IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】新規の三重特異的結合分子
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240618BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240618BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240618BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240618BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C07K16/46
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61K45/00
A61P1/00
A61P1/18
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577390
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2022066298
(87)【国際公開番号】W WO2022263507
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】21180033.9
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アダム,パウル
(72)【発明者】
【氏名】コミュー,スティーヴン・アール
(72)【発明者】
【氏名】ゴーマン,フィリップ・ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,パンカジ
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,プリヤンカー
(72)【発明者】
【氏名】ハイダー,カール-ハインツ
(72)【発明者】
【氏名】カストゥリランガン,シュリナス
(72)【発明者】
【氏名】コノピツキー,レナート
(72)【発明者】
【氏名】キューンケル,クラウス-ペーター
(72)【発明者】
【氏名】クマール,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】マーク,タネーシャ・アン-タナラ
(72)【発明者】
【氏名】オステルマン,エーリンボーグ・カトリン
(72)【発明者】
【氏名】シャーバン,アブドゥルサラム
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイスマン,デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルニッツニヒ,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,デヴィッド・エス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA88X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、新規の三重特異的結合分子に関する。本発明はまた、そのような結合分子をコードする核酸;そのような結合分子を調製するための方法;そのような結合分子を発現する、又は発現することが可能な宿主細胞;そのような結合分子を含む組成物;及び、特に癌疾患の分野における治療目的のための、そのような結合分子又はそのような組成物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)Kd≧1nMで栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位、
(b)カドヘリン-17(CDH17)に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位であって、CDH17に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、抗原結合部位(i)~(ii)からなる群より選択される抗原結合部位:
(i)配列番号32(CDR1)、配列番号33(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号35(CDR1)、配列番号36(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
及び
(ii)配列番号32(CDR1)、配列番号38(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号39(CDR1)、配列番号40(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位、及び
(c)分化クラスター3(CD3)に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位を含む結合分子。
【請求項2】
TROP2に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、抗原結合部位(i)~(vi):
(i)配列番号1(CDR1)、配列番号2(CDR2)、及び配列番号3(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号4(CDR1)、配列番号5(CDR2)、及び配列番号6(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号7(CDR1)、配列番号8(CDR2)、及び配列番号9(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号10(CDR1)、配列番号11(CDR2)、及び配列番号12(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号13(CDR1)、配列番号14(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号16(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号13(CDR1)、配列番号19(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号20(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(v)配列番号21(CDR1)、配列番号22(CDR2)、及び配列番号23(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号24(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号26(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
及び
(vi)配列番号27(CDR1)、配列番号28(CDR2)、及び配列番号29(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号30(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号31(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位からなる群より選択される、請求項1に記載の結合分子。
【請求項3】
TROP2に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、抗原結合部位(i)~(xii):
(i)配列番号83のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号84のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号85のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号86のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号87のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号88のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号89のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号90のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号91のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号92のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号93のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(x)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号99のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
又は
(xii)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位からなる群より選択される、請求項1又は2のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項4】
CDH17に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、抗原結合部位(i)~(ii):
(i)配列番号100のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号101のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
ならびに
(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号103のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項5】
CD3に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、抗原結合部位(i)~(xxxi):
(i)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号46(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号49(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号50(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(v)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号49(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号53(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号55(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号56(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(x)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号41(CDR1)、配列番号58(CDR2)、及び配列番号59(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号60(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号61(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xiii)配列番号41(CDR1)、配列番号62(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xiv)配列番号41(CDR1)、配列番号63(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号56(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xv)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号61(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xvi)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xvii)配列番号82(CDR1)、配列番号64(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xviii)配列番号82(CDR1)、配列番号69(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xix)配列番号82(CDR1)、配列番号72(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xx)配列番号82(CDR1)、配列番号73(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxi)配列番号82(CDR1)、配列番号74(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxii)配列番号82(CDR1)、配列番号73(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxiii)配列番号82(CDR1)、配列番号75(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxiv)配列番号82(CDR1)、配列番号69(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxv)配列番号82(CDR1)、配列番号76(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxvi)配列番号82(CDR1)、配列番号77(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxvii)配列番号82(CDR1)、配列番号78(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxviii)配列番号82(CDR1)、配列番号79(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号80(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxix)配列番号82(CDR1)、配列番号81(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxx)配列番号82(CDR1)、配列番号79(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号80(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
及び
(xxxi)配列番号82(CDR1)、配列番号81(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項6】
CD3に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、抗原結合部位(i)~(xvi):
(i)配列番号104のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号114、配列番号115、配列番号:116、配列番号117、配列番号120、配列番号121、配列番号123、及び配列番号129からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号110のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号111のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号112のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号113のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号118のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号119及び配列番号122からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号124のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号125、配列番号126、及び配列番号127からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号128及び配列番号130からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号127のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号131のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号132のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号133のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号134及び配列番号135からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号136のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号137のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号138及び配列番号156からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号139のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(x)配列番号140、配列番号142、配列番号143、及び配列番号161からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号141のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号144及び配列番号146からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号145のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xii)配列番号147、配列番号151、配列番号153、及び配列番号162からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号148のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xiii)配列番号149及び配列番号152からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号150のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xiv)配列番号154のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号155のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xv)配列番号157のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号158のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;及び
(xvi)配列番号159のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号160のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項7】
前記結合分子が、修飾された免疫グロブリン(Ig)分子、好ましくは修飾されたIgG分子であり、TROP2に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位及びCDH17に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、前記Ig分子の可変領域中に存在し、CD3に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位が、前記TROP2-CDH17特異的Ig分子に融合されたscFvである、請求項1~6のいずれか一項に記載の結合分子。
【請求項8】
前記scFvが、前記Ig分子の重鎖のC末端、好ましくはCDH17に特異的に結合する前記少なくとも1つの抗原結合部位を含む前記Ig分子の一部の重鎖に融合されている、請求項7に記載の結合分子。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の結合分子であって、前記結合分子が:
(a)
(a-i)~(a-xii):
(a-i)配列番号169のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号170のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ii)配列番号171のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号172のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iii)配列番号173のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号174のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iv)配列番号175のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号176のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-v)配列番号177のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号178のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vi)配列番号179のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号180のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vii)配列番号181のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号182のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-viii)配列番号183のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号184のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ix)配列番号185のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号186のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-x)配列番号187のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号188のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-xi)配列番号189のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号190のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(a-xii)配列番号191のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号192のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖より選択され、好ましくはペプチドリンカーにより一緒に連結された、第1の免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖の組み合わせ;
及び
(b)
(b-i)~(b-xii):
(b-i)配列番号196のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号197のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(b-ii)配列番号198のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖及び配列番号199のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖より選択され、好ましくはペプチドリンカーにより一緒に連結された、第2の免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の組み合わせ;
及び
(c)配列番号222~264からなる群より選択されたアミノ酸配列を含む、好ましくは、前記第2の免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の組み合わせの免疫グロブリン重鎖のC末端に連結された、単鎖可変フラグメント(scFv)を含む結合分子。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の結合分子であって、前記結合分子が:
(a-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(b-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(c-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(d-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(e-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(f-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(g-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(h-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(i-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(j-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;又は
(k)配列番号436のアミノ酸配列及び配列番号437のアミノ酸配列を含む又はそれからなる結合分子。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子をコードする核酸分子、又はその一部。
【請求項12】
請求項11に記載の1つ又は複数の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子を産生する方法であって、前記方法が、工程:
(a)請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子の発現を可能にする条件下で、請求項11に記載の宿主細胞を培養すること;
(b)場合により、前記分子を回収すること;ならびに、場合により、
(c)前記結合分子をさらに精製及び/又は修飾及び/又は製剤化することを含む方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載の1つ又は複数の結合分子、及び場合により、医薬的に許容可能な担体を含む又はそれらからなる医薬組成物。
【請求項16】
医学における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子、又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
癌を処置、寛解、又は予防する方法における使用のための、請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子、又は請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子、又は請求項15に記載の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、癌を処置、予防、又は寛解する方法。
【請求項19】
癌を処置、予防、又は寛解するための医薬組成物を調製するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の結合分子の使用。
【請求項20】
前記癌が結腸直腸癌(CRC)、胃癌(GC)、もしくは膵臓癌(PAC)である、請求項17に記載の使用のための結合分子もしくは医薬組成物、請求項18に記載の方法、又は請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記結合分子が、免疫チェックポイント阻害剤、好ましくは抗PD-1抗体もしくは抗PD-1-L1抗体との組み合わせにおいて使用される、請求項17に記載の使用のための結合分子もしくは医薬組成物、請求項18に記載の方法、又は請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の三重特異的結合分子に関する。本発明はまた、そのような結合分子をコードする核酸;そのような結合分子を調製するための方法;そのような結合分子を発現する、又は発現することが可能な宿主細胞;そのような結合分子を含む組成物;及び、特に癌疾患の分野における治療目的のための、そのような結合分子又はそのような組成物の使用に関する。
【0002】
発明の背景
癌は、一般に、異常な細胞増殖及び癌性細胞が身体全体に侵入する又は広がる潜在力に基づいた疾患の群である。それは深刻な疾患であり、世界的に主要な死亡の原因となっている。
【0003】
処置の種々の方法が、癌を管理する、一部の場合では処置する試みにおいて、手術、化学療法、放射線治療、及びホルモン治療を含めて、使用されてきた。また、抗体は、癌の処置のための強力な治療薬剤となる潜在力を提供する。抗体は、細胞の表面上の特定のタンパク質、それらの標的抗原を認識して、結合するように設計されている。この結合は、例えば、標的抗原を発現する細胞型、標的抗原タンパク質の機能、又は抗体自体の構造に依存して、多数の異なる生物学的応答を誘発し得る。
【0004】
一部の抗体は、例えば、癌細胞に直接的に結合し、例えば、細胞経路に干渉することにより、これらの細胞の細胞分裂を停止又は低下させ、それにより、異常な細胞増殖を遅延又は防止することができる。あるいは、そのような癌細胞標的化抗体はまた、薬物や放射性粒子を付着させることができ、それにより、これらの治療薬を癌細胞に送達し、細胞の固有経路とは独立して作用する。これらの癌細胞標的化方法とは異なるアプローチは、免疫系を誘導して癌細胞を攻撃して殺傷することができる抗体に基づいている。これは、免疫細胞、例えば細胞傷害性T細胞などを癌細胞に方向転換することにより、又は免疫系自体の活性に直接的に影響を及ぼすことにより達成することができる。
【0005】
癌細胞標的化アプローチならびに免疫細胞方向転換アプローチの両方が、癌の処置のための強力な作用機序(MoA)を提供するが、それらは、しばしば、癌細胞特異的マーカー、即ち、非癌細胞により発現されない、又はほとんど発現されない標的タンパク質の発現に頼っている。そのような腫瘍特異的標的タンパク質は稀であり、この不足は依然として、癌特異的な治療法の開発において典型的に直面する主要な欠点のままである。
【0006】
免疫細胞を、より広範囲に発現する系統抗原に方向転換する試みがなされてきた一方で、これらの治療法の価値は、特定の正常組織におけるこれらの抗原の発現、例えば、胃腸管におけるEpcamの発現などにより起こされる毒性により限定されてきた(Kebenko et al., Oncoimmunology 2018, Vol. 7, No. 8)。部位外抗原発現に関連する毒性を低下させるための種々のアプローチが現在追求されている一方で、毒性が、多くの化合物について依然として用量制限となっている。
【0007】
このように、近年中に特定の癌の処置における進歩があり、多数の異なるアプローチが現在追求されているとの事実にもかかわらず、癌の処置のための新規の治療的に適切な化合物を提供する必要性が依然としてある。このように、種々の癌疾患の処置において使用することができる、そのような薬理学的に活性な薬剤を提供することが、本発明の目的である。
【0008】
特に、現在使用されている及び/又は当技術分野において公知である薬剤、組成物、及び/又は方法と比較して特定の利点を提供する、そのような薬理学的に活性な薬剤、組成物、及び/又は処置の方法を提供することが、本発明の目的である。これらの利点は、特に当技術分野において既に公知の候補薬物と比較した場合の、インビボでの有効性、改善された治療特性及び薬理学的特性、より少ない副作用、ならびに他の有利な特性、例えば調製の改善された容易さ又は製品の低下したコストなどを含む。
【0009】
この必要性は、本明細書中で提供される実施形態により対処される。
【0010】
発明の簡単な概要
本発明は、単一の結合分子内で3つの抗原結合部位、すなわち、栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)に特異的に結合する第1の抗原結合部位、カドヘリン17(CDH17)に特異的に結合する第2の抗原結合部位、及び分化クラスター3(CD3)に特異的に結合する第三の抗原結合部位を組み合わせるという概念に基づいている。以下でより詳細に考察するように、本発明の分子の1つの利点は、標的細胞に対して優れた特異性を提供する、それらの低親和性、高結合力設計である。
【0011】
それ故に、本発明の第1の態様は、以下を含む結合分子を提供する:(a)Kd≧1nMで栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位、(b)カドヘリン-17(CDH17)に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位、それにおいて、CDH17に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(ii)からなる群より選択される:(i)配列番号32(CDR1)、配列番号33(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号35(CDR1)、配列番号36(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;(ii)配列番号32(CDR1)、配列番号38(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号39(CDR1)、配列番号40(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む抗原結合部位、及び(c)分化クラスター3(CD3)に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位。
