(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】二重特異性融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240618BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240618BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240618BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240618BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240618BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240618BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240618BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240618BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P35/00
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577295
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2022099322
(87)【国際公開番号】W WO2022262832
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110676229.7
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520302486
【氏名又は名称】杭州尚健生物技術有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】520302497
【氏名又は名称】尚健単抗(北京)生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】呂 明
(72)【発明者】
【氏名】丁 暁然
(72)【発明者】
【氏名】繆 仕偉
(72)【発明者】
【氏名】談 彬
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA06
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
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4B065AB01
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4B065CA44
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4C085BB01
4C085BB11
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4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
概要
本願は、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを含む二重特異性融合タンパク質を提供し、ここで、第1の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合する抗体を含み、前記抗体は、2つの抗体軽鎖および2つの抗体重鎖を含み、前記抗体軽鎖および前記抗体重鎖は、ジスルフィド結合によって連結されており、前記第2の結合ドメインは、1つのVEGFR1のIg様構造ドメイン及び1つのVEGFR2のIg様構造ドメインを含み、前記VEGFR1のIg様構造ドメインのN末端または前記VEGFR2のIg様構造ドメインのN末端は、それぞれ、前記抗体重鎖C末端に直接的または間接的に連結される。また、前記二重特異性融合タンパク質を含む薬物組成物およびその製薬における使用に関わる。ここで、前記二重特異性融合タンパク質は腫瘍細胞を効果的で安全に殺傷することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを含む二重特異性融合タンパク質であって、ここで、
前記第1の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合する抗体を含み、前記抗体は、2つの抗体軽鎖および2つの抗体重鎖を含み、前記抗体軽鎖および前記抗体重鎖は、ジスルフィド結合によって連結されており、
前記第2の結合ドメインは、1つのVEGFR1のIg様構造ドメイン及び1つのVEGFR2のIg様構造ドメインを含み、
前記VEGFR1のIg様構造ドメインのN末端または前記VEGFR2のIg様構造ドメインのN末端は、それぞれ、前記抗体重鎖C末端に直接的または間接的に連結される。
【請求項2】
前記第1の結合ドメインは、ヒトPD-L1に特異的に結合する、請求項1に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項3】
前記第2の結合ドメインは、ヒトVEGFファミリーに特異的に結合する、請求項1-2のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項4】
前記第2の結合ドメインは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-DおよびPLGFからなる群から選ばれるタンパク質に特異的に結合する、請求項1-3のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項5】
前記VEGFR1のIg様構造ドメインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1-4のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項6】
前記VEGFR2のIg様構造ドメインは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1-5のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項7】
前記VEGFR1のIg様構造ドメインとVEGFR2のIg様構造ドメインとは、直接的に連結される、請求項1-6のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項8】
前記第2の結合ドメインは、SEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1-7のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項9】
前記間接的な連結は、リンカーを介して行われる、請求項1-8のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項10】
前記リンカーは、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項11】
前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、LCDR1-3を含み、前記LCDR1は、SEQ ID NO:4、及び10のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1-10のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項12】
LCDR2は、SEQ ID NO:5、及び11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項13】
LCDR3は、SEQ ID NO:6、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項11-12のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項14】
前記LCDR1-3のアミノ酸配列は、次のいずれか1つの群から選ばれる、請求項11-13のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質:
(1)前記LCDR1は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記LCDR3は、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含み、
(2)前記LCDR1は、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記LCDR3は、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項15】
前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:16-17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1-14のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項16】
前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖定常領域を含み、前記軽鎖定常領域は、IgκとIgλからなる群から選ばれるタンパク質の軽鎖定常領域に由来する、請求項1-15のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項17】
前記抗体重鎖は、それぞれ重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、HCDR1-3を含み、前記HCDR1は、SEQ ID NO:7、及び13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1-16のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項18】
HCDR2は、SEQ ID NO:8、及び14のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項19】
HCDR3は、SEQ ID NO:9、及び15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項17-18のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項20】
前記HCDR1-3は、次のいずれかの群から選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項17-19のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
(1) 前記HCDR1は、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記HCDR3は、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含み、
(2) 前記HCDR1は、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2は、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記HCDR3は、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項21】
前記抗体重鎖は、それぞれ重鎖定常領域を含み、前記重鎖定常領域は、SEQ ID NO:18-19のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項1-20のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項22】
前記抗体重鎖は、それぞれFc領域を含む、請求項1-21のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項23】
前記Fc領域は、IgG1とIgG4からなる群から選ばれるタンパク質のFcに由来する、請求項22に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項24】
前記Fc領域は、N298、D357とL359からなる群から選ばれるアミノ酸位置に、アミノ酸突然変異を含む、請求項22-23のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項25】
前記Fc領域は、N298A、D357EとL359Mからなる群から選ばれるアミノ酸突然変異を含む、請求項22-24のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項26】
前記Fc領域は、SEQ ID NO:20-22のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項22-25のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項27】
