IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ メディカル・マイクロインストゥルメンツ・ソチエタ・ペル・アツィオーニの特許一覧

特表2024-522824ロボット手術用の外科用切断器具及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ロボット手術用の外科用切断器具及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/062 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
A61B17/062 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578718
(86)(22)【出願日】2022-06-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 IB2022055601
(87)【国際公開番号】W WO2022269424
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021000016199
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518132307
【氏名又は名称】メディカル・マイクロインストゥルメンツ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MEDICAL MICROINSTRUMENTS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ラッツァーリ,ジョルジョ
(72)【発明者】
【氏名】シミ,マッシミリアーノ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160BB23
4C160MM32
4C160NN01
(57)【要約】
ロッドとロッドの遠位端に接続された関節式エンドエフェクタとを備える外科用切断器具が開示される。関節式エンドエフェクタは、接続リンクと、接続リンクに関節結合され、凸状線織面を備える支持リンクと、支持リンクに関節結合されたブレードホルダリンクと、ブレードホルダリンクと一体に回転するブレードリンクと、支持リンクとブレードリンク及びブレードホルダリンクによって形成されたグループとに関節結合されたリアクションリンクとを備える。ブレードホルダリンクとリアクションリンクとは、外科用切断器具の拮抗テンドン対を受け入れる終端座部を備え、ブレードリンクの切縁は遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な方向で弾性的に曲がり可能であり、ブレードホルダリンクとリアクションリンクとの終端座部のそれぞれと、支持リンクの凸状線織面との間の遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な第1距離及び第2距離は任意の切断状態において一定である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用切断器具であって、遠位端(8)を有するロッド(7)と、前記ロッド(7)の前記遠位端(8)に接続された関節式エンドエフェクタ(9)とを備え、前記関節式エンドエフェクタ(9)は、
本体を有する前記ロッド(7)の前記遠位端(8)に接続された接続リンク(90)であって、
前記本体が、
平行な母線を有する、接続リンク(97,99)の1つ以上の凸状線織面と、
第1の遠位接続部(13)と、
を一体に備える、
前記接続リンク(90)と、
前記接続リンク(90)に関節結合され、本体を有する支持リンク(2)であって、
前記本体が、
平行な母線を有する支持リンク(96,98)の1つ以上の凸状線織面と、
前記接続リンク(90)の前記第1の遠位接続部に関節結合されて、前記接続リンク(90)と前記支持リンク(2)とが近位共通回転軸(P-P)を中心に相対的に回転できるように、前記接続リンク(90)及び前記支持リンク(2)のための近位回転ジョイント(509)を規定する近位接続部と、
第2の遠位接続部(17)と、
を一体に備える、
前記支持リンク(2)と、
前記支持リンク(2)に関節結合され、本体を有するブレードホルダリンク(50)であって、
前記本体が、
平行な母線を有するブレードホルダ根元部の1つ以上の凸状線織面(79)によって形成されたプーリ部を有するブレードホルダリンク取り付け根元部(51)と、
抗力部(57)と、
を一体に備える、
前記ブレードホルダリンク(50)と、
前記ブレードホルダリンク(50)と一体に回転し、切縁(34)と、前記ブレードホルダリンク(50)の前記抗力部と係合する抗力対向部(37)とを一体に備える本体を有する、ブレードリンク(30)と、
前記支持リンク(2)と、前記ブレードリンク(30)及び前記ブレードホルダリンク(50)によって形成されたグループとに関節結合され、平行な母線を有するリアクションリンク根元部の1つ以上の凸状線織面(80)によって形成されたプーリ部を有する取り付け根元部(21)を一体に備える本体を有する、リアクションリンク(20)と、
を備え、
前記ブレードホルダリンク取り付け根元部(51)及び前記リアクションリンク(20)の取り付け根元部(21)は、前記支持リンク(2)の第2の遠位接続部(17)と共に、前記ブレードホルダリンク(50)と、前記リアクションリンク(20)と、前記支持リンク(2)との遠位回転ジョイント(502)を規定し、それにより、前記ブレードホルダリンク(50)と、前記リアクションリンク(20)と、前記支持リンク(2)とが前記近位共通回転軸(P-P)に直交する遠位共通回転軸(Y-Y)の周りで相対的に回転可能であり、
前記リアクションリンク(20)の前記取り付け根元部(21)と一体に回転する対向ブレード(24)が設けられ、
前記外科用切断器具は、
前記ロッド(7)に沿って延在し、前記ブレードホルダリンク(50)に接続されて前記ブレードリンク(30)を前記遠位共通回転軸(Y-Y)の周りで動かせる第1の拮抗テンドン対(71,72)と、
前記ロッド(7)に沿って延在し、前記リアクションリンク(20)に接続されて前記対向ブレード(24)を前記遠位共通回転軸(Y-Y)の周りで動かせる第2の拮抗テンドン対(73,74)と、
を更に備え、
各テンドン(71,72,73,74)は長手方向延伸を有し、
前記ブレードホルダリンク(50)の前記取り付け根元部(51)は、前記第1の拮抗テンドン対(71,72)を受け入れる少なくとも第1の終端座部(15)を一体に備え、
前記リアクションリンク(20)の前記取り付け根元部(21)は、前記第2の拮抗テンドン対(73、74)を受け入れる少なくとも第2の終端座部(25)を一体に備え、
前記接続リンク(90)の、平行な母線を有する1つ以上の前記凸状線織面(97,99)は前記近位共通回転軸(P-P)と平行であり、
前記支持リンク(2)の、平行な母線を有する1つ以上の前記凸状線織面(96,98)のうちの少なくとも1つは前記近位共通回転軸(P-P)と平行であり、
前記ブレードホルダリンク(50)の、平行な母線を有するブレードホルダ根元部の1つ以上の前記凸状線織面(79)と、前記リアクションリンク(20)の、平行な母線を有する更なる根元部の1つ以上の前記凸状線織面(80)とは、前記遠位共通回転軸(Y-Y)と平行であり、
前記第1の拮抗テンドン対(71,72)と前記第2の拮抗テンドン対(73,74)とは、前記接続リンク(90)の1つ以上の前記凸状線織面(97,99)上及び前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)上で長手方向に摺動するように適合されるとともに、前記ブレードホルダリンク(50)又は前記リアクションリンク(20)の前記根元部のそれぞれの凸状線織面(79又は80)上で摺動することなく巻き付き/巻き戻して、前記ブレードリンク(30)と前記対向ブレード(24)とをそれぞれ開/閉動作させるように適合され、
前記ブレードリンク(30)の前記切縁(34)は、機械的干渉接触状態で開/閉自由度(G)の移動中に前記対向ブレード(24)に当接して切断作用を行うように適合され、
前記ブレードリンク(30)の前記切縁(34)は、前記遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な方向に弾性的に曲がり可能であり、
前記ブレードホルダリンク(50)の前記根元部(51)の前記第1の終端座部(15)と前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)の表面(96)との間の、前記遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な方向の第1距離(Y5)が、任意の切断状態において一定であり、
前記更なるリンク(20)の前記根元部(21)の前記第2の終端座部(25)と前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)の表面(98)との間の、前記遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な方向の第2距離(Y5’)が、任意の切断状態において一定である、
外科用器具(1)。
【請求項2】
動作状態にあるときに、各テンドンと、前記テンドンがその上で摺動する前記リンクの全ての前記線織面との間で交換される全体的な摺動摩擦力は、
開/閉自由度(G)が閉鎖方向に移動して切断作用を行うときに、前記ブレードリンク(30)のブレード(14)の弾性的曲げ変形を達成するために同じテンドンによって伝達される引張力よりもはるかに小さい、
請求項1に記載の外科用器具(1)。
【請求項3】
前記遠位回転ジョイント(502)は軸方向において剛性回転ジョイントである、
請求項1又は2に記載の外科用器具(1)。
【請求項4】
前記接続リンク(90)と、前記支持リンク(2)と、前記ブレードホルダリンク(50)の前記プーリ部と、前記リアクションリンク(20)の前記プーリ部との前記凸状線織面(79,80,96,97,98,99)の全ては、長手方向チャネルを有さない、
請求項1から3のいずれか1項に記載の外科用器具(1)。
【請求項5】
前記ブレードホルダリンク(50)の前記取り付け根元部(51)は、軸方向外側に面する第1表面(85)を備え、前記リアクションリンク(20)の前記根元部(21)は軸方向外側に面する第2表面(86)を備え、前記ブレードホルダリンク(50)の前記取り付け根元部(51)の前記第1表面(85)と前記リアクションリンク(20)の前記取り付け根元部(21)の前記第2表面(86)との間の軸方向の距離(Y8)は、任意の切断状態において一定である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の外科用器具(1)。
【請求項6】
前記ブレードホルダリンク(50)は、前記ブレードホルダリンク(50)の前記根元部(51)から延びる第1カンチレバドラッグレッグ(77)を一体に備え、
前記第1カンチレバドラッグレッグ(77)は、第1のレッグの自由端(77.1)を形成し、軸方向において前記第1の終端座部(15)を規定し、
前記リアクションリンク(20)は、前記リアクションリンク(20)の前記根元部(21)から延びる第2カンチレバドラッグレッグ(78)を一体に備え、
前記第2カンチレバドラッグレッグ(78)は、第2のレッグの自由端(78.1)を形成し、軸方向において前記第2の終端座部(25)を規定し、
前記第1カンチレバドラッグレッグ(77)と前記第2カンチレバドラッグレッグ(78)とはそれぞれ、当接壁及び抗力壁を備え、
前記当接壁及び前記抗力壁は、それぞれの終端座部(15,25)に対してアンダーカットされて配置され、それぞれのテンドン終端(70)の抗力当接部として作用し、
前記ブレードホルダリンク(50)の前記第1カンチレバドラッグレッグ(77)と前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)の表面(96)との間の軸方向の第1距離が、任意の切断状態において一定であり、
前記第2カンチレバドラッグレッグ(78)と前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)の表面(98)との間の前記遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な方向の第2距離が、任意の切断状態において一定である、
請求項1から5のいずれか1項に記載の外科用器具(1)。
【請求項7】
前記ブレードホルダリンク(50)と前記ブレードリンク(30)とのうちの少なくとも一方が自由遠位端を一体に備える、
請求項1から6のいずれか1項に記載の外科用器具(1)。
【請求項8】
前記対向ブレード(24)は、軸方向内側に突出し、好ましくは、軸方向内側に面する凹面を有する内側に湾曲した突出面を備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載の外科用器具(1)。
【請求項9】
前記接続リンク(90)に対して、前記支持リンク(2)を前記近位共通回転軸(P-P)の周りで動かせるための第3の拮抗テンドン対(75,76)を更に備え、
前記支持リンク(2)は、前記第3の拮抗テンドン対(75,76)のテンドン終端(70)を受け入れる少なくとも第3の終端座部(6)を備え、
好ましくは、
前記第3の拮抗テンドン対の作動テンドン(75,76)は、
前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)上で長手方向に摺動することなく巻き付き/巻き戻し、前記凸状線織面(96,98)は、前記第3の拮抗テンドン対の作動テンドン(75,76)のプーリ面として作用する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の外科用器具(1)。
【請求項10】
外科用器具による切断方法であって、
ロッド(7)の遠位端に関節式エンドエフェクタ(9)を設けるステップであって、
前記関節式エンドエフェクタ(9)が、近位回転ジョイント(509)で互いに関節結合された接続リンク(90)及び支持リンク(2)を備え、
前記支持リンク(2)が、
切縁(34)を有するブレードリンク(30)と、
前記ブレードリンク(30)と一体に回転するブレードホルダリンク(50)と、
対向ブレード(24)を有するリアクションリンク(20)と、
に遠位回転ジョイント(502)で関節結合されている、
前記ロッド(7)の遠位端に関節式エンドエフェクタ(9)を設けるステップと、
前記接続リンク(90)と前記支持リンク(2)のうちの少なくとも一方の、平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面(97,99;96,98)上で少なくとも一対の拮抗テンドン対の作動テンドン(71,72;75,76)を長手方向で摺動させて、前記ブレードリンク(30)の前記切縁(34)を所望の向きに方向付けるステップと、
前記接続リンク(90)と前記支持リンク(2)との、平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面(97,99;96,98)上で前記遠位回転ジョイント(502)の少なくとも1つの拮抗作動テンドン対の作動テンドン(71,72;73,74)を長手方向で摺動させて、前記切縁(34)を前記対向ブレード(24)に接触させるステップと、
前記切縁(34)と前記対向ブレード(24)とのうちの少なくとも一方を弾性的に曲げて、前記切縁(34)と前記対向ブレード(24)との間を機械的干渉接触させ、切断作用を行うステップと、
を含む、
切断方法。
【請求項11】
前記接続リンク(90)と前記支持リンク(2)との、平行な母線を有する前記凸状線織面(97,99;96,98)上で前記遠位回転ジョイント(502)の少なくとも1つの拮抗作動テンドン対の前記作動テンドン(71,72;73,74)を長手方向に摺動させる前記ステップは、前記遠位回転ジョイント(502)の少なくとも1つの作動テンドン(71,72;73,74)を、それがその上で摺動する前記凸状線織面に、60°~300°、好ましくは、120°よりも大きい巻回角で巻きつけるステップを含む、
請求項10に記載の切断方法。
【請求項12】
作動テンドンによって作動される回転軸(Y-Y)を有する切断ジョイントの回転ジョイント(502)であって、
支持リンク(2)の遠位接続部(17)と、
軸方向で弾性的に曲がり可能な本体を有するブレードリンク(30)の取り付け根元部(31)と、
前記ブレードリンク(30)と一体に回転するブレードホルダリンク(50)の取り付け根元部(51)と、
対向ブレード(24)と一体に回転するリアクションリンク(20)の取り付け根元部(21)と、
を備え、
前記ブレードリンク(30)の切縁(34)が、機械的干渉接触状態で開/閉自由度(G)の移動中に前記対向ブレード(24)に当接して切断作用を行うように適合され、
前記ブレードホルダリンク(50)の前記根元部(51)は、第1の拮抗テンドン対(71,72)のための少なくとも第1の終端座部(15)を一体に備え、
前記リアクションリンク(20)の前記根元部(21)は、第2の拮抗テンドン対(73,74)のための少なくとも第2の終端座部(25)を一体に備え、
前記支持リンク(2)は、切断動作中に前記第1の拮抗テンドン対と前記第2の拮抗テンドン対のテンドンがその上で摺動し、平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面(96,98)を一体に備え、
前記回転ジョイント(502)が軸方向で剛性があり、それにより、
前記ブレードホルダリンク(50)の前記根元部(51)の前記第1の終端座部(15)と前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)の表面(96)との間の前記遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な方向の第1距離(Y5)が、任意の切断状態において一定であり、
更なるリンク(20)の根元部(21)の前記第2の終端座部(25)と前記支持リンク(2)の1つ以上の前記凸状線織面(96,98)の表面(98)との間の、前記遠位共通回転軸(Y-Y)と平行な方向の第2距離(Y5’)が、任意の切断状態において一定である、
回転ジョイント(502)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用器具に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、切断動作を実行するように適合された外科用器具に関する。
【0003】
本発明に係る外科用切断器具は、ロボット手術に特に適している。
【0004】
本発明は、更に、外科用切断器具の回転ジョイントに関する。
【0005】
更に、本発明は方法に関する。
【背景技術】
【0006】
ロボット手術装置は、一般に当技術分野で知られており、典型的には、中央ロボットタワー(又はカート)と、中央ロボットタワーから延びる1つ以上のロボットアームとを備える。各アームは、患者に対して外科的処置を実行するために、遠位に取り付け可能な外科用器具を動かせるための電動位置決めシステム(又はマニピュレータ)を備える。患者は、一般に、手術室に配置された手術台に横たわり、手術室内には、ロボット装置の非無菌部品による細菌汚染を回避するために無菌性が確保される。
【0007】
従来の、すなわちロボットを使用しない手術において、一般に、操作リングの反対側の端部に、外科用針のための把持面及び縫合糸を切断するためのブレードを有する2つの自由端によって形成された針ドライバ/縫合糸カッターを備える、針ドライバ/縫合糸カッタータイプの器具が知られている。場合によっては、ブレードは、グリッパの本体内に形成された座部又は凹部に作られ、針の把持面にアクセスするための開口とは異なる別個のアクセス開口を介してアクセス可能である。
【0008】
外科用ハサミも当技術分野で知られており、これは、操作リングの反対側の端部に、自由端における2つの対向ブレードを備える。操作リングにはばねを設けることができる。典型的には、そのような従来の外科用ハサミで切断動作を実行するのに有用な自由端の開放角度は、25°未満でなければならない。
【0009】
更に、ロボット手術の分野では、対向する把持面と、細長いロッド又は細長いシャフトの遠位端に配置されたそれぞれのブレードとを有する、腹腔鏡検査用の針ドライバ/縫合糸カッター型エンドエフェクタ(end-effector)が提案されている。典型的には、ブレードは、針用のそれぞれの把持面と共成形され、典型的には、ブレードは、針用のそれぞれの把持面と共成形され、把持面の近位に、すなわち、把持面と把持面の回動ヒンジ(pivot hinge)との間に配置された、把持面に対するカンチレバ突起が形成される。したがって、単一の成形部品は、通常、ヒンジの一部を形成するための根元部と、自由端と、把持面と、針ドライバ/縫合糸カッター型エンドエフェクタの反対側の対面するもう一方のブレードに向かって、把持面に対して閉じる方向に延びるブレードとを備える。
【0010】
例えば、米国特許出願公開第2008/0119870号明細書に示されているように、エンドエフェクタの各自由端にブレードが設けられる、ロボット手術用のハサミ型エンドエフェクタも提案されている。
【0011】
