(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】電場治療を改善して固形腫瘍を減少させる装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20240614BHJP
A61N 1/40 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61N1/32
A61N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578132
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2024-02-15
(86)【国際出願番号】 US2022034439
(87)【国際公開番号】W WO2022271769
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522239074
【氏名又は名称】ライフブリッジ イノベーションズ ピービーシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ロトンド リチャード
(72)【発明者】
【氏名】トラヴァース ピーター エフ.
(72)【発明者】
【氏名】クライウィック スコット
(72)【発明者】
【氏名】トラヴァース ネイサニエル アール.
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンス ケン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
4C053JJ13
4C053JJ21
(57)【要約】
患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法を開示する。該方法は、電極アレイを患者に配置するステップと、電極アレイの温度分析モードを実行して温度分析を提供するステップと、温度分析に基づいて、電極アレイの、発射構成に中性非腫瘍治療電場発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法であって、
電極アレイを患者に配置するステップと、
前記電極アレイの環境分析モードを実行して環境分析を提供するステップと、
前記環境分析に基づいて、前記電極アレイの、発射構成に中性非腫瘍治療電場発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、
前記発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む、方法。
【請求項2】
仮想アレイを医用シミュレータの患者ファントムに適用して、前記仮想アレイ内の仮想電極の位置決めを評価して、配置ステップにおいて前記電極アレイの素子を配置する位置を決定するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療環境設定を選択するステップを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記治療環境設定は、患者によって選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
方向転換された中性腫瘍治療電場発射を前記発射構成に導入するステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記方向転換された中性腫瘍治療電場発射は、前記発射構成において、前記電極アレイの素子内の熱を緩和する選択シーケンスを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記方向転換された中性腫瘍治療電場発射は、前記発射構成において、前記電極アレイの素子内の熱を緩和する選択持続時間を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記選択持続時間は、3秒未満である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法であって、
仮想電極アレイを患者ファントムに配置するステップと、
前記仮想電極アレイの仮想温度分析を実行して温度分析を提供するステップと、
前記温度分析に基づいて、前記仮想電極アレイの、発射構成に中性非腫瘍治療電場発射及び/又は方向転換された中性腫瘍治療電場発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、
前記発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む、方法。
【請求項10】
電極アレイを患者に印加するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
