(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】ペプチドおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/10 20060101AFI20240618BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240618BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240618BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240618BHJP
C07K 7/08 20060101ALN20240618BHJP
【FI】
A61K38/10
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P1/00
A61P43/00 121
C07K7/08 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574133
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 US2022031559
(87)【国際公開番号】W WO2022256304
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523117373
【氏名又は名称】レアルタ ライフ サイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナ ニール ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】クニオン ケンジ
(72)【発明者】
【氏名】ティーネル ウルリヒ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA18
4C084BA42
4C084NA02
4C084NA06
4C084NA07
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZC412
4C084ZC751
4H045AA30
4H045BA17
4H045BA57
4H045DA55
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、C末端ペグ化を含む極性アソータント(PA)ペプチドの合成修飾体であるペプチドを提供する。本発明は、補体系を調節しかつ好中球と相互作用してそれらの結合および活性を変化させるための、少なくとも1つの合成ペプチドの使用方法をさらに提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、サイトカインの発現を変化させる方法。
【請求項2】
SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、その必要がある対象においてチェックポイント阻害剤の毒性副作用を防止、処置、および/または緩和する方法。
【請求項3】
SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、その必要がある対象において腸の壊死および/または損傷を防止、処置、および/または緩和する方法。
【請求項4】
SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤で処置されている、処置されたことがある、または処置されるであろう対象において、腸の壊死および/または損傷を防止、処置、および/または緩和する方法。
【請求項5】
前記組成物が、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、安定化剤、または賦形剤をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
SEQ ID NO:2および/または3の前記治療的に有効な量が約10mg/kg~約160mg/kgである、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
SEQ ID NO:2および/または3の前記治療的に有効な量が約20mg/kg~約160mg/kgである、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
SEQ ID NO:2および/または3の前記治療的に有効な量が約40mg/kg~約160mg/kgである、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
SEQ ID NO:2および/または3の前記治療的に有効な量が少なくとも1つの用量で投与され、第1の用量が約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む第2の用量が投与され、該第2の用量が約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
SEQ ID NO:2および/または3の前記治療的に有効な量が2つの用量で投与され、第1の用量が約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含み、第2の用量が約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記第2の用量が、前記第1の用量が投与されてから30秒~10時間後に投与される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
SEQ ID NO:2および/または3の前記治療的に有効な量が約1週間~約2週間の期間にわたって複数回用量で投与され、各用量が約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含み、かつ4~10時間ごとに投与される、請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
各用量が8時間ごとに投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
SEQ ID NO:2および/または3の前記治療的に有効な量が、約10mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3の、少なくとも1つの負荷用量で投与され、それに続いて、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3の少なくとも1つの維持用量が投与され、
第1の維持用量が最後の負荷用量から4~10時間後に投与され、かつ
該維持用量が、約1週間~約2週間の期間にわたって、4~10時間ごとに投与される、
請求項1~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記第1の維持用量が前記最後の負荷用量から8時間後に投与され、前記維持用量が約1週間~約2週間の期間にわたって、8時間ごとに投与される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記対象がまた、チェックポイント阻害剤で処置されている、チェックポイント阻害剤で以前に処置されたことがある、またはチェックポイント阻害剤で処置されるであろう、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記チェックポイント阻害剤が、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、およびPD-L1阻害剤、例えば、ペンブロリズマブ(Keytruda)、イピリムマブ(Yervoy)、ニボルマブ(Opdivo)、およびアテゾリズマブ(Tecentriq)からなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月15日に出願された米国仮出願第63/279,423号および2021年6月1日に出願された米国仮出願第63/195,401号に対して優先権を主張する。これらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体が参照により本明細書に組み入れられる配列表を含む。該ASCIIコピーは2022年5月25日に作成され、251110_000164_SL.txtと名付けられ、1,196バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本発明の態様は概して、療法のための合成ペプチドおよびその使用に関し、より具体的には、チェックポイント阻害剤に起因する毒性、特に腸管壊死または腸管損傷を防止、処置、および/または緩和し得る合成ペプチドの修飾に関する。
【0004】
補体系
自然免疫系の必須の成分である補体系は、侵入する病原体に対する防御機構として重要な役割を果たし、適応免疫応答を刺激し、免疫複合体およびアポトーシス細胞を除去するのを助ける。以下の3つの異なる経路が補体系を含む:古典的経路、レクチン経路、および代替経路。C1qおよびマンノース結合レクチン(MBL)は、それぞれ、古典的経路およびレクチン経路の構造的に関連した認識分子である。IgMまたはクラスター化IgGはC1qに対する主なリガンドとして働くが、MBLはマンナンなどの多糖を認識する。C1qおよびMBLによるリガンド結合はC4およびC2の連続的活性化をもたらして、それぞれ、古典的経路およびレクチン経路のC3コンバターゼを形成する。これに対して、代替経路の活性化は認識分子を必要としないが、古典的経路またはレクチン経路によって惹起されるC3活性化を増幅することができる。これらの3つの経路のいずれかの活性化は、炎症性メディエーター(C3aおよびC5a)ならびに細胞溶解を引き起こす膜攻撃複合体(MAC)の形成をもたらす。
【0005】
補体系は多くの保護的免疫機能で重要な役割を果たす一方で、補体活性化は、幅広い自己免疫性疾患および炎症性疾患のプロセスにおいて、組織損傷の重要なメディエーターである(Ricklin and Lambris, 「Complement-targeted therapeutics.」 Nat Biotechnol 2007; 25(11):1265-75)。
【0006】
補体調節因子が必要とされている。一方では、補体系は病原性生物に対するきわめて重要な宿主防御である。他方では、その抑制されていない活性化は壊滅的な宿主細胞損傷を引き起こし得る。現在、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、および多発性硬化症などの自己免疫疾患を含めた多くの疾患プロセスにおける補体調節不全と関連する公知の罹患率および死亡率にもかかわらず、ヒトにおける使用について以下の2つの抗補体療法しか最近承認されていない:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)および非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の処置で使用されているC5に対する2つのヒト化長時間作用型モノクローナル抗体である、(1)エクリズマブ(Soliris(商標))および(2)ユルトミリス(Ravulizumab(商標))。PNHおよびaHUSは、非常に少数の人だけが苦しんでいる奇病である。現在、調節不全になった補体活性化が中心的役割を果たすより一般的な疾患プロセスについて承認されている補体調節因子はない。調節不全になった補体活性化は、慢性疾患徴候と急性疾患徴候の両方で役割を果たし得る。
【0007】
補体系の古典的経路、レクチン経路、および代替経路を阻害するためのペプチドの開発が必要とされ、なぜならば、これらの3つの経路のそれぞれが、多数の自己免疫性疾患および炎症性疾患のプロセスに寄与することが示されているからである。古典的経路およびレクチン経路の特異的な遮断が特に必要とされ、なぜならば、これらの経路の両方が多くの動物モデルにおいて虚血再灌流誘導性傷害および他の疾患に関与しているからである。代替経路欠損を有するヒトは、重症の細菌感染症を患う。したがって、機能的代替経路が、侵入する病原体に対する免疫監視に必須である。
【0008】
PIC1分子ファミリー(本明細書において、EPICCファミリーまたはEPICCペプチドとも称される)は、スクランブルされたアストロウイルスコートタンパク質に基づいて合理的に設計されたペプチドのコレクションを含み、これは、補体の古典的経路の阻害、ミエロペルオキシダーゼ阻害、好中球細胞外トラップ(NET)阻害、および抗酸化活性を含めたいくつかの抗炎症性機能特性を有する。元の化合物は15アミノ酸ペプチド配列:
であり、その水溶解度を高める、C末端の単分散24merペグ化部分を有する
。PA-dPEG24は、古典的経路およびレクチン経路、ならびに好中球の主要なエフェクターであるミエロペルオキシダーゼ活性およびNETosisのペプチド阻害剤である[6~8]。SEQ ID NO:2のサルコシン置換スキャンによって、8位のイソロイシンのサルコシンとの置き換えにより、ペグ化なしで水溶性であるペプチド:
がもたらされることが明らかになった(米国特許第10,005,818号に記載される通り)。
【0009】
PA-dPEG24分子およびPA-I8Sar分子のさらなる特徴は、本明細書に記載される。
