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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】活動固有コンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240614BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240614BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C7/10
G02B5/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579565
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 US2022034743
(87)【国際公開番号】W WO2022271958
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】63/214,221
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/847,100
(32)【優先日】2022-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523483809
【氏名又は名称】パフォーマンス ビジョン テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PERFORMANCE VISION TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】アラン ダブリュー レイチョウ
(72)【発明者】
【氏名】カール サイテック
(72)【発明者】
【氏名】ブレット ジェームズ アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ポール アンドレ
【テーマコード(参考)】
2H006
2H148
【Fターム(参考)】
2H006BC06
2H006BE00
2H148CA13
2H148CA20
(57)【要約】
コンタクトレンズにパフォーマンスを向上させる色味を設け、コンタクトレンズの取り扱いに不慣れな人が装用できるような形状にする。適切なコンタクトレンズ形状により、コンタクトレンズの着脱が簡単であり、コンタクトレンズに色味を設けることで、眼鏡又はゴーグルに必要となるよりも透過性の高い色味を使用することができる。さらに、着色コンタクトレンズの使用により、眼鏡及びゴーグルに関連する物理的な制限及び問題のいくつかが回避される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、
前面、後面、及び12nm~16nmの直径を有するコンタクトレンズ基材
を含み、前記後面は、3.5mm以上のサグ及び7mm~9.5mmの曲率、並びに前記前面と前記後面との間に位置する着色層を有する
タスク固有の使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項2】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材はオキュフィルコンDである使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項3】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、400nm未満の波長の透過率が1%未満であり400nm~450nmの波長で40%未満であるように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項4】
請求項3に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、400nm~450nmの波長の透過率が2%未満である使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項5】
請求項4に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、650nm~700nmの波長の透過率が80%を超えるように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項6】
請求項5に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、該コンタクトレンズは、560nmを超える波長の透過率が90%以上であり480nm未満の波長の透過率が2%未満であるように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項7】
請求項3に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、620を超える波長の透過率が95%以上であり500nmで20%以上から600nmで80%以上まで単調増加するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項8】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記着色層は、80%の実効透過率を有する競技場の色味に対応する透過度を有する使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項9】
請求項3に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、620を超える波長の透過率が95%以上であり450nmで30%以上から600nmで90%以上まで単調増加するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項10】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記着色層は、84%の実効透過率を有するゲーミングの色味に対応する透過度を有する使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項11】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、400nm~450nmの波長の透過率が400nmで2%未満から450nmで25%未満だが30%未満まで単調増加し、500nm~650nmの波長では500nmで20%以上から650nmで90%以上まで単調増加するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項12