(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】オフショア構造物における管状部材の接合方法
(51)【国際特許分類】
F16L 23/036 20060101AFI20240614BHJP
F16L 13/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
F16L23/036
F16L13/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579391
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 DK2022050094
(87)【国際公開番号】W WO2022242815
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523480749
【氏名又は名称】スティースダル オフショア エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】スティースダル,ヘンリック
【テーマコード(参考)】
3H013
3H016
【Fターム(参考)】
3H013AA03
3H016AA03
3H016AC05
(57)【要約】
オフショア構造物における管状部材(4,4’)の接続方法に関する。隣接する2つのパイプフランジ(2)は、複数のクランプユニット(7)によって固定され、各クランプユニット(7)は、隣接する前記フランジ(2)をクランプユニット(7)の前記受け部(10)に収容するため、熱膨張する。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフショア構造物における管状部材(1)の接続方法であって、各管状部材(1)は、管状部材(1)を端同士で接続するための径方向外側に突出するフランジ(2)をその端部に有し、該方法は、
前記フランジ(2)を互いに隣接させた状態で、2つの管状部材(1)を端同士で位置決めすることと、
クランプユニット(7)が、第1の部分(8A)を有するベース(8)を有し、該第1の部分(8A)から対向する顎部(9)が延在し、その間に所定セグメントのうちの1つを受容・収容する受け部(10)が形成され、対向する前記顎部(9)間の前記受け部(10)の幅Wが、前記ベース(8)の前記第1の部分(8A)が周囲温度である場合、前記受け部(10)が隣接する前記フランジ(2)の前記所定セグメントを受容することができないほどの小ささであって、こうした前記クランプユニット(7)を複数設けることと、隣接する前記フランジ(2)の種々の前記所定セグメントに、前記クランプユニット(7)を位置決めすることによって、隣接する前記フランジ(2)を互いに固定することと、
隣接する前記フランジ(2)の前記所定セグメントを前記受け部(10)で受容する際、前記ベース(8)の前記期第1の部分(8A)を加熱し、前記第1の部分(8A)の膨張によって前記幅Wを大きくし、前記幅Wを大きくしながら、前記受け部(10)内の隣接する前記フランジ(2)の所定セグメントとともに、前記クランプユニット(7)を位置決めすることと、
次いで、前記幅Wを小さくし、収縮により隣接する前記フランジ(2)を前記顎部(9)で押圧することと、
を含み、
前記第1の部分(8A)の加熱中に、前記第1の部分(8A)が熱膨張することによって、前記幅Wが増加し、前記第1の部分(8A)の温度を周囲温度まで下げ、それに伴って前記第1の部分(8A)が熱収縮することによって、前記幅Wが収縮する、
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ベース(8)は、前記クランプユニット(7)が前記フランジ(2)に取り付けられたときに、前記顎部(9)から離れ、前記フランジ(2)から離れている第2部分(8B)を有し、該第2部分(8B)は、前記第1の部分(8A)に機械的に接続されており、
前記方法では、前記加熱によって、前記第2の部分(8B)よりも前記第1の部分(8A)の熱膨張が大きくなるようにし、それに対応して、前記第1の部分(8A)の近くよりも、前記第1の部分(8A)から遠い前記受け部(10)の縁部において、前記受け部(10)の幅の増加が大きくなることで、前記ベース(8)の不均一な熱膨張に伴い、前記顎部(9)間の角度を変化させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベース(8)の前記第1の部分(8A)及び前記第2の部分(8B)は、金属ブロック、任意には、鋼又は鋳鉄からなる部分であり、
前記方法は、前記第1の部分(8A)の加熱によって、前記第1の部分(8A)における温度を前記第2の部分(8B)よりも上昇させることを含む、
ことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ベース(8)の前記第1の部分と前記第2の部分(8B)との間に、加熱中に、第1の部分から第2の部分(8B)への熱エネルギーの伝達を防止又は遅延させるための断熱空間が設けられている、
ことを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
隣接する前記フランジ(2)の前記所定セグメントは、最大の厚さT
maxを有し、
前記方法は、前記クランプユニット(7)を前記所定セグメント上に嵌合させるため、前記加熱によって、前記幅Wを少なくともT
maxに増加させることを含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記顎部(9)は、加熱前に、前記受け部(10)に向かう平行な面を有し、前記第1の部分(8A)が周囲温度にあるときに、前記受け部(10)全体にわたり、一定の幅W
0となり、
前記所定セグメントは、T
0>W
0となる一定の厚さT
0を有し、
前記方法は、熱膨張により、前記受け部(10)の幅を前記厚さT
0よりも大きくすることを含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記顎部(9)のうちの少なくとも一方は、前記受け部(10)に向かう側面に凸状曲面(20)を有し、その極限位置(26)において、前記受け部(10)の最小幅W
minが画定され、
前記方法は、前記フランジ(2)が前記凸状曲面(20)を通過できるよう、熱膨張によって、前記受け部(10)の幅を十分に増加させることを含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記顎部(9)のうちの少なくとも一方は、前記受け部(10)に向かう側面に凸状曲面(20’)を有し、
前記方法は、
前記顎部(9)の間の前記所定セグメントの一部のみを受け入れるように、同時に、前記所定セグメントが、前記受け部(10)の前記最小幅W
minを画定する、前記凸状曲面(20’)の極限位置(26)を、前記受け部(10)内の前記所定セグメントの所定の最終位置に向けて通過することができない程度に、前記受け部(10)の幅を熱膨張によって十分に増加させることと、
前記顎部(9)の材料の弾性力を上回る前進力を伴って、前記クランプユニット(7)を前進させ、前記所定セグメントが前記極限位置(26)を通過できるよう、前記顎部(9)を互いに離間する方向に押圧することと、
次いで、前記第1の部分(8A)の温度を周囲温度に下げることにより、前記極限位置(26)で前記顎部(9)の弾性力を増加させることと、
を含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定セグメントが前記極端位置を通過して前記受け部(10)内に自在に移動するのに必要な幅よりも、W
minが0.5~3mm小さい範囲にある、
ことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記凸状曲面(20’)の前記極限位置(26)が、前記受け部(10)の縁(14)よりも前記ベース(8)に近い、
ことを特徴とする、請求項7乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記凸状曲面(20,20’)は、前記クランプユニット(7)を隣接する前記フランジ(2)に装着した際、前記管状部材(1)の中心軸(15)を中心とする極座標角θに沿った方向に測定した場合に、前記受け部(10)の長さの一部のみわたって延びる突起である、
ことを特徴とする、請求項7乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、隣接する前記フランジ(2)の前記所定セグメントに、径方向外側に向かって、最小の厚さから最大の厚さT
maxにかけて距離Dにわたり増加する厚さを有する形状を形成することを含み、
前記方法は、対応する距離D’にわたって前記ベース(8)に向かって前記最大幅W
max=T
maxまで増加させた前記幅Wを有する、対応する内部形状を、前記受け部(10)に形成することを含み、
前記方法は、前記基部(8)の不均一な熱膨張により、前記顎部(9)間の角度を増加させ、前記最大厚さT
maxの位置で前記受け部(10)の端がセグメント上を通過するよう、前記受け部(10)の端での幅の増加を、前記第1の部分(8A)に近いところでの幅の増加よりも大きくすることを含む、
ことを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記所定セグメントの厚さは、前記距離Dにわたって最小の厚さから最大の厚さT
maxまで直線的に増加する、
ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フランジ(2)には、前記管状部材の周囲に複数のボルト穴が設けられ、