第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖の2つのコピーからなるポリマーである、請求項9-26のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質であって、
前記第1のポリペプチド鎖は、前記抗体軽鎖を含み、
前記第2のポリペプチド鎖は、N末端から順に、前記抗体重鎖、前記リンカー、および前記第2の結合ドメインを含む。
【請求項28】
第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23-24のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項27に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項29】
第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:25-27のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む、請求項27-28のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質。
【請求項30】
請求項27-29のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質であって、前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含み、または、
前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列を含み、または、
前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列を含む。
【請求項31】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項32】
請求項31に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項33】
請求項32に記載のベクターを含む細胞。
【請求項34】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質の発現に適した条件で、請求項33に記載の細胞を培養することを含む、請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質の製造方法。
【請求項35】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質および、任意に選ばれる薬学的に許容される担体を含む薬物組成物。
【請求項36】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質を含む薬物分子。
【請求項37】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質、請求項31に記載のポリヌクレオチド、請求項32に記載のベクター、請求項33に記載の細胞、請求項35に記載の薬物組成物、および/または請求項36に記載の薬物分子の疾患治療薬製造における使用であって、前記疾患は腫瘍を含む。
【請求項38】
前記疾患は、固形腫瘍および非固形腫瘍を含む、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記疾患は、PD-L1陽性腫瘍を含む、請求項37-38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記腫瘍は、肺がん、結腸直腸癌、子宮頸癌、肝臓癌、胃癌および/または腎臓癌を含む、請求項37-39のいずれか1項に記載の使用。
【請求項41】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質、請求項31に記載のポリヌクレオチド、請求項32に記載のベクター、請求項33に記載の細胞、請求項35に記載の薬物組成物および/または請求項36に記載の薬物分子の有効量を投与することを含む、血管増殖を阻害するための方法。
【請求項42】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質、請求項31に記載のポリヌクレオチド、請求項32に記載のベクター、請求項33に記載の細胞、請求項35に記載の薬物組成物および/または請求項36に記載の薬物分子の有効量を投与することを含む、VEGF受容体リガンドの活性を阻害するための方法。
【請求項43】
請求項1-30のいずれか1項に記載の二重特異性融合タンパク質、請求項31に記載のポリヌクレオチド、請求項32に記載のベクター、請求項33に記載の細胞、請求項35に記載の薬物組成物および/または請求項36に記載の薬物分子の有効量を投与することを含む、PD-L1の活性を阻害するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はバイオ製薬分野に関わり、具体的に二重特異性融合タンパク質に関わる。
【背景技術】
【0002】
現在、腫瘍疾患はますます深刻化しており、免疫チェックポイントであるPD-1/PD-L1およびVEGFは腫瘍治療の重要なターゲットとなっている。
PD-L1は様々な悪性腫瘍で過剰発現し、予後不良と関連していることがよく見られる。PD-1、およびPD-1との相互作用を介してシグナルを伝達する他の分子(例えばPD-L1やPD-L2)の治療標的は、腫瘍治療の注目されている分野である。
VEGFは血管内皮細胞にとって強力かつ特異的な分裂促進因子として、血管新生プロセスのあらゆる側面を促進できる。各VEGF受容体(VEGFR)の役割は異なる。VEGFR-は内皮の成長、分化、透過性を調節する役割を果たし、VEGFR-1は内皮細胞の移動と凝集の調節に関与し、VEGFR-2を介してシグナル伝達を阻害する。VEGFとVEGFRとの結合によって、VEGFRの二量体化と自己リン酸化を引き起こし、複数の細胞内経路を通じてシグナルを伝達し、最終的に役割を果たす。
腫瘍の成長を効果的に阻害できる新しい融合タンパク質が求められている
【発明の概要】
【0003】
本願は、二重特異性融合タンパク質およびそれに対応するポリヌクレオチド、ベクター、細胞、製造方法、薬物組成物および使用を提供する。本願に記載される二重特異性融合タンパク質は、以下の特性の少なくとも1つを有する:1)PD-L1に特異的に結合する、2)PD-1とPD-L1との結合を阻害する、3)VEGFに特異的に結合する、4)VEGFとVEGFRとの結合を阻害する、5)(in vivo)腫瘍増殖を抑制する、6)免疫細胞(例えば、T細胞)を活性化する、7)免疫細胞(例えば、T細胞)のサイトカイン分泌(例えば、インターフェロンおよび/またはサイトカイン)を促進する、および/または、8)腫瘍の新生血管形成を阻害し、血管の正常化を促進する。
【0004】
1つの態様では、本願は、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを含む二重特異性融合タンパク質を提供し、ここで、前記第1の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合する抗体を含み、前記抗体は、2つの抗体軽鎖および2つの抗体重鎖を含み、前記抗体軽鎖および前記抗体重鎖は、ジスルフィド結合によって連結されており、前記第2の結合ドメインは、1つのVEGFR1のIg様構造ドメインおよび1つのVEGFR2のIg様構造ドメインを含み、前記VEGFR1のIg様構造ドメインのN末端または前記VEGFR2のIg様構造ドメインのN末端は、それぞれ、前記抗体重鎖C末端に直接的または間接的に連結される。
いくつかの実施形態では、前記第1の結合ドメインは、ヒトPD-L1に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、前記第2の結合ドメインは、ヒトVEGFファミリーに特異的に結合する。
【0005】
いくつかの実施形態では、前記第2の結合ドメインは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-DおよびPLGFからなる群から選ばれるタンパク質に特異的に結合する。
いくつかの実施形態では、前記VEGFR1のIg様構造ドメインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記VEGFR2のIg様構造ドメインは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記VEGFR1のIg様構造ドメインとVEGFR2のIg様構造ドメインとは、直接的に連結される。
いくつかの実施形態では、前記第2の結合ドメインは、SEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記間接的な連結は、リンカーを介して行われる。
いくつかの実施形態では、前記リンカーは、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、LCDR1-3を含み、前記LCDR1は、SEQ ID NO:4、及び10のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記LCDR2は、SEQ ID NO:5、及び11のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記LCDR3は、SEQ ID NO:6、及び12のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記LCDR1-3は、次のいずれか1つの群から選ばれるアミノ酸配列を含む:
(1) 前記LCDR1はSEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2はSEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記LCDR3はSEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含み、
(2) 前記LCDR1はSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含み、前記LCDR2はSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記LCDR3はSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:16-17のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖定常領域を含み、前記軽鎖定常領域は、IgκとIgλからなる群から選ばれるタンパク質の軽鎖定常領域に由来する。
いくつかの実施形態では、前記抗体重鎖は、それぞれ重鎖可変領域を含み、前記重鎖可変領域は、HCDR1-3を含み、前記HCDR1は、SEQ ID NO:7、及び13のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記HCDR2は、SEQ ID NO:8、及び14のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記HCDR3は、SEQ ID NO:9、及び15のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記HCDR1-3は、次のいずれかの群から選ばれるアミノ酸配列を含む:
(1) 前記HCDR1はSEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記HCDR3はSEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含み、
(2) 前記HCDR1はSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含み、前記HCDR2はSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含み、かつ前記HCDR3はSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗体重鎖は、それぞれ重鎖定常領域を含み、前記重鎖定常領域は、SEQ ID NO:18-19のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記抗体重鎖は、それぞれFc領域を含む。
いくつかの実施形態では、前記Fc領域は、IgG1とIgG4からなる群から選ばれるタンパク質のFcに由来する。
いくつかの実施形態では、前記Fc領域は、N298、D357とL359からなる群から選ばれるアミノ酸位置に、アミノ酸突然変異を含む。
いくつかの実施形態では、前記Fc領域は、N298A、D357EとL359Mからなる群から選ばれるアミノ酸突然変異を含む。
いくつかの実施形態では、前記Fc領域は、SEQ ID NO:20-22のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記二重特異性融合タンパク質は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖の2つのコピーからなる多量体であり、前記第1のポリペプチド鎖は、前記抗体軽鎖を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、N末端から順に、前記抗体重鎖、前記リンカー、および前記第2の結合ドメインを含む。
