(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】クイック油交換システムを備えたポータブルロータリベーン式真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 25/02 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
F04C25/02 D
F04C25/02 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578796
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 US2022033542
(87)【国際公開番号】W WO2022271498
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507090384
【氏名又は名称】サンダイム グレゴリー エス
(74)【代理人】
【識別番号】100181928
【氏名又は名称】日比谷 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100075948
【氏名又は名称】日比谷 征彦
(72)【発明者】
【氏名】サンダイム グレゴリー エス
(72)【発明者】
【氏名】シューメイカー トーマス シー
(72)【発明者】
【氏名】レンク ブレット ダブリュー
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA05
3H129AA21
3H129AB07
3H129BB32
3H129BB34
3H129CC09
(57)【要約】
【課題】
【解決手段】
ポンプ1はポータブルユニットであり、電気モータ5(
図2)によって駆動されるロータリベーン真空ポンプ3(
図2及び
図3を参照)を含む。ベーンポンプ3はハウジング7を含み、ハウジング7は、軸11を中心にして、部分的に空洞を画成するように延びる内側表面9を有する。ポンプ1のロータ13は、軸15を中心に回転するように空洞(
図3)内に取り付けられる。例示されている軸15は、ハウジング軸11からオフセットされており、ハウジング軸11とほぼ平行である。ロータ13はまた、それぞれのスロット19内で摺動するように取り付けられた少なくとも2つのベーン17を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍空調(AC/R)システムを周囲の大気圧より大幅に低い圧力まで排気するためのポータブル真空ポンプであって、前記真空ポンプが、
ハウジングであって、前記ハウジングを貫くように、空洞と、前記ハウジングの空洞とそれぞれ流体連通する油引入れ通路及び油放出通路とを含んだハウジングと、
油引入れ装置及び油戻し装置を含んだ潤滑油システムと、を備え、
前記油引入れ装置は、一次油貯留器、二次油貯留器、及び油ポンプ機構を含み、前記油ポンプ機構は、前記一次油貯留器と前記二次油貯留器の間の、前記ポンプハウジングの前記空洞の上流に配置され、この配置は、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作している間、前記一次油貯留器と前記二次油貯留器が大気に開放され、周囲圧力になった状態で、油を前記一次油貯留器から前記二次油貯留器と前記ポンプハウジングの前記空洞とへ移動させるようになっており、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作しているとき、前記ポンプハウジングの前記空洞は周囲よりも低い圧力になっており、前記一次油貯留器と前記二次油貯留器が大気に開放され、周囲圧力になった状態で、前記ポンプハウジングの前記空洞内へと、油が、前記ポンプハウジングの前記空洞の上流かつ前記油ポンプ機構の下流にある第1の流路に沿って引き込まれ、
前記油戻し装置は、前記一次油貯留器と前記二次油貯留器が大気に開放され、周囲圧力になった状態で、油を、前記ポンプハウジングの前記空洞及び前記二次油貯留器から、第2の戻り流路を経由して前記一次油貯留器に戻し、
前記潤滑油システムは更に、手動で取り外し可能な少なくとも第1及び第2の油容器と、第1のポジションと第2のポジションとの間で選択的に動作可能な切換機構とを含み、
前記第1のポジションにある前記切換機構は、(a)前記第1の油容器を、前記一次油貯留器になるように前記油ポンプ機構と流体連通させ、(b)前記油戻し装置の前記戻り流路を、前記二次油貯留器から前記第1の容器に油を戻すように前記第1の容器と流体連通させ、それと同時に、前記第1のポジションにある前記切換機構は、前記第2の容器を、前記油ポンプ機構及び前記油戻し装置の前記戻り流路との流体連通から切り離し、
前記第2のポジションにある前記切換機構は、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作している間、(c)前記第2の油容器を、前記一次油貯留器になるように前記油ポンプ機構と流体連通させ、(d)前記油戻し装置の前記戻り流路を、前記二次油貯留器から前記第2の容器に油を戻すように前記第2の容器と流体連通させ、前記第2のポジションにある前記切換機構は更に、前記第1の容器を、前記油ポンプ機構及び前記油戻し装置の前記戻り流路との流体連通から切り離し、前記第2の容器が前記一次油貯留器として機能する状態で、前記切換機構が前記第2のポジションにあるとき、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作している間に、前記第2の容器の前記一次油貯留器と、前記二次油貯留器が大気に開放され、周囲圧力になった状態で、前記第1の容器を前記真空ポンプから手動で取り外すことができる、
ポータブル真空ポンプ。
【請求項2】
最初に、前記第1の容器及び前記第2の容器をそれぞれ前記真空ポンプ上の第1の場所、第2の場所に配置することができ、前記切換機構が前記第2のポジションにあるとき、前記第1の容器を前記第1の場所から取り外し、清浄な油を再充填し、前記第1の場所に戻すことができる、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項3】
前記第1の容器を前記第1の場所に戻した状態で、前記切換機構を前記第1のポジションに戻すことができ、それにより前記切換機構は、(a)戻した前記第1の油容器を、前記一次油貯留器になるように前記油ポンプ機構と流体連通させ、(f)前記油戻し装置の前記戻り流路を再び、戻した前記第1の容器と流体連通させ、それと同時に、前記第2の容器を、前記油ポンプ機構及び前記油戻し装置の前記戻り流路との流体連通から切り離す、請求項2に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項4】
