(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】眼科外科用の外科用ロボットシステム及びその制御
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20240614BHJP
A61B 17/34 20060101ALI20240614BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B17/34
A61F9/007
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577966
(86)(22)【出願日】2022-06-13
(85)【翻訳文提出日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2022066010
(87)【国際公開番号】W WO2022263366
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523473420
【氏名又は名称】プリサイズ ベースローテン フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Preceyes B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】マールテン ヨハネス ベーレン
(72)【発明者】
【氏名】ヨリト スミット
(72)【発明者】
【氏名】ゲリット ヤコブス ランベルタス ナウス
(72)【発明者】
【氏名】ヒルデベルト クリスティアーン マティス メーニンク
(72)【発明者】
【氏名】マルク ヨゼフ ドミニーク デ スメト
【テーマコード(参考)】
4C130
4C160
【Fターム(参考)】
4C130AA02
4C130AA04
4C130AA22
4C130AB01
4C130AC05
4C130AD30
4C130CA20
4C160FF41
(57)【要約】
眼科外科的処置で使用するための外科用ロボットシステムが提供される。システムは、可動アーム部(082)を含む外科用アーム(080)を含み、外科用アーム(080)は、長手方向軸線を有する外科用器具(119)を取り付けるための器具コネクタを含む。可動アーム部(082)は、眼科手術標的(123)に向かう又は眼科手術標的(123)から離れるその長手方向軸線に沿った外科用器具(119)の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有する。システムは、センサ(030)と、ユーザインターフェース(020)と、アクチュエータ(060)と、プロセッササブシステム(040)とを含む。プロセッササブシステム(040)は、外科用器具(119)の初期位置にて、センサ(030)からセンサデータ(032)を取得し、外科用器具(119)と手術標的(123)との間の初期距離を決定し、外科用器具(119)の標的位置を示すデータを取得し、変位距離を決定し、変位距離の感覚認知可能表現を出力し、ユーザから確認信号を受け取り、確認信号を受け取ると、変位距離にわたる外科用器具(119)の単一の移動を生じさせるために、可動アーム部(082)を作動させるようにアクチュエータ(060)を制御するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科外科的処置で使用するための外科用ロボットシステム(100)であって、
- 可動アーム部(082)を含む外科用アーム(080)であって、前記可動アーム部(082)は、長手方向軸線を有する外科用器具(119)を取り付けるための器具コネクタを含み、前記可動アーム部(082)は、眼科手術標的(123)に向かう又は眼科手術標的(123)から離れる前記外科用器具(119)の前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有する、外科用アーム(080)と、
- 前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得するように構成されたセンサ(030)と、
- ユーザからユーザ入力を受け取り、前記ユーザに感覚認知可能出力を出力するように構成されたユーザインターフェース(020)と、
- 前記外科用器具(119)の前記長手方向の移動を生じさせるために前記可動アーム部(082)を作動させるように構成及び配置されたアクチュエータ(060)と、
- プロセッササブシステム(040)であって、
- 前記外科用器具(119)の初期位置にて、前記センサ(030)からセンサデータ(032)を取得し、前記センサデータ(032)に基づいて、前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の初期距離を決定し、
- 前記手術標的(123)に対する前記外科用器具(119)の標的位置を示すデータを取得し、
- 前記センサデータ(032)及び前記標的位置に基づいて、前記外科用器具(119)の変位距離を決定し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記決定された変位距離の感覚認知可能表現を出力し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記ユーザから確認信号を受け取り、
- 前記確認信号を受け取ると、前記決定された変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御する
ように構成されている、プロセッササブシステム(040)と、
を含む、外科用ロボットシステム(100)。
【請求項2】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、
- 前記外科用器具(119)の前記単一の移動を完了すると、前記センサ(030)から最新のセンサデータ(032’)を取得し、前記最新のセンサデータ(032’)に基づいて、前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の残りの距離を決定し、
- 前記決定された残りの距離に基づいて、前記標的位置に到達したかどうかを決定し、
- 到達していなければ、前記決定された残りの距離に基づいて、前記外科用器具(119)の深さを補正するように前記アクチュエータ(060)を制御する
ように構成されている、請求項1に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項3】
前記プロセッササブシステム(040)は、
- 前記手術標的(123)までの前記決定された残りの距離から、前記標的位置に到達するための補正変位距離を決定し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記補正変位距離の感覚認知可能表現を出力し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記ユーザから更なる確認信号を受け取り、
- 前記更なる確認信号を受け取ると、前記補正変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の更なる単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御すること
によって、前記外科用器具(119)の前記深さを補正するように、前記アクチュエータ(060)を変位ベース制御モードで制御するように構成されている、請求項2に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項4】
前記プロセッササブシステム(040)は、最新のセンサデータ(032)を使用して前記外科用器具(119)の前記深さを補正する制限閉ループ制御モードで前記アクチュエータ(060)を制御するように構成されており、前記制限閉ループ制御モードは、
- 前記制限閉ループ制御モードの事前定義された使用継続時間、
- 事前定義された最大補正変位距離、
- 前記補正中に確実性スコアが確実性スコア閾値を上回ったままであることを必要とすること、前記確実性スコアは、前記決定された残りの距離の確実性を表す、
- 前記補正中の継続的なユーザ入力を必要とすること、及び前記継続的なユーザ入力が終了したことを検知すると、前記外科用器具(119)の移動を停止すること、
の少なくとも1つによって限定される、請求項2又は3に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項5】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、
- 前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の決定された距離の確実性を表す確実性スコアを計算し、
- 前記計算された確実性スコアに従って、前記アクチュエータ(060)の前記制御を適応させる
ように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項6】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、前記センサ(032)の測定ノイズの推定値、前記手術標的(123)の動的運動の存在の検知、前記センサデータ(032)と前記センサデータ(032)の基準を表すモデルとの比較、及び推定手術標的位置と予測手術標的位置との間の比較の少なくとも1つに基づいて、前記確実性スコアを計算するように構成されており、前記予測手術標的位置は、少なくとも1つの位置センサによって測定された器具移動に基づく、請求項5に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項7】
前記プロセッササブシステム(040)は、前記確実性スコアを繰り返し計算し、前記計算された確実性スコアが確実性スコア閾値を下回る場合、中断手順を実行するように構成されており、
前記中断手順は、
- 前記外科用器具(119)を後退させること、
- 前記外科用器具(119)の移動を一時停止すること、及び
- 前記アクチュエータ(060)を前記制限閉ループ制御モードで制御することから前記アクチュエータ(060)をモーションコントローラベース制御モードで制御することへと切り替えること、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記プロセッササブシステム(040)は、モーションコントローラを介して前記ユーザから受け取った位置制御コマンドに従って前記アクチュエータ(060)を制御するように構成されている、
請求項4に従属する請求項5に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項8】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、前記計算された確実性スコアに基づいて一連の制御モードから制御モードを選択するように構成されており、前記一連の制御モードは、モーションコントローラベース制御モード、変位ベース制御モード、及び制限閉ループ制御モードのうちの少なくとも2つを含み、
- 前記モーションコントローラベース制御モードでは、前記プロセッササブシステム(040)は、前記ユーザインターフェース(020)のモーションコントローラを介して前記ユーザから受け取った位置制御コマンドに従って前記アクチュエータ(060)を制御するように構成されており、
- 前記変位ベース制御モードでは、前記プロセッササブシステム(040)は、
- 前記手術標的(123)までの前記決定された残りの距離から、前記標的位置に到達するための補正変位距離を決定し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記補正変位距離の感覚認知可能表現を出力し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記ユーザから更なる確認信号を受け取り、
- 前記更なる確認信号を受け取ると、前記補正変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の更なる単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御する
ように構成されており、
- 前記制限閉ループ制御モードでは、前記プロセッササブシステム(040)は、
- 前記制限閉ループ制御モードの事前定義された使用継続時間、
- 事前定義された最大補正変位距離、
- 前記補正中に確実性スコアが確実性スコア閾値を上回ったままであることを必要とすること、前記確実性スコアは、前記決定された残りの距離の確実性を表す、
- 前記補正中の継続的なユーザ入力を必要とすること、及び前記継続的なユーザ入力が終了したことを検知すると、前記外科用器具(119)の移動を停止すること
のうちの少なくとも1つによって限定されるように構成されている、
請求項5又は6に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項9】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、前記ユーザから前記確認信号を受け取る前に、前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記計算された確実性スコアの感覚認知可能表現を出力するように構成されている、請求項5~8のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項10】
前記センサ(030)は、
- 前記外科用器具(119)に取り付けられた又は内蔵された光ファイバに光学的に結合するように構成された光干渉断層撮影(OCT)センサ、
- 顕微鏡を介する術中光干渉断層計(iOCT)、
- 顕微鏡を介するステレオカメラ、
- 前記外科用器具(119)に内蔵された又は取り付けられた光干渉計センサ、
- 前記外科用器具(119)に内蔵された又は取り付けられた飛行時間センサ、及び
- 前記外科用器具(119)に内蔵された又は取り付けられた超音波センサ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項11】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、
- 眼の組織の第1の層(220)と前記眼の組織の第2の層(230)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得し、前記手術標的(123)は、前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間にあり、
- 前記外科用器具(119)が前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間にあるように、前記外科用器具(119)の前記位置を補正する
ように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項12】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、眼の組織の第1の層(220)と前記眼の組織の第2の層(230)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得するように構成されており、前記手術標的(123)は、前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間にあり、
