(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-26
(54)【発明の名称】カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤及びその製造方法ならびに使用
(51)【国際特許分類】
C08F 4/00 20060101AFI20240619BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20240619BHJP
C08F 20/10 20060101ALI20240619BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20240619BHJP
C07C 251/66 20060101ALN20240619BHJP
C07C 249/12 20060101ALN20240619BHJP
C07C 319/20 20060101ALN20240619BHJP
C07D 307/46 20060101ALN20240619BHJP
C07D 333/22 20060101ALN20240619BHJP
C07D 209/86 20060101ALN20240619BHJP
C07D 307/91 20060101ALN20240619BHJP
C07D 407/06 20060101ALN20240619BHJP
C07D 409/06 20060101ALN20240619BHJP
C07D 333/76 20060101ALN20240619BHJP
C07C 251/68 20060101ALN20240619BHJP
C07C 323/47 20060101ALN20240619BHJP
C07D 405/06 20060101ALN20240619BHJP
【FI】
C08F4/00
G03F7/031
C08F20/10
C08F2/50
C07C251/66
C07C249/12
C07C319/20
C07D307/46
C07D333/22
C07D209/86
C07D307/91
C07D407/06
C07D409/06
C07D333/76
C07C251/68
C07C323/47
C07D405/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568742
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 CN2022091212
(87)【国際公開番号】W WO2022237644
(87)【国際公開日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】202110501130.3
(32)【優先日】2021-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515324604
【氏名又は名称】常州強力先端電子材料有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY ADVANCED ELECTRONIC MATERIALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wucheng Industrial Park, Zhenglu Town, Tianning,Changzhou, Jiangsu 213159,China
(71)【出願人】
【識別番号】517427152
【氏名又は名称】常州強力電子新材料股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANGZHOU TRONLY NEW ELECTRONIC MATERIALS Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Qianjia Industrial Park, Yaoguan Town, Wujin District Changzhou city, Jiangsu 213011, China
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】錢 暁春
【テーマコード(参考)】
2H225
4H006
4J011
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC36
2H225AD06
2H225AM22P
2H225AM25P
2H225AM32P
2H225AN47P
2H225CA15
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
2H225EA01P
4H006AA02
4H006AA03
4H006AB40
4H006AB76
4H006AB91
4H006AB92
4H006AB99
4H006AC48
4H006BB12
4H006BE90
4H006BW23
4H006TA04
4J011QA02
4J011QA03
4J011QA22
4J011QA34
4J011QA46
4J011SA24
4J011SA25
4J011SA26
4J011SA29
4J011SA61
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA02
4J011WA05
4J015EA04
4J100AJ02Q
4J100AL08Q
4J100AL09Q
4J100AL59P
4J100BC43Q
4J100CA03
4J100CA23
4J100DA61
4J100FA03
4J100FA18
4J100FA43
4J100HA53
4J100HC59
4J100HC61
4J100HE22
4J100JA01
4J100JA03
4J100JA32
4J100JA43
(57)【要約】
本発明は、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤及びその製造方法ならびに使用を提供する。当該開始剤は、下記の構造を有する。当該カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤は、大きい共役構造を有し、感度に優れ、硬化後の砕片がマイグレ-ションしにくく、耐黄変性能に優れている。これに加えて、当該光開始剤は、さらに合成が簡単で、合成過程に高価な触媒を用いる必要がなく、かつ、硬化速度に優れるなどの特徴を有し、光硬化分野に広く使用することができる。
