トリノナノイルソルビトール、3,4,6-O-トリノナノイルソルビトール、3,5,6-O-トリノナノイルソルビトール、4,5,6-O-トリノナノイルソルビトール、1,2,3,4-O-テトラノナノイルソルビトール、1,2,3,5-O-テトラノナノイルソルビトール、1,2,3,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,2,4,5-O-テトラノナノイルソルビトール、1,2,4,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,2,5,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,3,4,5-O-テトラノナノイルソルビトール、1,3,4,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,3,5,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,4,5,6-O-テトラノナノイルソルビトール、2,3,4,5-O-テトラノナノイルソルビトール、2,3,4,6-O-テトラノナノイルソルビトール、2,3,5,6-O-テトラノナノイルソルビトール、2,4,5,6-O-テトラノナノイルソルビトールおよび3,4,5,6-O-テトラノナノイルソルビトール、特に好ましくは、1-O-ノナノイルソルビトール、2-O-ノナノイルソルビトール、5-O-ノナノイルソルビトール、6-O-ノナノイルソルビトール、1,2-O-ジノナノイルソルビトール、1,6-O-ジノナノイルソルビトール、5,6-O-ジノナノイルソルビトール、1,2,3-O-トリノナノイルソルビトール、1,2,6-O-トリノナノイルソルビトール、1,5,6-O-トリノナノイルソルビトール、4,5,6-O-トリノナノイルソルビトール、1,2,4,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,2,5,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,3,4,6-O-テトラノナノイルソルビトール、1,3,5,6-O-テトラノナノイルソルビトールおよび1,4,5,6-O-テトラノナノイルソルビトール。
【0015】
エリスリトールのn-ノナン酸エステルの場合、これらの様々なエステルを、例えば以下のものから選択することができる:1-O-ノナノイルエリスリトール、2-O-ノナノイルエリスリトール、3-O-ノナノイルエリスリトール、4-O-ノナノイルエリスリトール、1,2-O-ジノナノイルエリスリトール、1,3-O-ジノナノイルエリスリトール、1,4-O-ジノナノイルエリスリトール、2,3-O-ジノナノイルエリスリトール、2,4-O-ジノナノイルエリスリトール、3,4-O-ジノナノイルエリスリトール、1,2,3-O-トリノナノイルエリスリトール、1,2,4-O-トリノナノイルエリスリトール、1,3,4-O-トリノナノイルエリスリトール、2,3,4-O-トリノナノイルエリスリトールおよび1,2,3,4-O-テトラノナノイルエリスリトール、特に好ましくは1-O-ノナノイルエリスリトール、2-O-ノナノイルエリスリトール、3-O-ノナノイルエリスリトール、4-O-ノナノイルエリスリトール、1,2-O-ジノナノイルエリスリトール、1,3-O-ジノナノイルエリスリトール、1,4-O-ジノナノイルエリスリトール、2,4-O-ジノナノイルエリスリトール、1,2,4-O-トリノナノイルエリスリトール、1,3,4-O-トリノナノイルエリスリトールおよび1,2,3,4-O-テトラノナノイルエリスリトール。
【0016】
本発明により好ましいn-ノナン酸エステルは、モノ-n-ノナン酸エステルおよびジ-n-ノナン酸エステル、好ましくはトリ-n-ノナン酸エステルを含むことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、この文脈において存在するモノ-n-ノナン酸エステルは、少なくとも2つの位置異性体を有する。
【0018】
本発明によれば、本発明によるn-ノナン酸エステルが、1.0~4.0、好ましくは1.0~3.8、より好ましくは1.1~2.5、特に好ましくは1.3~2.3の平均エステル化度を有することが好ましいが、ただし、平均エステル化度が3.2より大きいエリスリトールのn-ノナン酸エステルは除外される。GCによる本発明によるn-ノナン酸エステルのエステル化度の決定に関しては、以下を参照のこと。
【0019】
本発明により好ましいn-ノナン酸エステルは、25重量%未満、好ましくは0.01重量%~20重量%、特に好ましくは0.05重量%~10重量%の遊離n-ノナン酸を含む混合組成物中に存在することを特徴とし、ここで、重量%は、キシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールのすべてのn-ノナン酸エステルとn-ノナン酸との合計に対するものである。遊離n-ノナン酸は、プロトン化された形態であっても中和された形態であってもよい。
【0020】
ノナン酸エステルを含む本発明による混合組成物中の遊離n-ノナン酸の含有量は、最初に酸価を決定することによって決定される。これを用いて、そのモル質量によりn-ノナン酸の重量割合を決定することができる。酸価の決定に適した方法は、特にDGF C-V 2、DIN EN ISO 2114、Ph.Eur. 2.5.1、ISO 3682およびASTM D 974に準拠する方法である。鹸化価は、DGF C-V 3またはDIN EN ISO 3681に準拠して当業者により決定される。
【0021】
本発明により好ましいn-ノナン酸エステルは、0.05重量%~40重量%、好ましくは0.2重量%~25重量%、特に好ましくは0.5重量%~10重量%、最も好ましくは2.0重量%~8.0重量%の遊離キシリトール、ソルビトールおよび/またはエリスリトールを含む混合組成物中に存在することを特徴とし、ここで、重量%は、キシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールのすべてのn-ノナン酸エステルとキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールのすべてとの合計に対するものである。
【0022】
本発明により好ましい混合組成物は、本発明によるn-ノナン酸エステルを40.0重量%~99.5重量%、好ましくは50.0重量%~98.0重量%、特に好ましくは40.0重量%~95.0重量%、最も好ましくは60.0重量%~80.0重量%の量で含み、ここで、重量%は、混合組成物全体に対するものである。
【0023】
本発明によるn-ノナン酸エステルは、例えば特に化粧品用途の配合物の製造に向けて、液状で優れた加工性を有する。
【0024】