最初に、前記第1の容器及び前記第2の容器をそれぞれ前記真空ポンプ上の第1の場所、第2の場所に配置することができ、前記切換機構が前記第2のポジションにあるとき、前記第1の容器を前記第1の場所から取り外し、前記第1の場所で第3の油容器と交換することができる、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項5】
前記第1の場所で、前記第1の容器が取り外され、取り外された前記第1の容器の代りに前記第3の容器が置き換わっている状態で、前記切換機構を前記第1のポジションに戻すことができ、それにより前記切換機構は、(a)前記第3の油容器を、前記一次油貯留器になるように前記油ポンプ機構と流体連通させ、(f)前記油戻し装置の前記戻り流路を、前記第3の容器と流体連通させ、それと同時に、前記第2の容器を、前記油ポンプ機構及び前記油戻し装置の前記戻り流路との流体連通から切り離す、請求項4に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項6】
前記切換機構が手動操作可能であり、前記第1のポジションと前記第2のポジションとの間で移行するときに、可聴クリック音を発生させて、第1の動作モードと第2の動作モードとの間で移行が行われたことを使用者に警告する、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項7】
前記切換機構が、前記第1のポジションと前記第2のポジションとの間でスナップするように弾性付勢される、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項8】
前記二次油貯留器の容積が前記一次油貯留器の1/10未満である、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項9】
前記二次油貯留器の容積が前記一次油貯留器の1/16未満である、請求項8に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項10】
前記一次油貯留器が前記真空ポンプ内のほぼ全ての油を含む、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項11】
前記第1の油容器及び前記第2の油容器が、それぞれ等しい量の油を保持するような大きさを有する、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項12】
前記切換機構が更に、前記第1のポジションと前記第2のポジションを有する弁ハンドルを備え、前記弁ハンドルが、前記第1の容器と前記第2の容器の何れが前記一次油貯留器として機能するかを選択して視覚的に示すためのものであり、かつ、前記一次油貯留器として選択されていない容器の取り外しを可能にしながら、前記選択された容器の取り外しを防止するためのものでもある、請求項1に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項13】
冷凍空調(AC/R)システムを周囲の大気圧より大幅に低い圧力まで排気するためのポータブル真空ポンプであって、前記真空ポンプが、
ハウジングであって、前記ハウジングを貫くように、空洞と、前記ハウジングの空洞とそれぞれ流体連通する油引入れ通路及び油放出通路とを含んだハウジングと、
油引入れ装置を含んだ潤滑油システムと、を備え、前記油引入れ装置は、一次油貯留器、二次油貯留器、及び油ポンプ機構を含み、前記油ポンプ機構は、前記一次油貯留器と前記二次油貯留器の間の、前記ポンプハウジングの前記空洞の上流に配置され、この配置は、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作している間、前記一次油貯留器と前記二次油貯留器が大気に開放され、周囲圧力になった状態で、油を前記一次油貯留器から前記二次油貯留器と前記ポンプハウジングの前記空洞とへ移動させるようになっており、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作しているとき、前記ポンプハウジングの前記空洞は周囲よりも低い圧力になっており、前記一次油貯留器と前記二次油貯留器が大気に開放され、周囲圧力になった状態で、前記ポンプハウジングの前記空洞内へと、油が、前記ポンプハウジングの前記空洞の上流かつ前記油ポンプ機構の下流にある第1の流路に沿って引き込まれ、
前記油引入れ装置は油交換システムを更に含み、前記油交換システムは、前記真空ポンプの第1の場所と第2の場所にそれぞれ配置可能な第1の油容器及び予備の第2の油容器を含み、前記油交換システムは、第1のモードと第2のモードの間で選択的に動作可能であり、(a)前記第1の動作モードにある前記油交換システムでは、前記真空ポンプの前記第1の場所に配置された前記第1の油容器が、前記一次油貯留器として機能し、前記油ポンプ機構と流体連通し、前記真空ポンプの前記第2の場所に配置された前記予備の第2の油容器が前記油ポンプ機構との流体連通から切り離され、(b)前記第2の動作モードにある前記油交換システムでは、前記真空ポンプの前記第2の場所に配置された前記予備の第2の油容器が、動作可能になるように前記第1の油容器と置き換わり、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作している間、前記一次油貯留器として機能し、前記油ポンプ機構と流体連通し、前記真空ポンプの前記第1の場所に前記第1の油容器がある状態で、前記油交換システムが前記第2の動作モードにあるとき、前記真空ポンプが前記冷凍空調システムを排気するように動作している間に、前記第2の容器の前記一次油貯留器と、前記二次油貯留器が大気に開放され、周囲圧力になった状態で、前記第1の容器が、前記油ポンプ機構との流体連通から切り離される、
ポータブル真空ポンプ。
【請求項14】
前記第1の油容器が、前記真空ポンプの前記第1の場所に取り外し可能に取り付けられ、前記油交換システムが前記第2の動作モードにあるとき、前記第1の容器を前記第1の場所から取り外し、清浄な油を再充填し、前記第1の場所に戻すことができ、前記油交換システムを前記第1の動作モードに戻すことができ、それにより、再び前記真空ポンプの前記第1の場所に配置された前記戻した第1の油容器が、再び前記一次油貯留器として機能し、前記油ポンプ機構と流体連通する、請求項13に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項15】