【0010】
チェックポイント治療薬および関連する毒性
腸壊死は、細菌敗血症および全身性炎症反応症候群(SIRS)含めた様々な原因から生じ得る、命に関わる可能性がある医学的状態である。腸壊死の病因としては、血管損傷、例えば、静脈血栓、慢性虚血、機械的閉塞、および非閉塞性腸間膜虚血[1]、ならびにクローン病および潰瘍性大腸炎を含む自己免疫性炎症性腸疾患、またはC.ディフィシル(C. difficile)大腸炎による有毒な巨大結腸をもたらし得る様々な疾患プロセスが挙げられる。さらに、重度の炎症反応による腸壊死は、癌チェックポイント阻害薬物と関連する、処置が制限される重度有害事象である[2]。
【0011】
腸壊死は、一般に、腸管腔を損ない、腸内細菌の遊出につながり、最終的に、腹膜および体循環への、細菌、毒素、および他の微生物産物を含む腸内容物の大規模な漏出につながる。このプロセスは、続いて、細菌性敗血症、低血圧、播種性血管内凝固、多臓器不全、およびしばしば死亡につながり得る。腸壊死の処置の一次治療介入には、腹膜および血流中の細菌性病原体を死滅させるための抗生物質が含まれる。エクリズマブなどの抗補体療法の使用は、対象を免疫無防備状態にする可能性があり、侵襲的な髄膜炎菌(N. meningitidis)感染の危険性を高める。さらに、持続的な好中球減少は、命に関わる細菌性敗血症の高い危険性と関連する。したがって、補体系および好中球エフェクター機能のモジュレーションは、腸壊死による手に負えない細菌感染の危険性を潜在的に悪化させることについての懸念がある。
【0012】
補体系の異なる経路のペプチドベースの阻害剤が当技術分野において必要である。チェックポイント阻害剤と関連する毒性副作用、特に、腸の壊死または損傷を防止、処置、および/または緩和するための治療用ペプチドも当技術分野において必要である。
【発明の概要】
【0013】
発明の簡単な概要
背景セクションで明記したように、補体系の異なる経路のペプチドベースの阻害剤のための技術を特定すること、および新規な治療用ペプチドを開発するためにこの知識を使用することが当技術分野において大いに必要である。本発明は、この必要性および他の必要性を満たす。本発明の態様は概して、合成ペプチド、より具体的にはペグ化されているか、またはサルコシン置換を含む合成ペプチド、ならびに補体系を調節する方法、およびチェックポイント治療薬と関連する毒性副作用、特に、腸の壊死または損傷を防止、処置、および/または緩和する方法におけるそれらの使用に関する。
【0014】
一局面では、本発明は、補体系を調節する合成ペプチドおよびこれらのペプチドの使用方法を提供する。特に、いくつかの態様では、合成ペプチドは、C1およびMBLに結合し、C1およびMBLを調節し、C1およびMBLを不活性化することができ、したがって、代替経路をインタクトなままにしながら、補体カスケードのその最も初期の時点で古典的経路およびレクチン経路の活性化を効率的に阻害することができる。これらのペプチドは、代替経路に影響を及ぼすことなくC1およびMBLの活性化を選択的に調節および阻害するために治療的価値があり、古典的経路およびレクチン経路の調節不全になった活性化によって媒介される疾患を処置するために使用することができる。他の態様では、本ペプチドは、古典的経路の活性化を調節するが、レクチン経路の活性化は調節しない。本ペプチドは、様々な治療的適応症に有用である。
【0015】
任意の態様では、合成ペプチドは、チェックポイント阻害剤の毒性副作用を防止、処置、および/または緩和することができる。
【0016】
任意の態様では、合成ペプチドは、腸の壊死および/または損傷、例えば、重度の炎症反応、腸梗塞(すなわち、腸組織の虚血再灌流障害)、自己免疫性炎症性腸疾患(IBD)、および関連する療法によって生じる壊死または損傷、ならびに化学療法誘導性または毒素誘導性腸壊死を、防止、処置、ならびに/または緩和することができる。
【0017】
任意の態様では、本発明は、極性アソータント(Polar Assortant)(PA)ペプチド(SEQ ID NO:1)からの15アミノ酸のペプチドの特定および修飾、本ペプチドの誘導体、ならびにそれらの使用方法に基づく。PAペプチドは、CP1と呼ばれる、ヒトアストロウイルスタンパク質に由来するスクランブルペプチドである。PAペプチドは、PIC1(補体C1のペプチド阻害剤)、AstroFend、AF、またはSEQ ID NO:1としても公知である。PIC1ペプチドは、補体系が介在する疾患と関連することが見出されたので、最初にそのように名付けられた。PA-dPEG24またはRLS-0071(SEQ ID NO:2)と呼ばれる、ペグ化形態のPIC1ペプチドは、本ペプチドのC末端に24個のPEG単位を有し、水溶液中の溶解度が向上していることが示された。SEQ ID NO:2のサルコシン置換スキャンによって、8位のイソロイシンのサルコシンとの置き換えにより、ペグ化なしで水溶性であるペプチド:
がもたらされることが明らかになった(米国特許第10,005,818号に記載される通り)。
【0018】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、チェックポイント阻害剤の毒性副作用を防止、処置、および/または緩和する方法を提供する。
【0019】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、腸の壊死および/または損傷、例えば、重度の炎症反応、腸梗塞(すなわち、腸組織の虚血再灌流障害)、自己免疫性炎症性腸疾患(IBD)、および関連する療法によって生じる壊死または損傷、ならびに化学療法誘導性または毒素誘導性腸壊死を、防止、処置、ならびに/または緩和する方法を提供する。
【0020】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤で処置を受けている、処置されたことがある、および/または処置されるであろう対象において、腸の壊死および/または損傷を防止、処置、および/または緩和する方法を提供する。
【0021】
前述の方法のいずれかの一態様では、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、安定化剤、または賦形剤をさらに含む。前述の方法のいずれかの一態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約10mg/kg~約160mg/kgである。前述の方法のいずれかの一態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約20mg/kg~約160mg/kgである。前述の方法のいずれかの一態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約40mg/kg~約160mg/kgである。任意の態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、少なくとも1つの用量で投与され、第1の用量は、約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む。任意の態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む第2の用量が投与され、第2の用量は、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約10mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む。任意の態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、2つの用量で投与され、第1の用量は、約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2、例えば、約10mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含み、第2の用量は、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約1mg/kg~約40mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む。任意の態様では、第2の用量は、第1の用量が投与されてから30秒~10時間後、例えば、第1の用量の投与から約8時間後に投与される。任意の態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約1週間~約2週間の期間にわたって複数回用量で投与され、各用量は、約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含み、4~10時間ごと、例えば、約8時間ごとに投与される。
【0022】
任意の態様では、約10mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約10mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3の、少なくとも1つの負荷用量が投与され、それに続いて、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約1mg/kg~約40mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3の、少なくとも1つの維持用量が投与される。任意の態様では、第1の維持用量は、最後の負荷用量から4~10時間後に投与される。任意の態様では、維持用量は、約1週間~約2週間の期間にわたって、4~10時間ごとに投与される。任意の態様では、第1の維持用量は、最後の負荷用量から8時間後に投与され、維持用量は、約1週間~約2週間の期間にわたって、8時間ごとに投与される。
【0023】
前述の方法のいずれかの任意の態様では、組成物は、皮下、静脈内、腹腔内、または筋肉内投与のために製剤化される。一態様では、組成物は、薬学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む。
【0024】
本発明のこれらのおよび他の目的、特徴、および利点は、添付の説明、特許請求の範囲、および図面とともに以下の明細書を読めば、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図は、以下に記載のいくつかの局面を図示する。本特許または出願ファイルは、カラーで製作された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を含む本特許または特許出願公開のコピーは、要請および必要な料金の支払いに応じて、当局によって提供されるであろう。
【
図1】
図1は、PA-dPEG24(本明細書において、RLS-0071とも称される)が、盲腸結紮後のラットの生存を増加させることを示す。カプラン・マイヤー生存曲線評価。赤色の線は、処置を受けていない動物(n=6)における75%CLP後の転帰を示し、一方で、赤色の曲線は、動物が単回用量の40mg/kgのRLS-0071を受けた後の転帰を表す(n=9)。
【
図2】
図2は、RLS-0071が血液中の遊離DNAレベルを低減させることを示す。手術前(前採血)(n=7)に、および手術の24時間後に、単回用量のRLS-0071の投与あり(n=4)およびなし(n=3)でCLPに供した動物から血漿を単離した。血漿試料をPicoGreenとともにインキュベートした。マイクロプレートリーダーにおいて、485nmの励起波長および520nmの発光波長で蛍光を読み取った。データは、平均値および平均値の標準誤差である。
【
図3】
図3は、RLS-0071が血液中のIL-6レベルを低減させることを示す。手術前(前採血)(n=8)に、および手術の24時間後に、単回用量のRLS-0071の投与あり(n=3)およびなし(n=5)でCLPに供した動物から血漿を単離した。製造者の指示書に従って、IL-6 ELISAで血漿試料を解析した。データは、平均値および平均値の標準誤差である。
【
図4】
図4は、カプラン・マイヤー生存曲線評価によって、複数回用量投与のRLS-0071が盲腸結紮後のラットの生存を増加させることを示す。黒色の線は、処置を受けていない動物(n=12)における75%CLP後の転帰を示し、一方で、緑色の線は、手術の0.5、24、28、および72時間後に40mg/kgのRLS-0071の投薬を動物が受けた後の転帰を表す(n=12)。
【
図5】
図5は、カプラン・マイヤー生存曲線評価によって、複数回用量投与のRLS-0088が盲腸結紮後のラットの生存を増加させることを示す。赤色の線は、食塩水のみを受けている動物(n=3)における75%CLP後の転帰を示し、一方で、緑色の線は、手術の0.5、24、28、および72時間後に40mg/kgの用量のRLS-0071を動物が受けた後の転帰を表す(n=5)。SID=1日1回の投薬。
【発明を実施するための形態】
【0026】
発明の詳細な説明
背景セクションで明記したように、補体系の異なる経路のペプチドベースの阻害剤のための技術を特定すること、および新規な治療用ペプチドを開発するためにこの知識を使用することが当技術分野において大いに必要である。本発明は、この必要性および他の必要性を満たす。本発明の態様は概して、合成ペプチド、より具体的にはペグ化されているか、またはサルコシン置換を含む合成ペプチド、および補体系を調節し、かつチェックポイント治療薬と関連する毒性副作用、特に、腸の壊死または損傷を緩和する方法におけるそれらの使用に関する。
