(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】真空下で試料器内の試料を管理するための機器
(51)【国際特許分類】
B01D 1/00 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
B01D1/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579343
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 EP2022067413
(87)【国際公開番号】W WO2022269067
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021116408.7
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511074350
【氏名又は名称】アンドレアス ヘティッヒ ゲーエムベーハー ウント ツェーオー. カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Andreas Hettich GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッシング ウルリッヒ
【テーマコード(参考)】
4D076
【Fターム(参考)】
4D076BA01
4D076CD03
4D076CD21
4D076CD22
4D076DA01
4D076DA27
4D076EA01Z
4D076EA11Z
4D076EA24Z
4D076HA14
(57)【要約】
本発明は、真空下で試料器(12)内の試料を処理するための機器であって、ハウジング(14)、ハウジング(14)内に配置され且つ真空ポンプと相互作用する真空チャンバ(14a)、カバー(16)であって、それによって、真空チャンバ(14a)が、真空気密で閉鎖され得、且つ試料器(12)を積み下ろしするために開放され得るカバー(16)、ベース面と、試料器(12)を受け入れるための複数の試料器レセプタクル(48)とを備える試料ホルダー(30)であって、試料ホルダー軸(34)が試料ホルダー(30)のベース面に対して垂直に延びる、試料ホルダー(30)、真空チャンバ(14a)内に装着され且つ試料ホルダー(30)に接続される駆動ユニット(36)であって、試料ホルダー(30)を試料ホルダー軸(34)の周りで駆動する駆動ユニット(36)、及び真空チャンバ(14a)外に配置され且つ駆動ユニット(36)に駆動結合される駆動機構(46)を含む、機器に関する。本発明は、試料ホルダー(30)の試料ホルダー軸(34)が、いくつかの領域において真空チャンバ(14a)の範囲を定める安全容器(18)の長手方向軸(40a)に対して特定の固定の鋭角のホルダー角度(β)に位置合わせされることにより特徴付けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空下で試料器(12)の試料を処理するための機器であって:
ハウジング(14)、
前記ハウジング(14)内に配置され且つ真空ポンプと相互作用する真空チャンバ(14a)、
カバー(16)であって、それによって、前記真空チャンバ(14a)は、真空気密に閉鎖され得、且つ前記試料器(12)を積み下ろしするために開放され得る、カバー(16)、
ベース面と、試料器(12)を受け入れるための複数の試料器レセプタクル(48)とを備える試料ホルダー(30)であって、試料ホルダー軸(34)は前記試料ホルダー(30)の前記ベース面に対して垂直に延びる、試料ホルダー(30)、
前記真空チャンバ(14a)内に装着され且つ前記試料ホルダー(30)に接続される駆動ユニット(36)であって、前記試料ホルダー(30)を前記試料ホルダー軸(34)の周りで駆動する駆動ユニット(36)、
前記真空チャンバ(14a)外に配置され且つ前記駆動ユニット(36)に駆動結合される駆動機構(46)
を含み、
前記試料ホルダー(30)の前記試料ホルダー軸(34)は、少なくともいくつかの領域において前記真空チャンバ(14a)の範囲を定める安全容器(18)の長手方向軸(40a)に対して特定の固定鋭角のホルダー角度(β)に位置合わせされることを特徴とする、機器。
【請求項2】
前記ホルダー角度(β)は、前記長手方向軸(40a)に対して、8°~85°の範囲内であり、且つそれらを含むことを特徴とする、請求項1に記載の機器。
【請求項3】
前記ホルダー角度(β)は、40°であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の機器。