前記油交換システムが更に切換機構を含み、前記切換機構は、前記油交換システムを選択的に、前記第1の油容器が前記一次油貯留器として機能する前記第1の動作モードから、前記予備の第2の油容器が前記一次油貯留器として機能する前記第2の動作モードに移行させ、更に、前記真空ポンプの前記第1の場所に戻した前記第1の油容器が再び前記一次油貯留器として機能する前記第1の動作モードに戻すためのものである、請求項14に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項16】
前記切換機構が更に、前記第1のポジションと前記第2のポジションを有する弁ハンドルを備え、前記弁ハンドルが、前記第1の容器と前記第2の容器の何れが前記一次油貯留器として機能するかを選択して視覚的に示すためのものであり、かつ、前記一次油貯留器として選択されていない容器の取り外しを可能にしながら、前記選択された容器の取り外しを防止するためのものでもある、請求項15に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項17】
前記第1の油容器が、前記真空ポンプの前記第1の場所に取り外し可能に取り付けられ、前記油交換システムは更に、前記真空ポンプの前記第1の場所に取り外し可能に取り付け可能な第3の油容器を含み、前記油交換システムが前記第2の動作モードにあるとき、前記第1の容器を前記第1の場所から取り外し、前記第1の場所で前記第3の油容器と交換することができ、前記油交換システムを前記第1の動作モードに戻すことができ、それにより、前記真空ポンプの前記第1の場所に配置された前記第3の油容器が、前記取り外した第1の油容器の代りに前記一次油貯留器として機能し、前記油ポンプ機構と流体連通する、請求項13に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項18】
前記油交換システムが更に切換機構を含み、前記切換機構は、前記油交換システムを選択的に、前記第1の油容器が前記一次油貯留器として機能する前記第1の動作モードから、前記予備の第2の油容器が前記一次油貯留器として機能する前記第2の動作モードに移行させ、更に、前記真空ポンプの前記第1の場所で前記第1の油容器と置き換わった前記第3の油容器が前記一次油貯留器として機能する前記第1の動作モードに戻すためのものである、請求項17に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項19】
前記切換機構が手動操作可能であり、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で移行するときに、可聴クリック音を発生させて、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で移行が行われたことを使用者に警告する、請求項18に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項20】
前記切換機構が、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間でスナップするように弾性付勢される、請求項18に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項21】
前記油交換システムが更に切換機構を含み、前記切換機構は、前記油交換システムを選択的に、前記第1の油容器が前記一次油貯留器として機能する前記第1の動作モードから、前記予備の第2の油容器が前記一次油貯留器として機能する前記第2の動作モードに移行させるためのものである、請求項13に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項22】
前記切換機構が手動操作可能であり、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で移行するときに、可聴クリック音を発生させて、前記第1の動作モードと前記第2の動作モードとの間で移行が行われたことを使用者に警告する、請求項21に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項23】
前記潤滑油システムが油戻し装置を更に含み、前記油交換システムが前記第1の動作モードにある間、前記油戻し装置は、油を、前記ポンプハウジングの前記空洞及び前記二次油貯留器から、第2の戻り流路を経由して前記第1の油容器に戻し、
前記油交換システムが前記第2の動作モードにある間、前記油戻し装置は、油を、前記ポンプハウジングの前記空洞及び前記二次油貯留器から、前記戻り流路を経由して前記第2の油容器に戻す、請求項13に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項24】
前記第1の油容器が、前記真空ポンプの前記第1の場所に取り外し可能に取り付けられ、前記油交換システムが前記第2の動作モードにあるとき、前記第1の容器を前記第1の場所から取り外し、清浄な油を再充填し、前記第1の場所に戻すことができ、前記油交換システムを前記第1の動作モードに戻すことができ、それにより、前記真空ポンプの前記第1の場所に配置された前記戻した第1の油容器が、再び前記一次油貯留器として機能し、前記油ポンプ機構と流体連通し、かつ、前記油戻し装置が、油を、前記戻り流路を経由して、再び前記真空ポンプの前記第1の場所に配置された前記戻した第1の油容器に送り、前記油交換システムを前記第1の動作モードに戻すと、前記第2の油容器が、前記油ポンプ機構及び前記油戻し装置の前記戻り流路との流体連通から切り離される、請求項23に記載のポータブル真空ポンプ。
【請求項25】
前記第1の油容器が、前記真空ポンプの前記第1の場所に取り外し可能に取り付けられ、前記油交換システムが更に、前記真空ポンプの前記第1の場所に取り外し可能に取り付け可能な第3の油容器を含み、前記油交換システムが前記第2の動作モードにあるとき、前記第1の容器を前記第1の場所から取り外し、前記第1の場所で前記第3の油容器と交換することができ、前記油交換システムを前記第1の動作モードに戻すことができ、それにより、前記真空ポンプの前記第1の場所に配置された前記第3の油容器が、前記取り外した第1の油容器の代りに前記一次油貯留器として機能し、前記油ポンプ機構と流体連通し、かつ、前記油戻し装置が、油を、前記戻り流路を経由して、前記取り外された第1の油容器の代りに前記真空ポンプの前記第1の場所に配置された前記第3の油容器に送り、前記第1の動作モードにある前記油交換システムでは、前記第2の油容器が、前記油ポンプ機構及び前記油戻し装置の前記戻り流路との流体連通から切り離される、請求項23に記載のポータブル真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年6月25日に出願された本出願人の米国仮特許出願第63/215,313号「クイック油交換システムを備えたポータブルロータリベーン式真空ポンプ(Portable, Rotary Vane Vacuum Pump with a Quick Oil Change System)」に基づいており、その優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ポータブルロータリベーン式真空ポンプの分野に関し、より詳細には、冷凍空調システムの整備に使用するためのかかるポンプの分野に関する。
