(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】心血管疾患または腎臓機能障害の発生危険性を低減させるためのエフペグレナチド
(51)【国際特許分類】
A61K 38/17 20060101AFI20240614BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240614BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240614BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K38/17
A61P9/10
A61P13/12
A61P3/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578950
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2022009027
(87)【国際公開番号】W WO2022270972
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083100
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516132149
【氏名又は名称】ハンミ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペク、スン チェ
(72)【発明者】
【氏名】ハン、オク ピル
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA41
4C084BA44
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC351
4C084ZC352
(57)【要約】
心血管疾患または腎臓機能障害の発生危険性を低減させるためのエフペグレナチドの用途、その薬学的組成物及びその方法を提供する。該エフペグレナチドは、心血管疾患または腎臓疾患を有するか、あるいは有する危険性がある第2糖尿病患者において、心血管または腎臓を保護するために使用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的有効量のエフペグレナチド(efpeglenatide)、及び賦形剤を含む薬学的組成物であり、
前記薬学的組成物は、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる、薬学的組成物。
【請求項2】
前記患者は、第2型糖尿病患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
前記患者は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記患者は、HbA1cが7%超過である第2型糖尿病患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記患者は、心血管疾患、腎臓疾患、またはこの2つの疾患をいずれも有するか、あるいは有する危険性がある第2型糖尿病患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記患者は、心血管疾患を伴う第2型糖尿病患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記患者は、18歳以上の心血管疾患を伴う第2型糖尿病患者である、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記心血管疾患は、冠状動脈疾患、脳卒中及び末梢動脈疾患のうちから選択される、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記患者は、腎臓疾患を伴う第2型糖尿病患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記患者は、推定糸球体濾過率(eGFR:estimated glomerular filtration rate)が、25ないし59.9ml/min/1.73m
2である、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記患者は、1以上の心血管疾患危険因子を有する、請求項9に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記患者は、下記の(a)ないし(f)のうちから選択された1以上の心血管疾患危険因子を有する、請求項9に記載の薬学的組成物:
(a)BMI(body mass index)35kg/m
2以上、
(b)スタチン系薬物服用中、直前6ヵ月以内、LDLが3.36mmol/L超過であり、男性の場合、HDL 1.03mmol/L未満、または女性の場合、HDL 1.29mmol/L未満、
(c)喫煙、
(d)UACR(urine albumin-to-creatinine ratio)3mg/mmol以上、
(e)収縮期血圧140mmHg以上、及び弛緩期血圧90mmHg以上であり、血圧降下剤薬物服用中、並びに
(f)男性の場合、55歳未満、または女性の場合、65歳未満の初期冠状動脈疾患。
【請求項13】
前記患者は、推定糸球体濾過率(eGFR:estimated glomerular filtration rate)が、25ないし59.9ml/min/1.73m
2であり、請求項12で定義された1以上の心血管疾患危険因子を有する50歳以上の男性、または55歳以上の女性の第2型糖尿病患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
前記患者は、去る3ヵ月以内、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作用剤またはDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)抑制剤を使用しない第2型糖尿病患者である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
前記エフペグレナチドは、皮下投与する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
前記エフペグレナチドは、週1回、4mgまたは6mg投与する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
前記エフペグレナチドは、4週間、週1回、2mg投与後、週1回、4mg投与する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記エフペグレナチドは、4週間、週1回、2mg投与後、その後の4週間、週1回、4mg投与後、週1回、6mg投与する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項19】
前記薬学的組成物は、心血管疾患または腎臓機能障害の発生危険性がある患者において、第2型糖尿病を治療するためのものである、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項20】
前記心血管疾患は、主要心血管疾患イベント(MACE:major adverse CV event)である、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
前記MACEは、非致命的心筋梗塞、非致命的脳卒中、及び心血管、または明らかではない原因からの死亡のうちから選択される、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
前記薬学的組成物は、偽薬に比べ、MACE発生危険性を20%以上低減させる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
前記腎臓機能障害は、下記の(a)ないし(d)のうちから選択された1以上の腎臓複合評価指標を含む、請求項1に記載の薬学的組成物:
(a)巨大アルブミン尿、
(b)30日以上持続的に、eGFRが40%以上低減、
(c)90日以上腎臓透析、及び
(d)30日以上持続的に、eGFRが、15ml/min/1.73m
2未満。
【請求項24】
前記巨大アルブミン尿は、UACRが33.9mg/mmol超過でありながら、基準値より30%以上であると定義される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