【請求項4】
前記長手方向軸(40a)は、前記駆動ユニット(36)の回転軸を形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の機器。
【請求項5】
前記試料器レセプタクル(48)はそれぞれ取付軸を有し、それらの軸は、前記試料器レセプタクル(48)の長手方向軸として設計され、及び前記試料器レセプタクル(48)の前記取付軸は、互いに平行に位置合わせされることを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の機器。
【請求項6】
前記試料ホルダー軸(34)は、全ての前記試料器レセプタクル(48)の前記取付軸に対して平行に位置合わせされていることを特徴とする、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記駆動ユニット(51)と協働するドライブシャフト(40)が設けられ、そのドライブシャフト(40)は、前記試料ホルダー軸(34)の周りでの前記試料ホルダー(30)の動きを発生させることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の機器。
【請求項8】
前記ドライブシャフト(40)は、回転運動を伝達するためにギアユニット(32、42)と協働することを特徴とする、請求項7に記載の機器。
【請求項9】
前記ギアユニット(32、42)は、前記ドライブシャフト(40)に接続された第1の歯車(42)、及び前記試料ホルダー(30)に接続された第2の歯車(32)を含み、前記第1及び第2の歯車(42、32)は、ドライブ・ロッキングで互いにかみ合っていることを特徴とする、請求項8に記載の機器。
【請求項10】
前記ギアユニット(32、42)は増速ギア又は減速ギアを形成することを特徴とする、請求項9に記載の機器。
【請求項11】
前記駆動機構(46)及び前記駆動ユニット(36)は、非接触結合によって互いに結合されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の機器。
【請求項12】
前記試料器(12)及び前記試料を加熱するための機器、特にIR放射体が設けられ、これらは、好ましくは上から前記試料に向けられることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の機器。
【請求項13】
1組の異なるタイプの試料ホルダー(30)が設けられ、1つの試料ホルダー(30)はそれぞれ、前記駆動ユニット(36)に取り外し自在に接続可能であることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の機器。
【請求項14】
前記機器は、1組の異なる駆動ユニット(36)を含み、ここで、1度に1つの駆動ユニット(36)は、試料の前記処理中に前記試料器(12)内での前記試料の異なる動きのために、前記真空チャンバ(14a)中へ解放可能に接続され得、及び前記駆動機構(46)に結合され得ることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の機器。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の真空下で試料器内の試料を処理するための機器を動作させるための方法であって、前記試料の前記処理中、前記傾斜した試料ホルダー(30)は、試料ホルダー軸(34)の周りで継続的に動かされ、前記試料ホルダー軸(34)は回転軸として設計されていることを特徴とする、方法。
【請求項16】
前記動きは、前記試料ホルダー軸(34)の周りでの前記試料ホルダー(30)の回転運動として行われることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記駆動ユニット(36)は、前記試料ホルダー(30)を、0.5rpm~150rpmの速度で、前記試料ホルダー軸(34)の周りで駆動することを特徴とする、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
