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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-26
(54)【発明の名称】光学拡散フィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20240619BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240619BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240619BHJP
   B29C 48/92 20190101ALI20240619BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20240619BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/20
B29C48/08
B29C48/92
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572587
(86)(22)【出願日】2022-05-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 IB2022054163
(87)【国際公開番号】W WO2022248952
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】63/193,842
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ストバー,カール エー.
(72)【発明者】
【氏名】フォーサイス,ベンジャミン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン,デイヴィッド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,スティーブン エー.
【テーマコード(参考)】
2H042
2H148
2H149
4F207
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA15
2H042BA16
2H148AA05
2H148AA18
2H149AA00
2H149AB01
2H149BA01
2H149BA02
2H149BA11
2H149FA06Z
2H149FA08Z
2H149FA12Z
2H149FA13Z
2H149FC06
2H149FD03
2H149FD09
2H149FD12
2H149FD30
2H149FD46
4F207AG01
4F207AR06
4F207KA01
4F207KA17
4F207KL84
4F207KM15
(57)【要約】
光学拡散フィルム(200)が、バインダー(20)内に分散した複数の粒子(10)を含む。粒子(10)及びバインダー(20)は、光学拡散フィルム(200)の同一の面内ブロック方向に沿ったそれぞれの屈折率n1b及びn2bと、ブロック方向に直交する面内通過方向に沿ったそれぞれの屈折率n1p及びn2pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、n1bとn2bとの間の差の大きさが約0.05よりも大きく、n1pとn2pとの間の差の大きさが約0.05よりも小さい。実質的に垂直に入射する光について、また少なくとも第1の波長に対して、光学拡散フィルム(200)は、ブロック方向(b)に沿って偏光した光については光学拡散性が高く、直交する通過方向(p)に沿って偏光した光については光学拡散性が低くあり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー内に分散した複数の粒子を含む光学拡散フィルムであって、前記粒子及び前記バインダーが、前記光学拡散フィルムの同一の面内ブロック方向に沿ったそれぞれの屈折率n1b及びn2bと、前記ブロック方向に直交する面内通過方向に沿ったそれぞれの屈折率n1p及びn2pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、
n1bとn2bとの間の差の大きさが約0.05よりも大きく、
n1pとn2pとの間の差の大きさが約0.05よりも小さく、
前記第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、前記光学拡散フィルムが、
前記入射光が前記ブロック方向に沿って偏光しているときは拡散光学透過率TDb及び拡散光学反射率RDbを有し、TDb/RDb≧4であり、
前記入射光が前記通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び拡散光学透過率TDpを有し、TTp/TDp≧1.1である、
光学拡散フィルム。
【請求項2】
前記第1の波長を有し実質的に垂直に入射する前記光について、前記光学拡散フィルムが、前記入射光が前記通過方向に沿って偏光しているときは拡散光学反射率RDpを有し、TTp/RDp≧10である、請求項1に記載の光学拡散フィルム。
【請求項3】
前記ブロック方向に沿って偏光した実質的に垂直に入射する光について、前記光学拡散フィルムの全光学透過率が、前記ブロック方向及び前記通過方向をそれぞれ含む第1の散乱面及び第2の散乱面において第1の強度分布及び第2の強度分布を有し、前記第1の強度分布及び前記第2の強度分布が半値全幅F1及びF2をそれぞれ有し、F2/F1≧1.5である、請求項1又は2に記載の光学拡散フィルム。
【請求項4】
前記光学拡散フィルムが、前記通過方向と約20度未満の角度を成す実質的に平行な複数の押出ダイラインを含む、押出プロセスによって形成された請求項1~3のいずれか一項に記載の光学拡散フィルム。
【請求項5】
前記バインダーが複屈折性の第1の熱可塑性ポリマーを含み、前記粒子が実質的に光学的に等方性の第2の熱可塑性ポリマーを含み、前記第1の熱可塑性ポリマー及び前記第2の熱可塑性ポリマーが、前記第1の熱可塑性ポリマーの融解温度及び前記第2の熱可塑性ポリマーの融解温度よりも高い温度で非混和性である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学拡散フィルム。
【請求項6】
前記ブロック方向に沿って偏光した実質的に垂直に入射する光についての光学ヘイズHbと、前記通過方向に沿って偏光した実質的に垂直に入射する光についての光学ヘイズHpとを有し、Hb/Hp≧1.5である、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学拡散フィルム。
【請求項7】
前記粒子が前記面内ブロック方向に沿って細長く、約10より大きい平均アスペクト比を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学拡散フィルム。
【請求項8】
バインダー内に分散した複数の粒子を含む光学拡散フィルムであって、前記粒子及び前記バインダーが、前記光学拡散フィルムの同一の面内ブロック方向に沿ったそれぞれの屈折率n1b及びn2bと、前記ブロック方向に直交する面内通過方向に沿ったそれぞれの屈折率n1p及びn2pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、
n1bとn2bとの間の差の大きさが約0.05よりも大きく、
n1pとn2pとの間の差の大きさが約0.05よりも小さく、
前記第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、前記光学拡散フィルムが、
前記入射光が前記ブロック方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTb及び全光学反射率RTbを有し、TTb/RTb≧2であり、
前記入射光が前記通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び全光学反射率RTpを有し、TTp/RTp≧6である、
光学拡散フィルム。
【請求項9】
前記第1の波長を有し実質的に垂直に入射する前記光について、
0.5≦TTp/TTb≦2であり、
前記入射光がそれぞれ前記通過方向及び前記ブロック方向に沿って偏光しているとき、前記光学拡散フィルムが正光学透過率TSp及びTSbを有し、TSp/TSb≧2である、
請求項8に記載の光学拡散フィルム。
【請求項10】
