(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】騒音発生を軽減した車両用のドアロック
(51)【国際特許分類】
E05B 77/36 20140101AFI20240618BHJP
E05B 77/54 20140101ALI20240618BHJP
【FI】
E05B77/36
E05B77/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577305
(86)(22)【出願日】2022-04-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2022061566
(87)【国際公開番号】W WO2022263048
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】102021003155.5
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100090583
【氏名又は名称】田中 清
(74)【代理人】
【識別番号】100098110
【氏名又は名称】村山 みどり
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム・キューネル
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250HH01
2E250JJ09
2E250JJ15
2E250JJ45
2E250KK01
2E250LL01
2E250LL05
2E250MM03
2E250MM05
2E250PP06
(57)【要約】
本発明は、車両(3)用の歯車駆動式ドアロック(1)に関し、このドアロック(1)は、
-閉要素(7)を形状結合で保持するための回転ラッチ(5)と、
-解除に対して回転ラッチ(5)を係止するための係止機構(9)と、
-ウェッジレバー(13)と接続ピース(15)とを備え、閉要素(7)と回転ラッチ(5)との間の相対運動を減少させるために、これらがセルフロック接触位置に至ることができるウェッジシステム(11)と、を備えるものであり、
係止機構(9)は、円弧状の周方向セグメントを介して、アウトプットレバー(17)の周囲と接触し、それにより係止機構(9)の動作時に、アウトプットレバー(17)が周方向セグメント上を転動することによって回転するものであり、アウトプットレバー(17)はキャッチレバー(19)に連結されており、係止機構(9)の開動作時におけるアウトプットレバー(17)の回転により、キャッチレバー(19)がウェッジレバー(13)と接続ピース(15)との間のセルフロック接続を解除するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(3)用のドアロック(1)において、
-回転ラッチ(5)であって、前記ドアロック(1)の閉状態において、閉要素(7)の周りに係合、特に回転して係合することにより、前記閉要素(7)を形状結合で保持するための、前記回転ラッチ(5)と、
-係止機構(9)、特に爪であって、前記係止機構(9)の閉動作後、前記ドアロック(1)の閉状態において、前記閉要素(7)と前記回転ラッチ(5)との前記形状結合の解除に対して前記回転ラッチ(5)を係止するための、前記係止機構(9)と、
-ウェッジシステム(11)であって、ウェッジレバー(13)と接続ピース(15)とを備え、前記閉要素(7)と前記回転ラッチ(5)との間の相対運動を減少させるために、前記ウェッジレバー(13)と前記接続ピース(15)は、相対的に運動を実行することができ、そして前記ドアロック(1)の閉状態のためのセルフロック接触位置に至ることができる、前記ウェッジシステム(11)と、
を備え、
前記係止機構(9)は、円弧状の周方向セグメントを介して、回転可能に支持されたアウトプットレバー(17)の周囲と摩擦結合及び/又は形状結合で接触し、それにより前記係止機構(9)の開動作時および閉動作時に、前記アウトプットレバー(17)が前記係止機構(9)の前記周方向セグメント上を転動することによって回転するものであり、前記アウトプットレバー(17)はキャッチレバー(19)に連結されており、前記係止機構(9)の開動作時における前記アウトプットレバー(17)の回転により、前記キャッチレバー(19)が前記ウェッジレバー(13)と前記接続ピース(15)との間のセルフロック接続を解除することを特徴とする、前記ドアロック(1)。
【請求項2】