したがって、本発明により好ましく、かつ本発明によるn-ノナン酸エステルを含む混合組成物は、0.1重量%~60重量%、好ましくは1.0重量%~50重量%、さらにより好ましくは5.0重量%~40重量%、特に好ましくは10重量%~35重量%の少なくとも1つの溶媒を含むことを特徴とする。好ましくは、本発明によれば、これらの溶媒は以下の群:
a)1,2-ジオール、1,3-ジオール、1,4-ジオールおよびα,ω-ジオールであるが、ただし、前述のものは、好ましくは2~8個の炭素原子を有するものとする、
b)ポリオール、特にグリセリン、オリゴグリセリン、例えばジグリセリンおよびポリグリセリン、
c)グリセリン脂肪酸部分エステル、オリゴグリセリン脂肪酸部分エステル、例えばジグリセリン脂肪酸部分エステルおよびポリグリセリン脂肪酸部分エステル、ならびに
d)水
から選択される。特に好ましい溶媒は、プロパン-1,3-ジオール、プロピレングリコール、グリセリンおよび水から選択される。
【0025】
本発明によれば、n-ノナン酸エステルの完全なジエステル成分が、少なくとも1つの第二級ヒドロキシル基がエステル化された位置異性体を10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~45重量%、特に好ましくは20重量%~35重量%含むことを特徴とするn-ノナン酸エステルが好ましい。
【0026】
エステル化度の決定、各種位置異性体の含有量の決定、例えば本発明によるn-ノナン酸エステルの完全なモノエステル成分および完全なジエステル成分中の各種位置異性体の含有量の決定、および存在する本発明によるすべてのn-ノナン酸エステルの合計に対するトリエステル種の含有量の決定、および少なくとも1つの第二級ヒドロキシル基がエステル化された本発明によるn-ノナン酸エステルの完全なジエステル成分中の位置異性体の含有量の決定は、ガスクロマトグラフィーを任意に質量分析と組み合わせて(GC-FIDおよびGC-MS)実施することができる:
まず、適切なn-ノナン酸エステルの試料100mgを、ピリジン/ジクロロメタン(4:1)中の5mlに溶解させる。次に、N-メチル-N-(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(MSTFA)0.5mlと、ピリジンとトリメチルシリルイミダゾールとの混合物(39:11)0.5mlとを加える。誘導体化を80℃で30分間行う。こうして得られた澄明溶液の試料を、GC-FIDおよびGC-MSにより分析する。分析法のパラメーターは、以下のとおりである:
ガスクロマトグラフ:Agilent MSD 7890
カラム:Agilent SimDist(10m、0.32mm、0.1μm)
流量:3ml/分の一定の水素(GC-MS:ヘリウム)
温度65℃、10℃/分;365℃、15分、インジェクタ0.1μl、オンカラム
検出器:FID、370℃/GC-MS Scan 35-650 d
【0027】
GC-FID分析では、試料中に存在するエステルがその全鎖長に応じて分離される。個々のエステル種が互いに占める割合は、GC-FIDピークのそれぞれの面積割合によって決定される。ピークはGC-MSにより個々のエステル種に同定され/割り当てられ、必要であれば、例えば第一級ヒドロキシル基のみがエステル化されたモノおよびジエステルについて、別途製造し分離した標準物質の保持時間との比較によっても同定される/割り当てられる。この方法により、遊離プロトン化カルボン酸の含有量およびさらに遊離中和カルボン酸の含有量も同様に把握することができる。なぜならば、これらも同様に誘導体化されるためである。
【0028】
エステル化度は、すべてのモノ、ジ、トリ、テトラ、ペンタおよびヘキサエステルのそれぞれのピーク面積の合計によって決定される:
【数1】
ここで、a
i=モノエステル(i=1)、ジエステル(i=2)、トリエステル(i=3)、テトラエステル(i=4)、ペンタエステル(i=5)およびヘキサエステル(i=6)の各ピーク面積の正規化された合計である。A
i=GCクロマトグラムにおけるモノエステル(i=1)、ジエステル(i=2)、トリエステル(i=3)、テトラエステル(i=4)、ペンタエステル(i=5)およびヘキサエステル(i=6)の各ピーク面積の合計[%]である。
【数2】
ここで、n
i=各モノエステル(i=1)、ジエステル(i=2)、トリエステル(i=3)、テトラエステル(i=4)、ペンタエステル(i=5)およびヘキサエステル(i=6)のモル比率[mol/g]である。M
i=各モノエステル(i=1)、ジエステル(i=2)、トリエステル(i=3)、テトラエステル(i=4)、ペンタエステル(i=5)およびヘキサエステル(i=6)のモル質量[g/mol]である。
【数3】
ここで、V=エステル化度である。
【0029】
本発明によるキシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルは、当業者に公知の任意のプロセスによって製造することができる。本発明によるキシリトールまたはソルビトールのn-ノナン酸エステルを化学触媒の存在下で比較的高温で製造する場合、キシリトールおよび/またはソルビトールの少なくとも部分的な脱水が起こり得る。このような条件下で頻繁に生じるキシリトールの3つの分解生成物は、アンヒドロペンチトール、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトールである(J. Carbohydr. Chem. 2004, 23, 4, 169-177およびAdv. Carbohydr. Chem. Biochem., 1983, 41, 27-66)。このような条件下で頻繁に生じるソルビトールの4つの分解生成物は、アンヒドロヘキシトール、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール(Advances in Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, 1983, 41, 27-66)およびイソソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロソルビトール;ChemSusChem. 5 (1): 167-176)である。本発明によるキシリトールまたはソルビトールのn-ノナン酸エステルを生成するためのエステル化反応の間に、前述のキシリトールおよびソルビトールの分解生成物は、典型的には、同様に、分解生成物のモノ-、ジ-およびトリエステルをそれぞれ様々な位置異性体の混合物の形態で生じる。本発明により好ましく、かつ本発明によるn-ノナン酸エステルを含む混合組成物は、好ましくは、そのようなキシリトールおよびソルビトールの分解生成物のエステルを微量のみ含む。したがって、本発明により好ましい混合組成物中に存在する、キシリトール、ソルビトール、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトールのすべてのn-ノナン酸エステルは、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトールの残留物を合計で20重量%未満、好ましくは15重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、特に好ましくは5重量%未満含み、ここで、重量パーセントは、前述のn-ノナン酸エステル中に存在するキシリトール、ソルビトール、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトールのすべての残留物に対するものである。
