(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】大電流計測装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
G01R15/20 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579786
(86)(22)【出願日】2021-09-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 KR2021011720
(87)【国際公開番号】W WO2023277242
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0083570
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】317006063
【氏名又は名称】ルーテック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チャンヨン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スンウン・ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンボク・ビュン
(72)【発明者】
【氏名】ググチュン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ソンボン・チェ
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB02
2G025AB14
2G025AC01
(57)【要約】
本発明の目的は、より小さいサイズで大電流を測定することができる大電流計測装置を提供することにあり、全電流をセンシングする方法を用いなくても大電流を計測できる大電流計測装置を提供することにある。本発明による電流計測装置は、金属バーとこれに結合する電流センサモジュールを用いて金属バーを通して流れる全電流を計測するための電流計測装置であって、金属バーは、長方形で板状であるアウトラインを有するが、長さ方向の中心には全電流が分けられて流れる複数のブランチ(3以上の奇数個)を含むブランチセットが形成されるようにするため、偶数個の分割スリットが幅方向に配置され、分割スリットの前端には、長方形の2つの長辺から内側に入り込んだ第1-1ノッチおよび第1-2ノッチを備え、分割スリットの後端には、長方形の2つの長辺から内側に入り込んだ第2-1ノッチおよび第2-2ノッチを備えることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属バーとこれに結合する電流センサモジュールを用いて、前記金属バーを通して流れる全電流を計測するための電流計測装置であって、
前記金属バーは、
前記全電流が分けられて流れる複数のブランチが隣接して配置・構成されるブランチセットを備え、
前記ブランチセットに含まれる複数のブランチのうち中心にあるセンターブランチに前記電流センサモジュールが装着され、
前記電流センサモジュールによってセンシングされた部分電流から前記全電流が算出されることを特徴とする、
電流計測装置。
【請求項2】
前記ブランチセットは、
前記センターブランチと、
前記センターブランチと離隔された離隔幅を有しながら、前記センターブランチの一側面に隣接して位置する第1サイドブランチと、
前記センターブランチと離隔された離隔幅を有しながら、前記センターブランチの他側面に隣接して位置する第2サイドブランチと、を有し、
前記第1サイドブランチの幅および前記第2サイドブランチの幅は同一であることを特徴とする、
請求項1に記載の電流計測装置。
【請求項3】
前記センターブランチ、前記第1サイドブランチおよび前記第2サイドブランチは全部同じ厚さを有しながら同じ平面上に位置することを特徴とする、
請求項2に記載の電流計測装置。
【請求項4】
前記金属バーは、
外部との接続点と前記ブランチセットとの間に構成され、前記全電流が集中されて流れるボトルネック部を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の電流計測装置。
【請求項5】
前記金属バーは、
外部との接続のために前記金属バーの一端に構成される第1接続部と、
前記第1接続部と前記ブランチセットとの間に構成され、前記全電流が前記複数のブランチに分散される前に集中されて流れる第1ボトルネック部と、
外部との接続のために前記金属バーの他端に構成される第2接続部と、
前記ブランチセットと前記第2接続部との間に構成され、前記複数のブランチを介して分散されて流れる全電流が集中されて流れる第2ボトルネック部と、を備えることを特徴とする、
