(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-24
(54)【発明の名称】流量計
(51)【国際特許分類】
G01F 1/32 20220101AFI20240617BHJP
【FI】
G01F1/32 C
G01F1/32 B
G01F1/32 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023575871
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2021067408
(87)【国際公開番号】W WO2022268330
(87)【国際公開日】2022-12-29
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523173209
【氏名又は名称】ジーカ・ドクトル・ジーベルト・ウント・キューン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ツァンダー・シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・ゼルギウス
(72)【発明者】
【氏名】ブライヒャート・バスティアン
(57)【要約】
本発明の主題は、流体の流速を測定するための流量計(1)であって、流体が貫流できる測定室(11)を形成する測定管(10)と、測定室(11)内に配置された少なくとも一つの渦発生体(12)とを有し、測定室(11)には、渦発生体(12)の下流に、さらに測定値取得器(13)が配置され、渦発生体(12)において渦が形成されることで、測定値取得器が偏向可能とされている流量計である。流量計(1)を流れが通り抜けるときの流体の流れ抵抗を最小限に抑えるために、測定管(10)は、本発明により、少なくとも渦発生体を配置した領域において(12)楕円形の断面(Q1)を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流速を測定するための流量計(1)であって、流体が貫流できる測定室(11)を形成する測定管(10)と、前記測定室(11)内に配置された少なくとも一つの渦発生体(12)とを有し、前記測定室(11)には、前記渦発生体(12)の下流に、さらに測定値取得器(13)が配置され、当該測定値取得器が、周りに流れがあるときに渦発生体において渦が形成されることで、測定値取得器が流体により偏向可能とされている流量計において、
前記測定管(10)は、少なくとも前記渦発生体(12)を配置した領域において楕円形の断面(Q1)を有していることを特徴とする流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の流量計(1)において、
前記測定管(10)の前記測定室(11)は、流体入口(14)と流体出口(15)の間を流れの軸線(16)に沿って延在し、前記流体入口(14)は、円形断面(Q0)を有し、当該円形断面が、前記流れの軸線(16)に沿って前記渦発生体(12)の位置まで推移しながら前記楕円形の断面(Q1)へと移り変わっていくことを特徴とする流量計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流量計(1)において、
前記楕円形の断面(Q1)は、前記渦発生体(12)の位置から前記流れの軸線(16)に沿って前記流体出口(15)まで、前記円形断面(Q0)へと移り変わっていくことを特徴とする流量計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記渦発生体(12)は、渦発生体軸線(12a)を有し、当該渦発生体軸線に沿って前記渦発生体(12)が延在し、前記渦発生体軸線(12a)は、前記測定室(11)を貫いて延びる前記流れの軸線(16)に対して垂直方向を向いているか或いは前記渦発生体(12)は、円形、楕円形、流線形、台形または三角形の断面を有しているかの少なくともいずれかであることを特徴とする流量計。
【請求項5】
請求項4に記載の流量計(1)において、
前記楕円形の断面(Q1)は、長めの長軸(17)と、当該長軸(17)に交差するように延びる短めの短軸(18)とにより展開され、前記楕円形の断面(Q1)は、前記短軸(18)が前記渦発生体軸線(12a)に一致するような向きにされていることを特徴とする流量計。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記短軸(18)に対する前記長軸(17)の長さの比が、1.1から2.0、好ましくは1.25から1.8、特に好ましくはさらに、1.3から1.6の値を有していることを特徴とする流量計。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記渦発生体(12)の流れがぶつかる面積に対する前記長軸(17)の長さの数値比は、0.15から0.6、好ましくは0.2から0.5、特に好ましくはさらに0.25から0.45の値を有していることを特徴とする流量計。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記流体入口(14)および/または前記流体出口(15)の前記円形断面(Q0)は、前記楕円形の断面(Q1)の前記長軸(17)の長さに相当する直径の大きさか、或いは、前記渦発生体軸線(12a)に交差する方向の前記測定室(11)の幅が、前記流体入口(14)から前記流体出口(15)に至るまで一定に保たれるような直径の大きさかの少なくともいずれかを有することを特徴とする流量計。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記測定値取得器(13)は、前記流れの軸線(16)に沿った前記測定室(11)内の一部の区間に配置され、その区間では、前記測定室(11)の断面は、楕円形の断面(Q1)を有し、前記流体出口(14)に向かって前記円形断面(Q0)に移り変わっていくことを特徴とする流量計。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記渦発生体(12)の上流には、前記測定室(11)を画成する内壁(19)に、前記測定室(11)内に突出する少なくとも一つの凸部(20)が形成されていることを特徴とする流量計。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記測定管(10)は、被覆管(10a)と内管(10b)とを備えて形成され、前記内管(10b)は、前記被覆管(10a)内に嵌入されていることを特徴とする流量計。
【請求項12】
請求項11に記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)および前記被覆管(10a)は、前記流れの軸線(16)において同じ長さを有するか、或いは、前記内管(10b)は、前記被覆管(10a)の長さの70%から100%を有するかの少なくともいずれかであることを特徴とする流量計。
【請求項13】
請求項11または12に記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)および/または前記被覆管(10a)は、完全に閉じた断面を有することを特徴とする流量計。
【請求項14】
請求項11から13のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)は、プラスチックを有し、および/または、前記被覆管(10a)は、金属を有することを特徴とする流量計。
【請求項15】
