(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】表面をスキャンする装置に使用するアタッチメント及びその装置
(51)【国際特許分類】
A61B 34/10 20160101AFI20240618BHJP
A61B 17/17 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B17/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576439
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-17
(86)【国際出願番号】 GB2022051423
(87)【国際公開番号】W WO2022258956
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519426058
【氏名又は名称】インペリアル カレッジ イノベイションズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】IMPERIAL COLLEGE INNOVATIONS LIMITED
【住所又は居所原語表記】Level 1 Faculty Building, C/O Imperial College, Exhibition Road London SW7 2AZ, United Kingdom
(71)【出願人】
【識別番号】523465159
【氏名又は名称】ハナマン,マルコ
【氏名又は名称原語表記】HANAMAN, Marco
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ブル,エム ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】クオモ,ピエルルイージ
(72)【発明者】
【氏名】ハナマン,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シエ,シューチャオ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL26
4C160LL28
(57)【要約】
表面、例えば骨表面をスキャンする装置と共に使用するためのアタッチメントであって、当該アタッチメントは、カメラを有する装置を取り外し可能に保持するように構成された第1ハウジング部と、第1ハウジング部に接続される第2ハウジング部であって、第2ハウジング部の内部領域及び第2ハウジング部の外部領域を画定する壁を有する第2ハウジング部と、壁に摺動可能に保持された複数のピンであって、複数のピンの各々が、内部領域に配置された近位端部及び外部領域に配置された遠位端部を有する複数のピンとを備える。各ピンの遠位端部が表面に接触すると、各ピンの近位端部は壁に対して相対的に並進するように構成されている。装置が第1ハウジング部に保持されているとき、複数のピンの近位端部はカメラによって視認可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面、例えば骨表面をスキャンする装置と共に使用するためのアタッチメントであって、
カメラを有する装置を取り外し可能に保持するように構成された第1ハウジング部と、
第1ハウジング部に接続される第2ハウジング部であって、第2ハウジング部の内部領域及び第2ハウジング部の外部領域を画定する壁を有する、第2ハウジング部と、
前記壁に摺動可能に保持された複数のピンであって、当該複数のピンの各々が、前記内部領域に配置された近位端部と、前記外部領域に配置された遠位端部とを有する、複数のピンと、
を備え、
前記複数のピンの各々の遠位端部が前記表面に接触すると、前記複数のピンの各々の近位端部は、前記壁に対して相対的に並進するように構成され、
前記装置が前記第1ハウジング部に保持されているとき、前記複数のピンの近位端部は、前記カメラによって視認可能である、
アタッチメント。
【請求項2】
前記第1ハウジング部は、前記装置を保持するための第1構造部と、前記装置を前記第1ハウジング部内に密封するための第2構造部とを有する、請求項1に記載のアタッチメント。
【請求項3】
遠位端部を有する支柱を備え、当該支柱は、当該遠位端部に対して既知の姿勢で前記第2ハウジング部を位置決めするように、前記表面に係合するように構成されている、請求項1又は2に記載のアタッチメント。
【請求項4】
前記第2ハウジング部は、前記支柱を複数の異なる位置で保持するように構成されている、請求項3に記載のアタッチメント。
【請求項5】
前記支柱は、前記第2ハウジング部に取り外し可能に保持されている、請求項4に記載のアタッチメント。
【請求項6】
