(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-24
(54)【発明の名称】ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料、その製造方法、負極及び電気化学装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240617BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240617BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240617BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023565575
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 CN2022134811
(87)【国際公開番号】W WO2023093893
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111438788.0
(32)【優先日】2021-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210114895.6
(32)【優先日】2022-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523402154
【氏名又は名称】▲蘭▼溪致▲徳▼新能源材料有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 青▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 江平
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ 瑞芳
(72)【発明者】
【氏名】▲房▼ 冰
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA17
5H050DA18
5H050GA02
5H050GA05
5H050GA12
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
5H050HA12
5H050HA13
5H050HA14
5H050HA20
(57)【要約】
本発明は、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料、その製造方法、負極及び電気化学装置を提供する。複合材料は、(Cx1-Oy1)-(Siz-Oy2-Cx2)を含み、Cx1-Oy1は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材であり、0.001≦y1/x1≦0.05であり、Siz-Oy2-Cx2は、ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素を含み、ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散分布し、酸素含有物質は、SiOδ形態で存在し、0<δ≦2、0.1≦z/x1≦2、0.01≦y2/z≦0.15、0≦x2/z≦0.15である。ケイ素ナノ粒子は複合材料中に均一に分散しており、酸素含有物質及び選択可能な炭素により隔てられと拘束され、ケイ素粒子の充放電サイクルにおける体積変化及び可能な融併を制御し、リチウム電池のサイクル性能を改善する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(C
x1-O
y1)-(Si
z-O
y2-C
x2)を含み、
C
x1-O
y1は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材であり、多孔質炭素基材及びその表面酸化層を含み、x1は、炭素の化学量数であり、y1は、表面酸化層中の酸素の化学量数であり、0.001≦y1/x1≦0.05であり、
Si
z-O
y2-C
x2は、ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素を含み、前記ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散分布し、前記酸素含有物質はSiO
δ形態で存在し、0<δ≦2、0.1≦z/x1≦2、0.01≦y2/z≦0.15、0≦x2/z≦0.15である、ことを特徴とするナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料。
【請求項2】
前記複合材料において、酸素総含有量は、0.5wt%~5wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のXPSテストでの高分解能Si 2pスペクトルに対してデコンボリューション積分ピーク分析を行った結果には、結合エネルギーピーク値が103±0.5eVに位置するSi-Oのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.5~2であり、好ましくは0.8~1.5であることと、結合エネルギーピーク値が100.5±0.5eVに位置するSi-Cのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.01~1であり、好ましくは0.01~0.5であることとが含まれる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記ケイ素ナノ粒子には、ケイ素結晶粒子及び/又は非晶質ケイ素が含まれ、前記ケイ素結晶粒子のサイズが5nm未満であり、さらに好ましくは前記ケイ素結晶粒子のサイズが2nm未満である、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項5】
前記ケイ素ナノ粒子のサイズが20nm未満であり、好ましくは前記ケイ素ナノ粒子のサイズが10nm未満である、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項6】
前記複合材料の比表面積が0.1m
2/g~15m
2/gであり、全孔容積が0.001m
2/g~0.05cm
3/gであり、好ましくは、前記複合材料の比表面積が0.1m
2/g~10m
2/gであり、全孔容積が0.001m
2/g~0.035cm
3/gである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料の真密度が1.8m
2/g~2.1g/cm
3である、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項8】
前記複合材料は、固体電解質及び/又は導電性ポリマーを含むコーティング層をさらに含む、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項9】
前記複合材料の中央粒径D
50が4μm~12μmの間にある、ことを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の複合材料。
【請求項10】
表面酸化層を含む多孔質炭素基材を提供し、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材中の酸素と炭素とのモル比は0.001~0.05であるステップS1と、
前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉にケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入し、且つ150℃~700℃で前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材と接触させ、熱処理を5h~100h行い、ケイ素及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素を多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散して沈積させ、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得るステップS2と、を含む、ことを特徴とするナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記ステップS1において、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の製造方法は、炭素前駆体と孔形成剤とを混合して、炭素化させた後、炭素化後の材料を形成し、且つ前記炭素化後の材料に対して破砕及び酸化処理を行う方法である、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の比表面積が50m
2/g~2000m
2/gであり、孔容積が0.1cm
3/g~3.0cm
3/gであり、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の孔構造にはミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が含まれ、好ましくは、前記ミクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~40%であり、前記メソ孔の容積の全孔容積における割合が30%~80%であり、前記マクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~40%であり、
好ましくは、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の比表面積が100m
2/g~1000m
2/gであり、孔容積が0.3cm
3/g~1.5cm
3/gであり、さらに好ましくは、前記ミクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~20%であり、前記メソ孔の容積の全孔容積における割合が60%~80%であり、前記マクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~20%である、ことを特徴とする請求項10又は11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップS2の実施中に、前記ケイ素含有前駆体及び前記酸素含有前駆体を任意の体積比で組合せ、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、ハロゲン化シラン、ポリシラン、シロール及びその誘導体、シラフルオレン及びその誘導体などから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、前記酸素含有前駆体は、酸素、二酸化炭素、水蒸気、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数であり、
好ましくは、前記ケイ素含有前駆体と酸素含有前駆体との体積比は、通入時間の経過につれ、連続的な変化し及び/又は周期的な変化が存在する、ことを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップS2において、前記ケイ素含有前駆体及び前記酸素含有前駆体を通入しながら、不活性ガスを通入し、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体と前記不活性ガスとの第1混合ガスを通入する場合、前記酸素含有前駆体は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数であり、前記第1混合ガスにおいて、前記ケイ素含有前駆体の体積含有量は1%~50%であり、前記酸素含有前駆体の体積含有量は0.5%~10%であり、好ましくは、前記第1混合ガスを通入する際の前記熱処理の温度は400℃~700℃であり、さらに好ましくは、前記第1混合ガスを通入する際の前記熱処理の時間は5h~50hである、ことを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップS2において、前記ケイ素含有前駆体及び前記酸素含有前駆体を通入する前、通入した後、通入すると同時に又は通入する合間に、不活性ガスを通入し、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体と前記不活性ガスとの第2混合ガスを通入する場合、前記第2混合ガスにおける前記ケイ素前駆体の体積含有量は1%~50%であり、前記酸素含有前駆体と前記不活性ガスとの第3混合ガスを通入する場合、前記第3混合ガスにおける前記酸素含有前駆体の体積含有量は1%~50%であり、さらに好ましくは、前記ケイ素含有前駆体を通入する際の前記熱処理の温度は400℃~700℃であり、前記酸素含有前駆体を通入する際の前記熱処理の温度は150℃~600℃であり、好ましくは、前記ステップS2は、
表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉に不活性ガスを通入し、且つ前記反応炉の温度を400℃~700℃まで上げるステップS2-1と、
前記ケイ素含有前駆体と前記不活性ガスとの第2混合ガスを通入し、前記第2混合ガスにおける前記ケイ素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ前記反応炉を400℃~700℃に0.5h~15h維持するステップS2-2と、
前記ケイ素含有前駆体の通入しを停止し、前記不活性ガスのみを通入し、前記反応炉の温度を150℃~600℃に調節するステップS2-3と、
前記酸素含有前駆体と前記不活性ガスとの第3混合ガスを通入し、前記第3混合ガスにおける前記酸素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ前記反応炉を150℃~600℃に0.1h~5h維持するステップS2-4と、
前記ステップS2-1からステップS2-4を2~50回繰り返すステップS2-5と、を含む、ことを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップS2の前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を破砕分級し、中央粒径が4μm~12μmのナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を獲得し、好ましくは前記破砕分級の方式は、人工研磨、機械研磨、ボールミル、ジェットミルのうちのいずれか1つ又は複数であるステップS3をさらに含む、ことを特徴とする請求項10~15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ステップS3の前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対して高度酸化処理を行い、好ましくは、前記高度酸化処理には、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を、酸化性物質を含む溶液及び/又はガスと0℃~400℃で0.5h~12h接触させるステップS4をさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ステップS4において、前記高度酸化処理には、液相酸化及び/又は気相酸化が含まれ、
好ましくは、前記液相酸化のステップは、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を酸化性物質及び/又は酸化性物質の水及び/又はエタノール溶液に入れ、超音波で0.5h~2h分散させた後、0℃~50℃で0.5h~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を40℃~200℃で0.5h~24h送風乾燥した後、不活性雰囲気下、200℃~400℃で0.5h~5h処理することであり、前記酸素含有化合物は、KMnO
4、H
2O
2、HNO
3、H
2SO
4、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸から選択されるいずれか1つ又は複数であり、前記液相酸化は、紫外線及び/又はミクロ波放射の作用下で行われ、
好ましくは、前記気相酸化のステップは、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を真空度が10
-2Paより低くなるまで真空引きし、その後、酸化性ガス及び不活性ガスを含む混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/min~10℃/minに制御し、室温から200℃~400℃まで上げ、且つ200℃~400℃で0.1h~5h処理することであり、前記酸化性ガスは、酸素、オゾン、二酸化炭素、水蒸気から選択されるいずれか1つ又は複数であり、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、前記酸化性ガスが前記混合ガスを占める割合は0.5%~20%である、ことを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記ステップS4の前に、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対する酸処理及び/又はアルカリ処理過程を追加し、
好ましくは、前記酸処理の方法は、酸を含む水/エタノール溶液に前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を分散させ、0℃~50℃で0.5h~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールを用いてろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで固体を複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥することであり、
前記アルカリ処理の方法は、アルカリを含む水/エタノール溶液に前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を分散させ、0℃~50℃で0.5h~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールを用いてろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで固体を複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥することであり、前記酸は、HCl、H
2SO
4、HNO
3、H
3PO
4のうちの1つ又は複数であり、前記アルカリは、NaOH、KOH、Na
2CO
3、K
2CO
3、NH
3H
2O、NH
4HCO
3、(NH
4)
2CO
3、尿素のうちの1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項17又は18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に、固体電解質及び/又は導電性ポリマーを包むステップS5をさらに含む、ことを特徴とする請求項10~19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に対して真空処理及び炭素コーティングを行い、前記炭素コーティングの方式は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、プロピン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数を用いて、前記複合材料に対して気相堆積を行うか、又は、液体炭素前駆体を用いて液相炭素コーティングを行うことであり、好ましくは、前記液体炭素前駆体は、樹脂、アスファルトから選択されるステップS6をさらに含む、ことを特徴とする請求項10~20のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
負極材料を含む負極であって、前記負極材料は、請求項1~9のいずれか1項に記載のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料又は請求項10~21のいずれか1項に記載の製造方法で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料である、ことを特徴とする負極。
【請求項23】
負極を含む電気化学装置であって、前記負極は、請求項22に記載の負極であり、好ましくは、前記電気化学装置がリチウムイオン二次電池である、ことを特徴とする電気化学装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、CN出願番号が202111438788.0で、出願日が2021年11月27日である中国出願を基礎とし、且つその優先権を主張し、このCN出願の開示内容は再び全体として本願に援用される。
【0002】
本願は、CN出願番号が202210114895.6で、出願日が2022年01月31日である中国出願を基礎とし、且つその優先権を主張し、このCN出願の開示内容は部分的に本願に援用されてもよい。
【技術分野】
【0003】
本発明は、電池材料の技術分野に関し、具体的には、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料、その製造方法、負極及び電気化学装置に関する。
【背景技術】
【0004】
リチウムイオン電池は、現今の人間の生産と生活においてますます重要な役割を果たしており、容量、初回クーロン効率、サイクル性能などのその負極材料の性能は、電池の容量、エネルギー密度及び耐用年数に大きく影響を与える。
【0005】
従来のリチウムイオン電池の負極は、通常、炭素材料を活性成分とし、特に黒鉛を典型的なものとし、黒鉛の層間リチウム吸蔵機序に基づき、その理論的なグラム当たり容量はわずか372mAh/gであり、現在、黒鉛負極のグラム当たり容量はすでに理論的な容量に近く、これにより、電池全体のエネルギー密度の向上が大きく制限されている。そのため、複数のリチウム吸蔵機序の負極材料を開発する必要がある。ここで、通常、合金化リチウム吸蔵機序により大きなリチウム吸蔵容量が実現でき、例えばケイ素材料は、リチウム吸蔵過程中にリチウムケイ素合金LixSiを形成し、xは最大4.4に達することができ、対応するケイ素負極の理論的な容量は4200mAh/gに達する。また、ケイ素系材料は、リチウム金属に近いリチウム放出電位(<0.5V v.s. Li/Li+)を有し、且つ環境に優しく、貯蔵量が豊富であるため、極めて有望な次世代高エネルギー密度リチウムイオン電池の負極材料となっている。しかし、ケイ素系負極材料には、リチウム吸蔵及びリチウム放出過程中に、大きな体積膨張及び収縮(リチウムフル吸蔵状態において、体積膨張が300%に達する。)が発生することにより、電池容量が減衰し、及び電極の微粉化に失敗するという深刻な問題が存在する。ケイ素材料は、サイクルの安定性が悪いため、その実際の適用で大きな技術的ボトルネックに直面している。
【0006】
リチウムイオン電池のサイクル容量が減衰する根本的な原因は、SEI膜の形成である。リチウムイオン電池は、充電時に、電極と電解液との接触面を完全に覆うまで、電解液中の電解質が正極からのリチウムイオンと負極の表面活物質で反応し、固体電解質界面(SEI)膜が形成される。SEI膜の形成は不可逆的なものであり、そのリチウム消費量は、電極での可逆的なリチウムの形成と競合し、これは、初めてのリチウム吸蔵-リチウム放出サイクルにおいて、リチウム放出容量がリチウム吸蔵容量より低いこと、即ち初回クーロン効率(初回効率)が100%より低いこととして現れる。初回の充放電が完了した後、安定なSEI膜が形成できたと、後続で容量が顕著に減衰することがなくなり、電池のサイクル性能がよい。逆に、SEI膜が破壊されると、露出された新鮮な活物質に新たなSEI膜が生成され、これにより、正極の可逆的なリチウムイオンが消費され続け、電池容量が減衰していく。そのため、化学的及び機械的に安定しているSEI膜は、リチウムイオン電池の高い容量、エネルギー密度及びサイクル性能を維持するために非常に重要である。
【0007】
リチウムの吸蔵と放出中でのケイ素系負極材料の大きな体積効果により、電極表面のSEI膜がサイクル充放電時に破壊及び再生され続け、それにより活性ケイ素材料が腐食され、及び電極容量が減衰し続ける。また、このような体積効果により、負極活物質の次第の微粉化、構造崩壊も招き易く、最終的に、電極活物質が集電体から離れて電気的接触がなくなり、電池のサイクル性能が大きく低下する。したがって、ケイ素粒子の充放電時の過大な体積効果の抑制は、常に、ケイ素系負極材料の研究開発における無視できない問題となっている。
【0008】
ケイ素粒子に、不可逆的に破裂するまでリチウムが吸蔵されてSEI膜が破壊され及び/又は自分が粉砕することは、実質的には、不均一な膨張が累積される過程である。リチウムを吸蔵する間、まず、ケイ素粒子表面のケイ素原子に大量のリチウムが累積され、次に、リチウムイオンがゆっくりとした速度で粒子の内部へ移し、即ちケイ素粒子は、内側から外側に向いてリチウムの勾配が存在するため、不均一に膨張し、これは、ケイ素粒子の破裂につながる。研究から分かるように、ナノ化されたケイ素粒子は、サイズが小さいため、粒子内のリチウムイオン勾配を弱めることができ、粒子間の隙間も膨張-収縮による体積効果を緩和するのに役立ち、負極電極片の膨張を低減し、良好な電極性能を維持するための効果的な方法である。
【0009】
ケイ素は、自体の導電率が低く、一般に導電性のよい炭素材料と複合して導電性の良い複合電極材料を取得し、ケイ素ナノ粒子を多孔質炭素担体に分散させることは、通常のやり方の1つであり、炭素担体の孔構造も膨張を緩和する役割を果たすが、一方では、多孔質担体により複合材料の比表面積が大きくなり、さらに電極の副反応が多くなり、初回クーロン効率が低下し、そのため、如何に多孔質担体へのケイ素ナノ粒子の効果的な沈積及び均一な分散を実現すると共に、複合材料の比表面積を低下させるかは、ケイ素・炭素複合材料の製造における難点である。
【0010】
従来技術において、シランガスを気相沈積の方法により多孔質炭素担体に沈積させた研究者もあり、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を大量に製造し、且つケイ素粒子の充放電時の過大な体積効果を抑制することができる。出願公開番号がCN110112377Aの中国特許出願には、多孔質炭素にケイ素を沈積させてナノケイ素・炭素構造の複合材料を製造する方法が開示され、複合材料のSi含有量が90%に達すると、初回リチウム吸蔵容量は2414mAh/gに達することが可能で、初回効率は82%であるが、サイクル性能が悪く、5回目のサイクル容量維持率はわずか48%である。出願公開番号がCN110582823Aの中国特許出願には、多孔質炭素にケイ素及び炭素化水素を順番に又は同時に沈積する方法が開示され、複合材料におけるSi含有量を約50%に制御する条件で、得られたナノケイ素・炭素構造の複合材料の容量は2082mAh/gに達し、初回効率は82%で、7回目~10回目サイクルの平均クーロン効率は98%である。
