(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】分離層コーティングとしての酸素バリアコーティング
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240618BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240618BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20240618BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240618BHJP
B32B 37/24 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
B65D65/40 D
B29B17/02
B32B7/06
B32B37/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571195
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 US2022030220
(87)【国際公開番号】W WO2022246173
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507385165
【氏名又は名称】サン ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・スコットランド
(72)【発明者】
【氏名】グレン・ウェブスター
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4F401
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086BA04
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3E086BB62
3E086CA01
4F100AB01E
4F100AC03B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK01E
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4F100BA04
4F100BA05
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4F100CA23B
4F100CB00C
4F100GB15
4F100HB00E
4F100JB04A
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4F100JB09B
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4F100JL16
4F100YY00
4F401AA15
4F401AA17
4F401AA26
4F401AC10
4F401AC13
4F401AD01
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA27
4F401CA35
4F401EA07
4F401EA08
4F401EA50
(57)【要約】
本発明は、分離層コーティングを含むリサイクル可能な積層フィルム構造を提供する。分離層コーティングは、積層構造がコーティングの層で剥離し、選択されたポリマーフィルムのクリーンな断片を残すように、特定のハンセン溶解度パラメータを有するように、コーティング組成物のポリマーを選択することによって、リサイクル処理中に、選択されたポリマーフィルムの分離を容易にする。ある特定の実施形態では、分離層コーティングは、酸素バリアコーティングなどのバリアコーティングである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクル可能な包装積層フィルム構造を調製する方法であって、以下の工程:
(a)第1の高分子基材及び第2の高分子基材を準備する工程であって、ここで、第1の基材のポリマーが、δD
s1(分散)、δP
s1(極性)、及びδH
s1(水素結合)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有している、工程;
(b)分離層コーティング組成物を前記第1の高分子基材上に適用し且つ硬化させる工程であって、ここで、前記分離層コーティング組成物がポリマーを含み、分離層コーティング組成物のポリマーが、δD
c、δP
c、及びδH
cのHSP、並びにRo
c(溶解度の球の半径)を有する工程;
(c)[ここで、各ポリマーのHSPパラメータに基づいて、第1の高分子基材のポリマーと、分離層コーティング組成物のポリマーとの間の距離Ra
(s1,c)が、以下の式(1):
Ra
(s1,c)
2=4×(δD
s1-δD
c)
2+(δP
s1-δP
c)
2+(δH
s1-δH
c)
2
に従って計算して、5~25である]
(d)前記分離層コーティングと同じ側又は第2の高分子基材の側のいずれかに積層接着剤層を適用する工程;及び
(e)前記分離層コーティング及び前記接着剤が、前記第1の基材と第2の基材との間に挟まれている積層構造を形成する工程、を含み、
形成された積層体が、パッケージ又は容器を作成するために、それ自体、又は予め形成された剛性若しくは可撓性の形状に密封するのに適している、方法。
【請求項2】
積層されたパッケージ又は容器を形成する方法であって、
(a)請求項1に記載の積層フィルム構造を準備する工程;及び
(b)前記積層フィルム構造をそれ自体又は予め形成された剛性若しくは可撓性の形状に密封して、パッケージ又は容器を作成する工程、
を含む方法。
【請求項3】
リサイクル中に、請求項1又は2に定義する第1の高分子基材の清浄な断片を得る方法であって、以下の工程:
(a)洗浄液中で、請求項1に記載の積層フィルム構造、又は請求項2に記載の積層フィルム構造を含むパッケージ若しくは容器を洗浄する工程であって、前記洗浄液が、δD
w、δP
w、及びδH
wのHSPを有する工程;
(b)ここで、前記分離層コーティングのポリマーと前記洗浄液との間の相対エネルギー差(RED)が、下記式(2):
RED
c,w=Ra
(c,w)/Ro
c
(式中、Ra
(c,w)が、下記式(3):
Ra
(c,w)
2=4×(δD
c-δD
w)
2+(δP
c-δP
w)
2+(δH
c-δH
w)
2
に従って計算される)
に従って、1以下であり;
(c)ここで、前記第1の高分子基材の前記ポリマーと前記洗浄液との間のREDが、下記式(4):
RED
s1,w=Ra
(s1,w)/Ro
s1
(式中、Ra
(s1,w)が、下記式(5):
Ra
(s1,w)
2=4×(δD
s1-δD
w)
2+(δP
s1-δP
w)
2+(δH
s1-δH
w)
2
に従って計算される)
に従って、1よりも大きく、したがって、前記洗浄液が前記高分子基材を溶解しない;及び
(d)リサイクルのために、前記パッケージ又は前記容器の残りの層から前記第1の高分子基材を分離する工程、
を含む方法。
【請求項4】
前記洗浄液と、前記積層構造中の全ての高分子基材のポリマーとの間のREDが、1よりも大きい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記洗浄液が、高温水、高温苛性溶液、有機溶媒、及びそれらの組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記洗浄液が、1つ以上の界面活性剤を更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記積層フィルム構造、又は前記積層フィルム構造を含むパッケージ若しくは容器が、洗浄ステップの前に細断される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
密封するステップが、熱密封、超音波密封、誘導密封、又は接着剤密封からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記積層接着剤が、熱的押出積層プロセスに置き換えられる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
(a)前記積層構造内の1つ以上のインク層、及び/又は
(b)前記積層構造内の分離層コーティングの1つ以上の追加の層、及び/又は
(c)前記積層構造内の1つ以上の金属化層、及び/又は
(d)前記積層構造内の追加のポリマーフィルム
のうちの1つ以上を更に含んで三重積層構造を形成する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分離層コーティング組成物が、1つ以上の水溶性若しくは水分散性ポリマー又はコポリマー、及び任意選択により場合によっては1つ以上の充填剤又は架橋剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の水溶性若しくは水分散性ポリマー又はコポリマーが、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、非晶質ビニルアルコール、ポリアクリル酸、及びポリウレタン分散液からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分離層コーティング組成物が、ポリアジリジン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリウレタンポリオール分散液、オルガノシラン、アミノシラン、酸官能性モノマー若しくはポリマー、チタネート、ジルコネート、又は他のキレート剤からなる群から選択される1つ以上の接着促進剤を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記分離層コーティングが、酸素バリアコーティングであり、かつ、コーティングされていないフィルムと比較して、酸素透過率(OTR)の10倍以上の低減をもたらす、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記積層構造の外縁部が、熱シール領域であり、かつ、前記分離層コーティングが、前記熱シール領域の外側領域を除外するように、印刷されたグラフィックに登録されたパターンとして塗布される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の高分子基材及び前記第2の高分子基材が、均一であり、ここで、
(a)前記第1の基材のポリマーが、δD
s1、δP
s1、及びδH
s1のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有し;
(b)前記第2の基材のポリマーが、δD
s2、δP
s2、及びδH
s2のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有し;
(c)各ポリマーのHSPパラメータに基づいて、前記第1の高分子基材のポリマーと、前記第2の高分子基材のポリマーとの間の距離Ra
(s1,s2)が、以下の式(6):
Ra
(s1,s2)
2=4×(δD
s1-δD
s2)
2+(δP
s1-δP
s2)
2+(δH
s1-δH
s2)
2
に従って計算して4以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の高分子基材及び前記第2の高分子基材が、不均一であり、ここで、