【0030】
代替的に好ましいのは、キシリトールおよびソルビトールの分解生成物のn-ノナン酸エステルが、本発明による混合組成物中に多量に含まれることである。本発明によるこれらの代替的に好ましい混合組成物は、食器洗浄用途において傑出した特性を有し、例えば、食器、特に金属製カトラリーへの望ましくない物質の付着を低減するのに役立つ。したがって、本発明による代替的に好ましい混合組成物中に存在する、キシリトール、ソルビトール、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトールのすべてのn-ノナン酸エステルは、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトールの残留物を合計で50重量%~95重量%、好ましくは60重量%~90重量%、特に好ましくは70重量%~85重量%含み、ここで、重量パーセントは、前述のn-ノナン酸エステル中に存在するキシリトール、ソルビトール、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトール、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトールのすべての残留物に対するものである。
【0031】
キシリトール、キシリトールの分解生成物(1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトール)、ソルビトールおよびソルビトールの分解生成物(1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトールおよびイソソルビド)の含有量は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて決定される。この方法には、分析するn-ノナン酸エステルのアルカリ加水分解、カルボン酸の除去、ならびに糖および糖アルコールフラクションの分析が含まれる。この目的のために、2.00mlの1MのKOH水溶液中の150mgの分析対象のn-ノナン酸エステルの初期投入物を、95℃で30分間撹拌しながら加水分解させる。その後、反応溶液を室温まで冷却し、2MのHCl水溶液でpH2~3に調整する。その結果析出したカルボン酸を、次いでジエチルエーテル(3×3.00ml)で抽出し、各抽出後に有機上澄み液をピペットで除去する。抽出後、水溶液を20分間撹拌しながら50℃に加熱して、残りのエーテルを除去する(ジエチルエーテルの沸点:34.6℃)。得られた水溶液を再蒸留H2Oで10.0mlとし、次いで1:10に希釈し、溶液のアリコートをHPLCで分析する。分析を以下の条件で行う:
カラム:Aminex HPX-87Cカラム 300×7.8mm
溶離液:H2O
注入量:10.0μl
流量:0.60ml/分
カラム温度:50℃
検出器:G1362A/1260 RID(Agilent社製)、35℃
ランタイム:30.0分
【0032】
キシリトールおよびその分解生成物、ならびにソルビトールおよびその分解生成物は、イオン交換プロセスによって分離される。評価のために、キシリトールおよびソルビトールのピーク面積の合計を、1,4-アンヒドロキシリトール、1,4-アンヒドロアラビニトールおよび1,4-アンヒドロリビトール、1,4-アンヒドロソルビトール、2,5-アンヒドロソルビトール、1,5-アンヒドロソルビトールおよびイソソルビドのピーク面積の合計との関係で表す。キシリトールおよびソルビトールの分解生成物の参照物質は市販されているか、または代わりに、キシリトールおよび/もしくはソルビトールの加熱を酸性触媒(>140℃)または塩基性触媒(>180℃以上)の存在下で行うことによって得ることができる。
【0033】
したがって、本発明はさらに、本発明によるキシリトール、ソルビトールもしくはエリスリトールのn-ノナン酸エステルおよび/または本発明による混合組成物を含む、配合物、特に化粧品配合物または家庭用ケア配合物を提供する。
【0034】
本発明はさらに、請求項1から6までのいずれか1項記載の本発明によるキシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルの酵素的な製造方法であって、
A)キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールと、少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体であって、特にn-ノナン酸エステルおよびn-ノナン酸、より好ましくはn-ノナン酸から選択されるものを提供するプロセスステップと、
B)キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールを、リパーゼの存在下で、75℃~110℃、好ましくは77℃~100℃、さらにより好ましくは80℃~95℃の温度で少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体と反応させて、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルを得るプロセスステップと、任意に
C)キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルを精製するプロセスステップと
を含む方法を提供する。
【0035】
アシル基供与体として本発明により有利に使用されるn-ノナン酸エステルは、6個までの炭素原子を有するアルカノールおよびポリオールをベースとするエステル、特に好ましくは3個までの炭素原子を有するアルカノールおよびポリオールをベースとするエステル、非常に好ましくはグリセリンエステルから選択される。
【0036】
アシル基供与体として本発明により有利に使用されるn-ノナン酸は、特にテクニカルグレードのn-ノナン酸の形態で使用することができ、このようなテクニカルグレードのn-ノナン酸とは、超高純度の物質ではなく、例えばさらなる脂肪酸の形態の不純物の割合を含む物質を意味すると理解される。特に好ましいのは、存在する全脂肪酸に対して85重量%超、好ましくは90重量%超、特に好ましくは95重量%超、殊に98重量%超の純度を有するテクニカルグレードのn-ノナン酸を使用することであり、これは、好ましくは、過酸化水素ベースのプロセスで、ω-9-脂肪酸、好ましくはオレイン酸および/またはエルカ酸から進行して得られ、特に非熱帯植物油、例えば菜種油、ヒマワリ油および/またはベニバナ油から得られたものである。したがって、本発明による方法において、プロセスステップA)におけるn-ノナン酸の提供は、好ましくは、以下の追加のステップを含む:ω-9-脂肪酸、好ましくはオレイン酸および/またはエルカ酸を提供し、これらを触媒、特にタングステン系触媒、例えばタングステン酸およびその塩、過タングステン酸およびその塩、タングストリン酸およびその塩、酸化ニオブ、コバルト塩、例えば酢酸コバルトおよびナフテン酸コバルトの存在下で過酸化水素と反応させて、n-ノナン酸を得るステップ。提供されるω-9-脂肪酸、好ましくはオレイン酸および/またはエルカ酸は、好ましくは非熱帯植物油から、例えば菜種油、ヒマワリ油および/またはベニバナ油から得られたものである。