請求項11から14のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)は、射出成形法で製造され、および/または、前記被覆管(10a)は、機械加工の製造方法により製造されていることを特徴とする流量計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流速を測定するための流量計であって、流体が貫流できる測定室を形成する測定管と、測定室内に配置された少なくとも一つの渦発生体とを有し、測定室には、渦発生体の下流に、さらに測定値取得器が配置され、周りに流れがあるときに渦発生体において渦が形成されることで、測定値取得器が流体により偏向可能とされている流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで対象とする流量計のタイプは、渦流量計とも呼ばれ、流体、特に液体の流量測定に広く使用されている。この流量計は、高い信頼性と低い製造コストに特徴がある。しかしながら、測定に必要な渦が流体中に形成されるために、流体が貫流する際の圧力損失が比較的大きく、その圧力損失により、流量計の組み込まれた流体系内にエネルギー損失が生じるという欠点がある。
【0003】
圧力損失を最小限に抑えるためにいくつかのアプローチが知られており、例えば、第一のアプローチによれば、渦発生体の幾何学的形状を最適化することにより、圧力損失を最小限に抑えることができる。こうして、これまでに多くの渦発生体の幾何学的形状が知られており、その形状は、円柱やデルタ型渦発生体の標準的な形状とは違っている。
【0004】
圧力損失を低減する別のアプローチは、流れが滞る物体の領域における測定管の断面を最小限にすることにあり、その結果、渦発生体に向かって細くなっていく測定室を備え、その測定室が渦発生体の下流で再び拡がっていく流量計が公知になっている。結果として、この場合も、測定断面は、例えば流量計の接続部の公称直径より小さくなる。従って、必要な測定断面をできるだけ小さなスペースに制限することで、全体の圧力損失を最小限に抑える試みがなされる。本明細書において、測定室若しくは測定管の断面とは、常に、これらの断面の平面上で流れの軸線が平面の法線を形成し、これが断面の平面に垂直であるような断面をいう。
【0005】
三番目のアプローチは、渦発生体と流れ断面との寸法の関係を最適化することにある。そのためには、測定値での圧力損失を、渦発生体の圧力損失から先ず切り離して考えればよい。決まった体積流量の場合、測定管にとって肝心なのは、断面が小さくなるにつれて圧力損失が増加するということである。渦発生体については、流れが当たる面が大きくなるにつれて圧力損失も増加すると言える。測定管の断面と渦発生体の寸法の割合を決めるとき、同様に三番目のアプローチに従って最適なものを探すことができる。
【0006】
例えば、特許文献1には、流体の流速を測定する流量計であって、流体が貫流できる測定室を形成する測定管と、測定室内に配置された少なくとも一つの渦発生体とを有し、測定室には、渦発生体の下流に、さらに測定値取得器が配置され、周りに流れがあるときに渦発生体において渦が形成されることで、測定値取得器が流体により偏向可能とされている流量計が記載されている。渦の形成を最適化するために、渦発生体の上流には、測定室を画成する内壁に、測定室に突出する少なくとも一つの凸部が形成されている。これにより、渦発生体で形成される渦を増大させることができるので、全体的に低い圧力損失で比較的高い電圧レベルを測定値取得器を介して出力することができる。
【0007】
流れを滞らせる物体の幾何学的な形状は、主として、渦流量計において重要な二つの流体力学的な特性に影響を与える。それらの特性の一つが圧力損失であり、これは、例えば、流れが当たる面が円筒形状である場合には、比較的小さくなる。もう一つの望ましい特性は、レイノルズ数の広い範囲にわたって、ストローハル数が可能な限り一定であることである。これにより、主な測定量としての渦周波数が、そこから計算される流速に対して線形的な関係を有することになる。このとき、円柱形の渦発生体とは対照的に、デルタ形の渦発生体は、特に優れた特性を示す。両方の形状の利点を組み合わせようとする他の形状の渦発生体は、通常、はるかに複雑な形態とされるので、実際には製造プロセスにおいてより多くの手間がかかる。
【0008】
流量計を貫流する際の圧力損失を低減するだけでは、測定値を取得する際の効率を必ずしも高めることにはつながらない。望ましくは、全体的に圧力損失が小さくなるとともに、電圧レベルが高くなることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018101278号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、流体の流速を測定するための流量計をさらに改善し、測定管内の流れ断面を幾何学的に最適化することにより、測定管内を流れる流体の圧力損失に対する測定値取得器の電位の比ができるだけ高くなるような目標を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の前提部分おいて書きによる流量計に基づき、特徴部による特徴と組み合わせることで解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明は、測定管が、少なくとも渦発生体を配置した領域において楕円形の断面を有しているという技術的教示を含む。
【0013】
少なくとも渦発生体を配置した領域における測定管の断面の楕円形を有利に選択することにより、使える測定信号の、圧力損失に対する比を的確に改善することができるので、流量計の効率を最大にすることができる。
【0014】
測定管の断面の楕円形状は、ちょうど渦発生体の配置面内および渦発生体の前後の隣接領域に存在すればよく、例えば、測定管の全長に対して、若しくは、測定管の流体入口または流体出口と渦発生体との間の長さに対して例えば、10%から20%、20%から30%、30%から40%、40%から50%、50%から60%、60%から70%および/または70%から80%の領域に存在すればよい。
【0015】
渦発生体の縦に延びる渦発生体軸線に対して横になった楕円形状により、楕円の長軸に沿って、一貫した幅広の領域が幅方向にもたらされ、その領域では、渦が渦発生体の側方において空間的に良好に形成され得る一方、楕円の短軸については、渦発生体に向かって狭まっていき、流れ方向に渦発生体を過ぎると、再び高さ方向に広がっていく。その結果、渦発生体に向かう流速が増加し、渦発生体の領域において流速は最大になる。
【0016】
このとき、渦は、主として楕円の長軸の領域に形成され、これにより、測定値取得器に及ぼす圧力振動の作用、ひいては、測定値取得器の偏向に及ぼす作用とが、測定値取得器の出力電圧の高い電圧レベルに有利な影響をもたらす一方、同時に、流れが加速されることで、結果的に測定値取得器への流体の作用をますます強めることにもなる。結果として、測定値取得器の測定信号と圧力損失との間のより良好なバランスからプラスの効果が生じる。
【0017】
測定管の測定室は、流体入口と流体出口の間を流れの軸線に沿って延在し、流体入口は、円形断面を有し、当該円形断面が、流れの軸線に沿って渦発生体の位置まで推移しながら楕円形の断面へと移り変わっていく。そのときには、楕円形の断面は、渦発生体の位置から流れの軸線に沿って流体出口に向かって、円形断面へと移り変わっていく。測定管の測定室は、全長にわたって、測定室が円形断面で始まるとともに円形断面で終わり、特に、渦発生体の領域で楕円形状がその最大となる、つまり、楕円の長軸と短軸の間の最大比が渦発生体の位置にあり、その比は、渦発生体から流体入口に向かって離れれば離れるほど、そして、渦発生体から流体出口に向かって離れれば離れるほど減少するような形状とされている。
【0018】
