(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】イソオキサゾリンカルボン酸誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 261/18 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
C07D261/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579818
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022067334
(87)【国際公開番号】W WO2023274870
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アントン・リスチンスキー
(72)【発明者】
【氏名】フランク・メメル
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ジェームズ・フォード
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・ベルンハルト・ハーフ
(57)【要約】
本発明は、式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製するための新規な方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(式中、
X
2は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
3は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
4は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
5は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
6は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
R
1は、H、C
1~C
4アルキルであり、
R
2は、C
1~C
4アルキルである)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製する方法であって、
一般式(II)
【化2】
(式中、
X
2~X
6は上記の定義を有し、
X
7、X
8、X
10、X
11は、独立してHまたはC
1~C
4アルキルであり、
X
9は、H、C
1~C
4アルキル、またはN(C
1~C
4アルキル)
2である)
の化合物を、前記一般式(II)の化合物に対して2.0~4.5当量の反応種「R
3OMgHal」(IV)
(式中、
R
3は、C
2~C
6アルキル、非置換またはC
1~C
6アルキル置換ベンジルであり、
Halは、ハロゲンである)の形成を可能にする試薬の組み合わせの添加を伴って、
式(III)
【化3】
(式中、
R
1およびR
2は上記の定義を有する)
の化合物と反応させて、
一般式(I)の化合物を得ることを特徴とする、方法。
【請求項2】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの定義が以下の通りである、請求項1に記載の方法:
X
2は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X
3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
4は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X
5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
6は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
R
1は、H、メチル、エチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R
2は、メチル、エチルである。
【請求項3】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの定義が以下の通りである、請求項1または2に記載の方法:
X
2は、Hであり、
X
3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
4は、フッ素、Hであり、
X
5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
6は、Hであり、
R
1は、H、メチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R
2は、メチルである。
【請求項4】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの定義が以下の通りである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法:
X
2は、Hであり、
X
3は、H、フッ素であり、
X
4は、H、フッ素であり、
X
5は、H、フッ素であり、
X
6は、Hであり、
R
1は、H、メチル、i-ブチルであり、
R
2は、メチルである。
【請求項5】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの定義が以下の通りである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法:
X
2は、Hであり、
X
3は、フッ素であり、
X
4は、Hであり、
X
5は、フッ素であり、
X
6は、Hであり、
R
1は、H、メチルであり、
R
2は、メチルである。
【請求項6】
