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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】電磁軸受を備えた電気機械
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
H02P27/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580646
(86)(22)【出願日】2022-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2022067804
(87)【国際公開番号】W WO2023275096
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】21182211.9
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508246076
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ カトリック ド ルヴァン
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE CATHOLIQUE DE LOUVAIN
【住所又は居所原語表記】Place de l’Universite 1,B-1348 Louvain-la-Neuve,Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100179648
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 咲江
(74)【代理人】
【識別番号】100222885
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 康
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100227695
【弁理士】
【氏名又は名称】有川 智章
(74)【代理人】
【識別番号】100170896
【弁理士】
【氏名又は名称】寺薗 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100219313
【弁理士】
【氏名又は名称】米口 麻子
(74)【代理人】
【識別番号】100161610
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 香子
(72)【発明者】
【氏名】デーズ,ブルーノ
(72)【発明者】
【氏名】ファン フェルデグヘム,ヨアヒム
【テーマコード(参考)】
5H505
【Fターム(参考)】
5H505AA01
5H505AA04
5H505AA30
5H505BB06
5H505DD03
5H505DD08
5H505EE41
5H505GG02
5H505HB01
5H505HB05
5H505JJ03
5H505JJ24
5H505KK05
5H505LL01
5H505LL41
5H505LL55
(57)【要約】
電気機械は、磁界が発生するロータと、ロータから発生する磁界と相互作用する磁界を発生するステータとを含む。ステータは、ロータに対して対称に配置された一対の巻線を含む。ロータの変位は、一対の巻線のうちの一方においてロータによって誘導される磁束の増加と、他方においてロータによって誘導される磁束の減少とを引き起こす。電気機械は、アクティブ電磁軸受モードでは、一対の巻線の一方にサスペンション信号成分を印加することにより、ステータによって生成される磁界が、ロータから発生する磁界との相互作用を通じて、ロータにサスペンション力を及ぼす。パッシブ電磁軸受モードでは、ステータの一対の巻線を相互接続し、一対の巻線の一方における磁束の増加と他方における磁束の減少とにより、一対の巻線にサスペンション電流を発生させることにより、ステータによって生成される磁界が、ロータの変位を打ち消す復元力をロータに及ぼす。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁軸受を備えた電気機械(300、800)であって、
磁界が発生するロータ(303、803)と、
前記ロータから発生する磁界と相互作用する磁界を生成するように適合されたステータであって、該ステータは、前記ロータに対して対称に配置された一対の巻線(304、305;804、805)を含み、前記ロータの変位が、前記一対の巻線のうちの一方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの増加と、前記一対の巻線のうちの他方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの減少とを引き起こすステータと、
アクティブ電磁軸受モードで動作するように適合された駆動装置(301、801)であって、該駆動装置は、アクティブ電磁軸受モードにおいて、前記一対の巻線のうちの少なくとも1つの巻線にサスペンション信号成分を印加し、これにより、前記ステータによって生成される磁界が、前記ロータから発生する磁界との相互作用を通じて前記ロータにサスペンション力を及ぼす成分を有するようになる駆動装置と、を含み、
前記駆動装置は、さらに、パッシブ電磁軸受モードで動作するように適合されており、該駆動装置は、パッシブ電磁軸受モードにおいて、前記ステータの前記一対の巻線を互いに相互接続し、前記一対の巻線の前記一方の巻線における磁束の大きさの増加と前記他方の巻線における磁束の大きさの減少とにより、前記一対の巻線にサスペンション電流を発生させて、前記ステータによって生成される磁界は、前記変位を打ち消す復元力を前記ロータに及ぼす成分を有するようになる、電磁軸受を備えた電気機械。
【請求項2】
前記一対の巻線(304、305;804、805)は、パッシブ電磁軸受モードにおいて、前記復元力が前記ロータの軸方向変位を打ち消すように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の電気機械。
【請求項3】
前記駆動装置(301、801)は、前記一対の巻線のうちの少なくとも1つの巻線に駆動信号成分を印加するように適合されており、これにより、前記ステータによって生成される磁界は、前記ロータから発生する磁界との相互作用を通じて前記ロータにトルクを及ぼす成分を有するようになる、請求項1または2に記載の電気機械。
【請求項4】
前記駆動装置(301、801)は、アクティブ電磁軸受モードにおいて、前記ステータの前記一対の巻線(304、305;804、805)のうちの単一の巻線(304、804)にサスペンション信号成分と駆動信号成分とを共同で印加するように適合されていることを特徴とする、請求項3に記載の電気機械。
【請求項5】
アクティブ電磁軸受モードにおいて、前記ステータの前記一対の巻線(304、305;804、805)の他方の巻線(305、805)を、前記ロータ(303、803)の変位を測定するセンサの一部として使用するように適合されている、請求項4に記載の電気機械。
【請求項6】
前記駆動装置(301、801)は、前記電気機械の少なくとも1つの動作状態に応じて、アクティブ電磁軸受モードまたはパッシブ電磁軸受モードで前記駆動装置を動作させるように適合されたコントローラ(306、806)を備えることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項7】