前記キャッチレバー(19)、前記アウトプットレバー(17)、および前記ウェッジレバー(13)は、互いに同心で回転可能に支持され、かつそれらの軸受で互いに独立して回転可能である、請求項1に記載のドアロック(1)。
【請求項3】
前記アウトプットレバー(17)は、前記アウトプットレバー(17)とともに回転するカム(21)を有しており、前記カム(21)は、前記係止機構(9)の開動作時に前記キャッチレバー(19)の突起部(23)に当たり、前記カム(21)が前記突起部(23)に当たった後、前記アウトプットレバー(17)が前記キャッチレバー(19)とともに回転する、請求項1または2に記載のドアロック(1)。
【請求項4】
前記キャッチレバー(19)と前記ウェッジレバー(13)とは開口ばね(25)を介して連結されており、前記開口ばね(25)は、前記ウェッジレバー(13)と前記接続ピース(15)との間のセルフロック接続を解除するために、前記ウェッジレバー(13)を前記セルフロック接続から開放位置に押し出し、その際、前記開口ばね(25)は前記キャッチレバー(19)によって、前記アウトプットレバー(17)から案内される形で、ばね力に対抗して圧力で荷重が加えられ、荷重が加えられた前記開口ばね(25)は、開放位置に向かって回転方向に前記ウェッジレバー(13)を押え付ける、請求項1から3のいずれか一項に記載のドアロック(1)。
【請求項5】
前記開口ばね(25)は、前記キャッチレバー(19)の円弧状ガイド(27)の周りに巻かれた渦巻きばねである、請求項4に記載のドアロック(1)。
【請求項6】
前記キャッチレバー(19)は、閉口ばね(29)に接続されており、前記閉口ばね(29)は、前記閉口ばね(29)が前記キャッチレバー(19)を前記ウェッジレバー(13)とともにセルフロック位置の方向に押し出すように配置され、プレテンションがかけられている、請求項1から5のいずれか一項に記載のドアロック(1)。
【請求項7】
前記接続ピース(15)は、前記閉要素(7)の領域にある、請求項1から6のいずれか一項に記載のドアロック(1)。
【請求項8】
前記接続ピース(15)は回転可能に支持されており、前記接続ピース(15)の第1の側面には、前記ウェッジレバー(13)と相互作用する表面が、セルフロックを形成するために配置されており、前記接続ピース(15)の第1の側面に対向する第2の側面は、前記ドアロック(1)の閉状態において、前記ウェッジレバー(13)の半径方向の力が前記接続ピース(15)を介して前記閉要素(7)に伝達されることによって、前記閉要素(7)を押え付ける、請求項1から6のいずれか一項に記載のドアロック(1)。
【請求項9】
前記係止機構(9)の前記円弧状の周方向セグメントはフェイススプラインを有している、請求項1から8のいずれか一項に記載のドアロック(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のドアロック(1)を備える車両(3)において、
前記閉要素(7)は前記車両(3)のボディに配置され、前記回転ラッチ(5)、前記係止機構(9)、前記ウェッジシステム(11)、前記アウトプットレバー(17)、および前記キャッチレバー(19)は前記車両(3)のドアに配置されている、前記車両(3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアロック、ならびにそのようなドアロックを備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアロックは、機能上の理由からドアロック内部に遊びのある構造になっており、それによってドアロックの確実な動作を保証している。
【0003】
特許文献1は、この問題を軽減することに関係しており、特に閉位置および低シール圧において、走行中のフラップの動的荷重変動反応によって係止面が爪および回転ラッチから外れることを防止するために、改善されたロックを提供することを課題として提供している。解決策として、特許文献1は、特に自動車のバックレストまたはテールゲート用のロックを提案し、このロックは、閉要素を備える回転ラッチと、この回転ラッチと閉要素とが閉じるように連結されているロックの閉鎖位置に、回転ラッチを係止するために割り当てられている係止機構、特に爪と、この係止機構に連結されている静止位置レバーとを有しており、このとき、静止位置レバーは外部輪郭を有し、この外部輪郭は、ロックの閉鎖位置において閉要素をセルフロック式に回転ラッチ内に保持する。
【0004】
