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特表2024-522994電気化学セル用の化学的に不活性な添加剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】電気化学セル用の化学的に不活性な添加剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240618BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240618BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240618BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240618BHJP
   H01G 11/64 20130101ALI20240618BHJP
   H01G 11/60 20130101ALI20240618BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20240618BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/052
H01G11/64
H01G11/60
H01G11/84
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574179
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 US2022031594
(87)【国際公開番号】W WO2022256320
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】63/195,592
(32)【優先日】2021-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522128619
【氏名又は名称】サウス エイト テクノロジーズ インク.
【氏名又は名称原語表記】SOUTH 8 TECHNOLOGIES, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ルストムジ, サイラス,エス
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジョンウ
(72)【発明者】
【氏名】ロイヤー, ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】セハ, ミゲル
【テーマコード(参考)】
5E078
5H029
【Fターム(参考)】
5E078AB01
5E078DA03
5E078DA06
5E078DA14
5E078DA18
5E078DA19
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AK05
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL04
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ00
5H029HJ14
5H029HJ15
(57)【要約】
100kPaの圧力及び293.15Kの温度で液状から気状に遷移(「脱気」)することになる液化ガス溶媒を含む、安全な電解質が、更に開示される。第1の混合物は、第2の電解質成分(1種又は複数の炭化水素共溶媒)と混合される第1の電解質成分(1種又は複数の溶媒)から形成される。第2の電解質成分の添加は、(1)293.15Kで測定したとき、第1の電解質成分のみの蒸気圧と比較して少なくとも10%、第1の混合物の蒸気圧を低下させ、及び(2)293.15Kの温度で100kPaよりも上の第1の混合物の蒸気圧をもたらす。第2の電解質成分は、第1の混合物の地球温暖化係数(GWP)を、第1の電解質成分のみのGWPと比較して少なくとも10%低下させるように選択されてもよい。安全な液化ガス電解質は、第3の電解質成分(1種又は複数の塩)を第1の混合物と混合することによって形成される。次いでこの安全な液化ガス電解質は、電気化学エネルギー貯蔵デバイスを製造するのに使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
293.15Kの温度で、100kPaで脱気することになる安全な液化ガス電解質を、形成する方法であって、
(a)(1)293.15Kで測定したとき、第1の電解質成分のみの蒸気圧と比較して少なくとも10%低い、第1の混合物の蒸気圧と、(2)293.15Kの温度で100kPaよりも上の前記第1の混合物の蒸気圧とを実現するように、第2の電解質成分と混合された前記第1の電解質成分から前記第1の混合物を形成することと、
(b)ステップ(a)の後、第3の電解質成分を前記第1の混合物に混合することにより、前記安全な液化ガス電解質を形成することと
を含み、
前記第1の電解質成分は、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、クロロメタン、クロロエタン、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化ホスホリル、ホスホリル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物、1-フルオロプロパン、2-フルオロプロパン、1,1-ジフルオロプロパン、1,2-ジフルオロプロパン、2,2-フルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,2,2-トリフルオロプロパン、フルオロエチレン、cis-1,2-フルオロエチレン、1,1-フルオロエチレン、1-フルオロプロピレン、2-プロピレン、塩素、クロロメタン、臭素、ヨウ素、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、分子状酸素、分子状窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、メチルビニルエーテル、ジフルオロエチレン、亜酸化窒素、二酸化窒素、酸化窒素、二硫化炭素、フッ化水素、水素、これらの異性体、又はこれらの組合せからなる群から選択され、
前記第2の成分は、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロプロパン、シクロプロパン、エテン、プロペン、ブテン、シクロブタン、シクロブテン、アセチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、これらの異性体、又はこれらの組合せからなる群から選択され、
前記第3の成分は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラガリウムアルミン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ヘキサフルオロスズ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムアルミニウムフッ化物(LiAlF3)、硝酸リチウム(LiNO3)、クロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラクロロアルミン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、シュウ酸リチウム、チオシアン酸リチウム、テトラクロロ没食子酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、窒化リチウム、超酸化リチウム、リチウムアジド、デルタ酸リチウム、スクアリン酸二リチウム、クロコン酸リチウム二水和物、ロジゾン酸二リチウム、シュウ酸リチウム、ケトマロン酸二リチウム、ジ-ケトコハク酸リチウム、又はナトリウム若しくはマグネシウムと置換された正電荷リチウムカチオンと任意の対応する塩、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択され、更に有用な塩には、正電荷カチオンを持つもの、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム アンモニウム、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウム、1,1-ジメチルピロリジニウム、及び1,1-ジエチルピロリジニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N(2メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-フェニルエチルアンモニウム、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N-トリブチル-N-メチルアンモニウム、N-トリメチル-N-ヘキシルアンモニウム、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-(4-スルホブチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3H-イミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-プロピルイミダゾリウム、H-3-メチルイミダゾリウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、N-ブチル-N-メチルピペリジニウム、N-プロピル-N-メチルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-(2-メトキシエチル)ピロリジニウム、1-メチル-1-(3-メトキシプロピル)ピロリジニウム、1-メチル-1-オクチルピロリジニウム、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム、又はN-メチルピロリジニウムであって、アセテート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサレート)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、臭化物、塩化物、ジシアナミド、リン酸ジエチル、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素塩、ヨウ化物、メタンスルホネート、メチル-ホスホネート、テトラクロロアルミネート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、又はこれらの組合せ等の負電荷アニオンと対になったものが含まれる、方法。
【請求項2】
前記第2の電解質成分が、前記第1の混合物の地球温暖化係数(GWP)を、前記第1の電解質成分のみの前記GWPと比較して少なくとも10%低下させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)が、313.15Kで測定したとき、前記第1の電解質成分のみの前記蒸気圧と比較して少なくとも20%低い、前記第1の混合物の前記蒸気圧を実現する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(b)が、第4の電解質成分を混合することを更に含み、前記第4の成分が、線形エーテル、環状エーテル、線形カーボネート、環状カーボネート、ニトリル、ホスフェート、又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
293.15Kの温度で、100kPaで脱気することになる安全な液化ガス電解質を持つ電気化学エネルギー貯蔵デバイスを構成する方法であって、
(a)(1)293.15Kで測定したとき、第1の電解質成分のみの蒸気圧と比較して少なくとも10%低い、第1の混合物の蒸気圧と、(2)293.15Kの温度で100kPaよりも上の前記第1の混合物の蒸気圧とを実現するように、第2の電解質成分と混合された前記第1の電解質成分から前記第1の混合物を形成することと、
(b)ステップ(a)の後、第3の電解質成分を前記第1の混合物に混合することによって、前記安全な液化ガス電解質を形成することと、
(c)2つの電極を持つセルハウジングを提供することと、
(d)前記安全な液化ガス電解質を前記セルハウジングに添加して、前記2つの電極が前記安全な液化ガス電解質に接触するようにすることと、
(e)前記セルハウジングを密閉することと
を含み、
