(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】最適化された発光デバイス
(51)【国際特許分類】
G21K 4/00 20060101AFI20240614BHJP
G01T 1/20 20060101ALI20240614BHJP
C09K 11/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G21K4/00 B
G01T1/20 B
G01T1/20 C
C09K11/00 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577853
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 EP2022066406
(87)【国際公開番号】W WO2022263563
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514255523
【氏名又は名称】サントレ ナティオナル ド ラ ルシェルシェ シアンティフィク
(71)【出願人】
【識別番号】520179305
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ パリ-サクレー
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-SACLAY
(71)【出願人】
【識別番号】519183782
【氏名又は名称】アンスティテュ・ドプティーク・テオリク・エ・アプリケ
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT D’OPTIQUE THEORIQUE ET APPLIQUEE
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】バレムボワ, フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】ピション, ピエール
【テーマコード(参考)】
2G083
2G188
4H001
【Fターム(参考)】
2G083AA04
2G083AA08
2G083AA09
2G083CC02
2G083CC05
2G083DD02
2G083EE02
2G188AA03
2G188AA25
2G188BB02
2G188BB04
2G188CC13
2G188CC15
2G188CC21
2G188CC22
2G188DD05
4H001CA01
(57)【要約】
固体蛍光材料または固体シンチレータ材料CLを含み、材料中で入射光Ldを吸収し、次にルミネッセンス光L
Lを放出するように適合した発光デバイス1であって、ルミネッセンス光の捕捉部分L
pと呼ばれる一部が、材料中で全内部反射によって捕捉され、材料が、水平面xyに沿った大きな面と呼ばれる2つの平行な面FE1、FE2と、側面と呼ばれる
【数1】
の面FL1、FL2、FL3、FL4を含み、2つの隣接する側面と大きな面の間に頂点S2、S3、S4を形成し、材料は、水平面に垂直なz軸の周りの水平面内で、2π/nの角度で回転することによる側面に対する法線が不変であり、材料は、面取りした頂点SB1と呼ばれる表面を形成する面取りした仮想頂点と呼ばれる頂点S1を有するか、または2つの側面の間に、面取りすることにより面取りしたエッジSB1の表面が形成される仮想エッジS1S5と呼ばれるエッジを有し、捕捉部分の光線の一部が面取りした頂点を通過して出射ビームL
Sを形成し、前記面取りした表面に対する法線
【数2】
が、±10°の範囲内で、前記仮想表面を形成する面の法線の和に平行である、発光デバイス。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体蛍光材料または固体シンチレータ材料(CL)を含み、前記材料中で入射光(Ld)を吸収し、次にルミネッセンス光(L
L)を放出するように適合した発光デバイス(1)であって、
前記ルミネッセンス光の捕捉部分(L
p)と呼ばれる一部が、前記材料中で全内部反射によって捕捉され、
前記材料が、水平面xyに沿った大きな面と呼ばれる2つの平行な面(FE1、FE2)と、側面と呼ばれる
【数1】
の面(FL1、FL2、FL3、FL4)を含み、2つの隣接する側面と大きな面の間に頂点(S2、S3、S4)を形成し、
前記材料は、前記水平面に垂直なz軸の周りの前記水平面内で、2π/nの角度で回転することによる前記側面に対する法線が不変であり、
前記材料は、面取りした頂点(SB1)と呼ばれる表面を形成する面取りした仮想頂点と呼ばれる頂点(S1)を有し、
前記捕捉部分の光線の一部が前記面取りした頂点を通過して出射ビーム(L
S)を形成し、
前記面取りした頂点に対する法線(
【数2】
)が、±10°の範囲内で、前記仮想頂点を形成する面の法線の和に平行である、発光デバイス。
【請求項2】
前記材料が直方体である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
xyz座標系における前記面取りした頂点に対する前記法線の角度座標が(α=±45°;β=±35,3°)±10°である、請求項1または請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
固体蛍光材料または固体シンチレータ材料(CL)を含み、前記材料中で入射光(Ld)を吸収し、次にルミネッセンス光(L
L)を放出するように適合した発光デバイス(1)であって、
前記ルミネッセンス光の捕捉部分(L
p)と呼ばれる一部が、前記材料中で全内部反射によって捕捉され、
前記材料が、水平面xyに沿った大きな面と呼ばれる2つの平行な面(FE1、FE2)と、側面と呼ばれる
【数3】
の面(FL1、FL2、FL3、FL4)を含み、
前記材料は、前記水平面に垂直なz軸の周りの前記水平面内で、2π/nの角度で回転することによる前記側面に対する法線が不変であり、
前記材料は、2つの側面の間に、面取りすることにより面取りしたエッジ(SB1)の表面が形成される仮想エッジ(S1S5)と呼ばれるエッジを有し、
前記捕捉部分の光線の一部が前記面取りしたエッジを通過して出射ビーム(L
S)を形成し、
前記面取りした頂点に対する法線(
【数4】
)が、±10°の範囲内で、前記仮想エッジを形成する2つの側面の法線の和に平行である、発光デバイス。
【請求項5】
前記面取りしたエッジまたは前記面取りした頂点を除く前記側面を覆う複数の反射鏡を備える、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記材料が、1/α>>2L(式中、Lは2つの平行な側面の間の最大距離である)となる前記ルミネッセンス光の減衰係数αを有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記材料が、窒素空孔中心を有するダイヤモンド結晶であり、入射放射線(Ld)が、結晶の少なくとも1つの面を照射するレーザーによって発せられる、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記側面が、大きな面に対して垂直である、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記面取りしたエッジまたは頂点に隣接するいわゆる上流端に取り付けられた先細の円錐形アダプターと、前記先細のアダプターのいわゆる下流端に接続した光ファイバーを備え、
