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特表2024-522796電磁または電気制御型自発呼吸刺激方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】電磁または電気制御型自発呼吸刺激方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/36 20060101AFI20240614BHJP
   A61N 1/40 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577947
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2022067110
(87)【国際公開番号】W WO2022268927
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021116265.3
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473202
【氏名又は名称】スティミット アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】レイモンドス,コンスタンティノス
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ06
4C053JJ24
4C053KK04
4C053KK07
4C053LL20
(57)【要約】
本発明は、電気信号によって、生体の1つ以上の神経および/または筋肉を刺激する電気刺激装置に関する。この電気刺激装置は、以下の特徴を有する。
a)電気刺激装置が、少なくとも1つの信号出力デバイスを有し、この信号出力デバイスを介して、電気刺激信号を少なくとも1つの神経および/または筋肉に供給することができる。
b)電気刺激装置が、少なくとも1つの制御デバイスを有し、少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力された刺激信号が、生体において筋肉の収縮を発生させることができ、これによって、前記生体の呼吸に的を絞って影響を及ぼすことができるように、この制御デバイスが少なくとも1つの信号出力デバイスを作動させるように構成される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号によって、生体の1つ以上の神経および/または筋肉を刺激する電気刺激装置であって、
a)前記電気刺激装置が、少なくとも1つの信号出力デバイスを有し、前記信号出力デバイスを介して、電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号を、少なくとも1つの神経および/または筋肉に供給することができ、
b)前記電気刺激装置が、少なくとも1つの制御デバイスを有し、前記制御デバイスが、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力された刺激信号が、前記生体において筋肉の収縮を発生させることができ、これによって、前記生体の呼吸に的を絞って影響を及ぼすことができるように、前記少なくとも1つの信号出力デバイスを作動させるように構成されることを特徴とする、電気刺激装置。
【請求項2】
請求項1記載の神経刺激装置であって、前記制御デバイスが、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号の強度を、前記生体の呼吸周期の間、数回のステップでおよび/または均一に修正するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項3】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記制御デバイスが、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号の強度を、前記生体の吐出フェーズ中、より高いレベルに保持するように構成され、前記レベルにおいて、刺激信号によって発生される前記筋肉の収縮が、ゼロよりも大きいが、吐出の終了時に予備吸気量の少なくとも75%までがなおも肺内に残る程度に高くなることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項4】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記生体の呼吸を、呼吸深度の所定の値、値の範囲、および/または時間的変化に制御または規制するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項5】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記生体の呼吸を、毎分40回の呼吸周期よりも回数が多い呼吸に制御または規制するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項6】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記生体の呼吸を、限られた時間期間において、当該生体の生命維持ガス交換には低すぎる呼吸深度に制御または規制するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項7】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記生体の呼気フェーズの期間を、吸気フェーズの期間の0.2~1.3倍に短縮することによって、完全な吐出を防止するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項8】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記呼吸周期の特性を、当該呼吸周期の所定の目標特性に制御するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項9】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記生体の呼吸周期の特性の現測定値が、少なくとも1つのセンサによって連続的に判定されて前記制御デバイスに供給され、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記呼吸周期の特性を、前記測定値の関数として、前記呼吸周期の所定の目標特性に規制するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項10】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、自発呼吸インパルスの現測定値が、前記生体の自発呼吸インパルスを検出することができる少なくとも1つの自発呼吸インパルス・センサによって連続的に判定されて前記制御デバイスに供給され、前記制御デバイスが、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを、前記自発刺激インパルスの測定値の関数として、特に、前記自発刺激インパルスと同期して、修正するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項11】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記生体の腹腔内圧を所定の値、値範囲、および/または時間的変化に制御または規制するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項12】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記呼吸神経および/または呼吸中枢に的を絞って、興奮を起こさせるように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項13】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、多数の呼吸周期にわたって、前記呼吸周期の特性を前記呼吸周期の所定の目標特性に制御または規制し、その後、多数の呼吸周期にわたって、前記生体の呼吸周期に影響を及ぼさず、その後再度多数の呼吸周期にわたって、前記呼吸周期の特性を、前記呼吸周期の所定の目標特性に制御または規制するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項14】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、多数の呼吸周期にわたって、前記生体の呼吸によって実行されるべきガス交換に必要でない前記生体の呼吸筋の筋肉収縮を誘発し、こうして筋肉のトレーニングを行う(produce)ように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項15】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記呼吸状態を、もっと高い値に制御または規制する、および/または前記呼吸状態を吸気フェーズに移行させるように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項16】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、呼吸深度の現測定値が、前記生体の呼吸深度の測定値を検出することができる、少なくとも1つの呼吸深さセンサによって連続的に判定されて前記制御デバイスに供給され、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記呼吸深度の測定値に基づいて、前記生体の呼吸を呼吸深度の所定の値、値範囲、および/または時間的変化に規制するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項17】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記吸気フェーズにおける前記呼吸深度および/または体積流量を、所定の最大値に制限するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項18】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記呼気フェーズにおいて前記体積流量を所定の最大値に制限する、および/または前記呼気フェーズにおける前記生体の平均固有体積流量に関係付けて、それを減少させるように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項19】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、前記呼気フェーズの期間を、前記生体の呼気期間の平均固有期間に関係付けて短縮するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項20】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、呼吸周期にわたって、前記制御デバイスが、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号の強度を、吸気フェーズにおいて高め、呼気フェーズにおいて前記刺激信号の強度を再度下げるように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項21】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記制御デバイスが、 通過流(throughflow)制御アクチュエータを可変的に作動させるように構成され、前記通過流制御アクチュエータが、空気力学的および/または電気的に生体の呼吸系に結合され、前記通過流制御アクチュエータによって、前記吸気フェーズおよび/または前記呼気フェーズにおける体積流量を、少なくとも一時的に、制限するまたは減少させるように、前記生体に流入するおよび/または流出する空気流の体積流量が、前記通過流制御アクチュエータによって、呼吸周期にわたって調節可能になることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項22】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記自発呼吸インパルス・センサが、前記生体の呼吸を制御する神経インパルス信号を検出することができる神経インパルス・センサとして設計されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項23】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記制御デバイスが、インターフェースを介して、人工呼吸器に接続可能であり、前記人工呼吸器が、可変陽圧および/または負圧を生成することによって、前記生体を換気するように構成され、前記制御デバイスが、前記人工呼吸器の制御デバイスとデータ交換可能に構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項24】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記制御デバイスが、前記それぞれの呼吸周期を定量的に特徴付ける、前記生体の1回以上の呼吸周期の特性を格納するように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項25】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記制御デバイスが、前記少なくとも1の信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号の強度を適切に適応させることによって、前記呼吸周期において最初に深い吸入を起こさせるように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項26】
請求項25記載の神経刺激装置であって、前記深い吸入に続いて、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、平均吐出と比較して、吐出期間を短縮しておよび/または刺激信号の強度を高めて、1回以上の部分的吐出を起こさせるように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項27】
請求項25または26記載の神経刺激装置であって、前記少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される前記刺激信号のパラメータを設定することによって、前記制御デバイスが、分泌動員を刺激し、前記分泌動員の刺激に続いて、深い吸入を起こさせるように構成されることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項28】