前記コントローラ(306、806)は、前記ロータ(303、803)が閾値速度未満の回転速度を有する場合には、前記駆動装置をアクティブ電磁軸受モードで動作させ、前記ロータが閾値速度を超える回転速度を有する場合には、パッシブ電磁軸受モードで動作させるように適合されている、請求項6に記載の電気機械。
【請求項8】
前記電気機械は、前記ロータの角度位置、前記ロータの回転速度、前記ロータの軸方向位置、および前記ステータの前記一対の巻線における信号の特性のうちの少なくとも1つの指示を、前記コントローラ(306、806)に提供するように適合された少なくとも1つのセンサを備えることを特徴とする、請求項6または7に記載の電気機械において電気機械。
【請求項9】
前記コントローラ(306、806)は、パッシブ電磁軸受モードからアクティブ電磁軸受モードへの切り替え時に、前記ロータ(303、803)に作用する軸方向力を考慮するように適合されている、請求項8に記載の電気機械。
【請求項10】
前記コントローラ(306、806)は、パッシブ電磁軸受モードにおいて前記ロータ(303、803)が安定する軸方向位置を推定し、該軸方向位置をアクティブ電磁軸受モードにおける設定点として適用するように適合されている、請求項8または9に記載の電気機械。
【請求項11】
前記コントローラ(306、806)は、アクティブ電磁軸受モードにおける前記駆動装置の故障の検出時に、前記駆動装置をパッシブ電磁軸受モードで動作させるように適合されている、請求項6から10のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項12】
前記駆動装置(301)は、2つのN相インバータ(309、310)を含み、これにより、
アクティブ電磁軸受モードにおいて、前記2つのN相インバータの一方(309)は、前記一対の巻線のうちの一方の巻線(304)に結合され、他方のN相インバータ(310)は、前記一対の巻線のうちの他方の巻線(305)に結合され、
パッシブ電磁軸受モードにおいて、前記ステータの前記一対の巻線は相互接続され、前記2つのN相インバータの少なくとも1つは、相互接続された前記一対の巻線に結合されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気機械。
【請求項13】
前記電気機械は、前記2つのN相インバータ(309、310)のうちのN相インバータの故障を検出し、アクティブ電磁軸受モードにおいて、前記N相インバータが故障していなければ結合されている前記ステータの前記巻線から前記N相インバータを切り離すように適合されていることを特徴とする、請求項12に記載の電気機械。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の電気機械(300)を含む、電気機械システム。
【請求項15】
電磁軸受を備えた電気機械(300、800)を動作させる方法であって、該電気機械は、
磁界が発生するロータ(303、803)と、
前記ロータから発生する磁界と相互作用する磁界を生成するように適合されたステータであって、該ステータは、前記ロータに対して対称に配置された一対の巻線(304、305;804、805)を含み、前記ロータの変位が、前記一対の巻線のうちの一方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの増加と、前記一対の巻線のうちの他方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの減少とを引き起こすステータと、を含み、
前記方法は、駆動装置(301、801)について、
前記駆動装置が、前記一対の巻線のうちの少なくとも1つの巻線にサスペンション信号成分を印加し、これにより、前記ステータによって生成される磁界が、前記ロータから発生する磁界との相互作用を通じて前記ロータにサスペンション力を及ぼす成分を有するようになる、アクティブ電磁軸受モードと、
前記駆動装置が、前記ステータの前記一対の巻線を互いに相互接続し、前記一対の巻線の前記一方の巻線における磁束の大きさの増加と前記他方の巻線における磁束の大きさの減少とにより、前記一対の巻線にサスペンション電流を発生させて、前記ステータによって生成される磁界は、前記変位を打ち消す復元力を前記ロータに及ぼす成分を有するようになる、パッシブ電磁軸受モードと、の2つのモードのいずれかで選択的に動作させることを含む、電気機械を動作させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電磁軸受を備えた電気機械に関する。この電気機械は、例えば、心室補助装置、送風機およびファン、リアクションホイール、フライホイール、ポンプ、およびいわゆる高純度装置、ならびに他の電気機械システムに用途を見出すことができる。本発明の他の態様は、電気機械システム、および電磁軸受を備えた電気機械を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械は、モータや発電機を共同して形成するロータとステータとを含む。ロータからは磁界が発生する。この磁界は、例えば1つ以上の磁極対によって生成される。永久磁石がこのような磁極対を提供してもよい。ステータはまた、例えばステータ内の1つ以上の巻線に印加される駆動信号に応答して、磁界を生成し得る。従って、ステータによって生成される磁界は、ロータから発生する磁界と相互作用し得る。モータでは、この相互作用がロータにトルクを与え、ロータをスピン回転させる。駆動信号は、ロータがスピン回転する回転速度と、ロータに作用するトルクを決定し得る。発電機では、トルクは回転速度に対して符号が逆である。
【0003】
前述した電気機械は、電磁軸受を備えていてもよい。そのために、ステータに印加される駆動信号は、サスペンション成分を含んでいてもよく、これにより、ステータによって生成される磁界もサスペンション成分を有することになる。磁界のサスペンション成分は、ロータから発生する磁界との相互作用を通じてロータにサスペンション力を及ぼす。サスペンション力を与える駆動信号のサスペンション成分は、ロータの実際の位置と所望の位置との測定偏差を補正するように制御される。また、電磁軸受を提供するサスペンション成分を制御するために、1つ以上の他の測定された動作パラメータを使用することもできる。さらに、サスペンション部品を適切な方法で制御することにより、電磁軸受の所望の剛性および制動を得ることができる。
【0004】
電磁軸受を備えた電気機械は、機械式軸受を備えた電気機械に比べてさまざまな利点がある。電磁軸受は機械的な摩擦がないため、機械的な摩耗がない。さらに、エネルギー損失があるとしても、機械式軸受に比べてかなり低くなる。その結果、動作効率が向上する。さらに、電磁軸受を備えた電気機械は、機械式軸受を備えた電気機械よりもコンパクトにすることができる。電磁軸受は潤滑を必要としないため、使用やメンテナンスが容易である。さらに、潤滑剤が電気機械の動作環境を汚染することもない。これらの利点から、電磁軸受を備えた電気機械は、高トルク密度、高スピン回転速度、高純度、コンパクト性、またはこれらの組み合わせが要求される用途に特に適している。
【0005】