針ドライバ/縫合糸カッター型のロボット手術のための外科用器具及びハサミ型外科用器具の両方において、複数の「ベルビルワッシャ(Belleville washer)」型弾性ワッシャは、カットを行うことを目的としたブレード間の機械的干渉状態を閉じるときにエンドエフェクタを形成する2つの部品の根元部間の予荷重を確保する。したがって、エンドエフェクタが閉じると、対向するブレードは干渉に入り、それぞれの根元部の間で横方向のスライドが生じ、前記弾性ベルビルワッシャによってヒンジに及ぼされる弾性影響作用が打ち消される。
【0012】
また、米国特許出願公開第2019/0105032号明細書は、切断エンドエフェクタを示しており、この切断エンドエフェクタでは、ブレードがそれぞれ、弾性カンチレバタブを一体に備え、2つの前記弾性カンチレバタブは、互いに向かってピンに平行な方向に延在し、それにより、弾性予荷重は、2つのカンチレバ梁タブ間の接触によって与えられる。これにより、ヒンジ上にベルビル型弾性ワッシャを組み立てることが回避され、したがって、2つのブレード間のヒンジに軸方向の空間が残され、相互に接触するカンチレバ状の弾性タブによって及ぼされる弾性反力の変動に対するそのスライドに適応することができる。
【0013】
別の既知の例は、米国特許出願公開第2020-0107894号明細書によって与えられており、この米国特許出願は、ブレードが把持リンクの長手方向ポケットに収容されてポケットに対して独立して回転可能であり、それにより、必要に応じてブレードを引き抜くことができる、針ドライバ/縫合糸カッターの解決策を示す。
【0014】
複数の「ベルビルワッシャ」型ワッシャに加えて又は代えて、ブレード間の切断干渉を調整するために、通常は関節ピン自体を形成する調整ねじをヒンジに設けることができる。調整ねじが複数の「ベルビルワッシャ」型弾性ワッシャと組み合わせて設けられる場合、調整ねじは、ばねの弾性作用に対抗して、弾性予荷重の調整の終了を可能にする。
【0015】
典型的には、前述のタイプに起因する既知の外科用ハサミは、切断干渉の相互接触を確実にするために両方とも同じ方向に軸方向に湾曲した2つのブレードを有し、これらのブレードは、例えば、25°を超えない小さい開放角度の場合のみ満足に切断することができるように調整され、すなわち、ブレードは、軸方向に(すなわち、ヒンジ軸の方向において)湾曲がより強調される遠位自由端の近く又は遠位自由端でのみ十分に切断されるが、そのそれぞれの近位部分では、これらのブレードは、軸方向に離間しており、したがって正確な切断を実行するのには適していない(切断される組織は分離することなくブレード間で曲げる)。逆に、ブレードが、その近位部分において、すなわち、例えば、15°を超える大きい開放角度において、機械的な切断干渉接触になるように調整されている場合、ブレードは、完全に閉鎖するには適さない、これは、ブレードの遠位曲率が実際に閉鎖ストローク端を生成し、小さな開放角度での切断能力を妨げるためである。ブレードの締め付け力を強く増加させると、ブレードは閉じることができるが、必然的に近位部分で再び軸方向に離間し、近位領域での切断能力を失う。これらの理由のために、機械的干渉状態が自由端の近くのみで達成されるように、既知の外科用ハサミのブレードの調整ねじを締め付けることが通常選択される。それは、ブレードがより見やすく、より小さい開放角度を必要とし、したがってより小さい設置面積を有するためである。
【0016】
ロボット手術のための外科用器具、特にその端部又はエンドエフェクタの小型化は、複雑な領域でのアクセス可能性及び手術を受ける患者にとって潜在的な最小限の侵襲性の有利なシナリオを開くことが可能にするため、特に望ましい。
【0017】
前述の種類の既知の解決策は、部品の製造のための不可能なプロセス、並びに組み立てられたエンドエフェクタを得るための部品の複雑な組み立て戦略を課すため、さらなる小型化には適していない。例えば、ベルビル型弾性ワッシャの弾性反力に対抗しながらヒンジにマイクロ部品を組み立てる必要性、並びに動作時にかなり高い応力に耐えるのに十分に頑強でなければならず、同時に摩擦を最小限に抑えるように幾何学的に成形されなければならないマイクロリッジ及びマイクロアンダーカットを共成形することによる製造の客観的な極端な困難性が考えられる。実際、よく知られているように、マイクロスケールでは、摩擦などの表面力が体積力よりも支配的である。
【0018】
更に、作動ケーブル又はテンドンによって作動される切断エンドエフェクタを有する外科用器具では、作動テンドンを損傷することなく正確な切断作用を行うなどの高い閉鎖力を確保するために、典型的には、減速機、すなわち、比較的大きな直径のプーリを作製することが必要であるが、これは、エンドエフェクタの遠位端に特に近い部品の小型化を制限する。さもなければ、エンドエフェクタのコンパクトなサイズを維持するために、作動テンドンの長手方向の曲げ性を犠牲にして作動テンドンの引張強度を増加させることが必要であり、したがっていずれの場合にも、比較的大きな直径の遠位プーリを装着することになり、又は、テンドンの直径を大きくすることによってテンドンを補強しようとする試みがなされ得るが、当業者には明らかなように、これらの選択は両方とも小型化を著しく妨げる障害となる。
【0019】
更に、スケールが減少するにつれて、支点、すなわち、ヒンジのレベルでの小さな機械加工の不確実性が、それぞれのカンチレバ自由端に近く、したがってハサミ型器具の場合には切断ブレードに、又は針ドライバ/縫合糸カッターなどの工具の場合には把持面に非常に不正確さを課すため、外科用器具のエンドエフェクタ把持終端などの回転ジョイントが組み立てるときに、形成されるように意図された要素を正確にサイズ設定することはますます複雑になる。
【0020】
作動テンドンを損傷することなく正確な切断作用を行うなど、高い閉鎖力を伝達する試みにおいて、ブレードに関連するリンク機構(それ自体は当該技術分野で知られている解決策である)を設けることも障害となるであろう。たとえ、動作条件下で堅牢であることが証明されるような小さなスケールで部品を作るという唯一の客観的な困難や、自由端の共通回転軸に近い領域の設置面積のため、並びに組み立ての困難性のためにも、小型化への取り組みが必要である。
【0021】
ヒンジに対して遠位に配置されるエンドエフェクタは、切断ブレードのみであるか切断ブレード及び把持面であるかにかかわらず、典型的には、非常に正確な作業を実行するように設計され、同時に切断ブレードは正確且つきれいな切断動作を確保する必要がある。
【0022】
同じ出願人の米国特許第10864051号明細書、国際公開第2017-064301号、国際公開第2019-220407号、国際公開第2019-220408号、国際公開第2019-220409号及び米国特許出願公開第2021-059776号明細書は、1つ以上のマスターインタフェースによって制御される1つ以上の外科用器具を有する遠隔操作のロボット手術システムを開示している。更に、同じ出願人の米国特許第10582975号明細書、欧州特許第3586780号明細書、国際公開第2017-064303号、国際公開第2018-189721号、国際公開第2018-189729号、米国特許出願公開第2020-0170727号明細書及び米国特許出願公開第2020-0170726号明細書は、ロボット手術及び顕微手術に適した外科用器具の様々な実施形態を開示している。これらのタイプの外科用器具は、一般に、ロボットマニピュレータによって駆動されるように適合されるインタフェースを有する近位インタフェース作動部(又はバックエンド部)と、ロッドと、ロッドの遠位端にある関節式カフ(cuff)とを備える。関節式カフは、複数のテンドン(又は作動ケーブル)によって動かされる複数のリンクで構成される。2つの終端リンクは、自由端を有するとともに、患者の解剖学的構造に直接作用し、及び/又は吻合又は他の外科的治療を行なうために針及び縫合糸を操作するように適合されている。
【0023】
例えば、同じ出願人の国際公開第2017-064306号は、関節式エンドエフェクタリンクの開/閉自由度を作動させるためのテンドンがエンドエフェクタリンクの凸状線織摺動面上を摺動し、同時に、凹部を有するガイド溝又はチャネル内でテンドンをルーティングすることを回避する外科用器具を示している。それにより、テンドンとリンクとの間の摺動接触部分の断面が最小化され、したがって、摺動摩擦が低減され、ピッチ及びヨーの回転ジョイントなどのエンドエフェクタジョイントによって与えられる高い器用さを確保しながら、関節式エンドエフェクタの小型化を促進することができる。
【0024】
更に、同じ出願人の国際公開第2018-189722号は、関節式エンドエフェクタの開/閉自由度を作動させるためのテンドンが、前に論じられたものと同様に、エンドエフェクタリンクの凸状線織摺動面上での摺動に加えて、前記凸状線織摺動面上に巻き付けられ、特に高い巻回角の基礎となる弧状経路を示す外科用器具を開示している。実際、テンドンの低い摺動摩擦のために、テンドンは、比較的長く、弧状の長手方向断面にわたって、リンクの凸状線織面と接触したままであり得る。
【0025】
更に、同じ出願人の米国特許出願公開第2021-0106393号明細書は、絡み合ったポリマー繊維からなるテンドンの幾つかの実施形態を開示している。ポリマーテンドンの使用は、金属テンドンの使用に対して摺動摩擦を低減することを可能にし、同時にテンドンの適切な寸法設定は、関節式エンドエフェクタにおける曲がりくねった長手方向の経路の移動を可能にする。
【0026】
更に、米国特許出願公開第2020/0390507号明細書は、テンドンを案内するために外科用器具の関節式終端リンクにローラが回転可能に取り付けられる解決策を開示している。そのようなローラを設けることは、関節式終端の小型化に対する明確な障害となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、関節式エンドエフェクタの器用さを低下させることなく、極端な小型化に適し、同時に堅牢で信頼性があり、正確で再現可能な切断動作を提供することができる関節式エンドエフェクタを有する外科用器具の解決策を提供する必要性が強く感じられている。
【0028】
更に、遠隔操作のロボット微細手術のための外科用器具の解決策を提案する必要性が感じられ、遠隔操作のロボット微細手術のための外科用器具の解決策は、動作状態下での組み立て及び構築が簡単であり、信頼性が高く、正確で堅牢であるとともに、例えば、外科手術の観察を容易にするのに有用であり得る外科用器具本体のメイン長手方向の延伸方向に対する切断動作の所望の制御された空間的配向を可能にするように適合される。
【0029】
グリップ及び/又はハサミを備えた関節式先端手術用微細器具を組み立てることを可能にし、容易且つコスト的に手頃な方法で組み立てることができるように、最小数の構成要素から成る解決策を提案する必要性が感じられる。
【0030】
グリップ及びハサミを備えた関節式先端マイクロ器具の形成のために、微小機械部品、特に鋭利な微小機械部品を高い幾何学的精度及び高い再現性で製造することを可能にする解決策を提案する必要性が感じられる。
【0031】
本発明の目的は、背景技術に関して述べた欠点を取り除くことである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
この目的及び他の目的は、請求項1に記載の外科用器具、並びに請求項10に記載の方法、並びに請求項12に記載の回転ジョイントによって達成される。
【0033】
幾つかの有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0034】
本発明の一態様によれば、外科用切断器具は、遠位端を有するロッド又はシャフトと、ロッドの遠位端に接続される関節式エンドエフェクタとを備える。
【0035】
前記関節式エンドエフェクタは、平行な母線を有する接続リンクの1つ以上の凸状線織面と、第1の遠位接続部とを一体に備える本体を有し、ロッドの遠位端に接続された接続リンクを備える。
【0036】
前記関節式エンドエフェクタは、接続リンクに関節結合されて本体を有する支持リンクを備え、本体は、平行な母線を有する支持リンクの1つ以上の凸状線織面と、接続リンク及び支持リンクが近位共通回転軸を中心に相対的に回転できるように、接続リンク及び支持リンクのための近位回転ジョイントを規定する、第1の接続リンクの第1の遠位接続部に関節結合された近位接続部と、第2の遠位接続部とを一体に備える。
【0037】
前記関節式エンドエフェクタは、本体を有する支持リンクに関節結合されたブレードホルダリンクを備え、本体は、平行な母線を有するブレードホルダ根元部の1つ以上の凸状線織面によって形成されたプーリ部を有するブレードホルダリンク取り付け根元部と、抗力部とを一体に備える。
【0038】
前記関節式エンドエフェクタは、前記ブレードホルダリンクと一体に回転するとともに、切縁と、ブレードホルダリンクの前記抗力部と係合される抗力対向部とを一体に備える本体を有する、ブレードリンクを備える;
【0039】
前記関節式エンドエフェクタは、支持リンクと、ブレードリンク及びブレードホルダリンクによって形成されるグループとに対して関節結合されるとともに、平行な母線を有するリアクションリンク根元部の1つ以上の凸状線織面によって形成されるプーリ部を有する取り付け根元部を一体に備える本体を有する、リアクションリンクを備える。
【0040】
本発明の一態様によれば、ブレードホルダ取り付け根元部及びリアクションリンク取り付け根元部は、支持リンクの第2の遠位接続部と共に、ブレードホルダリンクと、リアクションリンクと、支持リンクとのための遠位回転ジョイントを規定し、それにより、ブレードホルダリンクと、リアクションリンクと、支持リンクとが、前記近位共通回転軸に直交する遠位共通回転軸の周りで相対的に回転することができる。
【0041】
本発明の一態様によれば、リアクションリンクの前記取り付け根元部と一体に回転する対向ブレードが含まれる。
【0042】
前記外科用切断器具は、ロッドに沿って延びて、前記遠位共通回転軸の周りでブレードリンクを動かせるために、ブレードホルダリンクに接続された第1の拮抗テンドン対と、ロッドに沿って延びて、前記遠位共通回転軸の周りで対向ブレードを動かせるために前記リアクションリンクに接続された第2の拮抗テンドン対とを更に備える。更に、ブレードホルダリンクの取り付け根元部は、前記第1の拮抗テンドン対を受け入れる少なくとも第1の終端座部を一体に備え、リアクションリンクの取り付け根元部は、前記第2の拮抗テンドン対を受け入れる少なくとも第2の終端座部を一体に備える。
【0043】
本発明の一態様によれば、接続リンクの平行な母線を有する1つ以上の前記凸状線織面は、前記近位共通回転軸と平行であり、支持リンクの平行な母線を有する1つ以上の前記凸状線織面のうちの少なくとも1つは、前記近位共通回転軸と平行であり、ブレードホルダリンクの平行な母線を有するブレードホルダ根元部の1つ以上の前記凸状線織面及びリアクションリンクの平行な母線を有する1つ以上の前記凸状線織面は、遠位共通回転軸と平行であり、第1の拮抗テンドン対及び第2の拮抗テンドン対は、接続リンクの1つ以上の前記凸状線織面上及び支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面上で長手方向に摺動するように適合されるとともに、ブレードホルダリンク又はリアクションリンクの根元部のそれぞれの凸状線織面上で摺動することなく巻き付き/巻き戻して、ブレードリンク及び対向ブレードをそれぞれ開/閉動作させるように適合されている。
【0044】
好ましくは、ブレードリンクの切縁は、機械的干渉接触状態で開/閉自由度の移動中に前記対向ブレードに当接して切断作用を行うように適合され、ブレードリンクの切縁は、遠位共通回転軸と平行な方向で弾性的可撓性を有する。
【0045】
遠位共通回転軸と平行な方向の第1距離が、ブレードホルダリンク根元部の第1の終端座部と支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間で特定することができ、この距離は任意の切断状態において一定である。
【0046】
遠位共通回転軸と平行な方向の第2距離が、更なるリンクの第2の根元部終端座部と支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間で検出することができ、この距離は任意の切断状態において一定である。
【0047】
一実施形態によれば、ブレードホルダリンクは、ブレードホルダリンク根元部から延びる第1カンチレバドラッグレッグを一体に備え、第1カンチレバドラッグレッグは、第1のレッグの自由端を形成し、軸方向において前記第1の終端座部を画定する(delimit)。リアクションリンクは、リアクションリンク根元部から延びる第2カンチレバドラッグレッグを一体に備え、第2カンチレバドラッグレッグは、第2のレッグの自由端を形成し、軸方向において前記第2の終端座部を画定する。前記第1カンチレバドラッグレッグと前記第2カンチレバドラッグレッグとはそれぞれ、当接壁及び抗力壁を備え、当接壁及び抗力壁は、それぞれの終端座部に対してアンダーカットされて配置され、それぞれのテンドン終端のための抗力当接部として作用する。そのような場合、ブレードホルダリンクの第1カンチレバドラッグレッグと、例えば支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間の軸方向の第1距離が、任意の切断状態において一定であり、第2カンチレバドラッグレッグと、支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間の遠位共通回転軸と平行な方向の第2距離が、任意の切断状態において一定であることを識別することが可能である。
【0048】
第1距離と第2距離とは互いに等しくすることができる。
【0049】
第1距離及び/又は第2距離は0であってもよい。
【0050】
ブレードホルダリンクの取り付け根元部は、軸方向外側に面する第1表面を備えることができ、リアクションリンクの根元部は、軸方向外側に面する第2表面を備えることができ、ブレードホルダリンクの前記第1の取り付け根元部表面とリアクションリンクの前記第2の取り付け根元部表面との間に更なる軸方向距離を検出することができ、この距離は任意の切断状態において一定である。
【0051】
一実施形態によれば、ブレードホルダリンクは、第1のレッグの自由端を形成し、ブレードホルダリンク根元部から延びて、前記第1の終端座部を軸方向で画定する第1カンチレバドラッグレッグを一体に備え、リアクションリンクは、第2のレッグの自由端を形成し、リアクションリンク根元部から延びて、前記第2の終端座部を軸方向で画定する第2カンチレバドラッグレッグを一体に備え、前記第1カンチレバドラッグレッグ及び第2カンチレバドラッグレッグはそれぞれ、それぞれのテンドン終端の抗力当接部として作用し、それぞれの終端座部に対してアンダーカットされて配置された当接壁及び抗力壁を備える。そのような場合、ブレードホルダリンクの第1カンチレバドラッグレッグと、例えば、支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間の軸方向の第1距離が、任意の切断状態において一定であり、第2カンチレバドラッグレッグと、支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間の遠位共通回転軸と平行な方向の第2距離が、任意の切断状態において一定であることを識別することが可能である。
【0052】
一実施形態によれば、動作状態にあるときに、各テンドンとテンドンが摺動するリンクの全ての線織面との間で交換される全体的な摺動摩擦力は、開/閉自由度が閉鎖方向に移動して切断作用を行うときに、ブレードリンクのブレードの弾性的曲げ変形を達成するために、同じテンドンによって伝達される引張力よりもはるかに小さい。換言すれば、テンドンの前記摺動摩擦力は、ブレードリンクと対向ブレードとの間の機械的干渉接触摩擦力よりもはるかに小さくすることができる。この目的のために、テンドンはポリマー材料で作製することができ、リンクは金属材料で作製することができ、リンクの平行な母線を有する凸状線織面は滑らかであり、リンク上のテンドンの長手方向の摺動摩擦を低減することができる。例えば、リンクの線織面は、ワイヤ電気浸食によって得られる。
【0053】
前記遠位回転ジョイントは、軸方向の剛性回転ジョイントとすることができる。好ましくは、弾性要素はカップリングに含まれず、弾性は回転ジョイントに対して遠位側に、すなわちブレードに設けられる。
【0054】
好ましくは、接続リンク、支持リンク、ブレードホルダリンクのプーリ部、及びリアクションリンクのプーリ部の凸状線織面は全て、長手方向チャネルを有さない。したがって、作動テンドンは凹状チャネル内で摺動しない。
【0055】
接続リンクに対して、支持リンクを、前記近位共通回転軸を中心に動かせるために、第3の拮抗テンドン対を設けることができ、支持リンクは、前記第3の拮抗テンドン対のテンドン終端を受け入れる少なくとも第3の終端座部を備える。好ましくは、前記第3の拮抗テンドン対の支持リンクの作動テンドンは、支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面上を、長手方向に摺動することなく巻き付き/巻き戻し、したがって、凸状線織面は、第3の拮抗テンドン対の作動テンドンのためのプーリ面として作用する。
【0056】
本発明の一態様によれば、外科用器具の切断方法は、近位回転ジョイントにおいて互いに関節結合された接続リンク及び支持リンクを備え、ロッドの遠位端に関節結合された関節式エンドエフェクタを設けるステップを含み、前記支持リンクは、切縁を有するブレードリンクと、ブレードリンクと一体に回転するブレードホルダリンクと、対向ブレードを有するリアクションリンクと共に遠位回転ジョイントにおいて関節結合される。
【0057】