前記手術標的(123)に対する前記外科用器具(119)の標的位置を示す前記データは、前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間の前記距離を示すデータを含む、
請求項1~11のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項13】
眼科外科的処置における使用中に外科用ロボットシステム(100)を制御するためのコンピュータ実施方法(1100)であって、前記外科用ロボットシステム(100)は、外科用アーム(080)であって、前記外科用アーム(080)は、可動アーム部(082)を含み、前記可動アーム部(082)は、長手方向軸線を有する外科用器具(119)を取り付けるための器具コネクタを含み、前記可動アーム部(082)は、眼科手術標的(123)に向かう又は眼科手術標的(123)から離れる前記外科用器具(119)の前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有する、外科用アーム(080)を含み、前記外科用ロボットシステム(100)は、前記外科用器具(119)の前記長手方向の移動を生じさせるために前記可動アーム部(082)を作動させるように構成及び配置されたアクチュエータ(060)をさらに含み、前記方法は、
- 前記外科用器具の初期位置にて、前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得する(1110)ことと、
- 前記センサデータ(032)に基づいて、前記初期位置の前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の初期距離を決定する(1120)ことと、
- 前記手術標的(123)に対する前記外科用器具(119)の標的位置を示すデータを取得する(1130)ことと、
- 前記センサデータ(032)及び前記標的位置に基づいて、前記外科用器具(119)の変位距離を決定する(1140)ことと、
- 前記変位距離の感覚認知可能表現を前記ユーザに出力する(1150)ことと、
- 前記ユーザから確認信号を受け取る(1160)ことと、
- 前記確認信号を受け取ると、前記変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御する(1170)ことと、
を含む、コンピュータ実施方法(1100)。
【請求項14】
コンピュータプログラム(1250)を表す一時的又は非一時的データを含み、前記コンピュータプログラムは、プロセッサシステムに請求項13に記載の方法を実行させるための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体(1260)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科外科的処置で使用するための外科用ロボットシステムに関する。本発明はさらに、眼科外科的処置における使用中に外科用ロボットシステムを制御する方法、及びプロセッサシステムに方法を実行させるための命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科外科的処置では、外科用ロボットシステムの使用を伴うことが多くなってきている。そのような外科用ロボットシステムは、完全に自律的に動作するのではなく、例えば外科用ロボットシステムの外科用アームに取り付けられた外科用器具の移動を制御するために、典型的には、少なくとも部分的に人間のオペレータの制御下にある。したがって、外科用ロボットシステムは、人間のオペレータが外科的処置を実施するのを支援し得る。
【0003】
ロボット支援により、外科用器具を動かす操作精度を向上させることができる。眼内又は眼の周辺に見られる組織及び構造の複雑さ及び大きさを考えると、眼科手術では、特に高い精度が要求される。しかしながら、ロボットシステムは、そのような精度を、組織に対するものではなく、絶対座標で提供する。例えば、組織の変動又は動きにより、ロボット支援によって提供される精度が低下する。さらに、ロボットを操作する外科医は、顕微鏡を通した術野の限定された視界しか有しない。特に、奥行知覚は困難なものとなる。
【0004】
可動アーム部を含み、可動アーム部は、外科用器具を取り付けるための器具コネクタを含む外科用アームを備え得る、既存の外科用ロボットシステムは存在する。したがって、外科用器具は、外科用アームによって位置決めされ得る。外科用器具の移動を制御するために、人間のオペレータから位置決めコマンドを受け取るためのヒューマンマシンインターフェースが設けられ得る。人間のオペレータによって提供された位置決めコマンドに従って外科用器具の移動を生じさせるために可動アーム部を作動させるためのアクチュエータが設けられ得る。この手法の例は、人間のオペレータがマスターデバイス、例えばモーションコントローラを操作して、スレーブデバイス、例えば前述の外科用アームに位置決めコマンドを提供し得る遠隔操作の分野に見られ得る。
【0005】
しかしながら、そのようなシステムは、眼科外科的処置に必要なレベルの精度を確実には提供せず、典型的には、手の震えの影響を低減するなどのために、ユーザから受け取った位置コマンドを処理することにより課題を軽減する。
【0006】
米国特許出願公開第20190110682(A1)号明細書では、硝子体網膜外科用途において、外科用インジェクタが眼の所望の組織層に貫入したときに検知するために、光干渉断層撮影(OCT:optical coherence tomography)センサの使用が紹介されている。OCTセンサは、手術標的を走査するために使用される。例えば注入を受ける組織層を特定するために又は自動注入を確認するために、ユーザから指示を受け取る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
手術標的に向かう外科用器具の移動を完全に自動化することの課題は、そのような移動が、ノイズの多い又はそうでなければ信頼性の低いセンサデータに基づく可能性があることである。ユーザ(典型的には外科医)は、この理由から、歴史的に、完全に自動化された手順を採用することに関して懸念を抱いてきた。例えば、手術標的が網膜下位置にある場合、眼又は外科用器具の移動により、手術標的の位置を示すセンサ測定値がより信頼性の低いものになる可能性がある、又はセンサが例えば組織片によって部分的に若しくは完全に不明瞭な場合、外科用器具が意図しない組織若しくは臓器を穿刺するリスクを導入する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的の1つは、手の震え又はぶれの影響の低減を含む自動的な移動の利点をなおも維持しつつも、ユーザが外科用器具の変位を制御することを可能にする、外科用ロボットシステム及び/又は外科用ロボットシステムを制御する方法を得ることである。外科用器具の変位に対する制御をユーザに与えることで、自動化された手順を採用することに対するユーザの本質的な懸念にも対処する。この、自動的な移動と器具変位に対するユーザ制御との組み合わせにより、外科用ロボットシステムの信頼性を向上させる。
【0009】
本発明の第1の態様は、眼科外科的処置で使用するための外科用ロボットシステムであって、
- 可動アーム部を含む外科用アームであって、可動アーム部は、長手方向軸線を有する外科用器具を取り付けるための器具コネクタを含み、可動アーム部は、眼科手術標的に向かう又は眼科手術標的から離れる外科用器具の長手方向軸線に沿った外科用器具の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有する、外科用アームと、
- 外科用器具と手術標的との間の距離を示すセンサデータを取得するように構成されたセンサと、
- ユーザからユーザ入力を受け取り、ユーザに感覚認知可能出力を出力するように構成されたユーザインターフェースと、
- 外科用器具の長手方向の移動を生じさせるために可動アーム部を作動させるように構成及び配置されたアクチュエータと、
- プロセッササブシステムであって、
- 外科用器具の初期位置にて、センサからセンサデータを取得し、センサデータに基づいて、外科用器具と手術標的との間の初期距離を決定し、
- 手術標的に対する外科用器具の標的位置を示すデータを取得し、
- センサデータ及び標的位置に基づいて、外科用器具の変位距離を決定し、
- ユーザインターフェースを介して、決定された変位距離の感覚認知可能表現を出力し、
- ユーザインターフェースを介して、ユーザから確認信号を受け取り、
- 確認信号を受け取ると、決定された変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具の単一の移動を生じさせるために、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御する
ように構成されている、プロセッササブシステムと、
を含む、外科用ロボットシステムを提供する。
【0010】
本発明の更なる態様では、眼科外科的処置における使用中に外科用ロボットシステムを制御するためのコンピュータ実施方法であって、外科用ロボットシステムは、外科用アームであって、外科用アームは、可動アーム部を含み、可動アーム部は、長手方向軸線を有する外科用器具を取り付けるための器具コネクタを含み、可動アーム部は、眼科手術標的に向かう又は眼科手術標的から離れる外科用器具の長手方向軸線に沿った外科用器具の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有する、外科用アームを含み、外科用ロボットシステムは、外科用器具の長手方向の移動を生じさせるために可動アーム部を作動させるように構成及び配置されたアクチュエータをさらに含み、本方法は、
- 外科用器具の初期位置にて、外科用器具と手術標的との間の距離を示すセンサデータを取得することと、
- センサデータに基づいて、初期位置の外科用器具と手術標的との間の初期距離を決定することと、
- 手術標的に対する外科用器具の標的位置を示すデータを取得することと、
- センサデータ及び標的位置に基づいて、外科用器具の変位距離を決定することと、
- 変位距離の感覚認知可能表現をユーザに出力することと、
- ユーザから確認信号を受け取ることと、
- 確認信号を受け取ると、変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具の単一の移動を生じさせるために、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御することと、
を含む、コンピュータ実施方法が提供される。
【0011】
本発明の更なる態様では、プロセッサシステムに方法を実行させるための命令を含むコンピュータプログラム製品が提供される。
【0012】
本発明の上記態様は、外科用アームを含む外科用ロボットシステムを含む。外科用アームは、可動アーム部を含み、可動アーム部は、外科用器具を取り付けるための器具コネクタを含む。外科用器具は、典型的には外科用器具の先端を通る長手方向軸線を有する。可動アーム部は、手術標的に向かう外科用器具の長手方向軸線に沿った外科用器具の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度(DoF:Degree-of-Freedom)を有する。手術標的は、例えば、組織層、又は網膜上層の表面などの、そのような層の表面であり得る。可動アーム部は、前記長手方向の移動を可能にするために、外科用器具の長手方向軸線と整列されたただ1つのDoFを有し得ることに留意されたい。しかしながら、可動アーム部はまた、前記長手方向の移動を可能にする複数のDoFを有してもよいが、いずれのDoFも長手方向軸線と個々に整列させる必要はない。この段落に記載されている機能を有する外科用アームは、医療用ロボットの分野から自体公知であり、器具マニピュレータ、ロボットアーム、外科用ロボットスレーブデバイスなどとしても知られることに留意されたい。
【0013】
ユーザインターフェースは、ユーザから位置決めコマンドなどのユーザ入力を受け取り、ユーザに感覚認知可能出力を出力するために設けられている。さらに、アクチュエータは、外科用器具の長手方向の移動を生じさせるために可動アーム部を作動させるために設けられている。アクチュエータの別の用語は、駆動機構である。さらに、センサは、外科用器具、例えば外科用器具の先端と手術標的との間の距離を示すセンサデータを取得するために設けられている。
【0014】
プロセッササブシステムは、長手方向軸線に沿って外科用器具を移動させるために、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御するために設けられている。外科用器具の初期位置にて、プロセッササブシステムは、センサからセンサデータを取得し、外科用器具と手術標的との間の初期距離を決定してもよい。プロセッササブシステムは、手術標的に対する外科用器具の標的位置を示すデータを取得してもよい。例えば、標的位置を示すデータは、ユーザ入力の形態でユーザから取得されてもよい、又は特定の解剖学的構造などの検知に基づいて自動的に決定されてもよい。標的位置は、手術標的の位置、又は例えば手術標的と外科用器具の初期位置との間の別の位置であってもよい。プロセッササブシステムは、センサデータ及び標的位置に基づいて、外科用器具の変位距離を決定してもよい。例えば、変位距離は、外科用器具が単一の最初の移動で移動する距離であってもよい。プロセッササブシステムは、決定された変位の感覚認知可能表現を出力してもよい。感覚認知可能表現は、例えば、決定された変位距離を示す音声出力、例えば近接を示す音響出力、決定された変位距離が付された眼の内部の画像上のオーバレイなどのグラフィカル出力、又は決定された変位距離を表す数字の視覚出力などのテキスト出力、触覚フィードバックなどであってもよい。したがって、ユーザは、決定された変位距離を確認することができ、プロセッササブシステムは、ユーザインターフェースを介して確認信号を受け取ることができる。確認信号は、ユーザが決定された変位距離を確認したことを示す任意の種類のユーザ入力であってもよく、音声コマンド、例えばグラフィカルユーザインターフェース上のボタンのクリックなどを含む。確認信号が受け取られると、プロセッササブシステムは、決定された変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具の単一の移動を生じさせるために、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御し得る。すなわち、ユーザは、外科用器具が移動する距離を確認する。ここで、用語「単一の移動」は、移動を中断する休止又は一時停止を伴わない単一の流体移動であると考えることもできる。用語「手術標的に向かう又は手術標的から離れる長手方向の移動」は、外科用器具の前進移動又は外科用器具の後退移動を指す。
【0015】
