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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】糖脂質カルボン酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/04 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
C07H15/04 F CSP
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023579543
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 IB2022055884
(87)【国際公開番号】W WO2022269561
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】202141028550
(32)【優先日】2021-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483348
【氏名又は名称】アンセム・バイオサイエンシーズ・プライベイト・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ANTHEM BIOSCIENCES PRIVATE LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221578
【弁理士】
【氏名又は名称】林 康次郎
(72)【発明者】
【氏名】ガバラ,ゴビンダ ラジュル
(72)【発明者】
【氏名】エスワラン,スメシュ
(72)【発明者】
【氏名】ガイクワド,ラジェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】クマール,アムレシュ
(72)【発明者】
【氏名】サンバシバム,ガネーシュ
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA03
4C057AA17
4C057BB02
4C057CC04
4C057DD01
4C057JJ10
(57)【要約】
本発明は、酵素により対応するエステルを選択的に加水分解することによる、式Iの糖脂質カルボン酸の製造方法に関する。前記方法は、環境に優しい、ロバストな、経済的で、単純かつ便利な方法により、高収率での式Iの化合物の製造を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
〔式中、
「n」は0~15の範囲であり;
、AおよびAは各々、独立して、Hまたは
【化2】
から選択され;
但し、A、AおよびAはともにHであることはなく;
Gは次の群:
【化3】
から選択され;
Xは次の群
【化4】
から選択され;
Yは
【化5】
から選択され;
Zは次の群
【化6】
から選択され;
はアルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシまたはアリールアルキル基から選択され;
「l」、「m」および「p」は各々、独立して、0~15の範囲である〕
の化合物の製造方法であって、
(a)リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、トリプシン、パパインまたはその組合せから選択される酵素および水の存在下、式(Ia)
【化7】
〔式中、Rはアルキル、アリールまたはアラルキル基から選択される〕
の化合物を加水分解する;
(b)工程(a)の反応混合物を撹拌し、濃縮し、乾燥させ、溶媒で希釈する;
(c)工程(b)の反応混合物から前記酵素である固体沈殿を除去し、精製し、式(I)の化合物を得る
工程を含む、方法
【請求項2】
、AおよびAが各々、独立して、
【化8】
であり、置換基
【化9】
は次の群:
【表1】
〔式中、
は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシまたはアリールアルキル基から選択され;
「l」、「m」、「n」および「p」および「q」は各々、独立して、0~15の範囲である〕
から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)の酵素が1~100重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)の酵素加水分解が20~45℃で1~48時間実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(b)の溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルまたはその組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(I’):
【化10】
〔式中、
「n」は0~15の範囲であり;
Gは次の群:
【化11】
から選択され;
Xは次の群
【化12】
から選択され;
Yは
【化13】
から選択され;
Zは次の群
【化14】
から選択され;
ここでRはアルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシまたはアリールアルキル基から選択され;
「l」、「m」および「p」は各々、独立して、0~15の範囲である〕
の化合物の製造方法であって、
(i)式(z-b):
【化15】
の糖脂質カルボン酸、または式(z-bb):
【化16】
の糖脂質アミン化合物から選択される反応材を式(z-c):
【化17】
のエステルとカップリングさせ、式(Ia)’:
【化18】
の化合物を形成させる;
(ii)リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、トリプシン、パパインまたはその組合せから選択される酵素および水の存在下、式(Ia)’のエステル化合物を加水分解し、式(I)’の化合物を得る、
