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特表2024-522886咳喘息を治療する薬物の製造における漢方薬組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】咳喘息を治療する薬物の製造における漢方薬組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/18 20060101AFI20240614BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/238 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/232 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/25 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/233 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/23 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/234 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/346 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20240614BHJP
   A61K 36/076 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 11/14 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 11/10 20060101ALI20240614BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K36/18
A61K36/53
A61K36/238
A61K36/232
A61K36/25
A61K36/233
A61K36/23
A61K36/234
A61K36/752
A61K36/346
A61K36/484
A61K36/076
A61P11/14
A61P11/10
A61P11/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579525
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 CN2022101536
(87)【国際公開番号】W WO2023274150
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110729350.1
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511182437
【氏名又は名称】山▲東▼新▲時▼代▲薬▼▲業▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANDONG NEW TIME PHARMACEUTICAL CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1,North Outer Ring Road,Feixian Country,Shandong 273400,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン グイミン
(72)【発明者】
【氏名】リー シン
(72)【発明者】
【氏名】リウ ドングアン
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AA04
4C088AB17
4C088AB30
4C088AB38
4C088AB40
4C088AB41
4C088AB60
4C088AB62
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA10
4C088CA05
4C088CA06
4C088CA15
4C088MA17
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA62
4C088ZA63
(57)【要約】
荊芥、防風、羌活、独活、柴胡、前胡、センキュウ、枳殻、茯苓、桔梗、甘草で製造される漢方薬組成物を提供する。該漢方薬組成物は、咳喘息モルモットモデルの咳の回数を減らし、気管支肺胞洗浄液中の好酸球の割合を低下させ、血清好酸球カチオン性タンパク質レベルを下げることができ、咳喘息に対して予防・治療効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咳喘息を治療する薬物の製造における、荊芥、防風、羌活、独活、柴胡、前胡、センキュウ、枳殻、茯苓、桔梗、甘草からなる漢方薬組成物の使用。
【請求項2】
前記咳喘息は、寒哮、熱哮、外寒内熱型、肺実腎虚型のうちのいずれか1つのタイプである、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
咳喘息患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球の割合、及び血清好酸球カチオン性タンパク質レベルを低下させる、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記漢方薬組成物は、主な原料として、
荊芥5~30重量部と、防風5~30重量部と、羌活5~30重量部と、独活5~30重量部と、柴胡3~25重量部と、前胡3~25重量部と、センキュウ5~30重量部と、枳殻3~25重量部と、茯苓5~30重量部と、桔梗3~25重量部と、甘草1~10重量部と、で製造される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記漢方薬組成物は、主な原料として、
荊芥10~20重量部と、防風10~20重量部と、羌活10~20重量部と、独活10~20重量部と、柴胡3~20重量部と、前胡3~20重量部と、センキュウ10~20重量部と、枳殻3~20重量部と、茯苓10~25重量部と、桔梗3~20重量部と、甘草1~8重量部と、で製造される、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記漢方薬組成物は、主な原料として、