前出の請求項のいずれか1項記載の神経刺激装置であって、前記出力刺激信号に基づいて、前記制御デバイスが、純粋に胸式呼吸、純粋に腹式呼吸、またはこれらの組み合わせを交互に刺激するように構成され、前記腹式呼吸および前記胸式呼吸の刺激の強度が、互いに独立して、適応可能(can be adaptable)であることを特徴とする、神経刺激装置。
【請求項29】
電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号によって、生体の1つ以上の神経および/または筋肉を刺激する方法であって、
a)電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号を少なくとも1つの神経および/または筋肉に供給するステップと、
b)前記生体内に筋肉の収縮を発生させるために、前記刺激信号をアクティブにし(activate)、これによって前記生体の呼吸に的を絞って影響を及ぼすステップと、
を有する、方法。
【請求項30】
請求項29記載の方法であって、更に、前記生体の呼吸周期にわたって、前記刺激信号の強度を数回のステップでおよび/または均一に修正するステップを含む、方法。
【請求項31】
請求項29~30のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記刺激信号の強度を、前記生体の吐出フェーズ中、より高いレベルに保持するステップを含み、前記レベルにおいて、刺激信号によって発生される前記筋肉の収縮が、ゼロよりも大きいが、吐出の終了時に予備吸気量の少なくとも75%までがなおも肺内に残るように高くなる、方法。
【請求項32】
請求項29~31のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記生体の呼吸を、呼吸深度の所定の値、値の範囲、および/または時間的変化に制御または規制するために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップを含む、方法。
【請求項33】
請求項29~32のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記生体の呼吸を、毎分40回の呼吸周期よりも回数が多い呼吸に制御または規制するために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップを含む、方法。
【請求項34】
請求項29~33のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記生体の呼吸を、限られた時間期間において、当該生体の生命維持ガス交換には低すぎる呼吸深度に制御または規制するために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップを含む、方法。
【請求項35】
請求項29~34のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記生体の呼気フェーズの期間を、吸気フェーズの期間の0.2~1.3倍に短縮することによって、完全な吐出を防止するために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップを含む、方法。
【請求項36】
請求項29~35のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記呼吸周期の特性を、当該呼吸周期の所定の目標特性に制御するために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップを含む、方法。
【請求項37】
請求項29~36のいずれか1項記載の方法であって、更に、
前記生体の呼吸周期の特性の測定値を、少なくとも1つのセンサによって連続的に判定するステップと、
前記呼吸周期の特性を、前記測定値の関数として、前記呼吸周期の所定の目標特性に規制するために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップと、
を含む、方法。
【請求項38】
請求項29~37のいずれか1項記載の方法であって、更に、
前記生体の自発呼吸インパルスを少なくとも1つの自発呼吸インパルス・センサによって検出し、更に前記自発呼吸インパルスの現測定値を連続的に判定するステップと、
前記自発呼吸パルスの測定値に応じて、前記刺激信号のパラメータを、特に、前記自発呼吸パルスと同期して変更するステップと、
を含む、方法。
【請求項39】
請求項29~38のいずれか1項記載の方法であって、更に、
前記生体の腹腔内圧を所定の値、値範囲、および/または時間的変化に制御または規制するために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップを含む、方法。
【請求項40】
請求項29~39のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記呼吸神経および/または呼吸中枢に的を絞って、興奮を起こさせるために、前記刺激信号のパラメータを設定するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
[0001] 本発明は、電気信号を用いて、生体の1つ以上の神経および/または筋肉を刺激するための電気刺激装置(appliance)および方法に関する。
【従来技術】
【0002】
先行技術
換気の原理
[0002] ガス交換を維持するため、即ち、生命を支えるための酸素供給および同時に行われる二酸化炭素の吐出(exhalation)のために、呼吸が行われる。
【0003】
[0003] 病気の性質および重篤度に応じて、完全に機械的な吸入を支援し吐出の防止を維持しつつ、換気療法が行われる。呼吸ポンプの疲労(exhaustion)の場合、呼吸筋は吸入の間弛緩し、またガス交換障害の場合、ガス交換面積の更なる損失が、吐出の防止によって軽減される。肺の損傷度合い(severity)が高まるに連れて、吐出を防止するために圧力を高めるだけでなく、吸入中の酸素分率も増加させる。
【0004】
[0004] 病気の経過中に、吐出が十分にそして丁度良いときに防止されない場合、広範な肺損傷ARDS(急性呼吸窮迫症候群)という状況下において、非常に顕著なガス交換障害が発生する。すると、呼吸仕事量の著しい増大が必要となるが、最終的には、もはや呼吸筋によって補償できなくなる。消耗が増大するに連れて、呼吸不全が発現し(develop)、呼吸は一層速くそして浅くなる。すると、吸入、そして吐出も一緒に、人工呼吸器によって治療されなければならなくなる。
【0005】
[0005] 換気法(ventilation)は、同期を取りつつ自発呼吸を支援することができ、また自律呼吸とは独立して制御して、行うことができる。換気を制御する場合、呼吸数、一回換気量、または換気圧を制御し、吸入と吐出との間における呼吸時間比も予め定められる。加えて、換気とは独立して自律呼吸を可能にする換気の形態、および多数の混合形態がある。特殊形態の呼吸治療の1つに、高流量酸素療法と呼ばれるものがあり、この療法では、経鼻カニューレまたはマスクによる高流量のガス混合物を使用する。
【0006】
[0006] 気道をどのように確保するかに応じて、侵襲的または非侵襲的換気という用語が採用される。気道が気管チューブによって確保され、後者を通じて換気される場合、これを侵襲的換気と呼ぶ。チューブを用いずに換気が行われる場合、これを非侵襲的換気またはNIVと呼ぶ。負圧換気では、気道進入(airway access)せずにNIVを行うことができるが、一方陽圧換気の場合、気道進入は常に行わなければ(present)ならない。陽圧によるNIVは、換気ヘルメットを介して、または顔全体、口、および鼻を覆うマスク、もしくは鼻だけを覆う(enclose)マスクを用いて行うことができる。
【0007】
気道確保の原理
[0007]
例えば、麻酔または昏睡状態の場合、防御反射がないのであれば、チューブを使用して気道を確保する。このように、吸入に対抗して、即ち、胃内容物の気管への進入に対抗して、気道を確保(secure)しようとする。胃内容物の気管への進入も同様にARDSを発症する原因となる可能性がある。また、患者がNIVにもはや耐えられないとき、またはNIVがうまく機能しない(unsuccessful)ままであるときには、挿管も行われる。肺損傷が増大して、高換気圧力および高酸素分率が必要になると、たちまち陽圧換気によるNIVは安全ではなくなり、特定の限度以降では非常に危険にもなる。すると、現在の技術による挿管のためにマスクをずらすこと、ヘルメットを取り外すことは、不適切なガス交換に至り、またNIVにおいて必要な中断も、不適切なガス交換に至り、生命を脅かす酸素欠乏を招く可能性がある。
【0008】
[0008] 気道確保における中間段階では、喉頭マスクのような、声門上気道またはSGA(supraglottic airways)と呼ばれるものを伴う。これは、麻酔または緊急時に数百万回以上も使用されている。ここでは、声門を通して気管にホースを挿入せず、代わりに、換気を行うことができるように、喉頭を外部から封入し(enclose)密閉する(seal)。喉頭において、一体化されたホースを通じて、胃液を排出させることができる。気道確保についての全ての指針は、挿管が失敗しマスクによる陽圧換気も可能でない場合は、直ちにSGAの挿入を推奨する。しかしながら、気管内の管と比較すると、SGAによって提供される気道確保の程度は低く、高換気圧力および高酸素分率においてその限界がわかっている。気道は、声門が部分的にまたは完全に閉じることによって、喉頭の屋根(roof of the larynx)によってまたはSGAの滑りによって、閉塞される(block)おそれがあり、その結果、特に酸素要求が高い場合、患者の生命が同様に深刻な危険に晒されることになる。
肺損傷の原理
【0009】
[0009] 広範な肺損傷またはARDSの場合、吐出は特に重要である。何故なら、後者は以下の病理学的変化を伴うからである。肺領域(lung areas)の虚脱(collapsing)により、ガス交換面積が失われる。何故なら、毛細血管と肺胞との間における浸透性が高まるからである。および/または、肺細胞のウィルス感染は、そこにおける界面活性剤(surface-active substance or surfactant)がもはや吐出中において肺胞を安定化させられないことを意味する。しかしながら、血液は、虚脱し換気が行われない肺領域を通って循環し続け、取り込まれる酸素は減少し、酸素投与にも拘わらず、生命を脅かす酸素欠乏が発現する。これは、最初にARDSについて記載した者によって1967年に早くも認識されており、また彼らは人工呼吸器(ventilation)を提供することによって、吐出の間虚脱に対抗できることも認識した。それ以降、損傷した肺領域の虚脱を防止するために、吐出中において陽換気圧が使用されている。これは、呼気終末陽圧またはPEEP(positive end-expiratory pressure)と呼ばれている。PEEPが高い程、吐出が防止され維持されるレベルが高くなる。したがって、呼吸状態も吸入に推移し、その結果、予備呼気量(ERV)が増大し、予備吸気量(IRV)が減少する(図3から図5)。
【0010】
現在の位置および解決すべき課題
[0010] 治療法の侵襲性が高まった結果、治療に関して副作用や合併症(complications)が増えたため、現在では、肺、呼吸器系、およびその他の臓器系自体が、治療自体によって、更に損傷を受ける事態となっている。更に、最新の治療手段は増々複雑化し、過ちを犯し易くなっており、したがって、高度に専門家した人材が増々必要とされている。この理由のため、特に、集中治療医学は今日の医療制度において群を抜いて最もコストがかかるセクタとなっている。ある国々では、このために集中治療収容力の減少を招き、治療場所の利用可能性が低下するに至っている。人工呼吸器を付けている患者の死亡リスクが異なる国間で大きく異なるのは、明らかである。
【0011】
[0011] ヨーロッパの国々の比較では、ドイツ国は、人口1人当たり、群を抜いて最大の集中治療用ベッド数を有する。しかしながら、治療の品質には大きなばらつきがある。ドイツ国においてでさえも、入院治療の異なるレベル間で、人工呼吸器を付けている患者の生存率には、著しい差がある。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の場合、その差は更に大きく、50年以上にわたって、ARDS患者の内少なくとも50%は、専門センター以外では、人工呼吸器を外すことができない(survive ventilation)。ARDSではないが人工呼吸器を付けている患者の死亡率は、大学病院以外では31%であり、これは大学病院におけるよりも50%高くなっている。ARDSで人工呼吸器を付けている患者の場合、大学病院と比較すると、大学病院以外では死亡率だけでなく、死亡数の差(mortality difference)も2倍となっている。ARDSによる独立死亡リスク(independent risk of dying)は、3倍にもなる。[1]参照。
【0012】
[0012] 主な問題の1つは、気管チューブによる侵襲的陽圧換気である。いわゆる肺保護換気であっても、既に損傷を受けている肺および呼吸筋だけでなく、他の臓器系をも更に損傷する。更に、これは、生命を脅かす合併症の連鎖反応全体を誘発する。主にチューブのために、侵襲的な人工呼吸器を付けている患者の50%までが、更に肺の炎症も発現させ、これは肺だけでなく他の臓器系の更なる損傷の原因となる。加えて、気管内のチューブは、著しい防御反射を活性化させ、その結果、保護(shielding)および弱化(damping)のために鎮静法(analgosedation)が必要となる。これには多くの副作用があり、更に深刻な合併症を招く。つまり、オーバーハング(overhangs)が発生することが多く、このために換気の期間が長引き、したがって頻繁に換気関連合併症を発生させる。加えて、特に陽圧換気との組み合わせで、鎮静が循環機能を著しく阻害するので、循環を支援する薬剤を連続的に投与しなければならない。これらのいわゆるカテコールアミンは、一方、臓器における血流を減少させ、様々な臓器系の不全を加速させるおそれがある。非常に広範な肺損傷を患い人工呼吸器を付けている患者は、多くの場合、うつぶせの姿勢で治療を受けるが、その結果、彼らは特に深鎮静を必要とする。
【0013】
[0013] また、換気は、チューブを用いずに行うこともできる。しかしながら、そうすると、肺領域の虚脱および呼吸不全の進行(increasing)を回避するために、肺損傷の重篤度に合わせて十分効率的に、このいわゆる非侵襲的換気を適応させるのが困難になる可能性がある。次いで、呼吸ドライブの増大が起こり、呼吸が激しくそして一層深くなり、次いで同様に肺への更なる損傷を生じさせることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の目的
[0014] したがって、本発明の目的は、以上で述べた問題を少なくとも軽減することができる装置(appliance)、方法、およびコンピュータ・プログラムを利用可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の紹介