少なくとも前記第1の波長に対して、
n1bとn2bとの間の差の大きさが約0.06よりも大きく、
n1pとn2pとの間の差の大きさが約0.04より小さい、
請求項8又は9に記載の光学拡散フィルム。
【請求項11】
通過方向に沿って押し出された押出光学拡散フィルムであって、
バインダー内に分散した複数の粒子であって、前記粒子が、前記通過方向に直交する同一の面内ブロック方向に実質的に沿って細長く、約5より大きい平均アスペクト比を有する、複数の粒子と、
前記通過方向と約20度未満の角度を成す実質的に平行な複数の押出ダイラインと、を含み、
約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、前記光学拡散フィルムが、
前記入射光が前記ブロック方向に沿って偏光しているときは拡散光学透過率TDb及び拡散光学反射率RDbを有し、TDb/RDb≧4であり、
前記入射光が前記通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び拡散光学反射率RDpを有し、TTp/RDp≧10である、
押出光学拡散フィルム。
【請求項12】
前記通過方向に沿って約40インチを超える長さを有する、請求項11に記載の押出光学拡散フィルム。
【請求項13】
光学拡散フィルムを作製する方法であって、
副相材料と主相材料の不混和性ブレンドを、ダイを通して、前記副相材料のガラス転移温度及び前記主相材料のガラス転移温度よりも高い第1の温度で通過方向に沿って押し出して、実質的に第1の温度の、複数の実質的に球状の領域を含む押し出された混合物を得ることと、
前記押し出された混合物を、前記第1の温度よりも低い第2の温度で前記通過方向に実質的に直交するブロック方向に沿って延伸して、バインダー内に分散した複数の粒子を得ることと、を含み、前記バインダー及び前記粒子の少なくとも過半数の各々は、前記ブロック方向に沿ったそれぞれの屈折率n2b及びn1bと、前記通過方向に沿ったそれぞれの屈折率n2p及びn1pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、
n1bとn2bとの間の差の大きさが約0.05よりも大きく、
n1pとn2pとの間の差の大きさが約0.05より小さい、
方法。
【請求項14】
前記第2の温度が前記副相材料のガラス転移温度及び前記主相材料のガラス転移温度よりも約5~約50℃高く、前記押し出された混合物を前記ブロック方向に沿って前記第2の温度で延伸する前に、前記押し出された材料の温度が前記第2の温度よりも低い第3の温度まで下げられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記押し出された混合物の中の前記実質的に球状の領域が、少なくとも過半は前記副相材料を含む、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本明細書は概して、バインダー内に分散した粒子を含む光学拡散フィルム、及び非混和性ブレンドを押し出すことを含む光学拡散フィルムの製造方法に関する。この光学拡散フィルムは、ブロック方向に沿って偏光した光については光学拡散性が高く、直交する通過方向に沿って偏光した光については光学拡散性が低くあり得る。
【0002】
いくつかの態様では、本明細書は、バインダー内に分散した複数の粒子を含む光学拡散フィルムを提供する。粒子及びバインダーは、光学拡散フィルムの同一の面内ブロック方向に沿ったそれぞれの屈折率n1b及びn2bと、ブロック方向に直交する面内通過方向に沿ったそれぞれの屈折率n1p及びn2pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、n1bとn2bとの間の差の大きさは約0.05よりも大きく、n1pとn2pとの間の差の大きさは約0.05よりも小さい。いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、光学拡散フィルムは、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときは拡散光学透過率TDb及び拡散光学反射率RDbを有し、TDb/RDb≧4であり、入射光が通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び拡散光学透過率TDpを有し、TTp/TDp≧1.1である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、光学拡散フィルムは、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTb及び全光学反射率RTbを有し、TTb/RTb≧2であり、入射光が通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び全光学反射率RTpを有し、TTp/RTp≧6である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、光学拡散フィルムは、入射光がそれぞれ通過方向及びブロック方向に沿って偏光しているとき、正光学透過率(specular optical transmittance)TSp及びTSbを有し、TSp/TSb≧2である。
【0003】
いくつかの態様では、本明細書は、通過方向に沿って押し出された押出光学拡散フィルムを提供し、フィルムは、バインダー内に分散した複数の粒子であって、粒子は、通過方向に直交する同一の面内ブロック方向に実質的に沿って細長く、約5より大きい平均アスペクト比を有する、複数の粒子と、通過方向と約20度未満の角度を成す実質的に平行な複数の押出ダイラインと、を含む。いくつかの実施形態では、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、光学拡散フィルムは、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときは拡散光学透過率TDb及び拡散光学反射率RDbを有し、TDb/RDb≧4であり、入射光が通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び拡散光学反射率RDpを有し、TTp/RDp≧10である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、光学拡散フィルムは、入射光がそれぞれ通過方向及びブロック方向に沿って偏光しているとき、正光学透過率TSp及びTSbを有し、TSp/TSb≧2である。
【0004】
いくつかの態様では、本明細書は、光学拡散フィルムを作製する方法を提供する。方法は、副相材料と主相材料の不混和性ブレンドを、ダイを通して、副相材料のガラス転移温度及び主相材料のガラス転移温度よりも高い第1の温度で通過方向に沿って押し出して、実質的に第1の温度の、複数の実質的に球状の領域を含む押し出された混合物を得ることと、押し出された混合物を、第1の温度よりも低い第2の温度で通過方向に実質的に直交するブロック方向に沿って延伸して、バインダー内に分散した複数の粒子を得ることと、を含む。バインダー及び粒子の少なくとも過半数(majority)の各々は、ブロック方向に沿ったそれぞれの屈折率n2b及びn1bと、通過方向に沿ったそれぞれの屈折率n2p及びn1pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、n1bとn2bとの間の差の大きさは約0.05よりも大きく、n1pとn2pとの間の差の大きさは約0.05よりも小さい。
【0005】
これら及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、いかなる場合も、この簡潔な概要は、特許請求の範囲の主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】それぞれ、いくつかの実施形態による、光学拡散フィルムの概略上面図及び概略断面図である。
図1B】それぞれ、いくつかの実施形態による、光学拡散フィルムの概略上面図及び概略断面図である。
図2A】それぞれ、いくつかの実施形態による、別の光学拡散フィルムの概略上面図及び概略断面図である。
図2B】それぞれ、いくつかの実施形態による、別の光学拡散フィルムの概略上面図及び概略断面図である。
図3】いくつかの実施形態による、波長に対する、ブロック状態の拡散光学透過率と拡散光学反射率との比、及び通過状態の全光学透過率と拡散光学透過率との比のプロットである。