【化1】
[式中、Ar
1、Ar
2は、芳香環又はヘテロ芳香環を含有する置換基であり、R
1は、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基、C
1~C
20のアルキル基で置換されたC
3~C
8のシクロアルキル基、C
6~C
20のアリ-ル基、C
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のアリ-ル基、C
4~C
20のヘテロアリ-ル基、又はC
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のヘテロアリ-ル基である。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iで示される構造を有することを特徴とするカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【化1】
[式中、Ar
1、Ar
2は、芳香環又はヘテロ芳香環を含有する置換基であり、R
1は、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基、C
1~C
20のアルキル基で置換されたC
3~C
8のシクロアルキル基、C
6~C
20のアリ-ル基、C
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のアリ-ル基、C
4~C
20のヘテロアリ-ル基、又はC
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のヘテロアリ-ル基である。]
【請求項2】
Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して
【化2】
からなる群より選ばれ、
任意選択として、基における-CH
2-は、-O-又は-S-に置換されていてもよく、
R
3は、H、ニトロ基、ヒドロキシル基、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
4~C
20のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、C
2~C
20の鎖状アルケニル基、C
5~C
10の置換もしくは無置換の環状もしくはヘテロ環状アルケニル基、C
6~C
12のアリ-ル基又はヘテロアリ-ル基、C
6~C
12のアリ-ル基又はヘテロアリ-ル基で置換されたC
1~C
4のアルキル基であり、任意選択として、これらの基における-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、
R
4は、H、C
1~C
6の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
1~C
6の鎖状アルケニル基、フェニル基又は置換フェニル基を表すことを特徴とする請求項1に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【請求項3】
Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して
【化3(1)】
【化3(2)】
からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【請求項4】
R
1は、C
1~C
5の直鎖もしくは分岐状アルキル基又はC
6~C
12のアリ-ル基であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【請求項5】
前記光開始剤は、下記の化合物のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【化4(1)】
【化4(2)】
【化4(3)】
【化4(4)】
【化4(5)】
【化4(6)】
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法であって、
Ar
1-Hと三塩化ホスホリルとをホルミル化反応させ、中間体1
【化5】
を得る工程と、
前記中間体1を
【化6】
と縮合反応させ、中間体2
【化7】
を得る工程と、
前記中間体2を塩酸ヒドロキシルアミンとオキシム化反応させ、中間体3
【化8】
を得る工程と、
前記中間体3を、
【化9】
を含有する酸塩化物又は酸無水物とエステル化反応させ、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤を得る工程と、
を含み、
ただし、Ar
1、Ar
2、R
1は、請求項1~5のいずれか1項で定義した通りであることを特徴とする、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項7】
前記ホルミル化反応の過程において、反応温度が60~120℃であり、好ましくは100℃であり、反応時間が1~5hであり、
好ましくは、前記ホルミル化反応は、第1の溶媒中で行われ、前記第1の溶媒がDMFであることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項8】
前記縮合反応は、第1のアルカリによる触媒作用下で行われ、好ましくは、前記第1のアルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは水酸化ナトリウムであり、
好ましくは、前記縮合反応過程における反応温度が20~60℃であり、反応時間が2~6hであり、
好ましくは、前記縮合反応が第2の溶媒中で行われ、前記第2の溶媒がメタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、tert-ブタノ-ル、テトラヒドロフラン、DMF及びDMSOからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはメタノ-ルであることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項9】
前記オキシム化反応の反応温度が60~90℃であり、反応時間が10~16℃であり、