【0037】
本発明により好ましい方法は、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールおよび少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体が、プロセスステップB)の開始時に反応混合物全体に対して少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%を占めることを特徴とする。
【0038】
反応混合物がキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールから選択される2つ以上を含む場合、これらは一緒に添加される。
【0039】
この文脈において、反応混合物全体は、大部分が反応物、すなわちキシリトール、ソルビトールおよび/またはエリスリトールと、n-ノナノイル基供与体とからなるため、反応混合物全体中に存在し得る溶媒は、存在するとしてもごくわずかである。上記のことから、本発明による方法において、n-ノナノイル基供与体は「溶媒」という用語に包含されないことは明らかである。可能な溶媒は、例えばケトン、例えばメチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノン、立体障害第二級アルコール、例えば2-ブチル-1-オクタノール、メチルシクロヘキサノール、1-メトキシ-2-プロパノール、ブタン-2,3-ジオール、2-オクタノール、ジアセトンアルコール、2-メチル-2-ブタノールおよびエーテル、例えば1,4-ジオキサン、テトラヒドロフランおよびVaronic(登録商標)APMであろう。反応混合物全体に対して、溶媒は、20重量%未満、好ましくは10重量%未満、特に5重量%未満の最大総量で存在する。「X重量%未満の最大量で存在する」という表現は、「含有量がX重量%未満である」と同等と考えることができる。
【0040】
特に好ましいのは、本発明による方法を無溶媒で実施することである。
【0041】
本発明により好ましい方法は、提供されるキシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールによって提供されるすべてのヒドロキシル基と、提供されるすべてのn-ノナノイル基供与体中に存在するn-ノナノイル基とのモル比が、1.00:0.05~1.00:0.90、好ましくは1.00:0.07~1.00:0.75、特に好ましくは1.00:0.10~1.00:0.50、あるいは特に好ましくは1.00:0.15~1.00:0.35の範囲内であることを特徴とする。
【0042】
反応混合物が、キシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールから選択される2つ以上、および場合によってはさらなる糖または糖アルコール(下記参照)をも含む場合、これらによって提供されるヒドロキシル基が加えられる。
【0043】
本発明により好ましい方法ステップは、プロセスステップA)が、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールと、少なくとも1つのn-ノナノイル基供与体との少なくとも10分間、好ましくは30分間、さらにより好ましくは60分間のブレンドを含み、ここで、ブレンドを、好ましくは80℃~120℃、好ましくは90℃~120℃、さらにより好ましくは95℃~120℃、さらにより好ましくは100℃~120℃の温度範囲内で行うことを特徴とする。
【0044】
プロセスステップB)において本発明により有利に使用されるリパーゼは、固体支持体に固定化された状態で存在する。
【0045】
プロセスステップB)において本発明により有利に使用されるリパーゼは、サーモミセス・ラヌギノサス(Thermomyces lanuginosus)由来のリパーゼ(アクセッション番号O59952)、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼAおよびB(アクセッション番号P41365)ならびにムコール・ミエヘイ(Mucor miehei)由来のリパーゼ(アクセッション番号P19515)、フミコラ種(Humicola sp.)由来のリパーゼ(アクセッション番号O59952)、リゾムーコル・ジャバニカス(Rhizomucor javanicus)由来のリパーゼ(アクセッション番号S32492)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)由来のリパーゼ(アクセッション番号P61872)、カンジダ・ルゴサ(Candida rugosa)由来のリパーゼ(アクセッション番号P20261、P32946、P32947、P3294およびP32949)、リゾプス・ニベウス(Rhizopus niveus)由来のリパーゼ(アクセッション番号P61871)、ペニシリウム・カメンベルティ(Penicillium camemberti)由来のリパーゼ(アクセッション番号P25234)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)由来のリパーゼ(ABG73613、ABG73614およびABG37906)およびペニシリウム・シクロピウム(Penicillium cyclopium)由来のリパーゼ(アクセッション番号P61869)、特に好ましくは、カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼAおよびB(アクセッション番号P41365)、ならびにそれらのアミノ酸レベルでのそれぞれの少なくとも60%、好適には少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、特に好ましくは少なくとも95%、98%または99%の相同体を含む群から選択されるリパーゼである。
【0046】
本発明の文脈において挙げられるアクセッション番号は、2017年1月1日付のNCBIのタンパク質バンクデータベースエントリーに対応し、総じて、本発明の文脈において、エントリーのバージョン番号は「.数字」、例えば「.1」で識別される。
【0047】
