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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-25
(54)【発明の名称】バイオマーカー及びそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240618BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20240618BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240618BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240618BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20240618BHJP
   C12N 9/12 20060101ALI20240618BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20240618BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
C12Q1/6813 Z
C12N15/09 200
C07K14/705
C07K14/47
C12N9/12
G01N33/53 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518952
(86)(22)【出願日】2022-05-20
(85)【翻訳文提出日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2022063820
(87)【国際公開番号】W WO2022253604
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】2150710-8
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】523457372
【氏名又は名称】メタキュラム バイオテック アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ランドストローム, マレーネ
(72)【発明者】
【氏名】ソング, ジイ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA26
2G045CB02
2G045DA36
2G045FA40
2G045FB01
2G045FB03
2G045FB08
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ53
4B063QR32
4B063QR35
4B063QS34
4B063QX02
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA50
4H045EA51
(57)【要約】
本発明は、共局在する新規のバイオマーカーの測定を通じて、がんを有する対象を分類、診断、及びモニタリングするための方法を提供する。また、がん、特に侵襲性がんの診断、鑑別診断、並びにがんの進行をモニタリングするためのキット及びアレイも提供される。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象におけるがんを診断するための方法であって、前記方法が、
a)前記対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、前記バイオマーカーが、前記生物学的試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
前記生物学的試験試料中の3つのバイオマーカー全ての共局在が、前記対象におけるがんを示す、方法。
【請求項2】
第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、前記バイオマーカーが、前記生物学的試験試料中のTNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、前記生物学的試料中の前記生物学的試験試料中の4つのバイオマーカー全ての共局在が、前記対象におけるがんを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
対象における侵襲性がんを診断及び/又は予後予測するための方法であって、前記方法が、
a)前記対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、前記バイオマーカーが、前記試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
前記生物学的試料中の3つのバイオマーカー全ての共局在が、前記対象における侵襲性がんを示す、方法。
【請求項4】
第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、前記バイオマーカーが、前記生物学的試験試料中のTNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、前記生物学的試験試料中の4つのバイオマーカー全ての共局在が、前記対象における侵襲性がんを示す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
オーロラキナーゼB(AURKB)が、ユビキチン化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
AURKBが、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン85(K85)及び/又はリジン87(K87)に対応する一方又は両方のリジン残基でユビキチン化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記がんが、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断に関連し、及び/又はそれによって媒介される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記がんが、固形腫瘍である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記固形腫瘍が、前立腺がん、腎がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、膀胱がん、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記前立腺がんが、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記試験試料が、腫瘍からの生検などの組織試料である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びに/又はTNF受容体関連因子6(TRAF6)の存在又は非存在が、前記バイオマーカータンパク質を検出すること、及び/又は前記バイオマーカータンパク質の生物学的活性を検出することによって決定される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(b)における前記バイオマーカーの存在及び/又は非存在を決定することが、免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫沈降(IP)、ELISA技法(単一又は多重)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫放射線アッセイ(IRMA)及び免疫酵素アッセイ(IEMA)(モノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体を使用するサンドイッチアッセイを含む)、インサイチュ近接ライゲーションアッセイ(PLA)、酵素法、画像分析、質量分析、アプタマー、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴法(SPR)、マルチプレックスアッセイ(MSD、Mesoscale discovery)からなる群から選択される方法を使用して、又はオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型の細胞内ドメイン(TβR1-ICD);並びにTNF受容体関連因子(TRAF6)に結合する指標物質によって行われる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、がん及び/又は侵襲性がんと診断された場合に、前記方法が、
-がん療法を前記対象に投与するステップであって、任意選択で、前記がん療法が、手術、化学療法、免疫療法、化学免疫療法、及び熱化学療法のうちの1つ以上を含む、投与するステップを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前立腺がんに罹患しているか、又は罹患している疑いのある対象におけるグリソンスコア(GS)を、(i)GS≦6若しくは7(3+4)、又は(ii)GS7(4+3)若しくは≧8のいずれかであるとして決定するための方法であって、前記方法が、
a)前記対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)オーロラキナーゼB(AURKB)及びTGFβ受容体1型(TβR1)を含む複合体の量を評価するステップと、
c)(b)における前記複合体の量を、(i)GS≦6若しくは7(3+4)、又は(ii)GS7(4+3)若しくは≧8のいずれかのGSを有することが知られている参照試料からのオーロラキナーゼB(AURKB)及びTGFβ受容体1型(TβR1)を含む複合体の量と比較するステップと、を含み、
前記比較が、前記対象における前記GSを、(i)GS≦6若しくは7(3+4)、又は(ii)GS7(4+3)若しくは≧8のいずれかであるとして決定することを可能にする、方法。
【請求項16】
前記複合体が、アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複合体が、TNF受容体関連因子6(TRAF6)を更に含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記複合体が、細胞質分裂構造などの細胞構造に局在する、請求項15~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
AURKBが、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン85(K85)及びリジン87(K87)に対応するリジン残基のうちの一方又は両方でユビキチン化されている、請求項15~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記TGFβ受容体1型(TβR1)が、前記細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
個体におけるがんの存在を決定するためのアレイであって、
(i)オーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能な結合剤、及び/又はオーロラキナーゼB(AURKB)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(ii)アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能な結合剤、並びに/又はアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iii)TGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能な結合剤、及び/又はTGFβ受容体1型(TβR1)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iv)TNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能な結合剤、及び/又はTNF受容体関連因子6(TRAF6)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、を含む、アレイ。
【請求項22】
対象におけるがんの診断及び/又は予後のためのキットであって、前記キットが、
(i)オーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能な結合剤、及び/又はオーロラキナーゼB(AURKB)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(ii)アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能な結合剤、並びに/又はアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iii)TGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能な結合剤、及び/又はTGFβ受容体1型(TβR1)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iv)TNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能な結合剤、及び/又はTNF受容体関連因子6(TRAF6)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
任意選択で、請求項1~20のいずれか一項に定義される方法を行うための説明書と、を含む、キット。
【請求項23】
TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断及び/又は予後におけるバイオマーカーとして使用するための、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)であって、細胞内の細胞質分裂構造に対する3つのバイオマーカー全ての共局在が、前記疾患又は状態を示す、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)。
【請求項24】
請求項22に記載の使用のための、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)であって、TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断及び/又は予後におけるバイオマーカーとして使用するためのTNF受容体関連因子6(TRAF6)を更に含み、細胞内の細胞質分裂構造に対する4つのバイオマーカー全ての共局在が、前記疾患又は状態を示す、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)。
【請求項25】
TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断及び/又は予後におけるバイオマーカーとしての、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)の、使用。
【請求項26】
前記使用が、TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断におけるバイオマーカーとしてのTNF受容体関連因子6(TRAF6)を更に含む、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)を含む、複合体であって、AURKBが、ユビキチン化されている、複合体。
【請求項28】
TNF受容体関連因子6(TRAF6)を更に含む、請求項27に記載の複合体。
【請求項29】
オーロラキナーゼB(AURKB)が、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン85(K85)及び/又はリジン87(K87)に対応する一方又は両方のリジン残基でユビキチン化されている、請求項27又は28に記載の複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共局在する新規のバイオマーカーの測定を通じて、がんを有する対象を分類、診断、及びモニタリングするための方法を提供する。また、がん、特に侵襲性がんの診断、鑑別診断、並びにがんの進行をモニタリングするためのキット及びアレイも提供される。
【背景技術】
【0002】
形質転換成長因子β(TGFβ)は、いくつかの進行がんにおいて過剰発現され、腫瘍の進行を促進する。がん細胞がどのようにしてTGFβ誘導成長阻害を避け、正常な恒常性を回避するかは不明である。標準的なTGFβ-Smadシグナル伝達経路では、細胞応答は、TGFβ受容体I(TβRI)のキナーゼ活性に依存し、SERPINE1、Snail1、及びメタロプロテイナーゼタンパク質2を含む、ある特定の遺伝子の転写を調節するSmad2、Smad3、及びSmad4複合体の形成につながる。TβRIは、TNF-α変換酵素(TACE/ADAM17)によってその細胞外ドメインで切断され、Smadタンパク質によって媒介されるTGFβによって媒介される成長阻害効果の喪失をもたらす(Liu C et al.Mol Cell2009;35(1):26-36)。
【0003】
対照的に、非標準的なTGFβ誘導シグナル伝達経路では、細胞応答は、しばしば、E3-リガーゼ腫瘍壊死因子受容体関連因子6(TRAF6)によって調節される。このタンパク質は、TβRIと会合し、受容体へのリガンドの結合時に活性化され、MAPキナーゼキナーゼキナーゼTGFβ活性化キナーゼ1(TAK1)の活性化を促進する。TRAF6は、ホスファチジルイノシトール-3’-キナーゼ(PI3K)-AKT経路の活性化を、K160のエンドソームタンパク質であるアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)のK63結合ポリユビキチン化によるインスリン刺激に応答し11、13~15、及びPI3K複合体における調節サブユニットp85αのK63結合ポリユビキチン化によるTGFβ刺激に応答して促進する(Hamidi A,et al.Sci Signal 2017;10(486))。TRAF6はまた、γ-セクレターゼ複合体中のADAM17/TACE及びプレセニリン1などのタンパク質分解酵素を活性化して、TβRIの細胞内ドメイン(ICD)を切断し、TRAF6によるK178のユビキチン化後に、可溶性TβRI-ICDが核内に入ることを可能にして、前侵襲性遺伝子及びTGFBR1の転写を促進する。
【0004】
本発明者らは最近、エンドソームアダプタータンパク質APPL1及びAPPL2が、TβRI-ICDと会合し、細胞のTGFβ刺激に応答してTβRI-ICDの核蓄積を増強し、インビトロで前立腺がん細胞の侵襲性を促進し、ヒト前立腺がんの侵襲性との強い相関を示すことを示した(Song J,Mu Y,Li C,Bergh A,Miaczynska M,Heldin C-H,et al.APPL proteins promote TGFβ-induced nuclear transport of the TGFβ type I receptor intracellular domain.Oncotarget.2016;7:279-92)。
【0005】
WO2012/125623は、TβRIの切断阻害剤の使用及びがん療法におけるその使用、並びに診断方法を開示し、TβRI-ICDの核局在が、試料中のがん細胞の存在、及び対象におけるがん侵襲性/転移の可能性を示す。
【0006】
TGFβシグナル伝達経路は、腫瘍進行において二重かつ極めて重要な役割を有する。正常細胞では、腫瘍発生の早期に、それは、増殖を阻害し、分化及びアポトーシスを誘導することによって、腫瘍抑制因子として作用する。TGFβは、上皮細胞及び内皮細胞、ケラチノサイト、並びに白血球を含むいくつかの細胞型の増殖を阻害する。ほとんどの正常な細胞型では、TGFβ刺激は、MYCの発現を下方制御し、p15INK4B及びp21を含む、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤の発現を上方制御することによって、G1における細胞周期の進行を停止させる(Sintich SM,Lamm ML,Sensibar J a,Lee C.Transforming growth factor-β1-induced proliferation of the prostate cancer cell line,TSU-Pr1:the role of platelet-derived growth factor.Endocrinology.1999;140:3411-5)。しかしながら、進行がんにおいては、がん細胞がTGFβの抑制応答を避ける場合、サイトカインは、上皮-間葉移行を誘導し、腫瘍浸潤及び転移を促進し、免疫系を抑制することによって、腫瘍プロモーターになる(Batlle E,Massague J.Transforming Growth Factor-β Signaling in Immunity and Cancer.Immunity 2019;50: 924-940)。
【0007】
これらの知見にもかかわらず、有糸分裂におけるTGFβの役割についてはほとんど知られていない。TGFβは、ある特定の間葉系及びがん細胞の増殖を促進することができるが、成長刺激のメカニズムにおけるその役割は、あまり理解されていない。TGFβは、増殖の刺激因子として、ヒト腎線維芽細胞における線維芽細胞成長因子2の発現、及び神経膠腫及び骨肉腫細胞における血小板由来成長因子の発現を誘導する。正常な前立腺上皮細胞では、TGFβは、増殖を阻害し、アポトーシスを誘導することによって成長抑制因子として作用するが、TGFβ誘導の成長停止に対する感受性を失った前立腺がん細胞では、TGFβは、腫瘍細胞成長を促進する可能性がある。例えば、TGFβは、前立腺がん細胞株TSU-Pr1における細胞増殖を刺激し(Sintich SM,Lamm ML,Sensibar J a,Lee C.Transforming growth factor-β1-induced proliferation of the prostate cancer cell line,TSU-Pr1:the role of platelet-derived growth factor.Endocrinology.1999;140:3411-5)、DU145及びPC-3細胞株において一過性増殖阻害のみを引き起こすが、LNCaP前立腺がん細胞の増殖には影響を及ぼさない(Wilding G,Zugmeier G,Knabbe C,Flanders K,Gelmann E.Differential effects of transforming growth factor β on human prostate cancer cells in vitro.Mol Cell Endocrinol.1989;62: 79-87)。
【0008】
オーロラキナーゼは、細胞増殖に不可欠なセリン/スレオニンキナーゼである。これらは、分裂細胞がその遺伝物質を娘細胞に分配するのを助けるホスホトランスフェラーゼ酵素である。より具体的には、オーロラキナーゼは、クロマチド分離を制御することによって、細胞分裂において重要な役割を果たす。オーロラキナーゼA(AURKA)及びオーロラキナーゼB(AURKB)などのオーロラキナーゼは、乳腫瘍、肺腫瘍、膵腫瘍、卵巣腫瘍、及び前立腺腫瘍を含む多くの腫瘍で過剰発現される。オーロラキナーゼB(AURKB)は、3つの調節構成要素、すなわち、内側セントロメアタンパク質(INCENP)、サバイビン、及びボレアリンを含有する、染色体パッセンジャー複合体(CPC)の構成要素である。AURKBは、INCENPの保存されたC末端IN-Box領域に結合し(Adams RR,et al.Curr Biol 2000;10(17):1075-8)、そこで、AURKBによってリン酸化される、Thr-Ser-Serモチーフが位置しており(Bishop JD,Schumacher JM.J Biol Chem 2002;277(31):27577-80)、AURKBの活性化及び複合体の安定化に寄与する。AURKBがその結晶構造の研究において二量体を形成することが見出されたため、AURKB:INCENP複合体はまた、トランスにおけるAURKBの自己リン酸化を有利にすることが示唆されている(Elkins JM,et al.J Med Chem 2012;55(17):7841-8)。
【0009】