好ましくは、前記オキシム化反応が第3の溶媒中で行われ、前記第3の溶媒がメタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル及びtert-ブタノ-ルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノ-ルであることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項10】
前記エステル化反応は、第2のアルカリの作用下で行われ、好ましくは、前記第2のアルカリがトリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水素化ナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記エステル化反応の反応温度が-10~60℃であり、より好ましくは0~25℃であり、
好ましくは、前記エステル化反応は、第4の溶媒中で行われ、前記第4の溶媒が、ジエチルエ-テル、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエ-テル、テトラヒドロフラン、酢酸ビニル、トルエン、キシレン、プロパノン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項11】
光開始剤を含み、前記光開始剤が請求項1~5のいずれかに記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項12】
前記光硬化性組成物は、プラスチック、金属、ガラス、セラミック、木材、壁体又は光ファイバ-基材上に塗布される塗料;ハ-ドコ-ト剤、防汚膜、反射防止膜又は緩衝膜材料;光硬化性接着剤、粘着剤、光分解型塗料、塗膜、成形体;光記録媒体;光学成形樹脂;層間絶縁膜、光取り出し膜、輝度向上膜、封止材;印刷用インキ、インクジェット印刷用光硬化性インキ;光学部材;フォトスペ-サ、リブ、ナノインプリント用材料の分野に使用され、
好ましくは、前記光学成形樹脂は、3D印刷用インキ又は樹脂、電子回路及び半導体製造用フォトレジスト、電子材料用フォトレジストであり、
好ましくは、前記印刷用インキがスクリ-ンプリンティング、オフセット印刷又はグラビア印刷用インキであり、
好ましくは、前記光学部材がレンズ、レンズアレ-、光導波路、導光板、光拡散板又は回折素子であり、
好ましくは、前記光記録媒体がホログラム材料であることを特徴とする請求項11に記載の光硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、CN出願番号第202110501130.3号、出願日が2021年05月08日である中国出願を基礎として優先権を主張し、当該CN出願の開示内容全体を再び本願に組み込む。
【0002】
本発明は、有機化学分野に関し、具体的に、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤及びその製造方法ならびに使用に関する。
【背景技術】
【0003】
オキシムエステル構造を有する化合物は、光開始剤として光硬化分野において広く使用されており、より優れる応用性能を有する新規のオキシムエステル類光開始剤の設計及び合成は、従来より、光硬化分野において研究が盛んになっている。オキシムエステル類光開始剤は、高い感度を有するため、カラ-テレビ、液晶ディスプレイ、固体撮像素子、カメラ等において使用されるカラ-フィルタ、ブラックマトリクス等の用途において着色剤を含有する光重合性組成物に使用することができる。例えば、CN99108598A、CN101508744A、CN10565472A、CN103293855Aなどの特許文献には、異なるカルバゾ-ルオキシムエステル及びケトオキシムエステル類光開始剤が開示されており、これらの光開始剤は、良好な感光性及び貯蔵安定性を有し、従来の表示パネル及びカラ-フィルタなど光硬化分野の一般的な使用要求を異なる程度で満足することができるが、今まで感度と黄変性能とのバランスを取ることができなかった。
【0004】
CN107344918A、CN110066352A、CN110066225Aには、それぞれ重合性基を含有する異なるオキシムエステル光開始剤が開示されているが、その合成過程が複雑であり、このような化合物の合成には、高価なパラジウム触媒を使用する必要があり、かつ、後処理プロセスが複雑であり、精製が非常に困難であり、生産コストが非常に高く、これらの使用が大きく制限されている。
【0005】
したがって、合成が簡単であることと、感度及び黄変性能に優れることとを両立した新規のオキシムエステル類光開始剤を提供することは、本分野において早急に解決しなければならない問題である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の主な目的は、従来技術においてオキシムエステル類光開始剤が感度及び黄変性能に優れることと、合成スキ-ムが簡単であることとを両立できない問題を解決するために、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤及びその製造方法ならびに使用を提供することにある。
【0007】
上記目的を実現するために、本発明の1つの態様によれば、下記一般式Iで示される構造を有するカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤を提供する。
【0008】
【化1】
[式中、Ar
1、Ar
2は、芳香環又はヘテロ芳香環を含有する置換基であり、R
1は、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基、C
1~C
20のアルキル基で置換されたC
3~C
8のシクロアルキル基、C
6~C
20のアリ-ル基、C
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のアリ-ル基、C
4~C
20のヘテロアリ-ル基、又はC
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のヘテロアリ-ル基である。]
本発明の別の態様によれば、上記カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法であって、Ar
1-Hと三塩化ホスホリルとをホルミル化反応させ、中間体1
【化2】
