(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】光ファイバ
(51)【国際特許分類】
G02B 6/032 20060101AFI20240614BHJP
G02B 6/036 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
G02B6/032 Z
G02B6/036
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500221
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022068284
(87)【国際公開番号】W WO2023280712
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506179491
【氏名又は名称】エヌケイティー フォトニクス アクティーゼルスカブ
【氏名又は名称原語表記】NKT PHOTONICS A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ミキエレット、マッティア
(72)【発明者】
【氏名】ペデルセン、マルティン エルランド ヴェスターゴーア
(72)【発明者】
【氏名】マク、マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン、メッテ マリー
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250AB04
2H250AB05
2H250AB09
2H250AB10
2H250AC51
2H250AD13
2H250AF03
2H250AF29
2H250AH23
2H250AH33
(57)【要約】
光信号を案内するための光ファイバであって、長手方向の光軸(A)および前記光軸(A)に垂直な断面を有し、光信号波長λ1において実効屈折率ncを有する基本コアモードにより光信号を案内することができるコア領域(2)と、前記コア領域を包囲するクラッド領域と、を備え、前記クラッド領域は、内側クラッド領域(3)および外側クラッド領域(6)を含み、前記内側クラッド領域は、屈折率nbを有するバックグラウンド材料と、前記バックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャと、を備え、前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、第1の種類のフィーチャ(4)であり、前記第1の種類のフィーチャは、前記内側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも大きい屈折率nrを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含み、前記第1の種類のフィーチャは、前記光信号波長λ1において前記基本コアモードの前記実効屈折率nc以下である実効屈折率n1を有する光モードをサポートし、前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、屈折率nbを有する前記バックグラウンド材料と直接接触しているエアホールを含む、第2の種類のフィーチャ(5)であり、前記内側クラッドフィーチャは、ほぼ六方格子に配置されており、その六方格子において第1の種類のフィーチャを包囲する最近接の6つのものは前記第2の種類のフィーチャであり、前記第2の種類のフィーチャの最近接の6つ未満のものによって包囲されている第1の種類のフィーチャはない、光ファイバ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を案内するための光ファイバであって、長手方向の光軸(A)および前記光軸(A)に垂直な断面を有し、
光信号波長λ
1において実効屈折率n
cを有する基本コアモードにより光信号を案内することができるコア領域(2)と、
前記コア領域を包囲するクラッド領域と、を備え、前記クラッド領域は、内側クラッド領域(3)および外側クラッド領域(6)を含み、前記内側クラッド領域は、屈折率n
bを有するバックグラウンド材料と、前記バックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャと、を備え、前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、第1の種類のフィーチャ(4)であり、前記第1の種類のフィーチャは、前記内側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも大きい屈折率n
rを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含み、前記第1の種類のフィーチャは、前記光信号波長λ
1において前記基本コアモードの前記実効屈折率n
c以下である実効屈折率n
1を有する光モードをサポートし、
前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、屈折率n
bを有する前記バックグラウンド材料と直接接触しているエアホールを含む、第2の種類のフィーチャ(5)であり、
前記内側クラッドフィーチャは、ほぼ六方格子に配置されており、その六方格子において第1の種類のフィーチャを包囲する最近接の6つのものは前記第2の種類のフィーチャであり、
前記第2の種類のフィーチャの最近接の6つ未満のものによって包囲されている第1の種類のフィーチャはない、光ファイバ。
【請求項2】
前記コアを中心とする内側クラッドフィーチャ(4,5)の径方向外側層には、第1の種類のフィーチャ(4)が存在せず、径方向に見たときに、前記第1の種類のフィーチャ(4)のすべての内側クラッドフィーチャは、内側クラッドフィーチャ(4,5)の前記径方向最外層の径方向内方に配置されている、請求項1に記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記コアを中心とする内側クラッドフィーチャ(4,5)の径方向内側層には、第1の種類のフィーチャ(4)が存在せず、径方向に見たときに、前記第1の種類のフィーチャ(4)のすべての内側クラッドフィーチャは、内側クラッドフィーチャ(4,5)の前記径方向最内層の径方向外方に配置されている、請求項1または2に記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記第1の種類のフィーチャ(4)の前記内側クラッドフィーチャのすべては、同一のモード特性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項5】