治療環境設定を選択するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記治療環境設定は、患者によって選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記温度分析に基づいて、方向転換された中性腫瘍治療電場発射を前記発射構成に導入するステップを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記方向転換された中性腫瘍治療電場発射は、前記発射構成において、前記電極アレイの素子内の熱を緩和する選択シーケンスを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方向転換された中性腫瘍治療電場発射は、前記発射構成において、前記電極アレイの素子内の熱を緩和する選択持続時間を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記中性非腫瘍治療電場発射は、前記発射構成において、前記電極アレイの素子内の熱を緩和する選択シーケンスを有する、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記中性非腫瘍治療電場発射は、前記発射構成において、前記電極アレイの前記素子内の熱を緩和する選択持続時間を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記選択持続時間は、3秒未満である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法であって、
患者の医用画像を医用シミュレータに取り込むステップと、
仮想電極アレイを前記シミュレータの患者ファントムに配置するステップと、
前記仮想電極アレイの仮想温度分析を実行して温度分析を提供するステップと、
前記温度分析に基づいて、前記仮想電極アレイのどのサブアレイが発射構成に挿入された中性非腫瘍治療電場発射及び/又は方向転換された中性腫瘍治療電場発射を有するかを決定するステップと、
電極アレイを患者に印加するステップと、
前記発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む、方法。
【請求項20】
治療環境設定を選択するステップを更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍及び癌細胞の治療に関し、より具体的には、電磁場の印加を伴う治療に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電場(腫瘍治療電場(TTF又はTTField)とも呼ばれる)は、低強度の電磁場を使用することにより、癌治療療法の一種として用いることができる。これらの低強度の電磁場は、1秒間に数千回方向を急激に変える。TTFは、電場であるため、筋攣縮、又は他の電気的に活性化される組織に対する重篤で有害な副作用を引き起こさない。癌細胞の増殖速度は、通常、正常な健康細胞の増殖速度よりも速い。交流電場治療は、この高い増殖速度の特性を利用するものである。TTFは、細胞の分極可能な細胞内構成要素、すなわち、核内の遺伝物質を2つの姉妹細胞に引き入れる有糸分裂紡錘体を形成するチューブリン(tubulins)を操作することにより、癌細胞の有糸分裂プロセスと細胞質分裂を妨害するように作用する。チューブリンは、双極子モーメントと呼ばれる電気的特性を持ち、つまり、チューブリン分子が一方の側で正に帯電し、他方の側で負に帯電することにより、有糸分裂紡錘体を形成する。チューブリンは、互いに正から負に接続して鎖を形成することにより、有糸分裂紡錘体を形成する。TTFは、チューブリン分子間の電気的結合を妨害することにより有糸分裂紡錘体微小管重合を中断させて、細胞分裂を防止する。TTFを使用して治療された転移性疾患細胞は、通常、4~5時間以内にプログラム細胞死(programmed cell death)になる。分裂しようとする癌細胞は、奇形の娘細胞を生成し、これらの娘細胞は、免疫系によって異物として認識されて、攻撃される。その結果、腫瘍サイズが大幅に縮小し、固形腫瘍が完全に除去される可能性がある。TTFは、特定の癌細胞を治療するように調整されるため、正常な細胞を損傷しない。TTF治療は、単独の治療方法として使用されてもよく、従来の薬物送達機構と組み合わされてもよい。
【0003】
TTFは、医療用接着剤、衣料物品などの使用を含む様々な方法で皮膚に付着された絶縁電極を使用して患者に適用される。絶縁電極には、複数の構成があるが、すべてその一方側に高誘電率を有する絶縁材料を有し、他方側に通常は銀である薄い金属コーティングを有する。TTFを発生させるために使用される従来技術の絶縁電極は、常に対になっている。
【0004】
複数の角度からTTF治療を送達する(deliver)と腫瘍縮小が促進されることが十分に実証されている。これは、誘電泳動と呼ばれる現象によるものである。有糸分裂の終期では、出現した娘細胞の間に分裂溝が形成される。TTFieldが分裂溝を平行に通過する場合、分極可能な物体は、電場の最高濃度箇所(現在、分裂溝)に向かって引き寄せられ、この場合、分極可能な物体は、細胞分裂に必要な遺伝物質である。分裂溝に集積するこの大量の物質により、細胞が破裂して、細胞死を引き起す。TTFの基本的な作用機序に加えて、この標的癌細胞の破裂は、腫瘍縮小の促進につながる。癌細胞がランダムな位置と方向で分裂するため、一方向からのTTFは、誘電泳動を引き起こす機会を逃す。従来技術のTTFシステムは、現在2つの角度のみから治療を送達する固定アレイを使用する。
【0005】
TTF療法の成功は、強度にも依存する。1V/cmのTTFieldは、腫瘍の進行を遅らせる可能性があるが、死滅する細胞よりも多くの増殖する細胞を残す。また一方、2.35V/cmのTTFieldを発生させる強度により、増殖する細胞よりも多くの細胞が死滅し、腫瘍を完全に倒す可能性がある。強度による成功したTTF治療への問題は、熱管理である。従来技術では、アレイ温度が105.5°Fに達すると、冷却期間だけTTFシステム全体をシャットダウンすることにより、強度の増加による温度上昇に対処する。熱管理に対するこの反応的なアプローチは、場合によっては、装置装着時間の39%のみに患者に治療を送達することが観察されている。こうした長期のシャットダウンは、TTF治療の有効性を低下させる。