(a)前記第1の基材のポリマーが、δD
s1、δP
s1、及びδH
s1のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有し;
(b)前記第2の基材のポリマーが、δD
s2、δP
s2、及びδH
s2のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有し;
(c)各ポリマーのHSPパラメータに基づいて、前記第1の高分子基材のポリマーと、前記第2の高分子基材のポリマーとの間の距離Ra
(s1,s2)が、以下の式(6):
Ra
(s1,s2)
2=4×(δD
s1-δD
s2)
2+(δP
s1-δP
s2)
2+(δH
s1-δH
s2)
2
に従って計算して10以上である、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項1又は2に記載の方法によって生成された、積層フィルム構造又はパッケージ。
【請求項19】
前記構造が、リサイクル可能である、請求項18に記載の積層フィルム構造又はパッケージ。
【請求項20】
前記パッケージが、パウチ、サシェ、熱成形トレイ、蓋付き容器、ポット、カプセル、又はポッドの形態である、請求項18に記載のパッケージ。
【請求項21】
請求項3~7のいずれか一項に記載のリサイクルされたポリマーを使用して作られた、高分子物品。
【請求項22】
リサイクルプロセスのために意図されたリサイクル可能な包装積層フィルム構造を調製する方法であって、前記リサイクルプロセスが、ある特定のHSPパラメータを有する洗浄液を用いた洗浄ステップを含み、かつ、分離層コーティングのポリマー及び前記洗浄液のREDが、リサイクル条件下で1未満である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年5月20日に出願された米国仮出願第63/191,045号に対する優先権を主張し、これは、本明細書によってその全体が組み込まれる。
【0002】
本発明は、リサイクル可能なフレキシブル包装の分野である。本発明は、分離層コーティングを含むリサイクル可能な積層フィルム構造を提供する。分離層コーティングは、特定のハンセン溶解度パラメータを有するように分離層コーティング組成物のポリマーを選択することによって、リサイクル処理中に、選択されたポリマーフィルムの分離を容易にし、したがって、積層構造が分離層コーティングの層で剥離し、選択されたポリマーフィルムのクリーンな断片を残す。いくつかの実施形態では、分離層コーティングは、酸素バリアコーティングなどのバリアコーティングであり得る。
【背景技術】
【0003】
フレキシブル包装構造は多様である。しばしば異なる化学的性質を意味する、異なる特性を提供する異なる基材が一般に利用可能である。(例えば、Barry A.Morrisによる「The Science and Technology of Flexible Packaging」(ed.Elsevier,2017)を参照されたい)。付録B(697~709ページ)は、用途に応じた様々な包装構造、及びその中で使用されるいくつかの典型的なフィルムを例示する。フレキシブル包装基材は、接着剤層、酸素バリア層、水蒸気バリア層、汚染物質バリア層などの所望の特性を提供するために、追加のコーティング又は層を必要とし得る。
【0004】
包装用途に使用される多くの積層された高分子フィルム構造は、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアミド、及び他のポリマー又はコポリマーなどの複数のポリマー層から構成される。積層構造はまた、アルミニウム(Al)箔、又はフィルムの側面に塗布された金属酸化物の薄層などの1つ以上の金属化層を含み得る。フィルムは、構造が、外観、耐熱性、弾性率、破裂強度、耐穿刺性、バリア特性、及び熱シール強度などの特性に関して、積層体の最終使用要件を満たすことを可能にするように選択される。包装構造の内側及び外側の異なるニーズ(例えば、外側の破裂強度及び熱シール抵抗、並びに内側の優れた熱シール強度)を満たすために、化学的に異なる、しばしば化学的に非相溶性のフィルム材料を含む積層構造が使用される。このような構造物は、複数のタイプのポリマー、又は金属層の存在のために簡単に選別することができず、環境に残留する埋立地に行き着くか、又は海洋に到達し、プラスチック汚染に寄与する可能性があるため、容易にリサイクル可能ではない。同一の又は相溶性のある化学的性質を有するフィルム(ポリエチレン又はポリプロピレンなど)を使用して形成され得るいくつかの他の構造では、インク又は接着剤の存在は、リサイクル物の再利用を、ゴミ袋又は濃い色の庭用家具などの重く着色された用途に制限し得る。
【0005】
WO2005/085381は、再利用可能な容器に高分子フィルムラベルを取り付けるための感圧接着剤を対象とする。それらは、高分子フィルムであるバッキング層を含み、容器上にラベルを結合するための感圧性接着剤層が塗布されるラベル複合構造を提供する。感圧接着剤層は、バッキング層に面して接着する内面と、物品の表面に接着するための外面と、を有する。感圧接着剤は、熱に敏感であり、洗浄ステップ中に熱を加えられると、容器に対するラベルの剥離強度が低下する。容器に塗布する前に、接着剤層の外面は、接着改質剤でコーティングされる。接着改質剤は、接着改質剤が塗布される領域における接着剤層の接着強度を低下させるのに役立つ。接着改質剤の目的は、洗浄槽内のラベル縁部の持ち上げを容易にし、洗浄液が、ラベルの裏に浸透し、ラベルを洗い流すことを可能にすることである。ラベルの化学的除去は、接着剤が高温洗浄液と接触することによってもたらされ、洗浄液と界面活性剤などの接着剤中の添加剤との間で化学的相互作用が起こることを可能にする。ラベルが物品から除去されるとき、接着剤層はラベル上に捕捉されたままであることが好ましく、それによって、洗浄器に残る物理的汚染物質を最小限に抑える。
【0006】
積層構造における水除去可能な接着剤層の使用は、異なる基材の分離を可能にすることによってリサイクル可能性を助ける潜在的なアプローチであり得るが、接着剤をインクの上に塗布しなければならないという事実は、アプローチが、剥離後の透明な一次ウェブの回収を可能にしないことを意味する。
【0007】
Coleらは、接着が、絡み合いベースである高分子複合材料におけるスケーリング接着のための鎖切断モデルを開示している。ポリマー積層体は、溶融押出又は溶媒法によって調製される。溶融又は溶媒和されたポリマーは、界面領域にわたって混合して、絡み合いを生成する。多層ポリマーの場合、絡み合いは、物理的結合を介して接着を提供する(Cole et al.(2003).Adhesion between immiscible polymers correlated with interfacial entanglements.Macromolecules,36:2808-2815)。
【0008】
Vilminらは、架橋されたエラストマーと、ポリマー鎖が末端グラフトされた平坦な固体表面との間の接着を研究している。彼らは、熱的変動のみが、層がエラストマーと交差することを可能にする臨界表面グラフト密度を分析的に予測することを可能にする部分交差モデルを開発する(Vilmin,et al.(2004).Interdigitation between surface-anchored polymer chains and an elastomer:Consequences for adhesion promotion.Europhysics Letters,68(4):543-549)。
【0009】
バリアコーティングについて、既存の文献は、改善されたバリア性能、ある特定の基材(ポリオレフィンなど)への強化された接着性を有するバリアコーティングを作製する方法、又は優れたバリア特性と高い積層結合強度との組み合わせを達成することができる方法を教示することに焦点を当てている。いくつかの参考文献は、より高い相対湿度で改善された性能を有するバリアコーティングに焦点を当てるか、又はパッケージが沸騰条件に抵抗することを可能にする。しかし、バリアコーティングの特性(高温水に対する感度など)が、容器及びフレキシブル包装などの物品のリサイクル性にどのように影響し得るかについては言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Barry A.Morrisによる「The Science and Technology of Flexible Packaging」(ed.Elsevier,2017)
【非特許文献2】Cole et al.(2003).Adhesion between immiscible polymers correlated with interfacial entanglements.Macromolecules,36:2808-2815
【非特許文献3】Vilmin,et al.(2004).Interdigitation between surface-anchored polymer chains and an elastomer:Consequences for adhesion promotion.Europhysics Letters,68(4):543-549
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、リサイクル中の構造の剥離を容易にして、クリーンなポリマーフィルムの回収を可能にする、酸素バリアコーティング層などの分離層コーティングを含む積層されたポリマーフィルム構造を提供する。本発明は、酸素バリアコーティングに焦点を当てて説明されるが、本明細書に記載されるように、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)によって評価される特性を有する限り、任意のタイプのコーティング層を分離コーティング層として使用することができることを理解されたい。すなわち、本発明は、酸素バリアコーティング層に限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特定の態様では、本発明は、
(a)第1の高分子基材及び第2の高分子基材を提供する工程であって、ここで、第1の基材のポリマーが、δDs1(分散)、δPs1(極性)、及びδHs1(水素結合)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有し、第2の基材のポリマーは、δDs2(分散)、δPs2(極性)、及びδHs2(水素結合)のハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有する工程;
(b)分離層コーティング組成物を第1の高分子基材上に塗布し硬化させる工程であって、ここで、分離層コーティング組成物が、ポリマーを含み、分離層コーティング組成物のポリマーが、δDc、δPc、及びδHcのHSP、並びにRoc(溶解度の球の半径)を有する工程;
(c)[ここで、各ポリマーのHSPパラメータに基づいて、第1の高分子基材のポリマーと、分離層コーティング組成物のポリマーとの間の距離Ra(s1,c)が、以下の式(1):
Ra(s1,c)
2=4×(δDs1-δDc)2+(δPs1-δPc)2+(δHs1-δHc)2
に従って計算して、5~25である]
(d)分離層コーティングと同じ側又は第2の高分子基材の側のいずれかに積層接着剤層を適用する工程;及び
(e)バリアコーティング及び接着剤が、第1の基材と第2の基材との間に挟まれている積層構造を形成する工程、を含み、