ベアリングレスモータと称される電磁軸受を備えたモータの背景技術の一例として、特許第6628388号公報(特許文献1)がある。この公報に記載されたベアリングレスモータは、ロータと、このロータの回転シャフト方向の一端部のみを磁力によって支持するステータとを備えている。ロータは、回転シャフト方向に着磁されたシャフト部材を有する。シャフト部材の外周面に沿って複数のモータマグネットが配置されている。ステータは、回転シャフト方向に着磁された中空形状のシャフト部材を有する。ステータの中空形状のシャフト部材は、その内部にロータのシャフト部材の少なくとも一部を収容するとともに、回転軸方向においてモータマグネットと対向する複数のコイルを収容している。これらのコイルは、ステータの中空形状のシャフト部材の外周面に沿って分割されて設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6628388号公報
【発明の概要】
【0007】
信頼性、コンパクト性、スピン回転速度範囲、設計の容易性、製造の容易性の少なくとも1つを改善することができる電磁軸受を備えた電気機械が必要とされている。
【0008】
本発明は、以下の点を考慮している。本明細書に記載したような電磁軸受を備えた電気機械では、サスペンション電流の制御が比較的複雑で故障に脆弱な可能性がある。特に、例えばロータの角度位置の測定が不正確であるために、ロータが比較的高速でスピン回転する場合にはこのようなことが起こり得る。さらに、故障があると、ロータが所望の位置から外れて、ステータや電気機械の他の構造部品に衝突する可能性がある。このような損傷を防ぐために、機械式安全軸受が設けられることがある。しかし、この解決策では、ロータおよびこれらの軸受にとって比較的「ストレスのかかる」過渡事象を防ぐことはできない。というのも、ロータと一般的に静止している非常用安全軸受が接触する際には、ロータと非常用安全軸受の間に大きな速度差が生じるからである。この“ストレス”により、ロータが数回ハードランディングした後、機械式安全軸受の交換が必要になり得る。
【0009】
請求項1に画定される発明の一態様は、電磁軸受を備える電気機械を提供し、電気機械は、以下の構成を含む。すなわち、
-磁界が発生するロータと、
-ロータから発生する磁界と相互作用する磁界を生成するように適合されたステータと、
-アクティブ電磁軸受モードで動作するように適合された駆動装置であって、該駆動装置は、アクティブ電磁軸受モードにおいて、前記ステータにサスペンション信号成分を印加し、これにより、前記ステータによって生成される磁界が、前記ロータから発生する磁界との相互作用を通じて前記ロータにサスペンション力を及ぼす成分を有するようになる駆動装置と、を含み、
前記ステータは、前記ロータに対して対称に配置された一対の巻線を含み、前記ロータの変位が、前記一対の巻線のうちの一方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの増加と、前記一対の巻線のうちの他方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの減少とを引き起こし、
前記駆動装置は、さらに、パッシブ電磁軸受モードで動作するように適合されており、該駆動装置は、パッシブ電磁軸受モードにおいて、前記ステータの前記一対の巻線を互いに相互接続し、前記一対の巻線の前記一方の巻線における磁束の大きさの増加と前記他方の巻線における磁束の大きさの減少とにより、前記一対の巻線にサスペンション電流を発生させて、前記ステータによって生成される磁界は、前記変位を打ち消す復元力を前記ロータに及ぼす成分を有するようになる。
【0010】
請求項14に画定される本発明のさらなる態様は、本明細書で画定される電気機械を含む電気機械システムを提供する。
【0011】
請求項15に画定される本発明のさらに別の態様は、電磁軸受を備える電気機械を動作させる方法を提供し、以下を含む。すなわち、
前記電気機械は、
-磁界が発生するロータと、
-前記ロータから発生する磁界と相互作用する磁界を生成するように適合されたステータであって、該ステータは、前記ロータに対して対称に配置された一対の巻線を含み、前記ロータの変位が、前記一対の巻線のうちの一方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの増加と、前記一対の巻線のうちの他方の巻線において前記ロータによって誘導される磁束の大きさの減少とを引き起こすステータと、を含み、
前記方法は、駆動装置について、
前記駆動装置が、前記ステータにサスペンション信号成分を印加し、これにより、前記ステータによって生成される磁界が、前記ロータから発生する磁界との相互作用を通じて前記ロータにサスペンション力を及ぼす成分を有するようになる、アクティブ電磁軸受モードと、
前記駆動装置が、前記ステータの前記一対の巻線を互いに相互接続し、前記一対の巻線の前記一方の巻線における磁束の大きさの増加と前記他方の巻線における磁束の大きさの減少とにより、前記一対の巻線にサスペンション電流を発生させて、前記ステータによって生成される磁界は、前記変位を打ち消す復元力を前記ロータに及ぼす成分を有するようになる、パッシブ電磁軸受モードと、の2つのモードのいずれかで選択的に動作させることを含む。
【0012】
これらの各態様において、パッシブ電磁軸受モードにおいてロータに及ぼされる復元力は、アクティブ電磁軸受モードにおいてロータに及ぼされるサスペンション力の置換であり、これらの力は両方ともロータの同じ自由度に関するものである。パッシブ電磁軸受モードで与えられる復元力により、故障が発生した場合でもロータの比較的安全なソフトランディングが可能になる。これは、パッシブ電磁軸受モードが、ロータをステータや電気機械の他の構造部品との接触しない浮遊状態に保つために、故障に対して本質的に脆弱な能動制御に頼る必要がないからである。
【0013】
ロータを浮遊状態に保つために、パッシブ電磁軸受モードでは、ロータが閾値を超える速度でスピン回転することが必要となる場合がある。従って、ロータは、ステータ、安全軸受、または他の構造部品に着地するが、閾値を下回る速度でスピン回転し得る。この速度は、比較的安全な着地を保証するために十分に低い可能性がある。さらに、ロータが減速し、徐々に低速でスピン回転する間、復元力は徐々に弱くなり、ロータは、最終的にロータが着地する構造部品に向かって徐々に移動する。対照的に、アクティブ電磁軸受モードでは、サスペンション力が突然消失し、ロータが不時着する可能性がある。パッシブ電磁軸受モードが提供できる安全なソフトランディングは、このように機械的ストレス、摩耗、あるいは損傷を少なくすることができる。従って、本発明は信頼性の向上を可能にする。
【0014】
さらに、パッシブ電磁軸受モードは、比較的高いスピン回転速度、すなわち前述の閾値速度を超える速度でロータを浮遊状態に保つために使用することができる。従って、アクティブ電磁軸受モードは、このような比較的高いスピン回転速度に対応する必要はない。これにより、アクティブ電磁軸受モードに関与する、典型的にはセンサおよびコントローラを含む、回路の設計および製造を簡素化することができる。従って、本発明は、設計および製造の容易性を向上させ、従って、低コスト化を可能にする。これにより、さらにコンパクト性の向上を図ることができる。コンパクト性と同様に、設計および製造の容易性にさらに寄与する可能性があるのは、機械式安全軸受が不要になるか、または少なくとも、アクティブ電磁軸受のみを備えた従来の電気機械で必要とされる機械的安全軸受よりも単純、小型、もしくは安価、またはこれらの任意の組み合わせとなる可能性があることである。
【0015】
