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特表2024-523023可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を特定する装置、システム、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を特定する装置、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20240618BHJP
   A61B 17/3207 20060101ALI20240618BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240618BHJP
【FI】
A61B17/22 528
A61B17/3207
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577173
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2022065347
(87)【国際公開番号】W WO2022263223
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21179223.9
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】バーレンス ローランド ウィルヘルムス マリア
(72)【発明者】
【氏名】エキン アフメト
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE21
4C160MM36
(57)【要約】
本発明は、管腔を通る可撓性の細長いデバイス10の内膜下経路を特定する装置及びコンピュータ実施方法に関する。装置は(i)細長いデバイスに沿って曲率プロファイルを決定し、(ii)曲率プロファイルを管腔内の内膜下経路を表す曲率のタイプに関連付けるように、細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを処理するために、曲率に関連するパラメータで構成されたデータ処理命令を保存するメモリと、メモリと通信し、且つ細長いデバイス10の少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに対して命令を実行し、内膜下経路が特定された場合に情報を出力するプロセッサとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔を通る可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を特定する装置であって、
(i)前記細長いデバイスに沿って曲率プロファイルを決定し、(ii)曲率プロファイルを前記管腔内の内膜下経路を表す曲率のタイプに関連付けるように、前記細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを処理するために、曲率に関連するパラメータで構成されたデータ処理命令を保存するメモリと、
前記メモリと通信し、且つ前記細長いデバイスの少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに対して前記データ処理命令を実行し、内膜下経路が特定された場合に情報を出力するプロセッサと、
を含む、装置。
【請求項2】
前記データ処理命令は、
前記細長いデバイスの少なくとも1つの形状セグメントに沿って曲率プロファイルを測定することと、
前記曲率プロファイルにおいて、前記曲率プロファイルが、前記細長いデバイスの経路にある障害物に起因するものであり得る前記細長いデバイスの変形を表すものとして定義された第1の曲率閾値レベルを上回る少なくとも1つのセクションを決定することと、
前記少なくとも1つのセクションにおける前記曲率プロファイルの曲率値から、前記少なくとも1つのセクションにおける曲率強度を示す曲率強度パラメータを決定することと、
前記曲率強度パラメータが内膜下閾値レベルを上回る場合に、前記管腔を通る前記細長いデバイスの前記経路を内膜下経路として特定することと、
内膜下経路が特定されると、警告として前記情報を出力することと、
を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記データ処理命令は、
前記細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを受信し、前記少なくとも1つのセグメントに沿った曲率の分類を出力するために、曲率に関連するパラメータで構成された曲率分類器を含み、前記曲率分類器は、内膜下経路に関連付けられた曲率の少なくとも1つの分類を出力し、前記メモリと通信する前記プロセッサは、前記曲率分類器を、前記細長いデバイスの前記少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに適用して、前記曲率分類器によって内膜下経路クラスが見つけられた場合に、内膜下経路の前記情報を出力する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記データ処理命令は、前記曲率プロファイルの前記少なくとも1つのセクションにおける前記曲率値の合計として前記曲率強度パラメータを決定すること、又は、前記曲率プロファイルの前記少なくとも1つのセクションにおける前記曲率値の平均として前記曲率強度パラメータを決定することを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記データ処理命令は、最大曲率値が前記第1の曲率閾値レベルよりも高い第2の曲率閾値レベルを下回る場合に、前記少なくとも1つのセクションが内膜下の移動を示すものではないと特定することを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記データ処理命令は、前記曲率プロファイルが前記第1の曲率閾値レベルを通過した点を決定することによって、前記少なくとも1つのセクションを決定することを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記細長いデバイスの前記少なくとも1つの形状セグメントは、前記細長いデバイスの遠位先端を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記データ処理命令は、前記細長いデバイスの前記遠位先端からの前記少なくとも1つのセクションの遠位端の距離