[0015] 私たちは、私たちの自発呼吸を、私たちだけで、故意にまたは無意識に制御する。しかしながら、自発呼吸とは対照的に、自律呼吸は、電磁刺激または電気刺激によって制御することができる。呼吸筋は、非侵襲的に、そして痛みを伴わずに、電磁的刺激によって十分な換気を達成できるように、制御することができる。[2]参照。また、横隔神経も、埋め込み電極を介して直接刺激することができる。しかしながら、埋め込み電極を用いずに非侵襲的に行うとき、電磁的刺激とは対照的に、今日の技術を使用して皮膚を介して外部から電気刺激を加えるのは、苦痛である。痛みのない電気刺激を可能にする新たな技術が開発中である。したがって、電磁的刺激は、これまで、自律呼吸を非侵襲的に、痛みを伴わずに、そして直接制御することができる唯一の方法であった。
【0016】
[0016] 本発明による換気方法は、非侵襲的人工換気の自然な形態を表す。陽圧だけでなく負圧換気の全ての形態とは対照的に、電磁制御自律換気は、胸部および腹部における自然な圧力変動によって患者を換気させることができる唯一の換気形態である。この新たな形態の換気によって、肺保護換気と隔膜保護換気との間における既存の対立(conflict)を解消することができる。何故なら、電磁的呼吸の下で肺および隔膜の双方を効率的にそして優しく換気させることができるからである。自律呼吸の個別制御によって、不適切で過度な呼吸努力、およびこれらに伴う合併症の双方を回避することができる。
【0017】
[0017] 電磁的または電気的換気は、自発呼吸がない場合および自発呼吸がある場合の双方において行うことができ、これらの場合、自発呼吸とは独立して、そして自発呼吸と同期して行うことができる。7通りの異なる電磁または電気刺激パターンを3つのグループに分けることによって、疾病および呼吸障害に応じて、自律呼吸をしかるべく修正、制御、および/または監視することができる。
【0018】
[0018] 首領域における横隔神経の電磁または電気刺激に加えて、更に上位の神経構造または周辺に位置する神経構造においても刺激を発生することができる。これによって、腹式呼吸および胸式呼吸に絞った制御が可能になる。
【0019】
[0019] 本発明によれば、この目的は、請求項1による電気刺激装置によって達成される。加えて、この目的は、生体の1つ以上の神経および/または筋肉を、電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号によって刺激する方法によって達成され、刺激信号は、生体の少なくとも1つの神経および/または1つの筋肉に供給され、このようにして、生体における筋肉の収縮に的を絞って発生させ、この筋肉の収縮が、生体の呼吸に的を絞って影響を及ぼす。更に、この目的はコンピュータ・プログラムによって達成され、このコンピュータ・プログラムがコンピュータ上で実行されると、プログラム・コーディング手段が*このような方法を実行するように構成される。
【0020】
[0020] 本発明は、電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号によって、生体の1つ以上の神経および/または筋肉を刺激する電気刺激装置を提供する。
【0021】
[0021] この電気刺激装置は、少なくとも1つの信号出力デバイスを有し、この信号出力デバイスによって、電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号を少なくとも1つの神経および/または筋肉に供給することができる。また、この電気刺激装置は、少なくとも1つの制御デバイスを有する。この制御デバイスは、少なくとも1つの信号出力デバイスから出力された刺激信号を、生体において筋肉の収縮を発生させるために使用することができるように、少なくとも1つの信号出力デバイスを制御するように設定され、これによって生体の呼吸に特定的な影響を与えることができる。
【0022】
[0022] 電気刺激装置は、少なくとも1つの信号出力デバイスを有し、この信号出力デバイスによって、電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号を少なくとも1つの神経および/または筋肉に供給することができる。また、この電気刺激装置は、少なくとも1つの制御デバイスも有し、この制御デバイスは、少なくとも1つの信号出力デバイスから出力された刺激信号を、生体において筋肉の収縮を発生させるために使用することができるように、少なくとも1つの信号出力デバイスを制御するように設定され、これによって生体の呼吸に特定的な影響を与えることができる。
【0023】
[0023] 具体的には、ここでは、電気刺激装置および方法ステップの以下の機能の内、1つ、いくつか(several)、または全てを提供する。
【0024】
[0024] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号の強さは、様々なステップにおいて修正することができ、および/または生体の呼吸周期にわたって均一に修正することができる。これは、例えば、電磁界の活性化(activation)によって遂行することができる。この活性化は、電磁界または電界の振幅または強度および周波数を変化させることを含む。これに関して、刺激方法1の章において以下で更に詳しく説明する。刺激信号は、この場合、特に生体の肺および横隔膜の組織に入力されるエネルギを最少に抑える目的で、決定することができる。
【0025】
[0025] 電磁界発生器(generator)または電界発生器は、1つ以上のコイルを有する磁気刺激器(stimulator)を含むことができる。場発生器は、電磁界または電界の複数のインパルスの連続列のシーケンスを生成する。吸気(inspiration)、即ち、吸入(inhalation)の間、電磁または電気インパルスの強度を、呼気(expiration)、即ち、吐出(exhalation)の間よりも高くすることができる。呼気の間、電磁パルスまたは電気パルスの強度を本質的にゼロにすることができ、これによって受動呼気(passive expiration)に移ることができる。また電磁パルスまたは電気パルスの強度を特定のレベルに維持することもでき、これによって何らかの残余レベルの横隔膜収縮を伴う呼気に移ることができる。強度を穏やかに増加または減少させることによって、例えば、傾斜を作ることによって、吸気および呼気間の推移を滑らかに行い、一層正常な状態にすることができる(made more physiological)。
【0026】
[0026] 本発明に関して、「列」(train)という用語は、複数の電磁または電気インパルスのシーケンスを指す。インパルスは、通例、約15~40Hzの周波数で生成される。
【0027】
[0027] 本発明の文脈における「1つのインパルス」(impulse)または「複数のインパルス」(impulses)という用語は、電磁界の比較的短い供給を指す。インパルスは、正弦波の形態または他のインパルス形状で印加することができる。この場合、列の複数のインパルスの各々は、好ましくは、実質的に同じインパルス時間幅を有し、前述のように、このインパルス時間幅は比較的短い。具体的には、インパルスの時間幅または帯域幅(bandwidth)は、好ましくは、約150マイクロ秒から約300マイクロ秒の範囲である。吸気フェーズにおける列の期間、呼気フェーズにおける列間の期間、および傾斜は、調節可能である。通例、吸気フェーズにおける列の期間は1~3秒であり、呼気フェーズにおける列間の期間は2~5秒である。呼気は、受動的にまたは刺激を受けて行う(stimulated)ことができる。
【0028】
[0028] 少なくとも部分的に吐出を防止するために、少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号の強度は、生体の吐出の間、レベルを高くして維持することができる。このレベルでは、刺激信号によって生じた筋肉の収縮は、ゼロよりも大いのみならず、吐出の終了時に予備吸気量の少なくとも75%までがなおも肺内に存在する程度に高い。この予備吸気量は、通例、電流センサの補助によって、または人工呼吸器(ventilator)によって判定することができる。これに関して、刺激方法2という章において以下で更に詳しく説明する。
【0029】
[0029] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、生体の呼吸(respiration)を呼吸深度の所定の値、値範囲、および/または時間的変化に制御あるいは規制することができる。これに関して、刺激方法3という章において以下で更に詳しく説明する。
【0030】
[0030] パラメータには、電磁界の強度および周波数、ならびに刺激または非刺激吸気もしくは呼気の期間および強度が含まれる。
【0031】
[0031] 電磁界の強度が高い程、横隔膜の収縮が一層激しくなることによって、より多い流量の吸入、即ち、一層激しく、素早く、速い吸入を生じることができる。列の期間が長い程、横隔膜の収縮を長引かせることができ、即ち、経時的な流量の総和を大きくすることができる。言い換えると、横隔膜収縮の強度および期間を調節することによって、吸入量を制御することができる。吸気および呼気フェーズ間における休止(pause)の長さ、または強度が低い呼気フェーズの長さが、吐出の期間を決定する。呼気中における強度は、呼吸平均(respiratory mean)、即ち、PEEPを決定する。深い呼吸(breath)は、高い一回換気量を有するのが通例である。
【0032】
[0032] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、生体の呼吸を、毎分40回の呼吸周期よりも回数が多い呼吸に制御または規制することができる。例えば、毎分40回神経を刺激する。このように、分泌動員(mobilization)の刺激を行うことができる。ある時間の後、この増やされた呼吸数を、通常の呼吸周期、即ち、毎分10~12回に減らすことができる。これに関して、刺激方法4,分泌動員の刺激という章において以下で更に詳しく説明する。この機能では、具体的に、呼吸周期を毎分60回よりも多くに制御または規制することができる。例えば、低い振幅の筋肉刺激によって、毎分200~300回の呼吸周期が可能になる。
【0033】
[0033] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、限られた時間期間にわたり、生体の呼吸を、生体の生命維持ガス交換には低すぎる呼吸深度に制御または規制することができる。このように、十分な呼吸をせずに、生体の呼吸運動(respiratory movement)を行うこともできる。即ち、肺に流入し肺から流出する空気量が不十分になる。このように、例えば、分泌動員を刺激することができ、または呼吸筋のトレーニングを行うことができる。
【0034】
[0034] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、生体の吐出の期間(呼気フェーズの期間)を、吸入の期間(吸気フェーズの期間)の0.2~1.3倍に短縮することによって、完全な吐出を防止することができる。加えて、通常の呼吸周期と比較して、刺激信号の強さを高めて、吐出中における最大体積流量を生成することができる。このように、吐出を強制または加速することができ、または咳の刺激(cough stimulation)を実行することができる。これに関して、刺激方法4、咳の刺激という章において以下で更に詳しく説明する。この目的のために基準として使用される吸気フェーズの期間は、例えば、同じ呼吸周期の吸気フェーズの期間、数回の以前の吸気フェーズの期間の平均、またはそれぞれの生体に対して決定した吸気フェーズ期間の典型的な値にすることができる。
【0035】
[0035] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、呼吸周期の特性を、呼吸周期の所定の目標特性に制御することができる。これに関して、刺激方法4という章において以下で更に詳しく説明する。
【0036】
[0036] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、例えば、少なくとも1つのセンサによって連続的に判定される生体の呼吸周期の特性の現測定値の関数として、呼吸周期の特性を、呼吸周期の所定の目標特性に規制することが可能になる。これに関して、刺激方法4という章において以下で更に詳しく説明する。
【0037】
[0037] 前述の関数双方について、目標特性は、具体的には、肺への損傷を回避する特性とすることができると考えられる。具体的には、生体の自傷呼吸パターンをこのようにして回避することができる。また、制御デバイスは、呼吸の体積流量、呼吸運動、および/または経肺圧を所定の最大値に、刺激信号によって制限するように構成することもできる。
【0038】
[0039] 少なくとも1つの出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータは、生体の自発呼吸インパルスの現測定値の関数として、特に、自発呼吸インパルスと同期を取って、修正することができる。このように、生体の自発呼吸インパルスを阻止(block)または修正することができる。測定値は、少なくとも1つの自発呼吸インパルス・センサによって連続的に判定することができる。自発呼吸インパルス・センサは、生体の自発呼吸インパルスを検出することができる。これに関して、刺激方法5という章において以下で更に詳しく説明する。自発呼吸インパルス・センサは、神経インパルス・センサとして設計することができ、生体の呼吸を制御する生体の神経インパルス信号を検出することができる。また、例えば、電磁刺激の場合、同時に刺激信号を出力する信号出力デバイスが、神経インパルス・センサを形成することも可能である。例えば、このような信号出力デバイスは、コイルまたはコイル構成として設計することができる。また、神経インパルスは、コイルまたはコイル構成を用いて検出することもできる。
【0039】
[0040] 腹腔内圧とは、生体の腹腔内における圧力である。
【0040】
[0041] 腹腔内における圧力(腹腔内圧、IAP)は、吸入によって上昇し、吐出によって低下する。つまり、自発呼吸では、胸腔と腹腔との間に圧力差が生じる。呼吸筋は、腹腔において短いが強い圧力変動を起こす可能性がある。これらの圧力変動は、腹部臓器の機能に影響を及ぼす。
【0041】
[0042] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、生体の腹腔内圧を所定の値、値範囲、および/または時間的変化に制御または規制することが可能になる。このように、腹腔内圧に絞って影響を及ぼす(influence)ことができる。例えば、特定の臓器における血流をこの手段によって改善することができる。例えば、腹部臓器に対して、好ましい影響を達成することができる。自発呼吸におけると同様、刺激によって、胸腔と腹腔との間に自然な圧力差が生じ、腹腔における自然であるが強くもある圧力変動も発生させることができ、これは腹部臓器の機能、例えば、腸運動性およびその他の腸機能、臓器血液供給、またはリンパ・ドレナージュ(lymph drainage)に好ましい影響を及ぼす。これは、予後の改善に決定的に寄与することができる。例えば、横隔膜の収縮によって生ずる既存の腹腔内圧に応じて、吸入の深さおよび期間だけでなく、吐出のレベルおよび期間にも的を絞って制御することができる。
【0042】