荊芥15重量部と、防風15重量部と、羌活15重量部と、独活15重量部と、柴胡15重量部と、前胡15重量部と、センキュウ15重量部と、枳殻15重量部と、茯苓15重量部と、桔梗15重量部と、甘草5重量部と、で製造される、ことを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記漢方薬組成物の製造方法は、
荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻を蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備えるステップAと、
ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を10~40%のエタノール溶液に調製して、使用に備えるステップBと、
茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合して、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備えるステップCと、
柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に、水を加えて煎じ、煎じ液を濃縮して、使用に備えるステップDと、
ステップCで得られた浸出液とステップDで得られた煎じ液を混合して濃縮し、ステップAで得られた揮発性油を加えると、前記漢方薬組成物を得るステップEと、
を含み、
好ましくは、ステップBにおいては、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻水溶液を15~30%のエタノール溶液に調製し、使用に備え、
さらに好ましくは、ステップBにおいては、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻水溶液を25%のエタノール溶液に調製し、使用に備える、
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記漢方薬組成物は、1種又は複数種の薬学的に許容される医薬品賦形剤を含有しない、又は含有するである、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記漢方薬組成物は、錠剤、経口液剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、及び液体経口製剤のうちの1種又は複数種に製造されることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記経口製剤は顆粒剤であることを特徴とする請求項9に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漢方薬組成物の新しい用途に関し、具体的には、咳喘息症を治療する薬物の製造における漢方薬組成物の使用に関し、漢方薬の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
咳喘息(CVA:cough variant asthma)は、咳型喘息とも呼ばれ、過去には、アレルギー性気管支炎、アレルギー性咳や隠匿性喘息と呼ばれ、主に、繰り返しの空咳が主で、咽喉部の痒みを伴い、たまに咳出にくい少量の白い痰があり、咳は一般に陣発性、痙攣急性を呈し、激しい咳の時は息が急で、息が続かないことがあり、また声が低く息が短いなどの症状があり、一部の患者は夜間に激しい咳をし、睡眠に深刻な影響を与える。
【0003】
咳喘息は慢性咳を特徴とする。現代医学では、その誘因は、ほとんど、気道の刺激(煙、冷たい空気やアレルゲンなど)であり、咳がその唯一の表現であり、喘息を伴わない場合もあり、治療は喘息とほぼ同じであると考えられている。漢方医学の臨床では、それを「咳」、「哮証」、「風咳」、「肺痺」、「咽頭源性咳」などに分類し、「喘証」に分類することもある。咳喘息の症状を「咳」、「内傷咳」に分類して弁証治療を行うこともできる。この疾患は、多くの場合、邪実正虚(邪気の過剰により体の免疫力が低下する)、虚実夾雑(過剰な邪気と免疫力低下が同時に存在する)に属する。邪実は、主に、痰湿や痰熱が肺に蓄積され、肝火が肺に影響を与えることであり、正虚は、主に、肺陰損虚、肺脾両虚、肺腎両虚である。治療としては、邪を払い咳を止めると同時に、正を補強し、虚を補うことで、肺、脾臓、腎臓の3つの臓器を配慮する必要がある。
【0004】
咳喘息の発生機序と病因について、まだ正確な理解がないため、多くの学者は典型的な喘息病の機序と一致し、すなわち、気道アレルギー性炎症であると考えており、このため、現在の治療は基本的に対症療法である。咳喘息に対するよくある治療方法は、環境予防とホルモン療法などを含む。急性期では、西洋薬でコントロールし、寛解期では、漢方薬と西洋薬を併用して治療する。
【0005】
咳症状によく見られる漢方医学の弁証分類方式は以下の通りである。
【0006】
(1)悪寒は肺を襲う。咳の声が重く、痰が薄く色が白く、悪寒や発熱があり、汗がない。舌苔が薄く白く、浮脈と緊脈の両方が認められる。
【0007】
(2)風熱は肺を犯す。咳と息切れがあり、痰が高粘度で白色や黄色で、喉の痛みやかすれた咳があり、又は発熱があり、寒さに弱く、喉が少し渇く。舌先が赤色で、苔が薄い白色や黄色で、脈が表面的で速い。
【0008】
(3)燥邪は肺を損傷する。痰を伴わないコンコンといった空咳が出て、痰の喀出が困難で、鼻や咽頭が乾燥しており、口が乾燥する。舌先が赤く、苔が薄く黄色で、唾液が少なく、脈は糸のように細いであるが、強力で速く鼓動する。
【0009】
(4)痰熱は肺に蓄積される。咳と息切れがあり、痰が多くて濃く、黄色で、イライラしており、熱くて口が乾燥する。舌が赤く、苔が黄色で、脈が皿の中を転がるボールのように感じられ、脈の拍動が速い。
【0010】
(5)肝火は肺を犯す。咳をして、窒息のような状態を引き起こし、しゃっくりを伴い、咳をするときに胸部が痛み、深刻な場合は喀血もあり、舌が赤く、苔が薄く黄色で、唾液が少なく、脈拍が緊張していて強く、一定の規則性があり、脈拍の速度が速い。
【0011】
(6)痰湿は肺に蓄積される。咳の音が重くて、白色の痰が多く、朝の時に深刻で、胸が苦しくて心窩部の膨満感があり、食欲が悪い。舌苔が白くて、脈が皿の中を転がるボールのように感じられる。
【0012】
