(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】キメラ免疫グロブリン
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240618BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240618BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240618BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240618BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240618BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240618BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240618BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20240618BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240618BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240618BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C07K17/00
G01N33/53 D
G01N33/543 501D
G01N33/543 541Z
G01N33/545 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577741
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2022078975
(87)【国際公開番号】W WO2022262321
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】202110674660.8
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521204910
【氏名又は名称】ファポン バイオテック インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FAPON BIOTECH INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】孟 媛
(72)【発明者】
【氏名】鐘 冬梅
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA46
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA75
4H045EA50
4H045GA26
(57)【要約】
キメラ免疫グロブリンを提供する。それは、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して得られ、前記第1ポリペプチドが、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び前記第2ポリペプチドが、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む。当該免疫グロブリンは、より高い力価を有し、且つ固相にコーティングされる時、価数が同じIgG単量体に比べ、依然としてより高い力価を有し、そのため、検出分野に広く使用されることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して得られ、
前記第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
前記第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む、免疫グロブリン。
【請求項2】
前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgA又はIgMは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドは、IgGのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第2ポリペプチドは、IgA又はIgMのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2-CH3領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgM又はIgAは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であり、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、CH1領域を含み、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、ヒンジ領域を含む、請求項1に記載の免疫グロブリン。
【請求項3】
多量体であって、
請求項1又は2に記載の免疫グロブリンを単量体として重合して得られ、
任意に、前記多量体は、IgACH2-CH3領域を有する2個、3個又は4個の免疫グロブリン単量体が重合して得られたものであるか、又は、IgMCH3-CH4領域を有する5個の免疫グロブリン単量体が重合して得られたものであり、
任意に、前記多量体には、さらに、シグナル物質がコンジュゲートされている、多量体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の免疫グロブリンをコードする単離された核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含有するベクター。
【請求項6】
請求項4に記載の核酸を含有するか、又は請求項5に記載のベクターによって形質転換される宿主細胞。
【請求項7】
請求項6に記載の宿主細胞を発現させることを含む免疫グロブリンの製造方法。
【請求項8】
第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して発現させることを含み、
前記第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
前記第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む、免疫グロブリンの製造方法。
【請求項9】
前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgA又はIgMは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドは、IgGのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第2ポリペプチドは、IgA又はIgMのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2-CH3領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgM又はIgAは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であり、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、CH1領域を含み、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、ヒンジ領域を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法により製造される免疫グロブリン。
【請求項11】
多量体の製造方法であって、
請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法により製造される免疫グロブリンを単量体として重合することを含み、
任意に、前記多量体は、IgACH2-CH3領域を有する2個、3個又は4個の免疫グロブリン単量体を重合したものであるか、又は、IgMCH3-CH4領域を有する5個の免疫グロブリン単量体を重合したものである、多量体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法により製造される多量体。
【請求項13】
表面に請求項3又は12に記載の多量体がコーティングされている固相ベクターであって、
任意に、前記固相ベクターはプラスチックベクター、微粒子又は膜ベクターである、固相ベクター。
【請求項14】
請求項3又は12に記載の多量体、又は請求項13に記載の固相ベクターを含有するキット又は試験片であって、
任意に、前記試験片には、サンプルパッド、結合パッド、反応膜及び吸収パッドが含まれ、前記反応膜には検出領域及び品質検査領域が設けられ、
前記多量体は、前記検出領域にコーティングされるか及び/又は前記結合パッドに滴下され、
任意に、前記キットは、サンプル前処理試薬、洗浄液、緩衝液及び発色試薬を含む、キット又は試験片。
【請求項15】
抗原の検出方法であって、
請求項3又は12に記載の多量体、又は請求項13に記載の固相ベクターを前記抗原と接触させてコンジュゲート体を形成することと、
前記コンジュゲート体を検出することと、を含み、