【0003】
ポータブルロータリベーン式真空ポンプは、冷凍空調システムを整備の際、再充填前に比較的高い真空に真空引きする目的で、広く用いられている。典型的な整備手順では、まず冷凍空調システムの冷媒を回収し、そのシステムを大気に開放して修理を行う。その後システムの再充填前に、そこから空気と残留水分を除去しなければならない。そうしないと、システムの性能に悪影響が生じる。具体的には、システム内に空気と水分が残っていると、冷媒の熱サイクルが妨げられ、性能が安定せず非効率になる。更に、残留している空気や水分は、システム構成部品の内側で望ましくない化学反応を引き起こし、システムの内部に氷の結晶を形成し、構成部品の故障を早める一因となり得る。
【0004】
このような真空ポンプの大多数は、それを取り囲む油溜めに浸っているか、少なくとも部分的に浸っている。この油溜めにより、ポンプの中で回転するベーンの潤滑と封止を目的とした油の供給が可能になり、そうすることでポンプは高真空に真空引きすることができるようになる。作動中のポンプの周囲にある外部の油溜めはポンプを冷却する役割も果たす。このような装置では、油溜めからポンプ内部への油の供給を、典型的には1つ又は複数のポンプ軸受に隣接した各経路に沿って行う。それからその油が回転力によってベーンとポンプシリンダの内周に再分配され、回転部品に潤滑と封止を提供する。こういった油浸式油溜め設計の油の液位は、ポンプ内部への油経路の引入れ口よりも上に維持する必要がある。そうしないと、ポンプに対して油の新たな供給が継続的に行われず、ポンプが高真空に真空引きする正常な動作をしなくなる。
【0005】
このような油浸式又は部分的に油浸式の設計では、望ましくないことに、ポンプ停止時に、油が油溜めからポンプを通って排気中のシステム内に引き込まれる、あるいは吸い込まれる。これは、ポンプが意図的に停止された場合(例えば操作者によって)、又は意図せずに停止した場合(例えば誰かがポンプの電源コードにつまずいたり回路遮断器が作動したりすることによって)に当てはまる。このような場合、排気中の冷凍空調システムがポンプと切り離されていないと、上述のシステムではその中の真空によって、最終的にどこかで大気への漏れが生じるまで、油が油溜めからポンプを通ってシステム内に逆向きに引き込まれる、あるいは吸い込まれる。この時点において、望ましくないことに冷凍空調システムの中には油が入ってしまっており、続行する前にこの油をシステムから除去することが求められる。これには追加の時間と費用がかかる。また、望ましくないことにポンプにも非圧縮性の油がいっぱいに詰まっており、再始動時にポンプ部品及びそれらのアラインメントが損なわれる可能性がある。更に、ポンプと排気中のシステムを接続するホースにも往々にして油がいっぱいに詰まっており、ホースを外すと決まって傍の整備エリアに油が乱雑に流れてしまう。
【0006】
こういった引き込み又は吸い込みの問題に対処するために、多くのポンプ製造業者は、排気中のシステムからポンプへの引入れラインに、ボール弁又はその他の逆止弁装置を取り付けている。しかしながら、ボール又は同様の構造は流れの障害物であり、それによって排気中のシステムからの流量が大幅に減少し、排気工程の時間及び費用が増大し得る。更に、真空引きが進むと、ボール又は同様の部材がその閉位置に向かって弾性付勢されている場合、ばねの力がボールの両側における小さな圧力差に打ち勝ち、所望の真空になる前に逆止弁が途中で閉じてしまう可能性がある。
【0007】
多くのポンプ製造業者は、排気中のシステムへの油の逆流問題に対処するために、排気中のシステムとポンプの間に手動操作の遮断弁を設けるという、比較的効果的な方法を採用している。しかしこの方法は、所望の真空まで真空引きしたら操作者が忘れずに弁を閉じることを頼みにしている。更に重要なことは、この手法は、ポンプが意図せずに停止した場合(例えば誰かがポンプの電源コードにつまずいたり回路遮断器が作動したりすることによって)における逆流問題の予防にはならない。更に、この手動弁の手法も上述の逆止弁も、油がポンプに引き込まれて、望ましくないことにポンプが油でいっぱいになることを防ぐものではない。このポンプの問題に対処するために、一部の製造業者は、ポンプが真空のシステムから切り離されたら作動させるための手動操作の通気弁を提供している。しかし、これもやはり操作者が忘れずに弁を開くことを頼みにしており、ポンプが意図せずに停止した場合における逆流問題の予防にならない。
【0008】
冷凍空調(AC/R)システム内の冷媒は、100%純粋で汚染がない場合に最も効率的に機能する。汚染は、水蒸気、空気又はその他の気体、及び化合物の形態をとり得る。冷凍空調システムの寿命と効率は、そこに残った汚染物質によって深刻な悪影響を受ける可能性がある。冷凍空調システムの汚染を最小限に抑えるようにするには、典型的には、システムの汚染物質の大部分を取り出す又は抜き取るために、システムを高真空(500水銀柱ミクロン(67Pa)、更には20水銀柱ミクロン(2.7Pa)程度)に真空引きする必要がある。多くの装置製造業者は、システムから汚染物質を確実に除去できるように、特定の真空度に真空引きしてから一定時間保持するよう求めている。場合によってはこれを複数回(例えば3回)、各排気の合間にシステムを乾燥した清浄な窒素で一掃しながら行う必要があることさえある。何れにせよ、システムを冷媒の充填又は再充填前に清浄で乾燥した高真空にしておくことは、言い尽くせないほど重要である。同様に、真空ポンプの排気動作を中断することなく油を迅速に交換できることも最優先事項である。それによって節約できる時間は、小規模なシステムで数時間に達することがあり、大規模なシステムでは数日、更には数週間になり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述及びその他の問題を念頭に置き、本発明の開発を行った。本発明では、油溜めの油に浸さないポンプの設計を提供する。このポンプの設計は更に、ポンプが意図的又は意図せず停止した場合に、ポンプ内及び排気中のシステム内の真空を安全に破る自動装置を含む。これに加えてクイック油交換システムも提供する。