(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】性能が改善された低視差レンズ設計
(51)【国際特許分類】
G02B 13/00 20060101AFI20240614BHJP
G02B 13/06 20060101ALI20240614BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20240614BHJP
G03B 37/00 20210101ALI20240614BHJP
H04N 23/55 20230101ALI20240614BHJP
H04N 23/698 20230101ALI20240614BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
G02B13/00
G02B13/06
G03B15/00 W
G03B37/00 A
H04N23/55
H04N23/698
G02B13/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577920
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 US2021065002
(87)【国際公開番号】W WO2022173515
(87)【国際公開日】2022-08-18
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2021/017284
(32)【優先日】2021-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521564847
【氏名又は名称】サークル オプティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ボーロン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー エフ.カーツ
(72)【発明者】
【氏名】アダム ブリッグス
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ディーン-エルランデル
【テーマコード(参考)】
2H059
2H087
5C122
【Fターム(参考)】
2H059BA02
2H087KA01
2H087LA01
2H087LA21
2H087NA14
2H087PA08
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA18
2H087PB09
2H087PB10
2H087PB11
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA21
2H087QA22
2H087QA25
2H087QA34
2H087QA39
2H087QA41
2H087QA45
2H087QA46
2H087RA01
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA42
2H087RA43
2H087RA44
2H087UA01
5C122FA03
5C122FA18
5C122FB02
5C122FB06
5C122HB06
(57)【要約】
低視差撮像デバイスのレンズ形状は、多角形の視野をキャプチャして撮像するように配置された複数の撮像レンズ要素を含む。レンズ形状は、コンプレッションレンズ要素群および広角レンズ要素群を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低視差マルチカメラ撮像システムで使用するための撮像レンズであって、
メニスカスレンズ形状を有し、クラウン光学材料を備える多角形レンズ要素を含むコンプレッサレンズ要素群であって、前記コンプレッサレンズ要素群は、多角形視野内の像光としてスペクトル帯域幅を有する入射光の少なくとも一部を屈折させるように構成され、前記像光は、前記コンプレッサレンズ要素の縁部に沿って受容される光線である視野縁部主光線を含む、コンプレッサレンズ要素群と、
前記コンプレッサレンズ要素群から前記像光を受光し、前記像光を像面に向け、前記多角形視野に対応する多角形像を形成するように構成された広角レンズ要素群と
を備え、
前記入射光に含まれた前記視野縁部主光線の投影は、前記像面の後ろに位置する低視差点に収束して、前記スペクトル帯域幅内の光が前記低視差点で収束するようにする、撮像レンズ。
【請求項2】
前記第1のレンズ要素の前記メニスカス形状は、低視差量内で前記瞳球面収差(PSA)を最小化する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記低視差点の量内のRMS横方向主光線誤差として測定された、前記撮像視野の平均PSAは0.30mm以下である、請求項2に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記低視差点で収束する前記入射光のスペクトル差は、前記コンプレッサレンズ要素と前記広角レンズ群の1つまたは複数の前開口絞りレンズ要素との組み合わせによって決定される、請求項3に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記コンプレッサレンズ要素群が正の歪みを導入し、前記広角レンズ要素群がほぼ相殺する負の歪みを提供する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記コンプレッサレンズ要素群が正のラテラルカラーを導入しながらフロントカラーと視差の両方を制限し、前記広角レンズ要素群がほぼ相殺する負のラテラルカラーを提供する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
前記コンプレッサ群は第2のコンプレッサレンズ要素を含み、前記多角形コンプレッサレンズ要素および前記第2のコンプレッサレンズ要素は、フロントカラーを制御または制限するために無色に色補正される、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項8】
前記入射瞳と前記低視差点との間の距離が、前記複数の縁部のうちの1つの近傍で受光される非近軸主光線の視差誤差を低減する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項9】
前記コンプレッサレンズ要素は、1.6以下の可視屈折率および55以上のアッベ数を有する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項10】
前記コンプレッサレンズ要素は、約1.6以上約1.8以下の可視屈折率および40以上のアッベ数を有する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項11】
200nm以上のスペクトル帯域幅の可視光撮像を提供し、前記コンプレッサ群は、前記第1のコンプレッサレンズ要素の前記多角形レンズ縁部に沿った残留フロントカラーを約0.2mm以下に制限する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項12】
200nm以上のスペクトル帯域幅の可視光撮像を提供し、前記コンプレッサ群は、前記像面における前記像の前記多角形レンズ縁部に沿った残留フロントカラーを画像ピクセルサイズの約0.7以下に制限する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項13】
前記コンプレッサ群は、前記近軸主光線の投影が前記像面の後方に位置する入射瞳に収束するように、前記スペクトル帯域幅内の前記主光線の色補正された投影を提供するために組み合わされる2つのコンプレッサレンズ要素を有し、前記成形されたレンズ要素縁部またはその近くで受容された少なくとも前記非近軸主光線の前記スペクトル帯域幅にわたって遠近誤差が低減されるように、前記非近軸主光線の投影が、前記入射瞳に近接して位置するように最適化された遠近中心に収束する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項14】
前記多角形縁部に沿ったフロントカラーおよび視差の両方の制御が、前記撮像レンズによって提供される拡張視野の必要な幅を低減する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項15】
前記拡張視野は、公称視野幅の約5%未満であることが好ましく、約1%未満であることがさらに好ましい、請求項14に記載の撮像レンズ。
【請求項16】
前記多角形縁部に沿ったフロントカラーおよび視差の両方の制御が、マルチレンズデバイスにおける前記撮像レンズおよび隣接する撮像レンズの継ぎ目の幅を約8mmの機械的幅以下に低減させることに寄与する、請求項1に記載の撮像レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、隣り合って当接する複数の多角形カメラを有するパノラマ低視差マルチカメラキャプチャデバイスに関する。本開示はまた、多角形形状の視野からの入射光を取り込んで、改善された視差および前部色性能によって多角形形状の画像を形成するカメラのレンズ設計にも関する。
【背景技術】
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、(1)2021年5月6日出願の米国仮特許出願第63/185,042号、名称「Low Parallax Lens Design with Improved Performance」、および(2)2021年2月9日出願の国際特許出願第PCT/US21/17284号、名称「Panoramic Camera System for Enhanced Sensing」の優先権の利益を主張し、各出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
パノラマカメラは、広視野画像を同時に捕捉するその能力の故に重要な価値を持つ。最も初期のこのような例は魚眼レンズであり、これは、広いパノラマ画像または半球画像を取り込む一方で、強い視覚歪みが生じる超広角レンズである。魚眼レンズの視野(FOV)は通常、100度から180度の間であるが、その手法は、Y.Shimizuが米国特許第3,524,697号で提示しているように、220~270度に及ぶ範囲を含むさらに大きい角度に拡張されている。
【0004】
別の代替形態として、複数のカメラが球体まわりまたは球体の周囲に配置されたパノラママルチカメラデバイスがますます普及してきている。しかしながら、Jaunt Inc.のA.Van Hoffらの米国特許第9,451,162号および米国特許第号9,911,454号に記載されているものを含めて、これらのシステムのほとんどでは、複数のカメラがデバイスの外面に間隔をあけて装着されている。隣り合う個々のカメラ間の隙間または継ぎ目を含めて完全な360度パノラマ画像を取り込むために、カメラは、この場合には互いに重なり合う拡大FOVを有する。場合によっては、カメラのFOVまたは解像度の50%もがカメラ間オーバーラップのために使用されることがあり、これによりまた、取り込まれた画像間にかなりの視差が生じる。視差とは、物体の位置または方向が、異なる位置から見たときに異なるように見える視覚認知のことである。この場合、その後の画像処理において、過剰な画像重なりと視差差の両方が、隣り合うカメラによって撮影された画像から容認可能な画像を適切に結合、タイル化またはステッチ、および合成するための処理を複雑にするとともに大幅に遅らせる。
【0005】
複数のカメラが球体まわりまたは球体の周囲に、隣り合うカメラが隣接縁部の一部または全体に沿って当接するように配置されているパノラママルチカメラデバイスもまたある。例として、K.Yoshikawaの米国特許第7,515,177号は、隣り合う多数の撮像ユニット(カメラ)を含む撮像デバイスを描写している。画像は、視野が重なり合っているカメラから、機械的誤差を補償するように収集される。
【0006】
低視差パノラママルチカメラデバイスに使用できる撮像レンズ系のレンズ設計および機能には、改善する余地が残されている。可能性のある光学的改良にはまた、隣り合うカメラ間の継ぎ目または継ぎ目付近の問題に特に関連して、個々のカメラレンズ系およびデバイス全体の光学機械設計に対する直接的および間接的な利益または相乗効果もあり得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】マルチカメラキャプチャデバイスの一部分、特にそのうちの2つの隣り合うカメラを示す3D図である。
【
図2A】レンズ要素および光線経路を含むカメラレンズアセンブリの一部分の断面図である。
【
図2B】レンズ要素および光線経路を含むカメラレンズアセンブリの一部分の断面図である。
【
図3】FOV重なり、視野、重なり、継ぎ目、およびブラインド領域を示す、標準的なマルチカメラキャプチャデバイスの一部分の断面図である。
【
図4A】切頭二十面体の幾何形状を有するデバイスで生じる可能性がある、隣り合う6角形レンズおよび5角形レンズの視野の光学的幾何形状を示す図である。
