IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フラッグシップ パイオニアリング イノベーションズ シックス,エルエルシーの特許一覧

特表2024-523054環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法
<>
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図1
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図2
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図3
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図4
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図5
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図6
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図7
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図8
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図9
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図10
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図11
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図12
  • 特表-環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-26
(54)【発明の名称】環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20240619BHJP
   C12Q 1/6806 20180101ALI20240619BHJP
【FI】
C12N15/10 Z ZNA
C12Q1/6806 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023571506
(86)(22)【出願日】2022-05-18
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022029831
(87)【国際公開番号】W WO2022245942
(87)【国際公開日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】63/190,060
(32)【優先日】2021-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520445473
【氏名又は名称】フラッグシップ パイオニアリング イノベーションズ シックス,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デ ブール,アレクサンドラ・ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】ホバート,エリッサ・マグダレン
(72)【発明者】
【氏名】デピーター,ジョセフ・アーサー
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR14
4B063QR50
4B063QS16
4B063QX02
(57)【要約】
本開示の方法を使用すると、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとの混合物中の環状ポリリボヌクレオチド集団を濃縮することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法であって、
(a)環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;
(b)前記線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化すること;及び
(c)前記線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化すること
を含み;
それによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する、方法。
【請求項2】
前記線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分の5’末端が一リン酸部分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
消化するステップ(b)がステップ(c)の前に実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記消化するステップ(b)がステップ(c)の後に実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
消化するステップ(b)及び(c)が同時に実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記5’エキソヌクレアーゼが5’-リン酸依存性エキソヌクレアーゼである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記5’エキソヌクレアーゼがXrn-1である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記3’エキソヌクレアーゼがRNアーゼRである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記3’エキソヌクレアーゼがExonuclease Tである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
消化するステップ(b)が30分~90分間実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
消化するステップ(c)が30分~90分間実施される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記消化するステップ(b)が約37℃の温度で実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記消化するステップ(c)が約37℃の温度で実施される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
消化するステップ(b)及び(c)が、Mg2+を含む消化用緩衝液中で行われる、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記消化用緩衝液中の前記Mg2+が、0.05mM~1mMの濃度を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
消化するステップ(b)及び(c)が、ジチオスレイトールを含む消化用緩衝液中で行われる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ジチオスレイトールが、0.1mM~5mMの濃度を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ステップ(b)の前記5’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.012U~0.1Uの量である、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)の前記5’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.025Uの量である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
ステップ(c)の前記3’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~2Uの量である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(c)の前記3’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.5Uの量である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
消化するステップ(b)及び(c)の後、前記環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)が全ポリヌクレオチドの40%~95%である、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
消化するステップ(b)及び(c)の後、前記環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)が全ポリヌクレオチドの60%~90%である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
消化するステップ(b)及び(c)の後、前記環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)が全ヌクレオチドの70%~90%である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
消化するステップ(b)及び(c)の後、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)が70%~100%である、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法であって、
(a)環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;
(b)前記線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化すること、及び
(c)前記線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化すること
を含み、
消化するステップ(b)及び(c)が、0.05mM~1mM Mg2+及び/又は0.1mM~5mMジチオスレイトールを含む消化用緩衝液中で実施され;
それによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する、方法。
【請求項27】
消化するステップ(b)がステップ(c)の前に実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記消化するステップ(b)がステップ(c)の後に実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
消化するステップ(b)及び(c)が同時に実施される、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記5’エキソヌクレアーゼが1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量である、請求項26~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記3’エキソヌクレアーゼが1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量である、請求項26~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分の5’末端が一リン酸部分を含む、請求項26~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記5’エキソヌクレアーゼが5’-リン酸依存性エキソヌクレアーゼである、請求項26~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記5’エキソヌクレアーゼがXrn-1である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記3’エキソヌクレアーゼがRNアーゼRである、請求項26~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記3’エキソヌクレアーゼがExonuclease Tである、請求項26~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
消化するステップ(b)が30分~90分間実施される、請求項26~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
消化するステップ(c)が30分~90分間実施される、請求項26~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記消化するステップ(b)が約37℃の温度で実施される、請求項26~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記消化するステップ(c)が約37℃の温度で実施される、請求項26~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
ステップ(b)の前記5’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.012U~0.1Uの量である、請求項26~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
ステップ(b)の前記5’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.025Uの量である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
ステップ(c)の前記3’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~2Uの量である、請求項26~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
ステップ(c)の前記3’エキソヌクレアーゼが、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.5Uの量である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
消化するステップ(b)及び(c)の後、前記環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)が全ポリヌクレオチドの40%~95%である、請求項26~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
消化するステップ(b)及び(c)の後、前記環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)が全ポリヌクレオチドの60%~90%である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
消化するステップ(b)及び(c)の後、前記環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)が全ヌクレオチドの70%~90%である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
消化するステップ(b)及び(c)の後、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)が70%~100%である、請求項26~47のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本願は、電子形式の配列表と共に出願されるものである。この配列表は、サイズが6,438バイトである2022年5月18日に作成された51509-034WO2_Sequence_Listing_5_18_22__ST25という表題のファイルとして提供される。この配列表の電子形式での情報は、全体として参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
環状ポリリボヌクレオチドは、ヌクレアーゼによる分解に対する抵抗性の増加を示すため、線状ポリリボヌクレオチドと比較して半減期が長くなる。環状ポリリボヌクレオチドは内因的に発生することが公知であり、又は外因的に環状化することもできる。外因的な環状化反応では、結果として、環状化に成功したポリリボヌクレオチドに一部の残留している線状ポリリボヌクレオチドが加わった混合物が生じる。医薬品としての環状ポリリボヌクレオチド調製物中に線状ポリリボヌクレオチドが存在すると、予期せぬ望ましくない効果がもたらされ得る。したがって、線状ポリリボヌクレオチドと比べて環状ポリリボヌクレオチドを濃縮し、分離し、及び/又は精製する方法が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法を提供する。詳細には、本開示は、線状及び環状ポリリボヌクレオチドの混合物から、線状ポリリボヌクレオチドを5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼで消化することによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法を提供する。
【0004】
一態様において、本開示は、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法であって、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2U(例えば、0.01U~0.16U、0.01U~0.12U、0.01U~0.0.8U、0.01U~0.04U、0.01U~0.02U、0.01U~0.012U、0.02U~0.2U、0.04U~0.2U、0.0.08U~0.2U、0.12U~0.2U、及び0.16U~0.2U)の量の5’エキソヌクレアーゼで消化すること;及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4U(例えば、0.4U~3.6U、0.4U~3.2U、0.4U~2.8U、0.4U~2.4U、0.4U~2U、0.4U~1.6U、0.4U~1.2U、0.4U~0.8U、0.8U~4U、1.2U~4U、1.6U~4U、2U~4U、24U~4U、2.8U~4U、3.2U~4U、3.6U~4U、及び0.4U~0.6U)の量の3’エキソヌクレアーゼで消化することを含み;それによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する、方法を提供する。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分の5’末端は、一リン酸部分を含む。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化することの前に実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化することの後に実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップと、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化することとは、同時に実施される。
【0005】
一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、5’-リン酸依存性エキソヌクレアーゼである。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、Xrn-1である。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、RNアーゼRである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、Exonuclease Tである。
【0006】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、30分~90分(例えば、35分~90分、45分~90分、1時間~90分、75分~90分、30分~75分、30分~1時間、30分~45分、又は30分~35分)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、30分~90分(例えば、35分~90分、45分~90分、1時間~90分、75分~90分、30分~75分、30分~1時間、30分~45分、又は30分~35分)にわたって実施される。
【0007】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、約37℃の温度で実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、約37℃の温度で実施される。
【0008】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を、2.5μgのポリリボヌクレオチド当たり1U~10Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、Mg2+を含む消化用緩衝液中で行われる。一部の実施形態において、消化用緩衝液中のMg2+は、0.05mM~1mM(例えば、0.05mM~0.8mM、0.05mM~0.6mM、0.05mM~0.4mM、0.05mM~0.2mM、0.05mM~0.1mM、0.05mM~0.1mM、0.1mM~1mM、0.2mM~1mM、0.4mM~1mM、0.6mM~1mM、及び0.8mM~1mM)の濃度を有する。
【0009】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、ジチオスレイトールを含む消化用緩衝液中で行われる。一部の実施形態において、ジチオスレイトールは、0.1mM~5mM(例えば、0.1mM~4mM、0.1mM~3mM、0.1mM~2mM、0.1mM~1mM、0.1mM~0.5mM、0.5mM~5mM、1mM~5mM、2mM~5mM、3mM~5mM、又は4mM~5mM)の濃度を有する。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.012U~0.1U(例えば、0.012U~0.08U、0.012U~0.06U、0.012U~0.04U、0.012U~0.1U、0.02U~0.1U、0.04U~0.1U、0.06U~0.1U、0.08U~0.15U)の量である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.025Uの量である。
【0010】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~2U(例えば、1U~1.8U、0.4U~1.6U、0.4U~1.4U、0.4U~1.2U、0.4U~1U、0.4U~0.8U、0.4U~0.6U、0.6U~2U、0.8U~2.5U、1U~2U、1.2U~2U、1.4U~2U、1.6U~約2U、1.8U~2U)の量である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.5Uの量である。
【0011】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ポリヌクレオチドの40%~95%(例えば、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、80%~95%、又は90%~95%)である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ポリヌクレオチドの60%~90%(例えば、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~90%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、又は85%~90%)である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ヌクレオチドの70%~90%(例えば、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~90%、80%~90%、又は85%~90%)である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)は、70%~100%(例えば、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、及び95%~100%)である。
【0012】
別の態様において、本開示は、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法であって、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化すること、及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化することを含む方法において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップが、0.05mM~1mM(例えば、0.05mM~0.8mM、0.05mM~0.6mM、0.05mM~0.4mM、0.05mM~0.2mM、0.05mM~0.1mM、0.05mM~0.1mM、0.1mM~1mM、0.2mM~1mM、0.4mM~1mM、0.6mM~1mM、及び0.8mM~1mM)Mg2+及び/又は0.1mM~5mM(例えば、0.1mM~4mM、0.1mM~3mM、0.1mM~2mM、0.1mM~1mM、0.1mM~0.5mM、0.5mM~5mM、1mM~5mM、2mM~5mM、3mM~5mM、又は4mM~5mM)ジチオスレイトールを含む消化用緩衝液中で実施され;それによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する、方法を提供する。
