IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 中興通訊股▲ふん▼有限公司の特許一覧

<>
  • 特表-アンテナ装置及び基地局アンテナ 図1
  • 特表-アンテナ装置及び基地局アンテナ 図2
  • 特表-アンテナ装置及び基地局アンテナ 図3
  • 特表-アンテナ装置及び基地局アンテナ 図4
  • 特表-アンテナ装置及び基地局アンテナ 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】アンテナ装置及び基地局アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/06 20060101AFI20240614BHJP
【FI】
H01Q21/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580905
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2022101579
(87)【国際公開番号】W WO2023274159
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】202110751219.5
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511151662
【氏名又は名称】中興通訊股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZTE CORPORATION
【住所又は居所原語表記】ZTE Plaza,Keji Road South,Hi-Tech Industrial Park,Nanshan Shenzhen,Guangdong 518057 China
(74)【代理人】
【識別番号】100112656
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 英毅
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】叶凱
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021AB05
5J021AB06
5J021GA05
5J021HA05
(57)【要約】
本願の実施例は、無線通信の技術分野に関わり、アンテナ装置および基地局アンテナを開示しており、そのアンテナ装置は、第1の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられたM個のリニアアレイユニット(110)を備えるアンテナアレイ(100)を備え、各リニアアレイユニット(110)は、第2の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられた複数の放射ユニット(111)を備え、アンテナアレイ(100)におけるN個の隣り合うリニアアレイユニット(110)は、第2の方向に沿ってずらして設けられ、MおよびNはいずれも1より大きい整数であり、NはMより小さいかまたは等しい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられたM個のリニアアレイユニット(110)を備えるアンテナアレイ(100)を備え、各前記リニアアレイユニット(110)は、第2の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられた複数の放射ユニット(110)を備え、前記アンテナアレイ(100)におけるN個の隣り合う前記リニアアレイユニット(110)は、前記第2の方向に沿ってずらして設けられ、
前記Mおよび前記Nはいずれも1より大きい整数であり、前記Nは前記Mより小さいかまたは前記Mに等しい、
アンテナ装置。
【請求項2】
ずらして設けられた前記リニアアレイセル(110)のうち、任意の2つの隣り合う前記リニアアレイユニット(110)間のずらし距離は同じである、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記Nは2よりも大きく、
ずらして設けられた前記リニアアレイユニット(110)のうち、n―1番目のリニアアレイユニット(110)に対するn番目のリニアアレイユニット(110)のずらし方向と、n―2番目のリニアアレイユニット(110)に対するn―1番目のリニアアレイユニット(110)のずらし方向とは同じであり、
nは2よりも大きく、Nよりも小さいかまたはNに等しい、