【0027】
本発明の様々な態様の原理および特色を理解しやすくするために、様々な例示となる態様を以下で説明する。本発明の例示的な態様を詳細に説明するが、他の態様が企図されることを理解されたい。したがって、本発明が以下の説明または例で記載される成分の構成および配置の詳細にその範囲が限定されることは意図されない。本発明は、他の態様が可能であり、様々な方法で実施または実行することができる。さらに、例示的な態様の説明において、明確さのために特定の術語を用いる。
【0028】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において別段明記しない限り、複数形の言及を含むことにも留意しなければならない。例えば、1つの成分への言及は、複数の成分の組成物を含むことも意図される。「1つの(a)」構成成分を含む組成物への言及は、指定されたものに加えて、他の構成成分を含むことが意図される。換言すれば、用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、分量の限定を表すのではなく、言及された項目の「少なくとも1つ」の存在を表す。
【0029】
本明細書において使用する場合、用語「および/または」は、「および」を意味することができ、「または」を意味することができ、「排他的なまたは」を意味することができ、「1つ」を意味することができ、「すべてではないがいくつか」を意味することができ、「どちらも~でない」意味することができ、かつ/またはこれは「両方」を意味することができる。用語「または」は、包括的「または」を意味することが意図される。
【0030】
さらに、例示的な態様の説明において、明確さのために術語を用いる。各用語は、当業者によって理解されるその最も広い意味を企図し、同様の目的を達成するために同様な方法で作動するすべての技術的均等物を含むことが意図される。開示される技術の態様は、これらの具体的な詳細なしで実施することができることを理解されたい。他の場合では、この説明の理解を不明瞭にしないために、周知の方法、構造、および技法は詳細に示されていない。「一態様(one embodiment)」、「ある態様」、「実例態様」、「いくつかの態様」、「ある特定の態様」、「様々な態様」などへの言及は、そのように記載された開示される技術の態様が、特定の特色、構造、または特徴を含むことができるが、すべての態様が特定の特色、構造、または特徴を必ずしも含むとは限らないことを示す。さらに、フレーズ「一態様では」の反復使用は、必ずしも同じ態様を指すとは限らないが、その可能性もある。
【0031】
本明細書において使用する場合、用語「約」は、任意の範囲の終点として指定された数の両方を指すと解釈されるべきである。範囲へのいかなる言及も範囲内の任意のサブセットを支持するとして考慮されるべきである。範囲は、本明細書において、「約」もしくは「およそ」もしくは「実質的に」ある特定の値から、および/または「約」もしくは「およそ」もしくは「実質的に」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、他の例示的な態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。さらに、用語「約」は、当業者によって決定された特定の値に対して許容誤差範囲内であることを意味し、これは、どのように値が測定または決定されるか、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存すると考えられる。例えば、「約」は、当技術分野における慣例に従って、許容される標準偏差以内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の±20%まで、好ましくは±10%まで、より好ましくは±5%まで、より好ましくはさらに±1%までの範囲を意味し得る。あるいは、特に生物的システムまたはプロセスについて、本用語は、値の1桁以内、好ましくは2倍以内を意味し得る。本出願および特許請求の範囲で特定の値が記載されている場合、別段の記載がない限り、用語「約」は暗黙的であり、この文脈において、特定の値に対して許容誤差範囲内であることを意味する。
【0032】
本開示の全体を通して、本発明の様々な局面が範囲型式で提示され得る。範囲型式での説明は単に便宜および簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきでないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、範囲内のすべての可能性のある部分範囲および個々の数値を具体的に開示したと考慮されるべきである。例えば、1~6のような範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、ならびに範囲内の個々の数、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6を具体的に開示したと考慮されるべきである。これは、範囲の幅にかかわらず適用される。
【0033】
同様に、本明細書において使用する場合、何かが「実質的にない」または「実質的に純粋である」などの特徴づけは、何かが「少なくとも実質的にない」または「少なくとも実質的に純粋である」ことと何かが「完全にない」または「完全に純粋である」ことの両方を含むことができる。
【0034】
「含む(comprising)」または「含む(containing)」または「含む(including)」は、少なくとも指定された化合物、要素、粒子、または方法工程が組成物または物品または方法中に存在することを意味し、他の化合物、材料、粒子、方法工程の存在を除外せず、これは、他のそのような化合物、材料、粒子、方法工程が指定されたものと同じ機能を有する場合でさえもである。
【0035】
本説明の全体を通して、特定の値またはパラメーターを有する様々な成分が特定され得るが、これらの項目は例示的な態様として提供される。実際に、例示的な態様は、多くの匹敵するパラメーター、サイズ、範囲、および/または値が実施され得るので、本発明の様々な局面および概念を限定しない。用語「第1の」、「第2の」など、「一次の」、「二次の」などは任意の順序、分量、または重要性を表すのではなく、むしろ、ある要素を別の要素と区別するために使用される。
【0036】
「特に」、「好ましくは」、「典型的には」、「概して」、および「しばしば」のような用語は、主張される発明の範囲を限定するためには、またはある特定の特色が、主張される発明の構造または機能にとって決定的である、必須である、またはさらに重要であることを暗示すためには、本明細書において利用されないことに留意されたい。むしろ、これらの用語は、本発明の特定の態様で利用することができるかまたはできない代替のまたはさらなる特色を単に強調することが意図される。「実質的に」および「約」のような用語は、任意の定量的比較、値、測定、または他の表現に起因し得る不確実性の固有の程度を示すために本明細書において利用されることにも留意されたい。
【0037】
本明細書において開示される寸法および値は、列挙される正確な数値に厳密に限定されると理解されるべきでない。代わりに、別段の指定がない限り、そのような各寸法は、列挙される値とその値の周囲の機能的に同等な範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「50mm」と開示される寸法は、「約50mm」を意味することが意図される。
【0038】
1つまたは複数の方法工程の言及は、明白に特定されるそれらの工程の間のさらなる方法工程または介在する方法工程の存在を妨げないことも理解されたい。同様に、組成物中の1つまたは複数の成分の言及は、明白に特定されるもの以外のさらなる成分の存在を妨げないことも理解されたい。
【0039】
本発明の様々な要素を構成するものとして以下に記載される材料は、例示的であり、限定的でないことが意図される。本明細書に記載される材料と同じまたは同様の機能を果たすであろう多くの適切な材料は、本発明の範囲内に包含されることが意図される。本明細書に記載されていないそのような他の材料としては、限定されないが、例えば、本発明の開発時後に開発された材料を挙げることができる。様々な図面に列挙されるいかなる寸法も例示目的のためのみであり、限定を意図したものではない。他の寸法および比率が企図され、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0040】
本明細書において使用する場合、用語「対象」または「患者」は、哺乳動物を指し、非限定的に、ヒトおよび家畜(veterinary)動物を含む。好ましい態様では、対象はヒトである。
【0041】
本明細書において使用する場合、主張される発明による合成ペプチドと少なくとも1つの第2の薬学的活性成分の「組み合わせ」という用語は、化合物の少なくとも2つの、しかし任意の望ましい組み合わせが、同時にまたは連続して(例えば、24時間以内に)送達されることを意味する。様々な疾患を処置するために使用される場合に、本発明の組成物および方法は、同じまたは同様の疾患に適した他の治療的方法/剤とともに利用可能であることが企図される。そのような他の治療的方法/剤は、相加的または相乗的効果を引き起こすために、(同時にまたは連続して)共投与することができる。相加作用または相乗作用の理由から、各剤についての適切な治療的に有効な投薬量を下げることができる。
【0042】
「疾患」は、対象が恒常性を維持することができず、疾患が改善しない場合、対象の健康が悪化し続ける、対象の健康状況である。これに対して、対象の「障害」は、対象が恒常性を維持することができるが、対象の健康状況が障害がない場合よりも好ましくない健康状況である。未処置のままでも、障害は、対象の健康状況のさらなる低下を引き起こすとは限らない。
【0043】
状況、障害、もしくは状態を「処置する」または状況、障害、もしくは状態の「処置」という用語は、以下を含む:(1)状況、障害、もしくは状態に罹患しているか、またはそれらに罹りやすい可能性があるが、状況、障害、または状態の臨床的または準臨床的症状をまだ経験しておらず、呈してもいない対象で発生している状況、障害、または状態の少なくとも1つの臨床的または準臨床的症状の出現を防止するかまたは遅延させること;あるいは(2)状況、障害、または状態を阻害すること、すなわち、疾患の発生もしくはその再発(維持処置の場合)またはその少なくとも1つの臨床的もしくは準臨床的症状を停止させる、低減させる、または遅延させること;あるいは(3)疾患を軽減すること、すなわち、状況、障害、もしくは状態、またはその臨床的もしくは準臨床的症状の少なくとも1つの退行を引き起こすこと。処置される対象への恩恵は、統計学的に有意であるか、または患者もしくは医師に少なくとも認知されるかのいずれかである。
【0044】
本明細書において使用する場合、用語「治療的」は、処置および/または予防を意味する。治療効果は、疾患状況の抑制、縮小、寛解、または根絶によって得られる。
【0045】
本明細書において使用する場合、用量または量に適用される用語「治療的に有効な」は、状況、障害、または状態を処置する(例えば、防止するまたは改善する)ために対象に投与される場合に、そのような処置をもたらすのに十分である、化合物または薬学的組成物の分量を指す。「治療的に有効な量」は、投与される化合物または細菌または類似体、ならびに疾患およびその重症度ならびに治療される哺乳動物の年齢、体重、体調、および応答性に応じて変動すると考えられる。
【0046】
本発明の組成物に関連して使用する場合、フレーズ「薬学的に許容される」は、生理的に忍容可能であり、典型的には、哺乳動物(例えばヒト)に投与される場合に有害な反応をもたらさない、そのような組成物の分子実体および他の成分を指す。好ましくは、本明細書において使用する場合、用語「薬学的に許容される」は、哺乳動物、より詳細にはヒトでの使用について、連邦もしくは州政府の規制当局に承認されていること、または米国薬局方もしくは他の一般に認められる薬局方に収載されていることを意味する。
【0047】
用語「薬学的担体」または「薬学的に許容される担体」は、化合物が一緒に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビヒクルを指す。そのような薬学的担体は、無菌の液体、例えば、水および油、例えば、石油、動物、野菜、または合成起源のもの、例えば、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油などであってもよい。水または水溶液食塩水および水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、特に注射用溶液のために、担体として好ましくは用いられる。あるいは、薬学的担体は、限定されないが、結合剤(圧縮丸剤用)、流動促進剤、カプセル化剤、風味剤、および着色剤の1つまたは複数を含めた、固形剤形の担体であってもよい。適切な薬学的担体”、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0048】
用語「類似体」または「機能的類似体」は、該類似体がインビボおよび/またはインビトロで非修飾形態と実質的に同じ生物活性を保持するように少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、または付加が行われた、ポリペプチドの関連した修飾形態を指す。