[0043] つまり、呼吸による影響を受ける既存の腹腔内圧の関数として、刺激は、吸入の深さおよび期間だけでなく、吐出のレベルおよび期間にも的を絞って制御することができる。例えば、腹腔内高血圧(IAP>12mbar)における腹腔内圧が非常に高くなり、腹部臓器における血流が阻害される場合、それに応じて、吸入だけでなく吐出においても刺激を減少させることができる。
【0043】
[0044] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、呼吸神経および/または呼吸中枢に的を絞って、興奮(excitation)を起こさせることができる。このように、呼吸神経および/または呼吸中枢のみに的を絞って活性化させる。これは、呼吸筋には認知可能な影響を全く及ぼさない。具体的には、これは、生体の生命維持ガス交換には十分な呼吸筋の刺激を起こさせない。これは、例えば、刺激信号の強度が非常に低いので筋肉収縮が殆ど起こらない場合に、遂行することができる。このように、呼吸神経および呼吸中枢をなおも活性化し、および/またはそれらの活動を維持させることができる。
【0044】
[0045] 人工呼吸器(ventilation)は、呼吸筋の呼吸仕事(respiratory work)を軽減させる。呼吸運動は、人工呼吸器では受動的に行われ、呼吸神経の活動は衰退し、完全に消失することもあり得る。これは、筋肉を活性化させる遠心性運動ニューロン、および求心性感覚神経経路の双方に該当する。求心性感覚神経経路は、筋肉収縮の範囲および速度、ならびに対応する位置変化を検出し、フィードバックのためにこれを呼吸中枢に報告する。
【0045】
[0046] 遠心性および求心性神経経路の活動に加えて、脳幹領域における呼吸中枢内のニューロンの活動も、換気の間、適宜減少する。呼吸中枢は、わずか数分の換気時間の後、その活動を減少させる。換気が停止した後、呼吸中枢を意識的に、即ち、大脳皮質を通じて、活性化することが可能であるが、呼吸は、たとえ激しくなくても、このときは激しく感じられる。健康な生体において換気が停止され自発呼吸が完全に再確立してから少しして、自然の自律自発呼吸が再開し、呼吸中枢によって制御される。
【0046】
[0047] 呼吸神経および呼吸反射の活動を活性化するおよび/または維持するこの刺激方法では、遠心性および求心性ニューロン、即ち、運動および感覚神経経路ならびに脳幹領域における呼吸中枢のニューロンを活性化させることおよび/またはそれらの活動を維持させることを意図する。コンディショニング(conditioning)、トレーニング(training)、分泌動員、および咳等の場合と同様、この刺激方法でも、同様に、ガス交換を維持するための十分な呼吸があってはならない。
【0047】
[0048] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、呼吸周期の特性を、多数の呼吸周期にわたって、呼吸周期の所定の目標特性に制御または規制し、その後、多数の呼吸周期にわたって、生体の呼吸周期に影響を及ぼさず、その後、再度多数の呼吸周期にわたって、呼吸周期の特性を呼吸周期の所定の目標特性に制御または規制することが可能になる。これに関して、刺激方法6という章において以下で更に詳しく説明する。
【0048】
[0049] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、多数の呼吸周期にわたって、生体の呼吸筋の筋肉収縮を起こすことが可能になる。この筋肉収縮は、生体の呼吸によって行われることになるガス交換には必要でなく、つまり、余分な筋肉トレーニング(muscle training)を生ずる(produce)。このように、目標とする呼吸筋の筋肉トレーニングを実行することができる。これに関して、刺激方法7という章、具体的には、7.1、7.5、および7.6において以下で更に詳しく説明する。この種類の刺激では、呼吸の実際の深さには影響を及ぼさない。即ち、生体の生命維持ガス交換にとっては低すぎる、非常に低い振幅による影響を受けるに過ぎない。この刺激の目的は、呼吸筋のトレーニングであり、このトレーニングは呼吸の臓器に危害を加えることはない。具体的には、肺組織および横隔膜筋に危害を加えることはない。
【0049】
[0050] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、もっと高い値に呼吸状態を制御もしくは規制すること、および/または呼吸状態を吸気フェーズに移行させることが可能になる。これに関して、刺激方法7.2という章において以下で更に詳しく説明する。
【0050】
[0051] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、呼吸深度の現測定値に基づいて、生体の呼吸を、呼吸深度の所定の値、値範囲、および/または時間的変化に規制することが可能になる。この目的のために、生体の呼吸深度の測定値を連続的に検出する呼吸深さセンサを使用することができる。これに関して、刺激方法3および7.3という章において以下で更に詳しく説明する。
【0051】
[0052] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、吸気フェーズにおける呼吸深度および/または体積流量を所定の最大値に制限することが可能になる。これに関して、刺激方法4および7.4という章において以下で更に更に詳しく説明する。
【0052】
[0053] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、呼気フェーズにおける体積流量を所定の最大値に制限する、および/または呼気フェーズにおける生体の平均固有体積流量に関して、これを減少させることが可能になる。
【0053】
[0054] 少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、生体の呼気フェーズの平均固有期間に関して、呼気フェーズの期間を短縮することが可能になる。具体的には、刺激信号によって、生体の完全な吐出を防止することができる。即ち、少なくとも特定の空気残留量(residual amount of air)を肺内に保持することができる。
【0054】
[0055] 呼吸周期の間、少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号の強度を、吸気フェーズにおいて高め、呼気フェーズにおいて再度下げることができる。このように、生体の組織へのエネルギ入力を最小限に抑えることができる。
【0055】
[0056] 通過流(throughflow)制御アクチュエータは、空気力学的および/または電気的に生体の呼吸系に結合され、これによって、生体に流入するおよび/または流出する空気流の体積流量が調節可能になる。通過流制御アクチュエータによって、吸気フェーズおよび/または呼気フェーズにおける体積流量を、少なくとも一時的に、制限するまたは減少させるように、呼吸周期の間通過流制御アクチュエータを可変的に作動させる(activate)ことができる。通過流制御アクチュエータは、例えば、呼吸マスクまたはホースにおいて、電気的に作動可能な弁を有することができる。通過流制御アクチュエータは、例えば、電磁的な喉頭刺激によって、生体の喉頭を刺激することができる電気アクチュエータとすることができる。このように、例えば吐出の間、吐出空気流に対する所望の一定抵抗 (defined resistance)を発生することができ、これによって気道および肺胞を開いたままにする。
【0056】
[0057] 制御デバイスは、インターフェースを介して、人工呼吸器に接続可能にすることができる。人工呼吸器は、可変陽圧および/または負圧を生成することによって、生体を換気するように構成され、制御デバイスは、人工呼吸器の制御デバイスとデータ交換できるように構成される。これの利点は、電気刺激装置の制御デバイスがデータ、具体的には、人工呼吸器に存在するいずれかの通路における(anyway)測定値、例えば、体積流量、呼吸深度等の測定値を使用できることである。したがって、電気刺激装置においてこのようなセンサは不要になる。
【0057】
[0058] 少なくとも1つの刺激デバイスによって出力される刺激信号の強度を適切に適応させることによって、呼吸周期において最初に深い吸入を引き起こす(bring about)ことが可能になる。これの利点は、例えば、刺激方法2の場合、こうすることによって肺を開き、適宜回復刺激(recruitment stimulation)を実行するということである。咳の刺激(cough stimulation)の場合、例えば、肺に最大量の空気を取り込み、咳の刺激を促進することができるという利点がある。何故なら、吐出において高い体積流量を生成するために、多量の空気が利用可能になるからである。
【0058】
[0059] 例えば、少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号の強度を適切に適応させることによって、呼吸周期において最初に深い吸入を引き起こす場合、咳の刺激を起こさせる(carry out)ことが可能になり、この深い吸入に続いて、少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号のパラメータを設定することによって、平均的な吐出と比較して、短縮した吐出期間、および/または強度を高めた刺激信号によって、例えば、吐出を完全に防止することによって、例えば、吸入期間の0.2~1.3倍に短縮した吐出期間によって、1回以上の部分的吐出を引き起こす。加えて、吐出の間最大体積流量を生成するために、刺激信号の強度を、通常の呼吸期間と比較して、高めることもできる。具体的には、深い吸入に続いて、そして少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号の強度を適切に適応させることによって、吐出期間を短縮し、および/または最大体積流量で、途中に吸入を発生させずに、数回のこのような吐出を行わせる(generate)ことが可能になる。
【0059】
[0060] 更に、分泌動員の刺激の後、このような咳の刺激を時間通りに直接起こさせるという利点もある。前述したように、刺激信号出力のパラメータを設定することによって、少なくとも1つの信号出力デバイスによって、生体の呼吸を毎分40回の呼吸周期よりも多い呼吸数に制御または規制するために、分泌動員を刺激することができる。
【0060】
[0061] 出力された刺激信号に基づいて、純粋に胸式呼吸、純粋に腹式呼吸、またはこれらの組み合わせを交互に刺激することが可能になる。腹式呼吸および胸式呼吸の刺激の強度は、互いに独立して、順応可能にすることができる。このように、胸式呼吸および腹式呼吸を互いに独立して刺激することができる。つまり、胸部における活性化を高め、呼吸状態を吸入に移行させ、吐出を連続的に防止することによって、横隔膜の総断面積を、呼吸周期全体にわたって、大きく広げることができる。このように、胸式呼吸とは独立して、遙かに少ない呼吸運動、したがって、肺および横隔膜における遙かに少ない応力で、遙かに効果的に呼吸を行うことができる。
【0061】
[0062] ここで、電気的、電磁的、および/または磁気的に生成した刺激信号を、信号出力デバイスによって、少なくとも1つの神経および/または1つの筋肉に供給することができる。刺激信号の強度は、例えば、電圧または電流振幅、電力、磁気変数(magnetic variable)の振幅、および/または1つ以上のこのような変数の短期平均値によって定めることができる。例えば、刺激信号を生成するために信号出力デバイスに供給される信号は、交流電圧または交流電流信号、あるいはその他のパルス状信号シーケンスとすることができる。
【0062】
[0063] 信号出力デバイスは、原則として、任意の所望の信号出力デバイス、あるいはこのような電気刺激信号を少なくとも1つの神経および/または1つの筋肉に供給することができる、様々な信号出力デバイスの組み合わせとすることができる。つまり、信号出力デバイスによって、電気信号によって筋肉を直接興奮させて収縮を起こさせることができ、および/または対応する神経の電気刺激によって間接的に興奮させることができ、筋肉の収縮を誘発する(excite)ことができる。例えば、信号出力デバイスは、埋め込み電極を有することができ、埋め込み電極は、生体の身体内における適した場所に埋め込まれ、これを介して刺激信号を身体内に直接供給する。
【0063】
[0064] 有利な実施形態では、信号出力デバイスは、生体上の外部に配置することができる信号出力エレメントを有し、したがって埋め込む必要がない。このように、侵襲的過程を回避することができる。例えば、信号出力エレメントは、1つ以上の電気コイルを有することができ、これらの電気コイルによって、電気信号を誘導的に少なくとも1つの神経および/または1つの筋肉に供給することができる。このようなコイルによって、磁界を生体内に供給することができ、一方、この磁界は、身体内において、誘導電流をもたらし、この誘導電流は、少なくとも1つの神経および/または1つの筋肉において、所望の電気刺激信号を生成することができる。この目的のために、例えば、WO2019/154837A1またはWO2020/079266A1によるコイルまたはコイル構成を使用することができる。
【0064】
[0065] また、信号出力エレメントは電極も含むことができる。電極は、生体の身体上に置かれ、例えば、皮膚に留める(fasten)ことができる。電極は、電気的に電気信号を身体に結合することができる。更に別の可能性は、信号エレメントが容量性電極を有することができ、この容量性電極を介して、容量性結合によって、即ち、生体との電気接触を用いずに、電気刺激信号を生体に供給できることである。
【0065】
[0066] 電気刺激装置は、原則として、任意の所望の神経を刺激するように構成することができ、これによって、生体の呼吸に的を絞って、影響を与えることができる。また、これは、首領域における呼吸筋の刺激だけでなく、神経根の刺激、同様に脳領域における神経、例えば、脳幹および/または小脳における神経の刺激も含む。例えば、電気刺激装置は、以下の神経、横隔神経、1つ以上の肋間神経、第1、第2、第3運動ニューロンの内1つ以上を刺激するように設計することができる。但し、これらが呼吸運動を誘起できることが条件となる。
【0066】
[0067] 刺激信号によって生体の呼吸に所望の影響を与えるために、信号出力デバイスまたはその信号出力エレメントは、生体の適した位置にこれらを適切にそして安全に配置できるように設計される。例えば、横隔膜の刺激のためには、頭部に近い横隔神経の領域内に配置することができ、および/または胸式呼吸の刺激のためには、1つ以上の肋間神経の領域に配置することができる。この目的のために、信号出力エレメントは、その形状および特性(nature)に関して、生体上におけるこの適切な位置付けに適応する(adapted)。
【0067】
[0068] 制御デバイスは、例えば、パラメータ・メモリを有する制御デバイスによって、生体の1回以上の呼吸の特性を格納するように構成することができ、パラメータ・メモリに、このような生体の典型的な特性、または処置すべき個々の生体の特性を前もって格納しておく。この場合、電気刺激装置は、測定装置を用いずに、具体的には、制御回路の検知において測定信号のフィードバックを受けずに、設計することもできる。
【0068】