真空下で試料器内の試料を処理するための機器によって、蒸発により試料器内の試料から液体を除去するための方法であって、前記試料器(12)は、前記試料が前記試料器(12)の内面上で継続的に一方向に流れるように、動かされることを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記方法は、請求項1~14のいずれか1項に記載の機器により、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法により、行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文で特定されるタイプの、真空下で試料器(sample containers)内の試料を処理するための機器、及び試料を処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術において既知である、真空下で試料器内の試料を処理するための機器は、、蒸発によって、試料器内の生体、有機又は無機試料から液体を除去するために使用される。HettichのVortex Vacuum Concentratorは、例えば、処理中に振盪動作を行うこのタイプの一般的な機器である。これらの機器は真空振盪機とも呼ばれる。
【0003】
この一般的な機器は、真空気密容器(vacuum-tight vessel)を有し、その内部に、真空下で振盪されるべき試料を備える試料器を収容することを意図された試料器ホルダーを備える振盪ユニットが装着されている。適切なシールを使用して、容器は、カバーと真空気密で封止され得る。容器は、所望の陰圧に設定されるまで、振盪動作のために真空引きされる。振盪機を含む容器の真空気密シールを保証するために、例えば、容器内の振盪機を駆動するために、振盪機は、磁気結合によって容器外のモータに磁気的に結合されている。容器はまた、1つ又は複数のヒータを備えて、振盪機、試料器、及びそれらに入れられている試料の温度を制御し得る。とりわけ、熱放射体、例えば高いIR成分を備える光が知られており、これは、透明カバーを通して、試料が入っている真空チャンバ中へ放射するか、又は真空チャンバの壁やベースの加熱を引き起こす。
【0004】
これらの機器は、温度制御試料器レセプタクルを含むことも知られており、これらは、主に試料器と直接接触することにより、熱を伝える。
【0005】
試料は、通常、固体が溶解及び/又は分散されている液体からなる。液体は、揮発性若しくは半揮発性有機溶媒、水、又は上記の混合物とし得、これらは、真空状態で蒸発される。試料器、例えば試験管又はプラスチックバイアルに試料を詰めた後、試料器は、真空振盪ユニットの試料器レセプタクル内に配置され、振盪プロセスが開始され、且つ所望の真空が容器内に作られる。蒸発した液体を容器から除去し、且つ蒸発にもかかわらず所望の真空を維持するために、容器は、真空ポンプによって連続的に真空引きされる。溶媒及び/又は水は、真空ポンプによって、容器上の接続を経由して容器から除去される。溶媒が真空ポンプを損傷するのを防止するために、例えば、真空ポンプと容器との間に冷却トラップが設けられ得る。適用される真空は、蒸発されるべき液体に適合され、必要な場合には、プロセス中にさらに調整され得る。
【0006】
この機器を使用して真空下で液体を蒸発させることは、真空が液体の沸点を下げるという利点を有する。これは、液体がより低い温度で蒸発するため、生体、有機、又は無機の試料が全く熱的な影響を受けないか、又は少なくとも受ける度合が減ることを意味する。さらに、液体はより迅速に蒸発する。試料器内で振盪動作によって発生された液体の動きは、試料の表面積を増大させ、これにより蒸発を速める。
【0007】
さらに、試料は、振盪動作によって継続的に混合される。これは、試料内の温度差を効率的に補償し、これは、例えば、試料器レセプタクルからの入熱によって、又は蒸発冷却による試料表面の冷却によって引き起こされ得る。これは、蒸発プロセスをより簡単に制御できるようにし、且つまた、蒸発冷却による冷却の場合に、より効率的にする。それゆえ、いわゆる蒸発冷却による試料のその表面上での局所的な冷却は、減少される。さらに、このようにして、試料器が加熱ブロック内に配置される及び/又は熱源によって照射される場合でも、均一な試料温度が非常に迅速に達成される。液体の全体積の至る所での迅速な熱の分配はまた、試料中への熱伝達全体をより良好にすることを保証する。
【0008】
振盪動作はまた、前もって溶解された成分の沈殿による、試料の冷却表面でのいわゆる塊形成を防止し、試料器内で沈殿物質を一様に分布させる。しかしながら、物質の沈殿はまた、いくつかの領域の冷却を減少させることによって、減少されるか、又はさらには防止される。
【0009】
さらに、振盪動作は、いわゆる試料の過発泡(overfoaming)(沸騰遅れ)を防ぐ。そのような発泡は、特に溶解されていない物質が液体中にある場合、又は溶解された物質が、ある濃度を上回り、特に局所的な冷却に関連して、沈殿又は結晶化し始める場合、試料が沸点まで又は沸点近くまで加熱されたときに発生することが多い。これらの影響は、振盪動作の結果として達成される試料中に溶解された物質の均一な温度及び均一な分布によって、減少又は遅延される。
