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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】PCRモジュール
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20240614BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12M1/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580544
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 KR2022008788
(87)【国際公開番号】W WO2023282502
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0090030
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519122725
【氏名又は名称】オプトレーン テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OPTOLANE Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】チョ,スン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,アン・シク
(72)【発明者】
【氏名】クァク,ビョン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】オレクサンドロフ,セルゲイ
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029FA15
4B029GA08
4B029GB06
4B029GB10
(57)【要約】
毛細管原理を用いて試料注入が可能なPCRモジュールが開示される。PCRモジュールは、試料の投入のために形成されたインレット部を含み、射出成形で製造可能な微小流体チャンバ;上下部が貫通された複数のマイクロウェルを含み、微小流体チャンバの下面に配されたウェルアレイ;及びインレット部を通じて投入される試料が毛細管現象によって、マイクロウェルに到達するように経路を提供する毛細管部材;を含む。毛細管原理を用いてPCR溶液を反応空間に移動させ、その溶液が反応空間を満たす時、反応空間であるウェルアレイのコーナーやエッジ領域にエアポケットの生成を遮断することができる。これにより、PCR試験結果でエアポケットによる誤差の発生を防止することができる。また、CMOSフォトセンサーアレイ上にウェルアレイが位置するので、リアルタイムPCR反応を測定することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の投入のために形成されたインレット部を含み、射出成形で製造可能な微小流体チャンバと、
上下部が貫通された複数のマイクロウェルを含み、前記微小流体チャンバの下面に配されたウェルアレイと、
前記インレット部を通じて投入される試料が毛細管現象によって、前記マイクロウェルに到達するように経路を提供する毛細管部材と、を含むことを特徴とする、PCRモジュール。
【請求項2】
前記毛細管部材は、
前記微小流体チャンバと前記ウェルアレイとの間に配され、前記インレット部に対応して形成された流入ホール、前記ウェルアレイに対応して形成された投入ホール、及び前記流入ホールの直径よりも狭幅を有して、前記流入ホールと前記投入ホールとを連結する連結ホールを含む第1テープを含むことを特徴とする、請求項1に記載のPCRモジュール。
【請求項3】
前記第1テープは、四角状と前記四角状のエッジ領域に円状とが重畳された形状を有し、
前記四角状は、前記ウェルアレイに対応し、前記円状は、前記微小流体チャンバのインレット部に対応することを特徴とする、請求項2に記載のPCRモジュール。
【請求項4】
前記投入ホールは、前記四角状に形成され、前記流入ホールは、前記円状に形成され、前記連結ホールは、前記四角状と前記円状とが重畳された領域に形成されたことを特徴とする、請求項3に記載のPCRモジュール。
【請求項5】
前記第1テープは、前記微小流体チャンバに接する面と前記ウェルアレイに接する面のそれぞれに接着層が形成された両面テープを含むことを特徴とする、請求項2に記載のPCRモジュール。
【請求項6】
前記投入ホールは、前記ウェルアレイの四角状よりも大きな四角状を有して、前記ウェルアレイのマイクロウェルを露出することを特徴とする、請求項2に記載のPCRモジュール。
【請求項7】
前記ウェルアレイは、4個のエッジ領域が前記第1テープに付着されることを特徴とする、請求項2に記載のPCRモジュール。
【請求項8】
前記第1テープの連結ホールを形成する側面は、親水処理されたことを特徴とする、請求項2に記載のPCRモジュール。
【請求項9】
前記毛細管部材は、
前記ウェルアレイの下部に配され、前記第1テープに形成された前記連結ホールと前記投入ホールとをカバーする第2テープをさらに含み、