参照配列との比較により、アミノ酸レベルで相同である酵素は、好ましくは、本発明の文脈で定義されるように、ラウリン酸プロピル単位において少なくとも50%、特に少なくとも90%の酵素活性を有する。PLU(ラウリン酸プロピル単位)での酵素活性を測定するために、1-プロパノールとラウリン酸を60℃で等モル比で均一に混合する。酵素を添加して反応を開始し、反応時間を停止する。反応混合物から一定時間ごとに試料を採取し、水酸化カリウム溶液で滴定することにより、転化されたラウリン酸の含有量を測定する。PLUでの酵素活性は、当該酵素1gが60℃で1分間に1μmolのラウリン酸プロピルを合成する速度から得られ、この点に関しては、米国特許出願公開第20070087418号明細書、特に[0185]も参照のこと。
【0048】
市販の例、および本発明による方法において同様に有利に使用されるリパーゼは、市販品Lipozyme TL IM、Novozym 435、Lipozyme IM 20、Lipase SP382、Lipase SP525、Lipase SP523(いずれもNovozymes A/S(デンマーク、バウスベア)社製の市販品)、Chirazyme L2、Chirazyme L5、Chirazyme L8、Chirazyme L9(いずれもRoche Molecular Biochemicals(ドイツ、マンハイム)社製の市販品)、Purolite社製CALB Immo Plus(商標)およびLipase M “Amano”、Lipase F-AP 15 “Amano”、Lipase AY “Amano”、Lipase N “Amano”、Lipase R “Amano”、Lipase A “Amano”、Lipase D “Amano”、Lipase G “Amano”(いずれも天野エンザイム(株)(日本)社製の市販品)、Evoxx Lipase 4.3.040 191G immobilized、Evoxx Addzyme CALB 165G immobilized、Evoxx Addzyme TL 165G immobilized、Evoxx Addzyme RD 165G immobilized、Evoxx Addzyme CALB 10P、Evoxx Addzyme CALB 5L、Evoxx Addzyme TL 100P、Evoxx Addzyme TL 100L、Evoxx Addzyme RD 50P、Evoxx Addzyme RD 10L(いずれもEvoxx(ドイツ)社製の市販品)、Fermenta Biocatalyst CAL B 1L-10L、Fermenta Biocatalyst CAL B 1L-10L、Fermenta Biocatalyst CAL B TA 10000 immobilized、Fermenta Biocatalyst CAL B 1000-5000 immobilized(いずれもFermenta Biotech(インド)社製の市販品)、Purolite CALB Immo 8285 immobilized、Purolite CALB Immo 8806 immobilized、Purolite CALB Immo Kit immobilized、Purolite CALB Immo Plus immobilized(いずれもPurolite(米国)社製の市販品)、Vland L Lipase Kingpase、Vland Kingzyme IM-100、Vland L Lipase Coated Lipase(いずれもVland(中国)社製の市販品)、Clea B1、Eucodis CALB、Eucodis EL001、Eucodis EL012、Eucodis EL013、Eucodis EL016、Eucodis EL056、Eucodis EL070(いずれもEucodis(オーストリア)社製の市販品)である。
【0049】
本発明の文脈における「アミノ酸レベルの相同性」とは、既知の方法を用いて決定可能である「アミノ酸の同一性」を意味するものと理解される。総じて、特定の要件を考慮したアルゴリズムを有する特別なコンピュータプログラムが使用される。同一性を決定するための好ましい方法では、最初に、比較される配列間の最大のアラインメントを生成する。同一性を決定するためのコンピュータプログラムとしては、
- GAP(Deveroy, J. et al., Nucleic Acid Research 12 (1984), page 387, Genetics Computer Group University of Wisconsin, Medicine (WI)および
- BLASTP、BLASTNおよびFASTA(Altschul, S. et al., Journal of Molecular Biology 215 (1990), pages 403-410
のGCGプログラムパッケージが挙げられるが、これらに限定されない。BLASTプログラムは、米国国立生物工学情報センター(National Center For Biotechnology Information)(NCBI)および他の供給源(BLAST Handbook, Altschul S. et al., NCBI NLM NIH Bethesda ND 22894; Altschul S. et al.,前出)から入手可能である。当業者は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の類似性または同一性の計算のために種々のコンピュータプログラムが利用可能であることを認識している。例えば、2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、例えば、NeedlemanおよびWunschによって開発されたアルゴリズム(J. Mol. Biol. (48): 444-453 (1970))によって決定することができ、このアルゴリズムは、GCGソフトウェアパッケージのGAPプログラムに統合されており(http://www.gcg.comにて入手可能)、Blossom 62行列またはPAM250行列のいずれか、16、14、12、10、8、6または4のギャップ重み、および1、2、3、4、5または6の長さ重みが使用される。当業者であれば、異なるパラメータを使用することでわずかに異なる結果が得られるが、全体として2つのアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージが大きく異なることはないことを認識するであろう。Blossom 62行列は、通常、デフォルト設定(ギャップ重み:12、長さ重み:1)を適用して使用される。本発明の文脈では、上記のアルゴリズムによる60%の同一性は、60%の相同性を意味する。それ以上の同一性についても同様である。
【0050】
プロセスステップB)において、本発明によれば、転化されるキシリトール、ソルビトールまたはエリスリトール1g当たり25PLU~2000PLU、好ましくは200PLU~1500PLU、特に好ましくは500PLU~1250PLUのリパーゼを使用することが有利である。
【0051】