【0012】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、TROP2に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(vi)からなる群より選択される:
(i)配列番号1(CDR1)、配列番号2(CDR2)、及び配列番号3(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号4(CDR1)、配列番号5(CDR2)、及び配列番号6(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号7(CDR1)、配列番号8(CDR2)、及び配列番号9(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号10(CDR1)、配列番号11(CDR2)、及び配列番号12(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号13(CDR1)、配列番号14(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号16(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号13(CDR1)、配列番号19(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号20(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(v)配列番号21(CDR1)、配列番号22(CDR2)、及び配列番号23(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号24(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号26(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
及び
(vi)配列番号27(CDR1)、配列番号28(CDR2)、及び配列番号29(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号30(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号31(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位。
【0013】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、TROP2に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(xii)からなる群より選択される:
(i)配列番号83のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号84のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号85のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号86のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号87のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号88のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号89のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号90のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号91のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号92のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号93のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(x)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号99のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
又は
(xii)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位。
【0014】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、CDH17に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(ii)からなる群より選択される:
(i)配列番号100のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号101のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
及び
(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号103のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位。
【0015】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(xxxi)からなる群より選択される:
(i)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号46(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号49(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号50(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(v)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号49(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号53(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号55(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号56(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(x)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号41(CDR1)、配列番号58(CDR2)、及び配列番号59(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号60(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号61(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xiii)配列番号41(CDR1)、配列番号62(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xiv)配列番号41(CDR1)、配列番号63(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号56(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xv)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号61(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xvi)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xvii)配列番号82(CDR1)、配列番号64(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xviii)配列番号82(CDR1)、配列番号69(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xix)配列番号82(CDR1)、配列番号72(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xx)配列番号82(CDR1)、配列番号73(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxi)配列番号82(CDR1)、配列番号74(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxii)配列番号82(CDR1)、配列番号73(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxiii)配列番号82(CDR1)、配列番号75(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxiv)配列番号82(CDR1)、配列番号69(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxv)配列番号82(CDR1)、配列番号76(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxvi)配列番号82(CDR1)、配列番号77(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxvii)配列番号82(CDR1)、配列番号78(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxviii)配列番号82(CDR1)、配列番号79(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号80(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxix)配列番号82(CDR1)、配列番号81(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxx)配列番号82(CDR1)、配列番号79(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号80(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
及び
(xxxi)配列番号82(CDR1)、配列番号81(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位。
【0016】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(xvi)からなる群より選択される:
(i)配列番号104のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号114、配列番号115、配列番号:116、配列番号117、配列番号120、配列番号121、配列番号123、及び配列番号129からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号110のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号111のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号112のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号113のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号118のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号119及び配列番号122からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号124のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号125、配列番号126、及び配列番号127からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号128及び配列番号130からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号127のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号131のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号132のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号133のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号134及び配列番号135からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号136のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号137のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号138及び配列番号156からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号139のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(x)配列番号140、配列番号142、配列番号143、及び配列番号161からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号141のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号144及び配列番号146からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号145のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xii)配列番号147、配列番号151、配列番号153、及び配列番号162からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号148のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xiii)配列番号149及び配列番号152からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号150のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xiv)配列番号154のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号155のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xv)配列番号157のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号158のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;及び
(xvi)配列番号159のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号160のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位。
【0017】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、結合分子は修飾免疫グロブリン(Ig)分子、好ましくは修飾IgG分子であり、それにおいて、TROP2に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位及びCDH17に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位は、当該Ig分子の可変領域中に存在し、それにおいて、CD3に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位は、当該TROP2-CDH17特異的Ig分子に融合されたscFvである。
【0018】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、scFvは、Ig分子の重鎖のC末端に、好ましくは、CDH17に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位を含むIg分子の一部の重鎖に融合される。
【0019】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、結合分子は:(a)(a-i)~(a-xii)より選択され、好ましくはペプチドリンカーにより一緒に連結された、第1の免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖の組み合わせを含む:
(a-i)配列番号169のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号170のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ii)配列番号171のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号172のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iii)配列番号173のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号174のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iv)配列番号175のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号176のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-v)配列番号177のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号178のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vi)配列番号179のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号180のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vii)配列番号181のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号182のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-viii)配列番号183のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号184のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ix)配列番号185のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号186のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-x)配列番号187のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号188のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-xi)配列番号189のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号190のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(a-xii)配列番号191のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号192のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
ならびに(b)(b-i)~(b-ii)より選択され、好ましくはペプチドリンカーにより一緒に連結された、第2の免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の組み合わせ:
(b-i)配列番号196のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号197のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(b-ii)配列番号198のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖及び配列番号199のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖;
(c)配列番号222~264からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、好ましくは当該第2の免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の組み合わせの免疫グロブリン重鎖のC末端に連結された単鎖可変フラグメント(scFv)。
【0020】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、結合分子は、以下を含む又はそれらからなる:
(a-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(b-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(c-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(d-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(e-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(f-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(g-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(h-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(i-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-viii)配列番213のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(j-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;又は
(k)配列番号436のアミノ酸配列及び配列番号437のアミノ酸配列。
【0021】
本発明のさらなる態様は、以下を含む又はそれらからなる結合分子を提供する:
(a-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(b-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(c-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(d-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(e-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(f-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;;
(g-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(h-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(i-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(j-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;又は
(k)配列番号436のアミノ酸配列及び配列番号437のアミノ酸配列。
【0022】
本発明はさらに、本発明の結合分子をコードする核酸分子、又はその一部に関する。本発明はさらに、本発明の1つ又は複数の核酸分子を含む発現ベクターに関する。本発明はさらに、本発明の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞に関する。
【0023】
本発明はさらに、本発明の結合分子を産生する方法に関し、方法は、以下の工程を含む:
(a)請求項1~11のいずれか一項に記載の結合分子の発現を可能にする条件下で、請求項12に記載の宿主細胞を培養すること;
(b)場合により当該分子を回収すること;ならびに、場合により
(c)当該結合分子をさらに精製及び/又は修飾及び/又は製剤化すること。
【0024】
本発明はさらに、本発明の1つ又は複数の結合分子及び場合により医薬的に許容可能な担体を含む又はそれらからなる医薬組成物に関する。
【0025】
本発明はさらに、医学における使用のための本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物に関する。本発明はさらに、癌を処置、寛解、又は予防する方法における使用のための、本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物に関する。
【0026】
本発明はさらに、本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、癌を処置、予防、又は寛解する方法に関する。
【0027】
本発明はさらに、癌を処置、予防、又は寛解するための医薬組成物を調製するための本発明の結合分子の使用に関する。
【0028】
本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物、又は本発明の方法、又は本発明の使用の好ましい実施形態では、癌は結腸直腸癌(CRC)、胃癌(GC)又は膵臓癌(PAC)である。
【0029】
本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物、又は本発明の方法、又は本発明の使用の好ましい実施形態では、結合分子は、免疫チェックポイント阻害剤、好ましくは抗PD-1抗体又は抗PD-1-L1抗体との組み合わせにおいて使用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】GI癌組織での、しかし、正常組織ではない、CDH17及びTrop2の共発現。腫瘍及び重要な正常組織における遺伝子発現。スケールは、MAS5標準化発現値のlog2変換された任意の単位である。軸ラベルは遺伝子シンボル(TACSTD2.202286_s_at=Trop2、CDH17.209847_at=CDH17)及びAffymetrixプローブセットである。
図2】GI腫瘍における標的発現の確認。選択されたヒト癌組織でのTrop2(ENZ-ABS380、Enzo)及びCDH17(760-4865、Roche Ventana)に結合する抗体を使用した免疫組織化学。
図3】本発明の例示的な三重特異的結合分子の概略図。
図4】結合能を伴うCDH17結合剤の選択。フローサイトメトリーによりテストされた、ヒトCDH17を組換え発現するHEK293細胞株への、示された4つの異なるCDH17結合タンパク質(二価及び一価フォーマットのいずれか)の結合。抗TNP結合アームは、テトラニトロフェノールに対して向けられた無関係な(非結合)コントロールである。
図5】三重特異的フォーマットにおけるCDH17結合剤の結合能の確認。CDH17だけを発現する(左パネル)又はTrop2/CDH17を共発現する(右パネル)のいずれかのHEK293細胞の存在における、異なるCDH17抗原結合部位を伴うTrop2/CDH17/CD3分子により媒介されるCD8+T細胞上でのT細胞活性化マーカーCD69の上方調節。
図6】結合能を伴うTrop2結合剤の選択。フローサイトメトリーによりテストされた、ヒトTrop2を組換え発現するHEK293細胞株への、示された7つの異なるTrop2結合剤(二価又は一価フォーマットのいずれか)の結合。抗TNP結合アームは、テトラニトロフェノールに対して向けられた無関係な(非結合)コントロールである。
図7】三重特異的フォーマットでのTrop2結合剤の結合能の確認。CDH17だけ(C)、Trop2だけ(B)を発現する、又はTrop2/CDH17(A)を共発現するHEK293細胞の存在において、異なるCDH17抗原結合部位を伴うTrop2/CDH17/CD3分子により媒介されるCD8+T細胞上でのT細胞活性化マーカーCD69の上方調節。
図8】細胞結合アッセイにおける種々の三重特異的Trop2/CDH17/CD3結合剤の組み合わせの結合能の分析。フローサイトメトリーによりテストされた、ヒトTrop2を組換え発現する(A)又はヒトTrop2及びCDH17を共発現するHEK293細胞株(B)への三重特異的フォーマットにおけるTrop2及びCDH17結合剤の異なる組み合わせの結合。抗TNP結合アームは、テトラニトロフェノールに対して向けられた無関係な(非結合)コントロールである。
図9】CDH17、Trop2のいずれかを発現する、又は両方を共発現する細胞におけるT細胞誘導性溶解を媒介する際での潜在力。CDH17(左)、Trop2(中央)、又は両方(右)のいずれかを組換え発現するHEK293細胞の方向転換されたT細胞媒介性溶解(A)を、種々のTrop2/CDH17/CD3結合剤(Aにおいて示されているのは、1つの例示的なTrop2/CDH17/CD3結合剤である)ならびに1つの標的だけに一価又は二価のいずれかで結合する種々のコントロール分子を使用して評価した。Trop2だけ(左)又はCDH17及びTrop2の両方(右)のいずれかを発現するDLD-1由来細胞株(B)の方向転換されたT細胞媒介溶解を、異なるTrop2/CDH17/CD3結合剤の組み合わせ、ならびに一価のTrop2結合コントロールを使用して評価した。
図10】結合力誘導性の効力増加に対するCDH17結合の寄与の確認。SK-CO1細胞の方向転換されたT細胞媒介性溶解を、異なるTrop2/CDH17/CD3分子ならびにTrop2/TNP/CD3コントロール分子を使用して評価した。
図11】ノブ・イン・ホールフォーマットの比較。SK-CO1細胞の方向転換されたT細胞媒介性溶解を、2つの異なるノブ・イン・ホールフォーマットにおいて三重特異的分子を使用して評価した。レジェンドにおける括弧中の参照「ホール」又は「ノブ」は、CDH17/CD3アームの位置を示し、即ち、「ホール」は、CDH17/CD3がホールアーム上にあることを示す一方で(配列番号271、272、及び424~427を参照のこと)、「ノブ」は、CDH17/CD3がノブアーム上にあることを示す(配列番号428~433を参照のこと)。
図12】インビボでの腫瘍成長阻害の確認。ヒト化マウスモデルにおけるHPAF-II由来異種移植片腫瘍の成長に対する、異なるTrop2/CDH17/CD3結合剤ならびに一価コントロール結合剤の効果。
【0031】
発明の詳細な説明
本明細書では、特許出願及び製造業者のマニュアルを含む多数の文書が引用される。これらの文書の開示は、本発明の特許性について関連するとは考えられない一方で、その全体において参照により本明細書に組み入れられる。より具体的には、全ての参照文書は、各々の個々の文書が、参照により組み入れられることが具体的に及び個々に示されているのと同じ範囲まで、参照により組み入れられる。
【0032】
定義
本発明の上に要約された態様、ならびに本発明の他の態様及び実施形態は、本明細書中のさらなる説明から明らかになるであろうが、それにおいて:
a)他に示されない又は定義されない限り、使用される全ての用語は、当技術分野におけるそれらの通常の意味を有し、それは当業者には明らかであろう。矛盾の場合では、定義を含む特許明細書が優先される。
参照が、標準的なハンドブック、例えば、Sambrook et al, “Molecular Cloning:A Laboratory Manual”(2nd Ed.), VoIs. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Lewin, “Genes IV”, Oxford University Press, New York,(1990)、及びRoitt et al., “Immunology”(2nd Ed.), Gower Medical Publishing, London, New York(1989)など、ならびに本明細書中で引用される一般的な背景技術になされる。さらに、他に示されない限り、具体的に詳細に記載されていない全ての方法、工程、技術、及び操作が、当業者には明らかであるように、それ自体公知の様式において実施することができ、実施されてきた。参照が、例えば、再び標準的なハンドブック、上で参照した一般的な背景技術、及びそこで引用されるさらなる参考文献になされる。
b)他に示されない又は定義されない限り、用語「抗体」は、当技術分野における定義に従って使用される。抗体は、典型的には、免疫グロブリン(Igと省略される)、好ましくはガンマグロブリンタンパク質(IgG;さらに下記も参照のこと)である。天然抗体は、脊椎動物の血液又は他の体液中に見出すことができ、そこでそれらは、外来物、例えば細菌及びウイルスなどを同定して中和するために免疫系により使用され、この機能は、抗原として公知の他の分子又は構造との共有結合的な相互作用により結合するそれらの能力により媒介される。この結合は、抗体が、高い親和性を伴って特定の構造にだけ結合するという意味において特異的である。抗体により認識される抗原の固有の部分は、エピトープ、又は抗原決定基と呼ばれる。
