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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】スクリーニング系
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240614BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240614BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240614BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N5/10 ZNA
C12N15/63 Z
C07K14/705
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578936
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2022066779
(87)【国際公開番号】W WO2022268745
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】2108867.9
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エムター,ロジャー
(72)【発明者】
【氏名】ナッシュ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA24
4B065CA60
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書において記載されるのは、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む、核酸コンストラクト(ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能である)、前記コンストラクトを含む細胞および集団、ならびに嗅覚受容体を発現させるための、および新規の嗅覚受容体と受容体-リガンド相互作用を同定するための方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的な嗅覚受容体を発現する細胞について、および/または前記細胞における機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子について選択するための方法であって、以下のステップ:
A)細胞を提供すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、およびここで、コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含む、
B)前記嗅覚受容体のリガンドの存在下において、前記細胞を培養すること、
C1)嗅覚受容体を機能的に発現している細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
機能的な嗅覚受容体を発現する細胞について、および/または前記細胞における機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子について選択するための方法であって、以下のステップ:
A)変異誘発ステップを細胞に適用すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含む、
B)変異した細胞を、前記嗅覚受容体のリガンドの存在下において培養すること、
C1)嗅覚受容体を機能的に発現している変異細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること
を含む、前記方法。
【請求項3】
変異誘発ステップが、挿入変異誘発を用いて行われ、ここで、核酸配列は、プラスミド、直鎖状DNA配列、トランスポゾン、レトロウイルス、レンチウイルスまたはCRISPR-Casにより媒介される組み換えを用いて、細胞のゲノム中に挿入される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記挿入された核酸配列が、内在遺伝子の発現の活性化のために好適なエンハンサーおよび/またはプロモーター配列を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
選択された細胞における挿入された核酸配列の挿入部位が、マッピングおよび/または同定される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
変異誘発ステップが、CRISPR干渉またはCRISPR活性化を用いるCRISPR-Cas媒介性変異誘発を用いて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
所与のリガンドに結合している嗅覚受容体を同定するための方法であって、以下のステップ:
A)不均一な細胞の集団を提供すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含み、
ここで、細胞のうちの少なくとも1つにおいて含まれる前記第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体は、前記集団の他の細胞のうちの少なくとも1つにおける第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体から区別し得る、
B)前記細胞の集団を、前記所与のリガンドの存在下において培養すること、
C1)前記所与のリガンドに結合している嗅覚受容体を機能的に発現している細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること、
D)選択された細胞において受容体をコードするヌクレオチド配列を決定すること
を含む、前記方法。
【請求項8】
ステップC1)が、加えて、継代培養ステップを含み、ここで、嗅覚受容体の機能的発現が改善されている細胞が、培養において濃縮されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸配列が、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結された、抗生物質に対する耐性を付与するプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む、核酸コンストラクトであって、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、前記核酸コンストラクト。
【請求項11】
抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸配列が、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である、請求項10に記載の核酸コンストラクト。
【請求項12】
請求項10または11に記載の核酸コンストラクトを含み、および嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクトを含む、細胞であって、好ましくはここで、前記核酸コンストラクトは、単一の核酸コンストラクトを構成するように融合している、前記細胞。
【請求項13】
真核細胞、好ましくはヒト細胞である、請求項12に記載の細胞。
【請求項14】
請求項12または13において定義されるとおりのいくつかの細胞を含む細胞の集団であって、ここで、細胞のうちの少なくとも1つにおいて含まれる第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体は、前記集団内の他の細胞のうちの少なくとも1つにおける第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体から区別し得、区別し得る嗅覚受容体を発現する細胞のプールを定義する、前記細胞の集団。
【請求項15】
少なくとも1つの嗅覚受容体が、前記細胞の集団において機能的に発現される、請求項14に記載の細胞の集団。
【請求項16】
そのアミノ酸配列が、配列番号62と少なくとも60%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む、嗅覚受容体であって、好ましくはここで、配列番号62は、嗅覚受容体のC末端に位置する、前記嗅覚受容体。
【請求項17】
好ましくは請求項16に記載の、そのアミノ酸配列が、配列番号20と少なくとも60%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる、嗅覚受容体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本明細書において記載される側面および態様は、嗅覚受容体の分野に、ならびに嗅覚受容体を発現させるための、および新規の嗅覚受容体と受容体-リガンド相互作用を同定するための、核酸コンストラクト、宿主細胞、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
嗅覚または匂い分子受容体(OR)は、嗅上皮の嗅覚ニューロンにおいて発現され、匂い分子の検出を担っている。嗅覚受容体は、Gタンパク質共役型受容体スーパーファミリー(GPCR)に属する。匂い分子(リガンド)によるORの活性化は、嗅覚特異的Gタンパク質を活性化し、これは次いで、III型アデニル酸シクラーゼを介して環状AMP(cAMP)の産生を促進する。細胞内cAMPのレベルの増大は、環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルの開口をもたらし、これは、カルシウムイオンが細胞中に流入することを可能にし、嗅覚ニューロンを脱分極させ、脳に情報を運搬する活動電位を引き起こす。
【0003】
ヒトゲノムは、約400の異なる機能的な嗅覚受容体をコードする。特定の嗅覚受容体が1つより多くのリガンド分子により活性化される場合もあり、特定のリガンド分子が複数の嗅覚受容体を活性化する場合もあり、このことが、ORとリガンドのレパートリーとの間の高度に複雑な相互作用のネットワークを作り出す。前記の相互作用の解明は、新規のフレーバーおよびフレグランスの成分、または現在用いられている化合物よりも持続可能である、および/もしくは生成することがより容易である、匂いエンハンサーなどの化合物の発見を可能にし得る。
【0004】
嗅覚受容体の効率的なスクリーニングは、培養された細胞株におけるそれらの発現を必要とし、これは、一般的に、嗅覚受容体遺伝子の細胞中への導入と、その後のその安定なまたは一過性の過剰発現を含む。当該分野において現在利用可能な発現系を利用する、機能的な異種性の嗅覚受容体の発現は、一般的に、通常、嗅覚ニューロンにおいて発現し、細胞表面膜へのORの輸送を促進する、受容体トランスポーチンGタンパク質(RTP)ファミリーのアクセサリータンパク質、すなわちRTP1SおよびRTP2(Yu et al. (2017) PLoS One 12(6): e0179067)の共発現を必要とする。しかし、既知の嗅覚受容体のうちの半分より多くは、現在利用可能な核酸コンストラクト、細胞株および方法を利用して機能的に発現させることができない。このことが、利用可能な受容体-リガンド空間の適用範囲が現在のところ限定されていること、同定されたリガンド(オーファン受容体)を有しない複数の受容体が存在すること、および、前記の方法の工業的適用が限定されていることをもたらす。したがって、嗅覚受容体を発現させるための核酸コンストラクト、細胞株および方法の改善について、および新規のコグネートな受容体-リガンド相互作用を同定することについての必要性が存在する。
【0005】
古典的なORスクリーニングアッセイは、クローン細胞の集団が、一般的に一度に1つの受容体および/またはアクセサリー分子を受け取り、次いで、多様なリガンドにより機能的な活性化について試験されるというアプローチに依存する。前記のアッセイは、さらに一般的に、cAMPにより誘導可能なプロモーターに作動可能に連結された、レポーター遺伝子として用いられるルシフェラーゼ遺伝子の共発現を含む(Saito et al. (2004) Cell 119(5): 679-691)。嗅覚受容体の活性化と、その後の細胞内cAMPの増大は、ルシフェラーゼの発現をもたらす。ルシフェラーゼによるルシフェリンの切断は、光の放出をもたらし、これを、次いで検出および定量することができる。古典的なORスクリーニングアッセイは、一度にスクリーニングすることができる嗅覚受容体、アクセサリー分子、および/またはリガンドの数により限定され、時間がかかり、かつ煩雑であり、揮発性のフレーバーおよびフレグランス化合物のライブラリーのスクリーニングなどのハイスループットスクリーニングおよび選択方法とは適合可能でない。したがって、前述の弱点を伴わない、ORについての改善されたスクリーニングアッセイについての必要性が、なお存在する。
【発明の概要】
【0006】
要旨
本発明の側面は、機能的な嗅覚受容体を発現する細胞について、および/または前記細胞における機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子について選択するための方法に関し、前記方法は、以下のステップを含む:
A)細胞を提供すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、およびここで、コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列(half CRE)、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含む、
B)前記嗅覚受容体のリガンドの存在下において、前記細胞を培養すること、
C1)嗅覚受容体を機能的に発現している細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること。
【0007】
本発明の別の側面は、機能的な嗅覚受容体を発現する細胞について、および/または前記細胞における機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子について選択するための方法に関し、前記方法は、以下のステップを含む:
A)変異誘発ステップを細胞に適用すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含む、
B)変異した細胞を、前記嗅覚受容体のリガンドの存在下において培養すること、
C1)嗅覚受容体を機能的に発現している変異細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること。
【0008】
いくつかの態様において、変異誘発ステップは、挿入変異誘発を用いて行われ、ここで、核酸配列は、プラスミド、直鎖状DNA配列、トランスポゾン、レトロウイルス、レンチウイルスまたはCRISPR-Casにより媒介される組み換えを用いて、細胞のゲノム中に挿入される。いくつかの態様において、挿入された核酸配列は、内在遺伝子の発現の活性化のために好適なエンハンサーおよび/またはプロモーター配列を含む。いくつかの態様において、選択された細胞における挿入された核酸配列の挿入部位が、マッピングおよび/または同定される。いくつかの態様において、変異誘発ステップは、CRISPR干渉(CRISPRi)またはCRISPR活性化(CRISPRa)を用いる、CRISPR-Cas媒介性変異誘発を用いて行われる。
【0009】
本発明の別の側面は、所与のリガンドに結合している嗅覚受容体を同定するための方法に関し、前記方法は、以下のステップを含む:
A)不均一な細胞の集団を提供すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含み、
ここで、細胞のうちの少なくとも1つにおいて含まれる前記第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体は、前記集団の他の細胞のうちの少なくとも1つにおける第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体から区別し得る、
B)前記細胞の集団を、前記所与のリガンドの存在下において培養すること、
C1)前記所与のリガンドに結合している嗅覚受容体を機能的に発現している細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること、
D)選択された細胞において受容体をコードするヌクレオチド配列を決定すること。
【0010】
いくつかの態様において、本発明による方法は、以下のようなものである:ステップC1)が、加えて、継代培養ステップを含み、ここで、嗅覚受容体の機能的発現が改善されている細胞が、培養において濃縮されている。
【0011】
いくつかの態様において、本発明による方法は、以下のようなものである:抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸配列が、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0012】
本発明の別の側面は、抗生物質に対する耐性に付与するポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクトに関し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸配列は、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0013】
本発明の別の側面は、上で定義されるとおりの核酸コンストラクトを含み、かつ嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクトを含む細胞に関し、好ましくはここで、前記核酸コンストラクトは、単一の核酸コンストラクトを構成するように融合している。いくつかの態様において、細胞は、真核細胞、好ましくはヒト細胞である。
【0014】
本発明の別の側面は、上で定義されるとおりの細胞の集団に関し、ここで、細胞のうちの少なくとも1つにおいて含まれる第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体は、前記集団内の他の細胞のうちの少なくとも1つにおける第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体から区別し得、区別し得る嗅覚受容体を発現する細胞のプールを定義する。いくつかの態様において、細胞の集団は、以下のようなものである:少なくとも1つの嗅覚受容体は、前記細胞の集団において機能的に発現される。
【0015】
本発明の別の側面は、そのアミノ酸配列が、配列番号62と少なくとも60%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む、嗅覚受容体に関し、好ましくはここで、配列番号62は、嗅覚受容体のC末端に位置する。
【0016】
本発明の別の側面は、好ましくはそのアミノ酸配列が、配列番号62と少なくとも60%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む、嗅覚受容体に関し、より好ましくはここで、配列番号62は、嗅覚受容体のC末端に位置し、そのアミノ酸配列は、配列番号20と少なくとも60%の同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0017】
定義
本発明は、従来のアプローチを用いて発現させることが困難である嗅覚受容体(OR)の機能的発現において、および新規のコグネートな受容体-リガンドペアの同定において有用な、核酸コンストラクト、細胞および方法を提供する。本発明は、改善された機能的発現および/または改善されたアクセサリー分子を有する嗅覚受容体をさらに提供する。本明細書において記載される核酸コンストラクト、細胞、および方法は、既知の核酸コンストラクト、細胞および方法に対する以下の利点のうちの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、または全てを示す。
【0018】
・他の方法では従来のアプローチを用いては可能でない嗅覚受容体の機能的発現の実施可能性(enablement)
・嗅覚受容体および/またはアクセサリー分子を機能的に発現している細胞の選択またはスクリーニングおよび分類の実施可能性
・嗅覚受容体の機能的な発現または改善された機能的発現のために必要とされる、改善されたアクセサリー分子、ならびに/または遺伝子のおよび/もしくはエピジェネティックな修飾の同定の実施可能性
・新規のコグネートな受容体-リガンドペアの同定の実施可能性
・増大した嗅覚受容体、アクセサリー分子およびリガンドのスクリーニングスループット許容量
【0019】
本明細書において例のセクションにおいてもまた示されるとおり、本発明の核酸コンストラクト、細胞および方法の適用から、従来のアプローチに対する顕著な改善が予測される。したがって、本明細書において記載されるとおりの本発明の側面および態様は、本明細書において議論されるとおりの課題および必要性のうちの少なくともいくつかを解決する。
【0020】
核酸コンストラクト
第1の側面において、本発明は、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクトを提供し、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、CRE半配列の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、NFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む。cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、およびNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の定義は、本明細書において別の場所で提供される。
【0021】
用語「嗅覚受容体」または「匂い分子受容体」(OR)は、本明細書において用いられる場合、本開示を考慮して、当業者により通常理解されるとおりのその通例の意味を有する。それは、典型的には嗅覚受容体ニューロンの細胞膜において発現される、7回膜貫通ドメインGタンパク質共役型受容体スーパーファミリー(GPCR)に属する受容体を指す。予測される7回膜貫通(TM)ドメインTM I~TM VIIは、3つの予測される内部(IC)ループドメイン(IC I~IC III)、および3つの予測される外部(EC)ループドメイン(EC I~EC III)により連結される。ORは、典型的には、嗅覚受容体特異的アミノ酸モチーフを含む。かかるモチーフの例は、Zhang and Firestein (2002) Nature Neurosci 5(2): 124-33およびMalnic et al. (2004) PNAS 101(8):2584-9(これらの全ては、それらの全体において本明細書において参考として援用される)において議論される、TM IIIおよびIC IIとオーバーラップするN-MAYDRYVAIC-Cモチーフ、IC IIIおよびTM VIとオーバーラップするN-FSTCSSH-Cモチーフ、TM VIIにおけるN-PMLNPFIY-Cモチーフ、ならびにEC IIにおける3つの保存されたC残基、およびTM Iにおいて高度に保存されたGN残基の存在である。哺乳動物およびヒトの嗅覚受容体は、その全体において本明細書において参考として援用されるMainland et al. (2015) Sci Data 2:150002などの刊行物において、およびその全体において本明細書において参考として援用されるOlender et al. (2013) Methods Mol Biol 1003:23-38において記載されるWeizmann Institute of Scienceにより維持されるHORDE(The Human Olfactory Data Explorer)データベースなどの公共で利用可能なデータベースにおいて議論される。
【0022】