前記方法は、該穴にボルト(23)を設けて、前記フランジ(2)を互いに固定するための追加工程として該ボルトを締め付けることを含み、
前記クランプユニット(7)のそれぞれの前記顎部(9)は、フランジセグメント上を前記ボルト間の位置まで延びており、前記ボルトを締める際、前記ボルト(23)の周囲に空き領域を残すための凹部(25)を有する、
ことを特徴とする、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法は、ヒーター(16)を、前記顎部(9)間の前記第1の部分(8A)に隣接する位置に設置して、前記第1の部分(8A)を加熱し、前記クランプユニット(7)を前記フランジ(2)に取り付ける前に、前記ヒーターを取り外すことを含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記クランプユニット(7)のそれぞれが、前記フランジ(2)の円周の1/6以下の、前記フランジ(2)の角度セグメントにまたがり、
前記方法は、前記管状部材(1)の周りの隣接する前記フランジ(2)上に、等しい角度距離をもって、少なくとも3つのクランプユニット(7)を位置決めすることを含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記管状部材(1)の直径が2,000mmより大きい、
ことを特徴とする、請求項1乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記顎部(9)の長さは、100~400mmの範囲であり、
前記顎部(9)間の前記受け部(10)にわたる前記幅Wは、200~600mmの範囲である、
ことを特徴とする、請求項1乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記第1の部分(8A)を150度~300度の範囲の温度に加熱して、前記受け部(10)の縁部で、前記幅Wを0.5~3mmの範囲で増加させることを含む、
ことを特徴とする、請求項1乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隣接するフランジ同士を固定して、オフショア構造物におけるパイプライン又は他の大口径管状部材を連結する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、パイプラインを相互に接続したり、ポンプ場に接続したりするために、パイプラインの端には、フランジが設けられている。例えば、フランジは、パイプ端部の周囲にカラーとして設けられている。相互接続のために、フランジには、締め付け時に隣接する2つのフランジを同時に引っ張るための、ボルト用の貫通穴が設けられている。
【0003】
カラーにボルト用の穴が設けられていない場合として、特許文献1には、両方の隣接するカラーの背面に配置された2組のクランプシートを含む代替コネクタが開示されており、クランプシートはボルトで接続されるため、カラーに欠けているボルトホールを補うことができる。パイプ上のボルト締めクランプユニットは、特許文献2及び特許文献3にも開示されている。特許文献4は、ボルトのないU字型のパイプコネクタを開示しており、ポリマー淡気パイプの2つのフランジが、その弾性力によりクランプされている。特許文献5には、さらなる代替が開示されており、それによると、水道管の隣接する2つのフランジに、事前に変形されたポリマークランプが配置され、その後加熱される。この加熱により、予め誘発された収縮力が解放される。
【0004】
特許文献6には、端部にフランジを有するパイプ用の代替コネクタが開示されており、複数のクランプユニットがパイプセクションの周囲に配置され、隣接するカラーの角度セグメントが同時にクランプされる。クランプユニットはネジ機構で締め付けられる。
【0005】
いずれの場合も、パイプの接続には、フランジ接続を締結するという当初の目的を果たすボルトが含まれてはいるが、これらのボルトやフランジ間の締結ガスケットにおいて、時間の経過とともに、材料のクリープ特性により、締結の緩みが発生する場合がある。特に深海パイプラインの場合、ボルトの締め付けを新たに行うことは非常に困難である。そのため、オフショア構造物における大口径パイプ接続には、長期間にわたってパイプ接続が保たれるものを利用することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/3771198号明細書
【特許文献2】韓国登録特許第10-1159146号公報
【特許文献3】韓国公開特許第2010-0087978号公報
【特許文献4】独国特許出願公開第2435252号明細書
【特許文献5】中国特許出願公開第423209号明細書