(7)肺陰は欠乏している。咳が長続き、痰が少なく、痰の喀出が困難で、痰が粘っこく、痰に血が混じっており、咽頭が乾いて口が乾燥して、手のひらと足の裏が発熱する。舌が赤く、苔が少なく、脈は糸のように細いであるが、強力で速く鼓動する。
【0013】
(8)肺気は欠乏している。病気が長続き、咳の音が低く、咳は喘息を伴い、痰が薄く白色で、食欲が悪く、息が短く、息苦しく、元気がなく、発汗があり、寒さに弱い。舌が赤く、苔が白く、脈が弱い。
【0014】
楊徳義(楊徳義、『二麻合荊防敗毒散による咳喘息57例を治療する』[J].江西中医薬、2006(7):32)は、麻黄、麻黄根合荊防敗毒散を用いて咳喘息57例を治療し、かつ、治療効果が顕著であった。麻黄の主要な有効成分であるエフェドリンは、体の複数の系に作用することができ、心血管と中枢神経系に深刻な副作用をもたらすことがある(『エフェドリンの副作用と関連研究現状』[J].国外医学漢方漢薬分冊、2005,27(3):155-156)。劉暁帥ら(荊防散による一酸化窒素合成酵素-一酸化窒素経路の抗炎症機序の実験研究[J].時珍国医国薬、2008,19(12):3014-3015.)はオボアルブミン誘発マウス喘息モデル及びカラギーナン誘発ラット胸膜炎モデルを用いて、荊防散処置後のラット胸腔滲出液とマウス肺組織ホモジネート中のNOS、iNOS活性、及びNO含有量の変化を観察し、荊防散の抗炎症作用機序を検討した。荊防顆粒は、荊芥、防風、羌活、独活、柴胡、センキュウ、枳殻、桔梗、甘草などを配合したものであり、発汗を促進して解表を有し、風邪や痰を取り除き、肺に蓄積された汚れを除去し咳を止めることができ、外感風寒に用いた場合、一連の症状に対して良好な効果を持つことが知られている。咳喘息も、外感風寒により誘発又は悪化することがあり、実際の臨床応用において、咳喘息が荊防顆粒の新しい適応症であることを発見し、特に咳弁証は風寒が肺を襲うことによると考えられ、痰湿が肺に蓄積されるなどによる寒咳については、効果は更に良く、これらの臨床経験は、この製品の更なる開発・利用にサポートを提供した。現在、咳喘息に用いられ得る荊防顆粒の処方に対する報告はまだなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の主な目的は、羌活、独活、茯苓、防風、荊芥、センキュウ、桔梗、柴胡、前胡、枳殻、甘草を用いて製造された漢方薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、従来の製品である荊防顆粒に基づいて、その用途をさらに開発する。
【0017】
本発明者らは、荊防顆粒による咳喘息の治療を検討した結果、荊防顆粒が咳喘息に用いられる場合の効果が顕著で、患者に利用可能な薬物となる。本発明に使用される荊防顆粒の処方には、麻黄と麻黄根がないため、麻黄と麻黄根による副作用をなくし、安全上のリスクを低減させる。
【0018】
本発明の目的の1つは、主に、荊芥、防風、羌活、独活、柴胡、センキュウ、枳殻、茯苓、桔梗、甘草からなる漢方薬組成物を提供することであり、すなわち、前記漢方薬組成物は、主に、以下の原料成分で製造される。
荊芥5~30重量部、防風5~30重量部、羌活5~30重量部、
独活5~30重量部、柴胡3~25重量部、前胡3~25重量部、
センキュウ5~30重量部、枳殻3~25重量部、茯苓5~30重量部、
桔梗3~25重量部、甘草1~10重量部。
【0019】
好ましくは、前記漢方薬組成物は、主に、以下の原料成分で製造される。
荊芥10~20重量部、防風10~20重量部、羌活10~20重量部
独活10~20重量部、柴胡3~20重量部、前胡3~20重量部
センキュウ10~20重量部、枳殻3~20重量部、茯苓10~25重量部
桔梗3~20重量部、甘草1~8重量部。
【0020】
さらに好ましくは、前記漢方薬組成物は、主に、以下の原料成分で製造される。
荊芥15重量部、防風15重量部、羌活15重量部、
独活15重量部、柴胡15重量部、前胡15重量部、
センキュウ15重量部、枳殻15重量部、茯苓15重量部、
桔梗15重量部、甘草5重量部。
【0021】
本発明の別の目的は、咳喘息を治療する薬物の製造における、上記の漢方薬組成物の使用を提供することである。
【0022】
本発明の前記咳喘息症は、咳が主な臨床症状で、長期にわたる頑固な空咳を主とし、刺激臭(ペンキ、ガソリン、香水、花粉など)の吸入、寒気、アレルゲンへの接触、激しい運動、呼吸器感染により発症することが多く、何の誘因もなく喘息を発症する患者もある。咳喘息は夜間と早朝に多く発生し、春秋に最も多く見られる。
【0023】
本発明の前記咳喘息の臨床的特徴は以下のとおりである。2ヶ月を超える原因のない慢性咳、発作性刺激性空咳、または少量の白い泡沫様痰がある。煙やペンキ、ジクロルボスなどの化学的なにおいを吸い込むと、悪化することがある。多種の抗生物質を使用したが、効果がなく、撮影又はCT検査で明らかな異常がなかった。40%の患者は、くしゃみ、鼻水などのアレルギー性鼻炎の症状を伴うことがあり、中国国外の多くの医者は、それをアレルギー性鼻炎-気管支炎と呼ぶ。
【0024】
本発明の前記咳喘息症は、漢方医証型で分類されると、寒哮、熱哮、外寒内熱型、肺実腎虚型である。
【0025】
咳喘息(CVA:cough variant asthma)は、咳型喘息とも呼ばれ、過去にはアレルギー性気管支炎、アレルギー性咳や隠匿性喘息と呼ばれ、主に繰り返しの空咳が主で、咽喉部の痒みを伴い、たまに咳出にくい少量の白い痰があり、咳は一般に陣発性、痙攣急性を呈し、激しい咳の時は息が急で、息が続かず、声が低く息が短いなどの症状を伴うことがある。
【0026】
本発明の更なる目的は、
荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻を蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備えるステップAと、
ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を10~40%のエタノール溶液に調製して、使用に備えるステップBと、
茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合して、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備えるステップCと、
【0027】
柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に、水を加えて煎じ、煎じ液を濃縮して、使用に備えるステップDと、