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23-24のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:25-27のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
いくつかの実施形態では、前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含み、または、前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列を含み、または、前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含み、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:27に示されるアミノ酸配列を含む。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0006】
別の態様では、本願は、本願に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
別の態様では、本願は、本願に記載のベクターを含む細胞を提供する。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質の発現に適した条件で、本願に記載の細胞を培養することを含む、本願に記載の二重特異性融合タンパク質の製造方法を提供する。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質および、任意に選ばれる薬学的に許容される担体を含む薬物組成物を提供する。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質を含む薬物分子を提供する。
別の態様では、本願は、前記二重特異性融合タンパク質、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記細胞、前記薬物組成物、および/または前記薬物分子の疾患治療薬製造における使用を提供し、前記疾患は腫瘍を含む。
いくつかの実施形態では、前記疾患は、固形腫瘍と非固形腫瘍を含む。
いくつかの実施形態では、前記疾患は、PD-L1陽性腫瘍を含む。
いくつかの実施形態では、前記腫瘍は、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、肝臓癌、胃癌および/または腎臓癌を含む。
別の態様では、本願は、前記二重特異性融合タンパク質、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記細胞、前記薬物組成物および/または前記薬物分子の有効量を投与することを含む、血管増殖を阻害するための方法を提供する。
別の態様では、本願は、前記二重特異性融合タンパク質、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記細胞、前記薬物組成物および/または前記薬物分子の有効量を投与することを含む、VEGF受容体リガンドの活性を阻害するための方法を提供する。
別の態様では、本願は、前記二重特異性融合タンパク質、前記ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記細胞、前記薬物組成物および/または前記薬物分子の有効量を投与することを含む、PD-L1の活性を阻害するための方法を提供する。
当業者は、本願の他の態様および利点について、以下の詳細な説明から容易に洞察することができる。以下の詳細な説明では、本願の例示的な実施形態のみを示し、説明する。当業者が認識するであろうように、本願の内容は、当業者が、本願に係る発明の精神および範囲を逸脱することなく、開示された特定の実施形態に変更を加えることを可能にするものである。したがって、本願の添付図面および明細書の記載は単なる例示であり、限定的なものではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本願に係る発明の具体的な特徴は、特許請求の範囲に記載のとおりである。本願で詳細に説明される例示的な実施形態および添付図面を参照することによって、本願に係る発明の特徴および利点をよりよく理解することができる。図面の簡単な説明は下記の通り。
【
図1】本願に記載の二重特異性融合タンパク質の構造。
【
図2】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のヒトPD-L1への特異的な結合。
【
図3】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のVEGF165への特異的な結合。
【
図4】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のヒトPD-L1とVEGF165への特異的な同時結合。
【
図5】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のPD-1とPD-L1との相互作用に対する阻害。
【
図6】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のVEGFとVEGFRとの相互作用に対する阻害。
【
図7】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のVEGF165とVEGFR2との相互作用に対する阻害。
【
図8】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のVEGF121とVEGFR2との相互作用に対する阻害。
【
図9】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のVEGF CとVEGFR2との相互作用に対する阻害。
【
図10】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のHUVEC細胞増殖に対する抑制。
【
図11】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のリンパ球のIFN-γ分泌に対する活性化。
【
図12】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のリンパ球のIL-2分泌に対する活性化。
【
図13】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のADCC活性アッセイ。
【
図14】本願に記載の二重特異性融合タンパク質のマウス結腸癌増殖に対する抑制。
【0008】
具体的な実施形態
下記特定の実施形態で本発明出願の実施形態を説明する。当業者は、本明細書に公開された内容により、本願発明の他の利点および効果を容易に理解され得る。
用語定義
本願では、「二重特異性」という用語は、一般に、本出願に記載の融合タンパク質が2つの異なるリガンドと相互作用する能力を指す。本願では、前記二重特異性融合タンパク質は、PD-L1に特異的に結合することができ、VEGFに特異的に結合することもできる。
本願では、「特異的結合」という用語は、一般に、生体分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定できる、標的と抗体の間の結合などの測定可能で再現性のある相互作用を指す。例えば、標的(エピトープであってもよい)と特異的に結合する抗体とは、他の標的と結合するよりも高い親和性(アフィニティ)、親和性(アビディティ)、より容易に、および/又はより長い時間、その標的と結合する抗体である。一実施形態では、抗体の非関連標的への結合の程度は、放射免疫分析(RIA)によって測定されるように、抗体の標的への結合の約10%よりも小さい。例えば、本願では、前記二重特異性融合タンパク質は、<1×10-7M以下の解離定数(KD)でPD-L1およびVEGFに結合することができる。例えば、本願では、前記PD-L1抗体は、<1×10-7M以下の解離定数(KD)でPD-L1に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、異なる種のタンパク質に保存されているタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、特異的結合は排他的結合を含み得るが、排他的結合を必要としない。
本願では、「第1の結合ドメイン」という用語は、一般に、PD-L1に特異的に結合することができる結合ドメインを指す。例えば、前記第1の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合する抗体を含み得る。
本願では、「第2の結合ドメイン」という用語は、一般に、VEGFに特異的に結合することができる結合ドメインを指す。例えば、前記第2の結合ドメインは、1つのVEGFR1のIg様構造ドメインおよび1つのVEGFR2のIg様構造ドメインを含み得る。
本願では、「PD-L1」という用語は、一般に、プログラムされたデスリガンド1タンパク質、その機能的変異体および/またはその機能的フラグメントを指す。PD-L1は分化抗原群274(CD274)またはB7ホモログ1(B7-H1)とも呼ばれる。前記PD-L1は、CD274遺伝子によってコードされるタンパク質であり得る。PD-L1は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)などのその受容体に結合し、前記PD-1は活性化されたT細胞、B細胞およびマクロファージ上で発現され得る(Ishida et al.,1992 EMBO J, 11:3887-3395;Okazaki et al., Autoimmune dilated cardiomyopathy in PD-1 receptor-deficient mice.Science,2001;291:319-22参照)。PD-L1とPD-1の複合体形成は、T細胞増殖の抑制およびサイトカインであるIL-2およびIFN-γの産生によって、免疫抑制効果を発揮できる(Freeman et al., Engagement of PD-1 immunoinhibitory receptor by a novel B7 family member leads to negative regulation of lymphocyte activation,J.Exp.Med.2000,192:1027-1034;Carter et al., PD-l: PD-L inhibitory pathway affects both CD4(+)and CD8(+) T cells and is overcome by IL-2.EurJ.Immunol.2002,32:634-643参照)。「PD-L1」という用語は、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳動物を含む、任意の脊椎動物起源の任意の天然PD-L1を含み得る。前記用語は、「完全長」、未処理のPD-L1および細胞の処理によって生成された任意の形態のPD-L1を含む。PD-L1は膜貫通タンパク質または可溶性タンパク質として存在し得る。また、前記用語は、スプライス変異体や対立遺伝子変異体など、天然に存在するPD-L1変異体も含み得る。PD-L1の基本的な構造は、細胞外Ig様V型ドメインとIg様C2型ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインの4つのドメインを含み得る。PD-L1の配列は当分野で知られている。例えば、ヒトPD-L1遺伝子(ゲノムDNA配列を含む)に関する情報は、NCBI Gene ID No.29126の下に見出され得る。また、例えば、マウスPD-L1遺伝子(ゲノムDNA配列を含む)に関する情報は、NCBI Gene ID No.60533の下に見出され得る。また、例えば、カニクイザルPD-L1遺伝子(ゲノムDNA配列を含む)に関する情報は、NCBI Gene ID No.102145573の下に見出され得る。例示的な完全長ヒトPD-L1タンパク質のアミノ酸配列は、NCBIアクセッション番号NP_054862またはUniProtアクセッション番号Q9NZQ7の下に見出され得る。例示的な完全長マウスPD-L1タンパク質のアミノ酸配列は、NCBIアクセッション番号NP_068693またはUniProtアクセッション番号Q9EP73の下に見出され得る。例示的な完全長カニクイザルPD-L1タンパク質のアミノ酸配列は、NCBIアクセッション番号XP_005581836またはUniProtアクセッション番号G7PSE7の下に見出され得る。
【0009】