請求項1に記載の電流計測装置。
【請求項6】
前記金属バーの長さ方向に沿って前記第1ボトルネック部、前記センターブランチおよび前記第2ボトルネック部は、一直線上に配置されて幅方向のセンターに位置することを特徴とする、
請求項5に記載の電流計測装置。
【請求項7】
前記ブランチセット、前記第1接続部、前記第1ボトルネック部、前記第2接続部、前記第2ボトルネック部は、すべて同じ厚さを有しながら同じ平面上に位置することを特徴とする、
請求項5に記載の電流計測装置。
【請求項8】
前記第1ボトルネック部と前記第2ボトルネック部におけるそれぞれの幅は、前記ブランチセットに含まれるすべてのブランチの幅を全部合算したものの1/2以下であることを特徴とする、
請求項7に記載の電流計測装置。
【請求項9】
金属バーとこれに結合する電流センサモジュールを用いて、前記金属バーを通して流れる全電流を計測するための電流計測装置であって、
前記金属バーは、
長さ方向の中心には、前記全電流が分けられて流れる複数のブランチ(3以上の奇数個)を含むブランチセットが形成されるようにするため、偶数個の分割スリットが幅方向に配置され、
前記分割スリットの前端には、第1-1ノッチおよび第1-2ノッチを備え、
前記分割スリットの後端には、第2-1ノッチおよび第2-2ノッチを備えることを特徴とする、
電流計測装置。
【請求項10】
前記金属バーは長方形で板状であるアウトラインを有し、
前記第1-1ノッチおよび前記第2-1ノッチのそれぞれは、前記長方形の一側の長辺から内側に入り込んだものであり、前記第1-2ノッチおよび前記第2-2ノッチのそれぞれは、前記長方形の他側の長辺から内側に入り込んだことを特徴とする、
請求項9に記載の電流計測装置。
【請求項11】
前記第1-1ノッチ、前記第1-2ノッチ、前記第2-1ノッチおよび第2-2ノッチが前記長方形の長辺から内側に入り込んだ長さはすべて同じであることを特徴とする、
請求項10に記載の電流計測装置。
【請求項12】
前記偶数個の分割スリットは、長さ方向および幅方向に対称であり、前記ブランチセットに含まれるブランチのうち中心に位置するセンターブランチに前記電流センサモジュールが装着され、前記電流センサモジュールによってセンシングされた部分電流から前記全電流が算出されることを特徴とする、
請求項10に記載の電流計測装置。
【請求項13】
前記金属バーの一端には、外部との接続時にボルト締結のための第1締結ホールを備え、前記金属バーの他端には、外部との接続時にボルト締結のための第2締結ホールを備えることを特徴とする、
請求項10に記載の電流計測装置。
【請求項14】
前記電流センサモジュールは、
CT(Current Transformer)を含むか、または前記センターブランチを包むコアとホールセンサ(Hall sensor)を含むことを特徴とする、
請求項1または12に記載の電流計測装置。
【請求項15】
部分電流と全電流との間の一対一の対応関係を格納するキャリブレーションテーブルを備え、前記キャリブレーションテーブルを用いて前記電流センサモジュール20によってセンシングされた部分電流から前記全電流を算出する演算部をさらに備え、生産過程で前記キャリブレーションテーブルは較正されることを特徴とする、
請求項1または12に記載の電流計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大電流を計測するための大電流計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ACまたはDCの大電流を計測する方法として、Shunt抵抗を用いた方法、コアおよび巻線を用いた方法、コアおよびHall Effect Sensorを用いた方法などがある。
【0003】
Shunt抵抗を利用する方法は、AC/DC電流が流れる導体に抵抗を挿入して抵抗での電圧を測定するために損失と絶縁問題が発生する。そして、従来のコアおよび巻線を利用する方法は、大きな断面を有する導体(または導体や被覆)を囲む形で構成されなければならないため、コアサイズが大きくなり巻線数が多くなるという欠点がある。また、従来のコアとHall Effect Sensorを利用する方法は、AC/DCを同時に計測できるが、やはり大きな断面を有する導体を囲む形で構成されなければならないため、コアのサイズが大きくなるだけでなく、Hall Effect Sensorを挿入するギャップのサイズが電流の大きさに比例して大きくなり、それによる精度の確保が困難な問題を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、大電流を測定する計測装置に関するものであって、本発明の目的は、より小さいサイズで大電流を測定することができる大電流計測装置を提供することにある。
【0005】