を得る工程と、中間体1を
【化3】
と縮合反応させ、中間体2
【化4】
を得る工程と、中間体2を塩酸ヒドロキシルアミンとオキシム化反応させ、中間体3
【化5】
を得る工程と、中間体3を、
【化6】
を含有する酸塩化物又は酸無水物とエステル化反応させ、上記カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤を得る工程を含み、ただし、Ar
1、Ar
2、R
1は、上記で定義した通りである、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法を提供する。
【0009】
本発明のさらに別の態様によれば、光開始剤を含み、光開始剤が上記カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤である光硬化性組成物を提供する。
【0010】
本発明が提供するカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤は、大きい共役構造を有し、従来のオキシムエステル類開始剤よりも感度に優れ、硬化後の砕片がマイグレ-ションしにくく、耐黄変性能に優れている。これに加えて、当該光開始剤は、さらに合成が簡単であり、合成過程に高価な触媒を用いる必要がなく、かつ、使用後の硬化速度に優れるなどの特徴を有し、光硬化分野に広く使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
なお、矛盾がない限り、本願における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせてもよい。以下、実施例に結び付いて本発明を詳しく説明する。
【0012】
背景技術部分で説明した通り、従来技術においてオキシムエステル類光開始剤は、感度及び黄変性能に優れることと、合成スキ-ムが簡単であることとを両立できない問題が存在する。
【0013】
上記問題を解決するために、本発明は、下記一般式Iで示される構造を有するカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤を提供する。
【0014】
【化7】
[式中、Ar
1、Ar
2は、芳香環又はヘテロ芳香環を含有する置換基であり、R
1は、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基、C
1~C
20のアルキル基で置換されたC
3~C
8のシクロアルキル基、C
6~C
20のアリ-ル基、C
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のアリ-ル基、C
4~C
20のヘテロアリ-ル基、又はC
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のヘテロアリ-ル基である。]
カルコンは、共役程度が非常に高い構造であり、優れる吸光性能及び光学性能を有し、それを重合体のモノマ-として使用される報告があったが、光開始剤の母体基の使用についての報告が稀である。本発明者は、驚くべきことに、カルコン構造をオキシムエステル光開始剤の調製に使用すると、合成が簡単となり、得られた製品が長波長吸収という特徴を有することとなり、カラ-フィルタ及びブラックマトリクスに使用すると、感度に優れ、従来技術に存在する開始剤の感度が高いことによる高黄変の問題を解決できることを見出した。
【0015】
本発明が提供するカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤は、大きい共役構造を有し、従来のオキシムエステル類開始剤よりも感度に優れ、硬化後の砕片がマイグレ-ションしにくく、耐黄変性能に優れている。これに加えて、当該光開始剤は、さらに合成が簡単で、合成過程において高価な触媒を使用する必要がなく、かつ、使用後の硬化速度に優れるなどの特徴を有し、光硬化分野に広く使用することができる。
【0016】
光開始剤の感度をさらに向上させ、使用後の耐黄変性能を改善しながら、光開始剤により良い開始効率を有させるために、1つの好ましい実施態様において、Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して
【化8】
からなる群より選ばれ、任意選択として、上記の基における-CH
2-は、-O-又は-S-に置換されていてもよく、R
3は、H、ニトロ基、ヒドロキシル基、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
4~C
20のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、C
2~C
20の鎖状アルケニル基、C
5~C
10の置換もしくは無置換の環状もしくはヘテロ環状アルケニル基、C
6~C
12のアリ-ル基又はヘテロアリ-ル基、C
6~C
12のアリ-ル基又はヘテロアリ-ル基で置換されたC
1~C
4のアルキル基であり、任意選択として、これらの基における-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、R
4は、H、C
1~C
6の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
1~C
6の鎖状アルケニル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。
【0017】
より好ましくは、Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して
【化9(1)】
【化9(2)】
からなる群より選ばれる。上記類型の基をAr
1、Ar
2基として選択して使用することにより形成された光開始剤は、カルコン類構造及びオキシムエステル構造の二重作用をより良く発揮し、光開始剤の各性能をさらに改善することができる。
【0018】
なお、上記の基における「*」は、Ar1、Ar2基の結合手を表す。
【0019】
1つの好ましい実施態様において、R1は、C1~C5の直鎖もしくは分岐状アルキル基又はC6~C12のアリ-ル基である。
【0020】
例示的に、光開始剤は、下記化合物のうちの1種又は2種以上である。
【0021】
【化10(1)】
【化10(2)】
【化10(3)】
【化10(4)】
【化10(5)】