前記第1の電解質成分は、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、クロロメタン、クロロエタン、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化ホスホリル、ホスホリル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物、1-フルオロプロパン、2-フルオロプロパン、1,1-ジフルオロプロパン、1,2-ジフルオロプロパン、2,2-フルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,2,2-トリフルオロプロパン、フルオロエチレン、cis-1,2-フルオロエチレン、1,1-フルオロエチレン、1-フルオロプロピレン、2-プロピレン、塩素、クロロメタン、臭素、ヨウ素、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、分子状酸素、分子状窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、メチルビニルエーテル、ジフルオロエチレン、亜酸化窒素、二酸化窒素、酸化窒素、二硫化炭素、フッ化水素、水素、これらの異性体、又はこれらの組合せからなる群から選択され、
前記第2の成分は、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロプロパン、シクロプロパン、エテン、プロペン、ブテン、シクロブタン、シクロブテン、アセチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、これらの異性体、又はこれらの組合せからなる群から選択され、
前記第3の成分は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラガリウムアルミン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ヘキサフルオロスズ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムアルミニウムフッ化物(LiAlF3)、硝酸リチウム(LiNO3)、クロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラクロロアルミン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、シュウ酸リチウム、チオシアン酸リチウム、テトラクロロ没食子酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、窒化リチウム、超酸化リチウム、リチウムアジド、デルタ酸リチウム、スクアリン酸二リチウム、クロコン酸リチウム二水和物、ロジゾン酸二リチウム、シュウ酸リチウム、ケトマロン酸二リチウム、ジ-ケトコハク酸リチウム、又はナトリウム若しくはマグネシウムと置換された正電荷リチウムカチオンと任意の対応する塩、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択され、更に有用な塩には、正電荷カチオンを持つもの、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム アンモニウム、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウム、1,1-ジメチルピロリジニウム、及び1,1-ジエチルピロリジニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N(2メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-フェニルエチルアンモニウム、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N-トリブチル-N-メチルアンモニウム、N-トリメチル-N-ヘキシルアンモニウム、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-(4-スルホブチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3H-イミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-プロピルイミダゾリウム、H-3-メチルイミダゾリウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、N-ブチル-N-メチルピペリジニウム、N-プロピル-N-メチルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-(2-メトキシエチル)ピロリジニウム、1-メチル-1-(3-メトキシプロピル)ピロリジニウム、1-メチル-1-オクチルピロリジニウム、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム、又はN-メチルピロリジニウムであって、アセテート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサレート)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、臭化物、塩化物、ジシアナミド、リン酸ジエチル、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素塩、ヨウ化物、メタンスルホネート、メチル-ホスホネート、テトラクロロアルミネート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、又はこれらの組合せ等の負電荷アニオンと対になったものが含まれる、方法。
【請求項6】
前記第2の電解質成分が、前記第1の混合物の地球温暖化係数(GWP)を、前記第1の電解質成分のみのGWPと比較して少なくとも10%低下させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(a)が、313.15Kで測定したとき、前記第1の電解質成分のみの前記蒸気圧と比較して少なくとも20%低い、前記第1の混合物の前記蒸気圧を実現する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)が、第4の電解質成分を混合することを更に含み、前記第4の成分が、線形エーテル、環状エーテル、線形カーボネート、環状カーボネート、ニトリル、ホスフェート、又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記電極が、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、炭素、活性炭、ケイ素、チタン酸リチウム、二硫化チタン、二硫化モリブデン、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸ニッケルリチウム、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、又は硫黄、酸素、二酸化炭素、窒素、二酸化硫黄、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物の化学物質を持つような化学反応電極、又はリチウム、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム金属、若しくはこれらの金属の合金、若しくはこれらの任意の組合せを持つ金属電極から構成される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記電気化学エネルギー貯蔵デバイスが、バッテリーである、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記電気化学エネルギー貯蔵デバイスが、キャパシタである、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
293.15Kの温度で、100kPaで脱気することになる安全な液化ガス電解質を持つ電気化学エネルギー貯蔵デバイスを構成する方法であって、
(a)(1)293.15Kで測定したとき、第1の電解質成分のみの蒸気圧と比較して少なくとも10%低い、第1の混合物の蒸気圧と、(2)293.15Kの温度で100kPaよりも上の前記第1の混合物の蒸気圧とを実現するように、第2の電解質成分と混合された前記第1の電解質成分から前記第1の混合物を形成することと、
(b)2つの電極と第3の電解質成分を持つセルハウジングを提供することと、
(c)(1)前記安全な液化ガス電解質が、前記第1の混合物を前記第3の電解質成分と混合することによって形成され、且つ(2)前記2つの電極が前記安全な液化ガス電解質に接触するように、前記第1の混合物を前記セルハウジングに添加することと、
(d)前記セルハウジングを密閉することと
を含み、
前記第1の電解質成分は、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、クロロメタン、クロロエタン、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化ホスホリル、ホスホリル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物、1-フルオロプロパン、2-フルオロプロパン、1,1-ジフルオロプロパン、1,2-ジフルオロプロパン、2,2-フルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,2,2-トリフルオロプロパン、フルオロエチレン、cis-1,2-フルオロエチレン、1,1-フルオロエチレン、1-フルオロプロピレン、2-プロピレン、塩素、クロロメタン、臭素、ヨウ素、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、分子状酸素、分子状窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、メチルビニルエーテル、ジフルオロエチレン、亜酸化窒素、二酸化窒素、酸化窒素、二硫化炭素、フッ化水素、水素、これらの異性体、又はこれらの組合せからなる群から選択され、
前記第2の成分は、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロプロパン、シクロプロパン、エテン、プロペン、ブテン、シクロブタン、シクロブテン、アセチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、これらの異性体、又はこれらの組合せからなる群から選択され、
前記第3の成分は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラガリウムアルミン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ヘキサフルオロスズ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムアルミニウムフッ化物(LiAlF3)、硝酸リチウム(LiNO3)、クロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラクロロアルミン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、シュウ酸リチウム、チオシアン酸リチウム、テトラクロロ没食子酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、窒化リチウム、超酸化リチウム、リチウムアジド、デルタ酸リチウム、スクアリン酸二リチウム、クロコン酸リチウム二水和物、ロジゾン酸二リチウム、シュウ酸リチウム、ケトマロン酸二リチウム、ジ-ケトコハク酸リチウム、又はナトリウム若しくはマグネシウムと置換された正電荷リチウムカチオンと任意の対応する塩、又はこれらの任意の組合せからなる群から選択され、更に有用な塩には、正電荷カチオンを持つもの、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム アンモニウム、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウム、1,1-ジメチルピロリジニウム、及び1,1-ジエチルピロリジニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N(2メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-フェニルエチルアンモニウム、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N-トリブチル-N-メチルアンモニウム、N-トリメチル-N-ヘキシルアンモニウム、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-(4-スルホブチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3H-イミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-プロピルイミダゾリウム、H-3-メチルイミダゾリウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、N-ブチル-N-メチルピペリジニウム、N-プロピル-N-メチルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-(2-メトキシエチル)ピロリジニウム、1-メチル-1-(3-メトキシプロピル)ピロリジニウム、1-メチル-1-オクチルピロリジニウム、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム、又はN-メチルピロリジニウムであって、アセテート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサレート)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、臭化物、塩化物、ジシアナミド、リン酸ジエチル、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素塩、ヨウ化物、メタンスルホネート、メチル-ホスホネート、テトラクロロアルミネート、テトラフルオロボレート、トリフルオロメタンスルホネート、又はこれらの組合せ等の負電荷アニオンと対になったものが含まれる、方法。