【0011】
従来技術において、ケイ素・炭素複合材料の初回効率及びサイクル効率は比較的低く、これには2つの理由があり、1つは、炭素材料にシランガスを直接沈積すると、CとSiとの間に結合が不足しているため、多孔質炭素基材の孔内に位置する表面への効果的なケイ素沈積を実現し難く、材料の比表面積が大きく、電極表面での副反応が多く、電池の初回効率が低いことであり、もう1つは、より重要なことであり、SiH4分解が熱重合の鎖反応プロセスであり、まず、炭素粒子の接触しやすい表面に核を形成し、その後、非常に容易に形成済みのケイ素核上で急速に成長し、シランの沈積中にケイ素ナノ粒子の成長を制御するのが容易ではなく、サイズが大きく、これにより、充放電時に、リチウムケイ素合金化反応によって複合材料電極の体積が顕著に膨張し、さらに、サイクル過程にSEI膜の破壊と再生が繰り返され、正極の可逆的なリチウムを消費し、電池のサイクル性能が悪くなる。また、ケイ素・炭素複合材料は、充放電時に、リチウムケイ素合金化の正反応と逆反応の進みに伴い、隣接するケイ素粒子同士が融併することにより、複合材料におけるケイ素粒子が一層成長し、電極のサイクル性能が悪化する。どのようにサイズが小さいケイ素ナノ粒子が均一に分散しているケイ素・炭素複合材料の製造に成功し、且つケイ素ナノ粒子が電極反応中で融併して大きい粒子になることを防止するかについては、現在のどころ、研究報告及び関連の特許公開がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の主な目的は、ケイ素・炭素複合材料電極の体積膨張による電池のサイクル性能の悪化という従来技術における問題を解決するために、材料の角度から言えば、ケイ素・炭素複合材料の構造及び製造方法では均一に分散しているケイ素ナノ粒子を取得し難いという従来技術における問題を解決するために、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料、その製造方法、負極及び電気化学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を実現するために、本発明の一態様によれば、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を提供し、複合材料は、(Cx1-Oy1)-(Siz-Oy2-Cx2)を含み、ここで、Cx1-Oy1は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材であり、多孔質炭素基材及びその表面酸化層を含み、x1は、炭素の化学量数であり、y1は、表面酸化層中の酸素の化学量数であり、0.001≦y1/x1≦0.05であり、Siz-Oy2-Cx2は、ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素を含み、ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散分布し、酸素含有物質はSiOδ形態で存在し、0<δ≦2、0.1≦z/x1≦2、0.01≦y2/z≦0.15、0≦x2/z≦0.15であり、Siz-Oy2-Cx2は、Si-O-C(Si-SiOδ-C)構造単位の繰り返しと見なすことができ、(Siz1-Oy-Cx)n(n≧1)と書くことができる。
【0014】
本発明の別の態様によれば、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の製造方法を提供し、製造方法は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を提供し、表面酸化層を含む多孔質炭素基材における酸素と炭素とのモル比は0.001~0.05であるステップS1と、表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉にケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入し、且つ150~700℃で表面酸化層を含む多孔質炭素基材と接触させ、熱処理を5~100h行い、ケイ素及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素を多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散して沈積させ、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得るステップS2と、を含む。
【0015】
本発明の別の態様によれば、負極材料を含む負極を提供し、当該負極材料は、上記のいずれか1つのナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料又は上記のいずれか1つの製造方法で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料である。
【0016】
本発明の別の態様によれば、負極を含む電気化学装置を含み、当該負極は、上記のいずれか1つの負極であり、好ましくは、電気化学装置がリチウムイオン二次電池である。
【0017】
本発明の技術的解決手段を適用すると、ケイ素ナノ粒子が本願のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に均一に分散しており、且つ酸素含有物質及び選択可能な炭素により隔てられ及び拘束されるため、ケイ素粒子の沈積過程における団集及びケイ素粒子の充放電サイクルにおける体積変化及び可能な融併を効果的に抑制し、得られた複合材料により製造された負極を含むリチウムイオン二次電池は、高いグラム当たり容量、高い初回クーロン効率及び良好なサイクル性能を有する。
【0018】
上記の製造方法は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を担体及び/又はブラケットとし、その表面及び孔構造内でケイ素ナノ粒子及び酸素含有物質及び選択可能な炭素の沈積を行い、ここで、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、ケイ素ナノ粒子沈積層を隔てられ及び拘束する役割を果たし、沈積の最後に、多孔質炭素基材の孔路内に少量の閉孔が残される可能性がある。そのため、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に均一に分散している拘束されたケイ素ナノ粒子の、リチウム吸蔵及びリチウム放出過程における体積効果を効果的に緩衝することができ、且つ充放電時のケイ素ナノ粒子の融併現象が抑制され、材料の強度が向上し、当該ケイ素・酸素・炭素複合負極材料を含む電気化学装置の電気化学的性能の向上に役立つ。
【0019】
本発明の別の目的は、ケイ素・炭素複合材料電極の体積膨張により電池のサイクル性能が悪くなるという従来技術における問題を解決するために、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料、その製造方法、負極及び電気化学装置を提供することである。
【0020】
(一)技術的解決手段
以上の目的を実現するために、本発明は、以下の技術的解決手段により実現される。
本発明の一典型的な実施形態では、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を提供し、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料は、多孔質炭素骨格(上記の多孔質炭素基材に相当する。)、ケイ素ナノ粒子及びSiOδ(0<δ≦2)を含み、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料におけるケイ素元素の含有量は25~75wt%であり、酸素元素の含有量は0.5~10wt%であり、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料のN2吸着のBET比表面積は0.01~10m2/gであり、N2分圧が0.999より高い点での吸着量にしたがって測定された全孔容積は0.001~0.05cm3/gであり、前記ケイ素ナノ粒子は、前記SiOδのネットワークによって隔てられ及び/又は包まれ、前記ケイ素ナノ粒子及び前記SiOδは、前記多孔質炭素骨格の表面及び/又は孔路内に分布しており、前記多孔質炭素骨格とケイ素ナノ粒子との間は、C-O-Si結合を介して連結される。
【0021】
いくつかの実施例において、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料における、ケイ素元素の含有量を30~65wt%に、炭素元素の含有量を30~65wt%に、酸素元素の含有量を0.5~5wt%に、他の元素の含有量を0~5wt%に制御する。
【0022】
いくつかの実施例において、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料に対してXPSテストを行い、Al Kαを放射源とし、C 1sスペクトルにおける不定形のC-Cピークの結合エネルギーが284.7eVに位置することをピーク位置補正とし、高分解能C 1sスペクトルに、テストシステムに存在するC-Cピークが含まれるため、そのC-Siの分析に大きな誤差が存在し、そのため、その高分解能Si 2pスペクトルのみを分析する。前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料のXPSテストでの高分解能Si 2pスペクトルに対してデコンボリューション積分ピーク分析を行った結果には、結合エネルギーピーク値が103±0.5eVに位置するSi-Oのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.5~2であり、好ましくは0.8~1.5であることと、結合エネルギーピーク値が100.5±0.5eVに位置するSi-Cのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.01~1であり、好ましくは0.01~0.5であることとが含まれる。対応するピーク面積からそれぞれの結合形態が占める割合を計算することができる。
【0023】
いくつかの実施例において、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素骨格の孔構造における2~10nmの孔の体積が全孔体積を占める割合が50%より大きく、好ましくは、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素骨格の孔構造における2~10nmの孔の体積が全孔体積を占める割合が80%より大きい。前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素骨格の孔構造は、製造過程の前段階で多孔質炭素骨格を取得した後にテストして取得することができ、HF及び高濃度NaOH溶液などを用いて前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料におけるSi及びSiOδをエッチングした後に残りの多孔質炭素骨格をテストして取得することもでき、後者の場合、エッチング程度及び新たな孔の生成の可能性により、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素骨格の孔構造に対する把握に多少の偏りが生じるが、その性質をある程度反映することもできる。
【0024】
いくつかの実施例において、前記ケイ素ナノ粒子には、ケイ素結晶粒子及び/又は非晶質ケイ素が含まれ、好ましくはケイ素結晶粒子のサイズが5nm未満であり、さらに好ましくはケイ素結晶粒子のサイズが2nm未満である。XRD回折による結果における2θ=28.4°に位置するSi結晶の特徴的ピークの半値幅により計算し、使用された式はシェラー式である。炭素材料は2θ=26.6°付近に回折が存在するので、不定形の炭素は、一般に1つの小さなピークとして現れ、結晶粒子のサイズが2nm未満であるか或いは非晶質に近いケイ素ナノ粒子は、その2θ=28.4°でのSi結晶の特徴的ピークが炭素回折ピークと重なり、そのためXRD回折結果には顕著なSi結晶化ピークがない。高分解能TEMでケイ素ナノ粒子の形貌を観察することもでき、そのSi結晶に対応する格子縞集合中の格子縞の数により、個々のケイ素ナノ粒子の大きさを判断することができる。Si結晶のうち、最も強い回折ピーク2θ=28.4°に対応するSi(111)の結晶面間の距離は0.312nmであり、規則的な格子縞が6本未満である場合、対応するケイ素結晶粒子のサイズは2nm未満である。
【0025】
一方、前記ケイ素・酸素・炭素材料は、非晶質ケイ素或いはサイズが2nm未満のケイ素結晶粒子として現れるが、電極電気化学的過程において、ケイ素結晶粒子に再結合が発生する可能性があることにより、融併して大きい粒子を形成し、電極のサイクル性能に影響し、これに鑑み、本発明は、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に対してN2雰囲気下で温度上昇処理を行うとともに、XRDテストを行い、そのケイ素結晶粒子の成長状況を分析する、老化を促進してケイ素ナノ粒子の集まり状況を分析する方法を提供する。テストを経た後、複合材料に対して700℃、800℃、900℃でさらなる処理を行い、700℃で処理した後、2θ=28.4°で一定の結晶化ピークを表し、Si結晶が形成し始めたことを説明し、800℃で処理した後、XRD曲線におけるケイ素の結晶化ピークの強度が増加し、900℃で処理した複合材料サンプルにおけるSi結晶化ピークは、800℃で処理した結果とほぼ同じであり、Si結晶粒子の成長が限界に達したことを説明する。ケイ素の結晶化ピークの半値幅から、高温処理後の結晶粒子のサイズを計算することができ、それにより、電気化学的過程においてSi結晶粒子の融併と集まりが達成できる程度を間接的に反映する。本発明では、酸素含有物質を導入してケイ素ナノ粒子を分散させて、そのさらなる集まり、成長を阻止することで、多孔質炭素骨格の孔路構造も最終的にケイ素ナノ粒子のサイズを拘束する。上記のように、本発明は、複合材料をN2雰囲気下、800℃で処理した後のXRD結果により、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素ナノ粒子が電気化学的過程で大きくなる限界サイズを推定し、好ましくは、ケイ素ナノ粒子が電気化学的過程で大きくなる限界サイズを10nm未満に制御する。
【0026】
リチウムケイ素合金の体積効果を抑制することに対する完全にぎっしりしている材料の作用には限界があり、複合材料における適量の閉孔はケイ素の体積効果の緩和に役立ち、前記閉孔は、複合材料表面の内部に閉じられ、孔のいずれの点がいずれも材料表面に接触していない孔であり、前記表面は、N2分子が接触できる表面であり、即ち前記閉孔は、N2分子が入れない孔であるか、又はほぼ入れない孔であり、複合材料の内部に閉じられたこれらの孔は、ケイ素リチウム吸蔵の体積膨張のために緩衝空間を提供することができる。しかし、閉孔が多すぎると、材料の体積が大きくなり、それにより体積比容量が低下し、より重要なのは、閉孔が多すぎると、複合材料構造の強度が低下し、後続の圧ぺん過程で構造の崩壊につながる可能性があるため、閉孔の量が多すぎるのは望ましくない。閉孔は、吸着された分子が直接到達できないか又はほぼ直接到達できない領域に属することが原因で、通常の物理的吸着方法で取得することができず、例えばN2吸着により開孔及びその表面積のみを検出することができるように、この部分の孔及び表面は電解液と接触するため、材料の電極性能に不利である。閉孔の検出は、複合材料の真密度の測定により逆推定し、材料真密度が、同じ元素組成の完全にぎっしりしている材料の真密度未満である場合、閉孔が存在することを説明し、閉孔容積は、複合材料の真密度の逆数(閉孔+骨格の体積)から同じ元素組成の完全にぎっしりしている材料の真密度の逆数(骨格体積)を引いたものである。純黒鉛及びケイ素の密度は、いずれも2.2g/cm3より大きい。複合材料の真密度は、ヘリウム置換法及び/又は比重瓶法(アセトン液浸法)テストにより取得できる。本願は、比重瓶法を用いて複合材料の真密度を測定し、いくつかの実施例において、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の真密度は1.8~2.1g/cm3であり、一定量の閉孔を有していることを説明する。
【0027】
いくつかの実施例において、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料は、固体電解質及び/又は導電性ポリマーを含むコーティング層をさらに含む。具体的な固体電解質及び導電性ポリマーは、従来技術を参考でき、本願では詳細な説明を省略する。
【0028】
複合材料のタップ密度を向上させるために、破砕などの方法により複合材料の中央粒径D50を制御することができ、いくつかの実施例において、複合材料の中央粒径D50は2~12μmの間にある。
【0029】
本発明の別の典型的な実施形態では、炭素前駆体と孔形成剤とを混合して炭素化した後、多孔質炭素骨格材料を形成し、且つそれを破砕及び酸化処理し、適切な比表面及び孔構造を有する表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を得るステップS1と、ステップS1で得られた表面酸化層を含む多孔質炭素骨格に対して真空引きをし、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格が置かれている反応炉にケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入し、且つ前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格と接触させ、ケイ素及び酸素含有物質を多孔質炭素骨格の表面及び/又は孔路内に分散して沈積させ、且つ得られた材料を破砕整形し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得るステップS2と、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料1に対して高度酸化処理を行い、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得るステップS3と、を含むことを特徴とする前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造方法を提供する。
【0030】
上記の反応炉は、回転炉、取鍋炉、内釜炉、ローラーハース窯、プッシャー窯、密閉型の加熱炉(雰囲気箱状炉)又は管状炉のうちのいずれか1つ又は複数の組合せであり、ここで、ステップS2及びS3において、固気二相の接触方式は、固定床、移動床、流動床、沸騰床などの複数の方式のうちのいずれか1つ又は複数の組合せである。
【0031】
いくつかの実施例において、前記ステップS1において、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格の粒径は5~50μmであり、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格の比表面積が50~2000m2/gであり、孔容積が0.1~3.0cm3/gであり、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格の孔構造における2~10nmの孔の体積が全孔体積を占める割合が50%より大きく、及び/又は前記ステップS2は、具体的には、ステップS1の前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を真空度が10-2Paより低くなるまで、好ましくは10-6Paより低くなるまで真空引きし、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格が置かれた反応炉にケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入し、且つ150~700℃で前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格と5~100h接触させ、ケイ素及び酸素含有物質を多孔質炭素骨格の表面及び/又は孔路内に分散して沈積させること、及び、得られた材料を破砕整形して中央粒径が2~12μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得ることを含み、及び/又は前記ステップS3において、前記高度酸化処理には、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を、0~400℃で酸化性物質を含む溶液及び/又はガスと0.5~12h接触させることを含む。
【0032】
多孔質炭素骨格の孔サイズの分布は、ケイ素ナノ粒子のサイズに大きく影響し、適切な多孔質炭素骨格は、多いメソ孔(孔径2~50nm)を含み、且つ少量のミクロ孔(孔径が2nm未満である。)及びマクロ孔(孔径が50nmより大きい。)を含むべきであり、メソ孔及びマクロ孔はケイ素が沈積する主な領域であるべきであるが、過剰なマクロ孔は、ケイ素ナノ粒子が集まり、成長することを引き起こしやすい。いくつかの実施例において、本発明では、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格の比表面積が50~2000m2/gであり、孔容積が0.1~3.0cm3/gであり、前記表面酸化層の多孔質炭素骨格の粒径は5~50μmであり、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格の孔構造において、ミクロ孔の容積の全孔容積における割合が1~20%であり、メソ孔の容積の全孔容積における割合が40~90%であり、マクロ孔の容積の全孔容積における割合が0~10%であり、前記表面酸化層を含む多孔質炭素骨格の孔構造における2~10nmの孔の体積が全孔体積を占める割合が50%より大きく、好ましくは、2~10nmの孔体積が全孔体積を占める割合が80%より大きい。
【0033】
本発明の上記の表面酸化層を含む多孔質炭素骨格の製造方法は、異なる炭素前駆体及び/又は多孔質炭素骨格に応じて、対応する実現形態を選択することができる。
【0034】
いくつかの実施例において、前記ステップS1において、炭素前駆体と孔形成剤との均一な混合物を共に炭素化して多孔質炭素骨格材料を形成し、前記炭素前駆体は、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、澱粉、グリコーゲン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、尿素樹脂、フルフラール樹脂、フルフラールアセトン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アスファルトから選択される1つ又は複数であり、前記孔形成剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、オレイン酸、オレイルアミン、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリブロック共重合体、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、NH4HCO3、(NH4)2CO3、HNO3、H2SO4、LiOH、NaOH、KOHから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、前記ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリブロック共重合体は、P123、F127及び/又はF108から選択される。炭素前駆体と孔形成剤との混合に、当業者に周知の方法を用いてもよく、いくつかの実施例において、湿式ボールミル及び/又は乾式ボールミルを用いて炭素前駆体と孔形成剤とを混合し、いくつかの実施例において、炭素前駆体と孔形成剤とを共に水及び/又はエタノールに溶解し、超音波及び/又は撹拌などの方式で十分に混合してから乾燥させる。炭素前駆体と孔形成剤とを混合した後、先に予備安定化を行い、続いて炭素化を行う。予備安定化及び炭素化は、いずれも炭素材料の製造過程における通常のステップである。予備安定化は、酸化性雰囲気で行われ、温度が100~300℃であり、時間が0.1~48hであり、炭素化は、不活性ガス中で行われ、温度が600~1800℃であり、時間が0.5~10hであり、さらに好ましくは、炭素化の温度は800~1500℃であり、時間は2~5hである。
【0035】
多孔質炭素骨格材料を酸化処理して表面酸化層を生成することにより、ケイ素含有前駆体の効果的な沈積を促進し、前記酸化処理には、液相酸化及び/又は気相酸化が含まれる。好ましくは、前記ステップS1において、多孔質炭素骨格材料を酸化処理する方法には、液相酸化及び/又は気相酸化が含まれ、好ましくは、前記液相酸化のステップは、多孔質炭素骨格材料を酸素含有化合物及び/又は酸素含有化合物の水及び/又はエタノール溶液に入れ、超音波で0.5~2h分散させた後、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を真空乾燥及び焙焼するステップであり、前記酸素含有化合物は、HNO3、H2SO4、酢酸、プロピオン酸、ブタノール、酪酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸から選択されるいずれか1つ又は複数であり、好ましくは、前記気相酸化のステップは、多孔質炭素骨格材料を真空度が10-2Paより低くなるまで真空引きし、その後酸化性ガス及び不活性ガスを含む混合ガスを通入し、300~1600℃で0.1~5h接触させ、好ましくは、600~900℃で2~4h接触させるステップであり、前記酸化性ガスは、二酸化炭素、水蒸気、メタノール、エタノール、酢酸、プロパノール、ブタノール、アセトンから選択される1つ又は複数であり、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、前記酸化性ガスが前記混合ガスを占める割合が0.5~20%である。
【0036】
いくつかの実施例において、前記ステップS2の実施中に、前記ケイ素含有前駆体及び前記酸素含有前駆体を任意の体積比で組合せ、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、ハロゲン化シラン、ポリシラン、ポリメチルシラン、シロール(silole)及びその誘導体、シラフルオレン及びその誘導体から選択される1つ又は複数であり、好ましくは、前記酸素含有前駆体は、酸素、二酸化炭素、水蒸気、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体と酸素含有前駆体との体積比及び気相沈積温度の両方が、通入時間の経過につれ、間欠的及び/又は周期的な変化が存在し、好ましくは、ガス成分の変える前に、いずれも真空度が10-2Paより低くなるまで真空引き処理を行う。
【0037】