本願では、「抗体」という用語は、一般に、in vitroまたはin vivoのいずれで生成されるかにかかわらず、抗原結合部位を含むポリペプチドを包含する免疫グロブリンまたはそのフラグメントまたはその誘導体を指す。この用語には、多クローン性、単クローン性、単特異性、多特異性、非特異性、ヒト化、一本鎖性、キメラ性、合成性、組換え性、ハイブリッド性、変異性、および移植抗体が含まれるが、これらに限定されない。基本的な4本鎖抗体単位は、 2つの同一の軽 (L) 鎖と2つの同一の重 (H) 鎖からなるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は5つの基本的なヘテロ4量体単位とJ鎖と呼ばれるもう1つのポリペプチドから構成され、 10個の抗原結合部位を含むが、 IgA抗体は2~5個の基本的な4鎖単位を含み、 J鎖と結合して多価結合を形成する。IgGの場合、 4鎖単位は通常約150、000ダルトンである。各L鎖は1つの共有結合ジスルフィド結合によってH鎖と連結し、2つのH鎖は1つまたは複数のH鎖アイソフォームに依存するジスルフィド結合によって互いに連結する。各HとL鎖はまた規則的間隔の鎖内二硫化橋結合を有する。各H鎖はN末端に可変ドメイン(VH)を有し、αおよびγ鎖にはそれぞれ3つの定常ドメイン(CH)、μおよびεアイソフォームには4つのCHドメインが続いている。各L鎖はN末端に可変ドメイン(VL)を有し、その他端に定常ドメインを有している。VLはVHに対応し、 CLは重鎖の第一定常ドメイン(CH1)に対応する。特定のアミノ酸残基は軽鎖と重鎖可変ドメイン間の界面を形成すると考えられている。VHとVLのペアは一緒に単一の抗原結合部位を形成する。異なるクラスの抗体の構造および特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Edition,Daniel P. Sties,Abba I. Terr and Tristram G.Parsolw(eds), Appleton & Lange, Norwalk, Conn., 1994,71ページおよび6章を参照する。あらゆる脊椎動物に由来するL鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κおよびλと呼ばれる2つの明確に異なるタイプのいずれかに分類することができる。免疫グロブリンは、その重(CH)の定常ドメインのアミノ酸配列により、異なるクラスまたはアイソフォームに分類できる。IgA、 IgD、 IgE、 IgG、およびIgMの5種類の免疫グロブリンが存在し、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと命名された重鎖を有する。γおよびαは、 CH配列および機能の比較的小さな差異に基づいてさらに亜分類され、例えば、ヒトではIgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgκ1が発現している。
本願では、「CDR」という用語は、通常、高度に可変的な配列を有し、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体の可変ドメインの領域を指す。通常、抗体には6つのCDRが含まれる:VHでは3個(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、 VLでは3個(LCDR1、LCDR2、LCDR3)である。自然抗体の中で、 HCDR3とLCDR3は6つのCDRの大部分の多様性を示し、特にHCDR3は抗体に細かい特異性を付与することにおいてユニークな役割を果たすと考えられる。例えば、Xu et al, Immunity 13:37-45(2000); Johnson and Wu, in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo, ed., Human Press, Totowa, N.J.,2003)を参照する。
本願では、「VEGF」という用語は、一般に、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor)を指す。VEGFは、正常および異常な血管新生と、腫瘍や眼内病変に伴う血管新生の制御に関与する可能性がある(Ferrara, N.およびDavis-Smyth, T., Endocr.Rev.l8, 1997, 4-25などを参照する)。VEGFは、胎児期の血管形成における血管新生および成人期における血管形成において重要な調節機能を果たせる。VEGFは腫瘍の増殖を促進できる。VEGFは高度に保存されたホモ二量体糖タンパク質である。VEGFは、VEGF-A、VEGF-B(VEGF-B167およびVEGF-B186を含む)、VEGF-C、VEGF-DおよびVEGF-Eの6つのアイソフォーム(isoforms)を有し得る。本願では、前記VEGFはヒトVEGFであり得る。
【0010】
本願で、「VEGFR1」という用語は、一般に血管内皮増殖因子受容体1を指す。VEGFR1はVEGFRの一種である。VEGFRは、受容体チロシンキナーゼスーパーファミリーに属し、膜モザイクタンパク質である。VEGFRの膜外部分は約750のアミノ酸残基からなり、免疫グロブリンに構造的に類似した7つのIg様構造ドメインからなる。VEGFR1の膜外領域における第2のIg構造ドメインは、リガンドと結合する領域である。VEGFR1の異なるスプライセオソームは、VEGFと競合的に結合することによって(例えば、VEGF-A、VEGF-Bと結合することができる)、VEGFとVEGFR2との結合を阻害する。
本願で、「VEGFR2」という用語は、一般に血管内皮増殖因子受容体2を指す。VEGFR2の第3のIg構造ドメインは、リガンドへの結合の特異性において役割を果たし得る。VEGFR2は、VEGF-A、VEGF-Eに結合できる。
本願では、「Ig様構造ドメイン」という用語は、一般に、VEGFへの結合に関与し得るVEGFRの細胞外領域における構造を指す。例えば、VEGFR2の細胞外領域の第1のIg様構造ドメインは、VEGFとの結合に必要な部位であり、第2-3のIg様構造ドメインは、VEGFに緊密に結合するための主要部位であり、受容体は第4のIg様構造ドメインを介してホモダイマーの活性型を形成し、第5-7のIg様構造ドメインはVEGF結合と密接な関係を有しない。例えば、VEGFR1の細胞外領域は、VEGFへの結合および血管新生の促進に関与できる7つのIg様構造ドメインを持っている。
【0011】
本願では、「PLGF」という用語は、一般に、PGF遺伝子にコードされ得る胎盤増殖因子(Placental growth factor)を指す。前記PLGFは、VEGFサブファミリーのメンバーであり得る。前記PLGFは、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVE)および胎盤において発現され得る。前記PLGFは、栄養膜細胞の増殖および分化において役割を果たし得る。前記PLGFは、血管新生に関与し得る。
【0012】
本願では、「直結する」という用語は、「間接連結」という用語と対比させて使用され、「直結する」という用語は、一般に直接連結を指す。例えば、前記直接接続は物質間に間隔子がなくて直接連結する場合である。前記間隔子はリンカーであり得る。例えば、リンカーは、ペプチドリンカーとすることができる。「間接接続」という用語は通常、物質間が直接接続されていない状況を指す。例えば、間接的接続は、間隔子を介して接続される場合であってもよい。例えば、本願に記載のVEGFR1のIg様構造ドメインのN末端または前記VEGFR2のIg様構造ドメインのN末端は、それぞれ、前記抗体重鎖C末端に連結され得る。例えば、本願に記載の1つのVEGFR1のIg様構造ドメインは、1つのVEGFR2のIg様構造ドメインに直接的に連結され得る。
【0013】
本出願では、「アミノ酸突然変異」という用語は、一般に、少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を別の異なるアミノ酸残基で置換されることを指す。前記の置換されるアミノ酸残基は、「天然に存在するアミノ酸残基」であってもよく、例えば、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)およびバリン(Val)であり得る。前記の置換されるアミノ酸残基はまた、例えば、n-ロイシン、オルニチン、n-バリン、ホモセリン、aibおよび他のアミノ酸残基類似体など、非天然形態で存在するアミノ酸残基であってもよい。本願では、前記アミノ酸置換は、非保存的置換であってもよい。前記非保存的置換は、ある側鎖サイズまたはある特性(例えば、親水性)を有するアミノ酸残基を、異なる側鎖サイズまたは異なる特性(例えば、疎水性)を有するアミノ酸残基に変更するなど、非保存的形態で標的タンパク質またはポリペプチドにおけるアミノ酸残基を変更することを含み得る。本願では、前記アミノ酸置換は、保存的置換であってもよい。前記保存的置換は、ある側鎖サイズまたはある特性(例えば、親水性)を有するアミノ酸残基を、同一もしくは類似のサイズまたは同一もしくは類似の特性(例えば、依然として親水性)を有するアミノ酸残基に変更するなど、保存的形態で標的タンパク質またはポリペプチドにおけるアミノ酸残基を変更することを含み得る。これらの保存的置換は、通常、得られるタンパク質の構造や機能に大きな影響を与えない。
【0014】
本願では、「多量体」という用語は、一般に、モノマーの組み合わせによって形成される分子を指す。例えば、前記多量体は、少なくとも2つの構造的に同一または構造的に異なる成分を含む多量体タンパク質であり得る。例えば、前記多量体は、共有結合的もしくは非共有結合的会合、または共有結合的もしくは非共有結合的相互作用によって結合した2つ以上のポリペプチド鎖の分子であり得る。例えば、前記多量体は、二量体であっても、四量体であってもよい。
【0015】
本願では、「第1のポリペプチド鎖」という用語は、一般に、PD-L1抗体を標的とする本願に記載の二重特異性融合タンパク質の軽鎖を指す。
本願では、「第2のポリペプチド鎖」という用語は、一般に、PD-L1抗体を標的とする本願に記載の二重特異性融合タンパク質の重鎖と、本願に記載のリンカーおよび、本願に記載のVEGFを標的とする第2の結合ドメインを含むポリペプチドを指す。例えば、前記第2のポリペプチド鎖は、N末端から順に、PD-L1抗体を標的とする本願に記載の二重特異性融合タンパク質の重鎖と、本願に記載のリンカーと、VEGFを標的とする本願に記載の第2の結合ドメインからなり得る。
【0016】
本願では、「第1」、「第2」という用語は、順序上の区別がなく、前記「第2」は「第1」と異なる内容を指すための呼称に過ぎない。
本願では、「核酸分子」という用語は、一般に、任意の長さのヌクレオチド(例えば、単離形式のヌクレオチドであり得る)、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、またはその自然環境から単離され、または人工的に合成された類似物を指す。
本願では、「ベクター」という用語は、通常、タンパク質をコードするポリヌクレオチドが挿入され、その中でタンパク質が発現し得る核酸送達ビヒクルを指す。ベクターは形質転換、形質転換または宿主細胞へのトランスフェクションにより、宿主細胞内で遺伝子を発現させる。例えば、ベクターは、プラスミド、バクテリオファージ、コスプラスミド、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)、P 1由来の人工染色体(PAC)などの人工染色体、λファージやM 13ファージなどのファージ、動物ウイルスなどを含み得る。ベクターとして用いられる動物ウイルスの種類は逆転写酵素ウイルス(スローウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルスのように)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、乳頭腫ウイルス、ヒトパピローマウイルス(SV 40の場合)である。1種のベクターは多種の発現を制御する要素を含み、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素およびレポーター遺伝子を含む。また、ベクターは複製開始部位を含み得る。また、ベクターは、ウイルス粒子、リポソーム、タンパク質シェルなど、細胞への侵入を補助する成分を含み得るが、これらの物質だけに限定されるものではない。
【0017】
本願では、「細胞」という用語は、一般に、本願に記載の核酸分子または本願に記載のベクターを含む、被験者プラスミドまたはベクターのレシピエントであり得る、またはレシピエントであった個々の細胞、細胞株、または細胞培養物を指す。細胞は単一細胞の子孫を含み得る。自然突然変異、偶発突然変異、または意図的突然変異のために、子孫が必ずしも始原母細胞と同一でなくてもよい(全DNA相互補体の形態学的またはゲノム的)。細胞は、本願に記載のベクターを用いてin vitroでトランスフェクトされた細胞を含み得る。細胞は、細菌細胞(例えば、大腸菌)、酵母細胞、またはその他の真核細胞であり得る。例えば、COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO-K1細胞、LNCAP細胞、HeLa細胞、HEK293細胞、COS-1細胞、NS0細胞、ヒト非小細胞肺がんA549細胞、ヒト扁平皮膚がんA431細胞、淡明細胞型腎細胞癌786-O細胞、ヒト膵臓腺癌 MIA PaCa-2細胞、赤色白血病 K562細胞、急性T細胞白血病 Jurkat細胞、ヒト乳癌 MCF-7細胞、ヒト乳癌 MDA-MB-231 細胞、ヒト乳癌 MDA-MB-468 細胞、ヒト乳癌 SKBR3細胞、ヒト卵巣癌 SKOV3細胞、 リンパ腫 U -937細胞、リンパ腫Raji細胞、ヒト骨髄腫U266細胞、またはヒト多発性骨髄腫RPMI8226細胞。いくつかの実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態では、哺乳動物細胞はHEK293細胞である。
【0018】
本願では、「薬物組成物」という用語は、一般に、患者への投与に適する、例えば、ヒト患者への投与に適する組成物を指す。例えば、本願に記載の薬物組成物は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質、本願に記載の核酸分子、本願に記載のベクターおよび/または本願に記載の細胞、および任意に選ばれる薬学的に許容されるアジュバントを含み得る。さらに、前記薬物組成物は、また1種または多種(薬学的に有効な)の支持剤、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤および/または防腐剤の適当な製剤を含み得る。本願では、前記薬物組成物の許容できる成分は、投与量および濃度で、レシピエントに対して非毒性であり得る。本願の薬物組成物の形式は、液体、冷凍と凍結乾燥組成物を含むが、それに限定されない。