【0049】
用語「配列同一性」と「同一性パーセント」は、本明細書において互換的に使用される。本発明において、2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性パーセントを決定するために、最適な比較目的のために配列を整列させる(例えば、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適な整列化のために、第1のアミノ酸または核酸の配列中にギャップを導入することができる)ことが本明細書において定義される。対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチド残基を次いで比較する。第1の配列中のある位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチド残基で占められる場合、分子はその位置で同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、これらの配列に共通である同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一の位置の数/位置の総数(すなわち、重複する位置)×100)である。好ましくは、2つの配列は同じ長さである。
【0050】
2つの配列の間の同一性度を決定するために、いくつかの異なるコンピュータープログラムが利用可能である。例えば、2つの配列の間の配列の比較および同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。好ましい態様では、2つのアミノ酸配列または核酸配列の間の同一性パーセントは、Accelrys GCGソフトウェアパッケージ(www.accelrys.com/products/gcgで入手可能)のGAPプログラムに組み込まれているNeedleman and Wunsch(J. Mol. Biol. (48): 444-453 (1970))のアルゴリズムを使用して、Blosum 62行列またはPAM250行列のいずれか、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップの重み(gap weight)、および1、2、3、4、5、または6の長さの重み(length weight)を使用して、決定される。これらの異なるパラメーターは、わずかに異なる結果をもたらすと考えられるが、異なるアルゴリズムを使用した場合に2つの配列の全体の同一性パーセンテージが大きく変わるわけではない。
【0051】
配列比較は、比較される2つの配列の全長にわたって、または2つの配列の断片にわたって行うことができる。典型的には、比較は、比較される2つの配列の完全長にわたって行われると考えられる。しかし、配列同一性は、例えば、20個、50個、100個、またはそれ以上の連続したアミノ酸残基の領域にわたって行うことができる。
【0052】
当技術分野において公知である「配列同一性」は、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列、すなわち、参照配列と、参照配列と比較される所与の配列との間の関係性を指す。配列同一性は、そのような配列のストリング間のマッチによって決定される場合に最高度の配列類似性をもたらすように配列を最適に整列させた後に、所与の配列を参照配列と比較することによって決定される。そのような整列化の際に、配列同一性は位置ごとに確認され、例えば、配列は、ある特定の位置でヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一である場合、その位置で「同一」である。次いで、そのような位置が同一であるものの総数を参照配列中のヌクレオチドまたは残基の総数で割ることによって、配列同一性%が得られる。配列同一性は、限定されないが、その教示が参照により本明細書に組み入れられる、Computational Molecular Biology, Lesk, A. N., ed., Oxford University Press, New York (1988), Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W., ed., Academic Press, New York (1993); Computer Analysis of Sequence Data, Part I, Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey (1994); Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinge, G., Academic Press (1987); Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M. Stockton Press, New York (1991);およびCarillo, H., and Lipman, D., SIAM J. Applied Math., 48: 1073 (1988)に記載されているものを含めて、公知の方法によって、容易に計算することができる。配列同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間で最大のマッチを得るように設計される。配列同一性を決定するための方法は、所与の配列間の配列同一性を決定する公的に利用可能なコンピュータープログラム中に体系化されている。そのようなプログラムの例としては、限定されないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J., et al., Nucleic Acids Research, 12(1):387 (1984))、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990)が挙げられる。BLASTXプログラムは、NCBIおよび他の供給源から公的に利用可能である(その教示が参照により本明細書に組み入れられる、BLAST Manual, Altschul, S. et al., NCVI NLM NIH Bethesda, Md. 20894, Altschul, S. F. et al., J. Molec. Biol., 215:403-410 (1990))。これらのプログラムは、所与の配列と参照配列との間で最高レベルの配列同一性をもたらすために、デフォルトのギャップの重みを使用して配列を最適に整列させる。1つの例示として、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも、例えば95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、99%、または100%の「配列同一性」を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドによって、所与のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、所与のポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、1個まで、または0個までの点変異を含むことができることを除いて、参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにおいて、参照配列のヌクレオチドの5%まで、4%まで、3%まで、2%まで、1%まで、もしくは0%までを欠失させることができ、別のヌクレオチドで置換することができ、あるいは参照配列の全ヌクレオチドの5%まで、4%まで、3%まで、2%まで、1%まで、もしくは0%までの数のヌクレオチドを参照配列中に挿入することができる。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’または3’末端の位置で、あるいは参照配列中のヌクレオチドの間に個々にかまたは参照配列内の1つもしくは複数の連続した群でかのいずれかで分散して、これらの末端位置の間の任意の場所で生じ得る。類似して、参照アミノ酸配列に対して少なくとも、例えば、95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する所与のアミノ酸配列を有するポリペプチドによって、ポリペプチドの所与のアミノ酸配列は、所与のポリペプチド配列が、参照アミノ酸配列の各100アミノ酸あたり5個まで、4個まで、3個まで、2個まで、1個まで、または0個までのアミノ酸の変化を含むことができることを除いて、参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する所与のポリペプチド配列を得るために、参照配列のアミノ酸残基の5%まで、4%まで、3%まで、2%まで、1%まで、もしくは0%までを欠失させることができ、または別のアミノ酸で置換することができ、あるいは参照配列のアミノ酸残基の総数の5%まで、4%まで、3%まで、2%まで、1%まで、または0%までの数のアミノ酸を参照配列中に挿入することができる。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノまたはカルボキシ末端の位置で、あるいは参照配列中の残基の間に個々にかまたは参照配列内の1つもしくは複数の連続した群でかのいずれかで分散して、これらの末端位置の間の任意の場所で生じ得る。好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。しかし、配列同一性を決定する場合、保存的置換はマッチとしては含まれない。
【0053】
本明細書において使用する場合、用語「免疫応答」は、自然免疫応答、T細胞媒介性免疫応答、および/またはB細胞媒介性免疫応答を含む。例示的な免疫応答としては、T細胞応答、例えば、サイトカイン産生および細胞傷害性、ならびにB細胞応答、例えば、抗体産生が挙げられる。さらに、用語「免疫応答」は、T細胞活性化の影響を間接的に受ける免疫応答、例えば、抗体産生(体液性応答)およびサイトカイン応答性細胞、例えば、マクロファージの活性化を含む。免疫応答に関与する免疫細胞としては、リンパ球、例えばB細胞およびT細胞(CD4+、CD8+、Th1およびTh2細胞);抗原提示細胞(例えば、プロフェッショナル抗原提示細胞、例えば、樹状細胞、マクロファージ、Bリンパ球、ランゲルハンス細胞、およびノンプロフェッショナル抗原提示細胞、例えば、ケラチノサイト、内皮細胞、星状細胞、線維芽細胞、乏突起膠細胞);ナチュラルキラー細胞;骨髄系細胞、例えば、マクロファージ、好酸球、肥満細胞、好塩基球、および顆粒球(例えば、好中球)が挙げられる。
【0054】
免疫原性組成物の「非経口」投与としては、例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、腹腔内(i.p.)、または皮内(i.d.)注射または注入技法が挙げられる。
【0055】
医学の分野では、用語「防止する」は、疾患による死亡率または罹患率の負荷を低減させる任意の活性を包含する。防止は、一次、二次、および三次防止レベルで生じ得る。一次防止は疾患の発生を回避するが、二次および三次レベルの防止は、疾患の進行および症状の出現を防止すること、ならびに機能を取り戻すことおよび疾患関連合併症を低減させることによって、既に確立された疾患の負の影響を低減させることを目的とした活性を包含する。
【0056】
本発明によるポリペプチドの「変異体」は、(i)アミノ酸残基の1つまたは複数が保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは、保存的アミノ酸残基)で置換されており、そのような置換アミノ酸残基が遺伝暗号にコードされているものでもよいし、またはコードされていないものでもよいもの、(ii)1つまたは複数の修飾アミノ酸残基、例えば、置換基の付着によって修飾されている残基が存在するもの、(iii)ポリペプチドが本発明のポリペプチドの選択的スプライシング変異体であるもの、(iv)ポリペプチドの断片、および/あるいは(v)ポリペプチドが別のポリペプチド、例えば、リーダー配列もしくは分泌配列、または精製のために用いられる配列(例えば、Hisタグ)もしくは検出のために用いられる配列(例えば、Sv5エピトープタグ)と融合しているものであってもよい。断片は、元の配列のタンパク質分解性切断(多部位タンパク質分解を含める)を介して生成されたポリペプチドを含む。変異体は、翻訳後または化学的に修飾されていてもよい。そのような変異体は、本明細書における教示から、当業者の範囲内であるとみなされる。
【0057】
本発明の意味の範囲内で、用語「共投与」は、本発明による組成物と別の治療剤を1つの組成物中で同時に、または異なる組成物中で同時に、または連続して(好ましくは、24時間以内に)投与することを指すために使用される。
【0058】