【
図4C】近軸NP点または入射瞳とデバイス中心との両方の近くに位置する低視差(LP)量の例を示す図である。
【
図4D】遠近中心に対するカメラチャネルの視差差を示す図である。
【
図4E】外側コンプレッサレンズ要素の縁部におけるフロントカラーを示す図である。
【
図5】最適化されたパノラママルチカメラキャプチャデバイスの設計に両方とも有用な可能性のあるコアおよび拡張視野(FOV)の両方を含む、隣り合うカメラの視野を示す図である。
【
図7】本発明によるレンズ設計方法を示すフローチャートである。
【
図8A】レンズ設計方法に従って別個に設計された2要素コンプレッサレンズ群の断面図である。
【
図8B】レンズ設計方法に従って別個に設計されたコンプレッサレンズ要素によって作成された一時的開口絞りに向けられている主光線の断面図である。
【
図9A】
図7のレンズ設計方法を用いて設計された、視差とフロントカラーが両方とも低減されている改善された撮像レンズ系を示す図である。
【
図9C】
図9Aのレンズについて、度単位の視野に対する度単位の主光線画角誤差として残留視差誤差を示すグラフ上にプロットされた視差補正曲線を示すグラフである。
【
図9D】
図9Aのレンズの残留フロントカラーを示す図である。
【
図10A】
図7の新レンズ設計方法に従って設計された例示的な改善された撮像レンズ系の断面図である。
【
図10B】別の例示的な改善された撮像レンズ系の断面図である。
【
図11A】別の例示的な改善された撮像レンズ系の断面図である。
【
図11B】追加の例示的な改善された撮像レンズ系の前開口絞り(pre-aperture stop)部分の断面図である。
【
図11C】別の例示的な改善された撮像レンズ系の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
光学の分野で一般的に理解されているように、レンズまたはレンズアセンブリは通常、レンズ鏡筒またはハウジングに取り付けられ協働して光学像を生成する、複数のレンズ要素を有するシステムまたはデバイスを備える。撮像レンズは、レンズ系からいくらかの距離の物体空間に存在する物体または複数の物体から来る光の一部分を取り込む。そうして撮像レンズは、これらの物体の像を出力「面」に形成することができ、この像は、撮像レンズの焦点距離と、その焦点距離に対する物体および像面までの共役距離とによって決定される倍率に依存する有限の大きさを有する。レンズを通過する、物体から像への像光の量は、撮像レンズの開口絞りのサイズに大きく依存し、これは通常、開口数(NA)またはFナンバー(F#またはF/#)についての1つまたは複数の値によって定量化される。
【0009】
撮像レンズによって得られる画質は、設計に使用される光学材料の選択、レンズ要素のサイズ、形状(もしくは曲率)および厚さ、レンズ要素相互の相対間隔、スペクトル帯域幅、偏光、透過光の光負荷(パワーまたは束)、光回折もしくは散乱、ならびに/またはレンズ製造公差もしくは誤差を含む、レンズ設計の多数の特性に依存する。画質は通常、レンズ収差(たとえば、球面収差、コマ収差、非点収差、歪曲収差)、またはレンズによって得られる解像可能なスポットの相対的なサイズの観点から記述されるか定量化される。撮像レンズによって得られる解像度は通常、変調伝達関数(MTF)によって定量化される。
【0010】
典型的な電子カメラまたはデジタルカメラでは、通常はCCDまたはCMOSデバイスであるイメージセンサが、像面に名目上配置される。
【0011】
典型的な使用において、カメラは環境およびその中の物体を撮像する。カメラが、同じシーンの一部の別の画像を取り込むために、近くの別の場所に移動され使用される場合には、物体の見かけの視点と相対的な位置決めの両方が変化する。後の方の場合、ここでは一方の物体が他方の物体を部分的に覆い隠すことがあるのに対して、以前には隠れていた物体が少なくとも部分的に見えるようになる。物体のこれらの見かけ上の位置または方向の差は、視差として知られている。特に、視差とは、2つの異なる視線に沿って見た物体の見かけ上の位置のずれまたは差のことであり、これらの2つの線間の傾斜の角度または半角によって測定される。パノラマ画像取り込み適用例において、視差差は、画像ステッチングと画像外観の両方を複雑にして視覚的な差異、画像アーチファクト、露光差、およびその他の誤差を生じさせる可能性がある誤差とみなすことができる。結果として得られる画像は、画像処理アルゴリズムを用いて成功裏に継ぎ合せができることが多いが、入力画像誤差は画像処理時間を複雑にするとともに長くし、場合によっては視覚的に明白な残留誤差を残す。
【0012】
状況を提示するために、
図1は、視差低減画像キャプチャ用に設計されたハウジング130内に隣り合う2つのカメラ120を有する、改善された一体型パノラママルチカメラキャプチャデバイス100の一部分を示す。これらのカメラは、あるいはカメラチャンネルまたは対物レンズ系とも呼ばれる。カメラ120はそれぞれ、レンズ鏡筒またはハウジング130内に装着される複数のレンズ要素(
図2参照)を有する。隣り合う外側のレンズ要素137は、隣り合うベベル縁部132を有し、一方のカメラチャネルから他方のカメラチャネルまで近接して設置されているが、接触していなくてよく、したがって、有限の幅のギャップまたは継ぎ目160によって分離されている。シーンまたは物体空間105からの利用可能な光(λ)、すなわち光線110のいくらかの部分はカメラ120に入って、制約されたFOV内で捕捉され画像平面に向けられた画像光になり、他の光線はカメラを完全に外れる。
【0013】
より詳細に、
図2Aは、一体型パノラママルチカメラキャプチャデバイス100の一部分内のハウジング(130、図示せず)の中に装着されたレンズ要素135のセットを有するカメラ120の一部分の断面を示す。物体空間105からの、軸上主光線から全視野軸外主光線までの範囲に及ぶ扇形の光線110が、外側レンズ要素137に入射し屈折して内側に透過する。各主光線は、両側に隣接する光線とともに示されており、局所的な光ビームを表している。開口絞り145を通り、さらに内側レンズ要素140を通過して屈折および透過するこの像光115は、イメージセンサ(図示せず)が通常は配置されている像面150またはその近傍で焦点画像に収束する。
図2Aのレンズ系120はまた、外側レンズ要素137またはコンプレッサレンズ要素、および内側レンズ要素140からなるレンズ形態を有すると定義することもでき、後者はまた、前絞り(pre-stop)広角レンズ群および後絞り(post-stop)アイピース様レンズ群からなると定義することもできる。このコンプレッサレンズ要素(137)は、像光115を鋭く内向きに光を圧縮して、レンズアセンブリ全体が短い焦点距離を実現できるようにする助けにするとともに、一方ではまた、レンズ要素を保持または装着するためと、隣り合うカメラの鏡筒またはハウジングと適切にインターフェースするためとの両方に必要な機械的機能が得られるように、カメラレンズハウジングまたは鏡筒に必要な空間を可能にもする。カメラレンズアセンブリを外側レンズ要素137から像面150まで通過した像光は、像解像度、像コントラスト、焦点深度、および他の属性によって定量化され得る画質の画像をもたらし、その品質は、カメラ120内のレンズ要素(137、140)の各々において通過光で生じる、光学収差(たとえば、非点収差、歪曲収差、または球面収差)および色収差または分光収差によって定義された。
図2Bは、
図2Aに示されたカメラ光学部品(120)の外側レンズ要素137のベベル縁部132に沿って、またはその近くに入射する扇形の主光線170、または周辺光線を示している。
図2Bはまた、光軸185から端部光線と一致する線まで延びる、捕捉された多角形形状または非対称のFOV 125の一部分を示す。
【0014】
一体型パノラママルチカメラキャプチャデバイス100の複数のカメラによって生成される画像は、レンズ要素を通って任意の所与のカメラ120のイメージセンサに至る画像光の方向位置決めまたは収集によって、カメラが、角度歪みのある、または非対称のFOV(FOV⇔)、またはサイズ間違いのFOV(FOV±)を取り込むようになる影響を受ける可能性がある。レンズ位置決めばらつきは、カメラ(たとえば、レンズ要素、センサ、およびハウジング)の製造中に、または複数のカメラを一体型パノラママルチカメラキャプチャデバイス100に組み立て中に、個々のカメラのアライメントが、アライメント不良または装着応力によって歪むことになるように生じる可能性がある。これらのカメラ位置決め誤差が、カメラ120間に継ぎ目160があることと合わさると、取り込まれ得る利用可能な風景または全景FOVの一部分の画像が取り込まれずに取り逃されたり、不適切に取り込まれたりすることがある。カメラ位置決めおよび継ぎ目のばらつきは、熱または光(たとえば、画像コンテンツ)などの内部または外部の環境要因と、特にその非対称の負荷とによって引き起こされる機械的なシフトおよび歪みによって悪化する可能性がある。
【0015】
カメラ幾何形状に関するいくつかの問題を説明するのに役立つように、
図4Aは、五角形FOV 177を取り込む五角形レンズ175と、六角形FOV 182を取り込む六角形のレンズ180との断面を示しており、切頭二十面体、またはサッカーボール型のパノラママルチカメラキャプチャデバイス(たとえば、100、300)で生じ得るような、外側のレンズ要素が五角形および六角形の形状を有する隣り合うカメラの対を表す。理論上の六角形FOV 182は、辺に沿って20.9°の半FOV、または41.8°(θ
1)の全FOVに及ぶが、頂点付近のFOVはもっと大きい。五角形FOV 177は、円形領域内で36.55°FOV(θ
2)をサポートし、隅または頂点付近でより大きいFOVをサポートする。注目すべきことには、この断面では、五角形FOV 177は非対称であり、光軸185の一方の側で20度FOVをサポートし、光軸の他方の側では16.5度FOVだけをサポートする。
【0016】
改善された低視差マルチカメラパノラマキャプチャデバイス(300)のレンズ系を設計する場合、性能(特に視差を含む)に影響を及ぼすいくつかの要因と、それを制御するように個別にまたは一括して最適化することができるいくつかのパラメータとがある。レンズ最適化中の視差制御の1つの手法は、「NP」点、またはより重要なことには、その変形体を対象とする。背景として、光学の分野には入射瞳の概念があり、これは、物体空間から見た開口絞りの投影であり、または、物体空間からの撮像光線が第1のレンズ要素による屈折の前に伝播するように見える仮想的な開口である。標準的な手法では、入射瞳の位置は、開口絞りの中心を通過する物体空間105からの近軸主光線を特定すること、および、その物体空間方向を前方に、それが光軸185に当たる位置まで投影または延長することによって、見つけることができる。光学では、入射ガウス光線または近軸光線は、一般に、光軸から10°以下の角度範囲内に存在するとともに、開口絞りの中心に向けられる光線に対応すると理解されており、また、入射瞳位置を画定もする。レンズの特性に応じて、入射瞳は開口絞りよりも大きいことも小さいこともあり、開口絞りの前または後に位置することもある。
【0017】
比較して、低視差カメラの分野には、無視差(no-parallax)(NP)点、または視点中心の概念がある。概念的には、近軸入射瞳と関連付けられたNP点が、レンズを設計するための初期仕様、またはレンズを記述するための初期仕様を策定するのに役立ち得る。それに対し、非近軸視野縁部主光線と関連付けられたNP点は、視差性能を対象にすること、および理解すること、ならびにレンズアセンブリが存在できる円錐容積部または錐台を画定することに役立ち得る。主光線、特に非近軸主光線の投影は、レンズ収差と、これらのレンズ系に関連付けられた実際的な幾何学との両方の故に、近軸主光線画定の入射瞳を取り逃す可能性がある。前者に関連して、適切に設計されたレンズでは、像面における画質が通常は、解像力、テレセントリック性、および他の属性に対する収差の影響を制限することによって、優先される。レンズ系内では、重点が像面における正味合計にあるので、開口絞りを含む中間面における収差が広範に変化する可能性がある。開口絞りにおける収差は、ケラレを避けるためにある程度制御されることが多いが、非近軸主光線が、開口絞りの中心、または投影された近軸に位置する入射瞳の中心を通過する必要はない。
【0018】
これらの概念を拡張し、改善された低視差レンズ系の設計を可能にするために、