反応混合物がキシリトール、ソルビトールおよびエリスリトールから選択される2つ以上、場合によってはさらに糖または糖アルコール(下記参照)をも含む場合、それらの重量が加えられる。
【0052】
好ましくは、本発明によれば、プロセスステップB)は、1bar未満、好ましくは0.5bar未満、特に好ましくは0.1bar未満の圧力で実施される。
【0053】
あるいは本発明により好ましくは、プロセスステップB)は、気泡塔型反応器で実施され、少なくとも1つの不活性ガスが、反応混合物に通され、このガスは、好ましくは、窒素およびアルゴンを含む群から選択され、好ましくはこれらからなる群から選択される。この文脈において、本発明によれば、ガス流が1~60kg/h、好ましくは5~25kg/h、さらにより好ましくは10~14kg/hであることが好ましい。
【0054】
本発明により好ましくは、プロセスステップB)は、リパーゼが添加されてから遅くとも180時間、好ましくは120時間、特に好ましくは100時間以内に終了することを特徴とする。
【0055】
本発明により好ましい方法ステップは、プロセスステップB)において形成される副生成物、例えば、使用されるn-ノナノイル基供与体がn-ノナン酸である場合には水、使用されるn-ノナノイル基供与体がn-ノナン酸エステルである場合には対応するアルコールが除去されることを特徴とする。これは、例えば蒸留により可能である。
【0056】
本発明による方法のプロセスステップC)は、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルの精製を含む。この目的のために使用可能な方法論は、より高濃度のキシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルを得ることを可能にするものである。
【0057】
本発明により好ましくは、本発明による方法は、プロセスステップC)において、本発明による方法において使用されるリパーゼを除去することを含む。
【0058】
リパーゼが担体に固定化されている場合、本発明によれば、リパーゼが、0.1μ~1250μ、好ましくは0.5μ~200μ、特に好ましくは50μ~100μの織度を有するフィルター、特にバグフィルターを通したろ過によって除去されることが好ましい。
【0059】
本発明により好ましくは、本発明の方法は、プロセスステップA)において、キシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールに加えて、以下の群:アガロース、アリトール、アルロース、アルトリトール、アミロペクチン、アミロース、アラビニトール、アラビノース、セロビオース、セルロース、キチン、シクロデキストリン、デオキシリボース、デキストラン、エリスリトール、フルクタン、フルクトース、フコース、ガラクチトール、ガラクトース、グルシトール、グルコース、グリコーゲン、ヒアルロン酸、イジトール、イヌリン、イソマルト、イソマルツロース、イソメリシトース、ラクチトール、ラクトース、ラクチュロース、マルチトール、マルトヘキソース、マルトペントース、マルトース、マルトテトロース、マルトトリオース、マルツロース、マンニトール、マンノース、メリジトース、ペクチン、ラフィノース、ラムノース、リビトール、リボース、スクロース、ソルビトール、ソルボース、スタキオース、デンプン、デンプン加水分解生成物、スレイトール、トレハルロース、ウンベリフェロース、キシリトールおよびキシロース、より好ましくは、アリトール、アルロース、アルトリトール、アラビニトール、アラビノース、セロビオース、デオキシリボース、エリスリトール、フルクトース、フコース、ガラクチトール、ガラクトース、グルシトール、グルコース、イジトール、イソマルト、イソマルツロース、ラクチトール、ラクトース、ラクチュロース、マルチトール、マルトース、マルツロース、マンニトール、マンノース、ラムノース、リビトール、リボース、スクロース、ソルビトール、ソルボース、スレイトール、トレハルロース、キシリトールおよびキシロースから選択される少なくとも1つの他の糖または糖アルコールが提供されることを特徴とし、非常に好ましくは、糖および糖アルコールは、エリスリトール、フルクトース、グルコース、イソマルト、イソマルチュロース、ラクチトール、ラクトース、マルチトール、マルトース、マルツロース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、ソルボース、キシリトールおよびキシロース、特に好ましくは、エリスリトール、フルクトース、グルコース、ソルビトール、キシリトールおよびキシロースから選択され、これもさらなるプロセスステップを通過する。
【0060】
本発明の文脈において「1つの他の糖または糖アルコール」という表現は、例えばキシリトールが存在する場合にはキシリトール以外の糖または糖アルコールを意味し、ソルビトールおよびエリスリトールについても同様である。
【0061】
本発明はさらに、本発明による方法によって得ることができるキシリトール、ソルビトールまたはエリスリトールのn-ノナン酸エステルを提供する。
【0062】
本発明はさらに、本発明によるキシリトール、ソルビトールもしくはエリスリトールのn-ノナン酸エステル、および/または本発明による方法によって得ることができるキシリトール、ソルビトールもしくはエリスリトールのn-ノナン酸エステル、さらには本発明による混合組成物の、粘度調整剤、ケア有効成分、発泡ブースターまたは可溶化剤、抗菌剤、帯電防止剤、バインダー、腐食防止剤、分散剤、乳化剤、皮膜形成剤、保水剤、不透明化剤、口腔ケア剤、保存料、スキンケア剤、親水性エモリエント剤、泡安定剤および/または非イオン性界面活性剤としての、好ましくは、粘度調整剤、乳化剤、抗菌剤および/または親水性エモリエント剤としての、特に好ましくは、粘度調整剤としての、特に、増粘剤および/または抗菌剤としての、特に、洗浄配合物またはケア配合物における使用を提供する。
【0063】
以下の実施例は、本発明を例示的に説明するものであり、本明細書および特許請求の範囲の全体からその適用範囲が明らかである本発明が、実施例において特定される実施形態に限定されることを意図するものではない。
【0064】
以下の図は実施例の不可欠な一部である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】例1のガスクロマトグラフィーを示す図である。
【
図2】例4のガスクロマトグラフィーを示す図である。
【
図3】例6のガスクロマトグラフィーを示す図である。
【0066】
実施例:
例1:キシリトールと1.50当量のn-ノナン酸との酵素的エステル化(本発明による)
キシリトール(176.3g、1.16mol、1.00当量)とn-ノナン酸(酸価=355mg KOH/g、99%、275.0g、1.74mol、1.50当量)との混合物を、撹拌しつつN
