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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】細胞製剤を査定する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240618BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240618BHJP
【FI】
C12Q1/06
A61P35/00
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575980
(86)(22)【出願日】2022-06-10
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022033001
(87)【国際公開番号】W WO2022261432
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/209,557
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520032608
【氏名又は名称】パクト ファーマ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PACT PHARMA, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】プランダレ, バーミニ
(72)【発明者】
【氏名】センニノ, バーバラ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ08
4B063QQ79
4B063QR48
4B063QS33
4B063QX01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
治療用T細胞製剤の機能特性を査定または評価する方法が本明細書に記載される。
【選択図】図5B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞製剤を評価する方法であって、
細胞製剤をポリペプチドと接触させることであって、ポリペプチドが、エピトープペプチド配列と、HLAクラスI配列と、β2-ミクログロブリン配列とを含み、エピトープペプチド-HLA複合体を形成し、細胞製剤が複数のT細胞を含み、細胞製剤の少なくとも1個のT細胞が、選択されたT細胞受容体(TCR)を発現し、選択されたTCRがエピトープペプチド-HLA複合体を認識する、接触させることと;
T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することであって、T細胞機能の少なくとも1つのマーカーが、増殖マーカー、細胞傷害性マーカー、および活性化マーカーから選択される、検出することと
を含む、方法。
【請求項2】
ポリペプチドが固体支持体に結合されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
固体支持体が、マルチウェルプレートのウェル、ビーズ、または細胞である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ポリペプチドが、結合対の第1の要素を含むかまたはそれにコンジュゲートしており、固体支持体が、結合対の第2の要素を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
結合対が、ビオチンとストレプトアビジン、またはビオチンとアビジンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
固体支持体がストレプトアビジン被覆マルチウェルプレートである、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
固体支持体がストレプトアビジン被覆ビーズである、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ビーズが1~10μmの平均直径を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固体支持体が細胞であり、細胞がストレプトアビジンコンジュゲート抗体を表面に結合させている、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリペプチドが、ビオチンにコンジュゲートされいる、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
増殖マーカーが、Ki67、細胞増殖色素、増殖細胞核抗原(PCNA)、およびミニ染色体維持複合体成分2(MCM2)から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Ki67が、抗Ki67抗体を使用して検出される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
T細胞が、抗Ki67抗体との接触の前に透過処理される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
増殖マーカーが、フローサイトメトリーを使用して検出される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
細胞傷害性マーカーが、CD107a、パーフォリン、およびグランザイムBから選択される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
CD107aが、抗CD107a抗体を使用して検出される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細胞傷害性マーカーが、フローサイトメトリーを使用して検出される、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
活性化マーカーが、IFNγ、IL2、TNFα、4-1BB、OX40、およびCD25から選択される、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
活性化マーカーが、サイトメトリックビーズアレイを使用して検出される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
細胞製剤が、対象由来のCD8+および/またはCD4+T細胞を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
対象ががんを有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
細胞製剤が、選択されたTCRを発現するT細胞について濃縮されている、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
細胞製剤が、選択されたTCRを発現するように操作されている、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
選択されたTCRが、T細胞ゲノムにおいて、内因性TCR遺伝子座にプリセットされる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
細胞製剤が、非ウイルス操作方法によって作製される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
細胞製剤が、CRISPRを使用して作製される、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
細胞製剤が、T細胞のゲノム中にいかなる外因性DNA配列も含まない、請求項23から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
選択されたTCRが、がんに存在する体細胞コード変異に起因するアミノ酸変異を含むネオエピトープと結合する、請求項1から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
細胞製剤が、がんを有する対象由来のCD8+および/またはCD4+T細胞を含み、ネオエピトープが、対象のがんに存在する体細胞コード変異に起因するアミノ酸変異を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞製剤が治療用製剤である、請求項1から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
選択されたTCRを発現するT細胞の細胞製剤における百分率を決定することを含む、請求項1から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
a)固体支持体をポリペプチドと接触させることであって、ポリペプチドが、結合対の第1の要素を含み、固体支持体が、結合対の第2の要素を含む、接触させることと;
b)未結合ポリペプチドを除去することと;
c)選択されたTCRがエピトープペプチド-HLA複合体に結合するのに好適な条件下で固体支持体結合ポリペプチドを細胞製剤と接触させることと;
d)T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することと
を含む、請求項1から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
細胞製剤が品質管理基準を満たすか否かを判定することを含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
細胞製剤の、対象に投与するのに適切な用量を決定することを含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
細胞製剤を対象に投与することをさらに含む、請求項1から34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
対象ががんを有する、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
がんが、黒色腫、肺がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、前立腺、および結腸直腸がんから選択される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
TCRのエピトープペプチド-HLA複合体に対する親和性を決定することを含む、請求項1から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
TCRのエピトープペプチド-HLA複合体に対するアビディティを決定することを含む、請求項1から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
細胞製剤をポリペプチドと接触させることを、細胞製剤が疲弊するまで繰り返すことを含む、請求項1から39のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に組み込まれる、2021年6月11日に出願された米国仮出願第63/209,557号の優先権の利益を主張する。
【0002】
細胞製剤を査定または評価する方法であって、細胞製剤をポリペプチドと接触させることを含み、ポリペプチドが、エピトープペプチド-HLA複合体を形成するエピトープペプチド配列を含み、細胞製剤のT細胞が、ある特定のT細胞受容体を発現するかまたは発現するように操作されている、方法が提供される。一部の実施形態において、細胞製剤は、対象の疾患を処置することにおける使用のための治療用細胞製剤である。
【背景技術】
【0003】