【0019】
本願では、「薬学的に許容されるアジュバント」という用語は、通常、薬物投与に適合するあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、等張剤、および吸収遅延剤などを意味し、通常は安全で、無毒であり、生物学的にも他の点でも好ましくないものではない。
本願では、「薬物分子」という用語は、一般に、所望の生物学的効果を有する分子を指す。薬物は、予防的なものと治療的なものであり得る。薬物分子は、ペプチド、ポリペプチドを含むがこれらに限定されないタンパク質分子、翻訳後修飾タンパク質、融合タンパク質、抗体などを含むタンパク質を含むが、これらに限定されない。例えば、本願では、前記薬物分子は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質の他、その他の1つまたは複数のアミノ酸も含み得る。例えば、前記薬物分子は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質のほか、その他の構造体も含み得る。本願では、前記薬物分子は、無機化合物または有機化合物を含む低分子構造体も含み得る。本願では、前記薬物分子はまた、二本鎖もしくは一本鎖DNA、または二本鎖もしくは一本鎖RNA(例えば、アンチセンス(分子)、RNAiなど)、イントロン配列、三重らせん状核酸分子、およびアプタマーを含むがこれらに限定されない核酸分子も含み得る。
【0020】
本願では、 「含む」 という用語は、一般に、他の要素を除外することなく、明示的に指定された特徴を含むことを指す。
本願では、 「約」 という用語は、通常、指定値以上0.5%~10%の範囲での変動を意味し、例えば、0.5%、1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%、7%、7.5%、8%、8.5%、9%、9.5%、又は10%の範囲での変動を指す。
【0021】
発明の詳細な説明
1つの態様では、本願は、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを含む二重特異性融合タンパク質を提供し、ここで、前記第1の結合ドメインは、PD-L1に特異的に結合する抗体を含み、前記抗体は、2つの抗体軽鎖および2つの抗体重鎖を含み、前記抗体軽鎖および前記抗体重鎖は、ジスルフィド結合によって連結されており、前記第2の結合ドメインは、1つのVEGFR1のIg様構造ドメインおよび1つのVEGFR2のIg様構造ドメインを含み、前記VEGFR1のIg様構造ドメインのN末端または前記VEGFR2のIg様構造ドメインのN末端は、それぞれ、前記抗体重鎖C末端に直接的または間接的に連結される。
本願では、前記第1の結合ドメインは、ヒトPD-L1に特異的に結合し得る。
本願では、前記第2の結合ドメインは、ヒトVEGFファミリーに特異的に結合し得る。
本願では、前記第2の結合ドメインは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-DおよびPLGFからなる群から選ばれるタンパク質に特異的に結合し得る。
本願では、前記VEGFR1のIg様構造ドメインは、SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記VEGFR2のIg様構造ドメインは、SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記VEGFR1のIg様構造ドメインは、VEGFR2のIg様構造ドメインに直接的に連結され得る。例えば、前記第2の結合ドメインは、N末端から順に、前記VEGFR1のIg様構造ドメインおよび前記VEGFR2のIg様構造ドメインを含み得る。例えば、前記第2の結合ドメインは、N末端から順に、前記VEGFR1のIg様構造ドメインおよび前記VEGFR2のIg様構造ドメインからなり得る。本願では、前記第2の結合ドメインは、SEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記間接連結をリンカーで連結してもよい。例えば、前記二重特異性融合タンパク質では、前記第2の結合ドメインにおける前記VEGFR1のIg様構造ドメインのN末端は、前記リンカーを介して、前記抗体重鎖のC末端に連結し得る。例えば、前記二重特異性融合タンパク質では、前記第2の結合ドメインにおける前記VEGFR2のIg様構造ドメインのN末端は、前記リンカーを介して、前記抗体重鎖のC末端に連結し得る。
本願では、前記リンカーは、SEQ ID NO:3に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、任意の公知のPD-L1抗体は、PD-L1に特異的に結合できる軽鎖可変領域および重鎖可変領域を有する限り、前記第1の結合ドメインにおける前記抗体として使用し得る。
本願では、前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、LCDR1-3を含み得、そのLCDR1はSEQ ID NO:4またはSEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、LCDR2は、SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、LCDR3は、SEQ ID NO:6またはSEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖可変領域を含み、前記軽鎖可変領域は、LCDR1-3を含み得、前記LCDR1は、SEQ ID NO:4に示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は、SEQ ID NO:5に示されるアミノ酸配列を含み得、かつ、前記LCDR3は、SEQ ID NO:6に示されるアミノ酸配列を含み得、または、前記LCDR1は、SEQ ID NO:10に示されるアミノ酸配列を含み得、前記LCDR2は、SEQ ID NO:11に示されるアミノ酸配列を含み得、かつ、前記LCDR3は、SEQ ID NO:12に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖可変領域を含み得、前記軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:16またはSEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記抗体軽鎖は、それぞれ軽鎖定常領域を含み得、その軽鎖定常領域は、IgκとIgλからなる群から選ばれるタンパク質の軽鎖定常領域に由来し得る。
本願では、前記抗体軽鎖は、SEQ ID NO:23またはSEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記抗体重鎖は、それぞれ重鎖可変領域を含み得、前記重鎖可変領域は、HCDR1-3を含み得、そのHCDR1は、SEQ ID NO:7またはSEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、HCDR2は、SEQ ID NO:8またはSEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、HCDR3は、SEQ ID NO:9またはSEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0022】
本願では、前記抗体重鎖は、それぞれ重鎖可変領域を含み得、前記重鎖可変領域は、HCDR1-3を含み得、前記HCDR1は、SEQ ID NO:7に示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は、SEQ ID NO:8に示されるアミノ酸配列を含み得、かつ、前記HCDR3は、SEQ ID NO:9に示されるアミノ酸配列を含み得、または、前記HCDR1は、SEQ ID NO:13に示されるアミノ酸配列を含み得、前記HCDR2は、SEQ ID NO:14に示されるアミノ酸配列を含み得、かつ、前記HCDR3は、SEQ ID NO:15に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記抗体重鎖は、それぞれ重鎖可変領域を含み得、前記重鎖可変領域は、SEQ ID NO:18またはSEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:16に示されるアミノ酸配列を含み得、かつ、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:18に示されるアミノ酸配列を含み得、または、前記抗体の軽鎖可変領域は、SEQ ID NO:17に示されるアミノ酸配列を含み得、かつ、前記抗体の重鎖可変領域は、SEQ ID NO:19に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記抗体重鎖は、Fc領域を含み得る。
本願では、前記Fc領域は、IgG1とIgG4からなる群から選ばれるタンパク質のFcに由来し得る。
本願では、前記Fc領域は、N298、D357とL359からなる群から選ばれるアミノ酸位置に、アミノ酸突然変異を含み得る。
本願では、前記Fc領域のN298位置におけるアミノ酸突然変異はN298A、即ち、SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列における82位のアミノ酸Nがアミノ酸Aに突然変異したものをを含み得る。本願では、前記Fc領域のD357位置におけるアミノ酸突然変異はD357E、即ち、SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列における141位のアミノ酸Dがアミノ酸Eに突然変異したものをを含み得る。本願では、前記Fc領域のL359位置におけるアミノ酸突然変異はL359M、即ち、SEQ ID NO:20に示されるアミノ酸配列における143位のアミノ酸Lがアミノ酸Mに突然変異したものをを含み得る。
本願では、前記Fc領域は、N298A、D357EとL359Mからなる群から選ばれるアミノ酸突然変異を含み得る。本願では、前記Fc領域は、アミノ酸突然変異を有し得、前記アミノ酸突然変異はN298A、D357EおよびL359Mからなり得る。
本願では、前記Fc領域は、SEQ ID NO:20-22のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記二重特異性融合タンパク質は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖の2つのコピーからなる多量体であってもよく、前記第1のポリペプチド鎖は、前記抗体軽鎖を含み得、前記第2のポリペプチド鎖は、N末端から順に、前記抗体重鎖、前記リンカー、および前記第2の結合ドメインを含み得る。
本願では、前記第1のポリペプチド鎖は前記抗体軽鎖からなり得る。例えば、前記第1のポリペプチド鎖および前記第2のポリペプチド鎖における前記抗体重鎖は、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)を介して連結し得、前記第1のポリペプチド鎖および前記第2のポリペプチド鎖における前記抗体重鎖は非共有結合を介して連結し得る。
本願では、2つの前記第1のポリペプチド鎖は、同じアミノ酸配列を含み得る。例えば、2つの前記第1のポリペプチド鎖は、同じアミノ酸配列を含み得る。
本願では、2つの前記第2のポリペプチド鎖は、同じアミノ酸配列を含み得る。例えば、2つの前記第2のポリペプチド鎖は、同じアミノ酸配列を含み得る。
2つの前記第1のポリペプチド鎖は、任意に共有結合および/または非共有結合を介して、それぞれ、2つの前記第2のポリペプチド鎖に連結することで、本願に記載の二重特異性融合タンパク質を形成し得る。
本願では、前記第1のポリペプチド鎖は、それぞれSEQ ID NO:23-24のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記第2のポリペプチド鎖は、それぞれSEQ ID NO:25-27のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0023】
本願では、前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:25に示されるアミノ酸配列を含み、または、前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:24に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:26に示されるアミノ酸配列を含み、または、前記第1のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:23に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、前記第2のポリペプチド鎖は、SEQ ID NO:28に示されるアミノ酸配列を含み得る。