すべての第1の種類のフィーチャ(4)の前記高屈折率領域は、同一手法によりドープされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項6】
前記第1の種類のフィーチャ(4)の前記複数の内側クラッドフィーチャは、少なくとも第1のグループ(4a)および第2のグループ(4b)へと分割され、前記第1のグループは、前記第2のグループとは異なるモード分散性を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項7】
前記第1のグループ(4a)は、第1の波長領域(WR1)において高次コアモード、特にLP
11モードを非局在化するように構成されており、
前記第2のグループ(4b)は、より高い第2の波長領域(WR2)において高次コアモード、特にLP
11モードを非局在化するように構成されており、
前記第1の波長領域および前記第2の波長領域は、互いに隣接するかまたは部分的に重なる、請求項6に記載の光ファイバ。
【請求項8】
前記第1のグループ(4a)は、前記第2のグループ(4b)の前記第1の種類のフィーチャの前記高屈折率領域とは異なるようにドープされた高屈折率領域を有する第1の種類のフィーチャを含む、請求項6または7に記載の光ファイバ。
【請求項9】
前記第1の種類のフィーチャ(4)の前記高屈折率領域におけるドーピングエリアの大きさと前記高屈折率領域におけるドーピングレベルとのうちの一方または両方は、前記第1のグループ(4a)と前記第2のグループ(4b)との間において異なる、請求項6~8のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項10】
光信号を案内するための光ファイバであって、長手方向の光軸および前記光軸に垂直な断面を有し、
光信号波長λ
1において実効屈折率n
cを有する基本コアモードにより光信号を案内することができるコア領域(2)と、
前記コア領域を包囲するクラッド領域と、を備え、前記クラッド領域は、内側クラッド領域(3)および外側クラッド領域(6)を含み、前記内側クラッド領域は、屈折率n
bを有するバックグラウンド材料と、前記バックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャと、を備え、前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、第1の種類のフィーチャ(4)であり、前記第1の種類のフィーチャは、前記内側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも大きい屈折率n
rを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含み、前記第1の種類のフィーチャは、前記光信号波長λ
1において前記基本コアモードの前記実効屈折率n
c以下である実効屈折率n
1を有する光モードをサポートし、
前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、屈折率n
bを有する前記バックグラウンド材料と直接接触しているエアホールを含む、第2の種類のフィーチャ(5)であり、
前記内側クラッドフィーチャは、ほぼ六方格子に配置されており、その六方格子において第1の種類のフィーチャを包囲する最近接の6つのものは前記第2の種類のフィーチャであり、
前記クラッド領域は、1組の第1の種類のフィーチャ(11)をさらに含み、前記1組の第1の種類のフィーチャ(11)の各第1の種類のフィーチャは、前記第2の種類のフィーチャの最近接の6つ未満のものによって包囲されており、
前記1組の第1の種類のフィーチャ(11)の各第1の種類のフィーチャは、光信号波長λ
1において前記実効屈折率n
1を有する前記光モードを少なくともほぼサポートするように設計されている、光ファイバ。
【請求項11】
前記1組の第1の種類のフィーチャ(11)は、前記コアを中心とする内側クラッドフィーチャの径方向最外層にあり、径方向に見たときに、前記第2の種類のフィーチャ(5)の最近接の6つのものによって包囲されている前記第1の種類のフィーチャ(4)のすべては、前記径方向最外層の径方向内方に配置されている、請求項10に記載の光ファイバ。
【請求項12】
前記外側クラッド領域(6)は、屈折率n
obを有する外側バックグラウンド材料を含み、前記外側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも低い屈折率n
ddを有する1組のダウンドープ領域(10)をさらに含む、請求項10または11に記載の光ファイバ。
【請求項13】
前記1組のダウンドープ領域(10)は、前記1組の第1の種類のフィーチャ(11)に近接している、請求項12に記載の光ファイバ。
【請求項14】
前記1組のダウンドープ領域は、前記外側クラッド領域(6)にダウンドープリング(12)を形成する、請求項12または13に記載の光ファイバ。
【請求項15】
前記ダウンドープ領域(10)は、前記外側バックグラウンド材料にホウ素またはフッ素をドープすることによって形成される、請求項12~14のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【請求項16】
前記外側クラッド領域(6)は、最近接の前記内側クラッドフィーチャから前記内側クラッドの前記六方格子のピッチの0.2~2倍の距離にあるエアクラッド(9)を備える、請求項10~15のいずれか一項に記載の光ファイバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光信号を案内するための光ファイバに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光信号を案内するための大コア面積光ファイバを記載している。光ファイバは、長手方向の光軸およびそれに垂直な断面を有し、光信号波長λ1において実効屈折率ncを有する基本コアモードにより光信号を案内できるコア領域を備える。ファイバは、コア領域を包囲するクラッド領域を有する。クラッド領域は、内側クラッド領域および外側クラッド領域を含む。内側クラッド領域は、屈折率nbを有するバックグラウンド材料と、そのバックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャとを含む。前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、第1の種類のフィーチャである。第1の種類のフィーチャは、内側クラッドバックグラウンド材料の屈折率よりも大きい屈折率nrを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含み、第1の種類のフィーチャは、前記光信号波長λ1において基本コアモードの実効屈折率nc以下である実効屈折率n1を有する光モードをサポートする。コア領域は、約40μmを超える最大断面寸法を有し、高屈折率材料と内側クラッドのバックグラウンド材料との間の屈折率差は、約1・10-2未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、改良された光ファイバ、特に、とりわけ、より良好なモード性能を有する光ファイバを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、独立請求項1および10のいずれか1項に記載の光ファイバによって満たされる。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