外科用器具の変位距離を決定することにより、ユーザ(例えば外科医)は、眼内又は眼上で手術を実施する際に、自動化された手法で移動を実施しながら、外科用器具の配置及び前進に対する制御を保つことができる。測定値はセンサデータに基づくため、センサデータにノイズが多すぎて、信頼性の高い測定値を提供できないリスクがある。これにより、不適切な距離が計算されることになる可能性がある。外科用器具の単一の移動が実行される前に、決定された変位距離をユーザに承認させることで、センサデータが不適切又は不正確な場合に、外科用器具の移動を防止する機会をユーザに提供する。すなわち、ユーザは、外科用器具の移動の次の工程を、前記移動が実行される前に確認することを求められる。決定された変位距離は、ユーザに通知され、ユーザは、決定された変位距離を確認するように要求される。そうすることにより、決定された変位距離が不適切な場合、ユーザは、決定された変位距離を不承認することができる。これにより、外科用器具の移動自体が自動化された手法で実行されている間、ユーザが処置に対する制御を保つことが可能になり、手の震え又はぶれなどの、手動注入に関連するリスクが低減又は排除される。さらに、外科用器具が単一の移動で移動する変位距離は、距離測定値を示すセンサデータが取得された後に決定され、センサデータは、外科用器具が静止している間に取得されることが好ましい。これにより、特に、外科用器具が静止姿勢にある間にセンサデータが取得される場合、センサ測定値の信頼性が向上する可能性がある。
【0016】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、外科用器具の単一の移動を完了すると、センサから最新のセンサデータを取得し、最新のセンサデータに基づいて、外科用器具と手術標的との間の残りの距離を決定し、決定された残りの距離に基づいて、標的位置に到達したかどうかを決定し、到達していなければ、決定された残りの距離に基づいて、外科用器具の深さを補正するようにアクチュエータを制御してもよい。したがって、標的位置及び/又は手術標的を移動させる可能性のある例えば眼圧の変化、呼吸、患者の動き、又は外科用器具の移動に対する反応に起因する眼又は眼内の構造のあらゆる動きを考慮に入れることができる。さらに、最新のセンサデータは、初期測定値が、例えば眼内又は眼周辺の組織片又は他の構造又は組織などによって部分的に又は完全に不明瞭な場合などに、より信頼性の高い測定値を提供する可能性がある。最新のセンサデータは、外科用器具が、ノイズが少ない可能性のある、手術標的により近い可能性のある異なる位置にある間に取得されてもよい。
【0017】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、手術標的までの決定された残りの距離から、標的位置に到達するための補正変位距離を決定し、ユーザインターフェースを介して、補正変位距離の感覚認知可能表現を出力し、ユーザインターフェースを介して、ユーザから更なる確認信号を受け取り、更なる確認信号を受け取ると、補正変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具の更なる単一の移動を生じさせるために、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御することによって、外科用器具の深さを補正するように、アクチュエータを変位ベース制御モードで制御してもよい。この補正手順では、最新のセンサデータは、外科用器具がその位置を補正するために移動する前に取得される。その後、最新のセンサデータが取得された後に、補正変位距離が決定される。ユーザは、決定された補正変位距離を確認するように再度求められるため、外科用器具が移動する距離が妥当であることを確実にするための更なる機会が提供される。したがって、これにより、外科用器具の移動の更なる工程の安全性及び信頼性が向上する。
【0018】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、最新のセンサデータを使用して外科用器具の深さを補正する制限閉ループ制御モードでアクチュエータを制御してもよく、制限閉ループ制御モードは、制限閉ループ制御モードの事前定義された使用継続時間、事前定義された最大補正変位距離、補正中に確実性スコアが確実性スコア閾値を上回ったままであることを必要とすること(確実性スコアは、決定された残りの距離の確実性を表す)、並びに補正中の継続的なユーザ入力を必要とすること、及び継続的なユーザ入力が終了したことを検知すると、外科用器具の移動を停止することのうちの少なくとも1つによって限定される。したがって、このモードでは、システムの自動化のレベルは、上述の因子によって制御され、それにより、自動化プロセスの移動における利点をなおも提供しつつ、ユーザが直ちに採用しない可能性のある完全自動化システムを防止することができる。例えば、確実性スコアが閾値を上回るという要件により、センサデータが十分に信頼できる場合に外科用器具の移動が自動化され得るようにし、標的位置を越えて行き過ぎること又は標的位置に達しないことにつながる可能性のある、センサデータが信頼できない際の自動的な移動を防止する。補正中の継続的なユーザ入力を必要とすることで、ユーザが関与し、注意を払うことを確実にし得る。時間又は変位制限も同様に、外科用ロボットシステムが自動化される程度を制限し得る。例えば、外科用器具の自動的な移動は、いくらかの時間量の後又はいくらかの変位後に停止してもよく、その後、例えば、最新のセンサデータにより再開してもよい。したがって、この、システムの限定されたレベルの自動化により、外科的処置中の患者の安全性が向上する可能性がある。
【0019】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、外科用器具と手術標的との間の決定された距離の確実性を表す確実性スコアを計算し、計算された確実性スコアに従って、アクチュエータの制御を適応させてもよい。確実性スコアは、センサの測定ノイズの推定値、手術標的の動的運動の存在の検知、センサデータとセンサデータの基準を表すモデルとの比較、及び推定手術標的位置と予測手術標的位置との間の比較の少なくとも1つに基づいてもよく、予測手術標的位置は、少なくとも1つの位置センサによって測定された器具移動に基づく。例えば、確実性スコアが高い場合、外科用器具の速度を増加させてもよく、確実性スコアが低い場合、外科用器具の速度を減少させてもよい。このようにして、処置は、センサデータの信頼性がより高い(例えば高い確実性スコア)場合、より迅速に進み、それにより外科的処置の所要時間(したがって患者の長時間の不快感)が減少する可能性があり、外科用器具は、センサデータの信頼性が低い場合にはよりゆっくりと移動し、外科用器具が手術標的を越えて延びることを防止する可能性がある。確実性スコアの使用及び確実性スコアに従ったアクチュエータの制御の適応により、患者の安全性及び手術の精度を確保するためにより手動制御が必要なときと、より自動化された手法の利用が可能なときをユーザ(例えば外科医)が決定することを可能にすることができ、これにより処置を迅速にし、患者の不快感を低減する可能性がある。
【0020】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、確実性スコアを繰り返し計算してもよく、計算された確実性スコアが確実性スコア閾値を下回る場合、中断手順を実行してもよい。中断手順は、外科用器具を後退させること、外科用器具の移動を一時停止すること、アクチュエータを制限閉ループ制御モードで制御することから、アクチュエータをモーションコントローラベースの制御モデルで制御することへと切り替えることのうちの少なくとも1つを含んでもよく、プロセッササブシステムは、モーションコントローラを介してユーザから受け取った位置制御コマンドに従ってアクチュエータを制御してもよい。確実性スコアを繰り返し計算することで、センサデータのノイズが多すぎる又は信頼性が低い場合に外科用器具の移動の進行を防止し、それにより外科用器具の意図しない移動及び眼内又は眼上の構造の損傷のリスクを低下させる可能性がある。
【0021】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、計算された確実性スコアに基づいて一連の制御モードから制御モードを選択してもよく、一連の制御モードは、モーションコントローラベース制御モード、変位ベース制御モード、及び制限閉ループ制御モードのうちの少なくとも2つを含む。モーションコントローラベース制御モードでは、プロセッササブシステムは、ユーザインターフェースのモーションコントローラを介してユーザから受け取った位置制御コマンドに従ってアクチュエータを制御してもよい。変位ベース制御モードでは、プロセッササブシステムは、手術標的までの決定された残りの距離から、標的位置に到達するための補正変位距離を決定し、ユーザインターフェースを介して、補正変位距離の感覚認知可能表現を出力し、ユーザインターフェースを介して、ユーザから更なる確認信号を受け取り、更なる確認信号を受け取ると、補正変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具の更なる単一の移動を生じさせるために、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御するように構成されている。制限閉ループ制御モードでは、プロセッササブシステムは、制限閉ループ制御モードの事前定義された使用継続時間、事前定義された最大補正変位距離、補正中に確実性スコアが確実性スコア閾値を上回ったままであることを必要とすること(確実性スコアは、決定された残りの距離の確実性を表す)、及び補正中の継続的なユーザ入力を必要とすること、継続的なユーザ入力が終了したことを検知すると、外科用器具の移動を停止することのうちの少なくとも1つによって限定されてもよい。確実性スコアを使用して制御モードを選択することで、例えば確実性スコアが低い場合にユーザ入力の関与が大きくなる一方で、ある場合、例えば確実性スコアが高い場合に、自動化の程度を高くすることを確実とし得る。
【0022】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、ユーザから確認信号を受け取る前に、ユーザインターフェースを介して、計算された確実性スコアの感覚認知可能表現を出力してもよい。確実性スコアの感覚認知可能表現をユーザに提供することは、センサ測定値と関連する確実性のレベルを示し、ユーザが処置の進行を確認すること又は却下することのいずれかを可能にする。例えば、確実性スコアが低い確実性の程度を示す場合、ユーザは、外科用器具の単一の移動を続行しないことを決定してもよい、及び/又はセンサデータを再度更新することなどを決定してもよい。
【0023】
任意選択的に、センサは、外科用器具に取り付けられた又は内蔵された光ファイバに光学的に結合するように構成された光干渉断層撮影(OCT)センサ、顕微鏡を介する術中光干渉断層計(iOCT:intraoperative optical coherence tomography)、顕微鏡を介するステレオカメラ、外科用器具に内蔵された光干渉計センサ、外科用器具に内蔵された飛行時間センサ、及び外科用器具に内蔵された超音波センサのうちの少なくとも1つを含む。
【0024】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、さらに、眼の組織の第1の層と眼の組織の第2の層との間の距離を示すセンサデータを取得し、手術標的は、第1の層と第2の層との間にあり、外科用器具が第1の層と第2の層との間にあるように、外科用器具の位置を補正するように構成されている。外科用器具並びに各第1の層及び第2の層からの距離をそれぞれ決定することにより、システムは、外科用器具が2つの層の間にあるかどうかを決定してもよい。これにより、外科用器具の位置決めを向上させることができる。
【0025】
任意選択的に、プロセッササブシステムは、眼の組織の第1の層と眼の組織の第2の層との間の距離を示すセンサデータを取得してもよく、手術標的は、第1の層と第2の層との間にあり、手術標的に対する外科用器具の標的位置を示すデータは、第1の層と第2の層との間の距離を示すデータを含む。組織の層間の距離を決定することで、外科用器具の位置決めの精度を向上させることができる。
【0026】
本発明の上述の実施形態、実装形態、及び/又は態様の2つ以上を、有用と考えられる任意の手法で組み合わせることができることが当業者には理解されよう。
【0027】
外科用ロボットシステムの記載されている修正及び変更に対応する方法及び/又はコンピュータプログラム製品の修正及び変更は、当業者であれば本明細書に基づいて実行することができる。
【0028】
本発明は、独立請求項又は節に定義される。有利ではあるが任意の実施形態は、従属請求項又は節に定義される。
【0029】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記述する実施形態から明らかであり、以下に記述する実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図2】低侵襲手術中のトロカールを通過する外科用器具を示す。外科用器具は、4自由度(DoF)を有する。
【
図3】低侵襲手術で使用する外科用アームの可動アーム部の運動特性を示すジョイント図を示す。
【
図4】モーションコントローラの運動特性を示すジョイント図を示す。
【
図5】本発明の一実施形態による眼内の外科用器具を示す。
【
図6A】本発明の一実施形態による眼内の初期位置にある外科用器具を示す。
【
図6B】本発明の一実施形態による、外科用器具の単一の移動が行われた後の外科用器具を示す。
【
図7A】本発明の一実施形態による、制御モードを選択する方法を概略的に示す。
【
図7B】本発明の一実施形態による、確実性スコアを使用して制御モードを選択する方法を概略的に示す。
【
図8A】本発明の一実施形態による、制御モードを選択するための閾値を示す。
【
図8B】本発明の一実施形態による、制御モードを選択する及び/又は中断手順をトリガするための閾値を示す。
【
図9】本発明の一実施形態による、中断手順をトリガする方法を概略的に示す。
【
図10A】本発明の一実施形態による、注入前の2つの組織の層間の手術標的を示す。
【
図10B】本発明の一実施形態による、注入前の凹んだ網膜を示す。
【
図10C】本発明の一実施形態による、注入中の2つの組織の層間の手術標的を示す。
【
図11】眼科外科的処置における使用中に外科用ロボットシステムを制御する方法を概略的に示す。
【
図12】プロセッサシステムに方法を実行させるための命令を含むコンピュータプログラム製品を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
異なる図において同じ参照番号を有する項目は、同じ構造的特徴及び同じ機能を有する、又は同じ信号であることに留意されたい。そのような項目の機能及び/又は構造が説明されている場合、詳細な説明においてその説明を繰り返す必要性はない。
【0032】
参照番号のリスト
以下の参照番号のリストは、図面の解釈を助けるために提供され、請求項又は節を限定するものとして解釈されるものではない。
020 ユーザインターフェース
022 ユーザ入力
030 センサ
032 センサデータ
040 プロセッササブシステム
042 作動コマンド
060 アクチュエータ
062 外科用アームの作動
080 外科用アーム
082 可動アーム部
100 外科用ロボットシステム
101 e→
1、デカルト座標系の軸
102 e→
y、デカルト座標系の軸