図2Aのカメラレンズ系120は、物体空間105からの近軸主光線のベクトル投影によって画定された入射瞳に対応する第1のNP点190Aと、物体空間からの非近軸主光線のベクトル投影に対応するオフセットされた第2のNP点190Bとの両方を示していることに留意されたい。これら両方の仮想光線投影が、レンズ系と像面150両方の後ろの位置で光軸185を横切る。後で論じられるように、投影点190Aと190Bの間、およびこれらに近接する領域における光線の挙動は複雑になる可能性があり、投影された位置または点のどちらも明示的な値または大きさを有していない。主光線の投影は、点で光軸を横切るが、主光線の群の投影は、光軸に向かって収束し、密集できる(たとえば、数ミクロンまたは数十ミクロン以内)異なる位置で横切り、その「点」の範囲またはサイズは、解析に使用される近接主光線の集まったものに依存し得る。それに対して、大きいFOVを撮像する低視差撮像レンズを設計する場合、投影された近軸主光線および非近軸主光線によって得られるNP点190Aと190Bの間の軸方向の距離または差は、著しく大きい可能性がある(たとえば、ミリメートル)。したがって、後でまた論じられるように、軸方向の差は、現在のパノラマキャプチャデバイスおよび適用例のために設計されたレンズ系の視差最適化(たとえば、低視差量188)の有用な尺度である。後でも分かるように、改善されたデバイス(300)の設計は、デバイスの幾何学的中心、すなわちデバイス中心196を、この低視差量188の外側であるが近くに、あるいはその内部に、好ましくは非近軸主光線NP点の近傍に位置付けるように最適化することができる。
【0019】
1つの態様として、
図4Aは、共通点(190)に向けられた線を得るための、隣り合う2つのカメラの外側レンズ要素(レンズ175および180)を通り越す、視野の理論的縁部(FOV縁部155)の仮想投影図を示す。これらの線は、複雑な「円錐形」光学機械レンズアセンブリの理論的限界を表しており、通常は五角錐形または六角錐形の限界量である。再び、理想的には、無視差マルチカメラシステムでは、隣り合うカメラの入射瞳またはNP点は同位置にある。しかし、機械的な干渉を避けるために、所与のレンズアセンブリの機構は一般に、センサパッケージを含めて、カメラシステムの錐台の外側に、および隣接するレンズアセンブリの錐台空間の中に突出してはならない。しかし、マルチカメラパノラマキャプチャデバイスの実際のレンズアセンブリは、継ぎ目160によっても分離される。したがって、機械的な継ぎ目と、装着された外側レンズ要素(レンズ175および180)の物理的な幅または開放口との両方の内側にある、レンズ縁部で受容される実主光線170は、全体的に近軸NP点190に向けて投影されると、代わりにオフセットNP点192に着地し、NP点オフセット距離194だけ分離することができる。
【0020】
このことは、
図4Bに詳細に示されるように、公称または理想の点NP190に近接する拡大領域A-Aを考慮することによって、より良く理解することができる。
図4A~
図4Cは、相対的により細かい尺度に向かっており、たとえば、
図4Cに提示された細部が
図4Aまたは
図4Bですべて見えるわけではないことを理解されたい。
図4Bでは、六角形FOV 182内で、ガウス領域または近軸領域内を伝搬し開口絞りの公称中心を通過する光線(たとえば、近軸光線173)は、公称NP点190(入射瞳に対応)に、または公称NP点190からの小さいNP点差またはオフセット193でオフセットNP点190Aに、投影することができる。それに対して、六角形内の最大内接円と関連付けられた実六角形レンズ縁部主光線170は、より大きいオフセット距離(194A)のところにあり得る共通オフセットNP点192Aに着地するように投影することができる。
図4A、
図4Bの隣り合う2つのカメラはまた、一致するNP点(たとえば190)を共有することも、しないこともある。距離オフセットは、カメラ(隣り合う六角形カメラと五角形カメラ)間の幾何学的な事柄、カメラ内の幾何学的な非対称性(たとえば、五角形カメラの場合)、もしくは継ぎ目160の実際的な幅からの制限を含む様々な理由の故に、または収差光線間の方向性差の故に、生じる可能性がある。
【0021】
前述のように、極度に単純化された公称「NP点」(190)に向かう入射主光線の仮想投影図には、潜在的な幾何学的差もまたある。第一に、六角形レンズまたは五角形レンズの隅もしくは頂点または中央縁部(中央弦)付近からの入射撮像光路は、公称近軸NP点190とオフセットNP点192Bとの間の記述された範囲内の共通NP点に投影することも、しないこともある。また、
図4Bに示されるように、五角形レンズの幾何学的非対称性だけから、実際に受容されるFOVに対する縁部主光線170と171の関連付けられた対は、近軸NP点(190)からオフセット距離194Bだけと、互いにオフセット距離194Cだけとの両方で分離できる、異なる公称NP点192Bに投影することができる。
【0022】
別の問題として、レンズ設計中、最良の性能は通常、光軸185付近の、軸上または軸上付近(たとえば、0.3視野(正規化)以下)で生じる。多くのレンズでは、設計による良好な撮像性能は、コンプライアンスを強制するために最適化重み付けが使用されることが多い視野縁部またはその近傍で生じることが多い。そうして、最悪の撮像性能は、中間視野(たとえば、正規化像視野高さの0.7~0.8)で生じる可能性がある。再び
図4A、
図4Bを考察すると、近軸領域外側の中間視野(θ)からの、しかし縁部主光線(10°<θ<20.9°)ほどに極端ではない、中間軸外光線は、公称NP点190とオフセットNP点192Bとの間の中間NP点に向けて投影することができる。しかし他の、特に0.7~0.8中間視野からの、収差による影響をより多く受ける、より極端な軸外光線は、視野縁部オフセットNP点192Bよりも公称NP点190から多かれ少なかれオフセットされている位置のNP点に投影することができる。レンズ設計のばらつきを考慮すると、非近軸オフセット「NP」点は、
図4Bで示唆されているように、近軸NP点(入射瞳)の前(レンズにより近い)、またはその後ろに位置することができる(
図2Aに図示)。
【0023】
これは、より詳細に
図4Cに示されており、この図は、本質的に、
図4Bのさらに拡大された領域A-Aを示しているが、本手法の方法を使用して設計され最適化された撮像レンズ系について、近軸入射瞳(190)およびその近傍に収束する、収差像光線と関連付けられたベクトル投影光線経路の影響を示している。
図4Cにおいて、カメラレンズ系からの複数の視野における緑色の収差像光線の投影光線経路は、1つまたは複数の「NP」点近くの低視差量188内に収束する。同様の光線扇形の図はまた、赤色光または青色光について生成することもできる。近軸光線173の仮想投影は、像面150の後ろの距離Zにおいて公称光軸185上に位置する公称近軸NP点190もしくはその近傍に、または入射瞳に収束することができる。主光線171を含む視野縁部光線172の仮想投影は、光軸185に沿ってオフセットNP点192Bまたはその近くに収束する。NP点192Bは、たとえば、すべての視野縁部光線172の重心として定量的に画定することができる。「最小混乱の円」に対応する代替のオフセットNP点192Aを特定することができ、この場合には、近軸光線、端部光線、および中間または中央視野光線が最小スポット(軸外)に集まる。これらの異なる「NP」点は、近軸NP点からオフセット距離194Aおよび194Bだけ、また互いにオフセット距離194Cだけ分離される。したがって、より大きい近軸FOV、または非対称FOVをサポートする任意の所与の実際の撮像レンズアセンブリまたはカメラレンズの集合「NP点」は、通常は点ではなく、オフセット低視差(LP)スマッジ(smudge)または量188である可能性があると理解することができる。中央視野光線および視野縁部主光線のNPポイントは通常、近軸入射瞳または近軸NPポイントよりも像面から遠くに位置するが、常にそうなるとは限らない。レンズ設計では、これらの詳細が設計仕様と最適化優先順位の両方に依存する可能性がある。
【0024】
スマッジまたは低視差量188内では、様々な可能な最適または好ましいNP点を特定することができる。たとえば、改善された画像タイリングを実現するのに役立つように、視野光線172の縁部に対応するオフセットNP点を強調することができる。代替の中央視野(たとえば、0.6~0.8)のNP点(図示せず)もまた、追跡し最適化することができる。また、全体的な「LP」スマッジもしくは量188、またはその中の好ましいNP点(たとえば、192B)のサイズおよび位置は、レンズ設計最適化に応じて変化する可能性もある。このようなパラメータはまた、レンズアセンブリ間の製造差異の故に、所与の設計の製造された1つのレンズ系から別のレンズ”系までに関して、レンズ間で変化する可能性もある。
図4Cは、非近軸光線に対するこれらの代替オフセット「NP点」192A、Bを、近軸NP点190の後ろに、またはレンズおよび像面からさらに遠くに位置するように示しているが、本手法の方法を使用して最適化された、このタイプの他のレンズが提供されることも可能であり、この場合には、低視差量188で配置されている同様の非近軸NP点192A、Bが、像面と近軸NP点の間の位置に生じ得る。
【0025】
図4Cはまた、低視差マルチカメラパノラマキャプチャデバイスの中心、デバイス中心196の位置を示す。光学的考察に基づいて、改善されたパノラママルチカメラキャプチャデバイス300は、好ましくは、デバイス中心196を低視差量188内に名目上位置付けるように最適化することができる。その中の最適化された位置は、視野縁部主光線に対する視差制御を優先するように、オフセットNP点192Aまたは192Bのいずれかに、もしくは近傍に、またはそれらの間のオフセット距離194B内に、あることを含むことができる。その中の実際の位置は視差最適化に依存しており、この視差最適化は、入射瞳の球面収差、または直接主光線制約、または歪み、またはそれらの組み合わせに関連するレンズ最適化によって決定することができる。たとえば、球面収差が過補正または過小補正されるように最適化されるかどうか、およびどれだけの重み付けがメリット関数の視野オペランドに使用されるかが、周辺視野または中央視野に対する非近軸「NP」点の位置決めに影響を及ぼす可能性がある。「NP」点位置決めはまた、製造公差の管理およびレンズ系製造における残留ばらつきに依存する可能性もある。デバイス中心196はまた、低視差量188の近傍であるが、そこから中心オフセット距離198だけオフセットして配置することもできる。この手法はまた、公差管理に役立ち、より多くの空間をデバイス中心196の近傍に、ケーブル、回路、冷却ハードウェア、および関連する構造物のために設けることもできる。このような場合、隣り合うカメラ120は、「NP」点のオフセット低視差量188(
図4C)を、一致するもの(
図4A、4B)の代わりに有することができる。この例では、そうではなくデバイス中心196が、近軸方向入射瞳、NP点190に位置しているか近接しているならば、実質的にカメラ120の外側レンズ要素137のうちの1つまたは複数が過小サイズになり、所望の完全FOVが達成可能にならない。
【0026】
低視差量188の幅および位置と、様々な主光線の投影のベクトル方向と、それらの低視差量内のNP点位置とは、レンズ最適化中に、主光線170の扇形(たとえば、
図2A、
図2B)と関連付けられたオペランドを使用する方法によって制御することができる。しかし、
図4CのLPスマッジまたはLP量188はまた、入射瞳の球面収差(PSA)の横方向成分の視覚化であると理解することもでき、このパラメータは、主光線扇形を使用することの代替の、しかしそれと同等の設計最適化方法で使用することができる。特に、レンズ最適化中に、たとえばCode Vを使用して、レンズ設計者は、入射瞳の球面収差の横方向成分(たとえば、光線高さ)についての特別なユーザー定義関数またはオペランドを作成することができ、これはその後、様々に使用することができる。たとえば、オペランド値は、視野オペランドに対する均等または不均等な重み付けのいずれかを使用して、全FOVまたは局所的視野にわたる値の残差二乗和(RSS)として計算することができる。後の方の局所的な視野選択の場合、値は、入射瞳もしくはその近くの位置、または低視差量188内のどこか他のところについて、近軸、中央または周辺視野を選択することに応じて計算することができる。等価オペランドは、
図4Cに示されるように、オフセットNP点192Aの平面またはオフセットNP192Bのそれなどの、平面内の最小混乱の円の幅とすることができる。最適化オペランドはまた、視野全体にわたって不均一に視差誤差を低減または制限するための重み付けで、中央視野よりも周辺視野または縁部視野が有利になる不均衡な重み付けで、計算することができる。あるいは、最適化オペランドは、全視野にわたって(たとえば、
図5のように、コアFOV 205の内部またはその全体にわたって)名目上低い視差誤差を名目上均一にもたらす重み付けで計算することができる。そのタイプの最適化は、マッピングタイプ適用例に特に有用であり得る。
【0027】
低視差レンズ設計および最適化方法が、主光線または入射瞳の球面収差(PSA)に基づくオペランドを使用するものであろうとなかろうと、得られるデータはまた、撮像遠近(imaging perspective)の変化に関連して分析することもできる。特に、視野および色に対する視差誤差はまた、遠近中心(COP)の計算を使用して分析することもでき、この視差誤差は、可視画像アーチファクトに、低視差量よりも直接関連付けられるパラメータであり、また、物体をカメラシステムから2つの異なる距離において撮像する場合の画像ピクセル誤差または差異で評価することができる。遠近中心の誤差は本質的に、「無限遠」にある別の物体に対して近い距離(3フィート(91.44cm))にある物体などについての、所与の複数の物体距離における主光線軌跡の変化である。