少なくともいくつかの態様では、本発明は、光信号を案内するための光ファイバに関し、前記光ファイバは、長手方向の光軸および前記光軸に垂直な断面を有し、前記光ファイバは、
光信号波長λ1において実効屈折率ncを有する基本コアモードにより光信号を案内することができるコア領域と、
前記コア領域を包囲するクラッド領域と、を備え、前記クラッド領域は、内側クラッド領域および外側クラッド領域を含み、前記内側クラッド領域は、屈折率nbを有するバックグラウンド材料と、前記バックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャと、を備え、前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、第1の種類のフィーチャであり、前記第1の種類のフィーチャは、前記内側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも大きい屈折率nrを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含み、前記第1の種類のフィーチャは、前記光信号波長λ1において前記基本コアモードの前記実効屈折率nc以下である実効屈折率n1を有する光モードをサポートし、
前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、屈折率nbを有する前記バックグラウンド材料と好ましくは直接接触しているエアホールを含む、第2の種類のフィーチャであり、
前記内側クラッドフィーチャは、ほぼ六方格子に配置されており、その六方格子において第1の種類のフィーチャを包囲する最近接の6つのものは前記第2の種類のフィーチャであり、
前記第2の種類のフィーチャの最近接の6つ未満のものによって包囲されている第1の種類のフィーチャはない。
【0006】
少なくともいくつかの態様では、本発明は、光信号を案内するための光ファイバに関し、前記光ファイバは、長手方向の光軸および前記光軸に垂直な断面を有し、前記光ファイバは、
光信号波長λ1において実効屈折率ncを有する基本コアモードにより光信号を案内することができるコア領域と、
前記コア領域を包囲するクラッド領域と、を備え、前記クラッド領域は、内側クラッド領域および外側クラッド領域を含み、前記内側クラッド領域は、屈折率nbを有するバックグラウンド材料と、前記バックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャと、を備え、前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、第1の種類のフィーチャであり、前記第1の種類のフィーチャは、前記内側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも大きい屈折率nrを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含み、前記第1の種類のフィーチャは、前記光信号波長λ1において前記基本コアモードの前記実効屈折率nc以下である実効屈折率n1を有する光モードをサポートし、
前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、エアホールを含む第2の種類のフィーチャであり、前記第2の種類のフィーチャは、実効屈折率n1を有する光モードをサポートせず、
前記内側クラッドフィーチャは、ほぼ六方格子に配置されており、六方格子において第1の種類のフィーチャを包囲する最近接の6つのものは前記第2の種類のフィーチャであり、
前記第2の種類のフィーチャの最近接の6つ未満のものによって包囲されている第1の種類のフィーチャはない。
【0007】
いくつかの実施形態では、第2の種類のフィーチャは、屈折率nbを有する前記バックグラウンド材料と直接接触しているエアホールを含む。
第1の種類のフィーチャのすべての内側クラッドフィーチャが最近接の6つのものによって包囲されるとき、第1の種類のフィーチャおよび第2の種類のフィーチャの配置の径方向外側エリアにあり第2の種類の6つの内側クラッドフィーチャによって包囲されていない第1の種類のフィーチャの内側クラッドフィーチャを回避することが可能である。
【0008】
第1の種類のフィーチャおよび第2の種類のフィーチャの配置の径方向外側エリアにある第1の種類のフィーチャの内側クラッドフィーチャは、「コーナー共振器」とみなすことが可能である。そうしたコーナー共振器は、第2の種類のフィーチャの最近接の6つのものによって包囲されている第1の種類のフィーチャの内側クラッドフィーチャと比較して、波長が外れる傾向があることが分かっている。これは、構造の不完全性および材料屈折率の変動に起因し得るものであり、「コーナー共振器」が第2の種類の内側クラッドフィーチャの最近接の6つ未満のものしか有しない事実にも起因し得る。これは、コーナー共振器によってサポートされるモードのプロファイルに影響を及ぼし、それによって、このモードの実効屈折率を変化させる。コーナー共振器が光ファイバに存在しないとき、各第1の種類のフィーチャの周りの単位セルは同一である。したがって、第1の種類のフィーチャである内側クラッドフィーチャの挙動は同一であり、それらは少なくとも同様に、または好ましくは同一に挙動する。これは、次に、コア領域における高次モードのより効率的な抑制を伴うより良好なモード性能を可能にし、したがって、光ファイバのシングルモード動作のより広い帯域幅を可能にする。さらに、ロッドモジュールにおいてそうしたファイバを使用する場合、歩留まりを増加させることが可能である。さらに、ファイバにコーナー共振器を有しない場合、製造歩留まりを増加させることが可能である。
【0009】