間期では、CPCは、ヘテロクロマチンに局在し、細胞が有糸分裂に入った後、Ser10でのヒストンH3(H3S10)のAURKBリン酸化は、染色体腕から内側セントロメアへのCPCの除去を容易にする。後期開始時に、CPCは、染色体から放出され、紡錘体ミッドゾーンに再局在し、そこでAURKBのリン酸化勾配が形成される。細胞質分裂中、CPCは、分裂溝及び中心体を標的とする。AURKBは、液胞タンパク質選別関連タンパク質4(VPS4)の局在及び機能を制御することによって、脱離のタイミングを調節する(5)。簡潔に述べると、クロマチン修飾タンパク質/荷電多細胞体タンパク質(Chmp)4cは、ボレアリンと相互作用し、Chmp4a及びChmp4bパラログに欠如しているC末端のモチーフにおけるいくつかの残基でAURKBによってリン酸化される。中心体では、脱離/ノーカットチェックポイントレギュレータ(ANCHR)がChmp4c及びVPS4と相互作用して、三元複合体を形成する。AURKBキナーゼの阻害剤による処置は、Chmp4cからのVPS4の解離をもたらすため、AURKBのキナーゼ活性は、この複合体を維持するために必要である(5)。VPS4は、輸送III媒介性収縮及び最終的な切断に必要なエンドソーム選別複合体に関与する。しかしながら、脱離におけるVPS4の活性の調節は、依然として不明である。いくつかの異なるがんタイプとの関連性のために、オーロラキナーゼの阻害剤は、臨床治験で試験されている(Keen N,Taylor S.Aurora-kinase inhibitors as anticancer agents.Nat Rev Cancer.2004;4:927-36)。
【0010】
US2016/0153052は、単剤療法として、又は併用療法の一部としてのいずれかで、1つ以上のオーロラキナーゼB阻害剤を用いたがん療法を選択するための患者の分類、及びそのような療法に対する患者の応答をモニタリングする際に有用な診断アッセイに関するものであり、CN110261612Aは、結腸直腸がん診断キットを調製する際のオーロラB及びサルビビンの使用に関するものである。
【0011】
前立腺がんは、世界中、特に西洋諸国の男性において最も一般的ながんであり、毎年約375,000人の死亡に関連している(Esfahani M,Ataei N,Panjehpour M.Biomarkers for Evaluation of Prostate Cancer Prognosis.2015;16:2601-11及びSung H et al.CA Cancer J Clin 2021;71(3):209-49)。形質転換成長因子β(TGFβ)は、胚発生中及びいくつかのタイプの悪性腫瘍における、その細胞の恒常性及び分化の文脈的調節のために、細胞運命の強力な決定因子である。
【0012】
今日、侵襲性がんのスクリーニング及び検出のための、組織、又は血液若しくは尿などの体液中において利用可能なバイオマーカーは存在しない。前立腺がんでは、PSA(前立腺特異的抗原)がマーカーとして一般的に使用されているが、前立腺がんに対して信頼性がなく、特異的でもない。前立腺及び腎臓(RCC)生検は、病理医によって視覚的に評価され、RCCにおけるグリソンスコアグレード(前立腺)又はファーマングレードが割り当てられる。両方のスコアは、主観的であり、病理医の経験に依存する。更に、7を超えるグリソンスコアとして分類される前立腺がんと、7未満のグリソンスコアとして分類される前立腺がんとを区別することができる利用可能な組織ベースのマーカーは現在存在しない。7を超えるグリソンスコア(GS)は、7未満よりも予後が悪いため、これは重要である(Zhu et al.,Front.Oncol.,16 July 2019)。バイオマーカーは、患者の選択/分類(特定の治療に応答することができる対象のみを含むため)、療法モードの作用及び有効性の検証、患者のモニタリング、並びに用量滴定及び製品の有効性の評価に必要である。これにより、医薬品開発プロセスが加速し、臨床試験に必要な患者数が削減され、コストが削減される。
【0013】
以上を考慮すると、非標準的なTGFβシグナル伝達経路が関与し、そのため、このメカニズムを防止する薬剤を用いる抗がん治療に有益となるであろう患者を分類する、がんを診断するための新規のバイオマーカーに対するニーズが存在する。疾患の初期段階で侵襲性がんを予測するためのバイオマーカーのニーズも存在する。
【発明の概要】
【0014】
APPL1及びAPPL2の発現をノックダウンすることによって、本発明者らは、驚くべきことに、AURKBを、去勢抵抗性前立腺がん細胞(CRPC)におけるAPPL1/APPL2調節経路の標的遺伝子として識別した。本発明者らは、驚くべきことに、TRAF6が、有糸分裂進行中に自己ユビキチン化され、K85及びK87上でのAURKBのK63結合ポリユビキチン化を通じて、AURKB活性に寄与したことを見出した。更に、本発明者らは、驚くべきことに、AURKBが、CRPC細胞における有糸分裂及び細胞質分裂中に、APPL1及びTβRIの細胞内ドメイン(TβRI-ICD)と複合体を形成し、神経芽腫細胞において、AURKB及びTβRIの共局在が、共焦点イメージングによっても観察されたことを見出した。本発明者らは、驚くべきことに、APPL1及びTβRIがCRPC細胞の増殖に必要であることを見出した。更に、インサイチュPLA技術によって可視化されたAURKB及びTβRI-ICD複合体の高発現は、臨床前立腺がん物質に存在し、予後不良と相関していた。本発明者らは、驚くべきことに、AURKA及びAURKBの発現が、CRPC腺がんよりも神経内分泌型のCRPCにおいて高く、神経内分泌型のCRPCを有する患者の予後不良と一致することを見出した。
【0015】
本発明は、対象におけるがんの治療を分類、診断、及びモニタリングするためのバイオマーカーを提供する。バイオマーカーは、侵襲性がん形態を識別及び予測するためにも有用である。
【0016】
形質転換成長因子β(TGFβ)は、いくつかのがんにおいてしばしば過剰発現され、腫瘍進行を引き起こす。有糸分裂におけるTβRIの機能的意義の詳細な特徴付けは、細胞質分裂中の新たに特定された重要な役割を実証する。
【0017】
本発明の第1の目的は、対象におけるがんを診断するための方法を提供し、本方法は、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
生物学的試験試料中の3つのバイオマーカー全ての共局在が、対象におけるがんを示す。
【0018】
したがって、ステップ(b)は、試験試料内の第1、第2、及び第3のバイオマーカーの共局在を決定することを含み得ることが理解されるであろう。2つのタンパク質が共局在するかどうかを決定するために使用することができる技術の例としては、本明細書に記載のものが挙げられ、免疫組織化学、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫沈降、免疫蛍光、共焦点顕微鏡法が挙げられ、これらの多くは、実施例に例示される。
【0019】
誤解を避けるために、バイオマーカーの共局在は、バイオマーカーが互いに複合体にあることを必要とせず、単にバイオマーカーが空間的に互いに近接していることを必要とする。例えば、2つのタンパク質は、それらが互いに空間的に近いと観察される(例えば、zスタックを使用した免疫蛍光及びデジタルイメージングによって)場合、共局在し得、バイオマーカー間の直接相互作用は必要ではない。しかしながら、バイオマーカーは、直接相互作用するため、共局在し得、したがって、両方の状況は、「共局在」という用語によって包含される。
【0020】
本発明の全ての方法の一実施形態では、細胞構造に対するバイオマーカーの共局在は、対象におけるがんを示す。したがって、ステップ(b)は、試験試料内の細胞構造における第1、第2、及び第3のバイオマーカーの共局在を決定することを含み得ることが理解されるであろう。
【0021】
「細胞構造」とは、細胞小器官のサブ部分を含む細胞小器官などの任意の定義された細胞の区画又はサブ区画の意味が含まれる。細胞構造としては、核、リボソーム、小胞体(ER)、ゴルジ装置、細胞質、及びミトコンドリアが挙げられる。例えば、小器官は核であり得、核のサブ部分は中心体であり得る。2つのタンパク質が細胞構造に共局在しているかどうかを決定するために使用され得る技法の例は、当該技術分野で既知である。例えば、免疫蛍光又は免疫組織化学を使用して、特定のバイオマーカーのマーカーに加えて、核のマーカーを使用することができ、当業者が、これらの別個のマーカーが全て核内で観察されるかどうか、したがって、バイオマーカーが核に共局在するかどうかを評価することを可能にする。同様に、細胞の集団を分画してもよく、免疫沈降を行って、バイオマーカーが、例えば、核画分内の複合体内にあるかどうかを決定することができる。
【0022】
本発明の全ての方法の一実施形態では、細胞構造は、核である。本発明の全ての方法の更なる実施形態では、細胞構造は、細胞質分裂構造である。
【0023】
一実施形態では、本発明は、対象におけるがんを診断するための方法であって、本方法は、
a)対象からの生物学的試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
生物学的試験試料中の細胞質分裂構造に共局在する3つのバイオマーカー全ての存在が、対象におけるがんを示す。
【0024】
そのため、ステップ(b)が、試験試料内の細胞質分裂構造における第1、第2、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを含み得ることが理解されるであろう。
【0025】
そのため、細胞質分裂構造に対する3つのバイオマーカーの共局在は、3つのバイオマーカーの各々が1つ以上の細胞質分裂構造において識別可能であるという意味が含まれる。特に好ましい実施形態では、細胞質分裂構造は、中心体であり、したがって、細胞質分裂構造における3つのバイオマーカーの共局在は、中心体に対する3つのバイオマーカーの各々の共局在である。誤解を避けるために、細胞質分裂構造に対するバイオマーカーの共局在とは、バイオマーカーが互いに複合体にあることが必要ではなく、単にバイオマーカーが細胞質分裂構造に共局在していることが必要である。例えば、2つのタンパク質は、免疫蛍光及びzスタックを使用したデジタルイメージングによって、それらが互いに近接していると観察される場合、共局在し得る。
【0026】
一実施形態では、本方法は、生物学的試験試料中の第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、当該バイオマーカーが、TNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、生物学的試験試料中の4つのバイオマーカー全ての共局在が、対象におけるがんを示す。
【0027】
本発明の方法の一実施形態では、細胞構造に対するバイオマーカーの共局在は、対象におけるがんを示す。したがって、ステップ(b)は、試験試料内の細胞構造における第1、第2、及び第3のバイオマーカーの共局在を決定することを含み得ることを理解されたい。
【0028】
一実施形態では、本方法は、生物学的試験試料中の第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、当該バイオマーカーが、TNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、生物学的試験試料中の細胞質分裂構造に共局在する4つのバイオマーカー全ての存在が、対象におけるがんを示す。
【0029】
したがって、細胞質分裂構造に対する4つのバイオマーカーの共局在は、4つのバイオマーカーの各々が1つ以上の細胞質分裂構造において識別可能であるという意味が含まれる。特に好ましい実施形態では、細胞質分裂構造は、中心体であり、したがって、細胞質分裂構造における4つのバイオマーカーの共局在は、中心体に対する4つのバイオマーカーの各々の共局在である。
【0030】
一実施形態では、TGFβ受容体1型(TβR1)は、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である。「TGFβ受容体1型」という用語は、本明細書において「TGFβ受容体I型」「TβR1」、「TGFβR1」、「TβRI」、及び「TGFβRI」と同義で使用され得る。
【0031】
バイオマーカーの存在及び/又は細胞内局在を評価するための方法は、当該技術分野において周知であり、任意の好適な方法を使用することができる。例えば、細胞質分裂構造は、単離されてもよく、評価される細胞質分裂構造中のバイオマーカーの存在、又は細胞質分裂構造は、検出可能部分によって識別され得、その細胞質分裂構造内のバイオマーカーの局在は、バイオマーカーが同じ検出可能部分に局在するかどうかを評価することによって評価され得る。使用することができる技術の例には、本明細書に記載の技術が含まれ、免疫組織化学、インサイチュハイブリダイゼーション、免疫沈降、免疫蛍光、共焦点顕微鏡法が含まれ、その多くは、実施例に例示される。
【0032】
いくつかの実施形態では、がんを診断することは、がんの悪性度を決定することを含む。いくつかの実施形態では、がんを診断することは、がんの段階を決定することを含む。いくつかの実施形態では、がんを診断することは、がん再発のリスクを評価することを含む。いくつかの実施形態では、がんを診断することは、がんのグレードを評価することを含む。
【0033】
本発明はまた、
-対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、バイオマーカーが、試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を含む、方法を含み、
生物学的試験試料中の4つのバイオマーカー全ての共局在が、対象におけるがんを示す。
【0034】
本発明はまた、
-対象からの生体試験試料を提供するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、バイオマーカーが、試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を含む、方法を含み、
生物学的試験試料中の細胞質分裂構造に共局在する4つのバイオマーカー全ての存在が、対象におけるがんを示す。
【0035】
したがって、第2のステップは、試験試料内のバイオマーカーの共局在を決定することを含み得ることが理解されるであろう。
【0036】
TβR1の細胞内ドメイン(ICD)は、健康な細胞においてTβR1から切断されず、それによって、核内で検出されず、これは、細胞質分裂中に共局在する3つ又は4つのバイオマーカー(AURKB、APPL1、TβR1(又はTβR1-ICD)、及びTRAF6)が健康な細胞において検出されないことを意味する。
【0037】
バイオマーカーの存在、並びに/又は細胞質分裂及び/若しくは有糸分裂中にバイオマーカーが共局在するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野において既知である。例えば、各有糸分裂段階でのタンパク質の免疫蛍光を検査するために、細胞は、細胞動態細胞を豊かにするために、二重チミジンブロック及び放出によって(G1-S遷移で)同期させることができる。病期分類システムを使用して、DNA及び紡錘体形態、並びに染色体アラインメント及び分離の程度に基づいて、有糸分裂及び細胞質分裂の異なる段階を識別することができる。細胞質分裂における哺乳動物細胞の同期は、中期前停止から細胞を放出することによっても達成することができる。前中期相同期は、微小管重合/解重合剤(ノコダゾール及びタキソールなど)、並びにキネシン阻害剤(モナストロール及びS-トリチル-L-システインなど)を使用して達成することができる。
【0038】
対象における侵襲性がんを診断及び/又は予後判定するための方法を提供することが本発明の第2の目的であり、本方法が、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、当該試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
生物学的試料中の3つのバイオマーカー全ての共局在が、対象における侵襲性がんを示す。
【0039】
対象における侵襲性がんを診断及び/又は予後予測するための方法を提供することが本発明の第3の目的であり、本方法が、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、当該試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
生物学的試料中の細胞質分裂構造に共局在する3つのバイオマーカー全ての存在が、対象における侵襲性がんを示す。
【0040】
侵襲性がん形態には、転移の高いリスクの意味が含まれる。侵襲性がんとしては、例えば、対がん米国合同委員会(AJCC)TNMシステム対がん米国合同委員会、及び国際がん対策連合によって決定される、ステージIII及び/又はステージIVのがんを含むか、又はそれからなるがんが挙げられる。
【0041】
好ましくは、細胞質分裂構造は、細胞の中心体又はミッドゾーンである。
【0042】
一実施形態では、TGFβ受容体1型(TβR1)は、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である。
【0043】
中心体は、中心体に結合する分子、例えば、中心体に局在することが知られているタンパク質に結合する分子、例えば、中心体ポリペプチド又はその抗原性断片に特異的に結合する抗体、例えば、有糸分裂性キネシン様プロテイン-1(MKLP-1)、キネシンファミリーメンバー4(KIF4)、及び/又はβ-チューブリンを使用することによって検出することができる。MKLP-1は、紡錘体の赤道に局在し、紡錘体ミッドゾーンで反平行微小管を架橋させることによって、有糸分裂の後期Bの間の紡錘体極の分離に関与すると考えられる。本明細書に記載の方法における使用に好適ないくつかの抗体は、当該技術分野において既知であり、かつ/又は市販されている。例えば、抗MKLP1は、BD Biosciences(San Jose,CA)及びSanta Cruz Biotechnology Inc.(Santa Cruz,CA)から入手可能である。中心体を単離するための方法は当該技術分野で既知である(Science.2004 Jul2;305(5680):61-66)。次いで、中心体調製物中に存在するタンパク質は、タンデム液体クロマトグラフィー及びタンデム質量分析によって識別され得る。
【0044】
一実施形態では、本方法は、生物学的試験試料中の第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、当該バイオマーカーが、TNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、生物学的試験試料中の4つのバイオマーカー全ての共局在が、対象における侵襲性がんを示す。
【0045】
一実施形態では、本方法は、生物学的試験試料中の第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、当該バイオマーカーが、TNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、生物学的試験試料中の細胞質分裂構造に共局在する4つのバイオマーカー全ての存在が、対象における侵襲性がんを示す。
【0046】
更に、本発明は、対象における侵襲性がんを診断及び/又は予後予測するための方法を提供し、本方法は、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、当該試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を含み、
生物学的試料中の4つのバイオマーカー全ての共局在が、対象における侵襲性がんを示す。
【0047】
更に、本発明は、対象における侵襲性がんを診断及び/又は予後予測するための方法を提供し、本方法は、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、当該試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を含み、
生物学的試料中の細胞質分裂構造に共局在する4つのバイオマーカー全ての存在が、対象における侵襲性がんを示す。
【0048】
好ましくは、AURKBは、ユビキチン化されている。一実施形態では、本発明の方法は、生物学的試験試料中のユビキチン化されたAURKBの存在を検出することを含む。ユビキチン化されたAURKBの存在を検出するための方法は、当該技術分野で既知であり、本明細書に開示される。
【0049】
タンパク質ユビキチン化は、ユビキチン(Ub)活性化酵素(E1)、Ub結合酵素(E2)、及びUbリガーゼ(E3)を含む酵素反応のカスケードによって触媒される翻訳後修飾である。UbのC末端グリシン残基のカルボキシル基と、基質中のリジン残基の
との間にイソペプチド結合を形成することによって、Ubは、タンパク質基質上にコンジュゲートされる。更に、ポリユビキチン(ポリUb)鎖は、UbのC末端グリシン残基のカルボキシル基を、前述のUbにおける7つの内部リジンのうちの1つの
にコンジュゲートさせることによって形成される。
【0050】
言い換えれば、ポリUbは、前述のUbのLys-48及び/又はLys-63残基の
を介して連結される。一実施形態では、AURKBは、コンセンサス配列-(疎水性)-K-(疎水性)-K-X-(疎水性)-(極性)-(疎水性)-(極性)-(疎水性)を含み、少なくとも1つのKがユビキチン化されている。図3Iに示されるように、このモチーフは、ヒト、ブタ、ウシ、イヌ、マウス、及びラットのAURKBに保存される。一実施形態では、AURKBは、*K*KX*&*&*コンセンサス配列を含み、式中、*=疎水性、&=極性、X=任意のアミノ酸、K=アクセプターリジンであり、その中のリジン残基のうちの少なくとも1つがユビキチン化されている。一実施形態では、AURKBは、GKGKFGNVYL(配列番号23)コンセンサス配列を含み、その中のリジン残基のうちの少なくとも1つがユビキチン化されている。言い換えれば、一実施形態では、AURKBは、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン85(K85)及び/又はリジン87(K87)に対応する一方又は両方のリジン残基でユビキチン化されている。一実施形態では、AURKBは、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン85(K85)に対応するリジン残基でユビキチン化されている。一実施形態では、AURKBは、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン87(K87)に対応するリジン残基でユビキチン化されている。一実施形態では、AURKBは、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン85(K85)及びリジン87(K87)に対応するリジン残基の両方でユビキチン化されている。
【0051】
「に対応する」とは、ヒトAURKBの配列及び異なるAURKBの配列が比較される場合に、MacVector、ClustalOmega、若しくはClustalW2を使用して整合されるか、又は参照により組み込まれるBrown et al.,Evolutionary Biology volume 4,Article number:39(2004)の図1に示されるように整合されるなど、ヒトAURKB(配列番号1)のK85及び/又はヒトAURKB(配列番号1)のK87に整合する別のAURKB(ヒトAURKBのオルソログ又はバリアントなど)におけるリジン残基の意味が含まれる。
【表1】
【0052】
一実施形態では、AURKBは、Lys48結合及び/又はLys63結合ポリユビキチン化されている。
【0053】
添付の実施例では、本発明者らは、驚くべきことに、AURKBが、TRAF6によるユビキチン化のための認識部位として作用する少なくとも1つのアクセプターリジン残基を含有し、コンセンサス配列中のK85及び/又はK87上でのAURKBのTRAF6媒介性ユビキチン化が、その活性に寄与し、細胞分裂中の中心体におけるTβRIの局在を制御することを見出した。タンパク質がユビキチン化されているかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で既知であり、実施例に記載されるように、インビボユビキチン化アッセイ、又は2つの抗体(AURKB及びK63抗体)を用いたインサイチュPLAアッセイを含む。
【0054】
本明細書に開示される方法は、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断に関連し、及び/又はそれによって媒介されるがんタイプに好適である。