【0028】
遠近法は、シーンから想像上の長方形(図の平面として実現される)を通って観察者の目に至る光を、あたかも観察者が窓を通して見て、見えたものを直接窓ガラスに描くように表現することによって機能する。図面および建築学では、線遠近法または点遠近法を用いた図の場合、物体は、観察者からのその距離が増加につれて小さく見える。隣り合う光学系の対を用いる立体画像取り込みまたは投影において、遠近法は、デュアルビュー視差、影付け、オクルージョンとともに、奥行き感をもたらす視覚的手がかりになる。少なくとも部分的に重なる視野を持つ隣り合うカメラの対による画像取り込みの場合には、視差画像差は、立体画像知覚の手がかりになり、またはパノラマ画像アセンブリの誤差になる。
【0029】
分析的に、実際のレンズからの主光線データはまた、色誤差を含む遠近誤差の観点から、画角の関数として表現することもできる。その場合、遠近誤差は、異なる距離または方向に位置する2つの物体間の画像における位置誤差として分析することができる。遠近誤差は、COPの位置の選択、撮像FOV内の角度、および色誤差に依存する可能性がある。たとえば、緑色遠近誤差を最小にするようにCOPを優先することが有用であり得る。遠近差または視差誤差は、撮像FOV内の1つまたは複数の画角について、遠近中心に対するLP量188内の色軸の位置(Δz)または幅を最適化することによって低減させることができる。遠近中心はまた、画角に対するZ(軸)切片位置(mm単位の距離)の曲線の群として、色ごとにグラフ化し分析することもできる。あるいは、取り込まれた画像がどのように見えるかをよりよく理解するために、COPは、視野に対する画像ピクセル単位の視差誤差として、色ごとに、カメラシステムの曲線の群としてグラフ化し分析することもできる。
【0030】
カメラレンズ系の設計の間、目標は、コアFOV 205(
図5)内の撮像の視差誤差を数ピクセル以下に制限することとすることができる。あるいは、周辺視野における、たとえばコアFOVの外縁および拡張FOV領域(提供される場合)の視差誤差を特に制限することが好ましいことがある。カメラの残留視差誤差がこのように十分に小さい場合、それらの共有継ぎ目160近くの、または拡張FOV重なり撮像の継ぎ目関連領域内の、隣り合う2つのカメラ間の遠近誤差として見られる視差差も同様に、数ピクセル以下(たとえば、3~4ピクセル以下)に制限することができる。レンズ設計、デバイス設計、および用途に応じて、遠近誤差によって判定されるレンズ系の視差誤差をさらに、コアFOV全体、周辺視野、またはその両方で0.5ピクセル以下までさらに低減させることが可能であるとともに好ましい。隣り合う2つのカメラそれぞれの、これらの残留視差誤差が十分に小さい場合には、どの残留継ぎ目160またはブラインド領域165からの画像アーチファクトも補償または隠しながら、画像を取り込み、クロップし、容易にタイル化することができる。
【0031】
図1のもののタイプのパノラマカメラの設計を追求する上であるが、複数の隣り合うカメラを有する改善された低視差マルチカメラパノラマキャプチャデバイス(300)を可能にするために、レンズ最適化方法およびパラメータの選択が重要になり得る。
図2Aのもののようなカメラレンズ120、すなわちレンズ要素135のシステムを出発点として使用することができる。このカメラレンズは、コンプレッサレンズ要素、および内側レンズ要素140を有し、後者はまた、前絞り広角レンズ群および後絞りアイピース様レンズ群からなると定義することもできる。視差誤差を低減するためにこのようなレンズを設計する際、近軸主光線から非近軸主光線までの扇形125(
図2A参照)、または縁部主光線の扇形170(
図2B参照)、または視野縁部光線の局所的な集まり172(
図4C参照)が、カメラレンズアセンブリによってどのように撮像されるかを考察することは有益であり得る。レンズ設計は、主光線の集合またはセット(たとえば、31本の画定された光線)に対してメリット関数オペランドのセットを使用することによって最適化することが可能であるが、その場合、最適化プロセスが面倒になることがある。代替形態として、改善された低視差マルチカメラパノラマキャプチャデバイス(300)の設計を追求する上で、改善された性能がまた、入射瞳において、またはレンズ系の後ろのLPスマッジ量188内の同様の選択された表面または位置において(たとえば、オフセットNP点192Aまたは192Bにおいて)、球面収差の横方向成分を強調する光線パラメータまたはオペランドの縮小セットを使用することによって得られることも可能であると決定された。代替の非近軸入射瞳における球面収差(PSA)の横方向成分の最適化は、非近軸主光線を強調するメリット関数重み付けを使用することによって達成することができる。
【0032】
別の態様として、低視差マルチカメラパノラマキャプチャデバイスでは、カメラ120(
図2B参照)の外側レンズ要素のベベル縁部またはその近くに入射する主光線170の扇形は、隣り合うカメラ(
図1参照)の外側レンズ要素のベベル面の縁部132またはその近くに入射する主光線170の扇形と平行でなければならない。外側レンズ要素137またはコンプレッサレンズの「縁部」は、ガラス厚さを通して切断された平坦な縁部を有することができる3次元構造物(
図2B参照)であり、そのレンズ要素、レンズアセンブリ全体、およびハウジング130、ならびに隣接する継ぎ目160およびその構造の製造公差に従っていることに留意されたい。ベベル縁部が外側のレンズ要素のどこに切り込まれるかという位置の画定は、材料特性、フロントカラー、歪み、視差補正、公差、および余分の拡張FOV 215がもしあればその範囲、を含む要因に依存する。外側レンズ要素137は、ベベル縁部132がレンズに切り込まれて、多角形パターン(たとえば、五角形、または六角形)に名目上従う多角形形状の縁部のセットが作成されると、ファセット外側レンズ要素になる。本明細書全体を通して、用語の「多角形形状の縁部」、「多角形縁部」、「多角形形状のレンズ縁部」、および同様の用語は、多角形形状の視野を撮像するように構成された多角形形状のレンズの1つまたは複数の縁部を、たとえば、上で論じられたように、その視野に対応する多角形形状の画像として撮像するように構成されている、多角形形状のレンズの1つまたは複数の縁部を指すために用いられることがある。
【0033】
別の態様として、
図4Eは、軸外または縁部視野点に向けられたときの、視野に対する色による公称光線経路の差である「フロントカラー」を示す。通常、所与の視野点に対して、青色光線は最も遠いオフセットである。
図4Eに示されるように、第1のレンズ要素137への受入青色光線157は、同じ像面点に向けられた受入赤色光線158よりもΔX≒1mm遠くにある。レンズ要素137が十分に大きくない場合、この青色光はクリップされる、またはケラレる可能性があり、また、カラーシェーディングアーチファクトが、撮像視野の縁部またはその近くに生じる可能性がある。フロントカラーは、多角形FOVの細い虹様の輪郭として、または光学システムの視野絞りとして機能する外側コンプレッサレンズ要素の多角形縁部として、取り込まれた画像コンテンツに現れることがある。画像縁部近くのフロントカラー関連カラーシェーディングアーチファクトを生じさせ得る局所的色透過率差は、外側コンプレッサレンズ要素137のベベル縁部における差ケラレによって、またはコンプレッサレンズ要素における縁部切り捨てから、または開口絞り145によって引き起こされる可能性がある。改善されたカメラレンズ(320)を実現するためのレンズ設計最適化中に、フロントカラーは、コンプレッサレンズ群もしくはレンズ設計全体の中でのガラスの選択によるものを含むレンズ設計の色補正の一部として、または横方向の色の補正におけるトレードオフとして、低減させることができる(たとえば、幅0.5mm以下のΔX(B-R)幅に)。取り込まれた画像に対するフロントカラーの効果はまた、拡張FOV 215(
図5)を有するように改善カメラレンズ(320)を設計することによって、また光学機構も、ストレートカットまたはベベルレンズ縁部132を拡張FOV 215の縁部で押す、またはそれを越えて押すように設計することによって、光学機構的に低減させることもでき、それにより、いかなる残留フロントカラーもコアFOV 220の外側で発生するようになる。そうして、いかなる残留フロントカラーのアーチファクトも、画像処理中の画像クロップステップの間に除去することができる。
【0034】
図4Dは、
図2Aおよび
図2Bのタイプの、ただし光学設計および性能が改善されている、低視差レンズについて、画角および色(R、G、B)に対する画像ピクセル単位の誤差または差として、遠近中心の変化280を示す。この例では、一方が、改善された低視差カメラレンズ320を有する改善された低視差マルチカメラパノラマキャプチャデバイス(300)から3フィート(91.44cm)の距離にあり、他方がデバイスから「無限遠」(∞)の距離にある、2つの物体の撮像が分析された。
図4Dは、軸上から視野の縁部近くまで(たとえば、約34度まで)、赤色および緑色では<1ピクセルの、青色では約1.5ピクセルの視差誤差を示している。視差誤差はまた、角度単位で定量化することもできる(たとえば、色ごとの度の分数)。視差最適化により、遠近中心差280のR、G、B曲線は同様の形状を有しているが、それらの間には小さいオフセット差および勾配差がある。これらの差は、横方向の色、軸方向の色、およびフロントカラーを含む、レンズの残留色差の表れである。青色光の視差誤差は、極端な視野点(たとえば頂点)では1.5ピクセルを超えることがある。しかし、設計されたFOV内での、特に少なくとも緑色光では、周辺視野内での撮像のために遠近誤差または視差誤差をさらに、サブピクセルレベル(たとえば、0.5ピクセル以下)に制限することが好ましい。隣り合うカメラ間の残留視差誤差が十分に小さい場合、コアFOVから得られた取り込み画像は、容易かつ迅速にクロップし、一緒にタイル化することができる。同様に、継ぎ目またはその近くのコンテンツを取り込む拡張FOV内の残留視差誤差が同様に十分に小さく、隣り合う2つのカメラが互いに適切に位置合わせされている場合には、2つのカメラによる重ねられた取り込み画像コンテンツは、迅速にクロップまたは平均化し、出力パノラマ画像に含めることができる。
【0035】
継ぎ目またはその近くの光学性能はまた、部分的に、画定された視野(
図5)のセットに関連して理解することもできる。特に、
図5は、隣り合う2つのカメラによって潜在的な画像光を収集することができる視野の潜在的なセットを示す。例として、十二面体または切頭二十面体または他の多角形レンズカメラアセンブリが付随するかどうかにかかわらず、五角形形状の外側レンズ要素を備え、それを継ぎ目160が隣接するレンズまたはカメラチャネルから分離しているカメラは、頂点(60)まで、またはレンズが存在する錐台もしくは円錐容積部の多角形縁部まで広がる理想的なFOV 200を撮像することができる。しかしながら、レンズハウジングの有限の厚さ、ベベルレンズ要素縁部の物理的態様、機械的くさび、および公差を含む、継ぎ目で生じ得る様々な物理的制約の故に、より小さい通過画像光のコアFOV 205が実際には撮像される可能性がある。外側のレンズ要素137のためのコーティングされた開放口は、いくらかのマージン(たとえば、0.5~1.0mm)とともに少なくともコアFOV 205を包含しなければならない。レンズをARコーティング付きでベベリングの前に製造することができるので、コーティングは継ぎ目まで延びることができる。コアFOV 205は、所与の実際のカメラ120が撮像できる最大の低視差視野として画定することができる。等価的に、コアFOV 205は、カメラチャネルの、境界がその多角錐の境界に名目上平行であるサブFOVとして、画定することができる(
図4Aおよび
図4B参照)。理想的には、小さい継ぎ目160と、FOV位置決めの適切な制御および較正とによって、公称コアFOV 205は、サイズが理想的なFOV 200に近づくか一致する。
【0036】
ブラインド領域165と、シーンからの画像コンテンツの関連する損失とを補償するために、カメラは、継ぎ目の幅および公差を考慮するのに十分な余分なFOVを提供できる拡張FOV 215、またはオフセットデバイス中心196をサポートするように設計することができる。
図5に示されるように、拡張FOV 215は、隣接するカメラのコアFOV 205の端部との重なり127を得るのに十分なだけ遠くまで延びることができるが、拡張FOV 215はさらに大きくすることができる。この制限された画像重なりは、
図3に関して前に論じられたように、適度の分量の画像解像度損失、視差誤差、および画像処理におけるいくらかの複雑さをもたらす可能性があるが、継ぎ目およびブラインド領域の見かけの幅を低減させるのに役立つ可能性もある。しかしながら、余分な重なりFOVが適度であり(たとえば、5%以下)、その中の残留視差誤差が、本手法によって実現されるように十分に小さい場合(たとえば、0.75ピクセル以下の遠近誤差)、画像処理の負担は全く適度であり得る。拡張FOV 215までの画像取り込みはまた、改善されたパノラママルチカメラキャプチャデバイス300の動作中に、カメラ較正および画像補正をサポートする中間取り込みステップを可能にするために使用することもできる。