少なくともいくつかの実施形態では、前記コアを中心とする内側クラッドフィーチャの径方向外側層には、第1の種類のフィーチャが存在せず、径方向に見たときに、前記第1の種類のフィーチャのすべての内側クラッドフィーチャは、前記径方向最外層の径方向内方に配置されている。したがって、第1の種類のフィーチャのすべての内側クラッドフィーチャは、第2の種類の最外の内側クラッドフィーチャの径方向内方に配置される。したがって、第1の種類のフィーチャのいわゆるコーナー共振器は存在しない。それによって、コア領域における高次モードのより効率的な抑制を伴うより良好なモード性能、したがって光ファイバのより広い動作帯域幅を達成することが可能である。
【0010】
少なくともいくつかの実施形態では、前記コアを中心とする内側クラッドフィーチャの径方向内側層には、第1の種類の内側クラッドフィーチャが存在せず、径方向に見たときに、前記第1の種類のフィーチャのすべての内側クラッドフィーチャは、前記径方向最内層の径方向外方に配置されている。したがって、コアの周りの内側クラッドフィーチャの最内層は、第2の種類の内側クラッドフィーチャしか含まず、第1の種類のすべての内側クラッドフィーチャは、第2の種類の最内内側クラッドフィーチャの径方向外方に配置される。
【0011】
少なくともいくつかの実施形態では、前記第1の種類のフィーチャのすべての前記内側クラッドフィーチャは、同一のモード特性を有する。コア領域におけるより良好なモード性能およびより効率的な高次モードの抑制、したがって光ファイバのシングルモード動作のより広い帯域幅を得ることが、それによって可能である。
【0012】
少なくともいくつかの実施形態では、すべての第1の種類のフィーチャの前記高屈折率領域は、同一手法によりドープされる。したがって、すべての第1の種類のフィーチャは、類似のまたは同一でさえある特性を有し、これは、光ファイバの性能を改良するのに役立つ。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記第1の種類のフィーチャの前記複数の内側クラッドフィーチャは、少なくとも第1のグループおよび第2のグループへと分割され、前記第1のグループは、前記第2のグループとは異なるモード分散性を有する。それによって、ファイバのモード特性を少なくともある程度調整することが可能である。
【0014】
ファイバの特性を数値的に計算することが可能であり、例えば、六方構造における内側クラッドフィーチャの配置ならびに第1の種類のフィーチャの形態およびドーピングレベルなどの内側クラッドフィーチャの設計および特性に依存する。それによって、例えば、数値シミュレーションを介して、格子定数およびドーピングレベルなどの対応するパラメータを決定して、実際のファイバを製造することが可能である。
【0015】
少なくともいくつかの実施形態では、前記第1のグループは、第1の波長領域において高次コアモード、特にLP11モードを非局在化するように構成されており、前記第2のグループは、より高い第2の波長領域において高次コアモード、特にLP11モードを非局在化するように構成されており、前記第1の波長領域および前記第2の波長領域は、互いに隣接するかまたは部分的に重なる。したがって、ファイバのモード性能を向上させることが可能であり、シングルモード動作のより広い帯域幅を得ることが可能である。
【0016】
少なくともいくつかの実施形態では、前記第1のグループは、前記第2のグループの前記第1の種類のフィーチャの前記高屈折率領域とは異なるようにドープされた高屈折率領域を有する第1の種類のフィーチャを含む。第1のグループおよび第2のグループの第1の種類のフィーチャの必要なドーピングレベルは、数値計算またはシミュレーションによって決定することが可能であり、その結果、所望の重なる第1の波長領域および第2の波長領域を有するファイバを設計することが可能である。
【0017】
少なくともいくつかの実施形態では、前記第1の種類のフィーチャの前記高屈折率領域におけるドーピングエリアの大きさと前記高屈折率領域におけるドーピングレベルとのうちの一方または両方は、前記第1のグループと前記第2のグループとの間において異なる。それによって、2つのグループについて異なるモード分散性を得ることも可能である。
【0018】
少なくともいくつかの態様では、本発明は、光信号を案内するための光ファイバに関し、前記光ファイバは、長手方向の光軸および前記光軸に垂直な断面を有し、前記光ファイバは、
光信号波長λ1において実効屈折率ncを有する基本コアモードにより光信号を案内することができるコア領域と、
前記コア領域を包囲するクラッド領域と、を備え、前記クラッド領域は、内側クラッド領域および外側クラッド領域を含み、前記内側クラッド領域は、屈折率nbを有するバックグラウンド材料と、前記バックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャと、を備え、前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、第1の種類のフィーチャであり、前記第1の種類のフィーチャは、前記内側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも大きい屈折率nrを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含み、前記第1の種類のフィーチャは、前記光信号波長λ1において前記基本コアモードの前記実効屈折率nc以下である実効屈折率n1を有する光モードをサポートし、
前記複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、屈折率nbを有する前記バックグラウンド材料と直接接触しているエアホールを含む、第2の種類のフィーチャであり、
前記内側クラッドフィーチャは、ほぼ六方格子に配置されており、その六方格子において第1の種類のフィーチャを包囲する最近接の6つのものは前記第2の種類のフィーチャであり、
前記クラッド領域は、1組の第1の種類のフィーチャをさらに含み、前記1組の第1の種類のフィーチャの各第1の種類のフィーチャは、前記第2の種類のフィーチャの最近接の6つ未満のものによって包囲されており、
前記1組の第1の種類のフィーチャの各第1の種類のフィーチャは、光信号波長λ1において前記実効屈折率n1を有する前記光モードを少なくともほぼサポートするように設計されている。
【0019】
1組の第1の種類のフィーチャは、「コーナー共振器」とみなすことが可能である。
いくつかの実施形態では、コーナー共振器は、第2の種類のフィーチャの最近接の6つのものによって包囲されている「通常の」第1の種類のフィーチャとは異なるように設計される。具体的には、コーナー共振器は、光信号波長λ1において実効屈折率n1を有する光モードをサポートするように設計される。したがって、コーナー共振器は、他の第1の種類のフィーチャと同一のモード特性を提供することが可能であり、したがって、コーナー共振器が第2の種類のフィーチャの最近接の6つのものによって包囲されているかのように作用する。コーナー共振器は、光信号波長λ1において実効屈折率n1を有するように設計することもできる。しかし、分散性は異なり得る。
