(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】炭素質材料を処理する方法及びそのための装置
(51)【国際特許分類】
C10B 47/24 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
C10B47/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579621
(86)(22)【出願日】2022-06-23
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 AU2022050636
(87)【国際公開番号】W WO2022266713
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521155841
【氏名又は名称】シータ ホールディングス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター、ジョン デイビッド
(57)【要約】
炭素質材料を処理する方法であって、その方法は、炭素質材料を第1の反応器ゾーンに供給することと、触媒を第1の反応器ゾーンに供給することと、第1の反応器内で炭素質材料を処理して、炭素質材料の少なくとも一部を分解及び/又は揮発分除去することと、第1の反応器からの出力を第2の反応器に供給することと、を含み、第2の反応器は、第1の反応器よりも高い温度を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料を処理する方法であって、
炭素質材料を第1の反応器ゾーンに供給することと、
触媒を前記第1の反応器ゾーンに供給することと、
第1の反応器内で前記炭素質材料を処理して、前記炭素質材料の少なくとも一部を分解及び/又は揮発分除去することと、
前記第1の反応器からの出力を第2の反応器に供給することと、
を含み、
前記第2の反応器は、前記第1の反応器よりも高い温度を有する、
方法。
【請求項2】
前記第1の反応器内の温度が800℃~900℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応器が、互いに垂直方向に分離された少なくとも2つのゾーンを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒が酸化鉄ベースの触媒を含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒がイルメナイトを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒を、熱砂の形態、又は砂の形態における他の固体媒体の形態で供給することを含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記触媒が、前記反応器の高さに沿って間隔を開けて配置された複数の投入部を介して供給される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記間隔を開けて配置された複数の投入部を介した前記反応器への前記触媒の供給が、複数のバルブによって制御される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記バルブが非機械的である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器の長さに沿った様々な点での前記触媒の供給が、前記反応器を反応ゾーンに分割する、請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒は、反応器への複数の投入部を含む熱砂分配アセンブリを通して供給され、前記複数の投入部は、前記熱砂分配アセンブリに流動化空気を加えることによって制御され、ライザチャンバ内の密度を低下させ、熱砂を前記複数の投入部に移動させる、請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記炭素質材料が石炭を含む、請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記二次反応器に供給される前記出力が、ガス出力を含む、請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