天然抗体(例、古典的なY形状免疫グロブリン分子を含む)は、典型的には、基本的な構造単位で構成されている:各々が、2つの大きな重鎖及び2つの小さな軽鎖-又はラクダ科種もしくは軟骨魚のように2つの重鎖だけ(即ち、それぞれVHフラグメント及びVNARフラグメント)を伴い-それらは、例えば、1つの単位を伴う単量体、2つの単位を伴う二量体、又は5つの単位を伴う五量体を形成する。各々の重鎖は、N末端に可変ドメイン(VH)を有し、その後に3つ又は4つ(IgEの場合)の定常ドメイン(CH1、CH2、CH3、及びCH4)、ならびにCH1とCH2の間でのヒンジ領域が続く。各々の軽鎖は、2つのドメイン、N末端可変ドメイン(VL)及びC末端定常ドメイン(CL)を有する。エピトープへの結合を媒介する抗体の部分は、時折、パラトープと呼ばれ、抗体の可変ドメイン、又は可変領域(Fv)中に存在する。可変ドメインは、フレームワーク領域(FR)により間隔をあけられた3つのいわゆる相補性決定領域(CDR)を含む。フレームワーク領域は、ベータシート立体構造をとり、CDRは、ベータシート構造を接続するループを形成し得る。各々の鎖中のCDRは、フレームワーク領域により三次元構造中に保持され、典型的には、他の鎖(存在する場合)からのCDR と一緒に、抗原への結合を媒介する。本出願内で使用される用語「定常ドメイン」又は「定常領域」は、可変領域以外の抗体のドメインの要約を表示する。そのような定常ドメイン及び領域は、最先端技術において周知であり、例えば、Kabatら(“Sequence of proteins of immunological interest”, US Public Health Services, NIH Bethesda, MD, Publication No. 91)により記載されている。
抗体の「Fc部分」は、抗体と抗原の結合において直接的に含まれず、しかし、種々のエフェクター機能を示す。「抗体のFc部分」は、当業者に周知の用語であり、抗体のパパイン切断に基づいて定義される。重鎖の定常領域のアミノ酸配列に依存して、抗体又は免疫グロブリンは、クラスにおいて分割される:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM。重鎖定常領域に従って、免疫グロブリンの異なるクラスは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。これらのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4、IgA1、及びIgA2中に分割され得る。抗体のFc部分は、補体活性化、C1q結合、及びFc受容体結合に基づいて、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性)及びCDC(補体依存性細胞傷害性)において直接的に含まれる。補体活性化(CDC)は、大半のIgG抗体サブクラスのFc部分への補体因子C1qの結合により開始される。補体系に対する抗体の影響が、特定の条件に依存的であるのに対し、C1qへの結合は、Fc部分中の定義された結合部位により起こされる。そのような結合部位は最先端技術において公知であり、例えば、Kellner et al. Transfus Med Hemother. 44(5)(2017)327-336により記載されている。そのような結合部位の非限定的な例は、例えば、L234、L235、D270、N297、E318、K320、K322、P331、及びP329(KabatのEUインデックスに基づく番号付け)である。IgG1におけるC1q及びFcガンマ受容体の結合を媒介する際にこれらの残基の間で最も決定的なのは、L234及びL235である(Hezareh et al., J. Virology 75(2001)12161- 12168)。サブクラスIgG1及びIgG3の抗体は通常、補体活性化ならびにC1q及びC3結合を示すのに対し、IgG2及びIgG4は補体系を活性化せず、C1q及びC3に結合しない。
【0033】
用語「抗体」は、本明細書中で使用されるように、また、Fab、Fab’、又はF(ab’)2フラグメントなどの、抗原結合特性を保持する免疫グロブリンのフラグメントを含む。そのようなフラグメントは、免疫グロブリンの断片化により、例えば、タンパク質分解消化により、又はそのようなフラグメントの組換え発現により得てもよい。例えば、免疫グロブリン消化は、ルーチン的な技術を用いて、例えば、パパイン又はペプシンを使用して達成することができる(WO94/29348)。抗体のパパイン消化によって、典型的には、2つの同一の抗原結合フラグメント、いわゆるFabフラグメントが産生され、各々が、単一の抗原結合部位、及び残りのFcフラグメントを伴う。ペプシン処理によって、F(ab’)2がもたらされる。Fab分子中では、可変ドメインは、各々が、好ましくはヒト由来の免疫グロブリン定常ドメインに融合されている。このように、重鎖可変ドメインはCH1ドメイン(いわゆるFdフラグメント)に融合され得るが、軽鎖可変ドメインはCLドメインに融合され得る。そのような分子は、当技術分野において公知の方法を使用して、宿主細胞中でのそれぞれの核酸の組換え発現により産生され得る。
【0034】
天然抗体を修飾するための、ならびに免疫グロブリンの可変ドメイン、又はそのような可変ドメインから由来する分子を、異なる分子状況に配置するための多くのアプローチが、当技術分野において記載されており、例えば、Holliger, P., Hudson, P. Nat Biotechnol 23, 1126-1136(2005)又はNilvebrant, J. et al. Current pharmaceutical design vol. 22,43(2016):6527-6537を参照のこと。典型的には、これらの修飾の目的は、抗体を、医学及び技術においてさらにより多用途なツールにすることである。これらのアプローチは、本明細書中では「抗体誘導体」又は「修飾免疫グロブリン」としても言及される、構造的に修飾された分子に導き、それらは、しばしば、天然抗体の基本構成(即ち、2つの大きな重鎖及び2つの小さな軽鎖で構成される抗体、又はラクダ科種又は軟骨魚のように2つの重鎖だけ)とは異なる。しばしば、これらの分子は、天然抗体と比較して、サイズがより小さく、単一のアミノ酸鎖又はいくつかのアミノ酸鎖を含み得る。例えば、単鎖可変フラグメント(scFv)は、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の可変領域の融合物であり、短いリンカー、通常はセリン(S)又はグリシン(G)で一緒に連結されている(例、WO88/01649;WO91/17271を参照のこと)。「単一ドメイン抗体」又は「ナノボディ(登録商標)」は、単一のIg様ドメイン中に抗原結合部位を持つ(例、WO94/04678;WO03/050531を参照のこと)。同じ又は異なる抗原についての結合特異性を伴う単一ドメイン抗体を、一緒に連結してもよい。ダイアボディは、2つの可変ドメインを含む2つのアミノ酸鎖からなる二価抗体分子である(WO94/13804)。抗体様分子の他の例は、免疫グロブリンスーパーファミリー抗体(IgSF;Srinivasan and Roeske, Current Protein Pept. Sci. 2005, 6(2):185-96)である。異なる概念は、いわゆる小型モジュラー免疫医薬品(SMIP)に導き、それは、定常ドメインCH1を欠く単鎖ヒンジ及びエフェクタードメインに連結されたFvドメインを含む(WO02/056910)。しかし、一部の場合では、修飾はまた、古典的なIgフォーマットが、例えば、scFvsなどの形態において、追加の抗原結合部位と組み合わされる場合、天然抗体よりも大きな分子に導き得る。全てのそのような抗体誘導体又は修飾された免疫グロブリンがまた、本明細書中で使用される、より一般的な用語「抗体」により包含される。
【0035】
ヒトにおける適用については、しばしば、マウスなど他の種から本来由来する抗体の免疫原性を低下させることが望ましいため、キメラ抗体の構築、又はいわゆる抗体の「ヒト化」などの修飾アプローチが開発されてきた。この文脈において、「キメラ抗体」は、異なる種(例、ヒト)から由来する配列部分(例、定常ドメイン)に融合された、1つの種(例、マウス)から由来する配列部分(例、可変ドメイン)を含む抗体であると理解される。「ヒト化抗体」は、非ヒト種から本来由来する可変ドメインを含む抗体であり、それにおいて、特定のアミノ酸が変異して、その可変ドメインの全体的な配列が、ヒト可変ドメインの配列のアミノ酸により近く似るようになっている。抗体のキメラ化及びヒト化の方法は、当技術分野において周知である(Billetta R, Lobuglio AF. “Chimeric antibodies”. Int Rev Immunol. 1993;10(2-3):165-76;Riechmann L, Clark M, Waldmann H, Winter G(1988). “Reshaping human antibodies for therapy”. Nature:332:323)。用語「ヒト抗体」は、本明細書中で使用されるように、例えば、ファージディスプレイ又はトランスジェニック動物の使用により、ヒトゲノムから由来する配列に基づいて作製された抗体に関する(例、WO90/05144を参照のこと)。用語「抗体」は、本明細書中で使用されるように、そのようなヒト化抗体、キメラ抗体、ならびにヒト抗体を明示的に含む。
【0036】
抗体はさらに、抗体の特性に対して所望の影響を有する他の分子実体に融合(融合タンパク質として)されている、又は他の方法で(共有結合又は非共有結合により)連結され得る。例えば、抗体の薬物動態学的特性、例えば体液、例えば血液など中で、特に単鎖抗体又はドメイン抗体の場合での安定性を改善することが望ましいであろう。この点に関して、特に、循環中のそのような抗体の半減期を延長するための多数の技術、例えばペグ化(WO98/25971;WO98/48837;WO2004081026)、融合又は他の方法で、抗体を、アルブミンのような血清タンパク質に親和性を有する別の抗体に共有結合的に付着させる(WO2004041865;WO2004003019)、あるいはアルブミン又はトランスフェリンのような血清タンパク質の全部又は一部との融合タンパク質としての抗体の発現(WO01/79258)などが開発されている。抗体の設計におけるリードの同定及びリードの最適化のための手段及び方法は、当技術分野において周知であり、例えば、Goulet, D.R. and Atkins, W.M. J Pharm Sci 2020;109(1):74-103又はTiller, K. E., & Tessier, P. M.(2015). Annual review of biomedical engineering, 17, 191-216において概説されてきた。
c)「抗体模倣物」がまた開発されており、それは、典型的には、免疫グロブリン可変ドメインと離れた構造的関係だけを有する、又はそのような関係を全く有さないが、しかし、免疫グロブリン可変ドメインと同等の特定の結合特異性及び親和性を示す。そのような非免疫グロブリン「抗体模倣体」は、時折「足場タンパク質」と呼ばれ、例えば、プロテインA、リポカリン、フィブロネクチンドメイン、アンキリンコンセンサスリピートドメイン、及びチオレドキシンの遺伝子に基づき得る(Skerra, Current Opinion in Biotechnology 2007, 18(4):295-304)。
d)本明細書中で使用される用語「免疫グロブリン可変ドメイン」は、4つの「フレームワーク領域」から本質的になる免疫グロブリンドメインを意味し、それらは、当技術分野において及び本明細書中で以下「フレームワーク領域1」又は「FR1」として;「フレームワーク領域2」又は「FR2」として;「フレームワーク領域3」又は「FR3」として;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」としてそれぞれ言及され;それらのフレームワーク領域が、3つの「相補性決定領域」又は「CDR」により中断されており、それらは、当技術分野において及び本明細書中で以下「相補性決定領域1」又は「CDR1」;「相補性決定領域2」又は「CDR2」;及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」としてそれぞれ言及される。このように、免疫グロブリン可変ドメインの一般的な構造又は配列は、以下のとおりに示すことができる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。抗原結合部位を保有することにより、抗原について抗体に特異性を与えるのは、免疫グロブリン可変ドメインである。
e)「結合する」、「に結合する」、「特異的に結合する」、又は「に特異的に結合する」ことができる、特定のエピトープ、抗原、もしくはタンパク質(又はその少なくとも1つの部分、フラグメント、もしくはエピトープ)「について親和性を有する」及び/又は「について特異性を有する」分子(例えば、本発明の結合分子、又はそのフラグメントなど)は、当該エピトープ、抗原、もしくはタンパク質「に対する」もしくは「に対して向けられる」と言われる、又はそのようなエピトープ、抗原、もしくはタンパク質に関する「結合」分子である。
f)用語「抗原結合部位」は、本明細書中で使用されるように、特定の抗原への結合を与える結合分子のドメインに関する。抗原結合部位は抗体から本来由来するが、この分野における進歩は、目的の標的に対する天然抗体を生成する必要性を伴うことなく、抗原結合部位を設計する及び/又は得る追加の可能性に導いている。その起源とは無関係に、本発明に従った「抗原結合部位」は、その特定の標的抗原への結合を可能にする少なくとも最小限の構造エレメント、即ち、必要で十分な構造エレメントを含む。このように、本発明に従った「抗原結合部位」は、少なくとも3つの重鎖CDR配列(単一ドメイン抗体の場合では)、より好ましくは少なくとも3つの軽鎖及び3つの重鎖CDR配列を含む。上で考察したように、これらのCDRは、典型的には、抗体のいわゆる可変ドメイン、又は可変領域(Fv)中に存在する。抗原結合部位は、少なくとも最小限の構造エレメントを含むが、典型的には、追加エレメント(例えば、フレームワーク領域など)を包含することが理解されるであろう。このように、本発明に従って使用されるように、抗原結合部位はまた、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインのそれぞれの組み合わせの配列を介して定義することができる。「抗原結合部位」がポリペプチド中に含まれること、及び/又は当該CDR又は当該可変ドメインの各々が、ポリペプチド又はペプチドであることが、本発明に従って特に好ましい。
g)結合分子又は抗原結合部位の用語「特異的結合」は、例えば、それらの交差反応性の観点において記載され得る。好ましくは、本発明の結合分子の抗原結合部位は、標的抗原のエピトープとは異なるが、しかし、標的抗原の構造と同様の構造を有するエピトープとは交差反応しない、又は本質的に交差反応しない。好ましくは、「・・・に特異的に結合する」は、具体的に列挙される標的、即ち、それぞれ抗原TROP2、CDH17、及びCD3に対して65%未満、好ましくは70%未満、75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満、最も好ましくは98%未満の同一性(当技術分野において公知の方法を使用して算出される)を伴って標的に結合しない抗原結合部位を指す。研究中の分子のパネルの交差反応性は、例えば、目的のエピトープへの、ならびに多数の、多かれ少なかれ(構造的に及び/又は機能に)密接に関連したエピトープへの従来の条件下での分子の当該パネルの結合を評価することによりテストされ得る。その関連する状況(例、タンパク質の構造中の特定のモチーフ)において目的のエピトープに結合するが、しかし、他のエピトープのいずれにも結合しない、又は本質的に結合しない分子だけが、特異的に結合すると考えられる。対応する方法は、テキストブック文献ならびに、例えば、Brooks BD. Curr Drug Discov Technol. 2014 Jun;11(2):109-12又はAbdiche YN, et al. PLoS One. 2014 Mar 20;9(3):e92451において記載されている。
【0037】
「特異性」は、しかし、また、それらの親和性及び/又は結合力の観点において記載又は特定され得る。
【0038】
親和性は、結合分子と抗原の解離についての平衡定数(Kd)により表される、エピトープと、結合分子上の抗原結合部位の間での結合強度についての測定値である:Kdの値が小さいほど、エピトープと結合分子の間での結合強度が強い(あるいは、親和性はまた、1/Kdである親和性定数(Ka)として表現することができる)。
【0039】
その標的に特異的に結合する抗原結合部位が、それぞれの標的、即ち、抗原TROP2、CDH17、又はCD3に対して、構造的に無関係な分子よりも有意に高い結合親和性を有することが特に好ましい。このように、TROP2についての抗原結合部位は、任意の他の構造的に無関係な分子よりも TROP2に対して有意に高い結合親和性を有する;CDH17についての抗原結合部位は、任意の他の構造的に無関係な分子よりも CDH17に対して有意に高い結合親和性を有し、CD3についての抗原結合部位は、任意の他の構造的に無関係な分子よりもCD3に対して有意に高い結合親和性を有する。本発明に従って、抗原結合部位は、それが、同一条件下で、無関係な抗原に対する親和性よりも、少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍より大きい、好ましくは少なくとも20倍より大きい、及び最も好ましくは少なくとも100倍より大きい親和性を伴って当該標的抗原に結合する場合、その標的抗原に対して有意に高い結合親和性を有すると考えられる。
【0040】
好ましい結合親和性は、結合分子に依存して変動するが、しかし、例えば、当技術分野において公知の任意の標準的な方法論を介して、好ましくは、以下及び添付の実施例において記載されるようなBiacoreアッセイを介して測定される、少なくとも10E-4モル/リットル又はそれ以下の解離定数(Kd)を伴うものを含む。10E-4Mを上回る任意のKd 値は、一般的に、非特異的結合を示すと考えられる。好ましくは、抗原結合部位は、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは100nM未満、及び最も好ましくは20nM未満のKdを伴って、所望の抗原に特異的に結合する。特定の結合剤、例えば本明細書中に記載されるCD3についての抗原結合部位などについて、本明細書中で他に定義されない限り、解離定数(Kd)は、10nM未満、より好ましくは5nM未満、さらにより好ましくは2nM未満であることが好ましい。
【0041】
結合力は、結合分子(例えば、本発明の結合分子、又はそのフラグメントなど)と関連抗原の間での結合の強さの測定値である。結合力は、エピトープと、結合分子上のその抗原結合部位の間での親和性、及び結合分子上に存在する関連結合部位の数の両方に関連する。
【0042】
当業者には(例えば、本明細書中のさらなる開示に基づいて)明らかなように、特異的結合は、目的の特定の抗原に依存して、当技術分野においてそれ自体公知の手段及び方法を使用して決定することができる。そのような手段及び方法は、限定されないが、例えば、精製された野生型抗原を用いた、スキャッチャード分析及び/又は競合結合アッセイ、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素イムノアッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ、ならびにプラズモン共鳴アッセイ(Malmqvist M., Curr Opin Immunol. 1993 Apr;5(2):282-6.)を含む。抗体親和性はまた、速度論的排除アッセイ(KinExA)技術を使用して測定することができる(Darling, R.J., and Brault P-A., ASSAY and Drug Development Technologies. 2004, Dec 2(6):647-657)。好ましくは、特異的結合は、精製された野生型抗原を用いたプラズモン共鳴アッセイにより測定される。より好ましくは、Kd値を決定するための方法は、例えば、以下の実施例3.2において記載されるように、Biacoreアッセイに基づく。このように、本明細書中で言及される任意のKd値は、Biacore 4000上での表面プラズモン共鳴(SPR)を介して得られるKd値であることが好ましく、それにおいて、目的の結合分子は、10μl/分で60秒間にわたり、プロテインA/Gを介してセンサー表面上に捕捉され、次に、それぞれの標的分子(例、ヒトTrop2、CDH17、又はCD3)を、好ましくは100nMの濃度で、30μl/分で180秒間の会合に適用し、その後にHBS-EP緩衝液中での120秒間の解離が続いた。
h)アミノ酸残基は、当技術分野で一般的に公知であり、合意されている、標準的な3文字又は1文字のアミノ酸コードに従って示される。2つのアミノ酸配列を比較する場合、用語「アミノ酸の差」は、第2の配列と比較した、参照配列の位置での示された数のアミノ酸残基の挿入、欠失、又は置換を指す。置換の場合では、そのような置換は、好ましくは、保存的アミノ酸置換であり、それは、アミノ酸残基が、同様の化学構造の別のアミノ酸残基で置換され、それが、ポリペプチドの機能、活性、又は他の生物学的特性に対するほとんど又は本質的に無の影響を有することを意味する。そのような保存的アミノ酸置換は、例えば、WO98/49185から当技術分野において周知であり、それにおいて、保存的アミノ酸置換は、好ましくは、以下の群(i)~(v)内の1つのアミノ酸が、同じ群内の別のアミノ酸残基により置換される置換である:(i)小さな脂肪族、非極性又はわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr、Pro、及びGly;(ii)極性の負に帯電した残基及びそれらの(非帯電)アミド:Asp、Asn、Glu、及びGin;(iii)極性の正に帯電した残基:His、Arg、及びLys;(iv)大きな脂肪族、非極性残基:Met、Leu、Ile、Val、及びCys;ならびに(v)芳香族残基:Phe、Tyr、及びTrp。特に好ましい保存的アミノ酸置換は、以下のとおりである:
AlaからGIy又はSer;
ArgからLys;
AsnからGin又はHis;
AspからGIu;
CysからSer;
GinからAsn;
GIuからAsp;
GIyからAla又はPro;
HisからAsn又はGin;
IleからLeu又はVaI;
LeuからIle又はVaI;
LysからArg、Gin、又はGIu;
MetからLeu、Tyr、又はIle;
PheからMet、Leu、又はTyr;
SerからThr;
ThrからSer;
TrpからTyr;
TyrからTrp又はPhe;
VaIからIle又はLeu。
i)用語「単離された」は、本明細書中で使用されるように、その本来の環境又は自然環境(例、それが天然で生じる場合は自然環境)から除去された物質を指す。例えば、生きた動物において存在する天然核酸分子又はポリペプチドは、単離されていないが、しかし、同じ核酸分子又はポリペプチドが、自然システムにおける共存物質の一部又は全てからのヒトの介入により分離されており、単離されている。そのような核酸分子は、ベクターの一部であり得る、及び/又はそのような核酸分子又はポリペプチドは、組成物の一部であり得るが、そのようなベクター又は組成物が、核酸分子又はポリペプチドが自然において見出される環境の一部ではないという点で依然として単離されている。例えば、核酸分子又はポリペプチドは、その天然の生物学的供給源及び/又はそれが得られた反応培地もしくは培養培地と比較して、それが、当該供給源又は培地中で通常会合する少なくとも1つの他の成分、例えば別の核酸分子、別のポリペプチド、別の生物学的成分もしくは巨大分子、又は少なくとも1つの汚染物質、不純物もしくは微量成分などから分離されている場合、「本質的に単離された(形態)」であると考えられる。特に、核酸分子又はポリペプチドは、それが、少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、さらに特に少なくとも100倍、及び1000倍又はそれ以上まで精製された場合、「本質的に単離された」と考えられる。「本質的に単離された形態」である核酸分子又はポリペプチドは、好ましくは、適切な技術、例えば適切なクロマトグラフィー技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などを使用して決定されるように、本質的に均質である。本発明の結合分子及び核酸は、好ましくは単離される。
j)他に示さない限り、本明細書中で使用される用語「配列」(例えば、「免疫グロブリン配列」、「結合分子配列」、又は「ポリペプチド配列」のような用語)は、一般的に、文脈によって、より限定された解釈が要求されない限り、関連するアミノ酸配列ならびに核酸配列又は同をコードするヌクレオチド配列の両方を含むと理解すべきである。
k)本明細書中で使用される場合、用語「同一」又は「同一性パーセント」は、2つ又はそれ以上の核酸配列又はポリペプチド配列の文脈において、最大の対応のために比較及び整列された場合に、同じである、あるいは同じであるヌクレオチド又はアミノ酸残基の特定のパーセンテージを有する2つ又はそれ以上の配列又は部分配列を指す。同一性パーセントを決定するために、配列を、最適な比較目的のために整列させる(例、ギャップを、第2のアミノ酸配列又は核酸配列との最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸の配列又は核酸配列中に導入することができる)。対応するアミノ酸位置又はヌクレオチド位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが次に、比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドにより占められている場合、次に分子は、その位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列により共有される同一の位置の数の関数である(即ち、同一性%=同一位置の数/位置の総数(例、重複する位置)×100)。一部の実施形態では、比較される2つの配列は、ギャップが、適切な場合に、配列内に導入された後は同じ長さである(例、比較されている配列を超えて延びる追加の配列を除く)。例えば、可変領域配列を比較する場合、リーダー及び/又は定常ドメイン配列は考慮されない。2つの配列間の配列比較について、「対応する」CDRは、両方の配列中の同じ位置にあるCDR(例、各々の配列のCDR-H1)を指す。
【0043】
2つの配列間の同一性パーセント又は類似性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成することができる。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの好ましい非限定的な例は、Karlin and Altschul, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:2264-2268のアルゴリズムであり、Karlin and Altschul, 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877におけるように改変されている。そのようなアルゴリズムはAltschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410のNBLAST及びXBLASTプログラム中に組み入れられる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12で実施して、目的のタンパク質をコードする核酸に相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、XBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)で実施して、目的のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップアラインメントを得るために、ギャップ付きBLASTを、Altschul et al., 1997, Nucleic Acids Res. 25:3389-3402において記載されるように利用することができる。あるいは、PSI-Blastを使用して、分子間の遠い関係を検出する反復検索を実施することができる(同上)。BLAST、ギャップ付きBLAST、及びPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラムのデフォルトパラメーター(例、XBLAST及びNBLAST)を使用することができる。配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの別の好ましい、非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS(1989)のアルゴリズムである。そのようなアルゴリズムは、GCG配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み入れられている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120ウェイト残基テーブル、ギャップ長ペナルティ12、及びギャップペナルティ4を使用することができる。配列分析のための追加のアルゴリズムが、当技術分野において公知であり、Torellis and Robotti, 1994, Comput. Appl. Biosci. 10:3-5において記載されているADVANCE及びADAM;ならびにPearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444-8において記載されているFASTAを含む。FASTA 内では、ktupは、検索の感度及び速度を設定するコントロールオプションである。ktup=2の場合、比較されている2つの配列中の類似領域が、整列された残基のペアを調べることにより見出される;ktup=1の場合、単一の整列されたアミノ酸が検証される。ktupは、タンパク質配列については2又は1、あるいはDNA配列については1~6に設定することができる。ktupが特定されていない場合のデフォルトは、タンパク質については2及びDNAについては6である。あるいは、タンパク質配列アラインメントは、Higgins et al., 1996, Methods Enzymol. 266:383-402により記載されるように、CLUSTAL Wアルゴリズムを使用して行われ得る。好ましくは、上に記載されるCLUSTAL Wアルゴリズムが使用される。
l)用語「含む」は、本明細書中で使用されるように、さらなる成分及び/又は工程が、具体的に列挙された成分及び/又は工程に加えて、含まれ得ることを意味する。しかし、この用語はまた、特許請求の範囲に記載された主題が、正確に、列挙された成分及び/又は工程からなることを包含する。
m)本明細書中で使用されるように、用語「少なくとも」は、具体的に列挙された数及びそれより大きい任意の数を含む任意の数を指す。例えば、「少なくとも1つ」は、正確に1、ならびに1を上回る、限定されないが、2、例えば、3又は4を含む、を包含する。さらに含まれるのは、例えば、5、6、7、8、9、10、15、例えば20、30、40、50、75、100、150、200、300、400、又は500、ならびに、これらの具体的に列挙される数の間又はそれを上回る数字における任意の整数である。用語「少なくとも1つの抗原結合部位」に関しては、当該用語が、1、2、3、又は4つの抗原結合部位を包含することが特に好ましい。最も好ましくは、当該用語は、正確には、1つの抗原結合部位に関する。1を上回る抗原結合部位が、標的について選ばれる場合、これらの複数の抗原結合部位は、独立して選ぶことができ、即ち、それらは同一であることができる、又はそれらは互いに異なることができる。
n)本明細書中で使用される用語「ポリペプチド」は、30を上回るアミノ酸を含む、単鎖ポリペプチド又はそのフラグメントを含む、アミノ酸の直鎖分子鎖を記載する。他方で、本発明中で使用される用語「ペプチド」は、30までのアミノ酸を含むアミノ酸の直鎖を記載する。本発明に従って使用される用語「(ポリ)ペプチド」は、30までのアミノ酸からなるペプチドの群、ならびに30を上回るアミノ酸からなるポリペプチドの群を含む分子群を指す。
o)用語「リンカー」は、本明細書中で使用されるように、ペプチドリンカー、即ち、アミノ酸の配列、ならびに非ペプチドリンカーの両方を包含し、それらは、分子の個々の部分を共有結合的に又は非共有結合的に接続する。用語「非ペプチドリンカー」は、本明細書中で使用されるように、2つ又はそれ以上の反応性基を有するが、しかし、以下に定義するペプチドリンカーを除く連結基を指す。例えば、非ペプチドリンカーは、反応性基を両方の端に有するポリマーであり得るが、それは、本発明の分子の結合部分の反応性基、例えば、アミノ末端、リジン残基、ヒスチジン残基、又はシステイン残基に個々に結合する。ポリマーの反応性基は、アルデヒド基、プロピオン酸アルデヒド基、ブチルアルデヒド基、マレイミド基、ケトン基、ビニルスルホン基、チオール基、ヒドラジド基、カルボニルジミダゾール(CDI)基、ニトロフェニルカーボネート(NPC)基、トリシレート基、イソシアネート基、及びスクシンイミド誘導体を含む。スクシンイミド誘導体の例は、スクシンイミジルプロピオネート(SPA)、スクシンイミジルブタン酸(SBA)、スクシンイミジルカルボキシメチラート(SCM)、スクシンイミジルスクシンアミド(SSA)、スクシンイミジルコハク酸(SS)、スクシンイミジルカーボネート、及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を含む。非ペプチドポリマーの両方の端での反応性基は、同じであり得る又は異なり得る。例えば、非ペプチドポリマーは、1つの端にマレイミド基を、別の端にアルデヒド基を有し得る。
【0044】
ペプチドリンカーは、本明細書中で想定されるように、少なくとも1アミノ酸の長さの(ポリ)ペプチドリンカーである。好ましくは、リンカーは1~100アミノ酸の長さである。より好ましくは、リンカーは5~50アミノ酸の長さであり、より好ましくは10~40アミノ酸の長さであり、さらにより好ましくは、リンカーは15~30アミノ酸の長さである。しばしば使用される小さなリンカーの非限定的な例は、GSミニリンカーと呼ばれるグリシン及びセリンアミノ酸の配列を含む。これらのリンカー中のアミノ酸の数は変動し得るが、例えば、それらは、4(GGGS)(配列番号273)、又は6(GGSGGS)(配列番号274)、又はそれらの倍数、例えば、これらの4/6つのアミノ酸の2つあるいは3つ又はそれ以上のリピートなどであり得る。最も好ましくは、そのようなGSミニリンカーは、20アミノ酸及び配列GGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号275)を有する。
【0045】
目的の分子が単一のポリペプチド鎖である場合、リンカーはペプチドリンカーであることが、当業者により理解されるであろう。
【0046】
性質、即ち、リンカーの長さ及び/又は組成、例えばアミノ酸配列などが、リンカーを含む分子の安定性及び/又は溶解性を改変又は増強し得ることは、当技術分野において公知である。典型的には、リンカーの長さ及び配列は、それぞれの目的の分子の組成に依存して選ばれる。当業者は、異なるリンカーの適合性を設計及びテストする方法を十分に知っており、例えば、Volkel, T. et al. Protein Engineering, Design and Selection, Volume 14, Issue 10, 2001, Pages 815-823を参照のこと。例えば、分子の特性は、本発明の分子の結合部分の結合親和性を比較することにより簡単にテストすることができる。本発明の三重特異的分子の場合では、各々の結合部分についてのそれぞれの測定を、別々に行ってもよい。結果として得られた分子の安定性は、ELISAベースの方法を使用して測定し、ヒト血清中での37℃で数時間にわたるインキュベーション後の分子の残留結合能力を決定することができる。他の適切なテストは、例えば、Brian R. Miller, B.R. et al. Protein Engineering, Design and Selection, Volume 23, Issue 7, 2010, Pages 549-557又はKugler, M. et al. Protein Engineering, Design and Selection, Volume 22, Issue 3, 2009, Pages 135-147において見出すことができる。