【0020】
少なくともいくつかの実施形態では、前記1組の第1の種類のフィーチャは、前記コアを中心とする内側クラッドフィーチャの径方向最外層にあり、径方向に見たときに、前記第2の種類のフィーチャの最近接の6つのものによって包囲されているすべての前記第1の種類のフィーチャは、前記径方向最外層の径方向内方に配置されている。
【0021】
少なくともいくつかの実施形態では、光ファイバはシングルモード光ファイバである。
少なくともいくつかの実施形態では、コア領域は、内側クラッドバックグラウンド材料の屈折率にほぼ等しいコア実効屈折率を有する。
【0022】
少なくともいくつかの実施形態では、コア領域は、1つ以上の活性元素がドープされた材料を含む。光ファイバには、光信号の増幅など、いくつかの用途がある。コア領域において伝搬する光信号の増幅は、ポンプ光から信号光にエネルギーを伝達する活性元素の存在に起因してよい。活性元素は、イッテルビウム(Yb)、エルビウム(Er)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、ホルミウム(Ho)、ツリウム(Tm)、ジスプロシウム(Dy)、またはエルビウム(Er)とイッテルビウム(Yb)の組合せなどのそれらの組合せからなる群から選択される希土類元素を含んでよい。
【0023】
活性元素がドープされた材料は、コア領域において異なるように配置されてよい。いくつかの実施形態では、活性材料は、コア領域にわたってほぼ均一に分布している。活性部分は、前記コア領域内および/または前記内側クラッド領域内に少なくとも部分的に含まれてよい。いくつかの実施形態では、活性領域は環形状領域を含む。環形状領域は、前記コア領域の中心を包囲するコヒーレントリングを備えてよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、活性元素の濃度は、コア領域断面にわたって徐々に変化してよい。濃度は、例えばコア領域の円形または環状に形成された部分において実質的により高い濃度が存在し、別の部分またはコア領域においてより低い濃度が存在するようなものであってもよい。その場合、コア領域の「活性部分」との語句は、濃度が最も高いコア領域の部分を指し得る。
【0025】
少なくともいくつかの実施形態では、活性元素がドープされた材料の屈折率は、活性元素の存在によって影響を受け得る。1つまたは複数の追加のドーパントを添加することによって、屈折率が調整されてよい。いくつかの実施形態では、活性元素がドープされた材料は、ほぼ前記内側クラッドバックグラウンド材料の屈折率以下である屈折率プロファイルを有する。
【0026】
少なくともいくつかの実施形態では、活性元素がドープされた材料は、ほぼ前記コア領域の活性部分に配置され、前記活性部分は、基本コアモードが、約50%超、または約60%超、または約70%超、または約80%超である、活性部分とのモード場の重なりを有するように配置される。いくつかの実施形態では、重なりは、50%~80%、好ましくは50%~60%または50%~70%であることが可能である。
【0027】
少なくともいくつかの実施形態では、前記コア領域には、フッ素(F)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、トリウム(Th)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、およびセリウム(Ce)、またはこれらの組合せからなる群から選択される1つまたは複数の材料がドープされる。
【0028】
少なくともいくつかの実施形態では、前記第1の種類のフィーチャの前記エアホールの直径d1は、d1/Λ比が約0.3未満または約0.2未満である。この比は、0.02~0.2、好ましくは0.08~0.15であることが可能である。
【0029】
少なくともいくつかの実施形態では、前記第1の種類のフィーチャの高屈折率領域は、ゲルマニウムドープシリカを含む。例えばバックグラウンド材料の屈折率を増加させる任意の他の適切な元素が使用されることも可能である。
【0030】
少なくともいくつかの実施形態では、コア領域は、約40μmを超える最大断面寸法を有する。
少なくともいくつかの実施形態では、コア領域は、六方格子におけるのセルの数に対応し、その数は、7、19、または37など、7から37の間の任意の数である。
【0031】
いくつかの実施形態では、イッテルビウム(Yb)ドープコアと、ドーパントとしてゲルマニウム(Ge)を含む前記第1の種類のフィーチャの高屈折率領域とを有するファイバについて、そうしたファイバのピッチは10μm~20μmの間、好ましくは14μm~16μmの間とすることが可能であり、エアホールの直径は0.5μm~3μmの間とすることが可能であり、高屈折率領域の厚さは1μm~5μmとすることが可能である。
【0032】
いくつかの実施形態では、ツリウム(Tm)ドープコアと、ドーパントとしてゲルマニウム(Ge)を含む前記第1の種類のフィーチャの高屈折率領域とを有するファイバについて、そうしたファイバのピッチは、20μm~40μmの間、好ましくは25μm~33μmの間であることが可能であり、エアホールの直径は、1μm~6μmの間であることが可能であり、高屈折率領域の厚さは、2μm~10μmであることが可能である。
【0033】
少なくともいくつかの実施形態では、内側クラッドの高屈折率材料とバックグラウンド材料との間の屈折率差は、約1・10-2未満である。
以下の実施形態は、コーナー共振器に近接する領域における材料の屈折率を修正することによって、コーナー共振器を含む光ファイバのモード特性を改良することを狙いとする。修正は、コーナー共振器によってサポートされる光モードが、6つの第2の種類のフィーチャによって包囲されている第1の種類のフィーチャによってサポートされるモードと同様に閉じ込められることを提供するように構成される。同様の閉じ込めにより、コーナー共振器によってサポートされる光モードの実効屈折率および/またはモード分散性は、第1の種類のフィーチャによってサポートされる光モードのものと等しくなり得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記外側クラッド領域は、屈折率nobを有する外側バックグラウンド材料と、前記外側クラッドバックグラウンド材料の前記屈折率よりも低い屈折率nddを有する1組のダウンドープ領域とを含んでよく、それによって、サポートされる光モードは、6つの隣接する第2の種類のフィーチャの存在によって提供される第1の種類のフィーチャによってサポートされるモードの閉じ込めと同様に閉じ込められる。