渦発生体は、それ自体既知の態様で一つの渦発生体軸線に沿って延在し、この渦発生体軸線が、渦発生体がその断面を好ましくも変化させない軸をなしている。渦発生体軸線はここで、測定室を貫いて延在する流れの軸線に対して垂直に延びている。渦発生体は、本発明による特徴に関連して、円形、楕円形、流線形、台形または三角形の断面を有していてもよい。
【0019】
楕円形の断面は、長めの長軸と、この長軸に交差するように延びる短めの短軸とにより展開されている。長軸と短軸の向きは、短軸が渦発生体軸線に一致するように決められている。これにより、これに交差して延びる長軸が、渦が形成され得る比較的幅広のスペースを渦発生体の側方に形成し、渦がより良好に下流に向かって移動して、測定値取得器に作用するという利点が得られる。
【0020】
特に、短軸に対する長軸の長さの比が、1.1から2.0、好ましくは1.25から1.8、特に好ましくはさらに、1.3から1.6の値を有するように設けられている。特に、渦発生体の流れがぶつかる面積に対する長軸の長さの数値比は、0.15から0.6、好ましくは0.2から0.5、特に好ましくはさらに0.25から0.45の値を有している。
【0021】
測定室の楕円形状のさらに有利な実施態様によれば、流れの軸線に沿って、流体入口および/または流体出口の断面は、楕円形の断面の長軸の長さに相当する直径の大きさを有する。これにより、流れの軸線に交差する方向の測定室の幅が、流体入口から流体出口に至るまで一定に保たれる。測定管内部の渦発生体を配置する領域に本発明による楕円形の断面を形成することにより、測定管の断面が渦発生体軸線方向においてのみ狭まる一方、長軸の方向の断面は変わらないまま流体入口および/または流体出口の円形断面の直径に相当する。
【0022】
測定値取得器は、測定室内の流れの軸線に沿った一部の区間に配置され、その区間では、測定室の断面は、楕円形の断面を有するが、流体出口に向かって再び円形断面に移り変わっていく。従って、楕円形の断面の長軸と短軸との間の比は、測定値取得器が配置されている領域では、渦発生体の領域におけるよりも僅かに小さくなる。
【0023】
さらに他の長所により、渦発生体の上流には、測定室を画成する内壁に、測定室に突出する少なくとも一つの凸部が形成されている。これにより、渦を増大させる効果が得られるので、測定管内の流体の流速が小さい場合であっても、高いレベルの測定値取得器の出力電圧を得ることができる。この効果の要因として、少なくとも一つの、好ましくは対向する二つの凸部を渦発生体の上流に配置することで、凸部のところで予め乱流を生じさせ、凸部で生じた乱流が凸部から剥離し、発達するカルマン渦列内で渦発生体で生じた渦を増大させることができるのだと考えられる。その結果、渦発生体のところで周期的に剥離する増大された渦により、測定値取得器への供給が強まる。特に有利なのは、測定管の内壁に径方向に対向して位置する二つの凸部が流体入口の領域にあり、それらにおいて、凸部により決まる径方向の線が楕円形の断面の長軸に平行になる場合である。
【0024】
下流および上流とは、ここでは、下流との記載が、流体出口に向かう流れ軸線に沿った方向、上流との記載が、流体入口に向かう流れ軸線に逆らう方向を意味するものと解すべきものである。
【0025】
以下に、本発明を改善するさらなる手段を本発明の好ましい実施例の説明とともに図面に基づき詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による幾何学的形態を有する測定室を備えた流量計の断面図である。
【
図2】
図1の断面の切断平面を90°回転させた切断平面による流量計の断面図である。
【
図3a】渦発生体の第一の有利な断面形状を示す図である。
【
図3b】渦発生体の第二の有利な断面形状を示す図である。
【
図4】流れの軸線方向からの視線で測定室内を視た流量計の図である。
【
図5】測定室の様々な断面形状とともに渦発生体を概略的に示す図である。
【
図6】渦発生体における渦の形成を概略的に示す図である。
【
図7】被覆管および管インサートを備えた流量計の測定管の変形実施形態を示す図である。
【
図8】円形の流れ断面に対する楕円形の流れ断面による測定電圧の百分率による差を、生じる圧力差でそれぞれ規格化して示すグラフである。
【
図9】円形の流れ断面に対する楕円形の流れ断面の場合の、入口から出口まで測定室を通って流れる時の圧力差に関する測定電圧のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、流量計1の断面図が示されており、その流量計1は、左から右へ流れの軸線16に沿って図示の矢印に従って切断された状態で表され、流れが通り抜けできる(貫流できる)ものである。流量計1は、流量計1の測定管10を通り抜けて流れる単位時間当たりの流量を特定するために使用される。測定管10の貫流できる部位は、測定室11と呼ばれ、測定室11内、ひいては、流体が流れる領域内には、渦発生体12があり、下流には測定値取得器13が配置されている。渦発生体12は、流れの軸線16に関して測定値取得器13手前の上流側に位置し、渦発生体12に流れが当たることで、この渦発生体において周期的に剥離する渦が形成され、これらの渦が、流れの軸線16に交差する偏向方向に測定値取得器13を偏向させる。このとき、測定値取得器13の偏向もやはり周期的に行われ、これにより、測定電子回路22とともに構成することのできる測定素子21が、測定値取得器13と接続した状態で配置されていることにより、測定信号を取り出すことができる。測定素子21は、圧電素子として形成されていることが好ましい。
【0028】
渦発生体12は、流れの軸線16に交差する方向に延びる渦発生体軸線12aに沿って延在する。渦発生体軸線12aに対して平行ではあるが下流側に測定値取得器13が延在し、この測定値取得器13が、剣のように測定室11内に突き出ているとともに、測定電子回路22の下側に配置され、その測定電子回路は、外側で測定管10上において測定電子回路収容部27内に収容されている。
【0029】
測定管10は、流体入口14から流体出口15まで延在し、流体入口14には接続管28が示されている。
【0030】
本発明によれば、測定管10の断面は、渦発生体12が配置される領域で楕円形の断面Q1を有している。これに対し、測定管10は、流体入口14の領域と流体出口15の領域における断面が、円形断面Q0により形成されている。その結果、測定室11の断面は、流れの軸線16に沿って、流体入口14における円形断面Q0に始まり、渦発生体12が配置される領域における楕円形の断面Q1に至るまで変化し、引き続き下流側において流れの軸線16に沿って再び流体出口15における円形断面Q0へと移り変わっていく。円形断面Q0は、測定値取得器13の配置位置の後方でようやく形が元に戻るが、単に一例として、渦発生体12の配置位置の前方に比べ、下流側において流れの軸線16に沿って、より長い領域が円形断面Q0になっている(これは逆の関係にすることもできる。)。断面Q0および断面Q1は、可視化するために、切断面内へと垂直軸周りに90°回転されている。
【0031】
楕円形断面Q1の楕円形状は、渦発生体軸線12aの延在方向に対して横になるように形成されており、楕円形断面Q1の長いほうの長軸は、円形断面Q0の直径に相当する。
【0032】
渦の形成を最適化するために、渦発生体12の上流には、測定室11を画成する内壁19に、測定室11内に突出する二つの凸部20が形成されている。これにより、渦発生体12で形成される渦を増大させることができるので、全体的に低い圧力損失で比較的高い電圧レベルを測定値取得器を介して出力することができる。
【0033】
従って、測定管10の幅は、90°回転された断面形状が