【0013】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するステップの前に実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するステップの後に実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、同時に実施される。
【0014】
一部の実施形態において、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2U(例えば、0.01U~0.16U、0.01U~0.12U、0.01U~0.0.8U、0.01U~0.04U、0.01U~0.02U、0.01U~0.012U、0.02U~0.2U、0.04U~0.2U、0.0.08U~0.2U、0.12U~0.2U、及び0.16U~0.2U)の量の5’エキソヌクレアーゼ。一部の実施形態において、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4U(例えば、0.4U~3.6U、0.4U~3.2U、0.4U~2.8U、0.4U~2.4U、0.4U~2U、0.4U~1.6U、0.4U~1.2U、0.4U~0.8U、0.8U~4U、1.2U~4U、1.6U~4U、2U~4U、24U~4U、2.8U~4U、3.2U~4U、3.6U~4U、及び0.4U~0.6U)の量の3’エキソヌクレアーゼ。
【0015】
実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分の5’末端は、一リン酸部分を含む。
【0016】
一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、5’-リン酸依存性エキソヌクレアーゼである。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、Xrn-1である。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、RNアーゼRである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、Exonuclease Tである。
【0017】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、30分~90分(例えば、35分~90分、45分~90分、1時間~90分、75分~90分、30分~75分、30分~1時間、30分~45分、又は30分~35分)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、45分~60分(例えば、45分~55分、45分~50分、50分~60分、及び55分~60分)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、30分~90分(例えば、35分~90分、45分~90分、1時間~90分、75分~90分、30分~75分、30分~1時間、30分~45分、又は30分~35分)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、45分~60分(例えば、45分~55分、45分~50分、50分~60分、及び55分~60分)にわたって実施される。
【0018】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、約37℃の温度で実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、約37℃の温度で実施される。
【0019】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.012U~0.1U(例えば、0.012U~0.08U、0.012U~0.06U、0.012U~0.04U、0.012U~0.02U、0.02U~0.1U、0.04U~0.1U、0.06U~0.1U、0.08U~0.1U)の量である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.025Uの量である。
【0020】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~2U(例えば、0.4U~1.8U、0.4U~1.6U、0.4U~1.4U、0.4U~1.2U、0.4U~1U、0.4U~0.8U、0.4U~0.6U、0.6U~2U、0.8U~2U、1~2U、1.2U~2U、1.4U~2U、1.6U~2U、1.8U~2U)の量である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.5Uの量である。
【0021】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ポリヌクレオチドの40%~95%(例えば、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、80%~95%、又は90%~95%)である。
【0022】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ポリヌクレオチドの60%~90%(例えば、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~90%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、又は85%~90%)である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ヌクレオチドの70%~90%(例えば、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~90%、80%~90%、又は85%~90%)である。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップ及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップの後、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)は、70%~100%である。
【0023】
定義
本発明の理解を容易にするため、以下にいくつもの用語を定義する。本明細書に定義される用語は、本発明が関係する領域の当業者が一般に理解するとおりの意味を有する。「ある(a)」、「ある(an)」、及び「その(the)」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、説明のためにその具体的な例が用いられ得る一般的な分類を包含する。本明細書の用語法は、本発明の具体的な実施形態を記載するために用いられるが、特許請求の範囲に概要が示される場合を除いては、その用法が本発明を限定することはない。
【0024】
本明細書で使用されるとき、値の範囲として提供される任意の値は、上限及び下限の両方、並びに上限及び下限の範囲内に含まれる任意の値を包含する。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「3’エキソヌクレアーゼ」とは、ヌクレオチド鎖の3’末端から始まり、ヌクレオチド鎖の5’末端に向かって連続的に進む加水分解を用いて酵素がヌクレオチド鎖からヌクレオチドを取り除くようなエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素を指す。3’エキソヌクレアーゼとしては、限定はされないが、Exonuclease T、RNアーゼPH、ポリヌクレオチドホスホリラーゼ、RNアーゼD、RNアーゼR、及びエキソリボヌクレアーゼIIが挙げられる。
【0026】
本明細書で使用されるとき、用語「5’エキソヌクレアーゼ」とは、ヌクレオチド鎖の5’末端から始まり、ヌクレオチド鎖の3’末端に向かって連続的に進む加水分解を用いて酵素がヌクレオチド鎖からヌクレオチドを取り除くようなエキソヌクレアーゼ活性を有する酵素を指す。5’エキソヌクレアーゼとしては、限定はされないが、Xrn-1、及びTerminator(商標)エキソヌクレアーゼが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「5’-リン酸依存性エキソヌクレアーゼ」は、5’から3’に進みながら5’一リン酸を有するポリヌクレオチドを消化するエキソヌクレアーゼを指す(例えば、Terminator(商標)エキソヌクレアーゼ及びXrn-1)。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「circRNA」、「環状ポリリボヌクレオチド」、「環状RNA」及び「環状ポリリボヌクレオチド分子」という用語は、互換的に使用され、遊離末端を有していない(即ち、遊離3’又は5’末端がない)構造を有するポリリボヌクレオチド分子、例えば、共有結合又は非共有結合を介して環状又は末端のない構造を形成するポリリボヌクレオチド分子を意味する。
【0029】
本明細書で使用されるとき、「環状化効率」という用語は、得られた環状ポリリボヌクレオチドのその非環状出発物質に対する測定値である。
【0030】
本明細書で使用されるとき、「circRNA調製物」、「環状ポリリボヌクレオチド調製物」及び「環状RNA調製物」という用語は、互換的に使用され、circRNA分子と、希釈剤、担体、第1のアジュバント、又はそれらの組み合わせを含む組成物を意味する。
【0031】
本明細書で使用されるとき、用語「消化された混合物」は、線状ポリリボヌクレオチド及び環状ポリリボヌクレオチドの混合物を消化用酵素(例えば、5’エキソヌクレアーゼ又は3’エキソヌクレアーゼ)と接触させることにより作製される線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとの混合物を指す。
【0032】
本明細書で使用されるとき、用語「消化用緩衝液」及び「消化緩衝液」は、その中でヌクレアーゼ(例えば、エキソヌクレアーゼ)が活性を示し、且つポリヌクレオチドの少なくとも一部分を消化する緩衝液を指す。消化用緩衝液は、緩衝剤、Mg2+、及び/又はジチオスレイトール(DTT)などの成分を含み得る。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「濃縮された集団」とは、環状及び線状ポリリボヌクレオチドの別の集団と比較して環状ポリリボヌクレオチドのパーセントが高いポリリボヌクレオチド集団を指す。
【0034】
本明細書で使用されるとき、用語「断片」及び「一部分」は、ポリヌクレオチド分子よりも少なくとも1ヌクレオチド短いポリヌクレオチド分子の任意の一部を意味する。例えば、ヌクレオチド分子は線状ポリリボヌクレオチド分子であってもよく、及びその断片は、モノリボヌクレオチド又は線状ポリリボヌクレオチド分子の一部分である任意の数の隣接ポリリボヌクレオチドであってもよい。
【0035】
本明細書で使用されるとき、「不純物」という用語は、組成物、例えば、本明細書に記載の医薬組成物中に存在する望ましくない物質である。一部の実施形態において、不純物は、プロセス関連不純物である。一部の実施形態において、不純物は、最終組成物中の所望の産物以外、例えば活性薬物成分、例えば、本明細書に記載の環状又は線状ポリリボヌクレオチド以外の産物関連物質である。本明細書で使用されるとき、「プロセス関連不純物」という用語は、本明細書に記載の線状ポリリボヌクレオチド以外の最終組成物、調製物、又は製品では望ましくない、組成物、調製物、又は製品の製造で使用される、存在する、又は生成される物質である。一部の実施形態において、プロセス関連不純物は、ポリリボヌクレオチドの合成又は環状化に使用される酵素である。本明細書で使用されるとき、「産物関連物質」という用語は、組成物、調製物、又は製品、又はそれらの任意の中間体の合成中に生成される物質又は副産物である。一部の実施形態において、産物関連物質はデオキシリボヌクレオチド断片である。一部の実施形態において、産物関連物質は、デオキシリボヌクレオチドモノマーである。一部の実施形態において、産物関連物質は、1つ又は複数の本明細書に記載のポリリボヌクレオチドの誘導体又は断片、例えば、10、9つ、8つ、7つ、6つ、5つ、又は4つのリボ核酸、モノリボ核酸、ジリボ核酸、又はトリリボ核酸の断片である。
【0036】
本明細書で使用されるとき、「線状対応物」という用語は、環状ポリリボヌクレオチドと同じ又は類似のヌクレオチド配列(例えば、100%、95%、90%、85%、80%、75%、又はそれらの間の任意のパーセンテージの配列同一性)を有し、且つ2つの自由末端(即ち、環状ポリリボヌクレオチドの非環状型(及びその断片))を有するポリリボヌクレオチド分子(及びその断片)をいう。一部の実施形態において、線状対応物(例えば、環状化前の型)は、環状ポリリボヌクレオチドと同じ又は類似のヌクレオチド配列(例えば、100%、95%、90%、85%、80%、75%、又はそれらの間の任意のパーセンテージの配列同一性)及び同じ又は類似の核酸修飾を有し、且つ2つの自由末端(即ち、環状ポリリボヌクレオチドの非環状型(及びその断片))を有するポリリボヌクレオチド分子(及びその断片)である。一部の実施形態において、線状対応物は、環状ポリリボヌクレオチドと同じ又は類似のヌクレオチド配列(例えば、100%、95%、90%、85%、80%、75%、又はそれらの間の任意のパーセンテージの配列同一性)及び異なる核酸修飾を有するか、又は環状ポリリボヌクレオチドと同じ又は類似のヌクレオチド配列(例えば、100%、95%、90%、85%、80%、75%、又はそれらの間の任意のパーセンテージの配列同一性)を有するが核酸修飾を有しておらず、且つ2つの自由末端(即ち、環状ポリリボヌクレオチドの非環状型(及びその断片))を有するポリリボヌクレオチド分子(及びその断片)である。一部の実施形態において、線状対応物であるポリリボヌクレオチド分子の断片は、線状対応物ポリリボヌクレオチド分子よりも短い線状対応物ポリリボヌクレオチド分子の任意の部分である。一部の実施形態において、線状対応物は、5’キャップをさらに含む。一部の実施形態において、線状対応物は、ポリアデノシン尾部をさらに含む。一部の実施形態において、線状対応物は、3’UTRをさらに含む。一部の実施形態において、線状対応物は、5’UTRをさらに含む。
【0037】
本明細書で使用されるとき、「線状RNA」、「線状ポリリボヌクレオチド」及び「線状ポリリボヌクレオチド分子」という用語は、互換的に使用され、5’及び3’末端を有するポリリボヌクレオチド分子を意味する。5’末端及び3’末端の一方又は両方は、遊離末端であってもよいし、又は別の部分に結合していてもよい。線状RNAは、環状化されていない(例えば、事前に環状化されていない)RNAを含み、例えば、スプリントライゲーション、又は化学的、酵素的、リボザイム又はスプライシング触媒による環状化法による環状化のための出発物質として使用することができる。
【0038】
本明細書で使用されるとき、「混合物」という用語は、混合された2つ以上の異なる物質からなる材料を意味する。場合によっては、本明細書に記載の混合物は、2つ以上の異なる物質の均一な混合物であり得、例えば、混合物は、混合物の任意の所与のサンプル全体で、その成分(例えば、2つ以上の物質)が同じ割合を有し得る。場合によっては、本明細書で提供される混合物は、2つ以上の異なる物質の不均一な混合物であり得、例えば、混合物の成分(例えば、2つ以上の物質)の割合は、混合物全体で異なり得る。ある場合には、混合物は、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含む。一部の実施形態において、この混合物は、環状ポリリボヌクレオチド、線状ポリリボヌクレオチドを含み、及び線状ポリデオキシリボヌクレオチドを含み得る。場合によっては、混合物は溶液であり、例えば、混合物は液相で存在する。場合によっては、液体溶液は、液体溶媒及び溶質を含むとみなすことができる。溶質を液体溶媒に混合することは、「溶解」プロセスと呼ぶことができる。場合によっては、液体溶液は、液体中に液体を含む溶液(例えば、液体溶媒に溶解した液体溶質)、液体中に固体を含む溶液(例えば、液体溶媒に溶解した固体溶質)、又は液体中に気体を含む溶液(例えば、液体溶媒に溶解した固体溶質)である。場合によっては、複数の溶媒及び/又は複数の溶質が存在する。場合によっては、混合物は、コロイド、液体懸濁液、又はエマルジョンである。場合によっては、混合物は固体混合物であり、例えば、混合物は固相で存在する。
【0039】
本明細書で使用されるとき、「修飾リボヌクレオチド」という用語は、糖、核酸塩基、又はヌクレオシド間結合に対して少なくとも1つの修飾を有するヌクレオチドを意味する。
【0040】
本明細書で使用されるとき、「ポリヌクレオチド」という用語は、1つ又は複数の核酸サブユニット又はヌクレオチドを含む分子を意味し、「核酸」又は「オリゴヌクレオチド」と互換的に使用することができる。ポリヌクレオチドは、アデノシン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、及びウラシル(U)、又はそれらの変異体から選択される1つ又は複数のヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドは、ヌクレオシド及び少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又はそれ以上のリン酸(PO)基を含み得る。ヌクレオチドは、核酸塩基、五炭糖(リボース又はデオキシリボースのいずれか)、及び1つ又は複数のリン酸基を含み得る。リボヌクレオチドは、糖がリボースであるヌクレオチドである。ポリリボヌクレオチド又はリボ核酸、又はRNAは、ホスホジエステル結合を介して重合された複数のリボヌクレオチドを含む高分子を指し得る。デオキシリボヌクレオチドは、糖がデオキシリボースであるヌクレオチドである。
【0041】
ポリデオキシリボヌクレオチド又はデオキシリボ核酸、又はDNAは、ホスホジエステル結合を介して重合された複数のデオキシリボヌクレオチドを含む高分子を意味する。ヌクレオチドは、ヌクレオシド一リン酸又はヌクレオシドポリリン酸であり得る。ヌクレオチドは、発光タグやマーカーなどの検出可能なタグ(例えば、フルオロフォア)を含む、例えば、デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、ウリジン三リン酸(dUTP)、及びデオキシチミジン三リン酸(dTTP)dNTPから選択することができるデオキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP)などのデオキシリボヌクレオシドポリリン酸を意味する。ヌクレオチドは、成長する核酸鎖に組み込むことができる任意のサブユニットを含み得る。このようなサブユニットは、A、C、G、T、又はU、或いは、1つ又は複数の相補的なA、C、G、T、若しくはUに特異的であるか、又はプリン(即ち、A又はG、又はその変異体)若しくはピリミジン(即ち、C、T、又はU、又はその変異体)に相補的な任意の他のサブユニットであり得る。いくつかの例では、ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)、又はそれらの誘導体若しくは変異体である。場合によっては、ポリヌクレオチドは、いくつか例を挙げると、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、核内低分子RNA(snRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、mRNA前駆体(pre-mRNA)、アンチセンスRNA(asRNA)であり、ヌクレオチド配列、及び一本鎖、二本鎖、三本鎖、らせん、ヘアピンなどのその任意の構造的実施形態の両方を包含する。場合によっては、ポリヌクレオチド分子は環状である。ポリヌクレオチドは、様々な長さを有し得る。核酸分子は、少なくとも約10塩基、20塩基、30塩基、40塩基、50塩基、100塩基、200塩基、300塩基、400塩基、500塩基、1キロ塩基(kb)、2kb、3kb、4kb、5kb、10kb、50kb、又はそれ以上の長さを有し得る。ポリヌクレオチドは、細胞又は組織から単離することができる。本明細書で具体化されるように、ポリヌクレオチド配列は、単離及び精製されたDNA/RNA分子、合成DNA/RNA分子、及び合成DNA/RNA類似体を含み得る。
【0042】
ポリヌクレオチド、例えば、ポリリボヌクレオチド又はポリデオキシリボヌクレオチドは、非標準ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、及び/又は修飾ヌクレオチドを含む1つ又は複数のヌクレオチド変異体を含み得る。修飾ヌクレオチドには、限定されるものではないが、ジアミノプリン、5-フルオロウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン、5-カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルケオシン、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、1-メチルグアニン、1-メチルイノシン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノメチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルケオシン、5’-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メチルチオ-D46-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ウィブトキソシン、プソイドウラシル、ケオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、及び2,6-ジアミノプリンなどが含まれる。場合によっては、ヌクレオチドは、三リン酸部分への修飾を含む、それらのリン酸部分の修飾を含み得る。そのような修飾の非限定的な例としては、より長いリン酸鎖(例えば、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又はそれ以上のリン酸部分を有するリン酸鎖)及びチオール部分の修飾(例えば、α-チオ三リン酸及びβ-チオ三リン酸)が挙げられる。核酸分子はまた、塩基部分、糖部分、又はリン酸骨格で(例えば、典型的には相補的ヌクレオチドとの水素結合を形成するのに利用できる1つ又は複数の原子で、及び/又は典型的には相補的なヌクレオチドとの水素結合を形成できない1つ又は複数の原子で)修飾され得る。核酸分子はまた、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)などのアミン反応性部分の共有結合を可能にするために、アミノアリル(amino ally 1)-dUTP(aa-dUTP)及びアミノヘキシルアクリルアミド-dCTP(aha-dCTP)などのアミン修飾基を含み得る。本開示のオリゴヌクレオチドにおける標準的なDNA塩基対又はRNA塩基対の代替物は、高い1立方mm当たりのビット密度、より高い安全性(天然毒素の偶発的又は意図的な合成に対する耐性)、光プログラムされたポリメラーゼにおけるより容易な識別、又は下位二次構造を提供し得る。デノボ及び/又は増幅合成のための天然及び突然変異ポリメラーゼと適合するそのような代替塩基対は、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、Betz K,Malyshev DA,Lavergne T,Welte W,Diederichs K,Dwyer TJ,Ordoukhanian P,Romesberg FE,Marx A.Nat.Chem.Biol.2012 Jul;8(7):612-4に記載されている。
【0043】
本明細書で使用されるとき、「疑似らせん状構造」という語句は、環状ポリリボヌクレオチドの高次構造であり、環状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部がらせん構造に折り畳まれている。
【0044】
本明細書で使用されるとき、用語「全リボヌクレオチド分子」及び「全ポリリボヌクレオチド」は、リボヌクレオチド分子の全質量によって測定されるとおりの、線状ポリリボヌクレオチド分子、環状ポリリボヌクレオチド分子、単量体リボヌクレオチド、他のポリリボヌクレオチド分子、その断片、及びその修飾された変種を含めた、任意のリボヌクレオチド分子の総量を意味する。
【0045】
本明細書で使用されるとき、用語「単位」は、表1に酵素毎にまとめられるアッセイ方法の指定された方法の下、定義された触媒活性を果たすのに必要な酵素の量を指す。
【0046】
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】gLucをコードする線状ポリリボヌクレオチドがRNアーゼRによる消化後に分解されることを示す。
図2】gLucをコードする線状ポリリボヌクレオチドがTerminator(商標)エキソヌクレアーゼによる消化後に分解されることを示す。
図3】gLucをコードする線状ポリリボヌクレオチドがXrn-1による消化後に分解されることを示す。
図4】Terminator(商標)エキソヌクレアーゼとRNアーゼRとの組み合わせが、gLucをコードする線状ポリリボヌクレオチドを選択的に分解することを示す。
図5】Terminator(商標)エキソヌクレアーゼとRNアーゼRとの組み合わせを使用したライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドの濃縮を示す。
図6】最適濃度の5’及び3’エキソヌクレアーゼで同時に消化すると、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の線状ポリリボヌクレオチドが選択的に分解され、濃縮環状ポリリボヌクレオチド調製物が作り出されることを示す。