T細胞は、獲得免疫の主要なメディエーターである。各T細胞の固有のT細胞受容体(TCR)の特異性によって導かれて、T細胞は、自己免疫を制御し、B細胞および自然エフェクターの活性化を促進し、感染した細胞およびがん性細胞を正確に標的化して直接死滅させる。操作細胞製剤、例えばNeoTCR、CAR-T細胞、および腫瘍浸潤リンパ球(TIL)製剤は、がんのための療法の重要な部類であり、多くは患者ごとに特異的に設計される。例えば細胞製剤が強力かつ効果的であることを保証するために、患者への投与の前に各細胞製剤の機能解析は重要である。細胞製剤のそのような薬理的評価、例えば、同族抗原発現腫瘍細胞と接触させた場合における、抗原特異的細胞死滅、エフェクターサイトカイン分泌、および増殖活性の評価は、典型的には、標的細胞を使用して行われる。そのようなアッセイは、例えば、低い再現性、低いスルーアウト(low-throughout)である、および場合によっては製剤ごとに新規標的細胞株を生成する必要があるといった制限を有する。
【0004】
したがって、これらの制限を克服する、細胞製剤の有効性、力価、および/または特異性を定量的に評価するアッセイに対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載される本発明は、細胞製剤を査定または評価する方法を提供する。それに伴って、一部の実施形態が以下に提供される。
実施形態1.細胞製剤を評価する方法であって、細胞製剤をポリペプチドと接触させることであって、ポリペプチドが、エピトープペプチド配列と、HLAクラスI配列と、β2-ミクログロブリン配列とを含み、エピトープペプチド-HLA複合体を形成し、細胞製剤が複数のT細胞を含み、細胞製剤の少なくとも1個のT細胞が、選択されたT細胞受容体(TCR)を発現し、選択されたTCRがエピトープペプチド-HLA複合体を認識する、接触させることと;T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することであって、T細胞機能の少なくとも1つのマーカーが、増殖マーカー、細胞傷害性マーカー、および活性化マーカーから選択される、検出することと、を含む、方法。
実施形態2.ポリペプチドが固体支持体に結合する、実施形態1に記載の方法。
実施形態3.固体支持体が、マルチウェルプレートのウェル、ビーズ、または細胞である、実施形態2に記載の方法。
実施形態4.ポリペプチドが、結合対の第1の要素を含むかまたはそれにコンジュゲートしており、固体支持体が、結合対の第2の要素を含む、実施形態2または3に記載の方法。
実施形態5.結合対が、ビオチンとストレプトアビジン、またはビオチンとアビジンである、実施形態4に記載の方法。
実施形態6.固体支持体がストレプトアビジン被覆マルチウェルプレートである、実施形態2から5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7.固体支持体がストレプトアビジン被覆ビーズである、実施形態2から5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8.ビーズが1~10μmの平均直径を有する、実施形態7に記載の方法。
実施形態9.固体支持体が細胞であり、細胞がストレプトアビジンコンジュゲート抗体を表面に結合させている、実施形態2から5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10.ポリペプチドが、ビオチンにコンジュゲートしている、実施形態6から9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11.増殖マーカーが、Ki67、細胞増殖色素、増殖細胞核抗原(PCNA)、およびミニ染色体維持複合体成分2(MCM2)から選択される、実施形態1から10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12.Ki67が、抗Ki67抗体を使用して検出される、実施形態11に記載の方法。
実施形態13.T細胞が、抗Ki67抗体との接触の前に透過処理される、実施形態12に記載の方法。
実施形態14.増殖マーカーが、フローサイトメトリーを使用して検出される、実施形態1から13のいずれか1つに記載の方法。
実施形態15.細胞傷害性マーカーが、CD107a、パーフォリン、およびグランザイムBから選択される、実施形態1から14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16.CD107aが、抗CD107a抗体を使用して検出される、実施形態15に記載の方法。
実施形態17.細胞傷害性マーカーが、フローサイトメトリーを使用して検出される、実施形態15または16に記載の方法。
実施形態18.活性化マーカーが、IFNγ、IL2、TNFα、4-1BB、OX40、およびCD25から選択される、実施形態1から17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19.活性化マーカーが、サイトメトリックビーズアレイを使用して検出される、実施形態18に記載の方法。
実施形態20.細胞製剤が、対象由来のCD8+および/またはCD4+T細胞を含む、実施形態1から19のいずれか1つに記載の方法。
実施形態21.対象ががんを有する、実施形態20に記載の方法。
実施形態22.細胞製剤が、選択されたTCRを発現するT細胞について濃縮されている、実施形態1から21のいずれか1つに記載の方法。
実施形態23.細胞製剤が、選択されたTCRを発現するように操作されている、実施形態1から22のいずれか1つに記載の方法。
実施形態24.選択されたTCRが、T細胞ゲノムにおいて、内因性TCR遺伝子座にプリセットされている、実施形態23に記載の方法。
実施形態25.細胞製剤が、非ウイルス操作方法によって作製される、実施形態23または24に記載の方法。
実施形態26.細胞製剤が、CRISPRを使用して作製される、実施形態23から25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27.細胞製剤が、T細胞のゲノム中にいかなる外因性DNA配列も含まない、実施形態23から26のいずれか1つに記載の方法。
実施形態28.選択されたTCRが、がんに存在する体細胞コード変異に起因するアミノ酸変異を含むネオエピトープと結合する、実施形態1から27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29.細胞製剤が、がんを有する対象由来のCD8+および/またはCD4+T細胞を含み、ネオエピトープが、対象のがんに存在する体細胞コード変異に起因するアミノ酸変異を含む、実施形態28に記載の方法。
実施形態30.細胞製剤が治療用製剤である、実施形態1から29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31.選択されたTCRを発現するT細胞の細胞製剤における百分率を決定することを含む、実施形態1から30のいずれか1つに記載の方法。
実施形態32.固体支持体をポリペプチドと接触させることであって、ポリペプチドが、結合対の第1の要素を含み、固体支持体が、結合対の第2の要素を含む、接触させることと;未結合ポリペプチドを除去することと;選択されたTCRがエピトープペプチド-HLA複合体に結合するのに好適な条件下で固体支持体結合ポリペプチドを細胞製剤と接触させることと;T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することとを含む、実施形態1から31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33.細胞製剤が品質管理基準を満たすか否かを判定することを含む、実施形態1から32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34.細胞製剤の、対象に投与するのに適切な用量を決定することを含む、実施形態1から33のいずれか1つに記載の方法。
実施形態35.細胞製剤を対象に投与することをさらに含む、実施形態1から34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態36.対象ががんを有する、実施形態34または35に記載の方法。
実施形態37.がんが、黒色腫、肺がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、前立腺、および結腸直腸がんから選択される、実施形態36に記載の方法。
実施形態38.TCRのエピトープペプチド-HLA複合体に対する親和性を決定することを含む、実施形態1から37のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39.TCRのエピトープペプチド-HLA複合体に対するアビディティを決定することを含む、実施形態1から38のいずれか1つに記載の方法。
実施形態40.細胞製剤をポリペプチドと接触させることを、細胞製剤が疲弊するまで繰り返すことを含む、実施形態1から39のいずれか1つに記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】細胞製剤を査定するために使用したアッセイの例示的な概略図である。ネオエピトープ(neoE)特異的ペプチド-HLA複合体(comPACT)ポリペプチドの概略図であり、このポリペプチドは、HLAクラスI重鎖ポリペプチドに共有結合しているβ2-ミクログロブリンポリペプチドに共有結合しているneoEペプチドを含む。
図1B】細胞製剤を査定するために使用したアッセイの例示的な概略図である。3種類の例示的な機能的結果を含む、comPACT被覆プレートアッセイの概略図である。
図1C】細胞製剤を査定するために使用したアッセイの例示的な概略図である。3種類の例示的な機能的結果を含む、comPACT被覆ビーズアッセイの概略図である。
図1D】細胞製剤を査定するために使用したアッセイの例示的な概略図である。3種類の例示的な機能的結果を含む、comPACT被覆T2細胞アッセイの概略図である。
図2A-2C】F5 T細胞およびPACT032-TCR.075 T細胞による、comPACT被覆プレートアッセイを使用した用量依存的サイトカイン放出を示すグラフである。IFNγ(図2A)、IL2(図2B)、およびTNFα(図2C)分泌の程度が示される。
図3】comPACT被覆プレートアッセイにおける、CD8+PACT032-TCR.075 T細胞およびCD8+F5 TCR T細胞による用量依存的CD107a発現を示すグラフである。
図4A】comPACT被覆プレートアッセイにおける、CD8+PACT032-TCR.075 T細胞およびCD8+F5 TCR T細胞による用量依存的Ki67発現を示すグラフである。
図4B-4C】図4のBは、comPACT被覆プレートアッセイにおける、CD4+PACT032-TCR.075 T細胞およびCD4+F5 TCR T細胞による用量依存的Ki67発現を示すグラフである。図4のCは、comPACT被覆プレートアッセイにおける、PACT032-TCR.075 T細胞およびF5 TCR T細胞による用量依存的細胞増殖活性を示すグラフである。
図5A-5B】comPACT被覆ビーズアッセイにおける、1ミクロンのビーズ(図5A)または6ミクロンのビーズ(図5B)のいずれかに結合したcomPACTを用いた刺激後の、Neo12 TCR T細胞およびF5 TCR T細胞による用量依存的IFNγ分泌を示すグラフである。
図6A-6C】comPACT被覆T2細胞アッセイにおける、25,000個のT2細胞または50,000個のT2細胞に結合したcomPACTを用いたかまたは用いなかった刺激後の、Neo12 TCR T細胞による用量依存的IFNγ(図6A)、IL2(図6B)、およびTNFα(図6C)分泌を示すグラフである。図6A~6Cのそれぞれの棒は、左から右に向かって、25,000個のT2細胞+comPACT、50,000個のT2細胞+comPACT、comPACTを有しない25,000個のT2細胞、comPACTを有しない50,000個のT2細胞である。
図7A-7B】洗浄バッファーにTween20を含有する(「PBST」)かまたはTweenを含有しない(「PBS」)comPACT被覆プレートアッセイにおける、Neo12 TCR T細胞による用量依存的IFNγ(図7A)およびTNFα(図7B)分泌を示すグラフである。