前記表面に係合するように構成された複数の支柱を備え、各支柱は、遠位端部を備え、当該遠位端部に対する前記第2ハウジング部の既知の姿勢を画定する、請求項3~5のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項7】
前記第2ハウジング部は、前記第1ハウジング部に取り外し可能に保持されている、請求項1~6のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項8】
前記ピンの前記壁に対する相対的な移動を抑えるように前記ピンをロックするように動作可能なロック機構を備える、請求項1~7のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項9】
前記ロック機構は、摺動可能なロックプレートを備え、前記ロックプレートの第1位置において、前記複数のピンは、前記ロックプレートに対して相対的に並進可能であり、前記ロックプレートの第2位置において、前記ロックプレートは、前記複数のピンのうちの1以上に係合して、前記ピンの並進を抑える、請求項8に記載のアタッチメント。
【請求項10】
前記ロック機構は、前記ロックプレートを前記第1位置と前記第2位置との間で摺動させるように構成された可動ロック部材を備える、請求項9に記載のアタッチメント。
【請求項11】
前記複数のピンの1以上は、ねじ部を備え、前記ロックプレートは、前記複数のピンの1以上の前記ねじ部に係合するように構成された対応するねじ部を備える、請求項9又は10に記載のアタッチメント。
【請求項12】
前記第1ハウジング部は、前記カメラの視認方向を画定し、前記複数のピンは、互いに実質的に平行に配置され、検知方向を画定し、前記第2ハウジング部は、前記検知方向が前記視認方向に対して角度をなすように配置される、請求項1~11のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項13】
ユーザの手のための把持部を備え、当該把持部は、前記第1ハウジング部と前記第2ハウジング部との間にある、請求項1~12のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項14】
前記複数のピンのうちの第1ピンは、前記複数のピンのうちの第2ピンと異なる長さを有する、請求項1~13のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項15】
前記複数のピンの1以上は、各ピンの前記遠位端部から前記近位端部を離れるように付勢する弾力的に変形可能な要素を備える、請求項1~14のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項16】
前記複数のピンの1以上は、ポゴピンとして構成されている、請求項1~15のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項17】
前記複数のピンの1以上は、反射防止表面コーティングを備える、請求項1~16のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項18】
前記第2ハウジング部は、外部部品を前記表面上の予め決められた位置に誘導するための1以上の開口部を有する、請求項1~17のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項19】
前記第2ハウジング部は、前記表面に係合するための第2装置に接続するように構成されている、請求項1~18のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項20】
前記第2ハウジング部は、外科用ガイドとして構成されている、請求項1~19のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項21】
前記第1ハウジング部は、滅菌されている、請求項1~20のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項22】
前記第1ハウジング部は、電話ケースとして構成されている、請求項1~21のいずれか1つに記載のアタッチメント。
【請求項23】
表面、例えば骨表面をスキャンするための装置であって、
カメラを有する第1ハウジング部と、
第2ハウジング部であって、当該第2ハウジング部の内部領域及び当該第2ハウジング部の外部領域を画定する壁を有する、第2ハウジング部と、
前記壁に摺動可能に保持された複数のピンであって、前記複数のピンの各々が、前記内部領域に配置された近位端部と、前記外部領域に配置された遠位端部とを有し、前記複数のピンの各々の遠位端部が前記表面に接触すると、前記複数のピンの各々の近位端部が、前記壁に対して相対的に並進するように構成されている、複数のピンと、