【0055】
「形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解的切断に関連し、及び/又はそれによって媒介される」がんとは、TβRIの細胞内ドメイン(ICD)がタンパク質分解的に切断されており、核に入って、侵襲性の高い遺伝子の転写を促進するがんの意味が含まれる。TβRI及びTβRI-ICDの局在を検出する方法は、本明細書に記載されている。
【0056】
がんは、例えば、固形腫瘍である。腫瘍は、前立腺がん、腎がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、膀胱がん、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択され得る。
【0057】
好ましくは、がんは、前立腺がんである。更なる実施形態では、前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)である。「去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)」とは、低いテストステロンレベル(50ng/mL未満)によって、がんがもはや停止しない前立腺がんの形態の意味が含まれる。去勢抵抗性前立腺がんは、PSAレベルの上昇、及び/又は症状の悪化、及び/又はスキャンによって検証される成長しているがんによって定義される。一実施形態では、CRPCは、神経内分泌型である。一実施形態では、生物学的試験試料は、CRPC細胞を含む。添付の実施例に示されるように、本発明者らは、驚くべきことに、有糸分裂及び細胞質分裂中に、TβRI-AURKB複合体が、CRPC細胞及び神経芽腫KELLY細胞における中心体に形成されたことを見出した。
【0058】
好ましくは、生物学的試験試料は、腫瘍からの生検などの組織試料である。
【0059】
「試験される試料」、「生物学的試験試料」、「試験試料」、又は「対照試料」は、対象から採取されたか、又は対象に由来する組織又は流体試料であり得る。
【0060】
好ましくは、試験される試料は、哺乳動物から提供される。哺乳類は、任意の家畜又は農場の動物であり得る。好ましくは、哺乳動物は、ラット、マウス、モルモット、ネコ、イヌ、ウマ、又は霊長類である。最も好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0061】
本明細書で使用される試料は、分子プロファイリング、例えば、外科的処置又は他の処置中に取り出された生検又は組織などの組織の切片、体液(例えば、液体生検)、剖検試料、及び組織学的目的のために採取された凍結切片に使用され得る任意の関連する生体学的試料、細胞を含む試料を含む。そのような試料には、血液又は血液の画分又は生成物(例えば、血清、バフィーコート、血漿、血小板、赤血球など)、痰、悪性滲出物、頬細胞組織、培養細胞(例えば、一次培養物、外植片、及び形質転換細胞)、便、尿、他の生物学的液体又は体液(例えば、前立腺液、胃液、腸液、腎液、肺液、脳脊髄液など)などが挙げられる。試料は、新鮮な凍結及びホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロック、ホルマリン固定パラフィン包埋であるか、又はRNA保存剤及びホルマリン固定剤内にある生物学的材料を含み得る。各対象に対して、2つ以上のタイプの2つ以上の試料を使用することができる。好ましくは、試料は、細胞又は組織試料(又はその派生物)、例えば、がん細胞を含むか、又はそれらからなるものである。好ましい実施形態では、試料は、固定腫瘍試料を含む。本明細書に記載の方法で使用される試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料であり得る。FFPE試料は、固定組織、染色されていないスライド、骨髄コア又は血餅、コア針生検、悪性液体、及び細針吸引(FNA)のうちの1つ以上であり得る。一実施形態では、固定組織は、手術又は生検からのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ブロックを含む腫瘍を含む。
【0062】
試料は、当業者によって理解される技術に従って処理され得る。試料は、新鮮な、凍結された、又は固定された細胞又は組織であり得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、試料は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織、新鮮な組織、又は新鮮な凍結(FF)組織を含む。試料は、対象からの試料に由来する一次又は不死化細胞株を含む、培養細胞を含み得る。試料はまた、対象からの試料からの抽出物を指し得る。例えば、試料は、組織又は体液から抽出されたDNA、RNA、又はタンパク質を含み得る。そのような目的のために、多くの技術及び市販のキットが利用可能である。対象からの新鮮な試料を、更なる処理、例えば、細胞溶解及び抽出の前に、RNAを保存するための薬剤で処理することができる。試料は、他の目的のために収集された凍結試料を含み得る。試料は、対象における年齢、性別、及び対象に存在する臨床症状、試料の供給源、並びに試料の収集及び保管の方法などの関連情報に関連付けられ得る。
【0063】
生検は、診断又は予後評価のために組織試料を除去するプロセス、及び組織試料自体を含む。当該技術分野で既知の任意の生検技術を本発明の方法に適用することができる。適用される生検技術は、評価される組織型(例えば、結腸、前立腺、腎臓、膀胱、リンパ節、肝臓、骨髄、血液細胞、肺、乳房など)、とりわけ、腫瘍のサイズ及びタイプ(例えば、固形又は懸濁、血液又は腹水)に依存し得る。代表的な生検技術には、切除生検、切開生検、針生検、外科的生検、及び骨髄生検が含まれるが、これらに限定されない。「切除生検」とは、周囲に正常組織の小さい縁を有する腫瘍塊全体を除去することを指す。「切開生検」は、腫瘍の断面直径を含む組織のくさび状のものの除去を指す。本方法は、腫瘍塊の「コア針生検生検」、又は一般に腫瘍塊内から細胞の懸濁液を得る「細針吸引生検」を使用し得る。生検技術は、例えば、Harrison’s Principles of Internal Medicine,Kasper,et al.,eds.,16th ed.,2005,第70章、及びPart V全体で考察されている。
【0064】
好ましくは、試験試料及び対照試料は、同じ種に由来する。好ましくは、試験試料及び対照試料は、年齢、性別及び/又はライフスタイルについて一致する。
【0065】
一実施形態では、組織試料は、生検などの腫瘍組織である。一実施形態では、細胞試料は、がん細胞の試料である。
【0066】
好ましくは、本方法は、
(c)
i.がんに罹患していない個体、及び/又は
ii.がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、対照試料が、試験試料とは異なる段階のがんであるか、又は対照試料が、がんに罹患している個体からの健康な組織に由来する、提供するステップと、
d)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、対照試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を更に含み、
ステップ(b)で測定された3つのバイオマーカー全てが試験試料中で共局在し、かつステップ(d)で測定された3つのバイオマーカー全てが対照試料中で共局在していない場合に、がんが、診断される。
【0067】
好ましくは、本方法は、
(c)
i.がんに罹患していない個体、及び/又は
ii.がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、対照試料が、試験試料とは異なる段階のがんであるか、又は対照試料が、がんに罹患している個体からの健康な組織に由来する、提供するステップと、
d)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、対照試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を更に含み、
ステップ(b)で測定された3つのバイオマーカー全てが試験試料中の細胞質分裂構造に共局在し、かつステップ(d)で測定された3つのバイオマーカー全てが対照試料中の細胞質分裂構造に共局在していない場合に、がんが、診断される。
【0068】
例えば、がんが1つの前立腺葉に厳密に局在化されている場合、対照と同じ個体からの別の葉の健康な(すなわち、非がん性の)組織を使用することが可能であり得る。
【0069】
一実施形態では、本方法は、(d)対照試料中の第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、当該バイオマーカーが、TNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、ステップ(b)で測定された4つのバイオマーカー全てが試験試料中で共局在し、かつステップ(d)で測定された4つのバイオマーカー全てが対照試料中で共局在していない場合に、がんが、診断される。
【0070】
一実施形態では、本方法は、(d)対照試料中の第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定することを更に含み、当該バイオマーカーが、TNF受容体関連因子6(TRAF6)であり、ステップ(b)で測定された4つのバイオマーカー全てが試験試料中の細胞質分裂構造に共局在し、かつステップ(d)で測定された4つのバイオマーカー全てが対照試料中の細胞質分裂構造に共局在していない場合に、がんが、診断される。
【0071】
したがって、好ましくは、方法は、
(c)
i.がんに罹患していない個体、及び/又は
ii.がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、対照試料が、試験試料とは異なる段階のがんである、提供するステップと、
d)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、対照試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を更に含み、
ステップ(b)で測定された4つのバイオマーカー全てが試験試料中で共局在し、かつステップ(d)で測定された4つのバイオマーカー全てが対照試料中で共局在していない場合に、がんが、診断される。
【0072】
したがって、好ましくは、方法は、
(c)
i.がんに罹患していない個体、及び/又は
ii.がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、対照試料が、試験試料とは異なる段階のがんである、提供するステップと、
d)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在又は非存在を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、対照試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を更に含み、
ステップ(b)で測定された4つのバイオマーカー全てが試験試料中の細胞質分裂構造に共局在し、かつステップ(d)で測定された4つのバイオマーカー全てが対照試料中の細胞質分裂構造に共局在していない場合に、がんが、診断される。
【0073】
好ましくは、AURKBは、ユビキチン化されている。
【0074】
「対照試料が、試験試料とは異なる段階のがんであった」とは、対照試料が、がんに罹患した個体に由来するが、対照試料内に含まれるがんは、試験試料中のがんよりも進行していない(すなわち、より低いグレード又はスコア)という意味が含まれる。がんは、当該技術分野で既知の従来の臨床方法を使用して、がんに罹患している個体で診断され得る。
【0075】
「対照試料が、がんに罹患している個体からの健康な組織に由来する」とは、対照試料が、がん性組織に隣接する健康な非がん性組織に由来し得るという意味が含まれる。
【0076】
添付の実施例に例示されるように、細胞分裂構造におけるオーロラキナーゼB(AURKB)、アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)、TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)の存在は、対象におけるがんを示す。
【0077】
好ましくは、がんに罹患していない個体は、試料を取得した時点で、任意の疾患又は状態に罹患していなかった。好ましくは、がんに罹患していない個体は、健康な個体である。
【0078】
好ましくは、細胞質分裂構造などの細胞構造に好ましくは共局在するバイオマーカー、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びに/又はTNF受容体関連因子6(TRAF6)の存在又は非存在は、バイオマーカータンパク質を検出すること、及び/又はバイオマーカータンパク質の生物学的活性を検出することによって決定される。
【0079】
一実施形態では、TGFβ受容体1型(TβR1)は、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である。
【0080】
バイオマーカータンパク質を検出するとは、バイオマーカータンパク質が直接存在するかどうかを、例えば、バイオマーカータンパク質に特異的に結合する結合パートナーを使用することによって検出するという意味が含まれる。バイオマーカータンパク質の生物学的活性を検出するとは、バイオマーカータンパク質の生物学的活性、例えば、酵素活性をアッセイするという意味が含まれる。バイオマーカータンパク質の生物学的活性を検出することは、バイオマーカーの存在又は非存在を間接的に決定するために使用され得ることが理解されるであろう。
【0081】
好ましくは、細胞分裂構造などの細胞構造に共局在する当該バイオマーカーの存在及び/又は非存在は、免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫沈降(IP)、ELISA技法(単一又は多重複合体)、放射免疫アッセイ(RIA)、免疫放射線アッセイ(IRMA)及び免疫酵素アッセイ(IEMA)(モノクローナル抗体及び/又はポリクローナル抗体を使用するサンドイッチアッセイを含む)、インサイチュ近接ライゲーションアッセイ(PLA)、酵素法、画像分析、質量分析、アプタマー、バイオレイヤー干渉法(BLI)、表面プラズモン共鳴法(SPR)、マルチプレックスアッセイ(MSD、Mesoscale discovery)からなる群から選択される方法を使用して、又はオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型の細胞内ドメイン(TβR1-ICD);並びにTNF受容体関連因子(TRAF6)に結合する指標物質によって決定され得る。
【0082】
免疫組織化学(IHC)は、抗体を組織中の抗原に特異的に結合させる組織の細胞中で抗原(例えば、タンパク質)を局在させるプロセスである。抗原結合抗体は、例えば、視覚化を介してその検出を可能にするタグにコンジュゲート又は融合され得る。いくつかの実施形態では、タグは、アルカリホスファターゼ又はホースラディッシュペルオキシダーゼなどの発色反応を触媒することができる酵素である。酵素は、例えば、抗体に融合、又は例えば、ビオチン-アバジン系を使用して、非共有結合し得る。代替として、抗体は、フルオレセイン、ローダミン、DyLight Fluor、又はAlexa Fluorなどの蛍光色素分子でタグ付けすることができる。抗原結合抗体は、直接タグ付けされてもよく、又はそれ自体が、タグを運ぶ検出抗体によって認識されることができる。IHCを使用して、1つ以上のタンパク質が検出され得る。遺伝子産物の発現は、対照レベルと比較して、その染色強度に関連し得る。いくつかの実施形態では、染色が、対照と比較して、試料中で少なくとも1.2、1.3、1.4、1.7、1.8、1.9、2.2、2.7、3.0、4、5、6、7、8、9、又は10倍に変化する場合、その遺伝子産物は、差異的に発現されるとみなされる。
【0083】
IHCは、組織化学技術への抗原-抗体相互作用の適用を含む。例示的な例では、組織切片をスライド上に取り付け、抗原に特異的な抗体(ポリクローナル又はモノクローナル)でインキュベートする(一次反応)。次いで、ペルオキシダーゼアンチペルオキシダーゼ(PAP)、アビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ(ABC)、又はアビジン-ビオチンアルカリホスファターゼの複合体にコンジュゲートされた第2の抗体を使用して、抗原-抗体シグナルを増幅する。基質及び色素原の存在下で、酵素は、抗体-抗原結合部位で有色の堆積物を形成する。
【0084】
免疫蛍光は、標的タンパク質を視覚化するための代替アプローチである。この技法では、一次標的抗体シグナルを、蛍光色素にコンジュゲートされた第2の抗体を使用して増幅させる。紫外線吸収では、蛍光色素は、それ自体の光をより長い波長(蛍光)で放出するため、抗体抗原複合体の局在を可能にする。
【0085】
バイオマーカーの存在及び/又は量を検出するためのタンパク質ベースの技術は、バイオマーカーをコードするタンパク質に対して選択的に免疫反応性である抗体に基づく免疫親和性アッセイも含む。これらの技術には、限定されないが、免疫沈降、ウェスタンブロット分析、分子結合アッセイ、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、酵素結合免疫濾過測定(ELIFA)、蛍光活性化細胞選別(FACS)などが挙げられる。例えば、試料中のバイオマーカーの存在及び/又は非存在を検出する任意選択の方法は、試料を、バイオマーカーに対する抗体、又はその抗体の免疫反応性断片、又はバイオマーカーに対する抗体の抗原結合領域を含有する組換えタンパク質と、抗体-バイオマーカー複合体を形成するのに十分な条件下で接触させることと、次いで、当該複合体を検出することと、を含む。そのような抗体を産生するための方法は、当該技術分野で既知である。ELISA法は、当該技術分野において周知であり、例えば、The ELISA Guidebook(Methods in Molecular Biology),2000,Crowther,Humana Press,ISBN-13: 978-0896037281(その開示は、参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。そのようなアッセイ形式を使用する幅広い免疫アッセイ技術が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、同第4,424,279号、及び同第4,018,653号を参照されたい。これらには、非競合型の単一部位及び2部位又は「サンドイッチ」アッセイの両方、並びに従来の競合結合アッセイが含まれる。これらのアッセイはまた、標的バイオマーカーへの標識された抗体の直接結合を含む。好適な結合剤(結合分子とも称される)は、所与のタンパク質に結合するそれらの能力に基づいて、ライブラリから選択することができる。
【0086】
抗体を使用して、溶液試料から特異的タンパク質を免疫沈降させる、又は例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離されたタンパク質を免疫ブロッティングすることができる。
【0087】
好ましくは、ステップ(b)及び/又は(d)は、試験試料中の1つ以上のバイオマーカーを検出可能部分で標識することによって行われる。
【0088】
好ましくは、ステップ(b)及び/又は(d)は、対照試料中の1つ以上のバイオマーカーを検出可能部分で標識することによって行われる。
【0089】
「検出可能部分」とは、部分が、可視化される、存在するか否かとして認定される、及び/又は定量化されるなど、検出され得るものであるという意味が含まれる。検出可能である部分により、部分の相対量及び/又は位置が決定され得る。好適な検出可能部分は、当該技術分野において周知である。
【0090】
よって、検出可能部分は、特定の条件に曝露される場合に検出され得る、蛍光及び/又は発光及び/又は化学発光部分であり得る。例えば、蛍光部分は、蛍光部分の励起を引き起こすために特定の波長及び強度で放射線(すなわち、光)に曝露される必要があり、それによって、それが、検出され得る特定の波長で検出可能な蛍光を放射することを可能にし得る。
【0091】
代替として、検出可能部分は、(好ましくは検出不可能な)基質を可視化及び/又は検出することができる検出可能な生成物に変換することができる酵素であり得る。好適な酵素の例は、例えば、ELISAアッセイに関して下記により詳細に考察される。
【0092】
代替として、検出可能部分は、イメージングに有用である放射性原子であり得る。好適な放射性原子としては、シンチグラフィック研究のための99mTc及び123Iが挙げられる。他の容易に検出可能な部分としては、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)用のスピン標識、例えば、再度123I、131I、111In、19F、13C、15N、17O、ガドリニウム、マンガン、又は鉄が挙げられる。明らかに、検出される薬剤(例えば、本明細書に記載の試験試料及び/若しくは対照試料中のバイオマーカー、並びに/又は選択されたタンパク質の検出に使用される抗体分子など)は、検出可能部分が容易に検出可能となるために、適切な原子同位体を十分に有していなければならない。
【0093】
放射性又は他の標識は、既知の方式で本発明の薬剤(すなわち、本発明の方法の試料中に存在するタンパク質及び/又は本発明の結合剤)に組み込まれ得る。例えば、結合部分がポリペプチドである場合、それは、生合成されてもよく、又は例えば、水素の代わりにフッ素-19を含む好適なアミノ酸前駆体を使用して化学アミノ酸合成によって合成されてもよい。99mTc、123I、186Rh、188Rh、及び111Inなどの標識は、例えば、結合部位内のシステイン残基を介して付着することができる。イットリウム-90は、リジン残基を介して付着され得る。IODOGEN法(Fraker et al(1978)Biochem.Biophys.Res.Comm.80,49-57)は、123Iを組み込むために使用され得る。参考文献(“Monoclonal Antibodies in Immunoscintigraphy”,J-F Chatal,CRC Press,1989)は、他の方法を詳細に記載している。他の検出可能部分(酵素、蛍光、発光、化学発光、又は放射性部分など)をタンパク質にコンジュゲートさせるための方法は、当該技術分野で周知である。
【0094】
好ましくは、ステップ(b)及び/又は(d)は、当該バイオマーカーに結合することが可能な1つ以上の第1の結合剤を使用して行われる。第1の結合剤が、バイオマーカーのうちの1つに対して特異性を有する単一の種、又は各々が異なるタンパク質バイオマーカーに対して特異性を有する複数の異なる種を含むか、それらからなり得ることが当業者によって理解されるであろう。
【0095】
好ましくは、ステップ(b)及び/又は(d)は、当該第1の結合剤に結合することが可能な第2の結合剤を含むアッセイを使用して行われ、第2の結合剤は、検出可能部分を含む。
【0096】
結合剤のうちの少なくとも1タイプ、より典型的には全てのタイプは、抗体、その抗原結合断片、若しくはそのバリアントを含むか、又はそれからなり得る。
【0097】
好ましくは、第1の結合剤及び/又は第2の結合剤は、抗体若しくはその抗原結合断片を含むか、又はそれからなる。
【0098】
抗体又はその抗原結合断片は、scFv、Fab、又は免疫グロブリン分子の結合ドメインであってもよい。
【0099】
好ましくは、検出可能部分は、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、放射性部分、酵素部分からなる群から選択される。
【0100】
更に別の実施形態では、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びに/又はTNF受容体関連因子6(TRAF6)の存在及び/又は非存在は、バイオマーカーをコードする核酸分子の存在及び/又は発現を測定することによって決定される。
【0101】
好ましくは、核酸分子は、cDNA分子又はmRNA分子である。
【0102】
バイオマーカーをコードする核酸分子を検出及び/又は定量化する任意の方法は、原則として、バイオマーカーの存在及び/又は非存在を決定するために使用することができる。バイオマーカーをコードする核酸分子は、(例えば、RNA配列決定によって)直接検出及び/又は定量化され得るか、又はバイオマーカー若しくはその相補体をコードする核酸分子の増幅されたコピーの検出を可能にするようにコピー及び/又は増幅され得る。