出力材料からバイオ炭を分離することをさらに含む、請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記出力が、前記反応器からの合成ガス出力である、請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記二次反応器及び前記反応器が共通の再循環媒体を使用する、請求項13、14又は15に記載の方法。
【請求項17】
追加の触媒を前記二次反応器に供給することをさらに含む、請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
固体炭素系材料を回収することをさらに含む、請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
水蒸気が流動化剤として利用される、請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、反応器内で炭素質材料、特に石炭を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解反応器は、酸素又は任意のハロゲンの非存在下、高温で有機材料を熱化学的に分解する。熱分解は、化学組成及び物理相の同時変化を伴い、不可逆的である。反応器の設計は、熱化学変換のためのエネルギーを供給するために、2つの主要な熱伝達モードとして、直接、間接、又はその両方の組み合わせを用いることができる。間接加熱は金属の熱伝達面に依存し、これがこのタイプの設備をスケールアップする際の制限要因となり、その結果、合理的なプラントの処理能力を達成するためには、複数のユニットを並行して運転することになる。これは、高い資本コスト、高い保守コスト、高い運転コスト、及び低い熱効率をもたらす。このタイプの設備の例としては、ロータリーキルン、ドラムキルン、レトルト(固定床)、オーガ、アブレーティブ(ablative)及び真空反応器などがある。いくつかの新規な間接加熱方法には、電気(放射及び/又は伝導)、プラズマ、マイクロ波及び太陽エネルギーなどがある。これらの方法は、通常、安価な電気及び不活性キャリアガスを必要とする。さらに、これらの複雑な加熱方法は、高い運転コスト及び高い資本コストを有する。
【0003】
直接熱伝達は、高温の使用済み燃焼ガスの流れ、又は不活性ガス(通常は合成ガス)の再循環を使用して達成することができる。高温の使用済み燃焼ガスを使用すると、合成ガスが二酸化炭素と窒素とで著しく希釈され、非常に熱量が低い合成ガスが得られる。この熱量が低い合成ガスは、一旦冷却されると自己燃焼のための十分な燃料価値を有さないため、用途が限定される。合成ガスの再循環を使用することは、余分な再循環ガス体積を取り扱うために、はるかに大きいオフガス洗浄システムを必要とし、ガスを再圧縮しなければならないという欠点を有する。さらに、熱分解オフガス(未処理の合成ガス)は、タールや油分を凝縮及び除去するために、湿式スクラビング(冷却)されなければならない。従って、リサイクルされたガスは、再圧縮され、各サイクルで、約80℃から+800℃に再加熱されなければならず、その結果、熱効率が低く、運転コストが高くなる。さらに、再循環合成ガスは、間接熱交換器を使用して再加熱する必要があり、その結果、資本コストが高くなる。熱分解反応器を通過するガス流が多いほど、バイオ炭(biochar)の収率を低下させる。この技術の例としては、固定床レトルト、多段加熱炉、流動床及び同伴流反応器(entrained flow reactors)などがある。
【0004】
背景技術に対する上記の参照は、当該技術が当業者の共通の一般的知識の一部を形成していることを認めるものではない。また、上記の参照は、本明細書に開示されるアクチュエータ、アクチュエータの製造方法及びその組成物への適用を制限することを意図するものではない。
【発明の概要】
【0005】
本開示は一般に、反応器内での石炭を含む炭素質材料の処理に関する。また、開示された方法は、他の炭素質材料にも適用できることを理解されたい。
【0006】
いくつかの形態では、本方法は、熱分解を使用して有機材料を処理して、原料の有機材料を基本成分に分解するために利用される。いくつかの形態では、本方法は、炭素などの処理生成物又は出力(products or outputs)の一部を回収することを含む、有機材料の熱コストの低い処理である。