更に、方法は、ブレードリンクの切縁を所望の向きに方向付けるために、接続リンク及び支持リンクのうちの少なくとも一方の平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面上で少なくとも一対の拮抗テンドン対の作動テンドンを長手方向で摺動させるステップと、接続リンク及び支持リンクの平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面上で遠位回転ジョイントの少なくとも一対の拮抗テンドン対の作動テンドンを長手方向で摺動させて、切縁を前記対向ブレードと接触させるステップとを含む。
【0058】
方法は、切縁及び対向ブレードの少なくとも一方を弾性的に曲げ、それらの間を機械的干渉接触させ、切断作用を行うステップを更に含む。
【0059】
接続リンク及び支持リンクの平行な母線を有する凸状線織面上で遠位回転ジョイントの少なくとも一対の拮抗テンドン対の作動テンドンを長手方向に摺動させるステップは、遠位回転ジョイントの少なくとも1つの作動テンドンを、それが摺動する凸状線織面上に、60°~300°、好ましくは120°を超える巻回角で巻きつけるステップを含むことができる。
【0060】
本発明の一態様によれば、作動テンドンによって作動される回転軸を有する切断ジョイントの回転ジョイントは、支持リンクの遠位接続部と、軸方向に弾性的に曲がり可能な本体を有するブレードリンクの取り付け根元部と、ブレードリンクと一体に回転するブレードホルダリンクの取り付け根元部と、対向ブレードと一体に回転するリアクションリンクの取り付け根元部とを備え、ブレードリンクの切縁は、機械的干渉接触状態で開/閉自由度の移動中に前記対向ブレードに当接して切断作用を行うように適合されている。
【0061】
ブレードホルダリンクの根元部は、第1の拮抗テンドン対用の少なくとも第1の終端座部を一体で備え、リアクションリンクの根元部は、第2の拮抗テンドン対用の少なくとも第2の終端座部を一体で備える。支持リンクは、切断動作中に第1の拮抗テンドン対及び第2の拮抗テンドン対のテンドンがその上で摺動する、平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面を一体に備える。
【0062】
前記回転ジョイントは、ブレードホルダリンク根元部の第1の終端座部と支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間の遠位共通回転軸と平行な方向の第1距離が任意の切断状態において一定であり、リアクションリンク根元部の第2の終端座部と支持リンクの1つ以上の前記凸状線織面の表面との間の遠位共通回転軸と平行な方向の第2距離が任意の切断状態において一定であるように構成され、軸方向に剛性がある。
【0063】
提案された解決策のおかげで、関節式エンドエフェクタの極端で大幅な小型化が可能になる。例えば、プーリなしで手首を再現することができる。プーリは、非常に小さな半径を有し、リンクを備える一体部品に線織された表面によって置き換えられる。したがって、既知の金属テンドンは、低摩擦のために、その動きを規定する線織面上で摺動する小型化されたポリマーテンドンに置き換えることができる、
【0064】
簡素化された開/閉及び切断機構を有する最小サイズの外科用切断器具を作製することが可能であり、調整ダボ(dowel)及び/又はベルビルスプリングトレイン(Belleville spring train)に代えて、弾性ブレード(及び好ましくは湾曲した対向ブレード)を含み、その干渉による閉鎖によって、変形を引き起こし、そして切断作用を行う。
【0065】
比較的かさばる、及び/又はスケールが下がるにつれて組み立てが困難なコンポーネント(キー付きプーリ又はリンクに回転可能に接続されたプーリ、遠位関節ピン上のベルビル型ばね、金属作動テンドン)は、結果的に許容できないクリアランスが発生するリスクが伴い、小型化の障害となる要因になる。それらは実際に排除される。
【0066】
長手方向チャネルを有さないプーリ部を形成するそれぞれのテンドン用の凸状線織面である巻きつけ面を有する取り付け根元部は、好ましくは、平面状の弾性ブレードである更なる構成要素の連結を可能にするように適合された幾何学的抗力要素を備え、そのような幾何学的要素は、開/閉動作においてブレードを対向ブレードに対して一体的に案内するようなものである。
【0067】
外科用器具の更なる特徴及び利点は、添付図面(本開示における「1つの」実施形態への言及は、必ずしも同じ実施形態を指すものではなく、少なくとも1つとして理解されるべきであり、更に、簡潔にし、図面の総数を減らす目的で、所定の図面を使用して複数の実施形態の特徴を示すことができ、図面の全ての要素が所定の実施形態に必要であるとは限らないことに留意されたい)を参照して、非限定的であり、例示として与えられる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1A】一実施形態に係るロボット手術システムの不等角投影図
図1B】一実施形態に係る外科用器具の不等角投影図
図2】作動テンドンを概略的に示す、一実施形態に係るロッドの遠位端にエンドエフェクタを備える針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具の一部の不等角投影図
図3】作動テンドンを概略的に示す、一実施形態に係るロッドの遠位端にエンドエフェクタを備える外科用ハサミ型外科用器具の一部の不等角投影図
図4】作動テンドンを概略的に示す、一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの不等角投影図
図5】作動テンドンを概略的に示す、一実施形態に係るハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの不等角投影図
図6A】組み立てられた部品を示す、一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図6B】分解図で部品を示す、一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図7A】組み立てられた部品を示す、一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図7B】分解図で部品を示す、一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図8A】組み立てられた部品を示す、一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図8B】分解図で部品を示す、一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図9A】作動テンドンを概略的に示す、一実施形態に係る2つの動作構成の一方における外科用器具のエンドエフェクタを概略的に示す図
図9B】作動テンドンを概略的に示す、一実施形態に係る2つの動作構成の他方における外科用器具のエンドエフェクタを概略的に示す図
図10】外科用器具のエンドエフェクタの一部の一実施形態の平面図
図11】外科用器具のエンドエフェクタの一部の他の実施形態の平面図
図12】外科用器具のエンドエフェクタの一部の更なる実施形態を示す平面図
図13】一実施形態に係る外科用器具のエンドエフェクタの遠位回転ジョイントの平面図
図14】他の実施形態に係る外科用器具のエンドエフェクタの遠位回転ジョイントの平面図
図15A】一切断構成の外科用器具のエンドエフェクタの遠位回転ジョイントの平面図を
図15B】他の切断構成の外科用器具のエンドエフェクタの遠位回転ジョイントの平面図
図16】縫合糸の切断中の、一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具の不等角投影図
図17】一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの一部を分解図で示す平面図
図18】一実施形態に係る、ブレードリンクの垂直立面図
図19】一実施形態に係る、様々な機械的切断干渉構成の図17のエンドエフェクタの一部のブレード及び対向ブレード表面によって想定される形態の平面図を概略的に示す図
図20図17のエンドエフェクタの一部を分解図で示す不等角投影図
図21】一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの一部を分解図で示す平面図
図22】一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの一部の平面図
図23】一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図24】一実施形態に係る針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具のエンドエフェクタの一部を分解図で示す平面図
図25】一実施形態に係る対向ブレードリンクの垂直立面図
図26図23のエンドエフェクタの一部を分解図で示す不等角投影図
図27】5ユーロセントコインの表面上に配置されたブレードリンク及び対向ブレードリンクを示す電子顕微鏡写真画像
図28】一実施形態に係るブレードリンクの垂直立面図
図29】一実施形態に係る対向ブレードリンクの垂直立面図
図30】一実施形態に係る、外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部を分解図で示す不等角投影図
図31】開/閉自由度が部分的に開いている、一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図32】開/閉自由度が閉じている、一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部の垂直立面図
図33】一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部を分解図で示す平面図
図34】別の実施形態に係るブレードと、一対の拮抗テンドン対用の終端座部とを一体に有するリンクの平面図
図35】一実施形態に係る、様々な機械的切断干渉構成の図33のエンドエフェクタの一部のブレード及び対向ブレード表面によって想定される形態の平面図を概略的に示す図
図36】一実施形態に係るブレードリンクの垂直立面図
図37】一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部を分解図で示す不等角投影図
図38】一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部を分解図で示す平面図
図39A】一実施形態に係る、様々な機械的切断干渉構成の図38のエンドエフェクタの一部のブレード及び対向ブレード表面によって想定される形態を概略的に示す図
図39B】一実施形態に係る、様々な機械的切断干渉構成の図38のエンドエフェクタの一部のブレード及び対向ブレード表面によって想定される形態を概略的に示す図
図39C】一実施形態に係る、様々な機械的切断干渉構成の図38のエンドエフェクタの一部のブレード及び対向ブレード表面によって想定される形態を概略的に示す図
図40図38のエンドエフェクタのリアクションリンクの不等角投影図
図41A】一実施形態に係る、開/閉自由度が閉じた構成のハサミ型外科用器具のエンドエフェクタの一部の不等角投影図
図41B図41Aのエンドエフェクタの平面図
図41C図41Aのエンドエフェクタの不等角投影図
図42】一実施形態に係る針ドライバ/ハサミ型外科用器具の関節式エンドエフェクタを示す電子顕微鏡写真画像
図43】「2.00mm」のスケールを画像の右下に示す、一実施形態に係る外科用ハサミ型外科用器具の関節式エンドエフェクタを示す電子顕微鏡写真画像
【発明を実施するための形態】
【0069】
本明細書を通して「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は機能が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを示すことを意味する。したがって、本明細書の様々な部分における「一実施形態では」の記載は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。更に、異なる図面に示されているような所定の特徴、構造、又は機能は、1つ以上の動作モードで任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0070】
一般的な実施形態によれば、外科用切断器具1が提供される。例えば、前記外科用切断器具1はハサミ型外科用器具である。例えば、前記外科用切断器具1は、針ドライバ/縫合糸カッター型の器具である。
【0071】
外科用器具1は、遠位端8を有するロッド7又はシャフト7と、関節式エンドエフェクタ9(言い換えれば、ロッド7の遠位端8に接続された関節式エンドデバイス9)とを備える。
【0072】
前記外科用器具1は、ロボット手術に特に適しているが、一意には意図されておらず、例えば、図1Aに示すように、ロボット手術システム101の電動アクチュエータを備えるロボットマニピュレータ103に接続可能であり得る。例えば、前記外科用器具1は、機械的及び手動的な制御装置、並びに作動デバイスに関連付けることができる。
【0073】
前記外科用器具1を備えるロボット手術システム101は、ロボット顕微手術操作に特に適しているが、一義的に意図されているわけではない。ロボット手術システム101は、ロボット腹腔鏡手術を対象とすることができる。
【0074】
必ずしも前記シャフト7又はロッド7が剛性シャフトであるとは限らず、例えば、曲がり可能なシャフト及び/又は関節式シャフトであってもよいが、好ましい実施形態によれば、前記シャフト7は剛性シャフトである。例えば、図1Bに示すように、外科用器具1の近位インタフェース部104又はバックエンド部104をロッド7の近位端102に設けて、ロボット手術システム101のロボットマニピュレータ103とのインタフェースを形成することができる。滅菌バリアは、ロボットマニピュレータと外科用器具の近位インタフェース部104との間に介設することができる。例えば、前記近位インタフェース部104は、ロボットマニピュレータ103によって付与された駆動動作を受け、それらを関節式エンドエフェクタ9に伝達するためのインタフェース伝達要素のセットを備えることができる。一実施形態によれば、外科用器具1は、ロボット手術システム101のロボットマニピュレータ103に着脱可能に関連付けられる。
【0075】
ロッド7の遠位端8の関節式エンドエフェクタ9は、1つ又は複数の回転ジョイントで互いに関節結合される複数のリンクを備えることができる。これらのリンクは、ロッド7内で、近位インタフェース部104から関節式エンドエフェクタ9まで延び、関節式エンドエフェクタ9のリンクの少なくとも一部に設けられた終端座部で終端する複数対の拮抗作動テンドンによって移動可能である。複数対の拮抗作動テンドン対のうちの1つ又は複数の拮抗テンドン対の一対の作動テンドンは、器具の近位インタフェース部104から器具の関節式エンドエフェクタのリンクまでの往復経路を形成する単一のテンドンで構成することができる。
【0076】
好ましくは、「リンク」という用語は、単一部品で作られた本体、すなわち、モノブロック本体(monobloc body)を指す。
【0077】
関節式エンドエフェクタ9を構成する全てのリンクが、必ずしも互いに関節結合される、すなわち、互いに対して、及び/又はロッド7の遠位端8に対して可動であるとは限らない。
【0078】
例えば、前記エンドエフェクタ9は、当分野で広く採用されている専門用語によれば、「ロールピッチヨー(roll-pitch-yaw)」タイプの関節式カフ(articulated cuff)であり得る。例えば、前記エンドエフェクタ9は、「ヘビ(snake)」タイプの関節式エンドエフェクタ9であり得る、すなわち、多数の同一平面及び/又は非平面回転ジョイントを備えることができる。
【0079】
前記関節式エンドエフェクタ9は、ロッド7の遠位端8に接続された(第1の)接続リンク90を備え、該接続リンク90は、平行な母線を有する接続リンク97、99の1つ以上の凸状線織面を一体に備える本体を有する。接続リンク90は、第1の遠位接続部95を更に一体で備える。好ましくは、第1の接続リンク90の前記第1の遠位接続部95は、2つの突起91,92を備え、近位回転軸P-Pを有する近位回転ジョイントを形成するように適合されている。好ましい実施形態によれば、接続リンク90の凸状線織面母線97,99が全て近位回転軸P-Pに平行である。
【0080】
接続リンク90は、固定デバイス94(図示の例では、一対の固定ピン94として示されているが、代わりに、固定デバイス94は、ピン、リベット、ステープル、1つ以上のねじ要素、連結プロファイルなどを備えることができる)によってロッド7の遠位端8にしっかりと固定することができ、遠位接続部91、92を形成する2つの突起91、92を備え、近位共通回転軸P-P又はピッチ軸P-Pを有する近位回転ジョイント509又はピッチ回転ジョイント509を形成する。
【0081】
前記関節式エンドエフェクタ9は、第1の接続リンク90に関節結合され、平行な母線を有する支持リンク96、98の1つ以上の凸状線織面を一体に備える本体を有する(第2の)支持リンク2を備える。
【0082】
支持リンク2は、第1の接続リンク90の第1の遠位接続部95に関節結合された近位接続部13を一体で更に備え、接続リンク90及び支持リンク2のための近位回転ジョイント509を規定し、それにより、接続リンク90と支持リンク2とは、近位共通回転軸P-Pを中心に相対的に回転することができる。
【0083】
支持リンク2は、第2の遠位接続部17を更に一体で備える。支持リンク2の遠位接続部17は、好ましくは、例えば、遠位回転軸Y-Yを規定するための、すなわち、ピッチ近位回転軸P-Pに直交することができる遠位共通回転軸Y-Y又はヨー軸Y-Yを有する遠位回転ジョイント502又はヨー回転ジョイント502を形成するための、2つの突起3、4を備える支持構造体を備える。
【0084】
支持リンク2の支持構造体は、好ましくは剛性支持構造体であり、すなわち、例えば剛性支持フォークであり、突起3、4の相対位置は、突起3、4及び線織面96、98の相対位置と同様に剛性に決定される。一実施形態によれば、前記遠位回転軸Y-Yはヨー回転軸Y-Yであり、前記近位回転軸P-Pはピッチ回転軸P-Pであり、ヨー回転軸Y-Yとピッチ回転軸P-Pとは互いに直交する。これにより、近位接続部13及び遠位接続部17を有する接続リンク2は、互いに直交する回転軸P-P、Y-Yを有する2つの回転ジョイント509,502を一体に規定する。
【0085】
関節式エンドエフェクタ9は、支持リンク2に関節結合された(第3の)ブレードホルダリンク50を更に備える。当該(第3の)ブレードホルダリンク50は、平行な母線を有するブレードホルダ根元部の1つ以上の凸状線織面79によって形成されたプーリ部79を有するブレードホルダリンク51の取り付け根元部を一体に備える本体を有する。また、ブレードホルダリンク50は、前記遠位回転ジョイント502に関節結合された近位取り付け根元部51を一体に備える。
【0086】
好適には、関節式エンドエフェクタ9は、前記ブレードホルダリンク50と一体に回転し、切縁34を一体で備える本体を有する(第4の)ブレードリンク30を更に備える。切縁34は、切断動作を実行するように適合される。ブレードリンク30は、前記遠位回転ジョイント502に関節結合された近位取り付け根元部31を一体で備える。ブレードリンク30は、好ましくは、ブレードホルダリンク50の根元部51に隣接して配置された取り付け根元部31を一体で備え、好ましくは、ブレードリンク30の根元部31は、ブレードホルダリンク50の根元部51に隣接し、直接に密接する。
【0087】
ブレードホルダリンク50の本体は、抗力部57を更に一体に備え、ブレードホルダリンク30の本体は、ブレードホルダリンク50の前記抗力部と係合する抗力対向部37を更に一体で備える。抗力係合は、ブレードリンク30とブレードホルダリンク50との係合によって得ることができる。ブレードリンク30とブレードホルダリンク50との間の抗力係合は、共通回転軸Y-Yに対して遠位に、すなわち、取り付け根元部31及び51に対して遠位に配置することができる。そのような場合、ブレードリンク30の抗力対向部37(又は抗力部37)は、より有利な機械的伝達を達成するように、ブレードリンク30の抗力部37をブレードリンク根元部31に配置することができるが、正確な抗力を確保するために、ブレードリンク根元部31から遠く離れて配置されることが好ましい。
【0088】
関節式エンドエフェクタ9は、支持リンク2に関節結合された(第5の)更なるリアクションリンク20を更に備え、ブレードホルダリンク50は、平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面80を有するプーリ部80を有するリアクションリンク20の更なる取り付け根元部21を一体に備える本体を有する。
【0089】
支持リンク2、ブレードホルダリンク50及びブレードリンク30によって形成されるグループ、及び第2の先端は、共通回転軸Y-Yと一致又は平行な軸方向を規定する前記共通回転軸Y-Yで互いに関節結合される。言い換えれば、支持リンク2の遠位接続部17は、前記遠位共通回転軸Y-Yにおいてブレードホルダリンク50の根元部51及びブレードリンク30の根元部31、並びに第5の更なるリアクションリンク20の根元部21によって形成されるグループに対して関節結合される。好ましくは、提示を明確にするために、共通回転軸Y-Yの方向と一致又は平行な軸方向が規定される。
【0090】