一般式(IIa)の化合物中のラジカルの定義が以下の通りである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法:
X
7、X
8、X
10、X
11は、独立してH、メチル、エチルであり、
X
9は、H、メチル、エチル、またはN(メチル)
2である。
【請求項7】
一般式(IIa)の化合物中のラジカルの定義が以下の通りである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法:
X
7、X
11は、Hであり、
X
8、X
10は、独立してH、メチル、エチルであり、
X
9は、H、メチル、エチル、N(メチル)
2である。
【請求項8】
一般式(IIa)の化合物中のラジカルの定義が以下の通りである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法:
X
8は、H、メチル、エチルであり、
X
7、X
11は、独立してH、メチルであり、
X
9、X
10は、Hである。
【請求項9】
一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ
・R
4MgHalとR
3OH、または
・MgHal
2とR
3OM、または
・MgHal
2とMg(OR
3)
2
(式中、
R
3は、C
2~C
6アルキル、ベンジル、メチルベンジルであり、
Halは、ハロゲンであり、
Mは、アルカリ金属であり、
R
4は、C
1~C
6アルキル、アリール、ベンジル、アリル、ビニルである)のうち1つによって生成される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ
・R
4MgHalとR
3OH、または
・MgHal
2とR
3OM、または
・MgHal
2とMg(OR
3)
2
(式中、
R
3は、C
2~C
4アルキルであり、
Halは、臭素または塩素であり、
Mは、アルカリ金属であり、
R
4は、C
1~C
4アルキル、フェニル、ベンジル、p-トリル、ビニルである)のうち1つによって生成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
一般式(IV)の化合物が、以下の試薬の組み合わせ
・R
4MgHalとR
3OH、または
・MgHal
2とR
3OM、または
・MgHal
2とMg(OR
3)
2
(式中、
R
3は、i-プロピル、i-ブチルであり、
Halは、臭素、塩素であり、
Mは、ナトリウムであり、
R
4は、メチル、エチル、n-ブチル、i-プロピルである)のうち1つによって生成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記一般式(II)の化合物に対して2.8~3.2当量の前記反応種「R
3OMgHal」(IV)が使用されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
溶媒が、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸イソプロピル(i-PrOAc)、アセトニトリル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチル-THF、酢酸エチル(EtOAc)、またはそれらの任意の比の混合物であることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応が-25℃~70℃で行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記反応が10℃~30℃で行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
ジアステレオマー比がさらなる結晶化ステップによって増加することを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
一般式(IV)の化合物が、グリニャール反応によって、具体的には以下の試薬の組み合わせ
R
5MgHalとR
6R
7CO
(式中、
R
5は、C
1~C
6アルキル、アリール、ベンジルであり、
R
6、R
7は、H、C
1~C
6アルキル、アリールである)を用いて生成され、得られるラジカルの定義
R
3が、R
5R
6R
7Cである
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
1:1を除く任意の混合比の式(Ia)および(Ib)
【化4】
の化合物であって、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチルおよび3-フェニル-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチル以外であり、ラジカルが、請求項3から5のいずれか一項に記載の定義を有する、化合物。
【請求項19】
1:1を除く任意の混合比の式(Iaa)および(Iba)
【化5】
の化合物であって、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチルおよび3-フェニル-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチル以外であり、ラジカルが、請求項3から5のいずれか一項に記載の定義を有する、化合物。
【請求項20】
1:1を除く任意の混合比の式(Iab)および(Ibb)
【化6】
の化合物であって、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチルおよび3-フェニル-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチル以外であり、ラジカルが、請求項3から5のいずれか一項に記載の定義を有する、化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体は、活性農薬成分の重要な前駆体である(国際公開第2018/228985号参照)。