いくつかの実施例において、ステップS2では、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入しながら、不活性ガスを通入して、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の濃度を調節するとともに、適切な圧力を提供し、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数である。ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を不活性ガスと同時に通入する場合、三者を混合する方式で通入するか、又はそれぞれ通入した後に反応炉中で混合ガスを形成することができ、いずれの場合にしても、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を不活性ガスと同時に通入する限り、いずれもケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体と不活性ガスとの第1混合ガスを通入すると呼び、酸素含有前駆体は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数である。第1混合ガスにおけるケイ素含有前駆体の体積含有量は1~50%であり、酸素含有前駆体の体積含有量は0.5~10%であり、好ましくは、第1混合ガスを通入する際の熱処理温度は400~700℃であり、さらに好ましくは、第1混合ガスを通入する際の熱処理時間は5~50hである。
【0038】
いくつかの実施例において、ステップS2において、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入する前、通入した後、通入しながら、或いは通入する合間に不活性ガスを通入し、不活性ガスは、窒素ガスアルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数である。ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の濃度を調節するとともに、適切な圧力を提供する。ケイ素含有前駆体及び不活性ガスを同時に通入する場合、両者を混合した方式で通入するか、又はそれぞれ通入した後に反応炉中で混合ガスを形成することができ、いずれの場合にしても、ケイ素含有前駆体及び不活性ガスを同時に通入する限り、いずれもケイ素含有前駆体と不活性ガスとの第2混合ガスを通入すると呼び、第2混合ガスにおける前記ケイ素前駆体の体積含有量は1~50%である。酸素含有前駆体及び不活性ガスを同時に通入する場合、両者を混合した方式で通入するか、又はそれぞれ通入した後に反応炉中で混合ガスを形成することができ、いずれの場合にしても、酸素含有前駆体及び不活性ガスを同時に通入する限り、いずれも酸素含有前駆体と不活性ガスとの第3混合ガスを通入すると呼び、第3混合ガスにおける酸素含有前駆体の体積含有量は1~50%である。
【0039】
いくつかの実施例において、上記のステップS2は、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格が置かれている反応炉に不活性ガスを通入し、且つ反応炉の温度を400~700℃に上昇させるステップS2-1と、ケイ素含有前駆体と不活性ガスとの第2混合ガスを通入し、第2混合ガスにおけるケイ素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ反応炉を400~700℃に0.5~15h維持するステップS2-2と、ケイ素含有前駆体の通入しを中止し、反応炉の温度を150~600℃に調節するステップS2-3と、酸素含有前駆体と不活性ガスとの第3混合ガスを通入し、第3混合ガスにおける酸素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ反応炉を150~600℃に0.1~5h維持するステップS2-4と、ステップS2-1~ステップS2-4を2~50回繰り返すステップS2-5と、得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が2~12μmであるナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を獲得し、前記破砕整形は、ジェットミル、乾式ボールミル、湿式ボールミルなどの方式のうちの1つ又は複数により行われるステップS2-6と、を含む。
【0040】
いくつかの実施例において、ステップS3において、前記高度酸化処理は、液相酸化及び/又は気相酸化を含み、好ましくは、前記液相酸化のステップは、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を酸化性物質及び/又は酸化性物質の水及び/又はエタノール溶液に置き、超音波で0.5~2h分散させた後、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を40~200℃で0.5~24h送風乾燥した後、不活性雰囲気で、200~400℃で0.5~5h処理し、前記酸素含有化合物は、KMnO4、H2O2、HNO3、H2SO4、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸から選択されるいずれか1つ又は複数であり、前記液相酸化は、紫外線及び/又はミクロ波放射の作用下で行われるステップであり、好ましくは、前記気相酸化のステップは、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を真空度が10-2Paより低くなるまで真空引きし、その後、酸化性ガス及び不活性ガスを含む混合ガスを通入し、昇温速度を1~10℃/minに制御して室温から200~400℃まで上げ、且つ200~400℃で0.1~5h処理するステップであり、前記酸化性ガスは、酸素、オゾン、二酸化炭素、水蒸気から選択されるいずれか1つ又は複数であり、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、前記酸化性ガスが前記混合ガスを占める割合が0.5~20%である。
【0041】
いくつかの実施例において、ステップS3の前に、ステップS2で破砕して得られた前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1に対する酸処理及び/又はアルカリ処理過程を追加し、好ましくは、前記酸処理の方法は、酸を含む水/エタノール溶液に前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を分散させ、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体をろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥する方法であり、前記アルカリ処理の方法は、アルカリを含む水/エタノール溶液に前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を分散させ、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体をろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥する方法であり、前記酸は、HCl、H2SO4、HNO3、H3PO4のうちの1つ又は複数であり、前記アルカリは、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、NH3H2O、NH4HCO3、(NH4)2CO3、尿素などのうちの1つ又は複数である。
【0042】
いくつかの実施例において、ステップS3の後、得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料に対して真空処理及び炭素コーティングを行い、前記炭素コーティングの方式は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、プロピン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数を用いて得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を気相沈積するか、又は、液体炭素前駆体を用いて液相炭素コーティングを行うことであり、好ましくは、前記液体炭素前駆体は、樹脂、アスファルトなどから選択される。
【0043】
いくつかの実施例において、前記製造方法は、さらに、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料上に固体電解質及び/又は導電性ポリマーを包むステップを含む。
【0044】
本発明の別の典型的な実施形態では、負極材料の製造におけるナノケイ素・酸素・炭素複合材料の使用を提供し、前記ナノケイ素・酸素・炭素複合材料は、上記に記載のナノケイ素・酸素・炭素複合材料又は上記のいずれか1項に記載の製造方法で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料である。
【0045】
本発明の別の典型的な実施形態では、負極材料を含む負極を提供し、前記負極材料は、上記に記載のナノケイ素・酸素・炭素複合材料又は上記のいずれか1項に記載の製造方法で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料である。
【0046】
本発明の別の典型的な実施形態では、本発明は、負極を含む電気化学装置を提供し、前記負極は、上記の負極であり、好ましくは、前記電気化学装置はリチウムイオン二次電池である。
【発明の効果】
【0047】
(二)有益な効果
従来技術に比べ、下記のような有益な効果を有する。
本発明の技術的解決手段を使用すると、本願のナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素担体とケイ素粒子との間に、C-O-Siにより安定な結合が形成され、ケイ素ナノ粒子は、炭素担体の孔路内及び表面に均一に分散しており、且つ酸素含有物質より隔てられと拘束され、したがって、ケイ素粒子の沈積過程における団集及びケイ素粒子の充放電サイクルにおける体積変化及び可能な融併を効果的に抑制し、得られた複合材料により製造された負極を含むリチウムイオン二次電池は、高いグラム当たり容量、高い初回クーロン効率及び良好なサイクル性能などの優れた特性を兼備する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本願の一部を構成する明細書の添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するためのものであり、本発明の模式的な実施例及びその説明は、本発明を解釈するためのものであり、本発明を不当に限定するものではない
【
図1】本発明による実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の概略構造図を示す。
【
図2】本発明による実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のXRD回折図を示す。
【
図3】本発明による実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のHRTEM図を示す。
【
図4】本発明の実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を含む電極、実施例23の複合材料を含む電極及び比較例2の複合材料を含む電極の定電流充放電曲線を示す。
【
図5】本発明による実施例1、実施例23で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料、及び比較例2で複合材料を800℃、N
2雰囲気で処理した後のXRDスペクトル図を示す。
【
図6】実施例1のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を含む電極及び比較例2の複合材料を含む電極の半電池のサイクル性能のテスト結果を示す。
【
図7】本発明による実施例26で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の概略構造図を示す。
【
図8】本発明による実施例26で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のXPSテストでの高分解能Si 2pスペクトル及びそのデコンボリューション積分ピーク分析結果図を示す。
【
図9】本発明のナノケイ素・酸素・炭素複合材料の概略構造図である。
【
図10】実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料のXPSテストでの高分解能Si 2pスペクトル及びそのデコンボリューション積分ピーク分析結果である。
【
図11】実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料及びN
2雰囲気、800℃で処理した後に得られた材料のXRDパターンである。
【
図12】実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料の高分解能TEM画像である。
【
図13】実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を含む電極の半電池テスト結果の初回定電流充放電曲線である。
【
図14】実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を含む電極及び比較例2で得られたケイ素・酸素・炭素複合材料を含む電極の半電池のサイクル性能のテスト結果である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
なお、矛盾しない限り、本願の実施例及び実施例の特徴を互いに組み合わせることができる。以下、添付図面を参照しながら、実施例と合わせて本発明について詳細に説明する。
【0050】
本願の背景で分析したように、従来技術のケイ素・炭素複合材料では、製造過程においてケイ素ナノ粒子の多孔質担体への効果的な沈積及び均一な分散を実現するのが困難であるので、充放電時に、電極に顕著な体積膨張と収縮が発生することを抑制し難く、最終的に、電極のサイクル性能の悪化につながる。また、電池の充放電時に、隣接するケイ素粒子同士が融併する可能性があり、電極のサイクル性能のさらなる悪化につながる。本願は、ケイ素・炭素複合材料の製造過程におけるケイ素ナノ粒子の急速成長と団集を制御して、均一に分散しているケイ素ナノ粒子を含む複合材料を取得し、且つ電極の充放電時の体積効果及び隣接するケイ素ナノ粒子の融併を制御するために、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料、その製造方法、負極及び電気化学装置を提供する。
【0051】
本願の一典型的な実施形態では、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を提供し、当該複合材料は、(Cx1-Oy1)-(Siz-Oy2-Cx2)を提供し、ここで、Cx1-Oy1は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材であり、多孔質炭素基材及びその表面酸化層を含み、x1は、炭素の化学量数であり、y1は、表面酸化層中の酸素の化学量数であり、0.001≦y1/x1≦0.05であり、Siz-Oy2-Cx2は、ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素を含み、そのケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散分布し、酸素含有物質は、SiOδ形態で存在し、0<δ≦2、0.1≦z/x1≦2、0.01≦y2/z≦0.15、0≦x2/z≦0.15である。
【0052】
本願のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料中に、ケイ素ナノ粒子が均一に分散しており、且つ酸素含有物質及び選択可能な炭素により隔てられと拘束され、そのため、ケイ素ナノ粒子の沈積中の団集及びケイ素粒子の充放電サイクルにおける体積変化及び可能な融併を効果的に抑制し、得られた複合材料により製造された負極を含むリチウムイオン二次電池は、高いグラム当たり容量、高い初回クーロン効率及び良好なサイクル性能を有する。
【0053】
上記のCx1-Oy1は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材であり、多孔質炭素基材及びその表面酸化層を含み、炭素物質Cを主なものとし、表面酸化層は、多孔質炭素基材の不完全炭素化後に表面に残された少量の酸素含有官能基により形成されること及び/又は多孔質炭素基材を酸化処理した後に形成されることができ、その役割は、C-O-Si化学作用の形成により、よりよいケイ素沈積サイトを提供することである。x1は、そのうちの炭素の化学量数であり、分子式においては1つの代数にすぎず、関連物質の含有量をより良く表現することが目的である。多孔質炭素基材における表面酸化層の含有量は、そのうちの酸素元素と多孔質炭素基材中の炭素元素とのモル比値y1/x1で定義と表現され、0.001≦y1/x1≦0.05である。y1/x1が大きすぎると、余りの酸素がリチウム吸蔵過程にリチウムと不可逆反応を起こし、可逆的なリチウム容量の損失につながり、電池の初回効率及びサイクル効率が低下し、小さすぎると、効果的なC-O-Si化学接触及び/又は結合を形成できず、後続のケイ素沈積過程に大きなケイ素粒子集まりを形成しやすくなる。
【0054】
上記のSi
z-O
y2-C
x2は、上記の多孔質炭素基材C
x1-O
y1孔路内及び表面に均一に分散しているケイ素ナノ粒子と、酸素含有物質と、選択可能な炭素とであり、ケイ素ナノ粒子は、酸素含有物質及び選択可能な炭素と均一に交互して存在し、酸素含有物質は、SiO
δ(0<δ≦2)形態で存在し、当該Si
z-O
y2-C
x2構造成分をSi-O-C(Si-SiO
δ-C)構造単位の繰り返しと見なすことができ、(Si
z1-O
y-C
x)
n(n≧1)と書くことができ、
図1の概略図に示すとおりである。シラン分解は、熱重合の鎖反応プロセスであるため、制御しない結果は、シランが急速に集まり、成長することであり、本発明において、Siナノ粒子の間に酸素含有物質及び選択可能な炭素が存在し、即ち、少量の酸素含有物質及び選択可能な炭素でケイ素ナノ粒子を分散、拘束して、ケイ素ナノ粒子が沈積過程に制御不能に集まり、成長することを回避し、且つ充放電時のケイ素の体積膨張と収縮及びケイ素粒子同士の融併を効果的に制御する。高い複合材料グラム当たり容量及び高い初回効率を取得できるためには、ケイ素の負荷量が適切な範囲内にある必要があり、本発明では、0.1≦z/x1≦2に制御し、好ましくは0.2≦z/x1≦1であり、より好ましくは0.3≦z/x1≦0.6である。上記のz/x1の値を利用して、複合材料の物理と化学性質を制御することにより、以下のことを回避する。ケイ素の負荷量が低すぎると、高い複合材料グラム当たり容量を取得するのに十分ではなく、且つ多孔質炭素基材にまだ多くの孔構造が残されており、最終製品の比表面積が増加し、電池の初回効率が低下するとともに、材料強度の低下にもつながり、圧ぺんと電極反応中に、構造崩壊が発生しやすく、ケイ素の負荷量が高すぎると、ケイ素粒子が多孔質炭素基材の外面に集まり、成長することにつながりやすく、大きいケイ素粒子では、充放電時の複合材料電極の体積効果を効果的に制御できず、電池のサイクル性能が低下する。
【0055】
Siz-Oy2-Cx2中の酸素含有物質及び選択可能な炭素は、ケイ素粒子の分散のために用いられ、ケイ素粒子のナノ化を実現するとともに、ケイ素ナノ粒子を拘束する役割も果たす。酸素含有物質は、SiOδの形態でナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に存在し、ケイ素ナノ粒子の充放電時の体積膨張及び収縮を拘束することができ、且つケイ素ナノ粒子が充放電時に融併して大粒子を形成することにより、電極のサイクル性能が悪化することを防止する。酸素含有物質及び選択可能な炭素の量が多すぎることは好ましくなく、多すぎると全体Si含有量が低下し、複合材料電極のグラム当たり容量及び初回効率がいずれも低下し、少なすぎると、効果的な分散と拘束の役割を果たすことができないため、0.01≦y2/z≦0.15、0≦x2/z≦0.15に制御する。
【0056】
以上を纏めると、本発明は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材Cx1-Oy1、及びその孔路の内部及び外面に均一に分散しているSiz-Oy2-Cx2の2つの構造の組成分を含むナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を提供し、その多孔質炭素基材の表面酸化層は、C-O-Siの形成に役立ち、それにより、より安定なケイ素負荷が実現され、ケイ素ナノ粒子及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素がSiz-Oy2-Cx2に均一に分散しており、酸素含有物質及び選択可能な炭素によりケイ素物質が隔てられ、(Siz1-Oy-Cx)n(n≧1)に類似する繰り返し構造を形成し、ケイ素粒子の効果的なナノ化及び均一な分散を実現すると共に、酸素含有物質及び選択可能な炭素もケイ素粒子に対する拘束役割を果たす。
【0057】
以上のように、複合材料中の酸素材料の含有量をより適切な範囲に制御すると、酸素含有量が高すぎることによる全体Si含有量の低下、電極のグラム当たり容量及び初回効率の低下という問題、且つ、低すぎるとケイ素粒子を効果的に分散と拘束する役割を果たすことができないという問題を回避できる。いくつかの実施例において、複合材料の酸素総含有量は、0.5wt%~5wt%である。
【0058】
いくつかの実施例において、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のXPSテストでの高分解能Si 2pスペクトルに対してデコンボリューション積分ピーク分析を行った結果には、結合エネルギーピーク値が103±0.5eVに位置するSi-Oのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.5~2であり、好ましくは0.8~1.5であることと、結合エネルギーピーク値が100.5±0.5eVに位置するSi-Cのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.01~1であり、好ましくは0.01~0.5であることとが含まれる。対応するピーク面積からそれぞれの結合形態が占める割合を計算することができる。
【0059】
いくつかの実施例において、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素ナノ粒子には、ケイ素結晶粒子及び/又は非晶質ケイ素が含まれ、好ましくはケイ素結晶粒子のサイズが5nm未満であり、さらに好ましくはケイ素結晶粒子のサイズが2nm未満である。XRD回折による結果における2θ=28.4°に位置するSi結晶の特徴的ピークの半値幅により計算し、使用された式はシェラー式である。炭素材料が2θ=26.6°付近で回折が存在するため、不定形の炭素は、通常、1つの小さなピークとして表現され、結晶粒子のサイズが2nm未満であるか又は非晶質に近いケイ素ナノ粒子について、2θ=28.4°処のSi結晶の特徴的ピークは、炭素の回折ピークと重なるため、XRD回折結果に顕著なSi結晶化ピークがない。実際には、本発明のシラン蒸着により取得されたケイ素・酸素・炭素材料のXRD回折結果には、いずれにも顕著なSi結晶化ピークがなく、即ち非晶質ケイ素(
図2のとおり)であるのが一般的であり、TEM(
図3)も、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料が主に不定形の構造を呈し、少量の極めて小さなケイ素結晶粒子が存在し、その格子縞間の距離は約0.314nmであり、Si(111)の結晶面間の距離に近いことを示す。規則的な格子縞は、4~5個のみであり、対応するケイ素結晶粒子のサイズは2nm未満である。
【0060】
しかし、一方、ケイ素・酸素・炭素材料がいずれも非晶質ケイ素として表れるが、酸素含有量が異なることにより完全に異なる電気化学的性質を示し(
図4)、上記の酸素含有量により容量及び初回効率が異なる可能性で示されるだけでなく、より顕著なのは、酸素含有量の高い複合材料は、顕著な傾斜型リチウム放出曲線を表し、これは異なる複合材料におけるケイ素粒子の集まり状態(ケイ素ナノ粒子のサイズ)と関係があると推測される。ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料は、緻密な材料であり、ケイ素・酸素・炭素は、均一に分布して、SEM及びTEMの観察によりケイ素粒子の集まり状態を正確に取得することができず、これに鑑み、本発明は、ケイ素粒子の集まり状態を間接的に分析する方法を提供し、その結果を複合材料の電気化学的性能に効果的に関連付けることができ、即ち、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料をN
2雰囲気下、800℃で処理し、且つXRDテストを行うことにより、そのケイ素結晶粒子の成長状況を分析する。テストによると、複合材料を700℃、800℃、900℃で一層処理し、800℃で処理した後のXRD曲線において、ケイ素の結晶化ピークが基本的に安定しており、温度の上昇につれて変化することがなくなる。ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素粒子が、高温条件で、非晶質から結晶へ変化し、且つさらに結晶粒子が成長するが、この処理条件では、複合材料における多孔質炭素基材がまだ顕著に変化することがなく、依然として不定形の炭素材料であり、この場合、ケイ素の結晶化ピークの半値幅から高温処理後の結晶粒子のサイズを計算することができ、ケイ素の結晶化ピークと不定形の炭素ピークとの相対的な強度から、どれだけの結晶粒子が結晶化に関与したかを推測することができ、これによりナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素粒子の集まり状態を間接的に反映する。高温処理後のXRDテスト結果は
図5に示され、これから、酸素含有量が高いほど、高温処理後のケイ素結晶粒子のサイズがより小さく、結晶化程度もより低いことが分かり、これは、複合材料におけるケイ素ナノ粒子のサイズが小さいほど、対応して
図4の充放電曲線では傾きがより大きいリチウム放出曲線として表れることを反映する。
【0061】
ケイ素ナノ粒子が小さいほど、粒子内部の不均一な変形勾配による不可逆的な破壊を防止する効果がよりよく、且つ、多孔質炭素担体に均一に分散している場合、炭素担体における黒鉛状構造及びその孔構造は、ケイ素リチウム吸蔵時の体積膨張に一定の緩衝を提供することができる。しかし、複合材料の製造過程において、ケイ素結晶粒子がある程度集まってて大きなケイ素ナノ粒子を形成することが避けられない。本発明では、主に、酸素含有物質及び選択可能な炭素の導入によりケイ素ナノ粒子を分散させてさらなる集まりと成長を阻止し、また、多孔質炭素基材の孔路構造も、最終的にケイ素ナノ粒子のサイズを拘束する。以上のように、ケイ素粒子の大きさの直接検出と決定が難しく、本発明は、複合材料をN2雰囲気下、800℃で処理した後のXRD結果により、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素ナノ粒子のサイズを推定する。好ましくは、ケイ素ナノ粒子のサイズを20nm未満に制御し、さらに好ましくはケイ素ナノ粒子のサイズは10nm未満である。