図8A-8B】細胞ベースアッセイにおける、実施例12に記載されるHLA-A02を発現するK562細胞またはネガティブコントロール細胞を用いた刺激後(図8A)、およびcomPACT被覆プレートアッセイにおける、comPACTを用いた刺激後(図8B)後の、Neo12 TCR T細胞による用量依存的IFNγ分泌を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、細胞製剤を定量的に評価するためのcomPACTポリペプチドの使用に関する。本方法は、例えば、細胞製剤を有効性、力価、および/または特異性についてアッセイするために使用され得る。一部の実施形態において、アッセイは定量的である。
【0008】
定義
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本開示の主題に使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する:Singletonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版、1994);The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker編、1988);The Glossary of Genetics、第5版、R.Riegerら(編)、Springer Verlag(1991);およびHale&Marham、The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、別段の定めのない限り、以下でそれらに与えられる意味を有する。
【0009】
本明細書に記載される本発明の態様および実施形態は、態様および実施形態「を含むこと(comprising)」、「からなること」、および「から本質的になること」を含むことが理解される。「を含む(comprises)」および「を含むこと(comprising)」という用語は、米国特許法においてそれらに与えられる広い意味を有することが意図され、「を含む(includes)」、「を含むこと(including)」などを意味し得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「約」または「およそ」という用語は、当業者によって決定される、特定の値の許容誤差範囲内であることを意味し、これは、部分的には、その値が測定または決定される方法、すなわち、測定系の限界に依存し得る。例えば、「約」は、当技術分野における慣例に従って、3または3よりも大きい標準偏差以内であることを意味してもよい。あるいは、「約」は、所与の値の最大20%、例えば、最大10%、最大5%、または最大1%の範囲を意味してもよい。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、ある値の10倍以内、例えば5倍以内または2倍以内を意味してもよい。
【0011】
「チェックポイント阻害剤」とは、本明細書で使用される場合、ある特定の種類の免疫系細胞(例えば、T細胞)およびがん細胞のサブセットによって産生されるある特定のタンパク質をブロックする薬物の種類を意味する。ある特定の免疫細胞およびがん細胞によって産生されるそのようなタンパク質は、チェックにおける免疫応答の抑制を促進し、T細胞ががん細胞を死滅させることを妨げ得る。したがって、これらのタンパク質がチェックポイント阻害剤によってブロックされる場合、T細胞は、ある特定のがん細胞を死滅させることができる。チェックポイント阻害剤は免疫療法であり、これらの用語は、本明細書で使用される場合、相互に排他的ではない。
【0012】
「がん」および「腫瘍」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「がん」または「腫瘍」という用語は、悪性であるか良性であるかにかかわらず、全ての腫瘍性細胞成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性細胞および組織を指す。これらの用語は、制御されない細胞成長/増殖を典型的には特徴とする、哺乳動物における生理的状態を指すかまたは記載するためにさらに使用される。がんは、様々な細胞型、組織、または臓器、例えば、これらに限定されないが、膀胱、骨、脳、乳房、軟骨、グリア、食道、ファローピウス管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿生殖路、尿管、尿道、子宮、および膣から選択される臓器、またはそれらの組織もしくは細胞型に影響を及ぼし得る。がんには、肉腫、癌腫、または形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)などのがんが含まれる。がんの例としては、これらに限定されないが、本明細書に記載されるものが挙げられる。「がん」または「腫瘍」および「増殖性疾患」という用語は、本明細書で使用される場合、相互に排他的ではない。
【0013】
「comPACT」および「comPACTポリペプチド」とは、本明細書では交換可能に使用され、抗原またはエピトープアミノ酸配列(「エピトープペプチド」)と、β2-ミクログロブリンタンパク質配列と、MHC重鎖の細胞外ドメイン配列とを含むペプチドを意味する。β2-ミクログロブリンタンパク質配列とMHC重鎖の細胞外ドメイン配列とは本明細書において、例えば分子内ジスルフィド結合の適切な形成を含めて正確にフォールディングされる場合、まとめて「HLA複合体」と称される。一部の実施形態において、抗原またはエピトープは、ネオ抗原またはネオエピトープである。一部の実施形態において、β2-ミクログロブリンタンパク質配列は、全長β2-ミクログロブリンタンパク質配列である。一部の実施形態において、MHC重鎖の細胞外ドメインは、α1、α2、およびα3ドメインを含むクラスI MHC重鎖の細胞外ドメインである。一部の実施形態において、comPACTポリペプチドは、結合部分コンジュゲーション部位および/またはその部位にコンジュゲートしている結合部分を含む。一部のそのような実施形態において、comPACTポリペプチドは、ビオチンコンジュゲーション部位、例えばAviTag、および/またはその部位にコンジュゲートしているビオチンを含む。一部の実施形態において、comPACTポリペプチドは、切断可能なタグおよび精製タグ、例えばそれぞれ、TEVタグおよびヒスチジンタグを含む。一部の実施形態において、comPACTポリペプチドは、シグナル配列、例えばN末端シグナル配列を含む。一部の実施形態において、comPACTポリペプチドは、抗原もしくはエピトープ配列、β2-ミクログロブリンタンパク質配列、MHC重鎖の細胞外ドメイン配列、および/またはビオチンコンジュゲーション部位配列の間に1つまたは複数のリンカーを含む。
【0014】
「デキストラマー」とは、本明細書で使用される場合、自身と同族のNeoTCRに特異的に結合する多量体化されたネオエピトープ-HLA複合体を意味する。
【0015】
「内因性」とは、本明細書で使用される場合、細胞または組織において通常発現する核酸分子またはポリペプチドを指す。
【0016】
「外因性」とは、本明細書で使用される場合、細胞に内因性に存在しない核酸分子またはポリペプチドを指す。したがって、「外因性」という用語は、細胞において発現される任意の組換え核酸分子またはポリペプチド、例えば外来性、異種、および過剰発現核酸分子およびポリペプチドを包含し得る。「外因性」核酸とは、本来の野生型細胞に存在しない核酸を意味する;例えば、外因性核酸は、配列、位置/場所、またはその両方が内因性の対応物と異なり得る。説明を明確にするために、外因性核酸は、その本来の内因性の対応物と比べて同じかまたは異なる配列を有することができ、それは、遺伝子操作によって細胞それ自体またはその前駆体に導入することができ、任意選択で、非ネイティブプロモーターまたは分泌配列などの代替的な制御配列に連結していてもよい。
【0017】
「免疫療法」または「がん免疫療法」とは、本明細書で使用される場合、免疫系を活性化または抑制することによってがんなどの疾患を処置するように設計された療法を意味する。免疫療法は、免疫応答を誘発もしくは増幅するように(すなわち、活性化免疫療法)、または免疫応答を低減もしくは抑制するように(すなわち、抑制免疫療法)設計することができる。チェックポイント阻害剤は免疫療法であり、これらの用語は、本明細書で使用される場合、相互に排他的ではない。
【0018】
「ネオ抗原」、「ネオエピトープ」または「neoE」とは、例えば体細胞変異から生じ、「非自己」として認識される、新たに形成された抗原決定基を指す。「ネオ抗原」、「ネオエピトープ」または「neoE」を生じる変異としては、フレームシフトもしくは非フレームシフト挿入欠失、ミスセンスもしくはナンセンス置換、スプライス部位変化(例えば、選択的にスプライシングされた転写物)、ゲノム再構成もしくは遺伝子融合、任意のゲノムもしくは発現変化、または任意の翻訳後修飾を挙げることができる。
【0019】
「NeoTCR」とは、本明細書で使用される場合、例えば遺伝子編集法によってT細胞に導入されるネオエピトープ特異的T細胞受容体を意味する。本明細書で使用される場合、「TCR遺伝子配列」という用語は、NeoTCR遺伝子配列を指す。
【0020】
「NeoTCR細胞」とは、本明細書で使用される場合、1つまたは複数のNeoTCRを発現するように精密操作(precision engineer)された複数の細胞を意味する。ある特定の実施形態において、細胞はT細胞である。ある特定の実施形態において、T細胞はCD8+および/またはCD4+T細胞である。ある特定の実施形態において、CD8+および/またはCD4+T細胞は、NeoTCR製剤が投与される患者由来の自己細胞である。「NeoTCR細胞」および「NeoTCR-P1 T細胞」および「NeoTCR-P1細胞」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。一部の実施形態において、NeoTCR細胞は、例えばT細胞のゲノム中に、いかなる外因性DNA配列も含まない。
【0021】
「NeoTCR製剤」とは、本明細書で使用される場合、複数のNeoTCR細胞を含む薬学的配合物を意味する。NeoTCR製剤は、精密ゲノム操作された自己CD8+およびCD4+T細胞からなる。標的化されたDNA媒介非ウイルス精密ゲノム操作手法を使用することで、内因性TCRの発現は排除され、腫瘍特有のネオエピトープを標的とする、末梢CD8+T細胞から単離された患者特異的NeoTCRと置き換えられる。ある特定の実施形態において、結果として得られる、操作されたCD8+および/またはCD4+T細胞は、その表面に、本来の配列、本来の発現レベル、および本来のTCR機能を有するNeoTCRを発現する。NeoTCR外部結合ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインの配列は、本来のCD8+T細胞から単離されたTCRから改変されていない。NeoTCR遺伝子発現の制御は、NeoTCR遺伝子カセットがゲノムに組み込まれる位置の上流に位置する本来の内因性TCRプロモーターによって駆動される。この手法によって、NeoTCR発現の本来のレベルが、非刺激および抗原活性化T細胞状態において観察される。一部の実施形態において、NeoTCR製剤は、例えばT細胞のゲノム中に、いかなる外因性DNA配列も含まない。
【0022】
患者ごとに製造されるNeoTCR製剤は、同じ患者の末梢血から個々に単離されたネオエピトープ(neoE)特異的CD8+T細胞からクローニングされた単一のneoE特異的TCRを発現するように精密ゲノム操作されている、規定用量の自己CD8+および/またはCD4+T細胞を表す。
【0023】
「NeoTCRウイルス製剤」は、本明細書で使用される場合、ゲノム操作がウイルス媒介法を使用して行われることを除いてはNeoTCR製剤と同じ定義を有する。
【0024】
「薬学的配合物」とは、そこに含有されている有効成分の生物活性が効果的となることを可能にするような形態の調製物であって、その配合物が投与され得る対象にとって許容されないほど毒性となる追加の成分を含有しない、調製物を指す。説明を明確にするために、NeoTCR製剤に使用される量のDMSOは、許容されないほど毒性とは見なされない。
【0025】