【0010】
この従来技術の真空振盪機を使用する利点は、液体の軌道運動、いわゆる渦運動が、振盪プロセスによって達成され得、これにより、試料容器内の試料の表面積を大きくし、これが次に、蒸発速度を増すことである。
【0011】
この従来技術の真空振盪機の別の技術的な利点は、試料器レセプタクルが回転軸の周りで1つの円に、又は、必要な場合には、回転軸の周りでいくつかの円に配置されるように制限される真空遠心分離機とは対照的に、試料器ホルダーが振盪ユニットのベース領域全体にわたって提供され得、及びこれらに、試料を入れている試料器が積み込まれ得ることである。同じ幾何学的形状の真空チャンバに対して、これは、より多数の試料器を許容する。さらに、異なる幾何学的形状の試料容器は真空振盪ユニット内に同時に簡単に配置され得る。不均衡問題に起因して試料の質量が平衡にされる必要がある真空遠心分離機とは対照的に、異なる量の試料の試料器を同時に処理することも可能である。
【0012】
従来技術の真空振盪機に関して不利益な点は、試料表面の邪魔されない軌道運動を達成するために、振盪動作の正しい周波数を設定することは困難であることである。最善ではない軌道運動は、達成可能な表面拡大を減らし、且つ蒸発プロセスを引き延ばす。振盪動作の最適な周波数の設定は、例えば生化学の分野で使用されることが多い、特にいわゆるマイクロタイタープレートを備えるプラスチックバイアルのような直径が小さい試料器では特に難しい。直径が小さい容器に対し、試料器内での液体試料の軌道運動を誘発するために、より高い周波数が選択される必要がある。これは、ほとんどの場合不可能であるが、正しい設定のために試料器は観察される必要があるため、必要とされる正確な周波数を設定することをさらに難しくする。真空振盪機内に配置された試料器が異なる直径を有する及び/又は異なって詰められている場合、これは、実際はこのタイプの真空蒸発の利点のうちの1つであるが、振盪動作の精密な周波数を設定することもほとんど不可能である。
【0013】
振盪動作の周波数の設定プロセスはまた、蒸発中の試料の物理的性質の継続的な変化が原因による問題がある。例えば、溶解成分の濃度の上昇は、試料の粘度の上昇につながる。分散成分はまた、試料の流動性を変化させ得る。試料におけるこれらの変化は、振盪動作の周波数を持続した調整を必要とし、これは、実行に移すことが簡単ではない。
【0014】
例えばロータリーエバポレータ内で、回転する試料ホルダーをある角度に位置決めすることは、真空蒸発を改善するために表面積を大きくすることが知られている。その結果、試料器内の液体試料は、重力に起因して一方向に継続的に流れ、それにより、試料器の内部の追加的な部分が、液体によって継続的に湿潤される。傾斜位置にある試料器に起因する表面積の増大に加えて、これは、さらに、蒸発に利用可能な液体表面を増加させる。このアプローチは、試料器内での最適且つ再現可能な蒸発を保証する単純な方法であり、それにより、達成可能な表面拡大は、試料器の回転速度及び広範囲にわたる試料の粘度の変化の双方とほとんど無関係である。ロータリーエバポレータでは、真空チャンバはまた試料器である。
【0015】
このことの不利益な点は、例えば試料フラスコのような特別な耐真空試料器が必要とされることである。異なる形状の試料器並びにプラスチック製のものは、例えば、好適ではない。
【0016】
別の問題は、通常、1度には試料器は1つのみ使用でき、これが、いわゆる接地ジョイントを介して真空気密式にロータリーエバポレータに接続されることである。それゆえ、異なる試料の同時蒸発は、時間がかかり、且ついわゆるスピナーが使用される場合にのみ可能である。これは、一方の側で接地ジョイントを介してロータリーエバポレータに接続されるが、他方の側にはいくつかのより小型の接地ジョイントを有し、それに、より小型の真空気密器(vacuum-tight containers)が取り付けられ得、これが同様に、接地ジョイント自体を有する必要がある機器である。このために、単純な器は使用できない。さらに、真空気密を達成するために、全ての接地ジョイントが用いられる必要があるため、ここでは柔軟な数の器を使用できない。
【0017】
真空チャンバ全体、例えば真空フラスコの回転のために、後者を回転する真空チューブに接続することも必要であり、これは、駆動ユニットによって長手方向に回転させられ、且つ真空チャンバをクーラーユニット及び溶媒用の収集フラスコに接続する。それゆえ、真空チューブは、機器外で優勢な大気圧に対して真空を封止するために、ぴったり合うスリーブ内で回転する必要がある。真空チューブの回転のおかげで、これは、常に何の問題もなく可能なわけではない;試料器内の高真空は、通常、ロータリーエバポレータによって発生させることはできない。最適な条件下で、1桁のmbar範囲内の真空圧が、通常、達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