本発明によれば、当技術分野の範囲内の従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技法を用いることができる。そのような技法は、文献で十分に説明されている。数ある中でも、例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York(本明細書では「Sambrook et al., 1989」); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D.N. Glover ed. 1985); Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984); Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1985); Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984); Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1986); Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, (1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); F.M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994)を参照されたい。
【0059】
本発明のペプチド組成物
CP1のアミノ酸構造の修飾は、C1q活性などの補体活性化を調節することができるさらなるペプチドの発見につながった。ペグ化などの修飾が、古典的補体経路の活性化/阻害、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)阻害、抗酸化活性、およびNET活性の阻害のインビトロアッセイにおいて、親分子
と比較して、ペプチドの溶解度および生物活性の強力な阻害を増強することが以前に示された。C末端の単分散24merペグ化部分を有するペプチドは、非常に可溶性であり、補体系の強い阻害を有することが見出された
。SEQ ID NO:2のサルコシン置換スキャンによって、8位のイソロイシンのサルコシンとの置き換えにより、ペグ化なしで水溶性であるペプチド:
がもたらされることが明らかになった(米国特許第10,005,818号に記載される通り)。
【0060】
本明細書において使用する場合、用語「ペプチド」は、天然に存在し得るアミノ酸配列、またはペプチド模倣物、ペプチド類似体、および/もしくはSEQ ID NO:2および/もしくは3に基づく約15アミノ酸の合成誘導体(例えば、限定されないが、ペグ化ペプチドが挙げられる)を指す。さらに、ペプチドは、約15アミノ酸残基未満、例えば、約10~約15アミノ酸残基であってもよく、例えば、約5~約10アミノ酸残基のペプチドであってもよい。例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、および15アミノ酸のペプチド残基は、同様に本発明の文脈内のペプチドである可能性がある。ペプチドはまた、15アミノ酸を超えてもよく、例えば、16、17、18、19、および20、またはそれ以上のアミノ酸などであってもよい。
【0061】
開示されるペプチドは、概して、約15アミノ酸残基を越える、約15アミノ酸残基の、または約15アミノ酸残基未満の、拘束されている(すなわち、例えば、βターンもしくはβプリーツシートを開始するアミノ酸の存在のような構造のある種の要素を有する、または例えば、ジスルフィド結合したCys残基の存在によって環化されている)、あるいは拘束されていない(すなわち、直鎖状)のアミノ酸配列である。
【0062】
ペプチド配列内のアミノ酸に対する置換物は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーより選択することができる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。芳香環構造を含むアミノ酸としては、フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。極性の中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニンおよびリジンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。例えば、配列内の1つまたは複数のアミノ酸残基を機能的同等物として作用する同様の極性の別のアミノ酸で置換することができ、これにより、サイレントな変化がもたらされる。
【0063】
保存的変化は、一般に、得られたタンパク質の構造および機能の変化にあまりつながらない。非保存的な変化は、得られたタンパク質の構造、活性、または機能を変化させる可能性が高い。例えば、本開示のペプチドは、以下の保存的アミノ酸置換の1つまたは複数を含む:脂肪族アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンの別の脂肪族アミノ酸との置き換え;セリンのスレオニンとの置き換え;スレオニンのセリンとの置き換え;酸性残基、例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸の別の酸性残基との置き換え;アミド基を有する残基、例えば、アスパラギンおよびグルタミンのアミド基を有する別の残基との置き換え;塩基性残基、例えば、リジンおよびアルギニンの別の塩基性残基との交換;ならびに芳香族残基、例えば、フェニルアラニンおよびチロシンの別の芳香族残基との置き換え。
【0064】
特に好ましいアミノ酸置換としては以下が挙げられる:
(a)負電荷が低減し得るような、Gluに対するAlaまたはその逆;
(b)正電荷が維持され得るような、Argに対するLysまたはその逆;
(c)正電荷が低減し得るような、Argに対するAlaまたはその逆;
(d)負電荷が維持され得るような、Aspに対するGluまたはその逆;
(e)遊離-OHを維持することができるような、Thrに対するSerまたはその逆;
(f)遊離NH2を維持することができるような、Asnに対するGlnまたはその逆;
(g)おおよそ同等の疎水性アミノ酸としての、LeuもしくはValに対するIleまたはその逆;
(h)おおよそ同等の芳香族アミノ酸としての、Tyrに対するPheまたはその逆;および
(i)ジスルフィド結合が影響を受けるような、Cysに対するAlaまたはその逆。
【0065】
ペプチド配列内のアミノ酸に対する置換物は、限定されないが、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、ピロリジン(pyrolysine)、セレノシステイン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、N-ホルミル-L-メチオニン、サルコシン、または他のN‐メチル化アミノ酸を含めた任意のアミノ酸より選択することができる。いくつかの態様では、サルコシンがペプチド配列内のアミノ酸と置換される。
【0066】
一態様では、本発明は、ヒトアストロウイルス(human astrovirus)コートタンパク質に由来する合成ペプチドを開示し、本ペプチドは、SEQ ID NO:2および/または3のアミノ酸配列および修飾を含む。
【0067】
【0068】
他の態様では、合成ペプチドは、限定されないが、急性肺傷害(ALI)のモデルを含めて、サイトカインの発現を変化させることができる。いくつかの態様では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、サイトカインの発現を変化させる方法を提供する。
【0069】
他の態様では、合成ペプチドは、好中球の結合および/または接着を阻害するかまたは変化させることができる。いくつかの態様では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、好中球の結合および/または接着を阻害するかまたは変化させる方法を提供する。
【0070】
他の態様では、合成ペプチドは、好中球の生存を向上させることができる。いくつかの態様では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、好中球の生存を向上させる方法を提供する。
【0071】
他の態様では、合成ペプチドは、インビボで、例えば、限定されないが、インテグリンおよび/またはICAMなどの細胞表面受容体に結合することができる。いくつかの態様では、方法は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、細胞表面受容体への好中球の結合を阻害するかまたは変化させる方法を提供する。
【0072】
開示されるペプチドは、代替経路活性に影響を及ぼすことなく、C1qおよびMBLの活性化を選択的に調節することができ、したがって、古典的経路およびレクチン経路の調節不全になった活性化によって媒介される疾患の防止および処置に理想的である。古典的経路およびレクチン経路の特異的な遮断は、多くの動物モデルにおいてこれらの経路の両方が虚血再灌流誘導性傷害に関与しているので、特に必要とされる[Castellano et al., “Therapeutic targeting of classical and lectin pathways of complement protects from ischemia-reperfusion-induced renal damage.” Am J Pathol. 2010; 176(4):1648-59; Lee et al., “Early complement factors in the local tissue immunocomplex generated during intestinal ischemia/reperfusion injury.” Mol. Immunol. 2010 February; 47(5):972-81; Tjernberg, et al., “Acute antibody-mediated complement activation mediates lysis of pancreatic islets cells and may cause tissue loss in clinical islet transplantation.” Transplantation. 2008 Apr. 27; 85(8):1193-9; Zhang et al. “The role of natural IgM in myocardial ischemia-reperfusion injury.” J Mol Cell Cardiol. 2006 July; 41(1):62-7)。代替経路は侵入する病原体に対する免疫監視に必須であり、代替経路が欠損したヒトは重症の細菌感染症を患う。C1qおよびMBLに結合し、これらを不活性化することによって、本ペプチドは、代替経路をインタクトなままにしながら、古典的経路およびレクチン経路の活性化を効率的に調節することができる。
【0073】
本明細書において使用する場合、用語「調節する」は、(i)酵素、タンパク質、ペプチド、因子、副生成物、もしくはそれらの誘導体の生物学的機能を個々にかもしくは複合体かのいずれかで、制御する、低減させる、阻害する、もしくは調節すること;(ii)インビボもしくはインビトロのいずれかで、生物学的タンパク質、ペプチド、もしくはそれらの誘導体の分量を低減させること;または(iii)関連した一連の生物学的反応もしくは化学反応を含むことが公知である事象、カスケード、もしくは経路の生物学的連鎖を遮ることを指す。したがって、用語「調節する」は、例えば、対照試料と比較して補体カスケードの単一成分の分量を低減させ、成分もしくは成分の複合体の形成の速度もしくは総量を低減させ、または複雑なプロセスもしくは一連の生物学的反応の全体的な活性を低減させ、細胞溶解、コンバターゼ酵素の形成、補体由来の膜攻撃複合体の形成、炎症、または炎症性疾患などの結果につながることを説明するために使用することができる。インビトロアッセイでは、用語「調節する」は、ある種の生物学的または化学的事象の測定可能な変化または低減を指すことができるが、当業者は、測定可能な変化または低減が、「調節性」であるために絶対的である必要はないことを認識するであろう。
【0074】
任意の態様では、本発明は、補体系を調節する効果、ならびにチェックポイント阻害剤の毒性副作用、例えば、腸の壊死または損傷を防止、処置、および/または緩和する効果を有する治療的に活性なペプチドに関する。
【0075】
任意の態様では、本発明は、腸の壊死または損傷、例えば、重度の炎症反応、腸梗塞(すなわち、腸組織の虚血再灌流障害)、自己免疫性炎症性腸疾患(IBD、)および関連する療法によって生じる壊死または損傷、ならびに化学療法誘導性または毒素誘導性腸壊死を防止、処置、ならびに/または緩和する効果を有する治療的に活性なペプチドに関する。
【0076】
本発明の薬学的組成物
本開示は、上述した少なくとも1つのペプチド、および少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、安定化剤、または賦形剤を含む、補体系を調節することができる薬学的組成物を提供する。薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる投薬量および濃度で受容者に対して毒性を持たないものである。これらは、固体、半固体、または液体であってもよい。本発明の薬学的組成物は、錠剤、丸剤、粉末剤、ロゼンジ剤、サッシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、溶液、またはシロップの形態であってもよい。