この場合、静止位置レバーは、上述の課題を解決するための、特許文献1の重要な装置の特徴である。上述の係止機構がスムーズに回転ラッチの突出部に係合することができ、それによって回転ラッチが閉要素を形状結合的に保持し、この位置で係止された状態を維持するため、そのような突出部には、通常、多少の遊びがある。係止機構もまた、上述の遊びに伴って、基本的に回転ラッチのストッパまでは回転ラッチの周方向に保持されないので、回転ラッチは、この遊びによってさらに回転し続けることができる。これに対して、静止位置レバーは、例えば回転ラッチおよび係止機構とともに車両ドア内に配置されているドアロックの要素である。この静止位置レバーは、ドアロックの閉状態において、セルフロック式の押さえ機能によって閉要素を押え付けるため、場合によって生じるドアロックのカタカタ音が阻止される。これにより、ドアロックは、追加要素(静止位置レバー)によって固定され、前述の遊びは、静止位置レバーの機能によってそれ以上動けなくなる。従って、特許文献1により、上述の課題が解決され、これにより、特にドアロックの閉状態において、特にそのようなカタカタ音が阻止される。
静止位置レバーのセルフロック式押さえ機能は、特許文献1に記載されているように、例えば回転可能に支持された静止位置レバーによって実現することができ、この静止位置レバーは、その側面において、少なくともある程度の角度範囲にわたり径が大きくなる丸みを有する。静止位置レバーが回転してセルフロック位置に入る量が増えると、静止位置レバーのより大きな外側半径が第2の部品に接触する。この第2の部品は閉要素を押え付け、ボディなどに配置されている。この周方向セグメント上の増加半径は、勾配に相当する。この勾配の角度が、静止位置レバーのこの表面の最小半径を半径とする円セグメント形の仮想円周上の接線に対して大きすぎるように選択されると、セルフロック機能は保証されなくなり、機械的な励起があった場合(特に、閉要素が押し付けられた場合)、静止位置レバーのセルフロック位置が解除される可能性がある。しかしながら、さらに、このシステムは、その他のすべての機械式システムと同様に、継続的な磨耗を受けているため、静止位置レバーの回転角度は経年とともに大きくなることに留意しなければならない。すなわち、静止位置レバーのセルフロック位置に有効な実際の作用面は、磨耗が増加するにつれて、セルフロック作用が依然として可能である静止位置レバーの周方向セグメントの最終領域の方向へと常にずれることになる。それ以降、静止位置レバーが回転してドアロックの内部に最大まで入ると、セルフロック位置はもはや不可能になる。このことは、勾配角度が小さすぎると特に早く起こり、セルフロック喪失の危険という前述の理由から、勾配角度を任意に大きくすることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上述した問題を解決することであり、また特にそのような静止位置レバーの(以下では、「ウェッジシステム」の要素と一緒に説明され、特に「ウェッジレバー」によって説明される)機能を長持ちさせることによって、ドアロックの寿命を延ばすことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、独立請求項の特徴から明らかになる。有利な発展形態及び実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明の第1の態様は車両用のドアロックに関し、このドアロックは、
-回転ラッチであって、ドアロックの閉状態において、閉要素の周りに係合、特に回転して係合することにより、閉要素を形状結合で保持するための、回転ラッチと、
-係止機構、特に爪であって、係止機構の閉動作後、ドアロックの閉状態において、閉要素と回転ラッチとの形状結合の解除に対して回転ラッチを係止するための、係止機構と、
-ウェッジシステムであって、ウェッジレバーと接続ピースとを備え、閉要素と回転ラッチとの間の相対運動を減少させるために、ウェッジレバーと接続ピースは、相対的に運動を実行することができ、そしてドアロックの閉状態のためのセルフロック接触位置に至ることができる、ウェッジシステムと、を備え、係止機構は、円弧状の周方向セグメントを介して、回転可能に支持されたアウトプットレバーの周囲と摩擦結合及び/又は形状結合で接触し、それにより係止機構の開動作時および閉動作時に、アウトプットレバーが係止機構の周方向セグメント上を転動することによって回転するものであり、このアウトプットレバーはキャッチレバーに連結されており、係止機構の開動作時におけるアウトプットレバーの回転により、キャッチレバーがウェッジレバーと接続ピースとの間のセルフロック接続を解除することを特徴とする。