103 e→
z、デカルト座標系の軸
104 e→
x、器具長手方向軸線に直交する、器具先端に固定された座標系の軸
105 e→
y、器具長手方向軸線に直交する、器具先端に固定された座標系の軸
106 e→
z、器具長手方向軸線と整列したデカルト座標系の軸
107 φ、その先端を側方に変位させる外科用器具の回転
108 ψ、その先端を側方に変位させる外科用器具の回転
109 z、外科用器具の長手方向の(その長手方向軸線に沿った)並進、又は貫入方向、又は進行方向
110 θ、その長手方向軸線の周りの外科用器具の回転
111 Φ、可動アーム部の回転自由度
112 Ψ、可動アーム部の回転自由度
113 Ζ、可動アーム部の並進自由度
114 Θ、可動アーム部の回転自由度
115 Φm、モーションコントローラの回転自由度
116 Ψm、モーションコントローラの回転自由度
117 Ζm、モーションコントローラの並進自由度
118 Θm、モーションコントローラの回転自由度
119 外科用器具
121 距離センサ
122 外科用器具先端
123 手術標的
124 トロカール
125 遠隔運動中心(RCM)
126 モーションコントローラグリッパ上のボタン
127 光ビーム
200 眼
210 網膜
220 組織の第1の層
230 組織の第2の層
240 ブレブ
700 制御モードを選択する方法
710 確実性スコアを計算する
720 確実性スコアと第1の閾値とを比較する
730 決定ブロック
740 モーションコントローラベース制御モードを選択する
744 確実性スコアと第2の閾値とを比較する
746 決定ブロック
750 変位ベース制御モードを選択する
760 制限閉ループ制御モードを選択する
810 モーションコントローラベース制御モード
820 変位ベース制御モード
830 制限閉ループ制御モード
840 中断手順
900 中断手順をトリガする方法
910 確実性スコアを計算する
920 確実性スコアと閾値とを比較する
940a 外科用器具の移動を継続する
940b 眼科外科的処置を継続する
950 中断手順を実施する
1100 外科用ロボットシステムを制御する方法
1110 センサデータを取得する
1120 初期距離を決定する
1130 手術標的に対する標的位置を取得する
1140 変位距離を決定する
1150 変位距離を出力する
1160 ユーザ確認を受け取る
1170 単一の移動で移動するように可動アームを作動させる
1150 非一時的なプログラムコード
1160 コンピュータ可読媒体
【0033】
図1は、外科的処置で使用するための外科用ロボットシステム100を概略的に示す。外科用ロボットシステム100は外科用アーム080を含む。外科用アーム080は、可動アーム部082を含み、可動アーム部は、外科用器具を取り付けるための器具コネクタ119を含む。
図1は、器具コネクタに取り付けられた外科用器具119を示す(簡略化のために、器具コネクタは、
図1では別個に示されていない)。可動アーム部082は、手術標的に向かう外科用器具の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度(DoF)を有する。ここで、長手方向の移動とは、その長手方向軸線に沿った外科用器具119の移動を指す(簡略化のために、長手方向軸線は、
図1では別個に示されていない)。
【0034】
外科用ロボットシステム100は、ユーザから入力を受け取るためのユーザインターフェース020をさらに含む。ユーザ入力022は、外科用器具の長手方向の移動を制御するための、人間のオペレータ、例えば外科医若しくは医療提供者からの位置決めコマンド、手順若しくは手順の工程を継続する命令を示す確認入力、並びに/又は例えば動作パラメータを示す及び/若しくは手術標的位置の表示などの入力情報を含んでもよい。ユーザインターフェースの例としては、キーボード、マウス、タッチ感知表面、ジョイスティック、フットペダル、マイクロホン、ジェスチャ認識システムなどが挙げられるが、これらに限定されない。ユーザインターフェースは、タッチ、プッシュアクション、音声コマンド、眼球運動、ジェスチャ認識等などの任意の適切な入力様式を用いてもよい。
【0035】
外科用ロボットシステム100は、外科用器具の長手方向の移動を生じさせるために可動アーム部を作動させるように構成及び配置されたアクチュエータ060をさらに含む。アクチュエータ060は、例えば、外科用ロボットの分野の又はより一般的な分野のアクチュエータからの任意の適切なアクチュエータであり得る。特に、アクチュエータは、少なくとも1つのDoFに沿った可動アーム部060の作動を共に提供する複数のアクチュエータの1つであり得る。すなわち、外科用ロボットシステム100は、例えば複数のDoFに沿った作動を提供するために複数のアクチュエータを含んでもよい。したがって、アクチュエータ080の構成に対するいかなる言及も、そのような複数のアクチュエータの(連結)構成に対する言及として理解され得ることは理解されよう。
図1は、外科用アーム080の作動を概略的に、すなわち破線062として示す。外科用アーム080とは別に示されているが、アクチュエータ060は、外科用アーム080に内蔵されていてもよい又は取り付けられていてもよいことに留意されたい。
【0036】
外科用ロボットシステム100は、外科用器具119と手術標的との間の距離を示すセンサデータ032を取得するように構成及び配置されたセンサ030をさらに含む。センサ030は、外科用器具119に取り付けられた又は内蔵された光ファイバに光学的に結合するように構成された光干渉断層撮影(OCT)センサ、顕微鏡を介する術中光干渉断層計(iOCT)、顕微鏡を介するステレオカメラ、外科用器具119に内蔵された又は取り付けられた光干渉計センサ、外科用器具119に内蔵された又は取り付けられた飛行時間センサ、及び外科用器具119に内蔵された又は取り付けられた超音波センサのうちの少なくとも1つを含んでもよい。外科用器具は、所望の標的位置で流体を潅流又は吸引するための潅流/吸引器具、標的から所望の距離で光エネルギーを印加するための光凝固器具、標的から所望の距離で硝子体液又は他の流体を切除及び吸引するための硝子体切除器具、組織の第1の界面に正確に配置される必要がある組織操作器具などであってもよい。いくつかの実施形態では、外科用ロボットシステム100は、例えばステレオカメラ及び/又はiOCTを提供するように構成された顕微鏡を含んでもよい。いくつかの実施形態では、顕微鏡は、外科用ロボットシステム100に通信的に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、センサデータ032は、線測定値を含み、距離の関数としての強度と定義されるAスキャン、二次元画像を形成するBスキャン、例えば複数のBスキャンによるCスキャンなどを含んでもよい。距離は、これらのスキャンタイプのいずれかから例えば画像解析を使用して導出され得る。いくつかの実施形態では、センサ030は光センサを含んでもよく、センサデータ032は拡散反射率を含んでもよい。いくつかの実施形態では、センサ030は、ステレオカメラを含んでもよく、センサデータ032は、深度マップを得るための2つの二次元画像を含んでもよい。
【0037】
外科用ロボットシステム100は、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御し、外科用器具119を長手方向軸線に沿って移動させるように構成されたプロセッササブシステム040をさらに含む。外科用器具119が初期位置にあるとき、プロセッササブシステム040は、センサ030からセンサデータ032を取得してもよい。センサデータ032は、外科用器具119、例えば外科用器具119の先端122(
図2に示される)と手術標的123(
図2に示される)との間の距離を示してもよい。換言すれば、センサデータ032は、外科用器具と手術標的との間の距離を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態では、センサデータ032は、測定値の信頼性を向上させるために、外科用器具が静止している間に取得される。いくつかの実施形態では、センサ030は、眼の組織の複数の層間の距離を示すセンサデータ032を取得するように構成されてもよい。すなわち、センサ030は、外科用器具と組織の第1の層との間の距離及び外科用器具と組織の第2の層との間の距離を決定するように構成されてもよい。
【0038】
プロセッササブシステム040は、手術標的に対する外科用器具の標的位置を示すデータを取得するように構成されてもよい。手術標的の位置自体は、例えば内部センサ又は外部センサからのセンサデータから特定され得るが、代替的又は追加的に、ユーザ入力によっても特定されてよい。標的位置を示すデータは、典型的には、ユーザ入力から取得され得るが、代替的又は追加的に、また、自動的に決定されてもよい。概して、標的位置は、手術標的に対する相対位置であり得る。いくつかの実施形態では、標的位置は、外科用器具から手術標的までの線上の一次元位置と定義され得る。すなわち、標的位置は、長手方向位置と定義され得る。そのような標的位置は、他では、例えば標的位置が手術標的を長手方向に越える場合、「深さ」とも呼ばれることがある、又は例えば標的位置が手術標的の長手方向手前にある場合、「近さ」とも呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、標的位置は、手術標的からの指定された距離と定義され得る。標的位置が手術標的を越えているかその手前であるかどうかは、指定された距離の記号によって示されてもよい。標的位置はまた、任意の他の次元、例えば極座標系又はデカルト座標系における三次元位置を有してもよい。いくつかの実施形態では、ユーザは、例えばグラフィカルユーザインターフェース上で入力を提供することにより標的位置をグラフィカルに入力するように要求されてもよく、そのグラフィカル入力から、プロセッササブシステム040は、その後、標的位置を数値的に決定してもよい。他の実施形態では、ユーザは、例えば手術標的に対する距離を示す数値入力を提供することにより標的位置を直接数値形態で入力するように要求されてもよい。いくつかの実施形態では、手術標的が組織の層である場合、標的位置は、組織の層からの相対位置又は深さとして提供され得る。組織の層は、例えば、硝子体組織の層又は網膜組織の層であり得る。
【0039】
プロセッササブシステム040は、センサデータ及び標的位置に基づいて、外科用器具の変位距離を決定するように構成されてもよい。例えば、変位距離は、初期位置と標的位置との間の差の関数であり得る。いくつかの実施形態では、変位距離は、外科用器具の初期位置と標的位置との間の部分距離であってもよい。他の実施形態では、変位距離は、外科用器具の初期位置と標的位置との間の総距離であってもよい。
【0040】
プロセッササブシステム040は、ユーザインターフェース020を介して、決定された変位距離の感覚認知可能表現を出力するように構成されてもよい。決定された変位距離の感覚認知可能表現は、例えば術野の画像上に視覚的にオーバレイされる決定された変位距離のグラフィック表現、例えばユーザインターフェース020のスピーカを介する音声出力、及び/又は例えばユーザインターフェース020のディスプレイ上の視覚的な数値出力を含み得る。決定された変位距離の感覚認知可能表現は、指定された精度レベルに丸められてもよい。
【0041】
プロセッササブシステム040は、ユーザインターフェースを介して、ユーザから確認信号を受け取るように構成されてもよい。確認信号は、例えばユーザインターフェース020のマイクロホンを介した音声入力、例えばユーザインターフェース020のグラフィカルユーザインターフェース上のタッチ入力又はクリック入力、モーションコントローラへの入力、フットペダル入力、例えばユーザインターフェース020のカメラを介したジェスチャベースの入力などとして受け取られてもよい。ユーザインターフェース020は、確認信号の1つ以上のタイプの入力を受け取るように構成されてもよい。
【0042】
確認信号を受け取ると、プロセッササブシステム040は、決定された変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具の単一の移動を生じさせるために、可動アーム部を作動させるようにアクチュエータを制御するように構成されてもよい。すなわち、ユーザが決定された変位距離を確認すると、外科用器具は、単一の間断ない移動で、決定された変位距離にわたって移動される。外科用器具の単一の移動は、連続的な移動又は間断ない移動と呼ばれ得る。いくつかの実施形態では、外科用器具は、ユーザが決定された変位距離を確認した場合にのみ手術標的に向けて移動してもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、外科用ロボットシステム100は、補正手順を実施するように構成されてもよい。外科用器具の単一の移動を完了すると、プロセッササブシステム040は、センサ030から最新のセンサデータ032を取得し、最新のセンサデータ030に基づいて、外科用器具と手術標的との間の残りの距離を決定するように構成されてもよい。換言すれば、外科用器具が第2の位置へと決定された変位距離にわたって移動した後、外科用器具が第2の位置にある間に最新のセンサデータが取得される。いくつかの実施形態では、最新のセンサデータは、測定値の信頼性を向上させるために、外科用器具が静止している間に取得される。プロセッササブシステム040は、決定された残りの距離に基づいて、標的位置に到達したかどうかを決定するように構成されてもよい。プロセッササブシステム040が、外科用器具が標的位置に到達していないと決定した場合、プロセッササブシステム040は、決定された残りの距離に基づいて、外科用器具の深さを補正するようにアクチュエータを制御してもよい。いくつかの場合では、外科用器具及び/又は眼の動き、例えば眼圧の変化又は患者の動きが、標的位置を変位させる可能性がある。いくつかの場合では、初期センサ測定値はわずかに不正確な場合があり、不正確な変位距離につながり、最終的には、外科用器具の移動が短すぎるか長すぎるかのいずれかとなり、標的位置に達しないこと又は標的位置を越えて行き過ぎることとなる。そのような場合では、外科用器具の深さ、例えば位置は、決定された残りの距離に基づいて補正されてもよい。
【0044】
プロセッササブシステム040は、例えば確実性スコアに基づいて、
図7~
図9を参照して詳細に説明する1つ以上の制御モードでアクチュエータを制御してもよい。いくつかの実施形態では、
図7~
図9を参照して説明するような制御モードは、手動で選択されてもよい。
【0045】
図2は、低侵襲手術中のトロカール124を通過する外科用器具119を示す。例えば、硝子体網膜手術の場合、トロカール124は、強膜に配置され得る。手術標的123に接近又は貫入するために、トロカールの周囲の回転及びトロカール内の並進は、4自由度、例えば、回転φ107、回転ψ108、回転θ110及び並進z109で可能であり得る。さらに示されているのは、外科用器具119の先端122及び器具先端122に固定された座標系の3つの軸104~106であり、
【数1】
106は、外科用器具119の長手方向軸線と整列されている。回転φ107及び回転ψ108は、それぞれ、方向
【数2】
105及び方向
【数3】
104における器具先端122の側方変位を生じさせる可能性がある。並進z109は、外科用器具先端122の長手方向の移動を生じさせる可能性がある。
【0046】