【特許文献6】米国特許第10584816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、当該技術分野の改善にある。特に、オフショア構造物の大口径管状部材、例えば、パイプとポンプ又は他のパイプとの接続に代替接続を提供することを目的とする。この目的及びさらなる利点は、以下に記載の、そして、特許請求の範囲に記載の、オフショア構造物における管状部材の接続方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
端的に言えば、本方法は、複数のクランプユニットによって隣接する2つのパイプフランジを固定することを含み、各クランプユニットは、その受け部内に隣接するフランジを受容するため、熱膨張する。詳細は以下で説明する。
【0009】
本発明は、直径が1m以上、典型的には2mを超える大口径の管状部材を対象とする。
【0010】
冒頭で述べたように、オフショア関連産業におけるパイプ及びその他の管状部材は、典型的には、その端部に半径方向外側に突出するフランジを備えている。これにより、互いに隣接するフランジで位置決めされた後、管状部材を端同士で接続することができる。
【0011】
隣接するフランジを互いに固定するために、複数のクランプユニットが設けられ、隣接するフランジの種々の所定セグメント上に配置される。パイプセクションのフランジの典型的な設計においては、パイプ用であっても、また、ポンプなどの他の部材用であっても、フランジは、パイプセクション端部の円筒状壁の周りのカラーを備える。
【0012】
各クランプユニットは、第1の部分を有するベースを有し、第1の部分から対向する顎部が延在し、その間に所定セグメントのうちの1つを受容・収容する受け部が形成される。
【0013】
例えば、大口径の管状部材の場合、顎部の長さは100~400mmの範囲である。顎部間に受容可能な幅Wは、例えば、200~600mmの範囲である。
【0014】
「所定セグメント」という用語は、ここでは、フランジの、受け部の内側に収容される部分に対して使用される。所定セグメントは、フランジのカラーの角度セグメントのほぼ全体を指す場合があるが、多くの場合、所定セグメントは、カラーの全角度セグメントの一部分である。これは、フランジ、例えばカラーが、隣接するフランジを互いに追加固定する際、両方のフランジを貫通するボルトも含む場合に、特に当てはまる。後者の場合、クランプとボルトにより二重に固定されることとなる。
【0015】
クランプの一般的な角度スパンは、フランジの円周の1/6未満である。等しい圧力を付与するために、少なくとも3つのクランプユニットが、好ましくは、管状部材の周りの等しい角度距離をもって、フランジ上に配置される。典型的には、3つ以上の、例えば少なくとも6個又は8個のクランプユニットが設けられる。多くの場合、クランプの数は合わせて、フランジの円周全体にわたる。
【0016】
受け部は、対向する顎部の間に幅Wを有する。ベースの第1の部分が周囲温度である場合、隣接するフランジを組み合わせた厚さに対して、受け部の幅が、隣接するフランジの所定セグメントを受容することができないほどの小ささとなるよう、クランプユニットを設計する。隣接するフランジの所定セグメントを受け部内で実際に受容するために、ベースの第1の部分が加熱され、第1の部分の熱膨張によって、受け部の幅Wを増加させる。
【0017】
例えば、ヒーターが顎部の間に設けられ、例えば、電気加熱部材をベースの第1の部分に取り付けるか、又は、ガス炎をそれに向けて当てることによって、熱をベースの第1の部分に対して当てる。加熱後、クランプがフランジに位置決めされる前に、ヒーターを取り外す。ただし、原則として、電流が印加されたときにベースの特定の部分を加熱する、電気加熱プローブなどを、ヒーターとしてベースと一体化することも可能である。
【0018】
受け部の幅が大きくなると、クランプユニットは、受け部内の隣接するフランジの所定セグメントとともに、隣接するフランジ上に配置される。位置決め後、第1の部分の温度は再び周囲温度まで低下し、これにより第1の部分が熱収縮する。その結果、顎部間の幅Wが減少し、収縮により隣接するフランジを顎部で同時に押圧する。
【0019】
例えば、加熱によって顎部間の幅を均等に広げてもよい。これは、ベースの均一な膨張を実現するにあたり、ベースの第1の部分だけでなく、ベース全体を加熱することによって可能となる。
【0020】
しかし、顎部間の幅を不均一に増加させた方が有用であることが分かっているこの場合、ベースは不均一に加熱され、互いに機械的に接続されている2つの部分のうち、第2の部分よりも第1の部分でより多くの熱膨張が達成される。具体的な実施形態において、クランプユニットがフランジに取り付けられている場合、第2の部分は顎部から離れ、フランジから離間して対向している。
【0021】