また、本発明の目的は、全電流をセンシングする方法を用いなくても大電流を計測できる大電流計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態による電流計測装置は、金属バー10とこれに結合する電流センサモジュール20を用いて前記金属バー10を通して流れる全電流を計測するための電流計測装置であって、前記金属バー10は、前記全電流から分けられて流れる複数のブランチが隣接して配列・構成されるブランチセット(Branch Set)11を含んでおり、前記ブランチセット11に含まれる複数のブランチのうち中心にあるセンターブランチ11cに前記電流センサモジュール20が装着され、前記電流センサモジュール20によってセンシングされた部分電流から前記全電流が算出されることを特徴とする。
【0007】
前記電流計測装置であって、前記ブランチセット11は、前記センターブランチ11cと、前記センターブランチ11cと離隔された離隔幅s1を有しながら、前記センターブランチ11cの一側面に隣接して位置する第1サイドブランチ11s-1と、前記センターブランチ11cと離隔された離隔幅s2を有しながら、前記センターブランチ11cの他側面に隣接して位置する第2サイドブランチ11s-2と、を含んで構成され、前記第1サイドブランチ11s-1の幅w2および前記第2サイドブランチ11s-2の幅w3は同一であることを特徴とする。
【0008】
前記電流計測装置であって、前記センターブランチ11c、前記第1サイドブランチ11s-1および前記第2サイドブランチ11s-2は、すべて同じ厚さtを有しながら、同じ平面上に位置することを特徴とする。
【0009】
前記電流計測装置であって、前記金属バー10は、外部との接続点と前記ブランチセット11との間に構成され、前記全電流が集中されて流れるボトルネック部12、14を備えることを特徴とする。
【0010】
前記電流計測装置であって、前記金属バー10は、外部との接続のために前記金属バー10の一端に構成される第1接続部(第1連結部)13と、前記第1接続部13と前記ブランチセット11との間に構成され、前記全電流が前記複数のブランチに分散される前に集中されて流れる第1ボトルネック部12と、外部との接続のために前記金属バー10の他端に構成された第2接続部(第2連結部)15と、前記ブランチセット11と前記第2接続部15との間に構成され、前記複数のブランチを介して分散されて流れた全電流が集中されて流れる第2ボトルネック部14と、を備えることを特徴とする。
【0011】
前記電流計測装置であって、前記金属バー10の長さ方向に沿って、前記第1ボトルネック部12、前記センターブランチ11cおよび前記第2ボトルネック部14は一直線上に配置され、幅方向の中心に位置する。
【0012】
前記電流計測装置であって、前記ブランチセット11、前記第1接続部13、前記第1ボトルネック部12、前記第2接続部15、前記第2ボトルネック部14は、すべて同じ厚さtを有しながら、同じ平面上に位置することを特徴とする。
【0013】
前記電流計測装置であって、前記第1ボトルネック部12および前記第2ボトルネック部14において、それぞれの幅は、前記ブランチセット11に含まれるすべてのブランチの幅w1、w2、w3をすべて合算したものの1/2以下であることを特徴とする。
【0014】
本発明の一実施形態による電流計測装置は、金属バー10とこれに結合する電流センサモジュール20を用いて、前記金属バー10を通して流れる全電流を計測するための電流計測装置であって、前記金属バー10は、長方形で板状のアウトラインを有するが、長さ方向の中心には前記全電流が分けられて流れるブランチ(3以上の奇数個)を含むブランチセット11が形成されるようにするために、偶数個の分割スリット11a、11bが幅方向に配置され、前記分割スリット11a、11bの前端には、前記長方形の2つの長辺から内側に入り込んだ第1-1ノッチ12aおよび第1-2ノッチ12bを備え、前記分割スリット11a、11bの後端には前記長方形の2つの長辺から内側に入り込んだ第2-1ノッチ14aおよび第2-2ノッチ14bを備えることを特徴とする。
【0015】
前記電流計測装置であって、前記第1-1ノッチ12a、前記第1-2ノッチ12b、第2-1ノッチ14aおよび第2-2ノッチ14bが前記長方形の長辺から内側に入り込んだ長さn1、n2、n3、n4はすべて同一であることを特徴とする。
【0016】
前記電流計測装置であって、前記偶数個の分割スリット11a、11bは長さ方向および幅方向に対称であり、前記ブランチセット11に含まれるブランチのうち、中心に位置するセンターブランチ11cに前記電流センサモジュール20が装着され、前記電流センサモジュール20によってセンシングされた部分電流から前記全電流が算出される。
【0017】