工程を含む、方法。
【請求項7】
工程(i)でのカップリングが、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヘキサフルオロホスフェート ベンゾトリアゾールテトラメチルウロニウム(HBTU)、エチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCL)またはその組合せから選択されるカップリング剤の存在下で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(i)のカップリング反応が、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)から選択される塩基の存在下で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)の式(z-b)の糖脂質カルボン酸が:
酵素および水の存在下、式(z-a):
【化19】
の糖脂質カルボン酸エステルを加水分解し、式(z-b)の糖脂質カルボン酸を得る、
ことにより得られる、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
式(I)’の化合物が
【化20】
【化21】
【化22】
から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
式(1-e)
【化23】
の化合物の製造方法であって、
(i)酵素および水の存在下、式(1-a):
【化24】
の糖脂質カルボン酸エステルを加水分解し、
式(1-b):
【化25】
の糖脂質カルボン酸を形成させる;
(ii)式(1-b)の化合物を、式(1-c):
【化26】
のエステルとカップリングさせ、式(1-d):
【化27】
の化合物を形成させる;
(iii)酵素および水の存在下、式(1-d)のエステル化合物を加水分解し、式(1-e)の化合物を得る、
工程を含む、方法
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の方法により得られる、式(I)の化合物。
【請求項13】
請求項6~10のいずれか一項に記載の方法により得られる、式(I)’の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照:本出願は、2021年6月25日に出願されたインド仮特許出願番号第202141028550号の優先権を主張するものである。前記出願の全体の内容は、参照により本明細書に具体的に包含させる。
【0002】
本発明は、合成有機化学に関するものである。本発明は、糖脂質カルボン酸およびその誘導体の製造方法に関する。前記方法は、酵素を用いた糖脂質カルボン酸エステルの選択的加水分解を含む。特に、前記方法は、酵素を用いて糖脂質カルボン酸エステルを対応するカルボン酸へ選択的加水分解することによる、式Iの化合物の製造を含む。前記方法は、複合有機化合物を高収率で製造するための経済的かつ環境に優しいアプローチを提供する。
【背景技術】
【0003】
糖脂質は、糖および脂質部分から成る、細胞膜に必須の成分である。糖脂質は、細胞凝集、解離ならびに特定の細胞接触およびシグナル伝達にも重要であることが広く知られている。それはまた、RNA干渉(RNAi)治療剤において有望な送達系として作用する。この適用は、あらゆる遺伝子を可逆的に沈黙させるための、可能性のある治療剤として広く使用され、研究が進められている。RNAiの臨床的可能性を達成するために、標的組織の細胞における活性部位へ短干渉RNA(siRNA)を輸送するための送達材料が必要である。
【0004】
N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)およびその誘導体などの糖脂質は、薬物送達のための前記化合物の中で著名な物質である。そのコンジュゲートは、送達物質をsiRNAカーゴに直接コンジュゲートさせることにより開発されている。このアプローチは、等モル量の送達材料およびsiRNAのみを使用する、明確に定義された単一成分系につながる。治療剤は、化合物が、望ましくない副作用、投与量を最小限にするための本来の形態であることが要求される。しかしながら、本来の化合物を得ることは、特に前記複合化合物については困難である。
【0005】
N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)またはその誘導体は、大きな構造および容易に影響を受けやすい官能基のため、感受性糖脂質である。
【0006】
Migawa, Michael T.らの"A convenient synthesis of 5'-triantennary N-acetyl-galactosamine clusters based on nitromethanetrispropionic acid" Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 26.9 (2016): 2194-2197には、ニトロメタントリスプロピオン酸コアに基づくいくつかの三分岐型GalNAcクラスターの合成法が開発されたことが報告されている。合成アプローチは、ワンポットの7つの反応手順で使用され、多様な三分岐型GalNAcコンジュゲートASOを製造するために使用され得るペンタフルオロフェノール性エステル中間体を含む。
【0007】
国際公開第2014/025805A1号において、三分岐型GalNAc誘導体の製造が報告されている。
【0008】
しかしながら、前記化合物を製造するための先行技術における方法は、厳しい反応条件、多数の工程、目的化合物の低い収率を伴う。従来の製造方法は、大規模生産には困難であり、また経済的ではない。
【0009】
糖脂質化合物の重要性を考慮すると、前記複合糖脂質およびその潜在的中間体を製造するための、安定した、経済的かつ環境に優しい方法を開発することが必要である。驚くべきことに、本発明者らは、前記の要件を満たし、先行技術の欠点を改善する、糖脂質カルボン酸およびその誘導体の効率的な製造方法を開発した。