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記Nは2よりも大きく、
ずらして設けられた前記リニアアレイユニット(110)のうち、n―1番目のリニアアレイユニット(110)に対するn番目のリニアアレイユニット(110)のずらし方向と、n―2番目のリニアアレイユニット(110)に対するn―1番目のリニアアレイユニット(110)のずらし方向とは逆であり、
nは2よりも大きく、Nよりも小さいかまたはNに等しい、
請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
各前記リニアアレイユニット(110)における前記複数の放射ユニット(111)は、前記第2の方向に沿って等間隔に設けられ、ずらして設けられた前記リニアアレイユニット(110)のうち、任意の2つの隣り合う前記リニアアレイユニット(110)間のずらし距離は、各前記リニアアレイユニット(110)における隣り合う2つの前記放射ユニット(111)間の距離と等しい、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
少なくとも1つの仮想放射ユニット(200)をさらに備え、
前記少なくとも1つの仮想放射ユニット(200)は、ずらして設けられた前記リニアアレイユニット(110)の前記第2の方向において最も外側の前記放射ユニット(111)に隣接して設けられ、前記リニアアレイユニット(110)と前記第2の方向に沿って順次に設けられる、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
複数のビームフォーミングチップ(300)をさらに備え、
各前記ビームフォーミングチップ(300)は、X個の伝送ポートを有し、各前記伝送ポートは、1つのパワーディバイダ(400)に接続されており、各前記パワーディバイダ(400)は、そのうちの1つの前記リニアアレイユニット(110)におけるY個の前記放射ユニット(111)に給電するために用いられ、
前記Xおよび前記Yは、いずれも1より大きいかまたは1に等しい整数であり、Yは、各前記リニアアレイユニット(110)における前記複数の放射ユニット(111)の数よりも小さいかまたはそれに等しく、X、Yおよび前記複数のビームフォーミングチップ(300)の数の積は、前記アンテナアレイ(100)における前記放射ユニット(111)の数に等しい、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記複数のビームフォーミングチップ(300)は、前記第1の方向および前記第2の方向に沿って格子状に配置され、前記第1の方向に沿って配置された複数列の前記ビームフォーミングチップ(300)のうち、少なくとも2列の隣り合う前記ビームフォーミングチップ(300)は、前記第2の方向に沿ってずらして設けられ、前記第1の方向に沿って隣り合う2列の前記ビームフォーミングチップ(300)間のずらし距離は、任意の2つの隣り合う前記リニアアレイユニット(110)間のずらし距離と同じである、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
複数の電気分岐(500)をさらに備え、各前記電気分岐(500)は、前記第1の方向に隣り合う2つの前記ビームフォーミングチップ(300)を接続し、前記第2の方向において最も外側に位置する前記電気分岐(500)は、屈曲して設けられている、
請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
各前記リニアアレイユニット(110)における前記複数の放射ユニット(111)に1対1に対応する複数の結合スロット(610)が設けられた媒体基板(600)をさらに備え、
各前記パワーディバイダ(400)は、前記結合スロット(610)を介して前記結合スロット(610)に対応する前記放射ユニット(111)に給電する、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のアンテナ装置を備える、
基地局アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年07月02日に出願された中国出願番号「202110751219.5」に基づくものであって、その中国特許出願の優先権を主張するものであり、その中国特許出願のすべての内容が、ここで参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本願の実施例は、無線通信の技術分野に関し、特にアンテナ装置および基地局アンテナに関する。
【背景技術】
【0003】