前記先細のアダプターが、前記出射ビームの開口数を前記光ファイバーの開口数に一致させる、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記材料の面の表面に対する、面取りしたエッジまたは頂点の表面の比が、1/10より低い、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記比が、1/100より低く、好ましくは1/1000より低い、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
X線源またはガンマ線源と、以下を含む検出器(Det)を備えた、X線またはガンマ線画像システムであって、
- アレイを形成するように配置され、請求項1から請求項11のいずれかに記載の複数の発光デバイス(1)であって、各デバイスの前記材料が固体シンチレータである、複数の発光デバイスと、
- 各デバイスの材料の前記面取りしたエッジまたは前記面取りした頂点の反対側にそれぞれ配置された複数のフォトダイオード(PD)と、
を備える、画像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集光体の分野に関し、より詳細には、集光体内で発光する光の抽出に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)は照明の分野で多くの用途がある。しかし、LEDの輝度は、いくつかの用途には適さない値に制限される。
【0003】
LEDの輝度を向上させる1つの解決策は、LED励起発光集光体を使用することである(例えば、非特許文献1を参照)。この集光体は、例えば、可視域(赤色~橙色)の蛍光の光を発する結晶であり、Ce:YAG等である。これは、LEDが非常に効率の良い波長で、青色域(450nm付近)を吸収する。結晶は平面の形にカットされており、大きな表面の両方に数百個(さらには数千個)のLEDが並んでおり、エッジで発光する。これらの集光体は、LEDの10倍から20倍の輝度値を達成することができる。
【0004】
図1Aは、従来技術で公知の、集光結晶CLに基づく発光モジュールME0の一例を示す。
図1Aは、発光モジュールME0の斜視図を概略的に表す。発光モジュールME0は、第1のスペクトル帯域で発光する一組のLEDと、集光体CLを備える。集光体CLは蛍光平行六面体結晶であり、LEDによって放出されるエレクトロルミネッセンス放射Ldによって照明される寸法L×Wの少なくとも1つの照明面SI1、SI2を有する。照明面SI1、SI2は「大きな面」とも呼ばれる。集光体の厚さはeと記す。
【0005】
集光体の結晶は、前記エレクトロルミネッセンス放射Ldを吸収するように構成されている。LEDによって放出され、かつ照明面に向けられた光束は、結晶の塊の至るところに分布する蛍光結晶の発光団Lumによって吸収され、そして結晶の内部で蛍光放射線を放出する。放出される光線は大きく2つに分類することができる:
- 捕捉光線(Lpと記す):これらの光線は、結晶のさまざまな面上での全内部反射(TIR)により結晶内に捕捉される。これらの光線は、結晶が、6つの面が2つずつ平行で互いに垂直な平行六面体である場合に存在する。捕捉光線は結晶を出て行くことはない,
- 非捕捉光線は、最終的に結晶を出て行く光線である。それらは、2つのサブカテゴリーに分けることができる,RTIによって誘導され、集光体の面の1つに出現する誘導光線Lg,および、面で反射されることなく集光体から直接出現する非誘導光線Lout。
【0006】
図1Bは、集光体内に放射され捕捉されたすべての光線の角度図を表示したものである。暗色のキャップは非捕捉光線(誘導されたL
gと誘導されていないL
out)に対応する角度を表し、明るい領域は捕捉光線L
pに対応する角度を表す。例として示したこの図では、集光結晶CLとして選択された媒質は、周囲の媒質が空気である場合に33°の臨界角を有するCe:YAG結晶(屈折率n=1.82)である。RTIによって捕捉される放射線の、捕捉されない放射線と比較した割合は、スネル-デカルト(Snell-Descartes)の法則によって、結晶の屈折率と周囲の媒質の屈折率によって決定される。
【0007】
図1Aの平行六面体の集光体では、出射屈折率n=1(空気)および集光体屈折率n=1.82(例:YAG)と仮定すると、出射面SEで出射する光の割合は8%である。残りの光は、他の面で出射するか(5×8%)、全内部反射によって集光体内部に捕捉されたままとなる(52%)(
図1B参照)。空気中のダイヤモンド(n=2.4)の平行六面体の集光体では、捕捉される光線の割合は73%に増加する。効率を上げるために、出射面の反対側の面に反射鏡を配置することは当業者に知られている。しかしながら、平行六面体の各方向の効率は、Ce:YAGでは最大で2×8%=16%、ダイヤモンドでは最大で2×4.5%=9%に制限されたままである。
【0008】
発光結晶からの光抽出は、シンチレータの分野において過去50年にわたり重要なテーマであった(非特許文献2参照)。それは、抽出のための多様なアイデアを有する多くの出版物の主題であった。シンチレータ結晶は高い屈折率(例えばCe:YAG n=1.83、BGO n=2.15)を有することが多く、全内部反射によって捕捉される光(平行六面体形状では、Ce:YAGで52%、BGOで65%)が非常に重要になるため、この点はシンチレータ結晶の分野では何よりも重要である。
【0009】
この主題は、量子光学の分野で、窒素空孔(NV)中心を含むダイヤモンドにおける単一光子の放出という別の科学分野で再び登場した。ここでもまた、光抽出のためのさまざまな解決策が検討されている。ダイヤモンドの屈折率は非常に高い(n=2.4)ため、この点は、ダイヤモンドでは特に重要である(光線の73%が平行六面体に捕捉される)。
【0010】
光が抽出されたら、それを使用できるようにする必要がある。通常、重要な抽出は、出射ビームの開口数が非常に大きいことを意味する。液浸顕微鏡の使用は、NV中心の蛍光を収集し、放射線を検出器まで伝播させるための最初の解決策である。しかし、NV中心を有するダイヤモンドの光抽出を改善する必要性がまだある。
【0011】
シンチレータ結晶の分野でも同様の問題が生じる。シンチレータ結晶は、非常に高エネルギーの入射放射線(X線またはガンマ線)を、光電子増倍管やフォトダイオードなどの「古典的な」検出器で検出可能な可視放射線に変換する。シンチレータはいくつかの制約を満たす必要がある:
- 稀な事象の検出を可能にするためには検出される光束が最大でなければならず、高感度が要求される,
- 時間的に非常に近い事象を区別できるように、検出器は高速でなければならない,