図5はまた、コアFOV 205のサブセットに対応する、FOVセットのうちの1つの中の内接円も示しており、これは、そのカメラから全方向に取り込むことができる共通コアFOV 220である。共通コアFOV 220の角度幅は、カメラの画像容量のクイックリファレンスとして有用であり得る。コアFOV 205全体を含むようにより大きい、共通コアFOV 220の代替画定もまた有用であり得る。共通コアFOV 220またはコアFOV 205から、理想的なFOV 200を超えて、拡張FOV 215を名目上含むように延びる破線(225)は、レンズ設計が、低視差誤差撮像および隣り合うカメラによって取り込まれた画像の容易なタイリングを可能にするように、主光線または主光線の注意深いマッピングまたは入射瞳の球面収差の制御をサポートすることができる領域を表す。
【0037】
隣り合う2つのカメラ間の隣り合う2つの使用可能な開放口間の距離にまたがる継ぎ目160全体にわたって、視差を低減させ画像タイリングを改善するために、画像光が、有限の距離にわたって実質的な直線性および平行性を備え、共通の間隔で取り込まれるならば有利であり得る。設計される拡張FOVの量は、予想される光学的および機械的な継ぎ目幅と、公称物体視認距離とを考慮することができる。たとえば、有限の機械的な継ぎ目幅は、撮像された物体がマルチカメラデバイスから常に離れている場合には、継ぎ目をカバーするために必要とする拡張FOVが少ない可能性がある。一般に、機械的な継ぎ目幅は8mm以下であり、好ましくは4mm以下である。拡張FOVを形成し、ブラインド領域を制限するために必要なFOV重なりの量は、デバイス中心196(たとえば、十二面体形状の中心)に対する、入射瞳(近軸NP点)または(たとえば、周辺光線を強調するための)低視差量188内の代替の好ましい平面の相対的な近接度を制御することによって、決定することができる。拡張FOV 215の量は、カメラの周辺視野がたとえば約0.85~1.05になるように、好ましくは5%以下である(たとえば、37.5°の公称コアFOVでは1.8°以下の付加視野)。デバイス中心におけるスペーシング制約、および製造公差が適切に管理されるならば、拡張FOV 215は、1%以下の付加視野に低減させることができる。拡張FOV 215内では、視差は公称システムレベルに制限されるべきであるが、画像解像度と相対照度は両方とも十分なままである。視差誤差を低減させるための視差最適化では、主光線制約または瞳収差制約と、高FOV領域(たとえば、0.85~1.0視野)の、またはそれを超えるターゲティング最適化とを、拡張FOV 215によって得られる余分のカメラ重なり領域(たとえば、
図5、約0.85~1.05のうちのわずかな視野範囲)を含めるために用いることができる。
【0038】
フロントカラー(たとえば、
図4E)が引き起こし得る問題を考慮すると、改善された設計方法を開発すること、および大きさをさらに低減させること(たとえば、0.2mm以下に、好ましくは0.1mm以下に)が有利であり得る。フロントカラーは、像面の像の多角形縁部またはその近くに見られるが、それは、赤色、緑色、および青色光の空間色差またはビーム高さ差として外側コンプレッサレンズ要素に現れる入射瞳の色収差によって生じる。外側コンプレッサレンズ要素、およびその多角形の縁部は、本質的に、ソフトフォーカスまたは焦点の合っていない視野絞りとして機能する。多角形縁部近くから入ってくる光がレンズを通って伝搬するとき、青色光は、緑色と赤色に比較して外側の経路を横切り、設計者が開放口を画定するのに注意を払わない限りケラレる可能性がある。それに対して、赤色光は緑色および青色に比較して内側経路を横切り、比較的減衰しない。この結果として、保持された赤色光が、通常の白色光透過率を有するレンズ内視野またはコアFOVに到達する前に、外縁に沿って緑色光に隣接しており、青色光がさらに内側にある、虹色の像面アーチファクトが生じる。加えて、このフロントカラー問題は、隣り合うカメラチャンネル間の距離が必ず増加することを意味する。これらのギャップは望ましくなく、したがって、フロントカラーを最小限にすることが重要である。
【0039】
低視差カメラまたは対物レンズ系の設計中、フロントカラーは制御することが困難であった。この問題は、入射光が最初のコンプレッサ要素から屈折するとすぐに始まる。したがって、低分散要素が使用されなければならない。同時に、この大きい要素の曲率を最小にするために、可能な最高の屈折率も使用されなければならない。これらの相反する圧力は、ガラスマップの左上隅にあるOHARA S-LAH53などの光学材料を選択することを推進し得る。しかし、ガラスマップのこの領域におけるガラス選択は、むしろ限定されている。改善された解決策が、Surmet社(マサチューセッツ州バーリントン)の光学セラミックALONなどの、従来とは異なる光学材料をフロントレンズ要素に使用することによって見出される可能性がある。しかし、このような材料からそのような大きい要素が作られるのは望ましくないことがある。ALONは、S-LAH53と同様の屈折率を有するが、分散はずっと低い。S-LAH53フロント要素を使用することの補償をするために、ダブレットL2-3が、そのダブレットが残留色の問題を補正するのに役立つ3要素コンプレッサ群を得るように、また、それによってフロントカラーの低減を可能にするように、追加された(
図1の対物レンズを参照)。このような低視差および低フロントカラーカメラレンズ120の例が
図6に示されており、外側コンプレッサ要素137はSLAH-53を使用し、内側コンプレッサレンズ要素138は、要素138AにSBAH28を使用し、要素138BにSTIH53を使用しており、それぞれすべてOhara Glassのものである。しかし、設計は、視差を制御または制限するために、3つのコンプレッサ要素が非常に小さい入射瞳球面収差(PSA)もまた実現しなければならないという同時要件によって、さらに複雑になっている。さらに、同時に、レンズ系全体は、画像に生じるラテラルカラー(LC)収差および歪曲収差が小さくなければならない。
【0040】
図1または
図6のような低視差カメラまたは低視差対物レンズ系の設計中に、小さい視差、小さいフロントカラー、および小さいラテラルカラーの3つの目的を同時に達成することは困難なことがある。通常、フロントカラーとラテラルカラーは反比例の関係にあり、一方を減少させると他方が増加する。個々のカメラチャンネルが約37.4度の最大半FOVをサポートする、十二面体形状をサポートする低視差レンズの設計では、3要素コンプレッサレンズ群には十分な自由度がないようであり、フロントカラーの0.4~0.6mmの妥協値(外側のコンプレッサレンズ要素で測定)が残される可能性がある。しかし、実際には、0.1mm幅以下の、より小さい残留フロントカラー値が青と赤の分離では好ましい。
【0041】
前述のように、これを解決する1つの方法は、ALONなどの、従来とは異なる光学材料を使用することである。内側レンズ要素140の中で、いくつかのレンズ要素に好ましいガラスは、ガラスマップの左上隅にあることが分かった。これらの非常に小さい要素にALONを使用することは有益である。別の代替形態として、ラテラルカラーを増加させることが容認され得る。しかしそれは、いくつかの画像ピクセルと同等の、容認できない値にすぐに達する可能性がある。第3の代替形態として、対物レンズがリレーイメージングシステムと対にされる場合、フロントカラーが低減されることを可能にするために、対物レンズのラテラルカラーを犠牲にすることができる。これは、最初または第一の空中画像におけるラテラルカラーが「容認できないほど」大きくなり得ることを意味するが、リレーシステムが、最終的な性能損失を最終画像で修正する。この場合、瞳球面収差(PSA)およびフロントカラーの最適化は、対物レンズのコンプレッサレンズ群によって制御されて、第一または中間像での性能損失(たとえば、ラテラルカラー、歪み、およびテレセントリック性)が結果として生じ、それは次に、リレーレンズ設計において補償される。有利なことに、イメージングリレーは、対物レンズに見られる空間制約のいずれも受けない。しかし、本出願は、パノラママルチカメラデバイスの少なくとも1つの撮像チャンネルにおいて、対物レンズとリレーレンズ系組み合わせのための使用または空間を可能にしなければならない。
【0042】
これらのレンズ系を簡単にする1つの手法として、大きいフロントコンプレッサレンズ要素に使用される光学材料をガラスからプラスチックに置き換えることが望ましい可能性がある。しかし、現在および過去の光学プラスチックまたはポリマーは非常に限られており、S-LAH53またはALONとほとんど同等の高屈折率、低分散材料はない。接合されたプラスチックダブレットもまた、特にコンプレッサレンズ要素のサイズのレンズ要素では望ましくないことがある。
【0043】
これらの問題を克服するために、より良い同時視差性能およびフロントカラー性能を有する低視差レンズを設計するための、新たな強化された手法または方法が開発された。この改善された手法は、ガラス、プラスチックもしくはポリマー材料、光学セラミック、またはそれらの組み合わせを使用している屈折コンプレッサレンズ要素を有するレンズに適用される。それはまた、自由曲面を有するレンズ要素、またはサブ波長構造もしくはメタマテリアル構造を持つ表面を使用するレンズにも適用される。
【0044】
この新たな手法の1つの実施形態として、
図7に示された新たなレンズ設計方法600を使用することができ、この方法では、レンズ系が、コンプレッサレンズ要素またはレンズ群を分離し、それらを最初に設計することと(ステップ610~640)、次に、コンプレッサレンズを他のレンズ要素と組み合わせて(ステップ650)、完全な低視差、低フロントカラーカメラまたは対物レンズ系300を設計すること(ステップ660~670)とによって、設計される。より詳細には、ステップ610で、焦点距離およびスペクトル動作帯域幅などの一次目標データが、第1のコンプレッサレンズ要素237(
図8A参照)に対して提供される。特に、開口絞りの位置と、入射瞳の位置と、コンプレッサおよび広角群の画角とについての1次データが、全体的なシステム仕様またはこのタイプのレンズ系のための以前の設計のどちらかに基づくこと、どちらかで推測されること、またはどちらかより導出されることが可能である。
【0045】
また、最初の手法として、ステップ610で提示される最初の1次データは、スペクトルを一時的に準単色波長帯域幅に制限することもできる(たとえば、20nm帯域幅を有する緑色で)。これは、フロントカラー、ラテラルカラー、および他のいかなる色収差も一時的に除去する。次に、最初のコンプレッサ最適化ステップ615の間に、第1のコンプレッサレンズ要素237は、最終的なLPスマッジの位置の近くに配置された、無収差の入射瞳でもある一時的な開口絞り292に向かって入射光を導くように、形状およびサイズに関して設計することができ、主光線は、完全なレンズの最終的な開口絞りが配置される場所に名目上対応する位置245に向かって収束する。もちろん、245と292の役割を交代させることは、それらが互いに共役であるので可能である。初期コンプレッサ最適化ステップ615の間に、容認可能なPSAを有する本質的に単一のレンズ要素単色コンプレッサが設計される。このコンプレッサは、別個に設計することができ、または、利用可能であれば、広角レンズ群(140)の前絞り要素の一部または全部を含みながら設計することができる。後者の場合、それは、この前絞りコンプレッサレンズ群設計段階(ステップ610~640)の間、広角レンズ要素の処方が凍結または固定されているならば、有益であり、または好ましい。
【0046】
この最初のコンプレッサ最適化ステップ615の間に、第1のコンプレッサレンズ要素237のレンズ位置、サイズ、曲げ、およびパワーは、すべての単色収差を解決するように見出すことができる。この第1のレンズ要素は通常、
図8Aに示された第1のレンズ要素237のような形状を有するが、さらにメニスカス形状を有し、それは、単一のコンプレッサ要素の特定の形状係数から来ている非常に低い瞳球面収差(PSA)を実現することができる。
図7の改善されたレンズ設計方法600を使用しながら、このレンズを設定し、非撮像最適化を実行するための様々な方法がある。この第1のコンプレッサレンズ要素237が、曲率チェックステップ620によって製造されるか堅牢に取り付けられるには形状があまりに極端である場合、設計は、設計変更ステップ630によって、たとえば、要素の曲率を低減させるように変更することができる。ステップ630で、レンズ曲率が補正され、それが容認可能とみなされる場合、設計プロセスは色補正ステップ640に進むことができる。たとえば、あまり極端ではない形状のコンプレッサレンズ要素237を実現するために、光学材料、ガラス、プラスチック、またはセラミックが高屈折率材料に変更されることが可能である。設計帯域幅はまた、拡大することもできる(たとえば、50nmまで)。あるいは、または追加して、コンプレッサレンズ群は、第1のコンプレッサレンズ要素237と第2のコンプレッサレンズ要素238の両方を含むように拡張することができる。この前群のコンプレッサレンズ要素230は、物体の適切な画像を生成せず、したがって最適化は、レンズ設計者規定の内部制約のみを満たすように設定される。