処置を目的とした「対象」、「患者」、または「個体」とは、哺乳動物として分類される任意の動物、例えば、ヒト、飼育動物および家畜、ならびに動物園、スポーツ、または愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを指す。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
【0026】
「細胞製剤」とは、本明細書で使用される場合、操作されたTCRを発現するかまたは単離もしくは選択された天然に存在するTCRを発現する複数の細胞を含む薬学的配合物を意味する。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される細胞製剤は、T細胞、NK細胞、NKT細胞、マクロファージ、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、造血幹細胞(HSC)、HSCに由来する細胞、または樹状/抗原提示細胞を含む。ある特定の実施形態において、本明細書に記載される細胞製剤はT細胞を含む。ある特定の実施形態において、細胞製剤細胞は、一次細胞であるかまたは一次細胞に由来する。ある特定の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR細胞を含む。ある特定の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。
【0027】
「TCR」とは、本明細書で使用される場合、T細胞受容体を意味する。
【0028】
「処置する」、「処置」、および「処置すること」とは、交換可能に使用され、本明細書で使用される場合、有益なまたは所望の結果、例えば臨床結果を得ることを意味する。処置の望ましい効果としては、これらに限定されないが、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の任意の直接または間接的な病理学的帰結の軽減、転移の予防、疾患進行の速度の低減、病状の改善または緩和、および寛解または予後の改善が挙げられる。一部の実施形態において、本発明のNeoTCR製剤は、増殖性疾患(例えば、がん)の発症を遅延させるため、またはそのような疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0029】
「腫瘍抗原」とは、本明細書で使用される場合、正常細胞または非腫瘍性細胞と比較して、腫瘍細胞において固有に発現するかまたは発現変動する抗原(例えば、ポリペプチド)を指す。ある特定の実施形態において、腫瘍抗原は、抗原認識受容体を介して免疫応答を活性化もしくは誘導することができるか、または受容体-リガンド結合を介して免疫応答を抑制することができる腫瘍によって発現される任意のポリペプチドを含む。
【0030】
細胞製剤
一部の実施形態において、本明細書の方法は、これまでに開発された細胞製剤の有効性を評価することにおいて有用である。一部の実施形態において、本明細書の方法は、細胞製剤をスクリーニングし、それによって細胞製剤の開発を支援するのに有用である。一部の実施形態において、本明細書の方法は、細胞製剤の開発と開発された細胞製剤の評価の両方において有用である。細胞製剤は、TCRを発現するT細胞を含む任意の細胞製剤であり得る。非限定的な、例示的な細胞製剤は、本明細書に記載され、NeoTCRを含む。
【0031】
ある特定の実施形態において、本明細書の方法に使用される細胞製剤は、ヒトT細胞を操作することによって開発される。ある特定の実施形態において、そのような操作はゲノム編集を伴う。例えば、限定としてではないが、そのようなゲノム編集は、1つまたは複数の内因性遺伝子座、例えば、TCRアルファ(TCRα)遺伝子座およびTCRベータ(TCRβ)遺伝子座を標的とするヌクレアーゼを用いて実現することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、内因性標的配列に一本鎖DNAニックまたは二本鎖DNA切断を生成することができる。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、ゲノムのコードまたは非コード部分、例えば、エクソン、イントロンを標的とすることができる。ある特定の実施形態において、本明細書において企図されるヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、megaTALヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、およびクラスター化され規則的に間隔の空いた短い回文繰り返し配列(CRISPR)/Casヌクレアーゼを含む。ある特定の実施形態において、ヌクレアーゼは、切断活性の効率を高めるために、例えばアミノ酸置換および/または欠失の導入を介してそれ自体が操作されてもよい。
【0032】
ある特定の実施形態において、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、ヒト細胞を操作して、細胞療法、例えば細胞製剤を作るために使用される。ある特定の実施形態において、CRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、Casヌクレアーゼと、Casヌクレアーゼを内因性標的配列に動員する1つまたは複数のRNA、例えば、単一ガイドRNAとを含む。ある特定の実施形態において、CasヌクレアーゼおよびRNAは、例えば異なるベクターもしくは組成物を使用して別個に、または例えばポリシストロンコンストラクトもしくは単一のタンパク質-RNA複合体において一緒に、細胞に導入される。ある特定の実施形態において、CasヌクレアーゼはCas9またはCas12aである。ある特定の実施形態において、Cas9ポリペプチドは、限定されないが、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)または髄膜炎菌(Neisseria menengitidis)を含む細菌種から得られる。CRISPR/Casシステムのさらなる例は当技術分野で公知である。それが教示する全てが参照によって本明細書に組み込まれる、Adli,Mazhar、「The CRISPR tool kit for genome editing and beyond」、Nature communications第9巻、1 1911(2018)を参照のこと。
【0033】
ある特定の実施形態において、ゲノム編集は、免疫学的応答を制御する1つまたは複数のゲノム遺伝子座において行われる。ある特定の実施形態において、遺伝子座としては、限定されないが、TCRアルファ(TCRα)遺伝子座、TCRベータ(TCRβ)遺伝子座、TCRガンマ(TCRγ)、およびTCRデルタ(TCRδ)が挙げられる。
【0034】
ある特定の実施形態において、ゲノム編集は、非ウイルス送達系を使用することによって行われる。例えば、核酸分子は、リポフェクション(Feignerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413、1987;Onoら、Neuroscience Letters 17:259、1990;Brighamら、Am.J.Med.Sci.298:278、1989;Staubingerら、Methods in Enzymology 101:512、1983)、アシアロオロソムコイド-ポリリジンコンジュゲーション(Wuら、Journal of Biological Chemistry 263:14621、1988;Wuら、Journal of Biological Chemistry 264:16985、1989)の存在下で核酸を投与することによって、または手術条件下でのマイクロインジェクション(Wolffら、Science 247:1465、1990)によって細胞に導入することができる。遺伝子移入のための他の非ウイルス手段としては、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、およびプロトプラスト融合を使用するin vitroでのトランスフェクションが挙げられる。リポソームはまた、DNAの細胞への送達に潜在的に有益であり得る。対象の罹患組織への正常な遺伝子の移植は、培養可能な細胞型(例えば、自己もしくは異種一次細胞またはその子孫)に正常な核酸をex vivoで移入し、その後、細胞(またはその後代)を標的組織に注射するかまたは全身的に注射することによっても達成することができる。
【0035】
ある特定の実施形態において、ゲノム編集は、ウイルス送達系を使用することによって行われる。ある特定の実施形態において、このウイルス法には、標的化された組み込み(AAVを含むがこれに限定されない)およびランダムな組み込み(レンチウイルス手法を含むがこれに限定されない)が含まれる。ある特定の実施形態において、ウイルス送達は、ヌクレアーゼの組み込みを伴わずに達成され得る。そのような実施形態において、ウイルス送達系は、Lentiflashまたは別の類似した送達系であり得る。
【0036】
NeoTCR製剤。
一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、それらの全体が本明細書に組み込まれるPCT/US2020/17887およびPCT/US2019/025415に記載されている遺伝子編集技術およびNeoTCR単離技術を使用して、NeoTCRは、NeoTCRを発現させる精密ゲノム操作によって、がんを有する同じ患者由来の自己CD8+およびCD4+T細胞にクローニングされる。そのような実施形態において、腫瘍特異的なNeoTCRはがん患者において同定され、次いで、そのようなNeoTCRはクローニングされ、次いで、クローニングされたNeoTCRはがん患者のT細胞に挿入される。次いで、NeoTCR発現T細胞は、「若い」T細胞表現型を保存するように増大され、結果として、大部分のT細胞がメモリーT幹細胞(TMSC)およびセントラルメモリーT(TCM)表現型を呈するNeoTCR-P1製剤(すなわち、NeoTCR製剤)をもたらす。一部の実施形態において、例えば本明細書において提供される精密ゲノム操作の結果として、NeoTCR製剤は、例えばT細胞のゲノム中に、いかなる外因性DNA配列も含まない。
【0037】
これらの「若い」または「より若い」またはより未分化のT細胞表現型は、例えば、マウスモデルにおいて、および血液学的悪性腫瘍を有する患者における操作されたCAR-T細胞の臨床治験において、移植能の向上および注入後の持続性の延長を付与する。したがって、「若い」または「より若い」T細胞表現型から有意になるNeoTCR製剤の投与は、移植能の向上、注入後の持続性の延長、および全身の腫瘍細胞を根絶するエフェクターT細胞への急速な分化を介して、がんを有する患者に利益をもたらす可能性を有する。
【0038】
がんを有する患者由来のT細胞を用いて製造されたNeoTCR製剤を用いて行われたex vivo作用機序研究は、T細胞死滅活性の抗原特異性、増殖、およびサイトカイン産生によって測定した場合、同等の遺伝子編集効率および機能活性が観察されたことを示し、製造プロセスが出発物質としてのがんを有する患者由来のT細胞を用いて製剤を生成するのに成功したことを実証した。
【0039】
ある特定の実施形態において、NeoTCR製剤製造プロセスは、ガイドRNA配列に結合しているCRISPR-Cas9ヌクレアーゼの2つのリボ核タンパク質種のエレクトロポレーションを伴い、各種は、ゲノム上のTCRα遺伝子座およびゲノム上のTCRβ遺伝子座を標的とする。標的Cas9ヌクレアーゼのゲノム上の遺伝子座それぞれに対する特異性は、高度に特異的であることがこれまでに文献に記載されている。NeoTCR製剤の包括的試験は、in vitroおよびin silico解析において、それぞれCOSMIDおよびGUIDE-seqを使用して、起こり得るオフターゲットゲノム切断部位を調査するために行われた。健康なドナー由来の複数のNeoTCR製剤または同等の細胞製剤は、候補となるオフターゲット部位の切断について、ディープ配列決定によって査定され、これは、選択されたヌクレアーゼが高度に特異的であるという公開されている証拠を支持した。
【0040】
精密ゲノム操作プロセスのさらなる態様は、安全性について査定されている。精密ゲノム操作後のゲノム不安定性に関する証拠は、標的遺伝子座増幅(TLA)または標準的なFISH細胞遺伝学による複数のNeoTCR製剤の査定において見出されなかった。NeoTCR配列のゲノムへのオフターゲット組み込みは、いかなる位置においても検出されなかった。細胞製剤において、残留Cas9に関する証拠は見出されなかった。