【0006】
本分野で必要とされているのは、電場の方向に角度を追加して腫瘍縮小を大幅に促進し、送達角度を増加させ、アレイ素子のデューティサイクルを低下させ、アレイの熱蓄積を防止し、患者の体格(大きい、小さい、太っている、痩せているなど)、患者の衣料、周囲温度、姿勢の変化(座っている、寝ているなど)など、療法中の発熱につながる変数を管理するTTFシステムである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、TTF療法を利用した改善された癌及び腫瘍の治療計画を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一形態において、本発明は、患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法に関する。該方法は、電極アレイを患者に配置するステップと、電極アレイの温度分析モードを実行して温度分析を提供するステップと、温度分析に基づいて、電極アレイの、発射構成(firing configuration)に中性非腫瘍治療電場発射(firings)が挿入されたサブアレイを決定するステップと、発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む。
【0009】
別の形態において、本発明は、患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法に関し、該方法は、仮想電極アレイを患者ファントム(phantom)に配置するステップと、仮想電極アレイの仮想温度分析を実行して温度分析を提供するステップと、温度分析に基づいて、仮想電極アレイの、発射構成に中性非腫瘍治療電場発射及び/又は方向転換された中性腫瘍治療電場発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む。
【0010】
また別の形態において、本発明は、患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法に関し、該方法は、患者の医用画像を医用シミュレータに取り込むステップと、仮想電極アレイをシミュレータの患者ファントムに配置するステップと、仮想電極アレイの仮想温度分析を実行して温度分析を提供するステップと、温度分析に基づいて、仮想電極アレイの、発射構成に中性非腫瘍治療電場発射及び/又は方向転換された中性腫瘍治療電場発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、電極アレイを患者に適用(applying)するステップと、発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む。
【0011】
有利には、本発明は、温度分析を使用して先制的に(予防的に。preemptive)腫瘍治療電場装置内の電極の温度を制御して、電極アレイのサブアレイの発射構成を決定する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付の図面と合わせて本発明の実施形態の以下の説明を参照することによって、本発明の上記及び他の特徴及び利点、並びにそれらを達成する方法は、より明らかになり、本発明は、よりよく理解されるであろう。
【0013】
【
図1A】中性非TTF(NNTTF)の実装を導入する本発明の治療方法の一実施形態を示すフローチャートの第1ページである。
【
図2A】方向転換された中性TTF(RNTTF)の実行を導入する本発明の治療方法の一実施形態を示すフローチャートの第1ページである。
【
図3A】従来技術のシステムのアレイ素子の発射を示す。
【
図3B】従来技術のシステムによる別の対のアレイ素子の発射を示す。
【
図4A】
図1A及び1Bの方法を使用して、本発明の患者の腫瘍を治療する素子のアレイの個々のプログラム可能なアレイ素子の発射を示す。
【
図4B】
図4Aの素子のアレイの他の個々のプログラム可能なアレイ素子の発射を示す。
【
図4C】
図4A及び4Bの素子のアレイのまた他の個々のプログラム可能なアレイ素子の発射を示す。
【
図4D】発射シーケンスにNNTTFを導入することを示す。
【
図4E】
図4A~4Dの素子のアレイの更に他の個々のプログラム可能なアレイ素子の発射を示す。
【
図5A】サブアレイに割り当てられるための本発明の電極を患者の胴体に位置決めする一方法を示す。
【
図5B】左前から右後ろに発射する斜めのサブアレイペアを示す。
【
図5C】アレイ素子が活性化されない、3秒未満のNNTTFを示す。
【
図5D】右前から左後ろに発射する斜めのサブアレイペアを示す。
【
図5E】前から後ろに発射するサブアレイペアを示す。
【
図5G】アレイ素子が活性化されない、3秒未満のNNTTFを示す。
【
図6A】サブアレイに割り当てられるための本発明の電極を患者の胴体に位置決めする一方法を示す。
【
図6B】左前から右後ろに3秒未満発射する斜めのサブアレイペアを示す。
【
図6C】左前から右中後ろに左肺を通って3秒未満発射する斜めのサブアレイペアの形態のRNTTFを示す。
【
図6D】右前から左後ろに3秒未満発射する斜めのサブアレイペアを示す。
【
図6E】右中前から右後ろに左肺を通って3秒未満発射する斜めのサブアレイペアの形態のRNTTFを示す。