嗅覚ニューロンにおける嗅覚受容体の匂い分子(リガンド)による活性化は、典型的には、嗅覚特異的Gタンパク質(Gαolf)を活性化し、これが次いで、III型アデニル酸シクラーゼを介して環状アデノシン一リン酸(cAMP)の産生を促進する。細胞内cAMPのレベルの増大は、cAMP依存性カルシウムチャネルの開口を介する嗅覚受容体ニューロン中へのカルシウムの流入を誘導する。カルシウムの流入は、塩化物イオンの流出を引き起こす別のチャネルの開口を引き起こし、脳の対応する領域へのシグナルをもたらす活動電位を引き起こす。嗅覚受容体は、複数のリガンドと相互作用する場合もあり、1つのリガンドが複数の嗅覚受容体を活性化させる場合もある。
【0023】
本明細書において用いられる場合、細胞によるDNA分子の「発現」という用語は、細胞によるポリペプチドの産生に関与する任意のステップを含み、これは、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、細胞膜への輸送および分泌を含むがこれらに限定されない。発現は、当業者に公知の任意の方法により評価されてもよい。例えば、発現は、qPCR、RNA配列決定、ノーザンブロット分析、ウェスタンブロット分析、タンパク質由来のペプチドの質量分析、またはELISAなどの当業者に公知の標準的なアッセイにより、形質導入された細胞における遺伝子発現のレベルをmRNAまたはタンパク質のレベルにおいて測定することにより、評価されてもよい。
【0024】
本明細書において用いられる場合、用語「機能的発現」とは、ポリペプチドが生物学的活性を示す細胞による、当該ポリペプチドの産生を指す。例えば、嗅覚受容体は、前記受容体が、その産生の後で、細胞膜に輸送されてその中に組み込まれて、その対応するシグナル伝達カスケードと、その後のリガンドによるその活性化を引き起こすことができる場合に、細胞により機能的に発現される。嗅覚受容体の機能的発現を評価する従来の方法は、cAMP誘導性プロモーターに作動可能に連結された、レポーター遺伝子として用いられるルシフェラーゼ遺伝子の共発現を伴う、前記ORの発現を含む(Saito et al. (2004) Cell 119(5): 679-691)。嗅覚受容体が機能的に発現される場合、その活性化、およびその後の結果として生じる細胞内cAMPの増大は、ルシフェラーゼの発現をもたらす。標準的なアッセイにおけるルシフェラーゼによるルシフェリンの切断は、光の放出をもたらし、これは次いで、検出および定量することができる。類似のアプローチをORのアクセサリー分子の機能的発現を評価するために、利用することができる。「アクセサリー分子」の定義は、本明細書において後で提供される。
【0025】
本発明は、本明細書において後で記載され、実験セクションにおいて示されるとおり、嗅覚受容体および/またはアクセサリー分子の機能的発現について選択またはスクリーニングするための改善された方法を提供する。
【0026】
嗅覚受容体またはアクセサリー分子などのポリペプチドの機能的発現は、ベースラインの機能的発現と比較して改善(増大)されていてもよく、これは、改善(増大)された生物学的活性をもたらしてもよい。前記改善(増大)された機能的発現は、例えば、ORを発現する細胞における、未修飾の対応する細胞と比較した、遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾の発生から生じてもよい。前記機能的発現は、未修飾の対応する細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%、改善(増大)されてもよい。機能的発現の改善はまた、他の方法では従来のアプローチを用いては可能でない嗅覚受容体の機能的発現が、本発明の核酸コンストラクト、細胞および方法を用いて達成されるということであってもよい。
【0027】
本明細書において用いられる場合、「核酸コンストラクト」とは、これらに限定されないが、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列などの好適な調節性領域に作動可能に連結された、細胞においてRNA分子(例えば、mRNA分子)に転写される領域(コード領域またはORF)を含む、DNA分子を指す。核酸コンストラクトは、一般的に、プロモーター、エンハンサー、5’リーダー配列、コード領域、および/または例えばポリアデニル化および/または転写終結部位を含む3’非翻訳領域(3’末端)などの、複数の作動可能に連結されたフラグメントを含むであろう。核酸コンストラクトは、組み換え体、すなわち、プロモーターが、天然においては、コード領域の一部または全てと関連しない核酸コンストラクトなどの、通常は天然において見出されないものであってもよい。核酸コンストラクトの調製のための分子ツールボックス技術は、当該分野において周知であり、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、第3版(2003年)、John Wiley & Sons Inc and Sambrook and Green、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第4版(2012年)、Cold Spring Harbor Laboratory Pressなどの標準的なハンドブックにおいて議論され、これらはいずれも、その全体において本明細書において参考として援用される。そのうちのいくつかは本明細書において実験セクションにおいて示されるかかる技術の非限定的な例は、融合PCR、制限酵素消化、ゴールデンゲート(Golden-gate)クローニングなどである。
【0028】
核酸コンストラクトという用語はまた、発現ベクターを包含する。「発現ベクター」は、本明細書において代替的に「ベクター」または「送達ベクター」としても言及され、例えば、前記配列と適合可能な宿主細胞において遺伝子またはコード配列の発現をもたらすことができるヌクレオチド配列を導入することにより、宿主細胞においてコード領域(遺伝子など)の発現を得るために用いられる、分子生物学ツールを指す。発現ベクターは、宿主細胞において安定であってもよく、エピソーマルであり続けてもよい。代替的に、ベクターは、例えば相同組み換え、非相同末端連結を通して、または別段に、宿主細胞のゲノム中に組み込むことができるものであってもよい。「宿主細胞」の定義は、本明細書において別の場所で提供される。
【0029】
好適な発現ベクターは、細胞の間の核酸の移動を容易にすることができる、当該分野において公知の任意の遺伝要素、例えば、これらに限定されないが、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス(例えば、これらに限定されないが、レトロウイルス、レンチウイルスなど)、ビリオンなどから選択することができる。発現ベクターはまた、脂質複合体またはネイキッドDNAなどの化学的ベクターであってもよい。「ネイキッドDNA」または「ネイキッド核酸」とは、標的宿主細胞の細胞質への核酸の送達を容易にする封入手段中に含まれていない核酸分子を指す。ネイキッドDNAは、環状または直鎖状(直鎖状DNA配列)であってよい。任意に、ネイキッド核酸は、標的宿主細胞への核酸のその送達を容易にするために、例えば細胞膜を通しての核酸の輸送を容易にするために、当該分野において用いられる、標準的な手段と関連させることができる。好ましい発現ベクターは、プラスミドである。好適なプラスミドは、当該分野において公知であり、Ausubelら、およびSambrook and Green(上記)などの標準的なハンドブックにおいて記載される。好適なプラスミドはまた、pcDNA3.1(+)シリーズ(Invitrogen, MA, USA)またはpGL4.29シリーズのベクター(Promega, WI, USA)などの市販のベクターから選択してもよい。
【0030】
本明細書において用いられる場合、用語「作動可能に連結される」とは、機能的な関係におけるポリヌクレオチドエレメントの連鎖を指す。核酸は、それが、別の核酸配列と機能的な関係に置かれる場合に、「作動可能に連結される」。例えば、転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合に、コード配列に作動可能に連結される。作動可能に連結されるとは、連結されているDNA配列が、一般的に近接しており、必要な場合には2つのタンパク質のコード領域を結合するために、近接しており、かつ読み枠中にあることを意味する。連結は、便利な制限部位における、またはその代わりに挿入されたアダプターもしくはリンカーにおけるライゲーションにより、あるいは遺伝子合成により、達成することができる。
【0031】
本発明による核酸コンストラクトは、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む。本明細書において用いられる場合、用語「プロモーター」または「転写調節配列」とは、1つ以上のコード配列の転写(すなわち発現)を制御するように機能する核酸配列を指し、コード配列の転写開始部位の転写の方向に関して上流に位置し、DNA依存的RNAポリメラーゼのための結合部位、転写開始部位および任意の他のDNA配列(これは、限定されないが、転写因子結合部位、リプレッサーおよびアクチベータータンパク質結合部位、ならびに直接的または間接的にプロモーターからの転写の量を制御するように作用することが当業者に知られている任意の他のヌクレオチドの配列、例えば、本明細書において後で記載されるとおり、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)を含む)の存在により、構造的に同定される。
【0032】
本明細書において用いられる場合、用語「エンハンサー」とは、それが作動可能に連結された配列の転写を刺激することができる核酸配列を指す。作動可能に連結されたエンハンサーは、必ずしも、それがその転写を制御するコード配列と近接している必要はない。エンハンサーは、単一の配列として用いられてもよく、あるいは、本明細書において記載されるとおりの他のエンハンサーおよび/またはプロモーターとの融合ヌクレオチド配列において含まれてもよい。
【0033】
本明細書において記載されるとおりのプロモーターおよびエンハンサーは、対応する天然に存在する配列と比較して、修飾されていてもよい。かかる修飾されたプロモーターおよびエンハンサーは、本明細書において代替的に、それらの天然に存在する(野生型の)バージョンの「誘導体」として言及される場合がある。好適な非限定的な修飾は、ヌクレオチドの挿入、欠失、変異および/または置換から選択してもよい。好適な修飾はまた、これらに限定されないが、エンハンサーおよび/または他のプロモーター配列などの他のヌクレオチド配列との、プロモーター配列の融合を包含する。プロモーター-エンハンサーの融合は、特に好適である場合がある。ヌクレオチド配列の修飾、すなわち遺伝子修飾は、例えばAusubelら、およびSambrook and Green(上記)などの標準的なハンドブックにおいて記載されるような、当該分野において公知であるとおりの任意の組み換えDNA技術を用いて行ってもよい。
【0034】
本明細書において記載されるとおりのプロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であってよい。用語「誘導性プロモーター」とは、本明細書において用いられる場合、生理学的または化学的インデューサーとの接触によってのみ転写を開始するプロモーターまたはその誘導体を指す。当業者は、誘導性プロモーターまたはその誘導体は、インデューサーの不在下においてもなお、検出可能なレベルのコード配列の転写を可能にし得ることを理解する(「リーキーな」発現)。リーキーな発現とは、誘導性プロモーターまたはその誘導体が、インデューサーの不在下において、前記インデューサーの存在下と比較して、少なくとも1倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または少なくとも100倍低いレベルのコード配列の転写を可能にすることを意味し得る。発現は、当業者に公知の標準的なアッセイ(例えばqPCR、ウェスタンブロッティング、ELISA)により、mRNAまたはタンパク質のレベルにおいて評価してもよい。
【0035】
嗅覚受容体は、本明細書において記載されるとおりのプロモーターおよび/またはエンハンサーを、リガンドによる前記受容体の活性化により産生されるインデューサー分子を介して誘導し得る。前記インデューサー分子は、直接的に(すなわち、それぞれの核酸に直接的に結合することにより)、または間接的に、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー活性化をもたらすGタンパク質シグナル伝達カスケードを引き起こすことにより、プロモーターおよび/またはエンハンサーを誘導し得る。ORの活性化に関連するインデューサー分子は、イノシトール三リン酸(IP3)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、Ca2+などのシグナル伝達分子から選択してもよく、好ましくはインデューサー分子は、cAMPまたはCa2+である。
【0036】
本発明による好ましいプロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の2つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の3つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の4つ以上のコピーを含む。
【0037】
いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)の1つ以上のコピーとCRE半配列の1つ以上のコピーとの組み合わせを含む。
【0038】
いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)の1つ以上のコピーとNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーとの組み合わせを含む。
【0039】
いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、CRE半配列の1つ以上のコピーとNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーとの組み合わせを含む。
【0040】
いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)の1つ以上のコピーとCRE半配列の1つ以上のコピーとNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーとの組み合わせを含む。
【0041】
cAMP応答性エレメント(CRE)またはCRE半配列は、プロモーターおよび/またはエンハンサーにおいて含まれる場合、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーをcAMPにより誘導可能にする、核酸配列である。かかるプロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性プロモーターおよび/またはエンハンサーと称される場合がある。CREまたはCRE半配列の活性化の機序は、当該分野において公知である。典型的には、嗅覚受容体を機能的に発現する細胞において、リガンドによる嗅覚受容体の活性化によるGタンパク質の活性化(前記Gタンパク質は、嗅覚ニューロンの場合にはGαolf、または他の細胞の型においてはGαSなどの別のGタンパク質である)、およびその後のcAMPの産生は、タンパク質キナーゼA(PKA)の活性化をもたらす。典型的には、PKAの活性化は、43kDaの刺激誘導性転写因子(TF)であるcAMP応答エレメント結合Gタンパク質1(CREB)のリン酸化をもたらす。CREBは、cAMP応答性エレメントまたはCRE半配列に結合し得、これは、作動可能に連結されたポリペプチドをコードする核酸配列の転写をもたらす。
【0042】
cAMP応答性エレメント(CRE)は、核酸配列5’-TGACGTCA-3’(配列番号1)により表されてもよい。CRE半配列は、核酸配列5’-TGACG-3’(配列番号2)により表されてもよい。したがって、いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号1の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号1の2つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号1の3つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号1の4つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、好ましいプロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号2の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号2の2つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号2の3つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号2の4つ以上のコピーを含む。
【0043】
本発明によるプロモーターおよび/またはエンハンサーは、cAMP応答性エレメント(CRE)の1つ以上のコピーとCRE半配列の1つ以上のコピーとの組み合わせを含んでもよい。例示的な核酸配列は、配列番号3および4により表される。したがって、いくつかの態様において、好ましいプロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号3もしくは配列番号4、好ましくは配列番号4により表される核酸配列の1つ以上のコピー、または配列番号3もしくは配列番号4、好ましくは配列番号4と、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列の1つ以上のコピーを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0044】
NFAT応答性エレメント活性化の機序は、当該分野において公知である。NFAT-RE(活性化T細胞核内因子応答エレメント)は、プロモーターおよび/またはエンハンサーにおいて含まれる場合、典型的には、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーをCa2+により間接的に誘導可能とする核酸配列である。典型的には、嗅覚受容体を機能的に発現する嗅覚ニューロン細胞において、リガンドによる嗅覚受容体の活性化によるシグナル伝達カスケードは、ORを発現する細胞中へのCa2+の流入をもたらす。嗅覚受容体の外因的機能的発現を有する細胞において、細胞質ゾル中へのCa2+の流入は、cAMPの形成の後でカルシウムが細胞に流入することを可能にする、環状ヌクレオチド依存性イオンチャネル(CNGチャネル)をコードするヌクレオチド配列の導入により引き起こされてもよい。「外因的」発現の定義は、本明細書において後で提供される。環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルの非限定的な例は、CNGA1(NCBI Genbank遺伝子ID:1259)、CNGA2(NCBI Genbank遺伝子ID:1260)、CNGA3(NCBI Genbank遺伝子ID:1261)、CNGA4(NCBI Genbank遺伝子ID:1262)、CNGB1(NCBI Genbank遺伝子ID:1258)、およびCNGB3(NCBI Genbank遺伝子ID:54714)である。代替的に、その全体において本明細書において参考として援用されるConklin et al. (1993) Nature 363:274-276において記載されるキメラGタンパク質を用いてもよく、これは、cAMPの存在下において、ホスホリパーゼC(PLC)を活性化してIP3の産生をもたらすことができ、これは、内部ストアからのCa2+の放出をもたらす。前記タンパク質において、Gαの3つのC末端アミノ酸は、Gαの対応する残基により置き換えられる。細胞内Ca2+の増加は、カルモジュリンの活性化をもたらし、これは次いで、活性化T細胞核内因子(NFAT)の活性化をもたらす。NFATは、NFATc1、NFATc2、NFATc3、NFATc4およびNFAT5を含む転写因子(TF)のファミリーである。NFATc1~NFATc4は、カルシウムシグナル伝達により調節され、NFATファミリーの古典的なメンバーとして知られる。NFATの活性化は、NFAT-REの活性化をもたらし、これは、作動可能に連結されたポリペプチドをコードする核酸配列の転写をもたらす。したがって、NFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含むプロモーターおよび/またはエンハンサーは、NFAT応答性プロモーターおよび/またはエンハンサーと称される場合もある。当業者は、本発明によるプロモーターおよび/またはエンハンサーはまた、同時にcAMP応答性かつNFAT応答性であり得ることを理解する。
【0045】
NFAT-REは、典型的には、1つ以上のNFAT結合部位を含み、これは、核酸配列5’-GGAAAA-3’(配列番号5)により表されてもよい。したがって、いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号5の1つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号5の2つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号5の3つ以上のコピーを含む。いくつかの態様において、プロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号5の4つ以上のコピーを含む。
【0046】
NFAT応答性プロモーターおよび/またはエンハンサーは、典型的には、転写因子AP-1(アクチベータータンパク質1)のための1つ以上の結合部位をさらに含む。例示的な配列は、配列番号6により表される。したがって、いくつかの態様において、好ましいプロモーターおよび/またはエンハンサーは、配列番号6により表される核酸配列の1つ以上のコピー、または配列番号6と、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列の1つ以上のコピーを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0047】