【0003】
先行技術は、イソオキサゾリンカルボン酸誘導体の調製のための数々の環化方法を記載しており、例えばTetrahedron Letters、1991、6367~6370;Eur.J.Org.Chem.2008、5446~5460;Bull.Chem.Soc.Jpn.1993、2685が挙げられる。環化付加についての考えられる遷移状態について考察する。また、反応条件に応じた収率および異性体比も開示される。
【0004】
本発明の化合物が文献から既知の方法のうち1つによって得られる場合、これは、工業規模での合成には不十分な収率および異性体純度をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters、1991、6367~6370
【非特許文献2】Eur.J.Org.Chem.2008、5446~5460
【非特許文献3】Bull.Chem.Soc.Jpn.1993、2685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、工業規模での合成に適しており、高い収率および異性体純度を有し、その結果、面倒な精製方法を省くことができる、一般式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体の調製方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、本発明に従って、一般式(I)
【化1】
(式中、
X
2は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
3は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
4は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
5は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
6は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロアルコキシ、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
R
1は、H、C
1~C
4アルキルであり、
R
2は、C
1~C
4アルキルである)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製する方法であって、
一般式(II)
【化2】
(式中、
X
2~X
6は上記の定義を有し、
X
7、X
8、X
10、X
11は、独立してHまたはC
1~C
4アルキルであり、
X
9は、H、C
1~C
4アルキル、またはN(C
1~C
4アルキル)
2である)
の化合物を、一般式(II)の化合物に対して2.0~4.5当量の反応種「R
3OMgHal」(IV)
(式中、
R
3は、C
2~C
6アルキル、非置換またはC
1~C
6アルキル置換ベンジルであり、
Halは、ハロゲンである)の形成を可能にする試薬の組み合わせの添加を伴って、
式(III)
【化3】
(式中、
R
1およびR
2は上記の定義を有する)
の化合物と反応させて、
一般式(I)の化合物を得ることを特徴とする方法によって成し遂げられた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの好ましい定義は以下の通りである:
X2は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X7、X8、X10、X11は、独立してH、メチル、エチルであり、
X9は、H、メチル、エチル、またはN(メチル)2であり、
R1は、H、メチル、エチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R2は、メチル、エチルである。
【0010】
好ましくは、一般式(IV)の化合物は、以下の試薬の組み合わせ
・R4MgHalとR3OH、または
・MgHal2とR3OM、または
・MgHal2とMg(OR3)2
(式中、
R3は、C2~C6アルキル、ベンジル、メチルベンジルであり、
Halは、ハロゲンであり、
Mは、アルカリ金属であり、
R4は、C1~C6アルキル、アリール、ベンジル、アリル、ビニルである)のうち1つによって生成される。
【0011】
代替的に、一般式(IV)の化合物は、以下の試薬の組み合わせ
R5MgHalとR6R7CO
(式中、
R5は、C1~C6アルキル、アリール、ベンジルであり、
R6、R7は、H、C1~C6アルキル、アリールである)によって生成され、得られるラジカルの定義
R3は、R5R6R7Cである。
【0012】
上記の代替的な試薬の組み合わせ
R5MgHalとR6R7CO
によって調製される一般式(IV)の化合物のラジカルの好ましい定義は以下の通りである:
R5は、C1~C4アルキル、フェニル、ベンジル、p-トリルであり、
R6、R7は、H、C1~C4アルキル、フェニルである。
【0013】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの特に好ましい定義は以下の通りである:
X2は、Hであり、
X3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4は、フッ素、Hであり、
X5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6は、Hであり、
X7、X8、X11は、独立してH、メチル、エチルであり、
X9は、H、N(メチル)2であり、
X10は、Hであり、
R1は、H、メチル、i-プロピル、i-ブチルであり、
R2は、メチルである。
【0014】