本願では、前記第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:23に示され得、かつ、前記第2のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:25に示され得る。本願では、前記第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:24に示され得、かつ、前記第2のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:26に示され得る。または、本願では、前記第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:23に示され得、かつ、前記第2のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:28に示され得る。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0024】
本願に記載のポリヌクレオチドは、単離され得る。例えば、(i)in vitro、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって、(ii)クローン組み換えによって、(iii)精製、例えば酵素消化およびゲル電気泳動による段階的分離によって、または(iv)合成、例えば化学合成によって製造または合成され得る。いくつかの実施形態では、前記単離された核酸は、組換えDNA技術によって調製された核酸分子である。組換え DNA および分子クローニング技術は、Maniatis, T., Fritsch, E.F., Sambrook, J.: Molecular Cloning. A laboratory manual. Cold Spring Harbour Laboratory. Cold Spring Harbour, NY,1982、T. J. Silhavy, M. L. BennanとL. W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y. (1984)、およびAusubel, F. M. ら,Current Protocols in Molecular Biology, pub. By Greene Publishing Assoc, and Wiley-Interscience(1987)に記載された技術を含む。簡単に述べると、前記核酸は、ゲノムDNA断片、cDNAおよびRNAから製造することができ、これらの核酸はすべて、細胞から直接抽出するか、または種々の増幅方法(PCRおよびRT-PCRを含むがこれらに限定されない)によって、組換え的に産生することができる。
本願に記載のポリヌクレオチドは、少なくとも2つの異なるヌクレオチド配列を含み得る。本願に記載のポリヌクレオチドは、本願に記載の二重特異性融合タンパク質の少なくとも2つの異なる成分をコードし得る。例えば、前記ポリヌクレオチドは、本願に記載の第1のポリペプチド鎖をコードし得、および/または、前記ポリヌクレオチドは、本願に記載の第2のポリペプチド鎖をコードし得る。例えば、前記ポリヌクレオチドは、前記PD-L1抗体の軽鎖をコードし得、前記PD-L1抗体の重鎖をコードし得、前記第2の結合ドメインをコードし得、前記リンカーをコードし得、前記VEGFR1のIg様構造ドメインをコードし得、および/または、前記VEGFR2のIg様構造ドメインをコードし得る。
【0025】
別の態様では、本願は、本願に記載のポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
本願では、前記ベクターは、1つ以上の本願に記載のポリヌクレオチドを含み得る。例えば、前記ベクターは、本願に記載の二重特異性融合タンパク質を発現するために直接使用され得る。本願では、前記ベクターは、本願に記載の二重特異性融合タンパク質における任意の構成部分を発現するために使用され得る。本願では、少なくとも2つの前記ベクターは、本願に記載の二重特異性融合タンパク質を発現するために使用され得る。例えば、前記ベクターは、本願に記載の第1のポリペプチド鎖を発現し得、および/または、前記ベクターは、本願に記載の第2のポリペプチド鎖を発現し得る。例えば、前記ベクターは、前記PD-L1抗体の軽鎖、前記PD-L1抗体の重鎖、前記リンカー、前記VEGFR1のIg様構造ドメイン、および/または、前記VEGFR2のIg様構造ドメインを発現し得る。
本願では、上記ベクターはまた、適切な宿主細胞において、適切な条件下で当該ベクターを選ぶマーカー遺伝子などの他の遺伝子を含み得る。また、前記ベクターはコード領域が適切な宿主において正しく発現されることを可能にする発現制御要素を含み得る。そのような制御要素は本分野の技術者に周知であり、例えば、それらは、プロモーター、リボソーム結合部位、エンハンサー、および遺伝子転写またはmRNA翻訳を調節する他の制御要素を含み得る。いくつかの実施形態では、前記発現制御配列は、調整可能な要素である。上記発現制御配列の特定の構造は、種または細胞タイプの機能によって異なり得るが、通常、TATA、キャッピング配列、CAAT配列などの転写および翻訳開始に関与する5 '非転写配列と5'および3 '非翻訳配列を含み得る。例えば、5’非転写発現制御配列はプロモータ領域を含み得、プロモータ領域は転写制御のための核酸に機能的に連結するプロモータ配列を含み得る。前記発現制御配列は、エンハンサー配列または上流アクチベーター配列をさらに含み得る。本願では、好適なプロモーターは、SP6、T3およびT7ポリメラーゼのプロモーター、ヒトU6RNAプロモーター、CMVプロモーターおよびその人工異種プロモーター(例えばCMV)であってもよく、そのプロモーターの一部が他の細胞タンパク質(例えばヒトGAPDH、グリセルアルデヒド3-リン酸脱水素酵素)遺伝子のプロモーターの一部に融合してもよく、これらはさらにイントロンを含んでも含まなくてもよい。本出願に記載の1つまたは複数のヌクレオチドは、発現制御要素に作動可能に連結することができる。前記ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、または、例えば、遺伝子工学において通常使用される他のベクターを含み得る。例えば、前記ベクターは、発現ベクターである。
【0026】
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質、本願に記載のポリヌクレオチドまたは本願に記載のベクターを発現または含有する細胞を提供する。
前記細胞は、原核細胞(例えば、細菌細胞)、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293T細胞またはHEK293A細胞であってもよく、または真菌または酵母細胞などのその他の真核細胞であってもよい。本願に記載のベクターは、エレクトロポレーション、lipofectineトランスフェクション、lipofectaminトランスフェクションなどの当分野で知られている方法によって、前記細胞に導入されてもよい。例えば、前記宿主細胞は、COS、CHO、NSO、sf9、sf21、DH5a、BL21(DE3)またはTG1であり得る。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質の発現に適した条件で、本願に記載の細胞を培養することを含む、本願に記載の二重特異性融合タンパク質の製造方法を提供する。
【0027】
これは、例えば、適切な培地、適切な温度およびインキュベーション時間などを用いることにより行うことができ、当業者には公知の方法である。特定の実施形態では、前記方法は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質を回収する(例えば、単離および/または精製)ステップをさらに含み得る。例えば、本願に記載の二重特異性融合タンパク質は、プロテインG-アガロースまたはプロテインA-アガロースを用いるアフィニティークロマトグラフィー、または、ゲル電気泳動および/または高速液体クロマトグラフィーによって、精製および単離され得る。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質および、薬学的に許容される担体を含む薬物組成物を提供する。
前記薬学的に許容される担体は、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤、低分子量ポリペプチド、タンパク質、親水性ポリマー、アミノ酸、糖類、キレート剤、カウンターイオン、金属錯体および/または非イオン性界面活性剤などを含み得る。
本願では、前記医薬組成物は、経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、腫瘍部位でのin situ投与、吸入、直腸投与、膣内投与、経皮投与、または皮下リザーバーを介した投与のために製剤化され得る。例えば、経口投与の場合、薬物組成物は、小錠剤、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、またはフレーク剤として製造され得る。注射用製剤の場合、薬物組成物は、例えば、単回投与量剤形のアンプルとして、または多回投与量容器の単位型投与剤形として製造され得る。薬物組成物はまた、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセルおよび持効性製剤として調製され得る。
前記薬物組成物の投与頻度および投与量は、治療対象疾患の種類、投与経路、患者の年齢、性別、体重、および疾患の重症度、ならびに有効成分として使用される薬物の種類を含む複数の関連因子によって決定され得る。前記薬物組成物は、優れたin vivo有効性および濃度持続時間を有するため、投与頻度および投与量を大幅に低減することが可能である。
【0028】
別の態様では、本願は、前記二重特異性融合タンパク質を含む薬物分子を提供する。本願では、前記薬物分子は、前記二重特異性融合タンパク質の性質および/または機能を有し得る。本願では、前記薬物分子はまた、その他の性質および/または機能も有し得る。例えば、前記薬物分子はまた、その他の構造体も含み得る。例えば、前記薬物分子はまた、その他の1つまたは複数のアミノ酸も含み得る。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質の疾患治療薬製造における使用を提供し、前記疾患は腫瘍を含む。
本願に記載の二重特異性融合タンパク質、および/または本願に記載の薬物組成物は疾患の治療に使用され、前記疾患は腫瘍を含む。
本願は、必要とする被験者に、有効量の二重特異性融合タンパク質、および/または本願に記載の薬物組成物を投与することを含む、疾患を治療する方法を提供し、前記疾患は、腫瘍を含む。
【0029】
本願では、前記腫瘍は、固形腫瘍であってもよく、非固形腫瘍であってもよい。例えば、前記腫瘍は、当業者に公知の様々な腫瘍型を含み得るが、特定の1つまたは複数の腫瘍型に限定されない。例えば、前記腫瘍は、肺癌、結腸直腸癌、子宮頸癌、肝臓癌、胃癌、および/又は腎臓癌を含み得る。例えば、前記腫瘍は、結腸直腸癌を含み得る。
本願では、前記腫瘍は、PD-L1陽性(例えば、PD-L1過剰発現)の腫瘍であり得る。特定の態様では、前記腫瘍は、PD-L1陰性であってもよい。本願では、前記腫瘍は、VEGFの過剰発現(例えば、血管において)と関連し得る。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質、および/または本願に記載の薬物組成物の有効量を投与することを含む、血管(例えば、ヒト)増殖を阻害するための方法を提供する。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質、および/または本願に記載の薬物組成物の有効量を投与することを含む、VEGF受容体リガンドの活性を阻害するための方法を提供する。
【0030】
例えば、前記VEGF受容体リガンド活性は、VEGFおよび/またはVEGFR自体の生物学的活性および/または機能を含み得る。例えば、VEGFとVEGFRとの結合を含み得る。
別の態様では、本願は、本願に記載の二重特異性融合タンパク質、および/または本願に記載の薬物組成物の有効量を投与することを含む、PD-L1の活性を阻害するための方法を提供する。
【0031】
例えば、前記PD-L1活性はPD-L1および/またはPD-1自体の生物学的活性および/または機能を含み得る。例えば、PD-L1とPD-1との結合を含み得る。
以下の実施例は、理論に限定されることを意図するものではなく、本出願の各技術的解決手段を説明するためにのみ使用され、本出願の範囲を限定するために使用されるものではない。
【0032】
実施例
本願に係るタンパク質のコードは次の意味を有する:
SG1201:PD-L1抗体1のことであり、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO.16に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO.18に示され、
SG1202:PD-L1抗体2のことであり、その軽鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO.17に示され、その重鎖可変領域のアミノ酸配列はSEQ ID NO.19に示され、
SG1501:VEGFRs(そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.28に示される)-Fc(そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.20に示される)の融合タンパク質のことであり、
12VF1:本願に記載の二重特異性融合タンパク質のことであり、その第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、かつ、その第2のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.25に示され。