前記薬学的組成物は、偽薬に比べ、請求項23で定義された腎臓複合評価指標の発生危険性を30%以上低減させる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
前記心血管疾患は、MACE、冠状動脈再開通、及び不安定狭心症による入院を含む、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
前記薬学的組成物は、偽薬に比べ、MACEによる死亡、または非心血管死亡の発生危険性を低減させる、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
前記エフペグレナチドは、任意の1以上の他の治療物質と併用して投与する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
前記他の治療物質は、血糖降下薬物、心臓保護薬物、抗糖尿病剤、抗肥満剤、抗高脂血症剤、抗粥状動脈硬化剤、降圧薬、抗血小板剤、抗血栓剤及び抗凝固剤のうちから選択される、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項30】
前記他の治療物質は、SGLT2(sodium glucose co-transporter 2)抑制剤及びメトホルミンのうちから選択される、請求項28に記載の薬学的組成物。
【請求項31】
有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる方法。
【請求項32】
有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病を治療する方法であり、
前記患者は、治療中、心血管疾患または腎臓機能障害と係わる副作用に遭遇しない方法。
【請求項33】
前記患者は、HbA1cが7%超過である第2型糖尿病患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項34】
前記患者は、心血管疾患、腎臓疾患、またはこの2つの疾患をいずれも有するか、あるいは有する危険性がある第2型糖尿病患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項35】
前記患者は、心血管疾患を伴う第2型糖尿病患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項36】
前記患者は、18歳以上の心血管疾患を伴う第2型糖尿病患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項37】
前記心血管疾患は、冠状動脈疾患、脳卒中及び末梢動脈疾患のうちから選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記患者は、腎臓疾患を伴う第2型糖尿病患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項39】
前記患者は、推定糸球体濾過率(eGFR:estimated glomerular filtration rate)が、25ないし59.9ml/min/1.73m
2である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記患者は、1以上の心血管疾患危険因子を有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記患者は、下記の(a)ないし(f)のうちから選択された1以上の心血管疾患危険因子を有する、請求項38に記載の方法:
(a)BMI(body mass index)35kg/m
2以上、
(b)スタチン系薬物服用中、直前6ヵ月以内、LDLが3.36mmol/L超過であり、男性の場合、HDL 1.03mmol/L未満、または女性の場合、HDL 1.29mmol/L未満、
(c)喫煙、
(d)UACR(urine albumin-to-creatinine ratio)3mg/mmol以上、
(e)収縮期血圧140mmHg以上、及び弛緩期血圧90mmHg以上であり、血圧降下剤薬物服用中、並びに
(f)男性の場合、55歳未満、または女性の場合、65歳未満の初期冠状動脈疾患。
【請求項42】
前記患者は、推定糸球体濾過率(eGFR:estimated glomerular filtration rate)が、25ないし59.9ml/min/1.73m
2であり、請求項12で定義された1以上の心血管疾患危険因子を有する50歳以上の男性、または55歳以上の女性の第2型糖尿病患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項43】
前記患者は、去る3ヵ月以内、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作用剤またはDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)抑制剤を使用しない第2型糖尿病患者である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項44】
エフペグレナチドの投与前、下記のうちいずれか1に該当する患者を確認する段階をさらに含む、請求項31または32に記載の方法:
(1)冠状動脈疾患、脳卒中または末梢動脈疾患を有した第2糖尿病患者、または
(2)eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m
2であり、下記心血管疾患危険因子である(a)ないし(f)のうち1個以上を満足する第2糖尿病患者、
(a)BMI(body mass index)35kg/m
2以上、
(b)スタチン系薬物服用中、直前6ヵ月以内、LDLが3.36mmol/L超過であり、男性の場合、HDL 1.03mmol/L未満、または女性の場合、HDL 1.29mmol/L未満;
(c)喫煙;
(d)UACR(urine albumin-to-creatinine ratio)3mg/mmol以上;
(e)収縮期血圧140mmHg以上、及び弛緩期血圧90mmHg以上であり、血圧降下剤薬物服用中;並びに
(f)男性の場合、55歳未満、または女性の場合、65歳未満の初期冠状動脈疾患。
【請求項45】
前記投与は、皮下投与である、請求項31または32に記載の方法。
【請求項46】
前記エフペグレナチドの有効量は、4mgまたは6mgである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項47】
前記エフペグレナチドは、週1回、4mgまたは6mg投与する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項48】
前記エフペグレナチドは、4週間、週1回、2mg投与後、週1回、4mg投与する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項49】
前記エフペグレナチドは、4週間、週1回、2mg投与後、その後の4週間、週1回、4mg投与後、週1回、6mg投与する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項50】
前記心血管疾患は、MACEである、請求項31または32に記載の方法。
【請求項51】
前記MACEは、非致命的心筋梗塞、非致命的脳卒中、及び心血管、または明らかではない原因からの死亡のうちから選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記エフペグレナチドは、偽薬に比べ、MACE発生危険性を20%以上低減させる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項53】
前記腎臓疾患または前記腎臓機能障害と係わる副作用は、下記の(a)ないし(d)のうちから選択された1以上の腎臓複合評価指標を含む、請求項31または32に記載の方法:
(a)巨大アルブミン尿、
(b)30日以上持続的に、eGFRが40%以上低減、
(c)90日以上腎臓透析、及び
(d)30日以上持続的に、eGFRが、15ml/min/1.73m
2未満。
【請求項54】
前記巨大アルブミン尿は、UACRが33.9mg/mmol超過でありながら、基準値より30%以上であると定義される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記エフペグレナチドは、偽薬に比べ、請求項53で定義された腎臓複合評価指標の発生危険性を30%以上低減させる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項56】
前記心血管疾患は、MACE、冠状動脈再開通、及び不安定狭心症による入院を含む、請求項31または32に記載の方法。