図2に示されているように、半分の高さ面では、流体入口14と流体出口15の間で変化しない。このため、楕円形の断面の長軸17は、円形断面Q0の直径に相当することになるので、
図2中の図が、流体入口14から流体出口15まで幅の変わらない測定管10内の測定室11を示すものとなっている。この図は、特に、径方向に対向して位置する二つの凸部20が測定室11の内壁19に配設されていることも示し、これら凸部は、それらが楕円形の断面Q1の長軸17に沿ってその外側を位置させるようにして互いに対向しており、このとき凸部20は、楕円形の断面Q1よりももっと手前の円形断面Q0の領域において、流体入口14の隣に設けられている。
【0034】
図3aは、渦発生体12の一つの可能な断面形状であって略三角形に相当するものを示し、断面形状の三角形の基部は、流れとは逆方向に向き且つ流量計1の使用時には直に流れにさらされる矩形の接続部を備えている。この矩形の接続部の横方向に測ると、渦発生体12は、測定室11に渦発生体12を組み付けた姿勢で楕円形の断面Q1の長軸17と同じ方向に延在する幅Bを有している。
【0035】
図3bは、台形の断面を有する渦発生体12のさらに他の可能な形状を示し、これも矩形の土台部分を備えている。
【0036】
図3aおよび
図3bの渦発生体12は、図示された矢印に従って流れにさらされ、三角形と台形の幅広で平らな前面が流れに逆らう側に向いている。
【0037】
特に、
図3aおよび
図3bに図示された渦発生体12の断面形状は、本発明により形作られた測定管10内の測定室11と組み合わせることで、特に有利に使用することができる。
【0038】
図4は、測定管10の測定室11の中を覗き込めるように、流れの軸線16の方向から流量計1を視た図を示す。この図は、前側では円形断面Q0を示し、その中に向かって、測定室11の内壁19に径方向に対向して位置する二つの凸部20も突出しており、この円形断面Q0が、渦発生体12の領域における楕円形の断面Q1へと移り変わっていく。上側には、測定値取得器13が図示されており、この測定値取得器が、測定電子回路22に接続され、測定電子回路は、測定管10の外側において測定電子回路収容部27内に収容されている。この図は、次の
図5に関連してより詳細に説明するように、楕円形の断面Q1の楕円の横になった配置をもう一度明らかにしている。
【0039】
図5は、円形断面Q0から始まって断面が変化し、渦発生体12の領域における楕円形の断面Q1へと移り変わる変化する断面を概略図で示している。楕円形の断面Q1の楕円は、横向きに形成された長軸17を有しており、それにより、長軸17と渦発生体軸線12aが互いに垂直になっている。これに対して、楕円形の断面Q1の楕円の短軸18は、図示の垂直方向に渦発生体軸線12aに合わさって延びている。
【0040】
楕円は、長めの長軸17と短めの短軸18とにより形成され、長軸17の長さは、円形断面Q0の直径に相当する。
【0041】
仮に、測定管10が、渦発生体の位置12まで断面が縮小していく円形断面のままであったとすると、比較用の円形断面Q0’が得られることになろう。この場合、円形断面Q0の直径の大きさにそのまま対応する長軸17に比べて、テーパ状に狭まる円形断面の直径が小さいので、渦が形成されることになる渦発生体12の側方において領域が短くなっていることが分かる。これに対して、短軸18が短くなることは、渦発生体軸線12aに沿った渦発生体12の短縮26に役立ち、このとき、この短縮26は、測定値取得器13により出力できる達成可能な電圧レベルに何ら目立った影響を与えない一方で、圧力損失は低減させる。
【0042】
図6は、内側に測定室11を備えた測定管10の、渦発生体12が配置された領域における一部の区間を概略的に示す。図示されているのは、流れの矢印としての流れの軸線16と、渦発生体12の下流にある測定値取得器13である。
【0043】
渦発生体12で渦25が形成され、その渦が周期的に剥離し、測定値取得器13の側方で圧力振動を引き起こし、その振動が測定値取得器13を偏向させ、これを最終的に測定素子21により捉えることができる。長軸17は、図面に垂直な楕円形の断面Q1の短軸18が縮まっているにもかかわらず、その比較的長い長さによって、渦発生体12の領域においても非常に大きな幅を形成する。減少していく流れ断面により、流れが加速され、それによって、渦の形成が増幅され、その結果、流速が小さくなってしまっていても、比較的高い測定電圧が測定素子21で生成され得る。渦発生体12の領域において、測定室11の領域が、楕円形の断面Q1の長軸17に当たる横方向に拡張されていることで、
図5の円形断面Q0’に比較して空間的に広い領域がなおも残されたままとなり、その結果、渦25が有利に形成され得ることになる。
【0044】
図7は、被覆管10aと、流量計の基体としての内管10bとを備えた測定管10の一変形形態を示しており、内管10bは、被覆管10aに嵌入され、この変形例により測定管10が二つの部分で構成されるようになっている。
【0045】
二つの部分による構成の利点は、特に、測定流体の高圧用の測定管10の製造の容易さにある。これは、測定室11の内壁の楕円形の断面Q1が、測定室11内の渦発生体12と同様、本来の内管10bと一体的にプラスチック射出成形で有利に製造可能であり、その結果、幾何学形状が比較的複雑な内管10bを射出成形法でプラスチックから製造することができ、このときに、内管10bのためのプラスチック射出成形法に関する幾何学的形状の複雑さは、機械加工による製造に比べて取るに足らないからである。
【0046】
さらに、比較的高い圧力から非常に高い圧力までの測定流体のための流量計を作れるように、被覆管10aを金属材料により製造することも有利である。また、例えば、被覆管10a内の内部流路29が、一貫した円柱の断面を有し、例えば穴あけ加工またはボール加工による機械加工で製造することが容易にできることも有利である。被覆管10aの基体は、例えば、金属ダイカスト部品として提供することができるか、或いは、ブランクとしての然るべき寸法の円柱体または円筒スリーブからの切削部品として製造することができる。
【0047】
内管10bの外径はこのとき、被覆管10aの内径に対応していることで、中間嵌めが形成されるか、または若干の圧力嵌めが生じることが好ましい。
【0048】
流量計を非常に高い圧力に耐用させ、製造を簡素化することの利点は、特に、被覆管10aの長さと略同じ長さの内管10bを製造するか、或いは、被覆管10aと内管10bとが、小さな開口部や測定値取得器用の通路を除けばそれ自体が耐圧性のある閉じた、一周を囲まれた断面を有するか、それらの少なくともいずれかにより達成される。
【0049】
図8は、体積流量(リットル/分)に対する楕円形の流れ断面と円形の流れ断面との間の測定電圧の差をパーセントでグラフに表したものであり、それぞれ発生する圧力差に対して規格化されている。このグラフが明らかにしているのは、測定室を楕円形に形成することは、特に、流速が低いときに、測定信号が、断面が円形のときの測定信号に比べ、それぞれ圧力差に照らしてかなり増幅できるということである。
【0050】
最後に、
図9は、測定管の入口から出口まで測定された圧力差Δpに対する測定電圧Uのグラフを示す。本発明に係る楕円形の断面による圧力損失に対する電圧U1の推移は、グラフが示すように、楕円形の断面が形成されていないときの圧力損失に対する電圧U2よりも大きい。
【0051】
本発明の文脈において、挙げられた測定室の楕円形の断面には、楕円状に形成された断面も含まれるため、必ずしも数学的な楕円に相当する必要はない。従って、アールとして又は丸く形成されている角を備える或いは測定室の内壁を通る長軸と短軸の交点の領域に平らな壁部を備える矩形の断面も、本発明の意味において請求項に記載された楕円形の断面に該当し得る。
【符号の説明】
【0052】
1 流量計
10 測定管
10a 被覆管