2を通しながら90℃に加熱し、1時間後に固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(13.5g;Purolite D5619、117234PLUに相当)を添加した。この混合物を85℃、50mbarで24時間撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、溶融状態で均質であり、淡黄色を呈し、1.5mg KOH/gの酸価を有していた。GC-FIDによる分析では、それぞれが複数の位置異性体からなるモノ-、ジ-およびトリエステルの混合物が示された。これは
図1において明らかであり、例えば、11.55分および11.93分のシグナルは、モノエステルの位置異性体に対応し、15.51分、15.57分および16.06分のシグナルは、ジエステルの位置異性体に対応する。
【0067】
例2:0.90当量のキシリトールと0.10当量のキシロースと1.50当量のn-ノナン酸との混合物の酵素的エステル化(本発明による)
キシリトール(77.0g、0.506mol、0.90当量)とキシロース(8.56g、0.057mol、0.10当量)とn-ノナン酸(酸価=355mg KOH/g、99%、129.1g、0.816mol、1.45当量)との混合物を、撹拌しつつN2を通しながら90℃に加熱し、1時間後に固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(6.44g;Purolite D5619、55925PLUに相当)を添加した。この混合物を85℃、50mbarで24時間撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、溶融状態でわずかに混濁しており、淡黄色を呈し、5.6mg KOH/gの酸価を有していた。GC-FIDによる分析では、それぞれが複数の位置異性体からなるモノ-、ジ-およびトリエステルの混合物が示された。
【0068】
例3:0.90当量のキシリトールと0.10当量のキシロースと1.27当量のn-ノナン酸との混合物の酵素的エステル化(本発明による)
キシリトール(82.9g、0.545mol、0.90当量)とキシロース(9.21g、0.061mol、0.10当量)とn-ノナン酸(酸価=355mg KOH/g、99%、121.75g、0.769mol、1.27当量)との混合物を、撹拌しつつN2を通しながら90℃に加熱し、1時間後に固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(6.42g;Purolite D5619、55751PLUに相当)を添加した。この混合物を85℃、50mbarで24時間撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、溶融状態で均質であり、淡黄色を呈し、5.0mg KOH/gの酸価を有していた。GC-FIDによる分析では、それぞれが複数の位置異性体からなるモノ-、ジ-およびトリエステルの混合物が示された。
【0069】
例4:エリスリトールと1.5当量のn-ノナン酸との酵素的エステル化(本発明による)
エリスリトール(125.0g、1.02mol、1.00当量)とn-ノナン酸(酸価=355mg KOH/g、99%、226.31g、1.54mol、1.50当量)との混合物を、撹拌しつつN
2を通しながら85℃に加熱した。1時間後に固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(10.5g;Purolite D5619、91258PLUに相当)を添加し、この混合物の撹拌を85℃、15mbarで24時間続け、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、5.6mg KOH/gの酸価を有していた。GC-FIDによる分析では、モノ-、ジ-、トリ-およびテトラエステルの混合物が示され、モノ-、ジ-およびトリエステルは、それぞれ複数の位置異性体からなっていた。これは
図2において明らかであり、11.09分および11.34分のシグナルは、モノエステルの位置異性体に対応し、15.56分および15.89分のシグナルは、ジエステルの位置異性体に対応する。
【0070】
例5:ソルビトールと1.55当量のn-ノナン酸との酵素的エステル化(本発明による)
ソルビトール(96.5g、0.530mol、1.00当量)とn-ノナン酸(酸価=355mg KOH/g、99%、129.9g、0.821mol、1.55当量)との混合物を、撹拌しつつN2を通しながら100℃に加熱した。1時間後にこの混合物を85℃まで冷却し、固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(6.79g;Purolite D5619、58807PLUに相当)を添加し、この混合物を85℃、15mbarで24時間さらに撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、3.2mg KOH/gの酸価を有していた。GC-FIDによる分析では、それぞれが複数の位置異性体からなるモノ-、ジ-、トリ-およびテトラエステルの混合物が示された。
【0071】
例5a:ソルビトールと2.90当量のn-ノナン酸との酵素的エステル化(本発明による)
ソルビトール(96.5g、0.530mol、1.00当量)とn-ノナン酸(酸価=355mg KOH/g、99%、243.2g、1.54mol、2.90当量)との混合物を、撹拌しつつN2を通しながら100℃に加熱した。1時間後にこの混合物を85℃まで冷却し、固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(10.2g;Purolite D5619、88236PLUに相当)を添加し、この混合物を85℃、15mbarで24時間さらに撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、3.9mg KOH/gの酸価を有していた。GC-FIDによる分析では、それぞれが複数の位置異性体からなるモノ-、ジ-、トリ-およびテトラエステルの混合物が示された。
【0072】
例6:0.74当量のキシリトールと0.26当量のソルビトールと1.30当量のn-ノナン酸との混合物の酵素的エステル化(本発明による)
キシリトール(65.5g、0.430mol、0.74当量)とソルビトール(28.1g、0.154mol、0.26当量)とn-ノナン酸(酸価=355mg KOH/g、99%、120.2g、0.759mol、1.30当量)との混合物を、撹拌しつつN
2を通しながら90℃に加熱し、1時間後に固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(6.41g;Purolite D5619、55500PLUに相当)を添加した。この混合物を85℃、50mbarで24時間撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、1.5mg KOH/gの酸価を有していた。GC-FIDによる分析では、それぞれが複数の位置異性体からなるモノ-、ジ-、トリ-およびテトラエステルの混合物が示された。これは