ステップCで得られた浸出液とステップDで得られた煎じ液を混合して濃縮し、ステップAで得られた揮発性油を加えると、前記漢方薬組成物を得るステップEと、を含む、上記の漢方薬組成物の製造方法を提供することである。
【0028】
好ましくは、前記製造方法は、主に、
荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻を蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備えるステップAと、
ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を15~30%のエタノール溶液に調製して、使用に備えるステップBと、
茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合して、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備えるステップCと、
柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に、水を加えて煎じ、煎じ液を濃縮して、使用に備えるステップDと、
ステップCで得られた浸出液とステップDで得られた煎じ液を混合して濃縮し、ステップAで得られた揮発性油を加えると、前記漢方薬組成物を得るステップEと、を含む。
【0029】
さらに好ましくは、前記製造方法は、主に、
荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻を蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備えるステップAと、
ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を25%のエタノール溶液に調製して、使用に備えるステップBと、
茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合して、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備えるステップCと、
柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に、水を加えて煎じ、煎じ液を濃縮して、使用に備えるステップDと、
ステップCで得られた浸出液とステップDで得られた稠膏を混合して、清膏に濃縮し、ステップAで得られた揮発性油を加えると、前記漢方薬組成物を得るステップEと、を含む。
【0030】
本発明の更なる目的は、上記の漢方薬組成物を有する漢方薬製剤、すなわち、前記漢方薬組成物を通常のプロセスにより直接、医薬的に許容される補助材料を加えて製造された臨床で許容される剤形を提供することである。
【0031】
好ましくは、前記臨床で許容される経口製剤は、丸剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、及び液体経口製剤のうちの1種又は複数種であり、
【0032】
さらに好ましくは、前記経口製剤は顆粒剤である。
【発明の効果】
【0033】
従来技術と比べて、本発明は、顕著な技術的効果がある。
【0034】
本発明の漢方薬組成物は、咳喘息モデルモルモットの咳回数を著しく減少させ、その気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球率を減少させることができる。本発明の別の実施例によれば、本発明の漢方薬組成物が咳喘息ラットの咳回数を有意に減少させ、血清好酸球カチオン性タンパク質レベルを下げることが明らかになった。好酸球カチオン性タンパク質(ECP)はEOS活性化後に放出される気道上皮を損傷する毒性タンパク質であり、気道痙攣、粘膜浮腫などのアレルギー性病理変化を招き、気道の高い反応性をもたらす。本発明の漢方薬組成物は、臨床的に安全であり、咳喘息の治療に顕著な効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の実施例
咳喘息における本発明の漢方薬組成物の効能を検証するために、本発明者らは、動物試験研究を行い、以下では、一部の実験モデルのみを例として説明するが、本発明者らは、明細書に記載された他の咳喘息症状について薬理実験研究を行い、その結果、本発明の組成物は同一又は類似の効果を達成することができるので、ここでは詳しく説明しない。
【0036】
なお、以下の実験研究は、いずれも、急性毒性試験、長期毒性試験により薬物の安全性を証明した上で行われ、実験研究における薬剤投与量はいずれも安全な投与量の範囲内である。
【0037】
製造実施例1 顆粒剤の製造
処方
荊芥75g 防風75g 羌活75g 独活75g 柴胡75g 前胡75g
センキュウ75g 枳殻75g 茯苓75g 桔梗75g 甘草25g
【0038】
製造方法
ステップA:荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻をそれぞれ蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備える。
ステップB:ステップA で得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を25%のエタノール溶液に調製して、使用に備える。
ステップC:茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合して、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備える。
ステップD:柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に水を加えて、1.5時間ずつ2回煎じ、2回の煎じ液を併せて、濾過して稠膏に濃縮し、使用に備える。
ステップE:ステップCで得られた浸出液、ステップDで得られた稠膏を混合し、静置し、濾過して清膏に濃縮し、スクロースを適量加えて、均一に混合し、顆粒にして、乾燥し、ステップAで得られた揮発性油を加え、均一に混合し、漢方薬組成物を得る。
【0039】
製造実施例2 顆粒剤の製造
処方
荊芥10g 防風10g 羌活12g 独活12g 柴胡5g 前胡5g
センキュウ12g 枳殻5g 茯苓20g 桔梗5g 甘草3g
【0040】