【請求項13】
圧縮ガス溶媒及び塩の混合物を含む、イオン伝導電解質であって、前記圧縮ガス溶媒が、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、クロロメタン、クロロエタン、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化ホスホリル、ホスホリル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物、1-フルオロプロパン、2-フルオロプロパン、1,1-ジフルオロプロパン、1,2-ジフルオロプロパン、2,2-フルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,2,2-トリフルオロプロパン、フルオロエチレン、cis-1,2-フルオロエチレン、1,1-フルオロエチレン、1-フルオロプロピレン、2-プロピレン、塩素、クロロメタン、臭素、ヨウ素、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、分子状酸素、分子状窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、メチルビニルエーテル、ジフルオロエチレン、亜酸化窒素、二酸化窒素、酸化窒素、二硫化炭素、フッ化水素、水素、及びこれらの異性体からなる群から選択される、イオン伝導電解質、
293.15Kの室温で、100kPaよりも高い圧力で前記圧縮ガス溶媒を維持するため、加圧条件下で前記イオン伝導電解質を包封するハウジング、
前記イオン伝導電解質に接触する2つの電極、及び
前記イオン伝導電解質に添加された炭化水素溶媒であって、(1)293.15Kで測定したときに、前記圧縮ガス溶媒のみの蒸気圧と比較して少なくとも10%、前記イオン伝導電解質の蒸気圧を低下させ、及び(2)293.15Kの温度で、100kPaよりも上の、組み合わされた前記イオン伝導電解質と炭化水素溶媒の圧力を実現する、炭化水素溶媒
を含む、エネルギー貯蔵デバイス。
【請求項14】
前記炭化水素溶媒が、前記イオン伝導電解質の地球温暖化係数(GWP)を、前記圧縮ガス溶媒のみの前記GWPと比較して少なくとも10%低下させる、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項15】
前記炭化水素溶媒が、313.15Kで測定したときに、前記圧縮ガス溶媒のみの前記蒸気圧と比較して少なくとも20%、前記イオン伝導電解質の前記蒸気圧を低下させる、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項16】
前記イオン伝導電解質に添加される追加の成分を更に含み、前記追加の成分が、線形エーテル、環状エーテル、線形カーボネート、環状カーボネート、ニトリル、ホスフェート、又はこれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項17】
前記炭化水素溶媒が、アルカン、アルケン、又はアルキレンである、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項18】
前記炭化水素溶媒が、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロプロパン、シクロプロパン、エテン、プロペン、ブテン、シクロブタン、シクロブテン、アセチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、これらの異性体、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項19】
炭化水素共溶媒が、質量で又はモル比で0.01百分率から99.99百分率の間の比で使用される、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項20】
前記電極が、黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、炭素、活性炭、ケイ素、チタン酸リチウム、二硫化チタン、二硫化モリブデン、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸ニッケルリチウム、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、又は硫黄、酸素、二酸化炭素、窒素、二酸化硫黄、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物の化学物質を持つような化学反応電極、又はリチウム、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム金属、若しくはこれらの金属の合金、若しくはこれらの任意の組合せを持つ金属電極から構成される、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項21】
前記エネルギー貯蔵デバイスがバッテリーである、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。
【請求項22】
エネルギー貯蔵デバイスがキャパシタである、請求項13に記載のエネルギー貯蔵デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.0 関連出願へのクロスリファレンス
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる2021年6月1日に出願された米国出願第63/195592号の、非仮出願として優先権を主張する。
【0002】
本出願は、参照によりそのそれぞれの全体が本明細書に組み込まれる出願及び特許:2020年3月31日に発行された米国特許第10,608,284号;2021年5月4日に発行された米国特許第10,988,143号;2020年9月22日に発行された米国特許第10,784,532号;2019年5月15日に出願されたPCT/US19/032413;2020年4月1日に出願されたPCT/US20/26086;2021年8月10日に発行された米国特許第11,088,396号;2021年6月29日に発行された米国特許第11,049,668号;2020年12月22日に発行された米国特許第10,873,070号;2019年10月28日に出願された米国出願第16/666155;2021年5月20日に出願された米国出願第17/326093号;2022年2月3日に出願された米国出願第63/306396号;及び2022年4月7日に出願された米国出願第63/328480号にも関する。
【0003】
2.0 連邦政府資金による研究開発の記載
本発明は、米国国立科学財団(NSF)によって授与されたグラント1831087の下、米国政府の支援によりなされた。米国政府は本発明においてある特定の権利を有する。
【0004】
3.0 発明の分野
本発明の実施形態は、バッテリー及び電気化学キャパシタ等の電気化学エネルギーデバイスで使用される、電解質の組成物及び化学配合物に関する。組成物及び組成物を使用する方法を使用するデバイスも提供される。
【背景技術】
【0005】
4.0 背景
バッテリー及び二重層キャパシタ等の電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、正極と負極との間で電荷を運ぶのにイオン伝導電解質溶液を利用する。典型的には、これらの電解質は、293.15Kの標準室温及び標準圧力(約1.01325bar)で液体である。電解質溶液は、溶媒、共溶媒、塩、及び改善されたデバイス性能のための追加の添加剤の、いくらかの量の混合物を使用する。しばしば、セル性能を改善する、塩及び追加の共溶媒を可溶化するのに使用される1種の一次溶媒がある。例えば、一般的な電解質溶媒は、Liイオンバッテリーセル用に炭酸エチレンを含む可能性があるが、とりわけ炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトニトリル、炭酸フルオロエチレン、及び炭酸ビニルの添加が、電解質の伝導率又はセルのサイクル寿命を改善するのに使用されてもよい。液化ガス電解質は、室温及び室内圧力で気状である溶媒及び共溶媒を利用するが、液相にある電解質溶媒として使用されてもよい。性能を強化する共溶媒を特定することは、液化ガス電解質の電気化学性能を改善するのに重要である。
【発明の概要】
【0006】
5.0 概要
本開示の実施形態は、化学配合物、電解質組成物、それを使用する電気化学デバイス、及びそれを使用する方法に関する。一部の開示された実施形態は、液化ガス溶媒を含む電解質用の新規な配合物に関する。
【0007】
一実施形態は:1種又は複数の液化ガス溶媒、1種又は複数の塩、及び1種又は複数の添加剤を含む、イオン伝導電解質;イオン伝導電解質を包封し且つ液化ガス溶媒に加圧状態を提供するように構造化された、ハウジング;及びイオン伝導電解質に接触する少なくとも2つの伝導電極を含む、再充電可能な電気化学デバイスに関する。合わせたときの1種又は複数の溶媒又は共溶媒は、まとめて液化ガス溶媒と呼んでもよい。合わせたときの1種又は複数の塩は、まとめて塩と呼んでもよい。合わせたときの1種又は複数の添加剤は、まとめて添加剤と呼んでもよい。溶媒及び塩は、合わせたときにまとめて電解質と呼んでもよい。溶媒、塩、及び添加剤は、合わせたときにまとめて電解質と呼んでもよい。
【0008】
一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、圧縮圧力が加えられたときの温度で、液化ガス溶媒の蒸気圧に等しい又はそれよりも大きい圧縮圧力下に置くことが可能であり、それによって液化ガス溶媒は液相に保持される。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、293.15Kの室温で100kPaの大気圧-即ち標準圧力及び温度-よりも上の蒸気圧を有する。
【0009】