それゆえ、本発明の目的は、上述の不利益を回避しながら、追加的な温度上昇なく、真空下での試料の処理中の蒸発プロセスが改善されるように、請求項1の前文で特定したタイプの機器をさらに発達させることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、真空遠心分離機に関して、請求項1の特徴をその前文の特徴と併せて特徴づけることによって、達成できる。
【0020】
従属請求項は、本発明の有利なさらなる実施形態に関する。
【0021】
本発明は、真空チャンバ内での表面拡大のこの原理が、ある角度が維持される場合に、いくつかの別々の試料器内で同時に及び非常に簡単に実行され得るという認識に基づく。
【0022】
本発明によれば、真空下で試料器内の試料を処理するための機器は、ハウジング、及びハウジング内に配置され且つ真空ポンプと相互作用する真空チャンバを含む。真空チャンバは、カバーによって真空気密で閉鎖され得、且つ試料器を積み下ろしするために開放され得る。さらに、ベース領域及びいくつかの試料器レセプタクを備える試料ホルダーが、試料器を受け入れるために設けられる。試料ホルダー軸は、試料ホルダーのベース面に対して垂直に延びる。さらに、真空チャンバに装着された駆動ユニットが設けられ、これは、試料ホルダーに接続され、且つ試料ホルダー軸の周りで試料ホルダーを駆動する。駆動機構は真空チャンバ外に配置され、これは、駆動ユニットに駆動接続される。本発明によれば、試料ホルダーの試料ホルダー軸は、いくつかの領域において真空チャンバの範囲を定める安全容器の長手方向軸に対して、特定の固定された鋭角のホルダー角度に向けられる。
【0023】
ホルダー角度を設定することによって、試料器内で最適な表面拡大が設定され得、それにより、液体の真空蒸発を促進する。試料ホルダー軸の周りでの回転運動に起因して、試料器の側壁は、大きな領域にわたって液体で継続的に湿潤される。
【0024】
試料ホルダーのベース領域は、平面上へ試料ホルダーの外周の射影である。
【0025】
試料ホルダーが駆動機構によって試料ホルダー軸の周りで動かされるとき、これは、重力の作用力に起因して、試料器に対して液体試料中に相対的な軌道運動を誘発し、液体試料のこのタイプの軌道運動は-第1の近似では-動きの速度に左右されない。このようにして生成された試料の相対的な軌道運動は、試料器の内面のさらなる部分を湿潤させ、これが次に、蒸発され得る表面積を増大させる。長手方向軸に対する試料ホルダー、従って試料器の角度が大きいほど、表面積の増加が大きくなる。これは、静止時の表面拡大及び相対的な軌道運動に起因する表面拡大に関する。
【0026】
好ましくは、ホルダー角度は、長手方向軸に対して8°~85°の範囲内である。特に、ホルダー角度は40°である。この角度範囲内では、試料器の蒸発可能な面が最適に湿潤されて、利点を達成する。角度が小さすぎる場合、軌道の動きは、表面積の著しい増大をもたらすには十分ではない。角度が小さすぎる場合、軌道運動は、表面の著しい増大を引き起こすには十分ではない。角度が大きすぎる場合、軌道運動は、表面の湿潤をもたらさないが、大量の液体が表面にわたって流れるため、もはや、蒸発の利点はない。
【0027】
原理上は、試料器は、回転運動で試料ホルダーと一緒に動かされ得る。安全容器の長手方向軸は、駆動ユニットの回転軸であり、これは、傾斜した試料ホルダーを試料ホルダー軸の周りで駆動する。
【0028】
特に、試料器レセプタクルはそれぞれ、取付軸を有し、及び試料器レセプタクルの取付軸は、互いに平行に位置合わせされている。取付軸はそれぞれ、試料器レセプタクルの長手方向軸として設計されている。これは、試料器内の全ての試料が試料器レセプタクル内で同じように処理されることを保証する。しかしながら、取付軸が異なって位置合わせされること、例えば異なるサイズの試料器又は異なる幾何学的形状の試料器のための異なる直径の試料器レセプタクルも考えられる。
【0029】
本発明の一実施形態では、試料ホルダー軸は、全ての試料器レセプタクルの取付軸に対して平行に位置合わせされている。
【0030】
駆動ユニットと相互作用するドライブシャフトが設けられ、これが、試料ホルダー軸の周りでの試料ホルダーの動きを発生させることも可能である。例えば、ドライブシャフトは駆動機構によって駆動され得る。ドライブシャフトは、試料ホルダーを、後者が試料ホルダー軸の周りで回転するように、駆動する。