前記第2ハウジング部に保持され、遠位端部を有する支柱であって、当該支柱が、当該遠位端部に対して既知の姿勢で前記第2ハウジング部を位置決めするように構成されている、支柱と、
を備え、
前記第1ハウジング部は、前記複数のピンの前記近位端部が前記カメラによって視認可能に前記第2ハウジング部に保持されている、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面をスキャンする装置に使用するアタッチメント及び表面をスキャンする装置に関する。より具体的には、これに限定されるものではないが、本発明は、骨表面をスキャンする装置と共に使用するためのアタッチメントに関する。
【背景技術】
【0002】
人工関節のような整形外科用インプラントを正しく機能させ且つ長持ちさせるためには、当該インプラントを正確な位置及び方向に固定する必要がある。経験や臨床前計画は、外科医が骨切りや、穴あけ、インプラントの位置決めを正しく行うのに役立つが、正確な位置決めが常に可能であるとは限らない。特に、外科医が手術中に更なるガイダンスを持たず、インプラントの位置を主観的に判断しなければならない場合はなおさらである。人工膝関節全置換術の再置換率は約7%で、そのうちの10%以上がインプラントの不適合によるものであるため、この方法は患者に大きな不快感を与える。ひどい場合には再手術が必要となり、その結果、患者にとって更なる費用、不便、不快感が生じる。
【0003】
手術中のインプラントの位置決めには、3Dプリントされた患者専用器具(PSI)、コンピュータナビゲーション、ロボット手術が選択肢としてあるが、これらのアプローチは、いずれも大多数の病院にとっては法外に高価である。更に、スキャンデータから手術部位の3Dモデル及びPSIを作成する必要があるため、PSIの作成にはかなりの経験を要する。PSIの製造及び病院への納入には、更なる時間及び経験が必要である。多くの場合、このようなスキャンデータは、患者のCTスキャンやMRIスキャンから得られるが、このことはこのアプローチの更なる欠点である。
【発明の概要】
【0004】
第1態様から見ると、本発明は、表面、例えば骨表面をスキャンする装置と共に使用するためのアタッチメントであって、カメラを有する装置を取り外し可能に保持するように構成された第1ハウジング部と、第1ハウジング部に接続される第2ハウジング部であって、第2ハウジング部の内部領域及び第2ハウジング部の外部領域を画定する壁を有する、第2ハウジング部と、壁に摺動可能に保持された複数のピンであって、複数のピンの各々が、内部領域に配置された近位端部と、外部領域に配置された遠位端部とを有する、複数のピンと、を備えるアタッチメントを提供する。複数のピンの各々の遠位端部が表面に接触すると、複数のピンの各々の近位端部は、壁に対して相対的に並進するように構成されている。装置が第1ハウジング部に保持されているとき、複数のピンの近位端部は、カメラによって視認可能である。
【0005】
このように、本発明は、表面をスキャンするためにスマートフォンなどの装置と共に使用するための、正確で費用対効果の高いアタッチメントを提供する。スマートフォンは、通常、1以上のカメラ、及び/又は1以上のセンサ(加速度計、ジャイロスコープ、ライダーセンサなど)、及び/又は1以上の光源を備えるので、外科医が他の検知面を必要とせずに表面をスキャンすることを可能にするハードウェアを有する単一の統合装置を提供する。電話の光源は、ハウジング部内からピンを照らすことができ、カメラは、ピンの動きを追跡することができる。骨表面をスキャンするために手術環境で使用される場合、本発明のアタッチメントは、患者専用器具や従来の手術前計画と比較して、かなり費用対効果の高い方法で、より正確で効率的な骨表面のマッピング及びナビゲーションを可能にする。更なる利点は、本発明のアタッチメントを既存の手術プロセスの一部として使用できることであり、それにより、外科医は、手術ロボットの使用とは逆に、新たな技術を習得する必要がない。アタッチメント及び携帯電話は、外科医が所望の手術ポイントを迅速且つ正確に見つけるのに役立つ位置決めシステムとして機能する。また、断層撮影装置や3Dコンタクトスキャナとして使用する場合、CTスキャナを使用せずに骨の3D表面モデルを得ることができる。
【0006】
第1ハウジング部は、装置を保持するための第1構造部を有する。第1ハウジング部は、装置を第1ハウジング部内に密封するための第2構造部を有する。
【0007】
アタッチメントは、遠位端部を有する支柱を備えてもよい。支柱は、可変長及び/又は可変直径を有してもよい。例えば、支柱は、外科医が選択的に支柱を異なる長さで保持できるように伸縮式であってもよい。支柱は、遠位端部に対して既知の姿勢に第2ハウジング部を位置決めするように、表面に係合するように構成されてもよい。
【0008】