【0041】
NeoTCR製剤および精密ゲノム操作プロセスの包括的査定は、NeoTCR製剤が、注入して患者に戻された後、良好な耐容性を示し得ることを示す。
【0042】
本明細書に記載されるゲノム操作手法は、固形および液性腫瘍を有する患者に対する個別化された養子細胞療法のための特注のNeoTCR T細胞(すなわち、NeoTCR製剤)の高度に効率的な生成を可能にする。さらに、操作する方法は、T細胞における使用に制限されず、ナチュラルキラー細胞および造血幹細胞を含む他の一次細胞型にも首尾よく適用された。
【0043】
腫瘍浸潤リンパ球およびCAR-T細胞
一部の実施形態において、細胞製剤は操作されたTCRを含む。一部の実施形態において、細胞製剤は、天然に存在するTCR、例えば対象または患者によって産生されたTCRを含む。一部の実施形態において、細胞製剤は腫瘍浸潤リンパ球(TIL)製剤である。一部のそのような実施形態において、細胞製剤は、腫瘍浸潤リンパ球の濃縮および増大した集団である。一部の実施形態において、細胞製剤はキメラ抗原受容体(CAR)細胞製剤である。一部の実施形態において、ポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドのエピトープペプチド配列および/またはMHCクラスもしくはHLA型は、細胞製剤のTCRを配列決定することを含む方法によって決定される。一部の実施形態において、ポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドは、細胞製剤の開発または選択に使用されるエピトープペプチド配列を含むポリペプチドに基づいて選択または設計される。
【0044】
エピトープ-HLA複合体ポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチド
本明細書の方法は、細胞製剤の細胞を、エピトープペプチド配列と、HLA配列と、β2-ミクログロブリン配列とを含むポリペプチドと接触させることを含む。一部の実施形態において、ポリペプチドはcomPACTポリペプチドである。一部の実施形態において、HLA配列はHLAクラスI配列である。一部の実施形態において、エピトープペプチド配列はネオ抗原またはネオエピトープペプチド配列である。一部の実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチドの分泌を容易にするために、シグナル配列、例えばN末端シグナル配列を含む。一部の実施形態において、ポリペプチドは、ポリペプチドの組換え産生後にポリペプチドを精製するために使用される精製タグ、例えばヒスチジンタグを含む。一部の実施形態において、ポリペプチドは、細胞製剤をポリペプチドと接触させる前の精製タグの除去を容易にするために、精製タグとポリペプチドの残りの部分との間に切断タグ、例えばTEVタグを含む。一部の実施形態において、ポリペプチドは、結合部分コンジュゲーション部位および/またはコンジュゲーション部位にコンジュゲートしている結合部分を含む。一部のそのような実施形態において、ポリペプチドは、ビオチンコンジュゲーション部位、例えばAviTag、および/またはその部位にコンジュゲートしているビオチンを含む。一部の実施形態において、ポリペプチドは、エピトープ配列、β2-ミクログロブリン配列、HLA配列、および/またはビオチンコンジュゲーション部位配列の間に1つまたは複数のリンカーを含む。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0045】
一部の実施形態において、ポリペプチドは、固体支持体に結合している。一部のそのような実施形態において、ポリペプチドは、固体支持体にコンジュゲートしている結合パートナーに結合する結合部分を含むかまたはそれにコンジュゲートする。一部のそのような実施形態において、ポリペプチドおよび固体支持体上の結合パートナーは、結合対、例えばビオチンとストレプトアビジンである。一部の実施形態において、固体支持体は、プレート、例えば、ポリペプチドにコンジュゲートする結合部分の結合パートナーで被覆されているマルチウェルプレートである。一部の実施形態において、固体支持体は、ビーズ、例えば、磁気ビーズ、ストレプトアビジン被覆ビーズ、またはサイトメトリックビーズアレイに使用される任意の種類のビーズである。一部の実施形態において、ビーズは1~10μmの平均直径を有する。一部の実施形態において、固体支持体は細胞である。一部の実施形態において、固体支持体はT2細胞である。一部の実施形態において、細胞は、ポリペプチドにコンジュゲートする結合部分の結合パートナーを発現しているかまたはそれで被覆されている。
【0046】
一部の実施形態において、細胞製剤を、エピトープペプチド配列を含むポリペプチドと接触させることを含む本明細書の方法は、細胞製剤を、エピトープペプチド配列を発現する細胞株と接触させることを含む方法と比較して、向上したアッセイ感度、特異度、定量、再現性、および/または簡便性、ならびにより低いコストを容易にする。例えば、そのような実施形態は、細胞製剤を評価するために新規細胞株を生成する必要性を排除する。一部の実施形態において、本明細書の方法に使用されるポリペプチドは、細胞製剤の作製に使用されるものと同じポリペプチドであり、それによって、細胞製剤を評価する代替的な方法と比べて、本明細書の方法の開発の容易さをさらに高める。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0047】
細胞製剤を評価するための方法
本明細書に記載される方法は、細胞製剤をポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドと接触させることと、T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することとを含む。一部の実施形態において、方法は、例えば細胞製剤の対象または患者への投与の前の、細胞製剤の細胞のハイスループットな、定量的な、再現可能な、拡張可能な、および/または自動化可能な解析を容易にする。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤であり、ここで、本明細書のアッセイ法に使用されるものと同じcomPACTポリペプチドがNeoTCR製剤を生成するためにも使用され、NeoTCR製剤を評価するために標的細胞株または新規抗原ペプチドを生成する必要性を排除する。一部の実施形態において、comPACTポリペプチドは、プレート、ビーズ、または細胞などの固体支持体に結合している。一部の実施形態において、方法は、任意のMHCに拘束されているTCRに容易に適用される。一部の実施形態において、方法は、各細胞製剤を試験するために新規細胞株を生成する必要性を排除する。一部の実施形態において、方法の感度および特異度は、標的細胞を含む方法に匹敵するかまたはそれと比べて向上している。
【0048】
ポリペプチド被覆プレートアッセイ
一部の実施形態において、ポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドは、プレート、例えばマルチウェルプレートに結合する。一部のそのような実施形態において、comPACTポリペプチドは結合部分を含み、プレートは結合部分の結合パートナーで被覆されている。例えば、一部の実施形態において、comPACTポリペプチドはビオチンを含み、プレートはストレプトアビジンで被覆されている。そのような被覆プレートアッセイを含む方法は、各ウェルに使用されるcomPACTの濃度の制御を可能にし、したがって細胞製剤の細胞の機能の定量的かつ用量依存的な解析を可能にする。一部の実施形態において、ストレプトアビジン被覆プレートは、プレートをcomPACTポリペプチドで被覆する前に、tween、例えばtween20を含む洗浄バッファーを用いて洗浄される。一部の実施形態において、プレートは、comPACTポリペプチドとのインキュベーションの後に、tween、例えばtween20を含む洗浄バッファーを用いて洗浄される。一部の実施形態において、プレートは、次いで、tweenを除去するバッファーを用いて洗浄される。comPACT被覆プレートを含む方法におけるその後の工程には、細胞製剤をプレートに添加することと、T細胞機能のマーカーを検出することとが含まれる。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0049】
ポリペプチド被覆ビーズアッセイ
一部の実施形態において、ポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドは、ビーズ、例えば1~10ミクロンまたは1~6ミクロンの直径を有するビーズに結合する。一部のそのような実施形態において、comPACTポリペプチドは結合部分を含み、ビーズは結合部分の結合パートナーで被覆されている。例えば、一部の実施形態において、comPACTポリペプチドはビオチンを含み、ビーズはストレプトアビジンで被覆されている。一部の実施形態において、そのような被覆ビーズアッセイを含む方法は、代替的な方法と比べて、comPACTポリペプチドと細胞製剤との接触表面積の増大を可能にし、結果として、共培養法などの代替的な方法と比べて感度の向上をもたらす。一部の実施形態において、被覆ビーズアッセイ法はまた、使用されるcomPACTの濃度の制御を可能にし、したがって細胞製剤機能の定量的かつ用量依存的な解析を可能にする。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0050】
ポリペプチド被覆細胞アッセイ
一部の実施形態において、ポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドは、ポリペプチドにコンジュゲートする結合部分の結合パートナーで被覆されているT2細胞などの細胞に結合する。一部のそのような実施形態において、ポリペプチドにコンジュゲートする結合部分の結合パートナーは、細胞表面に発現する抗原に特異的に結合する抗体にコンジュゲートする。細胞を、1)細胞によって発現される抗原に特異的に結合する抗体にコンジュゲートする結合パートナー、および2)細胞の表面の結合パートナーと結合する結合部分にコンジュゲートするポリペプチドと接触させることで、ポリペプチド被覆細胞が生じる。一部の実施形態において、そのような被覆細胞を含む方法は、代替的な方法と比較して、ポリペプチドと細胞製剤の細胞との接触表面積の増大を可能にし、結果として、感度の向上をもたらす。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0051】
機能マーカー検出
本明細書の方法は、細胞製剤の細胞における、またはそれによって発現される、T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することを含む。一部の実施形態において、T細胞機能のマーカーは増殖マーカーである。一部のそのような実施形態において、増殖マーカーはKi67である。一部の実施形態において、増殖は、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE)を使用して測定される。一部の実施形態において、T細胞機能のマーカーは細胞傷害性マーカーである。一部のそのような実施形態において、細胞傷害性マーカーはCD107aである。一部の実施形態において、T細胞機能のマーカーは活性化マーカーである。一部のそのような実施形態において、活性化マーカーは、IFNγ、IL2、TNFα、CD69、CD44、またはCD25である。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0052】