【
図6F】前から後ろに3秒未満発射するサブアレイペアを示す。
【
図6G】3秒未満発射する左右サブアレイペアの形態のRNTTFを示す。
【
図7】日常の行動についてフィードバックを提供することによって患者自身の治療の有効性を改善できる本発明の治療方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【
図8A】実際の試験治療セッションではなく、位置特定治療セッションの個別シミュレーションを通じてNNTFF及びRNTFFの配置を達成する本発明の治療方法の実施形態を示すフローチャートの第1ページである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
対応する参照文字は、いくつかの図面全体を通して対応する部分を示す。本明細書に記載の例証は、本発明の実施形態を示すものであり、そのような例証は、いかなる方法で本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0015】
図面、特に
図1A及び1Bを参照すると、患者を治療するための本発明の治療方法100の実施形態が示されている。腫瘍治療電場(TTF)の施行において重要なステップは、人体の多発性腫瘍を標的とするように電場を位置決めすることである。本発明は、人体におけるアレイ素子(要素。element)の配置を最適化するプロセスと、アレイ素子の最適な発射シーケンスとを使用して、素子の配置を利用する。まず、ステップ102では、患者の腫瘍位置の医用画像をSim41ifeなどの医用シミュレータに取り込む。
【0016】
このような医用シミュレータは、大部分の人口の一般的な体形に合ったファントム又はアバター(avatars)を含む。ファントムは、人体構造をシミュレートする全ての組織タイプと器官を備えた3D身体である。適切な3Dファントムを選択して患者の体格に合わせる。ステップ104では、ファントムを、患者の体格/形状に合わせるように更に変形させる。ステップ106では、医用シミュレータ内で、本発明の表現をファントムに配置する。これにより、患者の腫瘍の位置と本発明の電気的属性、例えば誘電率、電力レベルなどを正確に表すファントムによる医用シミュレーションの準備を完了させる。ステップ108では、シミュレート発射アルゴリズムを実行し、アレイ素子のどのシーケンス又は組み合わせがシミュレーション腫瘍を最適に治療するかを分析する。アレイ素子の位置決めをシステムにより調整して、印加された(applied)電磁場のTTF治療を強化する。TTFからの、体の組織及び器官を通過する電場の挙動(behavior)をシミュレートすることにより、印加された電磁場の有効性を評価し、発射シーケンスを最適化する。これは、サブアレイペアの数、サブアレイペアを発射させる異なる角度の数、及び電力レベルの最適化を含む。次に、ステップ110では、最適な発射シーケンスの結果を波形発生器に出力する。ステップ112では、問診を通じて患者の日常習慣を発見する。患者が治療中に最も多くの時間を過ごす位置、例えば、安楽椅子、寝床、作業机などを特定し、リストする。ステップ114では、医用シミュレーションプロセス及び/又は医師の入力によって推奨された方法で本発明を患者に配置する。ステップ116では、各治療位置に進むプロセスを開始する。各位置で、温度などの環境に関連する基底変数(basic variables)、例えば、着用している可能性のある衣料、周囲温度、姿勢、空気流などを収集し記録する。ステップ118では、各治療位置に行き、装置を環境(又は温度)分析モードに設定し、治療セッションを実行する必要がある。ステップ120では、環境又は温度試験治療セッションを行い、装置により各アレイ素子及びそのサブアレイの温度を記録する。ステップ122では、各試験治療セッションからのデータを、分析するためにダウンロードする。環境分析中(ステップ124では)、温度上昇を防止するか又は緩和し、治療を最適化するために、発射シーケンスに中性非TTF(NNTTF)を挿入するタイミングを決定する。これは、各患者の治療位置ごとに行われる。ステップ126では、最適化された、NNTTFを有する発射構成を患者の波形発生器にダウンロードする。ステップ128では、どのように治療環境設定を選択するかを患者に指示し、例えば、1を押すと安楽椅子を選択し、2を押すと寝床(sleeping)を選択し、3を押すと机に座ることを選択する。次に、ステップ130では、マスタアレイを患者に配置し、132では、患者に対して最適な個別治療を開始する。必要に応じて、体重の変化、腫れ又は他の身体の変化、新しい腫瘍の発症又は既存の腫瘍の減少又は環境の変化による体形の変化に応じて、プロセスを繰り返す(ステップ134)。
【0017】
本明細書で使用される「環境分析」という語句は、「温度分析」を含み、アレイサイズ、アレイ形状、発射角度、デューティサイクル、使用電圧、患者の身体サイズ/形状、患者の活動/動作、周囲温度、周囲の空気流、患者の身体上又は患者の近くにある障害物、熱放射、及び/又は能動冷却など、分析に関与する他の要素を含むと考慮される。
【0018】
一般的に、アレイが大きいほど、電極ごとに使用される電流が少なくなり、電極ごとに発生する熱も少なくなるため、アレイのサイズが考慮される。逆に、アレイが小さいほど、各電極に供給される電流が増加するため、電極ごとに発生する熱の集中が高くなる可能性がある。アレイの形状、幾何学的形状、及び/又はレイアウトは、体及び腫瘍への電磁経路の確立につながり、個々の電極に送達すべき電力に影響を与えるため、熱及びその結果として生じる温度に影響を与える。発射角度により、体への電磁場の経路が変化し、各電極に送達される電力が増加するか又は減少することができる。当然のことながら、電極ペアに割り当てられるデューティサイクルは、送達される電力と潜在的な温度上昇に影響を与える。