製造方法は、実施例1と同様であった。
【0041】
製造実施例3 顆粒剤の製造
処方
荊芥30g 防風5g 羌活30g 独活5g 柴胡25g 前胡3g
センキュウ30g 枳殻3g 茯苓30g 桔梗3g 甘草10g
【0042】
製造方法は実施例1と同様であった。
【0043】
製造実施例4 経口液剤の製造
処方
荊芥5g 防風30g 羌活5g 独活30g 柴胡3g 前胡25g
センキュウ5g 枳殻25g 茯苓5g 桔梗25g 甘草1g;
【0044】
製造方法
ステップA:荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻をそれぞれ蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備える。
ステップB:ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を10%のエタノール溶液に調製し、使用に備える。
ステップC:茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合し、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液使用に備える。
ステップD:柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に水を加えて、1.5時間ずつ2回煎じ、2回の煎じ液を併せて、濾過して稠膏に濃縮し、使用に備える。
ステップE:ステップCで得られた浸出液、ステップDで得られた稠膏を混合し、静置し、濾過して清膏に濃縮し、スクロースを適量加えて、均一に混合し、ステップAで得られた揮発性油を加えて、均一に混合し、水を1000mlとあるまで加え、漢方薬組成物を得る。
【0045】
製造実施例5 シロップ剤の製造
処方
荊芥20g 防風10g 羌活20g 独活10g 柴胡20g 前胡3g
センキュウ20g 枳殻3g 茯苓25g 桔梗3g 甘草8g
【0046】
製造方法
ステップA:荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻をそれぞれ蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備える。
ステップB:ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を40%のエタノール溶液に調製し、使用に備える。
ステップC:茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合し、以ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備える。
ステップD:柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に水を加えて、1.5時間ずつ2回煎じ、2回の煎じ液を併せて、濾過して稠膏に濃縮し、使用に備える。
ステップE:ステップCで得られた浸出液、ステップDで得られた稠膏を混合し、静置し、濾過して清膏に濃縮し、スクロースを適量加えて、均一に混合し、ステップAで得られた揮発性油及びシンプルシロップ500mlを加えて、均一に混合し、静置し、濾過し、水を1000mlとなるまで加え、漢方薬組成物を得る。
【0047】
製造実施例6 錠剤の製造
処方
荊芥10g 防風20g 羌活10g 独活20g 柴胡3g 前胡20g
センキュウ10g 枳殻20g 茯苓10g 桔梗20g 甘草1g
【0048】
製造方法
ステップA:荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻をそれぞれ蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備える。
ステップB:ステップA で得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を15%のエタノール溶液に調製し、使用に備える。
ステップC:茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合し、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備える。
ステップD:柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に水を加えて、1.5時間ずつ2回煎じ、2回の煎じ液を併せて、濾過して稠膏に濃縮し、使用に備える。
ステップE:ステップCで得られた浸出液、ステップDで得られた稠膏を混合し、静置し、濾過して清膏に濃縮し、スクロースを適量加えて、均一に混合し、顆粒にして、乾燥し、ステップAで得られた揮発性油を加えて、均一に混合し、顆粒にして、補助材料を適量加えて、均一に混合し、打錠し、漢方薬組成物を得る。
【0049】
製造実施例7 カプセル剤の製造
処方
荊芥20g 防風10g 羌活20g 独活10g 柴胡20g 前胡3g
センキュウ20g 枳殻3g 茯苓25g 桔梗3g 甘草8g
【0050】
ステップA:荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻をそれぞれ蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備える。
ステップB:ステップA で得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を30%のエタノール溶液に調製し、使用に備える。
ステップC:茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合し、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備える。
ステップD:柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に水を加えて、1.5時間ずつ2回煎じ、2回の煎じ液を併せて、濾過して稠膏に濃縮し、使用に備える。
ステップE:ステップCで得られた浸出液、ステップDで得られた稠膏を混合し、静置し、濾過して清膏に濃縮し、スクロースを適量加えて、均一に混合し、顆粒にして、乾燥し、ステップAで得られた揮発性油を加えて、均一に混合し、顆粒にして、乾燥し、粉砕して、カプセルに充填し、漢方薬組成物を得る。