【0103】
好ましくは、ステップ(b)、(d)、及び/又は(f)においてバイオマーカーの存在及び/又は非存在を決定することは、サザンハイブリダイゼーション、ノーザンハイブリダイゼーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写酵素PCR(RT-PCR)、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)、ナノアレイ、マイクロアレイ、マクロアレイ、オートラジオグラフィー、及びインサイチュハイブリダイゼーションからなる群から選択される方法を使用して行われる。
【0104】
逆転写は、当該技術分野で既知である任意の方法によって行うことができる。例えば、逆転写は、Omniscriptキット(Qiagen,Valencia,CA)、Superscript IIIキット(Invitrogen,Carlsbad,CA)を使用してRT-PCRのために行われ得る。標的特異的プライミングは、標的配列の検出の感受性を高め、標的特異的cDNAを生成するために行われ得る。RT-PCRは、例えば、Applied Biosystems Prism(ABI)7900 HT機器、又はThermo Fisher QuantStudio Real Time PCR機器、又は増幅の蛍光リアルタイム検出を伴う任意の他のサーモサイクラーを使用して、1ng以上の全RNAに相当する標的配列特異的なcDNA又はメッセンジャーRNAを含む体積で行われ得る。TaqMan(登録商標)分析のためのプライマー及びプローブ濃度を加えて、1サイクルに95℃で10分間、95℃で20秒間、及び40サイクルに60℃で45秒間などのPCRサイクル条件を使用して蛍光増幅子を増幅する。増幅反応はまた、元々Thermus thermophilusから単離されたTthポリメラーゼなど、逆転写及びのDNA重合の両方を行うことが可能な単一の熱安定性DNAポリメラーゼのいずれかを使用して、ワンステップqRT-PCRとして行われ得る。また、逆転写酵素と熱安定性DNAポリメラーゼとの混合物を用いてワンステップqPCRを行うことも実行可能である。PCR生成物は、SYBR Green、又は器具によって検出される任意の他の蛍光染料などの蛍光染料で標識することもできる。
【0105】
増幅を、単一のエンティティとして、又は多重PCR若しくはデジタルPCR(dPCR)など、組み合わせてのいずれかで、ステップ(b)、(d)、及び/若しくは(f)における全てのバイオマーカーの存在及び/若しくは非存在を決定するように設計することができる参照試料をアッセイして、試薬及びプロセスの安定性を確保することができる。参照試料は、標的メッセンジャーRNAを発現する細胞株から得ることができるか、又は合成メッセンジャーRNAとして得ることができる。参照試料をアッセイして、試薬及びプロセスの安定性を確保することができる。陰性対照(例えば、鋳型なし)は、任意の外因性核酸汚染をモニタリングするためにアッセイされるべきである。
【0106】
インサイチュハイブリダイゼーションアッセイは周知であり、一般にAngerer et al.,Methods Enzymol.152:649-660(1987)に記載されている。インサイチュハイブリダイゼーションアッセイでは、例えば、生検からの細胞は、固体支持体、典型的にはスライドガラスに固定される。DNAがプローブされる場合、細胞は、熱又はアルカリで変性される。その後、細胞は、適度な温度でハイブリダイゼーション溶液と接触して、標識されている特定のプローブのアニーリングを可能にする。プローブは、好ましくは、例えば、放射性同位体又は蛍光レポーターで標識されるか、又は酵素的に標識される。FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)は、高度の配列類似性を示す配列のそれらの部分のみに結合する蛍光プローブを使用する。CISH(発色インサイチュハイブリダイゼーション)は、標準的な明視野顕微鏡下で可視化される従来のペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ反応を使用する。
【0107】
ヌクレオチドプローブの相補鎖を対象となる配列にハイブリダイズすることによって、組織切片又は細胞調製物中の特定の遺伝子配列を検出するために、インサイチュハイブリダイゼーションを使用することができる。蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)は、蛍光プローブを使用して、インサイチュハイブリダイゼーションの感度を増加させる。
【0108】
FISHは、細胞内の特定のポリヌクレオチド配列を検出及び局在化するために使用される細胞遺伝学的技術である。例えば、FISHを使用して、染色体上のDNA配列を検出することができる。FISHはまた、組織試料内の特定のRNA、例えば、mRNAを検出及び局在化するために使用することもできる。FISHでは、高度の配列類似性を示す特定のヌクレオチド配列に結合する蛍光プローブを使用する。蛍光顕微鏡を使用して、蛍光プローブが結合しているかどうか、及びどこで結合しているかを調べることができる。特定のヌクレオチド配列、例えば、転座、融合、切断、複製、及び他の染色体異常を検出することに加えて、FISHは、細胞及び組織内の特定の遺伝子コピー数及び/又は遺伝子発現の空間-時間的パターンを定義するのに役立ち得る。
【0109】
一実施形態では、ステップ(b)及び/又は(d)においてバイオマーカーの存在及び/又は非存在を決定することは、1つ以上の結合剤を使用して行われ、各々個別にバイオマーカーのうちの1つをコードする核酸分子に選択的に結合することが可能である。
【0110】
好ましくは、1つ以上の結合部分は、各々、核酸分子を含むか、又はそれからなる。
【0111】
好ましくは、1つ以上の結合部分は、各々、DNA、RNA、PNA、LNA、GNA、TNA、又はPMOを含むか、又はそれらからなる。
【0112】
好ましくは、1つ以上の結合部分は、検出可能部分を含む。好ましくは、検出可能部分は、蛍光部分、発光部分、化学発光部分、放射性部分(例えば、放射性原子)、又は酵素部分からなる群から選択され得る。
【0113】
放射性原子は、テクネチウム-99m、ヨウ素-123、ヨウ素125、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、リン-32、硫黄-35、重水素、トリチウム、レニウム-186、レニウム-188、及びイットリウム-90であり得る。
【0114】
好ましくは、結合部分の検出可能部分は、蛍光部分である
【0115】
対象におけるがんを診断するための方法を提供することが本発明の更なる目的であって、本方法が、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在及び/又は量を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、
(c)
i.がんに罹患していない個体、及び/又は
ii.がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、対照試料が、試験試料とは異なる段階のがんであるか、又は対照試料が、がんに罹患している個体からの健康な組織に由来する、提供するステップと、
d)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの存在及び/又は量を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、対照試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
3つのバイオマーカー全てが試験試料中に存在し、3つのバイオマーカー全てが対照試料中に存在していない場合に、がんが診断され、かつ/又はステップ(b)における試験試料中の3つのバイオマーカーの量が、ステップ(d)で測定された対照試料中の3つのバイオマーカーの量に対して増加した場合に、がんが、診断される。
【0116】
対象におけるがんを診断するための方法を提供することが本発明の更なる目的であって、本方法が、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在及び/又は量を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1)、並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、
(c)
i.がんに罹患していない個体、及び/又は
ii.がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、対照試料が、試験試料とは異なる段階のがんであるか、又は対照試料が、がんに罹患している個体からの健康な組織に由来する、提供するステップと、
d)第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの存在及び/又は量を決定するステップであって、当該バイオマーカーが、対照試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を含み、
4つのバイオマーカー全てが試験試料中に存在し、4つのバイオマーカー全てが対照試料中に存在していない場合に、がんが診断され、かつ/又はステップ(b)における試験試料中の4つのバイオマーカーの量が、ステップ(d)で測定された対照試料中の4つのバイオマーカーの量に対して増加した場合に、がんが、診断される。
【0117】
好ましくは、がんは、前立腺がんである。更なる実施形態では、前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)である。一実施形態では、CRPCは、神経内分泌型である。
【0118】
本発明の本方法は、発現プロファイリングを含み、これは、本明細書に開示されるバイオマーカーの差次的発現を評価することを含む。差次的発現は、対照(又は参照物)と比較した、生物学的産物、例えば、遺伝子、mRNA、又はタンパク質の過剰発現及び/又は過少発現を含み得る。当該バイオマーカーの存在及び/又は量を決定することは、本明細書に記載のタンパク質又は核酸ベースの技術のうちのいずれかによって行われ得る。対照試料は、試験試料と同様の細胞を含み得るが、疾患を伴わない(例えば、健康な個体からの試料から得られた発現プロファイル)。対照は、特定の疾患及び特定の薬物標的に関連する薬物標的の有効性を示す、事前に決定されたレベルであり得る。対照は、同じ対象、例えば、異常細胞と同じ臓器の正常な隣接部分に由来し得、対照は、他の個体からの健康な組織(すなわち、非がん性組織)に由来し得るか、又は特定の薬物標的に応答するか、若しくは応答しない疾患を示す、事前に決定された閾値に由来し得る。対照はまた、同じ試料中に見られる対照、例えば、ハウスキーピング遺伝子又はその産物(例えば、mRNA又はタンパク質)であり得る。例えば、対照核酸は、細胞のがん性状態又は非がん性状態に応じて異ならないことが知られているものであり得る。対照核酸の発現レベルは、試験及び参照集団におけるシグナルレベルを正規化するために使用することができる。例示的な対照遺伝子には、例えば、β-アクチン、グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ、及びリボソームタンパク質P1が挙げられるが、これらに限定されない。複数の対照又は対照のタイプを使用することができる。差異発現の源は、変化し得る。例えば、遺伝子コピー数は、細胞において増加されてもよく、それによって、遺伝子の発現の増加がもたらされる。代替として、遺伝子の転写は、例えば、クロマチンリモデリング、差次的メチル化、プロモーター若しくは又はエンハンサー領域の変化、転写因子の差次的発現又は活性などによって修飾され得る。翻訳はまた、例えば、mRNAを分解する因子、mRNAを翻訳する因子、若しくは翻訳をサイレンスする因子、例えば、microRNA若しくはsiRNAの差次的発現、又は代替的なスプライシングに起因する変化によって修飾され得る。いくつかの実施形態では、差次的発現は、差次的活性を含む。例えば、タンパク質は、構成的活性化などのタンパク質の活性を増加させる変異を担うことができ、それによって病的状態に寄与する。活性の変化を明らかにする分子プロファイリングを使用して、治療選択を導くことができる。
【0119】
オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びに/又はTNF受容体関連因子6(TRAF6)の発現のレベルは、当該それぞれのバイオマーカー(オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型細胞内ドメイン(TβR1-ICD);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6))をコードするDNA、mRNA、又はcDNA、及び/又はそれらの断片を測定することによって決定することができる。
【0120】
本発明の文脈において、当該バイオマーカー:対照試料中のバイオマーカーのレベルと比較した、試験試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)の増加したレベルは、対象におけるがんを示す。例えば、オーロラキナーゼB(AURKB)のレベルが対照試料中のオーロラキナーゼB(AURKB)のレベルと比較して試験試料中で増加する場合、アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)のレベルが対照試料中のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)のレベルと比較して試験試料中で増加する場合、レベルTGFβ受容体1型(TβR1)が対照試料中のTGFβ受容体1型(TβR1)のレベルと比較して試験試料中で増加する場合、並びにレベルTNF受容体関連因子6(TRAF6)が対照試料中のTNF受容体関連因子6(TRAF6)のレベルと比較して試験試料中で増加する場合、試験試料は、対象におけるがんを示す。
【0121】
「対照試料中の量と比較して増加する」とは、試験試料中の1つ以上のバイオマーカーの量が1つ以上の対照試料のそれ(又は同じものを表す事前に定義された参照値に対して)から増加していることを含む。好ましくは、試験試料中の量は、1つ以上の対照試料中の量(又は対照試料の平均)と比較して、1つ以上の対照試料(例えば、陰性対照試料)の少なくとも5%、例えば、少なくとも6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、41%、42%、43%、44%、55%、60%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、250%、275%、300%、350%、400%、500%、又は少なくとも1000%増加している。
【0122】
試験試料中の量は、対照試料中の量と比較して、統計的に有意な様式で増加され得る。z検定、t検定、スチューデントのt検定、f検定、マン-ホイットニーU検定、ウィルコクソン符号順位検定、及びピアソンのカイ二乗検定を含む、当業者に知られるp値を判定するための任意の好適な手段を使用することができる。
【0123】
好ましくは、がんに罹患していない個体は、試料を取得した時点で、任意の疾患又は状態に罹患していなかった。好ましくは、がんに罹患していない個体は、健康な個体である。
【0124】
代替として、又は追加的に、本発明の方法は、
(e)がんに罹患している個体(すなわち、陽性対照)、及び/又は
(f)がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、試料が、試験試料と同じ段階のものであったか、又は対照試料が、がんに罹患している個体からの健康な組織に由来する、提供するステップと、
ステップ(b)で測定される3つのバイオマーカー全ての対照試料中の存在及び/又は量を測定することによって、対照試料のバイオマーカーシグネチャーを決定するステップと、を更に含むか、又はそれらからなり、
ステップ(b)で測定されるバイオマーカーの試験試料中の存在及び/又は量が、ステップ(f)で測定される3つのバイオマーカー全ての陽性対照試料中の存在及び/又は量に相当する場合に、がんが、診断又は検出される。
【0125】
一実施形態では、代替として、又は追加的に、本発明の方法は、
(e)がんに罹患している個体(すなわち、陽性対照)、及び/又は
(f)がんに罹患している個体からの1つ以上の対照試料を提供するステップであって、試料が、試験試料と同じ段階のものであった、提供するステップと、
ステップ(b)で測定される4つのバイオマーカー全ての対照試料中の存在及び/又は量を測定することによって、対照試料のバイオマーカーシグネチャーを決定するステップと、を更に含むか、又はそれらからなり、
ステップ(b)で測定されるバイオマーカーの、試験試料中の存在及び/又は量が、ステップ(f)で測定される4つのバイオマーカー全ての、陽性対照試料中の存在及び/又は量に相当する場合に、がんが、診断又は検出される。
【0126】
代替として、又は追加的に、ステップ(a)、(c)、及び/又は(e)で提供される試料は、がんの治療(例えば、切除、化学療法、放射線療法)の前に提供される。
「陽性対照試料中の存在及び/又は量に相当する」とは、存在及び/又は量が、陽性対照試料の存在及び/若しくは量と同一であるか、又は1つ以上の陰性対照試料よりも、1つ以上の陽性対照試料の存在及び/又は量により近い(又は同じものを表す事前定義された参照値に)ことを意味するか、又は含む。好ましくは、存在及び/又は量は、1つ以上の対照試料の存在及び/又は量(又は対照試料の平均)の±40%以内、例えば、1つ以上の対照試料(例えば、陽性対照試料)の±39%、±38%、±37%、±36%、±35%、±34%、±33%、±32%、±31%、±30%、±29%、±28%、±27%、±26%、±25%、±24%、±23%、±22%、±21%、±20%、±19%、±18%、±17%、±16%、±15%、±14%、±13%、±12%、±11%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.05%、又は0%以内である。
【0127】
試験試料中の存在又は量の差は、異なる及び対応するバイオマーカー発現についての標準偏差範囲が重ならない(例えば、隣接するが重ならない)ことを条件として、対照試料中の平均の存在又は量から5以下の標準偏差、例えば、対照試料中の平均の存在又は量からから≦4.5、≦4、≦3.5、≦3、≦2.5、≦2、≦1.5、≦1.4、≦1.3、≦1.2、≦1.1、≦1、≦0.9、≦0.8、≦0.7、≦0.6、≦0.5、≦0.4、≦0.3、≦0.2、≦0.1、又は0の標準偏差であり得る。
【0128】
「対照試料中の存在及び/又は量に相当する」とは、試験試料中の存在又は量が、統計的に有意な様式で対照試料中の量と相関するという意味が含まれる。例えば、試験試料中の存在又は量は、≦0.05、例えば、≦0.04、≦0.03、≦0.02、≦0.01、≦0.005、≦0.004、≦0.003、≦0.002、≦0.001、≦0.0005、又は≦0.0001のp値により対照試料の存在又は量と相関し得る。
【0129】
バイオマーカーの差次的発現(上方調節又は下方調節)、又はその欠如は、当業者に知られる任意の好適な手段によって判定することができる。差次的発現は、少なくとも0.05未満(p=≦0.05)、例えば、少なくとも≦0.04、≦0.03、≦0.02、≦0.01、≦0.009、≦0.005、≦0.001、≦0.0001、≦0.00001、又は少なくとも≦0.000001のp値に対して決定される。代替として、又は追加的に、差次的発現は、サポートベクターマシン(SVM)を使用して判定され得る。
【0130】
一実施形態では、ステップ(b)で測定される1つ以上のバイオマーカーの試験試料中の存在及び/又は量は、ステップ(d)及び/又は(f)における測定を表す所定の参照値に対して比較される。
【0131】
がんに罹患している1つ以上の個体は、前立腺がん(去勢抵抗性前立腺がんなど)、腎がん、肺がん、腎臓がん、胃がん、膀胱がん、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択されるがんに罹患している個体であり得る。好ましくは、がんに罹患している個体は、診断又は検出されるがんと同じタイプのがんを有することが知られている個体である。がんに罹患している1つ以上の個体は、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断に関連する及び/又はそれによって媒介されるがんに罹患し得る。
【0132】
一実施形態では、対象ががんと診断された場合、本方法は、
-対象にがん療法を提供するステップを更に含む。
【0133】
好ましくは、がん療法は、手術、化学療法、免疫療法、化学免疫療法、及び熱化学療法からなる群から選択される。したがって、がんの存在が示される一実施形態では、本方法は、現在の推奨に従って(例えば、がん細胞の外科的除去、放射線療法、及び/又は化学療法)がんに対して対象を治療することを含む。
【0134】
一実施形態では、がん療法は、手術、化学療法、免疫療法、化学免疫療法、及び熱化学療法(例えば、AC化学療法;カペシタビン及びドセタキセル化学療法(Taxotere(登録商標));CMF化学療法;シクロホスファミド;EC化学療法;ECF化学療法;E-CMF化学療法(Epi-CMF);エリブリン(Halaven(登録商標));FEC化学療法;FEC-T化学療法;フルオロウラシル(5FU);GemCarbo化学療法;ゲムシタビン(Gemzar(登録商標));ゲムシタビン及びシスプラチン化学療法(GemCis又はGemCisplat);GemTaxol化学療法;イダルビシン(Zavedos(登録商標));リポソマルドキソルブリン(DaunoXome(登録商標));ミトマイシン(Mitomycin C Kyowa(登録商標));ミトキサントロン;MM化学療法;MMM化学療法;パクリタキセル(Taxol(登録商標));TAC化学療法;タキソテール及びシクロホスファミド(TC)化学療法;ビブラスチン(Velbe(登録商標));Vincristine(Oncovin(登録商標));Vindesine(Eldisine(登録商標));及びVinorelbine(Navelbine(登録商標))からなる群から選択される。
【0135】
一実施形態では、抗がん剤は、抗体若しくはその抗原結合断片、又はTβRIの切断を防止する小分子など、好ましくは細胞内ドメインが核に転座することができないように、TβRIの切断を防止する薬剤である。
【0136】
代替として、又は追加的に、本方法は、繰り返される。
【0137】
代替として、又は追加的に、本方法は、繰り返され、ステップ(a)では、試験される試料は、前の方法の反復における試料とは異なる時間に対象から得られたものである。
【0138】
本方法は、使用された前の試験試料とは異なる期間に採取された試験試料を使用して繰り返されることが理解されるであろう。
【0139】
代替として、又は追加的に、本方法は、使用された前の試験試料に対して1日~104週、例えば、1週~100週、1週~90週、1週~80週、1週~70週、1週~60週、1週~50週、1週~40週、1週~30週、1週~20週、1週~10週、1週~9週、1週~8週、1週~7週、1週~6週、1週~5週、1週~4週、1週~3週、又は1週~2週に採取された試験試料を使用して繰り返される。
【0140】
代替として、又は追加的に、本方法は、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、2週、3週、4週、5週、6週、7週、8週、9週、10週、15週、20週、25週、30週、35週、40週、45週、50週、55週、60週、65週、70週、75週、80週、85週、90週、95週、100週、104週、105週、110週、115週、120週、125週、及び130週からなる群からの期間ごとに採取された試験試料を使用して繰り返され得る。
【0141】
代替として、又は追加的に、本方法は、少なくとも1回、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23、24回、又は25回繰り返される。
【0142】
更なる目的において、本発明は、前立腺がんに罹患しているか、又は罹患している疑いのある対象におけるグリソンスコア(GS)を、(i)GS≦6若しくは7(3+4)、又は(ii)GS7(4+3)若しくは≧8のいずれかであるとして決定するための方法を提供し、本方法は、
a)対象からの生物学的試験試料を提供するステップと、