本明細書で画定した電気機械は、比較的広いスピン回転速度範囲で満足に動作することができる。前述したように、パッシブ電磁軸受モードは、高スピン回転速度範囲で使用されることがあり、これは、このモードの前述した閾値速度で開始されるか、またはこの閾値速度より幾分高い速度で開始される場合がある。高スピン回転速度範囲は、比較的高い最大スピン回転速度で終了してもよく、これは原則として、能動制御に関連する制約が課されるものではない。アクティブ電磁軸受モードは、比較的低いスピン回転速度範囲で使用することができ、これは、例えば、起動段階または終了段階で横断する可能性がある。さらに、パッシブ電磁軸受モードとアクティブ電磁軸受モードとの間の切り替えは、許容できない過渡的な影響を生じさせる必要がないことが判明している。さらに、これらの過渡的な影響は、複雑な要素を必要とすることなく緩和することができる。
【0016】
説明のために、本発明のいくつかの実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。この説明において、追加の特徴が提示され、その一部は従属請求項において画定され、利点が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、軸方向磁束構成を有するモータの単純化した概略透視図である。
図2図2は、径方向磁束構成を有するモータの単純化した概略透視図である。
図3図3は、非動作状態にあるデュアルインバータ電気機械の概略ブロック図である。
図4図4は、アクティブ電磁軸受モードによるデュアル駆動で動作するデュアルインバータ電気機械の概略ブロック図である。
図5図5は、アクティブ電磁軸受モードによる単一駆動で動作するデュアルインバータ電気機械の概略ブロック図である。
図6図6は、パッシブ電磁軸受モードによる単一駆動で動作するデュアルインバータ電気機械の概略ブロック図である。
図7図7は、駆動なしのパッシブ電磁軸受モードで動作するデュアルインバータ電気機械の概略ブロック図である。
図8図8は、アクティブ電磁軸受モードによる駆動で動作する単一インバータ電気機械の概略ブロック図である。
図9図9は、パッシブ電磁軸受モードによる駆動で動作する単一インバータ電気機械の概略ブロック図である。
図10図10は、駆動なしのパッシブ電磁軸受モードで動作する単一インバータ電気機械の概略ブロック図である。
図11図11は、アクティブ電磁軸受モードおよびパッシブ電磁軸受モードでモータを制御するための制御方式の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、軸方向磁束構成を有するモータ100の一例を概略的に示している。図1は、この構成のモータ100の単純化した概略透視図を提供する。モータ100は、軸方向に向いた磁界が発生するロータ101を含む。モータ100はさらに、軸方向に向いた磁界を発生させることができるステータ102を含む。これらの軸方向に向いた磁界は、互いに相互作用することができる。モータ100は、ロータ101とステータ102とが挟まれた一対の永久磁石心出し軸受をさらに含んでいてもよい。これらの永久磁石心出し軸受は、簡単のため図1には示されていない。
【0019】
この実施形態では、ロータ101は、3つの磁極対を含む円盤状の永久磁石構造体の形態をしている。円盤状の永久磁石構造体は、軸方向に向いた2つの主面103、104を有する。2つの主面103、104は、便宜上、個々に上側主面103および下側主面104と称する。
【0020】
ステータ102は、図1に示されるように、ロータ101と軸方向に並んだ一対の軸方向巻線105、106を含む。巻線105、106は、便宜上、個々に上部巻線105および下部巻線106と称する。上部巻線105は、ロータの上側主面103に軸方向に面している。下部巻線106は、下側主面104に軸方向に面している。上部巻線105は一対の端子107、108を有し、この端子107、108を介して上部巻線105は電気信号を受信し、電気信号を供給することができる。端子107、108は、便宜上、個々に左端子107および右端子108と称する。下部巻線106もまた、このような一対の端子109、110を有する。これらの端子も、便宜上、個々に左端子109および右端子110と称する。
【0021】
図2は、径方向磁束構成を有するモータ200の一例を概略的に示している。図2は、この構成のモータ200の単純化した概略透視図を提供する。モータ200は、径方向に向いた磁界が発生するロータ201を含む。モータ200はさらに、径方向に向いた磁界を生じさせることができるステータ202を含む。これらの径方向に向いた磁界は、互いに相互作用することができる。ここでも、モータ200は、ロータ201とステータ202とが挟まれた一対の永久磁石心出し軸受をさらに含んでいてもよい。これらの永久磁石心出し軸受は、簡単のため図2には示されていない。
【0022】
この実施形態では、ロータ201は、3つの磁極対からなる円柱状の永久磁石構造体の形態をしている。円柱状の永久磁石構造体は、径方向に向いた2つの主面203、204を有する。2つの主面203、204は、便宜上、個々に内側主面203および外側主面204と称する。
【0023】
ステータ202は、図2に示されるように、ロータ201と軸方向に並んだ一対の巻線205、206を含む。巻線205、206は、便宜上、個々に上部巻線205および下部巻線206と称する。上部巻線205は、ロータの外側主面204の上部に径方向に面している。下部巻線206は、外側主面204の下部に径方向に面している。上部巻線205は一対の端子207、208を有し、この端子207、208を介して上部巻線205は電気信号を受信し、電気信号を供給することができる。下部巻線206もまた、このような一対の端子209、210を有する。
【0024】
図1に示される軸方向磁束構成を有するモータ100と、図2に示される径方向磁束の構成を有するモータ200とは、以下の点で共通している。ロータ101、201から磁界が発生し、上部巻線105、205に磁束が誘導され、また下部巻線106、206に磁束が誘導される。ロータ101、201が軸方向に上方へ変位すると、ステータ102、202の上部巻線105、205の磁束の大きさを増加させ、下部巻線106、206の磁束の大きさを減少させる。逆に、ロータ101、201が軸方向に下方へ変位すると、ステータ102、202の上部巻線105、205の磁束の大きさを減少させ、下部巻線106、206の磁束の大きさを増加させる。
【0025】
説明の便宜上、図1および図2は、それぞれ軸方向磁束構成および径方向磁束構成を有するモータを極めて単純化して表したものであることに留意されたい。単純化の一要素は、これらのモータを単相として図示したことにある。実際には、モータは複数対の巻線からなる多相であってもよく、巻線の一対は1相に対応する。例えば、図1および図2に示すモータの3相バージョンは、3組の巻線を含み、これらの巻線は相互に角度をずらして配置することができる。
【0026】
巻線105、106、205、206がそれぞれ1ターンであるように表されていることも、単純化のもう一つの要素である。実際には、巻線は複数のターンを含んでもよい。さらに、ラップ巻や波巻など、巻線が実施され得る様々な巻線方式が存在する。また、巻線は、例えば、ヨーク、スロットなどの強磁性回路を含んでもよく、これらは、単純化のために図1および図2には表されていない。
【0027】
単純化、図示についてさらにもう一つの要素は、ロータ101、201が3つの磁極対を含むことにある。ロータ101、201は、より多数の磁極対を含んでもよい。さらに、ロータ101、201は、図1および図2に図示されたものとは異なる構造を有していてもよい。例えば、磁極対を提供する永久磁石は、これらの図に示されているものとは異なる配置であってもよい。逆に、ロータ101、201は、2つの磁極対のみ、あるいは単一の磁極対を有していてもよい。