【0051】
製造実施例8 丸剤の製造
処方:
荊芥10g 防風20g 羌活10g 独活20g 柴胡3g 前胡20g
センキュウ10g 枳殻20g 茯苓10g 桔梗20g 甘草1g
【0052】
製造方法
ステップA:荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻をそれぞれ蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備える。
ステップB:ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を25%のエタノール溶液に調製し、使用に備える。
ステップC:茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合し、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備える。
ステップD:柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に水を加えて、1.5時間ずつ2回煎じ、2回の煎じ液を併せて、濾過して稠膏に濃縮し、使用に備える。
ステップE:ステップCで得られた浸出液、ステップDで得られた稠膏を混合し、静置し、濾過して清膏に濃縮し、スクロースを適量加えて、均一に混合し、顆粒にして、乾燥し、ステップAで得られた揮発性油を加えて、均一に混合し、乾燥して、粉砕し、篩にかけて、精製蜂蜜を40~60g、適量の水を加えて丸剤にし、乾燥し、漢方薬組成物を得る。
【0053】
製造実施例9 浸膏製造
処方
荊芥75g 防風75g 羌活75g 独活75g 柴胡75g 前胡75g
センキュウ75g 枳殻75g 茯苓75g 桔梗75g 甘草25g
【0054】
製造方法
【0055】
ステップA:荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻をそれぞれ蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備える。
ステップB:ステップA で得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を25%のエタノール溶液に調製し、使用に備える。
ステップC:茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合し、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備える。
ステップD:柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に水を加えて、1.5時間ずつ2回煎じ、2回の煎じ液を併せて、濾過して稠膏に濃縮し、使用に備える。
ステップE:ステップCで得られた浸出液、ステップDで得られた稠膏を混合し、静置し、濾過して清膏に濃縮し、ステップAで得られた揮発性油を加えて、均一に混合し、漢方薬組成物を得る。
【0056】
薬効実施例1 本発明の漢方薬組成物が咳喘息モデルモルモットに与える影響
1 材料
1.1 動物
普通のモルモット、雌雄60匹、半分ずつ、60~90日齢、体質量(300±30)g
実験動物は魯南製薬集団股▲分▼有限公司の新薬薬理センターから提供され、実験前に1週間適応的に飼育された
【0057】
1.2 薬物、試薬
1.2.1 薬物
【0058】
実施例1 顆粒剤
二麻合荊防敗毒散、文献(楊徳義.二麻合荊防敗毒散を用いた咳喘息57例の治療[J].江西中医薬,2006(7):32-32)に記載の処方及び配合比
【0059】
オボアルブミン(OVA)(GBCBIO Technologies社、ロッド番号A20199006-59)
【0060】
水酸化アルミニウム乾燥粉末(天津惠瑞化工科技有限公司、ロッド番号:20201209)
【0061】
カプサイシン(米国のSigma社、ロッド番号:20200401)
【0062】
1.2.2 モルモットへの投与量
実施例1 顆粒剤:3.6g/kg高用量、1.8g/kg中用量、0.9g/kg低用量
【0063】
二麻合荊防敗毒散:1.8g/kg。
【0064】
1.3 主な試薬
ヘマトキシリン、エオシン、武漢博士徳生物工学有限公司製。
【0065】
2.群分け、モデル作成及び投与
2.1 群分け
動物を1週間適応的に飼育した後、体質量に応じて、正常対照群、モデル対照群、二麻合荊防敗毒散、及び実施例1顆粒剤の低、中、高用量群にランダムに10匹ずつ分けた。
【0066】
2.2 モデル作成
実験動物を正常対照群、モデル対照群、実施例1顆粒剤の高、中、低用量群、二麻合荊防敗毒散群にランダムに群分けした。
【0067】
モデリング動物を1~28日目に、毎日30分燻煙した。15日目にモルモットごとに20g/L OVA 1mLと水酸化アルミニウム200mgの懸濁液を注射した。22日目にモルモットごとに20g/L OVA 1mLと水酸化アルミニウム200mgの懸濁液を注射して1回感作を強化した。29日目から10g/L OVAによるエアロゾルチャレンジを7日間連続して毎日1回行った。正常対照群には、同じ体積の生理食塩水を与えた。
【0068】
すべての動物は普通の環境で飼育され、12h/12hの光を循環させ、自由に水を飲み、顆粒状の飼料を食べた。燻煙ケースと使用方法は以下のとおりである。燻煙ケースは長さ、幅、高さがそれぞれ100cm×60cm×60cmのステンレス製のカスタムケースである。当研究所で使用されるタバコは、「紅梅」というフィルタタバコ(紅塔煙草有限責任会社;黄色種タバコ、タール量10mg、煙中のニコチン量0.7mg、煙中の一酸化炭素量12mg)である。1回に10本ずつ燻煙ケースの中でタバコに火をつけ、タバコに火をつけた後、300mL注射器と三方管を用いた手動操作でタバコが燃え尽きるまで燻煙ケースに煙を排出した。
【0069】
2.3 処置
29日目のエアロゾルチャレンジ当日に投与を開始し、各投与群に対応する薬物10ml/kgを毎日1回、連続して7日間胃内投与した。正常対照群とモデル対照群には同量の精製水を与えた。
【0070】
2.4 検体採取及び検出
2.4.1 咳感受性の検出(CRS)。
2.4.2 気管支肺胞洗浄液中の好酸球数の割合
【0071】
2.5 統計学的方法
SPSS19.0統計ソフトを用いて分析を行った。実験データを
【0072】
【数1】
【0073】