【0007】
しかしながら、本方法は、これらの用途又は出力に限定されないことが理解されよう。説明される方法は、原料のばらつきに対応して、幅広い条件下で運転することができる。
【0008】
いくつかの形態では、一次反応器は、高温で運転する必要があり得る、すなわち、石炭などの高固定炭素原料を処理するために、高温で運転する必要があり得る。水蒸気流動化を利用する縦型配向は、本発明者らの熱及び物質の移動方法を使用して、特に複数の投入点を使用することで、大規模にこれを達成することができる。
【0009】
いくつかの形態では、開示された技術は、炭素の制御可能な部分を固体(炭(char))として残すことができ、その固体は、カーボンニュートラルを達成するために固体材料として隔離することができる。いくつかの形態では、炭素の一部を固体として残すことで、合成ガスの組成(H2対CO比)を、下流のアップグレードプロセスに適合するように操作することも可能になる。例えば、いくつかの形態では、この技術及び方法により、必要とされるH2:CO比が3:1であればメタンを製造することができ、H2:CO比が好ましくは2:1であればメタノールを製造することができる。
【0010】
開示されたシステムは、反応性鉱物(鉄系鉱物)及び非反応性鉱物(ゼオライト、アルミナなど)を混合することによって、熱物質移動(HMT)媒体組成を変更することによっても、操作可能である。これにより、CO2が排出される場所が効果的にシフトし、合成ガスから流動床酸化オフガスへと移動する。反応性媒体(物質移動)を使用することは、再加熱のための燃料が不要であることを意味する。すなわち、FeOがFe2O3に酸化されることにより、十分なエネルギーが供給され、結果としてCO2は発生しない。
【0011】
いくつかの形態では、開示された技術は、熱ループ原理と化学ループ原理とを組み合わせたものであり、最適な熱分解とガス化の結果をもたらす可能性がある。すなわち、高品質のバイオ炭を高収率で得ることができると共に、大気中の窒素で希釈されていないクリーンな合成ガスを得ることができる。
【0012】
化学ループに基づいて、いくつかの形態では、空気から酸素を分離する必要がない場合があり、これにより、従来の酸素吹き込み式のガス化装置と同様の品質の合成ガスを製造しながら、電気エネルギーを節約できる可能性がある。
【0013】
いくつかの形態では、媒体は、プロセス内で再循環(ループ)される固体状態の熱及び酸素キャリアであり得る。いくつかの形態では、イルメナイトや鉄鉱石などの天然鉱物がこの役割を果たすのに理想的であり得る。
【0014】
いくつかの形態では、回収された合成ガスは、発電(オンデマンド)に使用されたり、生成物(すなわち、水素)として分離されたり、他の商品に変換するための化学原料になったりし得る。いくつかの形態では、合成ガスは窒素で希釈されず、発熱量が高いため、これは合成ガスの経済的な貯蔵を可能にする場合がある(ガスホルダ内に又は圧縮ガスとして)。
【0015】
記載されるような方法及び装置の範囲に含まれ得る任意の他の形態にかかわらず、具体的な実施形態を、例示のためにのみ、以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】炭素質材料の処理に使用するための反応器の一実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図1の反応器を組み込んだガス化プラントを示す平面図である。
【
図3】本開示の一実施形態の内部サイクロンを示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態の流動床設計を示す図である。
【
図5】本開示の一実施形態の熱砂分配器を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態のラメラプレートを含む熱砂分配器を示す図である。
【
図7】炭素質材料の処理に使用するための一次反応器及び二次反応器が単一の容器(反応器)に配置された、反応器の一実施形態のフローチャートである。
【