但し、前記抗原は、前記IgG可変領域と特異的に結合することが発生できる抗原である、抗原の検出方法。
【請求項16】
請求項3又は12に記載の多量体、請求項13に記載の固相ベクター、又は請求項14に記載のキット又は試験片の免疫検出における使用。
【請求項17】
免疫検出のための請求項3又は12に記載の多量体、請求項13に記載の固相ベクター、又は請求項14に記載のキット又は試験片。
【請求項18】
請求項3又は12に記載の多量体、請求項13に記載の固相ベクター、又は請求項14に記載のキット又は試験片を用いて抗原を検出することを含む免疫検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2021年6月17日に出願された、出願番号が202110674660.8で、名称が「キメラ免疫グロブリン」の中国特許出願の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本願は、抗体工学の分野に関し、具体的には、キメラ免疫グロブリンに関する。
【背景技術】
【0003】
免疫グロブリン(immunoglobulin、Ig)は、4本のポリペプチド鎖からなり、各ポリペプチド鎖は、異なる数の鎖間ジスルフィド結合により連結される。Igは、「Y」字状構造を呈することができ、Ig単量体と呼ばれ、抗体を構成する基本単位である。天然Ig分子は、4本の異種ポリペプチド鎖を含有し、ここで、分子量が大きい2本の鎖は重鎖(heavy chain、H)と呼ばれ、分子量が小さい2本の鎖は軽鎖(light chain、L)と呼ばれる。同一のIg分子における2本の重鎖及び2本の軽鎖のアミノ酸組成は完全に同じである。重鎖分子量は50000~75000であり、450~550個のアミノ酸残基からなる。重鎖の定常(CH)領域のアミノ酸組成及び配列順序が異なり、その抗原性も異なる。これから、Igを5つのクラス(class)、即ちIgM、IgD、IgG、IgA及びIgEに分類することができる。この5つのクラスのうち、IgG、IgD、IgEは、いずれも単量体構造である。IgMは、B細胞から分泌される基本的な抗体であり、分泌形態では、5つのY型単量体から構成される五量体の形態であり、極めて高い親和性を有する。IgMの分子量が極めて大きいため、抗原凝集反応において非常に有効である。IgMは、多価抗体である。IgAは、単量体又は二量体、三量体又は四量体の形態で存在することができる。分泌型IgAは、二量体、三量体の形態で存在するものが多く、多価抗体でもある。1つの単量体抗体は、2個の抗原結合部位を有するため、IgAは、通常、4個又は6個の抗原結合部位を有し、IgMは、10個又は12個の抗原結合部位を有し、いずれも多価抗体である。
【0004】
抗体は、主に、Bリンパ球から合成される。Bリンパ球毎に、一種類の抗体を合成する遺伝子がある。生体が抗原によって刺激されると、抗原分子上の多くの決定基はそれぞれ異なる遺伝子を有する各B細胞を活性化する。活性化されたB細胞は、分裂増殖してポリクローナルを形成し、且つ複数種類の抗体を合成する。1975年、イギリスの科学者Kohler及びMilsteinは一緒に、既にインビトロ培養に馴れたマウス骨髄腫細胞とヒツジ赤血球免疫マウス脾臓細胞(Bリンパ球)とを融合し、これから、形成されたハイブリッド細胞は、インビトロで無限に増殖することができるだけでなく、引き続き特異的な抗体を分泌することもできることを発見し、クローン化の培養で取得できる純粋な細胞により、モノクローナル抗体を生成することができ、これにより、モノクローナル抗体技術を発明した。モノクローナル抗体技術の出現は、免疫学分野における重大な突破である。二十世紀八十年代半ばになると、モノクローナル抗体技術は日増しに完備され、生物医学研究やバイオテクノロジー、臨床診断や治療等多くの分野で広く使用され始めた。
【0005】
科学技術の進歩に伴い、インビトロ診断は、既に臨床医学診断の重要な助役となっており、医師の目の役割を演じている。モノクローナル抗体は、臨床医学でのインビトロ診断試薬における中核原材料の1つとして、その利点を十分に発揮する。モノクローナル抗体は、特異性が強く、抗原-抗体反応の特異性が大きく向上され、他の物質との交差反応の可能性が減少し、試験結果の信頼性が高くなる。モノクローナル抗体の均一性及び生物学的活性の単一性により、抗原-抗体反応の結果を制御しやすく、標準化及び規範化に有利である。
【0006】
免疫診断試薬は、インビトロ診断試薬の細分領域である。免疫診断(immunodiagnosis)は、免疫学理論、技術及び方法を適用して、様々な疾患を診断し、免疫状態を測定することである。免疫診断の方法には、放射性免疫、酵素結合免疫、化学発光、蛍光クロマトグラフィー又は金コロイドクロマトグラフィー等が含まれる。これらの方法の基本的な原理は、下記のとおりである。抗原又は抗体をある固相ベクターの表面に結合させるとともに、その免疫活性を維持し、適切なマーカーを選択して抗原又は抗体と、化学的方法により抗原又は抗体標識複合体を形成する。測定時に、被検体(そのうちの抗体又は抗原を測定する。)及び抗原又は抗体標識複合体を異なるステップにしたがって、固相ベクターの表面の抗原又は抗体と反応させる。洗浄の方法で固相ベクター上に形成された抗原抗体複合体を他の物質と分離させ、最終的に、固相ベクターに結合された標識複合体と、検体における被検物質との量が一定の比になる。標識複合体と反応する基質を加えた後、基質は、触媒されて有色生成物になる。有色生成物の量は、検体における被検物質の量と直接関係するため、色反応の濃淡に応じる定性又は定量分析が可能になる。しかしながら、現在、免疫診断用抗体の力価の改善は、抗体免疫及びスクリーニングプロセスの改善に依存することが多く、その効果には、非常に大きなランダム性があり、検出ニーズを十分に満たすことができない。
【発明の概要】
【0007】
本願の第1態様は、免疫グロブリンに関し、それは、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して得られ、
前記第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
前記第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む。
【0008】
本願の第2態様は、上記のような免疫グロブリンを単量体として重合して得られる多量体に関する。
【0009】
本願の第3態様は、上記のような免疫グロブリンをコードする単離された核酸に関する。
【0010】
本願の第4態様は、上記のような核酸を含有するベクターに関する。
【0011】
本願の第5態様は、上記のような核酸を含有するか、又は上記のようなベクターによって形質転換される宿主細胞に関する。
【0012】
本願の第6態様は、上記のような宿主細胞を発現させること又は上記の第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して発現させることを含む免疫グロブリンの製造方法、及び上記の製造方法により製造される免疫グロブリンに関する。
【0013】
本願の第7態様は、上記のような免疫グロブリンの製造方法により製造された免疫グロブリンを単量体として重合することを含む多量体の製造方法、及び上記の製造方法により製造される多量体に関する。
【0014】
本願の第8態様は、表面に上記のような多量体がコーティングされている固相ベクターに関する。
【0015】
本願の第9態様は、上記のような多量体又は上記のような固相ベクターを含有するキット又は試験片に関する。
【0016】
本願の第10態様は、上記のような多量体、又は上記のような固相ベクターを前記抗原と接触させてコンジュゲート体を形成し、且つ前記コンジュゲート体を検出することを含み、
前記抗原は、前記IgG可変領域と特異的に結合することが発生できる抗原である、抗原の検出方法に関する。
【0017】
本願の第11態様は、前記多量体、固相ベクター、キット又は試験片の免疫検出における使用に関する。
【発明の効果】
【0018】
本願にて提供される、IgGとIgM/IgAとがキメラされてなる免疫グロブリンは、より高い力価を有し、且つ固相にコーティングされる場合、同じ価数のIgG単量体に比べ、依然としてより高い力価を有するため、検出分野に広く使用できる。
【0019】
本願の1つ又は複数の実施形態の詳細は、以下の図面及び説明に記載される。本願の他の特徴、目的及び利点は、明細書及び図面並びに特許請求の範囲から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本願の具体的な実施形態又は従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下、具体的な実施形態又は従来技術の説明に使用する必要のある図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の説明における図面は、本願のいくつかの実施形態であり、当業者にとって、創造的な労働をしない前提で、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【0021】
【
図1】本願の一実施例におけるMA-9G7TB1及びMA-9G7TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体の電気泳動結果を示す。
【
図2】本願の一実施例における3E50TB2ハイブリッド組換え抗体の電気泳動結果を示す。
【
図3】本願の一実施例における5F27TB2ハイブリッド組換え抗体の電気泳動結果を示す。
【