[0069] また、電気刺激装置は、1つ以上のセンサを含む(with)測定装置を有することもでき、これらのセンサによって、生体の呼吸周期の特性を特定の時点においてまたは連続的に検出し、制御デバイスに供給する。この場合、少なくとも一時的に、特性を制御デバイスに格納することができる。更に、制御デバイス内に前もって定められている呼吸周期の更に別の特性も、前述のように、パラメータ・メモリに格納することができる。
【0069】
[0070] 制御デバイスは、具体的には、コンピュータを有する電子制御デバイスとして設計することができ、このコンピュータによって、電気刺激装置の個々の機能を制御する。制御デバイス内には、コンピュータ・プログラムを格納することができ、コンピュータがコンピュータ・プログラムを実行するように、対応する機能がプログラミングされる。
【0070】
[0071] コンピュータについて述べる場合、後者は、例えばソフトウェアの意味で、コンピュータ・プログラムを実行するように構成することができる。コンピュータは、例えば、PC、ラップトップ、ノートブック、タブレット、またはスマートフォンのような従来のコンピュータとして、あるいはマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、またはFPGAとして、あるいはこのようなエレメントの組み合わせとして設計することができる。
【0071】
[0072] 規制(regulation)について述べる場合、規制は測定値または内部値のフィードバックを伴うという意味で、規制は制御とは異なり、このフィードバックによって、生成された規制出力値が、次に、閉ループ制御回路というやり方で(in the sense of)影響を受ける。制御の場合、変数は、このようなフィードバックを用いずに、純粋に制御される。
【0072】
[0073] 「呼吸深度」(depth of respiration)という表現を使用する場合、この表現は、実際の呼吸深度だけでなく、生体の見かけ上の呼吸深度も含む。実際の呼吸深度は、一回換気量の多さ(size)によって定められ、これが吐出の間環境と実際に交換される。一回換気量とは、呼吸毎に吸入および吐出される、即ち、換気される空気の量である。見かけ上の呼吸深度は、一回換気量の多さ(size)によって定められる。一回換気量は、呼吸筋の運動を推察して、遮られることなく呼吸を行うことができる場合に生ずると考えられている。多くの場合、見かけ上の呼吸深度は、実際の呼吸深度に対応する。しかしながら、気道が、例えば、完全にまたは部分的に閉塞された場合、および/または肺が病理学的変化を示す場合、実際の呼吸深度が見かけ上の呼吸深度からかなり逸脱する可能性もある。
【0073】
[0074] 生体の実際の呼吸深度は、異なる変数に基づいて、例えば、一回換気量および/または経肺圧(TPP)の振幅に基づいて、検出することができる。一回換気量のレベルは、経肺圧のレベルに依存する。経肺圧とは、肺の空気充填空間と、2つの胸膜間における肺の外縁における圧力との間の圧力差である。したがって、これは肺内圧と胸腔内圧との間の差であり、また言い換えると、これは肺胞圧と胸膜圧との間の差である。肺胞圧は、気道または換気系における測定値を通じて、間接的にでなければ検出できない。胸膜圧は、食道における圧力にほぼ対応する。経肺圧は、例えば、生体の換気系における圧力または食道における圧力の測定値によって判定することができる。したがって、経肺圧は、換気圧から食道圧を差し引いた差となる。
【0074】
[0075] 見かけ上の呼吸深度は、異なる変数に基づいて、例えば、生体の運動、例えば、筋肉の収縮によって誘起される胸部および/または腹部における運動を検出することによって、検出することができる。見かけ上の呼吸深度を検出するまたは特徴付ける他の可能性は、生体の呼吸運動を生成するために必要な電気的および/または機械的エネルギもしくは力を判定することである。このエネルギまたは力は、ある体積流量で呼吸するために必要となる。したがって、見かけ上の呼吸深度は、少なくとも近似的に、少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号の強度に基づいて、判定することができる。
【0075】
[0076] 呼吸の体積流量は、単位時間当たり生体によって実際にどの位の空気量が吸入または吐出されるかを示す。呼吸周期は、吸入フェーズ(省略して吸入または吸気とも呼ぶ)と、その直後にある吐出フェーズ(省略して吐出または呼気とも呼ぶ)とを含む。安静にしているときの吸入の終了時には、未だ吸入することができる、可能な肺容積、予備吸気量(IRV)がある。安静にしているときの吐出の終了時には、未だ吐出することができる可能な肺容積、予備呼気量(ERV)がある。つまり、安静にしているときの呼吸は、予備吸気および呼気量間に定められた呼吸状態で行われる(図3および図4)。
【0076】
[0077] 安静にしているときの呼吸中における吐出が、各呼吸周期において少なくとも部分的に防止された場合、呼吸状態は吸入に移行する。ここで、予備呼気量が増大し、予備吸気量は減少する(図5)。吐出の防止によるこのような呼吸状態の移行は、1.吐出中における呼吸流を緩めることによって、および/または2.定められたレベルで吐出を続ける(keep)ことによって、および/または3.吐出時間を短縮することによって、起こる。
【0077】
[0078] 以下で説明する機能は、制御デバイスによって実行され、例えば、1つのコンピュータ・プログラムまたは複数のコンピュータ・プログラム、あるいはコンピュータ・プログラム・モジュールの機能として設計することができる。これらの機能が制御デバイスによって実行される場合、後者は対応する機能を自動的に実行することができる。また、電気刺激装置の多数の機能もユーザによって設定すること、および/または手動制御することができる。また、これには、制御デバイスによって随意に実行することができる機能も含まれる。
【0078】
[0079] したがって、本発明は、生体の1つ以上の神経および/または筋肉を、電気的、電磁的、および/または磁気的に生成された刺激信号を用いて、このような電気刺激装置によって刺激する方法にも関する。以上で述べた機能は手動で実行され、例えば、少なくとも1つの信号出力デバイスによって出力される刺激信号の強度の修正によって、またこのような方法を実行するコンピュータ・プログラムによって実行される。
【0079】
[0080] 呼吸の監視、フィードバック、および制御に関して、以下のものを付加的に提供することができる。
【0080】
[0081] 刺激制御のために、種々の監視パラメータおよびフィードバック・メカニズムを使用することができる。この目的のために、従来の人工呼吸器と同様、酸素摂取量および二酸化炭素排出量のような生体のガス交換のパラメータ、呼吸インパルス、呼吸数、一回換気量、呼吸の速度、吐出および吸入のレベルのような呼吸パラメータの内1つ、数個、または全てを検出することが可能である。また、この監視は、胸式および腹式呼吸を区別し、それらを別々に検出することもできる。
【0081】
[0082] 刺激中における調節、およびこの刺激の後に達成される効果の双方のために、特定の役割がパラメータによって割り当てられる(played)。これらのパラメータは、激しい呼吸と穏やかな呼吸との間の遷移を示し、つまり呼吸ドライブの増大を示す。これらには、例えば、呼吸数および一回換気量(RSBまたは浅速換気指数)の商、P0.1値、呼吸流強度(一回換気量および吸気時間の商)、および、例えば、4~8mbarの定められた範囲(range)における食道内の圧力変動、または横隔膜を挟む圧力変動の広がり(extent)が含まれる。
【0082】
[0083] 加えて、横隔神経の自発的な電気的活動も、例えば、同様に電磁的に神経電図(ENG)によって検出し、フィードバックに使用することができる。横隔神経の電気的な自発活動は、中枢神経呼吸活動の直接的な尺度を表し、例えば、呼吸当たりのインパルス数、最大吸気流量中のインパルス周波数、または0.1秒におよぶ平均活動によって検出し、フィードバックのためおよび刺激の制御のために使用することができる。
【0083】
[0084] また、特定の筋電図検査パターンが、疲労の開始を指摘することもできる。横隔膜の筋電図検査信号を、電磁的または電気的な呼吸のフィードバックおよび制御のための電気的筋肉活動の直接的な尺度として使用できるようにするために、刺激の合間における休止中に、自発活動の筋電図検査を行うことができる。対照的に、電磁刺激によって生ずるアーチファクトが測定を困難または不可能にすることもあり得る。ここで、特殊な刺激アルゴリズムによって、アーチファクトを生じることなく、一定間隔の筋肉活動を検出することができ、次いで、他の刺激を制御するために使用することができる。この制御は、自発的活動が低すぎも高すぎもしない、例えば、最大活動の8%を超えないという事実を考慮する。更に、装置を互いに直接結合することによって、電磁信号のフィルタリングを行うことも可能になる。例えば、達成された筋肉活動の筋電図検査監視も、刺激の合間に行うことができ、これによって直接フィードバックが可能になる。
【0084】
[0085] 電気刺激とその結果生ずる力学的筋肉活動との間における関係は、力-長さおよび力-速度比に依存し、つまり、胸郭容積および形状だけでなく、病理学的経過にも依存する。例えば、病気の進行中に、電気的筋肉刺激が増大しても、横隔膜力は低下するおそれがある。したがって、横隔膜力を監視することは、特に、トレーニング刺激(training stimulation)を制御するためのフィードバックには有利である。RSBおよびP0.1値のような間接的なパラメータの他に、横隔膜の運動および肥厚化の超音波測定値が、横隔膜力の間接的な指示を出す(provide)ことができる。長年使用されてきた標準的な方法では、胸腔と腹腔との間の圧力変動を通じて、横隔膜力を間接的に検出する。横隔神経を電磁的な標準刺激で刺激し、その結果生ずる経横隔膜圧の変動を、食道および胃において、バルーン・カテーテルによって測定する。これから横隔膜力を判定することができる。
【0085】
[0086] 以下で、更に別の有利な機能および方法ステップについて詳しく説明する。
【0086】
[0087] グループ1:肺依存性刺激
1)低エネルギ転送用肺弛緩(Lung-sparing)刺激
2)虚脱した肺領域を開き、開いた領域(regions)を維持するための回復(recruitment)および安定化刺激
3)一回換気量を制御するための肺保護刺激
グループ2:呼吸関連刺激
4)有害な自律呼吸を制御するための制御刺激
5)自発呼吸を修正するための変調刺激(modulation stimulation)
グループ3:コンディショニングおよびトレーニング刺激
6)改善呼吸パターンを実施するためのコンディショニング刺激(conditioning stimulation)
7)呼吸筋をトレーニングするためのトレーニング刺激
【0087】
[0088] グループ1:肺依存性刺激
【0088】
[0089] 肺弛緩刺激-刺激方法1
【0089】
[0090] 吸入中におけるインパルスの刺激強度を徐々に高め、吐出中におけるインパルスの刺激強度を弱めるパターンによって、穏やかで、特に、低エネルギの呼吸が達成される。このように、急激な呼吸運動が回避され、これによって、肺組織へのエネルギ転移、および呼吸自体によって起こる肺損傷を最小限に抑える。この原理は、新たに開発された流量制御換気(FCV)(3)の呼吸パターンに基づく(PCT/EP2017/052001も参照のこと)。
【0090】
[0091] この流量制御形態の換気では、肺弛緩(lung-sparing)および横隔膜弛(diaphragm-sparing)緩換気間の不一致(conflict)が非常に顕著である。何故なら、FCVの間、自発呼吸は可能であってはならないからである。しかしながら、刺激方法1をFCVと同期させることができる。このような電磁または電気刺激とFCVとの間の同期は、同時自律呼吸を促進することができ、つまり、FCVにおける呼吸筋およびそれらの筋力の保存を促進することができる。
【0091】
[0092] 自然な自発呼吸の間、横隔膜は吐出の間も活動する。呼気制動(expiratory braking)と呼ばれるこの活動によって、吐出は制動され、肺は安定化する。吐出中におけるこの横隔膜の自然な活動は、呼気抵抗 (expiratory resistance)が増大するに連れて、減少する。この肺弛緩刺激によって、強度(intensity)を下げた刺激が、同様に吐出フェーズ中に供給される。完全な吐出は、非常に短いものに過ぎず、完全に回避される(刺激方法2の下における安定化刺激を参照のこと)。これは、肺組織の虚脱を和らげる。このように、ガス交換における機能障害を防止するだけでなく、呼吸ドライブの増大および有害な自発呼吸パターンに伴う呼吸不全の進行(increasing respiratory insufficiency)も防止することができる。
【0092】
[0093] 加えて、この形態の刺激のコンディショニング効果の結果、この穏やかな呼吸パターンがトレーニングされる(刺激方法6の下におけるコンディショニング刺激を参照のこと)。更に、呼吸筋の筋力および筋肉質量の双方を維持してトレーニングする。これは、特に通常の換気の間、そして特に流量制御換気(FCV)の間、非常に重要である(刺激方法7.1.の下におけるトレーニング刺激を参照のこと)。
【0093】
[0094] 回復(recruitment)および安定化刺激-刺激方法2
【0094】
[0095] 刺激方法2は、吐出の防止および/または減速(slow down)(先の説明を参照のこと)と相俟って、ときとして深いため息を生じさせる。この刺激方法は、吐出を防止するおよび/または遅延させることによって、虚脱肺領域を回復し、肺を安定化させる。このようにして、新たな(renewed)虚脱を防止する。
【0095】
[0096] 回復刺激において、吸入の深さだけでなく、吸入フェーズの期間、更には吐出フェーズの期間も設定することが可能である。つまり、回復刺激において効率を高めるために、呼吸時間比も変更することができ、最大吸入時間を延長し、吐出の時間を短縮することができる。
【0096】
[0097] 安定化刺激において、要件に応じて吐出の終了を異なるレベルにおいて、呼吸筋の直接刺激によって保持することができる(呼気保持(expiratory hold))。刺激方法1の下において説明したように、先に説明した自然な呼気制動と同様に、例えば、吐出中に刺激インパルスの強度を低下させることによって、吐出の速度を更に低下させることができる。加えて、肺領域の虚脱も同様に、呼吸時間比を変更することによって、防止することができる。安定化刺激において刺激時間を変更することによって、先に回復安定化(recruitment stabilization)について説明したように、吸入時間を延長し、吐出フェーズを短縮することができる。吐出フェーズにおける刺激が不可能である場合、または不十分な程度にしか可能でない場合、吸入の電磁または電気刺激の開始を早めることによって、完全な吐出を防止することができる(呼気切断(expiratory cut))。ここで、既に上記したように、吸入に対して正しい時間を正確に確定することを可能にするためには、正確な呼吸の監視、特に、呼吸状態の正確な監視は有利である。
【0097】
[0098] 加えて、随意に吐出抵抗を動的に適応増大させ(adapted increase)、これと安定化刺激を組み合わせることもでき、その結果、吐出が更に減速し、こうして吐出フェーズにおいて肺を更に安定化させることができる。これは、吐出中における刺激と組み合わせて、そしてこの刺激と同期して行うことができる。つまり、自発吐出の間、吐出抵抗の増大が、非常に自然に声帯によって行われ、声帯は吸入中に再度開く。吐出抵抗の増大によって、呼気制動に対する自然な横隔膜活動が減少する。