図7】5’及び3’エキソヌクレアーゼの2つの異なる組み合わせを使用した環状ポリリボヌクレオチドの濃縮を示す。
図8】様々な緩衝液及び対応する緩衝液対照中におけるTerminator(商標)エキソヌクレアーゼとRNアーゼRとの組み合わせによるライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物の消化の結果を示す。
図9】様々な緩衝液及び対応する緩衝液対照中におけるXrn-1とRNアーゼRとの組み合わせによるライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物の消化の結果を示す。
図10】様々な緩衝液及び対応する緩衝液対照中におけるXrn-1とRNアーゼRとの組み合わせによるライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物の消化の結果を示す。
図11】濃縮環状ポリリボヌクレオチドからのガウシアルシフェラーゼのインビトロ発現を示す。
図12】幾つかの異なる分子量の環状ポリリボヌクレオチドの選択的濃縮の結果を示す。
図13】幾つかの異なる組み合わせの5’及び3’エキソヌクレアーゼを使用した同時消化の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本開示は、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法を提供する。例えば、本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団は、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2Uの量の5’エキソヌクレアーゼで消化すること;及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量の3’エキソヌクレアーゼで消化することにより作製されてもよい。本開示はまた、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化すること;及び線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化することにより環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法であって、消化するステップが、0.05mM~1mM Mg2+を含む消化用緩衝液中で実施され、それによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する、方法も提供する。
【0049】
環状及び線状ポリリボヌクレオチドを含むポリリボヌクレオチド集団は、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分が消化されることを可能にするのに十分な濃度、時間、及び温度で5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼと反応させてもよい。
【0050】
環状ポリリボヌクレオチドを濃縮する方法
一態様において本開示は、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法を提供する。ポリリボヌクレオチド集団を環状ポリリボヌクレオチドに関して濃縮する方法は、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化することを含んでもよく、それによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する。5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.25Uの量であってもよく、及び3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4Uの量であってもよい。
【0051】
別の態様において、本開示は、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を提供すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化すること;線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化することの、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する方法であって、消化用緩衝液がMg2+及び/又はジチオスレイトール(DTT)を含み;それによって環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する、方法を提供する。
【0052】
エキソヌクレアーゼ消化
ある態様では、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼと反応させて、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する。
【0053】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分は、5’エキソヌクレアーゼで消化される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分は、3’エキソヌクレアーゼで消化される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分は、5’エキソヌクレアーゼで消化された後、3’エキソヌクレアーゼで消化される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分は、3’エキソヌクレアーゼで消化された後、5’エキソヌクレアーゼで消化される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分は、5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼで同時に消化される。
【0054】
一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、5’-リン酸依存性エキソヌクレアーゼ(例えば、Xrn-1又はTerminator(商標)エキソヌクレアーゼ)である。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、Xrn-1である。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、Terminator(商標)エキソヌクレアーゼである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、RNアーゼRである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、Exonuclease Tである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、RNアーゼPHである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、ポリヌクレオチドホスホリラーゼである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、RNアーゼDである。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、エキソリボヌクレアーゼIIである。
【0055】
一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.01U~0.2U(例えば、0.01U~0.16U、0.01U~0.12U、0.01U~0.0.8U、0.01U~0.04U、0.01U~0.02U、0.01U~0.012U、0.02U~0.2U、0.04U~0.2U、0.0.08U~0.2U、0.12U~0.2U、及び0.16U~0.2U)の量である。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.012U~0.1U(例えば、0.012U~0.08U、0.012U~0.06U、0.012U~0.04U、0.012U~0.02U、0.02U~0.1U、0.04U~0.1U、0.06U~0.1U、0.08U~0.1U)の量である。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.025Uの量である。
【0056】
一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~4U(例えば、0.4U~3.6U、0.4U~3.2U、0.4U~2.8U、0.4U~2.4U、0.4U~2U、0.4U~1.6U、0.4U~1.2U、0.4U~0.8U、0.8U~4U、1.2U~4U、1.6U~4U、2U~4U、24U~4U、2.8U~4U、3.2U~4U、3.6U~4U、及び0.4U~0.6U)の量である。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.4U~2U(例えば、0.4U~1.8U、0.4U~1.6U、0.4U~1.4U、0.4U~1.2U、0.4U~1U、0.4U~0.8U、0.4U~0.6U、0.6U~2U、0.8U~2U、1U~2U、1.2U~2U、1.4U~2U、1.6U~2U、1.8U~2U)の量である。一部の実施形態において、3’エキソヌクレアーゼは、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.5Uの量である。
【0057】
一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼの濃度と3’エキソヌクレアーゼの濃度の比は、1μgのポリリボヌクレオチド当たり0.2U 5’エキソヌクレアーゼ対4U 3’エキソヌクレアーゼである。
【0058】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との5’エキソヌクレアーゼの反応は、少なくとも30分(例えば、少なくとも35分、少なくとも1時間、少なくとも1.5時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、少なくとも12時間、又は少なくとも24時間)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との5’エキソヌクレアーゼの反応は、30分~90分(例えば、35分~90分、45分~90分、1時間~90分、30分~75分、30分~1時間、30分~45分、又は30分~35分)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、45分~60分(例えば、45分~55分、45分~50分、50分~60分、及び55分~60分)にわたって実施される。
【0059】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との3’エキソヌクレアーゼの反応は、少なくとも30分(例えば、少なくとも35分、少なくとも1時間、少なくとも1.5時間、少なくとも2時間、少なくとも5時間、少なくとも12時間、又は少なくとも24時間)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との5’エキソヌクレアーゼの反応は、30分~90分(例えば、35分~90分、45分~90分、1時間~90分、30分~75分、30分~1時間、30分~45分、又は30分~35分)にわたって実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を3’エキソヌクレアーゼで消化するという消化するステップは、45分~60分(例えば、45分~55分、45分~50分、50分~60分、及び55分~60分)にわたって実施される。
【0060】
一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との5’エキソヌクレアーゼの反応は、30℃~42℃(例えば、約31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、及び41℃)の温度で実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との5’エキソヌクレアーゼの反応は、約37℃の温度で実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との3’エキソヌクレアーゼの反応は、30℃~42℃(例えば、約31℃、32℃、33℃、34℃、35℃、36℃、37℃、38℃、39℃、40℃、及び41℃)の温度で実施される。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドと環状ポリリボヌクレオチドとを含む環状ポリリボヌクレオチド集団との3’エキソヌクレアーゼの反応は、約37℃の温度で実施される。
【0061】
消化用緩衝液
ある態様では、消化用緩衝液中で環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとを含むポリリボヌクレオチド集団を5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼと反応させて、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団を作製する。
【0062】
一部の実施形態において、消化用緩衝液は、0.05mM~1mM(例えば、0.05mM~0.8mM、0.05mM~0.6mM、0.05mM~0.4mM、0.05mM~0.2mM、0.05mM~0.1mM、0.05mM~0.1mM、0.1mM~1mM、0.2mM~1mM、0.4mM~1mM、0.6mM~1mM、及び0.8mM~1mM)Mg2+を含む。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、0.05mM~0.5mM(例えば、0.05mM~0.1mM、0.05mM~0.2mM、0.05mM~0.3mM、0.05mM~0.4mM、0.1mM~0.5mM、0.2mM~0.5mM、0.3mM~0.5mM、及び0.4mM~0.5mM)Mg2+を含む。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、約0.1mM Mg2+を含む。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、約0.5mM Mg2+を含む。Mg2+は、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、又は任意のマグネシウム塩として消化用緩衝液に加えられてもよい。
【0063】
一部の実施形態において、消化用緩衝液は、ジチオスレイトール(DTT)を含む。一部の実施形態において、DTTは、消化用緩衝液中0.1mM~5mM(例えば、0.1mM~4mM、0.1mM~3mM、0.1mM~2mM、0.1mM~1mM、0.1mM~0.5mM、0.5mM~5mM、1mM~5mM、2mM~5mM、3mM~5mM、又は4mM~5mM)の濃度を有する。一部の実施形態において、DTTは、消化用緩衝液中0.5mM~2mM(例えば、0.5mM~0.7mM、0.5mM~1mM、0.5mM~1.2mM、0.5mM~1.5mM、0.5mM~1.7mM、1.7mM~2mM、1.5mM~2mM、1.2mM~2mM、1mM~2mM、又は0.8mM~2mM)の濃度を有する。一部の実施形態において、DTTは、消化用緩衝液中1mMの濃度を有する。
【0064】
一部の実施形態において、消化用緩衝液は、NaClを含む。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、10mM~1M NaClを含む;例えば、消化用緩衝液は、10mM~900mM、10mM~700mM、10mM~500mM、10mM~200mM、10mM~100mM、10mM~50mM、50mM~1M、100mM~1M、200mM~1M、500mM~1M、又は700mM~1M NaClを含み得る。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、10mM~200mM NaClを含む。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、100mM NaClを含む。
【0065】
一部の実施形態において、消化用緩衝液は、緩衝剤を含む。一部の実施形態において、緩衝剤は、トリス-HCl、トリス塩基、HEPES、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、又はこれらの組み合わせを含む。例えば、緩衝剤は、トリス-HClであってもよい。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、10mM及び1Mの緩衝剤を含む;例えば、消化用緩衝液は、10mM~900mM、10mM~700mM、10mM~500mM、10mM~200mM、10mM~100mM、10mM~50mM、50mM~1M、100mM~1M、200mM~1M、500mM~1M、又は700mM~1Mの緩衝剤を含み得る。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、10mM及び500mMの緩衝剤を含む;例えば、消化用緩衝液は、10mM~40mM、10mM~400mM、10mM~350mM、10mM~300mM、10mM~250mM、10mM~200mM、10mM~150mM、10mM~100mM、10mM~50mM、50mM~500mM、100mM~500mM、150mM~500mM、200mM~500mM、250mM~500mM、300mM~500mM、350mM~500mM、400mM~500mM、及び450mM~500mMを含み得る。一部の実施形態において、消化用緩衝液は、50mMの緩衝剤を含む。
【0066】
一部の実施形態において、消化用緩衝液は、pH6~8を有する。例えば、消化用緩衝液のpHは、6~7.8、6~7.5、6~7.2、6~7、6~6.8、6~6.5、6~6.3、6.3~8、6.5~8、6.8~8、7~8、7.3~8、7.5~8、及び7.8~8であってもよい。
【0067】
環状ポリリボヌクレオチドの濃縮された集団
一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼによる消化後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ポリヌクレオチドの40%~95%(例えば、40%~90%、40%~80%、40%~70%、40%~60%、40%~50%、50%~95%、60%~95%、70%~95%、80%~95%、又は90%~95%)である。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼによる消化後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ポリヌクレオチドの60%~90%(例えば、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~90%、70%~90%、75%~90%、80%~90%、又は85%~90%)である。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼによる消化後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント(w/w)は、全ポリヌクレオチドの70%~90%(例えば、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~90%、80%~90%、又は85%~90%)である。一部の実施形態において、5’エキソヌクレアーゼ及び3’エキソヌクレアーゼによる消化後、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)は、60%~100%である;例えば、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)は、60%~95%、60%~90%、60%~85%、60%~80%、60%~75%、60%~70%、60%~65%、65%~100%、70%~100%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、及び95%~100%である。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)は、70%~100%である;例えば、環状ポリリボヌクレオチドのパーセント収率(w/w)は、70%~95%、70%~90%、70%~85%、70%~80%、70%~75%、75%~100%、80%~100%、85%~100%、90%~100%、及び95%~100%である。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)は、80%~100%である;例えば、環状ポリリボヌクレオチドの総パーセント収率(w/w)は、80%~95%、80%~90%、80%~85%、85%~100%、90%~100%、及び95%~100%である。
【0068】
環状ポリリボヌクレオチド
本開示は、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとの混合物から濃縮されてもよい環状ポリリボヌクレオチド集団を提供する。
【0069】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、本明細書に記載されるとおりの要素のうちの1つ以上を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ポリA配列を欠いている(例えば、ORFの3’末端のポリA配列を欠いている)か、遊離3’末端を欠いているか、RNAポリメラーゼ認識モチーフを欠いているか、又はこれらの任意の組み合わせである。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、国際公開第2019/118919号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)に開示されるとおりの任意の特徴、又は特徴の任意の組み合わせを含む。
【0070】
一部の実施形態において、ポリリボヌクレオチド(例えば、環状ポリリボヌクレオチド)は、少なくとも約20ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチド、少なくとも約40ヌクレオチド、少なくとも約50ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約100ヌクレオチド、少なくとも約200ヌクレオチド、少なくとも約300ヌクレオチド、少なくとも約400ヌクレオチド、少なくとも約500ヌクレオチド、少なくとも約1,000ヌクレオチド、少なくとも約2,000ヌクレオチド、少なくとも約5,000ヌクレオチド、少なくとも約6,000ヌクレオチド、少なくとも約7,000ヌクレオチド、少なくとも約8,000ヌクレオチド、少なくとも約9,000ヌクレオチド、少なくとも約10,000ヌクレオチド、少なくとも約12,000ヌクレオチド、少なくとも約14,000ヌクレオチド、少なくとも約15,000ヌクレオチド、少なくとも約16,000ヌクレオチド、少なくとも約17,000ヌクレオチド、少なくとも約18,000ヌクレオチド、少なくとも約19,000ヌクレオチド、又は少なくとも約20,000ヌクレオチドである。一部の実施形態において、ポリリボヌクレオチド(例えば、環状ポリリボヌクレオチド)は1.2kb未満であり、1.2~1.4kbであり、1.4~1.6kbであり、3.5~4.5kbであり、4.5~5.4kbであり、又は5.4kb超である。
【0071】
一部の実施形態において、ポリリボヌクレオチド(例えば、環状ポリリボヌクレオチド)は、リボソームの結合部位を収容するのに十分なサイズであり得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドの最大サイズは、環状ポリリボヌクレオチドを生成する、及び/又は環状ポリリボヌクレオチドを使用する技術的制約の範囲内の大きさであり得る。特定の理論に束縛されることを望むものではないが、RNAの複数のセグメントをDNAから生成し、それらの5’及び3’遊離末端をアニールしてRNAの「ストリング」を生成することが可能であり、これが最終的に環状化して、1つの5遊離末端及び1つの3’遊離末端のみが残り得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドの最大サイズは、RNAをパッケージングして標的に送達する能力によって制限され得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドのサイズは有用なポリペプチドをコードするのに十分な長さであり、したがって、少なくとも20,000ヌクレオチド、少なくとも15,000ヌクレオチド、少なくとも10,000ヌクレオチド、少なくとも7,500ヌクレオチド、又は少なくとも5,000ヌクレオチド、少なくとも4,000ヌクレオチド、少なくとも3,000ヌクレオチド、少なくとも2,000ヌクレオチド、少なくとも1,000ヌクレオチド、少なくとも500ヌクレオチド、少なくとも400ヌクレオチド、少なくとも300ヌクレオチド、少なくとも200ヌクレオチド、少なくとも100ヌクレオチド、又は少なくとも70ヌクレオチドの長さが有用であり得る。