外科用ロボットシステム100は、上記のような低侵襲外科的処置などの眼科外科的処置において使用されてもよい。
図3は、眼科外科的処置、特に低侵襲手術で使用するための外科用アームの可動アーム部の運動特性を示すジョイント図を示す。
図3の例では、外科用ロボットシステムは外科用アームを含み、外科用アームは、各々の器具運動107~110を可能にし、外科用器具先端122の移動を生じさせるDoFΦ111、Ψ112、Ζ113及びΘ114を有する可動アーム部を含む。DoFは、遠隔運動中心(RCM)125と称される、空間内で移動しない外科用器具上の点が存在するように配置され得る。外科用アームの基部を移動させることにより、可動アーム部は、そのRCM125がトロカールに配置され得るように配置され得る。各々の作動ユニットは、全ての4自由度111~114における移動を生じさせるように配置され得る。
【0047】
外科用ロボットシステムは、人間のオペレータ、例えば外科医又は医療提供者から位置決めコマンドなどのユーザ入力を受け取るためのユーザインターフェースをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェースは、ジョイスティックなどのモーションコントローラを含んでもよい又はそれによって構成されてもよい。いくつかの実施形態では、モーションコントローラは、ユーザインターフェース又はプロセッササブシステム040がそれによってインターフェースするように構成された外部デバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、モーションコントローラは、例えばプロセッササブシステム040及び/又はユーザインターフェース020とインターフェースするように構成された更なる構成要素として外科用ロボットシステムに含まれてもよい。
図4は、そのようなモーションコントローラの運動特性を示すジョイント図を示す。ここで、モーションコントローラは、DoFΦ
m115、Ψ
m116、Ζ
m117及びΘ
m118を有するように示されている。ユーザは、例えば、モーションコントローラのグリッパ部を把持し、ボタン126を押し、モーションコントローラのグリッパ部を3D空間内で動かすことによって位置決めコマンドなどのユーザ入力を提供してもよい。
【0048】
図5は、本発明の一実施形態による、眼200内の外科用器具119を示す。外科用器具119の先端122も、拡大して示されている。
【0049】
図5の左手側に図示されているように、外科用器具119は、眼200内に挿入された状態で示されている。この図に示されるように、外科用器具119は網膜210に接近し得るが、これは単なる例示であり、本発明はそれに限定されない。いくつかの実施形態では、外科用器具119は、眼の別の領域、構造又は組織層に接近し得る。
【0050】
外科用器具119の先端122は、
図5の右手側に拡大して図示されている。この例では、手術標的123は、網膜に位置している。外科用器具は、所望の標的位置で流体を潅流又は吸引するための潅流/吸引器具、標的から所望の距離で光エネルギーを印加するための光凝固器具、標的から所望の距離で硝子体液又は他の流体を切除及び吸引するための硝子体切除器具、組織の第1の界面に正確に配置される必要がある組織操作器具などであってもよい。外科用器具119の先端122は、注入ルーメンであってもよい。光ファイバなどのセンサ又はセンサ構成要素121は、外科用器具119に内蔵されてもよい又は取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、センサ030は、網膜210の表面と外科用器具119の先端122との間の距離Dを示すセンサデータ032を取得するように構成された光ファイバ(図示のような)を含んでもよい。光ファイバ121は、外科用器具119の先端122から凹設されていてもよい。いくつかの実施形態では、センサ030は、光ファイバ121の端部と網膜210の表面との間の距離を決定し、その後、光ファイバ121が外科用器具119の先端122から凹設されている距離に対応するオフセットを減じ、距離Dを取得するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、距離Dは、光ビーム127を使用して決定されてもよい。光ファイバ121は外科用器具119の先端122から凹設されるため、外科用器具119の先端122が組織層に穿孔又は貫入している間にセンサデータを取得することが可能であり、有利である。
【0051】
網膜210の表面と外科用器具119の先端122との間の距離Dを使用して、外科用器具119の先端122と手術標的123との間の距離を決定してもよい。例えば、手術標的123は、既知の深さの網膜210の層又はその表面であり得、外科用器具の先端と手術標的123との間の距離は、外科用器具119の先端122と網膜210の表面との間の距離Dに手術標的123の既知の深さを加えることにより決定され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、標的位置は、網膜210の表面に対応し得る。より一般には、標的位置は、網膜210の表面などの構造又は組織層の位置又は検知に基づいて決定され得る。
【0053】
前述の例では、主に、外科用器具119の先端122と例えば網膜210の表面との間の距離に言及してきた。しかしながら、本発明はそれに限定されないことを理解されたい。いくつかの実施形態では、距離は、先端122の代わりに又は先端122に加えて、外科用器具119の別の部分から測定されてもよい。例えば、距離は、光ファイバの位置、外科用器具119上のマーカなどに対して決定されてもよい。
【0054】
図6Aは、本発明の一実施形態による、眼200内の初期位置にある外科用器具119を示す。
図5と同様に、網膜210の表面に沿った点に接近する外科用器具119が示されている。この手術標的の選択は単に例示的であることをここで繰り返して述べる。本明細書に開示する方法及びシステムは、手術標的の選択にかかわらず同様に適用される。
図6Aには、初期位置に、手術標的123から距離D(初期)をおいて外科用器具119が示されている。初期位置にある間、距離D(初期)は、
図5に示すように、例えば、外科用器具119に結合され、取り付けられ、又は組み込まれたセンサ030を使用して、決定されてもよい。好ましくは、センサ測定は、外科用器具119が静止している間に行われる。外科用器具119、例えば外科用器具119の先端122と手術標的123との間の距離が分かった時点で、変位距離が決定されてもよい。変位距離は、外科用器具119が移動するように構成された距離であり、外科用器具119と標的位置との間の距離と定義されてもよい。変位距離は、手術標的123までの(例えば、総)距離であってもよく、又は変位距離は、手術標的123までの距離よりも短くてもよい。例えば、手術標的123が眼200の特に複雑及び/若しくは繊細な部分に位置する場合、又はセンサを用いて手術標的123の位置を読み取ることが困難である場合、まず、外科用器具119を第1の距離だけ、より信頼性の高いセンサデータが取得され得る、次の位置まで移動させることが有利であることがある。外科用器具119と手術標的123との間の初期距離よりも短い変位距離を選択することは、器具の移動中に眼200又は患者の動きが生じる可能性が高い場合、例えば眼200内の構造及び/又は手術標的123が外科用器具の移動の結果として動く可能性が高い場合、さらに有利であることがある。
【0055】
変位距離は、例えばグラフィカルユーザインターフェース上で、標的深さを指定する又はさらには具体的な標的位置を示す入力などの、外科用器具の標的位置を示すユーザ入力を取得することによって決定されてもよい。いくつかの実施形態では、標的位置は、手術標的に対応してもよく、ユーザは、単に標的位置が手術標的の位置であることを示してもよい。いくつかの実施形態では、変位距離は、手術標的からの定められたオフセットなどの、所定の設定を用いて決定されてもよい。このようなオフセットは、例えば、手術標的の2mm手前である可能性がある。いくつかの実施形態では、変位距離は、例えば、1つ若しくは複数の解剖学的構造、組織層などの検出に基づいて、又はセンサデータ内のノイズに基づいて、自動的に決定されてもよい。例えば、センサデータにノイズが多い場合、より短い変位距離が決定されてもよい。いくつかの実施形態では、変位距離は、例えば初期距離の所定の一部をカバーするなどのために、例えば初期距離に基づいて、自動的に決定されてもよい。
【0056】
変位距離が決定された時点で、外科用ロボットシステム100は、決定された変位距離の感覚的に知覚できる表示を出力するように構成されてもよい。ユーザは、外科用器具119を移動させ得る前に、決定された変位距離を確認することを要求される。決定された変位距離のユーザ確認を必要とすることによって、システム100によって決定された値が妥当であることをユーザが保証することが可能となる。すなわち、不正確な若しくはノイズの多いセンサデータ又は検出によって不正確な変位距離が算出され得るので、不適切な(例えば、遠すぎる、又は不必要に短い)距離にわたる外科用器具の移動に関連するリスクが軽減される可能性がある。このステップはまた、ユーザを外科用器具119の移動に直接関与させ、手の震え、振動などに関連するリスクを引き起こすことなく、この分野の自動化に通常関連する不快感の一部を取り除く。
【0057】
ユーザ確認は、例えば、グラフィカルユーザインターフェース内などでの、マウス若しくはモーションコントローラ上のボタンのクリック、フットペダルの押圧、マイクロホンと音声認識とを用いた口頭での確認応答、ジェスチャキャプチャ用に構成されたカメラを用いて取り込まれたジェスチャのジェスチャ認識、又はこれらの任意の組み合わせなどによって提供される。これらのユーザ対話手段の一部若しくは全ては、ユーザインターフェースに組み込まれてもよく、又はユーザインターフェースを介して使用されてもよい。
【0058】
ユーザ確認信号の取得時に、外科用器具119を、単一の移動で、決定された変位距離だけ移動させてもよい。すなわち、決定された変位距離にわたる外科用器具119の移動には、一時停止又は中断がなくてもよい。
図6Bには、外科用器具119の新たな位置が示されている。いくつかの実施形態では、決定された変位距離にわたる外科用器具119の移動は、一定の速度若しくは一定の加速度で実行されてもよく、又は外科用器具119の速度若しくは加速度は、非線形であってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、速度、加速度などの、外科用器具119の移動の態様を、確実性スコアに基づいて適合させてもよい。確実性スコアは、外科用器具と手術標的との間の決定された距離の確実性及び/又は取得されたセンサデータ032の確実性を表してもよい。確実性スコアはまた、決定された距離及び/又はセンサデータ032の信頼度を表す、信頼度スコア、或いは、例えば決定された距離又は取得されたセンサデータの、測定又は算出の信頼性を示す、信頼性スコアと呼ばれることもある。換言すれば、確実性スコアは、測定の正確性及び信頼性の定量化可能な尺度である。すなわち、確実性スコアは、外科用器具119と手術標的との間の(例えば、外科用器具119を移動させる前の)初期距離の確実性、又は(例えば、外科用器具119を移動させる前の)外科用器具119と標的位置との間の決定された変位距離の確実性を表してもよい。例えば、確実性スコアは、測定ノイズ、測定アーチファクト、及び/又はセンサが、例えば眼内のごみによって、少なくとも部分的に遮蔽されていることに起因して低い場合がある。確実性スコアは、取得されたセンサデータに関連するノイズ、手術標的の動き、センサデータと基準モデルとの比較、推定された手術標的位置と手術標的の予測位置との比較のうちの少なくとも1つに基づいて算出されてもよい。
【0060】
予測された手術標的位置は、少なくとも1つのロボット位置センサによって測定されたロボット座標内での器具の移動に基づいてもよい。いくつかの実施形態では、ロボット080は、適切な位置センサを含んでもよく、器具の移動を決定するために使用されてもよい。
【0061】
確実性を決定する任意の既知の統計的手法が、上記の考慮事項の1つ又は複数に基づく確実性スコアの算出の際に使用されてもよい。また、テンプレートマッチングアルゴリズム、カルマンフィルタ、ベイズフィルタ及び/又は機械学習アルゴリズムの出力であってもよい。
【0062】
確実性スコアが高いときには、外科用器具119は、例えば、確実性スコアが低いときよりも速い速度で移動するように制御されてもよい。その上、初期確実性スコアが算出される場合、標的位置は、少なくとも部分的に、確実性スコアに基づいて決定されてもよい。例えば、初期確実性スコアが低い、例えば閾値を下回る場合、変位距離は、初期確実性スコアが高い(例えば閾値を上回る)場合よりも短くなることがある。確実性スコアはまた、
図6Bを参照してさらに明らかにするように、制御モードを選択するために使用されてもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、確実性スコアは、外科用器具119の単一の移動前に算出されてもよい。すなわち、ユーザが確認信号を提供する前に、決定された変位距離の感覚的に知覚できる表示だけでなく、確実性スコアの感覚的に知覚できる表示もユーザに出力されてもよい。このように、ユーザは、関連する確実性スコアも考慮に入れながら、決定された変位距離を確認しても確認しなくてもよい。いくつかの実施形態では、決定された変位は、確実性スコアの結果として制限されてもよい。例えば、確実性スコアが低い、例えば閾値を下回る場合、決定された変位距離は、外科用器具119が潜在的に危険又は不確定な領域に到達することを防止するために短くされてもよい。
【0064】
図6Bは、本発明の一実施形態による、外科用器具119の単一の移動が行われた後の外科用器具を示す。
【0065】
いくつかの実施形態では、標的位置は、例えば外科用器具119の単一の移動中に眼内の流体又は構造の動きに起因してずれている場合がある。このような場合、外科用器具119の位置を補正するために補正手順が行われてもよい。すなわち、センサ030は、現在位置(例えば、単一の移動が行われた後の外科用器具119の位置)にある外科用器具119と手術標的123との間の距離を示す更新されたセンサデータ030’を取得するように構成されてもよい。次に、外科用ロボットシステム100のプロセッササブシステム040は、外科用器具119と手術標的123との間の残りの距離D(残り)を決定するように構成されてもよい。
【0066】
次いで、プロセッササブシステム040は、決定された残りの距離に基づいて、標的位置に到達したかどうかを判定するように構成されてもよい。外科用器具119と手術標的123との間の残りの距離が、標的位置と手術標的との間の距離と同じ又はほぼ同じであると判定された場合、プロセッササブシステム040は、標的位置に実際に到達したと判定してもよい。残りの距離が標的位置と手術標的との間の距離と一致しない場合、例えば、残りの距離が所定のマージン内に収まらない場合、プロセッササブシステム040は、標的位置に到達していないと判定してもよい。標的位置に到達しないことは、例えば、標的位置を通り過ぎること又は標的位置に達しないことを含んでもよい。
【0067】