【化10(6)】
本発明の別の態様によれば、上記カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法であって、Ar
1-Hと三塩化ホスホリルとをホルミル化反応させ、中間体1
【化11】
を得る工程と、中間体1を
【化12】
と縮合反応させ、中間体2
【化13】
を得る工程と、中間体2を塩酸ヒドロキシルアミンとオキシム化反応させ、中間体3
【化14】
を得る工程と、中間体3を、
【化15】
を含有する酸塩化物又は酸無水物とエステル化反応させ、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤を得る工程と、を含み、ただし、Ar
1、Ar
2、R
1、R
2は、上記で定義した通りである、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法をさらに提供する。
【0022】
当該製造方法を利用して、Ar1-Hを順次にホルミル化反応、アセチル化アリ-ル基化合物との縮合反応、オキシム化反応、エステル化反応させることにより、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤を製造することができる。当該合成方法のスキ-ムが簡単であり、各工程の条件が温和であり、操作が便利であり、合成過程において高価な触媒などの原料を採用する必要もなく、合成スキ-ム及び合成コストの点で利点を有する。得られた光開始剤は、感度、耐黄変性能、硬化速度などの点に優れている。
【0023】
なお、上記のAr
1-H、
【化16】
を含有する酸塩化物又は酸無水物、三塩化ホスホリル、塩酸ヒドロキシルアミン等は、いずれも従来技術において知られている化合物であり、市販により取得してもよいし、従来の方法を採用して自ら作製することもできる。
【0024】
上記のホルミル化反応過程において、基質Ar1-Hにアルデヒド基を導入し、後続の反応のために用意する。反応過程をより安定化し、なるべく反応効率を向上させるために、1つの好ましい実施態様において、ホルミル化反応の過程において、反応温度が60~120℃であり、好ましくは100℃であり、反応時間が1~5hであり、より好ましくは、ホルミル化反応が第1の溶媒中で行われ、第1の溶媒がDMFである。
【0025】
1つの好ましい実施態様において、縮合反応が第1のアルカリによる触媒作用下で行われ、好ましくは、第1のアルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。アルカリを触媒として使用することにより、反応効率を効果的に改善でき、より好ましくは、水酸化ナトリウムを触媒として使用する。
【0026】
反応をより安定化するために、好ましくは、縮合反応過程における反応温度が20~60℃であり、反応時間が2~6hであり、好ましくは、縮合反応が第2の溶媒中で行われ、第2の溶媒がメタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、tert-ブタノ-ル、テトラヒドロフラン、DMF及びDMSOからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはメタノ-ルである。
【0027】
1つの好ましい実施態様において、オキシム化反応の反応温度が60~90℃であり、反応時間が10~16℃であり、好ましくは、オキシム化反応が第3の溶媒中で行われ、第3の溶媒がメタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル及びtert-ブタノ-ルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノ-ルである。
【0028】
1つの好ましい実施態様において、エステル化反応が第2のアルカリの作用下で行われ、好ましくは、第2のアルカリがトリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水素化ナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。アルカリを触媒として選択してエステル化反応を行うと、エステル化反応が効率よく行われるのに有利である。好ましくは、エステル化反応の反応温度が-10~60℃であり、より好ましくは0~25℃であり、好ましくは、エステル化反応が第4の溶媒中で行われ、第4の溶媒がジエチルエ-テル、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエ-テル、テトラヒドロフラン、酢酸ビニル、トルエン、キシレン、プロパノン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上である。
【0029】
本発明のさらに別の態様によれば、上記光開始剤の光硬化分野への使用をさらに提供する。当該光開始剤は、優れる感度及び耐黄変性能を有するため、光硬化分野の様々な光重合性組成物への使用に非常に適する。
【0030】
本発明のさらに別の態様によれば、光開始剤を含み、光開始剤が上記カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤である光硬化性組成物をさらに提供する。
【0031】
さらに、上記カルコンオキシムエステル開始剤は、プラスチック、金属、ガラス、セラミック、木材、壁体、光ファイバ-等の基材上に塗布される塗料;ハ-ドコ-ト剤、防汚膜、反射防止膜、緩衝膜等の保護膜材料;光硬化性接着剤、粘着剤、光分解型塗料、塗膜、成形体;ホログラム材料等の光記録媒体;光学成形樹脂、例えば3D印刷用インキ(樹脂)、電子回路及び半導体製造用フォトレジスト、ディスプレイ中のカラ-フィルタ、ブラックマトリクス、ドライフィルム等の電子材料用フォトレジスト等;層間絶縁膜、光取り出し膜、輝度向上膜、封止材;スクリ-ンプリンティング、オフセット印刷、グラビア印刷等の印刷用インキ、インクジェット印刷用光硬化性インキ;レンズ、レンズアレ-、光導波路、導光板、光拡散板、回折素子等の光学部材;フォトスペ-サ、リブ、ナノインプリント用材料等に使用することができる。
【0032】
実施例
以下、具体的な実施例を組み合わせて本願をさらに詳しく説明し、これらの実施例は、本願の保護を求める範囲を制限するものではないと理解され得る。
【0033】
実施例1
化合物1の製造