より好ましくは、一般式(IV)の化合物は、以下の試薬の組み合わせ
・R4MgHalとR3OH、または
・MgHal2とR3OM、または
・MgHal2とMg(OR3)2
(式中、
R3は、C2~C4アルキルであり、
Halは、臭素、塩素であり、
Mは、アルカリ金属であり、
R4は、C1~C4アルキル、フェニル、ベンジル、p-トリル、ビニルである)のうち1つによって生成される。
【0015】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの非常に特に好ましい定義は以下の通りである:
X2は、Hであり、
X3は、H、フッ素であり、
X4は、H、フッ素であり、
X5は、H、フッ素であり、
X6は、Hであり、
X8は、H、メチル、エチルであり、
X7、X11は、独立してH、メチルであり、
X9、X10は、Hであり、
R1は、H、メチル、i-ブチルであり、
R2は、メチルである。
【0016】
さらにより好ましくは、一般式(IV)の化合物は、以下の試薬の組み合わせ
・R4MgHalとR3OH、または
・MgHal2とR3OM、または
・MgHal2とMg(OR3)2
(式中、
R3は、i-プロピル、i-ブチルであり、
Halは、臭素、塩素であり、
Mは、ナトリウムであり、
R4は、メチル、エチル、n-ブチル、i-プロピルである)のうち1つによって生成される。
【0017】
一般式(I)、(II)、および(III)の化合物中のラジカルの最も好ましい定義は以下の通りである:
X2は、Hであり、
X3は、フッ素であり、
X4は、Hであり、
X5は、フッ素であり、
X6は、Hであり、
X7、X8、X11は、独立してH、メチルであり、
X9、X10は、Hであり、
R1は、H、メチルであり、
R2は、メチルである。
【0018】
先行技術は、式(I)
【化4】
のいくつかの化合物を開示しており、式中、ラジカルは上記の一般的な定義、好ましい定義、より好ましい定義、さらにより好ましい定義、および最も好ましい定義に対応し、
これらの化合物は異性体混合物の形態である。
【化5】
【0019】
(Ia)と(Ib)との異性体比は変化する。一般に、(Ia)が過剰である。この所望の過剰は、最適化された反応条件によって、先行技術と比較して増加する。高いジアステレオマー過剰率を得るためには、反応混合物中に2.0~4.5当量の反応種「R3OMgHal」(IV)が存在する場合が特に有利である。
【0020】
式(I)の化合物は、対応するエステルとして、または加水分解による後処理後にカルボン酸として単離され得る。
【0021】
結晶化による濃縮によって、式(I)の化合物において最大100:0までのジアステレオマー比が得られ得る。
【0022】
本発明はさらに、1:1を除く任意の混合比の式(Ia)および(Ib)
【化6】
の化合物であって、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチルおよび3-フェニル-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチル以外の化合物を提供し、ここで、ラジカルは、上記の特に好ましい定義、非常に特に好ましい定義、および最も好ましい定義に対応する。
【0023】
混合比(Ia):(Ib)は、好ましくは少なくとも90:1であり、より好ましくは少なくとも95:5であり、さらにより好ましくは少なくとも99:1である。
【0024】
使用される反応物質がエナンチオマーとして純粋な(S)-(III)である場合、式(Iaa)および(Iba)の化合物を調製することが可能である。
【0025】
本発明はさらに、1:1を除く任意の混合比の式(Iaa)および(Iba)
【化7】
の化合物であって、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチルおよび3-フェニル-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチル以外の化合物を提供し、ここで、ラジカルは、上記の特に好ましい定義、非常に特に好ましい定義、および最も好ましい定義に対応する。
【0026】
混合比(Iaa):(Iba)は、好ましくは少なくとも90:1であり、より好ましくは少なくとも95:5であり、さらにより好ましくは少なくとも99:1である。
【0027】
使用される反応物質がエナンチオマーとして純粋な(R)-(III)である場合、式(Iab)および(Ibb)の化合物を調製することが可能である。
【0028】
本発明はさらに、1:1を除く任意の混合比の式(Iab)および(Ibb)
【化8】
の化合物であって、3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチルおよび3-フェニル-5-(1-ヒドロキシエチル)-4H-イソオキサゾール-5-カルボン酸メチル以外の化合物を提供し、ここで、ラジカルは、上記の特に好ましい定義、非常に特に好ましい定義、および最も好ましい定義に対応する。
【0029】
混合比(Iab):(Ibb)は、好ましくは少なくとも90:1であり、より好ましくは少なくとも95:5であり、さらにより好ましくは少なくとも99:1である。
【0030】
方法および中間体の説明
【化9】
スキーム1
この目的は、式(I)のイソオキサゾリンカルボン酸誘導体を調製する方法であって、一般式(II)の化合物を、一般式(II)の化合物に対して2.0~4.5当量の反応種「R
3OMgHal」(IV)の形成を可能にする試薬の組み合わせの添加を伴って、式(III)の化合物と反応させて、一般式(I)の化合物を得ることを特徴とする、方法(スキーム1)によって成し遂げられた。
【0031】
表1は、考えられる様々な試薬の組み合わせを示すが、この選択肢は網羅的ではない。
【0032】
反応種「R3OMgHal」(IV)は、一般式(II)の化合物に対して好ましくは2.8~3.2当量存在する。
【0033】