一部の実施形態において、T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することは、細胞製剤を、T細胞機能の少なくとも1つのマーカーと特異的に結合する結合分子、例えば抗体と接触させることを含む。一部の実施形態において、T細胞機能マーカー抗体は、フルオロフォアなどの標識、または結合部分にコンジュゲートする。一部の実施形態において、検出することは、フローサイトメトリーまたはサイトメトリックビーズアレイを行うことを含む。一部の実施形態において、T細胞機能の少なくとも1つのマーカーを検出することは、当業者によって公知のT細胞機能マーカー検出のための任意のアッセイを含む。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。
【0053】
アッセイ特異度および定量可能性
本明細書の方法などの細胞製剤を評価するために使用される方法は、検出されるT細胞機能がエピトープペプチド配列と細胞製剤との相互作用に起因することを保証するために、特異的でなければならない。一部の実施形態において、本明細書の方法は、細胞製剤機能の特異的な査定を提供する。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。例えば、本明細書の実施例5、7、8、および12において、NeoTCR T細胞のTCRによって認識されないエピトープペプチド配列(ミスマッチペプチド)を含むcomPACTペプチドは、ミスマッチペプチドの存在下では観察可能な活性化も有意な活性化も示さなかった。
【0054】
一部の実施形態において、細胞製剤の有効性を評価するために使用される最適な方法は、定量可能および再現可能である。細胞ベース方法において細胞製剤の細胞が接触するポリペプチドの濃度は、決定することができない場合がある。対照的に、本明細書の方法は、定量可能および再現可能である。細胞製剤が接触するポリペプチドの濃度は容易に制御され、T細胞機能シグナルは、用量依存的、特異的、および再現可能であり、遺伝子編集効率と密接に相関する。一部の実施形態において、本明細書の方法は、細胞製剤評価の向上を促進し、結果として、細胞製剤の治療有効性の向上をもたらす。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0055】
処置の方法
本明細書に開示されるアッセイ法において評価される細胞製剤およびその細胞は、対象を処置するために使用することができる。一部の実施形態において、本明細書の方法において効果的なシグナルを生じる細胞製剤は、対象を処置するために使用される。一部の実施形態において、本明細書の方法において効果的なシグナルを生じない細胞製剤は、対象を処置するために使用されない。一部の実施形態において、本明細書において提供される方法は、細胞製剤の適切な用量を決定するために使用される。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、細胞製剤の細胞はNeoTCR細胞である。
【0056】
ある特定の実施形態において、細胞製剤は、チェックポイント阻害剤と共に投与することができる。ある特定の実施形態において、細胞製剤は、免疫療法と共に投与することができる。ある特定の実施形態において、免疫療法はがんワクチンである。ある特定の実施形態において、免疫療法はサイトカイン療法(すなわち、薬学的配合物に製剤化されている、サイトカインならびにその改変体、誘導体、および融合タンパク質)である。ある特定の実施形態において、免疫療法はT細胞療法である。ある特定の実施形態において、免疫療法はCAR-T細胞療法である。ある特定の実施形態において、免疫療法はインターフェロンである。ある特定の実施形態において、免疫療法はインターロイキンである。ある特定の実施形態において、免疫療法は腫瘍溶解ウイルス療法である。ある特定の実施形態において、免疫療法はNK細胞療法である。ある特定の実施形態において、細胞製剤は、対象に、標準治療である任意の他の化学療法剤、またはそうでない場合は、因子、例えば疾患、年齢、病歴、および医師が考慮し得る他の因子に基づいてそのような患者を処置するのに許容される薬剤と組み合わせて投与することができる。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。
【0057】
ある特定の実施形態において、有効量の細胞製剤はIV投与によって送達される。ある特定の実施形態において、細胞製剤はIV投与によって、単回投与で送達される。ある特定の実施形態において、細胞製剤はIV投与によって、複数回投与で送達される。ある特定の実施形態において、細胞製剤はIV投与によって、2回以上の投与で送達される。ある特定の実施形態において、細胞製剤はIV投与によって、2回の投与で送達される。ある特定の実施形態において、細胞製剤はIV投与によって、3回の投与で送達される。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。
【0058】
がんの非限定的な例としては、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、および骨髄腫)、卵巣がん、乳がん、膀胱がん、脳がん、結腸がん、腸がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、膠芽細胞腫、咽喉がん、黒色腫、神経芽細胞腫、腺癌、神経膠腫、軟組織肉腫、および様々な癌腫(前立腺および小細胞肺がんを含む)が挙げられる。好適な癌腫としては、星細胞腫、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、乏突起神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、原始神経外胚葉腫瘍(PNET)、軟骨肉腫、骨原性肉腫、膵管腺癌、小および大細胞肺腺癌、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、扁平上皮癌、気管支肺胞癌、上皮腺癌、ならびにそれらの肝臓転移、リンパ管肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫、肝がん、胆管細胞癌、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、横紋筋肉腫、結腸癌、基底細胞癌、汗腺癌、乳頭状癌、脂腺癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、肺癌、腎細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、精巣腫瘍、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、白血病、多発性骨髄腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ならびにH鎖病、乳房腫瘍、例えば乳管および小葉腺癌、子宮頸部の扁平上皮癌および腺癌、子宮および卵巣上皮癌、前立腺腺癌、膀胱の移行扁平上皮癌、BおよびT細胞リンパ腫(結節性およびびまん性)形質細胞腫、急性および慢性白血病、悪性黒色腫、軟組織肉腫ならびに平滑筋肉腫を含むがこれらに限定されない、腫瘍学の分野で公知の任意のものがさらに挙げられる。ある特定の実施形態において、新生物は、血液がん(例えば白血病、リンパ腫、および骨髄腫)、卵巣がん、前立腺がん、乳がん、膀胱がん、脳がん、結腸がん、腸がん、肝臓がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、皮膚がん、胃がん、膠芽細胞腫、および咽喉がんから選択される。ある特定の実施形態において、本開示の若いT細胞およびそれを含む組成物は、従来の治療介入が不可能である血液がん(例えば、白血病、リンパ腫、および骨髄腫)または卵巣がんを処置および/または予防するために使用することができる。
【0059】
ある特定の実施形態において、新生物は固形がんまたは固形腫瘍である。ある特定の実施形態において、固形腫瘍または固形がんは、膠芽細胞腫、前立腺腺癌、乳頭状腎細胞癌、肉腫、卵巣がん、膵臓腺癌、直腸腺癌、結腸腺癌、食道癌、子宮体類内膜癌(uterine corpus endometrioid carcinoma)、乳がん、皮膚黒色腫、肺腺癌、胃腺癌、子宮頸部および子宮頸管がん、腎明細胞癌、精巣生殖細胞腫瘍、ならびに高悪性度B細胞リンパ腫から選択される。
【0060】
対象は進行型の疾患を有している可能性があり、その場合、処置の目的は、疾患進行の軽減もしくは逆転、および/または副作用の改善を含み得る。対象は、すでに処置されている状態の経歴を有している可能性があり、その場合、治療の目的は、典型的には、再発のリスクの低減または遅延を含み得る。
【0061】
療法に好適なヒト対象は、典型的には、臨床基準によって識別することができる2つの処置群を含む。「進行疾患」または「高腫瘍負荷」を有する対象とは、臨床的に測定可能な腫瘍を有する対象である。臨床的に測定可能な腫瘍とは、腫瘍塊に基づいて(例えば、触診、CATスキャン、超音波画像、マンモグラムまたはX線によって;陽性生化学的または組織病理学的マーカーは、単独では、この集団を同定するのに不十分である)検出することができる腫瘍である。薬学的組成物は、これらの対象の状態を緩和する目的で、抗腫瘍応答を誘発するためにこれらの対象に投与される。理想的には、結果として腫瘍塊の縮小が生じるが、任意の臨床的改善が利益となる。臨床的改善としては、進行のリスクもしくは速度の低減、または腫瘍の病理学的帰結の減少が挙げられる。
【0062】
組成物および製造品
本明細書に記載される細胞製剤は、製造品と組み合わせて使用することができる。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。そのような製造品は、増殖性疾患(例えば、がん)の予防または処置に有用であり得る。製造品の例としては、これらに限定されないが、容器(例えば、点滴バッグ、ボトル、保管容器、フラスコ、バイアル、シリンジ、チューブ、およびIV溶液バッグ)、および容器に貼られているかまたは付随するラベルまたは添付文書が挙げられる。容器は、NeoTCR製剤内のNeoTCR細胞の保管および保存について許容される任意の材料で作製することができる。ある特定の実施形態において、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る。例えば、容器は、CryoMACS凍結バッグであり得る。ラベルまたは添付文書は、NeoTCR製剤が、選択された状態および起源の患者を処置するために使用されることを示す。NeoTCR製剤は、自己細胞から作られ、患者特異的な個々に合わせた処置として操作されているため、患者はNeoTCR製剤の容器で同定される。
【0063】
製造品は、1つのNeoTCR製剤が含有された容器を含み得る。製造品は、2つのNeoTCR製剤が含有された容器を含み得る。製造品は、3つのNeoTCR製剤が含有された容器を含み得る。製造品は、4つのNeoTCR製剤が含有された容器を含み得る。製造品は、5つのNeoTCR製剤が含有された容器を含み得る。
【0064】
さらに、本明細書に記載されるNeoTCR製剤のいずれの容器も、複数の投与時点のために、および/または患者に適切な用量に基づいて、2、3、または4つの別個の容器に分割することができる。
【0065】
ある特定の実施形態において、NeoTCR製剤はキットにおいて提供される。キットは、非限定的な例として、添付文書、ラベル、NeoTCR製剤を使用するための指示書、シリンジ、廃棄指示書、投与指示書、管類、針、およびNeoTCR製剤を適切に投与するために臨床医が必要とし得る他の任意のものを含有し得る。
【0066】
本明細書に開示されるNeoTCR製剤は、その使用のために薬学的配合物に製剤化される。ある特定の実施形態において、そのようなNeoTCR製剤のラベルは、それを必要とする対象を処置するための指示書を提供する。
【0067】
治療組成物および製造方法
本明細書に記載される細胞製剤は、臨床用製造プロセスを使用して医薬品に製剤化することができる。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。一部の実施形態において、およびこの臨床用製造プロセス下において、NeoTCR製剤は、CryoMACS凍結バッグまたは別の好適なクライオバッグに凍結保存されている。一部の実施形態において、1つまたは複数のバッグは、患者の必要に応じて、各患者の場所に輸送され得る。一部の実施形態において、製剤は、アフェレーシス由来の患者自己CD8およびCD4 T細胞から構成され、この細胞は、その患者の腫瘍細胞の表面に排他的に提示される内因性HLA受容体のうちの1つと複合体化しているネオエピトープを標的とする1つまたは複数の自己neoTCRを発現するように精密ゲノム操作されている。