図4】いくつかの実施形態による、波長に対する、通過状態の全光学透過率と拡散光学反射率との比、及び通過状態の全光学透過率と全光学反射率との比のプロットである。
図5】いくつかの実施形態による、ブロック状態の光についての、直交する2つの面内の散乱角に対する光学拡散フィルムの光学透過率の強度分布のプロットである。
図6】いくつかの実施形態による、波長に対する、ブロック状態の全光学透過率と全光学反射率との比、及び通過状態の全光学透過率と全光学反射率との比のプロットである。
図7】いくつかの実施形態による、波長に対する、通過状態の正光学透過率とブロック状態の正光学透過率との比、及び通過状態の全光学透過率とブロック状態の全光学透過率との比のプロットである。
図8】いくつかの実施形態による、光学拡散フィルムを作製する方法の概略プロセスフロー図である。
図9A】例示的な押し出された混合物の断面の顕微鏡写真である。
図9B】例示的な押し出された混合物の断面の顕微鏡写真である。
図10A】別の例示的な押し出された混合物の断面の顕微鏡写真である。
図10B】別の例示的な押し出された混合物の断面の顕微鏡写真である。
図11】ブロック方向に沿って偏光した光についての、ブロック方向に直交する平面内の散乱角に対する例示的な光学拡散フィルムの光学透過率の強度分布のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも正確な比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0008】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、光学拡散フィルムは、第1の方向(「ブロック」方向とも呼ばれ得る)に沿って偏光した光について、直交する第2の方向(「通過」方向とも呼ばれ得る)に沿って偏光した光についてよりも高いヘイズを有し、第2の方向と厚さ方向とによって画定される平面において、第1の方向と厚さ方向とによって画定される平面においてよりも大きい散乱を有し得る。光学拡散フィルムは、例えばディスプレイ又はセンサの適用例において有用であり得る。例えば、光が狭い視野角で(例えば、交差プリズムフィルムを通過した後)液晶ディスプレイ(LCD)パネルを通過するようにディスプレイを構築し、LCDパネルの出射側に光学拡散フィルムを、水平に配向された第2の方向に配置して、水平面内の視野角を広げることができる。別の例として、光学拡散フィルムは、光学装置(例えば、光センサ)において1/4波長リターダと共に使用して、ブロック方向に沿って偏光した光が広い角度分布で装置に入射するとき、装置から反射してリターダを通って光学拡散フィルムに向かって戻る光がいずれも、より散乱の小さい通過状態で光学拡散フィルムに入射するように、かつ/又は、通過方向に沿って偏光した光が狭い角度分布で装置に入射するとき、装置から反射してリターダを通って光学拡散フィルムに向かって戻る光がいずれも、ブロック状態で光学拡散フィルムに入射し、また、より広い角度分布で光学拡散フィルムを実質的に透過するようにすることができる。
【0009】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、光学拡散フィルムはバインダー内に分散した複数の粒子を含み、粒子は実質的に光学的に等方性であり(例えば、約400nm~約1000nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対する粒子の最大屈折率と最小屈折率との差は、約0.05未満、又は約0.04未満、又は約0.03未満、又は約0.02未満、又は約0.01未満であることができる)、バインダーは複屈折性である(例えば、約400nm~約1000nmの範囲内の少なくとも1つの波長に対するバインダーの最大屈折率と最小屈折率との差は、約0.05超、又は約0.06超、又は約0.07超、又は約0.08超、又は約0.09超、又は約0.1超であることができ、その差は、例えば、最大約0.35、又は最大約0.3、又は最大約0.25であり得る)。バインダーの屈折率と粒子の屈折率との差は、第1の方向に沿って実質的に異なることができ(例えば、約0.05超、又は約0.06超、又は約0.07超、又は約0.08超、又は約0.09超、又は約0.1超だけ異なり、差は、例えば最大約0.35、又は最大約0.3、又は最大約0.25であってもよい)、直交する第2の方向に沿って実質的に一致することができる(例えば、約0.05未満、又は約0.04未満、又は約0.03未満、又は約0.02未満、又は約0.01未満だけ異なる)。粒子は、第1の方向に沿って細長くてもよく、その結果、第1の方向よりも第2の方向(すなわち、第2の方向を含む散乱面)において、より大きな散乱をもたらすことができる。
【0010】
光学拡散フィルムの光学特性は、ブロック軸及び通過軸に沿って所望の範囲の屈折率の差を有するようにバインダー及び粒子材料を選択し、粒子の数又は体積を調整し、粒子の形状を調整することによって調整することができる。一般に、ブロック方向の屈折率差を大きくすると、ブロック偏光状態での散乱が大きくなる。粒子数を増加させることによっても、散乱が増加する。屈折率差及び粒子数は、例えば、主に前方散乱をもたらすように選択することができる。光学拡散フィルムは、本明細書の他の箇所に更に記載されるように、押出に続いて延伸(例えば、標準的な(線形)テンター又は、放物線状テンターなどの非線形テンターを使用して)を行うことによって形成することができる。延伸に使用される延伸比は、バインダーの屈折率に影響を及ぼし(例えば、正の複屈折性をもつポリマーでは延伸方向に増加する)、また粒子の形状に影響を及ぼす(例えば、延伸方向に沿って細長くなった粒子をもたらす)ことがある。延伸比は、例えば、少なくとも約1:1、又は少なくとも約2:1、又は少なくとも約3:1、又は少なくとも約4:1、又は少なくとも約4.5:1であることができ、また、最大約30:1、又は最大約20:1、又は最大約15:1、又は最大約10:1、又は最大約8:1、又は最大約7:1であってもよい。延伸比は、例えば、約3:1~約10:1、又は約4:1~約8:1、又は約4.5:1~約7:1の範囲にあってもよい。延伸方向はブロック方向であってもよく、この方向に沿って粒子を伸長させると、延伸方向に直交する散乱面での散乱が増加し得ることがわかった。
【0011】
図1A図1Bはそれぞれ、いくつかの実施形態による、バインダー20内に分散した粒子10を含む光学拡散フィルム200の概略上面図及び概略断面図である。図2A図2Bはそれぞれ、いくつかの実施形態による、バインダー20内に分散した粒子11を含む光学拡散フィルム201の概略上面図及び概略断面図である。フィルム200、201は、直交する面内第1(ブロック方向又はb方向)及び第2(通過方向又はp方向)に沿って延び、b方向及びp方向に直交するz方向に沿った厚さを有する。図2Bでは、粒子11はb方向に沿って細長い。粒子11は、図2Aに概略的に示されているものよりも実質的に高いLb/Lp比を有することができる。図2Bは、ブロック方向に沿って偏光した(偏光状態31)実質的に垂直に入射する光30bと、通過方向に沿って偏光した(偏光状態32)実質的に垂直に入射する光30pとを概略的に示す。光30bの一部131tは透過し、光30bの一部131rは反射する。光30pの一部132tは透過し、光30pの一部132rは反射する。各部分131t、131r、132t、132rは、正反射成分及び拡散反射成分を含むとして概略的に示されている。全光学反射率は、積分球を使用して所与の波長又は波長範囲の全ての反射光を収集し、反射率を計測することによって測定することができる。拡散光学反射率は正反射除去反射率と呼ぶこともでき、正反射に対応する光が積分球から抜け出せるようになった積分球を使用して反射率を計測することによって測定することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、全光学反射率及び拡散光学反射率はそれぞれ、ASTM D1003-13試験規格に従って測定された全透過率及び拡散透過率を100%から減算したものとして近似されてもよい。正反射率は、全光学反射率と拡散光学反射率との差として測定することができる。フィルム200、201は、通過方向に沿って、約40インチ超、又は約45インチ超、又は約50インチ超、又は約55インチ超、又は約60インチ超であり得る長さLを有する。例えば、フィルム200、201はp方向に沿った押出によって形成することができ、また、連続ロールツーロールプロセスで形成されてもよく、ここで長さLは、例えば数十又は数百ヤードであることができる。フィルム200、201は、例えば約30~約250マイクロメートル、又は約40~約200マイクロメートル、又は約50~約150マイクロメートルの範囲の平均厚さを有してもよい。