【0019】
環境分析で考慮される更なる要素は、電極ペアで使用される電圧レベルであり、一般的に、電圧が高いほど、熱が多くなり、電圧が低いほど、熱が少なくなる。患者の体格/形状及び熱耐性も分析の一部である。例えば、患者が比較的静止(static)している場合(寝ている、座っているなどの限定された動作、肝臓などのより静的な領域にある腫瘍など)、又は比較的動的である(dynamic)場合(位置が変化し、肺が膨張し収縮し、水分レベルが変化し、体重が減少するなど)の治療中の患者の動作も考慮される。周囲温度は、温度が制御された部屋のような比較的静的温度であるか、又は屋外空間のような比較的動的温度である場合がある。ファンなどからの直接的な流れ、そよ風などの間接的な流れなど、周囲の空気流も考慮される。衣料などの常に身体に近い障害物、及びベッド又は椅子などの断続的に近い障害物も考慮される。この分析では、太陽などからの熱放射の存在と、冷たいベッド、指向性のある冷却、更には電極まで延びるワイヤに関連付けられた冷却管によって送達される冷却などの能動冷却の存在も考慮される。
【0020】
上記実施形態を説明するために、
図5Aは、TTF治療を送達するためにサブアレイに割り当てられるための前アレイ、後ろアレイ502及び側方アレイ504を備えた患者にある本発明を示す。びまん性腫瘍514の位置も示されている。
図5Bは、左前から右後ろに腫瘍領域を斜めに通って発射する選択サブアレイペア506を示す(暗色のディスクがサブアレイペアの個々の電極を表す)。
図5Cは、アレイ素子が活性化されない、持続時間が3秒未満のNNTTFの導入を示す(
図5Bの暗色のディスクが
図5Cでは空白である)。
図5Dは、右前から左後ろに腫瘍領域を斜めに通って発射する選択サブアレイペア508を示す。
図5Eは、前から後ろに発射する選択サブアレイペア510を示す。
図5Fは、左右に発射する選択サブアレイペア512を示す。
図5Gは、アレイ素子が活性化されない、持続時間が3秒未満のNNTTFの導入を示す。そして、このサイクルは、TTFシステムのコントローラの制御に従って繰り返される。市販の従来技術のシステムでは、治療腫瘍領域、例えば
図5B~5G中の治療領域は、反応性熱遮断が起こるまで50%デューティサイクルで固定アレイによって治療される。従来技術のシステムのこれらの反応性遮断は、3秒よりも長く持続し、これは、治療の有効性を低下させる。本発明の方法は、
図5B~5Gに示すように、NNTTFの導入により各アレイ素子のデューティサイクルを17%未満に低下させて治療の有効性を失うことなく熱蓄積の可能性を低減する一連の発射を示す。
【0021】
現在、更に
図2A及び2Bを参照すると、本発明の治療方法200の実施形態が示されている。前述したように、本発明の腫瘍治療電場(TTF)の施行において重要なステップは、人体の多発性腫瘍を標的とするように電場を送達することである。本発明は、人体におけるアレイ素子の配置を最適化するプロセスと、アレイ素子の最適な発射シーケンスとを使用して、素子の配置を利用する。まず、ステップ202では、患者の腫瘍位置の医用画像をSim41ifeなどの医用シミュレータに取り込む。これらの医用シミュレータは、大部分の人口の一般的な体形に合ったファントム又はアバターを含む。ファントムは、人体構造をシミュレートする全ての組織タイプと器官を備えた3D仮想身体である。適切な3Dファントムを選択して患者の体格に合わせる。ステップ204では、ファントムを、患者の身体的特徴に合わせるように変形する。ステップ206では、将来転移する可能性のある領域又は既存の二次腫瘍標的を決定するプロセスを行う。ステップ208では、医用シミュレータ内で、本発明の表現(representation)をファントムに配置する。これにより、患者の腫瘍の位置と本発明の電気的属性、例えば誘電率、電力レベルなどを正確に表すファントムによる医用シミュレーションの準備を完了させる。ステップ210では、シミュレート発射アルゴリズムを実行し、アレイ素子のどのシーケンス又は組み合わせがシミュレーション腫瘍を最適に治療するかを分析する。TTFからの、体の組織及び器官を通る電場の行動をシミュレートすることにより、印加された電磁場の有効性を評価し、発射シーケンスを最適化する。これは、サブアレイペアの数、サブアレイペアを発射させる異なる角度の数、及び電力レベルの最適化を含む。次に、ステップ212では、最適な発射シーケンスの結果を患者の波形発生器に出力する。ステップ214では、問診を通じて患者の日常習慣を発見する。患者が治療中に最も多くの時間を過ごす位置、例えば、安楽椅子、寝床、作業机などを特定し、リストする。ステップ216では、医用シミュレーション及び/又は医師の入力によって推奨された方法で本発明を患者に配置する。ステップ218では、各治療位置に進むプロセスを開始する。各位置で、温度に関連する基底変数、例えば、着用している可能性のある衣料、周囲温度、姿勢、空気流などを収集し記録する。ステップ220では、各治療位置に行き、装置を温度分析モードに設定し、治療セッションを実行する必要がある。ステップ222では、温度試験治療セッション中に、装置により各アレイ素子及びそのサブアレイの温度を記録する。ステップ224では、各試験治療セッションからのデータを、分析するためにダウンロードする。