【0072】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼによる分解感受性を欠いている。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドが分解感受性を欠いているという事実は、つまり、環状ポリリボヌクレオチドがエキソヌクレアーゼによって分解されない、又はエキソヌクレアーゼの存在下で限られた程度、例えば、エキソヌクレアーゼが存在しないときと同等又は同様の程度にしか分解されないことを意味し得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドはエキソヌクレアーゼによって分解されない。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、エキソヌクレアーゼに曝露されたときの分解が低下している。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、キャップ結合タンパク質への結合を欠いている。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、5’キャップを欠いている。
【0073】
発現配列
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ペプチド又はポリペプチドをコードする発現配列を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ペプチド又はポリペプチドをコードする少なくとも1つの発現配列を含む。かかるペプチドには、限定はされないが、小ペプチド、ペプチドミメティクス(例えば、ペプトイド)、アミノ酸、及びアミノ酸類似体が含まれ得る。ペプチドは線状又は分枝状であってもよい。かかるペプチドは、1モル当たり約5,000グラム未満の分子量、1モル当たり約2,000グラム未満の分子量、1モル当たり約1,000グラム未満の分子量、1モル当たり約500グラム未満の分子量、並びにかかる化合物の塩、エステル、及び他の薬学的に許容可能な形態を有し得る。かかるペプチドには、限定はされないが、神経伝達物質、ホルモン、薬物、毒素、ウイルス又は微生物粒子、合成分子、及びそのアゴニスト又はアンタゴニストが含まれ得る。
【0074】
コードされるポリペプチドは、約5~約40,000アミノ酸、約15~約35,000アミノ酸、約20~約30,000アミノ酸、約25~約25,000アミノ酸、約50~約20,000アミノ酸、約100~約15,000アミノ酸、約200~約10,000アミノ酸、約500~約5,000アミノ酸、約1,000~約2,500アミノ酸、又はこれらの間にある任意の範囲の長さを有し得る。一部の実施形態において、ポリペプチドは、約40,000アミノ酸未満、約35,000アミノ酸未満、約30,000アミノ酸未満、約25,000アミノ酸未満、約20,000アミノ酸未満、約15,000アミノ酸未満、約10,000アミノ酸未満、約9,000アミノ酸未満、約8,000アミノ酸未満、約7,000アミノ酸未満、約6,000アミノ酸未満、約5,000アミノ酸未満、約4,000アミノ酸未満、約3,000アミノ酸未満、約2,500アミノ酸未満、約2,000アミノ酸未満、約1,500アミノ酸未満、約1,000アミノ酸未満、約900アミノ酸未満、約800アミノ酸未満、約700アミノ酸未満、約600アミノ酸未満、約500アミノ酸未満、約400アミノ酸未満、約300アミノ酸未満の長さを有するか、又はそれ未満が有用であり得る。
【0075】
ポリペプチドは、相当量で作製されてもよい。このように、ポリペプチドは、作製することのできる任意のタンパク質性分子であり得る。ポリペプチドは、細胞から分泌させることのできる、又は細胞の細胞質、核、若しくは膜成分に局在させることのできるポリペプチドであってもよい。一部のポリペプチドとしては、限定はされないが、ウイルスエンベロープタンパク質の少なくとも一部分、代謝調節酵素(例えば、脂質又はステロイド産生を調節するもの)、抗原、サイトカイン、毒素、それが存在しないことが疾患に関連する酵素、及び動物では(例えば、動物の腸において)切断されるまで活性でないポリペプチド、及びホルモンが挙げられる。
【0076】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、タンパク質、例えば、治療用タンパク質をコードする発現配列を含む。一部の実施形態において、本明細書に開示される環状ポリリボヌクレオチドから発現し得る治療用タンパク質は、抗酸化活性、結合、カーゴ受容体活性、触媒活性、分子担体活性、分子機能調節因子、分子伝達因子活性、栄養素貯蔵活性、タンパク質タグ、構造分子活性、毒素活性、転写調節因子活性、翻訳調節因子活性、又は輸送体活性を有する。治療用タンパク質の一部の例としては、限定はされないが、酵素補充タンパク質、補給用のタンパク質、タンパク質ワクチン接種、抗原(例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原)、ホルモン、サイトカイン、抗体、免疫療法(例えば癌)、細胞リプログラミング/分化転換因子、転写因子、キメラ抗原受容体、トランスポザーゼ又はヌクレアーゼ、免疫エフェクター(例えば、免疫応答/シグナルに対する感受性に影響を与える)、調節死エフェクタータンパク質(例えば、アポトーシス又は壊死の誘導因子)、腫瘍の非溶解性阻害因子(例えば、オンコプロテインの阻害因子)、エピジェネティック修飾剤、エピジェネティック酵素、転写因子、DNA又はタンパク質修飾酵素、DNA挿入剤、排出ポンプ阻害因子、核内受容体活性化因子又は阻害因子、プロテアソーム阻害因子、酵素の競合阻害因子、タンパク質合成エフェクター又は阻害因子、ヌクレアーゼ、タンパク質断片又はドメイン、リガンド又は受容体、及びCRISPRシステム又はその成分を挙げることができる。
【0077】
一部の実施形態において、本明細書に開示される環状ポリリボヌクレオチドから発現し得る例示的タンパク質としては、ヒトタンパク質、例えば、受容体結合タンパク質、ホルモン、成長因子、成長因子受容体調節因子、及び再生タンパク質(例えば、増殖及び分化に関係があるとされているタンパク質、例えば、創傷治癒のための、治療用タンパク質)が挙げられる。一部の実施形態において、本明細書に開示される環状ポリリボヌクレオチドから発現し得る例示的タンパク質としては、EGF(上皮成長因子)が挙げられる。一部の実施形態において、本明細書に開示される環状ポリリボヌクレオチドから発現し得る例示的タンパク質としては、酵素、例えば、オキシドレダクターゼ酵素、代謝酵素、ミトコンドリア酵素、オキシゲナーゼ、デヒドロゲナーゼ、ATP非依存性酵素、及びデサチュラーゼが挙げられる。一部の実施形態において、本明細書に開示される環状ポリリボヌクレオチドから発現し得る例示的タンパク質としては、細胞内タンパク質又は細胞質タンパク質が挙げられる。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、NanoLuc(登録商標)ルシフェラーゼ(nLuc)を発現する。一部の実施形態において、本明細書に開示される環状ポリリボヌクレオチドから発現し得る例示的タンパク質としては、分泌タンパク質(secretary protein)、例えば、分泌酵素(secretary enzyme)が挙げられる。ある場合には、環状ポリリボヌクレオチドは、血中で半減期が短い治療薬を有し得るか、又は細胞内局在性シグナルを持つタンパク質、若しくは分泌シグナルペプチドを持つタンパク質であり得る分泌タンパク質(secretary protein)を発現する。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ガウシアルシフェラーゼ(gLuc)を発現する。ある場合には、環状ポリリボヌクレオチドは、非ヒトタンパク質、例えば、蛍光タンパク質、エネルギー伝達アクセプター、又はFlag、Myc、若しくはHisのようなタンパク質タグを発現する。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドから発現し得る例示的タンパク質としては、GFPが挙げられる。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、タグ付加タンパク質、例えば、タンパク質タグ、例えば、キチン結合タンパク質(CBP)、マルトース結合タンパク質(MBP)、Fcタグ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、AviTag、カルモジュリンタグ、ポリグルタメートタグ;E-タグ、FLAGタグ)、HAタグ、Hisタグ、Mycタグ、NEタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag 1、Softag 3、Spotタグ、Strepタグ;TCタグ、Tyタグ、V5タグ;VSVタグ;又はXpressタグを含む融合タンパク質又は操作されたタンパク質を発現する。
【0078】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、抗体、例えば、抗体断片、又はその一部分の発現をコードする。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドが発現する抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG、IgMなど、任意のアイソタイプであってよい。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、軽鎖、重鎖、Fc断片、CDR(相補性決定領域)、Fv断片、又はFab断片、その更なる一部分など、抗体の一部分を発現する。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、抗体の一部分を1つ以上発現する。例えば、環状ポリリボヌクレオチドは、2つ以上の発現配列を含むことができ、その各々が抗体の一部分を発現し、及びそれらが合わさったものが、抗体を構成することができる。ある場合には、環状ポリリボヌクレオチドは、抗体の重鎖をコードする一つの発現配列と、抗体の軽鎖をコードするもう一つの発現配列とを含む。ある場合には、この環状ポリリボヌクレオチドが細胞又は無細胞環境で発現すると、軽鎖及び重鎖が適切な修飾、折り畳み、又は他の翻訳後修飾に供され、機能性の抗体を形成することができる。
【0079】
調節要素
環状ポリリボヌクレオチド又はポリリボヌクレオチドは、調節要素、例えば、環状ポリリボヌクレオチド内の発現配列の発現を調節する配列を含む。調節要素は、発現産物をコードする発現配列に隣接して位置する配列を含み得る。調節要素は、隣接する配列に動作可能に連結され得る。調節要素は、調節要素が存在しない場合に発現される産物の量と比較して、発現される産物の量を増加させ得る。ある調節要素を用いて、環状ポリリボヌクレオチドによってコードされる1つ又は複数のポリペプチドの発現を増加させることができる。同様に、ある調節要素を用いて、環状ポリリボヌクレオチドによってコードされる1つ又は複数のポリペプチドの発現を減少させることができる。一部の実施形態において、ある調節要素を用いて、ポリペプチドの発現を増加させることができ、また別の調節要素を用いて、同じ環状ポリリボヌクレオチドに対する別のポリペプチドの発現を減少させることができる。さらに、1つの調節要素が、並んで結合された複数の発現配列について発現される産物(例えば、ポリペプチド)の量を増加させ得る。したがって、1つの調節要素が、1つ以上の発現配列(例えば、ポリペプチド)の発現を促進することができる。複数の調節要素がまた、例えば、異なる発現配列の発現を異なって調節するのに使用され得る。一部の実施形態において、本明細書において提供される調節要素は、選択的翻訳配列を含み得る。本明細書において使用される際、「選択的翻訳配列」という用語は、環状ポリリボヌクレオチド、例えば、特定のリボスイッチアプタザイム中の発現配列の翻訳を選択的に開始させるか又は活性化する核酸配列を指す。調節要素は、選択的分解配列も含み得る。本明細書において使用される際、「選択的分解配列」という用語は、環状ポリリボヌクレオチド、又は環状ポリリボヌクレオチドの発現産物の分解を開始させる核酸配列を指す。一部の実施形態において、調節要素は、翻訳モジュレータである。翻訳モジュレータは、環状ポリリボヌクレオチド中の発現配列の翻訳を調節し得る。翻訳モジュレータは、翻訳エンハンサー又はサプレッサーであり得る。一部の実施形態において、翻訳開始配列は、調節要素として機能し得る。調節要素の更なる例が、全体が参照により本明細書に援用される国際公開第2019/118919号パンフレットの段落[0154]~[0161]に記載されている。
【0080】
翻訳を開始させるコドン、例えば、限定はされないが、開始コドン又は代替的な開始コドンに隣接するヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドの翻訳効率、長さ、及び/又は構造に影響することは知られている(例えば、Matsuda and Mauro PLoS ONE,2010 5:11を参照されたい;その内容はその全体が参照により本明細書中に援用される)。翻訳を開始させるコドンに隣接するヌクレオチドのいずれかをマスクすることを用いて、環状ポリリボヌクレオチドの翻訳開始の位置、翻訳効率、長さ及び/又は構造を変更してもよい。
【0081】
一実施形態では、コドンをマスクするか又は隠し、マスクされた開始コドン又は代替的な開始コドンでの翻訳開始の確率を低減するため、マスキング剤を開始コドン又は代替的な開始コドンの近傍で用いてもよい。別の実施形態では、代替的な開始コドンで翻訳が開始する可能性を高めるため、マスキング剤を用いて、環状ポリリボヌクレオチドの開始コドンをマスクしてもよい。
【0082】
翻訳開始配列
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ポリペプチドをコードし、翻訳開始配列、例えば、開始コドンを含む。一部の実施形態において、翻訳開始配列は、コザック又はシャイン・ダルガノ配列を含む。一部の実施形態において、翻訳開始配列は、コザック配列を含む。一部の実施形態において、翻訳開始配列は、コザック又はシャイン・ダルガノ配列を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、発現配列に隣接する翻訳開始配列、例えば、コザック配列を含む。一部の実施形態において、翻訳開始配列は、非コード開始コドンである。一部の実施形態において、翻訳開始配列、例えば、コザック配列は、各発現配列の1つの側又は両側に存在して、発現産物の分離をもたらす。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、発現配列に隣接する少なくとも1つの翻訳開始配列を含む。一部の実施形態において、翻訳開始配列は、環状ポリリボヌクレオチドに立体配座柔軟性を与える。一部の実施形態において、翻訳開始配列は、環状ポリリボヌクレオチドの実質的に一本鎖領域内にある。翻訳開始配列の更なる例が、全体が参照により本明細書に援用される国際公開第2019/118919号パンフレットの段落[0163]~[0165]に記載されている。
【0083】
環状ポリリボヌクレオチドは、限定はされないが、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60又は60を超える開始コドンなどの2つ以上の開始コドンを含んでもよい。翻訳は、第1の開始コドンで開始し得るか、又は第1の開始コドンの下流で開始し得る。
【0084】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、第1の開始コドン、例えば、AUGでないコドンで開始し得る。環状ポリリボヌクレオチドの翻訳は、国際特許公開の国際公開第2019/118919号パンフレット(その全体が参照により本明細書中に援用される)の[0164]に記載のような代替的な翻訳開始配列で開始し得る。
【0085】
一部の実施形態において、翻訳は、ロカグレートを伴う真核生物開始因子4A(eIF4A)の処理によって開始される(翻訳は、43Sスキャニングを遮断し、RocA-eIF4A標的配列を有する転写物からの未成熟な上流の翻訳開始及びタンパク質発現低下を引き起こすことによって抑制される、例えば、www.nature.com/articles/nature17978を参照)。
【0086】
スタガー要素
本開示の環状ポリリボヌクレオチドは、切断ドメイン(例えば、スタガー要素又は切断配列)を含み得る。「スタガー要素」という用語は、翻訳中のリボソームの休止を誘導する、ヌクレオチド配列などの部分を指す。一部の実施形態において、スタガー要素は、強いαらせん傾向を有するアミノ酸の非保存配列、続いてコンセンサス配列-D(V/I)ExNPGP(配列番号2)(ここで、x=任意のアミノ酸である)である。一部の実施形態において、スタガー要素は、グリセロール、非核酸連結部分、化学修飾、修飾核酸、又はそれらの任意の組合せなどの化学部分を含み得る。
【0087】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、発現配列に隣接する少なくとも1つのスタガー要素を含む。一部の実施形態において、スタガー要素は、各発現配列の1つの側又は両側に存在して、発現産物の分離をもたらす。一部の実施形態において、スタガー要素は、1つ以上の発現配列の一部である。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、1つ以上の発現配列を含み、1つ以上の発現配列のそれぞれが、後続の発現配列から隔てられる。一部の実施形態において、スタガー要素は、(a)単一の発現配列の2回の翻訳から、又は(b)2つ以上の発現配列の1回以上の翻訳からの単一のポリペプチドの生成を防止する。一部の実施形態において、スタガー要素は、1つ以上の発現配列から切り離された配列である。一部の実施形態において、スタガー要素は、1つ以上の発現配列のうちの発現配列の一部を含む。
【0088】
スタガー要素の例が、全体が参照により本明細書に援用される国際公開第2019/118919号パンフレットの段落[0172]~[0175]に記載されている。
【0089】
連続的発現産物の産生を回避しながら、ローリングサークル翻訳を維持するため、スタガー要素を含めることで、翻訳中のリボソーム停止を誘導してもよい。一部の実施形態において、スタガー要素は、1つ又は複数の発現配列の少なくとも1つの3’末端にある。スタガー要素は、環状ポリリボヌクレオチドのローリングサークル翻訳中にリボソームを停止させるように設計され得る。スタガー要素は、限定はされないが、2A様、又はCHYSEL(シス作用性ヒドロラーゼエレメント)配列を含んでもよい。一部の実施形態において、スタガー要素は、XEXNPGP(配列番号22)(式中、Xは、不在又はG若しくはHであり、Xは、不在又はD若しくはGであり、Xは、D又はV又はI又はS又はMであり、Xは、任意のアミノ酸である)であるC末端コンセンサス配列を有する配列をコードする。一部の実施形態において、この配列は、強力なαらせん性を有するアミノ酸の非保存配列と、それに続くコンセンサス配列-D(V/I)ExNPGP(配列番号2)(式中、x=任意のアミノ酸である)を含む。スタガー要素のいくつかの非限定例として、GDVESNPGP(配列番号3)、GDIEENPGP(配列番号4)、VEPNPGP(配列番号5)、IETNPGP(配列番号6)、GDIESNPGP(配列番号7)、GDVELNPGP(配列番号8)、GDIETNPGP(配列番号9)、GDVENPGP(配列番号10)、GDVEENPGP(配列番号11)、GDVEQNPGP(配列番号12)、IESNPGP(配列番号13)、GDIELNPGP(配列番号14)、HDIETNPGP(配列番号15)、HDVETNPGP(配列番号16)、HDVEMNPGP(配列番号17)、GDMESNPGP(配列番号18)、GDVETNPGP(配列番号19)、GDIEQNPGP(配列番号20)、及びDSEFNPGP(配列番号21)が挙げられる。
【0090】
一部の実施形態において、本明細書に記載のスタガー要素は、本明細書に記載のコンセンサス配列のG及びPの間などで、発現産物を切断する。1つの非限定例として、環状ポリリボヌクレオチドは、発現産物を切断するための少なくとも1つのスタガー要素を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、少なくとも1つの発現配列に隣接したスタガー要素を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、各発現配列の後にスタガー要素を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、各発現配列の片側又は両側に存在するスタガー要素を含むことで、各発現配列から個別のペプチド及び/又はポリペプチドの翻訳を引き起こす。
【0091】
一部の実施形態において、スタガー要素は、翻訳中にリボソーム停止を誘導する、1つ又は複数の修飾ヌクレオチド又は非天然ヌクレオチドを含む。非天然ヌクレオチドは、ペプチド核酸(PNA)、モルホリノ及びロックド核酸(LNA)、並びにグリコール核酸(GNA)及びトレオース核酸(TNA)を含んでもよい。これらなどの例は、天然に存在するDNA又はRNAと、分子の骨格に対する変化によって区別される。修飾は、翻訳中にリボソーム停止を誘導し得る、糖、核酸塩基、ヌクレオシド間結合(例えば、連結リン酸塩/リン酸ジエステル結合/リン酸ジエステル骨格)に対する任意の修飾、及びそれらの任意の組み合わせを含み得る。本明細書に提供される例示的な修飾のいくつかは、本明細書中の他の箇所に記載されている。
【0092】
一部の実施形態において、スタガー要素は、環状ポリリボヌクレオチド中に他の形態で存在する。例えば、いくつかの例示的な環状ポリリボヌクレオチドでは、スタガー要素は、環状ポリリボヌクレオチド中の第1の発現配列の終結配列、及び第1の発現配列に連続する発現の第1の翻訳開始配列から終結配列を分離するヌクレオチドスペーサー配列を含む。いくつかの例において、第1の発現配列の第1のスタガー要素は、環状ポリリボヌクレオチド中の第1の発現配列に連続する発現の第1の翻訳開始配列の上流(それに対する5’側)に存在する。いくつかの場合、第1の発現配列及び第1の発現配列に連続する発現配列は、環状ポリリボヌクレオチド中の2つの別々の発現配列である。第1のスタガー要素と第1の翻訳開始配列との間の距離は、第1の発現配列及びその連続する発現配列の連続的翻訳を可能にし得る。一部の実施形態において、第1のスタガー要素は、終結配列を含み、第1の発現配列の発現産物をその連続する発現配列の発現産物から分離し、それにより分離した発現産物を作出する。いくつかの場合、環状ポリリボヌクレオチド中の連続する配列の第1の翻訳開始配列の上流に第1のスタガー要素を含む環状ポリリボヌクレオチドは、継続的に翻訳される一方で、第2の発現配列に連続する発現配列の第2の翻訳開始配列の上流に存在する第2の発現配列のスタガー要素を含む対応する環状ポリリボヌクレオチドは、継続的に翻訳されない。いくつかの場合、環状ポリリボヌクレオチド中に発現配列が1つだけ存在し、第1の発現配列及びその連続する発現配列は、同じ発現配列である。いくつかの例示的な環状ポリリボヌクレオチドでは、スタガー要素は、環状ポリリボヌクレオチド中の第1の発現配列の第1の終結配列、及び下流の翻訳開始配列から終結配列を分離するヌクレオチドスペーサー配列を含む。いくつかのそのような例では、第1のスタガー要素は、環状ポリリボヌクレオチド中の第1の発現配列の第1の翻訳開始配列の上流(に対する5’側)に存在する。いくつかの場合、第1のスタガー要素と第1の翻訳開始配列との間の距離は、第1の発現配列及び任意の連続する発現配列の継続的翻訳を可能にする。一部の実施形態において、第1のスタガー要素は、第1の発現配列の1回目の発現産物を第1の発現配列の次回の発現産物から分離し、それにより分離した発現産物を作出する。いくつかの場合、環状ポリリボヌクレオチド中の第1の発現配列の第1の翻訳開始配列の上流に第1のスタガー要素を含む環状ポリリボヌクレオチドは、継続的に翻訳される一方で、対応する環状ポリリボヌクレオチド中の第2の発現配列の第2の翻訳開始配列の上流にスタガー要素を含む対応する環状ポリリボヌクレオチドは、継続的に翻訳されない。いくつかの場合、第2のスタガー要素と第2の翻訳開始配列との間の距離は、対応する環状ポリリボヌクレオチドにおいて、環状ポリリボヌクレオチドにおける第1のスタガー要素と第1の翻訳開始配列との間の距離よりも少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍大きい。いくつかの場合、第1のスタガー要素と第1の翻訳開始配列との間の距離は、少なくとも2nt、3nt、4nt、5nt、6nt、7nt、8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、25nt、30nt、35nt、40nt、45nt、50nt、55nt、60nt、65nt、70nt、75nt、又はそれ以上である。一部の実施形態において、第2のスタガー要素と第2の翻訳開始配列との間の距離は、第1のスタガー要素と第1の翻訳開始配列との間の距離よりも、少なくとも2nt、3nt、4nt、5nt、6nt、7nt、8nt、9nt、10nt、11nt、12nt、13nt、14nt、15nt、16nt、17nt、18nt、19nt、20nt、25nt、30nt、35nt、40nt、45nt、50nt、55nt、60nt、65nt、70nt、75nt、又はそれ以上大きい。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、2つ以上の発現配列を含む。
【0093】
IRES