【0098】
[0099] また、この刺激方法2は、肺の虚脱増大によって生ずる、呼吸仕事(respiratory work)および呼吸ドライブの増大を緩和し、自傷的自発呼吸(self-damaging spontaneous respiration)に付随する、更なる肺損傷を防止する(次のページの制御刺激も参照のこと)。したがって、回復および安定化刺激は、間接的に、呼吸仕事の増大および有害な呼吸努力だけでなく、一回換気量が多い換気も軽減することができ、更には防止することもできる。
【0099】
[0100] 肺保護刺激-刺激方法3
【0100】
[0101] 吸入中の刺激によって、例えば、6ml/kgの理想的な重量の穏やかな一回換気量で呼吸するように、および/または5mbarの経肺圧を超過しないように、呼吸深度を規制する。この目的のために、達成される一回換気量および/または経肺圧に刺激を適応させることができるように、一回換気量、経肺圧または対応する相互関係(correlates)、および刺激強度の測定値間でフィードバックを行うことができる。更に、これは後続の呼吸に対して行われるだけでなく、代わりに、監視およびフィードバックによって、実行中の刺激を直ちに(already)直接制御することもできる。つまり、例えば、6ml/kgの理想的重量の定められた一回換気量および/または5mbarの経肺圧を超過しないように、実行中の刺激の強度を弱めることができ、および/または刺激期間を短縮することができる。これは、特に、自発呼吸中には、非常に重要である(刺激方法4および5の制御および変調刺激を参照のこと)。
【0101】
[0102] 更に、二酸化炭素吐出レベルが高い病理学的状態では、十分な換気も確保しなければならない。ガス交換表面積の回復および維持、ならびに一回換気量のレベル以外に、これは適切に適応させた呼吸数によって達成される。呼吸数は、刺激の発生率(incidence of the stimulation)だけでなく、先に述べた吸入および吐出間の比率、即ち、呼吸時間比によっても定められ、呼吸時間比は、対応する刺激時間によって設定することができる。
【0102】
[0103] グループ2:呼吸関連刺激
【0103】
[0104] 制御刺激-刺激方法4
【0104】
[0105] 自発呼吸とは独立して、この電磁または電気刺激方法は、自発呼吸が完全に異なり、恐らくは有害にもなり得るパターンに従うときでさえも、肺に対して一層穏やかな自律呼吸の制御を達成する。つまり、例えば、呼吸仕事が過剰で、疲労が増えつつある場合に、呼吸ドライブおよび呼吸努力が増大するのであれば、刺激は的を絞った対抗制御を行うことができる。ここで、強化され、迅速で、更に深い呼吸が、既に損傷を受けている肺に損傷を加え、更には既に弱っており同様に以前に損傷を受けている呼吸筋に、損傷を加える。自傷的自発呼吸の結果として増大する肺の損傷だけでなく横隔膜損傷を、自発呼吸誘発性肺障害(P-SILI:patient-self inflicted lung injury)と呼ぶ。
【0105】
[0106] この刺激方法により、呼吸筋の過剰負荷およびP-SILIを減少または防止することさえもできるように、自律呼吸を制御することができる。電磁または電気刺激は、これまで、自律呼吸を制御することができる唯一の方法であり、つまり、自発呼吸および患者の意志と独立し、薬剤を使用しない、最適な非侵襲的方法である。
【0106】
[0107] この刺激方法を制御するために、自発呼吸の重要な特徴、および/または刺激によって最終的に一緒に発生する自律呼吸も考慮するフィードバック・メカニズムを使用することができる。ここでは、一回換気量、経肺圧、呼吸数、呼吸状態、および呼吸ドライブの間接的特性が、刺激を個々にそして柔軟に適応させることを可能にするのに、特に重要である。
【0107】
[0108] 制御刺激の特殊な形態:分泌動員および咳
【0108】
[0109] これら2つの呼吸筋刺激方法は、同じように、自発呼吸とは独立して行われ、呼吸に独立した特殊機能を満たす(satisfy)。このように、分泌は、末梢気道から中枢気道に動員され、更に咳によって動員され、最終的に気道から除去されることを意図する。
【0109】
[0110] 分泌動員刺激:この刺激方法によって、末梢から中枢起動に、例えば、高頻度で、短く素早い、強制吐出によって、分泌を動員することができる。
【0110】
[0111] 咳の刺激:この刺激方法は、分泌動員の直後に、動員された分泌を更に効果的に動員するため、そして特に「それらをはき出す」ことができるようにするために行うことができる。この目的のために、かなり長い吸入の後、短い咳または一連の短い咳をさせる(there is)。自然な咳の場合と同様、吐出の開始が、気道抵抗の増大に対抗して行われる場合、強制吐出は一層有効であり、つまり、肺内の圧力を高めることができる。この吐出抵抗を同期させながら短く増大させるには、人工的な抵抗を同期させることによって、および/または喉頭神経の刺激によって生ずる声帯の狭窄によって、行うことができる。
【0111】
[0112] 変調刺激(modulation stimulation)-刺激方法5
【0112】
[0113] 制御刺激(先の刺激方法4を参照のこと)とは対照的に、変調刺激は、自発呼吸と独立して行うのではなく、代わりに、自発呼吸インパルスの関数として行われる。自律呼吸が自発呼吸と完全に独立して制御される代わりに、したがって、自然な自発呼吸の部分的または完全な制御があり、弱い呼吸インパルスしかない場合でも、また存在しない場合でも、自発呼吸パルスを常に考慮に入れる。
【0113】
[0114] 同期の形態
【0114】
[0115] したがって、自発呼吸インパルスは、それと同期して電磁または電気刺激が行われるように、検出しなければならない。空気流における圧力、流量、または温度の変動のような、自発呼吸パルスの標準的な検出方法の補助によって、あるいはグレイスビー・カプセルまたは筋肉活動センサのような身体センサの補助によって、変調刺激を同期させることができる。しかしながら、自発吸入が開始する前における実際の神経インパルスとの同期の方が、遙かに正確である。神経インパルスと同期する換気を、神経補助(neurally assisted)または神経調節補助換気(NAVA:neurally adjusted ventilatory assist)と呼ぶ。ここでは、横隔膜に近接する食道内にあるセンサによって、神経インパルスを検出する。[4]を参照のこと。
【0115】
[0116] しかしながら、実際の神経インパルスは、非侵襲的な電磁的手段によって検出することもできる。これは、首上の刺激部位上で直接行うこと、末梢的に行うこと、または脳幹領域における神経インパルスの発生元の部位において中枢的に行うことができる。
【0116】
[0117] 吐出レベルの変調
【0117】
[0118] 次いで、先に説明した刺激方法1~3におけると同様、変調刺激と同期させて、自発呼吸を変化させることができる。これは、一層穏やかな自発呼吸を達成するために、肺弛緩刺激におけるように、呼吸周期全体にわたる刺激によって行うことができる。疾病および自発呼吸パターンに応じて、吐出の防止および/または吐出の遅延によって、異なるレベルにおいて肺を安定化させるために、刺激方法2の下において説明したような変調刺激を、吐出フェーズにおいてのみ行うこともできる。
【0118】
[0119] 一回換気量の変調
【0119】
[0120] しかしながら、要件にしたがって、刺激方法2の下において説明したように、間欠的で、非常に深い、持続的な呼吸によって、虚脱した肺領域を再開(re-open)できるように、吸入フェーズにおいてのみ、刺激を同期して供給することもできる。更に、不十分な浅い呼吸の場合、自発吸入中における刺激によって、十分な深さの呼吸を、対応する一回換気量を伴って、行わせることもできる。この目的のために、肺保護刺激においても説明したような呼吸インパルスの検出(先の刺激方法3を参照のこと)以外にも、呼吸量および/または経肺圧へのフィードバックが、ここでも有利である。
【0120】
[0121] 更に、自発神経インパルスを「先送りする」(take over)または禁止する(inhibit)ことによって、肺に損傷を与える過剰な一回換気量を伴う、過度に深い呼吸を防止することが可能になる。このような先送りは、神経の絶対不応期の間自然インパルスを送信することができず、相対不応期において減衰形態でのみ送信できるように、自然神経インパルスの直前における、横隔神経に的を絞った刺激によって実行することができる。
【0121】
[0122] 既に上で述べたように、過剰な自発呼吸による一回換気量も、呼吸状態を吸入に移行させて吐出を防止することによって、間接的に回避することができる。肺保護刺激(刺激方法3)において先に説明したように、一回換気量の測定を用いるフィードバック・メカニズムをここでも同様に使用する。
【0122】
[0123] 呼吸数の変調
【0123】
[0124] 直前の変調刺激の刺激形態では、自発呼吸数を変更しなかった。しかしながら、自発呼吸の回数が多すぎるまたは少なすぎる場合、電磁または電気刺激によって、自発呼吸数に直接的および/または間接的に影響を与え、制御することができる。その結果、自立呼吸への滑らかな遷移が制御され、自発呼吸数を検出することによって、対応するフィードバック・メカニズムによって規制される。
【0124】
[0125] つまり、自発呼吸深度および発生率にしたがって、刺激の程度(extend)および発生率(incidence)を個々に適応させることができる。自発呼吸数が多すぎる(too fast)場合、吸入および/または吐出フェーズを延長することによって、間接的に減らし(slow down)、最終的に、もっと少ない回数を重ね合わせる(superimpose)ことができる。また、呼吸反射を活性化することにより、個々の深い呼吸によって呼吸数を減らすこともできる。
【0125】
[0126] 従来のバックアップ換気と同様、呼吸が遅すぎる場合または停止している場合、電磁または電気制御された自律呼吸によって、呼吸数を直接増やす。例えば、昏睡の深さが増すに連れて、呼吸が徐々に減少する場合、間欠的呼吸による酸素欠乏を伴う不十分なガス交換が起こる前でも、対応する刺激の回数によって、早期に十分な呼吸数を達成することができる。
【0126】
[0127] 腹腔内圧に応じた変調
【0127】
[0128] 腹腔内の圧力(腹腔内圧IAP)は、吸入によって上昇し、吐出によって低下する。つまり、自発呼吸の場合におけるように、胸腔および腹腔間に自然な圧力差が生ずる。呼吸筋の刺激は、自然にもたらすことができるだけでなく、腹腔内における圧力変動を強めることもでき、腹部臓器の機能、例えば、腸運動性、臓器血液供給、またはリンパ・ドレナージュ(lymph drainage)に影響を及ぼし、更に、人工呼吸器を付けた患者の予後の改善に決定的に寄与することができる。
【0128】
[0129] つまり、呼吸による影響を受ける既存の腹腔内圧力の関数として、刺激は、吸入の深さおよび期間だけでなく、吐出のレベルおよび期間にも的を絞って、制御することができる。例えば、腹腔内高血圧症(IAP>12mbar)では腹腔内圧が非常に高いために腹部臓器内における血流が阻害される場合、これにしたがって、特に吐出において刺激を軽減することができる。
【0129】
[0130] グループ3:コンディショニングおよびトレーニング刺激
【0130】
[0131] コンディショニング刺激-刺激方法6
【0131】
[0132] 以上で述べた5つの刺激方法は全て、自発呼吸改善のコンディショニングとして専ら使用することもできる。ここでは、刺激期間を可変として間欠的刺激を行うが、数回のみの呼吸で十分であるとして差し支えない。コンディショニング刺激は、自発自律呼吸の変調によって、または先に説明した刺激方法1~5によって制御する自律呼吸としてのいずれかで、定められた自発呼吸パターンをトレーニングする。
【0132】
[0133] コンディショニング刺激は、直接フィードバックによって制御および増強することができる。フィードバックは、自律呼吸を検出しその測定値に基づいて行われる。呼吸の性質(nature)、吐出のレベル、吸入の深さ、一回換気量、および呼吸数を測定し、それにしたがって適応させたコンディショニング刺激を実行する。
【0133】
[0134] 陽圧換気において生ずるような、呼吸筋の領域への呼吸活動の再分布(redistribution)は、これによって防止される。また、従来の換気下における自律呼吸活動の疲労または衰退でさえも回避される。何故なら、呼吸筋からの対応する求心性インパルスによる末梢神経活動を、刺激によって維持できるからである。
【0134】
[0135] コンディショニング刺激のない「休止」において、自発呼吸は通常通りに行うことができる。しかしながら、通常の換気を行うこともでき、あるいは電磁または電気刺激によって補助された自発呼吸を行うことができ、そしてこの場合も、コンディショニング刺激とは対照的に、自律呼吸を前述のように変調することができる。これらの休止において、コンディショニング刺激が自発自律呼吸に影響を及ぼしたか否か、どの程度、そして特にどの位の長さにわたって影響を及ぼしたか確認するために、チェックを行う。そして、行われた変更に応じて、フィードバック・メカニズムによって、コンディショニング刺激の性質、発生率、期間、およびとりわけ間隔を個々に適応させることが可能になる。
【0135】
[0136] コンディショニング刺激によって行われるコンディショニング呼吸(conditioning respiration)は、以下で説明するトレーニング刺激と同様、特定の要件(以下を参照のこと)を満たさなければならない。
【0136】
[0137] トレーニング刺激-刺激方法7
【0137】
[0138] 筋肉の劣化(degradation)は、陽圧換気の間に僅か数時間後に開始し、筋力はそれよりも更に早くそして非常に素早く衰退する。つまり、僅か2時間の換気の後に取られる筋生検において、約35%の単離筋繊維の強度低下が実証された[5]。
【0138】
[0139] 筋肉の劣化、および筋力の弱化は、加えて、重篤な疾病過程によって、特に炎症によって、悪化する。弱った筋肉が換気によって不適切に緩められた(relieve)だけである場合、呼吸ドライブの増大が発現し、呼吸努力が大きくなり、最終的には大きくなり過ぎてしまい、既に損傷している肺だけでなく筋肉をも弱化させ、損傷する。高レベルの呼吸努力は、横隔膜の筋肉に対する損傷について最も重要な要因を表す。少なすぎる呼吸努力と高すぎるレベルの呼吸努力との間の度合いは、非常に狭く、更に個人間および個人内で、大きく異なる可能性もある。力の減退および筋肉の劣化の結果、弱化した呼吸筋は、最終的には、もはや十分な自律呼吸を確保することができなくなる。呼吸不全は、先に既に説明した呼吸パターンと共に進展する。呼吸は、速く(rapid)、浅く、そして激しくなり、既に損傷している肺だけでなく呼吸筋への更なる損傷の原因となる。換気の停止は、換気期間全体の最も大きな部分を占め、したがって、十分な自発呼吸に適した筋力の回復によって、必要とされる筋肉量(muscle mass)の再建と共に、厳しく(critically)判定される。
【0139】