前記第2テープは、前記第1テープの円状に対応することを特徴とする、請求項2に記載のPCRモジュール。
【請求項10】
前記連結ホールに対応する前記第2テープの面は、親水処理されたことを特徴とする、請求項9に記載のPCRモジュール。
【請求項11】
前記第2テープの厚さは、前記ウェルアレイの厚さと同じであることを特徴とする、請求項9に記載のPCRモジュール。
【請求項12】
前記第2テープは、前記第1テープに接する面に接着層が形成された断面テープであることを特徴とする、請求項9に記載のPCRモジュール。
【請求項13】
前記微小流体チャンバは、PDMS材質を含むことを特徴とする、請求項1に記載のPCRモジュール。
【請求項14】
前記微小流体チャンバは、
四角状の第1フラット部、前記第1フラット部の中心領域に形成された四角状の支持ホール、前記第1フラット部のエッジ領域に形成された円状のホールを含む四角状のベース部材と、
四角状の第2フラット部、皿状のメンブレンスイッチ、及び閉ループ状のインレット部を含み、前記ベース部材上に配される四角状のトップ部材と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載のPCRモジュール。
【請求項15】
前記ウェルアレイの下に配され、前記ウェルアレイのマイクロウェルに充填された試料の反応映像をリアルタイムで撮影するCMOSフォトセンサーアレイをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のPCRモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年7月8日付の大韓民国特許出願10-2021-0090030号に基づいた優先権の利益を主張し、当該大韓民国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、PCRモジュールに関し、より詳細には、微小流体チャンバの反応空間のコーナーやエッジ領域でエアポケットの発生を防止すると共に、リアルタイムPCR測定が可能なPCRモジュールに関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝子増幅技術は、分子診断において必須的な過程であって、試料内の微量のデオキシリボ核酸(Deoxyribonucleic Acid;DNA)またはリボ核酸(Ribonucleic Acid;RNA)の特定塩基配列を繰り返して複製して増幅する技術である。そのうち、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase chain reaction;PCR)は、代表的な遺伝子増幅技術であって、DNA変性段階(denaturation)、プライマー(Primer)結合段階(アニーリング:annealing)、DNA複製段階(伸長:extension)の3段階に構成されており、各段階は、試料の温度に依存されているので、試料の温度を繰り返して変わらせることにより、DNAを増幅することができる。
【0004】
従来、PCRは、一般的に96または384ウェルマイクロプレート(well microplates)で行われた。さらに高い処理量を要求する場合、従来のマイクロプレートでのPCR方法は、コストにおいて効果的または効率的ではない。一方、PCR反応容積を減少させれば、試薬の消費を減らし、反応容積の減少した熱質量で増幅時間を減らすこともできる。この戦略は、アレイ形式(mxn)で具現することもできるので、その結果、多数のさらに小さな反応容積を具現することもできる。また、あるアレイを使用すれば、増加した定量感度、ダイナミックレンジと特異性を有する拡張可能高スループット分析を許容する。
【0005】
これまでのところ、アレイ形式を使用してデジタルポリメラーゼ連鎖反応(dPCR)を行った。dPCRからの結果を使用して希少対立遺伝子(rare alleles)の濃度を検出及び定量化し、核酸試料の絶対定量化を提供し、また、核酸濃度が低い折り畳み式の変化を測定することができる。一般的に、複製の数を増加させれば、dPCR結果の正確度及び再現性が増加する。
【0006】
ほとんどの定量ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)プラットホームのアレイ形式は、試料別に分析実験のために設計され、ここで、PCR結果は、事後分析のためにアドレス可能でなければならない。しかし、dPCRについて、それぞれのPCR結果の特定位置またはウェルは重要ではなく、単に試料当たり、陽性及び陰性複製の数のみ分析されることもある。
【0007】
dPCRで、ターゲットポリヌクレオチドまたは核酸配列の相対的に少数を含む溶液を小さなテスト試料に分割することもでき、それにより、それぞれの試料は、一般的にターゲットヌクレオチド配列の一分子を含むか、またはターゲットヌクレオチド配列の分子を含まない。引き続き、試料がPCRプロトコル、手続き、または実験で熱的に循環される場合、ターゲットヌクレオチド配列を含む試料は、増幅されて、陽性検出信号を生成する一方、如何なるターゲットヌクレオチド配列も含まない試料は、増幅されず、検出信号を生成しない。
【0008】