一部の実施形態において、本明細書に記載される環状ポリリボヌクレオチドは、配列内リボソーム進入部位(IRES)要素を含む。一部の実施形態において、本明細書に記載される環状ポリリボヌクレオチドは、2つ以上の(例えば、2、3、4、及び5つの)配列内リボソーム進入部位(IRES)要素を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、各発現配列の片側又は両側に1つ以上のIRES配列を含み、結果として得られる1つ又は複数のペプチド及び/又は1つ又は複数のポリペプチドの分離につながる。一部の実施形態において、IRESは、少なくとも1つの(例えば、2、3、4、5つ又はそれ以上の)発現配列の両側に隣接している。環状ポリリボヌクレオチドに含めるのに好適なIRES要素は、真核生物リボソームと会合する能力を有するRNA配列であり得る。一部の実施形態において、IRESは、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRESである。一部の実施形態において、IRESは、コクサッキーウイルス(CVB3)IRESである。IRESの更なる例については、国際公開第2019/118919号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)の段落[0166]~[0168]に記載されている。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、配列内リボソーム進入部位を欠いている。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは配列内リボソーム進入部位を欠いており、その1つ以上の発現配列からのタンパク質発現に関してコンピテントである。
【0094】
翻訳
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドの翻訳が開始されたら、環状ポリリボヌクレオチドに結合されたリボソームは、環状ポリリボヌクレオチドの少なくとも1回の翻訳を完了する前に環状ポリリボヌクレオチドから離脱しない。一部の実施形態において、本明細書に記載される環状ポリリボヌクレオチドは、ローリングサークル型翻訳の能力がある。一部の実施形態において、ローリングサークル型翻訳中、環状ポリリボヌクレオチドの翻訳が開始されたら、環状ポリリボヌクレオチドに結合されたリボソームは、環状ポリリボヌクレオチドの少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、少なくとも6回、少なくとも7回、少なくとも8回、少なくとも9回、少なくとも10回、少なくとも11回、少なくとも12回、少なくとも13回、少なくとも14回、少なくとも15回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、少なくとも50回、少なくとも60回、少なくとも70回、少なくとも80回、少なくとも90回、少なくとも100回、少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも250回、少なくとも500回、少なくとも1000回、少なくとも1500回、少なくとも2000回、少なくとも5000回、少なくとも10000回、少なくとも105回、又は少なくとも106回の翻訳を完了する前に環状ポリリボヌクレオチドから離脱しない。
【0095】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドのローリングサークル型翻訳は、環状ポリリボヌクレオチドの2回以上の翻訳から翻訳されたポリペプチド産物(「連続した」発現産物)の生成をもたらす。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、スタガー要素を含み、環状ポリリボヌクレオチドのローリングサークル型翻訳は、環状ポリリボヌクレオチドの1回の翻訳又は1回未満の翻訳から生成されるポリペプチド産物(「別個の」発現産物)の生成をもたらす。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドのローリングサークル型翻訳中に生成される全ポリペプチド(モル/モル)の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%が別個のポリペプチドであるように構成される。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、全ポリペプチドの少なくとも99%が別々のポリペプチドであるように設計される。一部の実施形態において、全ポリペプチドにわたる別個の産物の量比率がインビトロ翻訳系において試験される。一部の実施形態において、量比率の試験に使用されるインビトロ翻訳系は、ウサギ網状赤血球溶解物を含む。一部の実施形態において、量比率は、真核細胞若しくは原核細胞、培養細胞又は生物内の細胞などのインビボ翻訳系において試験される。
【0096】
非翻訳領域
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)を含む。遺伝子を含むゲノム領域のUTRは、転写され得るが、翻訳されていない。一部の実施形態において、UTRは、本明細書に記載される発現配列の翻訳開始配列の上流に含まれ得る。一部の実施形態において、UTRは、本明細書に記載される発現配列の下流に含まれ得る。ある場合において、第1の発現配列のための1つのUTRは、第2の発現配列のための別のUTRと同じであるか又はそれと連続しているか又はそれと重複している。一部の実施形態において、イントロンは、ヒトイントロンである。一部の実施形態において、イントロンは、完全長ヒトイントロン、例えば、ZKSCAN1である。
【0097】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、アデノシン及びウリジンの1つ又は複数のストレッチが内包されたUTRを含む。これらのAUリッチのシグネチャーは、発現産物のターンオーバー速度を増加させ得る。
【0098】
UTRのAUリッチエレメント(ARE)の導入、除去、又は修飾は、環状ポリリボヌクレオチドの安定性、又は免疫原性(例えば、免疫又は炎症性応答の1つ又は複数のマーカーのレベル)を調節するのに有用であり得る。特定の環状ポリリボヌクレオチドを改変するとき、AREの1つ又は複数コピーを環状ポリリボヌクレオチドに導入してもよく、AREのコピーは、発現産物の翻訳及び/又は産生を調節し得る。同様に、AREを、同定及び除去し、又は環状ポリリボヌクレオチドに改変することで、細胞内安定性を調節し、ひいては得られるタンパク質の翻訳及び産生に作用することができる。
【0099】
任意の遺伝子からの任意のUTRが環状ポリリボヌクレオチドの各隣接領域に組み込まれてもよいことは理解されるべきである。例示的非翻訳領域については、国際公開第2019/118919号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)の段落[0197]~[201]に記載されている。
【0100】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは5’-UTRを欠いており、その1つ以上の発現配列からのタンパク質発現に関してコンピテントである。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは3’-UTRを欠いており、その1つ以上の発現配列からのタンパク質発現に関してコンピテントである。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、5’-UTRを欠いている。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、3’-UTRを欠いている。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは終結要素を欠いており、その1つ以上の発現配列からのタンパク質発現に関してコンピテントである。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、内部リボソーム進入部位を欠いており、その1つ又は複数の発現配列からのタンパク質発現の能力がある。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、キャップを欠いており、その1つ又は複数の発現配列からのタンパク質発現の能力がある。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、5’UTR、3’UTR、及びIRESを欠いており、その1つ又は複数の発現配列からのタンパク質発現の能力がある。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、以下の配列:1つ又は複数のmiRNAをコードする配列、1つ又は複数の複製タンパク質をコードする配列、外因性遺伝子をコードする配列、治療(therapeutic)をコードする配列、調節要素(例えば、翻訳モジュレータ、例えば、翻訳エンハンサー又はサプレッサー)、翻訳開始配列、内因性遺伝子を標的にする1つ又は複数の調節核酸(例えば、siRNA、lncRNA、shRNA)、及び治療的mRNA又はタンパク質をコードする配列、の1つ又は複数を含む。
【0101】
終結要素
環状ポリリボヌクレオチドは1つ以上の発現配列を含むことができ、各発現配列が終結要素を有しても、又は有しなくてもよい。終結要素の更なる例については、国際公開第2019/118919号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)の段落[0169]~[0170]に記載されている。
【0102】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ポリA配列を含む。一部の実施形態において、ポリA配列の長さは10ヌクレオチド長より長い。一実施形態において、ポリA配列は15ヌクレオチド長より長い(例えば、少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、120、140、160、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900、1,000、1,100、1,200、1,300、1,400、1,500、1,600、1,700、1,800、1,900、2,000、2,500、及び3,000ヌクレオチド又はそれより長い)。一部の実施形態において、ポリA配列は、国際公開第2019/118919号パンフレット(全体として参照により本明細書に援用される)の[0202]~[0204]にあるポリA配列の記載に従い設計される。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ポリA配列を欠いている(例えば、ORFの3’末端のポリA配列を欠いている)。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、終結要素を欠いている。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドはポリA配列を欠いており(例えば、ORFの3’末端のポリA配列を欠いており)、及びその1つ以上の発現配列からのタンパク質発現に関してコンピテントである。
【0103】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは1つ以上の発現配列を含み、発現配列は終結要素を欠いているため、したがって環状ポリリボヌクレオチドは連続的に翻訳される。終結要素が除かれる結果、リボソームの停滞又は脱落がないため、ローリングサークル翻訳又は発現産物、例えば、ペプチド若しくはポリペプチドの連続発現が生じ得る。かかる実施形態において、ローリングサークル翻訳は、各発現配列を通して連続した発現産物を発現する。一部の他の実施形態において、発現配列の終結要素は、スタガー要素の一部であり得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド中の1つ以上の発現配列が終結要素を含む。しかしながら、環状ポリリボヌクレオチドにおけるローリングサークル翻訳又は続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)発現配列の発現は実施される。かかる例では、リボソームが終結要素、例えば、終止コドンに出会うと発現産物からリボソームが脱落し、翻訳が終結し得る。一部の実施形態において、翻訳は、リボソーム、例えば、リボソームの少なくとも1つのサブユニットが環状ポリリボヌクレオチドと接触したまま残っている間に終結する。
【0104】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、1つ以上の発現配列の終わりに終結要素を含む。一部の実施形態において、1つ以上の発現配列は、2つ以上の終結要素を連続して含む。かかる実施形態では、翻訳は終結し、ローリングサークル翻訳は終結する。一部の実施形態において、リボソームは、環状ポリリボヌクレオチドとの会合から完全に遊離する。一部のかかる実施形態では、環状ポリリボヌクレオチド中の続く(例えば、第2、第3、第4、第5等の)発現配列の産生には、翻訳開始前にリボソームが環状ポリリボヌクレオチドと再び会合する必要があり得る。概して、終結要素は、翻訳の終結シグナルを送るインフレームのヌクレオチドトリプレット、例えば、UAA、UGA、UAGを含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド中の1つ以上の終結要素は、限定はされないが、オフフレームの、又は-1及び+1シフトしたリーディングフレーム(例えば、隠れた終止)など、翻訳を終結させ得るフレームシフトした終結要素である。フレームシフトした終結要素は、発現配列の第2及び第3のリーディングフレームに現れるヌクレオチドトリプレット、TAA、TAG、及びTGAを含む。フレームシフトした終結要素は、細胞にとって有害となることの多いmRNAの誤読の防止において重要であり得る。
【0105】
RNA結合部位
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、1つ以上の標的RNA結合部位を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、内因性遺伝子及び/又は外因性遺伝子の発現を修飾する標的RNA結合部位を含む。一部の実施形態において、標的RNA結合部位は、宿主遺伝子の発現を調節する。標的RNA結合部位は、内因性遺伝子にハイブリダイズする配列(例えば、本明細書に記載されるとおりのmiRNA、siRNA、mRNA、lncRNA、RNA、DNA、アンチセンスRNA、gRNAに関する配列)、ウイルスDNA又はRNAなどの外因性核酸にハイブリダイズする配列、RNAにハイブリダイズする配列、遺伝子転写に干渉する配列、RNA翻訳に干渉する配列、分解の標的化によるなどしてRNAを安定化させる若しくはRNAを不安定化させる配列、又はDNA結合若しくはRNA結合因子を調節する配列を含み得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、RNAに結合する標的アプタマー配列を含む。標的アプタマー配列は、内因性遺伝子(例えば、本明細書に記載されるとおりのmiRNA、siRNA、mRNA、lncRNA、RNA、DNA、アンチセンスRNA、gRNAに関する配列)に結合し、ウイルスDNA又はRNAなどの外因性核酸に結合し、RNAに結合し、遺伝子転写に干渉する配列に結合し、RNA翻訳に干渉する配列に結合し、分解の標的化によるなどしてRNAを安定化させる若しくはRNAを不安定化させる配列に結合し、又はDNA結合又はRNA結合因子を調節する配列に結合することができる。標的アプタマー配列の二次構造は、RNAに結合することができる。環状RNAは、RNAへの標的アプタマー配列の結合によってRNAと複合体を形成することができる。
【0106】
一部の実施形態において、標的RNA結合部位は、tRNA、lncRNA、lincRNA、miRNA、rRNA、snRNA、マイクロRNA、siRNA、piRNA、snoRNA、snRNA、exRNA、scaRNA、Y RNA、及びhnRNA結合部位のうちの1つであり得る。標的RNA結合部位は当業者に周知である。
【0107】
ある種の標的RNA結合部位は、RNA干渉(RNAi)の生物学的過程を通じて遺伝子発現を阻害することができる。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、典型的には15~50塩基対(約18~25塩基対など)を有し、且つ細胞内にある発現させる標的遺伝子のコード配列と同一の(相補的な)又はほぼ同一の(実質的に相補的な)核酸塩基配列を有するRNA又はRNA様構造を備えたRNAi分子を含む。RNAi分子としては、限定はされないが、低分子干渉性RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロRNA(miRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、メロデュプレックス、及びダイサー基質が挙げられる。標的結合部位の更なる例については、国際公開第2020/023655号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)の段落[0129]~[0146]に記載されている。
【0108】
DNA結合部位
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ガイドRNA(gRNA)の配列など、標的DNA結合部位を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、ガイドRNA又はgRNA配列の相補体を含む。不完全なエフェクター部分との結合に必要な標的結合配列及びゲノム標的に対するユーザ定義の約20ヌクレオチドのターゲティング配列で構成されたgRNA低分子合成RNA。ガイドRNA配列は長さが17~24ヌクレオチド(例えば、19、20、又は21ヌクレオチド)であり、標的化される核酸配列に相補的である。有効なガイドRNAの設計においては、カスタムのgRNA生成器及びアルゴリズムを使用することができる。天然に存在するcrRNA-tracrRNA複合体を模倣する、且つtracrRNA(ヌクレアーゼとの結合用)及び少なくとも1つのcrRNA(編集の標的となる配列へとヌクレアーゼを導くため)の両方を持つ操作された(合成の)シングルRNA分子であるキメラの「シングルガイドRNA」(「sgRNA」)を使用すると、遺伝子編集を達成することができる。化学的に修飾されたgRNAは、ゲノム編集において有効であり得る。
【0109】
gRNAは、特異的なDNA配列(例えば、遺伝子のプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、又はリプレッサーに隣接するか又はその範囲内にある配列)を認識することができる。
【0110】
一部の実施形態において、gRNAは、遺伝子編集のためのCRISPRシステムの一部である。遺伝子編集には、環状ポリリボヌクレオチドが、所望の標的DNA配列に対応する1つ又は複数のガイドRNA配列を含むように設計することができる。gRNA配列は、Cas9又は他のエキソヌクレアーゼと相互作用してDNAを切断するための少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド又はそれ以上を含んでもよく、例えば、Cpf1は、検出可能なDNA切断用の少なくとも約16ヌクレオチドのgRNA配列と相互作用する。
【0111】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、DNAに結合することのできる標的アプタマー配列を含む。標的アプタマー配列の二次構造は、DNAに結合することができる。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、標的アプタマー配列によるDNAへの結合によりDNAと複合体を形成する。
【0112】
DNAに結合する環状ポリリボヌクレオチド配列の更なる例については、国際公開第2020/023655号パンフレット(本明細書によって全体として参照により援用される)の段落[0151]~[0153]に記載されている。
【0113】
タンパク質結合
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、タンパク質、例えば、リボソームがRNA配列内の内部部位に結合することを可能にする、1つ又は複数のタンパク質結合部位を含む。タンパク質結合部位、例えば、リボソーム結合部位を環状ポリリボヌクレオチド中に設計することにより、環状ポリリボヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドを宿主の免疫系の成分からマスクすることによって、宿主の免疫系による検知を逃避し得るか又は低下させているか、分解を調節しているか、又は翻訳を調節している。
【0114】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、少なくとも1つの免疫タンパク質結合部位を含むことで、例えば、免疫応答、例えば、CTL(細胞傷害性Tリンパ球)応答を逃避する。一部の実施形態において、免疫タンパク質結合部位は、免疫タンパク質に結合し、外因性としての環状ポリリボヌクレオチドのマスキングを補助するヌクレオチド配列である。一部の実施形態において、免疫タンパク質結合部位は、免疫タンパク質に結合し、外因性又は外来性としての環状ポリリボヌクレオチドの隠蔽を補助するヌクレオチド配列である。
【0115】
線状RNAへのリボソーム会合の伝統的機構は、RNAのキャップされた5’末端へのリボソーム結合を含む。リボソームは、5’末端から開始コドンに移動するとすぐに、第1のペプチド結合が形成される。本発明によると、環状ポリリボヌクレオチドの翻訳の内部開始(即ち、キャップ非依存性)は、遊離末端又はキャップ末端を必要としない。むしろ、リボソームは、非キャップ内部部位に結合し、それにより、リボソームは、ポリペプチド伸長を開始コドンで開始させる。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、リボソーム結合部位、例えば、開始コドンを含む、1つ又は複数のRNA配列を含む。
【0116】
天然5’UTRは、翻訳開始における役割を果たす特徴を有する。それは、リボソームが多数の遺伝子の翻訳を開始させるプロセスに関与することが一般に知られるコザック配列のようなシグネチャーを内包する。コザック配列は、コンセンサスCCR(A/G)CCAUGG(配列番号23)(ここでRは、開始コドン(AUG)の3塩基上流のプリン(アデニン又はグアニン)である)を有し、それにもう一つの「G」が後続する。5’UTRは、伸長因子結合に関与する二次構造を形成することも知られている。
【0117】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、タンパク質に結合するタンパク質結合配列をコードする。一部の実施形態において、タンパク質結合配列は、環状ポリリボヌクレオチドを特異的標的に標的化し、又は局在化する。一部の実施形態において、タンパク質結合配列は、タンパク質のアルギニンリッチ領域に特異的に結合する。
【0118】
一部の実施形態において、タンパク質結合部位として、限定はされないが、ACIN1、AGO、APOBEC3F、APOBEC3G、ATXN2、AUH、BCCIP、CAPRIN1、CELF2、CPSF1、CPSF2、CPSF6、CPSF7、CSTF2、CSTF2T、CTCF、DDX21、DDX3、DDX3X、DDX42、DGCR8、EIF3A、EIF4A3、EIF4G2、ELAVL1、ELAVL3、FAM120A、FBL、FIP1L1、FKBP4、FMR1、FUS、FXR1、FXR2、GNL3、GTF2F1、HNRNPA1、HNRNPA2B1、HNRNPC、HNRNPK、HNRNPL、HNRNPM、HNRNPU、HNRNPUL1、IGF2BP1、IGF2BP2、IGF2BP3、ILF3、KHDRBS1、LARP7、LIN28A、LIN28B、m6A、MBNL2、METTL3、MOV10、MSI1、MSI2、NONO、NONO-、NOP58、NPM1、NUDT21、PCBP2、POLR2A、PRPF8、PTBP1、RBFOX2、RBM10、RBM22、RBM27、RBM47、RNPS1、SAFB2、SBDS、SF3A3、SF3B4、SIRT7、SLBP、SLTM、SMNDC1、SND1、SRRM4、SRSF1、SRSF3、SRSF7、SRSF9、TAF15、TARDBP、TIA1、TNRC6A、TOP3B、TRA2A、TRA2B、U2AF1、U2AF2、UNK、UPF1、WDR33、XRN2、YBX1、YTHDC1、YTHDF1、YTHDF2、YWHAG、ZC3H7B、PDK1、AKT1、及びRNAに結合する任意の他のタンパク質などのタンパク質への結合部位が挙げられる。
【0119】
修飾
本明細書に記載される環状ポリリボヌクレオチドは、参照配列、詳細には、親ポリリボヌクレオチドと比べて1つ以上の置換、挿入及び/又は付加、欠失、及び共有結合修飾を含んでもよく、本発明の範囲内に包含される。
【0120】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、1つ又は複数の転写後修飾(例えば、キャッピング、切断、ポリアデニル化、スプライシング、ポリA配列、メチル化、アシル化、リン酸化、リジン及びアルギニン残基のメチル化、アセチル化、並びにチオール基及びチロシン残基のニトロシル化など)を含む。1つ又は複数の転写後修飾は、RNAにおいて同定されている100を超える異なるヌクレオシド修飾のいずれかなどの任意の転写後修飾であり得る(Rozenski,J,Crain,P,and McCloskey,J.(1999).The RNA Modification Database:1999 update.Nucl Acids Res 27:196-197)。一部の実施形態において、第1の単離核酸は、メッセンジャーRNA(mRNA)を含む。一部の実施形態において、mRNAは、国際特許公開の国際公開第2019/118919号パンフレット(その全体が参照により本明細書中に援用される)の[0311]中に記載されるような群から選択される少なくとも1つのヌクレオシドを含む。
【0121】
環状ポリリボヌクレオチドは、例えば、糖、核酸塩基、又はヌクレオシド間結合(例えば、連結リン酸塩/リン酸ジエステル結合/リン酸ジエステル骨格)に対する任意の有用な修飾を含んでもよい。ピリミジン核酸塩基の1つ又は複数の原子は、任意選択的に置換されたアミノ、任意選択的に置換されたチオール、任意選択的に置換されたアルキル(例えば、メチル又はエチル)、又はハロ(例えば、クロロ又はフルオロ)で置換(replaced)又は置換(substituted)されてもよい。特定の実施形態では、修飾(例えば、1つ又は複数の修飾)は、糖及びヌクレオシド間結合のそれぞれにおいて存在する。修飾は、リボ核酸(RNA)の、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロックド核酸(LNA)又はそれらのハイブリッド)への修飾であってもよい。更なる修飾は、本明細書中に記載されている。