で表し、分散の均一性の検定を行った後、複数の群間の比較には分散分析を用い、2つずつの比較にはLSD法を用いた。P<0.05は統計学的に有意な差であることを示している。
【0074】
3.検査項目
3.1 各群のモルモットのCRS測定
カプサイシン咳刺激試験により気道の咳感受性を判定した。全身プレチスモグラフィー(Buxco Electronics)を用いて、10g/LOVAによる最後の1回のエアロゾルチャレンジ後の2日目にモルモットをボディスキャンボックスに入れ、10-4mol/Lカプサイシン溶液を2分間霧化した後、モルモットの5分間の咳回数を観察し記録した。
【0075】
3.2 各群のモルモット気管支肺胞洗浄液中の好酸球の割合の測定
刺激試験が完了した後、気管支肺胞をリン酸緩衝液(PBS)で2mLずつ3回洗浄し、気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。収集したBALFを200uL取り、3000r/minで10min遠心分離した後、上清を移送し、赤血球溶解液を加えた後、3000r/minで10min遠心分離した後、上清を移送し、等量のPBSを加えてスライドに滴下し、ヘマトキシリン-イオシン(HE)で染色した。連続視野における200細胞あたりの好酸球数を顕微鏡下で計測し、好酸球の割合を算出した。
【0076】
4.結果及び結論
4.1 各群のモルモットのCRS測定
表1の結果から、正常対照群と比較して、モデル対照群の咳回数は顕著に上昇し、統計学的有意差があった(P<0.05)。
【0077】
治療群の咳回数はモデル対照群より著しく低く、実施例1の顆粒剤の中、高用量群の咳回数はモデル対照群と比較して著しく低下し、統計学的有意差があった(P<0.05又はP<0.01)。
【0078】
二麻合荊防敗毒散群と比較して、実施例1顆粒剤群の高用量群では、の咳の回数は著しく低下し、統計学的有意差があった(P<0.05)。
【0079】
上記の実験結果により、荊防顆粒はモルモットの咳反応を抑制でき、鎮咳作用があり、咳止めの効果は顆粒剤の用量と一定の関係があることが明らかになった。
【0080】
【表1】
【0081】
注:正常対照群と比較して、#P<0.05、##P<0.01である。
モデル対照群と比較して、*P<0.05、**P<0.01である。
二麻合荊防敗毒散群と比較して、△P<0.05、△△P<0.01である。
【0082】
4.2 各群のモルモットの気管支肺胞洗浄液中の好酸球の割合の測定
表2の結果から、常対照群と比較し、モデル対照群の好酸球の割合は有意に上昇し、統計学的有意差があった(P<0.05)。
【0083】
モデル対照群と比較して、4つの治療群では、好酸球の割合は顕著に低下し、いずれも統計学的有意差があった(P<0.05又はP<0.01)。
【0084】
二麻合荊防敗毒散群と比較して、実施例1顆粒剤群の高用量群では、好酸球の割合の低下が顕著であり、統計学的有意差があった(P<0.05)。
【0085】
【表2】
【0086】
注:正常対照群と比較して、#P<0.05、##P<0.01である。
モデル対照群と比較して、*P<0.05、**P<0.01である。
二麻合荊防敗毒散群と比較して、△P<0.05、△△P<0.01である。
【0087】
以上より、本発明の漢方薬組成物は、CVAモルモットモデルの咳の回数を顕著に減少させ、気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球の割合を下げることができる。以上の実験結果から、本発明の漢方薬組成物が咳喘息を治療する目的を達成できることが明らかになった。
【0088】
薬効実施例2 本発明の漢方薬組成物が咳喘息ラットに与える影響
1 材料
1.1 動物
6週齢雄性クリーングレードSDラット、体質量(220±20)g
実験動物は魯南製薬集団股▲分▼有限公司の新薬薬理センターから提供し、実験前に適応的に1週間飼育された。
【0089】
1.2 薬物
【0090】
実施例1顆粒剤;
荊防散、文献(劉暁帥ら、荊防散による一酸化窒素合成酵素-一酸化窒素経路の抗炎症機序の実験研究[J].時珍国医国薬、2008,19(12):3014-3015.)に記載の成分及び製造方法
【0091】
オボアルブミン(OVA)(GBCBIO Technologies社、ロッド番号A20199006-59)
【0092】
水酸化アルミニウム乾燥粉末(天津惠瑞化工科技有限公司、ロッド番号:20201209)
【0093】
カプサイシン(米国のSigma社、ロッド番号:20200401)
【0094】
1.2.2 ラットへの投与量
実施例1顆粒剤:3.6g/kg高用量、1.8g/kg中用量、0.9g/kg低用量
【0095】
荊防散:2.5g/kg
【0096】
2.群分け、モデル作成及び投与
卵タンパク質と水酸化アルミニウムとの共刺激により感作する方法を用いてモデルを作成した。正常対照群の8匹のラットを除いて、残りのラットは、調製された卵タンパク質1mgと水酸化アルミニウム10mgを含む生理食塩水1mLを皮下注射した。それぞれ両後足底、鼠径部、腰、背、及び頚部に10点を取り、1点ごとに0.05mLを皮下注射するとともに、0.5mLを腹腔内注射し、合計1mL注射し、8日目に1回繰り返して感作を強化した。15日目から、ラットを密閉有機ガラスカバー内に置き、1%卵タンパク質溶液を含む生理食塩水を超音波霧化してラットに20分間刺激し、喘息を誘発し、ラット腹筋の明らかな収縮を陽性とし、呼吸が深くなり、早くなるなどの気道けいれんの症状が出現すると、モデル作成が成功したことを示している。
【0097】
モデル作成に成功したラットを5群(モデル対照群、実施例1顆粒剤の高、中、低用量群、荊防散群)に8匹ずつランダムに分けた。実施例1の顆粒剤の低用量、中用量、高用量はそれぞれ0.9g/kg、1.8g/kg、3.6g/kgであり、荊防散群の投与量は2.5g/kgであり、精製水に溶解し、10mL/kgの用量で投与された。正常対照群とモデル対照群は等体積の精製水を胃内投与した。13日間連続投与した。
【0098】
3. 指標検査
3.1 咳の回数の測定
3.2 血清中の好酸球カチオン性タンパク質(ECP)含有量の測定
【0099】
3.3 統計学的方法
SPSS19.0統計ソフトを用いて分析を行った。実験データを
【0100】
【数2】
【0101】
で表し、分散の均一性の検定を行った後、複数の群間の比較には分散分析を採用し、2つずつの比較にはLSD法を用いた。P<0.05は統計学的有意差があることを示している。
【0102】
4.結果