】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記着色層は、84%の実効透過率を有するゲーミングの色味に対応する透過度を有する使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項13】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、480nm未満の波長の透過率が2%未満であり、580nm~620nmの波長で40%以上であり、620nmで40%以上から700nmで90%以上まで単調増加するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項14】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、灰緑の色味に対応する透過度を有するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項15】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、480nm未満の波長の透過率が10%未満であり520nmで10%以上から620で95%以上まで単調増加するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項16】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、アンバーの色味に対応する透過度を有するよう着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項17】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、450nm未満の波長の透過率が20%未満であり、460nm~580nmで30%~40%であり、620nmで40%以上から700nmで95%以上まで単調増加するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項18】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、36%以上の透過率を有する色収差を低減したニュートラルな色味に対応する透過度を有するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項19】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、450nm未満の波長の透過率が40%未満であり、500nm~640nmで70%~80%であり、450nm~500nmから単調増加し、760nm~800nmで95%以上であるように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項20】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ基材は、75%以上の透過率を有する色収差を低減したニュートラルな色味に対応する透過度を有するように着色される使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項21】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記直径は15mm以上である使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項22】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記後面の前記サグは5mm以上である使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項23】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前記曲率は8.5mm以上である使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項24】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、レンズ度数の大きさが0.1D未満である使い捨てコンタクトレンズ。
【請求項25】
請求項1に記載のタスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、レンズ度数の大きさが0.05D未満である使い捨てコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年6月23日の米国仮特許出願第63/214,221号の優先権を主張する2022年6月22日の米国特許出願第17/847,100号の継続出願であり、これらの両方を参照により本願に援用する。
【0002】
本開示は、視機能を向上させるよう構成されたコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の視力矯正は、アイウェアかコンタクトレンズかを問わず、高倍率の矯正が必要な装用者であっても、多くの場合は装用者にいわゆる正常視力を与えることができる。光強度を制御するための色味を、矯正用又は非矯正用のアイウェアに設けることができる。しかしながら、従来のアイウェア及びコンタクトレンズは、焦点補正を提供する一方で、高いパフォーマンスを達成する主要な側面であることが多い装用者の視覚を向上させることは概してできない。少なくともこれらの理由から、特定の活動で視力を向上させる代替的な手法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、矯正レンズを使用するか必要とする又は使用せず必要ともしない装用者のための使い捨てソフトコンタクトレンズに関する。いくつかの例では、コンタクトレンズは、正視者又はコンタクトレンズを通常装用しない使用者が使用するよう構成される。装用者のために紫外線(UVR)をフィルタリングし可視スペクトル(VIS)を操作する様々なコンタクトレンズの色味を開示する。このような使い捨てコンタクトレンズにより、アイウェアでは利用不可能な歪みのない広角の改良品が得られる。さらに、本開示のコンタクトレンズは、特に概してコンタクトレンズの取り扱いに不慣れで馴染みのない正視者にとって使用し易いように従来の矯正用よりも取り扱い易い構成にすることができる。本開示のコンタクトレンズは、パフォーマンスを向上させる色味が与えられ、コンタクトレンズの取り扱いに不慣れな人が装用できるような形状にすることができる。適切なコンタクトレンズ形状により、コンタクトレンズの着脱が簡単であり、コンタクトレンズに色味を設けることで、眼鏡又はゴーグルに必要となるよりも透過性の高い色味を使用することができる。さらに、着色コンタクトレンズの使用により、眼鏡及びゴーグルに関連する物理的な制限及び問題のいくつかが回避される。