好ましくは、提示を明確にするために、ブレードリンク30及び/又はブレードホルダリンク50に関して、軸方向に沿って前記第5の更なるリアクションリンク20に面する内軸方向が更に規定され、同様に、第2の先端20に関して、前記内軸方向は反対に、すなわち、ブレードリンク30及び/又はブレードホルダリンク50に面する。
【0091】
近位方向及び遠位方向(又は意識(senses))は、図1Bの矢印によって示されるように、用語の共通の意味に従って参照するものとして理解される。
【0092】
好ましくは、提示を明確にするために、「径方向」という用語は、共通回転軸Y-Yに実質的に直交し、それに入射する方向を指す。
【0093】
好ましくは、提示を明確にするために、これはまた、外科用器具1の長手方向延伸と全体的に実質的に一致することができる長手方向、並びにブレードリンク30及び/又はブレードホルダリンク50及び/又はリアクションリンク20の細長い本体の長手方向延伸と局所的に一致することができる長手方向を意味する。
【0094】
更なる第5のリアクションリンク20の根元部21、ブレードホルダリンク50の根元部51、ブレードリンク30の根元部31によって形成されるグループは、ヨーY方向の自由度を規定する前記共通回転軸Y-Yを中心として支持リンク2の遠位部分17に対して関節結合される。したがって、共通回転軸Y-Y(又はその直線延伸)は、前記2つの突起3、4、及び前記根元部21、31、51と交差し、関節ピン5によって規定することができる。
【0095】
更に、更なる第5のリアクションリンク20の根元部21は、ブレードホルダリンク50の根元部51及びブレードリンク30の根元部31によって形成されるグループに対して、前記共通回転軸Y-Y周りで関節結合され、切断動作を行うための相対的開/閉自由度G(又は切断自由度G、又は広く採用されている専門用語による把持自由度Gであるが、この自由度の起動は必ずしも把持動作をもたらすとは限らない)を規定する。
【0096】
更なる利点により、リアクションリンク20の前記取り付け根元部21と一体に回転する対向ブレード24が含まれる。したがって、リアクションリンク20は、対向ブレード24と一体的回転する。リアクションリンク20は、必ずしも対向ブレード24と一体であるとは限らないが、好ましい実施形態によれば、リアクションリンク20は、取り付け根元部21と対向ブレード24とを一体に備える。
【0097】
外科用切断器具1は、シャフト7に沿って延在し、ブレードホルダリンク50に接続されて、前記遠位共通回転軸Y-Yの周りでブレードリンク30を動かせる第1の拮抗テンドン対71、72を更に備える。ブレードホルダリンク50の取り付け根元部51は、前記第1の拮抗テンドン対71,72を受け入れる少なくとも第1の終端座部15を一体で備える。
【0098】
外科用切断器具1は、シャフト7に沿って延在し、対向ブレード24を前記共通回転軸のヨーY-Y軸の周りに動かせるために前記更なるリアクションリンク20に接続された第2の拮抗テンドン対73、74を更に備える。リアクションリンク20の取り付け根元部21は、前記第2の拮抗テンドン対73,74を受け入れる少なくとも第2の終端座部25を一体で備える。
【0099】
各テンドンは、メイン長手方向延伸を有し、張力のみをかけられて作用するように適合されている。
【0100】
各テンドンは、好ましくは、接続リンク90、支持リンク2、ブレードホルダリンク50(特に、ブレードホルダリンク50の根元部51)、リアクションリンク20(特に、リアクションリンク20の根元部21)の少なくとも一部の前記凸状線織面79、80、96、97,98,99上でのみ、関節式エンドエフェクタ9のリンク90,2,20,30,50と接触している。好ましくは、作動テンドンは、ブレードリンク30と接触することを回避し、ブレードリンク30は、ブレードホルダリンク50によって回転に引きずられる。
【0101】
好適には、接続リンク90の平行な母線を有する1つ以上の前記凸状線織面97、99は、前記近位共通回転軸P-Pに平行であり、支持リンク2の平行な母線を有する1つ以上の前記凸状線織面96、98の少なくとも1つは、前記近位共通回転軸P-Pに平行である。更に、ブレードホルダリンク50の平行な母線を有するブレードホルダ根元部51の1つ以上の前記凸状線織面79と、更なるリアクションリンク20の平行な母線を有する更なる根元部21のプーリ部の1つ以上の前記凸状線織面80とは、遠位共通回転軸Y-Yと平行である。
【0102】
更なる利点により、第1の拮抗テンドン対71,72及び第2の拮抗テンドン対73,74は、接続リンク90の1つ以上の前記凸状線織面97,99及び支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96、98上を長手方向に摺動するように適合されるとともに、ブレードホルダリンク50又は更なるリアクションリンク20の根元部79又は80のそれぞれの凸状線織面上を、長手方向に摺動することなく巻き付き/巻き戻して、ブレードリンク30及び対向ブレード24をそれぞれ開/閉動作させるように適合されている。
【0103】
図9A及び図9Bに概略的に示されるように、拮抗テンドン対の作動テンドン71、72、73、74は、エンドエフェクタ9の遠位回転ジョイント502を作動させ、接続リンク90の1つ以上の凸状線織面97、99上で長手方向に摺動し、支持リンク2の1つ以上の凸状線織面96、98上で長手方向に摺動するように適合されている。言い換えれば、線織面上の作動テンドンの摺動は、テンドン自体71、72、73、74の長手方向延伸に生じる。各テンドン71、72、73、74の経路は、それらが摺動する凸状線織面に対して静止している、すなわち、各テンドンは長手方向に摺動するが、軸方向に摺動せず、各テンドンの長手方向延伸は、いかなる動作状態でも変化しない。加えて、好ましくは、エンドエフェクタ9の遠位回転ジョイント502を作動させるように適合された拮抗テンドン対の作動テンドン71、72、73、74は、ブレードホルダリンク50の根元部51上で終端する第1の拮抗テンドン対のテンドン71、72と、リアクションリンク20の根元部21上で終端する第2の拮抗テンドン対のテンドン73、74とを含み、第1の拮抗テンドン対のテンドン71、72は、遠位回転軸Y-Yと平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面79によって形成されるプーリ面79上で長手方向に摺動することなく巻き付き、第2の拮抗テンドン対のテンドン73、74は、遠位回転軸Y-Yと平行な母線を有する1つ以上の凸状線織面80によって形成されるプーリ面80上で長手方向に摺動することなく巻き付く。
【0104】
一方、接続リンク90の凸状線織面97,99、及び支持リンク2の凸状線織面96,98は、テンドンをガイド溝内に保持するためのガイドチャネル又は溝を含まない。テンドン71、72、73、74の終端座部15、25と、遠位回転ジョイント502の作動テンドンが摺動することなく長手方向に摺動するか、又は摺動することなく巻き付く線織面79,80,96,97,98,99との間の幾何学的関係は、エンドエフェクタのリンクの本体にガイドチャネル又は溝がない場合であっても、各テンドンの経路の不変性に有利である。更に、テンドンを案内するためのガイドチャネル又は溝がないことにより、摺動摩擦を最小限に保ちながら、各テンドンの断面とそれが摺動する凸状線織面との間の接触面を最小限に保つことができる。
【0105】
一実施形態によれば、図9A及び図9Bに概略的に示すように、関節式エンドエフェクタ9の近位回転ジョイント509を作動させるように適合された拮抗作動テンドン75、76は、支持リンク2上で終端し、支持リンク2に対して長手方向に摺動しない、すなわち、支持リンク2の1つ以上の前記線織面96,98上で長手方向に摺動しないが、摺動することなくその周りに巻き付く。一方、リンク90の1つ以上の前記線織面97,98上で長手方向に摺動して、近位回転ジョイントP-Pを作動させる。好ましくは、支持リンク2の本体は、以下に説明するように、第3の拮抗作動テンドン対75、76を受け入れるための少なくとも第3の終端座部6を一体で備える。
【0106】
したがって、テンドンの長手方向延伸は、テンドンが局所的に接触している線織面を生成する線に対して局所的に直交する。
【0107】
前述したように、遠位回転ジョイント502は、切断動作を引き起こすことができる。
【0108】
例えば図41に示す代替の実施形態によれば、切断動作は、アンビル(anvil)として作用する対向ブレードに当接する、ハンマ(hammer)として作用するブレード14によって実行される。
【0109】
ブレードリンク30の切縁34は、機械的干渉接触状態で開/閉自由度Gが移動して切断作用を行う間、前記リアクションリンク20と一体に回転する前記対向ブレード24に当接するように適合されている。
【0110】
好ましくは、ブレードリンク30の切縁34は、遠位共通回転軸Y-Yと平行な方向に弾性的に曲がり可能である。第1の拮抗テンドン対71、72用の第1の終端座部15と一体に回転するブレード14は、軸方向に弾性的に曲がり可能であり、前記対向ブレード24は、前記切縁34に当接するように適合され、ブレードリンク30の本体を軸方向に弾性的に曲げる。ブレード14は、前記切縁34を一体に備えるブレードリンク30の本体の一部であり、すなわち、切縁34はブレード14に含まれる。
【0111】
それにより、切断作用を得るための軸方向の弾性は、ブレード14の弾性によって少なくとも部分的に与えられるが、ブレードリンク30の根元部31が関節結合される遠位回転ジョイント502は、軸方向に剛性であり、すなわち、支持リンク2の遠位接続部17とリアクションリンクの根元部21、31、51との間、及びブレードと遠位回転軸Y-Y上のブレードホルダリンクとの間の相対変位が回避されるため、弾性的負荷がかからない。
【0112】
したがって、ブレードリンク30のブレード14の前記切縁34及びリアクションリンク20と一体に回転する前記対向ブレード24は、機械的干渉接触状態に達して切断作用を行う。
【0113】
切縁34とリアクションリンク20と一体に回転する対向ブレード24との間の機械的干渉接触は、切断作用をもたらすと同時に、ブレードリンク30の本体を曲げ変形させる。切断動作中のブレードリンク30の本体のブレード14の曲げ変形は、軸方向に向けられ、すなわち、共通回転軸Y-Yに実質的に平行に向けられる。
【0114】
対向ブレード24は、好ましくは、ブレードリンク30のブレード14を軸方向に曲げるようにブレードリンク30の切縁34と機械的干渉接触当接部を形成するように適合された軸方向内側に面する表面を備える。そして、リアクションリンク20は、切断動作中にブレードリンク30の弾性曲げに対して軸方向の反作用を与える。リアクションリンク20の本体は、弾性変形可能であり得る。
【0115】
ブレードリンク30及びリアクションリンク20が実質的に閉じた構成にあるときの、ブレード14の変形構成は最大限に曲げられ、いずれの場合も、ブレードリンク30及びリアクションリンク20が部分的に閉じて部分的に開いた構成にあるときのブレード14の構成よりも曲げられる。必ずしもそうとは限らないが、好ましくは、開放角度が最大限に開いており、ブレード14が自由であるとき、切縁34は真っ直ぐであり、ブレードリンク本体30は、少なくともそのブレード14において実質的に平坦な構成を有する。
【0116】
切縁34と対向ブレード24との間の少なくとも1つの接触点POCは、好ましくは、開/閉自由度Gの開放角度の関数として位置及び/又はサイズが変化し、好ましくは、開放角度が減少するにつれて遠位方向に移動する傾向があり、それによってブレードリンク30の本体の弾性変形による曲げを強める。
【0117】
「接触点POC」は、好ましくは、切縁34と対向ブレード24との間の接触領域の最遠位部分を意味するが、接触領域は、実施形態の幾つかの構成において類似であり得る。
【0118】
弾性的に変形可能な屈曲切縁34は、鋭利であり得る、すなわち、ブレード14の本体の厚さと比較して局所的に減少した厚さ及び/又はその断面における鋭利な形状を有するように、鋭利化に晒されることができる。例えば、ブレードリンク30の断面は、切縁34において、ブレードリンクのブレード14の面が30°-60°の範囲で互いに角度を形成する尖った形状を有する。好ましくは、切縁34は、対向ブレード24に軸方向に面して配置されたブレードリンク30のブレード14の軸方向に面するブレード表面35と同一平面になるように鋭利にされる。言い換えれば、ブレードリンク本体30のブレード14は、軸方向内側に面するブレード表面35を備え、前記切縁34は、ブレード表面35の縁部を形成する。
【0119】
切断動作中、ブレードリンク30のブレード表面35は、その少なくとも一部において、リアクションリンク20と一体的回転する対向ブレード24と接触することができ、実質的に開/閉方向Gに向けられた摩擦力を交換する。
【0120】
好ましくは、動作状態にあるときに、各テンドンとテンドンがその上で摺動するリンクの全ての線織面との間で交換される全体的な摺動摩擦力は、開/閉自由度Gが閉鎖方向に移動して切断作用を行うときに、ブレードリンク30のブレード14の弾性的曲げ変形を達成するためにテンドンに必要とされる引張力よりもはるかに小さい(例えば、一~三桁ほど小さい)。すなわち、テンドンの摺動摩擦力は、ブレードリンク30と対向ブレード24との間の機械的干渉接触摩擦力よりもはるかに低い。この目的のために、テンドンはポリマー材料で作製することができ、リンクは金属材料で作製することができ、リンクの平行な母線を有する凸状線織面は滑らかであり、リンク上のテンドンの長手方向の摺動摩擦を低減することができる。例えば、リンクの線織面は、ワイヤ電気浸食によって得られる。
【0121】
一実施形態によれば、リアクションリンク20と一体に回転する前記対向ブレード24は、軸方向内側に面する凹面を有する湾曲突出面を備える。これにより、対向ブレード24の突出部は、軸方向内側に面する凹面を有するその湾曲によって得られる。
【0122】
一実施形態によれば、リアクションリンク20と一体に回転する対向ブレード24は、対向ブレード24が切縁34と機械的に干渉接触しているときに、ブレードリンク30の本体を弾性的に曲げるように、ブレードリンク30の回転フットプリントに向かって突出する。言い換えると、対向ブレード24は、軸方向内側に突出する。一実施形態によれば、対向ブレード24の上記突出部は、リアクションリンク20の長手方向延伸に沿って遠位方向に向かって、すなわち、共通回転軸Y-Yから離れるように強調され、好ましくは、上記突出部は、ブレードリンク30の本体の遠位端32の近く又は遠位端32で最大である。
【0123】
好ましくは、「接近回転フットプリント」という用語は、把持自由度Gの閉鎖方向の相対的回転運動中に要素の本体によって占められ得る空間の体積を示すことを意味する。
【0124】
ブレード表面35は、必ずしも平坦な部分であるとは限らず、すなわち、平面上にあるとは限らず、湾曲又はアーチ状の部分であってもよいが、一実施形態によれば、平坦な部分である。
【0125】
一実施形態によれば、ブレードリンク30の本体は、二次元の主延伸、すなわち、好ましくは、平坦又はアーチ状の横たわる表面(lying surface)上に配置され、前記好ましくは平坦又はアーチ状の横たわる表面上の延伸に対して実質的に減少した厚さを有する。
【0126】
一実施形態によれば、切縁34は、好ましくは平坦又はアーチ状の横たわる表面において実質的に真っ直ぐであり、ブレードリンク30の本体の横たわる表面に凹面を設けることを回避する。
【0127】
好ましくは、ブレードリンク30の厚さは、ブレードホルダリンク50の取り付け根元部51及びリアクションリンク20の取り付け根元部21の厚さよりも大幅に小さく、ブレードリンク30の本体のブレード14が、動作状態にあるときに、切縁34の長手方向延伸に対して横方向に、特にブレードリンク30の厚さの方向に弾性的に曲がり可能であるように選択される。特に、ブレードリンク30の本体は、好ましくは、リアクションリンク20の本体よりも曲がり可能であり、好ましくは、対向ブレード24の本体よりも可撓性である。ブレードリンク30の可撓性、したがって切縁34の可撓性は、その厚さの方向、すなわちブレードリンク30の平坦であるかアーチ状であるかにかかわらず、横たわる表面に直交する方向にあることを意図している。例えば、ブレードリンク30は、横たわる表面から出る/横たわる表面に入る方向に面する凹面を有するアーチ状、すなわち、凹状の形状を有し、そのような場合、ブレードリンク30の本体の横たわる表面は、ブレード表面35と同様にアーチ状表面である。
【0128】
必ずしも、ブレードリンク30、したがって切縁34は、横たわる表面において弾性的に変形可能であるとは限らない、すなわち、その厚さに直交する方向の曲がり可能性は必ずしも含まれるとは限らない。
【0129】
ブレード14の高さにおけるブレードリンク30の本体の厚さ(この評価では、前述のように鋭利であることが好ましい切縁34の厚さを除外する)と、リンク50の根元部51の厚さ及び/又はリアクションリンク20の第2の根元部21の厚さとの比は、1/5~1/20とすることができる。絶対値において、ブレードリンク30の厚さは、0.1mmから0.5mmの間とすることができ、一実施形態によれば、ブレードリンク30の厚さは、0.2mmに実質的に等しい。
【0130】
前述したように、ブレードリンク30は、ブレードホルダリンク50と一体に回転する。これにより、切縁34は、ブレードホルダリンク50の本体及び/又はブレードリンク30の本体によって形成することができる遠位自由端と一体に回転する。自由端がブレードリンク30の本体によって形成される場合、それはブレードリンク30の遠位端32と一致することができる。弾性的可撓性であるため、切縁34は、動作状態にあるときに、回転において一体であるブレードホルダリンク50に対して弾性的に変形することができる。切縁34の弾性変形は、好ましくは、ブレードホルダリンク50の本体の長手方向延伸に対して横方向、すなわち、近位取り付け根元部51と、切縁34と一体に回転する自由端とを結ぶ方向に対して横方向、言い換えれば、ブレードリンク30の本体の厚さ方向に生じる。
【0131】
一実施形態によれば、ブレードリンク30は、非変形形態にあるとき、すなわち、規定可能な横たわる表面上にあるとき、実質的に平坦である。ブレードリンク30の弾性的曲げは、ブレード14を前記非変形平面構成に戻す傾向がある。したがって、軸方向内側に面するブレード表面35は、ブレードホルダリンク50の根元部51の軸方向に面する内部接触面83と平行であり、好ましくは、例えば、継ぎ目なく位置合わせすることもできる。好ましくは、切縁34は、非変形状態にあるときは真っ直ぐであり、すなわち、リンク50の根元部51の軸方向に面する内部接触面83に平行な、好ましくは真っ直ぐの延伸として実質的に直線状に延びる。言い換えれば、一実施形態によれば、切縁34は、ブレードリンク30の規定可能な横たわる表面に平行に延在する。
【0132】
切縁34は、例えば、シャフト7が真っ直ぐで剛性のシャフトであり、切縁34が対向ブレード24の突出部と接触していない場合に、少なくとも1つの動作形態でロッド7の長手方向延伸X-Xと位置合わせすることができる。
【0133】
一実施形態によれば、前記対向ブレード24は、リアクションリンク本体20の長手方向延伸に対して横方向、好ましくは直交する方向に突出することができ、また、共通回転軸Y-Yに対して横方向、好ましくは、直交する方向に突出することができる。なお、対向ブレード24は、突出した状態であっても傾斜していなくてもよい。
【0134】
一実施形態によれば、前記対向ブレード24は湾曲面である。これにより、対向ブレード24は、そのアーチ形状によって突出する。対向ブレード24の凹面は、好ましくは、軸方向及び内側に面しており、すなわち、共通回転軸Y-Yに平行な方向に、切縁34の回転フットプリントに面している。
【0135】
対向ブレード24は、実質的に対向ブレード24の長手方向の延伸全体に沿って切断作用を行うように、切縁34及びブレードリンク30の本体を適切に曲げるためのウェッジ(wedge)として作用することができる。
【0136】
動作状態にあるときのブレードリンク30の取り付け根元部31は、動作状態では弾性的に曲がらない。これは、例えば、ブレードリンク30の取り付け根元部31は、支持リンク2の突起3、4の間に軸方向にしっかりと介設され、他のリンクの軸方向内側に面するそれぞれの対向する接触面、例えば、ブレードホルダリンク50の根元部51の接触面83及びリアクションリンク20の根元部21の反対側の接触面84と直接に密接する対向の接触面81、82を有するためである。開/閉自由度Gの移動中、リアクションリンク20の根元部21の軸方向内側に面する接触面84とブレードリンク30の根元部31の接触面82との間で直接に密接し、相対的な摺動が生じる。好ましい実施形態によれば、ブレードリンク30の取り付け根元部31は、ブレードホルダリンク50の根元部51とリアクションリンク20の根元部21との間に、軸方向に介設される。好ましくは、ブレードリンク30の根元部31の接触面82は、ブレード表面35と軸方向に位置合わせされ、継ぎ目なくブレード表面35と接合される。そして、支持リンク2の遠位接続部17の突起3、4は、軸方向外側に面する表面85、86と直接に密接する、軸方向内側に面する対向する接触面87、88を備える。好ましくは、軸方向外側に面する前記表面85、86は、ブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20に属する。以下に説明するように、更なる対向ブレードリンク40が含まれる場合、それは、例えば、対向ブレードリンクの2つの対向する接触面を有するその根元部41を備えることができ、2つの対向する接触面は、例えば、ブレードリンク30の接触面82と、リアクションリンク20の軸方向内側に面する接触面と直接に密接する。