(p)用語「核酸分子」は、本発明に従って、本明細書中で用語「ポリヌクレオチド」と互換的に使用され、DNA、例えば、cDNA又はゲノムDNAなど、及びRNA、例えば、mRNAを含む。さらに含まれるのは、当技術分野において公知の核酸模倣分子、例えば、DNA又はRNAの合成又は半合成誘導体及び混合ポリマーなどである。本発明に従ったそのような核酸模倣分子又は核酸誘導体は、ホスホロチオエート核酸、ホスホロアミデート核酸、2’-O-メトキシエチルリボ核酸、モルホリノ核酸、ヘキシトール核酸(HNA)及びロックド核酸(LNA)を含む。LNAは、リボース環が、2’酸素と4’炭素の間でのメチレン連結により拘束されているRNA 誘導体である。それらは、当業者により容易に理解されるように、追加の非天然又は誘導体ヌクレオチド塩基を含み得る。
【0047】
本発明の三重特異的結合分子
本発明は、以下を含む結合分子に関する:(a)栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)、好ましくはヒトTROP2にKd≧1nMを伴って特異的に結合する少なくとも 1つの抗原結合部位、(b)カドヘリン17(CDH17)、好ましくはヒトCDH17に、Kd≧10nMを伴って、好ましくはKd≧100nMを伴って特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位、及び(c)分化クラスター3(CD3)、好ましくはヒトCD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位。
【0048】
このように、本発明の結合分子(本明細書中では「本発明のタンパク質」又は「本発明の結合剤」としても言及される)は、少なくとも具体的に列挙された3つの異なる抗原結合部位、即ち、TROP2についての少なくとも1つの結合部位、CDH17についての少なくとも1つの結合部位、及びCD3についての少なくとも1つの結合部位を含む。これらの3つの特異性のため、本発明の結合分子はまた、本明細書中では本発明の「三重特異的結合分子」として言及される。
【0049】
用語TROP2は、本明細書中で使用されるように、「栄養膜細胞表面抗原2」を指す。TROP2は、腫瘍関連カルシウムシグナルトランスデューサー(TACSTD)のファミリーに属し、クローディン7及びクローディン1の安定性のために要求される。ヒトTROP2は、配列番号419ならびにデータベースアクセッション番号UniProt P09758により表される。
【0050】
用語CDH17は、本明細書中で使用されるように、「カドヘリン17」を指す。CDH17は、カルシウム依存性の膜関連糖タンパク質のカドヘリンスーパーファミリーのメンバーである。コードされたタンパク質は、カドヘリン様で、7つのカドヘリンドメインを含む細胞外領域、及び膜貫通領域からなるが、しかし、保存された細胞質ドメインを欠く。胃腸管及び膵管におけるタンパク質の発現が、報告されている。ヒトCDH17は、配列番号420により、ならびにデータベースアクセッション番号UniProt Q12864において表される。
【0051】
用語CD3は、本明細書中で使用されるように、「分化クラスター3」を指す。CD3はタンパク質複合体であり、細胞傷害性T細胞、即ち、CD8+ナイーブT細胞及びヘルパーT細胞、即ち、CD4+ナイーブT細胞の両方を活性化する際に含まれるT細胞共受容体である。CD3は、4つの異なる鎖で構成されており、それにおいて、複合体は、哺乳動物において、CD3γ鎖、CD3δ鎖、及び2つのCD3ε鎖を含む。T細胞受容体(TCR)及びζ鎖(ゼータ鎖)と一緒に、CD3は、Tリンパ球中で活性化シグナルを生成する。ヒトCD3は、配列番号421により、ならびにCD3 デルタ鎖、配列番号422についてはデータベースアクセッション番号UniProtKB-P04234により、ならびにCD3イプシロン鎖、配列番号423についてはデータベースアクセッション番号UniProtKB-P07766により、ならびにCD3ガンマ鎖及び配列番号424についてはデータベースアクセッション番号UniProtKB-P09693により、ならびにCD3ゼータ鎖についてはデータベースアクセッション番号UniProtKB-P20963により表される。
【0052】
抗原結合部位の一般的な構造は、当技術分野において周知であり、例えば、上の本明細書中で考察されるように、単一ドメイン、例えばエピトープ結合ドメイン、単鎖Fv(ScFv)ドメイン、又は対合VH/VLドメインなどであり得る。好ましい実施形態では、抗原結合部位は、少なくとも軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含む。
【0053】
一般的な定義に関して考察されるように、抗原結合部位は、それぞれの標的抗原に特異的に結合することが要求される。また、本発明の結合分子は、TROP2及びCDH17にそれぞれ特異的に結合する抗原結合部位が、TROP2の場合において1nMを下回るKdで、DH17の場合において10nMを下回る(好ましくは100nMを下回る)Kdで結合することにおいてさらに特徴付けられる。換言すれば、当該抗原結合部位は、それらの標的抗原について特異的であることが要求される一方で、それらは、強い結合親和性のために選択されるのではなく、しかし、代わりに、両方の標的の存在においてだけ、本発明の結合分子の強い結合を可能にするより低い親和性を伴って結合することが要求される。以下でさらに詳細に考察するように、及び実施例(特に実施例6~8)において示されるように、これらの2つの抗原結合部位が、それらのそれぞれの抗原に対する低下した親和性を有するという要件によって、低い一価の結合、しかし、両方の標的の存在において、結合力に起因して、本発明の結果として得られる三重特異的結合分子の増強された結合がもたらされることが見出された。TROP2についての抗原結合部位は、1nM~20nMの間、より好ましくは1nM~10nMの間、さらにより好ましくは1nM~4nMの間のKdを有することが特に好ましい。最も好ましくは、TROP2に特異的に結合する抗原結合部位は、2nM~5nMの間のKdを有する。さらに、CDH17についての抗原結合部位は、10nM~200nMの間、より好ましくは50nM~150nMの間、さらにより好ましくは75nM~125nMの間のKdを有することが特に好ましい。最も好ましくは、CDH17に特異的に結合する抗原結合部位は、100nM~120nMの間であるKdを有する。好ましくは、当該Kdは、Biacore 4000上のSPRに関して上に記載されたように決定される。
【0054】
本発明に従って、そのような低下した親和性結合剤の要件は、CD3に結合する抗原結合部位については必要ない。このように、本明細書中で上に述べられているように、CD3を標的化する抗原結合部位については、結合剤が、500nM未満、好ましくは200nM未満、より好ましくは10nM未満のKdを伴って、及び、最も好ましくは2nM未満のKdを伴って結合することが特に好ましい。CD3に特異的に結合する多数の抗原結合部位が、当技術分野において、例えば、WO2004106383において記載されており、ここで、X35-3、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111-409、CLB-T3.4.2、TR-66、WT32、SPv-T3b、11 D8、XIII-141、XIII-46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW2-4B6、OKT3D、M-T301、SMC2、WT31、及びF101.01.e、ならびにSP34からなる群より選択される抗体から由来する周知の抗原結合部位が記載されている。特に、WO2004106383は、VH領域及びVL領域が、例えば、ヒトCD3-ε鎖についてのトランスジェニックのマウス細胞において、他のTCRサブユニットの状況においてヒトCD3-ε鎖を特異的に認識することが可能である抗体/抗体誘導体及び同様のものから由来することを記載している。適切なCD3特異的抗原結合部位のさらなる非限定的な例が、US20180118848、W02011090762(例、CRIS-7、OKT3、HU291、G19-4)、US9782478、US20180118827(SP34改変)、US20160145340(SP34改変)、US9212225(例:SP34 CDRの改変)、US10174124(クローン40G5C及び38E4.V1を含むCD3ハイブリドーマクローン)、US9914776及びWO2020127619(SP34改変)US7,728,114、US5929212、WO2014047231(OKT3又はCRIS-7に基づく)、WO2004108158(OKT3に基づく)、WO200703320(CD3クローン28F11、27H5、23F10、15C3)、US10066015(SP34改変)、WO2018201051(SP34改変)、WO201911871、US99759662、US20180326058、WO2019131988(SP34(mu、hu)、OKT3、UCHT1.v9、UCHT1、v1、UCHT1.vM1、HU40G5C、38E4.V1、抗CD3クローンAN104、AN119、AN121、AN395を含む)、US20180161428、WO2019075378(SP34 CDRバリアント)、WO2016187594(例、ムロモナブ CD3(OKT3)、オテリズマブ(TRX4)、テプリズマブ(MGA031)、ビシリズマブ(Nuvion)、SP34、X35、VIT3、BMA030(BW264/56)、CLB-T3/3、CRIS7、YTH12.5、F111-409、CLB-T3.4.2、TR-66、WT32、SPv-T3b、11D8、XIII-141、XIII-46、XIII-87、12F6、T3/RW2-8C8、T3/RW2-4B6、OKT3D、M-T301、SMC2、F101.01、UCHT-1、及びWT-31)、US10066016(SP34 CDRバリアント)、WO20180209298(tritac)、又はUS10544221(SP34 CDRバリアント)において提供される。
【0055】
列挙された標的についての抗原結合部位は、本明細書中に記載される抗原結合部位から、当技術分野において記載される抗原結合部位(例えば、上で詳述されている、CD3について当技術分野において公知のものなど)から、又は新たに開発された抗原結合から当業者により選ばれ得るが、各々の場合において、特異性に関する、上に記載される前提条件(即ち、それぞれの標的についての、しかし、上で定義したようにKdが低すぎないという条件で、TROP2及びCDH17についての特異的結合)が満たされることを条件とする。これらの要件をテストするための手段及び方法が上で提供されており、さらなる面倒を伴うことなく、当業者により適用されることができる。
【0056】
本発明の結合分子の抗原結合部位が、(a)、(b)、及び(c)として列挙されているのに対し、この列挙は、特定の順番又は配置を指示することを意図しない。このように、抗原結合部位は、本発明の結合分子内での任意の順番、例えば、(a)-(b)-(c)、(b)-(c)-(a)、(c)-(a)-(b)、(b)-(a)-(c)などの順番において配置することができる。本発明の結合分子内の抗原結合部位の好ましい配置が、以下でさらに詳述されている。
【0057】
重要なことは、本発明の結合分子は、全ての3つの標的(TROP2、CDH17、及びCD3)を(実質的に)同時に結合することが可能である。したがって、全ての3つの標的が存在する条件で、本発明の結合分子は、それらの全て3つに結合し、それにより、T細胞エンゲージャー(TcE)として作用する:それは、T細胞上のCD3に結合し、このように、TROP2及びCDH17の両方を発現する腫瘍細胞にT細胞を近接させる。目的の結合分子が、標的細胞の表面上のTrop2及びCDH17の両方に結合することが可能であり、T細胞活性を誘導することができるか否かは、例えば、抗原を内因的に発現する組換えHEK293細胞又は癌細胞株(例えば、結腸直腸癌 DLD-1細胞株など)(それらの両方が、実施例9において記載されている)を使用して、添付の実施例において記載されるように決定することができる。
【0058】
好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、TROP2、CDH17、及びCD3について具体的に列挙されている3つの抗原結合部位以外のさらなる抗原結合部位を含まない。さらにより好ましくは、本発明の結合分子は、三重特異的及び三価である、即ち、それは、3つの抗原標的の各々について1つの結合部位を含む。
【0059】
本発明の結合分子は、それが、少なくとも具体的に列挙される3つの異なる抗原結合部位(TROP2、CDH17、及びCD3)を含み、本明細書中で定義されるように(実質的に)同時にこれらの3つの標的に結合することが可能であるという条件で、そのフォーマットに関して特に限定されない。そのようなものとして、フォーマットは、天然抗体の、抗体誘導体の、又はそのような抗体のフラグメントのフォーマット、ならびに抗体模倣物に基づくことができる。そのようなフォーマットは、例えば、さらなる抗体フラグメント、特にFv、Fab、Fab’、又はF(ab’)2フラグメント、単鎖抗体、特に単鎖可変フラグメント(scFv)、小型モジュラー免疫医薬品(SMIP)、ドメイン抗体、又はナノボディを追加的に含むことにより、全ての3つの抗原結合部位を適応するように必要に応じて改変することができる。個々に又は全ての抗原結合部位について用いることができる適切なフォーマットのさらなる非限定的な例は、本明細書中で上に定義された抗体模倣物を含む。
【0060】
好ましくは、本発明の結合分子は、修飾された免疫グロブリン(また、本明細書中では修飾された免疫グロブリン分子として言及される)である。例えば、好ましい実施形態では、TROP2及びCDH17についての抗原結合部位は、(古典的なY形状)免疫グロブリンフォーマットを有する結合分子の可変領域中に存在する。そのようなフォーマットでは、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖の第1セットは、その可変領域中にTROP2についての抗原結合部位を含み、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖の第2セットは、その可変領域中にCDH17についての抗原結合部位を含み、両方の鎖のセットは、例えば、ジスルフィド架橋を介して互いに連結されて、免疫グロブリン分子を形成する。
【0061】
そのような免疫グロブリン分子を作製するための技術は、当技術分野において周知であり、限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(例、Milstein and Cuello, Nature 305:537(1983))、WO93/08829、及びTraunecker et al., EMBO J. 10:3655(1991));「ノブ・イン・ホール」操作(例、米国特許第5,731,168 号);抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電的ステアリング効果の工学的操作(WO2009/089004A1);2つ又はそれ以上の免疫グロブリン又はフラグメントの架橋(例、米国特許第4,676,980号及びBrennan et al., Science, 229:81(1985));ロイシンジッパーを使用して二重特異的抗体を産生すること(例えば、Kostelny et al., Immunol., 148(5):1547-1553(1992)を参照のこと)などを含む。当業者はそのような方法を十分に知っており、それらはまた、当技術分野において、例えば、Liu H. et al.(2017)Front. Immunol. 8:38. doi:10.3389/fimmu.2017.00038において、又はMoore, G.L., Methods, Volume 154, 2019, Pages 38-50において概説されている。
【0062】
当該免疫グロブリン分子は、CD3についての抗原結合部位を含む追加の成分の融合によりさらに修飾され、それにより、修飾された免疫グロブリンがもたらされる。好ましくは、CD3についての当該抗原結合部位は、免疫グロブリン分子の重鎖の一方又は両方のC末端に融合されているscFvである。互いに対する種々の成分の融合は、当技術分野において周知である。当該融合は、例えば、ペプチドリンカーを介して、又は非ペプチドリンカーを介し得る。好ましくは、当該融合はペプチドリンカーを介している。
【0063】
より好ましくは、当該免疫グロブリン分子及び/又は当該修飾免疫グロブリン分子は、モノクローナル、キメラ、ヒト化又はヒト免疫グロブリン(例、抗体)分子である。さらに好ましくは、当該免疫グロブリン分子の重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA及びIgE定常領域からなる群より選択される。別の好ましい実施形態では、当該免疫グロブリン分子の軽鎖定常領域はカッパ又はラムダである。
【0064】
本発明に従って、本発明の結合分子を構成する個々のエレメントは、1つ又は複数のリンカーを介して互いに接続することができる。好ましくは、これらのリンカーはペプチドリンカーであり、より好ましくは、それらは、共有結合を介して個々のエレメントを接続する。それぞれの軽鎖が、リンカーを介してそれぞれの重鎖に接続されていることが、本明細書中では特に好ましい。
【0065】
本発明の結合分子が1を上回るリンカーを含む実施形態では、当該リンカーは、同じ又は異なる長さを有することができ、同じ又は異なる構造で構成され得る、例えば、同じ又は異なるアミノ酸配列、あるいは同じ又は異なる非ペプチドポリマーを含むことが想定される。好ましい実施形態では、本発明の結合分子中に存在するリンカーは、長さ及び/又は構造(例、アミノ酸配列又は非ペプチドポリマーの性質)において互いに異なる。
【0066】
好ましくは、リンカーはペプチドリンカーである。より好ましくは、リンカーは、例えば、アミノ酸のアラニン及びセリン又はグリシン及びセリンを使用した柔軟なリンカー、例えば、配列番号275中に示されるリンカーである、あるいは、配列番号265及び266中に示されるリンカーの1つである。このように、本発明の結合分子は、完全にアミノ酸で構成される、即ち、それはポリペプチドであることが特に好ましい。
【0067】
本発明者らの知る限り、癌細胞上のTrop2及びCDH17と免疫細胞上のCD3を接続する三重特異的抗体又は組換え三重特異的抗体誘導体は、これまでに報告されておらず、それにおいて、Trop2特異的結合剤及びCDH17特異的結合剤は、それぞれ1nM及び10nMを上回るKdを伴ってそれらの標的に結合する。WO21113748は、Trop2、CDH17、及び/又はCD3に結合する「TriAx-E」と呼ばれる分子を含む、種々のフォーマットの多重特異的抗体を記載する特許出願であり、しかし、当該分子を再現する本発明者らのいかなる試みも、不十分な安定性に起因して失敗した。古典的な抗体選択キャンペーンは、通常、高親和性結合剤をもたらすことに向けて適合されている。これはまた、WO21113748において従われたアプローチである。しかし、本発明者らは、驚くべきことに、これらの2つの標的に対して高い親和性を伴う抗原結合部位の組み入れによって、狭い治療ウィンドウがもたらされることを見出した。実施例において、特に実施例6~8において示されるように、より高い親和性の使用は、1つ又は他の標的だけを発現する細胞に対する一価の結合及び活性に導き、このように、不要な副作用のリスクを増加させる。また、多価フォーマットの使用も治療ウィンドウを減少させた。これらの知見は、2つの標的のいずれかについての増加した親和性が、特異性の喪失に導き、増加した結合価に伴ってさらに増強される効果を示す。従って、異なる選択戦略が、低親和性結合剤を得ることに焦点を合わせて選ばれた。以下の実施例から明らかなように、本発明の三重特異的結合分子は、標的細胞に対して優れた特異性を提供する。最良の結果が、低親和性及び一価の結合剤が組み合わされた結合分子について得られたが、以下の実施例に示すとおりである。
【0068】
本発明の結合分子の別の好ましい実施形態では、TROP2に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位が、抗原結合部位(i)~(vi)からなる群より選択される:
(i)配列番号1(CDR1)、配列番号2(CDR2)、及び配列番号3(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号4(CDR1)、配列番号5(CDR2)、及び配列番号6(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号7(CDR1)、配列番号8(CDR2)、及び配列番号9(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号10(CDR1)、配列番号11(CDR2)、及び配列番号12(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号13(CDR1)、配列番号14(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号16(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号13(CDR1)、配列番号19(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号20(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(v)配列番号21(CDR1)、配列番号22(CDR2)、及び配列番号23(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号24(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号26(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
ならびに
(vi)配列番号27(CDR1)、配列番号28(CDR2)、及び配列番号29(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号30(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号31(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位。
【0069】
本明細書中に開示され、配列番号1~31において描写されるCDRは、Kabat命名法に従って提示され、以下の表1中に示されている。本明細書中で使用されるように、HCDRは重鎖CDRを、LCDRは軽鎖CDRを表す。
【0070】
追加の命名法が当技術分野において公知であるため、これらの命名法のうち最も一般に使用されるものに基づくCDR配列も、以下の表1中に示されているが、しかし、これらの代替の命名法の適用が、異なるアミノ酸配列をもたらした例についてだけである。これらの番号付けシステムは、(i)CCG(Almagro et al., Proteins 2011;79:3050-3066及びMaier et al, Proteins 2014;82:1599-1610において例証されるChemical Computing Group)、(ii)Chothia(Chothia and Lesk, 1987, J. Mol. Biol. 196:901-917)、(iii)IMGT(Lefranc MP, Dev Comp Immunol. 2003 Jan;27(1):55-77)、及び(iv)North(North B, J Mol Biol.(2011)406:228-56)に基づいている。
【0071】
Kabat、CCG、Chothia、IMGT、及びNorth位置に従って本明細書中のCDRについて示されるアミノ酸位置(表1を参照のこと)は直線的である、即ち、それぞれの全長分子鎖のアミノ酸は、N末端の番号1から開始して連続的に番号付けされ、当該分子中のアミノ酸の総数に対応する数字で終わる。例えば、118のアミノ酸の長さからなる重鎖は、N末端の1番で始まり、最もC末端のアミノ酸の118番で終わる。このように、例えば、位置25は、この分子のN末端から数えて25番のアミノ酸を指すことを意味する。
【0072】
本発明の結合分子のより好ましい実施形態では、TROP2に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(xii)からなる群より選択される:
(i)配列番号83のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号84のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号85のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号86のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号87のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号88のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号89のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号90のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号91のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号92のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号93のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(x)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号99のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
又は
(xii)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位。
【0073】
本発明に従って、用語「免疫グロブリン重鎖可変ドメイン」及び「免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン」は、当該技術分野における定義に従って使用される。
【0074】
本発明の結合分子の別の好ましい実施形態では、CDH17に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(ii)からなる群より選択される:
(i)配列番号32(CDR1)、配列番号33(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号35(CDR1)、配列番号36(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
及び
(ii)配列番号32(CDR1)、配列番号38(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号39(CDR1)、配列番号40(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位。
【0075】
また、本明細書中に開示され、配列番号32~40において描写されるCDRは、Kabat命名法に従って提示され、以下の表1中に示されている。再び、追加の命名法が当技術分野において公知であるため、これらの命名法のうち最も一般に使用されるものに基づくCDR配列も、以下の表1中に示されているが、しかし、これらの代替の命名法の適用が、異なるアミノ酸配列をもたらした例についてだけである。
【0076】
本発明の結合分子のより好ましい実施形態では、CDH17に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(ii)からなる群より選択される:
(i)配列番号100のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号101のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
ならびに
(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号103のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位。
【0077】
本発明の結合分子の好ましい実施形態では、
(a)TROP2に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位は、第1の免疫グロブリン重鎖定常CH1ドメイン、第1の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン、場合により第1のリンカー、第1の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、及び第1の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む第1のポリペプチド中に含まれ、ならびに/あるいは
(b)CDH17に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位は、第2の免疫グロブリン重鎖定常CH1ドメイン、第2の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン、場合により第2のリンカー、第2の免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン、及び第2の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む第2のポリペプチド中に含まれる。
【0078】
本発明に従って、また、用語「免疫グロブリン重鎖定常CH1ドメイン」及び「免疫グロブリン軽鎖定常ドメイン」が、当技術分野における定義に従って使用される。好ましくは、上に列挙される順番は、N末端からC末端である。
【0079】
用語「第1」及び「第2」、ならびにさらに以下の用語「第3」は、本明細書中で特定のポリペプチド及び免疫グロブリン鎖の状況において使用される場合、これらの分子が異なる分子であることを示すことのみを意図している(それらが、異なる標的抗原に結合するため)。このように、これらの用語は、本発明の結合タンパク質内のポリペプチド又は免疫グロブリン鎖の正確な順番又は配列を指すとして理解されるべきではない。代わりに、用語「第1」は、TROP2への結合に関連する態様を指す場合に使用され、用語「第2」は、CDH17への結合に関連する態様を指す場合に使用され、用語「第3」は、CD3への結合に関連する態様を指す場合に使用される。
【0080】
用語リンカーは、本明細書中で上記に定義されており、適切なリンカーが当技術分野において記載されている。本発明の結合分子の好ましい実施形態では、第1のリンカー及び/又は第2のリンカーは、配列番号265、配列番号266、配列番号273、配列番号274、又は配列番号275のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、第1の及び/又は第2のリンカーは、配列番号266のアミノ酸配列を含む。
【0081】
本発明の結合分子のこの実施形態に従って、TROP2及び/又はCDH17についての抗原結合部位は、本明細書で上記に記載された抗原結合部位より選択されるのに対し、CD3についての抗原結合部位は、当技術分野において利用可能なそれらのCD3特異的抗原結合部位から、又は本明細書に開示されるCD3特異的抗原結合部位から当業者により選ばれる。より好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、本明細書中で以下に定義されるscFv配列(配列番号222~264、好ましくは配列番号222~245、より好ましくは配列番号222~224)の1つより選択される。
【0082】
本発明の結合分子は、Fc部分を含み得る、好ましくは含む。用語Fc部分は当技術分野において公知であり、本明細書中で上に定義されている。天然免疫グロブリン分子のFc領域は、典型的には、多くのFc受容体と相互作用し、それによって、多くの重要な機能的能力(「エフェクター機能」として言及される)がもたらされる。本発明に従って、本発明の結合分子は、標的抗原の関連部分への、本発明の結合分子の特異的結合に干渉しないFc領域、又はFc領域の一部を含むことが好ましい。さらに、当業者は、定常領域の種類及び長さの選択が、補体結合又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害のようなエフェクター機能が望ましい特徴であるか否かに、及び抗体タンパク質の望ましい薬理学的特性に依存することを十分に知っている。
【0083】
このように、本発明の結合分子の好ましい実施形態では、結合分子は、可溶性Fcガンマ受容体及び/又は補体C1qによる意図しない架橋を回避するように操作されたFc領域、又はその関連部分を有する。好ましくは、そのような結合分子は、非操作結合分子(即ち、変異(操作)分子が由来する非Fc操作結合分子)よりもFcガンマ受容体及び/又は補体C1qに対して、ずっと低い親和性を有する。そのような免疫グロブリン分子は、しばしば、Ig(KO)として言及される。
【0084】
本発明の結合分子の特に好ましい実施形態では、本発明における結合分子による補体産物C1q又はFcガンマ受容体への結合は、位置234及び235での向けられたLからA変異誘発を伴うIgG4定常領域の又はIgG1定常領域の利用により切断される(いわゆる「LA-LA変異」;Hezareh et al., J. Virology 75(2001)12161-12168)。好ましくは、本発明の結合分子は、当該LからA変異誘発を含む。
【0085】
本発明の結合分子の別の好ましい実施形態では、結合分子は、新生児Fc受容体(FcRn)とのその相互作用を最適化することにより、CH2ドメイン中の位置H310A(EU番号付けスキームに従う)の点変異により血清レベル(半減期)を改変するように操作されているFc領域、又はその関連セクションを含む。そのようなIg分子は、本明細書中ではIgFc Rnmutとして言及される。
【0086】
多量体結合分子の設計における1つの課題は、ランダムな鎖対合及び他のミスマッチを伴わない工業規模でのそれらの産生である。当業者は、特に重鎖ホモ二量体の形成を防止することを試みるための多数のアプローチを知っており、例えば、いわゆるノブ・イン・ホール(KiH)戦略、静電的ステアリング効果を作るための反対電荷の使用、又は重鎖のヘテロ二量体化を促進する疎水性変異、CH3鎖交換操作ドメイン(SEED Technology)、及びヘテロ二量体モジュール、例えばCH3ドメインのC末端における切断可能なロイシンジッパーなどの融合(LUZ-Y技術)を含み、Amaralら(J Appl Bioanal 6(1), 26-51(2020))により最近要約されているとおりである。
【0087】
このように、本発明の結合分子が、ノブ・イン・ホール形成をもたらす変異を少なくとも含むことが特に好ましい。好ましくは、本発明の結合分子は、修飾された免疫グロブリン分子に基づいており、それにおいて、Ig分子部分の重鎖は、以下の変異を含む:
(i)第1の重鎖は、位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、第2の重鎖は、位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]、及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む;
(ii)第1の重鎖は、位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含み、第2の重鎖は、位置407にスレオニン(T)[Y407T]を含む;
(iii)第2の重鎖は、位置366にトリプトファン(W)[T366W]を含み、第1の重鎖は、位置366にセリン(S)[T366S]、位置368にアラニン(A)[L368A]、及び位置407にバリン(V)[Y407V]を含む;又は