【0122】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、翻訳効率を増加させるための少なくとも1つのN(6)メチルアデノシン(m6A)修飾を含む。一部の実施形態において、N(6)メチルアデノシン(m6A)修飾は、環状ポリリボヌクレオチドの免疫原性を低下(例えば、免疫又は炎症性応答の1つ又は複数のマーカーのレベルを低下)させ得る。
【0123】
一部の実施形態において、修飾は、化学又は細胞誘導修飾を含んでもよい。例えば、細胞内RNA修飾のいくつかの非限定例が、Nat Reviews Mol Cell Biol,2017,18:202-210からのLewis and Pan、“RNA modifications and structures cooperate to guide RNA-protein interactions”によって記載されている。
【0124】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドのリボヌクレオチドに対する化学修飾は、免疫逃避を増強し得る。環状ポリリボヌクレオチドは、又は、当該技術分野で十分に確立された方法、例えば、“Current protocols in nucleic acid chemistry,”Beaucage,S.L.et al.(Eds.),John Wiley & Sons,Inc.,New York,NY,USA(ここで参照により本明細書中に援用される)に記載されたものによって合成及び/又は修飾されてもよい。修飾は、例えば、末端修飾、例えば、5’末端修飾(リン酸化(モノ-、ジ-及びトリ-)、コンジュゲーション、逆結合など)、3’末端修飾(コンジュゲーション、DNAヌクレオチド、逆結合など)、塩基修飾(例えば、安定化塩基、不安定化塩基、又はパートナーの拡大されたレパートリーと塩基対を形成する塩基との置換)、塩基の除去(脱塩基ヌクレオチド)、又はコンジュゲート塩基を含む。修飾リボヌクレオチド塩基はまた、5-メチルシチジン及びプソイドウリジンを含んでもよい。一部の実施形態において、塩基修飾は、いくつかの機能的効果を挙げると、環状ポリリボヌクレオチドの、発現、免疫応答、安定性、細胞内局在化を調節し得る。一部の実施形態において、修飾は、双直交性のヌクレオチド、例えば、非天然塩基を含む。例えば、Kimoto et al,Chem Commun(Camb),2017,53:12309,DOI:10.1039/c7cc06661a(ここで参照により援用される)を参照されたい。
【0125】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの1つ又は複数のリボヌクレオチドの糖修飾(例えば、2’位又は4’位)又は糖の置換、並びに骨格修飾は、リン酸ジエステル結合の修飾又は置換を含み得る。環状ポリリボヌクレオチドの具体例として、限定はされないが、リン酸ジエステル結合の修飾又は置換を含む、修飾骨格又は非天然ヌクレオシド間結合、例えば、ヌクレオシド間修飾を含む、環状ポリリボヌクレオチドが挙げられる。修飾骨格を有する環状ポリリボヌクレオチドは、特に、骨格内にリン原子を有しないものを含む。本願を意図して、また時として当該技術分野で参照されるとおり、ヌクレオシド間骨格内にリン原子を有しない修飾RNAはまた、オリゴヌクレオシドと考えることができる。特定の実施形態では、環状ポリリボヌクレオチドは、ヌクレオシド間骨格内にリン原子を有するリボヌクレオチドを含むことになる。
【0126】
修飾された環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド骨格は、例えば、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ジチオリン酸、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチル及び他のアルキルホスホネート、例えば、3’-アルキレンホスホネート及びキラルホスホネート、ホスフィネート、ホスホロアミデート、例えば、3’-アミノホスホロアミデート及びアミノアルキルホスホロアミデート、チオノホスホロアミデート、チオノアルキルホスホネート、チオノアルキルホスホトリエステル、及び正常な3’-5’結合を有するボラノリン酸、これらの2’-5’結合類似体、及びヌクレオシド単位の隣接ペアが、3’-5’と5’-3’又は2’-5’と5’-2’で結合される、反転極性を有するものを含んでもよい。様々な塩、混合塩及び遊離酸形態も含まれる。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、負又は正に荷電され得る。
【0127】
環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドに組み込まれ得る修飾ヌクレオチドは、ヌクレオシド間結合(例えば、リン酸塩骨格)に対して修飾され得る。本明細書では、ポリヌクレオチド骨格との関連で、「リン酸塩」及び「リン酸ジエステル」という語句は、互換可能に用いられる。骨格リン酸基は、酸素原子の1つ又は複数を異なる置換基で置換することによって修飾され得る。さらに、修飾ヌクレオシド及びヌクレオチドは、非修飾リン酸部分の、本明細書に記載のような別のヌクレオシド間結合による大規模な置換を含み得る。修飾リン酸基の例として、限定はされないが、ホスホロチオエート、ホスホロセレネート、ボラノリン酸、ボラノリン酸エステル、ホスホン酸水素、ホスホロアミデート、ホスホロジアミデート、アルキル又はアリールホスホネート、及びホスホトリエステルが挙げられる。ジチオリン酸は、硫黄によって置換された両方の非結合酸素を有する。また、リン酸リンカーは、窒素(架橋ホスホロアミデート)、硫黄(架橋ホスホロチオエート)、及び炭素(架橋メチレンホスホネート)による結合酸素の置換によって修飾され得る。
【0128】
a-チオ置換リン酸部分は、RNA及びDNAポリマーに非天然ホスホロチオエート骨格結合を介して安定性を与えるように提供される。ホスホロチオエートDNA及びRNAは、細胞環境下で、増強されたヌクレアーゼ抵抗性と、それに続く延長された半減期を有する。環状ポリリボヌクレオチドに連結されたホスホロチオエートは、細胞の自然免疫分子のより弱い結合/活性化を介して自然免疫応答を低減することが予想される。
【0129】
具体的な実施形態では、修飾ヌクレオシドは、α-チオヌクレオシド(例えば、5’-O-(l-チオリン酸)-アデノシン、5’-O-(l-チオリン酸)-シチジン(a-チオ-シチジン)、5’-O-(l-チオリン酸)-グアノシン、5’-O-(l-チオリン酸)-ウリジン、又は5’-O-(1-チオリン酸)-プソイドウリジン)を含む。
【0130】
亜リン酸原子を含まないヌクレオシド間結合を含む、本発明に従って用いられてもよい他のヌクレオシド間結合が、本明細書に記載される。
【0131】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、1つ又は複数の細胞傷害性ヌクレオシドを含んでもよい。例えば、細胞傷害性ヌクレオシドは、二機能性修飾などの環状ポリリボヌクレオチドに組み込まれてもよい。細胞傷害性ヌクレオシドは、限定はされないが、アデノシンアラビノシド、5-アザシチジン、4’-チオ-アラシチジン、シクロペンテニルシトシン、クラドリビン、クロファラビン、シタラビン、シトシンアラビノシド、l-(2-C-シアノ-2-デオキシ-β-D-アラビノ-ペントフラノシル)-シトシン、デシタビン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フロクスウリジン、ゲムシタビン、テガフール及びウラシルの組み合わせ、テガフール((RS)-5-フルオロ-l-(テトラヒドロフラン-2-イル)ピリミジン-2,4(lH,3H)-ジオン)、トロキサシタビン、テザシタビン、2’-デオキシ-2’-メチリデンシチジン(DMDC)、及び6-メルカプトプリンを含んでもよい。更なる例として、リン酸フルダラビン、N4-ベヘノイル-l-β-D-アラビノフラノシルシトシン、N4-オクタデシル-1-β-D-アラビノフラノシルシトシン、N4-パルミトイル-l-(2-C-シアノ-2-デオキシ-β-D-アラビノ-ペントフラノシル)シトシン、及びP-4055(シタラビン5’-エライジン酸エステル)が挙げられる。
【0132】
環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、分子の全長に沿って均一に修飾されてもされなくてもよい。例えば、ヌクレオチドの1つ又は複数又はすべてのタイプ(例えば、天然に存在するヌクレオチド、プリン若しくはピリミジン、又はA、G、U、C、I、pUの任意の1つ若しくは複数若しくはすべて)は、環状ポリリボヌクレオチド、又はその所与の所定の配列領域において均一に修飾されてもされなくてもよい。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、プソイドウリジンを含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、イノシンを含み、それは環状ポリリボヌクレオチドを内因性RNAとウイルス性のRNAとして特徴づける免疫系に寄与し得る。イノシンの組み込みはまた、RNA安定性の改善/分解の減少を媒介し得る。例えば、Yu,Z.et al.(2015)RNA editing by ADAR1 marks dsRNA as“self”.Cell Res.25,1283-1284(その全体が参照により援用される)を参照されたい。
【0133】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド(又はその所与の配列領域)におけるすべてのヌクレオチドが、修飾される。一部の実施形態において、修飾は、発現を増強し得るm6A;免疫応答を減弱し得るイノシン;RNA安定性、又は翻訳リードスルー(スタガー要素)を増強し得るプソイドウリジン、安定性を増強し得るm5C;及び細胞内転位(例えば、核局在化)を補助する2,2,7-トリメチルグアノシンを含んでもよい。
【0134】
異なる糖修飾、ヌクレオチド修飾、及び/又はヌクレオシド間結合(例えば、骨格構造)は、環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド中の様々な位置に存在してもよい。当業者は、ヌクレオチド類似体又は他の修飾が環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの任意の位置に位置し得ることで、環状ポリリボヌクレオチドの機能が実質的に低下しないことを理解するであろう。修飾はまた、非コード領域修飾であってもよい。環状ポリリボヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドは、(全ヌクレオチド含量、又はヌクレオチドの1つ若しくは複数のタイプ、即ち、A、G、U若しくはCの任意の1つ若しくは複数のいずれかに対して)約1%~約100%、又は任意の間の百分率(例えば、1%~20%>、1%~25%、1%~50%、1%~60%、1%~70%、1%~80%、1%~90%、1%~95%、10%~20%、10%~25%、10%~50%、10%~60%、10%~70%、10%~80%、10%~90%、10%~95%、10%~100%、20%~25%、20%~50%、20%~60%、20%~70%、20%~80%、20%~90%、20%~95%、20%~100%、50%~60%、50%~70%、50%~80%、50%~90%、50%~95%、50%~100%、70%~80%、70%~90%、70%~95%、70%~100%、80%~90%、80%~95%、80%~100%、90%~95%、90%~100%、及び95%~100%)の修飾ヌクレオチドを含んでもよい。
【0135】
産生方法
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、非天然であり、組み換え技術(例えば、DNAプラスミドを用いてインビトロで得られる)、化学合成、又はそれらの組合せを用いて生成され得るデオキシリボ核酸配列を含む。
【0136】
RNA環を生成するのに使用されるDNA分子が、天然の元の核酸配列のDNA配列、その修飾形態、又は自然界で通常見られない合成ポリペプチド(例えば、キメラ分子又は融合タンパク質)をコードするDNA配列を含み得ることは、本開示の範囲内である。DNA及びRNA分子は、限定はされないが、部位特異的突然変異誘発、突然変異を誘発するための核酸分子の化学的処理、核酸フラグメントの制限酵素切断、核酸フラグメントのライゲーション、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅及び/又は核酸配列の選択された領域の突然変異誘発、オリゴヌクレオチド混合物の合成及び核酸分子の混合物を「構築する」ための混合物群のライゲーション並びにそれらの組合せなど、古典的な突然変異誘発技術及び組み換え技術を含む様々な技術を用いて修飾され得る。
【0137】
一部の実施形態において、線状一次構築物又は線状mRNAは、環状化又はコンカテマー化されて、本明細書に記載される環状ポリリボヌクレオチドを生成し得る。環化又はコンカテマー化の機構は、スプリントライゲーション方法などの方法によって行われ得る。新たに形成される5’-/3’-結合は、分子内結合又は分子間結合であり得る。
【0138】
本明細書に記載される環状ポリリボヌクレオチドを作製する方法は、例えば、Khudyakov & Fields,Artificial DNA:Methods and Applications,CRC Press(2002);in Zhao,Synthetic Biology:Tools and Applications,(First Edition),Academic Press(2013);及びEgli & Herdewijn,Chemistry and Biology of Artificial Nucleic Acids,(First Edition),Wiley-VCH(2012)に記載されている。
【0139】
環状化
一部の実施形態において、環状化用の線状ポリリボヌクレオチドが環化されるか、又はコンカテマー化されてもよい。一部の実施形態において、環状化用の線状ポリリボヌクレオチドは、製剤化及び/又は送達の前にインビトロで環化されてもよい。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、線状ポリリボヌクレオチドとの混合物中にあってもよい。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドと同じ核酸配列を有する。
【0140】
細胞外環状化
一部の実施形態において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、化学的方法を用いて環状化又はコンカテマー化されて、環状ポリリボヌクレオチドを形成する。ある化学的方法において、核酸(例えば、環状化のための線状ポリリボヌクレオチド)の5’末端及び3’末端は、互いに近づけると、分子の5’末端と3’末端との間で新たな共有結合を形成し得る化学的に反応性の基を含む。5’末端は、NHSエステル反応性基を含有し得、3’末端は、3’-アミノ末端ヌクレオチドを含有し得、有機溶媒中において、線状RNA分子の3’末端における3’-アミノ末端ヌクレオチドが、5’-NHS-エステル部分上で求核攻撃を起こして、新たな5’-/3’-アミド結合を形成するようになっている。
【0141】
一部の実施形態において、DNA又はRNAリガーゼを用いて、5’-リン酸化核酸分子(例えば、環状化のための線状ポリリボヌクレオチド)を核酸(例えば、線状核酸)の3’-ヒドロキシル基に酵素的に連結して、新たなホスホロジエステル結合を形成する。例の反応において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、製造業者のプロトコルに従って1~10単位のT4 RNAリガーゼと共に1時間にわたって37℃でインキュベートされる(New England Biolabs,Ipswich,MA)。ライゲーション反応は、酵素的ライゲーション反応を補助するために並んだ5’-及び3’-領域の両方と塩基対合することが可能な線状核酸の存在下で起こり得る。一部の実施形態において、ライゲーションは、スプリントライゲーションである。例えば、SplintR(登録商標)リガーゼ、RNAリガーゼII、T4RNAリガーゼ又はT4DNAリガーゼのようなスプリントリガーゼがスプリントライゲーションに使用され得る。スプリントライゲーションでは、一本鎖RNAのような一本鎖ポリヌクレオチド(スプリント)は、2つの末端が一本鎖スプリントとのハブリダイゼーション時に並置され得るように線状ポリリボヌクレオチドの両方の末端とハイブリダイズするように設計され得る。したがって、スプリントリガーゼは、線状環状ポリリボヌクレオチドの並置される2つの末端のライゲーションを触媒して、環状ポリリボヌクレオチドを生成し得る。
【0142】
一部の実施形態において、DNA又はRNAリガーゼは、環状ポリヌクレオチドの合成に使用される。一部の実施形態において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドの5’末端又は3’末端のいずれかは、インビトロ転写中、得られる環状化のための線状ポリリボヌクレオチドが、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドの5’末端を環状化のための線状ポリリボヌクレオチドの3’末端にライゲートすることが可能な活性リボザイム配列を含むように、リガーゼリボザイム配列をコードし得る。リガーゼリボザイムは、グループIイントロン、デルタ肝炎ウイルス、ヘアピン型リボザイムに由来し得るか、又はSELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの体系的な進化)によって選択され得る。リボザイムリガーゼ反応は、0~37℃の温度で1~24時間行われ得る。
【0143】
一部の実施形態において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、少なくとも1つの非核酸部分を用いることによって環状化又はコンカテマー化される。一態様において、少なくとも1つの非核酸部分は、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドを環状化又はコンカテマー化するために、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドの5’末端の近傍及び/又は3’末端の近傍の領域又は特徴と反応し得る。別の態様において、少なくとも1つの非核酸部分は、環状化のための線状ポリリボヌクレオチド5’末端及び/又は3’末端に位置するか又は連結されるか又はその近傍にあり得る。考えられる非核酸部分は、同種又は異種であり得る。非限定的な例として、非核酸部分は、疎水性結合、イオン結合、生分解性結合及び/又は切断可能な結合などの結合であり得る。別の非限定的な例として、非核酸部分は、ライゲーション部分である。さらに別の非限定的な例として、非核酸部分は、本明細書に記載されるアプタマー又は非核酸リンカーなどのオリゴヌクレオチド又はペプチド部分であり得る。
【0144】
一部の実施形態において、環状化用の線状ポリリボヌクレオチドは、IVT及びRNAポリメラーゼを使用して合成され、ここでIVTに使用されるヌクレオチド混合物は、グアノシン三リン酸と比べて過剰なグアノシン一リン酸を含むため、5’一リン酸を有するRNAを優先的に産生し得る;精製IVT産物は、スプリントDNAを使用して環状化されてもよい。
【0145】
一部の実施形態において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、環状化のための線状ポリリボヌクレオチド5’及び3’末端における、その近傍における若しくはそのような5’及び3’末端に連結された、原子間、分子表面間の吸引力を引き起こす非核酸部分により、環状化又はコンカテマー化される。非限定的な例として、1つ以上の環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、分子間力又は分子内力によって環状化又はコンカテマー化され得る。分子間力の非限定的な例としては、双極子-双極子力、双極子-誘起双極子力、誘起双極子-誘起双極子力、ファン・デル・ワールス力及びロンドン分散力が挙げられる。分子内力の非限定的な例としては、共有結合、金属結合、イオン結合、共鳴結合、アグノスティック結合(agnostic bond)、双極子結合、共役、超共役及び反結合が挙げられる。
【0146】
一部の実施形態において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、5’末端の近傍及び3’末端の近傍にリボザイムRNA配列を含み得る。リボザイムRNA配列は、配列がリボザイムの残りの部分に曝されるとき、ペプチドに共有結合し得る。一態様において、5’末端及び3’末端の近傍でリボザイムRNA配列に共有結合されたペプチドは、互いに結合して、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドを環状化又はコンカテマー化させ得る。別の態様において、5’末端及び3’末端の近傍でリボザイムRNAに共有結合されたペプチドは、限定はされないが、タンパク質ライゲーションなどの当該技術分野において公知の様々な方法を用いたライゲーションに線状一次構築物又は線状mRNAを供した後、それらを環状化又はコンカテマー化させ得る。本発明の線状一次構築物若しくは線状RNAに使用するためのリボザイムの非限定的な例又はペプチドを組み込み且つ/又は共有結合するための方法の非限定的な一覧が米国特許出願公開第20030082768号明細書に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0147】
一部の実施形態において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、例えば、5’トリホスフェートをRNA 5’ピロホスホヒドロラーゼ(RppH)又はATPジホスホヒドロラーゼ(アピラーゼ)と接触させることによって5’モノホスフェートに転化される核酸の5’トリホスフェートを含み得る。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分の5’末端は一リン酸部分を含む。一部の実施形態において、線状ポリリボヌクレオチドの少なくとも一部分を5’エキソヌクレアーゼ及び/又は3’エキソヌクレアーゼで消化する前に、環状及び線状ポリリボヌクレオチドを含むポリリボヌクレオチド集団をRppHと接触させる。代わりに、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドの5’トリホスフェートを5’モノホスフェートに転化することは、(a)環状化のための線状ポリリボヌクレオチドの5’ヌクレオチドをホスファターゼ(例えば、アンタークティック(Antarctic)ホスファターゼ、エビ由来アルカリホスファターゼ、又は仔牛小腸由来ホスファターゼ)と接触させて、3つすべてのホスフェートを除去する工程;及び(b)工程(a)後の5’ヌクレオチドを、1つのホスフェートを追加するキナーゼ(例えば、ポリヌクレオチドキナーゼ)と接触させる工程を含む2工程反応によって行われ得る。
【0148】
一部の実施形態において、本明細書において提供される環状化方法の環状化効率は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%又は100%である。一部の実施形態において、本明細書において提供される環状化方法の環状化効率は、少なくとも約40%である。一部の実施形態において、提供される環状化方法は、約10%~約100%の環状化効率を有し;例えば、環状化効率は、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、及び約99%であり得る。一部の実施形態において、環状化効率は、約20%~約80%である。一部の実施形態において、環状化効率は、約30%~約60%である。一部の実施形態において、環状化効率は、約40%である。
【0149】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、複製されると、スプライスされた末端が一緒に結合される内部スプライシング要素を含む。いくつかの例は、スプライス部位配列及び短い逆方向反復(30~40nt)、例えばAluSq2、AluJr、及びAluSz、隣接するイントロン中の逆方向配列、隣接するイントロン中のAlu要素、及びバックスプライス(backsplice)事象に近接するcis-配列要素に見られるモチーフ(サプタブル(suptable)4富化モチーフ)、例えば、隣接するエクソンを有するバックスプライス部位の200bp前にある(上流の)又は後ろにある(下流の)配列を有する小型イントロン(<100nt)を含み得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、内部スプライシング要素として本明細書における他の箇所に記載される少なくとも1つの反復ヌクレオチド配列を含む。このような実施形態において、反復ヌクレオチド配列は、イントロンのAluファミリーからの反復配列を含み得る。一部の実施形態において、スプライシング反復リボソーム結合タンパク質が、環状ポリリボヌクレオチド生合成(例えば、Muscleblind及びQuaking(QKI)スプライシング因子)を調節し得る。
【0150】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドの頭-尾結合に隣接する標準スプライス部位を含み得る。
【0151】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、2つの3-ヌクレオチドバルジが隣接する4-塩基対ステムを含むバルジ-ヘリックス-バルジモチーフを含み得る。切断は、バルジ領域中の部位において生じ、末端5’-ヒドロキシル基及び2’、3’-環状ホスフェートを有する特徴的なフラグメントを生成する。環状化は、同じ分子の2’、3’-環状ホスフェートへの5’-OH基の求核攻撃によって進行して、3’、5’-ホスホジエステル架橋を形成する。