【0137】
支持リンク2の遠位接続部17の突起3、4の間の根元部21、31、51のこのようなパック(pack)構成は、軸方向に剛性回転ジョイントYを形成し、すなわち、共通回転軸Y-Yの方向におけるリアクションリンク20、30、50の根元部21、31、51の間の相対変位が回避される。
【0138】
切断動作中、弾性は、ブレードリンク30の取り付け根元部31に対して遠位に位置するブレード14におけるブレードリンク30の本体の弾性可撓性によって少なくとも部分的に提供される。
【0139】
ブレードホルダリンク50の根元部51の第1の終端座部15と支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96、98の表面96との間の遠位共通回転軸Y-Yに平行な方向の軸方向距離Y5は、任意の切断状態において一定である。
【0140】
同様に、更なるリアクションリンク20の根元部21の第2の終端座部25と支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96,98の表面98との間の遠位共通回転軸Y-Yに平行な方向の軸方向距離Y5’は、任意の切断状態において一定である。
【0141】
すなわち、開/閉自由度Gの開放角度が変化するにつれて、支持リンク2の凸状線織面96,98と第1の拮抗テンドン対又は第2の拮抗テンドン対のテンドン71、72、73、74の終端座部15、25との間の軸方向距離Y5、Y5’は同じであるように維持される。
【0142】
一実施形態によれば、前記第1距離Y5は0であり、すなわち、終端座部15は、支持リンク2の凸状線織面96と長手方向に位置合わせされる。そのような場合、ブレードホルダリンク50の作動テンドン71、72は、互いに平行なそれぞれの遠位経路を有することができる。同様に、一実施形態によれば、前記第2距離Y5’は0であり、すなわち、終端座部25は、支持リンク2の凸状線織面98と長手方向に位置合わせされる。そのような場合、リアクションリンク20の作動テンドン73、74は、互いに平行なそれぞれの遠位経路を有することができる。
【0143】
軸方向距離Y5、Y5’は、任意の切断状態で不変のままであり、すなわち、遠位回転軸Y-Yの関節ピン5に沿った摺動が提供されないので、そのような距離又は他の軸方向距離は、関節式エンドエフェクタ9の異なる点の間で評価することができる。一実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の取り付け根元部51は、軸方向外側に面する第1表面85を備え、更なるリアクションリンク20の更なる根元部21は、軸方向外側に面する第2表面86を備え、ブレードホルダリンク50の取り付け根元部51の前記第1表面85とリアクションリンク20の更なる取り付け根元部21の前記第2表面86との間の軸方向の距離Y8は、任意の切断状態において一定である。表面85、86は、遠位回転軸Y-Yに直交する平坦な表面とすることができる。
【0144】
好ましい実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の根元部51の第1の終端座部15と支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96,98の表面96との間の軸方向距離Y5は、更なるリアクションリンク20の根元部21の第2の終端座部25と支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96,98の表面98との間の軸方向距離Y5’に等しい。
【0145】
したがって、根元部間、並びに根元部と突起との間の、関節ピン5に沿った軸方向の摺動を回避し、その上で第1の拮抗テンドン対又は第2の拮抗テンドン対のテンドン71、72、73、74が長手方向に摺動して開/閉自由度Gを作動させる。すなわち、切断作用を行う支持リンク2の線織面96,98と、ブレードホルダリンク50の根元部51又はリアクションリンク20の根元部21とそれぞれ一体に作られたそれぞれのテンドンの終端座部15、25との間の幾何学的関係が維持され。それによって、遠位共通回転軸Y-Yの周りの前記複数のリンク間の相対回転を妨げないようにすることができる。
【0146】
回転軸に平行な方向において、テンドンは、そのそれぞれの線織面に対して摺動しない。
【0147】
切断ジョイントの剛性の軸方向回転ジョイント502がこのように形成される。切縁34を有するブレードと、軸方向剛性回転ジョイント502と一体に回転する対向ブレード24とが設けられ、開/閉自由度の閉鎖動作中に共同で切断作用を行うことができる。
【0148】
したがって、関節ピン5に取り付けられた、又は支持リンク2の遠位部分17の突起3、4の間に他の方法で介設された、ベルビルタイプの弾性要素を設けることを回避することができる。更に、根元部を軸方向に一緒に締め付けるように適合された調整ねじを設けることも回避される。
【0149】
前記軸方向に剛性の遠位回転ジョイント502はまた、切縁34をヨーY-Yの回転軸の周りに回転させることによって切縁を方向付けることを可能にし、切断方向の調整を制御することを可能にする。
【0150】
そのような遠位回転ジョイント502はまた、ヨーYの自由度の任意の向き、すなわち、ブレードホルダリンク50、ブレードリンク30、及びリアクションリンク20によって形成されるアセンブリの、支持リンク2の遠位部分17に対する任意の動き、並びに近位回転ジョイント509のピッチP自由度の任意の向き、すなわち、支持リンク2、ブレードホルダリンク50、ブレードリンク30、及びリアクションリンク20によって形成されるアセンブリの、シャフトへの接続リンク90に対する任意の動きに対して、軸方向に剛性である。好ましくは、シャフトへの接続リンク90は、例えば、一対のピン94によってロッド7の遠位端8にしっかりと固定され、この場合、ピッチP自由度は、特にシャフト8が剛性シャフトである場合に、シャフト7に対する支持リンク2の向きとして理解することができる。
【0151】
前述したように、関節式エンドエフェクタ9のリンクを近位回転P-P及び/又は遠位Y-Yの前記共通軸、すなわち、ピッチP-P及び/又はヨーY-Yを中心に動かして関節式エンドエフェクタ9の自由度を活性化するために、好ましくは、外科用器具1は、シャフト9を通って、バックエンド部104から関節式エンドエフェクタ9まで延在し、関節式エンドエフェクタ9のリンクの少なくとも幾つかで終端する複数対の拮抗作動テンドンを備える。
【0152】
好ましい実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の根元部51は、第1の拮抗テンドン対71、72を受け入れる第1の終端座部15を一体に備え、リアクションリンク20の根元部21は、第2の拮抗テンドン対73、74を受け入れる第2の終端座部25を一体に備える。当業者であれば分かるように、この好ましい実施形態では、拮抗作動テンドンである前記第1の拮抗テンドン対及び第2の拮抗テンドン対のそれぞれは、開放作動テンドン71、73及び閉鎖作動テンドン72、74を備える。終端座部15、25をそれぞれのリンク20、50と一体に形成することにより、部品の数を最小限に抑えることができ、組み立てが容易になり、小型化が促進される。更に、ブレードリンク30の根元部31は、曲がり可能な部品として、非常に薄く、又は少なくとも薄くすることができ、ブレードリンク30の作製を弾性的に簡素化し、同時に切断動作に対して機能するその機械的特性の精密な特性評価を可能にする。更に、好ましい実施形態によれば、各終端座部15、25は、それぞれの拮抗テンドン対の両方の拮抗テンドンのための終端座部として機能し、リンク20,50のそれぞれに対して行われるべき動作の数を最小限に保つのに役立ち、したがって小型化を促進する。また、ブレードリンク30は終端座部を備えず、ブレードホルダリンク50によって回転に引きずられる。これにより、作動テンドンの数を少なく保つことができ、終端座部の数を最小限に保つことができ、したがって小型化が促進される。
【0153】
一実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の第1の終端座部15及びリアクションリンク20の第2の終端座部25は、それぞれのリンクの本体に隣接するそれぞれの根元部から、長手方向に延びるカンチレバドラッグレッグ77、78によってそれぞれ画定される。各カンチレバレッグ77、78は、好ましくは、そのそれぞれのリンクと一体に形成され、それぞれの根元部51,21に対して近位側に取り付けられ、ブレードホルダリンク50の本体又はリアクションリンク20の本体に沿ってそれぞれ長手方向にカンチレバ状に突出し、レッグの自由端77.1、78.1を形成する。これにより、ブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20の各終端座部15、25は、実質的に径方向のスロットであり、好ましくは長手方向のスロットでもあり、それぞれの取り付け根元部によって形成された径方向に面する底壁を有する。
【0154】
好ましくは、カンチレバドラッグレッグ77、78の延伸部と、ブレードホルダリンク50又はリアクションリンク20の本体のそれぞれの隣接部分の延伸部とは、それぞれの終端座部15、25の縁部の当接壁及び抗力壁15.1、25.1に面するように、それぞれ実質的に同一である。これらは、開/閉方向に同じレベルで並んで配置され、それぞれ第1の又は第2の終端座部15、25に受け入れられた一対の拮抗テンドンの各作動テンドン71、72、73、74のそれぞれのテンドン終端70の当接部及び抗力当接部として作用する。各作動テンドンのテンドン終端70は、例えば、それぞれの終端座部15、25の縁部の前記当接壁15.1及び抗力壁25.1に当接する結び目又はボスによって形成された拡大部分とすることができる。言い換えれば、各終端座部15、25の縁部の前記当接壁15.1及び抗力壁25.1は、閉鎖抗力当接部として作用する縁壁と、開放抗力当接部として作用する対向の反対縁壁とを含む。したがって、終端座部15及び25の当接壁及び抗力壁15.1、25.1は、それぞれの終端座部15、25のそれぞれのテンドン終端70のアンダーカットとして配置され、各終端座部15、25は、貫通終端座部であり、好ましくは、それぞれのリンクの自由端に向かって長手方向に面するアクセス開口を有する。したがって、前記第1の拮抗テンドン対及び第2の拮抗テンドン対の各作動テンドン71、72、73、74の遠位部分は、それぞれの終端座部15、25内で交差及び/又は重なり合って、それぞれのテンドン終端70を、それに対してアンダーカットとして周方向に配置された当接壁及び抗力壁15.1、25.1に当接させて、ブレードホルダリンク50及び/又はリアクションリンク20に対し、開/閉自由度Gの開/閉方向で回転時に抗力を与える。
【0155】
したがって、この場合、前記第1の軸方向距離Y5は、ブレードホルダリンク50の第1のカンチレバレッグ77と支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96、98の表面96との間の回転軸Y-Y方向の距離として規定することができ、そのような第1の軸方向距離は、任意の切断状態において一定である。同様に、この場合、前記第2距離Y5’は、第2のカンチレバレッグ78と支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96、98の表面98との間の遠位共通回転軸Y-Yと平行な方向の距離として規定することができ、この距離は任意の切断状態において一定である。
【0156】
好ましい実施形態によれば、前述したように、ブレードホルダリンク50の根元部51及びリアクションリンク20の根元部21はそれぞれ、共通回転軸Y-Yに対して反対側に面する少なくとも1つのプーリ面79,80を備え、プーリ面79,80、それぞれの抗力座部15,25を周方向の反対側から包み込み、それぞれの終端座部15、25内で継続してその半径方向に面する、すなわち、共通回転軸Y-Yの反対側に面する底壁を形成することができる。それにより、テンドン終端70がそれぞれの終端座部15,25のその当接壁15.1及び抗力壁25.1に当接したときに、前記第1の拮抗テンドン対及び第2の拮抗テンドン対のテンドン71,72,73,74の各テンドン終端70に近い遠位部分は、前記少なくとも1つのプーリ面79,80の周りに巻き付く。
【0157】
好ましい実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の根元部51の少なくとも1つのプーリ面79及びリアクションリンク20の根元部21の少なくとも1つのプーリ面80は全て、テンドンを案内又は保持するための周方向チャネル又は溝を含まなく、平行な母線を有し、共通回転軸Y-Yに平行な凸状線織面である。少なくとも1つのプーリ面79、80は、存在する場合、径方向カットチャネル19、29で中断することができる。
【0158】
一実施形態によれば、外科用器具1は、前記近位共通回転軸P-Pの周りで支持リンク2を動かせるための第3の拮抗テンドン対75、76を更に備える。したがって、支持リンク2は、第3の拮抗テンドン対75,76の前記第3の拮抗テンドン対のテンドン終端70を受ける少なくとも第3の終端座部6を備えることができる。例えば、図6A及び図6Bに示す実施形態によれば、支持リンク2の前記少なくとも第3の終端座部6は、支持リンク2の本体を通って軸方向に、すなわち遠位共通回転軸Y-Yに平行に、支持リンク2を通過する単一の終端座部であって、第1の終端座部15及び第2の終端座部25を参照して前述したものと同様に、第3の拮抗テンドン対のそれぞれの作動テンドン75、76のためのアンダーカットとして配置されたテンドン終端70用の当接壁及び抗力壁6.1を形成する。一実施形態によれば、支持リンク2は、2つの別個の異なる第3の終端座部6を備え、第3の拮抗テンドン対のそれぞれのテンドン75、76に対して1つの座部を備える。
【0159】
好ましい実施形態によれば、支持リンク2は、平行な母線を有し、全てが近位共通回転軸P-Pに平行な1つ以上の凸状線織面96、98を備える。第1の拮抗テンドン対及び第2の拮抗テンドン対の作動テンドン71、72、73、74は、ブレードホルダリンク50及び/又はリアクションリンク20の作動中に支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面84、86上を長手方向に摺動し、支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96,98は、テンドンを受けて案内するためのガイドチャネル又は溝を含まない。支持リンク2はまた、第1の拮抗テンドン対及び第2の拮抗テンドン対の作動テンドン71、72、73、74がブレードホルダリンク50及び/又はリアクションリンク20の作動中に、その上で長手方向に摺動する遠位共通回転軸Y-Y(図示せず)に平行な1つ以上の凸状線織面を含むことができる。
【0160】
平行な母線を有し、支持リンク2の近位共通回転軸P-Pに全て平行な同じような1つ以上の凸状線織面96、98は、第3の拮抗テンドン対の作動テンドン75、76用のプーリ面としても機能することができる。支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96,98は、支持リンク2の両側に延在する。一実施形態によれば、第3の拮抗テンドン対の作動テンドン75,76用のプーリ面は、支持リンク2の終端座部6の内面によって形成される。
【0161】
一実施形態によれば、リンク97、99は、平行な母線を有し、全てが近位共通回転軸P-Pに平行な1つ以上の凸状線織面71、72、73、74、75、76を備え、前記第1、第2及び第3の拮抗テンドン対の作動テンドン97、99は、リンク90の1つ以上の前記凸状線織面90上で長手方向に摺動する。接続リンク60の1つ以上の前記凸状線織面97,99は、接続リンク90の両側に延在し、接続リンク90と支持リンク2との間で、前記第一対、第2対、及び第3の拮抗テンドン対のそれぞれのテンドン71、72、73、74、75、76は、それらが近位方向に摺動する接続リンク90の凸状線織面97,99に対して反対側に面する支持リンク2の1つ以上の凸状線織面96,98上を、互いに交差して摺動するか又は摺動することなく巻き付く。例えば、支持リンク2の1つ以上の前記凸状線織面96,98は、リンク90の突起91,92の間に介設され、近位共通回転軸P-Pの反対方向に向けられる。
【0162】
テンドン71、72、73、74、75、76がその上を摺動する又は巻き付くことで接触する、リンクの平行な母線を有する凸状線織面79,80,96,97,98,99は、好ましくは、全てそれぞれのリンクの外面である。
【0163】
作動テンドン71、72、73、74、75、76は、好ましくは、絡み合ったポリマー繊維によって形成されたポリマーテンドンである。例えば、前記絡み合ったポリマー繊維は、高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維を含む。
【0164】
好ましい実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の前記根元部51、ブレードリンク30の前記根元部31、及びリアクションリンク20の前記根元部21によって形成されるグループは、支持リンク2の前記2つの突起3、4の間に全体的に介設され、2つの突起3、4と直接に密接する。これにより、根元部間及び各根元部と突起との間の相対移動が回避される。したがって、関節ピン5が含まれる場合、根元部と突起との間の関節ピン5に沿った相対的摺動は、ブレードリンク30の弾性変形中に回避される。換言すれば、根元部及び突起は、好ましくは互いに隣接して直接に密接しており、それらの間に弾性反力はない。たとえ遠位に、すなわち、共通回転軸Y-Yに対して所定の長手方向距離があったとしても、それぞれのリンクの幾何学的形状により、例えば、ブレードリンク30の切縁34と、リアクションリンク20と一体的回転する対向ブレード部分24との間の切断干渉接触が生じ得るように、それぞれのリンクの回転接近寸法が重なったり、干渉したりする可能性がある。
【0165】
根元部のこのようなパッケージ構成により、切断作用中にブレード本体の弾性曲げに対する反力が生じる。一方で、根元部間に弾性作用を及ぼす要素の提供が回避され、その結果、組み立てが簡素化され、極端な小型化が促進される。
【0166】
根元部のこのようなパック構成により、好ましくは関節ピン5よりも薄いブレードリンク30の根元部31の衝突が回避される。それにより、把持自由度Gの各開放角度において、対向ブレード24に対する切縁34の位置決めの十分な確実性を提供することができ、したがって、極めて高い切断精度を実現することができる。
【0167】
根元部は、好ましくは、共通回転軸Y-Yを中心とするシリンダ形状を有し、第3の根元部31が第1の根元部11及び第2の根元部21よりも実質的に小さい厚さを有する場合、第3の根元部31は、円板形のシリンダ形状を有する。同様に、これは、設けられている場合、対向ブレードリンク40の第4の根元部41にも適合することができる。
【0168】
ワイヤ電気浸食プロセスによる部品の製造は、増大された公差を得ることを可能にするが、共通回転軸Y-Yの方向において、根元部及び/又は突起の前記接触面の少なくとも幾つかの間に、10分の1ミリメートル程度の最小限の局所的マイクロクリアランスを提供して、直接的な密接を確保することができる。同時に、開/閉自由度G及び/又はヨーY自由度の作動中に、共通回転軸Y-Yを中心とした相対回転を可能にすることができる。関節ピン5は、根元部及び/又は突起の少なくとも1つと干渉し、すなわち、根元部及び/又は突起の少なくとも1つと一体に回転することができる。
【0169】
特に、支持リンク2、ブレードホルダリンク50、ブレードリンク30、及びリアクションリンク20が別個の部品で作られていることで、いずれの場合にも、軸方向、すなわち、それぞれの接触面間の共通回転軸Y-Yの方向には、最小のマイクロクリアランスが必然的に含まれる。そして、全体としての前記マイクロクリアランスは、実施形態によれば、ブレードリンク30の根元部31の厚さの1/20~1/5の範囲内にあり、分割され、すなわち、支持リンク2の突起3、4とそれぞれのリンクの根元部の接触面との間に局所的に分布し、ここで、ブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20の突起及び根元部の接触面は、それぞれワイヤ電気浸食(WEDM)によって作られる。
【0170】
したがって、「直接に密接する」という表現はまた、最小のマイクロクリアランスがいずれの場合にも、突起及びそれぞれのリンクの根元部の接触面の少なくとも一部だけでなく、それらの全部の間に含まれる実施形態を示すことを意図している。したがって、切断動作中、特に開/閉自由度Gの比較的大きい開放角度(例えば、20°-30°を超える角度)では、ブレードリンク30の切縁34と対向ブレード24との間の機械的干渉接触は、関節ピン5に沿ってブレードリンク30の根元部31の100分の1ミリメートル程度の最小の微小変位を生成することができる。
【0171】
例えば、本発明者らによって行われた分析から明らかなように、一実施形態によれば、ブレードリンク30の根元部31の厚さは約0.2mmであり、突起の接触面とそれぞれのリンクの根元部との間に局所的に分布する、動作状態にある共通回転軸Y-Yの方向の全体的なマイクロクリアランスは、全体的に約0.02mmであり、動作状態にあるとき、ブレードリンク30の根元部31とリアクションリンク20の根元部21との間の共通回転軸Y-Yの方向の局所的なマイクロクリアランスは、約0.01mm、すなわち、ブレードリンク30の根元部31の厚さの1/20に実質的に等しい。