(iv)第2の重鎖は、位置366にチロシン(Y)[T366Y]を含み、第1の重鎖は、位置407にスレオニン(T)[Y407T]を含む、
及び、より好ましくは、第1の重鎖を含む免疫グロブリン分子の部分は、TROP2に特異的に結合する抗原結合部位も含む部分(本明細書中では、また、Ig分子のTROP2結合部分として言及される)であり、第2の重鎖を含む免疫グロブリン分子の部分は、CDH17に特異的に結合する抗原結合部位も含む部分(本明細書中では、また、Ig分子のCDH17結合部分として言及される)である。
【0088】
この好ましい実施形態に従って、番号付けはそれぞれの重鎖に基づいており、重鎖の当該定常領域のN末端の第1のアミノ酸は、EU番号付けスキームに従って位置118である。言い換えれば、位置366のトリプトファンは、位置118のN末端から始まる、重鎖定常領域内の366番目のアミノ酸である。この番号付けは当業者には周知であり、また、文献中に記載されており、例えば、CH1についてのEU番号付けシステムを参照したIMGT Scientificチャートを参照のこと。ここでは、IgG1について、定常領域は、Edelman, G.M. et al., Proc. Natl. Acad. USA, 63, 78-85(1969)に従って、アミノ酸118の「A」で始まる。
【0089】
好ましくは、本発明の結合分子は、上記(i)において引用される変異を含む、即ち、Ig分子の1つの結合部分がノブ変異(T366W)を含む一方で、Ig分子の他の結合部分はホール変異を含む(T366S、L368A、Y407V)。より好ましくは、Ig分子のTROP2結合部分はノブ変異(T366W)を含む一方で、Ig分子のCDH17結合部分はホール変異(T366S、L368A、及びY407V)を含む。当業者は、本明細書中に記載される標的特異的抗原結合部位(好ましくは、単鎖Fabを含む又は単鎖Fabからなる標的特異的結合部位)を、そのようなノブ変異又はホール変異を含むFcドメインとどのように組み合わせるかを知っている;例えば、配列番号434及び435中に示されるFcドメインを用いて、目的の任意の抗原結合部位、好ましくはFabを、所望のノブ又はホール状況中に配置することができる。
【0090】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、ホール変異を含む重鎖は、追加でさらに以下の変異を含む:
v)位置435のアルギニン[H435R]及び位置436のフェニルアラニン[Y436F](プロテインA結合部位の除去に導く);及び/又は
vi)上で考察されるように、位置234[L234A]及び位置235[L235A]のアラニン。
上で定義した番号付けに関する同じ考慮事項が準用される。当業者により適用され得るさらなる変異は、当技術分野において周知であり、例えば、Saunders KO(2019). Front. Immunol. 10:1296において記載されている。
【0091】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、結合分子は、
(a-i)配列番号169のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号170のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ii)配列番号171のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号172のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iii)配列番号173のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号174のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iv)配列番号175のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号176のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-v)配列番号177のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号178のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vi)配列番号179のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号180のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vii)配列番号181のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号182のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-viii)配列番号183のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号184のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ix)配列番号185のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号186のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-x)配列番号187のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号188のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-xi)配列番号189のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号190のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(a-xii)配列番号191のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号192のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
及び/又は
(b-i)配列番号196のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号197のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(b-ii)配列番号198のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖及び配列番号199のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖を含む。
【0092】
本発明に従って、用語「免疫グロブリン重鎖」及び「免疫グロブリン軽鎖」は、当技術分野における定義に従って使用される。このように、これらの用語は、IgG、例えば、IgG1、IgG2、又はIgG4のそれぞれの鎖又はドメインに関連する。
【0093】
特に、免疫グロブリン重鎖は、典型的には、列挙された順番において、重鎖可変ドメインVH、第1の重鎖定常CH1ドメイン、及びFcドメインを含み、ヒンジ領域及び2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含むのに対し、免疫グロブリン軽鎖は、典型的には、列挙された順番において、軽鎖可変ドメインVL及び第1の軽鎖定常CL1ドメインを含む。
【0094】
本発明の結合分子のこの実施形態に従って、TROP2及び/又はCDH17についての抗原結合部位は、上に列挙される特定の配列中に含まれるのに対して、CD3についての抗原結合部位は、当業者により、当技術分野において入手可能なそれらのCD3特異的抗原結合部位から、又は本明細書中に開示されるCD3特異的抗原結合部位から選ばれる。より好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、本明細書中で以下に定義されるscFv配列(配列番号222~264、好ましくは配列番号222~245、より好ましくは配列番号222~224)の1つより選択される。
【0095】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、結合分子は、少なくとも第1及び第2のポリペプチドを含む免疫グロブリン分子を含み、それにおいて
(a)当該第1のポリペプチドは、TROP2に特異的に結合し、場合により第1のリンカーにより連結された、本明細書中で上に、(a-i)~(a-xii)において定義される免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の組み合わせを含み、ならびに
(b)当該第2のポリペプチドは、CDH17に特異的に結合し、場合により第2のリンカーにより連結された、本明細書中で上に、(b-i)~(b-ii)において定義される免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の組み合わせを含む。
【0096】
用語リンカーは、本明細書中で上に定義されており、適切なリンカーは、当技術分野において記載されている。本発明の結合分子の好ましい実施形態では、配列番号265、配列番号266、配列番号273、配列番号274、又は配列番号275のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、第1及び/又は第2のリンカーは、配列番号266のアミノ酸配列を含む。
【0097】
また、本発明の結合分子のこの実施形態に従って、TROP2及びCDH17についての抗原結合部位は、上で列挙される特定の配列中に含まれるのに対し、CD3についての抗原結合部位は、当業者により、当技術分野において入手可能なそれらのCD3特異的抗原結合部位から、又は本明細書中に開示されるCD3特異的抗原結合部位から選ばれる。より好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、本明細書中で以下に定義されるscFv配列(配列番号222~264、好ましくは配列番号222~245、より好ましくは配列番号222~224)の1つより選択される。
【0098】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、結合分子は、
(a-i)配列番号200のアミノ酸配列;
(a-ii)配列番号207のアミノ酸配列;
(a-iii)配列番号208のアミノ酸配列;
(a-iv)配列番号209のアミノ酸配列;
(a-v)配列番号210のアミノ酸配列;
(a-vi)配列番号211のアミノ酸配列;
(a-vii)配列番号212のアミノ酸配列;
(a-viii)配列番号213のアミノ酸配列;
(a-ix)配列番号214のアミノ酸配列;
(a-x)配列番号215のアミノ酸配列;
(a-xi)配列番号216のアミノ酸配列;もしくは
(a-xii)配列番号217のアミノ酸配列;
及び/又は
(b-i)配列番号220のアミノ酸配列;もしくは
(b-ii)配列番号221のアミノ酸配列を含む。
【0099】
また、本発明の結合分子のこの実施形態に従って、TROP2及びCDH17についての抗原結合部位は、上に列挙される特定の配列中に含まれるのに対して、CD3についての抗原結合部位は、当業者により、当技術分野において入手可能なそれらのCD3特異的抗原結合部位から、又は本明細書中に開示されるCD3特異的抗原結合部位から選ばれる。より好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、本明細書中で以下に定義されるscFv配列(配列番号222~264)の1つより選択される。さらにより好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、配列番号222~245のscFv配列の1つより選択される。さらにより好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、配列番号222~244のscFv配列の1つより選択される。
【0100】
本発明の結合分子のさらに好ましい実施形態では、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(xxxi)からなる群より選択される:
(i)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号46(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号49(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号50(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(v)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号49(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号44(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号53(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号47(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号55(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号56(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(x)配列番号41(CDR1)、配列番号48(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号41(CDR1)、配列番号58(CDR2)、及び配列番号59(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号60(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xii)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号61(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xiii)配列番号41(CDR1)、配列番号62(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xiv)配列番号41(CDR1)、配列番号63(CDR2)、及び配列番号54(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号56(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xv)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号61(CDR1)、配列番号45(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xvi)配列番号41(CDR1)、配列番号42(CDR2)、及び配列番号43(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号57(CDR1)、配列番号52(CDR2)、及び配列番号51(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xvii)配列番号82(CDR1)、配列番号64(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xviii)配列番号82(CDR1)、配列番号69(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xix)配列番号82(CDR1)、配列番号72(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xx)配列番号82(CDR1)、配列番号73(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxi)配列番号82(CDR1)、配列番号74(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxii)配列番号82(CDR1)、配列番号73(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxiii)配列番号82(CDR1)、配列番号75(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxiv)配列番号82(CDR1)、配列番号69(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxv)配列番号82(CDR1)、配列番号76(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxvi)配列番号82(CDR1)、配列番号77(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号71(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxvii)配列番号82(CDR1)、配列番号78(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxviii)配列番号82(CDR1)、配列番号79(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号80(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxix)配列番号82(CDR1)、配列番号81(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
(xxx)配列番号82(CDR1)、配列番号79(CDR2)、及び配列番号65(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号80(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位;
及び
(xxxi)配列番号82(CDR1)、配列番号81(CDR2)、及び配列番号70(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号66(CDR1)、配列番号67(CDR2)、及び配列番号68(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDRを含む抗原結合部位。
【0101】
TROP2及び/又はCDH17についての抗原結合部位の状況において上に列挙される定義及び好ましい実施形態は、他に述べられない限り、CD3に特異的に結合するこの少なくとも1つの抗原結合部位にも適用される。特に、抗原結合部位内の特定のエレメントの順番、TROP2又はCDH17に特異的ではない用語の定義、ならびに本発明の結合分子のエレメントの一般的な設計及び構造の態様は、このCD3特異的抗原結合部位にも適用される。さらに、また、このCD3特異的抗原結合部位について、それが、完全にアミノ酸で構成されること、即ち、それが、ポリペプチド中に含まれること、及び/又はCDRがペプチドもしくはポリペプチドであることが好ましい。これはまた、任意のリンカーが、存在する場合に、好ましくはペプチドリンカー、好ましくは本明細書中で上に定義される柔軟なリンカーであることを意味することが理解されるであろう。好ましくは、任意のそのようなリンカーは、配列番号265、配列番号266、配列番号273、配列番号274、又は配列番号275のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、リンカーは、配列番号265のアミノ酸配列を含む。
【0102】
また、本明細書中で開示され、配列番号41~82において描写されるCDRは、Kabat命名法に従って提示され、以下の表1中に示される。再び、追加の命名法が当技術分野において公知であるため、これらの命名法のうち最も一般に使用されるものに基づくCDR配列も、以下の表1中に示されているが、しかし、これらの代替の命名法の適用が、異なるアミノ酸配列をもたらした例についてだけである。
【0103】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、CD3に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位は、場合により第3のリンカーにより連結された、第3の免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び第3の免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む。
【0104】
本発明の結合分子のより好ましい実施形態では、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、抗原結合部位(i)~(xvi)からなる群より選択される:
(i)配列番号104のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号109、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号120、配列番号121、配列番号123、及び配列番号129からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ii)配列番号110のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号111のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iii)配列番号112のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号113のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(iv)配列番号118のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号119及び配列番号122からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号124のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号125、配列番号126、及び配列番号127からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(v)配列番号128及び配列番号130からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号127のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vi)配列番号131のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号132のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(vii)配列番号133のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号134及び配列番号135からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(viii)配列番号136のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号137のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(ix)配列番号138及び配列番号156からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号139のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(x)配列番号140、配列番号142、配列番号143、及び配列番号161からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号141のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xi)配列番号144及び配列番号146からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号145のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xii)配列番号147、配列番号151、配列番号153、及び配列番号162からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号148のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xiii)配列番号149及び配列番号152からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメインならびに配列番号150のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xiv)配列番号154のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号155のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;
(xv)配列番号157のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号158のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位;及び
(xvi)配列番号159のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号160のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメインを含む抗原結合部位。
【0105】
また、CD3に特異的に結合する当該抗原結合部位が、単鎖可変フラグメント(scFv)であることが好ましい。より好ましくは、当該scFvは、重鎖可変ドメインがそのN末端にあり、軽鎖可変ドメインがそのC末端にあるように配置される。
【0106】
scFv分子を含む、目的のポリペプチドを、例えば、IgG分子の重鎖のC末端に連結する方法は、当技術分野において周知である。Ig分子へのscFvの当該融合は、直接的な融合であってもよく、又はリンカー、好ましくは5~40アミノ酸の長さを有するペプチドリンカーを介したものであってもよいことが理解されるであろう。より好ましくは、当該ペプチドリンカーは、配列番号265、配列番号266、配列番号273、配列番号274、又は配列番号275のいずれか1つのアミノ酸配列を含む。より好ましくは、当該リンカーは、配列番号275のアミノ酸配列を含む。実際には、通常、この連結は、目的のIgGをコードする核酸分子を、所望のポリペプチド、例えば、scFvをコードする核酸と組み合わせることにより達成され、必要な場合、リンカー配列をコードする核酸分子により挟まれ、それにより、全ての3つのエレメントを含む単一の核酸分子を形成する。次に、この完全なHC-scFvコード化核酸分子を発現ベクター内に配置し、完全なIgG重鎖-scFv単一ポリペプチドが形成されるように適切な宿主細胞に導入する。
【0107】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位は、配列番号222~264からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。さらにより好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、配列番号222~245のscFv配列の1つより選択される。さらにより好ましくは、CD3特異的抗原結合部位は、配列番号222~224のscFv配列の1つより選択される。
【0108】
本明細書中で上に示されるように、本発明の結合分子の抗原結合部位についての番号付け(a)、(b)、及び(c)は、任意の特定の順番又はフォーマットを示すことを意図しない。
【0109】
しかし、TROP2に特異的に結合する第1の抗原結合部位及びCDH17に特異的に結合する第2の抗原結合部位は、両方が、1つの免疫グロブリン(Ig)分子内に含まれる、即ち、それらは、従来のIgG抗体のフォーマット中に配置され、例えば、図3中に示されるように、Y形状構造を形成することが好ましく、ここで、Ig分子の1つの半分(例、第1の重鎖に連結された第1の軽鎖を含む)は、TROP2に対する抗原結合部位を含み、Ig分子の第2の半分(例えば、第2の重鎖に連結された第2の軽鎖を含む)は、CDH17についての抗原結合部位を含む。好ましくは、当該Ig分子はIgGである、又はIgGから由来するフォーマットを有する。より好ましくは、当該免疫グロブリン分子は、好ましくは単鎖可変フラグメント(scFv)として、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位がそれに融合されるように修飾される。
【0110】
したがって、本発明の結合分子の特に好ましい実施形態では、結合分子は、修飾された免疫グロブリン(Ig)分子、好ましくは修飾されたIgG分子であり、それにおいて、TROP2に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位及びCDH17に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位は、当該Ig分子の可変領域中に存在し、CD3に特異的に結合する当該少なくとも1つの抗原結合部位は、当該TROP2-CDH17特異的Ig分子に融合された少なくとも1つのscFvである。より好ましくは、当該scFvは、Ig分子の重鎖のC末端に、好ましくは2つの重鎖のうちの1つだけのC末端に、より好ましくは、CDH17に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部位を含むIg分子の一部の重鎖に融合され、また、図3中に描写されるとおりである。
【0111】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、結合分子は以下を含む:
(a)(a-i)~(a-xii)より選択される第1の免疫グロブリン軽鎖及び免疫グロブリン重鎖の組み合わせ:
(a-i)配列番号169のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号170のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ii)配列番号171のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号172のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iii)配列番号173のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号174のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-iv)配列番号175のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号176のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-v)配列番号177のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号178のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vi)配列番号179のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号180のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-vii)配列番号181のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号182のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-viii)配列番号183のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号184のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-ix)配列番号185のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号186のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-x)配列番号187のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号188のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
(a-xi)配列番号189のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号190のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(a-xii)配列番号191のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号192のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;
ならびに
(b)(b-i)~(b-ii)より選択される第2の免疫グロブリン重鎖及び免疫グロブリン軽鎖の組み合わせ:
(b-i)配列番号196のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖及び配列番号197のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖;又は
(b-ii)配列番号198のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖及び配列番号199のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖;
ならびに
(c)配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~244からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む単鎖可変フラグメント(scFv)。
【0112】
好ましくは、当該第1の免疫グロブリン重鎖は、第1のリンカー、好ましくは配列番号266のリンカーを介して第1の免疫グロブリン軽鎖に融合され、及び/又は当該第2の免疫グロブリン重鎖は、第2のリンカー、好ましくは配列番号266のリンカーを介して第2の免疫グロブリン軽鎖に融合され、及び/又は当該scFvは、第3のリンカー、好ましくは配列番号275のリンカーを介して第2の免疫グロブリン重鎖のC末端に融合される。
【0113】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、結合分子は以下を含む:
(i)配列番号200のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(ii)配列番号200のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(iii)配列番号207のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(iv)配列番号207のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(v)配列番号208のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(vi)配列番号208のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(vii)配列番号209のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(viii)配列番号209のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(ix)配列番号210のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(x)配列番号210のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xi)配列番号211のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xii)配列番号211のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xiii)配列番号212のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xiv)配列番号212のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xv)配列番号213のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xvi)配列番号213のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xvii)配列番号214のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xviii)配列番号214のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xix)配列番号215のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xx)配列番号215のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xxi)配列番号216のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xxii)配列番号216のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;
(xxiii)配列番号217のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号220のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖;又は
(xxiv)配列番号217のアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖、配列番号221のアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖、及び配列番号222~264からなる群より、より好ましくは配列番号222~245からなる群より、さらにより好ましくは配列番号222~224からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む第3のポリペプチド鎖。
【0114】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、結合分子は、配列番号200、207~217、及び436からなる群より選択される第1のアミノ酸配列ならびに配列番号267~272、424~427、及び437からなる群より選択される第2のアミノ酸配列を含む又はそれらからなる。
【0115】
本発明の結合分子のさらにより好ましい実施形態では、結合分子は以下を含む又はそれらからなる:
(a-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(a-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;
(b-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(b-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号268のアミノ酸配列;
(c-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(c-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号269のアミノ酸配列;
(d-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(d-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号270のアミノ酸配列;
(e-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(e-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;
(f-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(f-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;
(g-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(g-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;
(h-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(h-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;
(i-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(i-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;
(j-i)配列番号200のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ii)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-iv)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-v)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-vii)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-viii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-ix)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-x)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xi)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;
(j-xii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;又は
(k)配列番号436のアミノ酸配列及び配列番号437のアミノ酸配列。
【0116】
1つの特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列を含む。別の特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子は、配列番号436のアミノ酸配列及び配列番号437のアミノ酸配列を含む。
【0117】
添付の実施例において示されるように、本発明のこれらの特に好ましい結合分子は、全ての3つの標的抗原に結合し、それにより、T細胞が、Trop2及びCDH17の両方を保有する腫瘍細胞に近づけられる。驚くべきことに、高親和性を伴う抗原結合部位の組み入れによって、これら 2つの標的のうちの1つだけを発現する細胞での一価の結合及び活性に導かれ、このように、不要な副作用のリスクが増加することが見出された。このように、本発明は、腫瘍細胞抗原についての低親和性結合剤を含む三重特異的結合分子を提供する。以下の実施例から明らかなように、本発明のこれらの低親和性、高親和性の三重特異的結合分子は、標的細胞に対して優れた特異性を提供する。
【0118】
本発明はさらに、以下のものを含む又はそれらからなる三重特異的結合分子に関する:(i)配列番号207のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;(ii)配列番号208のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;(iii)配列番号209のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;(iv)配列番号210のアミノ酸配列及び配列番号267のアミノ酸配列;(v)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;(vi)配列番号212のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;(vii)配列番号213のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;(viii)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;(ix)配列番号215のアミノ酸配列及び配列番号271のアミノ酸配列;(x)本発明は、配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;(xi)配列番号214のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;(xii)配列番号216のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;(xiii)配列番号217のアミノ酸配列及び配列番号272のアミノ酸配列;;(xiv)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号424のアミノ酸配列;(xv)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号425のアミノ酸配列;(xvi)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号426のアミノ酸配列;(xvii)配列番号211のアミノ酸配列及び配列番号427のアミノ酸配列;又は(xviii)配列番号436のアミノ酸配列及び配列番号437のアミノ酸配列を含む。
以下の表1は、本発明の結合分子、又はその一部の好ましいアミノ酸配列を要約する。
【表1】
















































【0119】
Trop2#1、Trop2#8~Trop2#18、CDH17#1、CDH17#8、ならびにCD3#1~CD3#43として本明細書中に開示される好ましい抗原結合部位は、全てが、本発明の三重特異的結合分子における使用のための適切な抗原結合部位として本発明者らにより同定され、テストされている。特に、当該抗原結合部位は、ポリペプチド鎖又はリンカーの柔軟なエレメントにより接続され、それは、当該抗原結合部位の構造的及び機能的完全性に干渉しない。
【0120】
TROP2についての単一特異的結合分子。
さらに本明細書中で提供されるのは、TROP2に特異的に結合する抗体分子(例、2つの重鎖及び2つの軽鎖を伴うY形状構造を有する全長抗体/免疫グロブリン分子、又はそれらのフラグメント、例えばFv、Fab、Fab’、もしくはF(ab’)2フラグメントなど、単鎖抗体、単鎖可変フラグメント(scFv))。一部の実施形態では、TROP2について特異的な抗体分子は、組換えモノクローナル抗体、キメラ、ヒト化、又はヒト抗体分子である。
【0121】
一部の実施形態では、TROP2について特異的な抗体分子は、(i)から(vi)において示される以下のCDRの組み合わせのいずれか1つを含む:
(i)配列番号1(CDR1)、配列番号2(CDR2)、及び配列番号3(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号4(CDR1)、配列番号5(CDR2)及び配列番号6(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR;
(ii)配列番号7(CDR1)、配列番号8(CDR2)、及び配列番号9(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号10(CDR1)、配列番号11(CDR2)、及び配列番号12(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR;
(iii)配列番号13(CDR1)、配列番号14(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号16(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR;
(iv)配列番号13(CDR1)、配列番号19(CDR2)、及び配列番号15(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号20(CDR1)、配列番号17(CDR2)、及び配列番号18(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR;
(v)配列番号21(CDR1)、配列番号22(CDR2)、及び配列番号23(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号24(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号26(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR;
又は
(vi)配列番号27(CDR1)、配列番号28(CDR2)、及び配列番号29(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号30(CDR1)、配列番号25(CDR2)、及び配列番号31(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR。
【0122】
一部の実施形態では、TROP2について特異的な抗体分子は、以下を含む:
i)配列番号83のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号84のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(ii)配列番号85のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号86のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(iii)配列番号87のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号88のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(iv)配列番号89のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号90のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(v)配列番号91のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号92のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(vi)配列番号93のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(vii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号94のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(viii)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(ix)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(x)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号97のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
(xi)配列番号95のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号99のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
又は
(xii)配列番号98のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号96のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン。
【0123】
一部の実施形態では、上で定義されているTROP2特異的抗体は、ヒト重鎖定常ドメイン(例、IgG定常ドメイン)及びヒト軽鎖定常ドメイン(例、カッパ又はラムダ軽鎖定常ドメイン)をさらに含む。一部の実施形態では、重鎖定常ドメインは、ヒトIgG1野生型(例、配列番号414において提供されている)、IgG1 KO(例、配列番号415において提供されている)、IgG4 Pro野生型(例、配列番号416において提供されている)、又はIgG1 FcRnmut(例、配列番号417において提供されている)である。一部の実施形態では、ヒト軽鎖定常ドメインはヒトカッパである(例、配列番号418において提供されている)。
【0124】
一部の実施形態では、TROP2特異的抗体は、配列番号414、415、416、又は417のいずれか1つの配列に融合された配列番号83、85、87、89、91、93、95、又は98のいずれか1つの配列を含む重鎖及び配列番号418の配列に融合された配列番号84、86、88、90、92、94、96、97、又は99のいずれか1つの配列を含む軽鎖を有する。
【0125】
本明細書中で提供されるTROP2特異的抗体は、色素、薬物、又は異なる抗原についての結合特異性を伴う別の分子を付着させることにより、TROP2を発現する細胞を(例、ELISAアッセイ、FACS分析、免疫組織学又は同様のものにおいて)インビトロ、インビボ、又はエクスビボで標識、局在化、同定、又は標的化するために使用され得る。本明細書中に記載されるTROP2特異的抗体は、単独で、TROP2を発現する細胞の細胞生存率に対する効果を有さない。一部の実施形態では、TROP2特異的抗体は、TROP2発現細胞の表面に特異的に結合し、そのような細胞を局在化及び/又は同定するために使用される。一部の実施形態では、本明細書中で提供されるTROP2抗体は、TROP2を発現する細胞(例、腫瘍細胞)を同定するために使用される。一部の実施形態では、本明細書中で提供されるTROP2抗体は、薬物又は細胞傷害性薬剤を、そのような薬物又は細胞傷害性薬剤を当該TROP2抗体に付着させることにより、標的細胞(例、TROP2を発現する腫瘍細胞)に送達し、それにより、例えば、当該標的細胞を死滅させるために使用される。
【0126】
また、本明細書中で提供されるのは、サンプル中の栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)を検出する方法であって、方法は、以下の工程を含む:
(a)サンプルを、本明細書中で上に定義されている抗TROP2抗体分子と接触させること;
(b)サンプル中での抗体-抗原複合体の形成を可能にすること;及び
(c)抗TROP2抗体を検出すること。
【0127】
抗体を検出するための手段及び方法は、当技術分野において周知であり、例えば、免疫組織化学、免疫ブロット法、及びELISAを含む。
【0128】
さらに本明細書中で提供されるのは、栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)を検出するキットであって、それにおいて、このキットは、本明細書中で上に定義される抗TROP2抗体分子及び使用のための説明書を含む。
【0129】
CDH17についての単一特異的結合分子。
さらに本明細書中で提供されるのは、CDH17に特異的に結合する抗体分子(例、2つの重鎖及び2つの軽鎖を伴うY形状構造を有する全長抗体/免疫グロブリン分子、又はそれらのフラグメント、例えばFv、Fab、Fab’、もしくはF(ab’)2フラグメントなど、単鎖抗体、単鎖可変フラグメント(scFv))である。一部の実施形態では、CDH17について特異的な抗体分子は、組換えモノクローナル抗体、キメラ、ヒト化、又はヒト抗体分子である。
【0130】
一部の実施形態では、CDH17に特異的な抗体分子は、(i)から(ii)において示される以下のCDRの組み合わせのいずれか1つを含む:
(i)配列番号32(CDR1)、配列番号33(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号35(CDR1)、配列番号36(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR;
ならびに
(ii)配列番号32(CDR1)、配列番号38(CDR2)、及び配列番号34(CDR3)のアミノ酸配列を含む重鎖CDRならびに配列番号39(CDR1)、配列番号40(CDR2)、及び配列番号37(CDR3)のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR。
【0131】
一部の実施形態では、CDH17について特異的な抗体分子は、
(i)配列番号100のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号101のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン;
又は
(ii)配列番号102のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン重鎖可変ドメイン及び配列番号103のアミノ酸配列を含む免疫グロブリン軽鎖可変ドメイン。
【0132】
一部の実施形態では、上で定義されているCDH17特異的抗体は、ヒト重鎖定常ドメイン(例、IgG定常ドメイン)及びヒト軽鎖定常ドメイン(例、カッパ又はラムダ軽鎖定常ドメイン)をさらに含む。一部の実施形態では、重鎖定常ドメインは、ヒトIgG1野生型(例、配列番号414において提供されている)、IgG1 KO(例、配列番号415において提供されている)、IgG4 Pro野生型(例、配列番号416において提供されている)、又はIgG1 FcRnmut(例、配列番号417において提供されている)である。一部の実施形態では、ヒト軽鎖定常ドメインはヒトカッパである(例、配列番号418において提供されている)。
【0133】
一部の実施形態では、CDH17特異的抗体は、配列番号414、415、416、又は417のいずれか1つの配列に融合された配列番号100又は102のいずれか1つの配列を含む重鎖及び配列番号418の配列に融合された配列番号101又は103のいずれか1つの配列を含む軽鎖を有する。
【0134】
本明細書中で提供されるCDH17特異的抗体は、色素、薬物、又は異なる抗原についての結合特異性を伴う別の分子を付着させることにより、CDH17を発現する細胞を(例、ELISAアッセイ、FACS分析、免疫組織学又は同様のものにおいて)インビトロ、インビボ、又はエクスビボで標識、局在化、同定、又は標的化するために使用され得る。本明細書中に記載されるCDH17特異的抗体は、単独で、CDH17を発現する細胞の細胞生存率に対する効果を有さない。一部の実施形態では、CDH17特異的抗体は、CDH17発現細胞の表面に特異的に結合し、そのような細胞を局在化及び/又は同定するために使用される。一部の実施形態では、本明細書中で提供されるCDH17抗体は、CDH17を発現する細胞(例、腫瘍細胞)を同定するために使用される。一部の実施形態では、本明細書中で提供されるCDH17抗体は、薬物又は細胞傷害性薬剤を、そのような薬物又は細胞傷害性薬剤を当該CDH17抗体に付着させることにより、標的細胞(例、CDH17を発現する腫瘍細胞)に送達し、それにより、例えば、当該標的細胞を死滅させるために使用される。
【0135】
また、本明細書中で提供されるのは、サンプル中のカドヘリン-17(CDH17)を検出する方法であって、この方法は以下の工程を含む:
(a)サンプルを、本明細書中で上に定義される抗CDH17抗体分子と接触させること;
(b)サンプル中での抗体-抗原複合体の形成を可能にすること;及び
(c)抗CDH17抗体を検出すること。
【0136】
抗体を検出するための手段及び方法は、当技術分野において周知であり、例えば、免疫組織化学、免疫ブロット、及びELISAを含む。
【0137】
さらに本明細書中で提供されるのは、栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)を検出するキットであって、それにおいて、このキットは、本明細書中で上に定義される抗TROP2抗体分子及び使用のための説明書を含む。
【0138】
本発明の核酸分子、発現ベクター、及び宿主細胞
本発明はさらに、本発明の結合分子をコードする核酸分子、又はその一部に関する。本発明はさらに、本発明の結合分子をコードする核酸分子のセットを包含する。
【0139】
本発明に従って、当該核酸分子は、本発明の結合分子又はその一部を「コード」し、それは、核酸分子が、発現可能な形態において、即ち、本発明の結合分子(又はそのそれぞれの部分)が発現できることを確実にする形態において提供されることを意味する。
【0140】
用語「その一部」は、当業者により理解されるように、本発明の結合分子の全てのエレメントが、単一の核酸分子上にコードされる必要はないという事実を反映する。代わりに、2つ又はそれ以上の核酸分子は、本発明の結合分子の特定の部分を個々にコードすることに依存し得る。このように、本発明はまた、単離された核酸分子のセットを包含し、それにおいて、このセットは、一緒に、本発明の結合分子の全ての部分をコードし、単離された核酸分子のこのセットの発現が、本発明の完全な結合分子の生成をもたらす。換言すれば、1つ又は複数の核酸分子が本明細書中で提供され、それらは、重鎖、軽鎖、scFv、ならびにそれらの組み合わせを含む、本発明の結合分子の個々のポリペプチド鎖を、個々の核酸分子上で別々に、又は1つの核酸分子中で組み合わせてコードする。
【0141】
好ましくは、本発明の結合分子は、2つの異なる単離された核酸分子によりコードされ、それにおいて、第1の核酸分子は、TROP2に特異的に結合する抗原結合部位(単鎖Fab及びFcドメインを含む)を含む全長鎖をコードし、第2の核酸分子は、CDH17(単鎖Fab及びFcドメインを含む)に特異的に結合する抗原結合部位を含む全長鎖をコードし、CD3に特異的に結合する抗原結合部位を含む全長鎖に連結されている(好ましくは、scFvとして)。発現時には、両方の発現されたポリペプチドは、例えば、定常ドメイン間のジスルフィド結合などを介して、本発明の完全な結合分子を形成する。
【0142】
好ましくは、核酸分子は、コード配列を含むDNA分子である。より好ましくは、当該DNA分子は、調節配列、及び場合により、天然又は人工イントロン(例えば、埋め込まれたmiRNA-557発現カセットを伴うホモサピエンスからのβ-グロビンイントロンなど)を追加で含む。それは、その本来のコドンを有し得る、あるいは意図される宿主細胞又は宿主生物における発現のために特に適合された最適化されたコドン使用を有し得る。本発明のそのような核酸分子は、当業者により、それ自体公知の方法に依存して、例えば、自動化された DNA合成、自然供給源からの単離、及び/又は組換え DNA 技術により、本明細書中に与えられる本発明の結合分子についてのアミノ酸配列に関する情報に基づいて、容易に調製される又は得られることができる。
【0143】
本発明の核酸分子は、限定されないが、配列表中に示されるポリペプチド配列をコードするDNA分子を含む。本発明はさらに、WO2007/042309において定義されているように、上で定義されたDNA分子に相補的な核酸分子、ならびに高ストリンジェントな結合及び洗浄条件下でそれにハイブリダイズする核酸分子を企図する。好ましい分子(mRNAの観点から)は、本明細書中に記載されているDNA分子の1つと少なくとも75%又は80%(好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%)の相同性又は配列同一性を有するものである。例として、目的が、真核細胞において本発明の結合分子を発現させることである場合、DNA配列は、真核細胞におけるコドン使用に一致するように設計されなければならない。大腸菌、又は他の原核生物系において抗体を発現させることが望ましい場合、これらの配列は、コドン使用が大腸菌、又はそれぞれの原核生物系に一致するように設計しなければならない。本発明のDNA分子のバリアントは、例えば、WO2007/042309において記載されているように、いくつかの異なる方法において構築することができる。
【0144】
好ましくは、核酸は単離されており、用語「単離された」は上でさらに定義されている。
【0145】
本発明はさらに、本発明の核酸分子を含む発現ベクターに関する。
【0146】
本発明に従って、ベクターは、発現ベクター、即ち、インビトロ及び/又はインビボ(例、適切な宿主細胞、宿主生物、及び発現系において)でコード核酸分子からのそれぞれのポリペプチドの発現を提供することができるベクターである。発現ベクターは、プラスミド、レトロウイルス、コスミド、EBV由来エピソーム、及び同様のものを含む。発現ベクター及び発現制御配列は、典型的には、宿主細胞と適合するように選択される。発現ベクターは、一般的に、1つ又は複数の適切な調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどに作動可能に連結された、本発明の少なくとも1つの核酸分子を含む。本発明のポリペプチドを発現させるために有用な又は必要な、そのような調節エレメント及び他のエレメント、例えば組込み因子、選択マーカー、シグナル配列又はリーダー配列、レポーター遺伝子、及び同様のものの具体例が、例えば、WO2006/040153のpp.131~133に開示されている。
【0147】
プロモーター配列についての非限定的な例(哺乳動物細胞における発現について例示される)は、CMVから由来するプロモーター及び/又はエンハンサー(例えばヒトサイトメガロウイルスのCMVプロモーター/エンハンサー又はCMVシミアンウイルス40(SV40)プロモーター/エンハンサーなど)、アデノウイルス、(例、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))、ポリオーマ、ならびに強力な哺乳動物プロモーター、例えば天然免疫グロブリン及びアクチンプロモーターなどである。ポリアデニル化シグナルについての例は、ハムスター成長ホルモン又はウシ成長ホルモンのポリA、SV40後期又は初期ポリAであり;あるいは、免疫グロブリン遺伝子の3’UTR などを使用することができる。
【0148】
組換え発現ベクターはまた、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例、複製起点、例えばColE1(pUC)複製起点など)及び選択マーカー遺伝子(例えば、大腸菌におけるプラスミドの増幅についてのアンピシリン耐性を与えるβ-ラクタマーゼ遺伝子など)を保有し得る。組換え発現ベクターはまた、結果として得られるポリペプチドの分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。それぞれのポリペプチド鎖をコードする核酸分子を、シグナルペプチドが、成熟全長核酸分子鎖のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクター中にクローニングしてもよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド、又は非免疫グロブリンタンパク質からの異種ペプチドであり得る。あるいは、本発明のタンパク質の全長鎖をコードするDNA配列は、シグナルペプチド配列を既に含み得る。
【0149】
上で示したように、ベクターにおいて挿入されるコード配列は、例えば、標準的な方法により合成される、あるいは天然供給源から単離される、又は半合成的に、即ち、化学合成及び組換え技術を組み合わせることにより産生される。転写調節エレメント及び/又は他のアミノ酸コード配列へのコード配列のライゲーションは、確立された方法を使用して行うことができる。しばしば用いられる1つのアプローチは、例えば、機能的に完全なヒトCH(定常重鎖)免疫グロブリン配列をコードするベクターを使用することであり、操作された、適した制限部位を伴い、任意の抗原結合部位、例えば単鎖Fab配列又は任意の重鎖/軽鎖可変ドメインなどが、簡単に挿入されて、発現できるようにする。抗体重鎖については、それは、限定されないが、任意のIgGアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)又は対立遺伝子バリアントを含む他の免疫グロブリンであり得る。
【0150】
1を上回る核酸分子が、本発明の結合分子を構成するために要求される場合には、これらの1を上回る核酸分子を、異なる又は同じ発現ベクター中に挿入することができる。後者の場合では、それらは、同じ調節エレメント、例えば、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター及び同様のものの制御下にあり得る、あるいは、それらは、各々が、それら自体の調節エレメントのセットを有し得る。本発明に従って、1を上回る核酸分子が、本発明の結合分子の個々のエレメント(即ち、TROP2に特異的に結合する抗原結合部位を含むポリペプチド鎖、CHD17に特異的に結合する抗原結合部位を含むポリペプチド鎖、及びCD3に特異的に結合する抗原結合部位を含むポリペプチド鎖)をコードする場合には、本発明の結合分子を形成するのに要求される全ての個々の核酸分子が、単一の発現ベクター上に存在しており、好ましくは、各々の核酸分子が、それ自体の調節エレメントのセットを有することが特に好ましい。
【0151】
これらのDNA分子を含む発現ベクターは、宿主細胞、例えば、細菌細胞又は(高等)真核細胞、例えば、哺乳動物細胞中に、リポソーム媒介トランスフェクション、ポリカチオン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、又はウイルスベクターによる移入を含む、当技術分野において周知のトランスフェクション方法に従って導入することができる。
【0152】
したがって、本発明はまた、本発明の発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞に関する。