【0035】
いくつかの実施形態では、前記1組のダウンドープ領域は、前記1組の第1の種類のフィーチャに近接してよい。
いくつかの実施形態では、前記1組のダウンドープ領域は、前記外側クラッド領域にダウンドープリングを形成してよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、前記ダウンドープ領域は、前記外側バックグラウンド材料にホウ素またはフッ素をドープすることによって形成される。
いくつかの実施形態では、nddは、nobの-2・10-4からnobのすぐ下までの範囲にあり、すなわち、ダウンドープ領域は、外側バックグラウンド材料の屈折率よりも最大2・10-4低い屈折率を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、ダウンドープ領域は、径方向最外内側クラッドフィーチャから、六方格子のピッチの0,5~2倍など、ピッチの2倍未満の距離にある。
いくつかの実施形態では、外側クラッド領域はエアクラッドを含む。エアクラッドは、例えば、ファイバコアにおける活性元素を励起させるために光ファイバを伝搬するポンプ光の閉じ込めを提供することが可能である。
【0038】
エアクラッドは、任意のコーナー共振器によってサポートされる光モードが、6つの隣接する第2の種類のフィーチャの存在によって提供される第1の種類のフィーチャによってサポートされるモードの閉じ込めと同様に閉じ込められるように位置することが可能である。いくつかの実施形態では、径方向最外内側クラッドフィーチャからエアクラッドまでの距離は、内側クラッドの六方格子のピッチの0.2~2倍の範囲内にある。
【0039】
特許文献1の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態が、これより、単なる例として、添付の図面を参照して記載される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】特許文献1に記載された光ファイバの断面図。
【
図3】本発明に従う光ファイバのさらなる変形例の断面図。
【
図4A】本発明によってカバーされないファイバについての、波長に対するファイバコアにおける光と全光との比のグラフ。
【
図4B】本発明によってカバーされるファイバについての、波長に対するファイバコアにおける光と全光との比のグラフ。
【
図5A】本発明によってカバーされないファイバについての波長に対する実効屈折率を示す図。
【
図5B】本発明によってカバーされるファイバの波長に対する実効屈折率を示す図。
【
図6】本発明に従う光ファイバのさらなる変形例の断面図。
【
図7】本発明に従う光ファイバのさらに別の変形例の断面図。
【
図8】本発明に従う光ファイバのさらなる変形例の断面図。
【
図9】本発明に従う光ファイバのさらに別の変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、特許文献1の
図2に対応し、コア2と、コア2を包囲する内側クラッド領域3と、内側クラッド領域3を包囲する外側クラッド領域6とを有する光ファイバの設計を示す。
【0042】
すべての内側クラッドフィーチャは、内側クラッド領域3に配置されている。内側クラッドフィーチャの一部は第1の種類のフィーチャ4であり、一部は第2の種類のフィーチャ5である。内側クラッドフィーチャは六方格子に配置されており、すべての第1の種類のフィーチャ4の最近接のものは、第2の種類のフィーチャ5の内側クラッドフィーチャである。
【0043】
コア領域2は、六方格子における19個のセルに対応する(
図3も参照)。19という数は特定の例に過ぎず、他の数のセルも可能である。
第1の種類のフィーチャ4の配置は、蜂の巣状または籠目格子を形成する。第1の種類のフィーチャ4の各々は、リング形状の断面エリアを有するほぼ円筒形構造として形成されている高屈折率領域(周囲部分)によって包囲されているエアホール(中央部分)を備える。
【0044】
第2の種類のフィーチャ5は、内側クラッド材料によって包囲されているエアホールからなる。いくつかの実施形態では、六方格子のピッチは14.5μmであり、高屈折率領域の厚さは約4μmであり、第1および第2の種類のフィーチャのエアホール直径は約2μmである。
【0045】
図1に示されるファイバは、内側クラッド3の径方向外側領域に、第2の種類のフィーチャ5の内側クラッドフィーチャの最外周列または層の径方向内側に配置されている第1の種類のフィーチャ4の内側クラッドフィーチャとは対照的に、第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つのものによって包囲されていない第1の種類のフィーチャ4の内側クラッドフィーチャを備える。第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つのものによって包囲されていない第1の種類のフィーチャ4のそうした内側クラッドフィーチャは、コーナー共振器7と呼ばれる。
【0046】
コーナー共振器7は、第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つのものによって包囲された第1の種類のフィーチャ4の内側クラッドフィーチャと比較して波長がずれる傾向を有する可能性があり、コーナー共振器7は、特に、光ファイバのモード性能を低下させ得る。
【0047】
図2の光ファイバは、そうしたコーナー共振器7を有しない。さらに、
図2の例では、領域6はエアクラッド9を備え、ファイバは外側クラッド領域6を包囲するポリマークラッド(図示せず)を随意でさらに備えることが可能である。
【0048】
したがって、
図2は、長手方向の光軸Aおよびそれに垂直な断面を有する、光信号を案内するための光ファイバの断面図を示す。ファイバは、光信号波長λ
1において実効屈折率n
cを有する基本コアモードにより光信号を案内することができるコア領域2を備える。ファイバは、コア領域2を包囲するクラッド領域を有する。クラッド領域は、内側クラッド領域3および外側クラッド領域6を含む。内側クラッド領域3は、屈折率n
bを有するバックグラウンド材料と、前記バックグラウンド材料に配置されている複数の内側クラッドフィーチャ4、5とを備える。複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、内側クラッドバックグラウンド材料の屈折率よりも大きい屈折率n
rを有する高屈折率材料を含む高屈折率領域によって包囲されたエアホールを含む第1の種類のフィーチャ4である。第1の種類のフィーチャ4は、前記光信号波長λ
1における基本コアモードの実効屈折率n