高周波基地局AAU(Active Antenna Unit、アクティブアンテナユニット)アクティブアンテナシステムにおいて、ミリ波周波数帯域の経路損失が大きく、ビームフォーミング技術を採用してアンテナに高い指向性ゲインを得させる必要がある。中低周波の全デジタルビームフォーミングと異なり、5G高周波は主にデジタルアナログ混合アーキテクチャのビームフォーミング回路を採用し、アンテナ振動子後のアナログ位相シフタによって、振動子の位相を調整してビームフォーミングを行う。
【0004】
基地局アンテナにおいて、ビームフォーミング回路の送信電力を増加させるか、またはアンテナアレイ面(antenna array surface)を増加させると、EIRP(equivalent isotropically radiated power、有効全方向放射電力)を向上させて、通信システム性能を向上させることができる。しかし、アンテナビームフォーミング回路における高周波シングルチャンネル電力増幅器の出力電力が低いため、通常はアンテナアレイ面を増加する方法を採用してEIRPを向上させるが、アンテナアレイ面のアパーチャの増加に伴い、アンテナビーム幅の減少が避けられず、大角度ビームのグレーティングローブが増加し、アンテナビームのカバー範囲が減少する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願のいくつかの実施例は、アンテナ装置を提供しており、前記アンテナ装置は、第1の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられたM個のリニアアレイユニットを備えるアンテナアレイを備え、各前記リニアアレイユニットは、第2の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられた複数の放射ユニットを備え、前記アンテナアレイにおけるN個の隣り合う前記リニアアレイユニットは、前記第2の方向に沿ってずらして設けられ、前記Mおよび前記Nはいずれも1より大きい整数であり、前記Nは前記Mより小さいかまたは前記Mに等しい。
【0006】
本願のいくつかの実施例は、上記アンテナ装置を備える基地局アンテナをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本願のいくつかの実施例によって提供されるアンテナ装置におけるずらし配置構造の1つを示す模式図である。
図2】本願のいくつかの実施例によって提供されるアンテナ装置における別のずらし配置構造の模式図である。
図3】本願のいくつかの実施例によって提供されるアンテナ装置の給電制御構造の模式図である。
図4】本願のいくつかの実施例によって提供されるアンテナ装置における1入力4出力パワーディバイドネットワークの構造模式図である。
図5】本願のいくつかの実施例によって提供されるアンテナ装置と規則的に配置されたアンテナ装置との間のシミュレーション結果の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本願の実施例の目的、技術案、および利点をより明確にするために、以下では、添付の図面を結合して、本願の各実施例を詳細に説明する。しかしながら、当業者であれば、本願の各実施例において、読者に本願をより良く理解させるために多くの技術的詳細が提示されていることを理解することができる。しかし、これらの技術的詳細、及び以下の各実施例に基づく種々の変更及び修正がなくても、本願の保護を請求する技術案を実現することができる。以下の各実施例の区分は、説明の便宜のためになされたものであり、本願の具体的な実施形態をいかなる限定するものではなく、各実施例は矛盾しない限り、互いに結合し、互いに参照することができる。
【0009】
本願のいくつかの実施例は、アンテナ装置を提供し、図1および図2に示すように、このアンテナ装置は、第1の方向Sに沿って互いに間隔をおいて設けられたM個のリニアアレイユニット110を備えるアンテナアレイ100を備え、各リニアアレイユニット110は、第2の方向Tに沿って互いに間隔をおいて設けられた複数の放射ユニット111を備え、アンテナアレイ100におけるN個の隣り合うリニアアレイユニット110は、第2の方向Tに沿ってずらして設けられ、ただし、MおよびNはいずれも1より大きい整数であり、NはMより小さいかまたはMに等しい。
【0010】
本願のいくつかの実施形態によって提供されるアンテナ装置は、アンテナアレイ100における一部またはすべてのリニアアレイユニット110を第2の方向Tに沿ってずらして設けさせ、このように、アンテナアレイ面を増加させてアンテナのEIRPを向上する場合、アンテナアレイ100の規則的なアレイ面を不規則なずらし配置(千鳥)アレイ面とし、アンテナビームが大きな角度をカバーすると、アンテナアレイ面のずらし配置によってより多くの位相粒子(リニアアレイユニット110における放射ユニット111のビームフォーミングアルゴリズムでの信号重み)の度合が導入され、よって、ビームが大きな角度で走査する際のアンテナグレーティンローブが減少し、アンテナビームのカバー範囲が増加する。