第2ハウジング部は、支柱を複数の異なる位置に保持するように構成されてもよい。支柱は、第2ハウジング部に取り外し可能に保持されてもよい。
【0009】
アタッチメントは、表面に係合するように構成された複数の支柱を備えてもよい。各支柱は、遠位端部を備え、当該遠位端部に対する第2ハウジング部の既知の姿勢を画定してもよい。
【0010】
第2ハウジング部は、第1ハウジング部に取り外し可能に保持されてもよい。
【0011】
アタッチメントは、ピンの壁に対する相対的な移動を抑えるようにピンを選択的にロックするように動作可能なロック機構を備えてもよい。ロック機構は、摺動可能なロックプレートを備えてもよい。ロックプレートの第1位置において、複数のピンは、ロックプレートに対して相対的に並進可能である。ロックプレートの第2位置において、ロックプレートは、複数のピンに係合し、ピンの並進を抑える。ロック機構は、ロックプレートを第1位置と第2位置との間で摺動させるように構成された可動ロック部材を備えてもよい。
【0012】
複数のピンの1以上は、ねじ部を備えてもよい。ロックプレートは、複数のピンの1以上の前記ねじ部に係合するように構成された対応するねじ部を備えてもよい。
【0013】
第1ハウジング部は、カメラの視認方向を画定してもよい。複数のピンは、互いに実質的に平行に配置されてもよい。複数のピンの方向は、検知方向を画定してもよい。第2ハウジング部は、検知方向が視認方向に対して角度をなすように配置されてもよい。
【0014】
アタッチメントは、ユーザの手のための把持部を備えてもよい。把持部は、第1ハウジング部と第2ハウジング部との間にあってもよい。
【0015】
複数のピンのうちの第1ピンは、複数のピンのうちの第2ピンと異なる長さを有していてもよい。複数のピンの1以上は、各ピンの遠位端部から近位端部を離れるように付勢する弾力的に変形可能な要素を備えてもよい。複数のピンの1以上は、ポゴピンとして構成されてもよい。
【0016】
複数のピンは、反射防止表面コーティングを備えてもよい。これにより、カメラで見たときのピンからの反射を有利に抑えることができる。当該表面コーティングは、複数のピンの近位端部に施されてもよい。
【0017】
第2ハウジング部は、外部部品を表面上の予め決められた位置に誘導するための1以上の開口部を有してもよい。第2ハウジング部は、表面に係合するための第2装置に接続するように構成されてもよい。第2ハウジング部は、手術用ガイドとして構成されてもよい。
【0018】
第1ハウジング部は、滅菌されていてもよい。第1ハウジング部は、電話ケースとして構成されてもよい。
【0019】
また、表面、例えば骨表面をスキャンするための装置が提供される。当該装置は、カメラを有する第1ハウジング部と、第2ハウジング部であって、第2ハウジング部の内部領域及び第2ハウジング部の外部領域を画定する壁を有する、第2ハウジング部と、壁に摺動可能に保持された複数のピンであって、複数のピンの各々が、内部領域に配置された近位端部と、外部領域に配置された遠位端部を有する、複数のピンと、を備える。複数のピンの各々の遠位端部が表面に接触すると、複数のピンの各々の近位端部が、壁に対して相対的に並進するように構成されている。また、本装置は、第2ハウジング部に保持され、遠位端部を有する支柱を備える。支柱は、遠位端部に対して既知の姿勢で第2ハウジング部を位置決めするように構成されている。第1ハウジング部は、複数のピンの近位端部がカメラによって視認可能に第2ハウジング部に保持されている。
【0020】
また、骨表面などの表面をスキャンする方法が提供される。当該方法は、第1態様に関して本明細書に記載されるようなアタッチメントを提供するステップと、内部領域内の複数のピンの近位端部がカメラによって視認可能であるように、スマートフォンなどの装置、カメラをアタッチメントの第1ハウジング部に挿入するステップと、複数のピンの1以上が壁に対して並進するように、アタッチメントを表面上の第1位置で表面に接触させるステップと、ピンの近位端部の1以上の画像をキャプチャするステップと、前記表面に対するアタッチメントの位置を決定するステップと、を含む。
【0021】
前記表面に対してアタッチメントの位置を決定するステップは、撮影された画像と前記表面の予め記録された画像との比較に基づいてもよい。
【0022】
本方法は、撮影された画像に基づいて表面の3Dモデルを決定することを含んでもよい。
【0023】
本方法は、決定された位置に基づいて、ユーザを表面上の予め決定された位置に誘導するためのインジケータを決定することと、インジケータをユーザに出力することとを含んでもよい。
【0024】
カメラは、ビデオカメラ、デプスカメラのいずれかであってもよい。
【0025】
前記表面は、膝関節、股関節、肩関節、脊椎関節などの筋骨格系関節の一部であってもよい。筋骨格系関節は、ヒトや動物など異なる種のものであってもよい。
【0026】