b)オーロラキナーゼB(AURKB)及びTGFβ受容体1型(TβR1)を含む複合体の量を評価するステップと、
c)(b)における複合体の量を、(i)GS≦6若しくは7(3+4)、又は(ii)GS7(4+3)若しくは≧8のいずれかのGSを有することが知られている参照試料からのオーロラキナーゼB(AURKB)及びTGFβ受容体1型(TβR1)を含む複合体の量と比較するステップと、を含み、
その比較が、対象におけるGSを、(i)GS≦6若しくは7(3+4)、又は(ii)GS7(4+3)若しくは≧8のいずれかであるとして決定することを可能にする。
【0143】
「オーロラキナーゼB(AURKB)及びTGFβ受容体1型(TβR1)を含む複合体」とは、2つ以上のタンパク質が、オーロラキナーゼB(AURKB)及びTGFβ受容体1型(TβR1)を含む、同じ位置で多タンパク質構造を形成するために互いに相互作用する2つ以上のタンパク質の集合の意味が含まれる。好ましくは、複合体中のタンパク質は、非共有結合相互作用によって互いに相互作用する。
タンパク質複合体を検出する方法は、当該技術分野で周知であり、免疫沈降及びインサイチュ近接ライゲーションアッセイ(PLA)、免疫蛍光及び共焦点顕微鏡検査が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、当該技術分野において既知の方法及び付随する実施例に記載されるものを使用して、そのようなタンパク質複合体を定量化することができる。
【0144】
本明細書に記載の方法のいずれかの一実施形態では、TGFβ受容体1型(TβR1)は、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である。
【0145】
現在、前立腺がんのための最も一般的な採点システムは、腫瘍の顕微鏡的外観に基づいて腫瘍が広がる可能性を示すために使用されるグリソン採点システムである(Gleason and Mellinger,1974,Iczkowski KA.Gleason grading.PathologyOutlines.com website.https://www.pathologyoutlines.com/topic/prostategrading.html)。組織は、α-メチルアシル-CoAラセマーゼ(α-methylacyl-CoA racemase、AMACR)、p63、及びサイトケラチン(cytokeratin、CK)5に対する抗体で染色し、光学顕微鏡を使用して調査することができる。このシステムは、1~5の尺度を使用し、5は、より侵襲性の腫瘍パターンを表す。2つのグレードが与えられ、それぞれ、1つは最も一般的なエリアに、もう1つは2番目に一般的なエリアに与えられる。次いで、病理医は、2つのグレードを加算して、「グリソンスコア」(GS)を取得する。GSは、2~10の範囲であり、前立腺がんによる死亡の予測因子として非常に強い予後値を有する。高GS(8~10)の患者は、より悪い生存転帰を有する。
【0146】
グリソンパターン3とグリソンパターン4の割合が異なるため、2014年に、7のGSを、以下の2つの異なるグループに分ける新しい採点システムが提案された:GS3+4=7(予後グレードグループII)及びGS4+3=7(予後グレードグループIII)、(Pierorazio PM,et al.BJU Int.(2013)111:753-60)。GS3+4=7とGS4+3=7とを区別することができることは、GS3+4=7(グレードグループII)と4+3=7(グレードグループIII)には異なる放射線療法アプローチがあるため、重要である(Zhu et al.Front.Oncol.,16 July 2019)。
【0147】
一実施形態では、本方法は、≦6又は7(3+4)のグリソンスコアを有する対象からの試験試料と、7(4+3)又は≧8のグリソンスコアを有する対象からの試験試料と区別することが可能である。添付の実施例に示されるように、本発明者らは、驚くべきことに、より低いグリソンスコア(7=(3+4)又は≦6)を有する前立腺がん患者の臨床材料と比較して、高いグリソンスコア(7=(4+3)又は≧8)を有する前立腺がん患者の臨床材料に多数のAURKB-TβRI-ICD複合体が見られたことを見出した(図5B)。
【0148】
一実施形態では、複合体は、アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)を更に含む。
【0149】
一実施形態では、複合体は、TNF受容体関連因子6(TRAF6)を更に含む。
【0150】
一実施形態では、複合体は、細胞分裂構造などの細胞構造に局在する。
【0151】
好ましくは、AURKBは、ユビキチン化されている。
【0152】
一実施形態では、オーロラキナーゼB(AURKB)は、ヒトAURKB(配列番号1)のリジン85(K85)及び/又はリジン87(K87)に対応する一方又は両方のリジン残基でユビキチン化されている。
【0153】
一実施形態では、前立腺がんは、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)である。
【0154】
更なる態様では、本発明は、対象におけるがんの存在を決定するためのアレイであって、
(i)本明細書に記載のオーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のオーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(ii)本明細書に記載のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能な結合剤、並びに/又は本明細書に記載のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iii)本明細書に記載のTGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、を含む、アレイを提供する。
【0155】
一実施形態では、アレイは、(iv)本明細書に記載のTNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分を更に含む。
【0156】
更なる態様では、本発明は、対象におけるがんの存在を決定するためのアレイであって、
(i)本明細書に記載のオーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のオーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(ii)本明細書に記載のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能な結合剤、並びに/又は本明細書に記載のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iii)本明細書に記載のTGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iv)本明細書に記載のTNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、を含む、アレイを提供する。
【0157】
がんは、侵襲性がんであり得る。
【0158】
好ましくは、結合剤は、TGFβ受容体1型細胞内ドメイン(TβR1-ICD)に結合することが可能である。
【0159】
一実施形態では、(i)における結合剤は、本明細書に記載のユビキチン化されたオーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能である。一実施形態では、(i)における結合剤は、ユビキチン化されたオーロラキナーゼB(AURKB)とユビキチン化されていないAURKBとを区別することが可能である。
【0160】
(上で考察された)好適な結合分子が識別及び単離されると、当業者は、分子生物学の分野で周知の方法を使用してアレイを製造することができる。アレイは、典型的には、固体支持体の表面上に形成された、各々無限の面積を有する、間隔があいた(すなわち、別々の)領域(「スポット」)を有する線形又は二次元構造で形成される。アレイはまた、各ビーズを分子コード若しくはカラーコードによって識別又は連続流において識別することができるビーズ構造とすることができる。分析はまた連続して行うことができ、試料は各々溶液から分子のクラスを吸着する一連のスポット上を通過させる。固体支持体は、典型的には、ガラス又はポリマーであり、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、ディスク、シリコンチップ、マイクロプレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、他の多孔質膜、非多孔質膜(例えば、とりわけ、プラスチック、ポリマー、パースペックス、シリコン)、複数のポリマーピン、若しくは複数のマイクロタイターウェル、又はタンパク質、ポリヌクレオチド、及びタンパク質、ポリヌクレオチド、及び他の好適な分子を固定化するため、並びに/若しくは免疫アッセイを行うために好適である任意の他の表面の形態であり得る。結合プロセスは、当該技術分野において周知であり、一般に、タンパク質分子、ポリヌクレオチドなどを固体支持体に共有結合又は物理吸着する架橋からなる。接触若しくは非接触プリント、マスキング、又はフォトリソグラフィーなどの、周知の技法を使用することによって、各スポットの位置を定義することができる。レビューについては、Jenkins,R.E.,Pennington,S.R.(2001,Proteomics,2,13-29)及びLal et al(2002,Drug Discov Today 15;7(18 Suppl):S143-9)を参照されたい。
【0161】
典型的には、アレイは、マイクロアレイである。「マイクロアレイ」とは、少なくとも約100/cm、好ましくは少なくとも約1000/cmの離散領域の密度を有する領域のアレイの意味を含む。マイクロアレイ内の領域は、典型的な寸法、例えば、約10~250μmの範囲の直径を有し、アレイ内の他の領域からほぼ同じ距離だけ離れている。アレイはまた、マクロアレイ又はナノアレイであり得る。
【0162】
(上で考察された)好適な結合分子が識別及び単離されると、当業者は、分子生物学の分野で周知の方法を使用してアレイを製造することができる。
【0163】
一実施形態では、アレイは、タンパク質レベルで、当該バイオマーカーである、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1)又はその細胞内ドメイン(TβR1-ICD);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)に(個別に又は集合的に)結合することが可能な、1つ以上の抗体又はその抗原結合断片を含む。例えば、アレイは、タンパク質レベルで、全てのバイオマーカーであるオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1)又はその細胞内ドメイン(TβR1-ICD);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)に(集合的に)結合することが可能なscFv分子を含み得る。
【0164】
アレイが本明細書に記載の対照試料などの1つ以上の陽性及び/又は陰性対照試料を含み得ることが理解されるであろう。
【0165】
対象における診断及び/又は予後のためのキットを提供することが更なる目的であって、当該キットが、
(i)本明細書に記載のオーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のオーロラキナーゼB(AURKB)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(ii)本明細書に記載のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能な結合剤、並びに/又は本明細書に記載のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iii)本明細書に記載のTGFβ受容体1型(TβR1)又はその細胞内ドメイン(ICD)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTGFβ受容体1型(TβR1)又はその細胞内ドメイン(ICD)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、を含む。
【0166】
一実施形態では、キットは、(iv)本明細書に記載のTNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分を更に含む。
【0167】
対象における診断及び/又は予後のためのキットを提供することが更なる目的であって、当該キットが、
(i)オーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のオーロラキナーゼB(AURKB)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(ii)アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)に結合することが可能な結合剤、並びに/又は本明細書に記載のアダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)をコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iii)TGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTGFβ受容体1型(TβR1)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、
(iv)TNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能な結合剤、及び/又は本明細書に記載のTNF受容体関連因子6(TRAF6)に結合することが可能なコードする核酸分子に選択的に結合することが可能な結合部分と、を含む。
【0168】
任意選択で、キットは、使用説明書を更に含む。
【0169】
キットは、例えば、がんの診断及び/又は予後に好適である。がんは、固形腫瘍であり得る。腫瘍は、例えば、前立腺がん、腎がん、肺がん、胃がん、膀胱がん、乳がん、子宮内膜がん、卵巣がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択され得る。がんは、侵襲性がんであり得る。
【0170】
一実施形態では、TGFβ受容体1型(TβR1)は、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である。
【0171】
一実施形態では、(i)において可能な結合剤は、本明細書に記載のユビキチン化されたオーロラキナーゼB(AURKB)に結合することが可能である。一実施形態では、(i)における結合剤は、ユビキチン化されたオーロラキナーゼB(AURKB)とユビキチン化されていないAURKBとを区別することが可能である。
【0172】
アレイと同様に、キットが、例えば、本明細書に記載の1つ以上の陽性及び/又は陰性対照試料を含み得ることが理解されるであろう。
【0173】
TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断及び/又は予後におけるバイオマーカーとして使用するための、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)を提供することが更なる目的であり、細胞内の細胞質分裂構造に対する3つのマーカー全ての共局在が、当該疾患又は状態を示す。
【0174】
一実施形態では、バイオマーカーとして使用するためのオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)は、TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断及び/又は予後におけるバイオマーカーとして使用するためのTNF受容体関連因子6(TRAF6)を更に含み、細胞内の細胞質分裂構造に対する4つのバイオマーカー全ての共局在が、当該疾患又は状態を示す。
【0175】
TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断におけるバイオマーカーとして使用するための、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)を提供することが更なる目的であり、細胞内の細胞質分裂構造に対する4つのマーカー全ての共局在が、当該疾患又は状態を示す。
【0176】
一実施形態では、TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態は、がんである。一実施形態では、がんは、本明細書に記載のがんのうちのいずれかである。好ましくは、AURKBは、ユビキチン化されている。一実施形態では、TGFβ受容体1型(TβR1)は、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である。
【0177】
TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断及び/又は予後のためのバイオマーカーとしての、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);及びTGFβ受容体1型(TβR1)の使用を提供することが更なる目的である。
【0178】
一実施形態では、使用は、TGFβ受容体1型のタンパク質分解切断を伴う疾患又は状態の診断及び/又は予後のためのバイオマーカーとしてのTNF受容体関連因子6(TRAF6)の使用を更に含む。
【0179】
対象におけるがんの存在を決定するためのバイオマーカーとしての、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)の使用を提供することが更なる目的である。
【0180】
一実施形態では、その使用は、本明細書に記載されるように、試験される対象からの生物学的試験試料、及び任意選択で対照試料を提供することを含む。
【0181】
オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)を含む、複合体であって、AURKBがユビキチン化されている、複合体を提供することが更なる目的である。
【0182】
一実施形態では、複合体は、TNF受容体関連因子6(TRAF6)を更に含む。
【0183】
オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)を含む、複合体であって、AURKBがユビキチン化されている、複合体を提供することが更なる目的である。
【0184】
一実施形態では、TGFβ受容体1型(TβR1)は、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)である。好ましくは、AURKBは、ユビキチン化されている。
【0185】
一実施形態では、対象ががん及び/又は侵襲性がんと診断される場合、本方法は、
-対象にがん療法を投与するステップを更に含む。
【0186】
対象におけるがんを治療するための方法であって、対象が、本明細書に記載の方法に従ってがんを有すると診断されており、本方法が、対象にがん療法を投与することを含む、方法を提供することが更なる目的である。好適ながん療法は、当該技術分野で既知であり、本明細書で考察される。一実施形態では、抗がん剤は、抗体若しくはその抗原結合断片、又はTβRIの切断を防止する低分子である。
【0187】
好ましくは、本方法は、以下のステップを含む:
(a)本発明の方法を使用して対象を、がんを有すると診断するステップ、及び
(b)そのように診断された対象を、がん療法により治療するステップ。
【0188】
一実施形態では、抗がん剤は、同時又は順次のいずれかで、別のがん療法と組み合わせて投与される。
【0189】
一実施形態では、対象は、有効量のがん療法及び/又は抗がん剤を投与され得る。「有効量」とは、限定されないが、生存率の改善、より迅速な回復、又は症状の改善若しくは排除、及び/又は当業者によって選択される他の指標を含む、対象における改善を達成するのに有効である薬学的化合物又は組成物の量の意味が含まれる。
【0190】
更に、がんを有する対象の治療をモニタリングするための方法が提供される。本方法は、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断によって媒介されるがんに好適である。本方法は、
-試験される対象からの第1の生物学的試料sを提供するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの発現レベルを表す第1の値vを決定するステップであって、当該バイオマーカーが、治療の第1の時点tにおける第1の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、
-治療を開始又は継続するステップと、
-治療の所定の時間tの後に、当該対象から第2の生物学的試料sを取得するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの発現レベルを表す第2の値vを決定するステップであって、当該バイオマーカーが、治療の第2の時点tにおける第2の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
-vのレベルがvを超える場合、対照は、治療に応答しており、vがv未満である場合、対象は、治療に応答していない。
【0191】
更に、がんを有する対象の治療をモニタリングするための方法が提供される。この方法は、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断によって媒介されるがんに好適である。本方法は、
-試験される対象からの第1の生体試料sを提供するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの発現レベルを表す第1の値vを決定するステップであって、当該バイオマーカーが、治療の第1の時点tにおける第1の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、
-治療を開始又は継続するステップと、
-治療の所定の時間tの後に、当該対象から第2の生物学的試料sを取得するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの発現レベルを表す第2の値vを決定するステップであって、当該バイオマーカーが、治療の第1の時点tにおける第2の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を含み、
-vのレベルがvを超える場合、対照は、治療に応答しており、vがv未満である場合、対象は、治療に応答していない。
【0192】
参照値と比較した当該バイオマーカーの発現レベルの低下は、がん細胞の数の低減を示す。
【0193】
更に、がんを有する対象の治療をモニタリングするための方法が提供される。本方法は、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断によって媒介されるがんに好適である。本方法は、
-試験される対象からの第1の生物学的試料sを提供するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの共局在を表す第1の値vを決定するステップであって、当該バイオマーカーが、治療の第1の時点tにおける第1の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、
-治療を開始又は継続するステップと、
-治療の所定の時間tの後に、当該対象から第2の生物学的試料sを取得するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、及び第3のバイオマーカーの共局在を表す第2の値vを決定するステップであって、当該バイオマーカーが、治療の第2の時点tにおける第2の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);並びにTGFβ受容体1型(TβR1)である、決定するステップと、を含み、
-vのレベルがvを超える場合、対照は、治療に応答しており、vがv未満である場合、対象は、治療に応答していない。
【0194】
更に、がんを有する対象の治療をモニタリングするための方法が提供される。この方法は、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断によって媒介されるがんに好適である。本方法は、