【0009】
上述の先行技術とは逆に、係止機構の円弧状周方向セグメントと駆動レバーの円弧状の周方向セグメントとの間の歯車作用、およびキャッチレバーに対する駆動レバーの作用により、時間の経過とともに摩耗によって生じる公差が補正される。作用様式の更なる詳細は、
図2から
図4に詳細に説明されている実施例に示されている。従って、本発明の有利な作用は、先行技術からの上述した問題と、それに関連する、周方向セグメントの偏心状の外側輪郭の大きすぎる勾配角度と小さすぎる勾配角度との間の達成困難な妥協とが解決されることであり、また摩耗が生じた場合でも、ウェッジレバー(上述の「静止位置レバー」に相当)が、少なくとも間接的に閉要素に対してクランプ力を作用させるために、十分に深く係合できることである。
【0010】
有利な実施形態によれば、キャッチレバー、アウトプットレバー、およびウェッジレバーは、互いに同心で回転可能に支持され、かつそれらの軸受内で互いに独立して回転可能である。従って、キャッチレバー、アウトプットレバー、およびウェッジレバーは、好適には共通の運動学的回転軸を有しているが、原理的にはドアロックのハウジング内に互いに独立して回転可能に支持されている。
【0011】
更なる有利な実施形態によれば、アウトプットレバーは、アウトプットレバーとともに回転するカムを有しており、このカムは、係止機構の開動作時にキャッチレバーの突起部に当たり、カムが突起部に当たった後、アウトプットレバーがキャッチレバーとともに回転する。カムは、特に、アウトプットレバーの丸い表面から突き出している突起部として構成されている。カムとキャッチレバーの突起部との間には、好適には、ドアロックが完全に閉じた状態において遊びが設けられており、これによって、係止機構の開動作が開始されてから一定時間遅れてウェッジシステムが開放される。
【0012】
さらなる有利な実施形態によれば、キャッチレバーとウェッジレバーとは開口ばねを介して連結されており、この開口ばねは、ウェッジレバーと接続ピースとの間のセルフロック接続を解除するために、ウェッジレバーをセルフロック接続から開放位置に押し出し、その際、開口ばねはキャッチレバーによって、アウトプットレバーから案内される形で、ばね力に対抗して圧力で荷重が加えられ、荷重が加えられた開口ばねは、開放位置に向かって回転方向にウェッジレバーを押え付ける。開口ばねは、有利には、固着したウェッジレバーが係止機構を詰まらせて、ロックが開かなくなるのを防ぐ働きがある。
【0013】
さらに有利な実施形態によれば、この開口ばねは、キャッチレバーの円弧状ガイドの周りに巻かれた渦巻きばねである。
【0014】
さらなる有利な実施形態によれば、キャッチレバーは、閉口ばねに接続されており、この閉口ばねは、閉口ばねがキャッチレバーをウェッジレバーとともにセルフロック位置の方向に押し出すように配置され、プレテンションがかけられている。開口ばねと同様に、閉口ばねも、摩耗している状態でもウェッジレバーに追加付勢することができる。というのも、予想される摩耗の寸法を大きく上回るばねのたわみ量によって、そのような摩耗現象が補正されるからである。
【0015】
さらなる有利な実施形態によれば、接続ピースは閉要素の領域にある。この実施形態によれば、接続ピースとウェッジレバーとの間のセルフロック接続は、閉要素に直接行われる。というのも、ここでは、ウェッジレバーと閉要素が互いに直接接触して、セルフロック接続を発生させるからである。
【0016】
さらなる有利な実施形態によれば、接続ピースは回転可能に支持されており、接続ピースの第1の側面には、ウェッジレバーと相互作用する表面が、セルフロックを形成するために配置されており、接続ピースの第1の側面に対向する第2の側面は、ドアロックの閉状態において、ウェッジレバーの半径方向の力が接続ピースを介して閉要素に伝達されることによって、閉要素を押え付ける。接続ピースの可動ベアリングにより、ウェッジレバーと接続ピースとの間の最適なセルフロック接触作用が可能になり、この接続ピースは、さらにウェッジレバーと接続ピースとの間のスペーサとしても機能するため、ウェッジレバーをより短く実施することができる。
【0017】