【0028】
図3は、非動作状態のデュアルインバータ電気機械300を概略的に示している。図3は、非動作状態にあるこの電気機械300の概略ブロック図である。デュアルインバータ電気機械300は、基本的に、駆動装置301とモータ302とを含み、このモータ302は、図1に示された軸方向磁束構成を有するモータ100であってもよいし、図2に示された径方向磁束を有するモータ200であってもよい。従って、デュアルインバータ電気機械300のモータ302は、図1に示されたロータ101、または図2に示されたロータ201に対応し得るロータ303を含む。さらに、デュアルインバータ電気機械300のモータ302は、一対の巻線304、305を有するステータを含み、これらの巻線は、図1に示された一対の巻線105、106、または図2に示された一対の巻線205、206に対応し得る。同様に、デュアルインバータ電気機械300のモータの一対の巻線304、305は、便宜上、個々に上部巻線304および下部巻線305と称される。しかし、前述の巻線304、305が機能的に同等であることを考慮すると、これらの呼称は交換可能であることを理解されたい。
【0029】
駆動装置301は、コントローラ306、パワーエレクトロニクス部307、スイッチ回路308を含む。本実施形態では、パワーエレクトロニクス部307は、2つのN相インバータ309、310を含む。スイッチ回路308は、図3に示すように、5つのスイッチを含む。図3は非動作状態を模式的に示しているので、これらのスイッチはそれぞれ開状態である。コントローラ306は、スピン回転位置および速度制御モジュール311、軸方向位置制御モジュール312、動作モード決定モジュール313、並びに2つのN相インバータ309、310の各々に対して1つずつ設けられた2つの力およびトルク制御モジュール314、315といった様々なモジュールを含むことができる。コントローラ306は、好適にプログラムされたプロセッサ、またはプロセッサのセットによって実施することができる。そして、その場合、コントローラ306のモジュールは、コントローラ306のプログラムメモリに格納されるソフトウェアプログラム、またはソフトウェアプログラムの一部に対応し得る。
【0030】
デュアルインバータ電気機械300は、単純化のために図3には表されていない1つ以上のセンサをさらに含んでもよい。センサは、ロータの角度位置、またはロータの回転速度、またはロータの軸方向位置、またはステータの一対の巻線304、305における信号の特性、またはこれらの任意の組み合わせに関する指示を提供することができる。この実施形態では、コントローラ306は、前述の指示を受信し、2つのN相インバータ309、310およびスイッチ回路308の制御にこれらを使用する。
【0031】
図4は、アクティブ電磁軸受モードによるデュアル駆動で動作するデュアルインバータ電気機械300を概略的に示している。図4は、スイッチ回路308の5つのスイッチのそれぞれの状態を除いて、図3とほぼ同じ概略ブロック図を提供する。コントローラ306は、これらのスイッチを図4に示すそれぞれの状態に設定し、デュアルインバータ電気機械300をアクティブ電磁軸受モードによるデュアル駆動で動作させている。このモードでは、2つのN相インバータ309、310の一方が上部巻線304に結合され、他方のN相インバータが下部巻線305に結合されている。図4では、N相インバータ309は上部巻線304に結合され、他方のN相インバータ310は下部巻線305に結合されている。明らかに、その逆であってもよい。すなわち、N相インバータ310が上部巻線304に結合され、他方のN相インバータが下部巻線305に結合されてもよい。
【0032】
アクティブ電磁軸受モードによるデュアル駆動では、モータ302は、2つのN相インバータ309、310から2つの駆動信号を受信する。各駆動信号は、駆動成分とサスペンション成分とを有することができる。駆動成分は、一対の巻線304、305によって生成される磁界が、ロータ303から発生する磁界との相互作用を通じてロータ303にトルクを及ぼす駆動成分を有するようにさせる。サスペンション成分は、一対の巻線304、305によって生成される磁界が、ロータ303から発生する磁界との相互作用を通じてロータ303にサスペンション力を及ぼすサスペンション成分を有するようにさせる。
【0033】
コントローラ306は、ロータ303が所望の速度でスピン回転し、所望のトルクを発生するように駆動部品を制御することができる。この駆動制御には、スピン回転位置および速度制御モジュール311が関与し得る。駆動制御は、ロータ303の角度位置に関する指示と、ロータ303のスピン回転速度に関する指示とに基づくことができる。スピン回転位置および速度制御モジュール311は、図4に示されるように、これらの指示を受け取ることができる。
【0034】
コントローラ306は、ロータ303が浮遊していることに対応する所望の軸方向位置をロータ303が維持するように、サスペンション部品を制御することができる。アクティブ電磁軸受を提供するこのサスペンション制御は、軸方向位置制御モジュール312に関与し得る。サスペンション制御は、ロータ303の軸方向位置の指示に基づくことができる。軸方向位置制御モジュール312は、図4に示されるように、この指示を受け取ることができる。
【0035】
図5は、アクティブ電磁軸受モードによる単一駆動で動作するデュアルインバータ電気機械300を概略的に示している。図5は、スイッチ回路308の5つのスイッチのそれぞれの状態を除いて、図3および図4とほぼ同じ概略ブロック図を提供する。コントローラ306は、デュアルインバータ電気機械300をアクティブ電磁軸受モードによる単一駆動で動作させるために、これらのスイッチを図5に示すようなそれぞれの状態に設定している。このモードでは、2つのN相インバータ309、310のうちの一方のみが、一対の巻線304、305のうちの単一の巻線に結合されている。図5は、上部巻線304がN相インバータ309に結合されている例を示している。下部巻線305は、2つのN相インバータ309、310のそれぞれから切り離されており、したがって上部巻線304からも切り離されている。しかし、下部巻線305は、ロータ303の軸方向変位を測定するセンサとして使用することができる。
【0036】
明らかに、図5に示されたもの以外の接続方式も、アクティブ電磁軸受モードによる単一駆動で適用することができる。例えば、上部巻線304をN相インバータ310に結合してもよい。別の例として、下部巻線305をN相インバータ309に結合し、上部巻線304を2つのN相インバータ309、310のそれぞれから切り離すこともできる。その場合、上部巻線304はセンサとして使用することができる。さらに別の例として、下部巻線305をN相インバータ310に結合してもよい。
【0037】
アクティブ電磁軸受モードによる単一駆動では、モータ302は、このように、単一の巻線において単一のN相インバータから単一の駆動信号を受信する。単一駆動信号は、本明細書で前述したように、駆動成分とサスペンション成分とを有することができる。コントローラ306は、本明細書で前述したように、駆動成分およびサスペンション成分を制御することができる。従って、このモードにおいても、ロータ303は所望の速度でスピン回転し、所望のトルクを発生することができる。しかしながら、単一の巻線のみが単一のN相インバータから単一の駆動信号を受信するという事実のために、所望のトルクの最大値は低くなり、典型的には半分に減少する。さらに、同様のことが、図4に示されたアクティブ電磁軸受モードによるデュアル駆動に関して本明細書で前述したサスペンション力にも適用され得る。