[0140] 以下で説明する電磁または電気刺激によるトレーニング方法は、筋肉をつけることができるように、そして既存の筋肉の低下した力、および筋肉の劣化を防止できるように、呼吸筋を鍛える(strengthen)ことを意図する。ここでは、肺および呼吸筋に対する更なる損傷を、最小限に抑えるか、またはできるだけ回避しなければならない。
【0140】
[0141] 回復に効果的で、予防的で、先制的な形態のトレーニング
【0141】
[0142] 電磁または電気刺激によって、1.劣化した(degraded)呼吸筋を再度つける、または弱化した筋肉を再度鍛える、2.筋肉の劣化または筋肉弱化を防止する、および/または3.予想される筋力低下の前に、予想される劣化(degradation)または強化(strengthening)が起こる前に、筋肉をつける。
【0142】
[0143] したがって、トレーニングは、回復効果があり、予防的であり、および/または先制的である、といったことが可能である。
1)従来の換気および疾病過程による呼吸筋の劣化および/または弱化の後、回復効果があるトレーニング刺激を、筋肉を再建するためおよび/または筋力を回復するために行う。
2)従来の換気および疾病過程の間、筋肉の劣化および/または筋力減退は、予防的トレーニング刺激によって軽減される。
3)従来の換気または疾病過程によって予想される負荷増大、および/または予想される呼吸筋の劣化もしくは弱化の前に、先行的なトレーニング刺激によって呼吸筋および/または筋力をつける。
【0143】
[0144] トレーニング刺激の強度(intensity)
【0144】
[0145] 電磁または電気刺激は、十分な換気(1)が得られるので、吸入におけるこの刺激強度は、正常な自発呼吸が筋肉の劣化および筋力の損失(loss)も防止するのと丁度同じように、筋肉の劣化を防止するためにも適していることが推測される。多くの場合、例えば、従来の換気の間適切にしばしば使用されれば、筋肉の劣化を防止するためには、もっと低い刺激強度も適している。刺激が激しくなる程、それに応じて呼吸筋および/または筋力をつけることができ、あるいは少ない回数の刺激でも、一層効果的に筋肉の劣化および/または筋力の低下(loss)を防止することができる。
【0145】
[0146] 高い刺激強度でトレーニングするためには、吐出中の刺激が特に重要視される(以下を参照のこと)。
【0146】
[0147] トレーニング刺激パターンのための滑らかな遷移(transition)
【0147】
[0148] トレーニング刺激では、6通りの滑らかな遷移がある。
1)少数の非常に激しいトレーニング刺激、および多数の非常に弱いトレーニング刺激。
2)部分的刺激、および呼吸周期全体において行われる刺激。
3)自発呼吸と同期する刺激、および自発呼吸と独立した刺激。
4)筋肉の劣化または筋力減退を防止する刺激、および筋肉増強または筋力向上をもたらす刺激。
5)トレーニング刺激およびコンディショニング刺激
6)トレーニング刺激および換気刺激
【0148】
[0149] トレーニング呼吸に対する要件
【0149】
[0150] トレーニング刺激の結果、対応するトレーニング呼吸が生ずる。したがって、トレーニング・パターンは、同様に、先に説明した刺激方法1~4に重点を置き、更にここで述べる関係を考慮に入れる。したがって、トレーニング刺激において行われる呼吸は、以下の4つの要件を満たすことも意図する。
【0150】
[0151] トレーニング呼吸は、
1)肺および呼吸筋に対して追加の損傷を与えてはならず、または最小限の追加の損傷に留めなければならず、逆にこれらに対して良い影響を与えなければならない。
2)更なる悪影響、例えば、過換気を起こさせてはならない。
3)自発呼吸に対して悪影響を及ぼしてはならず、逆に、可能な限り、それに良い影響を与えなければならない。
4)不快感を起こさせてはならない、または可能な限り最も少ない不快感に留めなければならない。
【0151】
[0152] 電磁的または電気的なトレーニング方法
【0152】
[0153] したがって、先に説明した刺激方法1~6にしたがって、以下にあげる6通りの形態のトレーニング刺激があり、これらも、有害な呼吸を起こさずに、集中的なトレーニング刺激を可能にする。
7.1.肺弛緩トレーニング刺激
7.2.集中的トレーニング刺激
7.3.肺保護トレーニング刺激
7.4.自傷行為による怪我を回避するトレーニング刺激(P-SILI)
7.5.変調トレーニング刺激
7.6.コンディショニング・トレーニング刺激
【0153】
[0154] 7.1.肺弛緩トレーニング刺激
【0154】
[0155] 刺激方法1において説明した、肺組織へのエネルギ転移が少なく穏やかな呼吸の原理は、時折しかも非常に長い間隔の後に行われるに過ぎなくても、トレーニング刺激にも当てはまる。この刺激方法によって、先に説明したような、突然で潜在的に有害な呼吸運動が、吸入中における刺激インパルスの漸増、および吐出中における刺激インパルスの漸減によって回避される。これは、特に、激しく頻繁なトレーニング刺激には非常に重要である(以下の7.2.を参照のこと)。
【0155】
[0156] 7.2.集中的トレーニング刺激
【0156】
[0157] この方法によって、筋肉の急速な増強(build-up)および筋力強化を達成することができ、および/または少数の集中的刺激のみで、筋肉の劣化および筋力の低下(loss)を効果的に防止することができる。この形態の刺激の決定的な態様は、呼吸筋の集中的筋肉活動にも拘わらず呼吸が少ししかないことである。刺激方法2において先に説明したように、これは、呼吸状態を吸入に移行させ、吐出を防止することによって、達成される。具体的には、定められたレベルに吐出を保持するには(呼気保持)、筋肉運動(muscular effort)の増大が必要となる。したがって、吸入フェーズおよび吐出フェーズの双方において、激しい呼吸を起こさせずに、非常に集中的なトレーニング刺激を、呼吸筋の顕著な収縮と同時に行うことができる。
【0157】
[0158] ここで、吸入フェーズおよび吐出フェーズ双方における「呼吸の保持」(holding of the respiration)は、それぞれの呼吸周期において刺激時間を適切に延長することによって、強化することができる。同時に、二次効果として、先に刺激方法2において説明したように、虚脱した肺領域(lung area)が開放され、換気された肺領域(lung region)は安定化する。
【0158】
[0159] このトレーニング方法は、呼吸筋の非常に集中的なトレーニング刺激を可能にし、しかも副作用が少なく、肺を保護する。顕著な筋肉活動にも拘わらず、自傷による損傷(以下の7.3~7.5を参照のこと)だけでなく、過換気、更には低炭酸症のような対応する副作用、そして結果的に、恐ろしいpHシフトも回避することが可能になる。
【0159】
[0160] 吐出フェーズにおいて刺激が可能でない場合、または可能であるが適当でない場合、過換気に伴う副作用および疲労も、休止によって回避することができる。休止はフィードバックによって制御することができる。加えて、深い呼吸も、機械的に、ストラップおよび/または重りによってだけでなく、気道抵抗を増やすことによって制限することができ、その結果、トレーニング効果を更に高めることができる。
【0160】
[0161] 集中的トレーニング刺激の結果、患者当たりの使用期間を大幅に短縮することができ、その結果、短い間隔で様々な患者に装置を利用可能にすることができる。
【0161】
[0162] この集中的トレーニングの重要な態様は、顕著な刺激と対応する呼吸筋の強い収縮にも拘わらず、突然の呼吸運動(先の7.1を参照のこと)、および/または大きな一回換気量(以下の7.3.を参照のこと)、および/または高い経肺圧を伴う、深い呼吸を発生させないことである。
【0162】
[0163] 7.3.肺保護トレーニング刺激
【0163】
[0164] 刺激方法3において先に説明したように、吸入中における呼吸深度も、穏やかな一回換気量だけ呼吸され、および/または穏やかな経肺圧が発揮される(exerted)ように、このトレーニングの形態で規制される。これは、特に、頻繁なトレーニング刺激の場合、非常に重要である。一回換気量の測定値と刺激強度との間における前述のフィードバックによって、先に説明したように(先の7.2.を参照のこと)、呼吸状態へのフィードバックも付加的に行うことができる。
【0164】
[0165] このように、刺激強度を高めることができ、しかも同時に、集中的トレーニング刺激においてでさえも、例えば、6ml/kg理想重量の肺を保護する一回換気量および/または5mbarの経肺圧を超過しない。先に7.2において説明したように、つまり、呼吸状態と一回換気量との間における相互作用によって、危険な呼吸を伴わない集中的トレーニング刺激を達成することが可能になる。
【0165】
[0166] 加えて、吐出抵抗を大きくすることによって、限られた範囲まで、呼吸状態を吸入に移行させることができ、これによって一回換気量を制限することもできる。これは、吐出中における刺激と組み合わせて、そしてこの刺激と同期して行うことができる。
【0166】
[0167] しかしながら、低い刺激強度であっても、高い一回換気量を達成することができる。また、呼吸状態とは独立して、肺保護刺激は、低い刺激強度においてであっても、一回換気量が多い危険な呼吸が引き起こされる状況を防止する。これは、特に頻繁な刺激の場合に、トレーニング刺激自体によって肺損傷効果が生ずる可能性を除外する。これは、特に、自発呼吸において重要である。何故なら、この場合、低いトレーニング刺激であっても、自発呼吸に加えて、そのときに行われる自律呼吸をかなり強めるからである(以下の7.4.~7.5を参照のこと)。
【0167】
[0168] 7.4.自傷行為による損傷(P-SILI)を回避するトレーニング刺激
【0168】
[0169] 先に述べた3通りのトレーニング刺激パターンは、トレーニング中に行われる換気によって生ずる追加の損傷を最小限に抑えるまたは防止することを意図するが、これら以外でも、このトレーニング・パターンは、自発呼吸があるときの損傷を回避または最小限に抑えることを意図する。
【0169】
[0170] 追加のトレーニング刺激が、深い吸入および/または突然の吸入を全く生じさせないように、自発呼吸を考慮に入れる。これは、特に、頻繁な繰り返しの場合に重要であり、異なる方法で達成することができる。あるいは、吸入の間は刺激を行わないか、または定められた一回換気量を超えないような刺激にするか、または吸入を適宜変調する。
【0170】
[0171] 更に他のパターンでは、このトレーニングにおいて、自発呼吸つまり自傷呼吸の深度も吐出の間は制限されるように、刺激方法2においてそして章(point)7.2.においても説明したように、吐出の防止によって呼吸状態を吸入に移行させることができる。
【0171】
[0172] したがって、刺激を個々にそして柔軟に適応させることができ、必要であれば、自発呼吸を変調することができるように(以下の7.5を参照のこと)、刺激によって生じたまたは変更された自発呼吸および/または自律呼吸を検出しなければならない。
【0172】
[0173] 7.5.変調トレーニング刺激
【0173】
[0174] 先に刺激方法5において説明したように、最後に、トレーニング刺激と変調刺激との間に、異なる組み合わせの滑らかな遷移がある。つまり、疾病およびこの疾病の重篤性を考慮に入れて、自律呼吸の要件および所望のトレーニング効果も実現できるように、刺激を個々に適応させることができる。
【0174】
[0175] 変調トレーニング刺激は、常に、自発呼吸を考慮に入れ、したがってそれも変化させる。ここでは、刺激は、呼吸周期全体にわたって、または一部のみにおいて行われる。部分的刺激の場合、吸入フェーズにおいてのみ、吐出中のみ、またはこれらの呼吸フェーズの一部において、トレーニングを実行する。ここでは、先に数回説明したように、集中的トレーニングを実施すること、制御された自律呼吸が深くなりすぎるのを回避すること、およびトレーニング中に自発呼吸が深くなりすぎるのを回避することも可能にするために、吐出は特に重要であると考えられる。呼吸筋の疲労による浅く素早い呼吸であっても、変調刺激は同時にトレーニングを実施することができ、先に刺激方法5において説明したように、呼吸パターンの改良を達成することができる。疲労が増大するに連れて、疲労した呼吸筋を和らげるために、できるだけ早く介入(intervention)を求めなければならない。過剰な疲労の場合において、換気による呼吸筋の緩和が必要であることが判明したならば、予防的トレーニング刺激(preventive training stimulation)が、早い段階で、筋肉の劣化を抑えるまたは防止することもできる。
【0175】
[0176] 7.6.コンディショニング・トレーニング刺激
【0176】
[0177] 刺激方法6において以上で説明したコンディショニング刺激も、トレーニング刺激の一形態を表す。しかしながら、コンディショニング刺激の目的は、主に、呼吸筋のトレーニングではなく、定められた呼吸パターンの「実施」(practicing)またはコンディショニングである。したがって、呼吸筋のトレーニングに対する補足として、定められた呼吸パターンを付加的に調整する(condition)ことを意図する場合、コンディショニング・トレーニング刺激が行われる。
【0177】
[0178] 刺激機能の組み合わせ
【0178】
[0179] 疾病、肺の損傷、および呼吸障害の重篤度に応じて、換気を適切に適応させる際の要件も満たすことができるように、トレーニング刺激を、最終的に、コンディショニング刺激と組み合わせることができる。
【0179】
[0180] 例えば、ARDSの状況における低酸素肺損傷の場合、呼気保持、制動および削減刺激(cut stimulation)パターンの補助を受けた吐出中の刺激(以上および以下を参照のこと)は、肺を安定させ、過剰に多い一回換気量から肺を保護し、吐出の「保持」(holding)を調整し、そして同時に呼吸筋の集中的トレーニングを実行することができる(吐出刺激の概要を参照のこと)。
【0180】
[0181] 吐出刺激の概要
【0181】
[0182] 吐出中における刺激は、1.肺の安定化、2肺の保護、3.自発呼吸のコンディショニング、および4.集中的でしかも同時に穏やかな呼吸筋のトレーニングのために、最も重要である。
【0182】
[0183] 1.肺の安定化
【0183】
[0184] 安定化刺激は、対応するガス交換不全を伴う肺の虚脱を防止し、更に有害な虚脱回復換気(collapse recruitment ventilation)、換気された肺の過膨張、呼吸仕事の増大、呼吸努力、P-SILI、そして最後に疲労も防止する。安定化刺激は、3通りの異なる方法、1.呼気保持、2.呼気制動、および3.呼気削減(cut)によって行うことができ、これらを組み合わせることもできる。
1)呼気保持:吐出の保持により完全な吐出(breathing out)の防止。
2)呼気制動:刺激強度を低下させることによる吐出の減速。
3)呼気削減:吐出期間の短縮。
【0184】
[0185] 最後に、呼気保持だけでなく、制動の性質によって、そして間接的に吐出時間の短縮によって、具体的に、吐出レベルを判定する。陽圧換気とは対照的に、ここでは肺において不自然な圧力上昇はないが、負圧換気の場合におけるように、腹腔内における不自然な圧力低下もない。
【0185】
[0186] 2.肺保護
【0186】