【0005】
ライトアーキテクチャ(LA)により、VISの量及び品質の両方が所望の結果を達成するように制御される。特定の要件に応じて、高エネルギー可視光線(HEV又はHEV光)として知られる約500nmよりも短い(青色)VIS波長が減衰又は除去されることで、眼内の色収差及び光散乱を低減し、視覚的な快適性を高め、選択された活動に関連する様々な光条件を含む特定の活動の視覚的要求及び環境的要求を考慮して色覚に対処する。人間の眼のピーク視感度(PVS又はPVS光)の波長域内、約500nm~600nm(緑色~黄色)では、VIS透過率が、物体及び目標の背景に対する視認性を高めるという設計目的に向けて選択される。低エネルギー可視光線(LEV又はLEV光)の波長域、すなわち約600nm~760nm(赤色)では、人間の眼の感度はPVS域よりもはるかに低く、透過率は特定の活動の色要件に基づき選択される。HEV、PVS、LEV、及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)その他等の光色指定は、以下の例のいくつかの説明に使用されるが、関連する見え方を完全に特徴付けるものではあり得ない。例えば、LEV光は赤色だけでなく橙色に見える部分を含み、PVS光の一部は橙色~黄色に見える場合があるものの、これらの近似的範囲は便宜的な説明に有用である。
【0006】
様々な光源スペクトルが、自然太陽光、発光型電子表示装置、及び競技場照明等のタスク固有の色味で考慮される。本開示のコンタクトレンズの代表例が角膜を越えて強膜まで眼の全体を覆うことにより、全体的に色味が広がり、可視光透過率(VLT)が従来の着色眼鏡よりも大幅に高く(100%、150%、200%、又はそれ以上高く)なり得る。一開示例では、コンタクトレンズのVLTが36%であるのに対し、従来の灰色着色サングラスレンズのVLTは13%である。本開示のコンタクトレンズで周辺光漏れをなくすことにより、より高いVLTを使用することができる。本開示のコンタクトレンズ(及びそれに関連したより高いVLT)により、装用者の瞳は、指標の明るさ及び身の回りを含む照明条件により正確に反応することができる。さらに、本開示のコンタクトレンズは、非矯正の非コンタクトレンズ装用者のために、コンタクトレンズの中心厚、直径、ベースカーブ、サジタルハイト(サグ)に基づき取り扱い易さを向上させ且つ初期快適性を高めるよう構成することができる。最後に、本開示のコンタクトレンズは、眼から着色レンズまでの距離(頂点間距離)をなくすことにより優れた視機能を提供する。これら及び他の特徴及び利点を例示的な実施形態に関して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1aは、3つの光源、C光源、D65光源、及びデラックスクールホワイト蛍光灯(DXCL FL)の正規化スペクトルを放出された相対エネルギーに関して示すグラフである。図1bは、3つの光源、クールホワイト(CW)発光ダイオード(LED)、ウォームホワイト(WW)LED、及び高輝度放電(HID)の正規化スペクトルを放出された相対エネルギーに関して示すグラフである。
図2】平均(Avg.)昼光照明(D65)下で「白色」として知覚される領域と、いくつかの光源:C光源、D65光源、クールホワイト(CW)発光ダイオード(LED)、デラックスクールホワイト蛍光灯(DXCW FL)、高輝度放電(HID)、及びウォームホワイト(ZWW)LEDのプロットとを示すCIE(1931)標準色度図である。
図3図3aは、UV=紫外、V=紫、B=青、G=緑、Y=黄、O=橙、R=赤、IR=赤外のスペクトル領域を含む、ND36%の色味の透過スペクトルを示す。図3bは、図3aのND36%の色味に関する、緑信号、黄信号、「白色」(平均昼光(D65))を規定する領域と、D65光源下の緑色光、黄色光、及び赤色光に関するこの色味のプロットと、種々の光源のプロットとを含むCIE(1931)標準色度図である:C=C光源、D65=D65光源、DXCW FL=デラックスクールホワイト蛍光灯、CW LED=クールホワイトLED、HID=高輝度放電、WW LED=ウォームホワイトLED。
図4図4aは、UV=紫外、V=紫、B=青、G=緑、Y=黄、O=橙、R=赤、IR=赤外のスペクトル領域を含む、アンバー50%の色味の透過スペクトルを示す。図4bは、図4aのアンバー50%の色味に関する、緑信号、黄信号、「白色」(平均昼光(D65))を規定する領域と、D65光源下の緑色光、黄色光、及び赤色光に関するこの色味のプロットと、図3bのような種々の光源、C、D65、DXCW FL、CW LED、HID、WW LEDのプロットとを含むCIE(1931)標準色度図である。
図5図5aは、UV=紫外、V=紫、B=青、G=緑、Y=黄、O=橙、R=赤、IR=赤外のスペクトル領域を含む、灰緑36%の色味の透過スペクトルを示す。図5bは、図5aの灰緑36%の色味に関する、緑信号、黄信号、「白色」(平均昼光(D65))を規定する領域と、D65光源下の緑色光、黄色光、及び赤色光に関するこの色味のプロットと、種々の光源のプロットとを含むCIE(1931)標準色度図である:C=C光源、D65=D65光源、DXCW FL=デラックスクールホワイト蛍光灯、CW LED=クールホワイトLED、HID=高輝度放電、WW LED=ウォームホワイトLED。
図6図6aは、UV=紫外、V=紫、B=青、G=緑、Y=黄、O=橙、R=赤、IR=赤外のスペクトル領域を含む、競技場80%の色味の透過スペクトルを示す。図6bは、図6aの競技場80%の色味に関する、緑信号、黄信号、「白色」(平均昼光(D65))を規定する領域と、D65光源下の緑色光、黄色光、及び赤色光に関するこの色味のプロットと、種々の光源のプロットとを含むCIE(1931)標準色度図である:C=C光源、D65=D65光源、DXCW FL=デラックスクールホワイト蛍光灯、CW LED=クールホワイトLED、HID=高輝度放電、WW LED=ウォームホワイトLED。
図6aa図6aの競技場80%の色味の設計上及び製造されたままの透過スペクトルを示す。
図7図7aは、UV=紫外、V=紫、B=青、G=緑、Y=黄、O=橙、R=赤、IR=赤外のスペクトル領域を含む、ゲーミング84%の色味の透過スペクトルを示す。図7bは、図7aのゲーミング84%の色味に関する、緑信号、黄信号、「白色」(平均昼光(D65))を規定する領域と、D65光源下の緑色光、黄色光、及び赤色光に関するこの色味のプロットと、種々の光源のプロットとを含むCIE(1931)標準色度図である:C=C光源、D65=D65光源、DXCW FL=デラックスクールホワイト蛍光灯、CW LED=クールホワイトLED、HID=高輝度放電、WW LED=ウォームホワイトLED。