図4】本願の一実施例における21C5TB2ハイブリッド組換え抗体の電気泳動結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本願の実施形態の参照を詳細に提供し、1つ又は複数の例を以下に記述する。提供される各例は、本願を解釈するためのものにすぎず、本願を限定するものではない。実際、本願の範囲又は精神から逸脱せずに、本願に対して様々な修正及び変更を行うことができることは、当業者には明らかである。例えば、一実施形態の一部として説明又は記載される特徴は、さらなる実施形態をもたらすために別の実施形態で使用されることができる。
【0023】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は本願の技術分野に属する技術者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書において本願の明細書で使用される用語は具体的な実施例を説明する目的のためにだけのものであり、本願を限定するものではない。本明細書で使用される用語「及び/又は」は1つ又は複数の関連する列記項目の任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0024】
本願の発明者らは、実験中に、正常なIgG抗体が、温度、緩衝条件等の保存条件の変化につれて、重合する現象が発生することを意外にも発見した。多量体抗体が出現したことは、診断試薬の使用中に、抗体の活性が単量体抗体に比べ遥かに高い活性を示すことによって直接体現される。しかしながら、自然に生じるIgG多量体は、不安定である。発明者らは、IgA及びIgM抗体の特徴と、その定常領域の親水性及び疎水性の特性と、均一で高発現の多量体抗体を得るという目標とを合わせて、構築したIgG/IgA、IgG/IgMのキメラ抗体の、診断試薬による検出における性能が、IgGクラス抗体より遥かに高く、且つ、キメラ抗体の均一性及び発現量の点で非常に良い優位性を有することを発見した。
【0025】
これにより、IgG/IgA、IgG/IgMキメラ抗体を構築し、それをインビトロ診断検出用試薬のコーティング末端或いは標識末端に使用する。本願のIgG/IgA、IgG/IgMキメラ抗体は、既存のIgG抗体を代替することができ、それにより、より優れた活性を有する検出用キットを得る。
【0026】
第1態様において、本願の実施形態では、免疫グロブリンを提供し、それは、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して得られ、但し、
第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む。
【0027】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1領域をさらに有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドにおけるIgA又はIgMは、CH1領域をさらに有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドは、IgGのヒンジ領域をさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドは、IgA又はIgMのヒンジ領域をさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2領域をさらに有する。
【0032】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2-CH3領域をさらに有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドにおけるIgMは、CH1-CH2領域をさらに有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である。
【0035】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのうちの少なくとも1つがCH1領域を含む。
【0036】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのうちの少なくとも1つがヒンジ領域を含む。
【0037】
IgG、IgA及びIgMは、同じ又は異なる種由来、例えば、鼠(マウス、ラット)、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、ウシ、イヌ及びヒトから独立して選択されるものであり得る。
【0038】
第2態様において、本願の実施形態は、上記のような免疫グロブリンを単量体として重合して得られる多量体を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態において、前記多量体は、IgACH2-CH3領域を有する2個、3個又は4個の免疫グロブリン単量体を重合して得られたものである。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記多量体は、IgMCH3-CH4領域を有する5個の免疫グロブリン単量体を重合して得られたものである。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記多量体には、さらに、シグナル物質がコンジュゲートされている。
【0042】
第3態様において、本願の実施形態は、上記のような免疫グロブリンをコードする単離された核酸を提供する。
【0043】
第4態様において、本願の実施形態は、さらに、上記のような核酸を含有するベクターを提供する。
【0044】
「ベクター(vector)」という用語は、ポリヌクレオチドが挿入されることが可能な核酸運搬ツールをいう。ベクターが挿入されたポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質を発現させることができる場合、ベクターは、発現ベクターと呼ばれる。ベクターは、携帯している遺伝物質エレメントが宿主細胞内で発現されるように、形質転換、形質導入又はトランスフェクションにより宿主細胞に導入されることができる。ベクターは、当業者に周知のものであり、プラスミド、ファージミド、コスミッド、酵母人工染色体(YAC)や細菌人工染色体(BAC)又はP1由来の人工染色体(PAC)等の人工染色体、λファージ又はM13ファージ等のファージ、及び動物ウイルス等を含むが、これらに限定されない。ベクターとして使用できる動物ウイルスは、レトロウイルス(レンチウイルスを含む)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス(単純ヘルペスウイルス等)、ポックスウイルス、バキュロウイルス、乳頭腫ウイルス、パポーバウイルス(SV40等)を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、本願の前記ベクターには、遺伝子工学によく使用される調節エレメント、例えばエンハンサー、プロモーター、内部リボソーム侵入部位(IRES)及び他の発現制御エレメント(例えば、転写終結シグナル、又はポリアデニル化シグナル及びポリU配列等)が含まれる。
【0045】
第5態様において、本願の実施形態は、さらに、上記のような核酸を含有するか、又は上記のようなベクターによって形質転換された宿主細胞を提供する。
【0046】
「宿主細胞」という用語は、ベクターの導入に使用できる細胞をいい、大腸菌や枯草菌等の原核細胞、酵母細胞やアスペルギルス菌等の真菌細胞、S2ショウジョウバエ細胞やSf9等の昆虫細胞、又は線維芽細胞、CHO細胞、COS細胞、NSO細胞、HeLa細胞、BHK細胞、HEK293細胞やヒトの細胞等の動物細胞を含むが、これらに限定されない。宿主細胞は、真核細胞であることが好ましく、哺乳動物細胞であることがより好ましい。
【0047】
第6態様において、本願の実施形態は、上記の宿主細胞を発現させることを含む免疫グロブリンの製造方法を提供する。
【0048】
本願の実施形態は、さらに、免疫グロブリンの製造方法を提供し、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して発現させることを含み、但し、
第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む。
【0049】
いくつかの実施形態において、前記免疫グロブリン、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1領域をさらに有する。
【0050】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドにおけるIgA又はIgMは、CH1領域をさらに有する。
【0051】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドは、IgGのヒンジ領域をさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドは、IgA又はIgMのヒンジ領域をさらに含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2領域をさらに有する。
【0054】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2-CH3領域をさらに有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドにおけるIgMは、CH1-CH2領域をさらに有する。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である。
【0057】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのうちの少なくとも1つがCH1領域を含み、