例えば、ベースの第1の部分及び第2の部分は、金属ブロックからなる部分であり、任意には、鋼又は鋳鉄からなる。例えば、これら2つの部分は、金属ブロックとして一体化されており、該金属ブロックは、2つの部分がそれぞれ両端に設けられた、単一の金属片として提供される。
【0022】
或いは、ベースの第1の部分と第2の部分との間には、加熱中の第1の部分から第2の部分への熱エネルギーの伝達を防止又は遅延させるために、絶縁空間が設けられる。任意に、第1及び第2の部分は、それらの端部で機械的に連結された2つの金属ブロックであってもよい。他の実施形態では、金属ブロックは、ブロックの中央部を貫通する空隙を有する、箱型形状を有する。第2の部分に熱が到達するためには、第1の部分からの熱が空隙の周囲に伝導されなければならず、このような配置により、第1の部分から第2の部分への熱伝導を遅らせることができる。
【0023】
第2の部分ではなく第1の部分への加熱を行うことで、第1の部分を第2の部分よりも多く熱膨張させる。その結果、第1の部分が第2の部分よりも膨張し、ベースを不均一に膨張させる。第1の部分が顎部に近く、第2の部分が顎部から離間しているため、第1の部分の近くよりも、第1の部分から遠い受け部の縁部において、受け部の幅の増加が大きくなることで、不均一に膨張することに応じて、顎部間の角度が変化する。クランプの位置決めにおいて、隣接するフランジの端が受け部の端にある顎部間の隙間に収まると、クランプのフランジへの前進が容易になるため、有利である。
【0024】
例えば、隣り合うフランジの所定セグメントが最大の厚さTmaxを有する場合、加熱によって受け部の幅を少なくともTmaxまで増加させる。これにより、クランプユニットを所定セグメントに嵌め込む。
【0025】
これは、顎部が受け部に対して幅W0を有し、フランジが厚さT0を有する平行な内側面を有する場合に、所定セグメントを受け部に適切に嵌めるために必要となる。この場合、所定セグメントは、一定の厚さT0>W0を有している。受け部の幅を厚さT0よりも大きくするための熱膨張において、こうした厚さを有している必要がある。
【0026】
加熱によって受け部の幅を少なくともTmaxに増加させることは、隣接するフランジの所定セグメントが半径方向に増加する厚さを有する場合、例えば直線的に増加する厚さを有する場合にも必要である。これにより、顎部が所定セグメントを受容し始める際、セグメントの厚さを最大にする。
【0027】
例えば、所定セグメントの形状は、径方向外側に向かって、最小の厚さから最大の厚さTmaxにかけて、距離Dにわたり増加する厚さを有する形状である。次に、受け部は、対応する距離D’にわたってベースに向かって最大幅Wmax=Tmaxまで、例えば直線的に増加した幅Wを有する、対応する内部形状を有する。次いで、顎部間の角度が、ベースの不均一な熱膨張によって増加する。これにより、最大厚さTmaxの位置で受け部の端がセグメント上を通過するよう、受け部の端での幅の増加を、第1の部分に近いところでの幅の増加よりも大きくする。
【0028】
上記の例とは対照的に、受け部全体にわたって少なくともTmaxまで加熱することによって受け部の幅を大きくすることは、必ずしも必要条件ではないことは、以下の議論から明らかになるであろう。
【0029】
一部の実施形態において、顎部のうちの少なくとも1つは、受け部に向かう側面に凸状曲面を有する。任意で、凸状曲面は、受け部に沿った極座標角の関数としての幅が一定で、かつ、半径方向に湾曲するように、半径方向に設けられる。或いは、曲面は、顎部から受け部に延びる凸状の湾曲した突起として設けられる。このような突起のうち、いくつかは、2つの顎部のうちの少なくとも1つの内側に設けられ得る。そのような突起が両方の顎部に設けられている場合、突起の位置は対向している必要はなく、一方の顎部と他方の顎部とで異なるよう、配置することができる。
【0030】
このような曲面、例えば突起は、フランジに追加で弾性圧力を与えるために用いることができる。この目的において、受け部の幅は、顎部間の所定セグメントの一部のみを受容するように熱膨張によって十分に増加しているが、これは、所定セグメントが、凸状曲面の極限位置を受け部内の所定セグメントの所定の最終位置に向けて通過することができない程度の増加幅である。所定セグメントが極限位置を通過するために、クランプユニットは、顎部の材料の弾性力を上回る前進力を伴って前進する。この前進力は、通常、ベースを多少延伸させる程度のものである。こうした力をさらに加えることにより、所定セグメントが極限位置を通過するのに充分な程度に、顎部が互いに離間する方向に押圧される。所定セグメントが受け部内部でその所定位置に達すると、第1の部分の温度を周囲温度まで下げる際の熱収縮によって、極端位置での顎部の弾性力が増大する。例えば、この極端位置において、受け部の最小幅Wminが画定され得る。
【0031】