【0010】
本発明の目的
糖脂質カルボン酸およびその誘導体の効率的な製造方法を提供することが、本発明の目的である。
【0011】
ロバストな、経済的で、簡便であり、工程が少なく、かつ環境に優しい効率的な方法を提供することは、本発明の別の目的である。
【0012】
高収率かつ高純度で糖脂質カルボン酸およびその誘導体をもたらす効率的な方法を提供することは、本発明の別の目的である。
【0013】
式Iの化合物の製造方法を提供することは、本発明のさらに別の目的である。
【発明の概要】
【0014】
本発明のある態様により、糖脂質カルボン酸およびその誘導体の製造方法が提供される。製造される糖脂質カルボン酸および誘導体は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)誘導体である。
【0015】
本発明の別の態様により、酵素を用いた選択的加水分解を含む、式Iの化合物およびその中間体の製造方法が提供される。式Iの化合物は、治療上重要な糖脂質の製造における鍵中間体として使用され得る。
【0016】
本発明のある態様により、式(I):
【化1】
の化合物の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の別の態様により、式(I’):
【化2】
の化合物の製造方法が提供される。
【0018】
本発明のさらに別の態様により、式(1-e):
【化3】
の化合物の製造方法が提供される。
【0019】
本発明のさらに別の態様により、式(I)および式(I’)の化合物が提供される。
【0020】
発明の詳細な説明
添付の図面を参照する以下の記載は、本発明の典型的な実施態様の包括的な理解を助けるために提供される。それは理解を助けるための多様な具体的詳細を含むが、単に例示的なものであると考えられるべきである。
【0021】
したがって、当業者は、本明細書に記載の実施態様の変更および修飾が本発明の範囲の範囲を逸脱することなくなされ得ることを認識する。さらに、既知の機能および構築物の記載は、明確性および簡潔性のために除外される。
【0022】
以下の記載および特許請求の範囲で使用される用語および単語は、書誌的な意味に限定されないが、単に本発明を明確かつ一貫して理解することを可能にするために、本発明者により使用される。したがって、以下の本発明の典型的な実施態様の記載が説明の目的のみで提供され、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物により定義される本発明の範囲を限定する目的で提供されないことが、当業者に明らかであるべきである。
【0023】
単一形の「ある(a)」、「ある(an)」および「その(the)」は、文脈により明確に示されない限り、複数の指示物を含むと理解されるべきである。
【0024】
一つの実施態様について記載および/または説明される特徴は、1以上の他の実施態様と同一もしくは類似の方法で、および/または他の実施態様の特徴と組み合わせてもしくはその代わりに使用され得る。
【0025】
本明細書において使用されるとき、「含む(comprises)/含む(comprising)」は、記載された特徴、工程または成分の存在を特定すると理解されるが、1以上の他の特徴、工程または成分またはその組合せ(groups)の存在または追加を排除しないことが強調されるべきである。
【0026】
本発明は、酵素を用いた糖脂質カルボン酸エステルの選択的加水分解の方法に関する。特に、前記方法は、酵素を用いた対応する糖脂質カルボン酸エステルの選択的加水分解による、糖脂質カルボン酸およびその誘導体の製造を含む。前記方法は、複合有機化合物を高収率で製造するための経済的かつ環境に優しいアプローチを提供する。
【0027】
本発明は、エステルの酸への酵素加水分解および酵素処理により式Iの化合物を製造する効率的な方法を提供する。
【化4】
【0028】
本発明は、式(I):
【化5】
〔式中、
「n」は0~15の範囲であり;
、AおよびAは各々、独立して、Hまたは
【化6】
から選択され;
但し、A、AおよびAはともにHであることはなく;
Gは次の群:
【化7】
から選択され;
Xは次の群
【化8】
から選択され;
Yは
【化9】
から選択され;
Zは次の群
【化10】
から選択され;
ここでRはアルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシまたはアリールアルキル基から選択され;
「l」、「m」および「p」は各々、独立して、0~15の範囲である〕
の化合物の製造方法であって、
(a)酵素および水の存在下、式(Ia)
【化11】
〔式中、Rはアルキル、アリールまたはアラルキル基から選択される〕
の化合物を加水分解する;
(b)工程(a)の反応混合物を撹拌し、濃縮し、乾燥させ、溶媒で希釈する;
(c)工程(b)の反応混合物から前記酵素である固体沈殿を除去し、精製し、式(I)の化合物を得る
工程を含む、方法を提供する。
【0029】
ある実施態様において、A、AおよびAは各々、独立して
【化12】
であり、置換基
【化13】
は次の群:
【表1】
〔式中、
は、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシまたはアリールアルキル基から選択され;
「l」、「m」、「n」および「p」および「q」は各々、独立して、0~15の範囲である〕
から選択される。
【0030】
ある実施態様において、工程(a)の酵素は、リパーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、トリプシン、パパインまたはその組合せから選択される。ある実施態様において、酵素はリパーゼである。
【0031】
ある実施態様において、工程(a)の酵素は1~100重量%の範囲の量で存在する。
【0032】