前記電流計測装置であって、前記金属バー10の一端には外部との接続時にボルト締結のための第1締結ホール13a、13bを備え、前記金属バー10の他端には外部との接続時にボルト締結のための第2締結ホール15a、15bを備える。
【0018】
前記電流計測装置であって、前記電流センサモジュールは、CT(Current Transformer)を含むか、または前記センターブランチ11cを包むコアを有するホールセンサ(Hall sensor)を含む。
【0019】
前記電流計測装置であって、部分電流と全電流との間の一対一の対応関係を記憶するキャリブレーションテーブルを備え、前記キャリブレーションテーブルを用いて前記電流センサモジュール20によってセンシングされた部分電流から前記全電流を算出する演算部をさらに備え、生産過程で前記キャリブレーションテーブルは較正(キャリブレーション)される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、電流センサがセンターブランチのみを貫通する程度の大きさを計測すればよいため、より小さいサイズとして大電流を計測することができ、全電流をセンシングする方法を利用しなくても大電流を計測できる効果がある。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、金属バーにおいて外部との接続点とブランチセットとの間に構成され、全電流が集中されて流れるボトルネックを備えることにより、接続点(接続部位)の位置にかかわらず、センターブランチには常に同じ比率の電流が流れるようにできる効果がある。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、電流計測装置の金属バーは長さ方向に沿って、ボトルネック部とセンターブランチが一直線上に配置され、幅方向のセンター(中心)に位置することにより、外部との接続点(接続部位)に関係なく一定の比率の電流がセンターブランチに流れるようにし、これによってより高い精度の計測が可能になる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態による電流計測装置を示す。
【
図2】ボトルネック部(ノッチ)が適用されていない電流計測装置の一例を示す比較例である。
【
図3】ボトルネック部(ノッチ)が適用されていない金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してFlux 3Dでシミュレーションした結果である。
【
図4】ボトルネック部(ノッチ)が適用されていない金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してFlux 3Dでシミュレーションした結果である。
【
図5】ボトルネック部(ノッチ)が適用されていない金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してFlux 3Dでシミュレーションした結果である。
【
図6】ボトルネック部(ノッチ)を適用した金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してシミュレーションした結果である。
【
図7】ボトルネック部(ノッチ)を適用した金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してシミュレーションした結果である。
【
図8】ボトルネック部(ノッチ)を適用した金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してシミュレーションした結果である。
【
図9】ボトルネック部(ノッチ)を適用するが、ボトルネック部の位置がセンターではなく上方にあるときに、金属バーを通した電流の流れをシミュレーションした結果である。
【
図10】ボトルネック部(ノッチ)を適用するが、ボトルネック部の位置がセンターではなく上方にあるときに、金属バーを通した電流の流れをシミュレーションした結果である。
【
図11】ボトルネック部(ノッチ)を適用するが、ボトルネック部の位置がセンターではなく上方にあるときに、金属バーを通した電流の流れをシミュレーションした結果である。
【
図12】ボトルネック部(ノッチ)を適用するが、第1ボトルネック部は上方にあり、第2ボトルネック部は下方にあるとき、金属バーを通した電流の流れをシミュレーションした結果である。
【
図13】ボトルネック部(ノッチ)を適用するが、第1ボトルネック部は上方にあり、第2ボトルネック部は下方にあるとき、金属バーを通した電流の流れをシミュレーションした結果である。
【
図14】ボトルネック部(ノッチ)を適用するが、第1ボトルネック部は上方にあり、第2ボトルネック部は下方にあるとき、金属バーを通した電流の流れをシミュレーションした結果である。
【