【0012】
バインダー20及び粒子10、11は、図示されたb方向、p方向、及びz方向の各々に沿った屈折率を有する。いくつかの実施形態では、光学拡散フィルム200、201はバインダー20内に分散した複数の粒子10、11を含み、粒子及びバインダーは、光学拡散フィルム200、201の同一の面内(pb面)ブロック方向(b方向)に沿ったそれぞれの屈折率n1b及びn2bと、ブロック方向に直交する面内通過方向(p方向)に沿ったそれぞれの屈折率n1p及びn2pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、n1bとn2bとの間の差の大きさは約0.05よりも大きく、n1pとn2pとの間の差の大きさは約0.05よりも小さくなっている。いくつかの実施形態では、その少なくとも第1の波長に対して、n1bとn2bとの間の差の大きさは、約0.05超、約0.06超、約0.07超、約0.08超、約0.09超、又は約0.1超であってもよい。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、少なくとも第1の波長について、n1pとn2pとの間の差の大きさは、約0.05未満、又は約0.04未満、又は約0.03未満、又は約0.02未満、又は約0.01未満である。
【0013】
その少なくとも第1の波長は、第1の波長範囲より狭い第2の波長範囲内の1つ以上の波長を含んでもよい。例えば、その少なくとも第1の波長は、例えば、約400nm~約700nm、又は約420nm~約680nm、又は約450nm~約650nmの第2の波長範囲内の1つ以上の波長を含んでもよい。あるいは、第1の波長範囲は、約400nm~約1000nmよりも狭い範囲であってもよい(例えば、第1の波長範囲は、第2の波長範囲について記載された範囲のいずれかであってもよい)。λ1~λ2にわたる波長範囲(例えば、第1又は第2の波長範囲に対応する)を図1Bに概略的に示す。λ1は、例えば、約400nm、又は約420nm、又は約450nmであってもよい。λ2は、例えば、約1000nm、又は約850nm、又は約700nm、又は約680nm、又は約650nmであってもよい。その少なくとも第1の波長は、例えば、約532nm、約550nm、約631nm、約633nm、又は約900nmのうちの1つ以上を含んでもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム200、201は、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときは拡散光学透過率TDb及び拡散光学反射率RDb(TDb/RDb≧4)を有し、入射光が通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び拡散光学透過率TDp(TTp/TDp≧1.1)を有する。いくつかの用途では、ブロック方向に沿って偏光した光については低い後方散乱(例えば、少なくとも4のTDb/RDbによって定量化される)が望ましく、通過方向に沿って偏光した光については、全透過率に対して限定的な拡散透過率(例えば、1.1以上のTTp/TDpによって定量化される)が望ましいことがある。図3は、いくつかの実施形態による、波長に対するTDb/RDb及びTTp/TDpのプロットである。典型的には、TDb/RDbは概して、バインダーに含まれる粒子の数を減少させたとき、及び/又は粒子とバインダーとの間のブロック方向に沿った屈折率の差を減少させたときに増加して、後方散乱が少なくなる。典型的には、TTp/TDpは概して、バインダーに含まれる粒子の数又は体積を減少させたとき、及び/又は粒子とバインダーとの間の通過方向に沿った屈折率の差を減少させたときに増加する。いくつかの実施形態では、TDb/RDb≧4、又はTDb/RDb≧5、又はTDb/RDb≧6、又はTDb/RDb≧7、又はTDb/RDb≧7、又はTDb/RDb≧9、又はTDb/RDb≧10、又はTDb/RDb≧11である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、TTp/TDp≧1.1、又はTTp/TDp≧1.25、又はTTp/TDp≧1.5、又はTTp/TDp≧1.75、又はTTp/TDp≧2、又はTTp/TDp≧2.25、又はTTp/TDp≧2.5である。TDb/RDbは、例えば最大約25、又は最大約20、又は最大約18であってもよい。TTp/TDpは、例えば最大約5、又は最大約4、又は最大約3であってもよい。図3、及び波長に対する比の他のプロットにおいて850nm付近に生じるピークは、計測に使用した分光光度計の検出器スイッチに起因すると考えられる。
【0015】
実質的に垂直に入射する光は、例えば、垂直から30度、又は20度、又は10度以内であってもよく、あるいは公称的に垂直であってもよい。斜めに入射する光については、光は、bp平面上に投影された偏光状態がそれぞれブロック方向又は通過方向に沿っているとき、ブロック方向又は通過方向に沿って偏光していると記述されてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム200、201は、入射光が通過方向に沿って偏光しているとき、拡散光学反射率RDpを有する。いくつかの適用例では、通過方向に沿って偏光した光については低い後方散乱(例えば、少なくとも10のTTp/RDpによって定量化される、及び/又は、他の箇所に記載される、少なくとも6のTTp/RTpによって定量化される)が所望されることがある。いくつかの実施形態では、TTp/RDp≧10、又はTTp/RDp≧15、又はTTp/RDp≧20、又はTTp/RDp≧25、又はTTp/RDp≧30、又はTTp/RDp≧35である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム200、201は、入射光が通過方向に沿って偏光しているとき、全光学反射率RTpを有し、ここでTTp/RTp≧6、又はTTp/RTp≧7、又はTTp/RTp≧8、又はTTp/RTp≧9である。典型的には、TTp/RDp及びTTp/RTpは概して、バインダー内に含まれる粒子の数又は体積を減少させたとき、及び/又は粒子とバインダーとの間の通過方向に沿った屈折率の差を減少させたときに増加する。TTp/RDpは、例えば最大約100、又は最大約80、又は最大約70であることができる。TTp/RTpは、例えば最大約25、又は最大約20、又は最大約18であることができる。図4は、いくつかの実施形態による、波長に対する比TTp/RDp及び比TTp/RTpのプロットである。
【0017】
図5は、いくつかの実施形態による、ブロック状態の光についての、bz平面内の散乱角(例えば図1Bのbz平面内の散乱角α1)及びpz平面内の散乱角(例えば図2Bのpz平面内の散乱角α2)に対する光学拡散フィルムの光学透過率の強度分布のプロットである。強度分布は、最大値1.0を有するように正規化されている。図5のプロットは、平行化された白色発光ダイオード(LED)光源を使用して測定した。いくつかの実施形態では、ブロック方向に沿って偏光した実質的に垂直に入射する光30bについて、光学拡散フィルム200、201の全光学透過率は、それぞれブロック方向及び通過方向を含む第1の散乱面及び第2の散乱面(bz面及びpz面)において、第1の強度分布34及び第2の強度分布35を有する。散乱面は一般に、入射光の方向及び散乱光の方向によって定義される面である。いくつかの適用例では、第2の強度分布については第1の強度分布よりも広い分布(例えば、分布の半値全幅(FWHM)の、少なくとも1.5の比率によって定量化される)が所望されることがある。いくつかの実施形態では、この異なるFWHMは、例えば、同一の面内ブロック方向に実質的に沿って細長く、約5より大きい(又は本明細書の他の箇所に記載される別の範囲内の)平均アスペクト比を有する粒子から生じる。いくつかの実施形態では、第1の強度分布及び第2の強度分布は、それぞれ半値全幅F1及びF2を有し、F2/F1≧1、又はF2/F1≧1.5、又はF2/F1≧2、又はF2/F1≧2.5、又はF2/F1≧3、又はF2/F1≧3.5、又はF2/F1≧4、又はF2/F1≧10、又はF2/F1≧50、又はF2/F1≧100である。F1は、いくつかの場合(例えば、大きな延伸比が利用される場合)は小さく(例えば、1度未満に)することができ、大きなF2/F1比をもたらす。F2/F1は、例えば最大約500であることができる。他の実施形態では、F2/F1は、例えば約200以下、又は約100以下、又は約50以下、又は約20以下である。いくつかの実施形態では、F1は、例えば、約0.5度~約10度、又は約1度~約8度、又は約1.5度~約6度、又は約2度~約5度の範囲である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、F2は、例えば最大約60度、又は最大約40度、又は最大約30度、又は最大約25度である。