【0011】
なお、このようなアンテナアレイ面に対する最適化は、アンテナアレイ100における一部のリニアアレイ素子110に対してずらし配置することに限定されるものではなく、アンテナアレイ100におけるすべてリニアアレイ素子110に対してずらし配置してもよく、即ち、NがMに等しい場合、アンテナアレイ100におけるすべてのリニアアレイ素子110がずらし配置状態となる。また、アンテナアレイ100における一部のリニアアレイユニット110に対してずらし配置する場合、そのうちのリニアアレイユニット110を第2の方向Tに沿って任意の距離を移動させてもよく、そのうちの少なくとも2つの隣り合うリニアアレイユニット110を規則的な配置方式から不規則な配置方式に変更すればよく、そして、いくつかのアンテナアレイ100において、ずらし配置が現れるリニアアレイユニット110は、アンテナアレイ100における位置が連続していなくてもよく、例えば、アンテナアレイ100が6つのリニアアレイユニット110を含む場合、第2の方向Tに沿ってずらし配置が現れるリニアアレイユニット110は、第1の方向Sから前の3つの隣り合うリニアアレイユニット110と後の2つの隣り合うリニアアレイユニット110であってもよい。第1の方向Sと第2の方向Tとは、互いに直交する2つの方向であってもよく、鋭角に交差する2つの方向であってもよい。
【0012】
アンテナアレイ100のアレイ面をずらし配置した後、アンテナアレイ面の規則的な配列方法が変更されたので、アンテナ装置の複雑度が増加し、例えばビームフォーミング回路の設計がアンテナアレイ面の配置方式に応じて変更される。しかし、アンテナアレイ100のアレイ面をずらし配置する際に、アンテナ装置の複雑さに過度に影響を与えないようにするために、アンテナアレイ100の、ずらして設けられたリニアアレイユニット110のうち、任意の2つの隣り合うリニアアレイユニット110間のずらし距離を同じにしてもよい。このように、アンテナアレイ100におけるリニアアレイユニット110を均一にずらすことができ、すなわち、アンテナアレイ100のアレイ面を均一に変化させることができ、よって、アンテナアレイ100のアレイ面を不規則なずらし配置アレイ面に変更した後も、アンテナアレイ100のリニアアレイユニット110をずらし距離において規則性を依然として保たせることができ、アンテナ装置内のビームフォーミング回路の設計に有利である。
【0013】
また、アンテナアレイ100におけるリニアアレイユニット110に対してずらし配置する場合、異なるずらし配置形式を採用してもよく、このように、アンテナ装置のビームフォーミング回路を配置する際に、異なるずらし配置形式に従ってビームフォーミング回路の設計を行うことができる。いくつかの実施例において、Nは2よりも大きい場合、ずらして設けられたリニアアレイユニット110のうち、n-1番目のリニアアレイユニット110に対するn番目のリニアアレイユニット110のずらし方向と、n-2番目のリニアアレイユニット110に対するn-1番目のリニアアレイユニット110のずらし方向とを同じにしてもよく、ただし、nは2よりも大きく、Nよりも小さいかまたはNに等しい。このようなリニアアレイユニット110のずらし配置形式において、図1の左から1番目から3番目までのリニアアレイユニット110に示すように、階段状の形式で互いにずらして設けることを実現可能である。しかし、別のいくつかの実施例において、Nは2よりも大きい場合、ずらして設けられたリニアアレイユニット110のうち、n-1番目のリニアアレイユニット110に対するn番目のリニアアレイユニット110のずらし方向と、n-2番目のリニアアレイユニット110に対するn-1番目のリニアアレイユニット110のずらし方向とを逆にしてもよく、ただし、nは2よりも大きく、Nよりも小さいかまたはNに等しい。このようなリニアアレイユニット110のずらし配置形式において、図1の左から2番目から4番目までのリニアアレイユニット110に示すように、互い違いの形式で互いにずらして設けることを実現可能である。
【0014】