【請求項57】
前記エフペグレナチドは、偽薬に比べ、MACEによる死亡、または非心血管死亡の発生危険性を低減させる、請求項31または32に記載の方法。
【請求項58】
前記エフペグレナチドは、任意の1以上の他の治療物質と併用して投与する、請求項31または32に記載の方法。
【請求項59】
前記他の治療物質は、血糖降下薬物、心臓保護薬物、抗糖尿病剤、抗肥満剤、抗高脂血症剤、抗粥状動脈硬化剤、降圧薬、抗血小板剤、抗血栓剤及び抗凝固剤のうちから選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記他の治療物質は、SGLT2(sodium glucose co-transporter 2)抑制剤及びメトホルミンのうちから選択される、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
第2型糖尿病患者の治療に使用するためのエフペグレナチドの用途であり、
前記エフペグレナチドは、前記患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる、用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心血管疾患または腎臓機能障害の発生危険性を低減させるためのエフペグレナチドの用途、その薬学的組成物及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エフペグレナチド(efpeglenatide)は、持続型CA-エクセンディン-4誘導体(LAPSCA-Exendin-4)に対し、WHOが付与した国際一般名(INN:international nonproprietary name)である。エフペグレナチドは、低血糖を起こさず、ブドウ糖レベルを低くする、毎週皮下注射されるGLP-1 RAであり、IgG4 Fc断片と接合された変形されたエクセンディン-4分子を含む(特許文献1及び2)。
【0003】
糖尿病患者は、心血管(CV:cardiovascular)評価指標の発生率が3倍上昇し、腎臓評価指標の発生率が高い。CV評価指標の発生率は、糖尿病持続期間、HbA1c、UACR(urine albumin to creatinine ratio)、腎臓機能障害、以前のCV疾患、及びその他CV危険因子によって上昇する。また、類似した因子が、腎臓評価指標の発生率を上昇させる。そのように、糖尿病は、心血管疾患を増加させ、腎臓機能を悪化させると知られているが、糖尿病を調節したとき、心血管疾患の発生率が低下するか否かということは、あまり知られておらず、腎臓機能が改善されるか否かということも、一部物質に局限して明らかになっているのみである。
【0004】
ヒトGLP-1を基とする4個のグルカゴン類似ペプチド1受容体作用剤(GLP-1 RA)は、第2型糖尿病において、心血管評価指標を低減させる。しかしながら、エクセンディン基盤GLP-1 RAが、CV発病危険が高い人において、CV及び腎臓の評価指標に及ぼす影響は、不確実である。また、エクセンディン基盤GLP-1 RAのSGLT2(sodium-glucose co-transporter-2)抑制剤併用時のCV及び腎臓の評価指標に及ぼす影響も知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/082274A1
【特許文献2】WO2009/011544A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それで、本発明者らは、臨床を介し、エフペグレナチドを利用し、糖尿病を調節したとき、心血管疾患が低減され、腎臓機能が改善されることを確認することにより、本発明完成に至った。それにより、本開示は、以下のところのようなエフペグレナチドの用途を提供する:
患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるためのエフペグレナチドを提供する。
【0007】
エフペグレナチドを含む薬学的組成物であり、前記薬学的組成物は、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる薬学的組成物を提供する。
【0008】
有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる方法を提供する。
【0009】
有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病を治療する方法であり、前記患者は、治療中、心血管疾患または腎臓機能障害と係わる副作用に遭遇しない方法を提供する。
【0010】
第2型糖尿病患者の治療に使用するためのエフペグレナチドの用途であり、前記エフペグレナチドは、前記患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様は、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるためのエフペグレナチドを提供する。
【0012】
他の態様は、エフペグレナチドを含む薬学的組成物であり、前記薬学的組成物は、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる薬学的組成物を提供する。
【0013】
他の態様は、有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる方法を提供する。
【0014】
他の態様は、有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病を治療する方法であり、前記患者は、治療中、心血管疾患または腎臓機能障害と係わる副作用に遭遇しない方法を提供する。
【0015】
他の態様は、第2型糖尿病患者の治療に使用するためのエフペグレナチドの用途であり、前記エフペグレナチドは、前記患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる用途を提供する。
【0016】
本明細書において、エフペグレナチド(efpeglenatide)は、エクセンディン-4誘導体が、非ペプチド性重合体を介し、免疫グロブリンFc領域と連結されたインスリン分泌ペプチド(insulinotropic peptide)結合体の一種である。そのようなインスリン分泌ペプチド結合体(例:エフペグレナチド)の物質、及びその医薬用途については、PCT国際公開公報WO 2008/082274 A1及び同WO 2009/011544 A2に説明されており、それらそれぞれは、本明細書に参照として統合される。
【0017】
一実施例において、第2型糖尿病患者でありながら、(1)以前に心血管(CV)疾患を有するか、あるいは(2)eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m2であり、1以上の他のCV危険因子を満足する参加者に、毎週エフペグレナチド4mgまたは6mg、あるいは偽薬を皮下投与した。その結果、エフペグレナチド投与群は、偽薬群に比べ、主要心血管疾患イベント(MACE:major adverse CV event)が27%低減され、腎臓複合評価指標(composite kidney outcome)が32%低減されるなど、心血管保護及び腎臓保護において、統計的に有意に有利な効果を有するということを確認した。すなわち、毎週エフペグレナチド4mgまたは6mgの投与は、心血管または腎臓疾患を伴う第2型糖尿病患者において、心血管または腎臓イベントの危険性を低減させることを確認した。従って、エフペグレナチドは、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるための、用途、薬学的組成物、方法などに使用されうる。
【0018】
<患者>
本明細書において患者は、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるための必要性がある個体を意味する。
【0019】
一具体例において、前記患者は、第2型糖尿病(T2DM:type 2 diabetes mellitus)患者でもある。
【0020】
一具体例において、前記患者は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:non-alcoholic steatohepatitis)患者でもある。
【0021】
一具体例において、前記患者は、HbA1cが7%超過である第2型糖尿病患者でもある。HbA1cが5.7%未満である場合、正常値であり、HbA1cが7%超過である場合、第2型糖尿病と診断されうる。
【0022】