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのうちの少なくとも1つがヒンジ領域を含む。
【0058】
本願の実施形態は、さらに、上記の免疫グロブリンの製造方法により製造される免疫グロブリンを提供する。
【0059】
第7態様において、本願の実施形態は、上記のような免疫グロブリンの製造方法により製造される免疫グロブリンを単量体として重合することを含む多量体の製造方法を提供する。
【0060】
いくつかの実施形態において、IgACH2-CH3領域を有する2個、3個又は4個の免疫グロブリン単量体を重合する。
【0061】
いくつかの実施形態において、IgMCH3-CH4領域を有する5個の免疫グロブリン単量体を重合する。
【0062】
本願の実施形態は、さらに、上記の多量体の製造方法により製造される多量体を提供する。
【0063】
第8態様において、本願の実施形態は、表面に上記のような多量体がコーティングされている固相ベクターを提供する。
【0064】
いくつかの実施形態において、前記固相ベクターは、プラスチックベクター、微粒子又は膜ベクターであり、前記プラスチックベクターは、ポリスチレンベクターであってもよく、微粒子は、磁性微粒子であってもよく、前記膜ベクターは、ニトロセルロースメンブレン、ガラスセルロースメンブレン又はナイロンメンブレンであってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、前記固相ベクターは、試験管、EP管、マルチウェルプレート、クロマトグラフィーカラム、微量反応プレートのウェルから選択される。
【0066】
本願では、用語「微粒子」は、球体、略球体、立方体、多面体又は不定形状であってもよい。微粒子の直径は、10nm~1mmであってもよく、例えば100nm、500nm、1μm、10μm、100μm、500μmであり、好ましくは、400nm~10μmである。
【0067】
微粒子は、磁性微粒子であることが好ましく、その成分には磁性物質が含まれる。磁性物質は、金属(金属単体又は合金)、非金属、又は金属と非金属によって形成される複合体であってもよい。金属は、例えば鉄、アルミニウムニッケルコバルト金属等であり、非金属は、例えばフェライト非金属(Fe2O3又はFe3O4磁性ナノ粒子であることが好ましい。)であり、金属と非金属によって形成される複合体は、例えばネオジム鉄ホウ素ゴム磁性複合材料である。
【0068】
マルチウェルプレートは、ELISAプレートであることが好ましく、ELISAプレートは、8ウェル、16ウェル、32ウェル、48ウェル、64ウェル、96ウェル又はより多くのウェルを有し得る。
【0069】
第9態様において、本願の実施形態は、上記のような多量体又は上記のような固相ベクターを含有するキット又は試験片を提供する。
【0070】
いくつかの実施形態において、前記試験片は、サンプルパッド、結合パッド、反応膜及び吸収パッドを含み、前記反応膜には、検出領域及び品質検査領域が設けられており、
【0071】
前記多量体は、前記検出領域にコーティングされるか及び/又は前記結合パッドに滴下される。
【0072】
前記検出領域及び前記結合パッドのいずれにも、多量体が含有されている場合、多量体のIgG可変領域が結合される抗原エピトープが異なり、第2ポリペプチド末端ドメインは、同じであっても、異なってもよいことを容易に理解される。
【0073】
いくつかの実施形態において、前記キットは、さらに、サンプル前処理試薬(例えばサンプル精製濃縮試薬、溶解液等)、洗浄液(例えば水等)、緩衝液(例えばPBS又はTris等)、シグナル物質に対する発色試薬(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼに対してシグナル物質としてのECL又はDAB)等を含んでもよい。
【0074】
第10態様において、本願の実施形態は、抗原の検出方法を提供し、当該方法は、
上記のような多量体又は上記のような固相ベクターを前記抗原と接触させてコンジュゲート体を形成することと、
前記コンジュゲート体を検出することと、を含み、
但し、前記抗原は、前記IgG可変領域と特異的に結合することが発生できる抗原である。
【0075】
当業者に周知のいずれの方法により前記コンジュゲート体を検出することができ、例えば二重抗体サンドイッチ法であり、即ち、抗原を前記固相ベクターと接触させた後、追加の前記抗原に対する別の抗体(それは一般的にシグナル物質が標識されているものであり、又は、シグナル物質が標識された二次抗体でそれを検出する。)を用いて前記コンジュゲート体を検出する。
【0076】
代替可能に、固相ベクター上にコーティングされた抗体として一般の抗体を用いて、且つ検出対象の抗原と共にインキュベートし、前記多量体を遊離の検出抗体(それは一般的にシグナル物質が標識されているものであり、又は、シグナル物質が標識された二次抗体でそれを検出する。)として検出を行う。
【0077】
代替可能に、多量体でコーティングされた固相ベクターと別の多量体とを合わせて使用して前記抗原を検出し、このとき、固相ベクターにコーティングされた多量体と、別の多量体とはペア抗体である。
【0078】
上記のシグナル物質は、蛍光物質、量子ドット、ジゴキシゲニン標識プローブ、ビオチン、放射性同位元素、放射性造影剤、常磁性イオン蛍光ミクロスフェア、電子緻密物質、化学発光マーカー、超音波造影剤、光増感剤、金コロイド又は酵素のうちのいずれか1つであり得る。いくつかの実施形態において、前記シグナル物質は、金コロイド、フルオレセイン、蛍光ミクロスフェア、アクリジニウムエステル、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ又はβ-ガラクトシダーゼである。
【0079】
第11態様において、本願の実施形態は、上記のような多量体、固相ベクター、キット又は試験片の免疫検出における使用を提供する。
【0080】
本願の実施形態は、さらに、免疫検出のための上記のような多量体、固相ベクター、キット又は試験片を提供する。
【0081】
本願の実施形態は、さらに、免疫検出方法を提供し、当該方法は、上記のような多量体、固相ベクター、キット又は試験片を使用して免疫検出を行うことを含む。
【0082】
さらなる態様において、本願の実施形態は、IgG-IgM又はIgG-IgAキメラ免疫グロブリンの多量体を含む免疫診断キットを提供する。
【0083】
いくつかの実施形態において、前記免疫グロブリンは、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して得られ、但し、
第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む。
【0084】
いくつかの実施形態において、前記免疫グロブリン、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1領域をさらに有する。
【0085】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドにおけるIgA又はIgMは、CH1領域をさらに有する。
【0086】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドは、IgGのヒンジ領域をさらに含む。
【0087】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドは、IgA又はIgMのヒンジ領域をさらに含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2領域をさらに有する。
【0089】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2-CH3領域をさらに有する。
【0090】
いくつかの実施形態において、第2ポリペプチドにおけるIgM又はIgAは、CH1-CH2領域をさらに有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4である。
【0092】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのうちの少なくとも1つがCH1領域を含む。
【0093】
いくつかの実施形態において、第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとのうちの少なくとも1つがヒンジ領域を含む。
【0094】
いくつかの実施形態において、前記多量体は、IgACH2-CH3領域を有する2個、3個又は4個の免疫グロブリン単量体を重合したものであるか、又は、IgMCH3-CH4領域を有する5個の免疫グロブリン単量体を重合したものである。
【0095】
いくつかの実施形態において、前記多量体には、さらに、シグナル物質がコンジュゲートされている。
【0096】
いくつかの実施形態において、前記キットには、さらに、サンプル前処理試薬、洗浄液、緩衝液及び発色試薬が含まれる。
【0097】
いくつかの実施形態において、前記キットには、さらに、サンプルパッド、結合パッド、反応膜及び吸収パッドが含まれ、前記反応膜には、検出領域及び品質検査領域が設けられている。
【0098】
いくつかの実施形態において、前記キットには、さらに、別の抗体が含まれてもよく、別の抗体は、多量体であっても、単量体であってもよい。
【0099】
いくつかの実施形態において、前記多量体は、ニトロセルロースメンブレン、ラテックス、磁気ビーズ又はELISAプレート等を含む固相ベクターに固定されてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態において、前記多量体は、ナノ粒子、化学発光物質、蛍光物質、放射性物質、コロイド、酵素等のシグナル物質で標識することができる。