図8図8aは、UV=紫外、V=紫、B=青、G=緑、Y=黄、O=橙、R=赤、IR=赤外のスペクトル領域を含む、ゲーミング65%の色味の透過スペクトルを示す。図8bは、図8aのゲーミング65%の色味に関する、緑信号、黄信号、「白色」(平均昼光(D65))を規定する領域と、D65光源下の緑色光、黄色光、及び赤色光に関するこの色味のプロットと、種々の光源のプロットとを含むCIE(1931)標準色度図である:C=C光源、D65=D65光源、DXCW FL=デラックスクールホワイト蛍光灯、CW LED=クールホワイトLED、HID=高輝度放電、WW LED=ウォームホワイトLED。
図9図9aは、UV=紫外、V=紫、B=青、G=緑、Y=黄、O=橙、R=赤、IR=赤外のスペクトル領域を含む、ND75%の色味の透過スペクトルを示す。図9bは、図9aのND75%の色味に関する、緑信号、黄信号、「白色」(平均昼光(D65))を規定する領域と、D65光源下の緑色光、黄色光、及び赤色光に関するこの色味のプロットと、種々の光源のプロットとを含むCIE(1931)標準色度図である:C=C光源、D65=D65光源、DXCW FL=デラックスクールホワイト蛍光灯、CW LED=クールホワイトLED、HID=高輝度放電、WW LED=ウォームホワイトLED。
図10】代表的なコンタクトレンズを示す。
図11図11a~図11bは、代表的な方法を示す。
図12a図4a及び図5aに示すような色味を有する本開示の着色コンタクトレンズを用いた視覚ノイズの低減を示す。
図12b図4a及び図5aに示すような色味を有する本開示の着色コンタクトレンズを用いた視覚ノイズの低減を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
最適化された視力は、人間のパフォーマンスを誘導する一次的な感覚である。競技現場、対戦相手、目標、ボール、つまり競技者の競争環境の要素の全てをはっきりと見ることができることは、競技者の自信及びパフォーマンスを向上させるのに必須の要素である。本開示の着色コンタクトレンズは、照明グレア等の視覚ディストラクションを除去する一方で、競技者のパフォーマンスを向上させるために視覚的明瞭性及びコントラスト等の重要な視覚的詳細を高めることができる。これらの開示されたコンタクトレンズは、特定のスポーツその他の活動の特有の環境的要求及び視覚的要求と特定の条件とに、つまり強烈な競技場又はアリーナ照明、グレア又は陰での90mphの投球の追跡、ボールを太陽の下で見失ったときの50ヤードタッチダウンパスのキャッチ、水面からの激しいグレアの状態でのサーフィン、及び多くの他の視力が重要となる活動に対処するために使い捨てソフトコンタクトレンズのマトリクスに配合された一連の活動固有の色味で、装用者が感じる光の量及び品質を選択する。各状況に、特有の視覚的要求及び環境的要求があり、本開示のコンタクトレンズは、競技者がスポーツ及び娯楽で遭遇する様々な視覚条件及び環境条件下で最大限の快適性、明瞭性、及び敏捷性で行動できるようにする目的で、視覚ノイズを軽減することができる。
【0009】
従来のサングラスは、本開示のコンタクトレンズが応えるパフォーマンス固有の視覚的要求に応えていない。このような従来のアイウェアは、視覚的歪みを導入し、視覚ノイズ及び視覚的クラッタの制御が十分でない。このようなウェアラブルアイウェア(ゴーグル又はシールドを含む)の頂点間距離をなくし、コンタクトレンズとして眼にパフォーマンス用の色味を位置決めすることにより、誘発されるこれらの光学的歪みがなくなると共に、着色アイウェアの装用時に人間のパフォーマンスで生じる他の視覚的及び環境的問題及び懸念も対処される。本開示のコンタクトレンズは、曇り、発汗による視界不良、レンズの傷をなくし、快適性を高め、視覚的敏捷性を促し、UVR保護及びブルーライトカットを行うことができる。高い光学性能の他の領域として、視覚的明瞭性、コントラスト感度、グレア回復、暗順応、損なわれない周辺視、奥行視、及び空間位置覚及び対象追跡の精度が挙げられる。
【0010】
本開示のコンタクトレンズは、概して、屈折力が皆無に等しいもの、すなわち矯正が不要な装用者に適したコンタクトレンズとして本明細書で説明される。適切な曲率又は他の形状を用いた矯正レンズも提供され得るが、競技者又は本開示のレンズの他の使用者は、多くの場合はコンタクトレンズの手入れ及び取り扱いに不慣れである。すなわち、本開示のコンタクトレンズの多くの又はほとんどの装用者は、プラノ度数を必要とする正視者であり得る。本開示のレンズは、快適性の向上及び取り扱い易さが得られる曲率、厚さ、及び直径を有する使い捨てソフトコンタクトレンズにこれらのパフォーマンスベースの色味を含む。
【0011】
人間の視覚系及び色覚
便宜上、人間の特定の色覚特性について簡単に要約する。人間の視覚系は、本明細書で光と称する狭帯域の電磁放射線に敏感である。約380ナノメートル(nm)~約760nmの波長を有するこの放射帯域内、VISでは、視覚系は、異なる波長を特有且つ別個の色として知覚する(表1参照)。
【0012】
【表1】
【0013】
380nmよりも短い放射線の波長は、UVRとして分類され、760nmよりも長い波長は、赤外線(IR)として分類される。これらのタイプの放射線のいずれも人間の眼には見えず、自然環境中のIRは本質的には無害だが、太陽光からのUVR曝露は、日焼け、角膜炎、翼状片、白内障等の皮膚及び眼の損傷を引き起こし得る。
【0014】
色範囲には、はっきりとした明確な境界はない。可視スペクトル全体で混色が可能である。例えば、正常色覚の人物には、波長500nmの光は青緑色に見える一方で、波長590nmの光は黄橙色に見える。さらに、単一波長の光は、飽和色として知られるソリッドな純色に見える一方で、複数の波長からなる光は、低彩度色として知られるパステル等の色味又は色合いのみを有し得る。
【0015】
人間の視覚系は、緑黄色に見える約555nmの波長の光に対して通常照明(例えば、昼光)でピーク感度を有する。夜間、低光量条件下では(例えば、他の照明がない月夜では)、ピーク感度は約505nmにある。
【0016】
白色光は、多くの場合は可視光の全波長から構成されると考えられる。しかしながら、補色として知られる僅か2つの厳選された有色光は、正常色覚の人物には「白色」と知覚させることができる。例えば、赤色光及び青色光の適切な組み合わせは白に見えることができ、紫色光及び黄色光の適切な組み合わせも白に見えることができる。
【0017】
色覚異常(CVD)は、一般的な疾患であり、通常は性連鎖形質として遺伝する。最も一般的なタイプのCVDは、赤緑色覚異常であり、赤色の物体と緑色の物体とが同様の又は同一の色に見える。全男性の約8%及び全女性の0.5%に、軽度から重度に及ぶある程度の赤緑CVDがある。他のタイプのCVD、青黄色覚異常は、先天性のものは非常に稀だが、白内障等の病状又はキニーネ等の薬物治療に伴って起こるのが最も一般的である。白内障を除去すると、又は薬物治療を停止すると、色覚は以前の状態に戻る。