- シンチレータは、特定のエネルギーで到着する吸収されたXまたはガンマ光子すべてに対して同一の応答を与えなければならない。この応答は「明所視」と呼ばれる。この応答の質を定量化する方法は「エネルギー分解」である。これは、シンチレータに記録された事象を、シンチレータからの発光強度によって分類し、ヒストグラムを作成することで構成される。エネルギー分解は、シンチレータの動作条件とその形状に強く依存する。分解はまた、抽出できる光にも強く依存する。それは面の反射率と表面状態の特質(研磨または散乱)に依存する。光ファイバー内の結合は、結合効率のために有用な光束の重要性が低くなるため、エネルギー分解を低下させる。従って、光抽出効率はこの分野では重要な問題である。
【0012】
本発明は、従来技術の特定の問題を軽減することを目的とする。このため、本発明の目的は、多数の捕捉光線をリサイクルするように適合させた方向の法線を有する面取りした頂点または面取りしたエッジを含む固体蛍光結晶または固体シンチレータ結晶(従って、デバイスの光抽出効率を増加させ、面取りした頂点または面取りしたエッジを通過する出射ビームの出力および輝度を増加させる)を含む発光デバイスである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Barbet,Adrien,et al.“Light-emitting diode pumped luminescent concentrators:a new opportunity for low-cost solid-state lasers.”Optica 3.5(2016):465-468
【非特許文献2】C.M Ankenbrandt and E.M.Lent“Increasing the light collection efficiency of scintillation counters”,RSI Vol 34 No6 p647(1963)
【発明の概要】
【0014】
この目的を達成するために、第1の変形例による本発明の目的は、固体蛍光材料または固体シンチレータ材料を含み、前記材料中で入射光を吸収し、次にルミネッセンス光を放出するように適合した発光デバイスである。前記ルミネッセンス光の一部(捕捉部分と呼ばれる)は、前記材料中で全内部反射によって捕捉され、前記材料は、水平面xyに沿った大きな面と呼ばれる2つの平行な面と、側面と呼ばれる
【0015】
【0016】
の面を含み、2つの隣接する側面と大きな面の間に頂点を形成する。前記材料は、前記水平面に垂直なz軸の周りの前記水平面内で、2π/nの角度で回転することによる前記側面に対する法線が不変であり、前記材料は、面取りした仮想頂点と呼ばれる頂点(面取りした頂点と呼ばれる表面を形成する)を有し、前記捕捉部分の光線の一部が前記面取りした頂点を通過して出射ビームを形成し、前記面取りした頂点に対する法線が、±10°の範囲内で、前記仮想頂点を形成する面の法線の和に平行である。
【0017】
第1の変形例の好ましい実施形態では、材料は直方体である。
【0018】
第1の変形例の好ましい実施形態では、xyz座標系における前記面取りした頂点に対する前記法線の角度座標は、(α=±45°;β=±35,3°)±10°である。
【0019】
第2の変形例による本発明の別の目的は、固体蛍光材料または固体シンチレータ材料を含み、前記材料中で入射光を吸収し、次にルミネッセンス光を放出するように適合した発光デバイスである。前記ルミネッセンス光の一部(捕捉部分と呼ばれる)は、前記材料中で全内部反射によって捕捉され、前記材料は、水平面xyに沿った大きな面と呼ばれる2つの平行な面と、側面と呼ばれる
【0020】
【0021】
の面を含む。前記材料は、その水平面に垂直なz軸の周りの前記水平面内で、2π/nの角度で回転することによる前記側面に対する法線が不変であり、前記材料は、2つの側面の間に仮想エッジと呼ばれるエッジを有し、該仮想エッジは面取りされて、エッジを面取りした表面を形成する。前記捕捉部分の光線の一部が前記面取りしたエッジを通過して出射ビームを形成し、前記面取りした頂点に対する法線が、±10°の範囲内で、前記仮想エッジを形成する2つの側面の法線の和に平行である。
【0022】
第1および第2の変形例に適合する本発明の好ましい実施形態では、デバイスは、前記面取りしたエッジまたは前記面取りした頂点を除く前記側面を覆う複数の反射鏡を備える。
【0023】
第1および第2の変形例に適合する本発明の好ましい実施形態では、材料は1/α>>2L(Lは2つの平行な側面の間の最大距離である)となる前記ルミネッセンス光の減衰係数αを有する。
【0024】
第1および第2の変形例に適合する本発明の好ましい実施形態では、材料は、窒素空孔中心を有するダイヤモンド結晶であり、前記入射放射線は、結晶の少なくとも1つの面を照射するレーザーによって発せられる。
【0025】
第1および第2の変形例に適合する本発明の好ましい実施形態では、側面は大きな面に対して垂直である。
【0026】
第1および第2の変形例に適合する本発明の好ましい実施形態では、デバイスは、前記面取りしたエッジまたは頂点に隣接するいわゆる上流端に取り付けられた先細の円錐形アダプターと、前記先細のアダプターのいわゆる下流端に接続した光ファイバーを備える。前記先細のアダプターは、前記出射ビームの開口数を前記光ファイバーの開口数に一致させる。
【0027】
これまでのすべての変形例および実施形態に適合する本発明の好ましい実施形態では、前記材料の面の表面に対する、面取りしたエッジまたは面取りした頂点の表面の比は、1/10より低く、好ましくは1/100より低く、より好ましくは1/1000より低い。
【0028】
本発明の別の目的は、x線源またはガンマ線源と、以下を含む検出器を備えた、x線またはガンマ線画像システムである:
- アレイを形成するように配置された、前記請求項のいずれかによる複数の同一の発光デバイスであって、各デバイスの前記材料が固体シンチレータである、複数の発光デバイス,
- 各デバイスの材料の前記面取りしたエッジまたは前記面取りした頂点の反対側にそれぞれ配置された複数のフォトダイオード。
【図面の簡単な説明】
【0029】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、例示として与えられ、それぞれを表す添付図面を参照してなされる説明から明らかになるであろう:
【0030】
【
図1A】
図1Aは、従来技術で知られている発光モジュールを示す図である。
【
図1B】
図1Bは、従来技術の集光体内に放射され、捕捉されたすべての光線の角度図を示す図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1の変形例による発光デバイスを示す図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第1の変形例の結晶内に放射され、捕捉されたすべての光線の3D角度図を表示した図である。
【
図2C】
図2Cは、本発明の第1の変形例の結晶内の発光団によって放射される光線の軌跡を示す図である。
【
図3】
図3は、エスケープコーンL
g、L
outおよびL