分析ステップ226では、方向転換された中性TTF(RNTTF)を挿入するタイミングと、RNTTFを標的にする位置、すなわち、予防標的領域又は既存の二次腫瘍とを決定する。この方法は、温度上昇を防止し、治療を最適化する。これは、各患者の治療位置ごとに行われる。ステップ228では、最適化された、RNTTFを有する発射構成を波形発生器にダウンロードする。ステップ230では、どのように治療環境設定を選択するかを患者に指示し、例えば、1を押すと安楽椅子を選択し、2を押すと寝床を選択し、3を押すと机に座ることを選択する。次に、ステップ232では、マスタアレイを患者に配置し、ステップ234では、患者に対して最適な個別治療を開始する。必要に応じて、体重の減少又は増加、新しい腫瘍の発症又は既存の腫瘍の減少又は環境の変化による体形の変化に応じて、プロセスを繰り返す(ステップ236)。
【0022】
上記実施形態を説明するために、
図6Aは、TTF治療を送達するためにサブアレイに割り当てられる(dividing into)ための前アレイ、後ろアレイ502及び側方アレイ504を備えた患者にある本発明を示す。また、肺領域の側方アレイ素子602が示されている。びまん性腫瘍514の位置も示されている。
図6Bは、左前から右後ろに肝臓及び胃上の腫瘍領域を斜めに通って3秒未満発射する選択サブアレイペア506を示す。
図6Cは、電極604を利用して左前から中後ろに左肺上の腫瘍群に3秒未満発射する、持続時間が3秒未満のRNTTFの導入を示す。
図6Dは、右前から左後ろに肝臓/胃の腫瘍領域を斜めに通って3秒未満発射する選択サブアレイペア508を示す。
図6Eは、左中前から左後ろに左肺に斜めに3秒未満発射するRNTTFの選択サブアレイペア606を示す。
図6Fは、前から後ろに肝臓/胃の領域に3秒未満発射する選択サブアレイペア510を示す。
図6Gは、肺608に左右に導入する持続時間が3秒未満のNNTTFを示す。サイクル、又は少なくとも選択部分は、TTFシステムの指示に従って繰り返される。
【0023】
従来技術のシステムでは、
図6B~6Gに示される腫瘍領域は、反応性熱遮断が起こるまで50%デューティサイクルで固定アレイによって治療される。固定アレイシステムが肺及び肝臓などの異なる領域にわたるびまん性疾患を同時に適切に処理できないため、これは、肝臓及び胃の領域のみに適用される。反応性遮断は、3秒よりも長く持続し、これは、治療の有効性を低下させる。本明細書で論じられるように、
図6B~6Gに示すように、本発明は、RNTTFの導入により各アレイ素子のデューティサイクルを17%未満に低下させて電極アレイ内の熱蓄積の可能性を低減する一連の発射を示す。全ての発射は、2つの異なる腫瘍領域を治療する。なお、
図6B~6Gに示される実施例では、全ての主発射及びRNTTFは、持続時間が3秒未満である。これにより、低下したアレイのデューティサイクルで、効果的なTTFを両方の腫瘍領域に常時(100% of the time)送達することができる。
【0024】
ここで、更に
図7を参照すると、有益な治療フィードバックを通じて患者自身の治療の有効性を改善できる本発明の治療方法700の実施形態が示されている。ステップ702では、患者がNNTTF及びRNTTFを最適化して治療を開始する。本発明は、ステップ704では、治療位置、時間、持続時間、温度遮断(最適化によって、温度がカットオフ限界を超えて上昇するのを防止することができない場合)、強度検証などを記録する。ステップ706では、一定期間の後、患者の治療セッションデータを、分析するためにダウンロードする。ステップ708では、分析後、最も効果的な治療を得た位置及び時間を明らかにするレポートを患者のために作成する。ステップ710では、以前のセッションに基づいて治療の有効性を向上できる習慣を提案する指導を患者に提供する。ステップ712では、装置により治療セッションを記録し続け、プロセスを繰り返す。
【0025】
ここで、更に
図8を参照すると、患者を治療するための本発明の治療方法800の実施形態が示されている。前述したように、腫瘍治療電場(TTF)の施行において重要なステップは、人体の多発性腫瘍を標的とするように電場を位置決めすることである。本発明は、人体におけるアレイ素子の配置を最適化するプロセスと、アレイ素子の最適な発射シーケンスとを使用して、素子の配置を利用する。まず、ステップ802では、患者の腫瘍位置の医用画像をSim41ifeなどの医用シミュレータに取り込む。これらの医用シミュレータは、大部分の人口の一般的な体形に合ったファントム又はアバターを含む。ファントムは、人体構造をシミュレートする全ての組織タイプと器官を備えた3D身体である。適切な3Dファントムを選択して患者の体格に合わせる。ステップ804では、ファントムを、患者の身体的特徴に合わせるように変形する。ステップ806は、将来転移する可能性のある領域又は既存の二次腫瘍標的を決定するプロセスである。ステップ808では、医用シミュレータ内で、本発明のアレイの表現をファントムに配置する。これにより、腫瘍の位置と本発明の電気的属性、例えば誘電率、電力レベルなどを正確に表すファントムによる医用シミュレーションの準備を完了させる。ステップ810では、シミュレート発射アルゴリズムを実行し、アレイ素子のどのシーケンス又は組み合わせがシミュレーション腫瘍を最適に治療するかを分析する。TTFからの、体の組織及び器官を通る電場の行動をシミュレートすることにより、印加された電磁場の有効性を評価し、発射シーケンスを最適化する。