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特表2024-522951チタン系リチウムイオン交換体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-24
(54)【発明の名称】チタン系リチウムイオン交換体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 39/09 20170101AFI20240617BHJP
   C01G 23/00 20060101ALI20240617BHJP
   B01J 39/10 20060101ALI20240617BHJP
   B01J 39/02 20060101ALI20240617BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20240617BHJP
【FI】
B01J39/09
C01G23/00 B
B01J39/10
B01J39/02
B01J49/53
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023567072
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-31
(86)【国際出願番号】 CN2022129139
(87)【国際公開番号】W WO2023083062
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202111348797.0
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520207413
【氏名又は名称】チォンドウ チェムフィズ ケミカル インダストリー カンパニー リミティド
【氏名又は名称原語表記】Chengdu Chemphys Chemical Industry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Tower 3-1101,Yintai Center 1199 North Tianfu Ave Hi-Tech District Chengdu, Sichuan 610041 China
(71)【出願人】
【識別番号】520207424
【氏名又は名称】サイノーリシーウム マテリアルズ リミティド
【氏名又は名称原語表記】Sinolithium Materials Limited.
【住所又は居所原語表記】Unit 212 Mirror Tower 61 Mody Road Tsim Sha Tsui East KL Hongkong, Hong kong 999077 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】モン チィァン
(72)【発明者】
【氏名】ダイ イーファ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン レイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジンフォン
(72)【発明者】
【氏名】バン ウェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ツァィ ロンフー
【テーマコード(参考)】
4G047
【Fターム(参考)】
4G047CA06
4G047CB05
4G047CC03
4G047CD03
(57)【要約】
本発明は、チタン系リチウムイオン交換体の製造方法に関する。前記製造方法は、メタチタン酸リチウム前駆体の製造、つまり、チタン源、リチウム源および水をボールミリングにより同割合で均一に混合し、補助剤を添加し、超音波加熱および撹拌により反応を起こすことで前記メタチタン酸リチウム前駆体の粉末を得る工程1と、メタチタン酸リチウム前駆体を用いて噴霧乾燥およびマイクロ波焼成を行い、メタチタン酸リチウム粉末を得ることを含む、前記メタチタン酸リチウム粉末の製造を行う工程2と、溶出および置換、つまり、溶離液を用いてリチウムを浸出させてリチウムイオン交換体を得る工程3を備える。超音波により合成反応を強化することによって反応を加速させる。また、マイクロ波焼成によりエネルギー消費を効果的に低減する。チタンの割合が比較的過剰になるように制御することにより、高い多孔性と優れた濾過性を持つメタチタン酸リチウム粉末が製造される。製造されたリチウムイオン交換体は、優れたリチウム抽出性能を持ちながらもチタンの溶液の損失が低く、実用化の要件を満たしている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン系リチウムイオン交換体の製造方法であって、