【0101】
以下、実施例を参照しながら、本願の実施案について詳細に説明する。
【実施例】
【0102】
以下の実施例において、制限エンドヌクレアーゼ、PrimeStarDNAポリメラーゼは、Takara社から購入した。pMD-18Tベクターは、Takara社から購入し、プラスミド抽出キットは、天根公司から購入し、プライマー合成及び遺伝子シークエンシングは、Invitrogen社によって行われた。
【0103】
実施例1 IgM、IgA重鎖定常領域をコードするポリヌクレオチドの製造
【0104】
本願では、鼠抗体のCH領域をコードするポリヌクレオチドは、PCRの方式により、鼠の末梢血細胞DNAから取得することができ、PCRの方式により、対応するタイプのモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株から取得することもできる。
【0105】
IgMCH領域をコードするポリヌクレオチドの取得
PCRの方式により、IgMタイプの鼠モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ細胞株6M9(faponbiotechから取得できる。)のゲノムから、鼠IgM-CH領域をコードするポリヌクレオチドを取得した。使用したプライマーは、下記のとおりである。
フォワードプライマー配列(5’→3’):GAGAGTCAGTCCTTCCCAAATGTCTTCCCCCTCGTCTC(配列番号1)
リバースプライマー配列(5’→3’):CCCGAATTCTTATCAATAGCAGGTGCCACCTGTGTCAGACATGATCAG(配列番号2)
【0106】
リバースプライマーにより、終止コドンTGATAA(アンチコドンTTATCA)の直後にEcoRI制限酵素認識部位(GAATTC)を導入した。この箇所では、ダブル終止コドンを採用した。PCR技術により、約1.4kbのポリヌクレオチドを取得して、且つpMD-18Tベクターに導入し、シークエンシングと確認に使用される。
【0107】
当該ポリヌクレオチドは、鼠IgM-CH領域をコードし、そのアミノ酸配列のN末端からC末端までは、次のとおりである。
【化1】
【0108】
IgACH領域をコードするポリヌクレオチドの取得
IgACH領域をコードするポリヌクレオチドは、PCRの方式により、単離された鼠末梢血細胞(faponbiotechから取得できる。)DNAから取得した。使用したプライマーは、下記のとおりである。
フォワードプライマー配列(5’→3’):GAGTCTGCGAGAAATCCCACCATCTACCCACTGACACTC(配列番号4)
リバースプライマー配列(5’→3’):CCCGAATTCTCAGTAGCAGATGCCATCTCCCTCTGACATGAT(配列番号5)
【0109】
リバースプライマーにより、終止コドンTGA(アンチコドンTCA)の直後にEcoRI制限酵素認識部位を導入した。PCR技術により、約1kbのポリヌクレオチドを取得して、pMD-18Tベクターに導入し、シークエンシングで配列を確認するのに使用される。
【0110】
当該ポリヌクレオチドは、鼠IgA-CH領域をコードし、そのアミノ酸配列のN末端からC末端までは、次のとおりである。
【化2】
【0111】
類似の方式により、IgMCH領域をコードするCH1、CH2、CH3及びCH4ドメイン又はその組合せのポリヌクレオチドを製造するか、又はIgACH領域をコードするCH1、CH2及びCH3ドメイン又はその組合せのポリヌクレオチドを製造する。
【0112】
実施例2 IgG/IgMハイブリッド組換え抗体の発現プラスミドの構築
【0113】
本実施例では、IgG抗体として、anti-Pan-PLDH9G7モノクローナル抗体(以下、MA9G7と呼ぶ。)を用い、当該モノクローナル抗体の配列は、公開番号CN111363044Aである中国特許に記載されており、それは、参照により本明細書に組み込まれる。抗体は、CN111363044Aの[0087]~[0089]段落における突然変異組合せ1~突然変異組合せ56のうちのいずれか1組の突然変異を有するいずれか1つの抗体から選択されることができ、例えば、突然変異組合せ32であり、それらは、類似の性質を有する。
【0114】
IgM自体の配列が多量体の特徴を有する。まず、MA9G7の重鎖可変領域(VH)のセグメント1をコードするポリヌクレオチドを、ブリッジPCRの方式により、IgMCH領域をコードするポリヌクレオチドに連結した。MA9G7のVH領域のセグメント1のアミノ酸配列は次のとおりである。
【化3】
【0115】
PCRにより1.8kb程度のポリヌクレオチドを取得し、且つHindIII/EcoRI二重酵素切断により、対応する制限酵素で切断した後のpcDNATM3.4TOPO(R)vectorに連結し、得られたベクターをpcDNA3.4A-9G7TB1VCHと名づけた。
【0116】
その後、MA9G7のVH領域のセグメント2をコードするポリヌクレオチドを選択して、ブリッジPCRの方式により、IgMCH領域のCH2から始まってC末端までをコードするポリヌクレオチドに連結した。MA9G7のVH領域のセグメント2のアミノ酸配列は次のとおりである。
【化4】
【0117】
PCRにより約1.8KBのDNA断片を取得し、且つHindIII/EcoRI二重酵素切断により、pcDNATM3.4TOPO(R)vectorに連結し、pcDNA3.4A-9G7TB2VCHと略称する。
【0118】
IgMの多量体特性は、重鎖に依存するため、中国特許公開番号CN111363044Aに開示された軽鎖プラスミドの構築方法を使用して、本実施例における抗体の軽鎖クローンを構築した。
【0119】
実施例3 MA-9G7TB1及びMA-9G7TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体発現の製造
【0120】
1. 組換え抗体発現プラスミドの線形化
次のような酵素切断系を製造する。50ulの制限酵素Buffer、100ug/管の組換えプラスミド、10ulのPvuI酵素で、また滅菌水で500ulまで補充し、37℃の水浴で夜通し酵素切断し、先に、酵素切断系と同体積のフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール(25:24:1)(下層)を用いて、続いて、クロロホルム(水相)を用いて順番に抽出し、0.1倍体積(水相)の3Mの酢酸ナトリウム及び2倍体積のエタノールで氷上に静置してDNAを沈殿し、DNA沈殿を70%エタノールですすいて、有機溶媒を除去し、エタノールの揮発が完了した後、適量の滅菌水で再溶解し、最後に濃度を測定した。
【0121】
2. 組換え抗体発現プラスミドの安定的なトランスフェクション、安定的な細胞株の加圧スクリーニング
超純水を用いてpcDNA3.4A-9G7TB1VCHプラスミド及び軽鎖プラスミドを1:1の比で40ug/100ulに希釈し、新しい遠心分離管を取って、CHO細胞濃度を管内に添加して1.43×107cells/mlに調整し、100ulのプラスミドと700ulの細胞を混合して、電気回転カップに移して電気トランスフェクションを行い、トランスフェクションの後に、細胞を培養し続け、翌日にカウントし、25umol/LのMSX96ウェルで約25日間加圧培養した。
【0122】
顕微鏡で、細胞が成長しているクローンウェルを観察して標識し、且つコンフルエンシーを記録し、培養した上清を取って、サンプルを検出に送り、抗体濃度、相対的な濃度が高い細胞株を選択して24ウェルプレートに移し、約3日後に6ウェルプレートに移し、3日後種を保存してバッチ培養を行い、細胞密度を0.5×106cells/mlに調整し、2.2ml体積でバッチ培養を行い、0.3×106cells/mlの細胞密度、2mlで種を保存し、7日後に6ウェルプレートにおけるバッチ培養した上清サンプルを検出に送り、抗体濃度及び細胞直径が小さい細胞株を選択してTPP管に移して種を保存して継代し、MA-9G7TB1IgG/IgMハイブリッド組換え抗体を発現する細胞株を得た。
【0123】
pcDNA3.4A-9G7TB2VCHプラスミド及び軽鎖プラスミドは、pcDNA3.4A-9G7TB1VCHプラスミドに対する上記に説明したような方法にしたがって、トランスフェクション及びスクリーニングを行って、MA-9G7TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体を発現する細胞株を得た。
【0124】
3. 細胞の拡大と培養
細胞が蘇生した後、先に、100%Dynamis培地を含有する125ml仕様の振盪フラスコに接種し、接種体積が30mlであり、回転速度が120r/minで、温度が37℃で、8%の二酸化炭素を含有する振盪ベッドに置いて培養した。72h培養した後、5×105cells/mlの接種密度で接種して培養を拡大し、拡大培養体積を生産ニーズに応じて計算し、使用した培地は100%のDynamis培地であった。その後、72h毎に、拡大培養を1回行った。細胞量が生産ニーズを満たす場合、接種密度を約5×105cells/mlに厳密に制御して生産した。
【0125】
4. 振盪フラスコでの生産及び精製
振盪フラスコの生産パラメータ:振盪ベッドは、回転速度が120r/minで、温度が37℃で、二酸化炭素の含有量が8%であった。流し添加で材料を補足した。振盪フラスコで72h培養してから、毎日材料を補足し、毎日、初期培養体積の3%のHyClone
TMCellBoost
TMFeed7aを流して添加し、1日当たりの流し添加量が初期培養体積の千分の一であるHyClone
TMCellBoost