一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、クロロメタン、クロロエタン、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化ホスホリル、ホスホリル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物、1-フルオロプロパン、2-フルオロプロパン、1,1-ジフルオロプロパン、1,2-ジフルオロプロパン、2,2-フルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,2,2-トリフルオロプロパン、フルオロエチレン、cis-1,2-フルオロエチレン、1,1-フルオロエチレン、1-フルオロプロピレン、2-プロピレン、塩素、クロロメタン、臭素、ヨウ素、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、分子状酸素、分子状窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、メチルビニルエーテル、ジフルオロエチレン、亜酸化窒素、二酸化窒素、酸化窒素、二硫化炭素、フッ化水素、塩化水素、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロプロパン、シクロプロパン、エテン、プロペン、ブテン、シクロブテン、アセチレン、これらの異性体、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数の材料を含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、二酸化炭素、及びn-ブタンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、及びプロパンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、二酸化炭素、及びiso-ブタンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、ジフルオロメタン、二酸化炭素、及びプロペンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、及びメタンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、ジメチルエーテル及びn-ブタンを含む。
【0010】
一部の実施形態では、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、及びこれらの異性体等の溶媒の成分は、室温及び大気圧で液体であってもよい。
【0011】
別の実施形態は、再充電可能なリチウムバッテリーに関する。再充電可能なリチウムバッテリーは、イオン伝導電解質を含んでもよい。イオン伝導電解質は、液化ガス溶媒を含んでもよい。イオン伝導電解質は、1種又は複数の塩を含んでもよい。一部の実施形態では、イオン伝導電解質は、非環状カーボネート、環状カーボネート、非環状エーテル、環状エーテル、ニトリル、ホスフェート、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数の気体、液体、又は固体添加剤を更に含んでもよい。一部の実施形態では、再充電可能なリチウムバッテリーはまた、2つの伝導電極及びイオン伝導電解質を包封するハウジングを含んでもよい。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、293.15Kの室温で100kPaの大気圧よりも上の蒸気圧を有する。一部のそのような実施形態では、液化ガス溶媒は、圧縮圧力が加えられたときの温度で液化ガス溶媒の蒸気圧に等しい又はそれよりも大きい圧縮圧力下に置くことが可能であってもよく、それによって液相に液化ガス溶媒が保持される。
【0012】
1種若しくは複数の液体成分、1種若しくは複数の固体成分、又は1種若しくは複数の塩成分の任意の組合せとの、1種又は複数の液化ガス成分から構成される液化ガス電解質を使用する例示的な電気化学デバイスでは、電極は、黒鉛、炭素、活性炭、酸化バナジウム、チタン酸リチウム、二硫化チタン、二硫化モリブデン、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸ニッケルリチウム、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、炭素等のインターカレーション型の2つの電極、又は硫黄、酸素、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、二酸化硫黄、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物の化学物質を持つような化学反応電極、又は活性炭、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン等の高表面積導電性材料を使用する静電電極、又はリチウム、ナトリウム、マグネシウム、スズ、アルミニウム、カルシウム、チタン亜鉛金属、若しくはリチウム、ナトリウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、亜鉛を含む金属合金、若しくはこれらの任意の組合せを持つ金属電極の、任意の組合せから構成される。これらの成分は、電極の構造的一体性を維持するために、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、又はポリテトラフルオロエチレンを含む様々な結合剤ポリマー成分と組み合わされてもよい。
【0013】
一部の実施形態では、添加剤は、液化ガス溶媒、及びリチウム、ナトリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、又はチタン系の塩と組み合わせて使用される。更に1種又は複数の液化ガス溶媒溶液又は電解質は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラガリウムアルミン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ヘキサフルオロスズ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムアルミニウムフッ化物(LiAlF3)、硝酸リチウム(LiNO3)、クロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラクロロアルミン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、シュウ酸リチウム、チオシアン酸リチウム、テトラクロロ没食子酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、窒化リチウム、超酸化リチウム、リチウムアジド、デルタ酸リチウム、スクアリン酸二リチウム、クロコン酸リチウム二水和物、ロジゾン酸二リチウム、シュウ酸リチウム、ケトマロン酸二リチウム、ジ-ケトコハク酸リチウム、又はナトリウム若しくはマグネシウムと置換された正電荷リチウムカチオンと任意の対応する塩、又はこれらの任意の組合せの1種又は複数を含む、1種又は複数の塩と組み合わされてもよい。更に有用な塩には、正電荷カチオンを持つもの、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム アンモニウム、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウム、1,1-ジメチルピロリジニウム、及び1,1-ジエチルピロリジニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N(2-メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-フェニルエチルアンモニウム、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N-トリブチル-N-メチルアンモニウム、N-トリメチル-N-ヘキシルアンモニウム、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-(4-スルホブチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3H-イミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-プロピルイミダゾリウム、H-3-メチルイミダゾリウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、N-ブチル-N-メチルピペリジニウム、N-プロピル-N-メチルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-(2-メトキシエチル)ピロリジニウム、1-メチル-1-(3-メトキシプロピル)ピロリジニウム、1-メチル-1-オクチルピロリジニウム、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム、又はN-メチルピロリジニウムであって、アセテート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサレート)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、臭化物、塩化物、ジシアナミド、リン酸ジエチル、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素塩、ヨウ化物、メタンスルホネート、メチル-ホスホネート、テトラクロロアルミネート、テトラフルオロボレート、及びトリフルオロメタンスルホネート等の負電荷アニオンと対になったものが含まれる。本明細書に記述される代替の又は追加の実施形態は、前述の又は本明細書の他の箇所の任意の記述の特徴の1つ又は複数を含む、電解質組成物を提供する。
【0014】
100kPaの圧力及び293.15Kの温度で液体状態から気体状態に遷移する(「脱気」)液化ガス溶媒を含む安全な電解質が、更に開示される。第1の混合物は、第2の電解質成分(1種又は複数の炭化水素共溶媒)と混合された第1の電解質成分(1種又は複数の溶媒)から形成される。第2の電解質成分の添加は、(1)293.15Kで測定したとき、第1の成分のみの蒸気圧と比較して少なくとも10%、第1の混合物の蒸気圧を低下させ;及び(2)293.15Kの温度で100kPaよりも上の第1の混合物の蒸気圧をもたらす。第2の電解質成分の添加は、第1の成分のみの地球温暖化係数(GWP)と比較して少なくとも10%、第1の混合物のGWPも低下させ得る。安全な液化ガス電解質は、第3の電解質成分(1種又は複数の塩)を第1の混合物に混合することによって形成される。次いでこの安全な液化ガス電解質を、電気化学エネルギー貯蔵デバイスを製造するのに使用してもよい。
【0015】
本明細書に記述される代替の又は追加の実施形態は、前述の又は本明細書の他の箇所の任意の記述の特徴の1つ又は複数を含む、電解質組成物又はデバイスを使用する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
6.0 図面の簡単な説明
図1】様々な液化ガス電解質の圧力、電解質1:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを90モル部のフルオロメタン及び10モル部の二酸化炭素に加えたものの圧力(実線)、電解質2:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のフルオロメタン、50モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものの圧力(破線)を、比較する図である。
図2】様々な液化ガス電解質の圧力、電解質1:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを90モル部のジフルオロメタン及び10モル部の二酸化炭素に加えたものの圧力(実線)、電解質2:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のジフルオロメタン、50モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものの圧力(破線)を、比較する図である。
図3】リチウム金属アノード、ステンレス鋼対電極、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを75モル部のフルオロメタン、15モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図4】リチウム金属アノード、ステンレス鋼対電極、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを90モル部のフルオロメタン及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図5】様々な液化ガス電解質、電解質1:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のフルオロメタン、50モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたもの、電解質2:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のジフルオロメタン、50モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたもの、電解質3:1.0M LiTFSI及び2.0M 炭酸フルオロエチレンを45モル部のジフルオロメタン、45モル部のフルオロメタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものの電解質伝導率を示す図である。