【0038】
コントローラ306は、デュアルインバータ電気機械300を、図4に示されるアクティブ電磁軸受モードによるデュアル駆動から、図5に示されるアクティブ電磁軸受モードによる単一駆動に切り替えさせることができる。コントローラ306は、例えば、2つのN相インバータ309、310のうちの1つが故障した場合、または一対の巻線304、305のうちの1つの巻線が故障した場合(ステータの部分的な故障である)、そのようにすることができる。コントローラ306は、例えば、一対の巻線304、305の巻線における信号の特性の表示に基づいて、このような故障を検出することができる。信号の大きさが小さすぎるかまたは、別の異常を示す場合もある。アクティブ電磁軸受モードによる単一駆動に切り替えることにより、デュアルインバータ電気機械300の全体が故障するのを防止できる。通常、このような故障はアクティブ電磁軸受の故障に起因し、ロータ303の衝突を引き起こす可能性がある。さらに、その結果、モータ302が故障する。
【0039】
図6は、パッシブ電磁軸受モードによる単一駆動で動作するデュアルインバータ電気機械300を概略的に示している。図6は、スイッチ回路308の5つのスイッチのそれぞれの状態を除いて、図3図4および図5とほぼ同じ概略ブロック図を提供する。コントローラ306は、デュアルインバータ電気機械300をパッシブ電磁軸受モードによる単一駆動で動作させるために、これらのスイッチを図6に示すようなそれぞれの状態に設定している。このモードでは、上部巻線304と下部巻線305とは相互接続され、2つのN相インバータ309、310のうちの1つに共同で結合されている。図6では、上部巻線304と下部巻線305とがN相インバータ309に共同で結合されている。明らかに、別の接続方式でもよく、上部巻線304と下部巻線305とは、N相インバータ310に共同で結合されてもよい。
【0040】
パッシブ電磁軸受モードによる単一駆動では、ロータ303は、本明細書で前述したような制御を必要とすることなく、ロータ303が浮遊している状態に相当する平衡軸方向位置を維持することができる。これは、以下の電磁現象によるものである。先に説明したように、ロータ303の軸方向変位は、上部巻線304の磁束変化と下部巻線305の磁束変化とを引き起こす。前述の2つの磁束変化の一方は大きさが増加し、他方は大きさが減少する。上部巻線304と下部巻線305とは互いに相互接続されているので、上部巻線304の磁束変化と下部巻線305の磁束変化とにより、これらの巻線304、305にサスペンション電流が発生する。このサスペンション電流は、ロータ303が回転するときに発生する。このサスペンション電流により、ステータによって生成される磁界は、軸方向変位を打ち消す復元力をロータ303に及ぼす成分を有するようになる。以上の電磁現象により、受動的な電磁軸受(パッシブ電磁軸受)が提供されるのである。
【0041】
上部巻線304と下部巻線305とを互いに相互接続する仕方は、これらの巻線304、305のどのように配置され、ロータ303がどのように配置されているかに依存する。これにより、上部巻線304の磁束と下部巻線305の磁束とが同様の向きになるか、反対向きになるかが決まる。図1に示されたモータ100を参照すると、向きは反対である。その場合、上部巻線105の左端子107は、下部巻線106の左端子109に接続される。上部巻線105の右端子108は、下部巻線106の右端子110に接続される。図2に示されたモータ200を参照すると、向きは同様である。その場合、上部巻線205の左端子207は下部巻線206の右端子210に接続され、上部巻線205の右端子208は下部巻線206の左端子209に接続される。
【0042】
本明細書で前述した電磁現象がパッシブ電磁軸受を提供するためには、ロータ303は閾値スピン回転速度を超える速度で十分に速くスピン回転する必要がある。この閾値速度は、ロータ303およびステータの電磁的および機械的特性を含む様々な要因に依存する。達成される平衡軸方向位置もまた、上部巻線304および下部巻線305の電磁特性、ならびにロータ303の電磁特性および動的特性を含む様々な要因に依存する。さらに、平衡軸方向位置は、例えば、ロータに作用する力、重力、またはこれらの組み合わせなどの外的要因にも依存し得る。
【0043】
コントローラ306は、デュアルインバータ電気機械300を、図5に示されるアクティブ電磁軸受モードによる単一駆動から、図6に図示されるパッシブ電磁軸受モードによる単一駆動に切り替えさせることができる。コントローラ306は、例えば、ロータ303が閾値スピン回転速度を超える速度で十分に速くスピン回転する場合に、そうすることができる。パッシブ電磁軸受モードによる単一駆動に切り替えることにより、能動的なサスペンション制御が不要となり、より高いスピン回転速度を可能にすることができる。また、コントローラ306は、デュアルインバータ電気機械300を、図4に示されるアクティブ電磁軸受モードによるデュアル駆動から、図6に示されるパッシブ電磁軸受モードによる単一駆動に切り替えさせることもできる。しかし、後者のモードでは、単一のN相インバータのみがモータ302を駆動するため、モータ302が発生できる最大トルクが低くなる可能性がある。
【0044】
図7は、駆動なしのパッシブ電磁軸受モードで動作するデュアルインバータ電気機械300を概略的に示している。図7は、スイッチ回路308の5つのスイッチのそれぞれの状態を除いて、図3図4図5および図6とほぼ同じ概略ブロック図を提供する。コントローラ306は、デュアルインバータ電気機械300を駆動なしのパッシブ電磁軸受モードで動作させるために、これらのスイッチを図7に示すようなそれぞれの状態に設定している。このモードでは、上部巻線304と下部巻線305とは互いに相互接続されているが、両方とも2つのN相インバータ309、310から切り離されている。従って、ステータは駆動信号を受信しない。ロータ303は、ロータ303が十分に速くスピン回転する限り、ロータ303が浮遊している状態に相当する平衡軸方向位置を維持することができる。これは、前述したパッシブ電磁軸受のおかげであり、閾値スピン回転速度を超えると十分な復元力を提供する。
【0045】
コントローラ306は、デュアルインバータ電気機械300を、図5に示されるアクティブ電磁軸受モードによる単一駆動から、図7に示される駆動なしのパッシブ電磁軸受モードに切り替えさせることができる。コントローラ306は、例えば、アクティブ電磁軸受モードによる単一駆動で動作しているN相インバータが故障してN相インバータの両方が故障した場合に、そのようにすることができる。駆動なしのパッシブ電磁軸受モードに切り替えることにより、ロータ303は、ロータ303が十分に速くスピン回転する限り、ロータ303が浮遊している状態に相当する平衡軸方向位置を維持することができる。パッシブ電磁軸受は、例えば、ロータ303が依然として比較的高速でスピン回転している間に、ロータ303がステータまたは他の部品に対して、いわば衝突するような損傷的な事故を防止することができる。
【0046】