【化17】
工程(1) 中間体1aの製造
【化18】
1Lの3つ口フラスコに150mLのDMFを添加し、氷浴で0℃に降温し、徐々に100mLのPOCl
3を添加し、温度を維持しながら30分間撹拌し、55.7gのジブチルフルオレン(0.2mol)を150mLのDMFに溶解し、その後、反応液に添加した。100℃に昇温し、温度を維持しながら2h撹拌した。原料が完全に反応すると、500gの氷水を加えて反応をクエンチし、反応液を500mLのDCMで抽出し、有機相を500mLの水で3回洗浄し、濃縮して、得られた固体を500mLのn-ヘキサンに溶解し、室温で30分間撹拌し、ろ過し、43.3gの類白色固体、すなわち、中間体1aを得、収率が70.6%であった。
【0034】
工程(2) 中間体1bの製造
【化19】
500mLの3つ口フラスコに40gの中間体1a(0.13mol)、15.7gのアセトフェノン(0.13mol)、5.7gの水酸化ナトリウム(0.14mol)及び400gのメタノ-ルを加え、室温で3h撹拌し、原料を完全に反応させた。反応液に400mLの水を加え、200mLのDCMで抽出し、有機相を濃縮し、36.4gの類白色固体、すなわち、中間体1bを得、収率が68.6%であった。
【0035】
工程(3) 中間体1cの製造
【化20】
500mLの3つ口フラスコに30gの中間体1b(0.07mol)、15.3gの塩酸ヒドロキシルアミン(0.21mol)、29.8gの硫酸ナトリウム(0.21mol)及び300gエタノ-ルを加え、還流となるまで加熱し、12h撹拌し、原料を完全に反応させた。反応液を室温まで降温し、ろ過し、ろ過液を濃縮し、得られた油状物を120mLのDCMで溶解し、120mLの水で3回洗浄し、有機相を濃縮し、得られた固体を50mLのプロパノンに溶解し、氷浴で0~10℃まで降温し、2h撹拌し、ろ過し、25.9gの淡黄色固体、すなわち、中間体1cを得、収率が87.4%であった。
【0036】
工程(4) 化合物1の製造
【化21】
250mLの反応フラスコに20gの中間体1c(0.05mol)、8.1gのTEA(0.08mol)及び100mLのジクロロメタンを加え、透明な溶液が得られるまで撹拌した。6.1gの無水酢酸(0.06mol)を滴下し、滴下終了後、室温で2h撹拌した。反応液に100mLの水を加え、30分間撹拌し、静置して分層し、下層の有機相を単離し、水で中性となるまで洗浄し、有機相を濃縮し、得られた固体を100mLのメタノ-ルで溶解し、還流しながら1h撹拌した。室温まで冷却し、1h撹拌し、さらに氷浴で5~10℃まで降温し、1h攪拌した。ろ過し、ろ過ケ-キを100mLのメタノ-ルで洗浄し、粗生成物を得た。粗生成物を60mLのプロパノンに溶解し、180mLのメタノ-ルに添加し、撹拌しながら結晶を析出させ、氷浴で引き続き1h撹拌し、ろ過し、ろ過ケ-キを100mLのメタノ-ルで洗脱し、得られた固体を60℃の真空乾燥箱内に放置して24h乾燥させ、19.2gの類白色固体を得、収率が82.3%であり、純度が99.64%であった。
【0037】
化合物1の構造は、下記核磁気デ-タにより確認された。
【0038】
1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.69 (d, J = 7.3 Hz, 1H), 7.56 (ddd, J = 7.8, 4.3, 2.2 Hz, 3H), 7.50 - 7.44 (m, 1H), 7.44 - 7.37 (m, 5H), 7.33 - 7.26 (m, 2H), 7.24 (dd, J = 15.2, 0.6 Hz, 1H), 7.17 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 2.15 (s, 3H), 2.04 - 1.95 (m, 2H), 1.93 (d, J = 7.1 Hz, 1H), 1.91 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 1.60 - 1.44 (m, 4H), 1.37 (dtd, J = 15.0, 8.0, 7.0 Hz, 4H), 0.88 (t, J = 7.9 Hz, 6H).
【0039】
実施例2
化合物2の製造
【化22】
反応スキ-ムは、以下の通りである。
【0040】
【化23】
250mLの反応フラスコに20gの中間体1c(0.05mol)、8.1gのTEA(0.08mol)および100mLのジクロロメタンを加え、溶液が透明となるまで撹拌した。8.4gのベンゾイルクロリド(0.06mol)を滴下し、滴下終了後、室温で2h撹拌した。反応液に100mLの水を加え、30分間撹拌し、静置して分層し、下層の有機相を単離し、水で中性となるまで洗浄し、有機相を濃縮し、得られた固体を100mLのメタノ-ルに溶解し、還流しながら1h撹拌した。室温まで冷却し、1h撹拌し、さらに氷浴で5~10℃まで降温し、1h撹拌した。ろ過し、ろ過ケ-キを100mLのメタノ-ルで洗浄し、粗生成物を得た。粗生成物を60mLのプロパノンに溶解し、180mLのメタノ-ルに添加し、撹拌しながら結晶を析出し、氷浴で引き続き1h撹拌し、ろ過し、ろ過ケ-キを100mLのメタノ-ルで洗脱し、得られた固体を60℃の真空乾燥箱内に放置して24h乾燥させ、19.5gの類白色固体を得、収率が73.9%であり、純度が98.72%であった。
【0041】
化合物2の構造は、下記核磁気デ-タにより確認された。
【0042】
1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 8.17 - 8.10 (m, 2H), 7.69 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.63 - 7.57 (m, 1H), 7.57 - 7.52 (m, 3H), 7.52 - 7.37 (m, 8H), 7.36 - 7.22 (m, 3H), 7.09 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 2.08 (dt, J = 12.3, 7.1 Hz, 2H), 1.98 (dt, J = 12.4, 7.0 Hz, 2H), 1.60 - 1.44 (m, 4H), 1.43 - 1.31 (m, 4H), 0.88 (t, J = 8.0 Hz, 6H).