【0047】
しかし、特に可視光スペクトルにおいて、色補正が最終的に必要とされるという予想を認めると、
図8Aに示されているもののような、少なくとも2つのコンプレッサレンズ要素237および238を有するコンプレッサレンズ群230が必要になり得る。次に、ステップ640で、コンプレッサレンズ群設計は、光学材料選択によって、設計スペクトル帯域幅をさらに拡大するように(たとえば、200~300nmまで)、およびこのダブレットを無色にするようにさらに修正することができる。無色化を達成するために、レンズ材料(たとえば、屈折率および分散)が選択され、レンズ要素曲げまたは曲率、厚さ、および介在空間が、所与の視野の光を、無彩色化レンズ群を出るときのこれらの光線の位置およびベクトル方向において最小のスペクトル差または色差で前方に向けるように設計される。ステップ640の間の最適化はまた、2要素コンプレッサ群の最適化だけで、瞳球面収差(PSA)と軸方向の色瞳収差(chromatic pupil aberration)の両方の良好な制御を実現することができる。修正コンプレッサ設計ステップ640の間、設計スペクトルは、フロントカラーを補正しながら、意図された全波長範囲に及ぶように拡張することができる。第3のレンズ要素またはフリントレンズ要素が、必要に応じて追加され得る。設計ステップ640の間、1次コンプレッサ設計ターゲット、および設計自体もまた、必要に応じて修正されることが可能である。設計ステップ610~640は、この分離されたレンズ要素群(230)の非撮像最適化である。軸方向の色瞳収差を制御することは、本質的に、入射瞳球面収差を無色で補正しており、フロントカラーを制御するための効果的な機構である。
【0048】
新たな方法600を使用してレンズ、特にその無色補正を設計する上で、目標は、視差およびフロントカラーを補正する際に、撮像されたスペクトル帯域幅の下端および上端またはその近くの光の主光線の投影が、名目上、同じ小さい低視差量またはLPスマッジの中に入ることである。200nm幅のスペクトル帯域幅を有する色補正された撮像システムでは、下端および上端波長または色は、たとえば450nmおよび650nmにあり得る。それに対して、300nm幅のスペクトル帯域幅を有する色補正された撮像システムでは、下端および上端波長または色は、たとえば400nmおよび700nmにあり得る。別の例として、LWIR光を撮像する、かつそれに対してスペクトル補正されているシステムでは、撮像され補正されたスペクトル帯域幅は6μm幅になり得、下端および上端波長はそれぞれ、8μmおよび14μmにある。
【0049】
例として、1つの設計では、
図8Aの第1および第2のコンプレッサレンズ要素は、それぞれ低屈折率E48Rおよびそれより高い屈折率OKPA2である、2つの光学プラスチックを含み得る。
図8Bは、最終開口絞り245近くの主光線色広がりを示し、縁部主光線270が厳密に制御されており、内側主光線272が互いにより多くオフセットしている。一時的な開口絞り292とLPスマッジ285は、この分離されたレンズ設計プロセス(ステップ610~640)において役割を反対にしており、入射瞳は、実際の、無収差のものとは対照的に、仮想の、収差のあるものになる。これらのコンプレッサレンズ要素237および238の、他の光学収差に対する寄与は、これらのレンズ要素がそれに対してほとんどまたは全く強調なしに設計されているので、増加し得る。縁部主光線270の、全視野またはその近くの色広がりは非常に小さく、フロントカラーが適切に制御されていることを意味していることに留意されたい。しかし、より低い視野における色広がり(主光線272)は補正されず、また、コンプレッサレンズ要素群では補正される必要がない。
【0050】
次に、対物レンズ全体を撮像用に最適化するために、最適化されたコンプレッサ群230は、広角群または内側レンズ要素を含む、または備えるレンズ要素と組み合わされる(ステップ650)。ここで、
図9Aの完全なレンズを考えると、広角群のレンズ要素340を追加する際に、開口絞り345は、光軸185に沿ってシフトし、第1のコンプレッサレンズ要素の頂点から遠くのレンズ内のその元の位置へ戻るが、投影された近軸入射瞳および非近軸等価物は、
図8Aの元のレンズと同じ名目上の位置に留まる。しかし、次に、像面またはセンサパッケージが容認される円錐容積部または錐台内に留まるように、像面が入射瞳位置およびLPスマッジ位置の前で十分遠くにあることを確実にするために、調整が必要になり得る。これらの他のレンズ群は、次に、ラテラルカラーおよび歪みを含む、コンプレッサ群によって導入された光学収差を修正することを一部は含めて、所望の撮像機能および画質を実現するように設計される(ステップ660)。コンプレッサレンズ要素は、このレンズ設計最適化ステップ(660)の間凍結すること、たとえば変更しないままにすることができる。これらのレンズ群内の、非常に多数の要素と、非球面プロファイルを持つレンズ面とによって、良好な画質を像面に得ることができる。最終の完全レンズ最適化ステップ670の間、コンプレッサレンズ要素の設計は、フロントカラーおよび視差性能が著しく犠牲にならない限り、撮像設計取り組みを支援するために変更する自由をいくらか許容することができる。
図9Aは、十二面体デバイス用に設計されたこのタイプの例示的低視差対物レンズまたはカメラレンズを示している。しかし実際には、このレンズ設計方法600を使用して、新たな低視差レンズ設計が、標準的な光学ガラス材料またはポリマー材料を使用しながら、以前の設計と同等またはより優れている低残留視差性能とともに、ただし改善されたフロントカラー性能と改善されたラテラルカラー性能の両方とともに、達成されている。
【0051】
図7の改善されたレンズ設計方法600は、設計問題に応じて、またはこのタイプの低視差、低フロントカラーレンズを設計する上でのレンズ設計者の経験が増加するにつれて、修正することができる。たとえば、ターゲット波長帯域が限定されている、または利用可能な光学材料が十分に低い分散を有するいくつかの状況では、結果として得られるレンズ設計は、ダブレット(たとえば、
図9A)または3つ以上のレンズ要素を有する代わりに、単一のレンズ要素を備えたコンプレッサレンズ群を有することができる。
【0052】
特に、
図9Aは、改善された方法600によって設計されており、マルチカメラキャプチャデバイス100で使用可能である、改善された低視差、低フロントカラーカメラレンズまたは対物レンズ300を示す。このレンズは、十二面体システム用に設計されており、したがって、中央縁部から頂点まで約31~37度の範囲の視野縁部角度を有する多角形縁部をサポートする。レンズ系300は、主光線370および視野縁部主光線372を含む、視野325から収集された光を、コンプレッサレンズ群330および内側レンズ要素または広角群340、および開口絞り345を通して像面350に撮像する。内側レンズ要素または広角レンズ群340はまた、前絞り広角レンズ群、および後絞りアイピース様レンズ群とみなすこともできる。縁部主光線372の仮想投影380は、像面350の後方に位置する縁部主光線NP点392の方に向いている。
【0053】
より詳細に、
図9Bは、
図9Aのレンズの縁部主光線NP点394またはその近くのLPスマッジ量の断面図を示す。近軸入射瞳390は、センサまたは像面350の後ろ約26.7mmに位置している。この図は、多角形縁部に沿った周辺主光線が、近軸入射瞳390からオフセットしているがその近くにある量または非近軸NP点394に収束することを示す。低部および中央視野光線は392に収束する。周辺主光線の緊密な投影収束は、視差を低減させるために必要である。この例では、多くの中央視野主光線374の投影は、実際には、近軸入射瞳390の後ろの中央視野NP点392の位置に、またはその近くに、しかし周辺光線NP点394よりもそれに近接して収束する。しかし、この設計例では、投影された主光線はすべて、縁部主光線視野NP点394の近くに位置する最小量に包含される。この例で示されるように、視差補正を分析する際に、様々な場合を考慮することは有用であり得る。
【0054】
また、観察平面を画定し、次にその平面全体にわたって残留視差誤差をグラフ化することもまた有用であり得る。図示のように、低角度(10度以下)および中間角度(たとえば、10~25度)主光線は、選択された観察平面の前にある狭い領域に収束する。最低角度光線は、近軸入射瞳および選択された観察平面に非常に近い位置に収束する。多角形縁部に沿った光線は、観察平面の前またはそれを越えた点に収束する。これは、主光線角度誤差対画角として
図9Cに定量化されている、いくらかの残留視差誤差を導入する。
図9Bに示される観察面または評価面の位置は、緑色主光線に対してバランスのとれた結果が生じるように少量だけ調整された。残留視差310のこの例示的グラフは、角度誤差対画角として与えられており、0~37.4度に及ぶ半視野にわたって数値的に最大残留±0.3度差を示す。
【0055】
より詳細には、この例では、真の無視差は、多角形縁部に沿った中央弦点近くで生じる(33.6度で0.0度誤差)。真の無視差からの残差は、弦中央点近くでほぼ均衡しており、頂点(37度)での-0.3度主光線偏差と、中央縁部(31.4度)での+0.18度偏差と、中央視野(約24度)での+0.27度残留誤差とがある。レンズ設計に応じて、残留非視差の大きさ、および曲線形状は変化することができ、またはさらに最適化することができる。ステレオカメラシステムまたは典型的なマルチカメラパノラマシステムの隣り合うカメラ間の視差差は通常、度の単位で測定され(たとえば、5~20度)、これらの値は約100×低く、視差関連の画像アーチファクトを大幅に低減させることができる。他の同様のグラフを、このデータを異なる条件で再計算することによって、作成することができる。たとえば、像平面に沿った位置に対するピクセル単位の残留視差誤差のグラフもまた、非常に有用であり得る。
【0056】
図9Aのレンズ設計例では、外側コンプレッサレンズ要素337について測定され、赤色光線と青色光線の間の局所距離Dxとして測定された、フロントカラーは、
図9Dに示されるように、わずか0.084mmに低減された。緑色光線と青色光線の間の局所距離は実質的にゼロである。これは、第1のコンプレッサレンズ要素337上の推定幾何学的ビームサイズの2.2mmと比較して小さい。レンズ設計が実質的にフロントカラーを制御するので、
図9CのRGB残留視差の3つの曲線は、多角形の縁部の範囲にわたって互いに最上部に実質的に位置する。特に、
図9Cのグラフは、主光線の分光補正またはRGB色補正された投影380が、中央縁部から頂点までの約31~37度画角に対応する多角形の縁部にわたって適切に補正されていることを表示する視差測定値を示している。
図9Cで、これは、RGB曲線が、多角形縁部に沿っている31~37度画角にわたって、緊密に集まっている、またはほとんど重なっている(たとえば、互いに0.07度以内に)ことによって示されている。
【0057】
センサにおける画像解像度(ピクセルまたはピクセル/mm)はまた、ピクセル/度として物体空間に再キャストすることもできる。通常、これらの低視差レンズは、設計および使用されるセンサに応じて、20~400ピクセル/度の解像度をサポートすることができるが、もっと高い値または低い値も可能である。隣り合うピクセルの隣り合う主光線は角度的にオフセットされているが、幾何学的ビームサイズは重なっている。したがって、多角形レンズ縁部に沿った残留フロントカラーは、センサの複数の画像ピクセルへの影響と相互に関連している可能性がある。それは、多角形縁部に沿って、総撮像FOV、画像タイリング、および残留画像アーチファクトに影響を及ぼし得る。したがって、フロントカラーの大きさを、
図7の改善された本設計方法600によって、および
図9A~Fおよび
図11B~Dの本例によって例示されているように、レンズ外面上でそれぞれ0.084mmまたは0.2mmに低減させることが、像面における影響の最小化につながり得る。特に、像面で考えると、このような小さい角度差は、0.7ピクセル以下、好ましくは0.2ピクセル幅以下のフロントカラー像アーチファクトにつながって、フロントカラー虹像アーチファクトをほとんど見えなくすることが可能になる。この残留分は、その後必要であれば容易に取り除くことができる。もちろん、残留角度主誤差を像面の画像ピクセルに変換することもまた、イメージセンサの解像度およびピクセルサイズに依存する。したがって、その尺度は、非常に有用であるが、相対的なものでもあり得る。
【0058】
図9Cと
図9Dは、一緒に解釈すると、
図7の改善されたレンズ設計方法600を適用することによって作成されたこの例示的レンズ設計には、フロントカラーと遠近補正または視差補正との両方について、残留色差がほとんどないことを示すものである。残留視差誤差および残留フロントカラーの量は、どれだけの拡張FOV 215がコアFOV 205を越えて与えられるかについての設計選択に寄与することができる。改善されたフロントカラー性能はまた、それが、光学機械設計が継ぎ目幅を縮小し、コンプレッサレンズの多角形縁部近くの差色ケラレを回避する助けになるので、有用である。