sをxyz座標系において、角度座標(α,β)を用いて平面的に表示した図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の第2の変形例による発光デバイスを示す図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の第2の変形例の結晶内に放射され、捕捉されたすべての光線の3D角度図を表示した図である。
【
図4C】
図4Cは、xyz座標系における角度座標を示す図である。
【
図4D】
図4Dは、エスケープコーンL
g、L
outおよびL
sをxyz座標系において、角度座標(α,β)を用いて平面的に表示した図である。
【
図5A】
図5Aは、さまざまな結晶の構成の減衰係数αの関数としての、出射ビームの輝度、および抽出効率を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、さまざまな結晶の構成の減衰係数αの関数としての、出射ビームの輝度、および抽出効率を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、結晶が6つの側面を有する、本発明の第2の変形例による発光デバイスを示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aの結晶内に放射され、捕捉されたすべての光線の角度図を表示した図である。
【
図7A】
図7Aは、先細の円錐形アダプターを介して光ファイバーに結合された、さまざまな結晶の構成を示す図である。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示したさまざまな結晶の構成について、上流端の直径φ
uの関数としての光抽出効率を示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1または第2の変形例による複数の同一の発光デバイスを含む検出器を示す図である。
【0031】
図面では、特に断りのない限り、要素は正確な縮尺ではない。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図2Aおよび
図4Aは、それぞれ本発明の第1および第2の変形例による発光デバイス1を示す。本発明のデバイス1は、固体蛍光結晶または固体シンチレータ結晶である集光体CLを含み、CLは、結晶内でルミネッセンス光L
Lの発光を誘発する入射光Ldを吸収するように適合している。別の実施形態では、集光体は結晶ではなく、ガラスなどの別の材料である。以下では、簡略化のため、結晶を用いた本発明のデバイスを説明するが、本発明は、結晶内でルミネッセンス光L
Lの発光を誘発する入射光Ldを吸収するように適合した別の材料の集光体でも実現できることが理解される。
【0033】
結晶は、水平面xyに沿って、大きな面と呼ばれるFE1、FE2の2つの平行な面を含み、さらに、側面と呼ばれるFL1、FL2、FL3、FL4の
【0034】
【0035】
の面を含む。これらの側面は、隣接する2つの側面と大きな面の間に頂点S1、S2、S3、S4、S5を形成する。
【0036】
【0037】
を側面FL
iの法線と呼ぶことにする(
図2Cを参照)。説明に役立つ例として、
図2Aおよび
図4Aでは、結晶CLは矩形状であり、n=4である。しかし、当業者であれば、本発明がn=4より大きい数を有する結晶にも適用されることが分かるであろう(例えば
図6A参照)。
【0038】
当業者に知られているように、前記ルミネッセンス光のうち捕捉部分Lpと呼ばれる部分は、前記結晶内で全内部反射により捕捉される。前述の通り、捕捉光線と非捕捉光線の比率は、スネル-デカルトの法則により、結晶の屈折率と周囲の媒質の屈折率によって決定される。捕捉光線はLpと表記される:これらの光線は、結晶のさまざまな面で全内部反射(TIR)により結晶内に捕捉される。非捕捉光線は、最終的に結晶から出て行く光線である。それらは、2つのサブカテゴリーに分けることができる:大きな面または側面において、TIRによって誘導され、集光体の面の1つに出現する誘導光線Lg,および、面で反射されることなく集光体から直接出現する非誘導光線Lout。
【0039】
本発明は、所定の角度範囲内で構造の捕捉光線に関連する人工的なエスケープコーンを作り、それらの光線を「リサイクル」して光抽出効率を高め、さらに従来技術の結晶で以前に達成されていたものと比較して、本発明の結晶から出射するビームの輝度と出力を増加させることを目的とする。本明細書における「リサイクル」という用語は、所定の角度範囲内の捕捉光線を結晶から逃がし、それにより結晶から出射するビームLsの輝度と出力を増加させることを意味するが、結晶内でのそれらの光線のインコヒーレントな重ね合わせの後にのみ可能である。
【0040】
この目的のために、本発明の結晶は、水平面に垂直なz軸の周りの水平面xyにおいて、2π/nの角度で回転することによる前記側面に対する法線が不変である。例として挙げた
図2Aおよび
図4Aの図では、n=4であり、側面に対する法線はz軸の周りでπ/2の角度で回転しても不変である。
【0041】
光抽出効率を高めるために、本発明の第1の変形例(
図2Aに示す)によれば、結晶は2つの側面FL1、FL2の間のエッジを有する。仮想エッジS1、S5と呼ばれるこのエッジは面取りされているため、面取りしたエッジSB1と呼ばれる面を形成する。その法線
【0042】
【0043】
は、側面の他の法線と同様に大きな面の平面内にある(さらに参照)。この面取りしたエッジAB1が出射面を定義する。面取りしたエッジを通過する捕捉部分の光線は、出射ビームLsを形成する。
【0044】
本発明の第2の変形例(
図4Aに示す)によれば、結晶は仮想頂点S1と呼ばれる頂点を有する。この頂点は面取りされているため、面取りした頂点SB1と呼ばれる面を形成する。その法線
【0045】
【0046】
は、大きな面の平面内にはない。その方向は、構造の対称性を利用するように選択される(さらに参照)。この面取りした頂点SB1は出射面を定義する。この面取りした頂点を通過する捕捉部分の光線は、出射ビームLsを形成する。
【0047】
各変形例において、前記面取りした頂点またはエッジに対する法線
【0048】
【0049】
は、最も多くの捕捉光線を「リサイクル」するのに適合した所定の方向を有し、従って、構造の対称性を利用することによって光抽出効率を増加させる。実際、後で説明するように、面取りした頂点またはエッジに対する法線の方向は、出射面(面取りしたエッジまたは頂点)を通過して結晶から出射することができる捕捉光線の所定の角度範囲を制御する重要なパラメータである。
【0050】
第1の変形例は、平面内の結晶の構造の対称性を利用する。より正確には、本発明の第1の変形例では、面取りしたエッジに対する法線
【0051】
【0052】
は、最も近い側面(すなわち、仮想エッジを形成する面)の法線の和に平行である。これは、
【0053】
【0054】
が
【0055】
【0056】
に比例することを意味する。法線の方向の許容範囲は、エスケープコーンの大きさと構造の損失によって決まる:
【0057】
【0058】
と
【0059】
【0060】
の間の最大角度は+/-10°が許容される。10°より大きい角度の場合、光のリサイクルが減少し、結晶CLの光抽出効率が望ましくない形で低下する。