一具体例において、前記患者は、心血管疾患、腎臓疾患、またはこの2つの疾患をいずれも有するか、あるいは有する危険性がある第2型糖尿病患者でもある。
【0023】
一具体例において、前記患者は、心血管疾患を伴う第2型糖尿病患者でもある。
【0024】
一具体例において、前記患者は、成人(例えば、18歳以上)である。
【0025】
一具体例において、前記患者は、18歳以上の心血管疾患を伴う第2型糖尿病患者でもある。
【0026】
一具体例において、前記心血管疾患は、冠状動脈疾患、脳卒中及び末梢動脈疾患のうちから選択されうる。前記心血管疾患は、以前の心血管疾患、または現在の心血管疾患でもある。
【0027】
一具体例において、前記患者は、冠状動脈疾患、脳卒中及び末梢動脈疾患のうちから選択された心血管疾患を有する、18歳以上の第2型糖尿病患者でもある。従って、前記患者は、心血管疾患を有するか、あるいは有する危険性がある第2型糖尿病患者でもある。
【0028】
一具体例において、前記患者は、腎臓疾患を伴う第2型糖尿病患者でもある。
【0029】
前記腎臓疾患は、腎臓機能に障害が発生したことを意味し、eGFRによって評価されうる。推定糸球体濾過率(eGFR:estimated glomerular filtration rate)は、年齢、性別、人種及び血清クレアチニン濃度を使用したMDRD公式によって計算され、該MDRD公式に係わる詳細は、本明細書の実施例を参照する。該eGFRは、腎臓機能を評価するために使用されうる。該eGFRが、60以上ないし90未満ml/min/1.73m2である場合、腎臓損傷、及び強度のGFR低下と定義され、該eGFRが、30以上ないし60未満ml/min/1.73m2である場合、重症度のGFR低下と定義され、該eGFRが、15以上ないし30未満ml/min/1.73m2である場合、重症のGFR低下と定義され、eGFRが、15未満ml/min/1.73m2または透析の場合、腎不全と定義される。
【0030】
一具体例において、前記患者は、重症度または重症のGFR低下を有するものでもある。
【0031】
一具体例において、前記患者は、eGFRが、25以上ないし60未満ml/min/1.73m2でもある。
【0032】
一具体例において、前記患者は、eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m2でもある。
【0033】
一具体例において、前記患者は、1以上の心血管疾患危険因子を有するものでもある。該患者が1以上の心血管疾患危険因子を有する場合、前記患者は、心血管イベントを有するか、あるいは有する危険性があると定義されうる。前記心血管疾患危険因子は、下記の(a)ないし(f)のうちから選択されうる:
(a)BMI(body mass index)35kg/m2以上、
(b)スタチン系薬物服用中、直前6ヵ月以内、LDLが3.36mmol/L超過であり、男性の場合、HDL 1.03mmol/L未満、または女性の場合、HDL 1.29mmol/L未満、
(c)喫煙、
(d)UACR(urine albumin-to-creatinine ratio)3mg/mmol以上、
(e)収縮期血圧140mmHg以上、及び弛緩期血圧90mmHg以上であり、血圧降下剤薬物服用中、並びに
(f)男性の場合、55歳未満、または女性の場合、65歳未満の初期冠状動脈疾患。
【0034】
一具体例において、前記患者は、eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m2であり、前述のところで定義された1以上の心血管疾患危険因子を有する第2型糖尿病患者でもある。
【0035】
一具体例において、前記患者は、eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m2であり、前述のところで定義された1以上の心血管疾患危険因子を有する50歳以上の男性、または55歳以上の女性の第2型糖尿病患者でもある。従って、前記患者は、腎臓疾患及び心血管疾患をいずれも有するか、あるいは有する危険性がある第2型糖尿病患者でもある。
【0036】
一具体例において、前記患者は、第2型糖尿病患者でありながら、(1)以前の冠状動脈疾患、脳卒中または末梢動脈疾患を有した18歳以上、または(2)eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m2であり、前述のところで定義された心血管疾患危険因子である(a)ないし(f)のうち1個以上を満足する50歳以上の男性、または55歳以上の女性でもある。しかしながら、前記患者は、必ずしも第2型糖尿病患者に制限されるものではなく、心血管疾患及び/または腎臓疾患を有するか、あるいは有する危険性がある患者であるならば、いずれも含まれるものでもある。
【0037】
一具体例において、前記患者は、胃麻痺(gastroparesis)、制御されていない逆流(uncontrolled reflux)、長期間の吐き気または嘔吐、深刻な網膜疾患、及び膵臓炎のうち、いずれでもない患者でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0038】
一具体例において、前記患者は、去る3ヵ月以内、GLP-1(glucagon-like peptide-1)受容体作用剤またはDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)抑制剤を使用しない第2型糖尿病患者でもある。しかしながら、それは、既存のGLP-1受容体作用剤またはDPP-4抑制剤による影響を最小化させるためのものであり、必ずしもそのような条件を満足しなければならないのというものではない。
【0039】
<投与経路、用量及び用法>
前記エフペグレナチドは、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるために、適切な投与経路、用量及び用法によって患者に投与されうる。
【0040】
前記エフペグレナチドは、適切な投与経路によって患者に投与されうる。一具体例において、前記エフペグレナチドは、皮下投与するものでもある。前記皮下投与のための方法は、当該技術分野に公知された適切な方法を使用することができる。例えば、前記皮下投与は、エフペグレナチドが適切な投与用量に事前に充填された注射器によって行われうるが、それに制限されるものではない。
【0041】
前記エフペグレナチドは、有効量で患者に投与されうる。前記有効量とは、薬学的有効量でもある。前記有効量は、エペグルレタナイドの意図された治療的効能が発揮されうる量を意味しうる。
【0042】
一具体例において、前記エフペグレナチドの有効量は、週1回(weekly)投与されうる。
【0043】
一具体例において、前記エフペグレナチドの有効量は、週1回、4mgまたは6mgでもある。従って、前記エフペグレナチドは、週1回、4mgまたは6mg投与するものでもある。
【0044】
一具体例において、前記エフペグレナチドは、4週間、週1回、2mg投与後、週1回、4mg投与するものでもある。
【0045】
一具体例において、前記エフペグレナチドは、4週間、週1回、2mg投与後、その後の4週間、週1回、4mg投与後、週1回、6mg投与するものでもある。
【0046】
前記エフペグレナチドは、最小1回以上、最小4週以上、最小3ヵ月以上、最小6ヵ月以上、または最小1年以上の期間の間、週1回、投与することができる。治療期間は、所望する治療効果を達成することができるまで延長させることができる。
【0047】
<心血管疾患関連または腎臓機能障害関連の用途>
前記エフペグレナチドを使用した組成物、方法及び/または用途において、前記エフペグレナチドは、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるための用途として提供される。
【0048】
前述の「心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防する」というのは、前記エフペグレナチドの投与によって患者において、心血管疾患または腎臓機能障害が新たに発生したり、あるいは悪化したりしないように防止することを意味しうる。
【0049】
前述の「心血管疾患または腎臓機能障害の発生危険性を低減させる」というのは、前記エフペグレナチドの投与により、偽薬投与に比べて患者において、心血管疾患または腎臓機能障害が新たに発生したり、あるいは悪化したりするという危険性が低下されることを意味しうる。
【0050】
前述の「心血管疾患または腎臓機能障害の進行を遅延させる」というのは、前記エフペグレナチドの投与によって患者において、心血管疾患または腎臓機能障害が新たに発生されることを遅延させるか、あるいは既存に存在した心血管疾患または腎臓機能障害の進展速度を低減させるか、あるいは心血管疾患または腎臓機能障害が悪化する速度を低減させることを意味しうる。