これは、サブアレイペアの数、サブアレイペアを発射させる異なる角度の数、及び電力レベルの最適化を含む。ステップ812では、患者が治療中に最も多くの時間を過ごす姿勢及び位置、例えば、安楽椅子、ベッドなどのリストを作成する。ステップ814では、患者の問診を通じて、各位置の温度変数(周囲温度、衣料、空気循環、椅子のタイプなど)を収集し、記録する。ステップ816では、各アレイ素子及びサブアレイの温度を含む、各位置のTTF治療のシミュレーションを実行する。位置シミュレーション中に、治療を最適化するためにRNTTF及びNNTTFを導入するタイミングと位置を決定する(ステップ818を参照)。これは、患者の治療位置ごとに行われる。ステップ820では、最適化された、RNTTFを有する発射構成を波形発生器にダウンロードする。どのように治療環境設定を選択するかを患者に指示し、例えば1を押すと安楽椅子を選択し、2を押すと寝床を選択し、3を押すと机に座ることを選択する(ステップ822を参照)。次に、ステップ824では、マスタアレイを患者に配置し、ステップ826では、患者に対して最適な個別治療を開始する。必要に応じて、体重の減少又は増加、新しい腫瘍の発症又は既存の腫瘍の減少又は環境の変化による体形の変化に応じて、プロセスを繰り返す(ステップ828)。
【0026】
本明細書で使用される「アレイ」という用語は、文脈に応じて異なる意味を有する。ある意味では、体上の電極のグループ分けについて話す場合、それは、電極の物理的な行と列、又は行と列にあるかどうかに関係なく、少なくとも電極の配置を広く指す。電磁場の形成に使用されるアレイは、所望の電磁場を生成できるように動的に選択され、これは、隣接してもしなくてもよい電極のサブセットを選択して使用することを意味する。
【0027】
更に、本発明は、個人の身体に複数の電磁場を送達する装置の形態であってもよいと考えられる。この装置は、個人の身体に配置されるように構成された複数の電極素子を含む。この装置は、個人の身体に対して複数の電極素子(electrode elements)を保持するように構成された支持材料を更に含んでもよい。この装置は、また、複数の電極素子に結合された制御装置を含む。制御装置は、複数の電極素子の温度を検出し、複数の電極素子の交互発射シーケンスを決定し、複数の電磁場を送達して個人の身体内の腫瘍を治療し、複数の電極素子の温度を下げるために、決定された交互発射シーケンスを実行するように構成される。
【0028】
別の形態において、本発明は、複数の電磁場を個人の身体に送達する方法に関する。この方法は、TTFieldを腫瘍領域を通って送達できる最適な角度数(number of angles)を発見するステップを含む。更なるステップでは、アレイ温度を不快な安全カットオフ範囲以下に先制的に維持するために、個別中性非TTF(NNTTF)と呼ばれる1つ又は必要な数のものを発射構成に導入する。NNTTFは、治療中の短時間の休止であり、有効性に影響を与えない。TTF研究では、TTF治療中の短時間の休止が治療の有効性を低下させないことが十分に実証されている。前臨床研究では、これらの休止は、通常3秒未満であることが示されている。この研究に基づいて、NNTTFを3秒、好ましくは、3秒未満に制限する。NNTTFを導入する直前にTTFieldが、有糸分裂が癌細胞で起こることに必要な細胞内の双極子粒子(つまり、チューブリン又はセプチン)の機能を妨害するため、これらの短い休止(NNTTF)は、治療に影響を与えない。治療用TTFieldが適用された後のNNTTFの短い休止は、次のTTFieldが3秒以内に適用される限り、双極子が再組織化するのに不十分である。言い換えれば、NNTTFが非常に短いため、双極子粒子が再組織化するか又は回復する時間がある前に、次のTTFieldは、双極子粒子を再び妨害する。したがって、中性という単語とは、有効性に影響を与えない十分に短い持続時間のTTF治療の休止を指す。この方法は、個々の患者の体温と、衣料、周囲温度、姿勢などの状況変数とに基づいて、NNTTFの導入を個人化するステップを更に含む。
【0029】
この方法は、また、複数の電極素子の交互発射シーケンスを決定するステップを含む。この方法は、また、複数の腫瘍治療用電磁場を送達して、複数の電極素子の温度を先制的に制御するために、決定された交互発射シーケンスを実行するステップを含む。
【0030】
別の形態において、本発明は、複数の電磁場を個人の身体に送達する方法に関する。この方法は、TTFieldを腫瘍領域を通って送達できる最適な角度数を決定するステップを含む。更なるステップでは、原発腫瘍領域全体にわたるアレイ温度を不快なカットオフ範囲以下に先制的に維持するために、個別の、方向転換された中性TTF(RNTTF)を発射構成に導入する。RNTTFは、原発腫瘍の標的領域にわたって休止を導入するが、治療中に休止を導入しないという点でNNTTFと異なる。代わりに、原発腫瘍領域から、統計的に更に転移性疾患を発症する可能性のある領域、又は元の標的領域の外側にすでに疾患がある領域に活性TTFの発射を方向転換する。例えば、結腸直腸癌の原発腫瘍領域にわたるTTF治療は、先制的に温度を低く維持するためにNNTTFを必要とする場合があるが、本発明は、発射を休止する代わりに、NNTTFと同じ持続時間だけ、発射を肝臓に方向転換する。これにより、RNTTFが形成される。利用可能な統計データベースにより、肝臓は、結腸直腸癌の転移に格好の場所であり、多くの場合、すでに疾患を患っていることを示す。前述したように、TTF研究では、TTF治療中の短時間休止が有効性を低下させないことが十分に実証されている。