反応種「R3OMgHal」(IV)は、一般式(II)の化合物に対してより好ましくは3当量存在する。
【0034】
環化は、通常-25℃~70℃、好ましくは10℃~30℃の温度範囲内で行われる。
【0035】
さらに、環化は、場合により溶媒もしくは希釈剤、または溶媒混合物の存在下で行われる。溶媒は、好ましくは、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸イソプロピル(i-PrOAc)、アセトニトリル、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、メチル-THF、酢酸エチル(EtOAc)、またはそれらの任意の比の混合物である。
【0036】
一般式(III)の化合物は、2段階法によって調製され、文献から既知である。第1段階は、ベイリス・ヒルマン反応である。関連する参考文献は、Drewes,S.E.;Hoole,R.F.A.[Synthetic Communications、1985、第15巻、12、1067~1074頁]である。第2段階については、関連する参考文献は、Nascimentoら(2003、Tetrahedron Asymmetry 14、311~311)である。
【0037】
一般式(II)および(III)の化合物は、国際公開第2018/228985号からも既知である。(II)からの式(IIa)の化合物の調製は、Binenfeld,Zlatkoら、Glasnik Hemijskog Drustva Beograd(1966)、31(4~6)、243~50、およびDaroszewski,J.ら、Pharmazie(1986)、41(10)、699~702から既知である。
【実施例】
【0038】
本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
測定方法
生成物は、1H NMR分光法および/またはLC-MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)によって特徴付けた。
NMRスペクトルは、フロープローブヘッド(容量60μL)を取り付けたBruker Avance 400を用いて測定した。個々の場合において、Bruker Avance II 600を用いてNMRスペクトルを測定した。
【0039】
実施例1
アルゴン雰囲気下、2-プロパノール(48mL)およびTHF(61mL)を24℃で1Lの反応容器に最初に入れる。混合物を0℃まで冷却する。次いで、反応温度を10~25℃に維持しながら(氷浴による冷却)、204mLのメチルマグネシウムクロリド溶液(3M THF溶液)を2時間かけて添加する。メタンが抜け、白色固体が析出する。得られた懸濁液をさらに撹拌し、ガスの発生が終了した後、20℃に加温する。次いで、27.46gの3-ヒドロキシ-2-メチレンブタン酸メチルを20℃で30分間かけて反応混合物に添加する。この間、水浴により反応温度を18~22℃に維持する。添加後、反応混合物をさらに10分間撹拌した後、トルエン/THF/i-PrOAc/DBFの溶媒混合物(16.3重量%)に溶解した240gの3,5-ジフルオロ-N-ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドイルクロリドを20℃で添加し、その間、反応容器を氷浴で冷却する。添加が完了したら、83.85gの水に溶解した40.25gのHCl(37重量%)に反応混合物を室温で添加することによって反応混合物を後処理する。有機相を分離する。トルエン(25mL)ですすいだ後、混合物を蒸留する(最高温度48~58℃、580~160mbar)。
69.4gのNaOH(20重量%、1.7当量)を用いて加水分解を行う。終了するまで溶液を60℃で1時間撹拌する。
後処理のために、100mLのトルエン、100mLの水、および3.00gのH2SO4(20重量%)を反応混合物に添加し、二相を形成する。有機相を分離し、DBFの残渣を抽出するために水相(pH約7)を50mLのトルエンで洗浄する。生成物のナトリウム塩を含む得られた水相に200mLのi-PrOAcを添加し、次いで、室温で激しく撹拌しながら65.09gのH2SO4(20重量%)を添加する。これにより、水相のpHが1の二相混合物が得られる。有機相を分離し、生成物の残りを除去するために、水相を50mLのi-PrOAcで抽出する。i-PrOAc相を合わせ、撹拌しながら減圧下(210~200mbar)50℃で蒸留すると、濃厚であるが依然として効率的に撹拌可能な懸濁液が得られた(約150mLのi-PrOAcの蒸留後)。次いで、100mLのトルエンを添加し、蒸留を減圧下(200~150mbar)50℃で継続する(約100mLのi-PrOAc/トルエン混合物を留去した)。混合物を室温まで冷却し、一晩放置して結晶化を完了させる。次いで、懸濁液を濾過し、さらなる50mLのトルエンでフィルター上で洗浄すると、固体材料が得られ、これを真空乾燥キャビネット(40℃、20mbar)内で乾燥させると、45.54g(98.0%、収率80.6%)の生成物が得られた。(5S)-3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-5-カルボン酸生成物をHPLCにより分析したところ、97.6:2.4のジアステレオマー比を示す。母液は、(31.3:68.7)のジアステレオマー比を示した。
1H-NMR (400MHz, DMSO-d6):δ (ppm) = 1.12 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 3.62 (d, J = 17.8, 1H), 3.68 (d, J = 17.8, 1H), 4.10 (q, J = 6.4 Hz, 1H), 5.30 (bs, 1H), 7.33-7.48 (m, 3H), 13.24 (bs, 1H).
19F-NMR (376MHz, DMSO-d6):δ (ppm) = -108.7 (m, 2F).