【0152】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、HPR要素を内包する多量体反復RNA配列を含み得る。HPRは、2’,3’-環状リン酸と5’-OH末端とを含む。HPR要素は線状の環状ポリリボヌクレオチドの5’末端及び3’末端を自己プロセシングして、それによりこれらの末端を一体にライゲートする。
【0153】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、自己ライゲーションを媒介する配列を含み得る。一実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、HDV配列(例えば、HDV複製ドメイン保存配列、GGCUCAUCUCGACAAGAGGCGGCAGUCCUCAGUACUCUUACUCUUUUCUGUAAAGAGGAGACUGCUGGACUCGCCGCCCAAGUUCGAGCAUGAGCC(Beeharry et al 2004)(配列番号24)又はGGCUAGAGGCGGCAGUCCUCAGUACUCUUACUCUUUUCUGUAAAGAGGAGACUGCUGGACUCGCCGCCCGAGCC(配列番号25)))を含むことにより自己ライゲートし得る。一実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、(例えばPSTVdにおける)ループE配列を含むことにより自己ライゲートし得る。別の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、自己環状化イントロン、例えば、5’及び3’スプライスジャンクション(slice junction)、又はグループI、グループII若しくはグループIIIイントロンなどの自己環状化触媒イントロンを含み得る。グループIイントロン自己スプライシング配列の非限定的な例としては、T4バクテリオファージ遺伝子tdに由来する自己スプライシング並べ替えイントロン-エクソン配列、及びテトラヒメナ属(Tetrahymena)の介在配列(IVS)rRNAを挙げることができる。
【0154】
他の環状化方法
一部の実施形態において、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドは、個々のイントロン内に又は隣接するイントロンにわたって反復又は非反復核酸配列を含む相補的配列を含み得る。反復核酸配列は、環状ポリリボヌクレオチドのセグメント内に存在する配列である。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、反復核酸配列を含む。一部の実施形態において、反復ヌクレオチド配列は、ポリCA又はポリUG配列を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドの別のセグメント中の相補的な反復核酸配列にハイブリダイズする少なくとも1つの反復核酸配列を含み、ハイブリダイズされたセグメントが内部二本鎖を形成する。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、1~10の間(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10)の反復核酸配列であって、環状ポリリボヌクレオチドの別のセグメント内の相補的な反復核酸配列にハイブリダイズし、ハイブリダイズされたセグメントが内部二本鎖を形成する、反復核酸配列を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、2つの反復核酸配列であって、環状ポリリボヌクレオチドの別のセグメント内の相補的な反復核酸配列にハイブリダイズし、ハイブリダイズされたセグメントが内部二本鎖を形成する、反復核酸配列を含む。一部の実施形態において、2つの別個の環状ポリリボヌクレオチドからの反復核酸配列及び相補的な反復核酸配列がハイブリダイズして、単一の環状化ポリリボヌクレオチドを生成し、ハイブリダイズされたセグメントが内部二本鎖を形成する。一部の実施形態において、相補的配列は、環状化のための線状ポリリボヌクレオチドの5’及び3’末端において見られる。一部の実施形態において、相補的配列は、約3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100又はそれを超える対合ヌクレオチドを含む。
【0155】
一部の実施形態において、環状化の化学的方法が、環状ポリリボヌクレオチドを生成するのに使用され得る。このような方法としては、限定はされないが、クリック化学(例えば、アルキン及びアジドに基づく方法又はクリック可能な塩基)、オレフィンメタセシス、ホスホロアミデートライゲーション、ヘミアミナール-イミン架橋、塩基修飾及びそれらの任意の組合せが挙げられる。
【0156】
一部の実施形態において、環状化の酵素的方法は、環状ポリリボヌクレオチドを生成するのに使用され得る。一部の実施形態において、ライゲーション酵素、例えばDNA又はRNAリガーゼは、環状ポリリボヌクレアーゼ若しくは相補体の鋳型、環状ポリリボヌクレアーゼの相補鎖又は環状ポリリボヌクレアーゼを生成するのに使用され得る。
【0157】
環状ポリリボヌクレオチドの環状化は、当該技術分野において公知の方法、例えばNucleic Acids Res,2015,43(4):2454-2465からのPetkovic及びMullerによる“RNA circularization strategies in vivo and in vitro”及びRNA Biol,2017,14(8):1018-1027からのMuller及びAppelによる“In vitro circularization of RNA”に記載されているものによって行われ得る。
【0158】
環状ポリリボヌクレオチドは、複製に有用な配列及び/又はモチーフをコードし得る。例示的な複製要素が、全体が参照により本明細書に援用される国際特許公開番号国際公開第2019/118919号パンフレットの段落[0280]~[0286]に記載されている。
【0159】
一部の実施形態において、線状の環状ポリリボヌクレオチドは、個々のイントロン内に、又は隣接するイントロンにわたって反復核酸配列又は非反復核酸配列のいずれかを含む相補配列を含み得る。反復核酸配列は、環状ポリリボヌクレオチドの一セグメント内に存在する配列である。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、反復核酸配列を含む。一部の実施形態において、反復ヌクレオチド配列は、ポリCA又はポリUG配列を含む。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドの別のセグメントにある相補的な反復核酸配列にハイブリダイズする少なくとも1つの反復核酸配列を含み、ここでハイブリダイズしたセグメントは、内部的な二本鎖を形成する。一部の実施形態において、2つの別個の環状ポリリボヌクレオチドからの反復核酸配列及び相補的な反復核酸配列がハイブリダイズして、単一の環状化ポリリボヌクレオチドを生成し、ここでハイブリダイズしたセグメントは、内部的な二本鎖を形成する。一部の実施形態において、相補配列は、線状の環状ポリリボヌクレオチドの5’末端及び3’末端に見られる。一部の実施形態において、相補配列は、約3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個、又はそれ以上の対合したヌクレオチドを含む。
【0160】
一部の実施形態では、化学的環状化方法を用いて環状ポリリボヌクレオチドが生成されてもよい。かかる方法としては、限定はされないが、クリック化学(例えば、アルキン及びアジドに基づく方法、又はクリック化学が可能な塩基)、オレフィンメタセシス、ホスホルアミデートライゲーション、ヘミアミナール-イミン架橋、塩基修飾、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0161】
複製要素
環状ポリリボヌクレオチドは、複製に有用な配列及び/又はモチーフをコードし得る。環状ポリリボヌクレオチドの複製は、相補体環状ポリリボヌクレオチドの生成によって行われ得る。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、転写を開始するためのモチーフを含み、ここで転写は、内因性細胞機構(DNA依存性RNAポリメラーゼ)か、又は環状ポリリボヌクレオチドによってコードされるRNA依存性RNAポリメラーゼかのいずれかによってドライブされる。ローリングサークル転写イベントの産物がリボザイムにより切断されると、相補的な環状ポリリボヌクレオチド又は増殖した環状ポリリボヌクレオチドのいずれかが単位長さで生成され得る。リボザイムは、環状ポリリボヌクレオチド、その相補体によるか、又はRNA配列によってトランスでコードされてもよい。一部の実施形態において、コードされるリボザイムは、リボザイムの活性を調節する(阻害又は促進する)ことにより環状RNA増殖を制御する配列又はモチーフを含み得る。一部の実施形態において、単位長さ配列は、細胞RNAリガーゼにより環状の形態にライゲートされてもよい。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、自己増幅を助ける複製要素を含む。かかる複製要素の例としては、限定はされないが、本明細書の他の部分に記載されるHDV複製ドメイン、ジャガイモやせいもウイロイドのRNAプロモーター(例えば、Kolonko 2005 Virologyを参照のこと)、及びアンチゲノム5’-CGGGUCGGCAUGGCAUCUCCACCUCCUCGCGGUCCGACCUGGGCAUCCGAAGGAGGACGCACGUCCACUCGGAUGGCUAAGGGAGAGCCA-3’(配列番号26)又はゲノム5’-UGGCCGGCAUGGUCCCAGCCUCCUCGCUGGCGCCGGCUGGGCAACAUUCCGAGGGGACCGUCCCCUCGGUAAUGGCGAAUGGGACCCA-3’(配列番号27)などの複製コンピテントな環状RNAセンス及び/又はアンチセンスリボザイムが挙げられる。
【0162】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、複製の助けとなる本明細書に記載されるとおりの少なくとも1つのスタガー要素を含む。環状ポリリボヌクレオチド内にあるスタガー要素は、環状ポリリボヌクレオチドから複製される長い転写物を特異的な長さに切断することができ、続いてそれが環状化して環状ポリリボヌクレオチドに対する相補体を形成することができる。
【0163】
別の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、環状ポリリボヌクレオチドから複製される長い転写物を特異的長さに切断するための少なくとも1つのリボザイム配列を含み、ここでは別のコードされるリボザイムが、その転写物をリボザイム配列において切断する。環状化により、環状ポリリボヌクレオチドに対する相補体が形成される。
【0164】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、例えばエキソヌクレアーゼによる分解に実質的に抵抗性である。
【0165】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは細胞内で複製する。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは細胞内で約10%~20%、20%~30%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~75%、75%~80%、80%~85%、85%~90%、90%~95%、95%~99%、又は間にある任意のパーセンテージの速度で複製する。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは細胞内で複製し、娘細胞に受け継がれる。一部の実施形態において、細胞は、少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は99%の効率で少なくとも1つの環状ポリリボヌクレオチドを娘細胞に受け継ぐ。一部の実施形態において、減数分裂中の細胞は、少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は99%の効率で環状ポリリボヌクレオチドを娘細胞に受け継ぐ。一部の実施形態において、有糸分裂中の細胞は、少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又は99%の効率で環状ポリリボヌクレオチドを娘細胞に受け継ぐ。
【0166】
一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは宿主細胞内で複製する。一実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、哺乳類細胞、例えば、ヒト細胞において複製する能力を有する。
【0167】
一部の実施形態では、環状ポリリボヌクレオチドは宿主細胞において複製するが、環状ポリリボヌクレオチドは、例えば宿主の染色体では、宿主のゲノムに組み込まれない。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、例えば宿主の染色体では、無視できる程度の組換え頻度しか呈しない。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドは、例えば宿主の染色体では、例えば、約1.0cM/Mb、0.9cM/Mb、0.8cM/Mb、0.7cM/Mb、0.6cM/Mb、0.5cM/Mb、0.4cM/Mb、0.3cM/Mb、0.2cM/Mb、0.1cM/Mb未満、又はそれより低い組換え頻度を呈する。
【0168】
線状及び環状RNAの検出
環状RNA医薬調製物中の線状RNAの存在は、予期せぬ、時に望ましくない効果を及ぼし得る。したがって、環状RNAを線状RNAと比べて濃縮し、分離し、及び/又は精製し得る;線状RNAをモニタし、評価し、及び/又は制御することのできる方法(例えば、環状RNA調製物の製造方法);及びかかる医薬組成物及び調製物を使用する方法。一部の実施形態において、環状RNA調製物は、閾値レベル以下の線状RNAを有し、例えば、環状RNA調製物は、線状RNAと比べて濃縮されるか、又は線状RNAが減少するように精製される。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド集団は、環状ポリリボヌクレオチドと線状ポリリボヌクレオチドとの混合物に閾値レベルの環状ポリリボヌクレオチドが含まれるように濃縮される。
【0169】
概して、医薬調製物中の要素の検出及び定量化は、目的の成分(例えば、環状RNA、線状RNA、断片、不純物等)若しくは類似の材料(例えば、環状RNAの標準として環状RNA構造と同じ配列の線状RNA構造を使用する)のいずれかである参照標準の使用を含み、又は試験試料からの内部標準若しくはシグナルの使用を含む。一部の実施形態において、標準を使用して、既知量又は相対量の材料についての検出器からの応答(レスポンスファクター)を確立する。一部の実施形態において、レスポンスファクターは、1つ又は複数の濃度の標準から(例えば、線形回帰分析を用いて)決定される。一部の実施形態において、次にレスポンスファクターを使用して、その成分に起因するシグナルから目的の材料の量が決定される。一部の実施形態において、レスポンスファクターは、1の値であるか、又は1の値を有すると仮定される。
【0170】
一部の実施形態において、医薬組成物中の環状RNAと比べた線状RNAの検出及び定量化が、線状バージョンの環状ポリリボヌクレオチドとの比較を用いて決定される。一部の実施形態において、線状バージョンの環状ポリリボヌクレオチドを使用し、及び1のレスポンスファクターを仮定して作成した検量線を使用して、医薬組成物中の全リボヌクレオチドの質量が決定される。一部の実施形態において、複数の既知量の線状バージョンの環状ポリリボヌクレオチドのバンド強度によって作成した検量線を医薬調製物中の環状ポリリボヌクレオチドのバンド強度と比較することにより、医薬調製物中の環状ポリリボヌクレオチドのw/wパーセンテージが決定される。一部の実施形態において、ゲルベースの電気泳動法の間にバンドが生成され、バンド強度がゲルイメージャ(例えば、E-gelイメージャ)によって測定される。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド調製物は、本明細書に記載されるとおり評価したとき閾値量未満(例えば、ここで閾値量は、参照基準、例えば、環状ポリリボヌクレオチド調製物の医薬品出荷規格である)の線状ポリリボヌクレオチド分子を含む。
【0171】
一部の実施形態において、医薬組成物中の全RNAと比べたニックRNAの検出及び定量化が、環状RNAを含む調製物のゲル抽出後にシーケンシングすることにより決定される。一部の実施形態において、医薬組成物中の線状RNAと比べたニックRNAの検出及び定量化が、環状RNAを含む調製物のゲル抽出後にシーケンシングすることにより決定される。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチド調製物は、本明細書に記載されるとおり評価したとき閾値量未満(例えば、ここで閾値量は、参照基準、例えば、環状ポリリボヌクレオチド調製物の医薬品出荷規格である)のニックRNA、線状RNA、又は線状RNAとニックRNAとの組み合わせを含む。例えば、調製物中に存在する線状ポリリボヌクレオチド分子の量の参照基準は、調製物中の総リボヌクレオチド分子を基準として30%、20%、15%、10%、1%、0.5%、又は0.1%以下の線状ポリリボヌクレオチド分子、又はこれらの間にある任意のパーセンテージである。一部の実施形態において、調製物中に存在するニックポリリボヌクレオチド分子の量の参照基準は、調製物中の総リボヌクレオチド分子を基準として30%、20%、15%、10%、1%、0.5%、又は0.1%以下、又はこれらの間にある任意のパーセンテージのニックポリリボヌクレオチド分子である。一部の実施形態において、調製物中に存在する線状及びニックポリリボヌクレオチド分子の量の参照基準は、調製物中の総リボヌクレオチド分子を基準として40%、30%、20%、15%、10%、1%、0.5%、又は0.1%以下、又はこれらの間にある任意のパーセンテージの線状ポリリボヌクレオチド分子とニックポリリボヌクレオチド分子との組み合わせである。
【0172】
一部の実施形態において、標準は、試料と同じ条件下で実行される。例えば、標準は、試料と同じ種類のゲル、同じ緩衝液、及び同じ露光量で実行される。更なる実施形態では、標準は、試料と並行して実行される。一部の実施形態において、要素の定量化は対象調製物からの複数の試料で(例えば、2回又はトリプリケートで)繰り返され、平均結果が求められる。一部の実施形態において、線状RNAの定量化は、並列キャピラリー電気泳動法を用いて(例えば、Fragment Analyzer又はUV検出を伴う分析的HPLCを用いて)測定される。
【0173】
或いは、存在する線状及び環状RNAの量を測定するため、2組のプライマー:ライゲーション部位にわたる1つと、ORFに特異的な1つとを使用したqPCR逆転写(RT-qPCR)。ライゲーション部位にわたるプライマーは、環状RNAのレベルに関して報告する一方、ORFに特異的なプライマーは、環状及び線状両方のRNAに関して報告する。一部の実施形態において、逆転写反応は、逆転写酵素(例えば、Super-Script II:RNアーゼH;Invitrogen)及びランダムヘキサマーで製造者の指示に従い実施される。一部の実施形態において、増幅されたPCR産物は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を用いて分析され、臭化エチジウム染色によって可視化される。一部の実施形態において、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮倍数を推定するために、デンシトメトリーを用いてPCR産物を定量化してもよく、全RNA試料の濃度を紫外吸光度により測定してもよい。
【0174】
他の実施形態
記載された本発明の組成物、方法及び使用の様々な変更及び変形は、当業者であれば、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく明らかであろう。本発明を特定の実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明がそのような特定の実施形態に過度に限定されるべきでないことを理解されたい。実際、当業者に明らかな、本発明を実施するための記載されたモードの様々な変更は、本発明の範囲内であることが意図される。
【0175】
すべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許、又は特許出願がその全体を参照することにより本明細書に組み込まれることが具体的且つ個々に示されたのと同程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0176】
本開示を限定するのではなく例示することが意図される以下の実施例は、本明細書に記載される組成物及び方法がどのように使用され、作製され、評価され得るかの説明を当業者に提供するために提示される。実施例は、本開示を純粋に例示するものであることが意図されており、本発明者らが本発明とみなすものの範囲を限定することは意図されていない。
【0177】
実施例1:線状ポリリボヌクレオチドの分解のためのエキソヌクレアーゼ濃度の最適化
本例は、5’及び3’エキソヌクレアーゼを使用して線状ポリリボヌクレオチドを分解できることを実証する。
【0178】
この実験では、ガウシアルシフェラーゼ(gLuc)をコードする2.5μgの線状ポリリボヌクレオチドを0U、0.5U、0.625U、1U、1.25U、2.5U又は5Uの3’エキソヌクレアーゼであるRNアーゼRにより37℃で90分間消化した。各消化はTerminator(商標)A緩衝液(Lucigen)中で実施し、EDTAでクエンチし、及びゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。この実験の結果は、3’エキソヌクレアーゼRNアーゼRにより線状ポリリボヌクレオチドが分解されたことを示している(図1)。実施例5及び7においては、1μgのRNA当たり0.5UのRNアーゼRを選択し、使用した(図6図8図10)。
【0179】
この実験では、gLucをコードする2.5μgの線状ポリリボヌクレオチドを0U、0.025U、0.03U、0.05U、0.0625U、0.125U又は0.25Uの5’エキソヌクレアーゼであるTerminator(商標)エキソヌクレアーゼにより37℃で60分間消化した。各消化はTerminator(商標)A緩衝液(Lucigen)中で実施し、EDTAでクエンチし、及びゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。この実験の結果は、Terminator(商標)5’エキソヌクレアーゼにより線状ポリリボヌクレオチドが分解されたことを示している(図2)。実施例5及び7においては、1μgのRNA当たり0.025UのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼを選択し、使用した(図6図8図10)。
【0180】
この実験では、gLucをコードする2.5μgの線状ポリリボヌクレオチドを0U、0.025U、0.03U、0.05U、0.0625U、0.125U又は0.25Uの5’エキソヌクレアーゼであるXrn-1により37℃で60分間消化した。各消化はTerminator(商標)A緩衝液(Lucigen)中で実施し、EDTAでクエンチし、及びゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。この実験の結果は、5’エキソヌクレアーゼXrn-1により線状ポリリボヌクレオチドが分解されたことを示している(図3)。実施例5及び7においては、1μgのRNA当たり0.05UのXrn-1を選択し、使用した(図6図8図10)。
【0181】
この実施例1により、5’及び3’エキソヌクレアーゼが線状ポリリボヌクレオチドを分解することが実証された。
【0182】
実施例2:ガウシアルシフェラーゼをコードする環状ポリリボヌクレオチドのインビトロ産生
本例は、環状ポリリボヌクレオチドのインビトロ産生について記載する。
【0183】
環状ポリリボヌクレオチドを、IRES及びガウシアルシフェラーゼ(GLuc)をコードするORF、及びIRES-ORFに隣接する2つのスペーサー要素で設計した。以下の2つの方法のうちの一方を使用したインビトロ合成(IVT)を用いて環状ポリリボヌクレオチドを生成した。
【0184】
第1の方法では、上記の要素を含むDNAセグメントからのT7 RNAポリメラーゼを使用したIVTにより未修飾の線状ポリリボヌクレオチドを合成した。転写されたポリリボヌクレオチドをRNA精製システム(New England Biolabs,Inc.)で精製し、RNA 5’ホスホヒドロラーゼ(RppH)(New England Biolabs、M0356)で製造者の指示に従い処理し、及びRNA精製システムで再び精製した。RppH処理した線状ポリリボヌクレオチドをスプリントDNAを使用して環状化した。
【0185】
第2の方法では、上記の要素を含むDNAセグメントからのT7 RNAポリメラーゼを使用したIVTにより未修飾の線状ポリヌクレオチドを合成した。IVTに使用したヌクレオチド混合物には、5’一リン酸を持つRNAが優先的に産生されるように、グアノシン三リン酸と比べて過剰量のグアノシン一リン酸が含まれた。転写されたポリリボヌクレオチドをRNA精製システム(New England Biolabs,Inc.)で製造者の指示に従い精製した。精製したIVT産物をスプリントDNAを使用して環状化した。
【0186】