プロセッササブシステム040が、標的位置に到達していないと判定した場合、外科用器具の深さを補正するために外科用器具を移動させる。すなわち、プロセッササブシステム040は、手術標的までの決定された残りの距離に基づいて、標的位置からの補正距離を決定してもよい。補正距離は、例えば標的位置が手術標的に対応する場合には、決定された残りの距離と同じであり得るが、この通りでなくてもよい。いくつかの実施形態では、標的位置は、手術標的123よりも外科用器具119に近接しており、外科用器具119と手術標的123との間の残りの距離が補正距離に対応しない場合がある。このような場合、補正距離は、残りの距離に基づいて決定されてもよい。例えば、標的位置は、手術標的123からの距離Yであってもよく、手術標的123と外科用器具119との間の残りの距離D(残り)は、Y+Δz、例えば、D(残り)=Y+Δzであってもよく、そのため、補正距離は、Δzであると決定されてもよい。すなわち、残りの距離は、標的位置と手術標的との間の距離と補正距離との和とみなされてもよい。標的位置を通り過ぎた場合、補正距離は負であり、外科用器具119を距離Δzだけ後退させるべきであることを示し得る。補正プロセスは、標的位置に到達するまで、必要に応じて、繰り返されてもよい。
【0068】
しかしながら、プロセッササブシステム040が、標的位置に到達したと判定した場合、外科用器具119が標的位置に正しく位置決めされていると判定することができる。
【0069】
補正手順は、変位ベース制御モード、制限閉ループ制御モード、及びモーションコントローラベースの制御モードから選択された制御モードで行われてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、外科用ロボットシステム100は、これらの制御モードのうちの1つ又は2つのみを用いて構成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、システム100は、これら3つのモードのうちの2つのみを選択するように構成されてもよい。
【0070】
変位ベース制御モード
変位ベース制御モードは、外科用器具119の初期移動の際に提供される自動化及び制御のレベルに類似している。すなわち、変位距離が(例えば、標的位置を示すデータに基づいて)決定され、決定された変位距離の感覚的に知覚できる表示がユーザに出力され、ユーザは、外科用器具の移動が行われ得る前に、決定された変位距離を確認することを要求される。すなわち、変位ベース制御モードでは、変位距離が決定され、この距離は、ユーザ(典型的には外科医)に提案されてユーザ(典型的には外科医)によって承認され、次いで、移動が自動的に実行される。
【0071】
変位ベース制御モードが補正手順のために選択された場合、上述のように、補正距離(補正変位距離とも呼ばれる)が決定される。補正距離の感覚的に知覚できる表示がユーザに出力され、決定された補正距離の確認を示す、更なる確認信号がユーザから受信される。ユーザからの更なる確認信号の受信時に、外科用器具119を1回の(例えば、連続した)移動で補正距離にわたって移動させる。すなわち、アクチュエータ060は、可動アーム部082を作動させて補正変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具119の更なる単一の移動をもたらすように制御されてもよい。
【0072】
制限閉ループ制御モード
制限閉ループ制御モードでは、アクチュエータ060の制御は、変位ベース制御モードでの制御よりも自動化され、ユーザ関与がより少なく、以下、すなわち、
- 制限閉ループ制御モードを使用する所定の持続時間、
- 所定の最大補正変位距離、
- 確実性スコアが補正中に確実性スコア閾値を上回ったままであることを必要とすること、
- 補正中に継続的なユーザ入力を必要とすること、及び、継続的なユーザ入力が終了したことを検出したときに外科用器具の移動を停止すること
の少なくとも1つによって制限されてもよい。
【0073】
制限閉ループ制御モードでは、外科用器具119の移動(例えば、アクチュエータの作動)は、例えば、センサデータの更新と、例えば外科用器具119と手術標的123との間の、決定された距離の更新とに基づいて、自動的に決定される。換言すれば、外科用器具119の移動中に、センサ030は、外科用器具119と手術標的123との間の距離を示す更新されたセンサデータ032’’を繰り返し取得するように構成されてもよい。
【0074】
制限閉ループ制御モードが時間制限される場合、外科用器具119の自動移動制御は、予め設定された時間後に無効にされてもよい。制限閉ループ制御モードが変位制限される場合、外科用器具119を予め設定された最大補正変位距離だけ変位させた時点で、外科用器具119の自動移動制御が無効にされてもよい。
【0075】
制限閉ループ制御モードが確実性スコアに依存する場合、プロセッサ040は、例えば更新されたセンサデータ032’’が取得されたときに、上述のように確実性スコアを繰り返し決定し、更新する確実性スコアと閾値確実性スコアとを比較するように構成されてもよい。確実性スコアが閾値確実性スコアを下回る場合、例えば、更新されたセンサデータ032’’が非常に不確かであると判定されたときに、制限閉ループ制御モード中に提供される自動制御が無効にされる。
【0076】
制限閉ループ制御モードが連続作動を必要とする場合、何らかのユーザ入力が継続的に検出されている間、ユーザ入力が解除されるまで外科用器具119の移動が自動化されてもよい。例えば、ユーザは、制限閉ループ制御モードを行うためにフットペダルを押圧してもよく、外科用器具119の移動は、ユーザがフットペダルから足を離すまで自動であってもよい。この例では、フットペダルの継続的なユーザ入力について説明するが、これは単なる例示であることが認識されるであろう。いくつかの実施形態では、連続作動は、視線検出、ジェスチャキャプチャ、音声検出、又はコントローラ上のトリガ若しくは同様のボタンの押圧などによって提供されてもよい。例えば、音声検出が、連続作動を示すユーザ入力とみなされる場合、外科医が3秒又は5秒に1回などの所定の頻度でフレーズを繰り返すことが要求されてもよい。
【0077】
モーションコントローラベースの制御モード
モーションコントローラベースの制御モードは、本明細書で説明する3つの制御モードのうちの最も自動化されていない制御モードであり、最も多くのユーザ関与を必要とする。モーションコントローラベースの制御モードでは、外科用器具119の移動(例えば、外科用器具119の移動をもたらすように可動アーム082を作動させるアクチュエータ060の制御)は、ユーザによって制御される。ユーザは、例えばモーションコントローラ若しくはジョイスティックを介して、位置決め指令などの入力を、又はユーザインターフェース020を介して同様の入力を提供してもよい。当技術分野で知られている解決策を用いて手の震え又は振動などの影響が低減又はさらには排除され得るが、モーションコントローラベースの制御モードでは、ユーザは、外科用器具119の移動を制御してもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、外科用器具119の位置を補正するときに使用される制御モードは、ユーザによって選択されてもよく、又は確実性スコアの算出に基づいて選択されてもよい。
図7A及び
図7Bを参照して後者をさらに詳細に説明する。
【0079】
ここで
図6A及び
図6Bに戻ると、いくつかの実施形態では、標的位置に到達したと判定したときに、プロセスが繰り返されてもよい。すなわち、センサ030は、外科用器具119と手術標的との間の距離を示す更新されたセンサデータ032bを取得してもよい。システム100は、初期標的位置とは異なる次の標的位置を示すデータをさらに取得してもよい。例えば、ユーザは、グラフィカルユーザインターフェースを介して次の標的位置を示してもよい。この現在位置にある外科用器具119に関して取得されたセンサデータ032bは、元のセンサデータ030よりも信頼性が高い可能性があり、ユーザが手術標的のより近傍の標的位置をより安全に選択すること又は実際に手術標的を次の標的位置として選択することを可能にする。次いで、更新された変位距離は、センサデータ032b及び次の標的位置に基づいて決定されてもよい。その後、更新された変位距離の感覚的に知覚できる表示が、例えばユーザインターフェースを介して、ユーザに出力されてもよい。感覚的に知覚できる出力の例は、
図1及び
図5を参照して既に提供されており、簡潔にするためにここでは繰り返さない。ユーザは、更新された変位距離の確認を示す更なる確認信号を再度提供してもよい。更なる確認信号の受信時に、外科用器具119を、単一の移動で、更新された変位距離にわたって移動させてもよい。
【0080】
このプロセスは、手術標的に到達するのに必要なだけ繰り返されてもよい。
【0081】
上記の説明を通じて、外科用器具の移動について言及してきた。外科用器具119の移動をもたらす、可動アーム部082を作動させるようにアクチュエータ060を制御することによって外科用器具119を移動させることを理解されたい。
【0082】
図7Aは、本発明の一実施形態による、制御モードを選択する方法700を概略的に示す。「確実性スコアを算出する」と題した動作において、プロセッササブシステム040は、センサによって取得されたセンサデータ及び/又はセンサデータに基づいて決定された距離に関連付けられ得る、確実性スコアを算出してもよい(710)。例えば、外科用器具119が標的位置に到達したか否かを判定する際に、決定された変位距離にわたって外科用器具119を移動させた時点で確実性スコアが算出されてもよい。
【0083】
次いで、プロセッササブシステム040は、方法700の「確実性スコアを第1の閾値と比較する」と題した動作において、算出された確実性スコアを第1の確実性スコア閾値と比較してもよい(720)。いくつかの実施形態では、第1の確実性スコア閾値は、唯一の確実性スコア閾値であってもよい。これは、現在説明している、
図7Aに図示されている。しかしながら、他の実施形態では、
図7B、
図8A及び
図8Bを参照して明らかにするように、複数の確実性スコア閾値が存在してもよい。
【0084】
ブロック730において、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値よりも高くない、例えば、確実性スコアに関連する測定若しくは距離が不確かである又は十分に信頼できないと判定された場合、方法700は、「モーションコントローラベースの制御モードを選択する」と題した、動作740に進む。すなわち、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値よりも高くない場合、アクチュエータは、上述のモーションコントローラベースの制御モードを用いて制御されてもよい。したがって、ユーザは、位置決め指令を与え、外科用器具119の移動に関連する自動化の程度を低減する。これは、システム100が十分な確実性又は確信を持って手術標的を検出できないような、ノイズの多いセンサデータに起因する場合がある。
【0085】
ブロック730において、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値を超えている又は満たしているとプロセッササブシステム040が判定した場合、方法は、「変位ベース制御モードを選択する」と題した、動作750、又は「制限閉ループ制御モードを選択する」と題した、動作760に進んでもよい。いくつかの実施形態では、システム100、具体的にはアクチュエータは、外科用器具119の位置を補正するときに2つの制御モードのうちの一方を用いて制御されるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、アクチュエータ060は、モーションコントローラベースの制御モード又は変位ベース制御モードのいずれかで制御されてもよい。言換すれば、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値を下回る場合、アクチュエータ060は、モーションコントローラベースの制御モードで制御されてもよく、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値以上である場合、アクチュエータ060は、変位ベース制御モードで制御されてもよい。いくつかの実施形態では、アクチュエータ060は、モーションコントローラベースの制御モード又は制限閉ループ制御モードのいずれかで制御されてもよい。すなわち、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値を下回る場合、アクチュエータ060は、モーションコントローラベースの制御モードで制御されてもよく、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値以上である場合、アクチュエータ060は、制限閉ループ制御モードで制御されてもよい。
【0086】
図7B、
図8A及び
図8Bを参照して、モーションコントローラベースの制御モード、変位ベース制御モード、及び制限閉ループ制御モードのいずれかでアクチュエータ060が制御され得る実施形態を説明する。
【0087】
図7Bは、本発明の一実施形態による、確実性スコアを用いて制御モードを選択する方法700の変形例700’を概略的に示す。
図7Bは、第1の確実性スコア閾値よりも高い、第2の確実性スコア閾値が使用されるという点で
図7Aと異なる。動作710、720、730及び740は、
図7Aに関して説明したものと同じである。簡潔にするために、これらの動作をここでは再び説明せず、
図7Aの方法700と
図7Bの変形例700’との違いのみを説明する。
【0088】
ブロック730において、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値を超えているとプロセッササブシステム040が判定した場合、方法700’は、「確実性スコアを第2の閾値と比較する」と題した、動作744に進む。動作744では、算出された確実性スコアが、第1の確実性スコア閾値よりも高い、第2の確実性スコア閾値と比較される。
【0089】
ブロック746において、算出された確実性スコアが第2の確実性スコア閾値を超えているとプロセッササブシステム040が判定した場合、方法700’は、アクチュエータ060が上述の制限閉ループ制御モードを用いて制御され得る、「制限閉ループ制御モードを選択する」と題した、動作760に進んでもよい。
【0090】
ブロック746において、算出された確実性スコアが第2の確実性スコア閾値を超えていないとプロセッササブシステム040が判定した場合、方法700’は、アクチュエータ060が上述の変位ベース制御モードを用いて制御され得る、「変位ベース制御モードを選択する」と題した、動作750に進んでもよい。
【0091】
これらの確実性スコア閾値を用いて、外科用器具119の移動の自動化度を、センサ測定及び/又は決定された距離に関連する確実性に基づいて適合させてもよい。これは
図8Aに図示されている。
【0092】
ここで
図8Aを参照すると、算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値CSThr1を下回ったときに、モーションコントローラベースの制御モード810が選択されてもよい。算出された確実性スコアが第1の確実性スコア閾値CSThr1を上回るが、第2の確実性スコア閾値CSThr2を下回る場合、変位ベース制御モード820が選択される。算出された確実性スコアが第2の確実性スコア閾値CSThr2を超える場合、制限閉ループ制御モード830が選択される。前述のように、第2の確実性スコア閾値の使用は任意選択である。