【0018】
着色レンズは、正しい環境下の装用者にとって、例えば、緑色の芝、赤土、又は青空に対して見える色付きボール等の物体の背景からの容易な識別に、又はコンピュータゲーミングのようにコンピュータモニタを長期間見ているときに起こり得るような視覚的ストレスの軽減に有益であり得る。一例として、眼に入る青色及び紫色光の量を減らす色味は、眼の色収差(すなわち、光が空気等の媒体から眼の構造等の別の媒体へ進む際の異なる波長の光の自然分離)を低減し、したがって知覚画像の明瞭性及びコントラストを高める。
【0019】
眼の色収差を低減することにより、着色コンタクトレンズは、光学的矯正の必要性をある程度低減することができる。例えば、選択されたレンズ度数で可能なよりも大きな距離補正を必要とする装用者は、必要な補正の度数に近いが等しくない着色レンズで十分な視覚的明瞭性を得ることができる。同様に、乱視のある装用者は、球面矯正度数のみを有する着色レンズで十分な視覚的明瞭性を得ることができる。さらに、二重焦点コンタクトレンズを常用している装用者又は物体を間近で見ることが困難な装用者は、距離補正度数のみを有する着色コンタクトレンズの装用時に近くの物体に対して十分な視覚的明瞭性を得ることができる。さらに、正視者でさえも、色収差の低減により視力が向上し得る。適切に集束していない波長の光は、眼により感知されるが、結像に効果的ではなく、本明細書では「視覚ノイズ」を発生させると言う。
【0020】
しかしながら、着色レンズは、眼鏡、ゴーグル、又はコンタクトレンズのいずれとして提供されるかを問わず、正常色覚の人物でも、但し特にCVDの人物で、色検知を変えることができる。とはいえ、色の知覚は、色恒常性として知られるように物体の色構成の物理的変化よりも変化が小さいので、着色レンズを通して見ると色検知が正確でないことに気付かない場合がある。しかしながら、日常の状況によっては、CVDが原因か着色レンズの使用が原因かを問わず色が「正しく」見えない場合でも、有色光及び物体の適切な識別が重要である。1つの顕著な例は、運転中の交通信号の識別である。CVDの人物、及びさらには正常色覚の人物でも、運転等の正確な色検知が必要な活動に着色レンズを使用する前に、注意して眼科医と相談すべきである。
【0021】
光源
最も一般的な「白色」光源は、自然太陽光であり、可視領域のそのスペクトルは、標準光源Cにより与えられる(図1a)。よく似たスペクトルを有する人工光源が、D65光源である(図1a参照)。図1aには、屋内照明で使用されることが多いが多くの場合にはコンピュータモニタ及びテレビの照明源としても使用される、典型的なデラックスクールホワイト蛍光灯のスペクトルも示す。図1bは、多くの場合に競技場及びアリーナで使用されるような高輝度放電(HID)光のスペクトルと、屋内照明で使用され、ラップトップやタブレット等の小型スクリーンコンピュータ及びスマートフォンでの使用も増えている2タイプの発光ダイオード(LED)光、クールホワイト及びウォームホワイトのスペクトルとを示す。
【0022】
光の色の見えを特徴付ける方法の1つは、そのスペクトルを人間の眼の視感度と比較してその結果を図2に示すような色度図にプロットすることである。「平均昼光」を規定する中央楕円202内に入るデータ点は、概して白色に見える。特定の光源及び色味に関連するデータ点がC光源の位置に近いほど、関連する光は「白色」に近い見えになる。C光源の位置から遠く図の縁寄りにある色座標値(X,Y)は、有色の見えに関連する。例えば、ウォームホワイトLEDは「平均昼光」範囲内にあるが、C光源と比較すると明確な橙赤の色合い又は見えを有し、HID光はそれほどではない。
【0023】
代表的なパフォーマンス用の色味
パフォーマンスコンタクトレンズの色味の様々な実施形態の透過率曲線を提示する。各曲線は、300nm~800nmの光の波長に対して色味の透過率をパーセントでプロットしたものである。参考までに、おおよその色範囲(表1参照)も示す。全ての色味が、有害なUVR、すなわち380nmよりも短い波長が眼に達するのを防止する。さらに、各色味がソフトコンタクトレンズの全体内にあり、コンタクトレンズは装用者の眼の角膜と接触して角膜よりも大きいので、装用者の後方又は側方から眼に入る光が漏れない。その結果、着色コンタクトレンズは、実際に眼に入る光の同様の効果的な低減を達成するために、着色眼鏡又はゴーグルレンズほどの量の光をフィルタリングする必要がない。
【0024】
各CIE色度図は、平均昼光(D65)での物体の色の見えをプロットしたものである。正常色覚の人物にとっては、色味(中抜き及び網掛け記号)が中央楕円(「平均昼光(D65)」と表示)内に生じた場合、白色物体は白色に、又は僅かな色合いのある白色に見え、色味が中央円外にプロットされた場合、白色物体は明確な非白色に見える。色味(中塗り円)が図の左上の点破線領域内(「緑信号」と表示)に生じた場合、緑色の交通信号は緑色に見え、色味がこの領域外にプロットされた場合、緑色の交通信号は緑色に見えない。色味(中塗り正方形)が図の右中央の破線領域内(「黄信号」と表示)に生じた場合、黄色の交通信号は黄色に見え、色味がこの領域外にプロットされた場合、黄色の交通信号は黄色に見えない。色味(中塗り菱形)がLEV領域内の波長で図の右下隅の境界線に沿って生じた場合、赤色の交通信号は赤色に見え、色味が境界線から離れてプロットされた場合、赤色の交通信号は赤色に見えない。
【0025】
概して、理想的な中性濃度(ND)の色味は、可視スペクトルの全波長の透過率を等しく低減するので、色知覚を変化させない。色知覚への影響が最小である一実施形態は、ND36%の色味である(図3a参照)。この色味は、明るく晴れた日の、特に正確な色検知が望ましいか又は重要である場合の使用を意図したものである。設計により、これは全ての有害なUVRをフィルタリングして一部のHEV光の透過率を低下させ、したがって眼の色収差の低減により見た目のコントラスト及び明瞭性を高める。赤色光に対する人間の視覚系の感度は黄色光及び緑色光に対するよりも当然大幅に低いので、赤色光、すなわちLEV領域の波長をより短い波長の光ほどフィルタリングしないことで、赤色の交通信号を検知しやすくなる。図3bは、交通信号に関するこの色味と、種々の光源の知覚色との色度図上のプロットを示す。
【0026】
屋外活動に有用な実施形態は、アンバー50%(図4a及び図4b参照)及び灰緑36%(図5a及び図5b参照)の色味を含む。両方の色味が、眼の色収差を大幅に低減し、したがって芝上又は空中のボール又はチームメイトの(又は対戦相手の)服装等の背景に対する物体の容易且つ迅速な知覚を可能にする。アンバー50%の色味は、ボール又はパックを用いるスポーツ等のダイナミックで反応性の高いスポーツでの物体の追跡時に、照明条件が明るい光から陰まで様々である場合に、より有用であり得る。灰緑36%の色味は、クロスカントリー競走及びサーフィンを含む陸上又は水上の様々な環境の屋外昼光条件でより有用であり得る。