さらなる有利な実施形態によれば、係止機構の円弧状の周方向セグメントはフェイススプラインを有している。このフェイススプラインは、仮にスリップが発生しても機能が損なわれるおそれがなく、係止機構とアウトプットレバーとの間でさらに高い力も伝達できる、特に信頼性の高い手段である。有利には、これに対応して、アウトプットレバーの回転する側面には、フェイススプラインが係合する歯付面がある。このことから、係止機構の円弧状の周方向セグメントによるアウトプットレバーの歯車作用が生じ、これにより、ウェッジレバーのより大きな調整角度が確保される。
【0018】
本発明のさらなる態様は、上述および後述のドアロックを備える車両に関し、閉要素は車両のボディに配置され、回転ラッチ、係止機構、ウェッジシステム、アウトプットレバー、およびキャッチレバーは車両のドアに配置されている。
【0019】
提案されている車両の有利かつ好適な発展形態は、提案されているドアロックとの関連において上記でなされた説明の類似的、かつ意味に即した移行から生じる。
【0020】
他の利点、特徴、及び詳細は、必要に応じて図面を参照しながら、少なくとも1つの実施例が詳しく説明される以下の記述から明らかになる。同一、類似、及び/又は機能的に同じ部品には、同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】先行技術によるドアロックの部品を示す図である。
【
図2】本発明の実施例によるドアロックを示す図である。
【
図4】
図2のドアロックの部品を拡大した断面図である。
【
図5】本発明の実施例によるドアロックを備える車両の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図は概略的なものであり、縮尺どおりには示されていない。
【0023】
図1は、ドアロック1の部分的断面を示している(以下の図を参照)。回転ラッチ5は、ドアロック1の閉状態でドアを閉めたまま保持するために、閉要素7を形状結合で保持する役割を果たす。回転ラッチ5が閉要素7に係合すると、係止機構9が回転ラッチ5の突出部に係合し、この回転ラッチが緩んで外れないように保護する。これにより、回転ラッチ5は、閉要素7に係合している位置で係止されたまま留まっている。しかし、係止機構9が回転ラッチ5の突出部に係合するためには、回転ラッチ5の突出部を画定している端部と、係止機構9の角張った突起部との間に遊びのある間隙ができるまで、回転ラッチ5が時計回りに回転しなければならない。この遊びは、閉要素7と、回転ラッチ5の膨らみのある凹形の突出部との間の間隔にも現われる。この遊びは、オーバートラベルとも呼ばれ、走行中に刺激があった場合にドアロック1でカタカタ音が生じる原因となり得る。そのため、以下の
図2から
図4には、ウェッジレバー13によって閉要素7を追加的にクランプすることによって、この問題を防止する解決策が示されており、このとき、ウェッジレバー13およびその他の構成部品の摩耗が考慮される。
【0024】
図2は、
図5に示されているような車両3のドアロック1を示す。ドアロック1は、ドアロック1の閉状態において、閉要素7の周りに回転して係合することにより、閉要素7を形状結合で保持するための回転ラッチ5と、係止機構9の閉動作後、閉要素7と回転ラッチ5との形状結合の解除に対して回転ラッチ5を係止するための、ここでは爪として形成されている係止機構9とを有している。さらに、ドアロック1は、ウェッジレバー13と接続ピース15を備えるウェッジシステム11も有している。ウェッジレバー13と接続ピース15は、
図2に示すように、相対的に運動を実行することができ、このときドアロック1の閉状態のためのセルフロック接触位置に至ることができるように、移動可能に支持されている。ウェッジレバー13は、
図2において、時計回りに開放位置に回転することができる。ウェッジレバー13は、セルフロック位置において、回転可能に支持された接続ピース15を押え付け、この接続ピース15がさらに閉要素7を押え付け、これによって、閉要素7と回転ラッチ5との間の相対運動が減少する。係止機構9は、その正面の円弧状の周方向セグメントを介して、回転可能に支持されたアウトプットレバー17の周囲にフェイススプラインによって接触することにより、係止機構9の開動作時および閉動作時に、アウトプットレバー17が係止機構9の周方向セグメント上を転動することによって回転するものであり、このとき、アウトプットレバー17はキャッチレバー19に連結されており、係止機構9の開動作時におけるアウトプットレバー17の回転により、キャッチレバー19がウェッジレバー13と接続ピース15との間のセルフロック接続を解除する。キャッチレバー19、アウトプットレバー17、およびウェッジレバー13は、すべて互いに同心で回転可能に支持され、かつそれらの軸受内で原理的には互いに独立して回転可能である。しかし、キャッチレバー19とウェッジレバー13は、開口ばね25を介して連結されている。ウェッジレバー13と接続ピース15との間のセルフロック接続を解除するために、キャッチレバー19が開口ばね25を十分に圧縮すると、開口ばね25は、ウェッジレバー13をセルフロック接続から開放位置に追いやろうとする。