【0061】
本発明の第2の変形例は、構造の対称性を完全に利用する。従って、本発明の第2の変形例では、面取りした頂点に対する法線
【0062】
【0063】
は、最も近い面すべて(すなわち、仮想頂点を形成する面)の法線の和に平行である。これは、
【0064】
【0065】
が
【0066】
【0067】
に比例することを意味する(
【0068】
【0069】
は、仮想頂点を形成する大きな面FE1に対する法線である)。法線の方向の許容範囲は、エスケープコーンの大きさと構造の損失によって決まる:
【0070】
【0071】
と
【0072】
【0073】
の間の最大角度は+/-10°が許容される。10°より大きい角度の場合、光のリサイクルが減少し、結晶CLの光抽出効率が望ましくない形で低下する。
【0074】
図2Bと
図4Bは、結晶CL内に放射され捕捉されたすべての光線の3D角度図を表示したものである。
図1Bと同様に、暗色のキャップは非捕捉光線(誘導されたL
gと誘導されていないL
out)に対応する角度を表す。中程度の強度の領域は、捕捉光線L
pに対応する角度を表す。中程度の強度の領域内の明るい領域は、面取りした表面のエスケープコーン1と、反射鏡とみなされる結晶の表面によって作られたエスケープコーン1の像である(例えば、全内部反射の効果)。出射ビームL
sを形成する光線は、主に捕捉光線で構成され、その方向はエスケープコーンまたは構造によるエスケープコーンの像に属する。面取りしたエッジや頂点がなければ、これらの光線は結晶を出て行くことはなかったであろう。例として挙げたこの図では、集光結晶CLとして選ばれた媒質はCe:YAG結晶(屈折率n=1.82)であり、周囲の媒質が空気である場合の臨界角は33°である。
【0075】
図2Bで見られるように、面取りしたエッジは1つのエスケープコーン(1)と3つの像(2-3-4)を作り出し、一方、
図4Bでは、面取りした頂点は1つのエスケープコーンと7つの像(2-3-4-5-6-7-8)を作り出している。
図2Bと
図4Bの角度表現におけるエスケープコーンの面積(すなわち、捕捉光線が結晶から出射する角度範囲)は、TIRの臨界角によって決定される。換言すると、出射ビームL
sを形成する光線のエスケープコーンの最大角度は、臨界角θ
cに等しい。従って、それは結晶の屈折率と周囲の媒質の屈折率によって、スネル-デカルトの法則により決定される。
図3と
図4Dは、効率的な光抽出のために、法線
【0076】
【0077】
に平行な軸であるエスケープコーンの方向が重要である理由を説明する。本発明の第1の変形例でそれが法線の和(
【0078】
【0079】
)に平行でないか、または本発明の第2の変形例でそれが法線の和(
【0080】
【0081】
)に平行でない場合、面取りした面のエスケープコーンおよびその像は、他の面のエスケープコーンと重なる可能性がある。この重なりを最小化することは、効率的な光抽出を達成するために重要である。
【0082】
図2Cは、結晶CL内で発光団SP1によって放射される光線の軌跡を示す。一例として、この光線は、水平面xyに沿って、エスケープコーン1内の方向1の軌跡を有し、面取りしたエッジに対する法線は、O
xyz座標系において角度座標(α=45°;β=0°)を有する(αは平面xyにおける角度であり、βはz軸に対する角度である)。前述の通り、この形状では、面取りしたエッジに対する法線
【0083】
【0084】
は、最も近い側面の法線の和(
【0085】
【0086】
)に平行である。簡略化のため、この法線を「最適法線」と呼ぶことにする。結晶の矩形の形を考慮すると、光線は結晶から出るまでに6回の方向転換をする。
図2Cから、光線の元のコーンであるエスケープコーン1は、側面上のTIRのために、コーンの像2、次にコーンの像3、次にコーンの像4、次にコーンの像3、次にコーンの像2、次にコーンの像1へと変換され、その後、面取りしたエッジAB1を通って出射することが分かる。コーンの像2で方向2に発光する発光団SP2を用いると、またはコーンの像3で方向3に発光する発光団SP3を用いると、またはコーンの像4で方向4に発光する発光団SP4を用いると、同じ光線の方向で、同じ出射点を達成できる。この図は、本発明の第1の変形例において、面取りしたエッジを通って出射する光L
sは4つの異なる光のコーンから得られることを示す。従って、面取りしたエッジは、4つのエスケープコーンを「リサイクル」し、これら4つのコーンからの光線をインコヒーレントに合わせて出射ビームL
sを形成することができる。
【0087】
反対に、
図1Aの従来技術の結晶では、側面の1つから出射する光は1つの光のコーンからしか得られない。
図1Aの従来技術の結晶において、出射面の反対側の面に反射鏡を配置した場合、前記出射面からの光は、依然として2つの光のコーンからしか得られない。従って、理論的には、矩形状の結晶の場合、本発明の第1の変形例(
図2A)は、
図1Aの従来技術の結晶の光抽出効率よりも4倍高い光抽出効率をもたらすことができる。注意点として、光抽出効率は、出射ビームL
sの出力を、構造から放出される総出力(L
p+L
out+L
g)で割ることによって計算される。
【0088】
一例として、
図4Aの結晶CLでは、xyz座標系における面取りした頂点に対する法線の角度座標は(α=45°;β=35.3°)である。
図4Cは、当該座標系における座標を示す。直方体結晶の場合、これは、面取りしたエッジに対する法線
【0089】
【0090】
が、最も近い面すべての法線の和(
【0091】
【0092】
)に平行でなければならないことを意味する。前記法線の別の表示は、xyz座標系における座標(1,1,1)である。簡略化のため、この法線を「最適法線」と呼ぶことにする。直方体の形状と、面取りした頂点S1を有する結晶の場合、この法線の方向は、面取りした頂点によって作られるエスケープコーンを形成する角度と、非捕捉光線のコーンを形成する角度の間の重なりを最小にすることを確実にする。結晶面によるエスケープコーン1の像は、コーン2、5、および4である。コーン2の像はコーン1、6、および3であり、コーン3の像はコーン2、7、および4であり、コーン4の像はコーン3、8、および1である。従って、多重結像により、
図4Aの結晶CLの面取りした頂点SB1は、8つの光のコーンを出射ビームL
sにリサイクルすることができる。理論的には、直方体の形状の結晶の場合、本発明の第2の変形例は、従って、
図1Aの従来技術の結晶の光抽出効率よりも8倍高い光抽出効率をもたらすことができる。
【0093】
しかしながら、この理論的限界の光抽出効率を達成するためには、面取りしたエッジまたは頂点によって作られるエスケープコーンを形成する角度と、非捕捉光線のコーンを形成する角度の間に重なりがないことが必要である。実際、そのような重なりが存在する場合、その重なり範囲内の角度で結晶内を伝播する光線は、側面または大きな面を通って結晶の外に「漏れる」ため、出射ビームの輝度と出力の増加に寄与しないことになる。このため、光抽出効率の相対的な低下をもたらす。これは、この理論的限界は、屈折率の高い結晶(例:ダイヤモンド)を使用するとより簡単に達成できることを意味する。なぜなら、臨界角θcが小さくなるため、面取りしたエッジまたは屈折率によって形成されるエスケープコーンにより多くの「スペース」を残すからである。明らかに、光抽出効率のこの理論的限界の値は、最終的に臨界角θcとスネル-デカルトの法則によって制限される。