メタチタン酸リチウム前駆体の製造として、チタン源、リチウム源、水および金属ドーパントをボールミリングにより均一に混合し、補助剤を添加し、超音波加熱および撹拌によって反応を起こし、濾過および洗浄して前記メタチタン酸リチウム前駆体を得る工程1と、
メタチタン酸リチウム粉末の製造として、
固液比1:2~1:5で前記メタチタン酸リチウム前駆体に水を添加し、混合してスラリーを得て、前記スラリーに細孔形成剤を添加し、ボールミリングにより均一に混合する、ボールミリング工程Aと、
均一に混合された前記スラリーを、150~200℃の温度で噴霧造粒し乾燥させて粉末を得る、噴霧乾燥工程Bと、
工程Bで得られた前記粉末を350~750℃で6~12時間かけて焼成した後、室温まで急冷して前記メタチタン酸リチウム粉末を得る、焼成工程Cと、を有する工程2と、
前記チタン系リチウムイオン交換体の製造として、
工程2において焼成された前記粉末を溶離液と混合および撹拌し、リチウムイオンを浸出させて前記チタン系リチウムイオン交換体を得る工程を有する工程3と、を備えることを特徴とするチタン系リチウムイオン交換体の製造方法。
【請求項2】
工程1における前記チタン源がメタチタン酸または二酸化チタンであり、前記メタチタン酸または前記二酸化チタンの一次粒径は10~50nm、その比表面積は60~400m/gであり、前記リチウム源は水酸化リチウムであり、工程1における前記金属ドーパントは金属Xをドープした塩であり、前記ドープ要素Xは、Mn、V、Fe、Nb、Ce、Mo、MgおよびAlからなる群から選択されるいずれか一つ以上であり、前記金属ドーパントの添加量は、チタン対前記金属Xドープのモル比0.8~1.0:0~0.2であり、前記金属Xドープ塩は、Mn、V、Fe、Nb、Ce、Mo、MgおよびAlからなる群のいずれか一つ以上を含む可溶性塩または不溶性塩であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記チタン源は水と混合され、前記水の添加量は固形分の20~50%であり、前記水酸化リチウムの添加量をリチウムとチタンのモル比2~2.5:1~1.5とし、チタンと前記金属ドーパントのモル比0.8~1.0:0~0.2であることを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記補助剤が、過酸化水素水、水酸化アンモニウム、クエン酸及びシュウ酸からなる群から選択されるいずれか一つであり、その添加量はチタンのモル質量の0~1.5倍であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
工程1における超音波加熱撹拌反応を、超音波周波数が20~60KHZ、反応温度が20~120℃、および反応時間が4~24時間というパラメータのもとで行うことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
工程1における焼成方法が、高温炉における焼成またはマイクロ波焼成であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
工程1において噴霧造粒される前記メタチタン酸リチウム前駆体粉末の粒径D50が20~60μmであり、噴霧された前記スラリー中の固形分は25~60%に制御されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記細孔形成剤が、デンプン、炭素粉末、炭素繊維粉末、カーボンナノチューブ、ナノセルロース、スクロース、キトサン、グルコース、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエチレンパウダー、およびパラフィンパウダーからなる群より選択されるいずれか一つ以上であり、前記細孔形成剤の添加量は前記スラリーの質量の3~10%であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