このようなデジタルPCRの場合、反応空間のサイズが非常に小さく、その数が非常に多いために、反応空間のそれぞれに試料を投入しにくい。
【0009】
また、試料が反応空間のコーナーやエッジ領域まで注入されず、反応空間のコーナーやエッジ領域にエアポケットが生じうる。エアポケットは、PCR過程中の温度変化によって膨張するか、収縮して試験結果に誤差が発生する。
【0010】
既存の主なdPCR方式は、試料を反応空間に投入する過程と塩基配列を増幅する過程とが分けられるエンドポイント(end-point)PCRを使用するので、各反応空間でリアルタイムに塩基配列が増幅される反応を測定することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の技術的課題は、このような従来の問題点を解決するためのものであって、本発明の目的は、毛細管原理を用いて試料を微小流体チャンバの反応空間に注入して、前記反応空間のコーナーやエッジ領域でエアポケットの発生を防止すると共に、リアルタイムPCR測定が可能なPCRモジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を実現するために、一実施形態によるPCRモジュールは、試料の投入のために形成されたインレット部を含み、射出成形で製造可能な微小流体チャンバ;上下部が貫通された複数のマイクロウェルを含み、前記微小流体チャンバの下面に配されたウェルアレイ;及び前記インレット部を通じて投入される試料が毛細管現象によって、前記マイクロウェルに到達するように経路を提供する毛細管部材;を含む。
【発明の効果】
【0013】
このようなPCRモジュールによれば、毛細管原理を用いてPCR溶液を微小流体チャンバの反応空間に移動させ、その溶液が前記反応空間を満たす時、前記反応空間内に配されたウェルアレイのコーナーやエッジ領域にエアポケットの生成を遮断することができる。これにより、PCR試験結果でエアポケットによる誤差の発生を防止することができる。また、CMOSフォトセンサーアレイ上にウェルアレイが位置するので、リアルタイムPCR反応を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるPCRモジュールを説明する斜視図である。
図2図1にPCRモジュールを説明する背面分解斜視図である。
図3図1に示された毛細管部材を説明する分解斜視図である。
図4図1に示されたPCRモジュールを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的を実現するために、一実施形態によるPCRモジュールは、試料の投入のために形成されたインレット部を含み、射出成形で製造可能な微小流体チャンバ;上下部が貫通された複数のマイクロウェルを含み、前記微小流体チャンバの下面に配されたウェルアレイ;及び前記インレット部を通じて投入される試料が毛細管現象によって、前記マイクロウェルに到達するように経路を提供する毛細管部材;を含む。
【0016】
一実施形態において、前記毛細管部材は、前記微小流体チャンバと前記ウェルアレイとの間に配され、前記インレット部に対応して形成された流入ホール、前記ウェルアレイに対応して形成された投入ホール、及び前記流入ホールの直径よりも狭幅を有して、前記流入ホールと前記投入ホールとを連結する連結ホールを含む第1テープを含みうる。
【0017】
一実施形態において、前記第1テープは、四角状と前記四角状のエッジ領域に円状とが重畳された形状を有し、前記四角状は、前記ウェルアレイに対応し、前記円状は、前記微小流体チャンバのインレット部に対応することができる。
【0018】
一実施形態において、前記投入ホールは、前記四角状に形成され、前記流入ホールは、前記円状に形成され、前記連結ホールは、前記四角状と前記円状とが重畳された領域に形成されうる。
【0019】
一実施形態において、前記第1テープは、前記微小流体チャンバに接する面と前記ウェルアレイに接する面のそれぞれに接着層が形成された両面テープを含みうる。
【0020】
一実施形態において、前記投入ホールは、前記ウェルアレイの四角状よりも大きな四角状を有して、前記ウェルアレイのマイクロウェルを露出することができる。
【0021】
一実施形態において、前記ウェルアレイは、4個のエッジ領域が前記第1テープに付着される。
【0022】
一実施形態において、前記第1テープの連結ホールを形成する側面は、親水処理される。
【0023】
一実施形態において、前記毛細管部材は、前記ウェルアレイの下部に配され、前記第1テープに形成された前記連結ホールと前記投入ホールとをカバーする第2テープをさらに含み、前記第2テープは、前記第1テープの円状に対応することができる。
【0024】
一実施形態において、前記連結ホールに対応する前記第2テープの面は、親水処理される。
【0025】
一実施形態において、前記第2テープの厚さは、前記ウェルアレイの厚さと同一である。
【0026】
一実施形態において、前記第2テープは、前記第1テープに接する面に接着層が形成された断面テープである。
【0027】
一実施形態において、前記微小流体チャンバは、PDMS(ポリジメチルシロキサン:Polydimethylsiloxane)材質を含みうる。
【0028】