図8】炭素質材料の処理に使用するための一次反応器及び二次反応器が単一の容器(反応器)に配置された、反応器の一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1の態様によれば、炭素質材料を処理する方法が開示され、この方法は、炭素質材料を反応器に供給することと、触媒を反応器に供給することと、炭素質材料を反応器内で比較的低温で処理して、炭素質材料を基本化合物(base compounds)に分解することと、を含む。いくつかの形態では、反応器は、独立したゾーンを有する縦型反応器(vertical reactor)を含む。いくつかの形態では、ゾーンは独立した反応器として機能する。いくつかの形態では、ゾーンは反応器内で互いに対して垂直に配置されるか、又は積み重ねられる。
【0018】
いくつかの形態における方法は、高温の固体を使用する直接熱伝達に基づいている。いくつかの形態では、流動性のある砂状材料を別々に加熱し、次いで、熱分解反応器内で炭素質材料又は原料と一緒に混合する。この方法は、合成ガスを窒素や二酸化炭素で希釈することなく、熱源から間接的に(但し、原料には直接的に)熱を供給するという利点を有し得る。
【0019】
いくつかの形態では、炭素質材料の供給システムは機械的である。いくつかの形態では、機械的供給システムは流れベース(flow based)である。いくつかの形態では、機械システム内の流れは重力ベース(gravity based)である。
【0020】
いくつかの形態では、一次反応器は、材料混合システムを含む。いくつかの形態では、この混合システムは、薄板プレート(lamella plates)の形態である。いくつかの形態において、この混合システムは、内部サイクロンの形態である。
【0021】
いくつかの形態では、この方法は、出力材料から触媒の少なくとも一部を回収することと、方法で再使用するために触媒を再生することと、をさらに含む。
【0022】
いくつかの形態では、出力材料はバイオ炭を含む。
【0023】
いくつかの形態では、触媒は酸化鉄ベースの触媒を含む。いくつかの形態では、触媒はイルメナイトを含む。
【0024】
いくつかの形態では、触媒又は熱伝達媒体は、反応成分又は吸収剤を含有することができる。いくつかの形態では、吸収剤は酸化カルシウムを含む。
【0025】
いくつかの形態では、本方法は、反応器処理の出力材料から合成ガスを回収するステップをさらに含む。
【0026】
いくつかの形態では、反応器は、砂又は触媒のための流動床酸化反応器を含むガス化プラントの一部を形成する。いくつかの形態では、反応器はサブマージされたプレナム(submerged plenum)を含む。いくつかの形態では、反応器は流動床と連通している。
【0027】
いくつかの形態では、一次反応器の運転温度は800~900℃であり、いくつかの形態では、二次反応器の運転温度は950~1000℃である
【0028】
いくつかの形態では、水蒸気が反応器のための流動化剤として使用される。いくつかの形態では、反応前にバイオマスを流動化するために、縦型反応器の下部から水蒸気が供給される。
【0029】
また、炭素質材料を処理する方法も開示されており、この方法は、炭素質材料を低温反応器内で鉄系触媒を用いて処理することを含む。
【0030】
熱伝達は、950℃又は同様の温度の流動床と約500℃の出口温度で動作する熱分解ユニットとの間で再循環される流動性の固形材料、すなわち、砂状材料を使用して達成される。使用され得る熱伝達媒体の一例としては、イルメナイトが挙げられる。
【0031】
反応器は、反応器への熱砂(hot sand)投入点を複数含むことができ、これは、炭及び合成ガスの収率を改善し、汚染物質の除去するための最大温度制御を提供する、制御された低速自己熱分解を提供するという利点を有し得る。いくつかの形態では、反応器内の一連の離間した投入部に熱砂を供給する熱砂分配アセンブリが使用される。熱砂分配アセンブリは、単一の熱砂投入部と複数の出力部とを含むことができ、複数の出力部は、ライザチャンバ内の密度を低下させ、熱砂を複数の出力部内に移動させるのに十分な流動化空気を加えることによって制御することができる。
【0032】
反応器は、いくつかの形態では、追加の生成物の流れを提供するために、触媒砂材料又は鉱物の熱処理を使用することができる。
【0033】
いくつかの形態では、反応器は、機械的に撹拌されて、良好な混合、均一な温度、良好な滞留時間制御を達成すると共に、閉塞を回避する。合成ガスの一部をリサイクルして部分的に流動化させることにより、反応器内の温度制御と反応器を通る材料の移動とを助けて、得られるバイオ炭の特性を向上させることができる。この方法は、熱分解反応器のスケールアップが熱伝達面積ではなく、機械的設計によってのみ制限されるという利点を有し得る。