【0059】
図9Eは、
図9Aの例示的低視差、低フロントカラー撮像レンズ300の光学処方を示す。それは、9つのレンズ要素、ならびにフィルタプレート、および像面近くの検出器窓からなる。要素1は光学プラスチックE48Rを使用し、レンズ要素2および9は、両方とも光学プラスチックOKPA2を用いて設計されている。要素4は非球面および円錐面を有する。レンズ要素8~9は、それぞれ1つの非球面を有する。撮像レンズ全体は、4.87mmの焦点距離、およびF/2.8の絞り値を有する。その半視野は37.4°であり、それは3.74mmの像半対角線をサポートする。前頂点から像面までの光軸に沿った撮像レンズ全体トラック長は122.8mmであり、LPスマッジは、イメージセンサの約25.6mm後ろに位置している。
【0060】
図9Aの撮像レンズ設計はまた、
図9Eの処方に詳述されているように、古典的なレンズ設計測定基準に対して適切に機能する。特に、50%超MTFによる撮像解像度が、全視野について、ナイキスト周波数である100lp/mmで達成される。このレンズは、視野全体にわたって1.5%未満である残留糸巻型歪みを像面に有する。この低歪みに対する、設計内の相対的な寄与は、表面寄与データを用いて調べることができる。この例示的設計では、コンプレッサレンズ要素は、正の3次歪み(+2.38)に寄与し、広角群レンズ要素は、相殺する負の歪み(-2.09)を与え、正味で、レンズ全体で+0.29の表面寄与合計になる。同様の計算を5次歪み表面寄与について行うことができ、これは再び、広角群が、コンプレッサレンズ群の正の歪み寄与を名目上相殺するように設計されたことを示す。組み合わせでは、3次と5次合計寄与が組み合わされて、視野にわたって前述の1.5%歪みに寄与する。
【0061】
このレンズ設計はまた、像面に、青と赤の間で<0.7ミクロン(mm)、青と緑の間で<1.7mm、緑と赤の間で<2mmの残留ラテラルカラーを有する。これらの値はすべてサブピクセルであるので、意図された2.5mmのセンサピクセルサイズに対して、残留ラテラルカラーは本質的に目立たない。相対照度(RI)もまた、撮像視野全体にわたって高く、視野の端で約63%までしか低下しない。また、
図9Fは、この撮像レンズの熱挙動もまた考慮されていることを示す。40℃温度範囲にわたって取得された、100lp/mmでのスルーフォーカスMTF曲線は、低い熱感度を示している。このレンズ設計の以前のバージョンには、光学プラスチックを使用した第4のレンズ要素があったが、そのバージョンは、範囲30~37.4°の視野外角に対してかなりの熱感度を有していた。
【0062】
図10Aは、
図9Aのものに対する代替の例示的レンズ設計を示している。この例では、改善された対物レンズ300は、色補正のために光学プラスチック(PMMAおよびOKPA2)の低屈折率と高屈折率対(Δn約0.17)を使用する2つのコンプレッサレンズ要素337および338を有するが、それらは、
図9Aに提示されたものとは実質的に異なるレンズ要素形状を有する。
図10Bは、
図9Aのものに対する追加の代替の例示的レンズ300を示し、これは、
図9Aおよび
図10Aのものとは形状が中間であるコンプレッサレンズ要素を有するが、E48Rを使用する低屈折率レンズ要素は、OKP4を使用する高屈折率レンズ要素(Δn約0.07)の前に来る。これらの様々な設計は、収差制御もしくは画質、円錐面もしくは非球面の数、スマートフォンカメラの最新のレンズに似ている広角群のレンズ要素340の存在、それらの視差性能、ゴースト光および熱デフォーカスに対するそれらの感度、ならびに/または他の要因の点で、細部が異なる。しかし、
図9A、
図10A、および
図10Bのレンズはすべて、
図7の新たなレンズ設計方法600を適用することによって、改善されたコンプレッサレンズ群を含むように設計された。
【0063】
これらの例示的レンズ300のすべてが、光学ポリマーを使用するコンプレッサレンズ要素(群330)を有するが、このコンプレッサレンズ要素はさらに、視差とフロントカラーの両方の制御を強化する。そうすることが、より大きい自由度を表面形状にもたらし、レンズ単価を下げ、レンズ総重量を低減させる。しかし、全ガラス製コンプレッサレンズ要素を有する他の低視差レンズ設計と比較して、広角群のいくつかの要素に非常に高い屈折率材料を使用することは、高屈折率フロントガラス要素から低屈折率ポリマーへの切り替えに起因するコンプレッサ群の屈折力の損失を相殺するために有益であり得る。
【0064】
コンプレッサレンズ群330の2要素形状を持つ、
図9Aおよび
図10A、
図10Bのものと同様のレンズは、光学ポリマーレンズ要素の代わりにガラスレンズ要素をコンプレッサレンズ要素に対して使用しながら、視差およびフロントカラー最適化に対する強化された制御を行うように、
図7の改善された方法600を使用して設計できることに留意されたい。さらに別の代替形態として、これら2つのコンプレッサ要素(337および338)は、ガラスレンズ要素および光学ポリマーレンズ要素で構成することが、どちらの順序でもできる。
【0065】
別の例として、
図11Aは、
図7の改善された方法600を使用して設計された代替撮像レンズ300を示しており、
図9A~Fおよび
図10A~Bの例示的レンズと比較して、画像サイズは大きい必要があるが、撮像される角度視野は小さい(最大約24度)。この例では、第1のコンプレッサレンズ要素337の前面の曲率が強すぎたので、光学プラスチックを使用する2要素コンプレッサ群330は実現されなかった。その後、光学プラスチックを使用する実行可能な3要素コンプレッサ群330を用いた設計が得られた。しかし、第1のコンプレッサレンズ要素337を中屈折率低分散ガラス(たとえば、Ohara SLAL-19(n約1.72))に変更することによって、2要素コンプレッサ解決策が得られた。第2のコンプレッサレンズ要素338には、光学プラスチックOKPA2を使用した。注目すべきことには、この設計解決策は、3要素プラスチック解決策よりも980g重い、1290gの重量があった。しかし、その熱感度は、3要素プラスチック解決策よりも低かった。
【0066】
さらに別の例として、
図11Bは、
図7の改善された方法600を用いて設計され、3要素プラスチックコンプレッサ群300が得られた、代替撮像レンズ300の開口絞り(345)前部分を仮想投影主光線380とともに示す。次に、
図11Cは、開口絞り345後に位置する広角群のレンズ要素340を含む、完全なレンズ系を示す。
図11Cはまた、縁部主光線NP点392に向けられた主光線の視野縁部仮想投影380を示している。このレンズ300は
図6のものに類似しているが、
図11Aの例示的レンズ300と同様に、最大視野は約24度である。
【0067】
この例示的レンズの設計中に、レンズ設計方法600が修正された。本質的に、ステップ650と660の間に中間ステップ645が含まれ、そのステップの間に、意図された広角(WA)群340の、最初の3つの前開口絞り広角群レンズ要素は含まれたが(たとえば、
図11B)、変化することが許容されず、3要素コンプレッサ群330の設計はさらに修正された。たとえば、第2または第3のコンプレッサレンズ要素の設計は、PSAにおけるフロントカラーまたは色差などの色収差を低減させるように変更することができる。3つのプラスチック要素に必要な空間は、1つのガラスレンズ要素および1つのプラスチックレンズ要素だけを含む
図11Aの前例よりも5mm大きかった。第1のコンプレッサレンズ要素337の前面での、レンズ形状の測定基準であるR/#は、余分のコンプレッサ要素(339)を使用することによって、R/0.508(ほぼ半球)からR/0.55に低減された。したがって、ステップ645を含むこの修正方法では、コンプレッサ群330設計は、入射瞳の収差に対するすべての寄与を考慮する。最終的なレンズ設計最適化のために、次に、得られた3つのコンプレッサレンズ要素が、WA群340全体のレンズ要素のすべてと組み合わされた。
【0068】
得られた
図11Cの対物レンズ300は、11個のレンズ要素からなる。要素1~3は、プラスチック(E48R、E48R、OKPA2)である。要素5は、非球面および円錐面を有する。要素9~10は、それぞれ1つの非球面を有する。レンズは、14.9mmの焦点距離、およびF2.8の絞り値を有する。その半視野は23.8°であり、それは6.55mmの像半対角線をサポートする。トラック長は119.7mmであり、LPスマッジは、イメージセンサまたはイメージプレーン350の約29.2mm後ろに位置している。
【0069】
図11Dは、
図11Cの例示的対物レンズ300について、近軸入射瞳390の近傍の全視野にわたる主光線を示す。この場合、LPスマッジ量は非常に小さく、位置のシフト(光軸185の交差)を視野でほとんど示さない。この結果、このレンズの視野内の残留角度視差が、緑色光では0.03°未満、赤または青色光では0.07°未満と非常に小さくなる。また、
図9Bの例と比較すると、近軸(390)、中間視野(392)、および視野縁部(394)NP点は、そこに微妙なばらつきがあるが、密集している。コンプレッサレンズ群のものを概ね相殺する広角群寄与から利益を再び得た歪みは、撮像視野全体にわたって1.3%未満である。0.7μm未満のラテラルカラーは、再びサブピクセルである。赤色光と青色光の間で0.2mm以下の補正されたフロントカラーは、第1のコンプレッサレンズ上の6.5mmの推定幾何学的ビームサイズと比較して、再び小さい。MTFによって測定された画像解像度は、200lp/mmのすべての視野に対して40%を超える。撮像視野の縁部における相対照度(RI)は約75%である。
図11Bのレンズ300のレンズ要素すべての総重量は、311グラムであると推定される。
【0070】
図9A~Fおよび
図11Bの例示的レンズと比較して、
図11Aおよび
図11B~Dのレンズでは、総視野の縮小が、コンプレッサレンズ要素群と広角群の両方の設計を容易にした。しかし、イメージセンサのサイズの相対的な増大は、広角群の設計にいくらかの負担を追加する際に、ある程度相殺された。
【0071】
しかし、大まかに言えば、
図7の改善されたレンズ設計方法600を適用することが、低視差カメラレンズまたは対物レンズの従来のレンズ設計方法と比べて大幅なレンズ性能向上を可能にした。メニスカスレンズ形状は、入射瞳またはLPスマッジをセンサ面の後ろに配置するために使用され、残留視差を制限する。特に、外側コンプレッサレンズ要素のメニスカス形状をより正確に制御することが、入射瞳またはLPスマッジにおける、またはその近くの入射瞳球面収差(PSA)を直接減少させることによって、視差を抑制する(
図4Cおよび
図8B参照)。PSAは、レンズ設計ソフトウェアで、LPスマッジ(たとえば、低視差量188)内の面を横切る主光線の平均RMS横方向逸脱もしくは半径、または横誤差(LPスマッジ半径)対視野含めて、さまざまな方法で推定することができる。例として、
図9A~Fの低視差撮像レンズ300では、LPスマッジ内のRMS横方向主光線誤差として測定された12個の視野の平均PSAは、わずか0.18mmであった。別の例として、
図11B~Dの低視差撮像レンズ300では、視野にわたって平均された推定PSAは、わずか0.023mmであった。良好な設計目標値は、約20~40度の半FOVを撮像するように設計されたレンズでは、視野にわたる平均PSAが、LPスマッジ内のRMS横方向主光線誤差として測定されたときに、0.30mm以下になっていることである。
【0072】
加えて、従来の低視差レンズと比較して、
図7の改善されたレンズ設計方法600を適用することが、フロントカラーアーチファクトを著しく減少させた。特に、両方の例示的レンズはそれを、従来の低視差レンズ設計で一般的に見られた0.5~0.6mmの値と比較して、0.2mm以下のフロントカラーに減少させた。さらに、これらの改善された結果は、低屈折率(たとえば、n(vis)から1.60以下)クラウンガラスを使用しながら、少なくとも第1のコンプレッサレンズ要素337が、高屈折率フリントガラスまたはALONなどの特殊材料を必要としないで55以上のアッベ数またはv数によって得られた。あるいは、第1のコンプレッサレンズ要素は、関連するクラウン/フリント境界線近くに(クラウンは50以上のvナンバーを有する)、40以上のv数範囲の分散を有する、中から高の間の屈折率ガラス(1.6以上1.8以下のn)とすることができる。
【0073】
図9A~Fのものを含むいくつかの新たなレンズ設計では、第1のコンプレッサレンズ要素は、低屈折率(n(vis)約1.55)プラスチッククラウン(E48R)である。低屈折率クラウンガラスまたは光学プラスチックの使用は、その低い分散によって、高屈折率フリントガラスを使用するのと比較して、フロントカラーを低減させるのに大いに役立つ。その場合、フロントカラーは、適切な光学材料(分散)選択とともに、第2の、場合によっては第3のコンプレッサレンズ要素を追加することによって、さらに抑制することができる。加えて、低屈折率クラウン材料(たとえば、BK-7)の使用は、(通常は)大きいコンプレッサレンズ要素に、特に第1のコンプレッサレンズ要素に、その多角形の縁部形状とともに高屈折率フリントガラスを使用することに対して、コストを大幅に改善することができる。また、1つまたは複数のコンプレッサレンズ要素に低屈折率のプラスチックを使用することが、レンズ要素重量、ならびにレンズ系重量およびコストを劇的にすることもできる。これらの低視差レンズ300では、第2および第3のコンプレッサレンズが、フロントカラー補正を助けるために通常必要とされる。しかし、提示された例は、コンプレッサレンズ要素群330内に2つまたは3つのレンズ要素を有していたが、1つのレンズ要素だけを有する、または4つ以上のレンズ要素を有する低視差レンズ系300もまた、改善された設計方法600を用いて開発することができる。