実際の適用の場合、通信基地局の垂直面カバー角度は、通常、水平面カバー角度よりも小さいので、アンテナアレイ100は、図1に示す垂直方向(すなわち縦方向)に放射ユニット111を増加してもよく、このように、アンテナアレイ100は、垂直方向に放射ユニット111を増加した後、垂直方向におけるアンテナアレイ面のアパーチャを増加させ、同時に、アンテナアレイ100におけるリニアアレイユニット110をずらし配置し、アンテナアレイ面のアパーチャの増加に伴うグレーティンローブを減少し、よって、アンテナビームのカバー範囲を増加することができる。
【0015】
図1に示すように、いくつかの実施例において、各リニアアレイユニット110における複数の放射ユニット111は、第2の方向Tに沿って等間隔に設けられ、アンテナアレイ100の、ずらして設けられたリニアアレイユニット110のうち、任意の2つの隣り合うリニアアレイユニット110間のずらし距離は、リニアアレイユニット110における隣り合う2つの放射ユニット111間の距離と等しい。図1に示す8列のアンテナアレイ100を例に説明すると、各リニアアレイユニット110は図1における1列であり、各リニアアレイユニット110における6つの放射ユニット111は等間隔に設けられ、各リニアアレイユニット110における隣り合う2つの放射ユニット111間の距離は1つのユニットピッチであり、左から2番目のリニアアレイユニット110は1番目のリニアアレイユニット110に対して1つのユニットピッチだけ下に移動され、3番目のリニアアレイユニット110は1番目のリニアアレイユニット110に対して2つのユニットピッチだけ下に移動され、4番目のリニアアレイユニット110は1番目のリニアアレイユニット110に対して1つのユニットピッチだけ下に移動される。このように、アンテナアレイ100のアレイ面にはずらし配置が現れたが、各リニアアレイユニット110において同じ横方向に放射ユニット111が依然として存在していることは、複数のリニアアレイユニット110のずらし配置が横方向に規則性を依然として有していることを示し、アンテナ装置におけるビームフォーミング回路の設計に有利である。
【0016】
アンテナアレイ100のアレイ面をずらし配置した後、アンテナアレイ100の境界は切断される場合があり、即ち図2に示すように、左から2番目から4番目までのリニアアレイユニット110を第2の方向T(すなわち図2に示す縦方向)に沿ってずらして設ける場合、アンテナアレイ100の境界は、2番目から4番目までのリニアアレイユニット110の上方に切断されたが、アンテナアレイ100の境界の完全性を保証するために、アンテナ装置は、少なくとも1つの仮想放射ユニット200をさらに備えてもよく、仮想放射ユニット200は、アンテナ給電ネットワークに接続されていない放射ユニット111であり、ずらして設けられたリニアアレイユニット110の第2の方向Tにおいて最も外側の放射ユニット111に隣接して設けられ、仮想放射ユニット200とこのリニアアレイユニット110とは第2の方向Tに沿って順次に設けられる。例えば、いずれかのリニアアレイユニット110が1つのユニットピッチでずらして設けられている場合、少なくとも1つの仮想放射ユニット200を、このリニアアレイユニット110と第2の方向Tに沿って順次に設けてもよく(すなわち図1または図2に示す左から2番目から4番目までのリニアアレイユニット110の上方に設けられている仮想放射ユニット200)が、この場合、仮想放射ユニット200の数は、このリニアアレイユニット110の移動距離の大きさに対応しており、1つのユニットピッチは、1つの仮想放射ユニット200に対応している。
【0017】
また、本願のいくつかの実施例に係るアンテナ装置は、アンテナアレイ面に対応するビームフォーミング回路をさらに備えてもよく、図1および図3に示すように、このビームフォーミング回路は、複数のビームフォーミングチップ300を備え、各ビームフォーミングチップ300は、X個の伝送ポート(図示せず)を有し、各伝送ポートは、1つの伝送ライン310を介して1つのパワーディバイダ400に接続されており、各パワーディバイダ400は、アンテナアレイ100の1つのリニアアレイユニット110におけるY個の放射ユニット111に給電するために用いられ、ただし、XおよびYは、いずれも1より大きいかまたは1に等しい整数であり、Yは、各リニアアレイユニット110における複数の放射ユニット111の数よりも小さく、X、Yおよび複数のビームフォーミングチップ300の数の積は、アンテナアレイ100における放射ユニット111の総数に等しい。ビームフォーミングチップ300には、位相シフタ回路とミリ波送受信フロントエンド回路とが集積されており、ビームフォーミング回路は、アンテナアレイ100における放射ユニット111から放射される信号の位相及び振幅をパワーディバイダ400で調節することができ、位相シフタ回路は、アンテナ装置のダウンチルト角を調節することができる。
【0018】