形成された積層体が、パッケージ又は容器を作成するために、それ自体、又は予め形成された剛性若しくは可撓性の形状に密封(シーリング)するのに適している、リサイクル可能な包装積層フィルム構造を調製する方法を提供する。任意選択により、分離コーティング層は、酸素バリア特性などのバリア特性をその構造に提供し得る。それに代えて、分離層は、フレキシブル包装の通常の使用中に基材へのそれらの接着を確実にするために、その上に印刷されるインクのためのプライマーとして機能し得る。
【0014】
別の態様では、本発明は、積層されたパッケージ又は容器を形成する方法であって、上記の積層フィルムを準備する工程と、積層フィルム構造をそれ自体に、又は予め形成された剛性若しくは可撓性の形状に密封(シーリング)して、パッケージ又は容器を作成する工程とを含む方法を提供する。
【0015】
更なる態様では、本発明は、リサイクル中に、第1の高分子基材のクリーンな断片を得る方法を提供し、その方法は、
(a)洗浄液中で、本発明の積層フィルム構造、又は積層フィルム構造を含むパッケージ若しくは容器を洗浄する工程であって、洗浄液が、δDw、δPw、及びδHwのHSPを有する工程;
(b)ここで、分離層コーティングのポリマーと洗浄液との間の相対エネルギー差(RED)が、式(2):
REDc,w=Ra(c,w)/Roc
(式中、Ra(c,w)は、式(3):
Ra(c,w)
2=4×(δDc-δDw)2+(δPc-δPw)2+(δHc-δHw)2
に従って計算される)
に従って、1以下であり;
(c)ここで、第1の高分子基材のポリマーと洗浄液との間のREDが、式(4):
REDs1,w=Ra(s1,w)/Ros1
(式中、Ra(s1,w)は、式(5):
Ra(s1,w)
2=4×(δDs1-δDw)2+(δPs1-δPw)2+(δHs1-δHw)2
に従って計算される)
に従って、1よりも大きい;
(d)リサイクルのために、パッケージ又は容器の残りの層から第1の高分子基材を分離する工程、を含む。
【0016】
好ましい実施形態では、洗浄液と、積層構造内の全てのポリマーフィルム基材との間のREDは、洗浄液が高分子フィルム基材を溶解しないように、可能な限り大きくなければならないが、少なくとも1よりも大きい。
【0017】
いくつかの実施形態では、洗浄液は、高温水(hot water)又は高温苛性溶液(hot caustic solution)(例えば、水中の1%~3%NaOH)、有機溶媒又は有機溶媒のブレンド、水性溶媒と有機溶媒とのブレンドであり、各種の溶媒は、任意選択により界面活性剤を含んでもよい。ある特定の実施形態では、積層フィルム構造、又は積層フィルム構造を含むパッケージ若しくは容器は、洗浄ステップの前に細断される。
【0018】
本発明の他の態様及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1の第1の基材のPETの回収を示す概略図である。
【
図3】クリーンなPE、OPP、又はCPPフィルムの両方が積層体の他の層から分離することができる、化学的に相溶性のある基材を使用するリサイクル可能な三重構造を示す。
【
図4】クリーンな熱シール可能なウェブフィルム(フィルム#2)を構造の他の層から分離することができる、高いバリア特性を有するリサイクル可能な三重構造を示す。
【
図5】クリーンなプリントウェブフィルム(フィルム#1)を積層体の他の層から分離することができる、高いバリア特性を有する三重構造を示す。
【
図6】クリーンな熱シール可能なウェブフィルム(フィルム#2)を、プリントウェブフィルム(フィルム#1)、インク、接着剤、及び真空金属化フィルムから分離することができる、高いバリア特性を有する三重構造を示す。
【
図7】パターン印刷されたバリアコーティングを有するリサイクル可能な積層構造の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、分離層コーティングとしての分離層コーティングを含む積層されたポリマーフィルム構造を提供し、分離層コーティングは、それが塗布されるポリマー基材からきれいに剥離することによってリサイクルを容易にする。分離層コーティングは、コーティング中の樹脂として使用されたポリマーが、基材が含まれるポリマーのHSPの特定の距離内にハンセン溶解度パラメータ(HSP)を有するように選択されるように配合される。本発明は、しばしばバリアコーティングとして説明されるが、任意のタイプのコーティングは、本発明の分離層コーティングとして使用されることができることを理解されたい。
【0021】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的及び説明的なものに過ぎず、特許請求される任意の主題を限定するものではないことを理解されたい。
【0022】
見出しは、組織的な目的のためにのみ使用され、決して発明を限定することを意図するものではない。
【0023】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、発明が属する技術の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の開示全体を通して言及される全ての特許、特許出願、公開出願及び刊行物、ウェブサイト、並びに他の公開資料は、別段留意されない限り、任意の目的のために参照によりその全体が組み込まれる。本明細書に記載のものと同様又は同等の任意の方法及び材料が、本発明の実施又は試験で使用され得るが、好ましい方法が記載される。
【0024】
定義
本明細書では、単数の使用は、別段具体的に記述されない限り、複数を含む。本明細書で使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」(すなわち単数形の名詞)は、文脈が別途明確に示さない限り、複数の形態も同様に含むことが意図される。
【0025】
本出願では、「又は」の使用は、特に明記しない限り、「及び/又は」を意味する。また、それが使用される文脈から明らかな場合、「及び」は、一度に全てが真実であるか、又は存在することが不可能である代替案のリストなどで「又は」と解釈され得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」及び/又は「含む(comprising)」という用語は、記述された特色、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特色、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外しない。更に、「含む(includes)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」、「構成されている(composed)」、「構成されている(comprised)」という用語又はそれらの変形が詳細な説明又は特許請求の範囲のいずれかにおいて使用される限り、そのような用語は、「含む(comprising)」という用語と同様の様式で包括的であることが意図される。
【0027】
「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、又は「からなる(consisting of)」という用語が特許請求の範囲の本文で使用される場合、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、及び/又は「からなる(consisting of)」と相殺される特許請求の範囲の用語は、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、又は「からなる(consisting of)」の直後に列挙される要素に限定され、その特定の特許請求の範囲の用語に関連する列挙されていない要素に対して閉鎖的である。「それらの組み合わせ」という用語は、「からなる(consist of)」、「からなる(consists of)」、又は「からなる(consisting of)」の後に続く列挙された要素のリストに含まれる場合、列挙された要素のうちの2つ以上のみの組み合わせを意味する。
【0028】
本明細書で使用される場合、範囲及び量は、特定の値又は範囲について「約」として表すことができる。「約」は、正確な量も含むことが意図される。したがって、「約5パーセント」は、「約5パーセント」を意味し、「5パーセント」も意味する。「約」は、意図された用途又は目的のための典型的な実験誤差内を意味する。
【0029】
数値範囲が列挙される場合、それは、具体的に列挙されるか否かにかかわらず、エンドポイント、その範囲内の全ての値、及びその範囲内の全てのより狭い範囲を含むことを理解されたい。
【0030】
本開示を通して、別途指定のない限り、全ての部分及び割合は、重量(総重量に基づく重量%又は質量%)であり、全ての温度は、℃である。
【0031】
本明細書で使用される場合、「基材」は、インク又はコーティングが塗布され得る任意の表面又は物体を意味する。基材としては、セルロース系基材、紙、紙板、布地(例えば、綿)、皮革、織物、フェルト、コンクリート、石積み、石、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、スパンボンド不織布(例えば、ポリプロピレン、ポリエステルなどからなる)、ガラス、セラミック、金属、木材、複合材、それらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。基材は、金属若しくは金属酸化物、又は他の無機材料の1つ以上の層を有し得る。高分子フィルム基材が特に好ましい。
【0032】
本明細書で使用される場合、「物品(article)」又は「物品(articles)」という用語は、基材又は製造品を意味する。物品の例としては、セルロース系基材、紙、紙板、プラスチック、プラスチック又はポリマーフィルム、ガラス、セラミック、金属、複合材などの基材、並びに出版物(例えば、小冊子)、ラベル、及び包装材料(例えば、カードボードシート又は段ボール)、容器(例えば、ボトル、缶)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、金属化箔(例えば、ラミネートアルミニウム箔)、金属化ポリエステル、金属容器などの製造品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
「積層体」又は「積層されたフィルム」という用語は、接着剤(水性、溶媒系、又は無溶媒)を使用するか、又は押出積層を介して互いに付着する、少なくとも上部フィルム部分及び下部フィルム部分を含むフィルム構造を指す。上部フィルムは、一般に、印刷ウェブ又は一次ウェブと呼ばれ、下部基材に積層される前に、コーティング及びインクを裏刷りされる。積層体は、多層構造の場合には、2つ以上のフィルムを含むことができる。パウチ及びサシェなどのフレキシブル包装用途の場合、底部フィルムは、優れた熱密封特性を付与するように設計され、典型的には、上部フィルムよりも低いTgを有する。構造内で使用されるフィルムは、同じ化学的性質(均一構造)であり得るか、又は異なる(不均一構造)であり得る。例えば、LDPE(低密度ポリエチレン)フィルムに積層されたPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムは、不均一構造の例であり、一方、LDPEフィルムに積層されたMDO-PE(機械方向配向ポリエチレン)、又はCPP(キャストポリプロピレン)フィルムに積層されたBOPP(二軸延伸ポリプロピレン)は、均一構造の例である。