【0068】
キット
本開示の主題は、細胞製剤を評価および/もしくは細胞製剤をスクリーニングするための、ならびに/または対象におけるがんもしくは病原体感染症を処置および/もしくは予防するためのキットを提供する。ある特定の実施形態において、キットは、有効量の細胞製剤またはそれを含む薬学的組成物を含む。一部の実施形態において、キットは、エピトープペプチド配列を含む1つまたは複数のポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドを含む。一部の実施形態において、キットは、1つまたは複数のポリペプチド、例えばcomPACTポリペプチドをコードする1つまたは複数の核酸、例えば1つまたは複数のベクターを含む。一部の実施形態において、キットは、T細胞機能の1つまたは複数のマーカーの検出に使用される試薬を含む。一部の実施形態において、キットは、T細胞機能のマーカーを検出する分子を含む。一部の実施形態において、キットは細胞製剤を含む。ある特定の実施形態において、キットは滅菌容器を含み、そのような容器は、箱、アンプル、ボトル、バイアル、チューブ、バッグ、パウチ、ブリスターパック、または当技術分野で公知の他の好適な容器形態であり得る。そのような容器は、プラスチック、ガラス、ラミネート紙、金属箔、または医薬を保持するのに好適な他の材料で作製することができる。ある特定の非限定的な実施形態において、キットは、本開示のHR鋳型をコードする単離された核酸分子を含む。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。
【0069】
所望される場合、細胞製剤および/またはポリペプチド核酸分子は、細胞製剤を評価するための、および/あるいは細胞製剤を、がんまたは病原体もしくは免疫疾患を有するかまたはそれを発症するリスクのある対象に投与するための指示書と一緒に提供される。指示書は、概して、がんまたは病原体感染症の処置および/または予防のための組成物の使用に関する情報を含む。ある特定の実施形態において、指示書は、以下:治療剤;新生物、病原体感染症、もしくは免疫疾患またはその症状の処置または予防のための投薬スケジュールおよび投与;注意事項;警告;適応症;禁忌;過量投与情報;有害反応;動物薬理;臨床研究;ならびに/あるいは参考文献の記載のうちの少なくとも1つを含む。指示書は、容器(存在する場合)に直接、または容器に貼られるラベルとして、または容器中にもしくは容器と共に供給される別個のシート、パンフレット、カード、もしくはフォルダーとして印刷することができる。結果として得られる細胞は、非改変細胞のための条件と同様の条件下で成長させることができ、それによって、改変細胞は増大され、様々な目的のために使用することができる。一部の実施形態において、細胞製剤はNeoTCR製剤である。
【0070】
本明細書に記載される方法の他の好適な修正および改変は、好適な均等物を使用して、本明細書に開示される実施形態の範囲から逸脱することなく行うことができることが当業者には容易に明らかとなるだろう。ある特定の実施形態を詳細に記載したので、同じことは、例示のみを目的として含まれ、限定を意図したものではない以下の実施例を参照することによってより明確に理解されるだろう。本開示の範囲は、前述の記載によってではなく添付の特許請求の範囲によって示され、したがって、特許請求の範囲と同等の意味および範囲内にある全ての変更は本明細書に包含されることが意図される。
【実施例
【0071】
以下は本発明の方法および組成物の例である。上で提供された一般的な説明を考慮して、他の様々な実施形態が実施され得ることが理解される。
【0072】
実施例1:材料および方法
NeoTCR T細胞の生成。Neo12、F5、およびPACT032-TCR.075ネオエピトープ特異的TCR T細胞を、PCT/US18/058230に記載されているように生成した。個々の患者に特異的なNeoTCR T細胞は、例えば、PCT公開第WO2020/0167918号、同第WO2019/089610号、および/または同第WO2019/195310号に記載されているように調製することができる。本明細書に記載されるアッセイは、任意のネオエピトープ特異的TCR T細胞および他の種類の操作されたT細胞に対する使用に好適である。
【0073】
comPACTポリペプチド。HLAクラスI重鎖ポリペプチドに共有結合しているβ2-ミクログロブリンポリペプチドに共有結合しているneoE(ネオエピトープ)ペプチドを含むビオチン化neoE特異的ペプチド-HLA複合体(comPACT)ポリペプチドを、PCT公開第WO2020/0167918号および同第WO2019/195310号に記載されているように調製した。それぞれの対象ごとに同定された腫瘍変異およびHLA型によって定義される個別化neoE-HLA comPACTポリペプチドを患者ごとに開発する。以下の表に示すcomPACTポリペプチドを、本明細書に記載される例示的な検証実験に使用した。Neo12およびMART-1エピトープペプチドは、Bio-SynthesisまたはGenscriptから購入し、DMSOに10mMの濃度で再懸濁した。
【0074】
comPACT被覆プレートアッセイ。ストレプトアビジンを0.1M NaHCOに希釈し、96ウェルプレートに100μL/ウェルで添加し、続いて4℃で一晩インキュベーションしたか、または市販のストレプトアビジン被覆96ウェルプレートを使用した。ストレプトアビジン被覆プレートを、洗浄バッファー(1%BSAおよび0.05%Tween20を含有するPBS)を用いて3回洗浄し、次いで10μg/mL~0.00005μg/mLの範囲の濃度の100μLのcomPACTを各ウェルに添加した。comPACTを有しないウェルおよびミスマッチのcomPACTで被覆したウェルをネガティブコントロールとして使用した。プレートを室温で2時間インキュベートし、次いで洗浄バッファーを用いて3回、および3%ヒトAB血清を補充したTexMACSを用いて3回洗浄して、Tween20を除去した。NeoTCR-P1 T細胞を計数し、培地を用いて2回洗浄し、次いで、3%ヒトAB血清およびペニシリン-ストレプトマイシン溶液を補充したTexMACS(Miltenyi Biotec)に、100万生存有核細胞/mLで再懸濁した。モネンシンおよび/またはブレフェルジンAのいずれかを含有するタンパク質輸送阻害剤もまた適宜添加した。CD107a染色のために、100μL/ウェルの抗CD107a抗体溶液を添加した。T細胞を100μL/ウェルでcomPACT被覆プレートに播種し、37℃、5%COで一定期間インキュベートした。
【0075】
comPACT被覆ビーズアッセイ。1~6ミクロンの直径を有するストレプトアビジン被覆ビーズを、PBSに再懸濁して100μLの最終容量に達した2.5μLの8Mビーズストック中20pmolのcomPACTと共に、ビーズの沈降を防止するために穏やかな回転を使用して、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、溶液を磁気ラックに2または3分間結合させ、PBSを用いて3または4回洗浄し、次いで50μLのPBSに再懸濁した。次いで、comPACT被覆ビーズをNeoTCR-P1 T細胞と共に、3:1の比(300,000個のビーズ対100,000個の細胞)で一定期間インキュベートした。
【0076】
comPACT被覆T2細胞アッセイ。T2細胞を、ストレプトアビジンコンジュゲート抗CD20抗体を用いて4℃で30分間標識した。過剰なストレプトアビジンコンジュゲート抗CD20抗体を、Pharmingen染色バッファー(0.2%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)を補充した中性pH(pH7.4)緩衝塩溶液(すなわち、DPBS)を用いて2回洗浄することによって除去した。10μg/mLのcomPACTを4℃で2時間添加した。過剰なcomPACTを、Pharmingen染色バッファーを用いて2回洗浄することによって除去した。次いで、NeoTCR-P1細胞を一定期間添加した。
【0077】
サイトカイン放出。NeoTCR-P1細胞を、comPACT被覆プレート、ビーズ、またはT2アッセイプロトコールに記載されているようにプレートに添加し、37℃、5%COで24時間インキュベートした。上清を回収し、解析直前まで-80℃で保管した。IFNγ、TNFα、IL2またはIL6分泌などのサイトカイン分泌を、サイトメトリックビーズアレイ(CBA)(ヒトTh1/Th2サイトカインキット、BD Bioscience)を使用して測定した。
【0078】
T細胞活性化、細胞傷害性、および増殖マーカーのフローサイトメトリー解析。NeoTCR-P1細胞を、comPACT被覆プレート、ビーズ、またはT2アッセイプロトコールに記載されているようにプレートに添加し、37℃、5%COで適切な時間インキュベートした。
【0079】
CD107a染色のために、細胞をアロフィコシアニン(APC)標識抗CD107a抗体と共に一晩インキュベートした。抗体とのインキュベーション後、細胞を数回穏やかにピペッティングし、96ウェルU底プレートに移した。細胞を遠心分離し、1ウェル当たり200μLのPharmingen染色バッファー(BD Biosciences)に再懸濁し、次いで再び遠心分離し、1ウェル当たり50μLのLive/Dead NIR蛍光反応染色液(1:250;Invitrogen)に再懸濁した。プレートを暗所にて4℃で20分間インキュベートした。150μL/ウェルのPharmingen染色バッファーを添加し、プレートを遠心分離し、次いで、CD4およびCD8aなどのマーカーに特異的な抗体を含む100μL/ウェルの抗体ミックスに再懸濁した。補正ビーズ(例えば、Ultra Comp eBeads、Thermo Fisher Scientific)をポジティブコントロールとして使用した。プレートを暗所にて4℃で20分間インキュベートし、次いで100μLのPharmingen染色バッファーを、1ウェル当たりおよそ200μLの総容量となるように各ウェルに添加した。プレートを遠心分離し、細胞を1ウェル当たり200μLのPharmingen染色バッファーに再懸濁し、プレートを再び遠心分離した。
【0080】
CD107a染色のために、細胞を100μL/ウェルのIC固定バッファーに再懸濁し、フローサイトメーターでの解析直前まで暗所にて4℃でインキュベートした。フローサイトメーターでの取得前に、125μL/ウェルのBD Pharmingen染色バッファーを添加し、細胞を十分にピペッティングした。
【0081】
Ki67染色のために、comPACT被覆プレートでの細胞のインキュベーション後、細胞を数回穏やかにピペッティングし、96ウェルU底プレートに移した。細胞を遠心分離し、1ウェル当たり200μLのPharmingen染色バッファー(BD Biosciences)に再懸濁し、次いで再び遠心分離し、1ウェル当たり50μLのLive/Dead NIR蛍光反応染色液(1:250;Invitrogen)に再懸濁した。プレートを暗所にて4℃で20分間インキュベートした。150μL/ウェルのPharmingen染色バッファーを添加し、プレートを遠心分離し、次いで、CD4およびCD8aなどのマーカーに特異的な抗体を含む100μL/ウェルの抗体ミックスに再懸濁した。補正ビーズ(例えば、Ultra Comp eBeads、Thermo Fisher Scientific)をポジティブコントロールとして使用した。プレートを暗所にて4℃で20分間インキュベートし、次いで100μLのPharmingen染色バッファーを、1ウェル当たりおよそ200μLの総容量となるように各ウェルに添加した。プレートを遠心分離し、細胞を1ウェル当たり200μLのPharmingen染色バッファーに再懸濁し、プレートを再び遠心分離し、上清を注意深く吸引した。200μLのFoxp3固定/透過処理溶液(ThermoFisher)を各ウェルに添加し、数回ピペッティングした。プレートを暗所にて4℃で30分間インキュベートし、遠心分離し、200μLの透過処理バッファーを各ウェルに添加した。プレートを再び遠心分離し、細胞を、透過処理バッファーに1:100に希釈した100μL/ウェルの抗Ki67抗体に再懸濁した。細胞を数回ピペッティングし、暗所にて4℃で30分間インキュベートした。100μLの1×透過処理バッファーを各ウェルに添加し、プレートを遠心分離し、細胞を200μLのBD Pharmingen染色バッファーに再懸濁し、フローサイトメーターによって解析した。