前臨床研究では、これらの休止は、通常3秒未満であることが示されている。本発明の装置での人間の使用に対して、NNTTF及びRNTTFを3秒、好ましくは、3秒未満に制限する。NNTTF又はRNTTFを導入する直前にTTFieldが、有糸分裂が癌細胞で起こることに必要な双極子粒子(つまり、チューブリン又はセプチン)の整列を妨害するため、これらの短い休止は、治療に影響を与えない。その後のNNTTF又はRNTTFの短い休止は、双極子粒子が回復するのに不十分である。言い換えれば、NNTTF又はRNTTFが非常に短いため、双極子粒子が再組織化できる前に、次のTTFieldは、双極子粒子を再び妨害する。この方法は、個々の患者の体温と、衣料、周囲温度、姿勢などの状況変数とに基づいて、RNTTFの導入を個人化するステップを更に含む。RNTTFの導入により、原発腫瘍領域全体にわたるアレイ素子の先制的な温度制御を達成しながら、患者に予防療法(preventive therapy)を追加することができる。或いは、RNTTFは、異なるアレイ素子を使用して任意の第2腫瘍領域を同時に治療することができる。
【0031】
腫瘍を治療する方法は、電極アレイを患者に配置するステップと、電極アレイの温度分析モードを実行して温度分析を提供するステップと、温度分析に基づいて、電極アレイの、発射構成に治療上中性非腫瘍治療電場(NNTTF)発射(治療上中性である理由は、中性非腫瘍治療電場発射が発生する時間が非常に短いため、チューブリンはライブ発射が再び発生する前に中断から回復する時間がなく、治療の全体的な有効性が影響を受けないが、デューティサイクルが低下してより少ない熱を発生することである)が挿入されたサブアレイを決定するステップと、発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む。
【0032】
患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法は、仮想電極アレイを患者ファントムに配置するステップと、仮想電極アレイの仮想温度分析を実行して温度分析を提供するステップと、温度分析に基づいて、仮想電極アレイの、発射構成に治療上中性非腫瘍治療電場(NNTTF)発射及び/又は方向転換された中性腫瘍治療電場(RNTTF)発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含むものとみなすこともできる。
【0033】
更に、患者に腫瘍治療電場を送達して腫瘍を治療する方法は、患者の医用画像を医用シミュレータに取り込むステップと、仮想電極アレイをシミュレータの患者ファントムに配置するステップと、仮想電極アレイの仮想温度分析を実行して温度分析を提供するステップと、温度分析に基づいて、仮想電極アレイの、発射構成に治療上中性非腫瘍治療電場発射及び/又は方向転換された中性腫瘍治療電場発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、電極アレイを患者に印加するステップと、発射構成を用いて患者に腫瘍治療電場を送達して患者を治療するステップと、を含む。
【0034】
この方法は、複数の電極素子の交互発射シーケンスを決定するステップを更に含む。この方法は、また、複数の腫瘍治療用電磁場を送達して、複数の電極素子の温度を先制的に制御するために、決定された交互発射シーケンスを実行するステップを含む。
【0035】
本発明は、少なくとも1つの実施形態に関して説明されたが、本開示の精神及び範囲内で更に修正することができる。したがって、本願は、その一般的原理を使用する本発明の任意の変形、使用、又は適用をカバーすることを意図している。更に、本願は、本発明が属する技術分野における既知又は通例の範囲であり、本開示からのそのような逸脱をカバーすることを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍治療電場を個人の身体に送達するように構成された装置であって、前記装置は、前記個人の前記身体上に配置されるように構成された複数の電極素子と、複数の前記電極素子と結合された制御装置とを備え、前記制御装置は、複数の前記電極素子の温度を検出し、複数の前記電極素子の交互発射シーケンスを決定し、前記個人の腫瘍を治療するための複数の電磁場を送達し、複数の前記電極素子の温度を低下させるために、決定された前記交互発射シーケンスを実施するように構成されている、装置。
【請求項2】
複数の前記電極素子を前記個人の前記身体に対して保持するように構成された支持材料をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記支持材料は、一時的な支持材料である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
医用シミュレーションによって患者の腫瘍の治療計画を作成する方法であって、
患者ファントム上に仮想電極アレイを配置するステップと、
温度分析を提供するために、前記仮想電極アレイの仮想温度分析を実行するステップと
前記温度分析に基づいて、前記仮想電極アレイの、発射構成に中性非腫瘍治療磁場発射及び/又は方向転換された中性腫瘍治療磁場発射が挿入されたサブアレイを決定するステップと、を含む、方法。
【請求項5】
患者の医用画像を医用シミュレータに取り込むことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発射構成を波形発生器に出力することをさらに含む、請求項4又は5に記載の方法。
【国際調査報告】