図2において、開口ばね25は別個に描かれておらず、キャッチレバー19の円弧状ガイド27のみが示されており、この円弧状ガイド27の周りに、渦巻きばねとして形成されている開口ばね25が巻かれている。アウトプットレバー17とともに回転するカム21がキャッチレバー19の突起部23に当たり、その際、キャッチレバー19がともに回転すると、開口ばね25はキャッチレバー19によって圧縮される。キャッチレバー19が開口ばね25を押し縮めると、そのばね力でウェッジレバー13を押え付ける。キャッチレバー19を押え付ける閉口ばね29は、ドアロック1の閉鎖時に、キャッチレバー19がウェッジレバー13とともにセルフロック位置の方向に動くようにする。
【0025】
ドアロック1の開プロセスは、以下のように説明できる。係止機構9は爪として実施されており、閉要素7はシャックルとして実施されている。さらに、爪9の円弧状の周方向セグメントはフェイススプラインとして実施されており、爪9の開動作であっても閉動作であっても、回転可能に支持されているアウトプットレバー17の周方向セグメントを爪9の各動作に伴って回転させるようになっている。このために、アウトプットレバー17は、回転可能にドアロック1の中に支持されており、これにより、爪9のフェイススプラインによって駆動される形でアウトプットレバー17が回転する。回転ラッチ5を開放するために、爪9がドアロック1の閉状態から出て、回転ラッチ5から離れる開動作へと移動する場合、回転ラッチ5は、シャックル7に係合しなくなり、アウトプットレバー17は、爪9のフェイススプラインの動きにより、アウトプットレバー17に配置されたカム21がキャッチレバー19の突起部に突き当たるまで回転する。この場合、キャッチレバー19、アウトプットレバー17、ウェッジレバー13は、すべて同心に支持されており、同一の運動学的軸を中心に互いに独立して回転することができる。上述したように、アウトプットレバー17のカム21がキャッチレバー19の突起部に突き当たると、アウトプットレバー17の回転運動に案内される形で、キャッチレバー19もともに回転する。キャッチレバー19は、開口ばね25によってウェッジレバー13の上側に連結されているので、キャッチレバー19のこの回転運動により、ウェッジレバー13とキャッチレバー19との間で開口ばね25が圧縮され、このとき、開口ばね25の拡張力が、ウェッジレバー13のこの上側に作用し、次に、ウェッジレバー13の反対側、すなわち接続ピース15に接触するウェッジレバー13の側を、セルフロック位置から外へ、すなわち、接続ピース15の領域でウェッジレバー13のより小さい半径に生じるウェッジレバー13の回転角度まで押し出し、それにより、ウェッジレバー13と接続ピース15との間のセルフロック接続が解除される。このとき、開口ばね25が、遊びと形状変化を補正するので、ウェッジレバー13の摩耗形成とは無関係に、メカニズムの機能が損なわれることはない。摩擦がセルフロック接続に打ち勝つと、ウェッジレバー13がキャッチレバー19のストッパに当たるまで、開口ばね25は緩められる。その後、ウェッジレバー13と接続ピース15との間のセルフロック作用が完全に解除されると、ウェッジレバー13はもはや接続ピース15に影響を及ぼさなくなり、接続ピース15もそれ以上シャックル7を押え付けないので、シャックル7は構造に由来する遊びを伴って回転ラッチ5の中にあるが、爪9の開きが十分にある場合、この回転ラッチ5によってシャックル7がそれ以上係合されることもない。この最終位置において、ドアロック1は開いており、接続ピース15も回転ラッチ5もシャックル7に接触していないため、ドアはもはやドアロック1での形状結合の係合によってシャックル7で保持されず、開けることができる。
【0026】