ある実施態様において、工程(a)の酵素加水分解を、20~45℃で1~48時間実施する。
【0033】
ある実施態様において、工程(b)の溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、メチルtert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルまたはそれらの組合せから選択される。
【0034】
ある実施態様において、前記基は、限定されないが、ハロゲン、ニトロ、アミン、アルデヒド、カルボニル、ヒドロキシルなどから選択される官能基を有するまたは有さない、直鎖、分岐鎖、環状の基である。
【0035】
ある実施態様において、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチルなどである。
【0036】
ある実施態様において、アリール基はフェニル、ナフチル基などである。
【0037】
ある実施態様において、アラルキルまたは置換アラルキルは、ベンジル、p-メトキシベンジルなどである。
【0038】
好ましくは、本発明は、酵素加水分解による式(I’):
【化14】
〔式中、G、X、Y、Z、Rは上記で定義されるとおりである〕
の化合物の製造方法を提供する。
【化15】
【0039】
詳細な工程を下記スキームCに示す:
【化16】
【0040】
別の実施態様において、糖脂質カルボン酸の代わりに式:
【化17】
の糖脂質アミンが出発反応材として使用され、工程2および工程3と同じ処理工程を経て、糖脂質カルボン酸(式I’の化合物)が得られる。
【0041】
方法は、次の工程を含む:
(i)式(z-b):
【化18】
の糖脂質カルボン酸、または式(z-bb):
【化19】
の糖脂質アミン化合物から選択される反応材を式(z-c):
【化20】
のエステルとカップリングさせ、式(Ia)’:
【化21】
の化合物を形成させる;
(ii)酵素および水の存在下、式(Ia)’のエステル化合物を加水分解し、式(I)’の化合物を得る。
【0042】
ある実施態様において、カップリング剤、溶媒、温度、pH、反応時間などの反応パラメーターは、酵素および目的の式Iの化合物またはその誘導体により変化する。
【0043】
別の実施態様において、反応物のpHは2~9に維持され;反応温度は0℃~150℃の間で変化し得る。反応時間は2~72時間または反応が完了するまでの間で変化する。
【0044】
別の実施態様において、反応のための溶媒は、プロトン性もしくは非プロトン性溶媒または適切な比でのその組合せから選択され;ここで前記プロトン性は水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールであり、前記非プロトン性溶媒はメチル tert-ブチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルである。
【0045】
ある実施態様において、工程(i)のカップリングは、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ヘキサフルオロホスフェート ベンゾトリアゾール テトラメチルウロニウム(HBTU)、エチル-(N’,N’-ジメチルアミノ)プロピルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCL)またはその組合せを含む群から選択されるカップリング剤の存在下で実施される。
【0046】
ある実施態様において、工程(i)のカップリング反応は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)から選択される塩基の存在下で実施される。
【0047】
ある実施態様において、工程(i)の式(z-b)の糖脂質カルボン酸は、酵素および水の存在下、式(z-a):
【化22】
の糖脂質カルボン酸エステルを加水分解し、式(z-b)の糖脂質カルボン酸を得ることにより、得られる。
【実施例
【0048】
以下の実施例は本発明を説明することを意味する。実施例は、本発明を例示するために示されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして考慮されるべきではない。
【0049】
実施例A:
実験:
詳細な処理工程は、スキームCにより示される。
一般的方法A(工程1):
20~25℃で、糖脂質カルボン酸エステル(1当量)の水(5V)溶液に、酵素(20重量%)を添加した。反応混合物を20~25℃で24~72時間撹拌した。反応の完了をTLCによりモニタリングした。減圧下、反応混合物を35℃で濃縮乾固させた。得られた残渣をDCM(15V)で希釈し、20分間撹拌した。固体沈殿(酵素)をろ過により除去し、ろ液を減圧下、35℃で濃縮し、糖脂質カルボン酸を得た。
【0050】
一般的方法B(工程2):
0~5℃で、糖脂質カルボン酸(4.5当量)のDCM(10V)溶液に、HOBt(0.1当量)、DIPEA(10当量)およびEDC・HCl(4.5当量)を添加した。反応混合物を同じ温度で10~15分間撹拌し、その後、DMF:DCM(1:5)に溶解したアミン(1.0当量)を滴下添加した。得られた反応混合物を20~35℃で16時間撹拌した。反応物を濃縮乾固させ、MTBE(10V×3)でスラリー化し、デカンテーションした。残渣をDCM(10V)に溶解し、水(5V×2)で洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、式(Ia)’の化合物を得た。
【0051】
一般的方法C((工程3):
20~25℃で、糖脂質カルボン酸エステル(1当量)の水(5V)溶液に、酵素(5重量%)を添加した。反応混合物を20~25℃で12~24時間撹拌した。反応の完了をTLCによりモニタリングした。減圧下、反応混合物を35℃で濃縮乾固させた。得られた残渣をDCM(15V)で希釈し、20分間撹拌した。固体沈殿(酵素)をろ過により除去し、ろ液を減圧下、35℃で濃縮し、糖脂質カルボン酸(式I’の化合物)を得た。