【0062】
大きすぎる比表面積により、複合材料電極と電解液との接触面積が大きくなり、界面副反応が増加することになり、SEI膜の形成もより多くの可逆的なリチウムを消費し、それにより、電池の初回クーロン効率及びサイクル性能が低下することになる。いくつかの実施例において、複合材料の比表面積(N2吸着、複数点BET)は、0.1~15m2/gであり、全孔容積(N2吸着、p/p0>0.999において測定する。)は0.001~0.05cm3/gである。好ましくは、複合材料の比表面積は0.1~10m2/gであり、全孔容積は0.001~0.035cm3/gである。低い比表面積及び全孔容積により、複合材料電極における界面副反応の発生が効果的に抑制される。
【0063】
リチウムケイ素合金の体積効果を抑制することに対する完全にぎっしりしている材料の役割は限られており、複合材料における適量の閉孔はケイ素の体積効果を緩和するのに有利であるが、多すぎる閉孔により材料の体積が大きくなり、それにより、体積比容量が低下し、より重要なのは、多すぎる閉孔により複合材料の構造強度が低下し、後続の圧ぺん過程に、構造崩壊の恐れがあり、そのために、閉孔の量が多すぎると好ましくない。閉孔は、吸着分子が直接到達できない領域に属するため、従来の物理的な吸着方法で取得できず、例えば、N2吸着は、開口孔及びその表面積のみを検出でき、この部分の孔及び表面は電解液と接触するため、材料の電極性能に不利である。閉孔の検出は、複合材料の真密度の測定によって逆行され、材料真密度が同じ元素組成の完全にぎっしりしている材料の真密度未満である場合、閉孔が存在することを説明し、閉孔容積は、複合材料真密度の逆数(閉孔+骨格の体積)から同じ元素組成の完全にぎっしりしている材料の真密度の逆数(骨格体積)を引いたものである。純黒鉛及びケイ素の密度は、両方とも2.2g/cm3より大きい。複合材料の真密度は、ヘリウム置換法及び/又は比重瓶法(アセトン液浸法)テストにより取得できる。本願は、比重瓶法を用いて複合材料の真密度を測定し、いくつかの実施例において、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の真密度は1.8~2.1g/cm3であり、一定量の閉孔があることを説明する。
【0064】
いくつかの実施例において、複合材料は、固体電解質及び/又は導電性ポリマーを含むコーティング層をさらに含む。その電気性能を一層向上させる。具体的な固体電解質及び導電性ポリマーについては、従来技術を参照でき、本願では詳細な説明を省略する。
【0065】
複合材料のタップ密度を向上させるため、破砕などの方法により複合材料の中央粒径D50を制御でき、いくつかの実施例において、複合材料の中央粒径D50は、4~12μmの間にある。
【0066】
本願の別の典型的な実施形態では、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の製造方法を提供し、当該製造方法は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を提供し、表面酸化層を含む多孔質炭素基材中の酸素と炭素とのモル比は0.001~0.05であるステップS1と、表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉にケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入し、且つ150~700℃で表面酸化層を含む多孔質炭素基材と5~100h接触させ、ケイ素及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素を多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散して沈積させ、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得るステップS2と、を含む。
【0067】
炭素前駆体炭素化及びシラン蒸着は、当業者が知っている技術的手段であるが、実際の操作においては均一に分散しているケイ素ナノ粒子沈積を取得することが非常に難しく、これは、例えば炭素前駆体の構造、処理方法、炭素化条件、炭素化後の表面性能、ケイ素沈積方法及び条件などの多くの理由に関連する。シラン分解は、熱重合の鎖反応であり、低温では反応が発生し難く、シランの利用率が低いが、高温では分解速度が速く、ケイ素粒子の急速成長が避けられない。本願の製造方法は、まず、少量の酸素含有官能基を多孔質炭素基材表面に保留したもの、即ち本願の表面酸化層を含む多孔質炭素基材を提供し、当該表面酸化層は、シラン分子の吸着と反応を促進することができ、シランの分解と沈積過程において、酸素含有前駆体を導入して、ケイ素ナノ粒子に対する酸化分隔層を形成し、ケイ素ナノ粒子の均一な分散が実現される。
【0068】
上記の製造方法は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を担体及び/又はブラケット(優先権書類(CN出願番号が202210114895.6である。)における表面酸化層を含む多孔質炭素骨格に相当)として、その表面及び孔構造にケイ素ナノ粒子及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素を沈積させ、ここで、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、ケイ素ナノ粒子沈積層を隔て及び拘束する役割を果たし、沈積の最後に、多孔質炭素基材の孔路内に少量の閉孔が残される可能性がある。そのため、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料中に均一に分散している拘束されたケイ素ナノ粒子の、リチウム吸蔵及びリチウム放出過程における体積効果を効果的に緩衝することができ、且つ充放電時のケイ素ナノ粒子の融併現象が抑制され、材料強度が向上し、当該ケイ素・酸素・炭素複合負極材料を含む電気化学装置の電気化学的性能を向上させるのに役立つ。
【0069】
上記のステップS2において、表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉にケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入する前に、表面酸化層を含む多孔質炭素基材に対して真空引き処理又は真空引きしない処理を行ってもよく、ここで、真空引き処理を行うと、初期にケイ素含有前駆体を沈積する速度を加速することができる。
【0070】
上記の製造方法で得られた複合材料の構造、組成及び物理的性能については、前述の複合材料の構造、組成及び物理的性能を参照でき、ここでは詳細な説明を省略する。
【0071】
上記の反応炉は、回転炉、取鍋炉、内釜炉、ローラーハース窯、プッシャー窯、密閉型の加熱炉(雰囲気箱状炉)又は管状炉のうちのいずれか1つ又は複数の組合せであり、ここで、ステップS2において、固気二相の接触方式は、固定床、移動床、流動床、沸騰床などの複数の方式のうちのいずれか1つ又は複数の組合せである。
【0072】
本願の上記の表面酸化層を含む多孔質炭素基材の製造方法は、異なる炭素前駆体及び/又は多孔質炭素基材に応じて、対応する実現形態を選択することができる。
【0073】
いくつかの実施例において、上記のステップS1は、炭素前駆体に対して予備安定化を行い、予備安定化された前駆体を得ることであって、炭素前駆体は、単糖、二糖、多糖、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、尿素樹脂、フルフラール樹脂、フルフラールアセトン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリビニルアルコール及びアスファルトから選択される1つ又は複数であり、予備安定化は、第1酸化性ガス及び不活性ガスを含む第4混合ガス中で行われ、第1酸化性ガスは酸素及び/又はオゾンであり、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、予備安定化の温度が100~300℃であり、時間が0.1~48hであり、好ましくは、予備安定化の温度が170~220℃であり、時間が1~48hであることと、予備安定化された前駆体を炭素化し、多孔質炭素基材を得ることであって、炭素化は不活性ガス中で行われ、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、好ましくは炭素化の温度が600~1800℃であり、時間が0.5~10hであり、さらに好ましくは炭素化の温度が800~1500℃であり、時間が2~5hであることと、を含む。炭素化過程において、炭素化条件を調節し、一部の酸素含有官能基を酸化層として保留することができる。又は、多孔質炭素基材を酸化し、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を得る。
【0074】
以上の予備安定化及び炭素化は、両方とも炭素材料製造過程における、従来のステップであり、優先権書類(CN出願番号が202210114895.6である)における予備安定化及び炭素化は、以上の予備安定化及び炭素化と類似する。
【0075】
本願の一実施例において、上記のステップS1において、表面酸化層を含む多孔質炭素基材の製造方法は、炭素前駆体及び孔形成剤を混合して炭素化させたと、炭素化後の材料を形成し、且つ炭素化後の材料に対して破砕及び酸化処理を行うことである。
【0076】
具体的には、好ましくは上記のステップS1は、炭素前駆体と孔形成剤との均一な混合物を予備安定化させ、予備安定化された材料を得ることと、予備安定化された材料を炭素化させ、多孔質炭素基材を得ることと、多孔質炭素基材に対して破砕及び酸化を行い、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を得ることと、を含む。炭素前駆体は、ブドウ糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、乳糖、シクロデキストリン、澱粉、グリコーゲン、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、尿素樹脂、フルフラール樹脂、フルフラールアセトン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、アスファルトから選択される1つ又は複数であり、孔形成剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、オレイン酸、オレイルアミン、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリブロック共重合体、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、NH4HCO3、(NH4)2CO3、HNO3、H2SO4、LiOH、NaOH、KOHなどから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリブロック共重合体は、P123、F127及び/又はF108から選択される。炭素前駆体と孔形成剤との混合は、当業者が熟知している方法を用いることができ、いくつかの実施例において、炭素前駆体と孔形成剤とを湿式ボールミル及び/又は乾式ボールミルを用いて混合し、いくつかの実施例において、炭素前駆体と孔形成剤とを共に水及び/又はエタノールに溶解した後、超音波及び/又は撹拌などの方式で十分に混合してから乾燥させる。予備安定化及び炭素化は、両方とも炭素材料製造過程における従来のステップである。予備安定化は、酸化性雰囲気で行われる場合、温度が100~300℃であり、時間が0.1~48hであり、炭素化が不活性ガス中で行われる場合、温度が600~1800℃で、時間が0.5~10hであり、さらに好ましくは炭素化の温度が800~1500℃であり、時間が2~5hである。
【0077】
いくつかの実施例において、上記の酸化は、第2酸化性ガス及び不活性ガスを含む第5混合ガス中で行われ、第2酸化性ガスは、酸素、二酸化炭素、水蒸気から選択されるいずれか1つ又は複数であり、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、酸化の温度が300~1600℃であり、時間が0.1~5hであり、さらに好ましくは酸化の温度が600~900℃であり、時間が2~4hである。孔構造をできるだけ多く残す上で、安定な酸化層を形成する。
【0078】
別のいくつかの実施例において、上記のステップS1は、さらに、多孔質炭素基材を直接酸化し、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を得ることを含み、多孔質炭素基材は、軟質炭素、硬質炭素、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、カーボンナノチューブ、炭素繊維、メソカーボンミクロビーズから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、酸化は、第2酸化ガス及び不活性ガスを含む第5混合ガス中で行われ、第2酸化性ガスは、酸素、二酸化炭素、水蒸気から選択されるいずれか1つ又は複数であり、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、酸化の温度が300~1600℃であり、時間が0.1~5hであり、さらに好ましくは酸化の温度が600~900℃であり、時間が2~4hである。即ち、従来技術における多孔質炭素素材料を基材として上記の酸化を行っても、本願の表面酸化層を含む多孔質炭素基材を得ることができる。
【0079】
いくつかの実施例において、上記の第2酸化性ガスは、さらに、メタノール、エタノール、酢酸、プロパノール、ブタノール、アセトンから選択されるいずれか1つ又は複数であってもよく、多孔質炭素基材を酸化する前に、多孔質炭素基材に対して真空引き処理又は真空引きしない処理を行うことができ、多孔質炭素基材に対して真空引きを行うと、その表面を清浄にすることができ、酸化の進行により有利である。
【0080】
上記の酸化において、第2酸化性ガスと不活性ガスとの割合については、従来技術を参考にすることができるが、一般に、多孔質炭素素材料の焼損を避けるために、不活性ガスが主な部分を占めるのが主流であり、例えば、第1活性酸素ガスと不活性ガスとを1:99~20:80の体積比で混合し、好ましくは、第2酸化性ガスの第5混合ガスに対する割合が0.5~20%である。
【0081】
又のいくつかの実施例において、上記の酸化は、酸素含有化合物及び/又は酸素含有化合物の水及び/又はエタノール溶液中で行われ、酸素含有化合物は、HNO3、H2SO4、酢酸、プロピオン酸、ブタノール、酪酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸から選択されるいずれか1つ又は複数であり、好ましくは、酸化ステップは、多孔質炭素基材を酸素含有化合物及び/又は酸素含有化合物の水及び/又はエタノール溶液に入れ、超音波で0.5~2h分散させた後、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥及び焙焼することである。
【0082】
ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料は、多孔質炭素を基材とし、大きな比表面積及び豊富な孔構造を有し、ケイ素ナノ粒子が沈積する領域を提供する。多孔質炭素基材の比表面積及び孔分布は、ケイ素の沈積効果及び複合材料の比表面積に直接影響する。ケイ素ナノ粒子への十分な負荷を実現するとともに、比表面積が大きすぎることによる副反応が過剰になる問題を回避する必要もある。適切な多孔質炭素基材は、多いメソ孔(孔径2~50nm)を含有し、且つ少量のミクロ孔(孔径が2nm未満)及びマクロ孔(孔径が50nmより大きい)を含有するべきであり、メソ孔及びマクロ孔は、ケイ素が沈積する主要領域であるべきであるが、過剰なマクロ孔は、ケイ素粒子が孔内に集まることを招きやすい一方、ケイ素粒子がマクロ孔をフル充填することができないと、最終の複合材料に一部の隙間構造が残され、それにより比表面積が大きすぎて要件を満たすことができず、適量のミクロ孔により、ケイ素が孔の開口に沈積して閉孔を形成する可能性があり、適量の閉孔は、ケイ素のリチウム吸蔵過程における体積膨張を緩和するのに有利であるが、閉孔が多すぎると、材料の構造強度が低下することになる。いくつかの実施例において、表面酸化層を含む多孔質炭素基材の比表面積が50~2000m2/gであり、孔容積が0.1~3.0cm3/gであり、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔を含み、好ましくは、そのうちのミクロ孔容積の全孔容積における割合が1~40%であり、メソ孔容積の全孔容積における割合が30~80%であり、マクロ孔容積の全孔容積における割合が1~40%である。いくつかの実施例において、表面酸化層を含む多孔質炭素基材の比表面積が100~1000m2/gであり、孔容積が0.3~1.5cm3/gであり、好ましくは、ミクロ孔容積の全孔容積における割合が1~20%であり、メソ孔容積の全孔容積における割合が60~80%であり、マクロ孔容積の全孔容積における割合が1~20%である。ケイ素ナノ粒子及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素の多孔質炭素基材における十分な負荷が実現されることにより、得られた複合材料が適切なケイ素含有量及び比表面積を有する。
【0083】
ケイ素ナノ粒子に対する十分な遮断を実現するために、いくつかの実施例において、上記のステップS2の実施中に、ケイ素含有前駆体と酸素含有前駆体とを任意の体積比で組み合わせ、好ましくは、ケイ素含有前駆体は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、ハロゲン化シラン、ポリシラン、シロール及びその誘導体、シラフルオレン及びその誘導体などから選択される1つ又は複数であり、好ましくは、酸素含有前駆体は、酸素、二酸化炭素、水蒸気、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数である。
【0084】
いくつかの実施例において、ステップS2において、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入しながら、不活性ガスを通入し、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の濃度を調節するとともに、適切な圧力を提供し、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数である。ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を不活性ガスと同時に通入する場合、三者は、混合した方法で通入されるか、又はそれぞれ通入された後に反応炉中で混合ガスを形成し、いずれの場合にしても、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を不活性ガスと同時に通入する限り、いずれもケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体と不活性ガスとの第1混合ガスを通入すると呼ばれ、酸素含有前駆体は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数であり、第1混合ガスにおいて、ケイ素含有前駆体の体積含有量は1~50%であり、酸素含有前駆体の体積含有量は0.5~10%であり、好ましくは、第1混合ガスを通入する際の熱処理温度は400~700℃であり、さらに好ましくは、第1混合ガスを通入する際の熱処理時間は5~50hである。
【0085】
好ましくは、ステップS2において、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入する前、通入した後、通入しながら、或いは通入する合間に不活性ガスを通入し、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数である。ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の濃度を調節するとともに、適切な圧力を提供する。ケイ素含有前駆体及び不活性ガスを同時に通入する場合、両者を混合した方式で通入するか、又はそれぞれ通入した後に反応炉中で混合ガスを形成することができ、いずれの場合にしても、ケイ素含有前駆体及び不活性ガスを同時に通入する限り、いずれもケイ素含有前駆体と不活性ガスとの第2混合ガスを通入すると呼び、第2混合ガスにおけるケイ素前駆体の体積含有量は1~50%である。酸素含有前駆体及び不活性ガスを同時に通入する場合、両者を混合した方式で通入するか、又はそれぞれ通入した後に反応炉中で混合ガスを形成することができ、いずれの場合にしても、酸素含有前駆体と不活性ガスとを同時に通入する限り、いずれも酸素含有前駆体と不活性ガスとの第3混合ガスを通入すると呼び、第3混合ガスにおける酸素含有前駆体の体積含有量は1~50%である。
【0086】
いくつかの実施例において、ステップS2において、温度がケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の濃度にしたがって変化する。ケイ素及び酸素の高効率沈積を実現するために、さらに好ましくは、ケイ素含有前駆体を通入する際の熱処理温度は400~700℃であり、酸素含有前駆体を通入する際の熱処理温度は150~600℃である。
【0087】
いくつかの実施例において、上記のステップS2は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉に不活性ガスを通入し、且つ反応炉の温度を400~700℃に上昇させるステップS2-1と、ケイ素含有前駆体と不活性ガスとの第2混合ガスを通入し、第2混合ガスにおけるケイ素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ反応炉を400~700℃に0.5~15h維持するステップS2-2と、ケイ素含有前駆体の通入しを中止し、反応炉の温度を150~600℃に調節するステップS2-3と、酸素含有前駆体と不活性ガスとの第3混合ガスを通入し、第3混合ガスにおける酸素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ反応炉を150~600℃に0.1~5h維持するステップS2-4と、ステップS2-1~ステップS2-4を2~50回繰り返すステップS2-5と、を含む。
【0088】
いくつかの実施例において、上記の製造方法は、ステップS2のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を破砕分級し、中央粒径が4~12μmのナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を得るステップS3をさらに含み、好ましくは、破砕分級の方法は、人工研磨、機械研磨、ボールミル、ジェットミルのうちのいずれか1つ又は複数である。複合材料のタップ密度を調節するためである。
【0089】
上記の破砕分級は、優先権書類(CN出願番号が202210114895.6である)におけるステップS2の破砕整形に相当する。
【0090】
いくつかの実施例において、上記の製造方法は、さらに、ステップS3のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対して高度酸化処理を行うステップS4を含み、好ましくは、高度酸化処理には、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を、酸化性物質を含む溶液及び/又はガスと0~400℃で0.5~12h接触させることが含まれる。
【0091】
好ましくは、上記のステップS4において、固気二相の接触方式は、固定床、移動床、流動床、沸騰床などの複数の方式のうちのいずれか1つ又は複数の組合せである。
【0092】
いくつかの実施例において、上記のステップS4において、高度酸化処理には、液相酸化及び/又は気相酸化が含まれ、好ましくは、液相酸化のステップは、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を酸化性物質及び/又は酸化性物質の水及び/又はエタノール溶液に入れ、超音波で0.5~2h分散させた後、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を40~200℃で0.5~24h送風乾燥させた後、不活性雰囲気で、200~400℃で0.5~5h処理することであり、酸素含有化合物は、KMnO4、H2O2、HNO3、H2SO4、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸から選択されるいずれか1つ又は複数であり、液相酸化は、紫外線及び/又はミクロ波放射の作用下で行われ、好ましくは、気相酸化のステップは、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を真空度が10-2Paより低くなるまで真空引きし、その後、酸化性ガス及び不活性ガスを含む混合ガスを通入し、昇温速度を1~10℃/minに制御して室温から200~400℃まで上げ、且つ200~400℃で0.1~5h処理し、酸化性ガスは、酸素、オゾン、二酸化炭素、水蒸気から選択されるいずれか1つ又は複数であり、不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、酸化性ガスが混合ガスを占める割合が0.5~20%である。
【0093】
いくつかの実施例において、上記のステップS4の前に、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対する酸処理及び/又はアルカリ処理過程を追加し、好ましくは、酸処理の方法は、酸を含む水/エタノール溶液にナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を分散させ、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、ろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥することであり、アルカリ処理の方法は、アルカリを含む水/エタノール溶液にナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を分散させ、0~50℃で0.5~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、ろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥することであり、酸は、HCl、H2SO4、HNO3、H3PO4のうちの1つ又は複数であり、アルカリは、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、NH3H2O、NH4HCO3、(NH4)2CO3、尿素のうちの1つ又は複数である。