図15】実験のために製作された金属バーおよび電流センサモジュールの試作品を撮影した写真である。
【
図16】
図15の試作品を利用して外部との接続点(接続部位)を異にしながら、電流を測定した結果を異にしたグラフであり、
図16(a)は線形スケールで示すグラフであり、
図16(b)は対数(ログ)スケールで示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による電流計測装置を示す。
【0025】
本発明の一実施形態による電流計測装置は、金属バー10と、これに結合する電流センサモジュール20と、を備えて構成され、金属バー10および電流センサモジュール20を用いて金属バー10を通して流れる全電流を計測する。
【0026】
金属バー10は、供給される電力の経路を構成するとともに本発明の電流計測装置を構成する構成要素となり、金属バー10は、例えば、既存のバスバーやクロスバーに代わるもの、または分電盤もしくは配電盤の電力経路上に必要な既存の金属部品に代わるものであってもよい。
【0027】
金属バー10のアウトラインは長方形でありながら板状の形状を有し、全電流容量に応じて一定の厚さtを有する。金属バー10は長方形で板状の金属で分割スリット11a、11b、ノッチ12a、12b、14a、14bおよび締結ホール13a、13b、15a、15bのような空きスペースを有する。金属バー10の一側の主面とその反対側の主面は、好ましくはすべて平面である。金属バー10は、金型により製造されるか、または長方形で板状の金属バーを切削などにより加工することで製造されうる。
【0028】
金属バー10において長さ方向Lの中心には偶数個、好ましくは2つの分割スリット11a、11bが幅方向Wに配置されるが、2つの分割スリット11a、11bは、センターブランチ11cを中心にしてその横の両側に配置される。2個(偶数個)の分割スリット11a,11bはセンターブランチ11cを中心に幅方向Wに対称であり、金属バー10の長さ方向Lにも対称である。
【0029】
金属バー10を通して流れる全電流は、ブランチ(3以上の奇数個として好ましくは3つ)により分けられて流れるが、センターブランチ11c、第1サイドブランチ11s-1および第2サイドブランチ11s-2を含むブランチセット(Branch Set)11を構成する。ブランチセット11は、全電流が分けられて流れる複数のブランチが隣接して配列・構成されるのである。
【0030】
センターブランチ11cは、ブランチセット11に含まれる複数のブランチのうち中心にあるものとして、センターブランチ11cに電流センサモジュール20が装着される。電流センサモジュール20は、センターブランチ11cに流れる部分電流から金属バー10に流れる全電流を算出するが、部分電流と全電流との間の対応関係はあらかじめ定義されており、これにより部分電流から全電流を求めることができる。
【0031】
電流センサモジュール20は、そのケース23の内部に巻線型CT(Current Transformer)を含むか、またはセンターブランチ11cを包むコアとホールセンサーを含み得る。このとき、ホールセンサ型の場合、コアの断絶された間隙にはホールセンサーが配置される。なお、電流センサモジュール20は、センシングされた電流または計測された電流を伝送するための通信ポート22と、通信ポート22を搭載するためのPCB基板21を備えることができる。他にも電流センサモジュール20としては本出願の技術分野で知られている他のタイプの電流センサが採用されうる。
【0032】
サイドブランチ11s-1、11s-2は、分割スリット11a、11bによってセンターブランチ11cと離隔された離隔幅s1、s2を有しながら、センターブランチ11cの両側面に隣接して位置する。第1サイドブランチ11s-1は、第1分割スリット11aによってセンターブランチ11cと離隔された離隔幅s1を有しながら、センターブランチ11cの一側面に隣接して位置する。第2サイドドブランチ11s-2は、第2分割スリット11bによってセンターブランチ11cと離隔された離隔幅s2を有しながら、前記センターブランチ11cの一側面とは反対側にある他側面に隣接して位置する。
【0033】
ブランチセット11に含まれるブランチのうち、中心に位置するセンターブランチ11cに電流センサモジュール20が装着されるが、センターブランチ11cの周辺にある2つの分割スリット11a、11bは、電流センサモジュール20が装着可能な空間を提供する。具体的には、電流センサモジュール20は、センサブランチ11cが貫通されるコアを有し得るが、このようなコアが位置することのできる空間を提供する。
【0034】
センターブランチ11c、第1サイドブランチ11s-1および第2サイドブランチ11s-2はすべて同じ厚さtを有しながら同じ平面上に位置する。さらに、金属バー10を構成するすべての構成要素、すなわちブランチセット11、第1接続部13、第1ボトルネック部12、第2接続部15および第2ボトルネック部14は、すべて同じ厚さtを有しながら同じ平面上に位置する。