【0031】
ドライブシャフトは、回転運動を伝達するためにギアユニットと相互作用し得る。
【0032】
好ましくは、ギアユニットは増速ギア又は減速ギアを形成し、これは、試料器内での試料の動く速度を簡単に調整するために使用され得る。
【0033】
これは、ギアユニットが、ドライブシャフトに接続された第1の歯車、及び試料ホルダーに接続された第2の歯車を有し、第1及び第2の歯車がドライブ・ロッキング式に互いにかみ合うという単純な方法で、実装され得る。増速比又は減速比は、それぞれの歯車の直径によって、簡単に調整され得る。
【0034】
駆動機構及び駆動ユニットは、好ましくは、非接触結合によって互いに結合される。これは、駆動ユニットを駆動するために使用される、真空チャンバにある貫通開口での複雑なシールの必要性をなくす。
【0035】
真空チャンバ内での蒸発を促すために、真空チャンバを加熱するための機器が設けられる。これは、例えば、IR放射体とし得、真空チャンバに、特に上から、向けられる。それに加えて又はその代わりに、ヒータもまた、真空チャンバの床又は壁に設置され得る。
【0036】
本発明の一実施形態では、1組の異なるタイプの試料ホルダーが提供され、いずれの場合も、1つの試料ホルダーが、駆動ユニットに取り外し自在に接続可能である。これは、異なる試料器を試料ホルダーに接続することを可能にするだけでなく、試料器レセプタクルに異なる試料保持軸も提供する。
【0037】
それに加えて又はその代わりとして、1組の異なる駆動ユニットも提供されてもよく、ここでは、1つの駆動ユニットがそれぞれ、試料の処理中、試料器内の試料の異なる動きのために、真空チャンバ内の試料器に取り外し自在に接続され得、及び駆動機構に接続され得る。例えば、これは、真空チャンバ内での試料ホルダーの回転運動を実現することを可能にする。
【0038】
本発明の一態様では、真空下で試料器内の試料を処理するための機器を動作するための方法において、上述のように、試料ホルダー軸は、回転軸として設計され、試料の処理中に、試料ホルダー軸の周りでの、傾斜した試料ホルダーの継続的な動きが実行される。
【0039】
好ましくは、動きは、試料ホルダー軸の周りでの試料ホルダーの回転運動として実行される。
【0040】
好ましくは、駆動ユニットは、試料ホルダー軸の周りで、0.5rpm~150rpmの速度で試料ホルダーを駆動する。
【0041】
本発明の別の一態様では、真空下で試料器内の試料を処理するための機器によって、蒸発により試料器内の試料から液体を除去するための方法において、試料器は、試料器の内面で試料が一方向に継続的に流れるように動かされる。これは、好ましくは、上述のタイプの機器を使用して実施される。
【0042】
試料ホルダーが回転運動している間、試料は、試料器の内面で一方向に継続的に流れる。これにより、試料器に対して試料の軌道の動きが生じる。
【0043】
両実施形態では、相対的な軌道運動は、従来技術の真空振盪機において達成されるものと比べてゆっくりとし得る。これは、重力の助けを借りた液体試料の相対的な軌道運動を確実に保証する。軌道運動の速度は、液体のタイプ及びそれらの蒸発のエンタルピー、すなわち、例えば揮発性又は不揮発性有機溶媒、水などに、試料器内の試料の粘度及び体積に、適合され得る。
【0044】
本発明の追加的な利点、特徴及び考えられる応用は、図面に示された実施形態を参照した、以下の説明から明らかになるであろう。
【0045】
説明、特許請求の範囲及び図面の全体を通して、それらの用語及び関連の参照符号は、下記の参照符号のリストに明記されているものとして使用される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本発明に係る真空下で試料器内の試料を処理するための機器の前部の、そのカバーが閉鎖されている状態の、上方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る真空下で試料器内の試料を処理するための機器の前部の、そのカバーが開放されている状態の、上方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、駆動機構、駆動ユニットを備える真空チャンバ、ギアユニット、及び試料器を備える試料ホルダーの第1の実施形態の、部分断面での概略図である。
【
図4】
図4は、
図3の実施形態の前部の、部分断面での別の概略図である。
【
図5】
図5は、
図3の実施形態の側面の、部分断面での別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図面は、本発明に係る真空下で試料器12内の試料を処理するための機器10の図である。機器10は、カバー16を備えるハウジング14を含み、カバーは、開閉機構(ここでは詳細に図示せず)によって、開放位置、