ドアロック1の閉プロセス時に、爪9は、回転ラッチ5がシャックル7に係合した後、上述した動作とは逆の動作を実行するので、シャックル7は、係合している回転ラッチ5によって形状結合で保持される。このとき、回転ラッチ5は、爪9によって保持されており、シャックル7を係合することができなくなるようにはそれ以上回転することはできず、これにより、回転ラッチ5は、シャックル7の周りで係合する位置に固定される。しかし、爪9の閉動作では、アウトプットレバー17が爪9のフェイススプラインによって再び駆動され、上述したドアロック1の開動作とは逆の回転方向にのみ回転する。このとき、アウトプットレバー17のカム21は、キャッチレバー19の突起部23から離れるので、キャッチレバー19もまた、閉口ばね29の拡張力によって駆動される形で、カム21の動きに僅かに追従することができる。ウェッジレバー13と接続ピース15との間にセルフロック摩擦が生じるように、ウェッジレバー13が接続ピース15上を移動することは、上述の勾配(円周にわたって増加する半径)を持つウェッジレバー13の偏心状の表面形状によって可能になるが、この移動を確実なものにするため、閉口ばね29がキャッチレバー19の上側に配置されており、この閉口ばね29がキャッチレバー19を押し、ウェッジレバー13、特に接続ピース15に接触するその表面と、ドアロック1のその他の構成部品とにおいてすでに生じている摩耗の程度とは無関係に、ウェッジレバー13が常にセルフロック位置に押し込まれるようにする。
【0027】
特に、アウトプットレバー17と、それに加えて閉口ばね29と開口ばね25の作用様式により、ドアロック1の寿命が延びる。これは、摩耗とは無関係に両方のばねがその作用機構を確保しており、その動きによって、遊び、長さ、必要な角度等の変化を補正するからである。
【0028】
図3は、
図2のドアロック1を示しているが、特に機能、および係止機構9とアウトプットレバー17との間の相互作用を説明するために、意図的にウェッジレバー13が取り外されている。アウトプットレバー17は、係止機構9が動くと、
図3において係止機構9の上端にある周方向セグメント上を転動する。係止機構9の動きを分かりやすく説明するため、
図3では、この係止機構9の開動作が複数の位置で示されている。係止機構9のフェイススプラインは、その円周上でアウトプットレバー17を捕らえているので、ドアロック1のハウジング内に支持されているアウトプットレバー17は歯車のように回転する。
【0029】
図4は、
図2および
図3の断面の拡大図であり、特にアウトプットレバー17を含んでいる。アウトプットレバー17は、係止機構9の開動作または閉動作を介して回転し、係止機構9において上側に配置されている係止機構9のフェイススプラインが、少なくとも一定の角度範囲にわたって歯車の動きを再現することにより、アウトプットレバー17の円周を動き、それによって、アウトプットレバー17は係止機構9の周方向セグメント上を転動する。このとき、アウトプットレバー17の周方向側の領域に配置されているカム21は、アウトプットレバー17の回転角が十分な場合、キャッチレバー19の突起部23に当たる。カム21は、キャッチレバー19に固定されている突起部23を押す。これにより、キャッチレバー19も回転する。
【0030】
図5は、
図2から
図4によるドアロック1を備える車両3を示している。ここでは、閉要素7が車両3のボディに配置されている。これに対して、回転ラッチ5、係止機構9、ウェッジシステム11、アウトプットレバー17、およびキャッチレバー19は、すべて車両3のドアに配置されている。
【0031】
本発明を好ましい実施例によってさらに詳細に詳しく図示及び説明したが、本発明は開示された実施例に限定されるものではなく、そこから当業者は本発明の保護範囲から逸脱することなく他の変形形態を導き出すことができる。従って、多数の可能な変形形態が存在することは明らかである。同様に、例示的に挙げられた実施形態は、実際のところ単なる例に過ぎず、どのような形であっても例えば本発明の保護範囲、適用可能性、又は構成を限定するものとして理解すべきでないことは明らかである。むしろ、前述の説明及び図の説明により、当業者は例示的な実施形態を具体的に実施することができ、その際、当業者は、開示された発明の思想を知ることで、請求項及びその法的均等物、例えば明細書中の十分な説明によって定義される保護範囲から逸脱することなしに、例えば例示的な実施形態に挙げられた個々の要素の機能又は配置に関して様々な変更を行うことができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(3)用のドアロック(1)において、
-回転ラッチ(5)であって、前記ドアロック(1)の閉状態において、閉要素(7)の周りに係合、特に回転して係合することにより、前記閉要素(7)を形状結合で保持するための、前記回転ラッチ(5)と、