環状ポリリボヌクレオチドを以下のとおりのスプリントライゲーションにより生成した:転写された線状ポリリボヌクレオチド及びDNAスプリント(5’-GTTTTTCGGCTATTCCCAATAGCCGTTTTG-3’;配列番号1)を混合してアニールし、RNAリガーゼで処理することにより、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を作製した。この環状化反応の副産物は、未反応の線状ポリリボヌクレオチドである。
【0187】
実施例3:5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用した線状ポリリボヌクレオチドの選択的分解
本例は、5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用して線状ポリリボヌクレオチドを選択的に分解できることを実証する。
【0188】
環状化反応後の未反応の線状ポリリボヌクレオチドを分解するため、5’エキソヌクレアーゼと3’エキソヌクレアーゼとの組み合わせを使用した。この実施例では、実施例2に記載されるとおり作製した環状及び線状の両方のポリリボヌクレオチドを含む2.5μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を0.5UのTerminator(商標)5’エキソヌクレアーゼ及び1U、2U、4U、6U、8U又は10Uの3’エキソヌクレアーゼRNアーゼRによって同時に37℃で90分間消化した。各消化はTerminator(商標)A緩衝液(Lucigen)中で実施し、EDTAでクエンチし、及びゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状)、及びライゲーション後に存在した環状ポリリボヌクレオチドの量と比較してエキソヌクレアーゼによる消化後に残留している環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージ(%eRNA残留)をImage Labにより分析した。本実施例の結果は、5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせがライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の線状ポリリボヌクレオチドを選択的に分解したことを示している(図4)。
【0189】
実施例4:5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用した環状ポリリボヌクレオチドの濃縮
本例は、スケールアップした反応で5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用して環状ポリリボヌクレオチドを濃縮できることを実証する。
【0190】
この実施例では、実施例2に記載されるとおり作製した1mgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を4000UのRNアーゼR及び200UのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼによって同時に37℃で60分間消化した。消化は、Terminator(商標)A緩衝液中で実施し、EDTAでクエンチし、及びゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状)、及びライゲーション後に存在した環状ポリリボヌクレオチドの量と比較してエキソヌクレアーゼによる消化後に残留している環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージ(%eRNA残留)をImage Labにより分析した。本実施例の結果は、組み合わせの5’及び3’エキソヌクレアーゼを使用してライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドが濃縮されたことを示している(図5)。
【0191】
実施例5:低濃度の5’及び3’エキソヌクレアーゼを使用した環状ポリリボヌクレオチドの濃縮
本例は、低濃度の5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを用いて環状ポリリボヌクレオチドを濃縮できることを実証する。
【0192】
この実施例では、実施例2に記載されるとおり作製した2.5μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を(i)1.25UのRNアーゼR及び0.0625UのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼ;又は(ii)1.25U RNアーゼR及び0.0625UのXrn-1のいずれかによって同時にTerminator(商標)A緩衝液中37℃で60分間消化した。各消化をEDTAでクエンチし、ゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogenで画像化した エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状)、及びライゲーション後に存在した環状ポリリボヌクレオチドの量と比較してエキソヌクレアーゼによる消化後に残留している環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージ(%eRNA残留)をImage Labにより分析した。本実施例の結果は、最適濃度の5’及び3’エキソヌクレアーゼで同時に消化すると、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の線状ポリリボヌクレオチドが選択的に分解され、濃縮環状ポリリボヌクレオチド調製物が作り出されることを示している(図6)。
【0193】
実施例6:5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用した環状ポリリボヌクレオチドの濃縮
本実施例は、5’及び3’エキソヌクレアーゼの2つの異なる組み合わせを使用した環状ポリリボヌクレオチドの濃縮を比較する。
【0194】
この例では、実施例2に記載されるとおり作製した2.5μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を1μgのRNA当たり0.5UのRNアーゼR(Lucigen又はMC Labs)及び0.025UのTerminator(商標)(Lucigen)エキソヌクレアーゼ;又は(ii)1μgのRNA当たり0.5UのRNアーゼR(Lucigen又はMC Labs)及び0.2UのXrn-1(New England Biolabs)によって同時にTerminator(商標)A緩衝液中37℃で60分間消化した。各消化をEDTAでクエンチし、ゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状)、及びライゲーション後に存在した環状ポリリボヌクレオチドの量と比較してエキソヌクレアーゼによる消化後に残留している環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージ(%eRNA残留)をImage Labにより分析した。
【0195】
図7は、本実施例の結果を示す(レーン1:NEB ssRNAラダー;レーン2:2.5μg未処理ライゲーション後混合物;レーン3:RNアーゼR+Terminator(商標)エキソヌクレアーゼで処理した2.5μgのライゲーション後混合物;レーン4:RNアーゼR(Lucigen)+Xrn-1エキソヌクレアーゼで処理した2.5μgのライゲーション後混合物;レーン5:Xrn-1で処理した2.5μgのライゲーション後混合物;レーン6:Terminator(商標)単独で処理した2.5μgのライゲーション後混合物;レーン7:RNアーゼR(Lucigen)単独で処理した2.5μgライゲーション後混合物;レーン8:Terminator(商標)エキソヌクレアーゼ及びRNアーゼR(MC Labs)で処理した2.5μgライゲーション後混合物;レーン9:Xrn-1及びRNアーゼR(MC Labs)で処理した2.5μgライゲーション後混合物混合物;レーン:10:RNアーゼR(MC Labs)で処理した2.5μgライゲーション後混合物)。ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物は、64%環状ポリリボヌクレオチドからなった(レーン2)。RNアーゼR及びTerminator(商標)エキソヌクレアーゼによる消化後、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドは、80%(レーン3及びレーン8)環状ポリリボヌクレオチドに濃縮された。RNアーゼR+Xrn-1による消化後、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドは、Lucigen RNアーゼRで76%(レーン4)及びMC Labs RNアーゼRで81%(レーン9)に濃縮された。Xrn-1又はTerminator(商標)エキソヌクレアーゼのみを単独で使用したとき、環状ポリリボヌクレオチドのライゲーション後混合物は、それぞれ69%(レーン5)又は74%(レーン7)に濃縮された。Lucigen RNアーゼR又はMC Labs RNアーゼRのみを単独で使用したとき、環状ポリリボヌクレオチドのライゲーション後混合物は、それぞれ61%(レーン6)又は74%(レーン10)に濃縮された。
【0196】
実施例7.環状ポリリボヌクレオチドの濃縮のためのエキソヌクレアーゼ反応時間の同定
本例は、環状ポリリボヌクレオチドの濃縮に使用した5’及び3’エキソヌクレアーゼによる線状ポリリボヌクレオチドの消化の反応時間を比較する。
【0197】
この実験では、実施例2に記載されるとおり作製した3.75μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を(i)Terminator(商標)A緩衝液中15UのRNアーゼR及び1.5UのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼのいずれかによって同時に消化した:反応は37℃で15、30、45、60、75、90、105、又は120分にわたって実施した。各消化をEDTAでクエンチし、ゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージをImage Labにより分析した。本実施例の結果は、反応時間が90及び分以下になると、ライゲーション後及びエキソヌクレアーゼによる消化前に残留した環状ポリリボヌクレオチドの少なくとも50%が、5’及び3’エキソヌクレアーゼの両方による消化後にもなお残留したままであったことを示している。本実施例の結果はまた、反応時間が15分以上になると、結果として得られる全ポリリボヌクレオチド(poly ribonucleoties)には少なくとも80%の環状ポリリボヌクレオチドが含まれることも示している。試験した各反応時間の結果は、表2に要約する。
【0198】
【表2】
【0199】
実施例8:環状ポリリボヌクレオチドの濃縮のための緩衝液条件の同定
本例は、5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用した環状ポリリボヌクレオチドの濃縮のための緩衝液条件の同定について記載する。
【0200】
実験1
この実験では、実施例2に記載されるとおり作製した2.5μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を(i)1.25UのRNアーゼR及び0.0625UのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼ;又は(ii)1.25UのRNアーゼR及び0.0625UのXrn-1のいずれかによって同時に37℃で60分間、以下の緩衝液のうちの1つの中で消化した:
緩衝液T:Terminator(商標)A緩衝液(Lucigen;有標)
緩衝液1:100mM NaCl、50mMトリス-HCl(pH8)
緩衝液2:100mM NaCl、50mMトリス-HCl(pH8)、0.5mM MgCl
緩衝液3:100mM NaCl、50mMトリス-HCl(pH8)、1mM DTT
緩衝液4:100mM NaCl、50mMトリス-HCl(pH8)、0.5mM MgCl、1mM DTT
【0201】
対照として、実施例2に記載されるとおり作製した2.5μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を緩衝液1、緩衝液2、緩衝液3又は緩衝液4中にエキソヌクレアーゼ消化なしに混合した(緩衝液対照)。各消化をEDTAでクエンチし、ゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状)、及びライゲーション(ligattion)後に存在した環状ポリリボヌクレオチドの量と比較してエキソヌクレアーゼによる消化後に残留している環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージ(%eRNA残留)をImage Labにより分析した。
【0202】
図8は、様々な緩衝液及び対応する緩衝液対照中でのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼとRNアーゼRとの組み合わせによる消化の結果を示す(レーン1:NEB ssRNAラダー;レーン2:Terminator(商標)A緩衝液(Terminator(商標)+RNアーゼR);レーン3:緩衝液1対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン4:緩衝液1(Terminator(商標)+RNアーゼR);レーン5:緩衝液2対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン6:緩衝液2(Terminator(商標)+RNアーゼR);レーン7:緩衝液3対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン8:緩衝液3(Terminator(商標)+RNアーゼR);レーン9:緩衝液4対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン10:緩衝液4(Terminator(商標)+RNアーゼR))。ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドは、緩衝液2中でのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼとRNアーゼRとの組み合わせによる消化後に83%に濃縮された(レーン6)。
【0203】
図9は、様々な緩衝液及び対応する緩衝液対照中でのXrn-1とRNアーゼRとの組み合わせによる消化の結果を示す(レーン1:NEB ssRNAラダー;レーン2:Terminator(商標)A緩衝液(Xrn-1+RNアーゼR);レーン3:緩衝液1対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン4:緩衝液1(Xrn-1+RNアーゼR);レーン5:緩衝液2対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン6:緩衝液2(Xrn-1+RNアーゼR);レーン7:緩衝液3対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン8:緩衝液3(Xrn-1+RNアーゼR);レーン9:緩衝液4対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン10:緩衝液4(Xrn-1+RNアーゼR))。これらの結果は、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドが緩衝液2中でのXrn-1とRNアーゼRとの組み合わせによる消化後に85%に濃縮されたことを示している(レーン6)。
【0204】
実験2
この実験では、実施例2に記載されるとおり調製した2.5μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を0.0625UのXrn-1及び1.25U RNアーゼRによって同時に37℃で60分間、以下の緩衝液のうちの1つの中で消化した:
Terminator(商標)A緩衝液(Lucigen;有標)
Xrn-1緩衝液(100mM NaCl、50mMトリス-HCl、10mM MgCl2、1mM DTT;pH7.9)
RNアーゼR緩衝液(Lucigen)(100mM KCl、20mMトリス-HCl(pH8)、0.1mM MgCl2)
緩衝液2:100mM NaCl、50mMトリス-HCl(pH8)、0.5mM MgCl2
【0205】
対照として、実施例2に記載されるとおり作製した2.5μgのライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を各緩衝液中にエキソヌクレアーゼ消化なしに混合した(緩衝液対照)。各消化をEDTAでクエンチし、ゲル電気泳動により分析した。TBE-尿素ゲルをSYBR Safeで染色し、iBrightイメージャー(Invitrogen)で画像化した。エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状)、及びライゲーション後に存在した環状ポリリボヌクレオチドの量と比較してエキソヌクレアーゼによる消化後に残留している環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージ(%eRNA残留)をImage Labにより分析した。図10は、様々な緩衝液及び対応する緩衝液対照中でのXrn-1とRNアーゼRとの組み合わせによる消化の結果を示す(レーン1:NEB ssRNAラダー;レーン2:Terminator(商標)A緩衝液対照(エキソヌクレアーゼなし);レーン3:Terminator(商標)A緩衝液(Xrn-1+RNアーゼR);レーン4:Xrn-1緩衝液対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン5:Xrn-1緩衝液(Xrn-1+RNアーゼR);レーン6:RNアーゼR緩衝液対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン7:RNアーゼR緩衝液(Xrn-1+RNアーゼR);レーン8:緩衝液2対照(エキソヌクレアーゼ消化なし);レーン9:緩衝液2(Xrn-1+RNアーゼR)。これらの結果は、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドがRNアーゼR緩衝液2中でのXrn-1とRNアーゼRとの組み合わせによる消化後に87%に濃縮されたことを示している(レーン7)。ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドは、緩衝液2中でのXrn-1とRNアーゼRとの組み合わせによる消化後に85%に濃縮された(レーン9)。
【0206】
実施例9:濃縮した環状RNAからのガウシアルシフェラーゼのインビトロ発現
本例は、二重エキソヌクレアーゼを使用して濃縮した環状ポリリボヌクレオチドが、二重エキソヌクレアーゼを使用せずに逆相クロマトグラフィーを使用して精製した環状ポリリボヌクレオチドと同等のレベルでGLucを発現することを実証する。
【0207】
二重エキソヌクレアーゼ、逆相精製試料を生成するため、実施例2に記載されるとおり作製したライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を1μgのRNA当たり0.025UのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼ及び1μgのRNA当たり0.5U RNアーゼRによって同時に37℃で60分間消化した。消化をEDTAでクエンチし、逆相クロマトグラフィーにより精製した。クロマトグラフィー及び緩衝液交換後、精製した環状ポリリボヌクレオチドの発現をインビトロ発現により試験した。
【0208】
逆相精製試料を生成するため、ライゲーション後ポリリボヌクレオチド混合物を逆相クロマトグラフィーにより精製した。クロマトグラフィー及び緩衝液交換後、精製した環状ポリリボヌクレオチドの発現をインビトロ発現により試験した。
【0209】
HeLa細胞(10,000個)に0.1pmolの精製環状ポリリボヌクレオチドをトランスフェクション試薬(Lipofectamine MessengerMax(ThermoFisher、LMRNA015))を使用してトランスフェクトした。6時間、24時間、48時間及び72時間の時点でガウシアルシフェラーゼ活性アッセイ(Pierce Gaussia Luciferase Flash Assay Kit(16159))を使用してガウシアルシフェラーゼの活性を測定することにより上清を分析した。
【0210】
この実施例により、濃縮した環状RNAからのタンパク質発現の成功が実証された(図11)。
【0211】
実施例10:様々な分子量の環状ポリリボヌクレオチドの選択的濃縮
本例は、広範囲の分子量サイズにわたって5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用して環状ポリリボヌクレオチドを選択的に濃縮する能力を実証する。
【0212】
この例では、150.0μgの様々なポリリボヌクレオチドを1μgのRNA当たり0.625UのRNアーゼR及び0.0625UのTerminator(商標)エキソヌクレアーゼによって同時に緩衝液2中37℃で60分間消化した。評価したコードされるポリリボヌクレオチドORFの各々について分子量は様々であった。RNA1~RNA6の各々は、分子量が左から右に増加する、1.2kb未満から5.4kb超までの範囲の異なるサイズの発現配列を持つ同一の環状ポリリボヌクレオチドである。いずれの場合も、消化をEDTAでクエンチし、アニオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX-HPLC)により分析した。エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状RNA)を消化前の混合物の環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージと比較した。図12は、1.2kb未満のサイズ、1.2~1.4kb、1.4~1.6kb、3.5~4.5kb、4.5~5.4kbの範囲、及び5.4kb超のサイズの環状ポリリボヌクレオチドの選択的濃縮に関する本例の結果を示す。消化前の全ポリリボヌクレオチドの環状集団は、それぞれ、71.4、59.0、64.1、21.9、21.2、及び17.6パーセントと決定された。RNアーゼR及びTerminator(商標)による消化後、これらの同じポリリボヌクレオチドの環状集団は、それぞれ、86.0、79.4、80.2、32.0、48.9、及び25.7パーセントにまで濃縮されたことが分かった。
【0213】
実施例11:様々な5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用した環状ポリリボヌクレオチドの濃縮
本例は、4つの5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせを使用して環状ポリリボヌクレオチド集団を選択的に濃縮する能力を実証する
【0214】
この例では、150.0μgのポリリボヌクレオチドを1μgのRNA当たり(i)0.625UのRNアーゼR(a)及び0.0625UのTerminator(商標);(ii)0.625U RNアーゼR(a)及び0.0625UのXrn-1;(iii)0.625U RNアーゼR(b)及び0.0625U Terminator(商標);又は(iv)0.625U RNアーゼR(b)及び0.0625U Xrn-1エキソヌクレアーゼによって同時に37℃で60分間消化した。各消化をEDTAでクエンチし、アニオン交換高速液体クロマトグラフィー(AEX-HPLC)により分析した。エキソヌクレアーゼによる消化後の全ポリリボヌクレオチドのうち環状ポリリボヌクレオチドであるパーセンテージ(%環状RNA)を消化前の環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージと比較した。本例の結果は、様々な5’及び3’エキソヌクレアーゼの組み合わせで環状ポリリボヌクレオチド種の選択的濃縮を実現できることを実証している。図13は、(i)RNアーゼR(a)及びTerminator(商標);(ii)RNアーゼR(a)及びXrn-1;(iii)RNアーゼR(b)及びTerminator(商標);及び(iv)RNアーゼR(b)及びXrn-1を使用した同時消化の結果を示す。IVT後ポリリボヌクレオチド混合物中の環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージは、同時消化プロセス前は僅か18.2%であった。同時消化後、環状ポリリボヌクレオチドのパーセンテージは、それぞれ、(i)36.0±0.91;(ii)39.0±0.03;(iii)30.2±0.70;及び(iv)36.5±2.23パーセントに濃縮されたことが分かった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024523054000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-03-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
配列表
本願は、電子形式の配列表と共に出願されるものである。この配列表は、サイズが6,307バイトである2023年3月15日に作成された51509-034WO2_Sequence_Listing_3_15_23__ST25という表題のファイルとして提供される。この配列表の電子形式での情報は、全体として参照により本明細書に援用される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】変更
【補正の内容】
【配列表】
2024523054000001.app
【国際調査報告】