【0052】
別の実施態様において、式
【化23】
の糖脂質アミンを糖脂質カルボン酸の代わりに出発反応材として使用して、一般的方法Bおよび一般的方法Cと同じ処理工程を経て、糖脂質カルボン酸(式I’の化合物)を得る。
【0053】
表1に示される多様な商業的に入手可能な酵素が、加水分解に利用される。さらに別の実施態様において、反応のための酵素量は、反応材と比較して1~100%wt/wtの間で変化し得る。
【表2-1】


【表2-2】

【0054】
実施例-1:
【化24】
工程1:5-{[4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンタン酸(1-b)の製造
【化25】
1-aから出発して、一般的方法Aに従って、化合物1-bを白色固体(50g、89%)として得た。
【0055】
工程2:メチル 11-{[1,3-ビス(2-{[3-(5-{[4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンタンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)-2-[(2-{[3-(5-{[4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンタンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)メチル]プロパン-2-イル]カルバモイル}ウンデカノエート(1-d)の製造
【化26】
1-bから出発して、一般的方法Bに従って、化合物1-dを白色固体(1.5g、80%)として得た。
【0056】
工程3:11-{[1,3-ビス(2-{[3-(5-{[4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンタンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)-2-[(2-{[3-(5-{[4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンタンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)メチル]プロパン-2-イル]カルバモイル}ウンデカン酸(1-e)の製造。
【化27】
1-dから出発して、一般的方法Bに従って、化合物1-eを灰白色泡状固体(25g、98%)として得た。
【0057】
実施例-2:
【化28】
工程1:3-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]プロパン酸(2-b)の製造
【化29】
2-aから出発して、一般的方法Aに従って、化合物2-bを白色固体(1.0g、86%)として得た。
【0058】
工程2:メチル 11-{[1,3-ビス({2-[(3-{3-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]プロパンアミド}プロピル)カルバモイル]エトキシ})-2-({2-[(3-{3-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]プロパンアミド}プロピル)カルバモイル]エトキシ}メチル)プロパン-2-イル]カルバモイル}ウンデカノエート(2-d)の製造
【化30】
2-aから出発して、一般的方法Bに従って、化合物2-dを白色固体(1.7g、85%)として得た。
減圧下、1.7g(85%)の化合物(2-d)を灰白色泡状物として得た。
【0059】
工程3:11-{[1,3-ビス({2-[(3-{3-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]プロパンアミド}プロピル)カルバモイル]エトキシ})-2-({2-[(3-{3-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]プロパンアミド}プロピル)カルバモイル]エトキシ}メチル)プロパン-2-イル]カルバモイル}ウンデカン酸(2-e)の製造。
【化31】
2-dから出発して、一般的方法Cに従って、化合物2-eを灰白色泡状固体(500mg、97%)として得た。
【0060】
実施例-3:
【化32】
工程1:3-{2-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}プロパン酸(3-b)の製造
【化33】
3-aから出発して、一般的方法Aに従って、化合物3-bを白色固体(2.0g、88%)として得た。
【0061】
工程2:メチル 4-{[1-(2-{[3-(3-{2-[2-(2-{[(2R,5R)-5-(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミド-4-(ホルミルオキシ)オキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)-3-(2-{[3-(3-{2-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)-2-({2-[(3-{2-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}プロパノイル)カルバモイル]エトキシ}メチル)プロパン-2-イル]カルバモイル}ブタノエート(3-d)の製造
【化34】
3-bから出発して、一般的方法Bに従って、化合物3-dを灰白色泡状物(4.0g、87%)として得た。
【0062】