本発明による核酸コンストラクトは、ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの態様において、前記核酸配列は、選択可能なマーカーであり、すなわち、選択的条件への暴露の際の前記細胞に対する選択的利点を付与することにより、前記核酸配列を発現する宿主細胞の選択のために用いることができるポリペプチドをコードする配列である。選択可能なマーカーは、正または負の選択を可能にするものであってよい。好適な選択マーカーは、当該分野において公知であり、かかるマーカーおよび選択方法は、例えば、その全体において本明細書において参考として援用されるMortensen and Kingston (2009) Curr Protoc Mol Biol 86:9.5.1-9.5.13などの標準的な刊行物において議論される。当業者は、特定の選択可能なマーカーの適用は、宿主細胞および/または適用される選択的条件に依存して、正または負の選択を可能にし得ることを理解する。正の選択可能なマーカーは、他の方法では生存および/または増殖が起こらない選択的条件への暴露に際した宿主細胞の生存および/または増殖を可能にするマーカーである。かかるマーカーの非限定的な例は、抗生物質などの毒性の化合物に対する耐性を付与するマーカー、普通ではない炭素および/または窒素源の利用を可能にするマーカー、変異または選択的条件の適用により生じる炭素、窒素、および/または微量栄養素の栄養素要求性を補完するマーカー(例えば、これらに限定されないが、シトシンデアミナーゼ(EC 3.5.4.1)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(EC. 1.5.1.3)、ヒスチジノールデヒドロゲナーゼ(EC 1.1.1.23)、チミジンキナーゼ(2.7.1.21)、またはキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(EC 2.4.2.8)など)である。好ましい選択可能なマーカーは、抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸配列である。かかる核酸配列の非限定的な例は、ピューロマイシンに対する耐性を付与するピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子(pac、例えば配列番号7により表されるとおりのもの)、ハイグロマイシンB(ヒグロベチン(hygrovetine))に対する耐性を付与するハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph、例えば配列番号8により表されるとおりのもの)、ジェネテシン(G418)に対する耐性を付与するアミノグリコシド3’-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo、例えばKlebsiella pneumoniaeからのもの、UniprotKB Ref:N0DR31)、ゼオシンおよびブレオマイシンファミリーの他の抗生物質に対する耐性を付与するSh ble遺伝子(例えばStreptoalloteichus hindustanusからのもの、UniprotKB Ref:P17493)、ならびにブラストサイジン(別名ブラストサイジンS)に対する耐性を付与するブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子(bsd、例えばAspergillus terreusからのもの、UniprotKB Ref:P0C2P0)である。ブラストサイジン-Sデアミナーゼの別の例は、配列番号65のアミノ酸配列により表されるか、および/または配列番号64により表されるヌクレオチド配列によりコードされる。選択可能なマーカーが抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードするいくつかの態様において、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子が好ましい。したがって、いくつかの態様において、抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドは、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼである。
【0048】
抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする別の好ましい選択可能なマーカーは、ブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。したがって、いくつかの態様において、抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドは、ブラストサイジン-Sデアミナーゼである。
【0049】
選択可能なマーカーとしてのブラストサイジン-Sデアミナーゼの使用、および関連する付与されたブラストサイジンに対する耐性は、本明細書において記載される方法と組み合わせて、特に有利である場合がある。本明細書における実験セクションにおいて示されるとおり、および他の抗生物質による選択と比較して、ブラストサイジンによる選択は、増強されたダイナミックレンジ、すなわち、リガンドの存在下においてORを機能的に発現する細胞と、機能的なOR発現を伴わずに、またはリガンドの不在下において生存する細胞との間で、測定される生存率の大きな差異を提供し得る。細胞の生存率およびその測定は、本明細書において後でさらに議論される。
【0050】
いくつかの態様において、核酸コンストラクトは、配列番号7または8により表される核酸配列、または配列番号7もしくは8と、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。いくつかの態様において、核酸コンストラクトは、配列番号7、8もしくは64、好ましくは配列番号64により表される核酸配列、または配列番号7、8もしくは64、好ましくは配列番号64と、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0051】
負の選択可能なマーカーは、他の方法では増殖が起こるであろう選択的条件への暴露の際に、増殖を排除または阻害するマーカーである。かかるマーカーの非限定的な例は、宿主細胞をガンシクロビル選択に対して感受性にするHerpes simplexチミジンキナーゼ(UniprotKB Ref:Q9QNF7)、および宿主細胞を5-フルオロシトシン選択に対して感受性にするシトシンデアミナーゼ(EC 3.5.4.1)である。
【0052】
いくつかの態様において、本発明による核酸コンストラクトは、ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、ここで、前記ポリペプチドは、レポーターポリペプチドである。前記ポリペプチドの発現は、嗅覚受容体の活性化の指標である。前記発現は、直接的または間接的に検出可能であってよい。「レポーターポリペプチド」とは、その発現が測定可能なシグナルをもたらすポリペプチドである。「直接的な検出」とは、測定可能なシグナルが直接的に測定可能であることを指す。直接的に測定可能なレポーターポリペプチドの非限定的な例は、蛍光タンパク質の任意のバリアント、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、または赤色蛍光タンパク質などの異なる蛍光スペクトルを有する任意のバリアントである。かかるポリペプチドは、当業者に公知であり、Chalfie and Kain, Green Fluorescent Protein:Properties, Applications and Protocols(Methods of Biochemical Analysis)、第2版(2005年)、Wiley-Liss(その全体において本明細書において参考として援用される)などの標準的なハンドブックにおいて、およびその全体において本明細書において参考として援用されるLambert (2019) Nature Methods 16:277-278において記載されるFPbaseなどの公共で利用可能なデータベース(www.fpbase.org)において議論される。かかるポリペプチドの発現と、その後の嗅覚受容体の活性化は、蛍光シグナルの放出をもたらし、これを検出して、蛍光励起セルソーティングデバイス(FACS)、またはClonePix2コロニーピッカー(colony picker)(Molecular Devices, CA, USA)などの蛍光性クローンのコロニーを自動でピックアップすることができるデバイスなどの市販のデバイスを用いて、細胞を濃縮するために利用することができる。代替的に、細胞内で保持される蛍光生成物を形成することができ、それにより上で議論されるとおりの市販のデバイスによる蛍光シグナルの検出を可能にする、当業者に公知の任意の酵素を用いてもよい。したがって、いくつかの態様において、コードされたポリペプチドは、蛍光励起セルソーティングデバイスにより検出可能である。
【0053】
「間接的検出」は、典型的には、レポーターポリペプチドの発現から生じる測定可能なシグナルが得られる前に、さらなるステップを必要とするであろう。間接的に検出可能なレポーターポリペプチドの非限定的な例は、蛍光標識された抗体により認識可能である抗原である。標準的なプロトコルを用いる、かかるポリペプチドの発現と、その後の嗅覚受容体の活性化と、その後のかかる抗体とのインキュベーションは、上記のとおりの市販のデバイスを用いた蛍光シグナルの検出を可能にするであろう。代替的に、例えばこれらに限定されないが、β-ガラクトシダーゼ(EC 3.2.1.23)、β-ラクタマーゼ(EC 3.5.2.6)、カラターゼ(EC 1.11.1.6)などのレポーターポリペプチドを用いてもよく、前記ポリペプチドは、例えばその全体において本明細書において参考として援用されるKasper et al. (2016) Methods Mol Biol 1453:123-36において記載されるように、標準的に用いられるアッセイにおいて、それらの対応する基質と接触した場合に、検出可能な呈色生成物の形成をもたらす反応を触媒する。レポーターポリペプチドの発現は、検出を容易にするために、CellEvent(商標)(ThermoFisher Scientific, MA, USA)などの市販の基質と組み合わせてもよい。
【0054】
本明細書において記載されるとおりの、嗅覚受容体により誘導可能なプロモーターおよび/またはエンハンサーと、選択可能なマーカーまたはレポーターポリペプチドなどのポリペプチドをコードする核酸配列との間の機能的な関係は、嗅覚受容体の活性化を伴わずに、例えば、その全体において本明細書において参考として援用されるAlasbahi and Melzig, (2012) Pharmazie 67(1):5-13のような標準的な刊行物において記載されるとおりの当該分野における標準的な方法を用いて、実験により確認してもよい。非限定的な例として、cAMP応答性エレメント(CRE)および/またはCRE半配列の1つ以上のコピーを含むプロモーターおよび/またはエンハンサーに作動可能に連結された、抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカーを、宿主細胞のゲノムに導入してもよい。前記細胞を、次いで、cAMP誘導剤であるフォルスコリンおよび抗生物質の存在下において、標準的な方法および条件に従って、培養してもよい。フォルスコリンにより誘導される抗生物質に対する耐性(嗅覚受容体の活性化から生じるもののような細胞内cAMPの増大により引き起こされる)は、機能的な関係を実証する。
【0055】
本発明に関して、嗅覚受容体は、宿主細胞により発現され得る。嗅覚受容体は、バリアント(本明細書において代替的に変異体として言及される)、すなわち対応する天然に存在する配列と比較して修飾された嗅覚受容体であってもよい。好ましくは、前記発現は、機能的発現である。嗅覚受容体の発現は、内因的であっても外因的であってもよい。内因的発現とは、ネイティブにそれを発現することができる細胞、すなわちその発現のために必要とされる遺伝情報を含む細胞、例えば嗅覚ニューロン細胞による、嗅覚受容体の発現を指す。外因的発現とは、典型的には、嗅覚受容体がネイティブでは発現されず、その能力が組み換えDNA技術の手段を介して導入されたものである、異なる生物および/または細胞による嗅覚受容体の発現を指す。本発明の文脈内において、外因的発現という用語はまた、標準的な分子ツールボックス技術(例えば、過剰発現)を用いる組み換えDNA技術の手段を介して、嗅覚受容体のネイティブな発現が、対応するネイティブな発現と比較して、増大される場合を包含する。前記増大は、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾、および細胞膜への輸送を含む、嗅覚受容体の発現ステップのうちのいずれかの修飾により達成されてもよい。前記増大は、対応するネイティブな発現と比較して、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも100%、少なくとも150%、または少なくとも200%であってよい。発現は、当業者に公知の標準的なアッセイ(例えばqPCR、ウェスタンブロッティング、ELISA)により、mRNAまたはタンパク質のレベルにおいて評価してもよい。
【0056】
したがって、本発明は、本明細書において先に定義された、嗅覚受容体をコードする核酸配列を含む核酸コンストラクトをさらに提供する。嗅覚受容体をコードする核酸配列は、プロモーターおよび/またはエンハンサーに作動可能に連結されていてもよい。前記プロモーターは、これに限定されないがCMVプロモーター(配列番号15)などの、構成的、すなわち定常的発現を可能にするものであってもよい。前記プロモーターは、誘導可能なものであってもよい。嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む核酸コンストラクトは、別の核酸コンストラクトであっても、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸配列を含む核酸コンストラクトと融合していてもよく、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、本明細書において先に記載されるとおり嗅覚受容体により誘導可能であり、単一の核酸コンストラクトを構成するために、好ましくは2つのコンストラクトは融合している。嗅覚受容体をコードする核酸配列の非限定的な例は、OR10G9(NCBI Genbank遺伝子ID:219870)、OR5AN1(NCBI Genbank遺伝子ID:390195、配列番号70)、OR5A2(NCBI Genbank ID:219981)、OR5A1(NCBI Genbank遺伝子ID:219982)、OR6Y1(NCBI Genbank遺伝子ID:391112)、OR10G4(NCBI Genbank遺伝子ID:390264、配列番号72)、およびOR10G7(NCBI Genbank遺伝子ID: 390265、配列番号71)である。嗅覚受容体をコードする核酸配列のさらなる例は、Mainlandら(上記)などの刊行物において、およびHORDE(The Human Olfactory Data Explorer)データベース(上記)などの公共で利用可能なデータベースにおいて見出され得る。
【0057】
いくつかの態様において、核酸コンストラクト、好ましくはプラスミドは、嗅覚受容体をコードする核酸配列、ならびに、ポリペプチド、好ましくは選択可能なマーカー、より好ましくは抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカーをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含み、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む。好ましくは、選択可能なマーカーは、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子、より好ましくはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0058】
任意に、さらなる核酸配列は、本明細書において記載される核酸コンストラクトのいずれかにおいて含まれるヌクレオチド配列に作動可能に連結されていてもよい。かかる配列の非限定的な例として、Shepard et al. (2013) PLoS One 8(7): e68758において、Zhuang and Matsunami (2007) J Biol Chem 282(20): 15284-15293において、およびWO2014/037800(これらの各々は、その全体において本明細書において参考として援用される)において記載される、N末端LUCY-タグ(配列番号9、配列番号10)、FLAG-タグ(配列番号11)、およびrho-タグ(配列番号12)などのシグナルペプチドをコードする核酸配列が挙げられる。シグナルペプチドをコードする核酸配列のさらなる例は、配列番号13により表される。核酸配列のさらなる非限定的な例として、核移行シグナル、kozak配列、ポリA-テイル、ウシ成長ホルモン(bgh)ターミネーター配列(配列番号16)などの転写ターミネーターなどが挙げられる。
【0059】
いくつかの態様において、核酸コンストラクトは、配列番号9、10、11、12または14、好ましくは配列番号14により表されるポリペプチドをコードする核酸配列、または配列番号9、10、11、12、または14と, 好ましくは配列番号14と、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性または類似性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0060】
いくつかの態様において、核酸コンストラクトは、配列番号13により表される核酸配列、または配列番号13と少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0061】
任意に、さらなるアクセサリー分子または他のタンパク質をコードする核酸配列が、本明細書において記載される核酸コンストラクトのうちのいずれかにおいて含まれてもよい。「アクセサリー分子」または「シャペロン」は、嗅覚受容体の発現、前記嗅覚受容体を発現する細胞の表面への輸送および/またはシグナル伝達を補助し得るタンパク質またはペプチドである。アクセサリー分子は、バリアント(代替的に、本明細書において変異体として言及される)、すなわち、対応する天然に存在する配列と比較して修飾されているアクセサリー分子であってもよい。アクセサリー分子または他のタンパク質の非限定的な例は、RTPL1、RTP1S、RTP2、REEP、RTP1S V227Iバリアント、RTP2 L220Rバリアント、β-アドレナリン作動性受容体、ヒートショックタンパク質70、Ric8b、Gαolf、Gα、またはこれらのバリアントなどを含み、それらの全体において本明細書において参考として援用されるWO2006/002161およびWO2014/037800においてさらに記載される。好ましいアクセサリー分子は、ヒとRTP1S V227Iバリアント(配列番号17)およびヒトRTP2 L220Rバリアント(配列番号18)である。いくつかの態様において、核酸コンストラクトは、配列番号17または18により表されるポリペプチドをコードする核酸配列、または配列番号17または18と、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性または類似性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる。
【0062】
本明細書において記載される核酸コンストラクトにおいて含まれてもよいさらなる核酸配列は、構成的に発現される、さらなる選択可能なマーカー、例えば抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカーである。かかるマーカーは、例えば、本明細書において記載される方法の適用の前に、本発明の核酸コンストラクトを含む宿主細胞を選択することにおいて用いられてもよい。かかるマーカーの非限定的な例は、ハイグロマイシンB(ヒグロベチン)に対する耐性を付与するハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph、例えば配列番号8により表されるとおりのもの)である。
【0063】
いくつかの態様において、核酸コンストラクト、好ましくはプラスミドは、嗅覚受容体をコードする核酸配列、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含み、これは、ポリペプチド、好ましくは選択可能なマーカー、より好ましくは抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカーをコードする核酸配列、および本明細書において先に記載されるとおりの環状ヌクレオチド依存性イオンチャネルをコードする核酸配列に作動可能に連結された、NFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つまたは複数のコピーを含む。好ましくは、選択可能なマーカーは、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子、より好ましくはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0064】
いくつかの態様において、核酸コンストラクト、好ましくはプラスミドは、嗅覚受容体をコードする核酸配列、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含み、これは、ポリペプチド、好ましくは選択可能なマーカー、より好ましくは抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカーをコードする核酸配列、本明細書において先に記載されるとおりのホスホリパーゼCを活性化することができるキメラGタンパク質をコードする核酸配列に作動可能に連結された、NFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つまたは複数のコピーを含む。好ましくは、選択可能なマーカーは、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子、より好ましくはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0065】
本明細書において記載されるとおりのコード配列および遺伝子は、宿主細胞における、好ましくは真核細胞における、より好ましくはヒト細胞における発現のために、コドン最適化されていてもよい。「コドン最適化」とは、本明細書において用いられる場合、既存のコード配列を修飾するため、またはコード配列を設計するために、例えば発現の宿主細胞もしくは生物におけるコード配列から転写されてトランスクリプトであるRNA分子の翻訳を改善するために、またはコード配列の転写を改善するために使用されるプロセスを指す。コドン最適化として、これらに限定されないが、コード配列について、発現の宿主細胞または生物のコドン嗜好性に適するコドンを選択することが挙げられる。コドン最適化はまた、RNAの安定性および/または翻訳に潜在的に負の影響を及ぼす要素を排除する(例えば、終結配列、TATAボックス、スプライス部位、リボソーム侵入部位、反復および/またはGCリッチ配列、ならびにRNA二次構造または不安定モチーフ)。いくつかの態様において、コドン最適化された配列は、オリジナルの非コドン最適化配列と比較して、少なくとも3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%またはそれより大きな、遺伝子発現、転写、RNAの安定性および/または翻訳の増大を示す。
【0066】
宿主細胞
本明細書において記載される核酸コンストラクトは、宿主細胞中への導入のために特に有用である。したがって、第2の側面において、本発明は、本明細書において先に定義されるとおりの核酸コンストラクトを含む宿主細胞を提供する。
【0067】
いくつかの態様において、宿主細胞は、
ポリペプチド、好ましくは選択可能なマーカー、より好ましくは抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカーをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含む。
好ましくは、前記核酸コンストラクトは、単一の核酸コンストラクトを構成するように融合しており、より好ましくは、単一のプラスミドである。いくつかの態様において、好ましい選択可能なマーカーは、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子、より好ましくはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0068】
「宿主細胞」は、本明細書において代替的に「細胞」または「操作された細胞」としても言及され、本明細書において定義されるとおりの核酸コンストラクトの導入により操作されている細胞を指す。宿主細胞は、単離された、または培養中の細胞を指してもよい。宿主細胞は、「形質導入された細胞」であってもよく、ここで、細胞は、例えば修飾されたウイルスにより感染している。非限定的な例として、レンチウイルスが用いられてもよいが、レトロウイルスまたは他のものなどの他の好適なウイルスも、同様に企図されてもよい。核酸コンストラクトの導入はまた、非ウイルス的な方法により、例えばトランスフェクションにより行われてもよい。「トランスフェクション」とは、非ウイルス的な細胞へのDNA(またはRNA)の導入の方法であって、導入された核酸配列が発現されるようなものを指す。トランスフェクションの方法およびプロトコルは、当該分野において周知であり、非限定的な例には、リン酸カルシウムトランスフェクション、PEGトランスフェクション、およびリポソームまたはリポプレックストランスフェクションがあり、Ausubelら、およびSambrook and Green(上記)などの標準的なハンドブックにおいて議論される。トランスフェクションの方法のさらなる例は、本明細書における例示的なセクションにおいて提供される。トランスフェクションは、一過性であっても安定なものであってもよく、後者は、細胞が、それらのゲノム中に組み込まれた核酸コンストラクトを有する場合を指す。本明細書において記載されるとおりの核酸コンストラクトを含む宿主細胞は、したがってまた、「安定にトランスフェクトされた細胞」であっても、「一過性にトランスフェクトされた細胞」であってもよい。