【0082】
フローサイトメトリー取得をAttune NxTフローサイトメーター(Invitrogen)において行った。
【0083】
ソフトウェア。フローサイトメトリーデータを解析するためにFlowJoソフトウェアを使用し、データ表現および統計解析のためにGraphpad Prismを使用し、サークルパッキング可視化のためにRAWgraphを使用した。
【0084】
実施例2.comPACT被覆プレートアッセイにおいて、NeoTCR細胞の遺伝子編集効率はサイトカイン分泌の程度と相関する
comPACT被覆プレートアッセイにおけるIFNγ検出限界を査定するために、64%の遺伝子編集を有するNeo12 T細胞を実験室規模で生成した。活性化され、DNA/RNPを伴わずにエレクトロポレーションされ、増大された同じドナー由来のCD4/CD8 T細胞(mockコントロールT細胞)を添加することによって2倍段階希釈を行い、希釈したT細胞を、実施例1に記載したcomPACT被覆プレートアッセイにおいて試験した。IFNγ分泌を、実施例1に記載したサイトメトリックビーズアレイ(CBA)サイトカイン放出アッセイを使用して測定した。表2に示すように、IFNγ分泌は、1%の遺伝子編集を有するNeo12 T細胞を使用した場合であっても検出され、Neo12 T細胞の遺伝子編集の程度はIFNγ分泌の程度と相関した。
【0085】
実施例3.comPACT被覆プレートアッセイは特異的である
comPACT被覆プレートアッセイの特異度を、実施例1に記載した、プレート上に被覆された異なる濃度のマッチおよび非マッチcomPACTに対してF5(MART1 TCR)T細胞を試験することによって確認した。IFNγサイトカイン放出を、実施例1に記載したように測定した。表3に示すように、マッチcomPACT(MART1 HLA-A02)を用いてF5 T細胞を刺激した場合、強力なIFNγ分泌が検出された。重要なことに、非マッチペプチドまたはHLAを含むcomPACTの存在下でF5 T細胞を試験した場合は、1000ng/ウェルであっても活性は観察されなかった。
【0086】
実施例4.comPACT被覆プレートアッセイにおいて、1ウェル当たりのT細胞の数はサイトカイン分泌の程度と相関する
comPACT被覆プレートアッセイにおけるNeoTCR T細胞数の最適な範囲を決定するために、異なるcomPACT被覆ウェルにおいて、添加する19%の遺伝子編集効率を有するNeo12 T細胞の数を漸増させ、実施例1に記載したようにアッセイを行い、IFNγ分泌を測定した。表4に示すように、上清において検出されたIFNγの量は、総細胞の数、したがってNeo12 T細胞の数の増加と共に増加した。細胞の数が多いほど、1ウェル当たりのcomPACTの濃度が低い場合であっても、IFNγ分泌は多くなった。表中の「N.D.」はデータがないことを示す。
【0087】
実施例5.comPACT被覆プレートアッセイにおいて、TCR親和性はサイトカイン分泌の程度と相関する
Bethuneら、Biotechniques、2017.62(3):123~130ページに報告されている、HLA-A2/MART126-35(A27L)(ELAGIGILTV)MART1に異なる親和性で結合するTCR、すなわちF5 TCR(K=5.4μM)およびM1W TCR(K>15μM)を発現するT細胞を、実施例1に記載したcomPACT被覆プレートアッセイおよびIFNγ放出アッセイを使用して試験した。表5に示すように、IFNγ分泌の程度は、comPACTエピトープペプチドに対するTCR親和性と相関した。
【0088】
実施例6.comPACT被覆プレートアッセイにおいて、いくつかのサイトカインの放出の程度はcomPACT濃度と相関する
comPACT被覆プレートアッセイを使用したサイトカイン放出の検出を、実施例1に記載したように行った。F5 T細胞およびPACT032-TCR.075 T細胞をそれらの同族のcomPACTと共に使用し、いくつかのサイトカインの分泌を測定した。以下の表および図2A~Cに示すように、IFNγ(図2A)、IL2(図2B)、およびTNFα(図2C)分泌の程度は、被覆プレートにおけるウェル1つ当たりの同族のcomPACTの濃度と相関した。
【0089】
実施例7.comPACT被覆プレートアッセイにおいて、細胞傷害性はcomPACT濃度と相関する
CD107a染色を使用して、NeoTCR T細胞の抗原特異的細胞傷害活性をcomPACT被覆プレートアッセイにおいて試験した。64%の遺伝子編集効率を有するNeo12 TCR T細胞、PACT032-TCR.075 T細胞、およびF5 TCR T細胞を、comPACT被覆プレートアッセイにおいて異なる濃度の同族のcomPACTを用いて刺激し、続いて、実施例1に記載したようにCD107a染色およびフローサイトメトリーによる測定を行った。表7における結果は、CD107aを発現したCD8+Neo12 TCR T細胞のパーセントを示す。Neo12 TCR T細胞は、抗原特異的細胞傷害活性を示した。ミスマッチcomPACTを使用した場合、活性は観察されなかった。図3は、CD107aを発現したCD8+PACT032-TCR.075 T細胞のパーセントおよびCD107aを発現したCD8+F5 TCR T細胞のパーセントを示す。PACT032-TCR.075 T細胞およびF5 TCR T細胞は、抗原特異的細胞傷害活性を示した。ミスマッチcomPACTを使用した場合、活性は観察されなかった。
【0090】
実施例8.comPACT被覆プレートアッセイにおいて、増殖はcomPACT濃度と相関する
Ki67染色を使用して、NeoTCR T細胞の抗原特異的増殖活性をcomPACT被覆プレートアッセイにおいて試験した。F5 TCT T細胞およびPACT032-TCR.075 TCR T細胞におけるKi67の発現を、comPACT被覆プレートアッセイにおいて異なる濃度の同族のcomPACTを用いて刺激し、続いて、実施例1に記載したようにKi67染色およびフローサイトメトリーによる測定を行った。図4に示すように、CD4+(図4B)およびCD8+(図4A)F5 T細胞ならびにCD4+(図4B)およびCD8+(図4A)PACT032-TCR.075 T細胞は、抗原特異的増殖活性を示した。ミスマッチcomPACTを使用した場合、活性は観察されなかった。
【0091】
e450増殖色素を用いた染色もまた使用して、F5 TCR T細胞およびPACT032-TCR.075 TCR T細胞の増殖活性をcomPACT被覆プレートアッセイにおいて試験した。T細胞を、e450増殖色素を用いて染色し、実施例1に記載した異なる濃度の同族のcomPACTを用いて刺激し、フローサイトメトリーによって測定した。図4Cに示す結果は、F5 T細胞およびPACT032-TCR.075 T細胞が抗原特異的増殖活性を示したことを示す。ミスマッチcomPACTを使用した場合、活性は観察されなかった。
【0092】
実施例9.comPACT被覆ビーズアッセイにおいて、サイトカイン放出はcomPACT濃度と相関する
comPACT被覆ビーズアッセイを、実施例1に記載した、ビーズ上に被覆された異なる濃度のマッチおよび非マッチcomPACTを用いてF5 TCR T細胞およびNeo12 TCR T細胞を刺激することによって試験した。IFNγサイトカイン放出を、実施例1に記載したように測定した。図5に示すように、1ミクロンのビーズ(図5A)または6ミクロンのビーズ(図5B)のいずれかに結合したマッチcomPACTを用いてF5 TCR T細胞およびNeo12 TCR T細胞を刺激した場合、強力なIFNγ分泌が検出された。非マッチペプチドを含むcomPACTの存在下で細胞を試験した場合は、10,000ng/ウェル超であっても活性はほとんどまたは全く観察されなかった。
【0093】
実施例10.comPACT被覆T2細胞アッセイにおけるサイトカイン放出
comPACT被覆T2細胞アッセイを、実施例1に記載したように、異なる数の、マッチcomPACTで被覆したT2細胞およびcomPACTで被覆していないT2細胞を用いてNeo12 TCR T細胞を刺激することによって試験した。IFNγ、IL2、およびTNFαサイトカイン放出を、実施例1に記載したように測定した。図6に示すように、25,000個のT2細胞または50,000個のT2細胞に結合したマッチcomPACTを用いてNeo12 TCR T細胞を刺激した場合、強力なIFNγ(図6A)、IL2(図6B)、およびTNFα(図6C)分泌が検出された。細胞を、それらに結合したcomPACTを有しないT2細胞の存在下で試験した場合、活性は観察されなかった。
【0094】
実施例11.アッセイ洗浄バッファーにおけるTween20の効果
comPACT被覆プレートアッセイを、Tween20を含む洗浄バッファーおよびTween20を含まない洗浄バッファーと共に、実施例1に記載したNeo12 TCR T細胞を用いて行った。IFNγおよびTNFαの検出を、実施例1に記載したCBAを用いて行った。図7に示す結果は、Tween20を洗浄バッファーに含めることで、IFNγ(図7A)とTNFα(図7B)の両方のサイトカインシグナルが増加したことを示す。
【0095】
実施例12.細胞ベースアッセイとcomPACT被覆プレートアッセイとの比較
細胞ベースアッセイフォーマットとcomPACT被覆プレートアッセイフォーマットとを、異なる遺伝子編集効率(12%、30%、または52%)を有する、Neo12 TCRを発現するNeo12 TCR T細胞を使用して直接比較した。実施例1に記載したように、comPACT被覆プレートアッセイを行い、Neo12 TCR T細胞によるIFNγ放出を解析した。細胞ベースアッセイを、HLA-A02を発現するK562細胞と共培養したか;またはそれぞれNeo12もしくはMART1エピトープペプチド-HLA複合体を恒常的に発現するNeo12 HLA-A2 K562細胞(図8Aにおける「N」)もしくはMART-1 HLA-A2 K562細胞(ミスマッチ細胞、図8Bにおける「M」)と共培養した、Neo12 TCR T細胞を用いて行った。K562細胞を発現するHLA-A02に、被覆プレートアッセイに使用した異なる濃度の同じcomPACTペプチド(0~1000nM)を、RPMI培地において37℃、5%COで1時間パルスした。インキュベーション後、細胞をRPMI中で2回洗浄し、3%ヒトAB血清を補充したTexMACSに250,000細胞/mLで再懸濁した。マッチまたはミスマッチエピトープペプチド-HLA複合体を恒常的に発現するK562細胞をTexMACSに250,000細胞/mLで再懸濁した。Neo12 TCR T細胞を、TexMACSを用いて2回洗浄し、100万細胞/mLで再懸濁した。25,000個の、HLA-A02を発現するペプチドパルスK562細胞およびエピトープペプチド-HLA複合体を恒常的に発現するK562細胞を、丸底マイクロタイター96ウェルプレートに播種した。100,000個のNeo12 TCR T細胞を各ウェルに添加した。共培養細胞ベースアッセイプレートを37℃、5%COでインキュベートし、IFNγを、実施例1に記載したように測定した。
【0096】
図8および以下の表に示す結果は、抗原特異的T細胞応答の測定において、被覆プレートアッセイフォーマット(図8B)が細胞ベースアッセイ(図8A)と一致したことを示す。両方のアッセイはIFNγ産生について類似した傾向を示し、いずれのアッセイもミスマッチエピトープペプチドの存在下において有意なサイトカイン放出を示さなかった。被覆プレートアッセイは、Neo12 TCR T細胞の遺伝子編集効率とサイトカイン放出との間のより良好な定量的相関関係を示した。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A-2C】
図3
図4A
図4B-4C】
図5A-5B】
図6A-6C】
図7A-7B】
図8A-8B】
【国際調査報告】