【0093】
図示しないが、いくつかの実施形態では、アクチュエータ060のための制御モードは、変位ベース制御モード及び制限閉ループ制御モードから選択されてもよい。換言すれば、第1の閾値CSThr1、及び同様に動作720及び730は、任意選択であってもよい。
【0094】
前述の説明では、制御モードを選択するために確実性スコアが使用されているが、いくつかの実施形態では、確実性スコアと1つ又は複数の閾値との比較も、又は代わりに、例えば外科用器具119の最大変位又は移動速度を制御することなどによって、制御モード内でアクチュエータを異なるように制御するために使用されてもよい。例えば、アクチュエータを制限閉ループ制御モードで動作させることがあるが、算出された確実性スコアに基づいて、外科用器具119の最大変位が使用されてもよく、及び/又は外科用器具119の速度が確実性スコアの関数として決定されてもよい。確実性スコアの関数は、例えば、階段関数(例えば、確実性スコアが第1の閾値を下回る場合には第1の速度、確実性スコアが第1の閾値を上回り、任意選択で第1の閾値よりも高い第2の閾値を下回る場合には、第1の速度よりも速い第2の速度、及び任意選択で、確実性スコアが第2の閾値を上回る場合には、第2の速度よりも速い第3の速度など)、又は連続関数であってもよい。
【0095】
確実性スコアは、眼科手術処置を通じていくつかの方法で使用されてもよい。この目的のために、
図8Bは、本発明の一実施形態による、制御モードを選択するための及び/又は中断手順をトリガするための閾値を図示する。
図9を参照して、中断手順自体をより詳細に説明する。
【0096】
図7A、
図7B及び
図8Aを参照して説明した1つ又は複数の確実性スコア閾値に加えて、又はその代替として、確実性スコア閾値は、中断手順をトリガするために使用されてもよい。そのような確実性スコア閾値は、確実性スコア限界閾値、中断閾値、又は単に確実性スコア閾値と呼ばれることがある。以下の説明を通じて、「中断閾値」という用語が採用される。
【0097】
中断閾値AbThrは、
図8Aを参照して説明した確実性スコア閾値などの、更なる確実性スコア閾値なしに使用されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、使用される唯一の確実性スコア閾値は、中断閾値AbThrである。しかしながら、いくつかの実施形態では、中断閾値AbThrは、制御モードを選択するための少なくとも1つの更なる確実性スコア閾値CSThr1、CSThr2と併せて使用されてもよい。
【0098】
補正手順中などに、確実性スコアが算出されたときに、又は確実性スコアが外科用器具119の移動中に算出される実施形態などにおいて、算出された確実性スコアが中断閾値AbThrと比較されてもよい。中断閾値AbThrは、制御モードを選択するために使用される閾値CSThr1よりも低くてもよい。算出された確実性スコアが中断閾値AbThrを下回る場合、中断手順840がトリガされてもよい。いくつかの実施形態では、モーションコントローラベースの制御モード810は、算出された確実性スコアが中断閾値AbThrと第1の確実性スコア閾値CSThr1との間にある場合に選択されてもよい。
【0099】
図9は、本発明の一実施形態による、中断手順をトリガする方法900を概略的に示す。
【0100】
方法900は、「確実性スコアを算出する」と題した動作において、確実性スコアを算出すること910を含んでもよい。確実性スコアの算出は、眼科手術処置中の任意の時点で、例えば、外科用器具119が標的位置に到達したかどうかを判定する際に、外科用器具119の移動中又は外科用器具119の移動前に行われてもよい。いくつかの実施形態では、確実性スコアは、センサデータ又は更新されたセンサデータが取得される毎に算出されてもよい。
【0101】
方法は、「確実性スコアを閾値と比較する」と題した動作において、算出された確実性スコアを確実性スコア閾値、例えば中断閾値AbThrと比較すること920をさらに含んでもよい。ブロック930において、確実性スコアが確実性スコア閾値を満たしている又は超えていると判定された場合、方法は、外科用器具の移動を継続してもよく940a、又は眼科手術処置を継続してもよい940b。いくつかの実施形態では、外科用器具119の移動中にセンサデータが繰り返し更新されているときなどに、方法900は、例えば、新たな確実性スコアが算出され得るなど、動作910から繰り返されてもよい。方法900はすぐに繰り返す必要はない。
【0102】
確実性スコアが確実性スコア閾値を下回る場合、方法は「中断手順を行う」と題した、動作950に進んでもよい。
【0103】
中断手順
中断手順950は、以下の動作、すなわち、
- 外科用器具119を後退させること、
- 外科用器具119の移動を一時停止すること、及び
- 制限閉ループ制御モードでのアクチュエータの制御からモーションコントローラベースの制御モードでのアクチュエータの制御に切り替えること
のうちの1つ又は複数を含んでもよい。
【0104】
特に、外科用器具119の移動の一時停止は、列挙された他の動作のいずれかと組み合わせて行われてもよい。いくつかの実施形態では、外科用器具119の移動を一時停止した後に、更新されたセンサデータが取得されてもよい。場合によっては、より信頼性の高いセンサデータは、外科用器具119が静止している間に取得されてもよい。このような場合、更新されたセンサデータの結果として、改善された確実性スコアが算出された場合に、眼科手術処置を再開することが可能であってもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、中断手順は、まず外科用器具119の移動を一時停止することと、新たなセンサデータを取得することと、新たな確実性スコアを算出することと、新たな確実性スコアを確実性スコア閾値と比較することとを含んでもよい。新たな確実性スコアがまだ確実性スコア閾値を満たしていない場合、外科用器具119を後退させてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、中断手順がトリガされたと判定した直後に外科用器具119を後退させてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、外科用器具119を、外科用器具119の元の位置に戻るなどのために、部分的に後退させ、例えば、短い距離だけ後退させてもよく、又は完全に後退させてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、アクチュエータ060を制御するための制御モードは、確実性スコアが中断閾値AbThrを下回る場合に切り替えられてもよい。例えば、アクチュエータが制限閉ループ制御モードで制御されており、確実性スコアが中断閾値AbThrを下回る場合、アクチュエータ060の制御モードは、変位ベース制御モード又はモーションコントローラベースの制御モードのいずれかに切り替えられてもよい。アクチュエータ060が、変位ベース制御モードで制御されており、確実性スコアが中断閾値AbThrを下回る場合、アクチュエータ060の制御モードは、モーションコントローラベースの制御モードに切り替えられてもよい。
【0109】
図10Aは、本発明の一実施形態による、注射前の2つの組織層の間の手術標的を示し、
図10Bはまた、本発明の一実施形態による、注射前の窪んだ網膜を示し、
図10Cは、注射中の2つの組織層の間の手術標的を示す。
【0110】
いくつかの実施形態では、センサ030は、外科用器具119と複数の組織層との間の距離を示すセンサデータ032を取得するように構成されてもよい。
図10Aに示すように、光ファイバなどの、距離センサ121は、外科用器具119に取り付けられ、組み込まれ、又は結合されてもよく、センサ030の構成要素であってもよい。すなわち、センサ030は、距離センサ121を含んでもよい。センサ030、例えば距離センサ121は、外科用器具119、例えば外科用器具119の先端122と眼内の第1の組織層220との間の第1の距離D1と、外科用器具119、例えば外科用器具119の先端122と眼内の第2の組織層230との間の第2の距離D2とを決定するように構成されてもよい。
図10Aには、距離D1、D2を示す矢印が異なる角度で示されているが、これは、単に説明を容易にするためであり、外科用器具119と各層220、230との間の距離は、同じ軸線に沿って決定されてもよい。
【0111】
いくつかの実施形態では、手術標的123は、例えば中間組織層であることによって、眼の2つの組織層220、230の間にあることが分かり得る。しかしながら、眼の第1の組織層220に接触して、例えば第1の組織層220を押すように外科用器具119を移動させると、網膜210に窪みが付けられ、
図10Bに図示するように、手術標的123を変位又は変形させる場合がある。第1の層220にかかる外科用器具の圧力は、
図10Bに示すように、網膜210の窪みを生じさせる場合がある。このような場合、外科用器具119と第1の組織層220との間の第1の距離D1の決定、並びに外科用器具119と第2の組織層230との間の第2の距離D2の決定は、手術標的123の位置の決定を改善するために使用されてもよい。
図7Bには図示しないが、外科用器具119が組織層220に接触している及び/又は組織層220を押圧している間、センサ030、例えば距離センサ121は、外科用器具119と第1の組織層220との間の距離D1を示し且つ外科用器具119と第2の組織層230との間の距離D2を示すセンサデータを取得するように構成されてもよい。
【0112】
いくつかの実施形態では、システム100は、外科用器具119が第1の層220に到達したときを検出してもよい。例えば、標的位置は、第1の層220に対応するように決定されてもよい。この位置に到達した時点で、アクチュエータ060は、穿刺/変位比を改善し、それにより、網膜の窪みを低減するために、好ましくはより高速で、例えば距離2xだけ、外科用器具119を前進させる前に、外科用器具119を距離xだけ後退させるように制御されてもよい。したがって、結果として生じる外科用器具119の変位は、開始位置からxの距離となる。すなわち、組織層の貫通は、より高速で、例えば高速の穿刺運動で外科用器具119を前進させることによって行われてもよい。高速の穿刺運動で使用される速度は予め設定されてもよく、又は外科用器具119の最大速度が使用されてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、
図10Cに図示するように、網膜210への流体の注射時にブレブ240が形成されてもよい。注射中に、外科用器具119の位置が補正されてもよい。すなわち、これらの2つの層220及び230の間に外科用器具119が流体を注射している間に、ブレブ240の中心が、例えば外科用器具119と2つの層220及び230のそれぞれとの間の距離の決定に基づいて、決定されてもよい。外科用器具119をブレブ中心まで後退又は伸長させてもよい。
【0114】
図11は、眼科手術処置での使用中に外科用ロボットシステムを制御する方法1100を概略的に図示し、外科用ロボットシステムは、外科用アームを含み、外科用アームは、可動アーム部を含み、可動アーム部は、長手方向軸線を有する外科用器具の取り付けのための器具コネクタを含み、可動アーム部は、眼科手術標的に向かう又は眼科手術標的から離れる外科用器具の長手方向軸線に沿った外科用器具の長手方向への移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有し、外科用ロボットシステムは、可動アーム部を作動させて外科用器具の長手方向への移動をもたらすように構成及び配置されたアクチュエータをさらに含む。方法1100は、「センサデータを取得する」と題した動作において、外科用器具が初期位置にあるときに、外科用器具と手術標的との間の距離を示すセンサデータを取得すること1110を含む。方法1100は、「初期距離を決定する」と題した動作において、センサデータに基づいて初期位置にある外科用器具と手術標的との間の初期距離を決定すること1120をさらに含む。方法1100は、「手術標的に対する標的位置を取得する」と題した動作において、手術標的に対する外科用器具の標的位置を示すデータを取得すること1130をさらに含む。方法1100は、「変位距離を決定する」と題した動作において、センサデータ及び標的位置に基づいて外科用器具のための変位距離を決定すること1140をさらに含む。方法1100は、「変位距離を出力する」と題した動作において、変位距離の感覚的に知覚できる表示をユーザに出力すること1150をさらに含む。方法1100は、「ユーザ確認を受信する」と題した動作において、ユーザから確認信号を受信すること1160をさらに含む。方法1100は、「可動アームを作動させる」と題した動作において、確認信号の受信時に、可動アーム部を作動させて変位距離にわたる長手方向軸線に沿った外科用器具の単一の移動をもたらすようにアクチュエータを制御すること1170をさらに含む。方法1100の動作が厳密に順次に行われる必要はないことに留意されたい。例えば、動作1120及び1130は、異なる順序で又は実質的に同時に行われてもよい。同様に、動作1110及び1120は、異なる順序で又は実質的に同時に行われてもよい。
【0115】
本発明による方法は、コンピュータ実装方法としてプロセッサ上で、又は専用ハードウェアで、又は両方の組み合わせで実現されてもよい。本発明による方法のための実行可能コードは、コンピュータプログラム製品に記憶されてもよい。コンピュータプログラム製品の例としては、メモリデバイス、光記憶デバイス、集積回路、サーバ、オンラインソフトウェアなどが挙げられる。
図12は、非一時的プログラムコード1250がプロセッサによって実行されたときに本発明による方法をプロセッサに行わせるための前記プログラムコードを含むコンピュータ可読媒体1260の形態のコンピュータプログラム製品を示す。
【0116】
好ましい実施形態では、コンピュータプログラムは、コンピュータプログラムがプロセッサによって実行されたときに本発明による方法の全てのステップを行うように適合されたコンピュータプログラムコード手段を含む。好ましくは、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体上に具現化される。
【0117】
上記の説明を通じて、外科用器具と標的位置、手術標的、組織層などとの間の様々な距離について言及する。これらの距離は、それぞれ、外科用器具の先端と標的位置、手術標的、組織層などとの間の距離に対応してもよい。すなわち、この説明を通じて述べる距離は、いくつかの実施形態によれば、外科用器具の先端から得られてもよい。
【0118】
上述の実施形態が本発明を限定するものではなく例示するものであることと、当業者であれば多くの代替実施形態を設計できることに留意すべきである。
【0119】
請求項又は条項において、括弧内に置かれたいかなる参照符号も、請求項又は条項を限定するものと解釈されるべきではない。動詞「含む(comprise)」及びその活用形の使用は、請求項又は条項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素に先行する冠詞「a」又は「an」は、かかる要素が複数存在することを排除するものではない。本発明は、いくつかの別個の要素を含むハードウェアによって、また、適切にプログラムされたコンピュータによって実現されてもよい。いくつかの手段を列挙している装置請求項又は条項において、これらの手段のいくつかは、全く同一のハードウェア装置によって具現化されてもよい。ある方策が互いに異なる従属請求項又は条項に記載されているというだけの事実は、これらの方策の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科外科的処置で使用するための外科用ロボットシステム(100)であって、