【0034】
使用済み砂のリサイクルは、砂を冷却することなく、特殊なエレベータや空気圧移送を使用して達成され得る。
【0035】
砂の再加熱による廃棄エネルギーは、いくつかの形態では、投入されるバイオマス原料を乾燥させるために使用される場合があり、これは、熱効率を最大化し、合成ガス品質を向上させる。
【0036】
いくつかの形態では、一次反応器及び二次反応器が単一の容器に配置されてもよい(
図7に示す、破線枠内の2つの単位動作)。いくつかの形態では、高水分原料、例えば、バイオソリッド、藻類原料などに由来する水蒸気を使用して「自己流動化」が行われる。
【0037】
いくつかの形態では、水蒸気又はリサイクルされた合成ガスを投入して、混合を助け、かつ/又は熱分解ガスを二次反応器内に導入して、完全な熱分解を行うことができる。
【0038】
この技術の利点は、以下を含み得る。
・すべての廃熱が供給されたバイオマスの予備乾燥及び/又は燃焼空気の予備加熱に利用されるので、エネルギー効率が高い。
・好適な反応器条件(低速熱分解)により、バイオ炭の収率が高い。
・(異なる用途への販売を可能にするため)バイオ炭の特性が制御可能である。
・未処理の合成ガス中には一部の油分及びタールが存在するが、これらは、熱砂を使用して別のガス化反応器中で処理され、油分及びタールをより多くの合成ガスに変換する。したがって、副生成物を処理する必要がなく、臭気もない。
・熱分解ガスは、いかなる不活性ガス又は燃焼生成物によっても希釈されない。
・処理条件、温度、ホットスポットやコールドスポットを伴わない滞留時間の良好な定常状態制御により、製品の品質がより安定する。
・ガス流の滞留や閉塞のリスクが無く、幅広い種類とサイズの原料を処理可能である。
・起動と停止が容易である(プラントの急停止が必要な場合でも、配管内の油分やタールの凝縮などの問題が生じない)。
・設備がシンプルでメンテナンスが容易である。
・触媒材料を使用して熱分解を助け、排出物を低減することが可能である。
・生成物であるバイオ炭の一部は、(活性炭のように)合成ガス洗浄に利用可能であり、その後、処理のためにシステムに戻されてもよい。
・安全運転、低漏洩排出が可能である。
・いくつかの形態では、システムは、反応器の長さを5分の1又は10分の1にすることができるという利点を有し得る。
・システムに窒素が添加されていないので、合成ガス出力はクリーンであり、窒素を含まない状態とすることができる。
・清浄化された合成ガス(窒素で希釈されていない)は高い発熱量を有し、これは合成ガスの経済的な貯蔵(ガスホルダ内又は圧縮ガスとして)を可能にし得る。
・いくつかの形態では、空気から酸素を分離する必要がないため、従来の酸素吹き込み式のガス化装置と同様の品質の合成ガスを生成しながら、電気エネルギーを節約できる可能性がある。
【0039】
ここで、
図1を参照すると、第1の流動床5及び反応器10を含む処理アセンブリ1が開示されている。第1の流動床5は約1100℃の温度で酸化するように構成されている。反応器10は、垂直に配向され、その幅よりも大きい高さを有する。いくつかの形態では、反応器は、その上部領域の幅よりも大きい、その基部における幅を有する。
【0040】
反応器10は、第2の流動床を含み、800~900℃のガス化運転温度を有するガス化のために構成された一次反応ゾーン12を含む。図示した形態の一次反応ゾーンは、反応器10の残りの部分よりも大きな直径を有する。二次反応器ゾーン14は、一次反応器ゾーン12の上方に配置されると共に、反応器の壁から延在し、中央に位置するキャビティを含む分離器15によって一次反応器ゾーン12から分離される。二次反応器ゾーンは、約950℃の運転温度を有する。二次反応ゾーン14は、反応器10の上端に位置する約1000℃の温度を有する三次反応ゾーン16から分離されている。二次反応ゾーン及び三次反応ゾーンは、分離器17によって分離されている。一次反応ゾーン及び二次反応ゾーンは、反応器本体に組み込まれた状態で、互いに独立するように設計されている。水蒸気は、反応器の下端に向かって配置され、一次反応ゾーンに開口する下部ポート20から投入される。石炭又は他の炭素質材料は、一次反応ゾーン内に位置する第2ポート22から投入される。
【0041】
水蒸気は、反応器を通って上方に移動する。反応器内には機械的/可動部品がないので、他の反応器で可能な温度よりも高い温度を許容することができる。
【0042】