12VF2:本願に記載の二重特異性融合タンパク質のことであり、その第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.24に示され、かつ、その第2のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.26に示され。
12VF8:本願に記載の二重特異性融合タンパク質のことであり、その第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.23に示され、かつ、その第2のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.27に示される。
【0033】
実施例1 融合タンパク質の構築
図1に示す二重特異性融合タンパク質の構造を参照しながら、PD-L1抗体1の配列、リンカー(そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.3に示される)およびVEGFRsを順次連結し、ここで、VEGFRsのN末端はPD-L1抗体1の重鎖のC末端に連結されることにより、二重特異性融合タンパク質12VF1を得た。
12VF1を基に、突然変異したIgG1 Fc(そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.22に示される)をIgG4 Fc(そのアミノ酸配列はSEQ ID NO.21に示される)に置き換え、二重特異性融合タンパク質12VF8を得た。
図1に示す融合タンパク質の構造を参照しながら、PD-L1抗体2の配列、リンカー(そのアミノ酸配列は、SEQ ID NO.3に示される)およびVEGFRsを順次連結し、ここで、VEGFRsのN末端はPD-L1抗体2の重鎖のC末端に連結されることにより、二重特異性融合タンパク質12VF2を得た。
【0034】
実施例2 二重抗原への結合活性に関するアッセイ
(1) PD-L1抗体をコントロールとし、ELISAにより、二機能性融合タンパク質とPD-L1との結合活性を評価した。
PD-L1(ヒト組換えPD-L1タンパク質(ECD, His Tag)、Sino Biologicalから購入)コーティングELISAストリップを4℃で、一晩静置した。PBSTで洗浄後に、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1h密閉した。異なる濃度の抗体SG1201およびSG1202、実施例1で調製された二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8を加え、37℃で1h反応させた。PBSTで洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG Fab二次抗体(Goat Anti-Human IgG (Fab’) 2(HRP),Abeam)を加え、37℃で30min反応させた。PBSTで5回洗浄した。各ウェルに100μL TMB(eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1~2min放置した。さらに、各ウェルに100μL 2N H
2SO
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二機能性融合タンパク質のPD-L1への結合能を分析した。
結果を
図2に示す通りである。
図2は、二重特異性融合タンパク質12VF1のPD-L1に対する結合能が12VF8よりやや強く、抗体SG1201と同等であることを示している。
図2は、二重特異性融合タンパク質12VF2のPD-L1に対する結合能が抗体SG1202と同等であることを示している。
(2) VEGFRs融合タンパク質をコントロールとし、ELISAにより、二機能性融合タンパク質とVEGF165との結合活性を評価した。
VEGF165(Human VEGF165 Protein, His Tag, Acro Biosystems)コーティングELISAストリップを4℃で、一晩静置した。PBSTで洗浄後、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1h密閉した。異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8およびSG1501を加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ標識ヤギ抗ヒトIgG Fc二次抗体(Goat anti-human IgG Fc antibody, horseradish peroxidase (HRP) conjugate, affinity purified, Invitrogen)を加え、37℃で30min反応させた。PBSTで5回洗浄した。各ウェルにl00μL TMB(eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1~2min放置した。さらに、各ウェルに100μL 2N H
2SO
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8と、VEGF165との結合能を分析した。
結果を
図3に示す通りである。
図3は、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のVEGF165に対する結合能が、同等で、融合タンパク質SG1501よりやや弱いことを示している。
【0035】
実施例3 二重抗原への同時結合活性に関するアッセイ
PD-L1抗体およびVEGFRs融合タンパク質をコントロールとし、ELISAにより、実施例1で調製された二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8と二重抗原との同時結合の生物学的活性を評価した。
PD-L1(ヒト組換えPD-L1タンパク質(ECD, His Tag),Sino Biologicalから購入)コーティングELISAストリップを4℃で、一晩静置した。PBSTで洗浄後、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1h密閉した。それぞれ、異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8、PD-L1抗体SG1201、SG1202、およびVEGFRs融合タンパク質SG1501を加え、37℃で1h反応させた。PBSTで洗浄後、ビオチン標識VEGF165(Biotinylated Human VEGF165 Protein, His, Avitag, Acro Biosystems)を加え、37℃で30分反応させた。PBSTで5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP,嘉暄生物)を加え、37℃で30min反応させた。PBSTで5回洗浄した。各ウェルに100μL TMB(eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1~2min放置した。さらに、各ウェルに100μL 2N H
2SO
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8と、PD-L1およびVEGF165との同時結合能を分析した。
結果を
図4に示す通りである。
図4は、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8がPD-L1およびVEGF165に同時結合でき、PD-L1抗体SG1201およびSG1202、VEGFRs融合タンパク質SG1501がPD-L1およびVEGF165に同時結合できないことを示している。
【0036】
実施例4 PD-1/PD-L1相互作用の阻害活性に関する分析
PD-L1抗体SG1201、SG1202をコントロールとし、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のPD-1/PD-L1相互作用を阻害するための生物学的活性を評価した。
PD-L1-his(ヒト組換えPD-L1タンパク質(ECD, His Tag),Sino Biologicalから購入)コーティングアッセイプレート、lμg/mlを4℃で、一晩静置した。PBSTで洗浄後、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1時間密閉した。それぞれ、異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8および抗体SG1201、SG1202を加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、ビオチン標識PD1(Biotinylated Human PD-1/PDCD1 Protein, Fc, Avitag
TM, HisTag, Acro Biosystems)を最終濃度2μg/mlとなるように加え、37℃で30min反応させた。PBSTで5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP,嘉暄生物)を加え、37℃で30minインキュベートした。PBSTで5回洗浄し、各ウェルに100μL TMB(eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1-5min放置した。各ウェルに100μL 2N H
2SO
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のPD-1/PD-L1に対する阻害効果を分析した。
図5からわかるように、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8はPD-L1抗体SG1201,SG1202と同等な活性で、PD-1とPD-L1の結合を競合的に阻害できる。ここで、SG1201のIC
50値は0.3968nM、SG1202のIC50値は0.4216nM、12VF1のIC50値は0.393nM,12VF8のIC
50値は0.5002nM、12VF2のIC
50値は0.4256nMである。
【0037】
実施例5 VEGF/VEGFR相互作用の阻害活性に関する分析
(1)融合タンパク質SG1501をコントロールとし、実施例1で調製された二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のVEGF/VEGFR相互作用を阻害するための生物学的活性を評価した。
VEGFR1(Human VEGF R1/Flt-1 Protein, His Tag, Acro Biosystems)コーティングアッセイプレート、lμg/mlを4℃で、一晩静置した。PBSTで洗浄後、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1時間密閉した。それぞれ、異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8および融合タンパク質SG1501を加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで洗浄後、ビオチン標識VEGF165(Biotinylated Human VEGF165 Protein, His, Avitag, Acro Biosystems)を最終濃度0.05μg/mlとなるように加え、37℃で30minインキュベートし、反応させた。PBSTで5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP,嘉暄生物)を加え、37℃で30minインキュベートした。PBSTで5回洗浄し、各ウェルに100μL TMB(eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1-5min放置した。各ウェルに100μL 2N H
2S0
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8のVEGF/VEGFRに対する阻害効果を分析した。
結果を
図6に示す通りで、
図6は、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8は、融合タンパク質SG1501と同様に、VEGFとその受容体VEGFR1との結合を競合的に阻害できることを示している。ここで、12VF1のIC
50値は3.749nM、12VF2のIC
50値は5.049nM、12VF8のIC
50値は2.182nM、SG1501のIC
50値は1.470nMである。
(2)二重特異性融合タンパク質IMM25011(特許出願US2020/0172623A1参照)をコントロールとし、実施例1で調製された二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のVEGF165/VEGFR2相互作用を阻害するための生物学的活性を評価した。
VEGF165(VEGF165 Protein, Human, Cynomolgus, Recombinant, HPLC-verified, Sino Biological)コーティングアッセイプレート、1μg/mlを4℃で一晩静置した。PBSTで洗浄後、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1h密閉した。それぞれ、異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8およびIMM25011を加え、37℃で1h反応させた。PBSTで洗浄後、ビオチン標識VEGFR2(VEGFR2/KDR Protein, Human, Recombinant (His Tag),Biotinylated,Sino Biological)を最終濃度1μg/mlとなるように加え、37℃で30minインキュベートし、反応させた。PBSTで5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP,嘉暄生物)を加え、37℃で30minインキュベートした。PBSTで5回洗浄し、各ウェルに100μL TMB(eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1-5min放置した。各ウェルに100μL 2N H