【0094】
図3は、xyz座標系において、角度座標(α,β)を用いて、エスケープコーンL
g、L
outおよびL
sを平面的に表示したものである。コーンとコーンの間の明るい領域が捕捉光線L
pに相当する。この図は、本発明の第1の変形例に関して、矩形状で最適法線を有する面取りしたエッジを有するダイヤモンド結晶を例として挙げられる。ダイヤモンドの場合、周囲の媒質が空気であると仮定すると、臨界角はθ
c=24.6°である。
図3から、面取りしたエッジが作る4つのエスケープコーンL
sと、他のコーンに対するそれらの位置が分かる。
図3は、最適法線がエスケープコーンL
gと面取りしたエッジAB1が作るエスケープコーンL
sの間の重なりが最小になることを確実にすることを示す。実際、エスケープコーンL
sの中心は、エスケープコーンL
gの中心と一直線になっており、エスケープコーンL
gの最も近い2つの中心から等距離にある。直方体の結晶で最適法線を有する本発明の第1の変形例では、臨界角θ
cが22.5°未満の場合、エスケープコーンL
g、L
outとエスケープコーンL
sの間の重なりはなくなる。
【0095】
図4Dは、xyz座標系における角度座標(α,β)を用いたエスケープコーンL
g、L
out、およびL
sの平面的な表示である。この図は、本発明の第2の変形例に関して、矩形状のダイヤモンド結晶で、最適法線を有する面取りした頂点を有する例として挙げられる。
図4Dから、面取りした頂点によって作られた8つのエスケープコーンL
sと、他のコーンに対するそれらの位置が分かる。
図3とは異なり、
図4Dでは、最適法線が、エスケープコーンL
gと、面取りしたエッジAB1によって作られるエスケープコーンL
sの間が重ならないことを確実にすることが分かる。実際、エスケープコーンL
sの中心はβ=35°の線上にあり、エスケープコーンL
gの最も近い2つの中心から等距離にある。一例として、矩形状の結晶で、xyz座標系において(α=45°;β=35.3°)の角度座標を有する面取りした頂点に対する法線を有する本発明の第2の変形例では、臨界角θ
cが、
【0096】
【0097】
未満の場合、エスケープコーンLg+LoutとエスケープコーンLsの間の重なりはなくなる。
【0098】
エスケープコーンLg+LoutとエスケープコーンLsの間に重なりが存在する場合、本発明の一実施形態では、デバイス1は、面取りしたエッジまたは面取りした頂点を除いて、側面を覆う複数の反射鏡を備える。これにより、角度範囲と重なる内側の角度で伝播する光線がリサイクルされ、側面または大きな面を通って結晶外に漏れる代わりに、面取りしたエッジまたは頂点を通って出射することができる。反射鏡が結晶の適切な面を覆う場合、前述の理論的限界までデバイスの光抽出効率を高めることができる。本明細書において、反射鏡は、ルミネッセンス光の反射率が50%よりも高く、好ましくは90%より高く、より好ましくは99%よりも高い反射面を意味する。
【0099】
本発明の好ましい実施形態では、側面に対する法線は水平面xy(大きな面の平面)内にある。これは、側面が大きな面に対して垂直であることを意味する。この構成では、側面のエスケープコーンは、反射鏡とみなされる大きな面によって自己結像する。この形状は、面取りしたエッジまたは頂点を介して捕捉光線を最適にリサイクルし、可能な限り最高の光抽出を達成するのに有利である。実際、側面が大きな面に対して垂直でない場合、大きな面による側面のエスケープコーンの像は、それらのエスケープコーンと等しくない。従って、n個の側面がある場合、それらの側面に関連するn個のエスケープコーンと、結晶の他の面での反射によって作られるn個の像が存在する。これは、側面が大きな面に対して垂直ではない場合、面取りした面のエスケープコーンと反射によるその像、および側面に関連する2n個のエスケープコーン(すなわち、n個の「実際の」エスケープコーンと反射によるn個の像)の間に重なりがないことを達成することがより複雑であることを意味する。従って、いくつかの形状および結晶の所定の屈折率について、側面が大きな面に対して垂直である前述の実施形態は、側面が大きな面に対して垂直ではない場合よりも、より高い光抽出効率を達成することができる。
【0100】
図5Aと
図5Bは、それぞれ出射ビームの輝度と抽出効率を、さまざまな構成の結晶の減衰係数αの関数で表す。さまざまな構成は
図5Cに示す。計算は解析方程式を用いて行った。例として挙げたすべての構成において、結晶はw=14mm;L=100mm;t=1mmの矩形状のCe:YAG結晶である(寸法については
図5Cを参照)。
図5Aおよび
図5Bにおいて、C0およびC0’曲線は、
図5Cの一番上の構成に対応する構成に基づく計算から得られたものであり、この構成では、反射鏡が側面SE’の全体を覆い、反射鏡が側面SEを部分的に覆っている。すなわち、出射ビームを出射する覆われていない面(「出射面」)が規定されている。「従来技術の構成」と呼ばれるこの構成は、本発明の実施形態ではなく、反射鏡のおかげで2つのエスケープコーンをリサイクルする。C1およびC1’曲線は、本発明の第1の変形例に基づく計算から得られ、最適法線を有し、
図5Cの中央の構成に対応する。最後に、C2およびC2’曲線は、本発明の第2の変形例に基づく計算から得られ、最適法線を有し、
図5Cの一番下の構成に対応する。
【0101】
図5Aと
図5Bの両方で、出射面の表面(従来技術の構成Aでは覆われていない表面、C1曲線では面取りしたエッジ、C2曲線では面取りした頂点)は、すべての構成で、
【0102】
【0103】
に等しい。
図5Aの計算では、出射面の直後の出射ビームの発光がランバーシアンであると仮定し、輝度値は、α=0cm
-1の場合の従来技術の構成Aの出射ビームL
sの輝度値で除算した。
【0104】
【0105】
【0106】
の場合、本発明の第1および第2の変形例は、従来技術の構成Aよりもわずかに良好な抽出効率と、高い輝度の出射ビームをもたらすことが分かる。しかしながら、
【0107】
【0108】
の場合、本発明の第1および第2の変形例は、従来技術の構成Aよりも著しく優れた抽出効率と、はるかに高い輝度の出射ビームをもたらす。例えば、α=5.10-4cm-1の場合、従来技術の構成Aにおける出射ビームLsの輝度は0.75uaであるのに対し、本発明の第1の変形例における出射ビームLsの輝度は1.5uaであり、また本発明の第2の変形例における出射ビームLsの輝度は2.5uaである。α=5.10-4cm-1の場合、従来技術の構成Aにおける抽出効率は14%であるのに対し、本発明の第1の変形例では24%、本発明の第2の変形例では38%である。α=2.10-4cm-1の場合、光抽出効率は、本発明の第2の変形例では50%超に達するが、従来技術の構成Aでは依然として15%に過ぎない。
【0109】
本発明の結晶の面取りしたエッジまたは頂点を通って出射する光線は、