【0034】
本明細書で使用される場合、「分離層コーティング」は、第1の高分子フィルム基材に塗布されるコーティングを指し、第1の高分子基材は、第2の高分子基材に積層され、分離コーティング層は、高分子基材の間に挟まれている。積層構造は、2つ以上の高分子基材を含有し得る。分離層コーティングは、積層された構造の高分子基材のいずれか又は全てに塗布され得ることに留意されたい。分離層コーティングは、同じであるか、又は異なり得る。本発明は、酸素バリアコーティングに関して説明されるが、それほど限定されない。分離層コーティングは、任意のタイプのコーティングであり得る。分離層コーティングは、剥離層であり、非相溶性である、フレキシブル包装構造からの他の層による汚染なしに、リサイクル中の所望の高分子フィルム基材の回収を容易にする。分離層コーティングはまた、「分離層」、「剥離層コーティング」、「剥離層」、又は単に「コーティング」と称され得る。
【0035】
分離層コーティング及びポリマーフィルム積層構造
本発明は、積層された多層フィルム構造、特に異なる化学的性質のフィルムを含む構造の持続可能性を改善するために、酸素バリアコーティングであり得る機能的分離層コーティングのための新しい用途を提供する。特別に設計された分離層コーティングは、リサイクル/再生利用プロセス中(好ましくは、高温水/高温苛性洗浄相中)の剥離を可能にし、したがって、フィルムが、分離され、相溶性のあるリサイクルストリームに向かうことを可能にして、再利用を可能にする。分離層コーティングが酸素バリアコーティングである場合、それらはまた、フィルムの酸素バリア性能を改善する。
【0036】
本発明の分離層コーティングは、典型的には、インクの前に、裏刷りされたウェブ上に最初に塗布され、したがって、多重積層構造における裏刷りされたインク層からの透明な一次ウェブの分離を可能にする。本発明に基づく構造は、構造の印刷変換ステップ中に、又は任意選択により場合によってフィルムサプライヤによって塗布され得る分離層コーティングを使用する。分離層コーティングが酸素バリアコーティングである場合、バリアコーティング層は、パッケージを通る酸素透過を低減させるだけでなく、高温水及び/又は高温苛性溶液に浸漬するとき、構造の剥離を可能にする。分離層コーティングは、積層体中に存在する裏刷りされたインク及び/又は接着剤層の除去を更に助けるために2つ以上の表面に塗布して、次いで、より広い範囲の用途にリサイクル/再利用することができる基材をきれいに分離することができる。
【0037】
一実施形態では、分離層コーティングは、その有用な保存期間中に水に浸漬する積層構造の耐性を改善するために、パターン塗布され得る。パターンは、好ましくは、印刷されたグラフィックに登録され、最終パッケージの切断縁部と熱シール領域の開始との間にコーティングのない隙間を残す。フレキシブル包装構造は、典型的には、洗浄される前に細断されるため、切断片は、分離層コーティングを高温水/高温苛性洗浄液、又は他のタイプの洗浄液に曝露し、剥離を可能にする。このような曝露は、パターン印刷のために細断されていない構造には存在しないことに留意されたい。この選択により、リサイクル性の向上を可能にしながら、バリア特性を有するより堅牢な積層構造を作成することができる。
【0038】
コーティングは、フレキソ、グラビア、ロールコーター、スクリーン、スプレー、ロッド若しくはバー、カーテン、又は他の工業用印刷又はコーティング方法によって、可撓性フィルム又は多層フィルム構造を含む基材に塗布される。コーティングは、好ましくは、印刷又はコーティング装置に取り付けられた熱的乾燥器によって蒸発的に乾燥され、任意選択により場合によって、その耐久性を増加させるために追加の化学硬化又は架橋を受け得る。
【0039】
次いで、フィルムのコーティングされた層は、溶媒ベース又は無溶媒接着剤又は熱的押出積層のいずれかを使用して、フィルムの1つ以上の追加の層に積層されて、フィルムの2つ以上の層の組み合わせからなる多層包装構造を形成する。構造は、任意選択により場合によって、金属化されたフィルム若しくは箔及び/又は印刷インクを含み得る。
【0040】
本発明の分離層コーティングは、典型的には、単一の水溶性ポリマー若しくはコポリマー又はそれらの組み合わせを含む。好適なポリマー及びコポリマーには、ポリビニルアルコール(PVOH)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、非晶質ビニルアルコール、ポリアクリル酸、及び/又はポリウレタン分散液が含まれるが、これらに限定されない。任意選択により場合によって、雲母、クレー、及びケイ酸塩などの無機添加剤及び充填剤をコーティング中に分散させて、ガスバリア特性を向上させる。本発明のバリアコーティングは、コーティングされていないフィルムと比較して、酸素透過率(OTR)の10~100倍の低減を提供する。
【0041】
コーティング組成物は、可溶性ポリマーを室温で水溶液中に溶解させることによって、又は熱を添加して溶解速度を加速させることによって調製される。バリアコーティング組成物は、効率的かつ効果的に、印刷、コーティング、及び乾燥を促進するために、任意選択により場合によっては、アルコールなどの非水溶媒を含有する。コーティング組成物はまた、意図された基材及び選択された装置上でのコーティングの製造並びに/又は効果的な印刷及び塗布を更に助けるために、界面活性剤、又は表面湿潤若しくは消泡添加剤などの性能添加剤を含み得る。コーティング組成物は、任意選択により場合よっては、ポリアジリジン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリウレタンポリオール分散液、オルガノシラン、アミノシラン、酸官能性モノマー若しくはポリマー、チタネート、ジルコネート、又は他のキレート剤などの接着促進剤を含み得る。接着促進剤は、コーティングの基材フィルムへの適切な接着を促進して、積層された構造内に、要求される接着強度を生成する。
【0042】
好適なPVOH、EVOH、及び非晶質ビニルアルコールポリマーの例としては、Exceval AQ-4104(Kuraray Europe GmbH)、Poval(Mowiol)4-98(Kuraray Europe GmbH)、Aquaseal X2281(Paramelt B.V.、the Netherlands)、及びNichigo G-Polymer(Mitsubishi Chemical Japan- Soarus L.L.C.USAにより流通されている)挙げられるが、限定されない。好適な修飾PVOHコポリマーの例には、Z-100及びZ-200アセトアセチル修飾PVOH(Mitsubishi Chemical)などのGohsenx Zポリマー、並びにUltiloc 5003(Sekisui Japan)などのアミノ官能性PVOH樹脂、例えばポリビニルアミン-co-ポリビニルアルコール樹脂が含まれるが、これらに限定されない。Charles Hansenによって作成されたHSPiPデータベースによると、非官能化PVOHのHSPは、以下:δD=15、δP=17.2、δH=17.8、及びRo=10.2として列挙される。上記のポリマーの実際の値は実験的に決定されていないが、上記に挙げたポリマーは、各パラメータについて±3単位のいくつかの実験的変動を有する、文献値に近いHSP値を有することが予想される。
【0043】
ビニルアルコールポリマー及びコポリマーの使用は、典型的には、剥離ステップが高温水中で生じる必要があるときに好ましいが、他のバリア樹脂は、条件が、洗浄サイクル中に、プラスチックリサイクルプラント、又は選別施設でさえもよく使用されるように、例えば、高温苛性溶液、特に強力な界面活性剤を伴う高温苛性剤(hot causetic)を含む場合に、使用され得る。その場合、バリアポリウレタン分散液などの材料を使用し得る。そのような材料の一例は、Mitsubishi ChemicalからのTakelac WPB-342(A)である。ポリウレタンバリアコーティングは、一般に、PVOH又はEVOHほど良好な固有の酸素バリア特性を有さないが、それらは、より良好な水分蒸気バリア特性、及び一般に、より良好な加水分解安定性を提供し、これは、包装構造に有用であり得る。
【0044】
好適なマイカ、粘土、及びケイ酸塩の例としては、Cloisite Na+(BYK-Altana Germany)、及びMicroLite 963(SPV-Dicalite Management Group USA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
無機充填剤、界面活性剤、触媒、硬化剤、又は架橋剤などの追加の成分をコーティング配合物中で組み合わせて、更なる改質なしに印刷又はコーティング装置上で使用することができる1パックの「プレスレディ」(press-ready)コーティングを生成し得る。それに代えて、追加の成分は、ポリマー溶液又は溶液、充填剤及び添加剤の液体分散液、並びに架橋剤又は触媒を含む1つ以上の部分からなる「多部分」コーティングとして別々に供給されることができ、別個の部分は、印刷又はコーティング装置での使用の直前に予め混合され、一緒にブレンドされることを必要とする。コーティング又はコーティング部品は、使用前に混合された場合、好ましくは、意図された印刷又はコーティング装置のための最適な粘度及び乾燥能力、並びにラミネート及び包装変換装置の要求を満たすための追加の性能特性を有するように設計される。
【0046】
本発明のコーティングを組み込むことによって生成される積層された構造は、好ましくは、包装の内容、用途、及び最終使用に応じて異なる場合がある、包装の意図された市場用途の要件を満たすのに十分な積層結合強度を有するであろう。
【0047】
コーティング組成物は、剥離条件及びそれらの条件下での構造の所望の性能に応じて、剥離特性を「調整」するように最適化され得る。例えば、組成物は、構造の耐冷水浸漬性又は耐温水浸漬性を向上させるために架橋剤を組み込んでもよく、水が少なくとも65℃、好ましくは75℃、又はより好ましくは85℃に達したときにのみ剥離を可能にする。組成物はまた、そのような条件下で、例えば、樹脂成分のガラス転移温度(Tg)、及び配合物の架橋の程度を調節することによって、より速い剥離を可能にするように最適化され得る。より低いTgは、高温水中でより速い隔離を可能にするが、架橋の程度が高いと、剥離がより困難になり、より多くの時間又はより高い温度を必要とし、剥離を加速するために洗浄液中の界面活性剤及び/又は苛性剤(caustic)の使用を必要とし得る。構造が、PET及びPEフィルムなどの、その温度で異なる熱的膨張特性を有する材料に基づいている場合、より高い温度が一般的に有益であることに留意されたい。
【0048】
更なる実施形態では、コーティングは、基材フィルムのコーティングされた領域が、包装構造の縁部の周りの意図された熱シール領域の少なくとも外側部分を除外するような方法で、パターン印刷又はパターンコーティングされ得る。これにより、未開封のバッグ又はパウチが、冷蔵庫又はクーラーなどの水に、意図せずに曝露された場合に、剥離しない熱的に熱シール可能なバッグ又はパウチが作成される。しかし、プラスチックリサイクルに必要なように、リサイクルされたバッグ又はパウチを小片に細かく切断すると、プラスチックリサイクル施設で水溶液又は苛性溶液にさらされると、断片は依然として剥離し、フィルムは非熱シール領域(コーティングが塗布された場所)で意図されたとおりに分離する。パターン印刷されたコーティングは、一般に、(インク層の)印刷されたグラフィックと登録される。この方法は、バリアコーティングを塗布するために使用される典型的な方法とは対照的であり、バリアコーティングは一般にフラッドコーティングされる。