【0074】
また、前述のように、
図7の改善されたレンズ設計方法600によって可能にされる残留視差誤差および残留フロントカラーの低減はまた、カメラチャネルおよびマルチカメラデバイス設計を別に改善することもできる。たとえば、改善は、拡張FOV 215がどれだけコアFOV 205を越えて与えられるかの量を低減させることができ、それによって光学機械設計が継ぎ目幅を縮小し、コンプレッサレンズの多角形縁部近くの差色ケラレを回避する助けになる。
【0075】
しかし、前記のように、視差(たとえば、PSA)およびフロントカラーを低減させる上で、コンプレッサ群レンズ要素、特に、その第1のレンズ要素は、画像歪みに対して大きい正の寄与をする。その場合、レンズの残り、特に広角レンズ群は、負の歪み寄与を実質的に相殺することを担っている。
【0076】
前述のように、改善された低視差撮像レンズ系(300)は、
図7の改善された方法600を用いて設計され、この方法では、コンプレッサレンズ群330の予備設計が、無収差の入射瞳でもある一時的な開口絞りに向かう光線に対して最適化することによって、別個に得られる。コンプレッサレンズ群330の初期設計が得られた後、広角群を含むレンズ300全体を設計し、最適化することができる。この改善された方法の利点は、コンプレッサレンズ要素群330が、他の設計目標でそれに負担をかけたり、過剰に負担をかけたりすることなく、それがすべきことをするように、視差およびフロントカラーを抑制するように、設計されることである。そうして、レンズ300全体が設計されると、広角群340は、コンプレッサ群330が台無しにした一次属性または収差は何でも、ある程度修正しなければならない。特定の例として、コンプレッサ群330、特に第1のコンプレッサレンズ要素337の歪みに対する表面寄与は通常、大きい正の歪みを与える。コンプレッサが、PSAを最小化し視差を抑制するために、他の収差を考慮せずに形状を変えることを許容されると、それはメニスカス形状を呈する。意図した像面の後ろの入射瞳の位置は、この形状を推進する鍵である。第2およびまたは第3のコンプレッサレンズ要素(338および339)の追加は、フロントカラーを低減させるが、歪みにはほとんど影響を及ぼさない。それらの歪み収差面の寄与によって測定されると、次に、広角群340は、意図された視野にわたって正味で小さい残留歪みになるように、反対符号のほぼ同等の大きい歪みをもたらす。
【0077】
図7の改善されたレンズ設計方法600はまた、ラテラルカラーに対して以前よりも精密な制御を可能にすることもできる。視差およびフロントカラーを抑制するようにコンプレッサレンズ要素群を別個に最適化すること(ステップ610~640)による、コンプレッサレンズ要素群の改善されたターゲティングによって、また、より多くの情報を与えられた材料選択によって、フロントカラーとラテラルカラーの両方をより低いレベルにすることができる。特に、ラテラルカラーに対するコンプレッサ群の表面寄与は、以前に見ているよりも低い。第二に、コンプレッサ群が凍結している間に広角群が設計され最適化されると(ステップ660)、広角群340は、コンプレッサレンズ要素群330のラテラルカラー寄与をより正確に相殺することができ、その結果、従来の設計方法で見られたよりも最終ラテラルカラーが低くなる。全体として、コンプレッサ群300は大きい正のラテラルカラー面寄与に寄与し、広角群340は大きい負のラテラルカラー面寄与に寄与し、組み合わせでは、それらが合わさって、無視できる総ラテラルカラーにすることができる。以前と比較して、低いフロントカラーに最適化することは、もはや高いラテラルカラーを引き起こすトレードオフではない。もちろん、この結果として生じる、低から無視できるまでの間のラテラルカラーは、次に、広角レンズ群340の設計を完成させながら、より正常なレベルにトレードオフすることができ、他のレンズ収差の低減に有益である。
【0078】
分離型コンプレッサ群330が広角群レンズ群340に取り付けられるステップ650は、少し扱いにくい可能性があることに留意されたい。レンズ要素パワー、レンズ要素間隔、および主光線角度が変化している、または異なっているとき、2つの群は、互いにすぐ適切に整列または嵌合しないことがある。その場合、レンズ設計ソフトウェア(たとえば、Code VまたはZemax)で利用可能ないくつかの標準的なレンズ設計策が、全体的な最適化を開始する前に、2つのレンズ群を一致させるために使用され得る。
【0079】
比較して、レンズを設計する従来の方法を始める場合、意図された機能的特徴の全部または大部分は最初から同時に存在しており、そこに分布しているレンズ要素によって表される。低視差レンズ系を設計する場合、これは、始まりのレンズ設計には、少なくともいくつかのコンプレッサレンズ要素(群330)と、開口絞り345前後の両方に設けられている広角群340のレンズ要素とが最初から含まれていることを意味する。しかし、従来の方法は、正しいタイプのレンズ要素をレンズ内の名目上正しい位置に有することはできても、それは、コンプレッサ群が、それがすべきことをするのを確実なものにはしない。本質的に、最適化メリット関数には平等な取り扱いが多すぎて、満足のいく結果があまり得られない。不適切な種類の競合が、コンプレッサレンズ要素群と広角レンズ要素群の間に設定される可能性がある。
【0080】
図7の部分的に順次的な設計方法600の代替形態として、より古典的なレンズ設計手法または方法が、同等の結果を達成するように適合することができる。その代わりに、コンプレッサレンズ要素(群330)と、開口絞り345前後両方に設けられる広角群340のレンズ要素とを含むレンズ全体を一緒に保持し、同時に最適化することができる。しかし、この場合は、レンズ設計メリット関数は、視差およびフロントカラー制御が対象とされるいくつかのコンプレッサ群制約を含むようにしか修正することができない。これらの制約は、Code VまたはZemaxメリット関数のオペランドおよび重み付け係数を使用して有効にすることができ、これらのオペランドおよび重み付け係数は、コンプレッサレンズ要素、および/または収差に対するそれらの表面寄与、またはそれらの集合体のみに影響を及ぼし、広角群レンズ要素には影響を及ぼさない。この代替レンズ設計方法はまた、レンズ設計の異なる段階中に異なる重み付けを使用することもでき、または2つの最適化スクリプトを有することもでき、1つは、最初のコンプレッサ群の最適化段階中に適用され、2つ目は、その後に、像面の画質を対象とするレンズ全体の最適化中に適用される。最適化スクリプトにはまた、標準的なレンズ収差のほとんどに対処するために、コンプレッサレンズ要素に対し、その他のレンズ要素に対するのとは異なる重み付けがあり得る。低視差、低フロントカラーの対物レンズの設計は、
図7の部分的に順次的な設計方法600と同等である、これらの代替方法によって生み出すことができる。
【0081】
図11B~Dの例示的対物レンズ300の設計はまた、異なるサイズ、重量、性能、およびコスト(SWaP-C)期待が存在する様々な適用例に対応するように修正されている。たとえば、
図11Cの対物レンズ300が119.7mmのトラック長および14.9mmの焦点距離を有する場合に、類似の、やはり製造可能な、ずっと小さいレンズが
図11Cから、ただし9.3mmのトラック長および1.12mmの焦点距離で得られた。両方のレンズが同じf/#および波長で機能する。この第2のレンズは本質的に、始まりのレンズと同じ設計形態であるが、小さくなる焦点距離とともに幾何収差がすべて縮小すると、レンズ要素数は低減させることができる。レンズサイズが、携帯電話に使用されているものと名目上同程度のプラスチックレンズ要素が実施可能になる領域にまで小さくなると、レンズ形状のより大きい自由度が、非球面プロファイルまたは自由形式プロファイルを使用することを含めて、実現可能になる。このような変化はまた、レンズがより少ないレンズ要素を用いて設計されることも可能にする。
【0082】
フロントカラーまたは残留視差を改善するために、前に論じられた、
図7の部分的に順次的な設計方法600、またはその変形形態もしくは等価物を適用することによるラテラルカラーの改善からも明らかなように、この新たな手法は、他の補完的な改善を実現または可能にすることができる。最も単純には、そうして他のレンズ収差の大きさを低減させることが容易になり得る。また、前記のように、本タイプの低視差レンズでは、外側コンプレッサレンズ要素337、およびその多角形の縁部は、本質的に、ソフトフォーカスまたは焦点の合っていない視野絞りとして機能し、この縁部は、有限のビーム幅、視差変動、および残留フロントカラーによって拡大される。したがって、
図7の部分的に順次的な設計方法600、または上述の代替方法などの変形形態もしくは等価物を適用することによって、フロントカラーおよび残留視差を低減させることができ、このことはまた、焦点の合っていない視野絞りをより鮮鋭にするのに役立つ。これは、機械設計と、画像クロッピングステップおよびタイリングステップとの両方に役立つことができる。加えて、レンズ系はまた、コンプレッサ要素の多角形縁部と位置合わせされた多角形形状の開口部を有するプレートなどの、機械的視野絞りを含むこともできる。
【0083】
本タイプの低視差低フロントカラーレンズ300はまた、イメージングリレーレンズ系と対にすることもできる。このイメージングリレーは、より大きいイメージセンサと、二次イメージセンサまたは光学センサを備えたビームスプリッタと、ズーミング光学部品との使用を可能にすることができる。あるいは、改善された対物レンズ300は、コヒーレントファイバ束を使用する光ファイバリレーと対にすることもできる。これらの改善されたレンズ300はまた、球面系および半球面系、半球面総視野よりも小さい視野を撮像する円錐系、または、たとえば水平方向に広く垂直方向に狭い視野を撮像する環状系(たとえば、ハロー系またはバイザ系)を含む、様々な構成のマルチカメラパノラマキャプチャデバイスに使用することもできる。設計要件に応じて、系幾何形状は、八面体、十二面体、二十面体とすることができ、またはより複雑なゴールドバーグ多面体の形状およびパターンを利用することができるが、五角形および六角形のファセット付き多面体が、それらはカメラチャネルの製造を容易にするので、一般的に好まれる。いくつかの適用例幾何形状では、正方形または長方形を外側レンズ要素に含むカメラチャンネルが有用であり得る。マルチカメラデバイスもまた製造することができ、この場合、外側コンプレッサレンズ要素が隣接するように一体化され、ファセットされたドームまたは部分ドームを形成する。ファセットされたドーム系では、継ぎ目幅をたとえば2mm以下に、好ましくは0.5mm以下に縮小することがより容易であり得る。レンズチャネルアライメント公差に応じて、次いで、拡張FOV 215もまた縮小することができる。
【0084】
この議論では、広帯域可視光、または人間が知覚可能な適用例に使用するための、改善されたマルチカメライメージキャプチャデバイスおよび関連する対物レンズ300の設計を強調したが、これらのデバイスはまた、狭帯域可視適用例(スペクトルフィルタを使用して修正)、またはマルチスペクトル、紫外(UV)もしくは赤外(IR)の光学撮像適用例向けに設計することもできる。赤外では、改善された低視差および低フロントカラーレンズは、短波(SWIR)、中波(MWIR)、または長波(LWIR)スペクトル向けに設計することができる。このような場合、画像スペクトル帯域幅は数ミクロンまで広がり得る。利用可能な材料は異なるスペクトルで変化するので、容易な、またはより困難な設計の態様が変わる可能性がある。それにもかかわらず、改善された設計方法を使用すると、これらのスペクトル帯域における残留フロントカラーもまた、幅で0.1mm以下に低減させることができる。偏光子または偏光子アレイもまた使用することができる。加えて、撮像カメラ300は、すべて屈折設計を使用しているとして説明されたが、光学設計はまた、反射型またはカタディオプトリック型とすることもでき、また、屈折性と反射性の光学要素の組み合わせを使用することもできる。本手法のカメラレンズ300は、屈折性、勾配屈折率、ガラスまたは光学ポリマー、反射性、非球面または自由形状、キノホルム、フレネル、回折性またはホログラフィック、およびサブ波長またはメタサーフェスの光学特性からなる、またはそれを含む、光学要素を用いて設計できることもまた理解されたい。これらのレンズ系はまた、無色もしくはアポクロマート色補正で、または熱デフォーカス感度抑圧で設計することもできる。
【国際調査報告】