【0051】
従って、前記エフペグレナチドは、心血管疾患または腎臓機能障害の発生危険性がある患者において、第2型糖尿病を治療するための用途として提供されうる。第2型糖尿病患者を治療するために、エフペグレナチドを使用する場合、偽薬、またはその他第2型糖尿病治療剤に比べて患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生危険性が低下しうる。それにより、前記患者は、エフペグレナチドを利用した疾病の治療中、心血管イベント(例:MACE)または腎臓イベント(例:腎臓機能障害と係わる副作用)に遭遇しないことができる。
【0052】
なお、前記エフペグレナチドは、エフペグレナチド投与による治療を必要とする個体において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるための用途として提供されうる。すなわち、前記エフペグレナチドは、心血管または腎臓の保護用途として提供されうる。前記エフペグレナチド投与による治療を必要とする個体は、第2糖尿病患者でもあり、あるいは第2糖尿病患者ではないことができる。第2糖尿病患者ではない場合、前記個体は、エフペグレナチド投与によって治癒されうる疾病を有する患者でもある。
【0053】
前記心血管疾患または前記腎臓機能障害は、患者が評価指標(outcome)に遭遇したか否かということによって判断されうる。
【0054】
一具体例において、前記心血管疾患は、一次評価指標でもある。前記心血管疾患は、主要心血管疾患イベント(MACE:major adverse CV event)でもある。前記MACEは、当該技術分野に広く知られた用語であり、非致命的心筋梗塞、非致命的脳卒中、及び心血管、または明らかではない原因からの死亡のうちから選択されうる。前記エフペグレナチドは、偽薬に比べ、MACE発生危険性を、20%以上、例えば、27%低減させることができる。例えば、前記エフペグレナチド投与群は、MACE発生率が、100人当たり、年間3.9人である一方、偽薬群は、MACE発生率が、100人当たり、年間5.3人でもある。
【0055】
一具体例において、前記腎臓機能障害は、二次評価指標でもある。前記腎臓機能障害は、腎臓複合評価指標(composite kidney outcome)でもある。前記腎臓機能障害は、下記の(a)ないし(d)のうちから選択された1以上の腎臓複合評価指標を含むことができる:
(a)巨大アルブミン尿(UACRが33.9mg/mmol超過でありながら、基準値より30%以上であると定義される)、
(b)30日以上持続的に、eGFRが40%以上低減、
(c)90日以上腎臓透析、及び
(d)30日以上持続的に、eGFRが15ml/min/1.73m2未満。
【0056】
本明細書において、「基準値(baseline)」とは、エフペグレナチドを投与する前、個別患者ごとに測定された数値を意味する。従って、前記基準値は、個別患者ごとにその数値が異なりうる。
【0057】
前記エフペグレナチドは、偽薬に比べ、前記定義された腎臓複合評価指標の発生危険性を、30%以上、例えば、32%低減させることができる。具体的には、前記エフペグレナチドは、患者において、巨大アルブミン尿発生を予防するか、その危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させることができる。前記エフペグレナチドは、患者において、30日以上持続的に、eGFRが40%以上低減しないように予防するか、その危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させることができる。前記エフペグレナチドは、患者において、腎臓透析の危険性を低減させることができる。前記エフペグレナチドは、患者において、30日以上持続的に、eGFRが、15ml/min/1.73m2未満に低下しないように予防するか、その危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させることができる。
【0058】
一具体例において、前記心血管疾患または前記腎臓機能障害は、その他評価指標でもある。前記心血管疾患は、MACE、冠状動脈再開通、及び不安定狭心症による入院を含むものでもある。従って、前記エフペグレナチドは、MACE、冠状動脈再開通、及び不安定狭心症による入院のうちから選択された心血管疾患の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させることができる。
【0059】
一具体例において、前記エフペグレナチドは、偽薬に比べ、MACEによる死亡、または非心血管死亡の発生危険性を低減させることができる。
【0060】
<他の治療物質>
前記エフペグレナチドは、任意の1以上の他の治療物質と併用して投与することができる。前記エフペグレナチドは、他の治療物質と併用しても、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させる効果を発揮することができる。
【0061】
前記他の治療物質は、血糖降下薬物、心臓保護薬物、抗糖尿病剤、抗肥満剤、抗高脂血症剤、抗粥状動脈硬化剤、降圧薬、抗血小板剤、抗血栓剤及び抗凝固剤のうちから選択されうるが、それらに制限されるものではない。前記他の治療物質は、当該技術分野に公知されたものであるならば、特別に制限されるものではないが、エフペグレナチドの効能に有意な影響を与えるものではない物質を使用することが望ましい。
【0062】
一具体例において、前記他の治療物質は、SGLT2(sodium glucose co-transporter 2)抑制剤及びメトホルミンのうちから選択されうる。例えば、前記他の治療物質は、SGLT2抑制剤でもある。
【0063】
前記他の治療物質は、エフペグレナチドと同時、順次、または個別的に投与されうる。前記他の治療物質の投与用量及び経路は、当該物質につき、適切なものを選択しうる。
【0064】
<薬学的組成物>
一態様による薬学的組成物は、エフペグレナチドを含み、患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させるためのものでもある。
【0065】
前記薬学的組成物は、心血管疾患または腎臓機能障害を予防、治療または改善させるためのものでもある。
【0066】
前記薬学的組成物は、第2型糖尿病を治療するためのものでもある。
【0067】
前記薬学的組成物は、第2型糖尿病患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、その発生危険性を低減させるか、あるいはその進行を遅延させるためのものでもある。
【0068】
前記薬学的組成物は、第2型糖尿病患者において、心血管または腎臓を保護するためのものでもある。
【0069】
前記エフペグレナチドは、薬学的に許容可能な任意の形態でもある。
【0070】
前述の「薬学的に許容可能な」とは、治療効果を示しうるほどの十分な量と、副作用を起こさないこととを意味し、疾患の種類、患者の年齢・体重・健康・性別、患者の薬物に対する敏感度、投与経路、投与方法、投与回数、治療期間、配合、または同時使用される薬物のような、 医学分野に周知された要素により、当業者によって容易に決定されうる。
【0071】
前記薬学的組成物は、患者にエフペグレナチドを投与するために、適切な形態に製剤化されうる。また、前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むものでもある。製剤化に適する担体、賦形剤及び希釈剤は、通常の技術者が任意の公知された物質を適切に選択しうる。
【0072】
一具体例において、前記薬学的組成物は、薬学的有効量のエフペグレナチド、及び賦形剤を含むものでもある。
【0073】
一具体例において、前記薬学的組成物は、液状製剤でもある。エフペグレナチドの液状製剤は、例えば、非制限的に、WO 2014/017845を参照することができるが、それは、本明細書に参照として統合される。
【0074】
一具体例において、前記薬学的組成物は、注射剤でもある。前記薬学的組成物は、皮下投与注射剤でもある。前記薬学的組成物が注射剤である場合、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、可溶化剤などのうちから選択される任意の成分を混合させて使用することができる。
【0075】
<使用方法>
一態様によれば、有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる方法を提供する。
【0076】