いくつかの実施例において、複数のビームフォーミングチップ300は、第1の方向Sおよび第2の方向Tに沿って格子状(マトリクスの形)に配置され、第1の方向Sに沿って配置された複数列のビームフォーミングチップ300のうち、少なくとも2列の隣り合うビームフォーミングチップ300は、第2の方向Tに沿ってずらして設けられ、第1の方向Sに沿って隣り合う2つのビームフォーミングチップ300間のずらし距離は、任意の2つの隣り合うリニアアレイユニット110間のずらし距離と同じである。このように、アンテナアレイ100のずらし配置されたアレイ面に基づいて、ずらし配置されたビームフォーミングチップ300を設計することができ、各ビームフォーミングチップ300の回路が、パワーディバイダ400を介してそれぞれ給電される複数の放射ユニット111が位置する平面の中心位置にあることが保証され、よって、アンテナアレイ100のアレイ面をずらし配置した後に、ビームフォーミング回路が低い設計複雑度を有することが保証される。アンテナアレイ面とビームフォーミング回路は一体化設計思想を採用し、アンテナアレイ100のアレイ面ずらし配置の場合にビームフォーミング回路のずらし配置方案を考慮することにより、ビームフォーミングシステムが低い設計複雑度を有することを保証し、同時に集積設計のビームフォーミングチップ300を採用し、ビームフォーミング回路が高い集積度を有することを保証することができる。
【0019】
いくつかの実施例において、アンテナアレイ100における放射ユニット111は、放射パッチの形式を採用してもよく、同時に、放射ユニット111のインピーダンス帯域幅を向上させるために、放射ユニット111に無給電パッチを加えてもよく、別のいくつかの実施例において、放射ユニット111は、パッチ形式以外のスロットアンテナ、バックキャビティパッチアンテナ、またはバックキャビティスロットアンテナなどの他の平面アンテナを採用してもよい。
【0020】
また、放射ユニット111は、結合給電を採用してもよく、すなわち、アンテナ装置は、各リニアアレイユニット110における複数の放射ユニット111に1対1に対応する複数の結合スロット610が設けられた媒体基板(誘電体基板)600をさらに備えてもよく、各パワーディバイダ400は、結合スロット610を介してこの結合スロット610に対応する放射ユニット111に給電する。各結合スロット610は、「エ」の字形としてもよく、このように、「エ」の字形の結合スロット610によってアンテナインピーダンス帯域幅を広げることができ、同時に、図3における45度の方向に沿って放射ユニット111の偏波を実現するために、結合スロット610を図3における45度の方向に沿って設けてもよい。なお、放射ユニット111は、同軸給電を採用してもよい。
【0021】
いくつかの実施例において、アンテナ装置のずらし配置式のビームフォーミング回路は、1つの回路基板上に集積されてもよい。図3に示すアンテナ装置におけるビームフォーミング回路の構造を、Xを4としてYを3とした場合に説明し、そのうち、各ビームフォーミングチップ300には、4つの位相シフタ回路とミリ波送受信フロントエンド回路とが集積されており、各ビームフォーミングチップ300の4つのフロントエンド回路ピンは、4つの伝送ライン310を介して外部にファンアウトされており、ファンアウトされた伝送ライン310とビームフォーミングチップ300は、いずれも回路基板の底層に位置しており、各伝送ライン310の終端は、信号ビア320を介して1入力3出力パワーディバイダ400に上向きに接続されており、1入力3出力パワーディバイダ400は等電力等位相設計されており、各位相シフタ及び送受信フロントエンド回路が、垂直に配置された3つの放射ユニット111を駆動することが保証され、各1入力3出力パワーディバイダ400の出力ポートは、結合スロット610によって放射ユニット111に対して給電する。また、回路基板は、2枚の完全に対称な多板材混合圧力板を圧着して形成してもよく、そのうち、ずらし配置アンテナアレイ面は、回路基板の最上層の混合圧力板上に設けられてもよく、ビームフォーミング回路およびパワーディバイドネットワークは、回路基板の底層の混合圧力板に設けられてもよい。
【0022】