-係止機構(9)、特に爪であって、前記係止機構(9)の閉動作後、前記ドアロック(1)の閉状態において、前記閉要素(7)と前記回転ラッチ(5)との前記形状結合の解除に対して前記回転ラッチ(5)を係止するための、前記係止機構(9)と、
-ウェッジシステム(11)であって、ウェッジレバー(13)と接続ピース(15)とを備え、前記閉要素(7)と前記回転ラッチ(5)との間の相対運動を減少させるために、前記ウェッジレバー(13)と前記接続ピース(15)は、相対的に運動を実行することができ、そして前記ドアロック(1)の閉状態のためのセルフロック接触位置に至ることができる、前記ウェッジシステム(11)と、
を備え、
前記係止機構(9)は、円弧状の周方向セグメントを介して、回転可能に支持されたアウトプットレバー(17)の周囲と摩擦結合及び/又は形状結合で接触し、それにより前記係止機構(9)の開動作時および閉動作時に、前記アウトプットレバー(17)が前記係止機構(9)の前記周方向セグメント上を転動することによって回転するものであり、前記アウトプットレバー(17)はキャッチレバー(19)に連結されており、前記係止機構(9)の開動作時における前記アウトプットレバー(17)の回転により、前記キャッチレバー(19)が前記ウェッジレバー(13)と前記接続ピース(15)との間のセルフロック接続を解除することを特徴とする、前記ドアロック(1)。
【請求項2】
前記キャッチレバー(19)、前記アウトプットレバー(17)、および前記ウェッジレバー(13)は、互いに同心で回転可能に支持され、かつそれらの軸受で互いに独立して回転可能である、請求項1に記載のドアロック(1)。
【請求項3】
前記アウトプットレバー(17)は、前記アウトプットレバー(17)とともに回転するカム(21)を有しており、前記カム(21)は、前記係止機構(9)の開動作時に前記キャッチレバー(19)の突起部(23)に当たり、前記カム(21)が前記突起部(23)に当たった後、前記アウトプットレバー(17)が前記キャッチレバー(19)とともに回転する、請求項1または2に記載のドアロック(1)。
【請求項4】
前記キャッチレバー(19)と前記ウェッジレバー(13)とは開口ばね(25)を介して連結されており、前記開口ばね(25)は、前記ウェッジレバー(13)と前記接続ピース(15)との間のセルフロック接続を解除するために、前記ウェッジレバー(13)を前記セルフロック接続から開放位置に押し出し、その際、前記開口ばね(25)は前記キャッチレバー(19)によって、前記アウトプットレバー(17)から案内される形で、ばね力に対抗して圧力で荷重が加えられ、荷重が加えられた前記開口ばね(25)は、開放位置に向かって回転方向に前記ウェッジレバー(13)を押え付ける、請求項1
または2に記載のドアロック(1)。
【請求項5】
前記開口ばね(25)は、前記キャッチレバー(19)の円弧状ガイド(27)の周りに巻かれた渦巻きばねである、請求項4に記載のドアロック(1)。
【請求項6】
前記キャッチレバー(19)は、閉口ばね(29)に接続されており、前記閉口ばね(29)は、前記閉口ばね(29)が前記キャッチレバー(19)を前記ウェッジレバー(13)とともにセルフロック位置の方向に押し出すように配置され、プレテンションがかけられている、請求項1
または2に記載のドアロック(1)。
【請求項7】
前記接続ピース(15)は、前記閉要素(7)の領域にある、請求項1
または2に記載のドアロック(1)。
【請求項8】
前記接続ピース(15)は回転可能に支持されており、前記接続ピース(15)の第1の側面には、前記ウェッジレバー(13)と相互作用する表面が、セルフロックを形成するために配置されており、前記接続ピース(15)の第1の側面に対向する第2の側面は、前記ドアロック(1)の閉状態において、前記ウェッジレバー(13)の半径方向の力が前記接続ピース(15)を介して前記閉要素(7)に伝達されることによって、前記閉要素(7)を押え付ける、請求項1
または2に記載のドアロック(1)。
【請求項9】
前記係止機構(9)の前記円弧状の周方向セグメントはフェイススプラインを有している、請求項1
または2に記載のドアロック(1)。
【請求項10】
請求項1
または2に記載のドアロック(1)を備える車両(3)において、
前記閉要素(7)は前記車両(3)のボディに配置され、前記回転ラッチ(5)、前記係止機構(9)、前記ウェッジシステム(11)、前記アウトプットレバー(17)、および前記キャッチレバー(19)は前記車両(3)のドアに配置されている、前記車両(3)。
【国際調査報告】