【0043】
実施例3
さらに、表1に示すように、異なる原料を選択して使用して異なる反応条件で反応を行うことにより、異なる構造の化合物を得ることができるが、これらに限られない。
【0044】
【表1(1)】
【表1(2)】
【表1(3)】
【表1(4)】
【表1(5)】
【表1(6)】
性能評価
典型的な光硬化性樹脂組成物を調製することにより、本発明の式(I)で示される光開始剤の硬化速度、マイグレ-ション性、溶解性、マイグレ-ション性などの使用性能を評価し、具体的なステップは以下の通りである。
【0045】
(1)下記の組成の光硬化性樹脂組成物を調製する:
アクリレ-ト共重合体 200質量部
[ベンジルメタクリレ-ト/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレ-ト(モル比70/10/20)共重合体(Mv:10000)]
ジペンタエリスリト-ルヘキサアクリレ-ト 100質量部
光開始剤 5質量部
ブタノン(溶媒) 900質量部
上記組成物において、光開始剤が本発明の式(I)で示される化合物又は従来技術において知られている光開始剤(比較として)である。
【0046】
(2)硬化速度
上記組成物を黄色光ランプ下で撹拌し、それを取ってPETプレ-ト上でロ-ルコ-タ-により成膜し、90℃で2min乾燥させ、ドライフィルムの厚さが2μmである塗膜を得、その後、室温まで冷却し、LEDランプ(光源波長:385nm、露光機型番:RW.LED-YT200sg1,1回当たりの露光量50mJ/cm2)照射により塗膜を露光し、硬化成膜させる。
【0047】
塗膜が硬化して硬化膜になるまでクロ-ラ露光機を通過する回数で評価し、通過回数が多いほど、硬化速度が良くないことを示した。
【0048】
(3)マイグレ-ション性
硬化膜を切り刻んで、硬化膜サンプルを0.5g量って、50mLのビ-カ-に置き、4.5mLのメタノ-ルを添加し、超音波で30mi超音波溶解し、得られたメタノ-ル溶液を10mLのメスフラスコに移し、引き続きサンプルをメタノ-ルで2回(2mL×2)洗浄し、メスフラスコに入れ、ピペットで内部標準物質としてトルエンを0.1mL取って、メタノ-ルを添加して定容し、均一に振り、静置した。
【0049】
日本島津LC-20A液体クロマトグラフィ-(shim packコラム、150×6.0mm、検出器SPD-20A、検出限界20ppm、検出波長254nm)を採用し、25℃、流速1.0mL/min、移動相(メタノ-ル/水=90/10)の条件で、光開始剤の存在を検出できるかどうかを観察した。トルエンに対する液相のピ-ク面積百分比で評価し、液相に開始剤の含有量が高いほど、マイグレ-ション性が大きいことを示した。
【0050】
(4)黄変度
ワイヤバ-を用いて組成物をブリキ上に塗布し、20μmの塗膜を作製し、クロ-ラ露光機で露光し、1000mJ/cm2のエネルギ-を受け取り、硬化終了後、オ-ブンに放置して230℃で30min焼付し、エックスライト色差計で黄変測定を行い、b値に基づいて黄変の状況を判断し、値が高いほど、黄変が明らかである。
【0051】
キャラクタリゼ-ション結果を表3に示す。
【0052】
【表2】
【表3】
表2、3において、光開始剤Aが1-(7-ニトロ-9,9-ジアリルフルオレン-2-イル)-1-(2-メチルフェニル)ケトン-オキシムアセテ-トであり、光開始剤Bが1-(6-(2-メチルベンゾイル)-9-エチルカルバゾ-ル-3-イル)-3-シクロヘキシル-プロパン-1-オン-オキシムアセテ-ト、光開始剤Cが1-(9-(2-ノルボルネン)メチル-9-メチル-9H-フルオレン-2-イル)-1,2-プロパンジオン-2-オキシム-O-アセテ-トである。
【0053】
表2、3の測定結果からわかるように、本発明の一般式(I)で示されるカルコンオキシムエステル類光開始剤は、光硬化の使用において開始剤の効率が高く、硬化速度が速く、マイグレ-ションが発生せず、黄変度が小さく、総合的性能に優れている。
【0054】
なお、化合物3の黄変度は、本発明の他の化合物より少し劣っていることは、その分子構造にニトロ基が含まれるからであり、同様にニトロ基を含有する光開始剤A及びCについて、化合物3の黄変度が明らかに改善され、これも本発明が提供するこのようなカルコンオキシムエステル類構造を有する光開始剤によって得られた有益な效果を説明できる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明に対して様々な変形及び変化を行うことができる。本発明の趣旨及び原則内で行った変更、均等置換、改進等は全て本発明の保護範囲内に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式Iで示される構造を有することを特徴とするカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【化1】
[式中、Ar
1、Ar
2は、芳香環又はヘテロ芳香環を含有する置換基であり、R
1は、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
3~C
8のシクロアルキル基で置換されたC
1~C
10のアルキル基、C
1~C
20のアルキル基で置換されたC
3~C
8のシクロアルキル基、C
6~C
20のアリ-ル基、C
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のアリ-ル基、C
4~C
20のヘテロアリ-ル基、又はC
1~C
5のアルキル基で置換されたC
6~C
20のヘテロアリ-ル基である。]
【請求項2】
Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して
【化2】
からなる群より選ばれ、
任意選択として、基における-CH
2-は、-O-又は-S-に置換されていてもよく、
R
3は、H、ニトロ基、ヒドロキシル基、C
1~C
20の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
3~C
20のシクロアルキル基、C
4~C
20のアルキルシクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基、C
2~C
20の鎖状アルケニル基、C
5~C
10の置換もしくは無置換の環状もしくはヘテロ環状アルケニル基、C
6~C