10b 内管
11 測定室
12 渦発生体
12a 渦発生体軸線
13 測定値取得器
14 流体入口
15 流体出口
16 流れの軸線
17 長軸
18 短軸
19 内壁
20 凸部
21 測定素子
22 測定電子回路
23 円錐体
24 影領域
25 渦
26 短縮
27 測定電子回路収容部
28 接続管
29 内部貫通路
U 測定電圧
U1 楕円のときの圧力損失に対する電圧
U2 楕円でないときの圧力損失に対する電圧
Δp 入口から出口までの圧力差
Q1 楕円形断面
Q0 円形断面
Q0’ 円の比較断面
B 渦発生体の幅
【手続補正書】
【提出日】2022-09-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流速を測定するための流量計(1)であって、流体が貫流できる測定室(11)を形成する測定管(10)と、前記測定室(11)内に配置された少なくとも一つの渦発生体(12)とを有し、前記測定室(11)には、前記渦発生体(12)の下流に、さらに測定値取得器(13)が配置され、当該測定値取得器が、周りに流れがあるときに渦発生体において渦が形成されることで、測定値取得器が流体により偏向可能とされ
、前記測定管(10)は、少なくとも前記渦発生体(12)を配置した領域において楕円形の断面(Q1)を有している流量計において、
流体入口(14)および/または流体出口(15)の円形断面(Q0)が、前記楕円形の断面(Q1)の前記長軸(17)の長さに相当する直径の大きさを有し、前記渦発生体軸線(12a)に交差する方向の前記測定室(11)の幅が、前記流体入口(14)から前記流体出口(15)に至るまで一定に保たれることを特徴とする流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の流量計(1)において、
前記測定管(10)の前記測定室(11)は、流体入口(14)と流体出口(15)の間を流れの軸線(16)に沿って延在し、前記流体入口(14)は、円形断面(Q0)を有し、当該円形断面が、前記流れの軸線(16)に沿って前記渦発生体(12)の位置まで推移しながら前記楕円形の断面(Q1)へと移り変わっていくことを特徴とする流量計。
【請求項3】
請求項1または2に記載の流量計(1)において、
前記楕円形の断面(Q1)は、前記渦発生体(12)の位置から前記流れの軸線(16)に沿って前記流体出口(15)まで、前記円形断面(Q0)へと移り変わっていくことを特徴とする流量計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記渦発生体(12)は、渦発生体軸線(12a)を有し、当該渦発生体軸線に沿って前記渦発生体(12)が延在し、前記渦発生体軸線(12a)は、前記測定室(11)を貫いて延びる前記流れの軸線(16)に対して垂直方向を向いているか或いは前記渦発生体(12)は、円形、楕円形、流線形、台形または三角形の断面を有しているかの少なくともいずれかであることを特徴とする流量計。
【請求項5】
請求項4に記載の流量計(1)において、
前記楕円形の断面(Q1)は、長めの長軸(17)と、当該長軸(17)に交差するように延びる短めの短軸(18)とにより展開され、前記楕円形の断面(Q1)は、前記短軸(18)が前記渦発生体軸線(12a)に一致するような向きにされていることを特徴とする流量計。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記短軸(18)に対する前記長軸(17)の長さの比が、1.1から2.0、好ましくは1.25から1.8、特に好ましくはさらに、1.3から1.6の値を有していることを特徴とする流量計。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記渦発生体(12)の流れがぶつかる面積に対する前記長軸(17)の長さの数値比は、0.15から0.6、好ましくは0.2から0.5、特に好ましくはさらに0.25から0.45の値を有していることを特徴とする流量計。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記測定値取得器(13)は、前記流れの軸線(16)に沿った前記測定室(11)内の一部の区間に配置され、その区間では、前記測定室(11)の断面は、楕円形の断面(Q1)を有し、前記流体出口(14)に向かって前記円形断面(Q0)に移り変わっていくことを特徴とする流量計。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記渦発生体(12)の上流には、前記測定室(11)を画成する内壁(19)に、前記測定室(11)内に突出する少なくとも一つの凸部(20)が形成されていることを特徴とする流量計。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記測定管(10)は、被覆管(10a)と内管(10b)とを備えて形成され、前記内管(10b)は、前記被覆管(10a)内に嵌入されていることを特徴とする流量計。
【請求項11】
請求項
10に記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)および前記被覆管(10a)は、前記流れの軸線(16)において同じ長さを有するか、或いは、前記内管(10b)は、前記被覆管(10a)の長さの70%から100%を有するかの少なくともいずれかであることを特徴とする流量計。
【請求項12】
請求項
10または
11に記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)および/または前記被覆管(10a)は、完全に閉じた断面を有することを特徴とする流量計。
【請求項13】
請求項
10から
12のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)は、プラスチックを有し、および/または、前記被覆管(10a)は、金属を有することを特徴とする流量計。
【請求項14】
請求項
10から
13のいずれかに記載の流量計(1)において、
前記内管(10b)は、射出成形法で製造され、および/または、前記被覆管(10a)は、機械加工の製造方法により製造されていることを特徴とする流量計。
【手続補正書】
【提出日】2023-12-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流速を測定するための流量計であって、流体が貫流できる測定室を形成する測定管と、測定室内に配置された少なくとも一つの渦発生体とを有し、測定室には、渦発生体の下流に、さらに測定値取得器が配置され、周りに流れがあるときに渦発生体において渦が形成されることで、測定値取得器が流体により偏向可能とされ、測定管は、少なくとも渦発生体を配置した領域において楕円形の断面を有している流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
ここで対象とする流量計のタイプは、渦流量計とも呼ばれ、流体、特に液体の流量測定に広く使用されている。この流量計は、高い信頼性と低い製造コストに特徴がある。しかしながら、測定に必要な渦が流体中に形成されるために、流体が貫流する際の圧力損失が比較的大きく、その圧力損失により、流量計の組み込まれた流体系内にエネルギー損失が生じるという欠点がある。
【0003】
圧力損失を最小限に抑えるためにいくつかのアプローチが知られており、例えば、第一のアプローチによれば、渦発生体の幾何学的形状を最適化することにより、圧力損失を最小限に抑えることができる。こうして、これまでに多くの渦発生体の幾何学的形状が知られており、その形状は、円柱やデルタ型渦発生体の標準的な形状とは違っている。