一態様によれば、有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病を治療する方法であり、前記患者は、治療中、心血管疾患または腎臓機能障害と係わる副作用に遭遇しない方法を提供する。
【0077】
一態様によれば、有効量のエフペグレナチドを患者に投与する段階を含む、第2型糖尿病の治療中、心血管または腎臓を保護する方法を提供する。
【0078】
前記態様において、エフペグレナチドの投与前、患者を確認する段階をさらに含むものでもある。前記患者は、エフペグレナチドの投与を必要とする個体、エフペグレナチドを投与することにより、心血管疾患または腎臓機能障害の危険性を低減させる必要性がある個体、またはエフペグレナチドを使用した治療に適する個体でもある。前記患者は、心血管疾患、腎臓疾患、またはそれら二ついずれも有するか、あるいは有する危険性がある第2型糖尿病患者でもある。
【0079】
一具体例において、エフペグレナチドの投与前、下記のうちいずれか1に該当する患者を確認する段階をさらに含むものでもある:
(1)冠状動脈疾患、脳卒中または末梢動脈疾患を有した第2糖尿病患者、または
(2)eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m2であり、下記心血管疾患危険因子である(a)ないし(f)のうち1個以上を満足する第2糖尿病患者、
(a)BMI(body mass index)35kg/m2以上、
(b)スタチン系薬物服用中、直前6ヵ月以内、LDLが3.36mmol/L超過であり、男性の場合、HDL 1.03mmol/L未満、または女性の場合、HDL 1.29mmol/L未満;
(c)喫煙;
(d)UACR(urine albumin-to-creatinine ratio)3mg/mmol以上;
(e)収縮期血圧140mmHg以上、及び弛緩期血圧90mmHg以上であり、血圧降下剤薬物服用中;並びに
(f)男性の場合、55歳未満、または女性の場合、65歳未満の初期冠状動脈疾患。
【0080】
<治療用途>
一態様によれば、第2型糖尿病患者の治療に使用するためのエフペグレナチドの用途であり、前記エフペグレナチドは、前記患者において、心血管疾患または腎臓機能障害の発生を予防するか、あるいはその発生危険性を低減させる用途を提供する。
【0081】
一態様によれば、第2型糖尿病患者の治療中、心血管または腎臓を保護するための、エフペグレナチドの用途を提供する。
【0082】
重複内容は、本明細書の複雑性を考慮して省略し、本明細書において、取り立てて定義されない用語は、本発明が属する技術分野において一般的に使用される意味を有するものである。
【発明の効果】
【0083】
一態様によるエフペグレナチドは、心血管または腎臓イベントの発生危険性を低減させることができる。従って、エフペグレナチドは、心血管疾患または腎臓疾患を有するか、あるいは有する危険性がある第2糖尿病患者において、心血管または腎臓を保護するために使用されうる。また、エフペグレナチドは、SGLT2抑制剤のようなその他薬物と併用しても、前記効果を達成しうる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【
図1】主要心血管評価指標に係わるグラフであり、一次評価指標MACEの累積危険を示したグラフである。
【
図2】主要心血管評価指標に係わるグラフであり、3個の事前に指定された二次評価指標(MACE、冠状動脈再開通または不安定狭心症入院)の累積危険を示したグラフである。
【
図3】腎臓評価指標に係わるグラフであり、二次腎臓複合評価指標の累積危険を示したグラフであり、腎臓複合評価指標は、巨大アルブミン尿、30日以上、eGFRが40%以上低減、90日以上、腎臓透析、または30日以上、eGFRが、15ml/min/1.73m
2未満である。
【
図4】主要心血管評価指標に係わるグラフであり、二次評価指標のMACEまたは非CV死亡の累積危険を示したのである。
【
図5】一次効能評価指標に係わる事前に指定された下位グループ分析を示した図である。
【
図6】一次効能評価指標に係わる事前に指定された下位グループ分析を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0085】
以下、本発明について実施例を介し、さらに詳細に説明する。しかしながら、それら実施例は、本発明について例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0086】
エフペグレナチドは、低血糖を起こさず、ブドウ糖レベルを低くする毎週皮下注射されるGLP-1 RAであり、IgG4 Fc断片と接合された変形されたエクセンディン-4分子を含む。それは、耐薬性にすぐれ、CV評価指標を低減させるヒトGLP-1基盤GLP-1 RAのような作用メカニズムを有するので、エフペグレナチドが、CV及び/または腎臓疾患を伴う糖尿病患者に、CV及び腎臓の利点を有するという仮説を立て、該仮説を臨床試験でテストした。
【0087】
1.方法
参加者
本臨床試験は、28ヵ国344地域で行われた国際ランダム対照試験である。参加者は、第2型糖尿病(T2DM:type 2 diabetes mellitus)患者でありながら、HbA1cが7%超過である者のうち、(1)以前の冠状動脈疾患、脳卒中または末梢動脈疾患を有した18歳以上、または(2)推定糸球体濾過率(eGFR:estimated glomerular filtration rate)が、25ないし59.9ml/min/1.73m2であり、下記心血管疾患危険因子である(a)ないし(f)のうち1個以上を満足する50歳以上の男性、または55歳以上の女性が含まれている:
【0088】
<心血管疾患危険因子>
(a)BMI(body mass index)35kg/m2以上、
(b)スタチン系薬物服用中、直前6ヵ月以内、LDL 3.36mmol/L超過、HDL(男性)1.03mmol/L未満またはHDL(女性)1.29mmol/L未満、
(c)喫煙、
(d)UACR(urine albumin-to-creatinine ratio)3mg/mmol以上、
(e)収縮期血圧140mmHg以上、及び弛緩期血圧90mmHg以上(血圧降下剤薬物服用中)、
(f)55歳(男性)または65歳(女性)未満の初期(first degree)冠状動脈疾患。
【0089】
主要排除基準は、胃麻痺(gastroparesis)、制御されていない逆流(uncontrolled reflux)、長期間の吐き気または嘔吐、深刻な網膜疾患、膵臓炎、または去る3ヵ月以内、GLP-1受容体作用剤またはDPP-4抑制剤の使用であった。
【0090】
本臨床試験は、全ての現場において、研究倫理委員会の承認を受け、全ての参加者は、書面同意を提供した。
【0091】
ランダム化及びマスキング
適格参加者らは、1:1:1の比率で、4mgエフペグレナチド投与群、6mgエフペグレナチド投与群及び偽薬群にランダムに割り当てられた。投与経路は、自分で皮下投与し、投与用量及び周期は、以下の通りである:
(1)4mgエフペグレナチド投与群:4週間、週1回、2mg投与後、週1回、4mg投与、
(2)6mgエフペグレナチド投与群:4週間、週1回、2mg投与、その後の4週間、週1回、4mg投与後、週1回、6mg投与、
(3)偽薬群:偽薬投与。
【0092】
研究薬物は、マスキングされ、同一に見える事前に充填された(prefilled)注射器でもって提供された。ランダム化は、SGLT2(sodium glucose co-transporter 2)抑制剤使用によって階層化された相互ウェブ応答システム(IWRS:interactive web response system)を使用して行われ、そのような心臓保護薬物を使用した療法において、グループ間の差を最小化させた。データモニタリング委員(DMC:Data Monitoring Committee)だけが、データベースがロッキングされるまで、マスキングされていないデータにアクセルすることができた。
【0093】
研究手続き
研究薬物は、ランダムに、以前治療中である療法に追加された。基底値HbA1cが7.5%未満である場合、研究者らは、低血糖症を最小化させるために、任意のインスリン、スルホニルウレアまたはメグリチニドの用量を減らすことができる。その後、血糖降下薬物は、最初の12週間、依然として維持され、その後、GLP-1 RAまたはDPP-4抑制剤を除いた全ての薬物を追加することができた。ランダム化後(post-randomization)訪問は、12週目、24週目、そして中間電話訪問により、毎24週ごとになされた。最大2回用量の研究薬物を服用しなかった者は、使用禁止事由(contraindication)がない限り、平素用量をさらに始めるように勧められた。3回以上連続して用量を服用しなかった場合、両側マスキング滴定(masked titration)がさらに始められた。同意が取り消しされない限り、参加者は、薬物投薬維持(adherence)いかんにかかわらず、試験が終わるまで追跡した。試験が終わるとき、研究薬物が残っている参加者らは、薬物を中断し、6週後に追跡観察を進めた。本臨床試験は、薬物の安全性や、他の理由ではない後援者(sponsor)側の経営上の理由により、もって指定された330件のイベントが発生する前に早期終了した。