【0049】
別の実施形態では、本発明の技術は、インク又は接着剤からの汚染なしに、構造内で使用される様々なフィルムを更に分離するのを助けるために、洗浄可能なインク及び/又は除去可能な接着剤と組み合わせて使用され得る。その場合、インク及び/又は接着剤は、洗浄液中に溶解されるか、又は非常に微細に分散されて、残留物なしでフィルム片の分離を可能にし、可能であれば、洗浄液からのインク及び/又は接着剤粒子の除去を可能にし、したがって、水(又は洗剤の有無にかかわらずの苛性溶液、又は他の洗浄液又は媒体)を洗浄プロセスで再利用できるようにする。これにより、インクが汚染されることなく、基材フィルムを分離及び回収することができる。Sun Chemicalからの洗濯可能なインクのSolvawash(商標)ラインは、そのような洗濯可能なインクの例である。
【0050】
本発明は、垂直又は水平に形成されたパウチ、サシェ、トレイ、バー、及びフローラップを含む、多くの多層包装構造のバリア特性及びリサイクル可能性を改善するために使用され得る。最終構造は、フレキシブル包装構造であってもよく、又は蓋を備えた容器などの、フレキシブル包装及び剛性包装の組み合わせを含み得る。蓋を備えたこのようなハイブリッド容器の例としては、例えば、フィルムベースの蓋を備えた果物及び野菜トレイ、蓋を備えた熱成形トレイ(又は容器)、及び蓋を備えた射出成形容器が挙げられる。熱成形又は射出成形容器の例としては、ヨーグルト若しくはデザートポット、カプセル、又はティー及びコーヒーポッドが挙げられる。これらのハイブリッド構成では、剛性容器は、一般的に、最大の重量分画及びリサイクルする最も重要な部分を表し、典型的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、又はポリスチレン(PS)に基づいている。しかしながら、蓋が非相溶性化学物質(例えば、ハイブリッドポリエステルポリオレフィン多層)で作られており、消費者によって又はリサイクル中に分離されることができない場合、重要な熱可塑性樹脂の再利用を妨げる可能性がある。そのような場合、本技術の使用は、容器から蓋を完全に取り外し、したがって、剛性分画から分離することができるようにすることか、又は該当する場合、フレキシブル包装構造のために行われるように非相溶性層を分離することができるようにすることのいずれかに有益であろう。
【0051】
その最も単純な形態では、本発明の技術は、剥離することができる二重バリア構造を作成するために使用され得る。更なる実施形態では、構造は、Al、AlOx、又はSiOxなどの真空金属化層を含み得る。構造は、三重又はより複雑な構造であり得る。剥離を可能にする分離層コーティングは、最高のリサイクル収率及び/又は価値を生み出すために、構造の最も有意義な分割を提供するように戦略的に配置されるべきである。そのために、いくつかの三重構造は、高いバリア特性を必要とする、フレキシブル包装又は蓋材において一般的に見られる。かかる三重構造の一例は、PET/インク/接着剤/VM-PET/接着剤/LDPEであり、VM-PETは、Al、AlOx、又はSiOxの真空蒸着された層を有するPETフィルムを示し、LDPEは、低密度ポリエチレンフィルムである。そのような構造では、バリアコーティングを、接着剤に面するLDPE側に配置して、それをPETベースの層から分離することができ、次いで、それを別々に処理することができる。いくつかの他の構造は、全てのフィルムを分離する必要があるOPA/インク/接着剤/VM-PET/接着剤/LDPEなど、より複雑であり得る(「OPA」は、配向ポリアミドフィルムである)。そのような場合、分離層コーティングは、好ましくは、少なくとも、浮遊によってLDPEを回収するのを助けるために、全ての層、又は少なくともLDPEに塗布されるべきである。
【0052】
いくつかのポリプロピレンベースのバリア構造は、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)コーティングされた配向ポリプロピレン(OPP)を使用して構築されている。かかる構造の一例は、PVdCコーティングされたOPP/インク/接着剤/VM-CPPであり、VM-CPPは、真空蒸着されたAlキャストポリプロピレンフィルムを表す。フィルム基材は両方ともポリプロピレン化学物質に基づいているため、構造は単一材料構造であるが、リサイクルが容易ではない。実際、PVdCは、リサイクル物を汚染し、回収又は再利用中に重大な問題を引き起こす可能性がある。金属化はまた、いくつかの場合では問題である場合がある。本発明のバリアコーティングがPVdCを置き換える(及び50%以下の相対湿度で測定されたときに同等又はより良い酸素バリア特性を付与する)ことができる、本発明に基づく構造を使用すると、リサイクル可能性の観点から著しい利点を提供する。第1に、印刷可能なバリアコーティングは、構造に、必要なバリア特性を付与しながら、一次OPPフィルムをコーティングし、インク層からの分離を助けるために使用され得る。また、第2のバリアコーティングは、接着剤に面するCPP側に塗布されることができ、したがって、インク及び接着剤は、インク及び接着剤が沈む間に浮遊する、OPP及びVM-CPPから完全に分離され得る。代替的なアプローチは、OPP側に塗布された本発明のバリアコーティングと組み合わせて、洗浄可能な接着剤(水ベースの堆肥化可能な接着剤など)を使用することであり得る。しかし、そのアプローチの欠点は、フレキシブル包装で使用される典型的な溶媒ベース又は無溶媒の積層と比較して、潜在的に低いバリア特性及び劣った積層接着特性である。更なる実施形態では、Al真空蒸着の前にCPPに塗布される真空金属化プライマーとしてバリアコーティングを設計することが可能である。このようにして、Al層を除去し、剥離後に透明なCPP及びOPPフィルムを残すこともできる。
【0053】
本発明に記載の技術は、よりリサイクル可能な単一及び複数の材料構造を作成するのに役立つ。いくつかの用途は、以下の実施例で例示される。しかしながら、当業者は、本技術が、所望の分離を達成し、リサイクルを改善するのを助けるために、剥離層が、異なる方法によって及び構造の異なる位置に適用され得る、食品、家庭用、又は工業用包装用途におけるより広範な用途に適用され得ることを理解するであろう。
【0054】
更なる実施形態では、高分子フィルム基材の1つ以上の追加の層を積層構造に含めて、「三重」又は「四重」(など)構造を形成することができる。
図3~6は、三重構造の潜在的な実施例を例示する。
【0055】
インク、接着剤、及び他の非相溶性ポリマーなど、他の汚染物質から分離されたリサイクルされた高分子材料は、対応するバージン樹脂が使用される実質的に任意の目的のために(例えば、新しい積層体、パッケージ、ゴミ袋などの作製のために)潜在的に使用されることができる。いくつかの例では、これらの材料は、食品を包装するために使用され得るフィルム又は新しい容器を生成するために使用され得る。相溶性のあるインク及び/又は接着剤を含有するリサイクル物、並びに他の非相溶性樹脂を含まないリサイクル物は、より低い付加価値の用途で使用するために、混合色のリサイクル樹脂として、回収され、押し出され、及び販売され得る。一方、非相溶性材料を含有するリサイクル不可能な構造は、最も好ましくは、構造の燃焼が有毒な副産物(例えば、PVdCコーティングされたフィルムの燃焼からのダイオキシンの放出、窒素含有材料の燃焼からのNOx又はHCNの放出)を生成する可能性がない限り、それらのエネルギー価値のために埋め立てられるか、又は使用される。
【0056】
出願人は、積層構造及びそれから作られたパッケージを提供するための多くの方法があることに留意するが、本発明は、より容易にリサイクル可能な構造を作成するための方法を提供し、これは、包装構造の層をよりクリーンかつ潜在的により高い価値のリサイクルストリームに分離し、循環経済の一部として将来再利用するのに役立つ。本方法は、戦略的に位置づけられた薄い分離層コーティングの使用に依存し、その使用中に、構造に必要な最終使用性能要件を維持しながら、高温水及び/又は苛性溶液中での剥離を可能にし、分離層コーティングがバリアコーティングである場合、バリア特性を更に高める。分離層コーティングは、積層体/パッケージング構造の耐用年数中に、特性の適切なバランスを提供し、リサイクル性を最適化するように特別に設計されている。分離層コーティングは、完全な固体連続層、又は印刷されたパターンとして塗布され得る。本方法は、多材料(不均一)構造、又は単一材料(均一)構造に適用することができる。好ましい分離層コーティングは、高温水(洗浄液)中で30分未満、好ましくは10分未満、及び最も好ましくは5分未満での完全な剥離を可能にする。理想的には、高温水洗浄液は、65℃~85℃の温度である。洗浄液は、任意選択により場合によって、Triton X100などの界面活性剤、又はリサイクル洗浄システムで一般的に使用される他の界面活性剤を含有してもよく、及び/又は洗浄液は、苛性溶液、例えば、1%~3%のNaOH溶液であってもよい。ある特定の実施形態では、洗浄液は、1つ以上の有機溶媒を含み得る。
【0057】
ある特定の実施形態では、ラミネートフィルム構造、又はラミネートフィルム構造を含むパッケージ又は容器は、リサイクルプロセスの洗浄ステップの前に細断される。
【0058】
ある特定の実施形態では、積層構造を形成する方法における密封ステップは、熱密封(ヒートシーリング)、超音波密封(超音波シーリング)、誘導密封(induction sealing)、又は接着剤密封(接着シーリング)からなる群から選択される。
【0059】
ある特定の実施形態では、積層接着剤は、積層フィルム構造内の層として塗布されて、積層構造を形成する。他の実施形態では、積層接着剤は、熱的押出積層プロセスに置き換えられる。
【0060】
いくつかの実施形態では、積層構造は、三重積層構造を形成するために、以下のうちの1つ以上を更に含む:
(a)積層構造内の1つ以上のインク層、及び/又は
(b)積層構造内の分離層コーティングの1つ以上の追加の層、及び/又は
(c)積層構造内の1つ以上の金属化層、及び/又は
(d)積層構造内の追加のポリマーフィルム。
【0061】
ある特定の実施形態では、分離層コーティングは、コーティングされていないフィルムと比較して、酸素透過率(OTR)の10倍以上の低減を提供するバリアコーティングである。分離層コーティングは、基材上にフラッドコーティングされ得るか、又は積層体及び熱シール領域の外縁部から離れてインク/パッケージ設計に対応してパターン塗布され得る。
【0062】
本発明はまた、本明細書に開示される方法によって生成される積層フィルム構造又はパッケージも提供する。好ましい実施形態では、積層フィルム構造又はパッケージ構造は、リサイクル可能である。本発明のパッケージは、パウチ、サシェ、熱成形トレイ、蓋付き容器、ポット、カプセル、又はポッドの形態にあり得る。
【0063】
本発明はまた、本明細書に開示される方法を使用して得られたリサイクルされたポリマーを使用して生成された高分子物品も提供する。
【0064】
本発明の基礎は、分離層コーティングのポリマーが、基材のポリマーと混ざり合うが、洗浄液、例えば、高温水及び/又は高温苛性溶液にも可溶であるように、分離層コーティングの配合を調整することである。これは、ハンセン溶解度パラメータ、及びフローリーハギンズパラメータの観点から以下に記載される。
【0065】