【0004】
圧力損失を低減する別のアプローチは、流れが滞る物体の領域における測定管の断面を最小限にすることにあり、その結果、渦発生体に向かって細くなっていく測定室を備え、その測定室が渦発生体の下流で再び拡がっていく流量計が公知になっている。結果として、この場合も、測定断面は、例えば流量計の接続部の公称直径より小さくなる。従って、必要な測定断面をできるだけ小さなスペースに制限することで、全体の圧力損失を最小限に抑える試みがなされる。本明細書において、測定室若しくは測定管の断面とは、常に、これらの断面の平面上で流れの軸線が平面の法線を形成し、これが断面の平面に垂直であるような断面をいう。
【0005】
三番目のアプローチは、渦発生体と流れ断面との寸法の関係を最適化することにある。そのためには、測定値での圧力損失を、渦発生体の圧力損失から先ず切り離して考えればよい。決まった体積流量の場合、測定管にとって肝心なのは、断面が小さくなるにつれて圧力損失が増加するということである。渦発生体については、流れが当たる面が大きくなるにつれて圧力損失も増加すると言える。測定管の断面と渦発生体の寸法の割合を決めるとき、同様に三番目のアプローチに従って最適なものを探すことができる。
【0006】
例えば、特許文献1には、流体の流速を測定する流量計であって、流体が貫流できる測定室を形成する測定管と、測定室内に配置された少なくとも一つの渦発生体とを有し、測定室には、渦発生体の下流に、さらに測定値取得器が配置され、周りに流れがあるときに渦発生体において渦が形成されることで、測定値取得器が流体により偏向可能とされている流量計が記載されている。渦の形成を最適化するために、渦発生体の上流には、測定室を画成する内壁に、測定室に突出する少なくとも一つの凸部が形成されている。これにより、渦発生体で形成される渦を増大させることができるので、全体的に低い圧力損失で比較的高い電圧レベルを測定値取得器を介して出力することができる。
【0007】
流れを滞らせる物体の幾何学的な形状は、主として、渦流量計において重要な二つの流体力学的な特性に影響を与える。それらの特性の一つが圧力損失であり、これは、例えば、流れが当たる面が円筒形状である場合には、比較的小さくなる。もう一つの望ましい特性は、レイノルズ数の広い範囲にわたって、ストローハル数が可能な限り一定であることである。これにより、主な測定量としての渦周波数が、そこから計算される流速に対して線形的な関係を有することになる。このとき、円柱形の渦発生体とは対照的に、デルタ形の渦発生体は、特に優れた特性を示す。両方の形状の利点を組み合わせようとする他の形状の渦発生体は、通常、はるかに複雑な形態とされるので、実際には製造プロセスにおいてより多くの手間がかかる。
【0008】
流量計を貫流する際の圧力損失を低減するだけでは、測定値を取得する際の効率を必ずしも高めることにはつながらない。望ましくは、全体的に圧力損失が小さくなるとともに、電圧レベルが高くなることである。
特許文献2は、流体の流速を測定するための流量計であって、流体が貫流できる測定室を形成する測定管と、測定室内に配置された少なくとも一つの渦発生体とを有し、測定室には、渦発生体の下流に、さらに測定値取得器が配置され、周りに流れがあるときに渦発生体において渦が形成されることで、測定値取得器が流体により偏向可能とされ、測定管は、少なくとも渦発生体を配置した領域において長めの長軸と短めの短軸を持つ楕円形の断面を有している流量計を示している。楕円の短軸は、楕円の断面の手前側の直径より小さいが、楕円の長軸も、測定管の流体入口若しくは流体出口の円形断面より小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第102018101278号明細書
【特許文献2】特開2004-191173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、流体の流速を測定するための流量計をさらに改善し、測定管内の流れ断面を幾何学的に最適化することにより、測定管内を流れる流体の圧力損失に対する測定値取得器の電位の比ができるだけ高くなるような目標を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の前提部分おいて書きによる流量計に基づき、特徴部による特徴と組み合わせることで解決される。本発明の有利な発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明は、流体入口および/または流体出口の円形断面が、楕円形の断面の長軸の長さに相当する直径の大きさを有し、渦発生体軸線に交差する方向の測定室の幅が、流体入口から流体出口に至るまで一定に保たれるという技術的教示を含む。
【0013】
少なくとも渦発生体を配置した領域における測定管の断面の楕円形を有利に選択することにより、使える測定信号の、圧力損失に対する比を的確に改善することができるので、流量計の効率を最大にすることができる。
流れの軸線に沿った測定室の楕円形状は、こうして、本発明により流体入口および/または流体出口の断面が、楕円形の断面の長軸の長さに相当する直径の大きさを有する。これにより、流れの軸線に交差する方向の測定室の幅が、流体入口から流体出口に至るまで一定に保たれる。測定管内部の渦発生体を配置する領域に本発明による楕円形の断面を形成することにより、測定管の断面が渦発生体軸線方向においてのみ狭まる一方、長軸の方向の断面は変わらないまま流体入口および/または流体出口の円形断面の直径に相当する。
【0014】
測定管の断面の楕円形状は、ちょうど渦発生体の配置面内および渦発生体の前後の隣接領域に存在すればよく、例えば、測定管の全長に対して、若しくは、測定管の流体入口または流体出口と渦発生体との間の長さに対して例えば、10%から20%、20%から30%、30%から40%、40%から50%、50%から60%、60%から70%および/または70%から80%の領域に存在すればよい。
【0015】
渦発生体の縦に延びる渦発生体軸線に対して横になった楕円形状により、楕円の長軸に沿って、一貫した幅広の領域が幅方向にもたらされ、その領域では、渦が渦発生体の側方において空間的に良好に形成され得る一方、楕円の短軸については、渦発生体に向かって狭まっていき、流れ方向に渦発生体を過ぎると、再び高さ方向に広がっていく。その結果、渦発生体に向かう流速が増加し、渦発生体の領域において流速は最大になる。
【0016】
このとき、渦は、主として楕円の長軸の領域に形成され、これにより、測定値取得器に及ぼす圧力振動の作用、ひいては、測定値取得器の偏向に及ぼす作用とが、測定値取得器の出力電圧の高い電圧レベルに有利な影響をもたらす一方、同時に、流れが加速されることで、結果的に測定値取得器への流体の作用をますます強めることにもなる。結果として、測定値取得器の測定信号と圧力損失との間のより良好なバランスからプラスの効果が生じる。
【0017】
測定管の測定室は、流体入口と流体出口の間を流れの軸線に沿って延在し、流体入口は、円形断面を有し、当該円形断面が、流れの軸線に沿って渦発生体の位置まで推移しながら楕円形の断面へと移り変わっていく。そのときには、楕円形の断面は、渦発生体の位置から流れの軸線に沿って流体出口に向かって、円形断面へと移り変わっていく。測定管の測定室は、全長にわたって、測定室が円形断面で始まるとともに円形断面で終わり、特に、渦発生体の領域で楕円形状がその最大となる、つまり、楕円の長軸と短軸の間の最大比が渦発生体の位置にあり、その比は、渦発生体から流体入口に向かって離れれば離れるほど、そして、渦発生体から流体出口に向かって離れれば離れるほど減少するような形状とされている。
【0018】