【0018】
いくつかの適用例では、通過方向に沿って偏光した光よりもブロック方向に沿って偏光した光について、より高いヘイズが所望される。いくつかの実施形態では、光学拡散フィルム200、201は、ブロック方向に沿って偏光した実質的に垂直に入射する光30、30bについて光学ヘイズHbを有し、通過方向に沿って偏光した実質的に垂直に入射する光30、30pについて光学ヘイズHpを有し、ここで、Hb/Hp≧1.5、又はHb/Hp≧2、又はHb/Hp≧2.5、又はHb/Hp≧3、又はHb/Hp≧3.5である。指定された偏光状態についてのフィルムの光学ヘイズは、ヘイズメーター(例えば、BYK Corporation(Wesel,Germany)から入手可能なHaze-Gardヘイズメーター)を使用し、フィルム上に吸収直線偏光子をヘイズメーターの光源に面して配置し、偏光子の通過軸を指定された偏光状態に整列させて計測することができる。光学ヘイズは、試験片がフィルム上に配置された吸収直線偏光子を含むことを除いて、ASTM D1003-13試験規格に記載されているように測定できる。典型的には、光学ヘイズHbは概して、粒子とバインダーとのブロック方向に沿った屈折率の差を増加させたとき、及び/又は粒子の数を増加させたときに増加する。光学ヘイズHbは、例えば、ブロック方向に沿って粒子とバインダーとの屈折率が実質的に異なる(例えば、少なくとも約0.08又は少なくとも約0.1だけ異なる)場合は高くなり得る(例えば、約80%超又は約90%超)。光学ヘイズHpは、例えば、通過方向に沿って粒子とバインダーとの屈折率が密に一致する(例えば、約0.02以内、又は約0.01以内)場合は低くなり得る(例えば、約2%未満又は約1%未満)。Hb/Hpは、例えば、最大約100、又は最大約50、又は最大約25、又は最大約20であってもよい。いくつかの実施形態では、Hbは、約10%~約100%、又は約15%~約99%、又は約20%~約98%、又は約20%~約90%の範囲にある。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、Hpは、約0%~約65%、又は約0.5%~約60%、又は約1%~約55%、又は約1.2%~約50%、又は約5%~約45%、又は約10%~約40%の範囲にある。光30pよりも光30bに対してヘイズが高いことは、例えば、図2Bに概略的に示されている。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム200、201は、入射光がブロック方向に沿って偏光しているとき、全光学透過率TTbを有する。TTbはTTpと同様であってもよく(例えば、両方とも約60%超、又は約70%超であってもよい)、入射光が通過方向に沿って偏光しているときの正光学透過率TSpは、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときの正光学透過率TSbよりも実質的に大きくてもよい(例えば、通過方向に沿って偏光している光よりもブロック方向に沿って偏光している光について、実質的に大きい拡散透過率及びそれに対応して実質的に小さい正透過率が所望されることがある)。図7は、いくつかの実施形態による、波長に対するTSp/TSb及びTTp/TTbのプロットである。いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、0.5≦TTp/TTb≦2である。いくつかのそのような実施形態又は他の実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム200、201は、入射光がそれぞれ通過方向及びブロック方向に沿って偏光しているときは正光学透過率TSp及びTSbを有し、TSp/TSb≧2である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、0.5≦TTp/TTb、又は0.6≦TTp/TTb、又は0.7≦TTp/TTb、又は0.8≦TTp/TTb、又は0.9≦TTp/TTb、又は1≦TTp/TTbである。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、TTp/TTb≦2、又はTTp/TTb≦1.9、又はTTp/TTb≦1.8、又はTTp/TTb≦1.7、又はTTp/TTb≦1.6、又はTTp/TTb≦1.5、又はTTp/TTb≦1.4、又はTTp/TTb≦1.3、又はTTp/TTb≦1.25、又はTTp/TTb≦1.2である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、TSp/TSb≧2、又はTSp/TSb≧2.5、又はTSp/TSb≧3、又はTSp/TSb≧3.5、又はTSp/TSb≧4、又はTSp/TSb≧4.5、又はTSp/TSb≧5、又はTSp/TSb≧5.5、又はTSp/TSb≧6である。典型的には、TSp/TSbは概して、粒子とバインダーとの間のブロック方向に沿った屈折率の差を増加させたとき、及び/又は粒子とバインダーとの間の通過方向に沿った屈折率の差を減少させたときに増加する。TSp/TSbは、例えば最大約150、又は最大約100、又は最大約75、又は最大約50、又は最大約30であってもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム200、201は、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTb及び全光学反射率RTbを有し、TTb/RTb≧2であり、入射光が通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び全光学反射率RTpを有し、TTp/RTp≧6である。いくつかの適用例では、低い後方散乱(例えば、少なくとも2のTTb/RTbによって、及び/又は少なくとも6のTTp/RTpによって定量化される)が所望されることがある。図6は、いくつかの実施形態による、波長に対する比TTb/RTb及び比TTp/RTpのプロットである。いくつかの実施形態では、TTb/RTb≧2、又はTTb/RTb≧3、又はTTb/RTb≧3.5、又はTTb/RTb≧4、又はTTb/RTb≧4.5である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、TTp/RTp≧6、又はTTp/RTp≧7、又はTTp/RTp≧8、又はTTp/RTp≧9、又はTTp/RTp≧10、又はTTp/RTp≧11である。典型的には、TTb/RTbは概して、バインダーに含まれる粒子の数を減少させたとき、及び/又は粒子とバインダーとの間のブロック方向に沿った屈折率の差を減少させたときに増加して、後方散乱が少なくなる。TTb/RTbは、例えば最大約15、又は最大約12、又は最大約10であり得る。TTp/RTpは、粒子及びバインダーの通過方向に沿った屈折率が厳密に一致する場合に大きくなることがある。TTp/RTpは、例えば最大約100、又は最大約75、又は最大約50、又は最大約30であり得る。いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、RTbは約25%未満、又は約20%未満、又は約17%未満、又は約15%未満である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、RTpは、約20%未満、又は約15%未満、又は約10%未満、又は約8%未満である。
【0021】