このシステムは少なくとも2つの油容器と、切換機構を使用し、この切換機構は、前記油交換システムの前記2つの油容器の何れか一方の油の引き出しと戻しを可能にするように選択的に動作可能である。その際、前記切換機構により、使用下にある油容器は、真空ポンプと流体連通する一次油貯留器になり、もう一方の油容器は流体連通から切り離される。使用下にある容器の油が汚染されたり汚れたりした場合、前記切換機構を瞬時に反転させて、汚れた油容器を切り離すと同時に、清浄な別の油容器を一次油貯留器として機能させることができる。従って、ベーンポンプの排気動作を中断することなく、汚れた油容器を取り外して、清浄な油の第3の容器と交換することができる。この交換用の清浄な油の第3の容器は、新しいものであっても、汚れて取り外した第1の容器に清浄な油を再充填して定位置に戻したものであってもよい。何れにしても、第2の容器が汚れて交換が必要になれば、同様の操作方法で前記切換機構を再反転して、清浄な容器(新しいものであるか、再充填した第1の容器であるかは問わない)を、一次油貯留器にすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クイック油交換システムを備えた潤滑油システムを有するポータブルロータリベーン式真空ポンプに関する。前記潤滑油システムは油引入れ装置を含み、この油引入れ装置は、一次油容器又は貯留器と、二次油容器又は貯留器と、これら2つの容器間にある小型の油ポンプ機構を含む。前記一次及び二次油容器は両方とも絶えず大気に開放され、周囲圧力になっている。前記ポンプ機構がまず、油を前記一次油容器から、それよりはるかに小さい前記二次油容器へと移動させる。その際、その油が前記油ポンプ機構の下流にある第1の経路又は通路を経由して、真空のベーンポンプのハウジング空洞へと引き込まれる。前記第1の油経路又は通路は前記二次容器と流体連通しており、この二次容器は上述のように大気に開放され、周囲圧力になっている。前記二次油容器又は貯留器はまた、前記一次油容器又は油溜めに入る油量のごく一部(例えば1/10以下)のみを保持し、前記一次油容器又は油溜めは実質的に前記システムの全ての油を保持する。前記潤滑油システムは油戻し装置を更に含み、この油戻し装置は、前記一次及び二次油容器がやはり大気に開放され、周囲圧力になっている状態で、油を、動作中の前記ベーンポンプ及び前記二次油容器から前記一次油容器に戻すためのものである。
【0011】
前記クイック油交換システムは、少なくとも2つの油容器と、切換機構を含む。前記切換機構は、最初に2つの容器のうちの第1の容器を一次油貯留器として機能するように真空ポンプと流体連通させる一方、第2の容器をそういった流体連通から切り離すように動作可能である。このポジションは、第1の容器の油が汚染されたり汚れたりするまで保持され得る。次に、前記切換機構をスナップ動作で反転させると、清浄な油の入った第2の容器を一次油貯留器として機能するように真空ポンプと流体連通させ、汚れた第1の容器を流体連通から切り離すことができる。その間、真空ポンプは冷凍空調システムを排気するために動作している状態のままである。その後、切り離された汚れた油の第1の容器を取り外して、清浄な油の第3の容器と交換し、第2の油容器が汚れたときに切換機構を反転させて元に戻し、清浄な油の交換用第3の容器を真空ポンプと流体連通させて、一次油貯留器として機能させることができる。ここで、第3の容器は、新しいものであっても、単に汚れた第1の容器に清浄な油を再充填して定位置に戻しただけのものであってもよい。何れにしても、必要に応じてこの工程を繰り返して、真空ポンプを常に清浄な油で動作させておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明のポータブルロータリベーン式ポンプの斜視図である。
【
図4】油引入れ装置と油戻し装置を含んだ、本発明のポンプの潤滑油システムの概略図である。
【
図5】一次油容器からベーンポンプ及び二次油容器に油を供給する油引入れ装置の拡大図である。
【
図7】閉位置にあるリード弁又はフラッパ弁を示す、
図4と同様の図である。
【
図8】開位置にあるリード弁又はフラッパ弁を示す、
図4と同様の図である。
【
図9】複数の油容器を使用し、それらが汚染されたり汚れたりした場合に、ベーンポンプの排気動作を全く中断することなく交換することができる、クイック油交換システムの図である。
【
図10】
図9と同様のクイック油交換システムの図である。
【
図11】
図9と同様のクイック油交換システムの図である。
【
図12】第1の油容器を真空ポンプの一次油貯留器として使用し、それと同時に予備の第2の油容器を使用状態から切り離すように動作中の、クイック油交換システムの追加の図である。
【
図13】
図12と同様のクイック油交換システムの追加の図である。
【
図14】
図12と同様のクイック油交換システムの追加の図である。
【
図15】
図12と同様のクイック油交換システムの追加の図である。
【
図16】
図12と同様のクイック油交換システムの追加の図である。
【
図17】
図12~16と類似しているが、第1の容器の油が汚染されたり汚れたりして交換が必要なときに、清浄な油の予備の第2の容器を真空ポンプの一次油貯留器として使用し、第1の容器を使用状態から切り離すように切り換えられた、クイック油交換システムの図である。
【
図22】弁ハンドルを備えた切換機構42を有するポータブルポンプの別の実施形態の斜視図である。前記弁ハンドルは、一次油貯留器として選択された容器(4又は4’)を示し、かつその容器の取り外しを防止する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1及び
図2に示されているように、本発明のポンプ1はポータブルユニットであり、電気モータ5(
図2)によって駆動されるロータリベーン真空ポンプ3(
図2及び
図3を参照)を含む。
図3(
図2の線3-3にほぼ沿った図)に最もよく示されているベーンポンプ3はハウジング7を含み、ハウジング7は、軸11を中心にして、部分的に空洞を画成するように延びる内側表面9を有する。ポンプ1のロータ13は、軸15を中心に回転するように空洞(
図3)内に取り付けられる。例示されている軸15は、ハウジング軸11からオフセットされており、ハウジング軸11とほぼ平行である。ロータ13はまた、少なくとも2つのベーン17を含み、これらのベーン17はそれぞれのスロット19内で摺動するように取り付けられる。
【0014】
動作中、
図2のモータ5が、ハウジング7の空洞内でロータ13を、軸15を中心に第1の方向21(
図3では時計回り)に回転させる。ここで、ロータ13のベーン17はそれぞれ、内側エッジ部分23及び外側エッジ部分25を有する。外側エッジ部分25は、ロータ13がモータ5によって軸15を中心に回転するときに発生する遠心力により、ハウジング7の内側表面9に接触する。このときベーン17は、図のように、ハウジング7の空洞を複数のチャンバ27、27’、及び27”に順次分離する。