【0069】
宿主細胞は、例えば、そのゲノムにおけるヌクレオチドの変異、置換、挿入、および/または欠失、および/またはさらなる核酸コンストラクトの導入を含むがこれらに限定されない、1つ以上の遺伝子修飾の導入により、さらに遺伝子修飾されていてもよい。前記修飾は、嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードするヌクレオチド配列、および/または別のゲノム領域において含まれていてもよく、前記嗅覚受容体および/または前記アクセサリー分子の機能的発現または改善された機能的発現をもたらすものであってもよい。機能的発現の定義は、本明細書において先に提供される。
【0070】
核酸配列の修飾は、例えばAusubelら、およびSambrook and Green(上記)などの標準的なハンドブックにおいて記載される、当該分野において公知のとおりの任意の組み換えDNA技術を用いて行われてもよい。また、Kunkel (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. 82:488(部位特異的変異誘発を記載する)およびRoberts et al. (1987) Nature 328:731 734またはWells, J.A., et al. (1985) Gene 34: 315(カセット変異誘発を記載する)を参照。
【0071】
代替的に、紫外光による細胞の照射、またはこれらに限定されないがN-エチル-N-ニトロソウレアまたはエチルメタンスルホナートなどのアルキル化剤などの既知の変異原に対する細胞の暴露による化学的変異誘発などの、当該分野において公知の変異誘発技術により、さらなる遺伝子修飾を導入してもよい。代替的に、例えばこれらに限定されないが、プラスミド、直鎖状DNA配列、トランスポゾン、レンチウイルス、レトロウイルスまたはCRISPR-Cas媒介性組み換え(すなわち、相同組み換えまたは非相同末端連結などの細胞のDNA修復機構を介した、ゲノム中への核酸配列の挿入と、その後のCRISPR-Casにより誘導される二本鎖DNAの切断)により媒介される、核酸配列の挿入変異誘発、すなわち、例えば遺伝子配列の近傍または内部におけるDNA配列の宿主細胞のゲノム中へのターゲティングされたまたはランダムな挿入により、さらなる遺伝子修飾が導入されてもよい。挿入された核酸配列は、スプライスアクセプター部位および/またはポリアデニル化シグナルを含んでもよい。前記配列は、不正確なスプライシングおよび/または早期の転写終結(機能喪失型変異)を引き起こすことにより、挿入部位における遺伝子発現を遮断することができる。挿入された核酸配列は、エンハンサーおよび/またはプロモーター配列を含んでもよい。前記配列は、任意に、さらに(または代わりに)、スプライスドナー部位を含んでもよい。前記配列は、内在遺伝子の発現を活性化させることができる。前記活性化は、転写および/または正確なスプライシング(機能獲得型変異)を促進することによる、挿入部位における遺伝子発現の促進から生じてもよい。
【0072】
プラスミド、直鎖状DNA配列、トランスポゾン、レンチウイルス、レトロウイルス、およびCRISPR-Cas媒介性組み換えを用いる挿入変異誘発の方法およびプロトコルは、当該分野において周知であり、Kandel et al. (2005) PNAS 102:6425-30、Montini et al. (2009) J Clin Invest 119:964-75、Ranzani et al. (2013) Curr Protoc Mol Biol Chapter 9:Unit9.5、Ranzani et al. (2014) Mol Ther 22(12):2056-2068、Feddersen et al. (2019) BMC Genomics 20:497およびYang et al. (2014) In: Storici F.(編)Gene Correction. Methods in Molecular Biology (Methods and Protocols),1114. Humana Press, NJ, USAなどの標準的な刊行物において記載され、これらの各々は、その全体において本明細書において参考として援用される。
【0073】
代替的に、さらなる遺伝子修飾は、CRISPR-Cas媒介性変異誘発により誘導されてもよく、これは、それぞれ、CRISPR干渉(CRISPRi)またはCRISPR活性化(CRISPRa)を用いる、機能喪失型または機能獲得型変異誘発のために用いられてもよい。前記方法は、機能喪失型変異誘発をもたらし得るCRISPRi(例えば、dCas9-KRAB)においてリプレッサータンパク質と、または機能獲得型変異誘発をもたらし得るCRISPRa(例えば、dCas9-VPH)においてアクチベータータンパク質と複合体化された場合に、遺伝子発現を調節することができ、その後、特に合成されたガイドRNA(sgRNA)を用いて、遺伝子標的のプロモーター領域にターゲティングされる、不活化Cas9(dCas9)の操作されたバージョンに依存する。ガイドRNA、dCas9タンパク質、ならびにCRISPRiおよびCRISPRaを適用するための遺伝子のターゲティングのためのプロトコルは、当該分野において周知であり、多くの市販の、例えばCellecta Inc.(CA, USA)により供給されるCRISPRa/CRISPRi dCas9およびsgRNAのライブラリーおよびプロトコルが存在する。
【0074】
さらに、遺伝子修飾は、宿主細胞の進化的操作(evolutionary engineering)により導入されてもよい。進化的操作は、典型的には、(i)任意に、当該分野において公知の任意の組み換えDNA技術、例えば上記のもののような変異誘発技術を用いて遺伝子修飾を導入することにより、宿主細胞の遺伝的多様性を生み出すこと、および(ii)選択可能なマーカーおよび/または遺伝形質(trait)と目的の表現型との連鎖と、その後の宿主細胞に対する選択圧の適用に依存する。前記宿主細胞が複数の世代にわたり継代される場合、改善された表現型をもたらす獲得された変異を有する細胞は、選択的な利点を有し、培養において濃縮されるであろう。進化的操作は、選択可能なマーカーおよび/または遺伝形質、ならびに適用される選択圧に依存して、機能獲得型および/または機能喪失型変異をもたらしてもよい。非限定的な例として、嗅覚受容体により誘導可能なプロモーターおよび/またはエンハンサーに作動可能に連結された、抗生物質耐性遺伝子、例えばピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子をコードする核酸配列、ならびに嗅覚受容体をコードする核酸配列を含む、核酸コンストラクトを、宿主細胞中に導入してもよい。嗅覚受容体のリガンドおよび培養中の対応する抗生物質への暴露に際して、嗅覚受容体を機能的に発現することができる宿主細胞のみが、抗生物質耐性の発現を誘導し、生存および/または増殖することができるであろう。複数の継代培養ステップが適用される場合、より効率的に前記嗅覚受容体を発現することができるようにする獲得された変異を有する宿主細胞は、培養中で濃縮されるであろう。これは、次いで、単離/選択されてもよい。かかるアプローチのさらなる例は、本明細書における例示的なセクションにおいて提供される。
【0075】
宿主細胞は、嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードする核酸分子、および/または別のゲノム領域において、エピジェネティックな修飾を含んでもよく、これは、前記嗅覚受容体および/または前記アクセサリー分子の機能的発現または改善された機能的発現をもたらし得る。本明細書において用いられる場合、用語「エピジェネティックな修飾」は、本開示を考慮して、当業者により通常理解されるとおりのその通例の意味を有する。それは、ヌクレオチド配列自体は改変しない、DNAまたはヒストンタンパク質の化学的修飾を指す。エピジェネティックな修飾の非限定的な例として、核酸のメチル化、アセチル化、リン酸化、セロトニン化、シトルリン化、ユビキチン化、SUMO化、およびリボシル化が挙げられる。
【0076】
宿主細胞において含まれてもよいさらなる核酸コンストラクトは、本明細書において先に記載されるとおりのアクセサリー分子または他のタンパク質をコードする核酸配列を含んでもよい。好ましいかかるコンストラクトは、本明細書において先に記載されるとおりの、ヒトRTP1SのV227Iバリアントおよび/またはヒトRTP2のL220Rバリアントをコードする核酸配列(配列番号17および/または18)を含む。
【0077】
宿主細胞は、原核または真核細胞であってよく、好ましくは、それらは、真核細胞である。好適な原核細胞は、細菌および古細菌から選択されてもよい。好適な真核細胞は、昆虫、植物、酵母、真菌、藻類、哺乳類およびヒト細胞から選択されてもよく、そのうち、ヒト細胞が好ましい。
【0078】
好適な宿主細胞として、これらに限定されないが、HEK293、HEK293T、HeLa、CHO、OP6、HeLa-S3、HEKn、HEKa、PC-3、Calul、Hep G2、HeLa B、HeLa T4、COS、COS-1、COS-6、C0S-M6A、BS-C-1サル腎臓上皮細胞、BALB/3T3マウス胚線維芽細胞、3T3 Swiss、3T3-L1、132-d5ヒト胎児線維芽細胞、10.1マウス線維芽細胞、293-T、3T3、BHK、BHK-21、BR 293、BxPC3、C3H-10T1/2、C6/36、Cal-27、CHO-7、CHO-IR、CHO-K1、CHO-K2、CHO-T、CHO Dhfr -/- COS-7、HL-60、LNCap、MCF-7、MCF-IOA、MDCK II、SkBr3、Vero細胞、初代嗅細胞、不死化嗅細胞、不死化味細胞、およびこれらのトランスジェニック変種が挙げられ、このうち、HEK293Tが好ましい。細胞株は、多様な公共で利用可能な微生物株保存機関(culture collections)、例えば、American Type Culture Collection(VA、USA)から入手可能である。
【0079】
本発明の文脈内において、宿主細胞は、細胞の集団において含まれてもよい。したがって、第3の側面において、本発明は、本明細書において記載されるとおりの細胞の集団を提供する。細胞の集団は、均一であっても、不均一(混合されたもの)であってもよい。「均一な」または「クローンの」集団は、全ての細胞が同じ核酸コンストラクトおよび/または遺伝子を含む集団である。「不均一な」または「混合された」集団は、細胞のうちの少なくとも1つが、他の細胞において含まれる核酸コンストラクトおよび/または遺伝子から区別し得る核酸コンストラクトおよび/または遺伝子(例えば、嗅覚受容体をコードする核酸配列)を含む集団である。不均一な集団は、区別し得る嗅覚受容体を発現する細胞のプール(すなわち、嗅覚受容体ライブラリー)を定義し得るので、特に有利であり得る。非限定的な例として、嗅覚受容体および/またはアクセサリー分子のライブラリー、すなわち、区別し得る嗅覚受容体および/またはアクセサリー分子を発現する細胞のプールを作製してもよく、これは、新規のコグネートな嗅覚受容体-リガンドペアのハイスループットスクリーニング、ならびに/または別の方法では典型的には機能的に発現することが困難である嗅覚受容体の機能的発現を可能にするアクセサリー分子および/もしくは変異の同定を可能にする。
【0080】
いくつかの態様において、細胞の集団は、
ポリペプチド、好ましくは選択可能なマーカー、より好ましくは抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカー、をコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト、
を含む、いくつかの細胞を含み、
ここで、細胞のうちの少なくとも1つにおいて含まれる第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体は、前記集団内の他の細胞のうちの少なくとも1つにおける第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体から区別し得、区別し得る嗅覚受容体を発現する細胞のプールを定義する。いくつかの態様において、少なくとも1つの嗅覚受容体は、前記細胞の集団において機能的に発現される。好ましくは、選択可能なマーカーは、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子、より好ましくはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0081】
いくつかの態様において、細胞の集団は、
ポリペプチド、好ましくは選択可能なマーカー、より好ましくは抗生物質に対する耐性を付与する選択可能なマーカー、をコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子、
を含む、いくつかの細胞を含み、
ここで、細胞のうちの少なくとも1つにおいて核酸分子によりコードされる嗅覚受容体は、前記集団内の他の細胞のうちの少なくとも1つにおいて核酸分子によりコードされる嗅覚受容体から区別し得、これは、区別し得る嗅覚受容体を発現する細胞のプールを定義する。いくつかの態様において、少なくとも1つの嗅覚受容体は、前記細胞の集団において機能的に発現される。好ましくは、選択可能なマーカーは、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子、より好ましくはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0082】
方法
本発明は、他の方法では従来のアプローチを用いては可能でない嗅覚受容体の機能的発現を可能にする。本明細書において記載される核酸コンストラクト、細胞、および細胞の集団は、さらに、嗅覚受容体および/または前記機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子を機能的に発現する細胞を選択またはスクリーニングするため、嗅覚受容体の機能的な、または改善された機能的発現のために必要とされる、改善されたアクセサリー分子および/または遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾の同定のため、あるいは新規のコグネートな受容体-リガンドペアの同定のための、方法における使用のために、特に有用である。本発明の方法は、さらに、ハイスループットな選択またはスクリーニングおよびセルソーティングアッセイのために、特に好適である。
【0083】
したがって、第4の側面において、本発明は、機能的な嗅覚受容体を発現する細胞について、および/または細胞における前記機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子について選択またはスクリーニングするための方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む:
A)本明細書において先に記載されるとおりの細胞を提供すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与するか、またはレポーターポリペプチドであり、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト
を含む、
【0084】
B)前記嗅覚受容体のリガンドの存在下において、前記細胞を培養すること、
C1)嗅覚受容体を機能的に発現している細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること、または
C2)嗅覚受容体を機能的に発現している細胞について、リガンドの存在下においてレポーターポリペプチドを発現している細胞を検出および選別することにより、スクリーニングすること。
【0085】
ステップA)において、抗生物質に対する耐性を与えるポリペプチドをコードする核酸配列が好ましく、好ましくは、核酸配列は、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。ステップC1)およびC2)のうちでは、ステップC1)が好ましい。
【0086】
第5の側面において、本発明は、機能的な嗅覚受容体を発現する細胞について、および/または細胞における前記機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子について、選択またはスクリーニングするための方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む:
A)変異誘発ステップを、本明細書において先に記載されるとおりの細胞に適用すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与するか、またはレポーターポリペプチドであり、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)の1つ以上のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト、
を含む、
【0087】
B)変異した細胞を、前記嗅覚受容体のリガンドの存在下において培養すること、
C1)嗅覚受容体を機能的に発現している変異細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること、または
C2)嗅覚受容体を機能的に発現している変異細胞について、リガンドの存在下においてレポーターポリペプチドを発現している細胞を検出および選別することにより、スクリーニングすること。
【0088】
ステップA)において、抗生物質に耐性を付与するポリペプチドをコードする核酸配列が好ましく、好ましくは、核酸配列は、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。ステップC1)およびC2)のうちでは、ステップC1)が好ましい。
【0089】
用語「選択」または「細胞の選択」とは、本明細書において用いられる場合、は、本開示を考慮して、当業者により通常理解されるとおりのその通例の意味を有する。それは、選択的な培養条件および/または培養培地、すなわち、前記目的の表現型を示す細胞の生存および/または増殖に有利であるが、一方で、全ての他の細胞の生存および/または増殖を阻害する条件および/または培地を適用することによる、混合された集団からの目的の表現型を示す細胞の分離(segregation)および/または単離を指す。用語「スクリーニング」または「細胞のスクリーニング」とは、本明細書において用いられる場合、本開示を考慮して、当業者により通常理解されるとおりのその通例の意味を有する。それは、前記表現型(例えば、蛍光レポーターポリペプチドを発現すること)に関連する測定可能なシグナルの検出による、目的の表現型を示す細胞の同定を指す。用語「スクリーニング」はまた、目的の表現型を示す細胞の同定後の選別、すなわち、混合された集団からのそれらの分離および/または単離を包含する。
【0090】
本明細書において別段に示されない限り、以下の個々のステップの各々の特性について提供される記載は、第4および第5の両方の方法に適用可能である;唯一の違いは、第5の側面の方法においては、ステップA)が変異誘発ステップの適用を含むことである。
【0091】
第4および第5の側面のステップA)において、細胞が提供される。前記細胞は、本明細書において先に記載されるとおりの任意の細胞であってよく、好ましくは、それらは、真核細胞、より好ましくはヒト細胞である。前記細胞は、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクトを含む。プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、本明細書において先に記載されるとおりの嗅覚受容体により誘導可能である。コードされたポリペプチドは、好ましくは、本明細書において先に記載されるとおりの抗生物質に対する耐性を付与してもよい。コードされたポリペプチドは、本明細書において先に記載されるとおりのレポーターポリペプチドであってもよい。前記細胞は、本明細書において先に記載されるとおりの嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクトを含む。好ましくは、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ならびに嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクトは、単一の核酸コンストラクトを構成するように融合しており、好ましくは単一のプラスミドである。
【0092】
第4および第5の側面のステップA)の細胞は、任意に、本明細書において先に記載されるとおりのさらなる核酸コンストラクトおよび/またはヌクレオチド配列を含んでもよく、好ましくは、それらは、本明細書において先に記載されるとおりの細胞における嗅覚受容体の機能的発現のために必要とされるアクセサリー分子をコードする核酸配列、より好ましくはヒトRTP1SのV227Iバリアントおよび/またはヒトRTP2のL220Rバリアントをコードする核酸配列(配列番号17または18)を含む、核酸コンストラクトを含む。
【0093】
第4および第5の側面のステップA)は、細胞の培養を含んでもよい。細胞培養は、炭素および窒素源などの好適な栄養、ならびに無機塩、微量元素およびビタミンなどのさらなる化合物を含む、培養培地を用いて行われてもよい。当業者は、好適な栄養(ならびに温度、pH、COレベルなどの培養条件)は、培養される細胞に依存して変化するであろうことを理解する。好適な培養培地および培養条件は、商業的な供給者から入手可能であり、標準的なハンドブックにおいて、および公共で利用可能な微生物保存機関、例えば、American Type Culture Collection(VA, USA)において見出される細胞株の情報において、さらに議論される。好適な培養培地の非限定的な例は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、例えばThermoFisher Scientific(MA, USA)により市販されている)。
【0094】
細胞培養は、培養される細胞に依存して変化し得る温度の値において行われてもよい。ヒト細胞が培養されるいくつかの態様において、細胞培養は、好ましくは、34~39℃の温度範囲において、より好ましくは35~38℃の温度範囲において、さらにより好ましくは36~37℃の温度範囲において行われる。ヒト細胞が培養されるいくつかの最も好ましい態様において、37℃または約37℃の温度の値が用いられる。
【0095】
細胞培養は、培養される細胞に依存して変化し得るpH値において行われてもよい。ヒト細胞が培養されるいくつかの態様において、細胞培養は、好ましくは7.0~7.7のpH値範囲において、より好ましくは7.2~7.6のpH値範囲、さらにより好ましくは7.4~7.5のpH値範囲において行われる。ヒト細胞が培養されるいくつかの最も好ましい態様において、7.5または約7.5のpH値が用いられる。
【0096】
細胞培養は、培養される細胞および培養培地に依存して変化し得るCOの%値において行われてもよい。当業者は、例えば細胞培養にCO-空気混合物を流すことによる外因的COの供給が、いくつかの場合、例えばCO-炭酸水素ベースのバッファーで緩衝化されている培地が用いられる場合においては必要とされ得ることを理解する。ヒト細胞が培養され、外因的COが供給されるいくつかの態様において、前記COは、好ましくは、空気中で4~10%、より好ましくは空気中で4~7%、さらにより好ましくは空気中で5~6%であってよい。ヒト細胞が培養されるいくつかのより好ましい態様において、空気中で5%または約5%のCO値が用いられる。
【0097】