[0187] 吐出において保持される空気が多い程、呼吸状態は吸入に移行し易くなり、再度の呼吸ではより浅く吸い込むことができる。呼吸状態の移行が、さほど深く吸い込めないことを意味する場合、多い(high)一回換気量、したがって損傷を与える一回換気量には、純粋に機械的に、達することができない。これは、1.自発呼吸、2.電磁または電気的に制御される自律呼吸、3.電磁的または電気的なトレーニング呼吸、だけでなく4.従来の換気にも作用する。つまり、吐出における刺激自体が、有害な自発呼吸を制限することだけでなく、有害な電磁または電気的換気、だけでなく一回換気量が多量な従来の換気をも制限することを可能にする。
【0187】
[0188] 3.コンディショニング
【0188】
[0189] コンディショニング刺激は、的を絞って種々の吐出方法の実施を補助し、それによって、以降の自発呼吸のために定められた吐出技法を一層効果的に学習する。
【0189】
[0190] 4.トレーニング
【0190】
[0191] 吐出における刺激は、呼吸状態の移行によって吸入を制限することによって、呼吸筋の集中的なトレーニングを可能にする。これは、非常に集中的なトレーニング刺激を可能にし、吸入フェーズおよび吐出フェーズの双方において、呼吸筋の顕著な収縮が見られる。何故なら、呼吸筋の集中的な筋肉活動にも拘わらず、わずかな呼吸しかないからである。このように、広範囲に及ぶトレーニング呼吸を回避するだけでなく、トレーニング中における有害な自発呼吸も回避し、更に付随する有害な効果や合併症も回避することが可能になる。
【0191】
[0192] 本発明の更に別の有利な実施形態は、以下の発明の代表的な実施形態の説明から、模式図の補助により、明白となろう。具体的には、例示的な実施形態に基づいて、添付図面を参照して、本発明について以下で更に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0192】
図1】生体上における電気刺激装置の使用を示す。
図2】陽圧人工呼吸器と併せた電気刺激装置の生体上における使用を示す。
図3】呼吸状態の時間図を示す。
図4】呼吸状態の時間図を示す。
図5】呼吸状態の時間図を示す。
図6】呼吸周期における肺内空気量の経時的な変化を示す。
図7】呼吸周期における経肺圧の経時的な変化を示す。
図8】吸気フェーズにおける電磁界を、刺激のためのパルス列、傾斜形状である列の立ち上がりと共に示す。
図9】吸気フェーズにおける電磁界を、刺激のためのパルス列、傾斜形状である列の立ち上がりおよび立ち下がりと共に示す。
図10】吸気フェーズにおける電磁界を、刺激のためのパルス列、傾斜形状である列の立ち上がりおよび立ち下がり、ならびに列間において強度を弱めたパルスと共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0193】
発明を実施する方法(1つまたは複数)
[0193] 以下の説明では便宜上特定の用語を使用するが、限定を意図するのではない。「右」、「左」、「下」、および「上」という単語は、参照する図面における方向を示す。「内側に」(inward)、「外側に」(outward)、「下に」(below)、「上に」(above)、「左」(left)、「右」(right)等の用語は、指定された部分の互いに対する配置、指定された部分の互いに対する移動、ならびに図に示される発明およびその名称付き部分(named parts)の幾何学的中心に向かう方向または遠ざかる方向を記述するために使用される。また、これらの空間的関係は、図に示すもの以外の位置および方位も含む。例えば、図に示す部分を回転させた場合、「下にある」と記述されているエレメントまたは構造は、「上にある」となる。用語は、以上で明示的に述べた単語、その派生語、および同様の意味の単語を含む。
【0194】
[0194] 種々の態様および代表的な実施形態の図面ならびに関連する説明における繰り返しを回避するために、特定の構造(feature)は、種々の態様および代表的な実施形態に共通するものと理解してしかるべきである。ある態様が説明または図において省略されている場合、この態様は、関連する代表的実施形態において欠けていることを暗示するのではない。逆に、このような省略は、明確にするため、そして繰り返しを回避する役割を果たす場合もある。この文脈では、以下の定義は以後の説明全体に当てはまる。図を明確にする目的で参照符号が図に含まれるが、直接関連する本文の説明(description text)では述べられない場合、直前の図の説明におけるそれらの説明を参照する。加えて、図に直接属する説明文において、関連する図に含まれない参照符号が述べられる場合、直前および直後の図を参照する。2つ以上の図における同様の参照符号は、同様のまたは同一のエレメントを表す。
【0195】
[0195] 図1は、臥位にある生体1を示す。物事を明確にするために、横隔神経2および肋間神経3の有利な刺激位置を生体1上に示す。この例示的な実施形態では、横隔神経2が電磁刺激によって刺激されることを意図すると仮定する。
【0196】
[0196] 図1は、電気刺激装置4を示す。電気刺激装置4は、磁界を生体1内に供給するための信号出力エレメント10、例えば、コイルに電気配線によって接続される。信号出力エレメント10によって、電気刺激装置は生体内において刺激信号を生成することができる。この刺激信号は、筋肉の収縮を発生させ、これによって、生体1の呼吸に的を絞って、影響を及ぼすことができる。
【0197】
[0197] 電気刺激装置4は、例えば、コンピュータ制御される電気刺激装置として設計することができる。これは、コンピュータ5、刺激信号発生器6、メモリ7、および操作エレメント8を有する。加えて、動作データを表示するためのディスプレイ・デバイスも設ける(present)ことができる。メモリ7内には、コンピュータ・プログラムが格納され、これによって、電気刺激装置4の機能の一部または全部を実行することができる。コンピュータ5はメモリ7内にあるコンピュータ・プログラムを実行する。このように、刺激信号発生器6は、対応する刺激信号を信号出力デバイス10に出力し、この刺激信号によって、所望の磁界が生成される。刺激信号による生体1の換気のための前述の機能、またはユーザによって実行されるプロセスには、ユーザによって、操作エレメント8を通じて、例えば、呼吸周期のパラメータを設定することによって、影響を及ぼすことができる。
【0198】
[0198] 電気刺激による生体1の人工換気は、所望のエレメントによって制御することができる。特定のパラメータも規制しようとする場合、生体1の呼吸周期の特性の1つ以上の測定値を、電気刺激装置4に供給する。例えば、生体1によって吸入される体積流量、および吐出体積流量を検出することが得策であるのはもっともである。これは、例えば、顔用マスク13によって行うことができ、顔用マスク13の中に流量センサが配置されている。顔用マスク13または流量センサは、実用上呼吸流には何の影響も及ぼさない。しかしながら、体積流量を特徴付ける定量的変数を検出し、電気刺激装置4に供給することができる。例えば、コンピュータ5によって、センサ信号の評価を実行することができる。
【0199】
[0199] 電気刺激装置4は、加えて、他の装置への接続のため、例えば、他の装置とのデータ交換のために、インターフェース9を有することができる。このように、更に他の測定値を電気刺激装置4に供給することができ、電気刺激装置4にそれ自体のセンサを装備する必要はない。
【0200】
[0200] 図2は、陽圧人工呼吸器11と併せて、生体1上において使用する電気刺激装置4を示す。人工呼吸器11は、空気送給ユニット(air delivery unit)18を有し、これを介して、環境からポート19を通って空気を吸入する(suction)ことができ、更に呼吸マスク13によって生体1の気道内に、空気配管12を通って空気を供給することができる。呼吸マスク13または空気配管12は、定められた漏出口14を有することができる。人工呼吸器11の内側では、圧力センサ16および体積流量センサ17、例えば、呼吸気流計が空気配管12に接続される。人工呼吸器11は、それ自体の制御ユニット15を有し、センサ16、17がこの制御ユニット15に接続される。制御ユニット15は、予め定められたアルゴリズムにしたがって、このように呼吸マスク13を介した生体1の呼吸器官における所望の体積流量曲線および/または圧力曲線を生成するために、空気送給ユニット18を作動させる。
【0201】
[0201] 尚、電気刺激装置4は、インターフェース9を介して、人工呼吸器11に接続されることは分かるであろう。インターフェース9によって、対応する測定値、そして随意に人工呼吸器11内部で計算され生体の呼吸周期の特性に関する追加の値を、電気刺激装置4に供給する。このように、電気刺激装置4は、例えば、生体1の呼吸周期の圧力および体積流量の現測定値を受け取る。
【0202】
[0202] 図3図5は、各々、種々の呼吸状態について時tの経過に連れてプロットした様々な呼吸周期を示す。肺において、各場合に突き止めた空気量Vが縦軸上にプロットされている。
【0203】
[0203] 図3は、呼吸状態を、呼吸中の静止時(AZV)および最大可能吐出時における一回換気量と共に示す。これによって、呼吸中の静止時における正常な呼吸状態、および呼気終末肺気量(ERV)を示すことを意図する。ここでは、予備吸気量(IRV)も特徴付け、最大可能吸入量によって図4に示す。最後に、図5は、呼吸中における静止時における呼吸から吸入への呼吸状態の移行を示す。これは、静止時における呼吸の一回換気量が、増大したERVおよび減少したIRVになることによって特徴付けられる。
【0204】
[0204] 図3図5に示す呼吸推移は、本発明による電気刺激装置4および本発明による方法によって、適切に制御または規制することができる。即ち、電気刺激装置によって対応する刺激信号を生体1の少なくとも1つの神経および/または1つの筋肉に供給し、その結果、呼吸筋の対応する筋肉収縮を発生させ、最終的に、図示した呼吸周期が生じる。
【0205】
[0205] 図6および図7は、呼吸周期を拡大図で示す。呼吸周期は吸気フェーズIおよび呼気フェーズEから成る。図6は、経時的な空気量Vを示し、一方図7は経時的な経肺圧TPPを示す。尚、図6による吸気フェーズIは、下頂点(lower vertex)で始まり、上頂点で終了することがわかるであろう。呼気フェーズEは、上頂点で始まり、曲線の次の下頂点で終了する。圧力TPPの推移グラフは、量Vの推移グラフに対して、位相ずれとなる。
【0206】
[0206] 電気刺激装置4は、例えば、図6および図7に示す呼吸周期の推移グラフを生成することができる。選択した機能にしたがって、吸気フェーズの期間および/または呼気フェーズの期間に、別々に影響を及ぼすことができる。空気量推移グラフ(volume profile)および/または圧力推移グラフの振幅にも、別々に影響を及ぼすことができ、更に曲線推移グラフの極大値および極小値のそれぞれの位置にも影響を及ぼすことができる。
【0207】
[0207] 図8は、電磁界を、吸気フェーズにおける刺激用列(trains for stimulation)と共に示し、列の立ち上がりは傾斜形状になっている。列の各々はパルスを含み、一連のパルスは極小値から既定値まで強度が増大する。これは、非侵襲的または穏やかな刺激の開始を可能にする。何故なら、パルスは直ちに既定の値で神経を刺激するのではないからである。列間には約1~3秒の休止がある。休止時間中には刺激パルスはない。ここでは、吐出は刺激によって支援されない。
【0208】
[0208] 図9は、電磁界を、吸気フェーズにおける刺激用列と共に示し、列の立ち上がりだけでなく、立ち下がりも傾斜形状になっている。これは、非侵襲的で穏やかな開始だけでなく、刺激に対して穏やかな終了も可能にする。
【0209】
[0209] 図10は、図9に示したような電磁界を、吸気フェーズにおける刺激用列と共に示す。加えて、列間のパルスは、強度を弱めており、この緩和によって吐出も支援する。この支援は、特に病気の患者にとって、彼らの肺が吐出時に完全に収縮しないようにして、肺を「接着」から防止するので、有益である。
【0210】
[0210] 以上、図面および関連する説明によって本発明について詳細に図示および説明したが、この図およびこの詳細な説明は、例示および代表例であり、本発明を限定するのではないと理解されてしかるべきである。発明を曖昧にしないために、特定の実例では、周知の構造および技法は詳細に図示も説明もしない場合がある。尚、以下の請求項の範囲から逸脱することなく、変更および修正は当業者によって行えることは理解されよう。具体的には、本発明は、明示的に説明した構造の組み合わせからは逸脱する可能性もある構造の任意の組み合わせを有する他の代表的な実施形態も、その範囲に含む。
【0211】
[0211] また、本開示は、以上または以下で異なる実施形態について述べたまたは示した特徴の任意の組み合わせを有する実施形態も含む。また、図における個々の構造が、図では他の構造と関連付けて示されても、および/または以上でも以下でも述べられていなくても、本開示はこれらの構造も含む。また、図および説明において説明した実施形態の代替物、およびこれらの構造の個々の代替物は、発明の主題または開示する目的から除外することができる。本開示は、請求項または代表的な実施形態において記載された特徴を排他的に含む実施形態、および他の追加の特徴を含む実施形態も含む。
【0212】
[0212] 以後、「備える」(comprising)という用語およびその派生語は、他のエレメントまたはステップを除外しない。同様に、不定冠詞「a」または「an」およびその派生語も多数(large number)を除外しない。請求項に列挙される様々な特徴の機能は、ユニットまたはステップによって実現することができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されるという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味しない。プロパティまたは値と関連付けられた「実質的に」(substantially)、「約」(about)、「近似的に」(approximately)等の用語は、具体的には、正確にそのプロパティまたは正確にその値も定める。所与の数値または範囲という観点からは、「約」および「近似的に」という用語は、その所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内、または2%以内である値または範囲を指すことができる。適した媒体、例えば、光記憶媒体、または他のハードウェアと共にまたはその一部として供給される固定媒体上に、コンピュータ・プログラムを格納および/または分散することができる。また、インターネットあるいは他の有線またはワイヤレス電気通信システムを通じてというようにして、他の形態で分散することもできる。具体的には、コンピュータ・プログラムは、例えば、コンピュータ読み取り可能媒体上に格納され、方法、具体的には、本発明による方法を実装するために、実行するように設計されたコンピュータ・プログラム製品とすることができる。請求項におけるいずれの参照符号も、請求項の範囲を限定するように解釈してはならない。
【0213】
[0213] 参考文献
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図1
図2
図3
図4
図5
図6-7】
図8
図9
図10
【国際調査報告】