図6】リチウム金属アノード、黒鉛カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを40モル部のフルオロメタン、50モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図7】リチウム金属アノード、黒鉛カソード、並びに1.0M LiTFSI及び1.0Mリン酸トリメチルを45モル部のジフルオロメタン、45モル部のフルオロメタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図8】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを90モル部のフルオロメタン及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図9】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを80モル部のフルオロメタン、10モル部のiso-ブタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図10】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを80モル部のフルオロメタン、10モル部のn-ブタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図11】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを70モル部のジフルオロメタン、20モル部のn-ブタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図12】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のフルオロメタン、50モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図13】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のフルオロメタン、50モル部のプロペン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図14】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを35モル部のジフルオロメタン、60モル部のプロパン、及び5モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用する、バッテリーコインセルの性能を示す図である。
図15】リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに様々な電解質、電解質1:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチル(TMP)を90モル部のフルオロメタン及び10モル部の二酸化炭素に加えたもの、電解質2:1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを35モル部のジフルオロメタン、60モル部のプロパン、及び5モル部の二酸化炭素に加えたものを使用する、2つのバッテリーコインセルの性能を示す図である。
図16】0.0、0.1、0.5、1.0、又は1.5M LiTFSI塩のいずれかを含有する3種の電解質の蒸気圧を示す図であり、塩濃度が電解質の蒸気圧に変化をもたらさず又は十分に測定の不確実性の範囲内にあることを、更に実証する。
図17】2Ahセルが加熱されたときのセルの電圧及び温度データを提示する図である。
図18】2Ahセルが過充電されたときのセルの電圧及び温度データを提示する図である。
図19】2Ahセルがクラッシュしたときのセルの電圧及び温度データを提示する図である。
図20A】安全な液化ガス電解質で電気化学エネルギー貯蔵デバイスを構成するための方法を提示する図である。
図20B】安全な液化ガス電解質で電気化学エネルギー貯蔵デバイスを構成するための代替の方法を提示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
7.0 詳細な説明
本明細書では、本発明を実施するために本発明者により企図される任意の最良の形態を含む、本発明の一部の特定の実施例を参照する。これらの特定の実施形態の実施例を、添付される図に例示する。本発明は、これらの特定の実施形態と併せて記述されるが、それらは本発明を、記述される又は図示される実施形態に限定するものではないことが理解されよう。対照的に、それらは、添付される特許請求の範囲により定義される本発明の精神及び範囲内に含まれ得るとして代替例、修正例、及び均等物を包含するものとする。
【0018】
以下の記述では、本発明の完全な理解をもたらすために、数多くの特定の詳細が述べられる。本発明の特定の例示的な実施形態は、これらの特定の詳細の一部又は全てなしで実現され得る。その他の場合には、当業者に周知のプロセス操作は、本発明を不必要に曖昧にしないように、詳述されていない。本発明の様々な技法及びメカニズムは、明瞭にするために、時々、単数形で記述されることになる。しかしながら、一部の実施形態は、他に記述されない限り、技法又は多数のメカニズムの多数の繰返しを含むことに留意すべきである。同様に、本明細書に示され記述される方法の様々なステップは、ある特定の実施形態では、示される順序で必ずしも行われず又は全く行われない。したがって本明細書に論じられる方法の一部の実現例は、図示され又は記述されるものよりも多くの又は少ないステップを含んでもよい。更に本発明の技法及びメカニズムは、時々、2つ又はそれよりも多くの実体の間の接続、関係、又は連絡を記述することになる。実体間の接続又は関係は、様々なその他の実体又はプロセスが任意の2つの実体間に在り又は生ずる可能性があるので、直接的な妨げられない接続を必ずしも意味しないことに留意すべきである。その結果、示される接続は、他に記述されない限り、直接的な妨げられない接続を必ずしも意味しない。
【0019】
バッテリー及び二重層キャパシタ等の電気化学エネルギー貯蔵デバイスは、正極と負極との間で電荷を運ぶのに、イオン伝導電解質溶液を利用する。典型的には、これらの電解質は、293.15Kの標準室温及び標準圧力(約1.01325bar)で液体である。電解質溶液は、改善されたデバイス性能のため、いくらかの量の溶媒、共溶媒、1種又は複数の塩、及び1種又は複数の追加の添加剤の混合物を使用する。しばしば、セル性能を改善する塩及び追加の共溶媒を可溶化するのに使用される、1種の一次溶媒がある。例えば一般的な電解質溶媒は、Liイオンバッテリーセル用に炭酸エチレンを含んでもよいが、とりわけ炭酸ジメチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、アセトニトリル、炭酸フルオロエチレン、及び炭酸ビニルの添加は、電解質の伝導率又はセルのサイクル寿命を改善するのに使用されてもよい。液化ガス電解質は、温度を低下させることによって又は溶媒をそれ自体の蒸気圧下で保持することによって、室温及び室内圧力で気状であるが液相の電解質溶媒として使用されてもよい溶媒及び共溶媒を利用する。性能強化共溶媒の特定は、液化ガス電解質の電気化学性能を改善するのに重要である。
【0020】
液化ガス電解質は、リチウムバッテリー又は電気化学キャパシタ等の電気化学デバイスで塩を可溶化するのに、一次溶媒としてフルオロメタン又はジフルオロメタンを使用してもよい。しかしながらこれらの溶媒は、典型的には高い蒸気圧及び高い地球温暖化係数(GWP)を有する。例えば293.15Kの室温で、フルオロメタン及びジフルオロメタンの蒸気圧はそれぞれ約493及び214psiである。フルオロメタン及びジフルオロメタンのGWP(地球温暖化係数、多数の二酸化炭素地球温暖化係数)は、それぞれ約92及び675である。より低い圧力、より低いGWP、又は両方で電気化学デバイスセルを動作させることが有益と考えられる。より低い圧力は、セルを配置し且つ液化ガス電解質を収容するのに、より薄い金属ハウジングを使用することによって機械的包装負荷を低下させると考えられる。より低いGWPは、より環境に優しいと考えられる。
【0021】
理想的に液化したガス電解質は、圧力を低下させること、GWPを低下させること、又はその両方に加えて、セルの性能に対して化学的に有益と考えられる共溶媒を使用すると考えられる。しばしば、アノード又はカソード上のいずれかでの固体電解質界面(SEI)の形成に有益な共溶媒が、特定される。しかしながら、化学的に不活性な共溶媒は、セル性能を劣化させ得る、電解質と電極との間でのセル内の化学反応を低下させる点が、有益とも考えられる。
【0022】
リチウム金属の高い反応性により、高エネルギーリチウムバッテリーセルのアノードとして使用することが難しい。リチウム金属は、キャパシティの重量に対する比が高いが、電解質との反応速度が高くなるという難点がある。セルサイクル中、リチウム金属の表面のSEI層は、亀裂が生じる可能性があり、新たにリチウム金属が露出して電解質と反応し、セルの効率を低下させ且つサイクル寿命を低下させることになる。セル効率及びサイクル寿命を増大させるため、その溶媒がリチウム金属に対して更に低い反応性を有する電解質を有することが、有益と考えられる。リチウムバッテリーと同様に、ナトリウム、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、及びカリウム、又はそれらの合金は全て、電極としてバッテリー内で使用されてもよく、より低い反応性の電解質溶媒から利益を得ると考えられる。
【0023】
一部の化学的に不活性な共溶媒は、炭化水素溶媒を含み得る。炭化水素溶媒は、非常に低い電気化学反応性を有し、安定である。これらの炭化水素溶媒は、メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロプロパン、シクロプロパン、エテン、プロペン、ブテン、シクロブテン、シクロブテン、アセチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、これらの異性体、及びこれらの組合せを含んでもよい。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、二酸化炭素、及びn-ブタンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、及びプロパンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、ジフルオロメタン、二酸化炭素、及びiso-ブタンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、ジフルオロメタン、二酸化炭素、及びプロペンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、フルオロメタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、及びメタンを含む。一部の実施形態では、液化ガス溶媒は、ジメチルエーテル及びn-ブタンを含む。
【0024】
それらの低い化学反応性により、ナトリウム及びリチウム金属等の高度に反応性のあるアルカリ又はアルカリ金属は、炭化水素溶媒又は長鎖炭化水素溶媒の混合物である鉱油中でしばしば輸送される。ブチルリチウム等のその他の高度に反応性のある化合物も、ヘキサン等の炭化水素溶媒中に貯蔵される。
【0025】
液化ガス電解質中で使用され得る炭化水素溶媒は、飽和又は不飽和炭化水素を含んでもよい。これはアルカン、アルケン、又はアルキレンを含んでもよい。これは更に、293.15Kの標準室温及び標準圧力(約1.01325bar)で気状又は非気状の炭化水素を含んでもよい。
【0026】
液化ガス電解質中の炭化水素溶媒の使用は、より低い蒸気圧、より低いGWP、及びより高い化学安定性等、電解質の性質を改善し得る。これは炭化水素液化ガス溶媒の多くが、その他の液化ガス溶媒(例えば、フルオロメタン、二酸化炭素)よりも低い蒸気圧を有するからである。更に炭化水素溶媒は、全電解質のGWPを実質的に低下させ得る、ゼロに近いGWPを有する。最後に、電解質に炭化水素溶媒を添加することは、電解質中の更に化学的に活性な種の量を低下させることにより、全電解質溶液の化学安定性を改善するのを助けることになる。