駆動なしのパッシブ電磁軸受モードは、ロータ303の安全なソフトランディングを可能にする。このモードに切り替えると、ロータ303は減速し、徐々に低速でスピン回転する。前述の復元力は徐々に弱くなり、ロータ303は、ロータ303が最終的に着地する構造部品に向かって徐々に移動する。ロータ303は十分に減速し、着地点に十分に近づいたので、着地は安全でソフトなものとなり得る。これとは対照的に、アクティブ電磁軸受モードでは、サスペンション力が突然なくなり、ロータ303が不時着する可能性がある。
【0047】
コントローラ306はまた、デュアルインバータ電気機械300を、図6に示されるパッシブ電磁軸受モードによる単一駆動から、図7に示される駆動なしのパッシブ電磁軸受モードに切り替えさせることもできる。コントローラ306は、前述したような理由で、そのようにすることができる。
【0048】
図8は、アクティブ電磁軸受モードによる駆動で動作する単一インバータ電気機械800を概略的に示している。図8は、このモードで動作する単一インバータ電気機械800の概略ブロック図である。デュアルインバータ電気機械300と同様に、単一インバータ電気機械800も基本的に駆動装置801とモータ802とを含む。モータ802は、ロータ803と、一対の巻線804、805を有するステータとを含む。デュアルインバータ電気機械300のモータ302に関して本明細書で前述したことは、単一インバータ電気機械800のモータ802にも同様に当てはまる。
【0049】
単一インバータ電気機械800の駆動装置801は、デュアルインバータ電気機械300の駆動装置301を単純化したものである。駆動装置801は、コントローラ806、パワーエレクトロニクス部807、およびスイッチ回路808という同様の機能部品を含む。ただし、本実施形態では、パワーエレクトロニクス部807は、単一のN相インバータ809を含む。スイッチ回路808は、図8に示すように、2つのスイッチから構成されている。コントローラ806は、単一の力およびトルク制御モジュール810を含む。その他については、コントローラ806は、デュアルインバータ電気機械300のコントローラ306と同様に、スピン回転位置および速度制御モジュール811、軸方向位置制御モジュール812、および動作モード決定モジュール813を含む。
【0050】
この実施形態においても、コントローラ806は、好適にプログラムされたプロセッサ、またはプロセッサのセットによって実施することができる。そして、その場合、コントローラ806のモジュールは、コントローラ806のプログラムメモリに格納されるソフトウェアプログラム、またはソフトウェアプログラムの一部に対応し得る。その他については、デュアルインバータ電気機械300に関して本明細書で前述したように、単一インバータ電気機械800は、1つ以上のセンサをさらに含んでいてもよい。これらのセンサは、単純化のために図8には表されていない。
【0051】
前述したように、図8は、アクティブ電磁軸受モードによる駆動で動作する単一インバータ電気機械800を概略的に示している。コントローラ806は、電気機械をアクティブ電磁軸受モードによる駆動で動作させるために、図8に示すように、2つのそれぞれのスイッチをそれぞれの状態に設定している。このモードでは、単一のN相インバータが単一の巻線に結合されている。図8は、N相インバータ809が上部巻線804に結合されている例を示している。下部巻線805はN相インバータ809から切り離され、したがって上部巻線804からも切り離される。下部巻線805は、ロータ803の軸方向変位を測定するセンサとして使用することができる。明らかに、逆接続方式は、アクティブ電磁軸受モードによる駆動にも適用可能である。下部巻線805がN相インバータ809に結合され、上部巻線804がN相インバータ809から切り離されてもよい。
【0052】
アクティブ電磁軸受モードによる駆動は、デュアルインバータ電気機械300に関する図5を参照して前述したアクティブ電磁軸受モードによる単一駆動と同様である。モータ802は、その上部巻線804において、単一のN相インバータ809から駆動信号を受信する。単一の駆動信号は、本明細書で前述したように、駆動成分とサスペンション成分とを有することができる。コントローラ806は、本明細書で前述したように、駆動成分およびサスペンション成分を制御することができる。従って、ロータ803は、所望の速度でスピン回転し、所望のトルクを発生することができる。ロータ803は、サスペンション部品の能動的制御によって、ロータ803が浮遊していることに対応する所望の軸方向位置を維持する。この能動的制御は、ロータ803の軸方向位置の指示に基づくことができる。本明細書で前述したように、下部巻線805はそのような指示を提供することができる。
【0053】
図9は、パッシブ電磁軸受モードによる駆動で動作する単一インバータ電気機械800を概略的に示している。図9は、スイッチ回路808の2つのスイッチのそれぞれの状態を除いて、図8とほぼ同じ概略ブロック図を提供する。コントローラ806は、電気機械をパッシブ電磁軸受モードによる駆動で動作させるために、これらのスイッチを図9に示すようなそれぞれの状態に設定している。このモードでは、上部巻線804と下部巻線805とは互いに相互接続され、単一のN相インバータ809に共同で結合されている。
【0054】
パッシブ電磁軸受モードによる駆動は、デュアルインバータ電気機械300に関する図6を参照して前述したパッシブ電磁軸受モードによる単一駆動と同様である。ロータ803は、能動制御を必要とすることなく、ロータ803が浮遊していることに対応する平衡軸方向位置を維持することができる。これは、図6に示されたパッシブ電磁軸受モードによる単一駆動に関して本明細書で前述した電磁現象によるものである。
【0055】
コントローラ806は、電気機械を、図8に示されるアクティブ電磁軸受モードによる駆動から、図9に示されるパッシブ電磁軸受モードによる駆動に切り替えさせることができる。コントローラ806は、例えば、ロータ803が閾値スピン回転速度を超える速度で十分に速くスピン回転する場合に、そうすることができる。パッシブ電磁軸受モードによる単一駆動に切り替えることにより、能動的なサスペンション制御が不要となり、より高いスピン回転速度を可能にすることができる。
【0056】
図10は、駆動なしのパッシブ電磁軸受モードで動作する単一インバータ電気機械800を概略的に示している。図10は、スイッチ回路808の2つのスイッチのそれぞれの状態を除いて、図8および図9とほぼ同じ概略ブロック図を提供する。コントローラ806は、電気機械を駆動なしのパッシブ電磁軸受モードで動作させるために、これらのスイッチを図10に示すようなそれぞれの状態に設定している。このモードでは、上部巻線804と下部巻線805とは互いに相互接続され、両方とも単一のN相インバータ809から切り離されている。従って、ステータは駆動信号を受信しない。ロータ803は、ロータ803が十分に速くスピン回転する限り、ロータ803が浮遊している状態に相当する平衡軸方向位置を維持することができる。これは、前述したパッシブ電磁軸受のおかげであり、閾値スピン回転速度を超えると十分な復元力を提供する。
【0057】
コントローラ806は、電気機械を、図8に示されるアクティブ電磁軸受モードによる駆動から、図10に示される駆動なしのパッシブ電磁軸受モードに切り替えさせることができる。コントローラ806は、例えば、単一のN相インバータ809が故障した場合に、そのようにすることができる。駆動なしのパッシブ電磁軸受モードに切り替えることによって、ロータ803は、ロータ803が十分に速くスピン回転する限り、ロータ803が浮遊していることに対応する平衡軸方向位置を維持することができる。本明細書で説明したように、パッシブ電磁軸受は、例えば、ロータ803が依然として比較的高速でスピン回転している間に、ロータ803がステータまたは他の部品に対して、いわば衝突するような損傷的な事故を防止することができる。コントローラ806はまた、電気機械を、図9に図示されるパッシブ電磁軸受モードによる駆動から、図10に図示される駆動なしのパッシブ電磁軸受モードに切り替えさせることもできる。コントローラ806は、前述したような理由で、そのようにすることができる。