4.1 各群のラットの咳の回数の測定結果の比較
投与13日目以降、各群のラットを密閉ボックス内に置き、1×10-4mol/Lのカプサイシン溶液を5分間内に噴霧吸入した後の咳の回数を記録して集計した。
【0103】
【表3】
【0104】
注:正常対照群と比較して、P<0.05、##P<0.01である。
モデル対照群と比較して、*P<0.05、**P<0.01である。
荊防散群と比較して、P<0.05、△△P<0.01である。
【0105】
正常対照群と比較して、モデル対照群の咳の回数は顕著に上昇し、統計学的な有意差があった(P<0.01)。モデル対照群と比較して、実施例1顆粒剤低、中、高用量群の咳の回数は有意に低下し、統計学的な有意差があった(P<0.05、P<0.01)。荊防散群と比較して、実施例1顆粒剤群中、高用量群の咳の回数は明らかに低下し、統計学的な有意差があった(P<0.05、P<0.01)。
【0106】
上記の実験結果により、荊防顆粒はラットの咳反応を抑制でき、咳喘息の咳を抑制する作用があり、咳止めの効果は荊防散より優れていた。
【0107】
4.2 各群のラットの血清中ECP含有量の比較
実験14日目に動物を殺した後、腹部大動脈から5mL採血し、4℃で静置し、2000r/minで10min遠心分離し、血清を分離し、-20℃で保存した。測定は厳密にECP ELISAキットの取扱書に従って行った。
【0108】
【表4】
【0109】
注:正常対照群と比較して、P<0.05、##P<0.01である。
モデル対照群と比較して、*P<0.05、**P<0.01である。
荊防散群と比較して、P<0.05、△△P<0.01である。
【0110】
正常対照群と比較して、モデル対照群の血清中ECP含有量は顕著に上昇し(P<0.01)、各投与群では、治療後、モデル対照群と比較して、実施例1顆粒剤中、高用量群の血清ECP含有量は明らかに低下し(P<0.05、P<0.01)、しかも、実施例1顆粒剤中、高用量群の血清ECPの低下効果は散防止群より優れた(P<0.05、P<0.01)。上記の試験結果により、荊防顆粒は体のECPレベルを下げ、咳喘息のアレルギー反応性症状を緩和することができる。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
咳喘息を治療する薬物の製造における、荊芥、防風、羌活、独活、柴胡、前胡、センキュウ、枳殻、茯苓、桔梗、甘草からなる漢方薬組成物の使用。
【請求項2】
前記咳喘息は、寒哮、熱哮、外寒内熱型、肺実腎虚型のうちのいずれか1つのタイプである、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
咳喘息患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)中の好酸球の割合、及び血清好酸球カチオン性タンパク質レベルを低下させる、ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項4】
前記漢方薬組成物は、主な原料として、
荊芥5~30重量部と、防風5~30重量部と、羌活5~30重量部と、独活5~30重量部と、柴胡3~25重量部と、前胡3~25重量部と、センキュウ5~30重量部と、枳殻3~25重量部と、茯苓5~30重量部と、桔梗3~25重量部と、甘草1~10重量部と、で製造される、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記漢方薬組成物は、主な原料として、
荊芥10~20重量部と、防風10~20重量部と、羌活10~20重量部と、独活10~20重量部と、柴胡3~20重量部と、前胡3~20重量部と、センキュウ10~20重量部と、枳殻3~20重量部と、茯苓10~25重量部と、桔梗3~20重量部と、甘草1~8重量部と、で製造される、ことを特徴とする請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記漢方薬組成物は、主な原料として、
荊芥15重量部と、防風15重量部と、羌活15重量部と、独活15重量部と、柴胡15重量部と、前胡15重量部と、センキュウ15重量部と、枳殻15重量部と、茯苓15重量部と、桔梗15重量部と、甘草5重量部と、で製造される、ことを特徴とする請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記漢方薬組成物の製造方法は、
荊芥、防風、羌活、独活、前胡、センキュウ、枳殻を蒸留して揮発性油を抽出し、蒸留後の滓、蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を使用に備えるステップAと、
ステップAで得られた蒸留後のセンキュウ、枳殻水溶液を10~40%のエタノール溶液に調製して、使用に備えるステップBと、
茯苓、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻滓を混合して、ステップBで得られたエタノール溶液で浸出して抽出し、浸出液を使用に備えるステップCと、
柴胡、桔梗、甘草、ステップAで得られた蒸留後の荊芥、防風、羌活、独活、前胡滓に、水を加えて煎じ、煎じ液を濃縮して、使用に備えるステップDと、
ステップCで得られた浸出液とステップDで得られた煎じ液を混合して濃縮し、ステップAで得られた揮発性油を加えると、前記漢方薬組成物を得るステップEと、
を含み、
好ましくは、ステップBにおいては、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻水溶液を15~30%のエタノール溶液に調製し、使用に備え、
さらに好ましくは、ステップBにおいては、ステップAで得られた蒸留後のセンキュウと枳殻水溶液を25%のエタノール溶液に調製し、使用に備える、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記漢方薬組成物は、1種又は複数種の薬学的に許容される医薬品賦形剤を含有しない、又は含有するである、ことを特徴とする請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記漢方薬組成物は、錠剤、経口液剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、及び液体経口製剤のうちの1種又は複数種に製造されることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【国際調査報告】