ハンセン溶解度パラメータは、1967年にCharles M.Hansenによって開発された(詳細については、www.hansen-solubility.comを参照されたい)。溶解度は、2つの液体、又は固体及び液体が、均一混合物を生成することができる程度である。主要概念は、よく知られている「似たものは似たものを溶かす」というアイデアから来ており、それ自体は、原子及び分子における「極性-極性」及び「非極性-非極性」相互作用の更に基本的な概念にまでさかのぼる。後者は更に、材料の分子間の凝集エネルギーに起因する。凝集エネルギーの密度の平方根は、総溶解度パラメータδtotalとして定義される。
【0066】
【数1】
式中、E
totalは、1モル当たりの総凝集エネルギー又は1モル当たりの蒸発の総エネルギー(J/モル)であり、Vは、(m
3/モル)のモル体積であり、δ
totalは、(MPa)
1/2である。液体の総凝集エネルギー(気化のエネルギー)は、(原子)分散力、E
D、(分子)永久双極子-永久双極子力、E
P、及び(分子)水素結合(電子交換)力、E
H、から生じる次の3つの部分で構成されており、したがって、
【0067】
【0068】
これにより、以下のような対応する溶解度成分が得られる。
【数3】
【0069】
δD、δP、及びδHは、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)である。「親水性/親油性」又は「極性/非極性」の単純化されたアイデアに頼るのではなく、HSPは、3つのパラメータを使用する。溶解度の3つの成分、すなわち、(HSP)ハンセン溶解度パラメータ(δD、δP、δH)は、三次元溶解度空間を設定する。各溶媒及びポリマーは、HSP、すなわち、3D溶解度空間におけるその位置を定義する(δD、δP、δH)の独自のセットを有する。
【0070】
δDは、分子の分極性と相関する「分散」パラメータであり、次に、屈折率及びファンデルワールス力と相関する(https://www.stevenabbott.co.uk/practical-adhesion/hsp.phpの「Hansen Solubility Parameters(HSP)|Practical Adhesion Science|Prof Steen Abbott」を参照されたい)。メタノールのような分子は、分極性電子をほとんど有しないため、δDは低いが、トルエンのような芳香族は分極性が高く、δDは高い。同様に、塩素化溶媒は、分極性ハロゲン電子のために高いδDを有する。
【0071】
δPは「極性」パラメータであり、-OH又は-C=Oなどの極性基に関する直感と相関する。したがって、メタノール及びアセトンは比較的高いδPを有し、トルエンは低いδP値を有する。
【0072】
δHは「水素結合」パラメータであり、メタノールなどの分子の観点から明らかである。しかしながら、アセトンなどの分子は、C=Oが水素供与体の受容体であるため、適度なδHを有する。
【0073】
あらゆる溶媒及びポリマーはそのHSPを割り当てることができる。HSP値が類似している場合、溶媒及びポリマーは相溶性であるが、それらが異なっている場合、それらは非相溶性である。これは、「同類は同類を引き付ける」という直感を象徴している。以下の式:
【数4】
で定義されるHSP距離(Ra)から、1及び2の2つの分子がどれだけ似ているかを簡単に計算することができる。
【0074】
明らかに、1及び2の3つの全てのパラメータが非常に近い場合、Raは小さく、相互溶解性/相溶性が高い。1つ以上の値が大きく異なる場合、距離は大きく、相互溶解性は低い。相溶性/可溶性材料に対応するHSP距離は、材料によって異なり得る。ポリマーは、「R」又は「Ro」で示される「溶解度半径」又は「相互作用の半径」と呼ばれる余分に有意な溶解度数を有する。HSP(δD
p、δP
p、δH
p)とのポリマーの相互作用の半径は、溶解度球と呼ばれる溶解度空間内の球を定義する。溶解度の球の半径は、(MPa)
1/2として計算される。したがって、ポリマーの溶解度パラメータの完全なセットは、溶媒又は溶媒ブレンドのための3つではなく、4つのパラメータ(δD
p、δP
p、δH
p、Ro)からなる。3D溶解度における溶媒又は溶媒ブレンドの位置が、ポリマーの溶解度球内にある場合、ポリマーは、溶媒又は溶媒ブレンドに可溶である。3D溶解度空間内の溶媒/ブレンドの溶解度の位置が、ポリマーの溶解度球内にあるかどうかを決定するために、溶媒/ブレンド位置とポリマー中心の中心との距離(D
(S-P))を決定し、相互作用のポリマー半径と比較する。
【数5】
【0075】
距離は二乗値として計算されるため、δD1、δP1、及びδH1は、高温水/苛性溶液のHSPであることができ、δD2、δP2、δH2は、ポリマーのHSPであり得るか、又はその逆であり得ることに留意されたい(数の二乗値は、差が正であるか負であるかにかかわらず、絶対値である)。REDは「相対エネルギー差」と呼ばれている。より小さいREDは、溶媒/ブレンドがポリマーを溶解する可能性がより高いことを示す。例えば、HSP距離Ra対Ro(RED)の比率が1未満である場合、材料は、可溶性/相溶性である可能性が高い。したがって、本発明について、分離コーティング組成物に使用されたポリマーは、典型的には、高温水及び/又は高温苛性溶液がリサイクル中に最も一般的に使用されるものであるため、これらの洗浄液がポリマーの溶解度球内に入るように選択される。しかしながら、洗浄液はそれほど限定されず、状況に応じて任意の適切な洗浄液を使用することができる。
【0076】
相溶性ポリマーは、「混ざり合う」又は「絡み合う」。混ざり合う程度は、それらがどの程度「似ている」かに依存する。これは、HSPパラメータを使用して距離を計算することによって決定される。2つのポリマーのHSPパラメータ、及びそれらの間のHSP距離は、「接着」に大きな影響を与える。
【0077】
ポリマー溶解度は、一般に、ポリマーブレンドを評価するときに考慮される。これとの関連では、ポリマー溶解度に関連するFlory-Huggins χパラメータは、
【数6】
によって計算され、
式中、MVolはモル体積であり、RTは通常のガス定数時間温度項である。ポリマー-ポリマー混ざり合いの場合(達成するのが難しい完全な相互溶解度ではなく)、χパラメータを使用して、2つのポリマーが界面を横切って到達できる距離を計算することができ、χ値が小さいほど混ざり合いの可能性が高くなる。言い換えれば、HSP距離Raは、ポリマー混和性に対するあまり良いガイドではないにしても、ポリマー混ざり合い対する良いガイドである。
【0078】
ほとんどのポリマー(高MWt)は不混和性であることはよく知られているが、それらの間の界面では、ポリマー鎖が混ざり合うことができる距離は、非常に近いわけではないポリマーであってもかなりのものであり得る。混ざり合い距離dは、「統計的結合長」(Kuhn長)に基づいており、これは、単純化のために、ここでは、5つのC-C結合長、すなわち、0.7nmに等しいとみなすことができ、それは、ヘルファンド式:
【数7】
によって与えられる。距離からのχの変換は、ポリマーのMVolについて50000の値を使用する。
【0079】
Steve Abbott教授は、Hansen HSPiP電子書籍、https://www.stevenabbott.co.uk/practical-solubility/polymer-blends.phpのウェブサイト、及びポリマー溶解性及び接着科学に関連する他のリンクで、混ざり合い/接着に関連するFlory-Huggins理論について論じている。以下の考察は、HSPパラメータを使用するが、当業者であれば、Flory-Hugginsパラメータを使用して、ポリマー相溶性、及びポリマー溶媒溶解性を評価することも可能であることを理解するであろう。
【0080】
上記の理論及び実際の応用は、Steve Abbott教授の研究で十分に文書化されている。HSPパラメータ及び上記のパラメータは、HSPiPソフトウェア又は彼が開発したオンラインアプリを使用して計算することができる(Hansen Solubility Parameters(HSP)|Practical Adhesion Science|Prof Steven Abbottを参照されたい)。
【0081】
以下の表及び計算で使用したHSPパラメータは、Hansen Solubility Parameters(HSP)|Practical Adhesion Science|Prof Steven Abbottのオンライン計算機、又はHSPiPデータベース、又はその両方から取得した。オンライン計算機内の材料は、HSPiPデータベースのサブセットであり、したがって、同じソースからのものである。
【0082】
互いからの高分子フィルム基材の距離を評価することは、複数の目的を果たす。例えば、高分子基材間の距離が近い場合、ポリマーの相溶性は、リサイクルを容易にし得る。又は、積層されたポリマーフィルムが、HSPパラメータを使用して計算されるように近い距離を有する場合、押出(例えば、溶融押出)によって生成された積層体は、より大きな結合強度を有するであろう。樹脂のHSPパラメータの重要性は、機械的リサイクル用途に関連している。機械的リサイクルでは、回収されたフィルムを(再)押し出して、新製品を作製する。構造で使用されるフィルムのHSP値を知ることは、リサイクル中の相溶性問題を回避するためにフィルムを分離することがどれほど重要であるかをフィルムが示すかどうかを判断するのに役立つ。インク及び接着剤は、全体的な構造のわずかな部分を表し得る。オンライン計算機からの例は、MPa1/2で表される値を有する「樹脂名」(δD;δP;δH)として以下に列挙される。
ポリエチレン(16.9;0.8;2.8)
ポリプロピレン(18.0;0;1)
PET(18.2;6.4;6.6)
ナイロン(17.4;9.9;14.6)
ポリスチレン(18.5;4.5;2.9)
【0083】
オンライン計算機を使用して計算された上記の値から、ポリエチレンとポリプロピレンとの間のRa(HSP)距離は、比較的小さく、したがって相溶性を示す3.0の値を与える。これは、他のパラメータχ=0.04及び1.36nmのかなり長い混ざり合い距離dによって更にサポートされる。一方、PET及びポリエチレンのRa値は、はるかに高く、計算されたRa値は、7.2であり、χ=0.27及びd=0.56nmであり、相溶性がはるかに低いことを例示している。ある特定の実施形態では、基材ポリマー間のRaは、約3~約10であり、それらは、相溶性である。相溶性基材は、一緒にリサイクルされるか、又は押出積層体に形成されることが可能であり得る。他の実施形態では、ポリマー基材は、不均一であり、それらの間に約10以上のRaを有する。好ましくは、不均一基材の場合、材料の密度は、基材がリサイクル中に重量法で分離されることができるようなものである。その一例は、LDPE/接着剤/インク層が、浮遊し、すくい取られることができる一方、クリーンなPETフィルムがリサイクル容器の底部に落下する、PET/LDPEの例である。
【0084】
より詳細なHSP表は、Taylor and Francisによって出版されたAlan F.M.Barron,ed.CRCプレスによる“Handbook of Solubility Parameters and other cohesion parameters”(第2版、1991年)、及びSteven Abbott教授によって出版され、ウェブサイトwww.hansen-solubility.comから入手可能な様々な電子書籍で見つけることができる。
【0085】