【0094】
製造された複合材料の電気化学的性能を一層向上させるために、いくつかの実施例において、好ましくは上記の製造方法は、さらに、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料上に固体電解質及び/又は導電性ポリマーを包むステップS5を含む。
【0095】
上記の固体電解質及び導電性ポリマーは、いずれも、従来の対応する物質を採用すればよく、ここでは詳細な説明を省略する。
【0096】
なお、ステップS5でいうナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料は、比較的広い意味を有し、即ち、S2でいうナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料と、ステップS3でナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を一層分級処理して得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子と、ステップS4でナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対してさらなる高度酸化処理を行って得られた酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料と、ステップS4の前にナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対して酸処理及び/又はアルカリ処理を行って得られた酸及び/又はアルカリ処理後の高度に酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料とのうちのいずれか1つである。
【0097】
いくつかの実施例において、上記の製造方法は、さらに、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に対して真空処理及び炭素コーティングを行うステップS6を含み、炭素コーティングの方法は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、プロピン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数を用いて複合材料に対して気相堆積を行うか、又は、液体炭素前駆体を用いて液相炭素コーティングを行う方法であり、好ましくは、液体炭素前駆体は、樹脂、アスファルトから選択される。
【0098】
なお、ステップS6でいうナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料は、比較的広い意味を有し、即ち、ステップS3でナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に対してさらなる分級処理を行って得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子と、ステップS4でナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対してさらなる高度酸化処理を行って得られた酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料と、ステップS4の前にナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対して酸処理及び/又はアルカリ処理を行って得られた酸及び/又はアルカリ処理後の高度に酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料と、ステップS5で得られた固体電解質及び/又は導電性ポリマーを包むナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料とのうちのいずれか1つである。
【0099】
本願の別の典型的な実施形態では、負極材料を含む負極を提供し、当該負極材料は、上記のいずれか1つのナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料又は上記のいずれか1つの製造方法で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料である。
【0100】
本願の又の典型的な実施形態では、負極を含む電気化学装置を提供し、負極は、上記の負極であり、好ましくは、電気化学装置がリチウムイオン二次電池である。
【0101】
本願のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料にケイ素ナノ粒子が均一に分散し、且つ酸素含有物質及び選択可能な炭素により隔てられと拘束されるため、ケイ素粒子の沈積過程における団集及びケイ素粒子の充放電サイクルにおける体積変化及び可能な融併を効果的に抑制し、得られた複合材料により製造された負極を含むリチウムイオン二次電池は、高いグラム当たり容量、高い初回クーロン効率及び良好なサイクル性能を有する。
【0102】
以下、実施例及び比較例と合わせて、本願の有益な効果についてさらに説明する。本願の実施例は、本願を限定するものと解釈されるべきではない。
【0103】
(実施例1)
ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の製造:
表面酸化層を含む多孔質炭素基材を製造するステップS1において、澱粉を炭素前駆体として、空気雰囲気で、室温から220℃まで上げ、且つこの温度で48h維持して予備安定化を行い、続いて、N2に変え、2℃/minで1500℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、炭素化を完了し、続いて、N2雰囲気で600℃まで降温させ、2%O2-N2混合ガスに切り換え、600℃で酸化を2h行って表面酸化層を含む多孔質炭素基材を取得した。得られた多孔質炭素基材において、酸素と炭素とのモル比は0.031であり、多孔質炭素基材の比表面積は380m2/gであり、孔容積が0.74cm3/gであり、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が占める割合が、それぞれ9%、70%及び21%であった。
【0104】
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、多孔質炭素基材を、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で2h維持し、ケイ素の沈積を行い、続いて、N2に変え、200℃まで降温させた後、1%O2-N2混合ガスに変え、1%O2-N2混合ガスの雰囲気で、200℃で12min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変えるとともに、600℃まで昇温させ、このように多孔質炭素基材上でケイ素沈積-酸素含有処理を15回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0105】
破砕するステップS3において、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料をジェットミルで破砕分級し、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を得た。
【0106】
得られた中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対してXRD、N2吸着テスト及びTEM検出を行って、電極を作製して電気化学的テストを行った。
【0107】
電極、半電池の製造及び電気化学的性能のテスト方法(本願に列挙された全ての実施例及び比較例に適用される):
従来の方法を用いて、各実施例及び比較例の複合材料を含む電極片をCR2032型ボタン電池に製造するとともに、電気的性能テストを行った。グローブボックスにCR2032型ボタン電池を組み立て、金属リチウム片を対電極とし、ポリプロピレン微多孔膜はセパレータであり、電解液は、LiPF6が炭素酸エチレン(EC)と炭素酸ジエチル(DEC)との混合液(体積比EC:DEC=1:1)に溶解したものであり、ここで、LiPF6濃度は1mol/Lであった。
【0108】
藍電(LAND)電池テストシステムを用いて電池に対して充放電テストを行った。
【0109】
前記CR2032型ボタン電池を6h静置した後、0.05Cで0.005Vになるまで放電してから、0.01Cで0.005Vになるまで放電し、5min静置した後、0.05Cの定電流で1.5Vになるまで充電し、初回リチウム放出容量と初回リチウム吸蔵容量との比が電池の初回クーロン効率であった。
【0110】
5min静置した後、上記の充放電ステップを2回繰り返し、
続いて、0.25Cで0.005Vになるまで放電し、5min静置した後、0.25Cの定電流で1.5Vになるまで充電し、50回サイクルした。50回目の充電比容量/1回目の充電容量×100%で計算し、容量維持率を得た。
【0111】
以下の方法を用いて電極片の膨張率をテストした。前記CR2032型ボタン電池を6h静置した後、0.05Cで0.005Vになるまで放電してから、0.01Cで0.005Vになるまで放電し、続いて、グローブボックス内でボタン電池を分解し、DECで電極片を洗浄し、且つ電極片の厚さを測定した。膨張率の計算式は、(初回満充電状態の電極片の厚さ-新鮮な電極片の厚さ)/新鮮な電極片の厚さ×100%であった。
【0112】
図1は、実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子の概略構造図を示した。上記の過程に応じて、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子において、そのコア組成(C
x1-O
y1)-(Si
z-O
y2-C
x2)は表面酸化層を含む多孔質炭素基材C
x1-O
y1と、多孔質炭素基材表面及び孔隙に負荷されるSi
z-O
y2-C
x2の2つの主要部分を含み、後者は、均一に分散したケイ素ナノ粒子及び少量の酸素含有物質並びに選択可能な炭素を含み、(Si
z1-O
y-C
x)
n(n≧1)と書くこともできる。複合材料は多段構造であり、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を担体及び/又はブラケットとし、その表面及び孔構造にケイ素ナノ粒子(即ち、
図1のSi)及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素(即ち
図1のSiO
δ+C)を沈積させ、ここで、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、ケイ素ナノ粒子を隔てと拘束する役割を果たし、沈積の最後に、多孔質炭素基材の孔路内に少量の閉孔が残される可能性がある。
【0113】
また、
図2に示すように、実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子のXRDパターンに顕著な結晶化ピークがないことにより、ケイ素粒子が非晶質であり、炭素も不定形であることを反映し、対応して、
図3のHRTEM図から分かるように、複合材料は、主に不定形を呈し、顕著な長距離秩序構造がなく、XRDパターンと一致した。
図3において、白丸内の格子縞間の距離は約0.314nmで、Si結晶粒子の(111)結晶面間の距離に対応し、規則的な格子縞の数から分かるように、Si結晶粒子のサイズは、いずれも2nm未満であった。N
2吸着及びアセトン液浸法により測定され、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子の比表面積は4.7m
2/gであり、孔容積が0.024cm
3/gであり、真密度は1.97g/cm
3であった。実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素、酸素、炭素の質量含有量は、それぞれ50.2%、1.9%及び47.9%であった。
【0114】
実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を、800℃、N
2雰囲気で処理した後、XRDテストを行い、結果は
図5に示され、2θ=28.4°でのピークの半値幅を測定するとともに、シェラー式で結晶粒子のサイズを計算し、結果は、800℃で処理した後の材料において、ケイ素結晶粒子のサイズが7.7nmであることを示し、材料の適切な酸素含有量がケイ素ナノ粒子に対して良好な分隔役割を果たし、ケイ素結晶粒子及び/又は非晶質ケイ素同士の団集を制限することを表す。実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を含む電極の定電流充放電曲線を
図4に示し、そのグラム当たり容量は2029mAh/gであり、1.5Vの初回クーロン効率は92.6%であり、電極片の膨張率は124%であり、充放電を50回サイクルした後のグラム当たり容量維持率は95.6%であった。
【0115】
表1は、実施例1~25及び比較例1と2に採用された表面酸化層を含む多孔質炭素基材及びその製造条件である。
【0116】
表2は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材の酸素含有量、比表面積及び孔性質である。多孔質炭素基材は、メソ孔を主とし、一部のミクロ孔及びマクロ孔を含む。
【0117】
表3は、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子の実施例1~25及び比較例1と2の製造条件である。本明細書に列挙された実施例におけるケイ素含有前駆体及び/又は酸素含有前駆体の濃度及び対応する処理温度は、パルス型の周期的或いは非周期的変化であり、表現の便宜のために、同じ表におき、「沈積周期」を用いてこのような違いを記述し、非周期的に変化すると、周期数は1である。ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体をそれぞれ導入した実施例が存在するため、表3では、「混合ガス1の沈積」及び「混合ガス2の沈積」で表示し、対応して、それぞれの接触温度及び滞留時間はそれぞれ「沈積温度1」及び「沈積時間1」、「沈積温度2」及び「沈積時間2」である。各周期に異なる前駆体濃度及び処理温度時間などを用いる方法によりも、本発明が要求するナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を実現できることは、排除しない。
【0118】
表4は、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子の実施例1~36及び比較例1と2における基本的な物理的性質及び電気化学的性能である。
【0119】
ケイ素及び炭素の負極材料におけるリチウム吸蔵能力が異なるため、SiOδ形態で存在する酸素は、不可逆的なリチウム吸蔵をもたらし、負極の初回効率を低下させるため、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素、酸素、炭素の含有量は、複合材料の初回効率に大きく影響し、多孔質炭素担体の孔構造、沈積混合ガスの濃度、沈積温度及び時間などにより各物質の含有量を調節することができ、異なる前駆体に必要な最適温度は異なり、一定の範囲内で、沈積温度が高いと、対応する物質の沈積量も向上する。一方、酸素含有物質の沈積方法及びケイ素沈積の相対時間は、酸素含有層のケイ素ナノ粒子に対する分散度の決定に大きく影響を及ぼし、さらに、電極片の膨張率及びサイクル性能などのような複合材料の電気化学的性能に影響を及ぼす。本願の実施例は、主に、これらの要素を中心に展開された。
【0120】
ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料において、ケイ素及び酸素含有物質は、主に、多孔質炭素基材の孔路内部に沈積され、少量が炭素骨格孔路の外の表面に沈積される一方、本発明では、緻密なケイ素・酸素・炭素複合材料を製造するため、炭素基材の孔容積により、ケイ素前駆体及び酸素含有前駆体の最大負荷量が決定される。ケイ素前駆体及び酸素含有前駆体の濃度、沈積温度及び相対時間、並びに炭素基材の孔容積により、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のケイ素含有量、酸素含有量が共同決定され、対応して、炭素含有量も決定された。沈積ガスの流量は、反応炉容積、炭素基材の使用量、ケイ素前駆体及び酸素含有前駆体の沈積混合ガスにおける濃度に関連し、必要に応じて調節することができ、本明細書では詳細な説明を省略する。多くの実施例は、ケイ素沈積の総時間が一致するように制御することにより、使用される炭素基材の孔容積が収容できる量を満たした。
【0121】
表3に列挙したように、実施例1~20、23、24及び25は、いずれも、ケイ素前駆体と酸素含有前駆体との交互沈積の方法を用いて、ケイ素及び酸素含有物質の負荷を行い、沈積周期毎に使用される沈積条件に含まれるガス濃度及び沈積温度、時間は一致する(しかし、本発明が主張する特許権は、沈積周期が完全に繰り返すのに限定されず、必要に応じて各周期における沈積条件を変えることもできる)。実施例1~12におけるステップS2に使用される酸素含有前駆体は、いずれもO2とN2の混合ガスである。実施例1~9における沈積混合ガス1及び沈積混合ガス2は、いずれも20%SiH4-N2及び1%O2-N2を用い、実施例10では、濃度を高めたケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の混合ガスを用い、実施例11及び12では、Si2H6及びSi3H8などの他のケイ素含有前駆体を用いて沈積させた。
【0122】
実施例2を実施例1と比べると、その区別点は、酸素含有前駆体を処理する時間が比較的長く、これにより酸素含有量が多くなり、電極の初回効率が低下したことである。実施例3~6は、1つの沈積周期におけるケイ素の沈積時間を変え、対応して、酸素含有物質を処理する時間及び沈積周期数も変え、これから分かるように、1つの沈積周期におけるケイ素の沈積時間が長い場合、実施例5及び実施例6のように、それぞれ10h及び15hであると、酸素含有物質のケイ素ナノ粒子に対する隔て作用が低下し、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の電極片の膨張率が大きくなり、複数回サイクルした後の容量維持率が低下した。
【0123】
実施例7に使用される多孔質炭素基材は、孔容積が小さく、0.33cm3/gであり、そのため、ケイ素の負荷量は、実施例1に比べ顕著に低下し、その初回サイクルのグラム当たり容量が実施例1より顕著に低く、わずか1639mAh/gである。実施例8は、比表面積が581m2/gで、孔容積が1.1cm3/gである9#多孔質炭素基材を用いてケイ素を沈積させ、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のケイ素含有量が68.7%と高く、それを含む電極のグラム当たり容量は2500mAh/g以上に達し、初回効率は92.8%に達するが、電極片の膨張率が高く、50サイクルの後の容量維持率は、わずか90.4%である。
【0124】
実施例9を実施例1と比べると、その区別点は、ステップS2において、ケイ素沈積-酸素含有処理のサイクル周期数を10回に減少し、ケイ素含有量が比較的低く(35.4%)、複合材料電極の容量が1500mAh/g未満であるが、低いケイ素含有量により、複合材料電極の膨張率も低くなり、また、ケイ素及び酸素含有物質で炭素基材の孔容積を完全に充填できなかったため、材料の比表面積及び孔容積が顕著に大きくなり、それぞれ41.8m2/g及び0.217cm3/gであり、大きい孔容積によりケイ素の膨張が一層緩和され、そのため、当該複合材料を含む電極の初回満充電になるリチウムを吸蔵した電極片の膨張率が顕著に低下し、わずか31%であるが、大きな比表面積により副反応が多くなり、電極の初回効率が低下し、1.5Vの電圧で初回効率は、わずか84.6%である。
【0125】
実施例10に使用される濃度を高めたケイ素前駆体及び酸素含有前駆体の混合ガスは、複合材料におけるケイ素と酸素の含有量及びこれによる電気化学的性能が、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の相対濃度及び1つの周期における両者の相対沈積時間に関連する。
【0126】
実施例11及び12では、Si2H6及びSi3H8などの他のケイ素含有前駆体を用いて沈積を行い。この2つの実施例では、比較的低い孔容積を有する多孔質炭素基材を炭素担体としてケイ素の沈積を行い、炭素基材の孔容積により、2つの実施例におけるケイ素含有量が限られていることが決定され、そのため、複合材料の電極容量が比較的低い。
【0127】
実施例13~17は、ステップS2においてCO2を酸素含有前駆体とする実施例であり、使用される沈積温度が低いと、得られたケイ素・酸素・炭素複合材料のケイ素含有量が低下し、電極のグラム当たり容量が低下し、沈積時間、相対時間などの他の要素は、実施例1~10に開示されたものに近い。実施例18~21は、ステップS2においてアセトンを酸素含有前駆体とする実施例であり、実施例18~20では、多孔質炭素基材を含む反応炉にそれぞれケイ素含有前駆体及びアセトンを通入し、実施例21では、多孔質炭素基材を含む反応炉にケイ素含有前駆体及びアセトンを同時に通入し、実施例22は、多孔質炭素基材を含む反応炉にケイ素含有前駆体及びメタノールを同時に通入する。沈積方法、沈積温度及び酸素含有前駆体の濃度の違いにより、複合材料におけるケイ素及び酸素の含有量が異なり、高温、高濃度アセトンにより、複合材料における酸素含有量が高くなり、さらに、当該複合材料を含む電極の初回効率が低下する。
【0128】
実施例23では、酸素含有処理過程に、高濃度の酸素含有前駆体、高い温度及び長い沈積時間を用いて、複合材料の酸素総含有量が高く、5wt%を超え、ケイ素粒子をよく隔てる役割を果たし、
図5から分かるように、800℃で処理した後の当該比較例のサンプルの結晶化程度は依然として低く、そのため、当該材料を含む電極の電極片の膨張率が低く、わずか72%である。しかし一方、高すぎる酸素含有量により、複合材料にSiO
δ物質が多くなり、電極反応中の副反応が多くなり、容量及び初回効率の両方とも大幅に低下し、容量はわずか1219mAh/gであった。
【0129】
(実施例26)
実施例1と異なる点は、高度酸化処理ステップを追加したことである。
高度酸化処理のステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を管状炉に置き、真空度が10
-3Paになるまで真空引きし、続いて、1%O
2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を獲得し、当該酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の概略構造図は、
図7に示された。
【0130】
実施例26で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料に対してXPSテストを行い、C 1sスペクトルにおける不定形のC-Cピークの結合エネルギーが284.7eVに位置することをピーク位置補正とし、高分解能C 1sスペクトルに、テストシステムに存在するC-Cピークが含まれるため、そのC-Siの分析に大きな誤差が存在し、そのため、高分解能Si 2pスペクトル(
図8)のみを分析した。実施例26で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料XPSテストでの高分解能Si 2pスペクトル及びそのデコンボリューション積分ピーク分析結果から分かるように、Si-Cの結合エネルギーピーク面積は、顕著にSi-O及びSi-Si未満であり、対応するピーク面積からそれぞれの結合形態が占める割合を計算することができる。実施例26で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料において、Si 2pスペクトルにおけるSi-OとSi-Siとの割合が0.96であり、Si-CとSi-Siとの割合が0.40であり、これから、実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素骨格とケイ素ナノ粒子とは、主にC-O-Siを介して連結され、C-Siが占める割合が小さいことが分かる。
【0131】
(実施例27)
実施例1と異なる点は、高度酸化処理ステップを追加したことである。
高度酸化処理のステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を管状炉に置き、真空引きし、続いて、1%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から300℃まで上げ、且つ300℃で2h処理し、降温させ、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0132】
(実施例28)
実施例1と異なる点は、高度酸化処理ステップを追加したことである。
高度酸化処理のステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を管状炉に置き、真空引きし、続いて、1%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から350℃まで上げ、且つ350℃で2h処理し、降温させ、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0133】
(実施例29)
実施例1と異なる点は、高度酸化処理ステップを追加したことである。
高度酸化処理のステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を管状炉に置き、真空引きし、続いて、5%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0134】
(実施例30)
実施例1と異なる点は、高度酸化処理ステップを追加したことである。
高度酸化処理のステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を管状炉に置き、真空引きし、続いて、20%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0135】
(実施例31)
実施例1と異なる点は、高度酸化処理及びその予備処理ステップを追加したことである。
ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対して酸処理を行うステップS3+において、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を1MのHNO3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、60℃で8h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を120℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、酸処理複合材料を得た。