前記溶離液が、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、クエン酸、Naおよび(NHSOからなる群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の製造方法により製造されることを特徴とする、メタチタン酸リチウムイオン交換体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化学物質の製造技術分野に関し、特にチタン系リチウムイオン交換体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術の発展に伴い、化学産業や製薬産業で重要なリチウム塩に関する研究がより深化している。また、リチウムは21世紀における新たなエネルギー源や戦略資源として大いに注目を集めている。リチウム電池技術の発展や制御された核融合の分野での発展に伴い、その役割はさらに拡大する。現在、国際需要は1年あたり7~11%の割合で成長を続けている。そのため、リチウムは「21世紀のエネルギー金属」「21世紀のクリーンエネルギー」とも呼ばれている。リチウムは新エネルギー分野で期待されている。市場の需要の増大とリチウムの埋蔵鉱量の致命的な不足の矛盾を解消するために、人々はわずかな液体資源からリチウム塩を開発することを試みている。リチウムイオンふるい吸着剤は優れた吸着選択性を持ち、塩水や海水からリチウムイオンを無駄なく抽出および分離できるため、産業関係者から関心を集めている。
【0003】
リチウムイオンふるい交換前駆体の従来の合成方法には、ゾルゲル法、水熱法、および高温固相法などがある。前の2つの方法は、原料コストが高く、処理が複雑で制御できないという問題があるため、産業化に応用するのは困難である。一方、高温固相合成法は処理が単純で大量生産が容易だが、原料の粉末を混合するために何度も粉砕する必要がある。加えて、処理中にリチウムとチタンの比率を制御するのは容易ではなく、合成されたリチウムイオンふるいにおいてチタン損失が比較的大きくなると考えられる。また、焼成時間が長い、高温になるなどの問題があり、合成される粉末の粒径の制御が困難である。したがって、技術を向上させるにはさらなる研究が必要である。
【発明の概要】
【0004】
従来技術の問題点を解決するため、本発明の主な目的は、メタチタン酸リチウムイオン交換体およびその製造方法を提供することである。製造方法は固液接触反応であり、原料比率を正確に制御しやすく、反応過程も穏やかである。反応時間を大幅に短縮するため、超音波により合成反応を強化する。マイクロ波焼成は焼成時の温度低下を効果的に低減し、エネルギーを大幅に節約する。チタンの割合が比較的過剰になるように制御することにより、均一なサイズ分布、高い多孔性、および優れた濾過性を持つメタチタン酸リチウム粉末が製造される。製造されたリチウムイオン交換体は、比較的吸着活性が高く、チタン損失が低い。製造されたリチウムイオンふるい(HTiO)粉末は、Liイオンを、塩湖の塩水、リチウムが沈殿している母液、高不純物リチウム含有溶液、リチウム電池回収液およびその他のリチウム含有溶液から高い選択性で認識し吸着する。また、吸着容量が大きい、吸着速度が高い、チタン損失が低い、およびサイクル安定性が優れているなどの特徴を持つ。
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明で採用される技術的解決策は以下の通りである。
チタン系リチウムイオン交換体の製造方法であって、
メタチタン酸リチウム前駆体の製造として、チタン源、リチウム源、水、および金属Xをドープした塩である金属ドーパントをボールミリングにより均一に混合し、補助剤を添加し、超音波加熱および撹拌によって反応を起こし、濾過および洗浄して前記メタチタン酸リチウム前駆体を得る工程1と、
メタチタン酸リチウム粉末の製造として、
固液比1:2~1:5で前記メタチタン酸リチウム前駆体を混合してスラリーを得て、前記スラリーに細孔形成剤を添加し、ボールミリングにより均一に混合する、ボールミリング工程Aと、
均一に混合された前記スラリーを、150~200℃の温度で噴霧造粒し乾燥させて粉末を得る、噴霧乾燥工程Bと、
工程Bで得られた前記粉末を350~750℃で6~12時間かけて焼成した後、室温まで急冷して前記メタチタン酸リチウム粉末を得る、焼成工程Cと、を有する工程2と、
前記チタン系リチウムイオン交換体の製造として、
工程2において焼成された前記粉末を溶離液と混合および撹拌し、リチウムイオンを浸出させて前記チタン系リチウムイオン交換体を得る工程を有する工程3と、を備えるチタン系リチウムイオン交換体の製造方法。
【0006】
本出願の好適な実施として、工程1の前記チタン源は、一次粒径が10~50nm、好ましくは10nm、比表面積は60~400m/g、好ましくは300m/gのメタチタン酸または二酸化チタンである。
【0007】
本出願の好適な実施として、工程1において前記メタチタン酸または二酸化チタンを、固形分(質量)の20~50%の量の水と混合して粉砕し、均一なスラリーを得る。また、前記リチウム源は固体の水酸化リチウムであり、その添加量はリチウム対チタンのモル比2~2.5:1~1.5、より好ましくはリチウム対チタンのモル比2.01~2.50:1である。
【0008】