細胞培養の期間は、培養される細胞に依存して変化し得る。いくつかの態様において、前記期間は、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、少なくとも24時間、少なくとも少なくとも31時間、少なくとも38時間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、または少なくとも1週間であってよい。
【0098】
第5の側面の方法のステップA)は、変異誘発ステップを含む。前記変異誘発ステップは、例えば、1つ以上のそのゲノムにおけるヌクレオチドの変異、置換、挿入および/もしくは欠失の導入、ならびに/または本明細書において先に記載されるとおりのさらなる核酸コンストラクトの導入により、細胞が遺伝子修飾される、任意のステップを含んでもよい。いくつかの態様において、変異誘発ステップは、挿入変異誘発を用いて行われ、ここで、核酸配列は、プラスミド、直鎖状DNA配列、トランスポゾン、レトロウイルス、レンチウイルスまたはCRISPR-Cas媒介性組み換えを用いて細胞のゲノム中に挿入され、好ましくはここで、挿入された核酸配列は、本明細書において先に記載されるとおりの内在遺伝子の発現の活性化のために好適なエンハンサーおよび/またはプロモーター配列を含む。挿入された核酸配列の挿入部位は、任意に、選択または選別された細胞において、本明細書において後で記載されるとおりのゲノムマッピングおよび/または配列決定方法を用いて、マッピングおよび/または同定されてもよい。当業者は、変異誘発ステップは、理解する複数回繰り返されてもよいことを理解する。いくつかの態様において、変異誘発ステップは、CRISPR干渉またはCRISPR活性化を用いるCRISPR-Cas媒介性変異誘発を用いて行われる。変異誘発ステップの細胞への適用は、改善された機能的発現を可能にし得る。例えば、変異誘発ステップは嗅覚受容体をコードする核酸分子に制限されないので、それは、嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードする核酸分子、および/または他のゲノム領域において、嗅覚受容体の改善された機能的発現を可能にするさらなる遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾を含む細胞を選択することにおいて、特に従来の方法を用いて発現させることが困難である嗅覚受容体の場合、特に有用であり得る。修飾は、次いで、本明細書において後で記載されるとおり、ゲノムマッピング、エピジェネティクスアッセイ、および/または配列決定方法を用いて、マッピングおよび/または同定されてもよい。
【0099】
第4および第5の側面の方法のステップB)において、細胞は、嗅覚受容体のリガンドの存在下において培養される。培養培地、条件および期間は、ステップA)において記載されるものに対応し、異なるのは、リガンドの添加である。リガンドは、既存の培養に添加してもよく、または代替的に、既存の培養の培養培地を、前記リガンドを含むフレッシュな培養培地により置き換えてもよい。好適なリガンドは、嗅覚受容体を活性化することができる、当該分野において公知の任意の化学的化合物(代替的に、「アロマ化合物」または「匂い分子」としても言及される)から選択してもよく、これらは、その全体において本明細書において参考として援用されるBuettner(2017年)、Springer Handbook of Odor, Springer International publishing(CH)などの標準的なハンドブックにおいて議論される。好適なリガンドの非限定的な例として、以下が挙げられる:エステル(例えば、酢酸ゲラニル、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、酪酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸ペンチル、ペンタン酸ペンチル、酢酸オクチル、酢酸ベンジル、アントラニル酸メチル、酢酸ヘキシル)、直鎖状テルペン(例えば、ミルセン、ゲラニオール、ネロール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、ネロリドール、オシメン)、環状テルペン(リモネン、カンファー、メントール、カルボン、ターピネオール、アルファ-イオノン、ツジョン、ユーカリプトール、ジャスミン)、芳香族化合物(例えば、ベンズアルデヒド、オイゲノール、イソオイゲノール、桂皮アルデヒド、エチルマルトール、エチルバニリン、アニソール、アネトール、エストラゴール、チモール)、アミン(例えば、トリメチルアミン、プトレシン、カダベリン、ピリジン、インドール、スカトール)、アルコール(例えば、フラネオール、1-ヘキサノール、エタノール)、アルデヒド(例えば、アセトアルデヒド、ヘキサナール、フルフラール、ヘキシルシンナムアルデヒド、イソバレルアルデヒド、アニスアルデヒド、クミンアルデヒド)、ケトン(例えば、ジヒドロジャスモン、2-アセチル-1-ピロリン、6-アセチル-2,3,4,5-テトラヒドロピリジン)、ラクトン(例えば、ガンマ-デカラクトン、ガンマ-ノナラクトン、デルタ-オクタラクトン、ジャスミンラクトン、マソイアラクトン、ワインラクトン、ソトロン)、チオール(例えば、チオアセトン、アリルチオール、エタンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、ブタン-1-チオール、メルカプタン、メタンチオール、フラン-2-イルメタンチオール、ベンジルメルカプタン)、ムスク(例えば、ニトロムスク、多環式ムスク、大環状ムスク、直鎖/脂環式ムスク、ムスクケトン、ムスクアンブレット、ムスクモスケン(moskene)、ムスクチベテン(tibetene)、ムスクキシレン)、クレゾール(例えば、バニラクレゾール(ウルトラバニル(ultravanil)))、プロペニルグアエトール(propenyl guaethol)(バニトロープ(vanitrope))など。
【0100】
当業者は、嗅覚受容体の活性化のために必要とされるリガンドの量は、嗅覚受容体、およびリガンドが前記嗅覚受容体に物理的に会合する能力に依存して変化し得ることを理解する。リガンドは、それが、1mM以下のEC50値で、典型的には10nM~1mMのEC50値で前記受容体と物理的に会合する(すなわち、それに結合する)ことができる場合に、所与の嗅覚受容体「のもの」である(すなわち、その受容体に特異的である)と考えられ得る。EC50とは、嗅覚受容体のリガンドに関して、嗅覚受容体の所与の活性化が、本明細書において別の場所で記載されるとおりの方法を用いて測定可能なその嗅覚受容体についての最大値の50%である、リガンドの濃度を指す。
【0101】
いくつかの態様において、リガンドは、培養中に、0.1nM~1mM、1nM~1mM、10nM~1mM、100nM~500μM、250nM~100μM、500nM~50μM、または10μM~30μMの濃度値において存在してもよい。
【0102】
当業者は、嗅覚受容体リガンドの存在下における細胞培養の期間は、嗅覚受容体、およびリガンドが前記嗅覚受容体に物理的に会合する能力に依存して変化し得ることを理解する。。いくつかの態様において、細胞は、少なくとも少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、または少なくとも24時間にわたり、培養される。
【0103】
第4および第5の側面の方法のステップC1)において、嗅覚受容体を機能的に発現している細胞は、抗生物質およびリガンドの存在下における細胞培養により選択される。培養中の抗生物質の存在は、細胞を、選択的条件に暴露する(すなわち、それが、選択圧を適用する)。本明細書において先に議論されるとおり、嗅覚受容体を機能的に発現することができる細胞のみが、抗生物質耐性を示すことができ、生存および/または増殖することができるであろう。このことが、それらの選択を容易にする。培養培地、条件および期間は、ステップA)またはB)において記載されるものに対応し、異なるのは、抗生物質の添加である(ステップBと比較して)。抗生物質は、既存の培養に添加してもよく、または代替的に、既存の培養の培養培地を、前記抗生物質を含むフレッシュな培養培地により置き換えてもよい。
【0104】
当業者は、抗生物質の選択は、コードされたポリペプチドにより付与される抗生物質耐性に依存して変化するであろうことを理解する。これらに限定されないが、ペニシリン(β-ラクタム)、アミノヌクレオシド、ヌクレオシドアナログ、テトラサイクリン、セファロスポリン、キノロン、リンコマイシン、マクロライド、スルホンアミド、ポリペプチド、糖ペプチド、糖脂質ペプチド、アミノグリコシド、フルオロキノロン、モノバクタム、オキサゾリジノン、ストレプトグラミン、リファマイシン、カルバペネム、クロラムフェニコール、クリンダマイシン、ダプトマイシン、ホスホマイシン、レファムリン(lefamulin)、メトロニダゾール、ムピロシン、ニトロフラントイン、チゲサイクリン、ピューロマイシン、ハイグロマイシンB(ヒグロベチン)、ジェネテシン(G418)、ブレオマイシン、ゼオシン、およびブラストサイジン。いくつかの態様において、抗生物質は、ピューロマイシン、ハイグロマイシンB(ヒグロベチン)、ジェネテシン(G418)、ゼオシン、およびブラストサイジンから選択される化合物を含む、任意の抗生物質が企図され得る。いくつかの態様において、抗生物質は、ピューロマイシンまたはブラストサイジン(ブラストサイジンS)、好ましくはブラストサイジンである。
【0105】
当業者は、選択的条件を達成するために培養中に存在する抗生物質の量は、抗生物質および/または細胞に依存して変化し得ることを理解する。嗅覚受容体を機能的に発現しない細胞の生存および/または増殖を阻害するであろう適切な量を選択するために、所与の細胞についての所与の抗生物質の最小阻害濃度(MIC)を用いてもよい。用語「最小阻害濃度」とは、所与の細胞の眼に見える増殖を妨げる最小の抗生物質の濃度を指す。所与の細胞についての抗生物質のMIC値は、公共のデータベースにおいて入手可能であり、その全体において本明細書において参考として援用されるSchwalbe R.ら、Antimicrobial susceptibility testing protocols、Boca Raton: CRC Press(2007年)のような標準的なハンドブックにおいて記載されるもののような当該分野において公知の方法、ならびに/またはETEST(登録商標)(Biomerieux, NC, USA)などの市販のキットおよびプロトコルを用いて、さらに決定してもよい。代替的に、細胞生存率の50%の減少をもたらす抗生物質の濃度(所与の抗生物質EC50)を用いてもよい。代替的に、嗅覚受容体を機能的に発現しない細胞の生存および/または増殖を阻害するであろう適切な抗生物質の量を選択するために、抗生物質への細胞の暴露と、その後のPrestoBlue(登録商標)(ThemoFisher Scientific, MA, USA)などの市販の細胞生存率試薬との、供給者のプロトコルに従ったインキュベーションを用いてもよい。抗生物質への暴露の後の細胞生存率を決定するための、かかる試薬の適用の例は、本明細書において実験セクションにおいてさらに提供される。
【0106】
いくつかの態様において、抗生物質は、培養中に、10ng/ml~1mg/ml、15ng/ml~500μg/ml、20ng/ml~250μg/ml、25ng/ml~125μg/ml、50ng/ml~100μg/ml、0.1μg/ml~90μg/ml、0.5μg/ml~80μg/ml、1μg/ml~70μg/ml、2μg/ml~60μg/ml、3μg/ml~50μg/ml、4μg/ml~30μg/ml、または5μg/ml~20μg/mlの濃度値において存在してもよい。いくつかの態様において、抗生物質の存在下における細胞培養は、少なくとも30分間、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間、少なくとも4時間、少なくとも5時間、少なくとも6時間、少なくとも7時間、少なくとも8時間、少なくとも9時間、少なくとも10時間、少なくとも11時間、少なくとも12時間、少なくとも13時間、少なくとも14時間、少なくとも15時間、少なくとも16時間、少なくとも17時間、少なくとも18時間、少なくとも19時間、少なくとも20時間、少なくとも21時間、少なくとも22時間、少なくとも23時間、少なくとも24時間、少なくとも少なくとも31時間、少なくとも38時間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、またはそれより長い期間を有していてもよい。
【0107】
いくつかの態様において、抗生物質およびリガンドの存在下において培養された細胞による嗅覚受容体の機能的発現は、嗅覚受容体を発現していない比較可能な細胞と、または抗生物質のみの存在下において培養された比較可能な細胞と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%の、前記細胞の生存率の増大をもたらす。いくつかの態様において、前記細胞の生存率の増大は、嗅覚受容体を発現していない比較可能な細胞と、または抗生物質のみの存在下において培養された比較可能な細胞と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、少なくとも15倍、少なくとも16倍、少なくとも17倍、少なくとも18倍、少なくとも19倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍である。
【0108】
いくつかの態様において、抗生物質およびリガンドの存在下において培養された嗅覚受容体を機能的に発現する細胞の細胞生存率を50%減少させるために必要とされる抗生物質の濃度(所与の抗生物質のEC50)は、嗅覚受容体を発現していない比較可能な細胞の、または抗生物質のみの存在下において培養された比較可能な細胞の場合と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%、増大する。いくつかの態様において、必要とされる抗生物質の濃度は、嗅覚受容体を発現していない比較可能な細胞の、または抗生物質のみの存在下において培養された比較可能な細胞の場合と比較して、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも6倍、少なくとも7倍、少なくとも8倍、少なくとも9倍、少なくとも10倍、少なくとも11倍、少なくとも12倍、少なくとも13倍、少なくとも14倍、少なくとも15倍、少なくとも16倍、少なくとも17倍、少なくとも18倍、少なくとも19倍、少なくとも20倍、少なくとも25倍、少なくとも30倍、少なくとも35倍、少なくとも40倍、少なくとも45倍、少なくとも50倍、または少なくとも100倍、増大する。
【0109】
いくつかの場合において、%生存率は、細胞なしの対照の生存率(0%生存率に相当する)および/または嗅覚リガンドのみで処置された細胞の生存率(抗生物質なし、100%生存率に相当する)と比較して、代替的に、または付加的に、決定してもよい。
【0110】
第4および第5の側面の方法のステップC1)は、任意に、選択的条件(すなわち、選択圧)下における、複数の世代にわたる(本明細書において先に記載される進化的操作)、細胞の継代培養を含んでもよい。前記継代培養は、細胞の増殖後の(栄養が)枯渇した培養培地の除去、ならびに同じまたは異なるリガンドおよび/または抗生物質の濃度を含む培地によるその置き換えを含む。培養培地の栄養枯渇は、当業者により、当該分野において標準的な方法、例えばHPLCを用いて評価され得る。連続継代、すなわち、培養において定常状態を達成するための培養培地の一定の供給および除去が、代替的に適用され得る。選択可能な表現型(すなわち、嗅覚受容体活性化から生じる抗生物質耐性)は、細胞の増殖と関連づけられるので、前記継代培養は、嗅覚受容体の機能的発現が改善された細胞を選択するために有利であり得る。なぜならば、前記細胞は、例えば、所与の嗅覚受容体のベースラインの機能的発現が、低すぎて検出可能でない場合において、選択的な増殖の利点を有し、培養において濃縮されるであろうからである。前記濃縮は、漸進的に増大する培養培地中の抗生物質濃度、漸進的に減少する培養培地中のリガンド濃度、または2つの組み合わせの適用により、さらに増強され得る。かかるアプローチは、嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードする核酸分子、および/または他のゲノム領域において、嗅覚受容体の改善された機能的発現を可能にするさらなる遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾を含む細胞を選択することにおいて、特に従来の方法を用いて発現させることが困難である嗅覚受容体の場合は、特に有用である。修飾は、次いで、本明細書において後で記載されるとおり、ゲノムマッピング、エピジェネティクスアッセイ、および/または配列決定方法を用いて、マッピングおよび/または同定されてもよい。
【0111】
第4および第5の側面の方法のステップC2)において、嗅覚受容体を機能的に発現している細胞は、リガンドの存在下においてレポーターポリペプチドを発現している細胞の検出および選別により、スクリーニングされる。本明細書において先に議論されるとおり、ORを機能的に発現することができる細胞のみが、レポーターポリペプチドを発現するであろう。これは、それらの検出および選別を可能にする。前記細胞は、本明細書において先に議論されるとおり、直接的にまたは間接的に検出されてもよい。本明細書において先に議論されるとおりの任意のレポーターポリペプチドおよび検出方法を用いてもよい。当業者は、検出および選別の正確な方法は、レポーターポリペプチドおよび利用される機器に依存するであろうことを理解する。選別された個々の細胞は、その後、培養されてもよい。嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードする核酸分子、および/または他のゲノム領域における、任意の遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾であって、嗅覚受容体の機能的発現を可能にするものは、次いで、本明細書において後で記載されるとおり、ゲノムマッピング、エピジェネティクスアッセイ、および/または配列決定方法を用いて、マッピングおよび/または同定されてもよい。
【0112】
非限定的な例として、GFPがレポーターポリペプチドとして用いられる場合において、ステップB)由来の細胞培養を、市販の蛍光励起セルソーター(例えば、BDから入手可能なBD-FACS(商標)、NJ, USA)においてロードしてもよい。細胞培養を、次いで、約488nmの光の波長に暴露してもよく、GFPを、任意に、510nmの波長において検出してもよい。GFPを発現している細胞を、次いで、製造者のプロトコルに従って、スクリーニングおよび選別することができる。
【0113】
嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードする核酸分子、および/または他のゲノム領域における遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾であって、嗅覚受容体の機能的なまたは改善された機能的発現を可能にするものは、ゲノムマッピング、エピジェネティクスアッセイ、および/または配列決定方法を用いて、マッピングおよび/または同定されてもよい。前記マッピングおよび/または同定は、第4および第5の側面の方法の任意のステップの後で行われてもよく、好ましくは、それは、ステップC1)またはC2)の後で行われる。
【0114】
第4および第5の側面の方法のいくつかの態様において、嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードする核酸分子、および/または他のゲノム領域において含まれる遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾であって、選択または選別された細胞による嗅覚受容体の機能的なまたは改善された機能的発現を可能にするものが、マッピングおよび同定される。
【0115】
マッピングとは、遺伝子などの核酸配列の位置、ならびに細胞のゲノムにおける核酸配列の間の距離の同定を指す。マッピングは、本明細書において先に記載されるとおり、第5の側面の方法のステップA)において挿入変異誘発が行われる態様において、特に有用であり得る。なぜならば、それは、選択または選別された細胞における挿入された核酸配列の挿入部位の同定を可能にするからである。マッピングは、遺伝子マッピング、すなわち、遺伝子マーカーに基づく遺伝連鎖の情報を用いるマッピング、物理的マッピング、または両方の組み合わせを介して行われてもよい。マッピング方法は、当該分野において公知であり、その全体において本明細書において参考として援用されるBrown、Genomes、第4版、Garland Science, NY, USA(2017年)のような標準的なハンドブックにおいて議論される。マッピング方法の非限定的な例として、サーキュラーPCR(染色体DNAの消化と、その後の環状DNAを形成するためのライゲーションと、その後のそのPCR増幅を含む)、および染色体ウオーキング(例えば、染色体DNAの消化と、その後の1つ以上のアダプターとのライゲーションと、その後の1つ以上のアダプターおよび挿入された配列に向けられたネスティッドPCRを含む)が挙げられる。
【0116】
遺伝子修飾の同定は、当業者に公知の任意の核酸配列決定方法を用いて行われてもよい。非限定的な例として、サンガーシークエンシング、単一分子リアルタイムシークエンシング、ion torrentシークエンシング、パイロシークエンシング、Illuminaシークエンシング、cPAS(combinatorial probe anchor synthesis)、ライゲーションによるシークエンシング(sequencing by ligation)(SOLiDシークエンシング)、ナノポア(Nanopore)シークエンシング、GenapSysシークエンシングなどが挙げられる。シークエンシング試料の調製、機器、およびプロトコルは、その全体において本明細書において参考として援用されるHead、OrdoukhanianおよびSalomon(編)、Next Generation Sequencing: Methods and Protocols、Humana Press, NJ, USA (2018年)などの標準的なハンドブックにおいて議論され、多くが、例えば、Illumina(CA, USA)、Pacific Biosciences(CA, USA)、および他から市販されている。
【0117】
本明細書において先に記載されるとおりの、嗅覚受容体、アクセサリー分子をコードする核酸分子、または他のゲノム領域のエピジェネティックな修飾は、Tollefsbol、Handbook of Epigenetics: The New Molecular and Medical Genetics、第2版、Academic Press, USA(2017年)およびDeAngelis and Woodrow(2008年)Mol Biotechnol 38(2): 179-183(これらの両方は、それらの全体において本明細書において参考として援用される)のような標準的なハンドブックおよび刊行物において記載されるような、当該分野において公知の任意の標準的なエピジェネティクスアッセイを用いて同定してもよい。エピジェネティックなアッセイの非限定的な例は、クロマチン免疫沈降(ChIP、そのラージスケールバリアントであるChIP-オンチップ(on-chip)およびChIP-Seqと一緒に)、蛍光in situハイブリダイゼーション、メチル化感受性制限酵素消化、DNAアデニンメチルトランスフェラーゼ同定(DamID)、バイサルファイトシーケンシング、RNA免疫沈降(RIP)、架橋免疫沈降である。多くのエピジェネティクスアッセイ、例えばAbcam(Cambridge, UK)から提供されるエピジェネティクスのアッセイおよびキットが、市販されている。
【0118】
本発明の方法は、新規のコグネートな受容体-リガンドペアの同定のために、さらに好適である。特に、目的の多くのリガンドについて、コグネートな嗅覚受容体は、知られていない(「オーファン受容体」)か、または、例えば目的のリガンドについてのそれらのアフィニティーにおいて、よく特徴づけられていない。
【0119】