2SO
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8のVEGF165/VEGFR2に対する阻害効果を分析した。
結果を
図7に示す通りで、
図7は、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8は、すべてVEGF165とその受容体VEGFR2との結合を阻害でき、かつ、活性はIMM25011より強いことを示している。ここで、12VF1のIC
50値は4.092nM、12VF2のIC
50値は3.501nM、12VF8のIC
50値は3.422nM、IMM25011のIC
50値は6.596nMである。
(3)二重特異性融合タンパク質IMM25011をコントロールとし、実施例1で調製された二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のVEGF121/VEGFR2相互作用を阻害するための生物学的活性を評価した。
VEGF121(VEGF 121 Protein, Human, Recombinant, Sino Biological)コーティングアッセイプレート、1μg/mlを4℃で一晩静置した。PBSTで洗浄後、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1h密閉した。それぞれ、異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8およびIMM25011を加え、37℃で1h反応させた。PBSTで洗浄後、ビオチン標識VEGFR2(VEGFR2/KDR Protein, Human, Recombinant (HisTag),Biotinylated, Sino Biological)を最終濃度1μg/mlとなるように加え、37℃で30min反応させた。PBSTで5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP,嘉暄生物)を加え、37℃で30minインキュベートした。PBSTで5回洗浄し、各ウェルに100μL TMB(eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1-5min放置した。各ウェルに100μL 2N H
2SO
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8のVEGF121/VEGFR2に対する阻害効果を分析した。
結果を
図8に示す通りで、
図8は、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8は、すべてVEGF121とその受容体VEGFR2との結合を阻害でき、かつ、活性はIMM25011より強いことを示している。ここで、12VF1のIC
50値は3.536nM、12VF2のIC
50値は3.291nM、12VF8のIC
50値は2.955nM、IMM25011のIC
50値は5.281nMである。
(4)二重特異性融合タンパク質IMM25011をコントロールとし、実施例1で調製された二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のVEGFC/VEGFR2相互作用を阻害するための生物学的活性を評価した。
VEGFC(VEGF C Protein, Human, Recombinant (His Tag), Sino Biological)コーティングアッセイプレート、1μg/mlを4℃で一晩静置した。PBSTで洗浄後、10%のウシ胎児血清を加え、37℃で1h密閉した。それぞれ、15μMの二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8およびIMM25011を加え、37℃で1h反応させた。PBSTで洗浄後、ビオチン標識VEGFR2(VEGFR2/KDR Protein, Human, Recombinant (His Tag),Biotinylated, Sino Biological)を最終濃度20μg/mlとなるように加え、37℃で30min反応させた。PBSTで5回洗浄した。西洋ワサビペルオキシダーゼ標識アビジン(Streptavidin-HRP,嘉暄生物)を加え、37℃で30minインキュベートした。PBSTで5回洗浄し、各ウェルに100μL TMB (eBioscience)を加え、室温(20±5℃)で遮光して1-5min放置した。各ウェルに100μL 2N H
2SO
4終止液を加えて基質反応を終止させ、マイクロプレートリーダーでOD値を450 nmで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8のVEGFC/VEGFR2に対する阻害効果を分析した。
結果を
図9に示す通りで、
図9は、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8は、すべてVEGFCおよびその受容体VEGFR2との結合を阻害することにより、血管新生を効果的に抑制でき、かつ、12VF1、12VF2、12VF8の阻害活性は同等であることを示している。これに対し、IMM25011は、VEGFCとその受容体VEGFR2との結合を阻害できない。
したがって、VEGF121とVEGFR2との結合のみを阻害できるIMM25011と比較して、本願の二重特異性融合タンパク質は、VEGF121とVEGFR2との結合だけでなく、VEGF Cとその受容体VEGFR2との結合も阻害できるため、このシグナル伝達経路の調節効果をより全面的に発揮し、腫瘍部位における血管新生をより完全に阻害する役割を果たせる。
【0038】
実施例6 HUVEC細胞増殖の抑制活性に関する分析
融合タンパク質SG1501をコントロールとし、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8のHUVEC細胞増殖を抑制するための生物学的活性を評価した。
HUVEC細胞を実験培地に再懸濁し、96ウェル細胞培養プレートに入れ、インキュベーターで一晩培養した。実験培地でVEGF 165 (ActiveMax(商標) Human VEGF 165 Protein, Tag Free (MALS verified), Acro Biosystems)を40ng/mLまで希釈し、さらに、異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2、12VF8および融合タンパク質SG1501と等量混合し、37℃で30minプレインキュベートし、96ウェル細胞培養プレートに入れた。37℃インキュベーターで3日間培養した後、96ウェルプレートを取り出し、室温で10min平衡化し、各ウェルに100μLのCellTiter-Lumi試薬(CellTiter-Lumi
TM Luminescent Cell Viability Assay Kit,碧雲天)を加え、軽く振り混ぜ、遮光して10min反応させた後、化学発光の相対蛍光強度(RLU)値をマイクロプレートリーダーで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8のHUVEC細胞増殖抑制活性を分析した。
図10からわかるように、二重特異性融合タンパク質12VF1、12VF2および12VF8は、全てHUVEC細胞増殖を抑制できるが、融合タンパク質SG1501に比べてやや弱い。
【0039】
実施例7 Tリンパ球の活性化における活性に関する分析
PD-L1抗体SG1201およびアイソタイプコントロール抗体をコントロールとし、混合リンパ球反応におけるTリンパ球の活性化における二重特異性融合タンパク質12VF8の生物学的活性を評価した。
CD14マイクロビーズ(CD14 microbeads, Miltenyi)を用いて健常ドナーのPBMCから単球を単離し、樹状細胞培養キット(ImmunoCultTM Dendritic Cell Culture Kit, Stemcell)を用いて、樹状細胞への分化を誘導した。CD4
+Tリンパ球分離キット(CD4
+T Cell Isolation Kit,Miltenyi)を用いて、別の健常ドナーのPBMCからCD4
+Tリンパ球を単離し、CD4
+Tリンパ球と樹状細胞を細胞数5:1の割合で96ウェル細胞培養プレートに入れ、さらに、異なる濃度の二重特異性融合タンパク質12VF8を加え、よく振り混ぜた後に、37℃インキュベーターで5日間培養した。細胞上清を回収し、ELISAキットでサイトカインIFN-γおよびIL-2の濃度を測定し、混合リンパ球反応におけるTリンパ球の活性化における二重特異性融合タンパク質12VF8活性を分析した。
図11-12からわかるように、アイソタイプコントロール群に比べて、二重特異性融合タンパク質12VF8は、PD-L1抗体SG1201と同じように、用量依存的な方式でT細胞を活性化し、IFN-γおよびIL-2の放出を促進することができる。
【0040】
実施例8 ADCC活性に関する分析
二重特異性融合タンパク質IMM25011をコントロールとし、PD-L1過剰発現細胞株CHO-K1/PD-L1を標的細胞とし、ヒト FcγRIIIa 遺伝子と NFAT蛍光レポーター遺伝子を過剰発現するJurkat細胞(Jurkat-ADCC細胞と略称する)をエフェクター細胞とし、実施例1で調製された二重特異性融合タンパク質12VF1および12VF8のADCC活性をレポーター遺伝子法を用いて評価した。
CHO-K1/PD-L1細胞を収集し、1ウェルあたり2×10
4の細胞で96ウェル細胞培養プレートに入れる。Jurkat-ADCC細胞を収集し、1チューブあたり1.2×10
5の細胞で96ウェル細胞培養プレートに入れる。異なる濃度の二重特異性融合タンパク質IMM25011、12VF1および12VF8を加え、37℃のインキュベーターで6hインキュベートした。1ウェルあたり、100μLのルシフェラーゼ検出溶液を加え、室温で遮光して10min反応させた後、化学発光の相対蛍光強度(RLU)値をマイクロプレートリーダーで読み取り、二重特異性融合タンパク質12VF1および12VF8のADCC活性を分析した。
結果を
図13に示す通りで、
図13は二重特異性融合タンパク質IMM25011がADCC活性を有するが、12VF1及び12VF8がADCC活性を有しないことを示している。
以上の結果は、12VF1および12VF8の安全性がより高いことを示唆している。PD-L1陽性の他の正常細胞を殺傷しないようにすることで、潜在的な副作用を軽減することができる。PD-L1は、骨髄系のDC、マクロファージ、リンパ系のTエフェクター細胞、Treg細胞、NK細胞など、多くの正常な免疫細胞にも発現しているため、12VF1および12VF8はADCC活性を有しない状況で、正常組織に対する殺傷を回避できる。
【0041】
実施例9 融合タンパク質のin vivo腫瘍抑制活性
マウス結腸直腸癌MC38モデルを用いて、二重特異性融合タンパク質12VF8の腫瘍抑制活性の効果を評価した。
マウス結腸直腸癌細胞MC38をオスC57BL/6Jマウス右脇腹皮下に接種し、合計36匹に接種し、腫瘍が約58mm
3に増殖した時点で、6匹/群、計5群に分けた。各群の詳細は次の通り:群1:試験17日目に腹腔内注射でPBS(即ち、Vehicle群として)を投与し、週に2回、3週間投与した。群2:腹腔内注射で、SG1201(2mg/kg)を週に2回、3週間投与した。群3:腹腔内注射で、SG1501(1.4mg/kg)を週に2回、3週間投与した。群4:腹腔内注射で、SG1201(2mg/kg)およびSG1501(1.4mg/kg)を週に2回、3週間投与した。群5:腹腔内注射で、12VF8(2.7mg/kg)を週に2回、3週間投与した(投与後の結果は、順に
図14の群1-5に示す)。毎週に腫瘍体積および体重を測定し、担癌マウスの体重および腫瘍体積推移と投与時間との関係を記録した。最後の投与から2時間後に、各群から決まったマウスの血清を採取した。実験終了後担癌マウスマウスを安楽死させ、腫瘍を摘出し、重量を測定して写真を撮った。腫瘍増殖抑制率TGITV(%)を計算し、統計的に分析した。
その結果、実験終了時に、群2、群3、群4および群5の腫瘍増殖抑制率はそれぞれ63%、39%、71%、83%であり、各投与群の腫瘍体積は対照の群1より有意に低く(p<0.05)、有意な抗腫瘍効果が示され、腫瘍の増殖を効果的に抑制した。中でも、群5の腫瘍体積は全投与群の中で最も小さく、群3より有意に低かった(p<0.05)。腫瘍抑制活性は単剤投与の第2群や第3群より優れており、また複数の薬剤を併用した第4群よりも優れていた。投与期間中、担癌マウスは群2‐群5の治療に対して良好な耐性を示し、各群のマウスは体重が正常で、異常所見がなく、全身状態も良好であったため、12VF8の投与安全性が示唆された。
【0042】
前述の詳細な説明は、説明および例として提供されるものであり、添付の請求項の範囲を限定することを意図するものではありません。本願に記載された実施形態の様々な変更は、当業者には明白であり、添付の特許請求の範囲およびそれと同等の方法の範囲内にとどまる。
【配列表】
【国際調査報告】