【0027】
明瞭性及びコントラストを大幅に向上させるという視機能上の利益に加えて、これら2つの色味及びHEV領域の大半をフィルタリングする下記のいくつかの他の色味は、眼の健康の観点から「ブルーライトハザード」に対処し、概日リズム及び睡眠サイクルのための身体の自然なメラトニン分泌も損なわない。最後に、このような色味はVISの多くをフィルタリングする一方で、PVSの領域付近の透過率の比較的急激な上昇により、視覚的な快適性と、上述のコントラスト向上から認識される「明るさ向上効果」とがある。
【0028】
屋外及び屋内の競技場及びアリーナでの夜間スポーツイベント等のHID照明下の活動に有用であり得る実施形態は、スタジアム80%の色味である(図6a及び図6b参照)。この色味は、HEV光の大部分をフィルタリングすることにより眼の色収差を大幅に低減する。したがって、このような人工照明下で照明された物体の明瞭性及びコントラストを高めることができる。
【0029】
オンラインゲーミング等のコンピュータ及びモニタベースの活動に有用な実施形態は、ゲーミング84%(図7a及び図7b参照)、ゲーミング65%(図8a及び図8b参照)、及びND75%(図9a及び図9b参照)の色味を含む。これらの色味の全てが、通常のモニタ及びスクリーンの照明源、すなわち蛍光灯及びLED光が発生させるHEV光の量を大幅に低減し、したがってこのような装置を長時間見ることにより生じる視覚的ストレスを低減する。ゲーミング84%及びND75%の色味は、正確な色検知を可能にするが、ゲーミング65%の色味は、視覚的ストレスを最も低減する。競技場80%の色味も、これらの活動に使用することができるが、ゲーミング65%の色味と同様の特徴がありながらも全光線透過率がより高い。
【0030】
代表的な着色剤及びレンズ寸法
様々な着色剤を使用することができるが、本明細書に開示する例は、以下の1つ又は複数を使用することができる:リアクティブイエロー15(CAS Reg. No.60958-41-0)、リアクティブオレンジ78(CAS Reg. No.68189-39-9)、リアクティブブラック5(CAS Reg. No.17095-24-8)、及びリアクティブレッド180(CAS Reg. No.98114-32-0)。着色は、参照により本明細書に援用するClaussen他による米国特許第4,733,959号に記載のものと同様のプロセスで重合後のコンタクトレンズに施すことができる。代表的な寸法は、下記の表にある。
【0031】
【表2】
【0032】
概して、レンズ表面の全体(前面及び後面の両方)は、VISにわたる指定の光透過率特性で装用者の瞳を完全に覆うように着色することができる。コンタクトレンズ全経は12.0mm~16.0mmの範囲で、光学部径は7.0mm~10.0mmに及ぶものとすることができる。後面のベースカーブ半径は、7.0mm~9.5mmの範囲とすることができる。0.12mm以上の厚さであれば、コンタクトレンズの取り扱いに不慣れな正視者に必要であり得る取り扱い容易性が向上する。
【0033】
使用可能な材料として、以下のものが挙げられる:DA-ジアセトンアクリルアミド;DMA-N,N-ジメチルアクリルアミド;HEMA-2-ヒドロキシエチルメタクリレート;MAA-メタクリル酸;MMA-メチルメタクリレート;NCVE-N-カルボキシビニルエステル;NVP-N-ビニルピロリドン;PBVC-ポリ[ジメチルシロキシル]ジ[シリブタノール]ビス[ビニルカルバメート];PC-ホスホリルコリン;TPVC-トリス-(トリメチルシロキシシリル)プロピルビニルカルバメート;及びTRIS-トリス-(ヒドロキシルメチル)アミノメタン。列挙した材料は、ポリマコン及びオキュフィルコンD等の様々な一般名でも知られている。いくつかの例では、オキュフィルコンD(HEMA、MAA)が使用される。本開示によるソフトコンタクトレンズは、使い切りの使い捨てコンタクトレンズに必要な低コスト製造を可能にするために、注型成形することができるこの材料又は他の親水性材料でできている。
【0034】
代表的なコンタクトレンズ
図10を参照すると、代表的なタスク固有コンタクトレンズ1000(断面で示す)は、後面曲率PCを有する後面1004と前面曲率ACを有する前面1006とを有する基材1002を含む。後面曲率PCは、使用時に装用者の眼に接触し、コンタクトレンズ1000が瞬き又は他の外乱に対して眼の上で静止している傾向があるようにSAGを提供するよう通常は選択される。これは、コンタクトレンズの装用に馴染みがない正視者による使用にとって特に重要であり得る。さらに、タスクによっては、眼の上のコンタクトレンズ位置の一時的な乱れから、タスク固有の視力が低下する可能性がある。前着色層AT及び後着色層PTが、前面1006及び後面1004にそれぞれ位置する。着色は、概して、選択された染料が前面1006及び後面1004に浸透して選択された透過率スペクトルを生成するように、整形され重合された基材を染浴に浸漬させることにより提供される。図示のように、着色層は、概して実質的に縁1010まで延びる。
【0035】
後面1004には、着用時のレンズの安定性及び快適性を促進するための曲率が設けられるが、前面曲率ACは、視力矯正に適した度数を提供するために必要に応じて選択される。しかしながら、多くの場合、意図される装用者は矯正が不要である。後面1004及び前面1006は湾曲しているが、矯正度数なしのコンタクトレンズを本明細書では「プラノ」レンズと称する。所望であれば、球面又は非球面曲率を設けることができる。プラノレンズは、ゼロ屈折力を提供するために後面及び前面で異なる曲率を有し得る。
【0036】
コンタクトレンズ1000は、直径Dと、視力に適した曲率の直径DOZを有する規定の光学部とを有する。コンタクトレンズ1000の周囲部分は、視力のために制御された曲率を有する必要はなく、薄くするか又は他の形状にすることができ、依然として装用者の快適性及び取り扱い容易性を提供する。
【0037】
分光透過率(色味)に関する留意点
上記の図1図9は、一般的に見られる光源の光スペクトル(図1a、図1b)と、CIE色度図(図2)に示すような視覚の分光感度(すなわち、これらの光源からの光の見え)とを示す。図2の囲み領域202は、白色に関連するCIE座標値に対応する。座標領域202等の領域外のCIE座標に関連する色味は、装用者の色知覚を変化させ、場合によっては一般的な装用に適さない。図3a~図9bの色味は、概して、500nm、475nm、450nm、又はそれ以下等のHEV光を実質的に減衰させる。これらの波長は、比較的高い光散乱及び色収差に関連する。これらの波長を減衰させることにより、焦点及びコントラストを改善することができる。白色光源に応答する座標領域202のCIE座標値に関連する色味を、本明細書ではニュートラルな色味又はニュートラルに見える色と称する。場合によっては、1つ又は複数の白色光源が、特定の色味に対してこの領域のすぐ外側にCIE座標をもたらし得るが、このような色味もニュートラルと称する。