を決定することと、決定された前記距離が閾値距離よりも小さい場合は、前記少なくとも1つのセクションを前記遠位先端部分として特定することと、を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記データ処理命令は、少なくとも2つの異なる内膜下閾値を設定することと、前記少なくとも2つの異なる内膜下閾値に応じて異なる警告を出力することと、を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記データ処理命令は、時間制限を設定することと、前記時間制限を超える期間について内膜下経路を表す前記曲率プロファイルが検出される場合に、前記情報を出力することと、を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記データ処理命令は、異なる時間制限を設定することを含み、各時間制限は、前記少なくとも2つの異なる内膜下閾値のいずれかに割り当てられる、請求項9及び請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記データ処理命令は、前記情報を触覚情報、可聴音情報、視覚情報、又はテキスト情報として出力することを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
細長い可撓性のデバイスと、
請求項1から12のいずれか一項に記載の装置と、
を含む、システム。
【請求項14】
管腔を通る可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を自動的に特定するコンピュータ実施方法であって、
(i)前記細長いデバイスに沿って曲率プロファイルを決定し、(ii)曲率プロファイルを前記管腔内の内膜下経路を表す曲率のタイプに関連付けるように、前記細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを処理するために、曲率に関連するパラメータで構成されたデータ処理命令を提供するステップと、
前記細長いデバイスの少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに対して前記データ処理命令を実行し、内膜下経路が特定された場合に情報を出力するステップと、
を含む、コンピュータ実施方法。
【請求項15】
コンピュータ上で実行されると、請求項14に記載のコンピュータ実施方法のステップを前記コンピュータに実行させるプログラムコード手段を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管腔を通る可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を特定する装置、方法、及びシステムに関する。本発明は更に、対応するコンピュータプログラムに関する。本発明は、血管内介入の分野において、特に慢性完全閉塞の治療に有用である。
【背景技術】
【0002】
動脈の慢性完全閉塞(CTO)は、ガイドワイヤをCTOに通した後で、閉塞領域を膨らませることで治療できる。更に、ステントを配置できる。CTOは管腔内で又は内膜下で通ることができる。医師は、ガイドワイヤがどのようにCTOを通過したかを正確に認識していないことが多い。これは、重大な臨床的影響を及ぼす可能性がある。特に、アテローム切除術、即ち、閉塞内の物質のデバルキングは、CTOの通過が管腔内である場合にのみ行うことができる。したがって、ガイドワイヤが血管内で内膜下経路を進んでいるかどうかを検出する検出器が必要である。
【0003】
US10267624D2は、光ファイバの軌跡を再構成するシステムを開示している。このシステムは、物体の中に挿入される光ファイバを含む。光ファイバには長さがあり、その長さに沿って少なくとも1つの曲げセンサユニットが配置される。このシステムはまた、光ファイバの挿入長増分を測定する測定デバイスと、少なくとも1つの曲げセンサユニットからの光学フィードバック信号を検出するインタロゲーションデバイスとを含む。このシステムは更に、測定された挿入長増分とそれに割り当てられる検出された光学フィードバック信号とに基づいているデータペアを使用して、挿入された長さに沿った光ファイバの軌跡を再構成するプロセッサデバイスを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、管腔を通る可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を確実に特定できる装置を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は更に、細長いデバイスが血管を通って内膜下経路を進む場合にユーザに警告するそのような装置を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は更に、対応するシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様では、管腔を通る可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を特定する装置が提供される。装置は、
(i)細長いデバイスに沿って曲率プロファイルを決定し、(ii)曲率プロファイルを管腔内の内膜下経路を表す曲率のタイプに関連付けるように、細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを処理するために、曲率に関連するパラメータで構成されたデータ処理命令を保存するメモリと、
メモリと通信し、且つ細長いデバイス(10)の少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに対して命令を実行し、内膜下経路が特定された場合に情報を出力するプロセッサとを含む。
【0008】