曲面によって生じる障害物、例えば、突起を乗り越えるために必要な力は、顎部の材質、隣接するフランジの所定セグメントが通過する際に顎部が押圧されて離間する距離、そして、障害物の位置自体の位置に依存する。これは、受け部の端近くの障害物のほうが、ベースに近い障害物と比較して、押し出しやすいためである。また、こうした力は、曲面の形成方法にも依存する。例えば、曲面が受け部のエッジに向かって、わずかな、場合によっては、一定の傾斜を有している場合、フランジは挿入の初期段階から比較的長い距離にわたって顎部を互いに離間するよう押圧する。そのため、比較的少ない前進力を加えるだけで、顎部の離間・押圧が可能となる。
【0032】
例えば、曲面の極限位置では、セグメントが障害物を通過するために、さらに1mmだけ顎部を押し広げる必要がある場合がある。エッジに向かう曲線の小さな傾斜が200mmを超える場合、フランジは1/200=5マイクロメートルの間隔で押圧する必要がある。これにより、顎部を押し広げるために必要な力が最小限に抑えられる。典型的には、所定セグメントが極限位置を受け部に自由に通過する際、増加した前進力によって顎部がさらに離間・押圧される幅は、0.5~3mmの範囲である。
【0033】
所定セグメントを受け部内の所定位置に配置し、かつベースが再び冷却された場合、曲面はフランジに追加の集中弾性力を付与する。この弾性力は、凸状曲面の極限位置が受け部の端に対して、ベースに近づくほど、大きくなる。クランプの材料やフランジの材料、又はフランジ間のガスケットの材料が長期間のクリープの影響を受けている場合でも、曲線は、例えば突起の形状で、フランジに対して弾性圧力を維持する。
【0034】
任意で、フランジには管状部材の周りに複数のボルト穴が設けられ、ボルトが穴を通ってフランジを互いに固定するための追加の対策が施されている。この場合、各クランプユニットの顎部がボルト間のフランジセグメントに広がり、圧力領域を最適化する一方で、ボルト周りにはボルトを締めるためのスペースが確保されていると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
本発明は、図面を参照してより詳細に説明される。図面は以下の通りである。
【
図1A】
図1Aは、カラーを有する、2本のパイプセクションを示す。
【
図1B】
図1Bは、端同士で接触したパイプセクションを示す。
【
図1C】
図1Cは、カラー上の角度セグメントにおいてクランプユニットを配置した様子を示す。
【
図1D】
図1Dは、カラー上の2つのクランプユニットを示す。
【
図3A】
図3Aは、クランプユニットと隣接するフランジの断面図である。
【
図3B】
図3Bは、ベースの不均一な熱膨張により傾斜した顎部を示す。
【
図3C】
図3Cは、受け部内での隣接したフランジの最終位置を示す。
【
図5】
図5は、原理及び可能な寸法の説明図である。
【
図6A】
図6Aは、曲面を有するクランプユニットの断面図である。
【
図6B】
図6Bは、ベースの熱膨張にもかかわらずフランジへのアクセスを遮断する曲面を有する場合の断面図である。
【
図8A】
図8Aは、平行に延びた隣接するフランジの形状を示す。
【
図8B】
図8Bは、直線的に厚みが増した隣接するフランジの形状を示す。
【
図8C】
図8Cは、段階的に厚さが増加した隣接するフランジの形状を示す。
【
図8D】
図8Dは、段階的に厚さが増加した隣接するフランジの形状を示す。
【
図10A】
図10Aは、クランプユニット7が凹部25を備える実勢形態の斜視図である。
【
図10B】
図10Bは、クランプユニット7が凹部25を備える実勢形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1Aは、2つの管状構造1を示しており、各々は、円筒状のパイプセクション4、4’の端部3にフランジ2を有する。例えば、一方の配管部4はオフショア配管の終端部であり、他方の配管部4’は、このようなオフショア配管に接続されるポンプの一部である。
【0037】
フランジ2は、管部4の周囲にカラー5を備え、管部4,4’の外面6に締結される、典型的な構成である。但し、フランジ2は、パイプセクション4の端部3の周囲ではなく、パイプセクション4の長手方向に沿って、パイプセクション4の端部3に締結されていてもよい。
【0038】
カラー5は、前面5Aと後面5Bとを有しており、これらは平行であるが、以下に例を挙げて説明するように、必須ではない。図示の実施形態では、典型的に、カラー5は円形の輪郭を有しているが、本発明の必須事項ではない。
【0039】
図1Bは、2つのパイプセクション4,4’が、2つのフランジ2が互いに隣接し、カラー5が互いに対向して端同士で位置決めされている状況を例示している。図示例では、簡素化のため、2つのカラー5は互いに当接しているが、フランジ2の間にガスケットが配置され得るので、常に当接状態にあるわけではない。クランプユニット7は、ベース8と、ベース8の一方の側から延びる2つの顎部9とを有し、顎部9の間に受け部10を設けている。