図3において明らかであり、12.32分および12.73分のシグナルは、キシリチルモノエステルの位置異性体に対応し、13.85分および14.52分のシグナルは、ソルビチルモノエステルの位置異性体に対応し、16.08分、16.45分および16.97分のシグナルは、キシリチルジエステルの位置異性体に対応し、17.63分および18.41分のシグナルは、ソルビチルジエステルの位置異性体に対応する。
【0073】
例7:キシリトールと1.50当量のカプリル酸/カプリン酸との酵素的エステル化(本発明によらない)
キシリトール(75.7g、0.497mol、1.00当量)と、カプリル酸とカプリン酸との混合物(酸価=362mg KOH/g、カプリル酸とカプリン酸との混合比60:40、115.7g、0.746mol、1.50当量)との混合物を、撹拌しつつN2を1時間通しながら90℃に加熱し、85℃まで冷却した後、固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(5.74g;Purolite D5619、49710PLUに相当)を添加した。この混合物を85℃、50mbarで24時間撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、1.5mg KOH/gの酸価を有していた。
【0074】
例8:0.74当量のキシリトールと0.26当量のソルビトールと1.30当量のカプリル酸/カプリン酸との混合物の酵素的エステル化(本発明によらない)
キシリトール(131.5g、0.864mol、0.74当量)と、ソルビトール(56.4g、0.309mol、0.26当量)と、カプリル酸とカプリン酸との混合物(酸価=362mg KOH/g、カプリル酸とカプリン酸との混合比60:40、239.6g、1.53mol、1.30当量)との混合物を、撹拌しつつN2を通しながら90℃に加熱し、30分後に固定化カンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(12.8g;Purolite D5619、110827PLUに相当)を添加した。その後、この混合物を80℃、20mbarで24時間撹拌し、その間に生成した水を連続的に留去した。その後、この混合物を80℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過して、酵素を除去した。得られた生成物は、3.0mg KOH/gの酸価を有していた。
【0075】
例9a~例9f:キシリトールおよびソルビトールの化学的エステル化(本発明による)
キシリトールまたはソルビトール(またはその水溶液)を、最初にn-ノナン酸と一緒に装入し、触媒を添加した後、反応混合物を1時間以内に所定の圧力で撹拌しながら反応温度まで加熱し、生成した水を所定の酸価になるまで連続的に除去した。最後に、混合物をフィルタープレスでろ過した。
【0076】
【0077】
例9g:国際公開第94/12651号の例3に類似したキシリトールカプリレート(=キシリトールオクタノエート)の製造(本発明によらない):
キシリトール(0.5g、3.3mmol)とオクタン酸(99%、3.35g、23.2mmol)との混合物を、機械的撹拌下で50℃に加熱した。その後、オクタン酸ナトリウム(0.85g、5.1mmol)、およびカンジダ・アンタークティカ(Candida antarctica)リパーゼB酵素(5000PLU/mLを含む水溶液0.5mL)を加え、その後、この混合物を50℃で20時間撹拌した。その後、この混合物を50℃でブラックバンドフィルター付きブフナー漏斗にてろ過した。
【0078】
例10:比較的低濃度の化粧品配合物における増粘性能
本発明による例1および例4の増粘効果を、本発明によらない増粘剤と比較して評価した。この目的のために、4.8%のココアンホアセテート、4.8%のコカミドプロピルベタイン、3.6%のラウロイルサルコシン酸ナトリウムからなる化粧品配合物を水中で製造した。この配合物のpHを、クエン酸で5.2に調整した。0.6%の上記例示物質を、60℃で30分間撹拌してこれらの配合物のそれぞれに配合し、22℃でブルックフィールド粘度計(スピンドル62、30rpm)を用いて粘度を測定した。粘度の測定結果を表2に示す。
【0079】
【0080】
例11:比較的高濃度の化粧品配合物における増粘性能
本発明による例3、例4、例5および例6の増粘効果を、本発明によらない増粘剤と比較して評価した。この目的のために、4.8%のココアンホアセテート、4.8%のコカミドプロピルベタイン、3.6%のラウロイルサルコシン酸ナトリウムからなる化粧品配合物を水中で製造した。この配合物のpHを、クエン酸で5.2に調整した。0.8%の上記例示物質を、60℃で30分間撹拌してこれらの配合物のそれぞれに配合し、22℃でブルックフィールド粘度計(スピンドル62、30rpm)を用いて粘度を測定した。粘度の測定結果を表3に示す。
【0081】
【0082】
例12:化粧品配合物における増粘性能
本発明による例1、例4、例5および例6の増粘効果を、本発明によらない増粘剤と比較して評価した。この目的のために、9%のSLES、3%のコカミドプロピルベタインおよび0.7%のNaClからなる化粧品配合物を水中で製造した。この配合物のpHを、クエン酸で5.2に調整した。1.1%の上記例示物質を、60℃で30分間撹拌してこれらの配合物のそれぞれに配合し、22℃でブルックフィールド粘度計(スピンドル62、30rpm)を用いて粘度を測定した。粘度の測定結果を表4に示す。
【表4】
【0083】
例13:手洗い試験
洗っている間の皮膚感触を評価するため、訓練された官能パネルにより試験を実施した。例10の配合物を官能手洗い試験に使用した。この目的のために、訓練された少なくとも10名の試験者のグループが、明確に定義された手順に従って手を洗った。施与の前に、標準化された方法での試験前に手を標準界面活性剤溶液2gで10秒間清浄化しなければならず、配合物を10秒間洗い流す。この前洗浄ステップの後、所定の組成物を含む配合物2gを濡れた手のひらに施与した。両手の間に泡を発生させ、洗っている間の皮膚感触を1(非常に劣悪)から5(非常に良好)までの評定スケールで判定する。配合物を15秒間洗い流す。その後、皮膚の滑らかさおよび皮膚の柔らかさについて、1(非常に劣悪)から5(非常に良好)までの評定スケールで2つの別々の判定を行う。この判定を、乾燥直後および3分後に行う。
【0084】
【0085】
表5の測定結果からわかるように、本発明による組成物を用いた本発明による配合物で手を洗うと、施与後の皮膚感触について最も高い評点が得られる。
【0086】
配合物例
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【表6-7】
【表6-8】
【表6-9】
【表6-10】
【表6-11】
【表6-12】
【表6-13】
【表6-14】
【表6-15】
【表6-16】
【表6-17】
【表6-18】
【表6-19】
【国際調査報告】