本発明は、内膜下経路に沿ってナビゲートされる可撓性の細長いデバイスは、管腔内経路に沿ってナビゲートされるときの可撓性の細長いデバイスの形状とは大きく異なる形状を示すはずであるという考えに基づいている。特に、内膜下経路に沿ってナビゲートされる可撓性の細長いデバイスの形状は、スパイラル又はヘリカル形状であると考えられる。完全又は理想的なヘリックスは、ヘリックスに沿って一定の曲率を有する。したがって、細長いデバイスの1つ以上の形状セグメントにおける細長いデバイスの曲率プロファイルの決定は、内膜下経路の検出に有利である。しかしながら、例えば、形状センシングプロセスなどにおける不正確さや、形状及び/又は位置に関連するデータの不正確さ、並びにヘリックスからの実際のナビゲーションの違い(したがって、内膜下領域における細長いデバイスの実際の形状は、理想のヘリックス形状から逸脱する)に起因して、内膜下領域において、デバイスの形状は完全なヘリックスとはならない場合がある。したがって、本発明は、曲率プロファイルを分析して、細長いデバイスの内膜下経路の候補となり得る曲率プロファイルにおける1つ以上のセクションを特定することを提案する。これは、細長いデバイスの経路の内膜下領域では、細長いデバイスの経路の管腔内領域と比較して認識可能に高い曲率値が曲率プロファイルにおいて観察されるはずであるという考えに基づいている。管腔内経路の場合、曲率はゼロか又は小さい。したがって、本発明によれば、曲率プロファイルを分析して、細長いデバイスが1つ以上のセクションにおいて高い曲率を示しているかどうかを決定して、デバイスの管腔内経路を特定し、内膜下経路が特定された場合に情報を出力する。このように、本発明は、可撓性の細長いデバイスの内膜下ナビゲーションの発生を、少ない計算量で迅速且つ正確に検出することを可能にする。本発明は、血管内介入、特にCTOの治療に有益である。
【0009】
第1の実施形態では、命令は、
細長いデバイス(10)の少なくとも1つの形状セグメントに沿って曲率プロファイルを測定することと、
曲率プロファイルにおいて、曲率プロファイルが、細長いデバイス(10)の経路にある障害物に起因するものであり得る細長いデバイス(10)の変形を表すものとして定義された第1の曲率閾値レベル(20)を上回る少なくとも1つのセクション(A~B)を決定することと、
少なくとも1つのセクション(A~B)における曲率プロファイルの曲率値から、少なくとも1つのセクション(A~B)における曲率強度を示す曲率強度パラメータを決定することと、
曲率強度パラメータが内膜下閾値レベルを上回る場合に、管腔を通る細長いデバイス(10)の経路を内膜下経路として特定することと、
内膜下経路が特定されると、警告として上記の情報を出力することとを含む。
【0010】
この実施形態では、曲率プロファイルは、例えば、形状センシングモダリティによって測定され、プロセッサによって分析されて、曲率プロファイルが、細長いデバイスの経路にある障害物に起因するものであり得る細長いデバイスの変形を表すものとして定義された第1の曲率閾値レベルを上回る少なくとも1つのセクションが決定される。曲率プロファイルが曲率閾値を下回る他のセクションは、計算時間を節約するために無視される。曲率プロファイルが曲率閾値レベルを上回るセクションが決定された場合、このセクションの曲率値から曲率強度パラメータが決定される。曲率強度パラメータは、直線形状からの形状の逸脱量を示す指標となり得る。特に、曲率強度パラメータは、少なくとも1つのセクションにおける曲率プロファイルがヘリカル形状又はヘリックス形状の曲率プロファイルに似ているかどうかを示す指標となり得る。曲率強度パラメータが、内膜下経路を表すものとして定義された内膜下閾値レベルを上回る場合、管腔を通る細長いデバイスの経路は内膜下経路として特定される。細長いデバイスの内膜下経路が特定された場合、医師は警告を受ける。
【0011】
動脈などの管腔を通る可撓性の細長いデバイスのナビゲーション中に、複数の形状ランが行われ、形状ランにおいて測定された曲率プロファイルを前述のように分析して、ナビゲーション中に内膜下での移動が発生しているかどうかがモニタリングされる。
【0012】
第2の実施形態では、命令は、
細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを受信し、上記の少なくとも1つのセグメントに沿った曲率の分類を出力するために、曲率に関連するパラメータで構成された曲率分類器を含み、曲率分類器は、内膜下経路に関連付けられた曲率の少なくとも1つの分類を出力し、メモリと通信するプロセッサは、曲率分類器を、細長いデバイス(10)の上記の少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに適用して、曲率分類器によって内膜下経路クラスが見つけられた場合に、内膜下経路の上記の情報を出力する。
【0013】
この実施形態では、本発明は、大量のデータを収集し、データに注釈を付け、そのデータを使用して、深層学習方法又は別の機械学習方法(決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、又はニューラルネットワークなど)をトレーニングすることによって、人工知能を利用する。AIベースのアルゴリズムを使用して、特定の曲率パラメータを推定することなく、通常領域の細長いデバイスの先端、内膜下領域に入る先端、内膜下領域を通過する先端など、所定のクラスのいずれかに形状を分類できる。このようなAIベースのアルゴリズムへの入力は、細長いデバイスの曲率プロファイル若しくは3D点座標のセットとしての細長いデバイスの形状、又はこれらの2つの組み合わせであり得、これにより、AIベースのアルゴリズムは曲率に対して追加の特徴を選択できる。
【0014】
本発明の更なる実施形態は、以下に定義され、本明細書に更に開示される。
【0015】
実施形態では、命令は、曲率プロファイルの少なくとも1つのセクションにおける曲率値の合計として曲率強度パラメータを決定することを含む。次に、関心領域における曲率プロファイルの曲率値の合計は、内膜下閾値レベルと比較され、曲率値の合計が内膜下閾値レベルを上回る場合は、内膜下経路が特定されたことを示す警告が出力される。「合計」という用語には、曲率プロファイルが第1の曲率閾値レベルを上回る少なくとも1つのセクションにおける曲率プロファイルの積分も含まれ得る。離散曲率値を合計することは、計算コストの観点から有利である。
【0016】
別の実施形態では、命令は、曲率プロファイルの少なくとも1つのセクションにおける曲率値の平均として曲率強度パラメータを決定することを含む。曲率値の平均を計算することも、計算コストの観点から有利である。
【0017】
更なる実施形態では、命令は、最大曲率値が第1の曲率閾値レベルよりも高い第2の曲率閾値レベルを下回る場合に、少なくとも1つのセクションが内膜下の移動を示すものではないと特定することを含む。最大曲率値が第2の曲率閾値レベルを下回る場合、少なくとも1つのセクションは無効とみなされ、このセクションでの曲率強度パラメータの決定は省略される。曲率プロファイルが第1の曲率閾値レベルを上回るセクションにおける曲率プロファイルの分析をより高い第2の曲率閾値に適用すると、このセクションでのノイズの多い計算を防止したり、長期間にわたって第1の閾値を超えているが、第2の閾値ほどの最大値に達しない曲率プロファイルを破棄したりできるという利点がある。第2の曲率閾値と第1の曲率閾値との比率は、1.5~3の範囲(例えば2)であり得る。