いくつかの実施形態では、光学拡散フィルム200、201は、バインダー20内に分散した複数の粒子10、11を含む。粒子10、11及びバインダー20は、光学拡散フィルム200、201の同一の面内(pb面)ブロック方向(b方向)に沿ったそれぞれの屈折率n1b及びn2bと、ブロック方向に直交する面内通過方向(p方向)に沿ったそれぞれの屈折率n1p及びn2pとを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲(又は本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの波長範囲)内の少なくとも第1の波長に対して、n1bとn2bとの間の差の大きさは約0.05よりも大きく、n1pとn2pとの間の差の大きさは約0.05よりも小さい。n1bとn2bとの間の差の大きさは、本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲内にあることができる。n1pとn2pとの間の差の大きさは、本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲内にあることができる。いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム200、201は、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTb及び全光学反射率RTbを有し、入射光が通過方向に沿って偏光しているときは全光学透過率TTp及び全光学反射率RTpを有する。いくつかの実施形態では、TTb/RTb≧2であるか、TTb/RTbは本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲内にあることができる。いくつかの実施形態又は他の実施形態では、TTp/RTp≧6であるか、TTp/RTpは、本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲内にあることができる。いくつかの実施形態では、第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光について、0.5≦TTp/TTb≦2であり、光学拡散フィルム200、201は、入射光がそれぞれ通過方向及びブロック方向に沿って偏光しているときに正光学透過率TSp及びTSbを有し、TSp/TSb≧2である。TTp/TTb及びTSp/TSbは、本明細書の他の箇所に記載されるそれぞれの範囲のいずれかにあることができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、光学拡散フィルム200、201は、本明細書の他の場所に更に記載されるように、押出プロセスによって形成される。いくつかの実施形態では、光学拡散フィルム200、201は、通過方向に対して約20度未満、又は約15度未満、又は約10度未満、又は約6度未満、又は約4度未満の角度θを成す、複数の実質的に平行な(例えば、平行から約20度以内、又は約15度以内、又は約10度以内、又は約6度以内、又は約4度以内)押出ダイライン40を含む。ダイラインは、フィルムを押し出すために使用されたダイからフィルムに残された痕跡又は構造(例えば、稜線又は溝線)である。フィルムは押し出された後に、ダイラインに実質的に直交する方向に延伸されることがあるので、ダイラインはb方向に沿って、ダイの対応する特徴よりも大きな距離で離間されることがある。いくつかの実施形態では、押出ダイライン40の少なくともいくつかは、稜線41を形成する。いくつかの実施形態では、ダイラインの稜線41は、例えば、約0.1~約8ミクロン、又は約0.2~約4ミクロン、又は約0.4~2ミクロンの平均高さh(例えば、図1B参照)を有する。いくつかの実施形態では、押出ダイライン40の少なくともいくつかは、溝線42を形成する。いくつかの実施形態では、ダイラインの溝線42は、例えば、約0.1~約8ミクロン、又は約0.2~約4ミクロン、又は約0.4~2ミクロンの平均深さd(例えば、図1B参照)を有する。いくつかの実施形態では、ダイラインが十分に大きくて(例えば、幅が広い、かつ/又は、高い/深い)、(例えば、投影画像から約1mの距離から見た場合)光源点からの光(例えば、通過方向に沿って偏光している)がフィルムを透過して投影画像を形成したときに、(例えば、正常視力の人の)裸眼でダイライが容易に見えることがある。
【0023】
いくつかの実施形態では、通過方向(p方向)に沿って押し出された押出光学拡散フィルム201は、バインダー20内に分散した複数の粒子11を含み、粒子11は、通過方向に直交する同一の面内ブロック方向(b方向)に実質的に沿って細長い。例えば、粒子11は、同一方向(b方向)の約20度以内、又は約10度以内、又は約5度以内の方向に沿って細長くあることができる。粒子は、例えば、約5超、又は約10超、又は約15超、又は約20超、又は約40超、又は約45超、又は約50超の平均アスペクト比を有することができる。平均アスペクト比は、例えば最大約1000、又は最大約600、又は最大約400、又は最大約200、又は最大約100、又は最大約80であることができる。特に明記しない限り、粒子のアスペクト比は、延伸方向に沿った粒子の長さ(Lb)を、フィルムの厚さ方向(z方向)に沿った粒子の長さ(Lz)で除算したものである。平均アスペクト比は、複数の粒子についての粒子のアスペクト比の平均(例えば、非加重平均)である。いくつかの実施形態では、例えば、Lb/Lp及びLp/Lzの一方又は両方は、粒子の平均アスペクト比(Lb/Lzの平均)について本明細書に記載される範囲の平均を有することができる。光学拡散フィルム201は、通過方向に対して約20度未満の角度θを成す実質的に平行な複数の押出ダイライン40を含むことができ、又は角度θは本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲内にあることもできる。いくつかの実施形態では、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内、又は本明細書の他の箇所に記載される別の範囲内の第1の波長を有し実質的に垂直に入射する光30について、光学拡散フィルム201は、入射光がブロック方向に沿って偏光しているときは拡散光学透過率TDb及び拡散光学反射率RDbを有し、TDb/RDb≧4であり、入射光が通過方向に沿って偏光している時は全光学透過率TTp及び拡散光学反射率RDpを有し、TTp/RDp≧10である。TDb/RDb及びTTp/RDpは、本明細書の他の箇所に記載されるそれぞれの範囲のいずれかであることができる。いくつかの実施形態では、押出光学拡散フィルム201は、通過方向に沿って約40インチを超える長さLを有し、又は、長さLは本明細書の他の箇所に記載される別の範囲内にあることもできる。
【0024】
いくつかの実施形態では、バインダー20は第1の熱可塑性ポリマーを含み、粒子10、11は、それとは異なる第2の熱可塑性ポリマーを含む。いくつかの実施形態では、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーは、第1の熱可塑性ポリマーの融解温度及び第2の熱可塑性ポリマーの融解温度よりも高い温度で(すなわち、第1の熱可塑性ポリマーの融解温度及び第2の熱可塑性ポリマーの融解温度の各々よりも高い温度で)非混和性である。いくつかのこのような実施形態又は他の実施形態では、第1の熱可塑性ポリマーは複屈折性であり、第2の熱可塑性ポリマーは実質的に光学的等方性である。
【0025】
バインダー20に適した材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、coPEN(コポリエチレンナフタレートテレフタレートコポリマー)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリヘキシルエチレンナフタレートコポリマー(PHEN)、グリコール変性PET(PETG又はPETg)、グリコール変性PEN(PENG)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、又はこれらのブレンドが挙げられる。好適なsPSは、例えば、Idemitsu Kosan Co.,Ltd.(Tokyo,Japan)から入手することができる。アタクチックポリスチレン(aPS)は、任意選択的に、得られる層の屈折率を調整するために、及び/又は層のヘイズを低減するために(例えば、層の結晶化度を低減することによって)、sPSと(例えば、約5~約30重量パーセントのaPSで)ブレンドすることができる。好適なPETは、例えば、Nan Ya Plastics Corporation,America(Lake City,SC)から入手することができる。PETGは、ポリマーのグリコール単位の一部が異なるモノマー単位、典型的にはシクロヘキサンジメタノールから誘導されるモノマー単位で置換されたPETとして説明することができる。