したがって、第6の側面において、本発明は、所与のリガンドに結合している嗅覚受容体を同定するための方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む:
A)本明細書において先に記載されるとおりの不均一な細胞の集団を提供すること、ここで、前記細胞は、
ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクト、ここで、前記コードされたポリペプチドは、抗生物質に対する耐性を付与するか、またはレポーターポリペプチドであり、ここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサーは、嗅覚受容体により誘導可能であり、好ましくはここで、前記プロモーターおよび/またはエンハンサー配列は、cAMP応答性エレメント(CRE)、CRE半配列、またはNFAT応答性エレメント(NFAT-RE)のうちの1つまたは複数のコピーを含む、ならびに
嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクト、ここで、細胞のうちの少なくとも1つにおいて含まれる前記第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体は、前記集団の他の細胞のうちの少なくとも1つにおける第2の核酸コンストラクトにおいて含まれる核酸分子によりコードされる嗅覚受容体から区別し得る、
を含み、
【0120】
B)前記細胞の集団を、前記所与のリガンドの存在下において培養すること、
C1)前記所与のリガンドに結合している嗅覚受容体を機能的に発現している細胞について、それらを抗生物質およびリガンドの存在下において培養することにより、選択すること、または
C2)前記所与のリガンドに結合する嗅覚受容体を機能的に発現する細胞について、リガンドの存在下においてレポーターポリペプチドを発現している細胞を検出および選別することにより、スクリーニングすること、
D)選択または選別された細胞において受容体をコードするヌクレオチド配列を決定すること。
ステップA)において、抗生物質に対する耐性を与えるポリペプチドをコードする核酸配列が好ましく、好ましくは、核酸配列は、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。ステップC1)およびC2)のうちでは、ステップC1)が好ましい。
【0121】
本明細書において先に提供される第4の側面のステップA)の記載はまた、第6の側面のステップA)にも適用され、違いは、第6の側面ステップA)において、細胞の集団が提供されることである。前記集団は、本明細書において先に記載されるとおり、不均一である(混合されている)。好ましくは、ポリペプチドをコードする核酸配列に動作可能に連結されたプロモーターおよび/またはエンハンサー配列を含む核酸コンストラクトと、嗅覚受容体をコードする核酸分子を含む第2の核酸コンストラクトとは、単一の核酸コンストラクトを構成するように融合しており、好ましくは単一のプラスミドである。
【0122】
不均一な集団の提供は、特に有利であり得る。なぜならば、それは、前記嗅覚受容体の特徴の、または必要とされるアクセサリー分子の、または前記嗅覚受容体の機能的発現を達成するために必要とされ得る任意の特定の遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾の事前の知識を要求することなく、目的のリガンドに結合する嗅覚受容体のハイスループット同定を可能にするからである。
【0123】
本明細書において先に提供される第4および第5の側面のステップB)の記載はまた、第6の側面ステップB)にも適用され、違いは、第6の側面のステップB)においては、所与のリガンドが結合している嗅覚受容体は、まだ同定されていないことである。本明細書において先に記載されるとおりの任意の目的のリガンド、培養培地、および培養条件を、選択して利用してもよい。
【0124】
本明細書において先に提供される第4および第5の側面のステップC1)およびC2)の記載はまた、第6の側面のステップC1)およびC2)にも適用され、違いは、第6の側面のステップC1)およびC2)においては、所与のリガンドに結合する嗅覚受容体はまだ同定されていないので、第6の側面のステップC1)およびC2)は、同時に、所与のリガンドが結合する嗅覚受容体を機能的に発現している細胞の選択またはスクリーニングおよび選別を可能にすることである。第6の側面のステップC1)において、本明細書において先に記載されるとおり、選択可能な表現型(すなわち、嗅覚受容体活性化から生じる抗生物質耐性)は、所与のリガンドが結合する嗅覚受容体を機能的に発現している細胞の生存および/または増殖と関連づけられるので、選択圧下における細胞の継代培養は、嗅覚受容体の機能的発現が改善された細胞を選択するために有利であり得る。なぜならば、前記細胞は、選択的な増殖の利点を有し、培養において濃縮されるであろうからである。
【0125】
したがって、第4、第5および第6の側面の方法のいくつかの態様において、ステップC1)は、加えて、継代培養ステップを含み、ここで、嗅覚受容体の機能的発現が改善されている細胞が、培養において濃縮されている。
【0126】
第6の側面の方法のステップD)において、選択または選別された細胞において嗅覚受容体をコードするヌクレオチド配列が決定される。したがって、前記受容体は、同定され(「脱オーファン化され(de-orphanized)」)てもよく、コグネートな嗅覚受容体-リガンドの関係は、解決されてもよい。任意に、嗅覚受容体の機能的発現を達成するために必要とされ得るアクセサリー分子をコードするヌクレオチド配列が、決定される。任意に、嗅覚受容体の機能的発現を達成するために必要とされ得る任意の特定の遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾が、同定される。
【0127】
抗生物質に対する耐性を付与するポリペプチドをコードする好適な核酸配列は、本明細書において先に議論されてきた。いくつかの態様において、核酸配列は、ピューロマイシン-N-アセチルトランスフェラーゼ遺伝子またはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子、好ましくはブラストサイジン-Sデアミナーゼ遺伝子である。
【0128】
任意に上記のとおりの遺伝子修飾を含む、嗅覚受容体の非限定的な例であって、本発明の方法を用いて同定され得るものは、配列番号20、36~62のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むか、これから本質的になるか、またはこれからなり、好ましくはこれを含む。
【0129】
嗅覚受容体もしくはアクセサリー分子の配列の決定、または任意の遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾の同定は、本明細書において先に議論される任意のゲノムマッピング、エピジェネティクスアッセイ、および/または配列決定方法により、行われてもよい。
【0130】
嗅覚受容体
本発明の核酸コンストラクト、細胞および方法は、前記嗅覚受容体の機能的発現または改善された機能的発現のために必要とされる遺伝子修飾および/またはエピジェネティックな修飾を含む、嗅覚受容体および/またはアクセサリー分子の同定および/または選択を可能にする。
【0131】
したがって、第7の側面において、本発明は、バリアント嗅覚受容体および/またはアクセサリー分子を提供する。「バリアント」、「機能的発現」および「改善された機能的発現」の定義は、本明細書において先に提供されている。バリアント嗅覚受容体は、本明細書において先に記載されるとおり、細胞において機能的に発現されてもよく、一方、天然に存在する配列は、前記細胞によって機能的に発現されない。バリアント嗅覚受容体は、細胞において、前記細胞における天然に存在する配列の機能的発現と比較して、改善された機能的発現を有していてもよい。嗅覚受容体のC末端および/またはN末端における遺伝子修飾は、有利であり得る。なぜならば、前記領域は、典型的にはリガンド選択性を担ってはいないが、典型的には、OR輸送および/または細胞表面膜への組み込みのために重要であるからである。いくつかの態様において、嗅覚受容体は、N末端における遺伝子修飾を含む。いくつかの態様において、嗅覚受容体は、C末端における遺伝子修飾を含む。いくつかの態様において、嗅覚受容体は、N末端における遺伝子修飾およびC末端における遺伝子修飾を含む。前記遺伝子修飾として、これらに限定されないが、本明細書において先に記載されるとおりの前記嗅覚受容体をコードするヌクレオチド配列におけるヌクレオチド挿入、欠失および/または置換から生じる、アミノ酸挿入、欠失および/または置換が挙げられる。いくつかの態様において、嗅覚受容体は、合成のものである。
【0132】
ヒトOR5A2受容体のバリアント(NCBI Genbank ID:219981、肺列番号19)は、特に有利である。ヒトOR5A2の野生型配列は、発現させることが困難な受容体をコードし、これは、典型的には、シャペロンRTP1SおよびRTP2を発現する細胞において、機能的に発現させることができない。それは、機能的発現のために、未知のアクセサリー因子を必要とする。OR5A2は、その全体において本明細書において参考として援用されるWO2019110630A1において、ムスク受容体であるものと推論された。本明細書において実験セクションにおいて示されるとおり、本発明者らは、これらに限定されないがHEK293T細胞などの細胞において、機能的に発現され得るOR5A2のバリアント(配列番号20)を選択および単離することができた。前記バリアントは、修飾されたC末端を含む(配列番号62)。
【0133】
したがって、1つの側面において、本発明は、嗅覚受容体に関し、そのアミノ酸配列は、配列番号62と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはここで、配列番号62は、嗅覚受容体のC末端に位置する。
【0134】
好ましい態様において、嗅覚受容体のアミノ酸配列は、配列番号20と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなり、好ましくはこれを含む。
【0135】
好ましい態様において、嗅覚受容体のアミノ酸配列は、配列番号20と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなり、好ましくはこれを含み、および、配列番号62と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含み、好ましくはここで、配列番号62は、嗅覚受容体のC末端に位置する。
【0136】
同一性または類似性は、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%であってよい。
【0137】
かかる嗅覚受容体は、細胞において機能的に発現されるものと推測される。一態様において、かかる機能的発現は、対照または参照の嗅覚受容体の発現との比較により、改善される。対照または参照の嗅覚受容体は、いくつかの態様において、OR5A2、例えば、ヒトOR5A2であってよい。
【0138】
したがって、さらなる側面において、本発明は、配列番号62と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列により表されるアミノ酸配列をコードする核酸分子によりコードされるポリペプチドを含む、嗅覚受容体のアミノ酸配列に関し、好ましくはここで、配列番号62は、嗅覚受容体のC末端において位置する。
【0139】
好ましい態様において、嗅覚受容体のアミノ酸配列は、核酸分子によりコードされ、核酸分子は、配列番号20と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる、好ましくはこれを含む、アミノ酸配列をコードする。
【0140】
好ましい態様において、嗅覚受容体のアミノ酸配列は、核酸分子によりコードされ、核酸分子は、配列番号20と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含むか、これから本質的になるか、またはこれからなる、好ましくはこれを含み、および、配列番号62と、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%、同一性または類似性を有するアミノ酸配列を含む、アミノ酸配列をコードし、好ましくはここで、配列番号62は、嗅覚受容体のC末端において位置する。
【0141】
同一性または類似性は、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%であってよい。
【0142】
表1:配列のリスト
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【0143】
一般的情報
別段に記述されない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および化学的用語は、本発明が属する分野における当業者により習慣的に、かつ通常理解されるもの、および本開示を考慮して読まれるものと同じ意味を有する。
【0144】
配列同一性
本明細書において所与の配列アイデンティティー番号(配列番号)により定義されるとおりの各々の核酸分子、またはタンパク質フラグメント、またはポリペプチド、またはペプチド、または誘導されたペプチド、またはコンストラクトは、開示されるとおりのこの特定の配列に限定されないことが理解されるべきである。本明細書において定義されるとおりの各々のコード配列は、所与のタンパク質フラグメント、またはポリペプチド、またはペプチド、または誘導されたペプチド、またはコンストラクトをコードするか、あるいは、それ自体が、タンパク質フラグメントまたはポリペプチドまたはコンストラクトまたはペプチドまたは誘導されたペプチドである。
【0145】
本願全体にわたり、所与のタンパク質フラグメント、またはポリペプチド、またはペプチド、または誘導されたペプチドをコードする特定のヌクレオチド配列の配列番号(例として配列番号Xとする)について言及されるたびに、それは、以下により置き換えられてもよい:
i.配列番号Xと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列;
ii.遺伝子コードの縮重に起因して、その配列が(i)の核酸分子の配列とは異なるヌクレオチド配列;または
iii.配列番号Xのヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%のアミノ酸同一性または類似性を有するアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列。
【0146】
配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、70%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、80%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、90%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、95%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、99%である。
【0147】
本願全体にわたり、特定のアミノ酸配列の配列番号(例として配列番号Yとする)について言及されるたびに、それは、配列番号Yのアミノ酸配列と少なくとも60%、70%、80%、90%、95%または99%の配列同一性または類似性を有する配列を含むアミノ酸配列により表されるポリペプチドにより置き換えられてもよい。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、70%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、80%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、90%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、95%である。配列同一性または類似性の別の好ましいレベルは、99%である。
【0148】
本明細書において、それぞれ所与のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列とのその同一性または類似性のパーセンテージにより記載される、各々のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列は、さらに好ましい態様において、それぞれ所与のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列と、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性または類似性を有する。
【0149】
各々の非コードヌクレオチド配列(すなわち、プロモーターのもの、または別の調節性領域のもの)は、特定のヌクレオチド配列の配列番号(例として配列番号Aとする)と少なくとも60%の配列同一性または類似性を有するヌクレオチド配列を含む、ヌクレオチド配列により置き換えることができる。好ましいヌクレオチド配列は、配列番号Aと、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の同一性を有する。好ましい態様において、プロモーターなどのかかる非コードヌクレオチド配列は、当業者に公知であるとおりのかかる非コードヌクレオチド配列の少なくとも1つの活性、例えばプロモーターの活性を示すまたは発揮する。
【0150】
用語「相同性」、「配列同一性」などは、本明細書において交換可能に用いられる。配列同一性は、本明細書において、配列を比較することにより決定されるものとしての、2つ以上のアミノ酸(ポリペプチドもしくはタンパク質)配列または2つ以上の核酸(ポリヌクレオチド)配列の間の関係として記載される。好ましい態様において、配列同一性は、2つの所与の配列番号の全長、またはその部分に基づいて計算される。その部分とは、好ましくは、両方の配列番号のものの、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%を意味する。当該分野において、「同一性」もまた、アミノ酸または核酸配列の間の、配列の関連性の程度を指し、これは、場合に応じて、かかる配列の文字列の間のマッチにより決定される。2つのアミノ酸配列の間の「類似性」は、アミノ酸配列、および1つのポリペプチドの第2のポリペプチドの配列へのその保存されたアミノ酸置換を比較することにより決定される。「同一性」および「類似性」は、公知の方法により容易に計算することができ、これは、これらに限定されないが、Bioinformatics and the Cell: Modern Computational Approaches in Genomics, Proteomics and transcriptomics, Xia X., Springer International Publishing, New York, 2018;およびBioinformatics: Sequence and Genome Analysis, Mount D., Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York, 2004において記載されるものを含み、これらの各々は、その全体において本明細書において参考として援用される。
【0151】
「配列同一性」および「配列類似性」は、2つの配列の長さに依存して、網羅的または局所的アラインメントのアルゴリズムを用いて、2つのペプチドまたは2つのヌクレオチド配列のアラインメントにより決定することができる。類似の長さの配列は、好ましくは、最適に全体的な長さにわたり配列をアラインメントする網羅的アラインメントのアルゴリズム(例えば、Needleman-Wunsch)を用いてアラインメントし、一方、実質的に異なる長さの配列は、好ましくは、局所的アラインメントのアルゴリズム(例えば、Smith-Waterman)を用いてアラインメントする。配列を、次いで、それらが(例えば、プログラムEMBOSS needleまたはEMBOSS waterにより、デフォルトのパラメーターを用いて最適にアラインメントされた場合に)少なくとも一定の配列同一性の最小パーセンテージ(以下に記載するとおり)を共有する場合に、「実質的に同一である」または「本質的に類似する」ものとして言及してもよい。
【0152】
網羅的アラインメントは、2つの配列が類似の長さを有する場合に、配列同一性を決定するために好適に用いられる。配列が、実質的に異なる全体的な長さを有する場合、Smith-Watermanアルゴリズムを用いるものなどの局所的アラインメントが好ましい。EMBOSS needleは、2つの配列をそれらの全体的な長さ(全長)にわたりアラインメントするために、Needleman-Wunschの網羅的アラインメントアルゴリズムを用い、マッチの数を最大にし、ギャップの数を最少にする。EMBOSS waterは、Smith-Watermanの局所的アラインメントアルゴリズムを用いる。一般的に、EMBOSS needleおよびEMBOSS waterのデフォルトのパラメーターが用いられ、ギャップオープンペナルティー=10(ヌクレオチド配列)/10(タンパク質)およびギャップ延長ペナルティー=0.5(ヌクレオチド配列)/0.5(タンパク質)である。ヌクレオチド配列について、用いられるデフォルトのスコア付けマトリックス、はDNAfullであり、タンパク質について、デフォルトのスコア付けマトリックスは、Blosum62である(その全体において本明細書において参考として援用されるHenikoff & Henikoff, 1992, PNAS 89, 915-919)。
【0153】
代替的に、パーセンテージ類似性または同一性は、FASTA、BLASTなどのアルゴリズムを用いて公共のデータベースに対して検索することにより決定してもよい。したがって、本発明のいくつかの態様の核酸およびタンパク質の配列は、例えば、他のファミリーメンバーまたは関連する配列を同定するために、公共のデータベースに対して検索を行うための「クエリー配列」として、さらに用いることができる。かかる検索は、その全体において本明細書において参考として援用されるAltschul, et al. (1990年)J. Mol. Biol. 215:403-10のBLASTnおよびBLASTxプログラム(バージョン2.0)を用いて行うことができる。BLASTヌクレオチドサーチは、本発明のオキシドレダクターゼの核酸分子に対して相同なヌクレオチド配列を得るために、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12により行うことができる。BLASTタンパク質サーチは、本発明のタンパク質分子に対して相同なアミノ酸配列を得るために、BLASTxプログラム、スコア=50、ワード長=3により、行うことができる。比較目的のためのギャップ付きのアラインメントを得るために、その全体において本明細書において参考として援用されるAltschul et al., (1997) Nucleic Acids Res. 25(17): 3389-3402において記載されるとおり、Gapped BLASTを利用することができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、BLASTxおよびBLASTn)のデフォルトのパラメーターを用いることができる。world wide web上でwww.ncbi.nlm.nih.gov/においてアクセス可能なNational Center for Biotechnology Informationのホームページを参照。
【0154】
任意に、アミノ酸類似性の程度を決定することにおいて、当業者はまた、いわゆる保存的アミノ酸置換を考慮してもよい。本明細書において用いられる場合、「保存的」アミノ酸置換とは、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。保存的置換のためのアミノ酸残基のクラスの例を、下の表において提供する。
【表2】
【0155】
代替的な保存的アミノ酸残基の置換クラス:
【表3】