渦発生体は、それ自体既知の態様で一つの渦発生体軸線に沿って延在し、この渦発生体軸線が、渦発生体がその断面を好ましくも変化させない軸をなしている。渦発生体軸線はここで、測定室を貫いて延在する流れの軸線に対して垂直に延びている。渦発生体は、本発明による特徴に関連して、円形、楕円形、流線形、台形または三角形の断面を有していてもよい。
【0019】
楕円形の断面は、長めの長軸と、この長軸に交差するように延びる短めの短軸とにより展開されている。長軸と短軸の向きは、短軸が渦発生体軸線に一致するように決められている。これにより、これに交差して延びる長軸が、渦が形成され得る比較的幅広のスペースを渦発生体の側方に形成し、渦がより良好に下流に向かって移動して、測定値取得器に作用するという利点が得られる。
【0020】
特に、短軸に対する長軸の長さの比が、1.1から2.0、好ましくは1.25から1.8、特に好ましくはさらに、1.3から1.6の値を有するように設けられている。特に、渦発生体の流れがぶつかる面積に対する長軸の長さの数値比は、0.15から0.6、好ましくは0.2から0.5、特に好ましくはさらに0.25から0.45の値を有している。
【0021】
(削除)
【0022】
測定値取得器は、測定室内の流れの軸線に沿った一部の区間に配置され、その区間では、測定室の断面は、楕円形の断面を有するが、流体出口に向かって再び円形断面に移り変わっていく。従って、楕円形の断面の長軸と短軸との間の比は、測定値取得器が配置されている領域では、渦発生体の領域におけるよりも僅かに小さくなる。
【0023】
さらに他の長所により、渦発生体の上流には、測定室を画成する内壁に、測定室に突出する少なくとも一つの凸部が形成されている。これにより、渦を増大させる効果が得られるので、測定管内の流体の流速が小さい場合であっても、高いレベルの測定値取得器の出力電圧を得ることができる。この効果の要因として、少なくとも一つの、好ましくは対向する二つの凸部を渦発生体の上流に配置することで、凸部のところで予め乱流を生じさせ、凸部で生じた乱流が凸部から剥離し、発達するカルマン渦列内で渦発生体で生じた渦を増大させることができるのだと考えられる。その結果、渦発生体のところで周期的に剥離する増大された渦により、測定値取得器への供給が強まる。特に有利なのは、測定管の内壁に径方向に対向して位置する二つの凸部が流体入口の領域にあり、それらにおいて、凸部により決まる径方向の線が楕円形の断面の長軸に平行になる場合である。
【0024】
下流および上流とは、ここでは、下流との記載が、流体出口に向かう流れ軸線に沿った方向、上流との記載が、流体入口に向かう流れ軸線に逆らう方向を意味するものと解すべきものである。
【0025】
以下に、本発明を改善するさらなる手段を本発明の好ましい実施例の説明とともに図面に基づき詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による幾何学的形態を有する測定室を備えた流量計の断面図である。
【
図2】
図1の断面の切断平面を90°回転させた切断平面による流量計の断面図である。
【
図3a】渦発生体の第一の有利な断面形状を示す図である。
【
図3b】渦発生体の第二の有利な断面形状を示す図である。
【
図4】流れの軸線方向からの視線で測定室内を視た流量計の図である。
【
図5】測定室の様々な断面形状とともに渦発生体を概略的に示す図である。
【
図6】渦発生体における渦の形成を概略的に示す図である。
【
図7】被覆管および管インサートを備えた流量計の測定管の変形実施形態を示す図である。
【
図8】円形の流れ断面に対する楕円形の流れ断面による測定電圧の百分率による差を、生じる圧力差でそれぞれ規格化して示すグラフである。
【
図9】円形の流れ断面に対する楕円形の流れ断面の場合の、入口から出口まで測定室を通って流れる時の圧力差に関する測定電圧のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1には、流量計1の断面図が示されており、その流量計1は、左から右へ流れの軸線16に沿って図示の矢印に従って切断された状態で表され、流れが通り抜けできる(貫流できる)ものである。流量計1は、流量計1の測定管10を通り抜けて流れる単位時間当たりの流量を特定するために使用される。測定管10の貫流できる部位は、測定室11と呼ばれ、測定室11内、ひいては、流体が流れる領域内には、渦発生体12があり、下流には測定値取得器13が配置されている。渦発生体12は、流れの軸線16に関して測定値取得器13手前の上流側に位置し、渦発生体12に流れが当たることで、この渦発生体において周期的に剥離する渦が形成され、これらの渦が、流れの軸線16に交差する偏向方向に測定値取得器13を偏向させる。このとき、測定値取得器13の偏向もやはり周期的に行われ、これにより、測定電子回路22とともに構成することのできる測定素子21が、測定値取得器13と接続した状態で配置されていることにより、測定信号を取り出すことができる。測定素子21は、圧電素子として形成されていることが好ましい。
【0028】
渦発生体12は、流れの軸線16に交差する方向に延びる渦発生体軸線12aに沿って延在する。渦発生体軸線12aに対して平行ではあるが下流側に測定値取得器13が延在し、この測定値取得器13が、剣のように測定室11内に突き出ているとともに、測定電子回路22の下側に配置され、その測定電子回路は、外側で測定管10上において測定電子回路収容部27内に収容されている。
【0029】
測定管10は、流体入口14から流体出口15まで延在し、流体入口14には接続管28が示されている。
【0030】
本発明によれば、測定管10の断面は、渦発生体12が配置される領域で楕円形の断面Q1を有している。これに対し、測定管10は、流体入口14の領域と流体出口15の領域における断面が、円形断面Q0により形成されている。その結果、測定室11の断面は、流れの軸線16に沿って、流体入口14における円形断面Q0に始まり、渦発生体12が配置される領域における楕円形の断面Q1に至るまで変化し、引き続き下流側において流れの軸線16に沿って再び流体出口15における円形断面Q0へと移り変わっていく。円形断面Q0は、測定値取得器13の配置位置の後方でようやく形が元に戻るが、単に一例として、渦発生体12の配置位置の前方に比べ、下流側において流れの軸線16に沿って、より長い領域が円形断面Q0になっている(これは逆の関係にすることもできる。)。断面Q0および断面Q1は、可視化するために、切断面内へと垂直軸周りに90°回転されている。
【0031】
楕円形断面Q1の楕円形状は、渦発生体軸線12aの延在方向に対して横になるように形成されており、楕円形断面Q1の長いほうの長軸は、円形断面Q0の直径に相当する。
【0032】
渦の形成を最適化するために、渦発生体12の上流には、測定室11を画成する内壁19に、測定室11内に突出する二つの凸部20が形成されている。これにより、渦発生体12で形成される渦を増大させることができるので、全体的に低い圧力損失で比較的高い電圧レベルを測定値取得器を介して出力することができる。
【0033】
従って、測定管10の幅は、90°回転された断面形状が
図2に示されているように、半分の高さ面では、流体入口14と流体出口15の間で変化しない。このため、楕円形の断面の長軸17は、円形断面Q0の直径に相当することになるので、
図2中の図が、流体入口14から流体出口15まで幅の変わらない測定管10内の測定室11を示すものとなっている。この図は、特に、径方向に対向して位置する二つの凸部20が測定室11の内壁19に配設されていることも示し、これら凸部は、それらが楕円形の断面Q1の長軸17に沿ってその外側を位置させるようにして互いに対向しており、このとき凸部20は、楕円形の断面Q1よりももっと手前の円形断面Q0の領域において、流体入口14の隣に設けられている。
【0034】