TMFeed7bを流して添加し、12日目(12日目も材料を補足する。)まで補足した。6日目にグルコースを3g/L追加した。13日目にサンプルを採集した。captoL(cytiva)及びCHT(Bio-Rad)の2種類のフィラーを利用して、アフィニティークロマトグラフィーにより、2段階に分けて精製して、MA-9G7TB1及びMA-9G7TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体の多量体抗体を取得した。10ulの精製した抗体(濃度が1mg/mlである。)を取って還元性SDS-PAGEを行い、電気泳動結果は、
図1に示すとおりである。
図1において、左側のレーンがMA-9G7TB1IgG/IgM組換え抗体のバンドであり、右側のレーンがMA-9G7TB2IgG/IgM組換え抗体のバンドである。各レーンに2本のバンドを示し、一方のバンドの相対的な分子質量(Mr)は70~75kD(重鎖)であり、他方のMrは20~35kD(軽鎖)である。
【0126】
実施例4 MA-9G7TB1及びMA-9G7TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体の使用
MA-9G7TB1金コロイド検出用の試験片の製造
【0127】
1. ニトロセルロースメンブレンの製造
ニトロセルロースメンブレンの製造:コーティング用緩衝液でMA-9G7TB1組換え抗体を1~5mg/mlに希釈し、T線(検量線)を引き、T線は金コロイド末端に近寄せ、コーティング用緩衝液でヒツジ抗マウスIgG抗体(faponbiotech股▲ふん▼有限公司生産、品番BA-PAB-MU0001)を1~5mg/mlに希釈して、C線(制御線)を引き、C線は吸収パッドに近寄せた。37℃で乾燥し、封止して使用に備えた。
【0128】
2. 金コロイド、金標識モノクローナル抗体の製造
2.1 金コロイドの製造
二重蒸留脱イオン水を用いて、1%のクロロ金酸を0.01%に希釈し、電気炉に置いて煮沸し、0.01%のクロロ金酸100ml当たりに1%のクエン酸三ナトリウムを2ml加え、煮沸し続けて、液体が真っ赤を呈すると加熱を停止し、室温に冷却した後、失った水を補足した。製造済みの金コロイドの外観は、純粋で透明で、沈殿物や浮遊物がなく、有効期間は1週間であった。
【0129】
2.2 金コロイド標識抗体の製造
0.1M炭酸カリウムを用いて金コロイドのpH値を8.2に調整し、8~10μg抗体/1mlの金コロイドにしたがって別の株のMA標識抗体(faponbiotechから取得できる。)を加え、マグネチックスターラーで均一になるように30min混合し、撹拌しながら、最終濃度が1%になるまでBSAを加え、1時間静置した。液体を、13000rpm、4℃で、30min遠心分離し、上清を捨て、沈殿を標識洗浄保存液で2回洗浄し、初期金コロイド体積の十分の一の標識洗浄保存液で沈殿を再懸濁し、4℃で使用に備え、有効期間は一週間であった。
【0130】
3. 金標識パットの製造
金標識パットをブロッキング液に30min浸漬した後、37℃で乾燥した。その後、製造済みの金コロイド標識抗体を金標識パット上に均一に敷き、1ミリリットル当たりの溶液を20平方センチメートルに敷き、凍結乾燥し、封止して、4℃で使用に備えた。
【0131】
4. 試験片のサンプルパッドの製造
サンプルパッドをブロッキング液(BSAを含有する。)に30min浸漬した後、37℃で乾燥し、封止して、4℃で使用に備えた。
【0132】
5. 検出用試験片の組立
吸収パッド(Millipore社から購入)、ニトロセルロースメンブレン、金標識パット、サンプルパッドを吸水しない支持シート上に設け、3mmの幅の小さいストリップに切断した。小さいストリップ10個毎を1袋にして、乾燥剤を加え、真空封止して、MA-9G7TB1金コロイド検出用試験片を得た。
MA-9G7TB2組換え抗体及びMA-9G7組換え抗体を使用して、MA-9G7TB1金コロイド検出用試験片の製造に対して説明した方法にしたがって、金コロイド検出用試験片をそれぞれ製造し、T線ハイブリッド組換え抗体の質量濃度は、対照抗体と同じであった。
【0133】
6. コロイド検出用試験片の使用
組立済みの検出用試験片を利用して、被検材料にPan-PLDHタンパク質(以下、MAタンパク質と呼ぶ。)を含有するか否かを検出し、それにより、MA抗体のMAタンパク質検出に対する作用性を特定した。検出時、MAタンパク質は、先に、金コロイド標識のMA抗体と結合して、MA-金コロイド標識-MA抗体複合体を形成し、毛細管が作用するため、MA-金コロイド標識-MA抗体複合体はニトロセルロースメンブレンに沿って前に泳動して、検量線に到達すると、MA-金コロイド標識-MA抗体複合体は、線を引いたMAコーティング抗体と結合して、MA抗体-MA-金コロイド標識-MA抗体の複合体を形成し、それにより、検量線に濃縮し、赤色沈殿線を形成した。表1は、対応する検出データである。赤色沈殿線の濃淡は、反応の強弱を示し、赤色が深いほど、反応性が強いことを示し、逆であれば弱いことを示し、同時に、反応の強弱を文字C及び数字の組合せを用いて示し、Cの後の数字が小さいほど、反応性が強いことを示し、逆であれば、反応性が弱いことを示し、赤色沈殿線が形成されていない場合、Bで示す。
【0134】
【0135】
実施例5 SARS-CoV-23E50TB2及び5F27TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体の構築、製造及び金コロイドプラットフォームの使用
【0136】
本実施例において、IgG抗体として3E50抗体を使用し、当該抗体は、中国特許公開番号CN112239501Aに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。抗体は、CN112239501Aの[0049]~[0052]段落の突然変異組合せ1~突然変異組合せ68のいずれか1組の突然変異を有する抗体から選択されるいずれか1つ、例えば突然変異組合せ50であってもよく、それらは似ている性質を有する。本実施例において、IgG抗体として5F27抗体を使用し、当該抗体は、中国特許CN112239500Aに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。抗体は、CN112239500Aの[0048]~[0049]段落の突然変異組合せ1~突然変異組合せ42のいずれか1組の突然変異を有する抗体から選択されるいずれか1つ、例えば突然変異組合せ20であってもよく、それらは似ている性質を有する。
【0137】
1. SARS-CoV-23E50TB2IgG/IgM及び5F27TB2IgG/IgM組換え抗体の発現プラスミドは、実施例2におけるMA-9G7TB2発現プラスミドの構築方式により構築した。
発現されたSARS-CoV-23E50TB2及び5F27TB2IgG/IgM組換え抗体は、3E50及び5F27IgGそれぞれのVH+CH1セグメント(ヒンジ領域を含む。)と上記のIgMのCH2-CH3-CH4セグメントとを結合してなる抗体である。
【0138】
2. SARS-CoV-23E50TB2及び5F27TB2IgG/IgM組換え抗体を実施例3におけるMA-9G7TB2組換え抗体の発現方式にしたがって製造した。
図2及び
図3は、それぞれ順番に3E50TB2及び5F27TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体の電気泳動結果である。
【0139】
3. SARS-CoV-23E50TB2及び5F27TB2IgG/IgM組換え抗体の使用は、実施例4の方法にしたがって性能評価を行い、具体的な性能評価結果は下表のとおりである。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
実施例6 CTNI21C5TB2IgG/IgMハイブリッド組換え抗体の構築、製造及び蛍光クロマトグラフィープラットフォームの使用
【0144】
本実施例において、IgG抗体としてAnti-cTnI-21C5モノクローナル抗体(以下、CTNI21C5と呼ぶ。)を採用し、当該モノクローナル抗体の配列は、中国特許公開番号CN111018983Aに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。抗体は、CN111018983Aの[0080]~[0084]段落の突然変異組合せ1~突然変異組合せ56のいずれか1組の突然変異を有する抗体から選択されるいずれか1つ、例えば突然変異組合せ37であってもよく、それらは似ている性質を有する。
【0145】
1. CTNI21C5TB2IgG/IgM組換え抗体の発現プラスミドは、実施例2のMA-9G7TB2発現プラスミドの構築方式にしたがって構築した。
発現されたCTNI21C5TB2IgG/IgM組換え抗体は、CTNI21C5IgGのVH+CH1セグメント(ヒンジ領域を含む。)と上記のIgMのCH2-CH3-CH4セグメントとを結合してなる抗体である。
CTNI21C5TB1IgG/IgM組換え抗体の発現プラスミドは、実施例2のMA-9G7TB1発現プラスミドの構築方式にしたがって構築した。
発現されたCTNI21C5TB1IgG/IgM組換え抗体は、CTNI21C5IgGの重鎖可変領域(VH)セグメントと上記のIgMのCHセグメントとを結合してなる抗体である。
また、CTNI21C5TB3及びCTNI-TBQIgG/IgM組換え抗体の発現プラスミドを構築した。具体的には、発現されたCTNI-TBQIgG/IgM組換え抗体は、CTNI21C5全長抗体(完全な定常領域を含む。)とIgMのCH3-CH4セグメントとを結合してなる抗体である。具体的には、発現されたCTNI21C5TB3IgG/IgM組換え抗体は、IgGのVH+CH1-CH2セグメント(ヒンジ領域を含む。)とIgMのCH3-CH4セグメントとを結合してなる抗体である。