【0172】
2つの突起3、4を有する支持リンク2、ブレードホルダリンク50の根元部51、リアクションリンク20の根元部21、及びブレードリンク30の根元部31が、上記で説明したように、共通回転軸Y-Yの方向に両方とも最小のクリアランスを課す別個の部品で作られる。これによって、これによって、開閉回転の自由度Gを開く方向と閉じる方向との両方において正確かつ制御された方法で操作することが可能になり、同時に把持動作及び/又は切断動作を行うことができる。
【0173】
好ましい実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の前記根元部51は第1貫通孔16を備え、リアクションリンク20の前記根元部21は第2貫通孔26を備え、ブレードリンク30の前記根元部31は第3貫通孔36を備え、前記根元部51の前記第1貫通孔16、前記根元部21の前記第2貫通孔26、及び前記根元部31の前記第3貫通孔36は、前記共通回転軸Y-Yと軸線上で整列している。一実施形態によれば、関節ピン5は、前記第1、第2、及び第3貫通孔16、26、36の内側に受け入れられる。この場合、前記関節ピン5は、支持構造体の突起3、4のうちの1つを備える単一のカンチレバレッグとして作製することができ、又は、関節ピン5は、2つの対向して整列したカンチレバレッグの形で2つの部品として作製することができ、2つの部品のそれぞれが支持構造の突起3、4のうちの1つを備える単一部品である。ただし、好ましい実施形態によれば、関節ピン5は、根元11、21、31に関して、また、突起3、4に関しても別個の部品である。一実施形態によれば、2つの突起3、4のそれぞれは、前記共通回転軸Y-Yと軸線上で整列され、前記第1、第2、及び第3貫通孔16、26、36のそれぞれ、及び全てと整列された突起の貫通孔を備える。
【0174】
一実施形態によれば、根元部51の前記第1貫通孔16、根元部21の前記第2貫通孔26、及び根元部31の前記第3貫通孔36は、全て円形の貫通孔であり、前記共通回転軸Y-Yと同軸であり、支持リンク2の遠位接続部17の第1突起3から支持リンク2の遠位接続部17の第2突起4まで共通回転軸Y-Yの方向に延在する単一の関節ピン5を受け入れる。一実施形態によれば、第1の根元部51の前記第1貫通孔16、第2の根元部21の前記第2貫通孔26、及び第3の根元部31の前記第3貫通孔36は全て、実質的に同じ直径を有し、それぞれの孔縁部の周方向延伸の全体にわたって直接に密接して前記関節ピン5を受け入れる。
【0175】
ブレードリンク30の根元部31の円形の前記第3貫通孔36を、その孔縁部の周方向延伸全体にわたって関節ピン5と直接に密接させて設けることにより、ブレードリンク30の切縁34によって及ぼされる切断作用に反力を与えることが可能になる。特に、切断作用中に、把持自由度Gの開放角度が徐々に減少し、ブレードリンク30の切縁34(及び好ましくはブレード表面35も)と、リアクションリンク20と一体に回転する対向ブレード24との間の機械的干渉接触をもたらし、したがって、開放方向の直接摩擦力が、対向ブレード24と接触しているブレードリンク30の本体の切縁34(及び好ましくはブレード表面35も)に発生し、これは、ブレードリンク30の根元部31の第3貫通孔36の孔縁部と関節ピン5との間の相互接触の部分で交換される切断作用の摩擦に対する反力によって平衡がとられる。切断作用の摩擦反力は、好ましくは、共通回転軸Y-Yに対して実質的に径方向に沿って向けられる。切断作用の摩擦に対する反力は、好ましくは、円形の貫通孔36に面するブレードリンク30の根元部31の円形の第3貫通孔36の孔縁部の厚さの円弧面38に影響を与える。
【0176】
根元部の貫通孔の少なくとも一部だけでなく全部もがワイヤ電気浸食(WEDM)によって作られる場合、ワイヤ電気浸食によって貫通孔を作るために使用される切断ワイヤの連続カット経路の効果として、径方向カットチャネル19、29、39が、孔縁部とそれぞれの根元部の外縁部との間のそれぞれの根元部に設けられる。好ましくは、それぞれの根元部上の径方向カットチャネルの配置は、動作状態にあるときのそれぞれのリンクの静的又は動的挙動に基づいて研究される。特に、好ましい実施形態によれば、ブレードリンク30の根元部31のカットチャネル39は、リンク20の根元部21のカットチャネル29に対して径方向にオフセットされて、開/閉動作中にカットチャネルの縁部が互いに噛み合うのを防止する。
【0177】
一実施形態によれば、支持リンク2の遠位接続部17の前記2つの突起3、4のそれぞれの貫通孔は、前記共通回転軸Y-Yと同軸の円形の貫通孔である。突起3、4がワイヤ電気浸食によって作られる場合、それぞれの突起の孔縁部と外縁部との間の少なくとも1つの径方向チャネルを突起に設けることができる。
【0178】
前述したように、外科用器具1の前記関節式エンドエフェクタ9は、第3の近位取り付け根元31と、曲げることによって弾性変形可能な切縁34とを一体的に備えるブレードリンク30を更に備える。切縁34は、鋭くすることができる。すなわち、切縁34は、ブレードリンク30の本体の厚さに対して局所的に減少した厚さ及び/又は鋭利な形状の断面を有するように鋭利化加工を受けることができる。
【0179】
一実施形態によれば、前記ブレードリンク30は、適切には実質的に平坦な弾性シート又はストリップを成形することによって、すなわちカットされることによって作製される。例えば、弾性シート又はストリップは、ブレードに関してばね鋼で作られ、ワイヤ電気浸食(WEDM)及び/又は光エッチング及び/又はレーザ切断及び/又は化学エッチングによって成形することができる。好ましくは、弾性シート又はストリップは、その一方の縁部で鋭利化されて、ブレードリンク30の切縁34を形成する。鋭利化加工は、ワイヤ電気浸食(WEDM)及び/又は研削(grinding)、例えば、石又はダイヤモンド研削によって行うことができる。一実施形態によれば、成形されたシート又はストリップの1つ以上の縁部は、切断ワイヤがシート又はストリップの横たわる表面に対して直交しない方向に流れるステップにおいてワイヤ電気浸食(WEDM)によって鋭利化される。
【0180】
一実施形態によれば、ブレードリンク30の本体は、二次元の主延伸、すなわち、好ましくは平坦又はアーチ状の横たわる表面上に配置され、前記好ましくは平坦又はアーチ状の横たわる表面上の延伸に対して実質的に減少した厚さを有する。
【0181】
一実施形態によれば、ブレードリンク30の切縁34は、好ましくは平坦又はアーチ状の横たわる表面において実質的に真っ直ぐであり、ブレードリンク30の本体の横たわる表面に凹面を設けることを回避する。
【0182】
好ましくは、ブレードリンク30の厚さは、前記リンク20、50の厚さよりも著しく小さく、動作状態にあるときに、ブレードリンク30の長手方向延伸に対して横方向に、すなわち厚さの方向に、ブレードが弾性的に曲がり可能であるように選択される。特に、ブレードリンク30は、リアクションリンク20よりも曲がり可能でなければならず、好ましくはブレードホルダリンク50よりも曲がり可能でなければならない。ブレードリンク30の可撓性、したがってブレードリンク30の切縁34の可撓性は、その厚さの方向、すなわち、ブレードリンクの横たわる表面に直交する方向に意図されている。想定し得る実施形態によれば、ブレードリンク30の本体は、出発弾性ストリップ又はシートの横たわる表面から出る/そこに入る方向に面する凹面を有するアーチ状、すなわち凹状の形状を有することを強いられるが、ブレードリンク30の本体のそのような横たわる表面は、適切に加工されてブレードリンク30を形成する出発金属ストリップ又はシートの横たわる表面に実質的に対応することができ、この場合、ブレードリンク本体の横たわる表面はアーチ状表面になる。
【0183】
必ずしも、ブレードリンク30、したがってブレードリンク30の切縁34は、横たわる表面において弾性的変形可能であるとは限らない、すなわち、その厚さに直交する方向の曲げ性は必ずしも含まれるとは限らない。
【0184】
ブレードリンク30の材料は、支持リンク2、リアクションリンク20及び/又はブレードホルダリンク50の材料に対して異なる材料とすることができる。例えば、ブレードリンク30は、ブレード用鋼で作ることができる。例えば、動作状態にあるときに、切縁34をより硬く耐摩耗性にするために、例えば、コーティング及び/又は熱処理などの1つ以上の表面処理をブレードリンク30に含めることができる。一実施形態によれば、切縁34は、動作状態にあるときに対向ブレードとの機械的干渉接触によって機能するように適合された少なくとも表面35上の表面処理を含む。
【0185】
ブレードリンク30は、例えば、プレス曲げ(press-bending)によって曲げることができる。プレス曲げによる湾曲は、ブレードリンク30に所望の弾性特性を与え得ることができる。例えば、ブレードリンク30は、機械的干渉作用を局所的に修正するために、対向ブレードに向かって軸方向に曲げられることができる。
【0186】
根元部31のレベルでのブレードリンク30の厚さ(この評価では、前述のように鋭利であることが好ましい切縁34の厚さを除外する)と、ブレードホルダリンク50の根元部51の厚さ及び/又はリアクションリンク20の根元部21の厚さとの比は、1/5~1/20とすることができる。絶対値において、ブレードリンク30の厚さは、0.1mmから0.5mmの間、好ましくは0.1mmから1mmの間の形態とすることができる。
【0187】
前述したように、支持リンク2、ブレードホルダリンク50、ブレードリンク30、及びリアクションリンク20は、別個の部品で形成され、好ましくは共通回転軸Y-Yに関節結合された、すなわち、共通回転軸Y-Y、又は共通回転軸ヨーY-Yに対して回転するように拘束された4つの別個の部品で形成される。一実施形態によれば、関節式エンドエフェクタ9は、正確には、前記共通軸Y-Yで一緒に関節結合される前記4つの部品(すなわち、前記4つのリンク2、20、30、50)と、加えて、前記共通軸Y-Yを規定する関節ピン5である更なる部品と、加えて、ピッチP-Pの前記近位共通回転軸を規定する更なる近位関節ピン93によって、ピッチP-Pの近位共通回転軸で支持リンク2に対して関節結合されるシャフト7を備える更なる接続リンク90と、によって構成される(合計7つの部品であって、作動テンドンはカウントから除外される)。ピッチP-P共通回転軸がヨーY-Y共通回転軸に対して非平行(好ましくは直交)であるこの実施形態により、ロッド7の遠位端に関節式カフを得ることが可能になり、ピッチP-P回転軸が非平行であり、好ましくはヨーY-Y共通回転軸に対して直交する場合、関節式カフには、ピッチ、ヨー、及び把持自由度Gが与えられる。把持自由度Gは、把持及び切断を管理するように適合される。接続リンク90がロッド7の遠位端8(図示せず)と一体に形成される場合、関節式エンドエフェクタ9は依然として、ロッド7の遠位端8、支持リンク2、ブレードリンク30、ブレードホルダリンク50、リアクションリンク20、及び前記2つの関節ピン5、93である前記7つの部品によって構成される。
【0188】
シャフト7と一体であり、好ましくはバックエンド部104とも一体であるロールRの自由度、例えば、外科用器具1全体をロッド7の長手方向延伸軸X-Xの周りで回転させることができるようにするロールRの自由度を提供することができる。
【0189】
部品の数を最小限に抑えることにより、外科用器具1の関節式エンドエフェクタ9の組み立てが大幅に簡素化され、極端な小型化に適したものになることが当業者には理解されるであろう。特に、軸方向(関節ピン5に取り付けられたベルビル型弾性ワッシャなど)、すなわち、支持リンク2の遠位接続部17間の共通回転軸Y-Yの方向に弾性予荷重要素を設けることを回避することにより、部品の組み立てを簡単にすることができ、したがって、関節式エンドエフェクタ9の極端な小型化、ひいてはロッド7の断面の極端な小型化を促進するとともに、動作状態で生じ得る応力に対する十分な強度及び抵抗を確保することができる。
【0190】
好ましい実施形態によれば、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50の少なくとも一方は、遠位自由端を備える。ブレードリンク30の本体の遠位端32は、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50によって形成されるアセンブリの遠位自由端を形成することができる。或いは、ブレードリンク30の遠位端32は、ブレードリンク30の抗力係合部37として作用するブレードホルダリンク50の抗力部57に回転的に拘束され、すなわち、ブレードリンク30の抗力部37は、その遠位端32と一致することができる。
【0191】
一実施形態によれば、リアクションリンクは遠位自由端22を含む。
【0192】
別の実施形態によれば、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50は一体に形成され、したがって、例えば、図34に示すように、根元部31及び根元部51は一体で形成される。
【0193】
(ハサミ型外科用器具)
本発明の実施形態の前述の説明を参照すると、前記外科用器具1は、例えば、図3図5図7図8図11図12図15図30図40及び図43に示すようなハサミ型外科用器具であり得る。前記外科用器具1の実施形態を以下に説明し、当該実施形態では、前記外科用器具1がハサミ型外科用器具である
【0194】
好ましい実施形態によれば、ブレードリンクの遠位端32は、遠位自由端を形成する。
【0195】
好ましくは、対向ブレード24は、リアクションリンク20の本体と一体に形成される。
【0196】
好ましい実施形態によれば、リアクションリンク20の本体はまた、切断作用を行うために軸方向に弾性的に曲げることができる。したがって、切断動作中、ブレードリンク30の切縁34とリアクションリンク20の対向ブレード24との間の機械的干渉接触は、ブレードリンク30の軸方向外側に向けられた弾性的曲げ変形をもたらし、同時に、軸方向外側に向けられたリアクションリンク20の弾性的曲げ変形をもたらす。なお、ブレード14の外軸方向は、リアクションリンク20の外軸方向と反対方向を意図している。
【0197】
例えば、図35に図示しているように、リアクションリンク20の対向ブレード24が、軸方向内側に面する、すなわち、ブレードリンク30に面する凹面を有する湾曲突出面である。この場合、突出部は、リアクションリンク20の遠位自由端22に遠位方向に近づくにつれて、又は遠位方向において強調される。切断動作中、好ましくは、小さい開放角度、すなわち、所定の閾値未満、例えば5°未満の開放角度を有する切断動作中に、切縁34と対向ブレード24との間の接触点POCは、自由端32、22に近接し、その結果、ブレードリンク30には、その非変形構成に対して、外側軸方向の弾性的曲がりが生じるとともに、リアクションリンク20にも、その非変形構成に対する弾性的曲がりが生じる。換言すれば、ブレードリンク30及びリアクションリンク20は、ブレードリンク30の本体及びリアクションリンク20の本体の両方がそれぞれの非変形構成に対して外側軸方向に弾性的に曲げられ、小さい開放角度での切断動作を行うための平衡構成に達する。
【0198】
前述したように、「接触点POC」は、好ましくは、切縁34と対向ブレード24との間の接触領域の最遠位部分を意味する。
【0199】
切縁34と対向ブレード24との間の接触点POCが、例えば、約10°-25°の開放角度の場合、前述した構成に対してより後方の位置、すなわち、より近位にあるとき、リアクションリンク20の構成は、接触点POCが自由遠位端22に近いか又は自由遠位端22にあるとき(開放角度が閾値未満、例えば5°未満又は10°未満のとき)よりも顕著な湾曲を表すことができる。それは、リアクションリンク20が近位において剛性がより強く、自由遠位端22に近いか又は自由遠位端22において、曲がり可能性がより強いためである。しかしながら、ブレードリンク30の本体は、必ずしも接触点POCがリアクションリンク20の自由遠位端22に近い又は自由遠位端22にあるとき(開放角度が閾値未満、例えば5°未満又は10°未満のとき)に、より顕著な湾曲を表すように変形する、すなわち曲がることを意味するとは限らないことに留意されたい。なぜなら対向ブレード24の曲率は、リアクションリンク20の遠位自由端22においてより強調されるように選択することができるためである。好ましい実施形態によれば、リアクションリンク20の本体は、長手方向に先細りになっており、リアクションリンク20の遠位自由端22に近づくにつれて軸方向に薄くなり、リアクションリンク20の曲がり可能性を実現する。
【0200】
一実施形態によれば、リアクションリンク20の対向ブレード24は、軸方向内側に面する、すなわち、ブレードリンク30に面する凹面を有する湾曲突出面であり、対向ブレード24の突出部は、リアクションリンク20の遠位自由端22の遠位側に近づくにつれて、又は遠位側において強調される。また、ブレードリンク30の本体は、切縁34を有するブレードが軸方向内側に面する、すなわち、対向ブレード24に面する凹面を有する湾曲突出部であり、ブレードリンク30の突出部は、その遠位自由端32の遠位側に近づくにつれて、又は遠位側において強調される。換言すれば、この実施形態では、ブレードリンク30の軸方向内側に面するブレード表面35は、軸方向内側に、すなわち、対向ブレードに向かって面する凹面を有する凹状突出面であり、突出部は、第1の先端30の第1の自由遠位端32に近づくにつれて、又は第1の自由遠位端32において強調される。この実施形態では、切縁34も、好ましくは、軸方向内側に面する凹面を有する湾曲経路を描く。
【0201】
ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50が、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50を一体に回転させるためのそれぞれの抗力係合部37、57を更に備える実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の抗力係合部57は、内軸方向の突出部57、すなわち、開放抗力面57.2及び反対側の閉鎖抗力面57.1を備える軸方向内側に延びる軸方向隆起部57として形成される。ブレードリンク30の抗力係合部37は、ブレードホルダリンク50の前記軸方向の隆起部57を受け入れる軸方向貫通スロット37として形成される。前記軸方向貫通スロット37は、ブレードホルダリンク50の軸方向隆起部57の前記開放抗力面57.2と抗力接触する開放抗力面37.2と、ブレードホルダリンク50の軸方向隆起部57の前記閉鎖抗力面57.2と抗力接触する反対側の閉鎖抗力面37.1とによって画定される。したがって、この場合、ブレードホルダリンク50の軸方向隆起部57は、入口開口37.0によってブレードリンク30のスロット37に挿入され、その後、入口チャネルを通って延び、その後、抗力係合部を得るようにブレードリンク30に対して回転される。換言すれば、この場合、ブレード30は、長手方向に、例えば、共通回転軸Y-Yに向かって近位方向に向けられてカンチレバ状に延在し、切断動作を得るには機能しない開放ドラッグレッグを備え、当該カンチレバ開放ドラッグレッグは、前記開放抗力面37.2を備え、その縁部で入口開口37.0を画定する。
【0202】
ブレードホルダリンク50の抗力係合部の軸方向隆起部57は、ブレードホルダリンク50の遠位端52で得ることができる。これにより、ブレードホルダリンク50は、前記軸方向隆起部57を形成する拡大及び/又は曲がった遠位端52を有するスクワット(aquat)形状を有する。
【0203】
必ずしもそうとは限らないが、ブレードリンク30が弾性的に曲がる切断動作中に、ブレードリンク30の軸方向外側の曲げ変形は、前記抗力係合スロット37に対して遠位側でのみ起こり得るため、ブレードリンク30は、ブレードホルダリンク50の軸方向隆起部57に対して軸方向外側にスライドする。ブレードホルダリンク50は、その根元51と、ブレードリンク30と接触する軸方向隆起部57との間に、軸方向内側に面する表面58を備えることができる。
【0204】
ブレードホルダリンク50の軸方向隆起部57の位置及び内軸方向におけるその延伸は、閉鎖抗力面57.1に対する軸方向隆起部57の軸方向内側部分が、第2の先端20のための閉鎖ストローク端面54を形成するように選択することができる。閉鎖ストローク端面54は、開/閉自由度Gのための閉鎖ストローク端として作用し、リアクションリンク20の表面を当接して受け入れるように適合されている。このため、ブレードホルダリンク50の軸方向隆起部57は、ブレードリンク30との抗力係合機能と、閉鎖ストローク当接機能との両方を果たすことができる。
【0205】
好ましくは、閉鎖ストローク端面54は、切縁34が既に存在する長手方向のレベルで延在する、すなわち、閉鎖ストローク端面54は、ブレード表面35から軸方向にカンチレバ状に延在する。
【0206】
例えば、図34に示すような実施形態によれば、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50が一体に形成されて先端リンクを形成し、ブレード表面35から軸方向にカンチレバ状に延在する閉鎖ストローク端当接部が提供される。
【0207】
閉鎖ストローク端面54は、好ましくは、ブレードホルダリンク50から、リアクションリンク20の回転接近フットプリント内で延在する。
【0208】