【0038】
場合によっては、これらの色味に基づくコンタクトレンズは、コンタクトレンズを眼に載せると眼鏡レンズの周りの光漏れがなくなるので従来の色味よりも実質的に明るく見え、これらの色味は、それほど濃い着色でなくても効果的である。例えば、図3aの色味は、約36%の実効透過率を有し、図3bに示すように概ねニュートラルに見える。別の例として、図9aの色味は、約75%の実効透過率を有する。本開示のタスク固有の色味は、概してニュートラルに見えず、装用者が色に正確に反応することができないが、その代わりに、特定のタスクの実行時に視覚を補助することができるような方法で透過スペクトルを制限する。
【0039】
図4aに示す色味(「アンバー」の色味)は、約500nm未満の光を減衰させ、視覚ノイズを低減して焦点を改善する。図4bに示すように、この色味はニュートラルに見えない。
【0040】
図5a及び図6aの色味は、HEV光を減衰させ、それぞれ36%及び80%の実効全透過率を有する。図6aの色味は、高透過率を有するが、視覚ノイズを効果的に除去する。図6aaは、設計スペクトル606及び例示的な生成スペクトル604を示す。図7a及び図8aの色味(「ゲーミング」の色味)は、コンピュータゲーミングに適している(また、図7aは、前述した色味のいくつかよりも正確な色応答を可能にする)。これらの色味は、長時間行う場合があるコンピュータゲームにおいて疲労を軽減し且つ迅速な反応を促進するよう選択される。
【0041】
図9bは、75%という比較的高い透過率を有する別のニュートラルな色味を示す。
【0042】
上記色味のいずれも、任意の波長で1%、2%、又は5%の透過率の差があり得る。
【0043】
分光透過率(色味)選択
タスク固有コンタクトレンズを作製する代表的な方法1100を図11aに示す。1102において、タスクに関連するアンビエント照明を評価する。例えば、光源及びタスクに通常関連する関連発光スペクトルを評価することができる。1104において、好ましいスペクトル帯域を選択し、1106において、視覚ノイズ帯域を識別する。1108において、色収差低減に関連するスペクトル帯域を選択することができる(又は他の帯域の選択に含めることができる)。場合によっては、このスペクトル帯域は視覚ノイズ帯域に含まれ、付加的な減衰は不要である。1110において、上記ステップに少なくとも部分的に基づき分光透過率を選択することができる。1112において、選択されたコンタクトレンズ基材の前面層及び後面層に通常は組み込まれるものとして、所望の分光透過率を生じさせる着色剤及び着色プロセスを選択する。1114において、装用者の快適性及び必要に応じて装用者の光学的矯正に関連するSAG及び厚さに基づきコンタクトレンズを選択し、1116において、コンタクトレンズの前面及び後面に着色することにより選択された色味を実現する。
【0044】
図11bに示す別の例では、方法1150は、場合によっては視覚ノイズを低減するために、1152においてHEV波長域の透過率を選択することを含む。1154において、通常は予想される照明を考慮して、物体のコントラスト及び視認性を高めるようにPVS波長域の透過率を選択する。1156において、適切な色を提供するようにLEV波長域の透過率を選択する。1158において、着色剤及び色プロセスを選択し、1160において、サグ及び厚さ等のコンタクトレンズの物理的特性(及び視力矯正のための曲率)を選択する。1162において、色味を適用する。
【0045】
色収差及び視覚ノイズの低減
図12aを参照すると、眼1200は、網膜表面1206に物体1202(慣例により矢印で示す)の像を生成するために使用される水晶体1204を含む。便宜上、全合焦力が水晶体1204に含まれるものとして説明するが、正常な人間の眼では、合焦は水晶体(可変)及び角膜(固定)により行われる。白色光で結像するには、水晶体1204は、図示のように赤(R)、緑(G)、及び青(R)の色成分に関連する像1210、1211、1212を生成するよう合焦する。緑色に関連する像1211が網膜1206に結像すると、赤色及び青色に関連する像1210、1212は、図示のように網膜1206の後方又は網膜1206の前方に向けて結像される。水晶体1204は、像1212が網膜1206の前方に位置するように短波長に対して高い屈折率を有する。像1210、1212の間隔は、網膜1206に結像するものとして図示されるPVS(緑色)光と同様にHEV(青色)光及びLEV(赤色)光を結像させるのに必要な2.3Dの屈折力差に対応する。関連するぼやけは、集束ビームの角度広がりθと縦色収差(B及びR焦点間の距離)との関数(積)であり、このぼやけが視覚ノイズを発生させる。図12bに示す適切な着色のコンタクトレンズ1205の場合、R像122、G像1221、B’像1222が小さな間隔を有し、1.1Dの屈折力差に対応し、視覚的なぼやけ及びノイズを低減する。B’像-R像の間隔は、図12aのB像-R像の間隔よりも小さく、色収差の低減を示す。この例では、B’はより短い波長を示すが、青色波長の一部は減衰又は遮断されている。なお、図示のように、着色コンタクトレンズ1205は、屈折力を加えるのではなく、スペクトル減衰のみを与える。
【0046】
図4a及び図5aは、図12a及び図12bに示すような視覚ノイズの低減に使用することができる代表的な着色コンタクトレンズのスペクトルを示す。図4aは、アンバーの見えに関連する分光透過率を有する着色コンタクトレンズを示し、図5bは、灰緑の見え方sに関連する分光透過率を有する着色コンタクトレンズを示す。これらの色味の両方が、480nm未満の波長で略完全に遮断され、実質的な減衰を生じる。視覚ノイズ低減は、コンタクトレンズ度数なしの場合を示すが、近視者及び遠視者に使用されるような矯正レンズで同様の視覚ノイズ低減を得ることができる。
【0047】
一般的考察
上述のように、本開示の着色コンタクトレンズは、特に視力矯正を通常使用しない人が快適で使用し易いように構成される。本明細書で使用する場合、矯正が不要な(又は0.1D、0.05D、若しくは0.025D未満の大きさの矯正が必要な)人を正視者と称する。より大きな正の矯正(0.1Dを超えるような)が必要な人を遠視者と称し、-0.1D未満の負の値が必要な人を近視者と称する。このような使用者のいずれにも、乱視矯正を含めることができる。いくつかの例では、本開示の着色コンタクトは、短期使用(2時間~10時間未満)用に構成され、酸素透過性が低い。色収差を1.2D、1.1D、1.0D、0.9D、0.8D又はそれ以下に低減する着色コンタクトレンズを、本明細書では色収差補正されたものと称する。
【0048】