【0146】
2. CTNI21C5TB2、CTNI21C5TB3、全長抗体CTNI-TBQ及びCTNI21C5TB1IgG/IgM組換え抗体は、実施例3のMA-9G7TB2組換え抗体を発現する製造方式にしたがって製造した。
図4は、21C5TB2ハイブリッド組換え抗体の電気泳動結果である。
【0147】
3. CTNI21C5TB2組換え抗体蛍光クロマトグラフィープラットフォームの使用
3.1 CTNI21C5TB2、CTNI21C5TB3、全長抗体CTNI-TBQ、CTNI21C5TB1及びCTNI21C5蛍光クロマトグラフィー検出用試薬カードの製造
3.1.1 ニトロセルロースメンブレンの製造
ニトロセルロースメンブレンの製造:コーティング用緩衝液でCTNI21C5TB2組換え抗体を1~2mg/mlに希釈し、T線(検量線)を引き、T線は金標識パット末端に近寄せ、金標識パット末端から約5mm離れており、コーティング用緩衝液でヒツジ抗鼠IgG抗体(faponbiotech股▲ふん▼有限公司生産、品番BA-PAB-MU0001)を1~2mg/mlに希釈し、C線(制御線)を引き、C線は、吸収パッドに近寄せ、吸収パッドから約3mm離れている。37℃で乾燥し、封止して使用に備えた。
【0148】
3.1.2 蛍光クロマトグラフィー標識モノクローナル抗体の製造
1%固形含有量の蛍光ミクロスフェアを1ml取って、遠心分離で上清を除去した後、ミクロスフェアと等体積の標識活性化液を加えて超音波で均一に混合してから、活性化剤EDC(最終濃度5mg/ml)及びNHS(最終濃度5mg/ml)を加え、20min間遮光して振って均一に混合した後、遠心分離で上清を除去し、ミクロスフェアと等体積の標識カップリング液を加えて超音波で均一に混合した後、別の株のCTNI標識抗体を0.2~1mg加え、3h遮光して振って均一に混合し、最後に、標識ブロッキング液を加えてブロッキングし、45min遮光して振って混合した後、標識を終了し、遠心分離で上清を除去し、ミクロスフェア標識保存液でミクロスフェアを再溶解し、超音波で均一に混合し、4℃で使用に備え、有効期間は1か月であった。
【0149】
3.1.3 蛍光標識パットの製造
マーカー希釈液でマーカーを5~10倍に希釈した後、液体噴霧器を使用して希釈後のマーカーをガラス繊維パッドに噴霧した。標識パットを封止して、4℃で使用に備えた。
【0150】
3.1.4 試験片のサンプルパッドの製造
ガラス繊維パッドをブロッキング液(BSAを含有する。)に30min浸漬した後、37℃で乾燥し、サンプルパッドを封止して、4℃で使用に備えた。
【0151】
3.1.5 検出用試薬カードの組立
吸収パッド(Millipore社から購入)、ニトロセルロースメンブレン、標識パット、サンプルパッドを吸水しない支持シートに設け、3mm幅の小さいストリップに切断して、カードケースに入れ、1つのカードが1袋であり、乾燥剤を加え、アルミ箔袋を真空封止して、CTNI21C5TB2蛍光クロマトグラフィー検出用試薬カードを得た。
CTNI21C5TB3、全長抗体CTNI-TBQ、CTNI21C5TB1及びCTNI21C5蛍光クロマトグラフィー検出用試薬カードを使用して、CTNI21C5TB2蛍光クロマトグラフィー検出用試薬カードの製造に対して説明された方法にしたがって、それぞれ蛍光クロマトグラフィー検出用試薬カードを製造し、CTNI21C5TB1、全長抗体CTNI-TBQ、CTNI21C5TB2、CTNI21C5TB3IgG/IgMハイブリッド組換え抗体T線ハイブリッド組換え抗体の質量濃度は対照抗体と同じである。
【0152】
3.2 CTNI21C5TB2組換え抗体蛍光クロマトグラフィープラットフォームのテスト結果
購買したCTNI抗原を検出サンプルとした。アルミ箔袋を破って、テストカードを取り出した。各々の検出サンプルから50μLのサンプルを吸い取り、サンプルをサンプル希釈液に加え、十分に均一に混合した後、50μLを吸い取ってテストカードの試料添加ウェルに入れ、テストカードに試料を添加した後の反応時間は15minであり、蛍光検出器は、自動的にテストして結果を読み取った。同時に、病院から収集した30部の臨床定値検体を検出サンプルとして、21C5TB2又は21C5抗体の検体関連性rを検出した。具体的なテスト結果は、表5に示すとおりであり、21C5TB2抗体の検出感度が21C5より大きいことを示した。同じ原理で、上記のテスト方法にしたがって、21C5TB1、21C5TB3及び21C5TBQ抗体を使用して検出した30部の検体の関連性rは、いずれも0.9以上であり、且つ、感度21C5TB2>21C5TB3>21C5TBQ>21C5TB1であった。
【0153】
【0154】
実施例7 CKMB10C5TB4IgG/IgAハイブリッド組換え抗体の構築、製造、及び蛍光クロマトグラフィープラットフォームの使用
【0155】
本実施例において、IgG抗体としてAnti-CKMB10C5モノクローナル抗体(以下、CKMB10C5と呼ぶ。)を採用し、当該モノクローナル抗体の配列は、中国特許公開番号CN111349168Aに記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。抗体は、CN111349168Aの[0096]~[0098]段落の突然変異組合せ1~突然変異組合せ56のいずれか1組の突然変異を有する抗体からいずれか1つをランダムに選択することができ、例えば、突然変異組合せ11であり、それらは似ている性質を有する。
【0156】
1. CKMB10C5TB4IgG/IgAハイブリッド組換え抗体の発現プラスミドの構築
まず、CKMB10C5のVH領域+一部のCH1セグメントをコードするポリヌクレオチドをブリッジPCRの方式により、IgAのCH領域のヒンジ領域からC末端までの断片をコードするポリヌクレオチドと連結した。PCRにより1.5kb程度のDNA断片を取得し、HindIII/EcoRI二重酵素切断により、pcDNATM3.4TOPO(R)vectorに連結し、pcDNA3.4A-10C5TB3VCHと略称した。
CKMB10C5TB1IgG/IgM組換え抗体の発現プラスミドは、実施例2のMA-9G7TB1の発現プラスミドの構築方式を参照して構築した。
発現されたCKMB10C5TB1IgG/IgM組換え抗体は、CKMB10C5IgGのVHセグメントを上記のIgMのCHセグメントと結合してなる抗体である。
また、CTNI-TBQIgG/IgM組換え抗体の発現プラスミドを構築した。具体的には、発現されたCTNI-TBQIgG/IgM組換え抗体は、CKMB10C5全長抗体(完全な定常領域を含む。)と上記の同じIgAの断片を連結してなる抗体である。
本実施例における抗体の軽鎖クローンは、中国特許公開番号CN111349168Aに開示された軽鎖プラスミドの構築方法を使用して構築した。
【0157】
2. CKMB10C5TB4、CKMB10C5TB1及びCTNI-TBQIgG/IgM組換え抗体は、実施例3のMA-9G7TB2組換え抗体を発現する方式にしたがって製造したものであり、captoL(cytiva)及びCHT(Bio-Rad)の2種類のフィラーを利用して、アフィニティークロマトグラフィーにより、2段階に分けて精製して、抗体を取得した。
【0158】
3. CKMB10C5TB4組換え抗体蛍光クロマトグラフィープラットフォームの使用
3.1 全長抗体CKMB-TBQ、CKMB10C5及びCKMB10C5TB4の蛍光クロマトグラフィー検出用試薬カードの製造は、実施例6の記載と同じであり、異なる点は、本実施例の各組のハイブリッド組換え抗体は、いずれもIgAの二量体であり、全長抗体CKMB-TBQ、CKMB10C5TB4IgG/IgAハイブリッド組換え抗体のT線ハイブリッド組換え抗体の質量濃度は、対照抗体と同じであることである。
【0159】
3.2 CKMB10C5TB4組換え抗体蛍光クロマトグラフィープラットフォームテスト結果
購買したCKMB抗原を検出サンプルとした。アルミ箔袋を破って、テストカードを取り出した。各々の検出サンプルから50μLのサンプルを吸い取り、サンプルをサンプル希釈液に加え、十分に均一に混合した後、50μLを吸い取ってテストカードの試料添加ウェルに加え、テストカードに試料を添加した後の反応時間は15minであり、蛍光検出器は、自動的にテストして結果を読み取った。同時に、病院から収集した30部の臨床定値検体を検出サンプルとして、10C5TB4又は10C5抗体の検体関連性rを検出した。具体的なテスト結果は、表6に示すとおりであり、10C5TB4抗体の検出感度が10C5より大きいことが分かり、検出した30部の検体の関連性rがいずれも0.9以上であった。同じ原理で、上記のテスト方法にしたがって、10C5TB1、10C5TBQ抗体を使用して検出した30部の検体の関連性rがいずれも0.9以上であり、且つ感度10C5TB4>10C5TBQ>10C5TB1であった。
【0160】
【0161】
以上に記載の実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせることが可能であり、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせについて説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾が存在しない限り、いずれも本明細書に記載の範囲であると考えられるべきである。
【0162】