【0035】
第1サイドブランチ11s-1の幅w2と第2サイドブランチ11s-2の幅w3は同一に構成され、第1分割スリットの幅s1および第2分割スリットの幅s2も同一に構成され、センターブランチ11cを中心に第1サイドブランチ11s-1および第2サイドブランチ11s-2が対称に構成される。
【0036】
ブランチセット11に構成されるブランチの厚さtはすべて同一であるが、センターブランチ11cの幅w1は、両側のサイドブランチの11s-1、11s-2の幅w2、w3よりも小さくすることが好ましい。すなわち、各サイドブランチ11s-1、11s-2を介して流れる部分電流よりもセンターブランチ11cを介して流れる部分電流を小さくすることで、センターブランチを介した部分電流対全電流の比率を大きくし、これによって電流センサモジュール20を介した実際のセンシング電流に比して計測対象である全電流の大きさを高くする。逆に見ると、小さな電流をセンシングする電流センサモジュール20に含まれるコアなどのサイズを小さくしながらも、大きな全電流を計測することができるようにする。
【0037】
第1接続部13は、外部との接続のために金属バー10の一端に構成されるものであり、第2接続部15は外部との接続のために同じ金属バー10の他端に構成されるものである。金属バー10の一端である第1接続部13には外部との接続時に、ボルト締結のための第1締結ホール13a、13bを備え、金属バー10の他端である第2接続部15には外部との接続時に、ボルト締結のための第2締結ホール15a、15bを備える。
【0038】
そして、金属バー10は、外部との接続点とブランチセット11との間に構成され、全電流が集中されて流れるボトルネック部を備えるが、本発明の1つの特徴はボトルネック12、14を構成する。本発明では、外部との接続点となる接続部13,15とブランチセットとの間にボトルネック部12,14をそれぞれ構成しているが、ボトルネック部12,14は、電流が流れる断面積をより小さくして介在される抵抗を若干増加させる欠点がある反面、電流の計測精度を向上させるメリットを有するようにするためである。
【0039】
第1ボトルネック部12は、第1接続部13とブランチセット11との間に構成され、金属バーを通して流れる全電流がブランチに分散される前に、集中されて流れるようにする(もちろん、反対方向の電流の流れでも同様である)。第2ボトルネック部14は、ブランチセット11と第2接続部15との間に構成され、複数のブランチを介して分散されて流れた全電流が集中されて流れるようにする(反対方向の電流の流れでも同様である)。したがって、ボトルネック部における単位面積当たりの電流密度は、各ブランチにおける単位面積当たりの電流密度よりも著しく大きい。
【0040】
長さ方向Lから見れば、ブランチセット11の両側にはそれぞれ第1ボトルネック部12および第2ボトルネック部14が構成される。もちろん、第1ボトルネック部12と各ブランチとの間の連結のために第1ボトルネック部12と各ブランチとの間を連結する第1連結部(図面番号なし)が構成され、第2ボトルネック部14と各ブランチとの間の連結のために、第1ボトルネック部12と各ブランチとの間を連結する第2連結部(図面番号なし)が構成される。第1連結部および第2連結部の幅は金属バー10の幅wと同じである。
【0041】
第1ボトルネック部12の幅は、ブランチセット11に含まれるすべてのブランチの幅w1、w2、w3をすべて合算したものの1/2以下であることが好ましい。なお、第2ボトルネック部14の幅は、ブランチセット11に含まれるすべてのブランチの幅w1、w2、w3をすべて合算したものの1/2以下であることが好ましい。ボトルネック部を通して流れる電流の電流密度は、各ブランチを介して流れる電流の電流密度の2以上であることが好ましい。
【0042】
金属バー10において、ボトルネック部12、14を構成するために、長方形で板状の金属バーに複数のノッチ12a、12b、14a、14bが構成される。
【0043】
分割スリット11a、11bの前端、すなわちブランチセット11の前端には、金属バー10のアウトラインとなる長方形の2つの長辺から内側に入り込んだ第1-1ノッチ12aおよび第1-2ノッチ12bを備える。なお、分割スリット11a、11bの後端、すなわちブランチセット11の後端には、長方形の2つの長辺から内側に入り込んだ第2-1ノッチ14aおよび第2-2ノッチ14bを備える。
【0044】
第1-1ノッチ12a、前記第1-2ノッチ12b、第2-1ノッチ14aおよび第2-2ノッチ14bはそれぞれ長方形の長辺から内側に入り込んだ第1長さn1、第2長さn2、第3長さn3および第4長さn4を有するが、好ましくは第1長さn1、第2長さn2、第3長さn3および第4長さn4はすべて同一である。