【0040】
隣接するフランジ2のセグメント11は、クランプユニット7をカラー5の上に移動させることによって受け部10に取り込まれる(
図1Cの矢印12で示す)。
【0041】
図示されている状況では、受け部10は隣接するカラー5の完全な角セグメントを占めている。ただし、受け部10で占められるセグメント11は、カラー5の完全な角セグメントである必要はなく、カラー5の全角セグメントよりも小さい、隣接するフランジ2の一部であってもよい。
【0042】
図1Dは、2つのクランプユニット7がカラー5上に並んで配置された状況を示している。クランプユニット7をカラー5の周囲に並べて位置決めし続けることにより、カラー5全体を、
図1Eに例示する複数の受け部10で占めていてもよい。
【0043】
図2は、クランプユニット7の断面を例示している。クランプユニット7は、ベース8と、ベース8の第1の部分8Aから延びる2つの顎部9とを有し、顎部9の間に受け部10を設けている。顎部9間の距離は、受け部10の幅Wを画定する。図示の実施形態では、受け部10全体で幅Wが一定となり、受け部10の外縁14での幅W
eが顎部9間のいかなる位置でも一定となるよう、顎部9が受け部10に対して平行な側面9Aを有している。但し、後述する実施例で説明するように、この一定幅Wは必ずしも上記の通りである必要はなく、また、カラー5の後面5Bが平行である必要もない。
【0044】
幅Wが変化する場合、幅は受け部内の位置の関数として表される。例えば、Wは極座標に依存する関数として表され、W=funct(r,θ)となる。ここで、rは径方向の座標、θは角度座標であり、パイプセクション4の中心長手方向軸15を座標の基準とした。その中心軸と座標については
図1Cを参照されたい。この場合、幅Wは、中心長手軸15に平行な方向に測定される。ただし、この例に限らず、他の式によってもWを表すことができる。
【0045】
図3Aでは、隣接する2つのカラー5の断面が、2つのパイプセクション4,4’の一部とともに示されている。2つのカラー5の前面5Aには、段差17が例示されている。段差17により、クランプユニット7をカラー5上に配置したときに、正確な嵌合が得られ、カラー5の相互摺動が回避される。
【0046】
クランプユニット7が実際に2つのフランジ2をカラー5によって互いに挟持して固定するためには、クランプユニット7の顎部9により、フランジ2に圧力を掛ける必要がある。
【0047】
また、隣接するフランジ2のカラー5は、フランジ2の平行な5B間で測定した厚さTを有しており、クランプユニット7の受け部10の幅Wよりも僅かに大きい。幅Wを厚さTに合わせるために、ベース8を熱源16で加熱し、熱膨張させる。例えば、ベース8は、15度から150度以上の周囲温度から、例えば150度~300度の範囲で加熱され、受け部の縁部で幅Wを0.5~3mmの範囲で増加させる。
【0048】
鋼などの金属の一般的な膨張係数は、ケルビン1度あたり10-5である。W=400mmで、15度から265度まで250ケルビンの加熱の場合、第1の部分は、10-5×250×400=1mmになる。精密に作られた顎部とカラーの場合、カラー5の上にクランプ7を嵌め込むのに十分であり得る。
【0049】
しかしながら、
図3Bに例示されるような改良された方法が見出された。この場合、ベース8の加熱は、ベース8が不均一に加熱されるよう、実行される。熱は、ベース8の第1の部分8Aに付与されるが、第2の部分8Bは加熱されないか、あるいは、第1の部分8Aから第2の部分8Bへの熱伝導によって、加熱が遅延する。第2の部分と比較して、第1の部分8Aの温度が高いため、第1の部分8Aにおける最大の膨張により、ベース8全体としては不均一に膨張する。その結果、顎部9は、顎部9の平行な配向を維持することなく、互いに押し離される。また、顎部9は、拡張されていない第2の部分8Bに対する第1の部分8Aの膨張によって画定される角度によって、角度が付けられる。
【0050】
角度付き膨張は、
図5と組み合わせて
図4を参照することでよりよく理解され得る。
図4に例示するように、ベースは、ベース8の第1の部分8Aと第2の部分8Bとの間に空隙18を含んでいる。空隙18は、第1の部分8Aと第2の部分8Bとの間の部分的な絶縁として作用し、第1の部分8Aから第2の部分8Bへの熱エネルギー伝達を遅らせる。
図5に例示するように、第1の部分が1mm程度に膨張し、第1の部分8Aと第2の部分8Bとの間の距離Dを200mmとし、顎部の長さLを400mmと仮定すると、
図5の簡素化された例示において、ギャップが第1の部分の膨張の4倍に増加することが容易に認識される。
図5の第1の部分の1mmの膨張と寸法は、縮尺ではなく、精密でもなく、例示のための大まかな例にすぎないものの、典型的なオフショアパイプ接続におけるサイズや、受け部の幅の拡張可能な寸法のイメージを持たせるものである。