-試験される対象からの第1の生物学的試料sを提供するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの共局在を表す第1の値vを決定するステップであって、バイオマーカーが、治療の第1の時点tにおける第1の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、
-治療を開始又は継続するステップと、
-治療の所定の時間tの後に、当該対象から第2の生物学的試料sを取得するステップと、
-第1のバイオマーカー、第2のバイオマーカー、第3のバイオマーカー、及び第4のバイオマーカーの共局在を表す第2の値vを決定するステップであって、バイオマーカーが、治療の第1の時点tにおける第2の生物学的試料中のオーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)である、決定するステップと、を含み、
-vのレベルがvを超える場合、対照は、治療に応答しており、vがv未満である場合、対象は、治療に応答していない。
【0195】
参照値と比較した当該バイオマーカーの共局在レベルの低下は、がん細胞の数の低減を示す。
【0196】
参照値は、例えば、治療の開始前、治療の変更、又はモニタリングの対照となり得る任意の変更後、すなわち開始値tであり得る。
【0197】
第2、第3、第4、第5などの値は、開始点t又は治療の変更後の所定の時点、治療中、又はモニタリングされるべき他の興味深いイベント中の所定の時点に設定されてもよい。
【0198】
上記の方法及びキットは、がん疾患の観点においてのみ使用されることに限定されず、方法及びキットは、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)のタンパク質分解切断に関連する、及び/又はそれによって媒介される任意の他の疾患若しくは状態に有用であり得る。
【0199】
ここで、以下の図面及び実施例を参照して、本発明が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0200】
図1】APPL1及び2は、AURKB、BIRC5、CDCA8、及びKIF2Cの発現を促進する。(A)ヒト前立腺がんPC-3U細胞を、対照又は、No.1 APPL1及びAPPL2 siRNAでトランスフェクトした。RNAを細胞から抽出し、マイクロアレイ解析を行った。(B(i)及び(ii))No.1 APPL1及びAPPL2 siRNAで処理したか、又は処理していない細胞のパネルaに示される遺伝子のqRT-PCR分析。siRNAによる阻害は、siRNA耐性構築物を発現することによって克服された。N=4、平均値±SEMとして提示されるデータ[スチューデントt検定、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001]。(B(iii)及び(iv))qRT-PCRを行って、第2のsiRNAの対(No.2、N=3)を使用して、図1bのマイクロアレイ結果を検証した。データは、平均値±SDとして提示される[スチューデントt検定、***P<0.001]。(C(i))No.1 APPL1/2 siRNA及びTGFβで処置した、又は処理していないPC-3U細胞における免疫ブロッティングによって、サバイビン及びAURKBの発現を評価した。(C(ii))PC-3U細胞を二重チミジンブロックと同期させ、No.1 APPL1及びAPPL2 siRNAで処理した。細胞を放出し、細胞溶解物を異なる時間に調製し、免疫ブロッティングに供した。(D)PC-3U細胞を、No.1 APPL1及びAPPL2 siRNAでトランスフェクトした、又はトランスフェクトせず、ノコダゾールで12時間インキュベートし、免疫ブロッティングによって分析した。(E)終期及び細胞質分裂中のAURKB(緑色)及びAPPL1(赤色)の共局在を示す免疫蛍光及び共焦点イメージング。(F~K)パネルeの2つのZスタック画像の直交の図(XY、XZ、及びYZ)。(F、I)XYの図(z-投影)。(G、J)XZの図。(H、K)YZの図。スケールバー、20μm。(L)PC-3U細胞をTGFβで異なる期間処理した後、細胞溶解物を、抗サバイビン抗体を使用する免疫沈降、及びAPPL1及びTβRIに対する抗体を使用する免疫ブロッティングに供した。IB、免疫ブロッティング;TCL、全細胞溶解物。(M)PC-3U細胞を全長GFP-APPL1、黄色蛍光タンパク質(YFP)-APPL1-ΔN、又はGFP-APPL1-ΔCでトランスフェクトし、次いでAURKB(赤)で染色した。緑のチャネルを選択して、GFP及びYFPの両方を示した。スケールバー、20μm。APPL1タンパク質及び変異体の概略図が含まれる。(N)APPL1タンパク質及び変異体の概略図。(O)示されるようにHA-AURKB及び異なるAPPL1ドメインで一時的にトランスフェクトしたPC-3U細胞を同期させ、次いでHAに対する抗体を用いる免疫沈降、及びGFP抗体を使用する免疫ブロッティングに供した。非トランスフェクト(NT)。
図2】TβRIは、有糸分裂中にAURKBと共局在する。(A、B、及びD)ヒト前立腺がん(PC-3U)(A)細胞及びヒト神経芽腫(KELLY)(B)細胞における有糸分裂中のAURKB(緑色)及びTβRI(V22、赤色)、並びにPC-3U有糸分裂(D)全体にわたるTβRI(V22、緑色)及びβ-チューブリン(赤色)の共局在を示す免疫蛍光実験。スケールバー、20μm。(C)有糸分裂全体にわたるPC-3U細胞におけるサバイビン(緑色)及びTβRI(V22、赤色)の局在(E)30分間の氷上におけるPC-3U細胞の処置後のTβRI及びAURKBの共局在の減少。スケールバー、20μm。(F)siRNAによるTβRIのノックダウンを伴うか、若しくは伴わない、又はTβRIキナーゼ阻害剤SB505124での処置を伴う緑色蛍光タンパク質(GFP)-VPS4A(緑)及びβ-チューブリン(赤)の局在を示す代表的な共焦点画像。スケールバー、5μm。(G)TGFBR1のノックダウン後、多核細胞をカウントした。平均値±SEMとして提示されるデータ、N=3[スチューデントt検定、*P<0.05]。スケールバー、20μm。(H)TGFBR1発現との相関によってランク付けされた遺伝子の遺伝子セット濃縮分析(GSEA)は、34個の著しく濃縮された遺伝子セットをもたらした(調節されたp値は0.05以下であり、p値は、ベンジャミニ-ホッホベルグ手順を使用して調節される)。リッジプロットは、コア濃縮遺伝子、すなわち、遺伝子セットの濃縮に最も貢献する遺伝子の相関係数の分布を示す。遺伝子セットは、正規化された濃縮スコアによって順序付けられる。色は、調整されたp値を示す。(I)特徴的な有糸分裂紡錘体(左)及びG2/Mチェックポイント(右)遺伝子セットのGSEAプロットは、TGFBR1相関遺伝子とのそれらの強い関連性を示す。上のパネルは、全ての遺伝子のランク付けされたリスト内の遺伝子セット遺伝子の相関係数及び位置を示し、下のパネルは、実行中の濃縮スコアを示す。(J)PC-3U細胞を、SB505124及びTGFβで、又はそれらなしで30分間処理し、その後、細胞溶解物を免疫ブロッティングによって分析した。(K)AURKBがTβRIをリン酸化することができることを示すインビトロキナーゼアッセイ。(L)PC-3U細胞を、p-Smad2(赤色)及びAURKB(緑色)に対する抗体で染色した。赤と緑のスケールバー、5μm;白のスケールバー、20μm。
図3】TRAF6は、AURKBのK63結合ポリユビキチン化を媒介し、AURKBとTβRIとの間の共局在は、TRAF6及び変異体AURKBの特徴に依存する。(A~B)PC-3U細胞を、TRAF6 siRNAで処理したか、又は処理せず、二重チミジンブロックと同期させ、異なる期間(A)の後の、ノコダゾールとの12時間のインキュベーション(B)を伴うか、又は伴わない、免疫ブロッティング(IB)によって分析に供した。(C)同期PC-3U細胞の溶解物をAURKB抗体で免疫沈降させ(IP)、続いてTβRI、APPL1、及びTRAF6に対する抗体で免疫ブロッティングを行った。(D(i)及びD(ii))Flag-AURKB及びHAタグ付き野生型(WT)又は変異ユビキチンでトランスフェクトされた同期PC-3U細胞の溶解物を、Flag抗体を使用して免疫沈降に供し、続いてHA抗体を使用して免疫ブロッティングを行った。矢印は、重免疫グロブリン鎖を指す。(E)PC-3U細胞を二重チミジンブロックと同期させ、10%FBSを含む新鮮な培地に放出し、示された時間に収集し、次いでインビボユビキチン化アッセイに供した。Sは、飢餓の略である。(F)TRAF6 siRNAで処理したか、又は処理していない同期PC-3U細胞の溶解物を、Flag抗体を使用して免疫沈降に供し、続いてHA抗体を使用して免疫ブロッティングを行った。矢印は、重免疫グロブリン鎖を指す。平均値±SEMとして提示されるデータ、N=3[スチューデントt検定、**P<0.01](G~H)TRAF6発現がPC-3U及びMEF細胞において減少した場合の、有糸分裂中のAURKB及びTβRIの共局在の減少を示す免疫蛍光。(I)TRAF6によるユビキチン化のコンセンサスモチーフは、いくつかの種においてAURKB中に存在する。同じタイプのアミノ酸は、(*)疎水性、(&)極性、(X)任意のアミノ酸残基として標識される。(K)は、アクセプターリジン残基である。(J(i)及び(ii))HAタグ付きWTユビキチン及びFlagタグ付きWT又は変異型AURKBでトランスフェクトされた同期PC-3U細胞の溶解物を、Flag抗体を使用して免疫沈降に供し、続いてHAウサギ抗体を使用して免疫ブロッティングを行った。平均値±SEMとして提示されるデータ、N=3[スチューデントt検定、*P<0.05]。(K)Flagタグ付きWT及び変異型AURKBでトランスフェクトしたPC-3U細胞の溶解物を、示されるように、Flag抗体で免疫沈降させ、次いで、TRAF6抗体で免疫ブロッティングに供した。(L(i)及び(ii))PC-3U細胞を、WT又は変異型GFP-AURKBでトランスフェクトし、次いで、H3pS10に対する抗体で免疫ブロッティングを行った。平均値±SEMとして提示されるデータ、N=3[スチューデントt検定、**P<0.01]。(M(i)及び(ii))免疫沈降されたFlag-AURKB又はその変異体をインビトロキナーゼアッセイに供した。Flag-AURKB及びその変異体並びに均等負荷の発現は、示されるように、Flag免疫沈殿物又は全細胞溶解物(TCL)のアリコートを免疫ブロッティングすることによって制御された。組み込まれた放射能は、ホスフォイメージャーによって検出された。クマシーブリリアントブルーを有するゲルの染色後に検出されたリン酸化タンパク質及び総タンパク質の移動位置が矢印(M(i))で示される。ヒストンH3を基質として使用し、H3pS10を免疫ブロッティングによって検出した(M(ii))。(N)PC-3U細胞をWT又は変異型GFP-AURKBでトランスフェクトし、次いでTβRI(赤色)で染色した。n=20、N=3、平均値±SEMとして提示されるデータ[スチューデントt検定、**P<0.01、***P<0.001]。(O)PC-3U細胞をWT又は変異型GFP-AURKBでトランスフェクトし、次いでHoechst33342で染色した。N=3[スチューデントt検定、*P<0.05]。
図4】AURKBの発現は、異なるがんにおける予後不良、及び前立腺がんにおけるRB1とAURKBの発現との間の関係、並びにCRPCにおけるAPPL1、AURKA、及びTGFBR1の発現との間の相関と相関し、AURKBは、異なるがんにおいてユビキチン化され、前立腺がんにおいてTβRIと複合体を形成する。(A(i))TMA上でインサイチュPLAを行って、AURKBとLys63結合ポリユビキチン(茶色のドット)との共局在を示した。(A(ii))TMA上でインサイチュPLAを行って、AURKBとK63結合ユビキチン(茶色のドット)との共局在を調査した。正常な前立腺、腎臓、及び肺の数は、それぞれ22、24、及び23であった。前立腺がん、ccRCC、肺腺がんの数は、それぞれ41、38、及び32であった。定量化は、平均値±SEMを示す[スチューデントt検定、**P<0.01、**P<0.001](B)患者材料(褐色の点)の前立腺がんTMAにおけるAURKBとTβRIとの間の関連を、インサイチュPLAによって決定した。グリソンスコアが低い患者29名、グリソンスコアが高い患者28名を含んだ。正常な前立腺の数は23であった。定量化は、平均±SEM[スチューデントt検定、*P<0.05、***P<0.001]を示す。スケールバー、50μm。(C)インサイチュPLAによって決定される、陰性対照として機能する(一次抗体は添加されなかった)、正常前立腺組織(褐色点)中のAURKBとTβRIとの間の会合の欠如。スケールバー、50μm。(D(i)及び(ii))原発腫瘍及び転移の両方を含む、15のCRPC-NE試料及び34のCPPC-アデノ試料を有する49のCRPC試料にわたる対象となる8つの遺伝子の発現。試料は、最初にそれらのサブタイプによってグループ化され、次に腫瘍の位置によってグループ化される。(D(iii))CRPC-NE及びCRPC-AdenoにおけるAURKA及びAURKBの発現[マン-ホイットニーU検定、***P<0.001]。(D(iv))AURKB及びTGFBR1の発現は、CRPC-NE及びCRPC-Adenoの両方において相関した。データ分析にはピアソン相関分析が使用された。(D(v))CRPC-NE及びCRPC-AdenoにおけるAPPL1、AURKA、及びTGFBR1発現の相関。データ分析にはピアソン相関分析が使用される。(E)前立腺がんにおけるRB1変異。(F)前立腺がんにおけるAURKB及びRB1についてのmRNAの発現間の負の相関;ピアソン相関係数(r)が提示される。データは、cBioPortal TCGA PanCancer Atlasデータベースから取得した。(G)TCGAにおける原発性前立腺腫瘍におけるAURKBの発現は、グリソン群間で異なる[スチューデントt検定、***P<0.001]。腫瘍は、グリソンスコアに基づいてグループ化した。(H~J)前立腺がん、ccRCC、又は肺腺がんにおけるAURKBの低発現対高発現の患者の生存への影響を例示するカプラン・マイヤープロット。代表的な画像は、TCGA Pan Cancer Atlasデータベースのデータに基づく、Human Protein Atlasから入手した。
図5】細胞増殖及び生存に対するAPPL1/2、TGFBR1及びTRAF6の効果。(A)PC-3U細胞を対照(ctrl)siRNA又はNo.1 APPL1/2 siRNAで処理し、培養物中で異なる日数後にMTTアッセイに供した。(B)異なるsiRNAでトランスフェクトされた細胞の中で、アポトーシス細胞を数えた。(C~D)EGF刺激細胞増殖に対するPC-3U細胞中のAPPL1/2遺伝子のサイレンシング(C)の効果、及び10%FBSによって刺激された細胞数に対するsiRNAによるTRAF6又はTGFBR1遺伝子のサイレンシング(D)の効果。N=3、定量化は、平均±SEMを示す[スチューデントt検定、*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001]。
図6】TβRI-ICDシグナル伝達経路、及び有糸分裂進行におけるその関与の模式図。TβRIが、活性化γセクレターゼ複合体中のTACE/ADAM17及びプレセニリン1によるタンパク質分解切断を受ける非標準的な経路は、細胞内ドメイン(TβRI-ICD)を生成する。エンドソームタンパク質APPL1/2及び無傷の微小管は、TβRI-ICDの核トランスロケーションに必要である。核において、TβRI-ICDは、転写共活性化因子p300と複合体を形成し、プロ侵襲性遺伝子、TGFBR1、並びにAURKB及びBIRC5(サバイビンをコードする)の発現を促進する。細胞分裂中、TβRI-ICD及びAPPL1は、AURKBと複合体を形成する。TRAF6は、有糸分裂中に、K85及びK87上でのAURKBのK63結合ポリユビキチン化を促進し、これは、TβRI-ICDとともに、適切な細胞質分裂に必要とされる。
【発明を実施するための形態】
【0201】
本発明が、記載される特定の材料及び方法に限定されないことを理解されたく、それは、これらが変動し得るからである。本明細書で使用される用語が単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるであろう本発明の範囲を制限することは意図されないことも理解されたい。
【0202】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「抗体」への言及は、1つ以上の抗体、及び当業者に既知のそれらの均等物などへの言及である。
【0203】
「バイオマーカー」とは、自然に発生する生物学的分子、又はその構成要素若しくは断片の意味を含み、その測定は、がんの予後及び/又は診断に有用な情報を提供することができる。例えば、バイオマーカーは、天然に存在するタンパク質若しくは炭水化物部分、又はその抗原構成要素若しくは断片であり得る。
【0204】
「診断」とは、個体における病態の存在又は非存在を判定する(例えば、個体が、侵襲性がんを含むがんに罹患しているか否かを決定すること)という意味が含まれる。
【0205】
「がん」及び「がん性」という用語は、哺乳類における生理学的状態が、典型的には、規制されていない細胞成長を特徴とすることを指すか、又は説明する。がんの例としては、がん腫、前立腺がん、小細胞肺がん、腎臓がん、子宮内膜がん、卵巣がん、皮膚がん、及び結腸直腸がんが挙げられるが、これらに限定されない。グレードスコア(数値:G1~G4)は、細胞分化の欠如とともに増加し、これは、腫瘍細胞が、それらが起源とする正常組織の細胞とどの程度異なるかを反映する。腫瘍は、施設及び腫瘍タイプに応じて、4層、3層、又は2層のスケールで採点され得る。組織学的腫瘍グレードスコアは、転移性(全身レベルのがん蔓延)病期分類とともに、各特定のがん対象を評価し、個々の治療戦略を開発し、それらの予後を予測するために使用される。最も一般的に使用される採点システムは、対がん米国合同委員会のガイドラインに従う。それらのガイドラインに従って、以下の採点カテゴリがある:GX グレードは評価することができない;G1 高分化(低グレード);G2 中分化(中級グレード);G3 低分化(高グレード)、;及びG4 未分化(高グレード)。
【0206】
「新生物」又は「腫瘍」という用語は、同義で使用され、組織の異常な塊を指し、その塊の成長は、正常組織の増殖を上回り、協調していない。新生物又は腫瘍は、以下の特徴に応じて「良性」又は「悪性」と定義され得る:形態及び機能性を含む細胞分化の程度、成長速度、局所侵入、並びに転移。「良性」新生物は一般に、高分化型であり、悪性腫瘍よりも成長が特徴的に遅く、発生部位に局在化されたままである。加えて、良性新生物には、遠隔部位に浸潤、侵入、又は転移する能力を有さない。
【0207】
「悪性」新生物は一般に、低分化型(退形成)であり、周囲組織の進行性浸潤、侵入、及び破壊を伴い、特徴的に急速に成長する。更に、悪性新生物は、遠隔部位に転移する能力を有する。
【0208】
「前立腺がん」という用語は、所与の対象内の前立腺の悪性新生物を指し、その新生物は、上皮由来であり、前立腺のがんとも称される。前立腺がんは、そのタイプ、病期、及び/又はグレードに従って定義され得る。典型的な病期分類システムには、ジューエット・ホイットモアシステム及びTNMシステム(対がん米国合同委員会及び国際対がん連合によって採用されたシステム)が含まれる。典型的な採点システムは、組織生検の病理学的検査に基づく腫瘍侵襲性の尺度であるグリソンスコアである。
【0209】
グリソンシステムは、前立腺がんにおける腺がん細胞を採点するために使用される。このシステムは、2~10の範囲の採点スコアを使用するが、6未満のスコアはめったに使用されない。グリソンスコアは、顕微鏡的な外観に基づいて前立腺がんに与えられる。グリソンスコアが高いがんは、より攻撃的であり、予後が悪い。前立腺がんは、しばしば異なるグレードのエリアを有するため、がんの大部分を構成する2つのエリアにグレードが割り当てられる。グリソンスコアは、2つの数値の合計に基づき、第1の数値は、最も一般的な腫瘍パターンのグレードであり、第2の数値は、2番目に一般的なパターンのグレードである。病理医は、生検標本を調べ、2つのパターンに最終的なグリソンスコアを与えようとする。グリソンスコアが6以下のがんは、高分化型又は低度と呼ばれることがある。7のグリソンスコアを有するがんは、中分化型又は中度と呼ばれ得る。8~10のグリソンスコアを有するがんは、低分化型又は高度と呼ばれ得る。
【0210】
「前立腺がん」という用語は、限定されずに使用される場合、局在化された前立腺がん及び転移した前立腺がんの両方を含む。「前立腺がん」という用語は、「局在した」又は「転移した」という用語によって限定されて、それらの単語本明細書で定義されるように、腫瘍の異なるタイプを区別する。「前立腺がん」及び「前立腺の悪性疾患」という用語は、本明細書では同義で使用される。
【0211】
「分化」という用語は、実質細胞が形態学的にも機能的にも同等な正常細胞に類似する程度を指す。
【0212】
「転移」という用語は、原発(元の)腫瘍から別の臓器又は組織へのがん細胞の拡散又は移動を指し、典型的には、原発(元の)腫瘍の組織型の「二次腫瘍」又は「二次細胞塊」の存在によって識別可能であり、二次(転移性)腫瘍が位置する臓器又は組織の存在によってではない。例えば、骨に移動した前立腺がんは、転移した前立腺がんと言われ、前立腺におけるがん性前立腺がん細胞、並びに骨組織において成長するがん性前立腺がん細胞からなる。
【0213】
「前立腺の非悪性疾患」、「非前立腺がん状態」、及び「良性前立腺疾患」という用語は、同義で使用されてもよく、直腸動悸、PSAスコアリング、経直腸超音波検査、及び組織生検を含むが、これらに限定されない特定の診断方法に従って、前立腺がんとして分類されていない前立腺の疾患状態を指す。そのような疾患としては、限定されないが、前立腺組織の炎症(すなわち、慢性細菌性前立腺炎、急性細菌性前立腺炎、慢性非細菌性前立腺炎)及び良性前立腺増殖が挙げられる。
【0214】
「健康である」という用語は、いかなる悪性疾患又は非悪性疾患も存在しないことを指し、したがって、「健康な個体」は、通常「健康である」とはみなされないであろう他の疾患又は病態を有し得る。「健康な」個体は、いかなる悪性疾患又は非悪性疾患も存在しないことを実証する。
【0215】
前立腺がんの文脈において、「健康な」という用語は、いかなる前立腺の悪性疾患又は非悪性疾患も存在しないことを指し、したがって、「健康な個体」は、通常「健康な」とはみなされないであろう他の疾患又は状態を有し得る。「健康な」個体は、いかなる前立腺の悪性疾患又は非悪性疾患も存在しないことを実証する。
【0216】
「細胞質分裂」とは、親真核細胞の細胞質が2つの娘細胞に分割される細胞分裂中の物理的プロセスの意味が含まれる。それは、動物細胞で生じる、有糸分裂及び減数分裂と呼ばれる2つのタイプの核分裂と同時に生じる。有糸分裂は、単一の細胞内に含まれる2つの別個の核をもたらす。細胞質分裂は、細胞を半分に分離し、1つの核が各娘細胞の中にあることを確実にするための不可欠なプロセスを行う。細胞質分裂は、後期と呼ばれる核分裂期中に始まり、末期まで続く。収縮環と呼ばれるタンパク質フィラメントの環は、形質膜の直下の細胞の赤道の周りに形成される。収縮環は、細胞の赤道で縮小し、形質膜を内側につまみ、分裂溝と呼ばれるものを形成する。最終的に、収縮環は、2つの別々の細胞が存在し、各々がその独自の形質膜によって結合される時点まで縮小する。2つの新たに生成された細胞を接続する膜が切断され、姉妹の物理的分離をもたらすプロセスである脱離により、細胞質分裂が終了する。
【0217】
「中心体」とは、細胞質分裂の終わりに2つの娘細胞を接続する一過性構造の意味を含み、主な機能は、2つの娘細胞を物理的に分離する脱離の部位を局在化することである。中心体は、後期の間に分離する姉妹クロマチドの間に組み立てられる双極性微小管アレイであるミッドゾーンから形成される。分裂溝が形成された後、中央紡錘体ミッドゾーンが再構築されて、中心体を形成する。中心体は、2つの娘細胞の分離を調節する重要なタンパク質を動員し、組織化するための重要なプラットフォームを提供するミッドゾーンの中心体への変換は、溝の移入と正の相関がある。
【0218】
「共局在した」という用語には、同じ細胞位置、例えば、中心体に2つ以上の分子/タンパク質/化合物/バイオマーカーが存在するという意味が含まれる。「会合した」及び「共局在した」という用語とは、本明細書で使用される場合、これらの分子/化合物/タンパク質/バイオマーカー化合物は、空間的及び時間的に細胞の同じ領域に局在しているが、各構成要素が互いに直接相互作用する複合体に必ずしも存在するわけではないことが含まれる。
【0219】