【0136】
高度酸化処理のステップS4において、ステップS3+で得られた酸処理複合材料を管状炉に置き、真空引きし、続いて、1%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0137】
(実施例32)
実施例31との異なる点は、高度酸化処理の予備処理ステップが異なることである。
ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対して酸処理を行うステップS3+において、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を1MのNaOH水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、60℃で8h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を120℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、酸処理複合材料を獲得し、最終的に、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0138】
(実施例33)
実施例1と異なる点は、高度酸化処理ステップを追加したことである。
高度酸化処理のステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を0.5MのKMnO4水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、50℃で2h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を60℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、最終的に、酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0139】
(実施例34)
実施例1と異なる点は、外層コーティングステップを追加したことである。
外層コーティングのステップS5において、ステップS4で得られた酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を管状炉に置き、真空引き処理を行い、続いて、N2を通入し、2℃/minで700℃まで昇温させ、C2H2ガスに切り換え、700℃で2h維持し、降温させ、炭素がコーティングされたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0140】
(実施例35)
実施例26と異なる点は、外層コーティングステップを追加したことであり、即ち、実施例1と異なる点は、高度酸化処理及び外層コーティングステップを追加したことである。
外層コーティングのステップS6において、ステップS4で得られた酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を0.1MのAl(NO3)3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、適量のNa2CO3水溶液(n(Na2CO3)=1.8n(Al))を加え、80℃で3h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を60℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、Al2O3がコーティングされたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0141】
(実施例36)
実施例26と異なる点は、外層コーティングステップを追加したことであり、即ち、実施例1と異なる点は、高度酸化処理及び外層コーティングステップを追加したことである。
外層コーティング-IのステップS5において、ステップS4で得られた酸化されたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を0.1MのAl(NO3)3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、適量のNa2CO3水溶液(n(Na2CO3)=1.8n(Al))を加え、80℃で3h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を60℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持した。
外層コーティング-IIのステップS6において、2℃/minで700℃まで昇温させ、C2H2ガスに切り換え、700℃で2h維持し、降温させ、炭素がコーティングされた、Al2O3がコーティングされたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得た。
【0142】
(比較例1)
表面酸化層のない多孔質炭素基材に、ケイ素沈積-酸素含有処理のサイクルを行うことなく、直接ケイ素を沈積させた。
【0143】
(1)多孔質炭素基材:市販の多孔質炭素を多孔質炭素基材としてテストし、C含有量が99.99%であった。
【0144】
(2)ケイ素沈積:多孔質炭素基材を、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で30h維持し、ケイ素を沈積させ、続いて、N2に変え、自然に降温し、ケイ素・炭素複合材料を得た。
【0145】
(3)破砕:(2)で得られたケイ素・炭素複合材料をジェットミルで破砕分級し、中央粒径が6μmのケイ素・炭素複合材料を得た。
【0146】
当該方法で製造したケイ素・炭素複合材料は、構造がC-Siであり、当該材料において、Si粒子が重篤に結塊し、破砕中に、ケイ素と炭素が分離して、効果的なケイ素・炭素複合材料を形成することができず、後続の特徴付けと電気化学的テストを行わない。
【0147】
(比較例2)
表面酸化層を有する多孔質炭素基材に、酸素含有処理をせずに、ケイ素を沈積させた。
【0148】
(1)表面酸化層を含む多孔質炭素基材の製造:澱粉を炭素前駆体として、空気雰囲気で、室温から220℃まで上げ、且つこの温度で48h維持して予備安定化を行い、続いて、N2に変え、2℃/minで1500℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、炭素化を完了し、続いて、N2雰囲気で600℃まで降温させ、2%O2-N2混合ガスに切り換え、600℃で酸化を2h行って表面酸化層を含む多孔質炭素基材を取得した。
【0149】
(2)ケイ素沈積:多孔質炭素基材を、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で30h維持し、ケイ素を沈積させ、続いて、N2に変え、自然に降温し、ケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0150】
(3)破砕:(2)で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料をジェットミルで破砕分級し、中央粒径が6μmのケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0151】
当該方法は、炭素化後の多孔質炭素基材に対して表面酸化処理を行って、表面酸化層を含む多孔質炭素基材を獲得し、さらにケイ素を沈積させ、製造されたケイ素・酸素・炭素複合材料の構造はC-O-Siであり、比較例1に比べ、当該材料は、効果的に負荷されたSiを得ることができ、Si粒子と多孔質炭素基材との結合が強固であり、破砕中にケイ素と炭素との分離が発生せず、電気化学的テスト結果は、1.5Vの初回効率が91.2%に達するが、ケイ素粒子が大きい(800℃で処理した後のケイ素結晶粒子のサイズが20nmより大きく、
図5)ため、電極片の膨張率が高く、157%に達することを示し、これはそのサイクル性能(
図6)に影響を及ぼす。
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
図4は、実施例1、実施例23及び比較例2の、電極の半電池(対電極がリチウム金属電極である。)初回サイクルの定電流充放電曲線を示した。実施例1は、複合材料が均一に分散しているケイ素ナノ粒子を有するため、それを含む電極は、高いグラム当たり容量(2029mAh/g)及び初回効率(92.6%、1.5V)を示し、リチウム放出曲線は傾斜型として示される。実施例23は、高い酸素含有量を用いるため、電極は、大きな分極を示し、且つグラム当たり容量及び初回効率は両方とも低く、それぞれ1219mAh/g及び84.3%であり、その傾斜型リチウム放出曲線の傾きは、実施例1に比べ、顕著に大きくなった。比較例2では、ケイ素沈積ステップで酸素含有処理を行わなかったので、複合材料におけるケイ素ナノ粒子は大きくて隔てられず、対応してグラム当たり容量及び初回効率も低下し、充電時に迅速に電圧プラットフォームに到達する。
【0157】
図5は、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の実施例1、実施例23及び比較例2の、N
2雰囲気、800℃で処理した後のXRDパターンを示した。比較として、実施例1の熱処理前のXRDパターンも示し、実施例23及び比較例2の熱処理前のXRDパターンは実施例1に近く、広げられた小さなピークとして示され、ここでは示さず、ケイ素が3つの複合材料のいずれにおいても非晶質状態であるか/又は非晶質状態に近い。800℃で処理した後の複合材料のケイ素粒子が顕著に結晶化するが、結晶化程度及び結晶粒子の大きさは酸素含有処理に関連することが分かり、比較例2では、酸素含有処理を行わず、その高温処理後の結晶化程度が非常に高く、結晶粒子のサイズが20nmより大きく、実施例1も、一定の結晶化程度を示し、その結晶粒子のサイズは7.7nmであり、実施例23では、実施例1に比較して、より高い酸素含有処理温度及びより長い酸素含有処理時間を用い、複合材料の酸素含有量が高く、熱処理後に依然として不定形に近い。800℃で処理した後の複合材料の結晶化程度及び結晶粒子の大きさは、
図4の電極の定電流充放電曲線の結果と対応関係がある。本発明の技術的解決手段を用いると、ケイ素沈積中のケイ素ナノ粒子の集まりを効果的に制御し、良好に分散し且つサイズが小さいケイ素ナノ粒子を取得し、さらに、複合材料電極の電気化学的性能を制御することができることを説明する。
【0158】
図6は、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を含む実施例1及び比較例2の電極の半電池(対電極がリチウム金属電極である。)サイクル性能を示した。実施例1は、均一に分散しているケイ素ナノ粒子を有し、それを含む電極の50回のサイクル後の容量維持率は95.6%であり、比較例2では、酸素含有処理を行わず、ケイ素ナノ粒子が隔てられず、グラム当たり容量及び初回効率が低く、電極片の膨張率が高く、50回のサイクル後の容量維持率は、わずか86.5%である。
【0159】
実施例24では、マクロ孔の体積が50%より大きい多孔質炭素基材を用いてケイ素を沈積させた。多孔質炭素基材のマクロ孔が多いため、ケイ素粒子がマクロ孔を完全に充填することが難しく、一部のマクロ孔は、ケイ素が負荷された後にメソ孔となり、複合材料の比表面積が大きいので、電極過程に副反応が多く、初回効率が低い。
【0160】
実施例25では、ミクロ孔の体積が50%より大きい多孔質炭素基材を用いてケイ素を沈積させた。多孔質炭素基材のミクロ孔が多いため、ケイ素沈積中に孔が詰まる可能性があり、続いて、ケイ素粒子が孔外に集まり、複合材料を破砕した後に一部の閉孔が開口孔になり、比表面積が大きくなり、且つ閉孔が多いことにより複合材料の真密度が低くなり、圧ぺん過程に、構造が崩壊する可能性があり、最終的に、複合材料のグラム当たり容量及び初回効率が両方とも比較的低い。
【0161】
実施例1に比べ、実施例26~33の材料に対する破砕分級及び後続の高度酸化処理により、完成品のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素ナノ粒子がいずれも膨張が極めて低い酸化層に包まれることが一層保証された。そのため、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料中に均一に分散している拘束されたケイ素ナノ粒子の、リチウム吸蔵及びリチウム放出過程における体積効果が、効果的に緩衝及び抑制されることができ、それにより、電極片の膨張率が顕著に低下し、グラム当たり容量の維持率が顕著に向上した。
【0162】
実施例34~36において、外層コーティングにより、複合材料の比表面積が低下するので、電池の初回効率が顕著に向上し、且つ、高いサイクル容量の維持率を有するが、ケイ素の含有量が低下するため、電池容量もやや低下した。
【0163】
以上の説明から分かるように、本発明の上記の実施例により、下記のような技術的効果が実現される。
まず、表面酸化層を含む多孔質炭素基材をケイ素沈積の担体として選択し、炭素基材表面酸化層とケイ素含有前駆体との間のC-O-Si化学作用により、ケイ素物質の多孔質炭素基材の孔路内及び表面への効果的な沈積が実現され、続いて、製造方法において、ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体の沈積条件を制御することにより、ケイ素ナノ粒子及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素が均一に分散と沈積して、(Siz1-Oy-Cx)n(n≧1)に類似する繰り返し構造を形成することが実現される。複合材料における酸素含有物質及び選択可能な炭素は、ケイ素物質を分散させて、ケイ素粒子の効果的なナノ化を実現するとともに、酸素含有物質及び選択可能な炭素もケイ素粒子に対する拘束役割を果たし、それにより、均一に分散している拘束されたケイ素ナノ粒子の、リチウム吸蔵及びリチウム放出過程における体積効果を効果的に緩衝することができ、且つ材料の強度が向上し、前記ケイ素・酸素・炭素複合負極材料及びそれを含む電気化学装置の電気化学的性能の向上に有利である。
【0164】
ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素ナノ粒子のサイズが小さく、多孔質炭素基材との結合が安定し、且つ多孔質炭素基材の孔路内及び表面に均一に分散しており、その適切な含有量の酸素含有物質及び選択可能な炭素は、ケイ素ナノ粒子の良好な分散に役立つとともに、ケイ素のリチウム吸蔵中の膨張を拘束することができ、材料の強度が高く、電極の電極片の膨張率が低く、電池のサイクル性能がよい。ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料は、小さい比表面積及び孔容積を有し、電極表面の副反応を効果的に減少し、材料のクーロン効率を向上させ、初回効率が超高いケイ素・酸素・炭素複合負極材料を取得するのに有利である。ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料が閉孔を含有するため、ケイ素のリチウム吸蔵中の体積膨張をある程度緩衝することができ、当該複合材料を含む電極の電極片の膨張率が低く、それにより、電池のサイクル性能をさらに向上させる。
【0165】
多孔質炭素基材にケイ素ナノ粒子を沈積させた後、本発明は、均質化及び後続の電極製造を容易にするために、得られた材料に対して破砕分級を行うことにより、異なる相に起因する材料中の応力を解放した一方、均一で、適切なサイズ及び形状を有する複合材料粒子を取得できる。破砕分級した後、新鮮なケイ素粒子表面が露出し、空気中で徐々に酸化して酸化層を形成し、当該酸化層も膨張をある程度緩和及び拘束する役割を果たすことができる。また、本発明は、一定のステップにより、露出しているケイ素ナノ粒子の表面に安定な酸化層を制御可能に生成し、当該酸化層は、SiOδ(0<δ≦2)形態で存在する。ケイ素ナノ粒子表面の均一で、構造を制御可能な酸化層は、ケイ素のリチウム吸蔵中の膨張を一層緩和及び拘束することができる。
【0166】
複合材料を破砕分級して、異なる相間の可能な応力を解放し、且つ、材料に均質化に必要な適切なサイズ及び形状分布を有させ、最後に、破砕分級後の複合材料に対して高度酸化処理を行って、ケイ素ナノ粒子の表面に安定な酸化層を形成する。破砕整形及び後続の酸化処理により、完成品のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素ナノ粒子がいずれも膨張が極めて低い酸化層によって包まれたことが一層保証される。そのため、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料中に均一に分散している拘束されたケイ素ナノ粒子の、リチウム吸蔵及びリチウム放出過程における体積効果を効果的に緩衝及び抑制することができ、材料の強度が向上し、当該ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を含む電気化学装置の電気化学的性能を向上させるのに役立つ。
【0167】
以上を纏めると、本発明にて提供されるナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料は、多孔質炭素骨格と、その孔路内及び表面に均一に分布しているケイ素ナノ粒子とを含み、炭素とケイ素との安定した複合、ケイ素粒子のナノ化及び均一な分散は、3つのレベルの酸素により保証される。(1)多孔質炭素基材表面の酸素含有基とケイ素ナノ粒子との間にC-O-Si結合を形成することにより、ケイ素ナノ粒子と多孔質炭素基材との間に安定な結合があることを保証し、(2)多孔質炭素基材の孔路内で、酸素含有物質によるケイ素ナノ粒子の隔てにより、リコンナノ粒子が沈積中に制御不能に集まって成長することを回避し、それにより、ケイ素ナノ粒子のサイズを制御し、且つ酸素含有物質によるケイ素ナノ粒子の隔て及び/又は包みを実現し、(3)破砕分級後に露出した新鮮なケイ素粒子表面に、酸化層が均一に成長することにより、酸素含有物質でケイ素ナノ粒子を包むことを一層実現した。これにより、得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料におけるケイ素ナノ粒子は、完全に、SiOδ(0<δ≦2)のネットワークによって隔てられ及び/又は包まれ、且つ、ケイ素ナノ粒子及びSiOδは、多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に均一に分布している。SiOδによるケイ素ナノ粒子の隔て及び/又は包みは、充放電時の複合材料のケイ素の体積膨張と収縮及びケイ素粒子同士の融併を効果的に制御することができる。また、適切な範囲のケイ素、酸素、炭素元素含有量及び複合材料の比表面積により、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料が最適なグラム当たり容量、初回クーロン効率、極めて低い膨張率及び優れたサイクル性能を示すことができる。
【0168】
いくつかの実施例において、リチウムイオン二次電池のグラム当たり容量が1500mAh/g以上であり、1.5Vの初回クーロン効率が85%以上であり、電極片の膨張率が120%より低く、充放電を50回サイクルした後のグラム当たり容量維持率が95%以上である。
【0169】
いくつかの実施例において、リチウムイオン二次電池のグラム当たり容量が2000mAh/g以上であり、1.5Vの初回クーロン効率が90%以上であり、電極片の膨張率が150%より低く、充放電を50回サイクルした後のグラム当たり容量維持率が95%以上である。
【0170】
本発明の背景で分析したように、従来技術において、ケイ素・炭素複合材料では、製造中に、多孔質担体へのケイ素ナノ粒子の効果的な沈積及び均一な分散を実現することが難しいので、充放電時に、電極に顕著な体積膨張と収縮が発生することを抑制し難く、最終的に、電極のサイクル性能が悪化することになる。また、電池の充放電時に、隣接するケイ素粒子同士が融併する可能性があり、電極のサイクル性能のさらなる悪化につながる。上記の技術的問題を解決するために、本発明は、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料、その製造方法、負極及び電気化学装置を提供する。
【0171】
本発明のナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素骨格とケイ素ナノ粒子とは、C-O-Si結合により連結され、ケイ素ナノ粒子と多孔質炭素骨格との結合が安定しており、ケイ素ナノ粒子は、いずれもSiO
δのネットワークによって隔てられ及び/又は包まれ、且つ多孔質炭素骨格の孔路内及び表面に均一に分散しており、そのため、ケイ素ナノ粒子の沈積中の団集及びケイ素粒子の充放電サイクルにおける体積変化及び可能な融併を効果的に抑制し、得られた複合材料により製造された負極を含むリチウムイオン二次電池は、高いグラム当たり容量、高い初回クーロン効率及び良好なサイクル性能を有する。
図9は、本発明のナノ複合材料の概略構造図である。
【0172】
ケイ素及び炭素の負極材料におけるリチウム吸蔵能力が異なるため、SiOδ形態で存在する酸素含有物質は、膨張を緩和及び拘束することができるが、不可逆的なリチウム吸蔵にもつながり、負極の初回効率が低下するため、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料におけるケイ素、酸素、炭素の含有量は、複合材料の容量、初回効率及び電極片の膨張率などに大きく影響するため、製造中に合理的に制御する必要がある。ナノケイ素・酸素・炭素複合材料において、ケイ素及び酸素含有物質は、主に、多孔質炭素骨格の孔路内部に沈積し、少量が炭素骨格の孔路外の表面に沈積する一方、本発明では、緻密なナノケイ素・酸素・炭素複合材料を製造するため、多孔質炭素骨格の孔容積により、ケイ素前駆体及び酸素含有前駆体の最大負荷量が決定される。ケイ素前駆体及び酸素含有前駆体の濃度、沈積温度及び相対時間、及び多孔質炭素骨格の孔容積により、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料のケイ素含有量、酸素含有量が共同決定され、対応して、炭素含有量も決定された。沈積ガスの流量は、反応炉容積、多孔質炭素骨格の使用量、ケイ素前駆体及び酸素含有前駆体の沈積混合ガスにおける濃度に関連し、必要に応じて調節することができ、本明細書では詳細な説明を省略する。
【0173】
(実施例1)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を製造するステップS1において、澱粉を炭素前駆体とし、トリブロック共重合体P123が孔形成剤であり、澱粉をP123の水/エタノール溶液に加え、溶媒が完全に揮発するまで50℃で撹拌し、得られた固体を空気雰囲気で、室温から220℃まで上げ、且つこの温度で48h維持して予備安定化を行い、続いて、N2に変え、2℃/minで800℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、炭素化を完了し、ガスを5%CO2-N2に変え、(N2をバランスガスとし、その中に5%のCO2を含有する。)900℃まで昇温させ、且つ10%CO2-N2雰囲気で、900℃で2h維持し、続いて、N2雰囲気で、特定の温度まで降温させて用意し、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を取得し、且つジェットミルでそれを中央粒径が約10~20μmの粒子に破砕して用意した。得られた多孔質炭素骨格粒子の比表面積が809m2/gであり、孔容積が0.68cm3/gであり、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が占める割合が、それぞれ16%、75%及び9%であり、ここで、2~10nmの孔体積が全孔体積で占める割合が68%であった。
【0174】
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で、2℃/minで600℃まで昇温させ、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で2h維持し、ケイ素の沈積を行い、続いて、N2に変え、200℃まで降温させた後、1%O2-N2混合ガスに変え、1%O2-N2混合ガスの雰囲気で、200℃で12min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変え、且つ600℃まで昇温させ、このように多孔質炭素骨格上でケイ素沈積-酸素含有処理を15回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、且つ湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
【0175】
高度酸化処理のステップS3において、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、続いて、1%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0176】
得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料に対してXRD、N2吸着テスト、XPSテスト及びTEM検出を行って、電極を製造し、且つ電気化学的テストを行った。
【0177】
電極、半電池の製造及び電気化学的性能のテスト方法(本願に列挙された全ての実施例及び比較例に適用される):
各実施例及び比較例の複合材料を含む電極片を、従来の方法でCR2032型ボタン電池に製造して、電気的性能テストを行った。グローブボックスにCR2032型ボタン電池を組み立て、金属リチウム片を対電極とし、ポリプロピレン微多孔膜はセパレータであり、電解液は、LiPF6を炭素酸エチレン(EC)と炭素酸ジエチル(DEC)との混合液(体積比EC:DEC=1:1)に溶解させたものであり、ここで、LiPF6濃度は1mol/Lであった。
【0178】
藍電(LAND)電池テストシステムを用いて電池に対して充放電テストを行った。
【0179】
前記CR2032型ボタン電池を6h静置した後、0.05Cで0.005Vになるまで放電してから、0.01Cで0.005Vになるまで放電し、5min静置した後、0.05Cの定電流で1.5Vになるまで充電し、初回リチウム放出のグラム当たり容量が電極材料のグラム当たり容量(又は質量比容量と呼ばれる。)であり、初回リチウム放出容量と初回リチウム吸蔵容量との比が電池の初回クーロン効率であった。
【0180】
5min静置した後、上記の充放電ステップを2回繰り返し、
続いて、0.25Cで0.005Vになるまで放電し、5min静置した後、0.25Cの定電流で1.5Vになるまで充電し、50回サイクルした。50回目の充電比容量/1回目充電容量×100%で計算して、容量維持率を得た。
【0181】
以下の方法を用いて電極片の膨張率をテストした。前記CR2032型ボタン電池を6h静置した後、0.05Cで0.005Vになるまで放電してから、0.01Cで0.005Vになるまで放電し、続いて、グローブボックス内でボタン電池を分解し、DECで電極片を洗浄し、且つ電極片の厚さを測定した。膨張率計算式は、(初回満充電状態の電極片の厚さ-新鮮な電極片の厚さ)/新鮮な電極片の厚さ×100%であった。