例えば、図38に示す実施形態によれば、リアクションリンク20の細長い本体は、切断作用を行うために軸方向に弾性的に曲がり可能であり、リアクションリンク20の本体は、根元部21から遠位方向に延在し、リアクションリンク20の本体の切断インタフェース部27で終端する接続ステム23を備え、前記切断インタフェース部27は、2つの長手方向に対向する自由端及びそれらの間の、前記対向ブレード24を含む長手方向及び軸方向内側の細長い本体を有する。好ましくは、切断インタフェース部27の遠位自由端は、リアクションリンク20の前記遠位自由端22と一致し、切断インタフェース部27の反対側の近位自由端27.0は、共通回転軸Y-Yに向かって、すなわち、リアクションリンク20の根元部21に向かってカンチレバ状に延在する。これにより、接続ステム23とリアクションリンク20の切断インタフェース部27とは一種の「T」構造を形成する。当該「T」構造では、2つのカンチレバアーム27.1及び27.2は、切断インタフェース部27の接続ステム23の遠位上部から長手方向の反対側に突出し、それぞれが自由端を有し、そして、対向ブレード2424は、切断インタフェース部の両方のカンチレバアーム27.1及び27.2に属し、接続ステム23に対して反対側に向いている。
【0209】
これにより、対向ブレード変形座部28が切断インタフェース部27の近位アーム27.1と接続ステム23との間に形成され、対向ブレード24の軸方向の変形、すなわち、切断インタフェース部27の、近位自由端27.0を有する近位アーム27.1の軸方向の変形を受け入れる。一実施形態によれば、第2の拮抗テンドン対の拮抗作動テンドン73、74のための第2の終端座部25は、切断インタフェース部27の接続ステム23と近位アーム27.1との間に軸方向に配置される。一実施形態によれば、第2の終端座部25の遠位カンチレバレッグ78は、接続ステム23と切断インタフェース部27の近位アーム27.1との間で遠位側にカンチレバ状に延在し、その結果、接続ステム23は、リアクションリンク20の第2の終端座部25を軸方向外側に画定し、第2の終端座部25の遠位カンチレバレッグ78は、対向のブレード変形座部28の少なくとも一部を軸方向外側に画定する。一実施形態によれば、第2の終端座部25は、前記対向のブレード変形座部28内に開き、したがって、この実施形態では、拮抗作動テンドン73、74は、遠位方向に開く第2の終端座部25内にそれぞれ挿入することができる。拮抗作動テンドン73、74を切断インタフェース部27の近位アーム27.1の近位自由端27.0と根元部21との間に形成された開口内に軸方向に挿入した後、それらをカンチレバレッグ78の軸方向内側に沿って遠位方向において対向ブレード変形座部28内に導いた後、それらを第2の終端座部25の入口に挿入する。したがって、この実施形態では、好ましくは、リアクションリンク20の本体の近位アーム27.1の対向ブレード24がブレードリンク30の切縁34と接触しないように、リアクションリンク20とブレードリンク30とが開放角度(例えば、約90°の開放角度)を形成し、近位自由端27.0と根元部21との間に形成された開口で軸方向のアクセスが解放されたときに、拮抗作動テンドン73、74の組み立てを行う。
【0210】
前記切断インタフェース部27で終端する前記接続ステム23を備えるそのようなリアクションリンク20を設けて、すなわち、前記対向ブレード24は、前記切断インタフェース部27に属し、近位自由端27.0を有する近位アーム27.1と、リアクションリンク20の前記第2の自由端と一致する遠位自由端を有する長手方向の反対側の遠位アーム27.2とを有することによって、対向ブレード24の長手方向延伸の実質的に全体に沿って、外軸方向に弾性的に曲がり可能なリアクションリンク20を形成することができる。これによって、大きい開放角度、例えば、25°-60°の範囲、好ましくは28°-58°の範囲の開放角度に対しても正確な切断動作を行うことができる。この状態は、接触点POCが切断インタフェース部の前記近位アーム27.1に属し、好ましくは、切断インタフェース部27の近位自由端27.0に近いか又は近位自由端27.0にある状況に対応する。この場合、すなわち大きい開放角度では、ブレードリンク30のブレードは切断作用を発揮するために必ずしも弾性的に曲がるとは限らない、弾性はリアクションリンク20のみによって提供することができる。特に、一実施形態によれば、接触点POCが近位アーム27.1の近位自由端27.0にあるとき、開放角度は約58°であり、切断作用が依然として実行される。
【0211】
したがって、前記切断インタフェース部27で終端する前記接続ステム23を含むそのようなリアクションリンク20を設けることによって、それぞれの作動テンドンにおける引張作用によって生じるブレードホルダリンク50又はリアクションリンク20での作動力を最小限に抑えながら、0°-60°の範囲の開放角度での正確な切断を行うように適合された解決策が可能になるとともに、テンドン終端15、25でのそれぞれの根元部51、21のプーリ面79、80の半径を最小限に抑えることを可能にし、したがって同時に極端な小型化を可能にする。
【0212】
例えば、図39Aに示すように、比較的高い開放角度(例えば、50°-60°の範囲の角度)では、切縁34と対向ブレード24との間の接触は、リアクションリンク20の切断インタフェース部27の近位自由端27.0に近いか又は近位自由端27.0で発生し、したがって切断機械的干渉接触は、リアクションリンク20の変形座部28の内側の近位アーム27.1の外側軸方向の変形をもたらすが、ブレードリンク30は、例えば、ブレードホルダリンク50によって外側軸方向に支持されているため、実質的に変形したまま、すなわち弾性的に曲がらない。これにより、例えば開放角度約60°までの大きい開放角度でも切断作用を行うことが可能になる。開放角度が小さくなるにつれて、接触点POCは遠位方向に移動する。
【0213】
例えば、図39Bに示すように、上記よりも小さい開放角度、すなわち、例えば10°-25°の範囲の開放角度の場合、切縁34と対向ブレード24との間の接触点POCは、切断インタフェース部27の、接続ステム23が終端する場所に近い部分、又は接続ステムが終端する場所にある。切断機械的干渉接触は、切断インタフェース部25を軸方向外向きに戻す接続ステム23の外側軸方向の変形をもたらし、一方、ブレードリンク30は弾性的に曲がらなくても可能であるが、特に部品が極度に小型化された場合には、軸方向外側に曲がることが好ましい。これにより、例えば10°-25°の範囲の中間開放角度では、リアクションリンク20の外側軸方向の変形を利用して、切断作用を行うことができる。この場合、ブレードリンク30の近位部分は、依然としてリアクションリンク20の切断インタフェース部27の近位アーム27.1の対向ブレード24と干渉接触することができる。
【0214】
例えば、図39から図39Cに概略的に示すように、例えば0°-5°及び/又は0°-10°の範囲の小さい開放角度の場合、切縁34と対向ブレード24との間の接触点POCは、遠位自由端22、32に近いか、又は遠位自由端にあり、切断機械的干渉接触は、ブレードリンク30と、リアクションリンク20の切断インタフェース27及び接続ステム23との両方の外側軸方向の変形をもたらす。
【0215】
対向ブレード24の曲率、並びに切断インタフェース部27及び接続ステム23の構造及び弾性特性は、例えば0°-60°の範囲の非常に広い範囲の開放角度に対して切断性能を最適化するように選択することができる。
【0216】
対向ブレードリンク40を更に設けることができる。当該対向ブレードリンク40は、回転する対向ブレード2を備え、リアクションリンク20と一体に回転することができる。好ましくは、対向ブレードリンク40は、リアクションリンク20の根元部21と、ブレードリンク30の根元部31とに隣接する対向ブレードリンク40の根元部41を一体に備える。
【0217】
一実施形態によれば、対向ブレードリンク40は、好ましくは、ブレードリンク30の切縁34に対して反対側に配置された対向ブレード切縁を備える。
【0218】
(針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具)
本発明の実施形態の前述の説明を参照すると、前記外科用器具1は、例えば、図2図4図6図10及び図16図29、並びに図42に示すように、針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具(又は共通に採用される専門用語によれば「針ホルダ/カッター」)であり得る。以下に前記外科用切断器具1の実施形態を説明し、前記外科用器具1は、針ドライバ/縫合糸カッター型外科用器具である。
【0219】
好ましい実施形態によれば、ブレードリンク30の遠位端32は自由端を形成せず、一方、ブレードホルダリンク50の遠位端52は遠位自由端を形成する。
【0220】
一実施形態によれば、遠位端32と遠位端52とが一体に形成される。この場合、例えば、図21に示すように、ブレードリンク30の遠位端32は、長手方向に引き込まれた自由端であり、すなわち、ブレードホルダリンク50の自由端52よりも近位にある。この実施形態では、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50は、一体に形成され、すなわち単一リンクとして構成される。
【0221】
一実施形態によれば、ブレードホルダリンク50は、根元部51と自由端52との間にストローク端面54を備え、ストローク端面54はまた、リアクションリンク20の根元部21と自由端22との間に配置されたリアクションリンク20の反対側の対面可能な把持面53と協働して、把持作用を行うための把持面としても機能する。使用時に、ブレードホルダリンク50の把持面54及びリアクションリンク20の把持面53は、互いに対向し、回転時に互いに対面して、相互に接触して移動し、例えば、外科用針に把持作用を行うように意図される。各把持面53,54は、既知の技術に従って機械加工することができ、把持能力を高めるためにレリーフ(reliefs)及び凹部を形成することができる。
【0222】
一実施形態によれば、ブレードリンク30の本体は遠位端32を含み、遠位端32は、好ましくは抗力係合部37として作用し、したがって、ブレードリンク30がブレードホルダリンク50に組み立てられたときに、遠位端32は自由端ではない。
【0223】
一実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の本体及びリアクションリンク20の本体はそれぞれ、それぞれの取り付け根元部から、それぞれの自由端まで延在する長手方向に細長い形状を有し、それぞれの把持面はそれぞれの自由端の近くに配置され、ブレードホルダリンク50、ブレードリンク30、及びリアクションリンク20の根元部は互いに隣接し、一方、ブレードリンク30のブレード14は、ブレードホルダリンク50の本体とリアクションリンク20との間の軸方向座部に受け入れられる。言い換えれば、ブレードホルダリンク50の細長い本体とリアクションリンク20とは、それぞれの根元部及びそれぞれの把持面において互いに隣接し、一方、ブレードリンク30は、その根元部31においてブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20の根元部に隣接し、その長手方向の延伸全体に沿って、ブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20の本体に隣接してそれらの間に介設されている。
【0224】
一実施形態によれば、ブレードリンク31の根元部は、ブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20の根元部間に介設される。好ましくは、ブレードリンク30の本体はまた、長手方向に細長く、ブレードリンク端部32を含み、ブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20の本体よりも短い。ブレードリンク30の本体は、互いに隣接する複数の取り付け根元部から、実質的に長手方向にブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20の把持面53、54の領域まで延びる。すなわち、ブレードリンク30の遠位端32は、把持面53、54の近位縁部に近いレベルまで長手方向に延在する。
【0225】
把持面53,54は、開/閉自由度Gのための閉鎖ストローク端として機能することが好ましい。
【0226】
一実施形態によれば、ブレードホルダリンク50は、軸方向内側に面する表面58を備え、軸方向内側に面する表面58は、ブレードリンク30の本体から離れるように軸方向内側に傾斜し、切断動作中に、対向ブレード24の突出面の作用によって弾性的に曲がったブレードリンク30の本体のブレード部分14を受け入れるように適合された軸方向の変形凹部44(又は変形座部44)を画定する。したがって、対向ブレード24及び軸方向内側に面する表面58は、両方ともブレードリンク30のブレード14に面し、切断動作中に両方ともブレード14に接触する。好ましくは、ブレードホルダリンク50の軸方向内側に面する表面58は、切断動作中に、対向ブレード24による曲げによって変形するときに、ブレードリンク30のブレード14の変形のための軸方向ストローク端当接面として機能する。対向ブレード24の突出面及びブレードホルダリンク50の軸方向に面する表面58の輪郭は、互いに平行であってもよく、一実施形態ではそれらが対応して同一である。
【0227】
切縁34と対向ブレード24との間の少なくとも1つの接触点POCは、好ましくは、例えば、図19に概略的に示すように、開/閉自由度Gの開放角度の関数として位置及び/又はサイズが変化する。特に、比較的大きい開放角度(例えば、20°-30°の範囲の角度)では、接触は、切縁34により近い部分、すなわち、ブレードリンク30の取り付け根元部31に近い部分で生じる。開放角度が減少するにつれて、接触は遠位方向に移動し、ブレードリンク30の根元部31に対するブレードリンク30のブレード14の弾性変形曲げが強められる。したがって、ブレードリンク30とブレードホルダリンク50とリアクションリンク20の変形した構成は、実質的に閉鎖構成にあり、最大限に曲がる。このとき、ブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20が部分的に閉じて部分的に開いた構成にあるときのブレードリンク30の変形した構成よりも大きく曲がっている。好ましくは、開放角度が最大限に開いており、ブレードが自由であるときに、ブレードは真っ直ぐであって、ブレードリンクは実質的に平面構成を有する。
【0228】
一実施形態によれば、対向ブレード24は、ブレードホルダリンク50の本体及びブレードリンク30のブレード部分14の回転接近フットプリント上に少なくとも部分的に重なることができる。弾性変形構成にあるとき、対向ブレード24は、ブレードホルダリンク50の長手方向の延伸方向を横切る方向に、すなわち、外側軸方向に、ブレードホルダリンク50の回転フットプリントに対して局所的に並進する。しかしながら、好ましい実施形態によれば、対向ブレード24及びブレードホルダリンク50の軸方向内側に面する表面58は、それぞれの回転クリアランスにおいて重ならないように幾何学的に成形される。
【0229】
例えば、図22に示す実施形態によれば、ブレードリンク30の根元部31は、支持構造体の第1突起3とブレードホルダリンク50の根元部51との間に介設され、それらと直接に密接する。対向ブレードホルダリンク50の本体の回転接近フットプリントを横切る横断ブリッジ33をブレードリンク30の本体に設けることにより、ブレード14は、その切縁34で対向ブレード24と接触する、すなわち、ブレードホルダリンク50とリアクションリンク20との間に接触する。
【0230】
一実施形態によれば、前記対向ブレード24を一体で備える対向ブレードリンク40が設けられ、対向ブレードリンク40はリアクションリンク20と一体に回転する。好ましくは、対向ブレードリンク40は、近位取り付け根元部41及び前記対向ブレード24を一体に備え、リアクションリンク20は、根元部21、把持面53及び遠位自由端22を一体に備え、対向ブレードリンク40の根元部41及びリアクションリンク20の根元部21は、互いに隣接して直接に密接する。前記対向ブレードリンク40が設けられる場合、ブレードホルダリンク50の前記根元部51、及びブレードリンク30の前記根元部31、並びに対向ブレードリンク40の前記根元部41及びリアクションリンク20の前記根元部21によって形成されるグループは、支持リンク2の遠位接続部17の前記2つの突起3、4の間に全体的に介設され、それらと直接に密接する。換言すれば、前記対向ブレードリンク40が設けられる場合、軸方向剛性遠位回転ジョイント502は、更に対向ブレードリンク40の根元部41により形成される。
【0231】
根元部のこのようなパック配置により、好ましくはより薄く形成されたブレードリンク30の根元部31及び対向ブレードリンク40の根元部41の、関節ピン5に対する衝突が回避される。それにより、開/閉自由度Gの各開放角度において、対向ブレード24に対する切縁34の位置決めの十分な確実性を提供し、したがって、極端な切断精度を提供することができる。
【0232】
近位取り付け根元部41を有する別個の対向ブレードリンク40上に形成される対向ブレード24が設けられた実施形態によれば、ブレードリンク30の根元部31が、対向ブレードリンク40の前記根元部41とブレードホルダリンク50の根元部51との間に軸方向に介設されて、これらと直接に密接する。また、対向ブレードリンク40の前記根元部41が、ブレードリンク30の前記根元部31とリアクションリンク20の前記根元部21との間に軸方向に介設されて、これらと直接に密接し、切断動作中にブレード14の弾性曲げに対する反力が生じる。
【0233】
前述したように、根元部は、好ましくは、共通回転軸Y-Yを中心とするシリンダ形状を有し、対向ブレードリンク40の根元部41は、ブレードホルダリンク50の根元部51及びリアクションリンク20の根元部21よりも著しく小さい厚さを有し、対向ブレードリンク40の前記根元部41は、ブレードリンク30の根元部31と同様の円盤型のシリンダ形状を有することができる。
【0234】
対向ブレードリンク40の前記根元部41が設けられる場合、それには、貫通孔16、26、26と同軸であり、等しい直径を有する貫通孔46が設けられる。一実施形態によれば、対向ブレードリンク40の根元部41の前記貫通孔46は、孔縁部の延伸全体にわたって関節ピン5と直接に密接する孔縁部を有し、切断動作中にブレードリンク30と対向ブレードリンク40の対向ブレード24との間で交換される摩擦に対する反力を孔縁部の厚さの円弧面に及ぼす。
【0235】
ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50が、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50を一体に回転させるためのそれぞれの抗力係合部37、57を更に備える実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の抗力係合部57は、把持面54に対してアンダーカット座部を形成する回転軸Y-Yに面する抗力歯によって画定される抗力座部57として構成されている。すなわち、近位方向に開くとともに、軸方向に延びる座部57は、ブレードリンク30の遠位端32の軸方向の変形を受け入れながら、回転抗力接触でブレードリンク30の遠位端32を受け入れる。換言すれば、この実施形態では、ブレードリンク30の遠位端32に近い部分又は遠位端32における部分は、回転抗力接触で、すなわち、開/閉方向において、ブレードリンク50の抗力座部57の内側に受け入れられるブレードホルダリンク30の抗力係合部37として機能する。同時に、ブレードリンク30の遠位端32は、同じ抗力座部57の内側で軸方向外側に自由に変形することができ、したがってブレード14の軸方向変形座部44の一部を形成する。言い換えれば、抗力座部57は、第1先端リンク10の軸方向内側に面する表面58に対して、すなわち、ブレード14の曲げのための軸方向当接部として作用することができる表面58に対して遠位方向に延在する。そのような場合、抗力座部57は、ブレードリンク30の遠位端32を受け入れるような軸方向延伸部を有し、したがって、切断動作中のブレードリンク30の変形を前記変形座部44と共に受け入れる。ブレードリンク30の遠位端32は、前記切縁34の遠位部分を含むことができ、そのような場合、前記切縁34の前記遠位部分は、ブレードホルダリンク50の抗力座部57を画定する抗力歯のそれぞれの開放抗力面57.2に対して協働する開放方向37.2の抗力対向面として作用する。
【0236】
ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50が、ブレードリンク30及びブレードホルダリンク50を一体的回転させるためにそれぞれの抗力係合部37、57を更に備える実施形態によれば、ブレードホルダリンク50の抗力係合部57は、2つの別個の異なる抗力面として形成される。言い換えれば、ブレードホルダリンク50の開放抗力面57.2及び閉鎖抗力面57.1は、共通回転軸Y-Yから異なる距離に配置することができ、ブレードリンク30の開放抗力面37.2及び閉鎖抗力面37.1は、共通回転軸Y-Yから異なる距離に、例えば図28に示すように、例えば、ブレードリンク30の異なる突出部に配置することができる。特に、そのような図28を参照すると、ブレードリンク30の根元部31は、ブレードホルダリンク50の根元部51上に折り畳まれた径方向ドラッグイヤー(drag ear)37.4を備えることができ、前記ドラッグイヤー37.4は前記開放抗力面37.2を備える。
【0237】