本出願の好適な実施として、工程1における前記金属ドーパントは金属Xをドープした塩であり、前記ドープ要素Xは、Mn、V、Fe、Nb、Ce、Mo、MgおよびAlからなる群から選択されるいずれか一つ以上であり、前記金属ドーパントの添加量は、チタン対前記金属Xドープのモル比0.8~1.0:0~0.2であり、前記金属Xドープ塩は、Mn、V、Fe、Nb、Ce、Mo、MgおよびAlからなる群のいずれか一つ以上を含む可溶性塩または不溶性塩である。
【0009】
本出願の好適な実施として、より好ましくは、前記補助剤は過酸化水素水であり、その添加量はチタンのモル質量の0.5~1.5倍であり、過酸化水素の濃度は10~40wt%である。
【0010】
本出願の好適な実施として、工程1の超音波合成反応は、超音波周波数は好ましくは30~60KHZ、反応温度は好ましくは40~110℃、反応時間は好ましくは2~8時間、という条件のもと行われる。
【0011】
本出願の好適な実施として、工程1において噴霧造粒される前記メタチタン酸リチウム前駆体粉末の粒径D50が20~60μmであり、噴霧された前記スラリー中の固形分は25~60wt%に制御される。
【0012】
本出願の好適な実施として、工程2における焼成は、大気雰囲気下で400~600℃の温度で3~6時間かけて行うことがより好ましく、マイクロ波焼成がより好ましい選択肢である。
【0013】
本出願の好適な実施として、工程1における噴霧されたスラリー中の前記細孔形成剤は、炭素粉末、炭素繊維粉末、カーボンナノチューブ、ナノセルロース、スクロース、グルコース、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエチレンパウダー、パラフィンパウダーからなる群から選択されるいずれか一つ以上であり、噴霧された前記スラリーへの前記細孔形成剤の添加量は前記スラリーの質量の3~10wt%であり、噴霧された前記スラリー中の固形分は30~60%である。
【0014】
本出願の好適な実施として、工程3における前記溶離液は、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、クエン酸、Naおよび(NHSOからなる群から選択されるいずれか一つ以上である。
【0015】
本発明は、従来技術に比べ、以下の有益な効果を有する。
(1)製造方法は固液接触反応であり、原料比率を正確に制御しやすく、反応過程も穏やかである。反応時間を大幅に短縮するため、超音波により合成反応を強化する。マイクロ波焼成は焼成時の温度低下を効果的に低減し、エネルギーを大幅に節約する。チタンの割合が比較的過剰になるように制御することにより、均一なサイズ分布、高い多孔性、および優れた濾過性を持つメタチタン酸リチウム粉末が製造される。
(2)製造された前記リチウムイオン交換体は、塩湖の塩水または模擬塩水からリチウムを抽出するのに使用するとき高い吸着活性を示し、0.1~2g/Lのリチウムを含む模擬塩水に適用可能である。前記リチウムイオン交換体のリチウム吸着容量は30~50mg/gである。
(3)製造された前記リチウムイオン交換体は、高い吸着選択性、高い吸着および脱着速度、優れたサイクル安定性、および0.01%未満のチタン損失を有する。
(4)製造過程において適度に過剰なチタンが存在することにより、前記リチウムイオンふるいの吸着性能および濾過性はもちろん吸着容量も大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明におけるチタン系リチウムイオン交換体の製造プロセスフローの模式図である。
図2図2は、実施形態3において製造されるチタン系リチウムイオン交換体のX線回折スペクトルである。
図3図3は、実施形態3において製造されるチタン系リチウムイオン交換体のSEM写真である。
図4図4は、実施形態1において製造されるチタン系リチウムイオン交換体の静的吸着カイネティック曲線を示す図である。
【発明の実施の形態】
【0017】
チタン系リチウムイオン交換体の製造方法であって、
メタチタン酸リチウム前駆体の製造として、チタン源、リチウム源、水、および金属Xをドープした塩である金属ドーパントをボールミリングにより均一に混合し、補助剤を添加し、超音波加熱および撹拌によって反応を起こし、濾過および洗浄して前記メタチタン酸リチウム前駆体を得る工程1と、
メタチタン酸リチウム粉末の製造として、
固液比1:2~1:5で前記メタチタン酸リチウム前駆体を混合してスラリーを得て、前記スラリーに細孔形成剤を添加し、ボールミリングにより均一に混合する、ボールミリング工程Aと、
均一に混合された前記スラリーを、150~200℃の温度で噴霧造粒し乾燥させて粉末を得る、噴霧乾燥工程Bと、
工程Bで得られた前記粉末を350~750℃で6~12時間かけて焼成した後、室温まで急冷して前記メタチタン酸リチウム粉末を得る、焼成工程Cと、を有する工程2と、