【0182】
実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料に対してXPSテストを行い、C 1sスペクトルにおける不定形のC-Cピークの結合エネルギーが284.7eVに位置することをピーク位置の補正とし、高分解能C 1sスペクトルに、テストシステムに存在するC-Cピークが含まれるため、そのC-Siの分析に大きな誤差が存在し、そのため、高分解能Si 2pスペクトル(
図10)のみを分析した。実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料XPSテストでの高分解能Si 2pスペクトル及びそのデコンボリューション積分ピーク分析結果から分かるように、Si-Cの結合エネルギーピーク面積は、顕著にSi-O及びSi-Si未満であり、対応するピーク面積からそれぞれの結合形態が占める割合を計算することができる。実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料において、Si 2pスペクトルにおけるSi-OとSi-Siとの割合が0.95であり、Si-CとSi-Siとの割合が0.41であり、これから、実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料における多孔質炭素骨格とケイ素ナノ粒子とは、主に、C-O-Siを介して連結され、C-Siが占める割合が小さいことが分かる。
【0183】
図11に示すように、実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料のXRDパターンには、顕著な結晶化ピークがなく、そのうちのケイ素粒子が非晶質であることを反映し、炭素も不定形であり、対応して、
図12のHRTEM図から分かるように、複合材料は、主に、不定形を呈し、顕著な長距離秩序構造がなく、XRDパターンと一致する。
図12において、白丸内の格子縞間の距離は約0.314nmであり、Si結晶粒子の(111)結晶面間の距離に対応し、これから、規則的な格子縞の数は、いずれも5未満であるため、Si結晶粒子のサイズがいずれも2nm未満であることが分かる。実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料は、800℃で処理した後のXRDテスト結果は
図11に示され、結晶粒子のサイズが大きくなる限界サイズは7nmである。N
2吸着及びアセトン液浸法により測定され、得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料の比表面積は4.1m
2/gであり、孔容積は0.021cm
3/gであり、真密度は2.00g/cm
3である。実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料におけるケイ素、酸素、炭素の質量の質量含有量は、それぞれ52.6%、2.1%及び45.3%である。実施例1で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を含む電極の定電流充放電曲線は、
図13に示され、そのグラム当たり容量が2011mAh/gであり、1.5Vの初回クーロン効率が92.8%であり、電極片の膨張率が75%であり、充放電を50回サイクルした後のグラム当たり容量維持率が97.1%であり、そのグラム当たり容量の、サイクル回数の増加に伴う変化傾向は、
図14を参照する。
【0184】
(比較例1)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
多孔質炭素骨格を製造するステップS1において、澱粉を炭素前駆体として、空気雰囲気で、室温から220℃まで上げ、且つこの温度で48h維持して予備安定化を行い、続いて、N2に変え、2℃/minで800℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、炭素化を完了し、続いて、N2雰囲気で降温させ、多孔質炭素骨格を取得し、且つジェットミルでそれを中央粒径が約10~20μmである粒子に破砕して用意した。得られた多孔質炭素骨格粒子の比表面積が331m2/gであり、孔容積が0.35cm3/gであり、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が占める割合が、それぞれ21%、63%及び16%であった。
【0185】
ケイ素沈積のステップS2において、多孔質炭素骨格を、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で30h維持し、ケイ素を沈積させ、N2の保護下で自然に降温し、湿式研磨で破砕整形し、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0186】
ステップS3の高度酸化処理がない。
【0187】
当該方法で製造したケイ素・炭素複合材料は、多孔質炭素骨格に製造過程に孔形成剤を導入せず、炭素化後も酸化処理を行わず、その構造はC-Siであり、当該材料において、Si粒子が重篤に結塊し、破砕中に、ケイ素と炭素が分離し、効果的なケイ素・炭素複合材料を形成することができず、後続の特徴付け及び電気化学的テストを行わない。
【0188】
(比較例2)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例1と同じであった。
ステップS2は、比較例1と同じであった。
ステップS3の高度酸化処理がなかった。
【0189】
当該方法では、炭素化後の多孔質炭素骨格に表面酸化層を含有させ、さらにケイ素を沈積させ(酸素含有処理がない。)、製造されたケイ素・酸素・炭素複合材料構造はC-O-Siであり、比較例1に比べ、当該材料は、効果的に負荷されたSiを得ることができ、Si粒子と多孔質炭素骨格との結合は強固であり、破砕中に、ケイ素と炭素との分離が発生せず、電気化学的テストの結果から分かるように、1.5Vの初回効率は91.8%に達することができるが、ケイ素粒子間に、酸化層隔てと拘束がほぼないため、電極片の膨張率が高く、163%に達し、これは、そのサイクル性能に影響を及ぼし、50回のサイクルの後の容量維持率は、わずか86.2%である。
【0190】
(比較例3)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例1と同じであった。
ステップS2は、比較例1と同じであった。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0191】
(比較例4)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
ステップS3の高度酸化処理がない。
【0192】
比較例3及び比較例4では、実施例1と同じ多孔質炭素骨格をケイ素沈積担体として採用し、そのため、ケイ素を沈積するとき、多孔質炭素骨格表面の酸素含有層とC-O-Si化学結合を形成し、安定なケイ素・酸素・炭素複合材料を取得した。比較例3は、比較例2に対して後続の高度酸化処理を行って得られたケイ素・酸素・炭素複合材料であり、後続の高度酸化処理があっても、シランの沈積中に酸素含有物質処理を行わなかったため、ケイ素粒子の集まりと成長は、多孔質炭素骨格の孔構造のみにより制限されて、効果的なSiOδネットワークを形成することができず、そのため、サイクル性能が実施例1より悪く、50回のサイクルの後の容量維持率は、わずか86.9%であり、リチウムフル吸蔵電極片の膨張率は、147%と高かった。比較例4は、実施例1と比べ、破砕整形後の高度酸化処理を行わず、破砕後の大量の新鮮なケイ素ナノ粒子表面が露出しており、自然酸化により形成された薄い酸化層は、電極の使用中にケイ素リチウム吸蔵膨張を拘束するのに十分ではなく、そのため、その電極片の膨張率が依然として高く、125%に達し、50回のサイクル後の容量維持率は89.5%であった。
【0193】
(実施例2)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を製造するステップS1において、S1-1では、澱粉を炭素前駆体とし、トリブロック共重合体F127を孔形成剤として、澱粉をF127の水/エタノール溶液に加え、溶媒が完全に揮発するまで50℃で撹拌し、得られた固体を空気雰囲気で、室温から220℃まで上げ、且つこの温度で48h維持して予備安定化を行い、続いて、N2に変え、2℃/minで800℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、炭素化を完了し、続いて、N2雰囲気で降温させ、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を取得し、これをジェットミルで中央粒径が約10~20μmである粒子に破砕して次のステップの処理のために用意した。S1-2では、得られた多孔質炭素骨格粒子を1MのHNO3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、60℃で8h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を真空乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を得た。得られた表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子の比表面積が705m2/gであり、孔容積が0.65cm3/gであり、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が占める割合が、それぞれ12%、83%及び5%であり、ここで、2~10nmの孔体積が全孔体積を占める割合が72%であった。
ステップS2~S3は、実施例1と同じであった。
【0194】
(実施例3)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を製造するステップS1において、S1-1では、熱可塑性フェノール樹脂を熱硬化性フェノール樹脂と1:50割合で混合して炭素前駆体とし、孔形成剤としてのトリブロック共重合体F127とボールミルで混合し、得られた固体を空気雰囲気で室温から180℃まで上げ、且つこの温度で4h維持して予備安定化を行い、続いて、N2に変え、2℃/minで900℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、炭素化を完了し、N2雰囲気で降温させ、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を取得した。且つこれをジェットミルで中央粒径が約10~20μmである粒子に破砕して次のステップの処理のために用意した。S1-2では、得られた多孔質炭素骨格粒子を1MのHNO3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、60℃で8h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を真空乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を得た。得られた表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子の比表面積が837m2/gであり、孔容積が0.74cm3/gであり、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が占める割合が、それぞれ13%、81%及び6%であり、ここで、2~10nmの孔体積が全孔体積を占める割合が69%であった。
ステップS2~S3は、実施例1と同じであった。
【0195】
(実施例4)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を製造するステップS1において、熱可塑性フェノール樹脂を熱硬化性フェノール樹脂と1:50割合で混合して炭素前駆体とし、臭化セチルトリメチルアンモニウムとボールミルで混合し、得られた混合物を空気雰囲気で室温から180℃まで上げ、且つこの温度で4h維持して予備安定化を行い、続いて、N2に変え、2℃/minで900℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、炭素化を完了し、続いて、N2雰囲気で、2℃/minで1200℃まで昇温させ、5%CO2-Arに切り換え、且つ1200℃で2h維持し、N2雰囲気で降温させ、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格を取得した。且つジェットミルでそれを中央粒径が約10~20μmである粒子に破砕して用意した。得られた多孔質炭素骨格粒子の比表面積が922m2/gであり、孔容積が0.78cm3/gであり、ミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が占める割合が、それぞれ15%、8%及び0%であり、ここで、2~10nmの孔体積が全孔体積を占める割合が63%であった。
ステップS2~S3は、実施例1と同じであった。
【0196】
(実施例5)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例2と同じであった。
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で2℃/minで600℃まで昇温させ、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で5h維持し、ケイ素を沈積させ、続いて、N2に変え、200℃まで降温させた後、1%O2-N2混合ガスに変え、1%O2-N2混合ガスの雰囲気で、200℃で30min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変えて600℃まで昇温させ、このように多孔質炭素骨格にケイ素沈積-酸素含有処理を6回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0197】
(実施例6)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例2と同じであった。
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で2h維持し、ケイ素の沈積を行い、続いて、N2に変え、200℃まで降温させた後、1%O2-N2混合ガスに変え、1%O2-N2混合ガスの雰囲気で、200℃で12min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変えて600℃まで昇温させ、このように多孔質炭素骨格にケイ素沈積-酸素含有処理を10回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、且つ湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0198】
(実施例7)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例2と同じであった。
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で、2℃/minで室温から450℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、450℃で2h維持し、ケイ素を沈積させ、続いて、N2に変え、200℃まで降温させた後、0.5%O2-N2混合ガスに変え、1%O2-N2混合ガスの雰囲気で、200℃で12min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変えて600℃まで昇温させ、このように多孔質炭素骨格にケイ素沈積-酸素含有処理を15回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、且つ湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0199】
(実施例8)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例2と同じであった。
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で、2℃/minで室温から700℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、700℃で2h維持し、ケイ素を沈積させ、続いて、N2に変え、350℃まで降温させた後、1%O2-N2混合ガスに変え、1%O2-N2混合ガスの雰囲気で、350℃で12min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変えて700℃まで昇温させ、このように多孔質炭素骨格にケイ素沈積-酸素含有処理を15回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、且つ湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0200】
(実施例9)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例2と同じであった。
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、20%SiH4-N2混合ガスに変え、20%SiH4-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で2h維持し、ケイ素の沈積を行い、続いて、N2に変え、2hパージし、5%CO2-N2混合ガスに変え、5%CO2-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で12min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変えて600℃まで昇温させ、このように多孔質炭素骨格にケイ素沈積-酸素含有処理を15回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、且つ湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0201】
(実施例10)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例2と同じであった。
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、10%Si2H6-N2混合ガスに変え、10%Si2H6-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で2h維持し、ケイ素の沈積を行い、続いて、N2に変え、200℃まで降温させた後、1%O2-N2混合ガスに変え、1%O2-N2混合ガスの雰囲気で、200℃で12min維持して酸素含有処理を行い、続いて、N2に変えて600℃まで昇温させ、このように多孔質炭素骨格にケイ素沈積-酸素含有処理を15回サイクルし、N2の保護下で自然に降温し、且つ湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0202】
(実施例11)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1は、実施例2と同じであった。
ケイ素沈積及び酸素含有処理のステップS2において、ステップS1に記載の中央粒径が約10~20μmである、表面酸化層を含む多孔質炭素骨格粒子を管状炉に置き、真空度が10-3Paになるまで真空引きし、N2雰囲気で、2℃/minで室温から600℃まで上げた後、20%SiH4-0.5%アセトン-N2混合ガスに変え、20%SiH4-0.5%アセトン-N2混合ガスの雰囲気で、600℃で30h維持し、ケイ素沈積及び酸素含有処理を同時に行い、N2の保護下で自然に降温し、且つ湿式ボールミルを用いて得られた材料に対して破砕整形を行って、中央粒径が6μmのナノケイ素・酸素・炭素複合材料を獲得し、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を得た。
ステップS3は、実施例1と同じであった。
【0203】
(実施例12)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
高度酸化処理のステップS3において、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を管状炉に置き、真空引きし、続いて、1%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から300℃まで上げ、且つ300℃で2h処理し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0204】
(実施例13)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
高度酸化処理のステップS3において、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を管状炉に置き、真空引きし、続いて、1%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から350℃まで上げ、且つ350℃で2h処理し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0205】
(実施例14)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
高度酸化処理のステップS3において、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を管状炉に置き、真空引きし、続いて、5%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0206】
(実施例15)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
高度酸化処理のステップS3において、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を管状炉に置き、真空引きし、続いて、20%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0207】
(実施例16)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
ステップS2で得られた破砕整形後のナノケイ素・酸素・炭素複合材料1に対して酸処理を行うステップS2+において、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を1MのHNO3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、60℃で8h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を120℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料2を得た。
【0208】
高度酸化処理のステップS3において、ステップS2+で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料2を管状炉に置き、真空引きし、続いて、1%O2-Ar混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/minに制御し、室温から200℃まで上げ、且つ200℃で2h処理し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0209】
(実施例17)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
ステップS2で得られた破砕整形後のナノケイ素・酸素・炭素複合材料1に対して酸処理を行うステップS2+において、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を1MのNaOH水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、60℃で8h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を120℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料2を得た。
ステップS3は、実施例16と同じであった。
【0210】
(実施例18)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S2は、実施例1と同じであった。
高度酸化処理のステップS3において、ステップS2で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料1を0.5MのKMnO4水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、50℃で2h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を60℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0211】
(実施例19)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S3は、実施例1と同じであった。
外層コーティングのステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を管状炉に置き、真空引き処理を行い、続いて、N2を通入し、2℃/minで700℃まで昇温させ、C2H2ガスに切り換え、700℃で2h維持し、降温させ、炭素がコーティングされたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0212】
(実施例20)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S3は、実施例1と同じであった。
外層コーティングのステップS4において、ステップS3で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を0.1MのAl(NO3)3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、適量のNa2CO3水溶液(n(Na2CO3)=1.8n(Al))を加え、80℃で3h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を60℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持し、降温させ、Al2O3がコーティングされたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0213】