図1Aの従来技術の結晶の側面SEから出射する光線よりも長い平均経路を有することが示される。これは、本発明の第1および第2の変形例において、減衰係数αの増加が輝度および抽出効率に及ぼす影響が、従来技術の構成Aよりも相対的に大きいことを説明する。
【0110】
面取りしたエッジまたは頂点の表面が、面取りしたエッジまたは頂点を通って出射する光線の平均経路L
meanに直接影響することは注目されるであろう。例えば、最適法線を有する本発明の第2の変形例(
図5Cの一番下の構成)の場合、平均長さは、
【0111】
【0112】
(式中、s2は面取りした頂点の面積である)である。好ましくは、そして本発明の構成によって与えられる利点からさらに大きな利益を得るために、本発明の結晶CLは、1/α>>2Lとなるルミネッセンス光の減衰係数αを有する。結晶の形状が矩形でない、より一般的な場合、Lは2つの平行な側面の間の最大距離である。
【0113】
図5Aおよび
図5Bは、出射ビームの輝度値と光抽出効率の値の両方が、本発明の第1の変形例の構成よりも本発明の第2の変形例の構成の方が高いことを示す。αが小さくなるにつれて、2つの構成間のギャップが大きくなる。これは、本発明の第2の変形例でリサイクルされるエスケープコーンL
gの数が8であり、本発明の第1の変形例でリサイクルされるエスケープコーンL
gの数である4の2倍であることで説明される。
【0114】
図6Aは、結晶CLが2つずつ平行な6つの側面を有する、本発明の第2の変形例による発光デバイス1を示す。この実施形態では、n=6であり、z軸の周りの水平面内で、π/3の角度で回転することによる側面に対する法線が不変である。面取りした頂点S1に対する法線は、頂点を形成する3つの面の法線の和(
【0115】
【0116】
)に平行である。それは、この形状に「最適」な法線である。
図6Bは、
図6Aの結晶CL内に放射され、捕捉されたすべての光線の角度図を表示したものである。
図6Bに示す通り、結晶の形状を考慮すると、面取りした頂点は12個の人工的なエスケープコーンを作り出している。従って、理論的には、本発明の第2の変形例は、エスケープコーンL
g、L
out、L
sの間に重なりがない場合、
図1Aの従来技術の結晶の光抽出効率よりも12倍高い光抽出効率をもたらすことができる。
【0117】
本発明の第1および第2の変形例に適合する本発明の実施形態では、結晶は窒素空孔中心を含むダイヤモンドである。NV(窒素空孔)中心は、ダイヤモンド内の照射によって生成され、その蛍光特性のために使用される不純物である。この実施形態では、入射放射線Ldは、大きな面の少なくとも1つを照射するレーザーによって発せられる。典型的には、それらは緑色の光を吸収し、赤色の光を放出する。ダイヤモンドの屈折率n=2.4を考慮すると、平行六面体の面を通過して空気中に出射する光は、全光の4.5%に相当する。通常、光は共焦点顕微鏡によって集められる。例えば、開口数1.35(液浸対物レンズ)では、集められる光は発光する光の最大8.6%に相当する。集められる信号の量に依存する実験の感度は、この値を増加させるために多くの戦略が試みられてきた。従って、本発明のダイヤモンド結晶CLは、光抽出効率を劇的に高めることができる。一例として、本発明の第2の変形例では、周囲空気中の矩形状の結晶と最適法線により、出射ビームLsにおいて8個のエスケープコーンをリサイクルすることができる。これは、この例では光抽出効率が4.5×8=36%であることを意味する。
【0118】
面取りした頂点の表面サイズの制御により、最大光束を収集しながら、NV中心を用いた実験に必要な非常に短い応答時間を有するより小さな表面の光検出器を使用することが可能になる(寿命は約10ns、μs領域の遷移の質問シーケンス)。
【0119】
図7Aは、先細の円錐形アダプターTCを介して光ファイバーFOと結合した結晶のさまざまな構成を示す。
【0120】
図7Aの一番下の構成は、本発明の第1および第2の変形例に適合する本発明の実施形態を示す。説明に役立つ例として示す
図7Aにおける矩形状の結晶は、本発明の第2の変形例によるものであり、最適法線を有する面取りした頂点を含む。この実施形態では、デバイス1は、面取りしたエッジまたは頂点に隣接する、いわゆる上流端に取り付けられた先細の円錐形アダプターTCを備える。「取り付けられた」は、上流端が例えば非常に薄い厚さの屈折率n’の中間媒質で接着していることを意味する。デバイス1は、先細のアダプターのいわゆる下流端に接続した光ファイバーFOを備える。先細のアダプターTCは、出射ビームL
sの開口数が前記光ファイバーの開口数ON
fに一致するように適合される。それは、出射ビームの光線がその面上のTIRによって光ファイバー内に導かれるように適合される。好ましい実施形態では、アダプターの面は、L
sビームの反射率を改善するために、金属または誘電性コーティングで処理される。
【0121】
エテンデュ(またはスループット)の保存を確実にするため、上流端の直径φuと下流端の直径φdは、以下の関係で関連付けられる。
【0122】
【0123】
(式中、nは結晶CLの屈折率、θmはファイバー内で誘導される光線の結晶内部での集光角である。)屈折率n’の接着剤が中間媒質として使用される場合、以下の通りとなる:
【0124】
【0125】
ファイバーを発光媒質に直接結合するよりも多くの光線を集めるには、コーンの入射における開口数が出射における開口数よりも大きいことが必要である。これはφu<φdを意味する。上流端φuの直径は、中間媒質の屈折率n’に依存する最小値によって制限されることに注意すべきである。アダプターの開口数がすべての可能な角度を収集するのに十分であり、θ’m=90°であると仮定すると、以下が必要である:
【0126】
【0127】
図7Aの一番上の構成は、従来技術の構成(「従来技術の構成B」)であり、ファイバーが単に結晶の出射側に配置され(「突き合わせ結合」)、開口部アダプターTCと、アダプターに対向する面に反射鏡M2を有し、収集される光束を増加させる。
【0128】
図7Aの中央の構成(従来技術の構成A’と呼ばれる)は、従来技術の構成Aに対応し、アダプターTCが配置されている出射領域に光を集中させるために、出射面に配置された反射鏡を有する。
【0129】
図7Bは、
図7Aに示す結晶のさまざまな構成について、上流端の直径φ
uの関数として光抽出効率を表す。
【0130】
図7Aの一番下の図に示す本発明の実施形態に対応する
図7Bの曲線は、曲線C21およびC22である。
【0131】
C21曲線の計算では、ファイバーのコア(またはコーンによるその「先行するもの」)は、出射領域、すなわち面取りしたエッジまたは頂点の面に内接する(「C21構成」)。この場合、ファイバーは出射面から出るすべての光線を集めることはない。
【0132】
C22曲線の計算では、ファイバーのコアは出射領域を完全に包含する(「C22構成」)。この場合、面取りしたエッジまたは頂点から出射する光線はすべてファイバーにつながる。しかし、その代償として、出射領域はC21構成の1/4の大きさである。そのため、当該領域を通る出射確率はかなり低くなり、出口を見つけるまでの媒質中での伝搬長が長くなる。
【0133】
図7Bの従来技術の構成A’に対応する曲線は、