【0018】
更なる実施形態では、命令は、曲率プロファイルが第1の曲率閾値レベルを通過した点を決定することによって、少なくとも1つのセクションを決定することを含む。曲率プロファイルの分析におけるこの操作は、計算コストが低いという利点がある。
【0019】
曲率プロファイルの測定は、細長いデバイスの1つの形状セグメントに限定される場合がある。この場合、この形状セグメントには、デバイスの遠位先端が含まれることが好ましい。これは、可撓性の細長いデバイスの内膜下経路の発生は、デバイスの遠位先端で最も予想されるためである。曲率プロファイルの測定はまた、遠位先端と近位端との間の1つ以上の他の形状セグメントに沿って行われてもよい。曲率強度パラメータは、これらの形状セグメントごとに計算される。
【0020】
或いは、曲率強度パラメータを計算する領域は、解剖学的情報から決定することもできる。例えば、造影剤で強調されたX線又は3D解剖学的データ上で閉塞領域を特定できる。形状をX線及び3D解剖学的データに対して位置合わせした後、解剖学的画像データ内で特定された閉塞領域に可撓性の細長いデバイスがあるときに、本発明による方法を開始できる。
【0021】
更なる実施形態では、命令は、細長いデバイスの遠位先端からの少なくとも1つのセクションの遠位端の距離を決定することと、決定された距離が閾値距離よりも小さい場合は、少なくとも1つのセクションを遠位先端部分として特定することとを含む。
【0022】
決定された距離が閾値距離を上回る場合、セグメントはデバイスの遠位先端を含むセグメントとはみなされず、遠位先端セグメントにおける曲率強度は0に設定され得る。
【0023】
更なる実施形態では、命令は、少なくとも2つの異なる内膜下閾値を設定することと、少なくとも2つの異なる内膜下閾値に応じて異なる警告を出力することとを含む。管腔内の移動からの細長いデバイスの移動の逸脱の深刻度を考慮した警告スキームを提供することは有利である。例えば、複数の警告レベルを定義し、曲率強度パラメータがこれらのレベルのどれを上回るかに応じて、異なる警告が出力される。例えば、黄、橙、明るい赤、及び暗い赤などの色分けされた警告が出される。ここでは、この色の順序は、管腔内経路からの移動の逸脱の深刻度の増加を示す。
【0024】
更なる好ましい実施形態では、命令は、時間制限を設定することと、時間制限を超える期間について内膜下経路を表す曲率プロファイルが検出される場合に、警告を出力することとを含む。この実施形態では、警告を出力することは、例えば、内膜下閾値の超過だけでなく、タイミング制約にも左右される。つまり、警告は、内膜下閾値と時間制限の両方を超過した場合にのみ出力される。この実施形態は、内膜下での移動は短時間(1又は2秒未満)のみ発生し、その後、細長いデバイスは再び管腔内経路を進む可能性があることを考慮に入れている。したがって、警告が不要な場合は警告を回避できる。
【0025】
上記の実施形態に関連して、少なくとも2つの異なる内膜下閾値のうちのどの内膜下閾値が定義されるかに応じて、異なる内膜下閾値に対して異なる時間制限が定義される。この時間制限は警告レベルに適合される。例えば、低い警告レベルでは、時間制限は、高い警告レベルに対してよりも高く設定される。
【0026】
更なる実施形態では、警告は、触覚、可聴音、視覚、又はテキストの警告として出力される。警告はディスプレイ上に視覚化されたり、スピーカによって再生されたりする。
【0027】
細長いデバイスの形状をモニタなどに表示するように装置が構成されている場合、高い曲率強度パラメータをもたらした関心領域の視覚化された形状の色を、例えば緑(管腔内での移動)から赤(内膜下での移動)に変化することもできる。
【0028】
更なる実施形態では、装置は、細長いデバイスに含まれる光ファイバを光学的にインタロゲートし、光ファイバからの光学フィードバックを受信する光学インタロゲーションモダリティを含む光学形状センシングモダリティを含む。
【0029】
光学形状センシングの他に、他の3D形状センシングソースも本発明で使用できる。例えば電磁気トラッキングシステムを使用できる。
【0030】
本発明の第2の態様によれば、細長い可撓性のデバイスと、第1の態様による装置とを含むシステムが提供される。
【0031】
可撓性の細長いデバイスは、ガイドワイヤ又はカテーテルであり得る。
【0032】
本発明の第3の態様によれば、管腔を通る可撓性の細長いデバイスの内膜下での移動を自動的に特定するコンピュータ実施方法が提供される。この方法は、
(i)細長いデバイスに沿って曲率プロファイルを決定し、(ii)曲率プロファイルを管腔内の内膜下経路を表す曲率のタイプに関連付けるように、細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを処理するために、曲率に関連するパラメータで構成されたデータ処理命令を提供するステップと、
細長いデバイスの少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに対してデータ処理命令を実行し、内膜下経路が特定された場合に情報を出力するステップとを含む。
【0033】
この方法の第1の実施形態は、
細長いデバイスの少なくとも1つの形状セグメントに沿って曲率プロファイルを表すデータを提供するステップと、
曲率プロファイルにおいて、曲率プロファイルが、細長いデバイスの経路にある障害物に起因するものであり得る細長いデバイスの変形を表すものとして定義された第1の曲率閾値レベルを上回る少なくとも1つのセクションを決定するステップと、
少なくとも1つのセクションにおける曲率プロファイルの曲率値から、少なくとも1つのセクションにおける曲率強度を示す曲率強度パラメータを決定するステップと、
曲率強度パラメータが内膜下閾値を上回る場合に、管腔を通る細長いデバイスの経路を内膜下経路として特定するステップと、
内膜下での移動が特定される場合に、警告を出力するステップとを含む。
【0034】
この方法の第2の実施形態は、
細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを受信し、上記の少なくとも1つのセグメントに沿った曲率の分類を出力するために、曲率に関連するパラメータで構成された曲率分類器、好ましくは、トレーニングされた曲率分類器を提供するステップであって、曲率分類器は、内膜下経路に関連付けられた曲率の少なくとも1つの分類を出力する、提供するステップと、