【0015】
図3のハウジング7は、ハウジング端壁35の内側表面9’(
図4も参照)に少なくとも1つの引入れ通路31と、内側表面9を貫く少なくとも1つの放出通路33(
図3及び
図4)を更に含む。通路31及び33はそれぞれハウジング7の空洞と流体連通しており、引入れ通路31は、
図1の引入れポート37を介して、真空引き対象のシステム又はユニット12に接続される。なお、
図3及び
図4では、引入れ通路31及び放出通路33はそれぞれの表面9、9’に示されているが、これらの通路の出入口は、ハウジング空洞を形成する任意の表面に形成され得る。何れにせよ、
図3に示されているロータ13はほぼ円筒形であり、そのほぼ円筒形の外側表面41が、ロータ軸15を中心にして延び、引入れ通路31と放出通路33との間の上側の位置で、ハウジング7の内側表面9に当接する。
【0016】
図4に略図で示されている本発明のポンプ1は潤滑油システム2を備え、潤滑油システム2は油引入れ装置と油戻し装置を含む。以下で詳細に説明するが、前記油引入れ装置は、油を一次油容器4(
図4)からベーンポンプ3及び二次油容器6に供給する。このとき前記油戻し装置は、容器4、6が大気に開放され、周囲圧力になっている状態で、油をベーンポンプ3及び二次油容器6から一次容器4に戻す。
【0017】
より具体的には、
図4に示すシステム2の油引入れ装置は、一次油貯留容器4(例えば8オンス(227g))と、それよりはるかに小さい二次油貯留油容器6(例えば0.5オンス(14g))と、一次容器4と二次容器6の間にある油ポンプ機構8を含む。油ポンプ機構8は、例示されているギヤポンプなどの容積式であると好ましい。このポンプ機構8は、容器4、6が両方とも図のように大気に開放され、実用上は周囲圧力になっている状態で、油を一次容器4から二次容器6に移動させる働きをする。
【0018】
油引入れ装置は、油を、一次容器4から油ポンプ機構8の下流に向かって、例示されている経路又は通路10、10’、10”(
図4及び
図5を参照)を通じ、少なくとも1つのチャンバ(例えば、
図6の27’)、好ましくは
図6の全てのベーンポンプチャンバ27、27’、及び27”へと供給する。なお、経路部分10は、二次油容器6の直ぐ隣にあると好ましいが、必要に応じて容器6の一部分であってもよい。何れにせよ、ベーンポンプ3に油を供給する際、真空のチャンバ(例えば27’)は周囲圧力よりも低い圧力になっている。その結果、油は、これらの真空のチャンバにより、経路又は通路10、10’、10”(
図5)沿いに引き込まれ、又は吸い込まれ、ベーンスロット19(
図6)を通じてベーン17を通過し、ハウジング7の真空の空洞の中に入る。ここで、油引入れ経路又は通路10、10’、10”、19は、二次油容器6と流体連通しており(
図4及び
図5)、この二次容器6は大気に開放され(
図4)、周囲圧力になっている。
【0019】
上述の潤滑油システム2の油戻し装置は、油を、ベーンポンプ3及び二次油容器6から一次油容器4に戻す。ここで、ベーンポンプ3のハウジング7の空洞に入っている、上述のように経路又は通路10、10’、10”、19を通じて供給された油は、そのベーンポンプ3(
図4)から、放出通路33を通じて出てくる。この油は次いで、リード弁又はフラッパ弁21を通過して二次容器6に入る。リード弁21は、
図4及び
図7の閉位置に向かって弾性付勢されており、放出通路33を選択的に開(
図8)、閉(
図7)する。リード弁又はそれと同様の弁21は、本来の性質上、ハウジング空洞から出て弁21を通過する気体と油の圧力波及び体積に応答して振動又ははためく。その際、放出された気体と油の混合物は二次容器6(
図4)内の油の中を通って泡だち、音を立てて、分離室20へと入っていく。分離室20は、一次油容器4への油戻し装置の一部であり、22のところで大気に開放され、周囲圧力になっている。分離室20では、二次容器6の油の中に放出されたベーンポンプ3からの気体が、油と分離し、開口22を通って大気中に放出される。分離した油は、好ましくは、重力によって、分離室20の下向きに傾斜した表面24に沿って流れて一次油容器4へと戻る。これで、モータ5が意図的に停止される(例えば操作者によって)、又は意図せずに停止する(例えば誰かがポンプの電源コードにつまずいたり回路遮断器が作動したりすることによって)まで、この油の循環が繰り返される。
【0020】
モータ5が停止し、ロータ13が駆動されなくなると、ハウジング7の空洞内の真空(例えば、周囲よりも低く、500水銀柱ミクロン(67Pa)、更には20水銀柱ミクロン(2.7Pa)程度)が自然に破られ、大気への通気が行われる。このハウジング空洞までの通気は、大気に開放され周囲圧力になっている二次容器6(
図4)から、油引入れ経路又は通路10、10’、10”、19を介して行われる。なお、その際、二次油容器6及び通路10、10’、10”、19内にある少量の油が、流入する通気空気と共にハウジング空洞に吸い込まれる可能性がある。このベーンポンプ3に、排気中のシステム又はユニットがまだ接続されていると、そこへその油の一部がハウジングの空洞から吸い込まれる可能性がある。しかしながら、引き込まれる可能性のある油の量は主として、二次油容器6及び部分10、10’、10”、19の通気経路内にあるものだけである。この量は、チャンバ27、27’、27”の容積(例えば2.5オンス(71g)以上)に比べて非常に少なく(例えば0.5オンス(14g)又はそれをわずかに上回る)、従ってベーンポンプ3又は排気中のユニットに問題は生じない。それに対して、従来の設計では、排気中のユニットが接続されたままであると、望ましくないことに、どこかで真空が破られるまで、油がポンプチャンバへ、そして排気中のユニットへと引き込まれる可能性がある。その頃には、ベーンポンプは非圧縮性の油で完全に満たされ、排気中のユニットが油で汚染されている可能性がある。その場合、汚染されたユニットから油を完全に除去しなければならず、かなりの時間と費用がかかる。更に、ベーンポンプからも、再起動前に過剰な油を抜かなければならない。そうしないと、ベーンポンプがひどく損傷する可能性がある。
【0021】
本発明のベーンポンプ3は、単段ポンプであっても多段ポンプであってもよい。
図4のような多段設計では、2段目のハウジング7’のロータ13’は、1段目のロータ13とほぼ同じように動作する。ここで、2段目の油は、1段目の10、10’、10”、19と同様の経路又は通路を通じて2段目の空洞内に引き込まれ得る。ただしこの油は、