【0156】
アミノ酸残基の代替的な物理的および機能的分類:
【表4】
【0157】
例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループは、セリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、アスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループは、リジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;ならびに硫黄含有側鎖を有するアミノ酸のグループは、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換のグループは、以下である:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミン。本明細書において開示されるアミノ酸配列の置換のバリアントとは、開示される配列中の少なくとも1つの残基が取り除かれており、異なる残基がその場所に挿入されているものである。好ましくは、アミノ酸の変更は、保存的である。天然に存在するアミノ酸の各々についての好ましい保存的置換は、以下のとおりである:AlaからSer;ArgからLys;AsnからGlnまたはHis;AspからGlu;CysからSerまたはAla;GlnからAsn;GluからAsp;GlyからPro;HisからAsnまたはGln;IleからLeuまたはVal;LeuからIleまたはVal;LysからArg;GlnまたはGlu;MetからLeuまたはIle;PheからMet、LeuまたはTyr;SerからThr;ThrからSer;TrpからTyr;TyrからTrpまたはPhe;およびValからIleまたはLeu。
【0158】
遺伝子またはコードヌクレオチド配列
用語「遺伝子」とは、好適な調節性領域(例えばプロモーター)に作動可能に連結された、細胞においてRNA分子(例えばmRNA)に転写される領域(転写される領域)を含むDNAのフラグメントを指す。コードヌクレオチド配列は、細胞にとってネイティブな配列、細胞において天然には存在しない配列を含んでもよく、それは、両方の組み合わせを含んでもよい。
【0159】
タンパク質およびアミノ酸
用語「タンパク質」または「ペプチド」または「ポリペプチド」または「アミノ酸配列」は、交換可能に用いられ、特定の作用の様式、サイズ、三次元構造または由来と関係なく、アミノ酸の鎖からなる分子を指す。本明細書において記載されるとおりのアミノ酸配列において、アミノ酸または「残基」は、3文字の記号により表される。これらの3文字の記号、ならびに対応する1文字記号は、当業者に周知であり、以下の意味を有する::A(Ala)はアラニンであり、C(Cys)はシステインであり、D(Asp)はアスパラギン酸であり、E(Glu)はグルタミン酸であり、F(Phe)はフェニルアラニンであり、G(Gly)はグリシンであり、H(His)はヒスチジンであり、I(Ile)はイソロイシンであり、K(Lys)はリジンであり、L(Leu)はロイシンであり、M(Met)はメチオニンであり、N(Asn)はアスパラギンであり、P(Pro)はプロリンであり、Q(Gln)はグルタミンであり、R(Arg)はアルギニンであり、S(Ser)はセリンであり、T(Thr)はスレオニンであり、V(Val)はバリンであり、W(Trp)はトリプトファンであり、Y(Tyr)はチロシンである。残基は、任意のタンパク質原性アミノ酸であってよいが、また、D-アミノ酸などの任意の非タンパク質原性アミノ酸、および翻訳後修飾により形成された修飾アミノ酸、およびまた任意の非天然のアミノ酸であってもよい。
【0160】
一般的用語
この文書において、およびその請求の範囲において、動詞「~を含むこと(to comprise)」およびその活用形は、その非限定的な意味において、当該用語に続く項目が含まれるが、特に言及されていない項目も除外されないことを意味するように用いられる。加えて、動詞「~からなること(to consist)」は、「~から本質的になること(to consist essentially of)」により置き換えられてもよく、このことは、本明細書において記載されるとおりの組成物は、特に同定されたもの以外に、追加の構成成分(単数または複数)を含んでもよく、前記追加の構成成分(単数または複数)は、本発明のユニークな特徴を改変しないことを意味する。加えて、動詞「~からなること」は、「~から本質的になること」により置き換えられてもよく、このことは、本明細書において記載されるとおりの方法または使用は、特に同定されたもの以外に、追加のステップ(単数または複数)を含んでもよく、前記追加のステップ(単数または複数)は、本発明のユニークな特徴を改変しないことを意味する。加えて、動詞「~からなること」は、「~から本質的になること」により置き換えられてもよく、このことは、本明細書において記載されるとおりのヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、特に同定されたもの以外に、追加のヌクレオチドまたはアミノ酸を含んでもよく、前記追加のヌクレオチドまたはアミノ酸は、本発明のユニークな特徴を改変しないことを意味する。
【0161】
不定冠詞「a」または「an」による要素についての言及は、文脈が、1つの、および1つのみの要素が存在することを明らかに要求しない限り、1つより多くの要素が存在する可能性を除外しない。不定冠詞「a」または「an」は、したがって、通常は、「少なくとも1つ」を意味する。
【0162】
本明細書において用いられる場合、「少なくとも」により、特定の値は、その特定の値またはそれより多くを意味する。例えば、「少なくとも2」は、「2以上」、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15などと同じである理解される。
【0163】
さらに、明細書において、および請求の範囲において、用語、第1、第2、第3などは、類似の要素の間を区別するために用いられ、必ずしも、連続的または経時的な順序を記載するためには用いられない。そのように用いられる用語は、適切な状況下において、交換可能に用いられること、および本明細書において記載される本発明の態様は、本明細書において記載または説明されるもの以外の順序における操作が可能であることが、理解されるべきである。
【0164】
用語「約(about)」または「約(approximately)」は、数値と関連して用いられる場合(例えば約10)、好ましくは、当該値が、所与の(10の)の値よりも1%多いまたは少ない値であってもよいことを意味する。
【0165】
本明細書において用いられる場合、用語「および/または」は、記述される場合のうちの1つより多くが、単独で、または記述される場合のうちの少なくとも1つと、記述される場合の全てまでと組み合わせて、起こり得ることを示す。
【0166】
多様な態様が、本明細書において記載される。本明細書において記載されるとおりの各々の態様は、別段に示されない限り、一緒に組み合わせてもよい。
【0167】
本明細書において引用される全ての特許出願、特許、および印刷された刊行物は、任意の定義、主題、部分放棄(disclaimer)または否認(disavowal)を除いて、および援用された材料が本明細書における明示的開示と不一致である場合(この場合、本開示の言語が支配する)を除いて、全体において本明細書において参考として援用される。
【0168】
当業者は、本発明の実施において用いることができる、本明細書において記載されるものと類似または等価の多くの方法および材料を認識するであろう。実際に、本発明は、記載される方法および材料に決して限定されない。
本発明は、以下の例によりさらに記載され、これは、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0169】
図1】11種類の濃度のピューロマイシンに暴露され、様々な嗅覚リガンドで共処置された、受容体OR10G7を含む、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORの安定な挿入を有するHEK293T細胞。OR10G7を発現する細胞は、コグネートなリガンドであるオイゲノール、イソオイゲノール、バニトロープおよびウルトラバニルの存在下において、ピューロマイシンに対する増大した耐性を有するが、一方、OR10G7に結合しない匂い分子ムスクケトンは、溶媒対照に対して耐性を増大させない。
図2】11種類の濃度のピューロマイシンに暴露され、様々な嗅覚リガンドで共処置された、受容体OR5AN1を含む、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORの安定な挿入を有するHEK293T細胞。OR5AN1を発現する細胞は、ムスクケトンの存在下において、ピューロマイシンに対する増大した耐性を有するが、一方、OR5AN1に結合しないリガンドであるオイゲノール、イソオイゲノール、およびウルトラバニルは、溶媒対照に対して耐性を増大させない。
図3】11種類の濃度のピューロマイシンに暴露され、様々な嗅覚リガンドで共処置された、受容体OR10G9を含む、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORの安定な挿入を有するHEK293T細胞。OR10G9を発現する細胞は、コグネートなリガンドであるバニトロープおよびウルトラバニルの存在下において、ピューロマイシンに対する増大した耐性を有するが、一方、所与の濃度においてはこの受容体に結合しないスクケトン、オイゲノールおよびイソオイゲノールに対しては、溶媒対照に対して耐性は増大しないことが観察される。
図4】例1において記載されるとおりの、11種類の濃度のピューロマイシンに暴露され、様々な嗅覚リガンドで共処置された、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORコンストラクトにおいて受容体OR5A2を含む単離されたクローン(「クローン3」)の耐性。OR5A2を機能的に発現する単離されたクローンは、コグネートなムスク匂い分子リガンドであるムスクアンブレットおよびセレノリド(serenolide)の存在下において、ピューロマイシンに対する増大した耐性を有するが、一方で、この受容体に結合しないオイゲノールの存在下においては耐性は増大しなかったことが観察された。
図5A】CRE誘導性ルシフェラーゼを含み、および(図5A)RTP1SおよびRTP2のバリアントならびにOR5A2を含むが、リガンド誘導性ピューロマイシン耐性について選択されていない、ならびに(図5B)同じ3つの遺伝子で安定にトランスフェクトされ、本明細書において記載されるとおり、リガンド誘導性ピューロマイシン耐性により2,500,000個の細胞のプールから機能的発現について選択された、「クローン3」の細胞における、HEK293T細胞における、匂い分子により誘導されたルシフェラーゼシグナル。「クローン3」は、OR5A2の機能的発現を付与する獲得型変異を含み、これは、特に適用された選択手順により、2,500,000個の細胞のプールから選択することができた。
図5B】CRE誘導性ルシフェラーゼを含み、および(図5A)RTP1SおよびRTP2のバリアントならびにOR5A2を含むが、リガンド誘導性ピューロマイシン耐性について選択されていない、ならびに(図5B)同じ3つの遺伝子で安定にトランスフェクトされ、本明細書において記載されるとおり、リガンド誘導性ピューロマイシン耐性により2500,000個の細胞のプールから機能的発現について選択された、「クローン3」の細胞における、HEK293T細胞における、匂い分子により誘導されたルシフェラーゼシグナル。「クローン3」は、OR5A2の機能的発現を付与する獲得型変異を含み、これは、特に適用された選択手順により、2,500,000個の細胞のプールから選択することができた。
図6】OR5A2野生型(配列番号69)の、「クローン3」(配列番号62)における変異体形態とのアミノ酸配列アラインメント。暗灰色の網掛けにおいて、7番目の膜貫通ドメインが示され、一方、明暗の網掛けにおいて、野生型C末端が表される。箱で囲んだ配列中の太字のアミノ酸は、「クローン3」において組み換えイベントにより獲得されたものであり、この変異を含む対応する細胞は、本発明の選択手順に基づいて選択されたものである。
図7】ヒトRTP1Sの機能的なバリアントV227I(配列番号17)およびRTP2の機能的なバリアントL220R(配列番号18)を発現し、CRE誘導性ルシフェラーゼにより、および図6において示されるOR5A2の変異体形態によりトランスフェクトされた、HEK293T細胞における、ムスクリガンドによるルシフェラーゼ誘導。
図8】11種類の濃度のブラストサイジンに暴露され、様々な嗅覚リガンドで共処置された、受容体OR5AN1を含む、pGL4.29-CRE-BLAST-ORの安定な挿入を有するHEK293T細胞。OR5AN1を発現する細胞は、リガンドムスクケトンの存在下において、ブラストサイジンに対する大した耐性を有するが、一方、OR5AN1には結合しないリガンドであるエチルバニリンは、溶媒対照に対して耐性は増大しない。
図9A】ムスクケトンにより選択されたクローン(配列番号36~44;M1 配列番号36、M2 配列番号37、M3 配列番号38、M4 配列番号39、M5 配列番号40、M6 配列番号41、M7 配列番号42、M8 配列番号43、M9 配列番号44)のOR5AN1(配列番号70)とのアラインメント。
図9B】ムスクケトンにより選択されたクローン(配列番号36~44;M1 配列番号36、M2 配列番号37、M3 配列番号38、M4 配列番号39、M5 配列番号40、M6 配列番号41、M7 配列番号42、M8 配列番号43、M9 配列番号44)のOR5AN1(配列番号70)とのアラインメント。
図9C】ムスクケトンにより選択されたクローン(配列番号36~44;M1 配列番号36、M2 配列番号37、M3 配列番号38、M4 配列番号39、M5 配列番号40、M6 配列番号41、M7 配列番号42、M8 配列番号43、M9 配列番号44)のOR5AN1(配列番号70)とのアラインメント。
図9D】ムスクケトンにより選択されたクローン(配列番号36~44;M1 配列番号36、M2 配列番号37、M3 配列番号38、M4 配列番号39、M5 配列番号40、M6 配列番号41、M7 配列番号42、M8 配列番号43、M9 配列番号44)のOR5AN1(配列番号70)とのアラインメント。
図10A】オイゲノールにより選択されたクローン(配列番号45~53;E1 配列番号45、E2 配列番号46、E3 配列番号47、E4 配列番号48、E5 配列番号49、E6 配列番号50、E7 配列番号51、E8 配列番号52、E9 配列番号53)のOR10G7(配列番号71)とのアラインメント。
図10B】オイゲノールにより選択されたクローン(配列番号45~53;E1 配列番号45、E2 配列番号46、E3 配列番号47、E4 配列番号48、E5 配列番号49、E6 配列番号50、E7 配列番号51、E8 配列番号52、E9 配列番号53)のOR10G7(配列番号71)とのアラインメント。
図10C】オイゲノールにより選択されたクローン(配列番号45~53;E1 配列番号45、E2 配列番号46、E3 配列番号47、E4 配列番号48、E5 配列番号49、E6 配列番号50、E7 配列番号51、E8 配列番号52、E9 配列番号53)のOR10G7(配列番号71)とのアラインメント。
図10D】オイゲノールにより選択されたクローン(配列番号45~53;E1 配列番号45、E2 配列番号46、E3 配列番号47、E4 配列番号48、E5 配列番号49、E6 配列番号50、E7 配列番号51、E8 配列番号52、E9 配列番号53)のOR10G7(配列番号71)とのアラインメント。
図11A】バニトロープにより選択されたクローン(配列番号54~61;V1 配列番号54、V2 配列番号55、V3 配列番号56、V5 配列番号57、V6 配列番号58、V7 配列番号59、V8 配列番号60、V9 配列番号61)アラインメントのOR10G4(配列番号72)とのアラインメント。
図11B】バニトロープにより選択されたクローン(配列番号54~61;V1 配列番号54、V2 配列番号55、V3 配列番号56、V5 配列番号57、V6 配列番号58、V7 配列番号59、V8 配列番号60、V9 配列番号61)アラインメントのOR10G4(配列番号72)とのアラインメント。
図11C】バニトロープにより選択されたクローン(配列番号54~61;V1 配列番号54、V2 配列番号55、V3 配列番号56、V5 配列番号57、V6 配列番号58、V7 配列番号59、V8 配列番号60、V9 配列番号61)アラインメントのOR10G4(配列番号72)とのアラインメント。
図11D】バニトロープにより選択されたクローン(配列番号54~61;V1 配列番号54、V2 配列番号55、V3 配列番号56、V5 配列番号57、V6 配列番号58、V7 配列番号59、V8 配列番号60、V9 配列番号61)アラインメントのOR10G4(配列番号72)とのアラインメント。
【発明を実施するための形態】
【0170】

例1.OR-リガンドにより誘導されるピューロマイシン耐性について選択するためのベクターの作製、および前記ベクターを含む安定な細胞株の作製
特定のOR遺伝子の機能的発現を有する細胞クローンの正の選択を可能にするベクターを作製するために、ピューロマイシン耐性遺伝子を、配列番号4の下流に配置した。
【0171】
pGL4.29プラスミド(Promega, WI, USA)を、HindIII/XbaI(部分的)で消化して、含まれていたCREの部分および完全なルシフェラーゼコード配列を取り除いた。取り除かれたCRE配列およびピューロマイシンN-アセチルトランスフェラーゼ(PAC、配列番号7)をコードする配列を、PCRで増幅して、以下のプライマーを用いる融合PCRにより結合させた:
GCGGCCAAGCTTAGACACTAGAG(配列番号24)、
CGGTCATGGTGGCTTTACCAACAGTACC(配列番号25)、
TGGTAAAGCCACCATGACCGAGTACAAGC(配列番号26)、
およびCAGTCTAGATCAGGCACCGGGCTTG(配列番号27)。
結果として生じたDNAフラグメントを、HindIII/XbaIで消化して、pGL4.29中にライゲーションして、pGL4.29-CRE-Puroを作製した。
【0172】
pGL4.29-CRE-Puro-ORの構築
CREの制御下におけるPAC、およびOR発現カセットを保有するプラスミドを作製するために、ORコード配列を、pcDNA3.1(+)(Invitrogen, MA, USA)から、CMVプロモーター配列(配列番号15)、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(mmLucy-FLAG-rho、配列番号13)およびbghターミネーター配列(配列番号16)と一緒に、以下のプライマーを用いてPCR増幅した:CAGAGATCTCGCGTTGACATTGATTATTGACTAG(配列番号21)およびCTGGTCGACAGAAGCCATAGAGCCCAC(配列番号22)。PCR生成物を、BglII/SalIで消化して、pGL4.29-CRE-PuroのBamHI/SalIフラグメントを置き換えるために用いた。このプラスミドは、したがって、構成的に発現されるOR遺伝子およびCRE誘導性ピューロマイシン耐性を含む。
【0173】
pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORの構築
構成的ハイグロマイシン耐性遺伝子(配列番号8)、CREの制御下におけるPAC、およびOR発現カセットを保有するプラスミドを作製するために、ORコード配列を、pcDNA3.1(+)から、CMVプロモーター配列(配列番号15)、シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(mmLucy-FLAG-rho、配列番号13)およびBGHターミネーター配列(配列番号16)と一緒に、以下のプライマーを用いてPCR増幅した:CTGGTCGACCGCGTTGACATTGATTATTGACTAG(配列番号23)およびCTGGTCGACAGAAGCCATAGAGCCCAC(配列番号22)。PCR生成物を、SalIで消化して、SalIで制限酵素切断されたpGL4.29-CRE-Puro中に挿入した。このプラスミドは、したがって、構成的に発現されるOR遺伝子、構成的ハイグロマイシン耐性遺伝子およびCRE誘導性ピューロマイシン耐性を含む。
【0174】
10μgの結果として生じるプラスミドpGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORを、次いで、150μlにおけるPvuIでの消化により直鎖化した。直鎖化されたプラスミドを、精製し、7.6μgを、15μlのP3000試薬(Invitrogen)を含む0.5mlのOptiMEM培地(Gibco(商標)、ThermoFisher Scientific, MA, USA)中で希釈した。並行して、11.5μlのLipofectamine 3000(Invitrogen)を、0.5mlのOptiMEM培地中で希釈し、5分間のプレインキュベーションの後で、2つの混合物を組み合わせて、トランスフェクション混合物を調製し、これを、さらに25分間インキュベートした。
【0175】
OR遺伝子の発現は、一般に、ヒトRTP1Sの機能的なバリアント(V227I、配列番号17)およびRTP2の機能的なバリアント(L220R、配列番号18)で安定にトランスフェクトされている、HEK293T細胞において行った。これらの細胞を、10cmのペトリ皿において37℃で5%COの存在下において、コンフルーエンス未満(sub-confluence)まで増殖させた。増殖培地を、9%のFBSを含有する10mlのDMEMで置き換え、次いで、プレインキュベートされたトランスフェクション混合物を、細胞に添加し、これを次いで、24時間にわたり37℃で5%COの存在下においてインキュベートして、DNAの取り込みおよび染色体挿入を起こさせた。細胞を採取して、9%のFBSおよびペニシリンとストレプトマイシンとの混合物(ThermoFisher Scientific)を含有するDMEM中で再懸濁し、それらを、次いで、96ウェルプレート中に50細胞/ウェルの密度で播種した(100ul/ウェル)。細胞播種の24時間後、染色体中へのベクターの安定な挿入を有する細胞について選択するために、選択圧を適用した。染色体挿入について選択するために、100μg/mlの最終濃度のハイグロマイシンを、細胞に添加し、1週間あたり2回、培地を、同じ量のハイグロマイシンを含有するフレッシュな培地で置き換えた。単一の、単離された生存するクローンを有するウェルをマークし、これらのクローンを採取して、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORコンストラクトを含む安定な細胞株として増殖させた。
【0176】
例2.選択された細胞クローンのリガンドにより誘導されるOR依存的なピューロマイシンに対する耐性
例1において記載された、受容体OR10G7、OR10G9またはOR5AN1(NCBI Genbank遺伝子ID:390265、219870および390195)のうちのいずれか1つを有する、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORコンストラクトの安定な挿入を含む、ハイグロマイシンにより選択された安定なクローンを、ポリエチレンイミドでコートされた、透明な底を有する、白色の96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、3000細胞/ウェルの密度で、200μlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中に播種した。細胞を24時間にわたり接着させた後で、それらを、様々な匂い分子(10μMにおけるムスクケトン、1μMにおけるオイゲノールまたはイソオイゲノール、100μMにおけるウルトラバニルまたはバニトロープ)に暴露した。匂い分子の添加の7時間後に、培地のうちの100μlを取り除き、同じ濃度の匂い分子、および加えて、11回の2倍希釈ステップにおいて0.015~16μg/mlの最終濃度に達するまでピューロマイシンを有する、フレッシュな培地で交換した(選択の第1日)。第2日および第3日において、培地のうちの100μlを、再び取り除き、同じ濃度の匂い分子およびピューロマイシンを有するフレッシュな培地で置き換えた。選択の第4日において、各々のウェルからの培地を完全に取り除き、リン酸緩衝化生理食塩水中で希釈された100ulのPrestoBlue(登録商標)細胞生存率試薬(ThermoFisher Scientific, Catalog No:14200-083)を、各々のウェルに添加し、ピューロマイシンを含有するウェル中の色の変化が目視可能になるまで、細胞を37℃でインキュベートした。様々な濃度のピューロマイシンの存在下における、細胞増殖および細胞殺傷の正味の結果である、相対的な細胞代謝活性を評価するために、560nmの励起および590nmの放出において、蛍光を決定した。結果を、細胞なしの対照(0%)および嗅覚リガンドのみで処置された細胞を有する対照(100%)と比較した、%生存率として表した。細胞は、この実験において活発に増殖していたので、生存率の部分的な低下は、細胞傷害性を示さず、(部分的な)細胞の滞留を示し得、一方、0%の生存率は、完全な細胞傷害性を示す。