以上に記載の実施例は、本願のいくつかの実施形態を示したのに過ぎず、その説明は具体的で詳細であるが、それにより特許請求の範囲を限定するものと解釈することはできない。なお、当業者であれば、本願の概念から逸脱せずに、いくつかの変形及び改良を行うことができ、これらはいずれも本願の保護範囲に属する。したがって、本願の保護範囲は添付の特許請求の範囲に準じるべきである。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-12-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して得られ、
前記第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
前記第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む、免疫グロブリン。
【請求項2】
前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgA又はIgMは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドは、IgGのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第2ポリペプチドは、IgA又はIgMのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2-CH3領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgM又はIgAは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgM又はIgAは、CH2領域をさらに有し、
任意に、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であり、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、CH1領域を含み、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、ヒンジ領域を含む、請求項1に記載の免疫グロブリン。
【請求項3】
多量体であって、
請求項1又は2に記載の免疫グロブリンを単量体として重合して得られ、
任意に、前記多量体は、IgACH2-CH3領域を有する2個、3個又は4個の免疫グロブリン単量体が重合して得られたものであるか、又は、IgMCH3-CH4領域を有する5個の免疫グロブリン単量体が重合して得られたものであり、
任意に、前記多量体には、さらに、シグナル物質がコンジュゲートされている、多量体。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の免疫グロブリンをコードする単離された核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の核酸を含有するベクター。
【請求項6】
請求項4に記載の核酸を含有するか、又は請求項5に記載のベクターによって形質転換される宿主細胞。
【請求項7】
請求項6に記載の宿主細胞を発現させることを含む免疫グロブリンの製造方法。
【請求項8】
第1ポリペプチドと第2ポリペプチドとを融合して発現させることを含み、
前記第1ポリペプチドは、N末端に位置するIgG可変領域を含み、及び
前記第2ポリペプチドは、C末端に位置するIgACH2-CH3領域、又はIgMCH3-CH4領域を含む、免疫グロブリンの製造方法。
【請求項9】
前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgA又はIgMは、CH1領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドは、IgGのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第2ポリペプチドは、IgA又はIgMのヒンジ領域をさらに含み、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgM又はIgAは、CH2領域をさらに有し、
任意に、前記第1ポリペプチドにおけるIgGは、CH1-CH2-CH3領域をさらに有し、
任意に、前記第2ポリペプチドにおけるIgM又はIgAは、CH1-CH2領域をさらに有し、
任意に、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4であり、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、CH1領域を含み、
好ましくは、前記第1ポリペプチド及び前記第2ポリペプチドのうちの少なくとも一方が、ヒンジ領域を含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法により製造される免疫グロブリン。
【請求項11】
多量体の製造方法であって、
請求項7~9のいずれか1項に記載の製造方法により製造される免疫グロブリンを単量体として重合することを含み、
任意に、前記多量体は、IgACH2-CH3領域を有する2個、3個又は4個の免疫グロブリン単量体を重合したものであるか、又は、IgMCH3-CH4領域を有する5個の免疫グロブリン単量体を重合したものである、多量体の製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の製造方法により製造される多量体。
【請求項13】
表面に請求項3又は12に記載の多量体がコーティングされている固相ベクターであって、
任意に、前記固相ベクターはプラスチックベクター、微粒子又は膜ベクターである、固相ベクター。
【請求項14】
請求項3又は12に記載の多量体、又は請求項13に記載の固相ベクターを含有するキット又は試験片であって、
任意に、前記試験片には、サンプルパッド、結合パッド、反応膜及び吸収パッドが含まれ、前記反応膜には検出領域及び品質検査領域が設けられ、
前記多量体は、前記検出領域にコーティングされるか及び/又は前記結合パッドに滴下され、
任意に、前記キットは、サンプル前処理試薬、洗浄液、緩衝液及び発色試薬を含む、キット又は試験片。
【請求項15】
抗原の検出方法であって、
請求項3又は12に記載の多量体、又は請求項13に記載の固相ベクターを前記抗原と接触させてコンジュゲート体を形成することと、
前記コンジュゲート体を検出することと、を含み、
但し、前記抗原は、前記IgG可変領域と特異的に結合することが発生できる抗原である、抗原の検出方法。
【請求項16】
請求項3又は12に記載の多量体、請求項13に記載の固相ベクター、又は請求項14に記載のキット又は試験片の免疫検出における使用。
【請求項17】
免疫検出のための請求項3又は12に記載の多量体、請求項13に記載の固相ベクター、又は請求項14に記載のキット又は試験片。
【請求項18】
請求項3又は12に記載の多量体、請求項13に記載の固相ベクター、又は請求項14に記載のキット又は試験片を用いて抗原を検出することを含む免疫検出方法。
【請求項19】
前記IgMのCH1、CH2、CH3,CH4領域は、配列番号3におけるIgMのCH1、CH2,CH3、CH4領域から選ばれ、前記IgAのCH1、CH2,CH3領域は、配列番号6におけるIgAのCH1、CH2、CH3領域から選ばれ;又は前記IgGのCH1領域、ヒンジ領域は、配列番号8におけるIgGのCH1領域、ヒンジ領域から選ばれる、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の免疫グロブリン又は請求項8~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0156
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0156】
1. CKMB10C5TB4IgG/IgAハイブリッド組換え抗体の発現プラスミドの構築
まず、CKMB10C5のVH領域+一部のCH1セグメントをコードするポリヌクレオチドをブリッジPCRの方式により、IgAのCH領域のヒンジ領域からC末端までの断片をコードするポリヌクレオチドと連結した。PCRにより1.5kb程度のDNA断片を取得し、HindIII/EcoRI二重酵素切断により、pcDNATM3.4TOPO(R)vectorに連結し、pcDNA3.4A-10C5TB3VCHと略称した。
CKMB10C5TB1IgG/IgA組換え抗体の発現プラスミドは、実施例2のMA-9G7TB1の発現プラスミドの構築方式を参照して構築した。
発現されたCKMB10C5TB1IgG/IgA組換え抗体は、CKMB10C5IgGのVHセグメントを上記のIgAのCHセグメントと結合してなる抗体である。
また、CTNI-TBQIgG/IgA組換え抗体の発現プラスミドを構築した。具体的には、発現されたCTNI-TBQIgG/IgA組換え抗体は、CKMB10C5全長抗体(完全な定常領域を含む。)と上記の同じIgAの断片を連結してなる抗体である。
本実施例における抗体の軽鎖クローンは、中国特許公開番号CN111349168Aに開示された軽鎖プラスミドの構築方法を使用して構築した。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0157
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0157】
2. CKMB10C5TB4、CKMB10C5TB1及びCTNI-TBQIgG/IgA組換え抗体は、実施例3のMA-9G7TB2組換え抗体を発現する方式にしたがって製造したものであり、captoL(cytiva)及びCHT(Bio-Rad)の2種類のフィラーを利用して、アフィニティークロマトグラフィーにより、2段階に分けて精製して、抗体を取得した。
【国際調査報告】