一実施形態において、前記微小流体チャンバは、四角状の第1フラット部、前記第1フラット部の中心領域に形成された四角状の支持ホール、前記第1フラット部のエッジ領域に形成された円状のホールを含む四角状のベース部材;及び四角状の第2フラット部、皿状のメンブレンスイッチ及び閉ループ状のインレット部を含み、前記ベース部材上に配される四角状のトップ部材;を含みうる。
【0029】
一実施形態において、前記PCRモジュールは、前記ウェルアレイの下に配され、前記ウェルアレイのマイクロウェルに充填された試料の反応映像をリアルタイムで撮影するCMOSフォトセンサーアレイをさらに含みうる。
【0030】
以下、添付した図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。本発明は、多様な変更を加え、さまざまな形態を有しうるので、特定実施形態を図面に例示し、本明細書で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変更、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。
【0031】
各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。添付図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性を期するために実際よりも拡大して図示したものである。
【0032】
第1、第2などの用語は、多様な構成要素の説明に使われるが、前記構成要素は、前記用語によって限定されるものではない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使われる。例えば、本発明の権利範囲を外れずに、第1構成要素は、第2構成要素と名付けられ、同様に、第2構成要素も、第1構成要素と名付けられうる。単数の表現は、文脈上、取り立てて明示しない限り、複数の表現を含む。
【0033】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在するということを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在、または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解しなければならない。
【0034】
また、取り立てての定義がない限り、技術的や科学的な用語を含んで、ここで使われるあらゆる用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的であるか、過度に形式的な意味として解釈されない。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態によるPCRモジュール100を説明する斜視図である。
【0036】
図2は、図1にPCRモジュール100を説明する背面分解斜視図である。図3は、図1に示された毛細管部材130を説明する分解斜視図である。図4は、図1に示されたPCRモジュール100を説明する断面図である。
【0037】
図1ないし図4を参照すれば、本発明の一実施形態によるPCRモジュール100は、微小流体チャンバ110、ウェルアレイ120、及び毛細管部材130を含む。
【0038】
微小流体チャンバ110は、ベース部材112、及びトップ部材114を含む。ベース部材112とトップ部材114は、一体に形成されうる。微小流体チャンバ110の底面領域には、ウェルアレイ120及び毛細管部材130を収容するように後退した形状の空間が形成される。微小流体チャンバ110は、透明であり、弾力がある材質を含みうる。例えば、微小流体チャンバ110は、PDMS材質を含みうる。これにより、微小流体チャンバ110は、射出成形で製造が可能である。
【0039】
ベース部材112は、四角状の第1フラット部112a、前記第1フラット部112aの下部の中心領域に形成された四角状の支持ホール112b、前記第1フラット部112aの下部の第1エッジ領域に形成された円状の第1フラットホール112c、及び前記第1フラット部112aの下部の第2エッジ領域に形成された円状の第2フラットホール112dを含む。前記第1エッジ領域と前記第2エッジ領域は、互いに対向する。支持ホール112bは、ウェルアレイ120に対応し、第1フラットホール112cは、試料が注入されるインレット部に対応し、第2フラットホール112dは、試料が排出されるアウトレット部に対応することができる。
【0040】
トップ部材114は、皿状のメンブレンスイッチ114a及び閉ループ状のインレット部114bを含み、前記ベース部材112上に配される。
【0041】
メンブレンスイッチ114aは、トップ部材114の中心領域に配され、上向きに突出する。メンブレンスイッチ114aの下部領域は、ベース部材112の支持ホールに対応する。これにより、微小流体チャンバ110の底面部には、後退した形状の空間が形成される。後退した空間には、CMOSイメージセンサーとウェルアレイ120とが収容される。
【0042】