また、アンテナ装置における第1の方向Sに隣り合う2つのビームフォーミングチップ300は、パワーディバイドネットワークによって接続されるが、第1の方向Sに隣り合う2つのビームフォーミングチップ300を接続するために、いくつかの実施例において、アンテナ装置は、複数の電気分岐500をさらに備えてもよく、各電気分岐500は、第1の方向Sに隣り合う2つのビームフォーミングチップ300を接続し、第2の方向Tにおいて最も外側に位置する電気分岐500は、屈曲して設けられている。このように、第2の方向Tにおいて最も外側に位置する電気分岐500を屈曲させるだけでよいが、第2の方向Tにおいて中間に位置する電気分岐500は依然として平坦な構造(すなわち直線型構造)を採用することによって、アンテナ伝送帯域幅および平坦度への影響を低減する。図4は、1入力4出力パワーディバイドネットワークの構造を示しており、第1の方向Sに隣り合う2つのビームフォーミングチップ300は、図4の電気分岐500によって接続され、第1の方向Sに隣り合う2つのビームフォーミングチップ300が同じ横方向に位置すれば、平らな電気分岐500を採用して接続されてもよく、第1の方向Sに隣り合う2つのビームフォーミングチップ300が異なる横方向に位置すれば、屈曲した電気分岐500を採用して接続されてもよく(図1に示す)、図4の1入力4出力パワーディバイドネットワークは、信号を処理するパワーディバイダ400をさらに備える。
【0023】
図5は、本願のいくつかの実施例によって提供されるアンテナ装置と、規則的に配置されたアンテナ装置との間のシミュレーション結果の比較図を示しており、図5において、横座標はアンテナゲインを表し、単位はdB(decibel、デシベル)であり、縦座標は累積分布関数(Cumulative Distribution Function)を表し、図5においてCDFを1としたときのゲインの大きさは、アンテナの最大走査角度におけるグレーティンローブの大きさであり、図5において最上段にある曲線は、ずらし配置形式のアンテナ装置の最大走査角度におけるグレーティンローブの大きさを示しており、図5において最下段にある曲線は、規則的な配置形式のアンテナ装置の最大走査角度におけるグレーティンローブの大きさを示しており、ずらし配置形式のアンテナ装置の最大グレーティンローブは11dBであり、規則的な配置形式のアンテナ装置の最大グレーティンローブは16dBであり、規則的な配置形式のアンテナ装置に比べて、ずらし配置形式のアンテナ装置の最大走査角度におけるグレーティンローブは5dB最適化されていることが分かる。
【0024】
本願のいくつかの実施例は、アンテナアレイ100のリニアアレイユニット110をずらし配置する上記実施例におけるアンテナ装置を備える基地局アンテナをさらに提供し、このように、アンテナのEIRPを向上するために第2の方向Tに放射ユニット111の数を増加すると同時に、大きな角度で走査されるときのアンテナビームのグレーティンローブを効果的に低減し、アンテナビームのカバー範囲が増加することができる。
【0025】
当業者であれば、上記の各実施形態は、本願を実現するための具体的な実施例であり、実際の適用においては、本願の精神および範囲から逸脱することなく、それに対して形式および詳細に様々な変更が可能であることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられたM個のリニアアレイユニットを備えるアンテナアレイを備え、各前記リニアアレイユニットは、第2の方向に沿って互いに間隔をおいて設けられた複数の放射ユニットを備え、前記アンテナアレイにおけるN個の隣り合う前記リニアアレイユニットは、前記第2の方向に沿ってずらして設けられ、
前記Mおよび前記Nはいずれも1より大きい整数であり、前記Nは前記Mより小さいかまたは前記Mに等しい、
アンテナ装置。
【請求項2】
ずらして設けられた前記リニアアレイユニットのうち、任意の2つの隣り合う前記リニアアレイユニット間のずらし距離は同じである、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記Nは2よりも大きく、
ずらして設けられた前記リニアアレイユニットのうち、n―1番目のリニアアレイユニットに対するn番目のリニアアレイユニットのずらし方向と、n―2番目のリニアアレイユニットに対するn―1番目のリニアアレイユニットのずらし方向とは同じであり、
nは2よりも大きく、Nよりも小さいかまたはNに等しい、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記Nは2よりも大きく、
ずらして設けられた前記リニアアレイユニットのうち、n―1番目のリニアアレイユニットに対するn番目のリニアアレイユニットのずらし方向と、n―2番目のリニアアレイユニットに対するn―1番目のリニアアレイユニットのずらし方向とは逆であり、
nは2よりも大きく、Nよりも小さいかまたはNに等しい、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記Mは8であり、前記Nは5であり、
前記N個のリニアアレイユニットのうち、1番目から3番目までの前記リニアアレイユニットは、同じ距離で順次に第1のずらし方向に沿ってずらして設けられ、