前記チタン系リチウムイオン交換体の製造として、
工程2において焼成された前記粉末を溶離液と混合および撹拌し、リチウムイオンを浸出させて前記チタン系リチウムイオン交換体を得る工程を有する工程3と、を備えるチタン系リチウムイオン交換体の製造方法。
【0018】
好ましくは、工程1の前記チタン源は、一次粒径が10~50nm、好ましくは10nm、比表面積は60~400m/g、好ましくは300m/gのメタチタン酸または二酸化チタンである。
【0019】
好ましくは、工程1において前記メタチタン酸または二酸化チタンを、固形分(質量)の20~50%の量の水と混合して粉砕し、均一なスラリーを得る。また、前記リチウム源は固体の水酸化リチウムであり、その添加量はリチウム対チタンのモル比2.01~2.5:1である。
【0020】
好ましくは、工程1における前記金属ドーパントは金属Xをドープした塩であり、前記ドープ要素Xは、Mn、V、Fe、Nb、Ce、Mo、MgおよびAlからなる群から選択されるいずれか一つ以上であり、前記金属ドーパントの添加量は、チタン対前記金属Xドープのモル比0.8~1.0:0~0.2であり、前記金属Xドープ塩は、Mn、V、Fe、Nb、Ce、Mo、MgおよびAlからなる群のいずれか一つ以上を含む可溶性塩または不溶性塩である。
【0021】
好ましくは、前記補助剤は過酸化水素水であり、その添加量はチタンのモル質量の0.5~1.5倍であり、過酸化水素の濃度は10~40wt%である。
【0022】
好ましくは、工程1において噴霧造粒される前記メタチタン酸リチウム前駆体粉末の粒径D50が20~60μmであり、噴霧された前記スラリー中の固形分は25~60wt%、より好ましくは45~55wt%に制御される。
【0023】
好ましくは、工程1の超音波加熱撹拌反応は、超音波周波数は好ましくは30~60KHZ、反応温度は好ましくは40~110℃、反応時間は好ましくは2~8時間、という条件のもと行われる。
【0024】
好ましくは、工程2における焼成は、大気雰囲気下で400~600℃の温度で3~6時間かけて行われる。また、マイクロ波焼成がより好ましい選択肢である。
【0025】
好ましくは、工程1における噴霧されたスラリー中の前記細孔形成剤は、炭素粉末、炭素繊維粉末、カーボンナノチューブ、ナノセルロース、スクロース、グルコース、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエチレンパウダー、パラフィンパウダーからなる群から選択されるいずれか一つ以上であり、噴霧された前記スラリーへの前記細孔形成剤の添加量は前記スラリーの質量の3~10wt%である。
【0026】
好ましくは、工程3における前記溶離液は、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、クエン酸、Naおよび(NHSOからなる群から選択されるいずれか一つ以上である。
【0027】
本発明における主な解決策をさらにその代替案と自在に組み合わせることで、複数の解決策を形成し、そのすべてを本発明で採用および特許請求することができる。また、各代替案は、本発明に係る他の互換性のある代替案と任意に組み合わせることができる。本発明の解決策を理解した当業者であれば、先行技術および一般常識に基づけば複数の組み合わせは自明である。また、本発明の解決策はすべて本発明によって保護される技術的解決策であり、またここで網羅するものではない。
【0028】
以下、本発明の実施を、具体例を通じて説明する。当業者であれば、本明細書に開示された内容から本発明の他の利点および効果を容易に理解することができる。本発明はその他の異なる具体的な実施例において実施または適用することができる。また、本明細書における様々な詳細は、本発明の精神から逸脱することなく、異なる観点および用途に基づいて修正または変更することができる。以下の実施形態および実施形態における特徴は、矛盾しない状況において互いに組み合わせることができることに留意されたい。
【0029】
本発明の目的、技術的解決策、および利点を明確に理解するために、本発明の実施形態の技術的解決策は実施形態の図面と組み合わされ、以下の通り明確かつ完全に説明されることに留意されたい。明らかに、本明細書の実施形態は、本発明の実施形態のすべてではなく、一部にすぎない。一般的に、本明細書で説明および図示されている本発明の実施形態の構成要素は、様々な構成で配置および設計することができる。本発明によれば、機械撹拌や高速分散を含む撹拌における具体的な操作は特定されず、本発明における塩水も特定されない。当業者によく知られている任意の操作および塩水を使用することができる。
【0030】