- 可動アーム部(082)を含む外科用アーム(080)であって、前記可動アーム部(082)は、長手方向軸線を有する外科用器具(119)を取り付けるための器具コネクタを含み、前記可動アーム部(082)は、眼科手術標的(123)に向かう又は眼科手術標的(123)から離れる前記外科用器具(119)の前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有する、外科用アーム(080)と、
- 前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得するように構成されたセンサ(030)と、
- ユーザからユーザ入力を受け取り、前記ユーザに感覚認知可能出力を出力するように構成されたユーザインターフェース(020)と、
- 前記外科用器具(119)の前記長手方向の移動を生じさせるために前記可動アーム部(082)を作動させるように構成及び配置されたアクチュエータ(060)と、
- プロセッササブシステム(040)であって、
- 前記外科用器具(119)の初期位置にて、前記センサ(030)からセンサデータ(032)を取得し、前記センサデータ(032)に基づいて、前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の初期距離を決定し、
- 前記手術標的(123)に対する前記外科用器具(119)の標的位置を示すデータを取得し、
- 前記センサデータ(032)及び前記標的位置に基づいて、前記外科用器具(119)の変位距離を決定し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記決定された変位距離の感覚認知可能表現を出力し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記ユーザから確認信号を受け取り、
- 前記確認信号を受け取ると、前記決定された変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御する
ように構成されている、プロセッササブシステム(040)と、
を含む、外科用ロボットシステム(100)。
【請求項2】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、
- 前記外科用器具(119)の前記単一の移動を完了すると、前記センサ(030)から最新のセンサデータ(032’)を取得し、前記最新のセンサデータ(032’)に基づいて、前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の残りの距離を決定し、
- 前記決定された残りの距離に基づいて、前記標的位置に到達したかどうかを決定し、
- 到達していなければ、前記決定された残りの距離に基づいて、前記外科用器具(119)の深さを補正するように前記アクチュエータ(060)を制御する
ように構成されている、請求項1に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項3】
前記プロセッササブシステム(040)は、
- 前記手術標的(123)までの前記決定された残りの距離から、前記標的位置に到達するための補正変位距離を決定し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記補正変位距離の感覚認知可能表現を出力し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記ユーザから更なる確認信号を受け取り、
- 前記更なる確認信号を受け取ると、前記補正変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の更なる単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御すること
によって、前記外科用器具(119)の前記深さを補正するように、前記アクチュエータ(060)を変位ベース制御モードで制御するように構成されている、請求項2に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項4】
前記プロセッササブシステム(040)は、最新のセンサデータ(032)を使用して前記外科用器具(119)の前記深さを補正する制限閉ループ制御モードで前記アクチュエータ(060)を制御するように構成されており、前記制限閉ループ制御モードは、
- 前記制限閉ループ制御モードの事前定義された使用継続時間、
- 事前定義された最大補正変位距離、
- 前記補正中に確実性スコアが確実性スコア閾値を上回ったままであることを必要とすること、前記確実性スコアは、前記決定された残りの距離の確実性を表す、
- 前記補正中の継続的なユーザ入力を必要とすること、及び前記継続的なユーザ入力が終了したことを検知すると、前記外科用器具(119)の移動を停止すること、
の少なくとも1つによって限定される、請求項
2に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項5】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、
- 前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の決定された距離の確実性を表す確実性スコアを計算し、
- 前記計算された確実性スコアに従って、前記アクチュエータ(060)の前記制御を適応させる
ように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項6】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、前記センサ(032)の測定ノイズの推定値、前記手術標的(123)の動的運動の存在の検知、前記センサデータ(032)と前記センサデータ(032)の基準を表すモデルとの比較、及び推定手術標的位置と予測手術標的位置との間の比較の少なくとも1つに基づいて、前記確実性スコアを計算するように構成されており、前記予測手術標的位置は、少なくとも1つの位置センサによって測定された器具移動に基づく、請求項5に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項7】
前記プロセッササブシステム(040)は、前記確実性スコアを繰り返し計算し、前記計算された確実性スコアが確実性スコア閾値を下回る場合、中断手順を実行するように構成されており、
前記中断手順は、
- 前記外科用器具(119)を後退させること、
- 前記外科用器具(119)の移動を一時停止すること、及び
- 前記アクチュエータ(060)を前記制限閉ループ制御モードで制御することから前記アクチュエータ(060)をモーションコントローラベース制御モードで制御することへと切り替えること、
のうちの少なくとも1つを含み、
前記プロセッササブシステム(040)は、モーションコントローラを介して前記ユーザから受け取った位置制御コマンドに従って前記アクチュエータ(060)を制御するように構成されている、
請求項4に従属する請求項5に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項8】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、前記計算された確実性スコアに基づいて一連の制御モードから制御モードを選択するように構成されており、前記一連の制御モードは、モーションコントローラベース制御モード、変位ベース制御モード、及び制限閉ループ制御モードのうちの少なくとも2つを含み、
- 前記モーションコントローラベース制御モードでは、前記プロセッササブシステム(040)は、前記ユーザインターフェース(020)のモーションコントローラを介して前記ユーザから受け取った位置制御コマンドに従って前記アクチュエータ(060)を制御するように構成されており、
- 前記変位ベース制御モードでは、前記プロセッササブシステム(040)は、
- 前記手術標的(123)までの前記決定された残りの距離から、前記標的位置に到達するための補正変位距離を決定し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記補正変位距離の感覚認知可能表現を出力し、
- 前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記ユーザから更なる確認信号を受け取り、
- 前記更なる確認信号を受け取ると、前記補正変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の更なる単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御する
ように構成されており、
- 前記制限閉ループ制御モードでは、前記プロセッササブシステム(040)は、
- 前記制限閉ループ制御モードの事前定義された使用継続時間、
- 事前定義された最大補正変位距離、
- 前記補正中に確実性スコアが確実性スコア閾値を上回ったままであることを必要とすること、前記確実性スコアは、前記決定された残りの距離の確実性を表す、
- 前記補正中の継続的なユーザ入力を必要とすること、及び前記継続的なユーザ入力が終了したことを検知すると、前記外科用器具(119)の移動を停止すること
のうちの少なくとも1つによって限定されるように構成されている、
請求項
5に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項9】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、前記ユーザから前記確認信号を受け取る前に、前記ユーザインターフェース(020)を介して、前記計算された確実性スコアの感覚認知可能表現を出力するように構成されている、請求項
5に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項10】
前記センサ(030)は、
- 前記外科用器具(119)に取り付けられた又は内蔵された光ファイバに光学的に結合するように構成された光干渉断層撮影(OCT)センサ、
- 顕微鏡を介する術中光干渉断層計(iOCT)、
- 顕微鏡を介するステレオカメラ、
- 前記外科用器具(119)に内蔵された又は取り付けられた光干渉計センサ、
- 前記外科用器具(119)に内蔵された又は取り付けられた飛行時間センサ、及び
- 前記外科用器具(119)に内蔵された又は取り付けられた超音波センサ
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~
4のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項11】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、
- 眼の組織の第1の層(220)と前記眼の組織の第2の層(230)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得し、前記手術標的(123)は、前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間にあり、
- 前記外科用器具(119)が前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間にあるように、前記外科用器具(119)の前記位置を補正する
ように構成されている、請求項1~
4のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項12】
前記プロセッササブシステム(040)は、さらに、眼の組織の第1の層(220)と前記眼の組織の第2の層(230)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得するように構成されており、前記手術標的(123)は、前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間にあり、
前記手術標的(123)に対する前記外科用器具(119)の標的位置を示す前記データは、前記第1の層(220)と前記第2の層(230)との間の前記距離を示すデータを含む、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の外科用ロボットシステム(100)。
【請求項13】
眼科外科的処置における使用中に外科用ロボットシステム(100)を制御するためのコンピュータ実施方法(1100)であって、前記外科用ロボットシステム(100)は、外科用アーム(080)であって、前記外科用アーム(080)は、可動アーム部(082)を含み、前記可動アーム部(082)は、長手方向軸線を有する外科用器具(119)を取り付けるための器具コネクタを含み、前記可動アーム部(082)は、眼科手術標的(123)に向かう又は眼科手術標的(123)から離れる前記外科用器具(119)の前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の長手方向の移動を可能にする少なくとも1つの自由度を有する、外科用アーム(080)を含み、前記外科用ロボットシステム(100)は、前記外科用器具(119)の前記長手方向の移動を生じさせるために前記可動アーム部(082)を作動させるように構成及び配置されたアクチュエータ(060)をさらに含み、前記方法は、
- 前記外科用器具の初期位置にて、前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の距離を示すセンサデータ(032)を取得する(1110)ことと、
- 前記センサデータ(032)に基づいて、前記初期位置の前記外科用器具(119)と前記手術標的(123)との間の初期距離を決定する(1120)ことと、
- 前記手術標的(123)に対する前記外科用器具(119)の標的位置を示すデータを取得する(1130)ことと、
- 前記センサデータ(032)及び前記標的位置に基づいて、前記外科用器具(119)の変位距離を決定する(1140)ことと、
- 前記変位距離の感覚認知可能表現
をユーザに出力する(1150)ことと、
- 前記ユーザから確認信号を受け取る(1160)ことと、
- 前記確認信号を受け取ると、前記変位距離にわたる前記長手方向軸線に沿った前記外科用器具(119)の単一の移動を生じさせるために、前記可動アーム部(082)を作動させるように前記アクチュエータ(060)を制御する(1170)ことと、
を含む、コンピュータ実施方法(1100)。
【請求項14】
コンピュータプログラム(1250)を表す一時的又は非一時的データを含み、前記コンピュータプログラムは、プロセッサシステムに請求項13に記載の方法を実行させるための命令を含む、コンピュータ可読記憶媒体(1260)。
【国際調査報告】