【0040】
実施例2
窒素雰囲気下、THF(1L)に溶解した74.74gのマグネシウム(3.075当量)を、ジャケット温度20℃で、2Lのジャケット付き容器に最初に入れる。その後、2.5mLの2-プロピルマグネシウムクロリド溶液(2M THF溶液、0.005当量)を添加し、混合物を10分間撹拌し、次いで、248.00gの2-クロロプロパン(99%、3.126当量)を滴下する。内部温度が35℃に上昇し、ジャケット温度を10℃に調整する。2-クロロプロパンをすべて2時間以内に滴下する。内部温度は、冷却により約30~34℃に維持する。マグネシウムが徐々に枯渇する。添加終了後、温度は徐々に下がり、ジャケット温度を30℃まで徐々に上昇させる。混合物の撹拌を、少量のマグネシウムフレークのみが存在するまで、内部温度29~33℃で合計2時間継続する。185.17gの2-プロパノール(3.075当量)をジャケット温度15℃で滴下する。内部温度は30~35℃に維持する。ガス(プロパン)の絶え間ない発生が観察される。固体が徐々に析出する。まだ撹拌可能な濃厚懸濁液が形成される。1時間30分かけて添加した後、灰色の濃厚懸濁液が生じる。混合物を20℃に冷却し、130.40gの(3S)-3-ヒドロキシ-2-メチレンブタン酸メチル(1当量)を添加する。混合物をさらに10分間撹拌し、ジャケット温度を10℃に調整する。次いで、3,5-ジフルオロ-N-ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドイルクロリド(15.2%、1260.30g)の溶液を、内部温度18~20℃、ジャケット温度10℃で1.5時間かけて滴下する。添加終了後、混合物を20℃で1時間撹拌する。
後処理のために、反応混合物を403gの氷および200gのHCl溶液(37重量%)に添加する。有機相を分離し、浴温50℃、350mbarで濃縮する。得られた残渣に314.40gの水酸化ナトリウム溶液(20重量%、1.57当量)を添加し、加水分解が終了するまで60℃で2時間混合物を撹拌する。溶媒を325mbar、浴温60℃で留去する。450gの水および372gのトルエンを残渣に添加する。抽出後、トルエン相を分離する。硫酸(500g、20重量%)で酸性化した後、水相を酢酸i-プロピルで抽出する。有機相の溶媒を除去する(内部温度40~61℃、200mbar)。得られた懸濁液を20℃で濾過し、さらなる280mLのトルエンでフィルター上で洗浄すると、固体材料が得られ、これを空気下で乾燥させた。
得られた生成物は、(5S)-3-(3,5-ジフルオロフェニル)-5-[(1S)-1-ヒドロキシエチル]-4,5-ジヒドロ-1,2-オキサゾール-5-カルボン酸:208.5g(純度98.1%、ジアステレオマー比>99.9:0.1、収率75.4%)である。
1H-NMR (401MHz, DMSO-d6):δ (ppm) = 1.11 (d, J = 6.5 Hz, 3H), 3.61 (d, J = 17.8, 1H), 3.67 (d, J = 17.8, 1H), 4.10 (q, J = 6.4 Hz, 1H), 5.20 (bs, 1H), 7.34-7.45 (m, 3H), 13.28 (bs, 1H).
19F-NMR (376MHz, DMSO-d6):δ (ppm) = -108.7 (m, 2F).
【0041】
実施例10
アルゴン雰囲気下、6.79g(51.2mmol)の(3S)-3-ヒドロキシ-2-メチレンブタン酸メチルを650mLのジクロロメタンに室温で溶解し、イソプロパノールを添加した。透明な溶液を0℃に冷却した。その後、THFに溶解した156mL(156mmol)のEtMgBr(1M)をゆっくり滴下した(発熱性)。溶液が濁った。次いで、10.00g(52.2mmol)の3,5-ジフルオロ-N-ヒドロキシベンズイミドイルクロリドを100mLのDCMに溶解した溶液を撹拌しながらゆっくり滴下し(15分間)、混合物を徐々に室温に加温した。混合物は、はっきりとした黄色に変化した。EA/n-ヘプタン1:1中でのTLCは、30分後に完全な変換を示した。
【0042】
後処理:
溶液を2N HClと飽和NaCl溶液との1:1混合物1Lに添加し、毎回400mLの塩化メチレンで2回抽出し、Na2SO4で乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗生成物のLCMS分析は、生成物のジアステレオマー比86%対14%を示した。
シリカゲルクロマトグラフィー(n-ヘプタン/EA)
画分1 m=600mg(4.0%)の親油性ジアステレオマー
1H NMR (CDCl3) :1.10 (d, 3H, CHCH3), 2.3 (s br., 1H, OH), 3.53 (d, 1H, CHH isoxazoline), 3.72 (d, 1H, CHH isoxazoline), 3.84b(s, 3H, OCH3), 4,34 (q, 1H, CHCH3), 6.88 (tt, 1H, arom. H), 7.22 (m, 2H, arom. H).
画分2 m=7700mg(51.7%)の極性ジアステレオマー
1H NMR (CDCl3) :1.29 (d, 3H, CHCH3), 2.10 (d, 1H, OH), 3.57 (d, 1H, CHH isoxazoline), 3.69 (d, 1H, CHH isoxazoline), 3.84b(s, 3H, OCH3), 4,24 (q, 1H, CHCH3), 6.88 (tt, 1H, arom.H), 7.18 (m, 2H, arom. H).
【0043】
【国際調査報告】