また、本明細書に記載のアタッチメントを備える部品キット、及び本明細書に記載のいずれかの方法で使用するように構成された装置も開示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を更に説明する。
【0028】
【
図3】ポゴピンの形をした例示的なピンを示す図である。
【
図4】開放された第1ハウジング部を有するアタッチメントの一部を示す図である。
【
図5】開放された第1ハウジング部を有するアタッチメントの一部を示す図である。
【
図6】閉鎖された第1ハウジング部を有するアタッチメントの一部を示す図である。
【
図7】遠位大腿骨の表面をスキャンするための例示的なシステムの側面図である。
【
図8】遠位大腿骨の表面をスキャンするための例示的なシステムの背面図である。
【
図9】遠位大腿骨の表面をスキャンするための例示的なシステムの断面側面図である。
【
図10】複数のピンの例示的な配置を示す背面斜視図である。
【
図11】骨の断層を表すピンの遠位端部の骨表面に押し付けられた複数のピンを示す図である。
【
図12】骨の断層を表すピンの遠位端部の骨表面に押し付けられた複数のピンを示す図である。
【
図13】ピンを所定の位置にロックするように構成された例示的なロック機構を示す図である。
【
図14】ピンを所定の位置にロックするように構成された例示的なロック機構を示す図である。
【
図15】ロックプレートを押すことによってピンが自由に移動できるように構成された例示的なロック機構を示す図である。
【
図16】ロックプレートを押すことによってピンが自由に移動できるように構成された例示的なロック機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び
図2は、組立前及び組立後のシステムを示している。このシステムは、アタッチメント1と、アタッチメント1内に収納された携帯電話2とを備えている。アタッチメント1は、電話ケース3と、ピンホルダ4と、電話ケース3とピンホルダ4との間にある人間工学的ハンドル5とを備え、使用中にユーザがシステムを把持するのを補助する。電話ケース3とピンホルダ4と人間工学的ハンドル5とは、アタッチメント1のハウジング部の異なる部分と考えることができる。人間工学的ハンドル5が開示されているが、これはピンホルダ4や電話ケース3の機能にとって不可欠なものではないことは明らかであり、場合によっては省略してもよい。
【0030】
図4~
図6に示すように、電話ケース3は、ヒンジによって接続された2つの部分から構成されており、ユーザが電話ケース3を開き、携帯電話2を電話ケース3に便利に挿入できるようになっている。その後、電話ケース3の2つの部分が閉じられ、携帯電話2が電話ケース3内に保持される。電話ケース3の2つの部分にある対応する構造と係合するスライダ6を使用して、電話ケース3をロックすることができる。スマートフォン2のカメラ7は、電話ケース3の覗き窓の上に配置されている。これにより、カメラは、ピンホルダ4に保持されたピン8の配列を、覗き窓を通じて視認することができる。カメラは、以下に説明するように、表面をスキャンするためにピン8の近位端部13を視認可能であることが好ましい。覗き窓は、電話ケース3内の切欠きとして形成されてもよいが、これは必須ではなく、電話ケース3を通じてピン8が視認可能であるように、電話ケース3の一部がカメラに対して光学的に透明であってもよいことは明らかであろう。本システムが手術室などの無菌環境で使用される場合、電話ケース3は、スマートフォン2を密閉し且つ無菌部品であることが望ましい。折り畳み式の電話ケースが図示されているが、これが必須でないことは明らかであり、折り畳み式でない電話ケース3が携帯電話2の保持に使用されてもよい。アタッチメント1は、1回限りの使い捨て品であってもよいし、滅菌処理後に再使用されてもよい。
【0031】
スマートフォンのような携帯電話2が図示されているが、これは、本発明のアタッチメント1と共に使用されるであろう適切な装置の特に便利な例に過ぎない。携帯電話は必須ではなく、カメラを有し、カメラから得られた画像を処理するように構成されたプロセッサに接続された他の装置も、本発明のアタッチメントとの使用に適していることは明らかであろう。同様に、電話ケース3が説明されているが、説明されている方法で装置を保持できるホルダであれば、本発明のアタッチメントに使用するのに適していることは明らかであろう。
【0032】
図7~
図10に示すように、ハンドル5は、ピンホルダ4と電話ケース3とを接続している。具体的には、ハンドル5は、ピン8がハンドル5を通じてカメラから視認可能に、覗き窓の上で電話ケース3に接続される。ピン8は、ピンホルダ4内で互いに平行に配置され、壁10に対して実質的に垂直に延びるように保持されているが、これが不可欠でないことは明らかであろう。ピン8が並進する方向は、検知方向と考えることができる。