【0153】
宿主細胞は、原核細胞、例えば細菌など、ならびに真核細胞、例えば酵母細胞又は哺乳動物細胞などを含む、当技術分野において公知の任意の適切な細胞であり得る。哺乳動物細胞の非限定的な例は、限定されないが、ヒト、マウス、ラット、サル、及びげっ歯類の細胞株を含む。発現のための宿主細胞として利用可能な特定の哺乳動物細胞株が、当技術分野において周知であり、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0、SP2/0細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト癌細胞(例、Hep G2細胞及びA-549細胞)、3T3細胞、又は任意のそのような細胞株の派生体/後代を含む。上記の宿主細胞のための適した培地及び条件は、当技術分野において公知である。
【0154】
本発明の結合分子を産生するための方法
本発明はまた、本発明の結合分子を産生する方法に関し、この方法は、以下の工程を含む:
(a)本発明の結合分子の発現を可能にする条件下で本発明の宿主細胞を培養すること;
(b)場合により、当該分子を回収すること;ならびに、場合により、
(c)当該結合分子をさらに精製及び/又は修飾及び/又は製剤化すること。
【0155】
本発明のタンパク質は、宿主細胞によるタンパク質の発現を可能にするのに十分な期間にわたり宿主細胞を培養することにより産生される。
【0156】
原核生物又は真核生物の宿主を培養するための適切な条件は、当業者に周知である。発現産物の収量及び溶解度を増加させるために、培地を緩衝化する、又は両方を増強もしくは促進することが公知である適切な添加剤を添加することができる。一般的に、当業者はまた、これらの条件が、宿主のニーズ及び発現される分子の要件に適合しなければならないであろうことを認識している。誘導性プロモーターが、宿主細胞中に存在するベクター中で本発明の核酸分子を制御する場合では、目的の分子の発現を、適した誘導剤の添加により誘導することができる。適切な発現プロトコール及び戦略が、当業者に公知である。
【0157】
その後に、本発明の結合分子が回収され、必要な場合に、さらに精製される。好ましくは、それらは、分泌分子として培養培地から回収される。しかし、それらはまた、例えば、それらが、分泌シグナルを伴わずに発現された場合には、宿主細胞溶解物から回収することができる。用語「当該分子を回収する」は、本発明の核酸分子によりコードされる本発明の結合分子、即ち、本発明の核酸分子又はベクターを用いた当該宿主細胞の形質転換又はトランスフェクションに起因して本発明の宿主細胞中に存在する結合分子の単離を指すことが理解されるであろう。
【0158】
本発明の結合分子を精製する任意の工程は、分子の実質的に均質な調製物を得る際にさらに役立つ。目的の分子を精製するための手段及び方法は、周知であり、当業者は、例えば、組換えタンパク質及び宿主細胞タンパク質のために使用される標準的なタンパク質精製方法を使用し、それを、それぞれの分子について適した方法で調整することができる。例として、本発明の結合分子を得るために有用な最先端の精製方法は、第1の工程として、培養培地又は溶解物からの細胞及び/又は粒子状細胞破片の除去、それに続く、例えば、免疫親和性カラム又はイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、セファデックスクロマトグラフィー、シリカでの又は陽イオン交換樹脂でのクロマトグラフィーによる混入可溶性タンパク質、ポリペプチド、及び核酸の除去を含む。
【0159】
本発明の結合分子を得る過程における最後の任意の工程として、精製されたタンパク質分子を乾燥させる、例えば、治療適用については以下に記載されているように凍結乾燥させる、又は所望の場合には製剤化してもよい。さらに、結果として得られた本発明の結合分子は、例えば、不要な翻訳後修飾及び同様のものを除去するために、さらなる修飾に供してもよい。
【0160】
本発明の結合分子の又は医薬組成物の医薬組成物及び医療用途
本発明はさらに、本発明の1つ又は複数の結合分子を含む、あるいはそれらからなる医薬組成物に関する。一実施形態では、当該結合分子は、唯一の医薬的に活性な薬剤である。代わりの実施形態では、当該組成物は、当該結合分子に加えて、例えば、以下でさらに定義されるような1つ又は複数のさらなる医薬的活性薬剤を含む。
【0161】
本発明に従って、用語「医薬組成物」は、患者、好ましくはヒト患者への投与のための組成物に関する。本発明の医薬組成物は、上に列挙される化合物を単独で又は組み合わせにおいて含む。それは、場合により、本発明の化合物の特性を変化させ、それにより、例えば、それらの機能を安定化、調節、及び/又は活性化することが可能なさらなる分子を含み得る。組成物は、固体、液体、又は気体の形態であり得る、とりわけ、粉末、例えば、凍結乾燥粉末、(a)溶液、(a)錠剤、又は(a)エアロゾルの形態であり得る。好ましくは、組成物は凍結乾燥粉末又は溶液である。
【0162】
治療において使用するために、本発明の結合分子又は抗体は、動物又はヒトへの投与を促進するために適した医薬組成物中に製剤化される。このように、本発明の医薬組成物はまた、好ましくは、医薬的に許容可能な担体を含む。そのような担体を含む組成物は、周知の従来の方法により製剤化することができる。典型的には、本発明の結合分子を含む医薬組成物は、結合分子を、そのような医薬的に許容可能な担体、ならびに(場合により)賦形剤又は安定剤と混合することにより製剤化することができる。「医薬的に許容可能な担体」により、非毒性の固体、半固体又は液体の充填剤、希釈剤、カプセル化材料、又は任意の種類の製剤補助剤を意味する。また、他の賦形剤、修飾剤、又は安定剤は、用いられる投与量及び濃度では無毒である。医薬的に許容可能な担体、賦形剤、修飾剤、及び安定剤は、限定されないが、緩衝系、例えばリン酸、クエン酸、酢酸、他の無機酸又は有機酸及びそれらの塩など;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤、例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリドなど;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチルパラベン又はプロピルパラベンなど;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリンなど;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン又はポリエチレングリコール(PEG)など;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリジンなど;単糖類、二糖類、オリゴ糖、又は多糖類、及びグルコース、マンノース、スクロース、トレハロース、デキストリン、又はデキストランを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTAなど;糖アルコール、例えばマンニトール又はソルビトールなど;塩形成対イオン、例えばナトリウムなど;金属錯体(例、Zn-タンパク質錯体);及び/又はイオン性もしくは非イオン性界面活性剤、例えばTWEEN(商標)(ポリソルベート)、PLURONICS(商標)もしくは脂肪酸エステル、脂肪酸エーテル又は糖エステルなどを含む。また、有機溶媒、例えばエタノール又はイソプロパノールなどを製剤中に含めることもできる。賦形剤はまた、放出調節機能又は吸収調節機能を有し得る。
【0163】
通常、水溶液又は懸濁液が好ましい。一般的に、治療用タンパク質、例えば本発明の結合分子などのための適切な製剤は、緩衝タンパク質溶液、例えば適切な濃度(例えば0.001~400mg/ml、好ましくは0.005~200mg/ml、より好ましくは0.01~200mg/ml、より好ましくは1.0~100mg/ml、例えば1.0~10.0mg/ml(静脈内投与)又は100mg/ml(皮下投与)など)においてタンパク質を含む溶液、及び水性緩衝液、例えば:
-リン酸緩衝生理食塩水、pH 7.4、
-他のリン酸緩衝液、pH 6.2~8.2、
-酢酸緩衝液、pH 3.2~7.5、好ましくは pH 4.8~5.5
-ヒスチジン緩衝液、pH 5.5~7.0、
-コハク酸緩衝液、pH 3.2~6.6、又は
-クエン酸緩衝液、pH 2.1~6.2などであり、
ならびに、場合により、溶液の等張性を提供するための塩(例、NaCl)及び/又は安定化剤(例えば、例、スクロース、トレハロース、リジンなど)及び/又は他の多価アルコール(例えば、例、マンニトール及びグリセロール)、ならびに、場合により、凝集を防止するための界面活性剤(例、0.02% Tween-20又はTween-80)である。
【0164】
静脈内投与のための好ましい緩衝タンパク質溶液は、10mMクエン酸緩衝液、pH5.5、207mMスクロース、25mMリジンHCl及び0.02%ポリソルベート20中に溶解された約10mg/mlの本発明の結合分子を含む溶液である。皮下適用のための製剤は、有意に高い濃度、例えば、100mg/mlまで又はさらに100mg/mlを上回る、などの本発明の抗体を含み得る。しかし、上に与えられた成分及びその量は、1つの好ましい選択肢を表すだけであることが、当業者には明らかであろう。その代替案及びバリエーションは、当業者には直ちに明らかとなる、又は上の開示から始めて、簡単に想到できる。
【0165】
本発明の医薬組成物は、例えば、注入又は注射(静脈内、関節内、筋肉内、皮下、胸骨内、腹腔内、皮内)による非経口投与、ならびに経皮、鼻腔内、頬側、もしくは経口投与又は吸入による投与を含む、任意の適切な投与様式を使用して対象に投与することができる。溶液又は再構成凍結乾燥粉末の投与については、非経口投与様式が好ましい。
【0166】
一般的に、本明細書中で言及される疾患、障害、及び状態の処置、予防、及び/又は軽減のために、処置される特定の疾患、障害、又は状態に依存して、使用される本発明の特異的結合分子の効力、使用される特定の投与経路及び特定の医薬製剤又は組成物は、投与される実際の用量に対して影響を有する。さらに、実際の医薬的な有効量又は治療投与量はまた、当業者により公知の要因、例えば患者の年齢及び体重などに依存するであろう。いずれの場合でも、本発明の結合分子又は本発明の医薬組成物は、医薬的に有効な量が、患者の固有の状態に基づいて送達されることを可能にする投与量及び様式において投与される。好ましくは、本発明の結合分子又は本発明の医薬組成物は、体重1kgあたり0.005~20.0mg/用量の間、好ましくは0.05~10.0mg/kg/用量の間、より好ましくは0.5~5mg/kg/用量の間で、連続的に(例、注入による)、又はより好ましくは単一用量として投与されるであろう。投与間隔は、例えば、週2回、毎週、又は毎月の用量であり得るが、しかし、特に、前述のパラメータに依存して有意に変動し得る。このように、一部の場合では、上に与えられる最小用量未満を使用することが十分であり得るのに対し、他の場合では、上限を超えなければならないこともある。大量に投与する場合には、それらを、1日にわたり多数のより少ない用量に分割することが推奨される。好ましくは、投与は、体重1kgあたり0.005~20.0mg/用量の間からの用量範囲、好ましくは0.05~10.0mg/kg/用量の間、より好ましくは0.5~5mg/kg/用量の間の用量で週1回である。
【0167】
本発明の結合分子、及び同を含む組成物の有効性は、任意の適切なインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、インビボアッセイ及び/又はそれ自体公知の動物モデル、あるいはそれらの任意の組み合わせを、含まれる特定の疾患に依存して使用してテストすることができる。適切なアッセイ及び動物モデルは、当業者には明らかであり、例えば、以下の実施例において使用されるアッセイ及び動物モデルを含む。
【0168】
本発明の結合分子又は本発明の医薬組成物は、それ自体で、又は他の薬理学的に活性な成分、例えば最先端又は標準治療の化合物、例えば、例、細胞増殖抑制性又は細胞傷害性物質、細胞増殖阻害剤、抗血管新生物質、ステロイド、免疫調節剤/チェックポイント阻害剤、及び同様のものとの組み合わせにおいて使用してもよい。
【0169】
それ故に、本発明のさらなる態様は、本発明の結合分子、又は本発明の結合分子を、1つ又は複数のさらなる活性成分、及び場合により、医薬的に許容可能な担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0170】
本発明に従って組み合わせパートナーとして投与され得る細胞増殖抑制性物質及び/又は細胞傷害性活性物質は、それに限定されないが、ホルモン、ホルモン類似体及び抗ホルモン、アロマターゼ阻害剤、LHRHアゴニスト及びアンタゴニスト、成長因子の阻害剤(成長因子、例えば血小板由来成長因子(PDGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)、表皮成長因子(EGF)、インスリン様成長因子(IGF)、ヒト上皮成長因子(HER、例、HER2、HER3、HER4)及び肝細胞成長因子(HGF)など)を含み、阻害剤は、例えば、(抗)成長因子抗体、(抗)成長因子受容体抗体、及びチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、セツキシマブ、ゲフィチニブ、アファチニブ、ニンテダニブ、イマチニブ、ラパチニブ、ボスチニブ、及びトラスツズマブなど;代謝拮抗剤(例、葉酸拮抗剤)、例えばメトトレキサート、ラルチトレキセド、ピリミジン類似体など、例えば5-フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、イリノテカン、ドキソルビシン、TAS-102、カペシタビン及びゲムシタビンなど、プリン及びアデノシン類似体、例えばメルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン及びペントスタチン、シタラビン(ara C)、フルダラビンなど);抗腫瘍性抗生物質(例、アントラサイクリン);プラチナ誘導体(例、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン);アルキル化剤(例、エストラムスチン、メクロレタミン、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、ダカルバジン、シクロホスファミド、イホスファミド、テモゾロミド、ニトロソウレア、例えばカルムスチン及びロムスチン、チオテパなど);有糸分裂阻害剤(例、ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及びビンクリスチンなど;及びタキサン、例えばパクリタキセル、ドセタキセルなど);ベバシズマブ、ラムシルマブ、及びアフリベルセプトを含む血管新生阻害剤、チューブリン阻害剤;DNA合成阻害剤、PARP阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤(例、エピポドフィロトキシン、例えば、エトポシド及びエトポホス、テニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカン、ミトキサントロンなど)、セリン/スレオニンキナーゼ阻害剤(例、PDK1阻害剤、Raf阻害剤、A-Raf阻害剤、B-Raf阻害剤、C-Raf阻害剤、mTOR阻害剤、mTORC1/2阻害剤、PI3K阻害剤、PI3Kα阻害剤、二重mTOR/PI3K阻害剤、STK33阻害剤、AKT阻害剤、PLK1阻害剤(例えばボラセルチブなど)、CDKの阻害剤、CDK9阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤を含む)、チロシンキナーゼ阻害剤(例、PTK2/FAK阻害剤)、タンパク質タンパク質相互作用阻害剤、MEK阻害剤、ERK阻害剤、FLT3阻害剤、BRD4阻害剤、IGF-1R阻害剤、Bcl-xL阻害剤、Bcl-2阻害剤、Bcl-2/Bcl-xL阻害剤、ErbB受容体阻害剤、BCRABL阻害剤、ABL阻害剤、Src阻害剤、ラパマイシン類似体(例、エベロリムス、テムシロリムス、リダフォロリムス、シロリムス)、アンドロゲン合成阻害剤、アンドロゲン受容体阻害剤、DNMT阻害剤、HDAC阻害剤、ANG1/2阻害剤、CYP17阻害剤、放射性医薬品、免疫療法剤、例えば免疫チェックポイント阻害剤(CTLA4、PD1、PD-L1、LAG3、及びTIM3結合分子/免疫グロブリン、例えばイピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブなど)及び種々の化学療法剤、例えばアミホスチン、アナグレリド、クロドロナート、フィルグラスチン、インターフェロン、インターフェロンアルファ、ロイコボリン、リツキシマブ、プロカルバジン、レバミゾール、メスナ、ミトタン、パミドロネート及びポルフィマーなど;プロテアソーム阻害剤(例えばボルテゾミブなど);Smac及びBH3模倣物;mdm2-p53アンタゴニストを含むp53機能性を回復する薬剤;Wnt/ベータ-カテニンシグナル伝達経路の阻害剤;間質調節因子、例えばCD137及びFAPを標的化する(好ましくは二重特異性)分子など;及び/又はサイクリン依存性キナーゼ 9阻害剤である。
【0171】
本発明に従って好ましいのは、以下より選択される薬物との組み合わせにおける本発明の結合分子又は本発明の医薬組成物を用いた処置である:
(i)例えば、特に乳癌患者における化学療法の組み合わせ(ネオアジュバント設定におけるドキソルビシン/シクロホスファミドの組み合わせ及び/又はカペシタビン/ドセタキセルの組み合わせ;最初の及びその後のラインの処置におけるタキサン/プラチナレジメンを含む)を伴う又は伴わない抗VEGF抗体(ベバシズマブ及び他の抗血管新生物質);
(ii)CRCの処置のために使用される化学療法剤(5-フルオロウラシル、イリノテカン、ドキソルビシン、及びTAS-102を含む);
(iii)例えば、CRC患者の処置のための、化学療法の組み合わせ(イリノテカンを含む)、抗VEGF抗体の組み合わせ(ベバシズマブ及び他の抗血管新生物質)、又はレゴラフェニブの組み合わせを伴う又は伴わない抗EGFR抗体(KRAS野生型腫瘍におけるセツキシマブ及びパニツムマブ);ならびに/あるいは
(iv)例えば、CRC患者の処置のための、抗PD-1薬剤及び抗PD-L1薬剤ならびに抗LAG3薬剤、例えばエザベンリマブ、ペンブロリズマブ、及びニボルマブ、ならびにWO2017/198741において開示されている他の抗体を含む免疫療法剤;ならびに/あるいは
(v)間質調節因子、例えばCD137及びFAPを標的化する(好ましくは二重特異性)分子など。
【0172】
特に好ましい実施形態では、本発明の結合分子又は本発明の医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤との、好ましくはPD-1アンタゴニスト、例えば抗PD-1抗体又は抗PDL-1抗体などとの組み合わせにおける癌の処置のために使用される。好ましくは、当該抗PD-1抗体は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、ピディリズマブ、又はWO2017/198741(参照により本明細書中に組み入れられる)において記載されているPD1-1、PD1-2、PD1-3、PD1-4、及びPD1-5からなる群より選択され、より好ましくは、当該抗PD-1抗体はエザベンリマブである。好ましくは、当該抗PDL-1抗体は、アテゾリズマブ、アベルマブ、及びデュルバルマブからなる群より選択される。
【0173】
本発明はさらに、医療における使用のための本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物に関する。本発明はさらに、医薬の調製における使用のための、本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物に関する。
【0174】
さらに、本発明はまた、癌を処置、寛解、又は予防する方法における使用のための、本発明の結合分子、又は本発明の医薬組成物に関する。本発明はさらに、本発明の結合分子の、又は本発明の医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、癌を処置、予防、又は寛解する方法に関する。
【0175】
投与される分子の「治療有効量」は、癌の臨床症状を予防、寛解、又は処置するために必要な最小量、特に処置される特定の癌に対して有効である最小量である。
【0176】
本明細書中で使用される用語「癌」は、組織病理学的な型又は浸潤の段階に無関係に、全ての種類の癌性成長又は発癌過程、転移組織又は悪性形質転換した細胞、組織、もしくは器官を含むことを意味する。このように、身体におけるそれらの特定の位置/起源により特徴付けられる、以下に言及される全ての癌、腫瘍、新生物などが、原発腫瘍及びそれから由来する転移性腫瘍の両方として含まれることを意味する。
【0177】
本明細書中に記載される多重特異的結合分子を使用して成長を阻害できる癌は、限定されないが、T細胞リンパ腫、骨髄性白血病、乳癌、卵巣癌、口腔扁平上皮癌、消化器癌を含む、任意のTROP2/CDH17発現腫瘍である。胃腸癌は、限定されないが、食道癌(例、胃食道接合部癌)、胃(胃)癌、肝細胞癌、胆道癌(例、胆管癌)、胆嚢癌、膵臓癌、又は結腸直腸癌(CRC)を含む。一部の実施形態では、以下の癌、腫瘍、及び他の増殖性疾患が、本発明の多重特異的結合分子で処置され得る:頭頸部癌、好ましくはHNSCC;肺癌;好ましくはNSCLC;乳癌;甲状腺癌;子宮頸癌;卵巣癌;子宮内膜癌;肝臓癌(肝芽腫又は肝細胞癌);膵臓癌;前立腺癌;胃肉腫;胃腸間質腫瘍、食道癌;結腸癌;結腸直腸癌;腎臓癌;皮膚癌;脳腫瘍;膠芽腫;非ホジキンリンパ腫(T又はB細胞リンパ腫);白血病(慢性又は急性骨髄性白血病、非リンパ球性白血病)、又は多発性骨髄腫。
【0178】
本発明に従った使用のための結合分子もしくは医薬組成物、又は本発明の癌を処置、予防、もしくは寛解する方法、又は本発明の使用の好ましい実施形態では、癌は結腸直腸癌(CRC)であり、転移性CRC(mCRC)、胃癌(GC)、膵臓癌(PAC)、又は食道癌を含む。本発明の特に好ましい実施形態では、癌はmCRCである。
【0179】
結腸直腸癌(CRC)は、ICD-10にリストされている明確な悪性疾患であり、世界中で癌の罹患及び死亡の主な原因の1つである。CRC患者の約25%が、顕性の転移を呈し、転移性疾患が、新たに診断された患者の40~50%において発生する。化学療法における最近の改善によって、転移性CRCの生存期間が延長されたが、大半の患者は、それらの疾患に屈するであろう。それ故に、この疾患を処置するためのさらなる治療薬剤についての大きな必要性がある。
【0180】
結腸直腸癌の約30~50%が、変異(異常)KRAS遺伝子を有することが公知である。新生物において頻繁に見出されるKRAS変異は、エクソン2(コドン12及び13)及びエクソン3(コドン61)での変異を含み、腫瘍生検から分析できる。それらは、継続的なシグナル伝達をもたらす活性化変異、細胞の成長、増殖、浸潤、及び転移において含まれる下流のシグナル伝達経路を刺激することを含む。このように、一実施形態では、本発明の結合分子は、KRAS変異型結腸直腸癌(即ち、KRAS変異型腫瘍を伴う患者)の処置における使用のためである。代わりの実施形態では、本発明の結合分子は、KRAS野生型結腸直腸癌(即ち、KRAS野生型腫瘍を伴う患者)の処置における使用のためである。
【0181】
胃癌は、また、胃癌として公知であり、癌関連死の第3の原因である。発生率は、20世紀初頭以降、食料保存における改善に起因して減少している一方で、胃癌は依然として、不良な予後を伴う適応症である。なぜなら、大多数の患者は、既に進行性疾患を呈し、治療の選択肢が手術、化学療法、放射線療法、及び限定された量の標的治療に限定されているからである。
【0182】
膵臓癌(PAC)は、世界中で年間400,000人以上の死亡を起こしている悪性疾患である。それは、先進国における癌関連死の最も一般的な原因の間にある。手術及び化学療法などの治療介入にもかかわらず、膵臓腺癌は、全ての膵臓癌症例の約90%を占めており、典型的には、非常に不良な予後を有し、約25%の人々が1年間生存し、わずか5%の人々が5年間にわたり生存する。
【0183】
食道癌は、世界中で最も頻繁に診断される癌の間にある。膵臓癌と同様に、診断は難しく、既に進行した段階で起こる傾向があるため、この適応症についての非常に不良な予後に導く。結果として、それは、癌関連死の約5%を占め、このように、6番目に最も多い癌関連死の原因となっている。
【0184】
食道癌の2つの主な型、すなわち、食道扁平上皮癌(ESCC、症例の60~70%)及び食道腺癌(EAC、症例の20~23%)の発生率は、異なる地理的地域の間で大きく変動し、ESCCは開発途上国においてより一般的であるのに対して、EACは先進国において主流である。現在の処置選択肢は、ほとんど手術及び化学療法又は放射線療法に限定されている。局所的な腫瘍だけが、治癒を意図して処置されるのに対して、転移性疾患の治療はほとんど緩和的である。
【0185】
上で述べられるように、本発明者らは、本明細書中に記載される結合分子が癌細胞を標的化するための多くの有用性を有し、従って、TROP2及びCDH17の両方を発現する癌の治療において使用することができることを確認した。特定の腫瘍がTROP2及びCDH17の両方を発現するか否かを同定する方法は、当技術分野において周知である。例えば、免疫組織化学を使用して、腫瘍組織がTROP2及びCDH17を発現し(例、本明細書中に記載されるTROP2及び/又はCDH17抗体を使用)、それ故に本発明の結合分子での処置について適切であるか否かを決定することができる。
【0186】
本発明の結合分子は、第一選択、第二選択、又は任意のさらなるラインの処置及び維持処置の状況における治療レジメンにおいて使用してもよい。
【0187】
さらなる態様では、本発明の結合分子は、結合分子の投与のために有用なデバイス、例えばシリンジ、インジェクターペン、マイクロポンプ、又は他のデバイスとの組み合わせにおいて使用される。さらなる態様では、本発明の結合分子は、例えば、また、結合分子の使用のための説明書を伴う添付文書を含む、部品のキット中に含まれる。
【0188】
実施例:
本発明を、今回、以下の非限定的な実施例により記載する。
【0189】
実施例1:GI癌組織で、しかし、正常組織ではなく、共発現される膜タンパク質としてのTrop2及びCDH17の同定
GeneLogicから得られた腫瘍及び重要な正常組織におけるTrop2及びCDH17の遺伝子発現を、Affymetrix Chipset HGU133a及びHGU133bを用いて測定し、特定の適応症、例えば胃癌、膵臓癌、食道癌、及び結腸直腸癌などの腫瘍組織における共発現が確認された(図1中に示すとおり)。共発現は正常組織において検出されなかった。
【0190】
CDH17及びTrop2タンパク質の発現をさらに、単一染色及び二重染色プロトコールにおいてTrop2(ENZ-ABS380、Enzo)及びCDH17(760-4865、Roche Ventana)に結合する抗体を使用した免疫組織化学により、ヒト腫瘍組織切片において評価した。これによって、胃、膵臓、及び結腸直腸起源の腫瘍細胞上でこれらの標的の共発現が追加的に確認された(図2)。
【0191】
実施例2:本発明の三重特異的結合タンパク質の概略図
Trop2及びCDH17を共発現する腫瘍細胞のT細胞媒介性溶解を達成するために、Trop2、CDH17、及びCD3に結合する多重特異的結合タンパク質が設計された。使用される1つの例示的な分子設計は、図3中に示されるように、IgG抗体足場及びIgG様構造を有する。それは、抗Trop2結合アームでのノブ部分及び抗CDH17結合アームでのHole部分を伴う、当技術分野において公知のヘテロ二量体化のためのFcドメイン中でのノブ・イン・ホール技術を特徴とする。また、結合タンパク質は、各々のアーム中の軽鎖と対応する重鎖の間に柔軟なペプチド配列を有する。CD3結合単鎖可変領域が、この例示的な設計において、ホール鎖のFc部分に付着されている。このように、結合タンパク質は、3つの抗原結合部位を含み、1つはTrop2に結合し、他の1つはCDH17に結合し、それにおいて、各々のアームは単鎖Fab及びFc領域を含み、第3の抗原結合部位は、scFvとしてCD3に結合する。好ましい分子設計では、結合分子は三重特異的及び三価(即ち、3つの標的の各々についてそれぞれ一価)である。
【0192】
実施例3:抗原結合部位及び三重特異的結合分子の設計、構築、及び検証
実施例3.1:ハイブリドーマ及び培養された単一B細胞からのハイスループットV遺伝子回収を使用した、Trop2及びCDH17を認識する抗原結合部位の調製
抗Trop2結合剤を得るために、Trop2免疫化野生型マウス及びAlivaMabヒト化マウス(Ablexis、米国カリフォルニア州サンフランシスコ:ヒト免疫グロブリン遺伝子座を伴うAlivaMabトランスジェニックマウスプラットフォーム)から由来するハイブリドーマ又は単一B細胞をインビトロで培養した。上清を、AlphaLISA(PerkinElmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)により、組換えヒトTrop2に対する反応性についてスクリーニングし、ヒトTrop2を発現する原発癌細胞株への結合を、フローサイトメトリーにより確認した。
【0193】
抗CDH17結合剤を得るために、野生型マウスの免疫化を Abpro(Abpro SOW#4)で実施した。免疫化マウスから由来するハイブリドーマ又は単一B細胞をインビトロで培養した。上清を、AlphaLISA(PerkinElmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)により、組換えヒトCDH17に対する、ならびにヒトCDH17を発現するAsPC-1膵臓腫瘍細胞株(ATCC(登録商標)、CRL-1682)及び/又はNCI-H716結腸腫瘍細胞株(ATCC(登録商標)、CCL-251)の細胞に対する反応性について、フローサイトメトリーによりスクリーニングした。リンパ節を標準的なAbproハイブリドーマ手順に従って処理した。一次スクリーニングは、hCDH17-His(以下の実施例4.5において記載されるように調製)を使用したELISAにより実施した。全てのELISA陽性ウェルを、上に列挙される2つの細胞株に対してフローサイトメトリーによりスクリーニングした。全てのELISA及び細胞株陽性ウェルを拡大し、両方の方法により再テストした。増殖させた陽性ハイブリドーマの親和性ランキングを、ForteBio Octetを使用して行った。
【0194】
Trop2及びCDH17の両方について、免疫グロブリン(Ig)VH及びVL遺伝子を次に、同定された陽性クローンから増幅させた。ハイブリドーマから RNAを単離するために、単一クローンからの約2×10個細胞をペレット化し、材料として使用した。単一のB細胞について、単一に単離された B細胞から増殖させた100~500個の細胞を、供給材料として使用した。RNAを、RNeasy Plus(Qiagen、ドイツ、ヒルデン)を使用して単離した。cDNAを次に、Smarter cDNA合成キット(Clontech、カリフォルニア州マウンテンビュー)を製造業者の指示に従って使用して合成した。
【0195】
cDNA合成を促進するために、オリゴdTを使用して全てのメッセンジャー RNAの逆転写をプライミングし、その後にSmarter IIAオリゴヌクレオチドを用いた「5’ キャッピング」が続いた。VH及びVLフラグメントのその後の増幅を、Smarter IIAキャップを標的化する5’プライマー及びCH1中のコンセンサス領域を標的化する3’プライマーを使用した2ステップPCR増幅を使用して実施した。簡単には、各々の50μlのPCR 反応は、20μMのフォワード及びリバースプライマーミックス、25μlのPrimeStar Max DNAポリメラーゼプレミックス(Clontech)、2μlの未精製cDNA、及び21μlの2回蒸留水からなる。サイクリングプログラムは 94℃で3分間にわたり開始し、その後に35サイクル(30秒間にわたる94℃、1分間にわたる50℃で、1分間にわたる68℃)が続き、7分間にわたる72℃で終了する。第2ラウンドのPCRを、それらのそれぞれのpTT5マザーベクター中のそれぞれの領域(VH及びVL)に「重複」する15bpの相補的伸長を含むVL及びVHの第2ラウンドプライマーを用いて実施した。第2ラウンドのPCRを、以下のプログラムを用いて実施した:3分間にわたる94℃;35サイクル(30秒間にわたる94℃、1分間にわたる50℃、1分間にわたる68℃)、7分間にわたる72℃で終了する。
【0196】
In-Fusion(登録商標)HD Cloning Kit(Clontech、米国)を、pTT5 huIgK ベクター中へのVL遺伝子の、pTT5 huIgG1KOベクター中へのVH遺伝子の方向性クローニングするために使用した。In-Fusion(登録商標)HDクローニングを促進するために、PCR産物を、In-Fusion HDクローニングの前に精製し、Cloning Enhancerで処理した。クローニング及び形質転換を、製造業者(Clontech、米国)のプロトコールに従って実施した。ミニプレップDNAをサンガー配列決定に供して、完全なV遺伝子フラグメントが得られたことを確認した。
【0197】
この方法論を使用して、Trop2及びCDH17についての特異性を伴う抗原結合部位をコードするIg VH及びVL遺伝子のペアを調製した。組換え抗体を、対応する重鎖及び軽鎖をコードするプラスミドを用いたCHO-E37細胞の一過性トランスフェクションにより産生した。
【0198】
実施例3.2:組換え抗体の確認的スクリーニング
発現された組換え抗体を含む上清を、ヒト又はカニクイザルのTrop2及びCDH17をそれぞれ発現する細胞株への結合についてフローサイトメトリーによりアッセイした。簡単には、細胞を組換え上清とインキュベートし、洗浄し、上清からの結合モノクローナル抗体(mAb)を抗ヒトIgG-APC(Jackson ImmunoResearch 109-136-098)で検出した。シグナル対バックグラウンド比率(S/B)を、サンプルの蛍光強度中央値(MFI)を、アイソタイプコントロール(無関係なタンパク質に対する可変領域及び異なる定常領域バックボーン)の蛍光強度中央値(MFI)により割ることにより算出した。
【0199】
Biacore 4000上の表面プラズモン共鳴(SPR)を、組換え上清で実施した。簡単には、HTP上清中の非最適化IgGを、プロテインA/Gを介して、10μl/分で60秒間にわたりセンサー表面上に捕捉した。捕捉されたIgGへの100nMヒトTrop2又は100nMヒトCDH17の結合を、30μl/分で180秒間の会合、それに続くHBS-EP緩衝液中での120秒間の解離についてモニタリングした。プロテインA/G 表面の再生を、各々の結合サイクルの間にグリシンpH 2.1を用いて実施した。
【0200】
以下の材料を、このアッセイにおいて使用した:タンパク質試薬:組換え発現されたヒトTrop2及びCDH17。システム泳動緩衝液:HBS-EP緩衝液(10mM HEPES pH 7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、及び0.005% v/v ポリソルベート P20)。捕捉試薬:プロテインA/G G(ThermoFisher Scientific、米国マサチューセッツ州ウォルサム)、全てのヒトIgGアイソタイプに向けられた特異性を伴う。
【0201】
目的のクローン(nM範囲中のKdを伴う)を多重特異的フォーマット用に選択した。多重特異的結合タンパク質をその後に生成し、以下に記載されるように機構的及び機能的スクリーニング(例えば、例、細胞結合、細胞毒性、及びT細胞活性化など)においてさらに評価した。
【0202】
実施例3.3:Trop2及びCDH17結合剤のヒト化及び最適化
上に記載されるTrop2及びCDH17結合剤の配列を、ヒト化及び/又は最適化した。抗体の配列最適化/ヒト化は、ヒトにおいて産生された抗体に似た治療薬としての使用のために、非ヒト種において産生された抗体(特定の抗原/エピトープに対する)を操作するための方法論であって、それにより、特異性を保持しながら潜在的な有害効果、例えば免疫原性などを排除する。本明細書で利用される配列最適化/ヒト化アプローチは、Singh et al., 2015(Singh S et al., mAbs 2015:7(4):778-91)により記載されているとおりであった。簡単には、密接にマッチするヒト生殖系列をインシリコで同定して、最適化/ヒト化バリアントを、ファージスクリーニング方法を使用して評価した。最終的なリード候補配列を、結合、パーセントヒトスコア、及びEpivax(潜在的な免疫原性についてのインシリコ予測ツール)スコアに基づいて選択した。