c以下である実効屈折率n
1を有する光モードをサポートする。複数の内側クラッドフィーチャのうちの複数は、屈折率n
bを有するバックグラウンド材料と直接接触するエアホールを含む第2の種類のフィーチャ5である。内側クラッドフィーチャ4、5は、ほぼ六方格子に配置され、その六方格子において第1の種類のフィーチャ4を包囲する最近接の6つのものは、前記第2の種類のフィーチャである。第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つ未満のものによって包囲されている第1の種類のフィーチャ4はないため、
図1のファイバにおけるようなコーナー共振器7は
図2のファイバには存在しない。
【0049】
したがって、
図2の光ファイバでは、第1の種類のフィーチャ4の内側クラッドフィーチャは、第2の種類のフィーチャ5の内側クラッドフィーチャである最近接の6つのものによって常に包囲されている。コーナー共振器7(
図1参照)が
図2の光ファイバには存在しないので、各第1の種類のフィーチャ4の周りの単位セルは同一である。したがって、この光ファイバにおけるすべての第1の種類のフィーチャ4は、同一の、または少なくとも非常に類似したモード特性を有するモードをサポートする。これは、次に、コア領域における高次モードのより効率的な抑制を伴うより良好なモード性能を可能にし、したがって、光ファイバの動作のためのより大きい帯域幅を可能にする。
【0050】
図3のファイバは、第1の種類のフィーチャ4の内側クラッドフィーチャが矩形配置により配置されている点において、
図2のファイバとは異なる。しかしながら、
図2におけるように、内側クラッドフィーチャ4、5は、ほぼ六方格子に配置され、その六方格子において第1の種類のフィーチャ4を包囲する最近接の6つのものは、第2の種類のフィーチャ5である。第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つ未満のものによって包囲されている第1の種類のフィーチャ4はない。
【0051】
図3のファイバは、
図2のファイバとは対照的に、エアクラッドを有しない(エアクラッド9参照)。
現時点で、
図3に示される第1の種類のフィーチャ4a、4bのグループは、同じ特性を有すると仮定する。
【0052】
図2および
図3のファイバにおいて、ファイバコア2を中心とする内側クラッドフィーチャの径方向外側周層または列には、第1の種類の内側クラッドフィーチャ4は存在せず、径方向に見たときに、第1の種類のフィーチャ4のすべての内側クラッドフィーチャは、第2の種類の内側クラッドフィーチャ5しか含まない径方向外側層の径方向内方に配置される。これに対応して、周方向においてコア2を中心とする内側クラッドフィーチャの径方向内側層または列には、第1の種類のフィーチャ4の内側クラッドフィーチャは存在せず、径方向から見たときに、第1の種類のフィーチャ4のすべての内側クラッドフィーチャは、第2の種類の内側クラッドフィーチャ5の径方向最内層または列の径方向外方に配置される。
【0053】
図4Aは、本発明によってカバーされない、
図1に従って設計されたファイバなどのファイバについて、ナノメートル(nm)における波長に依存してファイバコアにおける光とファイバにおいて伝搬するファイバモードの全光との間の比の計算された図を示す。
図4Bは、本発明によってカバーされる、
図2または
図3に従って設計されたファイバなどのファイバについて、ナノメートル(nm)における波長に依存してファイバコアにおける光とファイバにおいて伝搬するファイバモードの全光との間の比を計算した図を示す。光モードは、
図4Aおよび
図4Bでは特定されていない。各ドットは、ある波長における不特定モードの比率を示す。
【0054】
図4Aに見られるように、約1032nmと1038nmとの間の波長範囲において、
図4Aのファイバは、通常はLP
01モードである唯一のファイバモードが、
図4Aにおける曲線401に見られるように、全光に対するコアにおける光について高比率を有するため、本質的にシングルモード挙動を示す。一例として、高比率は、0.7を超えるように定義されることが可能であり、他のすべてのモードは、言及された波長範囲において0.25未満の比を有する。低比率を有する光モードは、コアからファイバのクラッドへとはるかに良好に結合し、散逸する。
【0055】
ファイバは、1つのモードのみが全光に対してコアにおける光について高比率を有する一方で他のすべてのモードが同一波長領域において低比率を有する波長範囲において、シングルモード挙動を示すと言うことが可能である。高比率は、0.7を超えるように設定することが可能である。低比率は、0.25未満に設定することが可能である。
【0056】
図4Bに示される曲線403は、曲線401よりも滑らかな挙動を示し、
図2または
図3に従うファイバが、改良されたモード挙動を有することを示す。さらに、シングルモード挙動は、1032nm未満から約1023nmまで拡張される。光信号波長λ
1は、シングルモード挙動が生じる波長範囲の中央、例えば、
図4Bにおける1030nm付近にあることが可能である。
【0057】
図2および
図3に係るファイバでは、第1の種類のフィーチャ4の内側クラッドフィーチャのすべてが、同一のモード特性を好ましくは有する。すべての第1の種類のフィーチャ4の高屈折率領域は、ファイバが製造されるときに同一手法によりドープされることが可能である。高屈折率領域は、
図2および
図3における第1の種類のフィーチャ4のエアホールである内側円を囲む外側リングによって示されている。
【0058】
図5Aは、
図2または
図3に示されるようなファイバの波長に対する実効屈折率を示す。ファイバが波長領域WRにおいてシングルモード挙動を示すことが理解される。LP
11モードの実効屈折率は、LP
01モードの実効屈折率よりも低い。
【0059】
いくつかの実施形態では、第1の種類のフィーチャ4の複数の内側クラッドフィーチャは、少なくとも第1のグループの第1の種類のフィーチャ4aおよび第2のグループの第1の種類のフィーチャ4bへと分割される。これは、
図3に例として示されており、第1の種類のフィーチャは、本質的に、第1のグループ4aの第1の種類のフィーチャであることと第2のグループ4bの第1の種類のフィーチャであることとの間において交互になっている。
【0060】
第1のグループ4aの第1の種類のフィーチャは、第2のグループ4bのものとは異なるモード分散性を有するように設計される。例えば、第1のグループ4aの第1の種類のフィーチャは、第1の波長領域WR1(
図5B参照)において高次コアモード、特にLP
11モードを非局在化するように構成され、第2のグループ4bの第1の種類のフィーチャは、第1の波長領域WR1に隣接するかまたは部分的に重なるより高い第2の波長領域WR2において高次コアモード、特にLP