以下の実施例におけるデータ分析では、K、Ca、Na、Mg、およびBはICP分析により分析され、Clは分光測色により分析され、LiおよびTiは原子吸光分析により測定され、硫酸根は硫酸バリウム比濁法により測定される(GB 13580.6-92)。本出願において記載される%は、特に断りのない限り、質量百分率、すなわちwt%を示す。
【0031】
以下の実施形態で使用される模擬塩水の化学組成は以下の通りである。
【0032】
【表1】
【0033】
実施形態1
工程1:メタチタン酸40kgと水10kgをボールミリングにより混合し、均一なスラリーを得て、固体の水酸化リチウム10.5kgと硫酸マンガン2.5gを添加し、超音波周波数が40KHzという条件下で80℃まで加熱し、反応を起こすため常圧で撹拌する。反応過程中、過酸化水素水(チタンのモル質量の0.5%)を滴下し、2時間半後に濾過および洗浄することによってメタチタン酸リチウム前駆体が得られる。
【0034】
工程2 メタチタン酸リチウム粉末の製造:
ボールミリング工程A:工程1で得られたメタチタン酸リチウム前駆体に少量の水を固液比1:3.5で添加し、混合してスラリーを得て、デンプン3%を添加し、ボールミリングによって均一に混合する。
噴霧乾燥工程B:工程Aで得られたスラリーを180℃の温度で噴霧することによって予備造粒し、乾燥して粉末を得る。
焼成工程C:工程Bで得られた粉末に対して410℃で4時間かけてマイクロ波焼成を行い、測定された多孔性が最大82%である前駆体LiTiOを得る。
【0035】
工程3 チタン系リチウムイオン交換体の製造:
工程2で焼成して得られた粉末を溶離液と混合、撹拌し、リチウムイオンを浸出させてマンガンをドープしたリチウムイオン交換体(HTiO)を得る。
【0036】
製造したチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)に対して、模擬塩水を用いた吸着試験を行う。リチウムイオン交換体(HTiO)は、1時間以内に30.5mg/gのリチウムを吸着することができ、連続24時間で46.0mg/gの飽和リチウム吸着容量に達すると判断される。リチウム抽出回収効率は99.1%、溶出率は99.7%、チタン損失は0.050%未満である。図4は静的吸着カイネティック曲線を示す図である。それによれば、吸着平衡は2時間後にほぼ達成される。
【0037】
実施形態2
製造方法は実施形態1と同様であるが、実施形態1の工程1における金属ドープ塩硫酸マンガンを硫酸アルミニウムに置き換えてドープリチウムイオン交換体を製造する点が異なる。
【0038】
実施形態3
製造方法は実施形態2と同様であるが、実施形態2の工程1における金属ドープ塩硫酸マンガンをシュウ酸バナジウムに置き換えてドープリチウムイオン交換体を製造する点が異なる。
【0039】
比較例1
製造方法は実施形態1と同様であるが、実施形態1の工程1における金属ドープ塩硫酸マンガンを硫酸マグネシウムに置き換えてドープリチウムイオン交換体を製造する点が異なる。
【0040】
比較例2
製造方法は実施形態1と同様であるが、実施形態1の工程1における金属ドープ塩硫酸マンガンを硫酸コバルトに置き換えてドープリチウムイオン交換体を製造する点が異なる。
【0041】
比較例3
製造方法は実施形態1と同様であるが、実施形態1の工程1における金属ドープ塩硫酸マンガンを硫酸ニッケルに置き換えてドープリチウムイオン交換体を製造する点が異なる。
【0042】
上述したように製造される交換体と本実施形態において製造されるチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)との吸着試験を行う。
具体的な試験結果は以下の通りである。
【0043】
【表2】
【0044】
実施形態4
製造方法は実施例1と同様であるが、実施形態1における前駆体合成反応過程から超音波が省略され、ドープリチウムイオン交換体を製造するのに反応時間が12時間必要となる点が異なる。また、本実施形態において製造されるチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)の吸着試験を行う。具体的な試験結果は以下の通りである。
【0045】
【表3】
【0046】
実施形態5
チタン系リチウムイオン交換体(HTiO)の場合、製造方法は実施形態1と同様であるが、マイクロ波焼成が高温炉焼成に置き換えられ、焼成温度が600℃である点が異なる。また、本実施形態において製造されるチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)の吸着試験を行う。具体的な試験結果は以下の通りである。
【0047】
【表4】
【0048】
比較例4
製造方法は実施形態2と同じであるが、焼成温度が500℃である点が異なる。
【0049】
比較例5