PETGは、ポリエステルを製造するエステル交換反応で使用されるエチレングリコールの一部(例えば、約15~約60モルパーセント又は約30~約40モルパーセント)を、例えばシクロヘキサンジメタノールで置き換えることによって製造することができる。好適なPETGコポリエステルとしては、Eastman Chemical Company(Kingsport,TN)から入手可能なGN071が挙げられる。PEN及びcoPENは、例えば、米国特許第10,001,587号(Liu)に記載されているように製造することができる。グリコール変性ポリエチレンナフタレート(PENG)は、ポリマーのグリコール単位の一部が異なるモノマー単位で置換されたPENとして説明することができ、例えば、ポリエステルを製造するエステル交換反応で使用されるエチレングリコールの一部分(例えば、約15~約60モルパーセント又は約30~約40モルパーセント)をシクロヘキサンジメタノールで置き換えることによって製造することができる。PHENは、エステル交換反応において使用されるエチレングリコールの一部分(例えば、約15~約60モルパーセント又は約30~約50モルパーセント、又は約40モルパーセント)がヘキサンジオールで置き換えられることを除いて、例えば、米国特許第10,001,587号(Liu)にPENについて記載されているように製造することができる。いくつかの実施形態では、バインダー20は、ポリエステル及びコポリエステルのうち1つ以上を含む。例えば、バインダーは、ポリエステルとコポリエステルのブレンドを含んでもよい。いくつかの実施形態では、バインダー20は、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びグリコール変性ポリエチレンナフタレートのうち1つ以上を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、複数の粒子10、11の中の粒子は、スチレン系のポリマー又はコポリマー(スチレン基を含有するポリマー又はコポリマー)を含む。いくつかの実施形態では、複数の粒子10、11の中の粒子は、スチレンブタジエン、スチレンアクリロニトリル、スチレンメチルメタクリレート、及び耐衝撃性改良スチレンアクリルのうち1つ以上を含む。耐衝撃性改良スチレンアクリルは、当該技術分野で知られているように、耐衝撃性及び/又は靱性を改善するためにモノマー基を組み込むことができる。好適な耐衝撃性改良スチレンアクリルとしては、例えば、Ineos Americas(League City,TX)からZYLARの商品名で入手可能なものが挙げられる。他の好適なスチレン系コポリマーとしては、例えば、Ineos Americas(League City,TX)からSTYROLUX、STYROLUTION、及びNASの商品名で入手可能なものが挙げられる。複数の粒子の中の粒子として有用な他のクラスの材料としては、例えば、ビスフェノールAを含むポリカーボネートポリマー、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)及びポリ(カプロラクタム)(ナイロン6)などのナイロンポリマー、並びにポリ(2-フェニルエチルメタクリレート)などのメタクリレートポリマーが挙げられる。複数の粒子の中の粒子として有用なポリマーを選択することは、一般に、非延伸面内方向における複屈折バインダーの屈折率に実質的に一致するようにポリマーを選択すること、及び、バインダーポリマー系と不混和性で、延伸プロセスの間非複屈折性を維持し、溶融加工段階の間分解しないポリマーを選択することを指針としてもよい。
【0027】
図8は、いくつかの実施形態による、光学拡散フィルムを作製する方法の概略プロセスフロー図である。いくつかの実施形態では、光学拡散フィルム201、265を製造する方法は、副相材料310と主相材料320との不混和性ブレンド263を、ダイを通して、副相材料310のガラス転移温度(Tg)及び主相材料320のガラス転移温度(Tg)よりも高い第1の温度T1で通過方向(p方向)に沿って押し出して、実質的に第1の温度T1(例えば、T1の約10℃以内又は5℃以内)の押し出された混合物264を得ること(ステップ301)と、押し出された混合物264を、通過方向に実質的に直交する(例えば、直交の約20度以内、又は約10度以内、又は約5度以内)ブロック方向(b方向)に沿って第1の温度T1より低い第2の温度T2で延伸して、バインダー20内に分散した複数の粒子11を得ること(ステップ302)と、を含み、バインダー20及び粒子11の少なくとも過半数の各々はブロック方向に沿ったそれぞれの屈折率n2b及びn1b及び通過方向に沿ったそれぞれの屈折率n2p及びn1pを有し、約400nm~約1000nmにわたる第1の波長範囲内又は本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの波長範囲内の少なくとも第1の波長に対して、n1bとn2bとの間の差の大きさが約0.05よりも大きく、n1pとn2pとの間の差の大きさが約0.05よりも小さい。n1bとn2bとの間の差の大きさは、本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲内にあることができる。n1pとn2pとの間の差の大きさは、本明細書の他の箇所に記載されるいずれかの範囲内にあることができる。粒子11の少なくとも過半数は、粒子11の(個数で)少なくとも約60パーセント、又は少なくとも約70パーセント、又は少なくとも80パーセント、又は少なくとも約90パーセント、又は実質的に全てを含むことができる。粒子11の少なくとも過半数は、粒子11の総質量の少なくとも約60パーセント、又は少なくとも約70パーセント、又は少なくとも80パーセント、又は少なくとも約90パーセント、又は実質的に全てを含むことができる。非混和性ブレンドの副相材料は一般に、非混和性ブレンドの総体積の半分未満を構成し、典型的には不連続相を画定する。非混和性ブレンドの主相材料は、一般に、非混和性ブレンドの総体積の半分より多くを含み、典型的には連続相を画定する。
【0028】
図9A図9Bは、延伸前の押し出された混合物(実施例1)のそれぞれpz面及びbz面での断面の顕微鏡写真である。図10A図10Bは、延伸前の押し出された混合物(実施例2)のそれぞれpz面及びbz面での断面の顕微鏡写真である。いくつかの実施形態では、押し出された混合物264(延伸前)は、離散した複数の領域410を含む。いくつかの実施形態では、押し出された混合物は、実質的に球状の複数の領域510を含む。例えば、離散した複数の領域410は、実質的に球状の複数の領域510を含むことができる。いくつかの実施形態では、離散した複数の領域410はまた、実質的に球状でない領域を含んでもよい。実質的に球状の領域とは、領域に内接できる最大の球が直径Diを有し、領域を包含できる最小の球が直径Doを有し、Do/Diが約4未満である領域である。いくつかの実施形態では、実質的に球状の領域の少なくとも一部(例えば、少なくとも過半数)は、約3.5未満、又は約3未満、又は約2.5未満のDo/Diを有する。より大きなダイ(例えば、より大きなダイギャップ)を、より遅い押出速度で使用することにより、かつ/又は、より粘度の低い(例えば、所与の温度で)主相材料320及び/若しくはより高い押出温度(例えば、主相材料320の粘度を低下させるため)を使用することにより、領域をより球状にできることがわかった。押し出された混合物において領域を実質的に球状にすると、例えば、p方向に沿って実質的に細長くするのとは対照的に、例えば、b方向に沿って延伸した後に、より大きなアスペクト比の粒子が得られることがわかり、また、所望の散乱特性(例えば、本明細書の他の箇所に記載される高いF2/F1)が得られることがわかった。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1の温度T1は、副相材料310の溶融温度及び主相材料320の溶融温度よりも高い。いくつかの実施形態では、第1の温度T1は、例えば、約200℃超、又は約220℃超、又は約240℃超、又は約260℃超、又は約270℃超である。いくつかの実施形態では、第1の温度は、例えば約400℃未満である。いくつかの実施形態では、第2の温度は、副相材料のガラス転移温度及び主相材料のガラス転移温度よりも約5~約50℃、又は約5~約40℃、又は約5~約30℃、又は約5~約20℃、又は約8~約30℃高い。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、押し出された混合物264を第2の温度T2でブロック方向に沿って延伸する前に、押し出された混合物264の温度は、第2の温度T2よりも低い第3の温度T3まで下げられる。例えば、押し出された混合物をキャスティングホイール(当該技術分野ではチルロール又はキャスティングドラムと呼ばれることもある)にキャストして、混合物を急速に冷却してキャストフィルムを得ることができる。いくつかの実施形態では、第3の温度T3は、ほぼ室温(例えば、約18~約30℃の範囲の温度)である。