【0033】
電話ケース3は、ピン8を視認する角度を変えられるように、ハンドル5及び/又はピンホルダ4に回転可能に保持されてもよい。例えば、カメラの視認方向は、ピン8の並進方向(すなわち、検知方向)に対して30度から90度の間の任意の角度であってもよい。場合によっては、ユーザは、電話ケース3に対するピンホルダ4の向きを調整することができる。
【0034】
図9及び
図10に示すように、ピンホルダ4は、ピンホルダ4の壁10を横切って配置されたピン8の配列を有し、ピン8は、ピンホルダ4の内部領域内に位置する近位セクションと、ピンホルダ4の外部に位置する遠位セクションとを有する。図示されたピン8の配置は単なる例示であり、他の配置がアタッチメント1での使用に適していることは明らかであろう。
【0035】
ピン8は、壁10に保持され、壁10を貫通して外部領域から内部領域まで延びている。ピン8が壁10に摺動可能に保持されているため、ピン8を遠位大腿骨11に押し付けると、ピン8がピンホルダ4の内部領域に更に並進する。ピンホルダ4内のこの移動は、カメラによって観察され、外部領域におけるピンの位置に対応する距離を決定することができる。
図11及び
図12に示すような複数のピン8間の相対変位は、遠位大腿骨11の表面を効果的にスキャンし、骨表面12の断層像を導出するために使用することができる。
図3に示すように、ポゴピンは、アタッチメントのピン8として使用するのに適しているが、これが不可欠でないことは明らかであろう。ポゴピンは、近位端部13と、遠位端部14と、遠位端部14を近位端部13から離れるように付勢するバネ又は同様の弾力的に変形可能な要素とを有する。また、遠位端部14が、骨表面12に係合するための丸みを帯びた端部を有することも示されている。ピン8は同じ長さで示されているが、これは必須ではなく、異なる長さのピンが本発明のアタッチメント1で使用されるピンの配置を構成してもよいことは明らかであろう。
【0036】
また、ピンホルダ4は、特定の骨表面12に適した形状及びサイズの支柱15を有する。例えば、脊椎手術に使用するアタッチメントは、膝や、股関節、肩の手術に使用するアタッチメントと比較して、異なる支柱15を使用することができる。本発明のアタッチメントが、あらゆる一次骨格外科手術や整形外科手術に適していることは明らかであろう。支柱15は、ピンホルダ4を支柱15の遠位端部に対して既知の姿勢(すなわち、位置及び向き)で位置決め及び/又は方向付けるように機能する。アタッチメント1の1以上の自由度を取り除くことで、ピンホルダ4を正しく位置決めする際の労力、ひいては不確実性が軽減される。ピンホルダ4には1本の支柱15を有するアタッチメント1が示されているが、2本以上の支柱を1本のアタッチメント1に保持させてもよいことは明らかであろう。また、支柱15は、好ましくは、アタッチメント1とその構成部品の柔軟性を高めるために、例えばねじ接続を介して、アタッチメント1に取り外し可能に保持される。
【0037】
支柱15が遠位大腿骨11の表面上の異なる位置で接触すると、ピン8によって示される表面の断層が変化する。ピン8によって示される断層像は、支柱15が遠位大腿骨11に接触したときのピンホルダ4及び支柱15の向きにも依存する。従って、骨(又は他の表面)の周囲でシステムを同じ位置又は骨上の異なる位置で移動させ、ピン8の複数の連続画像をキャプチャすることによって、スマートフォンを使用して骨(又は他の物体)の3Dモデルを決定することができる。
【0038】
このスキャンされた断層像は、その後、他の術前スキャン又はCTやMRI画像などの他のモダリティによって得られた3Dモデルと比較され、術前計画で決定された正しい位置に対するアタッチメント1の位置及び/又は向きに関する「ライブ」フィードバックをユーザに提供することができる。このフィードバックは、外科医を正しい位置及び/又は方向へ誘導するために、視覚的又は可聴的な形態で提供することができる。例えば、携帯電話2の画面に視覚的なインジケータを表示したり、遠隔地のディスプレイに送信したりすることができる。視覚的なインジケータは、遠位大腿骨のライブ画像上、又は遠位大腿骨の3Dモデル上に重ねて表示することができ、ユーザがピンホルダ4を正しく配置するために遠位大腿骨をナビゲートするのに役立つ。術前スキャンを携帯電話2に読み込ませてもよいし、携帯電話2で撮影した画像を手術室内のローカル装置に送信してもよい。処理には、オフライン装置を使用するのが望ましい。携帯電話2に画像を保存することによって、オンライン装置である必要がないため、手術室内の他の装置との電子的干渉の危険性が少なくなる。携帯電話2を使用する更なる利点は、そのような装置には加速度計及び/又はジャイロスコープが搭載されていることが多く、ピンの変位と組合せることで更なるセンサ入力を提供し、骨表面12上のピンホルダ4の位置及び向きを決定することができることである。これらの追加的なデータソースは、ユーザを正しい手術部位に導くための、より改善された術中フィードバックを提供するために使用することができる。携帯電話2のカメラで得られた画像を処理することは、特に有利である。更に、携帯電話2は、通常、静止画又は動画の撮影が可能であるため、これらの出力を外科医に提供するための追加のハードウェアを必要としない。