熱砂状材料の形態の触媒材料は、複数の投入点25から反応器に投入される。この場合、重力を使用して熱砂を複数の投入点に供給するが、これは固定炭素含有量の高い原料(石炭)を扱う場合、熱砂温度を高くする必要があるためである。空気を使用して使用済み砂を持ち上げて、流動床酸化段に戻すことができる。
【0043】
いくつかの形態では、砂はイルメナイトなどの鉄含有鉱物を含有する。これらの条件下で運転する場合、砂を再加熱するのに必要なエネルギーの大部分は、酸化鉄(II)(ferrous iron)を酸化鉄(III)(ferric iron)に再酸化(4FeO+O2→2Fe2O3)することによって得ることができる。逆に、これは、ガス化反応に酸素を供給する。
【0044】
ガス化と部分同伴流のためのバブリング/乱流流動床反応器と、タールの二次ガス化のための乱流流動床反応器とを組み合わせたものが示されている。これにより、合成ガスが反応器を通って移動する際に、ガス速度及び温度が上昇する。
【0045】
いくつかの形態では、得られる未処理の合成ガス(raw syngas)は、タールを含まない合成ガスを含む。このタールを含まない合成ガスは、いくつかの形態では、水による急冷の前に熱を回収することを可能にする。この熱は、水蒸気の生成のために利用することができる。
【0046】
いくつかの形態では、炭及び灰は出口28で反応器から放出される。オフガス又は空気は、29で流動床1に戻すことができる。未処理の合成ガスは30で放出され、サイクロン32が供給のために利用される。
【0047】
いくつかの形態では、固体のHMT混合物は、第1の流動床内の汚染物質の捕捉を可能にするために供給される。いくつかの形態では、システムは反応器に後付けされてもよい。
【0048】
ここで、
図2を参照すると、
図1に関連して概説したように、縦型反応器110を含むガス化プラントが開示されている。縦型反応器は、互いに対して垂直に配置された一次反応ソーン及び二次反応ゾーンを含む。
【0049】
固体燃料は、112において反応器110に投入される。固体燃料は、バイオマスや石炭の形態であってもよく、CO2排出の一部又は全部を中和するのに十分であってもよい。
【0050】
超臨界水蒸気は、下部ポート120で投入され、反応器110内を上方に移動する。
【0051】
未処理/高温の合成ガスは、出口130から排出される。流動床105は、熱砂の形態であり得る触媒材料を反応器110に供給する。空気は131で流動床に投入される。サイクロン132は、流動床105に材料を供給する。
【0052】
システムは、水又は他の材料を沸騰させるヒータ140をさらに含む。図示した形態では、ヒータは反応器110に供給するための水蒸気を生成する。ヒータは、ボイラと過熱器(super heater)とを備える。ヒータからのオフガスは、145でフィルタ又は湿式スクラバに供給される。
【0053】
炭及び灰は、129で反応器から送出される。
【0054】
図3~
図6は、反応器内部の混合システムの形態を示す。
図3は、内部サイクロン232を示す。
図4は、熱砂の分布に依存する構造化充填物233を示す。
図5は、より良好な熱砂分配のための鋸歯状エッジ235を有するマルチスタート螺旋体(multi start helix)234を示す。
図6は、スイッチバック配列を有する薄板プレート236を示す。熱砂の流量は、ガス流を変更するために変化させることができる。代替的な実施形態では、システムは、例えば、構造化充填物、次いでサイクロンなど、複数の態様を含むことができる。TT、PTの測定を可能にするために側壁に封止ポットを設けてもよい。
【0055】
いくつかの形態では、固体接触法が使用される。
【0056】
図7を参照すると、供給源301からの空気が流動床302に投入される。流動床は、約1000~1100℃の温度で酸化するように構成されている。一次反応器ゾーン303(熱分解)及び二次反応器ゾーン(ガス化)304は、流動床302と連通している。流動床からの高温媒体は、一次反応器ゾーン303及び二次反応器ゾーン304に投入される。大気中の窒素で希釈されていないクリーンで透明な高温の合成ガス306は、二次反応ゾーンの出口ポートを通って排出される。分離器307は、余分な炭308を分離するように構成されている。温かいオフガス310は、システムから排出される。媒体は、固体状態の熱及び酸素キャリアであり、プロセス内の予熱器又はリフタ311を通って流動床酸化段に再循環(ループ)される。
【0057】