【0030】
いくつかの実施形態では、押し出された混合物の中の離散領域及び/又は押し出された混合物の中の実質的に球状の領域は、少なくとも過半(mostly)が副相材料を含む。例えば、副相材料は、領域の少なくとも約80重量パーセント、又は少なくとも約90重量パーセント、又は少なくとも約95重量パーセントを成すことができる。いくつかの実施形態では、押し出された混合物の中の離散領域及び/又は押し出された混合物の中の実質的に球状の領域は、少なくとも過半が主相材料を含む材料の中に分散している。例えば、主相材料は、領域が分散している材料の少なくとも約70重量パーセント、又は少なくとも約80重量パーセント、又は少なくとも約90重量パーセント、又は少なくとも約95重量パーセントを成すことができる。
【実施例
【0031】
【表1】

表2に示す材料を使用して、共押出及びバッチ延伸(batch orienting)によって実施例1~5の光学拡散フィルムを作製した。押出機の温度は約277℃であった。
【表2】
【0032】
材料#1及び材料#3(含まれる場合)はポリエステル相材料であり、材料#2はコポリスチレン相材料であった。押出機への投入物中のこれらの材料の重量%及びポンド/時間(pph)が表2に示されている。ポリエステル相及びコポリスチレン相は不混和性であり、押出後及び延伸後に2つの別々の相を示した。
【0033】
押出後、延伸前に、押し出された混合物をキャスティングホイールにキャストすることによって、押し出された混合物を冷却した。実施例1~4では、2層共押出を行い、キャスティングプロセスの間、既に記載した層(ブレンド層)は空気側にあり、ホイール側の層は、ブレンド層内のポリエステル相と同じ組成物から構成され、ブレンド層全体と同じ速度で供給された。実施例5では、3層共押出を用い、中心層はブレンド層であり、他の2つの層はブレンド層のポリエステル相と同じ組成を有し、2つの流れのそれぞれがブレンド層全体の速度の半分の速度で供給された。全ての実施例に、8インチ押出ダイを使用した。ダイギャップは、実施例1~4では60ミル、実施例5では100ミルであった。
【0034】
これら全てのフィルムについて、延伸プロセスはバッチ延伸機(Brueckner Group(Portsmouth,NH)製のKaro IV)で行った。95℃の予熱及び延伸温度を使用した。延伸は、機械方向(MD)に直交する横方向(TD)に約6:1の延伸比を有する拘束延伸であった。これらの条件で延伸されたPETは、屈折計(Metricon Corporation(Pennington,NJ))を用いて631nmで計測して、延伸方向(TD)に約1.66、延伸方向に垂直な面内方向(MD方向)に1.56、厚さ方向に1.53の屈折率を有する。延伸後のフィルムの厚さを表2に示す。
【0035】
フィルムが偏光を散乱させる傾向の特性を、Haze Gard(BYK Corporation(Wesel,Germany))を使用して測定した。実施例フィルムの入射光側に高コントラスト比吸収偏光子を(通過状態の透過軸を実施例フィルムの延伸方向に整列させて)配置し、実施例フィルムの表面粗さからの散乱を低減するためにフィルムの空気側に透明テープ(3M(Saint Paul,MN)製の3M 375)を貼付することによって、ブロック方向(TD)に偏光した光のヘイズを測定した。フィルムのホイール側が入射光に向くように試料を配向した。通過状態ヘイズについては、吸収偏光子を実施例フィルムの非延伸方向(MD)に整列させる。偏光ヘイズ計測の結果を表3に示す。
【0036】
散乱光の角度分布を、コノスコープ(ELDIM Corporation(Herouville-Saint-Clair,France))を用いて円錐角80度で計測した。平行化された白色(LED)光源を、光源と実施例フィルムとの間に吸収偏光子を配置して利用した。偏光したものの透過軸をブロック方向にして計測を行い、MD及びTD方向に沿った散乱パターンの半値全幅(FWHM)を測定した。これを表3に報告する。
【表3】
【0037】
積分球内でフィルム反射率を計測することによって、実施例フィルムの反射特性を測定した。全反射率は、正反射を含む反射率(Reflectance with the Specular Included:RSIN)とも呼ばれ、これを、全ての角度から入射する、実施例フィルムから反射する全ての光を収集することによって計測し、拡散反射率は、正反射を除く反射率(Reflectance with the Specular Excluded:RSEX)としても知られ、これを、正反射を生じる光を積分球から逃がすことによって計測した。計測にはLAMBDA 1050分光光度計(PerkinElmer,Inc.(Waltham,MA))を使用した。表4に、得られた反射率を450nm~650nmの範囲の波長にわたって平均したものを示す。
【表4】
【0038】
機械方向及び厚さ方向によって定義される平面(pz平面)における、ブロック状態偏光についての例示的なフィルムの散乱(達成した最大カウント数によって正規化)を図11に示す。これらのフィルムの非対称散乱の例を、実施例5について図5に示す。延伸前の実施例フィルムの断面の顕微鏡写真を、実施例1について図9A図9Bに、実施例2について図10A図10Bに示す。
【0039】
キャストフィルムを延伸する前の粒子の平均アスペクト比を、光学顕微鏡を使用してbz面及びpz面における断面を調査して測定した。断面内の粒子について比Lp/Lz及びLb/Lzを測定し、比の平均を判定した。結果を表5に示す。
【表5】
【0040】
延伸されたフィルムの対応するアスペクト比を、標準的なテンターを実施例に使用した場合に想定されるように、延伸比が約6であればTD方向では6倍の延伸、厚さ方向では6倍の薄化がもたらされると仮定して計算した。結果を表6に示す。
【表6】
【0041】
パラボリックテンターを延伸比6で使用してキャストフィルムを延伸した場合に得られるであろうアスペクト比を、TD方向に6倍延伸し、MD方向及び厚さ方向に6の平方根倍だけそれぞれ収縮及び薄化すると仮定して計算した。結果を表7に示す。
【表7】
【0042】
「約(about)」などの用語は、これらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す量に適用される「約」の使用が、本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって別途明らかではない場合、「約」とは、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。特定の値の約として与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、それが本明細書で使用及び記載されている文脈において当業者にとって別途明らかではない場合には、約1の値を有する量とは、その量が0.9~1.1の値を有すること、及び、その値が1である場合もあることを意味する。
【0043】
上記において参照された参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。
【0044】
図面中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図面中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。特定の実施形態が本明細書において図示及び説明されているが、図示及び記載されている特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく、様々な代替的実施態様及び/又は等価の実施態様によって置き換えられ得ることが、当業者には理解されよう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のあらゆる適応例、又は変形例、又は組み合わせを包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
【国際調査報告】