【0077】
本発明の薬学的組成物は、適切な純度を有するペプチドを薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と混合することによって調製される。製剤およびそのような製剤を調製するための方法の例は、当技術分野において周知である。本発明の薬学的組成物は、上記のような様々な障害および疾患のための予防剤および治療剤として有用である。一態様では、組成物は、ペプチドの治療的に有効な量を含む。別の態様では、組成物は、補体系を調節するのに有効な少なくとも1つの他の活性成分を含む。別の態様では、組成物は、補体系と関連する少なくとも1つの疾患を処置するのに有効な少なくとも1つの他の活性成分を含む。別の態様では、組成物は、補体系と関連しない少なくとも1つの疾患を処置するのに有効な少なくとも1つの他の活性成分を含む。本明細書において使用する場合、用語「治療的に有効な量」は、対象への利益を示すのに十分である、各活性成分の総量を指す。
【0078】
ペプチドの治療的に有効な量は、いくつかの因子、例えば、処置される状態、状態の重症度、投与時間、投与経路、用いられるペプチドの排出速度、治療期間、関与する併用療法、ならびに対象の年齢、性別、体重、および状態などに応じて変動する。当業者は、治療的に有効な量を決定することができる。したがって、当業者は、最大の治療効果を得るために、投薬量をタイトレーションし、投与経路を修正する必要があり得る。
【0079】
有効な1日量は概して、約5~約160mg/kg、約10~約160mg/kg、約40mg/kg~約160mg/kg、および約40mg/kg~約100mg/kgを含めて、体重キログラムあたり約0.001~約200ミリグラム(mg/kg)の範囲内である。この用量は、毎日1~6回の投与レジメンによって達成することができる。あるいは、最適な処置は、より低頻度の投与レジメンを用いた持続性放出製剤によって達成することができる。いくつかの態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約10mg/kg~約160mg/kgである。いくつかの態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約20mg/kg~約160mg/kgである。いくつかの態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約40mg/kg~約160mg/kgである。いくつかの態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、少なくとも1つの用量で投与され、第1の用量は、約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む第2の用量が投与され、第2の用量は、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約10mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む。いくつかの態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、2つの用量で投与され、第1の用量は、約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約10mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含み、第2の用量は、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約1mg/kg~約40mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含む。いくつかの態様では、第2の用量は、第1の用量が投与されてから30秒~10時間後、例えば、第1の用量の投与から約8時間後に投与される。いくつかの態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約1週間~約2週間の期間にわたって複数回用量で投与され、各用量は、約1mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3を含み、4~10時間ごと、例えば、約8時間ごとに投与される。
【0080】
いくつかの態様では、約10mg/kg~約160mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約10mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3の少なくとも1つの負荷用量が投与され、それに続いて、約1mg/kg~約120mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3、例えば、約1mg/kg~約40mg/kgのSEQ ID NO:2および/または3の少なくとも1つの維持用量が投与される。いくつかの態様では、第1の維持用量は、最後の負荷用量から4~10時間後に投与される。いくつかの態様では、維持用量は、約1週間~約2週間の期間にわたって、4~10時間ごとに投与される。いくつかの態様では、第1の維持用量は、最後の負荷用量から8時間後に投与され、維持用量は、約1週間~約2週間の期間にわたって、8時間ごとに投与される。
【0081】
別の局面では、本発明は、治療的に有効な量のSEQ ID NO:2および/または3と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む薬学的組成物である。
【0082】
本発明の組成物は、担体および/または賦形剤を含むことができる。本発明のペプチドを療法のためにそのまま使用することは可能であるが、薬学的製剤中で、例えば、意図された投与経路および標準的な薬学的慣習に関して選択された適切な薬学的賦形剤および/または担体との混合物中でこれを投与することが好ましいこともあり得る。賦形剤および/または担体は、製剤の他の成分と適合性であり、それらの受容者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。治療的使用のための許容される賦形剤および担体は薬学分野で周知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. Lippincott Williams & Wilkins(A.R. Gennaro edit. 2005)に記載されている。薬学的賦形剤および担体の選択肢は、意図された投与経路および標準的な薬学的慣習に関して選択され得る。経口製剤は、例えば、牛乳、ヨーグルト、および乳児用調製粉乳などのさらなる混合物に容易に対応する。経口投与用の固形剤形を使用することもでき、経口投与用の固形剤形としては、例えば、カプセル剤、錠剤、カプレット、丸剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、粉末剤、および顆粒剤を挙げることができる。適切な賦形剤の非限定例としては、例えば、希釈剤、緩衝化剤(例えば、炭酸水素ナトリウム)、防腐剤、安定化剤、結合剤、圧縮剤、潤滑剤、分散促進剤、崩壊剤、抗酸化剤、着香剤、甘味剤、および着色剤が挙げられる。当業者は、適切な溶液を十分に調製することができる。
【0083】
本発明の組成物のいずれかの一態様では、組成物は、例えば、経口、局所、直腸、粘膜、舌下、経鼻、経鼻/経口(naso/oro)胃強制栄養、非経口、腹腔内、皮内、経皮、髄腔内、経鼻、および気管内投与などの経路による送達のために製剤化される。本発明の組成物のいずれかの一態様では、組成物は、液体、フォーム、クリーム、スプレー、粉末、またはゲルの形態である。本発明の組成物のいずれかの一態様では、組成物は、緩衝化剤(例えば、炭酸水素ナトリウム)を含む。
【0084】
本発明の方法におけるペプチドおよび組成物の投与は、当技術分野において公知の任意の方法によって達成することができる。送達の有用な経路の非限定例としては、経口、直腸、糞便(浣腸による)、および経鼻/経口胃強制栄養、ならびに非経口、腹腔内、皮内、経皮、髄腔内、経鼻、および気管内投与が挙げられる。活性剤は投与後に全身性でもよく、または領域性投与、壁内投与の使用、もしくは埋め込みの部位で活性用量を保持するように作用するインプラントの使用によって局在化されてもよい。
【0085】
本発明の化合物および製剤の有用な投薬量は、疾患の性質、患者の病歴、投薬頻度、投与様式、宿主からの作用物質の排除などに応じて広く変動し得る。初回用量を多くし、その後の維持量を少なくすることができる。用量は、有効投薬量レベルを維持するために、毎週または隔週のような低頻度で投与することができるか、またはより小さな用量に分割し、毎日、半週ごとなどに投与することができる。治療効果を達成するために様々な用量が有効であり得ることが考えられる。本発明の化合物を療法のためにそのまま使用することは可能であるが、薬学的製剤で、例えば、意図された投与経路および標準的な薬学的慣習に関して選択された適切な薬学的賦形剤、希釈剤、または担体との混合物中でこれを投与するが好ましいこともあり得る。賦形剤、希釈剤、および/または担体は、製剤の他の成分と適合性であり、それらの受容者に有害でないという意味で「許容され」なければならない。治療的使用のための許容される賦形剤、希釈剤、および担体は、薬学分野で周知であり、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy. Lippincott Williams & Wilkins(A.R. Gennaro edit. 2005)に記載されている。薬学的賦形剤、希釈剤、および担体の選択肢は、意図された投与経路および標準的な薬学的慣習に関して選択され得る。
【0086】
非経口投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝液、静菌薬、および製剤を意図された受容者の血液と等張にする溶質を含むことができる水性および非水性の等張無菌注射溶液、ならびに懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および防腐剤を含むことができる水性および非水性の懸濁液が挙げられる。
【0087】
溶液または懸濁液は、以下の成分のいずれかを任意の組み合わせで含むことができる:無菌の希釈剤、例えば、例として非限定的に、注射用水、食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールおよびメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸および亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば、酢酸、クエン酸、およびリン酸;ならびに張性の調整のための剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。
【0088】
剤が不十分な溶解度を示す場合、剤を可溶化するための方法を使用することができる。そのような方法は当業者に公知であり、限定されないが、共溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの使用、界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)80の使用、または炭酸水素ナトリウム水溶液中への溶解が挙げられる。有効な薬学的組成物の製剤化において、剤の薬学的に許容される誘導体を使用することもできる。
【0089】
組成物は、活性剤とともに、例えば、非限定的に以下を含むことができる:希釈剤、例えば、ラクトース、ショ糖、リン酸二カルシウム、またはカルボキシメチルセルロース;潤滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、およびタルク;ならびに結合剤、例えば、デンプン、天然ゴム、例えば、アカシアゴムゼラチン、グルコース、糖蜜、ポリビニルピロリドン、セルロース、およびそれらの誘導体、ポビドン、クロスポビドン、ならびに当業者に公知の他のそのような結合剤。液体の薬学的に投与可能な組成物は、例えば、担体、例えば、例として、非限定的に、水、食塩水、水性デキストロース、グリセロール、グリコール、エタノールなどに上記で定義された活性剤と任意の薬学的補助剤を溶解する、分散させる、または混合して、それによって、溶液または懸濁液を形成することによって、調製することができる。所望ならば、投与される薬学的組成物は、少量の無毒の補助物質、例えば、湿潤剤、乳化剤、または可溶化剤、pH緩衝化剤など、例えば、例として、非限定的に、酢酸、クエン酸ナトリウム、シクロデキストリン誘導体、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン、および他のそのような剤を含むこともできる。そのような剤形を調製する実際の方法は公知であるか、または当業者に明らかであろう(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 15th Edition, 1975)。投与される組成物または製剤は、いずれにしても、処置される対象の症状を軽くするのに十分な量の活性剤の分量を含む。
【0090】