図2参照と、閉鎖位置、
図1参照との間で、ハウジング14上で動かされ得る。カバー16は、ハウジング14内に配置される真空チャンバ14aを、真空気密に閉鎖する。機器10が開放されると、十分に解放されて、試料器12を積み下ろしすることを可能にする。
【0048】
安全容器18はハウジング14内に配置され、これは、ベース18aに開口を有し、その開口は、公知の方法で、真空ラインを介して真空ポンプと相互作用する。排気ダクトは真空ポンプに接続され、且つ環境へ放出する。安全容器18及びカバー16は真空チャンバ14aの範囲を定め、その内部で、試料器12に入れられた試料が真空下で処理される。
【0049】
真空ポンプは、ハウジング14外又はハウジング14内に配置され得る。真空ポンプを備えるこれらのタイプの機器は、基本的に公知であり、それらについてここでは詳細に説明しない。
【0050】
シール20は安全容器18の上方領域に配置され、そのシールは、カバー16のシール(ここでは図示せず)と相互作用するため、カバー16が閉鎖されているときに、カバー16が真空チャンバ14aを真空気密に閉鎖することによって、必要な場合には真空が確実に安全容器18内に作られる。
【0051】
ハウジング14は脚22に装着され、これら脚は、ハウジング14の真下に設けられる。機器10は、電源スイッチ(mains switch)24によってスイッチが入れられたり及び切られたりする。機器10の動作モードは、タッチディスプレイ26を介して設定される。
【0052】
図3~7は、内部で、処理中の回転運動によって試料が試料器12内で動かされる機器10を示す。
【0053】
支持体28は、安全容器18のベース18aに設けられる。支持体28の上方自由端には、その下に第2の歯車32が配置されている試料ホルダー30が回転自在に装着されている。試料ホルダー30及び第2の歯車32は、回転の軸を形成する試料ホルダー軸34に対して同心円状に配置されている。試料ホルダー30及び第2の歯車32は、試料の処理中に、この試料ホルダー軸34の周りで回転する。
【0054】
駆動ユニット36は、安全容器18内で同心円状に配置される。駆動ユニット36は、その内部に、ドライブシャフト40が回転自在に装着される、回転対称的な軸受ハウジング38を有する。第1の歯車42は、軸受ハウジング38外のドライブシャフト40の上方自由端に設けられ、その第1の歯車42は第2の歯車32とかみ合う。ベース18aの領域では、ドライブシャフト40はドライブディスク44にしっかりと接続されている。磁化可能なロッド、ここでは詳細に図示せず、は、ドライブプーリ44に組み込まれ、且つドライブシャフト40に対して直角に延びる。ドライブシャフト40は、回転軸40aの周りで回転するように装着されている。磁化可能なロッドは、長手方向軸40aを通して延び、且つそれに対して対称的に配置される。
【0055】
駆動ユニット36は、真空チャンバ14a内に取り外し自在に装着される。
【0056】
第1の歯車42及び第2の歯車32は、減速ギアを形成する。増速ギアも考えられる。
【0057】
ドライブシャフト40は磁力結合によって駆動される。この目的のために、電気駆動部46が、安全容器18外に、ベース18aの真下に、及び駆動軸40aに対して同心円状に設けられる。ドライブディスク44及び磁化可能なロッドを備えるドライブシャフト40は、対応する磁場を使用して、電気駆動部46を介して非接触式に駆動される。この目的のために、電気駆動部46は、モータ46aと、モータ46aによって駆動され且つ磁気ディスク46b内に配置されるロッド形状の磁石46bとを有する。ドライブディスク44は、磁力結合によって電気駆動部46により駆動され、これはまた、ドライブシャフト40も駆動する。それゆえ、ドライブシャフト40は、誘導によって、すなわち磁場を介して駆動される。そのような駆動はそれ自体が公知であるため、ここでは詳細に説明しない。
【0058】
第2の歯車32を備える試料ホルダー30は、長手方向軸40aに対して40°の角度βでキャリア28内に回転自在に装着される、
図4参照。長手方向軸40aが垂直方向に位置合わせされるため、試料ホルダー軸34及び長手方向軸40aは、この角度βを互いに対して形成する。キャリア28は、安全容器18のベース18a上で、軸受ハウジング38の脇に固定される。
【0059】
試料ホルダー30が、長手方向軸40aに対して8°~85°の角度βで配置されることも考えられる。
【0060】