ある特定の実施形態では、本発明は、ある特定のHSPパラメータを有する溶媒を伴う洗浄ステップを含むリサイクルプロセスのために意図されたリサイクル可能な包装積層構造を調製する方法であって、分離層コーティングのポリマー及び洗浄溶媒のREDが、リサイクル条件下で1未満である、方法を提供する。
【0086】
いくつかの実施形態では、積層構造のフィルム基材は、均一ポリマーで構成される。均一ポリマー間のRaは、5未満、好ましくは4未満である。この場合、適切な場合、積層構造のフィルム基材を一緒にリサイクルし得る。
【0087】
他の実施形態では、積層構造のフィルム基材は、不均一ポリマーで構成される。その場合、ポリマー間の距離Raは、それらが混ざり合わないか、又は非常に短い距離でのみ混ざり合うのに十分な大きさである。不均一ポリマー間のRaは、約5よりも大きい、好ましくは10よりも大きい、より好ましくは20よりも大きい。これらのポリマーは、互いに可溶性ではなく、ポリマー間のREDは、1よりもはるかに大きいことに留意されたい。そして、材料の密度は、材料が重量法で分離されることができるようなものである。一方のフィルム基材がPETで作られ、他方のフィルム基材がLDPEで作られる、このタイプの積層構造の例。リサイクル中、剥離後、LDPE/接着剤/インク層が浮遊し、容易にすくい取られることができる一方、クリーンなPETフィルムがリサイクル容器の底部に落下する。
【0088】
リサイクル中に、様々な洗浄液が使用され得ることに留意されたい。一般に、高温水又は高温苛性溶液(例えば、1%~3%NaOH)が使用されるが、ある特定の状況では、有機溶媒が使用され得る。有機溶媒が使用される場合、それが高分子フィルム基材を溶解しないことを確実にするように、慎重に選択されなければならない。代表的な高温水洗浄液のHSPパラメータを表1に列挙する。他の溶媒のHSP値は、HSPiPソフトウェアを使用して計算することができる。水の値は、Charles M.Hansen,Hansen Solubility Parameters:A User’s Handbook,2nd Edition,2007の表A.1(482ページ)からのものである。なお、水のHSPパラメータには、25℃における水の気化エネルギーに由来する単一分子(δD=15.5、δP=16.0、及びδH=42.3)、良好な溶媒が水に1%を超えて可溶性である、水中の様々な溶媒の相関に基づく単一分子(15.1、δP=20.4、δH=16.5、及びRo=18.1)、並びに水中の所与の溶媒の総混和度の相関に基づくデータ(δD=18.1、δP=17.1、δH=16.9、及びRo=13.0)の3組があることに留意されたい。全ての値は、25℃で測定されたHSPの値であることに留意されたい。以下の表1の水の値は、25℃での全混和度に基づく水の値である。より高い温度での水の値は、以下に記載されるように計算される。温度が増加するにつれて水のδHが減少し、温度が増加するにつれてポリマーからの距離が短く、水中のポリマーの溶解度が高いことに留意されたい。したがって、所与のポリマー及び水のREDの計算は、25℃で大きくてもよいが、温度が(例えば、リサイクルの洗浄ステップのように85℃に)上昇するにつれて、REDは、減少する可能性があり、ポリマーは、より可溶性が高い。温度の変化に伴い、小分子のHSP値は一般的に変化するが(例えば、水及び他の溶媒)、ポリマーのHSP値は、一般的に温度全体にわたって一定のままである(https://www.hansen-solubility.com/HSP-science/HSP-T.phpにおけるSP and Temperature-Hansen solubility parametersを参照されたい)。
【0089】
温度が増加する場合の水のHSP値は、オンライン計算機を使用して、以下の式に従って計算した(https://www.hansen-solubility.com/HSP-science/HSP-T.phpにおける、HSP and Temperature-Hansen solubility parameters):
δDT=δD*(1-(ΔT*α*1.25)
δPT=δP*(1-((ΔT*α)/2))
δHT=δH*(1-(ΔT*((0.00122+α)/2))
式中、Tは水の温度であり、ΔTは25℃からの温度変化であり、αは温度Tにおける水の熱的膨張係数である(水の熱的膨張係数は、異なる温度で異なる)。簡潔にするために、αの値は、上記に挙げたウェブサイトHSP and Temperatureのオンライン計算機で0.0007/Kに設定されている。表1の値は、上記に挙げたウェブサイトHSP and Temperatureで提供されている計算機を使用して計算される。必要に応じて、αのより具体的な値は、https://www.engineeringtoolbox.com/water-density-specific-weight-d_595.htmlにおけるEngineering Toolboxウェブサイト)で見つけることができる:
50℃でα=0.000454/K
60℃でα=0.000516/K
80℃でα=0.000621/K
85℃でα=0.000644/K
90℃でα=0.000666/K
95℃でα=0.000687
【0090】
【0091】
いくつかのポリマーのHSPパラメータが、表2に列挙されている。これらの値は、Hansen Solubility Parameters(HSP)|Practical Adhesion Science|Prof Steven Abbott、又はHSPiPソフトウェアに関連するHSPiPデータセット、又はその両方のオンライン計算機から取得した。オンライン計算機で提供される値は、HSPiPデータセットから取得されたサブセットであるため、同じソースからのものである。一般に、δD、δP、及びδH値は、Hansen Solubility Parameters(HSP)|Practical Adhesion Science|Prof Steven Abbottのオンライン計算機からのものであり、ポリマーは、HSPiPデータベースで相互参照されて、Ro値が得られる。ある特定の材料については、複数のHSP値が、どのように決定されたか、及び/又はそれらが、公開された複数の結果又は単一の結果の平均であるかどうかに応じて、複数のHSP値が利用可能であり得ることに留意されたい。したがって、表1は、どの値に基づいて計算するかが明確になるように提供されている。代替の表は、信頼できるソースから取得された場合に使用され得る。代替のソースが使用される場合、その場合、混合参照ではなく、好ましくは、一貫性のために同様の実験方法で決定された値を使用して、全ての計算がその参照からのデータで完了することを推奨する。
【0092】
【0093】
ウェブ基材への分離層コーティングの接着及び洗浄液による除去
ウェブ基材へのコーティングの接着は、ウェブ基材のポリマーと混ざり合う可能性がより高いコーティングの調製のための結合剤としてポリマーを選択することによって変化させることができる。2つのポリマー間のRa値は、2つのポリマーの相溶性、したがって混ざり合いを示す。
【0094】
表2中のHSP値を使用して、様々な基材ポリマーと本発明の分離層コーティング組成物に使用され得るポリマーとの間の距離Raを計算した(Hansen Solubility Parameters(HSP)|Practical Adhesion Science|Prof Steven Abbottのオンライン計算機を使用して)。データを表3に示す。
【0095】
【0096】
上記のデータは、PMMAがPETに最も類似しており、PETウェブ基材と混ざり合う可能性が高く、接着性が増加することを示す。PVOH及びEVOHは、ナイロン66(ポリアミド)に近いものであり、ポリアミド基材と混ざり合う可能性が高く、接着性が増加する。PUは、PETに最も近いものであり、PET基材と混ざり合い、接着性を増加させる可能性が高い。
【0097】
分離層コーティングは、基材によく接着し、水及び溶媒への通常の曝露による除去に耐性を示さなければならないが、ウェブ基材及び分離層コーティングを含む物品の寿命使用中、それはまた、リサイクル中に高温水又は高温苛性溶液にいくらか可溶性でなければならない。高温水及び高温苛性洗浄液中の分離層コーティングポリマーの溶解度は、ポリマーと洗浄液との間の相対エネルギー差(RED)を計算することによって推定することができる。好ましくは、分離層コーティングのポリマーと洗浄液との間のREDは、1未満である。REDが1よりも大きい場合、例えば、苛性(caustic)(例えば、NaOH)を添加すること、有機溶媒を添加すること、又は界面活性剤を添加することによって、洗浄液を調整することができる。バリアポリマーと洗浄液との間の計算されたREDのいくつかの例を表4に示す。
【0098】
【0099】
直感的には、より高い温度が常に、ポリマーの改善された溶解性をもたらすように思われるが、これは必ずしもそうではない。これは、小分子(例えば、溶媒)のHSP値が変化する一方で、ポリマーのHSP値は一般的に変化しないという事実の結果である。小分子の温度を増加させると、一般にHSP値が減少する。HSP温度効果は、溶解度を増加又は減少させることができる。例えば、所与のポリマーに対して両方とも不良溶媒である2つの溶媒を有し得、一方は、それが高いHSP値を有するので、ポリマーの球の外側にあり、他方は、それが低いHSP値を有するので、球の外側にあるか、又は球の内側にある。高いHSP値で始まる溶媒のHSP値を減少させると、溶媒が球に取り込まれ、溶解度が増加する。逆に、低いHSP値で始まる溶媒のHSP値を減少させると、溶媒を球から更に遠ざけ、溶解度を減少させる。これは、上の表で見ることができ、*EVOH Solは、85℃及び95℃よりも25℃の水でより可溶性である。しかしながら、HSP値に関する相対的な実験的不確実性を考慮すると、EVOH solの温水と冷水との間の0.05のRED値の差は、統計的に有意な差として解釈することができないことに留意されたい。熱及び/又は時間が違いを生む場合がある。その場合、科学者は、即時の溶解度ではなく、ある特定の時間数後にある特定の材料のHSPパラメータを決定し得る。熱及び/又は時間は、材料の溶解度を改善することができ、分離層コーティングをより良く可溶化するのを助けるためにリサイクル作業で活用することができる。
【0100】
水は、本明細書における洗浄液の典型的な例として使用される。しかしながら、当業者は、ポリマーが、水に十分に可溶性ではない場合、洗浄液は、有機溶媒などの他の溶媒を添加して溶媒ブレンドを作成することによってか、又は他の成分を添加することによって改質することができることを理解するであろう。例えば、添加され得る他の成分としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、又は1つ以上の界面活性剤が挙げられる。少量のNaOH(例えば、1%~3%)の添加は、水溶液のHSPパラメータに大きな影響を及ぼす可能性は低いが、NaOHは、典型的には、ポリマー中の酸基を化学的に攻撃することによって作用し、したがって、標的ポリマーの溶解性特性を変化させ、水中で溶解又は分散する可能性を高める。界面活性剤の添加は、水性洗浄液のHSPパラメータを変化させる可能性がより高い。リサイクル作業では、コーティングと水との間のREDが>1であっても、バリアコーティングをフィルムから持ち上げるのを助けることができる界面活性剤を水中に添加することが一般的であることに留意されたい。界面活性剤は、「平均」HSP値をもたらす異なるHSP値を有する2つの側(親油性側及び親水性側)を有する材料として解釈されることができる。界面活性剤のHSPの詳細については、https://pirika.com/ENG/HSP/E-Book/Chap21.htmlに記載されている。異なるブレンド及び成分を有する洗浄液のHSPパラメータは、HSPiPソフトウェアを使用して計算することができる。