【0039】
ピンホルダ4が骨表面12に正確に配置されると、ユーザは、ピンホルダ4に接続されたロック機構を介してピン8を所定の位置にロックすることができる。図示されたロック機構は、ピン8を所定の位置にロックするために、ロックプレート17をピン8と係合するように摺動するよう配置されたロックキー16を備える。ピン8は、ロックプレート17に形成されたそれぞれのスロットを通じて延び、
図15及び
図16に示すように、ロックプレート17がロック解除位置にあるとき、ピン8は、ロックプレート17に対して自由に動くことができる。ロックプレート17がロック位置に移動すると、
図13及び
図14に示すように、ピン8が延びるスロットがピン8と係合し、ピン8を所定の位置にロックする。図示されているように、ピン8の近位セクションは、ロックプレート17のスロットの対応するねじ部に係合するのに役立つねじ部を有してもよい。ねじ部は有利であるが、これは、ピン8を所定の位置にロックできるロックプレート17とピン8との間の適切な係合の一例に過ぎないことは明らかであろう。また、ロックキー18が摺動又は回転してロックプレート17をピン8に係合させてもよい。
【0040】
ピン8が所定の位置にロックされると、ピンホルダ4の壁10に形成された穴18は、骨表面12上のあらかじめ決められた位置に更なる部品を導くためのガイド穴として機能する。従って、ピンホルダ4は、ドリルビットなどの手術装置を骨表面12の所望の位置に誘導するために使用することができる患者固有の手術用ガイドとなる。しかしながら、本発明のアタッチメント1は、アタッチメント1が正しく位置決めされると、ピン8を所定の位置にロックすることができるため、カスタマイズされた患者専用の手術用ガイドを製造する必要性や技術的熟練を回避することができる。本発明のアタッチメント1の更なる利点は、ピンホルダ4がアタッチメント1に取り外し可能に保持されているため、ピンホルダ4を電話ケース3及び/又はハンドル5から分離できることである。一旦、ピン8が所定の位置にロックされると、ピンホルダ4が正しい位置に誘導されているため、携帯電話2及び/又はハンドル5は、それ以上必要ない場合がある。このように、外科医は、電話ケース3をハンドル5及び/又はピンホルダ4から取り外すだけで、手術部位へのアクセスを改善することができる。取り外し可能に保持されたピンホルダ4が記載されているが、これは必須ではなく、ピンホルダ4は、処置の間、アタッチメント1に保持されたままでもよいことは明らかであろう。同様に、ピンホルダ4は、電話ケース3及び/又はハンドル5がある場合には、それと一体になっていてもよい。
【0041】
本概念は、携帯電話2用のアタッチメントに関連して説明されてきたが、携帯電話を含む一体型装置、又は適切な装置を代わりに使用してもよいことは明らかであろう。
【0042】
本明細書の説明及び特許請求の範囲を通して、「備える(comprise)」及び「含む(contain)」という用語、並びにそれらの変形は、「有する(including)が、これらに限定されない」という意味であり、他の部位、添加剤、成分、整数、又はステップを除外することを意図していない(また、除外しない)。本明細書の説明及び特許請求の範囲を通じて、文脈上別段の定めがない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用されている場合、本明細書は、文脈上別段の定めがない限り、単数だけでなく複数も想定していると理解されるべきである。
【0043】
本発明の特定の態様、実施形態、又は実施例に関連して記載された特徴、整数、特性、又はグループは、それと両立しない場合を除き、本明細書に記載された他の態様、実施形態、又は実施例にも適用可能であると理解されるべきである。本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された全ての特徴、及び/又はこのように開示された方法もしくはプロセスの全てのステップは、そのような特徴及び/又はステップの少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組合せることができる。本発明は、前述の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の新規なもの、又は新規な組合せ、或いはこのように開示された方法又はプロセスのステップの新規なもの、又は新規な組合せに及ぶ。
【国際調査報告】