インレット部114bは、フェンス状(fence shape)を有して、試料の投入のために形成される。インレット部114bは、メンブレンスイッチ114aの一側に上向きに突出して試料の外部への流出を遮断する。インレット部114bの中心領域には、ベース部材112の垂直方向にインレット(INLET)が形成される。前記インレットを通じて試料が毛細管部材130を経由してウェルアレイ120に注入される。
【0043】
トップ部材114は、メンブレンスイッチ114aの他側に観察者の観点から上向きに突出したグリップ部114cをさらに含みうる。グリップ部114cは、メンブレンスイッチ114aを基準にインレット部114bと対向するように配置される。グリップ部114cの高さは、インレット部114bの高さよりも高い。インレット部114bの高さとメンブレンスイッチ114aの高さは、同一である。
【0044】
ウェルアレイ120は、上下部が貫通された複数のマイクロウェルを含み、微小流体チャンバ110の下面に配置される。ウェルアレイ120は、CMOSフォトセンサーアレイ140上に配され、PCB150に形成された基板ホールに挿設される。ウェルアレイ120は、複数のマイクロウェルを含みうる。マイクロウェルの形状や、寸法、個数などは、多様である。マイクロウェルのそれぞれには、粉末試料または液体試料のような分析試料が収容される。前記分析試料は、生物学的物質分析のための特異成分である。すなわち、前記分析試料とは、特定の生物学的物質、例えば、タンパク質、DNA、RNAなどの定量または定性分析のための成分であって、プライマー、プローブ、抗体、アプタマー、DNAまたはRNAポリメラーゼなどを意味し、特に、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応、定温酵素反応またはLCR(Ligase Chain Reaction)などを行うために必要な成分を意味する。
【0045】
毛細管部材130は、微小流体チャンバ110とウェルアレイ120との間に配された第1テープ132及びウェルアレイ120の下部に配された第2テープ134を含み、インレット部114bを通じて投入される試料が毛細管現象(capillarity action)によってマイクロウェルに到達するように経路を提供する。ここで、毛細管現象とは、重力などの外部力に関係なく細い管や多孔性物質などの狭い空間に沿って移動する性質を言う。
【0046】
第1テープ132は、四角状と前記四角状のエッジ領域に円状とが重畳された形状を有し、前記四角状は、前記ウェルアレイ120に対応し、前記円状は、微小流体チャンバ110のインレット部114bに対応することができる。
【0047】
第1テープ132は、インレット部114bのインレットに対応して形成された流入ホール132a、ウェルアレイ120に対応して形成された投入ホール132b及び流入ホール132aの直径よりも狭幅を有して、流入ホール132aと投入ホール132bとを連結する連結ホール132cを含みうる。投入ホール132bは、前記四角状に形成され、前記流入ホール132aは、前記円状に形成され、連結ホール132cは、前記四角状と前記円状とが重畳された領域に形成されうる。投入ホール132bは、ウェルアレイ120の四角状よりも大きな四角状を有して、ウェルアレイ120のマイクロウェルを露出することができる。
【0048】
第1テープ132は、微小流体チャンバ110に接する面とウェルアレイ120に接する面のそれぞれに接着層が形成された両面テープである。これにより、ウェルアレイ120は、4個のエッジ領域が第1テープ132に付着される。第1テープ132の連結ホール132cを形成する側面は、親水処理される。これにより、インレットを通じて注入された試料は、より円滑にウェルアレイ120に到達することができる。
【0049】
第2テープ134は、ウェルアレイ120の下部に配され、第1テープ132に形成された連結ホール132cと投入ホール132bとをカバーすることができる。第2テープ134は、第1テープ132の円状に対応することができる。連結ホール132cに対応する第2テープ134の面は、親水処理される。これにより、インレットを通じて注入された試料は、より円滑にウェルアレイ120に到達することができる。第2テープ134は、第1テープ132に接する面に接着層が形成された断面テープである。
【0050】
本発明によれば、微小流体チャンバ110とウェルアレイ120との間に配された第1テープ132及びウェルアレイ120の下部に配された第2テープ134で毛細管部材130を構成することにより、ウェルアレイ120のコーナーやエッジ領域にエアポケットの生成を遮断することができる。
【0051】
通常、エアポケットは、PCR過程中の温度変化によって膨張するか、収縮してPCR試験結果に誤差が発生する。しかし、本発明によれば、毛細管部材130を利用した毛細管現象によって試料を移動させ、その試料が微小流体チャンバ110の反応空間を満たす時、反応空間であるウェルアレイ140のコーナーやエッジ領域でエアポケットの生成が遮断される。したがって、PCR試験結果でエアポケットによる試験結果に誤差の発生を防止することができる。また、CMOSフォトセンサーアレイ140上にウェルアレイ120が位置するので、リアルタイムPCR反応を測定することができる。
【0052】