細胞質分裂構造におけるバイオマーカーの共局在は、当該技術分野で知られている方法によって決定することができ、本明細書に記載されるものを含む。
【0220】
「存在」、「発現」、「レベル」、「量」、及び「発現レベル」という用語は、DNA及びmRNAなどの核酸分子、並びに/又は例えばAPPL1、AURKB、TβRI、TβRI-ICD、及びTRAF6などの定義された生体分子のタンパク質の量に関連し得る。AURKBは、ユビキチン化されていてもよい。各生体分子のレベルは、例えば、核、サイトゾル、細胞膜、細胞質分裂構造などの細胞内の特定及び所定の部位で決定される。
【0221】
AURKBは、ユビキチン化されていなくても、ユビキチン化されていても、ポリユビキチン化されていてもよい。
【0222】
イベントという用語は、治療の開始、投薬の変更、及び治療の終了などの治療方法の任意の変更を意味する。形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)の異常な切断を伴う疾患若しくは状態、又は当該関連疾患若しくは状態の治療に関する情報を提供する、細胞質分裂構造において共局在されるバイオマーカー、すなわち、オーロラキナーゼB(AURKB);アダプタータンパク質、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1);TGFβ受容体1型(TβR1);並びにTNF受容体関連因子6(TRAF6)のレベルの変化。
【0223】
本明細書では、TGFβ受容体1型(TβR1-ICD)の細胞内ドメインに(検出及び/又は視覚化のために)結合する抗体(V22)が使用された。しかしながら、試料中でTβR1-ICD(約34kDa)が検出され、可視化されても、それは、このドメインのみが存在することを意味するのではなく、存在し得るが、V22は、無傷の全長タンパク質(55.96kDa)にも結合し、したがって、V22によっても認識される。ICDのみ又は例えば全長タンパク質が存在するかどうかを評価するために、例えば、それぞれの分子量を決定してもよい。
【0224】
これは、バイオマーカーとしての「TGFβ受容体1型(TβR1)」という用語が、いくつかの実施形態では、細胞内ドメイン(TβR1-ICD)を意味し得ることを意味する。
【0225】
参照値は、生物学的試料中のAPPL1、AURKB、TβRI、TβRI-ICD、及びTRAF6などのそれぞれのバイオマーカーの発現レベル、例えば、量(例えば、mRNA又はタンパク質)又は強度(例えば、免疫蛍光及び他の撮像方法、ウェスタンブロット)を表す値を意味する。試料は、基準点として使用するための開始/参照値tを定義し、例えば、投薬、用量、時間、投薬の追加(及び併用)などの時間及び/又は変更が、参照値t1、2、3などにどのように正又は負の影響を及ぼすかを検出するために、良性又は悪性の固形腫瘍から採取された生検であり得る。非がん性組織は、0の参照値を示し、すなわち、マーカー(APPL1、AURKB、TβRI、及びTRAF6)は、細胞質分裂中に共局在しない。
阻害剤又は遮断剤という用語は、タンパク質/酵素に結合し、それによってタンパク質/酵素活性を低下させ、又はタンパク質、膜、細胞などの部位を物理的に遮断し、それによって他の薬剤がその部位に到達するのを立体的に妨げる薬剤又は化合物を意味する。
【0226】
本発明は、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)の切断を伴う非標準的なTGFβ誘導性シグナル伝達経路に関連するがんに罹患している対象を選択/分類するための信頼性の高いバイオマーカーを提供し、治療への応答を予測し、TβRIの切断のための阻害剤/遮断薬による治療の結果をモニタリングすることは、がん治療を成功させるための貴重なツールを提供する。
【0227】
更に、本発明はまた、侵襲性がんの成長を識別し、それによって疾患の初期段階での転移を予防するための満たされていない高い医学的ニーズに応答している。
【0228】
材料及び方法
細胞培養
ヒト前立腺がん細胞株PC-3U(RRID:CVCL_0482)及びヒト神経芽腫細胞株KELLYは、Sigma(RRID:CVCL_2092)から購入し、10%ウシ胎児血清(FBS)、2mMのL-グルタミン、並びに100単位/mlのペニシリン及び0.1mg/mlのストレプトマイシンを補充したRPMI-1640中で成長させた。不死化野生型マウス胚性線維芽細胞(MEF)又はTRAF6が欠損したMEF(Jun-ichiro Inoueから)を、10%FBS、4mMのL-グルタミン、並びに100単位/mlのペニシリン及び0.1mg/mlのストレプトマイシンを含有するダルベッコ修飾イーグル培地中で成長させた。TGFβ刺激実験では、TGFβ(5ng/mL)を、1%FBSを含有する培地で調製し、1%FBSを補充したRPMI培地で18時間飢えた細胞に添加した。一過性トランスフェクションを、製造業者の説明書に従ってFuGENE HD(Roche)で行った。細胞株は、IDEXX BioAnalyticsによって検証されている。
【0229】
免疫ブロッティングに使用される抗体及び試薬
以下のタンパク質に対する抗体を、免疫ブロッティングに使用した:APPL1(Cell Signaling Technology カタログ番号3858、RRID:AB_2056989)、p-オーロラキナーゼ(AURKAのThr288;AURKBのThr232;AURKCのThr198;タンパク質の分子量は、それぞれ、48kDa、40kDa、及び35kDaである)(Cell Signaling Technology カタログ番号2914、RRID:AB_2061631)、サイクリンB1(Cell Signaling Technology カタログ番号4135、RRID:AB_2233956)、HA(Cell Signaling Technology カタログ番号3724、RRID:AB_1549585、及びCell Signaling Technology カタログ番号2367、RRID:AB_10691311)、GFP(Cell Signaling Technology カタログ番号2956、RRID:AB_1196615)、GAPDH(Cell Signaling Technology カタログ番号5174、RRID:AB_10622025)、p38(Cell Signaling Technology カタログ番号8690、RRID:AB_10999090)、サバイビン(Cell Signaling Technology カタログ番号2808、RRID:AB_2063948)、APPL2(Santa Cruz Biotechnology カタログ番号sc-67403、RRID:AB_2056383)、AURKB(Abcam カタログ番号ab2254、RRID:AB_302923)、TRAF6(Abcam カタログ番号ab40675、RRID:AB_778573)、Flag(Sigma-Aldrich カタログ番号F9291、RRID:AB_439698)、β-アクチン(Sigma-Aldrich カタログ番号A5441、RRID:AB_476744)、β-チューブリン(Sigma-Aldrich カタログ番号T0198、RRID:AB_477556、及びCell Signaling Technology カタログ番号2146、RRID:AB_2210545)、H3pS10(Millipore カタログ番号06-570、RRID:AB_310177)、及びTβRI(V22;Santa Cruz Biotechnology カタログ番号sc-398、RRID:AB_632493;この抗体は、前述のように、TβRIのICDを特異的に認識する13)。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体は、Dako及びProtein-G Sepharoseから購入し、ECL免疫ブロッティング検出試薬はGE Healthcareから購入した。PefablocはRocheから、PageRuler Prestained Protein LadderはThermo Fisher Scientificから取得した。
【0230】
タンパク質分析
細胞を氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、氷冷溶解緩衝液[150mMのNaCl、50mMのTris、pH8.0、0.5%(v/v)のデオキシコール酸塩、1%(v/v)のNP40、10%(v/v)のグリセロール、及びプロテアーゼ阻害剤]中で溶解した。遠心分離後、上清を採取し、BCAタンパク質アッセイキット(ThermoFisher Scientific)を使用してタンパク質濃度を決定した。各全細胞溶解物からの等量のタンパク質を、免疫沈降に使用した。免疫沈降タンパク質を、ニトロセルロース膜上でブロットしたMini-PROTEAN TGXゲル(Bio-Rad)上で、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-ポリアクリルアミンド電気泳動(PAGE)によって分解し、前述のように免疫ブロッティングに共した(Song J,Mu Y,Li C,Bergh A,Miaczynska M,Heldin C-H,et al.APPL proteins promote TGFβ-induced nuclear transport of the TGFβ type I receptor intracellular domain.Oncotarget.2016;7:279-92)。
【0231】
インビボユビキチン化アッセイ
PC-3U細胞を氷冷PBS中で1回洗浄し、1mlの氷冷PBS中に採取し、次いで300×gで、4℃で5分間遠心分離した。非共有結合性タンパク質相互作用を、PBS中の作りたての1%SDS中で、10分間沸騰させることによって解離した。試料を、PBS中のプロテアーゼ阻害剤を用いて、0.5%のNP-40を含有する1.5mlの溶解緩衝液中で希釈した。試料を免疫沈降に供し、その後、前述のように免疫ブロッティングを行った(Hamidi A,Song J,Thakur N,et al.TGF-β promotes PI3K-AKT signaling and prostate cancer cell migration through the TRAF6-mediated ubiquitylation of p85α.Sci Signal 2017;10:eaal4186)。
【0232】
免疫蛍光及び顕微鏡画像取得
以下のタンパク質に対する他の一次抗体を、免疫蛍光実験で使用した:AURKB(Novus、カタログ番号NBP2-50039、RRID:AB_2895237)、及びp-Smad2(Cell Signaling Technology カタログ番号3108、RRID:AB_490941)。二次抗体は、ロバ抗ウサギAlexa Fluor 555(Thermo Fisher Scientific カタログ番号A-31572、RRID:AB_162543)、ロバ抗マウスAlexa Fluor 555(Thermo Fisher Scientific カタログ番号A-31570、RID:AB_2536180)、並びにヤギ抗マウスAlexa Fluor 488(Thermo Fisher Scientific カタログ番号A-11029、RRID:AB_2534088)、及びヤギ抗ウサギAlexa Fluor 488(Thermo Fisher Scientific カタログ番号A32731、RRID:AB_2633280)であった。免疫蛍光アッセイを、前述のように行った(Song J,et al.Oncotarget 2016;7: 279-292)。簡潔には、細胞をカバースリップ上に播種し、4%のパラホルムアルデヒド中に30分間固定し、次いで、PBS中の0.2%のTriton X-100で5分間処理し、10mMのグリシンでブロックした。一次抗体とのインキュベーションを室温で1時間行い、続いてPBS中で洗浄し、二次抗体とインキュベーションした。63×/1.4NA対物レンズ(Carl Zeiss)を備えた共焦点顕微鏡LSM710(Carl Zeiss)を使用して、顕微鏡写真を得た。画像は、Zen 2011ソフトウェアを使用して、室温で油浸した状態で取得した。
【0233】
プラスミド及び部位指向された変異誘発
pCR3-Flag-AURKB K106Rキナーゼデッド(KD)は、Susanne Lens(Addgene Plasmid #108488;http://n2t.net/addgene:108488;RRID: Addgene_108488)44からの親切な贈り物であり、内容物の最適化、及びQuickChange Lightning MultiSite-Directed Mutagenesis kit(Agilent Technologies)による、Flagタグ付き野生型AURKBタンパク質を発現するために使用した。変異誘発のためのプライマーは、oJS5、oJS8、oJS17、及びoJS18であった(表2)。改変されたFlag-AURKB(すなわち、K85R、K87R、及びK85R/K87R二重変異体)を発現するプラスミドを、それぞれオリゴoJS9、oJS10、及びoJS11を使用して、PCR変異誘発によって生成した。同様のアプローチを用いて、pEGFP-AURKB K106R(KD)を変異誘発のためのテンプレートとして使用して、野生型AURKBに融合した増強された緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するプラスミド、並びにK85R、K87R、及びK85R/K87R変異体を構築した(Addgene Plasmid #108493;http://n2t.net/addgene:108493;RRID: Addgene_108493)。44タグの組み込み及びAURKB配列の改変は、個々のプラスミドのDNA配列決定によって確認された。
【0234】
6His-APPL1及び6His-APPL2(Thermo Fisher Scientificから購入)を担持するプラスミドを、変異誘発のためのテンプレートとして使用して、siRNA誘導性遺伝子サイレンシングに耐性のある転写物を産生する構築物を生成した。APPL1のsiRNA耐性構築物の配列は、5’-AGAGAGATGGATTCAGACATA-3’(配列番号3)であり、APPL2のsiRNA耐性構築物の配列は、5’-CAGATTTATCTCACAGATAAC-3’(配列番号4)であった。APPL1及びAPPL2配列の改変をDNA配列決定によって確認された。YFP-APPL1-ΔN及びGFP-APPL1-ΔCは、Marta Miaczynskaからの親切な贈り物であった。45 pEGFPC1-ヒトAPPL1は、Pietro De Camilli(Addgene plasmid #22198;http://n2t.net/addgene:22198;RRID:Addgene_22198)46からの贈り物であり、QuickChange Lightning MultiSite-Directed Mutagenesis kit(Agilent Technologies)によってそれぞれBARメイン、PHドメイン、及びPTBドメインを有する構築物を生成するために使用した。変異誘発のためのプライマーは、oYZ86、oYZ87、oYZ88、oYZ91、及びoYZ92であった(表2)。APPL1配列の改変は、個々のプラスミドのDNA配列決定によって確認された。
【表2】
【0235】
siRNAトランスフェクション
On TARGET plus APPL1(No.1:標的配列、5’-GGAAAUGGACAGUGAUAUA-3’(配列番号17);No.2:標的配列、5’-GAUCUGAGUCUACAAAUUU-3’)(配列番号18)、APPL2(No.1:標的配列、5’-AGAUCUACCUGACCGACAA-3’(配列番号19);No.2:標的配列、5’-GCGGAAAAGAUGCGGGUGU-3’)(配列番号20)、TβRI siRNA(標的配列、5’-CAUAUUGCUGCAACCAGGA-3’)(配列番号21)、SMART pool TRAF6 siRNA、及びsiGENOME非標的化対照siRNA #1(標的配列、5’-UAGCGACUAAACACAUCAA-3’)(配列番号22)を、Dharmacon Researchから取得した。siRNAは、製造業者のプロトコルに従って、Oligofectamineトランスフェクション試薬(ThermoFisher Scientific)を使用して細胞内にトランスフェクションした。
【0236】
総RNA抽出及びマイクロアレイアッセイ
APPL1及びAPPL2のノックダウン後、RNeasy Mini Kit(Qiagen)を使用して、PC-3U細胞から総RNAを抽出した。RNAの純度及び完全性を、Agilent RNA6000ナノキット及びAgilent2100バイオアナライザー(Agilent Technologies)で評価した。総RNA(500ng)を使用して、製造業者のプロトコルに従って、TargetAmp(商標)-Nano Labeling Kit for Illumina Expression Beadchip(Epicenter)を用いてビオチン標識されたアンチセンスRNA標的を生成した。RNA(750ng)をIlluminaヒトHT-12ビーズチップアレイに17時間ハイブリダイゼーションした。チップを洗浄し、製造業者の説明書に従ってCy3-ストレプトアビジンで染色した。画像データは、iScanシステム(Illumina)を使用して取得した。マイクロアレイデータを、GenomeStudio及びDAVID Bioinformatics Resources 6.7を使用して分析し、qRT-PCRによって検証した。
【0237】
インビトロキナーゼアッセイ
インビトロキナーゼアッセイのために、HEK293T細胞を、FuGENE(登録商標)HD(Promega)を使用して、Flagタグ付きAURKB若しくはその変異体K85R、K87R、及びK85/87Rのためのベクター、又は対照空pcDNA3ベクターでトランスフェクトした。タンパク質をRIPA溶解緩衝液(150mMのNaCl、0.1%のTriton X-100、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS、50mMのTris-HCl、pH8.0、プロテアーゼ阻害剤(Roche))中で抽出し、抗Flag抗体(Sigma-Aldrich カタログ番号F1804、RRID:AB_262044)及びプロテインGセファロース(Invitrogen)で免疫沈降させた。ビーズをRIPA緩衝液中で4回洗浄し、キナーゼ緩衝液(15mMのMOPS、pH7.2、7.5mMのグリセロール2-リン酸塩、15mMのMgCl、3mMのEGTA、0.15mMのジチオスレイトール)中で平衡化した。
【0238】
リン酸化反応は、基質、ヒストンH3(1μg)、及びATPの添加によって開始した。非放射性キナーゼアッセイでは、ATPの濃度は、0.5mMであったが、0.5μCi[γ-32P]ATP(Perkin Elmer)を用いたアッセイでは5μMであった。SDS-PAGEでの分析のために、反応を、5分の1体積の6×SDS試料緩衝液を添加することによって停止させ、96℃で5分間加熱し、SDS-PAGEに適用した。
【0239】
ヒストンH3のリン酸化を、抗ホスホヒストンH3(Ser10)抗体(Millipore カタログ番号06-570、RRID:AB_310177)を用いた免疫ブロッティングによって検出した。等しい発現及び負荷は、抗ヒストンH3抗体(Cell Signaling Technology カタログ番号4499、RRID:AB_10544537)及び抗フラグ抗体(Sigma-Aldrich カタログ番号F1804、RRID:AB_262044)による膜の免疫ブロッティングによって制御した。
【0240】
細胞数及び死亡の評価
細胞数は、Rocheの細胞増殖キットI(MTT)又はThermo Fisher Scientificの自動細胞計数器Countess(商標)を使用して測定した。細胞アポトーシスを、Tali(商標)アポトーシスキット(ThermoFisher Scientific)で染色した後、Arthur(商標)を使用して解析した。
【0241】
インサイチュ近接ライゲーションアッセイ(PLA)
PLA明視野については、前立腺がん組織マイクロアレイ(TMA、BioCat)を最初に脱パラフィン化し、次いで抗原検索、及び透過化に供した。PLAは、AURKB(Novus Biologicals カタログ番号NBP2-50039,RRID:AB_2895237))、K63結合ポリユビキチン(Abcam カタログ番号ab179434,RRID:AB_2895239)、及びTβRI(V22、Santa Cruz Biotechnology カタログ番号sc-398,RRID: AB_632493)に対する抗体を使用して、Duolink Detection for Brightfield(Sigma)を用いて行った。Pannoramic 250 Flashで画像を取得し、Duolink Image Toolソフトウェアを使用してPLAシグナルを解析した。
【0242】
バイオインフォマティクス
前立腺がんにおけるTGFβR1と相関する遺伝子を、TCGA PRADコホートのlog2 CPM正規化発現データを使用してピアソンの相関係数を計算することによって識別した。全ての遺伝子を、TGFBR1とのそれらの相関によってランク付けし、遺伝子セット濃縮分析(GSEA)を、分子署名データベース(MSigDB)48のホールマーク遺伝子セットを用いて、Rパッケージクラスタープロファイラー47を使用して行った。34個の遺伝子セットを、0.05以下の調整されたp値で濃縮した。
【0243】
The Cancer Genome AtlasからのRNA-seq発現データ及び臨床メタデータを、Genomic Data Commons49及びRパッケージTCGAbiolinks50、v.2.16.4を使用してダウンロードした。各前立腺腫瘍の一次及び二次グリソングレードを、ファイルPRAD_clindata.xlsから取得した。腫瘍は、グリソンスコアに基づいてグループ化した。対象となる各遺伝子のlog2 CPM(100万分の1のカウント)正規化発現値を、Rパッケージggpubr51を使用して、グリソン群ごとにプロットした。発現差の統計的有意性は、t検定を使用して計算した。
【0244】
公開された研究52からの49個の去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)試料からの試料についてのRNA-seq発現データ及びコピー数データを、cBio Cancer Genomics Portal(http://cbioportal.org)からダウンロードした。臨床データは、ファイルdata_clinical_sample.txtから、発現データは、data_RNA_Seq_expression_median.txtから、コピー数データは、data_log2CNA.txtから取得した。データを読み取り、R,v.4.0.253を使用して、全ての更なる分析に供した。発現データをlog2変換し、サブタイプ及び腫瘍位置によって選別された試料、並びにそれらの発現プロファイルによって階層的にクラスタリングされた遺伝子を用いて、行正規化されたヒートマップをプロットした。RB1コピー数ステータスは、0.4以上のRB1 log2コピー数値については獲得、-0.4以下の値については喪失、及びそうでなければコピーニュートラルとして定義された。3つの腺がん試料については、コピー数データは利用不可であった。Rパッケージggpubr51のggboxplot機能によって生成されたボックスプロットを用いて、マン-ホイットニーU検定p値とともに、神経内分泌CRPC群対腺がんCRPC群における対象となる遺伝子の発現差を可視化した。TGFBR1の発現と他の遺伝子との間のピアソンの相関を、神経内分泌CRPC試料及び腺がんCRPC試料内で計算した。
【0245】
統計分析
図の凡例に示されるように、スチューデントt検定又はマン-ホイットニーU検定を使用して、2つの独立した群間の差を分析した。値は、少なくとも3つの独立した実験の、±標準誤差(SEM)又は±標準偏差(SD)として表される。0.05未満のP値を、を統計学的有意とみなした。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【実施例
【0246】
実施例1.APPLタンパク質は、増殖及びアポトーシスに関与する遺伝子を調節する
本発明者らは、エンドソームアダプタータンパク質である、アダプタータンパク、PHドメインと相互作用するホスホチロシン、及びロイシンジッパー1(APPL1)並びにAPPL2が、細胞のTGFβ刺激に応答してTβRI-ICDの核蓄積に必要であることを見出した16。核TβRI-ICD-APPL1複合体の標的遺伝子を調査するために、本発明者らは、APPL1/2をノックダウンすることの遺伝子発現に対する効果を評価するためにマイクロアレイ分析を行った(表1及び図1a)。