【0051】
受け部の外縁部における幅W
eを数ミリメートル増加させることで、クランプユニット7のフランジ2上への位置決めが容易になり、また、
図3Cに例示されるように、フランジ2の所定セグメント全体が受け部10内で取り込まれるだけでなく、フランジ2が顎部9によって互いに確実に押圧される。第1の部分8Aの温度が周囲温度に戻ると、ベース8は熱収縮を受けて元の状態に戻る。カラー5の厚さTが顎部9を再び収縮させる程度まで、顎部9に対するベース8から生じる弾性力が残り、フランジ2を互いに押圧する。
【0052】
フランジ2のカラー5に対するクランプユニット7の弾性力を増加させるためには、
図6A及び
図6Bに図示されているような実施形態が有用であることがわかった。この場合、一方の顎部9、又は、両顎部9の内側9Aには、曲面20が設けられている。
【0053】
曲面20は、対応する顎部9全体の内側9Aに径方向の表面形状として任意に設けられている。或いは、対応する顎部9全体の内側面9A全体が湾曲しているのではなく、曲面20が顎部9の内面9Aに突起として設けられている。さらなる代替として、
図7に例示するように、このような突起20が複数個、顎部の内面9Aに設けられている。
【0054】
図6Aの曲面20は、加熱及び熱膨張によって増加した受け部10の幅よりも小さい距離だけ、受け部に向かって、そしてその内部に突出している。これにより、曲面20があっても、クランプユニット7は、隣接するフランジ2を超えて、容易に摺動移動しながら位置決めされる。しかしながら、ベース8が収縮すると、曲面20は、例えば複数の突起の形態で、フランジ2に対し、追加の弾性力を付与する。そのため、材料の長期的なクリープによる締結不足が起こらない。
【0055】
クランプユニットからの弾性力を高めるために、曲面は、第1部8Aの熱膨張による増加幅よりも長い距離で、受け部10内に延在する。この場合、
図6Bに例示されているように、フランジが充分に離間していないため、隣接するフランジ2が受け部10内に自由に収容されない。この場合、クランプユニット7は、曲面20’がフランジ2を越えてのクランプユニット7の前進を阻止するまで、フランジ上を移動する。クランプユニット7をさらに前進させるためには、増加した前進力により、前進が阻止される位置に至るまで曲面20’の極端位置26を押圧する。この前進は、ベース8及び/又は顎部9の弾性材料によって達成されてもよく、両者とも典型的には金属からなる。この実施形態では、比較的大きな突起20’により、フランジ2を同時に押圧する弾性力が追加される。
【0056】
図6Bに例示されるように、受け部10の縁部よりも、ベース8に近いほうが、極限位置26を有する曲面20’による受け部10の収縮幅が大きい。これは、顎部によって生じるフランジへの圧力がベース近くで最も高いという点で有利である。
【0057】
図7は、2つのタイプの20及び20’の、想定され得る突出パターンを示す。突起の位置とサイズ、及び突起の種類は、ここでは例示としてのみ使用されるが、種々の寸法と構成で提供され得る。
【0058】
図8は、フランジ2と顎部9の組み合わせの異なる例を示す。
図8Aでは、隣接するフランジ2は平行に延びており、受け部の対向する顎部9も同様である。
図8Bにおいて、フランジ2、例えば、フランジ2のカラーは、パイプセクション4からの距離に伴って直線的に厚みが増し、これに対応して、受け部の幅はパイプセクション4からの径方向の距離に比例して減少する。フランジ2の厚さの増加は、例えば滑らかに湾曲させることによって、非線形に増加させることもできる。
図8Cでは、厚さの増加は段階的であり、フランジ2の肩部21が設けられ、その後ろに顎部9が最適に嵌合するように引っ掛けられる。
図8Dでは、
図8Cと同様の構成が図示されているが、傾斜した肩部21’が設けられており、フランジ2への顎部9の取り付け、特に、肩部21’への嵌合を容易にする。
【0059】
図9A及び
図9Bは、さらなる実施形態を示しており、各クランプユニット7は、フランジ5の円周のわずかな部分、つまりパイプセクション4の周りの円の5度~10度程度にまたがる。これにより、各クランプユニット7が
図1Eに例示するように円の1/8にまたがる場合と比較して、軽量化を図ることができる。挿入を容易にするために、クランプユニット7は、例えばクレーンによる吊り上げ用の吊り上げアイ22を備える。
【0060】
斜視図である
図10A及び断面図である10Bは、クランプユニット7が凹部25を備える実施形態を示す。凹部25により、フランジ5を同時に押圧するための追加手段として使用される、ボルト接続部23へのアクセスが可能となる。圧力を最適化するために、クランプ7は、ボルト接続部23の間の領域まで延びる部分24を有する。
【国際調査報告】