【0094】
評価指標
一次評価指標(primary outcome)は、主要心血管疾患イベント(MACE:major adverse CV event)であった。該MACEは、非致命的心筋梗塞(non-fatal myocardial infarction)、非致命的脳卒中(non-fatal stroke)、あるいは心血管、または明らかではない原因からの死亡と定義される。
【0095】
二次評価指標(secondary outcome)は、拡張されたMACE(MACE以外に、冠状動脈再開通または不安定狭心症による入院を含む)、及び下記の(a)ないし(d)を含む腎臓複合評価指標(composite kidney outcome)を含む:
【0096】
<腎臓複合評価指標(composite kidney outcome)>
(a)巨大アルブミン尿(すなわち、尿のアルブミンとクレアチニンとの比率(UACR)が300mg/g超過または33.9mg/mmol超過、及び基準値より30%以上高いUACR)、
(b)30日以上持続的に、eGFRが40%以上低減、
(c)90日以上腎臓透析(renal replacement therapy)、
(d)30日以上持続的に、eGFRが、15ml/min/1.73m2未満。
【0097】
探索的評価変数(exploratory endpoint)(outcome)には、拡張されたMACE及び腎臓の評価指標の構成要素、任意の原因からの死亡、心不全入院、HbA1c、活力徴候(vital signs)、体重、抗エフペグレナチド抗体、膵臓酵素、及びその他実験室検査が含まれる。
【0098】
アンブラインディング以前、三種類の追加複合評価指標が定義された:
a)MACEまたは非CV死亡、
b)30日以上の間、eGFRの40%以上低減と定義された腎臓機能評価指標、または末期腎臓疾患(90日以上透析、腎臓移植、またはeGFRが、30日以上15ml/min/1.73m2未満)、または全ての原因の死亡、あるいは
c)MACE、非CV死亡、心不全入院または腎臓機能評価指標。
【0099】
治療割り当てがマスキングされた独立したな臨床終結点委員会(Clinical Endpoint Committee)は、全ての死亡、心筋梗塞、脳卒中、不安定な狭心症、または心不全による入院、及び膵臓イベントを判定した。自発的に報告され、前もって指定された異常反応(adverse events)は、各訪問で収集された。
【0100】
統計分析
2008年FDA規制指針により、MACE評価指標につき、偽薬対比のエフペグレナチドの非劣等性を立証するために、そのときの非劣等性の限界は、1.3であり、検定力(power)を90%にし、最大4,000人の参加者を3年間追跡することにした。このとき、使用された仮定は、SGLT2服用者の場合、MACE発生率が、年間3.7%、非服用者の場合、4.4%にし、全体対象者のうち27%において、SGLT2を服用すると予測した。年間薬物中断率は、2%、両側1種エラーは、5%と計算した。
【0101】
全ての分析は、盲検解除前に確定された統計分析計画によって行われ、治療目的方針(intention-to-treat principle)群を利用し、全参加者のランダム割り当てと、最後評価との間に発生した全ての評価指標を計数した。参加者らは、CV評価指標、または死亡に対する追跡の最後の日に検閲され、最後の日に、腎臓評価指標状態が、腎臓評価指標について提供された。連続変数は、平均偏差及び標準偏差、または中央値及び四分位数の範囲に要約され、範疇型変数は、数及び百分率に要約された。経時的な連続変数の変化は、制限最大可能度を使用し、繰り返し測定に係わる混合効果モデル(MMRM:mixed-effects model for repeated measures)を使用して分析され、基準値は、共変量であり、参加者は、任意効果であるが、地域(北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、その他)、三種類SGLT2ランダム割り当て階層、治療群、訪問時期、及び治療群と訪問時期との相互作用(treatment-by-visit interaction)を固定効果として含んでいる。特定複合評価指標の最初発生率、及び単一評価指標または複合評価指標の総負担頻度は、当該評価指標に係わる追跡検査の100人年(per 100person-years)当たり数と要約された。カプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)曲線を使用して累積危険を表示し、地域、及び三種類SGLT2ランダム割り当て階層について調整したCox比例危険モデルを使用し、危険比、並びに一次評価指標及び二次評価指標に係わるエフペグレナチド(2つの用量結合)の効果に係わる95%信頼区間を推定した。比例平均モデルを使用し、再発イベントを含む全イベントに係わるHR及び95% CIを推定した。非劣等性に係わるP値は、単側(one-sided)における優越性に係わるP値は、両側(2-sided)であった。
【0102】
下位グループ内におけるエフペグレナチドの効果は、Cox比例危険モデルにおいて、下位グループと相互作用項とを含めて評価した。95%信頼区間と共に、2個以上の範疇を有する下位グループ内において、治療効果に係わる探索的縮小推定値を、ベイズ(Bayesian)階層的モデリングを使用して推定した。
【0103】
非劣等性が一次評価指標について立証された場合、追加評価指標の優越性が有意にならなくなるまで階層的に評価された:MACE;拡張されたCV複合;腎臓複合評価指標;MACEまたは非CV死亡、新規腎臓評価指標、及びMACE、非CV死亡、心不全または新規腎臓評価指標。
【0104】
標本サイズは、PASS 13ソフトウェア(NCSS、LLC、kaysville、UT)を使用して計算され、縮小分析は、Rバージョン3.5.1(R Foundation for Statistical Computing)の「bayesmeta」パッケージを使用して行われ、その他全ての統計分析は、SASバージョン9.4を使用して行われた。
【0105】
方法要約
28ヵ国344地域で行われたランダム対照試験は、第2型糖尿病患者でありながら、(1)以前CV疾患を有するか、あるいは(2)eGFRが、25ないし59.9ml/min/1.73m2であり、1以上の他のCV危険因子を満足する者を募集した。参加者らは、毎週エフペグレナチド4mgまたは6mg、あるいは偽薬を皮下投与されるようにランダムに割り当てられ、SGLT2抑制剤使用いかんにより、層化された。一次評価指標は、非致命的心筋梗塞、非致命的脳卒中、あるいは心血管、または明らかではない原因からの死亡と定義された最初MACEであった。
【0106】
2.結果
2018年5月11日から2019年4月25日までの間、総5,732人の試験対象者を選別した。4,076人の参加者が資格基準を満たし、それらの者は、エフペグレナチド4mg投与群(対象:1,359人)、エフペグレナチド6mg投与群(対象:1,358人)及び偽薬群(対象:1,359人)にランダムに割り当てられた。追跡研究(follow-up)は、2020年12月10日に終了し、当該期間まで全体人年は、7,395.4人年であり、中央値(IQR)は、1.81年(1.69、1.98)であった。その当時、一次評価指標であるMACEに遭遇した患者の比率が3941/4076人(96.7%)でり、活力状態(vital status)の比率が4,073/4,076人(99.9%)であった。エフペグレナチドまたは偽薬に割り当てられた参加者は、それぞれ最大追跡研究時間の88.9%から91.1%までの間、研究薬物に露出された。
【0107】
基準値(baseline)特徴
選定された試験対象者の基準値特徴を、下記表1に示した。
【0108】
【0109】