11モードを非局在化するように構成される。
【0061】
第1のグループ4aの第1の種類のフィーチャは、第2のグループ4bの第1の種類のフィーチャの高屈折率領域とは異なるようにドープされた高屈折率領域を有する第1の種類のフィーチャを含むことが可能である。第1の種類のフィーチャの高屈折率領域におけるドーピングエリアの大きさおよび/または高屈折率領域におけるドーピングレベルも、第1のグループ4aと第2のグループ4bとの間で異なることが可能である。必要なドーピングレベルおよび/またはドーピングエリアの大きさは、ファイバを製造する前に数値的に決定されることが可能である。次に、
図5Bに示すような挙動を示すように、ファイバを製造することが可能である。
【0062】
図6を参照すると、ファイバが示されており、このファイバは、第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つ未満のものによって包囲されている1組の第1の種類のフィーチャ11を備える。1組の第1の種類のフィーチャ11の第1の種類のフィーチャの各々は、光信号波長λ
1において少なくともほぼ実効屈折率n
1を有する光モードをサポートし、この光モードは、第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つのものによって包囲された「適切な」第1の種類のフィーチャ4によってもサポートされる。これにより、例えば、「適切な」第1の種類のフィーチャ4のドーピングレベルを考慮して、1組の第1の種類のフィーチャ11の第1の種類のフィーチャのドーピングレベルを適切に選ぶことによって、
図4Bおよび
図5A、
図5Bに示されるような挙動を得ることが可能である。外側クラッド領域6は、外側クラッド領域6の径方向最外層にあるエアクラッド(図示せず)を含んでよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、
図6に示されるように、1組の第1の種類のフィーチャ11は、コア2を中心とする内側クラッドフィーチャの径方向最外層にある。したがって、径方向に見たときに、前記第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つのものによって包囲された第1の種類のフィーチャ4のすべては、径方向最外層の径方向内方に配置される。
【0064】
図7は、
図6の光ファイバが外側クラッド領域6の一部を形成するエアクラッド9を備え、内側クラッド領域3とエアクラッド9との間の距離が最適化されて、第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つ未満のものによって包囲される1組の第1の種類のフィーチャ11によってサポートされるモードの閉じ込めを確実にする実施形態を示す。エアクラッド9と1組の第1の種類のフィーチャ11のフィーチャとの間の適切な距離によって、1組の第1の種類のフィーチャ11によってサポートされる光モードの電界、したがってこれらの第1の種類のフィーチャの実効屈折率およびモード分散は、第2の種類のフィーチャ5の最近接の6つのものによって包囲された「適切な」第1の種類のフィーチャ4のものに整合することが可能である。
【0065】
このようにして、ファイバのモード特性が調整され、
図4Bおよび
図5A、
図5Bに示されるような挙動が、エアクラッド9が1組の第1の種類のフィーチャ11に適切に近接した状態により得られる。エアクラッドの大きさおよび直径の減少は、光ファイバのモード特性に対するコーナー共振器の影響を軽減する手法である。
好ましくは、1組の第1の種類のフィーチャ11のフィーチャとエアクラッド9との間の距離は、内側クラッドの六方格子のピッチ程度である(ピッチは、内側クラッドに形成された2つの隣接するエアホールの中心間の距離として定義される)。距離は、例えば、ピッチの0.5~2倍であってよい。内側クラッドにわたって11周期の内側クラッドフィーチャを有する六方格子を有する
図7に示されるような光ファイバの場合、エアクラッド9の内径は、格子のピッチの12~16倍程度であってよい。
【0066】
図8は、外側クラッド領域6が、屈折率n
obを有する外側バックグラウンド材料を含み、外側クラッドバックグラウンド材料の屈折率よりも低い屈折率n
ddを有する1組のダウンドープ領域10をさらに含む、光ファイバの別の実施形態を示す。外側バックグラウンド材料は、内側クラッド領域3のバックグラウンド材料と同一であってよい。これに代えて、外側バックグラウンド材料は、内側クラッド領域3のバックグラウンド材料とは異なる材料であってよい。外側バックグラウンド材料はシリカであってよい。典型的には、1組のダウンドープ領域10は、内側クラッドの六方格子のピッチの1~2倍の距離など、1組の第1の種類のフィーチャ11に近接している。ダウンドープ領域10は、外側バックグラウンド材料にホウ素またはフッ素をドープすることによって形成されてよい。
【0067】
図9は、ダウンドープ領域が、外側クラッド領域6に形成されたダウンドープリング12へと接続されている実施形態を示す。ダウンドープリング12は、外側バックグラウンド材料にホウ素またはフッ素をドープすることによって形成されてよい。
【0068】
ダウンドープ領域の屈折率nddは、失われたエアホール4を補償するために、より低い屈折率を有する。屈折率の低下はかなり小さく、-1×10-5のオーダーである。好ましくは、屈折率変化は少なくとも約-5・10-6であってよい。このようにして、ダウンドープ領域がポンプ閉じ込めのために使用されてよい。コーナー共振器に関する問題を解決するために、ダウンドープ領域は、外側クラッド領域の屈折率よりも低い屈折率を有してよく、その屈折率は、0をわずかに上回り、最大-2×10-4である。
【0069】
コーナー共振器11に近接する領域をダウンドープすることによってファイバのモード特性が調整され、コーナー共振器11に近接する近接低下屈折率がコーナー共振器11の周りの電界を変化させ、それによって1組の第1の種類のフィーチャ11の実効屈折率およびモード分散を変化させるため、
図4Bおよび
図5A、
図5Bに示されるような挙動が得られる。
【符号の説明】
【0070】
2 コア
3 内側クラッド領域
4 第1の種類のフィーチャ
4a 第1のグループの第1の種類のフィーチャ
4b 第2のグループの第1の種類のフィーチャ
5 第2の種類のフィーチャ
6 外側クラッド領域
7 コーナー共振器
9 エアクラッド
10 ダウンドープ領域
11 1組の第1の種類のフィーチャ
12 ダウンドープリング
401 曲線
403 曲線
A 光軸
WR 波長領域
WR1 第1の波長領域
WR2 第2の波長領域
【国際調査報告】