【0027】
液化ガス電解質の圧力を低下させることは、機械設計の観点から利益を得ることができる。高過ぎる蒸気圧を持つ電解質では、セルハウジングは、圧力を支持するのに更に厚い壁を必要とし得るが、それは更に厚い壁がセルハウジングに対して付加された強度を与えるからである。セルハウジングは、セルの寿命中に良好な密閉と漏洩がないこととを確実にするのに、より厚い壁を必要とすることになる。より厚い壁は、容積を付加し、質量を付加し、セルのコストがかかる等、それほど望ましくない特徴である。或いは、ステンレス鋼、チタン等、より強力な金属が、より薄い壁で使用されてもよいが、セルに対してコストがかかる。このように、電解質の蒸気圧を低下させることは、有益な性質を有することができる。機械的セルハウジングに対するそれほど厳しくない要件は、約100kPaの蒸気圧、又はより望ましくは100kPaから100MPaの間の蒸気圧、又はより望ましくは0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10MPaの蒸気圧を、293.15Kの室温で有する液化ガス電解質の低減した蒸気圧で実現され得る。
【0028】
加圧された電解質系を有することは、いくつかの理由で電気化学デバイスに有益にもできることが見出された。液体系電解質による標準的な製造中、セルは最初に真空状態に置かれ、その後、セル内への液体電解質注入が行われ、その後、数時間、セルの全ての電極及びセパレーター表面が完全に濡れるのを待つ。しばしば、セルは最初の電解質注入ステップを受け、その後、電解質で濡らす待機時間があり、その後、完全な濡れ性を確実にするよう2回目の電解質注入ステップがある。完全湿潤が生じるまで、セルは充電される準備ができない。更に、完全に湿潤していないセルは、より高いセルコストを必要とする、製造プロセスにおけるスクラップ率の主な原因である。加圧された液化ガス電解質により、電極及びセパレーターの全ての面に浸透する電解質の高い圧力に起因して、セルは素早く濡れる。この湿潤プロセスは、数時間とは対照的に数秒で生じ、製造時間及びコストを削減する。更にこのことは、完全に濡れたセルにおいて更に高い信頼性を可能にし、スクラップ率を低減させ、したがってセル製造の全体的なコストが削減される。湿潤プロセスは、約100kPaの蒸気圧、又はより望ましくは100kPaから100MPaの間の蒸気圧、又はより望ましくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10MPaの蒸気圧を293.15Kの室温で有する、加圧された電解質を使用することによって、高めることができる。
【0029】
加圧された電解質を有することの別の有益な性質は、物理的又は電気的セルの乱用からの安全性の危険のリスクを低減させる。一般的なLiイオンバッテリーセルでは、温度過上昇、過充電、クラッシュ、釘刺し、又は短絡事象等の物理的又は電気的乱用の下で熱暴走反応を見ることが一般的である。これは比較的低い温度で、例えば約+100℃で誘発され得るセル内の発熱反応に起因する。この「熱暴走発生温度」は、これらの追加の発熱反応を誘発させ、次いでセルを発火させ爆発させて深刻な安全性及び健康上の懸念を引き起こす。更に、1つのセルから発生した熱は、隣接するセルにも伝播し、そのセルも熱暴走へと誘導し、熱伝播事象をバッテリーパック全体にわたり創出させる。可燃性液体電解質は一般に、これらの熱暴走反応を推進させる極めて重要な構成成分である。セルが、電解質の自己燃焼温度まで温まると、爆発反応が生じ得る。更に、短絡したセルは、アノードとカソードとの間に電気及びイオン経路の両方を必要とする。電解質はセル内にイオンを保持し、したがってセル短絡に寄与する。
【0030】
対照的に、加圧された液化ガス電解質系には、物理的又は電気的乱用の下、セルが所定の排出温度まで温まる可能性があり、そのときにセルは加圧された液化ガス溶媒又は液化ガス電解質を大気中に排出させ、いかなる可燃性又はイオン伝導電解質も含まない「乾燥セル」を残すという、安全上の利点がある。排出されると、セルは、いかなる熱暴走反応も引き起こさずにフェイルセーフ動作することが可能となる。例えば温度過上昇の条件下、セルは、+240℃まで温まる可能性がある。+200℃の温度に達する前に、セルは排出温度と交差してもよく、その時点でセル内の液化ガス電解質の蒸気圧が、セル上に設計製作された排出を引き起こして開放し且つ圧力及び電解質材料を放出するのに十分高い圧力に到達する。熱暴走温度、例えば+100℃よりも低い排出温度、例えば+80℃が理想的であり、したがって可燃性電解質は、任意の熱暴走反応が生じる前にセルから排出され、セルを、+240℃程度に高い温度であってもフェイルセーフ動作させ得る。同様にセルは、過充電され、過充電事象中に温まる可能性がある。セルが排出温度に到達すると、液化ガス電解質はセルから放出されることになり、セルはフェイルセーフ動作する。同様に短絡事象中、セルは、高い放電電流に起因して急速に温まる可能性がある。セルが排出温度まで温まると、液化ガス電解質はセルから排出される可能性があり、セルは、熱暴走に進行するのではなくフェイルセーフ動作することができる。液化ガス電解質を使用するセルは、温度で誘発された排出なしでフェイルセーフ動作もし得る。例えば、クラッシュ又は投射貫通事象中、セルハウジングは破断し且つ加圧された液化ガス電解質をセルから破断ハウジングを通して大気に排出させると共にセル温度を約293.15Kの室温近くで維持し得る。セルで使用される従来の液体電解質では、セルがクラッシュ又は投射貫通事象中に短絡する可能性があり且つ過熱されてセルを熱暴走させ得るという、高い可能性がある。液化ガス電解質(約293.15Kの室温で100kPaを超える蒸気圧を有するものを含む)では、電解質から破断したセルハウジングを通した大気への排出又は脱気は、可能性のある短絡事象とは無関係にセルをフェイルセーフ動作させる。
【0031】
全てのシナリオにおいて、任意の熱暴走事象の可能性を最小限に抑えるため、物理的又は電気的乱用条件下、全ての液化ガス電解質のセルからの急速な排出を有することは非常に望ましい。液化ガス電解質をセルから排出するのに要する時間を低減させるため、より高い蒸気圧の電解質が望ましい。電解質の蒸気圧が低過ぎると、電解質はセルから、熱暴走を防止するように又は電解質が自己発火に到達し発火して火災の危険を引き起こすのを防止するように、十分速く排出できない。更に排出後、セルは、液体から気状に変化する液化ガス相によって引き起こされた蒸発の熱に起因して、温度を低下させ得る。セルの温度が十分に低下した場合、セルからの電解質の排出が停止するよう十分に蒸気圧を低下させる可能性があり、更なる危険が創出される可能性がある。したがって、液化ガス電解質は、セルから急速に排出するのに十分な蒸気圧を有することが望ましい。したがって電解質のこの蒸気圧は、293.15Kの室温で、約100kPa、又はより望ましくは100kPaから100MPaの間の蒸気圧、又はより望ましくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10MPaであり得る。セルは、任意の気状、液体、若しくは固体成分を含有する液化ガス電解質の内容物全体、又は液化ガス溶媒及び液体成分のみ、又は液化ガス溶媒成分のみ、又はセルからの部分成分の任意の組合せを排出し得ると理解すべきである。電解質の部分排出であっても、物理的又は電気的乱用条件下でセルのフェイルセーフ動作をもたらすことができる。
【0032】
低減した及び増大した蒸気圧の電解質の両方に、利益がある。低減した蒸気圧の液化ガス電解質は、機械的ハウジング要件を低下させることができ、より低い質量、より低い容積、及びより低いコストのセルを可能にする。より高い蒸気圧の液化ガス電解質は、製造中のセルの濡れ性を改善し、製造時間、コスト、及びスクラップ率を低減させると共に、温度過上昇、過充電、クラッシュ、釘刺し、又は短絡事象中等の物理的又は電気的乱用下でセルの安全性を改善する。したがって慎重な実験を通して、液化ガス電解質は、最適化されたセル性能にとって高過ぎない且つ低過ぎない理想的な蒸気圧を有するように最適化され得る。この実験は、ジメチルエーテル、メチルエチルエーテル、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、フルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,2-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2-トリフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、クロロメタン、クロロエタン、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化ホスホリル、ホスホリル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物、1-フルオロプロパン、2-フルオロプロパン、1,1-ジフルオロプロパン、1,2-ジフルオロプロパン、2,2-フルオロプロパン、1,1,1-トリフルオロプロパン、1,1,2-トリフルオロプロパン、1,2,2-トリフルオロプロパン、フルオロエチレン、cis-1,2-フルオロエチレン、1,1-フルオロエチレン、1-フルオロプロピレン、2-プロピレン、塩素、クロロメタン、臭素、ヨウ素、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、分子状酸素、分子状窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、二酸化硫黄、メチルビニルエーテル、ジフルオロエチレン、亜酸化窒素、二酸化窒素、酸化窒素、二硫化炭素、フッ化水素、水素、及びこれらの異性体、及びこれらの組合せ等の液化ガス溶媒で、並びにセル性能を最適化するために蒸気圧を低下させ又は増大させる炭化水素溶媒の添加で開始し得る。炭化水素溶媒の添加は、約100kPaの蒸気圧、又はより望ましくは100kPaから100MPaの間の蒸気圧、又はより望ましくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、9、10MPaを293.15Kの室温で実現するために、液化ガス電解質蒸気圧を修正し得る。これは液化ガス電解質の1Kから1000Kの任意の温度で、0.1%から99.9%の蒸気圧の増大又は低下に等しくなり得る。より望ましくは、液化電解質蒸気圧の増大又は低下は、293.15Kの室温で約0.1、1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、59、60、61、65、70、75、80、90、95、99、又は99.9%であってもよい。
【0033】
炭化水素は、改善された化学安定性を電解質に与え且つ比較的安価であるので、使用される理想的な材料である。しかしながら、液化ガス電解質への任意の炭化水素の添加は、いくらかの可燃性を液化ガス電解質系に常に与えることになるのを留意されたい。これはしばしば、炭化水素の概して低い引火点に起因して、電解質の、それほど望ましくない更に低い引火点(材料の蒸気が発火し得る最低温度)をもたらす。これらの炭化水素を液化ガス電解質に添加することによる更に低い引火点であっても、上記にて論じた、改善された安全性、製造可能性、性能、より低いGWP等の改善された特徴は、今日の産業で望まれる非常に望ましい態様を与える。
【0034】
炭化水素溶媒の、液化ガス電解質溶媒に対する質量比は、電解質の残りと比較したとき、質量により又はモル比により0.01百分率から99.99百分率のどこかであってもよい。溶解度を高め、相分離を最小限に抑え、伝導率を最大限にし、及びセル性能を最大限にするために、溶媒、炭化水素共溶媒、塩、及び1種又は複数の添加剤の比は、かなりの実験を通してのみ見出される。炭化水素溶媒の添加は、炭化水素溶媒を添加しない電解質と同じセル性能を維持しつつ、より低い蒸気圧又はより低いGWPを通して、電解質にも利益を与える可能性がある。
【0035】