【0247】
APPL1/2ノックダウン細胞における影響を受けた遺伝子の中で、細胞増殖及びアポトーシスに関与するタンパク質、すなわち、CPC[AURKB、サバイビン(BIRC5によってコードされる)、及びボレアリン(CDCA8によってコードされる)]並びにそれらの下流基質、有糸分裂セントロメア関連キネシン(KIF2Cによってコードされる)の構成要素をコードする遺伝子の発現の低下が観察された(表1及び図1a)33、34、54。INCENPの発現に対する効果は観察されなかった。
【表3】
【0248】
本発明者らは、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)を使用してマイクロアレイデータを検証した。具体的には、2つの異なるAPPL1/2低分子干渉(si)RNAでトランスフェクトされた細胞において、AURKB、BIRC5、CDCA8、及びKIF2Cの発現が低下したことが確認された(図1B(i)、(ii)、(iii)、及び(iv))。siRNA耐性構築物からの野生型APPL1/2タンパク質の再発現は、APPL1/2 siRNAによる阻害をかなりの程度克服した(図1B)。
【0249】
CPC複合体中でAURKBが機能するため、10%FBS中で成長した細胞の有糸分裂進行中、又は以下に特定されるように、タンパク質及びタンパク質-タンパク質相互作用のレベルを決定した。免疫ブロッティングを使用して、APPL1/2ノックダウン細胞において、AURKB及びサバイビンプロテインレベルの低下が観察された(図1C(i))。AURKB発現レベルがAPPL1/2タンパク質に関連しているかどうかを調べるために、二重チミジンブロックを使用して、PC-3U細胞を同期させ、次にそれらを10%FBSの正常培地に放出して、細胞周期の進行を追跡した。細胞をAPPL1/2 siRNAで処理すると、AURKBの発現、及びその基質、Ser10におけるヒストンH3(H3pS10)のリン酸化は、細胞周期において劇的に減少した(図1C(ii))。サイクリンB1及びTβRIの発現は、APPL1/2の発現をサイレンシングした後に顕著に低下した(図1C(ii))。APPL1/2 siRNAで処理された細胞におけるTβRIの発現の低減は、核TβRI-ICDがそれ自身の発現を促進するという以前の報告と一致している14、55。これらの所見を確認すると、ノコダゾール処置によってG2/M期で停止された細胞もまた、AURKB及びH3pS10のレベルの低下を示した(図1F)。興味深いことに、免疫蛍光顕微鏡及びzスタックイメージング分析を使用して、APPL1が、細胞動態構造(例えば、中心体)でAURKBと共局在することが観察された(図1E~K)。更に、共免疫沈降アッセイは、APPL1がTGFβ依存性様式でサバイビンと複合体を形成し、48時間でピークに達することを示した(図1L)。
【0250】
本発明者らは、APPL1がTβRI-ICDの核蓄積に必要であり、APPL1のC末端部分がTβRIに結合することを以前に報告した16。これらの知見に基づいて、本発明者らは、APPL1のN末端及びC末端欠失がAURKBのレベルに与える効果を調査した。実際、C末端欠失APPL1変異体の発現は、AURKBのレベルを抑制したが、N末端欠失変異体は、そのような作用を及ぼさなかった(図1M)。更に、共免疫沈降実験により、BARドメイン、PHドメイン、及びPTBドメインを含むAPPL1の3つのドメイン全てに関連するAURKBを見出した(図1N~O)。45、56まとめると、これらのデータは、APPL1がAURKBの発現に関連し、AURKBの発現を調節し、核TβRI-ICDに依存するTGFBR1の発現は、細胞周期依存性である14、55という見解を支持する。
【0251】
実施例2.TβRIは、有糸分裂中の細胞動態構造におけるAURKBと会合する
本発明者らは、APPL1がAURKBと相互作用し(図1E~K及び1O)、TβRIと複合体を形成することを観察した。TβRIの発現は、細胞周期依存性であるため、TβRIが有糸分裂及び細胞質分裂中にCPCとも会合するかどうかを調査した。PC-3U前立腺がん細胞及びKELLY神経芽腫細胞で実施された免疫染色実験は、TβRIが細胞動態構造(ミッドゾーン及び中心体における)においてAURKBと共局在することを明らかにした(図2A及びB)。終期中に、TβRIとサバイビンとの間で部分的な共局在が検出され(図2C)、TβRIとβ-チューブリンは、細胞動態構造(中心体)において明確に共局在した(図2D)。
【0252】
APPL1は、エンドソームから核に微小管を介してTβRI-ICDを輸送することが報告されている。したがって、無傷の微小管がTβRI局在に重要であるかどうかを調査し、微小管が冷間処理によって解重合されたとき、AURKBとTβRIとの間の相互作用は、細胞動態構造において見られなかった(図2E)。動的微小管は、後期中のAURKBの局在化にも重要であり、これは、以前の報告58と一致している。注目すべきことに、TβRIの発現をサイレンシングすることは、細胞質分裂細胞の約42%において異常な脱離をもたらしたが、SB505124によるTβRIのキナーゼ活性の阻害は、脱離に影響しなかった(図2F)。更に、TβRIのノックダウンは、多核化をもたらし(図2G)、細胞分裂中のTβRIの重要な機能の可能性を更に支持した。更に、TβRI(TGFBR1の発現)は、前立腺がんにおける有糸分裂紡錘体及びG2/Mチェックポイント遺伝子セットと強く相関した(図2H、I)。
【0253】
p-Smad2が中心体に局在することは見られず(図2L)、標準的なTGFβシグナル伝達経路がそこで活性ではないことを示す。まとめると、これらの結果は、TβRI及びAURKBが中心体で共局在し、この共局在が無傷の微小管細胞骨格に依存することを示唆する。
【0254】
SB505124によるTβRIのキナーゼ活性の阻害がAURKBリン酸化を抑制したことも観察され(図2L、2J)、TβRIキナーゼ活性がAURKB活性に重要であることが示唆された。相互に、インビトロキナーゼアッセイにおいて、His-AURKBがグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)-TβRIをリン酸化したことが観察された(図2K)。細胞動態構造(例えば、中心体)(図2L)には、pSmad2の局在は見られず、これは、標準的なTGFβシグナル伝達経路がそこで活性ではないことを示している。まとめると、これらの結果は、TβRI及びAURKBが細胞動態構造(例えば、中心体)で共局在し、この共局在が無傷の微小管細胞骨格に依存することを示唆する。
【0255】
実施例3.TRAF6は、Lys85及びLys87上でのAURKBのポリユビキチン化を促進する
次に、AURKBの発現に対するユビキチンE3-リガーゼTRAF6の役割を調査した。siRNAによるTRAF6ノックダウンが、免疫ブロッティングによって実証されるように、細胞周期中にH3pS10及びAURKBの両方の発現の低下をもたらすことが観察された(図3A、B)。AURKBは、共免疫沈殿アッセイによって決定されたように、TβRI、APPL1、及びTRAF6と会合する(沈殿する)ことが見出された(図3C)。
【0256】
AURKBは、ユビキチン化を受けることが報告されており、これは、セントロメアから微小管への再局在59及びクロマチン脱縮合及び核エンベロープ形成への関与に重要である60。本発明者らは、PC-3U細胞が有糸分裂で停止したときに、AURKBが、Lys48結合(K48結合)及びLys63結合(K63結合)の両方のポリユビキチン化を受けたことを見出した(図3D(i)及び3D(ii))。本発明者らはまた、TRAF6が、二重チミジンブロックから放出された後、有糸分裂進行中に自己ユビキチン化され、活性化され得るかどうかを調査した。内因性TRAF6は、PC-3U細胞が二重チミジンブロックから放出された10~12時間後に、すなわち、AURKBが活性であるときと同時に自己ユビキチン化され(図3E)、TRAF6のユビキチン化がその触媒活性を可能にしているという現在の知識と一致している62
PC-3U細胞におけるsiRNAによるTRAF6のノックダウンは、AURKBのポリユビキチン化を抑制した(図3F)。免疫染色もまた、内因性TβRIが、PC-3U及びMEF細胞株の両方において、TRAF6依存性様式でAURKBと共局在することを明らかにした(図3G、3H)。
【0257】
TRAF6によるユビキチン化のコンセンサスパターン、すなわち、-(疎水性)-K-(疎水性)-X-X-(疎水性)-(極性)-(疎水性)-(極性)-(疎水性)であって、Kがユビキチン化部位であり、Xが任意の他のアミノ酸63であるパターンは、AURKB(84GKGKFGNVYL)(配列番号23)に見られ、異なる種の間で保存される(図3I)。AURKB中のK85及び/又はK87がユビキチン化されているかどうか、及びその場合のその機能的結果(複数可)を調査するために、本発明者らは、Lys85及び/又はLys87がアルギニン残基に変異した変異体を生成し、本発明者らは、これらの変異体において、AURKBのユビキチン化が実際に減少したことを示すことができた(図3J(i)及び3J(ii))。TRAF6とAURKB変異体K85、K85/K87、及びより少ない程度のK87との間の相互作用もまた、共免疫沈降アッセイによって決定されたように、野生型AURKBとの相互作用と比較して減少した(図3K)。更に、AURKBによるS10におけるH3のリン酸化は、AURKB K85/87R二重変異体を過剰発現する細胞において減少し(図3L(i)及び3L(ii))、AURKBのユビキチン化がそのキナーゼ活性に影響を及ぼすことを示唆している。K85及びK87は、ATPに結合するAURKBのグリシンリッチループに局在するため、本発明者らは、インビトロキナーゼアッセイにおいてAURKB変異体を調査した。単一変異体及び二重K85/87R変異体の両方が、放射性リン酸塩を組み込むことが見出され(図2M(i))、これらの変異体が、ATPの結合を妨害しなかったことを実証した。AURKB変異体がキナーゼ活性に本質的に欠陥があるかどうかを調査するために、組換えヒストンH3を基質として使用するインビトロキナーゼアッセイを行った。実験の対照として機能したキナーゼデッドK106Rを除く全てのAURKB野生型及び変異体は、ヒストンH3をSer10でリン酸化することができ、それによってAURKB変異体の保存された固有の活性を実証した(図3M(ii))。
【0258】
興味深いことに、TβRIは、細胞がAURKB変異体を過剰発現したときには、細胞動態構造に局在せず(図3N)、これは、細胞動態構造(中心体)におけるTβRIの動員には、AURKBのユビキチン化が必要であることを示唆している。二重AURKB変異体(K85/87R)発現細胞は、野生型と比較して、より少ない4N DNA含有量を示し、細胞の複製中のK85及びK87上のAURKBのポリユビキチン化の生物学的関連性を支持した(図3O)。全体として、これらの結果は、TRAF6が有糸分裂進行中に自己ユビキチン化され、K85/K87上でのAURKBのTRAF6媒介性ユビキチン化がその活性に寄与し、細胞分裂中の細胞動態構造におけるTβRIの局在を制御するという見解を支持する。
【0259】
実施例4.AURKBの発現、及びAURKB-TβRI複合体の形成は、いくつかの腫瘍型において予後不良と相関する
注目すべきことに、AURKB mRNAの高発現はまた、前立腺がん、ccRCC、及び肺腺がんにおける予後不良と相関していた(図4H、I、J)。AURKB発現は、前立腺がん試料中の組織病理学的スコアリングに基づいて、グリソンスコアによって決定されたように、前立腺がんの悪性度と相関していた(より高いグリソンスコアは、より侵襲性の疾患を示す)(図4G)。
【0260】
がん進行に対するAURKB及びTβRIの重要性を調査するために、本発明者らは次に、臨床由来の試料におけるそれらの活性、発現、及び複合体形成を決定した。インサイチュ近接ライゲーションアッセイ(PLA)を使用することによって、AURKBのLys63結合K63結合)ポリユビキチン化が、前立腺がん、明細胞腎がん(ccRCC)、又は肺がん(腺がん)を有する患者由来の組織において可視化され得るかどうかを調査した。全ての3つのがんタイプにおいて、対応する正常組織と比較して、多数のLys63結合ポリユビキチン化AURKB分子を観察した(図4A(i)及び4A(ii))。更に、インサイチュPLAによって、また、正常な前立腺組織、シグナルがほとんど観察されなかった(図4C)において侵襲性の低い疾患(図4B)を有する患者からのものと比較して、侵襲性前立腺がんを有する患者からの切片では著しくより多い数のAURKB及びTβRI複合体を識別した。
【0261】
異なる前立腺がんタイプにおける対象となる遺伝子の発現を更に調査するために、公開データベースを使用してバイオインフォマティクス分析を行った(図4D(i)~(v))。AURKA及びAURKBの両方の発現は、CRPC-腺がん(CRPC-Adeno)よりもCRPC-神経内分泌(CRPC-NE)で高く、CRPC-NE患者が予後不良であるという観察と一致する(図4D(iii)。更に、AURKBの発現は、CRPC-NE及びCRPC-Adenoの両方におけるTGFBR1の発現と相関した(図4D(iv))。原発腫瘍及び転移の両方を含むCRPC-NE及びCRPC-AdenoにおけるTGFBR1、AURKA、AURKB、TRAF6、VPS4A/B、及びAPPL1/2の相対発現も示される(図4D(i)及び(ii)。興味深いことに、APPL1及びAURKAの発現は、CRPC-NEにおいてはTGFBR1と相関したが、CRPC-Adenoにおいては相関しなかった(図S4D(v))。
【0262】
いくつかの肺がん及び乳がん細胞株において、RB1の喪失により、細胞は、それらの生存のためにAURKBに高度に依存することが報告されている65。したがって、本発明者らは、前立腺がん組織におけるRB1及びAURKBの発現を調査した。本発明者らは、RB1が、前立腺がんの10%において欠失していること(図4E)、及び興味深いことに、AURKBの発現が、神経内分泌前立腺がん(図4D(iv))を含む、前立腺がん(図4F)において、RB1と負の相関があることを見出した。AURKA及びAURKBの両方の発現は、CRPC-腺がん(CRPC-Adeno)よりもCRPC-神経内分泌neuroendocrine(CRPC-NE)で高く、CRPC-NE患者が予後不良であるという観察と一致する(図4D(iii)。更に、AURKBの発現は、CRPC-NE及びCRPC-Adenoの両方におけるTGFBR1の発現と相関した(図4D(iii))。原発腫瘍及び転移の両方を含むCRPC-NE及びCRPC-AdenoにおけるTGFBR1、AURKA、AURKB、TRAF6、VPS4A/B、及びAPPL1/2の相対発現も示される(図D(i)及び(ii))。興味深いことに、APPL1及びAURKAの発現は、CRPC-NEにおいてTGFBR1と相関したが、CRPC-Adenoにおいては相関しなかった(図4D(v))。
【0263】
実施例5.APPLタンパク質、TβRI、及びTRAF6は、細胞の成長及び生存に影響を及ぼす
TβRIは、細胞の増殖及び生存において役割を果たすエンドサイトーシスアダプタータンパク質APPL1と会合する。APPL1とTβRIとの間の相互作用は、がんの進行中に重要であるため、APPLタンパク質がPC-3U細胞の増殖又は生存に影響を与えるかどうかを調査した。この目的のために、相対細胞数を測定するMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド)アッセイを使用した。結果は、APPL1/2のノックダウンが細胞数の減少をもたらしたことを示し、APPL1/2が細胞の増殖又は生存(生存能力)に必要であることを示唆する(図5A)。
【0264】
細胞生存におけるAPPL1/2の可能性な役割を更に調査するために、アポトーシス細胞を定量化し、それらのより多くが、対照よりもTβRI及びAPPL1/2ノックダウン細胞培養物中にあることを見出した(図5B)。比較のために、上皮成長因子(EGF)に対する細胞応答におけるAPPL1/2の役割を調査し、これは、細胞増殖を促進し、APPLタンパク質の核トランスロケーションを促進する45。siRNAによるAPPL1/2のノックダウンは、EGFで処理されたPC-3U対照細胞と比較した場合、細胞数の低減をもたらし(図5C)、APPLタンパク質がEGF刺激細胞の増殖又は生存に重要であることを示唆し、前立腺がんの開始及び進行中のAPPL1遺伝子発現及びタンパク質発現の増加の観察と一致する。PC-3U細胞のTRAF6及びTβRIノックダウン培養における細胞数の低減も観察され、TRAF6及びTβRIが細胞の増殖又は生存に必要であることが示唆される(図5D)。
【0265】
要約すると、本発明者らは、形質転換成長因子βI型受容体(TβRI)の切断を伴う非標準的なTGFβ誘導性シグナル伝達経路に関連するがんタイプを有する患者を識別するための方法を提供する。
【0266】
考察
本発明者らは、TβRIがTRAF6に依存する様式でタンパク質分解切断を受け、TβRIが残基K178上でTRAF6によってポリユビキチン化されるときに核に入るTβRI-ICDを生成する、がん特異的シグナル伝達経路を以前に識別している13~15。また、APPL1がそのC末端を介してTβRI-ICDと相互作用し、複合体がTRAF6に依存する様式で微小管を介して核へ輸送することを報告している16。核に入ると、TβRI-ICDは、TβRI及び他の遺伝子の発現を、それらのプロモーター領域に結合することによって誘導する14
【0267】
ここで、インビトロでは、AURKBを、CRPC細胞におけるAPPL1/APPL2依存性経路の標的遺伝子として特定した。TRAF6が、有糸分裂進行中にCRPC細胞において自己ユビキチン化され、AURKBの保存されたグリシンリッチ部分におけるK85/K87上でのK63結合ポリユビキチン化を通じて、AURKBキナーゼ活性に寄与することを見出した。更に、本発明者らは、驚くべきことに、APPL1及びTβRI-ICDが、CRPC細胞での有糸分裂及び細胞質分裂中にAURKBと複合体を形成したことを見出した。加えて、APPL1、TRAF6、又はTGFBR1のノックダウンは、CRPC細胞の増殖又は生存を阻害し、それらがインビトロでのCRPCの成長に必要であることを示唆している。
【0268】
有糸分裂は、非常に複雑で高度に制御された生物学的プロセスであり、オーロラキナーゼファミリーのメンバーは、染色体分離に必要であることが示されている41、75、76。理論に拘束されることなく、本発明者らは、TβRI-ICDが、K85及びK87上でのAURKBのポリユビキチン化を伴う、TRAF6に依存する様式で、有糸分裂及び細胞質分裂の調節に関与するために、AURKBとともに作用するという仮説を立てる。K85及びK87の二重変異は、AURKBのキナーゼ活性を抑制し、これらの残基のユビキチン化が、そのキナーゼ活性に寄与することを示唆する。しかしながら、2つのリジン残基の変異は、AURKBの自己リン酸化を妨げなかった。これらのリジン残基は、AURKBキナーゼのサブドメインIにおける保存されたグリシンリッチモチーフG-X-G-X-X-X-Gに位置し、K85は、第1のグリシン残基の後に位置し、K87は、第2のグリシン残基の後に位置する77。重要なことに、TRAF6は、自己ユビキチン化されていることが見出され、これは、AURKBが活性であるのと同時に、有糸分裂進行中のその活性化と一致し、活性TRAF6が、がん細胞の増殖を調節するようにAURKBに影響を及ぼすという本発明者らの仮説と一致している。
【0269】
共焦点イメージングによって、APPL1及びAURKB、並びにAURKB及びTβRIが、有糸分裂及び細胞質分裂中に中心体に共局在することを見出した。AURKB及びTβRIの共局在は、TRAF6に依存する。更に、共免疫沈降によって、AURKBが、APPL1、TβRI、及びTRAF6と相互作用することが示された(図3C)。AURKBがAPPL1の3つのドメイン全てに結合することが見出され(図1O)、一方で、TβRIは、APPL1のPTBドメインに結合する。これらの相互作用は、有糸分裂進行及び細胞質分裂中に動的であり、時間の経過とともにこれらの複合体の正確な構成は、決定されていないままである。しかしながら、我々のデータは、有糸分裂進行中にAURKB及びTRAF6が会合して、AURKB活性に寄与し、後期終末期及び細胞質分裂中に、APPL1、AURKB、及びTβRIが中心体に局在したことを示唆する。更に、中心体でのTβRI局在は、AURKBのK85及びK87上でのK63結合ポリユビキチン化に依存しており、TβRIがユビキチン化されたAURKBに関連することが示唆された(図6)。
【0270】
以前の研究では、ヒトアンドロゲン依存性前立腺がん細胞株であるLnCaPにおけるAURKBのノックダウンが、腫瘍細胞の生存に影響を及ぼさないことが示されている。対照的に、より侵襲性のアンドロゲン非依存性PC3細胞におけるAURKBのノックダウンは、インビトロでのアポトーシスをもたらし、インビボでの異種移植片ヌードマウスモデルにおける腫瘍成長を低減させ81、アンドロゲン非依存性前立腺がん細胞におけるAURKBの重要な役割を示唆する。以前の研究では、CPRCにおけるAURKB関連の腫瘍促進効果及び生存促進効果が記載された82。この結果、及びTβR1-APPL1経路がAURKB発現を制御し、TβRIがAURKBと相互作用するという現在の知見により、本発明者らは、TβRIが、細胞質分裂及び細胞分裂中のその役割を通じて部分的に細胞増殖を促進するという仮説を立てる。したがって、正常上皮細胞における標準的なTβRI-Smadシグナル伝達経路によって形質導入される成長阻害効果は、本明細書で報告されるように、有糸分裂進行及び細胞質分裂中の、AURKBとの複合体におけるTβRI-ICDの役割とは異なる。TβRIのノックダウンが、がん細胞の多核化をもたらしたという観察は、がん細胞の細胞質分裂におけるTβRIの機能的役割を強調する。
【0271】
AURKBは、前立腺がんを含む様々ながんにおいてしばしば過剰発現される。有糸分裂の誤りは、腫瘍形成の重要な特徴であるゲノム不安定性をもたらし得る83。述べたように、オーロラキナーゼは、中心体成熟、双極紡錘体アセンブリ、染色体縮合、アラインメント、及び細胞質分裂を含む、有糸分裂の複数のステップに関与する。有糸分裂を調節するそれらの特定の役割のため、それらは、がん治療における標的候補であり、阻害剤は、臨床試験で試験される30、31、41。AURKBのより高い発現はまた、前立腺がんのより高い侵襲性及びより低い患者生存を示した(図4)。TGFβは、細胞増殖を阻害し、正常な上皮細胞においてアポトーシスを誘導するが、しばしば進行がんの成長を促進し、TβRIキナーゼ阻害剤は、異なるがん細胞株の成長をブロックすることが見出されている。更に、前立腺がん患者では、TGFβRIの発現は、有糸分裂紡錘体及びG2/Mチェックポイントと高度に相関した(図2)。更に、AURKA及びAURKBの発現は、CRPC腺がんよりも神経内分泌型のCRPCで高く、神経内分泌型のCRPC患者の予後不良と一致した(図4)。TβRI及びAURKB複合体の量は、より侵襲性の疾患を示す、より高いグリソンスコアを有する前立腺がん患者からの切片においてより頻繁に観察された(図4)。要約すると、本データは、AURKB K85及びK87R変異体がTβRIを中心体に動員しなかったため、AURKBとTβRIが、細胞の有糸分裂及び細胞質分裂中に機能的複合体を形成して、細胞増殖に関与する及びAURKBのTRAF誘導ユビキチン化が重要な役割を果たすという仮説を支持する(図3)。
【0272】
まとめると、本明細書で提示される知見は、がん細胞増殖を調節する際の、すなわち、細胞が有糸分裂に入るときにAURKBとの相互作用によるTβRIの以前に知られていなかった機能を実証する。この機能は、TGFβに応答する、標準的なTGFβ-Smadシグナル伝達経路を介した転写応答の上流調節因子としてのTβRIの周知の機能とは明らかに異なる。TβRIと会合するTRAF6は、特定の残基(Lys85及びLys87)(K85及びK87)上でのAURKBのポリユビキチン化を引き起こし、それによってH3pS10によって測定されるAURKB活性に寄与する(図6)。がん細胞の細胞質分裂におけるTβRI-TRAF6-APPL1-AURKB複合体に対する重要な機能の識別は、この経路に依存する侵襲性がんのための新規のバイオマーカー及び治療戦略を開発するための基礎を提供する。
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【配列表】
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【国際調査報告】