曲率分類器を、細長いデバイスの上記の少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに適用して、曲率分類器によって内膜下経路クラスが見つけられた場合に、内膜下経路の上記の情報を出力するステップとを含む。
【0035】
本発明の第4の態様では、コンピュータプログラムが提供される。コンピュータプログラムは、コンピュータ上で実行されると、第3の態様による方法のステップをコンピュータに実行させるプログラムコード手段を含む。
【0036】
請求項に係るシステム、方法、及びコンピュータプログラムは、請求項に係る装置と類似及び/又は同一の好ましい実施形態、特に従属請求項に定義されているとおり、また、本明細書に開示されているとおりの実施形態を有することが理解されるべきである。
【0037】
本開示には、コンピュータプログラムを保存した非一時的コンピュータ可読記録媒体が包含されている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される模範的な実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【0039】
図1図1は、血管の管腔を通る可撓性の細長いデバイスの管腔内経路及び内膜下経路を説明するための略図を示す。
図2図2は、内膜下経路内の可撓性の細長いデバイスを模倣したボールペンフィラーの周りにスパイラル状に巻かれた可撓性の細長いデバイスの略図を示す。
図3a-3d】図3a-3dは、様々なビューでの図2の細長いデバイスの視覚化された再構成を示す。
図4図4は、実際に血管の管腔に挿入された細長いデバイスの視覚化された再構成を示す。
図5図5は、可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を特定する方法のフロー図を示す。
図6図6は、内膜下経路の影響下にある細長いデバイスの測定された曲率プロファイルの図を示す。
図7図7は、内膜下経路に沿ったデバイスの別の位置での曲率プロファイルの図を示す。
図8図8は、内膜下経路に沿ったデバイスの更に別の位置での曲率プロファイルの図を示す。
図9図9は、図8の曲率プロファイルの分析を示す図8の曲率プロファイルの図を示す。
図10図10は、図8の曲率プロファイルの更なる分析を示す図8の曲率プロファイルの図を示す。
図11図11は、図8の曲率プロファイルの更なる分析を示す図8の曲率プロファイルの別の図を示す。
図12図12は、細長いデバイスのナビゲーション中に内膜下経路が発生しない場合のいくつかの形状測定についての細長いデバイスの遠位形状セグメントの曲率強度パラメータを示す図を示す。
図13図13は、図12に類似する図であるが、デバイスのナビゲーション中に内膜下経路が発生している。
図14図14は、可撓性の細長いデバイスの内膜下経路を特定するシステムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1は、血管Vの管腔を通る可撓性の細長いデバイス10の管腔内経路及び内膜下経路を説明するための略図を示す。血管Vは、例えば動脈である。血管は、血管壁VW内の血管Vの管腔を狭くする慢性完全閉塞(CTO)の影響下にある場合がある。CTOは、ガイドワイヤGWであり得る細長いデバイス10をCTOに通すことで治療できる。ガイドワイヤGWをCTOに通した後、閉塞した領域を膨らませることができる。更に、ステント(図示せず)が配置されてもよい。血管内介入においてCTOを治療するために、細長いデバイス10は、血管Vを通してナビゲートされる。つまり、矢印14に従って血管Vの管腔を前進させられる。参照番号12は、可撓性の細長いデバイス10の先端部分を示す。細長いデバイス10を血管Vを通してナビゲートする際に、細長いデバイス10は、管腔内経路又は内膜下経路を進む可能性がある。細長いデバイス10の管腔内経路は実線で示され、内膜下経路は破線で示されている。CTOの適切な治療のためには、細長いデバイス10は管腔内経路でCTOを通る必要がある。例えば、アテローム切除術(閉塞内の物質のデバルキング)は、CTOの通過が管腔内である場合にのみ実施できるが、CTOの適切な治療には管腔内経路でのCTOの通過では不十分である。しかし、医師は、細長いデバイスがどのようにCTOを通過したかを正確に認識していないことが多い。本開示は、デバイス10のような細長い可撓性のデバイスの内膜下経路を自動的に特定し、内膜下CTOトラックについてのリアルタイム警告を出して、医師が手術中に治療を適応させることができて、細長いデバイス10によるCTOの通過が管腔内である場合にのみアテローム切除術が利用されることを確実にするコンピュータ実施方法及び装置を提供する。更に、本明細書における開示は、内膜下CTOトラックの程度についてリアルタイム警告を提供できる。
【0041】
図2図4を参照して、ガイドワイヤGWのような細長いデバイスの3D形状が、内膜下経路を進む際にどのように見えるかについて説明する。
【0042】
図2に示す光学形状センシング対応ガイドワイヤGWでベンチテストが行われた。図2では、ガイドワイヤGWは、血管の3mmの管腔を模倣した3mm径のボールペンフィラー16の周りにスパイラル状に巻かれている。本教示は、ガイドワイヤが、内膜下経路にあるとき、内膜下経路に沿ってスパイラル形状になるという考えに基づいている。したがって、ボールペンフィラーの周りのガイドワイヤGWのスパイラル形状は、内膜下空間内のガイドワイヤの想定されるスパイラル形状を模倣するように作られている。
【0043】
ボールペンフィラー16の周りにスパイラル状に巻かれたガイドワイヤGWは、形状センシング、ここでは、光学形状センシングされる。光学形状センシングは光周波数領域反射率測定(OFDR)センシングシステムを用いて行われる。図3a)~図3d)は、光学形状センシングビューイングソフトウェアによって作成された様々なビューでのガイドワイヤの再構成を示している。図3a)は、ボールペンフィラー16の正面図を示し、図3b)は側面図を示し、図3c)は拡大正面図を示し、図3d)は長手方向におけるビューを示している。
【0044】
図3a)~図3d)から明らかなように、ガイドワイヤの3D再構成は、ボールペンフィラー16の周りにスパイラル状に巻かれている領域Aでスパイラル構造を有している。これは、領域Bにおける通常の直線構造とは異なる。
【0045】
図4は、実際にガイドワイヤがCTOを内膜下で移動している、光学形状センシング対応のガイドワイヤの再構成された形状を可視化したものを示す。図4からわかるように、実際の場合でも、ガイドワイヤGWは、内膜下帯領域Sにおいてスパイラル構造を有し、管腔内領域Iにおいて通常の/直線構造を有している。この区別は、ガイドワイヤGWが管腔内空間にあるのか、内膜下空間にあるのか、又は部分的に内膜下経路にあり、部分的に管腔内経路にあるのかを自動的に検出するための本開示の基礎となっている。本開示によれば、管腔内空間から内膜下空間への移行、及びその逆も検出され得る。