この実施形態の例では、試料ホルダー30は長方形である。他の幾何学的形状も可能である。試料ホルダー30は、複数の試料器レセプタクル48を有し、そのそれぞれの中へ、処理されるべき試料を有する開放試料器12が挿入され得る。試料ホルダー30は、駆動ユニット36に対して取り外し自在及び接続自在であるように設計される。試料器レセプタクル48は、試料ホルダー30にある凹部によって形成され、その長手方向軸は、試料ホルダー30のベース面に対して、すなわち第2の歯車32に対して垂直に延びる。これは、試料器12のすべてが、試料ホルダー30内で互いに平行であるそれらの長手方向軸と位置合わせされることを意味する。試料器12の長手方向軸と試料器レセプタクル48の長手方向軸は、試料ホルダー軸34に対して平行に位置合わせされる。
【0061】
試料ホルダー軸34は、試料ホルダー30の表面に対して中心に及び直交して延びる。
【0062】
本発明による機器10に係る液体試料の処理中、液体は、試料器12内の生体、有機又は無機の試料から、蒸発によって除去される。真空は液体の沸点を低くする。これは、液体がより低い温度で蒸発するため、生体、有機若しくは無機の試料が全く影響を受けないか、又は少なくとも受ける度合が減ることを意味する。さらに、液体はより迅速に蒸発する。
【0063】
試料は、通常、液体からなり、その中に固体が溶解及び/又は分散されている。液体は、揮発性若しくは半揮発性の有機溶媒、水、又は上記の混合物とし得、これらは、真空状態で蒸発する。例えば試験管、プラスチックバイアル、マイクロタイタープレート、Erlenmeyerフラスコ、ビーカー、丸底フラスコなどの試料器12に試料を詰めた後、これらは、機器10の試料ホルダー30内に配置される。回転運動が開始され、且つ真空チャンバ14a内に所望の真空が作される。容器は、真空チャンバ14aから蒸発した液体を除去し、且つ蒸発にもかかわらず所望の真空を維持するために、真空ポンプによって継続的に真空にされる。試料ホルダー30が動いている間、溶媒及び/又は水は蒸発し、これは、真空ポンプ26によって、真空チャンバ14aから、真空チャンバ14aに通じる安全容器18のベース18aの開口部を経由して、除去される。加えられるべき真空は、蒸発されるべき液体に適応され、且つまた、必要な場合には、さらに、プロセス中に調整され得る。
【0064】
機器10はまた、ロータ12の温度、及び試料が内部に配置される試料器12の温度を制御するために、ヒータを備え得る。とりわけ、例えば、高IR成分を備える光のような、試料が入っている真空チャンバ14a中へ放射する熱放射体が知られている。明瞭にするために、このヒータは、図示しない。
【0065】
本発明は、回転運動の最中、試料器12内に液体試料を備える傾斜した試料器12が、重力に起因して一方向に連続的に流れることによって、特徴付けられ得る。その結果、試料器12の内部の追加的な部分は液体試料によって継続的に湿潤される。試料器12を角度βだけ傾斜させることによって表面積を大きくすることに加えて、これは、蒸発に利用可能な液体表面積をさらに大きくする。このアプローチは、試料器12内での最適且つ再現可能な蒸発を保証する単純な方法である。達成可能な表面拡大は、試料器12の回転速度及び試料の粘度の変化とはほとんど無関係である。表面積の増大は、角度β、それゆえ試料器12の傾斜位置に依る。
【0066】
駆動ユニット36は、試料ホルダー軸34の周りで、0.5rpm~150rpmの速度で試料ホルダー30を駆動する。
【0067】
試料ホルダー30が駆動機構によって試料ホルダー軸34の周りで動かされると、相対的な軌道運動が、重力の作用力に起因して、試料器12に関して液体試料に誘発される。このようにして生成された試料の相対的な軌道運動は、試料器12の内面のさらなる部分を湿潤させ、これが次に、蒸発され得る表面積の増大につながる。垂直線に対して試料ホルダー30、すなわち試料器12の角度βが大きいほど、表面積の増大が大きくなる。これは、静止している表面拡大に、及び相対的な軌道運動に起因する表面拡大に当てはまる。
【符号の説明】
【0068】
10 機器
12 試料器
14 ハウジング
14a 真空チャンバ
16 カバー
18 安全容器
18a 安全容器18のベース
20 シール
34 ハウジング10の脚
24 電源スイッチ
26 タッチディスプレイ
28 支持体
30 試料ホルダー
32 第2の歯車
34 試料ホルダー軸
36 駆動ユニット
38 軸受ハウジング
40 ドライブシャフト
40a 長手方向軸
42 第1の歯車
44 ドライブプーリ
46 電気駆動部
46a モータ
46b 磁気ディスク
48 試料器レセプタクル
β ホルダー角度、長手方向軸40aに対する試料ホルダー軸34の角度
【国際調査報告】