工程3:4-{[1-(2-{[3-(3-{2-[2-(2-{[(2R,5R)-5-(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミド-4-(ホルミルオキシ)オキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)-3-(2-{[3-(3-{2-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル}エトキシ)-2-({2-[(3-{2-[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エトキシ]エトキシ}プロパノイル)カルバモイル]エトキシ}メチル)プロパン-2-イル]カルバモイル}ブタン酸(3-e)の製造。
【化35】
3-dから出発して、一般的方法Cに従って、化合物3-eを灰白色泡状固体(1.5g、96%)として得た。
【0063】
実施例-4:
【化36】
工程1:12-{[1,3-ビス(2-{[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}エトキシ)-2-[(2-{[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}エトキシ)メチル]プロパン-2-イル]カルバモイル}ドデカノエート(4-c)の製造
【化37】
4-aから出発して、一般的方法Bに従って、化合物4-cを灰白色泡状固体(3.5g、94%)として得た。
【0064】
工程2:12-{[1,3-ビス(2-{[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}エトキシ)-2-[(2-{[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}エトキシ)メチル]プロパン-2-イル]カルバモイル}ドデカン酸(4-d)の製造
【化38】
4-cから出発して、一般的方法Cに従って、化合物4-dを灰白色泡状固体(1.8g、99%)として得た。
【0065】
実施例-5:
【化39】
工程1:メチル 12-({1,5-ビス[(5-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンチル)カルバモイル]-3-{2-[(5-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンチル)カルバモイル]エチル}ペンタン-3-イル}カルバモイル)ドデカノエート(5-c)の製造
【化40】
5-aから出発して、一般的方法Bに従って、化合物5-cを灰白色泡状固体(4.0g、98%)として得た。
【0066】
工程2:12-({1,5-ビス[(5-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンチル)カルバモイル]-3-{2-[(5-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}ペンチル)カルバモイル]エチル}ペンタン-3-イル}カルバモイル)ドデカン酸(5-d)の製造。
【化41】
5-cから出発して、一般的方法Cに従って、化合物5-dを灰白色泡状固体(1.5g、95%)として得た。
【0067】
実施例-6:
【化42】
工程1:3-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}プロパン酸(6-b)の製造
【化43】
6-aから出発して、一般的方法Aに従って、化合物6-bを白色固体(10g、90%)として得た。
【0068】
工程2:メチル 12-{[1,5-ビス({[3-(3-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル})-3-(2-{[3-(3-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル}エチル)ペンタン-3-イル]カルバモイル}ドデカノエート(6-d)の製造
【化44】
6-bから出発して、一般的方法Bに従って、化合物6-dを白色固体(2.5g、82%)として得た。
【0069】
工程3:12-{[1,5-ビス({[3-(3-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル})-3-(2-{[3-(3-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}プロパンアミド)プロピル]カルバモイル}エチル)ペンタン-3-イル]カルバモイル}ドデカン酸(6-e)の製造
【化45】
6-dから出発して、一般的方法Cに従って、化合物6-eを灰白色泡状固体(0.8g、94%)として得た。
【0070】
実施例-7:
【化46】
工程1:メチル 12-{[1,5-ビス({[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル})-3-(2-{[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}エチル)ペンタン-3-イル]カルバモイル}ドデカノエート(7-c)の製造
【化47】
7-aから出発して、一般的方法Bに従って、化合物7-cを灰白色泡状固体(20.0g、93%)として得た。
【0071】
工程2:12-{[1,5-ビス({[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル})-3-(2-{[2-(2-{[(2R,5R)-4,5-ビス(アセチルオキシ)-6-[(アセチルオキシ)メチル]-3-アセトアミドオキサン-2-イル]オキシ}エトキシ)エチル]カルバモイル}エチル)ペンタン-3-イル]カルバモイル}ドデカン酸(7-d)の製造
【化48】
7-cから出発して、一般的方法Cに従って、化合物7-dを灰白色泡状固体(15g、94%)として得た。
【0072】
このように、本発明は、普通の試薬を用いた環境に優しいアプローチによる、糖脂質カルボン酸を高収率で、選択的加水分解により、簡便に製造する方法を提供する。
【0073】
本発明は、当業者による修飾、変更および適合が可能であると理解されるべきである。このような修飾、変更および適合は、本発明の範囲であることが意図される。
【国際調査報告】