図3aは、渦発生体12の一つの可能な断面形状であって略三角形に相当するものを示し、断面形状の三角形の基部は、流れとは逆方向に向き且つ流量計1の使用時には直に流れにさらされる矩形の接続部を備えている。この矩形の接続部の横方向に測ると、渦発生体12は、測定室11に渦発生体12を組み付けた姿勢で楕円形の断面Q1の長軸17と同じ方向に延在する幅Bを有している。
【0035】
図3bは、台形の断面を有する渦発生体12のさらに他の可能な形状を示し、これも矩形の土台部分を備えている。
【0036】
図3aおよび
図3bの渦発生体12は、図示された矢印に従って流れにさらされ、三角形と台形の幅広で平らな前面が流れに逆らう側に向いている。
【0037】
特に、
図3aおよび
図3bに図示された渦発生体12の断面形状は、本発明により形作られた測定管10内の測定室11と組み合わせることで、特に有利に使用することができる。
【0038】
図4は、測定管10の測定室11の中を覗き込めるように、流れの軸線16の方向から流量計1を視た図を示す。この図は、前側では円形断面Q0を示し、その中に向かって、測定室11の内壁19に径方向に対向して位置する二つの凸部20も突出しており、この円形断面Q0が、渦発生体12の領域における楕円形の断面Q1へと移り変わっていく。上側には、測定値取得器13が図示されており、この測定値取得器が、測定電子回路22に接続され、測定電子回路は、測定管10の外側において測定電子回路収容部27内に収容されている。この図は、次の
図5に関連してより詳細に説明するように、楕円形の断面Q1の楕円の横になった配置をもう一度明らかにしている。
【0039】
図5は、円形断面Q0から始まって断面が変化し、渦発生体12の領域における楕円形の断面Q1へと移り変わる変化する断面を概略図で示している。楕円形の断面Q1の楕円は、横向きに形成された長軸17を有しており、それにより、長軸17と渦発生体軸線12aが互いに垂直になっている。これに対して、楕円形の断面Q1の楕円の短軸18は、図示の垂直方向に渦発生体軸線12aに合わさって延びている。
【0040】
楕円は、長めの長軸17と短めの短軸18とにより形成され、長軸17の長さは、円形断面Q0の直径に相当する。
【0041】
仮に、測定管10が、渦発生体の位置12まで断面が縮小していく円形断面のままであったとすると、比較用の円形断面Q0’が得られることになろう。この場合、円形断面Q0の直径の大きさにそのまま対応する長軸17に比べて、テーパ状に狭まる円形断面の直径が小さいので、渦が形成されることになる渦発生体12の側方において領域が短くなっていることが分かる。これに対して、短軸18が短くなることは、渦発生体軸線12aに沿った渦発生体12の短縮26に役立ち、このとき、この短縮26は、測定値取得器13により出力できる達成可能な電圧レベルに何ら目立った影響を与えない一方で、圧力損失は低減させる。
【0042】
図6は、内側に測定室11を備えた測定管10の、渦発生体12が配置された領域における一部の区間を概略的に示す。図示されているのは、流れの矢印としての流れの軸線16と、渦発生体12の下流にある測定値取得器13である。
【0043】
渦発生体12で渦25が形成され、その渦が周期的に剥離し、測定値取得器13の側方で圧力振動を引き起こし、その振動が測定値取得器13を偏向させ、これを最終的に測定素子21により捉えることができる。長軸17は、図面に垂直な楕円形の断面Q1の短軸18が縮まっているにもかかわらず、その比較的長い長さによって、渦発生体12の領域においても非常に大きな幅を形成する。減少していく流れ断面により、流れが加速され、それによって、渦の形成が増幅され、その結果、流速が小さくなってしまっていても、比較的高い測定電圧が測定素子21で生成され得る。渦発生体12の領域において、測定室11の領域が、楕円形の断面Q1の長軸17に当たる横方向に拡張されていることで、
図5の円形断面Q0’に比較して空間的に広い領域がなおも残されたままとなり、その結果、渦25が有利に形成され得ることになる。
【0044】
図7は、被覆管10aと、流量計の基体としての内管10bとを備えた測定管10の一変形形態を示しており、内管10bは、被覆管10aに嵌入され、この変形例により測定管10が二つの部分で構成されるようになっている。
【0045】
二つの部分による構成の利点は、特に、測定流体の高圧用の測定管10の製造の容易さにある。これは、測定室11の内壁の楕円形の断面Q1が、測定室11内の渦発生体12と同様、本来の内管10bと一体的にプラスチック射出成形で有利に製造可能であり、その結果、幾何学形状が比較的複雑な内管10bを射出成形法でプラスチックから製造することができ、このときに、内管10bのためのプラスチック射出成形法に関する幾何学的形状の複雑さは、機械加工による製造に比べて取るに足らないからである。
【0046】
さらに、比較的高い圧力から非常に高い圧力までの測定流体のための流量計を作れるように、被覆管10aを金属材料により製造することも有利である。また、例えば、被覆管10a内の内部流路29が、一貫した円柱の断面を有し、例えば穴あけ加工またはボール加工による機械加工で製造することが容易にできることも有利である。被覆管10aの基体は、例えば、金属ダイカスト部品として提供することができるか、或いは、ブランクとしての然るべき寸法の円柱体または円筒スリーブからの切削部品として製造することができる。
【0047】
内管10bの外径はこのとき、被覆管10aの内径に対応していることで、中間嵌めが形成されるか、または若干の圧力嵌めが生じることが好ましい。
【0048】
流量計を非常に高い圧力に耐用させ、製造を簡素化することの利点は、特に、被覆管10aの長さと略同じ長さの内管10bを製造するか、或いは、被覆管10aと内管10bとが、小さな開口部や測定値取得器用の通路を除けばそれ自体が耐圧性のある閉じた、一周を囲まれた断面を有するか、それらの少なくともいずれかにより達成される。
【0049】
図8は、体積流量(リットル/分)に対する楕円形の流れ断面と円形の流れ断面との間の測定電圧の差をパーセントでグラフに表したものであり、それぞれ発生する圧力差に対して規格化されている。このグラフが明らかにしているのは、測定室を楕円形に形成することは、特に、流速が低いときに、測定信号が、断面が円形のときの測定信号に比べ、それぞれ圧力差に照らしてかなり増幅できるということである。
【0050】
最後に、
図9は、測定管の入口から出口まで測定された圧力差Δpに対する測定電圧Uのグラフを示す。本発明に係る楕円形の断面による圧力損失に対する電圧U1の推移は、グラフが示すように、楕円形の断面が形成されていないときの圧力損失に対する電圧U2よりも大きい。
【0051】
本発明の文脈において、挙げられた測定室の楕円形の断面には、楕円状に形成された断面も含まれるため、必ずしも数学的な楕円に相当する必要はない。従って、アールとして又は丸く形成されている角を備える或いは測定室の内壁を通る長軸と短軸の交点の領域に平らな壁部を備える矩形の断面も、本発明の意味において請求項に記載された楕円形の断面に該当し得る。
【符号の説明】
【0052】
1 流量計
10 測定管
10a 被覆管
10b 内管
11 測定室
12 渦発生体
12a 渦発生体軸線
13 測定値取得器
14 流体入口
15 流体出口
16 流れの軸線
17 長軸
18 短軸
19 内壁
20 凸部
21 測定素子
22 測定電子回路
23 円錐体
24 影領域
25 渦
26 短縮
27 測定電子回路収容部
28 接続管
29 内部貫通路
U 測定電圧
U1 楕円のときの圧力損失に対する電圧
U2 楕円でないときの圧力損失に対する電圧
Δp 入口から出口までの圧力差
Q1 楕円形断面
Q0 円形断面
Q0’ 円の比較断面
B 渦発生体の幅
【国際調査報告】