炭化水素等の無極性溶媒の、電解質中への添加は、電解質の全体的な溶解度を低下させる可能性がある。いくつかの研究は、塩の溶解度を最適化するために、どの炭化水素が何パーセント電解質に添加できるかを決定するために実行された。相分離(流体の高密度及び低密度領域で明らかな分離がある)、蒸気圧、及びGWP等のその他のパラメーターを、表1-1、1-2に記録する。様々な電解質を含有する、ガラス窓があるステンレス鋼セルを組み立て、様々な電解質配合物中の塩の溶解度を研究した。以下の表1-1、1-2は、293.15Kで様々な電解質配合物に関して観察された溶解度を提示する。予測されるように、炭化水素溶媒の無極性の性質に起因して、リチウム塩は、添加剤が高められたとしても可溶化に問題がある。しかしながら、フルオロメタン、ジフルオロメタン、又はフルオロメタン及びジフルオロメタンの両方を含有する混合物中で共溶媒として使用されるとき、塩の溶解度が高められる。相分離は、塩、添加剤、及び溶媒系の不十分な混和性を示す、液化ガス電解質の様々な組合せで生じる可能性があることは、既に記述されている。これらの溶解度実験は、塩の溶媒和構造の慎重な制御が、高い塩溶解度及び相分離の不在を持つ電解質混合物を創出するのに重要であることを強調する。そのようにすることで、炭化水素溶媒の比を調整することができ、溶媒混合物の0.01から99.99パーセントであることが実証される。表1-1、1-2は、固定された塩濃度の目的で、標準として1Mの塩を使用するが、高い又は更に低い濃度を慎重に探り、0.001から5Mの塩溶解度が様々な結果で観察された。しかしながら、塩濃度がない状態では、塩は、1種又は複数の炭化水素溶媒のみから構成される任意の溶媒中に可溶になることがわかることが示された。更に、1種又は複数の炭化水素系溶媒及び塩の溶解度を改善するための液体添加剤のみから構成される溶媒の混合物では、塩の溶解度がなく又は強力な相分離があることが一貫して観察された。更に、1種又は複数の炭化水素系溶媒及び塩と、塩の溶解度を改善する液体添加剤のある又はないもののみから構成される溶媒の混合物では、1種又は複数の炭化水素溶媒のみから構成される純粋な溶媒に対して蒸気圧の低下がないことが、一貫して観察された。
【表1-1】
【表1-2】
【0036】
リチウム金属の高い反応性により、高エネルギーリチウムバッテリーセルのアノードとして使用することが難しい。炭化水素溶媒等の化学的に不活性な共溶媒を含む利点を実証するため、Li金属を様々な溶媒及び電解質混合物中に24時間貯蔵し、有害な副反応に関して目視検査した。液体炭化水素類似体(即ち、ヘキサン)と同様に、リチウム金属は、液化ガス炭化水素溶媒と、共溶媒として炭化水素を含む液化ガス系電解質とに、いかなる有害な副反応もなしに貯蔵することができる。293.15Kで24時間、様々な溶媒及び電解質に浸漬した後のリチウム金属の観察を、表2に示す。
【表2】
【0037】
1種若しくは複数の液体成分、1種若しくは複数の固体成分、又は1種若しくは複数の塩成分の任意の組合せと共に1種又は複数の液化ガス成分から構成される液化ガス電解質を使用する例示的な電気化学デバイスでは、電極は、黒鉛、炭素、活性炭、チタン酸リチウム、二硫化チタン、二硫化モリブデン、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸ニッケルリチウム、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物等のインターカレーション型の2つの電極、又は硫黄、酸素、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素、二酸化硫黄、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物の化学物質を持つような化学反応電極、又はリチウム、ナトリウム、マグネシウム、スズ、アルミニウム、亜鉛金属、若しくはリチウム、ナトリウム、スズ、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、を含む金属合金、若しくはこれらの任意の組合せを持つ金属電極の、任意の組合せから構成される。これらの成分は、電極の構造的一体性を維持するために、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、又はポリテトラフルオロエチレンを含む様々な結合剤ポリマー成分と組み合わされてもよい。
【0038】
更に、1種又は複数の液化ガス溶媒溶液又は電解質は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF6)、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4)、テトラガリウムアルミン酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiBOB)、ヘキサフルオロスズ酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウムアルミニウムフッ化物(LiAlF3)、硝酸リチウム(LiNO3)、クロロアルミン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラクロロアルミン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、ホウ酸リチウム、シュウ酸リチウム、チオシアン酸リチウム、テトラクロロ没食子酸リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、炭酸リチウム、フッ化リチウム、酸化リチウム、水酸化リチウム、窒化リチウム、超酸化リチウム、リチウムアジド、デルタ酸リチウム、スクアリン酸二リチウム、クロコン酸リチウム二水和物、ロジゾン酸二リチウム、シュウ酸リチウム、ケトマロン酸二リチウム、ジ-ケトコハク酸リチウム、又はナトリウム若しくはマグネシウムと置換された正電荷リチウムカチオンとの任意の対応する塩、又はこれらの任意の組合せの1種又は複数を含む、1種又は複数の塩と組み合わされてもよい。更に有用な塩には、正電荷カチオンを持つもの、例えばテトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム アンモニウム、スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウム、1,1-ジメチルピロリジニウム、及び1,1-ジエチルピロリジニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N(2メトキシエチル)アンモニウム、N,N-ジエチル-N-メチル-N-プロピルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-(3-メトキシプロピル)アンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-ベンジルアンモニウム、N,N-ジメチル-N-エチル-N-フェニルエチルアンモニウム、N-エチル-N,N-ジメチル-N-(2-メトキシエチル)アンモニウム、N-トリブチル-N-メチルアンモニウム、N-トリメチル-N-ヘキシルアンモニウム、N-トリメチル-N-ブチルアンモニウム、N-トリメチル-N-プロピルアンモニウム、1,3-ジメチルイミダゾリウム、1-(4-スルホブチル)-3-メチルイミダゾリウム、1-アリル-3H-イミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、3-メチル-1-プロピルイミダゾリウム、H-3-メチルイミダゾリウム、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム、N-ブチル-N-メチルピペリジニウム、N-プロピル-N-メチルピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-メチル-1-(2-メトキシエチル)ピロリジニウム、1-メチル-1-(3-メトキシプロピル)ピロリジニウム、1-メチル-1-オクチルピロリジニウム、1-メチル-1-ペンチルピロリジニウム、又はN-メチルピロリジニウムであって、アセテート、ビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(オキサレート)ボレート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、臭化物、塩化物、ジシアナミド、リン酸ジエチル、ヘキサフルオロホスフェート、硫酸水素塩、ヨウ化物、メタンスルホネート、メチル-ホスホネート、テトラクロロアルミネート、テトラフルオロボレート、及びトリフルオロメタンスルホネート等の負電荷アニオンと対になったものが含まれる。
【実施例
【0039】
実施例1
バッテリーセルのフルオロメタンの一部分を、プロパン等の炭化水素共溶媒と置き換えることは、図1(フルオロメタン)及び図2(ジフルオロメタン)に示されるように、より低い蒸気圧及びGWPを有する等、セルに有益な効果をもたらすと考えられる。圧力測定を、様々な電解質配合物に関して実行した。炭化水素溶媒(プロパン)を持つ電解質は、炭化水素共溶媒のないフルオロメタンよりも低い蒸気圧及び低いGWPを有することが示される。特に電解質混合物のGWPは、炭化水素共溶媒のないフルオロメタンと比較して54%低減した。また、電解質混合物の蒸気圧は、炭化水素共溶媒のないフルオロメタンと比較して、40%(293.15Kで)及び45%(313.15Kで)低減した。これを図1に示す。同様に、電解質混合物のGWPは、炭化水素共溶媒のないジ-フルオロメタンと比較して44%低減した。また、電解質混合物の蒸気圧も、炭化水素共溶媒のないジ-フルオロメタンと比較して15%(293.15Kで)及び28%(313.15Kで)低減した。これを図2に示す。
【0040】
GWPは、質量当たりのCO換算値(CO eq/kg)として測定される。低い又はゼロのGWPを持つ1種又は複数の炭化水素溶媒の、より高いGWPを持つ第1の電解質混合物への添加は、最終電解質のより大きい質量を超えるGWPの希釈によって、最終混合物の過大GWPを低下させることになる。GWP効果の低下は、炭化水素共溶媒の量を調節することによって又は使用される炭化水素共溶媒のタイプを変化させることによって、微細に調整することができる。使用され得るその他の炭化水素共溶媒には:メタン、エタン、プロパン、n-ブタン、iso-ブタン、シクロプロパン、シクロプロパン、エテン、プロペン、ブテン、シクロブタン、シクロブテン、アセチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、これらの異性体、及びこれらの組合せが含まれる。好ましくは、使用される炭化水素溶媒の量及びタイプは、混合物(即ち、溶媒に共溶媒を加えたもの)のGWPを、炭化水素共溶媒のない溶媒と比較して少なくとも10%低下させる。
【0041】
蒸気圧を低下させる際の改善は、電気化学エネルギー貯蔵デバイスの動作温度範囲全体にわたり増大させ、セルハウジングの圧力要件を著しく低減させる。より厚いセル壁は、容積、質量、及びセルのコストを増加させるので、それほど望ましくない。或いは、ステンレス鋼、チタン等、より強力な金属がより薄い壁で使用され得るが、セルにかかるコストが増加する。したがって、図1及び図2に示されるように、動作温度全体にわたる電解質の蒸気圧の低下は、有益な性質を有することになる。
【0042】
実施例2
フルオロメタンの代わりのプロパンの使用は、表2に示されるように、電解質溶液中のリチウム金属の安定性を改善する。これは更に、リチウム金属を持つ電解質の相対的な安定性を決定するため実行されるリチウム金属メッキ剥離試験で示される。リチウム金属アノード及びステンレス鋼対電極から構成されるバッテリーコインセルを構築し、リチウム金属メッキ及び剥離を試験するのに使用した。セルを使用して、4.0mAh/cmリチウム金属を、ステンレス鋼作用電極に、0.5mA/cmの電流でメッキした。その後、0.5mAh/cmのリチウム金属を剥離し、0.5mA/cmの電流で50サイクルにわたりメッキした。最後に、残りのリチウム金属を1.0Vの高電圧カットオフまで剥離して、平均リチウムメッキ及び剥離サイクル効率を決定した。これらの試験結果を図3(炭化水素溶媒を持つ)及び図4(炭化水素溶媒がない)に示し、炭化水素溶媒の添加はセルのクーロン効率(CE)を改善することが示される。過電圧の最小限の成長及び約99%のクーロン効率は、電解質中に炭化水素成分を使用しないときの97%のより低いクーロン効率である図4とは対照的に、図3で実証される。これは炭化水素溶媒の使用によるリチウム金属アノードとの電解質の反応性の低下を介した、最小限の樹枝状成長と好ましい固体電解質界面不動態化生成物とを示す。
【0043】
実施例3
電解質伝導率測定を、炭化水素溶媒を持つ及び持たない様々な電解質で実行した。炭化水素共溶媒を含有する電解質溶液は、図5に示されるように、フルオロメタン及びジフルオロメタンが主な電解質と同様の、電解質伝導率を実証する。炭化水素溶媒による僅かに低い伝導率は、機能的デバイス、特により低い圧力及びより低いGWPを持つものに、依然として許容可能と考えられる。
【0044】
実施例4