上記例では、具体的な透過率値が提供されているが、これらは±1%、±2%、±5%、±10%、±15%、又は±20%の変動があり得る。透過率が急速に、すなわち(図6aaの480nm~550nmのように)1%/nm、2%/nm、又は3%/nmよりも大きく急速に変わる領域では、より大きな変動が許される。可視領域400nm~760nm外の透過率値は、視覚に実質的に寄与しないので概して任意であり得る。透過率値は、「視感透過率」、すなわち人間の眼の視感度関数で重み付けした各波長の物理的透過率である。
【0049】
代表的な実施例
実施例1は、タスク固有の使い捨てコンタクトレンズであって、前面、後面、及び12nm~16nmの直径を有するコンタクトレンズ基材を含み、後面は、3.5mm以上のサグ及び7mm~実施例9.5mmの曲率、並びに前面と後面との間に位置する着色層を有するタスク固有の使い捨てコンタクトレンズである。
【0050】
実施例2は、実施例1の主題を含み、コンタクトレンズ基材がオキュフィルコンDであることをさらに特定する。
【0051】
実施例3は、実施例1~2のいずれかの主題を含み、400nm未満の波長の透過率が1%未満であり400nm~450nmの波長で40%未満であるようにコンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0052】
実施例4は、実施例1~3のいずれかの主題を含み、400nm~450nmの波長の透過率が2%未満であることをさらに特定する。
【0053】
実施例5は、実施例1~4のいずれかの主題を含み、650nm~700nmの波長の透過率が80%を超えるようにコンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0054】
実施例6は、実施例1~5のいずれかの主題を含み、コンタクトレンズは、560nmを超える波長の透過率が90%以上であり480nm未満の波長の透過率が2%未満であるように着色される。
【0055】
実施例7は、実施例1~6のいずれかの主題を含み、620を超える波長の透過率が95%以上であり500nmで20%以上から600nmで80%以上まで単調増加するように、コンタクトレンズが着色されることをさらに特定する。
【0056】
実施例8は、実施例1~7のいずれかの主題を含み、着色層は、80%の実効透過率を有する競技場の色味に対応する透過度を有する。
【0057】
実施例9は、実施例1~8のいずれかの主題を含み、620を超える波長の透過率が95%以上であり450nmで30%以上から600nmで90%以上まで単調増加するように、コンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0058】
実施例10は、実施例1~9のいずれかの主題を含み、着色層が、84%の実効透過率を有するゲーミングの色味に対応する透過度を有することをさらに特定する。
【0059】
実施例11は、実施例1~10のいずれかの主題を含み、400nm~450nmの波長の透過率が400nmで2%未満から450nmで25%未満だが30%未満まで単調増加し、500nm~650nmの波長では500nmで20%以上から650nmで90%以上まで単調増加するように、コンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0060】
実施例12は、実施例1~11のいずれかの主題を含み、着色層が、84%の実効透過率を有するゲーミングの色味に対応する透過度を有することをさらに特定する。
【0061】
実施例13は、実施例1~12のいずれかの主題を含み、480nm未満の波長の透過率が2%未満であり、580nm~620nmの波長で40%以上であり、620nmで40%以上から700nmで90%以上まで単調増加するように、コンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0062】
実施例14は、実施例1~13のいずれかの主題を含み、コンタクトレンズ基材が灰緑の色味に対応する透過度を有するように着色されることをさらに特定する。
【0063】
実施例15は、実施例1~14のいずれかの主題を含み、480nm未満の波長の透過率が10%未満であり520nmで10%以上から620で95%以上まで単調増加するように、コンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0064】
実施例16は、実施例1~15のいずれかの主題を含み、コンタクトレンズ基材がアンバーの色味に対応する透過度を有するよう着色されることをさらに特定する。
【0065】
実施例17は、実施例1~16のいずれかの主題を含み、450nm未満の波長の透過率が20%未満であり、460nm~580nmで30%~40%であり、620nmで40%以上から700nmで95%以上まで単調増加するように、コンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0066】
実施例18は、実施例1~17のいずれかの主題を含み、コンタクトレンズ基材が、36%以上の透過率を有する色収差を低減したニュートラルな色味に対応する透過度を有するように着色されることをさらに特定する。
【0067】
実施例19は、実施例1~18のいずれかの主題を含み、450nm未満の波長の透過率が40%未満であり、500nm~640nmで70%~80%であり、450nm~500nmから単調増加し、760nm~800nmで95%以上であるように、コンタクトレンズ基材が着色されることをさらに特定する。
【0068】
実施例20は、実施例1~19のいずれかの主題を含み、コンタクトレンズ基材が、75%以上の透過率を有する色収差を低減したニュートラルな色味に対応する透過度を有するように着色されることをさらに特定する。
【0069】
実施例21は、実施例1~20のいずれかの主題を含み、直径が15mm以上であることをさらに特定する。
【0070】
実施例22は、実施例1~21のいずれかの主題を含み、後面のサグが5mm以上であることをさらに特定する。
【0071】
実施例23は、実施例1~22のいずれかの主題を含み、曲率が8.5mm以上であることをさらに特定する。
【0072】
実施例24は、実施例1~23のいずれかの主題を含み、レンズ度数の大きさが0.1D未満であることをさらに特定する。
【0073】
実施例25は、実施例1~24のいずれかの主題を含み、レンズ度数の大きさが0.05D未満であることをさらに特定する。
【0074】
開示された技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態に鑑みて、図示の実施形態は好ましい例にすぎず、本開示の範囲を制限するものとみなすべきではないことを認識されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6aa
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12a
図12b
【国際調査報告】