【0045】
以下、
図2~
図8を参照しながらボトルネック部の機能および効果に対して説明する。
【0046】
図2は、金属バーにボトルネック部(ノッチ)が適用されていない電流計測装置の一例を示す比較例である。そして、
図3~
図5は、ボトルネック部(ノッチ)が適用されていない金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してFlux 3Dでシミュレーションした結果である。
【0047】
図2のような電流計測装置において、金属バー30には締結ホール33a、33b、35a、35bが構成されうるが、このような締結ホールを貫通するボルトの締め付けによって、外部構成要素との電気的連結が保障されうる。ところで、利用されるボルトの個数と締め付けの程度により、または両端にある2つの締結ホールのうち1つの締結ホールを用いる場合、どちらの締結ホールにボルトを締結するかによって、金属バー30での主な電気的接続部位の位置が変わるようになる。
【0048】
図3~
図5において、仮想接続部41a、41b、42a、42b、43a、43bは、金属バー41、42、43で外部との接続部位をシミュレーションするため金属バーにさらに構成されたものとして、金属バーの特定の部位を介して電流が供給されることを摸写する。
【0049】
図3のシミュレーションでは、金属バー41の両側の上部に接続部位が構成され、
図4のシミュレーションでは金属バー42の左上部と右下部に接続部位が構成され、
図5のシミュレーションでは金属バー43の左上部と右側の中間部に接続部位が構成される。
【0050】
シミュレーション結果からわかるように、接続部位の位置によって上側のサイドブランチに流れる電流は、全電流に比して42.05%、33.32%および36.93%として大きな偏差を示し、下側のサイドブランチに流れる電流は24.61%、33.33%および28.20%として大きな偏差を示す。これに反して、センターブランチに流れる電流は33.34%、33.35%および34.87%として小さな偏差を示す。すなわち、サイドブランチに比してセンターブランチに流れる電流の偏差は、はるかに小さい。
【0051】
シミュレーションでセンターブランチを流れる電流の最大偏差は、34.87-33.34=1.53%として小さい値であるが、高いレベルの精度を要求する応用分野では、まだも不足している。外部との接続部位が異なる場合にも、一定に分配されなければ精密計測に活用できないが、接続部位によってセンターブランチに流れる電流値の比率が若干異なって現れ、このような構造は、外部と結合される部分の締め付けや位置などの状況に応じて電流値が異なるようになり、高精度電流計測には適用できない。
【0052】
図6~
図8は、本発明のようにボトルネック部(ノッチ)を適用した金属バーの電流の流れ特性を調べるために、外部との接続領域をいくつか想定してシミュレーションした結果である。
【0053】
図6~
図8において、仮想接続部44a、44b、45a、45b、46a、46bは、金属バー44、45、46で外部との接続部位をシミュレーションするため金属バーにさらに構成されたものとして、金属バーの特定の部位を介して電流が供給されることをシミュレーションする。
【0054】
図6のシミュレーションでは、金属バー44の両側上部に接続部位が構成され、
図7のシミュレーションでは、金属バー45の左中間と右中間に接続部位が構成され、
図8のシミュレーションでは、金属バー46の左上部と右下部に接続部位が構成される。
【0055】
シミュレーション結果からわかるように、接続部位の位置に応じて上側のサイドブランチに流れる電流は、43.76%、43.60%および43.61%のような電流分配比率を有し、下側のサイドブランチに流れる電流は43.45%、43.62%および43.61%のような電流分配比率を有する。
【0056】
特に、センターブランチに流れる電流は、全電流に比して12.78%、12.78%、12.78%でシミュレーションで示す小数点以下2桁まで同じ電流分配比率を有する。
【0057】
図1に示した実施形態のように本発明の金属バーで外部との接続点とブランチセットとの間に構成され、全電流が集中されて流れるボトルネック部を備えることにより、接続点(接続部位)の位置にかかわらず、センターブランチには常に同じ比率の電流が流れるようにできる効果がある。
【0058】
本発明によれば、接続部位にかかわらずセンターブランチに常に同じ比率で電流の流れを確認することができ、センターブランチの電流のみ計測しても比例する全電流を正確に知ることができる効果がある。
【0059】
一方、本発明の一実施形態による電流計測装置の金属バー10は、長さ方向に沿って、第1ボトルネック部12、センターブランチ11cおよび第2ボトルネック部14が一直線上に配置される(