12のアリ-ル基又はヘテロアリ-ル基、C
6~C
12のアリ-ル基又はヘテロアリ-ル基で置換されたC
1~C
4のアルキル基であり、任意選択として、これらの基における-CH
2-は、-O-又は-C(=O)-に置換されていてもよく、
R
4は、H、C
1~C
6の直鎖もしくは分岐状アルキル基、C
1~C
6の鎖状アルケニル基、フェニル基又は置換フェニル基を表すことを特徴とする請求項1に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【請求項3】
Ar
1、Ar
2は、それぞれ独立して
【化3(1)】
【化3(2)】
からなる群より選ばれることを特徴とする請求項1に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【請求項4】
R
1は、C
1~C
5の直鎖もしくは分岐状アルキル基又はC
6~C
12のアリ-ル基であることを特徴とする請求項
1に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【請求項5】
前記光開始剤は、下記の化合物のうちの1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤。
【化4(1)】
【化4(2)】
【化4(3)】
【化4(4)】
【化4(5)】
【化4(6)】
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法であって、
Ar
1-Hと三塩化ホスホリルとをホルミル化反応させ、中間体1
【化5】
を得る工程と、
前記中間体1を
【化6】
と縮合反応させ、中間体2
【化7】
を得る工程と、
前記中間体2を塩酸ヒドロキシルアミンとオキシム化反応させ、中間体3
【化8】
を得る工程と、
前記中間体3を、
【化9】
を含有する酸塩化物又は酸無水物とエステル化反応させ、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤を得る工程と、
を含み、
ただし、Ar
1、Ar
2、R
1は、請求項1~5のいずれか1項で定義した通りであることを特徴とする、カルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項7】
前記ホルミル化反応の過程において、反応温度が60~120℃であり、好ましくは100℃であり、反応時間が1~5hであり、
好ましくは、前記ホルミル化反応は、第1の溶媒中で行われ、前記第1の溶媒がDMFであることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項8】
前記縮合反応は、第1のアルカリによる触媒作用下で行われ、好ましくは、前記第1のアルカリが水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド及びカリウムtert-ブトキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくは水酸化ナトリウムであり、
好ましくは、前記縮合反応過程における反応温度が20~60℃であり、反応時間が2~6hであり、
好ましくは、前記縮合反応が第2の溶媒中で行われ、前記第2の溶媒がメタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル、tert-ブタノ-ル、テトラヒドロフラン、DMF及びDMSOからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはメタノ-ルであることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項9】
前記オキシム化反応の反応温度が60~90℃であり、反応時間が10~16℃であり、
好ましくは、前記オキシム化反応が第3の溶媒中で行われ、前記第3の溶媒がメタノ-ル、エタノ-ル、イソプロパノ-ル及びtert-ブタノ-ルからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはエタノ-ルであることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項10】
前記エステル化反応は、第2のアルカリの作用下で行われ、好ましくは、前記第2のアルカリがトリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水素化ナトリウムからなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、
好ましくは、前記エステル化反応の反応温度が-10~60℃であり、より好ましくは0~25℃であり、
好ましくは、前記エステル化反応は、第4の溶媒中で行われ、前記第4の溶媒が、ジエチルエ-テル、アセトニトリル、tert-ブチルメチルエ-テル、テトラヒドロフラン、酢酸ビニル、トルエン、キシレン、プロパノン、メチルエチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6に記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤の製造方法。
【請求項11】
光開始剤を含み、前記光開始剤が請求項1~5のいずれかに記載のカルコン構造のオキシムエステル類光開始剤であることを特徴とする光硬化性組成物。
【請求項12】
前記光硬化性組成物は、プラスチック、金属、ガラス、セラミック、木材、壁体又は光ファイバ-基材上に塗布される塗料;ハ-ドコ-ト剤、防汚膜、反射防止膜又は緩衝膜材料;光硬化性接着剤、粘着剤、光分解型塗料、塗膜、成形体;光記録媒体;光学成形樹脂;層間絶縁膜、光取り出し膜、輝度向上膜、封止材;印刷用インキ、インクジェット印刷用光硬化性インキ;光学部材;フォトスペ-サ、リブ、ナノインプリント用材料の分野に使用され、
好ましくは、前記光学成形樹脂は、3D印刷用インキ又は樹脂、電子回路及び半導体製造用フォトレジスト、電子材料用フォトレジストであり、
好ましくは、前記印刷用インキがスクリ-ンプリンティング、オフセット印刷又はグラビア印刷用インキであり、
好ましくは、前記光学部材がレンズ、レンズアレ-、光導波路、導光板、光拡散板又は回折素子であり、
好ましくは、前記光記録媒体がホログラム材料であることを特徴とする請求項11に記載の光硬化性組成物。
【国際調査報告】