図4の好ましい実施形態では、1段目から放出される気体と油に混入して2段目のハウジング7’に入る。すなわち、最初の真空(例えば500水銀柱ミクロン(67Pa))に真空引きされるまでは、1段目の気体と油の混合物は通常、
図4の放出通路33を通ってリード弁21を通過し排出される(
図8も参照)。次いでリード弁21が典型的には閉鎖、又は引き寄せられて閉じ、1段目からの放出物は全体が端壁35’にある引入れポート31’(
図4)を通じて2段目に引き込まれる。それから2段目によって、気体と油の混合物が
図4の放出ポート33’を通ってリード弁21’を通過し排出されて、より高い真空(例えば20~50水銀柱ミクロン(2.7~6.7Pa))に真空引きされる。このような多段設計では、モータ5が意図的かどうかに拘らず停止した場合、1段目のリード弁21と同様に、リード弁21’が吸い込まれて閉じる。次いで、2段目の通気が、2段目の引入れポート31’を通じて1段目から、上述の経路又は通路19、10”、10’、10及び二次油貯留器6を経由して、大気へと行われる。
【0022】
従って本発明の自動真空破壊装置は、単段ポンプでも多段ポンプでも安全に通気する働きをすることができる。その際、一次油貯留容器4及び二次油貯留容器6は常時、大気に開放し、周囲圧力にしておくことができる。
【0023】
一次油貯留容器4は、好ましくは
図3の26のところで分離室20に接続され、手動で容易に取り外すことができる。一次容器4は、好ましくは、潤滑油システム2内のほぼ全ての油(例えば、8オンス(227g))を保持でき、ベーンポンプ3が動作しているかどうかに関係なく、この一次容器4を使用して油を交換することができる。つまり、元の容器4を、清浄な油で満たされた新しい容器と交換することで、迅速に潤滑油システムの油の交換を行うことができる。この交換中にベーンポンプ3が引き続き動作していても、潤滑油システム内には通常、安全な動作の維持に十分な油が残っている。ここで一次容器4は、好ましくは、ほぼ透明で剛性を有する材料(例えばプラスチック)で作られ、ポンプ1の本体の前面にある透明な扉の後ろに配置される(
図1及び
図2)ことから、油の状態を視覚的に監視し、必要に応じて交換を行うことが可能になる。
【0024】
この好ましい実施形態では、一次油貯留器4は、実質的に、潤滑油システムの油に対する総油溜め(例えば8オンス(227g))となっており、それを簡単にポンプ1の本体から取り外すことができる。このとき潤滑油システムの残りの部分は、一次容器4に対して相対的に少量の油しか含んでいない。例えば、二次容器6に含まれ得る油の体積は一次容器4の約1/10以下である(例えば1/16又は0.5液量オンス(15ml))。システムの残りの部分に残っている油は更に少なくなり得る。ポンプ1が油溜めの油に浸されていないため、ベーンポンプ3及びモータ5を含む本体の様々な部品の空冷が可能になる(例えば
図2のファン30を用いる)。これは、冷却のために油溜めの油に完全又は部分的に浸されている真空ポンプと対照的である。従ってこの設計では、潤滑油システム全体にわたって、コストのかかる封止の必要性が減り、設計がはるかに単純になる。また、上述の引き込み又は吸い込み問題など、油浸ポンプの多くの潜在的な問題も回避される。油浸ポンプは特にモータ停止時、望ましくないことに、油溜めから、流れの経路に沿ってだけでなく、当接するあらゆる部品の間からも油を引き込む可能性がある。更に冷却ファン30についても、好都合なことに、その駆動をベーンポンプ3及びポンプ機構8と同様に共通のモータ5から直接(例えば1700RPM)、又は必要に応じてギア機構を介して行うことができる。
【0025】
図9~
図11の実施形態では、真空ポンプ1が、40のところで変更された潤滑油システムを備える。この変更形態では、第2の油容器4’が、
図4及び
図7~
図8の第1の油容器4の第1の場所に隣接した、第2の場所に配置され、手動切換機構42(
図9)が設けられる。この手動切換機構42は、油容器4、4’の何れか一方を選択して油の引き出しと戻しを行うためのものである(
図9~
図10を参照)。その際、例えば、
図9の油容器4をまず、
図8のように真空ポンプ1の一次油貯留器として機能させることができる。しかしながら容器4内の油が使用されて汚染されたり汚れたりし、効力を失ったら(例えば真空計で判定)、切換機構42を
図10のように第2のポジションに移行させて、清浄な油の容器4’を一次油貯留器として機能させることができる。次に、汚れた油容器4を取り外し(
図11)、清浄な油の第3の容器4”と交換することができる(
図10)。ここで「第3の」容器4”は、新しいものであっても、単に汚れて取り外した第1の容器4に清浄な油を再充填して定位置に戻しただけのものであってもよい。何れにしても、
図11の第2の容器4’が汚れた場合などに、切り換えと交換の工程を繰り返して、汚れた容器の代りに清浄な油の第4の容器を用いることができる。同様に、こういった「第4」の容器もまた、新しいものであっても、単に汚れて取り外した第1の容器4’に清浄な油を再充填して定位置に戻しただけのものであってもよい。従って、切換機構42と、交換可能な2油容器式の仕組みにより、真空ポンプ1の油の迅速な交換が可能となり、しかも、冷凍空調(AC/R)システムを排気するよう真空ポンプ1を動作させたままそれを実施することができる。この交換は、使用者が切換機構42を反転させる速さで終えることができるため、ほぼ瞬間的に行われる。
【0026】
図12~
図16は前記クイック油交換システムの動作の追加の図である。
図12の斜視図と、
図13には、第1のポジションにある切換機構42が示されている。この第1のポジションで、容器4の清浄な油が、
図9の油ポンプ機構8によってその引入れライン44を経由して、容器4から引き出される(再び
図12を参照)。更に、油は二次油貯留器20から戻りライン46を経由して切換機構42に戻され、この切換機構42を介してライン48により容器4に戻るように方向付けられる(
図16も参照)。切換機構42が
図9のこの第1のポジションにある場合、予備の第2の油容器4’に関連付けられた、油ポンプ機構8への引入れライン44’は、油ポンプ機構8との流体連通から切り離されている(
図14~
図16も参照)。第2の容器4’への油戻りライン48’もまた、この第1のポジションにある切換機構42によって、二次油貯留器20からの油戻りライン46との流体連通から切り離されている。
【0027】
図17~
図21では、切換機構42が第2のポジションに移行しており、この第2のポジションで、今度は予備の第2の容器4’の清浄な油が、油ポンプ機構8によって引入れライン44’に沿って油ポンプ機構8に引き込まれる。更に、この第2のポジションでは、油は二次貯留器20から戻りライン46に沿って戻され、二次貯留器20から切換機構を介して
図17~
図21のライン48’により容器4’に戻るように方向付けられる(