【0203】
実施例3.4:CD3結合剤のscFv変換
CD3 scFvをコードする遺伝子セグメントを構築するために、CD3結合可変ドメインをコードするVL及びVH遺伝子のペアを、文献(Pessano et al., EMBO J. 1985 Feb;4(2):337-44;Salmeron A et al., J Immunol. 1991 Nov 1;147(9):3047-52)において記載されているCD3結合剤のヒト化から誘導し、ペプチド配列GGSEGKSSGSGSESKSTGGS(配列番号265)の柔軟なリンカーをコードする遺伝子セグメントにより連結させた。
【0204】
実施例3.5:Trop2、CDH17、及びCD3に結合する三重特異的タンパク質及びコントロールの構築
Trop2、CDH17結合剤、及びCD3 scFvの可変領域ならびに対応するコントロールを、一般的な分子生物学技術を使用して発現ベクターpTT5(National Research Council、カナダ)中にクローニングし、1つのTrop2特異的結合単位を伴う三重特異的結合タンパク質を形成し、Trop2に結合する単鎖Fab、及びFc領域を含む1つのTrop2特異的結合単位(そのような結合単位はまた、本明細書中では「Trop2アーム」又は「Trop2鎖」として言及される)ならびにCDH17に結合する単鎖Fab、及びFc領域を含むCDH17特異的結合単位(そのような結合単位はまた、本明細書中で「CDH17アーム」又は「CDH17鎖」として言及される)、及びCD3 scFvはアームの1つ、好ましくはCDH17アームのC末端に付加される。20アミノ酸のスペーサーを使用して、scFvをFcから分離した。Trop2アーム及びCDH17アームのFc領域は、「ノブ」又は「ホール」変異のいずれかを含み(Atwell et al, JMB, 1997, 270, 26-35)、それぞれの鎖はノブ鎖又はホール鎖として言及される。マルチフラグメントDNAアセンブリについては、Gibsonアセンブリ及びNEBuilder HiFi DNAアセンブリアプローチを、製造元のプロトコール(New England Biolabs、米国マサチューセッツ州イプスウィッチ)に従って使用した。DNAミニプレップを配列決定した。
【0205】
各々の発現ベクターは、鎖をコードする遺伝子(Trop2又はCDH17アーム/鎖)、即ち、シグナル配列ならびに軽鎖及び重鎖をコードする遺伝子のための真核生物プロモーターエレメント、原核生物の選択マーカー遺伝子、例えばアンピシリンなどのための発現カセット、及び複製起点を含んだ。これらのDNAプラスミドを、アンピシリン耐性大腸菌のコロニー及び培養物において増殖させ、精製させた。
【0206】
Trop2/Trop2/CD3、CDH17/CDH17/CD3、Trop2/TNP/CD3、TNP/CDH17/CD3、及びTNP/TNP/CD3を含む種々のアセンブリ中のコントロール分子を、上に記載されるGibsonアセンブリ及びNEBuilder HiFi DNAアセンブリアプローチを使用してクローニングし、一過性発現のためにpTT5ベクター中にクローニングした。
【0207】
実施例4:Trop2、CDH17、及びCD3に結合する三重特異的、三価結合タンパク質の発現及び精製
Trop2、CDH17、及びCD3に結合する三重特異的分子、ならびに対応するコントロールは、Trop2/CDH17/CD3鎖をコードする遺伝子を保有するpTT5ベクターを用いたCHO-E細胞の一過性トランスフェクションにより産生された。簡単には、無血清培地中の懸濁液において成長するトランスフェクトされたCHO-E細胞を、振盪フラスコ中で、140rpm、37℃、5% CO2での撹拌下で培養し、指数関数的成長の条件で保った。トランスフェクションの日に、細胞を、ノブ鎖プラスミドとホール鎖プラスミドを質量比1:3で化学的にトランスフェクトした。それらを 次に、1LのGibco(登録商標)FreeStyle(商標)CHO発現培地(LifeTechnologies、米国ニューヨーク州)中に1~2×10個細胞/mlで播種した。細胞を次に、軌道振盪下で、200mlの市販の供給溶液の1回供給を伴って10日間にわたりインキュベートして、タンパク質の発現を可能にした。細胞培養上清中の抗体力価を、Octet(登録商標)機器(Pall ForteBio、米国カリフォルニア州)及びprotAバイオセンサーチップを製造元の指示に従って使用して測定した。
【0208】
組換えTrop2/CDH17/CD3結合タンパク質は、2工程の過程において培養上清から精製した:第1に、MabSelect(商標)カラム(GE Healthcare)を使用したプロテインA親和性クロマトグラフィーによる;第2に、Poros 50 HSカラム(Applied Biosystems、米国カリフォルニア州カールスバッド)を使用した陽イオン交換クロマトグラフィーによる。2工程精製した物質を、50mM酢酸ナトリウム及び100mM NaClの最終緩衝液、pH5.0中に保存した。サンプルの純度及び不均一性の程度を、分析用サイズ排除クロマトグラフィー、質量分析、及び分析的超遠心分離により評価した。機能テスト用に進められたサンプルは、>98%単量体含量を伴う2段階精製された材料を含んだ。
【0209】
実施例4.1:等電点の不均衡を低下させるための抗Trop2抗体のフレームワーク操作
抗Trop2、抗CDH17、及び抗CD3を含む三重特異的分子を、その後にさらに修飾して、観察される凝集量を最小限にした(単一段階ProA精製後の約65%の単量体)。個々のFvアームのインシリコ分析によって、抗Trop2抗体が、抗CDH17アーム(pI=8.5)及び抗CD3アーム(pI=8.8)よりも1単位低いpI(pI=7.7)を有することが示された。この操作戦略の仮説は、抗Trop2アームのpIを、抗CDH17アーム及び抗CD3アームとより一致するように上昇させることによって、凝集が減少し、単量体のパーセントが増加するということであった。変異は、ファミリーと無関係に、少なくとも1つの天然重鎖又はカッパ軽鎖中のフレームワーク位置においてリジン又はアルギニンのいずれかを有する残基のサブセットより選択された。重鎖(プラス親)における合計 7つの点変異及び軽鎖(プラス親)における合計4つの点変異が選択された。電荷バリアントのモデリングは、単一点変異の組み入れによって、抗Trop2 FvのpIが、平均8.3まで上昇し、二重変異体(重鎖上の1つ、軽鎖上の1つ)は、pIが8.8まで上昇することを示した。
【0210】
以下の変異は、抗Trop2 FvのpIを上昇させために適切として選択された:VH:S19K、T23K、G43R、S61K、T72R、S83R、T85R及びVL:Q3R、S65K、S76R、Q79K。番号付けは、Kabatの番号付けスキームに基づき、VHドメイン又はVLドメインの最初のアミノ酸は、それぞれ1番目としてカウントされる(即ち、変異S19Kは、VHドメインの19番目のアミノ酸における変異、などである)。
【0211】
実施例4.2:改善された安定性のための抗CD3 scFvの最適化
抗CD3 scFvの安定性を改善させるために、構造モデリングに基づくアプローチを使用した。CD3#1(配列番号222)のFv部分についての分子モデルを、MOE(Chemical Computing Group、ULC)における抗体モデラーにより可能になるハイスループット抗体モデリングを介して作製した。構造モデルを使用して、Fv領域ならびにそれらの溶液及び分子表面におけるVL及びVH界面の安定性の記述子を計算した。インシリコで生物物理学的特性に影響を及ぼすと決定された位置を同定して、バリアントのライブラリーを生成し、三重特異的フォーマットにおける改善された血清安定性についてスクリーニングした。軽鎖中の8つの変異(R23G、E40Q、L45A、G59W、V60T、L77I、E87D、及びF89Y)及び重鎖中の9つの変異(K19R、S30N、G49A、D68G、T80S、A81L、N87S、K89R、及びT90A)が同定され、それらは、個々に(例えば、CD3#8において、配列番号229を参照のこと)、又は組み合わせにおいて(例えば、CD3#2(配列番号223)、3(配列番号224)、5(配列番号226)、7(配列番号228)において、を参照のこと)のいずれかで生物物理学的特性に影響を及ぼした。再び、番号付けは、Kabat番号付けスキームに基づいており、VHドメイン又はVLドメインの最初のアミノ酸は、それぞれ1番目としてカウントされる(即ち、変異R23Gは、VLドメインの23番目のアミノ酸における変異、などである)。
【0212】
実施例4.3:Trop2/CDH17/CD3結合タンパク質の単量体含量パーセント
単量体パーセントを、表2中に示すように、例示的なTrop2/CDH17/CD3結合タンパク質について、分析サイズ排除クロマトグラフィー(aSEC)により決定した。aSECを、Protein BEH SECカラム200A、1.7μm、4.6×150mm(カタログ番号186005225)を使用したWaters(米国マサチューセッツ州ミルフォード)Acquity UPLCシステムで実行した。実行条件は以下のとおりである:移動相:50mMリン酸ナトリウム、200mMアルギニン、及び0.05%アジ化ナトリウム;流量:0.5ml/分;実行時間:5分;サンプル負荷量:10μg;ピーク検出:A280nM;クロマトグラムの自動処理方法。
【表2】

表2:Trop2、CDH17、及びCD3を含む三重特異的分子についての第1及び第2精製工程後の単量体パーセント。それぞれの結合剤の配列を表1中に示す。
【0213】
実施例4.4:熱安定性
熱安定性を熱シフト分析(TSA)により決定し、代表的なTrop2/CDH17/CD3結合タンパク質の最初の融解転移(Tm1)の結果を表3中に示している。温度の関数としての蛍光強度プロファイルを、外因性蛍光体としてSYPRO Orange(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を用いたQuantStudio 6 FlexリアルタイムPCR システム(Applied Biosystems、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して取得した。サンプルを、40mM塩化ナトリウム及び0.02%アジ化ナトリウムを伴う10mMヒスチジン、pH6.0中で0.4mg/mlに希釈した。融解曲線は、25℃から95℃まで2℃/分の速度での昇温で生成し、データを「ROX」フィルターセット(例:580±10nm、Em:623±14nm)を通じて約4℃毎に収集した。データを、Protein Thermal Shift Softwareバージョン1.3(ThermoFisher Scientific、マサチューセッツ州ウォルサム)を使用して分析した。
【表3】

表3:代表的なTrop2/CDH17/CD3結合タンパク質の最初の融解転移(Tm1)により測定された熱安定性。
【0214】
実施例4.5:組換えタンパク質の産生
ヒトTrop2-His及びヒトCDH17-His
ヒトTrop2-His及びヒトCDH17-Hisを産生する細胞株を、HEK-293細胞(Thermo Fisher)、Lenti-X Lentiviral System(Clontech)、及びHuman Trop2-His(ヒトTrop2アクセッション番号P09758)及びヒトCDH17-His(ヒトCDH17アクセッション番号Q12864)をコードするプラスミドを使用して生成した。発現のために、細胞を、37℃、5% CO2、140rpmでの振盪で培養及び増殖させた。発現の0日目に、細胞をペレット化し、Expi 293培地中に再懸濁した。発現の3日目に、馴化培養上清を、細胞を4700rpmで40分間にわたりペレット化することにより回収した。プロテアーゼ阻害剤を、精製前にバイオマスに加えた。発現をウェスタンブロットにより確認した。馴化培養上清を0.5mM TCEP、0.02% CHAPS、10mMイミダゾールで調整した。精製を、HisTrap Ni excelカラム及び緩衝液A:50mM MES、50mM NaCl、0.5mM TCEP、0.02% CHAPS、pH6.5で行った。目的のタンパク質を、20mMイミダゾールから500mMイミダゾールまでの溶出勾配を使用して、0.5Mイミダゾールを添加した緩衝液A(pH 8.5)中に溶出した。プールした画分を、緩衝液:50mM MES、50mM NaCl、1mM TCEP、0.02% CHAPS、0.2Mアルギニン、3%グリセロール、pH 6.5中で透析した。精製された物質を、質量分析及び分析的超遠心分離により定性した。
【0215】
Cyno Trop2-His及びCyno CDH17-His
Cyno Trop2-His及びCyno CDH17-Hisを産生する細胞株は、HEK-293細胞(Thermo Fisher)、Lenti-Xレンチウイルスシステム(Clontech)、及びCyno Trop2-His(Cyno Trop2アクセッション番号:アクセッション# XP_001114599.1(RefSeq))及びCyno CDH17-His(Cyno CDH17アクセッション番号:XP_005563762.1(RefSeq))をコードするプラスミドを使用して生成した。発現のために、細胞を、37℃、5% CO2、140rpmでの振盪で培養及び増殖させた。発現の0日目に、細胞をペレット化し、Expi 293培地中に再懸濁した。発現の3日目に、馴化培養上清を、細胞を4700rpmで40分間にわたりペレット化することにより回収した。プロテアーゼ阻害剤を精製前にバイオマスに加えた。発現をウェスタンブロットにより確認した。馴化培養上清を0.5mM TCEP、0.02% CHAPS、10mMイミダゾールで調整した。精製を、HisTrap Ni excelカラム及び緩衝液A:50mM MES、50mM NaCl、0.5mM TCEP、0.02% CHAPS、pH6.5で行った。目的のタンパク質を、20mMイミダゾールから500mMイミダゾールまでの溶出勾配を使用して、0.5Mイミダゾールを添加した緩衝液A(pH 8.5)中で溶出した。プールした画分を、緩衝液:50mM MES、50mM NaCl、1mM TCEP、0.02% CHAPS、0.2Mアルギニン、3%グリセロール、pH 6.5中で透析した。精製された物質を、質量分析及び分析的超遠心分離により定性した。
【0216】
実施例5:結合剤選択のための細胞株生成
全長ヒトCDH17を単独で又はTrop2との組み合わせにおいて発現する安定したHEK293細胞の生成のために、CDH17のコード配列(タンパク質アクセッションQ12864)をpCMV6(Origene)中にクローニングした。全長ヒトTrop2を単独で又はCDH17との組み合わせにおいて発現する安定したHEK293細胞の生成のために、C末端Myc-DDKタグを伴うTrop2のコード配列を含むpCMV6を、Origeneから得た(#RC202519)。HEK293細胞を、製造元の指示に従って Cell Line Nucleofector Kit V(Amaxa)を使用してトランスフェクトし、安定したクローンを、それぞれジェネティシン及びピューロマイシン選択を使用して確立した。
【0217】
組換えタンパク質の発現を、抗Trop2(R&D# MAB650)及び抗CDH17(R&D# MAB1032)一次抗体、それに続くPE 標識抗マウス二次抗体(Dako# R0480)を使用したフローサイトメトリーにより検証した。
【0218】
実施例6:結合能を伴うCDH17結合剤の選択及び三重特異的フォーマットにおける結合能の確認
二価及び一価のいずれかのフォーマットにおける4つの異なるCDH17結合タンパク質(即ち、CDH17#6、CDH17#4、CDH17#7、及びCDH17#1;全てが実施例3において記載されるように産生される;それぞれの結合剤の配列を、表1中に見出すことができる)の結合をテストした。この目的のために、実施例5において記載されるように調製されたヒトCDH17を組換え発現するHEK293細胞株へのそれらの結合を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0219】
HEK293細胞を、FACS緩衝液(PBS/0.5%BSA/0.05%アジ化ナトリウム)中の増加濃度の2段階精製された二価又は一価CDH17結合タンパク質で染色した。結合分子を、FITC結合抗ヒト二次抗体(Invitrogen 05-4211)で検出した。各々のCDH17結合タンパク質の結合能を、それぞれの一価フォーマットの結合曲線を、二価フォーマットと比較することにより評価した(図4)。一価フォーマットから二価フォーマットへの有意な親和性シフトを示す結合タンパク質を、その後の実験のために選択した。
【0220】
T細胞を活性化する、これらのCDH17結合剤の潜在力をさらにテストするために、種々のCDH17結合剤を三重特異的Trop2/CDH17/CD3結合分子中に組み立てて、T細胞活性化を、CDH17単独又はCDH17及びTrop2の組み合わせを発現するHek293細胞の存在において評価した。このアッセイでは、Trop2/CDH17陽性細胞株を、エフェクター細胞としてのヒトT細胞及び増加濃度のTrop2/CDH17/CD3結合分子と、エフェクター対標的細胞の比率10:1で72時間にわたり共培養した。Trop2/CDH17/CD3結合分子を、実施例4において記載されているように、鎖をコードする遺伝子を保有するpTT5ベクターを用いたCHO-E細胞の一過性トランスフェクションにより産生された。
【0221】
凍結ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をStemcell Technologiesから得た。細胞を洗浄し、RPMI-1640 w/o Phenolred(Gibco/Lonza # BE 12-918-F)、5% HiFBS(FBS、HyClone(Thermo Scientific、カタログ:SH30071.03))、熱不活化、56℃、30分)、Glutamax(Gibco # 35050-061)、27.5μMベータ-メルカプトエタノール(Gibco #21985-023)を含むアッセイ培地中に再懸濁した。T細胞を、Pan T Cell Isolation Kit II(Miltenyi Biotec #130-091-156)を使用したネガティブ選択により、洗浄したPBMCから単離した。簡単には、末梢血単核細胞を、10Mio細胞あたり40μlの緩衝液 PBS/0.5% BSA(Gibco ref#041-94553 M)/2mM EDTA(Invitrogen ref# 15575-038)中に再懸濁し、10Mio細胞あたり10μlのビオチン抗体カクテルと4℃で5分間にわたりインキュベートした。その後、30μlの緩衝液及び20μlの抗ビオチンMicroBed/1000万細胞を加えて、4℃で10分間にわたりインキュベートした。その後、混合物を、適切なMACS分離器(Miltenyi Biotec)の磁場中で、予めリンスした25LSカラム(Miltenyi Biotec #130-042-401)中に置いた。T細胞を含むフロースルーを収集し、アッセイ培地中で洗浄した。
【0222】
その後、1:10の比率の標的細胞とT細胞を、示された濃度のTrop2/CDH17/CD3結合タンパク質と72時間にわたりインキュベートした(図5を参照のこと)。
【0223】
T細胞の活性化を決定するために、細胞を遠心分離し、CD4(Biolegend #31744)、CD8(BD #562428)、及びCD69(BD #557745)に対する抗体で染色し、蛍光を、フローサイトメトリーにより測定した。結果を図5中に描写する。
【0224】
結合能を、ヒトCDH17だけを発現する(図5A)又はCDH17及びTrop2の組み合わせを発現する(図5B)HEK293細胞の存在において誘導されるCD8+T細胞活性化の量を比較することにより分析した。CDH17だけを発現するHEK293細胞の存在において100nMで20%未満のT細胞活性化を起こす結合剤だけを、さらなる評価のために選択した。
【0225】
実施例7:結合能を伴うTrop2結合剤の選択及び三重特異的フォーマットにおける結合能の確認
二価(IgG)又は一価(ダミー結合アームを伴うノブ・イン・ホール・フォーマット)のいずれかの形態における7つの異なるTrop2結合剤(Trop2#1~Trop2#7;それぞれの結合剤の配列を、表1中に見出すことができる)の結合がテストされた。一価フォーマットでは、結合部位の1つが、真核生物の状況において存在しない無関係な抗原であるテトラニトロフェノール(TNP;配列番号167及び168のVH及びVLドメインを含む)に結合する結合部位により置換された。この目的のために、実施例5において記載されるように調製されたヒトTrop2を組換え発現するHEK293細胞株へのそれらの結合を、フローサイトメトリーにより分析した。Trop2結合タンパク質を、実施例4中に記載されているように産生した。
【0226】
HEK293細胞を、FACS緩衝液(PBS/0.5%BSA/0.05%アジ化ナトリウム)中で増加濃度の2段階精製した二価又は一価のTrop2結合タンパク質で染色した。結合分子を、FITC結合抗ヒト二次抗体(Invitrogen 05-4211)で検出した。各々のTrop2結合タンパク質の結合能を、それぞれの一価フォーマットの結合曲線を、二価フォーマットと比較することにより評価した(図6)。一価フォーマットから二価フォーマットへの有意な親和性シフトを示す結合タンパク質を、以下の実験のために選択した。
【0227】
T細胞を活性化する、これらのTrop2結合剤の潜在力をさらにテストするために、種々のTrop2結合剤を三重特異的Trop2/CDH17/CD3結合分子中に組み立て、T細胞の活性化を、CDH17単独、Trop2単独、又はCDH17及びTrop2の組み合わせのいずれかを発現するHek293細胞の存在において評価した。このアッセイでは、Trop2/CDH17陽性 HEK293細胞株を、エフェクター細胞としてのヒトT細胞及び増加濃度のTrop2/CDH17/CD3結合分子と、エフェクター対標的細胞の比率10:1で72時間にわたり共培養した。変動する抗原親和性を伴う3つの異なるTrop2結合剤を、実施例6において同定されたCDH17結合剤と三重特異的フォーマットにおいて組み合わせて(図5A)、CDH17だけを発現するHEK293細胞の存在において最も低いT細胞活性化を誘導した。Trop2/CDH17/CD3結合分子を、実施例4において記載されているように、鎖をコードする遺伝子を保有するpTT5ベクターを用いたCHO-E細胞の一過性トランスフェクションにより産生した。ヒトT細胞を、実施例6において記載されているように単離した。
【0228】
その後に、1:10の比率の標的細胞とT細胞を、示された濃度のTrop2/CDH17/CD3結合分子と72時間にわたりインキュベートした(図7を参照のこと)。
【0229】
T細胞活性化状態を、実施例6において記載されているように決定した。
【0230】
結合能を、ヒトTrop2だけ(図7B)、ヒトCDH17だけ(図7C)、又はヒトCDH17及びヒトTrop2の組み合わせのいずれかを発現するHEK293細胞の存在において誘導されるCD8+T細胞上でのCD69上方調節の量を比較することにより分析した(図7A)。再び、一価結合の状況において、即ち、CDH17(だけ)又はTrop2(だけ)発現細胞で、10nMで20%未満のT細胞活性化を起こす結合剤を、その後の実験のために選択した。
【0231】
HEK293細胞上で発現されたTrop2に対する結合親和性を、フローサイトメトリーに基づくスキャッチャード方法により評価し、Trop2#1については2.2nM、Trop2#5については0.6、及びTrop2#7については0.4のKdを明らかにした。結合能は、この方法を通じて決定された親和性と逆相関し、低親和性結合剤だけが、二価フォーマットにおいて、二重陽性細胞から単一陽性細胞の識別を可能にすることを示しています。
【0232】
実施例8:細胞結合アッセイにおける種々の三重特異的Trop2/CDH17/CD3結合剤の組み合わせの結合能の分析
結合力に基づく効力増加を確認するために、3つの異なるTrop2/CDH17/CD3三重特異的結合分子(Trop2#1/CDH17#1/CD3#1 Trop2#5/CDH17#1/CD3#1、Trop2#7/CDH17#1/CD3#1、図8を参照のこと)の標的結合を、二重特異的Trop2/Trop2/CD3結合分子ならびに三重特異的Trop2/TNP/CD3結合分子の結合と比較した。この目的のために、ヒトTrop2を組換え発現する(図8A)、又はヒトTrop2及びヒトCDH17を共発現する(図8B)、のいずれかのHEK293細胞株へのこれらの分子の結合を、フローサイトメトリーによりテストした。Trop2/CDH17/CD3 Trop2/TNP/CD3及びTrop2/Trop2/CD3結合タンパク質を、実施例4において記載されるように産生した。
【0233】
ヒトTrop2を組換え発現する、又はヒトTrop2及びヒトCDH17を共発現する、のいずれかのHEK293細胞を、FACS緩衝液(PBS/0.5%BSA/0.05%アジ化ナトリウム)中の増加濃度の2 段階精製されたTrop2/CDH17/CD3、Trop2/Trop2/CD3、及びTrop2/TNP/CD3結合分子で染色した。結合分子を、FITC結合抗ヒト二次抗体(Invitrogen 05-4211)で検出した。各々の三重特異的結合分子の結合能を、一価結合曲線及び二価結合曲線を比較することにより評価した。Trop2単独に対して有意な結合を示す結合タンパク質は、結合力が最適化された二重特異的結合アプローチのために選択されなかった。結果を図8中に示す。それぞれの結合剤の配列を、表1中に見出すことができる。
【0234】
実施例9:CDH17、Trop2を発現する、又は両方を共発現する細胞におけるT細胞誘導性溶解を媒介する際での効力
Trop2タンパク質及びCDH17タンパク質の両方を共発現するヒト細胞についてのTrop2/CDH17/CD3結合タンパク質の選択性に対処するために、非刺激T細胞を、ヒトCDH17及び/又はヒトTrop2を発現する細胞に向けて方向転換することにより、溶解を誘導する能力をテストした。
【0235】
Trop2/CDH17陽性細胞株のT細胞媒介性溶解の効力を、以下に記載されるように細胞溶解についての読み取り値として乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出を使用して決定した。このアッセイでは、Trop2もしくはCDH17のいずれか又は両方を発現する細胞株を、エフェクター細胞としてのヒトT細胞及び増加濃度のTrop2/CDH17/CD3結合分子と72時間にわたり、エフェクターと標的細胞の比率10:1で共培養した。Trop2/CDH17/CD3結合分子を、実施例4において記載されているように、鎖をコードする遺伝子を保有するpTT5ベクターを用いたCHO-E細胞の一過性トランスフェクションにより産生した。
【0236】
ヒトT細胞を、実施例6において記載されているように、凍結PBMCから単離した。
【0237】
細胞傷害性活性を、細胞傷害性検出キットPLUS(Roche)を製造元の指示に従って使用して決定した。簡単には、この方法は、死んだ又は形質膜が損傷した細胞からのLDHの放出に基づいている。細胞培養上清を、キットからの反応混合物と30分間にわたりインキュベートし、ホルマザンの形成を、LDH活性の結果として、細胞溶解についての代用として分光光度計において500nMで測定する。最大溶解コントロールに対する細胞傷害性のパーセンテージを、以下の式に従って算出した:
【数1】

バックグラウンド:標的細胞 + エフェクター細胞
最大溶解:標的細胞 + 5% Triton X-100
最小溶解:標的細胞
【0238】
GraphPad Prism 5ソフトウェアを使用して、最大溶解コントロールに対する細胞傷害性のパーセンテージを、対応するTrop2/CDH17/CD3結合分子濃度に対してプロットした。用量反応曲線を、シグモイド用量反応曲線の評価のために、4パラメータロジスティック方程式モデルを用いて分析した。
【0239】
三重特異的Trop2/CDH17/CD3結合分子は、Trop2+/CDH17+細胞の溶解を、良好な有効性を伴って媒介したのに対し、これは、それぞれ Trop2 だけ又はCDH17だけを発現する細胞株については該当せず、このように、当該三重特異的分子の結合力の増強された生物学的活性が確認された(図9Aを参照のこと)。結合力アプローチの特異性を、Trop2(Trop2/TNP/CD3)又はCDH17(TNP/CDH17/CD3)のいずれかに一価で結合するコントロール分子が、有意な標的細胞溶解を誘導できないという事実によりさらに裏付けた。同じフォーマットにおけるTrop2及びCDH17についての二価結合剤をコントロールとして使用した。
【0240】
癌設定における結合力アプローチを確認するために(図9Bを参照のこと)、方向転換されたT細胞の細胞傷害性を、Trop2/CDH17を共発現する結腸直腸癌細胞株DLD-1、ならびにCDH17を欠くように操作され、このように、Trop2だけを発現するように設計されたDLD-1クローンにおいて評価した。DLD-1細胞をATCCから得て、レポータータンパク質GFPが導入されたCDH17欠損DLD-1クローンを生成した。48時間後、GFP陽性トランスフェクタントをフローサイトメトリー(Sonysorter)により単離し、クローンを限界希釈により分離した。CDH17欠損を、CDH17特異的抗体を使用したウェスタンブロッティングによりCDH17含量についてクローンタンパク質抽出物を分析することにより確認した。
【0241】
Trop2+CDH17-クローンの細胞溶解は、Trop2+CDH17+親細胞株に対する効果と比較して有意に減少し、それにより、結合力ベースの効力増加が確認された。Trop2+CDH17-クローンに対するTrop2/CDH17/CD3結合分子の活性は、一価のTrop2結合剤(Trop2/TNP/CD3)の活性に対応し、このように、Trop2+/CDH17-標的細胞に対する効果が、Trop2媒介性であることが確認された。
【0242】
図9は、Trop2結合剤(Trop2#1、#8、#9、#10、#11、#12、#13、#14、#15、#16、#17、#18)と CDH17結合剤(CDH17#1、#8)及びCD3結合剤(CD3#1、#2、#3)のいくつかの例示的な組み合わせを代表する分子の選択を用いて得られた機能データを示し、それについて、結合力ベースの効力増加が示されている。それぞれの結合剤の配列を、表1中に見出すことができる。
【0243】
実施例10:結合力誘導性の効力増加に対するCDH17結合の寄与の確認
結合力誘導性の効力増加に対するCDH17結合の寄与を確認するために、5つの異なるTrop2結合剤を、CDH17結合アーム、又はTrop2/CDH17/CD3もしくはTrop2/TNP/CD3結合分子中の無関係な標的テトラニトロフェノール(TNP)についての結合剤のいずれかとそれぞれ組み合わせた。このアッセイでは、Trop2/CDH17陽性結腸直腸癌細胞株SK-CO1を、エフェクター細胞としての未刺激ヒトT細胞及び増加濃度のTrop2/CDH17/CD3又はTrop2/TNP/CD3結合分子と、エフェクターと標的細胞の比率10:1で72時間にわたり共培養した。Trop2/CDH17/CD3結合分子を、実施例4中に記載されるように、鎖をコードする遺伝子を保有するpTT5ベクターを用いたCHO-E細胞の一過性トランスフェクションにより産生した。細胞傷害活性は、実施例9中に記載されるように決定した。T細胞を、実施例6中に記載されているように、健常なドナーPBMCから単離した。CDH17結合アームは、Trop2/TNP/CD3 vs.Trop2/CDH17/CD3から、EC50における40~60倍増加を伴って、有意な効力増加に導いた;図10中に示されるとおり(それぞれの結合剤の配列を、表1中に見出すことができる)。
【0244】
実施例11:ノブ・イン・ホールフォーマットの比較
三重特異的分子を2つの異なるノブ・イン・ホールフォーマット(即ち、ホールアーム上のTrop2及びノブアーム上のCDH17/CD3、又はその逆)において産生し、T細胞媒介性細胞毒性に対するそれらの効果を、実施例9中に記載されるように評価した。両方の型のフォーマットが十分に機能したのに対し、驚くべきことに、CD3及びCDH17結合部分の両方が分子のホール部分に位置付けられる構築物は、使用された結合剤に無関係に一貫してより高い効力を有することが見出された(例示的な結果については図11を参照のこと;対応する結合剤を表1中に見出すことができる)。
【0245】
実施例12:インビボでの腫瘍成長阻害の確認
有効性試験を、ヒトT細胞を用いて再構成されたヒト異種移植マウスモデルを使用して実施した。詳細には、ヒトHPAF-II 膵臓癌細胞(5×10個)をNOGマウスの右背側腹部中に皮下(s.c.)注射した。並行して、ヒトT細胞を、上に記載されるように、Pan T Cell Isolation Kit II(Miltenyi Biotec #130-091-156)を使用したネガティブ選択によりPBMCから単離した。
【0246】
その後に、T細胞を、T細胞活性化/増殖キットヒト(Miltenyi Biotec Cat#130-091-441、Lot#5170720843)を使用して 20日間にわたり増殖させた。簡単には、抗ビオチンMACSiBead(商標)粒子を、CD2-、CD3-、CD28 ビオチンを用いてロードし、粒子あたり2細胞の比率において精製T細胞に移し、20単位の組換えIL-2(R&D#202-IL-050/CF)の存在において0.5~1×10個細胞/mlの密度で20日間にわたりインキュベートした。細胞に、3日毎に20単位の新鮮IL-2を添加した。動物中への注射前の3日に、T細胞を、CD2-、CD3-、CD28ビオチンを4個の細胞あたり1ビーズの比率でロードした抗ビオチンMACSiBead(商標)粒子を用いて、追加の3日間にわたり再刺激した。最後に、ビーズを、MACSiMAG Separator(Miltenyi Biotec)を用いて除去し、T細胞をPBS中で洗浄した。
【0247】
14日目に、動物を、腫瘍容積に基づいて処置群中に無作為化し、2×10個のヒトT細胞を腹腔内(i.p.)注射した。三重特異的分子を用いた処置を17日目に開始した。Trop2/CDH17/CD3結合タンパク質、Trop2/TNP/CD3結合タンパク質、TNP/CDH17/CD3結合タンパク質、又は溶媒緩衝液(50mM NaOAc、100mM NaCl、pH 5.0)を、外側尾静脈中への静脈内(i.v.)ボーラス注射による週1回の投与計画において投与した。腫瘍成長を外部キャリパー測定によりモニターし、腫瘍容積を、標準的な半楕円体式を使用して算出した。
【0248】
ヒトT細胞生着が、試験の最後に、ヒトCD3についての免疫組織化学(IHC)染色により、脾臓において確認された。試験の終了時にヒトT細胞生着を示した動物だけを統計分析中に含めた。屠殺基準に達した動物は、倫理的な理由のため試験の間での早期に安楽死させた。
【0249】
図12中に示されるように、三重特異的Trop2/CDH17/CD3結合分子(配列番号436と437の組み合わせ又は配列番号214と271の組み合わせのいずれかにより表される)を用いた週1回の腫瘍担持マウスの処置によって、有意な腫瘍退縮が誘導されたが、しかし、同じ用量及び処置間隔でのコントロールTrop2/TNP/CD3結合分子又はTNP/CDH17/CD3結合分子ではされなかった。
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図9-4】
図9-5】
図9-6】
図9-7】
図9-8】
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図10-4】
図10-5】
図11-1】
図11-2】
図11-3】
図11-4】
図11-5】
図11-6】
図12-1】
図12-2】
【配列表】
2024523033000001.app
【国際調査報告】