【0058】
図11は、モータアセンブリ1101を制御するための制御方式1100を概略的に示す。図11は、ブロックがモータアセンブリ1101を概略的に表す、制御方式1100の概略ブロック図を提供する。図8図10に示される単一インバータ電気機械800内のコントローラ806は、図11に示される制御方式1100に従って動作することができる。したがって、ロータおよびステータからなるモータアセンブリ1101は、単一インバータ電気機械800内のモータ802を含んでもよい。モータアセンブリ1101は、信号変換回路および増幅回路をさらに含んでもよい。
【0059】
概略ブロック図は、制御方式1100の駆動制御部1102を表す上部を含む。下部は、制御方式1100のサスペンション制御部1103を表す。駆動制御部1102は、モータアセンブリ1101に印加される信号成分uを制御する。サスペンション制御部1103は、モータアセンブリ1101に印加される更なる信号成分uを制御する。前述の信号成分u、uは、トルクおよびサスペンション力をそれぞれ提供する前述の駆動成分および前述のサスペンション成分を決定する。ωref、ωmesという表記は、それぞれ設定点スピン回転速度、測定スピン回転速度を表す。zref、zmesという表記は、それぞれ設定点軸方向位置、測定軸方向位置を表している。
【0060】
M,d,refおよびIM,d,mesは、それぞれ駆動電流の設定点d軸成分および駆動電流の測定d軸成分を表す。IM,q,refおよびIM,q,mesは、それぞれ駆動電流の設定点q軸成分および駆動電流の測定q軸成分を表す。Nおよびpは、それぞれ相数およびロータ極対数を表す。KαおよびKという表記は、それぞれ巻線が中心位置で遮断する磁束の振幅およびこの磁束の振幅と軸方向位置との間の比例係数を表す。LMcは、インバータから見た巻線の同期インダクタンスを表す。
【0061】
サスペンション制御部1103は、破線で図示されたロータ位置決め制御部1104を含む。この制御部1104は、アクティブ電磁軸受モードにおいてのみ活性化される。これは、スイッチ1105によって概略的に示されており、スイッチ1105が上側の位置にある場合には、制御方式1100内のロータ位置決め制御部1104が含まれ、一方、スイッチ1105が下側の位置にある場合には、ゼロ値(0)が印加される。したがって、上側の位置がアクティブ電磁軸受モードに対応し、下側の位置がパッシブ電磁軸受モードに対応する。
【0062】
制御方式1100では、パッシブ電磁軸受モードからアクティブ電磁軸受モードへの切り替え時に、ロータに作用する軸方向力が考慮される。この軸方向力は、ロータの測定されたスピン回転速度ωmesとロータの測定された軸方向の位置zmesとに基づいて推定することができる。ロータに作用する軸方向力は、図11には明示的に表されていない位置調整器の積分項にフィードフォワードされてもよい。このようにして、モータアセンブリ1101に影響を及ぼす軸方向の外乱は、軸方向の中心位置(z=0)に向かう1設定点ステップに制限される。これにより、パッシブ電磁軸受モードからアクティブ電磁軸受モードへの切り替え時に発生し得る過渡的な影響が緩和される。このような過渡的な影響は、制御方式1100のコントローラゲインを調整することによってさらに緩和することができる。
【0063】
過渡現象の影響は、設定点軸方向位置zrefを、ロータがパッシブモードで安定する軸方向位置に設定することで、さらに緩和することができる。アクティブ電磁軸受モードからパッシブ電磁軸受モードへの切り替えの場合、この軸方向位置は、準静的条件における復元力の式にアキシャル荷重の推定値を代入することによって評価することができる。アキシャル荷重の推定は、測定されたd軸モータ電流IM,d,mes、電流剛性、および測定されたスピン回転速度ωmesに基づいて得ることができる。パッシブ電磁軸受モードからアクティブ電磁軸受モードへの切り替えの場合、設定点軸方向位置zrefは、パッシブ電磁軸受モードにおける測定された軸方向位置の移動平均として計算することができる。
【0064】
(注意事項)
図面を参照して前述した実施形態は、例示のために提示されたものである。本発明は、多数の異なる方法で実施することができる。これを説明するために、いくつかの選択肢を簡単に示す。
【0065】
本発明は、電磁軸受を備えた電気機械に関連する数多くの種類の製品または方法に適用することができる。提示された実施形態では、電気機械はモータを含む。他の実施形態では、電気機械は、発電機を含んでもよい。
【0066】
本発明による電気機械を実施する多数の異なる方法がある。本明細書に示した実施形態は、図3図7および図8図10にそれぞれ示すように、スイッチ回路308、808を含む。他の実施形態では、異なるスイッチ回路を含んでもよい。例えば、図8図10に図示したスイッチ回路808を参照すると、図8に示したアクティブ電磁軸受モードによる駆動において、上部巻線804または下部巻線805を選択できるスイッチを追加してもよい。また、本発明による電気機械は、図3~7および図8~10にそれぞれ示したスイッチ回路308、808のような別個のスイッチ回路を含む必要はない。前述の図に示されたパワーエレクトロニクス部307、807の代替として、アクティブ電磁軸受モードとパッシブ電磁軸受モードとの間の切り替えを可能にするスイッチ機能を組み込んだ1つまたは複数のN相インバータを含んでもよい。
【0067】
本発明による電気機械にステータを実施する多数の異なる方法がある。本明細書で提示した実施形態では、1相の巻線105、106、205、206は、単一のコイル構造によって形成されるものとして表されている。他の実施形態では、1相の巻線は複数のコイル構造によって形成されてもよい。
【0068】
本明細書で述べたことは、図面を参照して説明した実施形態が、本発明を限定するのではなく、本発明を説明するものであることを示している。本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にある多数の代替的な方法で実施することができる。特許請求の範囲の意味および同等性の範囲内に入るすべての変更は、その範囲内に包含される。特許請求の範囲におけるいかなる参照符号も、特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。特許請求の範囲における動詞「含む」は、特許請求の範囲に記載された要素以外の他の要素や他のステップの存在を排除するものではない。類似の動詞についても同様である。製品に係る請求項において要素を単数形で記載することは、製品が複数の当該要素を含む可能性を排除するものではない。同様に、方法に係る請求項においてステップを単数形で記載することは、方法が複数の当該ステップを含む可能性を排除するものではない。それぞれの従属請求項がそれぞれの追加的特徴を画定しているという単なる事実は、請求項に反映されている以外の追加的特徴の組み合わせを排除するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】