表1で分るように、募集された参加者は、平均年齢64.5(8.2)歳であり、1,954人(47.9%)は、65歳未満であり、1,344人(33.0%)は、女性であった。3,650人(89.6%)は、冠状動脈疾患、脳血管疾患または末梢動脈疾患と定義された以前のCV疾患があり、1,287人(31.6%)は、低いeGFR(60ml/min/1.73m2未満)を有し、888人(21.8%)は、CVD及び低いeGFRをいずれも有し、618人(15.2%)は、基本的に、SGLT2iを使用していた。エフペグレナチドまたは偽薬に割り当てられた類似した数の参加者が、基本的に多様な血糖降下薬物または心臓保護薬物を服用していた。しかしながら、最後の研究訪問において、偽薬に割り当てられたさらに多くの参加者が、DPP-4抑制剤(1.9%対0.9%、p=0.005)、及び/またはSGLT2抑制剤(21.2%対17.5%、p=0.004)を服用していた。
【0110】
試験評価指標
判定された最初イベントを表2に示した。
図1ないし
図4は、主要心血管及び腎臓評価指標に係わるグラフである。
図5及び
図6は、一次効能評価指標に係わる、事前に指定された下位グループ分析を示したものである。
【0111】
【0112】
表2で分るように、4mgまたは6mgのエフペグレナチド投与群において、189/2,717人(7.0%)の参加者(100人当たり、年間3.9人)が、少なくとも1つの一次MACE評価指標に遭遇し、偽薬群において、125/1,359人(9.2%)の参加者(100人当たり、年間5.3人)が、少なくとも1つの一次MACE評価指標に遭遇した(HR 0.73、95% CI 0.58-0.92、P非劣等性は、1.8限界及び1.3限界において、いずれも0.001未満、及びP優越性0.0069)。
図1ないし
図4に示されているように、2グループ間の格差は、臨床試験終了まで維持されることを確認した。
【0113】
探索的分析は、可能な用量・反応効果を示唆し、偽薬対比で、4mg及び6mgの用量につき、それぞれ0.82(95% CI 0.63、1.06)及び0.65(0.50、0.86)の危険比(hazard ratio)が推定された。
【0114】
エフペグレナチド投与群は、また少なくとも1つの拡張されたMACE評価指標(HR 0.79、95% CI 0.65、0.96、P=0.020)、少なくとも1つの腎臓複合評価指標(HR 0.68、95% CI 0.57、0.79、P<0.0001)、及び少なくとも1つのMACEまたは非CV死亡(HR 0.73、95% CI 0.59、0.91、P=0.040)の発生率が顕著に低かった(
図1ないし
図4)。
【0115】
事前に定義された臨床的に重要な下位グループの参加者内において、一次評価指標に係わるエフペグレナチドの影響分析は、性別、年齢、血統、糖尿病持続期間、HbA1c、体質量指数(BMI)、eGFR、以前CV疾患の病歴、SGLT2抑制剤使用、またはメトホルミン(metformin)使用によって変化がないことを示している(
図5及び
図6)。
【0116】
偽薬と比較し、連続変数の最小二乗平均(LSM:least square mean)差に係わるエフペグレナチドの効果は、追跡期間の間、1.24%(95% CI 1.17、1.32)さらに低いHbA1c、0.9kg/m2さらに低い体質量指数(95% CI 0.8、1.0)、2.6kg(95% CI 2.3、2.9)さらに低い体重、それぞれ1.5mmHg(95% CI 0.8、2.2)及び0.6mmHg(95% CI 0.2、1.0)さらに低い収縮期血圧及び弛緩期血圧、2.1mmHgさらに低い脈圧(95% CI 1.4、27)、3.9bpm(95% CI 3.4、4.4)さらに高い心臓拍動数、2.7mg/dlさらに低いLDLコレステロール(0.07mmol/l、95% CI 0.03、0.12)、21%さらに低いUACR(95% CI 14、28)、及び0.9ml/min/1.73m2(95% CI 0.3、1.5)さらに高いLSM eGFRを含んでいる。経時的なeGFRの変化に係わる影響に係わる調査は、追跡の間、一貫した効果を示唆した。
【0117】
副作用
関心ある特定異常反応を表3に示した。
【0118】
【0119】
表3で分るように、偽薬群よりさらに多くのエフペグレナチド投与群において(P=0.0090)、深刻な胃腸副作用が報告され、違いは、便秘、下痢、吐き気、嘔吐または膨満感に限られている(P=0.028)。その他事前に指定された安全性評価指標(表3)、及びその他副作用(補充表S4及びS5)は、2つのグループにおいて類似している。
【0120】
結果要約及び結論
4,076人の参加者が、エフペグレナチド投与群(対象:2,717人)または偽薬群(対象:1,359人)に割り当てられた。中間値1.81年の追跡期間の間、エフペグレナチド投与群において、189人(7.0%)の参加者(100人当たり、年間3.9人)、及び偽薬群において、125人(9.2%)の参加者(100人当たり、年間5.3人)が、一次評価指標に遭遇した(HR 0.73、95% CI 0.58、0.92、P非劣等性<0.001及びP優越性=0.0069)。腎臓評価指標(腎臓縮小または巨大アルブミン尿)は、エフペグレナチド投与群において、353人(13.0%)の参加者、及び偽薬群において、250人(18.4%)の参加者に影響を及ぼした(HR 0.68、95% CI 0.57、0.79、P<0.0001)。下痢、便秘、吐き気、嘔吐または膨満感は、エフペグレナチド投与群において、さらに頻繁であった。
【0121】
結論として、毎週エフペグレナチドの4mgまたは6mgの投与は、心血管(CV)または腎臓疾患を有する第2型糖尿病患者において、CV評価指標及び腎臓複合評価指標を低減させ、胃腸異常反応を起こした。
【0122】
3.論議
本CV評価指標試験において、エフペグレナチド(4mgまたは6mg)を毎週皮下注射すれば、CVまたは腎臓疾患を伴う第2型糖尿病患者において、MACEが27%低減され、腎臓複合評価指標が32%低減された。そのようなCV及び腎臓の利点は、SGLT2抑制剤の基底使用、メトホルミンの基底使用、及び基準値eGFRとは独立して発生した。また、他のGLP-1 RAの典型的な胃腸管異常反応と関連があったが、網膜、膵臓または甲状腺の関連イベントとは関連性がなかった。
【0123】
本試験は、CV及び腎臓の評価指標に係わるGLP-1 RAの以前に報告された有益なCV効果が、GLP-1 RAの7個の以前に完了したCV評価指標試験に含まれたところより、腎臓疾患の有病率がさらに高い高危険参加者にまで拡張されるということを示している。さらに、そのような発見が、持続型エクセンディン-4基盤GLP-1 RAで発生したという事実は、該種類の製剤のCV利点が、ヒトGLP-1基盤GLP-1 RAに限られるものではないということを示唆する。最後に、試験期間の間、15%以上の参加者が、SGLT2iを同時に使用し、SGLT2i抑制剤服用いかんにかかわらず、CV効果に対する信頼区間が重なったので、それは、エフペグレナチドの有益なCV効果が、SGLT2抑制剤の効果と無関係なものであることを示唆する。
【0124】
多様な可能性が、エフペグレナチドの心臓保護効果及び腎臓保護効果について説明しうる。エフペグレナチドは、HbA1c、血圧、体質量指数、LDLコレステロール、eGFR及びアルブミン尿を含む、CV及び腎臓疾患のいずれに係わるさまざまな危険因子を顕著に改善させた。実際、他のGLP-1 RAのCV評価指標試験で公開された媒介効果分析は、そのCV及び/または腎臓の利点がHbA1c、血圧またはアルブミン尿に対する効果により、部分的に媒介されうることを示唆し、メタ回帰分析は、GLP-1 RAを使用したHbA1cの低下程度とMACE発生危険との線形関係を示唆した。
【0125】
他のGLP-1 RAについて示唆されているように、本試験において、腎臓複合評価指標、eGFR及び脈圧の観察された低下により、エフペグレナチドは、また有益な内皮及び末梢の血液効果を有しうる。他の可能なメカニズムとしては、他のGLP-1 RAに係わる研究で言及されたように、抗炎症、抗線維化、抗粥状硬化及び血管拡張、並びにその他血流力学的効果がある。
【0126】
短い追跡期間、本来計画されたところ(330)より少ない(314)一次評価指標、及び以前のCV、並びに/または腎臓疾患に係わる選択により、臨床試験の検定力(power)と、第2型糖尿病を有する低危険患者に係わる関連性が制限される。長所としては、高い薬物投与維持(adherence)及び後続研究、CV及び腎臓の評価指標に係わる高危険群の募集、並びにSGLT2抑制剤を服用する相当数の参加者が含まれるということが含まれる。そのような特徴と、全体参加者の高い比率がガイドライン勧められた心臓保護療法及び腎臓保護療法を受けているという事実は、本臨床試験の結果が第2型糖尿病を有する類似した高危険患者に一般化される可能性があることを示唆する。
【0127】
そのような結果と、以前GLP-1 RACV評価指標試験との一貫性は、エフペグレナチドが、第2型糖尿病、及びCVまたは腎臓疾患を有する患者において、深刻なCV及び腎臓の評価指標を低減させるということを明確に示しているという点である。
【国際調査報告】