(実施例21)
ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造:
ステップS1~S3は、実施例1と同じであった。
外層コーティングのステップS4において、ステップS4で得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を0.1MのAl(NO3)3水/エタノール(50/50)溶液に分散させ、超音波で2h分散させ、適量のNa2CO3水溶液(n(Na2CO3)=1.8n(Al))を加え、80℃で3h撹拌し、ろ過し、脱イオン水で固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を60℃で24h送風乾燥してから、N2雰囲気で、2℃/minで400℃まで昇温させ、且つこの温度で2h維持してから、2℃/minで700℃まで昇温させ、C2H2ガスに切り換え、700℃で2h維持し、降温させ、炭素がコーティングされた、Al2O3がコーティングされたナノケイ素・酸素・炭素複合材料を得た。
【0214】
上記のように、各実施例におけるナノケイ素・酸素・炭素複合材料の製造について、その製造条件の主なタイプと考察要素は、次のとおりである。実施例1~4では、多孔質炭素骨格及びその表面処理方法を変更し、実施例5~11では、ケイ素沈積と酸素含有処理過程における各要素を変更し、実施例12~18では、高度酸化方法を考察し、実施例19~21では、複合材料の外層コーティングの例を挙げた。本発明のナノ材料のケイ素・酸素・炭素複合材料における3つのレベルの酸素について、比較例1~4を設定し、比較例1において、多孔質炭素骨格表面には、表面酸素含有基がほとんどなく、比較例2では、ケイ素沈積過程で酸素含有処理による酸素含有層の隔てを行わず、沈積により得られた複合材料も高度酸化処理されず、比較例3では、ケイ素沈積と酸素含有処理を用いたが、破砕整形した後に、さらなる酸化処理を行わず、比較例4では、ケイ素沈積過程に、酸素含有処理を行わなかったが、破砕整形した後に、高度酸化処理を行った。
【0215】
表1は、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料の実施例1~21及び比較例1~4の基本的な物理的性質及び電気化学的性能である。
【表5】
【0216】
以上の説明から、本発明の上記の実施例により下記のような技術的効果が実現されることが分かる。
本発明は、適切な製造方法により、複合材料における多孔質炭素骨格とケイ素ナノ粒子とがC-O-Si結合を介して連結され、安定で均一なナノケイ素・酸素・炭素複合材料を取得できる。この接続方式は、この連結方法をXPSテスト結果で反映することができ、
図10に示すように、実施例1で取得したナノケイ素・酸素・炭素複合材料のSi 2p微細スペクトルは、Siの結合が主にSi-Si及びSi-Oの2つの形態で存在し、結合エネルギーピークがそれぞれ、99±0.5eV及び103±0.5eVの結合エネルギーの箇所に存在し、結合エネルギーピークの100.5±0.5eVに位置するC-Siのピーク面積が小さく、Si-Siは、ケイ素ナノ粒子に存在し、Si-Oは、複合材料におけるC-O-Si及びSiO
δにより存在するものである。
【0217】
多孔質炭素材料において、その孔構造は、ケイ素ナノ粒子を収容する主な場所であり、多孔質炭素の孔径の分布は、通常、<2nmのミクロ孔から>50nmのマクロ孔まで広く、一部の多孔質炭素には、μmレベルのマクロ孔が存在する可能性がある。シラン分解は、熱重合の鎖反応であり、低温では反応が発生し難く、シランの利用率が低いが、高温では、分解速度が非常に速く、ケイ素粒子が不可避的に急速に成長する。ケイ素含有前駆体の気相堆積プロセスにおいて、ケイ素含有前駆体は、通常、先に多孔質炭素の孔路表面上で小粒子に分解して沈積し、次に、時間の経過とともに孔路の内部を完全に充填し、この過程において、ケイ素ナノ粒子の成長への最終的な拘束は、多孔質炭素骨格の孔路のサイズであり、そのため、不可避的にサイズが大きいケイ素粒子を形成し、それにより、ケイ素粒子のサイズ、分布が不均一になる。本発明では、多孔質炭素骨格の孔構造を制御し、特に、孔径のサイズが2~10nmにある孔の全孔容積における割合を高める一方、ケイ素含有前駆体の沈積過程を制御することや酸素含有物質の沈積及び成長を導入することにより、酸素含有物質によるケイ素ナノ粒子の効果的な隔てを実現し、最終的に、複合材料におけるケイ素ナノ粒子のサイズ制御及び均一な分散を実現する。Si粒子が酸化されやすいため、酸素含有物質により、Si及び酸素含有物質界面におけるSiナノ粒子が酸化されることにより、Si、SiO及びSiO2の濃度勾配を含む酸化層を形成し、当該酸化層をSiOδ(0<δ≦2)書くことができる。
【0218】
多孔質炭素骨格にケイ素ナノ粒子を沈積させた後、本発明は、均質化及び後続の電極製造を容易にするために、得られた材料に対して破砕整形を行うことにより、異なる相に起因する材料中の応力を解放した一方、均一で、適切なサイズ及び形状を有する複合材料粒子を取得できる。整形した後の新鮮なケイ素粒子表面が露出し、空気中で徐々に酸化して酸化層を形成し、当該酸化層も膨張をある程度緩和及び拘束する役割を果たすことができる。また、本発明は、一定のステップにより、露出しているケイ素ナノ粒子の表面に安定な酸化層を制御可能に生成し、当該酸化層はSiOδ(0<δ≦2)形態で存在する。ケイ素ナノ粒子表面の均一で、構造を制御可能な酸化層は、ケイ素のリチウム吸蔵中の膨張を一層緩和及び拘束することができる。
【0219】
本発明は、まず多孔質炭素骨格の表面構造及び孔構造を調節し、続いて、シランの分解と沈積過程において、酸素含有前駆体を導入し、ケイ素ナノ粒子に対する酸化分隔層を形成し、ケイ素ナノ粒子の均一な分散を実現し、これを基に、複合材料に対して破砕整形を行い、異なる相間の可能な応力を解放し、且つ、材料に均質化に必要な適切なサイズ及び形状分布を有させ、最後に、破砕整形後の複合材料に対して高度酸化処理を行い、ケイ素ナノ粒子表面に安定な酸化層を形成する。破砕整形及び後続の酸化処理は、完成品のナノケイ素・酸素・炭素複合材料におけるケイ素ナノ粒子がいずれも膨張が極めて低い酸化層によって包まれることが一層保証される。そのため、得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料に均一に分散されている拘束されたケイ素ナノ粒子の、リチウム吸蔵及びリチウム放出過程における体積効果を効果的に緩衝及び抑制することができ、材料の強度が向上し、当該ケイ素・酸素・炭素複合負極材料を含む電気化学装置の電気化学的性能を向上させるのに役立つ。
【0220】
本発明のナノケイ素・酸素・炭素複合材料におけるケイ素ナノ粒子は、非晶質及び/又は2nm未満の結晶粒子であり、ケイ素ナノ粒子は、SiOδのネットワークによって隔てられ及び/又は包まれ、多孔質炭素骨格とC-O-Siにより安定な複合材料に結合され、且つケイ素ナノ粒子及びSiOδは、多孔質炭素骨格の孔路内及び表面に均一に分散しており、適切な含有量のSiOδは、ケイ素ナノ粒子の良好な分散に役立ち、且つケイ素のリチウム吸蔵過程における膨張を拘束でき、それにより、ケイ素ナノ粒子の限界集まりサイズが10nm未満になり、電極の電極片の膨張率が低く、材料の強度が高く、電池のサイクル性能が良い。ナノケイ素・酸素・炭素複合材料は、小さい比表面積及び孔容積を有し、電極表面の副反応を効果的に減少させ、材料のクーロン効率を向上させ、初回効率が超高いケイ素・酸素・炭素複合負極材料を取得するのに有利である。ナノケイ素・酸素・炭素複合材料は、閉孔を含有し、ケイ素のリチウム吸蔵中の体積膨張を一定の程度緩衝することができ、当該複合材料を含む電極の電極片の膨張率が低く、それにより、電池のサイクル性能を一層向上させる。
【0221】
以上を纏めると、本発明にて提供されるナノケイ素・酸素・炭素複合材料は、多孔質炭素骨格と、その孔路内及び表面に均一に分布しているケイ素ナノ粒子とを含み、炭素とケイ素との安定した複合、ケイ素粒子のナノ化及び均一な分散は、3つのレベルの酸素により保証される。(1)多孔質炭素骨格の表面の酸素含有基とケイ素ナノ粒子との間にC-O-Si結合を形成することにより、ケイ素ナノ粒子と多孔質炭素骨格との間に安定な結合があることを保証し、(2)多孔質炭素骨格の孔路内で、酸素含有物質によるケイ素ナノ粒子の隔てにより、リコンナノ粒子が沈積中に制御不能に集まって成長することを回避し、それにより、ケイ素ナノ粒子のサイズを制御し、且つ酸素含有物質によるケイ素ナノ粒子の隔て及び/又は包みを実現し、(3)整形後に露出した新鮮なケイ素粒子表面に、酸化層が均一に成長することにより、酸素含有物質でケイ素ナノ粒子を包むことを一層実現する。これにより、得られたナノケイ素・酸素・炭素複合材料におけるケイ素ナノ粒子は、完全に、SiOδ(0<δ≦2)のネットワークによって隔てられ及び/又は包まれ、且つケイ素ナノ粒子及びSiOδは、多孔質炭素骨格の表面及び/又は孔路内に均一に分布している。SiOδによるケイ素ナノ粒子の隔て及び/又は包みは、充放電時の複合材料のケイ素の体積膨張と収縮及びケイ素粒子同士の融併を効果的に制御することができる。また、適切な範囲のケイ素、酸素、炭素元素含有量及び複合材料の比表面積により、ナノケイ素・酸素・炭素複合材料が最適なグラム当たり容量、初回クーロン効率、極めて低い膨張率及び優れたサイクル性能を示すことができる。
【0222】
そのため、本発明のいくつかの実施例において、リチウムイオン二次電池のグラム当たり容量が1500mAh/g以上であり、1.5Vの初回クーロン効率が90%以上であり、電極片の膨張率が100%より低く、充放電を50回サイクルした後のグラム当たり容量維持率が97%以上である。いくつかの実施例において、リチウムイオン二次電池のグラム当たり容量が2000mAh/g以上であり、1.5Vの初回クーロン効率が90%以上であり、電極片の膨張率が120%より低く、充放電を50回サイクルした後のグラム当たり容量維持率が96%以上である。
【0223】
なお、本明細書において、第1及び第2などのような関係用語は、1つの実体又は操作を別の実体又は操作と区別するために使用されるだけで、必ずしもこのような実体又は操作間に実際の関係又は順序が存在することを要求又は暗示するものではない。そして、用語、「含む」、「含有」又はそのいずれかの他の変形は非排他的な包含を含むことを意図し、それにより一連の要素を含むプロセス、方法、物品又は機器はそれらの要素を含むだけでなく、明確に列挙されない他の要素も含み、又はこのようなプロセス、方法、物品又は機器に固有の要素を含む。より多くの制限がない場合、「…一つを含む」という表現によって限定される要素は、前記要素を含むプロセス、方法、物品又は機器に追加の同一の要素も存在することを除外しない。
【0224】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者であれば、本発明の様々な変更及び変化が可能である。本発明の精神と原則内で行われたいかなる修正、等価置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Cx1-Oy1)-(Siz-Oy2-Cx2)を含み、
Cx1-Oy1は、表面酸化層を含む多孔質炭素基材であり、多孔質炭素基材及びその表面酸化層を含み、x1は、炭素の化学量数であり、y1は、表面酸化層中の酸素の化学量数であり、0.001≦y1/x1≦0.05であり、
Siz-Oy2-Cx2は、ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素を含み、前記ケイ素ナノ粒子、酸素含有物質及び選択可能な炭素は、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散分布し、前記酸素含有物質はSiOδ形態で存在し、0<δ≦2、0.1≦z/x1≦2、0.01≦y2/z≦0.15、0≦x2/z≦0.15である、ことを特徴とするナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料。
【請求項2】
前記複合材料において、酸素総含有量は、0.5wt%~5wt%である、ことを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料のXPSテストでの高分解能Si 2pスペクトルに対してデコンボリューション積分ピーク分析を行った結果には、結合エネルギーピーク値が103±0.5eVに位置するSi-Oのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.5~2であり、好ましくは0.8~1.5であることと、結合エネルギーピーク値が100.5±0.5eVに位置するSi-Cのピーク面積と結合エネルギーピーク値が99±0.5eVに位置するSi-Siのピーク面積との比が0.01~1であり、好ましくは0.01~0.5であることとが含まれる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記ケイ素ナノ粒子には、ケイ素結晶粒子及び/又は非晶質ケイ素が含まれ、前記ケイ素結晶粒子のサイズが5nm未満であり、さらに好ましくは前記ケイ素結晶粒子のサイズが2nm未満である、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記ケイ素ナノ粒子のサイズが20nm未満であり、好ましくは前記ケイ素ナノ粒子のサイズが10nm未満である、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項6】
前記複合材料の比表面積が0.1m2/g~15m2/gであり、全孔容積が0.001m2/g~0.05cm3/gであり、好ましくは、前記複合材料の比表面積が0.1m2/g~10m2/gであり、全孔容積が0.001m2/g~0.035cm3/gである、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項7】
前記複合材料の真密度が1.8m2/g~2.1g/cm3である、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項8】
前記複合材料は、固体電解質及び/又は導電性ポリマーを含むコーティング層をさらに含む、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項9】
前記複合材料の中央粒径D50が4μm~12μmの間にある、ことを特徴とする請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項10】
表面酸化層を含む多孔質炭素基材を提供し、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材中の酸素と炭素とのモル比は0.001~0.05であるステップS1と、
前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉にケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体を通入し、且つ150℃~700℃で前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材と接触させ、熱処理を5h~100h行い、ケイ素及び酸素含有物質並びに選択可能な炭素を多孔質炭素基材の表面及び/又は孔路内に分散して沈積させ、ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を得るステップS2と、を含む、ことを特徴とするナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の製造方法。
【請求項11】
前記ステップS1において、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の製造方法は、炭素前駆体と孔形成剤とを混合して、炭素化させた後、炭素化後の材料を形成し、且つ前記炭素化後の材料に対して破砕及び酸化処理を行う方法である、ことを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の比表面積が50m2/g~2000m2/gであり、孔容積が0.1cm3/g~3.0cm3/gであり、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の孔構造にはミクロ孔、メソ孔及びマクロ孔が含まれ、好ましくは、前記ミクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~40%であり、前記メソ孔の容積の全孔容積における割合が30%~80%であり、前記マクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~40%であり、
好ましくは、前記表面酸化層を含む多孔質炭素基材の比表面積が100m2/g~1000m2/gであり、孔容積が0.3cm3/g~1.5cm3/gであり、さらに好ましくは、前記ミクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~20%であり、前記メソ孔の容積の全孔容積における割合が60%~80%であり、前記マクロ孔の容積の全孔容積における割合が1%~20%である、ことを特徴とする請求項
10に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ステップS2の実施中に、前記ケイ素含有前駆体及び前記酸素含有前駆体を任意の体積比で組合せ、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体は、モノシラン、ジシラン、トリシラン、ハロゲン化シラン、ポリシラン、シロール及びその誘導体、シラフルオレン及びその誘導体
から選択される1つ又は複数であり、好ましくは、前記酸素含有前駆体は、酸素、二酸化炭素、水蒸気、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数であり、
好ましくは、前記ケイ素含有前駆体と酸素含有前駆体との体積比は、通入時間の経過につれ、連続的な変化し及び/又は周期的な変化が存在する、ことを特徴とする請求項10
又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記ステップS2において、前記ケイ素含有前駆体及び前記酸素含有前駆体を通入しながら、不活性ガスを通入し、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体及び酸素含有前駆体と前記不活性ガスとの第1混合ガスを通入する場合、前記酸素含有前駆体は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数であり、前記第1混合ガスにおいて、前記ケイ素含有前駆体の体積含有量は1%~50%であり、前記酸素含有前駆体の体積含有量は0.5%~10%であり、好ましくは、前記第1混合ガスを通入する際の前記熱処理の温度は400℃~700℃であり、さらに好ましくは、前記第1混合ガスを通入する際の前記熱処理の時間は5h~50hである、ことを特徴とする請求項10
又は12に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ステップS2において、前記ケイ素含有前駆体及び前記酸素含有前駆体を通入する前、通入した後、通入すると同時に又は通入する合間に、不活性ガスを通入し、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、好ましくは、前記ケイ素含有前駆体と前記不活性ガスとの第2混合ガスを通入する場合、前記第2混合ガスにおける前記ケイ素
含有前駆体の体積含有量は1%~50%であり、前記酸素含有前駆体と前記不活性ガスとの第3混合ガスを通入する場合、前記第3混合ガスにおける前記酸素含有前駆体の体積含有量は1%~50%であり、さらに好ましくは、前記ケイ素含有前駆体を通入する際の前記熱処理の温度は400℃~700℃であり、前記酸素含有前駆体を通入する際の前記熱処理の温度は150℃~600℃であり、好ましくは、前記ステップS2は、
表面酸化層を含む多孔質炭素基材が置かれている反応炉に不活性ガスを通入し、且つ前記反応炉の温度を400℃~700℃まで上げるステップS2-1と、
前記ケイ素含有前駆体と前記不活性ガスとの第2混合ガスを通入し、前記第2混合ガスにおける前記ケイ素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ前記反応炉を400℃~700℃に0.5h~15h維持するステップS2-2と、
前記ケイ素含有前駆体の通入しを停止し、前記不活性ガスのみを通入し、前記反応炉の温度を150℃~600℃に調節するステップS2-3と、
前記酸素含有前駆体と前記不活性ガスとの第3混合ガスを通入し、前記第3混合ガスにおける前記酸素含有前駆体の体積濃度は1%~50%であり、且つ前記反応炉を150℃~600℃に0.1h~5h維持するステップS2-4と、
前記ステップS2-1からステップS2-4を2~50回繰り返すステップS2-5と、を含む、ことを特徴とする請求項10
又は12に記載の製造方法。
【請求項16】
前記ステップS2の前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料を破砕分級し、中央粒径が4μm~12μmのナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を獲得し、好ましくは前記破砕分級の方式は、人工研磨、機械研磨、ボールミル、ジェットミルのうちのいずれか1つ又は複数であるステップS3をさらに含む、ことを特徴とする請求項10
又は12に記載の製造方法。
【請求項17】
前記ステップS3の前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対して高度酸化処理を行い、好ましくは、前記高度酸化処理には、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を、酸化性物質を含む溶液及び/又はガスと0℃~400℃で0.5h~12h接触させるステップS4をさらに含む、ことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記ステップS4において、前記高度酸化処理には、液相酸化及び/又は気相酸化が含まれ、
好ましくは、前記液相酸化のステップは、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を酸化性物質及び/又は酸化性物質の水及び/又はエタノール溶液に入れ、超音波で0.5h~2h分散させた後、0℃~50℃で0.5h~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールで固体を複数回洗浄し、且つ得られた固体を40℃~200℃で0.5h~24h送風乾燥した後、不活性雰囲気下、200℃~400℃で0.5h~5h処理することであり、前記
酸化性物質は、KMnO4、H2O2、HNO3、H2SO4、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸から選択されるいずれか1つ又は複数であり、前記液相酸化は、紫外線及び/又はミクロ波放射の作用下で行われ、
好ましくは、前記気相酸化のステップは、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を真空度が10-2Paより低くなるまで真空引きし、その後、酸化性ガス及び不活性ガスを含む混合ガスを通入し、昇温速度を1℃/min~10℃/minに制御し、室温から200℃~400℃まで上げ、且つ200℃~400℃で0.1h~5h処理することであり、前記酸化性ガスは、酸素、オゾン、二酸化炭素、水蒸気から選択されるいずれか1つ又は複数であり、前記不活性ガスは、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスのうちの1つ又は複数であり、前記酸化性ガスが前記混合ガスを占める割合は0.5%~20%である、ことを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記ステップS4の前に、前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子に対する酸処理及び/又はアルカリ処理過程を追加し、
好ましくは、前記酸処理の方法は、酸を含む水/エタノール溶液に前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を分散させ、0℃~50℃で0.5h~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールを用いてろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで固体を複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥することであり、
前記アルカリ処理の方法は、アルカリを含む水/エタノール溶液に前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料の分級粒子を分散させ、0℃~50℃で0.5h~12h撹拌し、ろ過及び/又は遠心分離により固液を分離し、脱イオン水及び/又はエタノールを用いてろ液及び/又は上澄み液のpHが中性になるまで固体を複数回洗浄し、得られた固体を真空乾燥することであり、前記酸は、HCl、H2SO4、HNO3、H3PO4のうちの1つ又は複数であり、前記アルカリは、NaOH、KOH、Na2CO3、K2CO3、NH3H2O、NH4HCO3、(NH4)2CO3、尿素のうちの1つ又は複数である、ことを特徴とする請求項
17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に、固体電解質及び/又は導電性ポリマーを包むステップS5をさらに含む、ことを特徴とする請求項10
又は12に記載の製造方法。
【請求項21】
前記ナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料に対して真空処理及び炭素コーティングを行い、前記炭素コーティングの方式は、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、ブテン、アセチレン、プロピン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、ブタノンのうちの1つ又は複数を用いて、前記複合材料に対して気相堆積を行うか、又は、液体炭素前駆体を用いて液相炭素コーティングを行うことであり、好ましくは、前記液体炭素前駆体は、樹脂、アスファルトから選択されるステップS6をさらに含む、ことを特徴とする請求項10
又は12に記載の製造方法。
【請求項22】
負極材料を含む負極であって、前記負極材料は、請求項
1に記載のナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料又は請求項
10に記載の製造方法で得られたナノケイ素・酸素・炭素構造の複合材料である、ことを特徴とする負極。
【請求項23】
負極を含む電気化学装置であって、前記負極は、請求項22に記載の負極であり、好ましくは、前記電気化学装置がリチウムイオン二次電池である、ことを特徴とする電気化学装置。
【国際調査報告】