図1参照)。別に見ると、ブランチのうちセンターブランチが金属バーの幅方向Wでセンターに位置するように、同様にボトルネック部12、14も幅方向Wでセンターに位置する。
【0060】
図9~
図11は、ボトルネック部(ノッチ)を適用するが、ボトルネック部の位置がセンターではなく上方にあるとき、金属バーを通した電流の流れをシミュレートした結果である。
図12~
図14はボトルネック部(ノッチ)を適用したが、第1ボトルネック部は上側にあり、第2ボトルネック部は下側にあるときに、金属バーを通した電流の流れをシミュレーションした結果である。
【0061】
両側ボトルネック部が上側にあるとき、センターブランチに流れる電流は、接続部位の位置に応じて10.82%、10.85%および10.84%として、最大0.03%の偏差を示す。なお、第1ボトルネック部が上側にあり、第2ボトルネック部が下側にあるときに、センターブランチに流れる電流は、接続領域の位置に応じて10.87%、10.89%および10.88%として、最大0.02%の偏差を示す。
【0062】
ボトルネック部がセンターに位置する場合、
図6~
図8に示すように、接続領域の位置が変わってもセンターブランチの電流は12.78%、12.78%、12.78%と小数点以下2桁まで同じ電流値を有するに比し、ボトルネック部がセンターにない場合には、小数点の下2桁で若干の偏差を有することがわかる。以上のように、ボトルネック部とセンターブランチがすべて幅方向のセンターにあるのが精度が最も高い構造であると確認することができる。
【0063】
本発明の一実施形態による電流計測装置の金属バー10は、長さ方向に沿って、第1ボトルネック部12、センターブランチ11cおよび第2ボトルネック部14が一直線上に配置され、幅方向のセンターに位置することにより、外部との接続点(接続部位)にかかわらず、一定の比率の電流がセンターブランチに流れるようにし、これにより高精度の計測が可能であるという効果がある。
【0064】
図15は、実験のために作製された金属バー10および電流センサモジュール20の試作品を撮影した写真であり、
図16は、
図15の試作品を用いて外部との接続点(接続部位)を異にしながら電流を測定した結果を異にしたグラフであり、
図16(a)は線形スケールで示すグラフであり、
図16(b)はログスケールで示すグラフである。
【0065】
実験では、InputおよびOutputにおいて、接続点(接続部位)の位置をA、B、C、D、Eの5つに変えながら実験しており、
図16のグラフはOutputで接続部位の位置をA、B、C、D、Eの5つに変えながら実験した結果を示す。
【0066】
グラフの横軸はInput currentであり、縦軸はSensing currentであるが、接続部位にかかわらずInput current 対 Sensing currentがほぼ同じであるため、5つの線がまるで1つの線のように重なって見えることがわかる。
【0067】
一方、本発明の電流計測装置は、センターブランチ11cに流れる部分電流から金属バー10に流れる全電流を算出するが、このような算出(換算)のために演算部が電流センサモジュールの内部にまたは外部に構成されうる。
【0068】
演算部は、部分電流と全電流との間の一対一の対応関係を記憶するキャリブレーションテーブルを備え、前記キャリブレーションテーブルを用いて電流センサモジュール20によってセンシングされた部分電流から全電流を算出し、各電流計測装置の生産過程で、キャリブレーションテーブルはキャリブレーションされる。
【0069】
本発明では、分配される電流が流れるように大きな断面積のサイドブランチおよび小さな断面積のセンターブランチが構成され、小さな断面積のセンターブランチでのみ電流センシングが行われ、あらかじめ定義された倍率を適用して全電流が計測される構造である。
【0070】
本発明によれば、電流計測の精度を確保しながらも小さな電流センシングで大電流の計測が可能であることにより、前で言及された大電流計測の困難な点である精度や、大きさの問題と価格などの問題を同時に解決することができる。また、連続的な電流が流れていくと金属バーの温度が上昇するが、すべて一体となった各ブランチでの抵抗係数が同一であるため、温度変化による計測精度の低下を防止する。また、本発明は、大電流を計測する方法でありながらAC/DC計測にすべて適用されうる。
【符号の説明】
【0071】
10:金属バー
11:ブランチセット
11c:センターブランチ
11s-1、11s-2:サイドブランチ
12、14:ボトルネック部
12a、12b、14a、14b:ノッチ
13、15:接続部
13a、13b、15a、15b:締結ホール
20:電流センサモジュール
21:PCB基板
22:通信ポート
23:ケース
【国際調査報告】