一実施形態によれば、別個の部品で作られた前記ブレードホルダリンク50及び前記ブレードリンク30は、解放可能に互いに一体に回転し、解放は、好ましくは関節式エンドエフェクタ9を分解することによってのみ行うことができる。
【0238】
一実施形態によれば、リアクションリンク20は、共通回転軸Y-Yに面するねじ止め壁48を備え、このねじ止め壁は、縫合糸68を受けるためのねじ止め凹部を画定して、切断閉鎖中に縫合糸68をブレードリンク30のブレードの切縁34と接触させ続ける。ねじ止め壁48を設けることにより、閉鎖動作の効果として、切断動作中に縫合糸68がブレードの遠位端32を越えて遠位側に摺動することが防止される。
【0239】
例えば、ねじ止め壁48は、切縁34に面する凹部を規定する凹面を有するアーチ状壁である。凹部は、リアクションリンク20の本体に設けられた切り欠きの形態で作ることができ、そのような場合、ねじ止め壁48は、前記切り欠きを画定する壁である。凹部は、リアクションリンク20の本体の突出部に設けられたアンダーカット壁の形態で作ることができ、そのような場合、ねじ止め壁48は、共通回転軸Y-Yに面する前記突出部のアンダーカット壁である。
【0240】
一実施形態によれば、ねじ止め壁48は、その軸方向内縁で対向ブレード24を画定する。対向ブレード24がリアクションリンク20に対して別個の部品で作られる場合、ねじ止め壁48及び凹部は、対向ブレードリンク40の本体に形成することができる。
【0241】
一実施形態によれば、リアクションリンク20は、対向ブレードリンク40のためのハウジング座部45を形成する軸方向凹部45を備える。前記軸方向凹部45は、好ましくは、リアクションリンク20の軸方向内側に面する表面43によって軸方向に画定される。
【0242】
好ましい実施形態によれば、対向ブレードリンク40は、曲げによって弾性的に変形可能である。これにより、ブレードリンク30の切縁34が対向ブレードリンク40の対向ブレード24に機械的に干渉して切断作用を行うと、対向ブレードリンク40の本体も軸方向に弾性的に曲がる。
【0243】
対向ブレードリンク40は、好ましくは弾性シート又はストリップから作製され、切断動作中にブレードリンク30を弾性的に曲げるために、軸方向内側に面する凹面を有する湾曲して突出した対向ブレード24を形成するように予め湾曲している。曲げによって弾性変形可能な湾曲して突出した対向ブレード24を有する対向ブレードリンク40を設けることにより、切断動作中に、リアクションリンク20の軸方向凹部45の軸方向内側に面する表面43とブレードリンク30の切縁34との間に弾性反力を得ることが可能になる。特に、対向ブレードリンク40は、反応20の軸方向凹部45の軸方向内側に面する前記表面43に当接する、対向ブレード24に対向して軸方向に向けられた静止表面64を備える。これによって、対向ブレードリンク40が、切断作用中にブレードリンク30を弾性的に曲げることを目的として、ブレードリンク30の切縁34に弾性作用をもたらすことを可能にする。例えば、対向ブレードリンク40は、存在する場合、ばね鋼で作ることができる。
【0244】
対向ブレードリンク40は、ブレードリンク30を参照して前述した特徴及び特性の少なくとも一部を有することができるが、全部を有することもできる。対向ブレードリンク40の厚さは、前述したように、ブレードリンク30の厚さと実質的に同等又は同等であり得る。一実施形態によれば、対向ブレードリンク40は、好ましくはブレードリンク30の切縁34に対して反対側に配置された対向ブレード切縁を備える。対向ブレードリンク40の近位取り付け根元部41は、ブレードリンク30の根元部31を参照して前述した特徴及び特性の少なくとも一部を有することができるが、全部を有することもできる。対向ブレードリンク40の根元部41は、ブレードリンク30の径方向カットチャネル39と位置ずれした径方向カットチャネル49を備えて、開/閉動作中にカットチャネル39、49の縁部が係合するのを防止することができる。
【0245】
一実施形態によれば、対向ブレードリンク40及びリアクションリンク20を一体に回転させるために、対向ブレード表面24の長手方向延伸に沿って、又はそれに対して遠位側に抗力係合部が設けられる。好ましくは、抗力係合部は、対向ブレードリンク24の遠位端42の近く又は遠位端において得られる。一実施形態によれば、リアクションリンク20は、実質的に対向ブレードホルダリンクとして作用し、対向ブレードリンク40を一体的回転させるための開放抗力面及び反対側の閉鎖抗力面を有する抗力座部67を備える。抗力座部67は、リアクションリンク20の把持面53に対してアンダーカットされた抗力座部に遠位に配置されて、対向ブレードリンク40の遠位端42を受け入れることができる。一実施形態によれば、対向ブレードリンク40の前記遠位端42は、リアクションリンク20の前記開放抗力面と抗力接触する開放抗力面47.2と、前記閉鎖抗力面と抗力接触する反対側の閉鎖抗力面47.1とを備える。言い換えれば、この実施形態では、対向ブレードリンク40の抗力係合部47は、対向ブレードリンク40の遠位端42の近く又は遠位端に配置される。対向ブレードリンク40の遠位端42は、好ましくは、リアクションリンク20に拘束された遠位端である。
【0246】
例えば図29に示される実施形態によれば、対向ブレードリンク40は、リアクションリンク20の根元部21上に折り畳まれた径方向ドラッグイヤー47.4を備え、対向ブレードリンク40の前記ドラッグイヤー47.4は、例えばリアクションリンク20の本体の後部に配置された開放抗力面67.2と抗力接触する開放抗力面47.2を備え、対向ブレードリンク40は、対向ブレードホルダリンク60の閉鎖抗力面67.1と抗力接触する対向ブレードリンク40の遠位端42に近接して配置された閉鎖抗力面47.1を更に備える。
【0247】
一実施形態によれば、対向ブレード切縁は、開/閉方向に対して凹形状を有することができる。
【0248】
一般的な実施形態によれば、前述の実施形態のいずれか1つによる少なくとも1つの外科用器具1を備えるロボット手術システム101が提供される。したがって、ロボット手術システム101は、生体組織の切断及び/又は縫合糸の切断を含む外科的又は顕微手術的処置を実行することができる。
【0249】
一実施形態によれば、前記ロボット手術システム101は、少なくとも2つの外科用器具を備え、そのうちの少なくとも1つは、前述の実施形態のいずれか1つによる外科用器具1であり、他の外科用器具は、針ドライバ型の外科用器具又は拡張器型の外科用器具であり得るが、一実施形態によれば、両方の外科用器具は、前述の実施形態のいずれか1つによる外科用器具1であり、必ずしも互いに同一であるとは限らない。例えば、少なくとも2つの外科用器具のうちの1つの外科用器具は、外科用ハサミ型の外科用器具とすることができ、少なくとも2つの外科用器具のうちの別の外科用器具は、針ドライバ/ハサミ型の外科用器具とすることができる。
【0250】
ロボット手術システム101は、好ましくは、少なくとも1つのロボットマニピュレータ103を備え、少なくとも1つの外科用器具1は、前記少なくとも1つのロボットマニピュレータ103に動作可能に接続される。例えば、少なくとも1つのロボットマニピュレータ103と少なくとも1つの外科用器具1のバックエンド部104との間には、例えば滅菌手術布などの滅菌外科用バリア(図示せず)が介設される。ロボットマニピュレータ103は、ピッチP、ヨーY、及び把持自由度Gの前記作動テンドンに応力をかける、すなわち、外科用器具1を把持して切断するための電動アクチュエータと、転動自由度を規定するシャフト7の周りで外科用器具1を回転させるための電動アクチュエータとを備えることができる。ロボット手術システム101は、例えば、車輪又は他の接地ユニットを備える支持部106(カート又はタワー)と、支持部106と少なくとも1つのロボットマニピュレータ103との間に延在する、例えば手動で移動可能な、すなわち受動的な関節式位置決めアーム105とを備えることができる。一実施形態によれば、ロボット手術システム101は、マスタ-スレーブアーキテクチャに従って少なくとも1つの外科用器具1、好ましくはそれぞれのロボットマニピュレータ103を制御するための少なくとも1つのマスタコンソール107を備え、好ましくは、ロボット手術システム101は、マスタコンソール107の少なくとも1つのマスタ制御デバイス108に対する外科用器具1の追跡を決定するために、マスタコンソール107及びロボットマニピュレータ103に動作可能に接続された制御ユニットを更に備える。一実施形態によれば、マスタコンソール107は、拘束されていない、すなわち、地面から機械的に切り離されている少なくとも1つのマスタ制御デバイス108と、例えば光学的及び/又は磁気的な追跡システムとを備える。
【0251】
以下、外科用器具による切断方法について説明する。
【0252】
外科用器具による切断方法は、以下のステップを含むことができる。
【0253】
本方法は、切縁34を所望の向きに向けるように、接続リンク90及び支持リンク2の少なくとも一方の平行な母線を有する凸状線織面上で少なくとも一対の拮抗テンドンのテンドン71、72、75、76を長手方向に摺動させるステップを含む。
【0254】
本方法は、遠位回転ジョイント502の少なくとも一対の拮抗作動テンドンのテンドン71、72、73、74を接続リンク90及び支持リンク2の凸状線織面上で長手方向に摺動させて、切縁34を対向ブレード24と接触させるステップを含む。このステップは、ブレードリンク30及びリアクションリンク20に相対的に接近することによって、すなわち、前記テンドン71、72、73、74を接続リンク90及び支持リンク2の凸状線織面上で摺動させながら、開/閉自由度Gだけ動かせることによって実行することができる。
【0255】
好ましい動作モードによれば、遠位回転ジョイント502の少なくとも一対の拮抗作動テンドンのテンドン71、72、73、74を、接続リンク90及び支持リンク2の凸状線織面上で長手方向に摺動させるステップは、遠位回転ジョイント502の少なくとも1つの作動テンドン71、72、73、74を、それらが摺動するリンク2及び90の線織面上に60°~300°、好ましくは120°より大きい巻回角で巻き付くステップを含む。換言すれば、遠位回転ジョイント502の各作動テンドン71、72、73、74は、それらが摺動するリンク2及び90の凸状線織面96、97、98、99のそれぞれの上で、局所巻回角を規定する弧状の長手方向摺動経路を描き、遠位回転ジョイント502の少なくとも1つの作動テンドンの全ての局所巻回角の合計は、60°~300°、好ましくは120°よりも大きい値を提供する。テンドンが摺動しないブレードホルダリンク50及びリアクションリンク20のプーリ部の凸状線織面79、80は、カウントに関与しないことに留意されたい。
【0256】
好ましい動作モードによれば、テンドンを長手方向に摺動させるステップは、各テンドンを一定の長手方向経路に沿って摺動させ、テンドンが遠位回転軸Y-Yに平行な方向に並進することを防止するとともに、テンドンが近位回転軸P-Pに平行な方向に並進することを防止するように実行される。
【0257】
この方法は、切縁34及び対向ブレード24の少なくとも一方を弾性的に曲げ、それらの間に機械的干渉接触を形成して切断作用を行うステップを更に含む。
【0258】
好ましい動作モードによれば、本方法は、前述の実施形態のいずれか1つによる外科用器具1を用いて実行される。
【0259】
添付の特許請求の範囲の1つ以上に開示された特徴、構造、又は機能の組み合わせは、本明細書の不可欠な部分を形成することが十分に理解される。
【0260】
特定の実施形態において別々に又は互いに組み合わせて提供される上記の特徴のおかげで、前述したニーズを満たすことができ、前述の利点、特に、以下の利点を得ることができる。
【0261】
-開/閉自由度は、切断動作を実行することを可能にする。
【0262】
-軸方向に剛性回転ジョイントが設けられ、回転ジョイントを形成する要素によって切断動作が実行される。
【0263】
-それぞれのリンクと一体に作られたテンドンの終端座部及び線織プーリ面は、小型化に有利であり、部品の数を小さく保ち、関節式エンドエフェクタをコンパクトに保つのに役立つ。
【0264】
-開/閉作動テンドンの自由度は、開/閉自由度の移動中に接続リンク及び支持リンクの線織面上で長手方向に摺動し、線織面がテンドンを案内するための案内チャネル又は溝を有していなくても、そのような線織面上での軸方向の摺動を回避することができる。すなわち、換言すれば、テンドンの摺動経路は、任意の動作構成において一定のままである。
【0265】
-好ましくは、テンドンの経路は全て互いに平行である。
【0266】
-支持リンクの同じ凸状線織面は、開/閉自由度を有する作動テンドンのための摺動面と、巻き付き面、すなわち、ピッチ自由度を有する作動テンドンのためのプーリ部とすることができる。
【0267】
-ブレードホルダリンク及びリアクションリンクのプーリ部は、凸状線織面によって形成され、凸状線織面は、その上でそれぞれの作動テンドンの端部(又はそれぞれの終端部に近い部分)が長手方向又は軸方向のいずれも摺動することなく巻き付くガイドチャネル又は溝を含まない。
【0268】
-既知の解決策と比較して、外科用器具の関節式エンドエフェクタの極端な小型化が可能である。
【0269】
-支持リンクの遠位接続部の突起間にリンクの根元部を積み重ねることが可能であり、一方で、弾性ワッシャ及び調整ねじの設置、並びに取り付け根元部のレベルでのタッピング又はねじ切り機械加工を回避し、それにより、関節式エンドエフェクタの極端な小型化を可能にする。
【0270】
-特に、関節ピン5はねじが切られていない。
【0271】
-それぞれの根元部の貫通孔の孔縁部表面も、支持リンクの遠位接続部の突起を貫通する突起の貫通孔の内面も、タップされておらず、すなわち、雌ねじが切られていない。
【0272】
-関節ピンには、「ベルビルワッシャ」タイプなどの弾性要素が取り付けられていない。
【0273】
-根元部の外側、すなわちブレードリンクのブレード、及び必要に応じてリアクションリンクの対向ブレード表面に集中した切断動作に必要な全ての弾性を実質的に提供することを可能にし、非常に小型化された関節式エンドエフェクタを形成しながら正確な切断動作を実行することを可能にする。
【0274】
-特に、開/閉自由度の比較的大きい開放角度の場合、ブレードは自由であり、すなわち弾性的に変形せず、このような構成では真っ直ぐであることが好ましい。
【0275】
-開/閉自由度の開放角度が閉じられるにつれて、ブレードは弾性的に曲げられ、対向ブレードを弾性的に押す。
【0276】
-切断動作に必要な弾性が根元部に対して遠位に集中しているため、ブレード又は対向ブレードの比較的大きな軸方向の曲げを受け入れる変形座部を設けることができる。
【0277】
-突起間にパック状に積み重ねられた根元部は、ブレードの弾性的曲げ変形に対する反力を提供し、関節ピンにおける軸方向の摺動を回避し、したがって切縁の正確で効果的な切断作用を可能にする。
【0278】
-ブレードリンク及び対向ブレードリンクは、存在する場合、ブレードホルダリンク及びリアクションリンクによって回転時に抗力が及ぼされる。
【0279】
-受け根元部における関節ピンと接触する全て同軸の貫通孔を設けることによって、根元部間の望ましくない相対回転を回避することが可能となり、対向ブレードに対する切縁の位置決めの確実性を提供し、したがって関節式エンドエフェクタの極端な小型化が可能となる。なぜなら、根元部のレベル、すなわち、共通回転軸に近い小さな回転運動により、比較的大きな切断の不正確さが生じるためである。
【0280】
-更に、ブレードリンクの孔は、その近位縁部がピンを押すことによって、切断動作中にブレードと対向ブレードとの間の摩擦に対する反力が生じ、正確な切断動作を得るのに役立つ。
【0281】
-ブレードリンクの切縁は、真っ直ぐに、つまり凹面なしにすることができるため、連続生産が容易になり、例えば、単一のバンド又はストリップから開始することができる。
【0282】
-ブレードリンクとブレードホルダリンクとの間の回転に単一の抗力係合部を設けることにより、抗力クリアランスを最小限に抑えることができ、小型化を促進することができる。
【0283】
-共通回転軸Y-Yを規定する回転ジョイント502は、ヒンジとすることができる。
【0284】
所定の偶発的なニーズを満たすために、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、前述の実施形態に対して幾つかの変更及び適合を加えることができ、要素を他の機能的に等価なものと置き換えることができる。
【符号の説明】
【0285】
1 外科用切断器具
2 支持リンク
3 第1支持リンク突起
4 第2支持リンク突起
5 関節ピン又は回動ピン(pivot pin)
6 第3の支持リンク作動テンドン対用の終端座部、又は第3の支持リンク終端座部
6.1 第3の終端座部の抗力当接壁
7 外科用器具のロッド又はシャフト
8 ロッド遠位端
9 関節式エンドエフェクタ、又は関節式端末
13 支持リンクの近位接続部
14 ブリッジ部
15 第1の終端座部
15.1 第1の終端座部の抗力当接壁
16 第1貫通孔
17 支持リンクの遠位接続部
19 径方向カットチャネル
20 リアクションリンク
21 リアクションリンクの近位取り付け根元部
22 リアクションリンクの遠位自由端
23 リアクションリンクの接続ステム
24 対向ブレード
25 第2の終端座部
25.1 第2の終端座部の抗力当接壁
26 リアクションリンク根元部の貫通孔
27 リアクションリンクの切断インタフェース
27.0 切断インタフェース部の近位自由端
27.1 切断インタフェース部の第1近位アーム
27.2 切断インタフェース部の第2遠位アーム
28 リアクションリンクの軸方向変形座部、又は対向ブレードの軸方向変形座部
29 径方向カットチャネル
30 ブレードリンク
31 ブレードリンクの近位取り付け根元部、又はブレードリンク根元部
32 先端ブレードリンクの端部
33 横ブレードリンクブリッジ
34 ブレードリンクの切縁
35 軸方向内側を向くブレード面
36 ブレードリンク根元部の貫通孔
37 ブレードリンクの抗力係合部
37.0 ブレードリンク抗力座部の入口開口
37.1 ブレードリンクの閉鎖抗力面
37.2 ブレードリンクの開放抗力面
37.4 カンチレバブレードリンクイヤー
38 ブレードリンク根元部の孔縁部の円弧面
39 ブレードリンク根元部のカットチャネル
40 対向ブレードリンク
41 対向ブレードリンクの近位取り付け根元部又は対向ブレードリンク根元部
42 遠位対向ブレードリンク端部
43 対向ブレードホルダリンク凹部の軸方向内側を向く表面
44 ブレードホルダリンクのブレード用の軸方向変形座部
45 軸方向対向ブレードリンクの凹部
46 対向ブレードリンク根元部の貫通孔
47 対向ブレードリンクの抗力係合部
47.1 対向ブレードリンクの閉鎖抗力面
47.2 対向ブレードリンクの開放抗力面
47.4 対向ブレードリンクドラッグイヤー
48 ねじ止め壁
49 対向ブレードリンクの径方向カットチャネル
50 ブレードホルダリンク
51 ブレードホルダリンクの近位取り付け根元部、又はブレードホルダリンク根元部
52 遠位ブレードホルダリンク端部
54 ブレードホルダリンクの閉鎖ストローク端面
57 ブレードホルダリンクの抗力係合部
57.1 ブレードホルダリンクの閉鎖抗力面
57.2 ブレードホルダリンクの開放抗力面
58 ブレードホルダリンクの軸方向内側を向く表面
64 対向ブレードリンク支持面
67 リアクションリンクの抗力係合部
68 縫合糸
70 テンドン終端
71 第1の先端の開放作動テンドン
72 第1の先端の閉鎖作動テンドン
73 第2の先端の開放作動テンドン
74 第2の先端の閉鎖作動テンドン
75 支持リンクの作動テンドン
76 支持リンクの作動対向テンドン
77 第1先端の第1の終端座部の第1カンチレバドラッグレッグ
77.1 第1レッグの自由端
78 第2先端の第2の終端座部の第2カンチレバドラッグレッグ
78.1 第2レッグの自由端
79 ブレードホルダリンクプーリ部の線織面
80 リアクションリンクプーリ部の線織面
81 ブレードリンク根元部の接触面
82 ブレードリンク根元部の反対側の接触面
83 ブレードホルダリンク根元部の内部接触面
84 リアクションリンク根元部の内部接触面
85 ブレードホルダリンク根元部の外部接触面
86 リアクションリンク根元部の外部接触面
87 第1突起の内部接触対向面
88 第2突起の内部接触対向面
90 接続リンク
91 接続リンクの第1突起
92 接続リンクの第2突起
93 近位関節ピン
94 固定装置
95 接続リンクの遠位接続部
96 支持リンクの凸状線織面
97 接続リンクの凸状線織面
98 支持リンクの凸状線織面
99 接続リンクの凸状線織面
101 ロボット手術システム
102 ロッド近位端
103 ロボットマニピュレータ
104 外科用器具の近位インタフェース部、又は外科用器具バックエンド部
105 位置決めアーム
106 支持部、又はカート、又はタワー
107 マスタコンソール
108 マスタ制御デバイス
502 遠位回転ジョイント
509 近位回転ジョイント
X-X ロッド長手方向軸
Y-Y 共通回転軸、又は遠位共通回転軸又は共通のヨー回転軸
P-P 近位共通回転軸、又は共通のピッチ回転軸
Y ヨー自由度
P ピッチ自由度
G 開/閉方向自由度、切断自由度
R ロールの自由度
POC ブレードと対向ブレードとの間の少なくとも1つの接触点
Y5 第1の軸方向距離
Y5’ 第2の軸方向距離
Y8 更なる軸方向距離
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39A
図39B
図39C
図40
図41A
図41B
図41C
図42
図43
【国際調査報告】