活性剤または薬学的に許容される誘導体は、徐放製剤またはコーティング剤など、体からの急速な排出から剤を保護する担体を用いて調製することができる。組成物は、特性の望ましい組み合わせを得るために、他の活性剤を含むことができる。
【0091】
非経口投与は、一般に、皮下、筋肉内、または静脈内のいずれかの注射を特徴とし、本明細書においても企図される。注射液は、液体の溶液もしくは懸濁液、注射前の液状の溶液もしくは懸濁液に適した固体形態としてか、または乳剤としてかのいずれかで、従来の形態で調製することができる。適切な賦形剤としては、例として、非限定的に、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、またはエタノールが挙げられる。さらに、所望ならば、投与される薬学的組成物は、少量の無毒の補助物質、例えば、湿潤または乳化剤、pH緩衝化剤、安定化剤、溶解度促進剤、および他のそのような剤、例えば、酢酸ナトリウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、およびシクロデキストリンなどを含むこともできる。
【0092】
凍結乾燥粉末は、溶液、乳剤、および他の混合物の投与のために再構成することができるか、または固体またはゲルとして製剤化することができる。無菌の凍結乾燥粉末は、本明細書において提供される剤または薬学的に許容されるそれらの誘導体を適切な溶媒に溶解することによって調製される。溶媒は、安定性を向上させる賦形剤、または粉末もしくは粉末から調製される再構成溶液の他の薬理学的成分を含むことができる。使用することができる賦形剤としては、限定されないが、デキストロース、ソルビトール(sorbital)、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、ショ糖、または他の適切な剤が挙げられる。溶媒は、緩衝液、例えば、クエン酸、ナトリウム、もしくはリン酸カリウム、または当業者に公知の他のそのような緩衝液を典型的にはほぼ中性pHで含むこともできる。続いて溶液の無菌濾過、その後の当業者に公知の標準的な条件下での凍結乾燥によって、望ましい製剤が提供される。一般に、得られた溶液は、凍結乾燥のためにバイアル中に配分することができる。各バイアルは、例として、非限定的に、単回投薬量(10~1000mg、例えば、100~500mg)または複数回投薬量の剤を含むことができる。凍結乾燥粉末は、適切な条件下で、例えば、約4℃~室温で保存することができる。注射用水を用いたこの凍結乾燥粉末の再構成によって、非経口投与で使用するための製剤が提供される。
【0093】
併用療法
本発明のさらなる態様は、本発明の薬学的組成物を対象に投与する段階を含む、補体系を調節する方法を提供する。本発明の薬学的組成物は、唯一の活性な薬学的剤として投与することができるが、これらは、補体系の調節に有効な1種または複数種の治療剤または予防剤と組み合わせて使用することもできる。この局面では、本発明の方法は、補体系を調節するのに有効な1種もしくは複数種のさらなる治療剤または予防剤の前に、該剤と同時に、および/または該剤の後に、本発明の薬学的組成物を投与する段階を含む。
【0094】
本発明の薬学的組成物は、併用療法においてさらなる剤とともに、一緒にかもしくは別々にかのいずれかで、または薬学的組成物とさらなる剤を組み合わせて1つの組成物にすることによって、投与することができる。投薬量は、補体系の最大の調節を達成するように、投与および調整される。例えば、薬学的組成物とさらなる剤の両方は、通常、単独療法レジメンで通常投与される投薬量の約10%~約150%の間、より好ましくは約10%~約80%の間の投薬量レベルで存在する。
【0095】
任意の態様では、本発明の薬学的組成物は、チェックポイント阻害剤と組み合わせて、同時にかまたは任意の順序で連続してかのいずれかで、投与される。例えば、限定されないが、薬学的組成物は、チェックポイント阻害剤の後に投与することができ、および/またはチェックポイント阻害剤で処置されたことがあり、チェックポイント阻害剤の結果として、腸の炎症、損傷、もしくは壊死を経験したことがある対象に予防薬として投与することができる。任意の態様では、本発明の薬学的組成物は、チェックポイント阻害剤で現在処置されている、チェックポイント阻害剤で処置されたことがある、および/またはチェックポイント阻害剤で処置されるであろう対象に投与することができる。チェックポイント阻害剤の非限定例としては、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、およびPD-L1阻害剤、例えば、ペンブロリズマブ(Keytruda)、イピリムマブ(Yervoy)、ニボルマブ(Opdivo)、およびアテゾリズマブ(Tecentriq)が挙げられる。
【0096】
任意の態様では、本発明の薬学的組成物は、チェックポイント阻害剤の毒性副作用、例えば、腸の壊死および/または損傷を防止、処置、および/または緩和することができる。
【0097】
任意の態様では、本発明の薬学的組成物は、腸の壊死および/または損傷、例えば、重度の炎症反応、腸梗塞(すなわち、腸組織の虚血再灌流障害)、自己免疫性炎症性腸疾患(IBD)、および関連する療法によって生じる壊死または損傷、ならびに化学療法誘導性または毒素誘導性腸壊死を、防止、処置、ならびに/または緩和することができる。
【0098】
使用方法
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、チェックポイント阻害剤の毒性副作用を防止、処置、および/または緩和する方法を提供する。
【0099】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、腸の壊死および/または損傷、例えば、重度の炎症反応、腸梗塞(すなわち、腸組織の虚血再灌流障害)、自己免疫性炎症性腸疾患(IBD)、および関連する療法によって生じる壊死または損傷、ならびに化学療法誘導性または毒素誘導性腸壊死を、防止、処置、ならびに/または緩和する方法を提供する。
【0100】
一局面では、本発明は、SEQ ID NO:2および/または3を含む合成ペプチドの治療的に有効な量を含む組成物を、その必要がある対象に投与する段階を含む、少なくとも1つのチェックポイント阻害剤で処置されている、処置されたことがある、および/または処置されるであろう対象において、腸の壊死および/または損傷を防止、処置、および/または緩和する方法を提供する。
【0101】
前述の方法のいずれかの任意の態様では、組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、安定化剤、または賦形剤をさらに含む。前述の方法のいずれかの一態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約10mg/kg~約160mg/kgである。前述の方法のいずれかの一態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約20mg/kg~約160mg/kgである。前述の方法のいずれかの一態様では、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量は、約40mg/kg~約160mg/kgである。前述の方法のいずれかの一態様では、組成物は、皮下、静脈内、腹腔内、または筋肉内投与のために製剤化される。一態様では、組成物は、薬学的に許容される担体および/または賦形剤をさらに含む。
【実施例】
【0102】
本発明はまた、以下の実施例を通して説明され、示される。しかし、本明細書の任意の場所でのこれらおよび他の実施例の使用は例示に過ぎず、本発明または任意の例示された用語の範囲および意味を決して限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書で説明されるいかなる特定の好ましい態様にも限定されない。実際に、本明細書を読めば、本発明の多くの修正および変形が当業者に明らかになる可能性があり、そのような変形は、趣旨または範囲において本発明を逸脱することなく行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。
【0103】
実施例1:腸壊死を防止、処置、および/または緩和するためのPA-dPEG24の使用
腸壊死は、様々な臨床的病因から生じ得る、命に関わる可能性がある医学的状態である。腸組織の壊死は、管腔の損傷および腸内細菌の漏出、ならびに補体系および好中球を含む侵攻性の免疫応答の誘起につながる。PA-dPEG24(RLS-0071)は、古典的経路およびレクチン経路、ならびに好中球の主要なエフェクターであるミエロペルオキシダーゼ活性およびNETosisのペプチド阻害剤である。したがって、本発明者らは、腸壊死および腸内容物の漏出の状況において、補体系および好中球エフェクターの阻害を介した免疫調節が生存に影響を及ぼし得る程度を評価することにした。青年期の雄のLong-Evansラットを盲腸結紮穿刺(CLP)に供し、これは腸壊死の確立されたラットモデルであり、単回用量の40mg/kgのRLS-0071を手術から30分後に1つのコホートに与え、一方で、対照群は処置しなかった。次いで、手術から5日後までラットの生存を評価した。驚いたことに、RLS-0071で処置した動物は、未処置群の50%と比較して80%の生存を示した。生存の予期しない増加が炎症反応の軽減が理由であり得るかどうかを評価するために、NETosisのマーカー、血漿中の遊離DNA、および炎症誘発性サイトカインIL-6を評価した。RLS-0071で処置した動物について、遊離DNAの血中レベルおよび炎症性サイトカインIL-6の低減が観察された。これらの結果によって、単回用量のRLS-0071が、おそらく、ある特定の炎症反応を低減させることによって、腸壊死の生存を増加させることができることが示される。
【0104】
材料および方法
動物実験
以前に確立されたCLPモデル[10]を改変して利用した。雄のLong-Evansラット(250~300グラム)を、酸素をともなう5%イソフルランを使用して誘導し、ノーズコーンを介して送達される、酸素をともなう1.5~2%のイソフルランによって、麻酔を維持した。足指をつねること(toe pinch)で十分な麻酔を確認した。手術領域(下腹部の4分の1区)を剪毛し、10%ヨウ素で消毒し、続いて、70%エタノールで合計3回消毒した。疼痛対策のために、術前に、ブプレノルフィン-SR(1mg/kg)を皮下に与えた。手術手法については、動物を仰臥位にし、頭部を手術者から離れた向きにした。無菌ドレープを配置してから、縦正中切開(およそ3~4cm)を無菌のメスで行った。最初の切開の後、小さな剪刀を使用して、腹膜腔に進入した。腹部筋系の白線を切り離し、筋膜層と腹膜層を筋間切開した。盲腸を捜し出し、体外に出し、腸の残部を腹膜腔内に残した。回盲動脈の盲腸枝への損傷を避け、出血性合併症を避けるように注意して、盲腸の腸間膜を切り離した。無菌の3-0非吸収性縫合糸を使用して、盲腸を75%で結紮した。腸間膜から対腸間膜の方向で、結紮部と盲腸の先端の間の中間部で、無菌の18ゲージの針を使用して、貫通穿刺によって盲腸を2回穿孔処理した。盲腸を腹腔内に再配置した。4-0非吸収性縫合糸を使用して腹膜を閉じ、無菌の金属製創傷クリップで皮膚を閉じた。動物に5mLの前もって温めた(37℃)通常の食塩水を皮下に与えて、回復させた。RLS-0071処置動物(n=9)については、手術から30分後に、ラットに単回用量の40mg/kgのRLS-0071を留置頚静脈カテーテルを通して静脈内に与えた。アミノ酸配列:
からなるペプチドは、単分散の24merポリエチレングリコール(PEG)テールを有し、HPLCおよび質量分析によって検証した場合に≧95%の純度に、PolyPeptide Group(San Diego、CA)によって製造された。凍結乾燥RLS-0071を0.05Mのヒスチジン緩衝液中に可溶化し、pHを6.5に調整した。対照群(n=6)には化合物を与えなかった。手術後少なくとも2時間にわたって30分ごとに動物をモニターした。一旦快活になり、機敏になり、かつ反応を示すようになったら、動物をホームケージに戻した。研究の継続期間の間1日2回、罹患の定量的評価を動物に対して行った(Shrum, B., Anantha, R.V., Xu, S.X et al. robust scoring system to evaluate sepsis severity in an animal model. BMC Res Notes 7, 233 (2014). https://doi.org/10.1186/1756-0500-7-233)。スコアリングの判断基準には、外観、意識レベル、活動性、刺激への応答、眼が開いている対閉じている、呼吸速度、および呼吸の質が含まれていた。各カテゴリーを0(最高)~4(最低)にランク付けした。動物の累積スコアが21を越えた場合、または呼吸の質が3を超えた場合、動物を人道的に安楽死させた。5日目の終わりに、生存している動物を二酸化炭素窒息および頸椎脱臼によって安楽死させた。最低でも2回/日動物を引き続きモニターした。
【0105】
手術前(前採血)および手術から24時間後に血液試料を収集した。血液から血漿を単離し、以下に記載のように、遊離DNA濃度およびサイトカインレベルについて解析した。
【0106】
血漿DNAの測定