図10も参照)。切換機構42が
図17~21のこの第2のポジションにある場合、容器4に関連付けられた、油ポンプ機構8への引入れライン44は、油ポンプ機構8との流体連通から切り離されている(
図19~21)。第1の容器4への油戻りライン48もまた、切換機構42によって、二次油貯留器20からの戻りライン46との流体連通から切り離されている(
図10も参照)。
【0028】
図17~
図21の切換機構42の第2のポジションでは、真空ポンプ1に取り外し可能に取り付けられている汚れた油の第1の容器4を、
図10のように手動で取り外し、
図11のように清浄な油の第3の容器4”と手動で交換することができる。その際、汚れた油の第1の容器4は切換機構42によって切り離されているので、冷凍空調システムを排気する真空ポンプ1の動作が中断されることはない。それ以上に重要なことは、第1の油容器から第2の油容器への油交換は、文字通り使用者が切換機構42を手動で反転する間に行われ、使用者は他に注意集中を要することがあっても、慌てて汚れた油容器4を取り外して清浄な油容器4”と交換する必要はないということである。上述のように、第3の容器4”は、新しいものであっても、単に汚れて取り外した第1の容器4に清浄な油を再充填しただけのものであってもよく、この再充填した容器は、再び取り付けると、ここで例示した一連の工程で使用される第3の容器となる。この一連の工程は、排気工程全体を通じて繰り返すことができる。
【0029】
以上より、
図9~
図21の油交換システム40は、第1のモードと第2のモードで選択的に動作可能である。上述の
図12~
図16の第1のモードでは、第1の油容器4が、真空ポンプ1の第1の場所に配置され、油ポンプ機構8と流体連通する一次油貯留器として機能する。このとき、予備の第2の油容器4’は真空ポンプ1の第2の場所に配置され、油ポンプ機構8との流体連通から切り離されている。上述の
図17~
図21の第2のモードでは、真空ポンプ1の第2の場所に配置された予備の第2の油容器4’が、動作可能になるように第1の油容器4と置き換わり、油ポンプ機構8と流体連通する一次油貯留器として機能する。このとき、真空ポンプ1の第1の場所にある第1の容器4は、油ポンプ機構8との流体連通から切り離されている。真空ポンプ1の第1の場所には、第1の容器4が取り外し可能に取り付けられており、この真空ポンプの第1の場所に、第3の油容器4”を取り外し可能に取り付けることができる。上述のように、汚れてしまった油の第1の容器4を、切換機構42の第2の動作モードで取り外し、真空ポンプ1の第1の場所で、清浄な油の第3の容器4”と交換することができる(この第3の容器4”は、上述のように、取り外して清浄な油を再充填した第1の容器4でもよい)。その後、第2の容器4’内の油が汚れると、切換機構42をその第1のポジションに戻し、第1の動作モードに戻すことができ、それによって、使用下にある第3の容器4’(新しいもの、又は再充填した容器4)が一次油貯留器として機能し、油ポンプ機構と流体連通する。更に、油戻し装置2については、二次油貯留器20からの戻り油が、重力によって、戻りライン46を経由して、一次油貯留器として機能するように切換機構42によって選択されている油容器(例えば、4、4’、又は4”)に選択的に送られる。
【0030】
切換機構42は、第1と第2のポジション/動作モード間を移行するときに可聴クリック音を発生させて、移行が行われたことを使用者に警告するように設計されている。ここで、切換機構42は、
図13及び
図18の50のところで弾性付勢されている。切換機構42を動作モード間又はポジション間で移行させると、ばね50の一方の脚50’が頂点52を乗り越え、表面54又は54’の何れか一方にスナップして、可聴クリック音を生成する。この動作により、操作環境が騒々しくクリック音が聞こえにくい場合でも、使用者が感じることができる力触覚も生成される。更に、一層重要なことには、この弾性付勢されたスナップ動作により、2つの油容器間の切り換えがほぼ瞬時に行われる。このとき、切換機構42は、それが第1の動作モード又は第2の動作モードの何れかにあり、その2つの何れにあるかについて使用者は気にする必要はないという点で、双投切換機構であると好ましい。
【0031】
図22は、弁ハンドルを含んだ切換機構42を備える本発明の別の実施形態を示しており、前記弁ハンドルは、容器4又は4’の何れが一次油貯留器として機能するかを選択するために2つのポジションの間で移動することができる。この弁ハンドルは、選択された容器4を視覚的に示し(
図22)、一次油貯留器として使用下にある容器4が真空ポンプから取り外されるのを防止する。一次油貯留器として選択されなかったもう一方の容器4’は、弁ハンドルによるブロックが解除され、上述のように自在に取り外すことが可能になる。
【0032】
前記の開示には、添付の図面に関する本発明の幾つかの実施形態が記載されており、それらの説明が詳細に行われている。当業者であれば、以下の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の教示に基づいて、様々な変更、修正、その他の構造的な配置、及び他の実施形態を実施できることが理解されよう。特に、ほぼという用語は、本明細書では、量的な比較、値、測定値、又はその他の表現に起因し得る固有の不確実度を表すために使用されることに留意されたい。この語はまた、本明細書では、ある量的表現が、関連する対象物の基本的な機能に変化をもたらすことなく記載された基準値から変動し得る程度を表すためにも使用される。
【符号の説明】
【0033】
1 ポータブル真空ポンプ
2 潤滑油システム
3 ベーンポンプ
4 一次油貯留器、第1の油容器
4’ 予備の第2の油容器
4” 第3の油容器
5 電気モータ
6 二次油貯留器
7、7’ ハウジング
8 油ポンプ機構
9、9’ ハウジング内側表面
10、10’、10” 油引入れ経路又は通路
11 ハウジング軸
12 真空引き対象のシステム又はユニット
13、13’ ロータ
15 ロータ軸
17 ベーン
19 ベーンスロット
20 分離室
21、21’ リード弁又はフラッパ弁
23 ベーンの内側エッジ部分
25 ベーンの外側エッジ部分
27、27’、27” ベーンポンプチャンバ
30 冷却ファン
31、31’ 引入れ通路、引入れポート
33、33’ 放出通路、放出ポート
35、35’ ハウジング端壁
37 引入れポート
40 油交換システム
41 ロータの外側表面
42 切換機構
44 油ポンプ機構への引入れライン
46 二次油貯留器からの油戻りライン
48 第1の容器への油戻りライン
48’ 第2の容器への油戻りライン
50 ばね
50’ ばねの一方の脚
52 頂点
54、54’ スナップ表面
【国際調査報告】