リチウム金属アノード、黒鉛カソード、及び様々な電解質から構成されるバッテリーコインセルを、図6及び図7で比較する。セルをC/10レートで5サイクルにわたりサイクル動作させ、黒鉛アノードを持つ安定な固体電解質界面を形成する電解質の能力を示した。図6は、炭化水素系電解質で作製されたセルの性能を示し、一方、図7は、炭化水素溶媒がない電解質で作製されたセルの性能を示す。これは炭化水素の添加が、セル性能を犠牲とすることなく電解質の蒸気圧及びGWPを低下させることができることを示す。
【0045】
実施例5
リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを90モル部のフルオロメタン及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質を使用するバッテリーコインセルを、構成した。性能を図8に示す。この電解質は、炭化水素溶媒を含有しない。
【0046】
実施例6
バッテリーコインセルは、リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを80モル部のフルオロメタン、10モル部のiso-ブタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質から構成された。この電解質溶液は、93のGWP及び486psiの圧力を293.15Kで有する。セルは、C/10、C/5、C/3、C/2、1C、及び2Cレートの様々なレートで、各レートで5サイクルにわたり、4.2Vまでサイクル動作させた。セル性能を図9に示す。このセルは、図8の炭化水素溶媒を持たない類似のセルと比較して、類似の性能を示す。
【0047】
実施例8
バッテリーコインセルは、リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを80モル部のフルオロメタン、10モル部のn-ブタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質から構成された。この電解質溶液は、93のGWP及び484psiの圧力を293.15Kで有する。セルは、C/10、C/5、C/3、C/2、1C、及び2Cレートの様々なレートで、各レートで5サイクルにわたり、4.2Vまでサイクル動作した。セル性能を図10に示す。このセルは、図8の炭化水素溶媒を持たない類似のセルと比較して、類似の性能を示す。
【0048】
実施例9
バッテリーコインセルは、リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリメチルを70モル部のジフルオロメタン、20モル部のn-ブタン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質から構成された。この電解質溶液は、475のGWP及び246psiの圧力を293.15Kで有する。セルは、C/10、C/5、C/3、C/2、1C、及び2Cレートの様々なレートで、各レートで5サイクルにわたり、4.2Vまでサイクル動作させた。セル性能を図11に示す。このセルは、図8の炭化水素溶媒を持たない類似のセルと比較して、類似の性能を示す。
【0049】
実施例10
バッテリーコインセルは、リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のフルオロメタン、50モル部のプロパン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質から構成された。この電解質溶液は、48のGWP及び345psiの圧力を293.15Kで有する。セルは、C/10、C/5、C/3、C/2、1C、及び2Cレートの様々なレートで、各レートで5サイクルにわたり、4.2Vまでサイクル動作させた。セル性能を図12に示す。このセルは、図8の炭化水素溶媒を持たない類似のセルと比較して、類似の性能を示す。
【0050】
実施例11
バッテリーコインセルは、リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを40モル部のフルオロメタン、50モル部のプロペン、及び10モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質から構成された。この電解質溶液は、47のGWP及び357psiの圧力を293.15Kで有する。セルは、C/10、C/5、C/3、C/2、1C、及び2Cレートの様々なレートで、各レートで5サイクルにわたり、4.2Vまでサイクル動作させた。セル性能を図13に示す。このセルは、図8の炭化水素溶媒を持たない類似のセルと比較して、類似の性能を示す。
【0051】
実施例12
バッテリーコインセルは、リチウム金属アノード、リチウム-ニッケル-マンガン酸化物(NMC622)カソード、並びに1.0M LiTFSI及び2.0Mリン酸トリエチルを35モル部のジフルオロメタン、60モル部のプロパン、及び5モル部の二酸化炭素に加えたものから構成される電解質から構成された。この電解質溶液は、239のGWP及び195psiの圧力を293.15Kで有する。セルは、C/10、C/5、C/3、C/2、1C、及び2Cレートの様々なレートで、各レートで5サイクルにわたり、4.2Vまでサイクル動作させた。セル性能を図14に示す。このセルは、図8の炭化水素溶媒を持たない類似のセルと比較して、類似の性能を示す。その後、セルを1Cレートでサイクル動作させて寿命の劣化を測定し、これを図15に示す。1000サイクルを十分に超えるものは、炭化水素溶媒を持つ電解質(電解質2)に関して実証され、炭化水素溶媒を持たない電解質(電解質1)よりも改善されている。
【0052】
実施例13
いくつかの液化ガス電解質の蒸気圧を、様々な量の塩に関して測定した。3つの溶媒系を使用した:溶媒1(45モル部のジフルオロメタン、45モル部のフルオロメタン、及び10モル部の二酸化炭素)、溶媒2(31.5モル部のジフルオロメタン、31.5モル部のフルオロメタン、7モル部の二酸化炭素、及び30モル部のiso-ブタン)、及び溶媒3(31.5モル部のジフルオロメタン、31.5モル部のフルオロメタン、7モル部の二酸化炭素、及び30モル部のアセチレン)。0.0Mの塩を持つ純粋な溶媒以外、各電解質は、LiTFSI及びリン酸トリメチルを1:2のモル比で含有した。各電解質は、0.0、0.1、0.5、1.0、又は1.5M LiTFSI塩のいずれかを含有した。各電解質の蒸気圧曲線を図16に示す。塩濃度は、電解質の蒸気圧の変化がなく、又は測定の不確実性の範囲内に十分あることを示すことが観察される。更に、炭化水素を含有しない(溶媒1)液化ガス電解質の蒸気圧は、最適な性能に合わせて電解質の蒸気圧を調整するため、様々な炭化水素添加剤の添加によって、より高く(溶媒3)又はより低く(溶媒2)調整され得ることが実証される。この場合も図1及び図2に示される知見と矛盾しない。
【0053】
実施例14
セルを、黒鉛アノード及びNMC622カソードで構成し、熱ランプ試験下で試験した。温度を、分当たり5℃の速度で上昇させた。セルの電圧及び温度データを図17に示す。約+90℃の温度で、液化ガス電解質の圧力は、セルの排出圧力に達し、電解質は大気に排出され、電圧は直ぐにゼロに降下することがわかる。セルが排出され且つ電圧がゼロに降下した後、セルは、+240℃の温度まで反応が観察されることなく同じ速度で加熱され続け、セルがフェイルセーフ動作し得ることを示す。この顕著な結果は、+100℃程度に低い温度で熱暴走の発生を見る及び熱暴走反応中に+800℃程度に高い温度に到達する可能性がある、典型的なセルと対照的である。
【0054】
実施例15
2Ahセルを、黒鉛アノード、及びNMC622カソード、及び液化ガス電解質で構成し、過充電試験で試験した。セルを2Ampのレートで充電し、セルの電圧及び温度を観察し、そのデータを図18に示した。セルが5.4Vの過充電状態(セルの公称電圧は4.2Vであった)に到達するにつれ、セルは過熱し、+60℃の温度に到達し、その時点で液化ガス電解質の蒸気圧は、セルの排出を開放するよう十分に高く、液化ガス電解質は急速に大気に排出され、セルをフェイルセーフ動作させることがわかった。排出口は、過充電中のカソードからの酸素の発生に起因して、予測されるよりも低い温度で開放されることにも留意した。この増大した酸素含量は、液化ガス電解質の圧力を増大させ、より低い温度でセルから排出させ、したがって、酸素含有電解質による危険な熱暴走反応又は爆発になり得る前に、セルの安全性が改善した。この結果は、過充電試験が熱暴走反応、セル爆発、及び危険な状況をもたらすことになる従来のLiイオンセルとは、全く対照的である。
【0055】
実施例16
2Ahセルを黒鉛アノード、及びNMC622カソード、及び液化ガス電解質で構成し、セルを4.2Vの完全電圧で保持しながらクラッシュ試験下で試験した。セルを、18mm直径の円筒状インパクターで、分当たり1mmの速度でセルの中心部へとクラッシュさせた。セル温度及び電圧を観察し、データを図19に示した。試験に入って約9分で、セルは破砕され、液化ガス電解質がセルから逃げたことが観察された。セル内部の短絡も観察され、セル温度の小さい上昇を引き起こしたが、電解質は、いかなる熱暴走事象も発生するのを防止するよう十分に素早く排出され、セルをフェイルセーフ動作させた。これはセルの短絡に起因してクラッシュ試験中に熱暴走を示す従来の液体電解質を含有するセルと、全く対照的である。
【0056】
電気化学エネルギー貯蔵デバイスの構成
293.15Kの温度で100kPaで脱気することになる安全な液化ガス電解質で電気化学エネルギー貯蔵デバイスを構成する方法を、図20Aに示す。ステップ20-1で、第1の混合物を、第1の電解質成分(1種又は複数の溶媒)を第2の電解質成分(1種又は複数の炭化水素共溶媒)と混合することによって形成する。第2の電解質成分の添加は、(1)293.15Kで測定したとき、第1の電解質成分のみの蒸気圧と比較して少なくとも10%、第1の混合物の蒸気圧を低下させ;(2)293.15Kの温度で100kPaよりも上の第1の混合物の蒸気圧をもたらす。第2の電解質成分は、第1の混合物の地球温暖化係数(GWP)も、第1の成分のみのGWPと比較して少なくとも10%低下させ得る。ステップ20-2では、安全な液化ガス電解質が、第3の電解質成分(1種又は複数の塩)を第1の混合物に混合することによって形成される。次いでこの安全な液化ガス電解質は、ステップ20-3でアノード及びカソードを持つセルハウジングに添加され、したがってアノード及びカソードは安全な液化ガス電解質と接触するようになる。或いは、図20Bに示されるように、第3の電解質成分(塩)はセルハウジングに最初に添加されてもよく、次いで第1の混合物は、セルハウジングに添加され(ステップ20-3B)、第3の電解質成分(塩)と混合されて、安全な液化ガス電解質を形成する(ステップ20-2B)。最後に、セルハウジングをステップ20-4で密閉する。
【0057】
この方法によって構成された例示的な電気化学デバイスでは、電極は、炭素、例えば黒鉛、グラフェン、酸化グラフェン、炭素、活性炭、若しくはケイ素、チタン酸リチウム、二硫化チタン、二硫化モリブデン、リン酸鉄リチウム、リン酸コバルトリチウム、リン酸ニッケルリチウム、コバルト酸リチウム、リチウムニッケルマンガン酸化物、酸化リチウムニッケルマンガンコバルト、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物等の2つの電極、又は硫黄、酸素、二酸化炭素、窒素、二酸化硫黄、フッ化チオニル、チオニル塩化フッ化物、フッ化スルフリル、スルフリル塩化フッ化物の化学物質を持つような化学反応電極、又はリチウム、ナトリウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム金属、若しくはこれらの金属の合金、若しくはこれらの任意の組合せを持つ金属電極から構成される。電極は更に、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース、スチレン-ブタジエンゴム、又はポリテトラフルオロエチレンを含む様々な結合剤ポリマー成分を、電極の構造的一体性を維持するために含んでもよい。この方法は、バッテリー又はキャパシタを製造するのに使用することができる。
【0058】
本発明の例示的な実施形態及び適用例は、上記を含み本明細書で記述され、且つ含まれる実施例の図に示されるが、本発明は、これらの例示的な実施形態及び適用例に、又は例示的な実施形態及び適用例が動作するような若しくは本明細書に記述されるような手法に限定するものではない。事実、当業者に明らかであるように、例示的な実施形態の多くの変形例及び修正例が可能である。本発明は、得られるデバイス、システム、又は方法が、この又は任意の関連ある特許出願に基づいて特許庁により許可された請求項の1つの範囲内に包含される限り、任意のデバイス、構造、方法、又は機能性を含んでもよい。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A
図20B
【国際調査報告】