製造方法は実施形態2と同じであるが、焼成温度が700℃である点が異なる。
実施形態2、比較例2および比較例3において製造されるリチウムイオン交換体(HTiO)に対して吸着試験を行う。具体的な試験結果は以下の通りである。
【0050】
【表5】
【0051】
実施形態6
チタン系リチウムイオン交換体(HTiO)の場合、製造方法は実施形態1と同様であるが、工程1における固体の水酸化リチウムの添加量がリチウム対チタンのモル比2:1.03(チタン過剰)である点が異なる。また、製造されるチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)に対して模擬塩水での吸着試験を行う。具体的な試験結果は以下の通りである。
【0052】
【表6】
【0053】
実施形態7~9におけるチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)の場合、製造方法は実施形態6と同様であるが、チタン系リチウムイオン交換体(HTiO)を製造するLi/Ti(モル比)の条件が異なる。また、製造されるLi/Ti(モル比)の異なる条件で製造されたチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)に対して模擬塩水での吸着試験を行う。具体的な試験結果は以下の通りである。
【0054】
【表7】
【0055】
実施形態10
チタン系リチウムイオン交換体(HTiO)の場合、製造方法は実施形態3と同様であるが、細孔形成剤をキトサンに置き換えられる点が異なる。また、製造されるチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)に対して模擬塩水での吸着試験を行う。具体的な試験結果は以下の通りである。
【0056】
【表8】
【0057】
実施形態11
チタン系リチウムイオン交換体(HTiO)の場合、製造方法は実施形態3と同様であるが、細孔形成剤をポリスルホン粉末に置き換えられる点が異なる。また、製造されるチタン系リチウムイオン交換体(HTiO)に対して模擬塩水での吸着試験を行う。具体的な試験結果は以下の通りである。
【0058】
【表9】
【0059】
注記:粉末の多孔性を測定するには、恒量になるまで乾燥させたイオン交換粉末50gをとり、それを100mLメスシリンダに入れて振動させ、体積V1を読み取る。恒量になるまで乾燥させたイオン交換粉末をさらに50gとり、それを200mLメスシリンダに加え、水を加えてメスシリンダを振り均一に混合させたスラリーを得て、さらに15ml水を加えた後に15分間超音波処理し、1時間放置する。吸着剤が水で飽和したことを確認した後に総体積Vを読み取る。すると、多孔性Φ=(m-V)/V×100%となる。
注記:チタン損失、溶出率、および回収率の割合%は業界標準の計算式に従って計算(質量比)される。
【0060】
サイクル安定性実験
模擬塩水1を用いて、実施形態8において製造されるリチウムイオン交換体(HTiO)を1時間半かけて吸着し、洗浄した後に濾過する。硫酸0.22mol/Lを用いて溶液を1時間半かけて分析し、洗浄した後に濾過する。サイクル安定性実験を100回繰り返し、ICP分析によりリチウムイオン濃度を測定する。評価結果は以下の通りである。
【0061】
【表10】
【0062】
リチウムイオン交換体は100回循環し、粉末吸着剤は優れた安定性を持つ。平均Li吸着容量は27mg/g超で安定しており、回収率は90%超である。Li溶出率は95%超である。
【0063】
異なる塩水またはリチウム含有溶液の吸着実験:
【0064】
【表11】
【0065】
初回のLi吸着容量は25.8mg/g、Li回収率は97.7%である。50サイクル後のLi吸着容量は21.5mg/g、Li回収率は95.8%である。
【0066】
【表12】
【0067】
初回のLi吸着容量は19.8mg/g、Li回収率は98.5%である。50サイクル後のLi吸着容量は18.5mg/g、Li回収率は95.5%である。
【0068】
【表13】
【0069】
初回のLi吸着容量は30.8mg/g、Li回収率は96.5%である。50サイクル後のLi吸着容量は25.5mg/g、Li回収率は93.5%である。
上記の表から、本発明により製造されるチタン系リチウムイオン交換体は、優れた吸着性能とサイクル安定性を持つことが分かる。
【0070】
好適な実施形態の上記説明は、限定的に解釈されるべきではない。なぜなら、当業者は、上記説明に従って改良または変更を行うことができ、これらすべての改良および変更は本発明の特許請求の範囲の保護範囲に含まれるはずだからである。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】