以前に述べられたように[8]、ラット血漿試料において、PicoGreenによって遊離DNAを測定した。手短に言えば、10mM Tris-HCl、1mM EDTA、pH8.0(TE)緩衝液中に血漿試料を希釈し、50uLの1:200希釈のPicoGreen(Life Technologies、Carlsbad、CA、USA)とともに、50uLの各試料をウェルに添加し、遮光して室温で10分間インキュベートした。TE緩衝液中でDNA検量線を調製した。次いで、BioTekマイクロプレートリーダーを使用して、485nmの励起波長および520nmの発光波長で蛍光を読み取った。すべての遊離DNA測定は3連で行った。
【0107】
サイトカインの解析
ラットIL-6 ELISAをR&D Systemsから購入した。実験動物由来の血漿試料を製造者の指示書に従って解析にかけた。手短に言えば、捕捉IL-6抗体で前もってコーティングしたウェルに、希釈したラット血漿試料を一晩添加した。プレートを1%BSAで室温で60分間ブロッキングした。100uLの血漿試料(1:4希釈)または標準物質をプレートに添加し、室温で2時間インキュベートし、次いで、いかなる未結合成分も洗浄によって除去した。次に、100μLの検出IL-6抗体(1:60希釈)を添加し、室温で2時間インキュベートし、洗浄した。次に、100μLのストレプトアビジン-西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(1:40希釈)を添加し、暗所、室温で20分間インキュベートした。洗浄後、100μLの3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)基質を添加し、室温でおよそ5分間おいた。100μLの硫酸を添加して反応を止め、BioTekマイクロプレートリーダーを使用して、450nmで吸光度を測定した。1:2段階希釈で作成したIL-6検量線を使用して、試料の濃度を計算した。
【0108】
統計解析
平均値および平均値の標準誤差としてデータを表す。
【0109】
結果
RLS-0071はCLPモデルにおいて死亡率を低減させる
補体系および好中球免疫機構のモジュレーションが、腸壊死の状況において、細菌性敗血症による死亡を増加さるかどうかを試験するために、CLPモデルにおいてRLS-0071を試験した。CLPモデルでは、盲腸の結紮が、盲腸穿孔(punch)の梗塞を引き起こし、次いで、これは壊死する。Long-Evansラットにおいて以前に開発されたCLPモデルによって、約40%の生存率をもたらす中程度の壊死の誘導は、盲腸の遠位極と基部の間の距離の半分で盲腸を結紮し、それに続いて、結紮した盲腸を18ゲージの針で貫通穿刺することを必要とすることが報告された[11]。本発明者らの実験プロトコールは、盲腸の75%結紮、それに続く、18ゲージの針による盲腸への2回の穿刺を利用し、20%の生存を得た。驚いたことに、
図1に示すように、非レスキュー処理群と比較して、CLPを受け、手術から30分後に、単回用量の40mg/kgのRLS-0071が静脈内送達されたラットは、50%の生存であり、2.5倍増加した。したがって、補体系および好中球エフェクターのモジュレーションが、手に負えない感染による死亡の増加を引き起こすというよりもむしろ、RLS-0071の投与が、腸壊死の状況における生存を増加させると思われた。
【0110】
RLS-0071は血液中の遊離DNAの蓄積を阻害する
RLS-0071が、腸壊死の状況において生存を増加させた可能性があるという発見によって、ラットにおける炎症の阻害がラットの生存に影響を及ぼしているかどうかという可能性が高まった。次いで、本発明者らは、CLP動物の血液における炎症の2つの重要な局面をアッセイした。活性化された好中球から放出される好中球細胞外トラップ(NET)は、様々な自己免疫性、代謝性、および炎症性疾患において病原性の役割を果たすことが以前に示され[12]、敗血症における免疫血栓症および播種性血管内凝固(DIC)に寄与するという仮説が立てられている[4]。NETは、ウイルス誘導性急性肺傷害のマウスモデルで観察されている。第2の局面では、血流中の遊離DNAの存在は、急性肺傷害を有するヒト患者[13、14]およびCOVID-19患者[15]の血液中のNETのバイオマーカーである。遊離DNAが敗血症のラットの血液中に存在するかどうかを確かめるために、手術の24時間後に、PicoGreen蛍光によって遊離DNAのレベルを測定した。手術前(前採血)の動物から得た血液と比較して、CLP手法に供した動物で遊離DNAレベルが増加した。RLS-0071を受けている動物は、処置を受けていない動物と比較して、遊離DNAのレベルが低減した。さらに、IL-1Bについて動物を試験し、陰性であることが分かった。
図2に示すように、RLS-0071で処置した動物における遊離DNAのこの低減によって、このモデルにおいて、RLS-0071がNET形成を低減させることが示唆される。
【0111】
RLS-0071は血液中の炎症性サイトカインIL-6のレベルを低減させる
腸壊死の場合、感染に応答して、かなりの量の炎症誘発性サイトカインが生成される。このいわゆる「サイトカインストーム」は、敗血症について十分に実証されており、この侵攻性の炎症反応は、重度の転帰、例えば、終末器官損傷および時には死亡と関連する[4]。このモデルにおいて、炎症性サイトカインレベルに対するRLS-0071の効果を確かめるために、血液のIL-6のレベルを測定した。IL-6は、主にマクロファージによって放出される強力な炎症誘発性サイトカインであり、炎症性腸疾患を含めた多くの炎症性疾患で主要な役割を果たす[16]。手術前(前採血)に動物から得た血液は、検出可能レベルのIL-6はなかった。CLP手法に供した動物は、手術の24時間後にサイトカインの血中レベルの増加を示した。これに対して、
図3示すように、RLS-0071を受けている動物は、レスキュー非介入動物と比較してIL-6の低減を示し、これによって、RLS-0071が、このモデルにおいて炎症性サイトカインの産生を低減させることができることが示唆される。さらに、動物をIL-1Bについて試験し、陰性であることが分かった。
【0112】
考察
本発明者らは、免疫調節性分子RLS-0071が、腸壊死の状況において、細菌性敗血症からの生存に影響を及ぼし得るかどうかを決定するために実験を行った。驚いたことに、RLS-0071は、盲腸結紮によって生じる腸壊死の確立されたモデルにおいて、生存を増加させることができた。以前に報告されたように、盲腸結紮穿刺(CLP)ラットモデルは、40年超にわたって利用されており、腸壊死および敗血症のモデルとしてゴールドスタンダードと考えられる[11]。このモデルにおいて、盲腸を回盲弁より下で結紮し、それに続いて、盲腸を針で穿刺する。盲腸の壊死および穿孔処理の際に、細菌、毒素、および他の汚染微生物が腹膜腔中に放出され、その結果、細菌性腹膜炎が生じる。続いて、これらの混合腸内細菌が血液コンパートメント中に輸送され、細菌性敗血症を引き起こす。腸内病原体性細菌性敗血症は、一般に、低血圧、播種性血管内凝固(DIC)、多臓器不全、および潜在的に死亡を誘起する。
【0113】
RLS-0071は、インビトロ、インビボ、およびエクスビボ研究において古典的補体活性化を阻害すること、ならびにインビトロおよびエクスビボ研究においてミエロペルオキシダーゼの阻害を介してNET形成を阻害することが示されている[6~8]。補体系および好中球エフェクターに対する免疫調節活性を考慮して、本発明者らは、RLS-0071が、CLP動物モデルにおいて、細菌性敗血症を悪化させ、致死率を高める可能性があるという仮説を立てた。本発明者らの結果は、手術後30分で単回用量として送達されるRLS-0071が生存を2.5倍増加させるという驚くべき発見を示した。この結果によって、RLS-0071は、腸壊死に対する炎症反応の致命的な局面を低下させることによって、生存を増加させている可能性があることが示唆された。RLS-0071で処置したCLP動物は、NETosisのバイオマーカーとして働く遊離DNAのレベル低下、および炎症性サイトカインIL-6の低減を示した。CLPモデルにおいて、RLS-0071が生存を増加させ、炎症を低減させる能力は、腸梗塞(すなわち、腸組織の虚血再灌流障害)、自己免疫性炎症性腸疾患(IBD)、および関連する薬物療法などの腸壊死と関連する様々な疾患プロセス、、化学療法誘導性または毒素誘導性腸壊死、ならびに重度の炎症反応によって生じる腸の壊死または損傷のための、臨床的治療薬としての有用性について潜在性を有する。
【0114】
実施例2:RLS-0071およびRLS-0088の複数回用量投与はCLPモデルにおいて死亡率を低減させる
本発明者らは次に、RLS-0071の複数回用量レジメンが生存率に効果があるかどうかを評価した。手術から0.5、24、48、および72時間後に、実施例1と同様にRLS-0071を動物に投与した。RLS-0071を受けているラットは、生存の有意な増加を示した(p=0.032)(
図4)。次いで、第2世代のEPICCペプチド、RLS-0088をCLPモデルで試験して、生存の向上に対して同様の効果があるかどうかを決定した。実施例1に示したものと同じ複数回用量実験アプローチを使用して、ラットをCLPに供し、手術から0.5、24、48、および72時間後に40mg/kgのRLS-0088をラットに投与した。RLS-0088を受けているラットは、生存の増加を示した(
図5)。
【0115】
実施例3:薬学的製剤の投与
疾患または状態を処置するために、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む薬学的組成物を、その必要がある対象に投与する。投与は、任意の適切な経路(例えば、注射、注入、埋め込み、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)によってもよい。
【0116】
対象において補体系を調節するために、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む薬学的組成物を、その必要がある対象に投与する。投与は、任意の適切な経路(例えば、注射、注入、埋め込み、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)によってもよい。
【0117】
対象においてサイトカインの発現を変化させるために、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む薬学的組成物を、その必要がある対象に投与する。投与は、任意の適切な経路(例えば、注射、注入、埋め込み、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)によってもよい。
【0118】
チェックポイント阻害剤の毒性副作用、例えば、腸の壊死または損傷を防止、処置、および/または緩和するために、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む薬学的組成物を、その必要がある対象に投与する。投与は、任意の適切な経路(例えば、注射、注入、埋め込み、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)によってもよい。
【0119】
腸の壊死および/または損傷、例えば、重度の炎症反応、腸梗塞(すなわち、腸組織の虚血再灌流障害)、自己免疫性炎症性腸疾患(IBD)、および関連する薬物療法によって生じる壊死または損傷、ならびに化学療法誘導性または毒素誘導性腸壊死を、防止、処置、ならびに/または緩和するために、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む薬学的組成物を、その必要がある対象に投与する。投与は、任意の適切な経路(例えば、注射、注入、埋め込み、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)によってもよい。
【0120】
少なくとも1つのチェックポイント阻害剤で処置されている、処置されたことがある、および/または処置されるであろう対象において、腸の壊死および/または損傷を防止、処置、および/または緩和するために、SEQ ID NO:2および/または3の治療的に有効な量を含む薬学的組成物を、その必要がある対象に投与する。投与は、任意の適切な経路(例えば、注射、注入、埋め込み、静脈内投与、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与)によってもよい。
【0121】
いくつか可能性のある態様が上に開示されるが、本発明の態様は、そのようには限定されない。これらの例示的な態様は、網羅的であることも、本発明の範囲を不必要に限定することも意図するものではなく、代わりに、他の当業者が本発明を実施することができるように本発明の原理を説明するために選択され、記載されたものである。実際に、本明細書において記載されるものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者に明らかとなると考えられる。そのような修正は、添付の特許請求の範囲の範囲に入ることが意図される。
【0122】
本明細書において引用されるすべての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、および他の資料は、本明細書中に物理的に存在するかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0123】
【配列表】
【国際調査報告】