【0101】
本発明の目的のために、選択されたウェブ基材で剥離を誘発するために、ウェブ基材及び分離層コーティング組成物で使用されたポリマーとの間のRaは、混ざり合いを可能にするために25未満であるが、剥離を可能にするために3を超えるべきである。すなわち、Raは、第1の基材のポリマーと分離層コーティングのポリマーとが混ざり合って、パッケージの有用な寿命中に積層構造が損なわれないようにするための第1の高分子基材への分離層コーティングの十分に高い接着を得ると同時に、リサイクルプロセスの洗浄ステップ中に第1の高分子基材からコーティングを除去することを可能にするのに十分な低い接着を提供するようなものでなければならない。好ましくは、基材のポリマーと分離層コーティングのポリマーとの間のRaは、約3~約25、又は約3~約20、又は約3~約15、又は約3~約10、又は約3~約5、又は約5~約25、又は約5~約20、又は約5~約15、又は約5~約10、又は約10~約25、又は約10~約20、又は約10~約15である。
【0102】
理想的には、洗浄液中の分離層コーティング中のポリマーの溶解度は、リサイクルの洗浄ステップにおいて、選択されたウェブ基材からの分離層コーティングの除去を可能にするのに十分であるべきである。この文脈では、洗浄液と分離層コーティングポリマー(コーティング中の一次結合剤樹脂及び/又は樹脂のブレンドとして定義される)との間のREDが1未満であることが望ましい。しかしながら、特に、有機溶媒が使用される場合、高分子フィルム基材のポリマーと洗浄液との間のREDは、高分子フィルム自体が洗浄液中に溶解しないように、可能な限り大きく、少なくとも1よりも大きいことが重要である。好ましい実施形態では、積層構造内の全ての高分子フィルム基材の洗浄液とポリマーとの間のREDは、可能な限り大きく、少なくとも1よりも大きい。
【0103】
積層構造
図1は、剥離バリアコーティング、インク、接着剤でコーティングされ、かつポリエチレン(PE)シーラントウェブ(第2の基材)に積層されたポリエステルフィルム(PET)第1の基材を使用して積層構造が形成される二重積層構造を示す。バリアコーティングは、剥離層を提供し、クリーンなPETフレーク(第1の基材)をリサイクル中に回収することを可能にする。
【0104】
図2は、
図1の第1の基材のPETの回収を示す概略図である。積層体から作られた包装構造は、パッケージを細断し、断片を高温水又は高温苛性溶液に浸して、他の層からPETを除去し、最後にクリーンなPETを分離することによってリサイクルされる。回収されたPETは、リサイクルすることができ、バージンPETが使用される実質的に任意の目的(例えば、新しいポリエステルフィルム、積層体、パッケージ、及び容器を作製するため、又は様々な用途で樹脂又は共樹脂として)に使用される。
【0105】
図3は、クリーンなPE、OPP、又はCPPフィルムを、インク、接着剤、及び任意選択により場合によって、真空金属化アルミニウム層から分離することができる、化学的に相溶性のある基材を使用するリサイクル可能な三重構造を示す。「分離層コーティング#1及び#2」は、高温水/苛性(caustic)での剥離も可能にするように設計された本発明の分離層コーティングを示す。
【0106】
図4は、クリーンな熱シール可能なウェブフィルム(フィルム#2)を、プリントウェブフィルム(フィルム#1)、インク、接着剤、真空金属化フィルム、及び接着剤から分離することができる、高いバリア特性を有するリサイクル可能な三重構造を示す。
【0107】
図5は、クリーンなプリントウェブフィルム(フィルム#1)を、インク、接着剤、真空金属化フィルム、及び熱シール可能なウェブフィルム(フィルム#2)から分離することができる、高いバリア特性を有する三重構造を示す。
【0108】
図6は、クリーンな熱シール可能なウェブフィルム(フィルム#2)を、プリントウェブフィルム(フィルム#1)、インキ、接着剤、及び真空金属化フィルムから分離することができる、高いバリア特性を有する三重構造を示す。
【0109】
図7は、本発明のバリアコーティングが、熱シール可能な構造の縁部には存在せず、かつその構造が濡れた保管条件にさらされている場合、細断及びリサイクルの前に構造が意図せずに剥離することはないように、塗布され、印刷インクグラフィックデザインに登録されている、パターン印刷された剥離バリアコーティングを備えたリサイクル可能な構造を示す。
【実施例】
【0110】
本発明は、本発明を更に例示する以下の非限定的な実施例によって更に説明され、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきではない。
【0111】
実施例1.ビーフジャーキースナック食品接着剤ラミネートパウチ。
ポリエステル(PET)一次印刷ウェブ、及び低密度ポリエチレンシーラントウェブ(LDPE)を含むビーフジャーキースナック食品接着剤ラミネートパウチを調製した。PVOH溶液及びナノ粘土分散液を含む分離層コーティング(酸素バリアコーティングとしても作用する)を、0.3g/m
2~0.5g/m
2の乾燥固体コート重量で、透明PETフィルムにフレキソ印刷又はグラビア印刷によって塗布し、次いで、スナック食品アートワーク(インク)でオーバープリントし、次いで、コーティング、インク、及び接着剤が全てフィルムの外側PET層と内側LDPE層との間にあるように、LDPEに接着剤積層した。バリアコーティングは、構造内に、強化された酸素バリアを提供し、PETの酸素透過率(OTR)を140cm
3/m
2/日から(参照、Dupont Tejin Films Mylar 12ミクロンポリエステル、25℃、相対湿度45%)1.0cm
3/m
2/日以下に低減させる。このタイプの積層構造を
図1に例示する。
【0112】
苛性剤(1%NaOH)の有無にかかわらず、高温(約85℃)の水溶液で切断及びリサイクルすると、PET/LDPE層が剥離し、大部分がクリーンなPETフィルムを残し、残りのコーティング、インク、及び接着剤がLDPEフィルムに付着した。汚染されたLDPEは、表面への浮遊(密度0.91g/cm
3)によって分離し、クリーンなPETは、その高密度(1.37g/cm
3)のために、苛性溶液タンク内に沈む。このプロセスを
図2に例示する。バリアコーティング層を有しない比較積層構造は、剥離せず、したがって、著しいリサイクル問題を提示し、埋立地に回される可能性が高い。
【0113】
実施例2.乾燥スナック二重接着剤積層されたパウチ。
ポリエステル(PET)一次印刷ウェブ及び低密度ポリエチレン(LDPE)シーラントウェブを含む乾燥スナック食品二重接着剤積層されたパウチを調製する。この実施例では、PVOH溶液及び接着促進剤(ポリエチレンイミン(PEI))を含む分離層コーティングを、フレキソ印刷又はグラビア印刷によって0.3g/m2~0.7g/m2の乾燥固体コート重量でコロナ処理されたLDPEに直接塗布し、次いで、印刷されたPETフィルムに接着剤積層する。コーティング、インク、接着剤は全て外側のPETフィルムと内側のLDPEフィルムとの間にある。コーティングは、依然として、強化された酸素バリアを提供する。バリアコーティング層の厚さ、及び試験に使用される相対湿度に応じて、構造のOTRは、20cm3/m2/日未満、10cm3/m2/日未満、又は2cm3/m2/日以下であってもよい。より低いOTR値は、ナノ粘土ケイ酸塩粒子を含むコーティングを選択することによって可能になり得る。苛性剤の有無にかかわらず高温(~85℃)水で切断及びリサイクルすると、PET/LDPE層が剥離し、大部分がクリーンなLDPEを残し、残りのコーティング、インク、及び接着剤がPETフィルムに付着した。クリーンなLDPEは、表面への浮遊(密度0.91g/cm3)によって分離し、汚染されたPETは、その高密度(1.37g/cm3)のために、苛性溶液タンク内に沈む。
【0114】
実施例3.両方のウェブ基材を分離するための積層構造。
実施例1及び2に記載の選択肢を組み合わせることができ、それによって、分離する必要がある各層に1つずつ、2つの分離層コーティング層が塗布される。これは、大幅に強化されたバリア特性(本実施例では0.2cm
3/m
2/日以下)を提供するだけでなく、上部一次ウェブ及びシーラントウェブの両方を透明フィルムとしてクリーンに分離するのにも役立ち、次いで、潜在的には食品包装用途を含むより多くの用途にリサイクルすることができる。この積層構造を
図3に例示し、タイ(tie)コーティング#1及びタイコーティング#2はバリアコーティングである。
【0115】
実施例4.乾燥シリアル二重接着剤積層されたパウチ。
二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)一次印刷ウェブ及び低密度ポリエチレン(LDPE)シーラントウェブを含む乾燥シリアル二重接着剤積層されたパウチを調製する。この実施例では、PVOH溶液、PEI接着促進剤、及びケイ酸塩粘土分散液を含むバリアコーティングでもある分離層コーティングを、0.3g/m2~0.5g/m2乾燥固体コーティング重量で、コロナ処理されたBOPPに塗布し、次いで、コーティング、インク、及び接着剤が全てフィルムの外側BOPP層と内側LDPE層との間にあるように、インクでオーバープリントされ、LDPEに接着剤積層される。酸素バリアは、乾燥シリアルの必要条件ではないが、酸素バリアは、25℃で、2,000cm3/m2/日を超えて10cm3/m2/日未満に、及び50%の相対湿度(RH)で、依然として100倍を超えて強化されている。高温(約85℃)苛性剤(1%NaOH)溶液で切断及びリサイクルすると、BOPP/LDPE層が剥離し、大部分がクリーンなBOPPを残し、残りのコーティング、インク、及び接着剤がLDPEフィルムに付着した。これは、強化された摩擦帯電及び自由落下セパレータプロセスなどのLDPEからBOPPを分離することができる任意の後続の分離プロセスにとって有利であり得る。
【0116】
実施例5.代替乾燥パウチ積層構造。
実施例1及び2と同様に、並びに実施例4に類似して、コーティングは、対向するコロナ処理されたLDPEフィルム表面に塗布され、分離されると、大部分がクリーンなLDPEフィルムが得られ、残りのコーティング、インク、及び接着剤がBOPPフィルムに付着する。
【0117】
実施例6.食品包装材二重接着積層。
二軸延伸ポリアミド(BOPA)一次印刷ウェブ及び無延伸ポリプロピレン(CPP)シーラントウェブを含む食品包装材二重接着剤積層されたパウチを調製する。BOPA/LDPE層が剥離し、大部分がクリーンなBOPAを残し、残りのコーティングインク及び接着剤がCPPフィルムに付着した。汚染されたCPPは、表面への浮遊(密度0.895g/cm3)によって分離し、BOPAは、その高密度(1.13g/cm3)により、苛性溶液タンク内に沈む。
【0118】
実施例7.代替食品包装材二重接着積層。
実施例1及び2と同様に、並びに実施例6に類似して、バリアコーティングは、対向するコロナ処理されたCPPフィルム表面に塗布され、分離されると、大部分がクリーンなCPPフィルムが得られ、残りのコーティング、インク、及び接着剤がBOPAフィルムに付着した。
【0119】
本発明は、その好ましい実施形態を含め、詳細に記載されている。しかしながら、当業者は、本開示を考慮すると、本発明の範囲及び趣旨に含まれる本発明に対する変更及び/又は改善を行うことができることが理解されるであろう。
【国際調査報告】