【0046】
ガイドワイヤのような可撓性の細長いデバイスの形状は、内膜下領域においてスパイラル状又はヘリカル状の構造を有するという考えに基づいて、どのように細長いデバイス10のスパイラル構造を少ない計算量で検出できるかを更に説明する。
【0047】
上で説明したように、内膜下経路における細長いデバイス10の3D形状は、(不完全な)ヘリックスの形をしている可能性がある。完全な円筒形ヘリックスは、次のパラメータ化によって数学的に記述できる。
x(t)=a cos(t)
y(t)=a sin(t)、
z(t)=bt、
ここで、aは半径であり、b/aはヘリックスの傾きである。ヘリックスとの内膜下経路における細長いデバイス10の3D形状の類似性のため、全ての形状の遠位部は上記のパラメータ化に適合し、ヘリックスにどれだけ適合するかを評価できる。しかし、この計算操作では、細長いデバイス10のナビゲーション中の全ての形状測定に対してこの計算を行うと、大量の計算が必要になり、また、計算によって必ずしも一意の解が得られるとは限らない。更に、細長いデバイスの形状は、形状測定の不正確さと実際の内膜下経路の形成のために、必ずしもヘリックスに適合するとは限らない。したがって、本教示は、形状センシングデータの不完全さと内膜下の移動の両方を大量の計算を必要とせずに扱うことができる間接的であるが、より実用的な解決策を提案する。
【0048】
本開示による方法は、細長いデバイス10の形状の測定から得られた曲率プロファイルを分析する。曲率が内膜下経路の特定に適している理由は、完全な円筒形ヘリックスの曲率が定数であり、上記のパラメータa及びbを基準とすると、次のようになるためである。
|a|/(a+b
【0049】
内膜下経路における細長いデバイス10の形状はヘリックス形状に似ていることが予想されるため、細長いデバイス10の3D形状は、管腔内経路に比べて内膜下経路での曲率が大幅に高くなることが予想される。内膜下経路が細長いデバイスの理想的なヘリックス形状をもたらすならば、高い一定の曲率を有する長方形の曲率プロファイルが観察されるはずである。デバイス10の先端部分14が内膜下経路にあると、曲率プロファイルの最遠位部において一定の曲率プロファイルが高くなる。
【0050】
実際には、形状センシングの不正確さ、データの不正確さ、及び完全なヘリックスからの実際のナビゲーションの違いのために、内膜下経路内の細長いデバイスの実際の形状は理想的なヘリックスから逸脱し、したがって、曲率プロファイルは完全な長方形のプロファイルから逸脱する。ただし、曲率プロファイルは、内膜下経路全体を通して曲率が高いままである。
【0051】
図5は、細長いデバイスの内膜下経路を自動的に特定するコンピュータ実施方法の実施形態のフロー図を示している。方法100は、細長いデバイス10の少なくとも1つの形状セグメントに沿って曲率プロファイルを測定するステップS102を含む。曲率プロファイルの測定は、光学形状センシングモダリティなどの形状センシングモダリティや任意の他の形状センシングデータ源から取得された形状センシングデータを評価することによって行われる。曲率は、当業者には知られているように、形状センシングデータから抽出又は計算される。
【0052】
図6は、細長いデバイス10の遠位部分での曲率プロファイルの図を示しており、ここでは、遠位部分は内膜下経路にある。図6のx軸は形状センシングデータのサンプル点(ノード)を示し、y軸は曲率(逆数のサンプル点を単位とする)を示している。サンプル点350は細長いデバイス10の先端である。図6の形状センシングデータは、実際に細長いデバイスが血管を通ってナビゲートされたときに得られたものである。図6から明らかなように、曲率プロファイルには、サンプル点270~350からの曲率値があり、この曲率値は、サンプル点270よりも下の曲率プロファイルの曲率値と比較して大幅に高くなっている。図7及び図8に示すように、同様の曲率プロファイルが、内膜下経路に沿ったデバイスの様々な位置で発生する。したがって、デバイス10が内膜下経路にある限り、各形状測定の曲率プロファイルは、デバイス10のナビゲーション中に内膜下経路で高い曲率を示す。図6図8からわかるように、曲率値が高くなる領域における曲率値は、図6から図7、及び図7から図8で異なる。それでもなお、曲率プロファイルは、高い曲率の明確な領域を示す。つまり、デバイス10の先端(サンプル点350)を含む遠位部分は、内膜下経路にあると想定される。
【0053】
図5を再び参照すると、方法100は、曲率プロファイルにおいて、曲率プロファイルが第1の曲率閾値レベルを上回る少なくとも1つのセクションを決定するステップS104に進む。曲率閾値レベルは、細長いデバイスの経路にある障害物に起因するものであり得る細長いデバイスの変形を表すものとして定義される。図9は、方法のステップS104の実装の実施形態を示している。第1の曲率閾値レベル20は、好ましくは、図9に示すように、低い曲率値(0.5など)として設定される。曲率プロファイルが第1の曲率閾値レベルを上回る少なくとも1つのセクションの決定は、曲率プロファイルが第1の曲率閾値レベル20を通過した点A及びBを決定することによって行われる。これは、次に、曲率プロファイルを遠位(サンプル点350)から近位(0)まで(又はその逆で)調べて、曲率プロファイルがレベル20を通過した位置A及びBを見つけることによって行うことができる。
【0054】
図5を再び参照すると、方法100は、曲率プロファイルが第1の曲率閾値レベル20を上回る少なくとも1つのセクションにおける曲率プロファイルの曲率値から、少なくとも1つのセクションA~Bにおいて曲率がどれくらい強いのかを示す曲率強度パラメータを決定するステップS106に進む。図10に示す実施形態では、曲率強度パラメータは、曲率プロファイルのセクションA~Bの曲率値の合計として決定される。セクションA~Bにおける曲率値を合計する操作は、図10に縦線22で示されている。別の実施形態では、曲率強度パラメータは、曲率プロファイルのセクションA~Bにおける曲率値の平均として決定される。
【0055】
図5を再び参照すると、方法100は、事前に決定された曲率強度パラメータが内膜下閾値を上回る場合に、管腔を通る細長いデバイス10の経路を内膜下経路として特定するステップS108を含む。曲率強度パラメータをセクションA~Bにおける曲率値の合計として決定する場合、内膜下閾値は、第1の曲率閾値レベル20よりもはるかに大きく、例えば1桁大きく設定される値であり得る。