前記N個のリニアアレイユニットのうち、3番目から5番目までの前記リニアアレイユニットは、同じ距離で順次に第2のずらし方向に沿ってずらして設けられ、
前記第1のずらし方向は、前記第2のずらし方向と異なる、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
各前記リニアアレイユニットにおける前記複数の放射ユニットは、前記第2の方向に沿って等間隔に設けられ、ずらして設けられた前記リニアアレイユニットのうち、任意の2つの隣り合う前記リニアアレイユニット間のずらし距離は、各前記リニアアレイユニットにおける隣り合う2つの前記放射ユニット間の距離と等しい、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
アンテナ給電ネットワークに接続されていない少なくとも1つの仮想放射ユニットをさらに備え、
1つの仮想放射ユニットは、1つの放射ユニットの位置にある、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
記少なくとも1つの仮想放射ユニットは、ずらして設けられた前記リニアアレイユニットの前記第2の方向において最も外側の前記放射ユニットに隣接して設けられ、前記リニアアレイユニットと前記第2の方向に沿って順次に設けられる、
請求項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記仮想放射ユニットの数は、前記リニアアレイユニットの移動距離の大きさに対応している、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記仮想放射ユニットは、前記N個の隣り合う前記リニアアレイユニットの前記第2の方向において最も外側の前記放射ユニットに隣接して設けられ、
前記仮想放射ユニットは、いずれも前記アンテナアレイの端に位置している、
請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
ビームフォーミングチップアレイをさらに備え、
前記ビームフォーミングチップアレイは、前記N個の隣り合う前記リニアアレイユニットに対応的にずらして設けられ、ずらして設けられた距離が、前記リニアアレイユニットがずらした距離と同じである、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
各ビームフォーミングチップは、X個の伝送ポートを有し、各前記伝送ポートは、1つのパワーディバイダに接続されており、各前記パワーディバイダは、そのうちの1つの前記リニアアレイユニットにおけるY個の前記放射ユニットに給電するために用いられ、
前記Xおよび前記Yは、いずれも1より大きいかまたは1に等しい整数であり、Yは、各前記リニアアレイユニットにおける前記複数の放射ユニットの数よりも小さいかまたはそれに等しく、X、Yおよび複数の前記ビームフォーミングチップの数の積は、前記アンテナアレイにおける前記放射ユニッの数に等しい、
請求項11に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
前記複数のビームフォーミングチップは、前記第1の方向および前記第2の方向に沿って格子状に配置され、前記第1の方向に沿って配置された複数列の前記ビームフォーミングチップのうち、少なくとも2列の隣り合う前記ビームフォーミングチップは、前記第2の方向に沿ってずらして設けられ、前記第1の方向に沿って隣り合う2列の前記ビームフォーミングチップ間のずらし距離は、任意の2つの隣り合う前記リニアアレイユニット間のずらし距離と同じである、
請求項12に記載のアンテナ装置。
【請求項14】
複数の電気分岐をさらに備え、各前記電気分岐は、前記第1の方向に隣り合う2つの前記ビームフォーミングチップを接続し、前記第2の方向において最も外側に位置する前記電気分岐は、屈曲して設けられている、
請求項13に記載のアンテナ装置。
【請求項15】
各前記リニアアレイユニットにおける前記複数の放射ユニットに1対1に対応する複数の結合スロットが設けられた媒体基板をさらに備え、
各前記パワーディバイダは、前記結合スロットを介して前記結合スロットに対応する前記放射ユニットに給電する、
請求項12に記載のアンテナ装置。
【請求項16】
各前記リニアアレイユニットの前記放射ユニットが連続して配置されており、前記リニアアレイユニット毎に、前記放射ユニットの数が同じである、
請求項1~15のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載のアンテナ装置を備える、
基地局アンテナ。
【国際調査報告】