ここで、
図8を参照すると、いくつかの形態では、単一の容器400(反応器)に配置された一次反応器及び二次反応器が開示されている。これは、
図7に示すプロセスフローシートの破線枠内の単位動作と相関している。いくつかの形態では、高水分原料、例えば、バイオソリッド、藻類原料などから得られる水蒸気を使用して、「自己流動化」を提供することができる。あるいは、水蒸気又はリサイクルされた合成ガスを投入して、混合を補助し、及び/又は熱分解ガスを二次反応器中に導入するのを助け、完全な熱分解を行うことができる。いくつかの形態では、反応器400は、原料(高水分原料、水蒸気若しくはリサイクルされた合成ガス、又は他の原料を含み得る)を投入するための複数の投入点/投入ポートを含むことができる。いくつかの形態では、エネルギーを管理するために共供給(Co-feeding)が使用され得る。
【0058】
図8では、縦型反応器400は、互いに対して垂直に配置された一次反応ゾーン410及び二次反応ゾーン412を含む。図示した形態の一次反応ゾーンは、反応器400の残りの部分よりも大きな直径を有する。二次反応器ゾーン412は、一次反応器ゾーン410の上方に位置する。いくつかの形態では、各反応器ゾーンは、ギャップによって、バルブによって、又は
図8に示す鋸歯状エッジ414を有する又はマルチスタート螺旋体411によって分離されている。二次反応器ゾーン412は、約750~950℃の運転温度を有する。一次反応器ゾーン410は、350~600℃の運転温度を有する。いくつかの形態では、一次反応器は、材料混合及び/又は撹拌システム404を含む。いくつかの形態では、この混合及び/又は撹拌システムは、薄板プレートの形態である。いくつかの形態では、この混合及び/又は撹拌システムは、内部サイクロンの形態である。
【0059】
高水分原料を含み得る原料は、ポート401を通って一次反応ゾーンで反応器に投入される。代替的に、水蒸気又はリサイクルされた合成ガスを、反応器の下端に向かって配置され、一次反応ゾーンに開口する下部ポート402から投入して、混合を補助し、かつ/又は熱分解ガスを二次反応器に導入して完全に熱分解するのを助けることができる。水蒸気は、反応器を通って上方に移動する。いくつかの形態では、導入ガス(sweep gas)は下部ポート402から投入され得る。
【0060】
いくつかの形態では、石炭又は他の炭素質材料を含み得る代替的な原料は、ポート401を通して反応器に供給される。いくつかの形態では、原料のばらつきに対応して、幅広い条件下で運転することができる。
【0061】
いくつかの形態では、一次反応器ゾーン及び二次反応器ゾーンは流動床405と連通している。いくつかの形態では、高さ調整可能な高温媒体投入ポートを使用して、約1000℃の温度で酸化するように構成された流動床405から、一次反応器ゾーン及び二次反応器ゾーンに高温媒体を投入することができる。いくつかの形態では、高温媒体は触媒材料であってもよい。いくつかの形態では、
図8に示す反応器は、乱流/流動床反応器と自己流動化反応器とを組み合わせたものである。いくつかの形態では、ポートはノズルの形態であってもよい。
【0062】
分離器409は、余分な炭及び/又は灰を分離するように構成されている。炭及び/又は灰は、408で反応器から送出される。いくつかの形態では、炭はバイオ炭であってもよい。クリーンで透明な高温の合成ガスは、ポート413を通って排出され、サイクロン406が送出のために使用される。いくつかの形態では、調整可能なギャップ407が、反応器の高さを維持するために使用されてもよい。
【0063】
本明細書に開示される方法及び装置の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの他の修正が行われ得ることが、当業者には理解されよう。
【0064】
以下の特許請求の範囲及び前述の説明において、文脈上、明示的な文言又は必要な含意によりそうでないことが要求される場合を除き、「含む(comprise)」や「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」などのその変形は、包括的な意味で使用される、すなわち、本明細書に開示される方法及び装置の様々な実施形態において、記載された特徴の存在を特定するために使用されるが、さらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【国際調査報告】