【0056】
方法100は更に、内膜下での移動が特定された場合に警告を出力するステップS110に進む。警告は、触覚、可聴音、視覚、又はテキストの警告として出力され得る。
【0057】
方法100は更に、例えば、ステップS106の前及びステップS104の後で、セクションA~Bにおける最大曲率値が、第1の曲率閾値レベル20よりも高い第2の曲率閾値レベルを下回る場合、セクションA~Bは、内膜下の移動を示すものではないと特定するステップを含んでもよい。これを図11に示す。図11に第2の曲率閾値レベル24が示されている。例えば、第2の曲率閾値レベル24は、第1の曲率閾値レベル20の1.5~2.5倍の範囲、例えば2倍であり得る。図11の例では、第2の曲率閾値レベル24は0.1に設定されている。したがって、第1の曲率閾値レベルの2倍である。このステップは、ノイズの多い計算を有利に回避するか、又は、長期間にわたって第1の閾値を超えているが、第2の閾値ほどの最大値に達しない曲率プロファイルを破棄するために有利に使用することもできる。
【0058】
上記の説明では、細長いデバイス10の先端を含む遠位形状セグメントのみを考慮しているが、遠位端と近位端との間の細長いデバイス10の他の形状セグメントを考慮することもできる。しかし、細長いデバイス10の遠位形状セグメントについての方法を行うことが最も重要であり、利点である。
【0059】
方法100は更に、ステップS104の後に、細長いデバイス10の遠位先端14からのセクションA~Bの遠位端Aの距離を決定し、決定された距離が閾値距離よりも小さい場合は、セクションA~Bを遠位先端部分として特定することを含んでもよい。それ以外の場合、検討下のセグメントは遠位形状セグメントとはみなされず、内膜下経路を特定する方法がデバイス10の遠位先端部分にのみ適用されるか、遠位先端部分のみを対象としている場合は、遠位形状セグメントの曲率強度パラメータはゼロに設定される。
【0060】
以上をまとめると、ナビゲーション中のデバイスの形状ごとに曲率強度パラメータが決定されるか、又は、例えば、非遠位形状セグメントも評価される場合は、複数の曲率強度パラメータが決定され、これらの曲率強度パラメータに基づいて決定を行うことができる。図12及び図13は、多数の形状ランに対するこれらの曲率強度パラメータの分布を示している。図12は、内膜下経路なしで記録された10,000回の形状測定(形状ラン)を超える数の決定された曲率強度パラメータを示し、図13は、内膜下経路があるものを示している。曲率強度パラメータは、セクションA~Bにおける最大曲率値が第2の曲率閾値レベル24(図11)を上回ることを必要とせずに計算されている。セクションA~Bにおける最大曲率値が第2の曲率閾値を上回ることを必要とすると、図12及び図13の一部の低い値は影響を受けるが、警告を出すかどうかのためにより重要である高い値は影響を受けない。
【0061】
図12では、各形状ランに対して決定された全ての曲率強度パラメータは、内膜下閾値として設定された4を下回り、ほとんどの値は2を下回り、細長いデバイスの正常のナビゲーションを示している。
【0062】
図13では、各形状ランに対する曲率強度パラメータは、10,000回目の形状ラン後の内膜下の移動と、3,500回目の形状ランの周りの短い試行とを示している。形状ラン10,000から始まる値は、ほとんどが細長いデバイス10の内膜下経路を示す6を上回るが、管腔内経路を示すナビゲーションの領域では、曲率強度パラメータは4を下回る。
【0063】
本教示による方法では、2つ、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上など、1よりも多い内膜下閾値を設定し、異なる内膜下閾値に応じて異なる警告レベルを出力することも想定されている。例えば、4つ、6つ、8つ、10など、複数の警告レベルが事前に設定されていてもよく、曲率強度パラメータがこれらのレベルのいずれかを上回ると、黄、橙、薄い赤、及び濃い赤などの色分けされた警告が出される。したがって、細長いデバイス10の経路の管腔内経路からの逸脱の深刻度を医師に示すことができる。
【0064】
本教示による方法の範囲内で、警告レベルにタイミング制約を含めることも可能である。つまり、1つ以上の時間制限を設定できる。複数の異なる時間制限がある場合、各時間制限を異なる内膜下閾値のいずれかに割り当てることができる。例えば、2秒の時間制限を6を下回る曲率強度パラメータに割り当て、1秒の時間制限を6を上回る値に割り当てることができる。警告は、振幅とタイミング制約の両方が満たされる場合にのみ提供される。
【0065】
更に、高い曲率強度パラメータをもたらした関心領域の視覚化された形状の色を、例えば緑から赤に変更することができる。
【0066】
以下では、内膜下経路を特定する方法の別の実施形態について説明する。
【0067】
上述の曲率に関連するパラメータは、教師あり機械学習及び最適化手法を用いて推定できる。上記と同じ方法を使用できる。ただし、上記の曲率に関連するパラメータは、形状の注釈付きのセットを使用して最適に決定される。注釈付き形状セットには、セット内の各形状に対して以下の内容が含まれる:
-形状情報(位置、ひずみ、曲率、ねじれ、アルファ値など)、
-曲率が高い形状の開始セグメント及び終了セグメント、
-形状の先端がCTO領域にあるかどうかを示す形状全体の第1のラベル、
-形状が内膜下経路をたどっている程度を示す形状全体の第2のラベル。ここで、程度は連続的な測定値であっても、マルチレベルスケール(例えば、バイナリは、0が管腔内経路を示し、1が内膜下経路を示す特殊なケースである)からのあるレベルであってもよい。
【0068】
注釈付きセットを使用して、第1及び第2の曲率閾値などの曲率に関連するパラメータの値を決定して、高い曲率を有する形状セグメントの検出を最大限に高めることができる。推定するパラメータは2つだけなので、組み合わせの完全な検索が可能であり、上記の注釈付きデータセットの第1のラベルを使用して精度を評価でき、最高の精度になる値の組み合わせを選択できる。
【0069】
曲率強度の内膜下閾値の値を決定するために、同様の方法を使用できる。この場合、第2のラベルを使用し、それを最大限に高めることによって精度を決定できる。この最適閾値は、決定された形状セグメントにおける曲率の合計又は平均を使用して別々に計算できる。曲率強度を測定する別の方法が想到される場合、その方法を使用して最適閾値を再計算できる。
【0070】
以下では、AIベースの形状分類を使用する内膜下経路を特定する方法の別の実施形態を説明する。
【0071】