【0177】
図1は、例1において記載されるとおりにベクターで形質導入された、OR10G7を含む細胞についての結果を示す。細胞が、OR10G7についてのリガンドではない匂い分子であるムスクケトンの存在下において選択された場合、溶媒対照に対して、誘導されたピューロマイシン耐性は観察されなかった。しかし、OR10G7に結合するリガンドオイゲノール、イソオイゲノール、ウルトラバニルおよびバニトロープにより、強力に増強されたピューロマイシン耐性が観察され、生存率は、ピューロマイシンにより部分的にのみ低下した。
【0178】
図2は、ムスクケトンなどのムスク化合物に対して応答することが知られているOR5AN1により行われた同じ実験を示す。この場合、ムスクリガンドの存在下において、増強されたピューロマイシン耐性、および生細胞の部分的な減少のみが観察され、一方、この受容体に対するリガンドではないオイゲノール、イソオイゲノールおよびウルトラバニルの存在下においては、耐性は、溶媒対照と同等であった。同様に、図3において示されるとおり、OR10G9を有するベクターを保有する細胞について、コグネートなリガンドであるウルトラバニルおよびバニトロープについての選択的に増強された耐性が観察され、一方、所与の濃度においてはこの受容体に結合しないムスクケトン、オイゲノールおよびイソオイゲノールに対しては、増大した耐性は観察されなかった。
【0179】
これらの結果は、嗅覚受容体の機能的発現およびそのコグネートなリガンドの添加による、CREエレメントに対して作用する環状AMP経路の活性化により、選択可能なマーカー(この場合はピューロマイシン)に対する耐性を選択的に誘導することが可能であることを示す。
【0180】
例3.発現させることが困難なORの機能的発現を有する細胞クローンの選択
例1において記載されるとおり、受容体OR5A2(NCBI Genbank ID:219981)を含有するpGL4.29-CRE-Puro-ORベクターを作製した。ヒトOR5A2の野生型配列は、発現させることが困難な受容体をコードし、シャペロンRTP1SおよびRTP2を発現している細胞においては発現させることができない。それは、機能的発現のために、未知のアクセサリー因子を必要とする。OR5A2は、WO2019110630A1においてムスク受容体であると推論され、Trimmer et al. (2019) PNAS 116(19):9475-9480において、この受容体における遺伝子バリアントは、ムスクリガンドであるガラクソリドについての感受性に相関することが示された。これらのデータは、集合的に、OR5A2が、候補ムスク受容体であることを示す。このコンストラクトを、例1において記載されるとおり、RTP1SおよびRTP2のバリアントで安定にトランスフェクトされている、2,500,0000個のHEK293T細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、細胞を、9%のFBSを含む240mlのDMEM中で再懸濁し、12ウェルプレート中に分配した(1ml/ウェル)。例1におけるもののように、ハイグロマイシンで選択する代わりに、以下のとおり、本発明の手順に従う直接的な選択を行った:細胞の接着を可能にするためのインキュベーションの24時間後、OR5A2を刺激して、ひいてはcAMP産生を開始させるために、リガンドでありムスクアンブレットを、30μMの最終濃度まで添加した。7時間後、ピューロマイシンを3μg/mlの最終レベルまで添加した。次いで、インキュベーション培地を繰り返し交換することにより、細胞をこの濃度のリガンドおよびピューロマイシンに連続的に暴露し、この処置を生き残った単一のクローンを単離して、リガンド依存的な耐性およびOR5A2の機能的発現について試験した。実験のために用いられた2,500,0000個の細胞のうち、リガンドであるムスクアンブレットの存在下においてピューロマイシン処置を生き延びることができたが、その不在下においては生き延びることができなかった、1つのクローン(「クローン3」)のみを単離した。このクローンを、初めに、例2において記載されるとおりの、その選択的な、OR-リガンドにより誘導される耐性の評価により特徴づけた。図4において示されるとおり、このクローンは、リガンドにより誘導されるピューロマイシン耐性を獲得しており、このことは、それが、リガンドの添加に際して、受容体OR5A2を機能的に発現して、cAMPを産生することができることを示す。このクローンを、機能的発現について、さらに分析した:それを、96ウェルプレートにおいて、10000細胞/ウェルの密度において増殖させ、例1において記載されるとおり、lipofectamine 2000を用いて、CRE誘導性ルシフェラーゼを保有するプラスミドpGL4.29(Promega)により一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、細胞を様々なリガンドで刺激し、4.5時間後に、OR依存的なcAMP産生に基づいて誘導されるルシフェラーゼシグナルを測定した。図5aは、RTP1SおよびRTP2のバリアント(配列番号17および18)で安定にトランスフェクトされており、受容体OR5A2を有するが、本発明による機能的発現についての選択は経験していないHEK293T細胞についての結果を示す。リガンドにより誘導されるルシフェラーゼシグナルは、検出されなかった。このことは、この受容体が、RTP1SおよびRTP2を発現している細胞においてすら、機能的ではないことを示す。図5bにおいて、上記のとおりの選択手順から誘導されたOR5A2を保有する「クローン3」についての結果が示される。このクローンは、リガンドにより誘導される強力なルシフェラーゼシグナルを示した。このことは、このリガンドに基づく選択手順により、この発現させることが困難な受容体の機能的発現を可能にする希少な変異(250,0000個の細胞の中から)が選択されたことを確認する。
【0181】
例4.レトロウイルスによる正方向(forward)の機能獲得型変異誘発と、その後の発現させることが困難なORの機能的発現を有する細胞クローンの選択
例1において記載されるとおり、受容体OR5A2(NCBI Genbank遺伝子ID:219981)を含有するpGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORベクターを作製した。例1において記載されるとおり、RTP1SおよびRTP2のバリアントにより安定にトランスフェクトされているHEK293T細胞を、この新たなコンストラクトでトランスフェクトし、例1において記載されるとおり、ハイグロマイシンの存在下において安定なクローンを選択した。選択されたクローンを、ピューロマイシン耐性について試験し、0.5μg/mlのピューロマイシンに対して感受性である単一のクローンを選択して、増殖させた。このことは、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORベクターの同一の挿入部位、およびピューロマイシンについての高い感受性を有する細胞の、均一なプールを提供した。
【0182】
ベクター(i)pCCLsin.PPT.SFFVまたはpCCLsin.PPT.eGFP.sPRE.3’LTRsenseSFFV、(ii)pK-Rev、(iii)pMD2-VSV-Gおよび(iv)pMDLg-pRREによるHEK293T細胞のトランスフェクションにより、レトロウイルス粒子を生成した。Montini et al. (2009) J Clin Invest 119:964-75およびRanzani et al. (2014) Mol Ther 22(12):2056-2068により記載されるとおり、これらのベクターは、細胞が、ウイルスゲノム/ベクター中に強力なSFFVプロモーターを含有する、感染性であるが非複製性のウイルス粒子を産生することを可能にする。ランスフェクションの24~36時間後に、ウイルス粒子を含有する細胞上清を採取した。
【0183】
上記の、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORベクターを含有する、高度にピューロマイシン感受性の安定なクローンを、10cmのペトリ皿に、3×10細胞/プレートで播種した。細胞を、24時間にわたりインキュベートして接着させ、次いで、ウイルス粒子の希釈により感染させ(感染多重度、MOI=8)、3日間にわたりインキュベートして、感染させ、ウイルスベクターを染色体中に組み込ませた。このことが、個々の細胞における染色体の様々な部位において、強力なプロモーターSFFVの挿入による、ランダム変異誘発イベントをもたらした。次いで、以下のとおり直接的な選択の手順を行った:OR5A2を刺激して、ひいてはcAMP産生を開始させるために、リガンドであるムスクアンブレットを、30μMの最終濃度まで添加した。7時間後、ピューロマイシンを、4μg/mlの最終レベルまで添加した。次いで、インキュベーション培地を繰り返し交換することにより、細胞をこの濃度のリガンドおよびピューロマイシンに連続的に暴露し、この処置を生き残った単一のクローンを単離して、例3において記載されるとおり、リガンド依存的な耐性およびOR5A2の機能的発現について試験した。
【0184】
例5.CRISPRaを用いる正方向の機能獲得型変異誘発と、その後の発現させることが困難なORの機能的発現を有する細胞クローンの選択
例4の、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORベクターを含有し、受容体OR5A2を含有する、高度にピューロマイシン感受性の安定なクローンに、VP64、p65およびHSF1トランス活性化ドメインに融合した「触媒的に死んだ(catalytic dead)」Cas9をコードするdCas9-VPH遺伝子を発現させるために、レンチウイルスで形質導入する(Cellecta Inc. CA, USAから入手することができるプラスミドpRDVCRB-RSV-dCas9-VPH-2A-Blast)。ブラストサイジンの存在下において、安定なクローンを選択する。安定なクローンを、次いで、10cmのペトリ皿において、3×10細胞/プレートで播種する。細胞を、24時間にわたりインキュベートして接着させ、次いで、Cellecta Inc.から得られたウイルス粒子を感染させる(カタログ番号KADHGW-105K-V9;https://cellecta.com/collections/crispra-and-crispri-lentiviral-sgrna-libraries)。これらのウイルス粒子は、ガイドRNA(sgRNA)の全ゲノムライブラリーをコードする。細胞を、3日間にわたりインキュベートして、感染させ、ウイルスベクターを染色体中に組み込ませる。dCas9-VPHタンパク質は、次いで、sgRNAの結合部位に隣接する遺伝子の活性化をもたらす。次いで、本発明の手順による直接的な選択を、以下のとおり行う:OR5A2を刺激して、ひいてはcAMP産生を開始させるために、リガンドであるムスクアンブレットを、30μMの最終濃度まで添加する。7時間後、ピューロマイシンを、4μg/mlの最終レベルまで添加する。次いで、インキュベーション培地を繰り返し交換することにより、細胞をこの濃度のリガンドおよびピューロマイシンに連続的に暴露する。この処置を生き残った単一のクローンを単離して、例3において記載されるとおり、リガンド依存的な耐性およびOR5A2の機能的発現について試験する。
【0185】
例6.クローン3における変異の特徴づけ
トランスフェクトされたプラスミドの組み込み部位を同定するために、例3において記載されるとおりの「クローン3」からの染色体DNAを、標準的なプロトコルに従って抽出した。DNAは、以下の制限酵素により、個別に消化した:BamHI、BglII、HindIII、NcoI、NdeI、NheI、SpeI。個別の消化を、各々、ライゲーション反応に供して、環状DNAフラグメントを作製し、次いで、以下のプライマーペアを用いたネスティッドPCRに供した:
第1のPCR:
5’-ATTAAGGTACGGGAGGTATTGG-3’(配列番号34)および
5’-AAGAGTGGGCTATATCGAACTG-3’(配列番号35);
ネスティッドPCR:
5’-AACATTTCTCTGGCCTAACTGG-3’(配列番号28)および
5’-ATTCCCGATGATGAGCACTTTC-3’(配列番号29)。
結果として生じるPCR生成物の配列を、サンガー配列決定により決定した。結果は、クローン3において、挿入されたプラスミドに由来するOR5A2遺伝子が、組み換えイベントによりそのC末端の変異を獲得したことを示した。図6におけるアラインメントは、最後の膜貫通領域により開始してC末端までのOR5A2の野生型アミノ酸配列(配列番号69)、および「クローン3」から増幅されたOR5A2の変異配列(配列番号62)を示す。「クローン3」からのOR5A2の完全な配列は、配列番号20により表され、C末端の終末は、配列番号62により表される。
【0186】
同定された変異が、実際にOR5A2にHEK293T細胞において機能的に発現される能力を付与することを検証するために、OR5A2バリアントを、クローン3のゲノムDNAから、 プライマー5’-TACAGGAATTCATGGCTGTAGGAAGGAACAAC-3’(配列番号30)および5’-ACTGCGGCCGCTTACCATGAGCGACAACACCG-3’(配列番号31)を用いてPCR増幅し、シグナルペプチドの下流で発現ベクターpcDNA3.1(+)中にクローニングした(配列番号14)。
【0187】
結果として生じる、図6において示されるものと同じ導入されたC末端変異を有するOR5A2を有するプラスミドを、次いで、ヒトRTP1Sの機能的なバリアント(V227I、配列番号17)およびRTP2の機能的なバリアント(L220R、配列番号18)で安定にトランスフェクトされているHEK293T細胞の一過性トランスフェクションのために用いた。図7において示されるとおり、機能的発現およびムスクリガンドに対する応答は、CRE誘導性ルシフェラーゼのコトランスフェクション、および様々なムスクリガンドによる刺激により検証することができた。このことは、C末端の安定な変異が、OR5A2に機能的に発現される能力を付与するために、十分であることを証明する。
【0188】
例7.標的リガンドによる選択による、受容体を発現する細胞のプールからの特定のコグネートな受容体を発現する細胞の選択
多くのリガンドについて、コグネートなOR受容体は知られていない(「オーファン受容体」)、または、受容体のプールの中で、どれが目的のリガンド、例えば特定の目的の香料のノートについての最良のアフィニティーを有するか知られていない。したがって、リガンドにより誘導される選択圧を、目的のリガンドの存在下において、ORを発現する細胞のプールから特定のORを発現する細胞を濃縮するために用いることができる。RTP1SおよびRTP2を安定に発現するHEK293T細胞を、6ウェルプレートの7つのウェル中に、330,000細胞/ウェルで播種した。
【0189】
翌日、各々のウェルの細胞を、受容体OR5A1(NCBI Genbank遺伝子ID:219982)、OR5A2(NCBI Genbank遺伝子ID:219981)、OR5AN1 NCBI Genbank遺伝子ID:390195、配列番号70)、OR6Y1(NCBI Genbank遺伝子ID:391112)、OR10G4(NCBI Genbank遺伝子ID:390264、配列番号72)、OR10G7(NCBI Genbank遺伝子ID:390265、配列番号71)、またはOR10G9(NCBI Genbank遺伝子ID:219870)のうちの1つを保有する、2μgのPvuIで直鎖化したpGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORコンストラクトでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、7つ全てのトランスフェクションの細胞を採取して、プールした。異なるOR遺伝子が挿入されたこの細胞のプールのうちの350個の細胞を、次いで、7つの96ウェルプレートの各々のウェル中に播種した。
【0190】
3日後、細胞を、OR5AN1(10μMのムスクケトン)、OR10G7(1μMのオイゲノール)、またはOR10G4(100μMのバニトロープ)のいずれかについてのリガンドで刺激した。1つのプレートは、DMSOのみで処置した。ORリガンドの添加の6時間後、各々のプレートに1μg/mlの最終濃度でピューロマイシンを添加した。その後の週の間、毎日、全てのプレートにおける培地を、対応するリガンドおよびピューロマイシンを含有するフレッシュな培地で置き換えた。プレートを、次いで、ピューロマイシン耐性細胞の単一のコロニーのみを含有するウェルについて探索した。これらのコロニーの細胞を、より大きなプレートに移し、それらが約8000,000個の細胞まで増加するまで増殖させた。Puregeneキットを製造者のプロトコルに従って用いて、各々のクローンの2,000,000個の細胞のゲノムDNAを単離した。PCRプライマー5’-ACAAGGACGACGACGATAAG-3’(配列番号32)および5’-GATGGCTGGCAACTAGAAGG-3’(配列番号33)を用いて、pGL4.29-CRE-Puro-Hygro-ORプラスミドによるトランスフェクションの後で特定の細胞クローンにおいて安定に組み込まれたOR遺伝子を増幅して、配列決定した。結果として生じる配列の配列アラインメントを、下に示す。
【0191】
ムスクケトンにより選択された9つ全てのクローン(クローンM1~M9、配列番号36~44)は、ムスクケトンなどのムスクに対して応答することが知られているOR5AN1を含み、オイゲノールにより選択された8つのクローンのうちの8つ(クローンE1~E8、配列番号45~53)は、オイゲノールについての特異的受容体であるOR10G7を含み、バニトロープにより選択された8つのコロニーのうち8つ(クローンV1~V8、配列番号54~61)は、このリガンドに対して応答する受容体であるOR10G4を含んだ。
【0192】
したがって、本発明の選択の手順を適用することにより、特定のリガンドについての選択的な受容体の脱オーファン化が、実現可能である。なぜならば、このリガンドにより、様々なORでトランスフェクトされた細胞のプールから、目的のリガンドにより効率的に活性化される受容体を発現する、特定の細胞を選択することが可能であるからである。
【0193】
例8.OR-リガンドにより誘導されるブラストサイジン耐性について選択するためのベクターの作製、および前記ベクターを含む安定な細胞株におけるリガンドにより誘導されるブラストサイジン耐性の評価
特定のOR遺伝子の機能的発現を有する細胞クローンの正の選択を可能にするベクターを作製するために、ブラストサイジン耐性遺伝子を、配列番号4の上流に配置した。例1において記載されるとおり作製されたpGL4.29-CRE-Puro-ORベクターを、BglII及びFseIで消化して、含まれていた基本のプロモーターおよび完全なピューロマイシン耐性遺伝子を取り除いた。取り除かれた基本のプロモーター配列を、プライマーAACATTTCTCTGGCCTAACTGG(配列番号28)、GACAAAGGCATGGTGGCTTTACCAACAG(配列番号63)により増幅し、ブラストサイジンSデアミナーゼ(bsd、配列番号64)をコードする配列を、プライマーGTAAAGCCACCATGCCTTTGTCTCAAGAAGAATCC(配列番号66)、CCGACTCTAGATTAGCCCTCCCACACATAAC(配列番号67)を用いてPCRにより増幅した。2つのオーバーラップするPCR生成物を、プライマーAACATTTCTCTGGCCTAACTGG(配列番号28)およびATCAGGCCGGCCGCCCCGACTCTAGATTAGCCCTCC(配列番号68)を用いて、融合PCRにより結合させた。結果として生じるDNAフラグメントを、BglII/FseIで消化し、消化されたベクター中にライゲーションして、pGL4.29-CRE-Blast-ORを作製した。
【0194】
このベクターを、例1において記載されるとおり、安定な細胞株を作製するために用いた。
受容体OR5AN1(NCBI Genbank遺伝子ID:390195)と共にpGL4.29-CRE-BLAST-ORコンストラクトの安定な挿入を含有する安定なクローンを、次いで、ポリエチレンイミドでコートされた、透明な底を有する、白色の96ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、3000細胞/ウェルの密度で、100μlのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で播種した。細胞を24時間にわたり接着させた後で、様々な匂い分子(40μMにおけるムスクケトンまたはエチルバニリン)を含有する50μlの培地を、各々のウェルに添加し、これは13.3μMの匂い分子濃度をもたらした。匂い分子の添加の6時間後に、ブラストサイジンを含む50μlの培地を、10回の2倍希釈ステップにおいて0.5~256μg/mlの最終濃度に達するように添加した(選択の第1日)。このステップは、匂い分子を10μMまでさらに希釈した。選択の第4日において(ブラストサイジン添加の72時間後)、各々のウェルからの培地を完全に取り除き、1mg/mlのグルコースを含有するリン酸緩衝化生理食塩水中で希釈された100μlのPrestoBlue(登録商標)細胞生存率試薬(ThermoFisher Scientific, Catalog No:14200-083)を、各々のウェルに添加し、ブラストサイジンを含有するウェルにおける色の変化が可視可能になるまで、細胞を37℃でインキュベートした。様々な濃度のブラストサイジンの存在下における、細胞増殖および細胞殺傷の正味の結果である、相対的な細胞代謝活性を評価するために、560nmの励起および590nmの放出において、蛍光を決定した。結果を、細胞なしの対照(0%)および嗅覚リガンドのみで処置された細胞を有する対照(100%)と比較した、%生存率として表した。細胞は、この実験において活発に増殖していたので、生存率の部分的な低下は、細胞傷害性を示さず、(部分的な)細胞の滞留を示し得、一方、0%の生存率は、完全な細胞傷害性を示す。
【0195】
図8は、ムスクケトンなどのムスク化合物に対して応答することが知られているOR5AN1遺伝子を含有する、ベクターpGL4.29-CRE-BLAST-ORで形質導入された細胞についての結果を示す。ムスクリガンドの存在下において、増強されたブラストサイジン耐性および僅かのみの生細胞の減少が観察され、一方、この受容体に対するリガンドではないエチルバニリンの存在下においては、細胞は、ブラストサイジンに対して、溶媒対照の存在下と同等に感受性であった。ピューロマイシンと比較して、ブラストサイジンによる選択は、例えば、32μMにおける生存率の違いがほぼ10倍であり(ムスクリガンドの存在下においては75%の生存細胞であり、一方、リガンドの不在下においてはわずか7%の生存率が観察された)、生存率を50%低下させるブラストサイジンの濃度(EC50)が、ムスクリガンドの存在下においては>50倍高いことから、さらに増強されたダイナミックレンジを提供する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
【配列表】
2024522842000001.app
【国際調査報告】