本発明によるPCRモジュール100は、CMOSフォトセンサーアレイ140をさらに含みうる。CMOSフォトセンサーアレイ140は、ウェルアレイ120の下に配され、ウェルアレイ120のマイクロウェルに充填されて行われるPCR反応産物の映像をリアルタイムで撮影することができる。
【0053】
CMOSフォトセンサーアレイ140は、PCB150に形成された基板ホールに挿設される。CMOSフォトセンサーアレイ140は、放出される光を収容してPCR装置で行われるPCR反応産物をリアルタイムで撮影することができる。すなわち、CMOSフォトセンサーアレイ140は、励起光線によって多数のプローブで発生する蛍光(emission light)を検出する。前記蛍光の検出は、時間分離方式によって行われても、波長分離方式によって行われても良い。
【0054】
前記時間分離方式の場合、蛍光物質が励起光に応答して発光を発現するにつれて、蛍光センサーアレイまたはアレイを構成する単一センサーは、エミッションフィルターを通過する発光を検出し、該検出された発光の時系列を求めて蛍光を感知する。
【0055】
このために、PCRモジュール100は、所定の波長を有する光を選択する役割を行うエミッションフィルター(図示せず)をさらに含みうる。前記エミッションフィルターは、CMOSフォトセンサーアレイ140上に配置される。
【0056】
一方、前記波長分離方式の場合、蛍光物質が励起光に応答して発光を発現するにつれて、蛍光センサーアレイまたはアレイを構成する単一センサーは、前記エミッションフィルターを通過する発光を検出し、該検出された発光のスペクトル分析を通じて蛍光を感知する。
【0057】
本発明によるPCRモジュール100は、PCB150をさらに含みうる。PCB150は、微小流体チャンバ110の下に配され、搭載されるCMOSフォトセンサーアレイ140を収納することができる。PCB150は、微小流体チャンバ110の底面エッジ領域に接するように配置される。
【0058】
試料がインレットに投入されれば、毛細管部材130によってウェルアレイ120の一部領域、前記一部領域の上部領域及び前記一部領域の下部領域に提供される。
【0059】
本実施形態において、前記PCRモジュール100は、ウェルアレイ120のマイクロウェルのそれぞれに収容されたプローブに向けて励起光線(excitation light)を照射するように配された光提供部(図示せず)をさらに含みうる。一実施形態において、前記光提供部は、LED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)光源、レーザ光源のように光を放出する光源を含みうる。光源から放出された光は、ウェルアレイ120のマイクロウェルを通過するか、反射し、この場合、核酸増幅によって発生する光信号をCMOSフォトセンサーアレイ140が検出することができる。
【0060】
前述したように、本発明によれば、PCRモジュールのウェルアレイに試薬が内蔵された状態で発売されるために、試薬をセッティングするための別途の手続きが不要であって、汚染可能性が画期的に低下し、検査準備のための別途の手続きが不要である。
【0061】
また、デジタルリアルタイムPCRの場合、反応空間であるウェルアレイのマイクロウェルのサイズが非常に小さく、その数が非常に多いとしても、毛細管現象によって反応空間のそれぞれに試料を投入することが可能である。
【0062】
また、試料がウェルアレイのコーナーやエッジ領域まで注入されて、反応空間であるウェルアレイのコーナーやエッジ領域にエアポケットの生成が防止され、試験結果の信頼性が向上する。
【0063】
以上、実施形態を参照して説明したが、当業者は、下記の特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から外れない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができるということを理解できるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のPCRモジュールによれば、毛細管原理を用いてPCR溶液を微小流体チャンバの反応空間に移動させ、その溶液が前記反応空間を満たす時、前記反応空間内に配されたウェルアレイのコーナーやエッジ領域にエアポケットの生成を遮断することができる。これにより、PCR試験結果でエアポケットによる誤差の発生を防止することができる。また、CMOSフォトセンサーアレイ上にウェルアレイが位置するので、リアルタイムPCR反応を測定することができる。
【符号の説明】
【0065】
100:PCRモジュール
110:微小流体チャンバ
112a:第1フラット部
112b:支持ホール
112c:第1フラットホール
112:ベース部材
112d:第2フラットホール
114:トップ部材
114a:メンブレンスイッチ
114b:インレット部
120:ウェルアレイ
130:毛細管部材
132:第1テープ
132a:流入ホール
132b:投入ホール
132c:連結ホール
134:第2テープ
140:CMOSフォトセンサーアレイ
150:PCB
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】