この実施形態では、内膜下の移動の尤度を使用して、デバイスが内膜下でCTOを通過する程度を示す。先の実施形態では、これは、曲率強度を閾値と比較することにより、0/1と決定された。AIベースの方法では、曲率強度を明示的に使用することなく、0~1の連続値として計算できる。したがって、内膜下の移動の尤度は、この状況を説明するより一般的な項である。
【0072】
AIベースの形状分類は、次のように使用できる。
【0073】
形状の全体又はその一部を、内膜下であるか又は管腔内であるか分類でき、これに加えて、程度を割り当てることができる。この程度は内膜下の移動の尤度を示す。[0,1]の場合、低い値は形状又はその一部が管腔内経路を通過する可能性が高いことを示し、高い値は内膜下経路を示す。
【0074】
形状を内膜下経路であるか又は管腔内経路であるか分類するために深層ニューラルネットワークをトレーニングすることは、上記と同じ注釈付きセットを使用することによって達成できる。この場合、深層ニューラルネットワークは、入力として形状を使用し、グラウンドトゥルースクラスとしてラベル(内膜下又は管腔内)を使用することによってトレーニングできる。位置、曲率、ひずみ、ねじれ、アルファ値などの形状特徴を入力として提供できる。また、複数の形状を入力として提供することも可能である。ネットワークアーキテクチャは、分類ネットワークにすることができる。ResNetアーキテクチャ(K He、X Zhang、S Ren、J Sun、「Deep residual learning for image recognition)(Computer Vision and Pattern Recognition Conf.、2015)など、文献にある典型的なアーキテクチャを、この目的に使用できる。
【0075】
別の実施形態では、深層ニューラルネットワークは、形状をその長さに沿って異なるクラスに分類するようにトレーニングできる。このタスクでは、上記と同じデータセットを使用できるが、曲率が高い形状の開始セグメントと終了セグメントに関する情報を使用して、グラウンドトゥルースが生成される。全ての形状について、0及び1からなるグラウンドトゥルース形状が生成される。0の値はCTOの外側の形状の位置に割り当てられ、1の値はCTO内の位置に割り当てられる。N個のサンプル(点)の長さの形状が入力として与えられると、その形状のグラウンドトゥルースもNサンプル長となり、CTOの外側は0の値で、CTOの内側は1の値となる。このタイプの問題はセグメンテーション問題とも知られている。上記のように、最新のニューラルネットワークを形状セグメンテーションに使用できる。一般的なセグメンテーションネットワークはU-Net(O.Ronneberger、P.Fischer、T.Brox、U-Net:Convolutional Networks for Biomedical Image Segmentation,Medical Image Computing and Computer-Assisted Intervention(MICCAI)(Springer、LNCS、第9351巻:234~241、2015)である。ここでも、分類の場合と同様に、位置、曲率、ねじれ、ひずみなどの特徴を持つ形状を入力として使用でき、セグメント化された形状を出力として推定できる。この出力セグメンテーションマップを、深層ニューラルネットワークのトレーニング中にグラウンドトゥルース形状セグメンテーションと比較できる。十分な精度が得られると、又は反復間の進歩が遅くなると、トレーニングは停止し、これらの反復中の最適なネットワークが形状のセグメンテーションに使用される。この方法を用いると、CTO又は健康なセグメントを通過する形状の部分を特定できる。
【0076】
図14は、本教示による方法を実行する細長いデバイス10の内膜下経路を特定するシステム50を示している。
【0077】
システム50は、形状センシングモダリティ54、メモリ56、及びプロセッサ58を含む装置52を備える。装置は更に、ディスプレイ及び/又はスピーカ(図示せず)を備えてもよい。
【0078】
形状センシングモダリティ54は、ステップS102に従って曲率プロファイルを測定する。メモリ56は、デバイス10のような細長いデバイスの形状及び/又は位置に関連するデータを処理するために、曲率に関連するパラメータで構成されたデータ処理命令を保存する。形状及び/又は位置に関連するデータを使用して、この細長いデバイスに沿って曲率プロファイルを決定し、曲率プロファイルを管腔内の内膜下経路を表す曲率のタイプに関連付けることができる。プロセッサ57はメモリ56と通信し、細長いデバイス(10)の少なくとも1つのセグメントに沿って測定された形状及び/又は位置に関連するデータに対して命令を実行し、内膜下経路が特定された場合に情報を出力する。
【0079】
プロセッサ58は、ステップS104~S110を実行する。
【0080】
形状センシングモダリティ54は、細長いデバイス10に含まれる光ファイバ60を光学的にインタロゲートし、光ファイバ60からの光学フィードバックを受信する光学インタロゲーションモダリティを含む光学形状センシングモダリティであり得る。システム50は更に、例えばガイドワイヤとして構成され得る細長い可撓性のデバイス10を含む。
【0081】
データプロセッサ58は、ハードウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとして実装できる。
【0082】
本発明は、図面及び上記の説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的とみなされるべきであって、限定的とみなされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行可能である。
【0083】
特許請求の範囲において、語「含む」は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除するものではない。単一の要素又は他のモダリティが、特許請求の範囲に記載されているいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。
【0084】
本発明による方法を実行するためのコード手段を含むコンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な非一時的媒体で保存/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど、他の形式で配布することもできる。
【0085】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】