図7Aの曲線C0’’である。
【0134】
図7Bの従来技術の構成Bに対応する曲線は、
図7Aの曲線C01である。
【0135】
図7Bの曲線を計算するための例として示した
図7Aの3つの構成では、結晶は矩形の形状で、寸法はw=2.5mm、L=50mm、t=1mm、および、α=2.10
-3cm
-1である。光ファイバーのコア径は1mmであり、開口数ON
f=0.5である。エスケープコーン間の重なりがないと仮定して計算した。
【0136】
図7Bにおいて、縦線VLx
VL=0.5mmは、曲線C0、C01、C22、C21を、屈折率n’>1の中間媒質でのみ達成可能な効率値(φ
u<x
VLの場合)と、中間媒質なしで達成可能な効率値(φ
u>x
VLの場合)に分離する。この縦線は式Eq1で得られる。説明に役立つ例として、
図7Bでは、n’=1.4である。
【0137】
図7Bの曲線C01は、従来技術の構成a)では効率が非常に低いことを示す(約1%)。φ
u=φ
d=1mm(アダプターコーンのない結合と同等)の場合、本発明の実施形態(曲線C21およびC22参照)は、従来技術の構成A(C01曲線)の結合と比較して既に8倍の改善を与えており、従来技術の構成A’(C0’’曲線)と比較して2倍の改善を与える。φ
u=0.5mmの場合、この改善倍率はC22構成では18、およびC21構成では24になる。最後に、φ
u=0.4mmの場合、改善倍率はC21構成で32になる。
【0138】
図7Bは、光ファイバーにおける出射ビームL
sの高い抽出効率を達成するために、面取りしたエッジまたは頂点を有する本発明の結晶とアダプターTCを組み合わせて使用することによってもたらされる利点を明確に示す。
【0139】
図7Bから、上流端φ
uの直径が小さくなるほど、本発明のC21構成がC22構成に比べて良好になることが分かる。これは、面取りした端部または頂点から出射する前の結晶CL内の光線の平均経路距離が、C21構成よりもC22構成の方が長いという事実による。従って、C22の伝搬損失は、抽出効率を制限する。
【0140】
本発明の別の目的は、シンチレータ結晶に関連する。前述の通り、シンチレータのエネルギー分解は、結晶の光抽出効率に大きく依存する。シンチレータは、X線/ガンマイメージングを行うために、しばしばアレイ状に組み立てられる。コンパクトにするために、平行六面体の結晶がほとんどの場合選ばれる。このイメージング法の重要なパラメータはピクセル密度であり、アレイの各シンチレータがピクセルを表す。実際、散乱面の場合「クロストーク」を回避するために、反射体によって結晶を互いに光学的に分離する必要がある。すなわち、第1の結晶で発光する光が、第2の結晶の面で出射することで、第2の結晶からの光として検出されることを避けるためである。
【0141】
従来技術の特定の問題を軽減するために、本発明の別の目的は、X線源またはガンマ線源と検出器Detを備えるX線またはガンマ線画像システムである。検出器Detは、
図8に示され、本発明の第1または第2の変形例による複数の同一の発光デバイス1を備える。説明に役立つ例として示す各デバイスの結晶は、本発明の第2の変形例によるものであり、面取りした頂点を含む。
図8の実施形態では、各デバイスの結晶は固体シンチレータである。デバイス1は、アレイを形成するように配置され、X線源またはガンマ線源によって発せられた入射放射線Ldのためのピクセル化検出器を形成する。面取りしたエッジまたは頂点を通過する可視出射ビームを収集するために、画像システムは、各デバイスの結晶の面取りしたエッジまたは面取りした頂点の反対側にそれぞれ配置された複数のフォトダイオードPDを備える。すなわち、本発明の画像システムでは、1つのピクセルは、デバイス1とそれに対応するフォトダイオードPDによって形成される。好ましくは、結晶のすべての面が光学的に研磨される。
【0142】
従来技術のシンチレータ検出器アレイと比較して、
図8の検出器を使用する画像システムの決定的な利点は、クロストークが問題にならないことである。これは、検出器Detにおいて、面取りしたエッジまたは面取りした頂点を出て、各フォトダイオードによって検出される光線は、フォトダイオードの反対側に配置された結晶からの捕捉光線のみであるという事実による。実際、アレイの任意の結晶から、所定のいずれかの面から出る非捕捉光線は、同一であり、同じエスケープコーンを有するため、アレイの別の結晶には捕捉されない。従って、アレイの任意の結晶を出る非捕捉光線は、その経路上にある検出器のすべての結晶を通過して伝搬し、フォトダイオードPDの位置によって、どのフォトダイオードPDでも検出されない。
【0143】
結晶の面取りしたエッジまたは面取りした頂点の面積を、面取りしたエッジまたは面取りした頂点の間の側面の面積よりも小さくすることにより、最大光束を収集しながら、非常に短い応答時間を有する、より小さな表面のフォトダイオードを使用することが可能になる。従って、好ましくは、フォトダイオードの表面および面取りしたエッジまたは頂点の表面は、面取りしたエッジまたは頂点の間の側面の表面よりも小さい。
【0144】
結晶CLの全表面に対する、面取りしたエッジの表面または面取りした頂点の表面の比(Sbev/Stotと記す)は、ルミネッセンス光を大きい光束を有する出射ビームに集中させる、いわゆる「集光体効果」を制御するための重要なパラメータである。Sbev/Stotの比が小さいほど、出射ビームの光束は大きくなる(伝搬損失が集光体効果を補償しないことを前提とする)。実際、小さなSbev/Stot比は、多数の捕捉光線をリサイクルしながら、かつ、結晶CLが比較的大きな面積を有する大きな面を介して励起されることを可能しながら、小さな出射領域を通過してルミネッセンス光が出射するように「押し進める」。さらに、上述の通り、より小さなSbev/Stot比の使用は、非常に短い応答時間を確保するために、小さな表面を有する任意の光検出器の面積に出射面積を適合させるのに有用である。
【0145】
従って、好ましくは、本発明のすべての実施形態において、Sbev/Stot比は1/10よりも低く、好ましくは1/100よりも低く、さらに好ましくは1/1000よりも低い。シミュレーションおよび実験を通じて、本発明者は、1/10よりも低いSbev/Stot比の使用が、ルミネッセンス光の十分な集光体効果を可能にする一方で、1/100より低く、好ましくは1/1000より低いSbev/Stot比の選択が、出射ビームのより大きな光束を可能にすることを確認した。
【0146】
以下の表は、さまざまなパラメータとさまざまな材料を使用した、面取りしたエッジを有する平行六面体の結晶CFを用いた選択された実施形態を示す。以下の例では、エッジは表面t2を有する正方形の形状(対称的な出射ビームを提供するためにほとんどの用途に有用)になるように面取りされており、Sbev/Stot比は以下の通り概算することができる:
【0147】
【0148】
【0149】
前述の通り、平行六面体構造の形状は、光線が面取りしたエッジから出射するまで構造内でリサイクルされることを押し進める。以下の比率と寸法により、さまざまな用途の光検出器との組み合わせに特に適した出射面を有する結晶CLが得られる。
【国際調査報告】